約 2,172,947 件
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1343.html
オフィーリア (12) 砲声が激しく轟き、砲弾は白煙を貫いて空を飛びぬける。 重い響きが、バルタの街の南の壁に起きて、砂埃が白く吹き上がる。 南岸に放列を敷いた、オスミナ軍の砲兵は、バルタ川の向こう、バルタの街の南の壁に砲撃を放っていた。その壁の付け根辺りを狙って、砲弾を放ち、壁の付け根に弾痕をうがっている。 「・・・・・・」 オフィーリアは、組み立ての長椅子に身を横たえ、それを見ていた。木枠に厚手の布を張った、兵らの可搬寝台にも似たものだ。それを西岸の天幕の影に据えさせている。 今は、待ちの間だ。バルタの街に集められたフィンゴルド軍の物資を焼き、またバルタの街にあるフィンゴルド大公姫ヒルデガルドを倒すには、まずバルタの街の城壁を打ち崩さねばならない。オフィーリアは近衛騎士団の機装甲にではなく、王立砲兵隊にその役を任せた。 「オフィーリア様」 呼ぶ声に顔をあげた。アーシアだ。気遣わしげに、けれど兵の歩調で一歩踏み出す。 「王立砲兵隊が攻城の第二段階に入ると報告しております。許可を伝えてよろしいでしょうか」 「もちろんだ。だが、私が直接命じる」 気鬱になど押されていられない。オフィーリアはゆっくりと身を起こし、立ち上がる。アーシアがそっと寄り添う。 「だいじょうぶ。それではまるで、私が起き上がれぬようではないか」 「はい」 彼女の指が、オフィーリアの腕からそっとほどけて離れる。オフィーリアは彼女を伴い、天幕へ裏から入った。王立砲兵隊長エンマヌイルは、すでに軍議のための卓のところにあった。左の掌で右の拳を包む武人の礼をオフィーリアへと向ける。 「砲兵隊より報告申し上げます」 「申せ」 「は。攻城砲撃は、第一段階を終えました。これより第二段階へ入り、実際の城壁の撃ち崩しへ入ります」 彼は続ける、これまでの砲撃で、砲の損耗、異常、ともに無し。弾薬の損耗は想定通り。全弾消耗以前に予定通り城壁に開口部を開拓する見込み、と。オフィーリアは命じる。 「滞りなくすすめよ。狙いはバルタの街に集積されたフィンゴルド軍の物糧。これを焼き払え」 「すでに焼夷弾の準備と移送を始めております。城壁に開孔を得られれば、砲撃に六听砲を伴うことができ、これの焼夷弾を合わせて、街を焼き払うこと、叶いましょう」 「砲の護りは万全であるか」 「近衛騎士団機卒、およそ十の直援を得ております」 残りの機卒二十ほどは近衛騎士団機装甲の回収と修繕に当てられている。特にドルク騎士団長の機は、放置しておけなかった。あれが失われれば、ドルク団長はおそらく自裁してしまうだろう。近衛騎士団の士気は地の底へ落ち、二度と回復できなくなるかもしれない。そうなれば諸侯に対する王家の威信も落ちる。しかしドルク団長の機の修繕には、かなりの手間がかかると見込まれていた。困ったことに、オスミナの機装甲は帝國の機のように部品をそのまま入れ替えるつくりになっていない。なんとか自力歩行まで修繕できなければ、敷板に乗せて引きずり、海軍砦あたりまで送り返すしかない。 「・・・・・・」 思い彷徨うオフィーリアへ、エンマヌイル砲兵隊長は探るような目を向けている。 「よし」 オフィーリアは声を上げた。 「さだめの通りに行え。バルタを焼け」 「御意」 武人の礼とともにエンマヌイルは頭を垂れ、そして退く。 天幕は静まり、アーシアは再び寄り添ってくる。腕に絡む彼女の指に、オフィーリアもそっと手を重ねる。己の手がひどく冷たいと、今に思う。その指に、アーシアは指を絡めてくる。 「だいじょうぶ」 アーシアに先んじてオフィーリアは言った。 「手は進めてある。我らは負けてなどおらぬ」 勝敗は、双方の援軍こそが決める。 オスミナの軍勢は全てを合わせてもフィンゴルド勢にはかなわない。しかし今のオスミナには帝國の援軍がある。軍勢の出立前に、公使へ、皇帝陛下へ、そして副帝陛下へ、素の全てへ援軍の要請を行っていた。皇帝陛下が、リランディアが、オフィーリアを見捨てることなどありえない。そして皇帝陛下が問うならば帝國は動く。 帝國軍ならば一個旅団に過ぎなくても、フィンゴルド軍を叩くには十分だ。あのハーラル大公ですら帝國軍を破れぬとあれば、オスミナでのゴーラの威信もまた地に落ちる。オフィーリアはその手を握り締める。 焦ることはない。一の勝ちは、得るべき時に得られればそれでいい。それが二に、三に、あるいは十にでも膨らむように見えるからこそ、無理をする。武人らにとってはそれが栄光でありまた栄達の礎だ。その手綱を引いてこその将ではないか。 今はとにかく、一の勝ちを一のまま得るべきときだ。それはヒルデガルド大公姫ではなく、バルタの街に集められているだろうフィンゴルドの物糧だ。それを焼けば、ハーラル大公の軍勢の脚も抑えられる。ハーラル大公がいかな武人であろうとも、一個旅団の帝國軍を一人で斬り伏せられはせぬ。 「・・・・・・オフィ」 アーシアの声に少し驚き、オフィーリアは彼女を見た。アーシアは目を少し逸らし、そっという。 「手が、痛くて」 「・・・・・・」 知らずこめていた指の力を抜き、宙に伸ばし、握って、こわばりを解く。それからまだオフィーリアの腕にからむアーシアの手指をそっと撫でた。 天幕の外で、ふたたび砲声が響く。 アーシアの指に己が指を絡めながら、オフィーリアは踏み出す。天幕の入り口を、その垂れ布を開く。 白煙を貫いて飛び去った砲丸は、こんどは、壁の真中にめり込む。高さの上でも、幅にしても、ちょうど真ん中だ。それまで壁の下側に、横一線にうがたれていた弾痕の列の上に、一つ新たに弾痕が生まれる。それが第二段階だ。弾痕を横に連ねたなら、あとは押し崩すのみ。 置きながら、けれど砲声は響く。撃つは、変わらず城壁の真ん中。繰り返しそこを撃つ。貫くことなどない。しかしそれが城壁崩しの技なのだ。城壁の下側にはすでに弾痕が横並びにある。下を撃ち弱め、続いて城壁の中ほどを撃つ。 「・・・・・・」 その狙いは、兵を流し込むことではない。焼夷弾を叩きこむことだ。 二門しかない十二听砲を労わりながら、止まることはない。エンマヌイル王立砲兵隊長は時計を片手に砲側に立つ。砲術は武術としては異端だ。一人一人の動きが、必ずしも敵を倒すわけではない。動きの果ての精華が、人には決して行えぬ破壊を行う。 彼ら砲兵は今、バルタ川の西岸に陣取り、川の向こうに立つバルタの城壁を撃つ。王立砲兵隊のみならず、オスミナの軍勢の多くは西岸に留まっている。王立砲兵隊、近衛歩兵連隊の一つ、二つの王立義勇兵連隊、それに近衛騎士団の機卒と段列だ。 東岸にあるのは近衛騎士団の機装甲と、近衛歩兵連隊の残りの一つ、さらに騎兵だ。いまあるのはオフィーリアの持つ騎兵の半分でしかない。残りの半分はすでに東岸どころか、そのさらに奥深くへ派遣していた。 オフィーリアの手持ちの軍勢でもっとも重要なものが、その東岸奥深くへ送り出した騎兵らだ。一刻でも早く、フィンゴルド軍勢の本隊を、ハーラル大公のありかを、探り出すためのものだ。 今ひとつ、さらなる砲声がとどろく。アーシアは供回りのものに命じて、オフィーリアのための折りたたみ椅子を出させる。今は待つしかない。一つは敵情を知らせるものを。一つはバルタの城壁を破る時を、一つはオスミナ諸侯軍の到着を。そして帝國軍の増援を。 日は中天を過ぎて、やがて傾きはじめる。砲声は続き、白煙の中から大きな十二听砲が退き、砲のための小斜路を掏りあがる。白煙を貫いて飛び去った砲丸は、再びバルタの街の城壁に砂埃を吹きあげる。 バルタの街にある大公姫ヒルデガルドは、バルタの街だけでなく、カイネの街へも姿を現した。あの女に釣り上げられて、オスミナ艦隊もまた大きな損害を受けた。その縦横の動き、動きの陰にあるフィンゴルドの思惑に、オスミナは翻弄されつづけてきた。 だが、今は違う。 ヒルデガルドは、カイネの街にある。そこにはフィンゴルド勢が送り込んだ物糧もある。ようやくフィンゴルド勢の動きに追いついたのだ。それは一の勝利と言えるだろうか。いや、確かな勝ちとしてこの手に掴みたい。一足飛びにフィンゴルドを傾かせうる勝利もまた望みではあるけれど、今は、負けられない。 「!」 兵らのなかから声が上がる。見るからに判る。 城壁が歪んでいる。撃たれ続けたその真ん中は、えぐられ、くぼみとなっている。そのくぼみへむけて、あるいはくぼみそのものが重いというように、城壁のあちこちにはひびの影が走り、壁の上の線は緩み始めている。 破れる。今なら。 「・・・・・・」 オフィーリアの思いを押しやるように、ざわめきが起きる。腕にも鈍い痛みがある。アーシアが力を込めている。 いぶかしくアーシアへ目を向けると、彼女は呟くように、あれを、と示す。 「!」 そのとき、オフィーリアも気付いた。バルタの城壁に魔力を感じる。 大きな魔力、その源にも、気付いていた。 「レーヴァテイン・・・・・・」 魔力の薄青い光が、城壁の真ん中に現れる。それは、きらめきながら集まり、白く貼りつき、広がってゆく。 「・・・・・・氷」 アーシアの呟く通りだった。氷が広がり、ひびの筋を埋め、また壁の真ん中にうがたれたくぼみの中にすら、氷の柱を作り、支えるのだ。 「・・・・・・・」 落胆の声が兵らから上がる。 けれどオフィーリアは、己の腕に掴み、すがるアーシアの手をそっと抑えた。 「落胆には及ばない。アーシア。伝令を出さしめよ。城壁を撃て。これを破れ。氷の壁を作るなら、これも破れ」 「はい、陛下」 アーシアはそっと離れ、振り返り、伝令をここへ、と声を上げる。 「・・・・・・小癪な」 オフィーリアはつぶやく。氷で城壁を強化しようと、うつし世に顕現した魔力のものは、うつし世の理に従うしかなくなる。いずれ解けて失われようものなど、小細工、時間稼ぎに過ぎぬ。 「・・・・・・」 それも判っていた。 ヒルデガルドも、オフィーリアと同じく待っているのだ。父たる大公、ハーラルを。 だが、明日にはオフィーリアにも援軍が来る。二日遅れて海軍砦を出立した、バシュタール侯率いる諸侯軍が。 諸侯軍は、数の上ではオスミナ近衛軍よりも多い。諸侯軍が来たならば、たとえハーラル率いるオスミナ本勢が迫ろうとも、引けは取らない。 バルタの川を挟んで対峙し、その対峙から、時を稼ぐ。 時はまだオフィーリアの味方だ。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1211.html
オフィーリア (6) 広い野に風が吹く。 重い足音にはもう慣れた。オフィーリアの軍勢は進む。オフィーリアも、近従の騎馬を率いて、隊列の脇を追い抜いてゆく。 「!」 将をたたえる喚声が、オフィーリアに向けて沸き起こる。もとは隊列ごとの指揮官に、将の到来を知らせるためのものであったらしい。 とはいえ、オフィーリアが走ったところで何ができるわけでもないのだが。 長鑓を携えた列、銃を携えた列がが行く。オスミナ軍もまた、長鑓兵をもって方陣を組むが、帝國より小さな戦闘陣を好んでいた。列の重ねは少な目で、列の長さも短く、方陣そのものも小さい。 方陣の両脇には定石通り銃兵を置いている。近衛連隊は、帝國との戦いの戦訓から、これまでより銃兵をかなり増やしている。近衛連隊はほぼすべてが銃兵だが、義勇兵連隊では弩兵もかなり残っている。 オスミナはそれら銃兵の背後にさらに、長柄や剣を持つ突兵を置いている。槍兵同士の遣りあいで敵に隙を見つけたなら、踊りこんでさらに叩くためだ。帝國と戦う南の国境の森では、そのようなオスミナ軍の方が、小回りが利く。 オスミナのいくさとして、オフィーリアが思い浮かべてきたのは、帝國との国境である南での様相だ。だが今目にしているものは、南の森とは違っている。 婚礼行幸の時に見た時には、まだ開拓の進んでいない原野にばかり思えた。やはりオスミナの道は、帝國にほど遠く及ばない。西岸領土はまだいい。東岸、そして北に向かうにつれて、その道の悪さが目につく。それが北方諸侯の動員が常に遅れる訳でもある。 砂利を突き固めたこの道も、軍勢の行軍が続けば、踏み崩されてしまうだろう。 「・・・・・・」 そして今にして判るのだ。フィンゴルド軍はこれらのことを良く知っていたからこそ、海路を使ってバルタに物糧を運び込んだ。フィンゴルドもオスミナでいくさをすることを考えていた。 オスミナの中でも北方、バルタ河の川下にひろがるこのあたりは平野だが、見通しはあまり効かない。草が高く茂りまた疎林も点々とある。小川や池の近くに生えるものだ。 それら小川で街道は頻繁に橋にあたる。 「止まれ!」 命じるその声は、橋のたもとからだ。 オフィーリアらに向けてではなく、近衛縦列へ向けてだ。橋のたもとに立つ従士が命じる。 将や伝令は、隊列を止めさせ、先に通る権利がある。オフィーリアはその筆頭だった。それが軍律というものだ。 「構わん!隊列先へ!」 だがオフィーリアは命じる。掌橋従士はうなずき返し、隊列前進を命じる。 橋といっても渡る小川に見合った小さな木橋だ。人馬を渡すにはいいが、機卒機装甲は通れない。 代わりにあるのが、道を脇に外れて水にそのまま引き込まれてゆく石畳だ。それは川底を渡り、向かいの岸に再び登っている。そしてそれは再び踏み固められた砂利道につながる。濡れ跡は、すでにオスミナ軍の軽機装甲が流れを渡ったからだ。近衛連隊より前に、騎兵らがこの道を通っている。 「・・・・・・」 近衛騎士団の機卒機装甲を手当てする一日の間に、騎兵らの一部を先遣させて物見をさせていた。その騎兵らの一隊はバルタの街を望むところまで進み出て、フィンゴルド軍騎兵と追い合う形の騎兵機動戦となった。 だが、オフィーリアはさらに騎兵を増強して、押し切ることまではさせなかった。 数の不安があったからだ。敵情がわからぬうちに、逆押しを掛けられては意味が無い。騎兵は本隊に引き寄せ、近衛部隊の編成を守って前進させている。 もともと、オスミナ軍はフィンゴルド軍と比べて、そう弱いものではなかった。オスミナは小国とはいえ、帝國からも、ゴーラからもそう簡単に踏み込まれ、踏み荒らされないくらいの力は持っていた。その釣り合いを崩したのは、この数年の早すぎる諸国の動きだった。 動員の隙を突かれ、オスミナ北部に踏み込まれ、今、動かせる戦力は限られている。ここに至ってもまだ北方から後退してくる諸侯軍が無いということは、もはやオスミナは今手元にある戦力のみで戦わねばならないということでもある。 だとしても、オフィーリアは負けられない。 「「!」」 近衛連隊が喚声を上げて、道端に留まるオフィーリアを讃える。オフィーリアも手を軽く上げて応える。 士気は高い。 「・・・・・・」 敵も近い。 カイネの街からバルタの街まで、海路で風が良ければ半日で済む。それを沿岸の街道沿いに何倍もの時を費やして進む。しかしそうすれば、部隊はまとまりとしての力を保てる。 海軍砦を出立し、門を閉じたままのカイネの街は無視した。 カイネの街そのものが軍勢を成して、背後を襲うのは無理だ。カイネの街にフィンゴルド軍が入り込むなら、むしろそれこそ願うものでもある。カイネの潟湖に入った船を根こそぎ焼き、街の城壁の内側に封じ込めて絞め殺せばいい。 そうして街道を進み、昼の大休止を過ぎ、日差しは中天を過ぎて、やがて傾きつつある。 近衛連隊のあとに、百歩ほどの間合いを開けて、近衛騎士団の機装甲らが歩いてくる。 先駆けに駆けてくるのは、近衛騎士団の先ぶれ役だ。騎乗の姿はティオルダント副長と、伝令や祐筆役らの姿が見える。その一団の任は、隊の通行に問題が起きないようにすることだ。 橋のたもとまで来たティオルダント副長は、そこの従士と何事か話すと、手を振って手下を留まらせる。そして己は騎乗のまま石畳へ、そしてそれが滑り込んでゆく小川へと踏み込んでゆく。 恐れず進む馬の胸元へ水は至り、さらに騎乗の膝を越える。だがティオルダント副長は足も袴も濡らすことをまったく厭わぬ様子で、小川を押し切り、渡り終える。 何事も無かったかのように、水をしたたらせながら石畳を上がり、橋を渡ったところのオフィーリアの元へ寄せてくる。ひらりと鞍を降り、左の掌に右拳を包んで掲げる武人の礼をして見せる。 「王妃陛下、近衛騎士団、ただ今行軍中。特段の問題はございませぬ」 ティオルダント副長は、口髭を生やし、その口髭と同じくらい太い眉をしている。オフィーリアはうなずく。 「御苦労。副長は、常もこのようにしているのか」 「つねには王妃陛下はいらっしゃいませぬゆえ、目立つようなことは控えております。役目にて、失礼いたします」 思わず、笑ってしまった。その間にもティオルダント副長は振り返る。 「橋梁従士長!近衛騎士団の通行許可を求める!」 「橋梁は徒歩、騎馬、許しある荷車のみ!許されざる物は、水底渡瀬路を使うべし!」 「近衛騎士団承知!旗振れ!」 「旗振れ!」 橋の向こうの騎影が復唱し、鞍から手旗を取り出す。それを向かい来る近衛騎士団の隊列へ向けて大きく振るって見せる。 それを受けて、近衛騎士団の隊列は、道脇の石畳へと踏み出す。重い足音が響く。 隊列の先頭を歩くのは、騎士団旗を掲げる機装甲だ。つづいてドルク近衛騎士団長の機が歩む。 他の機より、幾分大きく見える。 機装甲というものの形が定まるより前に作られたからという。 もちろん、機装甲なるものが生まれて、千年とは言わないが、それなりの長い長い時が流れている。それがそのまま使われるはずもない。 あの機とて、幾度も修繕され、作り直しに近いことも行われたという。作られたときと同じものは何一つ残っておらず、あるのは名だけともいう。 だが、それが大事だった。 その名こそ近衛騎士団長が引き継ぐべきものでもある。あの機は、眠れるオスミナの機神がまだ現れてたころ、その機神から直に模って作られたものだと言われているからだ。 そのドルク騎士団長の機は、他の機とは違う長柄を携えている。ドルク騎士団長が己のために作らせたものだ。 並の長柄を使ったとしても、ドルク団長は他の近衛騎士を圧して強い。団長と打ちあえるのはティオルダント副長のみだという。 これに加えて、ドルク団長が作らせた長柄を縦横に振るえば、ティオルダント副長すら近づけなくなるとも聞いていた。 王宮で一度、ドルク団長とシャルロッテと打ちあわせてみようとしたときがある。 その時オフィーリアはほとんど初めてドルク団長の言葉を聞いた。 「死合い、ということで構いませんでしょうか」 常のオフィーリアならば、面白い、やって見せよと言い放つのだが、その前にアークリンデが「及ばぬ」と止めた。 応じる言葉が御意であり、それからこちらドルク団長の言葉と言えば、御意しか耳にしていない。アークリンデは、たわむれにそんなことを言ってはいけない、というようにオフィーリアに向けて首を振っても見せた。 シャルロッテに言わせると「苦手」らしい。苦手というものの、ドルク団長にちょこまかとくっついて歩いた時期がしばらくあった。苦手じゃなかったのかと聞くとシャルロッテは答えた。 「びきっとなると怖いけど、いつもはそうじゃないみたい」 ゴーラの武の者とシャルロッテの気持ちには、相通じるものがあるのかもしれない。ならばそのシャルロッテを海峡に向かわせたことは失策だったかもしれない。 敵と相対させれば、オフィーリア以上に敵を察し、敵を知りえたかもしれない。 だが、オスミナがただオスミナの領地を守っているだけではならない。 「・・・・・・」 それらさえ、己の胸の中では題目に思える。 今は寂しい。 オフィーリアは思う。戻ってきてほしいと、今はただ思う。 「王妃陛下!水上がりは危のうございます。お下がりいただけますまいか」 ティオルダント副長が振り向き、見上げる。 「そうであった」 機装甲は危ういものだ。人の五倍はある鉄の兵だ。それを操るのは胎内の人で、しくじれば転ぶし、転ぶことを避けようとやたらとあたりの物を薙いだりもする。 道より退きながら見る先で、まずは騎士団旗を持つ機が石畳から小川へと踏み込む。鉄の脛で水を押して渡ってゆく。つま先で、水底の石畳を探るように進む。機装甲はよほどよく作られた物でも、己の体ほど自在には動かせない。 続いてドルク団長の機が小川に踏み込む。滑らかに、そして何事も恐れることは無いという風に。 ドルク団長の魔道相は土なのだという。そのどっしりした立ち居振る舞いを見れば、確かにそうなのかもしれないと思う。ドルクの機は、小川を押し渡りながら、その鉄の腕を軽く振って見せる。脚甲の裾から水を流し落としながら、川より上がる。 「続けて渡せ!」 ティオルダント副長が命じ、橋のたもとの旗振り役が手旗を振って示す。一度に一機ずつが小川に踏み込む。小川のたびに行軍は少しずつ遅れる。 先に小川を渡ったドルク団長の機体は、砂利の道でくるりと向きを変え、オフィーリアらの脇に立ち、さらに片膝をついた。 魔道の双眸が光を失い、その背の甲蓋が押し開けられる。姿を現したドルク団長は、ひらりと地へと舞い降りる。 「・・・・・・」 そして無言のまま、オフィーリアへ向けて武将の礼をしてみせる。 「ご苦労である。近衛騎士団の様子、如何にあるか」 「つつがなく」 ドルク団長は一言、そう応じる。確かにつつがなく進んでいるのはわかる。目の前の小川を押して、一機、また一機と渡ってゆく。 「・・・・・・」 それ以上はもはや問い重ねようがない。 「・・・・・・」 だがオフィーリアはあえて続ける。 「シャルロッテを覚えていようか。余の義妹だ。余が義妹であり、余が剣でもある。ドルク団長に問いたい。シャルロッテの力、如何に思うか」 「仰せのとおりかと」 武人の礼を示しつつ、ドルク団長は言う。しかし常と違い、言葉はそれで終わらなかった。 「かの方、心に死地を知らず。ゆえに死戦を知らず」 常のドルク団長と違い、彼はさらに言葉を続ける。 「ゆえに、その力示されることあらざると」 思わず、オフィーリアは強くドルク団長を見返した。 「シャルロッテは、力示せぬと申すか」 ドルク団長は、僅かに目を伏せ、しかし顔を上げ、武将の礼と共にいう。 「御意」 「・・・・・・」 ドルク団長は、もはや言葉をつづけなかった。オフィーリアもまた、問い重ねることができなかった。 「承知した」 オフィーリアが応じると、ドルク団長は武人の礼に合わせていた両手を降ろす。 歩む機装甲らの足音も、押し割られ乱れる水の音も、胸騒ぎと同じ静けさに感じられる。 その静けさの中に、新たな声が加わる。 「伝令!」 街道から伝令の旗を携えた騎兵の一団が駆け戻ってくる。 「伝令ここへ!」 オフィーリアの近従が導く。駆け来た騎兵伝令は、馬を止めるのももどかしく、鞍より飛び降りて、武人の礼を示す。 「前衛騎兵団長より伝令、敵騎兵群見ゆ!その数、百から二百。騎兵団は前進してこれを撃破せんとす」 「承知した」 オフィーリアは応じる。騎兵団長の行いは正しい。騎兵のいくさを後ろから左右することはできない。なにより前衛騎兵団は千には足りないが、七、八百はいる。二百やそこらの騎兵に負けることは無い。 オフィーリアは鞍を降りて求める。 「地図を」 「ただいま」 思っていたよりも少し早い。 もう少し、バルタの街に引き寄せるかと思っていた。 「・・・・・・」 逆に言えば、バルタの街前に、フィンゴルド軍がいるのかもしれない。 騎兵は足が速い。騎兵戦になれば、本隊が手出しできることなど無くなる。オフィーリアにはあと半分の騎兵団がある。本隊隊列後衛にあと八百ほどが控えている。だがこれはまだ前に出せない。 オフィーリアが決めるべきことは、このまま近衛歩兵連隊を進めるか、それとも近衛騎士団の機装甲を前に出すかという事だ。 「近衛騎士団長、副長、これへ」 礼の後に二人は歩み寄る。 「如何にすべきか。近衛騎士団を前に出すべきか」 「御意」 ドルク団長の応えは、思っていた通りだった。その言葉を引き受けてなのか、ティオルダント副長が言う。 「献策いたします。お考えの通り、近衛騎士団を前に出されるがよろしいかと存じます。敵の狙いは、我が方の脚を止めさせること。歩兵の力は欠くべからざるものにございますが、押し切る力は騎士団にございましょう」 「なるほど」 オフィーリアはうなずく。 「承知した。かくのごとく成す。近衛騎士団は前進して、近衛連隊の前に立て。阻むものこれあれば、実力にてこれを破れ」 「御意」 騎士団長と副長は武将の礼で応じる。 「前衛近衛連隊長にもそのように命じよ。近衛砲兵は、近衛連隊の後方につけ」 「承知」 「かく成せ、伝令を発せよ」 「承知!」
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1286.html
オフィーリア (11) 良く考えたら、前回、東西の方向を間違ってたわ(テヘペロ 朝日は陸から、夕日は海へなのに。 駄目だ申し脳。 砲声が響く。 夕暮れの光を横切って砲弾が飛びぬけ、一拍か二拍が過ぎる。城壁にめり込む重い音がして、白く砕かれた城壁の砂煙が上がり、バルタの町の城壁の上にまで登ってゆく。 舞い下りてゆく砂埃から、薄い影が横なぎに伸びる。 それが今日の最後の砲声だった。二門しかない十二听砲は半時に二発ずつ、非常にゆっくりした射撃を行っていた。それはオフィーリアが、やむなく命じた事だった。 王立砲兵隊十門のうち、十二听砲は二門ある。二門しかないが、バルタの町の城壁ならば二門で十分だ。フィンゴルド勢の砲兵がいなくなった今、オスミナの砲兵を阻むものはなく、オフィーリアはバルタの城壁の鍵を手に入れたも同じだった。 ただ、鍵を手に入れたものの、それを思うまま開けるわけでもない。オフィーリアが頼りとする近衛騎士団は、すぐにはバルタに踏み込めないほど消耗していた。 「陛下、諸将が集合しました」 声はアーシアだった。オフィーリアが一人になりたいとき、瑣事との壁になるのはアーシアだけだ。 「今行く」 オフィーリアは振り返る。 夕日に照らされてあるのは、沿岸の低く平らな土地ばかりだ。その中に、近衛騎士団の機装甲と、機卒の列がある。さらに夜営に備え始めた近衛歩兵連隊と、後衛騎兵がある。オフィーリアの率いてきた近衛の半分がバルタを渡河していた。 残りの半分、王立砲兵隊と、その工事警衛のために残した近衛騎士団機卒、さらに義勇兵連隊は、バルタ側の西岸に留まっている。正直なところ、オフィーリアは迷っていた。 フィンゴルド勢をバルタに押し込め、その砲兵も失わせた。バルタに話を絞れば、砲兵をもってバルタをこじ開け、焼き払って構わない。そうすれば、ヒルデガルドをも倒し、フィンゴルドの国体そのものに痛打を与えられるかもしれない。だが本来の敵はヒルデガルドごときではない。ハーラル大公の直卒するフィンゴルド本隊だ。オスミナ東部領土を進みくるそれらが、今、どこにあるのかは知れない。バルタのヒルデガルドに入れ込み過ぎれば、ハーラルへの備えに欠けてしまう。 思いめぐらせつつ歩く先に、天幕はすでに立てられていた。近衛兵が幕囲いの外に槍持ち立っている。アーシアを伴い行くオフィーリアを、背を正して迎える。 「王妃陛下御来臨!」 天幕の中で、諸将が一斉に武人の礼を示す。オフィーリアも武人の礼を持って応じる。 「報告を」 は、と応じてまずドルク近衛騎士団長が踏み出す。 「近衛騎士団可動十三、備えあり」 「申し沿えます」 その隣からティオルダント副長が踏み出す。 「現在、修繕中がさらに八機あり、明日中にはすべてが戦列に戻りえます。西岸には六機が健在であり。これを渡河させれば明日中には二十七機が戦列にそろいます」 「承知した」 本来はここまでの報告すべて含めて、ドルク団長が行うべきとは思う。だがオフィーリアはドルク団長のことを見直していた。ドルクがいなければ、オフィーリアが今、ここにこのようにして在ったかどうか、わからない。 ドルクは魔力に寄らずレーヴァテインを含めた三機に一歩も退かなかった。退かなかったどころか、背後にオフィーリアを置いて、敵の攻め手を一つも通さなかった。だからこそ、オフィーリアは魔力の限りまで雷撃陣を放つことができた。朝におこなった、今と同じような諸将会合で、オフィーリアはそう讃えた。 誉れは、受けるべき責めを引き受けるものだ。誉れによって許しとなり、犠牲は報われる。誉れによって、あの失策はオフィーリアのものであり、諸将の献身によってそれを切り開いたことを明らかにする。この東岸への進出、オフィーリアの考えとは違っていたが、近衛騎士団の献身と能力にって思わぬ形で掴み取ったものであり、その筆頭としてドルクがある。 しかしドルクは、今と同じように、いつもと変わらなかった。その武人の礼との狭間に、オフィーリアは継ぐ言葉を持たなかった。いやむしろ、ドルクのその振る舞いを語る言葉をオフィーリアは持たなかった。 続けて砲兵隊長から詳しい報告が入る。長い黒髪の、彼はオスミナの中では珍しい学者肌の男だった。エンマヌイルといい、父姓どころか姓も持たぬエンマヌイルと言った。彼は武人の礼に続き、己の背後に控えていたものより覚書を受け取り、それを横目に見つつ報告をする。 「十二听砲の砲弾の優先輸送を行っており、また装薬は十分な量があり、御命令さえあれば、一砲あたり半時に三十射撃が行えます」と。 そう言った報告はオスミナでは珍しい。オスミナの諸将は数そのものにはあまり重きを置かない。数そのものには大きな意味は無いと考えている風だった。ただ、多少の多寡ならば己の武威で如何にかして見せんとするものらこそゴーラの武将であると。それはオフィーリアにはつかみどころの無さばかり感じられる。こうして顔を合わせて報告を受けていても、軍勢が今持つ力というのが、はっきりとはつかめない。東方の帝國軍士官ならばたとえ機装甲小隊長格であっても、与えられる補給の数について把握しておこうとする姿とは全く違っていた。 「ただしこれは砲の限界に迫るものであり、これを行った砲は、事後しばらくの砲撃は危険となります。ただしこの規模の砲撃を行えば・・・・・・」 エンマヌイルは覚書を軽く繰り、そして計算上、打倒し得る壁の長さを告げた。それは諸将をして息をのませるほどの、大きな破孔、というよりむしろ崩落だった。 「もちろん、敵は我々の砲撃意図を認知すれば、敵は補強措置を行うでしょう。今も準備を行っているのは間違いありません。実際に開ける破孔は半分ほど、と考えていただかざるを得ません」 鼻息に似た吐息が聞こえる。ゴーラ気質の武将からすればエンマヌイルの言い分は、いくさ知らずの算術そのものだろう。王立砲兵はフィンゴルド砲兵が姿を消してから、のうのうと姿を見せたのと同じなのだ。切り開いたのは、恐れず夜にすらバルタ川を押し渡って、フィンゴルド勢を打ち払った近衛騎士団の勇猛だ。 しかし彼らをオフィーリアから見ると、勇猛の他は信頼に欠けるのだ。行軍にあたっても消耗所用を十分には示さず、それを補うルクレツィアの労苦は並々ならず、かといって諸将にそれらをすぐに改めさせることはできなかった。 「承知した」 オフィーリアは応じる。続いてオフィーリアに示される報告は、近衛、義勇、両歩兵と、後衛騎兵隊からのものだ。いずれも今は力を蓄え、敵に備えていればよい。 「前衛騎兵隊からの連絡は」 「今だございませぬ」 騎兵隊長はそう言って頭を垂れる。すなわち、ハーラル大公本隊の行方はまだ知れぬということだ。 「ルクレツィア、諸侯軍は」 「報せでは予定通り、出立したとのことです。あと二日で、バルタに至るかと」 二日。 この二日に、如何にすべきだろうか。バルタを圧すか。あるいは近衛騎士団の回復に専念させるか。だとしても王立砲兵隊を待たせる意味はあるだろうか。オフィーリアはバルタの城壁をこじ開ける鍵を得た。しかし開けることに意味は無い。押し入ってバルタに溜め込まれたフィンゴルドの物糧を壊し、焼かねば何の意味も無い。 「わたくしも連絡を絶やさぬようにいたします。何かあれば、直に解決を」 「たのむ」 できるなら、ヒルデガルドの首級を上げたい。そうすればフィンゴルドの国体そのものを揺るがすことができる。オフィーリアは、勝ったとは言えない。むしろドルクの肩を踏んで、のぼっただけなのだ。もう一度、賭けに出られるだろうか。 ヒルデガルドが死ねばフィンゴルドの国体が揺らぐように、オフィーリアが死ねば、オスミナの国体そのものも揺らぐ。オスミナと帝國を繋ぐものは無くなる。そうなれば帝國は、いや副帝レイヒルフトは容赦なく旧の策に戻るだろう。つまりは帝國の武威をもってヴィルミヘ河をフィンマルク湾まで押し破るだろう。 この実直に過ぎる武人らも、すべてが帝國の鉄火の中に滅びてゆくだろう。なにより、そうなってアークリンデがいのち永らえるとは思えない。 「・・・・・・」 今のオフィーリアの胸の内を、帝國にある者らは知るだろうか。シリヤスクスの楔として、ヴィルミヘ河の出口に打たれたもの。おぼこと嘲られた青年王アークリンデを落とせと命じられた毒の棘。 今のオフィーリアはもう、そのようにはあれない。 「二日後の朝を期して、バルタを破る」 オフィーリアはここで戦わねばならない。帝國に求めた援軍は必ず来るはずだ。けれど、それはオスミナの為ではない。あくまで帝國のための援軍であるはずだ。帝國のための援軍を、オスミナのために使うには、帝國とオスミナを繋ぐオフィーリアが、ここで戦わねばならない。 戦うオフィーリアを、リランディアが、永久の幼子が見捨てるはずがない。別れの前の夜、あれほど泣きじゃくり、忘れぬと繰り返したのだから。 「これに向けて、献策せよ」 オフィーリアの言葉に、武将の礼と共にエンマヌイルが踏み出す。 「献策いたします。明日の夜明け直前より、砲撃を開始、半時の砲撃を持ってバルタ西壁を破ります」 「では、攻撃は渡河の上か」 ティオルダント副長は腕を振って退ける。 「渡河の上、堤防を登り、さらにその上の崩れた城壁を登るだと?お前はそのようなことができると思うのか」 「南壁を破れと仰せなら、近衛騎士団にて、砲兵を東岸へお渡しいただけましょうか」 「良かろう。砲の二門ばかり、どうということはない」 「六十発分の砲弾装薬の量を甘くご覧のようだ。水に濡らせば役に立たなくなるのですぞ」 「役に立たぬなら、近衛騎士団にて南の城門を破るまで。むしろ近衛騎士団にお命じ下さい。バルタの城門を破れと」 「お待ちいただこう。陛下への献策は砲兵が先。その裁可を受けずして何を言われる」 「献策にあたっては先も後も無い。あるのはどちらがより良いかにすぎぬ」 「ほう?では、いかにして破られるおつもりなのか」 「衝角に決まっておろう」 「いかほどの時を費やするおつもりか」 「それは行ってみなければわからぬ。だが行えば必ず果たす」 「何を根拠に」 「なんだと?」 「根拠なき自負で押し通せるのは論のみ」 「貴様、我ら近衛騎士団を愚弄するか」 「やめよ!」 オフィーリアは声を上げる。 「献策にあたって愚弄など無い。より善きのみあると申したのは近衛騎士団副長であったな」 「献策いたします」 ティオルダント副長は、武人の礼を示して続ける。 「どうか、近衛騎士団に御命令を。バルタ一番槍の栄誉をお与えください」 「・・・・・・」 動いたのは、ドルク団長だった。 足音も高く踏み出し、武人の礼をオフィーリアに向ける。 「無用にございます。先の不始末は我が不始末」 「待て、ドルク団長、何を言っている」 問うオフィーリアに、ドルク団長は応えない。オフィーリアは声を上げる。 「一軍にあって不始末はその将に帰されるべきものぞ。余はこれまでの働きに不始末など見ておらぬ」 「・・・・・・」 常ならば、御意と返すはずのドルクは、その言葉さえ発しない。 今にして、オフィーリアは気付いた。ドルクのような使い手の名が帝國に響かなかった訳にだ。この男は、近衛騎士団という器を指図するためのものではない。この男は、真に国王の剣としてあったのだ。ゆえに機神オスミナスより直にかたどられたと言われる機装甲を与えられ、そして戦場で特に名を上げることは無かったのだ。 それは、剣としてのこの男が抜き放たれる時、何があろうとも、その役のみを果たすためだ。 だから昨夜に、オフィーリアと共に行き、そして一歩も退かなかったのだ。 「・・・・・・武人馬鹿め」 「!」 思わず絞り出した言葉に、天幕の中の気が張り詰める。諸将がオフィーリアを見つめる。 「・・・・・・」 オフィーリアは息をかみしめる。 「諸卿が小娘と思おうが、この一軍、気ままに率いているつもりは一つもない」 答えるものなどいない。オフィーリアは、言葉を止められなかった。 「これまでの全て、諸卿らの思うままでなかろうと、余は一つオスミナのみを思って命じたつもりだ」 声が震えているのが己でも判っていた。動揺を示せば、軽んじられる。それも判っていた。けれど止まらなかった。 「余をして、国母になど値せぬと、諸卿は思おうか。だが、余にはそのつもりはある。生きるも死ぬも、オスミナと共にしかない。その余に、諸卿の武人の誉れを先にせよと言うのか」 「・・・・・・」 応えるものはいない。 「余が卿らに与えた恥を雪ぐため、卿らを失ったと、国王陛下に申しあげろというのか」 静まり返った天幕の中に、オフィーリアの言葉だけが響く。止められなかった。 「国王陛下に、アークリンデに、そう言えと余に求めるのか!」 「・・・・・・」 静まり返った天幕の中に、ふいに一つの声が上がった。 「申し上げます」 それは武人の礼を示すドルク近衛騎士団長だった。常とは違い、まっすぐにオフィーリアを見据える。 「我らとて母なる国はオスミナのみ。生きるも死ぬも、オスミナと共にのみあり。国母陛下はオスミナと同じ。かく成せと示されるままに我ら成し、死ねと命じられるまま、我ら死せり」 そしてドルク団長は続けた。 「かくのごとく生きることこそ、我らの望み。国母陛下のお心のままに」 本当は、このへんにちゃっちゃと持ち込みたかったんだけど、 見通し無くてえらく手間食っちゃった(テヘペロ 守るべきもの、って表題なんだから。
https://w.atwiki.jp/shakespeare1616/pages/47.html
『オフィーリア』ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス J.W.ウォーターハウス
https://w.atwiki.jp/vrcinmu/pages/287.html
迫真デスクトッ部 沼から助かる裏技 http //www.nicovideo.jp/watch/sm43312418 迫真デスクトッ部 沼から助かる裏技〜二度漬け〜 http //www.nicovideo.jp/watch/sm43352659 迫真デスクトッ部 沼の底、もう助からないゾ♡ http //www.nicovideo.jp/watch/sm43565701 迫真デスクトッ部 退部の正式申請 〜そしてVRへ〜 http //www.nicovideo.jp/watch/sm43746200
https://w.atwiki.jp/legacy75/pages/15.html
フィーリア連邦共和国内で起こった大規模災害の総称。 概要 首都直下型地震の直後、異常なオーロラが観測され、その後数日に亘って天変地異が発生。 1ヶ月ほどでフィーリア連邦共和国の大半は海に没した。 死者・行方不明者は数百万人にも上る。 異常の現れ 正確な記録は無いが、早朝フィーリア連邦首都フレイミアを直下型地震が襲ったところから始まる。 この影響で都心の交通機関が完全に麻痺し、全国の流通がストップした。 また、地質研究所は地震の観測データとボーリングの結果から「地層の一部が液状化しているが、その他は問題なし」と発表した。 惨劇 数日後、島全体を震度8を超える地震が襲った。 地震による大津波は島沿岸を洗い流し、近海で活動していた主力艦隊を壊滅させた。 艦隊を取材していて津波に遭ったレポーターのリン・アレスターは「水の壁が向かって来た」と証言しており、津波の巨大さを物語っている。 同時に島の活火山が一斉に噴火。地震と火山灰により島中の交通・通信機関が麻痺した。 大統領も島外脱出を試みたが、専用機は離陸直後に消息を絶ち、大統領も死亡したとされる。 最後の地震の直後、ウィング本島は首都を中心に陥没。首都周辺は急速に沈下し、その周辺も引き込まれるようにして沈んでいった。 また、島の地盤が貧弱であったため地震による液状化現象が被害を増し、島の沈下に拍車をかけた。 これらの災害によりウィング本島の平地のほとんどが海に没し、中央高原を主とする山地や最高峰である火炎山が残るだけとなり、フィーリア連邦共和国は多数の遺骸と共に事実上消滅した。 原因 現在も詳しい原因は分かっておらず、 急激な地殻変動 特殊兵器の実験失敗 巨大怪獣 宇宙人の襲来 などの諸説が流れている。 また、未確認だが埋め立ていのらの目撃情報もあり、サドンデスに陥った可能性もあるとされている。 現在 現在、ウィング本島があった海域はロスフェアリス諸島に改称され、僅かに残った土地は再度埋め立てやメガフロートなどによって広げられた。 その中心であるディアス島ファリア市の郊外に追悼記念墓地が建立している。 また、アルウィング島の北部は現在でも沈下が進み、立ち入りが制限されているため、 場所によっては廃墟となった街が当時の状態で残っているところも少なくない。 詳しくはロスフェアリス諸島を参照
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1212.html
オフィーリア (7) 夕日を浴びて、川がきらめく。 バルタの河の流れだ。 「・・・・・・」 騎馬がしきりに首を振り、はみを噛んで落ち着かない。オフィーリアはむしろ落ち着いた心持でいたのに。 敵は目の前にいる。 ゆっくり流れてゆく左手の先には、フィンマルク湾が広がり、夕日にきらめいている。西へ落ちゆく日差しと、きらめく波と、そして未だ沖合にある何隻もの櫂船と帆櫂船の姿が浮き立つ。 それら帆柱の姿は、浜に切れ込むようにしてある潟湖の中にもいくつもある。その先で夕日と影とを受けて立つのがバルタの街の城壁だ。 夕日に美しく輝いているけれど、あの城壁は海賊よけのもので、機装甲に耐えるほどの厚みも高さもない。すでに崩されたところもあり、そのあとには石を積み直した跡もある。 その城壁から、すぐのところにバルタの橋がある。街の城壁よりも立派な石積みの橋だ。川幅そのものは百五十呎ほどだが、砂の河原をまたいでいるため、橋の長さはその数倍、おそらく五百呎ほどになる。これでも機卒機装甲を渡すほど強くは無い。また石橋の中央は切り欠かれ、木製の跳ね橋となっている。跳ね上げ橋だとオフィーリアは承知していたし、その仕掛けも見えるのだが、いまは降ろされている。 そしてフィンゴルドの騎兵らが、その橋へ向かって退いてゆく。橋の前には、杭が打たれ、柵が立てられ、銃兵鑓兵がわずかいる。そうして、戻り来るフィンゴルド騎兵を待ち受けている。 いまにしてやっと、フィンゴルド騎兵の姿を見ることができていた。騎兵と、軽機装甲を合わせた、列国では良く見る形の騎兵だった。 いままで、存分に駆け回り、オスミナ軍の前進を阻んできた。 軽機装甲は道に陣取り、封じてきた。騎馬らが道の外に踏み出して回り込んでも追ってこなかった。 ならば機装甲には機装甲であたるしかない。オスミナ騎兵の軽機装甲と、投槍の放ちあいもした。数の上ではオスミナ側が勝る。道を外れて逃れるフィンゴルド軽機装甲を追い、しかしそのオスミナ側を、別のフィンゴルド軽機装甲が投槍で阻む。 その動きはまるで、宮廷舞踏の足の運びのようだった。退くように見せかけて回り込み、押しかけると退く。そうして戦意と能力を見る。 オフィーリアの見るところ、フィンゴルド騎兵の動きは早く、また何かを狙っているように見えた。数で勝るオスミナ騎兵の機装甲に対して、巧みに退き代を小さくし、しかもまた包囲されぬようにと立ち回る。 もっとも、フィンゴルド軽機装甲が留まろうとしても、無理なことではある。オスミナの近衛騎士団の隊列が前進してゆけば、フィンゴルドの軽機装甲が留まっても意味が無い。 どれだけ留まろうとするかは、オフィーリアもまた見ていた。そしてフィンゴルド軍もオスミナ近衛騎士団が道を外れて追う動きを見せるまで、留まろうとしいた。 そのようにして、けれどフィンゴルド軍の動きは一貫して、退くものであった。オスミナ軍の機装甲がやってくるのを待っている風でもあった。近衛騎士団が騎兵軽機装甲を合わせて押しかける動きをすると、大きく退く。 そしてオフィーリアの思っていたより速やかに、バルタの街へと退いていた。その速やかさは、まるでオスミナ軍を引っ張るようだと、オフィーリアは思っていた。 それら騎兵はいま、バルタの橋へと向かってゆく。軽機装甲らも、隊列を成してバルタの橋の上流側隣にあるという、水底の石畳道を渡っている。石畳道は見えない。バルタの河は、満潮でなければ機装甲の腰あたりまである。 川の向こうには、フィンゴルド軍があった。 そしてその姿に、オフィーリアは安堵していた。心から。 掲げられた旗印は二つ。フィンゴルド騎士団を示す印に青をあしらったものと、そしてフィンゴルド大公姫を示す旗印だ。夕日の中に羽ばたくようにひらめく。 その下に、百ほどの鉄兵の姿が並ぶ。ざっとみて四十二、三の機装甲と、それよりやや多い、おそらく五十ばかりの機卒がある。 機装甲のみならず、砲もある。 「・・・・・・」 それにオフィーリアはすこしならず臍を噛んでいた。 敵の砲の数は、十を超えている。オフィーリアの持つ、この軍勢の砲とほぼ同じ数だ。 その一つが、白く煙を吐き出す。 川のこちらの平野の、オスミナ騎兵群がざわめく。 そして砲声は離れたオフィーリアへも届いてくる。フィンゴルドの砲兵は、十分に備えをしていたようだった。河岸に放列を敷いており、その前にも、杭を打ち、土塁を積み重ねてある。 「・・・・・・」 押して渡れぬことはない。 バルタの河はそれほど深くは無く、機卒とて腰が浸るほどで済む。行軍で渡すなら、水底を通る石畳の道も入用だろうが、横隊で一気に押し渡るなら、そこまでは不要だ。 ただ、河岸に着くまで、また川を踏み越える間も、あの砲らに撃たれるだろう。また川を踏み越えたところで、敵の機装甲が阻止してくるはずだ。 「・・・・・・」 バシュタール侯なら、押し切って攻撃を行うだろうか。それとも夜を待ち、夜陰に乗じて川岸に迫ることを待つだろうか。 夜陰に乗じるなら、正面でなく、回り込むのも手ではある。上流に回ったとしても、河の深さはそれほど変わらぬのだ。ただし夜にあって、隊列の統制は難がある。機装甲は歩くものであり、転べば、また泥にはまれば人がそうであるように傷つき、動けなくもなる。 「旗振れ。将、集合」 オフィーリアは命じる。 今は、力押しは無理だ。砲兵の支援なく力押しをかけても、敵砲兵に一方的に撃たれるのみだろう。オフィーリアの砲兵を呼び寄せるにしても、まだもう少し時が要る。砲兵もやってきただけでは撃てない。敵と撃ちあえば陣地を作っている敵に利があるだろう。 元はと言えば、バルタの街に集められているだろう敵の物糧を叩かんがためだ。そのためならバルタの街を砲撃して叩き潰すつもりでもあった。 敵も同じく考えたのだろう。砲と砲とが出会えば叩きあいとなる。備えて陣地を作った方に利がある。 砲の数では劣るが、機装甲の数では数倍はある。騎兵も同じくだ。押し切って進ませるべきだろうか。 「近衛騎士団長、前衛騎兵団長をこれへ!伝令立て!」 問うべきは二つ。今のうちに力押しに押せば、どれほどの利を得られるかだ。 何を行うべきかを見失ってはならない。 オスミナ本勢を見つけ出し、これを叩く。それはオフィーリアの軍勢のみでなくても構わない。帝國からの救援軍勢とともにでも構わない。 だが、そのためには迫りくるだろう敵を見出さねばならない。あるいは、オスミナ本勢のために蓄えられた物糧を焼き払う。 やがて騎馬の一団が駆け来、機装甲もやってくる。ドルク騎士団長と、ティオルダント副長の機だ。片膝をつき、背の甲蓋を開く。ドルク団長とティオルダント副長はその背を伝い降りて歩み来る。オフィーリアへと武将の礼を向ける。 オフィーリアも馬を降りた。 「あれを如何に見る」 「お心のままに」 ドルク団長が言う。オフィーリアは応じる。 「献策せよ」 「ご命令のままに」 「申し上げます」 ティオルダント副長が進み出る。 「お命じあらば、我ら近衛騎士団は、今より直ちに踏み出し、河を渡って敵騎士団を打ち払う事に、僅かの躊躇もございません。それぞ我らが団長の奏上にございます。我らより陛下に献策せよと申されるならば、我ら近衛騎士団をもってして、いかにバルタ河を渡るかこそが肝要かと思われます」 「して、副団長はどう考える」 「それがしは機甲乗りに過ぎませぬ。ゆえに軍勢の他の事物について申し上げるのは僭越にございます」 「構わぬ、許す」 「申し上げます。ならば砲には砲をもって合い撃ちあうことをお勧めいたします。今の我が方機卒機装甲と、敵勢機卒機装甲では、数の上で大きな差はございません。今押しかけるならば、砲と川からの上がり際にて、数の差は無くなる、むしろこちらこそ減らされるかと。川を渡れば、退きどころなく、破れることあれば」 ティオルダント副長はひととき口をつぐむ。 「もし破れることあれば、散らざるを得ぬかと。かく成れば、諸侯軍到来までの間、西岸を守るものはなくなりましょう。そのうえで、ご命令のままに」 「あと二日、待つが良いか」 「二日待てば、敵に三倍する機甲を得られましょうが、その二日の間に、敵の動きいかになるかは見通しづらく」 「余の求めは騎兵の進発だ。東岸を知らねばならぬ」 「・・・・・・」 ティオルダント副長は沈黙する。沈黙は、献策すべき言葉が無いということを示す。 「前衛騎兵団長、述べよ」 武人の礼とともに、前衛騎兵団長は進み出る。 「お任せいただけるならば、夜陰に乗じて上流へ回り込み、暁闇を待って渡河、敵に気取られぬまま進みえまする。我ら前衛騎兵団のみでも、敵勢騎兵の倍は居りますゆえ、騎兵団をもって渡河すれば、敵勢騎兵に阻まれることなく、東岸奥へと踏み入れるかとは存じます」 しかしながら、と前衛騎兵団長は低く言う。 「これは手綱を解き放つも同じにございます。我ら前衛騎兵は失われるものとお考えいただかざるをえませぬ」 「承知した」 送り込むことを、今決めた。 いまも近衛の部隊は続々とやって来つつある。二つの近衛連隊、二つの義勇兵連隊合わせて兵四千、そして王立砲兵隊の十門の砲。最後に後衛騎兵団およそ八百騎。 歩兵の数では、敵勢を上回っているが、機甲の数は、やや上回るのみ。 「・・・・・・」 だが、とオフィーリアは思った。 力では劣っていない。 「夜営陣は、敵より一哩半をとる。平野にて敵と対峙あるがゆえに、敵の夜襲はあり得るだろう」 ならば、とオフィーリアは言う。 「我が方からの夜襲はありえぬか」 ドルク団長が踏み出す。 「ご命令を」 「わたしも夜襲に参画する」 「ご容赦を」 ドルク団長は抗いも短い。けれどその目は、明らかに強く拒んでいる。 だがオフィーリアは行くつもりだった。オフィーリアのヴァーミキューデス・フォルトゥナの魔術戦力を使って、可能な限り、敵の砲を叩く。 あの川岸に並ぶ砲をだ。 「・・・・・・」 夕日の色にきらめくバルタの河へと向かって、機装甲が一機、向かってくる。 いや二機だ。 「陛下!」 近従が呼びかける。追従してくる一機は、フィンゴルド大公姫旗を掲げている。 「・・・・・・すなわち、あれがヒルデガルド大公姫ということか」 「あれは・・・・・・」 ティオルダント副長が口ごもり、しかし言った。 「申し上げます。あの機装甲、レーヴァテインにございます」 「それが、ヒルデガルド大公姫とともにあるというのか」 レーヴァテインは恐れもせず、水の中に踏み込む。脚で押しやる波が夕日にきらめく。レーヴァテインは携えていた剣を機体の前に回し、逆手にひらめかせて、杖のようにつく。 その頭を軽く俯かせて動きを止める。 やがてその背から人影が現れる。夕日を浴びて、銀の髪が光る。 「お招きのようだな」 オフィーリアは静かにヒルデガルドを見ていた。 姿の見えぬ敵は読めぬだけに考えあぐねる。だが姿の見える敵は違う。あの姿は、オフィーリアともほとんど年の変わらぬ姿だった。 あの娘も自らを賭け代に差し出している。 「ならば応ぜねばなるまい」 オフィーリアは鞍に上がった。 「軍勢動かすな。敵将のあいさつに応じるだけだ」 手綱をさばいて、馬の腹を蹴る。駆けさせる。慌てて近従が付き従ってくる。 さらにドルク団長と、ティオルダント副長の機装甲がたちあがり、そして付き従ってくる。敵と同じ二機というのは都合がよい。 敵騎兵はすでに退き、残るのは杭や柵ばかりだ。 川に立つ機装甲は動かずに待つ。オフィーリアは騎乗のまま手を上げて、追従のドルク団長らの脚を止めさせる。 「ゴーラ帝国フィンゴルド大公国右府将軍ヒルデガルド・ハーラルドッテル・フィンゴルドである」 さすがに遠く、その声は聞き取りづらい。けれど確かに若い女の声だ。 「オスミナ王国オフィーリア王妃陛下と存じる。お初にお目にかかる」 「いかにも!」 オフィーリアは応じる。 「余はオフィーリア。フィンゴルド閣下、お目にかかれて光栄だ」 「・・・・・・」 ヒルデガルドは応えず、笑みを見せた。確かに見せたとオフィーリアは思った。ただの笑みではないこともわかった。確信だった。 何かを得たのだ。明らかに。 「・・・・・・」 「ゴーラの義によって申し上げる。オスミナ王国は、ゴーラの大義に立ち返るべし。これを阻むならば、ゴルム陛下の命により、また我が大公ハーラルの命により、オスミナ王家を誅する」 「では伺おう。ゴーラの義とはいかなるものか」 「ゴーラの紐帯の下にあっては、あらゆるものどもは一つである。それは人が人であることを人の一人一人に認めるものである」 「帝國にそれが無いと申されるか」 「ならば帝國は何故にオスミナを、また南岸諸国に攻め入るか」 ヒルデガルドは続ける。 「失礼ながら、王妃殿下は敗戦の虜でなかろうか。その虜の身を、盛り立てるはオスミナにゴーラの義あるゆえ。そのオスミナを誤った方へ導く事、座視できぬ」 「いろいろと耳が痛い」 だがここに交わされている言葉は、互いを探るものでしかない。 「帝國にも多くの民があり、それらを一人一人を、人と認めてある。だがゴーラと帝國とは互いを認めえぬようだ」 そしてオフィーリアは帝國の勝利を一つも疑っていない。 「では、我らに戦いあるのみか」 「そのようだな」 それが言葉の終わりだった。ヒルデガルド大公姫は、乗機へ乗りこみ、姿を消す。 その機の魔道の双眸に光を宿すと、振り返り、河より退いて行った。
https://w.atwiki.jp/legacy75/pages/14.html
フィーリア連邦共和国は箱庭海東部、現ノースフィーリア連邦の北西に存在した島国。 地理 フィーリアは大小数十の島からなり、一番大きなウィング本島はだいたい翼のような形をしている。 中央には山脈があり、それを囲むように学園都市が点在する。 北東部にある火炎山(2980m)は島内最高峰であり、もとは島であったが地殻変動と埋め立てにより陸続きとなった。 また火炎山には国内最大の採掘場があり、工業地帯が隣接している。 南部には広大な農業地域が存在する。また西部にも精密機器を扱う工業地域が広がっている。 北部には首都があり、それを取り囲むように商業地域がある。 また近年は居住区の整備など、島面積を増やさない事業が進められていた。 特産物は火炎米(赤米。普通の米よりさっぱりしている)、フレイヤ(赤い果物。洋梨のような甘さで、栄養価が高い)、火炎地鶏。 歴史 フィーリア本島の原型は数万年前、かつての箱庭大陸が沈没し、箱庭海の誕生と共に出来たとされる。 蒼炎王国 約三百四十年前に発見され王制国家、“蒼炎国”が誕生した。 王朝は独自開発を基本とし、末期は国交で栄えた。しかし、特権階級による専制政治により国が混乱。 さらには武官たちの反乱により王国は終焉を迎えた。 大火炎帝国と弾圧 蒼炎王国に代わって“大火炎帝国”が誕生。富国挙兵が推し進められ、列強国にならって立憲君主制が採用された。 議会が設立され、検閲を通され、国民は秘密警察により監視。 また、外交に対しても軍艦を使用した砲艦外交という形で近海では緊迫の雰囲気を漂わせていた。 春終革命と民主化 政府による強硬政治が十数年間続き、時の大統領であるA提督が主力艦隊及び傘下の部隊を蜂起させ、4.31事件(後の春終革命)を引き起こした。 数ヶ月の戦いの後、遂に帝国は倒れ、民主国家“火炎共和国”が誕生した。 数年後、国際化の波が押し寄せ、同国は火炎連邦共和国と改名し、後の瑞穂連邦である箱庭共和国連邦に加盟。 瑞穂連邦誕生と共にフィーリア連邦共和国と改名された。 フィーリア大災厄 石油危機時代、首都で大地震が発生。同時に地盤に異常が見られたが、政府は地震での被害状況確認を最優先した。 数日後、今度は島内全域で大規模な地殻変動が発生。民衆の脱出の暇もなく島は短時間に沈没し、フィーリア連邦は消滅した。
https://w.atwiki.jp/jojobr3rd/pages/170.html
細い肩をいからせ、魅力的な口唇を男神のようにぐっと引き結びながら、川べりをゆく女が一人。 女優ばりの力強く大きな瞳は、いま、激情に黒々と燃えていた。 彼女―空条徐倫は怒っていた。 殺し合いを命じ、惨劇を引き起こした名も知らぬ男に対して。 「あの男、絶対許さない……」 あのホールのような場所にどれほどの人がいたのだろう。 か弱い少女、幼い少年もいた。凶悪で卑劣そうな、刑務所内でよく見たような、顔をした筋骨隆々な男もいた。 その全員が、なんの事情も説明もなされぬまま、殺し合いを命じられたのだ。 逆らえば、死。逆らわなくても、死……。 なんて非人道的なんだろう。 ここに連れてこられた時点で、みんな被害者だ。 だけど、本当に許せないのはそこじゃない。 『首輪』が爆破され、殺されたのは父さんだった。 服装や顔つきにどことなく違和感を感じたが、見知らぬ男に殺されたのは、たしかにあたしの父さんだった!! F・Fが命をかけてくれたおかげで、父さんの記憶DISCが手に入ったのに、DISCを渡す前に父さんは敵の手に落ちたんだ。 あたしは、また、なにもできなかった。 うなだれた父さんの首が吹っ飛ぶサマを、アホ面で見てた。 無力な自分。三ヶ月前となにも変わっていない。 あの時、父は危険を冒してまであたしを助けに来た。グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所へ。 マヌケにもあたしがハメられなければ、父がDISCを奪われ、瀕死に陥ることはなかった。 やっと、わかりあうことができそうだったのに。 なのに……なのに……。 すべては無駄だった。 「あたしの本当の気持ち、ちゃんと伝えたかった……」 愛も哀しみも悔恨も、すべては怒りへと帰結する。 空条徐倫は怒っていた。 殺し合いを命じ、惨劇を引き起こした名も知らぬ男に対して。 なにもできなかった無力な自分に対して。 * * * ペット・ショップは笑っていた。 生物学上の分類に当てはめるなら彼は「ハヤブサ」という種に属しているが、 特別に彼は笑うほどの知性、他者を傷つける残忍な性格、そしてそれを可能にするだけの『力』を有していた。 ペット・ショップが、ただ命令を実行するだけの殺人機械だったならば、死体を弄ぶだろうか、獲物を追いつめることに悦びを感じるだろうか。 主の力量に恐怖し、付き従っていたわけではない。彼は生来そういう性格をしていたのだ。 彼は「殺りく追跡機械」であると同時に、それを楽しむ快楽殺人鬼の一面を持っていた。 思えば「館に近づくものを排除しろ」というかつての命令は、単調で暇な作業だった。 獲物はいつもやってくるわけではない。 たまの獲物も遊んでやるまでもなく、すべて一瞬で片が付いた。そうすると、また獲物を待つだけの長い時間が残される。 主の命令には背けないため、鳥の本能に従って気ままに飛び回ることもできなかった。 DIOに反逆しようとは思わない。だがあまりに暇な毎日だった。 そこへ飛び込んだ朗報。 本能のままに行動することが推奨されたこの状況。 目に入ったすべての生き物と遊んでやろう、と彼はほくそ笑む。ここはそれを認められた場所なのだ。 そして、彼は発見する。 川べり、奇しくもかつての命令で守っていた建物のすぐそばで、地図の確認をしているらしい女。 暗闇の中、ハンドライトの明かりは目印のように煌々と輝いていた。 夜盲症の俗称として『鳥目』という言葉があるが、鳥類の中で夜目が利かない種はごく一部でしかない。 もとより時速300kmをこえる降下時にも敵を見逃さないほどハヤブサの目はいいのである。 夜道で揺れ動く明かりは、なんの遮蔽物もない平原をのこのこ歩くネズミに等しく滑稽だった。 彼の口ばしの端が奇妙に歪む。 それは奇妙だが、彼なりの笑いだった。 * * * 「こ、これってツララ……!? なんで、空から!!?」 足下にぶっ刺さった氷柱を確認し、徐倫が驚きの声を上げる。 怪しい建物が近くなったところで、現在地を確認するため地図を開いていたのだが、それが無惨にも地面に縫い止められている。 極太でいて、先端が鋭利なそれは死人に打ち付ける杭を想起させた。 「ウェザーが近くにいるってわけじゃあなさそうね」 天候を操り、大規模な災害まで引き起こせるウェザーならば雹を降らすことも可能だろう。ヤドクガエルでさえ降らせてしまうのだから。 彼が自分の存在を知らせるために雨を降らせることは考えられる。 だが氷柱が突き刺さったのは、あくまで徐倫が座っていた半径1mほどの範囲まで。 これはあまりに悪意に満ちていた。 徐倫が空に目を凝らす。 なにかが夜空を旋回しているように思えるが、あまりに遠く、暗い。 さらに目を凝らす。 旋回するものは鳥のように思えた。それが、ホバリングをするかのように一瞬動きを止める。 鳥?の周囲に針のような煌きが現れるも、それがなにかを確認する時間はない。 ほとんど時間差もなく先ほどより大量の氷柱が降り注いでいた。 「空を飛べるスタンドなのか、あいつ自身がスタンド使いなのかわからないけど、あいつはあたしを上空から攻撃している!! あいつは、このふざけた『ゲーム』に乗っている!!」 徐倫の胸にフツフツと怒りが再燃する。 殺し合いを命じたふざけた老人。 殺し合いに乗ったふざけた参加者。 父さんは殺されたけれど、あたしがその意志を引き継いでみせる。 父さんが裁くはずだった『悪』を、あたしが裁く!! 「でも」 勇ましい決意を胸に徐倫はデイパックを拾い上げる。 建物の方へと向き直り、彼女がとったポーズはジョースター家伝統の戦闘スタイルを模したそれだった。 「いまは…逃げる!!」 遙か空中から自在に氷柱を発射することができるペット・ショップに対して、徐倫は地を這うことしかできない。 これほど射程距離に差がある状態で、まともな戦いなどできるはずがなかった。 逃げることは敗北ではなく、次の一手への布石。 ジョースター家の不屈の精神をあらわすものにほかならない。 グゲゲゲゲゲッ―笑い声のように聞こえる鳴き声をあげ、ペット・ショップがそれを追った。 鳥より早く走れる人間がいるはずがない。 あっという間に追いつき、行く手を阻むかのように氷柱を打ち込む。 女は器用にもすべてを回避した。 一発目をしくじったことから相手がただ者ではないことはペット・ショップも感づいていた。 角度を変え、試すように氷ミサイルを発射する。 やはり避ける。 速度に緩急をつけ打ち込む。 しなやかな動きですべて避けられた。 苦々しい思いが胸中に渦巻くが、すぐに気を取り直す。 あの女は気付いていないだろう。 氷柱を避けるため建物から遠ざかり、川の方へ川の方へと誘導されていることに。 グガガガガガッ バシャン、と音をたて水面が乱れる。 ついに氷柱は川面を捕らえた。 建物はすでに遠く、近くに人影もない。 舌打ちとともに徐倫の足が止まった。 ペット・ショップが高度を下げ、至近距離から徐倫に氷柱が発射される。 四方八方へ。反撃を許さないばかりでなく、確実に殺そうという意志のこもった攻撃。 対する徐倫も『ストーン・フリー』を表出させ氷柱を打ち落とす。 たっぷり3歩分飛び退いてほとんどをかわし、2本をスタンドではたき落とし、1本を足で蹴り落とす。 すさまじい量の氷柱が散乱したが、徐倫に致命傷はなかった。 さらにペット・ショップが高度を下げる。 全方向から迫った氷ミサイル。 飛び退こうとした徐倫の瞳が驚愕の色に染まる。 彼女の足下は凍り付いていた。 川面に落ちた氷柱が流れていかなかった時点で、彼女は違和感を感じるべきだった。 足下からの攻撃は始まっていたのだ。 ペット・ショップが狙っていたのはこれだった。 ある程度水面まで近付かなければ水面を凍らせることはできない。 高度を下げたのは、穴のないミサイル攻撃を放つためでもあり、敵の逃亡を不可能にするためでもあった。 焦る内心を隠すように、徐倫が両手の中指を立て笑みを浮かべる。 ―くたばりやがれ― そして始まった更なる猛攻。 密度を増し、繰り出される氷柱。足下から迫る氷の浸食。 徐々に明らかになっていくのは、動けない徐倫の劣性。 氷ミサイルが玉の肌を傷つけ、その傷口さえも凍りついてゆく。 跳ねた水がかかった部分も凍り、動かせる部位の方が少なくなり、徐倫にできることは、苦し紛れに氷柱を投げ返すことのみ……。 否 この状況で徐倫は笑っていた。 「あたしの近くまで降りてきたのがあんたの敗因よ、鳥公」 ハッタリともつかぬ勝利宣言にペット・ショップの顔が歪む。 腹部までが凍らされた状態で、この余裕の笑みはいったい? なぜこのタイミングで? 「あたしのスタンドが、この氷柱を投げ返すくらいしか能がないと思ってた? むしろ追いつめられてたのはあんたの方!!」 ハッとなにかを察知したペット・ショップが距離を取ろうと、彼だけの絶対の領域、空中へと飛び立つ。いや、飛び立てない。 翼が、頭が、くちばしが、なにかに絡まりほどけない。 空中に張り巡らされていたのは、糸の結界。 ペット・ショップはいつの間にか全身を糸で絡めとられていたのだ。 よくよく見れば、女の体はスカスカの糸巻きのような状態になっている。 外面が氷でコーティングされていたために、ペット・ショップは気付けなかった!! さながら蜘蛛の巣に絡め取られた蝶のように、ペット・ショップがもがき、羽をかきむしる。 何本化の糸が切れ、徐倫の身体に赤い筋を残したが、ペット・ショップが置かれた状況は変わらなかった。 キィイイイィィィイイイ くちばしから漏れる鳴き声は、ペット・ショップの怒りそのもの。 彼が初めて見せた怒りの感情だった。 「『相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している』 誰の言葉だったかしら」 徐倫が自らの右手を左手に打ち付ける。パン、と小気味のいい音が響いた。 右拳は先ほどの攻撃で半ば氷塊となっていたのだ。 「氷って思っていた以上に硬いものね 推理小説の消えた凶器のトリックなんかでよく使われるわけだわ あんたはよく知っちゃあいるけど、喰らったこと、なかったでしょう?」 オラァッ!! 最も威力の高まる距離に引き寄せられたペット・ショップに、渾身の右ストレートが炸裂する。 糸で縛られたペット・ショップはサンドバッグとなるしかなかった。 何本かの骨が折れたような鈍い音が響き、羽毛が舞う。 さらにもう一発。徐倫が振りかぶる。 強烈な一撃に、ペット・ショップは『吹っ飛んでいった』。 「………………?」 『ストーン・フリー』の結界が霧散していたために、ペット・ショップは吹っ飛んでいったのだ。 ならば、なぜ『ストーン・フリー』が形を失ったのか。 空条徐倫がゆっくりと、振り返る。 その胸に開いた、拳大の穴。 正確に背中から胸を突き抜けていた。 隙間だらけの身体を撃ち抜いたものは、鉛玉でも、氷柱でもなかった。 背後の存在を認め、徐倫の表情が歪む。 泣いているような、笑っているような表情をしていた。 「えふ………、え、ふ………?」 「先ほどの鳥がやっていたのを真似て発射したF・F弾だ なぜおまえがわたしの名前を知っているのかはわからないが」 空条徐倫の背後、川面から上半身を覗かせていたのは、『F・F』そのスタンドヴィジョンともいえる、真の本体だった。 F・Fは湿地帯でDISCを守っていた。 自分自身の存在のため、戦っていた。 エートロという女囚の身体を借りて、F・Fはよみがえった。 笑いあいながら過ごした日々。数々の戦い。 そして、ホワイトスネイクの急襲を受け、F・Fは、死んだ。 死んだはずだった。 なぜ? どうして? 世界は暗転し、常識も、過去も未来も消え去る。残ったものは疑問のみ。走馬燈のように駆け抜ける。 空条徐倫の口が、疑問を発することはない。 ペット・ショップとの死闘を演じた徐倫に、体内からのF・Fの侵食を阻止する力は、残っていなかった。 亡くなったはずの友と和解する術は、永遠に……。 * * * 考えるともなく、先ほどから、いや、何年も前から、考え続けていた。 それは流れ続ける川を考えることと、きっと似ていただろうと思われる。 この水は、水を構成するもっと細かい粒子はどこから来て、どこへ行き、なにになるのだろう。 わたし自身を考えることと、川を、水を、世界を考えることは、おそらく似ている。 もしも、わたしが死んだとしたら? 水面をなにかの植物が流されていくさまが見えた。 川は変わらず流れ続けるのだろう。世界も、変わらずにその営みを続けるのだろう。 ひとつだけ確かなことは、わたしが死んだとしたら、わたしの見ている世界は失われるということだ。 わたしが死に、水が死ぬ、川が死ぬ、世界が死ぬ。 フー・ファイターズが恐れていたこと、それは自分を自分たらしめる「知性」と「記憶」が失われることだった。 自分を創ってくれた存在を守ることは、自分自身の存在を守ることだと信じ、何年もグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所でDISCを守っていた。 殺し合いを命じられ、自分が守っていたはずのDISCが消失し、覚えた感情は「戸惑い」、そして「恐怖」だった。 DISCの消失はなにを意味するのだろう? 見知らぬ場所に連れてこられたことはなにを意味するのだろう? フー・ファイターズは悩み、結論を出した。 誰かが望んだのだ。 自分自身であり、同胞のような気さえしていたDISCが消滅することを。 そして、「知性」と「記憶」の宿ったフー・ファイターズがこの世から消え去ることを。 自分には『それ』しかないのに、それすらも奪われようとしている。 悲しみとも怒りともつかない感情がわきあがった。 水面をぼんやりと眺めるように靄がかかった生活は、その瞬間に終わりを告げた。 プランクトンの集合体である自分がどのような状態で、『ゲーム』の始まりを見ていたのか、定かではない。 けれど、わたしは疑いなくあの場に居合わせ、老人の演説をきき、三人の人間の首が飛ぶ様子を見た。 そして今ここにいる。誰の配慮かはわからないが、川底にわたしは存在している。 にわかにはっきりとした意識が首のあたりの違和感を伝えた。 そこには『首輪』と称されたものがはめられている。 (わたしに対し、これが抑止力になるとでも思っているのか?) 水さえあればフー・ファイターズはどこまでも広がっていくことができた。 容器から溢れた水を留めておけないように、川の中にいるかぎり、フー・ファイターズはどのような形状にも変化できる。 首輪から頭をはずしてしまうことなど造作もなく、たとえ爆発したとしても、身体が大きく広がっていればすべてのフー・ファイターズが消滅することはない。 『首輪をはずそうとした場合に、爆発のみが起こるのならば』 そう、懸念事項があるとすればそれだった。 この身体がある程度の集合体だったとはいえ、首輪をつけたものはフー・ファイターズの特性を知っている。知っているはずなのだ。 分裂も増殖も可能なプランクトンに、わざわざ首輪をはめるだろうか。 本当に首輪が枷となることを望むのならば、必ずフー・ファイターズの弱点をついてくるだろう。 たとえば、いくら増殖できても、完全に無に消え去ることは不可能だとか、意識の中心が必ずどこかに存在するといったフー・ファイターズの弱点を。 増殖によって首輪をはずそうとしたとする。 その瞬間に電流が流れる。それだけですべてのフー・ファイターズが死滅する。 考えられることだ。 それより恐ろしいこともある。 もしも、もしも、首輪をはずそうとした瞬間に、自らのDISCが飛び出てしまうような構造になっていたとしたら……。 爆発など起きなくとも、電流など流れなくともフー・ファイターズは死ぬ。 この川底で、あっけなく。 それだけは耐えられなかった。 わたしは、存在していたい……。 切なる願いを抱いた生物の頭上に、氷柱は音を立てて舞い降りてきた。 まるで、神の啓示のように。 * * * 「思い出」がその胸にあったのならば、その生物は、自身が生き残ること以上の価値をなにかに見出せたのだろうか。 いまだなにも知らぬフー・ファイターズは、自らの存在を守るため、敵を撃ち殺す。 敵だと認識した彼女が、将来、自身が命をかけて力になりたいと思える女性だと、教えてくれる人間はいなかった。 死んだ彼女の肉体をおいて、他には。 見覚えのある農場。 見覚えのあるDISC。 女と対峙した、奇怪な生物。 「これは………、わたし…………?」 【空条徐倫 死亡】 【残り 142人】 【C-3 DIOの館周辺/一日目 深夜】 【ペット・ショップ】 [スタンド]:『ホルス神』 [時間軸]:本編で登場する前 [状態]:何箇所か骨折(詳細は不明)、即座には動けない状態 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況]基本行動方針:サーチ&デストロイ 1.怪我の状態を確認 2.自分を痛めつけた女(空条徐倫)に復讐 3.DIOとその側近以外の参加者を襲う 【C-3 サンタンジェロ橋の下の川の中/一日目 深夜】 【F・F】 [スタンド]:『フー・ファイターズ』 [時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前 [状態]:健康、空条徐倫の『記憶』に混乱 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(未確認)(F・Fの近くの川べりに落ちています) [思考・状況]基本行動方針:存在していたい 1.なぜ、この女の記憶の中に自分がいる? 2.自分の存在のため、敵を殺すしかない 3.消失したはずのDISCがあったら守りたい ※「2.3」も思考にはありますが、「1」の衝撃が大きく呆然としている状況です 【備考】 ※F・Fの首輪に関する考察は、あくまでF・Fの想像であり確証があるものではありません ※空条徐倫の死体はF・Fと共に川の中に沈んでいます ※空条徐倫の支給品(基本支給品、ランダム支給品1~2(空条徐倫は確認済))は同じく川の中に沈んでいます ※空条徐倫の参戦時期は、ミューミュー戦前でした ※ペット・ショップの支給品はF・Fの支給品の近くに落ちています 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 前話 登場キャラクター 次話 GAME START ペット・ショップ 061 アルトリアに花束を GAME START 空条徐倫 GAME OVER GAME START F・F 055 人魚姫
https://w.atwiki.jp/legacy75/pages/11.html
ノースフィーリア連邦共和国は箱庭海北東海域に存在する海洋国家。 概要 歴史飛龍連邦以前 アヌビアス連合 大規模革命と八月戦争 ツキガミ連邦 ノースフィーリア連邦 地理 政治行政機関 地方行政区分アルティア セントラル サウスアーリス ニューフォーリア ロスフェアリス アルヴィス諸島 フォーレスト諸島 ノルヴェア諸島 ボリディナ諸島 主な都市 主な政策 経済概要 代表的企業飛龍重工業 ウィニング 箱庭東方通信 文化教育 民族 言語 宗教国民の祝日 スポーツ 食文化 交通 軍事 概要 正式国名 ノースフィーリア連邦共和国 公用語 和語、英語 連邦大統領 ギルフォード・S・ラファール 首都 セルレイ 面積 317.35平方km(T11180現在) 人口 1億2546万人(T12773現在) 公式略称 フィーリア、北翼、飛 英語国名 The Federal States of North Feelia 通貨 ガルス(Gs) 国歌 大翼よ 国鳥 ツバメ 国花 アスター 国樹 メタセコイア 主要宗教 大聖翼神教(フィーラ神教) 主要民族 フィーラ人、和人、セルド人 政治体制 連邦共和制 政治志向 民主主義・研究志向 独立 T9218 建国 T10150 中心のノースフィーリア列島をはじめとする無数の諸島郡を領土とする多民族の連邦国家である。周辺の海は通称フィーラ海域と呼ばれている。 箱庭大戦以降、経済発展が著しく、近年では宇宙産業にまで着手するようになった。 国名は古代フィーラ語で「北の翼」という意味を持ち、また周辺海域に伝わるフィーラ神話に登場する神の名というのが有力。国旗の翼はそれを模していると言われる。 最近では和語を中心とする文化が浸透しつつある。 歴史 ノースフィーリア連邦以前の政治は非常に不安定であり、政争や軍事クーデターなどにより幾度となく血が流れてきた。 また、飛龍連邦時代では中華風、アヌビアス連合王国時代では欧風、ツキガミ・キリシマ連邦では和風文化と時代ごとに異なる文化が発達している。 飛龍連邦以前 飛龍列島はフィーラ海域の発見とほぼ同時期に大陸の開拓者によって発見されたと当時の歴史書に記されているという。 戦国時代にはすでに「飛流国」という独立国家となっていたとされ、ウィング列島(現ロスフェアリス)で蒼炎王国が誕生すると、一時的な対立はあったものの、ある程度の友好関係を保っていた。 百数十年前、蒼炎王国が倒れ、後に建国された大火炎帝国は領有を主張し、飛流国を占領。ワイバーン空軍基地を設置した。 また、当時は「飛流」と呼ばれていたが、時代の経過とともに「飛龍」となったとされている。 フィーリア大災厄時には臨時政府が成立し難民を受け入れた。飛龍臨時政府は飛龍共和国の建国を望んだが、ツガル・懐郷代表によって先にニューフォーリア共和国が誕生すると、 殆どの住民が温暖なニューフォーリアへ移り住み、島内は要塞化が図られた。第二次箱庭大戦時には島のほとんどの航空部隊が基地から飛び立ったが、帰ってこれたのはほんの一握りであった。 またこのとき、ニューフォーリアも攻撃を受け壊滅し、多数の難民が再び押し寄せた。半年後、外交次官を務めたファーガス大統領の手によってレガシー共和国が建国。 後にレガシー連邦共和国の内政が安定すると、ファーガス大統領の後継であるR.リュンシン大統領が大規模な国内改革を施行。飛龍社会主義連邦へと改称した。 前大戦の教訓から、再軍備は早期に行われたが、初期武装のほとんどは旧社会主義陣営からの輸入品であった。 アヌビアス連合 相次ぐ公務員の汚職と物価上昇、それに伴う国内恐慌により、中央の尊王派の指揮官達が武装蜂起。 わずか半日で首都は占拠され、反対派の議員らは拘束された。約百数十年ぶりにフィーラ海域で王政復古がなされ、国名をアヌビアス連合に改名された。 皇室には火炎帝政時代の王の子孫であるヴァリアント家が招かれ、専制的な王政が布かれた。 王朝は資本主義政策を推し進め、国民一人当たりの所得向上を実現し、国民から支持を集めたが、その一方で政治的特権階級が復活。 また、王朝は全国に秘密警察を配備して、宗教活動や共産主義運動、自由民主化運動などを反政府思想として厳しく取り締まり、時として超法的措置もとられたため、 結果として、再び民主化の波が押し寄せた。 大規模革命と八月戦争 「民族・宗教・価値観が違えども、平和で安定した生活」を掲げた武装集団「フィーリア自由解放戦線」や反王政派の軍閥などにつられて民衆が暴徒と化し、首都警備隊を破って官庁街に進攻。 後に七・七革命と称される大規模反乱が勃発した。結果、政府首脳陣は指導者であるヴィリアス皇を連れて近隣諸国へ亡命し、一時無政府状態となった。 その数日後、武装グループによって開放された政治犯や知識人たちによって新たに新政府が発足し、国名をツキガミ連邦と改称。 また、独裁政治を強いた王家は排斥され、次期国皇には日系三世の斉天皇が即位し、宮廷も和風に改装された。 一方の亡命政府はヴィリアス皇をたててアルヴィス皇国を建国するも、ツキガミ連邦軍の大規模侵攻(八月戦争)により滅亡した。 ツキガミ連邦 七・七革命、八月戦争を経て誕生したツキガミ連邦はすぐに特権階級を廃止し、人権問題を中心としたさまざまな政策を進めた。 また、軌道エレベーターの建設に着手するなど、海外からも注目される存在となっていた。 しかし、世界同時不況の煽りを受けて財政が崩壊し、国内経済が混乱。 銀行は軒並み倒産し、街には失業者があふれる事態に至った。 衆議院選挙により、最大勢力である“自由改革党”に政権移行し、政界再編の名目で「キリシマ連邦」と改名されたものの、依然として雇用問題は残った。 ノースフィーリア連邦 政治家による金権政治と社会事業の無駄遣いによる上限無しの増税により、住民の不満は頂点に達していた。また、経済政策の失敗によって更なる失業者の増加を招いた。 その結果、選挙において与党の自由改革党は惨敗。野党による政権交代が行われた。これに対して与党は選挙のやり直しを求め、議事堂へ立てこもったが結局失敗に終わり、自由改革党は解党した。 与党となった共和党は政治大改革を実施。新たに発足された連邦議会で皇室の廃止を決定し、立憲君主制から大統領制に移行した。 移行直後は過激派団体などの残党勢力によるテロが相次いだが、治安の安定などにより現在は沈静化している。 飛龍連邦以前の歴史はフィーラ海域の歴史も参照されたし。 地理 元はワイバーン諸島(和称:飛龍列島)であったが、暫定政府の成立に伴いノースフィーリア列島と改称された。 ノースフィーリア列島は中央のオルタ島をはじめ、アルティア島、ガリア島ほか大小合わせて十数の島々から構成されている。 戦略拠点であったため、島の防御力は高く、都市部には無数の地下壕が設けられている。 アルティア東部からガリア南東部にかけては北方から流れる寒流に近く、冬場の平均気温が-10度以下になるところも少なくない。 北部のアルティアは西方からの暖流の影響で耕作が盛んである。アルティア近海には潮目があり、好漁場となっている。 連邦の最高峰はガリア島の新羅岳(3520m)であり、莫大な量の資源が眠っているとされているが、 火山性ガスの影響で鉱石の産出量は少ない。 近年ではガリアからの工業排水による環境悪化が懸念されている。 第二次箱庭大戦終結後、占領されていたニューフォーリア島はDASFの解散とともに返還。 大災厄で陸の大半が水没した旧フィーリア列島の残骸であるロスフェアリス諸島や八月戦争の主戦場となったアルヴィス諸島も連邦に属する。 政治 ノースフィーリア連邦は大統領制である。直接選挙で選ばれる大統領(任期5年)は国家元首であり行政の長であるとともに各軍の最高指揮官でもある。 議会は両院制を採用し、上院の元老院(定員182名、任期6年、3年ごとに半数を改選)と下院の衆議院(定員298名、直接選挙)がある。 優先権は衆議院にあり、元老院は諮問機関としての色彩が強い。 以前から軍事クーデターやそれら伴う国名の改称が多く、"箱庭一名前の多い国"と呼ばれさえした。 現在は治安が安定し、国民の生活水準も高い。 行政機関 地方行政区分 アルティア セントラル サウスアーリス ニューフォーリア ロスフェアリス アルヴィス諸島 フォーレスト諸島 ノルヴェア諸島 ボリディナ諸島 主な都市 主な政策 年金および国民保険の給付金増額 小学校、中学校の義務教育化と公立高校の無料化。私学の補助金増額 高速道路のETC全面導入。ETC未装着車は自動車税up 住民税の割り増し、その他... 経済 概要 基幹産業は、自動車・船舶・航空機・鉄鋼・化学・機械などの重化学工業であり、国内外の評価は上々である。 また、造船・航空機、電子部品製造・軍需大手の飛龍グループやウィニングなどは、世界規模で活躍する企業として知られている。 商業需要が急速に伸び、都市部では高層ビルの建築ラッシュが続いている。最近では技術力の発達により空中都市も建造され、話題を集めている。 海域資源が豊富で、資源自給率は高く、それに伴う重化学工業も盛んである。 国内には原子力発電所があり、国内の電力供給量の大半を占めているが、海外の原発事故の影響で脱原発が求められている。 近年ではアルティアに大規模太陽光発電所が建設され、環境への配慮も注目されている。 また離島にも風力発電所と太陽光発電所、波力発電所が設けられてる。 代表的企業 飛龍重工業 飛龍グループの一社で社名の通り重工業を中核とした企業。近年は家電事業も手がけているが、 造船や兵器の生産を担っていることから軍需産業としての顔の方が有名。 ウィニング 独自のOSである「Mega Sphere」を制作しているIT企業。 ソフトウェアはもちろん、稀にハードウェアも手掛ける。 箱庭東方通信 新聞からテレビ、ネット放送などを手がけるメディア業界の最大手。 民間運営だが公共放送として指定されており、また一般報道機関としてだけでなく通信社としても活動している。 文化 報道機関が充実しており、常時政治の動きを監視している。 各局とも事件に関する報道にも熱心で、個人のプライバシーの侵害などが問題となっている。 特に下総時事通信社に次ぐ報道機関、箱庭東方通信はニュース専用のチャンネルを設けており、24時間、国内での動物救助から大陸での国際紛争、さらには宇宙開発まで様々なことを報じている。 現在、大陸の影響を受けた国内アニメ・マンガ業界は最高潮に達しており、俗にオタクと呼ばれる人々の割合が急増しているという。 海外からの交流も盛んで、世界的歌手やオーケストラ楽団が毎週のように公演を開いている。そのため音楽業界の活動も活発だが、著作権を無視した不正ダウンロードが後を絶たない。 全体的に和系文化が浸透している。 教育 教育水準は高く、9年間の義務教育、そして3年、4年の高等教育が存在する。 多くの児童は初等、中等の義務教育後も3年の高等教育を受ける。またその後、最高教育である大学へ進む児童も多い。 民族 ノースフィーリア連邦の人口の大半は大陸からの開拓者(主に和人やセルド人)の子孫や原住民と移民者の混血種であるフィーラ人、セルド人を主とする大陸民族などで構成される。 貿易国であったため、古代から様々な人種、民族が移住している。道徳教育制度と法の整備もあり、差別意識は減少しているものの、一部では未だに民族差別が行われているという。 また、和系フィーラ人などは和語の姓をミドルネームとして残す人が多い。 フィーラ人・・・57%和系フィーラ人・・・45% 大陸系フィーラ人・・・40% その他・・・15% 和人・・・22% セルド人・・・8% 下総・愁華人・・・1% 野々村人・・・2% その他・・・10% 言語 初期に伝わった和語、国際化の波で伝わった英語が主だが、古代から伝わるフィーラ語やセルド人が伝えたセルド語などがある。 学校などでは和語、英語共に初等教育で学ぶが、割合的には和語のほうが学習量が多い。 フィーラ語やセルド語は代々家庭からや学校では総合学習、歴史の時間に習う程度である。 宗教 原則として宗教の自由が認められている。 代表的宗教はフィーラ神話を基に、大陸の宗教などが独自に混ざり合った大聖翼神教。 古くからフィーラ海に伝わる宗教であり、国民の4割強が信仰している。 国民の祝日 1/1 元旦 新年を祝う日 2/13 独立記念日 独立宣言を採択した日 4/31 自由記念日 前フィーリア連邦で春終革命が行われた日 5/3 文化の日 共和国憲法が公布された日 5/4 特別記念日 国民の休日 7/7 革命記念日 七・七革命が行われた日 7/21 青の日 開拓者がフィーラ海域を発見したとされる日 7/30 平和記念日 第二次箱庭大戦終戦日 9/12 復興記念日 戦後復興を遂げ、近代化を祝う日 9/15 敬老の日 老人の長寿を祝う日 10/10 体育の日 初めて国際陸上競技大会が行われた日 11/3 憲法記念日 共和国憲法が施行された日 11/23 労働記念日 収穫祭が行われる日 12/31 祝杯の日 一年の終わりを飾る日 ※このほか、ニューフォーリアでは返還記念日(6/10)、ロスフェアリスでは災厄復興記念日(11/1)、アルヴィス諸島では夏終記念日(8/31)としてそれぞれ休日となっている。 スポーツ 特に国技といったものは無く、野球やサッカー、ゴルフなどが人気である。 食文化 祝い事等に作られる伝統的な郷土料理は干物や発酵食品などの保存食が多く、特に魚介類を使った料理が多い。離島にはマグロの丸焼きや極辛の火炎鍋など独創的なものがあるところも。 近年は欧米的な食文化が普及しているが、健康ブームの影響で郷土料理が見直されてきた。 また、フィーリアの固有種であった「火炎米」をさらに改良した「飛龍米」で造った酒は東海域一の美酒とされ、固有種の果物「フレイヤ」は名産物とされ珍重されている。 交通 原油高が進行する中、生産国でありまた治安の安定している国内で高度な石油精製が可能なことから目立った値上げの動きはなく、そのため比較的安価なガソリンを使用した自動車が主要な陸上交通となっている。 近年では環境保護の観点からハイブリットカーや電気自動車などの開発が進んでいるが、高価格ということもあり環境保護をアピールする環境省など行政または高所得者の一部が保有しているに過ぎない。 またこの分野では先述したとおりガソリンが安価ということもあり、諸外国のそれと比較して研究は若干立ち後れている。 公共交通においては都市圏では戦中の地下壕がそのまま残っており、地下鉄なども含めた鉄道網が文字通り網目状に広がっている。 都市部での自動車所有者は住宅事情、特に駐車場事情などもあり比較的普及率は低い。 郊外での鉄道は主に中長距離運行が行われ、そういった地域の住民の多くは私物または公共の自動車を利用している。 高速鉄道は存在するが、遠距離移動には航空機の方がよく使われている。 軍事 フィーリア軍は陸軍、海軍、空軍、国境警備隊の四つから成る。全軍の最高指揮官は大統領。 多くの技術者を広範囲に派遣しているため、兵器類には大陸の技術がふんだんに導入されている。 また、核武装していることでも知られる。 海軍の力が非常に強く、空軍は多数の航空機を所持しており、最新型は海軍航空隊との共用も可能である。 陸軍の戦力は弱く、本土防衛がやっとの状況。ただ最近は高機動陸戦兵器を配備したため、市街地戦では鉄壁の防御力を誇る。また地上のミサイル基地も陸軍の指揮下。 海域間中距離弾道ミサイルは常時発射可能となっている。 またそれらとは別に国境警備隊が組織されており、洋上プラットホームの警備や海難救助、怪獣討伐などを行っている。