約 1,871,335 件
https://w.atwiki.jp/whentheycry3-4/pages/136.html
Characters 1 右代宮 金蔵 右代宮 蔵臼 右代宮 夏妃 右代宮 朱志香 右代宮 絵羽 右代宮 秀吉 右代宮 譲治 右代宮 留弗夫 右代宮 霧江 右代宮 戦人 右代宮 楼座 右代宮 真里亞 主治医 南條 使用人 源次 使用人 紗音 使用人 嘉音 使用人 郷田 使用人 熊沢 Characters 2 ベアトリーチェ ゴールドスミス ワルギリア ロノウェ ガァプ シエスタ00 シエスタ410 シエスタ45 シエスタ556 煉獄の七姉妹 山羊の皆さん 右代宮 真里亞 さくたろう エンジェ ベルンカステル ラムダデルタ Characters 3 右代宮 縁寿 煉獄の七姉妹 マリア さくたろう 右代宮 絵羽 小此木 鉄郎 天草 十三 須磨寺 霞 大月教授 南條 雅行 熊沢 鯖吉 川畑船長 Tips マリアージュ・ソルシエール 魔法大系 魔導書 ベアトリーチェの称号 魔女について 航海者について 造物主について
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8824.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第二十三話『タルブと土鍋と時々カボチャ』 「うわぁぁぁぁ~~~~~っ!!!助っ!助けてくれっ~!!」 今ギーシュは情けない悲鳴をあげながら全力で木々が生い茂る森の中を走っていた………そう、三匹のオーク鬼を引きつれて。 「何で僕がこんな……目にぃっ!?」 そもそもこんな事になった理由はキュルケがミントを宝探しに誘い、そのミントがギーシュを半ば無理矢理拉致するかのように宝探しに連れ出したのだ。 ギーシュは魔法学園の中でもミントとは付き合いの深い方に入るしルイズとオスマンを除けばミントが異世界の王女だと知る唯一の人物だ。だが、だからこそミントが良い笑顔で自分を誘った時嫌な予感しかしなかった。 無論、拒否と抵抗を行ったがミントに通用する筈も無く問答無用で連れてこられ、今は宝が眠る寺院からオーク鬼を誘い出す為の囮をやらされている… 死にものぐるいで予定地点に辿り着いたギーシュが落とし穴の目印をなんとか飛び越えるとそれを追っていたオーク鬼達は次々とヴェルダンデによって掘られ、タバサの水魔法によって沼と化した落とし穴に下半身を飲まれた。 「お疲れ様です、ミスタ・グラモン大丈夫ですか?」 肩で息をするギーシュにハンカチを差し出し、労いの優しい言葉を掛けるのは身の回りの世話とガイドとして付いて来たシエスタ。 「あ…あぁ、何とかね…後は…」 ヘトヘトになりながらもギーシュは何とか呼吸を整え、自分のやり遂げた仕事の成果を確認する為、沼の落とし穴に填まったオーク鬼に視線を向ける。 藻掻きながら落とし穴を抜けようとするオーク鬼の眼前にミントとキュルケが木の枝の上から飛び降り、ようやくその姿を現した。 「フレイムボール。」「フレア。」 二人の手によってそれぞれ同時に放たれた二つの大火球が身動きが取れないオーク鬼を無慈悲に焼き尽くす。 ___ 寺院内部 「で…結局見つけたお宝は…」 「銀のコイン一枚と古いだけのネックレス…」 批難めいたジト目でキュルケを見つめるミントにタバサが本を手放さぬままポツリと答える。 既に7カ所も巡ったというのにこれといった成果が無い事に露骨に項垂れる一行、因みに今更ながら一行の内訳はミント、キュルケ、タバサ、ギーシュ、シエスタ、後は三人のそれぞれの使い魔である。 「んもうっ、分かってるってば!!次よ次で最後だから。次こそ本命なの!その名も『巨人の土鍋』これに関しては実在が確認されてるのよ!!ね、シエスタ!!」 と成果の上がらない今回の冒険の立案者であるキュルケは些か勢いでバツの悪さを押し切り、夕食の鍋をお玉でゆっくり丁寧にかき回していたシエスタへと話を振る。 「あ、はい。ミス・ツェルプストーの仰る通り巨人の土鍋は私の田舎のタルブ村の祠に祀られています。村のみんなは土鍋様って呼んでますけど…アレはお宝って言うよりは変な石像って感じの物で、価値があるようにはとても…」 言ってシエスタは苦笑いを浮かべる。その言葉にミントとキュルケのテンションがグッと下がった。 「あっ、ですがタルブは上質なワインが名産でとても喉かな良い所なので立ち寄られるならば折角です精一杯お持て成ししますので、ゆっくりしていって下さい。」 屈託無く微笑むシエスタに一同は「まぁ、観光みたいだけどそれも良いか。」と軽い気持ちでタルブ村へと向かう事に決めた。 ちなみにギーシュはこの間疲れ果てて眠っており、寝言で「もう帰りたい。モンモランシーに会いたい、帰りたい…」と魘されるように繰り返していた… ___ タルブ村 「皆さん、こっちでーす。」 向日葵の様な明るい笑顔のシエスタが村の入り口、門の下で大きく手を振って一行を呼ぶ。シエスタの案内を受けてようやく一行はタルブの村へと到着した。 「まぁ予想はしてたけど、何て言うか牧歌的というか…はっきり言って超が付く田舎ね。」 「…君はそういう事を本当にばっさり言うね。」 「まぁ良いじゃ無い。それに確かに田舎だけど村自体は豊かそうだわ。良い領主に恵まれてるのかしらね…」 シエスタに案内されつつそれぞれ好き勝手な事を良いながら村の中をミント達は歩いて行く。 「はい、領主様の統治の御陰もありますが実はタルブには他には無い名産品があってそれが村の生活を支えているんです。」 「名産ってワインでしょ?何、そんなに珍しいワインなの?」 「僕の舌を唸らせるワインならば是非買って帰りたいね。」 鼻高々自慢げに語るシエスタにワインに目が無いキュルケとギーシュが瞳を輝かせて食いつく。 「いえ、ワインも確かにそうなんですがもっと変わった物ですよ♪あ、ほらあの右手の畑に見える…「ひぃっ!!!!」」 話を続けていたシエスタが右手の民家の畑を指し示した所、ミントの今まで誰もが聞いた事の無い様な情けない悲鳴でシエスタの言葉を遮った。 「カ……カボチャ…」 ミントは完全に忘れていた… 確かに聞いていた…以前シエスタと初めて顔を合わせた時にシエスタ自身から故郷のタルブの名産がミントがこの世で最も嫌いなカボチャであるという事を… ミントは手で口元を押さえて怖じ気づいたように二、三歩後ずさり必死に思考を巡らせる。 (何で!?何でよりにもよってアレが名産なの?ていうかアレ、間違いなくアレよね…) 目にしたカボチャが唯のカボチャならミントも此処までうろたえる事は無かっただろう。しかし、目の前に見える畑で丸々と実った巨大なカボチャはどう見てもミントには馴染み深いこの世界にあるはずの無いカボチャに見えた。 「あ…あの、ミントさん?」 明らかに様子がおかしいミントを心配そうに見つめるシエスタに対し、キュルケ、ギーシュ、果てはタバサまでが今まで見た事も無い大きさのカボチャに興味を引かれその足を畑へと向ける。 「うわっ、でっかーい!!何これ…手?」 「可愛い…」 「驚いたね…この大きさなら名産にもなるよ。しかしこのカボチャの模様なんだか顔と口みたいだね。」 ギーシュ達が注目したのはその大きさとカボチャの模様、オレンジの外皮に浮かんでいるその黒い模様はどう見ても口と目にしか見えなかった。おまけに非常に小さい申し訳程度に手の様な形に外皮が両脇に伸びている。 「その子達はお化けカボチャって名前でそういう風に顔がくっきり浮かぶと食べ頃なんですよー。でも、収穫せずに放っておくと畑から逃げていっちゃうんですよ~。」 「逃げるって…まさかこれ生き物なの?」 シエスタの説明にキュルケが驚いた様子で足下のカボチャを見つめる。 「一応そうでは無いんですが…私は種を遠くへ運ぶ為に頑張ってるんじゃ無いかって父から聞きました。」 「成る程…変なカボチャね。」 「何で…アレがここにあるのよ…」 シエスタ達が色々と会話に花を咲かせていた間、ガックリと四つん這いの姿勢で項垂れていたミントは目の前のカボチャをよ~く知っていた。 何故ならこのカボチャは間違いなくミントの世界で『パンプキン』と呼ばれる品種だったからである。 「おや、君達は?何故ここに…」 と、そんな一行の背後に突然学園で聞き慣れた、人の良さそうな男性の声が掛けられる。 『ミスタ・コルベール!?』 その声に振り返れば太陽の光を反射する眩しい頭が全員の目を眩ませる。そこに立っていたのは紛れも無く学園の教師コルベールだった。 ミント達は授業をサボっていた件について叱責を受けながらもコルベールとお互い何故タルブに居るのかを聞いてみる。するとコルベールも巨人の土鍋の噂を聞いてこの村を訪れていたのだと言う。 その日ミント達は村中の暖かい歓迎を受け、シエスタの実家に宿泊し翌朝巨人の土鍋こと『土鍋様』が祀られてい祠へと向かう事となった。 シエスタの家は村の中でも大きく、聞けばお化けカボチャを育てだしたのはシエスタの曾祖父らしく土鍋様も一応その家系の所有物に当たるそうでそこそこに裕福な家庭であった。 ミント以外はそこで名物のワインとカボチャのフルコースに舌鼓を打ち、それでもミントは頑なにそれらを口に運ぶ事を拒み続けた。 折角の料理を食べて貰う事が出来なかった事をシエスタは残念に思ったがミントのカボチャ嫌いっぷりはそれはもう凄まじい物であった。 ___ タルブの祠 翌朝、一行はやはりシエスタの案内の元にタルブの祠を訪れていた。それは祠といっても鍵の付いた独特の設計をした唯の木造の倉庫の様だった。 「これが、土鍋様の祠です。何でも私の曾おじいさんがお化けカボチャの種を持って土鍋様に乗って遠くの国からやって来たそうです。」 「ほう、やはり噂で聞いた通り巨人の土鍋は人を乗せて稼働していたのかね?」 コルベールはシエスタの説明に興味深そうに訪ねる。コルベールは趣味の域を超えてそういった動力機関などの研究を行っている。 最も周囲の反応は冷ややかな物であるが… 「はい、今はもう動かす事は出来ないのでそれが本当かどうかは判りません。でも土鍋様は今はこの村の守り神みたいな物ですから大切に祀られていて凄いメイジの方に固定化も掛けて貰っているんですよ。…お待たせして申し訳ありません、開きました。」 誇らしげにそう話しながらシエスタが扉の鍵を外し、その重たい扉を開いていく。 しん、と静まり返った薄暗い祠の中に太陽の光が入り込む。 露わになった安置されていた土鍋様の巨体に男のロマンを感じ取り、コルベールとギーシュはそれに子供の様に瞳を輝かせながらかけだしていく。 土鍋と評されるに相応しいずんぐりとした亀の甲羅の様なボディ、そこから前方に伸びる蛇腹の多節状の一対の腕、 後方にはプロペラに良く似た形状の足が、そして亀っぽい頭部には大きな水晶がモノアイの瞳らしき場所にはめ込まれている。 そして普段ならばコルベール達同様テンションを上げるであろうミントはその姿に色々と考えてしまう事がありすぎて珍しく呆然としてしまい、その場から直ぐには一歩も動く事が出来なかった。 「これは………むむむ………何と!!…素晴らしい…」 「何だ、この材質は!?土?岩?だがこの硬度はなんだ?」 ギーシュとコルベールは早速土鍋様に触れ、その未知の材質や構造に驚嘆し続ける。ただの石像などでは無い事がこの二人には判るのだ。 「何アレ?唯の石像じゃ無いの…いい年したおっさんがはしゃいじゃって。ごめんねミント、タバサ、付き合って貰ったのに結局全部大ハズレだったわね。…ってミントどうしたの??」 そんな二人の少年の心を露わにする二人に呆れながら溜息を溢したキュルケはふと隣に立つミントの様子がおかしい事に気が付いた…よく見ればその身体はワナワナと震えている。 「……大ハズレ?…いいえ…大当たりよ、キュルケ!!」 言ってミントは地面を蹴って飛び上がると華麗に土鍋様の背中に着地する。そしてその足下に刻まれているルーンと何かが以前填め込まれていただろうくぼみを確認して全てを確信した。 オスマンがかつてある村で石像に固定化をかけた際、カノンオーブを渡されたと言っていたがその話の舞台は間違いなくこのタルブ村で、パンプキンをこの村に持ち込んだシエスタの曾祖父は間違いなくミントと同郷なのだ。 そこまで考えてミントは決めた。 「シエスタ。」 「はい、何でしょうミントさん?」 「この巨人の土鍋!いいえ、この『ヘクサゴン』きっと動かせるわよ。あたしに寄越しなさい!!」 ビシリとシエスタを指さしてそう宣告するとミントは不敵に笑う。 『ヘクサゴン?』 同時にその場に居た全員がミントの口から出た謎の名称に首を捻った。 かつてベルとデュークによって使用されミントを苦しめた魔法兵器『ヘクサゴン』。 タルブの物はその二人が使用していた物とは別物の様であったがミントにとってこれはとてつもなく大きな意味を持った代物だ。 (ベル…デューク…) まさかハルケギニアに来てまでベルとデュークの事を思い出す事になろうとはミントも思っていなかったが不思議と今はそれも悪い気はしなかった。 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4318.html
586 名前:1/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 24 31 ID PIj79Lv4 懐かしい夢を見た、始めて会った頃の記憶。 ……わたしが自分で言ったことを思い出す。 ……サイトが何かを言い返して……そして…… うなされて目を覚めた、慌てて周りを見回してサイトを見つける。 シエスタはいつも先に起きて、わたしとサイトの朝の支度をしている。 だから……いつもこの時間はゆっくりサイトを見つめられる。 サイトの寝息を聞きながら、もう一度サイトの隣に寝転がる。 (ずーーーーっと、こうしていられたらしいのに) サイトがおきないようにそっと、サイトの前髪に指を絡ませて遊ぶ。 シエスタが起こしに来るまで、毎日こうしているのが最近の日課。 「ミス・ヴァリエールそろそろ……って、またですか」 触っているだけなのに我慢できなくなって、サイトにキスしようとする頃に決まってシエスタが入ってくる。 「……変な本能でも付いてない?」 「毎朝、サイトさんを襲ってる人に言われたくないです。」 「おおおおお襲ってなんか無いわよっ」 「へーそうなんですか?」 「そ、そうに決まってるじゃない」 にっこり笑ったシエスタが、サイトの手を取って胸に当てる。 そのまま眠ってるサイトに唇を寄せる。 「なに、いきなり襲ってるのよっっっ」 「ほら?」 ……ズルイ。 「あれ……おはよー、ルイズ、シエスタ……」 わたしの声でサイトが目を覚ました。 ……わたしの方を先に呼んだ……メイドは後ー。 ちょっとうれしい。 「ってぇぇぇぇぇぇ、シエスタ」 「いやん、サイトさん手、動かしちゃだめです。」 あ、当てっぱなしぃぃぃぃ 「離れなさいっ」 名残惜しそうなサイト……悔しい。 「朝っぱらから、さかってるなぁぁぁ、いぬっ!」 とりあえず踏む。 「まてぇぇぇぇ、起きた所で全然展開分からないぞ、ルイズ」 ……もっともな気もしたけど…… 「うれしそうだったから、有罪よっ!」 結局サイトが謝るまで踏み続けた。 587 名前:2/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 25 07 ID PIj79Lv4 またやっちゃった…… 自己嫌悪、付き合いの長い友達のような気がする。 理由は随分変わったけど、わたしは結局いつもこう。 昔は魔法が使えない自分が嫌いだった。 今は素直になれない自分が嫌い。 気まずくなったので、サイトより少し先に食堂に向かう。 切ない所が〜〜って叫んでたけど…… シエスタがいるから大丈夫…… ……いるから不安に思った方がいいのかしら? 食堂の前まで来て、今更引き返すのも恥ずかしくて席について待つ。 ……サイト遅い。 まだちょっとしか待ってないけど。 食堂にはまだ一年生しか居ない。 一年しか違わないし、人によったら年も上なのに、随分幼く見える気がする。 周りの席の子とざわざわと話している。 『……ェ…サ…ト……って』 ……何か気になることが聞こえた……気がする。 「サイトさま、おやさしいですわねー」 「今日も差し入れもって行きますわ」 ……息を詰めて会話に集中する。 「でも、ミス・ヴァリエール邪魔ですよね」 ……悪かったわね。 「知ってます?サイトさま昔、公衆の面前で鞭で打たれたり」 「あー知ってます、獣用の首輪つけられてたり」 「そうそう、人前でボコボコ蹴られたり、殴られたり」 ……し、したけどっ、昔の話じゃない。 「あれって……ミス・ヴァリエールの趣味ですわよね?」 なぁっ……ち、ちがうっ 「シュヴァリエに成る前はそれで……」 「今は差し入れすらさせてくれずに、べぇぇぇぇったり」 「調子いいですよねー」 ちがうもんっ、わたしは……ずっと前から…… 「普通、あんなにべったりする相手にそんなこと出来ませんよね?」 「好きだからーとか?」 「えーそんな、変態みたいな」 へ、変態……わたし、変態? 「あー、でも案外サイトさまの趣味だったりしてー」 「えーサイトさまが変態?」 ……ちがうもん、サイト変態じゃないもん。 わたしの事は良いけど…… わたしの所為でサイトが馬鹿にされるのは悲しかった。 サイトや皆が来るまでの間ずっと聞き続けた一年生の会話は、 私の心を切り裂いていた。 588 名前:3/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 25 39 ID PIj79Lv4 「元気ないですねー」 授業に出ずに部屋に帰ったわたしを、シエスタが出迎えてくれる。 何も言わずにベットに潜り込む。 「体調悪いんですか?」 「うるさい」 何も聞きたくなかった。 昔サイトにあんな酷いことをしたのを忘れたかった。 何も考えたくなかった。 泣きたかった、シエスタが居るから泣けないけど。 どうすればサイトに許してもらえるだろう? サイト気にしてないのかな? お詫びに同じことをサイトにしてもらう? ……多分わたしは嫌じゃないから……お詫びにならない。 サイトのすることなら何でもうれしいと思う。 でも……わたしはサイトに今までずっと酷いことをしてきた。 それに……… 不意にベットが沈み込む。 布団を被ったままのわたしの後ろに、シエスタが寝転んでいた。 「なに?」 どこかに行ってほしい。 「サボってるんです」 ………わたしもそうだから、何も言えなかった。 「何か有りました?」 「してほしいこと有りますか?」 返事せずに放っておいたら、シエスタは何も言わなくなった。 でも……どこかに行ったりもしなかった。 何も言わずにずっと側に居てくれる。 背中が温かくて泣きそうになる。 シエスタは優しい。 サイトも優しい。 わたし一人だけが二人の側に居る資格が無い気がする。 声を殺して泣いてたら、シエスタが優しく抱きしめてくれた。 589 名前:4/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 26 10 ID PIj79Lv4 「サイト……どこかに行っちゃうかもしれない」 ミス・ヴァリエールが泣きながら話し始めた。 貴族だけど、わたしのライバルで、 サイトさんが居ないと死んじゃうくらいサイトさんが好きで、 綺麗で強気な女の子。 「分かったの」 「なにがですか?」 「サイトに言えない……言ったら……居なくなる」 サイトさんは多分何を言われても、ミス・ヴァリエールの側を離れない。 ちょっと切ないけど、それでいいと思ったから。 『2番目でいいですよ』ってサイトさんには伝えてある。 「大丈夫ですよ?何があったのか分かりませんけど」 泣き止むまで抱きしめようと思って、背中に回した手で背中を撫でる。 「サイト、シュヴァリエに成ったから」 「それで態度が変わる方じゃなかったですよ?」 わたしも最初怖かったけど、サイトさんはサイトさんだった。 「違うの………わたし……最初に」 なんだろう? 「最初に言ったの『誰があんたを養うと思ってるの?誰があんたのご飯を用意すると思ってるの?ここ誰の部屋?』って」 うわぁ、ミス・ヴァリエール強気だ……でも 「その通りじゃありませんか?」 「違うの……もう」 どう違うんだろう? 「シュヴァリエは……お金貰えるもの」 あ 「サイトもう、私の側に居なくてもいいの、町に下りて一人で暮らしても大丈夫だし、お金出して部屋を借りても良いし、それに今はシエスタが居るからっわたし……要らないの」 「部屋を借りるのは、無駄なお金使うなっていったけど……本当はっ……どこにも……」 ……そうか… 「シエスタはサイトに付いて行くし、わたし………一人だよ」 怖かったんですね、ミス・ヴァリエール 「今までずっと、サイトに酷い事した、暮らすところが無いからって弱み利用して、 食事だって抜いた、まるで動物みたいに扱ったからっ」 ミス・ヴァリエールの体が震えだした、考えるだけで怖いことのように。 「わたし、きっとサイトに嫌われてる。好きだって言ってくれたのも、言わないと生活できなくなるからっ」 ………何も言わずに力づくでミス・ヴァリエールを引き起こした。 布団を剥ぐ。 一瞬嫌がったけど、真剣な私の顔を見て黙り込んだ。 向き合ったまま……頬を張った。 パチンという音が部屋に響く。 多分あまり痛くなかったと思うけど……驚いた表情でわたしを見つめていた。 「サイトさんは、下げたくない頭は下げない人でしょう?」 ミス・ヴァリエールの視線が彷徨いだす。 「サイトさんの言葉を疑うのは可愛そうですよ?」 ……わたしにこんな事言わせないで下さい。 「そんなに怖かったら、サイトさんに聞いてみましょう、ね?ミス・ヴァリエール」 わたしの顔を見なくていいように…… わたしに顔を見られずにすむように抱きしめると、ミス・ヴァリエールは堰を切ったように泣き出した。 590 名前:5/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 26 43 ID PIj79Lv4 随分時間が経った、シエスタはまだわたしの為に側に居てくれた。 幸せだった、ちぃ姉さまが増えたみたい。 「ねぇ、シエスタ」 「はい、ミス・ヴァリエール」 「後で聞いてみる」 「そうですね」 「……たまには帰ってくるよね?」 二度と会わない、お前なんか嫌いだ……そんな風に言われたら……どうしよう? ガンダールヴじゃ無くなったとき、すぐ帰ってこなかったのは、帰って来たくなかったからだったら…… 「そんな心配いりませんよ」 シエスタ……優しい。 サイトが帰ってくるまで、わたしはずっとシエスタに甘えていた。 591 名前:6/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 27 19 ID PIj79Lv4 「サイト!」 部屋にはいった途端、ルイズに怒鳴られた。 「あ、ルイズ、休んでたみたいだけど、身体の調子とか?」 「いいから、黙ってそこに座りなさい」 椅子を勧められる。 妙な迫力に押されて、おとなしく座ってしまう。 「サイト、あんたシュヴァリエよね?」 ……なんだろう?いまさら? 「そうだけど?」 シエスタが苦笑しながら俺のマントを掛けてくれている。 「年金貰ってるわよね?」 「馬とか買っただろ?」 思いつめたように見つめながら、分かりきったことばかり聞いてくる。 「分かってるの?」 ルイズの指がいらだつように、トントンと動いている。 「なにがだよ?」 ルイズが怯む。でも、それも一瞬で。 「出て行きたかったら、いつでも出て行けるのよ、って言ってるのよ、分かってんの?」 なに言ってるんだろう? 「そーだけど?なんでいまさら?」 「出て行きたかったら、出て行っていいのよ、って言ってるの」 「どっかいったほうが良いの?」 なにか知らない間に、またルイズを怒らせたんだろうか? 「違うわよっ、無理してここに居なくてもいいの、って」 話が見えないけど…… 「今ならシエスタも居るし、一人で何でも出来るでしょっ」 「ここに居たら駄目なのか?」 ルイズが出て行けっていうんなら仕様が無いけど。 「俺、ルイズの側に居たいんだけど?」 「な、なんでよ?」 ……何回言わないと分かってくれないんだろう。 「ルイズが好きだから」 592 名前:7/7[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 27 51 ID PIj79Lv4 サイトが……好きだって言ってくれた。 前よりずっとうれしい。 わたしを拒絶出来るサイトが、わたしを好きだって言ってくれる。 使い魔と主じゃなくて、 平民と貴族じゃなくて、 ルイズとサイトとして、好きだって言ってくれる。 さっきまで暗く感じていた部屋が、一気に明るくなる。 何かに凍えていた体が、内側から温かくなる。 「しょーがないわねー、そこまで言うなら置いてあげるわよ」 「じぶんできいてきたんじゃねーか、なんなんだよ、いきなり」 うれしかった、一日暗かったのが馬鹿みたい。 シエスタがこちらを見て……微笑んでく……れる。 優しく笑ったままのシエスタが、ごく自然に廊下に出る。 わたしの頭の中で、何かが怒っていた。 慌てて自分も廊下に出ると、シエスタが走ってる。 あ、……わ……たし……なに…を…… 分かりきったことを確認するために、思い足取りでシエスタの後を追う。 廊下の隅で……シエスタが泣いていた。 昔のわたしみたいに、泣き声も上げずに。 ……ワタシノバカ。 慰めてくれたシエスタの前で……サイトに何を聞いたんだろう。 微笑んでくれたシエスタは、何を考えていたんだろう……。 わたしはいつも自分の事ばかりで…… 優しいサイトとシエスタの側に、やっぱり自分の居場所が無い気がした。 594 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/10/29(日) 04 34 40 ID PIj79Lv4 あ、肝心なこと書くの忘れました、続きます。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8148.html
前ページ次ページTALES OF ZERO どうして、物事はこうも上手くいかないのだろう モット伯に『召喚されし書物』を渡して、シエスタを連れて帰る それだけで良い筈だったのに… 「何でこうなるんだよ!!!」 目の前の光景に、才人はそう叫ぶしか出来なかった 破壊される屋敷、武器を手に戦う兵士達、そして… 「アオーーーン!!!」 何匹もの狼達が屋敷の中庭に解き放たれていた ウルフというこの魔物達はモット伯の物ではなく、警備の兵士や番犬達を襲っている その時、近くで番犬に喰らいついていた一匹が、口から獲物の血を垂れ流しながら才人を見据える 彼を次の獲物と認定し、こちらに向かって走りだした 「わっ、こっちに来る。」 慌てて武器を手にしようと思ったが、デルフはクラースに返していた事を思い出す 相手が丸腰でも、ウルフは容赦なくその喉笛目掛けて飛び掛った 「うわあっ!?」 思わず目を瞑る才人…しかし、噛み付かれる寸前に銃声が響き渡った それから少し時間が経ってもウルフが襲ってくる事はなく、才人は恐る恐る目を開ける するとと、自分を襲おうとしたウルフが近くに倒れていた…頭部を銃撃され、絶命している 「忠告した筈だぞ、無謀な真似は何時か命を落すと。」 振り返ると、少し離れた所でライフルを構えるリカルドの姿があった 彼はその場から狙撃を続け、射程範囲内のウルフ達を射殺していく 全て急所を撃ち抜かれており、恐ろしいまでの狙撃能力を見せる 「才人、これを使え。」 追いついたクラースが、持っていたロングソードを才人に向かって投げる 才人が反射的に受け取ったと同時に、またウルフ達が襲ってきた 「わわっ、また来た!?」 「焦るな、冷静に対処しろ。」 クラースの言葉に、兎に角冷静になって剣を鞘から抜いた ルーンが輝く…才人は剣を構え、飛び掛ってくるウルフ達を見据え… 「でやっ!!」 剣を振り払い、向かってきたウルフを切り捨てた それでも、ウルフ達は次々と襲い掛かってくる…才人は必死に応戦する その後ろではクラースが詠唱を行っている 「お前達にはこれで十分だ…バースト!!!」 光弾を連射し、才人に群がるウルフ達を攻撃する 才人の剣技、クラースの術、リカルドの銃撃…それらによって、ウルフ達は次々と倒される 数分後には、クラース達は自分達の周りの敵を倒す事に成功した 「ふぅ、ふぅ…へへっ、余裕だぜ。」 「調子に乗るんじゃない。」 「イテッ!?」 少し息を整えてから、才人がそう言うとクラースがその頭を本で軽く叩いた 「武器も持たずに真っ先に向かうとは、君は私の話を聞いていなかったのか!?」 「す、すいません…シエスタが危ないと思うと、いてもたってもいられなくて…。」 「全く、君という奴は…。」 才人の行動に呆れながらも、彼の人の良さにクラースはある意味感心した 「こんな所で話をしている暇はないぞ、まだ周囲には敵がいる。」 リカルドの言うとおり、この広い中庭ではまだ兵士達が戦っている 一匹一匹は大した事無いが、相手は群れて攻撃しているので苦戦しているようだ 「それに、本命は既に館の中だろう…早く行かねば手遅れになる。」 「そうだな、急ごう……才人、君は此処から離れるんだ。」 「はい…って、何で!?」 その言葉に、二人に続こうと思っていた才人は驚く それはつまり、自分はシエスタを助けにいけないという事だ 「此処から先何があるか解らん、下手をすれば命を落とす危険性もある。」 現状からでは、敵の正体が完全に把握できていない…それに、この魔物の数だ こんな所に才人を放り込むような真似をしたくない、保護者としての意見である 「だから、君を連れて行く事は出来ない…シエスタの事は私達に任せて、早く此処から離れるんだ。」 「そんな…そんなの、あんまりじゃないですか。」 当然である、此処まで来てクラースは自分だけ逃げろと言ったのだ そんな事、才人の性分から納得出来るものではなかった 「クラースさんはこういう時の為に、俺に剣の稽古をさせていたんじゃないんですか?」 「あくまで君が自分自身を守る力を培ってもらう為にだ…君を危険に晒す為じゃない。」 「けど、俺だって…。」 両者は互いの意見を主張し、一歩もひこうとしない 才人がどうにか同行を許可してもらおうとする中、新手のウルフが此方に向かってきた 「ちっ、こんな所で無駄話をするから、また一匹来たぞ。」 舌打ちしながら、リカルドは向かってくるウルフに向かって照準を合わせようとする だが、その前にいきなり才人が飛び出し、ロングソードを構えた 「魔神剣!!!」 向かってくるウルフに向けて、才人は剣圧を放った 放たれた魔神剣はウルフに命中し、吹き飛ばされる 「クラースさん、俺だって戦えます…戦えるのに、此処から逃げるなんてできません。」 「才人…。」 「それにシエスタは待っている筈なんです、俺が戻ってくるのを…だから、俺は絶対行きます。」 何と言われようと…その言葉と共に、才人は真剣な眼差しをクラースに向ける その目からも、これ以上何を言っても才人が此処から離れない事を悟った 「…リカルド殿、貴方はどう思う?」 「こいつを連れて行く事か?俺は賛同しかねるな。戦場を知らない者を連れて行けば、俺達の足元をすくわれかねん。」 傭兵として、才人は足手まといなると踏んでの判断だった 反論しようする才人だが、その前にリカルドが続きを口にする 「だが…此処から先、自分のケツは自分でふくというのなら構わんがな。」 それは何かあったとしても助けはしないし、自分で対処しろという事だ その言葉に才人は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに自分の答えを口にする 「それでも構いません。足手まといにならないよう頑張りますから…連れて行ってください。」 お願いします…と、才人は二人に向かって頭を下げた そんな才人に、クラースが出した結論は… 「言っても聞かないようだな………解った、君を連れて行こう。だが、絶対に無理はしない事…これも条件だからな。」 「はい、解りました…約束します。」 「話が終わったならさっさと行くぞ、大分時間をロスしたからな。」 才人が誓いを立て、リカルドが二人を急かす 急いで屋敷の方へ向かおうとする三人だが、その矢先に…… 「などと急いでいるらしい雰囲気など気にせず、唐突に登場する俺。」 突然の声が、三人の足を止める その声はこの場には全く似合わない、妙に爽快なものだった クラース達が声の方を振り返ると、槍を持った男が此方に近づいてきた その男は実に奇妙だった…何が奇妙かというと、その全てがだ こんな状況でもヘラヘラしており、才人にも解るほど奇妙な気を放っている 「やあやあ皆さん、お急ぎのようですがどちらまで?もしかして、夜遅くの新聞配達?」 「な、何だよあんたは?」 「それとも牛乳配達?だとしたら、こんな夜遅くにゴクローサマです。」 才人の言葉を無視して棒読みで言葉を発する男…もとい、変人 こいつも傭兵だろうか…それをリカルドに尋ねようとしたが、それは出来なかった 何故なら、リカルドは殺気と憎悪を放ちながら、男を睨みつけていたからだ 「貴様…何故貴様が此処にいる。」 彼にとって男の存在は予想外の何者でもなかったらしい リカルドの問いかけに、男は相変わらずヘラヘラしながら口を開く 「おや?まさかそこにいるのはリカルドs…。」 相手が喋り終える前に、リカルドが男に向かってライフルの引き金を引いた 銃声と共に男は背を後ろに曲げて、ブリッジ状態になる 「ちょ、いきなり撃つなんて…。」 「答えろ、何故貴様が此処にいる!?」 才人の言葉を無視し、リカルドは再度疑問を投げられる ブリッジ状態の男はすぐに体勢を戻した…当たった振りをしていたらしい 「久しぶりにあったリカルド氏は人の口上を遮る馬鹿になっていたのでした…うーん、残念!!」 「…そうだったな、貴様には我々の言葉は通用しなかった。」 槍を持ってクネクネと動く男に、リカルドは呆れるように言った 死んでも治らなかったようだな、この男は… 「誰なんだ、この男は?」 「…ハスタ・エクステルミ、俺が以前仲間と共に倒した殺人鬼だ。」 殺人鬼…その言葉にギョッとなる才人だが、何となく理解は出来た 何故なら、このハスタという男は狂気が一人歩きしているように見えるからだ 「お前はあの時確かに息の根を止めた筈…何故生きて、此処にいる。」 「何故?それはね、きっと俺の生前の行いが宜しかったからだポン。」 「よく言う、赤子も喜んで殺すこの殺人鬼が。」 リカルドの言葉に対し、相変わらずヘラヘラとハスタは笑っている 「リカルド氏と再会を喜ぶ俺…しかし、すぐに別れと悲しみがやってくるのでした。」 そう言うと、突然殺気と共にハスタは槍をリカルドに向けた 先ほどとは違って、持っている槍同様突き刺すような気を放っている 「何故なら、此処でリカルド氏は俺との再会パーティのメインディッシュとなるからです。」 「やる気か、ならば容赦はせん…するつもりもないがな。」 ライフルで狙いを定め、リカルドはハスタを狙い撃つ 放たれた弾を、ハスタは悉く避けた…妙に凝ったポーズで 「すまんが、俺はこいつにもう一度引導を渡す必要がある…お前達は先に行け。」 「えっ、でも…。」 「リカルド氏の串焼き、一丁!!!」 そんな時、ハスタが一瞬の隙をついて槍を突き出してきた 恐ろしく早く、命を奪う突きをリカルドは避け、再度発砲するが避けられてしまう 相手の性格はあれだが、その実力が本物である事が伺える 「…事情は解らんが、此処は任せた方がよさそうだな…行くぞ、才人。」 「えっ…あ、はい。」 リカルドにこの場を任せ、クラースは屋敷へと向かった 屋敷に向かう前に、才人はもう一度リカルドの方を振り返る 「…リカルドさん、気をつけてください。」 「人の心配をする暇があるなら、自分の心配をしろ…此処は戦場だぞ。」 戦場で油断すれば死ぬ…その意味を込めての言葉だった 解りました、と答えると才人はクラースを追って屋敷の中へと向かった 「さて、貴様と再び相見えるとは…これも、前世からの縁か。」 もう終わったと思っていた、あの因縁…しかし、まだ終わってはいなかったようだ 「ならば、今度こそその縁、断ち切ってくれる。」 「ぴょろーん、行くんだプー。」 狙いを定めるリカルド、相変わらずふざけながら槍を振り回して襲い掛かるハスタ… 二人の死闘は始まった リカルドにハスタの相手を任せ、才人とクラースは屋敷の中へと入った 屋敷のエントランスでも、兵士達と侵入者達との戦闘が始まっていた 「ぐわっ!?」 屋敷内に溢れる魔物達…今、一人の兵士が魔物に襲われ、倒される 魔物は先程のウルフの他にも、巨大カエルのゲコゲコ、植物モンスターのプチプリ… それに棍棒を持った亜人のバグベアなどがいた 「魔物が…こんなに沢山…。」 「恐らく、侵入者が持ち込んだのだろうが…。」 何処からこれだけの魔物を…恐らく、犯人は土くれのフーケではないだろう それどころか…その時、兵士を倒したバグベアが、此方に向かって走り出した 「考えている暇はないか…才人、応戦するぞ。」 「は、はい。」 才人が剣を抜いたと同時にバクベアが棍棒を振り上げ、襲い掛かった それを避けると、才人はすぐに剣を振り払いバグベアを切り倒す 「へっ、大した事ないぜ…ってうわっ!?」 バグベアを倒した直後、ゲコゲコが才人に向かって飛び掛ってきた 体当たりを受けた才人は尻餅をつき、その隙をついてゲコゲコが再度襲い掛かる 「てぇい。」 クラースは才人とゲコゲコの間に入り込むと、本でゲコゲコを攻撃する 本の角を脳天に受け、ゲコゲコは目を回してその場に倒れた 「油断するな、才人…常に間合いに気をつけ、攻撃と防御を使い分けるんだ。」 「わ、解りました。」 クラースの助言を受け入れて立ち上がると、才人は辺りを見回した 周囲は魔物とそれに応戦する兵士がいるが、シエスタの姿は見えない 「シエスタ…一体何処にいるんだ?」 「恐らく、まだ屋敷の中にいる筈だ…魔物を倒しながら、隈なく探そう。」 魔物は自分達も襲ってくる…二人は魔物を蹴散らしながら先へ進んだ シエスタを探して屋敷の中を回り、その際危険に陥っている兵士や使用人達を助ける だが、屋敷は広く、中々シエスタは見つからなかった 「シエスタ、何処だ~~~!!!」 襲い掛かってきたバグベアを倒し、才人が彼女の名前を叫ぶ 何度も彼女を呼んだが、返事は返ってこない…段々才人は不安になってくる 「シエスタ…まさか、魔物に襲われて…。」 「無事だと信じよう…そんな事を考える暇があるなら、もっと捜索を…。」 「だ、誰かお助けを~。」 その時、近くの部屋から助けを呼ぶ声が聞こえた…二人は声がした一室へと入り込む そこには、この部屋に逃げ込んだメイド達が魔物に襲われようとしていた 「オオオオオッ!!!!」 「な、なんだコイツ!?」 それは、土色をした巨大な人有らざるもの…ゴーレムだった 後ろに才人とクラースが現れた事に気付き、ゴーレムはメイド達から二人に振り向く ゴーレムは腕を振り上げ、才人は咄嗟に剣を構えた 「こいつは、ゴーレムか…才人、避けろ。」 応戦しようと思っていた才人の耳に、クラースの指示が入る その言葉に従ってバックステップをすると、その直後にゴーレムの腕が振り下ろされた その腕から放たれた一撃は、床を大きくへこませる 「でぇい!!!」 相手の攻撃後、即座に才人が攻撃を仕掛ける カキィン、キィン、と剣でゴーレムの体を斬った時に金属音が響く 体に僅かな傷と手が痺れただけで、ゴーレムを倒す事は出来なかった 「こいつ、無茶苦茶かてぇ…ギーシュのゴーレムはバッサリと斬れたのに。」 このゴーレムは、あの青銅のワルキューレ以上の硬度を持っているようだ 続いてゴーレムは腕を伸ばして、グルグルと回転して才人を攻撃する しゃがんで攻撃を避けると、もう一度ゴーレムに飛び掛る 「飛燕連脚……いってぇ~~~!?」 今度はとび蹴りを放ったが、逆に足を痛める結果となった そんな才人にゴーレムが殴りかかった…このタイミングでは避けられない 剣を盾代わりに攻撃を受け止め、才人は吹き飛ばされるが何とか無事に済んだ 「俺の攻撃が効かない…どうしましょう、クラースさん?」 困った才人は、クラースに攻略法を尋ねる 後ろでは、クラースが何やら変わった虫眼鏡のような物でゴーレムを見ていた それは、敵の情報を収集する特殊レンズ、スペクタクルスである 「慌てるな…あのゴーレムは土属性か、土と来れば…。」 「えっと…風、ですか?」 敵が属性を持っている場合、得意属性と相反する属性が弱点である事が多い 火には水、土には風、光には闇と…逆もまたしかりである 「そうだ、だから………シルフ!!!」 クラースはすぐに詠唱を唱え、シルフを召喚した 三姉妹はゴーレムを囲むように、その姿を現す 「シルフ、頼むぞ!!」 『解りました』 クラースの指示に頷くと、三姉妹はゴーレムの周囲で風を巻き起こした 風は無数の刃となり、ゴーレムの身体を切り裂いた 才人の剣では傷つかなかったその身体に、次々と傷跡と罅割れが出来ていく 「今だ才人、トドメを。」 「はい…でやっ!!!」 才人はロングソードを構え、ゴーレムに向かって飛び掛った ゴーレムはシルフの風によるダメージで思うように動けず、そこに才人の一撃がヒットする 先程は効かなかった攻撃も、今の一撃が致命傷となった 「オオオオオ…オオ…。」 罅割れていた箇所から更に全体へと罅割れが進行し、ゴーレムの身体が崩れていく それでもゴーレムは戦おうとするが、それは適う事無く完全に崩れ落ちた 「俺達の勝ちだ!!!」 クルクルと剣を回し、鞘に納める才人…二人の連係プレーによる勝利だ メイド達も二人が魔物を倒したので、落ち着きを取り戻して感謝の言葉を口にする 「あ、ありがとうございます、もう少し遅ければ私達はあのゴーレムに…。」 「礼なら良い…それより、シエスタというメイドを知らないか?」 この中にはシエスタがいないので、クラースが彼女の行方を尋ねる メイド達が顔を見合わせる中、老年のメイドが口を開く 「シエスタさんでしたら…確か、襲撃前に湯浴みを…。」 「湯浴み…浴場か、場所は?」 「はい、此処を出て左の突き当りがそうですが…。」 もしかしたら、まだそこにいるかもしれない 二人はメイド達に此処にいるよう伝えると、浴場へと向かった 「………ふぅ。」 その頃、シエスタは湯船に浸かってこれからの事を考えていた この浴場は防音対策がしっかりと行き届いており、外の騒ぎは全く届かなかった 外で大騒ぎになっているとも知らず、シエスタはずっと考えている 「(湯浴みが終わったら、寝室にこいだなんて…やっぱり、モット伯爵は私を…。)」 彼は才人が成功するとは思っておらず、手っ取り早く事に運ぶつもりらしい 湯船に浸かっているのに体が震える…シエスタは自身の体を支える 「(才人さん…ごめんなさい。)」 折角私の為に頑張ってくれているのに…シエスタはブラックオニキスを見つめる 胸が締め付けられる想いに彼女は涙を流し、その一滴が黒い宝石を濡らした その時、突然ガシャンと大きな音が浴室に響いてきた 「な、何!?」 突然の事に驚きながらシエスタが入り口の方を向くと、何かがやってくる 3匹のウルフ達が浴室内に侵入し、シエスタの前に現れた 「ひっ…狼!?」 どうしてこんな所に…と思ったが、そんな事を考える余裕はない シエスタは逃げようとしたが、恐怖に体を縛られてその場から動けなかった 3匹のウルフ達はゆっくりと、シエスタに向かって歩み寄ってくる 「こ、来ないで…私、美味しくないから…。」 震えながらのシエスタの言葉を、ウルフ達が理解する筈がない 先頭の一匹が舌なめずりすると、シエスタに向かって飛び掛った 「きゃあああああああ!!!!!」 悲鳴をあげるシエスタ…ブラックオニキスを握り締め、助けを求めた 才人さん、助けて…と 「ギャン!?」 その時、光弾がシエスタに襲いかかろうとしたウルフに命中した ウルフは大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて絶命する 「えっ…今のは…。」 「シエスタ!!!」 続いて浴室に誰かが飛び込んできた…この辺りでは見ない服装に剣を持っている それが誰なのか、シエスタはすぐに解った…才人だと 「才人さん!?」 来てくれた、才人さんが…私を助けに来てくれた 残ったウルフ達はシエスタから才人の方を振り向き、彼に狙いを定めて襲い掛かる 才人は落ち着いて剣を構え、ウルフ達を待ち構える 「でやっ!!!」 才人はロングソードを振り払い、二太刀でウルフ達を倒した 剣を振るって血を払い、剣を鞘に納める 「シエスタ、大丈夫か!?」 そしてすぐに、彼女の無事を確認する為、浴槽へと駆け寄る すると、シエスタは浴槽から飛び出して、才人に抱きついた 「ああ、才人さん…才人さんなんですね。」 「し、シエスタ…。」 「怖かった…怖かったんです…。」 シエスタは泣きじゃくりながら、才人にしっかりと抱きつく 彼が助けに来てくれた事を、神様に感謝しながら… 「シエスタ…良かった、間に合って。」 シエスタに抱きつかれて戸惑った才人だが、彼女をあやすようにその頭を撫でた 本当に良かった…シエスタを守れた事を才人は喜んだ そんな時、シエスタから良い香りがするのに気付いた…お風呂に入っていたからだろう 「(ん、待てよ…此処は風呂場で、今シエスタは風呂に入ってたわけだから…。)」 此処で、才人は冷静になって今の状況を分析する これが確かなら彼女は裸で、今自分の胸板に当たっているのは… 「…ぶはっ!?」 「きゃあ、才人さん!?」 この状況は今の才人には刺激が強すぎたらしく、突然鼻血を吹いて倒れてしまった 「才人さん、しっかり…まさか私を助ける時に何処か…。」 自分に原因があるとは気付かず、おろおろするシエスタ そんなシエスタに、クラースが布を持ってきて羽織らせる 「クラースさん…。」 「君が無事だったのは良かった…が、喜ぶのは服を着てからにしよう。」 クラースの言葉に、自分が裸である事を思い出す シエスタは顔を真っ赤にして、クラースがくれた布をしっかり羽織る 「す、すいません…私、気が動転していて…。」 「まあ、こんな状況だからな。私達は外を見張っているから早くしなさい。」 クラースは鼻血を出して失神している才人を引っ張って浴場を出て行く シエスタはまだ顔を赤くしつつも、急いで着替える事にした ……………… 「クラースさん、才人さん…本当に、ありがとうございました。」 浴場前で、メイド服に着替え終えたシエスタは改めて礼を言った あの後気を取り戻した才人は、鼻の穴にティッシュを詰め込んでいる 「いや、俺もあんな良い思い…じゃない、シエスタが無事でよかったよ。」 あはははは、と本音を言おうとした才人だったが、笑ってごまかした 「それにしても…まさか、外がこんな事になっているなんて。」 シエスタは未だ聞こえる争いの音に身を震わせた モット伯邸の攻防戦は未だ続いており、屋敷内は慌しい 「やっぱり、土くれのフーケがモット伯の『水のアクアマリン』を狙ってやってきたんですね?」 「水のアクアマリン?」 「はい、モット伯が左手に嵌めている指輪で…水の魔法の力をあげる効果があるそうです。」 モット伯が指輪を見せながら自分に話していた事を、二人に教える 才人も、あの左手の指輪か…とモット伯と面会した時の事を思い出す 「『恐らく土くれが狙うのであれば、この指輪だろう』って…違うんですか?」 「いや、そうなのかは解らんが…もしかしたら…。」 水のアクアマリン…キュルケの持っていた火のガーネットと似たような効果だ 結局は、火のガーネットはイフリートと契約するのに必要なガーネットの指輪だった だったら、その水のアクアマリンも… 「契約の指輪かもしれないな。」 水の精霊ウンディーネとの契約に必要な、アクアマリンの指輪 そうだとしたら、襲撃犯に奪われるわけにはいかない 「才人、急いでモット伯の所に行こう…場所は解るな?」 「は、はい、解りますけど…シエスタはどうするんですか?」 「先程のメイド達がいた部屋で匿って貰おう…それで良いか、シエスタ?」 クラースの言葉にシエスタは頷く…早速彼女を先程の部屋へと連れて行った 先程の部屋戻ると、他に避難したした使用人達が来ており、それを守る兵士達もいた これなら、シエスタも大丈夫だろう…守りの兵士達に彼女の事を任せる 「クラースさん、才人さん…気をつけてください。」 「うん、大丈夫…行ってくるよ。」 シエスタに見送られ、二人は急遽モット伯の部屋に向かった 前ページ次ページTALES OF ZERO
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/106.html
うみねこのなく頃に 作品情報 原作公式HP http //07th-expansion.net/umi/Main.htm アニメ版公式HP http //umineko.tv/web/index.html 40枚 右代宮戦人 右代宮朱志香 右代宮譲治 右代宮真里亞 右代宮真里亞(うーうー差分) 右代宮縁寿 右代宮金蔵 右代宮蔵臼 右代宮夏妃 右代宮絵羽 右代宮秀吉 右代宮留弗夫 右代宮霧江 右代宮楼座 呂ノ上源次 紗音 嘉音 郷田俊朗 熊沢チヨ 南條輝正 天草十三 ベアトリーチェ ベルンカステル ラムダデルタ ワルギリア エヴァ ロノウェ ガァプ さくたろう シエスタ45 シエスタ410 シエスタ00 シエスタ556 ルシファー レヴィアタン サタン ベルフェゴール マモン ベルゼブブ アスモデウス
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2502.html
ルイズは自分のベッドへ行き二時間眠った。そして…目をさましてからしばらくして 使い魔が逃げ出したことを思い出し…… ………泣いた…… おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第三話 ディオがルイズの部屋に入ると昨日散乱した下着がそのまま散らかっていた。どうやらあの後ルイズはそのまま寝てしまったらしい。 まだ朝は早い。使い魔として信頼を得る為ならば心底嫌だが掃除、洗濯くらいはやってやらなければいけないだろう。 日の光を浴びて小川はきらきらと輝いてまるでダイヤモンドが流れているようである。 ディオは洗濯場らしき場所を見つけると腰を下ろし、洗濯を始めた。 ディオ・ブランドーといえば常に上に立ちながら都合よく部下を使っていた印象が強い。 だがディオはジョースター家に養子として入る以前、具体的には母が死んでから父を殺害するまでの間、 家事の一切を切り盛りしていたのである。 故に洗濯も一通りこなせるのだが、それは同時にダリオとの辛い生活を思い出す事でもあった。 よってディオは早々に「この洗濯、昔の生活を思い出すッ!」と不機嫌になると、下着の端をつまんで小川の流れに暫く浸すだけにした。 「それじゃあ汚れは取れませんよ」 気がつくと後ろにメイドが立っていた。その笑顔はディオに一瞬だけ遠い昔、元気であった頃の母の笑顔を思い起こさせた。 「君は誰だい?見たところこの学院のメイドのようだが」 「私はシエスタと申します。あなたはミス・ヴァリエールが召喚した平民の方ですね?」 「ああ。ぼくはディオ・ブランドーだ。よろしく」 どうやらゼロのルイズが平民を使い魔にしたという噂はあっという間に校内に広がったらしい。 「それよりディオさん。そんな方法じゃちゃんと綺麗になりませんよ。」 と言うとシエスタはディオの籠を手に取り、慣れた手つきで洗いはじめ、あっという間に洗濯を終えた。 「ふぅ、できました。」 笑顔で洗濯済みの籠を渡すシエスタ。 「すまないね。ぼくは女物の下着を洗った事がなくてね、どうしたらいいのかわからなかったんだ」 そう言うとシエスタは今更ながら女物の下着を洗っているディオを思い出して赤面する。 「でっでもっ酷いですよね!他の方は使い魔がいても自分で掃除も洗濯もするのに…」 やはりルイズはおれを奴隷かなにかと勘違いしていたようだ。怒りの感情が込み上げてくる。 「…。」 気が付いたらシエスタが少し引いていた。気付かないうちによほど凄い顔をしていたらしい。この感情がすぐ顔にでるのもなんとかしないとな。 「あの…」 やがてシエスタは怖ず怖ずと提案をした。 「よかったらこれからは私が洗濯しましょうか?」 「本当かい?しかし君も忙しいだろう。大丈夫かい?」 「はい。あの程度の洗濯ならすぐに終わりますから♪」 フフ…この言葉を待っていたぞッ!人が困っていれば手助けしてしまうようなお節介野郎めッ! 「ありがとう、ミス・シエスタ」 「そ…そんな…ミスだなんて…///ただのシエスタでいいですよ」 「でもそれじゃあぼくの気がすまないな」 「いいんですよ、困った時はお互い様です」 「ありがとう、いつかお礼をするよ」 そういうとシエスタに背中を向けて部屋に戻るディオ。その顔つきはまさに『計画通り!』とでも形容できるような表情だった。 ディオにとってシエスタは都合よく動く駒の一つを見つけたぐらいでしかなかったのだろうか…。 to be conthinued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2009.html
「あ、牛がいる……」 シエスタが車の窓から外を見て、嬉しそうに呟いた。 「牛?」 モンモランシーは、何か珍しい牛でもいたのだろうかと思い、シエスタに聞いた。 「ええ、あんなに沢山。のどかで良いところですね」 期待した答えとは違ったので、モンモランシーは「どこにでもいるじゃない、そんなの」と言って両手を広げた。 だが、くだらないことでも、屈託のない笑顔で答えられるシエスタの笑顔に、少しだけ救われた気がした。 二人が馬車に乗り、ラグドリアン湖を目指しているのには理由がある。 ラ・ヴァリエール家でカトレアの治療に当たってから二日目の夜。 二人は大食堂で、巨大なテーブルを囲んで座っていた。 カトレアは大事を取って部屋で休んでおり、公爵と公爵夫人、そしてエレオノールの三名がシエスタとモンモランシーに向かい合って座っている。 カトレアは大事を取って部屋で休んでおり、晩餐には参加しないようだ。 「まずは礼を言わせていただこう、ミス・モンモランシー。そしてミス・シエスタ。よくぞカトレアの治療に尽力してくれた」 「私からも感謝を述べさせて頂きます」 公爵に続き、公爵夫人からも礼を言われ、モンモランシーとシエスタはガチガチに緊張していた。 「ま、まだ治療が完了したわけではありませんので」 モンモランシーが返事をする前に、シエスタが申し訳なさそうに呟く。 「いや、それでも礼を言わせて貰う。幼い頃からカトレアを治癒していたメイジが、君たち二人の治癒の力をとても高く評価していた、それにカトレアの笑顔を見たのは一ヶ月ぶりなのだよ」 公爵は、心底から嬉しそうだった。 貴族の威厳よりも、父親としての喜びが勝っているのだろう、公爵のにこやかな笑顔にエレオノールが苦笑した。 「それで、具体的なことは解ったのかしら?よければ聞かせて頂きたいわ」 エレノオールの言葉に、モンモランシーが「はい」と答える。 「はい。ご存じかもしれませんが、人の身体は本来解毒能力を持っています。ミス・カトレアの身体はその能力が弱く、定期的に水の魔法で毒を浄化しなければなりません」 ヴァリエール家の三名は、モンモランシーの説明をじっと聞いていた。 「こちらのシエスタが持つ『波紋』を流すと、浄化能力が回復しました。『波紋』は身体の全体に作用します、それによって水魔法の効果が二倍にも三倍にも増幅されるのです」 モンモランシーがシエスタに目配せをし、シエスタが続きを引き継ぐ。 「私の波紋は、オールド・オスマンが研究されていたものです。一言で言えば…『魔法の素』です。特殊な呼吸法によって、体力や精神力を増強する技術です」 エレオノールが手を挙げ、シエスタに質問する。 「貴方はオールド・オスマン以上の『波紋』を持っていると聞いたけど、それは生まれつきのもの?」 「私は最初曾祖母が『波紋使い』だとは知りませんでした。実家でも私以外に波紋を使える者はいないと、オールド・オスマンが仰っていました。 祖父にも、父にも波紋の訓練を受けさせたと聞いたんですが…私以外には発現しなかったみたいです」 「ふうん…つまり、波紋は個人差が大きいのね…」 うんうん、と納得したような仕草をするエレオノールを前に、シエスタは冷や汗をかいていた。 訓練を受けさせたというのは嘘だ、オールド・オスマンは波紋を世に出さないつもりだった。 『石仮面』の出現がなければ、シエスタに波紋を取得させることは決して無かっただろう。 波紋を悪用されぬために、血筋以上に個人差が大きいと思わせるため、シエスタは嘘をついた。 少しの沈黙が流れた後、モンモランシーが続きを話し出した。 「ミス・カトレアの治癒を完璧なものとするため。ミス・エレノオールにも、ラ・ヴァリエール公爵と公爵夫人に、協力を願いたいことがあります」 「言ってみたまえ」 「私の見立てですが、カトレア様の身体は突然濁った血が綺麗な血に混ざり、身体の中を循環します。その原因を探るために、水の秘薬をいただきたいのです」 「………わかった、可能な限りの『水の秘薬』を集めよう」 「ありがとうございます」 モンモランシーが公爵に礼をすると、エレオノールが呟いた。 「治療のために水の秘薬が必要なのは解るけど、原因究明のために秘薬が必要なら、薬を作るんでしょう?それなら私の研究道具を持ってこさせるわ」 「いえ、その必要はありません」 「…どういう事?」 「シエスタの波紋は、秘薬の効果を劇的に高めるだけでなく、身体にとけ込ませずに形を保つことができます。ミス・カトレアの身体を走る無数の『水』を、より細かく知ることができるのです」 エレオノールが驚き、目を見開く。研究者としての本能なのか、まるで詰め寄るように身体を前に傾けた。 「それはどのくらいの精度なの?」 「えっと…以前、毒を飲んでしまった生徒をシエスタと協力して助けましたが、そのときは身体の表面にある汗の穴が数えられるぐらい…だったと思います」 「素晴らしいわ、それで、その波紋と…」 興奮気味に質問を続けるエレオノールを、公爵夫人が制止する。 「エレオノール。お客様に失礼です」 「……はい」 モンモランシーは、エレオノールを一言で黙らせる公爵夫人の威厳に驚き、自然と苦笑いが出てしまった。 シエスタは、ほれ薬を飲んでしまった生徒ギーシュを思い出し『毒を飲ませた自覚はあったんだ…』と苦笑いをした。 「ふむ、そろそろ頃合いだな」 公爵がちらりと執事の方を見ると、執事は食堂の扉を開け、廊下で待機していたメイド達を部屋へと導き入れる。 メイド達が運ぶ料理は豪勢の一言に尽き、またもやシエスタとモンモランシーの二人を驚かせた。 「さあ、英気を養ってくれたまえ」 公爵の声が、やけに大きく聞こえた。 三日目。 カトレアの部屋で、香水の瓶より少し大きなガラス瓶を手に持ち、シエスタが波紋を流している。 モンモランシーがシエスタに「頃合い?」と聞くと、シエスタは「お願いします」と答えた。 シエスタから瓶を預かり、モンモランシーがカトレアの口元にそれを持って行く。 カトレアは両手を瓶に添えて、中身の『水の秘薬』を飲み干した。 すかさず、シエスタがカトレアの身体に杖を向け、秘薬の位置を確認する。 じわじわと身体の中を拡散していく秘薬は、波紋の効果により身体に吸収されず、秘薬のまま身体の中を巡っていく。 モンモランシーは秘薬の流れを感じ取り、カトレアの身体の中がどうなっているか、極めて精密に検査していった。 「この香り、貴方の香水?……落ち着いた花の香りがするわ」 カトレアが呟いた。 「え?あ、はい」 一瞬きょとんとしたモンモランシーだったが、カトレアの言葉に気付いて慌てて返事をした。 病人を相手にするので、ギーシュの気を引くために作った香水ではなく、あくまでも落ち着いた香りの香水を使っているのだ。 「いい香りね…風に運ばれた香りがするわ。どこかへ消えてしまいそう」 カトレアはベッドの上で目を閉じて、じっとしている。 その表情は喜怒哀楽のどれなのかわからない、だがシエスタには理解できる気がした。 風に運ばれた香り…それは、シエスタが考えるルイズの印象に近い。 タバサ…いや、シャルロットの母に深仙脈疾走(ディーパス・オーバードライブ)をかけようと決心したときも、タルブ村で治癒を続けたときもルイズの姿が思い浮かんだ。 彼女こそ理想の貴族像、そして儚く消えてしまった残り香だった。 シエスタの手が、じわりと汗ばむ。 「……?」 モンモランシーが首をかしげる。 「どうしたんですか?」 シエスタがモンモランシーを見上げ、声をかけた。 「うーん…今ちょっと気になることがあったんだけど……」 「気になることって、何でしょうか」 「水の流れが突然濁った気がするの、でも、水の流れを掴みきる前だったから、具体的にはちょっと解らないのよ」 「それでしたら、一度図にしてみたらどうでしょうか」 「図に?」 モンモランシーが少し驚く。 「曾祖父の故郷では、人間の身体を微細に記した『解体新書』という本で医療が発展したそうです、日記に書いてありました」 図に描く、それは治癒のメイジらしからぬ考えだった。 なにせ優れた水のメイジは、手で触れるだけでその人の水の流れが感覚的に理解できる。 しかし自分はまだそこまでの力はない、波紋の力を借りて図に表すことでなにができるか…少しの時間考えてみた。 タルブ村で治療した傷病兵の中には、女性もいたが、一人一人身体的な特徴があった。 身体的な特徴が、カトレアの病気を生んでいるのだとしたら? 考えを整理するためにも、一度図に書いてみるといいかもしれない… 「わかった。図に書いてみるわ、大きな紙と、ペンを貰ってきてくれない?」 「はい」 三日目の晩、昨日と同じように、シエスタとモンモランシーの二人は晩餐に参加していた。 食後の紅茶を飲んでいると、不意にエレノオールが呟いた。 「それで、なにか細かいことは解ったの?」 エレオノールが二人に問いかけると、モンモランシーが懐に手を入れて、折りたたんだ紙を取り出した。 執事がそれを受け取り、銀製のトレイに乗せてエレオノールの元に運ぶ。 紙を受け取り、開いてみると、そこには無数の線が書かれていた。 線の形は人間のシルエットのようであり、心臓とおぼしき場所には矢印でいくつもの線が描かれていた。 「これは?」 「ミス・カトレアの身体を流れる、水の流れです」 「…なるほどね、アカデミーで研究していたものとは違う描き方ね…これは貴方のアイディアかしら。ミス・モンモランシー」 「いいえ、シエスタのアイディアです。身体の中を図面化する本があると教えてくれました」 「水系統のメイジなら、身体に触れれば水の流れが解るんじゃないの?」 エレオノールが更に質問する、どこか胡散臭そうに感じているのかもしれない、モンモランシーはエレオノールの視線におびえることなく淡々と答えた。 「黒で描かれた線は、波紋を流してから作ったものです、青で書かれたものは波紋を流さない状態で調べた結果です」 エレオノールがハッとして紙を見る、上から下まで素早く目を通すと、ちょうど心臓の部分に大きな差があることが解った。 「…心臓に異常があるってこと?」 エレノオールが顔を上げ、二人を見る。 公爵と公爵夫人も驚いた顔をして、モンモランシーを見た。 「以前にも身体の中をじっくり調べたことはあったわ、心臓はたしかに弱かったけど…」 顎に手を当てて考え込み、エレノオールはうんうんとうなった。 「…心臓は、綺麗な血を送る部屋と、汚れた血を流す部屋に分かれています。 人間は呼吸で微弱な『波紋』を生み出していますが、その力は心臓から始まって体中を巡り、最後にもう一度心臓に帰ってきます。 ミス・カトレアは心臓が弱いだけではなく、心臓に小さな穴が開いているのだと考えられます。 汚れた血と綺麗な血が混ざって送られ…その結果、体の中が全体的に弱くなり、全身至る所での発作を起こしてしまうのだと、思います」 「「「…………」」」 ヴァリエール家の三人は、皆一様に絶句していた。 エレオノールにしても、今までに聞いたことのない説を聞いたようなものなので、これをどう考えるべきかと頭を悩ませている。 モンモランシーも、緊張のあまり卒倒しそうだった。 カトレアの身体は、波紋によって回復することは解ったが、心臓がすべての原因なのかははっきりとはしていないのだ。 だが、今は「原因」に対処するのではなく「原因と思わしき場所」に対処しなければならない。 もしかしたら自分の説は大きく間違っているのかも知れない、けれども、今は全力を尽くさなければならないと自分に言い聞かせていた。 公爵が、重い口を開く。 「…対処法は、あるのかね」 「水の魔法で穴を埋めることもできますが、危険です。確実な方法を取るためには、もっと大量の水の秘薬が必要になります」 「やはり、水の秘薬か…」 渋い顔をする公爵を見て、エレオノールが口を開いた。 「実は、王宮から『水の秘薬を控えろ』と通達があったの。どうも水の精霊を怒らせた者がいるらしいんだけど…原因はよく分からないわ」 「水の精霊をですか!?」 モンモランシーの顔がサッと青ざめる。 彼女の父は、以前に水の精霊を怒らせてしまい、干拓に失敗したのだ。 それが原因でモンモランシ家は、水の精霊との交渉役を降ろされてしまった。 「そういえば、モンモランシ家は確か、水の精霊との交渉役を務めていたな、今はその役目を退いていると聞いているが…」 公爵の声が、異様なほど重々しい声として聞こえてくる、モンモランシーは今にも卒倒しそうだった。 父の失敗をダシにされて、非難されるのではないかと思うと、冷や汗が額を流れるのを止められなかった。 「どうかね。君の手で、水の秘薬を手に入れることは出来ないかね」 だが、公爵の口から飛び出した言葉は意外なものだった。 「わ、私がですか」 「水の精霊と交渉し、水の秘薬を手に入れ、カトレアを治癒してくれたのなら…ラ・ヴァリエール家から支援を約束しよう」 実家を助けられる…! 願ってもない公爵からの申し出に、モンモランシーはうわずった声で、まるで叫ぶように声を上げた。 「つ、つとめさせて頂きます!杖にかけて!」 シエスタは隣で、『貴族って大変なんだなぁ』と思った。 ヴァリエール家の三人は、ほっとしたようにほほえみを浮かべていた。 そして四日目… 今日はラ・ヴァリエール家で準備してくれた馬車に乗って、ラグドリアン湖に向かう。 そのため朝食も採らずに、朝早くに出発の準備をすませたのだが、準備された馬車を見てシエスタが絶句した。 馬車を引くのは馬ではなく、竜。 噂には聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてなので、シエスタはどうしたものかと冷や汗をかいた。 「…これに乗っていくんですか?」 竜車を指さし、シエスタが聞く。 「そうよ、馬より早いもの。それにこれなら一日で往復できるわ」 「それはそうですけど、なんか、ちょっと怖いですね」 「怖くないわよ、よく飼い慣らされてるわ」 そう言って竜に近づくと、竜はモンモランシーに頭を垂れた。 竜は、無言で頭を撫でさせている、臆病な竜ではこうはいかない、知能が高い竜だからこそ人間とのつきあい方を心得ているのだ。 「御者の方も大変ですね…」 そう言って御者の席を見上げたが、つばの広い帽子を被った御者は、手綱を握ってじっと黙っている。 「シエスタ、これはゴーレムの一種なのよ」 「え?そ、そうなんですか?へぇー…」 まじまじと御者をのぞき込むシエスタ、その様子があまりにも田舎者丸出しなので、モンモランシーは少しだけ恥ずかしそうに顔を背けた。 「お待たせしました」 屋敷の入り口から声がかかる、二人が振り向くと、そこには凛々しい男性の姿…ではなく、男装の麗人とも言うべきカリーヌ・デジレが立っていた。 「「………」」 二人が驚いていると、カリーヌは竜車に近づき扉を開け、二人を中へと導いた。 大きな馬車の中は豪華というよりは上品な作りをしており、居心地の良さを最優先に考えて作られているのが解る。 二人は、カリーヌに導かれるまま竜車に乗り込み、座席に座る。 カリーヌが「出しなさい」と呟くと、馬車はゆっくりと走り出した。 「あの…」 シエスタが呟く。 カリーヌがなぜ付いてくるのか、その上なぜ男装しているのかを質問しようとしたのだ。 意図をくみ取ったのか、カリーヌはどこか懐かしそうにほほえみを浮かべた。 「私は昔、男の姿をして軍隊にいました。お二人の護衛として、マンティコア隊を引退した老兵が務めさせて頂きます」 「は、はあ」 モンモランシーが気の抜けた返事をする。 オールド・オスマンから聞かされてはいたが、目の前に座る人物が『烈風カリン』だとはにわかに信じられない。 「…カトレアを治療して下さったのですから、私から出来るせめてもの誠意ですわ」 カリーヌはそう言って微笑んだ。 がらがらと音を立てて竜車が走る。 カリーヌは窓の外を見て、数日前の森林火災を思い出していた。 (…ピンク色の頭髪、年の頃は20、顔立ちは幼さを残し、顔に大きな火傷のある女性…) (…その女性を『ルイズ』と呼んでいたそうです…) カリーヌは、烈風カリンと呼ばれ恐れられた、希代のメイジであった。 だが、同時に彼女は母でもあるのだ。 ルイズの手がかりを探したいがために、カリーヌは水の精霊にも話を聞いてみるつもりなのだ。 二人の護衛を買って出たのもそのためだった。 見上げた空は、雲一つ無い快晴、どこまでも青い空が広がっている。 だが、カリーヌの心中は未だに曇り続けていた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4314.html
353 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/10/22(日) 23 19 46 ID pYFPIhH4 ガンダールヴの力はセックスした数に比例して大きくなるという設定を付け加えるだけで、あら不思議! アンリエッタ「トリステインの女性は全てシュヴァリエ・サイトの性奴隷とする。 貴族も平民も…そして王女も一切の例外は認めません。 いついかなる時も、求められれば即座に股を濡らしてご奉仕出来るようになさい」 469 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/10/25(水) 21 55 25 ID ies/KQEv 353 信じられないお触れだ。サイトは素直にそう思った。 勿論、男としては嬉しい。 しかし、国命とは… 最初に飛んで来たのはシエスタだった。 既に上気した頬と、艶を帯びた瞳、先程のお触れを聞いている事は言うまでも無いだろう。 しかし、この場所は… 「サイトさん…」 「シ、シエスタ!」 「私…サイトさんの為に一生懸命頑張ります…」 「でも…ここって…」 城下町の路地裏。 サイトは人々の反感を買いかねないと逃げて来たのだ。 人通りが少ないとは言え、表通りの喧噪は聞こえる。その中をシエスタは走って来た。 「国命なら…仕方ありませんよね…」 ゆっくりとした足取りで近付いて来るシエスタに、サイトは後ずさりする。 「いや…その…」 「私…サイトさんの為に…」 両手でスカートの端を持ち、ピロッ、とそれを捲りあげた。 「!」 「ちゃんと…こうしてきたんですよぉ…」 隠すものが、無かった。 産毛と、白い膨らみ。露出したわれめ。 更にシエスタは口にスカートの裾をくわえ、シルクの手袋を自らの股間にあてた。 「ほ…ほらぁ…」 ゆっくりと割られたタテスジからは、滴り落ちそうな液体と、魅惑的な桃色を持つ粘膜が顔を出す。 「こっちだって…」 片手ではしっかりとサイトに秘部を見せつつ、もう片方の手で器用に胸当ての布を外してみせた。 そこには下半身と違う女性の膨らみ、既に「突起」となった桃色の頂点が存在した。 目の艶は妖しい。 「サイトさん…どうぞ…」 「…シエスタ…」 「もう我慢出来ないんです…お薬飲んできましたからぁ…」 515 名前:1/3[sage] 投稿日:2006/10/27(金) 01 41 38 ID 1l0Nee0z 469 「ふあ…ぁ」 「はぁっ…シエスタ…」 立ったままサイトは、一気にシエスタを貫いた。身長差のせいで体が持ち上がりそうだ。 それでもシエスタは、甘い声をあげていた。 その内、サイトはシエスタの腰を抱えた。彼女の体を壁に押し付けて自らのモノを更に深く射し込んでいく。 「あぁ…深いぃ…」 開脚されたまま壁に押し付けられ、シエスタは深く入っているサイトの温もりを感じていた。 「…っぷ!」 いつの間にかサイトの首に手を回し、その唇を貪りに来た。 晒された胸をサイトの胸に押し付け、柔らかみも与える。 唇、 胸、 性器、 シエスタはサイトに全てを捧げていた。 「私…もう…」 「…俺も…」 余韻にくらい…浸らせて欲しかったな… 手錠をかけられ、引きずられながら、サイトは沈み込んでいた。 今、シエスタの中に射精しようとした瞬間の事だった。いきなり通りから 「見つけたぞ!」 と、数人の兵士が雪崩こんで来たのだ。すぐにサイトは自身の危機を感じ、下半身の繋がりを外した。 引き抜く時、シエスタは 「あん…」 と残念そうな声をして、サイトの心残りとなったが、今となってはどうしようも無かった。 516 名前:2/3[sage] 投稿日:2006/10/27(金) 01 43 23 ID 1l0Nee0z 「シエスタ…大丈夫だよな…」 あの状態で置いてきた事を後悔した。襲われはしないだろうかと心配だったのだ。 時刻はまだ昼間。路地裏の日陰で行為をしていたとは言え、見つかればシエスタの身は危ないだろう。 「はあ…」 溜め息ばかりが出る。兵士達に連行されて、行く先は国王の住まいである。 「すいません…手荒な真似をして…」 「あ、はい」 拘束を解かれ、引き出されたのは女王の部屋の中だった。 室内には確かに最低限の物しか無かったが、アンリエッタのドレス姿だけは今も昔も良く似合っている。 アンリエッタが人払いを命じると、必然的に部屋はサイトとアンリエッタの二人きりになった。 「いくら俺の為とはいえ…びっくりしました」 「国の英雄ですもの。当然ですわ…」 「はぁ…」 直立しているサイトに近づきながら、アンリエッタは言う。 「それに…」 「…」 「王女も例外ではありません…」 「…!」 サイトは気が付いた。 近づいて、はっきり捉えたアンリエッタのドレスを見て。 「ひ、姫様!」 「あなたの為に…作ったものですよ…」 アンリエッタのそれは、既にドレスと言える代物では無かった。 517 名前:3/3[sage] 投稿日:2006/10/27(金) 01 44 48 ID 1l0Nee0z 本来、肌の露出を隠すからこそ、ドレスである。しかし、今のアンリエッタが着ている物はその意味を成していない。 胸と、下腹部。その部分の布「だけ」が決定的に薄かったのだ。 上半身は鎖骨がしっかりと隠れ、乳房だけが出されているようで、乳首など隠しようが無かった。布の上から二つの頂点をサイトは確認出来た。 更に、下半身は凄い事になっていた。 太ももや脚はしっかりと隠されているにも関わらず、「ソコ」だけが布の上から覗く事が出来たのだ。 薄い青色の生地の向こうに見える、茂み。 更にアンリエッタは 「あなたの肉奴隷なのですから…こうせねば…」 と、その布に手をかける。 ヒラッ 「!」 信じられない事に、その布には中央に切れ目が入っていた。 まるで、カーテンを開けるかの様にその布を持ち上げる。 その向こうには… 「実は私…まだ経験がないのです…」 ピッタリと閉じた、割れ目。 「あわ…あわ…」 「でも…サイトさんになら差し上げます。国命にしたのは私ですし…」 女王が目の前で、 「しましょう」 と言っている。サイトはそれを理解するまでに数秒かかった。 サイトの緊張を知ってかしらずか、アンリエッタは言った。 「そうですわ…」 「…はい?」 「サイトさん…国民に示しをつけなければなりません…」 何故かアンリエッタの息が荒くなっている。 「はぁ…」 「ですから…」 「?」 「国の皆が見ている前で…私とあなたが…」 「…まさか?」 「ヴェストリの広場でなど…いかがですか…?」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/816.html
故郷! 魂の眠る場所 その② 「竜の羽衣っていうんです」 空の旅にようやく慣れてきたシエスタが、承太郎に支えながら説明を開始する。 無関心そうに見えるタバサも、前を見ながら耳をすませていた。 コルベールは現地の住人の情報という事で興味津々という風に瞳を輝かせている。 「羽衣と呼ばれているのは、それをまとった者が空を飛べるから……なんですけど、実際にそれが空を飛んでる姿を見た人は一人もいないんです。 持ち主は私のお爺ちゃんだったんですけど、ある日ふらりとタルブの村に竜の羽衣で現れたらしいんです。 東の地からやって来た……と言っていました。 でも誰も信じなかった。お爺ちゃんは頭がおかしかったって言われてます」 「何と。それでは竜の羽衣というのはデタラメなのかね?」 残念そうにコルベールが言い、シエスタは苦笑を浮かべる。 「お爺ちゃんは、竜の羽衣で空を飛んで見せろって村の人に言われたんですが、結局飛べなかくて言い訳ばかりしていたそうです。 それで『もう飛べない』と言って村に住み着いちゃって、でも一生懸命働いて、いっぱいいっぱいお金を貯めて、 貴族の方に頼んで竜の羽衣に固定化の呪文までかけてもらうくらい大事にしてました。 でも竜の羽衣の件以外では働き者でいい人だったらしく、最終的に村のみんなと仲良くなって、結婚もして家庭を持つようになったとか」 「ふむ、その孫がシエスタという訳か。しかし竜の羽衣は本当に飛ぶのだろうか? どう思う、ジョータロー君。君なら何か解るのではないかね?」 話を聞いていた承太郎は、しばしの沈黙の後語り出した。 「竜の羽衣が飛行機の類だとしたら、故障して修理不能になっちまったのかもな。 何せハルケギニアには修理に必要な設備や部品が存在しねー。 もし竜の羽衣を見つけても、空を飛べると期待しない方がいいかもしれん」 「それは残念……しかしとりあえず現物を見てみたいものだな。 ガソリンで動いていたという事はエンジンで動いているのだろう? 私の研究の参考になるかもしれん。ああ! 実に楽しみだ!」 シエスタの話は、承太郎とコルベール以外は半信半疑で聞いていた。 コルベールと違い機械に対する理解が無いし、所詮小さな村に住む平民に伝わる昔話といった認識である。 しばらくしてシルフィードがタルブの村上空に到着し、シエスタの指示で竜の羽衣を補完してある寺院の方向へと飛ぶ。 すると森の中にちょっと大き目の一軒家ほどの、古びた建物があった。 「あれです。あそこに竜の羽衣が保管されているはずです」 「寺院の手前が空いているな。タバサ、あそこに降ろしてくれ」 ゆっくりと寺院手前に舞い降りたシルフィードから、真っ先に承太郎が降りて、シエスタが降りるのに手を貸してやる。 それを見てルイズは、自分も――と思い手を伸ばしたのだが、承太郎はそれに気づかず寺院の様子を見ていた。 「入れるのか?」 「いえ、確か鍵がかかってたと思います」 「では私が解除しよう。構わんね?」 手を出したまま固まっているルイズの横から降りたコルベールが言う。 一応この村の住人であるシエスタの許可を取ってからというつもりらしい。 承太郎が視線を向けると、シエスタはニッコリと笑ってうなずく。 「それじゃ任せたぜ。ところでシエスタ、竜の羽衣以外には何もないのか?」 承太郎が鍵が開くまでの時間つぶしにと訊ねると、 シエスタは寺院の外にある磨かれた石碑を指差した。 「お爺ちゃんのお墓です。村の共同墓地はちゃんとあるんですけど、何でも竜の羽衣を見守りたいとかで、寺院の前にお墓を作ったんです」 「……そうか…………」 何気なく承太郎はその墓に近寄る。 もしかしたら自分の未来がこうなるかもしれないという不安を抱いて。 そして、承太郎は石に彫られている文字に気がついた。 「…………」 手入れをされていないのか汚れていて読めなかったため、手のひらで埃を払っているとシエスタが解説を始めた。 「お爺ちゃんは死ぬ前に、この墓石を自分で作ったんです。 普通墓石は白いのに、お爺ちゃんは東方の風習なのか黒い石で。 それから異国の文字で何か彫ったそうですけど、今まで読めた人はいません。 孫の私にも教えてくれませんでした。何て書いてあるんでしょうね?」 承太郎はシエスタの一言一言を噛みしめるように心に刻む。 彼が、どんな想いでこの地で眠りについたのかを想像しながら。 「……ジョータローさん、どうかしたんですか?」 埃を払った文字に、承太郎はゆっくりと視線を這わせる。 「海軍少尉天田史郎、異界ニ眠ル」 「えっ……?」 シエスタは承太郎の視線を追った。墓石の文字。 (シローって……お爺ちゃんの名前。……え? あれ? どうしてジョータローさんが知ってるの? 私まだ話してない……。それに、異界に眠る……ってどういう意味?」 シエスタは墓石の文字に視線を戻した。まさか、という予感。 「よ、読めるんですかッ!?」 驚いて再び承太郎の顔を見る。 承太郎は、シエスタの黒い瞳と黒い髪を見ていた。 「シエスタ……その髪と目の色、祖父に似ていると言われなかったか?」 「ええっ!? そ、そうですけど、どうして解ったんですか?」 互いに驚き合うは、同じ国の血を受け継ぐ者。 二人が何をしているのか気になってすぐ後ろまで近づいてきていたルイズも、二人に気づかれぬままやはり驚いていた。 なぜ自分達が読めない文字を読めるのか? 「開いたぞ。さあ、入ろう」 コルベールの声に、承太郎達とルイズが振り返る。 ギーシュ、キュルケ、タバサはコルベールのすぐ後ろで、寺院の扉が開く様をのんびりと眺めている。 そして承太郎達より一足早く竜の羽衣の姿を見た。 「……何これ? こんな物が飛ぶ訳ないじゃない」 キュルケが呆れた声で言うが、ギーシュは真面目に考察をしてみる。 「金属でできているみたいだな。これじゃ重すぎて飛ばすのには非効率すぎる。 しかも翼もこんな風に固定されていては羽ばたけないだろう。 仮にこれがジョータローの行っていた『ひこうき』だとして、いったいどうやって飛ぶのか全然想像できないな」 タバサはというと珍しげに竜の羽衣を眺めているだけだ。 コルベールは熱心にあちこち触っている。 「ふむ、固定化の魔法はしっかりしたものらしいな。 金属の劣化などはほとんど見られないが……。 ジョータロー君の意見がぜひとも聞きたいな。ジョータロー君、見てくれ」 一足遅れてやってきた承太郎とルイズとシエスタ。 ルイズとシエスタは、こんな物が本当に飛ぶのだろうかと半信半疑だ。 しかし承太郎は竜の羽衣を見て驚く。 これは、見覚えがある。日本では有名な物だ。 マニアでなくとも見覚えくらいはあるだろうし、一般人でも見て名前を当てられる人間もいるだろう。 それほどまでに有名な、第二次世界大戦に大空を駆けた兵器。 「海軍少尉……やはり……これは……!」 翼と胴体に描かれた赤い丸の国籍標識。元は白い縁取りが成されていたらしいが、その部分は機体の塗料と同じ濃緑に塗り潰されている。 黒いつや消しのカウリングに白抜きでかかれた『零八』の文字は、部隊のナンバーか何かだろうか。 承太郎は左手で機体をそっと撫でた。 手の甲のルーンが光る。なるほど確かにこれも武器。巨大な武器だ。 そしてこの機体の情報が頭に流れ込んでくる。 その名前も――。 「ゼロ戦……」 「ぜろせん?」 一同の視線が集まる。承太郎は静かに続きの言葉を口にした。 「俺の祖国がだいたい五十年ほど前、戦争で使っていた戦闘機……戦争のための飛行機だ」 「こないだ君が言っていたひこうきかい?」 「それじゃあ、本当にこれ、空を飛ぶんですか?」 ギーシュとシエスタの言葉に、承太郎はうなずいて答えた。 「シエスタ……おめーの祖父は、俺と同じ国から来たらしい」 「ええっ! そ、そうなんですか!?」 それに一番驚いたのはルイズだ。 なぜならば、ルイズだけは知っているからだ。承太郎の故郷が異世界だという事を。 しかし他の面々は、承太郎の故郷はハルケギニアのどこかだと思っている。 そしてもう一人、承太郎が異世界から来た事を知っているはずの人物は、特に驚いたりせず何かを考え込んでいる。 「……ジョータロー君。これは、飛べるのかね?」 「ちょっと待ちな」 コルベールに問われ、承太郎はゼロ戦に左手を押しつけ情報を探った。 機体の損傷は………………無い。無い? ならば飛べるはずだ。 他におかしいところは無いか探り、精神を集中すると、それが見えた。 「……燃料切れだ。ガソリン……竜の血と呼ばれていたアレを補給できれば飛べる」 「そうか……ふむ……なるほど。では、つまり………………おおっ! そうか!」 突然コルベールがガッツポーズを取った。 気のせいか一瞬、彼のU字ハゲ頭が電球のようにピコリーンと光った気がする。 「どうした? コルベール」 「ジョータロー君! 君は、帰れるかもしれんぞ! 元の世界に!」 衝撃が走る。ルイズの身体が、わずかに震えた。 ジョータローが、元の世界に、帰る? それはずっと望んでいたはずの事なのに、なのに、どうして、こんなショックを受けるのか。 「元の世界? 何だか妙な言い回しだが、いったいどういう意味だい?」 ジョータローがこの世界のどこか遠くから来たと思っているギーシュが質問したが、それを無視してコルベールが説明を続ける。 「伝説によれば竜は二匹いた。竜は雄叫びを上げて現れた。 そして一匹は消え、もう一匹はどこかに落下したという。 これはその落下した方の竜だ。ならばもう一匹はどこへ消えたと思う? 出発前にシエスタが話してくれたろう、思い出してみなさい」 「……シエスタの話じゃ日食の中に……日食か」 「そう! 日食だよ。こんな奇妙な竜が二匹いたら、どこかで見つかっている。 だがそんな情報は無い……竜はこの世界にはもういない。 いいかね、日食に消えたという事は、つまりこれに乗って日食に向かって飛べば! 元の世界に帰れるかもしれないのだよ、ジョータロー君!」 誰もが目を丸くしていた。元の世界とは、いったい何の事かと。 正直に答えるべきではないと思ったコルベールは、咄嗟に東方のロバ・アル・カリイエの事だと誤魔化した。 しかし、シエスタにはそれが嘘だと解っていた。 だって承太郎に質問した時、ロバ・アル・カリイエから来たのではないと否定された。 そして帰る手段が解らないほど遠い所だと説明された。 本当の故郷の名前は教えてもらえなかった。それを知っているのは――。 シエスタはルイズを見る。ルイズは、何かをこらえるように唇をキュッと結んでいた。 夕方――承太郎は村の側に広がる草原を眺めていた。 シエスタと一緒に。
https://w.atwiki.jp/ogonmusou/pages/64.html
黄金夢想曲 原作 うみねこのなく頃に 企画原案・脚本 竜騎士07 ディレクション ビリー・コマツナ プログラム・ゲームデザイン はちみつ紅茶 企画アシスタント LEE イラストレーション 津田 晶 肖像画 江草 天仁 エフェクトグラフィックス Kone イラスト彩色 jelly キャラクターグラフィックス 1ひ2よ8こ3 Qni クサマ タカユキ エンドウ シロウ サクライ ケント クニヨシ タカハル さの たかあき マツハシ ケイゴ ヤマザキ トモユキ さとう ゆうじ 背景 イシヒサ お寿司 塩子 もぉりぃ 43 Y・B おおくぼてつや インフォメーショングラフィックス くま 楽曲・効果音 dai zts ラック眼力 pre-holder オープニングムービー よゆ オープニングテーマ 黄金夢想曲 ~金色の血に染まる前に~ Vocal Chorus 木野寧 ギター にいむ 録音スタジオ Studio JAKE ミキシング 松金昭治/StudioYellowmoon 声の出演 右代宮 戦人 小野 大輔 右代宮 縁寿 佐藤 利奈 紗音 釘宮 理恵 嘉音 小林 ゆう ベアトリーチェ 大原 さやか ワルギリア 井上 喜久子 エヴァ・ベアトリーチェ 伊藤 美紀 ロノウェ 杉田 智和 ベルンカステル 田村ゆかり ラムダデルタ 大浦 冬華 ルシファー 斉藤 佑圭 レヴィアタン 米澤 円 サタン 日笠 陽子 ベルフェゴール 吉田 聖子 マモン 新名 彩乃 ベルゼブブ 山岡 ゆり アスモデウス 豊崎愛生 シエスタ410 喜多村 英梨 シエスタ45 水野 マリコ シエスタ00 廣田 詩夢 さくたろう 茅原 実里 ゼパル 斎賀 みつき フルフル 仙台 エリ うみねこさん1 小山 力也 うみねこさん2 遊佐 浩二 山羊 秋元 羊介 熊沢 チヨ 羽鳥 靖子 右代宮 朱志香 井上 麻里奈 音響監督 村松 宏昭 音響プロデュース 小柳 路子 松原 勝彦 音響監修 猫桜 餡豆 キャスティングマネージメント 白川 大樹 録音 中島 次郎 音声編集 村井 徹哉 スペシャルサンクス 時火 八咫桜 なるせ椿 各務 竹玄 萩原 雪崩 月光樹 Alche_info FFC (株)アルケミスト メディア・ビジョン(株) (株)ウインズ (株)5pb. (株)デジタルハーツ サウンドテック プロデューサー 脇本 博道 エグゼグティブプロデューサー 竜騎士07 浦野 重信 制作 07th Expansion