約 2,967,656 件
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1859.html
とてつもなく南の島のまりさ 42KB 自滅 野良ゆ 自然界 現代 独自設定 うんしー あまりにも南の島のまりさ続編です 作:神奈子さまの一信徒 どこかで見たことのあるお話のパロディです。 クラシック好きな方への推奨BGM:レイフ・ヴォ−ン・ウィリアムズ、交響曲第七番 『とてつもなく南の島のまりさ』 初夏 観測基地のゆっくりたちは、無事冬を越すことができた。 これは室内に餌が豊富に用意されていたことが何よりの要因である。 しかし、ここに来て問題も発生した。すっきりによる赤ゆの急増である。 ありすとちぇんの間にも赤ゆが生まれたが、胎生であったため、赤ちぇんが2匹生まれ ただけだった。 まりさとれいむの間には、それなりの大きさに成長した子まりさと(故)子れいむがいた が、その他に10匹も赤ゆが生まれていた。しかし、れいむはそれでも足りなかった。 食糧が豊富で危険な狩りをせずにゆっくりできる。 そのような環境下で、ゆっくりが増えようとするのは、自然の摂理というべきだろう。 「ゆふふ、ここはとてもゆっくりしたゆっくりぷれいすだよ。きっとにんげんさんは ここでまりさとれいむに幸せになってほしくで出て行ったんだよ。」 その隣にいるまりさは虚ろな表情でどこかを見つめていた。防寒服はうんうんしーし ーができるように、下腹部にマジックテープ式の前張りがついていた。しかし、度々 れいむのその肥満体でのしかかられ、すっきりさせられたために、まりさの防寒服の 下腹部は表面が磨り減り、繊維のほころびが見られた。 もっとも一番磨り減っていたのは、衣服ではなく、まりさの心だったが。 まりさの心は、おちびちゃんを死なせてしまったことへの後悔によってズタボロだった。 れいむは毎日とてもゆっくりしていた。たくさんのごはんさん、たくさんの赤ちゃんに 囲まれたれいむはゆっくりしてすっかり大きくなり、最早、サッカーボールどころか、 大きなだるまだった。選挙に使えそうなサイズである。 飼育員の言いつけを守り、防寒服は着ていたが、背中の辺りが動くたびにみちみちと 音を立てていた。その姿で「おうた」と呼ばれる怪音波をまきちらす姿は、宇宙の根源 に座す痴愚神の周りで単調な音楽を奏でる醜悪な蕃神たちを思い起こさせた。 「まりさ!れいむはもっと赤ちゃんがほしいよ!!ゆっくりすっきりしようね!!」 子育てに他種よりも情熱を傾けるれいむ種としては、子沢山は夢だった。子供たちはた くさんいればいるほどゆっくりできるものなのだ。 しかし、まりさはれいむのように楽観していなかった。自分たちは人間さんが用意して くれたごはんさんを食べてるだけなのだ。あまりたくさん赤ちゃんを増やすとえっとう に失敗する。まりさはそう何度も言ってきたが、その度にれいむに無理矢理すっきりさ せられていた。 まりさは最早、ぶくぶくに太ったれいむの召使い兼すっきり相手であり、一部の子供た ちからは「南極1号」などとバカにされていた。 「…れいむ、おちびちゃんが多すぎるのはゆっくりできないよ…もう新しい赤ちゃんは いらないよ…今のおちびちゃんたちをゆっくり育てようよ…」 まりさはれいむに比べてげっそりしていた。れいむたちの食べる食糧はすべてまりさが 袋を破ったり、缶を開けたりして、初めて食べられるようになるのだ。子供の数が増え、 まりさがゆっくりごはんさんをいただける時間はなくなってしまった。 「あああああああああ゛!?あがじゃんがゆっぐりできるのはとうぜんでしょおおおお おお!?あがじゃんがうまれでほじぐないとが、ばがなの!?じぬの!?」 「…だったら…れいむもごはんさんを用意する手伝いや…うんうんの掃除を…してほし いよ…」 赤ゆが増えてからというもの、れいむは専ら赤ゆへのすりすり、おうた、赤ちゃんと のおひるねなどに忙しく、自分で狩り(ただ木箱からごはんの入った袋や缶詰を取っ てくるだけだが)やうんうんしーしーの後始末をすることはなくなっていた。 「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ゛!? なにいっでるのおおおお゛!?れいむはあかちゃんのめんどうみなきゃいげないんだ よ!!いくじのきびしざをじらないのおおおおお゛!?まりさはすどれずでぐるじむ れいむをじっがりゲア゛しなぎゃだめでじょおおおおおお゛!?」 「…かったーさんやかんきりさんを…使えるようになって欲しいよ…まりさはれいむ にゆっくり教えたよ…ちぇんも…ありすも上手にかったーさんや…かんきりさんでご はんさんをあけてるよ…」 ちぇんとありすはまりさほど上手ではないものの、すっかり道具の扱いにもなれ、今 はこの飼育スペースではなく、空いていた観測員の部屋の一つを巣にして住んでいる。 たまに餌がある木箱の通路「アメ横」で会う他は、ほとんどちぇんとありすの家族を 見る機会はなかった。 「ああああ↑あ゛あ゛あ゛あ゛↓ああああーっ↑!? あのふだりはごぞだでをまじめにやっでないにぎまっでるでじょおおおお!!いぞが じいでいぶどいっじょにじないでねえええええ゛!!でいぶはごぞだでにずべでをざ ざげる聖母なんだよおおおおお゛!!!」 まりさはれいむの絶叫を最後まで聞かずに、食事を用意しに向かった。 「なんきょくいちごう!!はやくごはんしゃんもってきちぇね!!!」 「すっきりちかできないむのーはちゃっちゃとごはんさんもってこい!!」 「はやきゅもってこにゃいとどれーをくびにするよ!!!」 「ゆきゃははははは!!!」 生まれたばかりの赤ゆたちが実の親に罵声を浴びせる。もう慣れてしまったまりさは 視線を向けることすらしなかった。 「アメ横」にある餌はもうほとんどなくなっていた。人間用の食品もほとんどなく、 残っているのは開けにくい缶詰ばかりあと一週間分あるかないかだった。 「…きっとみんな死ぬよ…みんな死ぬよ…ごめんね、お兄さん…」 「アメ横」に陳列されていた食糧がゼロになったのは三日後のことである。 「どぼじでごばんざんないのおおおおおお゛!!!」 「…みんな食べちゃったからだよ…」 観測隊が残していった食糧は、人間の分も含まれば、6匹のゆっくりが一年以上生き延 びるのに十分な量だった。だが、個体数が途中で倍増すれば話は別である。 「ゆええええん!!!みゃみゃ~!おにゃかすいたよ~!!!」 「なんきょくいちごう!はやきゅれいみゅちゃまにごはんもってきょい!!!」 「ごばんざんがないならどっでぐるのがおやのやぐめでじょおおおおおおお!?」 「…お兄さんは…ここお外にはごはんさんはないって…言ってたよ…」 れいむは怒りのあまりまりさに体当たりをした。太りに太ったれいむの体当たりは、 痩せ細ったまりさにとって、あまりに重かった。まりさは思わず餡子を吐いてしまう。 「!!…ゆ…ぐ…」 「ごばんざんをどっでごれないげずはぜーざいずるよ!!!」 完全に見下した目でまりさをにらみつけるれいむ。その頬は、顎は、そして腹部は醜 悪なほどにたるんでいた。 「…………」 まりさは黙って廊下を見るようにれいむに促す。れいむは面倒臭そうに廊下をのぞい た。そこにあったのは、かつてあふれんばかりに食糧に満ちていた木箱が空箱になっ ているという、れいむには信じられない光景であった。 「どぼじでごばんざんのごっでないおおおおお゛!?でいぶにはあがぢゃんがだぐざ んいるんだよおおおおおお゛!!!」 原因と結果の順番が完全に入れ違っていた。 「みゃみゃー!!おにゃかすいたんだじぇい!!!」 「むーしゃむーしゃしないとゆっくちできないいいいいい!!!」 「おい!なんきょくいちごう!!はやくごはんさんもってきょい!!!」 赤ゆたちが騒ぎ立てる中、れいむは唖然として空箱だらけになった木箱を、まりさは そんなれいむを黙って眺めていた。 「まりさ!れいむ!」 ありすとちぇんだった。 「もうごはんさんがないんだよ~!分かるよ~!」 「ちぇんとあちこち探してみたんだけど、もうごはんさんがないわ!このままじゃい なかものよ!!」 「…まりさ…」 「?」 「かりにいくよ…」 「!?」 「ゆっくりしないでかりにいくよ…おちびちゃんをゆっくりさせたいよ…」 まりさは驚いた。れいむの母性がまだ錆び付いてはいなかったことに。まりさの瞳 は虚ろなままだったが、どんなに罵声を浴びても我が子は我が子だった。 「…まりさはゆっくりしないで狩りに行くよ…」 まりさは外出用の通路に向かった。その後を苦しそうに跳ねながられいむがついて きた。一緒に狩りをするのは…初めてだろうか?… さらにその後にちぇんが続く。赤ゆたちのこともあるので、ありすには残ってもら った。 まずは餌場を探さなくてはならない。 まりさは新しい餌場を見つけた場合、引っ越すことも考えていた。 まりさはあの飼育員特製の外出通路を通じて外へ出た。夏になると、気温が0℃近く で推移するようになるため、防寒服を着ている状態では特に寒いと感じなかった。 まもなくして、通路ぎりぎりにまで肥えてしまったれいむが苦労して通路から顔を 出す。まりさには、れいむがまだこの通路を通れたことが驚きだった。 観測基地は南極大陸周縁部の島に建てられている。そのため、夏場になると海氷が 縮小して海が接近し、基地周辺には陸地が顔を出していた。遠くの半島にはアデリ ーペンギンの群れがコロニーを形成し、その上空ではトウゾクカモメがペンギンの 雛を狙っている。 れいむは黙って、れいむ専用すぃー「ぶーねい」(びゅーねいの誤表記と思われる) に乗り、鳥が集まっている岩場に向けて走り出した。まりさは自身の専用機「ふぉ るねうす」に乗り、ハンドルのグリップをあにゃるで軽く握り締め、後を追う。 途中、何度もスピードを調整し、れいむを追い越さないようにしながら走った。 すぃーはそれぞれ、持ち主の好みに合わせて飼育員が改造を繰り返しており、まり さのすぃーは飼育員の愛情によって過剰なまでに強化されていた。 衝撃や振動を吸収するクッション、ぴかぴかに磨かれたボディ、さらにどんな荒地 でも走破できるよう各種改造・調整が施され、その加速性能は他の三台の追随を許 さなかった。 一方のれいむはスピードこそ出ないものの、通常のすぃーの倍近い大きさを誇り、 おちびちゃんをたくさん乗せて走り回れるようになっていた。 れいむはたるんだ体を右に、左にと巧みに動かしながら、重心を移動させてすぃー を操作する。風を切って走るすぃーの上でたるんだ達磨が「ぶりん!ぶりぶりぶり りん♪ぶりーん★」と踊る様子は、後方を走るまりさを思わず失笑させた。 「でいぶはかぜ!!でいぶはかぜになっだのよおおおおおお゛!!!」 その後方からちぇんが専用すぃー「ファーン?」がやってくる。 ちぇんのすぃーはれいむ同様、体重移動によって操作するタイプであり、小回りの 効く、軽快な機動性が売りだった。「ふぉるねうす」ほどの加速性能はないが、そ の分軽量で、海氷や新雪の上でもある程度安定した走行が可能だった。 三台のすぃーは、海鳥が集まる岩場を目指した。 岩場にいたのはユキドリだった。ユキドリはハトよりやや大きいくらいの真っ白な 鳥で、沿岸域の魚やアミを捕食して暮らしている。この時期ユキドリは南極大陸沿 岸の岩場に巣を作り、卵を産む。 その上空にはユキドリを狙うトウゾクカモメが乱舞していた。この時期の亜南極域 は海鳥があちこちで営巣しており、アデリーペンギン、ナンキョクトウゾクカモメ、 ユキドリの巣が近接して形成されていた。ペンギンなどは巣の材料となる小石をあ ちこちで奪い合っている。 珍事としては、ナンキョクトウゾクカモメがその餌であるはずの、ペンギンの卵を 抱卵して孵化させたという記録も残っている。これも、この巣の密度と、重複した 行動圏が生んだ一つのエピソードであろう。 また露出した大地には、コケや地衣類が生え、中にはイネ科の種子植物らしき草も 点々と生えていた。 このユキドリ、そしてユキドリを捕食するために集まるトウゾクカモメの糞が地面 に滋養をもたらし、この不毛な大陸の端っこに緑をもたらしているのだ。 三匹は颯爽とすぃーから降り、まずはこの草やコケを食べてみた。 「むーしゃ、むーしゃ、それなりー…」 二匹ともすっかり人間の食物の味に慣れてしまっていたが、今更文句は言えなかっ た。せっせと口の中や、まりさの帽子の中に植物を地面から引っぺがしては詰め込 んでいく。 「ゆ~…これだげじゃあ、おぢびぢゃんゆっぐぢでぎないよ…」 れいむはユキドリの巣に目をつけた。周囲にはトウゾクカモメの巣もあったが、 より体の小さいユキドリの方が与しやすいと考えたようだ。 「そろーり、そろーり…」 ぼよんぼよんと跳ね、ユキドリの巣に接近するれいむ。 「でいぶとおぢびぢゃんのためにゆっぐりたまごさんはいただくよ!!ありがだ ぐおもっでね!!!」 まりさはかわいそう、と思ったが、おちびちゃんと自身の空腹に耐えられないれい むはためらわなかった。 「どりざん、ゆっぐりでいぶたちのごはんざんになっでね!!!」 言うが早いか、体当たりを仕掛けて親鳥を追い散らす。親鳥は真っ白な体をいっぱ いに広げて抵抗したが、このサイズの、それも防寒服を着込んだれいむの前では無 力だった。そして、巣の中の卵を口の中にしまいこむ。 ユキドリは卵を一つだけ産卵し、そしてそれを40~50日かけて暖め、孵化させると 言われている。この極地という苛酷な環境下では、数少ない卵を大事に育てるしか とるべき手段がないのであろう。 「ゆふふ、まだまだいただぐよ!!まりざもてつだっでね!!!」 れいむはユキドリの巣を回り、片っ端から卵を奪っていった。生き残るためには手 段は選べない。それはユキドリの側でも同じことであり、何匹か、必死の抵抗を試 みた親鳥がいたが、上空から隙を狙っていたトウゾクカモメに次々と襲われ、真っ 白な羽と赤い染み、そして誰もいなくなった無残な巣だけが残された。 もうまりさの帽子もれいむの口の一杯だった。それでも、今まで食べていた量に比 べると足りなかった。しかし、もう太陽は傾き、タイムリミットが迫っていた。 長い長い極地の夏の昼が終わり、夜が迫る。 夜間にこの過酷な環境の大陸ですぃーを走らせるのは自殺行為と言えた。 ちぇんはありすとの間に二匹しか子がいないため、まりさたちよりも少ない卵やコ ケで満足していた。しかし、まりさとれいむが苦労して集めた餌は、おちびちゃん 全員のおなかを満たすには足りなかった。 観測基地に向けてすぃーを疾走させる三匹を、横から夕日が真っ赤に照らす。 ふと、太陽が今にも沈もうとしたそのとき、夕日が緑色になった。 グリーンフラッシュと呼ばれる現象である。 グリーンフラッシュは太陽が沈む直前に緑色の閃光を放つ現象のことで、普段は大気 中で散ってしまっている波長の短い光が、大気の透明度など様々な条件が重なった時 に地上まで届く現象のことである。 ほんの数秒だけ、緑色の淡い光が、この無人の大陸を照らす。 「おひさまがみどいいろなんだよ~!!分からないよ~!!」 まりさはグリーンフラッシュに見入った。 こんなにゆっくりできないおそとなのに、なんでこんなにきれいなんだろう… 一方、れいむもグリーンフラッシュに驚き、そして怒り狂った様子で猛然と吼えた。 「ぢょっどだいようざん!!!みどいいろはゆっぐりでぎないよ!!!にーぴーから ーはじね!!!せーさいっずるよ!!!みどりじね!!るいーじじね!!!」 沈み行く太陽はそんなれいむの罵声を相手にしようともせず、静かに沈んでいった。 「ゆええええん!!!くさしゃんにがいいいい゛!!!」 「おいじくないよおおおおお!!ゆっぐりできないよおおおお!!!」 「まずっ!これめっちゃまずっ!!」 「味のりぐるきっくやあああああ!!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおお゛!!!」 新しく生まれた赤ゆたちは、人間の食物を食べて育ったため、両親が野外でとってき た餌を受け付けることができなかった。 「ゆぎいいいい゛!!!なんでだべないの!!!ごはんざんだべないどゆっぐりでぎ ないでじょおおおおおお゛!!!」 「うるじゃいよ!!!びゃきゃなおやははやくあまあまもってきちぇね!!!」 「たきゅさんでいいよ!!!」 「なんきょくいちごう!!!ゆっくりちてるひまあったらおいちいごはんしゃんさが ちてこい!!みゃみゃ!おみゃえもだ!!!」 「ゆぎゃあああああ!!!どぼじで!!!どぼじでぞんなにわがままなのお゛!!」 れいむは焦っていた。このままごはんさんを食べなければ、せっかく産んだおちびち ゃんが永遠にゆっくりしてしまう。それはたくさんの子供たちに囲まれることを特別 視するれいむ種にとって、想像するのすら辛いことだった。 れいむはコケを噛んで軟らかくし、なんとか赤ゆたちに食べさせようとした。 「いいがらだべなじゃい!!!ゆっぐりでぎなぐなるよ!!!」 「たまごしゃんまっず!!!」 一匹の赤まりさが、れいむたちが苦労して取ってきたユキドリの卵をぺっと吐き出す。 潰れた黄身が床に歪な楕円を描き、喚き散らす赤ゆたちのちーちーによって汚れてい った。れいむの沸点は近づいていた。 だが、そのとき、 「ゆゆ!たまごしゃんよりもいもうちょのほうがおいちそうだよ!!」 がぶ 怒鳴り散らすれいむの後ろで、一匹の赤ゆが妹に噛み付いたのである。 「ゆぎ!!?やべでね!?まりちゃ!!なにちゅるの!?きゃわいいれいみゅにかみ ちゅかないでにぇ!!」 だが、赤まりさは力に任せて、赤れいむの頬を食いちぎり、咀嚼した。 「むーちゃむーちゃ…ちあわせ~!!!」 たった一日絶食しただけ。 だが、それは急激に成長する時期にあたる、赤ゆたちには耐え難い苦痛だった。 一般的に赤ゆから野球ボールぐらいまでの時期のゆっくりの成長は急激であり、指数 関数的に成長する。その後、成長速度は対数関数的に変化するのだが、指数関数的に 成長する期間の餌料転換効率(食べた餌の何パーセントが成長に費やされたか)は非常 に高い値を示すことが知られている。 この成長期のゆっくりにとって、一日とは言え、絶食は危険であった。 そして共食いが始まった。 「ゆゆ!れいみゅのいもうちょおいちいよ!むーちゃむーちゃちゅるよ!!」 「やべで!おねえぢゃんやべで…ゆんやぁあああああああ゛!!!」 「いもうちょのおべべきちゃないけどおいちいよ!」 「ゆげっ…ゆ゛!ゆ゛!」 それは共食いというよりは、先に生まれてきた大きな個体が、まだ幼い赤ゆたちをむ さぼり食らう一方的な虐殺に近かった。 「でょ!!ぢょっどなにやっでるのおおおおおお゛!!!ゆっぐりごろじはゆっぐり でぎないでじょおおおおおお゛!!!」 れいむの雄叫びに、うつらうつらしていたまりさも飛び起きた。 「おじびぢゃああああん!!!ゆっぐりごろじはゆっぐりでぎないよおおお゛!!」 「ゆきゃきゃ!!!れいみゅにたべられるなんちぇ、ほきょりにおもって…」 ぶちゅ 次の瞬間、まりさが目にしたのは、妹たちをむさぼり、得意になる赤ゆたちを潰した れいむの姿だった。 「ゆ゛…ゆゆ゛…きゃばいい…れい…が…なんじぇ…」 潰された赤れいむが動かなくなると、止まっていたゆっくりたちの餡子脳がやっと動 き出した。 「ゆっぐりぎょろちだああああああああああ!!!」 「ゆっぐりできにゃいんだじぇえええ!!!」 さっきまで自分たちが何をしていたかも忘れて逃げ出す、赤まりさと赤れいむ。 「いもうどだぢをごろじだげずはじね!!!」 「ぶぎゅ!!!」 「ぶぽっ!?」 妹をむさぼっていた赤ゆたちは一匹、また一匹とれいむに殺され、残ったのは、あん よを齧られて動けなくなった赤ゆ一匹と、何とか難を逃れた三匹の合計四匹だった。 「ゆわああああああああああああああああああああああああん!!!」 れいむは号泣した。 たるんだ頬をぷーるぷーると震わせ、目と口から液体を振りまいて泣くれいむ。 その姿は薄闇の中で、ホラー以外の何者でもなかった。 もし、ここに小傘を連れてきたら、傘を放り出してでも逃げ出すだろう。 「なんじぇ!?なんじぇ!?どぼじでじんでれらでいぶがごんなめにいいい゛!!! ゆがあああああ゛!!!ゆばばああああああ゛ん!!!ぶばああああああああ゛!!」 子供たちのために苦労して取ってきた餌を拒否され、挙句共食いを見せ付けられ、自 分で産んだ赤ゆを自分で処分しなければならなかったのだから。 まりさは不思議と涙は出なかった。 ただ、久しぶりに、れいむに同情した。 れいむが泣き止む頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。 「…まりさ…」 れいむはたるんではいるが、疲れきった顔でまりさを呼んだ。 「…れいむは…新しいゆっくりぷれいすを探すよ…」 れいむは餌もなく、赤ゆの死臭が染み付いたこのゆっくりぷれいすに住むことはでき ない。そう思っていた。しかし、ここを離れてはいけない、まりさたちは飼育員に何 度もそう言われていた。 「…ゆっくりりかいしたよ…残ったおちびちゃんたちのために新しいゆっくりぷれい すを探すよ…」 このとき、まりさは今までのれいむの横暴への怒りを少しだけ忘れていた。 翌日、まりさとれいむ、子まりさと赤ゆ四匹、ちぇんとありす、そして二匹の子であ る子ちぇんが二匹、合計十匹のゆっくりたちは、三台のすぃーに分乗して昨日の岩場 へと向かった。 まりさは赤ゆたちが自分の生まれ育った場所を捨て、お外に出られるのか不安だった が、昨日の一件があったせいか、赤ゆたちは親に逆らおうとはしなかった。 本来なら、ありす専用すぃー「あらけす」があるはずなのだが、なぜか見つからなか った。「あらけす」はありす専用にカスタマイズされたすぃーであり、あにゃるで動 かすグリップには走行による振動が何倍にも増幅されて伝わるようになっている、恐 るべきすっきり使用のすぃーであった。 ありすは自分のすぃーがなくなっていたことを悲しんだが、幸い、ちぇんのすぃーな らば四匹乗せることができた。 「お兄さん…まりさはいつかきっと帰ってくるよ…」 ゆっくりたちは慣れ親しんだ観測基地を放棄し、昨日餌を漁ったユキドリが営巣して いる岩場へと向かった。 少しユキドリの数が減ってしまったが、そこには、相変わらずユキドリの巣が点在し ており、その上空をトウゾクカモメが舞っていた。 改めて見ると、ユキドリが営巣している岩場は氷河で削られており、大小様々な窪み がその表面に形成されていた。ここに観測基地から持ってきた毛布や、その辺のコケ などを敷き詰めれば、暖かいゆっくりぷれいすができるのではないか? まりさはそう考えた。 「とりざんゆっぐりででいっでね!!ごごはでいぶのゆっぐりぶれいずだよ!!!」 れいむはおうち宣言と同時に親鳥を巣の外にたたき出し、卵をくすねた。 れいむがおうち宣言をした巣は、うまい具合にくぼんだ岩に、大きな石が乗っかって おり、何箇所か隙間をふさぎ、出入り口を毛布で覆えば、外気をたやすく遮断できそ うだった。 「さ~、おじびぢゃんだぢ、ぎだないどりざんはおっぱらっだがら、あだらじいゆっ ぐりぶれいずにはいっでね!!!げっがいざんをはるよ゛!!!」 れいむはいそいそと持ってきた毛布を敷き、観測基地から持ち出した雑多な材料で新 しい巣の周りを覆っていく。危機に陥ったことで、眠っていた母性が目覚めたのだろ うか?れいむは子供たちのためにかつてないほどゆっくりしないで働いていた。 「ゆゆぅ~なんじゃかこのゆっくりぷれうしゅはくさいんじゃじぇ~!!!」 「でもとってもゆっくりできそうだよ!!!」 れいむが巣を作っている間に、まりさはすぃーから、一匹の赤ゆを下ろし、口の中に 入れて運んできた。 昨日、姉たちに食いつかれあんよを怪我した赤れいむである。 ちょっと前までの自堕落な生活からは想像もできないほど、れいむが献身的に介護し たことにより、傷はすっかりよくなっていた。この分ならば、あと数日もすれば這い まわれるようになるだろう。 「おい!なんきょくいちごう!!ここはちゃむくてゆっくりできにゃいぞ!!ぽかぽ かなあったかぷれいちゅにちゅれてけ!!きゃわいいきゃわいい…?」 まりさは最後まで言わせず、赤れいむを口から取り出して、岩場に置いた。 夏の日中であるため、気温は数度はあるため、凍死することはない。しかし、防寒服 のない赤ゆたちには、岩場の上で南極の風に曝されるのは耐え難い苦痛だった。 「ひゃぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!おい!れいみゅをたちゅけろ!!」 「口の聞き方の出来ていないおちびちゃんはゆっくりできないよ。反省するまで、そ こでゆっくりしていってね!」 「ゆっぐりできにゃいいいいいい゛!!!」 まりさは昨日のれいむの子供たちへの献身ぶりを見たことで、閉ざされていた心が少 しだけ開きかけていた。だから、暴言を振るう子供たちを教育し、立派なゆっくりに しようとし始めたのだ。兄さんが帰ってきた時に、みんなで歓迎できるように。 「なんぎょくいちごう!おねがいたじゅげでえええ!!!ちゃむいいいい゛!!!」 「なんきょくいちごうってだれ?まりさはまりさ、ぱぱだよ!」 「しょんなのどっちでもいいきゃらはやくぽかぽかあああああ゛!!!」 まりさは喚きたてる赤れいむを静かににらみつける。躾は根気の勝負なのだ。 赤れいむは岩場の上に置かれた当初こそ、どこで覚えたのか首を傾げたくなるほどの 罵詈雑言をまりさに浴びせ続けた。だが、所詮は、母親の保護下から出たことのない 赤ゆである。ものの十分もしないうちに、赤ゆの根拠のない居丈高さは砕け、まりさ に泣きながら謝り始めた。 「ゆっぐ…ゆっぐ…ごめんにゃしゃい…たちゅけてぴゃぴゃ…」 まりさは少しだけ笑顔になった。やっぱりまりさの子供なのだ、ちゃんと躾をすれば きっといい子に育つ。もう少しの辛抱だ。 「聞こえないよ…悪いことしたから謝っているんだよね?何をしたからぱぱに謝って いるの?」 「ゆゆ…れいみゅは…ゆゆ~んおちょらをとんでるみちゃ~い…」 実際に赤れいむはお空を飛んでいた。せっかく怪我が回復しつつあった上に、まりさ による躾の成果が見られつつあった赤れいむは、トウゾクカモメにくわえられ、どこ かへ連れ去られてしまった。そのまま雛鳥の餌になるのである。 「おぢびぢゃあああああああああああん!!!なんじぇええええええ゛!?」 それは昨日今日と、自分たちがやったことが裏返しになったに過ぎない、自然界では ありふれた一幕だった。 「ありすたちのとかいはなおうちの完成よ!!」 「おうちのなかぬくぬくなんだね~、分かるよ~!!」 こうして、ゆっくりたちは、ユキドリの営巣地を奪取することで、海岸沿いの日当た りの良い斜面に新しいゆっくりぷれいすを建設した。 その夜、狭い巣の中で、まりさとれいむ、そしてその子供たちは身を寄せ合い、久し ぶりに家族の暖かさを噛みしめながら眠りについた。 翌日、この季節にしては寒い日だった。 風はなく、穏やかだが、気温は−5℃まで下降した。 疲れて昼まで寝てしまったまりさたちはけたたましい鳴き声で目が覚めた。 餌をとるために沖合いの海にでかけていたアデリーペンギンたちが大慌てで海から 出ようとしている。 アデリーペンギンは産卵後、雄が卵を抱卵し、その間、雌が沖合いの海で餌をとる。 しかし、そこには、ペンギンを狙うヒョウアザラシ、そして南極の海最強の捕食者と されるシャチが待ち受けているのだ。 今回はシャチに襲撃されたようで、懸命に海氷に向かって泳いでいたペンギンがまた 一匹、シャチに襲われて丸飲みにされる。その間に、ペンギンたちは次々と海中から 脱出しては、岩場へと帰ってきた。 「ゆゆ!?ペンギンさんがいっぱいだよ!!」 まりさはペンギンを知っていた。かつて飼育員が教えてくれたのだ。南極のペンギン は人を恐れないため、近くで観察することが出来た。氷の海でゆっくりしている生き 物、それがゆっくりたちのペンギンに対する認識だった。 「きょうばべんぎんざんをやっつげで、おぢびぢゃんだぢにげんぎになっでもらう よ!!」 そう言い出したのはれいむだった。昨日ユキドリを散々に追い払い、その巣や卵を奪 取したことで、れいむは捕食者としての自信を持ち始めていた。 まりさもそれに賛同した。なんとしても栄養価の高い餌を子供たちに食べさせること で、少しでも早く、自力で餌が取れるサイズにまで成長してほしかった。 成体ゆっくり四匹と子まりさが三台のすぃーに分乗して、ペンギンの営巣地に近づく。 アデリーペンギンは体長70cm前後、体重は4−5?の中型ペンギンである。 いくら成体ゆっくりとは言え、まともに相手をすることができないサイズである。そ こで、ゆっくりたちはすぃーに乗ったまま、ペンギンを轢き殺す戦術に出た。 「ゆっぐりじねええええええ゛!!!」 れいむは巣に一羽残っていた雛を狙う。通常、巣に親鳥が不在ということは、両親が 捕食されて死んだことを意味していた。 ゴリッ 既に体重が3kg以上にまで増えたれいむがすぃーに乗っているのだ。雛鳥の脆弱な骨格 ではその衝撃に耐えることが出来ず、ペンギンの雛鳥は首の骨が折れて死んでしまった。 「ゆぶぶ、ごれもでいぶのがばいいがばいいおぢびぢゃんだぢがいぎのびるだめだよ。 わるぐおもわないでね。ぶぶぶ、づよぐっでごめんでぇ~♪」 その頃、まりさやちぇんは、すぃーで親鳥に体当たりしたものの、体当たりの衝撃で一 羽のペンギンが胃内容物を吐いてしまったほかは、何の打撃も与えられなかった。 この時期は、まだ孵化するには早い時期であり、雛自体が少なかった。そして、親鳥は 海中深く潜水するために、通常の鳥類とは違い、その骨は密度が高く、頑丈な骨格を形 成していた。 れいむは血に染まった雛の死体をすぃーに乗せ、次の獲物を探す。 「ゆゆ!?」 そのとき、成体ペンギンによってれいむは囲まれた。 「どいでね!!でいぶはだべられないべんぎんざんにようはないよ゛!!!でいぶの え゛んじぇる゛ずまいる゛にみどれるのはじょうがないげど、どいでね!!!ぶーで ほーでごめんね゛~!!!ぶっ!!!」 次の瞬間飛んできたのは、アデリーペンギンの翼による平手打ちだった。 ペンギンはかわいらしい、というイメージしかないが、実際は強力な海中の捕食者で ある。かつて、コウテイペンギンは捕まえようとする漁師たちをその力でてこずらせ、 犬を翼の一撃でノックアウトしたという。 アデリーペンギンにそこまでの力はないが、れいむの歯は衝撃で砕け散り、口内は切 れ、餡子の味がじんわりとれいむの口に広がった。 「ゆげえええ゛!!!でいぶのえべがんどなは…ゆべっ!!!」 次から次と、ペンギンによるビンタが続く。敵討ちなのだろうか?最早ペンギンによ るれいむのリンチになっていた。 「ゆべ!!!やべ!!!やべで!!!でいぶ!!!ぎでいな!!!でぶっ!!!」 歯が折れ、餡子を吐き、頬はずたずたになっていった。 「ゆびゃああああ゛!!!」 一匹のペンギンが何を思ったのか、れいむの目をくちばしでつつく。れいむの右目は 簡単に潰れてあたりに透明な液体を散らした。 「ゆぎゃああああああああああ゛!!!でいぶのみやびなおべべべっ!!!」 そしてビンタが続行される。 思わぬペンギンの反撃によってぼこぼこにされていたのはれいむだけではない。 「ゆっぎゃああああ゛!!!ばでぃざの…ばでぃざのあま゛あま゛なまずぐがあああ あああ゛!!!」 「ぼうじざんなぼっでね!!わがらないよおおおおお゛!!!」 「あでぃずの!!あでぃずのどがいばな!!ぶぼおおお゛っ!!? まりさはビンタによって歯を半分ほどやられ、その肌は乾燥と相まって所々、切れて 餡子がにじんでいた。 ちぇんは帽子をずたずたにされ、尻尾も片方が途中から食いちぎられている。 ありすは髪の毛をくちばしでむしられ、金髪はまだらはげとなり、左目は潰れかけ、 視力を喪失していた。 子まりさだけは、背丈が小さいことが功を奏し、ビンタをされずに岩陰に隠れること に成功していた。 「ゆっわあああああ゛!!!もうやじゃ!!!おうちがえるっ!!!」 「どぶぉじで!!!でいぶがごんなべにいいいいいいいい゛!!!」 ゆっくりたちはペンギンにボコボコにされ、ほうほうの態ですぃーに乗り込み逃げ出 した。当初の捕食者として自信は、もう欠片ほども残っていなかった。 逃げるゆっくりたちを、ペンギンは翼をぱたぱたと動かしながら、追撃してくる。 何度もつつかれたまりさの帽子はもうぼろぼろで、先端に穴が開いていた。 「ゆええええ゛!!!こにゃいでええええ゛!!!」 すぃーとペンギンたちとの距離が離れると、ペンギンたちは満足したように鳴き、 よたよたと巣へ帰っていった。 「ぺんぎんさんは…ゆっくりできないわ…とかいはじゃないわ…」 「なんでぢぇんがごんなべに…」 「ぶゅえええええええん゛!!!でいぶのおべべがああああ゛!!!」 「ばでぃざは…きんばっじ…おぼうじ…ゆっぐじできな…」 金バッジは野生で生き残るのに何も役に立たなかった。それとも、そもそも南極は 饅頭が生き残れる場所ではなかったのだろうか? やっとゆっくりたちが新しい巣まで逃げてきたとき、そこにあったのは新しい地獄 だった。 「おぢびぢゃあああああああああああああんっ!!!」 誰も守るもののいない巣をトウゾクカモメの集団が襲ったのだ。そもそも、ペンギン、 ユキドリ、トウゾクカモメがこの時期、同じような場所に営巣するのは、彼らが新し い命を育むことができる場所が限られているからである。そして、彼らはその中で、 常に天敵を警戒しながら生きていた。少しでも気を緩めれば、卵は、雛は、食べられ てしまうのである。 「やべで!!!どりざんやべでね!!!」 まりさがすぃーを降り、必死に巣へと跳ねていく。その後を子まりさが追った。 トウゾクカモメによって巣は荒らされ、貯めておいた食糧は全て持ち去られてしまっ た。三匹いた赤ゆは巣の奥に固まっていたおかげか、連れ去られてはいなかったが、 傷だらけだった。 「ゆんやあああああ゛!!!」 「ぐるなあああ゛!!!そりょそりょほんきでおぎょるよおおおおお゛!!!」 「ゆっぴゃああああ゛!!!まりちゃのこうきなおがおがぁあああああ゛!!!」 必死にぷくーっで応戦する赤ゆたち、だが、焼け石に水ほどの効果もなかった。 「おぢびぢゃんをばなぜえええええ!!!」 「いもうちょがらばなれろおおおお゛!!!」 「じね!!じね!!!おぢびぢゃんをゆっぐりざぜないくずはじね!!!」 まりさ、子まりさ、れいむが必死にトウゾクカモメに体当たりを繰り出す。 しかし、その度にトウゾクカモメは軽やかに攻撃をかわし、逆に子まりさの帽子を持 って飛んでいってしまった。 「ゆああああ゛!!!ばでぃざのおぼうじ!!がえじで!!!ばでぃざのわいるどな おぼうじいいいいいいいいい!!!」 だが、帽子が帰ってくることは二度となかった。 そのとき、両親が帰ってきたことに赤ゆたちは気づいた。 「ゆゆ!?ぱぱとみゃみゃが帰ってきちゃょ!!!」 「たちゅけて!!なんきょくいちごう!!!」 「もうこんなばかなとりしゃんなんてすぐやっちゅけちゃうよ!!!」 安心したのか、一匹の赤まりさが巣から出てくる。 「まりちゃはここだよ!!!はやきゅたちゅ…ゆゆ~!!おちょらをとんでるみちゃ い~!!!」 そして、ずっと巣を突っついていたトウゾクカモメの一羽のくちばしに捕らえられ、 そのまま空へと消えた。 「でいぶのがばびびおぢびぢゃんがあああああ゛!!!」 「ゆわああああ゛!!!おぢびぢゃんでてきちゃだめえええええええ゛!!!」 不運は続いた。絶叫しながられろれろ舌を動かすれいむ。その舌をトウゾクカモメが 捕らえたのである。 「ゆえええええええ゛!!!やへへへ!!!ふっふりふぃふぁいへははひへへ!!!」 何やら意味不明な絶叫を繰り返すれいむ。 しかし、トウゾクカモメはあらん限りの力で、れいむの舌を引っ張った。 「ゆえええええええええ!!!ゆひいいいいっ!!!」 ぶちっ 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 れいむはショックのあまり、白目を剥いて倒れた。 トウゾクカモメは舌をくわえたまま自分の巣へと飛び去ってしまった。 一方、ありすとちぇんの巣では、子ちぇんはトウゾクカモメに持ち去られたのか、一 匹しか姿が見えず、その一匹もあんよや目を食いちぎられ、ひどい有様だった。 「ゆぴいいいいいいい゛!!!いじゃいよ~!!わきゃらにゃいよ~!!!」 「ごのいながものおおおおお゛!!!」 「がえぜ!!!ゆっぐりじないでおちびぢゃんをがえぜ!!!」 だが、トウゾクカモメは残った一匹の子ちぇんをくちばしに挟み、飛び去ってしまっ た。 「いじゃああいいいい゛!!!おちょらとんじぇるみじゃいいいいいいっ゛!!!」 「おぢびぢゃんをがえぜ~!!!わがるがよ~!!!」 ちぇんは砂糖水を目から振りまきつつ、必死にすぃー「ファーン?」でトウゾクカモ メを追う。ちぇんは「ファーン?」の軽快さを生かして海氷上を全速力で突っ走るが 鳥に対して速度差は明らかだった。 「ゆああああああああ゛!!!おぢびぢゃあああああん!!!どりのぶんざいでええ ええ゛!!!」 ちぇんは必死にすぃーを走らせる。「ファーン?」の軽さなら比較的薄い海氷の上も 走行可能である。しかし、タイドクラック−露岩近くで潮汐によって生じる海氷の割 れ目−の前では、軽量も最高速度も関係なかった。 ちぇんは子ちぇんを連れ去ったトウゾクカモメを追うのに夢中になるあまり、上ばか り見て、目前にせまるタイドクラックに気づかなかった。 「おぢびちゃあああああ゛!!ああっ!?」 ガツンという音と共に、「ファーン?」はタイドクラックにはまった。 「ゆあああああああ゛!!こおりのわれめさんでダンスっちまった~!!!わがらな いよぉ゛~!!!」 衝撃ですぃーから放り出されたちぇんは氷の割れ目の壁を滑走する。ちぇんはなんと か残された一本の尻尾で壁面の出っ張りを掴むが、冷たい氷をいつまでも掴んでいる ことは不可能だった。 「だじゅげで!!!だじゅげでありずううう!!!ばでぃざあああ!!!でいぶうう う!!!…ゆ゛!?」 そこに上から自身のすぃーが落ちてくる。 「やべで!!ごないで!!!ゆっぎゃああああ゛!!!」 ちぇんとすぃーはそのまま氷の下、水深数百メートルはある冷たい海に落下し、二度 とあがってくることはなかった。 やっとトウゾクカモメの襲撃から解放されたとき、そこにはぼろぼろの毛布とトウゾ クカモメの糞と羽が残った巣、まりさ、ありす、舌を失ったれいむ、帽子を失った子 まりさ、そして傷だらけの赤ゆ二匹と二台のすぃーだけが残された。早くも、ゆっく りたちの新しいゆっくりぷれいすはゴミ捨て場のようになっていた。 「…おにいさんといた…ゆっくりぷれいすにかえりたいよ…」 子まりさのつぶやきに異議を唱える声はなかった。 まりさたちは一日にして、新しいゆっくりぷれいすを放棄して、観測基地に戻ること にした。気圧が下がりつつあったことなど、まりさたちは知る由もなかった。 二台のすぃーに分乗して、観測基地を目指すまりさたち。 幸い、太陽はまだ高く、日が暮れる前に観測基地に着けるはずだった。 ユキドリたちがいる岩場からの帰り道、背丈の低いゆっくりたちには観測基地の屋根 やアンテナが物陰に隠れてしまって見えない。そこで、まりさは前回先が鋭く尖った 氷山を目印にして帰っていた。 「ゆゆ!?」 だが、今日は氷山がたくさんあって見分けがつかなかった。 「ゆゆ~?なんだかいつもとけしきさんが違うよ…」 蜃気楼である。 風がない、穏やかな日ならば、南極では度々発生する現象である。 蜃気楼によって、氷山はひっくり返ったように空へと伸び、まりさたちは形が変わっ てしまった氷山の前に道を誤った。そして、より気候の厳しい内陸部へとすぃーを走 らせた。 そしてその夜、雪が降った。 ここがどこかも分からないまりさたちは、氷原の真ん中で、岩と氷の間の小さな窪地 に避難していた。申し訳程度に毛布とすぃーで壁を作り、外気を遮断しようとするが、 あちこちの隙間から、風が、そして雪が入り込んできた。 冬のブリザードとは比べ物にならないが、それでもゆっくりたちにとって、横殴りに 吹き付ける雪は脅威以外の何者でもなかった。 吹き付ける風と表面に付着した雪が体温を容赦なく奪っていく。 肥満した体のせいで防寒服がぴちぴちだったれいむは、はみ出た部分が凍傷になり、 感覚を失った。ありすはペンギンやトウゾクカモメとの戦いで防寒服に穴が何箇所 か空いてしまい、そこから凍傷が広がりつつあった。 そして、防寒服のない赤ゆたちは今にも永遠にゆっくりしてしまいそうだった。 「んん~!!!んんんん゛!!!」 舌を失ったれいむは、今にも死にそうな赤ゆをぺーろぺーろしてやることも出来ず、 ただ涙を流していた。 「おちびちゃん、しっかりしてね…ぺーろぺーろ…」 「まりさのいもうと、げんきになってね…ぺーろぺーろ…」 だが、まりさたちは、ぺーろぺーろすることで、赤ゆの表面に水分が付着し、それが 夜間の低温、吹き付ける風によって冷却され、赤ゆの体温を結果的に奪っていること など気がついていなかった。 その後方で、ありすはぐったりしていた。番と子供たちの死を目にしたことで、精神 的に追い詰められており、凍傷で感覚がなくなった背中と頬は、ありすに忍び寄る死 神の鎌のきらめきを予感させていた。 れいむは動きが鈍くなったもみあげで、なんとか防寒服から頬を出し、元気のない赤 ゆたちにすーりすーりをする。 しかし、れいむの頬も、赤ゆたちの表面も凍傷で堅くなり、ごりごりと表面が削れた だけだった。 「…ゆぴゃああ…いじゃいよ…みゃみゃいじゃいよ…すーりすーりはゆっぐりできじ ゃい…」 れいむはすーりすーりを止め、ただ涙を流した。 献身的に赤ゆの世話をしていた三匹だったが、夜が深まり、疲れきっていた三匹はい つのまにか眠りこけてしまった。 夜、ありすは一人、寝床を離れた。 もう長くはない。その体を蝕む凍傷の具合から自分が動けなくなるのはそう遠いこ とではないと認識していた。どうせもう、愛したちぇんも、我が子もいない。あり すはせめて誰の迷惑にもならずに永遠にゆっくりしようと考えていた。 「さようなら、まりさ、れいむ…生まれ変わったら…また一緒にみんなでゆっくり しましょう…」 ありすはつぶやくようにそう二匹の寝顔に語りかけると、冷たい体を必死に動かし て、雪の舞い散る氷原に消えていった。 後日、ありすの遺骸は、飼育員と行ったことのある思い出のクジラの死骸、氷原に 残る骨の楼閣の中で発見される。その顔はとてもゆっくりしていたという。 翌朝、雪は止んでいたが、二匹の赤ゆは永遠にゆっくりしていた。防寒服のない状 態で、ただでさえ脆弱な赤ゆが、悪天候の日に南極の夜を越せるわけがなかったの である。 「んんんんん゛~!!!」 れいむは声にならない声をあげて泣いた。 「おぢびじゃああああああん!!!」 「もっど!…ゆっぐりじで…ほじがった…!!!」 赤ゆだったものは、黒ずんだ氷の塊、餡子味のアイスキャンディーになっていた。 そして、ありすもいなくなっていた。 「がえりだいよおおおおお!!!ぽーかぽーかなゆっくりぷれいすにがえりたいよ ~!!!ゆああああああん゛!!!」 観測基地での何不自由ない生活を思い出して泣く、子まりさ。 その金髪はぼろぼろになり、凍傷になった部分の皮が崩れて十円ハゲが出来ていた。 「…今日こそ…おにいさんのゆっくりぷれいすに帰るよ…」 まりさは「ふぉるねうす」の冷たくなったグリップをあにゃるでそっと抱え込んだ。 冷たいかどうか、その感覚は分からなくなり始めていた。 れいむの「ぶーねい」にはれいむと子まりさが乗る。 二台のすぃーはもうどの方角にあるのかも分からない観測基地に向けて走り出した。 まりさはとりあえず高いところに行き、海の方角を知りたかった。海に出れば、観 測基地のだいたいの方向が分かるのではないかと考えていた。 二台のすぃーに乗ったゆっくりたちは必死に海の方角を探した。そして、地面への 注意はおろそかになった。 昨日は雪だったのだ。当然、新雪で覆われたヒドゥンクレバスの存在に気がつくべ きだった。 「ゆゆ゛!!?」 ヒドゥンクレバスに落ちたのはれいむと子まりさの乗った「ぶーねい」だった。 すぃーはそのまま静かに、数十メートルはある割れ目に落ちていき、しばらくして 派手な破壊音が聞こえてきた。 「れいぶうううううう゛!!!おじびぢゃああああん!!!」 急いで引き返すまりさ。 「んー!!!んー!!!」 まりさの目に映ったのは、必死に歯とおさげでクレバスに落ちないよう氷に食らい つく子まりさと、そのあんよに歯のほとんどなくなった口で食らいつくれいむの姿 だった。どう見ても、肥満体のれいむを支えるだけの頑丈さは、子まりさにはなく、 そのあんよにはれいむの数少ない歯が食い込み今にも引きちぎれそうになっていた。 「んんんんんん!!!」 涙目で助けを求める子まりさ。まりさは必死に子まりさの髪の毛に食らいつき、引 っ張りあげようとする。 びちびちびち… 「んんんんんんん!!?」 風雪でもろくなった髪の毛はあっさりと切れてしまい、なかなか子まりさを持ち上げ られない。いや、まりさには子まりさとれいむを一緒に持ち上げるだけの力はなかっ た。人間でもなければ、救助は不可能だったのである。 「んー!…んふー!…」 落ちまいと必死に食らいつくれいむ。 まりさは必死に考えた。どうやったら二人を助けられるのか、それとも、れいむを見 殺しにするべきなのか… まりさは今までのれいむの行動、あまりにも強い母性から一つの結論を導き出した。 「れいむ!!」 「んー!!んふー!!」 この間にも子まりさのあんよはみちみちと裂け始め、餡子の色が見え始めている。 「大丈夫!おちびちゃんたちはちゃんとゆっくりさせるから、れいむは心配しないで ゆっくりしてね。」 まりさは帽子の中から、雪で錆び付いたカッターを取り出すと、れいむに投げつけた。 かったーはれいむの頭に刺さり、そこから横に体を抉るようにして、クレバスに落下 していった。 「ほほひへっ!!?」 どうしてそんなことするの? そう言いたかったのだろうか? 子まりさから口を離したれいむは真っ逆さまにクレバスを落ちて行った。 れいむには信じられなかった。あんなに愛し合ったまりさが凶行に及んだことに。 子供が残っている以上、れいむは生きて子の面倒を見なければならないはずだった。 自分なしで子供たちがゆっくりできるわけがない。 だが、まりさにしてみれば、これはれいむが何を望んでいるか、考えての行動だっ た。れいむに対する愛情なんてものは、観測基地から人間がいなくなって間もなく 失ってしまったが、土壇場でれいむが見せた母性に心打たれ、ここまで子供たちの ために頑張ってきた。つらいけど、きっとれいむは分かってくれる。 まりさは子まりさを引き上げると、 「れいむ!ゆっくりしていってね!!」 もう一度クレバスの奥に消えたれいむに最後の挨拶をした。そして、まりさは子ま りさを乗せてすぃー「ふぉるねうす」を走らせた。 まりさが考えたれいむの最後の思いをかなえるため−子まりさがゆっくりできるよ うにするためには一刻も早く観測基地へ帰らなければならなかった。 一方、れいむはクレバスの奥に叩きつけられ、肥満していた体は見るも無残に四散 していた。お飾りも、目玉も、体もどこかへ行ってしまっていた。ただ、中枢餡が 機能を停止するには、少しだけ猶予があった。 れいむには分からなかった。おちびちゃんのために必死に生きてきた自分がなぜ、 今、冷たい氷の床の上で死に掛かっているのかを。 れいむは…ゆっくりしたかった…だけなのに… れいむは子供を守る、という点で無能ではなかったが、自身を省みることはなかっ た。そして、ここはほとんどの生物を拒絶する場所だった。 まりさはどこか軽くなった心ですぃーを走らせた。 後ろでは子まりさが裂けた傷口をぺーろぺーろしながら泣いている。 とても楽観できる状況ではなかったのに。 「ゆゆ!?」 そのとき、まりさは上空に見慣れたものを見つけた。 真っ赤な小型飛行機、かつて観測隊が撤収したときに使われた、観測船に搭載され ている軽輸送機だった。観測隊が帰ってきたのだ。 「ゆゆゆー!!!おにぃさああああああああああん!!!」 まりさはあにゃるを巧みに動かし、お尻をぷりぷりりんと動かしながらすぃーの速 度を上げる。 後方に乗っていた子まりさは無言で涙を流していた。それは嬉し涙だった。 「まりさだよおおおおおおおっ!!!まりさはここにいるよおおおおおっ!!!」 観測基地が見えてきた。 観測基地には一年ぶりに人間の姿があった。 そして見慣れた真っ赤な人間さんの空飛ぶすぃー−飛行機はもう目の前に。 目の前…? まりさは知らなかったが、そこは雪上飛行機の滑走路だった。 接岸した観測船から先行した雪上車隊が雪原を平らにして作った滑走路だった。 「ゆああああああ゛!!!どぼじでにんげんさんのすぃーがぶっ!!!」 まりさは雪上飛行機の着陸用スキーに潰されて死んだ。 まりさのすぃーは大破し、放り出された子まりさは顔面から雪に叩きつけられた。 子まりさが意識を失う前に見たのは、泣きながら走り寄って来る、あの飼育員の姿 だった。 後日談 飼育員の献身的な介護により、子まりさは回復した。 失った歯は差し歯を入れてもらった。れいむに噛み付かれたあんよは全快しなかっ たが、這って移動するくらいなら出来るようになった。 ゆっくりに基地内を無茶苦茶にされたことで、飼育員はこっぴどく怒られたが、そ もそも緊急事態だったこともあり、一人で大掃除をすることで赦しを得た。 そして、越冬後、飼育員は子まりさと共に赤い軽輸送機で基地を離れた。もう子ま りさは成体になっていた。 結局のところ、観測隊員たちの 「饅頭より新鮮な野菜が食いたい」 という意見によってゆっくりの食糧化計画は破棄され、その資金で野菜の室内栽培 が行われることになった。また、観測隊員の精神面のケアでは効果が見込めるとい うことで、少数のゆっくりを基地内で飼育することが提案された。 実際、何を、どれくらい飼うのかは、これから決まっていくだろう。 成体になったかつての子まりさは、飼育員の腕に抱かれながら、窓からの景色を眺 めていた。そこは、かつて、自分たちが必死に生きようとして、拒絶された真っ白 な大地だった。 まりさはその景色を美しいと思った。とてもゆっくりしていると思った。 誰もいないのに、みんな死んだのに、なんでこんなにゆっくりしているんだろう。 まりさはふと思った。 ひょっとして、誰もいないから、全て拒絶してしまうから、 この白い大地は美しく、とてもゆっくりしているのかもしれない。 完 神奈子さまの一信徒です。 雪降ってテンション高まって書いたんですが、思いのほか楽しんでくれた方がいた ようで嬉しかったです。南極の天候や生態系を調べるのに手間取り、遅くなりまし た。すみません。 また、的を得た助言や素敵な感想ありがとうございました。 仕事で忙しくなったため、感想を返すより先にこちらを書き上げました。 せっかくのコメントにお返事できなくてすみません。 ただ、皆さんの指摘や意見の中に後編に書こうと思っていたものや、使おうとした 小ネタ、これは別にいいかなと手を抜いた部分あってヒヤリとしました。 皆様の見識には頭が下がります。 でいぶネタに飽きていた方々にはゆっくりしていただけなかったようで、申し訳な いです。皆さんの感想やご助言を参考にし、どんなものを書いたら楽しいか考えな がら、また皆さんにお目にかかる機会を窺いたいと思います。 ありがとうございました。 挿絵 byM1 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る すべてはノンキな紅白饅頭の自己満足か・・・ -- 2020-06-21 16 14 40 ↓×4キモい -- 2013-04-10 15 50 02 むしろ、善良餡統を受け継いだ(これだけの極限状況でゲス化しなかった)まりさが生き残ったのは重畳 その素質を受け継がせたまりさが死んでしまったのは損失、だと思う ゲスは極限状況下では全滅確実だったし -- 2012-08-29 02 58 59 飼育員は撤退する時にクソ饅頭でいぶを潰しておくべきだったな -- 2012-07-13 19 22 40 れいむは結局根本的には何も変わらなかったな。 でいぶがいなけりゃ皆無事だったろうに。 -- 2012-01-29 00 18 14 子まりさが助かった事に対して強い憤りを感じるが それを抜かせばとてもよく出来たSSであり あの話をモチーフにしたのであれば多分子まりさは生き残るだろうなとは分かってもいた でも子まりさを生き残らせるのであれば金髪は落ち武者カットに、両目は抉られて、 舌とぺにまむは引き抜かれ、あんよは二度と動作しないくらにズタズタな状態にしてほしかった -- 2011-11-15 04 39 26 でいぶを最初に始末してればよかったのに -- 2011-09-12 08 43 25 罪過と報いが釣り合ってないぶん地獄で苦しんどけでいぶ! -- 2011-01-06 02 40 56 全部死ねばよかったのにね!残念! -- 2010-12-03 17 41 52 でいぶが居なければ食料も有ってゆっくりできただろうにな。 子供より自分が大事な母性(笑) 面白かったよー -- 2010-11-19 20 38 07 まりさを介抱するような連中は死んでしまえばいい -- 2010-09-23 04 06 04 おお、ぶざまぶざま(笑) -- 2010-08-25 16 28 53 れいむがでいぶになった時点で、どんな環境でも生き抜くのは無理だろ・・・ -- 2010-07-26 07 29 29 面白かった! -- 2010-05-25 03 23 33
https://w.atwiki.jp/chibikenkawiki/pages/18.html
喧嘩師を募集しています 自分が喧嘩師だ! 載せてくれ! という人はコメントをお残しください。 それなりに対応します。 全てのコメントは此処にお願いします 名前はコテハンでお願いします。 このサイト初めて見た。 -- £ローズ£ (2010-11-25 02 16 04) 喧嘩師よん♪よろしくねん(*´ω`*) -- £ローズ£ (2010-11-25 02 16 38) fm ちびちゃとでよく見かけるが、喧嘩師だったとは・・・。次喧嘩してるとこを見たら評価して追加するかもしれない -- 管理人 (2010-12-12 07 07 17) 酒さんが俺にくれた評価を 参考にしてみてくれ。 -- £ローズ£ (2010-12-19 09 08 26) 見かけたらよろしくww -- £ローズ£ (2010-12-19 09 08 37) 他人の評価はあまり信用出来ない。左京君の評価を見させてもらったが、あれは屑としか言いようがなかった。見かけた時に評価させて貰います -- 管理人 (2010-12-27 19 50 04) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2433.html
『電車を待ちながら』 30KB 制裁 いたづら 自業自得 野良ゆ 現代 13作目ましてこんにちわ、キャンセルあきです。 「いやあ、ありがとうございました」 「本当にまあ、危うく出発時間が遅れてしまうところだったね。ありがたいね。これ、お礼ね」 猛烈な残暑も過ぎた九月の終わり、人気の少ない田舎の駅の、そのホーム。 お兄さんと駅員のおじさんは、甘い珈琲を差し出して、ゆっくり対策課の駆除係に心から、 お礼の言葉を述べていた。 電車の待ち時間、線路上にたむろしている野良ゆっくりに気付いたお兄さんが 連絡を入れると、その駆除係は取るものも取り敢えず飛んできてくれたのだ。 線路の上に陣取って、電車を相手に「つうこうりょう」を要求していたまりさの親子は今、 ホームの喫煙コーナーで黒いシミにジョブチェンジしている。 「それじゃあ、野良ゆっくりどもの後始末はお兄さん達に御願いしますよ」 「私はゆっくり対策課じゃないんですが……まあいいです、承りました」 お兄さんは再び電話を掛けて、対策課の応援を頼む事となった。 そして、ホームのベンチに落ち着き、ホットのブラックコーヒーを啜っていた時の事だ。 「おにいさん、ちょっとれいむのはなしをきいてほしいよ!」 ベンチの下から、バスケットボール並みのサイズがある薄汚れたれいむと、そのおちびちゃんらしき 子れいむ、子まりさが合わせて1ダースほど、こーろこーろと現れた。 「ゆーんゆーん!」「おかあしゃーん、あみゃあみゃまだにゃにょ?」「ゆっくちしないではやきゅしちぇね!」 「おかあさん、このにんげんさんはゆっくりできるのぜ?」 中には、赤ゆ言葉もすっかり抜けた成体に近い子まりさまでいる。 どこをどう見ても、野良のしんぐるまざー一家であった。 電車を待ちながら キャンセルあき ■HR 議題:あいさつはだいじだよ! お兄さんの隣に座っている駆除係が、「処理しましょうか?」という目を向けてきたが、 お兄さんは軽く断ってれいむの相手をする事にした。 「どうかおにいさん、れいむたちをかい――」 「まあまあ話を聞く前に、まずは駆けつけ一坏からどうぞ」 じょぼじょぼ、と手にした「クソ苦いコーヒー」を親れいむに垂らすお兄さん。 「ゆ……?」 一瞬、何をされたかも分からずに固まる親れいむの表面に、ぞわりと血管のようなシワが浮く。 待つこと三秒。 「――ゆっぎぇえええええええええええっ!」 びったんびったんびったんびったん。 「お、おきゃあしゃんどうちたにょ!?」 「おかあしゃん、ゆっくちちてね! れいみゅがぺーろぺーろしてあげりゅからねええ!」 饅頭肌におぞましい浮腫を作ってのたうつれいむに、子ゆっくり達が駆け寄ったが、お兄さんの 飲んでいた「クソ苦いコーヒー」は、成体のれいむですら瀕死になる程のにがにがだ。 「ぺーろぺー……ゆぎゃ!」 「ゆ……れいみゅ? にゃんでれいみゅがえいえんにゆっくちしちゃってるのおおお!?」 コーヒーの染みた親れいむの肌をぺーろぺーろした赤れいむは、餡子を吐いて即死した。 「ゆっげ! おじびじゃ! おにいざん! どぼじでごんなごどをずるの!」 「挨拶も無しにいきなり要求から入るなんて、ゆっくりしていないゆっくりですから」 「ゆ、ゆがーん!」 ゆっくりしていないゆっくり――それはゆっくりにとって最大級の侮蔑の言葉である。 多大なショックを受けたれいむは、しばしの間、体を冒すにがにがの事も、最愛の おちびちゃんが永遠にゆっくりしたことも忘れて激昂した。 「れいむはれいむだよ、ゆっくりしていってね! ほらほら、れいむはゆっくりしてるでしょ! ゆっくりしてないゆっくりだなんていわないで、ゆっくりていせいしてね、ぷんぷん!」 「お兄さんはお兄さんです。ゆっくりしていって下さいね。本当にゆっくりしたゆっくりなら、 私に向って"のーびのーび"してくれますか?」 「ゆゆん! そんなことあさめしまえっ! だよ!」 れいむは体をうねらせてのーびのーびをした。 その間に、お兄さんは餡子を吐いてた赤れいむの残骸をナマモノ用のゴミ箱に放り込み、 代わりに甘いゆっくりフードを幾らか、子ゆっくり達に向ってばらまいた。 たちまち、ゆっくりできる匂いに群がる赤ゆっくり達。 「ほら、れいむはゆっくりしたゆっくりでしょおおぉ? おにいさんはていせいしてね!」 「……それなりにゆっくりしたゆっくりですね。認めますよ」 「それから、えいえんにゆっくりしちゃったおちびちゃんの、"しゃざい"と"ばいしょう"を ようっきゅっするよ!」 「その前によく見て下さい。おちびちゃん達はみんな、ゆっくりしてるじゃないですか」 「ゆ……? おちびちゃんたち?」 後を振り返ると、 「どうしたのおかあさん? まりさゆっくりしてるよ?」 「おそらからあまあまがふってきたのぜ! みーんな、まりしゃのものなのぜ!」 「むーちゃむーちゃ、ちあわしぇええええ!」 殆ど成体の長女まりさを筆頭に、れいむの子ゆっくり達はみなゆっくりフードへと群がって、 幸せにむーしゃむーしゃしている。 「ゆゆーん、みんなゆっくりしてるよおお!」 「そうですね、どなたか、大変な目にあったおちびちゃんは残っていますか?」 「いち、にい…………たくさん! おちびちゃんたちはみーんなそろってるね! みんなゆっくりしてるよ! おにいさんもゆっくりしたにんげんさんだね! ゆんゆゆーん」 思い込みの激しさが体調にまで表れるゆっくりのことである。 れいむはいつの間にか、クソ苦いコーヒーが体にしみこんだ事すら忘れて、ゆっくりし始めた。 「それで、私に何か用事があったんではないですか?」 「ゆゆ――! そうだよ! おにいさんにおねがいがあったんだよ!」 危うくそのままひなたぼっこを始めてしまう所だったれいむは、慌ててお兄さんに向き直った。 「どうか、れいむたちを――「勿論駄目ですよ」――"かいゆっくり"に!?」 「……」 「……れいむをかいゆっくりに――「お断りします」――どぼじでぞんなごどいうのおおおおっ!?」 ■道徳:うそつきはどろぼうのはじまりだよ! 「貴方を飼いゆっくりにした所で、私はゆっくりできそうもないです。ゆっくり理解して下さい」 「なんで!? どぼじで!? りゆうをゆっくりおしえてね、おにいさん!」 「うしろを見て下さい」 「ゆん?」 振り向けば、おちびちゃんたちが、 「はやくまりしゃをゆっくちしゃせるのじぇ!」「じじいはあみゃあみゃもっとよこちてにぇ!」 などと言っていた。 「飼いゆっくりは、"人間にゆっくりさせてもらう"ゆっくりではなくて、 "人間をゆっくりさせる"ゆっくりで有ることくらいは分かりますよね?」 「あれはおちびちゃんのいうことでしょおおおお!?」 「子は親の鏡ですよ。そもそも、どうして飼いゆっくりになりたいんですか?」 「それは……れいむは"かり"がへただから、おちびちゃんたちをゆっくりさせてあげられないんだよ。 だから"かいゆっくり"に――」 「だったらなおさら駄目ですね……」 「どぼじでえええええ!? れいむが"のら"だから? "しんぐるまざー"だからあああ!?」 「どちらも違います」 "飼いゆっくり"としてやっていけるぐらい人間と付き合えて、価値観を共有できるならば、 "野良ゆっくり"でも食い詰める事は無いからである。 人間が捨てるゴミでも、ゆっくりならば食べたり利用できたりする物は多々あるので、 人間と"交渉"する概念を身につけた野良ならば、地域によっては快適に暮らせるのだ。 「しんぐるまざーでも、ゴミ拾いと草刈り、物乞いで、立派に子育てするれいむは居ますからね」 「はああああああっ!?」 そうしたゆっくり達は、人間との力関係を理解しているので、時には人間に拾われる事もある。 しかし、人間と親しい野良ゆは決して、「かいゆっくりにしてください」とは言わない。 「自分は人間と交流する能力ないよ!」という宣言に等しいからである。 「かいゆっくりにしてください」は死亡フラグ。懸命に野良をやって、人間の目に止まるのを 期待するしかない――それは今や、野良ゆにとってすら常識であった。 しかるに、このれいむはどうだろう? 「いやだあああああ! もうなまごみさんも、にがにがなくささんもたべたくないんだよ! むしさんはすぐにぴょんぴょんでにげちゃうよ! れいむはもう"かり"にいきたくないよ!」 「なつさんはあつくてゆっくりできなかったのぜ!」 「だんだんしゃむくなってきちぇ、おうちもゆっくちできないよ!」 「だからじじいは、まりしゃをゆっくちしゃせてにぇ! いましゅぐでいいよ!」 「ほらほら、おにいさん、おちびちゃんはゆっくりできるよね? おうたもうたえるんだよ? れいむたちなら、おにいさんをたくっさんっ! ゆっくりさせてあげられるよおおおおおっ!」 「おかあさん、ゆっくりしてね、まりさがすーりすーりしてあげるよ!」 「おかあしゃんをいじみぇるな! れいみゅぷきゅーしゅるよ! ぷきゅううう!」 「"ビキィっ!"」 「すいません、ちょっとだけ落ち着いて下さいね。あくまでこの場は、私がれいむと話します」 親子の様子に"きた"駆除係が飛びかかろうとしたのを、お兄さんは優しく宥めた。 線路に入った野良まりさ達は、死臭すら出すことなく処理された。 そのため、れいむ親子は、駆除係に気付いてすら居ない。 それどころか、眼中にはいってもいないようだ。 「それでれいむ、貴方はどうやって、私をゆっくりさせてくれるんですか?」 「ゆん……れいむは……れいむはきんばっじさんになれるよ」 「ほう……金バッジですか」 「ゆ――そうだよ! きんばっじさん、きんばっじさんだよ!」 "金バッジ"という言葉が、お兄さんの興味を引いたとあって、れいむは必死で連呼した。 「れいむのおかあさんは、きんばっじのかいゆっくりだったんだよ!」 「本当ですか?」 「いまおもいだしたんだからまちがいがないよ! だかられいむも、すぐにきんばっじさんになれるよ!」 それは、餡子脳の中で発生したでたらめにすぎなかった。 が、次の瞬間には、本ゆんも気づかないうちに、れいむの中で真実にすり替わっていた。 ゆっくりの思い込みは、自身の記憶など容易くゆがめるのである。 「もしそれが本当なら、確かに私にとってはゆっくりできますね……」 「おちびちゃんたちだって、おにいさんにかいゆっくりにしてもらえれば、みんなみーんな、きんばっじさんだよ!」 「それでは、テストをしてあげましょう」 「ゆゆ!? てすと?」 「このテストに全て合格出来たら、貴方たち全部を私の飼いゆっくりにしてあげます」 「ゆ……ほんとうなの、おにいさん! れいむはてすとをするよ! ゆっくりしないではやくしてね!」 「ええ。……ただし」 と、お兄さんは優しげな笑顔に真剣な光を宿らせて、れいむを見た。 「もしもれいむが、出来もしないことを"出来る"と言い張るような嘘つきでしたら、 絶対にゆっくりできなくなります。私が保証しますよ」 「ゆ、れいむ、いたいいたいなてすとさんはゆっくりできないよ?」 「安心して下さい」 落ち着いた声が、れいむに届いた。 お兄さんの声は、とてもゆっくりできる。 「テストが終わるまでは、私はれいむを決して傷つけません」 「ゆん、とうっぜんっだね!」 「そして同時に、テストに合格するまでは決して貴方たちを手助けもしません」 「にんげんさんのてをかりなくても、れいむはりっぱにやりとげてみせるよ!」 「結果は最後に言いますが、もしも途中で不合格だったとしても、テストは最後までやりますか?」 「ゆーん……やるよ! れいむはさいごまでてすとさんをうけるんだよ!」 「おちびちゃんたちにもテストを手伝って頂きますが、それで良いですね?」 「ゆっくりりかいしたよ! いいよね、おちびちゃんたち! えいえい、ゆー!」 「「「「えいえい、ゆー!」」」」×11 「ええ、了解しました……それではテストを始めましょう」 ■社会:おかざりはだいじだいじだよ! 「まずはれいむに質問です。お飾りが無くっても、自分の家族や大切なゆっくりを区別出来ますか? これは金バッジゆっくりになるためには、とても重要な事なんです」 「ゆ……おかざりがなくっても?」 れいむは背後でゆっくりしている、沢山のおちびちゃん達を見た。 みんなゆっくりしていて個性的で、我が身にも代え難いおちびちゃん達だ。 この中の誰一人が居なくなっても、れいむは中枢餡を切られるような悲しみに駆られることだろう! 母性(笑)溢れるれいむが、例えお飾りが無くとも、おちびちゃんを見間違えるわけ無いじゃないか! 「ゆん! できるにきまってるよ! やっぱりれいむはきんばっじにふさわしいおかあさんだね!」 「本当ですね? ならばテストしましょう」 「ゆん? おにいさんまりさになにをするの!?」 「れいみゅ、おしょらをとんじぇるみちゃい!」 言うが早いかお兄さんは、れいむのおちびちゃん達の中から、一番大きな子まりさと、 一番小さな赤まりさをつかみ取った。 「おちびちゃんたち! おにいさん、いったいなにをしてるのおおぉぉぉ!?」 「すこし、お飾りを借りますね。ひょいひょい、と」 「やめてね! まりさのおかざりさんかえしてね!」 「れいみゅ、おかじゃりしゃんがにゃいとゆっくちできにゃいよ!」 そして、れいむに見えない所で二体のお飾りを奪ってしまう。れいむの前には、外されほかほかの おぼうしとおりぼんさんが置かれた。そしてお兄さんが、れいむに向って右手を差し出す。 「それでは、はい。私の手に乗っているゆっくりを、ちゃんと区別ができますか?」 「……ゆ!?」 お兄さんの右手の上。れいむの目の前。 そこには、お飾りのない、ゆっくりしていないゆっくりが置かれていた。 「お……おちびちゃん?」 お飾りが無いため、そのゆっくりは、全く特徴のない"のっぺらぼう"に見える。 だが、お兄さんの右手に乗っているゆっくりは、たった今れいむの足下から奪われたばかりの、 最愛のおちびちゃんに違いないのだ。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ……」 「さあ、このゆっくりは誰でしょう? ちなみに、声を出せないように口は押えてあります」 「ゆんゆゆゆゆゆゆんゆんゆんゆんゆん……」 れいむはそのお饅頭――じゃなくてゆっくりをにらみ続ける。 子まりさはさらさらのきんぱつさんだ。でも、赤れいむの髪もさーらさーらしていて区別出来ない。 子まりさのおめめはおそらのようなあおいいろだ。でも、赤れいむの瞳もおんなじくらいきらきらだ。 今のれいむにとって、おちびちゃんを区別することは、無改造の虐待鬼威惨がヒグマとタイマンを 張るくらい難しいことだった。 せめて、れいむに似て罪な程の美ゆっくりで有ること以外に、区別出来る所があれば! 「ゆ……そうだよ! まりさちゃんはいちばんうえのおねえちゃんだよ、だかられいむとおんなじくらい おおきいんだよ」 「ほうほう、それで?」 「れいむはいちばんあとにうまれたんだよ! だかられいむのおくちにはいるくらいちいさいよ!」 つまり、お兄さんの手に乗っているのは――れいむとおなじくらいに成長したゆっくりは、 「そのゆっくりはれいむのまりさちゃんだよおお!」 ぽふん。 れいむは、子まりさの外された帽子を、お下げで掴んで乗せた。 するとのっぺらぼうだったお饅頭はたちまち、金髪のゆっくりした"おちびちゃん"として見える。 「ゆゆーーん! やっぱりれいむのおちびちゃんはゆっくりしてるよおおお!」 「……まあ、色々と言いたいことはありますが、ひとまずこの場は正解にしておきましょう」 「おにいさん、こんないたずらはやめてほしいよ」 「我慢して下さい。テストが終わったら、特別にご褒美を上げますから」 「おちびちゃんはつらかったよね、だけどいいんだよ。れいむはおちびちゃんがもどってきて くれただけでだいまんぞくっ! だよぉ!」 お兄さんの手から降ろされるなり、ジト目で人間を睨み付けるのをすーりすーりで宥めながら、 れいむは勝利の美酒に酔った。 だが、余韻にひたってばかりもいられない。 「さあおにいさん! れいむはみごとにせいかいしてみせたよ! これでれいむはきんばっじ――」 「では、次のテストに行きましょうか」 「ゆゆ! まだあるのおおお!?」 「テストはあと一、二、"沢山"ありますからね。……嫌なら止めても良いんですよ?」 「わかったよ! はやくつぎのてすとさんにいこうね、おにいさん!」 ■算数:さんよりうえまでかぞえようね! 「それでは次の質問ですが、れいむは"二"よりも大きな数を数えられますか? 金バッジを目指すなら、二桁の足し算くらいは暗算でやってもらわないといけないのですが……」 「ゆゆ……かず?」 金バッジではなくて銀バッジであれば、"12"まで数えるのが最低ラインと言われている。 理由は時刻。 「十二時に帰る」という言葉が理解出来なければ、留守番をさせられないのだ。 「例えば、れいむは自分のおちびちゃん達の数を数えられますか? 先程から数が減ったり増えたりはしていませんか?」 「ゆん?」 言われてれいむは、おちびちゃん達を見回した。 数をかぞえる。いち、に、たくさん。 再度確認する。いち、に、たくさん。 「おちびちゃんたちは"たくさん"いるよ! おにいさんはへんなこといわないでね!」 れいむは、数を数えるのに極限まで集中した。 あまりに夢中で、言い返す頃には、れいむは直前にされたテストの内容など全てすっかり忘れていた。 お兄さんに隠された赤れいむ? 赤れいむは犠牲になったのだ。ぼせい(笑)の犠牲に。 「はあ、これは駄目かも分かりませんね。それではれいむ、"二"の次の数は何ですか?」 「ゆ……"に"のつぎのかずは……えーと……えーと」 「せめて、"五"までは数えて欲しいですね」 野生ゆっくりでもぱちゅりーなら、それなりの確率で"十"まで行ける個体はいる。 だが、普段からいい加減なナマモノであるれいむには、これはかなり厳しい問題と言えた。 「かず……かずは……えーと」 「"二"のつぎは何でしょう? "五"は何番目でしょう?」 「に……ご……。"ご"? そうだよ、れいむはおもいだしたよ! "かず"は、いち、に、さん、し、ごだよ!!」 「……ほう? もう一度御願いします」 お兄さんの顔に、これは素直に感心の色が見えた。 顔色をうかがうれいむは、"きんばっじ"という言葉に反応した時と同じく、これだ、とひらめく。 「ぱちゅりーがいってたんだよ。かずは、いち、にい、さん、し、ごなんだよ、あってるでしょ!?」 「では、"三"の次は何ですか?」 「ゆ……いち、に、さん、し、ご。いち、に、さん、し、ご……さん? さん?」 だが、そこまででれいむは固まってしまった。 このれいむ、どうやらかつて一緒にいたぱちゅりーが"五"まで数えることは出来たらしい。 しかしながら、ぱちゅりーが数えている場面を、理解するでもなく見ていただけなのだろう。 「私の指は今、何本ありますか?」 お兄さんが指を三本立ててれいむに見せた。 「えーと……いち、に、たくさん。あれ? いち、に、たくさん。ゆ……ゆううううううっ!」 物体が三つ存在するという概念と、"さん"という言葉が全く結びついていない。 「本当に数を分かっているんですか? 嘘つきはゆっくりできませんよ?」 「ゆ、れいむはゆっくりりかいしてるよ! かずはいち、に、さん、し、ごなんだよ! ぱちゅりーがいったから、まちがいないんだよおお! ばかにしないでね、ぷんぷん!」 「……分かりました、まあいいです。それでは次のテストに行きましょうか」 ■音楽:ゆっくりおうたをうたおうね! 「それでは次のテストです。れいむには、おうたを歌って貰います」 「ゆ――! ゆわーい。おうたはれいむもだいすきだよ。ゆぷぷぷぷぷ、おにいさんもようやく、 れいむをかいゆっくりにするきになったみたいだね! ゆっくりしてるね!」 れいむは、自分の得意分野が出題された位で得意になっている。 「ただし、私が"止め"と言ったり、手を叩いたり、あるいは何か特別な事が起こったら、 直に歌うのを止めて下さいね」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「金バッジならば、おうたを歌ったりしていても、周囲の危険に気づきますし、 人間の指示を受け取ることもできるのです。れいむはちゃんとできますか?」 「もちろんだよ、れいむはゆっくりうたってあげるよ!」 「本当ですね?」 れいむは勘違いしているが、このテストは要するに、『おうた』の最中であっても周囲の 様子に気を配ることが出来るのか、指示が聞けるのか、というものである。 「おちびちゃんたちも居るので、一緒に歌って貰いましょう」 「おちびちゃんたち! ゆっくりりかいしたよね? それじゃあおかあさんといっしょに、 おうたをうたってあげようね! さん、はい!」 「「「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」」」 一斉に、饅頭達が雑音を垂れ流し始めたのにもめげず、お兄さんは静かに一分待った。 「はい、ストップ」 「ゆん! こんなかんじでいいんだね、おにいさん!」 「まあいいですけど、これだけじゃわかりませんね。もう一度御願いします。 今度は私が号令を出しますからね、さん、はい!」 「「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」」 一分。お兄さんは、今度は手を鳴らして合図した。 「ゆっくり~の――ゆっ! おちびちゃんたち、うたうのをゆっくりやめてね! どう、おにいさん? れいむたちゆっくりしてるでしょ?」 「ええ、たしかにゆっくりしています。でも、少し声が小さくなってきましたね」 「おちびちゃんたち、かいゆっくりになるために、もっとおおきなこえでおうたをうたうんだよ! さん、はい!」 「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」 一分。お兄さんが足を踏みならす。 「ゆん! おちびちゃんたち、うたうのをやめてね!」 れいむが指示を出すと、おちびちゃんたちはぴたりと歌うのを止めた。 「……ゆふん」 ドヤ顔でお兄さんを見上げるれいむ。 歌声は秋空へと綺麗に響き渡っていたし、注意深く周囲を警戒したれいむはお兄さんの 合図を見逃すこともなかった。 そのうえ、おちびちゃんたちはれいむの指示に段々素早く反応するようになって、 ざわざわと騒がなくなっていった。 これはもう、合格以外あり得ないおうただっただろう、そういう自負がれいむにはあった。 「……まあいいでしょう。次のテストが最後ですよ」 「ゆゆゆ……ゆわーーーい!」 やった、合格だ! れいむは喜びのあまりちょっとうれしーしーをもらしつつ、きりっとした顔で おちびちゃん達に自分の姿を見せてあげた。 ――みんな、れいむのすがたをみて、おかあさんみたいなきんばっじさんをめざすんだよ! れいむの餡子な脳内では、既に金色に輝くバッジが赤いおりぼんさんに付けられている。 さあ、いち、に、たくさんのおちびちゃんたちと一緒に"飼いゆっくり"の玉座に着くのはもうすぐだ! ■体育:みんなおくちにはいってね! 「それでは最後のテストです」 「ゆん! いまのれいむはむてきだよ! どんなてすとさんでも、どんとこい、だよ!」 「「「「どんときょい、じゃよ!」」」」 小さいおちびちゃん達までが、れいむの真似をしてふんぞりかえっている。 「危険なものが迫っている時、お母さんはおちびちゃんを守ってあげなければなりませんよね?」 「ゆ、そうだね! それでれいむはどうすればいいの?」 「小さなゆっくりのみなさんを、お口に入れて守って下さい。理解出来ましたか?」 「……ゆっくりりかいしたよ」 「おちびちゃんたちきこえた? まずはいちばんおおきなおねえちゃんのおくちに、はいれるだけ はいるんだよ! のこったおちびちゃんたちはおかあさんのおくちにはいってね!」 「「「ゆっくちりかいしちゃよ!」」」 母れいむがゆっくりならざる即断即決を下すと、おちびちゃんたちはこーろこーろと転がって、 先ずは大口を開けたおねえちゃんゆっくりのお口に入っていった。 「ゆゆ? のこったのはれいむだけなの?」 「しょうだよおきゃあしゃん!」 お口に入りきれなかったのは、なんと赤れいむが一体だけだった。 「ゆゆーん、いつのまにか、おねえちゃんもおおきくなってたんだねえ!」 我が子の成長を喜ぶ母れいむ。 「あかちゃんれいむは、おかあさんのおくちにゆっくりはいってね!」 「ゆっくちおかあしゃんのおくちにはいりゅよ!」 これで、残った子ゆっくり達はみんな、大きなゆっくりのお口に入った。 「…………」 「…………」 「……もう出しても大丈夫ですよ」 「おちびちゃんをぺー、するよ!」 「こーろこーろ、でりゅよ!」 「どう、おにいさん! これでれいむのてすとさんはぜんぶおわったんでしょ?」 「ええ、テストは全て終了ですね」 「ゆふん!」 ようやくだ。やっとここまでれいむはこれた! 「やくそくだよおにいさん! れいむたちをかいゆっくりに――「勿論、しませんよ」……ゆ?」 ■採点:うそつきさんはふごうかくだよ、りかいしてね! 「ゆゆゆゆゆゆゆ? いま、おかしなことがきこえたよ? れいむはかいゆっくりになれ――」 「――貴方が飼いゆっくりになることは有り得ません。ゆっくり理解して下さい」 「は……はああああああ!? おかしいよおにいさん! れいむはさいごまでてすとさんを うけたでしょおおおおおっ!? ごうっかくっ! なんでしょおおおおおおおぉぉっ!?」 「れいむは最後までテストを受けましたが、途中で不合格が決まってましたから」 あれだけのテストを受けて、今更不合格だったとは納得できないれいむだが、 れいむとお兄さんは確かに、約束していたのだ。 ――結果は最後に言いますが、もしも途中で不合格だったとしても、テストは最後までやりますか? ――ゆーん……やるよ! れいむはさいごまでてすとさんをうけるんだよ! 不合格であっても、最後までテストはやると。 「どぼじでぞんなごどいうの!?」 しかし、れいむは納得ができない。 「れいむがいつ、どのてすとさんにふごうかくだったっていうの! ゆっくりせつめいしてね!」 テストに合格していた思い込みが、テストの全てを完璧にこなしたというプライドに転化されて、 不合格を認めることができない。 「れいむは最初から、全てのテストに不合格でしたよ?」 そんなれいむに、お兄さんは死刑宣告にも等しい採点結果を、告げた。 「……はああああああああ!?」 「まずは、最後のテストからいきましょう。『危険なものからおちびちゃんを守れるか?』という テストでしたが、れいむはおちびちゃん達を守り切れていません。ですから不合格です」 「なにいってるのおにいさん! れいむのおちびちゃんたちは、このとおり、いち、に……あれ? いち……に…………」 「れいむ、貴方のおちびちゃんは、どれだけ残っていますか?」 「……"に"だよ」 れいむは、周囲をきょろきょろと見回している。 「おちびちゃんたちが"ふたり"いるよ……」 だが、"たくさん"いた筈のおちびちゃんが、どれだけ確認しても、二体しか居ない。 「……どうして、どうしておちびちゃんたちが"ふたり"しかいないの?」 「それはれいむが、貴方たちにとって危険な物から、守ることが出来なかったからです。 続けてその前にやった、おうたのテスト結果ですが、これも不合格ですよ」 「おちびちゃ……なんで? どおして?」 れいむは、れいむたちは、とてもゆっくりした"おうた"を歌えたはずだ。 「あのテストは、『お歌の最中に周囲が見えているか?』です。歌いながら気を配っていれば、 おちびちゃんたちが"減っている"事にも気付いた筈です。よっておうたのテストも不合格」 そしてさらに、とお兄さんは言葉をつなげる。 「あるいは、れいむが本当に『三以上を数える事が出来る』のなら、途中でおちびちゃんの 数の変化に気付いた筈なのです。つまり、数のテストも不合格」 採点は続けられる。 弾劾は、続いている。 「おちびちゃん……そうだよ!」 そこで、れいむは気付いた。 「さいごのてすとさんで、おちびちゃんたちはおねえちゃんのおくちにかくれたはずなんだよ! なーんだ! おねえちゃんがまだおくちに、いれたまんま……じゃ」 そして、疑問を覚える。 どうして一番上のまりさおねえちゃんは、まだお口におちびちゃん達を入れたままなんだろう? と。 れいむの"おちびちゃん"は、困惑したれいむを、冷たい瞳で見下ろしていた。 「ゆ……?」 ……見下ろす? 「どうしてれいむのおちびちゃんが、れいむより大きくなってるの?」 「そして、一番最初のテストで『お飾りが無いゆっくりを区別出来て』いれば、そのゆっくりが そもそも、貴方のおちびちゃんですら無い事に気付いていた筈なんです」 よって、最初のテストも不合格。と、小さなつぶやきがれいむのテスト結果を"零点"と宣告。 「もういいですよ、"ふらん"」 お兄さんは、れいむの眼前に居る"まりさ"からおぼうしを取り去った。 「ほんとうに、こんないたづらはにどとこんてにゅーしないでほしいよ、お兄さん」 お飾りをとられても身じろぎどころか、嫌がる素振りすらしない"のっぺらぼう"は、 大きく口を開け、「げぷ」と"ゆっくりの死臭に満ちた吐息"をれいむに浴びせかける。 その赤い口。 鋭く尖った砂糖菓子の牙。 殺意に満ちたとげとげしい眼光。 七色に輝く飴細工の羽。 もはや、特有のお飾りを付けていなくても分かる。 それは、野良ゆっくりが遭遇する中でも、最大級に禍々しい捕食種のひとつ。 「ふ……ふらんだあああああああああああああああああああああっ!」 「うー……死ね!」 「お、おかあしゃあああああん! ゆげっ! いちゃいよ、ゆっくちできにゃいゆっくちめ! ゆびゃ! やみぇちぇね! れいみゅいちゃいいちゃいはいやじゃよ、ゆぎゃ!」 硬直するれいむの目の前で、ゆっくりふらんは悠々と赤れいむを嬲り始めた。 苦痛を味合わせて甘くする、ふらん種の本能だ。さっきまではれいむの背後で"手早く" 子ゆっくり達を食っていたので、鬱憤を晴らすかのようにハッスルしている。 「や……やめてよ。れいむにのおちびちゃんがいたがってるでしょ? おにいさん?」 「私は、『テストに合格するまでは手助けしない』と言いましたよ?」 「ほ、ほかのおちびちゃんたちはどこにいったのおおおおっ!?」 「とっくの昔に、ふらんのお腹の中です」 「うそつき! おにいさんはうそつきだよ! てすとさんがおわるまでは、れいむたちに いたいいたいをしないっていったでしょおおおお! どぼじでふらんをつれてきたのおおおっ!」 「いいえ、ふらんは最初から居たんです。れいむが気づかなかっただけですよ」 「……ゆ?」 「お飾りを付けていなかったので、れいむは気づきもしませんでしたが、最初から私の 隣に居たのです。線路に入り込んだまりさ達を駆除して、もらうためにね」 お兄さんが、ゆっくり対策課に電話連絡を入れるや否や、洗濯中のお飾りを付けもせずに、 文字通り飛んで――というよりお姉さんにぶん投げられて――来たのがふらんだった。 「ゆっべ! おがああじゃああ! だずげ! れいみゅをだずげでねえええ、おかあじゃあんん! どぼじでだずけないの!? れいみゅをだずげりょおお、こにょ、くしょおやあああ!」 「う……うそつき。うそつきうそつきうそつきうそつき! おまえはうそつきだああああ、 このげす、くそどれい! くそじじいいいぃぃぃぃ!」 「……ほう?」 ふらんは飽くことなく、昏い情熱を燃え上がらせて赤れいみゅを嬲る。 その悲鳴を背後に、親れいむはお兄さんを"下衆"と詰る。 お兄さんの目に、危険な光が宿った。 「そうだよ、れいむはゆっくりしたおかあさんだから、れいむはきんばっじさんなんだよ! てすとさんは、ぜんぶぜんぶ、ぜーーーーんぶ、ごうかくしてるにきまってるんだよおおおおおっ! れいむはごうかくだよ! れいむはきんばっじだよ! おまえだけがうそつきの、くそじじいなんだよ! さっさとれいむをゆっくりさせろ、この……くそどれいいいいいいいいいいいぃぃぃぃいぃ!!」 「……お兄さん。こいつ、ツブそうか?」 尖った歯で、痙攣する赤れいみゅの中枢餡を"こりこり"しつつ、ふらんが言う。 「いいえ、それには及びませんよ。……れいむ、私は"飼いゆっくりになりたい"という貴方の為に、 最大限のチャンスを提示しましたよ」 「あたりまえだああああっ! れいむはしんぐるまざーなんだよ! じじいはやさしくしなきゃいけないんだよ、 それがていっせつっなんだあああ!」 「ふらん」 「ぶちいっ!(もっちょ……ゆっくちしちゃかっちゃ……)」 ふらんの口の中で、れいむ最後のおちびちゃんが永遠にゆっくりした。 「ああ……これでしんぐるまざーでもなくなりましたね」 「だったらなんだっていうのおお!? ぜんぶじじいがうそつきだからわるいんでしょおおおお!? ばかなのおおおぉ? しぬのおおおおぉぉぉ!?」 「私は貴方との約束を破ってはいません。それでも私を、"嘘つき"と言いますか!」 「そうだああああっ! おまえがうそつきなのがわるいんだあああっ! しゃざいしろ、ばいしょうしろ! れいむをっ! ゆっくり……させろおおおおおおっ! そしてれいむを"かいゆっくりに"――」 「――分かりました」 厳かな声が、れいむの中枢餡を打った。 「ゆ……? ゆふふふふふ! ようやくじじいもれいむのいだいさがわかったみたいだね! さあ、くそどれいは、このれいむさまにびゆっくりのまりさをつれてきてすっきりーさせるんだよ!」 「れいむがそう思うのなら、私は嘘つきなのでしょう、れいむの中では……。 なので私はせめて少しでも嘘つきから離れるために、自分の言葉を守りたいと思います。 『出来もしないことを出来ると言い張るような嘘つきは、絶対にゆっくり出来ない』と、 私は確かに言いました」 そう、テストは既に終わっているのだ。 お兄さんがれいむをどうしようが、既に約束の外。 「ゆふふふふふ。れいむはきんばっじさんだよー! ゆっくりしたけっかがこれなんだよー」 お兄さんはおもむろに、懐からおもむろにピーラーを取り出した。 この皮むき器、ゆっくりの餡子を傷つけずに皮だけを剥くための特別製で、 商品名も少し変わっている――すなわち、『謝罪と賠償』。 ■放課後 「オラァ! 居るなら返事しやがれ……って、あれ? アイツが居たんじゃ無かったのかよ、ふらん?」 数分経って、ゆっくり対策課駆除班のお姉さんが駅に着いた。 そこで目にしたのは、綺麗に掃除された無人のホームと、日向でうとうとするふらんの姿だけだ。 「うー……おにいさんなら、おっきなすぃーにのっていったよ。 おねえさんにでんごん、"すこしはせがのびましたか?"だって」 「野郎……次に会った日を命日にしてえらしいな、おい」 お姉さんの身長は、九年前から四尺八寸――現在の単位に直して148cm――で変化が無い。 ちょっと物足りないと感じているのをわざわざつつく命知らずは、お兄さんくらいのものだ。 踵を浮かせて背筋を伸ばし、精一杯見栄を張った体勢で辺りを見回していると、奇妙なオブジェが 目に付いた。 「……なんだこれ?」 喫煙コーナーの灰皿代わりに置かれているそれは、表面をニスで塗り固められた、黒い餡子玉だ。 時折蠕動している所を見るに、まだ生きているようである。 「このぴこぴこの形からみるに、元はれいむっぽいがよ……」 「おにいさんがつくったよ。ふらんはまずそうだからたべないけど」 「……そうだな、れいむなんざどうなったっていいや、放っておこう。ほれ、帽子だ」 「うー、おねえさんありがとう!」 ゆっくりんぴーすのメンバーが聞いたら怒り出しそうな台詞だが、命の価値が違うんだから仕方ない。 お姉さんとふらんが仲良く駅を去って、黒い餡子玉はちょっと蠢くオブジェとして、 駅のホームに取り残された。 ――れいむは―― 二度とゆっくりはできなかった……。 餡子とゆっくりの中間の不思議物体となり、中枢餡が非ゆっくり症で脳死するまで、 駅のホームに佇むのだ。 そして死にたいと思っても餡子が無くならないし。 餡子むき出しの激痛に、考えるのも止められなかった。 ~おわり~ ■あとがき 鬼威惨がまたヒグマさんにむーしゃむーしゃされました。三人目です。 加工所謹製『謝罪と賠償』シリーズ。 対ゆっくり駆逐用品のブランド。 玄翁、のこぎり、鉋などの大工用具から始まり、キリライター、半田ごて等の工具、果ては包丁や、 作中でお兄さんが使ったピーラー等の料理器具に至るまで、幅広いラインナップを誇っている。 自殺願望のあるゆっくりの『謝罪と賠償』要求に応えるべく、「一撃で行動不能になるが決して即死はしない」 使い勝手を目指して常に改良が続けられている。 ――が、本来の用途においてもかなり"使える"事が、加工所の技術力に対する評価を高めている。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2870.html
『とてもたくさん(300)』 19KB 制裁 戦闘 同族殺し 共食い 群れ 希少種 自然界 人間なし 7作目 ネタ パロディ? 「赤いリボンが妬ましいわ……」 その奇妙なゆっくりの口からそんな言葉が放たれた。 とてもたくさん(300) 人里離れた森の中、いや近くには人間の勢力範囲は存在せず、ただ雄大な自然のみが広がっている。 そんな森の中は様々な動物植物が生息していたが、ゆっくり達の楽園にもなっていた。 ゆっくりと気ままに暮らしていた彼女達だが、数が増えれば当然の流れとして様々なゆっくり間の争い、揉め事がおきしばらくすると小規模~中規模のまとまり、群れを作るようになっていた。 これはそんな群れの一つのお話である。 その群れの長は他のものより一回り大きなれいむだった。 「ゆぷぷ、れいむほどゆっくりしたゆっくりはいないね!」 ここでは彼女の事を「れいむだす」と呼ぶことにしようと思う。 れいむだすは単独で暮らしている頃から、他のゆっくりより恵まれた体躯を生かして周辺のゆっくりの間で好き勝手に生きていた。 お腹が減れば他のゆっくりのおうちへ行って置いてある食料を奪い取る。 眠くなれば他のゆっくりのおうちのへ行ってそこにあったおふとんを使って眠る。 珍しいあまあまな木の実を手に入れたものが居れば、そのゆっくりの所へ行って強請り取る。 そんあ生活を続けるれいむだすは、 「れいむ!それはまりさのごはんなのぜ、れいむもむーしゃむしゃしたいなら、じぶんでかりにいくのぜ!」 「ゆう、なんでありすのつくったとかいはなべっどさんがなくなってるのぉ、あ、れいむあなたねかえしなさい!」 「むきゅれいむ、あなたきょう、まりさのおちびちゃんのもっていたきいちごさんとったわね、かえしてあげなさい!」 そんな生活に諫言してくれる周囲のゆっくりを無視する。 「ゆ、なにいってるの?まったくみんなゆっくりしていないね、みんなれいむをみならってね!」 そんなれいむだす周りには、同じような考えを持つれいむ達が集まりだしていた。 集団になってさらに周囲への被害を広げるれいむだす達、周りのゆっくりむ堪忍袋の尾が切れかかるが。 その時期森のゆっくり達はそれぞれの地域ごとに集まり群れを形成しており、バラバラでいるとの危険性に気が付いたため。 れいむだす達の集団も含めた群れの設立を考えることになった。 しかしそれが命取りであった、元々ある程度の集団を形成していた勢力が、新しく創る群れの中に既に存在しているのである。 その集団の勢力が大きかったことも災いし、地域のゆっくり達の群れはすぐさま乗っ取られ、事実上のれいむだす達れいむ種の群れになってしまった。 「すぱゆた」新たに群れの長となったれいむだす、彼女はその新しい群れにそんな名前をつけた。 反感を持つゆっくり達もその時には既に周辺地域では群れが創られており、そちらに今から行っても新参者として扱われることが分かりきっていたため逃げることすら出来なかったのだ。 れいむだすは、それまでの自分の生活を変える気は、群れの長となってもさらさら無かった。 彼女達の価値観は基本的にゆっくりすることであり、そのためならば他の事を犠牲にしてもなんら問題視する事は無かったのである。 「ゆぅ、みんなはやくでいぶのゆっくりをみならってね、まったくえらくってごめんね!」 こんなれいむだすの言葉で、何もしないでただゆっくりしているだけのれいむ達が重用され、真面目に群れのことを考え掟の整備食料をの備蓄を考えるぱちゅりーや道具の製作に優れるありす、身軽で探索に適したちぇんなどが省みられることは無かった。 群れの掟はただれいむ達がゆっくりする事だけを考えて作られ、他のゆっくりをその為に働かせ、自分だけがゆっくりしてその事から「自分達はゆっくりしている、だから偉い」などと言い放つれいむ達に嫌気が差したのか、群れからぱちゅりー、ありす、ちぇん、みょんなどが逃げ出していく。 唯一の例外がまりさ達だった、れいむと同様に群れの中では最大規模の数を持つまりさ達だが、彼女達もれいむには苦しめられていた。 しかし、まりさ達の多くはれいむを番にしていたのである、特に子供が居れば逃げることは出来ない。 しばらくすると、すぱゆたはれいむとまりさの群れになっていた、他はれいむを番にしていたごくごく少数だけである。 その頃は母にもなっていたれいむだすは、群れの教育制度にも手をつけ始めた。 「ゆ、ゆっくりしているでいぶがおちびちゃんをきょういっくするよ、ははのたつじんでごめんね!」 そう言って群れの子ゆっくりを集めだす、一箇所に集められた子ゆっくりが教えられるのは、 「ゆぅ、でいぶににたおちびちゃんはとってもゆっくりしているよぉ、おちびちゃんたちはゆっくりしていてえらいから、ゆっくりすればいいからねぇ!」 「まったくやくたたずのまりさににたおちびちゃんはゆっくりしていないね、でいぶはかんだいだからゆるしてあげるよ、はやくかりにいってでいぶたちをゆっくりさせてね!」 これだけであった、それ以外の子ゆっくりについては、ゆっくりしていないと言う理由で森のにあった穴に連れて行き落してしまったのである。 「わきゃらないよーやめちぇねやめちぇねたきゃくてきょわいよ!」 「いやよぉ、こんにゃところいにゃかものよぉ!」 「むきゅ、やめちぇえ、エレエレ!」 「ゆぷぷ、ゆっくりしていないおちびちゃんは、しんでゆっくりしたでいぶになってからうまれてね!」 そんな事が続き、群れは完全にれいむとまりさだけの群れになってしまう。 しかしそんな二種のゆっくり達の待遇は大違いであった、食料を独占に普段はゆっくりだけするれいむ達は醜く超え太り。 毎日ひたすら狩りに走り回らされ、持って来た戦果を奪い取られそれでなお文句を言われるまりさ達はやせ細っていった。 「もうがまんできないのぜ、まりさはこんなむれからでていってやるのぜ!」 そんな不満がまりさ達から上がるのも不思議ではなかった。 この群れでは夕食は全てのゆっくりが一堂に会してする決まりになっていた、ある日そんな夕食の席でその不満をあらわにしたまりさが居たのである。 このまりさはれいむを番にしてしまい、子供が生まれたかため逃げられなくなっていたが、常日頃からのれいむ達の態度には鬱憤が溜まっており。 さらに自分のまりさ種のおちびちゃんが、れいむ達によって酷い目に合わされていることを知ってしまったため、このよううな態度に出たのである。 「ゆぅ、なにいってるのでいぶさまにひきいるすぱゆたにもんくがあるっていうの?」 「あたりまえなのぜ、れいむたちばっかりゆっくりして、まりさたちはぜんぜんゆっくりできないのぜ!」 「あたりまえでしょう、でいぶたちはとってもゆっくりしたせかいのしほうたるゆっくりなんだよぉ!」 「ゆっくりできないまりさたちも、とくべつにつかってやってるんだよ、かんしゃしてね!」 「それにおちびちゃんがいるんだから、まりさたちがかりをするのがあたりまえでしょ!!!」 「そんなのれいむがいっているだけなのぜ、まりさたちはまりさににたおちびちゃんといっしょにでていくのぜ!」 凄まじい表情でまりさを睨むれいむだす、その視線に真っ向から対峙するまりさ、後ろのまりさ達も同意するかのような表情をしている。 するとれいむだすはそれまでの表情を急に緩め、優しげな声で言った。 「ゆぅ、わかったよまりさたちのこともちゃんとかんがえるよ、つよいまりさはゆっくりしているしね!」 「ゆぅ、わかってくれたのかぜ!」 まりさ種はれいむ種より身体能力に優れている、その事にれいむ達が恐れをなしたのか矛を収める様子に満足するまりさ。 「そうそう、じゃあつよいまりさはれいむとおんなじにするよ、つよいまりさはまえにでてね!」 「「「ゆぅ、それならまりさなのぜ!」」」 数匹のまりさが前に出る、その顔は自分の強さへの自身と、これでゆっくり出来ない生活が終わると言う希望に満ちていた。 「ゆぅ、うっくりできないまりさはさっさとしんでね!」 途端にれいむだすの体当たりが先頭のまりさを捉えた、弾き飛ぶまりさは近くの木に激突する。 「ゆぎぃ!」 「ゆあぁ、なにをするのぜ!」 「うるさいよ、やっぱりまりさはゆっくりできないね!」 仲間のまりさが攻撃されたことに驚きを隠せないまりさ達、続けてれいむだすの体当たりがそんなまりさを打ちのめす。 その頃には他のれいむ達も参加しだし、前に出た数匹のまりさはあっという間に餡子の塊にされてしまった。 「ゆぷぷぷ、やっぱりでいぶがさいっきょうのゆっりなんだね、ゆぷぷ、ゆ、これはあまあまだよ!」 「でいぷもたべるよぉ、し、しあわせ~!」 「でいぶにもたべさせてね、うめめっちゃうめ、まりさもすこしはやくにたつね!」 そんな狂気の宴に群れのまりさ達はおそろしーしーを流していた、まりさ達の反乱はこうして失敗に終わることになった。 「すぱゆた」はこうして群れとして安定することになる、ひたすらにゆっくりを追求するれいむたち、それを支えるまりさ達によって、ある意味歪んだ安定を勝ち取ったのである。 一見即座に破綻しそうなこの群れも、おうちの建造に優れるありす種や道具を使いこなすみょん種がいない事から、大きなおうちを作ることが出来ない事と、ぱちゅりー種が居ない事もあって備蓄の概念を持たなかったことから。 食料はその日に集めたものをその日に食べるを繰り返しており、食料が常にギリギリな事からすっきりーをする番が通常の群れより少なかった事から、危うい天秤の上に乗っていたのである。 そんな生活がしばらく続いた頃、森に住むゆっくり達に一つの噂が広まった。 森の外にある大きな群れが、この森の群れを襲うようになったと言うのである。 他の群れとはほとんど付き合いの無い「すぱゆた」にもこの噂が流れてきた事から、非常に広まっている噂であると考えられた。 森の様々な群れはそれぞれこれに対する対策として、相互補助の同盟を結ぶ事が多く、れいむだすの元にもその使者が訪れていた。 面倒くさがるれいむだすだが、何かあったときは使えばいいとその同盟を結ぶ事になる、その内容は森の外からの侵略があった場合相互に援軍をだすと言うものだった。 (ゆぷぷぷ、ばかだねそんなのくるはずがないよ、まぁきたとしてもむてきのでいぶがまけるわけないね!) れいむだすは内心そんな事を考えていたのである。 これまで平和だった森に侵略者など来るはずが無い、きっと誰かが不安から言い出した事だろうと…… そんな考えはあっさりと外れる事になる。 ある日れいむ達が森で日向ぼっこに興じていると、騒がしい声が聞こえる。 「ゆぅ、うるさいねひなたぼっこのじゃまだよ、しずかにしてね!」 まどろんでいるれいむだすの元に駆けてきたのはあの隣の群れの使者のちぇんであった。 「たいへんだよー、てきだよ、てきがきたんだよー"どうめい"によってえんぐんをようせいするよー!」 慌てた使者ちぇんが話したことによると、例の森の外からの侵略者が来たそうである、最初は降伏勧告の使者が来たが。 それを追い払うと「とてもたくさん」のゆっくりが攻めて来たと言うのだ。 「ちぇんたちのむれよりたくさんだよー、れいむたちもきょうりょくしてねー!」 必死に訴える使者ちぇん、しかしれいむだすはそんな言葉を煩わしそうに聞いていた。 それまで日向ぼっこをしていたれいむだすは眠かったのである。 「わかったよ、でもいまからだととちゅうでれみりゃがでるから、あしたのあさしゅっぱつするよ!」 適当に答える、使者ちぇんは不満そうだったがしばらく悩むと自分の群れへ戻っていってしまった。 「まったくゆっくりしていないちぇんだよ、でいぶはゆっくりぽかぽかさせてもらうよ!」 そんな事で昼寝に入ってしまったれいむだすは、コロっとこの事を忘れてしまい、数日が経ってしまった。 群れのまりさから、使者ちぇんの用件が何だったのか聞かれて初めて思い出し、 「よわいとなりのむれが、ないてたのんできたから、みんなでたすけにいくよ!」 そう言ってれいむだけを引き連れて隣の群れに向った、すると途中に明らかにゆっくりの争いが起きたと思われる場所が見つかった。 死体こそ片付けられたのか見当たらないが、あたり一面にゆっくり出来ない臭いが充満している。 他のゆっくりならすぐさま逃げてしまっただろう、しかしれいむだす達は違った。 「ゆぅ、これならきっと、あったよぉぺーろぺろ、あまあま~!」 以前のまりさの反乱でゆっくりの味に目覚めていたのである、群れのゆっくりを殺して食べる事こそ無かったが、野生では貴重なあまあまである。 直ぐにれいむ達は木や地面に残るあまあまをなめ始めた、餡子、チョコ、カスタード、生クリーム様々な甘みが感じられる。 特にれいむ達も見た事が無いあまあまは強烈な甘みでれいむ達の餡子を揺さぶった。 辺りに飛び散った割合から見れば、これが侵略してきた敵の中身なのだろう。 「ゆぷぅ、もりのそとにはすごいあまあまがあるんだね!」 その日はそれで満足しておうちに戻ってしまい、森の外からの侵略者はれいむだすの頭から忘れられる事になる、ただ強烈な甘みの記憶を残して。 それから再びゆっくりな生活を送る「すぱゆた」に奇妙なゆっくりが現れたのはそれからしばらくしてからあった。 「赤いリボンが妬ましいわ……」 ありすともまりさとも異なる色の金髪、顔の横には尖ったもの、緑の目を持つゆっくりは開口一番にそんな言葉を口にした。 分かりづらいがこれが降伏勧告であった、このゆっくりこそ森の外からやってきたゆっくりだったのである。 そんな言葉に対するれいむだすの返答は拒否であった。 「ゆあぁ、なにいってるのそっちがれいむたちのどれいにしてくださいっていうなら、とくべつにしてあげるよ!」 激昂してそのゆっくりを叩き潰すれいむだす、つぶれてしまったそのゆっくりからは、あの時味わったあまあまが流れ出していた。 「ゆぅ、あのあまあまはこれだったのだね、むーしゃむしゃしあわせー! 他のれいむ達も集まってきてむさぼり喰らう、直ぐに足りないと文句が上がる。 「ゆゆゆ、こうなったらさいっきょうのでいぶたちで、このてきをやっつけてあまあまをむーしゃむしゃするよ!」 「「「「「「ゆっゆおー!!!」」」」」」 そうして士気を上げたれいむだす率いる「すぱゆた」のゆっくり達は森の外からの侵略者を撃退に向った。 総兵力はエリートれいむ300匹、槍(木の枝)まりさ200匹、数としては多くは無いがれいむ達はエリート化(でいぶ化)した体の大きなゆっくりである。 敵の情報も何も知らないれいむだす達はただ森の外の方角を目指した。 れいむだすは以前に使者ちぇんが言っていた敵の群れの名前を思い出していた、その群れは「ぱるしあ」と言った。 しばらく進んだ先でれいむだす達はこちらに進んでくる敵を発見した。 誰とも無くそれが敵である事が分かった、なぜなら敵は全てあの奇妙なゆっくりであったからである。 森の木々の先があの金髪で埋め尽くされている、まるで暗闇から黄金が湧き出してくるかの様な、そんな光景に目を取られたれいむだす達、我を取り戻し吼える。 「ゆぉぉ、みんなあれがあまあまだよぉ!いまこそれいむたちのさいっきょうをしょうめいするよ!」 「「「「「「ゆっゆおー!!!」」」」」」 (ちょちょっとおおいね、てきがたくさんだよ……でもれいむたちだってとてもたくさんだよ) 眼前を埋め尽くす敵に一瞬恐れおののくれいむだす、しかし直ぐに自分の仲間たちをを見て、自分達の数も多い事に安堵する。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 前方からはあのゆっくりが何かを呟きながら進んでくる、れいむ達は知らなかったがこの時の「ぱるしあ」の総兵力は100万を超えている。 ゆっくりの数の概念では比べる事すら出来ない戦力差があった。 士気軒昂なれいむだす達だが、明らかに眼前を覆う敵に突撃する事は出来なかった、そのために一箇所に固まり敵を迎え撃つ事になる。 れいむだす達には一つ幸運があった、森で闘いに入った事によって木々が邪魔をして完全に包囲されることが無かったのだ、不意の会敵にも関わらず有利な戦場であった。 「ゆあぁ!」 「ゆっくりしないでさっさとしね!」 木によって作られた十字路のような場所で、その一方から来る敵を体当たりで撃退する、これまでの生活によって得た大きな体は質量と言う攻撃力を有していた。 動けなくなった敵にはまりさ達が木の枝で止めを刺していく。 「ゆがぁ、どうだぁでいぶのつよさ、おもいしったかぁ!」 しかしそんなれいむだす達の反撃にも敵の侵攻が止まる事は無い、既にある程度の損害は出ているはずなのに、表情を変えずただひたすらにれいむ達めがけて進んでくる。 その様子はとても戦いをしているようには見えない、攻撃をするでもなく、大きな声で吼えるでもない、唯ひたすらに何かを呟きながら定められた事の様に前進してくる。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「ゆがぁ、どうじでにげないんだだぁ!」 「さっさとあきらめてよね、いますぐでいいよ!」 「でいぶもうつかれたよ、はやくかえってね!」 仲間達も疲労が溜まってきているようである。 そのうち今まで敵の来ていた前方以外左右からも敵が現れるように成り、れいむ達は後退を余儀なくされた。 敵が積極的に攻撃するのでは無く、唯ひたすらに前に進むだけであるため、ゆぱるた側の損害は少ないが。 このままでは永遠にゆっくりするものが出るのは時間の問題である。 「ゆぎゃあ、まりさのおぼうしが!」 左翼に居たまりさがやられたようだ、倒れたまりさに奇妙なゆっくりが集っていく。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「いやだぁ、やめてね、もみあげさんひっぱらないでね!」 「黒い帽子が妬ましい……」 「綺麗な金髪が妬ましい……」 「可愛いリボンが妬ましい……」 「おしゃれなもみ上げが妬ましい……」 あっという間に作られた奇妙なゆっくりに山、その山にまりさが埋もれる。 「ゆぅ、なになんなのあれ……?」 その様子にれいむ達の間にも動揺が広がる。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 そんな様子にもお構い無しに湧き出す敵。 「ゆがぁ、さっさとやっつけるよ、ゆっくりしたれいむたちなららくしょうだよ!」 士気を鼓舞するれいむだす、しかしその努力もれいむ達の後方、唯一敵の居なかった方角に、謎の敵が現れると無に帰す。 それはとても奇妙な敵だった、敵は元々奇妙なゆっくりであったが、それを上回る。 ツルリとした楕円形で、多くのゆっくりのようにお飾りも髪の毛も存在しない、いや体全体を何かのお飾りで包んだような外見、その顔には大きく釣りあがった形の目とその周りに炎の縁取りが施されている。 この場に人間が居れば、それをプロレスの覆面の様だと表現しただろう。 彼らこそ「ぱるしあ」最強の軍団、その名も「不死隊」である。 特殊な覆面を被り、たとえ損害が出てもその覆面を受け継ぐ形で常に総兵力の1万が維持されるこの部隊の名前の由来は、「愛は死するが嫉妬は不死である!」という言葉である。 その精鋭部隊がゆぱるたのれいむ達のの背後に回りこんでいたのだ。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「ゆあぁ、もうだめだぁ、でいぶはにげるよ、まりさはおとりになってね!」 「ゆがぁ、にげるな、たたかえでいぶこそさいっきょうなんだ!」 「いぎぃふまないでね、でいぶもにげいぎゃぁぁぁ!」 士気が崩壊し、逃亡しようと集団を離れたものから黄金の津波に飲み込まれる。 最前線で指揮を執るれいむだすは何とか立て直そうとするが、すでに背後から迫る覆面の敵が自分の後ろまで来ていた。 逃げるしか無い……苦渋の決断をして木々の隙間に飛び込むれいむだす、この判断は正しく何とか包囲を突破する事に成功したのである。 「ゆぎぃ、どぼじで……でいぶのむれが……どっでもゆっぐりじでいたのに……」 ボロボロになって逃げ出してれいむだす、怒りを感じようにも脳裏にはあの奇妙なゆっくりの波に飲み込まれる仲間達の最後が映る。 「ゆぐぐぐ……ゆ、そうだよ"どうめい"だよおとなりのむれにいれてもらえばいいんだよ!」 今になっていきなり以前の同盟を思い出すれいむだす。 そうだ、お隣の群れに行けばいい、そこでまたゆっくりしたれいむの群れを作ろう、そしてあの奇妙なゆっくりに復讐するのだ。 れいむの中に希望の火がともる、既に夕方が近く薄暗い森の中を隣の群れの方向に走る。 その時、何かが聞こえる、それは暗闇に静かにざわめくようで、とてもゆっくり出来ない物に感じられた。 「ゆ、なんだかうるさいよ、ゆっくりしないでしずかにしてね!」 その音に文句を言おうと振り返ったれいむだすは見てしまう。 暗くなった森の中に輝く黄金の津波、あのゆっくり出来ない言葉を呟き、緑色の目を輝かせた、あの奇妙なゆっくり達が向って来ることを。 「ゆあぁ、こないでね、れいむはみのがしてね!」 逃げ出すれいむだす、しばらく逃げたところで後ろが気になって振り向き、捕まってしまう。 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「ゆがぁ、はなぜぇ、こうきなでいぶになにをずるんだぁ、いや、やめてね!」 「「「「「「ぱるぱるぱるぱるぱるぱる……」」」」」」 「黒くて綺麗な髪が妬ましい……」 「大きな体が妬ましい……」 「つやつやのお肌が妬ましい……」 「二本のもみ上げが妬ましい……」 「赤いリボンが妬ましい……」 「ゆびぃ、ゆぎぃ、ゆー!」 れいむだすの居たところにできる、奇妙なゆっくりの塊、大きな悲鳴が聞こえて静かになった。 「と、こんな感じの映画とか……どうだ?」 「いやどうだって……どう見てもパクリじゃねぇか!」 狭いアパートの一室で二人の人間が胡坐を組んで酒を飲んでいる。 「いや、作ろうと思えばつくるよな、でいぶなんてそこらで捕まえてもいいし、ぱるすぃはこれ一匹であとはCG合成で……」 そう言って自分の足の辺りに手をやる男。 「そもそも何でそんな話になったんだよ、ぜんぜん脈絡が無いじゃないか!」 対面の男はそう言うと手にした缶を呷る。 「いや、お目が言い出したんだろ、飼ってるありすがむくつけき肉体の屈強なカルタゴ兵数百人に輪姦される夢を見たとか!」 「忘れろ、それにどうしてカルタゴがスパルタになるんだよ!」 「いや、それはなぁ、カルタゴ→ローマ→ギリシアとなって色々な……」 むにゃむにゃと言い訳をする男、その足元から声がした。 「お兄さん、ぱるすぃが居るのに他のゆっくりの話をするなんて……妬ましいわ……」 後書き 「胴付きありすがカルタゴ兵に輪姦される」をネタに即興を書こうと思っていたら、 何がどう変化したのかこんな感じに成ってしまいました、自分でも何がどうつながったのか良く分かりません 基本的にギャグなので、実際の歴史とかは考えないでください、全部ネタですので突っ込みをお待ちしています。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。 そういえば、ゆっくりぱるすぃの中身って何なんでしょう? このSSでは 人の不幸は蜜の味+パルスィート=砂糖の三倍甘い にしているのですが。 もう一つ前作anko2814 黒い穴へご意見ご感想もありがとうございました。 ゆっくりポイントが200を超えたのは初めてです、地味に嬉しかった。 誤字や句読点などまだまだ足りないところが多いですが、少しずつ勉強しようと思います。 またこれを上げる直前に気づいたのですが、挿絵を描いてくださって方が居るようです。 ありがとうございます、これを励みにこれからも頑張ります。 過去作品 anko2700 そして新記録 anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~ anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編) anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編) anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編) anko2764 ゆっくり公民 ~農奴制~(春) anko2765 ゆっくり公民 ~農奴制~(夏) anko2766 ゆっくり公民 ~農奴制~(秋) anko2767 ゆっくり公民 ~農奴制~(冬) anko2802 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(前編) anko2803 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(中編) anko2804 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(後編) anko2814 黒い穴
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1274.html
「狭間に見た夢」 羽付きあき ・理不尽物です ・第三者視点です ・いくつかの独自設定を盛り込んでありますご注意を ・視点がコロコロ変わります。ご注意を ・・・子れいむの眼下には煌びやかな街の光が映し出されていた。 イルミネーションが星の様にキラキラと輝き、車のライトが流れる光の河を形作っている。 「ゆゆーんちょっちぇもきらきらしちぇきれいぢゃね!」 感嘆の声を上げる子れいむ。 後ろを振り向けば、フカフカの毛布のベッド、より取り見取りのあまあまの数々。 おうたを歌うステージ。底部に履く「おようふくさん」は子れいむのお気に入りばかりを何十着も用意されていた。 そう、自分は金バッジゆっくりなのだ。 子れいむはクッキーやチョコレート、ケーキなどのあまあまを夢中になって食べた。 「む~しゃむ~しゃ!ちあわちぇー!」 口の周りはチョコやクリームだらけ、幸せだった。はじける様な笑顔を浮かべ、次はステージの上で体をくーねくーねと動かして「おうた」を歌う。 「ゆ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆっきゅり~♪ゆっきゅりしちぇいっちぇ~ね~♪」 子れいむは今、幸せだった。 快適な「おうち」頬っぺたが落ちるほどの甘い「あまあま」ふわふわの「べっど」 そして飾りに輝く金バッジ。 「ゆふふ!おちびちゃんとってもゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!おきゃあしゃん!ゆっくりしちぇいっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!」 親れいむが声をかける。モチモチの小麦粉の肌にしっとりとした砂糖細工の髪、そして皺ひとつない飾りに輝く金バッジ。 子れいむ自慢の母親だ。 「おきゃあしゃんしゅーりしゅーり!」 「すーりすーり!おちびちゃんはこれからずっとゆっくりしたまいにちをおくるんだよ!」 「れいみゅちょっちぇもしあわちぇぢゃよ!」 「れいむもとってもしあわせだよ!」 ・・・子れいむはこれから、親れいむに見守られ育ち、同じ金バッジの番いのまりさと「ずっといっしょにゆっくり」して、かわいいかわいい子ゆっくり達を育み、笑顔いっぱいの「家族」と永遠にゆっくりするのだ。ずっと・・・きっとずっと・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・・・不気味な音を立てた風がビュービューと流れていく。 風はまだあまり強くないが、空は鉛色に染まっており、夏のはずなのに不気味なほどの静寂さを醸し出していた。 そう、台風が近づいてきている。 と言っても、明後日やそこらの話だ。まだ雨も降っていないし、ただ曇っているだけである。 この街には曇り空がお似合いではないかと思う。 そう考えるのは私が街ゆっくりに焦点を当てているからだろうか・・・? いずれにせよ、街は相も変わらず寂しい、荒涼とした感じを醸し出している様に思えた。 羽付きが横を跳ねて追いついてきた。 「羽付き、もうすぐ台風だけど"おうち"に居なくていいのかい?」 「まだほんかくてきになるのはさきのはなしだぜ。それに」 「それに?」 「たいふうやふぶきみたいなひのまえは、まりさのおうちによくくるんだぜ。あぶれたゆっくりが・・・」 「じゃあ尚更戻った方がいいんじゃないか?」 「いまもどってるところなんだぜ」 「え?」 「このさきのろじうらにまりさのおうちがあるんだぜ」 私と羽付きは今にも落ちてきそうな曇天の下を歩く。 風はただ不気味に、そして寂しく音を立てて流れていくだけだった。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ こじんまりとした路地裏に、ひと際立派なダンボール箱がある。 ビニールシートをかぶせ、大きさがバスケットボールサイズのゆっくりなら3~4体は入れそうな程の大きさだ。 「ここが羽付きの?」 「いつつめのおうちだぜ」 「五つ目?」 「そうだぜ。このきせつとつぜんあめとかがふってきたりとか、いらいをうけたところがとおかったりしたときになんこかおうちをてんざいさせてあるんだぜ」 「でも、勝手に住み着かれたりしないのか?」 「かってにすみついてもらったほうがけっこうなんだぜ。かってにおそうじをしたりしてくれるからわりかしべんりなんだぜ」 ・・・羽付きはどうやら全部で10個近くの「おうち」を持っていると言う。 街の各所に点在しているそれらを使って長丁場の依頼や地域ゆっくりの一時的な避難場所の提供等に羽付きは使っていると言う。 重要な所は普段は地域ゆっくりの住まいとして提供しており、それ以外の所は勝手に街ゆっくりに住み着かせていると言う。 街ゆっくりの最重要物資である食料等はおいていないので勝手に食い荒らされる心配は無いと言う。 また、羽付きがよく使用している「おうち」は食料も相当数貯めているが、南京錠を使った簡易的かつ堅牢な「きんこ」を作っており、破られる心配は無いと言う。 ・・・羽付きの「おうち」の前に二体のゆっくりがいる。 先客だろうか?パッと見た限り地域ゆっくりと言った感じではなさそうだ。 「先客がいるね」 「れいむのおやこかぜ・・・」 羽付きと私は少し近づいて様子を伺う。 バスケットボール大のれいむと、ソフトボールほどの子れいむ。合わせて二体の様だ。 風貌は汚く、ボロボロの飾りと砂糖細工の髪、いくつか擦り切れて駆けているリボンは街ゆっくりと言う事を否応なしに現していた。 煤や泥にまみれた小麦粉の皮は生傷だらけで、底部に近づくにつれ多くなっていく。底部も真っ黒くカチカチになっているようだ。 「ゆゆー!ちょっちぇもすてきなおうちがありゅよ!おきゃあしゃん!ここをおうちにしちゃいよ!」 「・・・ここはほかにすんでるゆっくりがいるよ。でもたいふうさんがどこかへいくまでちょっとだけやすませてもらおうね」 どうやら先ほどここを見つけたようだ。 恐らく食料も住処も持っていないれいむなのだろう。 こんな天気にまで外に出ていると言う事は「おうち」を探しながら食料をあてどなく探して街をふらついていたのだろう。 「じゃあ、なかでゆっくりやすもうね」 「ゆっくりわかっちゃよ!」 親れいむがビニールシートを捲った時に、羽付きが飛び出した。 「かってにはいってもらっちゃこまるんだぜ」 「「ゆゆ!?」」 驚くれいむ親子をしり目に羽付きが意にも介さず淡々としゃべる。 「ここはまりさのおうちなんだぜ。あまやどりならおうちのなかにまではいらなくてもこのろじうらならあめもかぜもはいらないんだぜ」 「ゆ!?れいみゅゆっくりやしゅみちゃいよ!いじわりゅしにゃいぢぇいれちぇね!」 「ゆゆう・・・しかたないよ・・・おちびちゃん・・・」 食らい下がる子れいむを宥める親れいむ。 グズっていた子れいむも親れいむが粘り強く宥めてようやく落ち着いた様だ。 「そこにすきまがあるからねるときはそこにすればいいぜ。あとこれからにんげんさんがくるけどべつにまりさやれいむたちにはなにもしないからほっといてもらってけっこうなんだぜ」 「ゆっくりわかったよ」 私が近付いて行くと、少しおびえた表情をした物の、そこまでの事だった。 ビールケースなどが積まれたその隙間に、すっぽりと体を押し込め、じっとしているれいむ親子を見ずに、羽付きは帽子の中から一口ゼリーやアーモンドチョコ等を取り出すと、黙々と食べ始めた。 「む~しゃむ~しゃ・・・」 「ゆうう・・・」 「おいししょうぢゃよ・・・」 それを見ていた親れいむが恐る恐る羽付きに話しかける。 「ま、まりさ!」 「なにかぜ?」 ・・・羽付きが目玉だけを動かしてれいむを見据える。 「その・・・ち、ちょっとだけでいいかられいむたちにもわけてほしいよ!」 羽付きの動きがとまった。それをYESと見たのか親れいむが捲し立てるように話す。 「れいむたちはゆっくりできないにんげんさんにおうちをこわされてからずっとゆっくりできないせいかつをしていえるんだよ!」 「だからなんだぜ?」 「ご、ごはんさんもあんまりたべられないでおちびちゃんもおなかをすかせてるよ!れいむがだめならせめておちびちゃんにごはんさんをちょうだいね!」 「いやにきまってるんだぜ」 「ゆ・・・ほんのちょっとでいいから・・・ち、ちょうだいね!」 「いやっていってるのがきこえないのかぜ!!」 「ゆぅ!?」 羽付きが声を荒げてどなりつけた。 ビクリと小麦粉の体を震わせてれいむがひるむ。 「まりさはじぶんがかわいそうとかいってだれかからなにかをもらおうとするゆっくりがだいっきらいなんだぜ!かわいそうなのはおまえのせいだぜ!じごうじとくのぐずになさけをかけてやるほどまりさもよゆうはないんだぜ!」 「ゆびぇえええん!きょわいよぉぉ!」 ・・・羽付きの声に驚いた子れいむが泣きだしている。 親れいむそれを見て子れいむに寄り添い、すーりすーりで宥めている。 「おちびちゃんだいじょうだよ!こわくないよ!すーりすーり!」 「ゆぇええええん!ゆびぇぇええええん!!」 羽付きはその光景を冷めた目で見ながら、帽子をかぶり直している。 「言いすぎじゃないか?」 「にんげんさんはあまいんだぜ。どこかのゆっくりのえさばをしらずにかりをしてるとかならまりさだってごはんさんはあげるけど、こんなやつらにやってたらきりがないんだぜ」 「悪いゆっくりには見えないけどなぁ」 「ゆっくりにいいわるいがあるとすればそれはかいゆっくりだけだぜ。まりさたちはまちゆっくり、そもそもがわるいというぜんていにいるんだぜ」 「しかし泣きやまなかったらうるさくって仕方がないんじゃないかい?」 私がれいむ親子に目を向ける。火がついた様に泣き喚く子れいむを必死になだめるれいむであったがあまり意味は無い様だ。 「ゆびぇええええん!おなかすいちゃよぉぉおおお!どぼじぢぇえええ!?れいみゅたちにゃにもわりゅきょちょしちぇにゃいにょにいいいい!きょんなにょっちぇないよおおおおお!」 「おちびちゃんゆっくりなきやんでね!すーりすーり!」 「どぼじじぇきんばっじのれいみゅちょおきゃあしゃんぎゃきょんなゆっきゅりきにゃいにょおおおおおお!?」 「おちびちゃん!きんばっじでもゆっくりできないときがあるんだよ!?」 「ゆえええええん!きんばっじさんはいつになっちゃらもらえりゅにょおおおお!?」 「おちびちゃんがゆっくりしたゆっくりになったらだよ!だからなきやんでね!ゆっくりしていってね!」 「ゆびえええええええええん!」 ・・・ダメだ。キリがない。 私はバッグの中から板チョコレートを取り出し、小さく割るとれいむ親子の方に投げつけた。 「ゆ?」 「ゆっく・・・ひっく・・・ゆゆぅ・・・?」 「お腹がすいてるから泣くんだよ。それ食べていいよ」 ・・・途端に親子れいむの顔が明るくなる。 何度も親れいむがお礼を言って、子れいむが貪る様に食べている。 「ゆっくりありがとうね!おにーさん!」 「はふっ!むしゃむしゃ!はぐっ!しあわしぇええええ!!おにーさんゆっきゅりありがちょう!」 「でも、あげるのはこれっきりだからね?」 「「ゆっくりわかったよ!」」 先ほどとは打って変わって明るくなったれいむ親子を見ると、私は再び羽付きの方へと歩んでいった。 「いただけないんだぜ。にんげんさん」 「いいじゃないか、うるくなくなっただけでもさ」 「・・・ゆぅ」 「それにしても金バッジとか言ってたね。あのれいむ親子」 「ふいてるだけだぜ。きっとほんとうのきんばっじならまちゆっくりになるはずないんだぜ・・・ほんとうにゆっくりしていれば・・・」 羽付きの表情が曇った。すぐに帽子の唾を下げたため表情が隠れてしまったが、何か嫌な事でも思い出したかのように私は見えた。 「おにーさん!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 私が振り返るとそこにはれいむ親子が近付いていた。 「ああ、別にいいよ」 「おにーさんはとってもゆっくりできるね!」 「れいみゅきょんにゃおいしいあみゃあみゃをたべちゃのはじめちぇぢゃよ!」 「所で、さっき金バッジがどうのこうのって言ってたけど、れいむ達は金バッジだったのかい?」 「ゆぅ・・・」 ・・・れいむが口をもごもごとさせている。 半面、子れいむの方は明朗快活に答えている。 「そうぢゃよ!おきゃあしゃんはきんばっじのゆっきゅりだっちゃっちぇいっちぇちゃよ!だきゃられいみゅもきんばっじのゆっくりになりゅんぢゃよ!」 「ゆ・・・おちびちゃん・・・」 「きんばっじになればとっちぇもゆっきゅりできりゅんぢゃよ!れいみゅがあとちょっとおおきくなっちゃらおきゃあしゃんもきんばっじになっちぇゆっきゅりできりゅっちぇいっちぇちゃよ」 「へぇ・・・金バッジにねぇ」 「おにーさん・・・」 れいむの顔が焦りに陰る。 ・・・都合の良い方便に金バッジを使ったと言う事はありありとわかった。 羽付きもウンザリと言った顔をしている。 目をキラキラと輝かせて輝かしい未来を信じている子れいむに、私はこう言った。 「凄いね。きっと金バッジになれるよ・・・ゆっくりしたね」 「ゆ!おにーしゃんありがちょうね!」 「・・・おちびちゃん。ごはんさんをたべたらあんまりうごかないようにしようね。きょうはもうねようね」 「ゆ!?でみょ・・・」 「寝た方がいいよ、疲れてるんだろう?」 「ゆゆ!しょうじゃね!ゆっきゅりちゅーやちゅーやしゅりゅよ!」 「・・・じゃあ、しっかりれいむにくっついてね」 「ゆゆ!わかっちゃよ!」 ・・・この子れいむの信じている未来が来る事は、おそらく永遠にないだろう。 羽付きも怒りを込めて目でれいむを見ていた。 私も正直言ってkのれいむのしている事に感心しない。 何時かウソもばれる日が来るだろう。その時はどうするのだろうか・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「すーやすーや・・・」 「ちゅーやちゅーや・・・」 15分もするとすぐにれいむ親子は小麦粉の皮を寄せ合って眠り始めた。 ・・・寝顔だけは金バッジ級だ。 「このれいむ親子はどうなるんだろうな・・・」 「さあ・・・まりさにはかんけいないことだぜ」 「この子れいむは金バッジを何かよく知らないで信じ込んでる節があるなぁ・・・かわいそうに」 「・・・きんばっじなんてあのれいむがおもってるほどいいものじゃないんだぜ」 「だろうね」 ・・・羽付きの顔が曇る。 きっと何かを思い出しているのだろう。 だがそれを聞く勇気は私には無かった。 そう考えていると、微かに遠くでゆっくりの悲鳴が聞こえた。「ゆんやあ」と それを聞いて羽付きが急いで「おうち」から飛び出す。 「すぐにここをはなれるんだぜ!」 「なんでだい?」 「かこうじょだぜ。いっせいほかくにきたんだぜ!」 「何だって!?」 「はやく!はやくいくんだぜ!」 「でももう表には・・・」 そう、私と一緒に居ても羽付きは「街ゆっくり」 見つかればつかまってしまうだろう。しかも、すぐそこまで来ている。 そう考えた私の考えを見抜く様に、羽付きが帽子の中から、ほんの少しだけ鈍く光る金色の丸い何かを取り出した。 「まりさはだいじょうぶだぜ!きんばっじをこうやってつけたら・・・」 「よかった!じゃあ・・・」 「はやくいくんだぜ!」 「ちょっとまって!れいむ達は!?」 「・・・ざんねんだけどおいていくんだぜ。それに、もうばっじのよびはないんだぜ」 「・・・!・・・しょうがないか」 ・・・私と羽付きは路地裏を一気に飛び出した。 表では袋に詰められて泣き叫び、苦しむ街ゆっくりがそこらかしこに現れている。 「 わがらないよぉぉぉ!!らんじゃまああああ!」 「むぎゅううう・・・!ぐるじぃぃ・・・えれえれ・・・!」 「どがいばっ!どがいばあああ!までぃざあああああ!」 「でいぶうううう!おぢびぢゃああああん!にげっ!にげるんだぜえええええ!」 棒の先にフックを付けた物を持ってゆっくりを引っかけて捕まえる加工所職員達。 路地裏から飛び出した、私と羽付きを一瞥するが、すぐに路地裏へと通り過ぎて行った。 あのれいむ達は・・・私と羽付きが振り返り、れいむ親子のいた場所を眺める。 未だすーやすーやと眠り続けていたれいむ親子だったが、表の騒音にようやく目覚めたようだ。 「ゆゆ!?」 「ゆぅ・・・おきゃあしゃんどうしちゃの・・・?」 「・・・そとのようすがおかしいよ!おちびちゃん!いますぐいどうするよ!」 「ゆ・・・ゆっくりかわっちゃよ!」 ・・・親れいむの只ならぬ様子に感ずいたのか、素直に言う事を聞いて隙間から飛び出すれいむ親子、だがその目前に、加工所職員がいた。 「ゆううううう!おちびちゃん!いそいでにげてねっ!」 「ゆ!ゆ!」 足元を掻い潜って逃げようと跳ねた親れいむの小麦粉の顔がゆがんだ。 その瞬間、凄まじい勢いで蹴っ飛ばされ、壁面に叩きつけられる。 「ゆげぇっ!」 「おぎゃあじゃああああああああん!?」 「おぢびぢゃ・・・にげ・・・ゆぐぇっ!」 跳ね寄る子れいむに逃げろと言う親れいむ、だが言葉半ばに加工所職員がれいむの底部辺りを思いっきり踏みつけた。 ゴボリと口か餡子が吐き出される。 「ゆげぼっ!ゆごぼっ!おぢびぢゃん・・・!おでがい・・・にげっ・・・ゆぐぉおっ!」 「おぎゃあじゃん!おぎゃあじゃああああん!ゆっぎゅりじじぇええええええ!」 親れいむが再び踏みつけを食らう。 勢いよく転がって、地面に這いつくばりながら、せき込み、餡子を吐き出した。 「ゆぐっ・・・!ゆげぇぇぇぇええええ…!ゆげぼっ・・・!ゆご・・・お”ぅ”げえ”え”え”え”え”・・・!」 ビチャビチャと餡子と砂糖水が吐瀉物のごとく口からダラダラと流れ出る。 「おきゃあしゃんをゆっきゅちいじめにゃいぢぇね!れいみゅおきょりゅよ!」 「ゆげっ・・・!げぇっ・・・!お、おぢびぢゃん・・・!」 ・・・加工所職員の目の前に立ち、大きく膨らみピコピコを激しくふって威嚇する子れいむ。 加工所職員がひきつった笑みを浮かべると、棒の柄で、子れいむを突こうとした。 その刹那、親れいむが背中を向けて子れいむをかばい、柄の棒での突きを受けた。 ゴチッと音がしてれいむの後部に棒の柄がめり込む。 「ゆぐっ・・・ゆぐぅぅぅっ!」 「おぎゃあじゃん!?」 「おぢびぢゃん・・・は・・・れいむ・・・が・・・まも・・・まもるよ・・・!」 加工所職員が棒の柄で何度も何度もれいむを突き続ける。 そのたびにれいむは屈んで子れいむを守り続けた。 「ゆぐっ!ゆがっ!ゆぎっ!」 「おぎゃあじゃんぼうやべぢぇ!おぎゃあじゃんすっぎょきゅいちゃがっちぇりゅよ!?」 「ゆっぐぅ!べいぎ・・・!だよ・・・!おぢびぢゃん・・・は・・・!れいぶが・・・れいぶが・・・!まもるがらねっ・・・!ゆぐぇっ!」 ・・何度突いても屈んで耐え続けるれいむに業を煮やしたのか、フックで引っかけると、こちらに引っ張ってこようとする。 「おぢびぢゃんっ・・・!れいぶのおぐぢのながにばいっでね・・・!ゆぎっ・・・!」 「ゆ!ゆっくりわかっちゃよ!」 ・・・ここからではそこまでしか見えなかった。 恐らくフックで引っ掛けられて袋に詰め込まれてしまったのだろう。 加工所職員が路地裏から出てきた時には、れいむ親子が入っていたであろう袋がグネグネと蠢いているのを私は見た。 あっという間に加工所の捕獲は終わった。 後に残ったのは隠れて無事だった子ゆっくり達や赤ゆっくり達の親ゆっくりを呼ぶ慟哭。 そして破壊された「おうち」の数々。 まだこの子ゆっくり達はまだマシな方だろう。 捕まったゆっくり達は明日までのゆん生なのだから・・・ 羽付きと私は、ただその光景を眺めている事しかできなかった。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 「ゆうー!」 「ゆゆ!」 子れいむ達の目の前に広がっていたのは、まさしく「ゆっくりプレイス」ともいうべきものだった。 どこかの大きなビルの上の階なのだろう。絶景が子れいむ達の眼下に広がっている。 あの後、親切な人間さんが子れいむ達を助け出してくれたのだ。 一目見て金バッジのゆっくりだとわかったと言う。 そしてけがをした親れいむを治療してくれた。 小麦粉を水で溶いた物をハケで塗ってくれて、すっかり子れいむを守るために受けた傷は治ってしまった。 すっかり元気になった親れいむを見て、何故か子れいむは涙が止まらなかった。 そんな子れいむを見て人間さんは、チョコレートをお皿一杯に持ってきてこう言ってくれた。 「お腹がすいてるから泣くんだよ・・・それ食べていいよ」 にっこりとほほ笑む人間さんを見て、お礼を言いながら、チョコレートをほおばった。今まで食べた事のない様な味だった。 ・・・そして子れいむ達は汚れを洗って綺麗にしてもらった後は「おようふく」を着せてもらったのだ。 「とっても似合ってるよ」 そうほほ笑む人間さんに親れいむと子れいむはこう言った 「「にんげんさん!ゆっくりありがとうね!!」」 そう、子れいむは今、幸せだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「おぎゃあじゃああああああああああああん!!」 「おぢびぢゃんっ・・・!おぢびぢゃぁぁんっ・・・!」 ・・・捕まった後、れいむ親子はトラックに載せられ、「加工所」に入れられた。 餡子脳の奥深くに刻まれているのだ。加工所はとてもゆっくりできないものだと。 戦々恐々とする親子れいむは、せまくるしい籠の中に入れられ、一夜を明かした。 怖がりながらも小麦粉の皮を寄せ合って寝た。親れいむの温もりだけが子れいむを包み込む優しい祐樹だった。 ・・・それが最後の親れいむの温もりとなる事も知らずに そして今、籠から親れいむが引っ張り出されようとしている。 何とか食らいついていたが、とうとう引っ張り出されてしまった。 加工所の職員にピコピコを掴まれて連れて行かれる時に、親れいむはひたすら子れいむに語りかけていた。 「おちびちゃんっ!れいむがいなくなってもつよくてゆっくりしたゆっくりになってねっ!まけないでっ!まけないでねっ!おちびちゃんんんんんっ…!」 「おぎゃあじゃんっ!おぎゃあじゃんっ!!おぎゃあじゃあああああん!!」 ・・・そして、扉がバタンと大きく音を立てて閉められた。 子れいむは、それ以降親れいむを見ていない。 そして今子れいむは真っ暗やみの狭い狭い「箱」の中に居る。 何もない、本当に何もないところだ。 ・・・餌だけはほんの少しだけ毎日小さな窓からポロリと落ちてくる。 食にこまる事は無かった。だが子れいむは「しあわせー」と叫べない。親れいむがいないから・・・ 今日も子れいむは夢を見る。儚い夢だ。 あの羽根のついたまりさの横にいた人間さんが助けだしてくれる夢。 その中で、子れいむは全てを手に入れる。金バッジをくれて、あまあまも、親れいむも、「おようふく」も・・・ 淀みゆく空虚な思考の「ゆっくりプレイス」の中で、子れいむは今日も夢を見る。 たとえそれが叶う事のない夢だとしても ここには真っ暗で狭くて、冷たくて、本当に、何も、無い。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 夏の夕暮れが全てをオレンジ色に染め上げていく。 台風は去り、再び夏はうだるほどに太陽を照らしつける。 私は、夕暮れの街に居た。 あの後、羽付きは「おうち」を転々と変えて街にいる。 時にはバッジを付けて、時には「かざり」を変えて・・・ 少なくとも羽付きが捕まる事は無いだろう。 私はなぜかそう確信していた。 ・・・あの親子れいむの事を何故かよく思い出す。 金バッジの事を何も知らず、あるはずのない空虚な未来を信じていたあの子れいむは幸せだったのだろうか? 本当のあの親れいむは金バッジだったのだろうか・・・ 全てをする術はもうどこにも無かった。 日はまた沈み、また昇っていく。 昨日もまた、明日もまた・・・ あの子れいむにも親れいむにも太陽は光を照らし続けてくれるだろう。 きっと・・・ずっと・・・
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/809.html
『いつもの風景』 D.O 「ゆぴゃぁぁああ!!れいみゅのあんよがぁぁあ!?」 「おちびちゃん、ゆっくりしてね!ぺーろぺーろ、ぺーろぺーろ!」 とある町の歩道で、母れいむと赤れいむの親子が泣き叫んでいた。 鋭い小石で赤れいむがあんよを怪我してしまったのだ。 怪我はかなり重症で、あんよは半分ほど裂けてしまっており、 餡子もトロリと流れ出している。 こうなってしまうと、母れいむのぺーろぺーろ程度ではもはや手に負えない。 母れいむは最後の希望、ゆっくりには不可能な事を可能にする、人間さんの手を借りるしかないと考えた。 「おねーさん!」 「ん、なぁに?あら、おちびちゃん、酷い怪我。大丈夫?」 運よく、ゆっくりしたお姉さんに声をかけることができたようだった。 「おねーさん、だいじょうぶじゃないよ!おちびちゃん、このままじゃえいえんにゆっくりしちゃうよ!」 「あら。大変だわ。早く手当てしないと。」 「おねーさん、はやくてあてしてあげてね!」 「・・・ん?なんで?」 「ゆ・・・おちびちゃんがけがしてるんだよ!?かわいそうなんだよ!」 「そうね。とっても痛そう。」 「かわいそうならゆっぐぢぢないでだずげでぇえええ!!」 お姉さんもその整った顔立ちに憐れみを浮かべ、赤れいむのもみあげをそっとなでる。 「ゆ・・・ゆぴぇ、ゆっくちさせちぇ・・・。」 「れいむちゃん。がんばってね。痛いだろうけど、がんばって!」 「ゆぴぅぅ・・・」 そしてお姉さんはすっと立ち上がると、去っていこうとした。 「お、おねえざぁぁあああん!!どうぢでいっぢゃうのぉぉぉおお!?」 「ごめん私、もう行かないと・・・。」 「ゆぁああああぁぁぁぁ!?」 「辛い事もあると思うけど、れいむもがんばってね!」 お姉さんはギュッと握りこぶしを作りれいむの顔の前に掲げると、 『がんばれ!』というようにこぶしを2~3回揺らし、そしてそのまま去っていった。 「ゆ、どうぢで・・・」 「ゆぴ・・・ゆ・・・」 「おぢびぢゃぁぁああん!!」 だが、ここで諦めてはおちびちゃんは助からない。 母れいむは気を取り直して、おちびちゃんの方を向いて辛そうな顔をしている、 ゆっくりできそうなお兄さんに声をかけた。 「おにーざん!!おぢびぢゃんをだずげでぐだざい!!」 「うぅん、これは痛そうだな。かわいそうに・・・。」 「おぢびぢゃんは、とっでもゆっぐぢした、かわいいおぢびぢゃんなんでず!だずげでぐだざい!」 お兄さんは、赤れいむの苦しそうに汗ばんだ額をなでてやりながら、 ゆっくりとした声で語りかける。 「なあ、チビれいむ・・・」 「ゆぴぅ・・・ゆぴゅぅ・・・?・・・」 「痛みなんかに、負けるなよ。」 「・・・ゆ?・・・」 「精一杯ゆっくりするんだ。お前ならできる!がんばれ!」 そういって、とてもゆっくりしたお兄さんは去っていった。 「どうぢで・・・どうぢで、だれもだずげでぐれないのぉぉおお!?」 答えは返ってこなかった。そして・・・ 「も・・・ぢょ・・ゆっくち・・・しちゃ・・かっちゃ・・・」 「ゆぁああああ!おぢびぢゃん!おぢびぢゃぁぁあああん!?」 赤れいむは、出餡多量で、誰からも治療を受けることなく、その短い生涯を終えたのであった。 「ゆぁぁあああ!?なんでぇええ!?ゆっぐぢぢでだのに!ゆっぐぢぃぃいいいああああ!?」 母れいむの慟哭は、町中にいつまでも響き続けた。 そして、通行人の中にその声を騒音、迷惑だなどと思った者は一人としていなかった。 通行人たちは一様に、おちびちゃんの遺体の前で泣き叫び続ける母れいむの背後で、 手を合わせたり、十字を切ったり、それぞれの形ではあったが、 全員が、赤れいむの短い生涯をあわれみ、その冥福を祈ったのであった。
https://w.atwiki.jp/eeelmmm/pages/142.html
白銀君インタビューのインタビューコーナー にょろ<ようこそ。 白銀<どーも(´・ω・`) にょろ<何歳ですか? 白銀<13の中学1年(´・ω・`) にょろ<毎度聞きますがそれは「しろがね」ですか?「はくぎん」ですか? 白銀<しろがねのつもり(´・ω・`)b にょろ<なぜその名前に? 白銀<妹から付けられた。由来、ポケモンの白銀山らしい(´・ω・`) にょろ<ところでちびちゃとはいつからしてますか? 白銀<今年の6月ぐらいからですかね(´・ω・`) にょろ<タイピング早いですね^^喧嘩師ですか? 白銀<ぇ、違うよWWW オレタイプ遅いよWW にょろ<一時期ちゃっとに来てなかったみたいですが何かありましたか? 白銀<アク禁WWWW にょろ<ちびちゃとの友達は誰が居ますか? 白銀<にょろちゃん、、以下省略w にょろ<あなたのそのかっこいい顔を見せて頂きたいのですが・・・。 白銀<かっこよくないよ>< にょろ<僕のことってどう思います? 白銀<(´・ω・`)むっちゃ優しい人だぬ にょろ<白銀君は彼女居るのですか?リア充ですか・・・? 白銀<彼女はいるが、リア充と非リア充の真ん中ぐらいですかね(´・ω・`) にょろ<ご趣味は。 白銀<サッカー にょろ<将来の夢は? 白銀<医者とかほざく(´・ω・`) にょろ<ご協力ありがとうございますた。 白銀<どーも(´・ω・`)インタビューさんくす(´・ω・`)b
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/595.html
「かわいいれいむのおちびちゃんををみて、ゆっくりしたんだったら、あまあまちょうだいね!!! ぐずはきらいだよ!!!いそいでね!!!たくさんでいいよ!!!」 「「きゃわいくちぇごめんにぇ~!!!」」 足元が何か騒がしい。 が、折角のお昼休みを邪魔されたくないので無視する。 野良ゆっくり何ぞに関わって時間を無駄にしたくない。気にせず歩き続ける。 カツッカツ 「おぃ、くしょにんげん!!きいちぇるのきゃ!」 うるさいが無視する。構うと余計厄介だ。 都会のビル街には野良ゆっくりが意外と多く、いつもこんな光景がどこでも見れる。 いつもいつもこんな様子だから呆れてしまう。こんなことしてもしょうも無いのに。 心の中でグチグチと文句を言っていたせいか、前を見ていなかったからか・・・ 「あみゃあみゃよこ・・・」ブチュ! 「あっ・・・」 ついゆっくりを踏んづけてしまった。 唯でさえ日本の都会の人口密度は大きい。それに加えて日本は、ゆっくりが世界で一二を争うほど生息している。 こんな狭いところで人様の道を塞いだら、踏んづけてしまうに決まっている。 「ゆ゛ぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!れいむににた、きゅーとなおちびちゃんがぁぁぁぁ!!!ごろじてやるぅぅぅ!!」 「ぷきゅぅぅぅぅ!!!!!しぇいしゃいだぁぁぁ!!!」 発狂したれいむ親子が私の足に飛び掛ってくる。 碌に飯も食えない野良ゆっくりにしては、なかなかの跳躍だった。所詮饅頭なので当たっても痛くは無いが。 ただ、今の私はお昼休憩。午後からはお得意先との打ち合わせがある。 薄汚い饅頭にぶつかって、スーツを汚すなんて、もってのほかだ。 さっと横に足をよけると、愛しのコンクリートとのちゅっちゅだ。 親れいむの方は噛み付こうとしていたらしく、ペキペキと音を立てて、歯が四散していった。 「ゆんぐっ!!!」 「ゆぴゃん!!!」 悶絶するれいむ親子。体中から汁を出し、ぶりんぶりんと尻を振って痛みを紛らわそうとしている。 その醜悪な姿に顔をしかめながらも、腕まくりをして、饅頭たちの髪の毛を掴んで持ち上げる。市民の義務を果たすのだ。 「ゆぐぃぃぃぃ!!!!!ばな゛ぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「いじゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」 大声で喚くれいむ親子。だが、それを気にかける人は一人もいない。 これは、日常なのだ。 ゆっくりが喚くのも。そんなうるさい汚物を駆除するのも。 近くに設置されているゆっくり用ゴミ箱に、饅頭どもを放り込む。 罵声が反響して聞こえてきたが、しばらくすると大人しくなった。 ゴミ箱の中身をちょっとだけ覗くと、口や体が溶けて、ただ、涙を流すだけのれいむ親子がいた。 その視線は助けてと訴えているのに間違いはなかったが、再び私はゴミ箱の入り口を閉じる。 人の領域に土足で入るゆっくりになんて、情けをかける必要は無いのだ。 街のゴミ掃除が終わって思う。 野良ゆっくりの命なんかより、まず、この汚れた靴を綺麗にしようと。 とはいっても、どうすればいいのかは、既に検討が付いている。 何せこんなことは日常的にある。餡子で靴を汚したことなんて一回や二回じゃない。 ゆっくりではないが、数え切れないくらいたくさんやったことがある。 そんなとき私が決まっていく場所がある。行き着けの格安靴磨きだ。 ―「ゆっくりまたきたね!まりさはうれしいよ!!!」 「おう、また潰しちまったわ。いつものやつで頼むよ。」 目の前には、一匹の野良まりさがいる。どこからか拾ってきたレジャーシートを広げ、その上には商売道具が置かれていた。 私は、アウトドア用の小さい椅子に腰掛けて、まりさの前に汚れたほうの靴を差し出す。 ツンッとゆっくりの死臭が漂ったようで、一瞬まりさは嗚咽を漏らすが、すぐに先ほどの営業スマイルに戻り・・・ 「ゆっくりきれいにするよ!!!ぺーろ、ぺーろ!!!」 汚れた部分を、丹念に舐め、飛散した餡子を靴から取り去っていくまりさ。 いくら死臭つきの餡子とはいえ、それなりの甘さがあるはずだが、甘味に夢中になる様子はない。 その表情は笑顔ながら、目は真剣そのものである。注意力散漫なゆっくり共にしては本当に珍しい。 「ぺーろ、ぺーろ!ゆっくりきれいになってね、くつさん!!!」 汚れた箇所を何度も何度も重ねて舐めることで、餡子のこびりつきを落としていくまりさ。 「ぺーろ!ぺーろ!」 餡子の色が消えたら、ポケットティッシュを器用に取り出し、まりさの唾液で濡れた部分を拭き取っていく。 「ふーき、ふーき!」 さっと乾拭きをしたら、私の靴は、ゆっくりを踏み潰す前の綺麗な状態に戻ったいた。 「ゆっくりきれいになったよ!!!」 「おお、ありがとな。じゃあ、お代の方なんだが・・・」 「まりさがたべられるものならなんでもいいよ!!!でもできるだけやわらかいもののほうが、うれしいよ!!!」 キリッとした表情で言うまりさ。仕事を終えた達成感からだろうか? 「うーん・・・。今日はそんなに柔らかいものじゃないんだが、これでいいかな?」 そういって私が差し出したのは、スーパーでよく売ってるアルファベットの形をしたビスケットのお菓子だ。 「ゆゆゆ!!!そんなにいっぱいもらっていいの!!!おにいさんゆっくりできなくなっちゃうよ!!!」 「いや、ビスケットぐらい幾らでも買えるさ。これは、いつも綺麗にしてもらっているお礼だよ。 端のほうに切れ込みを入れておいたから、そこを引っ張ったら開くからな。」 「ゆゆん!ありがとうございます!おにいさん!!!」 「ははっ・・・。そんなに畏まるなよ。じゃあ、俺は仕事があるから行くよ。またな!」 「ゆっくりがんばってきてね!!!」 ―回想。 まりさは飼いゆっくりであった。 銀バッジまでしか取ることは出来なかったが、それなりに賢いゆっくりであった。 主人の言いつけは必ず守り、一緒に住んでいたれいむとは、いいお年頃ながら、すっきりーっするのを我慢していた。 銀バッジながら、捨てられるような行動は一切取らない、よく出来たゆっくりであったという。 そのゆっくりらしからぬ生真面目さを評価されて、2匹のおちびちゃんを作ることが許可された。 れいむに似たおちびちゃんとまりさに似たおちびちゃんが一匹ずつ、れいむの額の蔓にぶら下がっていた。 2匹の赤ゆっくりが生まれて、幸せの絶頂にいたまりさ。 すーりすーり、ぺーろぺーろと赤ゆっくりとのスキンシップを繰り返す。 ただし、赤ゆっくりばかりに注意が行き、飼いゆっくりとしての義務を怠ることがないように気をつけた。 まりさは、飼いゆっくりであることに、誇りを持っていた。 しかし、そのプライドはある日突然打ち砕かれる。 朝、目を覚ますと見知らぬ場所であった。 身震いするような寒さと、ゴウゴウと吹く風がまりさに現実を突きつける。 捨てられたという現実を。 必死に考えた。捨てられた理由を。 しかし思いつかなかった。まりさは飼い主の気に触ることなど何一つしたつもりは無かったから。 生まれたばかりの赤ゆっくり達にも、飼いゆっくりとしての振る舞いを教えようとするほどだったから。 ゆんゆんと唸っているまりさの横で、れいむがボソッと呟く。 「あきられたんだよ・・・」と。 そうだ、まりさ達は、ゆっくりにしては余りにも礼儀正しすぎた。 まりさ達はゆっくりらしさのない、ペットとしての魅力が無い、唯の居候であった。 その時やっと、まりさは飼い主が自分達を見るときの目を、思い出すことが出来た。 慈しみなんて無い。ただ、つまらない茶番を見ているような目であった。 その日から地獄の日々は、始まった。 初めての野外生活は、まりさ達にとって苦痛でしかなかった。 野良ゆっくりの真似をして、生ゴミをかき集めた。 舌の肥えた飼いゆっくりである自分達にはかなりきついものであった。 悪臭に慣れるまで、何度も何度も餡子を吐き出した。 赤ゆっくりを抱えて必死におうちの材料を探し回った。 ダンボールやビニールシートを何とかかき集めることが出来たが、 失ったものは余りに大きかった。 ダンボールを運びながら道路を渡っていたとき、後ろから来る自動車に気づけず、れいむが轢かれた。 下半身を失ってもがき苦しむれいむ。目や口から餡子を噴き出し、危険な状態であった。 番の危機をなんとかしようと近づくまりさであったが、後続車にれいむは再び轢かれ、彼女は道路の染みと化した。 れいむがいなくなったことで、食糧の供給が少なくなった。 ただでさえ、ゴミ漁りの慣れていない捨てゆっくり。 労働力が単純に半分になったため、満足に食糧を確保できなくなってしまった。 数少ない食糧を、育ち盛りの赤ゆっくりに与えるため、まりさは次第にやせ細っていく。 プライドを打ち砕かれ、 愛しい番を失って、 満足に飯も食えない状況で、 まりさは、心を病んでいく。 何もかもが嫌になって、ふらふらと人間の下に近づいていく。 人間さんに喧嘩を売って、踏み潰してもらおうと・・・。 しかし、まりさが話しかけた人間はどうも変わり者だったらしく。 靴に付いたゆっくりの餡子をまりさに舐めらせた。 まりさは拒絶したが、暴力で訴えてきた人間に、 痛みに慣れていないまりさは、さからう事ができず、ぺろぺろと靴を舐めた。 餡子を十分に舐め取ったら、どういうわけか、男は食べ物を与えてくれた。 残飯などではなく、コンビニで売っているような菓子パンをまりさに差し出したのだ。 このことをきっかけに、まりさは、靴磨きの仕事を始めるようになる。 ―ビル街。 人の流れは途切れずとも、ゆっくり達は寝静まる。 今活動しているのは、捕食種のれみりゃぐらいであろう。 そんななか、基本種のバイオリズムに逆らって、跳ね回るゆっくりが一匹。 靴磨きのまりさだ。彼女は昼に男から貰ったビスケットを咥え、路地裏へ消えていく。 3分ほど跳ねて、あるダンボールハウスの前に止まる。 そこには、2匹の子ゆっくりが寝息を立てていた。 れいむ種とまりさ種が一匹ずつ。紛れも無いまりさのおちびちゃんだ。 ダンボールのおうちの中に入って、ビスケットの包装を破る。 ビスケットをおうちのなかに置いたら、まりさはおちびちゃんに挨拶をすることなく、この場を去る。 ―翌朝。 「ゆっくちおきりゅよ!!!れいみゅはおきりゅよ!!」 「まりしゃもおきちゃのじぇ~!!!ゆゆ!きょうはびしゅけっとしゃんなのじぇ~!!!」 「そうだにぇ!まりしゃ!いっちょにむーちゃむーちゃしようにぇ!!!」 「わかっちゃのじぇ!おにぇちゃん!むーちゃ!むーちゃ!」 「むーちゃ!むーちゃ!」 「「しやわしぇ~~~!!!!!」」 満足そうにビスケットを頬張る子ゆっくりたち。 それを影から覗くゆっくりが一匹。 まりさだ。靴磨きのまりさだ。 彼女の目からは涙が止め処なく溢れている。 幸せなおちびちゃんの姿を見られるというのに、 どうして涙を流すのか。 どうして会いに行かないのか。 答えは一つ。 彼女が靴磨きまりさだからだ。 まりさが磨く靴は、例外なく餡子に塗れている。 死臭たっぷりの吐き気を催すような餡子が。 一日に何度もソレを舐めているまりさに死臭が付かないなんて、あるはずが無かった。 仕事が軌道に乗り出した頃から、まりさはおちびちゃんと会話を一切していない。 死臭でおちびちゃん達がエレエレして、危険な状態になった時、二度と会えないと、悟ったのだ。 まりさは、いつまでも幸せそうなおちびちゃんの姿を眺める。 二度とお話しすることが無くとも。 二度と頬をすり合わせることがなくても。 おちびちゃんの笑顔のために、靴磨きまりさは穢れた靴を舐め続ける。 <あとがき> いらっしゃいませ、こんにちは。ドナルドあきです。 大通りを歩いていると、靴磨きをしている人を見かけたのでつい書いてしまいました。 このSSは多分自分の中で最も早く書き終えたSSだとおもいます。 話は変わりますが、にとりあき様、挿絵ありがとうございます!!! まりちゃの悲しむ表情はやっぱりゆっくりできますね!!! では、いい加減勉強しないといけないので、ここらで失敬します。 最後に・・・読んでいただきありがとうございました。 <過去作なのぜ> anko1066 ゆくドナルド anko1166 ゆくドナルド2 anko1304 れいむと・・・ anko1384 豆れみりゃとこうまかん anko1395 ゆくドナルド3 anko1404 お前のゆん生30点 anko1432 幸福マスベ anke1472 餡子に捧ぐは菊の門 anko1606 絶望あにゃる anko1643 流れゆく物 前編 anko1721 流れゆく物 後編 挿絵
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3413.html
『可哀想なゆっくり』 34KB 制裁 自業自得 飼いゆ 野良ゆ ゲス 希少種 現代 17作品目。少し真面目になって書いてみました。 注意書きです。 1 希少種が出ます。 2 酷い目にあうゆっくりと、そうでないゆっくりがいます。 それでもOKという方のみ、どうぞ。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?やめてえぇぇぇぇっ!!」 ……そこは、とある街中の、とある一軒家。 その一軒家のリビングの中に、甲高い悲鳴が響き渡った。 「やめてえぇぇぇぇっ!!なんでこんなことをするのおぉぉぉぉっ!?」 「うるせぇ……!」 そのリビングでは、一人の青年が、一匹のソフトボールサイズのゆっくりれいむを踏み付けていた。 そのれいむは、顔面のあちこちが腫れ上がっていて、歯もボロボロに折れていた。 「……もう一度聞くぞ。あれは、お前がやったんだろ?」 青年は、床の一ヶ所を指差した。 ……そこには、饅頭の餡子や皮が散乱しており、その傍にズタズタに踏まれて潰された、赤ゆっくりの帽子が転がっていた。 その帽子には、飼いゆっくりの証である、銀バッジが付いていた。 「ちがうよおぉぉぉぉっ!!れいむはなんにもわるくないんだよおぉぉぉぉっ!!ほんとうだよおぉぉぉぉっ!!しんじてよおぉぉぉぉっ!!」 「黙れ、この糞饅頭が……!」 れいむは青年に必死にそう訴えたが、青年は全く信用していないようだった。 「なんでぇ……?なんで、れいむばっかり、こんなめにあうのぉ……?」 れいむは、青年に全く信じてもらえない事が、とても悔しかった。 今思えば、自分はとても不遇な立場にあった。 自分は何も悪くないのに、いつも自分が悪者扱いで、蔑みの眼差しで見られていた。 どうして、こうなってしまったのか。 れいむは涙をボロボロと流しながら、自分の不幸で短いゆん生を思い返していた。 ~回想開始~ (ゆぅ……、ゆぅ……) れいむは今、これからの幸せなゆん生を夢見ていた。 「ゆっ……!もうすぐうまれそうだよ!」 自分の下の方から、母親の声が聞こえていた。 れいむは今、母親のゆっくりの頭から生えている茎に実っていた。 (ゆ……、ゆっくちうまれりゅよ……) れいむがそう思ったのと同時に、れいむの体がプルプルと震え、やがてポトリと地面に落ちた。 「ゆ……」 れいむが目を開けると、目の前に、自分と同じれいむ種の、母れいむがいた。 「ゆぅ……!おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」 母れいむはれいむの誕生に嬉し涙を流しながら、れいむにそう言った。 (ゆっ……!おきゃーしゃんに、とっちぇもゆっくちした、あいしゃつをしゅるよ……!) れいむは母れいむに対し、生まれて初めての挨拶をしようと、口を開き、大きく息を吸い、そして……。 「ゆゆ~ん!きゃわいくっちぇ、ごみぇんにぇ~!!」 自信に満ち溢れたドヤ顔で、そう挨拶した。 決まった。 とてもゆっくりした挨拶が出来たと確信したれいむは、そう思っていた。 ……が。 「ゆぅ……?おちびちゃん、なんか、おちびちゃんのあいさつは、すこしへんだよ?」 母れいむの対応は、れいむが予想していたものと全く真逆のものだった。 「ゆっ……?」 「おちびちゃん、あいさつはこうするんだよ。……ゆっくりしていってね!……ほら、やってみて」 「ゆ……?にゃんで……?にゃんで、れいみゅのこと、へんっていうにょ……?」 自分の挨拶で、歓喜の涙を流してすりすりしてくれると思っていたれいむは、母れいむにそう聞いた。 「れいみゅ、とっちぇもきゃわいいでしょ……?にゃんで……?」 「おちびちゃんはとってもかわいいよ!でもね、そのあいさつはゆっくりできないんだよ。ゆっくりりかいしてね?」 「ゆ……、ゆっくち、りかいしちゃよ……」 れいむは、母れいむのその返答に釈然としないものの、可愛いという事は認めてもらったので半ば良しとした。 「ほら、おねーちゃん!おねーちゃんも、かわいいいもうとにあいさつしてね!」 母れいむは、れいむの後ろを見ながらそう言った。 「ゆ……?おねーちゃん……?」 一体誰の事を言っているのか分からなかったれいむは、後ろを振り向いた。 ……そこには。 「ゆぴー!」 元気に跳ねている、一匹の、赤まりちゃがいた。 ……が、れいむはその赤まりちゃを見て、こう言った。 「ゆっ……!?にゃんにゃの、こいちゅ……!?じぇんじぇん、ゆっくちしちぇにゃいよ!?」 その赤まりちゃは、髪の毛やお下げがかなり短く、帽子も小さく、口元から涎を垂らしており、目も焦点が合っておらず、何よりバカの顔付きをしていた。 「おちびちゃん!じぶんのいもうとに、そんなことをいっちゃだめだよ!」 「ゆっ……!?れいみゅのいもうちょ……!?」 れいむは母れいむのその言葉が信じられなかった。 ……こいつが、自分の妹? れいむから見て、全くゆっくりしていない赤まりちゃが、自分の妹だという事実が信じられなかった。 「このおちびちゃんはね、ちょっとだけふじゆうなんだよ。だから、へんだとか、そういうことをいっちゃだめだよ?」 「ぴー!」 ……そう、この赤まりちゃは、いわゆる『足りないゆっくり』であった。 体格は普通の赤まりちゃと大差無いものの、中枢餡に異常をきたしており、言語障害や運動障害が現れていた。 そして、この赤まりちゃは、本当はれいむより先に産まれたのだが、母れいむの判断で、姉と妹の立場を交換したのだ。 足りないゆっくりの赤まりちゃを、姉として扱うには無理があると思っての判断だった。 「ゆうぅぅぅぅ……!」 その事を知ってか知らずか、れいむは納得出来ずにいた。 「ほら、おねーちゃん、いもうとにあいさつしてね?」 「ゆ……、よ、よろちくにぇ、まりちゃ」 「ゆぴゃー!」 母れいむに促される形で、れいむは妹まりちゃに渋々と挨拶した。 ……そしてこの日から、れいむのゆっくり出来ないゆん生が始まった。 ……食事の時。 「はい、おちびちゃん、ごはんだよ!」 「むーしゃ……、むーしゃ……」 「むく、むく……」 れいむは母れいむが食べやすいように一度噛み砕いた食べ物を咀嚼していた。 そして、妹まりちゃは、母れいむから口移しで食べ物を食べていた。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!れいみゅにもあーんしちぇにぇ!」 「ごめんね、いまおちびちゃんにたべさせているとちゅうなんだよ。おねえちゃんは、おちびちゃんがたべおわるまでまっててね」 「むく、むく、ゆぴゃぴゃー」 「ゆぅ……!」 ……しーしーの時。 「おちびちゃん、しーしーしようね!」 「ぴゃー、ちー、ちー」 「ゆぅ……!」 赤ゆっくりは自分でうんうんやしーしーを排泄する事が難しいので、親にまむまむなどを舐めてもらって手伝って貰って、排泄を行っていた。 れいむは今、とてもしーしーがしたかったが、母れいむが妹まりちゃのしーしーの介助に時間がかかって、なかなか出来なかった。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!はやきゅれいみゅもちーちーしちゃいよ!」 「ごめんね、おかあさん、おちびちゃんのしーしーのてつだいをしているんだよ。だから、おねえちゃんはもうすこしまっててね」 「ぴー」 「ゆうぅ……!」 ……就寝の時。 「ゆー、ゆーゆー」 「ゆーぴゃーぴゃー」 「しゅーや、しゅーや……、ゆぅ……!」 夜寝る頃になると、母れいむは子守唄のようなものを妹まりちゃに聞かせて、寝付かせていた。 れいむはさっさと寝たかったが、その歌のせいでなかなか寝れずにいた。 「ゆっ!!おきゃーしゃん!れいみゅははやきゅねちゃいんだよ!しょのへんにゃうたをやめちぇにぇ!!」 「ごめんね、おちびちゃんはこもりうたをうたわないとなかなかねれないんだよ。だから、ねむるまでまっててね」 「ぴゃぴゃー」 「ゆうぅぅぅぅっ……!」 ……れいむは全くゆっくり出来ない日々を送っていた。 母れいむはいつも妹まりちゃに付きっきりで、『お姉ちゃんだから、後でね』と言われてきた。 『我慢してね』とは言われていないものの、何であんなゆっくり出来ない奴なんかを優先するのか、分からなかった。 れいむにとって、妹まりちゃは『妹』では無く、ただ単純に『目障りな奴』としか見えていなかった。 そして何より、自分の暮らしている家から、自由に外へ出る事が出来なかった。 れいむ達はどこかの空き地の段ボールハウスで暮らしていたが、れいむは外の世界を知らなかった。 れいむは母れいむに外へ出かけたいと何度もせがんだが、母れいむは『そとはとてもきけんだから、おおきくなるまででちゃだめ』と言って、れいむが外へ出る事を許さなかった。 遊びたいざかりの年頃のれいむにとって、薄暗くて狭い段ボールハウスで、しかも目障りな妹まりちゃと一緒に一日を過ごす事は、れいむにとってかなりのストレスとなっていた。 ……そして、二週間後。 「ゆっ、それじゃ、おちびちゃんたち!おかあさんはたべものをさがしてくるからね!」 「ゆっ、いってらっしゃい、おかあさん!」 「ぴぴゃー!」 母れいむはれいむと妹まりちゃにそう言うと、食べ物を探しに外へ出かけた。 そして、段ボールハウスに残されたのは、れいむと妹まりちゃだけとなった。 「ぴゃぱぱー!」 「……」 妹まりちゃは、相変わらず奇声を発しながら体を震わせており、その様子をれいむは黙って見ていた。 ……そして、れいむはいきなり、妹まりちゃを揉み上げでバシリと叩いた。 「ぴいぃっ!?」 「いつもいつも、ぴーぴーうるさいよっ!!」 妹まりちゃは何故叩かれているのか分からず泣き出したが、それでもれいむは妹まりちゃを叩くのを止めなかった。 「おまえなんか、れいむのいもうとじゃないよ!おまえがいるから、れいむはちっともゆっくりできないよ!」 「ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「ゆっくりできないゆっくりのくせに!なんでいきてるの!?ばかなの!?しぬの!?おまえはばかなんだから、さっさとしんでね!」 「ぴゃあぁぁぁぁっ!!」 ……この二週間の間で、れいむは一つのストレス解消法を見つけた。 それは、母れいむがいない間に、妹まりちゃを虐める事だった。 全くゆっくり出来ない、役立たずで目障りな存在の妹まりちゃを虐める事に、れいむは全く罪悪感などは感じていなかった。 むしろ、それが当たり前とさえ考えていた。 「れいむはおおきくなったのに、おまえはぜんぜんおおきくならないね!やっぱりばかはせいちょうしないね!」 「ぴゃぱあぁぁぁぁっ!!」 れいむは子ゆっくりサイズまで成長していたが、妹まりちゃは産まれた時と、大きさが殆ど変っていなかった。 妹まりちゃは発育にも異常をきたしていたが、れいむはその事実を知らず、たとえ知っていたとしても、態度は変わらなかっただろう。 れいむにとって、妹まりちゃの価値観は、『目障りな奴』から『ストレス解消道具』に変わっていたのだった。 「しね!しね!やくたたずのぐずは……、ゆっ、もどってきたよ……」 れいむがチラリと外の様子を見ると、母れいむが口の中に食べ物を入れて帰って来たので、れいむは妹まりちゃを叩くのを止めた。 「ぴゅうぅぅぅぅっ!!ぴゅいぃぃぃぃっ!!」 「おちびちゃんたち、ただい……、ゆっ!?どうしたの!?おちびちゃん!?」 「お、おかーさん、またまりちゃがぐずりだしちゃったよ……、れいむ、なきやまそうとしたんだけど……」 「ゆっ、おちびちゃん、いいこいいこ、なかないでね……」 「ゆぴゅいぃぃぃぃ……」 母れいむは、泣き続ける妹まりちゃを必死にあやしていた。 (ゆふふっ!とりあえず、すっきりー!したよ!) れいむは妹まりちゃが喋れない事を良い事に、母れいむにデタラメを言っていた。 そして、妹まりちゃの体に叩いた跡が残らないように、毎回力加減をして妹まりちゃを叩いていたので、母れいむに虐めの事を気付かれずに済んでいたのだ。 「ぴいぃ……、ぴいぃ……」 妹まりちゃは、涙を溜めた目でれいむを見ていたが、れいむの心は全く痛まなかった。 それどころか、かえって怒りが込み上げてきた。 (……おまえがわるいくせに、なんでれいむをわるもののようなめでみるの!?わるいやつはせいっさいっしてとうぜんでしょ!?ばかなの!?しぬの!?) 自分は可哀想で全然ゆっくり出来ていないというのに、何故そんな目で自分を見るのか。 れいむには、それが分からなかった。 ……そして、己のゆん生を大きく変える出来事が起きようとしている事もまた、れいむには分かっていなかった。 ……ある日の事。 「ぴゃややあぁぁぁぁっ!!」 「ゆふふっ!ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっするのは、とってもたのしいね!」 れいむはいつものように、母がいない間に、妹まりちゃを虐めて楽しんでいた。 ……が、その日はいつもと違っていた。 「ぴ……、ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「ゆぅっ!?」 いつもはただ叩かれて泣き叫んでいるだけだった妹まりちゃが、急にその場で何度も跳ね、お下げを振り回し始めた。 耐え重なる暴力への訴えか、それとも防衛本能からの行動か、理由は分からなかったが、妹まりちゃはいつもとは違っていた。 「こいつうぅぅぅぅっ!!じぶんがわるいくせに、ぎゃくぎれするなんて、とんでもないげすだよっ!!」 妹まりちゃの行動に腹を立てたれいむは、さらに揉み上げで妹まりちゃを叩こうとした……、が。 「ぴゃいやあぁぁぁぁっ!!」 ベチッ! 「ぴゃあっ!?」 妹まりちゃのお下げが、れいむの顔に当たってしまった。 「ゆ……、ゆ……」 今まで感じた事の無い、痛み。 それがゆっくり出来ない奴によって引き起こされた、痛み。 「ゆ……、ゆがあぁぁぁぁっ!!このくそまりさがあぁぁぁぁっ!!おねえちゃんにぼうりょくをふるいやがってえぇぇぇぇっ!!」 それにより、れいむの逆上は有頂天へと達した。 「このげすがあぁぁぁぁっ!!」 れいむは怒りに身を任せ、赤まりちゃに体当たりをした。 「びゅぽおぉっ!?」 自分より一回りも二回りも大きいれいむの体当たりを受けた妹まりちゃは弾き飛ばされ、段ボールの壁にぶつかった。 「せいっさいっしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむはその場で飛び跳ね、妹まりちゃを押し潰そうとした、その時。 「なにしてるのぉっ!!」 「ゆんやぁっ!?」 後ろから何者かに髪の毛を噛まれ、後ろへと引きずられた。 「おねえちゃん!?いもうとにいったいなにをしているの!?」 「ゆっ!?」 ……そこにいたのは、食べ物探しから帰って来た、母れいむだった。 「ゆ……、こ、これは……」 「おかあさんはみていたよ!おねえちゃんがいもうとにたいあたりをしていたところを!……なんでこんなことをしたの!?」 「ゆ……、ゆぅ!れ、れいむは、なんにもわるくないよ!?こいつが、れいむにいたいおもいをさせるから……!」 バシッ! 母れいむに問い詰められ、そう言い訳をしたれいむの頬を、母れいむが揉み上げで叩いた。 「ゆびゃあぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!!」 「……おねえちゃん。きょうは、ばんごはんはぬきだよ。じぶんがなにをしたのか、ちゃんとはんせいしてね」 母れいむはそう言うと、妹まりちゃの体を舐め始めた。 「おちびちゃん……、いたいのいたいの、とんでいってね……」 「ぴゃあぁ……、ぴゃあぁ……」 「お、おかあさん!れいむのほっぺもいたいよ!れいむにも、ぺーろぺーろしてね!」 れいむは母れいむにそう言ったが、母れいむはその言葉を無視した。 それかられいむは母れいむに再度ぺーろぺーろするよう言ったり、泣き喚いたり、癇癪を上げたりしたが、母れいむは無視する事に徹底していた。 (ゆうぅぅぅぅっ……!?なんでぇ……!?なんでれいむが、こんなめにあうのぉ……!?なんでれいむがおこられなきゃいけないのぉ……!?) れいむには、その原因が全く分かっていなかった。 (ゆぅ……!れいむは、とってもかわいそうだよ……!ぜんぜんゆっくりできないよ……!ゆうぅ……) そしてれいむは、暴れたり、泣いたりした事により疲れ果て、やがて眠ってしまった。 ……夜。 「ゆ……」 れいむが目を覚ますと、昼間でさえ薄暗い段ボールハウスの中がさらに暗くなっていた。 「ゆぅ……、ゆぅ……」 「ぴぴゃー……、ぴゅぴー……」 そして、少し離れた場所で、母れいむと妹まりちゃが身を寄せ合って寝ていた。 「ゆ……!」 その光景を見て、れいむの心に再び憎悪の炎が燃え上がった。 その憎悪の対象は、やはり妹まりちゃだった。 (こいつのせいで……、れいむは、おかあさんにおこられたんだよ……) れいむはじりじりと這いながら、寝息を立てている妹まりちゃに近付いた。 (こいつさえいなければ……!こいつさえいなければ……!) れいむは妹まりちゃを睨みつけながら、少しずつ距離を縮めていった。 (こいつは……、とんでもないげすだよ……!れいむがかわいそうなのは、ぜんぶ、こいつのせいなんだよ……!) ……そして、とうとうれいむは妹まりちゃのすぐ傍まで到達した。 (れいむをいじめる、こんなげすは……!) そして、れいむは大きく口を開け……。 (れいむが、ころしてやるよぉっ!!) 妹まりちゃの頬を、食い千切った。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?」 「ゆっ!?」 妹まりちゃは突然の鋭い痛みに悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いて母れいむが目覚めた。 「お、おちびちゃん!?いったいどうし……、な、なんでおちびちゃんのほっぺがちぎれてるのぉっ!?」 「ぴゅぴゃあぁぁぁぁっ!!ぴゅぴいぃぃぃぃっ!!」 母れいむは何故妹まりちゃがこんな惨たらしい姿になっているのか訳が分からず、何か傷口を塞ぐものが無いかと周りを見回し、そして、見てしまった。 「うっめ!こいつ、めっちゃうめぇ!まじぱねぇ!」 れいむが何かを美味しそうに咀嚼している姿を。 ……そして、れいむの頬に付いていた、餡子も同時に。 「ゆっ!おかあさん!おかあさんもいっしょにこいつをころ」 「……でていけ」 「……ゆ?」 れいむのその言葉の先を、母れいむの静かで、ドスの効いた声が遮った。 「お、おかあさん?いったいなにを」 「いもうとをころそうとするげすなんて、おかあさんのこどもじゃないよ」 「な、なんで!?なんでそんなことを」 「でていけえぇぇぇぇっ!!このげすがあぁぁぁぁっ!!」 「!?」 母れいむの怒りの形相を目の当たりにしたれいむは、確信した。 ……本気で、殺されると。 「ぴ……、ぴいぃぃぃぃっ!?」 目の前の死への恐怖から逃れる為に、れいむは必死に跳ねて段ボールハウスから逃げ出した。 目から涙を、体中からは汗を、まむまむからはしーしーを、色々と水分を垂れ流しながら、必死に逃げ出した。 「なんでえぇぇぇぇっ!?れいむはなんにもわるくないのにいぃぃぃぃっ!!」 れいむは叫びながら、一度も振り返る事無く、夜の世界へと逃げ出した。 「ぴいぃぃぃぃっ!!ぴいぃぃぃぃっ!!」 「おちびちゃん……!しなないでね……!」 ……段ボールハウスに残されたのは、傷の痛みに泣き叫んでいる妹まりちゃと、妹まりちゃの傷口を備蓄の葉っぱなどで必死に塞ごうとしている母れいむの二匹だけとなった。 ……十分後。 「ゆうぅぅぅぅっ!!ゆうぅぅぅぅっ!!」 あれかられいむは、母れいむから少しでも遠ざかろうと、必死に跳ねていた。 涙も、汗も、しーしーも、全て出しきったが、それでもれいむは必死に跳ねていた。 「ゆ……、ゆうぅ……」 ……が、やがて体力の限界が来て、れいむは跳ねるのを止め、ずりずりと這っての移動に切り替えた。 「こ、ここはどこなのぉ……?」 れいむは這いながら、キョロキョロと周りを見回した。 コンクリートの壁。 アスファルト。 街灯。 時折れいむの横を通る、乗用車。 それら全てが、れいむが初めてみる物だった。 ……そして、すぐ近くにある雑木林を見つけた。 「ゆっ……!あ、あそこにかくれるよ……!」 れいむはその雑木林の中へ入っていった。 前へ進むたびに、葉っぱや木の枝がチクチクと体のあちこちに刺さるが、そんな事を気にしている場合では無かった。 そして、比較的周りに葉っぱや木の枝が無いスペースを見つけると、そこで体を休ませた。 「ゆうぅ……。れいむは、ゆっくりできないやつを、えいえんにゆっくりさせなくしようとしただけなのに……。いったい、なにがわるいの……?」 れいむはホロリと涙を流しながら、ボソリと呟いた。 「ゆっ……!そうだよ!れいむはなんっにもわるくないんだよ!!わるいのはぜんぶ、あのまりさなんだよ!」 そしてれいむは何度目になるか分からない責任転換をし始めた。 「そうだよ!おかあさんだって、れいむをころそうとした、とんでもないげすだよ!あんなくそばばあ、れいむのおかあさんなんかじゃないよ!」 とうとうれいむは母れいむまで罵倒し始めた。 「まりさも、くそばばあも、どうしてみんな、れいむをわるものあつかいするの!?ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっすることは、ただしいことなのに!!」 一度湧きあがった怒りや不満感はなかなか収まらず、れいむはしばらくの間、妹まりちゃや母れいむの悪口を言っていた。 ……が、跳ねて移動した疲れが徐々に出てきて、れいむは再び睡魔に襲われた。 「ゆぅ……。とりあえず、れいむはす~やす~やたいむにはいるよ……。ねるすがたも、かわいくてごめんねぇ……」 そしてれいむは、比較的安全な場所に隠れたと判断し、眠りにつくのだった。 ……数時間後。 「……ゆ、ゆゆ~ん……、よくねたよぉ……。ねおきすがたも、かわいくてごめんねぇ……」 あれから数時間程寝ていたれいむは、雑木林の隙間から差し込んでくる太陽の光の眩しさで目が覚めた。 どうやら、昼過ぎまで寝ていたようである。 そして、目が覚めるのと同時に、空腹感がれいむを襲った。 「ゆぅ……。おなかがへったよ……」 昨日から何も食べていなかったので、当然と言えば当然である。 「とりあえず、ここからでるよ……」 いつまでもここにいても意味が無いと思ったれいむは、その雑木林を抜ける事にした。 そのまま来た方向へと戻っては、母れいむに見つかると思ったので、反対側へ進む事にした。 ……れいむが雑木林を抜けると、目の前には大きな建物があった。 それは、どこにでもあるような、ありふれた一軒家であった。 「ゆうぅぅぅぅっ!!とってもおおきなおうちだよぉっ!!」 れいむは産まれて初めて見る、とても大きな家に感動して、しーしーを漏らした。 「ゆっ!そうだ!ここをれいむのおうちにするよっ!!れいむはかわいそうなんだから、こういうおうちにすむくらい、とうぜんだよね!」 自分は今まで不遇な立場にあったのだから、これ位は良い思いをしても当然だ。 そう考え、れいむはその家の方へと跳ねていった。 れいむがベランダの方まで来ると、目の前にガラスが立ちはだかっていた。 「ゆうぅっ!!とうめいなかべさん!れいむをいれてね!ぐずはきらいだよ!……どぼぢでいれてくれないのおぉぉぉぉっ!?」 れいむは窓ガラスに自分を中に入れるよう命令したが、そんな事で窓ガラスが開く訳が無かった。 「いれろおぉぉぉぉっ!!かわいそうなれいむをいれ……、ゆっ!?」 痺れを切らして、窓ガラスに体当たりをしようとしたれいむは、家の中のあるものを見て、固まってしまった。 「こぼにぇー……」 家の中のリビングで、一匹の赤ゆっくりがスヤスヤと寝ていた。 ……その赤ゆっくりは、ゆっくりゆゆこだった。 そして、その帽子には、銀色に光るバッジが付いていた。 (な、なんなの?あのゆっくりは……。なんで、れいむのおうちのなかにいるの……!?) れいむの頭の中では、この家は既に自分の家という事になっており、赤ゆゆこはすっかり侵入者扱いされていた。 (ゆぎいぃぃぃぃっ!!れいむのおうちにかってにはいりやがってえぇぇぇぇっ!!そっこくおいだしてやるうぅぅぅぅっ!!) れいむは何とか家の中に入ろうとしたが、窓ガラスは体当たりでは壊れそうになかったので、どうすれば良いものかと餡子脳を悩ませた。 ……すると、ある事に気付いた。 「ゆっ!こんなところに、すきまがあるよ!」 見ると、窓ガラスは僅か数センチ程開いており、鍵はかかっていなかった。 れいむは窓ガラスの隙間に、頭を突っ込ませ、何度も頭を振りながら、無理矢理隙間から侵入しようと試みた。 れいむの体は、段々と隙間の中に入っていき、そして……。 「ゆうぅぅぅぅっ!!ここはれいむのおうちだよおぉぉぉぉっ!!」 リビングへと侵入したれいむは、赤ゆゆこに対し大声を上げた。 「こ……、こぼにぇ!?」 れいむの大声で目覚めた赤ゆゆこは、突然の侵入者に対し、驚きを隠せなかった。 赤ゆゆこが驚き、竦みあがってる内に、れいむは赤ゆゆこの方へと跳ね、どんどん距離を縮めた。 「こいつうぅぅぅぅっ!!おうちせんげんするまえに、せいっさいっしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむは目を血走らせ、赤ゆゆこに体当たりをかました。 「こぼにえぇぇぇぇっ!?」 赤ゆゆこは弾き飛ばされ、コロコロと向こうへ転がっていった。 ……その際に、赤ゆゆこの帽子が落ちてしまった。 「ゆうぅぅぅぅっ!!げすのぼうしなんか、めざわりだから、こうしてやるよっ!!」 れいむはそう言うと、赤ゆゆこの帽子の上に乗っかり、その場で何度も跳ねた。 それにより、赤ゆゆこの帽子は徐々に潰され、あちこちが破けていった。 「こぼにえぇぇぇぇっ……!」 赤ゆゆこは涙を流して泣き叫んだが、れいむの頭の中は『ゲス』の帽子を踏み潰す事で夢中だった。 「ゆふぅ~!いいことしたあとにかくひとあせって、いいものだねぇ!」 ……そして、ゆゆこの帽子は完全にひしゃげてしまった。 れいむの心の中は、正義感と達成感で満たされていた。 「こ……、こぼにえぇぇぇぇ……」 赤ゆゆこは、以前は自分の大切な帽子だった布切れを見て、再び泣き声を上げた。 ……赤ゆゆこのその姿を見たれいむは、苛立ちがピークに達した。 「なんでないてるのおぉぉぉぉっ!?なきたいのはこっちなんだよおぉぉぉぉっ!?れいむのすてきなおうちにふほうしんにゅうしたくせにいぃぃぃぃっ!!」 赤ゆゆこの泣き叫ぶその姿が、妹まりちゃと重なったからだ。 「どいつもこいつもおぉぉぉぉっ!!れいむのことをいじめやがってえぇぇぇぇっ!!」 れいむの頭の中は、赤ゆゆこに対する怒りで一杯だった。 そしてれいむは赤ゆゆこを噛み殺そうと、大口を開けて跳躍しようとした、その時。 「ゆっ!?」 れいむはあるものを見つけ、飛び跳ねようとしたのを止めた。 ……自分から少し離れた場所に、小皿に盛られた、美味しそうな饅頭があったのだ。 それは、赤ゆゆこの為に用意されたおやつだった。 「ゆ……、そういえば、おなかがすいていたね!さきにはらごしらえをするよ!」 昨日から何も食べていなかったれいむは、一旦赤ゆゆこに対する怒りを忘れ、饅頭を食べる事にした。 「ゆふふっ!れいむはこれから、すーぱーむ~しゃむ~しゃたいむにはいるよ!それがおわったら、おまえのばんだからね!」 「こぼにぇ……」 れいむは赤ゆゆこにそう言うと、饅頭の近くまで跳ね、大口を開けて、その饅頭に喰らい付いた。 「む~しゃむ~しゃ!うめぇ!これめっちゃうめぇ!まじぱねぇ!あのくそまりさより、てらうめぇ!」 れいむは饅頭の餡子やら皮やら、あちこちに飛ばしながら、口汚くその饅頭を食べていた。 ……数分後。 「げっぷぅ~!たべるすがたもかわいくてごめんねぇ~!」 饅頭を食べ終えたれいむは、心身共に満足した。 「ゆっふっふ!はらごしらえもおわったことだし、こんどはせいっさいったいむにはいるよぉ!」 食後の軽い運動とばかりに、赤ゆゆこを制裁しようと、赤ゆゆこのいた方を見た、……が。 「ゆうぅぅぅぅっ!?どぼぢでいないのおぉぉぉぉっ!?」 そこに赤ゆゆこの姿はなかった。 れいむはリビングの周りをあちこち見まわしたが、赤ゆゆこはどこにもいなかった。 「にげたなあぁぁぁぁっ!!なんてひきょうなげすなんだあぁぁぁぁっ!!」 しばらくあちこちを探して、ようやく逃げたと気付いたれいむは、怒りと悔しさから叫び声を上げた。 「ころしてやるうぅぅぅぅっ!!みつけたら、そっこくころしてやるうぅぅぅぅっ!!」 れいむは赤ゆゆこに対する殺意を剥き出しにし、赤ゆゆこを探すべく、他の場所へ移動しようとした。 「寝惚けた事言ってんじゃねぇぞゴラァッ!!」 ……が、その第一歩を踏み出す前に、何者かに背中を思い切り蹴り飛ばされた。 「ゆびゃあぁぁぁぁっ!?おそらをとんでべびゃあっ!?」 れいむは顔面から壁に激突した。 「チッ……、窓ガラスが開いてたのか……」 「びいぃぃぃぃっ!?でいぶのうづぐじいかおがあぁぁぁぁっ!!でいぶのまっじろなはがあぁぁぁぁっ!!」 壁に当たった際に、顔面を強打し、歯も何本か折れてしまった。 「だれだあぁぁぁぁっ!!でいぶにごんなごどをするげすはあぁぁぁぁっ!!」 れいむは転げ回りながら、そう叫んだ。 「べっ!?」 「俺か?俺はなぁ……」 その何者かは、転げ回るれいむの体を、足で踏み付け、そして、こう言った。 「この家の主人なんだけどさぁ……?」 ~回想終了~ 「二階で昼寝してたらさぁ、何か下の方が騒がしいと思って降りてみたら、廊下でゆゆこが泣いてたのさ。……お前、ゆゆこに何した?」 「れ……れいむは、おうちせんげんしようとしたげすを」 「お家宣言してんのは手前ェだろうが糞饅頭が!ここは俺とゆゆこの家なんだよ!!」 青年はそう言うと、れいむを持ち上げ、床に叩き付けた。 「ばびゃあぁぁぁぁっ!?」 「何も悪くないだぁ?勝手に人様の家に入って、ゆゆこを酷い目に合わせて、何が自分は悪くないだゴラァッ!!」 「れ……、れいむはとってもかわいそうなゆっくりなんだよおぉぉぉぉっ!?だから」 「可哀想だから何だ!?不法侵入や殺しが許されんのか!?他の奴を酷い目に合わせる事が、許されるって事なのか!?」 「あたりまえでしょおぉぉぉぉっ!?かわいそうなゆっくりは、しあわせにならなきゃいけないんだよおぉぉぉぉっ!?なんでそれがわからないのおぉぉぉぉっ!?」 「……」 れいむのその言葉に、何故か青年は黙り込んでしまった。 「かわいそうなゆっくりをひどいめにあわせるげすは、せいっさいっされなきゃ」 「あぁ、そうかいそうかい。分かったよ、お前の言いたい事は。可哀想な奴は、幸せにならなきゃいけない。……そういう事だろ?」 「ゆっ!そ、そうだよ!だかられいむのやったことは、ただしいんだよ!」 「……そうかい。だったら、俺も正しい事をやらせてもらうよ」 青年はそう言うと、れいむの揉み上げを掴み、持ち上げた。 「い、いだいぃぃぃぃっ!!はなぜえぇぇぇぇっ!!でいぶのきゅーてぃくるなもみあげさんが、ちぎれるだろうがあぁぁぁぁっ!!」 れいむは必死に抗議したが、青年はそれを無視し、台所へと言った。 「今、『代わり』を用意するからな、待ってろよ、ゆゆこ」 「こ~ぼにぇ~」 テーブルの上には、先程の赤ゆゆこがいた。 そしてテーブルには、一枚の皿が置かれていた。 「はなじでえぇぇぇぇっ!!」 「もうすぐ離してやるから、待ってろよ糞饅頭」 青年はそう言うと、流し台まで行き、れいむを水で洗い、まな板の上に置いた。 「ゆっ!?な、なにする」 そして暴れようとするれいむを押さえ付け、れいむの髪の毛をリボンごと掴み、思い切り引き抜いた。 「はぎゃあぁぁぁぁっ!?でいぶのさらさらへあーがあぁぁぁぁっ!!げいじゅつてきなおかざりがあぁぁぁぁっ!?」 青年はれいむの叫び声を無視し、再び残っている髪の毛を毟る作業へ戻った。 「はぎっ!?いぎっ!?ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?」 何度も髪の毛を毟られる度に、れいむは悲鳴を上げた。 ……そして、れいむの髪の毛は一本も無くなり、れいむはハゲ饅頭と化した。 「ゆぐぎいぃぃぃぃっ……」 「まだ終わりじゃねぇぞ?」 青年はそう言うと、今度はガスコンロの上に大き目のフライパンを乗せ、火を付けた。 「なっ、なにする」 「これしかねぇだろうがよ!」 青年はれいむを持ち上げると、れいむをそのままフライパンの上に乗せた。 「あぎゃあぁぁぁぁっ!?あづいぃぃぃぃっ!?でいぶのかもしかのようなあんよがあぁぁぁぁっ!?」 れいむは必死にウネウネと体を動かしたが、青年に頭部を押さえつけられていたので、ほとんど効果が無かった。 ……そして、れいむの底部は完全に焼け焦げた。 「あづいよおぉぉぉぉっ!!どぼぢでごんなごどするのおぉぉぉぉっ!?」 れいむは青年が何故こんな事をするのか分からなかった。 「……なぁ、れいむよぉ。……ゆゆこを見て、どう思うよ?」 「ゆうぅぅぅぅっ!?」 急に青年はれいむにそんな事を尋ねた。 「ぼうしがない、みじめなくそゆっくりにきまってるでしょおぉぉぉぉっ!?」 「……そうだよなぁ。大切な帽子が無いなんて、可哀想だよなぁ。……その帽子を潰したのは、お前だよな?」 「たしかにれいむはぼうしをふみつぶしたけど、それがなんだって」 「まだ分からないか?俺が言いたい事が」 「なんだっていうんだあぁぁぁぁっ!?」 「じゃあ分かるように言ってやる。ゆゆこは大切な帽子を失くした『可哀想』なゆっくり、お前はその帽子を潰した『悪い』ゆっくりなんだよ」 「ゆっ!?」 「『可哀想』なゆっくりは幸せになって、『悪い』ゆっくりは制裁されなくちゃいけない。……お前が言った事だろ?」 「あ……、あぁぁぁぁっ……!?」 「お前は、お前が駄目にしちまった饅頭の『代わり』になってもらって、ゆゆこに食べられるんだよ」 「や……、やべでえぇぇぇぇっ!?そんなのゆっぐりできないぃぃぃぃっ!!ゆるじでえぇぇぇぇっ!!」 ここに来て、青年が何をやりたいのかようやく理解したれいむは必死に泣き叫び、命乞いを始めた。 「お前はゆゆこに食われて制裁されて、ゆゆこは腹一杯になって幸せになれる。丸く収まるって訳だ」 「やだあぁぁぁぁっ!!やだやだやだあぁぁぁぁっ!!れいむ、かわいそうなのにいぃぃぃぃっ!!なんでこんなめにあうのおぉぉぉぉっ!?」 「そりゃ、悪い事をしたからさ」 そう言って青年はれいむを持ち上げると、今度は顔面をフライパンに押しつけた。 「ぎゅぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!?」 れいむの口や飴細工で出来た歯が、熱によって焼かれ、溶け、あっと言う間にれいむの口は焼き潰された。 「……!!……!?……!……!!」 青年はフライパンを持ち上げると、テーブルの皿の上に、あちこちを焼かれたれいむを乗せた。 「ほらゆゆこ。腹一杯食べろよ?」 「こ~ぼにぇ~!」 赤ゆゆこは目を輝かせ、待ってましたとばかりにれいむの背中に噛み付いた。 「!!?!?!!!」 「はふっ!はふっ!こぼにぇ~!」 れいむは赤ゆゆこに背中を何度も噛まれ、その度に激痛に襲われ、涙を流した。 青年が口を潰したのは、いちいち叫び声を上げられてはうるさいと思ったからだ。 そんなれいむとは対照的に、赤ゆゆこは幸せそうな笑顔で、美味しそうにホクホクの餡子を食べていた。 「美味いか?ゆゆこ。次は赤ありす達を用意しておくからな。お前はカスタードが大好きだからなぁ」 「こぼにぇ~」 「……!!……!!」 れいむが必死に痛みに耐えている横で、青年と赤ゆゆこは楽しそうに笑っていた。 ……十数分後。 「すぅ……。すぅ……」 「……!!」 「……」 赤ゆゆこが、子ゆっくりサイズのれいむを全て食べきれる訳もなく、赤ゆゆこはれいむを食べ残したまま、スヤスヤと眠っていた。 それとは対照的に、れいむは背中の大部分を食いつくされ、中から飛び出た餡子が空気に触れ、それによる激痛で涙を流していた。 そして、青年はそんなれいむを静かに、黙って見ていた。 「……何かさぁ」 「……」 「今のお前を見ていると、確かに可哀想だなって思ってきたわ」 「!」 青年のその言葉に、れいむの表情が変わった。 「ゆゆこも十分満足しただろうし、もう良いや。この家から出してやるよ、お前」 「ゆぴ……、ゆぴ……」 「ゆぅ……、あんこさんがでなくなったよ……。よかったよ、おちびちゃん……」 そこは、とある空き地の、とある段ボールハウスの中。 その中には、あの母れいむと妹まりちゃがいた。 あれから母れいむは、妹まりちゃの手当てを寝ずに行い、その結果、餡子の流出を食い止める事が出来た。 幸い餡子自体はそれほど失わずに済んだので、安静にさえしていれば命の危険は無かった。 「ゆ……、ゆぴ……」 しかしそれでも、傷口を葉っぱで塞いでいるその姿は、やはり痛々しいものであった。 「……おちびちゃん……。……まりさ……。ごめんね……」 母れいむは目の前の妹まりちゃと、今はもういない、自分の番のまりさに向かって謝った。 母れいむにはかつて、同じ野良であるまりさに一目惚れし、一緒にゆっくりしようと誓い、番同士になった。 母れいむの頭の上に、新しい命が宿った時には、共に涙し、喜んだ。 まりさは母れいむと子供の為に、必死になって食べ物探しに勤しんだ。 ……が、ある日突然、まりさは帰らぬ身となった。 ゴミ袋から得た生ゴミや食べ残しを持ち帰る際に、車に轢かれてしまったのだ。 母れいむはその事故に立ち会った訳でもなく、そのまりさの死体を見た訳でもないが、いつまでもまりさが帰ってこない事で、悟ったのだった。 これで自分はしんぐるまざーになってしまった訳だが、母れいむはその事を言い訳にする気は無かった。 まりさの分まで、自分が頑張る。 そう心に決め、今日まで頑張って来た……、つもりだった。 ……あの時、何故、『あの子』に『自分で考えろ』と言ってしまったのか。 何故、それが悪い事なのか、一から聞かせるべきだった。 そうすれば、こんな事にはならなかった筈だ。 「……おちびちゃん……」 母れいむの頭の中で、様々な思いが渦巻き、次第に目元に涙が溜まり……。 「……ゆー、おきゃーしゃん、なかにゃいで」 その涙がこぼれ落ちる事は、無かった。 「お……、おちびちゃん……?」 「ゆ、ゆー」 「しゃ……、しゃべれるの……?おちびちゃん……?」 「ゆー、ゆぴー、お、おきゃーしゃん」 妹まりちゃは、たどたどしいながらも、必死に自分の口で、初めて母れいむを『お母さん』と呼んだのだ。 れいむに頬を噛まれた際の痛みが、ショック療法となったのかもしれない。 それとも、時間が経てば少しずつ改善出来る状態だったのかもしれない。 あるいは、ただ単に成長が遅かっただけなのかもしれない。 その理由は分からなかったが、母れいむにとって、そんな事はどうでも良かった。 「ゆ……!な、ないてないよ!おかあさん、ないてないからね!」 「ゆー、よかったー」 「お、おちびちゃん、おなかすいたでしょ?お、おかあさん、たべものをさがしてくるから、まっててね!」 母れいむはそう言って、段ボールハウスを飛び出した。 「ゆー、いってらっしゃい」 妹まりちゃの言葉を背に受けながら。 そして、折れかけていた決意が再び蘇り、そして、新しい誓いを立てた。 あの子の一生を、不幸なまま、終わらせない。 それがどれだけ大変な事であるか、それを理解したうえでの誓いだった。 (まりさ……、おちびちゃん……、れいむ、がんばるよ!がんばるからね!) そう思いながら、母れいむはいつもの狩り場である、ゴミ捨て場へと向かったのだった。 ……同時刻。 あれから青年はれいむの食いかけの部分を再び焼き潰し、袋に入れてどこかへ出かけた。 ……そして、青年が辿り着いたのは、青年がよく利用しているゴミ捨て場だった。 「なぁれいむ。俺は外に出すとは言ったけど、自由にするとは言ってないからな?」 青年は袋の中のれいむに話しかけた。 「……!!」 れいむは、青年の言葉に対し、怨みが込められた眼で青年を睨みつけた。 「もしかしたら、他の気の良いゆっくりが、お前を拾って何とかしてくれるかもな。……そうだな、ゆっくりショップで、ゆゆこの帽子を買ってから帰るか」 青年はれいむの入った袋を、ゴミ袋の山へと投げ捨て……。 「じゃあな、『頭』が可哀想なれいむちゃん」 そう言い残し、ゴミ捨て場を後にした。 「……!!」 袋の中のれいむは、青年の後ろ姿を、ただじっと睨みつけていた。 (……れいむは……。れいむは、かわいそうなんだよ……!だれか……!れいむをたすけてね……!) れいむはこの状況になっても、まだ何とかなると思い、諦めていなかった。 (くそまりさ……!くそばばあ……!はやくかわいそうなれいむをたすけろぉ……!!) そして、かつては殺そうとし、そして見捨てられた家族に助けを求めた。 (だれでもいいから……!かわいそうなれいむをここからだせえぇぇぇぇっ!!) どう考えても、れいむのゆん生はとっくに詰んだも同然なのだ。 それはれいむにも分かっていたはずだが、れいむはその事を理解したくはなかった。 自分の一生が、不幸なままでは終われない。 その気持ちが、れいむのゆん生への執着心への原動力となっていた。 ……そして、その気持ちが天へと通じたのか、外側から、何者かが袋を噛み千切ろうとしていた。 (やった!やったよ!れいむはたすかるよ!やっぱり、かわいそうなれいむはさいごにはしあわせになれるんだね!かちぐみでごめんねぇ!) ……そして、袋が完全に破れ……。 「ゆっ!?やったよ!きょうはおまんじゅうさんがあったよ!!」 END あとがき 私がSSを書く際に気を付けている事は、出来るだけシンプルな内容にまとめようとする事です。 今のところ、シンプルにまとまった事が一度もありません。 来週からテストがラッシュでストレスがマッハでヒャアってなりそうなので、もしかしたらしばらくはSSの投下は無理っぽさそうです。 出来れば、小ネタか何か書きたいなーと思っています。 ご意見、御感想、お待ちしています。 作者:ぺけぽん 感想用掲示板はこちら http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ミラーはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1.html 今までに書いたSS anko1656 クズとゲス anko1671 うにゅほのカリスマ求道記 anko1767 あなたは、食べてもいい○○○○? anko1788 そんなの常識ですよ? anko1926~1928 二人はW ~Yは二度と帰らない~ anko2079 しんぐるまざー anko2750 無意識だから anko2786 ともだち anko3189 おちびちゃんは大切だよ! anko3210 バクユギャ anko3221 根本的な間違い anko3249 お兄さんは興味が無い anko3261 それぞれの願い anko3319 好みは人それぞれ anko3330~3331 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~ anko3343 HENNTAI達の日常~駄メイドの休日~
https://w.atwiki.jp/eeelmmm/pages/154.html
無意味な投票場です。 是非投票お願いします。 ちびちゃとNo.1(女ver~) ちびちゃとNo.1(男ver~) ちびちゃと嫌いな人ランキング