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「(お願い、美影さんを探してきて!)」 望は町の中を駆けていた。何時もなら立ち寄る八百屋や魚屋を気にも留めず 精霊たちに頼み、美影を探し出すことを最優先に模索を開始する (もぅ望ってばせっかちねぇ) 「(そうしないといけないんだお願いダネフ!)」 (まっていなさいすぐ見つけてあげるわ!) ダネフとはダークネフティスのことである。女性のような口調だがこれはいわゆるオカマというヤツでありオネエ系なのだ。 ダネフが天空へ飛び去っていく最中、もう2つの声が望の心へと話しかけてくる (いかんな、俺も探してこようデミス、望を頼む。) (けっゲスのせいで面倒ごとってのが気に入らねぇ) 落ち着いた声の主はダークホルスドラゴン、デミスに似た性格で影が薄いのでと思い悩んでいる。 そして荒々しい声の主はダークアームドドラゴン、他のダークモンスターに比べて若くダーク・ボルテニスに似ていた 飛び去ったダークモンスターたちが町を見渡すのにそう時間はかからず、すぐにダークアームドドラゴンが 望の下に舞い降りて、公園の東側の自販機近くに行くように指示した。 (急げ望!やべーみたいだぞ) 「(急がないと!きっと・・・たぶんだけどイヤな予感がする!!)」 息を切らしながらやっとの思いで公園にたどり着く望。その目線の先にあるものは・・・!! 「お、遅かった・・・!!」 望が疲れでへたりこむ。間に合うように走ったつもりだが、後1歩遅かったようだ。 携帯の声を聞いた時に感じていた不安、レアハンターと戦う美影を 「ふんっザコめ」 特に心配せず望が心配していたのは、レアハンターのほうだった。声色が違う美影に違和感を感じ 美影ではなくもう一つの人格がレアハンターと戦っている。もう一つの人格は 闇のゲームの力を持っており、美影と比べて高いデュエルセンスの持ち主で かの初代デュエルキングの切り札にして、魔法使い族デッカー憧れの、だがトリッキーな動きに 挫折者が多いブラックマジシャンを使いこなすのだから レアハンター側の惨敗は必然的であり、運命でありアルカナハートもといアルカナフォースなのだ。 「あの、美影さん?」 「どうした望?」 「い、いえ無事で何よりですレアハンターのほうは・・・」 「やはりその手のか、ブリューナク狙いで襲ってきたようだが」 ノースウェムコとカオスソーサラーのソリッドビジョンが存在して、相手のフィールドのカードがゼロ。 手札は残っているが彼女の伏せカードは神の宣告。どうやら相手は完膚無きまでに粉砕されてしまったようだ。 (おぉこれはこれはダムド殿とデミス王、お久しゅうございます。) (カオスソーサラー・・・また派手にやったようだな、無事で何よりだが) (これもウェムコ嬢のお力あってこそ、カオスの末席の私などに勿体無いお言葉でございます) (お久しぶりですデミス王それにダムド、これで末席なのですからカオスとはさぞ凄まじかったのでしょうね・・・) 精霊同士の会話からして、どうやらカオスソーサラーが無双したようで ノースウェムコの関心しているのか、呆れているのか分からないような表情に ダムドは過去に時代を支配し危うくデュエルモンスターの歴史を破壊しかけた カオスシリーズ、その一人が自分にこの態度な事にため息が出た (カオスを後継しうる力のある貴方がため息などと、何事が) (テメーのような強者がその態度、他のカオスとは何なんだと思ってな」 (あのお方たちはそれはもう) (いいよ、面倒だ) カオスソーサラーが残る二体のカオスについて、小1時間ほど賛美しようとしたのでダムドはそれを止めて 頭をかきながら、伸びているレアハンターに哀れみの目をやった。 どうやら切り札をソーサラーに全滅にされたのだろう、除外ゾーンに3枚ほどカードが埋まっている 「どうやらショックで伸びているようだな」 「そ、そうでしょうね」 闇の力の罰ゲームで気絶しているのだろうが、深くは追求せず合掌するだけに留めていた。 しばらくして福本がやってくると事態に驚いていたが 何事も無かったなら良かったと、レアハンターを運ぶために抱えていた 「最近のレアハンターは気が弱いのでしょうか?先ほども同じように伸びていましたね」 「(えっ・・・)」 「(ほう、闇のゲームの使い手か)」 美影のもう一つの人格、影美がこの話に眉を顰める。自分の与えた罰ゲームと同じ力の持ち主がいる しかも福本に負けたレアハンターがそれを受けていると言うことは レアハンターの中に口止め役がいて、それが罰ゲームを行えるかもしれないのだ。 「(考え物だな、ブリューナクを囮にしてもいいか?)」 「(いいけど・・・やりすぎちゃダメだよ?)」 「(分かった、気をつける)」 美影と影美が精神会話をしている間、望とデミスたちもまた精神で会話をして傍から見ると 上の空のような状態になっていた。福本はどうしたんだと首を傾げるばかりだが 精霊が見えなければ把握できないのでしょうがない。 「(まさかレアハンターに闇の力の持ち主が・・・)」 (潰すべきだな、サーチアンドデストロイだ) (落ち着けダムド、望の都合もあるだろう) 「(いや、僕は大丈夫・・・といいたいけど疲れちゃった。)」 望も食事の支度などもあり、そろそろ帰らなくてはいけないのだ レアハンターが気に入らないダムドはそれでも場所だけは探しに出たが。 後始末は福本に任せ、望は完全に真っ暗になる前に家に帰ろうと 公園を後にするのだった。それから少しして。 「ご馳走様ー」 望の住んでいる平屋、親から社会勉強の一環として与えられたこの家で 望は一人暮らしをしており、家事はもちろん買い物まで全部自分で行っている。 終園家は剛田家もといルプライエ家に勝るほどの家系、金銭面などではバックアップがあり チラシを気にする必要などはないのだが、しかし望としてはやるからにはと その手のチラシを見逃さず、中年女性に混ざって安売りの群となるなど逞しい一面がある。 「まさかメザシの安売りがあったなんて、予想外だったね」 (魚屋の親父殿は気前がいいからな。良くしなければな) 今日の晩御飯はめざしと野菜と鶏肉の煮付け、漬けておいた大根と胡瓜と油揚げの味噌汁。 これはデュアルアカデミア本校の成績不振生徒の集まりオシリスレッドの現和食メニューと似ているらしい デュアルアカデミア本校では、教員すら太刀打ちできないほど優秀だったが レッドに留まってのんびりとしていた、伝説のデュエリストがいたのでこのメニューはプロの卵などが そうなりたいと食べる事もあるらしい。しかしそのころのレッドのメニューはもっと品数が少なく その伝説のデュエリストと同じメニューというわけではないのだが。 「やっぱり急須買おうかなぁ」 壊れ使い物にならなくなってしまったティーポッドとの日々を思い返し 骨董屋にあったアンティークの急須を買うか、しかし使えれば同じ わざわざ高い急須を買うよりそれを生活費や強欲で謙虚な壺に回すべきではないか 上流階級と一般人とデュエリストの自分に囲まれ、ティーパックで緑茶を作りながら メモ帳に書いてある今月の出費と相談する望であった。 そんな悩みを抱える望がお茶を飲んでいると、玄関のほうからチャイムの音が鳴る。 「あれ、誰だろう?」 (私が見てこよう夜だし物騒だ) デミスが縁側をすり抜けて、外に様子を見てまた家の中に入ると 玄関前にいるのが双海だと伝える。もう7時だというのにどうしたのかと 望が不思議そうに玄関を開けると双海は何か急ぎ気味のようだった 「望大変だ!浴屋ばあちゃんに勝つとアイスか飲み物のタダ券もらえるって!!」 「えっ本当!?」 「急いで桶と着替え持って一緒に行こうぜ!!」 「分かった!あっデッキちょっと調整してくる!」 どうやらキャンペーンか何かで、銭湯のアイスか飲み物の引換券を貰えるらしく それを何かで知った双海が望を誘って銭湯に行こうというのだ。 一見すると望たち現役デュエリストに、発言からすると老婆が勝てるとは思えないが だがしかし世の中とは不思議なもので、デミスが子供たちがカモにされるな と心中で思うものの、止めても無駄かとあえて何も言わなかった。 「墓地のボルカニックバレットの効果発動、さて手札からボルカニックバレットを捨てて氷炎の双竜の効果発動じゃ」 「あぁフェニックス・ギア・フリード!」 というわけでやってきた銭湯なのだが、双海が追い詰められていた 「氷炎の双竜をリリースして氷帝メビウスを召還じゃ伏せカードは破壊してもらうぞい」 「げっこのパターン!」 「そしてワシはライフを払って異次元からの帰還を発動!ブリザードドラゴンとドラゴンアイスとフレムベルゲルニカが帰還じゃ」 「浴屋ばあちゃん強くなりすぎだって!」 浴屋姫、高齢ながら孫に影響されてデュエリストとなった老婆なのだが、物覚えがいいのか根性なのか 氷炎の双竜という、炎属性1体と水属性2体を墓地から除外して召還する特殊なドラゴンが切り札のデッキに 帰還ギミック、リクルーター戦法などの様々なパターンを組み込んだ複雑なデッキを使っている。 こうして一斉攻撃で双海は敗北してしまい、次は望の番だった。 「お願いしますお婆ちゃん」 「望ちゃんじゃないかえ、いやぁこのきゃんぺーんもやってみるもんじゃ」 ディスクは重く使わない浴屋はテーブルの上でのデュエルがメインであり、お互いのデッキをシャッフルして 5枚のカードを引くとデュエル開始の合図がなる。じゃんけんで先行を取った望はまず 「終末の騎士を召還!効果で墓地にネクロガードナーを送ります」 (よし最高のパターンだ望!) ぐっと親指を立てる終末の騎士、墓地を肥やした上にネクロガードナーで守りを固め さらに闇の幻影を伏せる。これにより双竜が効果を使っても防ぎさらに 都合がいいことにダークボルテニスが手札に存在する。これで迂闊に除去を使えば そのカードを無効にされて2800の大型モンスターがカードを1枚破壊しながら現れるのだ。 「む・・・とりあえず未来融合を発動じゃな」 「(来た、双竜の効果を無効にしてボルテニスだ!)」 指定したFGDにより、墓地に送られるブリザード・ドラゴン 氷炎の双竜 ドラゴン・アイス2体 ドラゴニック・ガード これにより一気に墓地が増えた浴屋は、氷炎の双竜で効果発動後に直接攻撃を仕掛ける そう踏んでいた望だが、次に出てきたカードにより予想は裏切られた。 「リチュア・ノエリアを召還じゃ」 「リチュア!?」 浴屋の召還したカードはなんと、近神の使うリチュアシリーズを出したのだ。 そして墓地に落ちたのはリチュアの儀水鏡とイビリチュア・ガストクラーケ リチュア・エリアルが墓地に落ちた。これで浴屋の墓地は1ターンにして凄まじい数となり そのうえカードを墓地ではなく、デッキに戻す望の天敵とも言えるイビリチュアの1体が 墓地の儀水鏡で手札に確実に入ってしまう。計算を大きく狂わされた 「(ボルテニスがデッキに戻されたらやだな・・・)」 「手札の儀水鏡発動じゃ、炎帝テスタロスを捧げ降臨するはイビリチュアマインドオーガス!」 「マインドオーガス!?」 イビリチュアマインドオーガス、その効果は墓地のカードを5枚までバウンスするという特殊な物 最悪の事態であった。合計5枚までなので望の墓地のネクロガードナーだけが デッキにバウンスされた挙句、相手は大型モンスターが1体フィールドを残せるのだ 「ネクロガードナーが・・・」 「まだ終わらんよドラゴン・アイスとブリザードドラゴンとテスタロスを除外して氷炎の双竜を召還じゃ!」 唖然とするしかなかった。たった1ターンでイビリチュアの大型モンスターで守りの要ネクロガードナーを流し 切り札まで召還。あと数ターンすればFGDまで召還できるという。怒涛のラッシュを仕掛けてきたのだから だがFGDは所詮は墓地肥やしか、ほぼこの時点で敗北は決定していた 「ノエリア、氷炎の双竜、マインドオーガスの順番で攻撃するが、何かあるかえ?」 「手札から・・・といいたいですけど、バトルフェーダーはありませんありがとうございました」 まさかの後攻1ターンキルである。少々唖然とする望を尻目にリチュアビートになりかけていたので デッキのバランスをもう少し考えるかと腕組む浴屋であった。 「運が良かったようじゃな、望ちゃんのデッキは3ターン生かすと追いつけんよ」 「さっきのラッシュは凄かったですねリチュアはどうしたんです?」 「近神のお嬢ちゃんを見てのう、あのガストクラーケンとかいうのに高等儀式術が使いたいのが本音じゃがのう」 場合によってはガストクラーケやテスタロスを召還してバトルフェーダーを運任せだが落すなど 偶然にメタ的な動きが可能となったらしく。攻撃反応型の罠を少し増やすべきだったと思う望だった デッキを片付けていると、望むの前にもやもやとした何かが現れ形を成していく。それが形を成すとそこに立っていたのは 「(えっとリチュアのノエリアさんと・・・マインドオーガスさんそれとも)」 (この子はエリアルです。お初にお目にかかりますほら挨拶なさい) (な、なんだか怖い・・・) どうやら新しく参戦したリチュア・ノエリアとエリアルの精霊らしい。ガストクラーケはどうしたかというと 現実のダイオウイカと同じく人前に姿を現すのが苦手らしい、デッキボトムに眠っていた (こらっ失礼でしょう!) (だ、だってアイちゃんたちは、気のいいかわいい男の子だって・・・) 「(アハハ・・・(アイちゃん・・・ドラゴンアイスのことかな?))」 (すいません妹が失礼を・・・)」 「(えっ妹さんなの!?)」 (えぇ、私の妹分です) 「(あぁそういう・・・)」 本当の妹なら似てないにも程があると望は危なく声を出しかけた。それ以外にも態度 魅惑の女王に似て礼儀正しいという点でも驚いているのだが。最大の理由はというと 近神のノエリアとエリアルは高慢な態度で、エリアルはさらに無口で目つきが悪く、刺々しい物言いだからだった。 (はい、これからも・・・) (はい、これからも末永く愛を語り合いましょう海底の美しき真珠たちよ) 「(あっダークボルテニス!逃げて二人とも!)」 そしてお約束のようにダーク・ボルテニスが突然飛び出してきた。いきなりのことでノエリアは驚くだけだが エリアルに関してはピーッと泣きそうになりながら、ノエリアの影に隠れてしまった。 唐突に現れナンパされ、だいぶ困っているようだが救う神はやはりいた (あぁその潤んだ瞳、海原のように透き通った唇。雷をつかさどる私と貴方は海と空まさに運命の出会いと言えるのではないだろうか」 (あ、あのワタシク困りますわそんな・・・) (お姉ちゃんやっぱり怖い人だよ!誰か助けて~!) (天魔爆滅鳳凰大蛇捻り!!) そう、双海のフェニックス・ギア・フリードがいるのだ。突然の出来事にまたポカーンっとするノエリアだが フェニックス・ギア・フリードは世間で言うコブラツイストというやつを、無理やりダークボルテニスにかけて 動きを封じていた。さらにここにデミスまで加わって、この銭湯はカードの精霊がぶつかり合う 四角いジャングルへと変貌したのだ! (お客様の中にD・マグネンかマグネットウォリアー!それかマグネッツ兄弟はおらぬか!) 「(ちょっデミスどうするのさ!?)」 (飛翔の系譜である我らも出来るはずだ、完璧の帝王の奥義にして友情の証クロスボンバーが!) (悪逆非道の戦士超人を友情の力で打ち破り、宇宙の危機を救ったあの技ならばいかにヤツでも) 「(あぁ・・・もう何というか、とりあえずダークボルテニスをお願い)」 (あの、望君これは) 「(何時もの事なんですスイマセン・・・)」 何だ何だと集まった精霊の中に、運よくマグネットウォリアーとマグネンがいたもので デミスとP・ギア・フリードのクロスボンバーを食らって凄まじい悲鳴を上げるダーク・ボルテニスを 何時ものことだからと流して、望はノエリアたちとの挨拶を済ませていた。 「(これからよろしくお願いします。僕の仲間たちのことはデミスに聞けば詳しく分かるかと)」 (お婆さまがお世話になっているとお聞きします。これからもよろしくお願いします望君) (お姉ちゃん見て!あんなのデュエルでも滅多に見れないっ) (大変だわゴブリンの秘薬かご隠居の猛毒薬もってきて!) (猛毒薬はダメージのほうでいい?) (回復のほうですっ!急いでエリアル!) 美人って言うのは大変だな、と精霊たちのどんちゃん騒ぎを横目に望は着替えのために その場を後にした。ついでに四角いジャングルでは騒ぎが収まり どこからか来たセコンド・ゴブリンと、D・クロックンにより試合終了の合図が鳴り響き P・ギア・フリードとデミスが勝利宣言を受けていた。一度騒ぎが起こると精霊たちが集まるのが デュエリストがデュエルではなく骨休めに来る銭湯のいい所・・・なのかもしれない 「浴屋ばあちゃんってば強くなりすぎだよなぁ」 「まさかリチュアにまで手を伸ばすなんて・・・」 そういえば、浴屋さんには敵わないとか本気なんだか冗談だか分からない笑いを浮かべていたなと 近神の顔を思い浮かべながら、服を手早く棚にいれてタナの鍵を閉めて 双海と望はどうすれば勝てるか作戦会議をしながら風呂場へと向かっていく 流石に走り回る歳でもないが、子供の突撃がありえるので一応慎重に 「特殊召還封じに王宮の弾圧は?」 「ライフ5分の1は大きいなぁ・・・」 「だよなぁ・・・強いんだけどライフコストがなぁ」 それ以前に、自分たちの動きも妨害される可能性があるのでうまくは行かないのだ。 やはり攻撃反応型の罠、ミラーフォースや次元幽閉といった物がいいのだろうかと 石鹸を洗い流しタオルで髪をまとめながら、二人は湯船にちょんっと足を差し込んだ 「あ”ぁーっやっぱあっちぃ」 「けどこれぞ銭湯って感じだよね」 ふぅっと心地よさそうにする望が周りを見てみると、今日はちびっ子が多いことに気づく おばあちゃんがデュエルしたいから開いたようなキャンペーンに釣られて 皆来たんだなと微笑ましく見ていた。見覚えのある顔も多く常連客のデュエリストも多い 「今度こそ買ってタダ券ゲットするぞー」 「そうだね、けどその前にサイドデッキでデッキを改造しなきゃ」 男湯でこうしている間に、女湯では 「はぁ極楽ですわ~」 「このような大衆浴場というのもいいものですねクイーン」 「そうですわねウェムコ」 本来必要なさそうだがノースウェムコや魅惑の女王も湯船に浸かっていた。これは世間で言うサービスというヤツだろう サウナのほうにも 「ゴール、やはりサウナはいいものですね」 「そうだねヴァーキィ熱は私たち爬虫類に恵みを与え活気をくれる、そして君は幸せを私にくれた」 「あぁゴール、私たちいま幸せの中にいるのね」 「やーんもう二人ともアツアツで余計熱くなっちゃう!!」 レプティレス達がサウナで体温を上げていた。レプティレス・ヴァーキスとゴルゴーンの熱愛っぷりに 本来なら人は気づかない精霊の温度を感じサウナが実際よりほんの少しだけ熱くなっていた。 ゴルゴーンはいわゆる性格が宝塚というかなんと言うかなので、非常に凛々しくきれいな声音でイチャつく。 冷やかしているスキュラだが、犬タイプのスキュラである彼女には熱すぎるのは毒なのではないだろうか? 「はぁーごっくらくぅ~」 「(どうしてこうなった!どうしてこうなったぁっ!!)」 「あらどうしたの?のぼせたんじゃない?」 そして精霊のサービスシーンから、一般デュエリストに視線を戻すとセシリアが銭湯で冷や汗を流しているという謎な状況に追い込まれていた。 右には藤山、左には聖というまさに彼女にとって挟み撃ち。ここに辻がいた日にはヴィクトリードラゴンマッチキルであった。 なぜこんな事になっているかというと、藤山はこのキャンペーンでちびっ子のデュエリストレベルを見るために 聖は子供に加わっておばあちゃんとデュエルするためにだった。ついでに聖はエンシェントホーリーワイバーンで追い詰め オネストを使いガストクラーケごと圧殺しようとして、マジックシリンダーを撃たれるも盗賊の七つ道具でフィニッシュに持ち込んだ。 「最近の子供は資金面でも恵まれているわね、グリーンバブーンを使う子供がいたわ」 「えっマジ?このごろ再デビューした古参プロフェッサーの切り札だから高騰してたのに」 「ただ使い方が甘いようだったけど、カードプロフェッサーといえば黒山君がランクを上げたそうよ」 「あっこの前望から聞いたよ、なんか大喜びしてた」 「同じデミス使いとして、あの子も成長するといいのだけど」 「(あっよかった、弄られない!?)」 心底安心したようなセシリアだったが、災いとは安心した瞬間に突如として襲い掛かるのが世の運命 聖がそういえばと何かを思い出したように手を叩くと、タオルがずるりと湯船に落ちた。 「あっそうだセッシー、コスプレなんだけどフォーチューンレディとBMGどっちがいい?」 「ちょっハイレグか超ミニしかないの!?」 「サニーピクシーと霞の谷の祈祷師は無理があるんじゃないかなー」 「わざとでしょねぇ!XX-セイバーヒュンレイとかは無いの!?異次元の女戦士でもいいから!」 「先客がいるから無理だねー氷結界の舞姫とかも」 「センセはどうしたのよ!?」 「私はサイコヘルストランサーよ」 こ、こいつとギリギリと歯軋りをするセシリアだが、藤山は安全地帯にいるわけではない 時間で様々なコスプレをするらしく、彼女も魅惑の女王やカオスゴッデスのコスチュームを着るらしい 「色的にウインディーだね」 「勝手に決めるなー!?」 苦労人はどこまでも苦労人か、藤山に関しては露出の高い衣装なんて何時ものことで デュエルモンスターのカードのコスチュームで接客をするだけと考えており、ハンデなんて何も無いのだが セシリアはそんなわけにも行かず、何よりも選択肢があんまりにもあんまりなので 聖に対してヤメローと必死になって講義をしていた。 「あぁ、良かった来て・・・」 そしてこの巨乳艦隊に感動する少女が一人、石奈なのである。はたして彼女の将来はどっちだ 選択肢としてハーピィもあると言われグヌヌヌと動きを止めるセシリアと 何してんだかと関係なさげにしてるが、機械族に女性型は極端に少ないのも考え物だと レアメタルシリーズを思い出しため息をつく藤山。そのまま避難するように隣の少し深い湯船にむかった 「あら、藤山先生こんばんわ」 「あなたは確か・・・美影さんだったかしら?」 「えぇ、望たちとは知り合いです」 ここで混沌とした場から、一転して日常的な場に来た藤山は美影と遭遇する。どうやら彼女もタダ券目当てだったらしい ブラックマジックで伏せカードを全滅させ、ブラック・マジシャン・カオスソーサラーの連続攻撃が決まり見事勝利したようだ 「お店で聞いたけれど、ブリューナクはどうするの?」 「ブリューナクは強いから入れたいけど、危なっかしくて使い難いですね」 汎用シンクロであるブリューナク、パワーこそ後一歩だが肝心な部分は能力だった。一時期は クレインと早すぎた埋葬によるライフが許す限りドローコンボなども存在するほど 用途の広いカードだった。一部レアリティのものはレートが落ち着いて 盗難被害も少ないのだが美影が手にしてしまったのは、遊ぶには少々使い辛いカードだった 「売って安いブリューナクを買えばお釣りが来るわよ?」 「どーしようかなぁ、せっかく奢ってもらったカード売っちゃうのも薄情かなって」 藤山としてはカードへの危機管理を人情で犠牲にして、この子もダメなほうのデュエリストかと残念そうにするが それ以上は興味は無いので考えるのをやめて湯に浸かり、それきり黙ってしまった 「(収穫がないのが残念だけど、仕方が無いわね)」 小さくあくびをして、そのまま藤山は目を閉じ・・・軽く睡眠についた。銭湯ならば湯に落ちても 誰かが起してくれるだろう、ならば睡眠と入浴を同時に行ってしまえという 賢いのか賢くないのかよく分からない理由である。そしてそれを見る影が一つ 「おっぱい浮遊・・・こ、これが巨乳艦隊の実力なのねっ」 本当に石奈なのは将来は本当に心配である。そして場面は男湯・・・ではなく、先ほどの銭湯のリクライニングスペースを兼用する デュエルスペース。望と双海は牛乳を買ってここでデッキの調整に勤しんでいた 「フリーチェーンにしたいけど、手札がね・・・」 「除去しなくても、パワーは低くないんだし収縮とかは?」 「収縮かぁ」 双海は一気飲みだったが、望はちびちびとやりながら並べた速攻魔法、通常罠を吟味しつつ これだと言うカードを決めれずに悩んでいた。コンバットトリックを取るか戦闘なんてせずに吹き飛ばすか 闇霊術「欲」はなぜこんなに安定しないのかなど、並べたカードをこうでもないああでもないと 3枚手にとって見たり2枚だけ持ったりと悩んでいた。 「はぁヘイト・バスターが闇属性全部に使えたらいいのに」 「やっぱこれじゃねーかな?」 それかな、と双海が手にした望のサイドデッキのカードを受け取ると、デッキに投入して 1度シャッフルしたあと、5枚カードを引いてを数回繰り返し 満足そうにデッキをケースに戻した。はたして望が投入したカードとは何か? そのころ精霊たちは (お婆さまのほかにもリチュアを使うかたが?) (こちらでは貴女方よりも先に、近神というお方が) (そちらのノエリアさんやエリアルちゃんは、どちらかというとこう・・・) 雑談に興じていた。近神のノエリアやエリアルはイラストと違わぬ性格なせいか 浴屋のリチュアに魅惑の女王とノースウェムコが驚いたようにしていた。 ついでに3人を口説こうとした、ダーク・ボルテニスは今度はレプティレス・ゴルゴーンに 石化されていた。これで一安心だろうと、だいぶ気を抜いている精霊たちだが マジキャットを追いかけて遊んでいるエリアルが突如として、その終わりを告げようとしていた (猫ちゃんまてまて~!) (ぶにゃー!これだから子供は嫌いにゃー!近神んとこのエリアルのがマシにゃ~!!) 見た目相応に、マジキャットを追い回してじゃれてる2体なのだが突然エリアルがストップして 何かをポカーンっと見つめて突っ立ち、唐突な変化に何があったと 恐る恐るエリアルに近づいたマジキャットが、エリアルの目の前で杖をふりふりと振ってみた (おーいどうしたんだにゃー?) (あれ見て、あの人カード泥棒!) (にゃんだってー!?) この一言とマジキャットの絶叫に、精霊たちの間に衝撃が走る。カード泥棒というのは精霊にとって 人攫いにも等しい行為なのだ。誰が連れ去られたと、あたりは騒然となり銭湯の精霊としてドラゴン・アイスや 氷炎の双竜も動き出す。誰が連れて行かれたかまったくの謎で、エリアルだけが頼みの綱 エリアルを囲むように精霊たちが集まると、盗まれたカードが判明するそれは (あの人のブリューナク、あのブリューナクは別のブリューナクだよ) (なんてこった!精霊と喋れる客は誰だ!)(客に失礼じゃろう誰かおりませぬかというべきじゃ) 氷炎の双竜の氷の首がワァワァと騒ぎ、炎の首が落ち着いた感じに周りを見るが 都合の悪いことに精霊の見える客は望のみだった。見失うとカード奪還が絶望的なため ダークネフティスとダークアームドドラゴンが銭湯から犯人を追い飛び立ったため 望も何事かとデミスたちのほうへと目を向けた。 「(何があったの!?二人とも飛んでっちゃったけど)」 (おそらく例のレアハンターグループだろう、追いかけるぞ望) 「(なんだって!?誰かを呼べないの?)」 (呼んでもいいが・・・その、女湯での出来事らしい、事情を知っていると怪しまれてしまうぞ) 「(うぅ都合が悪いなぁ・・・)」 チビチビと飲んでいた牛乳を少し零したが、一気に飲み干してディスクを装着すると 双海がどうしたという風に首をかしげる。のんびりしてた望が突然これでは怪しくもある なにか事情を適当に考え、デミスが家のテレビの電源を消してないと耳打ちすると 「た、大変!?」 「な、何が?」 「えっあっあぁ、テレビの電源を消してなかったの思い出したんだ」 「あぁそういうことか、じゃあまた明日な~」 「うん、双海君も気をつけてね!」 一瞬本当のことかと思い、焦って声を出した望に双海も驚いたような顔をして、事態がややこしくなりそうだったが 上手く言葉を繋げて望は銭湯を後にした。湯冷め対策に持ってきたコートを羽織ると ブリューナク奪還のために駆け出す。果たして次回こそ望は主人公らしい勝利を得ることが出来るのか そんなデュエルしないSSデュエルパート
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まよなかのおつかい【登録タグ ま 曲 波音リツ 蒼姫ラピス 雪見だいふくP】 作詞:雪見だいふくP 作曲:雪見だいふくP 編曲:雪見だいふくP 唄:波音リツ・蒼姫ラピス(最終修正版のみ) 曲紹介 深夜のテンションで出来た動画です☆ リッちゃんがおつかいに行く物語です☆ リツ虐待曲 リツがおつかいに行かされる行く曲 残虐表現こそないが、結構バイオレンスな歌詞なので注意 歌詞 ※動画では全てひらがな表記 ママが呟いた タマゴが無いと なんでこっち見るの あたしはやだよ こんな時間に外出たくないよ 行くよ 行くよ行くから包丁しまって さてと 行く先は近所のスーパー 深夜2 00まで営業してて便利 目的のタマゴをカゴに入れて 余ったお金で何を買おうかしら タマゴは買った お菓子も買った バンホー●ンも山積みよ あとは家に帰るだけね 結構楽だった 家に着いた途端 延髄斬り お釣り? 何それあたし分からないわ やめて 風呂に沈める(物理)のはやめて ガチで死にかねないからやめて ほんと 反省してるからお家に入れて 真夏といっても夜は寒いのよ もう二度と無駄遣いしないから カギを開けて早く 凍えて死にそう (動画字幕より) コメント かなりバイオレンスな歌詞だなwwww -- 名無しさん (2012-12-26 03 33 14) 名前 コメント
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狭い世界で毒づく後輩 どっちがマシかなオレと老害 おもしろ半分で出したるちょっかい お望み通りの処刑は公開 名指しじゃないと解らないと おっしゃるリスナー様にオレが再度 disrespectの意思表明 このシットに名付ける小便 hip hopちゃうのにdis気張ってる 成長止まったおっさんはどけ こっちは本気でスキル磨いてる トウホウのラップで金稼いどけ 韻に踏まれるだみ声マシン 聞いてて恥ずかしい 韻ばっかし 身内のプロップス、信者のプロップス ほめ殺しに気付かんよりマシ 意味不明の韻ばっか並べたて ネットラップキャリアで固めたfake hip hop ポイのは上辺だけ 気付かんリスナーは腹下せ トノサマガエルはお前のことだよ yelloのケツお雨天決行 パクリでハングリー気取った似非ワナビー ネットラップ界隈の恥さらし 重鎮が苦言呈したつもり? なかみ空っぽ、無しdisじゃ尻すぼみ 残念ながらお前の才能 妬んだことは無いの クソな思考回路 スキルかネタか?スキル、ノーダウト 本末転倒のオリコウサン 骨粗鬆症の背骨に詰まった 過信ごと粉砕する音アンビリバボー
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#blognavi レインホースの四作目に着手した。 前日までにあらかた構想はできていた。シーン別にノートにまとめたりして。マンガで言えば「ネーム」ができたってカンジかな。後はペン入れ。小説はそっからが本チャンなんだけど。小説におけるネームって。まあ、妄想だよね。 今日一日格闘して。 つくづく小説はメンタルな作業だと思った。 なかなか小説モードに頭を切り替えられなくて。なんとなく『消えたイレブン』読み始めたら結局全部読んじゃった(笑) 凄いね。『消えたイレブン』。描けるかも、と思えた。 小説を描く為に必要なものはたった三つしかない。 勇気。勇気。勇気。 圧倒的な空白を前にして、僕はいつだって途方に暮れる。 描ける気、全然しないもん。びっくりするくらい、描ける気しない(笑) それでも勇気を振り絞って、描き始めるしかない。屈強なディフェンダーに挑む孤独なアタカンテ(闘士)みたいに。 小説は描かない限り完成しない。 当り前のことだけど、これは真実だよ。それも相当重くて、揺らぐことのない真実。 やるしかねえよな。 俺にできることはもう、これだけだから。 カテゴリ [2009年10月] - trackback- 2009年10月23日 01 18 01 #blognavi
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髪を撫でる風にほんの少しだけ秋の気配を感じる午後 川面に反射する穏やかな陽光 壊れ物を優しく包む様に抱きしめてくれる憂の腕が温かくて… でも…お願い…これ以上優しくしないで… 私にはそんな資格なんてないよ… どうしてこんなに弱くなってしまったんだろう… 強かった私は壊れた…もう、戻る事は無いんだ… 憂「我慢しなくていいよ、私が受け止めてあげる」 梓「…優しくしないで…お願い」 涙が溢れる…ダメだよ、こんなの…なのに憂の優しさに甘えようとしている 自分が…嫌いだ 視線が交わる…憂の目には憐れみの影なんて一片も浮かんでいない ひたむきなまでに真剣なまなざし…そこにあるのは吸い込まれそうな透明さと優しさ お願いだよ…そんな目で見つめないで 思わず瞳を逸した… 憂「…梓ちゃん」 梓(!?) 戻した視線の先には瞳を閉じた憂だけ 重なる唇から伝わるぬくもり…優しさ…身体の奥深く…凍えてしまった私の心まで溶かすように染みわたっていく 凍った時が動きだす…でも、壊れた夢は戻らないよ、きっと… きっかけはクラスメートとの他愛も無い会話 「中野さん、今年も学園祭ライブするんでしょ?」 梓「うん、良かったら見に来てね」 「もちろん!楽しみにしてるよ」 これが先輩方との最後のライブになるかも知れない そんな一抹の不安を胸の奥に抱きつつも、私は張り切っていた 「でもさ、中野さんも色々大変だよね」 「だよね。ほら、さっきの子達だってさ」 「あぁ、あんなのただのやっかみだってば」 梓「え?どうかしたの?」 「さっき廊下で聞いちゃったんだ」 梓「だから、何を?」 「他の組の子達がね、中野さんの事を…」 「よしなよ、そんな事言うの。告げ口するみたいで嫌じゃん」 「でもさ、こういうのって見知らぬ誰かにいきなり聞かされるよりは知ってたほうがよくない?」 梓「ハッキリ言ってくれていいよ。そのほうが私もスッキリするし」 「あのね、中野さんの事を軽音部の先輩達に可愛がって貰ってるからって、いい気になってるんじゃないかって」 梓「…え?」 「ほら、軽音部ってウチでは目立つ存在じゃん」 確かにこれは否定しない。桜ヶ丘の部活の中でも軽音部が目を引く存在なのは薄々承知している 「そのバンドメンバーだからって注目を浴びて、自分はみんなとは違うって感じで、ちょっと勘違いしてるんじゃないかってさ」 正直驚いた…そんな事は考えた事すら無いのに 純「ちょっとあんた達さぁ、さっきから梓に何の恨みがあるって言うのよ!」 呆然としていて気付かなかったが、いつの間にか純がクラスメート達の後ろに立っていた 「わっ私達じゃないわよ!他の組の子達が」 純「だったら、何組の誰よ!ハッキリ言えばいいじゃん」 「その、廊下ですれ違っただけだから。それに私達もよく知らない子達だったし、だよね!」 「う、うん。そうそう」 「うん、うん」 梓「純、私は平気だから。とにかく少し落ち着こう、ね?」 純「でもさぁ、梓」 梓「本当に私は気にしてないから。あの、みんなも教えてくれてありがとうね」 「う、ううん。なんかゴメンね」 「ライブ頑張ってね」 「じゃあ、ね」 純「もう、梓は優しすぎんのよ!私ならあんな事言われた日にゃあ」 梓「ありがとう、純、心配してくれて。でも私は平気だよ」 純「…ホントに?」 梓「本当に本当」 純「うーっ、それでもなんかイライラするぅ!絶対許せないっていうかさぁ」 私の為に本気で怒ってくれる、これが純の良い所でもあるけど、今は事を余り荒立てたくない 憂「ほら、純ちゃん落ち着いて。それじゃ返って梓ちゃんを困らせちゃうよ?」 こんな時にすかさずフォローに入ってくれるのが憂だ。どうやら憂も一連の会話を聞いていたらしい 純「…まぁ、梓が気にしないって言うんなら」 梓「全然。朝日のように爽やかに、だよ」 純「おやおや、ジャズ研にはそんな洒落たナンバーを会話に混ぜる小粋な子はいないわ。だから梓って大好きなのよね」 さっきまでのお怒りモードはどこへやら。満面の笑みを称えて大好き、なんて恥ずかしい台詞を平気で言っちゃうのも、これまた純の良い所だ 純「さってと、それじゃ私は部活に行くわ。梓もお茶ばっかり飲んでないで練習頑張りなさいよ」 梓「大きなお世話ですぅ」 純「まっ、軽音部はライクアローリングストーンよね」 梓「…純。あんた本当にジャズ研?」 純「…未だにもって、ジャズとは何なのか分かんないわ」 憂「SMOKE GETS in The EYEsだね、純ちゃん」 梓「憂のほうがよっぽどスイングしてるわ」 純「…これ以上いたら目どころか、心までやられるわ。では、サラバじゃー」 なんと言うか、純は平和だ。それもまたよし 梓「ふぅ」 憂「梓ちゃん」 優しく微笑みながら、机の上の私の手に温かな掌を重ねる。余計な言葉で飾らない優しさ、これが憂だ 梓「ありがとう、憂」 重なる掌が心地よい。こんな時いつも思う、憂にはかなわないって 憂「ううん、私はなんにもしてないよ。それにしても純ちゃんは優しいよね」 梓「だね」 重なった互いの掌を見つめる。これが…って、私まで恥ずかしい台詞を口にしそうになって思わず笑みがこぼれた 梓「純なら言いそうだよね。これが青春だぁ!なーんて」 憂「アハハ、きっと言っちゃうよね」 梓「だよね」 この時の私はまだ笑えていたんだ… それは突然だった 帰宅する憂と別れ、いつものように音楽室へ続く階段に向かう廊下。不意にその声は聞こえた 「いい気になってんじゃないわよ」 思わず声のした方向を見る…でも、そこには誰もいない 梓「気のせい、だよね」 気を取り直して階段を昇る。楽しそうに会話をする二人の生徒達とすれ違う。背後で彼女達の笑い声が響いた 梓「…別に私を笑った訳じゃないし。感じすぎだよ、私」 降り積もり始めた心の澱に、まだ気付いていなかった… 音楽準備室、いつもの賑やかで楽しい軽音部への扉を開く 梓「こんにちはー」 穏やかな陽光の降り注ぐ室内。しかし、先輩方の姿は無い 梓「まだ誰も来てないんだ…」 特別意識する事も無く、自然と足が部屋の片隅に向かう 梓「トンちゃん、今日も元気かな」 水槽の中でゆらゆらと泳ぐトンちゃんと目が合う。軽く水槽を指で弾く 梓「ねぇ、トンちゃん。私って嫌な子なのかな…」 勿論トンちゃんは答えてくれない 梓「アハハ、何を考えてるんだろう、私」 誰もいない部室、ふと胸の奥が軽く痛んだ… 梓「…遅いな、先輩方」 長椅子に腰掛けて、室内を見渡してみる いつもの見慣れた室内。ホワイトボードに描かれた他愛の無い落書き 梓「唯先輩の絵って、結局進歩しなかったなぁ」 少し驚いた…進歩しなかった…なんで過去形なの、私? 梓「…練習しようかな」 ギターケースを開き、ムスタングを取り出す。なぜだろう…少し違和感を感じてしまう 梓「なんかシックリこない…ネックがモタレたかな?」 軽くフィンガーボードを押さえて、水平に構えてみる。 指が…手が…震えていた 梓「集中、集中しよう、私」 目を閉じて意識を指先に集中…出来ない 不意に誰かの視線を感じた気がして、慌てて目を開き周囲を見渡す 梓「…誰…もいない」 不快なノイズが響く…震える指先が弦を擦る音だと気付くまでに数秒を要する程に動揺していた 梓「どうしよう…震えが止まらないよ」 指先から全身へ伝播する震え…決して暑くない室内で前髪が額に張り付く程に汗を浮かべていた 梓「…気持ち…悪いよ」 降り積もる澱が心を、身体を浸食していた… 耐え難い不快感…駄目だ…今日はもう帰ろう 梓「先輩方にメールしないと」 震える手を励まし、携帯のメールキーを押す…空白の画面を見つめた途端、思考が停止する 梓「なんて…書けばいいの」 嘲るような声が耳の奥に響いた 「あんたなんて必要無いんじゃないの?」 そうだ…元々軽音部は先輩方4人だった 私がいなくても… 虚ろな意識の片隅に、様々な記憶の欠片が浮かんでは消える やめて…今は思い出したくないよ 真っ白だった… 気がつけばギターケースを抱えて、部室を飛び出していた 梓「こんなの…嫌だよ」 すれ違う人々が私に嘲りの視線を向けているようで…怯えた子犬のように家路を急ぐ 自宅の玄関に飛び込む…息苦しさは消えない 静まり返った家…靴を脱ぐのももどかしく、階段を駆け上がって自分の部屋に入る 制服のままでベットに潜り込み…身体を丸めて全身の震えを止めようとした 何も見たくないよ…聞きたくないよ…考えたく…ないよ 降り積もる澱は、小さな私から溢れようとしていた… まどろみの中で先輩方の姿が浮かぶ 見知らぬ校舎…桜が咲き誇る道を私服姿の4人が並んで歩いている 「しっかしまさか、軽音部どころかサークルすらないなんてなぁ」 「ここって結構お嬢様学校だしな。バンドよりクラシックて感じだろ」 「なければ作ればいいんだよっ!」 「そうよね。高校の時だって、私達4人で始めたんだから」 「だな。よっしゃー、いっちょやるかぁー!」 「相変わらず私の参加は決定事項なのか?」 「当ったり前じゃん!大学でもファンクラブが出来るくらい大活躍してやれぇい」 「それだけは絶対に嫌だっ!」 「んー、でもそうなりそうな気がする」 「嫌だっ!」 「まぁまぁ、人気者の宿命ってやつだな」 「嫌だっ!」 「先ずは部室を確保しないと、ティーセットも運び込めないわ」 「いや、それは微妙に間違えている気がするぞ」 「えー、お茶とお菓子の無い軽音部なんて軽音部じゃないよっ!」 「いや、それは絶対に間違えているぞ」 「あら、それじゃティーセットは無しにする?」 「いやーん、イケズゥ。分かってる癖にぃ」 やっぱり私は要らない子なんだ… 頬を伝う涙の感触に意識がまどろみの中から引き戻される… 梓「…嫌な夢」 鉛が入ったかのように重たい身体…なんとか両腕で支えて上半身を起こす 暗闇の中で携帯の着信を示すランプが明滅している、確認することも無く電源を切る… 壁掛け時計の蛍光に彩られた長針と短針が深夜3時を報せていた 梓「酷い寝汗…最悪だ」 シワクチャになった制服を脱ぎ捨て、着替えもそこそこにバスルームへ向かう 着替えたばかりの服を脱衣所で脱ぎ捨てる 鏡に映る姿…泣き腫らした目、涙の筋がついた頬 自分でも嫌になるくらい未成熟な身体に視線を移す 華奢な肩と薄い膨らみしかない胸、緩やかなラインの腰 身体が心を写すのなら、私は全てにおいて子供だと実感させられる 鏡に映る誰かが呟く 「大嫌い」 その醜悪な表情に恐れを感じて、慌てて鏡から視線を逸してバスルームに飛び込む シャワーを全開にして叩き付けるような水の奔流に身を委ねる 梓「…汗と一緒に全部流れちゃえばいいのに」 翌朝、ドアをノックする音に目覚める 「梓、もう起きないと遅刻するわよ」 時計は7時30分を報せていた 相変わらず重たい身体を引摺り起こし、母に答える 梓「起きてるから大丈夫だよ」 大丈夫…嘘だ。ちっとも大丈夫なんかじゃない 「時間が無くても朝食はちゃんと取りなさいよ。あなた昨日は夕食も取らずに寝ちゃったんだから」 いつもなら優しい母の声も今日は違って聞こえるのは…きっと私自身のせい 思わず苛立ちをぶつけそうになる自分をなんとか律する 梓「はーい。分かってるよ」 嘘で固めた自分…降り積もる澱はもう私を押し潰そうとしていた ダイニングテーブルで母と他愛の無い会話を交わしながら食事を取り、学校へ向かうべく玄関を出る 「いってらっしゃい、梓」 梓「行って来まーす」 母の姿がドアの向こう側に消えた途端、なんとか体裁を繕っていた空元気も消え失せた… 背負ったギターケースがまるで罪人の枷の如く、私を戒める 梓「…こんなに重かったんだ」 分かってる、重いのはギターじゃない 我侭で臆病な自分自身 結局昨晩の着信やメールは確認することなく全て消去してしまった 梓「…もう先輩方に会わせる顔もないよ」 いつもと違う道を選んで学校へと向かう 遅刻ギリギリのタイミングで校門をくぐり、教室に入った 純「おっはよー、梓。珍しいじゃん、遅刻寸前なんて」 今朝も元気な純だ。今の私には眩しいくらいに… 梓「おはよー、純。昨日はちょっと夜更かししちゃってさぁ」 純「ふーん、どうせまたネットで怪しげなグッズを探してたんでしょ」 梓「そんな事言っていいのかなぁ。折角安くて効きそうな縮毛矯正コンディショナーを見つけたのに」 純「なっ!マジで?」 大丈夫…こんな嫌な私を誰にも知られたくない…笑うんだ、例えそれが偽りの笑顔でも 憂「おはよう、梓ちゃん」 梓「お、おはよう、憂」 ヤバい…今一瞬声が震えそうになった 唯先輩から昨日部活をサボった事、きっと聞いてると思うとつい… 憂「…少し寝不足みたいだね。目の下が少しクマってるよ」 梓「ちょっとネットに熱中しちゃってさぁ」 始業を告げるチャイムが鳴る…助かった 憂「それじゃまた後でね」 梓「うん」 自分の席に戻るべく振り返った憂から、なんだかいい香りがした なんだったかな…花の香りだよね 私の不安をよそに、時間は流れた 休み時間の他愛もないおしゃべり 憂と純と食べる昼食 いつもと変わらない穏やかな学校生活 …嘘。いつもと変わらないフリをしているだけ まるでもう一人の自分を見るように、心は少し離れた位置にある 本当は泣き出したかった…お願いだよ、誰か偽りの私に気付いて… 誰か…助けてよぉ そんな心の叫びとは裏腹に、もう一人の私はいつもと変わらない笑顔を浮かべている… 降り積もった澱は、もう私を壊してしまったのかな… 最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る 純「んーっ、今日も勉学に勤しんだぁ」 梓「うむ、偉いぞ、純くん」 純「ははぁ、有り難き幸せです、梓大先生!って、誰?」 梓「私が知る訳ないじゃん」 純「アハハ、そりゃそうだ。さってと勉学の後は、音楽に勤しみますか」 ギターケースを背負う純の姿を見て、なんとか押さえていた胸の痛みが甦る… 純「途中まで一緒に行く?」 梓「先に行っていいよ。私はちょっと用事を済ませてから行くわ」 純「ほいほーい。じゃあまた明日ー」 梓「うん、ばいばい」 …嘘つき。用事なんてない癖に 2
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このページはこちらに移転しました ながいゆめのなかで 作詞/うんこマン もしも明日が訪れず 今日に終わりがないのなら 僕はいったい何をする? 少しばかりの酒を肴にして 歩き疲れて陽も暮れて 夜には布団に包まって 僕は今夜も夢を見る 少しばかりの酒を肴にして 君と僕はいつからか 会話をなくして遠くなる ながいゆめのなかで 懐かしい日を見かけたよ もしも昨日に戻れたら 僕は過ちを繰り返さない たとえ夜が繰り返したって 僕の空はあの頃のまま すべては時間と共に 姿かたちを変えてしまうから 街を君が歩いていても 気付きもしないですれ違う 君と僕はいつからか 会話をどこかに置き忘れたまま ながいゆめのなかで 懐かしい日々に手を伸ばす
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124 :花と名無しさん:2007/05/27(日) 19 29 07 ID ???O ゆみみの絵私は好きなんだけどなー 最近どんどん可愛くなってきていると思うから、このまま成長すれば絵も話も描ける漫画家になれるんじゃ 虹色パレットも一話目から最終話まで全部内容ある話を描いていて良かった デイジーは確かに話の完成度に差があるような イノセントワールド、個人的には一話目は駄目だったけど離婚の話は良かったし、原作つけなくてもいいんじゃない? 柏木さんは絵がすごく可愛いから原作付きで美少女変身物を描けばいいと思う 125 :花と名無しさん:2007/05/27(日) 19 31 00 ID ???O このご時世にまだ美少女変身ものとか言ってるんだ… 180 :花と名無しさん:2007/05/30(水) 21 42 11 ID ???0 乙です。 柏木さん新連載だと思っていたけど、やはり今は無理なのかな。 625 :( ・`ω・´) :2007/06/30(土) 23 18 55 ID ???0 8月号テンプレ 巻頭カラー 小川とゆかいな斉藤たち(2話) しゅごキャラ! オレンジ・プラネット かみちゃまかりん ココにいるよ! プリキュア5 デリカシーがない(瀬田ハルヒ) もどって!まもって!ロリポップ イノセント・ワールド スクール×ファイト キッチンのお姫さま 地獄少女 9月号予告 新連載 フィアンセはモンスター!? 読みきり CCC(トリプルシー) フクシマハルカ リリカル忍伝すっぱだもんっ!(まもなく連載化) 637 :花と名無しさん:2007/07/01(日) 01 11 36 ID ???0 やっぱり瀬田・柏木さんか… 水無月さんや高上さんってそんなに人気ないのか? 638 :花と名無しさん:2007/07/01(日) 01 23 09 ID ???O 瀬田さんの読み切りアレはない…酷すぎた… 花森先生の前の読み切りもだいぶ酷くて「これ並に酷い読み切りはもう本誌に載らないだろう」と思ってたけどキタこれ… 今更アリナチの影響受けすぎてるのもなぁ デイジー先生の今回の話もありきたりだっが瀬田さんと比べるとだいぶ良く見える 柏木さんは早く本誌連載すればいいのに 678 :花と名無しさん:2007/07/03(火) 23 50 25 ID ???0 総評 厚い重い 小川 ひたすらバカ しゅご まともな話だと浮く くま 可愛い惜しい オレプラ とっとと気づけ、栄介氏ね かりん バカネタ多すぎ ココ 扉がエロゲパッケージに見えた、というのはエロゲをなめすぎか? プリキュア5 ラブラブ デリカシー り●ん?→早稲田さん?→…なんだこりゃ。 もどろり あてられた。 イノセント ポイントが違うだろ。 スクファイ なんでもありのラブラブ。 キチプリ どんな勝負になるやら。 ニーハオ うなぎいいな。 小川B 成田に同情した。 地獄少女 警察バカすぎ ついで 書き下ろし単行本も多いな。 講談社漫画賞発表で久米田さんの「少年サンデー編集部の人も 驚いています」に吹いた。 来月号 また二本立てか。 まだ花森さんか。それに柏木さんも、オタよし化が進みそうで鬱。 夢水の機巧館は好きな話なので楽しみ。 861 :花と名無しさん:2007/07/19(木) 23 53 03 ID ???O きららってたの幼系の増刊にも載ってるんだなびっくり 今のなかよしは ベテラン→わんころ、上北(?) 外部→コゲ、桃種、小鷹 ベテラン?→川村、有沢 中堅→安藤、福島、原、水上、えぬえ、恵月 若手→桃逝、遠山、永遠、花森、菊田、白沢 新人→柏木、ゆみみ、山田、水無月、高上、茶匡、瀬田 新人2軍→美麻、菊井、春瀬、栗沢、瀬崎、あおい、青月 こんな感じ? 871 :花と名無しさん:2007/07/20(金) 14 59 25 ID ???0 咲良って人好きだったんだけど外部なんか おまえらが編集だったら誰を育てて誰を引っ張って来る? 873 :花と名無しさん:2007/07/20(金) 18 13 07 ID ???0 871 まずは、人目を惹く絵が描ける柏木を育てて、外部は 敢えて男作家・・・ばらスィー辺りを引っ張ってくるかな? 973 :花と名無しさん:2007/07/29(日) 22 03 50 ID ???O 968 柏木さんも足してほしいなー 地味な人たちも好きだが華やかな人も必要だと思う
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プロヴァンス・アルプ・コートダジュールのまちなかピアノ 他の地域はまちなかピアノのある場所を参照。 現在設置されている場所 モナコ公国 モナコ駅? モナコ公国。 プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏 ニース駅? アルプ・マリティーム県、ニース。 カンヌ駅? アルプ・マリティーム県、カンヌ。 トゥーロン駅? ヴァル県、トゥーロン。 アヴィニョンTGV駅? ヴォクリューズ県、アヴィニョン。 アヴィニョン中央駅? ヴォクリューズ県、アヴィニョン。 エクサンプロヴァンスTGV駅? ブーシュ・デュ・ローヌ県、エクサンプロヴァンス。 かつて設置されていた場所 不明 マントン駅? アルプ・マリティーム県、マントン。 2014年末時点では存在していたが、現在不明。 エクサンプロヴァンス町駅? ブーシュ・デュ・ローヌ県、エクサンプロヴァンス。 2014年末時点では存在していたが、現在不明。 マルセイユ・サンシャルル駅? ブーシュ・デュ・ローヌ県、マルセイユ。 2014年末時点では存在していたが、現在不明。
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南中の数学教師のひとり。 長い話を人前でするときは、必ずつま先だちをしておなかをつきだす。 その様から、おなか先生と呼ばれる。 おもなセリフ。 「いいかーい?」 「うっせーよー!!」 「なんなんだよ!!」 名付け親 dankan 主な著書 「天才ガウスに挑戦しよう」
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アーキテクト、それは無人のACに魂を吹き込む、AIチューニングのスペシャリストの事である。 アーキテクトによってチューニングされ、AI制御で動くAC=u-AC同士が戦うメカニカルバトルの最高峰、これがフォーミュラF、「フォーミュラフロント」だ。 レイヴンが大手をふるって活躍していた時代は既に過去の物となった今、各企業の微妙な均衡のなかにかりそめの平和が生まれた。 平和となると、同時に脱力感に似た「堕落と退屈」が人々を支配し始める。そこに登場したのが、「フォーミュラF」。 新たな時代の刺激を求めた人々への新たな興行として始まったこの「フォーミュラF」は、世界中の人々を熱狂させ、その広告効果から各企業は巨額を投じて参戦することとなった。 今や「フォーミュラF」は最大のエンターテイメントである。 アーキテクト達は己の知性全てを使い、名誉を勝ち取るために世界中を転戦し厳しいリーグを勝ち抜いていく。 そうしてリーグの頂点へと立ったアーキテクトのチームは、最高の栄誉を得ることとなる。人類の英知、その象徴として羨望を集め、時には新たな英雄像へとなる。 僕も子供の頃からアーキテクトに憧れ、リーグの制覇、頂点を夢見てきた。 ・・・その夢までは呆れるほど果てしなく遠いが。今ではリーグ制覇どころかアーキテクト人生が危うい。 僕は“フォーミュラB12”のランキング9位。“フォーミュラB”とは通称“ボトムリーグ”と呼ばれ、僕のようなB級ライセンスを持つ者が参加可能な下位リーグの名称だ。 B12の“12”は12番目の事。つまりボトムリーグは他にもB03とかB24とか無数に存在する。 ちなみにこのB12に参加しているチームは僕を含めて10チーム。 僕はランキングとしても崖っぷちというわけだ。 僕の運命が決まる次の対戦相手は“ヌガルムポート”というチームで、タンク型ACにエネルギーEO、左右にスナイパーライフル、両肩グレネードと、かなりの重武装を積んでいる。 ちなみに前回の対戦では正面から突っ込んでしまって瞬殺された。 「近づいて回り込むか、遠距離から削るか、だな。」 情報端末から前回の戦闘結果と敵ACの装備を確認する。分析と研究はアーキテクトの基本であり、勝利するためには不可欠である。戦略のパズルをひとつひとつ当てはめて いき、初めてAIチューニングは完成する。 「出来れば近づくのはもうゴメンだな・・・」 前回の記憶が甦る。僕のACはOBでバカ正直に前へ突進して行き、ライフル弾の牽制とグレネード弾の弾幕に突っ込み、EOのエネルギー弾に止めを刺された。 ACの上半身が爆散、APが一瞬で0をカウントした。 試合開始わずか23秒、屈辱的な敗北だ。 二度もさすがにこの屈辱感を味会うほどマゾではないので、前回とは違う機体構成にする必要がある。 AIも、ACの武装自体もだ。 AIは調整をすれば遠距離を保つような動きにチューニングできるだろう。 遠距離を維持するように設定してやって、FCSを遠距離タイプに変更、近づかれる前に敵ACのレンジ外から攻撃して撃破してしまえば良い。 ただし、ひとつ問題がある。 「ACパーツ、調達できるかなぁ・・・」 僕のチームが所属しているスポンサーはフォーミュラFに対して消極的で、援助支援をほとんどしてくれない。 AIは自分でチューニングできるからいいが、武器などのパーツはそうは行かない。ACのパーツは非常に高価で、スポンサー側が資金を提供してくれないと用意などとてもできない。 今までも、オーダーに満たないACや調達できなかったパーツを別の物で代用したり、中でも最悪だったのは前戦のダメージをほとんど引きずった状態で出場したこともあった。 何度も直訴したが、大抵は無駄に終わる。こういうことがチームの敗北へと繋がっている一番の要因となっているのをスポンサーは解っていない。 次の対戦まであと3日。何とか調達させるように説得するしかないが・・・ 「WB18M-CENTAUR・・・が1200000c、クレスト製のCR-LH89Fが・・・」 「・・・本当にこんな巨額を使うのか・・・?・・・」 「・・・・・・これは・・・すぐに判断は・・・・・・」 次の日、僕はスポンサーの上層部に直訴しに行ったのだが・・・ 本当ならばスポンサーのフォーミュラF担当者に直訴して上層部へ通じてもらうのが普通なのだが、担当者が「アーキテクトである君が直接説明に行ったほうが効果があるのではないかな?」と言われてしまい、僕が直接直談判するハメになってしまった。 ちなみに、担当に直訴したことはあっても、上層部に直訴するのは初めてだ。 「JIKOH・・・?ああ、キサラギのパーツなのか。キサラギ社の製品は変わったものが多いねぇ、キミ?」 「それにしても、AC用パーツというのは高額な物が多いんだねぇ・・・」 僕の目の前にいるのは、スポンサーの上層部のお偉いさん方である。 左から少々ケバイ化粧の濃いマダム、髪の毛と豊かなヒゲが白い、いかにもって感じの重役、それとまだ色あせてない髪の毛が沢山生えそろえてはいるが、どう見ても頭が不自然な眼鏡をかけた男。 それぞれ左からマダム、サンタ、シケイダと(心の中で)呼ぼう。 本当の名前は忘れた。とにかく、スポンサーの上役達である。 彼らは上役らしく、上役らしい豪華な椅子に腰掛け、上役らしく豪華な木のテーブルに情報端末を繋げ、僕が提示した条件を拝見していた。 ちなみに僕はさっきから立ちっぱなしだ。椅子くらい用意してほしい。 まず、僕の用意した資料を見て、驚きと驚愕のの声を上げた後、ネチネチと小言のような質疑問答が始まった。 頭が不自然な男、シケイダが口を開いた。 シ「キミの提出した・・・そのy-ACの」 僕「u-ACです。」 シ「そう!そ、そのu-AC用パーツなのだが・・そのもう少しなんとかならないのかね?」 僕「もう少し、と言いますと?」 シ「その・・・費用がかかりすぎるのだよ。」 そこに白ヒゲサンタが加勢する。 サ「フォーミュラFの広告による収入効果と、君の請求書とは、どう考えても吊り合っていない。」 今はチームが低迷しているからしょうがないではないか。 Bリーグの下位を低迷しているチームなんか、ほとんどの人たちが認知していないだろうし。 スポンサーについてもらってる僕が言うのもなんだけど、宣伝効果があるとはとてもじゃないが思えない。 シ「この額・・・君の提示間違っているのでは・・・ないのか?」 僕「僕の提出した内容に間違いはありません。私が掲示した数値に疑問があるならば、各ACパーツメーカー側へ確認を取ってみてください。」 サ「それにしても、この額は・・・」 僕「まがりなりにも、ACパーツは兵器です。兵器が高額なのはしかたがないのでは?」 そこに顔が白塗りされ顔がテカるマダムが入り込む。 マ「そもそも、アーキテクトである貴方が努力すれば、このような高額な買い物をしなくても済むんじゃありませんの?」 僕「アーキテクトがどんなに優秀であっても、アセンブルされたACの限界以上の能力は発揮することが出来ません。」 マ「それをどうにかするのが、貴方達アーキテクトじゃなくって?」 僕「ですから・・・どんなにAIを戦闘に最適化をしようとも、そのAIチューンを生かすにはそれ相応の装備が必要なのです。」 そこまでいうと、ミズマダムは「ふーん、あらそう。」と判ってるのか判ってないのか無表情で端末へと顔を戻した。 たぶん、僕の話の内容の半分も理解していないだろう。 なぜ担当が僕に直訴させたか、この状況を見て理解した。 彼らは・・・ACについてもフォーミュラFについても、知識が非常に乏しい。こんな状態では、支援を渋るのも無理はない。 そんな上役方に今まで説明してきた担当が、今回の請求を見たら結果を予想すると確かに嫌になるだろう。要するに「厄介事の押し付け」でだった。 大方、フォーミュラFへ参戦したのもミーハー女子が「周りもやってるからアタシも参戦しちゃおっと☆」って具合なノリで参戦したに違いない。 なるほど、イメージダウンを懸念して、ではなくフォーミュラF自体を重要視してなかったわけか。 Bリーグをさ迷い歩いているチームの半分は、そんな行き当たりばったりな参戦をして、宣伝効果の業績で資金を回収できない企業なのだ。 世界最大の興行、フォーミュラF。勝利を手に業績を挙げる企業やアーキテクトもいれば、その陰で「ゴミクズ」に分類されて脱落していく。 どうも僕はスポンサーに恵まれてなかったようだ。前々からわかってた事だけど。 これではただの時間の無駄かもしれない・・・ そもそもフォーミュラFに対して消極的なお偉いさん方にフォーミュラFに対しての支援が行われるとも到底思えない。 結局今日一杯時間を浪費して、話は終わった。 結果として、散々長々と説得させられたが僕の要望はほとんど受け入れられなかった。 あまりしつこく騒いで「今すぐ解雇」とかいわれるとさすがにまずいので、途中で早々切り上げ、暗雲たる気分のままガレージへと帰ってきた。 「ガレージに帰ってきたのはいいけど・・・このままだと勝つ見込みがあまりにも低すぎるよ・・・」 そうつぶやいた僕の目の前に、今このガレージにあるだけのパーツで組まれたACが上がってきた。 ACが上がってくると同時に、僕は現実を直視して・・・頭を抱え、弱音を吐いた。 組まれたAC。四脚は前回の戦闘で一次破壊を起こした際に冷却関係に問題が起こっているので修理中。 なのでかわりに安価な中量逆間接に第一世代コアにクレスト製の腕に頭部と、足以外が新人レイヴンに宛がわれる機体と同じフレームになってしまっている。 ちなみに他のパーツも四脚と同じく修理に出ていたりスクラップになってしまったり、その「末路」はさまざまだ。 ラジェータもそれほど性能の良いとは言えず、冷却機能をフルチューンしてあるにも関わらず、ブースト熱で機体温度が蓄積されてしまう。 そのブースターだが、唯一恵まれてるのがこのブースターだ。フレームパーツが比較的安価なのに、ブースターはTP2だ。おかげでそれなりの機動性能が期待できる。 ・・・ブースト熱をどうにかできればの話だが。 ラジェータの性能がさっきも言った通り、あまりよろしくないので熱効率が非常に悪い。 いっその事ブースターなんか無いほうがいいんじゃないかとも思うけど、無いとACは動かないし、そもそも基準違反なので出場もできない。 なお、他にブースターは無い。渋るスポンサーが資金を出さないので、他のパーツを購入するために売却してしまった。 試しにACテストをする時、知り合いのレイヴンにマニュアル操作で動かしてもらったことがあるのだが、彼女には「こんなACに乗っていたらゾッとするわ。」と言われてしまった。 「もし、こんな熱効率の悪いACを無人ではなく有人で動かそうと思ったら、耐火スーツが必要ね。」とも付け加えられた。それほど熱効率が悪い。 このパーツを購入させたのは僕ではなく、前任のアーキテクトが用意させた曰く付きなものだった。 どう曰く付きかというと、その前任アーキテクトは、整備主任の話によると解雇された後日、生活苦からナイアー産業区の裏路地で首を吊って全身から色々と垂れ流していた所を発見されたらしい。 なんだかTPに怨念みたいなものが憑いていそうで少し怖い。 解雇されたら最後、二度とアーキテクトの道へは戻れない。 いくらスポンサーの支援状況が怠慢だろうと、表面上では「アーキテクトの腕が悪い」と見られるわけだし。 そんなアーキテクトを雇ってくれる企業体があるはずもない。 次は自分の番かもしれない・・・やめよう、考えるとキリが無くなる。 武装もこれまた愉快極まりない。右にミラージュのスナイパーライフルに、左にロングブレード。インサイドに接着地雷。肩に初期型レーダー。 これだけである。わずかこれだけの武装でここ最近までやってこれたのは自分で言うのもなんだが奇跡だと思う。 タンクや重装ACが相手になると、火力が足りなくて最終的に武器がブレードのみになってしまうなんてこともザラである。 ・・・僕はいつから節約上手なアーキテクトになったのだろうか? この状態で勝ち星を「稀に」にあげてこれただけでも奇跡だ。 さて、このままでは本当に勝ち目が薄い、薄すぎる。 先述のレイヴンにパーツだけ借りてくるという手もあるが、彼女には色々と面倒をかけすぎている。 これ以上はさすがに手を借りるのは気が進まないし、それに・・・色々と後で怖そうだ。 他の人の手を借りず、なんとかする方法がひとつだけあった。あまり選びたくない選択しだが・・・正直スポンサーはもう当てにできない。 僕はとある大企業へ就職し、色々と黒い噂の絶えないところで活躍している古い友人に連絡することにする。