約 4,022,965 件
https://w.atwiki.jp/dansen_eroparo/pages/66.html
静かな神威島の昼下がり。 その中を疾走る、紅い影。 彼女の名前は、かつて世界を救った伝説のLBXプレイヤー、花咲ラン。 ある人物がここにいると聞いて、この島を訪れたのだった。 「ユぅ~ウぅ~ヤぁぁぁ~~~っ!!」 声をかけられた青年、灰原ユウヤが返事をするより前に、ランがユウヤに飛びつき、地面に押し倒す。 「痛っ…! ど、どうしたんだい、ランくん…」 「どうした、ですってぇ~…」 ランが体を震わせ、ユウヤを睨みつける。 「どうもしなかったから怒ってるんでしょうが!」 ランの拳が振り下ろされ、ユウヤの顔の横の地面を抉った。 相変わらずのランの力強さに、ユウヤは震えあがった。 感情を吐き出して幾分か怒りが治まったランは、ユウヤと共に神威島をあてもなく歩いていた。 時折、まだ痛みを気にするユウヤが、頭をさする。 「…なんでウチに来なかったの」 ムスッとした声で、ランが口を開く。 「うち、って君の道場の…?」 「他に何があるのよっ!」 またランが大声で怒鳴る。 だが、今度はため息を一つついて、落ち着きを取り戻した。 「…ずっと待ってたんだからね」 何気なく交わした、『道場に行く』という約束。 それはランにとって、とても大事だったようだ。 勿論、ユウヤもランとの約束を忘れたわけではない。 だが、ユウヤはまだ広い世界を見ていたかった。 自分の知らない世界を、知りたかった。 それがランをここまで傷付けていたという事には、気付けなかった。 「ごめん…」 「いーや、許さない。ちょっと付き合ってもらうからね」 そう言うと、ランはユウヤの手を引いて歩き出した。 道を外れた茂みの中で、ランがユウヤを押し倒す。 ユウヤのズボン、そして下着の中から、ユウヤの性器を取り出した。 「ち、ちょっとランくん、こんなとこで何を…」 ユウヤの言葉を遮るように、ランが唇を重ねる。 舌を絡めながら、右手に握ったユウヤ自身を扱く。 先ほどまでの激しい怒りとは真逆の、優しい愛撫が繰り返される。 「っ…!」 重なった唇の端から、ユウヤの吐息が漏れる。 その反応に満足したのか、ランが唇を離した。 「ユウヤ…」 ランが手に握ったユウヤ自身を垂直に立て、口に含む。 先端を、何度も舌で撫でる。 その度に、ユウヤの下腹が震えた。 「っ、く…」 歯を食いしばり、必死に耐えるユウヤ。 だが、それでもランの責めには敵わなかった。 あと少しでイく…という所で、ランの口が離れた。 「ラン…くん…」 ユウヤが息を整えながら、体を起こそうとする。 だが、ランがその肩を抑え込んだ。 先ほどの責めの間に、ランのショートパンツ、そして下着が取り去られている。 ランの秘所が、上からユウヤの性器を飲み込んだ。 「あぁっ…!」 吐息交じりの、ランの喘ぎが響く。 ランの肩にかけた胴着が、二人の結合部を隠す。 それが見えているのは、本人たちだけだった。 「ユウヤ…ユウヤっ…!」 ランが激しく腰を上下に動かす。 今までの孤独を埋めようとするかのようだった。 「ラン、くん…そろそろ、離れて…!」 遠のいた絶頂が、あっという間に呼び戻される。 だが、聞こえていないのか、それともわざとか、ランはより一層動きを速めた。 「うぅっ…も、もう…!」 そのまま耐え切れず、ユウヤはランの中で精を吐き出した。 少し遅れてから、ランも全身を震わせる。 そして、力が抜けたかのように、ゆっくりとユウヤの上に覆い被さった。 二人は服を整え、体に纏わりついた草葉を落として、茂みを後にした。 気まずい沈黙が二人を包む中、やがてユウヤが口を開いた。 「…やっぱり、僕はまだこの世界を見ていたいよ」 ランは何も言わず、ユウヤの言葉に耳を傾けてる。 「でも、いつかきっと、ランくんの道場にも行く。だからそれまで待って…」 「ヤだ。ユウヤの言う事なんか信じらんない」 ランがきっぱりとユウヤの言葉を否定する。 まだ怒っているのか、ランは視線を合わせようとしなかった。 「じゃあ、どうすれば…」 困ったように頭をかくユウヤに、ランが抱きつく。 「アタシもユウヤと一緒にいるっ」 「一緒、って…」 「どこまでだってついていくから。今度こそ逃げられないように…!」 力強く、ランの腕がユウヤを抱きしめる。 観念したかのように、ユウヤも小さく一息ついて、ランの体を抱き返した。 「分かったよ…これから宜しく、ランくん」 その言葉を聞いたランが、自分の胸の中で笑顔になっていたことに、ユウヤは気付かなかった。
https://w.atwiki.jp/dansen_eroparo/pages/20.html
予告編 アルテミス1回戦で、優勝候補の二人組に圧勝した古城アスカ。だがその時の相手を小馬鹿にしたような戦法が、相手の反感を買ってしまう。 一人になった隙に殴って気絶させられ、トイレに連れ込まれて縛られるアスカ。そこで二人に、殴る蹴るの暴行を受ける。 相手を睨みつけながらもなす術もなく暴行を受け続けるが、その時にふたなりだという事を気付かれ――― さらにその現場に途中から、「ある人物」も乱入!? 「ふたなり少女(?)・古城アスカの受難」近日公開!
https://w.atwiki.jp/infinitynet/pages/255.html
ミネルバ改 メーカー ハンドメイド(山野淳一郎) フレームタイプ ストライダー 基本装備 ― 使用プレイヤー 花咲 ラン
https://w.atwiki.jp/infinitynet/pages/207.html
パンドラ メーカー タイニーオービット フレームタイプ ストライダーフレーム 基本装備 ホープ・エッジ 使用プレイヤー 宇崎 悠介 概要 作中での活躍 ギャラリー 出典 概要 作中での活躍 ギャラリー 出典
https://w.atwiki.jp/dansen_eroparo/pages/41.html
慰安任務の演習授業 鹿島ユノ LBX学園には機体を失った者は退学する決まりがあるが、他にも厳しい校則がある。 ――慰安任務。 男子の士気を養うための性的奉仕が校則化され、女子生徒は事前に講習を受け、実践演習をこなす事が定められている。 慣れない初経験でぎこちないことをしては、士気を高める効果が薄まる。そこで事前に講習を受け、実践演習を通して経験を積ませるといったカリキュラムが組まれているのだ。 胸の大きい鹿島ユノは特に期待を寄せられている。 「いいか? ユノ、まずはそのおっぱいを活用することから覚えてもらうぞ!」 実践演習の実施日となり、ユノは猿田教官に指導室に呼び出されていた。 「……は、はい!」 姿勢良く背筋を伸ばし、敬礼と共に声を張り上げる姿は、まさに軍事を模したそれである。ただ、隊列をなすのはユノ一人。今回の演習は一人ずつ行われるため、その他の生徒は通常通りの授業に出席していた。 「おっぱいは揉まれるためにある! まずは揉まれることに慣れるんだ!」 「はい!」 これから卑猥なことをしようというのに、卑猥なムードはどこにもない。まるでテスト中に誰もが解答用紙に立ち向かっている時のような、極めて真剣な空気があった。 「では揉ませてもらうぞ」 猿田教官は制服越しの乳房に触れ、存分に揉みしだく。 ユノにとっては初めての男の手だ。恥ずかしさのあまりにすぐに目を合わせていられなくなり、思い切りまぶたを閉じながら天井を向く。 「ブレザーを脱げ!」 「はい!」 ユノが張り上げる声には羞恥が篭り、喉から上ずり震えた声になっている。 脱いだブレザーを机に畳み、猿田はワイシャツ越しの白い乳房を揉みしだく。こうして衣服の上から揉み、一枚ずつ段階的に脱がしていくことで少しずつ羞恥に慣らしていくのだ。 「ワイシャツを脱げ!」 「はい!」 ブラジャー越しに揉みしだかれ、大きな胸はパン生地でも捏ねているかのように、ぐにゅりぐにゅりと変形する。 「ブラジャーを外せ!」 「……は、はい!」 とうとう上半身裸になり、ユノはプルンと丸い乳房を露出した。恥ずかしさに頬を染め、込み上げる羞恥を堪えようと唇を内側に噛んでいる。いかにも大事な本番前に緊張に凝り固まっているかのような、強張った表情となっていた。 生乳を捏ねられる。猿田は太い指を食い込ませ、じっくりとほぐすかのように揉んでいき、存分に弄んでいた。 「うむ。芯がしっかししていて、露出時もほとんど垂れない。弾力があって中々の揉み心地だぞ?」 「……あ、ありがとうございます」 わざわざ感想を述べられて、ユノは声を震わせる。 「それでどうだ? ユノ、慣れてきたか?」 「いえ、まだ……」 ユノは性経験の全くない年頃の少女だ。 演習初日で慣れるなど、到底無理な話であった。 「まあ無理はない。だがユノ、この大きいおっぱいには可能性がある。例えばどんなことができると思う?」 「どんなことって……。挟める、とかでしょうか?」 女子生徒への講習で、性技に関する知識は一通りインプットされている。経験こそないものの、フェラチオからあらゆる体位でのセックスまで、要するにあらゆるエロ知識をユノは事前に学んでいた。 「そう、挟めることだ。パイズリだ!」 猿田は手を止め、ユノに床に座るようにと指示を出す。猿田自身は椅子に座り、その股のあいだにユノが正座で腰を下ろす形となった。 「ユノ、これからパイズリを行ってもらう。心してかかるように」 「――はい!」 目の前でチャックが下ろされ、勃起した肉棒が露出される。まともに直視できずに顔を背け気味にするユノだったが、意を決したように体を押し寄せ、それを谷間に挟みこんだ。 ふわりと柔らかい弾力に包まれ、挟み込む圧力で肉棒はしごかれる。 ユノのやり方はぎこちないもので、挟んでいるはいいものの、猿田には中々刺激が伝わらない。初めて感じる脈打つような熱さの前に、学習したはずの知識をユノは上手く活かせていなかった。 「ど、どうですか? 猿田教官」 「そうだな。いい具合だぞ? もっと大胆にしごけばなお良しだ」 「はい」 肉棒を谷間に抱えた乳房を使い、より強く乳圧をかけてみる。上手くできているだろうかと上目遣いで猿田を伺い、顔色を見ながら身体ごと上下に動かす。 「おおっ、だんだん良くなってきたぞ?」 「本当ですか?」 「本当だとも、慣れるのが中々早い。ユノ、お前はとても優秀だ」 コツが少しずつ掴めてきた。 たっぷりと乳肌の弾力を塗り込むように、強く圧力をかけながら上へずり上げる。すぐに乳房を根元へ下ろし、またずり上げる繰り返しが猿田に快楽を与えていく。 いつしか先端から透明な分泌液が先走った。 「ユノ、とても気持ちいいぞ」 「……良かったです」 これも授業の一環だ。 成績も絡んでいるので、快い評価にはホッとする。 「このままパイフェラをしてみるんだ。やり方はわかるな?」 「はい。挟みながら先っぽを舐めたりするんですよね」 「授業はしっかり覚えているようだな。それでは実践してみるんだ」 「はい」 猿田の亀頭に唇を沿え、鈴口を舐めずりながら乳でのしごきを加えていく。乳房を上下に動かしつつ、顔を自分の谷間に埋めるような勢いで、口内に亀頭を包みこむ。ユノの舌には分泌液の青臭い味が広がっていた。 「出すぞ? ユノ、精液は全て口に含むんだ」 ドクン、と肉棒は激しく脈打ち、熱い白濁が放たれる。 「んっ、んん……!」 口に広がる精液は頬の内側を塗り固め、喉奥にまでねっとり絡まる。吐き出してしまわないように唇を強く締め上げ、 チュゥゥゥゥ…… と、吸い込むように音を立てながら、少しずつ口を離していき、そのままぴったりと唇を閉じ、口内に精液を閉じ込めた。 「上出来だ! さあ、口を開けて飲んだ証を見せてみるんだ」 ユノは大きく口を開け、舌を浸した口内の白い水溜りを見せつける。 猿田は白濁の絡んだ舌や歯をじっくり覗き込み、頬の内肉にまでへばりついているのを確認し、満足げな表情を見せた。 「よし、飲んでよし!」 ゴクンッ、 ユノは大きく喉を鳴らし、猿田の精液を飲み込んだ。 「どうでしたか? 猿田教官」 「うむ、文句無しの百点だ。ユノには十分な才能がある。今後もしっかりと性技に磨きをかけるように!」 「はい!」 ユノは背筋を伸ばした敬礼の後、教官の許可を得てから着替え直す。 (慰安任務は兵隊の士気を養うためだから、エッチはみんなジェノック同士ってことになるよね) 指導室を出た廊下を渡り、ユノはある一人の顔を思い浮かべる。 (よーし、任務が出たらしっかり気持ち良くしてあげるからね? アラタ) 慰安演習は今後も続く。 この調子でしっかりと技術を身に付けていこうと、ユノは心に決めるのだった。
https://w.atwiki.jp/infinitynet/pages/30.html
K ナイト S ストライダー B ブロウラー(パンツァーを含む) W ワイルド S ライフェイン B リズー K 竜帝ルシファー K リュウビ K リュウビ(ユウヤ専用) K リュウビホウオウ K ルシファー W レオローダー B レッドソル S レッドリボン S ローズ・ジャンヌD K ロノ S ロビンH
https://w.atwiki.jp/infinitynet/pages/10.html
LBX一覧 K ナイト S ストライダー B ブロウラー(パンツァーを含む) W ワイルド A〜Z(LBX) ア行(LBX) カ行(LBX) サ行(LBX) タ行(LBX) ナ行(LBX) ハ行(LBX) マ行(LBX) ヤ行(LBX) ラ行(LBX) ワ行(LBX)
https://w.atwiki.jp/infinitynet/pages/405.html
アキハバラ施設一覧 (アキハバラ大通り) 秋葉原駅 (アキハバラ裏通り) AKIBA BOOKS 裏模型ブルータス(模型店) ネットカフェ電脳珈琲 DREAM LBXパラダイス 3号店 LBXフリークス アキハバラ店 (アキハバラタワー) AKIBAMODEL(模型店) オタクロスの部屋 M⭐︎AKIBAホール
https://w.atwiki.jp/dansen_eroparo/pages/37.html
月影慕情 月明かりが暗い部屋の中に零れ落ちている。 その部屋は机があり、本棚があり、クローゼットがあり、いくつか可愛らしいぬいぐるみや人形やLBXがある、ごく普通の女子中学生の部屋だった。 ただ一つ、普通でないものがあるとすれば、ベッドに寝転ぶ少女の姿。 眠っているわけではない。彼女は背中を丸め、ネグリジェの裾にその手を差し入れている。 「あ……んっ……」 その少女は愛しい人を脳裏に描き、自らを慰めていた。 年齢の割に発育した乳房と未熟な秘所を指で刺激する様は、期待される子どもの在り方とはとても一致しない。 白い肌はしっとりと汗ばみ、頬は熱く上気し、少女の淫らな興奮を表していた。 女陰の入口に触れるだけでは満足できず、中にまで指を挿し入れて、くちゅくちゅとかき回す。 それでも、まだ足りない。あの人には及ばない。 「はあっ、はあっ、はぁ……郷田さん………」 荒い息の合間に彼の名前を一人呟けば、言いようもない切なさが少女の心を満たしていった。 『月影慕情』 明くる日の朝。少女は昨晩の淫靡な面影など露ほども感じさせず、涼しい顔で通学路を歩いていた。 「おっはよー、ミカ!」 後ろから突然かけられた友人の声に、少女は振り向く。つややかな黒髪をまとめたツインテールが小さく揺れた。 彼女は三影ミカ。ミソラ第二中学校に通う普通の女の子だ。 「……おはよう」 いや、やはり普通…とは言えないかもしれない。 普通の女子なら、クラスの友人に元気よく挨拶されれば元気に返すのが当然だ。 だがミカは友人のアミに感化されることなく、マイペースに抑揚のない声で応える。 ミカは口数が少なく、表情も乏しい。初対面の人間であれば不機嫌だと受け取られかねない態度である。 だがアミにとっては慣れっこなことであるから、いつも通りミカの隣を歩き、彼女に話しかける。 「聞いた? 昨日、郷田が仙道と決闘したんだって! 河川敷で鉢合わせてLBXバトルになっちゃって、そのまま場外乱闘の大混乱!」 アミの口から郷田の名が出て、わずかにミカの表情が動いた。 普通でないミカも、同年代の普通の女子と同じように恋をする。 ミカは同じ学校の先輩、郷田ハンゾウに想いを寄せていた。 ミソラ二中の番長で地獄の破壊神とすらあだ名されるほど激しく暑苦しい郷田に、他人に不干渉を決め込むクールなミカが惚れた、というのはクラスでちょっとした事件になるくらいには意外なことであった。 この幼い恋に関してクラスメートたちの間で様々な憶測が飛び交った。一過性の熱病にのぼせているだけだとか、ミカが実はドMだとか、恋の理由は諸説あり定かではない。 ただ一つはっきりしているのは、ミカが郷田に尋常でなくゾッコンであるという事実だった。 「知ってる。応援しに行ったから、郷田さんを」 郷田の戦場であれば、正規大会でも非正規大会でもスラムでも強襲全翼機の中でさえも追って行くのがミカだ。 恋というものは実に恐ろしい。 アミたちは少しばかり呆れながらも、そんなミカの気持ちを知っていた。 だが、その心の奥深くまでは誰にも理解されていなかった。 「ふうん…相変わらずなのね、ミカも」 決して変わっていないわけではない。ミカの郷田に対する想いはわずかずつだが変わり続けている。 最初は背中を見ているだけで満足だった。LBXバトルを応援しているだけで幸せだった。 それが、ともにシーカーとして行動し、いくらか言葉を交わすようになってから、より多くを望むようになってしまった。 もっと一緒にいたい。いろいろ話をしたい。自分を好きになってほしい。抱きしめてほしい。キスがしたい。そして、もっと… そんな思いを馳せ、乙女の妄想に浸っているミカを、アミの言葉が現実に引き戻す。 「でも、郷田も仙道も協力して世界を救うために戦った仲間じゃない。なんで仲良くできないのかしら?」 「…人がそんな急に変われるわけないよ」 心がどんなに変わっていっても、行動を伴わせることは難しい。 それはミカも同じことで、想いがどんなに大きくなろうと、ミカと郷田の距離がそれ以上に縮まることはなかった。 もともとコミュニケーションが苦手なミカには、郷田に想いを伝えるなどといったことは不可能に近い。自分から話しかけることすら容易ではなかったのだ。 だからこそ、有り余る想いを一人抱え込み、毎夜自らを慰めるという馬鹿げた行為に及んでしまう。 こんな汚らしい自分を知れば、郷田はきっと自分を嫌う。 ミカも、そんな自分が何より嫌だった。 「変われたら、いいのに」 「……そうね」 賢いアミは詳しいことまではわからずとも、何となく察するところがあったのだろう。 ぽつりと零れたミカの独り言を肯定し、それきり黙った。 それから学校へ着くまで、二人とも言葉を発することはなかった。 退屈な授業が終わり、放課後になるとクラスは自然と解放感に包まれた。 しかしそんな他の生徒とは違い、ミカは授業中からずっと郷田に思考を絡め捕られている。 郷田への悶々とした想いだけでミカの心は積載過剰なのだ。 つまり授業に全く集中してないわけだが、それが毎日続くのだからミカの成績は芳しいと言えるものではない。 成績が落ちればLBXを取り上げられる。そうなれば郷田の背中を追うことすら叶わない。 (こんなんじゃダメ。私、変わらないと…) そんな時、隣のクラスのカズが慌てた様子で教室に押し入った。 「おい、みんな! 一中が殴り込みに来やがったぜ!」 お騒がせ男の報告に、教室の端々で不揃いなざわめきが起きる。 聞けば仙道が昨日の決着をつけに、わざわざミソラ二中まで乗り込んで来た、ということらしい。 二人のケンカ自体はそう珍しいことではないのだが、このクラスには人一倍正義感の強いバンがいる。 特にLBXを使ったケンカなど見て見ぬふりをできるはずもなく、矢も楯もたまらず首を突っ込みに行くのだ。 「大変だ! 郷田と仙道を止めないと」 「OK。いつも通りね」 「俺たちで止められるか自信ねーけど、行くしかないか。ミカも早く準備しろよ」 「行かない」 ミカはそれだけ言うと机に突っ伏した。 だがミカが郷田を見に行かないということは極めて異常なことであるから、カズとバンが不思議に思って、質問攻めにしたとしてもやむを得ないのだ。 「何だよそれ?! いつも郷田追っかけてるくせに、こんな時だけほっとくのかよ!」 「ミカ、もしかして具合でも悪いのか?」 どうして男というものは、こうも人の気持ちを考えようとしないのか。 行けば彼にもっと憧れる。もっと切なくなる。 少しでも自分を変えたいミカは、郷田との距離を置くところから始めたかった。 「何でもないよ…! 行かないったら、行かない」 「でも…」 まだ釈然としないバンたちに、アミが口をはさむ。 「…バン、カズ、私たちだけで行きましょ。無理しないでね、ミカ」 こういう時、気持ちを汲んでくれるアミはありがたい。 一方で言うべき時にはしっかり物を言ってくれる。ミカはアミのようになりたかった。 アミがバンとカズを連れて出ていくと、ミカは教壇の下に身を隠した。 人目に付くところにいれば、誰かにまた郷田のことで声をかけられるだろう。 こんなことで他人に干渉されるのは、もう嫌なのだ。 一人、また一人と生徒の気配がなくなっていく。 やがてたった一人取り残されたミカは、どうしようもなく惨めな自分に気付いた。 「馬鹿だな、私…」 自分はこうやって一人で閉じこもって、郷田と向き合うことすら避けようとしている。 結局変わりたいなどとは口だけで、本当は今の自分と郷田の関係が壊れるのが恐ろしいのだ。嫌われて、心が傷つくのが怖いのだ。 自己嫌悪で膝を抱え、動き出す気力もなく、ミカはそのままいつまでもうずくまり続けていた。 暗い闇の中、重たい身体を動かしたミカは周囲を見回して驚く。誰もいない学校がこうも寂しいものかと。 間抜けな話だが、あのまま眠ってしまっていたらしい。 遅くなる、と簡素なメールだけをCCMで家に送る。窓の外を見ればもう月が高く昇っていた。 月は太陽の光をその身に受け、それを照り返すことで自身を輝かせる。 それゆえ月明かりはとてもか細く、移ろいやすい。 だが幸いにも今宵の月は、昨日と同じく怪しく輝いていた。 だからミカは照明を灯さずとも、階段を下り、廊下を歩くことに何の不都合も感じなかった。 生徒用玄関までたどり着いたところで、ふと足を止める。そして左手奥へ向かって再び歩き出した。 (いるわけ…ないよね) 目指すのは郷田の教室3年1組。こんな時間まで郷田がいるはずはない。 しかし今日は郷田を見られなかったし、他の誰にも邪魔されない機会などめったにないのだから、少しだけでも郷田を感じたいと思っても無理はない。 見ていたいけど、会いたくない。矛盾した気持ちのまま教室に入ったためであろう。 扉を開いたその一瞬、ミカには郷田が見えたのだ。 「郷田さん…?」 だがすぐにその姿は消えた。 郷田のように見えたソレの正体を確かめるため、ミカはソレの見えた場所に近づく。 暗い机の森を抜け、教科書類の詰め込まれた郷田の座席に到達する。 ソレは郷田の上着だった。いつも郷田の背中にかかっている、シワだらけの長ランだった。 一切の虚飾もない無骨な姿は、まさに郷田そのものを表している。 もうすっかり冷たくなっているはずなのに、触れればあの人の熱が伝わってくる気がした。 ミカの身体には大きすぎるソレをマントのように羽織ると、郷田の温もりがミカを包み込む。まるで彼の腕に抱かれているようだった。 「郷田さんのにおいだ…」 恋に浸る少女というものは、常に夢見心地である。だからミカはこれが夢でも現実でも、もうどうでもよかった。 それとほぼ時を同じくして、同じように3年1組に向かう人影があった。件の郷田ハンゾウである。 しかも上半身に何も身に着けていない半裸状態なのだが、これには理由がある。 仙道の挑戦を受けて校庭に飛び出し、その時気合を入れるため上着を脱いで座席のイスに掛けた。 そこまでは良かった。しかし、バトルをバンたちに中断させられた後そのままスラムへ直行したために、上着の存在をすっかり失念してしまったのだった。 実はこの格好のまま帰ろうとしたのだが、「リーダー、サイテー!!」とか「郷田くんに警察の世話になってほしくないんだよお」とか「人生を棒に振る気でごわすか?!」などと言われて、しぶしぶ上着の回収に向かわされたのだ。 (ちなみにその3人は、薄情にも郷田を置いてさっさと帰ってしまった) もちろん施錠はしてあったが、1階廊下最端の窓の鍵が壊れていると知っていたのでそこから校内へ忍び込み、現状の通りだ。 「あーあ、まったくいい月夜だぜ」 夜の学校に侵入するという泥棒まがいのことをしている郷田は、自嘲気味に呟いた。 誰もいない静寂に、その呟きとカラコロ鳴る下駄の音が容易に溶けていく。 そう、誰もいないはずだった。だから郷田は教室の中の様子など一切気にせず、3年1組の扉を勢いよく開いた。 ミカには信じられなかった。というより信じたくなかった。 誰も来ないはずの教室に突然郷田が入ってきて、自分の方を凝視していることを。 なぜなら、ミカの今の姿はとても他人の目にさらせるようなものではなかったからだ。 あえて述べるならば、郷田の上着を羽織り、トップとインナーをまくり上げて胸を外気にさらけ出し、スパッツを降ろしてショーツ越しに机の角を股間に当てている状態だ。 月は残酷なまでに明るく、そのミカの姿の情報すべてを郷田に届けていた。 どうしよう、早く何とかしないと。 こちらに向かってくる郷田を見て、ミカは焦る。 だが混乱しきった思考では妙案が出るはずもなく、第一身体が硬直して身なりを整えることさえできなかった。 (もうおしまいだ…) 恥ずかしさのあまり、心臓の音が聞こえるほど眼前に迫った郷田を直視することもできず、ミカは耳まで真っ赤になった顔をうつむかせた。 「おい、ミカ。いったい何があった。どうしてこんな時間にこんなとこにいる」 「ごめん…なさい」 「何で謝るんだよ! どうしたって聞いてんだ!!」 腕をつかまれ、無理矢理上を向かされる。 そんなことを言われても、乱暴な語気で問い詰めてくる郷田に、ミカは謝る以外の選択肢をとれない。 泣きたくないのに涙があふれてくる。 「ごめんなさい…! ごめんなさい…!!」 「泣くな!! いいから俺の質問に答えろ!!」 「ごめんなさい…私、私…オナニーしてた…!」 好きな人に責められたことで自棄になったミカは、正気であれば決して口にしないであろうあられもないことを叫んでしまった。 「おなにい? なんだそりゃ」 「だから! 郷田さんのこと考えて…私、いやらしいこと…」 最後の方は羞恥心で声が小さくなり、消え行ってしまいそうだった。 全部言ってしまった。こんなことをして気持ち悪いと思われたに決まっている。 しかし、それに対する郷田の返答は、ミカにとって予想外のものだった。 「……よくわからんが、元気なのか。安心した」 「何言ってるの…気持ち悪くないの…?」 「何がだ? お前こそ気分とか悪くないか?」 「え…どうして」 「顔、赤いだろ。熱でもあるんじゃないかと思ったんだが…大丈夫そうだな。ミカが何ともないなら良かったぜ」 清々しいほどにニカッと郷田が笑った。 郷田は何もミカをとがめたわけではない。純粋にミカのことが心配で、つい言い方が荒くなってしまっただけなのだ。 ほっとして、ミカは発展途上の胸をなでおろす。その拍子、郷田の股間がテントを張っているのが目に入った。 年近い少女の痴態を目撃して何の反応も示さなければ、それこそその人間は男ではない。 「えっと、その…郷田さん、それ…」 「ん? ああ。たまにこうなるんだよ、朝とか。ほっときゃ収まる」 自慰の一つも知らない男だ。当然勃起のメカニズムなど知るはずもないだろう。 憐みすら感じて、ミカはおもむろに郷田のズボンのファスナーに手を掛けた。 すべてを郷田にさらけ出してしまったミカは、もう何も怖くなかった。 「苦しそう…私が治してあげる」 「うおっ、お前、何すんだよ!」 「これで治るの。すぐ楽になるから、任せて」 「そうなのか? なら頼む」 経験のないミカが郷田を満足させられる根拠などないわけだが、希望的観測も含めて、半ば騙したように郷田を納得させた。 ミカは大胆な手つきで、下着の中の郷田自身を露出させる。 初めて目にした男性器は、想像よりもずっとグロテスクで大きかった。 (わ…大きい…) だがこの程度のことで躊躇っている場合ではない。 剛直に快感を促すため、本やネットで得た知識を総動員する。 熱い幹に両手の白く細い指を絡め、リズミカルに擦り上げる。 浮き出た血管に柔らかな舌を這わせたかと思えば、小さな口で精一杯先端を頬張る。 ミカの指遣い、舌遣いは稚拙なものであったが、少女が自身に懸命に奉仕する姿はそれだけで格別なのだろう。時折ビクリと郷田のモノが震える。 「郷田さん、気持ちいい?」 「すっげーいい…だけど汚いだろ、そんなもん。腹壊しても知らねーぞ」 臭いし、苦いし、強烈な雄のにおいにむせ返りそうになる。でも 「郷田さんの…だから平気」 ミカの健気な態度に影響されたのか、口の中の重く熱い塊は、より一層密度を増す。 このまま出してもらってもいいが、どうせならもっと身体の中心に欲しい。 ミカが剛直から口を離すと、唾液と先走りが混ざり合って糸を引いた。 ミカは郷田を上目遣いに見上げる。小首をかしげる。人間を魅了し誘惑する小悪魔か堕天使のように。 「あの…ね、郷田さん。これ、セックスしたらもっと気持ち良くなると思う。私と…しよ?」 「セッッックスだあっ?! いやいやいやいや、今妊娠はマズイだろ!!」 どうやらセックスは知っているらしい。子どもを作る行為としかみなしていないようだが。 「大丈夫、初潮まだだから」 「しょちょー? なんだそりゃ」 「…セックスしても子どもができないってこと」 「へえ、そういう仕組みなのか。じゃあ、やってみるか」 郷田の性に関する知識の薄さと性行為への認識の軽さは異常である。授業を受け持った保健教師はたぶん泣くだろう。 一方でミカにとっては、望みを叶えるためこの上なく好都合であった。 ミカは机に敷いた郷田の上着の上に腰を下ろし、郷田と向き合う。邪魔なスパッツもショーツもすでに取り払った。 胸の高鳴りと舞い上がりそうになる気持ちを抑えながら、あとは郷田のなす行為に合わせればいい。 しかし、待てども郷田は動かない。まだ毛も生えていないミカの恥丘を見据えたまま、凍りついたように固まっている。 「……どこに入れりゃいいんだ」 こういう肝心なところで躓いてしまう郷田に不満がないわけではない。 それでもミカはそんな部分も含めて郷田のことが好きなのだ。 みっともないくらいに脚を広げ、愛液で潤う秘所をさらし、手に手を取って郷田の指をそこに導く。くちゅり、と情欲の音が鳴った。 「狭いな。入るのか?」 「入る…そういう風にできてるから」 無論、やはり根拠はない。だがどうしても郷田を受け入れたかった。 愛しい人とひとつになれるかもしれない。その期待と興奮でミカの心は満たされていた。 「来て…」 「おう。行くぞ、ミカ」 郷田のたくましいモノが近づいてくる。膣口に触れた。そして (え…?!!!) 一瞬の出来事で、何が起きたかミカにはわからなかった。 ただ待ち望んでいたはずのモノが、下腹部に不快な圧迫感を与え、自分を深々と貫いていることだけは理解できた。 そしてその存在を意識すれば、鋭い斬撃が身体中を切り刻み、鈍く重い衝撃がジンジン脳に響く。 まだ身体の出来上がっていないミカには、郷田は大きすぎた。 (痛い…! 何これ…死んじゃう…) セックスというものはもっとロマンチックで、心地の良いものだと思っていた。 愛する者同士、互いを想い合い、相手のすべてを受け入れ、身も心もひとつに溶け合う。 そんな理想とあまりにも程遠い現実を目の当たりにし、ミカの心は打ちひしがれる。 痛い、苦しい、気持ち悪い。好きな人との交わりがこんなものであるはずがない。 こんなの、もう、いやだ。 「うぅ…ごうださん…」 これ以上夢を穢さないため、ミカは中止を訴えようと声を絞り出した。 だが郷田はその訴えを無慈悲にも一蹴し、抽送運動を始める。 ミカと郷田のサイズ差は、ミカには苦痛を与えたが、郷田には快楽を与えた。 「ぁあっ、やあぁぁあっ!」 普段のミカからは想像できないほどの甲高い悲鳴が上がる。 肉がえぐられ、内臓がつぶされるような感覚は、ミカの小さな体では耐えられようもなかった。 もし第三者がこの教室を観測したとして、感じられるのは、女というには幼すぎる喘ぎ声、男の荒い呼吸、粘性の高い水音、肉がぶつかる乾いた音、発情した男女の猥雑なにおいだけであろう。 先ほどまで明るかった月には雲がかかり、その光は闇を晴らすには足りない。 だからミカが郷田の表情をうかがうことはできないし、ミカがいくら苦しもうと郷田が気づくこともない。 ただわずかに浮かび上がった輪郭は、肉食獣が非力な小動物を捕食する光景にも似ていた。 その性衝動に基づく暴力は、ミカがセックスに抱いていた甘ったるい幻想など簡単に吹き飛ばしてしまった。 (痛い痛い痛い! こんなの違う!! もうやめてよ、郷田さん…) 言葉を紡ぐことさえかなわないミカは、心の中で行為の終焉を願うことしかできない。 しかし獣が人間の思い通りになるはずはない。そう、目の前にいるこの男は「獣」だったのだ。 快楽をむさぼるため、野性のまま動く獣。 ミカは後悔していた。この獣に恋をしてしまったことを。 ああ、何を勘違いしていたのだろう。 いくら自分が想おうとも、獣が他人を想い返すことなどない。 この行為だって生存本能によるものにすぎない。そこに愛は存在しない。 自分が求めていたような甘く安らかな関係など、最初から到底無理なことだったのだ。 恋が冷めてしまったミカにとって、郷田とのセックスはもはや拷問でしかなかった。 生殺与奪のすべては郷田の手にゆだねられ、郷田が飽きるまで責め苦が止むことはない。 一方的に押し付けられる凌辱を、ミカは必死に堪えていた。 いっそ気を失えば楽になれるのだが、郷田はそれすらも許してくれない。 両手の並ならぬ握力で骨盤がえぐられ、性器同士の摩擦で粘膜が引き裂かれ、未成熟な子宮が断続的に押しつぶされる苦痛は、ミカの意識をなおさらその身にとどまらせた。 それに痛くて苦しくて仕方ないのに、膣はきつく収縮して郷田に喰らいつき、決して離そうとしない。 最奥を突かれるたび肺から無理矢理空気が押し出され、上げたくもない声を上げてしまう。 「ん…ぁあ…! ひっ…く、あっあぁぅっ!!」 のどがひりついて呼吸すらままならず、ミカは酸素を求めて口を必死にパクパクと開閉させる。 辛くて、悔しくて、涙がこぼれた。わずかに差し込む月の光が悔恨の雫に反射し、きらめく。 しばらくして、その光をとらえた郷田は、ほんの数秒だけ動きを止めた。 そしてその数秒の間に、ミカにとっては信じられない行動をとった。 郷田が何を考えていたのかはわからない。 嗜虐心にかられたが故かもしれないし、単なる気まぐれだったのかもしれない。 だが、確かに郷田はミカの唇に自らの唇を重ねたのだった。 つまりそれはキス、だった。 そしてたったそれだけのことで、ミカの幼い恋心は再び燃え上ってしまう。 (……! 郷田さん! 郷田さん、郷田さん…!) 今この瞬間、自分の手の届く場所にいてくれる郷田を離すまいと、ミカは脚を郷田の背中に、腕を郷田の肩に、舌を郷田の舌に絡める。 郷田の動きに合わせて、自らも腰を振る。 痛みが消えたわけではない。苦しみから解放されたわけでもない。 だが、人としての理性は、もう郷田によって壊されてしまった。 だからミカも、小賢しい余計なことは考えず、彼が欲しいという野性の命じるまま、彼を求めるだけだ。 愛がもらえないなら、自分からもぎ取ればいい。 そんな浅ましい自分自身を感じ、ミカはいやでも思い知らされる。 自分もまた、この人と同じ「獣」なのだと。 (郷田さん、もっと壊して…) 衝動に突き動かされる雄と雌の獣。 配慮など微塵もなく腰を打ちつけ合い、結合部からはじゅぶじゅぶと品のない音が立つ。 たとえ子をなさぬ生物的に無駄な行為だとしても、満たされる肉欲に悦ぶ。 他の誰も間に入らせまいと、互いに相手の身体に自分を刻み付けるよう強く深く抱きしめ合う。 徐々に、呼吸が速くなる。襲いくる奔流の中に、新しいなにかが芽生える。 もう少し、もう少しで未知の世界に手が届きそうなのに。 雄が一瞬身を震わせて、短く、低く吠えた。 途端、雌の中にほとばしる熱が注ぎ込まれる。 爆ぜる。蕩ける。溺れる。いろんな感覚がないまぜになって、頭の中が真っ白になった。 「ごうださん……だいすき…」 虚空に向けた小さな告白は、誰に届くでもなく、霧散した。 雲はすでに払われ、月は再びその輝きを夜空に取り戻していた。 月光の下、ミソラタウンの住宅街を行く影が一つ。いや、よく見れば二つの影がひとつになっていた。 あれだけ甚振られたミカが足腰も立たなくなったのは致し方ないことであるし、動けないミカを郷田が背負うことになったのも致し方ない。 ついでに述べれば、教室の後始末もすべて郷田がする羽目になったのだが、生来のガサツさから作業は尋常でなく困難を極めた。 また、鮮やかな赤い痕だの白濁したゾルだのがこびりついたチリ紙を教室のゴミ箱に捨てるわけにもいかず、今は上着のポケットの中だ。 せっかく回収した上着だが、どうやら明日は着られそうにない。 ともかく郷田におぶわれる形となったミカは、理屈抜きに幸せだった。 「悪いな、遅くなって。金があればタクシーでも呼べたんだが」 「優しいね、郷田さん。いいの、気にしないで」 郷田さんと一緒にいられる方がずっといいから。 どんなにこの身が痛もうと構わない。この心が傷つこうと構わない。 もう言い訳なんてしない。自分はこの人が好きだ。 ミカは何も言わずに、目の前の愛しい背中を抱きしめた。 「…あ、そーだ。そういや、この辺のタクシーってなあ…」 ちょっとした沈黙に耐えられなくなったのか、郷田は突如ミソラタウンのタクシー事情について話し始める。 システムと自動車需給の問題から入ったはずが、いつの間にかハードウェアとしての自動車の話になり、タクシーにとどまらず家庭用車両から特装車の構造にまで至っていた。 その知識量は、ミカの同級生である重機マニアのリュウですら及ばないだろう。 このように知的な話題を饒舌に語る郷田が初めてだったミカは、新たな彼の一面を発見した気がして嬉しかった。 もっとも、ミカにはモーターとバッテリー以外は馴染みのない単語ばかりで、内容に関してはまったく理解できなかったのだが。 「なんだか意外。郷田さんがLBX以外のことにも、そんなに詳しいなんて」 「まあなんっつーか、親父がそっちの仕事やってて、家でもいろいろ言うからな。嫌でも気にしちまうさ。門前の小僧ってやつだ」 口ではそう言っていても、父親のことを話す郷田の目が輝いていることをミカは見逃さなかった。 「お父さん、いい人なんだ?」 「ああ、厳しいけど自慢の親父だ。俺もああいう人間になりたい」 照れながら父親を誇る郷田の顔は、15歳の少年らしい将来への夢と希望にあふれた顔だった。 「でも甘いとこもあんだぜ? 試作機のハカイオーを俺にくれたりな。まさか戦闘データがCPU製品の演算処理モデルに使われるとは思ってなかったけどよ」 郷田は何の気なしに言ったつもりだろう。だが一般家庭とかけ離れた家庭事情を聞かされれば、疑念を抱かないものはいない。 ミカもまた、その一人だった。一つ、至った結論を尋ねる。 「…郷田さんのお父さんって、もしかしてプロメテウスの…?」 「社長やってるぜ、一応」 刹那、ミカの世界が一変する。自分と彼の人生の違いに愕然とする。 郷田がまた何かを話し続けているが、もうミカの耳には入らなかった。 郷田をずっと見てきたはずなのに、何も知らなかった、あまりにも狭い視界でしかいられなかったことをミカは思い知らされる。 彼は太陽のような人。熱く、まぶしく、男女の区別なくたくさんの人を惹きつける。 戦いでは激しく、人付き合いでは優しい。獣の野性と人の理性を兼ね備えた気高き王。 そうなるべくして教育され、現に今もその道への歩みを進めている。 対して自分はどうだ。自分本位で無愛想で、勉強ができるわけでもなければ、特別LBXが強いわけでもない。 いずれ彼は今以上に大勢の人の上に立ち、皆から愛される大人になる。 今の自分では彼に釣り合わない。一緒にいても彼の幸せになるはずがない。 好きなだけでは、ダメなのだ。 ならば、それならば、背中を追うのはもうやめにしよう。 この幼い恋は――捨て去ってしまおう。 「着いたぜ。ここでいいんだよな、お前の家」 ミカが思い悩んでいるうちに、二人の時間は終わってしまった。 もう何度悩んで、悩んで、悩みぬいただろう。だが、これできっと最後だ。 ミカは郷田の背中を離れ、なんとか立てるくらいには回復した足で、地面にすとんと降り立つ。 そしてここまで一緒にいてくれた郷田に、深い漆黒の瞳をもって向き合った。 「郷田さん、ありがとう」 思い出をいっぱいくれて。 誰にも見せたことがないほどの極上の笑顔を、ミカは郷田に向ける。 その笑みはとても愛らしく、心ならずとも郷田を狼狽させるには十分であった。 「お前、笑うと可愛いな…って何言ってんだ、俺。か、体、気いつけろよ! えっと…………じゃあな!」 それだけ言って、郷田は足早に夜の暗がりの中へ消える。 いつも見てきた背中が、大好きだった背中が遠ざかっていく。 それを見送るミカの目から不意に、ぽろぽろと光の粒が零れた。 「おかしいな…決めたはず、なのに」 笑って、お礼を言って、それでこの気持ちを終わりにするって決めたはずなのに。 もう、彼の姿は見えない。一人立ち尽くすミカの呟きが闇に響く。 「私、きっと変わるから。強くなるから。いつか隣に行くから…それまで待ってて…!」 月明かりは町を、ミカの世界を照らし続けていた。
https://w.atwiki.jp/infinitynet/pages/85.html
イカロス・ゼロ メーカー ハンドメイド(山野淳一郎) フレームタイプ ナイトフレーム 基本装備 ゼロ・ランス ゼロ・シールド 使用プレイヤー 山野バン 海道ジン ジャック・ジェラート中尉から託されたプロト・Iの予備機を、山野博士が大幅に強化し高機動型に改修したLBX。プロト・I同様、従来のLBXには出来ない挙動を可能にする高次元多関節機構を搭載し、ウェポンフォームへと変形することができる。