約 473,284 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/42142.html
ニミュエ ヴィヴィアンの別名。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/31957.html
登録日:2015/04/04 土 20 00 00 更新日:2023/12/27 Wed 22 25 22 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 兵器 変態 変態兵器 戦艦 漢のロマン 漢の浪漫 現在の技術でも実現困難 男のロマン 男の浪漫 私の排水量は530000tです 見果てぬ夢 軍事 軍艦 五十万トン戦艦とは、明治から大正にかけて大日本帝国海軍の金田秀太郎中佐が構想した史上最大級の戦艦である。 如何せん日本の戦艦と言えば、架空戦記でも常連の大和型や国の象徴だった長門型、航空戦艦となりロマンを与えた伊勢型、艦橋が巨大な扶桑型、極めてマイナーな鞍馬型といったものを連想しがちだが、この五十万トン戦艦とは、ある意味島国である日本ならではの発想と言えよう。 なお、この五十万トン戦艦の後も様々な戦艦が計画されたが、本艦を超える大きさの戦艦は計画されていないと思われる。一応、計画のみだが本艦の4倍の規模を持つ空母が構想された事はある。 (ドイツのH45なる戦艦が本艦と同等の艦であると言われる事もあるが、H45は海外のミリオタによる創作であった事が明らかになっている。) ◆概要 1912年(大正元年)のころ、日本では日露戦争に勝利し、これから第一次世界大戦へ突入していく過渡期である。 そんな中、大日本帝国海軍の連合艦隊はロシア海軍を相手に幾多もの海戦に勝利を収め、世界を驚かせていた。 当然ながら、日露戦争が終わった後も次の戦争へ備えていたのである。それは海軍も同じであり、更に強力な戦艦を要求していたのである。 が、当時の日本はそんなに戦艦を建造できる勢いはなかった。というか今のような工廠もそれ程多くなかったのである。 そこで、どういう発想か、海軍上層部と当時は中佐であった金田秀太郎は思いついた。 副官「なにか手立てはないか?」 司令官「そう言われましても今の我が国では欧米列強のような工廠の用意から始めないと・・・・。」 金田「私にいい考えがある。」 大将「なにか思いついたのですか?」 金田「我が国でも一番手っ取り早い方法があります。大量に建造できないのなら、途方になく巨大な戦艦を1隻浮かべてしまえばいい。つまり、1隻で他国の艦隊とお手合わせできる戦艦を作るべし!」 副官「なっ!!」 こんな形の会話だったのかはさておき、要は大量に作らなくとも1隻だけ優れたものを作れば合理的だというのである。これを元に1隻で艦隊と渡り合える戦艦という構想になった。 無敵戦艦に求められたのは、まず艦砲のプラットホームとしての安定性。ここでポイントになったのが太平洋の荒波である。当時すでに最大波長が90メートルであることは判っていた。 金田「じゃあ90メートルを超える長さがあれば波で揺れることはないから超安定するよね?」 そう、この超戦艦はまず「最大幅91メートル」が先にあり、それにふさわしい船体と武装を与えるというコンセプトでデザインされたのだ。 そして、まとめられた要目はこうなった・・・・。 全長 609~1017m 最大幅 91~150m 主砲 45口径41センチ砲…200門以上 (または連装50基100門)副砲14センチ砲単装200門 排水量 50万トン以上 速力 42kt 魚雷発射菅 200門 乗員 12,000人 え、えーっと・・・・なにこの要目?ふざけてるの!? まあ言うまでもなく1隻で艦隊と渡り合うのだから当然巨大なわけで、全長は現在も最大級の軍艦であるニミッツ級の約2倍、最大幅は同国の大和より3倍以上、主砲は長門型と同じ16インチ砲を大量に装備している・・・・・。 なんだろうね。これは最早戦艦とは名ばかりの移動要塞である。浮かべる城どころか軍艦島である(*1)。 金田は造船所には配備されたことはないが、用兵の専門家・海軍大学校教官・呉海軍工廠長を歴任し、軍艦建造にも関わった人物であった。 長門建造の際、艦橋に色々詰め込んで従来の三脚檣では保たないと判って困っていたところ、金田が事もなげに出したアイデアが七脚檣だった。 後で巨大戦艦・大和を設計した平賀譲中将は金田のことを「彼は突然凄いことを言う。これは夢物語に近いものもあれば、大いに参考になる場合もある」と話している。 ホントどうしてこうなった! ◆結果 さて、その後どうなったかといえば、言うまでもなく……建造すらされず、本当に構想のみで終わった。世界には早すぎたのである。 なぜこうなったかというと、当時は超弩級戦艦がまだ珍しい、日本が自力で戦艦を建造できるようになって間もない頃だったからだ。 また、その超弩級戦艦の排水量は22,200トンが限界で、あのイギリスのタイタニックも全長269.1 mであり、当時の造船技術ではこれより巨大な船を建造するという技術はなかったのである。 結局のところ、日本もこれだけの大きさの軍艦を建造できるわけが無く、計画段階にさえ入らずに終った。 まあ、こういうのがあったらどうだ的な発想でしょうけど。 分かりやすく言えば、リボンの騎士の時代にプリキュアを思いつくようなものであろうか。 そもそも、これだけの巨艦を建造するとなれば造船所も専用のものが必要だし、今のようなコンピュータの無い時代であるため緻密な設計は不可能。そして、石炭にしても燃料にしても大量に確保しなければならないのだから。 ◆if もしも、仮に五十万トン戦艦が建造可能だったら、世界は極めて緊張に包まれたに違いない……が、果たして1912年の地点で建造を始めたとしても完成できたかは疑問が残る。 まず、建造費だが日本では、通常の戦艦1隻で国家予算の3~4%くらいかかる(*2)。更に、建造には当然50万トン分の鉄材が要る。つまり史実では建造された艦艇が存在しなかったかもしれないのだ。 また、専用の工廠も必要であり、こちらも国家予算の何割というレベルの巨額な経費が必要だったに違いない。 しかし、本艦の最大の敵は、1921年のワシントン海軍軍縮条約だろう。 この条約が発効されるまでに建造するのだから、当然苦労するわけで9年で構想から就役までしなければならないのだ。 間に合わなければ廃艦である。とはいえこの期間で戦力化すれば条約が来ても「処分だけで予算が建造費よりかかる」という理由でお咎めなしだったに違いない。 あと、本艦が寄港できる港も必要だと思われ……。 ◆喫水線 さて、全長600m以上で排水量50万トンとなれば、戦艦としては喫水がかなり浅いことになるわけだが、喫水が何mになったのかは不明である。 もし、喫水が通常の戦艦のように10m以上あるのなら、排水量は50万トンに収まらず100万トンになってしまう。 実際、こんな巨体が進水式を行うと戦艦武蔵が巨体を浮かべた瞬間街に水が押し寄せたと考えれば、最早50万トン以上の船体が降りるわけだから洪水みたいになるだろう。巨大な防護壁の建設も必至である。 ◆ちなみに 年々増加する戦艦の建造コストを問題視して、それなら最初から強力な戦艦を作ってしまえという発想は太平洋の向こう側であるアメリカ合衆国でも存在しており、当時の上院議員ベンジャミン・ティルマンの指示によって幾つかの構想が練られている。 この構想によって計画された戦艦はティルマンの最大戦艦、或いは単に最大戦艦と呼ばれており、I、II、III、IV、IV-1、IV-2、IV-3の7案が検討された。 最大戦艦そのものの規模はパナマックスを基準とした為、排水量6万~8万程度の艦であるがそれでも当時の艦と比較すれば遥かに巨大である。 もっとも、その建造費は1隻でコロラド級3隻分とも言われており、議会からまともに取り扱われる事は無かったとされる。 ◆アニヲタ的には 超・漢の浪漫であるが、あまりに超兵器過ぎてなかなか作中に登場させられない。 仮想戦記でも数例を見るのみである。 『超々弩級戦艦土佐』『不沈要塞播磨』 たぶんこの二作以外にはない。 とはいえ世の中にはぶっ飛んだ発想をする作品もあるもので、ガールズ&パンツァーに登場する学園艦は比較的小型の大洗学園艦でも7600mの規模を誇る空母型の洋上都市である。 こんなものが一県に一隻はある世界観では、もしかしたら金田中佐は50万トン級ではなく5000万トン級戦艦を企画したのかもしれない…… 追記・編集は巨艦に夢を馳せてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 私の排水量は53万tですってか リアル鋼鉄の咆哮だな… -- 名無しさん (2015-04-04 20 02 56) 数ある架空戦記小説でもこれを実現したのはたった二作しかない、氷山空母と並ぶ現実に考えられた中で最大級のトンデモ兵器 -- 名無しさん (2015-04-04 20 07 59) 大砲の安定の為に波浪を打ち消すのに必要な最大幅から船体サイズが決められているあたり、一分ほど正気が残っていると言える。 -- 名無しさん (2015-04-05 00 10 31) これ、もし仮に作ったとしたら周辺設備がすごいことになるな。全長1キロ近く全幅100メートル越えのブツを入れるドックなんて想像しただけでわくわくできるデカさだ -- 名無しさん (2015-04-05 00 15 43) ACのアームズフォートもびっくりだよ -- 名無しさん (2015-04-05 00 26 55) そもそも1隻だけで運用できるんだろうか -- 名無しさん (2015-04-05 00 59 44) 42ktの速力もヤバいだろ どれだけの馬力がいるのか・・・ あと燃費も極悪だろうし維持費も・・・ アメリカのチート国力でもむりでしょ -- 名無しさん (2015-04-05 01 15 54) しかしこのスペック、大きい方の数字は初見だがソースは何だ? そっちだと排水量、多分100万トン超えるんだが -- 名無しさん (2015-04-05 01 20 04) ↑ウィキだと思われ -- 名無しさん (2015-04-05 09 20 43) ちょび髭おいwww -- 名無しさん (2015-04-05 09 44 10) H45のスペックをみる限り、50万トンで特に吃水が浅いということはなさそうだな。満載63万トンのH45が17m弱なんだから、50万トンなら13~14mになる -- 名無しさん (2015-04-05 14 25 49) 作られたとしたら、当然列強各国も「敵の持ってる兵器は自分も持たねばならない」の理論で作り始めるだろうな。50万トン級戦艦同士の砲撃戦とくれば壮絶なものだろう -- 名無しさん (2015-04-30 13 06 32) 現在の発想でやるとしたらメガフロートの超巨大移動航空基地ってとこか。通常空母のほうが汎用性高いのは言うに及ばずだが -- 名無しさん (2015-05-19 02 07 08) 作ったとしたら100年くらい使いまわさないと割に合わないな -- 名無しさん (2015-05-28 22 45 36) スターデストロイヤー並のを作ろうとしたのか… -- 名無しさん (2015-06-07 00 07 22) 100万トンの空飛ぶ戦艦をノコギリでバラバラにするって結構凄い事だったんだな -- 名無しさん (2015-08-06 15 49 18) ↑5 なんというか、帆船時代のように船体に見合わぬ「小口径」砲を撃ちまくる戦いになりそう。 -- 名無しさん (2016-04-18 03 31 49) 単騎で戦局を担う兵器とか、もう設計の発想からしてロボットアニメの主役ロボだなまるで。 -- 名無しさん (2017-01-08 01 10 28) ↑マウスや氷山空母とか、そういうロマン兵器はけっこうどこの国も考えてる。その極致が一発で都市を消滅させられる核だろうけど、これにはロマンの欠片もないな -- 名無しさん (2017-05-14 00 27 13) エースコンバットでノースポイントにありそうだ -- 名無し (2018-12-21 12 37 22) H45級はペーパープランですらないと聞いたが(*3)。そもそも80cm砲の装填速度だと水上砲戦は論外だし -- 名無しさん (2018-12-21 16 10 08) ↑改造で、3~5分に1発の発射速度を目指したとか。陸上と違って工場並みの機械設備が設けられる軍艦なら、まあ不可能ではない。 -- 名無しさん (2019-01-30 18 58 24) なにこのスターデストロイヤー -- 名無しさん (2019-04-03 23 03 04) もうアーマードコアとかエースコンバットとかの世界だよ。ガンプラバトルとかでボスとして出たら最高に楽しそう -- 名無しさん (2019-04-25 12 31 00) アームズフィートやん!? -- 名無しさん (2019-04-25 15 54 15) 「氷山空母を撃沈せよ」では最後に氷山空母同士の対決になったけど、もと五十万トン戦艦同士の砲撃戦が起こったら想像を絶するものになるだろうな -- 名無しさん (2019-07-06 22 59 52) 寧ろ50万トン戦艦の架空戦記が二作あるのが驚きだが -- 名無しさん (2020-03-02 22 17 30) この金田氏ってひょっとしてアルキメデスの大戦の主人公のモデル? -- 名無しさん (2020-03-02 22 36 08) 典型的な「飛車角に依存する初心者の将棋」の発想だわな。 -- 名無しさん (2020-03-03 00 33 25) ↑その例えはイギリスの高速艦好きな大将にふさわしいのでは。 -- 名無しさん (2020-03-28 23 58 56) その架空戦記二作だけど、五十万トン戦艦に対する作中の評価が正反対なのがなかなか興味深い -- 名無しさん (2022-05-18 22 03 35) 「多数の艦艇を造るには工廠が足りない」という主題に対し「強力な艦を少数造る」のはまあいい。その艦の為にはかつてない規模の工廠・ドックから必要になるから本末転倒もいい所で、全く主題の回答として成立してない。 -- 名無しさん (2023-01-13 13 52 07) 圧倒的有利じゃないと戦艦は沿岸砲台に撃ち勝てないと言われる程「揺れる艦上から撃つ艦砲射撃と陸上で固定された沿岸砲台では命中率が段違い」と言う常識が先にあって、じゃあ海上でも波の揺れを克服して沿岸砲台並みの命中率を出せる最低限の全幅で作れば敵戦艦を命中率で圧倒できないか…?という発想になるのはコペルニクス的転回ではある。後の大和型が仮想敵をパナマックス戦艦としてそれに撃ち勝てる最小限のサイズを追求したのと根は同じ。なお波による命中率低下の問題は数十年後に砲撃の代用である航空攻撃とミサイルにとって克服された -- 名無しさん (2023-02-10 00 16 50) ただ、エスコンにはアリコーンという更にヤバい化け物がいると言う… -- 名無しさん (2023-02-12 17 49 37) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/gods/pages/42143.html
ニミアン ヴィヴィアンの別名。
https://w.atwiki.jp/chaina_battle/pages/297.html
{{大統領 | 人名=ハリー・S・トルーマン | 各国語表記=Harry S. Truman | 画像=Harry S Truman, bw half-length photo portrait, facing front, 1945.jpg | 代数=33 | 職名=大統領 | 国名=アメリカ合衆国 | 副大統領職=あり | 副大統領=アルバン・W・バークリー | 就任日=1945年4月12日 | 退任日=1953年1月20日 | 代数2=34 | 職名2=副大統領 | 就任日2=1945年1月20日 | 退任日2=1945年4月12日 | 国名2=アメリカ合衆国 | 元首2=フランクリン・ルーズベルト | 出生日=1884年5月8日 | 生地=ミズーリ州ラマー | 生死=死去 | 死亡日=Template 死亡年月日と没年齢? | 没地=ミズーリ州カンザスシティ | 配偶者=ベス・トルーマン | 政党=民主党 | サイン=Harry S. Truman signature.png }} ハリー・S・トルーマン(Harry S. Truman, 1884年5月8日 - 1972年12月26日)は、アメリカ合衆国の第34代副大統領および第33代大統領。ルーズベルト大統領の死を受けて1945年に副大統領から大統領に昇格。公民権革命を行った初めての大統領である。日本への原子爆弾投下については、彼が投下書類(投下命令書)を承認したNHK総合 「模擬原爆パンプキン~秘められた原爆投下訓練~」2008年8月27日放映。 第二次世界大戦の終了、冷戦の始まり、国連の創成および朝鮮戦争など、トルーマンの大統領職は非常に多事だった。トルーマンは「the buck stops here」など多くの有名な句を創り出した打ち解けた大統領だった。 生い立ち ハリー・S・トルーマンは1884年5月8日にミズーリ州ラマーでジョン・アンダーソン・トルーマンとマーサ・エレン・ヤングの息子として生まれた。トルーマンが6歳の時、彼の親はミズーリ州インディペンデンスに引っ越した。そこで人格形成の時期の大部分を費やした。1901年に高校を卒業し、その後銀行の事務職に就いたが、1906年に父親を手伝うために就農した。彼は大学卒業以上の学歴を持たない最後の大統領だった。 第一次世界大戦へのアメリカの参戦に際して、トルーマンは州兵に参加し士官となり、フランスで連隊を指揮した。戦争終結後インデペンデンスに戻り長年の恋人ベス・ウォーレスと1919年に結婚した。間もなく一人娘のマーガレットをもうけた。 トルーマンは最初の選挙戦に於いてクー・クラックス・クランの支援を得るため同団体に加入した。しかしクー・クラックス・クランのローマ・カトリックに対するスタンスを知り、その考えを変更した。クー・クラックス・クランへの加入と、衣類販売業を共同で行った戦友でありユダヤ人のエディ・ヤコブセンとの友情を保つことは、トルーマンとユダヤ人との複雑な関係のスタートだった。近年発見された彼の日記には、「ユダヤ人は実に利己的」といった記述があり、彼がユダヤ人に対する嫌悪感を持っていたことを証明している。 政治経歴 1922年にトルーマンは、カンザスシティの民主党員トム・ペンダーガストの支援を受けジャクソン郡の裁判官に選任された。1924年の再選には失敗したが、1926年には再び選任された。郡裁判官としての主な業績の一つは、道路の改良であった。彼は計画案を作成し、資金提供のための債券発行を承認した。彼が離任するまでにジャクソン郡には200マイル以上の新しいコンクリートの道路が完成していた。 1934年にトム・ペンダーガストはトルーマンをミズーリの上院議員として選出するために支援した。選挙戦は激烈で、トルーマンは40,000票を得て予備選挙を勝ち抜いた。ミズーリで民主党の予備選挙を勝ち抜くことは本選挙で勝つことよりも困難なことであった。上院議員に当選したトルーマンは、ルーズベルト大統領のニューディール政策を支持して活動した。その後1940年には再選に挑んだが、すでにペンダーガスト機械は倒産し、その支援なしで選挙を戦わなければならなかった。 再選の後1941年には、軍事費の不正使用に関して調査報告を行い「トルーマン委員会」が設立された。その後の委員会の調査報告で150億ドル近い浪費が押さえられ、彼の知名度は全国的に上昇した。1944年の大統領選が近づくと共に、トルーマンは副大統領候補としてその名が浮上した。当初彼は副大統領としての指名を望まなかったが、ルーズベルトからの電話で指名を受諾することにした。ルーズベルトは先例のない4選を果たしそれに伴いトルーマンは副大統領に就任したが、ルーズベルトが1945年4月12日に急死しトルーマンは大統領に昇格した。副大統領としての任期は82日間であった。 大統領職 大統領就任後、トルーマンは外交政策に没頭した。1945年7月にはポツダム会談に参加した。26日にはアメリカ・イギリス・中華民国の3国による「ポツダム宣言」が発表されたが、三カ国代表のサインはトルーマンによって書き上げられた物であった。それには太平洋戦争の勝利をソ連抜きで行おうという意図があった。 1945年4月の時点で原爆の完成予定を知っていたトルーマンは、核の力でソ連を抑止できるという考えがあった。日本への原爆投下命令はポツダム宣言発表の一日前、7月25日に行われていた。共和党の大物の面々が日本への原爆使用に反対していたこともあって、トルーマンは投下決定を共和党側には伏せたまま、先にスターリンに知らせた。共和党や共和党系と見なされていた将軍たちに原爆投下決定が伝えられたのは投下の二日前であり、これは「反対を怖れるあまり自国の議員よりも先にソ連に知らせた」と共和党側をさらに激怒させた。この原爆の日本への使用については、後に共和党大統領となるアイゼンハワーなどが猛反対しており、共和党支持者の米陸海軍の将軍たち(マッカーサーも含む)は全員が反対意見を具申している。アイゼンハワーに至ってはスティムソン陸軍長官に対し「米国が世界で最初にそんなにも恐ろしく破壊的な新兵器を使用する国になるのを、私は見たくない」(一九六三年の回想録)と何度も激しく抗議していた。 トルーマンが原爆投下を決定した背景として、アメリカ軍の損失を最小限に止めること、実戦での評価、戦後の覇権争いでソ連に対して優位に立つという目的があったとする一方、「潰れた洋品店の親父」の様な風貌などという酷評にさらされた自らを男らしい決断力のある存在として誇示する考えと、人種的偏見があったとする説もある。トルーマンは二発目の長崎投下後「さらに10万人も抹殺するのは、あまりにも恐ろしい」として、3発目以降の使用停止命令を出した。トルーマンは公式的な場では原爆投下を正当化し続けていた。またトルーマンが日本へ計十八発もの原爆投下を承認していた事実がワシントン.ポスト紙にスクープされている。陸軍の完全な機密保持下に行われた原爆開発は戦後見直しを計られ、トルーマンは1945年10月に議会に対し原子力に関する教書を送った。それは原子力開発に関する管理体制についての物であった。翌年の8月には原子力法案が成立し、原子力委員会(AEC, United States Atomic Energy Commission)が作られた。1953年1月7日にトルーマンは、水素爆弾の開発を発表した。 第二次大戦終結後の共通の敵の不在が、米ソの利害の対立につながると悟ったトルーマンは、ソ連に対して強硬路線をとることを明確にした。また、ウッドロウ・ウィルソンの意を継ぎ国際連合の設立を強く支援し、前ファーストレディ、エレノア・ルーズベルトを含む代表団を最初の国連総会に派遣した。彼の外交知識を疑う者もいたが、マーシャル・プランに対する広い支援の獲得と、トルーマン・ドクトリンによってヨーロッパにおけるソ連の軍事力を牽制し、外交面での成果を上げた。また、米軍の統合に関する大統領令を出した。 1948年の大統領選でトルーマンは自身の政策を「フェアディール政策」と呼び、民主党員としてルーズベルトのニューディール政策を受け継ぐ立場であることを強調した。その政策は社会保障、公民権、タフト・ハートレー法の撤廃などを内容とするものであった。トルーマンの敗北が広く期待されたが、彼は猛烈にキャンペーンを行い共和党候補トマス・E・デューイを破り、真の大統領としての任期を得、大統領選挙史上で最も大きな混乱のうちの一つを切り抜けた。シカゴ・トリビューン紙は混乱した大統領選の結果を「デューイ、トルーマンを破る」との見出しで誤報した。その見出しをトルーマン本人が掲げて笑うスナップは有名である。 二期目の就任直後にトルーマンはフェアディールの諸政策を議会に提示したが、議会多数を占める共和党や民主党保守派には受け入れられなかった。その後の朝鮮戦争の勃発で、再び外交政策へ注力せざるを得なかった。戦況は停滞し、1950年11月国連軍総司令官のダグラス・マッカーサーは中国本土への核攻撃を主張したが、トルーマンは戦争の拡大を恐れマッカーサーを解任した。それはトルーマンの人気に大きく影響した。朝鮮戦争の行き詰まり、中華人民共和国の存在、ベトナムのフランスからの独立運動などによる人気の低下で、再選の可能性がわずかになったことを悟ったトルーマンは次の大統領選不出馬を決定した。民主党の大統領候補はアドレー・スティーブンソンに決定した。 他の大統領と異なり、トルーマンはその任期中のほとんどをホワイトハウスで過ごさなかった。ホワイトハウスはその構造分析で19世紀前半の英軍による火災が原因で崩落の危険が示され、改築を行うことになり、コンクリートと鋼材を使用して基礎部分から再建された。再建で造られた新しいバルコニーは現在トルーマン・バルコニーとして知られている。ホワイトハウスの改築中、近くのブレア・ハウスがトルーマンにとってのホワイトハウスとなった。 トルーマンがブレア・ハウスに滞在中の1950年11月1日午後2時過ぎに、プエルトリコの国家主義者グリセリオ・トレソーラとオスカー・コラッツオが大統領の暗殺を試みた。 しかし、警察官とシークレット・サービスによって阻まれ未遂に終わった。トレソーラは警官三名を銃撃したが射殺された。銃撃を受けた警官の一名は病院で死亡した。コラッツオは負傷したが身柄を確保され、裁判後に服役した。 内閣 thumb|right|200px|[[朝鮮戦争への介入を宣言する宣誓書へのサイン]] 職名氏名任期 アメリカ合衆国大統領ハリー・S・トルーマン1945 - 1953 副大統領無し1945 - 1949 アルバン・W・バークリー1949 - 1953 国務長官エドワード・ステティニアス1945 ジェームズ・F・バーンズ1945 - 1947 ジョージ・C・マーシャル1947 - 1949 ディーン・アチソン1949 - 1953 財務長官ヘンリー・モーゲンソウ・ジュニア1945 フレデリック・ヴィンソン1945 - 1946 ジョン・スナイダー1946 - 1953 陸軍長官ヘンリー・スティムソン1945 ロバート・ポーター・パターソン1945-1947 ケネス・クレイボーン・ロイヤル1947 国防長官ジェームズ・V・フォレスタル1947-1949 ルイス・A・ジョンソン1949 - 1950 ジョージ・C・マーシャル1950 - 1951 ロバート・A・ラヴット1951 - 1953 司法長官フランシス・ビドル1945 トム・C・クラーク1945 - 1949 J・ハワード・マクグラース1949 - 1952 ジェームズ・P・マクグラネリー1952 - 1953 郵政公社総裁フランク・C・ウォーカー1945 ロバート・E・ヘネガン1945 - 1947 ジェシー・M・ドナルドソン1947 - 1953 海軍長官ジェームズ・V・フォレスタル1945 - 1947 内務長官ハロルド・L・アイクス1945 - 1946 ジュリウス・A・クルーグ1946 - 1949 オスカー・L・チャップマン1949 - 1953 農務長官クロード・レイモンド・ウィッカード1945 クリントン・プレスバ・アンダーソン1945 - 1948 チャールズ・フランクリン・ブラナン1948 - 1953 商務長官ヘンリー・A・ウォレス1945 - 1946 W・アヴェレル・ハリマン1946 - 1948 チャールズ・W・ソウヤー1948 - 1953 労働長官フランシス・パーキンス1945 ルイス・B・シュウェレンバック1945 - 1948 モーリス・J・トービン1948 - 1953 大統領職後 トルーマンはワシントンD.C.からミズーリ州インデペンデンスの自宅に戻った後、数多くの講演を行い、回想録を執筆した。だが1964年、自宅バスルームでの転倒事故で不幸にも半身不随となってしまい、大統領図書館で毎日の仕事を継続することが困難となってしまった。1972年12月26日に死去(Template 没年齢?)し、28日に大統領図書館の庭に埋葬された。当時アメリカはベトナム戦争とウォーターゲート事件で揺れ動ていたが、トルーマンは偉大な元大統領としての評判を受けた。ポップ・グループの「シカゴ」は死を悼み、トルーマンに関する歌を書いた。 ニミッツ級航空母艦の8番艦ハリー・S・トルーマン(USS Harry S. Truman, CVN-75) は彼にちなんで命名された。 いとしのベス thumb|left|結婚式にて([[1919年6月28日撮影)]] トルーマンは6歳の時、教会で一人の少女に出会った。後の夫人、エリザベス・バージニア(ベス)・ウォーレスである。彼は会ったとたんに一目惚れをしてしまい「将来結婚する」と心に誓った。しかし「生い立ち」にある如く、家は大変貧しく結婚にこぎつけたのは1919年のことだった。結婚の9年前である1910年から1959年までの49年間、2人は結婚をはさんで「いとしのベス」「いとしのハリー」で始まる手紙をやりとりしていた。その手紙を収録した書簡集『Dear Bess』は、576ページの厚さに及ぶ。 『Dear Bess the letters from Harry to Bess Truman 1910-1959』 - Robert H. Ferrell(University of MissouriPress) ミドルネームについて トルーマンはミドルネームではなくイニシャルだけを持っていた。フル・スペルのミドルネームの代わりにイニシャルだけを付けることはミズーリを含む南部の州でしばしば行われていたという。トルーマンは、イニシャルが彼の祖父アンダーソン・シップ・トルーマンとソロモン・ヤングの名前の折衷であると語った。彼は「S」はイニシャルではなく「エス」というミドルネームだとジョークを言い、それにはピリオドを付けないのだとしたが、すべての公文書、彼の大統領図書館もピリオドの付いた名前を使用している。ハリー・S・トルーマン図書館は、トルーマンの生涯を通じての様々な場面で、彼が「S」の後にピリオドを付けた署名を行った多数の明白な例が存在すると公に述べている。 脚注・参考資料 関連項目 トルーマン・ドクトリン マーシャル・プラン フェア・ディール 1944年アメリカ合衆国大統領選挙 1948年アメリカ合衆国大統領選挙 ボーイング707 DC-6 Template commons? 外部リンク 就任演説. トルーマン・ドクトリン(1947年3月12日の演説。英語). トルーマンはどのように彼の名前を綴ったか. Peter M. Carrozzo on Michael R. Gardner, Harry Truman and Civil Rights Moral Courage and Political Risks. ハリー・トルーマンの忘れられた日記 (washingtonpost.com). An analysis of Harry Truman s personality. Harry Truman s cabinet. 出典 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』_2008年9月6日 (土) 11 13。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2198.html
612 :yukikaze:2013/11/27(水) 20 46 12 いよいよアメリカ赤化もラストに。 戦闘描写は苦手なのです。 1948年5月 2年半にも及ぶ「アメリカ赤化戦争」は、南部連合の敗北によって終わりを告げた。 彼らの敗北の原因は色々とあるが、最大の要因は、皮肉にもマッカーサーが優秀すぎたことであろう。 卓越した戦略家である彼は、序盤の劣勢を跳ね返すことに成功し、一時はかつての南部連合の領域のみならず、西海岸の州政府とも秘密裏に手を結び、彼らの積極的中立を勝ち取ることにも成功していた。多くの軍事アナリストが、「マッカーサーによる統一は近い」という予想をたて、列強の政治家や高級官僚も同じ意見を抱いていた。 しかしながら、マッカーサーのこの八面六臂の活躍は、翻ればマッカーサー以外に碌な人材がいないという事の証でもあった。 陸戦においてはパットン中将がおり、海軍もニミッツ中将が同じようにマッカーサーを補佐していた(もっとも、マッカーサーとパットンはともに我が強く、ニミッツはいつも苦労していた)のだが、政治面や外交面で彼を補佐しうる人間がいなかった。 ここら辺は、度重なる不況とモンロー主義により、国際的視野を持つ人間が育つ環境が潰されていたことが大きいのだが(数少ない人材は、軒並み国外に出たか共産主義かぶれであった)、これによりマッカーサーは政治と外交を一手に引き受けざるを得ず、必然的に彼の処理能力を超えることになった。 しかもマッカーサー自身が、実績を積み上げている事と、自負心が高い事から、権限委譲をなかなか認めようとせず、南部の領域が拡大すれば拡大する程、政府の動きは鈍重になってしまった。 こうした状況に対し、ロングは、自身が大統領に就任して以降編制した連邦軍師団の準備を整えると共に、かつてのロシア内戦で傭兵部隊として名を馳せ、アメリカに亡命以降はロングの軍事顧問となっていたミハエル・トハチェフスキーを陸軍総司令官に任命。 トハチェフスキーは、子飼いの将帥に命じて、未だ去就定かではない西海岸に侵攻させ、彼らを物理的に屈服。政治的要求からマッカーサーが援軍として派遣した4個師団を後手の一撃によって粉砕し、序盤の劣勢を大きく取り戻すことに成功している。 それでもなお2年半も持ちこたえたのは、マッカーサーとパットンの優秀さによるものだが、パットンが前線で暗殺された後、陸軍の作戦までマッカーサーが引き受けることになり、これ以降、全てが後手後手にまわることになった。 まさにナポレオンと同じ道をたどったと言えよう。 南部連合首都であるヒューストンが、共産アメリカ軍の猛砲撃によって廃墟となる中、マッカーサーは、首都救援をしようとしたアイゼンハワーの二個師団に対し、最後の命令を出す。 「南部の人間を一人でも多く脱出させよ。古き良きアメリカを復活させるために」 自らを囮にして、民間人を一人でも多く救おうと命令したマッカーサーは、確かに当代の英雄であったと言えよう。 そしてヒューストンの陥落によって、アメリカ合衆国は名実ともに終わりを迎えたのであった。 613 :yukikaze:2013/11/27(水) 20 52 12 今回はこれまで。 内戦が非常にやっつけでしたが、正直南部の準備があまりにもなさ過ぎてどれだけ戦術的勝利を重ねてもどうにもならない状況でした。 マッカーサーとしても、連邦軍が寝返ることを期待していましたが、基本的に連邦軍上層部が監禁されていた(忠誠心がしっかりしているもの除く)のと、州兵部隊も意図的に旧式兵器しか回しておらず、碌な戦力になっていなかったことで、南部の兵力不足は最後まで解消されませんでした。 大陸日本が、第二次大戦後の国力回復と、アジア地域の面倒に注力していたのもマッカーサーの誤算でした。 さて・・・一応、後はエピローグ的なものだけが残っていますが、これ以降は マーシャル沖海戦か、半島危機のどちらかになるでしょうかねえ。
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/959.html
第89話 蹂躙の空 1483年10月22日 午前10時 カレアント公国ネリジラ 「前方にアメリカ軍機!機種はフライングフォートレス及びマスタング!」 この日、アメリカ軍機の迎撃のため、急遽飛び立った第10空中騎士隊の戦闘ワイバーン20騎は、 他の空中騎士隊のワイバーンと共にアメリカ軍機に向かいつつあった。 現在は高度2500グレル。前方には、今しも爆撃地点に向かいつつあるアメリカ軍機がいる。 敵機の種類は2つだ。 小さいほうは、護衛戦闘機のマスタングだ。 機動性はワイバーンより無いが、速度性能や武装等はワイバーンに勝っているため、かなりの難敵だ。 大きいほうは既に馴染みとなっているフライングフォートレスだ。 数は約40~50機ほどで、大きく3つの編隊に分かれている。 このフライングフォートレスの編隊は、3つの編隊が階段状に違う高度に布陣しており、それぞれの編隊は 互いに緊密な距離を保っている。 「畜生、相変わらずコンバットボックスとやらでがっちり固めてやがる。」 第10空中騎士隊の指揮官である、ネブラ・ダバングド少佐は忌々しそうな口調で呟いた。 捕虜から聞き出された情報では、あのフライングフォートレスが組み上げている編隊は、コンバットボックスと呼ばれる物であり、 相互支援を目的として考案されたようだ。 その効果は絶大であり、本格的に取り入れられた3月頃から、フライングフォートレス攻撃を担当するワイバーン隊には 必ずと言っていいほど犠牲が出ている。 (今日は、俺達の空中騎士隊があの化け物と戦わねばならん。今日こそは、大戦果を得られるといいが・・・・) ダバングド少佐は心中でそう祈った。 敵戦闘機を引き付ける役をになう他の空中騎士隊が、フランイグフォートレスの周囲に張り付いているマスタングに襲い掛かっていく。 マスタングが待ってましたと言わんばかりにフライングフォートレスから離れ、ワイバーンに向かっていく。 護衛に付いていたマスタングは32機、向かっていったワイバーンは38騎と、ほぼ互角に近い数だ。 距離が縮まった所で、マスタングがワイバーンの正面に向けて両翼の12.7ミリ機銃6丁をワイバーンに向けて撃ちまくる。 ワイバーンもまた、口から光弾を連射する。 ワイバーンとマスタングが互いに通り過ぎると、いくつかの影が墜落し始める。 1機のマスタングが、無残に操縦席を砕かれた状態で真ッ逆さまに落ちていく。 一方、2騎のワイバーンがマスタングの後を追うように、絶命して脱力しきった体を自然落下に任せていく。 最初の儀式とも言える正面戦闘が終わるや、後は彼我入り乱れての乱戦となる。 「行くぞ!目標、一番下段の敵爆撃機編隊!いつもの通り正面から突っ込む!」 ダバングド少佐は部下のワイバーンにそう命じる。 彼が目標に選んだ編隊、コンバットボックスの最下段を飛行するフライングフォートレスの群れが、彼が指揮する隊の獲物だ。 他の空中騎士隊もそろそろ、目標に食いつこうとしている頃だろう。 「突撃!」 ダバングド少佐は、気合いを入れるように命じながら、相棒に合図を送る。 指示を受け取った相棒が増速し始める。 第10空中騎士隊の20騎のワイバーンが、255グレルの最高速度で目標に急速接近する。 近付けば近付くほど、フライングフォートレスの姿が鮮明になってくる。 左右の主翼に取り付けた4基の発動機に胴体上面及び下面に装備された機銃。 無骨ながらも、洗練されたデザインの機首と、その下に配備された連装機銃。 そして、巨大な機体と、異常とも思えるほどの防御力。 (何度見ても圧倒される物だ) ダバングド少佐は、すっかり馴染みとなったフライングフォートレスに対してそう思った。 この巨大な空の怪物が、シホールアンルの目の前に現れて早1年以上が経つが、幾度見てもフライングフォートレスの発する 威圧感は並々ならぬ物がある。 ダバングド少佐自身、3機のフライングフォートレスを単独撃墜しているが、この怪物はいつ戦っても容易に落とせぬ物だ。 やがて、フライングフォートレスの銃火が彼らに向けて開かれる。 B-17は、正面上方から突っ込みつつあるワイバーンに向けて、胴体上面と機首下面の12.7ミリ機銃を撃ちまくるが、 ダバングド隊のワイバーンは、最初の射弾を自慢の超機動でひらりとかわす。 ダバングド少佐は、相棒を巧みに操りながら、先頭を行くフライングフォートレスに向けて光弾を放った。 1連射、2連射と、ワイバーンの口から緑色の光弾が放たれる。 1連射目はフライングフォートレスの右に逸れたが、2連射の幾つかかが、機体の胴体部分に命中する。 そこまで確認した直後に、目標のフライングフォートレスの下方に抜けていく。 フライングフォートレスの尾部機銃座が猛烈な追いかけ射撃を行うが、この射弾はダバングド少佐を捉えるに至らない。 先頭機には、ダバングドが直率する小隊のワイバーンが次々に襲い掛かる。 2番騎の光弾は全て外れたが、3番、4番騎の光弾がそれぞれ右主翼及び胴体に突き刺さる。 一方、B-17も猛烈に反撃する。 先頭騎よりすぐ右後ろのフライングフォートレスは、別のワイバーン編隊に襲われたが、初っ端からワイバーンの1番騎を叩き落した。 2番騎、3番騎がB-17の反撃に怯んだかのように、やや遠目の位置で光弾を放ってから右下方に抜けようとする。 3番騎が、別のB-17の胴体側方機銃が放った射弾をまともに喰らう。 瞬時に魔法防御が働いて、12.7ミリ弾の幾発かが弾け飛ばされるが、魔法防御が作用したのはごく僅かの時間であった。 3秒ほどで魔法防御は叩き割られ、12.7ミリ弾の十字砲火が御者とワイバーンを引き裂いた。 ダバングド少佐は高度1800グレルまで降下した後、視線をフライングフォートレスの編隊に向ける。 フライングフォートレスに幾つものワイバーンが突っ掛かっている。 大半は正面からの攻撃だ。今しも、1騎のワイバーンが敵の機銃弾に撃ち抜かれ、墜落していく。 第20空中騎士隊のほとんどが、最初の正面攻撃を終えつつあるが、目だった戦果は無い。 フライングフォートレスの編隊のうち、1機だけが右主翼から白煙を噴いている。 その1機はよほど重傷を負ったのか、速度を緩めている。 やがて、そのフライングフォートレスは編隊から脱落し始めた。 「第3小隊、あの爆撃機にとどめを刺せ!残りは引き続き、敵の編隊に攻撃を仕掛ける!」 ダバングド少佐は脱落機の処理を他に任せると、残ったワイバーンで再度攻撃を仕掛けた。 この日、ネリジラ近郊の物資集積所の爆撃を担当する事になった第36爆撃航空師団は、第55爆撃航空群のB-17を出撃させた。 55BG(爆撃航空群)から出撃した48機のB-17に、第39戦闘航空群から出撃したP-51マスタング32機が護衛に付いた。 総計80機の戦爆連合編隊に、シホールアンル側は多数のワイバーンを上げて迎撃してきた。 「畜生、ウォルトン・ボーイが落伍していきます!」 第3中隊長であるロバート・スタンク大尉の耳に、下面旋回機銃手の悲鳴じみた声が聞こえた。 「IP(爆撃地点)までもう少しと言うのに・・・・・・」 スタンク大尉の横に居る副操縦士のキム・ランス中尉が悔しそうな口調で言う。 「落伍しているだけだ。何も撃墜されるとは決まらんさ。」 スタンク大尉はランス中尉にそう言って、落ち着かせようとする。 現在、55BGは高度5000メートルから4500メートルの上空を飛行している。 3つの編隊に分かれてコンバットボックスを作り上げているのだが、敵のワイバーンを完全に食い止めるには まだ至らないようだ。 「5時方向から敵ワイバーン!下方から迫ります!」 見張っていた乗員が、迫りつつあるワイバーンの姿を見るや、スタンク大尉に報告する。 「了解。しっかり狙って撃てよ!」 ワイバーンが距離900メートル迫ったところで、12.7ミリ機銃が吼える。 曳光弾がワイバーンに向かっていく。 ワイバーンは機銃弾をひらり、ひらりと交わそうとするが、機銃手が逃さぬとばかりに狙いを修正し、曳光弾の線が鞭のようにしなる。 1騎のワイバーンが12.7ミリ機銃弾に絡め取られる。瞬く間に背面をずたずたに引き裂かれ、ワイバーンは絶命する。 先頭のワイバーンがお返しと言わんばかりに口から光弾を放つ。 機体の右や左に緑色の光弾が通り過ぎていく。唐突に、ガガン!と機体が音と共に振動する。 機体の左横をワイバーンが上に飛び抜けていく。 「野朗、なめるな!!」 胴体上方機銃手が罵りながら、12.7ミリ機銃をぶっ放す。だが、射弾はワイバーンを捉えるには至らない。 ワイバーンの2番騎、3番騎が機体の後ろ下方から襲い掛かってくる。 2番騎に右斜めを飛行していた僚機が横合いから機銃を撃ちまくる。その射弾は過たず、ワイバーンの横腹に突き刺さった。 一瞬にして複数の機銃弾を浴びたワイバーンが急速に力を失う。 御者は必死に相棒を励まそうとするが、相棒はそれに答える事無く、御者もろとも地上に落下していった。 3番騎が至近距離から光弾を放つ。胴体下面にまたもや光弾が突き刺さる。 「くそ、また喰らった!」 胴体下面機銃手が忌々しい口調でそう叫んだ。 「・・・・・今の所、機体には異常は無いな。」 スタンク大尉は計器を見ながら、少しばかり安堵した。 ワイバーンの光弾は機体の所々を抉ってはいるが、いずれも致命弾ではない。 「流石は空の要塞。ちょっとやそっとではへこたれませんな。」 ランス中尉が余裕めいた口調で言う。 「喜ぶのはまだ早いぞ。問題はこれからだ。」 その時、 「あっ!第1中隊3番機被弾!ブレスを喰らったようです!!」 胴体上方機銃手から悲鳴のような声が上がる。 ワイバーンは、スタング大尉の率いる第3中隊のみならず、上の第1、第2中隊にも襲い掛かっている。 交戦開始から10分ほど経ち、今度は第1中隊にも被撃墜機が出た。 「うわああああ!助けてくれ!火が!火が!」 「落ち着け、ミス・リュンヒャン!脱出だ、すぐに脱出しろ!」 被弾した3番機・・・・ミス・リュンヒャン号と第1中隊長機との無線交信が流れて来るが、ミス・リュンヒャンからの 断末魔の声は聞くに耐えぬものであった。 この短い交信の後、ミス・リュンヒャンからの通信は途絶えた。 胴体上方機銃手であるデイビット・バートン軍曹は、一番上の編隊から、1機のB-17が墜落していく様子を見ていた。 右主翼を根元から叩き折られたそのB-17は、切断部分から猛火を発しつつ、急速に落下していった。 ミス・リュンヒャンの機長はコリアン系アメリカ人の中尉で、機体の名称は自分の彼女の名前から取った様だ。 バートン軍曹はその機長と会った事はなかったが、噂ではよく自分の彼女の事を他の仲間に自慢にしていたという。 その機長の操縦するB-17は、10回目の出撃にしてついに未帰還となった。 (戦死公報を受け取る恋人は、恐らく悲しみに暮れる事だろう・・・・・全く、酷い物だ) 「ミス・リュンヒャン、墜落します。」 「パラシュートは確認できたか?」 「・・・・・いえ、確認できません。」 「IPまであと6マイル。」 悲報と共に、爆撃予定地点までの距離が報告される。 「敵ワイバーン編隊、離れて行きます。」 しつこく付き纏っていた敵のワイバーンが、さっと退いて行く。 敵のワイバーンがこのように退いた時は、次の敵が待ち構えていると言う証拠だ。 「これで第1関門を突破か。あとは、シホットの高射砲だけだな。」 スタンク大尉は、見透かしているような口調で呟く。彼の言葉通り、前方に幾つもの黒煙が沸いた。 「IPまであと5マイル。」 「敵高射砲、発砲してきます!」 胴体の爆弾倉の扉が開かれ、中にある500ポンド爆弾が地上を眺める。 目標の物資集積所は、ネリジラの郊外の森林地帯にある。 その周囲には、やはり高射砲陣地が配備されており、B-17の群れが近付くや発砲を開始した。 高射砲の弾幕は、最初は見当外れの位置で炸裂しているが、次第に機体の至近で炸裂するようになる。 機体の右側でドン!という炸裂音が鳴り、破片が機体の胴体を掠る。 先導機を務めるのは、第3中隊のスタング大尉機だ。 機首の爆撃手席では、爆撃手のドムンク・フラーバ曹長がノルデン照準機を覗きながら、照準を目標に合わそうとする。 「機長、このままでOKです。後は任せてください。」 「よし、頼んだぞ。」 スタンク大尉はそう言って、操縦をノルデン照準機が導くままに任せる。 周囲では、シホールアンル側の高射砲弾がひっきりなしに炸裂している。 時折、至近で炸裂する砲弾が機体を揺さぶるが、幸いにも破片は機体の主要部を逸れていた。 「IPまであと1マイル、もうすぐです。」 フラーバ曹長は、目標までの距離を正確に報告する。目標の物資集積所は、森の風景と重なるように作られている。 だが、余りにも時間が無かったのか、カモフラージュは中途半端になっている。 (あれじゃあかえって目立つぜ、シホットさんよ) フラーバ曹長は、心中で敵に忠告した。 物資集積所の規模はなかなかに大きい。 今までは規模の小さい集積所が殆どで、このような規模の大きい集積所はたまにしか見なかった。 (久しぶりの大物だな) フラーバ曹長はそう思った。その時、乗機は爆弾投下地点に到達した。 「目標地点到達、爆弾投下!」 胴体から、12発の500ポンド爆弾が次々に投下される。 それが合図となり、他の僚機や、上の第1、第2中隊も一斉に爆弾を投下する。 敵ワイバーンの迎撃や、高射砲の迎撃から生き残った45機のB-17が、総計540発の500ポンド爆弾を カモフラージュされた物資集積所にばら撒いた。 やがて、地上に次々と爆弾炸裂後の煙が吹き上がる。 ほぼ緑一色の下界に、不似合いな茶色や、灰色の炸裂煙が沸き起こる。 やや間を置いて、カモフラージュされた部分からオレンジ色の火炎が吹き上がった。 「ベリーグッド!敵の弾薬庫を吹っ飛ばしたぜ!」 「ざまあ見ろシホット!ミス・リュンヒャンの仇だ!」 無線機からの僚機の歓声が次々と入って来る。その後に、攻撃隊指揮官機の司令部宛の報告が流れる。 「こちら第1次攻撃隊指揮官機、我、敵物資集積所を爆撃、効果甚大、これより帰投する」 ひとまず、55BGの目的は達成されたのである。 だが、スタンク大尉は気を緩めなかった。 「あとは帰りだな。この高射砲弾幕と、予想される敵ワイバーンの再攻撃に、1機もやられなければいいが。」 カレアント北部に対する爆撃行は常に危険と隣り合わせだ。 行きは待ち受けていた大量のワイバーンと高射砲の迎撃、そして、爆撃後はまた、ワイバーンの攻撃と高射砲の追い撃ちである。 ここ最近は、リトルフレンド達(P-51やP-47)も強力なため、敵のワイバーンにやられる爆撃機は少ないが、 それでも1日に5、6機が撃墜される事はザラだ。 全機無事に帰還できた日は、ここ2ヶ月全くない。最低でも必ず1機は犠牲になる。 「フライングフォートレスもいい機体だが、俺としてはもっと強い爆撃機が欲しい。」 スタンク大尉は、心底からそう願ってた。 「3番機被弾!左主翼から火を噴いています!」 そのような事を考えている間にも、また1機、味方機がやられた。 「これ以上は、味方に損害は出ないで欲しい物だ。」 スタンク大尉は、表情を硬くしながら、愛機の操縦に専念し続けた。 午後5時 ネリジラ 「しかし、また手酷くやられた物だ。」 シホールアンル陸軍第20軍司令官である、ムラウク・ライバスツ中将は、司令部のある建物の屋上から、猛爆撃で耕された防衛線を見ていた。 ネリジラの南1ゼルドには、第202歩兵師団が守る防御線が築かれており、敵がいつ来ても対応できるようになっていたが、 その防衛線もアメリカ軍機の空襲によってめちゃめちゃにされた。 この空襲で、第202歩兵師団は戦死者79名、負傷者198名を出した。 「敵は4回に渡って空襲を行ってきましたね。」 「最初は、森に隠してあった物資集積所を狙ってきたな。全く、アメリカ人共は徹底しているよ。 奴らのお陰で、貴重な補給品がまた失われてしまった。」 ライバスツ中将は忌々しげに呟いた。 今日1日だけで、アメリカ軍は4次に渡る空襲を行った。 最初の第1次攻撃隊がやって来たのは、午前10時過ぎで、この攻撃隊はフライングフォートレスとマスタングの混成編隊である。 この時の数は計80機以上であった。 シホールアンル側はフライングフォートレス4機とマスタング7機を撃墜したが、迎撃側もワイバーン18騎を失い、 隠匿していた物資集積所は大量の爆弾によって隙間無く耕された。 第2次攻撃隊は午前11時に現れ、フライングフォートレスとは別の大型爆撃機であるリベレーターと、護衛のサンダーボルト計120機が、 ネリジラの南にある防衛線を叩いた。 ここでもワイバーンと、高射砲が迎撃を行ったが、防衛線の投弾は阻止できなかった。 シホールアンル側はサンダーボルト6機とリベレーター3機を撃墜したが、ワイバーンも14機を失った。 ライバスツ中将が、物資集積所の壊滅の次に大きな痛手を被ったと感じたのは、敵の第3次空襲であった。 敵の第3次空襲は、第2次攻撃隊が去ってから僅か30分ほどで来襲した。 この第3次攻撃隊は、エアコブラとハボック、計80機で編成されており、これらはネリジラの北方にあるワイバーン基地に襲い掛かった。 このワイバーン基地には第10空中騎士隊と第11空中騎士隊が配属されており、第3次攻撃隊がやって来た時には、大半が先の戦闘の疲れを 癒している最中であった。 そこに80機のアメリカ軍機襲いかかったのだからたまったものではない。 敵ワイバーンの迎撃を全く受けなかったエアコブラとハボックは、高射砲や魔道銃の反撃をあっさりと突き抜け、ワイバーン基地を銃爆撃した。 エアコブラとハボックは縦横無尽に暴れ回り、攻撃を開始して僅か20分ほどで引き上げていった。 この第3次空襲で戦闘ワイバーン49騎と、待機していた攻撃ワイバーン39騎、計88騎が地上で無為に失われ、基地施設も壊滅状態に陥った。 午後4時頃、最後の第4次空襲がアメリカ軍機によって行われた。 迎撃するワイバーンは第1次空襲の120騎に対し、第4次空襲では40騎に激減していた。 第4次空襲はライトニングとフライングフォートレスの混成編隊、計80機によって行われた。 この第4次空襲は、第2次空襲が狙った防衛線に爆撃を加えた。 そして4時40分頃、アメリカ軍機は引き返していった。 アメリカ軍機の投下した爆弾は、一部がネリジラ市内に落下し、民家7棟を破壊した物の、この誤爆による死傷者は皆無であった。 「しかし、第4空中騎士軍はこれで壊滅したも同然になってしまいましたな。」 作戦参謀が険しい表情でライバスツに行った。 「全滅した第10、第11空中騎士隊は戦力の低下した第4空中騎士軍において主力とも言える部隊でしたが、 これが無くなった今、第4空中騎士軍が使える空中騎士隊は第12空中騎士隊のみとなりました。」 「第4空中騎士軍だけじゃない。第5空中騎士軍も無視できん被害を受けている。」 ライバスツ中将は、ふと空を見上げた。 1年前のこの日、カレアントの空には多数のワイバーンが飛んでいた。 ひとたびアメリカ軍機侵入の報が入れば、戦闘ワイバーンが大編隊を成してアメリカ軍機に向かっていった物だ。 だが、頼りにしていたワイバーンは、既に姿を見せなくなりつつある。 他の前線では、ワイバーンの姿は見えないが、アメリカ軍機や連合軍のワイバーンならそこら中にいるという、皮肉めいた報告がいくつもあると言う。 「一昔前までは、我が無敵のワイバーン隊は敵のワイバーンや地上軍を蹴散らしまくっていたと言うのに、今では蹴散らされているのは我々のほうだな。」 「唯一の救いとしては、我が20軍の撤退行動は一応順調の範囲内、と言う事でしょうか。」 「そうだろうな。」 (最も、この調子では、その救いとなっている要素も早々と失われかねんだろうが・・・・・・) ライバスツ中将は、最後の部分だけは言葉に出さなかった。 「気掛かりとしては、急激に突き上げられつつある左翼戦線の事だが・・・・我々ではどうする事もできんからなぁ。」 左翼戦線では、アメリカ軍の進撃が猛烈な物となっている。 左翼戦線の友軍は、なんとか逃げ切れている状態だが、撤退作戦が少しでも躓けば、左翼戦線は崩壊するであろう。 「手助けしようにも、我々は我々で精一杯だからな。心苦しい事だが、左翼戦線の友軍がうまく立ち回ることを期待する以外無いだろう。」 ライバスツ中将は、ため息交じりにそう言い放った。 (予定では、12月初旬までには北大陸に逃れられるようだが・・・・・とにかく予定通り行って欲しい物だ。) 彼は屋上から建物の中に入る時に、心中でそう願っていた。 1483年(1943年)10月27日 午前10時 バルランド王国ヴィルフレイング この日の早朝、第58任務部隊は久しぶりにヴィルフレイングへと帰ってきた。 TF58に属する艦艇は、午前8時までに割り当てられた区域に停泊した。 スプルーアンスがTF58をヴィルフレイングに帰港させる間、カレアントの地上戦闘では大きな動きがあった。 10月25日、第1軍と並んで進撃を続けていたアメリカ第5軍に突如として、中央戦線のシホールアンル軍が反撃してきた。 中央戦線のシホールアンル軍は、温存していた第14軍所属の2個石甲師団を主力に反撃に転じた。 だが、その反撃も僅か1日で頓挫した。 その反撃を退けるきっかけとなったのは、マリキラの東にある小都市、リバンミダの戦闘だった。 この戦闘で、アメリカ第5軍所属の第7軍団は、新式の76ミリ砲を装備した新生シャーマン戦車を主軸に敵石甲師団のキリラルブス と激突した。持てるだけのシャーマン戦車を投入した第7軍団は、自身も112両のシャーマン戦車を失いながら、敵キリラルブスを 280体以上を破壊し、戦闘の終盤には、第7軍団は自ら敵陣に切り込み、見事敵の反撃を頓挫させた。 このリバンミダ地方の大戦車戦は、米シ双方が死力を尽くした激戦として知られる。 だが、順調に進撃を続けていた第5軍はこの反撃で受けた損害を回復するために、しばらくは進撃速度を緩める事を決定した。 それは左翼戦線軍を追い詰める第1軍の歩調も緩める事になり、後年、アメリカ軍は、左翼戦線軍を逃げる切らせる策略に 嵌ったと言われる事になる。 そんな大きな動きがあったカレアント戦線も、海軍の将兵にとってはやや関心の薄い話題でしかなかった。 船の将兵達が、久しぶりの休息に胸を躍らせている中、第5艦隊司令長官であるレイモンド・スプルーアンス中将は、 インディアナポリスから降りて、一路、南太平洋部隊司令部へと向かった。 午前10時頃、待合室で待っていたスプルーアンスのもとに、南太平洋部隊司令官のニミッツ中将と、もう1人見慣れた男が現れた。 「レイ、久しぶりだね。」 「ニミッツ司令官。こちらこそお久しぶりです。それにラウス君も。」 「はあ、どもっす。」 名前を呼ばれた男、ラウス・クレーゲル魔道士はやや照れ笑いを浮かべながらスプルーアンスに言った。 「どうかね?元の職場で客人として来る気分は?」 「まあ、少し微妙な気持ちですな。以前は私があなたのように、待合人のところへ赴いた物ですが。」 「まあそれはそうとして、久しぶりの海はどうかな?」 「楽しくやっております。最初は、少々戸惑いもありましたが、今となってはすっかり慣れましたな。」 スプルーアンスは視線をニミッツからラウスに向けた。 「ラウス君は確か、バルランドの首都で働いていると聞きましたが。」 「彼はバルランド海軍の総司令部で参謀みたいな仕事をやらされているようだ。」 「まあ、厳密に言えば、参謀のようでそうなのかな~と思えるような仕事なんすけど。」 ラウスは苦笑しながら言う。 ラウスは、7月末まではアメリカ海軍に派遣された連絡要員として開戦から機動部隊と共に過ごして来ている。 その間、幾つもの海空戦を経験して来たラウスに目を付けたバルランド海軍総司令部は、しばらくの間は彼を司令部の特別要員として働かせる事にした。 ラウスは総司令部派遣されてから、自らが体験した海空戦の模様を海軍のお偉方に教えた。 「僕が体験した事を踏まえた上で言わせてもらうと、これからは飛行物体の時代です。今までは水上艦同士の砲撃戦が全てである と思われていたようですが、もはや、その考えは既に古い物であります。アメリカ海軍は一定の条件下以外では、空母を用いた 機動部隊を持って相手に向かいます。空母の艦載機は、1機1機は脆弱な存在ですが、纏まれば戦艦以上に強力な物になります。 レアルタ島沖海戦を始めとする今までの海空戦が、その証拠です。」 ラウスはこのような調子で、これからの海軍戦略において水上艦と飛行物体の連携は大事であると熱心に説いた。 このラウスの弁論は、かつて魔法学校に通っていた同期生も聞いて、ラウスの変貌振りに驚いていた。 それまで眠りのラウスというやや印象の悪い渾名を付けられたこの魔道士は、今では近代海軍戦略の数少ない理解者として知られるようになっている。 とは言っても、やはり中身までそうそう変わらないようであり、休日の際は相変わらず家で引き篭もっていると言う。 「でも、結構楽しめながらやっていますよ。僕が体験談を語る時、今までふんぞり返っていた海軍のお偉方が顔色を変えた時は、 正直言って笑いを堪えるのに一苦労しましたよ。」 「バルランド海軍の上層部には、結構頭の固い方が大勢居るようだが。」 スプルーアンスは何気ない口調で聞く。それに対し、ラウスもまた何気ない口調で返事した。 「そうっすね。やっぱ長い間、ワイバーンとかは大した物ではない考えてきた人ばかりですからね。そう言う人達は 僕の説明に難癖をつける事が多いんで、結構苦労しますよ。」 「なるほど。だが、上層部という物は案外そういうもんだぞ。」 「ハハ、まあさほどしつこく突っ込まないんで、あまり気にはならないんですけどね。」 ラウスは苦笑を交じえながらそう言った。 「ところで司令官、今日、私を呼んだ理由はなんですか?」 「ああ。実はな、レイ。つい先日、キンメル長官から電話があったのだ。」 ニミッツはそう切り出してから、スプルーアンスに話の内容を教えた。 その話の内容は、以前、ニミッツとスプルーアンスが、キンメルに頼まれて内密に調査していた事と関係があるものだった。 話が終わった後、スプルーアンスは険しい表情を浮かべていた。 「・・・・・その話は、本当の事なのですか?」 「キンメル長官がレイリー・グリンゲル魔道士から直接聞いた事だ。間違いは無いだろう。ラウス君、君もこの事は知っていたと思うが。」 「ええ。知ってましたよ。」 「しかし、1人の少女に、とんでもない魔法を埋め込むとは。」 「ああ、全くひどい事をする。いくら戦争に勝ちたいからとはいえ、人を人とも言わぬような人体実験を繰り返して人間を爆弾代わりに するとは、正気の沙汰ではないよ。」 「グリンゲル魔道士はよく、あの少女がその巨大魔法を埋め込んでいると気が付きましたな。」 「僕はグリンゲルさんから聞いたんですが、うっすらと手の露出している部分に魔術刻印が見えたそうです。グリンゲルさんはその魔術刻印が 何であるか調べた結果、大分昔の魔術所に禁忌の術として、大規模な破壊魔法を人体に埋め込む魔法を知ったんです。その時、グリンゲルさんは かなり驚いてました。なんでこの禁忌の魔法が、あの少女に・・・と」 「問題は、この少女がどこにいるか・・・・だ。」 ニミッツ中将は真剣な表情で言う。 「この少女が南大陸に逃げ込んだから、シホールアンルは馬鹿らしい大義名分を掲げて南大陸に侵攻した。だが、問題の少女フェイレは、 南大陸のどこにいるかも分からない。」 「本当に南大陸にいるか・・・・・あるいは・・・・・」 スプルーアンスは押し黙った。ニミッツはスプルーアンスの考えている事が分かった。 「南大陸に逃げたと見せかけて、北大陸にいるか・・・・・そうだな?」 「ええ、その通りです。この南大陸には、何万ものシホールアンルシンパのスパイがおります。当然、スパイ達の目は厳しいでしょう。 ですが、そのスパイ達も、シホールアンルの直接の支配権なら派遣されている数は少ないはず。常識的に考えて、わざわざ敵の本陣に 向かう者はいませんからな。」 「だが、逆を言えば、あえて敵の本陣の近くに隠れるからこそ、厳しい監視の目を抜けられるという手もある。いわば、燈台下暗しと言う訳だ。」 ニミッツとスプルーアンスの推理に、ラウスは感嘆した。 「ははぁ。そう言う手もありますね。」 「まっ、探偵の推理に比べたら、雑がありすぎるだろうがね。でも、敵の裏を掻くとすればこれしか方法は無いだろう。」 「レイの言う通りだ。現に、そのフェイレとやらをシホールアンルはまだ捕まえていないようだ。捕まえたらすぐに使えるようにして、 どこかで爆発させているはずだ。シホールアンル側がフェイレを捕まえれば、この戦争は酷い有様になるだろう。」 (今だって酷い有様なのに・・・・・) ニミッツ中将は、最後の言葉は口に出さず、心中で呟いた。 「鍵を、我がアメリカが手に入れるか、それともシホールアンルが手に入れるか・・・・・これによって、以降の戦局は大きく左右されるだろう。」 その時、待合室に若い士官が入ってきた。 「司令官、カレアント陸軍のラドム・バンドナ中尉とエリラ・ファルマント軍曹がお見えになりました。」 「おお、来たか、通してくれ。」 ニミッツはその2人を通すように命じる。この時、ラウスは覚えがある名前を聞いて一瞬首を傾げた。 「エリラ・・・・・?」 どこかで聞いたことのある名前。ラウスは記憶を探っていく。 その間にも、カレアント陸軍からやって来た2人の軍人が待合室の中に入って来た。 「初めまして。私はカレアント陸軍第92特殊旅団第2連隊に所属しています、ラドム・バンナム中尉と申します。」 「同じく、エリラ・ファルマント軍曹です。」 入って来たのは男と女の軍人である。 共にカレアント陸軍の青色の軍服を付けている。男の軍人は犬のような獣耳を、女の軍人は猫のような獣耳を生やしていた。 「あっ・・・・・」 突然、女の軍人がラウスを見てから、唖然とした表情を浮かべた。 「・・・・・やあ、久しぶり。」 ラウスは何気ない表情で女の軍人に挨拶した。 「あなたは・・・・ラウスさん!?どうしてこんな所に!?」 「どうした。そこの人と知り合いか?」 「はい、大尉殿。以前、ちょっとお世話になった物で。」 スプルーアンスがすかさず、ラウスに聞いた。 「ラウス君。どうやら彼女とは面識があるようだが、以前ビルが言っていた女体化事件の真犯人かね?」 「ええ、そうっすよ。あの時は色々めんどくさい事をさせられましたけどね。」 「ラウス君と、そこのレディは知り合いのようだね。おっと、遅れましたが、私は合衆国海軍南太平洋部隊司令官を務めます、 チェスター・ニミッツ中将です。そこの眠たそうな青年はラウス・クレーゲル、今はバルランド海軍総司令部の特別要員です。 こちらは第5艦隊司令長官を務める、レイモンド・スプルーアンス中将です。まあ、立ち話もなんですから座りましょうか。」 ニミッツはそう言って、2人のカレアント軍人を反対側のソファーに座らせた。 「今回、あなた方カレアント陸軍の方に来てもらったの、ある作戦についての事なのだが。以前、そこのお嬢さんが我が機動部隊の パイロットをグラマラスなレディに変えたが、我が太平洋艦隊司令部は、今度考えている作戦では、その魔法技術が変装にも使えるのでは? と思っているのだ。」 「作戦といいますと?」 ラウスがすかさず聞いてくる。 「今度の北大陸侵攻作戦時に、敵の後方深くに侵入してある重要人物を保護する作戦だ。この作戦にはOSSの特殊班も参加する予定だ。」 ニミッツは最初、これだけしか言わなかったが、スプルーアンスはこの時点で、フェイレという少女を救出する作戦であると理解していた。
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/739.html
アニミズム 生命をもたない物や植物、現象などに人間と同じ感情や意志があると信じる傾向をアニミズムと呼ぶ。ラテン語で心を意味するアニマに由来している。例えば、枯れている花を見て「花が苦しそう」だとか、消しゴムに針が刺さっているのを見て「消しゴムが痛そう」というようなものがアニミズムである。 タイラー(Tylor,E.B.)が原始宗教の根源をアニミズムと考えたことがその後の研究を刺激するきっかけとなった。心理学ではピアジェ?が子どもの思考の特徴を明らかにし、その世界観の傾向のうちの一つとしてアニミズム的傾向を挙げている。ピアジェによるとアニミズムの根源は自分の心の中の出来事と外界の事象の中で行われている出来事、すなわち自己と外界、自己と他者との関係性が未分化である自己中心性であるとし、この分化が進むとアニミズム的な思考は減少するという。 めぐみ
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/911.html
第55話 飛空挺乗りの想い 1483年(1943年)1月18日 午前8時 ヴィルフレイング ヴィルフレイングは、今やアメリカ軍の一大根拠地として生まれ変わっていた。 アメリカ太平洋艦隊の一部がこのヴィルフレイングに進駐して早1年以上。 魔法実験が失敗し、昔はそれなりの都市であったヴィルフレイングがわずか1000人足らずの寒村に変わってから、 ここは呪われた地と言われ続けた。 その呪われた地は、今やアメリカ軍が主役となり、異様な発展を見せていた。 港には、11月に完成したばかりのABSDと呼ばれる浮きドッグを始めとする、移動サービス部隊の艦艇が一部の区画に陣取り、 別の区画には、アメリカ本土から輸送船に運ばれてきた増援部隊の兵員や物資が、慌ただしく陸揚げされている。 整備された桟橋には輸送船や、最近就役したばかりのボーグ級護衛空母が3隻ほど横付けされて、兵達が嬉しそうな顔を見せながら、 これから始まる半舷上陸の事で僚友と楽しげに話をしていた。 目を内陸に向ければ、アメリカ軍進駐前には殺風景な広場だった場所が、今や様々なアメリカ式の店がこれでもかとばかりに 立ちまくり、長い船旅で疲れた陸軍部隊、海兵隊の兵員や水兵達を癒していた。 今や、ヴィルフレイングの人口は今年1月始めの時点で7万人を超え、昔以上に活気に満ちていた。 そんなヴィルフレイングの一角にある建物、アメリカ太平洋艦隊・南太平洋部隊司令部。 参謀長のレイモンド・スプルーアンス少将は近くの官舎からこの司令部に、歩いて出勤して来た。 スプルーアンスはふと、司令部の近くにあるゲートに目を向ける。 「流石に、誰もいなくなったか。」 彼は、無表情な顔つきのわりに、少し嬉しそうな口調でそう言いながらも司令部の中に入って行った。 会議室のドアを開けると、長テーブルの真ん中に南太平洋部隊司令官である、チェスター・ニミッツ中将が座っていた。 「おはようございます、司令官。」 「おはよう参謀長。」 二人はいつも行う一通りの挨拶を済ますと、スプルーアンスがニミッツ中将の左の席に座った。 それから10分ほどの間に、司令部の幕僚が続々と入って来た。 「おはよう諸君。それでは、これから定例の作戦会議を開く。まず、今日の議題は、シホールアンル軍の今後の行動についてだ。」 ニミッツの第一声によって、会議は開かれた。 「シホールアンル陸軍は、昨年のミスリアル王国侵攻が失敗して以来、表立った動きを見せていない。それは敵の海軍にも言える 事であり、今はまだ前の戦闘で失った戦力を再建中と考えられる。そこでだが、今後の敵の動向について話し合いたい。」 ニミッツ中将が言い終えると、情報参謀のバイエル・リーゲルライン中佐が立ち上がった。 「スパイの情報によりますと、シホールアンル海軍の前線基地であるエンデルドには、巡洋艦主体の艦隊が2、3個ほど配備されて いるようですが、戦艦や竜母といった主力艦は前線には無いようです。」 「そうすると、東海岸に配備されていた竜母や戦艦の大半は、本国でドック入りしたままという事か。」 スプルーアンスの言葉に、リーゲルライン中佐はそうですと言った。 「あるいは、既にドックに出てはいるものの、今は本国の近海で訓練を行っている可能性もあります。」 「潜水艦部隊からは何か目立った報告はなかったかね?」 ニミッツが問う。 「潜水艦部隊からは、東海岸沖で戦艦2隻を主力とする艦隊が北大陸方面に向かったと、報告がありましたが、エンデルド沖の 状況は、依然として輸送船団が往来するだけです。それ以前に、シホールアンル海軍の対潜作戦が昨年11月始めから厳しく なっており、現状では敵艦隊の動向を把握する事は難しくなっているようです。」 南太平洋部隊は、東海岸ではガルクレルフ、西海岸ではエンデルドといった重要拠点に第18、第19任務部隊の潜水艦部隊を 投入して、敵艦隊の現状報告又は敵艦船の攻撃を命じた。 だが、11月以来、対潜能力を強化したシホールアンル海軍は、米潜水艦を封じ込めようと躍起になり、このため、敵の爆雷攻撃を 受けて撃沈されたり損傷を受ける潜水艦が相次いだ。 1月始めからは、第20任務部隊の潜水艦18隻を新たに前線に送り、ヴィルフレイング、ガルクレルフの監視に当たらせているが、 成果は思うように上がらなかった。 3個任務部隊は、1月までに駆逐艦2隻、哨戒艇3隻、輸送船7隻を撃沈した物の、新鋭のガトー級潜水艦を含む5隻の潜水艦を 現地で失い、損傷を負って引き返した6隻の潜水艦のうち、2隻は修理不能とみなされて廃棄された。 「それは問題だな。早急に対策を取らねば、今後の作戦に支障が出る。」 「敵の対潜能力の向上も問題でありますが、問題は他にもあります。」 リーゲルライン中佐がやや険しい顔つきで次の話題に移る。 「今年から、わが太平洋艦隊には新鋭正規空母のエセックス級が続々と配備されますが、新鋭艦を配備していくのは、 我が合衆国海軍のみではありません。」 「当然、敵も新顔を出してくる。そうだな?」 ニミッツの言葉に、リーゲルライン中佐は深く頷いた。 「その通りであります。現在、シホールアンル海軍には、弱体化したとはいえ、依然として正規竜母2隻、小型竜母2隻を 保有しています。太平洋艦隊が保有している正規空母6隻と比べれば、大きく見劣りしますが、それでも200騎以上の ワイバーンを有する侮れぬ敵です。これに敵の新鋭竜母が加われば、我が太平洋艦隊にとって最も危険な物となるでしょう。」 「敵がよからぬ事を企てるのなら、その時は第3艦隊に大暴れしてもらうだろう。」 太平洋艦隊は、今年の1月から新たに第3艦隊という空母主体の新艦隊を編成している。 第3艦隊の司令官は、歴戦の勇将であるウィリアム・ハルゼー中将が就任している。 第3艦隊は、第38任務部隊、第39任務部隊に分かれており、第38任務部隊は正規空母ヨークタウン、エンタープライズ、 それに修理の終えたホーネットを主軸に、戦艦ノースカロライナ、ワシントンを主軸とする水上艦が護衛する。 第39任務部隊は、正規空母レキシントン、サラトガ、ワスプで構成されており、これらを守るのは、戦艦サウスダコタと アラバマ以下の水上艦である。 これらの空母のうち、ワスプは3月一杯で大西洋艦隊の所属に戻る。 代わりに4月からエセックスと軽空母のインディペンデンスが配属され、この2隻の新鋭空母を主軸に第37任務部隊が編成される予定だ。 「その敵新鋭竜母というのは、例のホロウレイグと呼ばれる大型空母だな。」 スプルーアンスの一言にリーゲルラインは頷く。 「はい。性能はこれまでの竜母より段違いに優れており、搭載ワイバーン80~90騎以上と、レキシントンより上か、 エセックス級に近い物です。情報では、秋までに3隻~5隻が配備される予定であり、シホールアンル海軍の母艦勢力は 前年度よりも大きく上回るでしょう。それに、敵はインディペンデンス級と類似する小型竜母も追加で配備するでしょうから、 今年中には、正規竜母6ないし7隻、小型竜母3ないし5隻になる見込みです。」 「敵さんも、なかなかの工業力を持っているな。私としては、この竜母部隊を戦力が拡充する前に潰したいと思うのだが、 作戦参謀。何か意見はないかね?」 ニミッツ中将は、作戦参謀のポール・ルイス中佐に話を振った。 「確かに、シホールアンル機動部隊の戦力強化は避けねばならぬ事態ではあります。現在、第3艦隊には6隻の正規空母と、 搭載している艦載機は552機と、強大な数です。しかし、問題はその質と、敵機動部隊が居る位置です。」 ルイス中佐は、会議参加者全員の頭にしっかり刻み込むように、最後の部分をゆっくりと言う。 「太平洋艦隊所属の6空母には、数々の海戦を経験したベテランパイロットがまだまだ多数配備されています。 しかし、ベテランパイロットは多くが前年の12月下旬に、艦載機パイロット養成のため本土勤務に配置換えとなっており、 各空母のパイロットは、7:3か、多い所には6:4の比率で新人が埋めております。無論、艦載機パイロットですから、 それなりの錬度は持っています。ですが、実戦を経験していない者が戦場でうまく出来るかは別です。目下、各母艦航空隊で 夜間飛行を含む入念な訓練が日々行われていますが、現状としては3月までみっちり訓練させたほうがよろしいでしょう。 搭乗員は、現状では厳しいですが、時間があれば訓練次第で何とかなります。しかし」 ルイス中佐は立ち上がり、会議室の壁に張られている地図の前に移動した。 「求める敵が、自らの内懐にいると言う事。そして、地の利はシホールアンル側にある事は変えようがありません。 このまま、第3艦隊が総出で北大陸沿岸部に突っ込めば、それこそ敵の思う壺です。未確認ながら、シホールアンルは エンデルド、カレアント以北の北大陸沿岸部は警戒を厳重にしています。沿岸部にはワイバーンの発着基地が必ずあり、 特に本土に至っては沿岸部に総計4000騎以上のワイバーンを配備しているようです。重点的に配備されているのは 西方沿岸部で、アリューシャン列島からの侵攻を警戒しているようです。ですが、東海岸部にも相当数のワイバーンが 配備されており、総計は1000騎とも1500騎以上とも言われています。」 「東海岸には重要な軍港都市などもいくつか点在しているからな。敵さんもやはり、高速機動部隊の脅威に怯えているのだろう。」 スプルーアンスが相槌を打った。 「はい。そのためには、敵機動部隊が出撃せざるを得ない状況を作り出す事が効果的かもしれません。」 「状況を作り出すか。レイ、君はどう思うかね?」 ニミッツはスプルーアンスに聞いてみた。 「確かに、敵機動部隊が防御の厚い内懐にいる以上、引っ張り出すような状況を作る事は望ましいでしょう。ですが、正直言って 敵機動部隊が出てくる事はあり得ないでしょう。」 「出て来ない、だと?どうして分かる?」 「それは、敵将の性格。それに、戦力比です。機動部隊を率いるリリスティ・モルクンレル中将は大胆な行動を取る事で有名です。 過去の海戦でも、彼女は我々をあっと驚かすような戦いを見せています。一見無謀にも思える戦法を取っていますが、いずれも、 勝利を見込んで行った事であり、過去の戦いでは、航空機はともかく、母艦戦力では常に我々が劣勢を強いられていました。 それ故、敵将モルクンレルは、一定の戦力が無ければ先の海戦のような奇策を使う事も、また正面から堂々と戦う事は無いでしょう。 そして現在、先の大海戦で正規竜母を4隻も失った敵は、大小合わせて4隻の竜母を持つのみ。対して我々は正規空母6隻。 航空部隊で比較しても214対556と、半分にも満たない数です。これでは、敵に戦いを挑んでもみすみす竜母4隻撃沈の戦果を くれてやるようなものです。従って、敵将はこう思うでしょう。「戦力が溜まるまでは打って出れぬ」と」 「考えてみれば、確かにそうだな。」 ニミッツは深く頷いた。 「我々が機動部隊を大事に思っているのと同時に、敵も大事に思っている。その大事な決戦兵力を、無為に失う事をする筈がない。 よく考えれば、君の言うとおりだな。不本意だが、敵機動部隊が引っ込んでいる間はこっちも打って出る事はできまい。」 「小官も、司令官の考えに賛成です。」 スプルーアンスが言った。 「むしろ、敵の機動部隊が戦力を回復中の今こそ、我々が自由に動ける時です。今後、我々は敵の少し後方を叩き、シホールアンル側 の補給線少しでも削いでおくべきでしょう。ループレングに陣取る敵地上軍はおよそ70万。その70万に食わせるだけでも相当な 苦労でしょう。敵艦隊を叩く必要はありません。叩くのは、敵の補給線です。」 「兵糧攻め、と言う訳か。」 「そうです。参加兵力は、潜水艦部隊を中心に行わせますが、機動部隊を使わぬ事も無いでしょう。」 「機動部隊を使うか。だが、どこにだね?ループレングやその少し後方は、第3航空軍が爆撃を加えておる。」 「我々が狙うのは、そのもっと後方です。」 スプルーアンスは席を立ち、作戦参謀から指揮棒を借りると、壁に掲げられている地図のある地点を叩いた。 「カレアント、もしくはエンデルドを機動部隊の艦載機で攻撃するのです。ただし、本格的に攻撃する事は限定します。 そうですな・・・・・・1週間、又は2週間に1度、3週間に1度でも構いません。とにかく、不定期に空襲を加えて、 敵の輸送船なり、港湾施設なりを破壊するのです。無論、攻撃はその都度、一度のみに留めて現場海域から逃げるのです。 この方法は、新鋭のエセックス級やインディペンデンス級の数が揃い始めた後、より大々的に行います。」 「ヒットエンドランか。カレアント、エンデルドは補給の要衝だ。致命的な一撃は繰り出さないが、小さい打撃は、積み重なれば 大なるものとなる。名案だな。」 「この作戦は、シホールアンル側の海軍が、大規模な作戦行動が出来ないからこそ出来る事です。この方法で敵の補給能力を 少しでも削れば、9月に行われる反攻で、我が方は戦いをより有利に進められるでしょう。」 「よろしい。レイ、君の案を取ろう。」 ニミッツ中将は、スプルーアンスの提案を受ける事にした。 会議は、他の敵新鋭艦の有無についてや、敵のスパイ対策などに移っていった。 1483年(1943年)1月20日 午前6時 シホールアンル帝国アルジア・マユ アルジア・マユは、首都から北西70ゼルド離れた所にある寂れた町である。 昔は交通の要衝として栄えていたが、今ではやって来る旅人も少なくなり、町はそこそこの活気はあれど、全盛期より比べると どこか寂れた感があった。 冬も盛りを迎えた1月20日、午前6時。アルジア・マユの町はずれにある軍の基地。 ワイバーン基地にしては珍しい長い滑走路のある基地で、とある計画が着々と進めていた。 飛空挺開発部の技術主任であるカイベル・ハドは、まだ瞼の重い両目をこすりながら、格納庫の中に入った。 「おはようございます、主任。」 彼が入るなり、早速声がかかった。ハドは微笑みながら声をかけた相手に返事した。 「やあ、おはよう。今日も元気そうだね。」 「そういう隊長、いや、主任こそ元気そうですぞ。」 「隊長でも構わんよ。」 ハドは苦笑しながら、格納庫の内部を見回した。 「今は君と、私の2人しかいないんだ。昔のよしみだ。」 そう言って、ハドは屈強な体つきの男を椅子に座らせた。 屈強な体つきを持つ男。飛空挺のテストパイロットであるレガルギ・ジャルビ少佐はハドの用意した椅子に座る。 ハドも椅子に座るなり、目の前の飛空挺を感慨深げに眺めた。 目の前の飛空挺は、これまでの飛空挺技術の粋をこらして作られた新型機であった。 空力学的に考慮された流線型の機体は、ワイバーンとは明らかに違う物だと思わせる。 すらりと伸びた主翼に、騎士の掲げる長剣のように突き立った尾翼。 全周を見張れるように工夫された操縦席の風防ガラス。 主翼の前縁には、2つずつ、計4つの穴が開いており、武装時にはここに魔道銃が装備される予定だ。 魔法石を内蔵したやや太い機首に、大きな3枚のプロペラは、ワイバーンには無い力強さを感じさせる。 全体的には、アメリカ軍の持つウォーホークを連想させる形だが、この機体は、ウォーホークよりやや大型で、俊敏で、逞しそうな感がある。 「隊長、あと少しで、理想の飛空挺が空を飛びますね。」 「そうだなぁ。あの悪夢の日以来、縮小され、細々と研究、開発を続けられた“人工の鳥”。それが、もうすぐで大空に飛ぶ。 これで、ワイバーン支持派に目に物を見せてやれるよ。」 ハドはそう言いながら、目の前の飛空挺を見つめ続けていた。 シホールアンルに、飛空挺が登場したのは、今から30年以上前の1450年。 当時、ワイバーン支持派が幅を利かせていたころ、トルリッド・リンベクという魔道士によって、魔法動力で飛行する飛空挺が 開発され、軍民双方から注目の的を集めた。 最初は1ゼルドしか飛行能力が無かった飛空挺は、時が経つにつれて次第に進化を遂げていった。 そして1475年2月には、飛空挺もワイバーン部隊に次ぐ航空部隊として予備部隊扱いではあるが、この世に姿を現した。 当時、配備された飛空挺は、これまでの飛空挺より先鋭的な単翼式の機体で、搭乗員は2名乗ることが出来る。 武装は爆弾を200リギルまで搭載出来、これは当時の攻撃ワイバーンに匹敵した。 機体は木製式であるが、構造自体は頑丈に出来ており、開発者達は金属製にも負けないと太鼓判を押したほどだ。 操縦の仕方は、今、アメリカが使用する航空機とほとんど似たような物である。 ただ違う点があれば、魔法石が燃料兼、発動機の役割を果たしていたことだ。 ワイバーン推進派は、外見では飛空挺派を嫌ってはいたものの、細々とながら、開発を続けてきた飛空挺派の不屈の精神には 一目置いており、最終的にはワイバーン推進派も飛空挺の前線配備を許可した。 配備された飛空挺の数は、実戦用のみで実に300機にも及んだ。 (訓練用の飛空挺は180騎ある。) 普通の国なら、このような飛空挺を作る事は愚か、大量生産など夢のまた夢である。 だが、シホールアンルにはそれを実行に移せるほどの力があった。 北大陸、南大陸の中で先進的な国家として栄えたシホールアンルは、長年繰り返されて来た各国との紛争で武器や必要部品の 大量生産が必要と理解し、まず大量生産のノウハウを自力で会得した。 飛空挺の試験飛行が成功した時は、既にシホールアンルは、野砲等の必要武器や部品を大量生産出来る体制を整えていたのだ。 飛空挺の量産に入った当初は、深刻なトラブルも出てきたものの、シホールアンル側は見事に克服して、飛空挺の大増産という 偉業を成し遂げた。 造られたのは、前線に出す飛空挺のみならず、練習用の飛空挺も合わせて造られた。 練習生は、竜騎士の道から運つたなく落第した者や、志願兵が集められ、飛空挺の練習が開始された1475年12月には、 実に2000名もの若者が募集に応じていた。 これらの中から選考し、飛空挺搭乗員になった兵は800名に及び、その800名は練習飛空挺でみっちり訓練を仕込まれた後、 ようやく前線用の飛空挺に乗せられた。 そして、1479年6月。当時、北大陸で第5位の強国であったデイレア王国侵攻作戦に姿を現した飛空挺部隊は、緒戦で敵の 野戦軍を撃破するという大戦果を得、飛空挺部隊の勇名を世に轟かせた。 しかし、飛空挺部隊の栄光も長くは続かなかった。 8月15日に起きた地上部隊の支援作戦で、ワイバーンの護衛の下に敵地爆撃に向かっていた36機の飛空挺は、 突如デイレア軍のワイバーン100騎以上に襲撃された。 護衛のワイバーン30騎は、劣勢にもかかわらず、敵ワイバーンを次々に落とした物の、余った分は容赦なく 飛空挺に襲い掛かった。 当時、勇名を馳せた攻撃飛空挺は、実は速力が160レリンク(320キロ)しか出せなかった。 当時のワイバーンはいずれも220レリンク(440キロ)オーバーであるのに対し、飛空挺のその速度は 余りにも遅すぎた。 そして、何より致命的なのは、自衛用の武器を積んでいない事だった。 今現在は、ふんだんに使用される魔道銃も、この当時はまだ開発途上であり、飛空挺はほぼ無武装で出撃を繰り返していた。 おまけに、この時は爆弾を積んでいたため、動きが鈍かった。 無理な進撃を命じた指揮官によって、悲劇は瞬く間に拡大して言った。 1ゼルド進むたびに、飛空挺部隊は小隊ごとに片っ端から攻撃され、逃げようにもあっという間に追いつかれ て、射的のごとくあっけなく撃墜された。 護衛のワイバーン隊が20騎に打ち減らされながらも、辛うじて相手を撃退した時には、36機の飛空挺は 1機残らず叩き落されていた。 後に、リク・ルンバイの射的場と呼ばれた不名誉な一戦は、シホールアンル上層部に少なからぬ打撃を与えた。 この日から、飛空挺の被害は続出し、飛空挺隊が前線任務から強制的に外された10月初旬までに、実に184機の 飛空挺が失われ、搭乗員戦死は320人を数えた。 僅か4ヶ月足らずの活躍で、表舞台から引き摺り下ろされた飛空挺部隊は、規模を3個中隊(攻撃飛空挺42機) にまで引き下げられ、一時はこれぞ好機とばかりに、飛空挺の無用を主張するワイバーン派によって、飛空挺部隊 そのものが無くなろうとしていた。 だが、開発責任者の必死の願いが皇帝オールフェスの心を動かし、1480年12月、飛空挺部隊は再建される事になった。 狂喜した技術陣は、これまでの経験や、謹慎中に得た新技術、前の飛空挺で得た戦訓を元に、新しい飛空挺を造り始めた。 ・・・・速度が足りない。 それならば、もっと早く。 ・・・・運動性能が鈍すぎる。 それならば、もっと動きやすく。 ・・・・機体の防御が脆い。 それならば、もっと硬く。 ・・・・機体に合う武器がほしい。 なら、強力な魔道銃を付ければいい。 ・・・・もっと高く飛びたい。 なら・・・・・とことんまで高く飛ばせるようにしよう。 血の滲む努力の末、シホールアンルが生み出した、新世代の飛空挺は、多くの下積みや教訓を糧にして、ようやく形になった。 試作飛空挺、ケルフェラク。 北大陸に昔から伝わる神話に必ず出て来る、聖なる火の鳥の名を冠したこの飛空挺が、飛空挺乗り達の理想とした物だ。 「確かに、ワイバーンは素晴らしい。あの魅力的な戦闘機動は飛空挺に真似できない。だが、飛空挺は生き物の ワイバーンと違って、常にえさを与え続けたりする必要もないし、一から飼育する必要も無い。飛空挺は、 作られたすぐ後に、戦いに望める。ワイバーンが幼体を経て、成体になる1年の間、飛空挺は何百機と作れる。」 「隊長の言う通りです。練習飛空挺で訓練に励んでいる奴らのためにも、飛行試験は失敗できませんな。」 「俺のためにもな。」 ハドはそう言いながら、長袖の右腕部分を撫でた。 服の中にあるはずの右腕は、無かった。 1479年9月20日、帰還中にワイバーンに襲撃された際、右腕を吹き飛ばされたのだ。 彼は元々、シホールアンル陸軍の少佐であり、昔は16機からなる飛空挺中隊を率いていた。 その日、後ろの見張り員席に座っていたハドは、突然のワイバーンの攻撃によって負傷した。 迫り来る激痛。揺らぐ意識。 だが、彼の機の操縦員であった、当時中尉のジャルビの励ましによって基地に帰るまでなんとか気を失わずに済んだ。 その後、右腕を無くした彼は、2ヶ月ほどは廃人同様の状態だった。 だが、使える飛空挺を造りたいと思う心が、彼を立ち直らせた。 立ち直った彼は、飛空挺開発の研究チームに入り、日夜、新しい飛空挺を作るために自らの得た経験を技術者達に教え続けた。 「この通り、俺は飛空挺に乗れない体だ。俺の分まで、こいつで空を飛び回ってくれ。」 「勿論ですよ、隊長。まずは、こいつの性能をワイバーン支持派の連中にとくと拝見させてやります。」 ジャルビ少佐は、自信に満ちた表情でハドに答えた。 現在、この飛空挺が量産された後に、少しの訓練期間で前線に配備できるように、搭乗員の練成はまだ手付かずに残されていた 78機の練習飛空挺を使って行われている。 練成は81年3月から始まっており、それ以来、僅かな休みを除いて練習は繰り返されていた。 このため、飛空挺部隊の募集には、常に定員オーバーが発生し、飛空挺部隊は練習生が2000名に増え、そのうち700名は 1000~800時間の飛行時間を終えており、残りの大半も、平均400時間の飛行を経験している。 「こいつの飛ぶ姿を見といてくれよ。」 ジャルビ少佐はそう呟きながら、3年前の夏の日、空に散って行った仲間達の顔を1人1人、頭の中に思い描いていった。 後に、白銀殺しとも言われるジャルビ少佐が、この飛空挺の試験飛行を行うのは、2月2日である。
https://w.atwiki.jp/nicoten/pages/121.html
テニミュ てにみゅ 【タグ】 詳細はこちら 関連項目 あいつこそがテニスの王子様 有機VS人参 カナダ☆レモン 爆破☆ヅラ 猫駆除 イージー☆レモン タグ検索 「テニミュ」でタグ検索 動画 sm3505675[β時代を再現]あいつこそがテニスの王子様[コメ数限界突破]β時代の英雄。初代はsm27からあり、再うpされ続けている。 http //www.nicovideo.jp/watch/sm3505675 sm768有機VS人参 http //www.nicovideo.jp/watch/sm768 sm3317586空耳ミュージカル 「たこ焼きライス」 http //www.nicovideo.jp/watch/sm3317586 再現 た行の単語一覧にもどる 「タグ」に関する単語の一覧 「アニメ・ゲーム等」に関する単語の一覧 トップページにもどる
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/844.html
第28話 リンクショック作戦発動 1482年 6月23日午前10時 ワシントンDC その日、作戦部長であるアーネスト・キング大将は、執務机に座って書類を読んでいた。 彼は時折、書類を読みながら時計を見た。 「もうそろそろ来る頃だな」 彼はそう呟いて、再び書類を見ようとした。その時、ドアがノックされた。 「入れ。」 彼は閉ざされたドアの向こう側にそう言い放つと、ドアが開かれた。執務室の外からは、初老の男が 失礼しますと言いながら入って来た。 その男は、つい先日まで海軍航海局長を務めていた、チェスター・ニミッツ中将である。 顔立ちはどこにでもいそうな普通の男といった感じで、体格も普通である。 全体的には、田舎の農夫のような印象が強く出ている。 「おはよう、ミスターニミッツ。」 「おはようございます。作戦部長。」 2人は一通り挨拶を交わす。キングは読んでいた書類を置くと、無表情のままニミッツを見つめた。 「早速だが航海局長。いや、今は航海局長ではないな。君にはヴィルフレイングに行って貰う。」 キングはそう言いながら、机から1枚の書類を取り出し、ニミッツに渡した。 「急病で倒れたパイの変わりに、君を南太平洋部隊司令官に任命したい。」 キングの言葉に、ニミッツは驚いた様子も無く、ただ頷いた。 太平洋艦隊は最近、少しばかり運がない。 グンリーラ島救出作戦の際には、前線で指揮を取るはずであったハルゼーが皮膚病に倒れてしまった。 そして、6月14日には南太平洋部隊司令官であった、ウィリアム・パイ中将が急病に伏せてしまい、 ポストはそのまま空席となっていた。 キングは後任として、航海局長を務めていたニミッツ中将を南太平洋部隊司令官に任命し、空席となっていた ポストを再び埋めることにした。 「君は部下の信頼も厚いし、腕も確かだ。南太平洋部隊司令官というポストは、その君にうってつけだと思うのだ。 これから、太平洋方面の戦いは厳しい物になっていくに違いない。だが、君ならパイの後を引き継げると思うのだ。 ミスターニミッツ、引き受けてくれるかね?」 その言葉に、ニミッツは二つ返事で返した。 「はい。」 ニミッツの言葉を聞くと、キングは引き締まっていた表情を緩めた。 「そうか。引き受けてくれるのなら話が早い。早速で済まないが、ヴィルフレイングに行って貰いたい。 ニミッツ、ヴィルフレイングに行くまで何日ほどかかるかね?」 「せいぜい5日ほどはかかりますな。引き継ぎの手続きなどもありますから。」 「それで十分だ。」 キングは満足したように頷いた。ニミッツはこの時、ある考えが浮かび、その事をキングに進言した。 「そういえば、幾つか要望があるのですが。」 「言いたまえ。」 キングは頷いて、ニミッツの要望を聞こうとする。 「南太平洋部隊司令部の幕僚の事なのですが、第16任務部隊司令官のスプルーアンス少将を、私の参謀長に下さい。」 1482年 6月25日 午前7時 ノーフォーク ノーフォークの一角を埋めていた艦郡が、外海に向けて動き始めた。 「TF26出港します!」 第23任務部隊旗艦、ワスプの艦橋から、司令官のレイ・ノイス少将は、第26任務部隊の諸艦艇が出港していく 様子を見つめていた。 数隻の駆逐艦がまず、港の出口に差し掛かると、今度は軽巡が後に続く。 その後に、第26任務部隊旗艦である戦艦プリンス・オブ・ウェールズが、マストに掲げられた星条旗と ユニオンジャックを誇らしげにはためかせながら、ゆっくりと出港する。 プリンス・オブ・ウェールズが出港し、続いて正規空母のイラストリアス、巡洋戦艦のレナウンが後を追う。 最後に重巡と駆逐艦の順で外海に出ると、いよいよ第23任務部隊の出港が始まった。 各艦艇が機関の唸りを上げて、来るべき出港に備える。 前衛の駆逐艦4隻が、まず港の出口に差し掛かると、重巡のウィチタとミネアポリスが続航する。 続いて、1隻の巨艦が、ワスプの左舷から出港を開始し、ゆっくりとしたスピードで前方に出て行く。 「参謀長、サウスダコタは役に立つと思うかな?」 ノイス少将は、不安げな口調で参謀長のギャリソン大佐に問いかけた。 「サウスダコタはドックから出てきてまだ3ヵ月半ほどしか経っていない。乗員は未だに艦のコツを掴み切れて いないのではないか?」 「心配には及びませんよ。ギャッチ艦長の猛訓練のおかげで、サウスダコタ乗員の錬度は上がっています。 練習戦艦となったアーカンソーやテキサスから乗り組んだ兵も多数いますから、慣熟訓練もスムーズに行っています。」 ギャリソン大佐は、アナポリスで同期だった艦長を誇るようにノイスに言った。 サウスダコタは、本来ならば3月20日に就役予定であったが、レンドリース分のキャンセルはこの時期、各新造艦艇の 建造スピードの加速というプラス効果をもたらしていた。 そのため、サウスダコタは予定よりも早く工期を終了し、3月4日に海軍に引き渡された。 サウスダコタ初代艦長に任命されたトーマス・ギャッチ大佐は、サウスダコタの早期戦力化を実現させるために、 3月6日から予定よりも遥かに早い慣熟訓練を開始した。 度重なる猛訓練に、乗員たちは見事に応えてくれた。 途中、何度か事故はあったものの、幸いにも死者は出ず、負傷者も再起不能レベルの傷は負っておらず、海軍病院で 養生しながら、再びサウスダコタに戻れる時を待ちわびていた。 サウスダコタの他に、4月10日に就役した戦艦インディアナは、アメリカ北海岸沖で目下訓練中であり、8月には戦力化できる見通しだ。 「ふむ。それなら問題は無いな。旧式戦艦を2隻、前線から外した事は痛いだろうが、これから就役して来る新鋭戦艦は、 その穴を充分に埋めるだろう。」 「海軍の戦艦も世代交代、と言うわけですか。」 「そうかもしれないな。」 ギャリソン大佐の言葉に、ノイス少将は苦笑しながら呟いた。 「だが、いくら新しい戦艦が出来ようと、時代はもはや航空機というものが海戦の主役になっている。 この作戦からしてそうだ。」 ノイス少将は語った。 「26ノット以上の高速艦でマオンド領及び、本国の港を奇襲攻撃する。これは空母を伴う機動部隊以外では 実現し得ぬ物だ。ガルクレルフは敵の警戒が薄い時期を狙ったから成功したような物だが、今回はそれも通用しない。 チャンスは1度きり。この1度の航空攻撃で、奴らに強い衝撃を与えねばならん。」 彼は、前方を行くサウスダコタを見据えながら言い放った。 サウスダコタの両舷には、5インチ連装両用砲や多数の機銃座が天を睨んでいる。 時代の趨勢が戦艦から、航空機にへと移った事を物語る装備だ。 表舞台の主役から引き摺り下ろされた感が強いが、これからは機動部隊の守り神として、その真価を発揮するだろう。 「マオンドの奴らに、復活したワスプの力を見せ付けてやろう。半年前に受けた屈辱を何倍にも増して叩き返してやる。」 ノイス少将は珍しく、好戦的な笑みを浮かべながらそう呟いた。 やがて、ゆっくりとワスプは出港を開始した。 エセックス級に積まれる物と同じエンジンが、頼もしい唸り声を上げると、ワスプはゆっくりと進み始めた。 洋上に出た第23任務部隊は、陣形を整えた後、会同地点にへ向かった。 同時刻、ニューヨークでは空母ホーネットを主軸とする第24任務部隊と、空母レンジャーを主軸とする 第25任務部隊が出港し、会同地点に向かいつつあった。 1482年 6月28日 午前2時 エルケンラード沖70マイル地点 シュルシュルシュルという微かな音が、左舷から右舷に抜けて行った。 聴音員のジャン・ヴェンク兵曹はやや安堵した表情で艦長に報告する。 「艦長、敵駆逐艦が真上を通り過ぎました。速度、針路ともに変わりません。」 「そうか。それなら一安心だな。」 潜水艦セイル艦長である、イギー・レックス少佐は微笑を浮かべた。 「だが、奴がフェイントを仕掛けて来る可能性もある。それを避けるためにも、もう少しここでお座りしておこう。」 レックス少佐の冗談めいた言葉に、発令所の誰もが笑みを浮かべた。 「しかし、マオンドの奴らも侮れん装備を持っていますな。ミスリアルからやって来たエルフとかいう男から 話を聞いた時はびっくりしましたぜ。」 副長のヴォル・リンデマン大尉が忌々しそうな口調で言って来た。それにレックス少佐も頷く。 「生命反応探知装置とか言う奴だな。元々は、海中に住む凶暴な海洋生物をいち早く見つけるために開発されたようだ。」 レックス少佐は、南大陸からやって来た、特使団とは別の視察団の中にいた、エルフの男性と面談する機会を得た。 そのエルフの言葉では、この世界の海軍は一昔前まで探知魔法の魔道式を埋め込んだ探知装置が船に搭載されており、 魔法石の色合いの変化で海洋生物の存在の成否が分かるようだ。 ボストン沖海戦で潜水艦のトリトンが撃沈されたり、他の潜水艦が一度ならず爆雷攻撃を受けたのは、この装置を装備した艦が 攻撃を加えた可能性が高いと言われている。 実を言うと、セイルも2ヶ月前、マオンド軍の駆逐艦2隻に探知され、2時間もの間、爆雷攻撃を受けてしまった。 その時、深度は30メートルほどであり、セイルは深深度に逃げ込んで、なんとか事なきを得ているが、あの2時間は生きた心地がしなかった。 「敵艦に出会ったら、深度70以下に潜れとは言われているが、敵が探知魔法を強化させたら、俺達のように海底に鎮座している 状態でも、所かまわず爆雷を放り込まれているかもしれないな。」 「もみくちゃにされるのはもうごめんですぜ。どうせならいっそ、敵地に侵入して輸送船を叩き沈めてやりましょうか。」 「そいつぁ機動部隊の仕事だ。俺達はマイリー共の船団を見つけて、どこに向かうか報告するだけだ。 まっ、俺としても、君の気持ちは分かるが、俺はプリーン大尉でもないし、無謀な事で部下を危険晒す馬鹿でもない。 ニューヨークでカミさんと出会う秘訣は、こうやって待ち、動く時は動いて、決められた事をやるのみさ。」 レックス少佐はそう言い返したが、彼自身、大戦果を求めていない訳ではない。 3月初めに、セイルは南下中のマオンド艦隊を発見した。 マオンド艦隊は戦艦1隻の他に、巡洋艦、駆逐艦多数を含む有力な部隊であった。 その時、現場海域にいた潜水艦はセイルのみであり、レックス艦長は襲撃しようかどうか迷った。 だが、いくら旧式とはいえ、元は頑丈に作られた戦艦だ。 魚雷をぶち込んでも撃沈できるかは未知数だし、よしんば、撃沈しても、怒りに駆られた駆逐艦群に 袋叩きにされるのは目に見えている。 レックス少佐は、ドイツ海軍のプリーン大尉並みの英雄となって果てるか、やり過ごして後に備えるか迷ったが、 彼は後者を選んだ。 「俺も命は惜しいし、俺以外の乗員を謝った判断であの世に連れて行きたくないからな。」 あの時、レックス少佐はそう言っている。 そして、セイルは今まで生き延びられてきた。 「敵艦の通過から20分経過したが、敵さんは戻って来ないな。よし、進むぞ。」 レックス少佐は、敵の哨戒艦が完全に過ぎ去った事を確認すると、セイルを前進させる事にした。 89メートルの海底に鎮座したセイルは、海底から浮き上がり、ゆっくりと舳先をエルケンラードに向けて、 時速5ノットの低速で前進を再開した。 それから6時間後、セイルはエルケンラードより南西48マイルの地点に到達していた。 「周囲に、敵艦は居ないな。」 レックス少佐は潜望鏡で、周囲の海面を一通り確認してから、レーダー手に問いかけた。 「敵のワイバーンは居ないか?」 「対空レーダーには反応ありません。」 「反応はなし・・・・か。」 レックス少佐は呟きながら、潜望鏡を上空に向ける。 上空は曇っていた。雲は厚く、上空から偵察する際には不適正な状況だ。 「浮上する。」 彼はそう言うと、兵達が頷いて機器を操作し、セイルの艦体に浮力を増していく。 ほどなくして、セイルの艦体は洋上に浮き出た。 艦橋のハッチからまず、レックス艦長が出てきた。 その次に、見張りの水兵3名、下士官2名、副長のリンデマン大尉が最後に出る。 配置に付くなり、見張り員は目を皿にして洋上、上空を見渡した。 海は穏やかで、艦自体の揺れもあまりない。空は曇っていて、対空警戒には少々しんどい環境である。 「レーダー手、近づいて来る物があったらすぐに知らせろ。」 「アイアイサー」 レックス艦長はそう命じた後、自らも双眼鏡を使って、洋上を見渡す。 「副長。こうして見ると、海と言うものはどこも変わらないものだな。」 「のどかですな。戦争が起きているとは信じがたい光景です。」 「同感だ。」 レックス少佐は頷いた。 「曇り空でなければ、満点だったんだが。贅沢は言えないか。」 「今は、この空模様で我慢と言う事でしょうな。」 そう言うと、2人は苦笑した。 それからは、艦長も副長も、見張り員達と一緒になって洋上を見張った。 セイルが浮上航行を開始して30分後、 「右舷側に何か見えます!」 右舷側見張り員のうちの1人が報告して来た。 「3時方向です!」 全員が右舷側に視線を向け、双眼鏡の倍率を上げてその見張りが見つけた物を探す。 それはすぐに見つかった。 「聴音室より報告!本艦の右舷側方向に、船らしきスクリュー音を探知!距離、約8000!」 「こっちでも確認した。恐らく、いつもの護送船団だろう。」 レックス少佐は返事する。 この時、セイルの右舷側には、マオンド海軍の巡洋艦、駆逐艦に護衛された大型輸送帆船13隻がエルケンラードに向かっていた。 「潜行するぞ!」 レックス艦長はそう言って、見張り員達を艦内に下がらせた。 最後に彼が艦内に滑り込んでハッチを閉めた。 その時には、急速潜行を命じられたセイルは、既に甲板を水中に没しており、程無くして艦体全てが海中に没した。 「副長、さっき見つけたあの船団だが、あれは定期便だな。」 「恐らくそうでしょう。」 副長は、輸送船団が入港する日が記されたカレンダーを取り出した。 「ちょうど、前の船団がマオンド本国に向かって4日目です。いつも通りのパターンですな。」 「と、すると、積荷を降ろして、また積み上げて出港するには、あと1日。あと1日の猶予がある訳だな。」 マオンド側の輸送船団は、3日おきに1度、あるいは4日おきに1度のサイクルで、 エルケンラード~マオンド本国間を移動している。 大西洋艦隊司令部は、事前に複数の占領箇所の港を、同時攻撃する事になっているが、奇襲には前もって情報が必要となる。 そのため、大西洋艦隊は潜水艦部隊である第29、第30、第31、第32任務部隊に襲撃予定の港を往来する船舶を監視させた。 セイルの所属する第29任務部隊の潜水艦群は、エルケンラードの沖100~50マイル付近で待機し、 マオンド海軍の動向や、船舶の往来状況を監視していた。 「で、役者さん達は、今ここにいる訳だな。」 レックス艦長は海図のとある箇所を、コンパスで撫でる。 その海域は、セイルが居る位置から300マイル、エルケンラードから370マイル西の地点である。 マオンド軍のワイバーンは、シホールアンル側のワイバーンと比べると、空戦性能こそほぼ同じだが、 航続距離に関しては落ちるという報告が、南大陸側から届けられている。 航続距離は800マイルだが、この地域のワイバーンはせいぜい300~350マイル程度しか哨戒圏を設定しておらず、 密度も本国と比べて薄い事が、スパイの情報や潜水艦部隊の調査で判明している。 夜間には、ワイバーンは飛行できず、哨戒艇の行動範囲も、陸地から50マイル圏内に留まっている。 機動部隊は、その夜のうちに敵地に接近し、夜明けと同時に港に停泊中の船団、もしくはめぼしい軍事目標に 艦載機で持って攻撃を仕掛ける。その後は敵のワイバーンが来ぬうちに艦載機を収容し、反転離脱を行う。 これが、リンクショック作戦の骨子である。 「敵船団には、駆逐艦がいるからな。今すぐにでも浮上して、報告を送りたいが、念の為、このまま潜って、 敵船団が過ぎ去ってから報告を送ろう。」 レックス艦長は後の方針を決めると、まずは電文の作成を命じた。 1482年 6月29日午前7時 エルケンラード 普通なら、初夏の暖かさで誰もが気分を一新して、仕事に取り掛かるであろう。 エルケンラードの町には、そのような気持ちで仕事を行う物は半数程度しかいない。 後の半分は、マオンド兵の機嫌を伺ったり、これからの未来に暗澹とする者がほとんどである。 殊更、今日に関しては後者の色のほうが、心なしか強いような気がする。 「寂しい町だな。」 クルッツ・ラエクは、早朝の町を練り歩きながらそう呟いた。 今日、町の中心部にある広場では、恒例の反逆者狩りが行われる。マオンド側は、占領地域の政治は、派遣した領主に任せている。 エルケンラードの領主は、現地の部隊に対して反逆者は即刻処刑せよと命じてあった。 そのため、月に2度、しょっ引かれた反逆者達は広場で絞首刑に処せられる。 (本当の反逆者はこっちにいるのに、マオンドのぼんくら共は関係の無い人ばかりを縄で吊るしている。どいつもこいつも無能な奴だ。) 空振りばかり繰り返すマオンドに対し、クルッツは内心で嘲笑した。 とりあえず、昨日の夕方にマオンド軍の輸送船団が入港し、いつもの通り積荷を降ろし始めている。 マオンド側は、輸送船の荷降ろしや荷積み作業には、現地人を使わず、全て自分の軍に所属する者ばかりで行っている。 マオンド側の言い分からすると、劣等人共に任せると、積荷が紛失する可能性があるからとある。 明らかに言いがかりであるが、その事が、マオンドが占領地域の住民達に対しどれほど警戒しているか如実に物語っている。 「とりあえず、報告は送ったが・・・・・」 クルッツはおもむろに後ろを振り返った。 彼の背後には、岸壁に接舷して、荷積み作業を行う輸送船と、周囲で目を光らせているマオンド軍の戦闘艦艇がいる。 それらに遅い来るであろう敵はいない。 「アメリカは、いつになったらこのレーフェイルに目を向けてくれるのだろうか。」 クルッツは、内心でアメリカがこのレーフェイルに向かって来る事を期待しているが、アメリカは一向に攻撃して来ない。 「本当に、彼らはやる気があるのだろうか?さっさと来て貰いたいのに。」 そう呟きながら、彼は再び歩き始めた。 彼は、何気なく言ったに過ぎなかった。それは、すぐには叶えられるはずが無い願い。 どうせ来ないと思いつつも、適当に言った言葉に過ぎない。 しかし、彼の何気ない願いは、唐突に表れた。 歩き始めて数分、広場からマオンド兵達が、集まった住民達(マオンド兵の呼びかけで強引に集められた)が、 中央の絞首刑台に注目させられ、マオンド兵が罪人の髪をわし掴みしながら演説している。 よく透き通る声であったが、クルッツはその声音とは別に、別の音を捉えていた。 (・・・・・・この音は・・・・・) クルッツは足を止め、周りを気にしながら、後ろを振り返った。 そこには、先と変わらぬ光景がある・・・・いや、若干変わっていた。 西の空に、うっすらと黒い粒々のような物が幾つか浮かんでいた。 羽虫のような音はそこから発せられていた。 「あれは、一体?」 クルッツはそれが何なのか、一瞬分からなかったが、疑問は瞬時に氷解した。 アメリカに訓練で居た頃、何度か見た飛行機。それの発する音は、異質でありながら力強く、頼もしいと感じた。 その音と、この羽虫のような音は共通点がある。 「まさか・・・・・」 彼は思った。あれは、アメリカ軍の飛行機なのでは? 疑問に答えるかのように、停泊していた護送船団に異変が起きた。 クルッツがいる位置からは遠くてよく見えないが、港で何か騒ぎが起きている。 彼は知らなかったが、この時、警戒駆逐艦は恐ろしい物を目の当たりにしていた。 「て、敵飛空挺来襲!数は100機以上!」 その駆逐艦が目の当たりにした物、それは、空を覆わんばかりの数で攻め入って来た、アメリカ軍機の群れであった。 「こちら攻撃隊指揮官機。攻撃隊はエルケンラードに到着した。これより攻撃に移る。」 「了解。朝メシをくれてやれ。」 空母ワスプ艦爆隊長であり、攻撃隊指揮官でもあるアールド・プラック少佐はワスプとの交信を終え、次に攻撃隊全機に指示を下す。 「全機に告ぐ。これより攻撃に移る。戦闘機隊は港の南側に位置するワイバーン基地を攻撃、叱る後に市内の軍事目標を機銃掃射。 ドーントレス隊、アベンジャー隊は輸送船団、戦闘艦艇を攻撃しろ。グッドラック!」 プラック少佐の指示を受けると、各機がそれぞれの目標に向かっていく。 この日、エルケンラード空襲に参加した空母は、ワスプとレンジャーである。 攻撃隊の内訳は、ワスプがF4F18機、SBD24機、アベンジャー12機。 レンジャーがF4F24機、SBD24機、アベンジャー14機。計116機である。 そして、攻撃の先鋒を務めたのは、40機以上のワイルドキャットであった。 ワイバーン基地はなかなか大きかったが、その短い滑走路に、何騎かのワイバーンが並べられ、慌ただしく発着の準備に入っている。 ワイバーンの列線にも、竜騎士とおぼしき人影が相棒に取り付こうとしていた。 ようやく、5騎のワイバーンが離陸を開始した、と思った直後、急降下して来たワイルドキャットが両翼から閃光を発した。 「甘いぞマイリー!」 レンジャー戦闘機隊の隊長であるテル・パーキンソン大尉は喚いた。 「空戦とはな、空に上がり切ってからやるものだ!」 機体の両翼から12.7ミリ機銃がぶっ放され、4本の線が浮き上がったばかりのワイバーンに突き刺さる。 わずか数秒の射撃であり、目標はすぐに後方へと吹っ飛ぶ。 だが、パーキンソン大尉に撃たれたワイバーンは、体中をずたずたにされて、浮き上がって10秒足らずで地上に叩きつけられた。 離陸したばかりのワイバーンがあっという間に叩き落されている間、今しも飛び立とうとしていたワイバーンの列線にもF4Fは暴れ込んできた。 500キロ以上の猛速で突っ込んで来たワイルドキャットは、ミシンを縫うようにして列線の初めから終わりまでを掃射する。 1番機が討ち取れなかったワイバーンを、2番機、3番機が続けて掃射を仕掛けて行く。 10機以上のワイルドキャットが、1航過を終えた後には、飛び立とうとしていた16騎のワイバーンは例外なく死ぬか、 瀕死の重傷を負い、御者たる竜騎士も全て戦死していた。 ワイルドキャットはそれだけでは飽き足らず、基地の指揮所や集積所にも次々と機銃をぶち込んだ。 ワイルドキャットの機銃弾が、指揮所で被害報告を行っていた兵と指揮官を一気に串刺しにしてこの世から消し去った。 集積所に会った爆弾が機銃弾を浴びるや、大爆発を起こして、近くに居た馬車やワイバーン、建物を全て吹き飛ばした。 その時には、高空からドーントレス隊が、それぞれの目標に向かって急降下を開始していた。 クルッツは、ワイバーン基地で起きた爆発音でハッとなった。 ワイバーン基地からは濛々たる黒煙が吹き上がっている。 先ほどまで、絞首刑台で演説を行っていた兵士が押し黙り、状況が分からないのか、口をポカンと開けて ワイルドキャットの襲撃を呆然と見ている。 その時、エルケンラードの町を圧するかのような甲高い轟音が鳴り始めた。 広場に集合した住民や、家の中にいた住民達が一斉に音のする方向、輸送船団が停泊する港に目を向けた。 港の上空に、数機の黒い粒が、高空から1本棒となって墜落していく。 「自殺する気か!?」 住民の誰かが、信じられないといった表情で黒い粒の急降下を見ている。 黒い粒は、やがて形が分かるようになって来た。 その機体の角度からして、通常ではあり得ぬものだ。 人々の不安の声を掻き消さんばかりに、甲高い轟音は徐々に大きなものになっていく。 傍目から見ても、心臓を掻き毟られるような音だ。 その直下にいるマオンド兵達はさぞかし、耳を塞ぎながら退避しているのだろう。 唐突に黒い粒の周りに爆煙が吹き上がる。それは次第に数を増していったが、見慣れぬ飛空挺を爆砕するには至らない。 甲高い轟音が極大に達した時、低高度まで降下した飛空挺が航過速度を緩め、水兵飛行に移っていく。 飛空挺が輸送船、戦闘艦艇の上空を通過した時、1隻の輸送船から火柱が上がった。 その次に舷側から水柱が吹き上がる。 そのまた次に船体の後部甲板から爆炎踊り、何かの破片が高々と舞い上げられた。 ドーン!という腹に応えるような爆発音が連続して町に響き渡り、住民たちは誰もが仰天した。 「家の中に逃げろ!」 誰かがそう喚くと、広場に集められていた住民達はパニックに陥り、それぞれが別の方角に逃げ始めた。 「こ、こら!貴様ら!我らの命があるまで勝手に逃げ出すんじゃない!」 マオンド兵の指揮官らしき男が、長剣を振りかざして逃げ散る住民を引き止めようとするが、その声すらも、 またもや起こった甲高い轟音に掻き消されてしまった。 「おのれ!反逆者共めが!」 指揮官が顔を真っ赤にして叫び、不意に横を向いた時、ワイバーン基地を襲った飛空挺が、今しも彼らの下に向かう所であった。 「ひ、退けい!罪人なんぞそこらに放り出しても構わん!駐屯地に戻るぞ!」 指揮官の声が響くと、マオンド兵達は慌てて罪人達を放り出し、馬車に乗り込んだ。 組み立てた絞首刑台なぞ目もくれず、先頭の馬車が街道を突っ走ろうとした。 その次の瞬間、鋭い射撃音と共に、最後尾の馬車が12.7ミリ機銃弾に絡め取られた。 馬車の車輪が音立てて外れ去り、荷台の中にいた兵達が一瞬で射殺された。 組み立てられた絞首刑台にも機銃弾が雨あられと降り注ぎ、罪人の首を吊り下げる筈だった縄がちぎり飛ばされ、 基部がギタギタに引き裂かれた。 絞首刑台はわずか数秒の射撃でぼろぼろに打ち砕かれ、ただの木屑に変換された。 別のF4Fが先頭を走る馬車に12.7ミリ機銃弾をぶち込む。 幌が容易く引き裂かれ、御者と馬が瞬時に息の根を止められ、馬車はけたたましい音を響かせて横転した。 横転した馬車は、狭い街道沿いの露店に突っ込んで、閉店状態にあった店を強引に開店させてしまった。 4機のF4Fは、そのまま上空をフライパスして、新たな目標を探した。 「全く、酷いやつらだ。公衆の面前で公開処刑とは。」 パーキンソン大尉は苦い表情でそう呟いた。彼は飛行場を銃撃した後、市街地にある軍事施設に襲いかかろうとしていたが、途中で広場が見えた。 その広場は、元々住民達の休息の場所として作られたらしいが、パーキンソン大尉が見たのは、今しも公開処刑を行うとする執行人達と、 その罪人とされた人々であった。 10人以上の執行人達は、パーキンソン大尉のF4Fが近付いてくるのが仰天したのか、罪人達を逃がして慌てて馬車で逃げようとした。 4機のF4Fはそれを逃がさず、絞首刑台共々機銃掃射で蹴散らした。 「さて、本当の目標に向かうとするか。」 パーキンソン大尉は、一番狙いたかった物、領主の銅像が立てられた公園に向かった。 そこは広場と目と鼻の先であり、パーキンソン大尉は旋回した後、その目立つ銅像目がけて愛機を突っ込ませた。 「朝飯だ、しっかり味わえ!」 彼は、尊大な態度を表した銅像に、距離800で銃撃を行った。両翼の12.7ミリ機銃がリズミカルな音と共に放たれ、 曳光弾がその銅像全体に突き刺さった。 慌てて、家に逃げ帰って来たとある住人は、突然、家の目の前にある領主様の銅像がけたたましく火花を散らす光景を見て度肝を抜かされた。 無数の光弾らしきものがこれでもか、これでもかとばかりに叩き込まれ、勇壮な顔つきであった領主の表情が醜い化け物面に変わっていく。 その上空を、胴体に星を描いた見慣れぬ飛空挺が、猛スピードで航過していく。 都合、4機の飛空挺がその銅像の上空を通り過ぎた時、領主の銅像は全身が酷く損傷し、ただの醜いオブジェと化していた。 (すごい!あの憎らしかった銅像が・・・・・) その住民は、内心で喝采を叫んでいた。町の為政者として君臨してきた、あの憎らしい領主が税金で建てた自分の銅像。 エルケンラードの住民にとってはあの屋敷にふんぞり返る領主と同等に憎い存在であった。 それが、未知の飛空挺によってあっけなく破壊された。 (素晴らしい!なんて素晴らしい事だろうか!!) 最初、恐怖の眼差しで見つめていた飛空挺だが、今ではその思いは消え去っていた。 港の輸送船団は惨憺たる様相を呈していた。13隻の輸送船は、ことごとくドーントレスの爆撃によって粉砕された。 戦闘艦艇はかなわじと、機銃掃射を繰り返すドーントレスを尻目に、慌てて港の外に逃げ出してきた。 だが、そこに待っていたのは、低空を這い進んで来る26機のアベンジャーであった。 慌てて逃げて来たため、相互支援の取れなくなったマオンド艦艇は、低空からの刺客に次々と襲われた。 まず、真っ先に逃げ出してきた1隻の巡洋艦に4機のアベンジャーが取り付く。 巡洋艦は必死に回頭を繰り返すが、アベンジャーの追撃は執拗を極め、ついには2本の魚雷を艦の前部に受けた。 艦首を食いちぎられた巡洋艦は数メートルも進まぬ内に停止し、沈み始めた。 次に駆逐艦2隻に、10機のアベンジャーが群がってきた。 運悪く、魔道銃の光弾を食らったアベンジャーが、もんどりうって海中に叩きつけられるが、脅威を取り去る事は出来なかった。 残り9機となったアベンジャーは、射点に到達し、次々と魚雷を投下する。 1隻の駆逐艦はなんとか避け切ったが、もう1隻には2本の魚雷が中央部に叩き込まれ、艦体を真っ二つに叩き割られた。 気が付くと、クルッツは港が見渡せる丘に来ていた。港は濛々たる黒煙に覆われて、その全容を見渡す事が出来ない。 港から少し離れた海域では、5本の黒煙が吹き上がっている。 その上空には、まばらだが、アメリカ軍機らしき機影が、勝ち誇ったように上空を旋回していた。 「ラエクさん!」 後ろから声がかかった。 振り向くと、いつもの酒場の主人が、困惑した表情をうかべながら近寄って来た。 「なんか、相当ひでえ事になっているが、何があったんだい?」 「俺もよく分からない。分かる事といえば、いきなり海の方向から変な飛空挺がやってきて、散々暴れ回った、それぐらいだ。」 「なるほど・・・・・すげえな。沖で船が燃えている。ありゃマオンド軍の巡洋艦じゃないか。」 「飛空挺の爆撃を受けたようだな。あの飛空挺の乗員達、上手く軍艦を追い詰めていた。結構な手練が操っているようだぜ。」 「それはともかく・・・・・あの強かったマオンドが、こうまでも一方的にやられるとは。」 酒場の主人は、上手く状況が飲み込めていないのか、しきりに頭を抱えている。 「天敵現るって奴だろう。いずれにしろ、マオンド軍もこれまで通りの戦いは出来なくなった。 それだけは確かだろう。」 クルッツは、やや上ずった口調でそう言った。 「なるほどね。今までさんざんやりたい放題やって来たんだ。今日の出来事は、マオンドの奴らにはいい薬になるかもな。」 主人は、初めて笑みを見せた。その笑みは、今までに無いほど爽やかだった。 午前8時30分 エルケンラード西方沖200マイル地点 攻撃隊の最後のアベンジャーがワスプの飛行甲板に降り立った時、ノイス少将はようやく、安堵の表情を浮かべた。 「司令、全機収容完了しました。」 艦長のジョン・リーブス大佐が報告して来た。 「よし。これよりこの海域を離脱する。艦隊針路270度。」 ノイス少将は、予め決めていた命令を全艦に発した。 「レンジャーより通信。我、攻撃隊の収容完了。これより反転す、であります。」 「OK。今の所は順調に行っているな。」 ノイス少将はそう呟きながら、脳裏では第26任務部隊の作戦に不安を抱いていた。 第26任務部隊は、現在別の場所を攻撃するために、別の海域を航行している。 他の機動部隊とは別の時間帯に攻撃を仕掛ける為、あえて別針路を取っているが、危険度はTF26のほうが大きい。 ちなみに、TF24のホーネットからは、5分前に攻撃終了の報告が入っている。 損害は、TF23、25でSBD2機、TBF1機喪失。F4F3機、SBD、TBF各2機損傷となっている。 しかし、エルケンラードのマオンド軍輸送船は全滅させており、護衛艦艇も2隻撃沈、3隻大破の戦果を挙げているから、 エルケンラード空襲に関しては大成功である。 TF24は、エルケンラードより北800キロのゲンタークルを空襲している。 後は、TF26の攻撃の成否を待つのみだ。 「後はあなたがたの出番だ。大いに暴れてくれ。」 ノイス少将は、サマービル中将の顔を思い浮かべながら、TF26の健闘を祈った。