約 8,219 件
https://w.atwiki.jp/nicotetsu/pages/534.html
アポロ回数券 能登急行線の特急「アポロ」の普通車指定席がご利用いただける便利な6枚つづりの回数券です。神戸大開乗換えでご利用になれます。 取扱箇所 お求め・お問い合わせは、ニコニコ鉄道や幻想鐵道の主な駅の窓口、旅行センターおよび主な旅行会社へ。 (一部お取扱いしていない箇所もあります。) 発売期間 通年 有効期間 3箇月間 利用期間 通年 (4/27〜5/6、8/11〜20、12/28〜1/6の期間はご利用になれません。) 設定区間・料金 設定区間 料 金 上白沢・気門 ⇔ 宮小路 大人 11,000円 ⇔ 新朝日 大人 19,000円 ⇔ 神戸大開 大人 24,000円 宮小路 ⇔ 新朝日 大人 10,000円 ⇔ 神戸大開 大人 17,000円 新朝日 ⇔ 神戸大開 大人 10,000円 ※こども料金の設定はございません。 ご利用条件 特急・急行列車の普通車指定席がご利用になれます。 経路は能登急行線経由です。 途中下車はできません。 有効期間開始日の変更はいたしません。 指定列車の変更は指定列車の出発前に限り何回でも変更できます。変更の際は「きっぷ」本券と出発前の指定席券を窓口にお持ちください。 神戸大開駅でアポロからスペーシアてゐにお乗り換え、またはスペーシアてゐからアポロにお乗り換えのお客様は事前に窓口までお申し出下さい。神戸大開駅発着のスペーシアてゐの割引特急券を発売致します。この割引特急券は車内では発行できません。ご注意ください。 払戻し 払戻しは、有効期間内で全ての券が未使用で表紙を伴っている場合に限り取扱います。 (210円の払い戻し手数料がかかります。) 元ネタ ひたち回数券(普通車)
https://w.atwiki.jp/nicotetsu/pages/858.html
概要 東武鉄道の特急型電車で、バブル期にホテルのデザイナーを招いて作られた豪華な特急。 現在でもその豪華さは健在である。 ホットフードが販売できるビュッフェや、床にカーペットを敷き、大理石を用いたテーブルのある個室など 今の東武を代表する特急電車にふさわしい内装や外観となっている。 浅草からの「スペーシアけごん」「スペーシアきぬ」と、JR新宿からの「スペーシアきぬがわ」「スペーシア日光」に用いられる。 ニコニコ鉄道での運用 南初音支社・鶴抵支社・芝地区開発プロジェクト 3支社間環状特急「スペーシアてゐ」に用いられる。 編成 スペーシアてゐ編成 5両編成2本が在籍、全て鶴抵支社の受け持ち。
https://w.atwiki.jp/chaos-touhou/pages/616.html
“東方永夜抄”“永遠亭のウサギ” 読み:“とうほうえいやしょう”“えいえんていのうさぎ” カテゴリー:Chara/女性 作品:永夜編 属性:無 ATK:6(-) DEF:4(+1) 【登場】〔自分の手札の 永夜編 のキャラカード1枚を控え室に置く〕 [自動]このキャラが登場かレベルアップかオートレベルアップした場合、ターン終了時まで、このキャラは攻撃力が4上昇する。 [永続]このキャラ以外の《“東方永夜抄”“永遠亭のウサギ”》が1体以上登場している場合、このキャラは『貫通』を得る。 幸運が訪れるわー illust:とんとろ 永夜-049 C 収録:ブースターパック「OS:東方混沌符 -永夜編-」 参考 特徴“東方永夜抄”を持つキャラ・エクストラ一覧 “異変解決”“東方永夜抄”逢魔が時「十六夜 咲夜」&「魂魄 妖夢」 “異変解決”“東方永夜抄”永夜異変「博麗 霊夢」&「霧雨 魔理沙」 “異変解決” “東方永夜抄”ラストスペル「霧雨 魔理沙」 “異変解決” “東方永夜抄”ラストスペル「博麗 霊夢」 “東方永夜抄”赤眼催眠「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”蟲を操る妖蟲「リグル・ナイトバグ」 “東方永夜抄”老いる事も死ぬ事も無い人間「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”禁呪の魔法使い「霧雨 魔理沙」 “東方永夜抄”生命遊戯「八意 永琳」 “東方永夜抄”狂気を操る月の兎「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”火の鳥「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”海を渡る兎の軌跡「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”永遠亭の主人「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永遠亭の「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”永遠亭の「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”永遠亭の「八意 永琳」 “東方永夜抄”永遠と須臾を操る月人「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永夜返し -初月-「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永夜返し -世明け-「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永夜返し -丑の刻-「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”歴史を食べるワーハクタク「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”正直者の死「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”歌で人を狂わす夜雀「ミスティア・ローレライ」 “東方永夜抄”梟の夜鳴声「ミスティア・ローレライ」 “東方永夜抄”月兎遠隔催眠術「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”月のいはかさの呪い「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”旧秘境史「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”新幻想史「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”幽冥の剣客「魂魄 妖夢」 “東方永夜抄”幻想の巫女「博麗 霊夢」 “東方永夜抄”天人の系譜「八意 永琳」 “東方永夜抄”夢幻の使用人「十六夜 咲夜」 “東方永夜抄”壺中の大銀河「八意 永琳」 “東方永夜抄”地上の流星「リグル・ナイトバグ」 “東方永夜抄”古代の詐欺師「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”人間を幸運にする妖怪兎「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”リトルバグ「リグル・ナイトバグ」 “東方永夜抄”ラストワード「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”ラストワード「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”ファーストピラミッド「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”シンデレラケージ「鈴仙・優曇華院・イナバ」&「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”イルスタードダイブ「ミスティア・ローレライ」 “東方永夜抄”あらゆる薬を作る月人「八意 永琳」 “東方永夜抄”Stage5 穢き世の美しき檻「因幡 てゐ」 「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”Stage4 uncanny 伝説の夢の国「博麗 霊夢」 「十六夜 咲夜」 “東方永夜抄”Stage4 powerful 魔力を含む土の下「霧雨 魔理沙」 「魂魄 妖夢」 “東方永夜抄”Stage3 歴史喰いの懐郷「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”Stage2 人間の消える道「ミスティア・ローレライ」 「霧雨 魔理沙」 “東方永夜抄”Stage1 蛍火の行方「リグル・ナイトバグ」 「博麗 霊夢」 “東方永夜抄”Final 姫を隠す夜空の珠「八意 永琳」 “東方永夜抄”Final B 五つの難題「八意 永琳」 「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”Extra 蓬莱人形「上白沢 慧音」 「藤原 妹紅」 “東方永夜抄” 永遠亭のウサギ “東方永夜抄” Imperishable Night. 特徴“永遠亭のウサギ”を持つキャラ・エクストラ一覧 “東方永夜抄” 永遠亭のウサギ
https://w.atwiki.jp/tohofight/pages/2400.html
魅魔スレ 301「でも魅魔様の搾乳ならちょっと見たいかも」 幽香「 憤! 」 ドゴォ! 文(幼)「あたりいちめんょぅι゙ょだらけ…って、わたしもロリかしてるじゃないですかー!やったー!」 幽香「 破! 」 ドゴォ! 馬鹿き手「ロリロリ祭と聞いて。ついに俺の出番か!?」 幽香「 喝!」 ドゴォ! はたて(幼)「おねーさまー!おねーさまー!」 メディ「はたてー、ココはぐれボススレじゃないよー?」 幽香「……///」 ナデナデ 向日葵 \ユウカチャン!/ \ボクモナデナデシテ!/ 幽香「…」 グチャッ グチサァッ ~っす「始めから幼女(てゐィ)しきな俺はこの程度ではうろたうはしない」 幽香「………うわーお」(ボソリ) ~っす「許してくだふぁい・・。」 幽香「うわーお!うわーお!うわーおうわーおうわーおうわーおうわーお?うわーお! うわーおうわーおうわーお…?うわーお?うわうわーおうわーおうわーおwww」 てゐ「やめたげてよぉ!」 魅魔「……次々と現れる何かアレな奴等を蹴散らしていく…。流石は幽香さね!」 魔理沙(幼)「うふふ。魅魔様!私は魅魔様がナンバーワンだって信じてるわ!」 魅魔「ありがとうよ魔理沙。…でもまぁ、この状況じゃあ私の負けだろうねぇ。」 幻想幼女達「「 ゆうかりん! ゆうかりん! ゆうかりん! ゆうかりん! 」」 幽香「…………グッ!」(←男前に微笑みながらサムズアップ) 結果 ゆうかりん勝利 ~っす「 」 死~ん… てゐ「…さて。財布財布は…と。」 ゴソゴソ… アルティメットサディスティッククリーチャー カオス 他スレ住人 幽香 魅魔 ~っす
https://w.atwiki.jp/toho/pages/3966.html
東方永夜抄 ~ Imperishable Night. シンデレラケージ ~ Kagome-Kagome CHERRYSTORY / CHERRY / 彩月 あみ KAGOME galleryいえろ~ぜぶら / 東方弦想歌 ~Color of Flower~ / 紗菜 Princess in reticulated cageKraster / 東方雨月譚 / 羽丘 淳 Secure Cage -day side-Rhyth / 東方スクランブル3 -the Clane and the Turtle- / 葉月 なの Secure Cage -night side-Rhyth / 東方スクランブル3 -the Clane and the Turtle- / 小宮 真央 Time ChaseC-CLAYS / 遙~HARUKA~ / 舞 K2 SOUND / 麗鳴 RAY-MEI / 小峠 舞 Trick and TrapSOUND HOLIC / 永 -TOKOSHIE- / A~YA 愛の監獄Bloody Sword / 東方歌劇曲 / ミカエル咲夜 檻の中の遊戯 ~ かごめ ~ feat. 初音 ミク吉田未来Project / 東方モラトリアム / 初音 ミク 籠 -Cage-CYTOKINE / ⑨ -maruQ- / 初音 ミク 穢き世の美しき檻魂音泉 / FANTASIA / ytr、たまちゃん 燦詞『四響八謡詠夜唱』あぷえぬすたーと! / 東方ラヂヲ和歌集 ~Vocal Arrange Musics~ / すし~ あぷえぬすたーと! / 寿司詰め合わせ ~東方ラヂヲ和歌集あぺんどでぃすく~ / すし~ シアワセネガイセブンスヘブンMAXION / 東方恋想郷 ~Grazing Heart~ / 珠梨 地獄 シンデレラケージFragile Online / だってしょうがないじゃない / YS シンデレラケージ虹色論理 / RED EYES LUNATICA / 210 虹色論理 / 恋と少女と絶対零度 / 210 シンデレラケージ ~ Kagome-Kagomeefs / Mystic Heart / 野瀬 冬弥 efs / Mystic Heart おまけCD / 野瀬 冬弥 シンデレラケージ ~ Kagome-KagomeKota-rocK / Birth of Fire / 鼓太蝋 シンデレラケージ ~ Kagome-KagomeLight ? Staff / No genre 3 if / 小澤 裕子 Light ? Staff / トビラ / 小澤 裕子 シンデレラ・ラプソディーSister s Spread-i / PINK RHAPSODY / まいなすいょん ツキニフレルヨウニactivity / search-eye / 野。 月の夜百田屋 / うさみみてゐしょく ~ 大盛り ~ おまけでぃすく / ま ってゐ! ~えいえんてゐVer~石鹸屋 / 石鹸屋のお歳暮2 / 秀三 ドグマ・カグラ~新月の後夜祭~MiuMyu(東方らぢぉ) / うどんげPoPs~UdongePoPs~ / 遊女 ハピネスフルムーンSun Flower Field / Flower Garden / mineko Sun Flower Field / 神社から始まる大騒動 / 姫 宵月物語いえろ~ぜぶら / 東方絢彩歌 ~Touch of Air~ / 藤宮 ゆき 夜があけるまでLiz Triangle × Like a rabbit / LR First Strike! / lily-an (複数曲混合)Fancy Full MoonSilly Walker / きみのならまた死ねる / 小宮 真央 Silly Walker / 横浜幻想郷 / 小宮 真央 Silly Walker / 178R(いなばらびっつ) / 小宮 真央 (複数曲混合)Fancy Full Moon (ver.thC)Siestail / ザ・ベストてゐ / 小宮 真央 (複数曲混合)Fancy Full Moon (ver.Siesta)Siestail / ザ・ベストてゐ / 樹 詩音 (複数曲混合)Lie la Rabbitthe blankets / HAPPY REBIRTHDAY / キアリク (複数曲混合)いなばらびっつ!Silly Walker / TEI!TEI!TEI! / 小宮 真央 Siestail / ザ・ベストてゐ / 小宮 真央 (複数曲混合)いなばらびっつ! (ver.tail)Siestail / ザ・ベストてゐ / 小宮 真央 (複数曲混合)いなばらびゅ!Silly Walker / ぼくの月夜を守って / 小宮 真央 (複数曲混合)ウサテイイオシス / 東方萃翠酒酔 / ビートまりお、あまね (複数曲混合)桜華の剣よ風と舞えQLOCKS / stereoscopic / 慶 (複数曲混合)鏡花水月 ~ Dream in the Fantasy地元青年弾(合同企画CD) / 幻想鏡らびリンス / SHO Sonic Hybrid Orchestra / ANOTHER SIDE OF TOHO TEMPEST Vol.1 -COLORLESS- / SHO (複数曲混合)月光幻想曲 ~Moonlight FantasyeS=S / cut-a-rouge / りと (複数曲混合)月光小夜曲 ~Moonlight Serenadeばーどちゅーん / 東方ちゅんちゅん郷 / みりん☆ (複数曲混合)シアワセうさぎPROJECT tM@S / 幻想メガ★ラバ / ビートまりお、あまね COOL&CREATE / スーパーあまねりお / あまね、ビートまりお COOL&CREATE / スーパーシャッターガール / あまね、ビートまりお (複数曲混合)シンデレラケージ岸田教団 The明星ロケッツ / ROLLING★STAR / ichigo (複数曲混合)飛び跳ねっぷりなら負けないかも知れない!Siestail / かえるさん☆ダ・KERO! / 小宮 真央 (複数曲混合)憂月の詩人生の気だるさ日和 / Compared with Light / 藤宮 遊鳥 (複数曲混合)ラ・ビットパレードSilly Walker / うさばん / 小宮 真央
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/274.html
奇人山崎今朝彌-法曹界のアメリカ伯爵- 宮地嘉六 最後の対面 山崎今朝彌氏とは終戦後、久しぶりで偶然に或る追悼会の席で落ち合つた。それがついこのあひだのことのやうだが、もうそれから三四年は経つてゐる。そのとき、丁度、卓を挟んで向ひあふことになつたので私は少しバツがわるかつた。山崎氏の方でも何か同じやうなことを感じただらう。が、氏はそんなことには頓着せぬ風で、例によつてキヨトンとした顔で隣席の荒畑寒村氏と何やら話を交へてゐた。とんだ場所におれは席を選んだものだと思つたが、もうどうにもならなかつた。見渡したところ、みんなの席はきまつてしまつてゐる。 ずつとおしまひのあたりに、空いた席がなくもなかつたが、すぐ私の隣席には小生夢坊氏がゐ、その他、私と山崎今朝彌氏との曽てのイキサツを知つてる人が多数ゐて、その人達の手前、今更席をかへるのも見えすいてゐて、逃げをうつ心弱さを嗤はれさうな気もしたので頑ばりぬいて腰を落ちつけてしまつた。向ひあつた以上はお互に顔を見まいとしてもさうはゆかない。 私には三十年ぶりで目近に見る米国伯爵山崎今朝彌氏だつた。で一切を白紙にした気持で私の方からおじぎをし、挨拶した。おじぎだけではよそよそしくもあり、白々しくもあるので『--御元気で・・・・・・』とか何とかいはねばならなかつた。山崎さんの方でも軽く応答した。挨拶をして悪い気持はしなかつた。偶然にも彼氏の近くに席を選んで挨拶する機会を得たことは却つてよかつたやうな気がした。 が、そのとき、お互に席が遠く離れてでもゐたら、私とても、わざわざ近づいて行つて氏に挨拶する勇気は出せなかつたにちがいない。そして当夜、あいさつをせずにゐたら、もうこの世では氏と挨拶を交へる機会はなかつたわけである。山崎さんの急逝の報をきいて、私は、あのとき、挨拶をしてよかつたと今は思ふ。 かかあ天下の山崎家 法曹界の名物男、奇人の定評あつた山崎今朝彌氏と私との曽てのイキサツなど今は知らない人が多いのは私にとつては勿怪の幸ひでもある。が、山崎氏の半面を茲に描くには一応過去の荒筋を語らねばならぬことになる。 今から三十年前、今朝彌夫人実の妹俊子と私とは、堺利彦先生のおとりなしで結婚したのであつた。そして同棲僅かに一年余で別れてしまつた。丁度その年の師走近くに生れた赤ん坊を彼女に抱かせて、お産後の初の挨拶の意味で芝の桜田本郷町の山崎家へ母子を俥にのせてやつたところ、それつきり彼女は戻つてこないのだつた。平素、心やすい隣家の人も心配して迎へに行つてくれたりしたが『本人は戻りたいとおつしやつてゐますが、お姉さま御夫婦がお引きとめになるさうで・・・・・・』といふのだつた。 私としても山崎今朝彌夫婦のこじれてゐる気持がわからぬではなかつた。それは、私が結婚後、九州の福岡日日新聞(今の西日本新聞)に群像と題する小説を連載したこと、そして、その小説の内容が山崎夫婦の気持をいたく害してゐることだつた。百六十回ほどのもので、それは主として俊子との結婚生活を描いたものだが、その心理描写が山崎氏夫婦、殊に夫人のお気に喰はなかつたのである。いくら新婚生活を主題として描くにしても目出たし目出たしでは小説にならないから大努力で、突つこんで書いたのが祟つたわけであつた。 ところで私としては一方、新婚生活をきりぬけるために、さうした連載小説をどうしても書き続けねばならぬ苦難の途上にあつた。が或る日、堺先生の家を訪ねると『山崎夫婦は福日の小説を読んでるらしい。心理描写が深刻だといつてゐる』と堺先生はいはれた。 そんなことから私は山崎今朝彌氏の家にしばらく御無沙汰した。構はずにときどきゆけばよかつたかも知れないが、行けばブンとした顔をされるし・・・・・・だから、赤ん坊が生れたときも、鳥の子餅を持つて私自身出かけはしたが、つい神経質的に気おくれがしたので、山崎家の一丁ほど手前で俥を留め、私はそこに居て車夫君に贈物をとどけさした。それがまた先方に感づかれて、いやが上にも山崎夫婦の気持を害したといふわけであつた。 離婚が表面化してからはお手のものの法律を楯にギユウギユウ私は山崎氏にとつちめられた。喰ふか喰はれるかの激闘にまで展開しかけた。山崎今朝彌氏としては、一つは夫人の御機嫌とりに私を存分やつつけねばならなかつたらう。また、ひいては山崎夫人の実家に対してもさうであつたらう。といふのは、山崎家は嬶天下の傾向が多分にあつたから、夫人に対して、また夫人の実家に対しても、そこのかしら娘のお婿さんらしい腕まへをこんな時に山崎さんは見せねばならなかつたらう。事実、夫人の実家は弘前の旧家であり婿の山崎氏を偉大なる人物として信頼してもゐた。 新聞では私を悪者のやうにかいたがこれも山崎氏がさう書かせたらしい臭ひが多分にあつた。女房の持参金(そんなものを見たことも私はなかつたが)をまきあげたの、女房の物を入質してなくしてしまつたの、あることないことを新聞記者に書かせた。ところが、私の手もとには既に、女の所持品全部を受取つたといふ証書が山崎の方からとどけられてゐたのである。 私はその証書を、王子署の特高が来たときに見せて納得させてゐたあとだのに、私がよこしまなことをしたかのやうに世間に発表した。夫人の御機嫌とりに私をやつつけるのではあつたらう。けれど、山崎今朝彌といふ人はもともとさうした茶目な偽悪癖のある人だつたともいへよう。山崎家が嬶天下であつたといふことは決して悪いとは私にはいへない。あの、ものにこだはらない生一本の負けぬ気の先生が嬶天下で家ではをさまつてゐたところは愛すべきであつた。戦時中は遠くへ妻子を疎開させてゐたさうだが終戦となつても、家族を東京へよびよせることは転入禁止の場合、おいそれとはできなかつた。そんなこんなで手もとは不如意となり遂に持家を売りとばしたりしたらしい。その頃の苦難はひとり山崎氏一家ばかりではなく、御同様であつた。然し山崎夫人は良人が家を売り飛ばしたことをひどく残念がつたらしい。『あなた、あなたが死ぬまでに家だけは建ててから死んで下さいよ。お願ひだから・・・・・・』とあけくれいつたものださうだ。そのため、山崎氏は老体に鞭つてやつともと通り一軒の家を手に入れ、夫人の望みを実現して死んだ・・・・・・とこれはまた聞きの話しである。 モンペ姿の山崎氏 ところで、それと関連した話がある。終戦直後のこと、山崎今朝彌氏は杉並区の区長改選のとき新居格を向うにまはして立候補したことは周知である。これは興味ある選挙相撲、よい取り組として地元内外を熱狂させた。が、まんまと山崎氏は土俵際で突つ張りがきかずに惜敗した。しかし、新居が区長になつたお蔭で、その頃、住宅難で弱つてゐた山崎氏は新居のはからひで区長公舎に一時ころげこむことができたのであつた。選挙戦で勝者の地位にありついた新居は、せめて好漢山崎への心づくしとして区長公舎へ山崎を住まはせたのであつた。美談といへば美談。のうのうと準区長気どりで公舎にころげこんで、すましてゐるところも山崎らしい心臓だよ、といつてゐた人があつた。 女権尊重の国、米国仕込の山崎今朝彌氏が、一生を嬶天下でをさまり、サイノロの定評を残してこの世に終りを告げたのはあやしむに足らぬ。生れは信州諏訪で、法律家としてのふり出しは検事だつたさうである。が、それは、ほんの僅かの期間で、米国に渡り、あちらから帰ると米国伯爵と自称し、弁護士大安売、などと引札をばら撒いたりして剽軽ぶりで先づ世人を釣りこんだ。元来多分に諧謔家的素質の人。占領軍がバッコしてゐた頃のことだが、新憲法法文中の『主権在民』といふ字句を『主権在マ』などとヒニクつてゐたのも面白い。在マのマはマツカーサーを指していつたもので、さうしたことにトウイ即妙的な天才をひらめかす人だつた。明治文壇の鬼才齋藤綠雨ふうのところがあつた。 弁護士としては刑事弁護よりも民事を多く取扱つてゐた。一頃、二年あまり私は仕事の関係で毎日裁判所に出入りしたものだつたが、彼の刑事弁護は一度も聞く機会がなかつた。或る人が彼の刑事弁護を唯一度傍聴したことがあるといひ『山崎今朝彌の弁論ぶりは一風変つてて面白いよ。なんにもいはないで唯「被告は親孝行であります。何卒執行猶予を・・・・・・」と、それでおしまひなんだ』と私に語るのだつた。それでゐて裁判長の受けは、くどくどとわかりきつたことをいふ低調な弁論よりも簡にして要を得てゐたので案外よかつたさうである。 私は或るとき、山崎氏がモンペをはいて裁判所の民事部の廊下を大股でさつさと歩いてゆく姿を見た。終戦前後のことである。少し前かがみに歩いて行く姿は、元気さうには見えたが、年齢は争はれないものか、だいぶお爺さんらしく見えた。きけば晩年はよほど耳が遠くなつてゐたらしい。 氏は袴をはくことをめんどくさがる風で、芝の桜田本郷町から小田急線の成城町に移つてから、毎朝、蝙蝠傘のさきに小さな風呂敷包をつつかけて、それを肩にかけ、尻端折りで自宅から駅へと歩いて行く姿は珍風景に見えたさうである。そのコーモリのさきの風呂敷包は袴と法廷できる法服(戦後は廃されたが)だつたらしい--さういへば山崎今朝彌氏の洋服姿は恐らく見た人はないだらう。長らくアメリカにゐて戻つた人にはめづらしく、和服と無帽主義で一生を通したのではなかつたらうか。 二人で銀ブラした話 私が山崎氏の風□にはじめて接したのは堺先生主宰の売文社でであつた。その頃、売文社は今の日比谷の日活会館のあたりにあつたが、私もときどきその売文社を訪れた。或る日、ストーブのそばに五十近いイガグリ頭の和服の男が椅子にかけたまま両足を投げ出して話相手もなくポカンとしてゐた。袴もはかずに足を開いてゐたので膝坊主のへんまでまる見えだつた。円顔で頤の短い中柄な体格でどことなしに凄味があつた。社員と話をするときはにこにこと笑顔を見せるが、私にはゴロつきのやうにも見えた。場所がその頃の社会主義者の本城であつたから此の男はただものではないぞと思つた。ところがそれが米国伯爵山崎今朝彌氏であつたことがずつと後になつて私にわかつたのである。 彼の義妹との縁談の進行中、私は彼に誘はれてギンブラをしたことがある。堺先生、長谷川如是閑氏、加藤一夫その他左翼文士をグループとする著作家組合の会合の帰りだつた。散会したのは夜の九時頃であつたらうか、『どうだ、これから銀座を歩いてクリスマスデコレーシヨンでも見ないかね』と山崎氏の方から誘ふので『お伴しませう』といつて、それから二人は人出の多いクリスマス前夜の銀座をぶらついたが、銀座を一緒に歩かうかなどとめつたにいふ山崎氏ではない。 して見れば既に私はそのとき彼の意中での義弟になりかけてゐたのであらう。破格の親しみを仕向けられたといふわけである。が一緒に歩きながら二人は啞のやうに無言であつた。誘ひをかけたほどだからお茶でものまう、といふのかしらと思つたがさうでもない。酒を一滴ものまない山崎氏に私からバーに誘ひこむわけにもゆかない。唯ぶらぶら銀座の歩道を歩いてシヨーウインドーなどを覗いたりしてから『ぢや、さよなら・・・・・・』と彼氏の方からさういつて別れてしまつた。煙草も酒もたしなまない人であつた。 『君も印税で喰つてゆけるやうにならなくちやね・・・・・・』といよいよ彼の義妹と結婚してから彼は私にさういふのだつた。私も社会主義者、山崎氏も社会主義者のつもりだつた私はその言葉をちよつと受入れかねた。一人の大金持ができることは多くの貧困者をつくることになるといふ私のその頃の考へ方では、印税で、不労所得で生活することなど神の御心に反するものと思つてゐたのだ。 無口なユーモリスト 山崎さんが酒のみだつたら私にはとりつきよい男だつたかも知れない。酒も煙草もやらないといふ義兄だつたので呑助の私は当惑した。然しいつも酒に酔つてるみたいな愛嬌はあつた。無口でゐてユーモリストであつた。ところが、あれほど服装を構はぬ人でありながら、何々会などで私と出あつたりすると、それとなくジロリと私の服装に視線を向ける人だつた。私はもともとおしやれが好きで少少気どりやでもあつたが、どうかすると、無雑作なふだん着の粗服で同志の宴会に出席した。そんな時、山崎氏と出くはしたりすると氏はよい顔をしなかつた。自分の女房の妹の亭主としての関心を払ふのであつたらう。そんな場面が二三度あつたのを今でも思ひ出す。 私たちの結婚披露会は銀座横町の、その頃あつたカフエー・バウリスタ(三十年前の時事新報社前)でやつたが、次の日は山崎今朝彌氏の宅で山崎氏の平素親しい弁護士仲間を招待することになつた。その趣向がまた山崎流でふるつてゐた。数十人の客を迎へるだけの食卓がなかつたので八畳の広間にリンゴ箱をならべ、雨戸を持ち出して来て架け渡し、その上に白布をひろげて即席のテーブルができあがつた。料理は、おでん燗酒。その頃、社会主義のおでんや岩崎で聞えてゐた(有楽町のガード下でおでんをやつてゐた)岩崎善右衛門君が、屋台車を庭さきに曳きこんで、おかはり御自由といふのであつた。さういふヒヨウタクレたことのすきな山崎今朝彌氏だつたのである。(作家) <以上は、宮地嘉六氏(1958年没)が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『文藝春秋』(文藝春秋社)第32巻17号165頁(昭和29年(1954年)11月号)> <この評論は、第三者による客観的な人物批評であるとはいい難い(森長英三郎『山崎今朝弥』(紀伊國屋書店)200頁参照)。とはいえ、山崎の人となりを知るうえで参考となると思われたから紹介することとした。>
https://w.atwiki.jp/dreamself/pages/621.html
151 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/09/17(日) 06 44 31 [ DiSxI32I ] 自分が通ってた小学校のグラウンドに立ってた。 懐かしがってうろうろする俺。そうしているうちにボロボロの飼育小屋についた。 自分の知ってるウサギとかチャボとかもうみんな死んじゃってるんだろうなぁ…とか思って覗いてみた。 何故かてゐ?が飼われてた。 別段不機嫌だとかそんなことなく、そこにいるのが当然みたいな顔して座ってるてゐ。 何となく指を突っ込んでみる。甘噛みされる。 腹でも空いてるのかと思って、弁当箱から玉子焼きを出して食べさせてみる。 幸せそうにもぐもぐ食べてくれた。 以外と普通の夢だった。 現実 のんびり
https://w.atwiki.jp/tohofight/pages/153.html
両チーム、三人並んでレッツスタート。 しょっぱなに藍が腰のひねりをきかせたら、尻尾で己の主を、さらに向こうの霊夢ごとフッ飛ばしてしまうハプニング発生。 これはポイント差でプリズムリバーの勝利かと思われた時だった、 ワンコーラス踊ったところで、急に長女が「もう恥ずかしい、お嫁にいけない」と今さら駄々をこね始める。 (ちなみにこの際ルナサが無意識に放った甘い欝の音によって、客席にはしっとりと甘酸っぱい雰囲気が漂う) だがそこはプリズムリバー。リリカの「この写真をばらまかれるのとどっちがいいの」という 誠心誠意溢れる説得に心打たれ、顔を真っ赤にしながら踊りを再開する。 以後、両チームはエースを筆頭にした互角の戦いを繰り広げた。 魔神の召還式を保存しているといわれる腰の動きを完璧に再現する紫に対し、 お前本当は初めてなんかじゃないだろってくらいノリノリで踊り続けるメルラン。 踊りながら乗ってきたのか、プリズムリバー楽団の演奏も加わり会場はヒートアップ。 だがそうして一時間経ったころ、ある異変が起きた。 霊夢は見たのだ。興奮真っ只中の会場の観客の中に――舌先三寸で賽銭をかき集めるてゐの姿! 思わずキタキタ踊りのままで観客の中に飛び込む霊夢、その異様さには観客も度肝を抜かれる。 霊夢、そのまま踊りの腰と手の動きでてゐをとっちめてしまう。 この瞬間、霊夢は「スピーディーな踊りで兎を倒し賽銭を手に入れた巫女」という伝説と成った。 これには三姉妹も手放しで負けを認め、ファンファーレの嵐を霊夢に送ったという。 てゐ ダンス トリオ戦 プリズムリバー メルラン リリカ ルナサ 紫 藍 霊夢
https://w.atwiki.jp/touhou/pages/213.html
亀夫君問題 過去問集 77スレ目 鈴仙・U・イナバの失踪 77スレ目733~78スレ目28 【問題】 某月某日。 永遠亭の月の兎、鈴仙・U・イナバが謎の失踪を遂げた。 永遠亭総出の捜索の甲斐もあり、数日後、因幡てゐによって発見されたのだが…… 証言者 因幡てゐ ……おかしい。どう考えてもおかしい。 やっと帰ってきたと思ったら、目は虚ろ、ぶつぶつと独り言、 おまけに格好もいつものブレザーじゃないし…… 流石の私でも異常だと分かるわ。 今、師匠は居ないしここは私が何とかしないと…… という訳で貴方達は私を手伝うと幸せになるわー 【ルール】 亀夫君問題です。 てゐに指示して鈴仙の様子がおかしくなった理由を突き止めてください。 なお、BADエンドや質問制限の類は一切ありません。 解説を表示 【解答】 永遠亭の兎。鈴仙・U・イナバ。 白玉楼の亡霊嬢に捕らわれ、危うく兎鍋にされかける。 そこで彼女はとっさにこう言った。 「あ、あの!じ、実は私、妊娠してるんです!」 「……? それが今、何の関係があるのかしら?」 「えっと、あの……。もう少し待てば二匹分食べられるんじゃないかなーって……」 「……それもそうね。別に急ぐ必要もないでしょう」 という訳で、白玉楼にて軟禁されるようになった鈴仙。 嘘がばれれば命はない。そこで彼女は本当に妊娠することにしたのだ。 自分自身を狂気に誘い、自己暗示をかける事によって。 もっとも数日後、彼女は庭師に発見されたので、兎鍋の話自体が無かったことになったのだが。 だが、解放されても鈴仙の自己暗示はまだ解けていなかった。 鈴仙は、自分が妊娠してると思い込んだ状態で発見されたのだった。 元ネタ 東方創想話より STR氏作 http //coolier.ath.cx/~coolier/l_clr_sosowa/anthologys.cgi?action=html2 key=20050524004309 log=2005060509 921で紹介されているものです 流石に選んだネタがまずかったか……、パッチェさんにロイヤルフレアされてくるorz トリは「パッチェさん許して」でした。 そういえばこの問題作った当時はあのAAも無かったんだよなぁ おまけを表示 【おまけ】 ~数日後、永遠亭~ 「……あのね、てゐ」 「んー?」 「私、もう子供の名前も決めたって言ってたでしょ?」 「うん」 「あれはね、本当なの」 「うん」 「私自身、正気じゃなかったけれどね……、本当に愛してたんだ。この子の事」 (そう言って腹部をさする鈴仙) 「………」 「………」 「……ねぇ、鈴仙」 「ん?」 「今度ね、部下の兎の子が赤ちゃん産むの」 「うん」 「でね、転生って言うの? 死んだ魂は生まれ変わってまた戻ってくるんだって」 「うん」 「……その子の名前ね、鈴仙が決めてくれないかな?」 「……うん」 「ねぇ、てゐ」 「ん?」 「……ありがと」 「ん」 流石にこのまま終わると後味が悪そうなので元の話を参考にあとがき書いた。 SS書きじゃない&速攻で書いたのでクオリティは勘弁してくださいorz 【おまけ2】 魔「おーい、香霖。遊びに来たz || || || ( ⌒ ヽ ∪ ノ ∪∪魔「キャアアァァァァァ!!!」ボコボコの状態で吊られている香霖!現場には大量の血飛沫や凶器の跡が!果たして魔理沙はこの謎が解けるのか!次回! 「揺れる死体と紅き褌」公開日未定!ヤメテイシナゲナイデ……
https://w.atwiki.jp/crimsonfox/pages/12.html
鏡面界 ***************副題************************************** Pianist ハロルド・バッド(Harold Budd)の静謐な演奏が白眉な、Ambient Music(環境音楽)の創始者であり、現在ではClassicの現代音楽家とも目されるブライアン・イーノ(Brian Eno)の美しき1980年の作品「 Plateaux of Mirror 」(邦題 鏡面界)を聴きながら…… ********************************************************** 追記 イーノの作品で私はNASA制作の映像作品のSoundtrack盤「APOLLO(邦題 アポロ)」が一番のお気に入りである。 *********************************************************** 万華鏡を覗いてゐるとその変幻自在で色鮮やかな千変万化する鏡面世界は私の思考を無理矢理にでも宇宙に誘(いざな)ふのである。 ――Black hole(ブラックホール)…… 最近、Black holeは存在しないといふ新説が発表されたが、ここではBlack holeが存在するものとして話を進める。 さて、光すら逃れられないBlack hole内はその名に反して眩いばかりに光り輝く鏡面世界なのではないかと最近、特にさう思ふ。銀河の中心域の輝きを見ると尚更さう思へてくるのである。 ――Light-shining hole…… 唯、シュヴァルツシルト半径または重力半径と呼ばれるBlack holeの境界域のみ漆黒なのであって、仮にその境界域を鏡面界と仮定すればBlack holeは万華鏡と同じと考へられなくもないのである。 ――もしかすると銀河の中心域もまた鏡で出来た『林檎宇宙』([水鏡]を参照して下さい)の縮図なのかもしれない…… ――Fractal(フラクタル)的に考へると……この私が存在してしまってゐるこの宇宙自体が巨大な巨大な巨大な巨大なBlack holeと考へられなくもないではないか…… ――ふっ、面白い…… ――するとだ……宇宙外にはこの宇宙を中心とする巨大な巨大な巨大な巨大な銀河が形作られてゐるのかもしれない…… ――するとだ……この宇宙をBlack hole型宇宙だと仮定すると……この宇宙を閉ぢ込め包み込む更に巨大な巨大な巨大な巨大なBlack hole型の宇宙が存在し、それが無限に続いてゐるとすると…… ――ふっ。鏡面界を皮と見立てると……この世といふものは巨大な巨大な巨大な巨大な……鏡で出来た無限の『玉葱宇宙』といふことか…… ――また……『無限』といふ名の陥穽に落ちてしまったぞ…… と、不意にイーノの「鏡面界」が終はったのであった。 審問官Ⅲ――主体弾劾者の手記Ⅱ 私が何故Televisionを殆ど見ず、街中を歩く時伏目になるのかを君はご存知の筈だが……私には他人の死相が見えてしまふのだ。街中で恋人と一緒に何やら話してゐて快濶に哄笑してゐる若人に死相が見える……体の不自由なご主人と歓談しながらにこにこと微笑み車椅子を押してゐるそのご婦人に死相が見える……Televisionで笑顔を見せてゐるTalentに死相が見える等々、君にも想像は付く筈だがこの瞬間の何とも名状し難い気分……これは如何ともし難いのだ。それが嫌で私はTelevisionを見ず、伏目で歩くのだ。 そんな私が馥郁たる仄かな香りに誘はれて大学構内の欅を見た時、その木蔭のBenchで雪が何かの本を読んでゐるのを目にしたのが私が雪を初めて見た瞬間だった。 その一瞥の瞬間、私は雪が過去に男に嬲られ陵辱されたその場面が私の脳裡を掠めたのである。そんなことは今まで無かったことであったが雪を見た瞬間だけそんな不思議なことが起こったのである。 その時から私は雪が欅の木の下に座ってゐないかとその欅の前を通る度に雪を探すやうになったのである。 君もさうだったと思ふが、私は大学時代、深夜、黙考するか本を読み漁るか、または真夜中の街を逍遥したりしては朝になってから眠りに就き夕刻近くに目覚めるといふ自堕落な日々を送ってゐたが、君とその仲間に会ふために夕刻に大学にはほぼ毎日通ふといふ今思ふと不思議な日々を過ごしてゐた訳だ。 話は前後するが、今は攝願(せつぐわん)といふ名の尼僧になってゐる雪の男子禁制の修行期間は疾うに終はってゐる筈だから、雪、否、攝願さんに私の死を必ず伝へてくれ給へ。これは私の君への遺言だ。お願ひする。多分、攝願さんは私の死を聞いて歓喜と哀切の入り混じった何とも言へない涙を流してくれる筈だから…… さうさう、それに君の愛犬「てつ」こと「哲学者」が死んださうだな。さぞや大往生だったのだらう。君は知ってゐるかもしれないが、私は「てつ」に一度会ってゐるのだ。君の母親が ――家(うち)にとんでもなく利口な犬がゐるから一度見に来て と、私の今は亡き母親に何か事ある毎に言ってゐたのを私が聞いて私は「てつ」を見に君の家に或る日の夕刻訪ねたのだが、生憎、君はその日に限って不在で君の母親の案内で「てつ」に会ったのだよ。 「てつ」は凄かった……。夕日の茜色に染まった夕空の元、「てつ」の柴赤色の毛が黄金色(こがねいろ)に輝き、辺りは荘厳な雰囲気に覆われてゐた。その瞬間、私にとって「てつ」は「弥勒」になったのさ。私を見ても「てつ」こと「弥勒」は警戒しないので君の母親は私と「弥勒」の二人きりにしてくれた。それはそれは有難かった。暫く「弥勒」の美しさに見蕩れてゐると「弥勒」が突然、私に ――うぁぁお~んわぅわぅあぅ と、何か私に一言話し掛けたのである。私にはそれが『諸行無常』と聞こえてしまったのだ。 今でもあの神々しい「弥勒」の荘厳な美しさが瞼の裏に焼き付いてゐる……。あの世で「弥勒」に会へるのが楽しみさ……。 さて、話を雪のことに戻さう。 或る初夏の夕刻、君と一緒にあの欅の前を歩いてゐると雪がBenchに座っていつものやうに何かの本を呼んでゐた。 (以降に続く) 後ろの正面 先づ、次の文章が何のことなのか……謎謎である。 『宇宙を普遍的に支配する法則、宇宙の基本的なBalanceは、始終、破られてゐる。Energie(エネルギー)保存則を無視して、真空から、電子や陽子のやうな物質が――まるで手品の空っぽの帽子から鳩や兎が飛び出すやうに――ポンポンと出て来るのである。これを「真空の揺らぎ」と呼ぶのであった。但し、このやうな奇妙な現象は、観測者(主体)が観測してゐない時にしか起きない。一旦、無から生成された物質は、観測者(主体)が――周囲が――Unbalanceに気づく前に、無へと直ちに回帰してしまふ。結局、無から飛び出した電子や陽子たちは、観測者(主体)の眼には、「存在してゐなかった」ことになる。』――引用(『本 読書人の雑誌 2007年6月』【講談社】~ とき の思考――大澤真幸著 「独裁者という名の民主主義」~(一部私が変更) 上記の記述には大澤真幸の理解不足が散見されるが概ね正しいとして、さて、何のことなのか解るだらうか。 先づ科学関係、それも物理学関係の事だとは解ると思ふが、しかし、科学者の間では上記の引用が「常識」なのである。 さう、量子力学のことである。量子力学における現象は一般の常識を越えた事がしばしば起こるが、上記の引用は彼のアインシュタインが生涯受け入れられなかった量子論の基本の基本の考え方である。アインシュタインでさへさうなのだから一般の人々にとっては尚更受け入れられない考え方である。 一言で言ふと私の背中では上記の引用の摩訶不思議としか言へない「現象(?)」が常に起こってゐることになる。 ――はっはっはっ、可笑しくて仕様が無い…… さて、しかし、ここが大きな問題である。上記の引用が科学者の「常識」といふ事が――空恐ろしくて悪寒が体を走る――「文明」の基本の基本にある考え方なのだ。 ――逃げろ ! ! さう、文明から即刻逃げなければ観測者にされた主体はこの世の「文明世界」で弄り殺され兼ねないのだ。 ――奇妙奇天烈な『文明』から……早く、早く、逃げろ ! ! アインシュタインの一般相対性理論と量子論が「統一」された「大大統一理論」が理論物理学の世界で確立されない限り狂気の沙汰としか言へない「文明」から逃げる外、私たち一般の人々が「文明」に弄り殺されずに生き残る術は今の所……無い。 ――誰か吾を助け給へ…… 童歌の「かごめかごめ」 籠目籠目 籠の中の鳥はいついつ出やる 夜明けの晩に鶴と亀がすべった 後ろの正面誰 審問官Ⅱ――主体弾劾者の手記Ⅰ にやりと笑った途端、不意にこの世を去った彼の葬儀に参列した時、亡くなった彼の妹さんから彼が私に残したものだといふ一冊の大学Noteを渡されたのである。英語と科学を除いて勿論彼は終生縦書きを貫いたのでそのNoteの表紙にそのNoteが縦書きで使ふことを断言するやうに『主体、主体を弾劾すべし』と筆書きされてあったのである。 その手記は次の一文から始まってゐた。 『――吾、吾を断罪す。故に吾、吾を破壊する―― これは君への遺言だ。すまんが私は先に逝く。これが私の望む生だったのだ。私はこれで満足なのだ…… 君もご存知の「雪」といふ女性が私の前に現はれた時に私は『自死』しなければならないと自覚してしまったのだ。 自分で言ふのも何だが……、私は皆に『美男子』と言はれてゐたので美男子だったのだらう。良くRock BandのU2の『WAR』のジャケットのCover写真の少年(俳優 ピーター・ロワン)に似てゐると言はれてゐたが、ご存知のやうに私は変人だったのでそれ程多くの女性にもてたとは言へないが、生命を生む性である女性の一部はどうしても私の存在が「母性」を擽(くすぐ)るのだらう、彼女らは私を抛って置けず無理矢理――この言ひ方は彼女らに失礼だがね――私の世話をし出したのは君もご存知の通りだ。 しかし、私に関わった全ての女性たちは私が変はらないと悟って私の元から離れて行った。雪を除いては…… 私は雪と出会った頃には埴谷雄高がいふ人間の二つの自由――子を産まないことと自殺することの自由――の内、自殺の仕方ばかり考へてゐたが、私には人間の自由は無いとも自覚してゐたので自殺してはならないとは心の奥底では思ってゐたけれども、画家のヴァン・ゴッホの死に方には一種の憧れがあったのは事実だ。自殺を決行して死に損なひ確か三日ぐらゐ生きた筈だが、私もヴァン・ゴッホが死す迄の三日間の苦悩と苦痛を味はふことばかりその頃は夢想してゐたのだ。それに自殺は地獄行きだから死しても尚未来永劫『私』であり続けるなんて御免被るといったことも私が自殺しなかった理由の一つだ。 今は亡き母親がよく言ってゐたが、私は既に赤子の時から変はってゐたさうだ。或る一点を凝視し始めたならば乳を吸ふ事は勿論、排泄物で汚れたおむつを換へるのも頑として拒んださうだ。ふっ、私は生まれついて食欲よりも凝視欲とでも言ったら良いのか、見ることの欲望が食欲より――つまりそこには性欲も含んでゐるが――優ってゐたらしい。赤子の時より既にある種の偏執狂だったのだ。君が私を『黙狂者』と呼んだのは見事だったよ。今思ふとその通りだったのかもしれない。 そんな時だ、雪に出会ってしまったのは…… (以降に続く) 雷雲 彼は幼い頃から屋根に寝そべって時々刻々とその姿を変容させる雲を見続けてゐる何とも名状し難い心地よさに包まれるその時間を愛して已まなかった。 特に雷雲が遠ざかる時の鬱勃と雷雲に雲が次々と湧いては上昇したために冷えた気団が纏ふ雲が雲団に崩れ沈む様をずうっと眺めてゐる時のその雄大な儚さが何とも堪らなく好きであった。 或る日、彼は特別強い突風が吹かない限り欠かせた事が無い激烈に変化する気候の不思議に魅了されて眺めずにはゐられない雷雲の去来の全てを部屋の窓を開け放って眺め始めたのであった。 先づ、斥候の雲として龍のやうな雲が中空を滑るやうに横切り始めると彼は最早空から目が離せなくなったのである。そして、灰色の氷山のやうな小さな暗雲が次第に群れを成して上空を流れ行く段になるともう直ぐ空が一変する瞬間が訪れるのを彼はわくわくしながら待つのである。 それは雷神が巨大な甕に薄墨をどくどくと注ぎ込みその巨大な甕が薄墨で一杯になったところでその甕の薄墨を空にぶち撒けるやうに薄墨色の暗い雲がさあっと空一面に一気に拡がる瞬間の息を飲むやうな迫力に圧倒されたいが為のみである。 辺りが夜の闇に包まれたかのやうに真っ暗になると雷神の本領発揮である。きらっと暗雲の何処に閃光が走ると ――どどどどど と腹の底まで響き渡る轟音がこの世を覆ひ包む。 時には稲妻が地上から暗雲へ向けて這い登るその雷神の大交響樂は何時見ても凄まじいものであった。すると、彼は奇妙な感覚にその日は襲われたのである。 ――睨まれた ! ! その瞬間であった。一閃の稲妻が地目掛けて駆け落ちた時、蒼白い小さな小さな閃光がこっちへ向かって疾走して来たのであった。その時Radioからワーグナーの「ワルキューレの騎行」が流れてゐた。 その蒼白い小さな小さな閃光はRadioのAntennaの先端に落ちたのであった。すると、「ワルキューレの騎行」は突然大音響で鳴り響き雷神の大交響樂を更にその迫力が鬼気迫る何とも凄まじいものへと変貌させたのであった。 それからである。稲妻が次々と閃光を放っては轟音を轟かせこの世を縦横無尽に駆け回り始めたのである。 ――ぼとぼとぼと―― 豪雨の襲来である。 その日の雷雨は記録的な降雨を記録した物凄いものであった…… 魔人「多頭体一耳目」の悲哀 印刷技術を始め様々な科学技術を応用した発明がなければ「知識」は未だに特権階級の独占状態にあった筈であるが、幸か不幸か「知識」は人類共有のものへと世俗化したのである。しかし、現代は人間を魔人「多頭体一耳目」へと変態させてしまったのである。 印刷技術の発達のお蔭で書物が誰でも手にすることが出来るものへ、画家や写真家のお蔭で或る絵画や写真の情景が見る人誰もが共有出来るものへ、Recordの発明のお蔭でで誰もが音楽を共有出来るものへ、そして、映画や団欒のTelevisionのお蔭で誰もが同じ映像を共有出来る時代になったが、さて、ここからが問題である。個室で独りTelevisionやVideo等を見る段階になると人間は魔人「多頭体一耳目」に変態するのである。 ――奴とこ奴の記憶すら交換可能な時代の到来か…… つまり、現在「個人」と呼ぶものは既に頭蓋内すら他者と交換可能な、言ひ換えると仮に人類が個室で全員同じ画像を見てゐるとすると将来生まれて来るであらう人類の為には極端なことを言へばたった独り生き残っていれば、否、誰も生き残らなくとも映像さへ残れば良いのである。 ――こいつとあいつは頭蓋内の記憶すら交換可能な、つまり、こいつが居ればあいつは無用といふあいつの悲哀…… さて、そろそろ魔人「多頭体一耳目」の正体が解ってきたと思ふが、つまり、魔人「多頭体一耳目」は個室で独りTelevisionやVideo等を見てゐる人間のことなのである。 ――俺の存在とは誰かと交換可能な……つまり……俺がこの世に存在する意義は全く無い…… 映画館や団欒等、他者と一緒に同じ映像を見てゐるならばは傍に「超越者」たる「他者」が厳然と存在するので魔人「多頭体一耳目」は出現しない。 魔人「多頭体一耳目」を戯画風に描くと一対の耳目を蝸牛の目のやうに一対の耳目をTelevisionやVideo等が映す映像の場所ににょきっと伸ばし、その映像を見てゐる人数分、一対の耳目から枝分かれした管状の器官で頭と肉体が繋がってゐる奇怪な生物が描き出されるのであるが、オタクには失礼かも知れないがオタクこそ魔人「多頭体一耳目」の典型なのである。 さうなると主体が生き延びるには「感性」しかないのであるが、「感性」といっても如何せん頭蓋内の記憶すら同じなので、哀しい哉、「感性」もまた「同じ」やうなものばかりしか育めないのである。 ――主体とはこの時代幻想に過ぎないのか…… 人間を魔人「多頭体一耳目」に変態させたくなければ同じ映像を見るにしても必ず他者と一緒に見なければそいつは既に魔人「多頭体一耳目」に変態してしまってゐる。 ――さう云へば私は最早Televisionを見なくなって久しいが……本能的に魔人『多頭体一耳目』になることを察知してTelevisionを見なくなったのかもしれないな…… 位置 高田渡も歌ってゐる黒田三郎の詩『夕暮れ』の第一連から 夕暮れの町で ボクは見る 自分の場所から はみだしてしまった 多くのひとびとを ……は何とも私の胸奥に響く一節である。特に 自分の場所から はみだしてしまった 多くのひとびとを ……の一節は見事である。 ところが ――自分の場所とは一体何処だ? といふ愚問を発する私の内部の声がその呟きを已めないのである。 今ゐる自分の場所は日本国内では、地球上では、太陽系内では、天の川銀河内では、更に何億年か何十憶年か、もしくは何百億年か後に天の川銀河と衝突すると予測されてゐるアンドロメダ銀河との関係性から全て自分の場所、もしくは自分の位置は言葉で指定できるが、さて、宇宙に仮に中心があるとして我々が棲息する天の川銀河は宇宙全体の何処に位置するのかとなると最早言葉では表現出来ずお手上げ状態である。 現代物理学ではこの宇宙は「閉ぢて」ゐると考へられてゐるのでこの宇宙の中心は多分何処かにある筈に違ひないと考へられなくもないが、しかし、宇宙全体の形状すら未だ不確かな状態ではこの宇宙に中心があるのかどうか不明である。仮令この宇宙に中心があったとして、さて、我々が棲息する天の川銀河はこの宇宙の何処に位置するのであらうか…… さて、『水鏡』で宇宙の涯についての妄想を書き連ねたが、仮にこの宇宙が『水鏡』の「林檎宇宙」であるならばこの宇宙の存在物は全て「林檎宇宙」の表皮に存在するといふやうに考へられなくもないのでこの宇宙の存在物全ては宇宙の周縁に存在する、つまりこの宇宙の存在物全ては宇宙の涯と接してゐるといふことになる。私の外部は宇宙外と接した何処かといふことになる。 ――吾の隣は既に宇宙外……、はっはっ。 そこでまた『水鏡』の妄想から宇宙の涯が鏡――古代の人々は矢張り素晴らしい。鏡を神器と看做してゐたのだから――であるならば、私が鏡を見る行為は宇宙の涯を見てゐる擬似行為なのかもしれないのだ。鏡を見て自己認識する人間といふ生き物は、もしかすると宇宙の涯との相対的な関係性から自己の位置を認識したいのかもしれないのである。 ――さて、吾は何処に存在するのか…… ここで石原吉郎の代表作の一つであり傑作の一つでもある『位置』といふ詩のその凄みが露になる。 ――吾は吾の『位置』を言葉で表現し得るのか…… 石原吉郎の第一詩集である『サンチョ・パンサの帰郷』(思潮社、1963年)の最初の詩は、『位置』である。 位 置 しずかな肩には 声だけがならぶのでない 声よりも近く 敵がならぶのだ 勇敢な男たちが目指す位置は その右でも おそらく そのひだりでもない 無防備の空がついに撓(たわ)み 正午の弓となる位置で 君は呼吸し かつ挨拶せよ 君の位置からの それが 最もすぐれた姿勢である (『石原吉郎全集Ⅰ』花神社、1979年、5ページ) 審問官Ⅰ――主体弾劾者 彼は絶えず――断罪せよ――といふ内部の告発の声に悩まされ続けてゐたらしい。 彼が何か行動を起こさうとすると必ず内部で呟く者がゐる。 ――断罪せよ!! 彼は己の存在自体に懐疑的であった、といふよりも、自己の存在を自殺以外の方法でこの世から葬り去る事ばかり考へてゐたやうであった。 ――両親の死を看取ったなら即座にこの世を去らう。それが私の唯一の贖罪の方法だ…… 彼には主体なる者の存在がそもそも許せなかったらしい。彼をさうさせた原因はしかし判然としなかった。彼は埴谷雄高が名付けた奇妙な病気――黙狂――を患ってゐたのは間違ひない。 彼はいつも無言、つまり『黙狂者』であった。 ――俺は…… といって彼は不意に黙り込んでしまふ。 しかし、彼は学生時代が終わらうとしてゐた或る日、忽然と猛烈に語り始め積極的に行動し始めたのであった。彼を忽然とさう変へた原因もまた判然としなかったのである。 彼は大学を卒業すると二十四時間休む間のないことで学生の間で有名だったある会社に自ら進んで就職したのである。 風の噂によると彼は猛然と二十四時間休むことなく働き続けたらしい。しかし、当然の結果、彼は心身ともに病に罹ってしまったらしいのである。その後某精神病院に入院してゐるらしいのであった。 ――自同律の不快どころの話ではないな。『断罪せよ』と私の内部で何時も告発する者がゐるが、かうなると自同律の嫌悪、故に吾は自同律の破壊を試みたが……、人間は何て羸弱な生き物なのか……唯病気になっただけではないか、くっ。自己が自己破壊を試みた挙句、唯病気になっただけ……へっ、可笑しなもんだ。だがしかし、俺も死に至る病にやっと罹れたぜ、へっ。両親も昨年相次いで亡くなったからもう自己弾劾を実行出来るな…… 彼の死は何とも奇妙な死であったらしい。にやりと突然笑い出した途端に息を引取ったらしいのである。 ――断罪せよ、お前をだ。其の存在自体が既に罪なのだ…… 肉筆 『波紋』のところで横書きと縦書きについて少し触れたが、文字を手にした人類は何を措いても肉筆が森羅万象を表現するのには一番である。 先づ縦書きと横書きについてであるが、横書きは頭上に坐す一神教の神の信者以外の者にとっては使い捨ての文(ふみ)でしかない。『波紋』で「神の視点」といふものを述べたが横書きは一行書くごとに下方へ一段下る。文を認(したた)めるといふ作業もまた周回運動に変換出来、それが綺麗な螺旋運動になってゐることに気が付く筈である。 「神の視点」の神とは『時間の神』、日本で言へば滋賀県大津市にある「天智天皇」を祀る近江神社が「時の神」の神社として有名だが、ギリシア神話で言へば「クロノス」(英語;Chronos、ギリシア語;χρόνος)のことである。一神教、例へばユダヤ教ではヤハウェ、基督教では基督、回教ではアッラーフ(アッラー)に「時の神」は統べられてしまってゐるが…… 以上のことから唯一神不在若しくは無信仰の人間の横書きが如何に虚しい作業かは言はずもがなである。 さて、本題の肉筆だが、仏教徒であらうが神道信者であらうが、更に言へば無信仰ならば尚更であるが、日本人ならば先づ縦書きが基本で、『浅川マキと高田渡と江戸アケミ』で述べたやうに文を記すことは現代理論物理学の実践である。ハイデガーのいふ「世界=内=存在」でありたいならば「道具存在」である筆でも万年筆でも鉛筆でも何でもよいが筆記用具を手にして紙に記す行為こそ「世界=内=存在」であり得る。そこでだ、現代理論物理学を実践するならば肉筆に限る。文字を記すときの一点一画を記す行為は「時間」を紙上に封印する行為である。それが肉筆であるならば「個時空」を紙上に封印することである。紙上に肉筆で封印された「個時空」は既にこの世に唯一の「顔」を持ってゐて唯一無二の存在物になるのである。 肉筆原稿が嘗ては活字、今はComputer入力の写植に変貌してしまったが、それでも肉筆で今でも原稿用紙と格闘してゐる作家の文は迫力が違ふのである。これは私だけのことかもしれないが文芸誌などで何某かの作家の作品の一文を読めばその作家が原稿用紙に肉筆で書いたかComputer入力かがたちどころに解ってしまふのである。私にとってComputer入力の作家の作品は其れだけで既に読むに値しない愚作である。今でも肉筆で原稿用紙に書いてゐる、例へば本人には申し訳ないが、私は嫌いである大江健三郎の作品を文芸誌で見つけると嫌いにも拘はらずその作品の一文を読んでしまふと最後まで読んでしまはないと気が済まなくなるのである。写植になっても肉筆で書いたといふ「個時空」若しくは作家の「言霊」が私の魂を鷲摑みにして作品を最後まで読ませてしまふのである。 ――何故、現代人はComputer入力で文を認める、つまり己を『のっぺらぼう』にしたがるのかね…… ――へっ、己のことを自然を「超えた」若しくは神を「超えた」存在だと錯覚したいだけのことさ、ふっ。 風紋 川面を弱風が吹き渡ると千変万化する風紋が川面に現はれる。 風紋といふ文字の姿も「ふうもん」といふ文字の響きも美しい。何がこんなにも私の魂と共鳴を起こして『美』を想起させるのか…… 「揺らぎ」……。揺らぎを語り始めると量子論や宇宙論まで語らなければならないので自然の本質の一つとしてここでは一応定義しておくが、「揺らぎ」については後日語らなければならないのかもしれない…… 風紋は風の揺らぎによって無常にその姿を変へ波の紋をこの世に映す。 諸行無常とは正に風紋の如しである。 さて、ここで妄想を膨らませると、風紋は時空間の時間を主体にした時空が姿を与へられてこの世に出現する現象ではないかと思ふ。波は周回運動に変換でき、つまり波は或る物が「揺らぐ」螺旋運動をしてこの世を駆け抜けたその軌跡ではないのではないだらうか。ここでいふ或る物とは正に『時』である。 確率論的に言へば風に幾ら「揺らぎ」があらうが風紋の最終形は直線の筈である。水はその姿を千変万化に変容させるので兎も角、砂丘の砂が例へば真っ平らであって例へ「揺らいだ」風でも万遍無く砂丘の砂にその風を数時間か吹き付け続ければ確率論的には直線の風紋が出来る筈であるが自然はそれを許さない。それは何故か――時空が特に時間が「揺らぐ」螺旋運動をしてゐるとしか考えられないからである。 多分、螺旋運動は自然の宿命なのだ。それ故時空は「揺らぐ」のだらう。 ――人間もまた螺旋から逃れられない自然物なのだ。さて、例へばRobotだが、それが自然を超へるといふ人間の宿願を果たす人間の夢想であるならばだ。しかし、それが人間の頭蓋内の思索といふまた「揺らぎ」の螺旋運動から出現したものならば、さて、Robotもまた自然でしかない…………… ――さてさて、人類の叡智とやらに告ぐ。……無から何か有を、存在物を……人間よ……創造し給へ。それが出来ない以上、人間よ、自然に隷属し給へ……。それが自然の宿命だからな……、ふっ。 - -