約 1,720,100 件
https://w.atwiki.jp/th_sinkoutaisen/pages/918.html
大妖精と小悪魔のサポートカード。 2人の戦闘力が高い方に同期される。 オヒキユニットとしての側面が強い彼女たちではあるが、 小悪魔はふたりきりの大図書館での修行強化やパチュこあは聖典でのパチェ同期を 大妖精は♪妖精大戦争周辺カードとのシナジーや大自然の申し子によるコンテニューを持つので 上手く高戦闘力で揃えれば意外と強い。 戦闘目的でなくともお互いに自身の戦闘力を他のユニットの為に活かすカードを持つため、有用性は高い。 ただし大チルは湖のお友達でチルノを怒らせたい場合だけは足かせになる。 パチュこあは聖典と大ちゃんこあちゃんを同時に使用した場合、 パチェの戦闘力の半分 > 大妖精、小悪魔の戦闘力 のとき →パチェの半分の戦闘力が小悪魔に同期、更に大妖精に同期する 大妖精の戦闘力 > パチェの戦闘力の半分 のとき →小悪魔の戦闘力が大妖精の戦闘力に同期される。パチェこあの効力は実質小悪魔自動復活のみに となる。基本的には都合の良い方が優先されるので安心しよう。
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/51.html
前へ 雪の降る高原に、私は一人ぼっちでいた。一面真っ白で、何も見えない。 不安にかられて歩いていると、遠くの方から楽しそうな笑い声が近づいてきた。 「かまくら作ろう。」 「みんなで座れるソファを作ろう。」 「ソリで遊ぼうよ。」 なぜか懐かしい気持ちになる。キュートの皆だ。私は声のする方に向かって走り出す。 「舞美ちゃん。」 雪玉を栞菜にぶつけようとふざけている舞美ちゃんに声をかける。 振り向かない。 二度、三度と名前をよんでも、私のことなんか気が付かないみたいに誰も反応してくれなかった。 怖くなって舞美ちゃんに飛びつこうとしたけれど、私の体は舞美ちゃんをすり抜けた。雪の中にしりもちを付く。 「栞菜。えりかちゃん。ねえってば!」 とっさに投げた手元の雪さえ、誰にも届かずに地面に落ちた。 「楽しいね。」 「面白いね。」 「あっちでソリ競争やろうよ。」 またみんなが遠ざかっていく。 誰も私に気づいてくれない。私なんかいなくて当たり前のように、世界が循環していく。 嫌だ、舞はここだよ。誰か私を見つけて。ここにいるんだよ。 「舞ちゃん。」 ふりむくと、ベージュのハンチングを被った千聖が立っていた。 「舞ちゃん。遊ぼうよ。」 おそるおそる、差し出された手に触ってみる。 すり抜けない。暖かい千聖の手が、ぎゅっと握り返してくれた。 「舞ちゃん手冷たくなってるー」 千聖はうへへって楽しそうに笑っている。 よかった、千聖元に戻ったんだね。そして、ちゃんと舞のこと見つけてくれた。 誰も気づいてくれなくても、千聖だけは。 「皆のとこ行こう。一緒にソリ乗ろうよ。」 手を引っ張られて、転がりそうになりながら2人で走る。 「千聖。私、千聖にまだ謝ってない」 「なーに?聞こえないよぅ」 「うわっ」 千聖があんまり早く走るから、私はつまずいて転んでしまった。 手が離れる。千聖は気づいていないかのように、笑い声をあげながらみんなの輪の中に入っていく。 待って、やだよ。千聖、千聖!!」 「舞!大丈夫!?」 ・・・・・・? いきなり、舞美ちゃんのドアップが目の前にきた。 「舞、大丈夫?うなされてたけど」 何だ。夢か。千聖の手だと思って握っていたのは、舞美ちゃんの手だったのか。 「あれ、ここ・・・」 「ああ。タクシーの中でぐっすり寝てたから、とりあえず家にお泊りしてもらうことにしたんだ。舞のママには連絡してあるから、大丈夫。」 壁にかかっている時計を見ると、もうすぐ日付が変わるぐらいの時間だった。 よっぽど熟睡していたんだろうな。レッスンスタジオを出てからここにたどり着くまでのことが全く思い出せない。 「なっきーは?」 「家に帰ったよ。舞によろしくって。」 「ふぅん」 目が覚めてくると、今日一日にあったことが次々と頭をよぎっていく。 ダンスレッスン中に栞菜となっきーがケンカして、なっきーが居残り練習をするっていうから、ロビーで待っていた。 約束していたわけじゃないけど、千聖のことを話したかった。 なっきーは千聖のことを話せる、唯一の理解者だったから。ついさっきまでは。 しばらくたってもなっきーが階段を降りてこなかったから、様子を見にロッカーまでいくと、中で「あの千聖」が歌を歌っていた。 なっきーとの約束で、最近は挨拶ぐらいはするようにしてたけれど、やっぱりなるべく係わりを持ちたくなかった。 前の千聖と同じで、自分のパートと愛理のパートだけをずっと練習している。 何だよ。頭打っても愛理のことはちゃんとライバルだって覚えてるんだ。私が千聖にとってどんな存在だったのかも忘れちゃったくせに。 苛立つ気持ちを押さえて、廊下の端まで移動する。ちょうど入れ替わるようなタイミングで、なっきーがロッカーに入っていった。 しょうがない。もし2人が一緒に出てきたら、今日はあきらめて帰ろう。・・・話ぐらいは、聞いてもいいよね。 そう思ってドアの前まで行くと、千聖がなっきーに「私のライバルは愛理です」とかなんとか言っていた。 たよりない変なお嬢様キャラに変わっても、そういうことははっきりした口調で言えるんだね。むかつく。 そして、次になっきーが信じられないことを言った。 「千聖は変わってないね。前の千聖のままだね。」 その後のことは、あんまり覚えていない。 なっきーに文句を言ったような貴がする。 千聖を怒鳴りつけた気もする。 もしかして、暴力を振るったのかもしれない。 気がついたら、舞美ちゃんにすがりついて大泣きしていた。 こんなに泣いたのは初めてかもしれない。まだこめかみが痛い。 「舞、熱いココア入れたから、あっちで飲もう。」 こんな真夏に、Tシャツにハーフパンツでホットココアって。 「ありがとう。」 カップを受け取って、口をつける。 熱いけど、おいしかった。舞美ちゃんはかなりの天然だけど人の好みをよく記憶していて、 たまにこういう風にお茶を入れてくれることがあると、いつもそれぞれが一番おいしく飲めるように気を使ってくれる。 「おいしい?」 汗だくだくになりながら、舞美ちゃんが首をかしげる。 「うん。舞は砂糖少な目でミルクが多いのが好き。ちゃんと覚えていてくれたんだ。」 「そりゃあそうだよ、大好きなキュートのことですから。みんな特徴あって面白いから、なんか覚えちゃうんだよね。 愛理は味薄めでしょ、栞菜はココア粉大目にミルクたっぷり。ちっさーなんてココアも砂糖もミルクもがんがん入れて!とか言ってさ。・・・・あ、」 「・・・いいよ、別に。舞の勝手で今の千聖を受け入れられないだけなんだから、そんな風に気使わないで。」 心がかすっかすになっていたけど、まだ笑顔を作ることぐらいはできた。 「ねえ、舞。千聖のことなんだけど」 「今はその人の話したくない。」 「舞。・・・・ううん、そうか、それじゃ仕方ないね。違う話しよっか。あのさ、友達の話なんだけどね、最近。・・・」 舞美ちゃんの顔がちょっとだけ曇ったけれど、それを打ち消すように不自然に明るく振舞ってくれた。 「うそー。ありえないよ。」 「でも本当なんだって、私もびっくりしちゃってさあ」 “・・・バカじゃないの、周りの人傷つけて、あんた何で笑ってんの” 舞美ちゃんに調子を合わせて、楽しげに話す自分を、もう1人の自分が責めている声が聞こえた気がする。 会話が盛り上がれば盛り上がるほど、心には虚しさが降り積もっていった。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/labohkmtp/pages/16.html
Tちゃん 中高大が期待する小6。 Nちゃんの妹。 面白い。俺とMを足したような感じ。 学アリ好き。 ソングよりもテーマ活動派。 でもフォークソング好き。男役に回るのが大好き。 俺とMと仲良し。 俺にはRとの仲を妄想される。 超しっかりしてて、尚且つムードメーカー。 来年中高大に入ってくれるということで中高大はハイテンション。 大好き。小4から仲良しですぜ。 お菓子大好き。甘いものと茎わかめが大好きなよう。 茎わかめは俺があげてたら好きになったみたい。
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/122.html
前へ 「舞美!あたしたちの7年の友情はこんなもんなの!?」 暗雲立ち込める楽屋の中で、ちぃの怒号が響き渡る。 「千奈美、待って」 「そんなに私って信用ないの?いつもヘラヘラしてるから?」 ふだん明るくてにこにこしてる人が怒り出すと、本当に怖い。 まるで時間が止まってしまったように、誰も動かない。 「ごめん、そうじゃないよ。すごく複雑なことだから、まだベリーズには言ってないだけで」 舞美ちゃんの説明が、余計にちぃをいらだたせたみたいだ。 「嘘!私以外全員知ってるんでしょ!そんな、そんな大事なことなら、何で私だけ」 「いや、私も多分知らないけど。」 「私も。」 「・・・あ、そ、そうなの?」 みやとキャプテンが割って入ったら若干トーンダウンしたみたいだ。 こっそり茉麻の顔を伺ってみると、すごく強張っている。 さっき私がカマをかけた時はとぼけていたけど、間違いない。茉麻はあの千聖のことを知ってしまっている。一緒にいた熊井ちゃんも、多分。 千聖本人が今ここにいないから、何がどこまでどうなってるかはわからない。 だけどおそらく、みんなのリアクションからしてちぃたち3人以外――多分桃ちゃんも、すでにお嬢様キャラのことは知ってしまっているんだと思う。 うまくいかないな。キュートの中だけで内緒にしておきたかったのに。 ベリーズのみんなを信じてないわけじゃない。でも、私にとって千聖じゃないあの千聖を、みんなに認知させてしまうのは嫌だった。 いずれは元の千聖に戻ってもらいたいからああして仲直りをしたわけで、私は彼女を岡井千聖と認めたわけじゃないんだ。 「・・・舞美、私もちょっと悲しいよ。うちらリーダーとキャプテンで、いろいろ相談しあってきたじゃん。どうして今回に限っては何も言ってくれないの?」 「待って、舞美のこと責めないで。これはキュート全員で決めたことだから。」 「えり・・・」 「もう、いいじゃん舞美ちゃん。」 その時、ずっと黙っていた愛理が口を開いた。 「隠しきれないよ。・・・ていうか、隠すことじゃないよ。誰も千聖を拒んだりしないと思う。私たちだって、そうだったじゃない。」 愛理の横で、梨沙子もコクコクとうなずいている。 「・・・あのさ、うちと熊井ちゃんも本当に断片的なことしか知らないんだ。だから、もし良かったら、何があったか教えてほしいな。」 「そうだねー。何でゆりなさんって言ったのか気になる。」 「そか、うん・・・そうだよね、みんなちっさーのこと心配してくれてるんだよね。」 何。 何、この流れ。 「ちょっと待って舞美ちゃん!」 「舞ちゃん、もうだめだよ。」 妙に落着いた愛理の静止が勘に触る。 「ダメって何が?愛理は元の千聖より、あの千聖の方が好きなんだろうけど私は違うの。私の千聖はあの千聖じゃないんだよ。今の不自然な千聖を、わざわざみんなに広めることないじゃん!」 「不自然って何、舞ちゃん。舞ちゃんがどれだけ望んだって、もう前の千聖は戻ってこないのかもしれないんだよ。私は舞ちゃんと違って、どっちの千聖の方が好きなんて思わない。どっちも好きだよ。勝手に決めないで。」 愛理からの思わぬ反撃で、私は少しひるんだ。でもここで言い負かされるわけにはいかない。 「愛理なんかに何がわかるの?私がどれだけ千聖のこと大好きなのか、愛理には絶対わかんないよ。私はずっと、千聖の横にいたの。いっぱいケンカしたけど、ずっとずっとずっと千聖の側にいたのは私なんだから。私はまだ元の千聖に話さなきゃいけないことがいっぱいあるの。 あの千聖に話すんじゃ意味ないの。」 「・・・・舞ちゃんは勝手だよ。ああやって無茶をさせてるせいで、千聖はずっと苦しんでいるんだよ。夢の中でまで辛い思いをしてる千聖の気持ちはどうでもいいの?それに、あの事故が起きたのだって」 「・・・もうやめてよ、2人とも・・・・!こんなのやだ・・・・」 エスカレートする私たちの言い争いは、頭を抱えて座り込んだ梨沙子によって中断された。 「あ・・・・あのー・・・・・舞、ちゃん・・・?」 すっかり気をそがれたちぃの間の抜けた声が、すすり泣く梨沙子の声とともにむなしく部屋に響いた。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/130.html
前へ 千聖と離れた私は、しばらく舞美ちゃんやちぃたちとバカ話で盛りあがった。 時々聞こえる千聖の楽しそうな声が、私を安心させてくれる。 「何か舞ちゃん、大人になったよね。」 「そう?まあ、いろいろあったから。」 「うん、舞は本当によくできた妹だよ。心も外見も急成長した!舞は最高にいい妹だね!」 「・・・・恥ずかしいから2回も言わないでいいよ。」 考えてみれば、千聖が頭打ったあの事件から、まだ1ヶ月もたっていない。 喜怒哀楽の全てをフル活用した、あまりにも中身の濃すぎる数週間だった。 「ねー、もうそろそろお開きにしませんか!あんまり遅くなると中学生組はお父さんお母さんも心配しちゃうだろうし。」 30分ぐらいして、キャプテンが大きな声でみんなに呼びかけた。 「えー」 「えー、じゃないの。またすぐ会えるんだから。早くお菓子片付けよう。」 チョコやクッキーはみんなで山分けして(ポテチの残りは舞美ちゃんがなっきぃにカ゛ーッした)、ゴミをまとめると、急ぎ足で部屋を出た。 ベリキューそれぞれのロッカーで荷物を持って、大階段のあたりで再び合流する。 「いい?行くよー」 まるで集団下校みたいだ。舞美ちゃんとえりかちゃんが先頭で、一番後ろはキャプともも。 私と千聖は前から2番目。後ろには茉麻となっきぃがいた。 年長組に挟まれて、みんなでキャーキャー言いながら階段を降り始めた。 「あ・・・嫌だわ、私ったら。いただいたお菓子、ロッカーに置いてきちゃった。」 私が手に提げていたお菓子の袋を見て、千聖が声をあげた。 「また今度でいいんじゃない?レッスンすぐあるし。」 「でも・・・明日菜たちにおみやげで持って帰りたいの。すぐに追いかけるから、私ちょっと戻ります。」 千聖はそういうと、くるっと後ろを振り返った。 「茉麻さん、ちょっとごめんなさい。私・・・」 「えっ!?」 茉麻は私たちに完全にお尻を向けて、後ろ歩きしながら熊井ちゃんとおしゃべりしていた。 急に話しかけられてびっくりしたんだろう、若干オーバーリアクション気味に、体全体で思いっきり振り返った。 茉麻のほうへ駆け寄っていった千聖の胸のあたりに、いきおいよく茉麻のひじがぶつかった。 「あ」 「あ」 「あ」 何人かの唖然とした声が重なる。 デジャヴ。 こんな光景を、私は知っていた。 もっとずーっとずーっと昔、茉麻に飛びつこうとした千聖が、振り返った勢いで吹っ飛ばされてしまった事件があった。 私は直接見たわけじゃないけれど、あとでビデオかなんかで見て、おなかが痛くなるほど大笑いしたからよく覚えている。 もうあんなに子供じゃないけれど、千聖はやっぱり体が小さいし、茉麻は大きい。 驚いた顔のままの千聖が、階段から押し出されて宙に浮いた。スローモーションのように、体が倒れていく。 「危ない!」 舞美ちゃんの大声で、私の時間感覚は元に戻った。 階段から落ちかけた千聖を、舞美ちゃんが両腕で抱きとめた。 千聖をかばったまま、2人は階段の一番下に落ちてしまった。 「千聖!!!!」 私は自分の口から、こんな金切り声が出たのを初めて聞いた。 もう大事な人を失いたくない。恐怖で足がガクガク震えて、座り込んでしまった。 「舞美!千聖!」 茉麻が真っ青になって、2人のところへ走っていく。 「ごめん、私・・・!」 「えっ何?どうしたの?」 「落ちたの?大丈夫?」 後ろの方のみんなも、人が落ちる鈍い音に驚いて集まってきた。 「舞ちゃん、立てる?」 肩を貸してくれたなっきぃの体も震えている。 「舞美・・・・」 「・・・・イタタタ・・・背中打ったー・・・。一瞬息止まったんだけど」 しばらくして、舞美ちゃんが照れ笑いしながら、体を起こした。 「平気なの?舞美。」 「うん、もうあと5段ぐらいだったから。なんてことないよ。それより・・・よかった。今度は守れた。」 舞美ちゃんは優しい顔で、千聖の体を抱きしめなおした。 でも 「・・・・ちっさー?ちっさー?・・・・・どうしよう、ちっさー、どこか打ったのかもしれない。起きないよ。」 舞美ちゃんの腕の中の千聖は、目を閉じたまま全く動かなかった。 「舞ちゃん?」 大切な人を失う恐怖で、体から力が抜けていく。 「・・・私、マネージャー呼んでくる。」 「私も。」 愛理と栞菜の声が遠ざかっていくとともに、私の意識もゆっくり遠のいていった。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/129.html
千聖大好きっ子の舞ちゃんに、千聖を悪の道から救い出そうとしてるなっきぃ、明らかに面白がってる愛理。 どんな恐怖映像が世に出回るかと思ったけど、撮影中はわきあいあいとソフトクリームを食べたり、牛や羊と戯れる平和な時間を過ごすことができた。 なっきぃが赤いマントを羽織って、「オーレィ!」と牛を挑発しながら私の方へ駆け寄ってきたことは忘れることにしよう。 すぐに予定の時間が過ぎて、ふたたびちさまいみかんなと合流するために、広場へ戻った。 3人はもうジャージから私服風の衣装に着替えて、楽しそうにまたバドミントンをやっていた。 「キュフフ、体力あるねー。」 「あ、お帰り!牧場どうだった?こっちはねー・・・」 舞美がなっきぃ舞ちゃんと話し初めて、愛理と栞菜が木陰に移動したから、私は必然的に千聖と2人になる。 「アスレチック、楽しかった?」 「ええ、とても。3人で競争もしたんですよ。舞美さんたら、私がロープを使って登っている時に、わざと揺らしていたずらするから怖かったわ。私も後で、栞菜と一緒にお返ししちゃいました。ウフフ」 ほわんほわんなお嬢様の千聖だけれど、やっぱり根っこはスポーツ大好きっこ。目を輝かせて喋る顔は、無邪気で可愛らしかった。 「今度、えりかさんも一緒にやりましょう。タイムトライアルが楽しかったわ。みなさんとプライベートで来ても面白そう。」 千聖、長い付き合いじゃない。いい加減私の運動神経をなめてもらっちゃ困る。 ロープのうんていを、腕の力だけで進む。 下に待ち受けるのはシザーなっきぃの大群。よーい、スタート! ウチだってやればできる!信じれば夢は叶うよ! と思ったけど二本目で落下する私。 落ちたよー、えりこちゃん、落ちたよーキュフフフフフ・・・・・ 「えりかさん?」 「はっ!・・・そ、そうだね機会があったらね。」 千聖は私の答えに満足して、話題を変えた。 「えりかさんたちは、何を?」 「えーと、ヤギ触って、牛触って、乳搾りしたんだよ、乳搾り。こう、ニキ゛ニキ゛ニキ゛って。」 私はわざと千聖の胸の前で、手をゆっくり閉じたり開いたりして挑発してみた。 恥ずかしがる姿を楽しもうと思ったのに、千聖はしばらくポカンと口を開けて、私の手つきに見入っていた。 だんだんと目がトロンとなって、唇がかすかに震え始める。 ちょ、そこまで興奮しなくても! 「ちちしぼり・・・」 「さーーーーーてと!!!次は後半の撮影だよ!!さあ行きますよ2人とも!」 千聖が妙に湿った声で呟いた瞬間、なっきぃが大音量で私たちを引き剥がしにかかった。 「なっきぃはりきりすぎー!そんなにおなかすいたの?とか言ってw」 「いいの!さあ、またグループ分けしよう!」 反復横とびみたいな動きで私と千聖をさえぎるなっきぃ。 舞美が千聖を連れて行ったのを確認すると、ゆっくり私に向き合った。 「あ、ちょ、ちょっとふざけすぎた・・・ってなっきぃ?何やってるの?」 なっきぃは私がさっき千聖にしたみたいに、私の胸の前で2,3回手をもにゅもにゅさせた。・・・と思ったら、 「ひええ!!」 いきなりその手を力強く閉じて、私のエアーおっぱいをぐしゃっと握りつぶした。 「・・・キュフフ、えりこちゃん。なっきぃはいつも、千聖のこと見守ってるんだからね。忘れないでね。」 なっきぃはそう言うと、いつもの可愛いなっきぃスマイルに戻して「じゃあ、早くみんなのとこ行こう!」と私の手を取った。 こ、怖い。ずっと怒られてるならともかく、こうメリハリを付けられると、恐怖感は倍増する。 今日の夜はさっき焦らしてしまった分、たっぷり楽しもうと思ったのに、 この分じゃ舞美あたりをけしかけて「えり!ちっさー!UNOやろう!」「トランプ!トランプ!」「ガールズトーク(笑)しようよ」とコテージを襲撃してくることは間違いなさそうだ。 ああー・・・私だって結構、楽しみにしてたのに。 さっきとは別の意味で落ち込んでるうちに、いつのまにかご飯係の班分けは終わっていた。 「えりかちゃん、私たちカレー作る係だよ。愛理も一緒。よかったー、どうしてもお姉ちゃんに話したいことがあったから。愛理になら、聞かれてもいいし。」 栞菜が嬉しそうに話しかけてくる。愛理は相変わらず、S入ったイタズラな目つきのままだった。 「あ、舞ちゃんと舞美ちゃんはご飯炊くんだって。千聖はなっきぃとアイスとバター作るんだよ。さっきえりかちゃんが絞った乳で、千聖がね。ケッケッケ」 ちょっとあーた!敵なの!味方なの!? 相変わらず読めない表情で、「野菜もらってくるねー」と、私たちを置いてどこかへ行ってしまった。 「私たちも調理器具とかもらってこようよ、えりかちゃん。」 「そうだね。あ・・・ねえ栞菜、話したいことって、なーに?気になるから、撮影始まる前に聞いときたいんだけど。」 私がそう切り出すと、栞菜は人差し指で「シーッ」のポーズを取って、急ぎ足で調理器具置き場まで移動した。 「どうしたの?相談事?」 周りを警戒しながら、栞菜はお鍋や包丁を選んでいく。 「私、決めたよお姉ちゃん。」 「うん?」 「ちっさーとえりかちゃんのこと、いろいろ悩んだんだけど。」 「え・・・?」 「でも、応援するから。」 応援、て。 ガバッと顔を上げた栞菜は、妙に明るい顔をしていた。 経験上、こういう表情の時の栞菜は要注意だ。 「ごめん栞菜、応援って、一体何を言って」 「私、2人の恋を応援するから!」 「・・・・・・は?」 私の手から落ちたお鍋のふたが、クワンクワンクワンと大きな音を立てた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/takemi201/pages/27.html
カンボジア人となった、猫ちゃんがオリンピックカンボジア代表に!! ほぼ決まったそうなんですよ。 猫ちゃんの努力はすごいものがあったと思うので、 それは素直におめでとうございます!!って思います。 でも、賛否両論はあるようで、 カンボジアの方々もそれでいいの?って思ったり、 オリンピックが終わった後は、日本には戻ってこない方がいい、とか、 色々な意見はあるようですね…。 でも、決まったからにはオリンピック代表として、 今までの記録を大幅に更新できるくらいの走りを、 ぜひとも期待したいですよね! 車 高価買取 引越し料金 神奈川 蓮のちから 車 一括査定
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/22.html
前へ 「あーっ千聖!」 舞美ちゃんの大声と何かが落ちた鈍い音に驚いて振り返ると、千聖が階段の一番下で倒れていた。 どうやらくすぐり合いっこをしていたら、バランスを崩した千聖が足を滑らせてしまったらしい。 雑誌の撮影が終わり、階段を降りていく途中の出来事だった。 「もー何やってんの」 まだ舞美ちゃんに笑顔の余韻が残っていたから、私はそのまままた前を向いて愛理とのおしゃべりを続行することにした。 でも「やだ、ちょっと・・・千聖動かないよ。」 「どうしよう、私・・・」 千聖と一緒に階段の途中でふざけていた舞美ちゃんが、みるみるうちに青ざめていく。 舞美ちゃんに抱きかかえられている千聖はピクリとも動かない。 「違うよ、マイが最後に千聖をちょっと押しちゃったんだよ。舞美ちゃんのせいじゃないよ。」 舞ちゃんの目に涙が溜まっていくのを見ていたら、つられて私も泣き出しそうになった。 栞菜も愛理もすごく動揺しているのがわかる。 えりかちゃん・・・はずいぶん前を歩いていたから「どうしたのー」なんてケーキをモシャモシャ食べながらのんびりこっちに向かってきた。 こんなことになるなんて・・・。 「とにかくさ、誰が悪いとかどうでもいいからマネージャー呼んでこよう?」 一番最初に冷静さを取り戻した愛理がそういうと。玄関の方に向かって走り出した。 そのとき「う~ん・・・」 千聖が短く声を漏らして、ゆっくりとまぶたを開けた。 「千聖!」「大丈夫?」「どっか痛いとこない?」 みんなが走りよって、千聖にいっせいに話しかける・ 「よかったぁ私千聖に何かあったらどうしようって・・・」 「なっきー泣きすぎだよ」 涙でほっぺたをぬらしている栞菜に突っ込まれたけど、私の涙は止まってくれなかった。 そんな私たちの顔を、順番にゆっくりと見つめながら、千聖は体を起こした。 「皆様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。わたくしはもう大丈夫ですので、早くお家に帰りましょう。」 「千・・・聖?」 「それでは参りましょう、皆様。」 えりかちゃんの手から、食べかけのケーキが落ちた。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/figbr/pages/146.html
DragonDrive ◆QotHY4VA.M 午前五時。 朝というには暗すぎるが、夜というには明るすぎる半端な時間。 これが普通の街であれば、気の早い人々は活動し始め、わずかながら街に喧騒の芽が息吹き始める……そんな時間帯でもあっただろう。 だが、今、この街は"普通"ではない。 総合自律戦闘実験"BATTLE ROYALE"――61体のフィギュア同士の壊し合い……その舞台となっているのだ。 それが一体どういうからくりであるかは不明だが、この街には人間どころか虫の一匹すら存在しない。 それ故に街全体を淀んだような、不気味で不自然な静寂が支配している。 そんな静寂を鋭い甲高い回転音が切り裂いていく。 リノリウム張りの床に轍を刻みながら、その音の主――チャリオットは校舎内を徘徊していた。 ……数時間前、彼女は敵を求めこの校舎に入り込んだ。 だがその目論見は外れ、自分以外のフィギュアと遭遇することはなかった。 しかしチャリオットには具体的な方針があるわけでもない。 "目の前に出現すれば破壊する"というシンプルな思考に従っているだけだった。 それゆえに彼女は深く考えずに、思うままに校舎の一階をうろついていたのだ。 一階には保健室や職員室など通常の教室以外にも多様な特別教室が存在している。 数時間の間、彼女はそのあたりを重点的に徘徊していた。 そして彼女はあるものを目の前にして立ち止まっていた。 それは、2階への階段である。 「……」 彼女の脚部は巨大なホイールで構成されている。 それは高速移動には適しているが、立体的な機動には向いていないことを意味する。 つまり、彼女にとって階段を登るという行為は非常に難しい……というか不可能と言って良いレベルであった。 1階で何者にも遭遇できなかった以上、彼女の興味がより上の階に向くのは当然のことだろう。 だがしかし彼女にとって2階へと続く階段は、絶壁と同異義の言葉であったのだ。 どのぐらいそうしていただろうか。 立ち止まっていても仕方ないと思い直したのか、階段に背を向けるチャリオット。 だがその時、彼女は一つの可能性に思い当たる。 それは"拡張パーツ"という可能性だった。 勿論、この実験が始まる前、彼女も他の実験体同様にアーキタイプ・シーと名乗るフィギュアから説明を受けている。 だが彼女にとって重要なのは"ヨミ"のことだけ。他のことにさしたる興味はわかなかったのだ。 しかし"拡張パーツ"とやらにはもしかしたらこの退屈な状況を変える何かがあるかも知れない。 インプットされた手順を踏み、自分に支給された拡張パーツを確認する。 そこで彼女が確認したのは―― * * * 「……どうやら他のフィギュアの姿はないみたいだね」 そう言いながら廊下の角から姿を表したのは巨大な頭を持つ青いシルエットだった。 彼の名はドラえもん。その元となったキャラクターは国内トップクラスの知名度を誇ると言っても過言ではないだろう。 「……うん、背後にもそれらしい影はないわ」 「うーん、ものどもご苦労さまですぅ」 そんな彼に続くようにそれぞれ黄色と紫紺を基調としたカラーリングの少女型フィギュアたち――巴マミとマリーセレスが姿を現す。周囲を警戒しながらも学校に辿り着いた一行は、幸か不幸か他のフィギュアと遭遇すること無く校舎内へと侵入を果たしていた。 「んもぅ、マリーちゃんもちゃんと仕事してよ! ……っていうか何なのその格好は?」 「ん? 気になるですかぁ? じゃじゃーん! マリーちゃんフル武装形態ですぅ! どうですぅ? かわいいでしょう?」 誇らしげに胸を張るマリーセレス。 先ほどまでの素体に加え、人間で言う腰あたりにスカート状に可動装甲が装着されている。 可動装甲はサブアームも兼ねているのか、彼女の意思に従ってウネウネと奇妙にうごめいている。 その様子は可愛いというよりもはっきり言って不気味なのだが、マリーセレスにとっては心底可愛いらしく、愛おしげにその触手装甲を撫でていた。 「……まぁ人の趣味はそれぞれだからね」 「むっ、ドラちゃんってば芸術を解する心がないんですねぇ。 まぁこれで戦闘力もぐーんとアップですぅ。ビビリのマミさんだけには任せられないですぅ!」 「ビ、ビビリじゃないもの! 私だってやる時はやるんだから!」 頬をふくらませるマミ。 そういうマミも制服Verから魔法少女Verへとフォームチェンジし、愛用のマスケット銃を構えている。 「あーもう、二人共落ち着いてよ! ……ところでマミさん、目的の教室は一階でいいんだっけ?」 「あ、はい……奥の方の教室……のはずよ」 教室の正確な位置を覚えていないため、どうしても言葉尻が弱くなる。 流石に階段を登り降りした記憶はないので一階であったことだけは確かなのだが…… しかしどの教室だったかを思い起こそうとすると、赤と銀の体躯が力なく倒れこむ光景を思い返してしまうのだ。 自分のせいで誰かが命を落としてしまったかもしれない、その光景を。 「……ッ!」 「大丈夫、マミさん? 無理して思い出さなくてもいいからね?」 「え、ええ……大丈夫よ。ありがとう、ドラえもん」 「ぶーぶー、ドラちゃんてばマミさんにばかり優しくして、これは立派なフィギュア差別ですぅ! その優しさをちょっとは可愛い可愛いマリーちゃんに分けてほしいですぅ」 「はいはい、まったくマリーちゃんは調子がいいんだから……。 それにしても目的地が二階でなくて助かったよ」 彼らが見上げる先にあるのは二階へと続く階段の姿。 全高15cm程度の彼らにとって、それは幾重にも重なった壁であり、天空へ続く塔のようでもある。 登攀技能やアクションを得意とするものならばさほど苦にはならないのかもしれないが、 そうでないものは二階に行くだけでかなりの時間を浪費してしまうだろう。 「特にドラちゃんは手足の生えたドラム缶みたいですからねぇ。 もしそうなったらその短い手足を伸ばす光景が拝めたのに……もったいないことですぅ」 「余計なお世話だよ! それに僕にはタケコプターがあるからいいの!」 「ふ、二人共落ち着いて……」 今度はマミがドラえもんをなだめる。 そんなやりとりを続けながら目的の教室に向かって足を進める一行。 一つ、また一つと教室を見て回り、廊下の突き当りまで進むが、結局そこには代わり映えのしない教室が続いているだけであった。 「……ごめんなさい、こっち側じゃなかったみたい」 「うーん、だったら階段の反対側かなぁ? たしか同じ作りになってるみたいだしそっちに行ってみようよ」 「えー、またここから戻るですかぁ?」 「ご、ごめんなさい……私がもっとしっかりしてれば……」 「マミさんは気にしなくていいからね。 ……マリーちゃんはもうちょっと気にして欲しいけど」 「あー、ちょっと耳のセンサーの調子が悪いみたいで聞こえないですぅ」 そんなやりとりを繰り返しながら今きた道を引き返す3体のフィギュア。 それはまるでここが戦場であることを忘れるかのような、のどかな時間だった。 特に実験開始直後にショッキングな光景を目撃したマミにとっては、それは心休まる時間だった。 だがそれは唐突に破られた。 階段付近まで戻ってきた瞬間、並んで歩いていた2つの背中をマリーセレスが突然突き飛ばしたのだ。 「うわあっ!」 「きゃあっ!」 バランスを崩し倒れこむ2人。 これは悪ふざけにしても度が過ぎている。 ここは一つ強く叱らなければ! そう決意し振り返ったドラえもんは言葉を失った。 彼女の触手を模した装甲のうちの一つが黒く焼け焦げて、煙を上げていたのだ。 それが意味するところは一つ……マリーセレスは何者からか2人をかばったのだということだった。 「不意打ちとはやってくれるですねぇ……!」 その目に先程までのおふざけの色は薄い。 戦いへの熱を宿した瞳は、"武装神姫"の名に恥じぬ、戦う者の眼だ。 その焼けつくような視線を追ったマミたちが見たものは―― 「ドラ……ゴン……?」 彼女たちの見上げる視線の先、階段の踊場にいたのは漆黒の肌を持つ東洋風の龍であった。 メタリックなボディに窓の外からの光を反射させながら、真紅の瞳でマミたちを睥睨している。 ――その名は暗黒龍ドラグブラッカー。 仮面ライダーリュウガとセットで販売された、硬質の肌を持つドラゴン型のフィギュアだ。 そしてその背には王冠をかぶった少女型フィギュアがまたがっている。 ……原作においてチャリオットが最も得意とするのは、メアリという蜘蛛型多脚メカによる蹂躙走法だ。 重量を活かした大地を削り食らうような突撃。その名が示す通りの"戦車(チャリオット)"。 それこそが彼女の真骨頂だ。 だがそれはあくまで原作であるアニメでの話。 1/12スケールでそれを再現しようにもそのサイズのメアリは発売されていない。 それはあまりにも大きく、コストと需要のバランスが取れてないからだ。 しかしチャリオット自身には"操縦技術"という形でそれが生かされた。 それ故に彼女は、本来の主・仮面ライダーリュウガが行わなかったドラグブラッカーへの騎乗が可能となったのだ。 地を駆ける蜘蛛から天を駆ける龍へ。 龍戦車(ドラグーン・チャリオット)とでも表現すべき存在がそこにあった。 ―――オオオオオオオオォンッ! 黒竜は空気を切り裂くような叫び声を上げ、威嚇する。 一方その乗り手であるチャリオットは無言で彼女たちを見下ろしている。 「き、君はなんでこんなことをするんだ!」 ドラえもんが大声で問いかける。 だがチャリオットは表情一つ動かさず、冷たい視線を彼らに向けるだけだ。 「――ドラちゃん、そんなこと聞いても無駄無駄ですぅ」 マリーセレスの声は明るく、その調子は先程までと何も変わらない。 だがその声の中には確かに先ほどまでとは明らかに異なる"何か"があった。 底冷えする冷たたさを持った硬質の"何か"が。 「そいつは油断してるドラちゃんたちに向かって攻撃を仕掛けてきたんですよ? つまり最初っから殺しあう気満々なんですよぉ? 覚悟決めちゃった系のヒトか、あんな奴の話を信じちゃった底なしのおバカさんかはわかりませんが、説得するだけ無駄ってものですよ 「で、でも……」 それでもマミは割り切れない。 自分たちは機械だ。だが確かにこうして悩む"心"があるのだ。 それはきっと目の前の存在も同じ。 だから説得もきっと意味があるのではないだろうか。 「ふー、やれやれ……とんだ甘ちゃんばっかりですぅ。 でもマリーちゃんはとっても優しいですからね、最大限意見を尊重してあげるですぅ。 ――それで、アンタはどうですか、女王さま気取りの金髪さん?」 マリーセレスの顔に浮かぶのは花のような笑顔。 だが目だけは決して笑っていない。 その青色の視線に蔑みと敵意を込めて、龍を駆る王女に問いかける。 その返答はすぐに来た。言葉以外の――龍の口から放たれた炎という形で。 自身に向かってきた炎弾を事も無げに触手アーマーで弾き返しながら、それみたことか、と二人に向かって笑いかける。 その様子を見たチャリオットは、竜に命じて炎弾を連射させる。 「うわああああああ!」 「きゃあああっ!」 爆発する漆黒の炎弾にドラえもんとマミは右往左往する。 「二人共戦わないなら下がって、教室の隅でガタガタ震えてるがいいですぅ!」 唯一、動じていないマリーセレスが突撃しながらハンドガンを乱射する。 しかし空中を滑るように移動するドラグブラッカーには中々当たらない。 「てめぇー! 降りてきて勝負するですぅ!」 強力な遠距離武装を持たないマリーセレスが怒りの声を上げる。 一方でチャリオットもドラグブラッカーの炎弾では致命傷を与えられないことを理解していた。 敵のスカートアーマーが自在に動き、炎弾を弾いて直撃を避けているのだ。 一瞬、二機のフィギュアの視線が交錯する。 敵同士、一切の理解を求めない破壊しあうだけの関係であるが……いや、だからこそ破壊することにためらいのない二人の思考は同調した。 至近距離による一撃必殺、それが最善手である、と。 「ハッ、いい度胸ですぅ! 軽くブチ転がしてやるですよォッ!」 バイザーを下げ、マリーセレスはパンファーファウスト型武器『ハフ・グーファ』、銃型武器『イング・ベイカー』をドッキングさせ、ハンドアックス型の必殺武器『ヴァル・アクス』を完成させる。 一方でチャリオットは龍の背で抜刀し、マリーセレスに向かい突撃を敢行する。 龍の背中に乗った女王と大地を駆ける小柄な重戦士の激突。 まるでファンタジー小説の中の戦いだ。 だがこれは紛れもない現実の出来事だ。 普通に考えれば重量で劣るマリーセレスがぶつかり合って勝てる見込みなどありえない。 だがそれでも勝負を受けたのは、マリーセレスにも十分な勝算があってのことだ。 ドラグブラッカーは確かに速い。 だがブースター付きのような急加速ではなく、空中を泳ぐという表現がしっくり来るものだ。 つまり急加速や急な方向転換はできないということに他ならない。 今のような急降下している状態ならなおさらだ。 つまりタイミングを合わせ、カウンターを当てれば一撃で相手のCSCやコアを砕くことも可能だろう。 敵を破壊することに関して、マリーセレスに容赦はない。 自ら喧嘩を売るつもりはないが、売られた喧嘩は即決で買い叩く。 いつだってやりたいようにするために、ジャマをするのなら一片の容赦もなく破壊する。 ――撃っていいのは打たれる覚悟のあるやつだけですぅ それがマリーセレスという名の神姫の流儀だった。 黒竜が吠える。 その口から吐き出される炎弾は数を増し、マリーセレスの視界を奪う。 (牽制のつもりですかぁ? その程度の攻撃でマリーちゃんの装甲を抜けると思わないことですよ!) 触手型アーマーを肩部に接続。 それだけでアーマーは全身を覆うローブ型アーマーへと姿を変える。 触手型アーマーパーツはそれなりに厚い装甲を持ち合わせている。 炎弾が直撃しても致命には程遠い。 そしてその時はやってきた。 炎の隙間から黒竜が身を躍らせて出てくるその瞬間、地を蹴り、マリーセレスは跳躍した。 自身を噛み砕くつもりだっただろう龍の牙が装甲をわずかにかすめる――だが、かわしきった。 (取ったッ!) マリーセレスは勝利を確信する。 相対速度を込めた全力の一撃は、たとえ相手が剣で防御しようとも、それごと砕くだけの威力はあった。 「死ねぇぇぇぇぇっ!」 マリーセレスの全力を込めた一撃が放たれる。 ――だが、その攻撃は虚しく空を切った。 龍の背中、敵の姿があるはずのそこには何もなかったのだ。 一瞬の混乱。だがすぐにマリーセレスはそのからくりを理解する。 何故ならば、敵が――脚部ローラーを高速回転させたチャリオットが目の前に迫ってきているのだ。 チャリオットがとった行動は至極単純なものだった。 火炎弾を目眩ましにして、ドラグブラッカーから飛び降りる。 脚部ローラーを回転させ、まるで飛行機のソフトランディングのように。 言葉にすればそれだけだが、それは一歩間違えば全身を砕いてしまうような暴挙だ。 だがその行動に対しチャリオットの中に躊躇は一切なかった。 チャリオットにとってはヨミ以外は全てが些細ごと。 気に留めるほどのことではない。 ――たとえそれが自身の破壊であったとしても。 そしてその目論見は成功した。 隙だらけのマリーセレスに向かって、巨大なシールドを構えたマリーセレスが突撃する。 十分な質量と加速を兼ね備えた、それはまさに砲弾だった。 そして、砲弾は神姫(もくひょう)に命中した。 炸裂。 耳をつんざく衝突音と鈍い破砕音はそう表現するしかなかった。 皮肉にも彼女の当初の目論見通り、相対速度の一撃を真っ向から受けた神姫の体は宙を舞った。 そしてそのまま小柄な体は何回も地面に叩き付けられ、数メートル離れたところでやっと停止した。 「ま、マリーさん!」 マミの悲痛な叫び声にもマリーセレスは横たわったまま反応しない。 ここからだとわかりにくいがコアやCSCに致命的なダメージを受けてしまっているかもしれない。 旗から見てもそれほどの衝撃だったのだ。 思わず物陰から飛び出し、マリーに駆け寄ろうとする。 だが、敵はそれすら許そうとしなかった。 ――キュイイイイイッ! 何かが回転する音。 その音源はマミに向かって一直線に接近してくる。 そう、チャリオットは次の獲物を目の前の少女型フィギュアに定めたのだ。 「止まりなさいっ!」 乱射されるマスケット銃。 だが敵は縦横無尽に大地を駆け、または分厚い盾で攻撃を防ぎながらマミに迫る。 その行動には一片の迷いも躊躇もない。 高速回転するホイールが、彼我の距離をあっという間に縮めていく。 (……やられる、の?) 目の前に迫る少女型フィギュア。 その手に握られた漆黒の片手剣が振りかざされる。 だが、そのチャリオットを不可視の一撃が横殴りに吹き飛ばした。 二足歩行と接地面の少ない車輪走法。 柔軟な高速移動を可能にするそのスタイルは、一方で極めてバランスを崩しやすい。 彼女のもととなったフィギュアもスタンド無しでは自立が不可能なほどである。 その状態で横殴りに衝撃を受ければどうなるか。 結果は至極簡単、――転倒である。 チャリオットはマミの横を通り過ぎながら転倒し、そのまま壁へと激突した。 呆然とその光景を見ていたマミは、不可視の一撃を放った人物に視線を向ける。 マリーセレスが倒れた今、それを出来るのはただ一人だ。 ドラえもんの右手にはめられた空気砲からは、発射の余波である風が渦巻いている。 「あ、あわわ……のび太くんみたいなことをしてしまったぞ……」 とんでもないことをやったという自覚はある。 空気砲には敵を一撃で破壊する威力はない。 むしろだからこそ思い切り叩きつけたのだが、思いの外クリーンヒットしてしまったらしい。 こうなったあとのチャリオットの思考は予想できる。だとしたら自分のしなければいけないことは…… 「……マミさんはマリーちゃんをお願い……!」 「ど、ドラえもんはどうするの?」 「ぼ、僕は……」 ふらり、と立ち上がったチャリオットの瞳がこちらを向いている。 不純物のない綺麗な瞳が映しだすのは、混じりけのないチャリオットの内心。 つまり迷いのない、純度の高い殺意がまっすぐにドラえもんを射抜いていた。 「頑張って、アイツを引きつけてみる! ……うわああああああああああ!!」 その短い足からは信じられないようなスピードで逃げていく。 チャリオットはマミのことなどすでに眼中にないように、黒竜とともにドラえもんを追いかけていった。 そしてその場にはマミだけが残される。 「そっ、そうだ、マリーさんを助けないと……!」 ドラえもんも心配だが、マリーセレスのことを託されたのだ。 全力で駆け寄る。 あれだけ凶悪な一撃を受けたのだ、最悪バラバラになっているかもしれない。 だがドラえもん入ったのだ。『マリーちゃんをお願い』と。 つまり彼女が無事だと少なくともドラえもんは信じていたのだ。 だから私も信じよう……恐怖に震える体を叱咤してマリーに近づく。 「マリーさん!!」 そこでマミが目撃したのは……全身に傷を追っているものの五体満足なマリーセレスの姿だった。 4つあるスカートアーマーのうち2つは粉々に破壊されているが、本体に目立った外傷はない。 それはあの衝突からしてみれば奇跡的と言って良いダメージの少なさだった。 マミは知る由もないが、激突の瞬間にマリーセレスはアーマーを叩き付けていたのだ。 破壊の衝撃と自分からはじき出されることで本体の破壊を最小限に抑えたのだ。 武装神姫の中でも好戦派であるマリーセレス型の戦闘センスが彼女の命を首の皮一枚でつないでいた。 マミはマリーセレスの体を揺さぶる。 「マリーさん! しっかりしてマリーさん!」 「あ……あ?」 目は虚ろ、口からは不明瞭な言葉が漏れだしている。 おそらくは内部メカの一時的な接触不良。 人間で言う脳震盪にあたる状態のようだ。 だが次第に目の焦点があってきた。 ぱちくりとまたたきをして、ゆっくりと周囲の状況を確かめている。 「よかった! マリーさん、大丈夫ですか!?」 だがそれに対する返事はなかった。 それどころか飛び起きて、周囲をものすごい勢いで見回すとマミに詰め寄った。 「マミ! あの王冠女は……どこにいったですぅ?」 「え……ドラえもんを追いかけて廊下の向こうに……」 「チッ、逃すかですぅ!」 破壊された触手パーツを切り離し、しっかりした足取りで廊下を走りだした。 「ちょ、ちょっと! 急に動いたら危ないわ! 助けに行くにしても、もうちょっとだけ安静に……」 「これが静かにしてられるかですぅ!」 鬼気迫る表情でふた振りの剣、サーペンタインを装備する。 彼女の脳裏にリフレインするのは気絶する直前に見たチャリオットの表情だ。 メモリに焼きついたその表情は、確かに笑っていた。 それも勝ち誇ったような、こちらを徹底的に見下したような嘲笑。 それはマリーセレスのプライドを荒い目の鑢で逆なでしていた。 「小娘がなめた真似しやがって……! あのすまし顔に一撃ブチこんでやるですぅ!」 鬼気迫る表情で追撃を開始するマリーセレス。 マミはその背中を追いかけることしかできなかった。 【早朝/エリアN(校舎1階廊下)】 【マリーセレス@武装神姫】 【電力残量:70%】 【装備:サーペンタイン、フル武装】 【所持品:クレイドル、基本パーツ、拡張パーツ×0~1(確認済み)、ヂェリカンもも味×4、マジカルマスケット銃×5】 【状態:触手アーマーのうち2本が破壊、全身に細かい傷】 【思考・行動】 基本方針:こころのおもむくままに。 1:野郎(チャリオット)ぶっ殺ですぅ 【巴マミ(魔法少女ver.)@figma】 【電力残量:70%】 【装備:マジカルマスケット銃】 【所持品:クレイドル、基本パーツ(ソウルジェム)、拡張パーツ×0~1(未確認)】 【状態:損傷なし。脱力】 【思考・行動】 基本方針:もう好きにして。 1:マリーセレスを追いかける。 2:ドラえもんが心配 ※付属品にないため現状ティロ・フィナーレが使えません。 * * * 「トホホ……まずい所に逃げ込んじゃったなぁ」 一方でドラえもんは途方に暮れていた。 手近な教室に逃げ込んだはいいが、出入口をチャリオットたちに抑えられてしまったのだ。 今も教壇の影に身を潜めている状態だ。 しかしその状態でドラえもんは奇妙なものを発見した。 「あれは……?」 黒板あたりに薄暗い中ぼうっと光るマークがある。 曲線で描かれた、筆記体を更に簡易にしたような奇妙な文字だ。 ドラえもんは知る由もなかったが、それはウルトラサインと呼ばれるものだった。 短い模様に多種多様な意味を埋め込む特殊な文字であり、原理としてはQRコードに近い。 だが"宛先"ではないドラえもんにとってはそれは奇妙なマークにすぎない。 だが教室にはあまりにも不似合いな、不可思議なオブジェクトはドラえもんにある種の直感を呼び覚ました。 もしかしてアレはタロウがマミに残したメッセージではないだろうか。 偶然に逃げ込んだここは、当初の目的の場所ではないのか。 「とにかくここにマミさんを連れてこないと……」 しかし周囲から絶え間なく聞こえるドラゴンの咆哮とホイールの回転音。 合流するどころか今にも見つかって破壊されてしまいそうだ。 「ああ、どこでもドアがあればなぁ」 あるにはあるが四次元ポケットから出現途中を再現したただのオブジェだ。 あるのに使えない。そのことに歯噛みしながら、ドラえもんは野性の狸のごとく穴蔵に身を隠し続ける。 【早朝/エリアN(校舎1階教室)】 【チャリオット(TVver.)@figma】 【電力残量:70%】 【装備:剣、メアリーの車輪】 【所持品:クレイドル、基本パーツ(マカロンx複数)、暗黒竜ドラグブラッカー@仮面ライダーリュウガ(電力残量:40%)、拡張パーツx0-1】 【状態:損傷なし】 【思考・行動】 基本方針:自分以外の全滅。 1:まずドラえもんを殺す。 ※ドラグブラッカーは独立型のサポートメカです。 飛行・炎弾発射が可能ですが、割りと電池消費量は多めです。 【ドラえもん@ROBOT魂】 【電力残量:80%】 【装備:空気砲(ひみつ道具セット)】 【所持品:クレイドル、ひみつ道具セット、かじりかけのどら焼き、ねずみ、ヂェリカンどら焼き味×4、拡張パーツ×0~1(確認済み)】 【状態:損傷なし】 【思考・行動】 基本方針:マリーちゃんの暴走を止める。 1:ここから逃げて2人に合流する。 ※ひみつ道具セットの内訳は 空気砲、タケコプター、スモールライト、ポケットから出かかっているどこでもドア。 まともに性能再現されているのはタケコプターと空気砲くらいです。 ※ 教室にはウルトラサインが残されていました。 ※ ウルトラサインはQRコードのようなもので、マミが見れば何らかの情報を引き出せるかもしれません。 前:A Legacy of GODZILLA 投下順に読む 次:聞こえない声 前:A Legacy of GODZILLA 時系列順に読む 次:聞こえない声 前:あの日あの時の青ダルマ マリーセレス 次: 前:あの日あの時の青ダルマ ドラえもん 次: 前:あの日あの時の青ダルマ 巴マミ 次: 前:歩兵と兵器を繋ぐ歯車 チャリオット 次: ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/71.html
電車のドアが開くと同時に猛ダッシュで階段を駆け上がり、PASMOを叩き付けて改札を飛び出した。 なっきぃから涙声の電話をもらってから約30分で、私はレッスンスタジオの最寄り駅に到着した。 …なっきぃ、何があったの。 今日はなっきぃと栞菜がちょっと言い争いになった。 私は揉め事や喧嘩が苦手だから、いつもみたいにすぐに割って入った。 なっきぃが引き下がってくれてその場は収まったけど、もしかしたら私の強引な仲介が泣くほど辛かったのかもしれない。 あるいは栞菜と鉢合わせになって第2ラウンドが…そっちか!栞菜か! 「開けるよ、なっきぃ!栞菜!」唯一電気が点けっ放しだったロッカールームに直行して、ドアを開ける。 「…………あれ?」 なっきぃはいたけど、栞菜はいなかった。 栞菜はいなかったけど、ちっさーと舞がいた。 「みぃだん…」目を真っ赤にしたなっきぃがしがみついてきた。 一体これはどういう状況なんだろう。 ドアに近いベンチでなっきぃが顔を覆っていて、一番奥のロッカーの前でちっさーがぼんやりと空を見つめていて、そのちっさーの肩に指を食い込ませながら舞が何かを呟いている。 「どどどうしたの、なっきぃ。栞菜は?」 「…?栞菜?いないけど」 「そっか。」 だとしたら、なっきぃは一体何で泣いてるんだろう。 いや、なっきーだけじゃなくて、あの二人も。 「何があったか聞いてもいい?」 「いいけど、うまく答えられないと思う。」 「そっか。」 とりあえずなっきぃは落ち着いたみたいなので、私はちっさーと舞のほうに向かった。 「大丈夫?二人とも。」 「舞、美さん」 ちっさーは相変わらず、夢でも見てるような顔でこっちを見た。 「やだ!舞美ちゃんに話しかけないでよ!」 突然、舞が起き上がってちっさーを突き飛ばした。 「ちょっと!舞!」 お嬢様化したちっさーのことが気に入らないのは知っていたけど、こんなことを許すわけにはいかない。 「もうやだよ、舞美ちゃん・・・舞どうしたらいいのかわかんないよ」 「舞・・・・」 舞も泣きながら私の腰にすがり付いてきた。 右になっきぃ、左に舞。 ちっさーは相変わらず表情のない顔で私たちを眺めていた。 「あの、さ、とりあえず今日は帰ろう?タクシー呼んで四人で帰ろうよ。もうけっこう遅い時間だし。また今週中にレッスンあるから、そのとき話そうよ。うん。今日は落ち着いたほうがいい。」 「・・・そだね。」 力なく立ち上がったなっきぃが、荷物をまとめ始めた。 「・・・・舞美さん。私、父が迎えに来てくれるので。早貴さんと舞さんとご一緒にお帰りになって。」 「でもちっさー」 「舞さんって呼ばないでよぉ・・・・!バカ!」 ずっと黙っていたちっさーがやっと喋ってくれたけれど、何か言うたびに舞が過剰反応してしまって、あまり会話にならない。 こんなに情緒不安定な舞を見たのは初めてだった。 「大丈夫です。私のことはお気になさらないで。」 「ほら気にするなって言ってる。もう帰ろう。」 ど、どうしよう。こんなことになるとは思ってなかった。 いくら鈍い私でも、今ちっさーと舞を一緒にしておくわけにいかないのはわかった。 舞もちっさーも、私の決断を待つように黙り込んだ。 「千聖。お父さんはいつ来るの?」 沈黙を破って、なっきぃがちっさーに話しかけた。 「きりがないから、私たちは三人でタクシー乗って帰るよ。でも、千聖のお父さんが来るまでは待つ。それでいいよね、みぃたん。」 「あ・・・うん、うん!それがいいよ!なっきぃの言うとおり。ちっさー、パパは今どのへんかな?」 すると急に、ちっさーの顔がこわばった。 「え、どうしたの?パパ遅くなりそうなの?」 ちっさーは何も答えない。 「・・・千聖。本当はお父さん、来ないんじゃないの。」 「え」 なっきぃが聞くとほぼ同時に、ちっさーは私たちの横をすり抜けるようにして、ロッカー室を飛び出していった。 「ちっさー!」 「嫌!二人とも行かないで!舞と一緒に帰るんでしょう!?」 必死にしがみつく舞の手を離すことはどうしてもできなかった。 リーダーなら・・・・こんな時どうするべき?私じゃなくて、佐紀だったらどうしてる?先輩達なら・・・ 「私、追いかけてくる。」 私がもたついてる間に、なっきぃが走り出した。 再び泣き出した舞の頭を撫でながら、私は今までの人生最大ともいえる挫折感をじわじわと味わっていた。 私、ちっさーを見捨てちゃったことになるの? 本当にこれで良かったの? キュートは問題のないグループだと言われていた。 でもそれは、皆がお互いを温かく守りあっていたから。 私の力なんかじゃ絶対にない。 むしろ、こういうときに決断もできないような私がリーダーだなんて。 「ご、ごめん。見失っちゃった。どうしよう・・・・。」 しばらくしてなっきぃが戻ってきた。 必死で追いかけたんだろう、呼吸がすごく乱れている。 「ありがとうなっきぃ。じゃあ、まずちっさーのパパとママに連絡してみよう。」 携帯を開いてアドレスを確認していると、いきなり画面が着信通知画面に変わった。 「ちっさーだ!」 急いで電話に出た。 「もしもし、ちっさー戻っておいで!」 “舞美さん・・・・・私、ごめんなさい。大丈夫ですから。一人でも平気です。” 「何言ってんの。ダメだよ。一緒に帰らないならちっさーの家に連絡するよ。」 “両親には、今連絡を取りました。私のことなんかより、舞さ・・・・・ま、舞ちゃん・・・をお願いします。” それだけ言うと、ちっさーは電話を切ってしまった。 「ねぇ、舞。ちっさーが舞のこと、舞ちゃんって言ったよ。良かったね。」 「・・・・その人に言われても嬉しくない。」そっか。難しいね。 「みぃたん。そしたら、本当に千聖が連絡とってるのか確認とって、OKだったら私たちもここ出よう。もう本当に時間やばいから。」 あぁ、なっきぃは冷静だ。順序を考えて行動している。 それに比べて私は何て。 「連絡取れた。千聖から迎えにきてほしいって電話あったって。」 「そか。じゃあ、私達も出よう。」 三人とも無言で、ビルの出口を目指す。 突然呼び出されて、突然の事態に対応できず、しまいには助けを呼んだひとに助けられてしまった。 私、バカじゃなかろうか。 タクシーは既に入口に止まっていた。これもなっきぃが手配してくれたのかもしれない。 凹んだ気持ちのまま乗り込むと、疲れ切っていた舞が寄りかかってきて、そのまま寝込んでしまった。 本当はこんなになる前に、私が気づいてあげるべきだったのに。つくづく鈍感な自分が嫌になった。 「みぃたん。」 「ん?」 「来てくれて、ありがとう。みぃたんがキュートのリーダーで良かった。」 キュフフと照れたように笑うと、なっきぃも寝る姿勢に入った。 単純な私はこんな一言だけで十分浮上できるみたいだ。 結局、何があったのかはわからなかった。でも話すべき時が来たら、いつかは教えてくれるだろう。 こんなリーダーでも、頼ってくれる人がいるんだ。もっともっと頑張っていかないと。 ・・・ちゃんと、舞とも話をしないとね。 両肩に二人分のぬくもりを感じながら、私はちっさーへのメールを打ち始めた。 *************** どこをどう走ったのかもうわからない。 レッスン着に室内履きのまま、私はにぎやかな街の中を一人で彷徨った。 いつの間にか大粒の雨が降り出して、体中を打ち付けられた。 もう涙は出なかった。 頭がぼんやりして、何か考えようとしても何も思いつかない。 私のせいで、私が存在することで、大切な人が傷ついてしまう。 もうあの場所にはいられない。濡れて帰るにはちょうどいい気分だった。 狭い路地を何度か曲がった辺りで、私はバッグの中で携帯が振動していることに気づいた。 「あぁ・・・・」 早貴さんや舞美さんから、たくさんの着信。メール。 こんな私をまだ心配してくれるなんて、本当に優しい。 画面をスクロールしていくと、早貴さんの前に、もう一通メールが届いていた。 「栞菜。」 たわいもない、雑談のメールだった。 それが何故か今は心にしみてくる。 栞菜に会いたい。 もう何も考えられないぐらいに疲れ果ててていたけれど、私は力を振り絞って返信を打った。 《栞菜にお話ししたいことがあるの》 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -