約 4,198,938 件
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/449.html
幻想郷で亡霊にされました 作リンク コメント 幻想郷で亡霊にされました 作者 初心者壱号 ひとこと:諸事情によりブログを閉鎖してしまいましたので、書き直した上げた時にリンクを載せようと思います。 主人公 名前:冷泉 司霊 性別:男 年齢:16歳 種族:亡霊 容姿:死に装束に教授のマント、身長164cm、アホ毛有りのショート、白髪 能力:スペルカードを使う程度の能力 作リンク コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1109.html
26 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/17(土) 17 05 51.87 ID pYNE1UCp0 [5/25] タイトル:「セクハラ宣言」 俺は今、桐乃の部屋の前にいる。数ヵ月後に受験を控えた身だから少しでも勉強を したほうがいいのだろう。 しかし、ベッドの下にあったこれを見つけてしまってからは、どうしても勉強に身 が入らない。 どうしてもこれを使いたい。 しかし、あの日、俺は自分の不誠実さを恥じ、反省した。特に冗談とわかってはい るだろうが、あやせを少しからかい過ぎたようだ。 そう、そして誓ったんだ 『桐乃にしかセクハラはしないと!』 桐乃の部屋をノックすると、少しして桐乃がドアの隙間から顔を覗かせた。 「ん、なんのよう?」 「人生相談がある」 「・・・・・入って」 桐乃はしばらく考えて、俺を中に入れてくれた。 大き目のスポーツバックを持って部屋に入ってくる俺を見て、怪訝そうな顔をしな がら 「何それ?」 床のクッションに腰を下ろしながら俺は言った。 「これは、人生相談と関係あるものだ」 「そう・・・」 そういって桐乃は椅子に腰掛けた。 「で、相談って何?」 「桐乃、メルルは好きだよな」 「そりゃ、あんたも知ってることじゃない」 「コスプレしてくれないか?」 「・・・はぁ?」 俺が単刀直入に”人生相談”の内容を話すと、桐乃は呆れるを通り越して変態を見 るような目をしながら 「・・・キモ、マジ引く」 「あんた、あたしにセクハラする気?」 「そうだ!」 俺は胸を張ってそう答えた。 俺の顔面に桐乃の蹴りが炸裂する。 「何、胸張って答えてるのよ!せなっちーにも『おっぱい揉むぞこの雌豚』とか言 ってセクハラしてるって聞いてるわよ!」 「それはずいぶん前の話だ。それに俺は自分の不誠実さを恥じ、そして誓ったんだ。」 「俺がセクハラをするのは・・・お前だけだぜ?」 そうどこかで言ったことがあるようなないような台詞を言った。 「・・・・・・・・・・」 沈黙が続く。桐乃はいきなり俯いてしまった。 「桐乃・・・さん?」 桐乃はゆっくりと顔をあげる。その頬は赤く高揚している。 目を逸らしながら桐乃は 「・・・わかった。京介のお願いだから・・・聞いてあげる」 あれ?何か反応が・・・・・ 「あはぁ、メルルの衣装着ても加奈子みたいに似合うかなぁ?それに・・・サイズと か心配だな・・・ははは」 俺はスポーツバックを開けながら桐乃に言った。 「そのへんは大丈夫だろ。もともとあやせに合わせて作ってあるから、少し胸回り がきついくらいだ。」 「・・・・・はぁ?」 「これだ!ダークウイッチ タナトス・エロスEX」 「死ね!」 桐乃の水平回し蹴りが、衣装を広げながら立ち上がる俺のわき腹に炸裂する。その顔 は、先ほどの頬を赤く染めた乙女ではなく・・・怒りに打ち震えた鬼の形相であった。 俺は倒れこそしなかったがわき腹を押さえて蹲った。 「はぁ?あんた何で、あやせのサイズしってんの?」 「いや、前にEXメルルフィギュアを手に入れるために加奈子がでたやつ」 「それが?」 「加奈子がどうしても出ないってときは、あやせがこれを着て出るつもりだったんだよ。」 「あっ、そうだったんだ・・・・・」 さっきまで鬼の形相だった桐乃の顔が、ゆっくりと綻んでいき、最後には・・・・・ エロゲーをやっているときの締りのないオタクの顔になった。 こいつ何想像してるんだ? 「桐乃、顔がやばいぞ・・・」 「はっ、えっ、なんでもないなんでもない。てか、これは没収!」 そういうと桐乃は俺からコスプレ衣装を奪い取り、俺を部屋から追い出した。 日曜日、京介の部屋 玄関のチャイムがなる。俺はベッドから立ち上がり玄関に行った。 「おっ、あやせか」 「こんにちは、お兄さん、桐乃はいますか」 「部屋にいるよ」 そう、あやせと会話をしていると背後から桐乃の声がした。 「いらっしゃい、あやせ。さぁあがって」 「おじゃまします」 そういうと2人は二階の桐乃の部屋に入っていく。 俺も部屋に戻るか。 そう自分に言い聞かせ、再びベッドの上で楽な体勢をとり英単語カードをめくり始めた。 「あやせ、お・・・・るん・・けど」 「な・・桐乃」 薄い壁を通して桐乃たちの話し声が聞こえる。 「これ・・だけど」 「それって!!!!」 「これ・・・てもら・・・・んだけど」 「やめて!桐乃」 桐乃の声は相変わらず聞こえづらいが、あやせの声は明らかに何かに動揺しているのか はっきりと聞こえる。 ドン!! 壁に何かが当たるような音がした。俺は桐乃の部屋がある壁に顔を向けた。 「おーい、桐乃何やってるんだ」 返事がない。 不思議に思っていると、携帯が鳴った。 俺は携帯を手に取り、確認すると1通のメールが届いていた。 あやせからだ。 「隣にいるのに、何メール送ってるんだ」 そう独り言を言いながら、メールを確認した。 『お兄さん、おはなしがあります。今ドアの前です。』 いつもどおり簡潔なメールが送られてきた。 そしてドアをノックする音がした・・・・・・・・・ 完 -------------
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/334.html
68名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/04(火) 8 28ID LyXRPKHO0 http //www.imgup.org/iup723221.png ※プライバシーの関係で画像は掲載しません。 以下の文字が記載されたいちゃいちゃするククゼシレイヤーさんの画像でした。 ク「ゼシカって胸大きいけど何カップ?」 もみもみ ゼ「な…!!///」 ゼ「何すんのよ!このドスケベ!!!」 ガッツ!! ク「ぐは!!!」 ・・・多分日常です(笑) 69名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/04(火) 21 53 04 ID lc7rclJx0 わわわ、お御足の奥がちょっと危ういw 70名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/04(火) 22 34 29 ID XlVAGTBf0これはwww でもククならこういうセクハラもナチュラルにやってのけそうだw 後からいきなり乳もまれてショックと驚きでたじろぐゼシカと まるで何でもない事のように「この感触はE…いや、Fか?」とサイズ当てするクク 71名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/04(火) 23 14 33 ID yXts60sC0 それってまだ出会った直後の、こんな格好してるゼシカがまさか貞淑なお嬢だと思わず 冗談まじりでやっちゃった感じだろうな。ついでにこんな華奢な娘が魔法使いだとすら知らない頃の だって今ならいきなり乳もむとかできあがってからでもメラ必至だしw 72名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/04(火) 23 48 55 ID 22ssZIZx0 ククールの中にはそんな抵抗されるという意識も、 自分が何をやっているかという認識もなかったんだろうな 色男だしw ゼシカがあまりの衝撃に固まっている間にもみもみしながらあれこれ考えるクク。 (おーすげえ…。この感触はなかなかないぞ。見た目だけならこれに 勝るとも劣らずなもんいくつか知っているけど、このさわり心地は今までにない… なんつーか…) 「パーフェクト!」←思わず口に出してしまうクク。 「何がパーフェクトよ!!この変態スケベ男ーーーーーー!」←ゼシカの涙目メラ。 ククに痛恨の一撃! 73名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/05(水) 00 54 30 ID YOLOj0C40 いやあれはぶっちゃけEかFじゃ足りないと思う …すんません多少願望が入ってます 74名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/05(水) 01 37 16 ID kINhduv40 72 そんな抵抗されるという意識も、 自分が何をやっているかという認識もなかった 「いやぁん、みんなの前で何するのよバカー><僧侶のくせにエッチなんだからぁ☆」 「わりーわりー、じゃあ今夜オレだけに見せてくれないか?ゼシカの全てをさ…(魅惑のry)」 みたいな展開を想像していたんかククール パーフェクト!ワロスwwwww
https://w.atwiki.jp/digimon-battle-terminal/pages/216.html
たいきパパは死ね imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7130.html
前ページ次ページ東方のキャラたちがルイズたちに召喚されました 03.明日ハレの日、ケの昨日(*1) その年の召喚の儀式は、初めは例年のように進行していた。生徒達の召喚呪文に よって、普通に使い魔として見かける生き物達が召喚される。猫やカラス、蛇に フクロウ。特殊なところでは風竜が呼び出され、周囲を驚かせたくらいだ。 しかし、ある男子生徒の召喚から状況が一転する。彼のところに現れたのは、 何と妖精だった。身長七十サントほどのそれは透明な羽を持ち、何より人間の 言葉で挨拶をしてきたのだ。 初めはエルフの類かとも思われたのだが、その愛らしい笑顔が周囲を魅了した(*2)。 聞けば、特別なことは何も出来ない(*3)という。それでも、召喚した男子生徒は 得意満面で妖精とコンタクト・サーバントを行った。風竜には敵わないけれど、 それでも十分特殊な生き物だ。メイジの力を見るなら使い魔を見ろ、というでは ないか。今はただのドットクラスだけれど、きっと自分には秘められた力があるに 違いない――。 残念ながら彼のその希望は儚くも砕かれることになる。次々と呼び出される 妖精達。先ほどの妖精を羨ましそうに見ていた生徒達が一転、今度は嬉しそうに 契約をしていく。 そして毛色の変わった生き物が呼び出されはじめた。基本的に人間の姿をして いるものの、鳥の様に翼があったり、虫の触角が生えていたり、猫の尻尾が二本 生えていたり、捻れた角が生えていたりと様々である。ただ共通しているのは、 みな女性――それも少女と言っても良いような年頃の姿をしていること。そして みな知り合いだということだ。 彼女たちは自分たちのことを『ヨーカイ』なのだと話した。妖精とは比べものに ならない力を持っており、契約すれば使い魔として働くという。 「まあ妖怪って基本的に、人を襲って食べたりするんだけどね。でもそれはそこの 大きいの(*4)だってそうでしょ? 大丈夫大丈夫、使い魔として呼び出されたん だから、ちゃんと使い魔をするよ」 角の生えた少女――自らを伊吹萃香と名乗った――は笑顔でそういうと、腰に ぶら下げた奇妙な形の入れ物を口につけた。ゴクゴクと喉が動き、プハァと息を 吐き出す。酒臭い。それを見た召喚主は、コンタクト・サーバントしただけで 酔っちゃいそう、と現実逃避気味に考えていた。本当は考えなければならない ことは他に沢山ある。どういう種の生き物なのか。何が出来るのか。自分の 専門属性は何になるのか。そして、コンタクト・サーバントをすべきか否か。 彼女は助けを求めるように、引率の教師を振り返った。 召喚の儀式は神聖なものであり、契約は絶対のもの、とはいうものの、引率の 教師であるコルベールは内心頭を抱えていた。敵意はない。自分たちから進んで 使い魔をやるという。その点はとても望ましいことだ。しかし、自分の中の何かが 危険信号を発している。これは危険な生き物だ、と。 結局彼は、召喚と契約の続行を決めた。召喚の儀式で使用される、魔法に対する 信頼があるからだ。また今までの記憶にも記録にも、召喚した生き物が制御 できなかったということはない。 彼女は諦めて、自分の呼び出した酒飲みとコンタクト・サーバントを行った。 案の定、酒臭い。眉をしかめる様に気づいた様子もなく(*5)、萃香はどこから ともなく取り出した茶碗に酒をつぐと、召喚主に向かって差し出した。萃香達の ところでは、主従関係を結ぶ場で酒を飲むしきたりがある(*6)、という。匂いを 嗅いだだけでも、かなりアルコール度数が高いことが分かった。彼女たち貴族も 一応普段からワインを嗜んでいるが、それは様々な香料を入れたり甘みをつけたりと アルコール度を薄めたものを少し飲むだけだ。ここまで度数の高いものをそのまま 飲んだことはない。それでも彼女は、その酒を一息に呷った。使い魔になめられる わけにはいかない、と思ったのかどうか。しかし彼女は茶碗を手から取り落とし、 目を回して倒れ込んだ。地面にぶつかる前に、彼女の使い魔となった萃香が軽々と 彼女を抱え、ゆっくりと地面に寝かせてやった。そして手を叩き笑う。 その心意気は見事、と。 それを見ていた他の妖怪や妖精も、手に手に湯飲みや茶碗を取り出した。 そして自分の召喚主に対して笑いかけた。さあ、私たちも、と。こうして召喚の場が 宴会場へと変わっていくのであるが、未だ召喚を行っていない者達には それどころではない。なにしろ次に呼び出された生き物は、今までとは段違いに 危険だったのだから。 背格好自体は十歳に満たない少女の様。日傘を差し、背中には蝙蝠のような羽、 笑った口元には牙のような犬歯が見える。彼女は辺りを見回すと、威厳に満ちた 口調で言い放った。 「私はレミリア・スカーレット、誇り高き吸血鬼の貴族。 さあ、私を召喚した幸運な子は誰?」 「吸血鬼!」 コルベールは油断なく杖を構えると、レミリアに相対した。彼の知っている限り、 吸血鬼などといった人間に敵対する知性体が召喚されたことはない。 「吸血鬼が一体どうして召喚されたのだ?」 「もちろん、使い魔をするためよ」 そこの連中と同じよ、と酒を飲んでいる妖怪を指さした。指された方は笑って 手を振り返す。 「いや、私が聞きたいのはそういうことではなく……」 「何故、こんな得体の知れない連中が大量に召喚されてるのか、ってこと?」 「……まあ、そんなところだ」 明らかな敵意を向けられてなお、レミリアは悠然と笑い言い放った。 「後に召喚される妖怪の中には、説明が得意なのもいるわ。 彼女達に聞いてちょうだい」 知識人っぽいのとか、家庭教師っぽいのとか、と含み笑いをするレミリア。 「後に……ということはまだ君たちのような人外が呼び出されるというのか?」 「そうよ。まあ、その中でも私が一番(*7)だけど」 何が一番(*8)なのやら、と妖怪連中から戯れ言が飛ぶが、一睨みで黙らせる。 「むやみに人間を傷つけるつもりはないわ。貴族の誇りにかけて、ね」 貴族の誇りを出されてしまっては、人間達も黙るしかない。それに納得も していた。人間にも平民と貴族がいるように、吸血鬼にも普通の吸血鬼と高貴な 吸血鬼がいるのだ、と。粗野な平民と違い、貴族には礼儀と誇りがあるものだ。 それは、吸血鬼でも変わらないのだろう。 コンタクト・サーバントを終わらせると、レミリアはニヤリと牙を見せて笑った。 「吸血鬼に相応しい主人にしてあげるわ」(*9) レミリアを呼び出した女生徒は、顔色を青くしながらも頷いた。普通の下級貴族で ある自分にそんなことが可能なのか。いや、やるしかないのだ。吸血鬼を使い魔に した貴族など、きっと後世にも名前が残るだろう。貴族にとってそれはこの上も ない名誉なことである。 こうして召喚の儀式は継続された。レミリアの言ったように、それからも様々な 妖怪が呼び出される。中には、どう見ても人間にしか見えない者達もいた。 例えばキュルケが呼び出した者は、自らを蓬莱人だと名乗った。それが何を 意味するかは不明だったが、少なくとも彼女は炎を操ることが出来た。呪文も なしに火を生み出す様に精霊魔法なのか、と騒然となったが、当の本人は至って 平然と答えた。 「そこの大きいのだって火を吐くんだろ(*10)? まあそれと同じようなもんさ」 それに精霊魔法は、その地に存在する精霊と契約して発動する魔法。逆に言えば、 契約をしなければ発動できない。召喚されたばかりの彼女に、そんな時間や呪文の 詠唱はあったか。答えは否だ。 それでも、いきなり彼女のような存在が呼び出されていれば、また話は違った だろう。魔法を使わずに特殊なことが出来る者に対する偏見は大きい。だが今回の 召喚の儀式では、妖精に始まり吸血鬼まで、特殊な生き物が数多く呼び出されている。 さすがに人間達も感覚が麻痺してきていた。慣れてきた、とも言える。 その最たる例として、自らを神と称する者が召喚されたが、比較的スムーズに コンタクト・サーバントまで至っていることがあげられるだろう。 「神って言うけど、こっちの世界じゃ精霊みたいなものかね」 背中に縄を結ったような飾りを付けた(*11)女性は、そう言いつつどっかりと 腰を下ろした。 「なにしろ今までいたところには、神様が八百万もいたからね。こっちは神様は 一人なんだろ?」 彼女を召喚した男子生徒は、どう返答したらいいのか分からず、とりあえず頷いた。 この世界の神と言えば始祖ブリミルということになるのだろうか。もちろん、 神聖な存在であり、威厳があって厳かな存在なのだろうと思っている。しかし……。 ちらりと横を見る。そこではやはり神を自称する少女が、召喚主の女生徒に後ろから 抱きつかれて困っていた。 「あーうー、私は神なのだぞー」 「か~わい~」 蛙を模した帽子をかぶった少女は手足をばたばたさせるが、威厳の欠片もない。 どういう経緯でこうなったのかは彼にも分からなかったが、可愛いことは確かだ。 「あははは、土着神の頂点も形無しね、諏訪子」 「そう思っているなら助けてよ、神奈子」 それも親交(*12)よ、と取り合う様子もなく、神奈子はどこからともなく盃を 取り出した。同じく、どこからともなく取り出した瓶から何かを注ぐ。言うまでも なく、酒だ。 「さあ、私たちもやろうじゃないの」 確かにもう辺りは、酒を飲まない方が不自然な状態にまでなっている。 楽器ごと宙に浮いた三人組が音楽を奏でると、翼を持った少女が歌を歌う。 やたら偉そうな妖精が空中にダイアモンドダストを発生させると、別の妖精が 輝きを集めて虹を作る。幻の蝶(*13)や見たこともない赤い葉っぱが辺りを舞い、 どこかに消えていく。ついでにコルベールはしきりに頷きながら、奇妙な帽子を かぶった者から話を聞いている。制止役がこれでは、騒ぎが収まるわけがない。 これは酒でも飲まないとやってられない。彼は神奈子から杯を受け取ると一気に 呷った。奇妙な味だが悪くない。 最初の爆音が響いたのは、ちょうどその位だった。 生徒達はその音に振り返り、ああ、あいつか、と呟いた。ゼロがまた魔法を 失敗した、と。 「ゼロ?」 その声に一人の少女が反応した。紫色のゆったりとした服(*14)に身を包んだ 自称魔女は、視線を自分の召喚主の男子生徒へと向ける。その全てを見通すかの ような視線にたじろぎながらも、彼は問いに答えた。 「あいつは魔法を成功したことがないんだ。だからゼロ」 彼が指さす先で、一人の女生徒が杖を構える。他の生徒に比べ、幾分幼い感じが する少女は真剣な面持ちでサモンサーバントの呪文を唱え杖を振った。が、 二度目の爆音が響いただけで、何も召喚されない。 なるほど、と彼女は頷くと感想を述べる。 「ふーん。零点ね」 「そうさ。零点――」 しかし魔女は召喚主の口をふさぐかのように指を伸ばした。 「零点なのはあなたよ」 「は?」 呆けたような顔を面白くなさげに一瞥すると、魔女は少し大きな声で説明を始めた。 「費やされた魔力のうち、サモンサーバントの分は正しく消費されてるわ。 あの爆発は余剰分が行き先をなくして発生しているだけ」 「まさか。だいたい何でそんなこと――」 わかるんだよ、と続けようとして、ジロリとにらまれる。 「貴族の合間にメイジをやってるあなた方には分からないかもしれないわね。 だけど私は生まれたときから魔法使いなのよ。言葉を話すより先に魔法を 使っているの」 魔法の動きを知るなんて呼吸をするのと同じ事よ、とつまらなそうに言うと、 手に持った本に視線を落とした。この世界は発動体が必須とされるようなので、 常に持ち歩いているこの本が発動体だと言うことにしてある。別に嘘だという わけではない。上級スペルを詠唱する際には、一部の負担を本に蓄えた魔力で 代替わりしているのだ。疲れないために。 しかしこの世界の魔法は彼女の知っているそれとは全く違う。呪文はあくまで キーワードでしか過ぎない。もちろん各自が持っている魔力は消費されているが、 消費分に対して発動される内容が高度なのだ。大体、この程度の魔力消費で空間を 転移するゲートを開けるなど、彼女の常識からすれば冗談の様である。まるで、 合い言葉を唱えると、世界そのものが魔法を発動しているかのようだ。 この魔法はどのような原理で構築されているのか。これからの研究対象を考えると、 彼女は興奮を覚えるのだった。なぜなら彼女の名前はパチュリー・ノーレッジ。 知識こそが彼女の生き甲斐なのだから。 「で、でもさ、じゃあなんで何も召喚されないんだよ」 本に向かって顔を伏せたまま、上目遣いにルイズを見ると、このやり取りが 聞こえたのか当のルイズと目があった。絶対に諦めない、という眼差し。 その視線に知り合いだった人間を思い出す。彼女もよくこんな目をしていた。 普通の人間の魔法使いだったくせに。いや、だからこそ、か。 そんなことを考えていると、再び爆音が轟いた。 「ふん、やっぱり失敗は失敗だよな。あいつはゼロなんだから」 「……零点。おめでとう、これでダブルゼロね。ダブルオーの方がいいかしら」 「なにーっ」 最近流行だったみたい(*15)だし、などとよくわからない解説が追加される。 「なぜ召喚されないのか、ということを考えず失敗と思考停止するのは、 愚か者のやることよ」 「僕が愚か者だって――」 「違うというなら考えてみなさい」 ピシャリと言い切られ、歯がみをして悔しがる。なんで僕は使い魔にこんな 言い込められないといけないんだろう。こんなことなら普通の動物がよかった。 と数分前とはまったく逆のことを彼は考え始めた。そんな様子を歯牙にもかけず パチュリーの考察と解説は続く。 「サモンサーバントで発生するゲートは、強制的に相手を転送させるものではないわ。 対象となったものが触れて初めて効果を現す。逆に考えれば、触れなければ 召喚されないという事よ」 「……じゃあ、触ろうかどうしようか迷ってるっていうのか?」 「そうね。意図的に触れずにいることを選択しているのかもしれないし、 何らかの事情で触れられない状態になっているとも考えられる――」 少し離れたところでそのやり取りを聞いていた狐の妖怪、八雲藍は、口元に 笑みを浮かべ呟いた。紫様も人が悪い、と。 もうほとんどの生徒は召喚を終えている。見回したところ、幻想郷にいた妖怪は 一人を除いて全員召喚されているようだ。その残った一人こそ、八雲藍の主人であり 幻想郷の賢者といわれた八雲紫。少々戯れに過ぎるのが玉に瑕。今回もその戯れだと 思ったのだ。 「紫様を使い魔にするのだ。これくらいの苦労は越えられねばな」 早々に酔いつぶれてしまった自分の新たな主人に膝枕(*16)をしながら、藍は しみじみと呟いた(*17)。 そしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの召喚魔法 失敗が二十回を超え、儀式の場はますます盛り上がっていた。 「さあ、次の呪文で召喚できたら、銀貨一枚につき二枚払うよー」 頭から兎の耳が生えた妖怪が、賭け事を始めている。 「人の失敗を賭に使うなーっ!」 ルイズの怒声もなんのその。生徒達や妖怪達が、おもしろ半分に賭け金を出し 始めた。 「あんた達も賭けるんじゃないわよっ!」 手に持った杖を突きつけるルイズだったが、次で召喚すれば問題ないでしょ、 と笑って返され二の句が継げなくなる。どうやらみな、酷く酒に酔っているらしい。 一体どうしてこんなことになったのだろう? もちろん答えは決まっている。 このヨーカイといかいう連中の所為だ。でもその一人がさっき言っていた。 魔法自体は成功している、と。本当のことかどうかは分からない。けれど、 今のところ縋ることの出来る唯一にして最高の言葉だ。だから自分は魔法を 唱え続ける。続けられる。 そんなことを考えながらも呪文を唱え、杖を振った。が、爆発。また失敗だ。 賭けた者からは罵声が、賭けなかった者からは歓声があがる。 「じゃあ次は銀貨一枚で、銀貨三枚ねー」 兎の声に、先ほどより多くの賭け金が集められた。思わず怒鳴ろうとしたが、 よくよく考えれば賭けるということは、召喚の成功が、つまり魔法の成功が 期待されているということだ。酔っぱらい共の戯れだとしても少しだけ気分が良い。 詠唱、そして杖を振り……また爆発。何も現れない。汗が目にしみる。まだまだ 諦めるには早すぎる。 集中、詠唱、杖、爆発。一体何が召喚されるというのだろう。 深呼吸、集中、詠唱、杖、爆発。もう周囲が騒ぐ声も気にならない。 「そう。重要なのは集中することよ」 その様子をじっと見ていたおかっぱ頭の少女が呟いた。背中には二本の刀、 隣には半透明な物体がふわふわと浮いている。半分人間である彼女は、努力して 技術を習得するということを人の半分程度は慣行している。だから、周囲の声にも 拘わらず召喚呪文を唱え続けるルイズという少女を、彼女は内心応援していた。 もっとも、彼女の主人はそうとは思っていないようだが。 「無理だと思うんだけどな」 「何故?」 鋭い視線で見つめられ、腰が引けそうになる。背の武器で斬りつけられたら…… と思うと気が気ではない。コンタクト・サーバントは終わっているので危害を 加えられることはないだろう、とはいうものの、やはり怖い。もちろん、その前に 魔法で何とか出来るとは思うが…… 「ダメよ~、妖夢。ご主人様が怖がっているじゃないの」 「何を言うんですが、幽々子様!」 「あらあら、怖い怖い」 突然横から現れた女性は、広げた扇子で口元を隠すと含み笑いを漏らした。 「妖夢は真面目すぎるのよ」 「性分ですから」 憮然として答える妖夢。その様子はまるで教師に叱られた生徒のようであり、 現役の生徒である彼女の主人は不意に親しみを感じた。 「もっとこう、余裕を持った方がいいと思うのよ」 「幽々子様は余裕がありすぎです!」 「そうねぇ。でも『今の』ご主人様は真面目な人みたいだし、 従者が余裕を持たないとね~」 その言葉に妖夢はハッとさせられた。なるほど、従者とは主人を補う者だ。 幽々子様の下では今までの自分でよかった。しかし新しい者の従者になるという ことは、自分も変わっていかなければならないのではないか。 「……努力します」 「そうそう。変われる、というのは人間の特権ですもの」 再び口元を扇子で覆い、笑い声を漏らす。その言葉は、果たして誰に向けられた ものか。 そんな周囲の会話ももはや聞こえる様子もなく、ルイズの召喚失敗は回を重ねる。 兎の賭の倍率が十倍にもなり、辺りが夕日に包まれてもまだ召喚は成功しなかった。 肩で息をする。喉も渇いた。魔力が尽きかけていることが、自分でも分かった。 これで最後にする。そう気合いを入れ、呪文を唱えた。そしてイメージする。 自分が最高の使い魔を使役している姿を。 「!」 杖を振ると共に起きる爆発。だがその中に、人影が見えた。 「おや……?」 その姿に真っ先に反応したのは藍。なぜならその容姿が彼女の想像と違って いたからだ。片手には日傘。これはよい。髪の色は金色。これも想像通り。 だが頭には黒いとんがり帽子を被り、黒い服の上に、白いエプロン。ドロワーズも 露わについた尻餅の下敷きになった箒。これではまるで、知り合いの魔法使いの ようではないか。その人間の名前は―― 「魔理沙っ!」 何人もの妖怪が叫んだ。疑惑に満ちた声で。単純に驚きで。喜びをにじませて。 嫌そうな声色で。溜め息と共に。 静寂の中、呼ばれた本人はゆっくりと立ち上がるとスカートに付いた土埃を払う。 そして不貞不貞しく笑みを浮かべると、口調だけは残念そうに第一声を放った。 「くっそー、ついに捕まっちまったか」 「ついに……ってどういうことよ」 その魔理沙の正面に立つ少女、ルイズ。杖を構え、肩で息をする様を一瞥し、 魔理沙は納得するように二度三度と頷いた。 「ん、ああ、あんたが私を召喚したのか。よろしくな。勝負に負けたんだ。 潔く使い魔になってやるぜ」 「ししし勝負ってなんのこここことかしら?」 あくまで冷静な魔理沙に対し、ルイズは興奮のあまり口が回っていない。 「根比べさ、召喚の。あんたが私を捕まえるのが先か、魔力が切れるのが先か。 寿命まで無料奉仕してやろうってんだ。これぐらいは試させてもらわないとな」 「じじじ寿命ですって?」 「ああ、私はこいつらと違って、普通の人間だからな」 周囲に座った妖怪を指さしながらの言葉。普通の、人間。その意味をルイズが 理解できるより先に、周囲が反応した。 「普通の人間って事は平民か?」 「なんだ、これだけ大騒ぎして結局普通の平民かよ」 「これって失敗だよな!」 「やっぱりゼロのルイズね」 いつも通り巻き起こる嘲笑。肩を落とすルイズ。よりにもよってただの平民とは。 また失敗なのか。しかしそれを認めるわけにはいかない。例えそれが強がりと 見られようとも。ルイズは顔を上げ、言い返そうとした。いつものように。 しかしルイズより先に、目前に立った少女が大声を上げた。 「ああ、そうだ! 私は霧雨魔理沙! 普通の人間だ!」 ルイズに背を向け、ルイズを守るように、霧雨魔理沙は立っている。 「だがなっ!」 だからルイズだけは気がついた。他の人間から隠すよう背に回した右手に、 光が集まっていることに。 「普通の人間の……魔法使いだぜ!」 そういうなり、右手の光――魔力塊を真上に向かって打ち出した。 一瞬の静寂。そして閃光。 まるで花火のように、光り輝く星屑が夜空に広がる。きらきらと輝くそれは 幾何学的な模様を徐々に変えながら、ゆっくりと広がっていく。 「わぁ……」 其処此処から感嘆の声があがる。四つの系統のどれにも属さない魔法。しかし 誰もそのことを言い出さない。 それほどに美しかったのだ。 そして何が起こるかうすうす感づいている妖怪連中は、にやにやと笑っていた。 人に馬鹿にされてただで済ますほど、霧雨魔理沙という人間は温厚ではないのだ。 「おっと、ちょっと魔力を調整しそこなったぜ」 わざとらしい声とともに、上空に広がった七色の星屑が一斉に地面目がけて 落ちてきた。(*18) そりゃあもう、唐突に。 「うぉあっあたる、あたる!」 「馬鹿っこっちくるな!」 「いやーっ」 「ブリミル様、お救いをーっ」 右往左往した挙げ句、互いにぶつかって倒れてみたり。地面に伏して祈ってみたり。 そんな様子を、魔理沙の召喚主であるルイズは唖然として眺めていた。 普通の人間? 魔法使い? 先住魔法? 星屑? 自分は一体、何を呼び出したんだろう? 「あー、別に危険じゃないぜ。ちゃんと消えるし」 その声にルイズが顔を横に向ける。いつの間にかルイズの横に並んだ魔理沙は、 困惑したという口調で嘯いてみせた。 事実、それは地面に一つも届いていない。流星の様に落ちてきた星屑は、最初から 幻であったかのように、中空で溶け込み消えていく。その様子もまた幻想的で、 混乱していた生徒達は徐々に呆けたように空を見上げていった。 一方妖怪達は、いつもの宴会芸に大喝采である。やはり酒の席にはこの花火が ないと始まらないとばかりに再び音楽が始まり、静寂が一転、喧噪に包まれる。 「さて、と」 そんな様子に満足したのか魔理沙は、ルイズを見るとウインクして見せた。 「契約をしなきゃなんないんだろ?」 言われて思い出す。そういえばまだコンタクトサーバントを行っていない。 「さっさとやろうぜ。せっかく注目を外したんだしな」 「注目を……?」 おうむ返しの質問。頭が混乱して、考えがまとまらない。 「いくら女の子同士でも、人の注目浴びながらキスをするのはちょっとな」 ファーストキスだからな。と帽子を目深に被りなおしながらつぶやく。 その頬が夕日の下でもそれと分かるほど赤く染まっていることに、ルイズは 気がついた。普通の人間で、魔法使いで、先住みたいな魔法を使って、でも、 中身はルイズと同じ少女なのだ。 そのことに気がついたルイズは、ようやくいつもの調子を取り戻した。 「感謝しなさい。わたしみたいな貴族の使い魔になれるなんて、名誉なことなんだからね」 胸を張り宣言する。その様子に魔理沙は、ニヤリと笑い言葉を返す。 「さすが私のご主人様だ。そうこなくっちゃな」 こうして、魔法が使えない貴族、ルイズと、魔法が使える普通の人間、魔理沙は コンタクト・サーバントを行ない、主従となったのであった。 そして二時間後。月明かりの中、ルイズは目を回して倒れていた。別にルイズに 限ったことではない。多くの生徒はルイズ同様、召喚の儀式が行われた草原に制服の まま倒れ伏している。 全ての原因は魔理沙だ。コンタクト・サーバントが終わるとルイズの手を引いて、 妖怪達の宴会に飛び込む。ここまではいい。自分が酒を飲み、ルイズにも酒を飲ます。 これもある意味当然の流れだ。だけど言ってしまったのだ。「さすが私のご主人様だ、 いい飲みっぷりだぜ」と、他の生徒を挑発するように。その結果がこれだ。 「みんななさけないわね」 余裕を装うキュルケも、目が虚ろ。手に持ったグラスは今にも滑り落ちそうだ。 ルイズより先に酔いつぶれるわけにはいけない、と半ば意地で意識を保っていた ものの、そろそろ限界らしい。自慢しようにも当のルイズはさっさと潰れている。 その使い魔は、狐っぽいのと日傘を挟んで深刻そうな話をしている。さあどうしよう。 その揺れる視線が親友の姿を捉えた。青い髪を持った小柄な少女、タバサ。 いつものように本を開いてはいるが、遠い目をして何か呪文のように呟いている。 ずりずりと膝立ちで近づいたキュルケのことも、目に入っていない。 「…………」 「なに一人でぶつぶつ言ってるのよ」 「亡霊だから幽霊じゃない…… 騒霊だから幽霊じゃない…… 半人半霊だから幽霊じゃない…… 亡霊だから――」(*19) 「ねえ、タバサ~」 反応のないタバサに業を煮やし、何気なく肩に手を掛ける。が、ビクン、 と一瞬背筋が伸び、こてんと倒れてしまった。 倒れてしまった親友を一人寝かしておく訳にはいかないわよね、とようやく 理由が出来たキュルケは、タバサを抱きしめるように横になり、自分の意識を 手放すことが出来たのだった。 一方タバサの使い魔となった風竜――もちろん実際には風韻竜なのだが―― のシルフィードは、そんな主人の事も気づかずに、他の使い魔達との会話に 夢中だった。他の使い魔とはいっても、妖怪が主である。それも特に、幼い雰囲気の 連中だ。 「きゅいきゅい!」 「へえ、一人で二百年も」 「きゅいきゅい」 「へーそーなのかー」 「きゅいきゅいきゅい」 「うんうん、その気持ち、よく分かるよ……あ、八目鰻、食べる?」 「きゅい!」 「えへへ~おだてても何もでないわよ~」 「みすちー、私のはー?」 「もうとっくに食べちゃったでしょ?」 「きゅい……」 「あー、いいのいいの、こいつが食いしん坊なだけだから」 「ひどいよー、そんな嘘、言いふらさないでー」 「そうそう、食いしん坊と言ったらやっぱり、アレよね」(*20) 「きゅい?」 まだまだ話は尽きそうもなかった。 脳天気な話をしている連中もいれば、ただ杯を傾けている連中もいる。 蓬莱山輝夜と八意永琳、そして鈴仙・優曇華院・イナバは、言葉少なに月を 見上げていた。 「イナバが二つに見せてるんじゃないの?」 波長を操作できる鈴仙なら、光を操作して一つのものを二つに見せることなど 雑作もない。 「姫様が一つ増やしているんじゃないですか?」 先日の夜が終わらない騒ぎの元凶は、輝夜が作り出した偽物の月である。 二人そろって盃を干すと、大きな溜め息をついた。そんな二人を照らす月も、二つ。 「確かに世界が違えば、月が二つあってもおかしくはないのでしょうけどね」 永琳も、遅れて溜め息をついた。 「本当にあなたたちって、違う世界から来たのね」 永琳の主人が口を挟む。言葉の意味に気がついたから。 「それにしては驚いてないのね」 「もう驚き疲れちゃったわよ」 大体なんで貴族である私が、夜の野外に酒盛りなんてしないといけないのかしら、 それも地面に座り込んで、などとブツクサ呟きつつ、盃を傾けた。そしてちらりと 斜め向こうを見る。そこでは彼女と付き合っているキザっぽい少年が、自分の呼び 出した使い魔に何かを囁いていた。あんな光景を見せられたら、酔うに酔えない。 うふふ、という笑い声にキッと使い魔を睨むが、永琳は嬉しそうに笑うばかりだ。 「若いっていいわね」 しばらく睨んだ末の言葉がこれだ。色々とやるせなくなって、永琳の主人である モンモランシーは一息に盃を干したのだった。 一方、そのキザっぽい少年の使い魔となったアリス・マーガトロイドは、安堵の 溜め息をついていた。やっと酔い潰せた、と。 基本的には悪い人間ではないと思う。選民思想が少々気になるが、まあ特権階級の 子息ならこんなものだろう。服装のセンスが悪いのも、多分なんとかできる。 だが、語彙の乏しさはなんとかならないものか。延々と同じ口説き文句を 聞かされると、最初いい気分だっただけ落差が酷い。 「?」 そうして落ち着いてみると、なにやら視線を感じる。月の姫達と共にいる少女が なにやらこっちを見ているようだ。アリス自身がそちらを向くと見ていないフリを するが、周囲の状況は腕にさりげなく抱えた上海人形により、常に把握している。 人形の目は彼女の目なのだから。もっとも、状況自体はわかっても、それが何を 意味するものなのかを推測するには、アリスには経験が足りなすぎた(*21)。 特に男女間の人間関係における心情については。こうして今しばらくの間、アリスは 据わりの悪い思いをするのだった。 一方、そんな状況を早速手帳に書き留めている者もいる。 「『三角関係勃発か?』 ……うーん、 『主人と使い魔の恋は成り立つのか?』 の方がいいですかねえ」 「アヤ、今度は何を書いてるの?」 問うたのは彼女の主人。ポッチャリとした体型の彼は、先ほどまで使い魔の 射命丸文から質問責めにあっていたのだ。律儀に使い魔からの質問に答えて いたのは、時に鋭くなる言葉の槍が、妙に心地よかったから。 「ふふふ、秘密ですよ」 そんな文の不敵な笑みもまた、彼の心を撫で上げるようである。これって もしかして恋なのかな?(*22) などと考えるマリコルヌ少年が、自身の性癖に 気がつくのはもう少し先のことである。 一方、文はそんな主人の様子よりも、目の前で起きている出来事の方が重要だった。 そこでは唯一使い魔となった人間、霧雨魔理沙と、主人達の教師であるコルベールが 興味深い話をしていたのだ。先程の藍と魔理沙の会話も興味深いものだったが、 こちらの話もまたそれに劣らず面白そうだ。 「ほう、変わったルーンだ」 「ふーん、そうなのか?」 コルベールに言われ自分の額を撫でる魔理沙。コンタクト・サーバントにより浮かび 上がる使い魔のルーンが、魔理沙は額にあった(*23)。月明かりの下、手元の本を 広げるコルベール。誰からもらったのかそれは、幻想郷縁起(*24)であった。苦労して 魔理沙のページを探すと、そこにルーンの形状を書き込んでいく。 「しょうがないなぁ」 そんな魔理沙の言葉と共に、辺りが明るくなる。見上げれば、本の上に明かりが ともっていた。星も集まれば、月よりも明るい。その輝きをしばし見つめた コルベールは頭を振ると、魔理沙に問いかけた。 「それは一体どういうものなんだね?」 「星の魔法だぜ」 さも当然だと言わんばかりの返答に、コルベールは再度頭を振った。 この世界で人間が使う魔法と言えば、四つの属性に分類されるものだ。例外として コモンマジックと、伝説と言われる虚無。しかしこの魔法は、そのいずれにも該当 しないものだ。いや、少なくともコモンマジックと属性魔法には該当しない。では虚無 魔法か? いや、あれは遠い伝説のものだし、そもそもこの人間は、杖を使ってすら いない。では先住魔法か? いや、彼女は人間だ。それは間違いない。マジック アイテムを所持しているものの、自身は普通の人間であることは、ディテクトマジックで 確認済みだ。ならばそのマジックアイテムの力なのだろうか? コルベールは使い魔の印を書き写す作業に戻りながら、考えを巡らす。それを 知ってか知らずか、さらにコルベールを混乱させる事を口にする。 「他には、恋の魔法とかもあるぜ」 「は?」 「ま、星も恋も、遠くにあって憧れるものさ」 何かの聞き間違いかと思った。今、恋、と言ったのだろうか? どこか遠い目をしてのその言葉に、コルベールは聞き返せなかった。いずれ詳しい 話を聞く機会もあるだろう。彼は三度頭を振ると、本を閉じた。 「ん、終わりか?」 「うむ、これは後日、調べることにしよう。 それより一つ、聞いておいて欲しいことがある」 「あー?」 聞き返す魔理沙は十分に酔っているように見える。これから話すことを覚えて いてくれるかも怪しい。それでもコルベールには伝えておきたいことがあった。 「他でもない、君の主人となる者のことだよ」 当のルイズは、魔理沙の脇で横になり、寝息を立てている。その寝顔がどことなく 微笑んでいるように見えるのは、うがちすぎであろうか。 「もう知っているかもしれないが、彼女――ミス・ヴァリエールは、 魔法が使えないのだ」 「でも、私を呼び出したぜ?」 「ああ。だが明日以降も魔法が使えるかどうかはわからない。 今回が特別なのじゃないかとも思う」 もちろん、そうでないことを願うがね、という言葉とは裏腹に、コルベールの顔は暗い。 「ははん。だから面倒を見ろって?」 「そういうわけではないが……覚悟して欲しい、ということだ」 「ふん、覚悟か。 そんなのは、この世界に来ることを決めた時に、とっくに終わってるぜ」 魔理沙は手に持った茶碗に残った酒を一気に空けた。 「なにしろ私は、普通の人間の魔法使いだからな」 そういうと、おーい、酒が切れたぞー、と傍らの集団に声をかけた。コルベールが 何か言うより早く、新たな酒が魔理沙の茶碗に注がれる。ついでにコルベールの 手にも、コップが持たされた。 「お、おい、私が飲むわけには――」 「まぁまぁ、そういいなさんな。これからも長い付き合いになるんだしさ」 傍らに巨大な鎌を置いた女性が気軽に肩を叩き、コップに酒を注ぐ。その容姿に、 コルベールの相好も思わず崩れる。彼とて木石ではない。女性に酌をされれば それなりに嬉しい。(*25) 「昨日までの日々に別れを。明日から世界に祝福を」 生真面目な雰囲気の女性が盃を掲げると、まだ意識のあるものは自らの酒杯を 掲げた。数瞬の静寂。ある者は離れてきた家を想い、ある者は残してきた者達を想い、 ある者はそこにあった自然を想い……みな幻想郷のことを想い、そして別れを告げた。 こうして今までの昨日は終わり、全く新しい明日が始まったのである。 人間にとっても、妖怪にとっても。 *1 タイトルは、同人弾幕ゲーム「東方風神録」のBGM名より借用 *2 こうやって人間をだまして悪戯する *3 空を飛ぶのと弾幕を撃つのは、幻想郷では標準技能。 *4 大きいの談「きゅいきゅい、きゅいきゅいきゅい!」(訳:そんなことないわ! 普通の風竜と一緒にしないで欲しいのね!) *5 絶対に気がついてる。 *6 酒を飲むありがちな口実。 *7 多分カリスマ度。 *8 多分幼女度。 *9 レミリアの能力は、運命を操る程度の能力。 *10 大きいの談「きゅいきゅい、きゅいきゅいきゅい!」(訳:そんなことないわ! 野蛮な火竜と一緒にしないで欲しいのね!) *11 正装。 *12 親交=信仰。って神主が言ってた。 *13 見ているだけなら安全。 *14 実は寝間着らしい。 *15 早くも幻想郷入りしていた? *16 尻尾枕だったかもしれない。 *17 とてもこき使われたらしい。回転しながら特攻とか。 *18 この弾幕はフランからのパクリなのか? *19 現実逃避。あるいは自己暗示。もちろん、全部幽霊。 *20 ご想像にお任せします。 *21 魔法ヲタクかつ人形ヲタク。 *22 恋ではなく変です。 *23 ミョ(略)ンなルーン。 *24 妖怪にとってはイラスト付きの自己紹介本。自己アピールあり。だから信頼性は不明。 *25 それに体型的にも嬉しい。 前ページ次ページ東方のキャラたちがルイズたちに召喚されました
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/530.html
幻想郷で亡霊にされました 作リンク コメント 幻想郷で亡霊にされました 作者 初心者壱号 ひとこと:ブログでやらせて頂いてます初心者壱号というものです。まだやり始めたばっかりで、文体も含めいろいろと変な部分があると思いますが多めに見てください。 旧作成分が高めです。 主人公 名前:冷泉司霊 性別:男 年齢:15歳以上20歳以下 性格:やや冷静。いい加減。正直者 種族:亡霊 容姿:死に装束に教授のマント、アホ毛有りのショート、白髪 能力:スペルカードを使う程度の能力 備考:ルーミアに殺されて現在は亡霊となっている。生前の肉体はルーミアに食べられてない。そして、チルノとの戦闘、射命丸の取材により、自身の能力が判明(?)した。その後、中有の道の店にて小町との賭けに勝ち小町の家へ居候させてもらうことになった。その後に 作リンク 新作五話 http //blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/effd84fc517086f50eb9f502ee4589ad 一話 http //blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/ebc6429bd63202afb9f0506506a68eec 二話(前編) http //blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/c2a7df86a44d24083ce52a5f41f36c5d 二話(中編) http//blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/75735d69b40e1ca22648db973f7ae631? 二話(後編) http //blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/e8c61614778a620538b4b823145e02f4 三話 http //blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/6c735c3a0ac3f26b6a2b5b1b33fbef64 四話 http //blog.goo.ne.jp/syosinsyaichigou/e/eb700ef4536f25768d76e4815b1832bc コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/2689.html
501 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/03/03(月) 21 51 32 ID ??? すげえ久しぶりにSWやったんだが。 女性PC・NPCへの挨拶はセクハラ(主に乳揉み)の男盗賊(ハーフエルフ) それをフォースで折檻する女神官(マーファ) 揉まれても動じない女戦士(大酒呑み) だれが一番困ったちゃんだろう?w 508 名前:1/2[sage] 投稿日:2008/03/04(火) 01 08 06 ID ??? 501 ああ、なんか似たような経験あるな。 戦士が優男系のキャラで、NPCやら女の子PLの神官にちょっかいかけまくるのよ。 「悪くないな。だが胸がもう少し大きい方が好みだ」とか。 「俺としては、何も着ていない時にお会いしたいねぇ」とか。 NPCからは平手や冷たい眼差しが飛んでくるものの、GMも笑って流してるし、 女の子PLの方も「やーだ、もう」とか言いながら、 神官でツンデレ系のロールプレイをしてたんだ。 で、皆が面白がってその神官の子をからかい始めたんだ。 胸が大きいだの、素直じゃないとか、まぁその辺は良かった。 少なくとも神官の女の子も笑顔のままだったし。 ただ、そのうち雲行きが怪しくなってきた。 偉いNPCが出た時に、盗賊が言った台詞が原因だったかな 「おい、神官。テメェの大きな胸で誘惑してやりなよ」 こんな感じで、ちょっと神官の子が嫌がり始めた。 509 名前:2/2[sage] 投稿日:2008/03/04(火) 01 08 39 ID ??? 最悪だったのが、パーティが潜入して見張りに見つかった際 盗賊「神官、裸んなってあいつ等の前に出てけ」 神官「…は?」他の面子も呆然としてた 盗賊「注意引かれるだろ、その隙に俺らが見張り黙らせる」 神官の子、明らかに不快そうな顔。 盗賊「何言ってんだ、テメェのでけぇ胸なんぞ、他の何の役に立つってんだ!」 戦士「女の子に対し、その言い方はノーサンキューだな?」 魔術士(俺)「別に身体的特徴が役に立つからパーティを組んでいるのでもないでしょう?」 皆でPCとしても諭し、PLの方でも女の子が嫌がってるからと諭したんだがそれが火に油。 盗賊「テメェもそんな風に言われて喜んでたじゃねぇか!」 とまぁ、聞くに堪えない差別的発言を垂れ流しまくる。 女と言うのは顔がいいと思えば誰にでも股を開くだの 人格的攻撃やらもう脳が理解を拒否するような言葉まで。 勿論、飛んできた主催者に事情を話して盗賊にはお帰り願った。 卓はちょっと盛り下がったけど、助っ人のNPC盗賊と協力し、セッション終了。 優男戦士とツンデレ神官と甘えん坊魔術士の三角関係で再度盛り上がりつつ幕は閉じた。 戦士PLが神官PLと肩組んでスキンシップとかしたから 盗賊が誤解した部分もあるかもしれない。行動は行き過ぎなんだが。 まぁ、同じ行動でも男PLがやるのと女PLがやるのとでは女PLの対応が違うのも当然だよなっつーお話。 519 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/03/04(火) 03 16 20 ID ??? 509 まぁ、同じ行動でも男PLがやるのと女PLがやるのとでは 女PLの対応が違うのも当然だよなっつーお話。 これは性別逆にしても同じだよな。 いつかのセッションで 男PLの男PC盗賊が 男PLの男PCパラディンに対して 「童貞の聖騎士様は女が怖いのか?」とか言ってからかう ロールプレイを何度かしていたんだが 女子大生PLの女PCバーバリアンが 同じ調子で 「童貞騎士は引っ込んでランスでも磨いてな!」 って言ったら、その時はまあ聖騎士PLが「セクハラやん」って 言ってプチ騒ぎになっただけだったが、 その時、リプレイ起こし用に録音してたのね。 んで「童貞騎士は引っ込んでランスでも磨いてな!」の発言だけが 音声データとして抽出され、サークルの男性構成員の間で コソーリと配布されましたとさ。 スレ161
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/4383.html
46 名前: NPCさん 04/08/25 13 39 ID ??? 困ったちゃんといえば、コンベ関係者(♀)にセクハラ働いて県下全域のコンベで 出入り禁止をくらい、それに逆ギレして刑法を持ち出し名誉毀損だとホムペで訴えてる 変な人が、うちの県にいます。 スレ30
https://w.atwiki.jp/nekokan1995/pages/17.html
このwikiを荒らしました。 嬉しいですね。 ちなみに[R.P.D]の隊員です。 誰かです。 死んで下さい[R.P.D]の隊長。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7131.html
前ページ次ページ東方のキャラたちがルイズたちに召喚されました 04.恋色マジック(*1) ルイズはまぶしくて目が覚めた。霞がかかったような頭に苛立ちを感じながら身を 起こす。下はいつものベッドではない。それどころか屋内でもない。 服も制服のままだ。どうやらここは昨日、召喚の儀式を行った草原らしい。 一体何があったんだっけ? という疑問は、辺りを見回したとたんに氷解した。 「う゛あ……」 思わず、貴族らしからぬ呻きを漏らす。死屍累々。その言葉がここまでぴったりと くる光景は初めてだ、とルイズは思った。気持ちの良さそうな寝息を立てて寝ている 妖怪達と、気持ちが悪そうに呻きながら横たわる生徒達。 その間を埋める、酒瓶の山。どこにこんな沢山持っていたのだろう、という程に 並んでいる。 自分も飲んだはず。だから、記憶もとぎれとぎれ。しかし、しっかり覚えていることも ある。それは、自分の隣で心地よさげな寝息を立てていた。 「キリサメ、マリサ」 確かそういう名前だった。しかし名前を呼んだ程度では反応はない。ずいぶんと酒を 飲んだのだろう。酒の入っていた瓶をしっかり抱きかかえたままだ。わたしも飲まされて、 疲れていたから簡単に酔いが回って、それで酔いつぶれた、 ということだろう。 だけど、彼女がいるということは、間違いのない事実。それはすなわち、召喚の魔法が 成功したということ。これでもうわたしは、魔法が使えない落ちこぼれなんかじゃない。 そう思うと、頬がゆるむ。今のわたしなら、レビテーションの魔法だって成功するはずだ。 ほら、目の前にちょうどいい大きさの小石があるじゃないか―― こうしてその日の朝は、爆発音と共に始まった。 「うわ、なんだなんだ」 魔理沙が飛び起きると、そこには杖を振り下ろしたまま、呆然とした顔で突っ立って いるルイズがいた。 「あー、とりあえず、おはよう」 声を掛けられたルイズは、慌てて杖を背後に隠した。そして取り繕うように胸を張る。 「ご、ご主人様より寝てるなんて、使い魔としてどうなのかしら」 「なんだ、使い魔の仕事には、モーニングサービスまで入ってるのか?」 まあそれくらいなら構わないけどな、といいつつ周囲を見回し、魔理沙もこの状況に 気がついた。 「やめろー」 「このぜろめ」 「あたまいたい……」 「はきそう……」 口元を押さえたり、頭を振ったりしながら体を起こす生徒達。どう見ても二日酔いの 集団である。彼らにとってあの爆発は手厳しい目覚めの合図となったことだろう。 ここまで酒を飲まされ、酒に飲まれた(*2)経験は、彼らにはなかったのだから。 一方、妖怪達もあわてて飛び起きはしたものの、ここが神社の境内でないことに 気がつき、安心した表情で再び座り込んだ。そして一抹の寂しさに吐息を漏らす。 宴会の後を片付けようとする巫女に手厳しく追い立てられる(*3)、ということはもう ないのだ、ということに気がついて。 そしてこの場で唯一の大人の人間、コルベールは、周囲を慌てて見回していた。 なぜなら今日はまだ、虚無の曜日ではない。ということは、普通に学校があり、授業が あるということ。 「皆さん、急いで戻りましょう!」 慌てるように言うと、自分自身にフライをかけ、そのまま生徒と妖怪を後目に、 飛んでいく。生徒達も自身にフライをかけ、後に続こうとした。いつものように、 ルイズに嘲笑を浴びせることも忘れない。 「ゼロは歩いて……うぷっ」 「あなたも……フライを……ああ、もうダメ……」 バランスを崩してフラフラしたり墜落しそうになっていなければ、それはきっと効果的な 罵声になっていたのだろう。フライを維持するには、ある程度の精神集中が必要なのだが、 二日酔いの中でもそれを維持できている人間はそう多くなさそうだ。 歩いた方が安全なのだが、それでもフライで移動しようというのは貴族としての意地と 見栄だろうか。それを見ていた妖怪達はヤレヤレと肩をすくめ、ふわりと宙に浮き上がった。 自分の主人となった人間に肩を貸そうというのだ。 地面に残り、一人その光景を見上げていたルイズは、思わず呟いていた。 「なんでみんな飛べるのよ」 しかもルイズの見ていた限りにおいて、呪文が唱えられた様子はない。まるで、鳥が 空を飛ぶのは当然だ、とでもいうかのごとく、自然に浮いていたのだ。 その人数は、五十に近い。このヨーカイとかいう連中がこれだけ召喚されていた、 という事実に改めて驚く。さらに驚くべき事は 「翼だってないのに」 ということだ。羽を持つ妖怪・妖精はごく一部。中には、羽と考えるならまったく実用的 ではない、七色の飾りのついた何か(*4)を背に生やした者もいる。そんな者たちも、 当たり前のように飛んでいる。 「普通、飛べるぜ」 地面に残り、一人何かを探している魔理沙は、そんなルイズの独り言に対して律儀に 合いの手を入れる。 「普通ってねぇ。じゃああなたはどうなのよ」 「私だけなら浮ける程度だな」(*5) 「はぁ……」 その返答に大きくため息をつく。やっぱり魔法使いとは言っても平民ならこんなものなのか。 「ふふん。この魔理沙様をなめてもらっちゃ困るぜ」 ルイズの元に戻ってきた魔理沙は、一本の箒を担いでいた。昨日ルイズが召喚した ときに、魔理沙が座っていたものだ。宴会の邪魔になるからと、遠くに放り出されて いたらしい。 「ご主人様に向かって何よそれ。だいたいそんな汚い箒がどうしたっていうのよ」 ふくれっ面のまま問いかけるルイズに、魔理沙はニヤニヤと笑いながら答える。 「空を飛ぶ……いや、駆けるのさ。あいつらよりも速いぜ」 「ふーん」 「あ、信じてないだろ」 「だってこんなので、どうやって飛ぶっていうのよ」 この世界には、箒に乗って空を飛ぶ魔女、という概念はない。そのことを魔理沙は 知らないが、何であれ飛ぶということを否定されるということは、幻想郷随一の飛行 速度を誇る魔理沙にとって、我慢ならないことだ。 「よーし!」 魔理沙の瞳が輝きを帯びる。きっと博麗の巫女なら『魔理沙がまた碌でもないことを 考えている』と分かっただろうが、昨日主人となったばかりのルイズにそれを求める のは、酷というものであろう。 「それではこの霧雨魔理沙の飛びっぷりを、ご主人様にごらんいただきましょう。 特等席で」 「え? え?」 戸惑うルイズの目の前で、まず魔理沙は箒を空中に固定した。奇術師のように 地面と箒の間に腕を通し、本当に浮いてることを示してみせる(*6)。ふぇ? という ルイズの間抜け声に含み笑いを漏らしつつ、魔理沙は自らの箒にまたがった。 そしてルイズを手招きする。 「……そこに座れっていうの?」 「ああ、特等席だからな」 魔理沙の前のスペースを指さしつつ、魔理沙はにこやかに笑った。不自然なまでに。 さすがにルイズの六感が警報を鳴らす。しかし、逃げ出すわけにはいかなかった。 ここで逃げたら、自分の使い魔を信じていないということを決定づけることになる。 使い魔を信じないということは、それを呼び出した自分の魔法を信じていないと いうことだ。自分の唯一となる魔法の成果を否定できるわけがない。 それに、昨日の召喚直後、魔理沙は自分のことを守ってくれたではないか。 「さあ、追いついてもらおうかしら」 魔理沙の手を借りて箒にまたがったルイズの命令に、魔理沙は不敵に笑って返す。 「追いつく? ぶち抜くぜ」 それは、嘘ではなかった(*7)。 「すごいわねぇ、風竜は」 「なんだ、早くも他人の使い魔に浮気か?」 「きゅいきゅい!」 「この子、雌」 タバサの使い魔となった風竜、シルフィードの上に三人の少女が乗っていた。主人で あるタバサとその友人、キュルケ、そしてキュルケの使い魔となった藤原妹紅である。 「ふふ、妬いてるの? ……いたた」 「確かに焼くのは得意だけどな」(*8) 人を連れて飛ぶのはどうもね、といいつつ肩をすくめる。それが二日酔いの人間で あれば尚更である、と。 さすがのキュルケも、深酒は堪えたようだ。片手で頭を押さえつつ片手で妹紅に 捕まるキュルケに、友人のタバサが救いの手を差し出した、というわけだ。 三人乗せても、風竜の飛行速度は他の誰よりも速い。頭痛に辟易としながら キュルケが後ろを振り返ると、妖怪に肩を借りたり、首筋を掴まれたり、抱きつかれ たりして飛んでいる生徒達が見える。中には手を繋いだだけなのに、頬を赤くする 小太りの男子生徒の姿もある(*9)。その後ろに、普通の生き物を召喚した生徒達が フラフラと続く。さらに目をこらすと、未だ地上に留まっている 人影が二つ。 「気になるのか?」 「まさか。ただちょっとどうしてるのかと思ったのよ」 素っ気ない仕草に、妹紅は内心ため息をついた。昨日の様子でも、自分の主人で あるキュルケとあのルイズという少女にはなにやら因縁じみた関係があるということは 想像がつく。ただそれは自分と蓬莱山輝夜のような殺伐とした関係ではなく、どうやら ライバルのようなものらしい。問題なのは本人達がそれに気がついていないことで。 まあ、しばらくは放っておこう、と妹紅は心の中で決めていた。変に弄って悪い方に 転がっても困る。 「あいつらなら、すぐに追いついてくるさ」 「…………?」 「きゅいきゅい!」 今まで手元の本を読んでいたタバサが不思議そうに妹紅を見上げ、シルフィードが 非難じみた鳴き声をあげる。それも当然だろう。ここからならば、もう目的地である 学院の方が近い。今の速度のままでも、あと三十秒足らずで着くはずだ。 「来るさ。なにしろアイツは――」 不意に妹紅が後ろを振り返った。他の妖怪達も振り返っている。タバサも気がついて いた。爆発的な魔力の放出に。 「後方注意!」 誰かが叫んだが、その時には既に遅かった。 地上から飛び立った何かが白い固まりを纏い、ものすごい勢いで接近してくる。 そして誰かが反応するよりも早く、生徒達の真上を駆け抜けていった。その軌跡を なぞるかのようにまき散らされる星屑に、みな昨日の光景を思い出す。ルイズの 使い魔である霧雨魔理沙が放った、星の花火を。 これでもし、うわー、とも、ひゃー、とも、ひー、ともいえない悲鳴が聞こえなければ、 ルイズのことを羨む者がいたかもしれない。そのなんとも形容しがたい悲鳴は ドップラー効果と共に遠ざかり、まるで流星のように学院目がけて落ちていく。 「今日は一段と速いな」 「きゅい!」 妹紅の評に応えるように一声叫ぶと、シルフィードは追い掛けるように速度を上げた。 今までとは比べものにならない速度ではあるが、時既に遅し。それでも風竜として意地 なのだろう。 一方、妖怪にも速さを信条とする者がいる。 「私たちもいきますよっ」 「えっ、ちょっとアヤ、待っ――」 左手で主人の手を握ったまま、右手で団扇を打ち振るう。巻き上がった突風に己と 主人の体を乗せ、これまた男の甲高い悲鳴と共に空を駆けていく(*10)。 後に残された生徒達は呆然とそれらを見送り、そして己の使い魔をそっと窺った。 その様子に気づいた妖怪が、内心苦笑しつつ応える。 「私たちはこのままの速度でいいですか?」 「そ、そうね、速ければいいというものでもないし……」 そのやり取りに、頷く者多数。あんな無様な悲鳴を上げるハメになど陥りたくない。 二日酔いで調子が悪いと来れば、尚更だ。 みな、自分たちの使い魔はあのような無茶で主人を振り回す生き物ではないと思い、 安心していた――まだ、この時は(*11)。 学院の厨房を取り仕切るコックのマルトーは、昨日の晩から機嫌が悪かった。 生徒の一人や二人が夕食を食べないことはよくあること。そのような分は、コックや メイドの賄いになるので、みな密かに望んでいたりする。 しかし昨日の晩は、二年生全員が食事をとりに来なかったのだ。あの誰も座って いないテーブルの寒々しいことと言ったら! そして今朝もまだ、二年生は誰も食堂に現れていない。 「くそっ! これだから貴族ってやつは!」 いつもの愚痴が漏れる。食材を作る平民のことも、それを運ぶ平民のことも、 調理する平民のことも眼中にないのが貴族だ、というわけだ。 そんな中突然、外からどよめきと悲鳴が聞こえてきた。 「なんだー?」 様子を見に行った部下の報告に、マルトーは眉をひそめた。曰く、召喚の儀式を 行っていた二年生がようやく帰ってきたという。まずは生徒四人に、使い魔が一匹と 三人。つまり、人間と思わしき使い魔が三人もいるということだ。 しかもその人型の使い魔は、まだまだ数がいるらしい。 「人型の使い魔ねぇ」 この学院で長いこと働いているが、そんな話は初耳だ。もっともマルトーにはそれ 自体は関係ない。重要なのはただ一つ。 「お前ら! どうやら今日からお客さんが増えるらしい。気合いを入れてけ!」 「はいっ!」 コック達の返事が唱和した。使い魔であろうと旨いと言わせてみせる。 それが料理人というものなのだ。 一方、学院長室。コルベールの報告を、次の授業の担当であるシュヴルーズは顔を 強張らせ、学院長であるオスマンは鼻毛を抜きながら聞いていた。 「――という訳で、直近のところでは問題はなさそうですが……」 「ま、見た目は可愛らしい連中じゃな」 「見てたんですか!」 コルベールの視線が一瞬、オスマンの背後にある鏡に向かう(*12)。 「そりゃあなあ。教師も含めて全員帰ってこなかったら、心配もするわい」 「申し訳ありません」 禿頭を下げるコルベールに対しオスマンは、ヒラヒラと手を振った。 「よいよい。あの場は一緒に酒を飲むのが一番じゃろ。 それが連中のコミュニケーション手段のようじゃし」 「それで、どう思われますか。連中はおとなしくしているでしょうか?」 「さあ、どうじゃろうなぁ」 「いんちょー!」 引き抜いた鼻毛をはじき飛ばしながらの台詞に、非難めいた声を上げるコルベール。 しかしオスマンはそれを無視し、真剣な声色で話し始めた。 「ただな。連中を見た目通りの存在だと思わん方がよいぞ」 「はい。なにやら色々出来るようです」 そういいつつ、懐から幻想郷縁起を取り出したが、書かれている内容を説明すべきか 迷う。一応本人達から直接話は聞いたのだが、運命を操るだの、豊穣を司るだの、 永遠と須臾を操るだのと、どう考えても酔っぱらいの戯言としか聞こえなかったのだ(*13)。 受け取ったオスマンはペラペラとめくりながら、言葉を続ける。 「鏡で覗いた時にな。ヨーカイ共が、こっちを向いたんじゃ」 「はぁ……」 言葉の意味が分からないコルベールに嘆息し、説明を続けた。 「魔法を介して気取られず観察できる筈のこちらの視線を感じて、反応したんじゃよ、 連中は」(*14) 「……単なる偶然では?」 「三十人からが一斉に振り向いてもか?」 「それは――っ!」 絶句するコルベール。 「その上、笑顔で会釈までしてきおった。まったく、どういう連中なのやら」 そこまでしてきたのはごく一部なのだが(*15)、それでも肝が冷えたことは確かだ。 ペラペラと幻想郷縁起をめくっていた手が、ふと止まる。印刷されている文字は 読めないが、イラストの下に見慣れた文字が書き込まれていた。 「キリサメマリサに……ミス・ヴァリエール?」 「ええ。彼女も召喚に成功しまして」 「そりゃよかった」 不幸中の幸いというやつか、というオスマンの言葉は、おそらくこの学院全ての 教師の内心を代弁したものといっても過言ではない。ヴァリエール家という高名な 貴族の息女がこの学院に預けられたのは、魔法に関する能力についてということも、 大きな一因なのだから。 「それで――」 今まで一言も発しなかったシュヴルーズが、引きつったような声を漏らした。 「次の授業はどうすればよいでしょうか」 「……普通でいいんじゃないかの」 「普通……ですか」 「連中は、ここが学舎であることは理解しとるんじゃろ」 コルベールはうなずき、言葉を継いだ。 「それに使い魔としての責は全うすると」 「主人達が静かにしていろという限りは、静かにしているじゃろ」 「はあ……」 まだ要領を得ない表情のシュヴルーズに、オスマンはしたり顔で頷いた。 コンタクト・サーバントによる契約が成されているのだ。実際にはそれほど 心配するほどのこともないのではないか、と(*16)。 「そういえば契約といえば――」 何かを思い出したようにコルベールは、オスマンの手元の本を指さした。 いまだに開かれている霧雨魔理沙のページには、彼女の額に浮かび上がった ルーンが書き写されている。 「このようなルーン、私は見たことがないのですが……」 「……私もないぞ」 シュヴルーズも黙って首を振る。三人とも、教師として長い。数多くの使い魔を 見ているが、このようなルーンを見たことは初めてである。もっとも、このように 奇妙な連中が召喚されたのも初めてのことではあるが。そこに何かしらの関係性が あるのではないだろうか(*17)。 「調べてみます」 「うむ、任せる……が、無理はせんことじゃ」 「は?」 「いや、まだ夜は寒いじゃろ? 酒を飲んで外で寝て、風邪でもひいてないかと思ってな」 ま、そんなヤワなわけでもないか。と笑うオスマンに対し、コルベールの顔が 徐々に引きつっていく。 「寒く……なかったのです、そういえば」 「ふむ。運がよいことじゃな」 「夜を通して暑くもなく寒くもなく、心地の良い風が吹いて、 まるで春の木陰にいるような……」(*18) 「……運がよい、だけでもなさそうじゃな、それは」 三人そろって嘆息した。運や偶然でなければ、この新しい使い魔達の仕業なの だろう。 オスマンが杖を振ると、鏡に何かが映し出された。食堂のようだ。貴族たちと共に テーブルに着く、使い魔の姿が見える。二日酔いのせいか顔色の悪い生徒達に対して、 使い魔となった妖怪たちは実に楽しげな笑みを浮かべていた。 いったいこの妖怪という連中は何者なのだろうか(*19)。 ルイズは気がつくと、アルヴィーズの食堂に座っていた。その直前の記憶は、 急速に近づいてくる地面だった気がする。あれは死んだと思った。走馬燈も走ったし。 でも今は、こうしてちゃんと食堂に座っている。その上左手にはフォーク。 先にはつけ合わせの野菜が刺さり、囓った後まである。全然覚えてないけれど。 そして彼女をこのような目に遭わせた使い魔はというと、彼女の横に座り、 他の使い魔と出来の悪い漫才に興じていた。 「――それで、その速さの秘密はなんです?」 「ん? いつも通りだぜ」 「ふふふ。私の目はごまかせませんよ」 「じゃああれだ。『郷に入っては郷に従え』」 「あなたは、そう簡単に従うような人間ですか?」 「あー、そりゃ気のせいだ。今の私は、ご主人様の命令を忠実に守る使い魔だぜ」 「どこが忠実な使い魔よーっ!」 思わず大声で叫んでしまった。 「うるさいー」 「あたまにひびくって言ったでしょー」 「このぜろのばかがー」 呪詛のような呻きが周囲から返ってきた。どうやら二日酔いは未だに治って ないらしい。食欲もない様子だが、その分、妖怪達が食べている。 「ご主人様、食べないんですか?」 「むしろよく食べれるな、君たちは」 「?」 呆れたような男子生徒の答えに、猫の尻尾を二本持つ使い魔は可愛らしく首を 傾げながら、主人が取り分けた鶏肉にかぶりついた。彼もまた昨日の深酒が 堪えている。彼ら以上にこのヨーカイといわれる連中は酒を飲んでいる筈なのだが、 なんでこんなに普通なんだろう。それに意外とみな、行儀がよい。きちんとナイフと フォークも使っている。昨日の夜の騒ぎ方からすれば信じられないくらいだ。 もっとも中には、鶏を骨ごとバリバリと噛み砕き、主人の顔を引きつらせている 者もいる。見た目が可愛らしいだけに、ギャップが酷い(*20)。 また、野菜だけを少しだけ食べているものもいる。 「食べないの?」 「うん、朝からそんなに食べたら、太っちゃうよ」(*21) 使い魔となった妖精の返答に、複雑な表情を見せる女生徒。年頃の女性として、 やはり体型は気になるところだ。 また別の生徒は、自らの使い魔がメイドに真っ赤な飲み物を持ってこさせる様子を、 気が抜けた風に見ていた。 彼女がその血のように紅いワインを飲む様子を見ながら呟く。 「血は飲まないのか……」 「下手な血よりは美味しいよ」 そういうと何が可笑しいのか、ケタケタと笑う。 「人間って鶏を食べるのに、鶏小屋に入って生きてる鶏に噛みつくの?」 「まさか」 「じゃあ、そういうことっ」 無邪気な様子で盃を一気に空ける。ニコリと笑った口に覗く犬歯は、今し方飲んだ ワインで紅く染まっていた。 また食事とは関係なく、むしろ周囲の人形に興味を示している者達もいる。 「ねぇ、一つ分解してみていい?」(*22) 「やめなさい、高いのよ、あれ」 「大丈夫、ちゃんと元には戻すから」 「……まずは、もっと安いので試して欲しいわ」 また別の主従でも。 「可愛い子達ね。一体貰えないかしら?」(*23) 「やめてくれ、あれは学院の備品で、高いんだぞ」 「そう、残念だわ」 「だったら僕が一つ作ってあげよう」 「あら、あなた、そんなことも出来るの?」 「ふふん。僕は青銅のギーシュ。この二つ名が意味するところは――」 しまった、と思うも後の祭り。二日酔いとも思えぬ勢いで始まった自慢話を 聞き流すアリス。一部そういうのもいるが、おおかたの所、この主人と使い魔達は 良好な関係を築きつつあるようだ。 そんな二年生と使い魔を、一年生と三年生が左右から、教師達が上からちらちらと 窺っている。興味半分、恐怖半分、羨望少々、といったところだろうか。 召喚の儀式でこのような人の姿をした者達が呼び出されたということは、今まで 例がない。しかもみな基本的に、少女、もしくは年頃の女性の姿をしているのだ。 貴族とはいっても年頃の青少年、興味がないと言えば嘘になる。 とはいっても、異形の存在であることには違いない。妙な動きを見せたら即座に 対応できるようにと、杖を握りしめている教師もいる。もっとも大半の者達は 様子見だ。主人となった二年生と普通にやり取りをしている、ということもあるし、 その能力が分からない、ということもある。 先ほど中庭に突如として落ちてきた生徒と使い魔には、一時騒然となったものだ。 本人曰く、落ちてきたわけではなく着陸した、ということだが、フライという魔法の 能力では、あの勢いを制御できるものではない。 だから二年生達を羨む者達もいる。メイジの力を見るなら使い魔を見ろ、と一般的に 言われているではないか。あの主人となった生徒も、実はすごい力を秘めているの ではないか、という憶測も飛んでいる。 もっとも、実際にその着陸を自らの体で体験した生徒にとっては色々と不満が あるらしい。だから、こんな文句も出る。 「なんでわたしたちと一緒に座ってるのよ」 「まさか床に座らせて、食べさせるわけにもいかないでしょ」 不満気なルイスの声に、キュルケが面白そうに応えた。彼女の使い魔である 妹紅は、我関せずというようにハシバミ草を囓っている。その様子をタバサがじっと 見ているのは、単に退屈だからというわけではないようだが(*24)、この場には 関係ないので割愛。 「なんだ、このすばらしい使い魔に不満でもあるのか?」 「あたりまえでしょ。わたしは、追いつけ、っていったのよ」 「追いつけ、といわれたから、ちゃんとぶち抜いたってのに」 「なんで追いつくだけにしないのよ」 「私はいつだって全力全開だぜ」 「全力全開っていうより、全力全壊ですね」 親指を立てての魔理沙の台詞に、横から射命丸文が口を挟んだ。壊すのが 魔理沙の専売特許でしょう、と何やら懐から紙切れを取り出す。そこに印刷された 写真の中には、窓を壊しつつ外に飛び出す魔理沙の姿があった。 「なるほど、さすがアヤ、上手いこというね」 さらに口を出すマリコルヌ。いつも悪口を言い合う相手の参入は、ルイズにとって 都合が良かった。怒りの捌け口という意味で。 「かぜっぴきは黙ってなさいっ」 「俺は風上のマリコルヌだっ」 そのまま始まった二人の言い合いを余所に、魔理沙と文は顔を見合わせた。 「この世界は日本語というわけじゃないですよね」 「ああ、昨日の禿頭の教師が書いてた文字は、私には読めなかったな」 「それでも会話は通じるし、同音異義語を使った冗句も伝わってます」 「面白いこともあるもんだぜ」 「これなら、いつもの調子で新聞を書いても、ちゃんと訳してもらえそうですね」 「なんだ、ここでも新聞を作るつもりなのか?」 呆れたような魔理沙に、文はあたりまえじゃないですか、と鼻を鳴らした。 「新聞の名前も考えてあります。 その名も文々。※新聞(ぶんぶんまるこめしんぶん)」 「まる……こめ……?」(*25) 「私のご主人様に敬意を表してですね――」 「マルコメじゃなくて、マリコルヌ、だよぅ」 情けなさそうなマリコルヌの声。さすがに聞き流すわけにはいかなかったらしい。 「それを言ったら、私だってブンじゃなくてアヤです。 いいですか、こういうのはちょっとした教養と余裕がなせる言葉遊びで――」 そのまま説明とも説教ともつかない話が始まってしまったが、マリコルヌはそれを どこか嬉しそうに聞いている。堪らないのは口げんかの最中に放り出された格好と なったルイズだ。右腕を振り上げたままの肩を、ポンポンと叩かれた。 振り返ると、神妙な顔をした自らの使い魔。 「早く慣れないと、辛いぞ」 「そうそう。こんな経験、なかなか出来るものじゃないわよ」 キュルケに同調までされてしまい、ルイズは深く溜め息をついた。まるで自分だけ おかしいみたいじゃない。ルイズは他の生徒達とは異なる頭痛に襲われていた。 覚悟を決めて教室に入ったシュヴルーズは、意外と平穏な状況に内心安堵の息を ついた。見るからにつまらなそうな様子で座っている者達(*26)もいるが、騒がれる よりはよっぽど良い。むしろ気になるのは、観察するかのような視線だ。 普通に、という学院長の言葉を思い出しつつ、彼女は毎年恒例となった挨拶を 口にした。 「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、 こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 今年は特に、可愛らしい使い魔が大勢いますね、という声に、当の妖怪達は微妙な 笑みを浮かべた。確かに外見は可愛らしいが、大半の妖怪はシュヴルーズの何倍も(*27) 生きているのだから。 何はともあれ、こうして授業が始まった。生徒達の体調を考慮してか今回は復習的な 内容らしく、多くの生徒は聞き流している状態だ。むしろ、一部の使い魔達の方が熱心に 授業を聞いている。 シュヴルーズが実際に真鍮を練金してみせると、小さなどよめきが起こった。 「無から小石を生成したり、そこから組成を組み直して真鍮を作ったり…… 面白いわね」 「なるほど、パチュリーの言う通りだ。あの魔力消費量は異常だぜ。少なすぎる」 「実は召喚魔法の応用で、物体の入れ替えを行っているとか? そちらの方がよっぽど納得できるわ」 「重要なのは、それが体系だった魔法として成り立っている事よ」 「研究するための所ではなく、習得するための所、か」 「貴族の立場が圧倒的優位にある理由がよく分かるわ」 「お静かに!」 シュヴルーズの注意に、三人の言葉が止まる。しかし、シュヴルーズの冷や汗は 止まらなかった。観察されていたのは彼女個人ではなく、この学院、そして魔法 そのものだったことがわかったのだから。 もっとも、だからといってどうこうできるわけでもない。彼女はいつも通り授業を進める ことにした。ここでは生徒に練金を試してもらう場面。ならば―― 「ミス・ヴァリエール」 「はい」 「練金を、あなたにやってもらいましょう」 あなたの無駄口の所為よ、などと使い魔にあたっているが、それは違う。彼女が 魔法を上手く使えないということは、シュヴルーズも話にだけは聞いている。先ほどの 三人の前で実践させれば、何か原因のようなものもわかるのではないか、と考えたのだ。 ただ、どのように失敗するか、ということまで詳しく知らなかったのが、迂闊ではあるが。 もっとも、当の使い魔の方は乗り気でないようだ。 「止めた方がいいんじゃないか?」 「なによ!」 「いや、だってなぁ……」 周りを見回すと、生徒達はみな、ルイズに思いとどまるような言葉をかけたり、何か から避難するかのように机の下に潜り込んでいる。つまり、ルイズの魔法は危険なのだ。 そういえば今朝、爆音で飛び起きた直後に魔理沙が見たものは、杖を持ったルイズの 姿だった。そして昨日の夜のコルベールの話。併せて考えれば、何が起きたのか、 そしてこれから何が起きるのかは容易に想像つく。 「朝だって失敗したんだろ?」 「だから何よ! 今度はちゃんと出来るかもしれないじゃない!」 「失敗した原因は分かってるのか?」 「う……」 「それじゃあ失敗するだろ、間違いなく」 「うるさいうるさいうるさい! 何度も練習したんだもん。今度ぐらい成功するわよ!」 前ページ次ページ東方のキャラたちがルイズたちに召喚されました