約 1,375,624 件
https://w.atwiki.jp/sousakujojis/pages/434.html
ここに作品タイトル等を記入 更新日:2022/07/20 Wed 21 34 58 タグ一覧 セブンスカラー はぁい。今回のあらすじを担当する龍香よ。前回は…ようやく、私は私になれたわ。私ったらあのシードゥスを殺して、ようやくホントの気持ちを出したんだから。 上っ面の私じゃない。ホントの私。 最っ高の気分……さぁてどうなるのかしら第27話。 それはほんの些細な事だった。クラスメイトが遊んでいたぬいぐるみが欲しかった。 私も遊びたいから貸して欲しい。そう言うとクラスメイトは先に私が使っているのだから、嫌だ。と言った。 どうしても遊びたかった彼女はその子を殴ってぬいぐるみを手に入れた。 しかし、その子はすぐ泣いて先生にこの事を言いつけ、彼女は怒られた。 しかし、彼女は貸してくれなかったその子が悪いのに何故私が怒られているのだろう、としか思わなかった。 だから言ったのだ。 「この子が貸して欲しいと言ったのに貸してくれなかった。」 そう言うと、先生は少し困った顔をした後。 「でも、この子が先に遊んでいたんだから待ってあげなきゃ。あんまりワガママばっかり言ってると独りぼっちになっちゃうよ。」 多分先生は軽く注意するつもりでそう言った。そう言われた少女は裏切られたような悲しい気持ちになった。 すると、先生が味方についたと思った相手のクラスメイトは少女に向かって叫んだ。 「アナタがワガママだからアナタにはパパとママがいないんだ!」 少女の心にその言葉が深く突き刺さった。 先生がその子を注意する声も聞こえない。目の前が真っ暗になり、心臓が早鐘を鳴らすように鼓動し、冷や汗が止まらない感覚。 その日以来、少女は──自分を偽ることを決めたのだった。 「龍…香……」 雨が降りしきる天を仰ぎ、何かを吐き出すように産声を轟かせる怪物と化した龍香を見て、雪花は呆然する。 龍香は一頻り吼えると、目にあたる部分がボロで巻かれているにも関わらず、ギョロッと雪花を睨んだ気がした。 「ッ」 次の瞬間大きく跳躍するとその場を離れる。 「──ぁ、待ちなさい!」 一瞬龍香の重圧に怯むが、雪花は龍香を追いかける。今までにない程の言い知れぬ不安と共に。 「チッ、コイツチョロチョロと!」 「ふっ!悪いけどこの私をそう簡単にやれると思って貰っては困るなぁ!」 デネブが放つ羽根の弾丸をピーコックを再び装備した月乃助が高速で飛翔しながら避ける。 「ベガ!」 「あぁ!分かっている!」 アルタイルの言葉と共にさらにベガが全身の糸を震わせ、防御に使用した先程とは違い、指向性と攻撃性を持たせた衝撃波の斬撃を放つ。 月乃助はさらに身体を捻らせその攻撃を避けると右手の武装“サーキュレーション•フィナーレ”をベガに向けて構える。 しかし横からアルタイルが剣を構え、突撃してくる。 「チッ」 左手で“ピーコック”の武装ラックから蛇腹剣を引き抜くと、それでアルタイルの一撃を受け流す。 「その程度で!」 月乃助はアルタイルに反撃を入れようとするが、デネブの攻撃が見えたと同時に攻撃をやめて回避に徹する。 「ふっ……三対一。この天才月乃助でなければここまで持ち堪えられなかっただろうな。」 《流石天才。》 とは言っても月乃助も限界が近いことは薄々察して来た。今は凌げているが、それもいつまで持つか。 「決定打が打てんことがこうも歯痒いとは。」 《そんなキミに朗報だ。あと3分ほどで黒鳥君と赤羽君が到着するそうだ。》 「3分か。長いな。」 ピーコックと軽口を叩きながら、月乃助が歯噛みをしていると、空から獣のような咆哮が聞こえた気がした。 「なんだ?」 どうやらそれも相手の三体も聞こえたようで。この場にいる全員が何かがこちらに来ることに警戒していると、空から何かが降ってきて泥を跳ね上げながら着地する。 「うおっ…」 飛んできた泥を手で防ぎながら、月乃助が降って来たもののに目をやると、そこにはボロを纏った醜悪な怪物がいた。 「なんだ?」 《……もしかして、カノープス、なのか?》 「何と?」 ピーコックの言葉を聞いて、月乃助がその怪物をよくよく観察すると、ボディは確かに龍香だ。しかし手足と頭は完全に怪物のソレだ。 「……そうだとしたら随分なイメチェンだな。」 月乃助がどうするか、静観していると三体はすぐに陣形を組み、龍香に攻撃する構えを見せる。 「現れたなカノープス!」 「貴様を倒すこと!それ即ちプロウフ様の意思!」 「討ち取らせて貰う!」 デネブが羽根を発射しながら龍香へと走り出す。それと同時に、ベガとアルタイルも続く。 (さぁ、この攻撃を避けろ。反撃をベガで受け止めてアルタイルがトドメを刺す!) フォーメーションを組んだ隙のない一撃。龍香は迫り来るそれをチラッと一瞥すると、“羽根の攻撃を真正面から受けながら三人に突進してくる。” 「なっ」 あまりにも突飛かつ無謀な行動にデネブが一瞬怯む。だが羽根が直撃するのも意に介さず龍香は吼えながら突き進み、デネブを掴むと思い切り地面に叩きつける。 「ぐぅ」 「貴様!」 ベガが攻撃をしようとするが、龍香は尻尾をしならせると刃のように尖った先端を思い切り突き出す。 「むぅおっ!?」 その切っ先がベガを貫くことは無かったが、思い切り遠くへと突き飛ばす。 突き飛ばされたベガが地面に倒れる。さらにアルタイルが龍香に剣を突き出すが、龍香はそれを掴んで受け止める。 「なっ」 アルタイルが剣を引き抜こうとするが、全く動かない。アルタイルが引き抜こうと足掻いていると龍香はアルタイルに向けて口を大きく開ける。 「──マズイッ!」 アルタイルは剣を手放すと上空へと飛翔して逃げる。その直後、さっきまでアルタイルがいた場所を熱線が焼き尽くした。 「あ、危ない所だった。咄嗟に剣を捨てなければやられていた……!」 冷や汗を流すアルタイル。だが、彼は上空から龍香を見下ろしてあることに気づく。 そう、先程地面に叩きつけられたデネブの腹を龍香が思い切り踏みつけて逃すまいと拘束していたのだ。 「ぐっ、あっ」 「なっ、貴様やめっ」 アルタイルが慌てて龍香を止めようとした瞬間。スパンっと龍香の尻尾がしなると同時に先端の刃がデネブの首を刎ねた。 「あ」 一拍置いて、爆発。紅蓮の炎が龍香を包み込む。しかしすぐに唸り声を上げながら龍香が爆炎を掻き分けてその姿を現す。ところどころが焦げついているが、これと言ったダメージを受けている様子はない。 「化け物め……!」 アルタイルが一瞬でデネブを倒されたことに戦慄していると。 『アルタイル、ベガ。ここは引きなさい。』 「プロウフ様!?」 彼らの脳内に直接プロウフの声が響く。撤退命令を出すプロウフにアルタイルは。 「し、しかし奴らにデネブを…!」 『引きなさい。私の言うことが聞けないのですか。』 「ぐっ……了解。」 アルタイルは苦惜しげに龍香を睨むと撤退する。ベガも距離が離れていたことで離脱に成功したようだ。 シードゥスが去っていくのを見ると、龍香はそれを追撃もせずボンヤリと見るだけだ。 「あれだけ私が苦労したのをあぁもアッサリと…」 《確かに凄い、が。何か雰囲気が危なくないか?》 なんてやっているとギョロッと。龍香が月乃助を睨むように振り返る。そして月乃助に向けて口を大きく開ける。 「おい、まさか。」 月乃助が咄嗟に飛翔すると同時に熱線が月乃助がさっきまでいた場所を灼く。 「おい、おいおいこの天才に牙を剥くのか!?私は味方だぞ!」 飛翔する月乃助に向けて、またもや龍香が口を向けた瞬間。山頂から雪花が現れる。 「やめなさい龍香!」 「ッ、危ない!」 雪花が龍香を押さえつけようと飛び掛かるが、龍香はまるでハエでも払うかのように尻尾を振るい、雪花を吹っ飛ばす。 「ぐぁっ」 吹き飛ばされた雪花は身体を激しく木に打ち付けられたせいか、そのまま地面に倒れると同時に気絶し、変身が解除される。 「スノーガール!クッ龍香、君は!」 最早悠長なことは言ってられない、先程のシードゥスと同じように雪花の首を刎ねるかもしれない、と月乃助が止めようとして気づく。龍香は雪花に見向きもしていない。ずっと月乃助を睨みつけているだけだ。 (何故、彼女を攻撃しない?) 龍香が咆哮する度に放つ熱線を回避しながら、月乃助は思考を巡らせる。 シードゥスへの容赦のない攻撃、雪花への無関心、そして月乃助への攻撃。 考えた末、月乃助はある結論に辿り着く。 「ピーコック!分離だ!」 《良いのか?狙い撃ちにされるぞ?》 「いいからやってくれ!!」 言うが早いかピーコックと月乃助は分離し、月乃助は地面へと降り立つ。 今からやろうとする事は客観的に見たら自殺行為だ。ピーコックにああは言ったものの月乃助の背筋を冷や汗が伝う。 そして、龍香は一瞬で降り立った月乃助を見るが……月乃助が変身を解除した瞬間。 龍香はすぐに月乃助から意識を外すと、空を旋回するピーコックに攻撃を仕掛ける。 《なんと!》 それを見た月乃助は心臓が緊張でバクバク跳ね上がる中、月乃助は引き攣った顔で意識のない雪花を抱えると、笑いながら走ってその場を後にする。 「は、ハハハッ!ハハハハハハハハハッ!やはりっ!私の仮説は合っていた!ピーコック!撤退だ!ここは引かざるを得ない!」 《撤退って言ったって。妹ちゃんは。》 「黒鳥君に言って烏で監視させておけ!」 月乃助はそう言うと雪花を抱えて山を降りる。龍香はピーコックが空中へと逃げるのを確認すると、その場に座り込み、俯いて止まった。 雨は容赦なく龍香に雨粒を打ち続けていた。 「プロウフ様、只今戻りました。」 「ご苦労様です。プロキオン、デネブのことは残念でしたが……よく戻ってきてくれました。」 襲撃から戻ってきた二人にプロウフは労いの言葉をかける。 するとアルタイルが膝をつき、首を垂れて土下座をしながら叫ぶ。 「僭越ながらお願い致します!我らに、我らにもう一度チャンスを!デネブの仇を我らの手で!」 「私からもお願いします。」 アルタイルがそう言うのを見て、ベガも同じように土下座をする。その様子を見てプロウフは膝をつくと、そっとアルタイルの肩に手を置く。 「顔をあげなさい。貴方達の友を想う気持ちは痛い程分かりました。いいでしょう。出撃を命令します。」 「プロウフ様!」 顔を上げて喜色を浮かべる二人。さらにパチンとプロウフが指を鳴らすと奥から三体の怪物……アルタイル、ルクバト、レグルスが現れる。 「ツォディアの面々も貴方達があの子を討つのを協力して下さります。必ずやり遂げなさい。」 「は、はっ!必ず!」 そんなプロウフとアルタイル達のやり取りを見ていると、ルクバトがアルタイルに話かけてくる。 「珍しいな。お前がこんな事にやる気を出すなんて。」 「別に。……ただプロキオンのアホがやられたのが気に食わないだけよ。」 アンタレスがそう言うと、レグルスがアンタレスに意外そうな顔をしながら。 「……お前がそう言うだなんてしばらく見ない内に随分と変わったな。」 「……悪い?」 「……アイツは良い奴だったからな。バカだけど。気持ちは分かる。」 アンタレスにルクバトがそう言う。 そしてプロウフの指示の元、雨が降りしきる中、五体は仇討ちをせんと出撃する。 その後ろ姿を見送りながら、プロウフは。 「えぇ。期待してますとも。」 そう、独りごちた。 「……とんでもない事になったわね。」 重苦しい空気が漂う会議室で山形が言う。全員の視線がピーコックが戦闘中に撮影した映像……暴れ回る暴走した龍香に釘付けになる。 「今は活動を停止しているようですが。」 烏や蛇達を通じて龍香を監視している黒鳥が不安そうに言う。 「…龍香ちゃん。どうして。」 火元の不安そうな声に山形は少し目を瞑ると、厳しい顔つきとなり、言う。 「……とにかく。彼女をこのままにしておけないわ。」 「それには私も同感です。過去にあった暴走形態の話から、あの形態が龍香ちゃんにどう影響を及ぼすか分かりませんから。」 黒鳥が山形に同調する。すると赤羽が尋ねてくる。 「……って言ったって。具体的にどうすんのよ。」 「今までの戦闘を見返すと、龍香ちゃんとカノープスは過度なダメージを受けると分離して変身が解除されるんだ。つまり。」 「つまり、一旦変身が解ける位ボコボコにすればいいのね?」 「まぁ、飾り言葉をつけなきゃそうなるね。」 赤羽の物言いに林張が苦笑いを浮かべる。 「んもぉ、アカちゃんったら……。この事、ケンケンには伝えたの?」 風見が聴くと、今度は月乃助が答える。 「話は通してあるよ。だけど、今回の作戦に彼は不参加だ。」 「まぁ大怪我してますしね……。」 火元が納得したように言うと、月乃助は面倒そうに頭をかきながら。 「まぁ、それもあるのだけど……大きな要因は今の龍香君はシードゥスに強く反応するからだ。」 「反応?」 全員が小首を傾げると。 「さっきの戦いで、敵のシードゥスに苛烈な追い討ちを仕掛けたのに対して、雪花君は軽くあしらった程度で攻撃をやめた。さらに私とピーコックが離れた場合、ピーコックにばかり攻撃を加えるようになった。つまり、今の彼女はシードゥスに対して強い攻撃衝動を抱いている。だから、何が言いたいかって言うと。」 月乃助はポンっとピーコックに手を置いて。 《シードゥスである私と月乃助、龍賢とトゥバンが近づくといち早く察知され、作戦が失敗する。》 「そう言う事だ。力を多少なりにも借りている黒鳥君、赤羽君でも反応するだろう。」 「じゃあ誰が行くのよ?」 赤羽が尋ねると。 「だったら、私しかいないでしょ。」 会議室の扉を開いて、そう言いながら雪花が入ってくる。 「藍……」 「私はシードゥスの力を使ってないから。龍香に近づけて不意打ちをかませる。」 「その通り。雪花君の攻撃で龍香君の動きを数分止めて貰う。それと同時に我々が近づき、一斉に攻撃を加えて変身を解除させる。仲間に暴力を振るうのは心苦しいが、現状これが最善手だが。」 「いいわ。やってやろうじゃない。」 「傷の方は大丈夫なの?」 山形が尋ねると、雪花はフッと笑みを浮かべ。 「大丈夫よ。アイツにはぶっ飛ばされた恨みがあるし、それに。」 雪花は笑って言う。 「私はアイツの友達だから。手足へし折ってでもここに連れて帰るわ。」 「お、お手柔らかにね…」 「……なら、作戦を開始するわ。皆準備を進めて。」 雪花に林張が若干引く。そして山形の言葉を合図に各々が準備のために持ち場へと向かう中、雪花は黒鳥に話しかける。 「ねぇ、黒鳥。アンタに頼みたいことがあるんだけど。」 「?」 呼びかけられ、振り返った黒鳥に雪花は耳を貸すようジェスチャーをし、近づけた黒鳥の耳にコッソリと囁いた。 「分かりました。すぐに向かいます。」 携帯を切ると、龍賢は外を見つめる。外の天気は段々とひどくなって来ており、ザァザァと雨が病院の窓を叩く。 龍賢はベッドに横たわり、目を閉じたままの龍斗に向けて話しかける。 「……つくづく、自分の無力を感じるよ。龍斗。」 そう話し掛けてもピッピッと龍斗が生きていることを教える電子音が返ってくる。 「…こんな時、お前がいてくれたら。」 《おいおい。泣き言かよ。》 「……トゥバン。」 《無いものねだりしている暇はねぇぞ。》 「…分かっている。分かっているさ。」 龍賢はそう言うと左腕のギプスを外して病室の扉の取手に手をかける。 「……俺の家族は、絶対に守る。」 龍賢はそう決意を固め、部屋を後にする。雨が窓を叩き、開けた扉が閉まると同時に──龍斗の指がピクリと動いた。 『黒鳥、配置につきました。』 『赤羽、配置に着いたわ。』 『龍賢、配置に着いたぞ。』 『うむ、よろしい。私ももう着いてる。』 全員が配置に着いたのを確認する通信が聞こえてくる。雨が降りしきる中、“デイブレイク”を纏った雪花は一人、ナビゲーションを頼りに山道を進んでいた。 「全く世話がかかるお嬢様だこと。」 雪花はそうグチりながらも、進み続ける。 『龍香君の探知範囲は約半径3kmだ。君が持っている捕獲ライフルの当たり所次第で結末は変わる。』 「プレッシャーかけないでよ。」 『それだけ重要と言うことよ。』 山形からの通信を聞いて、ため息をつきながら雪花はポイントに到着すると長距離射撃ライフル“漁火”を構える。 「さて、と。」 雪花は寝そべると銃を構えて、スコープを覗き込む。 その先には雨に打たれながら座り込む怪物と化した龍香の姿があった。 『ちょっと待ってね。風速、重力、空気抵抗、風向きを計算してるから。』 林張達がパソコンを叩く音が聞こえる。そしてしばらくすると林張から指示が飛び、そのように雪花は構える。 「龍香……多分、今アンタはすっごく苦しいんだろうけど…。」 そう呟きながら引き金に指をかける。 「ちょっと我慢しなさい……!」 そして引き金を引こうと力を入れた瞬間。 「!!!」 突然龍香は起き上がると、尻尾で地面を叩いて宙へと飛び上がる。 「なっ」 『龍香ちゃんが動いたッ!?』 『どういうこと!?』 『全員範囲内に入ってないぞ!』 突然の龍香の行動に皆がパニックになる中、黒鳥だけがあっと声を上げる。 『どうしたの?』 『その、彼女が向かってる先に…!』 一瞬の躊躇いの後、黒鳥は衝撃的な一言を言い放つ。 『彼女が向かっている先にシードゥスが五体いる!』 「……!」 「どうしたのルクバト?」 龍香の元へと向かう中、ルクバトが何かを感知したのか顔を上げる。 「……近づいて来ている。中々の殺気だ。」 ルクバトがそう言って飛び上がり、木の上に着地すると同時に五人の前の木々を破壊しながら咆哮と共に暴走した龍香が五人に襲い掛かる。 「むぅん!」 襲いかかって来た龍香とレグルスが取っ組み合い、膠着する。その隙に残る三体が三方向から攻撃を仕掛けようとした瞬間。 龍香の尻尾が畝り、後ろから襲いかかって来たアルタイルを弾き飛ばす。 「アルタイル!」 ベガが声を上げるが、さらにうねりを上げて襲い掛かる尻尾をアンタレスはクルリ、と身を捻ってかわす。 「ギャロロロロロロ!!」 龍香は唸ると、レグルスに渾身の頭突きをぶつけ、怯んだ隙に思い切り蹴り飛ばす。 「むぅ」 地面に跡を残して引きずりながらレグルスは止まる。龍香に対してルクバトが矢を射るが、龍香は尻尾を振り回してその攻撃を弾く。 「くっ、アンタレスのような姑息な真似を」 「あ!?誰が姑息だって!?」 アンタレスがルクバトに文句を言いながら龍香に針の着いた尻尾を飛ばす。 それに対して龍香も同じように尻尾を振り回して迎撃する。 尻尾がぶつかり合い、火花が散る。しかし戦う龍香にルクバトが矢を射掛ける。 龍香の動きが防御のために一瞬止まった瞬間、レグルスが突っ込んできてその剛腕を振り上げ、思い切り殴り飛ばす。 倒れた龍香にベガが斬撃を、アルタイルが風の刃を飛ばすが龍香の口が開くと同時に放たれた熱線がその攻撃を焼き払いながら二人に飛んでいく。 「ッ」 二人がその熱線を避けるが、龍香は首を振ってそのまま放射しながら、ルクバトの方を向く。 「チッ」 ルクバトが飛び上がると同時に避けた木が焼け焦げる。 焼かれた木が雨に打たれ、水蒸気を上げる中龍香が咆哮を上げる。 「どっちが化け物なんだか。」 「だが、奴とて無限ではない。あの状態では長く持つまい。」 呆れ果てながら呟くアンタレスにレグルスがそう言う。 「さて、次はどう来る……」 ルクバトが矢を引き絞ろうとした瞬間。 「!」 察知したルクバトが腕を構える。それと同時に何処からともなく放たれた弾丸が着弾し、ルクバトを木から叩き落とす。 「何!?」 さらに今度は空から黒い球が落ちてくる。その球は地面に着弾した瞬間爆発し、シードゥス達を襲う。 「うおおお!?」 全員が怯む中レグルスが空を見上げると、そこには空中を飛行するピーコックと月乃助、そしてそこからもう一人、龍賢が降り立つ。 「貴様らに龍香を殺させはせん!」 龍賢は剣を引き抜くとレグルスに襲い掛かる。しかし、レグルスも爪を振り上げトゥバンとかち合う。 「裏切り者め!今ここで同胞の仇を取らせて貰うぞ!」 二人がもつれ合う中、アルタイルは空中にいる月乃助に狙いを定めると、飛翔して斬りかかる。 月乃助はすぐに剣を引き抜いてそれを受け止める。 「おおっと。」 「余計な邪魔を!」 「それはこっちの台詞だがね!」 月乃助がそう言い返し、苛烈な空中戦を繰り広げる。混戦状態に陥り、アンタレスが龍香の攻撃を避けた瞬間、その頬を弾丸が掠める。 「チイッ!ルクバト!」 「そう焦らせるな。場所はもう大体掴めた。」 ルクバトはそう言って立ち上がると、狙撃手がいるであろう方向に素早く弓を構えて撃つ。 果たして、その放たれた矢は目論見通り……狙撃に徹していた雪花の“漁火”を射抜き、破壊する。 「チッ!結構気に入ってたんだけど!」 雪花はすぐに破壊された“漁火”を放棄すると、狙撃ポジションから離れる。 ルクバトがさらに狙いをつけて攻撃しようとした瞬間、横から赤羽が飛んでくる。 「ッ!」 ルクバトが向かってくる赤羽に矢を向けた瞬間。赤羽の身体を貫いて針が飛んでくる。 「何ッ」 針は咄嗟にルクバトが振った腕に弾かれるが一本だけルクバトに当たり、爆発する。 「これは?」 「ハァっ!」 針に貫かれた幻は消え、体勢を崩したルクバトに本物の赤羽が斬りかかる。 「俺の殺気を感じ取るのを逆手に!」 「アンタはこの私が倒す!」 赤羽がルクバトを押さえ込む。 「チッ、次から次へと……」 アンタレスがそう言いながら、ふと龍香の方を見ると、プルプルと龍香が震え始めていた。 そして次の瞬間、アンタレスの背筋が冷水をかけられたようにゾッとする。 「アレは、マズイ!」 龍香から放出される強い殺気にアンタレスが身構える。他の面々も只事ではないと感じ取ったらしく、龍香の方に視線が向く。 龍香の背中に生えた翼のような怪物の顎が羽根を広げる様に口を開けた瞬間。 その口から牙のような鋭く尖ったエネルギー弾が上空に打ち上がったかと思うと、それは宙で弾けて殺意の雨となって全員に降り注いだ。 「んなっ」 「仲間ごとだとっ」 襲い掛かるエネルギー弾は地面に着弾すると爆発し、それらが連鎖的に炸裂し、全員を吹き飛ばす。 「うおおおおおお!?」 「きゃあああ!」 地上を縦横無尽に破壊する攻撃に全員が散り散りに吹き飛ばされる中、雪花は左腕につけていた回転式盾兼掘削機“ルーキス•オルトゥス”を回転させその攻撃の一部を防ぐ。 そしてまさしく嵐と言っても差し支えない攻撃が止むと、そこに立っているのは雪花とアンタレス、ベガだけだった。 「くっ、龍香…!」 「……そんなボロボロなのに仲間の心配?」 アンタレスが尋ねると雪花はアンタレスを睨みながら言う。 「仲間だからこそ、よ!アンタ達には分かんないでしょうけど!」 「………。」 雪花はそう言うと、龍香を見据える。流石に今の一撃は龍香もかなりの体力を使うのか、跪く。 「好機!」 ベガがそう言うと、消耗した龍香へと襲い掛かる。 「させるか!」 雪花がベガを止めようとするが、アンタレスの尻尾が畝りを上げて雪花を吹き飛ばす。 「おおっと。そうはさせないわ。」 「ぐあっ」 倒れる雪花。 「見ていろデネブ!今こそ貴様の仇を…!」 ベガが龍香に攻撃しようとした瞬間。横から突風が吹き荒れ、ベガを吹き飛ばす。 「何っ」 ベガが倒れると同時にその場に黒翼をはためかせた黒鳥が着地する。 「待たせたな。雪花。」 「…遅いわよ!」 黒鳥の軽口に雪花も笑って返す。 「チッ、そういやいたわね。アンタ。」 アンタレスはそう言いながら二人に問う。 「けど、アンタ達二人に何が出来るって言うのよ。その子、その侵食具合はどうにもならないんじゃない?あの暴れん坊と私達二人を、貴方達にどうにか出来るとは思えないんだけど。」 アンタレスがそう挑発すると、雪花がフッと自虐気味に笑う。 「そうね……“私達二人”じゃ無理かもしれない。」 雪花がそう言うと同時に黒鳥の翼の影から二人の人影が現れる。 「……巻き込んですまないが、任せたぞ。」 「うん!龍香のことなら任せて!」 「あぁ!」 そこに現れたのは子供達……かおりと藤正だった。 「……?ただのガキに何が」 「邪魔者は退場願うぞ!!」 怪物に変化した黒鳥が両腕から糸を射出してアンタレスを絡みとろうとする。アンタレスはそれを跳躍して回避する。 「…二人とも!龍香のこと、頼んだわよ!」 雪花も“マタンII”を引き抜いて黒鳥に加勢する。 二人は雪花の言葉にちょっと意外そうな顔をした後。 「…あの子、意外と優しいわよね。」 「あぁ、口が悪いけどな。ツンデレって奴か。」 二人はそう言うと、跪き肩で息をする龍香に近づく。龍香は近づく二人に一瞬唸るが、二人を見ると何処か怯えたような顔をしたように感じた。 「龍香。アンタ、何やってんのよ。こんなに濡れちゃって。」 「事情は聞いたけどよ。かなり大胆なイメチェンだな。」 二人がそう優しく話しかけると、龍香は尻尾を振って二人の前の地面に叩きつける。 「わぷっ」 泥を庇った二人が尻もちをつく。そして龍香は息も絶え絶えになりながらも二人に言う。 「……二人には関係ない。どっか行って。」 その言葉は、二人が彼女と接して来て初めて聞いた…ハッキリとした拒絶の言葉だった。 「ぐおおっ」 「手負いの貴様に一対一でこの私が負けるとでも思ったか!」 龍香の一撃で吹き飛ばされ、皆から離れた河原でレグルスの一撃が龍賢を吹き飛ばす。 龍賢が剣を振るうがレグルスはそれを難なく受け止めるとその身体に何度も爪を叩き込むと、火花が散りダメ押しの咆哮による衝撃波を喰らって龍賢はさらに大きく吹き飛ばされる。 そのまま水飛沫を上げながら、倒れる。 「ぐっ……!お、のれ…!」 《おいおい!やべーぞ!》 最早立ち上がるのすらやっとの状態の龍賢にレグルスは。 「終わりだ裏切り者よ。せめてもの情けだ。苦しまずに死なせてやろう。」 レグルスが爪を振り上げる様を龍賢がせめてもの抵抗で睨んだ瞬間。 横から水の弾丸がレグルスを襲う。 「何!?」 怯むレグルスに横から飛び込んできた影がレグルスに蹴りを入れる。レグルスはそれを防ぐが、続く手刀を避け、体勢を立て直すため、一旦跳躍してその場を離れる。 そして、その影……傷だらけの魚人のような戦士が龍賢の前に立つ。 「お前は……」 その姿を見た龍賢が目を見開く。その魚人の戦士は振り向いて龍賢を見るとスッと手を差し出す。 龍賢は少しその手を見た後、フッと笑ってその手を取る。 「アルレシャ……!いや、貴様は!」 「……行くぞ龍賢。少しだけ手を貸してやる。」 「あぁ。一緒に戦おう!」 魚人……変身した龍斗と共に龍賢は構えると、レグルスに向かって行く。 「“モドキ”になってまで我らの邪魔をするとは……!断罪ッ!貴様らは徹底的に砕いてくれるわ!!」 レグルスも二人を迎え撃つように咆哮し、衝撃波を飛ばす。しかしその衝撃波は龍斗が水の障壁で防ぐ。 そしてその後ろから飛び上がった龍賢がレグルスに斬りかかる。 レグルスがそれを受け止めると同時に龍賢の身体をギリギリ掠めない精密な水の射撃がレグルスを襲う。 「ぐおっ!」 そしてレグルスが怯むと同時に龍賢が膝蹴りを叩き込み、剣を振るう。火花が散りさらによろめく。 さらにトゥバンが身を屈めると同時に龍賢を飛び越え、よろめいたレグルスに龍斗が飛び蹴りをお見舞いする。 「はぁっ!」 「ぐぅ!」 (コイツら…!なんてコンビネーションだ!) まるでお互いが先にやる事が分かっているかのような息の合った連携にレグルスが舌を巻く。 「龍賢!」 「あぁ!」 龍賢はそう言うと、赤黒い雷を纏った剣をレグルスに向けて投擲する。 「むぅ!」 だがレグルスはその剣を腕をクロスさせて防ぐ。が、その剣は当たったと同時に雷を放出し、レグルスの動きを封じる。 「行くぞ!」 二人は飛び上がると、その剣の柄目がけて一緒に蹴りを叩き込む。 その瞬間を剣を通してエネルギーが暴発し、レグルスの爪を砕いて大きく吹き飛ばす。 「ぐぉおおおぉ!?き、貴様ら如きに…!くっ」 レグルスは負傷した腕を庇いながらその場を離脱する。 《逃げたみたいだな。》 「あぁ。……龍斗。ありがとう助か」 龍賢が振り返るとそこに龍斗の姿は無く、一つの置き手紙が残されていた。 「?」 龍賢がそれを拾い上げると、そこには短く文字が書き連ねられていた。 「…“俺と会ったことは誰にも喋るな”?」 《なんじゃそりゃ。》 手紙の裏面を見ても何も書いていない。だが、龍賢は何処か嬉しげに呟く。 「まぁ、いいか。」 《感慨に浸ってる場合じゃねぇぞ。》 「わかっている。龍香。待っていろ。」 トゥバンに言われ、龍賢は駆け出す。彼のためにも、龍香を救い出さなくては。 「龍香……」 拒絶の意志を見せる龍香にかおり達が歩み寄ろうとした瞬間、龍香は地面を叩いて威嚇するように吼える。 「近づかないで!」 その言葉に二人は顔を見合わせると。 「分かった龍香。もう近づかない。約束するよ。」 「だったらそのまま消えて。もう私に関わらないで。」 藤正が話しかけるが、龍香はそう言って二人を拒絶する。 「どうしたのよ龍香。急に。」 かおりが尋ねると、龍香は。 「関係ないでしょ、かおりには。」 「関係ある!だって私は」 「私は龍香の友達だから?」 かおりの言葉を先読みしてそう言うと、鼻を鳴らして嘲るように龍香は話出す。 「かおりが友達だって思ってるのは素直で思いやりのある私でしょ、ホントの私じゃない。」 「…ホントの、龍香?」 藤正が首を傾げて尋ねると、龍香は自嘲気味に笑いながら答える。 「そう、ホントの私。ホントは私、ワガママで嫉妬深いの。こんな私じゃ誰にも好かれない。だから、今まで私は外受けの良い良い子ちゃんを演じてたの。そうしたら、嫌われなくて済むから。嫌われたくなかったから。なのにっ」 龍香は一瞬言葉を呑み込むが、それを吐き出すように二人に叫ぶ。 「私がこんなに頑張っているのに、いい子にしているのに辛い事ばっかり!お父さんとお母さんの顔を私は知らない!一緒にいるって言ってくれたお兄ちゃんも、2年も消えていたのに、仕事ばっかりに夢中で私といてくれない!龍斗兄さんは私をいじめてきたし!ワケの分からない戦いに巻き込まれて、痛くて苦しくて辛い思いをしても…皆のためだって思って戦ったのに…!先生は死ぬし、結局家では一人ぼっち!シオンちゃんはシードゥスで私を殺しに来て、その子を殺して……もうワケ分かんないんだよ!」 それは龍香の心の叫びだった。2年の間積もりに積もった寂しさと恐怖と不安。それらが怒りとないまぜになって龍香の口から溢れる。 「だから、もうどうでもいいの!どうせこんなに辛い事ばっかりなら、私からぶっ壊してや」 龍香がそこまで言いかけると、パァンと渇いた音が鳴る。 目を見開いて驚く藤正。 そこには突然頬をぶたれ、唖然とする龍香と涙を滲ませ龍香を睨みつけるかおりがいた。 「……龍香。それ以上は言わせないわよ。」 「かお、り」 まさかかおりからぶたれると思っていなかったのか、唖然とする龍香の襟首をかおりは掴むと龍香に鬼気迫るその顔で龍香を睨む。 「私や、皆が龍香がいい子だから、友達になったと思っているの?」 「だ、だって、こんな私、誰にも好かれ」 「それは貴方がそう思い込んでいるだけじゃないの?」 かおりにそう言われて龍香は黙る。ジロっと見るかおりに代わって藤正がまぁまぁと彼女を宥めながら龍香に言う。 「龍香、確かに意地悪な奴は好かれない。けどよ、皆何かしらそう言う面があるんじゃねぇか?俺にしたって桃井にしたって。」 「で、でも。」 「出してみろよ。皆を信じて。」 「う」 「そうよ。私達を甘く見ないで。」 二人にそう言われるが、龍香は尚も渋り、叫ぶ。 「でも私は、ホントにダメな子で、きっと今日みたいに暴れるかもしれない。それでも、いいの!?」 「当然よ。今度から辛いことがあったら私にもそれを背負わせて。龍香は一人じゃないんだから。」 「あぁ!一生そばにいてやる!」 そう力強く言う二人を見て、龍香は顔を俯けさせ、肩を震わせる。 心の中で二人の龍香が向かい合う。お互いしばらく黙っていたが、龍香がもう一人の龍香に言う。 「……貴方は私。私は貴方。」 その言葉にもう一人の龍香が顔を上げる。 「……きっと。私達は、二人で一つ。どっちも私で。どっちかが欠けたら私じゃない。」 龍香の言葉にもう一人の龍香が食ってかかる。 「……何よ。アイツらの言う事を信じるの!?アナタが私だって言うなら、アナタは友達を殺したのよ!!これが私!こんな私は」 「でも、ならなんで二人を抱きしめたの?」 その問いにもう一人の龍香は目を見開く。 「……攻撃出来たのに。私を追い詰めることが出来たのに。」 「それは…」 「ホントは受け入れて欲しかった。我慢せず、ありのままの自分を見て欲しかった。それだけなんじゃないの。」 龍香の一言に、もう一人の龍香は顔をぐしゃぐしゃに歪めると顔を手で覆い、地面に膝をつく。 「……何ッ、何なのよ!皆好き勝手言って!!私はこんなに……弱くて、ズルくて悪い子なのに、」 そして泣きながら、言葉を絞り出す。 「なんでっ、皆私を……見捨てないの…ッ?受け入れてくれるの?」 「それはきっと、皆龍香の事が好きだからだよ。」 その声に龍香が振り返ると、そこには赤黒髪の少女、シオンがいた。 「シオンちゃん…?何で…」 驚いた様子で尋ねる龍香にシオンはテヘッと笑って。 「うん。死ぬ直前にちょっとね。意識だけを龍香に移したんだ。」 「シオンちゃん…その、ごめん、私は」 「言っとくけど許さないよ。私を刺したこと。」 謝る龍香にシオンはキッパリと笑顔でそう言う。 「けど、これから何があっても生きててくれたら許してあげる。」 「シオンちゃん……」 「ほら、龍香。皆が待ってる。もう一人も立った、立った。」 「う…。」 バツが悪そうなもう一人の龍香を立たせると、シオンは笑って二人を並ばせる。 「ほら、カノープスが呼んでるよ。」 シオンがそう言うと、微かにカノープスが叫びながら自分を呼ぶ声が聞こえる。 「龍香ー!!どこだー!!」 「カノープス…。」 「約束、守ってね龍香。」 二人の龍香の頬にシオンはキスをする。そしてそれとは別にトンっと優しく誰かに背中を押された気がして振り返ると、そこには薄紫の長い髪を柔和な面持ちの女性がいた。 「え、」 「────」 その女性が何かを呟く。そして次の瞬間、この空間がひび割れて、外からカノープスが現れる。 「龍香!」 「カノープス!」 二人の龍香はカノープスを同時に手に取る。その瞬間二人の身体は引き寄せられるように一つになり、目の前が真っ白に染まる。 そして次に目を開けると、ずぶ濡れで変身を解除した状態で龍香はへたりこんでいた。 「龍香!」 「元に戻ったんだな!」 二人が嬉しそうに目を潤ませる。 「かおり、藤正君…。」 「ようやく戻ったわね!手間かけさせて!」 「とにかく、良かった。」 シードゥス達と打ち合いながら、雪花、黒鳥が言う。 「馬鹿な、あの状況から帰ってきたって言うの!?」 元に戻った龍香を見て目を見開くアンタレス。 「ごめん……迷惑かけちゃった」 「いいのよ!戻ってこれたんだし。」 《すまなかったな龍香。俺が不甲斐ないばかりに》 「ううん。こっちこそ、ごめん。」 謝るカノープスに龍香が答えるとベシャッと音を立てて空からボロボロだけどの月乃助が降ってくる。 「はっはっはっ!ようやく戻ったようだね龍香君!」 「つ、月乃助さん?」 《すまん。翼を折られた。》 見ればピーコックの左翼がへし折られており、上空には傷だらけなものの健在なアルタイルが飛んでいる。 「龍香君。これを」 そう言うと月乃助は腰部のラックから六角形の奇妙な機械を龍香に手渡す。 「これは?」 「私と林張さんと風見が協力して作った君の強化アイテムだ。今の君なら、使いこなせるだろう。」 「……ありがとうございます。」 龍香はそう言うと、それを手に取り立ち上がる。 「行くよ……カノープス!!」 《おう!》 龍香がカノープスに触れると同時に六角形の機械のスイッチを押し込む。すると龍香がティラノカラー•アトロシアスに変身すると同時にその機械から転送された鎧とコードが次々と龍香の左半身に装着されていく。 「……私は、もう投げ出さない!自分を出す事に怯えない!全部受け入れて前に進む!」 《二律背反!》 次の瞬間左半身の装着が済むと同時に衣装の左側が白く染まり、左目が赤く染まる。 《ティラノカラー•アンビバイレト!》 龍香の新たな姿に皆が息を呑む。 「成功だ…!ぶっつけ本番で成功…!やはり私は天才!」 龍香が構えると、左腰部に装着された六角形のデバイスから何が転送される。 それは機械で構成された棍棒のような武器だった。龍香はそれを手に取るとアンタレスとベガに構える。 「それは分子破砕振動棍棒“ディザスター•メイス”だ!使い方は簡単ぶん殴るだけ!!」 「雑ッ!」 「チッ、厄介な事になったわね!」 アンタレスが龍香に尻尾を飛ばす。しかし、龍香はそれをメイスで弾いて、掴むと思い切り引っ張る。 「何!?」 そしてジャイアントスイングの要領でアンタレスを振り回すと上空にいるアルタイルに向けて投げつける。 「なんだとっ!?」 目論見通り放り投げられたアンタレスはアルタイルにぶつかり、地面に墜落する。 「アルタイル!」 ベガがそちらに気を向けた瞬間、龍香は地面を蹴って一気に距離を詰めようと駆け出す。 だがベガはそれに気づくと、全身の糸を震わせ、斬撃を放って龍香を迎撃する。 「なんの!」 しかし龍香は放たれた放たれた斬撃をメイスを振り回して防ぎながらベガに肉薄する。 「なんて無茶苦茶な!」 《近づいたぞ!!》 龍香は思い切りメイスをフルスイングする。しかし、ベガは身体を振動させ、振動波を放つことでメイスの軌道を逸らそうとした瞬間。 メイスの一部が展開し、赤紫に輝いた瞬間バキィッという音と共にベガの腹部にメイスがめり込む。 「がっ」 「うおおおおおっ!!」 勢いそのまま龍香が振り抜くと、ベガは大きく吹き飛ぶ。 「な、に?何が?」 吹き飛ばされ、困惑するベガに黒鳥達に支えられている月乃助がワハハと笑いながら言う。 「どうだ見たか私が組み込んだ特殊電磁エネルギーフィールド精製ギミックは!その小賢しい振動波の防御を破るために急ピッチで組み込んだのだ!」 「なんだかよく分からないけど、行くよ!」 龍香はメイスを構える。すると龍香が力を入れると同時にメイスが赤く、熱く輝き始める。 「はァッ!」 そして、龍香は飛び上がると吹き飛ばされて動けないベガにその赤熱したメイスを振り下ろす。 《ノンパイレル•二ファリアス!!》 勢いそのままに振り下ろされた灼熱の一撃は容赦なくベガを打ち砕く。 「ごっ……」 ベガがよろめく。さらにそこへダメ押しの突きがベガにめり込むと同時に龍香はメイスの柄頭を思い切り殴りつける。 次の瞬間めり込んだ箇所から爆発的なエネルギーが溢れ、ベガの身体を木端微塵に吹き飛ばした。 「べガーッ!!貴様よくもぉ!!」 「!ま、待ちなさい!」 仲間の死に激昂したアルタイルがアンタレスの静止も聞かず飛び込むが、龍香は“タイラント•ブレイド”を召喚すると、振り向きざまにアルタイルに斬撃をお見舞いする。 「ぐぉっ!?」 体勢を崩し、地面へと不時着するアルタイルを尻目に、龍香は“タイラント•ブレイド”とメイスの柄頭同士を連結させて一本の槍のようにする。 「私はもう自分を見失わない!皆のために!私のために!」 《おう!行くぞ龍香!》 「うん!」 「この、俺が、エスティーヴォが!貴様らに、」 そう叫びながらアルタイルが剣を構えると同時に龍香は連結させた剣を振り下ろすとエネルギーの斬撃を浴びせる。 それは防ごうとしたアルタイルの防御を砕いてそのまま身体を切り裂く。 「がっ」 「ジャガーノート•ジュビラーテ!!」 そしてメイスの方を向けると、それを思い切り突き出す。その瞬間メイスから極太のエネルギーの塊が放たれ、アルタイルを吹き飛ばした。 「こ、この俺が……!?プロウフ様、申し訳ありま…ッ!?」 次の瞬間爆破と共にアルタイルが消える。 「アルタイル!…クソッ、ルクバト!レグルス!ここは退くわよ!」 アンタレスはそう言うと、その姿を消す。 「……退いたね。」 《あぁ…。》 龍香が変身を解除すると同時に雨も段々と小降りにになり、果てには雲の切間から光が漏れ出し、晴れていく。 そして龍香が振り返ると同時にかおりの身体が視界いっぱいに広がる。 そのまま龍香を抱きしめて何故かわんわん泣きながら龍香の頭を撫でる。 「龍香〜〜!!カッコよかったよ〜!!」 「か、かおり?」 「おう、やったじゃねぇか龍香!」 藤正達も遅れて合流する。 一方でボロボロの月乃助に肩を貸す黒鳥が月乃助に言う。 「あの、重たいので変身解除して貰えませんか?」 「残念だけど、ピーコックは今飛べないから変身解除したら私の腰が死ぬからダメ。」 なんてやっていると、同じく変身を解いた雪花が龍香に近づきながら。 「全く…ホント手間かけさせて。」 「ごめんね。雪花ちゃん。」 「いいわよ。ったく赤羽の奴が散々言ってたでしょ?溜め込むなって。」 雪花がぐちぐち言い始めるが、龍香は雪花の背後に回るとピョンと跳ねてその背中に飛び乗る。 「うおわわっ!?何、何なの?」 雪花が慌てながらワタワタしていると、龍香は首に腕を回して。 「疲れちゃったからおんぶして。」 「はァッ!?何で私が」 「あー、今断られると溜め込んじゃうかも。あー」 「こ、こいつ…!」 《…まぁ、許してやってくれ。》 「ふっ!」 「む」 赤羽とルクバトは互いの獲物を振るって相手を切り裂こうと何度も打ち合う。 そして、ルクバトが地面を蹴って下がると同時に赤羽は“サダルメリクの瞳”を光らせ、攻撃を加えようとする。 しかしルクバトは赤羽の足元に射撃を打ち込み泥を跳ね上げ視界を塞ぐ。 「!」 「お返し、だ。」 ルクバトが弓を引き絞ろうとした瞬間、赤羽はルクバトに向けて思い切り刀を投げつける。 「何」 慌てて刀を弾いて防ぐが、体勢が崩れた隙に赤羽は一気に距離を詰めていた。 「ッ!!」 赤羽が思い切り突き出した足から踵に仕込んである単発式パイルバンカー“蛍火”を放つ。だがルクバトは身体を捻ってギリギリで回避するが、その体表を弾丸が掠める。 「チッ」 「くっ」 ルクバトはそのまま、手をつきながら倒れると同時に地面に手を当て、後方へバク転をしながら距離をとる。 「……なかなかやるようになった。」 「……言ったはずよ。私が生きてる限り負けじゃないって。」 「フフッ、面白い……。次会う時が楽しみだ。」 そう言うと、ルクバトの姿がスゥと宙へと溶けるように消える。 「逃げる気!?」 (そう急ぐな。貴様との決着は然るべき場所でつける。) そう言うと、ルクバトの気配は完全に消えてなくなる。赤羽はキョロキョロと辺りを見回した後、刀を拾い上げて納刀する。 「……逃げたわね。」 そして、赤羽が変身を解除すると。 「赤羽君、無事か?」 「ご、ごめんね赤羽さん。私のせいで迷惑かけちゃって。」 声をかけられて、見れば龍香達と合た龍賢がいた。赤羽は雪花に背負われて、謝る龍香を見て、作戦が上手くいったのを見ると踵を返す。 「さっさと帰るわよ。服ビショビショで気持ち悪いし。」 「ホントよホント。泥だらけで溜まったもんじゃないわ。」 龍香達が下山すると、道にリフトカーを二台停車させている風見と山形がこちらに手を振る。 「皆ーっ!迎えに来たわよー!」 「男の子は風見の方、女の子はこっちに来なさい。」 「おおありがたい!正直黒鳥君と龍賢君に肩を貸してもらってるまま帰るのはいささか気が引けるからね!」 「もうちょい気にしてください。」 なんてやり取りをしながら皆が帰ろうとする中、龍香があっ、と声を上げて。 「藤正君、その。」 「なんだ?紫水?」 何故かちょっと頬を赤く染めてそっぽを向きながら龍香は藤正に言う。 「その、思いやってくれるのは伝わったんだけど、一生そばにいるって、あんまり言わない方が良いよ。私、勘違いしそうになっちゃったし。」 「え?……あ、違っ、いや違うくはないし、なんなら、勘違いしてもらっても良いって言うか」 龍香の言葉に一瞬意味が分からず思考が止まったが、すぐに気づいて藤正があたふた言っていると。 「……藤正君だったかな。」 何故か青ざめて震えながらも必死に営業スマイルを浮かべている龍賢が藤正に。 「龍香はちょっと疲れてるから、な?」 「えっ、はい…」 《うわ大人げない。》 《そう言うの俺は良くないと思うぞ龍賢。》 龍香が戻って一件落着……とは龍賢の中ではいかなさそうだった。 そんな、“新月”のメンバーを見下ろす一つの影があった。白いマントを纏い、紫の仮面をつけた魔人、プロウフだ。 プロウフはフフッと思わず笑みを浮かべながら彼らに片手で賛辞を送るジェスチャーをする。 「ふふっ、素晴らしい。こうも早くこの領域まで至るとは。やはり彼女は素晴らしい。」 プロウフは特に龍香を注視しながら、その目元を歪ませる。 「もう少しで、全てが決まる。生き残るのは人間か、シードゥスか。」 そう言うとプロウフはハハと笑いながらその場を後にする。 彼がいた場所は薄く薄氷に覆われていた。 To be continued… 関連作品
https://w.atwiki.jp/atenza/pages/120.html
【作品名】ケータイ捜査官7 【ジャンル】ドラマ 【名前】フォンブレイバーセブン 【属性】歩くケータイ 【大きさ】携帯電話並み 【攻撃力】握力は20kg。サイズからすれば達人並み。 【防御力】人間に乱暴に投げられたりしても割と平気。 【素早さ】歩行時1km/h、疾走時4km/h。サイズからすれば達人並み。 【特殊能力】コンピューターをコントロールして制圧することができる。 射程10cmぐらい。所要時間5秒でその間セブンは無防備になる。 【長所】ソフトバンクから発売中 【短所】ケータイは投げるものではなぁ~い! vol.6 439 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2009/12/08(火) 15 01 03 ID 1ZbPrj4o ウラヌス:素の防御 クレイプ:防御のバルカンの威力がない セブン:ロボじゃない リモコン系はロボの全長分距離とるんだっけ? 441 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/12/08(火) 15 35 33 ID SS88vs3D 素の防御は大きさ相応でいいんじゃないの? フォンブレイバーってロボットだと思うが 人型自律行動型で充分ロボットと言えると思うんだけど リモコンについては、俺もロボの全長分でいい思う 442 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/12/08(火) 15 57 16 ID 1ZbPrj4o ロボではなく携帯だろ? 443 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/12/08(火) 16 03 57 ID ZjEmwPKp 確かに携帯だが広義ではロボだろ 447 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/12/08(火) 20 03 15 ID lk3js89n 442 確かに携帯なんだけど、手足があって人型の、自立行動する機械なので 参戦するには十分じゃないかと思う 462 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/12/11(金) 02 07 17 ID AhbUAK7i フォンブレイバーセブン考察 ○蚊 自爆勝ち △アシモ 倒せない倒されない ×ホイホイさん サブマシンガン負け ×コンバットさん ライフル負け ホイホイさん>アシモ=フォンブレイバーセブン>蚊
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/973.html
語り部:ベアトリス・マクスウェル エーテル能力―― 星から排出され、有機無機の関係無く、全ての物質に内包される未知のエネルギー。通称エーテル。 そのエーテルを自らの意思で自在に操って、殺して、壊して、踏み躙る事だけに特化した異能の力。 力を持たない人間……無能力者は私達、エーテル能力者を恐れる。 そして、力の低い低級能力者は力の強い、上級能力者を妬む。 誰もが恐れ、羨む異能の力……こんな力が宿ったせいで、私の全てが狂った。狂わされた。 この力は未来を切り開く力なんかじゃない……ただ絶望と、死を広げるだけの狂った力。 こんな能力があるせいで、何もかも全部、みんな、みんな、私の前からいなくなってしまった。 パパ、ママ、庭師のライコフ、メイドのアリエッタ、コックのサントス、ペットのロッソ、親友のリズ。 命以外の全てを失ったあの日から三年―― ただ死んでいないだけの無意味な命を守るために、私は私以外の他人を踏み躙り続けて来た。 今日も、明日も、明後日も、来週も、来月も、来年も、死神の鎌が私の首に振り落とされる日が来るまでずっと、きっと…… だって仕方が無い。理不尽に抗う術は無く、反抗する力も無いんだから、殺されないように殺すしか無い。 私のせいで、大好きだったあの人たちはみんな死んじゃった。死んじゃった人たちのためにも私は死ねない。 ――ソレハ、ゼンブウソ――タダノ、イイワケ――ワタシハ、シヌノガコワイ――シニタクナイ―― 嗚呼、何て私は醜いんだろう。何て私は情けないんだろう。何で――私は弱いんだろう。 帝国なんか怖いだけで思い入れなんて無いし、共和国に怨みがあるわけじゃない。 地球人類の統一なんてどうでも良い。幸せだった、あの日を返して。 ――お願いします。返して下さい。 帰ってこない穏やかで幸せな日々――それを奪い取る側の立場になったくせに返してだなんて都合の良い話。 自分勝手で何が悪い? 望んで何が悪い? 自分勝手な事を考えても、望んでもどうせ手に入るわけが無い。 せめて、心の中で都合の良い未来を妄想して何が悪い? 悪くない。悪いはずがない。 悪いのだとしたら、どうすれば良い? 無謀にも抗えば良いの? それとも死ねば良いの? ――ふざけるな。フザケルナ。フザケルナフザケルナフザケルナ―― 自分がやっている事が悪い事くらい最初から分かっている。 だけど、抗えるものなら抗っている。抗えなんて簡単に言わないで。 じゃあ、死ねって? 死ぬのが怖いって何度も同じ事を言わせないで欲しい。 怖いから、優しい妄想を思い浮かべるしか残されていないんだから、それに縋って良い筈。 みんな同じ。みんな同じように奪われて、同じように絶望したのに……何で、あの人はみんなと同じじゃないんだろう? 人間狩りに襲われて、目の前で親しい人を多くの人を殺されて、圧倒的な力で抑え付けられたのに何で折れないの? 何で反抗しようとするの? 何で戦えるの? その身に宿るエーテル量は私と同程度、戦いに関しては素人で私よりもずっと弱い。 なのに私の事を同情してくれた、理解しようとしてくれた。私と違う。 エーテルナイトの存在すら知らなかった癖に陸戦騎を奪い取って、簡単に起動させた。 そんな能力者を見た事も無ければ、聞いた事も無い。私たちと全然、違う。 無駄なのになんで? なんで違うの? ――嗚呼、どっちにしても私に殺されるから、なんでなのか聞く事も出来ないのは少し残念。 あの人が差し伸べてくれた手は救いだったのかも知れない。 なのに、それを振り払ってまで、妄想の世界に救いを求めている自分の弱さが嫌になる。 誰か、この世界から私を助け出して……私に気付いて……私はずっと此処で泣いている……! 機神幻想Endless 第二話 エーテルナイト スクレイル帝国本土から遥か南方の広大な海に浮かぶ、七つの小島。通称セブンス。 文明と、時代と共に三国が引き起こした戦争からさえも置き去りにされた楽園。 だが、その楽園も一世紀遅れで惨劇の時を迎えた。 女、子供、老人、病人、怪我人の区別無く、命ある者は全て惨殺され、まるで絨毯の様にその残骸を大地に広げていた。 どれが誰の残骸なのかも定かで無い程の死界。気が狂いそうになるような惨状に人々の無念がセブンスの大空を茜色に覆い尽くした。 そして、この世の地獄と化したセブンスに四つの醜悪なオブジェクトが屹立していた。 セブンスのエーテル能力者と“交渉”するために派遣された人型機動兵器。 スクレイル帝国の主力兵器、エーテルナイト。その一号機、陸戦騎である。 尤も、四機の内一機はセブンスのエーテル能力者、閼伽王によって奪取されている。 最早、交渉の余地など何処にも無く、後は誰が死んでセブンスの土になるか、誰が生きてセブンスから出て行くかを決める為に殺し合うだけだ。 帝国兵が駆る三機の陸戦騎は脚部のローラージェットからエーテル光を放ち、砂塵を巻き上げながら油断無く、閼伽王を包囲した。 エーテルナイト乗り――エーテルライダーとしての経験は素人同然だが、帝国兵達は閼伽王に対して一切の油断も無く、侮りもしない。 本来、陸戦騎のカラーリングはカーキ色だが、閼伽王が奪取した陸戦騎は乳白色に染まっている。 特別仕様に塗装したのでは無い――ある意味、それでも間違ってはいないが、塗料を使って色を変えたのでは無い。 エーテルナイトにエーテルを使用するという性質上、力の強い能力者が搭乗すると、搭乗者のエーテルの色に染まる事がある。 乳白色に染まった閼伽王の陸戦騎。その白濁の色こそが閼伽王のエーテルの色であり、強い力を持つ能力者であるという事を示している。 能力者としての力量は閼伽王の方が遥かに上。その厳然たる事実が彼等から慢心を完全に奪い取っていた。 だが、愛機と共に幾多の死地を踏破して来た実績、三対一という数の利が彼等の表情から悲観の色を打ち消していた。 それに閼伽王が優れた能力者であるとは言え、その能力をエーテルナイトに生かせられるか如何かは別の問題だ。 相手を侮らず、油断せず、慢心せず。さりとて、恐れ過ぎる事無く、三人の帝国兵は一撃必殺の機を虎視眈々と狙う。 竜巻の様な高速旋回。迫り来る津波の様に間合いを詰めたかと思えば、何の行動を起こす事も無く、引き潮の様に間合いを広げる。 間合いの定まらない、その動きは包囲した者に疑心と、焦りを呼び、集中力を磨耗させ、精神力を削り取る。 ――その筈だった。 「こっちは既に右の頬を殴り飛ばされてんだ! 兆倍にして返してやんよォッ!!」 猛る怒りで、冷静な思考力を失った閼伽王に、帝国兵達の動きなど意識に無い。 閼伽王にあるのは、平穏を乱した輩が不愉快で仕方が無い。だから、ブチのめす。徹底的にブチのめす。ただ只管、ブチのめす。 精々、その程度の事しか無く、相手の意図など気付きもしない。 三機の陸戦騎が間合いを詰めた瞬間、閼伽王は白濁のエーテルを背に、弾丸の如く帝国兵の陸戦騎へと肉迫した。 警戒も、躊躇も、恐れも、迷いも無く、抜刀すらせずに拳一つ構えて、砂塵を巻き上げながら一直線に駆け抜ける。 彼等はその様を見て、閼伽王の事を一つの事しか考えていないが故に、迷いも恐れも無い。だからこそ質が悪いと評した。 そして、その評価は概ね正解。と言うよりも、今の閼伽王に余計な思考を差し挟む事が出来るだけの余裕は残されていない。 コクピットと一体化したエーテルジェネレーターが、閼伽王に流れるエーテルを喰らい尽くさんと貪欲に奪い取る。 陸戦騎を操る際に消耗するエーテル量は普段能力を使う時の比では無く、まるで血液ごと抜き取られていく様な虚脱感が全身に圧し掛かって来る。 だからこそ―― 「秒殺されちまいなァッ!!」 咆哮と共に力強い足取りで大地を蹴り抜き、閼伽王は迅雷の如く勢いで正面の陸戦騎に追走する。 それを迎え撃つ帝国兵は閼伽王の陸戦騎に向き直り、腰部にマウントされた強化セラミックソードを引き抜き、斜に構えて攻撃に備えた。 更に閼伽王の背後に回った二機の陸戦騎が強化セラミックソードから水飛沫の様なエーテル光を迸らせ、閼伽王を両断せんと駆け抜けた。 それでも、閼伽王は背後から迫り来る二振りの斬撃を意に介する事無く地を蹴った。 そして、閼伽王の拳が正面に捉えた陸戦騎に炸裂すると共に、頭部への縦一文字、腰部に横一文字、二つの剣閃が閼伽王に喰らい付いた。 閼伽王が放った乳白色のエーテル光を纏った拳打は盾代わりに構えられていた強化セラミックソードを圧し折り 閼伽王に放たれた剣閃は拳同様、装甲表面を満遍なく覆う乳白色のエーテル光に阻まれ、かすり傷一つ付ける事が出来ないでいた。 エーテルナイトは搭乗するエーテル能力者の能力を増幅し、その性能を何倍にも発揮するという性質を持っている。 そして、エーテル能力はより強いエーテルによって打ち滅ぼされる。それがルールであり、摂理である。 それまでに彼等がやってきた数の暴力を質の理不尽で捻じ伏せるというものを、そっくりそのまま閼伽王に返されたのである。 「くぅぅぅたぁぁばれぇぇぇぇぇぇぇッ!!」 帝国兵の硬直は一瞬。だが、その刹那の瞬間を無限に拡張するのがエーテル能力者という存在だ。 刹那の瞬間が無限ならば、最早、目の前の障害などただの案山子でしか無く、案山子を相手に技や構えなど無用、純粋な力が一つあれば事足りる。 閼伽王は逆手に引き抜いたセラミックソードを目の前の案山子の股間から斬り上げた。 閼伽王の怒りが込められた烈火の如き苛烈な一撃は、エーテル震となって空間を蹂躙し周囲を轟音で包み込んだ。 エーテル震が鳴り止むと同時に閼伽王の一撃で、へしゃげた強化セラミックソードごと一刀両断にされた陸戦騎が地面に崩れ落ちた。 その断面は滅茶苦茶に湾曲し、切り裂かれたと言うより力任せに捻じ切ったような有様ではあるものの 電光石火の早業は陸戦騎に乗る帝国兵に断末魔の声すら上げるどころか、自らの死を知覚する暇すら与えていない。 「まずは一機……ッ!?」 閼伽王が意気揚々と声を張り上げると共に分断された陸戦騎から分断された陸戦騎から爆轟が巻き起こり、密着状態にあった閼伽王を弾き飛ばした。 生命や物質が崩壊する際に発生するエーテルの突風――エーテルバーストと呼ばれる現象である。 本来ならば周囲に影響を及ぼす事は無く、エーテル能力者ですら意識を傾けなければ知覚するのも困難なのだが エーテルナイトの力で増幅されたエーテル能力と同様、エーテルバーストもまた増幅され、爆轟となって閼伽王を襲い掛かったのである。 閼伽王にとっては災難だが、帝国兵にとっては状況を打破する千載一遇の好機。 そして、エーテルナイトが破壊された際に発生する強烈なエーテルバーストの事を熟知している帝国兵達は 既に安全圏に離脱し左手に空間が歪曲する程の高密度のエーテルを収束していた。 エーテルを纏った陸戦騎の左手首の手甲がスライドし、排煙と共にエーテル発生装置の姿が露になる。 そして、発生装置から三叉槍の様な刀身が形成され、空を引き裂く甲高い音と共に閼伽王に向けて放たれた。 「ッざけてんじゃねぇぞ!!」 やぶ蚊の様に飛び交う二つの飛刃を紙一重の所で身を捩って避けると、鋭く尖ったエーテルの刀身は墓標の様に大地に深々と突き立ち、その動きを止めた。 だが、閼伽王が一息吐いたのも一瞬。 武装名、エーテル制御式ショットランサー。 エーテルによって形成された刀身を持ち、エーテルによって制御される無線遠隔攻撃装置である。 その名が示す通り、エーテルによって形成された不可視の腕に地面から引き抜かれ、再び、勢いを取り戻して閼伽王に襲い掛かる。 立ち上がる暇も無く、地面を転がりながら乳白色の装甲を泥で汚しながら、必死に逃げ惑う閼伽王を嘲笑うかの様にエーテルによって制御されたランサーは 常に最高速度を維持しながら、慣性を無視した軌道で獲物を狙う蛇の如く閼伽王を確実に追い詰めていく。 「しゃらくせェッ!!」 逃げ続けていては埒が開かないと、フラストレーションを溜め込んだ閼伽王は、怒声と共に背中のバネを使って宙を舞う。 その瞬間、ショットランサーの軌道が変わり、閼伽王を刺し貫かんと二条の閃光が空を走った。 そして、閼伽王が装甲全体を補強すると同時に二本のショットランサーが陸戦騎の両肩に突き刺さる。 閼伽王は生唾を飲み込むと同時に機体全体に回したエーテルを両肩に収束し、損傷を最低限に押さえ込むんだ――というのが閼伽王の目論みだった。 だが、閼伽王がエーテルを操作するよりも早く、両肩を捉えたショットランサーは間抜けな音を立てて地面を転がった。 「ああ?」 決死の覚悟とは裏腹にあまりにも間の抜けた結果に閼伽王は肩透かしを食らったような表情を浮かべる。 不発か? 否――帝国兵が企てた計略は、ほぼ完成していると言っても良い。 ただ閼伽王の意識をショットランサーに向ける。それも可能な限り長く。それが彼等の目的だった。 陸戦騎が弾き飛ばされる程のエーテルバーストに驚き戸惑った閼伽王が、愚直な怒りさえも忘れた事を帝国兵達は見逃さなかった。 そこで思考を乱した閼伽王に感知されるだけの膨大な量のエーテルを収束し、その警戒心を煽る。 案の定、閼伽王は膨大なエーテルの収束直後に放たれたショットランサーが一撃必殺の威力を持つエーテル兵器であると誤認した。 だが、事前行動とは裏腹にショットランサーに込められたエーテルは、発動に必要な最低限度の極僅かなエーテルのみ。 クラス分けされる程に差がエーテル能力者を相手に、不利を覆すのは並大抵の事では無い。 ましてやセラミックソードの直撃にも耐え得る閼伽王を相手に、ショットランサーでは威力不足であるのは彼等にとっても承知の上の事だった。 それでも、彼等に撤退の二文字は無い。何故なら、その不利を覆すだけの威力を持った兵器が陸戦騎に装備されているからである。 エーテルキャノン――搭乗する能力者のエーテルを物理的な破壊衝動に変換し撃ち出す、陸戦騎に装備された唯一のエーテル兵器である。 能力者の力量に大きく影響される上、発射準備にかなりの時間を要し、能力者に与える負担も決して無視出来ない程の物だが 大きな代償と引き換えに、大半の戦闘兵器を一撃で消滅させて有り余る圧倒的な火力を誇り、正しく切り札という形容が相応しい兵器である。 そして、帝国兵の思惑通り、閼伽王が長々とショットランサーに気を取られていた隙に、悠々とエーテルキャノンの発射準備を終える事が出来ていた。 陸戦騎の左腕に収束されていた膨大なエーテルはエーテルキャノンの砲口に飲み込まれ、二機の陸戦騎の姿を陽炎の様に揺らめかせた。 次の瞬間、無音の光芒が二条の閃光となって閼伽王の心臓を喰らい尽くそうと獣の様に宙を駆ける。 刹那――視界がセピア色に染まり、閼伽王は流れる時間が遅くなっていくのを感じた。 (どうせ殺るなら一思いに一気に殺りやがれってんだ……!) 時間の流れが遅く感じられても、自分の動きが早くなったわけでは無い。 ゆっくり――ただ只管、ゆっくりと眼前に迫り来るエーテルキャノンの弾光に閼伽王は内心で悪態を吐いて、破壊衝動の波に呑み込まれた。 だが、帝国兵の表情に喜色の色は無く、エーテルキャノンの再チャージを開始する。 エーテルナイト同士の戦いが始めてという事もそうだが、力が増幅された上位能力者との差が大きく広がっている事を嫌という程思い知らされた直後である。 既に彼等の頭の中では、今の攻撃で閼伽王を撃破出来ていなかった場合の対応策が頭の中で練られ始めていた。 そもそも、撃破出来ていない事はエーテルバーストが発生していない事からも明らかであった。 良くて虫の息。最悪の場合、無傷で反撃の機を伺っているという可能性も充分すぎる程に考えられる。 もしも、これで閼伽王が無傷だとしたら、必殺の機会を逃した彼等に勝ち目は無くなったと言っても良い。 今の一撃が彼等に出せる最大の一撃で、何をどう足掻いても先程以上の威力を出す事も、奇襲を仕掛けるのも困難だ。 何の脈絡も無く、唐突にBクラスのエーテル能力者にクラスアップすれば話は別だが、そんなに都合の良い話は滅多に無い。 そして、恐れていた最悪の事態が起ころうとする兆しが見え始め、彼等は思わず息を呑んだ。 セブンス全体を覆い尽くす程の急激なエーテルの高まり。大地から立ち上る、乳白色のエーテル光。 これが閼伽王から放たれているエーテルである事は把握出来るものの、閼伽王の気配は愚か、陸戦騎の姿すら何処にも見えない。 エーテルの出所を探ろうにも閼伽王のエーテルはセブンス全体に満遍なく、均一に広がっており、何処にでも居るような錯覚を起こしそうな程であった。 一回り近く年下の上官に縋り付きたくなる様な気弱な感情を必死に押し殺し、二体の陸戦騎は無言で背中合わせに立って全周囲を警戒する。 だが、一度自覚した恐怖を容易く払拭出来る筈も無く、背後から閼伽王が剣を振り被っているのではと根拠の無い疑心を抱く始末だった。 恐怖を自覚出来る程度には冷静なのだと自身を言い聞かせ、押し潰されかけた自らの意思を奮い立たせようとするが、その思考こそが恐怖に屈した事を意味する。 現に恐怖に破れたが故に彼等のすぐ傍で息を潜めている閼伽王に気付く事が出来ないでいたのだから。 「間一髪って奴かぁ? マジで死ぬかと思ったぜ……流石に年がら年中戦争やってる兵隊サンは場慣れしてやがんぜ」 閼伽王は陸戦騎のコクピットの中で冷や汗を拭う様な仕草をして深い溜息を吐いた。 「けど、使い方は把握した! 一方的にぶん殴られんのは終わりだ、な?」 必要以上にエーテルを膨張させ、帝国兵の恐怖心と、警戒心を煽り、検討違いの方向を警戒させる。 そして、湧き水の様に溢れるエーテルで砲弾を鋳造し、思考の海に浮かぶ砲身へと装填し、錆付いた撃鉄を火花と共に引き落とす。 照準を合わせる必要は無い。三者の距離は殆ど零距離。外しようが無い。 「ブッ飛べェェェェェェェッ!!」 閼伽王の咆哮と共に二機の陸戦騎の足元に亀裂が走り、その破片を押し上げるように乳白色の巨大な光芒が天を貫いた。 そして、光の昇天に呑み込まれた二機の陸戦騎が爆散し、大規模のエーテルバーストを引き起こした。 「畑弄りに能力を使っていたのが、こんな所で役に立つたぁな……世の中、何が役に立つか分かりゃしねぇな」 閼伽王は得意気な口振りで、地中から飛び出し、地表へと降り立った。 エーテルキャノンに飲み込まれる瞬間、閼伽王は足元の地面を溶かし、地下へと逃れ、帝国兵の足元という絶好の射撃ポジションを確保していたのだった。 セブンスに流れ着いて三年。途切れる事無く、能力を使ってセブンスの畑を耕してきた閼伽王にとって地質を操る程度、造作も無い。 それでも、気を抜ける様な状況では無い。セブンスに降り立ったエーテルナイトは四機。そして、始末した帝国の能力者は四名。 そして、セブンスに訪れたエーテル能力者は五名、後一人。セブンスの人間狩りを指揮するエーテル能力者―― 「ベアトリス……何処に行った……?」 一方、ベアトリスはアルトールの小屋から一歩も動かずに閼伽王の戦いを眺めていた。 同格の力を持つとは言え、つい先程、エーテルナイトの存在を知ったような物知らずが陸戦騎を帝国兵から奪取し 何の訓練も受けていないにも関わらず、容易く、陸戦騎を起動させ三人の帝国兵を撃破。 「そんな捕縛対象、見た事も聞いた事も無い……アイツが共和国に渡ったら、帝国は困った事になる……」 少数で戦火を広げ、戦渦を巻き起こし、戦果を得る力を持つ、エーテルナイトの台頭により帝国は圧倒的な力を身につける事が出来た。 それに対する共和国は技術力で帝国に遅れを取っているものの、潤沢な資源、物資、物量だけで帝国と拮抗出来るだけの力を持ち合わせている。 初期量産型の陸戦騎など帝国にとって人間狩りの部隊に宛がうか、廃棄処分して再利用する程度の価値しか無い。 だが、閼伽王が陸戦騎を手土産に共和国へと流れ、大量生産などされでもしたら帝国には打つ手が無くなる。 ベアトリスにとって帝国がどうなろうと知った事では無いが、そうなった場合、彼女に科せられる処遇は――ベアトリスは考えたくも無いと首を振った。 「おいで……」 その小さな呟きに応え、空の彼方から風を越え、雲を突き抜け、天空を自在に舞う第二の騎士がベアトリスの前に降り立った。 姫君に頭を垂れる騎士の様に肩膝を付いて、ベアトリスの搭乗を待つエーテルナイトは細身のシルエットをしており、陸戦騎の様な質実剛健さは無い。 だが、搭載されたエーテルジェネレーターは、陸戦騎に搭載されている物よりも遥かに大容量で、エーテルの循環効率に優れている。 更に血管の様に張り巡らされたオリファルコンの含有量は、陸戦騎の二十パーセント増で、搭乗する能力者のエーテルを余す事無く生かすことが出来る。 Bクラス以上のエーテル能力者の中でも、一際優れたエーテルライダーに支給されるエース専用エーテルナイト―― 「行くよ、空戦騎」 ベアトリスがコクピットに乗り込み、自身のエーテルを流し込み循環させると迷彩模様の空戦騎の装甲が深緑に染まり、額の単眼が深緑の光を放った。 背中のドラム缶の様な形状の二基のブースターから深緑のエーテル光を迸らせ、その名が示す通り空へと飛翔する。 そして、左腕に携えた長槍、強化セラミックランスを構え、閼伽王へと落雷の様に肉迫する。 「そのエーテルはベアトリスか!?」 雷光の如く勢いで急接近するエーテルを察知した閼伽王は、振り向き様に叫びながら剣を水平に振り抜いた。 間一髪――背後から陸戦騎を貫かんとしていた長槍は閼伽王の剣に阻まれ、火花を散らしながら陸戦騎の左肩を掠めた。 硬直する両者。閼伽王はベアトリスが二の手を使うよりも早く、更に一歩深く踏み込みながら、一刀両断にせんと縦一文字に剣を振り落とす。 「やっぱり、騎士の能力者を相手に格闘戦は不利……」 ベアトリスは臆するわけでも無ければ、口惜しげにするわけでも無く、淡々と述べながら残像を残して、斬撃の間合いから逃れる。 「逃がすかよッ!!」 閼伽王の叫び声と共に浮遊していたショットランサーが疾風を切り裂き、空戦騎に襲い掛かる。 「でも、騎士の能力者が魔弾の能力者に飛び道具を使うのは無謀――」 空戦騎の右腕に構えられたエーテルライフルに深緑のエーテル光が収束され、ショットランサーを飲み込んで尚、陸戦騎を穿たんと疾駆する。 「チッ……騎士だの、魔弾だの意味分かんねぇっての!」 閼伽王は吼えながら脚部のローラージェットから、乳白色のエーテル光を吹かしながら、空戦騎の銃撃を避け続ける。 怒鳴ってみせたは良いが、閼伽王の内心は焦りの色が見え初めていた。空戦騎の機動力は陸戦騎を遥かに圧倒している。 その上、空に逃げられたら陸戦騎には追撃の手段が乏しいのにも関わらず、空戦騎のエーテルライフルのチャージ時間は無いに等しい。 「対抗する手段はコイツだけか……」 左肩のエーテルキャノン。陸戦騎を一撃で葬り去る程の威力を持つが、チャージに時間がかかり過ぎる。 エーテルライフルを避け続けながら、チャージを完了させる事が出来るのだろうか? 両者の能力者としての力は同程度。一撃で仕留められる程、容易い相手なのか? 「まあ……知った事じゃねぇよなァッ!!」 一々、考えていては知恵熱を起こして脳が壊死してしまう。そして、閼伽王は自分の頭で考えても結果に繋がらない事を自覚している。 だからこそ、取り合えずやってみれば良い。なる様になるだろうという短絡思考で、迷う事無く動き出す事が出来る男なのだ。 閼伽王はローラージェットから出鱈目な軌跡を描きながら、空戦騎から断続的に放たれる銃弾を避け、エーテルキャノンのチャージを開始する。 「初めてでよく粘る……でも、もうこれまで」 「勝手に決め付けてんじゃねぇ! 俺はお前等なんざとは違うんだよォッ!!」 「そうだね……本当にそう思う。能力もだけど心も強い。此処まで歯向かえる能力者と出会えたのは初めて。 でもね、私も死ぬのが嫌だから……私が生きるために死んで……私から逃げる事が出来ても、もう道は無い」 「勝手に決め付けて、勝手に諦めて、勝手に帝国なんぞに負けてんじゃねぇ! 死ぬのが嫌なら歯ァ食い縛って死に損なえ! 先に道がねぇんなら、テメェで切り開け! テメェに宿ったエーテル能力は何だ! ただの貧乏くじか! テメェより弱い奴を殺す力か! それとも何か! テメェより強い奴に尻尾ふる力かよ! そんな奴等を相手に誰が逃げるかよッ!!」 「五月蝿い! 何も知らないくせに……!」 「自分の事を知らせようともしねぇ他人の事なんざ知るか! 辛いんだったらなぁ! 辛いから助けてくれって腹の底から叫んでみせろ! 勝手に絶望して、勝手に塞ぎこんで、勝手に自己完結してんじぇねよ、馬鹿餓鬼が! 心を殺さなくたってなぁ! 道なんざいくらでも選べんだよッ!」 そして、閼伽王は陸戦騎のローラージェットを停止させ、その動きを止める。 左肩のエーテルキャノンの砲口には乳白色のエーテル光が球状に収束され発射されるその時を今か、今かと待っている。 「ベアトリス。これで最後だ。俺は進むべき道を見つけた。お前はどうする?」 ベアトリスは閼伽王の問いかけに対し、エーテルライフルを下ろして応えた。 「私に同情してくれるって、私の言う事なら何でも聞くって言ってくれて……私の事を理解しようとしてくれてありがとう。 今も私を救い出そうとしてくれてありがとう……私と同じ立場なのに……本当に嬉しかった……」 「ベアトリス……」 ベアトリスの空戦騎が纏うエーテルが苛烈な物から穏やかな物へと変わり、閼伽王の表情が柔らかくなる。 「でも、ごめん」 ベアトリスのエーテルは穏やかでありながら、静かに研ぎ澄まされた殺気へと変貌し、ライフルの銃口には空間が歪んで見える程の高密度のエーテルが収束されていた。 「これが私の選んだ道……後には引けない。だから……さようなら」 ベアトリスにとって閼伽王の言葉はあまりにも甘美な猛毒の様なものだった。後一つ、小さく些細な切欠があれば帝国を棄ててしまいそうになる程の。 だから、ベアトリスは張り裂けそうになる想いを殺意で押し退け、言の葉を銃弾に変えて、閼伽王と共に行く道を撃ち貫いた。 「馬鹿餓鬼が……!」 閼伽王はこれ以上の説得は無意味だと悟り、空戦騎から放たれる光弾を飲み込む程の巨大な光芒を放った。 「本当にごめん……そして、騎士の能力者が、飛び道具で魔弾の能力者に戦いを挑むのは無謀だと言った」 光芒と光弾が衝突する寸前、光弾はその軌道を変え、光芒を縫う様に駆け抜け、陸戦騎のエーテルキャノンを破壊する。 そして、空戦騎へと迫る光芒にベアトリスは眉一つ動かさずにエーテルライフルを構え、光弾では無く、光芒を放つ。 空戦騎から放たれた光の柱はエーテルキャノンの光芒ごと、一瞬にして閼伽王の陸戦騎を飲み込んだ。 巨大なクレーターを穿たれ、セブンスから平穏な日々を謳歌していた島民達の痕跡が消滅し クレーターの中心地では、装甲を欠落させ、満身創痍の体となった陸戦騎が膝から崩れ落ちた。 とは言え、行動不能に陥っただけで閼伽王自身の死には程遠く、ベアトリスは感心の中に苛立ちを含ませた。 だが、それも此処までだ。ベアトリスは躊躇う事無く、エーテルライフルの銃口を陸戦騎のエーテルジェネレーターに向ける。 「バイバイ……嫌いじゃなかったと思うよ」 そして、ベアトリスが無感情にトリガーを引こうとした、その瞬間――空戦騎の右肩が爆発を起こした。 「エーテル攻撃……!」 陸戦騎が戦闘不能に陥った今、ベアトリスの空戦騎にエーテル攻撃を仕掛けられる相手は限られている。 と言うよりも空戦騎に攻撃を仕掛ける命知らずなど一陣営しか存在しない。 「共和国の戦闘航空機……今なら勝てると思ってるんだ……随分と甘く見られている」 ベアトリスが戦いに身を投じるようになって三年。閼伽王の様な敵と戦うのは初めてだったが、空を覆い尽す共和国の部隊と対峙してみて分かった事がある。 「他人の命なんて軽いくらいで丁度良い……」 自分を理解しようとして、必死に声をかけてくる閼伽王を撃った時の気分は最悪以外の何物でも無く、後ろめたさしか残らなかった。 だと言うのに、自分に殺気を向ける共和国の兵に向けて放つエーテルライフルのトリガーは何と軽い事か。 「だから……殺してあげる」 四機の陸戦騎を失った上に捕縛対象の閼伽王は死んだも同然。せめて、共和国の一部隊くらいは滅ぼしておかなければ割に合わない。 ベアトリスの呟きと共に空戦騎からエーテル光が放たれ、空を深緑に染めると同時に共和国の戦闘航空機――ズィーダーは一斉にエーテルキャノンを発射する。 刹那――ベアトリスはエーテルキャノンの弾道、弾速を読み取り、迫り来る弾幕に真正面から飛び込んだ。 そして、砲撃の軌跡が空戦騎の肩や脇、腰の隙間を、紙一重の所で通り抜けていくのを尻目に航空機部隊の中心に躍り出た。 一斉に散開しようとする戦闘航空機の中から、僅かに逃げ遅れた者がセラミックランスをコクピットの中に叩き込まれ、ズィーダーの中で木端微塵に弾け飛んだ。 更に空戦騎は錐揉みしながらエーテルライフルのトリガーを引き、放射線状に光芒を放ち、敵部隊の半数を撃墜し、速度重視の弾丸を鋳造し三連射。 何と無く逃げ足が遅い気がする――曖昧な判断基準で選ばれた敵は必死に回避運動を取ろうとするが、光弾はその軌道を自在に変え、猟犬の様に追い立てる。 そして、光弾を振り抜き、雲を抜けた瞬間、ズィーダーのキャノピーに差す陽光が、暗い影に覆われて途切れ――パイロットの意識は途切れた。 「この程度で私に挑むなんて、とんだ馬鹿……」 ベアトリスの表情から疲労の色は隠せないが、ズィーダーのエーテルキャノンでは脅威足りえるには程遠い。 エーテル兵器とは言え、エーテルジェネレーターで増幅されていなければ、通常兵器に毛が生えた程度の性能しか無いのだから。 それでも、共和国の兵士達は健気にもエーテルキャノンで必死に応戦しようとする。 ――強いエーテル能力は、より強いエーテル能力によって捻じ伏せられる 一斉に逸れた筈のエーテルキャノンの軌跡が鞭の様に撓りながら突如と軌道を変え、豪雨の様に空戦騎に降り注いだ。 閼伽王を撃った事による動揺、能力と性能差のある相手への慢心がベアトリスを窮地に追い込んだ。 「何……!?」 微弱なエーテルの中にその姿を隠していた禍々しいエーテルが急速に膨張し、深緑の空を白濁に染めていく。 だが、閼伽王は未だ陸戦騎と共に沈黙を保ったまま。閼伽王と同じエーテルの色を持ち、尚且つ、ベアトリスのエーテルを侵食する程の力の持ち主―― 「ドゥアーッハッハッハッハッハーイ!! どうよ、帝国の小鳥ちゃんよぉぉぉぉお!!」 「……気持ち悪。濃い、暑苦しい、汗臭い」 実際に顔を合わせたわけでは無く、ただの印象でしか無いが、その印象は概ね正解と言えた。 小麦色に焼けた肌は鍛え抜かれた筋肉で脂ギッシュにテカリを放っており、ズィーダーのコクピットの中で缶詰の様に抑え付けられている。 そして、顔はバナナの様に長く弧を描くように反っており、顎は二つに割れ、顔の半分程もあるのでは無かろうかという程の巨大な口に図太い眉毛。 鶏の鶏冠の様に立派にそそり立つ金髪のモヒカンはズィーダーのキャノピーで押し潰されていた。 これをベアトリスの言葉で簡潔に一言でまとめると―― 「不快」 「人の事を気持ち悪いだの不快だのとよぉぉぉお!! このAクラス能力者ワーグナルド・ミッテルシュナウダー様を舐めてんのかあああん!?」 「名前もウザいし、そもそも、聞いてない」 不快とは言え、Aクラスのエーテル能力者である事には変わりは無い。 そして、その実力はエーテルジェネレーターで能力を増幅していないにも関わらず、仲間の弾丸を操作し、空戦騎を追い詰めた事から察するに余る。 だが、それ以上に―― 「顔見てないけど、顔が生理的に無理」 ベアトリスは空戦騎のエーテルジェネレーターからスパークが迸っているのも無視して、侮蔑の言葉と共にエーテルライフルをマシンガンの様に連射した。 ワーグナルドは少女の声で自身を徹底的に否定され悲しみに暮れている所に銃弾を打ち込まれ、慌てて回避に転じる。 「あんまり手間ぁかけさせるなよォ? 大人しくソイツを渡せば、上には従順だったって報告出来るんでなァ!」 「こうも同じだと本当に嫌になる……」 つい先程の自分を焼き増したようなワーグナルドの言葉にベアトリスは不快感を露にした。 こんな不快な男と同じ言葉を発していた事に――閼伽王は今の自分と同じ気持ちになっていたのかと思うと―― 「……本当に不快」 「いい加減に黙れやァァァァァアア!! お前の言葉は地味に傷付くんだよォ!! そういう事を言っちゃダメって、ママから言われなかったんかぁ!? ああん!? 十八歳未満お断りなお仕置でもされたいんか、アアン!? 寧ろ、ヤんぞゴルアアアアッ!!」 「下衆」 ワーグナルドの怒鳴り声を一言で一蹴し、ライフルの銃口に収束したエーテルを散弾の様に拡散し、弾幕の網でワーグナルドを封じ込める。 「共和国のAクラス能力者ならミスの埋め合わせに丁度良い……私が生き残るために死んで……それに不快」 「まァだ言うか、この雌ガキャアッ!!」 空戦騎のライフルの銃口に深緑のエーテルが、ズィーダーのキャノンの銃口に乳白色のエーテルが収束され、まさに一触即発の状況。 そんな最中、空戦騎のコクピット内に新たな命令が届き、その命令内容にベアトリスは驚いた様な表情を浮かべた。 「現作戦及び、戦闘行動を破棄並びに中断。即時撤退命令……Sグレードの最優先命令……どう言う事……?」 だが、ベアトリスが疑問を差し挟む余地は何処にも無い。 どんな状況下にあろうとセブンスに放置されている四機の陸戦騎の残骸を放置してでも所属基地へと戻れ。それが、ベアトリスに下された命令である。 「エーテルナイトを棄ててでも戻って来い……帝国にとって私はまだ利用価値がある……まだ……生きていられる……」 「なァにをブツブツ言ってやがる!! ぶっっっっっ殺すぞぉぉぉぉああ!!」 「勝手に殺して、死んでいれば良い……下衆に付き合っていられない……」 ベアトリスは空戦騎を反転させ、空間が捻じ曲がりかねない程のエーテル震を巻き起こして、空の彼方へと飛び去った。 「暴言吐くだけ吐いて逃げんのか!? おおい!!」 ワーグナルドが叫び終わった頃には既に空戦騎の姿は芥子粒程の光点になるまで遠ざかっている。 追いかけようにも単機で帝国本土付近の海へと接近する程、無謀な男でも無い。 気を取り直したかの様な表情で、セブンスに穿たれた巨大なクレーターの中心地に横たわる陸戦騎を睥睨した。 「陸戦騎四機分の残骸に死に損ないのBクラスが一人か……」 セブンスのエーテル能力者、閼伽王の存在に気付いていたのは共和国も同じだったが、立地の都合上、帝国を出し抜くのは不可能だった。 其処でワーグナルドは、この事態を静観しつつも、彼の権限で動かせる兵力をベアトリス達に勘付かれない地点に配置させていた。 そして、セブンスで始まった戦闘は彼にとって非常に好都合なものだった。 閼伽王の手によって三機の陸戦騎が撃破され、閼伽王の陸戦騎も比較的綺麗な状態で撃破された。 彼等にとって一番厄介だった空戦騎と、ベアトリスは閼伽王との戦闘でエーテルを消耗し、精神状況も決して良好では無い所まで追い詰められていた。 残った陸戦騎の能力者も消耗状態。貴重なエーテルナイトのサンプルを手に入れる潜在一隅のチャンスが到来したというわけだ。 「空戦騎も欲しかったんだが……まあ、一先ずは成功だなぁーハッハッハッハァッ!!」 誰も為し得る事の出来なかったエーテルナイトの鹵獲。与えられる恩賞は如何程の物かを想像して、込上げる笑いを堪える事無く、大空に大きな笑い声を鳴り響かせた。 一方、帝国では―― 下士官の軍服に身を包んだ若い帝国兵が基地司令の執務室で、虚空に映し出された共和国の将官の立体映像と向かい合っていた。 「其方にエーテルナイトのサンプルと、野良を送った……G計画の進捗はどうなっている?」 「陸戦騎の鹵獲という切欠を得た今、長く見積もっても二ヶ月といった所だ」 「取り合えず、十機程完成させたら此方を襲わせろ。性能を確認しておきたい」 「了解した……相変わらず、随分な暴れようだな?」 帝国の下士官の背後には、帝国の将官や下士官達の骸が折り重なり、壁や天井には、おびただしい量の鮮血が飛び散り、あるいは滴り落ちていた。 「芝居に夢中になり過ぎる癖があってな。偶には塵を塵扱いしておかなければ、本当の自分を忘れそうになるのでな」 「……二ヶ月以内にGによる強襲を仕掛ける。そのつもりでいろ」 帝国の下士官は悪びれた様子も無く、おどけた態度で肩を竦めていると共和国の将官は呆れた口振りで通信を終了した。 「き……貴様……共和国のスパイか……!」 その一部始終を見ていた帝国兵が骸の山から這い出て、呼吸の乱れた荒い声を上げた。 自身の物か、それとも、他人の物かも分からないおびただしい量の血液に全身を染め上げた、その姿は地獄から現れた亡者の様にも見える。 「おやおや……すまんな」 スパイの容疑をかけられた帝国の下士官は、その様が無性に愉快だったらしく、目を細めて、口角を吊り上げ―― ――殺し忘れていた そして、紅い血肉が弾け飛び、新たに鮮やかな紅が執務室を塗り潰した。 【次回予告】 ヴィルゲスト共和国本土に運び込まれる四機の陸戦騎の残骸と、閼伽王。 遂に共和国はエーテルナイトの開発に大きな一歩を踏み出し、帝国に対し反撃の狼煙を上げた。 その最中、閼伽王は時代の影で、人を喰らう異形の群れと戦う学徒――君嶋悠との出会いを果たす。 機神幻想Endless 第三話 覚醒者 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) + ... 名前
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/10845.html
777 -スリーセブンー 登場人物 コメント 小沢としおによる漫画作品。 登場人物 アギルダー:マスクマン コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/eurekamyslot/
マイスロ詳細 ミッション 称号 キャラクターカスタム エピソード 楽曲BGM 設定推測を更新しました。 ミッションリストついに完成!ご協力ありがとうございました! ミッション一覧はこちらから 情報提供ありがとうございます!皆様のおかげで成り立っています。感謝です。 ちょっとだけミッションを見やすくしたつもりですが提案があればがんがんコメント下さい。頑張って編集します! エピソード&楽曲BGM&キャラクターカスタム 完成しました。ご協力ありがとうございました! 何か違いがあればコメント欄までお願いします 称号カスタム 4 . 9 . 11 情報募集中 称号カスタム一覧はこちらから 公式 http //www.sammy.co.jp/japanese/product/pachislot/eureka2/ 導入日 11/5~ 交響詩篇エウレカセブン 2013年10月25日~2013年11月28日まで全50話 無料配信中 http //www.b-ch.com/contents/feat_eureka2/ *注意* 携帯&スマホを見やすくしたいと思いましたのでTOPに画像貼り付けを辞めました。 編集して下さいる方もTOPには画像を張らない方向性でお願いします。
https://w.atwiki.jp/gunvoltsou2ch/pages/106.html
追加コンテンツ「最強への挑戦」で追加される、ミッション「EX凍結都市」のGV編のボスです。 本来は本編GV編の真のラスボスなので、一応ネタバレ回避をしております。 “能力者を滅する者(セブンス・スレイヤー)”アキュラ(CV:増尾興佑) 今作の主人公である14歳の少年。どの勢力にも属さず、皇神グループと能力者に対し強い憎悪を向ける“能力者を滅する者(セブンス・スレイヤー)”。 能力者はいずれ能力を持たない人間を脅かす存在になると考え、個人で能力者たちを倒して回っている。 能力者たちの能力因子サンプルを回収・解析し、彼らの第七波動を擬似再現した特殊装備を操り、ガンヴォルトの前に立ちはだかることとなるアキュラ。 第七波動(セブンス)を持たない普通の人間ではあるが、独自の技術力と天才的な戦闘センスにより並の能力者を上回る戦闘力を有している。 EX凍結都市のボス。 スーパーアキュラEX本編からの変更点 攻撃接触事故[30] 斜め上ブリッツダッシュEX→急降下EX[80] グリードスナッチャーEX (立ち)[60] グリードスナッチャーEX (ジャンプ)[60] ダッシュEX[20+60] ブリッツダッシュEX[20+60] スペシャルスキル:ファイナルラストドップラーEX[ロックオン 30,急降下のみ 40?,1体 45?,2体 70,3体 95,4体 即死] ボイス スーパーアキュラEX アキュ「神へ祈る間も無く、ここで死ね! ガンヴォルト!!!」 シアン「やめてっ!!GVはわたしが守るっ!! 」 最初からスーパーアキュラの状態で戦闘開始。 電子の謡精の加護が無いのに、スーパーナントカ人的なオーラを放っている。 とにかくスピードが光速い。 アキュラ編の主人公アキュラくんと戦っているのか?と錯覚するほどのスキのなさである。ガンヴォルトEXほどの理不尽さは無いものの、純粋にひたすら強い。 今回はダッシュ・ブリッツダッシュに引っかかりやすくなっているため、即席の無敵時間がもらえる吼雷降を温存しておこう。 またボスの猛攻とスキのなさを考慮すると規定タイムが厳しく、チキンプレイをしていると高得点はまずもらえない。 時には自ら近づいてロックオンを行う勇気が必要。 回復手段はヒーリングヴォルトしかない。一発のダメージが高いので、回復は早め早めに行おう。 耐久力 1段階 688 2段階 656 3段階 656 計 2000 本編からの変更点 攻撃力が若干高い。 スピードが非常に光速い。 急降下リロードを第1段階から使用してくる。 ファイナルラストドップラーは幻影の順番がランダムになり、即死効果付き。 攻撃 体力が2/3、1/3になった際にリロードを行い、EPを回復する。 接触事故[30] 斜め上ブリッツダッシュEX→急降下EX[80] 第1段階から使用。 ややジャンプした後、斜め上の画面外へブリッツダッシュ。壁に当たった場合は壁蹴りをして画面外に飛ぶ。 GVが接触しなかった場合、少し間をおいてからGVを狙って画面外から急降下する。同時にリロードしてEPを回復する。 無理にジャンプせず地上にいれば斜め飛びは回避可能。急降下は地上を走って同じ所に居なければ回避可能。 アキュラの着地位置を中央付近にさせないように注意。 今回はこの攻撃が数少ないロックオンチャンス。着地時の衝撃波に攻撃判定はないので、着地点の真横でアキュラを待ち構えよう。 着地時に霆龍玉をお見舞いすれば、強制オーバーヒートによりロックオンしやすくなる。 グリードスナッチャーEX (立ち)[60] その場で3発ずつ2回撃ってくる。 雷撃鱗のホバリングを使い上手く滞空してかわす。 状況次第ではホバリングでそのままアキュラを飛び越えて、ロックオンしてもよい。 グリードスナッチャーEX (ジャンプ)[60] ジャンプして1発、地上で1発打つ。 ジャンプで上手く間を通ってかわす。 ダッシュEX[20+60] 地上で前方向にダッシュする。 接触するとロックオン状態になり、回避不能のロックオン射撃を行ってくる。 今回はこれに引っかかるだけでも致命傷になりかねない。 ブリッツダッシュEX[20+60] 第2段階から使用。 ややジャンプした後、広いV字軌道か、まっすぐ進むブリッツダッシュを行う。 接触するとロックオン状態になり、回避不能のロックオン射撃を行ってくる。 今回はアキュラが中央に寄りがちなため、地上にいてもV字に接触してしまいやすい。まっすぐのダッシュは地上にいれば当たらない。 ジャンプ時にグリスナ発射音が聞こえないのが判別のポイント。間に合わないなら画面端から離れた位置で吼雷降の無敵時間を使ってしのぐ。 グリードスナッチャーの直後に使用してくると回避困難。第2段階以降は常に警戒しておくこと。 スペシャルスキル:ファイナルラストドップラーEX[ロックオン 30,急降下のみ 40?,1体 45?,2体 70,3体 95,4体 即死] 「討滅する…」 世に仇たる天魔を滅する この身が罪に塗れても 咎ある魂よ、無へと還れ 「FINAL LUST DOPPLER(ファイナルラストドップラー)」 「舞い踊れ…!」 スキルカットインはロロが居ないバージョンになっている。 第3段階から使用。通常技を織り交ぜながら何度も使用してくる。 今回は4体全てを喰らってしまうと即死。 幻影の順番はスーパーアキュラとは異なり、完全にランダムになっている。 しかし幻影の出現順に攻撃してくることは変わらないので、出現した順番をしっかり覚えておかなければならない。 ボイス リロード・急降下 はぁっ! グリードスナッチャー(立ち) 奪い取れ! グリードスナッチャー(ジャンプ) はっ! ゲージ1本撃破 貴様には負けん! ゲージ2本撃破 ミチル…俺は…勝つ…! ファイナルラストドップラー 討滅する… ファイナルラストドップラー!舞い踊れ…! 撃破時 ぐっ…
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2495.html
魔法少女リリカルなのは ULTRA SEVEN story 第二話 ランナウェイ それは太陽のように熱く、太陽のように真っ赤な巨人であった。突如として現れた 巨人は咆哮をあげる怪獣に勇猛果敢に迫り、怪獣も巨人の接近に気がついたのか、 今以上の雄叫びをあげ、巨人を迎え撃つように走り出した。二つの巨体が走るたびに 地響きがおき、周辺の森に住む動物が騒がしく暴れ、逃げ出してゆく。 巨人は理性を殆ど持たない怪獣に飛び掛り、肩を掴んで身動きを封じようとした。 しかし、怪獣も大人しくするはずも無く、大きく体を揺らすと巨人の腕を振り払う。 さらにそれが気に触ったのか、短いが太く強靭な腕を巨人目掛けて振り下ろす。巨人 はすぐさま振り下ろされた腕を受け止めると、そのまま怪獣の腹に蹴りを入れ、怯んだ隙を狙って怪獣の頭に何度もチョップを食らわせる。 『ダァアア!』 『ゴオオォォォ!』 「こんな巨大な戦いがあるなんて……」 「真竜クラスの竜でもここまで巨大なものは存在しません。これが……怪獣」 両者は雄叫びを上げ、肉弾戦を続ける。そんな光景を目の当たりにしたエリオ とキャロは愕然とした。今まで巨大な生物同士の戦いといえば、キャロの竜の 一匹、ヴォルテールと白天王と呼ばれた生物だけだろう。それでも二匹の身長 は15m程度、しかし目の前で繰り広げられる戦いは40m以上の生物の戦いであり、 スケールが違った。 怪獣の存在そのものは昔から確認されていた。現存する生物がなんらかの当然変異 を遂げたものなのか、それともロストロギアなどで生み出されたものなのか、はたまた 怪獣そのものがロストロギアとも言われ、管理局でもその生態の調査はなされていた。 しかし確認された固体数は少なく、また保護も捕獲も難しい怪獣の生態は未だ不明の ままでいた。今回の密猟団の摘発により保護された怪獣がミッドチルダに輸送されず、 現地で預かっていたのはそういった危険性があるからである。 「ユーノ先生、あの怪獣、どうするんですか? まさか、殺したりは……」 たとえ暴れまわる怪獣であっても元々は密猟され、自分の意思とは関係なしに 連れてこられた怪獣に非はないだろう。不安げに問いかけるキャロにユーノは 安心させるように微笑みながら答えた。 「大丈夫、多少手荒いことはするけど、大人しくさせるだけだから」 「そうですか、よかった」 その答えに安心したのかホッと胸をなでおろすキャロ。 同時に巨人と怪獣の戦いも佳境を迎えていた。巨人から次々と繰り出される スピーディな攻撃に対応できない怪獣はしだいに動きが鈍くなっていた。それ を見計らってか、巨人は怪獣との間合いを取り、両腕をあわせるとその先から リング状の光線を発射した。光線が命中した怪獣はまるで電撃が走ったように 体を痺れさせるとゆっくりと倒れ、目を閉じた。気を失っただけらしく、息は あった。まるで暴風が吹いているような音を出しながら息をしているのがその 証拠である。 巨人は倒れた怪獣を持ち上げると、そのまま宙に飛ぶ。数十トンはあるはず怪獣 を軽々と持ち上げ、さらに飛行まで可能とする巨人の能力に驚きである。巨人は 一気に速度を出して何処かへと飛んでいってしまう。 「あ、巨人が……」 「エリオ君、本部に戻ってくれないかな。セブンもそこに行っているはずだから」 「セブン? わ、わかりました」 エリオはユーノに言われたとおりにフリードに指示を出す。移動を開始して数分 とたたないうちにエリオは気になっていたことをユーノに質問した。 「ユーノ先生、一体、あの巨人は何者なんです? 先生は何か知っているよう ですし、それにどうして管理局の魔導師が僕たちを襲ったんでしょうか? 本部 とも通信が取れなくて、さらに保護した怪獣が外に出て暴れて……第一、今朝の ニュースでユーノ先生は行方不明って聞きましたけど」 「う~ん、一度に説明するのには時間が掛かるかな。あの巨人の名はウルトラ セブン、僕はセブンに助けられここにいる。怪獣のことや局員のことは保護隊 本部についてから説明するよ。とにかく、僕たちはまたとんでも無いことに巻き込まれてしまったのさ」 「とんでもないこと……ですか?」 「これは……」 「酷い、私たちがいない間にこんなことになっていたなんて」 約一時間掛けて、本部へと帰還したエリオとキャロが見たものは戦闘が行われた 痕跡がある本部の姿であった。半壊した本部の周辺には恐らく先ほどの怪獣が 暴れたためか酷く荒らされていた。ふと、そのときユーノがセブンと呼ぶ巨人と その巨人に運ばれたはずの怪獣の姿が無いことに気がついた。 「ユーノ先生、巨人と怪獣は一体どこへ?」 「怪獣が保護されていた場所にいると思う。その前にコイツらをどうにかしないとね。一先ず降りよう」 その後、荒れた地面に降り立った三人。その際キャロはフリードを幼竜の姿に 戻した。三人は気絶し、バインドを掛けられている局員を半壊した本部に運んで いく。さすがに身内組織の人間を牢に入れるのは気が引けたが、用心のためである。 ここでも違和感があった。誰一人として保護隊の人間と出会わなかったのだ。 「隊長も皆も一体どこに行ったんでしょう?」 疑問に思ったことをつい口にするキャロの言葉にユーノがすぐさま答えた。 「他の牢にいるよ」 「え、どうしてです!?」 「彼らと同じさ。怪獣を解き放ったのもここの人間だ」 「そんな、一体どうして?」 「操られていたんだ」 『え?』 突然三人の後ろから聞き覚えの無い声が返ってきた。振り返るとそこには見知らぬ 青年が立っていた。エリオとキャロは警戒するがユーノは反対に親しげに話しかけていた。 「カザモリさん、怪獣は?」 「あぁ、眠らせて保護区に戻した。他の二体も無事だ。恐らく、この密猟騒ぎ は囮だろう、そうでなければここまで大げさな行動には出られない」 「一応、局員は牢に入れておいたけど」 「気を取り戻したら、様子を見よう。大丈夫なようなら協力を仰ぎたい」 「ちょ、ちょっと待ってください!」 突然、エリオが二人の会話に割ってはいる。事情がよく飲み込めなかったため である。突然現れた謎の男はどうやら敵ではないようだが、自分たちは彼のこと を良く知らないのだ。一体どういう関係なのかを聞き出したかった。 「ユーノ先生、この人は一体誰なんですか? 局の人でもないようですし、それ に囮とか操られているとか……」 「あぁ、ごめんごめん。彼はカザモリ・マサキ、僕の命の恩人さ。彼の言うとおり、 彼らはなんらかの精神操作を受けている。さっきの騒ぎもそのせいさ」 「命の恩人? ユーノ先生、さっきはあの巨人に助けられたって……まさか!」 「カザモリさん」 「別に構わない。『今』は隠す必要はないからな」 カザモリの了承を得て、ユーノはカザモリの事と自分が何故ここにいるかを説明 を始めた。 「二人とも、ニュースで僕が行方不明になったことは知っているよね? 実は 僕も局員に襲われたんだ。あまりにも突然だったから、抵抗も出来なくて、 バインドを掛けられたんだ。なんでこんな事をって言ってみたんだけど、答えて くれる訳も無くてね、無限書庫をあさり始めたんだ」 「無限書庫を?」 「あそこの情報量は半端じゃないからね。敵もそれを狙ったんだろう。僕を捕 らえたのも情報を引き出すために利用しようとしたんだろう。もちろん、僕は 拒否したけどそしたら次は実力行使にでようとしてね、僕は抵抗できない状態 だったし、万事休すかと思った時に彼が来たんだ。それからはすごかったなぁ、 敵も彼の出現に浮き足立ってしまって、一瞬で撃退された。その時は何がなんだ か分からなかったんだけど、とりあえず、書庫にプロテクトを掛けて、彼と一緒 に逃げたんだ。その後ごらんの通りさ」 「そんなことが……それじゃ、ミッドの地上本部の局員は全員操られているんですか?」 「いや、今頃は全ての局員が入れ替わっているだろう。そして、ここでも同じ ようなことが起きたに違いな。ここは保護隊とは言え、そう簡単に局員全てが 操られるとは思えない。敵が侵入していると見て間違いないだろう」 エリオの質問に答えるようにカザモリが言った。操られているや入れ替わって いるなども気にはなるが、敵というのが一体何のかエリオは知りたくて、問う ように返事を返した。 「敵……ですか?」 「あぁ、エリオ君と言ったね、キャロちゃんでもいい。ここ最近で妙に挙動が 大人しくなった者や、ボケっとした者はいないか? とにかく、普段とは何か 違う局員がいないか思い出して欲しい」 「ン……特に無いですけど……キャロは?」 「私も……皆さん普段と変わった様子はなかったと思います」 「そうか、ありがとう」 急にそのようなことを聞かれても、一々他人の挙動を細かく観察するものなど そうはいない。よほど観察眼が鋭いか物好きなだけである。ある程度は予想して いた答えだったのか、特に気にした様子もなく、カザモリは軽く礼を言った。 「カザモリさん、もしかしたら、ここにはもういないんじゃないかな?」 「かも知れないな。港に逃げたか……」 「あ、そういえば、ユーノ先生、港は封鎖されているはずなのに、どうしてここへ?」 エリオはふと思い出し、ユーノに問いかけた。港の封鎖の主な原因は世界を 繋ぐ次元間が不安定だということである。そんな状態で次元航行艦は運行で きない。下手をすれば未開拓地に飛ばされるか、永遠に次元間を彷徨う事に なるのだから。そんな危険な状況下にあるにも関わらず、ミッドチルダにいた はずのユーノがいるのはほぼ不可能である。 「港は封鎖されていない。まぁ言い方を変えれば封鎖されているともいえなくはないか……」 「どういうことですか?」 次はキャロが質問した。 「さっきも言ったが地上本部とやらの局員は全て異星人によって占拠されている。 人知れずな」 「異星人?」 「宇宙人って事ですか?」 「キュクルー?」 二人と一匹が頭をかしげる様は中々可愛らしいものがあった。カザモリはフッと 笑みを浮かべると、すぐさま真剣な顔つきに戻る。 「問題はこれからどうするかだが……」 「一度、ミッドチルダに戻ってみないか?」 「危険だと思うが?」 ユーノの提案にあまり賛同的ではないカザモリ。しかし、危険だということは ユーノも理解しているはずである。それなのにそういう提案をするということ は考えがないわけではないのかも知れないと、カザモリは聞き返した。 「何か考えがあるのか?」 「一応ね、もしかすると彼女たちも捕まっているかも知れないけど、心強い味方がいる」 「彼女たち?」 ユーノの言う彼女たちと誰なのかはカザモリは知らない。しかし、エリオとキャロ には心当たりがあった。確かに、彼女たちならこれと無い味方になるのは当然だろう。 「元機動六課のメンバー!」 「確かに、皆さんなら心強いです!」 「正解、地上本部になら、なのはやはやて、ヴォルケンリッターたちがいるはず だ。彼女たちならそう簡単にやられるとは思わない。どちらにせよ、ミッドチルダ の現状を知らなければ、奪還も出来ない。出来る限り、協力者を集めたい」 「ふむ……俺はその機動六課という部隊は知らないが、君たちがそこまで言う 人材が揃っているのなら期待は出来るな。保護隊の人間が目を覚ましたら、彼ら にも協力してもらおう。たった四人で敵の本拠地に乗り込めば、返り討ちにあう」 「わかった。港も奪還しなければいけないしね」 「……ッ!」 同時刻、ミッドチルダ地上本部にて、大勢の局員に囲まれていたはやてと リイン。いつの間にか周りを取り囲んでいた局員に気がつくのと局員たちが デバイスを構え、魔法を発動しようとする瞬間はほぼ同時。 「捕らえよ、凍てつく足枷!」 凍てつく足枷・フリーレンフェッセルンは本来、設置型の凍結・拘束魔法で あるが、リインはそれを周囲の局員にぶつけるように放とうとするが、地上本部 の空気中の水分はあまり多くはない。それは地上本部の空調管理による温度や 湿度の調整によるものだ。その為、人間にとって程よい湿度でもフリーレンフェッセルン を発動させるには条件が厳しい。ベルカ式魔方陣が現れても氷を精製するのに時間が 掛かってしまった。主を守ろうとするリインのとっさの行動だったが、あまりにも 突然のことそのことを忘れていたのだ。 その隙を狙って前方を固める局員のデバイスから射撃魔法が放たれてしまう。 直後に魔法を放った局員は凍結されるが、すでに手遅れである。 「マイスターはやて!」 「リイン!」 「やらせん!」 まさに疾風のようにとはこのことである。局員たちの頭上、正確に言えば天井 を駆け、現れた蒼き狼。瞬時に強固なシールドを発生させ、主を攻撃から守る。 感極まるはやてとリインは現れた狼の名を叫んだ。 『ザフィーラ!』 「この盾の守護獣、主に指一本触れさせはせん!」 そして現れたのは盾だけではなかった。突然、左右の局員たちが一瞬にして 吹き飛ぶ。右側の通路には長剣を構え、左側の通路には鉄槌を構えた騎士が 立っていた。 「シグナム!」 「主を守るのが我らの務め、ご無事で何よりです」 右側の騎士、シグナムははやての下に駆け寄り、彼女の言葉に答えるように 返事を返した。 「ヴィータちゃ~ん!」 「おいおい、泣くなよリイン」 左側の騎士、ヴィータは泣きながら、飛んでくるリインを受け止めながら、 シグナム同様はやての下へと駆け寄る。現れたのは剣、主の敵を打ち砕く剣たち であった。そして、もう一人。 「おのれ……ギャッ!」 奇跡的に無事だった右側の局員の一人が震える手でデバイスを構えるが、魔法 を放つ瞬間に頭部に分厚い本が直撃し、気を失う。そこには虚空から伸びる手が あった。一見、奇妙な光景だが、はやてにはそれがなんなのか分かっていた。 「遅いぞ、シャマル」 「シグナムが早すぎるのよ~」 えげつない攻撃で局員を倒したのが癒し手であるシャマルであった。シグナム に文句を言いながら、はやてに駆け寄るとすぐさま怪我が無いかを確認する。 「良かった、怪我はないみたいね。ごめんなさい、遅れちゃって」 「皆、よう来てくれた!」 「我らヴォルケンリッター、主の危機に黙っているわけには行きません。主はやて、 現在この地上本部は危険です、一旦本部を抜け出します」 「うん、そうしたほうがえぇみたいや。よう分からんけど、地上本部は墜ちた と見てえぇみたいや」 はやてが了承すると同時に周りが騒がしくなる。恐らく増援だろう。しかし、 今度ははやてがデバイスを起動させる時間は十分にあった。眩い光に包まれ、 はやては騎士甲冑に包まれ、同時に指揮を取る。 「シャマル、接敵まではどれ位?」 「この距離だと五分……いえ、向こうも急いでいるから、三分!」 クラールヴィントのセンサーを最大に発揮し、周囲の状況はシャマルの手の中 にあった。どこに敵がいるのか、どこから攻めてくるのかなども彼女には逐一 クラールヴィントから情報を得ていた。 「正規の脱出ルートは封鎖されとるはずやから、私の部屋の窓から逃げる。その前に、 隔壁を閉鎖、進行を遅らせる!」 はやてはすぐさまデスクの端末を起動させ、周囲の隔壁を下ろさせる。本来 なら警備室からの操作でなければ、いけないのだが、はやてを含め、一部の 局員のデスクからならば、その周囲のみの隔壁を閉鎖が可能である。その後、 隔壁が降りる音が響くが…… 「はやてちゃん、隔壁が上がっているわ!」 センサーのよって、それを確認したシャマルが叫ぶ。 「チッ……警備室も墜ちとったか……皆、長居は無用や、脱出するで!」 『了解!』 六人は一斉に窓から外へと飛び出す。はやてを中心にリインははやての肩に ザフィーラとシャマルが彼女の左右に付き、さらにその前をシグナムとヴィータが固める。 「ヴィータ、本部を壊さん程度に攻撃!」 「あいよ、アイゼン!」 『シュワルベフリーゲン』 威力を抑えたヴィータの誘導弾が本部の壁を直撃する。すると、はやての部屋 の警報がなり響き、窓の隔壁が降りる。これは外から襲撃を想定したものである。 誤認を防ぐために特定の攻撃、たとえば魔法による攻撃に反応して隔壁が下ろさ れる。この隔壁はたとえ警備室でも解除には時間が掛かる。これである程度の時間稼ぎが出来る。 「どこへ向かいます?」 シグナムの問いかけにはやてはすぐさま答えた。 「局の関連施設は全部墜ちとるはず。一先ず、聖王教会へ。多分、カリムは この事件の事を予測しいてたはずや。教会騎士団もおるし、対策はとっとる はず。そう簡単に墜とされるとは思わへん」 「しかし、教会からなんの警告が無いというのは……」 「情報を遮断されとったか、その時、すでに本部は墜とされとったか……教会 が手を出そうにも、局が問題無いと言えば手が出せへん」 局員の様子を見る限り、教会からの警告も了承しつつなんの対策もとっていない ことは明白、とるはずが無い。はやての下に情報が届かなかったのも情報操作が なされていたのだろう。 「味方の本拠地から逃げるか……奇妙なもんやね」 「二年前よりも酷い状況です」 「局の怠慢のせいじゃねーのかよ?」 ヴィータの言い分も正しいのかも知れないが、はやてはどうしてもそれだけ とは思えなかったのだ。いくら管理局が怠慢していると言え、そう簡単に本部 が乗っ取られるとは思えない。 「とにかく、カリムの所に行けばある程度分かるはず……急ぐで!」 味方に追われるという奇妙な逃避行の始まりであった。何故なのかという疑問 が残るなか、はやてたちは飛び続ける。 そして、今日この日より、人知れず、全次元世界の平和を守るはずの管理局地上 本部は墜ちたのだった。 次へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/hirahira001/pages/26.html
セブンボール(7ボール)ゲーム ルール ここに書かれたセブンボールのルールは、完璧なセブンボールのルールを作るために、いろんなところからの情報の集めて、編集されたものです。 セブンボール(7ボール)ゲーム ルール セブンボールゲームは、進み方の早いビリヤードのゲームで、他のゲームと同じように、多くの技術と、(多分)少しの運を必要とするゲームです。 The game of seven ball is a fast-paced billiards game that requires a lot of skill and perhaps a little bit of luck, like most games. テーブルの上には7つのボールがあるだけで、ゲームをするのに長い時間が必要になることはほとんどありません。(7番以外の)6個のボールはどこのポケットに落としても良いことで、より短い時間でゲームが終わります。 With only seven balls being on the table there is little need for the game to go on for an extended period of time, making the game even more of a quick finish is the fact that six of the seven balls need not go in any particular pocket. セブンボールは9ボールのバリエーションで、基本的には同じルールですが、2つの違いがあります。 7 ball is a variation of 9 ball. It uses basically the same rules with 2 changes. セブンボールの素晴らしいところは、プレイヤーの実力に違いがあるときでも、セブンボールをプレイすることが出来ると言う点です。 One of the beauties of seven ball is that you can play it when you have two players of unequal skill. たとえば、経験の少ないプレイヤーは、7番を入れるときに4つのポケットを使ってポケットしてよいけれども、経験の多いプレイヤーは7番を狙ってよいポケットは2つだけの限られる、など。 The player with less experience may have four possible pockets in which to hit the seven ball while the more experienced player may have only two possible holes. もし、あなたが7ボールゲームをスピーディに行いたいなら、7番を落とすときに6つのポケットどれでも使ってよいことにしてもよいです。 If you choose to play seven ball just for the speed of the game you can agree to be able to pocket the seven ball on any of the six holes. より詳細なルールは、以下に記載したルールで確認できます。 You ll find more details on 7 ball billiard rules below. 各プレイヤーは、7番を落とすときに片一方の側のポケットのみ狙ってよい。 7番を狙ったときにファールをしたら、負けになります。 Each player only has 1 side of the table to pocket the 7 ball. A foul on the 7 ball is loss of game. セブンボールのラック The first step to having a successful and competitive game of seven ball is to rack the balls according to the rules. ちゃんとしたセブンボールゲームをするための最初のステップは、セブンボールのルールに従ってラックすることです。 In seven ball billiards, the balls are to be placed in a circle with the one ball being in front and two through six being counterclockwise from that spot. セブンボールのラックでは、1番をトップにおいて、2から6番は時計と逆周りに円を描くように置きます。 The seven ball is placed in the center of the circle and, when the breaking shot is made, it must legally pocket one ball or be re-racked for the opposing shooter to break. 7番は円の真ん中に置かれ、ブレイクショットが行われたとき、(最低でも?)一つのボールはポケットに入らなければならず、そうでない場合は、ブレイクを交代してもう一度ラックが組まれます。 Balls numbered 1 through 7 are racked in circular form, with the 1-ball at the head and the 7-ball in the middle. The sequence of all other object balls is irrelevant. 1番から7番のボールは、円を描くようにラックされ、1番はヘッドの位置に、7番は中心に置かれます。そのほかのボールの順序は関係ありません。 See the IMAGE of the 7 ball rack below. セブンボールのラックのイメージは下図を見てね。 It is an image of racking up a game of seven-ball using a special hexagonal seven-ball rack, and incidentally also using a special 7 ball that borrows the black color and stripe, respectively, of the "money balls" in the games of eight-ball and nine-ball, to make it stand out more. これは、セブンボール用の特殊な6角形を使ってセブンボールゲームのラックをしたところの図です。ついでにより目立たせるために黒でストライプされた特殊な7番ボールを使っています(ナインボールとエイトボールのゲームボールから借りてきてます)。 The 1 ball is on the foot spot. 1番ボールはフットスポットの上に置かれます。 セブンボールゲームのブレイク Player s can either lag or flip for the break. プレイヤーは、ブレイクのためにバンキングやコイントスしてしてもよいです。 A legal break occurs when an object ball is pocketed or at least four object balls contact a rail. ブレイクにおいては、的球がポケットされるか、少なくとも4つの的球がクッションにさわらなければなりません。 The 1-ball must be contacted first. また、1番ボールには初めに当たらなくてはなりません。 If this does not occur, the opponent can accept the table as is or request a re-rack and be awarded the break. もし、これらが発生しなければ、対戦相手はそのまま続けるか、ラックを組みなおしてブレイクが与えられます。 If the 7-ball is pocketed on the break, and a foul does not occur, it is a win. もし、ブレイクで7番ボールが落ち、ファウルが発生してなければ、勝ちになります。 If the 7-ball is made and a foul doe occur, the 7-ball is spotted and the opponent has ball in hand throughout the table. All balls, with the exception of the 7-ball, remain pocketed. もし、ブレイクで7番ボールが落ち、ファウルが発生した場合は、7番ボールを(フット)スポットに戻し、対戦相手にフリーボールが与えられます。その場合、7番ボール以外のボールがポケットされていれば、ポケットされたままにしておきます。 In seven ball billiards the balls have no point value and the object is to legally pocket the seven ball. セブンボールゲームでは、ボールに得点が割り振られてはいません。ゲームの目的は、7番ボールをポケットすることです。 However, after the opening shot the two opposing shooters must choose a side of the table to attempt to shoot the seven ball into. しかし、ブレイクの後、プレイヤーは、7番ボールをテーブルのどちらの側のポケットに落とすか選ばなくてはなりません。 So, either player is able to shoot balls one through six into any open pocket, but once the seven ball is left it must go into the pocket on the side that he/she declared after the opening break. そして、各プレイヤーは1番から6番までのボールはとこのポケットに入れてもかまいません。しかし、一旦7番ボールが残されたら、7番ボールはブレイクの後に選ばれた自分の側のポケットに入らなければ成りません。 セブンボールゲームでのプッシュアウト Immediately following the break, regardless of which player is shooting, a push out can occur. ブレイクの直後であれば、どちらのプレイヤーにおいても、プッシュアウトがコールできます。 If the player does not feel confident with the location of the cue ball, they are allowed to shot it to a new location on the table. もしプレイヤーがその手球の位置で自身が無いなら、違う位置に手球を撞いて移動させることが出来ます。 They are not required to contact any object ball and no foul can be called, with the acception of a scratch. その場合には、手球が的球に当たらなくても、ファールにはなりません。スクラッチでもなりません。 The player must notify their opponent that they are going to push out, else it will be considered a regular shot. プレイヤーは、プッシュアウトする場合には事前に対戦相手に伝えなくてはなりません。そうでなければ通常のショットだとみなされます。 After the push out, the opponent has the option to accept the cue ball where it lies or can make the player shot again. プッシュアウトの後は、プッシュアウトされた対戦相手は、その手球の位置で続けるか、(自分ではプレーせずに)プッシュアウトした相手につかせるかを選ぶことができます。 A push out can occur only once in a game and only on the shot immediately following the break. ブッシュアウトは1ゲームで1回だけブレイクの直後のみ行うことができます。 セブンボールをポケットするテーブルのサイドの決め方 After the break, the non-breaking seven ball player picks a side of the table, where he/she is going to pocket the 7 ball. ブレイク後、ブレイクをしていない側のプレイヤーが7番ボールをポケットするための自分のサイドを決めます。 The breaking player has the opposite side of the table. ブレイクしたプレイヤーはその反対側になります。 セブンボールでの有効な(ファウルでない)ショット The player must contact the lowest numbered object ball first and either pocket any object ball or cause contact an object ball or the cue ball to contact a rail after initial contact. プレイヤーが撞いた手玉は、テーブルの上の最小番号のボールに初めに当たらなくてはなりません。 そして、何らかの的球がポケットされるか、的球に当たった後に、手球か的球がクッションに入らなくてはなりません(つまり、ノークッションファウルは適用されるということ)。 Object balls need not be called. If the seven ball is pocketed on the shooter s side of the table during a legal shot, it is a win. コールショットは必要ありません。もし7番ボールが入ったのが、撞いた人の側のポケットであれば、勝ちになります。 If the seven ball is pocketed on his/her opponet s side, it is spotted. もし、7番ボールが相手側のポケットに入ってしまった場合は、(フット)スポットに戻ります。 To recap, the shooter, on any shot except the final seven ball, must first contact the lowest numbered ball on the table before a shot is considered legal. However, if the opening shooter pockets the seven ball on the opening break, after first contacting the one ball, it IS enough to declare the opening shooter the winner of the game even though they had not declared a side of the table to pocket the ball yet. 7 Ball - Frozen object ball If an object ball is in direct contact with a rail, it is said to be frozen. The opponent is required to notify the shooter that a ball is frozen to a rail. If a player attempts to pocket a frozen ball, it is a foul unless they make the ball, or any other object ball cause the frozen ball to contact a different rail, or cause the cue ball or any other object ball to contact a rail Seven Ball - Pocketed Balls Any object ball pocketed illegally will remain pocketed, with the exception of the 7-ball. If the 7-ball is illegally pocketed, it will be spotted. 7 Ball - Object balls off the table If a player causes any object ball to leave the playing area, it will be pocketed and the shot considered a foul. Seven Ball - Jump shot For a jump shot to be legal, the cue tip must strike the cue ball above center, forcing the cue ball into the table. Any contact below the cue ball, causing it to scoop off the table, is a foul. Note that if a player is attempting to hit low on the cue ball during a regular shot (such as a draw shot) and unintentionally scoops the cue ball, it is not a foul. 7 Ball - Push shot A push shot occurs when the cue ball and an object ball are frozen together. If the player shoots (pushes) through the balls, it is considered a foul (this will be noticeable because the cue ball and object ball will travel down table at the same speed). To avoid a foul, the player is required to elevate their cue during the shot. It is the responsibility of the opponent to ask a third party to referee over the shot before it takes place; otherwise, a foul cannot be called. Seven Ball - Double Hit shot Similar to a push shot, with the exception that the cue ball and object ball are not frozen. Rather, they are very close together and the effect of a player shooting (pushing) through both balls is likely. All statements mentioned above regarding a push shot apply to a double hit. 7 Ball - Foul A shot will be considered a foul if a player Fails to make a legal shot Pockets the cue ball or sends it off the table Shots while not having contact with the floor causes a push shot causes a double hit performs an illegal jump shot The penalty for all fouls is ball in hand for the opponent throughout the table. Three consecutive fouls is loss of game. After the second foul, it is the responsibility of the other player to warn the fouling player that he/she is "on 2 fouls." If the fouling player is not warnned, it is not loss of game. Then the foul count will be reset back to zero.
https://w.atwiki.jp/tomopih/pages/241.html
人物・経歴・略歴 スチーブンス(Lee Stevens) ローレンス高-エンゼルス-近鉄 1967年7月10日~ 左投左打 192cm99kg 背番号:33(1994~1995) 年度別成績・通算成績 シーズン打撃成績 年度 所属 試合 打席 打数 得点 安打 二塁 三塁 本塁 塁打 打点 勝点 盗塁 盗刺 犠打 犠飛 四球 故意 死球 三振 併殺 打率 長率 1994 近鉄 93 334 302 44 87 21 0 20 168 66 - 3 1 0 3 28 1 1 100 3 .288 .556 1995 近鉄 129 527 476 54 117 29 1 23 217 70 - 0 0 0 4 46 4 1 129 13 .246 .456 通算 2年 222 861 778 98 204 50 1 43 385 136 - 3 1 0 7 74 5 2 229 16 .262 .495 守備成績・各種成績 シーズン守備成績 年度 総失策数 守備位置別出場数 1994 4 外74一13指2 1995 6 一85外43 通算(2年) 10 外117一98指2 ポジション別守備成績 守備位置 試合数 刺殺 補殺 失策 併殺 守備率 94一 13 82 1 1 3 .988 94外 74 103 2 3 0 .972 95一 85 739 60 5 65 .994 95外 43 61 5 1 1 .985 1994年方向別本塁打-左5中5右10 1994年ノーストライク時打率.462、9本塁打 1994年無走者時打率.217、走者有時打率(得点圏ではない).369 タイトル・表彰・記録 最多連続試合本塁打 6(1995.4.7~4.13)[パリーグ記録] 資料情報 外部リンク ウィキペディア http //www2.plala.or.jp/ippeifuji/gaikoku/Buffaloes04.htm http //www.geocities.co.jp/Athlete-Athene/3320/order/1995buffaloes.html その他
https://w.atwiki.jp/vipkotei-j/pages/997.html
ここでは一切自演してねえぞ! -- (セブン) 2011-03-03 12 05 14