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前 翌日の朝── 「ゆっゆっゆっ、きょうこそれいむにいっしょにすんでもらうんだぜ」 巣穴から出てきたのはゆっくりまりさ。あの三匹のまりさの内の一匹である。 ちなみに三匹は全員れいむに惚れており、誰が先に自分の伴侶にするか競争しているライバルである。 最も、この三匹はまったくれいむから相手にされていないわけではあるが。 「まずははらごしらえなんだぜ、たべものをさがすんだぜ」 このまりさはゆっくりの中では立派とも言える巣をもっているが、食べ物を保存するという計画性はまったく無かった。 その辺りにある物を食べたり、他のゆっくりから食べ物を無理矢理奪うなど、実にその場しのぎな生活をしていた。 今日もいつもと同じように、食べ物が無いか跳ねながら辺りを見回す。 「ゆっ、なんかあまくていいにおいがするんだぜ」 匂いの元を探して跳ね回ると、さほど離れていない場所に、小さな黒い塊が落ちていた。 どうやら先程の甘い匂いは、この塊から発しているらしい。 まりさは一口丸ごと食べてみる。 「うめぇ!! これめっちゃうめぇ!!」 思わず声に出して叫ぶほど美味しい味がまりさを包んだ。こんな物は食べた事が無い。 この美味しい食べ物がもっと欲しい、まりさは他に同じようなものが無いか辺りを見回す。 すると先程と同じように、黒い塊が点々と落ちていた。 まりさはそれを見るや、点々と落ちている黒い塊を食べながら辿っていく。 道しるべのように点々と落ちていたその先には、大きな黒い塊が落ちていた。 「ゆゆーっ!! これはまりささまのものなんだぜ、だれにもわたさないんだぜ!!」 夢中になってその大きな塊を貪るまりさ。その姿は醜かったが、とても幸せそうだった。 だがそのために気づかなかった。考えもしなかった。 この塊が何でできているかという事に。 この塊が何でここに落ちているかという事に。 自分の家から点々と小さな塊が落ちていたという事に。 いつのまにか、誰かに見られていたという事に。 「がつがつがつがつがつがぶぉぶ!!」 食事中に強い衝撃を受け、黒い塊に突っ込むまりさ。 突然の出来事に思わず吐き出してしまい、吐き出した先に突っ込んでしまった事で、自身の顔がべとべとの黒まみれになってしまう。 食事の邪魔をされたどころか言いようの無い屈辱を受けたまりさは今までに無い怒りを覚えた。 「なにをするんだぜ!! まりささまをおこら……せ……」 後ろを振り向いたまりさは唖然とする。 そこには遠ざかるまりさの姿が見えた。 しかしその帽子には見覚えがある。見間違えることなどない。 まりさは今までに無い怒りを即座に忘れ、さらに強い怒りと焦りを覚える。 「ばがあぁぁぁぁ!!!!! まりざざまのぼうじがえぜええええぇぇぇぇぇ!!!!!」 帽子を奪った相手のスピードはそこまで速くはなく、見失う事は無かった。 しかし追いつくことも無く、一定の間隔以上は離されていた。 それでもまりさは必死になって、自分の帽子を取り戻そうとひた走る。 しばらく走っていると、急に相手のスピードが速くなった。 負けじとまりさも追いつこうとするが、離される一方であり、見えなくなってしまった。 それでも帽子を取り返さなければいけない、ゆっくりできなくなるのは嫌だ。 そんな思いから気力を振り絞って懸命に進む。 そしてその苦労は報われ、先程帽子を奪ったまりさに追いついた。 よくみると、その先にはいつも一緒に行動しているゆっくり仲間がいるではないか。 これで帽子を取り返せると思い、まりさは叫ぶ。 「ごのばがあぁぁぁ、まりざざまのぼうじをざっざどがえじでゆっぐりじねえぇぇぇ!!!!!」 その声にゆっくり達は反応する。 「ゆっ、ゆっくりできないゆっくりがいるよ!!」 「ゆっくりできないゆっくりは、ゆっくりしぬといいんだぜ!!」 「まりささまがころしてやるから、ありがたくおもうんだぜ!!」 まりさは一瞬言っている事が理解できなかった。 仲間達の反応は、自分の考えていた反応とまったく違っていた。 「なにいっでるのおぉぉ!!! ぼうじをうばっだゆっぐりでぎないゆっぐりばあいづだよおぉぉぉ!!!」 「なにねぼけたことをいっているんだぜ? まりささまがぼうしをとられるわけがないんだぜ」 「おお、おろかおろか」 「ゆっくりできないゆっくりはやっぱりばかなんだぜ」 「あんなのがいたらゆっくりできないよ!! みんなあいつをやっつけてね!!」 「「「わかったんだぜ!!!」」」 涙ながらに訴えるが、仲間たちは判ってくれなかった。 それどころか、帽子を奪った犯人と一緒に此方に来るではないか。 「ぢがぶっ!! まりざざまがまりざざまなんだぜえぇぇ!! にぜものはあいぶぅぅぅ!!!」 必死に伝えようとするが、仲間達は聞く耳持たず、それどころか体当たりを仕掛けてきた。 このままでは死んでしまう、そう思ったまりさは一旦逃げることにした。 「まりざざまがまりざざまっでなんでわがっでぐれないんだぜえぇぇぇ!!」 「にがさないんだぜ、ゆっくりしぬといいんだぜ」 「まりささまのなをかたるなんて、しけいなんだぜ」 「まりささまがじきじきにころしてやるから、ありがたくおもうんだぜ」 しばらくまりさは逃げていたが、先程まで全力疾走していたのだ、そう体力も持たなかった。 すぐに三匹のまりさに捕まってしまい、体当たりを受ける事になる。 「ゆぎゃっ、ゆべぇっ、やめるんだぜ、まりざざまばぼんもの゛おぉぉぉ!!」 「うるさいんだぜ、そんなうそにはだまされないんだぜ」 「このごにおよんでうそをつくなんて、おうじょうぎわがわるいんだぜ」 「うそつきのゆっくりはさっさとしぬといいんだぜ」 「ゆぎぃっ、ゆぶっ、ゆげっ、ゆぎゃあぁぁぁ!!!」 最早まりさには体力は残されておらず、ただ三匹のまりさたちのサンドバッグとなる運命しかなかった。 しばらく悲鳴を上げていたが、やがてその声も弱まり、遂にはなんの反応も示さなくなった。 動かなくなったまりさだった物をみて、二匹のまりさはゲラゲラと笑い出す。 「すごくゆっくりしてなかったんだぜ、しんでとうぜんなんだぜ」 「せいぜいあのよでゆっくりするんだぜ」 勝手な事を言って馬鹿笑いをしている二匹に対して、もう一匹のまりさは二匹に聞こえないように呟いた。 「そうだね、おまえたちもいっしょだよね」 「ゆっぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 「な、な、な、なんなんだぜ!?」 突然悲鳴を上げるまりさに驚き、まりさはそちらを見る。 そこには大きく口を開けて叫ぶまりさの姿が見える。 そしてその後ろにもう一匹、枝を咥えているまりさの姿があった。 「いだいいいぃぃぃ!!! どうじでごんなごどずるんだぜえぇぇえぇぇ!!!!!」 「なにしてるんだぜ!? きがくるったんだぜ?」 背中に枝が突き刺さり、悲鳴を上げるまりさ。 突然の狂った行動に戸惑うまりさ。 状況が理解できていないまりさ達の問いに、枝を咥えているまりさは平然と答える。 「れいむにいわれて、ゆっくりできないまりさをころしているんだぜ。 ゆっくりりかいするんだぜ」 思いもよらない答えにますますわけが判らなくなったまりさ達だったが、痛みでそれどころではないまりさは叫ぶ。 「うぞだあああぁぁぁあぁぁ!!! うぞをいうまりざはゆっぐりじねえぇぇぇええぇぇ!!!」 「うそじゃないんだぜ、ゆっくりしね!!」 「そごのまりざあああぁぁぁあぁぁぁ!! まりざざまをだずげろおぉぉぉおおぉぉぉぉ!!!」 「まりさ、れいむがいってたんだぜ、ゆっくりできないこいつをころすんだぜ!!」 目の前で行われている仲間の行動に頭が追いつかないのは傍観しているまりさだった。 だが目の前の光景や先程言われた言葉、自分の立場を考える。 そして一つの結論を出した。 「ゆっくりしね!!」 「ゆっ!?」 まりさが選択したのは、枝を加えているまりさへの攻撃だった。 枝を加えているまりさは思わず枝を離して攻撃を避ける。 (ちっ、やっぱりうまくはいかないね……でもよそうどおりだよ) 避けたまりさは心を落ち着かせると、体当たりしたまりさを見る。 枝が刺さったまりさは助かったと思い、罵倒を始めだした。 「ゆううぅぅ、たすかったんだぜ!! まりささまをこんなめにあわせたあいつをたおすんだぜ!!」 これであの裏切り者を倒せる、そう怪我をしたまりさは思っていた。だが── 「うるさいんだぜ、まりささまにめいれいするなんて、ひゃくねんはやいんだぜ」 「ゆぶぇ!!」 「……ゆ?」 なんとせっかく助けたまりさを先程体当たりしたまりさは攻撃し始めた。 その行動は完全に予想外であり、身構えていたまりさは唖然としている。 「なにをずるんだぜえぇぇぇ、でぎばあっぢなんだぜえぇぇぇ!!!」 「おまえはれいむにとってじゃまなんだぜ、ゆっくりしね!!」 訳が判らない。傍観者となったまりさはそう思っていた。 だが当事者である二匹には通じているようで── 「あれはあいづのうぞなんだぜえぇぇぇ、れいむばまりざざまのごどがいぢばんずぎなんだぜええぇぇ!!」 「れいむがいちばんすきなのはまりささまなんだぜ、おまえらみたいなくずはゆっくりしぬといいんだぜ!!」 (ああ、そういうことか) 傍観していたまりさは理解した。 こいつは自分にとって都合のいいように解釈しているだけなんだ、 おそらくれいむを取り合うライバルをこの機会に排除しようとしているのだろう。 仮にれいむが排除しようとしてた事が嘘でも、他の二匹の事は嘘を言えばいいと思っているのだろう。 単純な事だった。まりさはそう思った。 「れいむをうばおうとするやつはまりささまがゆるさないんだぜ、ゆっくりしね!!」 最早動かなくなったまりさに対して、執拗にまりさは攻撃し続ける。 その隙を見逃すはずも無く、傍観していたまりさは助走をつけた力一杯の体当たりを仕掛けた。 「ゆぶぎゃっ!!」 全力の体当たりはまりさに大きなダメージを与え、白目をむいて気絶してしまった。 こうなってしまうと後は一方的な展だった。 無傷のまりさは瀕死のまりさから枝を抜き取ると、気絶しているまりさに向かって勢い良く突き立てる。 「ゆっぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!!!」 痛みで目を覚ますまりさ。しかしまりさは容赦はせずに枝を動かし、抜き差し、揺さぶっていく。 「やめろばがっ!! やめっ、やっ、やめでっ!!」 罵倒する体力も気力も尽きたのか、しだいに懇願するようになっていった。 「やめでぐだざいっ!! おねがいじまずっ!!」 まりさにとって偉大な自分が相手に懇願するなど屈辱だった。 だがだからこそこれは効果がある。そう信じていた。 事実、その言葉を発した事によって、枝の動きは止まったのだ。 「やめてって……おねがいしてるの?」 「そうだよ!! だがらまりざをだずげでね!!」 ちょろいもんだ、まりさはそう思っていた。 相手にまったく感謝の気持ちなど存在してなかった。 まりささまがここまで譲歩してやったのだ、助けるのは当然のことだ。 傷が癒えたら復讐してやる。頭の中はそのことで一杯だった。 しかし、帰ってきた言葉はまりさの望みとはまったく異なる物だった。 「そうしたおねがいをしたゆっくりに……おまえはどうこたえたの……?」 「うるざいっ!! さっさとだずげろごのばがあぁぁぁあぁぁ!!!」 上辺だけの誠意だったのが、本来の口調にもどるまりさ。 それを聞いて枝を咥えたまりさは動きを戻す。 「ゆぎゃあああぁぁ!!! やめでえぇぇええぇぇ!!!」 最早枝の動きは二度と止まってくれることは無かった。 やがてまりさは唯の黒い塊と化した。 まりさが後ろを見ると、瀕死だったまりさがわずかに這って動いた後があった。 だが結局は黒い塊と化していた。 「これで……あとはあいつだけだね……」 「ゆっ、れいむをまたせるなんて、やっぱりあいつらはつかえないね!!」 何時まで経っても帰ってこないまりさ達に、れいむは文句を垂れていた。 ゆっくりできないゆっくりくらいすぐに片付けることができないなんて、なんて役立たずなんだ。 別の使えるゆっくりを探そうか、そう思い始めた頃にまりさが一匹帰ってきた。 「ゆっくりかえったんだぜ!!」 「ゆっくりしすぎだよ!! れいむをまたせないでね!!」 ばかなの?しぬの?と続けたかったところをれいむは抑える。機嫌を損ねることは避けたかった。 次に何を命令しようか考えようとして、他の二匹がいない事に気づいた。 「ゆゆっ? ほかのまりさはどうしたの?」 「ほかのまりさはゆっくりできないゆっくりにやられてしまったんだぜ」 「ゆゆっ!!」 れいむは怒った。ただしそれはゆっくりできないゆっくりに対しての怒りではなかった。 三匹対一匹にもかかわらずやられるようなまりさなんて役立たずにも程がある。 いっそ切り捨てれて良かったかもしれないとまで思い始めた。 このまりさだって本当は逃げてきたのではないのか? そう疑い、まりさを値踏みするように見始めてれいむは気づいた。 (ゆゆっ? まりさがとてもゆっくりしているよ?) 今日のまりさは一段と輝いて見えた。 皮もしっかりしていて艶があり、とても良いゆっくりに見えた。 これなら一緒になってもいいかなとれいむは心揺らぐ。 そんなまりさが突然話をし始めた。 「れいむ、まえにぱちゅりーをおそったときのこと、おぼえてるんだぜ?」 「ゆゆ?」 どうしてそんなことを聞くんだろう。れいむは疑問に思ったが、まりさに心揺らぎ始めてたので素直に答えた。 「ゆっ、おぼえてるよ!!」 「どうしてぱちゅりーをおそったのか、しりたいんだぜ」 「ゆ? あのぱちゅりーはゆっくりできなかったんだよ?」 「そのゆっくりできなかったりゆうってのをしりたいんだぜ」 執拗に理由について聞いてくるまりさに、れいむは嫌悪感を覚えた。 なんだこいつは、このまりさはこんな些細な事を気にするような奴じゃなかったはずだ。 苛立ちながらもれいむは答えた。 「れいむのさがしてたまりさをおいかけていたからだよ!!」 「……そのまりさってどんなまりさ……?」 「まりさがたべものをうばったまりさでしょ!! そんなこともおぼえてないの?」 れいむの答えを聞くたびに、まりさのテンションは下がっていく。 それに対してれいむの怒りによるテンションは上がっていった。 れいむはここまで言って、あることを思い出す。 「そうだよ!! まだあのときのまりさをみつけてないの? さっさとみつけてきてね!!」 自分でもすっかり忘れていたことを棚に上げ、自分の願いを忘れたまりさを怒るれいむ。 だがまりさはまったく動く気配はなく、それを見てれいむはさらに激昂する。 「なにをぼーっとしているの!? れいむがみつけてほしいっていっているんだよ!? さっさとさがしてきてね!! それともいっていることがわからないの? ばかなの? しぬの? れいむをゆっくりさせないまりさなんてさっさと──」 れいむの罵倒の嵐は中断させられる事となる。 まったく動かなかったまりさが突然れいむの眼前に迫り── そのままれいむは空を見上げる形となる。 空は照りつけていた太陽が雲によって遮られていた。 「ゆぐっ!! なにをするの!! れいむにてをだしてただですむとおもってるの!?、ぜったいにまりさをゆる……さ……」 起き上がり、相手を罵倒しようとしたれいむはそれ以上言葉を紡ぐ事ができなかった。 目の前の出来事が夢ではないかと疑ってしまうほど、れいむには衝撃的だった。 「どうして……」 目の前のゆっくりは命の次に大事という黒い三角帽を外しており、枝を咥えて此方に向けている。 先程まで黒い三角帽のあった場所には、別の帽子がつけられている。 そのゆっくりの被っている帽子に、れいむは見覚えがあった。 おかしい、だってあの帽子をしたぱちゅりーは── 「どうじでばぢゅりぃがいぎでるのおぉぉぉぉ!?!?!?!?!?!?」 ぱちゅりーと呼ばれたゆっくりは、枝を構えてれいむに狙いを定める。 恐怖と混乱で動けなくなっているれいむの瞳を見て、静かに言い放った。 「──まりさは、わたさない」 「ゆっぎゃああああああああああ!!!!!」 恐怖で思うように避けることが出来ず、右の頬を枝によって切られてしまう。 致命傷には程遠いが、れいむは大きく悲鳴をあげていた。 これまで自分で手を下さず他のゆっくりに任せていたため、自分が傷つく体験がなく、痛みに悶えているようだ。 「いだいいだいいだいいぃぃぃ!!!!!」 涙を流しながら大きくのたうち回ること数秒、れいむは見苦しくも命乞いを始めだした。 「ごめんなざいごめんなざい、まりざはあぎらめまず、にどどでをだじまぜん」 「れいむはなにもじでまぜん。ぜんぶあのまりざだぢがやっだんでず」 「ぼんどうでず、ゆるじでぐだざい、おねがいじまず」 「いやだああぁぁぁぁぁ、じにだぐないいいぃぃぃぃぃ、もっどゆっぐりじだいいいぃぃぃぃ」 べらべらと喋るれいむを見て、今までに無い程の怒りが込み上げてくる。 なんなんだこいつは、自分では何もせず他の者にやらせ、自分の思い通りに行かないと納得しない。 そのくせ都合が悪くなると簡単に手のひらを返して仲間のせいにする。 今まで見た中で最低のゆっくりだ。 こんなクズのせいで── こんなクズのせいで── こんなクズのせいで── 「ゆぎゅぶぇ!!」 咥えていた枝を離し、ぱちゅりーの帽子を被ったゆっくりはれいむの上に圧し掛かる。 れいむは潰れはしなかったが、圧し掛かられた衝撃で餡子を吐き出す。 そんなれいむにお構いなく、圧し掛かったゆっくりはゆっくりとれいむのリボンを咥えて── ぶちぶちぶちっと音がした。 「ぎゃあぁぁああああぁああぁぁあああああぁぁぁあぁ!!!!!」 リボンを咥えて全力でそのまま飛び跳ねた結果、れいむの髪の毛ごとリボンを奪い取る。 あまりの痛さにれいむの方は失神してしまったようで、白目をむいて倒れていた。 それを見たぱちゅりー帽子を被ったゆっくりは、少しれいむを見た後、振り返り移動する。 奪い取ったリボンは黒い三角帽の中に入れ、そのまま運び出す。 もうれいむに関して興味は無くなっていた。 「ゆぎぃ、いだいっいだいいぃぃぃぃ!!!」 目を覚ましてすぐ、れいむは激痛に襲われていた。 周りを見てもぱちゅりーはいなかった。 れいむはいなくなったぱちゅりーにむかって怒りをぶつける。 「ゆっぎいいぃぃぃ!!! ぱちゅりーめ、れいむをこんなめにあわせるなんて、ぜったいにころしてやるうぅぅ!!!」 怒って叫ぶが痛みがぶり返してきてしばらく黙る。 落ち着いたところで誰かに助けてもらおうと少しずつ動き出す。 そこに都合よく、れいむとまりさの二匹が通りかかった。 「ゆっ、そこのれいむとまりさ!! れいむをたすけてね!!」 その声に反応するれいむとまりさ。これで助かったとれいむは思った。 だが相手の様子がおかしい。見ればこっちを見る目が険しくなっているではないか。 「ゆっ!! ゆっくりできないゆっくりだよ!!」 「れいむのなまえをかたるなんてわるいゆっくりだね、ゆっくりしね!!」 助けてくれると思っていた二匹が、敵意を向けてこちらに来る。 れいむは事情を理解してもらおうと必死になって叫び始めた。 「ゆううううぅぅぅぅ、なにをずるのおぉぉぉ!! れいむばれいむだよぉぉぉぉ!!」 「ゆっ、そんなうそにはだまされないよ、れいむにはりっぱなりぼんがあるんだよ!!」 「うそつきのゆっくりはゆっくりしね!!」 「ぢがううぅぅぅ!! うぞじゃないいいぃぃぃ!!」 二匹に攻撃され、動く体力も残っていないれいむができることは、ただ殺されるのを待つのみだった。 死にたくない、もっとゆっくりしたい、誰でも良い、あのゆっくりできないゆっくりでもいい、助けてくれ。 そう思うが、そのゆっくりの顔を思い出すことは出来ない。何も思い出すことが出来ない。何も── そうしてれいむは永遠に暗闇の中へゆっくりする事になった。 新たな住処となるはずだった穴の中、まりさは佇んでいた。 全てが終わったはずなのに、全然心が晴れない。 むしろ心に空白が出来た感じもする。 復讐に燃えていた頃は、こんな気持ちにならなかったのに。 いや、空白にはなったことがある。目の前で大切な者が死んで、全てが壊れたと思った時だ。 嫌な思い出なのに、今でも鮮明に覚えている。 笑い声の聞こえなくなった広場で、まりさは傷ついた体を引き摺って進んでいた。 その目はただ虚ろに動かなくなった黒い物体と最愛の者を映していた。 幸いにもまりさは体が痛むだけで、命の素である餡子は流出していない。 この雨で死ぬことはなさそうだが、帽子もないため、危険なことには変わりはなかった。 「ぱちゅりー……」 目の前で大切なものが壊れてしまった。 絶望した子まりさにはただ呟くことしか出来なかった。 その時である。 「まりさ……?」 「ぱっぱちゅりー!? まりさだよ、しっかりしてえぇぇぇ!!!」 「まりさ……だいじょうぶそうだね……よかった……」 動くことはないと思っていた子ぱちゅりーが反応した。 慌てて子まりさは子ぱちゅりーの餡子の流出を抑えようとするが、止まる気配はまったくなかった。 それどころか雨により状況は悪化していく一方だった。 「まりさ……ぱちゅりーはもうだめよ……」 「どうじでぞんなごどいうのぉ!? いっじょになろうっでやぐぞぐじだでじょおぉ!?」 「ごめんねまりさ……ぱちゅりーはやくそくまもれないよ……」 「ばぢゅりーっ!! うごいだらだめっ!! ゆっぐりでぎないよ!!」 もはや子ぱちゅりーは手遅れの状態である。そんなことは誰の目に見ても明らかであった。 しかし子まりさは判っていても認めたくないのか、必死に餡子の流出を抑えようと努力していた。 そんなまりさに、ぱちゅりーは声をかける。 「もういいよ、まりさ……ありがとう」 「だめだよ!! じんじゃっだらゆっぐりでぎないよ!!」 「……まりさ、おねがいがあるの……」 「なんでもぎぐよ、だがらじなないでばちゅりいぃぃぃぃ!!!」 もうぱちゅりーは死んでしまうことは理解していた。最後くらい望みを叶えてやりたい。 子まりさはどんな願いでも聞き届けるつもりだった。 「まりさに……このぼうし、もらってほしいの……」 「ゆっ!?」 「もうぱちゅりーはだめだよ……まりさがもらってくれればゆっくりできるよ……」 「で、でも……」 「ぱちゅりーがしんじゃうまえに……はやく……」 「──わかったよ、ぱちゅりー……」 死んだゆっくりの飾りをつけると、ゆっくりの間では死臭を感知すると同属殺しとみなされ、問答無用で殺されてしまう。 しかし、生きているゆっくりの飾りをつけた場合は、殺される心配はない。 子ぱちゅりーが急かす理由はそこにあった。 自分の飾りをつければゆっくりできないゆっくりとして認識されることはない。 もう死んでいく自分には必要の無いものだ。 帽子を無くした子まりさのためにできる恩返しとして思いついたのが、帽子の譲渡であった。 そんな子ぱちゅりーの意思を汲み、子まりさはぱちゅりーの帽子を受け取った。 「ありがとうまりさ……ぱちゅりーのかわりだとおもってね……」 「ぱちゅりー……」 子ぱちゅりーは微笑んでいた。だがその微笑みは苦しそうであり辛そうであり── 子まりさはそんなぱちゅりーをただじっと見ることしか出来なかった。 そして、最期の時が訪れる。 「……まりさ…………ずっと……ゆっくり……して……いっ……て…………ね…………」 その表情は、とても安らかだった。 「ぜんぜんゆっくりできてないよ……ぱちゅりー……」 まりさは自然と呟いていた。 どうしてぱちゅりーは最期に、ゆっくりしていってねと言ったのか。 いや、それ以前から、まりさのことを確認してからずっとまりさの事を気遣っていた。 この帽子だって、帽子を無くしたまりさが、自分の帽子が無くてもゆっくりできるようにと考えてくれたのだろう。 ぱちゅりーは、優しすぎた。まりさはそう思う。 そんなぱちゅりーだからこそ、それを奪った奴らがどうしようもなく憎かった。 どうしても罰を受けさせたかった。苦しめてやりたかった。殺してやりたかった。 きっとぱちゅりーはそんなことを望んでいないのだろう。だからこそまりさはそれが許せなくて── 晴れた空であるにも関わらず、雨が降っていた。 しばらくして雨が止んだところで、まりさは決意する。 ──行こう。 ぱちゅりーはまりさにゆっくりして欲しいことを願った。 まりさはそれに答えるべきだと考えた。 ただし、この辺りでゆっくりするにはあまりにも辛い思い出が多すぎる。 どこか自分の知らない土地に行こう。そう思って歩きだすと── 「ゆ、ぱちゅりーだね、おひさしぶり!!」 「ゆっ!?」 まりさに声をかけるゆっくりが現れた。 そのゆっくりをまりさは知っていた。見間違えるはずなかった。 自分をここまで育ててくれて、あの日巣立ちの別れをしたまりさ唯一の家族。 まりさの生みの親である母まりさだった。 「まりさはげんきかな? ぱちゅりーにめいわくかけてない?」 「ゆっ……まりさはげんきだよっ!! すごくたすかってるよ!!」 どうやら生みの親も自分が本当の子供だとは気づかないらしい。 要らぬ心配をかけるまでもないと思い、適当に合わせる。 「そう、よかったよ……ゆっ? ぱちゅりー?」 「ゆゆっ!?」 気づかれたか!? まりさは内心焦ってしまう。 だが親まりさはまりさにとって思いもしない言葉を話す。 「ぱちゅりー……なんだかまりさのぱちゅりーおかあさんににているね……」 「っ……」 「ぱちゅりーをみてると……なつかしいふんいきがするよ……」 「……」 「おもいだすよ……いろいろと……」 「……」 「ゆっ、ごめんね!! へんなはなししちゃったね!!」 「ゆっ、そ、そんなことないよ!!」 思い出に浸っていた親まりさだったが、目の前のぱちゅりーに気づき慌てて謝罪する。 言われた本人は少しの間呆然としており、親まりさに言われてこちらも慌てて否定する。 何とも言えない雰囲気になり、両者とも退場しようとする。 だが親まりさの方がまりさに声をかける。 「まって、ぱちゅりー!!」 「ゆっ!?」 まりさはなんだろうと思い、振り返る。 親まりさは此方を振り返ったのを確認して話す。 「まりさのこと、よろしくおねがいするね!! あのこのことだから、つらいことがあったらひとりでせおいこむとおもうんだ。 だから、できればむりをしていないか、きづかってあげてくれるとうれしいな。 わがままなおねがいでごめんね!!」 話すのを終えた後、此方を見ていたぱちゅりーは背を向けた。 どうしたんだろう? 親まりさがそう思っていると、返事が返ってくる。 「ゆっぐりりがいじだよ!!」 そう言って、去っていってしまった。 親まりさは不思議に思うが、その後ろ姿を見送り続けた。 そしてその姿が見えなくなりそうになったところで、親まりさは見た。 「ゆ~っ、とってもきれいだよ~!!」 まりさの進む方向に、きらきらと輝く虹が架かっていた。 あとがき 題名が思いつきませんでした。 ただ単に帽子の違うゆっくりが書きたいなとおもった結果がこれだよ!! このSSに感想を付ける
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「む~しゃ♪む~しゃ♪しあわせ~♪」 「おいしいね!ありす!」 「まりさ!ご飯を食べたら一緒にひなたぼっこしましょうね?」 ある春の日の森の中 日に照らされた野原で2匹のゆっくりが仲良く食事を取っていた。 とても楽しそうにニコニコとお喋りをしながら草を食べる2匹は 誰が見ても幸せそうに見えるだろう。 「ゆふー!お腹いっぱいだよ!幸せー!」 ご飯を食べて直ぐにころんと野原に横になる二匹。 彼等の属する群れは(といってもたった4匹だけだが) いつもこの様なゆっくりした生活を送っている。 日が昇ってからゆっくり外に出て、 その辺りに生えている雑草をついばみ、 お腹が膨れたら横になってお昼寝をする。 余りにも無防備でゆっくりとしたその姿は 獰猛な野生動物でさえゆっくりさせてしまう。 そしてお昼過ぎに起きては4匹で遊んで、 夕方になったらまた巣で食べる為のご飯を口の中や帽子の中に詰めて 巣へと持ち帰り、身を寄せ合って眠るのだ。 どこまでも争いの無い平和な森の中。 4匹のゆっくりは皆、幸せ一杯に暮らし、 どんな時でもゆっくりしていた。 只一つの例外を除いて 怖い人間とゆっくりするには 古緑? 「ーゆッ!ありす、ありす、起きてね!」 「ゆ!もう起きてるわまりさ!」 何かカサカサと物音を聞きつけた2匹が 全くゆっくりせずにお昼寝から目を覚まし、 全くゆっくりせずに樹の陰まで跳ねて隠れる。 樹の陰に隠れたその2匹の視線の先には 30歳程の背の高い、籠を背負った人間の姿。 「やっぱちょっと探したぐらいじゃ 見つからないモンだな…」 そう言って男は腕を組んで大きく溜め息を吐いた。 籠を背負った人間の目的は山菜探し。 しかし、他所の村の人間から聞いた『ゆっくり』という 人の言葉を解する生物を山菜探しのついでに一目見たくなった男は 少し山奥の方まで探索しに来たのだ。 「(やっぱり人間さんだね…)」 「(しー、まりさ、静かに ゆっくり出来なくなっちゃうわよ…)」 樹の陰にその身を隠して男を覗く二匹のゆっくりは ゆっくりらしからぬ小声で話し合う。 かつてこの群れがここでは無い、違う山に居た時 ある事件から『人間はゆっくり出来ない』と言う事を思い知らされた結果 群れの4匹は人間に近寄らなくなり、 新しい住処も人の姿の見られない山の中に作られた。 この群れと人との交流は今までのところ全く無い。 「しょうがねーか…帰ろっと…」 そう独り言を言って引き返していく男を4つの目で見つめながら 2匹のゆっくりは音を立てない様にそろそろと樹の陰から這って出ていった。 「「(そろーり…そろーり…)」」 「人間さん、もう行ったのかな…?」 「(しー!まりさ、まだ油断しちゃ駄目よ!)」 「(ご、ごめん…)」 2匹のゆっくりは念入りに、 男が見えなくなるぐらい、ゆっくりとその背中を見送ると 「誰もいないよ!またゆっくりしようね!」 「れいむとぱちぇも起こしてきて 皆でゆっくり大会しましょ!」 念には念を入れて、 場所を移してまた遊び始めた。 あの男は決して、ゆっくりに対して悪意を持って来たなんて事は無かったし この二匹のゆっくりも、あの男が自分達を殺しに来たとまでは考えていなかった。 だが、それでもゆっくり達は今の群れの皆で平和に暮らせていれば十分幸せだし、 この群れの4匹にとっては今でも人間と接触する事は恐怖でしかない。 「皆でず~っとゆっくりしようね!」 「明日も、明後日もず~っとゆっくりしようね!」 このゆっくり達は今のまま4匹だけの群れで、 今のままこの野原で暮らすだけで十分幸せなのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「父ちゃん!ゆっくりは見つかった?」 「あーいや、駄目だな、 諦めな、多分あの山にはいねぇよ」 「ちぇー…」 「まぁそうむくれんな そういや○○んトコの犬が子犬産んだって言うからよ 一匹貰って来てやるよ!欲しがってたろ?」 「本当!?飼っても良いの!? やったぁ!流石お父さん!!」 「世話はちゃんとお前がやれよ」 「あぁアンタ!帰ってたの! もう風呂出来てっから ○○と一緒にちゃっちゃと入ってきちまいなよ」 「ただいまカーちゃん! ま、取り敢えず風呂入ろうぜ お前も入りな」 人もまた、 ゆっくりがいなくても十分幸せだった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ しかし4匹のゆっくり達の 不満も不安も争いも無い、平和なゆっくり達の群れはある日 唐突にその姿を変える事になった。 「「「ゆっゆゆー!」」」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆ!何なの?何なの?」 ある晴れた日。 騒がしい音によって4匹のゆっくりはお昼寝から起こされた。 起きた4匹のゆっくりの視線の先には ゆっくりプレイスである野原の中で歓喜の声を上げる、20数匹のゆっくり達。 その種はれいむ、まりさ、ありす、みょん、他様々。 冒頭のありすとまりさ、そしてぱちゅりーとれいむの4匹だけでゆっくりしていた このゆっくりプレイスに、他所の山から急に20数匹程のゆっくりの群れがやって来たのだ。 「ゆー!ぱちぇ! ここはすごいゆっくりぷれいすだね! ここをまりさ達のゆっくりぷれいすにするよ!」 新しくこの群れに来た大きなゆっくりまりさが 元々のこの小さな群れのリーダー的存在であったぱちゅりーに向かってそう言った。 先住者に対して礼儀も遠慮もないその台詞から 『どんな群れ』なのかは聡明なぱちゅりーにはある程度想像がついた。 「む…むきゅぅ…」 このぱちゅりー、目立たないがよく見ると頬に酷い傷痕がある。 ぱちゅりーだけでは無く、まりさやれいむ、ありすの4匹のゆっくりは かつて人間に群れごと殺されかけた過去を持ち、 生き残った4匹で命からがらこの山へと逃げてきた末に、群れを築いたのだ。 『人とはゆっくり出来ない』と言う4匹の考えはこの過去の経験から来るものだった。 「わ…分かったわ…ゆっくりしていってね…」 まるで脅迫を受けた様に怯えた表情で ぱちゅりーは大きなゆっくりまりさに向かって承諾の返事を返した。 実際にこの群れに反抗しても無駄だと確信しての返事だったが、これは正解だった。 反抗しようものならそれを上回る反撃が待っていた事だろう。 その返事を聞いた大きなゆっくりまりさは満足そうに頷くと 周りのゆっくりに向かって次の様に言った。 「やったね皆!これでゆっくり出来るよ!」 「「「ゆゆ~ん♪」」」 「まずは住むのに良さそうな巣を探そうね!! 今日のご飯はぱちゅりー達から御馳走になろうね!」 新しく来た群れのゆっくり達がそれぞれに散って行き、 住み着くのに良さげな穴を探して行く。 その様を不安げに眺める4匹のゆっくり。 「ぱちぇ、コレは一大事だよ…」 「分かってるわ…」 人に恐怖を抱く4匹は皆、この事態に対して不安を抱いていた。 なんせたった4匹だったぱちゅりー達の群れは 一挙に30匹近くの群れに膨れ上がったのだ。 こんなに急に群れの人数が増えるとさぞ目立つ事だろう。 かつて自分達の生まれ育った群れを滅ぼした人間に見つかる可能性が増してしまう。 不安になったぱちゅりーは、大きなゆっくりまりさに怯えてはいたが 新しくなるであろう環境に直ぐに適応出来る様にゆっくりまりさに対して質問をする。 「ねぇまりさ…どうしてあっちの山からこっちに来たの? ゆっくり教えてね?もしかして…」 「ゆ?そんなの決まってるよ! ご飯が少なっちゃったんだよ! あっちのお山さんはゆっくり出来ないね! それに人間さんまで意地悪するんだよ!」 どうやら群れに新しく来たゆっくり達は あまり物事について深く考える事はしない様だった。 そして『ゆっくりしてない』、そう4匹は感じていた。 この時、今度は『人間』と言う言葉を聞きつけて 不安になったゆっくりれいむが大きなゆっくりまりさに向かって質問しようとした。 「ねぇ、『人間さんの意地悪』って…」 「とにかく! あんなゆっくり出来ないお山さんになんて居られなかったんだよ! …ゆ!あそこは良さそうな穴だね! ここをまりさのゆっくりプレイスにするよ!」 疲れてお喋りが面倒になったのか、大きなゆっくりまりさは強引に話を打ち切り 近くにある最も大きな穴に向かって跳ねて行った。 そこはぱちゅりーとれいむのお家。 初めてこのゆっくりプレイスに辿り着いて皆で家を探した時、 まりさとありすが見つけたお家なのに まず体の弱いぱちゅりーにと、譲ってくれた大事なお家だった。 「むきゅぅ!駄目よまりさ! そこはぱちゅとれいむのお家なのよ!」 「ゆ?何言ってるの? まりさが見つけたんだからここはまりさのお家だよ? ぱちゅりーは馬鹿なの?」 「…むきゅぅ~……」 反抗しようにも、どう見てもこのゆっくりまりさは 自分達よりも体格も大きいし、また新しく来た群れの数も多い。 それに元々この群れにいた4匹のゆっくり達は皆気が弱く、 戦いには向かない性格だった。 結局、争いなんてゆっくり出来ない事は真っ平御免な4匹は 新しく来たこの大きなゆっくりまりさに群れの主導権を任せ、 暫く様子を見る事にした。 この時点で4匹の頭の中には『群れを出よう』等という考えは無かった。 なにせあの日、人間から命からがら逃げ出した先で ようやく見つけたゆっくりプレイス、4匹の新しいゆん生の始まりの地。 見捨てるには愛着を持ち過ぎてしまっていたのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 幸運な事にぱちゅりー達が思っていたよりも 新しい群れのゆっくり達は身勝手では無かった。 暫くの間はぱちゅりー達にも不満は無く、ゆっくり出来ていた。 だがやはり先住者と余所者との混じり合の中で ゆっくり間の違いはあらゆる所で生じてしまう。 その中で最も目立ったものは食生活のギャップだった。 「ぱちゅ達はいつもそのご飯を食べてるね! そんなのでゆっくり出来てるの?」 「むきゅ…?この草さんは美味しいのよ?」 「あんまり美味しくないよ… この辺のご飯はゆっくり出来ないよ!」 「あっちで採れたご飯は もっとゆっくり出来たのにね!」 4匹が新しく来た群れに対して感じた、自分達との最も大きな違い。 それは新しく来た皆は揃ってグルメな事だった。 新しく来たゆっくり達は この辺の草を食べる事はせず、美味しい虫や花ばかりを食べている。 しかしそれらの美味しい物を食べても尚、彼等は不満そうにしていた。 元々の群れのれいむやまりさは不思議に思っていた。 草は美味しいし、滅多に食べられないけど花や虫なんてもっと美味しいのに、と。 「………」 しかしぱちぇとありすは薄々感づいていた。 彼等の求めている物に。 新しく来たゆっくり達はかつての生活の中で『あれ』を食べていたのではないかと。 ぱちゅりー達の嫌な予感が的中するのは それから少しゆっくりしてからの事だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 風の強い日だった。 新しいゆっくり達が来てから3週間程経ち、 段々と新しい群れにも馴染み始めてきた頃。 暮れて行く太陽の下、ぱちゅりーはゆっくりしながら 大きなゆっくりまりさがやけに嬉しそうに野原に跳ねて来るのを見た。 「ゆゆー!皆!見つけて来たよ! ちょっと遠かったけど、この辺にもあったよ! ゆっくり出来るご飯だよ!」 「………?」 そう言って狩り(元々の群れには無かった言葉)をして来た 現リーダーであるゆっくりまりさがその帽子の中から出したもの。 「ほらこれ! 久しぶりのゆっくり出来る美味しいご飯だよ!」 「む”む”ぎゅう”う”ぅ”ぅ”!!?」 大きなまりさが帽子から出したそれを見て ぱちゅりーは少量の中身と共に驚愕の悲鳴をその口から吐き出した。 まりさが嬉しそうに持ってきた物は、かつて見た人間の主食である野菜。 食べると非情にゆっくり出来ると言われているご飯だが、 コレは人間の食べ物であり、人間はこれしか食べない。 そしてこれを自分達が食べると 食い扶持を減らされた事に腹を立てた人間達が自分達を皆殺しに来る。 つまり、美味しいご飯だが これを群れの誰かが食べ続けると人間が自分達を滅ぼしに来る悪魔の植物。 そういう災厄を呼ぶ植物だとぱちゅりーは認識していた。 (人間達がぱちゅりー達4匹の群れを滅ぼしに来たのは 群れの中の一部のゆっくりがこの植物を何度も何度も人間の近くから取って来たからだと ぱちゅりー達は知っている) 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~!」」 「うっめコレめっちゃうっめ!まじぱねぇ!」 呆然とその災厄の植物を食べ始める皆を眺める4匹のゆっくり達。 この4匹は決してその植物に手をつけよう等とは考えない。 かつてそれを食べた仲間のゆっくり達が殺された過去の記憶が それを食べる事を拒否するのだ。 そうとも知らずに野菜を頬一杯に詰め込んだ大きなゆっくりまりさは ぱちゅりー達に向かってニコニコと笑いながら言った。 「ゆ?どうしたのぱちゅ? れいむも、まりさも、ありすも、 遠慮しないで食べて良いよ! コレは美味しい草の在処がまた見つかったお祝いだよ!」 「「これからはずっとゆっくり出来るよ!」」 草や虫を食べてる時にも見せない笑顔を見せながら群れの皆はそう言った。 『これからはずっと』 これからはずっとそれを食べるつもりなの? その災厄の植物を。 ぱちゅりーは新しく来た群れのゆっくり達の嬉しそうな食事風景を 虚ろな表情で眺めながら気を失い、ころんと横に転がった。 『む~しゃ♪む~しゃ♪しわせー♪』  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「む…きゅ…むきゅぅ…」 「ぱ…ぱちゅ…しっかりしてね…? ゆっくり気を確かにね…?」 元々の群れの3匹が失神したぱちゅりーを巣まで運んでいく。 この3匹は皆、もうここには居られない事を確信していた。 直ぐに、とは言わないがやがて人間達はここに来るだろう。 あの日の様にー 『だずげで!!許じでぇ”え”ぇえぇえ!!』 『喧しいんだよゴミ虫が 群れの在処まで案内すりゃ助けてやるっていってんだろうが』 何かしら?騒々しいわね… れいむ、ゆっくり起きてね?もうお昼よ? 『ゆゆぅ…』 『ごごをまっずぐだよ”!!』 『おぉ、アレか! オイ皆!見つかったぞ!』 むきゅ?人間さん?ゆっくりしていってね! ほられいむ、挨拶しなさい、お客さんよ 『ゆゆー!ゆっくりしていってねー!』 人間さんが群れに来るなんて初めてだわ! 遠慮せずにゆっくりしていってね! ねぇ、人間さんはー 『…フン、じゃあな金髪饅頭 お務めごくろーさん』 『ゆぴ』 …む…きゅ…?まりさ…? 『……ゆ?まりさお姉ちゃん…?』 『これ以上俺等の食い扶持を減らされちゃたまんねーんでな 悪く思うなよ』 ぱちゅりーの夢の中、今にも降り出しそうな曇り空の下。 目の前に広がる光景。人間の足の下のもの。 『ゆっくり出来るご飯を見つけたんだぜ』と自慢していたまりさだったもの。 人間に向かって命乞いした末に群れを売って結局殺されたまりさ。 そして男の脚と脚の間から見える、次々に殺されていくかつての仲間達。 ゆっくりぱちゅりーは夢の中でうなされながら その日の光景を再度見ていた。 そして夢の中の場面は変わり今の群れの野原。 あの日の様に群れに来た人間が、あのリーダーまりさを野原に放り投て踏みつぶす。 そして一人、また一人と殺される群れの皆、壊されるお家。 『ありす!!まりさぁああぁ!!ゆっぐりじで!!ゆっぐりじでいっでぇ!!』 『逃げでばちゅりぃ!!逃げでええぇぇえ!!』 ーーそして幼馴染みのまりさやありすまで踏みつぶした 人間達の無表情な目が、自分に向いたかと思うと 大きな足の裏が自分の帽子に向かってゆっくりとーー 「む”ぎゅゅうううぅぅうぅぅ!!!」 「ぱちゅ!?大丈夫!? ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「む…きゅ…」 ぱちゅりーが悪夢から目覚めると 体には何枚もの葉っぱが掛けられており、子供の頃より共に育ってきた皆が 心配そうにぱちゅりーの顔を覗き込んでいた。 「ぱちゅ…?起きたの…? ゆっくり出来なくなっちゃったよ…」 ゆっくりまりさが悲しそうな顔でぱちゅりーに向かって唐突に言った。 それは何もかも省略した台詞だったが、 ぱちゅりーにも、他の2匹にもその言葉の意味は容易に理解出来た。 皆あのリーダーまりさが持ってきたものを見て、同じ危機感を覚えたのだ。 ぱちゅりーはそれを聞いて、迷う事無く決断した。 あの悪夢を正夢にしたくない。 それは何よりも優先させるべき心からの願いだった。 「分かってるわ…皆、群れを出るわよ…」 「…ゆん、ぱちゅもそう言うと思ってたよ」 「残念だけどここではもうゆっくり出来ないわね…」 「他にもゆっくり出来るところはあるよ! 頑張って皆で探そうね!」 4匹の心は通じ合っており、誰もNOは言わない。 同じ環境で育ち、同じ地獄を見て来た仲間達なのだから。 恥ずかしがりやで皆と中々打ち解けなかった、でも本当は優しいありす。 社交的な性格でこれまでずっと皆を笑わせてくれたまりさ。 前向きな性格でいつも自分を元気づけてくれたれいむ。 その皆で必死に探し出したゆっくりプレイス。 捨てるのは余りに惜しいけど命には代えられない。 あの日の惨劇を繰り返すわけにはいかない。 「また、皆でゆっくり探しましょう… ぱちゅ達の、本当のゆっくりプレイスを!」 「「「ゆっくり頑張るよ!!」」」 次の日の朝、ぱちゅりー達4匹は 新しく来た群れの皆とも相談する事無く、 ひっそりと群れを出て行った。 かつて、ぱちゅりーはありすと一緒に『話題のご飯』を食べに行った際に 畑の近くで、野菜を持ち上げている人間の姿を見た事があった。 『人間もあそこに生えているご飯を食べるのね』 二匹がそんな感想を抱きながら人間を眺めていると、 その齧られた野菜を見た瞬間、人間が見た事も無い様な怖い顔に変わったのを見て 怖くなったぱちゅりーとありすは群れへと引き返し、 あそこに行くのを辞める様に皆に説得しようとした事があったが、それは徒労に終わった。 群れの皆にとって、ゆっくり出来るものが近くにあるのに我慢する道理は無い。 それはきっとリーダーまりさ達の群れも同じ。 ぱちゅりー達はあの草に魅入られたゆっくり達に 何を言っても無駄だと知っていたのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ゆゆー?ぱちゅ達がいないよ?」 「またお昼寝でもしてるんだよ! そんな事よりゆっくり狩りに行こうね!」 それから数日が過ぎ、群れの皆はぱちゅりー達4匹が居なくなった事に気付くが そんな事には全く気にせずにまた人里まで降りて行く。 だが、群れのゆっくり達は気付いていなかった。 段々と自分達の群れの数が減っていっている事に。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ぱちゅりー達が新しいゆっくりプレイスを探し出したのは 群れを捨ててから僅か4日後の事だった。 「ゆぅ…ゆぅ…」 「頑張ってねれいむ!きっともう少しでゆっくり出来るよ!」 傷つき、消耗し、もう跳ねるのも辛そうに眉を垂らすゆっくりれいむ。 それを励ます帽子無しのゆっくりまりさ。 4匹はもう満身創痍。 体力は既に限界を迎えつつあった。 「ごめんね…まりさ、ありす、ごめんなさい…」 「いいよぱちゅ!ゆっくりしていってね!」 そして誰よりも、 元々あまり運動に向かないぱちゅりーの体は碌に動けるものでは無くなっていた。 移動の際に誤って底部を尖った石に突き刺してしまい、殆ど動けなくなってしまったのだ。 まりさの帽子を地面に敷き、それを二匹がかりで引っ張るその姿は まるで人間が怪我人を担架で運ぶかの様。 あまりにも速度を失ったゆっくりプレイス探し。 だが、それもようやく終わろうとしていた。 「…ゆゆ?ぱちゅ!ここは…?」 「むきゅ…!そうね…皆、ここはきっと良いゆっくりプレイスになるわ…」 『ゆっくり』を嗅ぎつける勘に従って移動する事4日。 ようやく前のゆっくりプレイスにも劣らぬゆっくりプレイスを見つけ出した4匹。 川も近くにあり、柔らかい草も沢山生えており、近くに広場もある。 嬉しい事に4匹皆で暮らせそうな小さな洞窟まである。 何よりも4匹の勘が『ここはゆっくりプレイス』と教えている。 洞窟の事も考慮すれば、数日前に捨てたゆっくりプレイスよりも良い所かもしれない。 「でも…ぱちゅ、ここは…」 「………ゆっくり出来ないよ…」 だがそれは、近くに人間の家さえ無ければの話。 そのゆっくりプレイスから僅か100m足らずの所に人の民家らしき建物がある。 その上そこと洞窟との間には障害物も無く、 人が見ようと思えば自分達は丸見えである。 「ゆうう…こんなにゆっくり出来そうなのに…!」 「静かにしてれば気付かれずに暮らせないかしら…?」 「駄目だよ…!見つかっちゃったら 今度こそゆっくり出来なくなっちゃうかも…」 「…残念だけどここは駄目ね…他の所を… ゆ…いたぃ…!」 しかし、ぱちゅりー達の体力は限界を迎えつつある。 何しろあの群れから抜けてから4日間もの間ゆっくりしてないのだ。 4匹全ての体力、そしてゆっくり分は直ぐにでも枯渇しようとしていた。 「…ぱちゅ、人間が近くにいるけど 今日だけは静かにここでゆっくりしよう? このお家の中でゆっくりしてればきっと見つからないよ!」 「むっきゅ…」 『ゆっくりしたい』と言う本能から来る 『一晩でもここに留まりたい』と言う欲求。 しかし人間に対する恐怖もある。 その狭間でぱちゅりーは葛藤したが、 自分が余りにも足手まといになっていると言う自覚から 今回は僅差で本能が勝ったようで、ぱちゅりーはまりさのその言葉にゆっくりと頷いた。 「むきゅ…何か…何かゆっくり出来ないわ…」 しかしぱちゅりーは頷く瞬間、 周囲の雰囲気がゆっくり出来ないものに変わったのを感じ取った。 ゆっくりプレイスの中にいるのに何故かゆっくり出来ない。 何かゆっくり出来ない雰囲気がこの辺りに立ちこめている。 「ゆ…ゆ…」 ふとぱちゅりーがその顔を上げると3匹が皆、 ぱちゅりーの後ろを見て目を見開いている。 まるで人間の様に、とんでもなくゆっくり出来ないものがぱちゅりーの後ろにいるかの様に。 「…むきゅ?」 不思議に思ったぱちゅりーは深く考える事もせず、 ゆっくりと後ろへと振り返った。 「おい皆!!これゆっくりじゃねぇの!?」 「ああ?本当だ!?何でこんなトコに4匹もいんの?」 「 」 「 」 「 」 「 」 振り向いた先にいたのは人間の子供達が数人。 恐れていた人間にあっさりと見つかってしまった事で ぱちゅりー達の残り少ないゆっくり分は一瞬で無くなり、 4匹は仲良く揃って気を失った。 後編?へ
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*警告* ゆっくりは何も悪いことをしていませんが、ゆっくりできません。 ↓以下本文 れいむはとてもゆっくりしていた。大好きなまりさと力を合わせれば、おなかいっぱい ゆっくりできるごはんが集まった。ゆっくり育てた十匹の可愛い子ゆっくりはみんな良い 子で、お姉ちゃんゆっくりはもう一緒にごはんを取りに行くこともできる。妹ゆっくりは おうちでゆっくりお留守番ができる。みんなゆっくり、けんかなんてすることはない。 雨の日も風の日もゆっくりできない日も、家族みんなでゆっくりしてきた。一匹も欠け ることなく育てあげた家族は、れいむの自慢だった。 「ゆ゙ぴぃ!」 その子れいむが弾け飛んだ。ゆっくり一匹分の枠のなかに、照り返しも艶やかなこしあ んの餡子が飛び散っている。ぷにぷにですりすりすればとってもゆっくりできた皮も、す てきなおりぼんも今はあんこにまみれた残骸でしかない。 「お゙ぢびぢゃんどぼじだの゙お゙お゙!?」 れいむは叫ぶ。寒天の目玉をひん剥いて叫ぶしかなかった。叶うならば、今すぐ子れい むの側に跳ね寄りたかった。しかし、どれほど動こうとしても、黒焦げになるまで焼かれ たあんよは言うことを聞かない。 「あ゙ん゙よ゙ざん゙! ゆっくりうごいてね! おぢびぢゃんがたいへんだよ!」 れいむは柔らかいおまんじゅうの身体を必死によじり、跳ねようと身をたわめる。しか しその場でもにもにするばかりで、あんよは決して動くことはない。 「お゙でえ゙ぢゃ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!」 一番近くにいた一匹の子れいむが大声で泣き叫ぶ。その子れいむもまた、あんよが炭に なるまで焼かれており、決して近寄ることはできない。そして、子れいむは泣き顔のまま、 一瞬で中身をぶちまけた。跡にはあんこと破れた皮、ボロボロの飾りが残るばかり。 「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」 わけもわからず、あんよも動かない。一斉に泣き叫ぶ子れいむたち。ゆんゆん絶叫が響 くなか、少し離れた場所が爆発した。 「ゆっぐりでぎないよ゙ぉ゙! も゙お゙お゙うぢがえる゙!」 爆発をきっかけに、一番小さいれいむが大泣きに泣きはじめた。そして、爆発は次第に 子れいむに近づき、二回目の爆発のあと、子れいむは泣き顔の皮をあんこの中に撒き散ら し、生ゴミとなり果てた。親れいむはそれをゆっくり見ていることしかできなかった。 そして再び、少し離れた別の場所が爆発した。 「ゆっ……! みんな! ゆっくりきいてね!」 「ゆ゙ぁ゙……?」 「おがあぢゃあ゙あ゙……?」 「どっかーん、はゆっくりできないよ! でもゆっくりしずかにしてね! ゆっくりしてな いと、おちびちゃんみたいにどっかーんしちゃうよ! ちかくでどっかーんしても、ない たらゆっくりできなくなるよ!」 親れいむの考えは、こうだ。自分たちは白くて広いお部屋にいる。お部屋の床には四角 い模様が書かれていて、その枠はどれもゆっくりひとりぶん。地面の四角い枠からは出ら れない。時々、地面が爆発してゆっくりできない。もし爆発した枠のなかにいたら、永遠 にゆっくりしてしまう。お部屋には他に誰もいないから、爆発する模様はでたらめなのだ。 でも爆発の近くにいて大きな声を出した子には爆発が近づいてきて、最後には永遠にゆっ くりしてしまった。 「やだやだやだあああ! ゆっくりしたいよ!」 「ゆっくりしずかにしていれば、ちかくでどっかーんしてもだいじょうぶだよ! みんな おかあさんのいうとおりにしてね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 まりさと一緒にゆっくり育てた自慢の子ゆっくりでも、近くで爆発したら大声で泣き叫 び、爆発を呼び寄せてしまうかもしれない。それでもあんよを焼かれたれいむには、子 ゆっくりを信じるしかない。 部屋に残っているゆっくりは、親れいむと子れいむが三匹。二匹は既に永遠にゆっくり してしまっている。床の枠が火を噴く。轟音にどの子ゆっくりも恐怖の表情を張りつけて 身動きのとれない身体を震わせる。親れいむの言うとおりに、ゆっくりできないのを必死 に我慢してガタガタ震えていると、先ほどの一番小さいれいむの時とは違い、爆発は誰か に近づいてくることはなかった。でたらめな場所が爆発し、親れいむはゆふぅ、と大きく ためいきをついた。これで爆発しなくなるまでゆっくりできるかもしれない、と。 「おかーしゃんすごいね! どっかーんさんこっちにこないよ!」 それもその次に小さい子れいむがきゃいきゃいと幸せそうな顔で叫ぶまでのことだった。 子れいむの幸せそうな大声に、爆発は一枠一枠、確実に近づいてくる。 「い゙や゙ぢゃ゙あ゙あ゙あ゙! こっちこないでね! れいむ゙はここぢゃないよ゙!」 近づく爆発。動かないあんよ。ゆっくりできない恐怖に、親れいむの言葉も忘れ、子れ いむは涙を激しく流し、金切り声をあげる。そして、子れいむは盛大に爆ぜ飛んだ。周囲 の枠に、あんこが飛び散る。声もなく見つめる親れいむとれいむ姉妹。 怖くて泣かなくても、しゃべったら永遠にゆっくりさせられてしまうのだ。怖くても泣 けず、永遠にゆっくりしてしまった子れいむのためにゆっくりすることもできない。親れ いむは涙を静かにこぼし、声を絞り出した。 「こわくても、ゆっくりしずかにしていてね……おはなしするとゆっくりできないよ」 「ゆ、ゆっくりぃ」 残るは大きめの子れいむが二匹と、親れいむが一匹だけ。爆音と共に、近くの枠が火を 噴いた。恐怖の表情で固まり、ガタガタ震える子れいむ。どんなに怖くても、親れいむの 言いつけを守り、お口をぎゅっとつぐんでしずかにゆっくりしている子れいむを心配そう に見つめながら、れいむは唯一の希望をひたすら待っていた。れいむのすてきなまりさが 助けに来てくれることを。まりさは狩りも上手でかけっこもはやい。れいむたちが動けな くても、必ずゆっくりさせてくれるはずだった。 「ぴゃ゙ぎゅ゙!?」 遠くの爆発に目をぎゅっと瞑って悲鳴を押し殺していた一匹の子れいむが吹き飛んだ。 爆発は遠かったのに。親れいむは信じられない表情で子れいむだった残骸を見つめる。 そして、気付いた。一度爆発した場所は、黒く焦げていることを。そして、まだ焦げてい ない場所は、ほとんど残されていないことを。 「ゆっくりしたいよ! ゆっくりさせてね! ゆっくりしていってねー!」 姉妹が全て吹き飛んで、とうとう恐怖に耐えられなくなった最後の子れいむが泣き叫び はじめた。あんよは動かず、まりさは来ない。親れいむにできることは、もう一つしかな かった。 「でいぶはごごでず! ぢびぢゃんのかわりに! でい゙ぶをどっがーんぢでね゙!」 子れいむの金切り声よりも、もっと大きな声でありますように。声をかぎりに親れいむ は叫ぶ。二匹からだいぶ離れた場所が爆発した直後、子れいむは跡形もなく吹き飛んだ。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙……ゆっくりしたけっかがこれだよ……」 不意に、親れいむの正面の壁が開いた。壁の向こうはれいむのいる部屋と全く同じで、 床に格子の模様が描かれ、どれも黒く焦げている。そして、いくつかの格子にはボロクズ になっても見間違えるはずもない、黒い煤けたとんがり帽子の残骸と、つぶあんだったゴ ミが飛び散っていた。 「ば、ばでぃざあ゙あ゙あ゙?! ゆっくりしていってね!? ゆっくりしていってね?!」 答える者は誰もいない。朝まではみんな仲良くゆっくりしていたれいむの家族は、今や 一匹残らず物言わぬゴミ。あんよの動かないれいむが一匹、家族の残骸を見つめていた。 「おみずざんはゆっくりでぎないよ! がぼっ、やべでね゙! ゆっくりじでね!」 壁の穴から勢いよく流れこむ水が、床にこびりついたしあわせ家族を押し流し、排水口 に消えていく。奇麗に流れたあとは、爆煙とあんこで汚れた床も元通り。遊技場にゆっく り一家がいたことを示す物は、スコア表だけだった。 れいむ:1 まりさ:0 [1P WIN] 森に魚を求める とか書きました。 09/07/20 書き直し このSSに感想を付ける
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はじめてのゆっくりSS ゆっくりよめないね! ある所に変わったゆっくり魔理沙が居ました。ですが、見た目も大きさもも全く同じです。 その子はたった一つだけ変わったところがありました。そのおかげでいつも独りぼっち。 そのせいでゆっくりすることができませんでした ですがその子は信じていました。いつか何処かゆっくりできる場所があると ―――とある森の中 「おーーいそっちに居るかーー?」 「いやーー全然いないな」 二人の男が大きな籠を背負い人里近くの林を歩いている。 「粗方ここ等辺のゆっくりを取りつくしてしまったのかね?やっぱり山狩りが効いたのかなぁ」 「まぁそうらしいな。いずれ増えるとは言え、居て欲しくもない時にたくさん居やがる癖に こういう時に限って居ないとはな…冬になる前にできるだけ捕まえて宵越しの銭を稼ぎたいってのによ」 2人の男がため息をついてると何処からともなくか細い声が聞えてきた 「むきゅー!むきゅー!ゆっくりしんでね!」 「おい…この声」 「間違いない…ゆっくりパチュリーだ。今日はツイてるぜ」 2人の男は顔見合せると互いに頷き静かにそこへ近づいた。そして物陰から声のする方を覗くと意外な光景が目に入 「むきゅー!むきゅうー!偽ものはゆっくりはやくしね!」 ゆっくりパチュリーがゆっくり魔理沙に圧し掛かり、ゆっくり魔理沙が押しつぶされよう・・・・・と言う風には見えず、2匹でじゃれあってるようにしか見えない。 しかしゆっくり魔理沙の方はかなり衰弱してるらしく、涙とその他体液でグチョグチョになりながらも必死に逃げようともがいている ゆっくり種の中で最弱であるゆっくりパチュリーにゆっくり魔理沙がゆっくり苛められているという何ともきみょんな光景が繰り広げられていた。 「や゛あ゛あ゛ぁー!おあちゅりー!お゛れ゛ま゛り゛さ゛いじめないでだぜー!」 「おれまりさはゆっくりしね」 男達が驚いたのはその光景でなく別の事だった。男たちは茫然と互いを見るとすぐさま我に帰り動きだした ガボッ! 「む…むきゅ…む…」 ゆっくりパチュリーの顔面に小石がのめり込みゆっくりパチュリーあっさり息絶えた ゆっくり魔理沙は突然の事に呆然としたが我に返り、目の前に突然現れた男達に弱弱しくか細い声でこう言った 「おにいさんたちはゆっくりできる人だぜ?」 2人の男は満面の笑みを浮かべて口を揃えてこう言った 「「ああ!できるとも」」 「やっと…おれ…ゆ…っくりできる…ぜ」 と言うとそのまま寝息を立て始めた 一人の男ゆっくり魔理沙を大事に抱えると二人は幻想郷の外れにある竹林へと向かった .............. .......... ...... ... . 一面にお花畑が広がっている。心地よい風に乗って花の香りが漂い、その中を蝶が舞う平和な光景が広がっている そのお花畑の中に洞の空いた切り株が一つ。そこにゆっくり魔理沙が住んでいた。 物心ついた時からずっと一人ではあったが幸いにも食料とゆっくりする場所には困ることはなかった。 しかし一緒にゆっくりする相手が居なかった。ゆっくりは一部を除きを生涯の大半をゆっくりする相手と過ごす 「おれまりさもだれかとゆっくりしたいぜ!」 顔は笑っていてもどこか悲しげに呟いた。 黄昏ているとどこからともなく賑やかな声が聞こえてきた 「ゆっくりできるね!」 「ちーんぽっ!」 「むきゅう!」 ゆっくり魔理沙が近づいて見ると3匹のゆっくりが蝶をおっかけて遊んでいた。ゆっくり魔理沙にとっては初めて見る同種だった。 嬉しく思いつつも今まで孤独だったゆっくり魔理沙にはどう声をかけ良いかわからなかった 「だれかゆっくりしてるよ!」 ゆっくり霊夢が言うと他の2匹も気づいて3匹はゆっくり魔理沙の元にまる 「いっしょにゆっくりしようね!」 「ちーんぽっぽ!」 「むきゅ!」 「おれまりさもいっしょにゆっくりするぜ!」 始めて声をかけられたゆっくり魔理沙は大きな声でと叫んだ…が その次の瞬間騒いでいた3匹が急に黙りこくり、冷たい視線を投げかけた 「どうしたんだぜ?」 「こいつまりさじゃないよ」 「むきゅ!まりさはおれなんていわないよ!」 「おれまりさだぜ!」 何度も自分はゆっくり魔理沙と訴えるが3匹は冷たい言葉を浴びせかけて否定する 「きもわちるいからゆっくりどっかいってね!」 「ゆっくりさわらないでね!」 悲しくなってゆっくり魔理沙は泣き出してしまった 「い゛っし゛ょて゛ぃゆ゛っぐでぃさ゛せ゛て゛よぉぉぉぉぉッ!!」 3匹は泣き叫ぶゆっくり魔理沙に困りはて相談し、そして霊夢が言った 「ゆっくりいうこときたらいっしょにゆっくりしてあげるよ!!」 「ほんと?ゆっくりきくぜ!!」 4匹は草原の開けた場所に出るとゆっくり魔理沙が中央に立ち、他の3匹それを取り囲むよう立った 「どうすればいいだぜ?」 そしてゆっくり霊夢が口を開いた 「ゆっくりけられてね!!」 そういうとゆっくり霊夢はゆっくり魔理沙にとびかかり弾き飛ばした 「だぜぜぜぜ!」 ゆっくり魔理沙は奇声を上げながらロケットの様に一直線に吹っ飛びながらゆっくりパチュリーの場所へ転がる 「ゆっくりとんでね!」 ゆっくりパチュリーが弾くと今度はボールの様に跳ねながらゆっくり妖夢の方へ転がる 「ちーんぽっ!」 ゆっくり妖夢は上空へと跳ね飛ばす こうしてしばらく間3匹の間を何度も何度も弾かれ転がされた。 そのせいで地面の砂利で表皮が傷つき顔の各所から餡が滲みだしている。顔は餡と泥にまみれて真っ黒になってしまった 「ゆっくりあきたね!」 「むきゅ!」 「ちんーぽっ!」 そう言うと3匹はゆっくり魔理沙を蹴るのを止めどこかへ去ろうとした。 「ま゛って゛ぇぇぇぇ!お゛れ゛も゛い゛っし゛ょに゛ゆ゛っく゛て゛ぃし゛て゛った゛せ゛ぇぇぇぇ!」 とゆっくり魔理沙が叫ぶと 「きもちわるいからゆっくりしね!」 というとどこかへ走り去ってしまった。 .............. .......... ...... ... . 「ゆっ!」 眼をうっすら開けるとそこには暖かな夕日の日差しが飛び込んできた。 眩しく一度目を閉じたがおかげで意識が覚醒した 「あらお目覚めかしら?」 ゆっくり魔理沙が声をする方を向くと銀髪の白衣を着た女性が座椅子に座りながらこちらを見ていた 「おねえさん…ここでゆっくりできるだぜ?」 「ええ…勿論よ。あなたは今弱っているからここでしばらくゆっくりしていきなさい。ご飯も持ってくるから少し待ってなさい」 「ゆっくり待つだぜ!」 ―――永遠亭 「まさか本当に実在してたなんて…」 2人の男は幻想郷のゆっくり研究の権威である八意永琳の元にゆっくり魔理沙を連れてきていた 「ゆっくり俺魔理沙…とある学者がその存在を何十年も前から指摘しながらも、証明できず周囲から『新参乙!』『俄かはカエレ!』 との批判を浴びて学会を追われ失意のうちに死んだが…最期までその存在を死の床で唱え続けたと言われる伝説の種…」 「はい俺たちも初めて見た時は目と耳を疑いましたよ!」 「いやぁツチノコ発見どころの騒ぎじゃないでしょうねぇ。あ…ツチノコはもう発見されてたな」 色めき立つ3人を横目にポカンとした表情でその様子を見る鈴仙と薄笑いを浮かべながらその様子を見ているてゐ 「全くあのどこにでもいそうな饅頭のどこが凄いのか理解に苦しむわ」 「鰯の頭も信心からウサ」 「何を言ってるの鈴仙!私たちは今歴史の目撃者なのよ!いい?この事が幻想郷の歴史さえ揺るがしかねないの!!わかる!?」 「は・・・はぁ。そもそもゆっくりってつい最近出現し始めたんですよね?刻む歴史なんて…」 「アナタ?後で新薬の実験台になりたい?」 「ひッ…ひぃーーーー!なんでもありません!」 続く? ゆっくり俺魔理沙 見た目・大きさ・生態全ては原種と変わらない突然変異種。一人称におれと語尾にだぜを使う点で区別できる。 他のゆっくりからは何故か嫌われており、ゆっくり魔理沙である事を否定されると「おれまりさだぜ!」と言うので余計嫌われるという 希少性ゆえにその価値だけは高いが滅多に見つかることはない 参考:どういう訳か愛されてるようです。アリガトね! (注:愛でWIKI作品) http //www33.atwiki.jp/slowlove/pages/28.html
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カマキリさんの卵でゆっくりするよ!! 31KB 虐待 悲劇 愛護 妊娠 ツガイ 都会 現代 初投稿です 『カマキリさんの卵でゆっくりするよ!!』 河原を埋め尽くすススキの黄金色が秋の深まりを感じさせる。 思わず身震いしそうな冷たい風が辺り一面を凪ぎ、ススキの茎に付いているカマキリの卵が揺れ、冬の訪れが近い事を知らせた。 「平和だなあ……」 もう時間的にも夕映えといってもいいだろうその景色を眺めながら、私はかなり遅めの昼食をとっていた。 例年通りこの時期は仕事が忙しく、休日であるにも関わらず先程までサービス出勤していた私はどこにでもいる一平社員だ。 もう少しでキリのいい所だからと粘った結果、ついついこんな時間になってしまった。 やれやれ、午前中だけのつもりだったのにな…。 もう遊びに行くには遅いしビデオでも借りて帰るかなー。 そんな事を考えつつ腰を上げようとしたその時、 「ゆぴ~…ゆぴ~…」 ……おや? どこからか、間の抜けたイビキが聞こえてくる。 これは…どこからだろう…? 「ゆ~…もうこんなにだべれないよぉ…む~にゃむにゃ…」 橋のある方向から寝言が聞こえてくる。 近くに行くと橋の下に大きいダンボールがあり、その中に毛布に包まれたれいむが一匹。 野良にしてはきれいな方だが飼いにしては汚れている。 リボンに『ゲン』と油性マジックで書かれたビール瓶の王冠がついているが勿論ちゃんとした飼いバッチではない。 誰かの悪戯か、れいむが飼いバッジのつもりでつけているのか。 額からは茎が生えそこにはまだ球体が5つ付いていた。 まだ口や目すら形成されていない未熟児以前の蕾の状態だ。 「ゆぴ~…あかちゃんたち、いっぱいあまあまたべてね…」 音を立てずに寄ったのでれいむは私に気付いていない。 う~む、これは…。 私は起こさないようゆっくりそこから離れると草むらに向かった。 「よし、大量大量」 私の手にはカマキリの卵が5つ。 れいむの茎に付いている蕾と同じ数だ。 鞄から文具入れを探すと…あったあった。 瞬間接着剤を取り出すとれいむの元へゆっくりと戻り、気付かれないようにそっと優しく蕾の1つをもぎ取った。 ぴくっ! 手の中の蕾が少し震える。 さすがにまだ意識が生まれている筈も無いだろうが、それでも本能だろうか。 自らの命の危機を察知し懸命に動こうともがく。 迫りくる死から逃れる為に。 母親に異常事態が発生した事を知らせる為に。 しかし物音一つ立てず行われている我が子の略奪にお母さんは気付かず、相変わらず夢の中。 「ゆ~…ゆ~…あかちゃんたちはほんとうにわんぱくさんだね……ゆふふ…」 私は細心の注意を払い次々と蕾を採集していく。 ぴくっ! ぴくぴくっ! 私の掌には5つの蕾。 次に接着剤とカマキリの卵を手に取ると本来の蕾があった箇所にそれぞれ卵をくっ付けていった。 母れいむに気付かれず全ての作業を終え私は立ち上がると額の汗を拭った。 「ふーっ、終わった終わった」 つい吐き出してしまったその一言に反応し、それまで眠っていたれいむがハッと飛び起きる。 「…ゆゆっ!?」 おっと、しまった。 気付かれず立ち去るつもりだったのだが。 「ゆっ!おにいさんはだれ!?れいむはおるすばんをしてるんだよ!ゆっくりしないででていってね!!ぷくぅぅ!」 れいむは不安と恐怖で軽いパニック症状になりながら叫びたてる。 無理も無い。寝ていると突如目の前に不審なお兄さんが立って自分の事を見ていたのだ。 「ああ、ゴメンネ!れいむの寝顔が余りにも可愛くてお兄さんつい魅入っちゃったんだよ。ゆっくりさせてくれてありがとうね!」 「ゆ、ゆゆっ!?ゆっ、ゆっくりありがとう!」 悪意の無い私の笑顔にまだ多少警戒しながらもぎこちない笑顔で返すれいむ。 と、本能で母親の声と分かったのか右手の中の蕾ゆ5匹がピクピクと反応する。 私はれいむに見えないように両手を後ろに回し合わせると蕾を思いきり潰し捏ね繰り回した。 意思も何もない蕾は抵抗らしい抵抗すら出来ず、姉妹仲良く1つの餡団子と化す。 「ゆっ!?おにいさんなにしてるの?」 後ろ手に何かもぞもぞしている私を不審に思った母れいむが尋ねる。 下手に隠したら警戒され、気付かれるかもしれない。 キョトンとした表情のれいむに両手を広げ、餡団子を差し出す。 飾りはおろか顔のパーツすら出来上がっていないので、これが元は我が子だった等とは夢にも思わないだろう。 「ゆっ!?おにいさんどうしたの?へんなおかおさんしてるよ!?このおだんごさんどうしたの!?」 いけないいけない、我慢できず表情が歪んでいたらしい。 「…いや、なんでもないよ。ああ、それとこれはね。お兄さんをゆっくりさせてくれたれいむにお礼を用意してたんだ。とってもあまあまな物だよ!」 「ゆ~ん!あまあまさん!」 「ほら、美味しそうなお団子さんだよ!れいむもうすぐお母さんになるんだから栄養つけなくちゃね!」 「ゆゆっ!おにいさんほんとうにこのおだんごさんもらっていいの!?ゆっくりありがとう!れいむおちびちゃんのためにむ~しゃむ~しゃするよ!」 「ははっ、どうぞどうぞ。遠慮せずむしゃむしゃしてね!」 「ゆふ~ん♪おいしそうなおだんごさんだよぅ~む~しゃ!む~しゃ…!ゆ!ゆゆっ!!とってもあまあまだよー!しあわせぇ~♪♪」 「喜んでもらえたようでお兄さんもとっても満足だよ!それじゃ俺は帰るけどれいむはゆっくりしていってね!」 「ありがとうおにいさん!またゆっくりしていってね!」 親切なお兄さんが帰って暫く経ち辺りが暗くなった頃、れいむの番のまりさが2人の人間さん達と一緒に帰ってきた。 人間さんの2輪すぃーの籠には今日の収穫物が溢れんばかりに入っている。 どうやら今日も大漁のようだ。 荷物を降ろすと一人はすぃ~に乗ってどこかに行ってしまった。 れいむの姿を認めると、まりさは抱えられていた人間さんの腕からするりと飛び降り、愛するれいむの元へ駆け寄った。 「れいむただいま~!ゆっくりおとなしくしてた?」 「ゆ~ん♪おかえりまりさぁ~!れいむあかちゃん達と一緒にゆっくりしてたよ~」 そんな仲睦まじい2匹の元へ、れいむが留守番していたダンボール本来の住人である男がのっそりとやってきた。 初老の域に入りかけているこの男は皆からゲンさんと呼ばれているこの橋の下に住む、いわゆる浮浪者だ。 「おう、留守番ありがとうよ、れい…」 ゲンさんの言葉が止まる。 その視線はれいむの頭上…夕方お兄さんが蕾ゆと入れ替えたカマキリの卵鞘。 そんなゲンさんに釣られてまりさもその視線の先に目を延ばすと…。 「ゆゆゆううぅっ!!?れいむ!あかちゃんおおきくなってるのぜ!?」 「ゆゆっ!!?ほんとうだ!!あかちゃんたちすごいせいちょうしちゃってるよぉ~♪」 お兄さんが交換した卵鞘は元々付いてた蕾の2倍近くの大きさだったのだ。 しかし2匹は蕾がカマキリの卵と変わってるのにも気付かず、ゆゆ~ん、あかちゃん育ってうれしいよぉ♪と大喜びだ。 「げんさん!」 「……えっ!?ど、どうかしたのか、まりさ!?」 呆然としていたゲンさんはまりさの呼びかけにハッと我に返る。 「まりさたち、ちょっとはやいけどここをでておうちでふゆごもりするよ!おじさんたちのおかげでゆっくりしたごはんさんもいっぱいあつまったよ!」 「えええっ!?」 町の野良ゆは基本的に冬篭りはしない。野生と違い日々の食料も少なく冬になっても残飯がある町で冬篭りをする必要も余裕も無いからだ。 だが、このまりさ達は野良ゆにしては非常に恵まれていていた。 今日までゲンさん達の空き缶回収等を手伝う事によってバイト代として日々残飯の余りを分けて貰い、今から冬篭りをしても十分な位の蓄えをしていたのだ。 まあ野良というか半分ゲンさんの飼いゆっくりみたいなものなので普通の野良ゆと比べたら当たり前なのかもしれない。 まりさが言うにはこの成長速度だともうそろそろ赤ちゃんが生まれてしまうかもしれない。 本当はもう少しゲンさんの近くでゆっくりと食料を集める予定だったのだが、大事を考え今から巣に戻り篭る方が良かろうという判断をしたのだ。 「あー……いや、うん。わかった…そういう事じゃ仕方ねえな。何かあったらすぐ戻ってくんだぞ?」 「ゆ!ゆっくりわかったよ!はるさんになったらまりさとれいむのかわいいあかちゃんたちをつれてくるね!」 「ゆぅ~!とってもかわいいあかちゃんにそだてるよ!」 ゲンさんは物凄く複雑そうな表情をしながら頷くと今日の分のバイト代として収穫した弁当の残飯をビニール袋に大目に入れ、おまけに保存の利きそうなお菓子を渡し2匹を見送った。 「「げんさん、ゆっくりさようなら~!またゆっくりしようねぇ~~!!」」 「ゲンさんあいつらどうしちゃったの?途中ですれ違ったけど」 自転車を止めに行っていた相方が戻ってきてゲンさんに話しかけてきた。 「ああ、ゴロウか。その様子だと暗くてあいつの頭のアレ見えなかったか。まったくひでえ事する奴がいたもんだぜ!」 「は?」 「頭の赤ん坊引き千切ってカマキリの卵くっ付けてやがんだよ!」 「はあ!!?」 「それでアイツら…ゆっくりだから気付きもしなくてよ。大きくなった赤ちゃんの為に今から篭るんだとさ」 「なんでゲンさんあいつらに知らせてやんなかったの?」 「……いやあ、あいつらの幸せそうな顔見てるとつい言い出しにくくてよぉ」 「でも、そのうち気付くべ?」 「だろうなあ。でももう赤ん坊いねえんだし無理にメシを貯め込む事もねえだろ。今まで無理して働いてきたんだから暫くゆっくり休ませてやろうと思ってな」 それに今、説明してもカマキリの卵を赤ちゃんだと信じている2匹が納得するとは思えなかった。 そのうち、中々生まれて来ない赤ん坊を不信がるかもしれない。 春になり卵が孵化した時に全てに気付くだろうが、春の陽気が雪と一緒にまりさたちの悲しみも溶かしてくれるに違いない。 なぁに、今回は駄目だったが来年また新しい家族を作ればいいじゃないか。 いくら嘆き悲しんだところでもう失われたモノは戻ってこないのだから。 「それにしても…一体どこのどいつだ。俺のペットに手を出しやがったクソは」 ゲンさんはこの辺の浮浪者のリーダーで、元々土方で働いてた事もあり腕っ節もかなり強い。 以前にもゲンさんの飼っていたゆっくりに手を出そうとした虐待鬼威惨を仲間と共に追い掛け回して囲み…いや、それは今どうでもいい話だ。 そんな訳でこの近辺の虐待癖を持つ人間はゲンさんお手製のバッジを付けているゆっくりの番には手を出さない筈なのだが。 後日、ゲンさん達は犯人を調査したが付近のゆ虐趣味の人間は全員アリバイもあり、目撃情報すら無かったので結局手掛かりすら掴める事は出来なかった。 それもその筈、お兄さんは普段その時間帯に立ち寄る事もなければ住まいは2つ隣の町なのでこの付近の住人でもない。 更に言うとゲンさんは根本的に間違っていたのだ。 まりさとれいむは夢を見ていた。 遠い遠いある冬の1日。 両親が若い頃苦労して見つけた薄暗い洞窟の中、家族全員寄り添うように集っていた。 かっこいいお父さんまりさといつも優しいお母さんれいむ。 それに10匹ほどの子ゆっくりたち。 晩夏に生まれ、ようやく赤ちゃんを卒業しようやく子ゆになったばかりでまだ完全に赤ちゃん言葉の抜け切っていない一番可愛い頃合だ。 「ゆっゆ~♪ゆっくりそだってね~♪」 「「ゆっゆっゆ~♪ゆゆっゆ♪ゆーゆゆ~んっ♪」」 お母さんれいむの歌声が響き、それに続くように甘えん坊でかわいいまりさの妹れいむ達が続く。 「ゆゆ~ん。おかあさんとおちびちゃんたちのおうたはとってもゆっくりできるね!」 一方こちらでは、 「ゆっゆ!まりしゃははやいね!まけないよ!」 「まりしゃだってまけないよ!」 「ゆっゆっゆーーん!」 「ゆやーん!ころんじゃっだよー!いじゃいよー!」 「ゆゆう!まりちゃなかないで!ぺ~ろぺ~ろすりゅよ!」 わんぱくなまりさ達は今日も仲良く洞窟を運動場においかけっこ。 まりさは必死で走りながらチラリと横目で隅の従兄弟れいむを見る。 れいむはもうねむねむの妹をむ~にゃむ~にゃさせる為、小声で子守唄を歌っている所だ。 「ゆっゆっゆ~ん♪はるさんになったらまたいっしょおはなさんとろうね~♪」 「ゆぅ…ゆぅ…おねちゃ…ゆっくち…」 れいむは父まりさの妹れいむの子供だったが1ヶ月前、巣がれみりゃに襲われて妹と2匹だけ生き残ったのだ。 父まりさは妹の死を悲しむと孤児となった2匹を引き取った。 幸い今年は豊漁でごはんさんもたくさん集まっていたのもあり、母れいむも快く引き受けた。 従兄弟家族とは時々遊んでいたから面識もあるので、姉妹達も大喜びだ。 これから長い冬篭りの中で遊び相手は多いに越した事はない。 それに、何度か聞いた事があるが従兄弟れいむのお歌はとっても上手で小さいながらもお母さんと同じくらいゆっくり出来ると評判だったのだ。 まりさは従兄弟れいむの事が大好きだった。 いつか一人立ちできた時には従兄弟れいむに告白するつもりだ。 まりさと一緒にずっとずっとゆっくりしようね!と…。 そんな事を考えつつ従兄弟れいむの方を何度もチラチラと見ていると、不意にれいむと目が合ってしまった。 少し固まってしまうまりさに、れいむはニコッと優しく微笑み返してくれた! 瞬間、まりさの中の餡子が沸騰してしまうかのような感覚に襲われた。 「ゆっゆっゆ!?」 「ゆあ~!まりしゃとってもはやいよ!」 「しょごいよ~!」 そうだ!もっともっと早くぴょんぴょん出来て兄弟の誰よりも狩が上手にならなきゃ! あんなに可愛くてお歌の上手なれいむと一緒にゆっくりするには、それに見合うようにならなきゃ! 気が付くと妹を寝かしつけた従兄弟れいむはお母さんに手招きされ、まりさの妹達と仲良くお歌を歌っていた。 お父さんまりさは、そんなまりさ達の様子を穏やかな笑顔で眺めながらとってもゆっくりした幸せを噛み締める。 貯蔵庫には父まりさが苦労して集めたいもむしさんや木の実さんが天井に届く程高く積まれている。 洞窟さんの中は快適な室温を保ってくれており、ジメジメする事も無い。 それに何より可愛い子供達。 「ゆふ~ん。まりさはとってもしあわせー!だよ~」 だが、虐待される為に存在するゆっくりのしあわせー!など薄紙を破る程容易く壊される。 お母さん達の歌をかき消すかのように、それは聞こえてきた。 「おい、ココだココ!」 「うわ、こんなんで隠してるつもりなの?バレバレじゃん!やっぱこいつら頭悪いな」 巣の外から響いてくる人間の声。 一体なんだろう…? 人間さんを知らない姉妹はみんな顔をあわせて首を(というか顔だが)傾げる。 ただ、お父さんまりさとお母さんれいむだけが青ざめ、金縛りにあったように動けないでいる。 気になった一匹の妹れいむが声のする塞がれた入り口さんに歩いていき、それに気付いたお父さんまりさが、 「おっ、おちびちゃん!!そっちにいっちゃあぶないよ!おとうさんたちのところへもどってきてね!!!」 その叫び声に妹れいむが振り向いた次の瞬間、あんなにも強固に入り口さんを塞いだけっかいを、いとも簡単に壊したシャベルの先がその勢いのまま妹れいむを突き潰した。 弾け飛んだ餡子が一家の頭上に降り注ぎ、可愛い可愛いおめめがお父さんの頬に張り付く。 「「「ゆ”っ……!!!?」」」 余りの出来事に固まる一家を2人の侵入者が一瞥する。 「おーー、こん中、結構広いじゃん」 「だべ?それに結構いるなあ、当たりじゃん」 侵入者はどちらも小学生位の子供だったが、それでもあの大きいお父さんの何倍も大きかった。 「「ゆ゛っゆ゛っ」」 「「「ゆ゛あああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」 「ばりざの「れいぶの「「おぢびじゃんがああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」」 「れいぶのいもうちょがあああああああああああああああ!!!」 「ばりざのおねえじゃんがああああああああああっ!!!!!」 「おっ、なんか叫び始めたべー。そらそうと、何匹いるの?」 「んー、赤いのと黒いの一匹づつでいいや」 「そんならそれ以外はやんべー」 ニタニタ笑みを浮かべながら、恐慌に陥っている一家に近づいてくる2つの巨大な黒い影。 「ばりざのおぢびじゃんかえぜええええええぇぇぇぇ!!!!!」 勇敢にも少年に向かってぷくーしながら突っ込んでくるお父さんまりさだが、あっさりと頭を捕まれると、そのままぐぐっと容赦なく全力で地面に押し付けられる。 「ゆぎにゅぎゅぎゃあああああああああぁぁぁ!!!!」 圧力で中の餡子が口やらあにゃるからブピピッっという汚い音を出して漏れ出す。 「「おどうぢゃああああんんん!!!!!」」 「ばりざあああああーーーーーっ!!!!!!」 家族の悲痛な叫びに目玉から餡子の涙を流しつつ父まりさは必死の形相で地獄を耐える。叫ぶ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!お゛どうぢゃんがあああ!!みんだぼまぼるぼおおおおお!!!!」 「うひょっ!こいつら間抜けな顔して超必死!!まじでー?まもるのーーー?」 ゆっくり家族の阿鼻叫喚の地獄に超ゴキゲンな鬼委三郎君(10) ゴキゲン過ぎて体重を一気にのせたせいで父まりさを襲った更なる圧力は餡子が目玉を吹き飛ばし外皮を破き、皮一枚だけのゆっくりだったモノと変えた。 「ゆごぴゅっ!!?」 「「ゆんやあああああ!!!!!おどどど!!!!!」 「「おどじゃんがあああああああ!!!!!」」 「「よぐぼおどうぢゃんぼおぉーーー!!」」 勇敢な子まりさ2匹が顔を真っ赤にして父を潰した少年にぺちぺちと体当たりする。 「うひひ!超いてえ!反撃反撃!」 バチュン! バチュン! 「ゆべっ!!」 「ちべっ!!」 「ゆあーーーんん!!やめてねやめてね!!!」 「「おねいもうちょちゃーーーん!!!」」 それを見たスコップを持った少年が 「あ、もったいね。どうせなら食えばいいのに」 「えー、でもこいつら野良だから汚くね?」 この少年は加工所産の清潔なゆっくりしか食べた事がないのだ。 「ばっか。野良と野生は違うんだよ。都会のきったねえ空気に汚れたドブ饅頭と比べてここいらのは綺麗なもんだべ」 そう答えるシャベルを持った少年は地元民。 正月休みに田舎に遊びに来た従兄弟の少年に頼まれてゆっくり狩り遊びを教えていたのだ。 「見てみろ」 言うと、少年のすぐそばで呑気に眠りこけている従兄弟れいむの妹れいむを捕まえた。 「ゆゆっ?」 こんな大騒ぎでも起きなかったがさすがに身体を掴まれ目が覚めたようだ。 「ゆああああ!!れいむのいもうちょ!!」 「ゆううっ!まつんだじぇ!いまいったらあぶないのじぇ!!」 「おちびちゃんゆっくりいっちゃだめ!!」 「はなちてえぇーーー!!」 そんなやり取りも寝ぼけた頭には届かず、少年に持ち上げられ 「ゆわーい!おそらをとんでるみたい!!」 「「ゆゆーーーっいいなーーーー」」 ガブリッ!ペッ! 「ゆぎゃあああああ!!!れいみゅのあんよぎゃあああ!!!」 「「「ゆあああああああぁぁぁぁん!!!」」 「「もうやめちぇええええ!!!!」」 「ほら、こうやって下の皮を噛み千切ってな・・・ずずずーーーっ!!うはっ!うんめぇええ!!」 「ゆぎひぃぃぃ!!れいみゅのあんきょをしゅわにゃいりぇぇぇぇ……っ!!! 「へーーー!そんなに美味いの。よし、食ってみようかな!」 三郎君がジリジリと残りの家族に近寄り、シャベルの少年も吸い尽くした子れいむの皮をポイッと投げ捨て後ろに続く。 れいむの可愛い可愛い妹はペラペラの皮に成り果て、洞窟の地面にベチャリと汚い音を立てて張り付いた。 「…ゅっ………ゆああああああああ!!!!れいみゅのいもうちょをかえちぇええええ!!!ぷっきゅうう!!!」 「ゆううう!!まりちゃがれいみゅをまもりゅよ!!!ぷっくううううう!!!」 極悪非道な少年達に向かってゆん生最恐のぷくぅー!をかます2匹。 「ゆああああ!!まりさもれいむもあぶないよおおお!!!!?のこりのおちびちゃんたちはおかあさんのおくちさんにはいってね!!」 「ゆーーー!!!」 「ゆっくちおくちさんにはいるよぉ!!!」 「きょわいよぉぉぉ!!!」 「ゆっくち!ゆっくち!!!」 「ゆふふふ!!おきゃあしゃんのおくちにはいったからもうあんちんなのじぇ!!」 ぷくぅをしているまりさとれいむ以外の子ゆを口の中に入れると守るように2匹の前に立ち、母れいむは渾身の力を込めてぷくぅーーー!!してみせた。 お父さんとお母さんのぷくーは凄いのだ。 長老ぱちゅりーからも『むきゅ!!ものすごいぷくーだわ!きっとうさぎさんもおどろいてにげだすにちがいないわ!』『ゆ!うさぎさんも!!もうこのもりのなかではてきなしね!』『ゆーっゆっゆ!!(笑い声)』というお墨付きだ。 最も、その父まりさのぷくーもまったく効果は無かった訳なのだが。 「ひんへんはんはほっほほへいむはひのおふひはらへへっへへ!ふふぅーーー!!!」 「はぁ?口の中に入れて喋ってるから何言ってんのかわかんねーよ」 ヘラヘラと笑いながら、母れいむの口の上、人間で言えば鼻の部分に爪をかけるとバリバリと掻き毟り始めた。 「……っ!!!びゅ!!!!!……!!!!」 叫び声をあげてしまえば口が開き中の子が飛び出てしまう。 れいむは必死に叫び声をあげない様、頑張って頑張って頑張りぬいた結果、10秒後に皮を剥がされ餡子をほじられまた一匹一匹と子ゆが発掘されてゆく。 「ゆふーー!?おそらをとんで…ゆぎゃあああああ!!!!」 「おねえちゃ…ゆ!?おしょりゃを…ゆ゛んやはあああ!!!」 山道を駆け回りすっかりお腹の空いていた少年達の食欲をまったく衰えを見せず、激痛と悔しさに涙を流す母れいむの眼前で次々と子ゆっくりを吸い殺し続け、ペラペラになった汚い皮袋を母れいむの頭に叩き付けていく。 そして口腔にいた子ゆ全てを平らげると 「ごっそさーん。んじゃこいつはもらっていくわー」 母れいむの後ろで必死にぷくぅー攻撃していたまりさとれいむを両手で掴み鼻歌を弾ませながらその場を後にする。 「…!!……っ!!!」 叫びたくとも口は破壊されたので声は出せず、追いかけたくとも致死量の餡子を掘り出されたので一歩も動けない。 母れいむは緩慢な死の中で少年達に無駄な怨念を延々とかけ続けた。 「ゆっ…!!」 そこでまりさは飛び跳ね、隣で毛布に包まれしあわせー!そうに眠る愛しい妻と赤ちゃん達の姿を見ると胸を(無いけど)撫で下ろす。 あの後、まりさとれいむは少年が親に隠して都会に持ち戻り、少しの間飼われていたのだがある日少年のお母さんに見つかり外に投げ捨てられたのだ。 まりさ達にとって幸運だったのはその場で潰されずに捨てられたのと、少年の母親に早く発見された事だろう。 もう少し遅れていたら、まりさ達に飽きていた少年に虐待され、生ごみとしてポリバケツに捨てられただろうから。 暫くして更に幸運な事にゲンさんに拾われ曲りなりとも人間の飼いゆとして今日まで生き延びてこれたのだ。 ゲンさんと出会わなければ、慣れない街の生活に適応する間もなく死んでいただろうし、こんな素敵なおうちも持つ事は無かっただろう。 まりさたちが冬篭り用に住んでいるここはゲンさん達のグループが自転車を止めている荒れた空き地に建っている使われていない古びた小さな物置だ。 人間が入るには狭すぎるし、人間さんもゲンさん達の縄張りなので近寄らないのだ。 時々ゆっくりが近くにやってくる事もあったが、けっかいを張って進入できない用にしている。 ここなら雨さんや雪さんの侵入も防げるし家屋ほどではないにしろ外より全然マシだ。 マシどころか、野良ゆにとって最高級のおうちだろう。 れいむもまりさも無計画に子作りした訳ではなかったのだ。 家族みんなで笑いながら仲良く冬篭りを…。 あの日、二人が果たせなかった夢が今、ようやくそこまで来ているのだ。 「いやあ、あの野良れいむは本当に可愛かったなあ!」 夜、暇だからとウチに遊びに来た友人が開口一番、いきなり叫んだ。 いつもの事なので適当に流す。 「なんで借りてきたDVDを俺の家で見るんだよ。帰って見ろよ」 「えーーーっ!?いいじゃん。どうせお前も暇なんだろ?一緒に見ようぜ!」 許可を取る間もなく居間のコタツに座るといきなり持参した弁当とビールを開け、レンタルしてきたDVDをセットし始めた。 タイトルは可愛いゆっくり大集合!とかそんなの。 「いや、お前と違ってそこまでゆっくり好きって訳じゃないし」 「ちぇっー!いいよ、そんじゃ帰ってゆっくり見るよ!」 俺が渋い顔を見せると渋々DVDを戻し、チャンネルを変える。 番組名は『ゆーぶつ奇想天外!』 「……まあ、いいけど。特に見たい番組ないし」 「おう!一緒に見ようぜ!」 で、TVを見ながら帰りに見つけたゆっくりの事を喋り始めた。 なんでも野良ゆっくりがにんっしんしていたらしい。 大自然と違い、町には比較的食べ物があるとはいえ、やはりそれでもこの時期に野良が子を作るのは自殺行為だ。 気温の低下により運動能力も低下するので食料集めが他の季節に比べ、やはり多少は困難になる上、室内にいる飼いゆならまだしも、屋外で暮らす野良ゆの場合、寒さと雪で極端に体力の無い赤ゆは死ぬ場合が多い。 よってこの時期にんっしんしたゆっくりは冬場に飢えと寒さで最悪、家族同士が共食いする可能性が高い。 愛で派のこの友人はほんの少し躊躇したが、心を鬼にして最悪の事態を避けるべく赤子を間引いたのだ。 「さすがに潰した赤ゆを親に見せた時は申し訳なくて泣きそうになっちゃってさ。うううっ。誤魔化すのが大変だったよ!」 言いながら思い出したのか涙ぐむ。 愛で派といっても、ゆっくりんピース程には極端に偏っていないし、感情に流されず間引きとか決断する意思とか個人的にいいとは思う。思うのが…。 「ほー、よく誤魔化せたな……いや、あいつらなら餡子脳だし大丈夫か」 「ひどい事言うなよお!野良にしてはいい子だったんだぜ?変なあまあま要求もしないし挨拶もきちんとしてくれてたし!」 「というか、なんで子供の死骸を食べさせたんだ?悪趣味だな」 「違うよお!そこら辺に捨てるのも可哀想だし、それなら実のお母さんの体内に還るのが一番かなって…」 「…えっ、埋葬じゃ駄目なの?」 「ああああ!!!気付かなかったああああ!!!」 「大体なんでカマキリの卵なんだよ。孵化したら気持ち悪いだろ」 「いやあ、そりゃ最初は驚くだろうけど、いいおやつになるだろ。カマキリは餡子なんか食わないしな!!」 叫ぶと、ふと台所の一画、透明なケースの中に視線を泳がせる。 中には成体のぱちゅりーとまりさが2匹とその子供が1匹。 物凄い形相で歯をぎりぎりと噛みながらこちらを睨みつけている。 まりさがゴツゴツと頭をケースに打ち付けてくるが、そんなもんで壊れるわけがない。 「あれ?お前のとこの飼いゆの家族、なんか数が減ってねえ?」 「ペットじゃなくてコンポストな。勝手に子供増やしてたから間引いた。で、朝から物凄い騒ぐし鬱陶しいから捨てようかと思ってるんだが」 「うおいっ!お前本当にひでえな!」 「言葉が通じるのにまったく言い付け守らないから仕方ないだろ」 俺はゆっくりを特に虐待したいとも思わんが特に愛でたいとも思わない。 正直どーでもいいと思いたい。が…それは兎も角、先程の友人の話の中で少し引っ掛かった所がある。 橋の下って大体浮浪者が住んでるもんだし、それに人間の文字が書いてある王冠のバッジか…。 野良にてはゲス度が高くないというのも、それなりに躾があったんじゃ…。 いや、目の前で今日の幸せに浸っている友人の気分を壊すのも可哀想なので考えるのはよそう。 どーでもいい筈だ。 「ゆうっ!?」 再びまりさは飛び起きた。 お外がなにやら騒がしい。 「火事だあーーー!」 「くそっ!間にあわねえ!!燃え広がるぞ!!」 「消防車はまだか!!?」 どうやら何処かで火事が起きているらしい。 「ゆゆっ!かじさんはゆっくりできないよ!!」 まりさはあわてて火さんが来ないように入り口のけっかいを補強する事にした。 「ゆゆ~?まりさ、どうしたの?」 「ゆっ!しんぱないよ!れいむはゆっくりねてていいよ!」 身重のれいむに下手に心配をかける必要はない。 「まりさがまもるよ!」 辺りの荷物を積み重ね次々と入り口を塞いでいく。 「ゆ!ここまでやればあんしんだね!ゆっくりできるよ!」 「おい!火の粉が飛んで燃え移ったぞ!」 「何い!?あそこで燃えてんのはなんだ!?」 「ああ、あの空き地の物置だろ。ありゃあもう使われてねえし、中にあるとしてもあの辺のホームレスの持ち物だろ。あの狭さじゃ人間なんて入れねえし」 「そっか。んじゃ、それより先にこっちの家の方をどうにかしねえとな!!」 「ゆきゅっ!?」 三度、まりさは飛び起きた。 変だ、暖かいよ?! いくらなんでも春さん来るの早すぎるよ! まだまりさたち赤ちゃん達にす~りす~りもぺ~ろぺ~ろもしてないよ。 赤ちゃん達のおかっけっこもしてないし、れいむのお歌も聞かせてないよ。 まりさ達、赤ちゃん達としあわせ~な冬篭りするから、春さんゆっくり来てね! ………いや、暖かいどころではない。 暑い。暑すぎる。 春さんどころか夏さんまで来ちゃったの!? ゆっくりしない季節さんだね!! 「はるさんなつさんいいかげんにするのぜ!ぷくぅーーー!!」 「ゆゆ!?まりさどうしたの!?」 「はるさんとなつさんがゆっくりしないでくるからぷくぅーしておこってるのぜ!」 「ゆゆゆっ!?ゆっくりしないはるさんとなつさんはいけないね!でもまりさなんででんきさんつけてるの?」 「ゆぅー?ここのおうちにでんきさんなんてないのぜ!?」 「ゆっ!?だってあかるいよ?」 「ゆゆぅー!?」 そして2匹は揃ってその光源に視線を向け… 「「ゆああああああああああ!!!!??」」 「どぼじでかじさんになってるのおおおおおぉぉ!!!!??」 「ゆっぐりできないいいいいいいいい!!!!!」 既に天井部分から火の粉が降り注ぎ始めていた。 「いっ!いそいでここからでるのぜ!!」 まりさ達は慌てて脱出しようとしたその先には先程高く積み上げたけっかいさんが。 「ゆわあああん!どぼちてけっかいさんおそとにだしてくれないのおおおお!!?」 「ゆっくりしてね!ゆっくりおわてないでねれいむ!まりさがゆっくりいそいでけっかいさんをけすのぜ!!」 「ゆああ!!れいむもゆっくりしないでてつだうよおお!!」 大急ぎで荷物を除けるまりさだが、火の粉さんはゆっくりしてくれる訳がない。 とうとう辺りに燃え広がり始めた。 「ゆああ!!まりしゃたちがあかちゃんたちとむ~しゃむ~しゃするはずのごはんさんたちがあああ!!!」 「ゆあああああん!!あづいよおおおおお!!!!!」 そんな騒ぎ立てるまりさのお帽子に火の粉さんが1つ降り注いだ。 「ゆゆ!!まりさのおぼうしがもえてるよおお!!」 「ゆっ!!???ゆっぎゃあああああああ!!!!」 慌てて転げ周り炎を消すが既に帽子の半分は燃え、まりさの金髪も見る影も無く、身体のあちこちに火傷も負ってしまった。 もう、虫の息といってもいいまりさだが、その目に飛び込んできたのは小さい頃から愛してきたれいむとその額から生えた二人の愛しいあかちゃんのついた茎。 「ゆあああああん!!ちにだぐないよおおおおおお!!だれかあがじゃんだげでもだすげてえええ!!」 「…ゆ…ゆっがあああああ!!!!!」 まりさは怒号を上げけっかいさんの山に突っ込む。 すると、それまでビクともしなかった山が少しずつ動いていくではないか。 身体のどこにそんな力が残っていたのか。 この世の神がまりさの最後の最後に哀れんで奇跡を与えてくれたというのだろうか。 そうなのだろう。神様は与えてくれたのだ。 愛する妻と愛してもいないカマキリの卵を守る為に。 「れいぶうぅぅ!!ごごがらぞどにでてえええええーーーーー!!!」 まりさの最後の力を振り絞った努力の結果、なんとかゆっくり1匹ギリギリ通れそうな隙間が出来ていた。 「で、でもまりさが!」 「ばりざのごどはほうっておくのぜ!どっどといくのぜ!!」 まりさの帽子や身体に火の粉が再び降りかかっている煙が燻っている。 このままではまた火達磨になるのも時間の問題だろう。 見れば辺り一面火の粉が降り注いでいる。 れいむにほとんどかからなかった事だけでも凄い奇跡なのだ。 「…あがじゃんを…たのむのぜ…」 もう、全ての力を使い果たしたのだろう。 まりさは糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちる。 「ゆ…!わかったよ、まりさ…!れいむはいくよ!」 止まることの無い涙を拭きもせず、れいむはまりさの命を代償に空いた隙間めがけて潜り込んだ。 「でっでれないいいい!!?」 「ゆあっ!?」 そう、まりさの作った隙間はなんとか通れそうな大きさだがギリギリ足りなかったのだ。 それでもなんとか出ようと必死でもがくれいむだが、本当にギリギリ足りないのでどうにもこうにもならない。 「ゆぎゃああ!か、からだがさけっ!さける!さけちゃうぅーーー!!」 まあ、本当に少し裂けている訳だが。 そうこうしている内に、額の先の茎の部分だけはどうにか外に出たのはいいものの、完全に挟まれてしまった。 「れいむ!?れいぶ!?どうしだの!でれだの!?」 「むり!ごれいじょうばむり!」 「ぞんなあああああぁぁ!!」 もうこれまでか。 そう、もうどうしようもないだろう。 後はこのまま、まりさもれいむも赤ちゃんも、火に巻かれて焼け死ぬしかないのだ。 「ゆっ!?あかちゃん!?」 そこでれいむは、ハッとして茎に視線を這わせる。 そうだ!赤ちゃんだけでも! 大きさ的にはいつ生まれてもおかしくないのだ。 自分達が死んでも赤ちゃんさえ生き残ってくれれば…! 幸い、まりさ達にはゲンさんという優しく心強い味方がいる。 物置の火事にはさすがに気付いてるだろうから、その内駆けつけてきてくれるだろう。 両親がいなくても、彼の保護が受けられれば生きていけるに違いない。 「ゆっゆ~♪ゆっゆ~♪ゆゆ♪ゆゆゆ~んっ♪」 「ゆゆっ!?」 突然のれいむの懐かしくも美しい歌声にまりさがはっと顔を上げる。 そして、まりさもれいむの意図に気付いた。 「ゆっゆ~♪あかちゃんゆっくりしないでうまれてきてね~♪」 「ゆう!まりさたちのあかちゃん、いそいでうまれてくるのぜ!」 れいむは迫りくる死に恐怖する事も無く赤ちゃんに語りかけ歌い続ける。 命を懸けて我が子を想うこの世で一番尊くも美しい歌声。 それに包まれ死ぬ自分は幸せな筈だ。 とうとう帽子の残り半分が発火し炎がr 「ゆぎゃああああああああ!!!!!!?????どぼちてれいぶのあがちゃんがらかまきりさんがうまれてぐるのおおぉぉ!!!!?」 「ゆっ…??………ゆゆはああああああああ!!!!???」 れいむの歌声に応えたのか単に火事のによる温度の上昇の為か。 まあ、理由は後者だろうが2匹の祈りに答え赤ちゃんはどんどんと孵化して来る。カマキリの。 「やめて!やめてね!かまきりさん!れいむのあかちゃんからでてこないでね!!」 「どっ、どゆことおおおお!!?なんでばりざだぢのあがじゃんがかまぎりざんんっ!!??」 「わがらないよおおおお!!???れいむのあかちゃんがボロボロになっていくよおおお!!!」 カマキリの卵鞘1つに卵は数百個含まれている。 れいむの茎にある卵鞘は5つなので、単純計算でも1000以上のカマキリの幼虫が一斉に孵化し、れいむの顔を這い回る。 「ゆべええええええ!!!??ぎぼじわるいよおおおおおおお!!!」 「ひっ!?ひぎゃわああああああああ!!!??あづあづあづあづうううううううぅぅっ!!!!!!ゆんやあああああああああ!!!!」 とうとうまりさの全身が炎に包まれ、さながらカマキリの赤ちゃん達を祝福する為の生きるキャンドルと化す。 そのまりさの炎はあっさりと入り口のけっかいさんに燃え移り、少しずつ少しずつれいむをあんよから焦がしていく。 「ひぃぃぃぃぃぎぁぁぁぁはぁぁぁぁぁっ!!!!!れいぶの!れいぶのあんよしゃんが!!!あぢゅい!あぢゅいよお!!」 まりさとは違い少−−−しずつ熱せられる事により、なかなか焦げるもなく焼ける事もなく、ぐつぐつと内部の餡子が沸騰するのを感じながらこの世の物とは思えぬ程の苦痛がれいむを襲い続ける。 「くうう゛ぅぅーーーーーーーがああぁぁぁーーーーーーはああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」 沸騰した餡子がゼラチンで出来た目玉を溶かしボトリと流れ落ち、眼窩、口腔、あにゃる、ぺにぺに、まんまん、身体の穴という穴から水蒸気が吹き出る。 そして、カマキリの最後の幼虫がようやく無事脱出した所で初めて、れいむの身体が炎に包まれたのだ。 「ゲンさん…」 「ああ…」 それから数時間後、すっかり焼け落ちた物置の前で呆然と立ち尽くす男がいた。 「もうどっちがどっちだがわかんねえけど…この炭の塊、あいつらだろうなぁ…」 ブルブルと固めた拳を振るわせる。 「くそっ!くそっ!よりにもよって今夜、火事なんて!なんてツイてねえんだ!そもそもどっかの誰かがあんな悪戯しなきゃ今夜もあいつらは俺ん所で寝てた筈なんだ!!」 そんなゲンさんの肩に仲間の一人がぽんと手を置き、慰めの言葉をかけてきた。 夜空を見上げると、2つの星が大きく輝いている。 まるで死んだゆっくりがお星様になったようだ、等と似合いもせず想うゲンさんだった。 カマキリのお兄さんは友人宅を離れ帰路に着いていた。 表面上はなるべく明るく振舞おうとしていたが、さっきまでやはり夕方、蕾ゆを殺した事に対して罪悪感を抱いていた。 が、酒の力もあり今では今日中に吹っ切ろうと決心していた。 「そうだよな!あのままじゃアイツら不幸になっちゃうもんな!そうそう、俺は凄くいい事をしたんだ!セイントか俺!」 夜空を見上げると、2つの星が大きく輝いている。 が、すぐに流れて消えた。 終わり トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る うっせえだまれ -- 2020-09-03 14 34 51 ↓×1の者です。 浮浪者がゆっくりにエサを与える行為は、いわば、 野良犬や鳩やカラスやゴキブリにエサを与えることと同じ。 つまり違法行為に当たる。 →幼虫カマキリは(恐らく)助からず、野良に餌付けする違法行為、近隣住民(虐待お兄さん)への恫喝·暴行、河川敷に無許可での建造(浮浪者ハウス)。 意外と善人がおらず、ハッピーエンドのない悲しいストーリーだと思った。 -- 2018-01-04 00 02 25 カマキリ・・・通常は春に産まれ、秋くらいまで産卵し、冬前に寿命が尽きる。 中には翌年1月まで生きる場合があるが、エサの確保が十分可能であり、ある程度気温が暖かいことが条件。 →幼虫でも越冬できそう!と思ったが、エサとなる小さい虫がいないため、恐らく全滅する。 -- 2018-01-03 23 43 24 浮浪者さらっとやばいこと言ってんじゃねーよwww -- 2017-05-21 15 34 12 ラストの二行良かった -- 2016-02-14 11 32 16 これは浮浪者も死ぬべきやったやろ -- 2014-07-20 01 33 13 いかんぞ、善良種に手を出すのはどうでもいいが他人の飼いゆに手を出してはいかんぞぉぉぉぉ! -- 2014-06-28 18 52 51 #128317;確かに -- 2014-06-27 16 51 00 浮浪者ごときが市や業者の集める資材をゴミ饅頭使って勝手に集めた挙句、饅頭を餌付けして更にちゃんと働いて生活しているゆ虐派の人たちを袋叩きにしたって?浮浪者死ねよ。人間版のゆっくりだろうよ -- 2014-04-21 00 50 50 火事になった時悲惨な孵化を見ずに終わってしまうのかとハラハラしたが無事生まれてホッとした ゆっくりした環境で期待に夢膨らませて出産しても良かったけど -- 2014-01-08 03 16 15 カマキリさんは全員脱出できたんだね、よかったよかった -- 2013-12-12 04 11 21 なんかやけにハイテンションなゆっくりの最期の展開に草生えるwww -- 2012-10-10 23 57 28 まむまむがまんまんって…一気に生々しくなってるよ -- 2012-05-26 22 45 02 このゆっくりいい奴等だったよな? お兄さんもはだしのゲンさんも良心で色々やってたから 複雑ですな まあもみもみしながら そろそろ寝ます(´ρ`)スピー -- 2012-05-25 01 01 41 げんさんのくだり要らなくね?あとなんかカマキリってグロイな・・・ -- 2011-12-01 04 40 53 ↓ちがうよー!おれさまはぎぜんのたいげんしゃたるせいっさいっおにいさんなんかじゃない、しんのせいぎたるひーろーおにいさんなんだよー! あくをくじきせかいにせいぎをしめす、せいんとなんだよー! いくらゆっくりできないくそどれいでも、そのていどのことぐらいわかってろよー! -- 2011-11-07 17 14 16 •お兄さんがげすっていってるひとがなんでここにいるのかわからないよー ↑制裁お兄さんなんだよーわかれよー -- 2011-11-06 04 57 46 あえて飼いゆっくりにする必要がないだろ。 オマケに一応善意の行動だから、誰に悪意を向けて良いかもわからずカタルシスがないよ。 -- 2011-07-11 20 27 36 カマキリのお兄さんのキャラが不愉快 自分の事を俺とか言ってる醜女を見ているようでキモい -- 2010-12-17 07 35 27 ざまあ -- 2010-12-08 15 56 52
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注意書き あまり虐待してません。 家にゆっくりが現れた に似たタイトルですが全然話のつながりはありません。 夜、家に帰ってくると、扉が半開きになっていた。 まさか、鍵をかけ忘れた?そんなバカな、鍵をかけ忘れてもドアを閉め忘れるバカはいまい。 まさか、泥棒?そんなバカな、泥棒だったらちゃんとドアぐらい閉めてる。 とりあえず自分は万が一のために、用心しながらドアを開けて中に入って行く、やっぱり俺の予想、読者さんの予想は当たった。 だが、中で起きていることは俺の予想外だったし、読者さんの予想外だったと思う。 「ゆっくりしね!!」 「はやくしぬんだね!!すくなくともゆっくりしないでねー!!」 「ちね!!ちね!!」 「おねーちゃんのかちゃきなんだゃよー!!」 「もうやべづんだぜ!!じんじゃぶんだべ!!」 「いやあああ!!どかいばらじぐないいぃぃぃ!!」 居間では夫婦と思われるちぇんとれいむ、その子供数匹が、これまた夫婦と思われるまりさとありすを攻撃していた。 まりさ達が抵抗したのか周囲につぶれた個ゆっくりらしきものが見えるが、数の暴力に押されたのか二匹とももうぼろぼろでろくに抵抗もできないようだ。 しかしなぜこんなことになっているのだろう?同じ家を自分の家宣言したため喧嘩になったのだろうか? そんな考え事をしている俺に気がついたのかまりさが俺に向かって叫んだ。 「お、ぼにーざん!!ばりざをだずけでほじぃんだぜぇぇ!!」 するとどういうことだろう?今までまりさとありすを攻撃していたゆっくり達が攻撃をやめ、二匹から離れた。 「さて、お前ら、俺の家で何をやっているんだ?」 「な、なにをいってるのかしら?ここはとかいはなありすとまりさのあいの…「だまってねー!!」げぶっ!!」 ありすが自分の家宣言する前にちぇんに妨害される、やっぱり自分の家争いだろうか? 「おにいさんのいえにこいつらがかってにはいったからこらしめてたんだよー!!」 「ゆっくりできないやつだったからみんなでゆっくりこらしめてたよ!!」 「しょーだよ!!このまりしゃおねーしゃんとありちゅおねーしゃんはゆっちゅりできにゃいやつだよ!!」 つまりこのれいむとちぇんは俺の家を守ろうとしていたのか?居間の惨状を見た限りではこいつらが介入したから散らかったようにも見えるが… 「れいむとちぇんはこう言っているが…こいつらの言う通りなのか?」 とりあえずまりさとアリスの意見も聞いておく、裁判はお互いの意見を聞かないとね。 「う、うそはっぴゃくだぜ!!」 「そうよ!!いなかものよ!!」 「ここはだれのおうちでもないからまりさとありすのあいのすにしようとおもっただけなのにこいつらがよこどりしてこようとしたんだぜ!!」 はい、確定。 「そうか…お互いの言い分は大体わかった、確かに人のゆっくりプレイスを奪うのは悪いことだよな!!」 そういった瞬間、まりさとありすの顔が百万ドルの夜景みたいな笑顔になる。 俺はそれを無視して窓を開けた。 「でもな」 「ぜっ!?」「んほっ!?」 ガっ!!という効果音をつけて二匹の頭をつかんだ、力は加えているけどゆっくりが死ぬほどの強さじゃない。 「残念だがここは俺の家、俺のゆっくりプレイス、つまり悪いのは俺の家を奪ったお前たちだ、そしてぇ!!」 俺は思いっきり両手を振りかぶり… 「愛の巣ってのは二人で一緒に作るから愛の巣なんだぜ!!」 思いっきり外に放り投げた。 「それなんてとかいはなのおぉぉぉぉぉ…」 「わかったんだぜえぇぇぇぇぇ…」 二匹はきれいな放物線を描き夜の闇の中に消えていった。まあ、あそこらへんは草地だったはずだから変な落ち方しない限りは死にはしないだろう。 「さすがおにいさん!!ゆっくりしてるね!!」 「せいぎはかつんだね!!わかるよー!!」 「ゆっちゅりー!!ゆっちゅりー!!」 れいむ、ちぇん、そしてその子供たちも俺を祝福してくれた。 「じゃあゆっくりしているおにいさん!!おにいさんのおうちをまもったれいむたちにごはんちょうだいね!!」 なんだそれ?お前らがいたから話がややこしくなったんだが…まあ、実際守ってもらったのは事実だから適当にクッキーでもやってお引き取り願おう。 「そしてごはんをあげたらこのいえをちぇんとれいむにわたしてねー、わかったねー?」 あん?なんだって? 「まったく、じぶんのいえをあんなわるいゆっくりにとられるなんておにいさんはばかだね!!」 「じぶんのいえをまもるぎむもはたせないおにいさんにこのいえはまかせれないから、いまからこのいえはじぶんでまもれるちぇんたちのものになったんだよー!!」 「わかったらゆっくりごはんをよういしてね!!よういしたらでていってね!!」 「でていっちぇね!!」 わぁお、ついにゆっくりずむもここまできたのか… 「良いよ、お前たちに最高のご飯をご馳走してやるよ…」 俺は手に持っていたクッキーの缶を棚にしまうとフライパンに油をひき、コンロに火をつけた。 続きません あとがき 子供の純粋さと大人の汚さ、醜さを集めたもの、それがゆっくりだと思うんだ。 なんか連続で似たような作風になってる気がする…何とかしなきゃ。 10月2日 1813 セイン このSSに感想を付ける
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『おにいさんはゆっくりする』 15KB 虐待 制裁 独自設定 とおりすがり 二作目だと… とおりすがりです。 今回は虐待メインなのでよろしくです。 「」はゆっくり 『』は人間です。 前作で『とおりすがりとでも名乗っておこうか(キリッ』なんてやってたけど 今になってから俺 は・ず・か・し・いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!! って思ったのさ。 ぽてちたべたい。 うすしおおいしい。 過去作 anko4545 ゆっくりしていくがいいさ おにいさんはとことんゆっくりする 「くしょにんげん!あまあまよこしぇ!」 生意気なまりしゃもとい子まりさから先制攻撃を受けたおにいさんは、『はぁ…』とため息をついた。 先ほど回覧板を届けに行ってる間に、まんまとゆっくりに侵入されたようだ。 幸い、侵入されたばかりで、被害はカーペットが汚れる程度で済んだ。 だがお兄さんは、『たまの休日ぐらいゆっくり過ごすぞ!ウヒョー!』なんて言った日に ゆっくりにゆっくりを邪魔されたわけだ。なんか矛盾してねぇかこれ。 「ゆぷぷ、くそにんげんはびびってるのぜ!さすがまりさのおちびだぜ!ゆっふん!」 「くそにんげんはあみゃあみゃをわたしたらちんでね!しゅぐでいいよ!ゆぷぷ!」 「わーい、あみゃあみゃたべられりゅよ!」 家族構成はまりさとれいむ、それと子ゆっくりがれいむとまりさ一匹づつ、それと赤れいむが1匹だ。 そしてテンプレ乙な挑発セリフ。ゆっくりが歩く死亡フラグともいわれている理由の一つでもある。 まあ、ありきたりすぎるが、これがゆっくりという生物(ナマモノ)なのだからしょうがない。 このままテンプレ通りに潰されるのがせいぜいのオチだろう。 …次の一言さえ、言わなければ、テンプレ以上の苦しみはなかったろうに。 「くそにんげんはぜんっぜんゆっくりしてないよ!ゆぷぷ!」 キラキラバシューン 何かがおにいさんの中ではじけた。 そう、おにいさんは今日ゆっくりする予定だったのだ。 『おれが…ゆっくりしていない…?』 だけどその予定は、この饅頭共に台無しにされた。 「ゆぷぷ、そうだぜ!くそにんげんはぜんぜん 『きさまらのせいだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!』 「「「「「ゆゆゆ!?」」」」」 『お前たちみたいなのがいるから、俺がゆっくりできないんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』 ドゴォ 鈍い音と共に、親まりさがカーペットと同化し、天に召された。 きっと汚れが落ちずに後々困ることになるだろうが、今のおにいさんには関係のないことだ。 「ゆ?まりさはどこにいったの?」 『知るかボケがぁぁぁぁぁぁ!!お前もつぶしてやろうかぁぁぁぁ!?』 「ゆ、ゆわわぁぁぁぁ…!!?」 残った家族は、親まりさの姿が見えない事やおにいさんの怒りからくる気迫に、只ならぬ危機を感じていた。 「や、やじゃぁぁぁ!!おうちかえりゅぅぅぅ!」 「れ、れいみゅは、れいみゅはぁぁぁ!!???」 「ゆっくりできないぃぃぃぃぃ!!」 『はあっ、はあっ、クソ…少し頭に血が上りすぎたようだな!イ゛エ゛ェェェア!!』 おにいさんは落着きを取り戻し、加工所特製の透明な箱に一家を入れた。ちなみに完全防音ではないため少し声が漏れる。 因みにこのおにいさんは決して虐待鬼意山ではないが、野良ゆ対策として透明な箱を持ち合わせていた。 普通は対ゆ用強化ガラスにするのだが、あいにく持ち合わせがなかったのである。 「ゆえぇぇぇん、きょわいよぉ!」 「お、おちびちゃん!ゆっくり、ゆっくりだよ!」 「たしゅけてね!れいみゅをゆっきゅりたしゅけてね!?」 「おとうしゃん、どこにいったんだじぇぇぇぇ!!まりしゃをたしゅけろぉぉぉぉ!!」 ああもう、うるさいったらありゃしない。 おにいさんは苛立ちながらも、冷蔵庫から冷やした麦茶を出して飲んだ。 火照った体に冷えた麦茶はちょうどいい冷却剤になった。そして煮え立っていた頭の熱も冷めたようだ。 『…そうだ!いいこと思いついた!』 おにいさんはニヤリと笑い、あるものを取りに行った。 数分後 「ここからだしぇくそじじい!ぷぎゅー!」 「はやくあまあまをもってごいくそじじい!」 「ゆっく…おとうしゃん、いなくなっちゃったにょ?」 「まりさったらさいきょうね!」 なんか一匹おかしいがまあ気にすることはないだろう。 すっかり自信を取り戻した家族に、笑顔で答えるおにいさん。 『やあお前ら、すっかり元気になったじゃないか!』 「ゆゆ!?ゆっくりできな『ゆっくりしていってね!』「「ゆっくりしていってね!」」 『ゆっくりしていってね!』「「ゆっくりしていってね!」」 「ゆ、ゆう!?」 いきなりのゆっくりしていってね!に戸惑うれいむ。 おにいさんは素早く箱を片付け、動きの止まった子れいむを持ち上げた「おそらをとんでるみたい!」 そして、ライターで加熱。 「ゆ?あんよさんがぽーかぽーかして…ゆんやぁぁぁ!あんよさんがもえるぅぅぅぅ!!」 『れいむは実に馬鹿だなぁ』 「れ、れいむばかじゃな、あづいぃぃぃぃぃ!」 『あっはっは!いい気味だぜ!そら、焼きあんよ一丁あがり!』 こうして子れいむはあんよの機能を破壊された。 「ぐぞじじいぃぃぃぃ!!おちびちゃんのあんよざんをが『ゆっくりしていってね!』「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆがぁぁぁぁぁ!?」 れいむが何か言おうとするたびに、おにいさんはこのセリフを口にする。 ゆっくりにとって最もゆっくりした挨拶。それゆえ、無意識に反応してしまうゆっくりした言葉。 そう、『ゆっくりしていってね!』を。 「おきゃーしゃ『よし次はれいみゅだ!』」ゆゆ~?」 五月蠅いれいみゅを持ち上げて「おしょらを」落とす。 ベチョッ「ゆぎぃ!!」れいみゅは中身を出して、苦しそうに呻いた。 そしてそれをご丁重にも動けない子れいむの前に放置する。 「ゆ…ゆぎぃ…いちゃいよ………」 「おちびぢゃぁぁぁぁぁん!?ゆっくりなおっでね!?ぺーろぺーろ…どぼじでなおらないのぉぉぉぉぉ!?」 「れいみゅぅぅぅぅぅ!おねーしゃんがなおしてあげりゅんだじぇ!ぺーろぺーろ!」 「ゆあぁぁぁん、いみょうとがゆっくりしてないぃぃぃぃ!!」 『そりゃ大変だ!ゆっくりしていってね!』「「「ゆっくりしていってね!」」」「ゆ…ゆっきゅり…」 『ゆっくりしていってね!』「「「ゆっくりしていってね!」」」「…ゆっ…」 『ゆっくりしていってね!』「「「ゆっくりしていってね!」」」「ゅ……」 『ゆっくりしていってね!』「「「ゆっくりしていってね!」」」「もっ…ちょ………ゆっ…きゅり…」 『ゆっくりしていってね!』「「「ゆっくりしていってね!」」」「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 ついに親れいむがおにいさんに怒りをぶつけた。 「おちびちゃんにぺーろぺーろしてるでしょぉぉぉぉぉ!?じゃましじゃいでねぇぇぇぇ!?」 『ふーん。』 「ふーん、じゃないでしょぉぉぉぉぉ!!」 『で、おちびちゃんって、そのボロのこと?』 数行前におちびちゃんは永遠にゆっくりしてるのだが、 のんきなことに気付かなかったようだ。 しかし、こうもあっさり死んでしまうのにゆっくりが全滅しないのはもはや超常現象ものである。 「くぞじじいぃぃぃぃぃ!よくもおぢびぢゃんをごろじだなぁぁぁぁぁ!!」 『あっはっは!目の前の子どもも助けられないとは、親子そろってれいむは馬鹿だなぁ』 「ゆがぁぁぁぁぁ!でいぶはばがじゃないぃぃぃぃぃ!!」 え、突っ込み所そこじゃないだろ?っという疑問はさておき、 騒ぎ立てるれいむを完全にスルーし、次におにいさんが目を付けたのは… 「ゆわぁぁぁぁん!いみょうちょがえいえんにゆっくちしちゃったのじぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆ、ゆんやぁぁぁぁ!!もうおうち『れいむ!君に決めた!!』ゆゆ!?」 またしてもれいむである。先ほど加熱したれいむである。 ちなみに加熱したれいむを後回しにしたのは気まぐれ以外の何物でもない。 「おしょらを(ry」 『さあれいむ!ゆっくりしていってね!』「ゆっくりしていってね!」 『ほらみてごらん!みんなだいすき爪楊枝だよ!これでれいむをぷーすぷーすするよ!』 「ぷーすぷーすさんはゆっくりできないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「ゆゆ!?おちびちゃん、どごにいっだのぉぉぉぉぉぉ!??」 なんということでしょう。 ようやくれいむがおちびちゃんに気付いた時には、おちびちゃんは既におにいさんの手の中だった。 「くそにんげんんんんんんんんんんんん!!?これいじょうおぢびちゃんにひどいごどずるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 『やーだよ♪おちびちゃんにはこれから針地獄を味わってもらう!そぉれ!』 ぶすっ 子れいむのおかざりに無慈悲にも爪楊枝が刺さった。 おかざりを貫通した爪楊枝が、子れいむの肌を突き抜けた! 「いじゃいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 「おじびぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 「れいみゅぅぅぅぅぅぅううう!!」 『もういっちょ!そぉれ!』 ぷすっ ぷすっ 子れいむの中に遠慮なく刺さっていく爪楊枝。 生まれてから初めて感じたこの痛みに、子れいむが耐えられるはずがなかった。 ぷすっ 「いじゃいぃぃぃ!!いじゃいよぉぉぉぉぉ!!」 最初は元気よく泣きわめいていた。 ぷすっ 「どぼじでれいむをいじめるのぉぉぉぉぉ!?」 質問を投げ掛け、 ぷすっ 「ぎょめんなしゃいぃぃぃぃ!でいびゅがわるがっだでずぅぅぅぅぅ!」 何故か謝り始め、 ぷすっ 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!くしょおやぁぁぁぁぁ!ばやぐだずけにごいぃぃぃぃぃ!! かわいいでいぶがじんぢゃうでじょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 ゲス丸出しで親を罵倒し、 そして三分後 「も、もっとゆ 『最後に中枢餡、いってみよう!』 ブズッ 最後の言葉を言う間もなくゆっくり逝ってしまった。 『ふう~、すっきりー!』 ぼすっ 『ん?』 気付くとただでさえ汚い親れいむが気持ち悪い顔でおにいさんの足に体当たりしていた。 実は針をぷーすぷーすし始めてからずっと攻撃してたのだが、おにいさんは全く気付かなかった。 つまり殺傷性はおろか威力も皆無なのである。 「じねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!おじびぢゃんをごろじだぐぞにんげんはゆっぐりしないでじねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「おきゃーしゃんがんばりぇ!」 『うわっ気持ちわるっ!』 ついカウンターの蹴りを入れてしまい、「ゆべぇ!?」親れいむは壁にぶつかった。 「ゆ…ゆうう…」 「お、おきゃーしゃぁぁん!」 なさけなくうずくまる親れいむの前に、おにいさんが立った。 『これでわかったろ?お前たちじゃどうあがいても俺には勝てない。』 「ぢ、ぢがう…、ぐぞにんげんはきっとひきょうなでをつがったんだ…!!」 『だったら何?どんな手を使ったとしても俺がお前たちより強いことに変わりはないよ。』 「ゆ…」 『だいたいさぁ、お前らおうちせんげんとかいいだすけどさぁ。 あれってゆっくりの間だけのルールなんだよ?人間には無効なの。』 「だ、だって…」 『だってもクソもねぇよ理解しろ餡子脳。しかも何? あんなヘボい体当たりで人間が死ぬとでも思っていたのか?』 「ゆ、ゆがぁぁぁぁぁぁ!!」 『うなっても無駄だよ無駄。お前らゆっくり同士なら有効かもしれないが人間には無駄なんだよ。 ゆっくりは人間に勝てない。ゆっくりしないで理解しろ。』 「………。」 「お、おきゃあしゃん…?」 ここまで言えばさすがの餡子脳も理解したようだ。 れいむは考えた。 人間には勝てない。今の状況は絶望的。 だが、この人間には絶対に頭を下げたくない。 おちびちゃんを殺され、自分も重傷を負った。 さっきの話で理解してしまったがおそらくまりさもこの人間にやられたのだろう。 こんな人間に頭を下げるのは、家族への侮辱に等しい。 そして自分の目の前には最愛のおちびちゃん。 無きまりさの面影を残す愛しいおちびちゃん。 だから、だからこそ、人間に媚を売るわけにはいかない。 この子の前でそんな無様な真似はできない。ならば…。 れいむのとった行動は――― 「さあおちびちゃん、おたべなさい!」 パカッ 自らの命を絶つことだった。 しかし、絶望した果てに選んだわけではない。 親である自分が死ねば、残されるのはあのおちびちゃんだけになる。 おちびちゃんは孤独になってしまうが、さすに人間も可哀そうなおちびちゃんの世話をするだろう。 そしておちびちゃんはあまあまをたくさん食べてしあわせー!になる。 そんな子供思いのれいむはきっとゆん国へ行けるだろう。 そしてたくさんあまあまを食べるのだ。 完璧なシナリオだった。完璧に穴だらけのシナリオだが。 (ゆふふ…いっしょにいられないのはざんねんだけど、 おちびちゃん、ゆっくりしていってね…! れいむはさきにゆんごくでまってるよ!) こうして、波乱に満ちたれいむのゆん生は幕をとじたのだった。 おわり これが映画だったら三流以下だな 「ゆ…ゆぅ?」 眩い光を受け、れいむは目を覚ました。 そこには、見たこともない景色があった。 「ゆ、ゆわぁ…!」 どこまでも続く草原。 見渡す限りの広い空。 向こうに見える花畑。 どれもが、すごくゆっくりしていた。 そうか。ここがゆん国なんだ。 れいむは確信した。 生前によい行いをしたゆっくりだけがいけると言われている『ゆん国』。 れいむはそこに入ることを許された選ばれしゆっくりなのだ! はやる気持ちを抑え、れいむは言った。 「れいむ、ゆうっしゅう!なゆっくりでごめーんね!」 『誰もお前が優秀なんていってないけどな。』 …え? その声と共にれいむの周りの景色が変わってゆく。 元の、あのゆっくりできない場所に。 まあただ単に透明な箱の周りに壁紙を置いただけだったんだが。 「ゆぅぅぅぅ!?どぼじでぐぞにんげんがゆんごくにいるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 『まあ落ち着け。第一にここはゆん国ではありませんぞ。』 「なにぞれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」 おかしい。確かにれいむはおたべなさいをして 永遠にゆっくりしたはずだ。 なのに、ここがゆん国じゃない?なら、ここは― 『そもそもお前死んでませんから!残念!』 最近、加工所の研究でわかったことなのだが、 『おたべなさい』をしたゆっくりは仮死状態になるらしい。 おたべなさいをしたゆっくりを見てもらえばわかるが、 中枢餡らしきものが見当たらない。 これはおたべなさいをしたときに中枢餡が移動し、皮の端に移動するためである。 なぜそんなことになるのかという疑問は、ゆっくりの性質によって解決される。 ゆっくりは『ゆっくりできないこと』を経験すると中身が甘みを増すことは有名だが、 仮死状態でもその性質は健在なのである。 つまり、おたべなさいをしたゆっくりを他のゆっくりが食べている間にも その甘みが増していくのだ。最後の愛情といったところか。 …しかし普通そんな甘いもの食ったら舌が肥えるだろうに。流石餡子脳。後のことを考えていない。 そしてもう一つ面白い実験結果が出た。 お食べなさいをして真っ二つに分かれたゆっくりをオレンジジュースで接着し、 少し経つとなんと仮死状態から目覚めるのだ。つまり蘇生である。 この研究結果によって多くの愛で派と虐待派が喜んだのは言うまでもない。理由は真逆だが。 『というわけでお帰り!』 「ゆ、ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 絶望に包まれる親れいむの前に、子まりさを設置。 その表情は親れいむを心配しているかのような、そんな表情だった。 「お、おちびちゃん…。」 親れいむは子まりさに向かって、申し訳ないような顔をした。 そしてキリッ、とでもいいそうな顔になり 「さあ、おたべなさい!」 やっぱりやりやがった。 次の瞬間、 パカッ 子まりさの体が真っ二つに割れた。 「………ど」 「どぼじでおぢびぢゃんがおだべなざいじでるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!???!!」 それは簡単だ。おにいさんが先ほど真っ二つにしたから。 親れいむが真っ二つになった直後に唖然としている子まりさを後ろからスパッと 同じように真っ二つにしたのだ。一瞬の事だったため、子まりさは自分の死を理解する間もなかった。 そして今に至るわけだ。 『れいむ』 「い、いやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ごっぢごないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 『れいむ』 「もうおうぢがえるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 『れいむ』 「やじゃぁぁぁぁぁぁ!もうやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 泣きじゃくり、幼児退化をおこして逃げるれいむを追いかけながら、 おにいさんは言葉をなげた。そう、あの言葉だ。 『ゆっくりしていってね!』 「ゆ、ゆっくりしてい『やっぱゆっくりするな』グジャ れいむは今度こそ、永遠にゆっくりしてしまった。 『あーすっきりぃぃぃぃ!』 ゆっくりを片付けてご満悦のおにいさん。 時計は12時を回っていた。 『さぁぁぁぁぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!! お昼ご飯にするかぁぁぁぁぁぁぁ!!』 ゆ虐を味わってハイな状態になったおにいさんは、 そのノリでお昼ご飯を作ることにした。 『この子まりさをぉぉぉぉぉぉぉぉ!! お湯で溶くゥゥゥゥゥゥ!!!!! 簡単にぃぃぃぃ!おいしいぃぃぃぃぃ!! おしるこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』 先ほど真っ二つになった子まりさを使ったお汁粉のようだ。 『んまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!! 新鮮そのもののできたてだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 どうやらすごくおいしかったようだ。 子まりさはそこまで絶望を味わったわけではなかったので特別甘くはないが、 甘さ控えめの味がお気に召したようだ。 『次はぁぁぁぁぁぁ!部屋の片づけをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! するぞぉぉぉぉぉ『うるさいです』すいませんでした。』 お隣さんから苦情が来てしまった。 そりゃあんなに叫んだらうるさいに決まってる。 『はあ…ゆっくりできたぁ…』 だけどおにいさんの表情はゆっくりしていた。 当初の目的とは違ったが、ゆっくりすることができたのだから。 ゆっくりに侵入されたけど、 おにいさんは、ゆっくりできた。 餡子色に染まった部屋を見渡すまでは。 『なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』 『うるさいよ!』 おわり あとがき なんだかこうはんがゆっくりしてないよ! さくしゃのてんしょんがおかしいからだね! ゆっくりはんせいするよ! ゆんやぁ! ぜんさくをひょうかしてくれたおにいさんおねえさん、 ゆっくりありがとうだよ! おれいにさくしゃをゆぎゃっていいよ! ゆんぎゃあ!
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前 日が落ちて月が輝く夜。 子ぱちゅりーは眠れなかった。 今日、まりさに言われたことが頭から離れなかった。 夢じゃないかと何度も思った。その度に壁に軽く体当たりして、夢じゃないと理解した。 あの時の言葉をゆっくりと思い出す。 それは、ぱちゅりーが一番望んでいた夢。 それは、ぱちゅりーが常に思い描いてた夢。 それは、ぱちゅりーが何処かで諦めてた夢。 だがぱちゅりーはその夢を現実として掴もうとしている。 ああ、自分はなんて幸せなゆっくりなんだろう。 この先ちょっと不安もあるけど、それ以上に期待のが大きい。 目の前には自分が望んでいた世界があるのだ。 何を恐れる必要があるのだろうか。 これからの生活を想像しつつ、ぱちゅりーは思う。 このままずっとゆっくりできたらいいな── 日付が変わり、森が照らされる朝── 「ゆ~んゆ~ん♪ ゆっゆっゆ~ん♪」 歌らしき物を口ずさみながら、あの子まりさは森の中を進んでいた。 その姿は、全身一杯で喜びを表現しているようにも見えた。 「ゆっ、きょうはこのあたりでたべものをとるよ」 そう独り言を言う子まりさ。別に誰か傍にいるわけではないのだが、これがこの子まりさの一つの癖なのだろう。 そして歩いているときから目星をつけていた茂みをじっと観察し始めた。 そうして実にゆっくりすること三分、微動だにしなかった子まりさが勢いよく茂みに飛び掛る。 茂みからは虫達が逃げ出してきた。まりさはその虫達を眺めつつ、自身も茂みから出る。 口には既に捕獲した虫がいたが、それを吐き出してから別の逃げ出した虫に飛び掛る。 そうして同じ事を繰り返し、数匹の虫が手に入った。 茂みに入ったときに少しだけ浅い傷が付いたが、放っておけばすぐに直るだろう。 吐き出した虫を一箇所にあつめ、別の茂みにターゲットを移し、再び同じ事を繰り返す。 子まりさはこの方法で、他のゆっくりよりも多くの餌をとっていた。 そんな子まりさに、一匹のゆっくりが近づいてきた。 「まりさ! きぐうだね!!」 「ゆっ、れいむおかあさん。おはようございます」 愛するぱちゅりーの親である、れいむであった。 親れいむは一旦立ち止まり、まりさの方を向いて話しかけた。 「まりさはきょうはここでかりをするの?」 「ゆっ、そうだよ。れいむおかあさんもここでかりをする?」 「れいむはもうすこしすすんだとこでかりをするよ。まりさはここでがんばってね!!」 「ゆっくりがんばるよ!!」 挨拶もそこそこにして、親れいむは来た方向とは逆に飛び跳ねる。 そうして親れいむが去ろうとした時、子まりさが話しかけた。 「あとでれいむおかあさんのおうちにいくね!!」 「ゆっ、わかったよ!!」 そう言葉を交わし、二匹は離れていった。 一匹になったとき、親れいむはポツリと呟いた。 「これでゆっくりできるね」 れいむは昨日の出来事を思い返していた。 れいむが怒りに身を任せていた時、その声は聞こえた。 「あのまりさがいるから、ゆっくりできないのね?」 突然親れいむの後ろから、声がかかる。 「ゆっ! だれなの!!」 親れいむは驚いて、声を荒げて振り返る。 そこには同じゆっくりの種類であるれいむがこちらを見ていた。 鬼のような形相をしていたが、れいむは怯えることもなく話しかける。 「ゆっくりおちついてね、れいむはれいむのみかただよ」 (みかた? どういうこと?) 親れいむはれいむの言った言葉の意味が即座に理解できなかった。 「あのまりさがいるから、ゆっくりできないのね?」 れいむは何事もなかったかのように、もう一度同じ言葉をかける。 ようやく親れいむは、れいむが何を言っているか理解した。 「ゆっ、そうだよ、あのまりさがいるからゆっくりできないんだよ!!」 先程まで知らないゆっくりがいきなり話しかけてきたので警戒していたが、 まりさの事を話そうとしていると理解した瞬間、先程の光景を思い出したのか、怒りに震え始めた。 そして震え始めた親れいむをみて、れいむは話しかける。 「あのまりさ、れいむにとてもひどいこといってたよ」 「ゆっ!?」 怪しげな笑みを浮かべて。 「あのまりさ、れいむのこと、のろまでぐずなゆっくりだっていってたよ」 「ゆぐうぅぅぅ!!?」 まるで目の前の愚か者を嘲笑うかのように。 「とってもあたまのわるいおばかさんだっていってたよ」 「ゆゆゆゆゆゆ!!!」 鳴き続ける玩具を見て楽しむかのように。 「えさもろくにとれないごみくずだっていってたよ」 「ゆがあああああああああああああ!!!!!」 喜々としながら、語り続けた。 「まりざめ!!まりざめ!!ゆるぜないいいいいい!!!」 れいむの話を聞いた親れいむは、その怒りを抑えることは当然できず、辺りに撒き散らす。 今にも怒りで餡子が飛び出さんというほどの勢いだ。 そんな様子を見て、れいむは笑顔を向けて話しかける。 「れいむたちがゆっくりするために、いいほうほうがあるんだよ!!」 「ゆゆっ!?」 自分がゆっくりできる。その言葉を聞き親れいむは興味を示す。 そんな反応を見て、れいむは親れいむに近づき、小さな声で話し始めた。 「ゆっくりりかいしたよ!!」 話を聞き終えた親れいむは、とてもご機嫌だった。 「ゆっ、こんだけあればじゅうぶんだね!!」 狩りを終えてまりさはご機嫌だった。目の前に虫や花、木の実やキノコなどが山となって詰まれている。 口で持っていくには少し多いが、まりさには帽子がある。この中に入れて持っていけば大丈夫だろう。 今日はなんだか天気がよくない気がするから早く帰ろう。そう思い帽子を外して急いでその中に食べ物を詰め始めた。 ガサガサと音がして、思わずまりさはその音のする方へと振り向いた。 そこには同じゆっくり種であるまりさが三匹いた。 「ゆっ、しらないまりさたちだね。ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 お決まりであるフレーズを言い、子まりさはまた食べ物を詰める作業に戻ろうとする。 しかしその前に、三匹のまりさの内一匹が子まりさに話しかけた。 「ゆっゆっゆ、ここはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!! ゆっくりしたいならそのたべものをよこすんだぜ!!」 「ゆっ?」 子まりさは意味が理解できなかった。このまりさは何を言っているんだろう。 「ゆっ、ここはみんなのゆっくりぷれいすだよ?」 「うるさいんだぜ、さっさとそのたべものをまりささまによこすんだぜ!!」 「ゆっ、すこしならわけてあげるよ、ちょっとまってね」 要するに食べ物が欲しいのだろう。少しくらいならいいか、と子まりさは思い、帽子と食べ物の山の方に向き直す。 そして完全に食べ物の方向に体を向けると── 体に強い衝撃が走った。 「ゆぶぇっ!!」 「なにをねぼけたことをいってるんだぜ、ぜんぶにきまってるんだぜ!!」 「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」」 一体何が起きたのか、子まりさは状況が把握できなかった。 (たしかたべものをわけようとして、どれがいいかえらんでたら、きゅうにいたくなって── きづいたらこうなってて、まりさたちがわらっていて、まりさがめのまえにむかってきて──) 「ゆぶぁっ!!」 再びまりさの一撃を受けて子まりさは吹っ飛んだ。 成体に近いが、それでも一回り小さい子まりさは成体まりさの体当たりに耐え切れず、意識を失ってしまった。 「ゆっゆっゆ、まりささまにさからうとこうなるんだぜ、このたべものはありがたくもらっていくんだぜ」 「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」」 子まりさが意識を再び取り戻したとき、そこには何もなかった。 太陽が高く昇った頃、親れいむが沢山の食べ物を持って帰ってきた。 「ゆっくりかえったよ!!」 「むきゅ、おかえりなさい」 「「「「「「おかーさんおかえりなさい!!」」」」」」 家族に迎えられ、上機嫌の親れいむは今日の成果である食べ物を見せる。 「ゆっ、きょうはたいりょうだよ!!」 「わー!」「すごーい!」「いっぱいだねー」「さすがおかーさんだねー!」「ゆっくりー」 「むきゅ、やればできるじゃない」「おかあさんすごいね!!」 口々に家族が褒め称える。ああ、こんなにもゆっくりできたのは何時以来だろうか。 親れいむの心は満たされていた。 いつもより豪華な昼食を済ませ、各々が自由に過ごし始める。食べ物の蓄えもまだあったはずだ。今日はゆっくりしてても大丈夫だろう。 親れいむはそう考えを言うと、子供達は賛成した。伴侶であるぱちゅりーも何も言わなかった。 日が傾くにつれ、親れいむは子ぱちゅりーと親ぱちゅりーの様子がおかしいことに気づいた。 他の子供達は思い思い外でゆっくり遊んでいるのだが、なぜか子ぱちゅりーは外に佇んでただ遠くを見渡しているようであった。 親ぱちゅりーは、そんな子ぱちゅりーに寄り添うようにしている。 親れいむはそれが気になり、親ぱちゅりーと子ぱちゅりーに話しかけた。 「ゆっ、ゆっくりしていないけどどうしたの?」 「むきゅん。れいむ、きょうまりさがおひるすぎにきてくれるはずなのにこないのよ」 「ゆゆっ!?」 れいむは驚いた、なぜまりさを心配するのか、まりさのことでゆっくりできなくなるのか、まったく理解できなかった。 「ゆっ、きっとわすれちゃったんだよ!! だからまりさはほうっておいて、ゆっくりしようね」 「ゆっ!? ……ま……まりざ……どうじで……」 「そんなことないわ、だいじょうぶよ。まりさはちゃんときてくれるわよ」 なんで子供が泣きそうになっているのかれいむにはまったくわからなかった。 そんなれいむを責めるようにぱちゅりーは文句を放つ。 「れいむ……どうしてそういうことをいうの……?」 「ゆっ、れいむをばかにしたまりさなんてしらないよ!!」 「むきゅ!?」 親ぱちゅりーは驚いた。あの優しい子であるまりさがそんなことを言うはずがないと思っていた。 「ほんとうにまりさはれいむのことをばかにしたの?」 「そうだよ!! そういっていたってほかのれいむからきいたんだよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 そう親れいむは言うと、さっさと住処へと戻っていった。 残された親ぱちゅりーは、曇った空を見つめながら、しばらくその場で考え事をし始めた。 そして、行動を開始した。 「おかーさん、おかーさん」 「ゆっ? どうしたの?」 「ぱちゅりーおかーさんとぱちゅりーがでかけてくるっていってたよ」 「ゆゆっ!?」 驚いた親れいむはすぐに外に出る、そこにはぱちゅりーの姿は何処にもなかった。 「どうしてとめなかったの!!」 「ゆゆっ!? だって……ぱちゅりーおかあさんだからだいじょうぶだって……」 親れいむは怒るが、子供は当然の事をしただけである。親が出かけるのに止める子はいないだろう。 「ゆっ、とにかくおいかけるよ!! どっちにいったの!!」 「あっちのほうだよ」 「ゆっ!! みんな、ぱちゅりーをおいかけるよ!!」 そうしてれいむ親子はぱちゅりー親子を追いかけ始めた。 ただし焦っているのはれいむだけで、子供達はなんで追いかけているのかまったく理解していなかったが。 「どういうことなの!? ゆっくりせつめいしてね!!」 「ゆっ……そ、そんなこといわれてもわからないんだぜ……」 時間はまだ太陽が高い位置に留まっている時まで遡る。 先程まで子まりさが倒れていた場所で、言い争う声が聞こえる。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさ達である。 どうやられいむがまりさ達にむかって問い詰めているようだ。 「れいむのいったとおりに、たべものをもらおうとしたんだぜ」 「そしたら、なまいきにもまりささまにさからってきたんだぜ」 「おろかなまりさはかえりうちにあって、そこでぶざまにのびてたんだぜ」 「ならまりさがそこにいるでしょおぉぉぉぉ!!」 「ゆっ!? そんなことしらないんだぜ」 「おおかたれみりゃあたりにでもくわれたんだぜ」 「あんなよわっちいまりさなんてどうでもいいんだぜ! それよりいっしょにゆっくりしようなんだぜ」 (ちっ、やくにたたないくずゆっくりめ……) れいむは目の前の三匹のゆっくりまりさを蔑んでいた。 こいつ等のせいでれいむの考えた完璧な作戦が台無しだ。れいむは本気でそう思っていた。 れいむはまりさ達に、親れいむが見つけたゆっくりまりさを気絶させて、食料を奪い取るように指示していた。 そして気絶させた後に、れいむに知らせるよう手筈を整えていた。 その後れいむはまりさの傍に寄り添い、看病することにより、好感度をアップさせ、二人で一緒にゆっくりする計画を立てていた。 だが実際には、食料を強奪したまりさ達は食料のことで頭が一杯になり、居場所を知らせた親れいむ共々分配を先に済ませてしまった。 その際に突如風邪が吹き、戦利品の山がバラバラと飛んでいってしまったために集めるのに時間がかかってしまった。 結果、気絶したまりさが目を覚ますまでに、れいむはたどり着くことはできなかった。 「ゆっ、とにかくあのまりさをさがすよ!!」 「ゆゆっ? なんでさがすんだぜ?」 「あんなまりさはどうでもいいんだぜ」 「そうなんだぜ、もうたべものはいっぱいあるんだぜ、ゆっくりしようなんだぜ」 (わたしのびぼうとたべものめあてのいやしいゆっくりが……) 「ばかなの? あのまりさはたべものをいっぱいもってたのよ? おうちにもたくさんあるはずよ?」 「ゆっ!! それをうばえばもっとゆっくりできるんだぜ!!」 「さすがれいむなんだぜ、あたまもよくてきれいなんだぜ!!」 「そうときまればさがすんだぜ!!」 れいむは内心嘲笑っていた。やはりこいつらも馬鹿で愚かなゆっくりだと。 賢い私にはつりあわないが、馬鹿なおかげで利用しやすい。せいぜい手駒として利用させてもらおう。 私に似合うのはまりさだけ、ああ何処にいるの? 愛しいまりさ── 「どうして……どうして……」 子まりさは森の中を彷徨っていた。その姿にいつもの元気な様子はなく、絶望を浮かべていた。 「どこにあるの……まりさのぼうし……」 そう、目を覚ましたらまりさの帽子が食べ物と共に無くなっていたのだった。 ゆっくりは、生まれたときから身に着けている装飾品で固体を見分けると言われている。 その装飾品を何らかの理由でなくした場合、いくつかの例外はあるが、基本的に他のゆっくりからは判別が付かなくなる。 それだけでなく、なかには同じゆっくりであるはずなのに、ゆっくり出来ないものとして認識されてしまい、攻撃や差別を受けるケースもある。 ゆっくりにとって装飾品は命の次に大事であり、これがないとゆっくりはゆっくりできなくなる。 食べ物は代わりがあるが、自分の帽に代わりはない。今まりさは、自分の帽子を必死に探していた。 「これじゃあゆっくりできないよ……」 半ば諦めかけているが、もしかしたらという気持ちでまりさは進む。しかし探す当てなどあるはずもなく、ただ闇雲に歩き回っているだけだ。 できることならば帰りたい。しかし帽子のない今それもかなわぬだろう。 帽子を探すことだけにとらわれていたまりさだが、ふとあることに気が付く。 (そういえば、このあたりは……) まりさはいつのまにか、ぱちゅりーと良く遊んでいた広場に出ていた。 そこに探している帽子は落ちてるはずもなく、あるのは楽しかった思い出だけだ。 (ぱちゅりー……) できることならば今ぱちゅりーに会いたい。だが今会えば何を言われるかわからない。 自分だと判ってもらえないならばまだいい方だ。一番怖いのは、自分だと判らないとはいえ、愛する者から嫌われることだった。 (しかたないね……) そう思いその場からまりさが去ろうとしたその時── 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 (うん、ぱちゅりーのこえだ……ぱちゅりー!?) まりさは驚いた、そして迷ってしまった。 ぱちゅりーに会いたいという気持ちと、会ってはいけないという気持ちが葛藤し始める。 その間にもまりさを呼ぶ声は近づいてくる。 結局どうすればいいかわからなくなり、その場から動けないでいた。 どれくらい時が経っただろう、まりさは決断を下した。 (このままわかれたほうが、ぱちゅりーにとってしあわせだよね……) そういえば、もう自分を呼ぶ声も聞こえない。 きっとどっかに行ってしまったんだろう。まりさは安堵した。 もう約束を果たせない自分はぱちゅりーと会ってはいけない。そう思いこの場を去ろうとしたその時。 「むきゅううううううううううううん!!!!!!!」 まりさは考えることもなく、声のする方に走っていった。 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 時は少し遡る。まりさがぱちゅりーの声を聞いて考え事をし始めた頃── れいむとまりさのグループもまた、その声を聞いていた。 「ゆっ、まりささまをよぶこえがきこえるんだぜ」 「あっちからきこえてくるんだぜ」 「にんきものはつらいのだぜ」 勝手なことを言っているまりさたちを余所に、れいむは別のことを考えていた。 もしかしてこの探している声は、かっこいいまりさの言っていた、ぱちゅりーではないかと。 どうやらぱちゅりーもまりさを見つけていないらしい。 それならそれで考えがある。れいむはそう思うとまりさ達と共に声のする方向に向かっていった。 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 子ぱちゅりーは叫んでいた。自分の体が弱いこともかまわずに、力の限り声を出し続けた。 そんな我が子と共に親ぱちゅりーもまた、まりさがいないか周囲を注意深く観察しながら進んでいた。 「むきゅん……まりさ……どこにいるのよ……」 あの優しくて賢いまりさが約束を破るはずなんてない。きっと何かあったに違いない。 ぱちゅりーの親子はそう判断し、まりさを探していた。 (そういえば、このちかくでまりさとよくあそんだっけ……) 子ぱちゅりーは思い出す。この近くにまりさが家族と暮らしていたときに良く遊んでいた場所だと。 あの時自分は他の子供より体力がなく、激しい運動はできなかったために、その光景を見ていることが多かった。 元気一杯遊んでいる皆をみて羨んでいた。自分も沢山遊ぶことのできる体が欲しいと思っていた。寂しかった。 そんな子ぱちゅりーを見かねたのか、まりさは一緒にいてくれた。 子ぱちゅりーはその行為が嬉しかったと共に、申し訳なくも感じていた。 一度まりさに他の皆と遊んだほうが楽しいのではないかと聞いたことがある。 その問いに、まりさは笑顔でこう答えた。 「ぱちゅりーといっしょにいたいんだよ!! ぱちゅりーがゆっくりできていないのをみてると、まりさもゆっくりできないんだよ!!」 その言葉がどんなに嬉しかっただろう。あの時の感動を忘れることなんてできない。 今の私があるのはまりさのおかげだ、そしてこれからも私にはまりさが必要だ。 それなのに何処に行ってしまったというのか、何か良くない事でも起こってしまったというのか。 どうか無事であることを願いつつ、子ぱちゅりーはまりさを呼びかける。 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 「どうしたんだぜ?」 「まりささまのとうじょうだぜ!!」 「もうあんしんするんだぜ!!」 その呼びかけに答えるかのように、三匹のまりさと一匹のれいむが姿をあらわした。 れいむは言葉を発することもなく、ただ二匹のぱちゅりーを眺めているだけだ。 「ゆっ……ごめんなさい。べつのまりさをさがしていたの」 「むきゅん、ごめんなさい。わるぎがあったわけじゃないわ」 ぱちゅりー親子がまりさ達にむかって謝罪の言葉を述べる。 しかし、その言葉にまりさたちは激昂した。 「ゆっ!? なんなんだぜ、このまりささまをよんでおいて、かんちがいですまされるとおもっているのかだぜ!!」 「しゃざいのほかにもばいしょうがひつようなんだぜ!!」 「たべものをたくさんもってきたらゆるしてやるんだぜ!!」 わけのわからない理論を展開するまりさ達に、ぱちゅりー親子は困惑した。 なんだこのまりさは、あの優しくて賢いまりさとは似ても似つかわしくないではないか。 これ以上こいつらに関わっている暇はない。そう考えていると、まりさ達の後ろにいたれいむが話しかけてきた。 「ゆっ!! あなたたち、まりさをさがしているの?」 「……むきゅ、そうだけど……」 「そのまりさ、どんなまりさだった?」 このれいむには話が通じそうだ。親ぱちゅりーはそう思い、特徴を話し始める。 「むきゅん……とてもたくさんのたべものをかれる、はだやかみがきれいなまりさよ」 「「「ゆゆゆっ!?」」」 説明になっていない説明だが、ゆっくりまりさ達にはどこか思い当たることがあるようで、あからさまに表情を変えた。 それを見た親ぱちゅりーは、このゆっくり達は何か知っているのではないかと感じ取った。 ただ、れいむだけは微笑んでいる。 「ゆっくりりかいしたよ……ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!」 「むきゅ!?」 れいむは何を言っているんだ? ぱちゅりー親子はれいむが何を言っているか理解できず、戸惑っていた。 その隙をのがさずに、まりさ達が襲い掛かる。 そして、隙だらけのぱちゅりー親子はまりさ達の体当たりを受けた。 「むきゅううううううううううううん!!!!!!!」 ぱちゅりー親子は声を上げながら吹っ飛んでいった。 「ゆっゆっゆ、まりささまにけいいをはらわないなんておろかものなんだぜ」 「まりささまでなく、あんなよわっちいまりさをよびかけるなんてみるめがないんだぜ」 「まりささまをばかにしたつみはおもいんだぜ、しけいなんだぜ」 目の前でまりさ達がぱちゅりー達を攻撃している光景を見て、れいむは思う。 (こういうとき、ばかなまりさはべんりだね!! このぱちゅりーをけせば、あのまりさをうばうてきはいなくなるよ!!) 自分が描いていた予想通りの展開になり、れいむはほくそ笑む。 このままぱちゅりーがゆっくりと死んでいくのを見届ければいい。そう思い眺めていると── 黒い帽子が目の前に飛びこんできた。 「ゆぶうぅぅ!!?」 吹き飛ばされる一匹のまりさ。おもわずれいむはそれを避ける。 そしてまりさが飛んできた方向に視線を戻す。 すると他のまりさも倒れているではないか。 そしてぱちゅりー親子に立ち塞がっているゆっくりが一匹── 「ぱちゅりぃをいじめるなあぁぁぁ!!!」 そのゆっくりは、金色の髪をなびかせて此方を見据えていた。 「むきゅぅん……たすかったわ……ありがと」 親ぱちゅりーお礼をいった。見ず知らずの帽子のないゆっくりまりさとはいえ、自分達を助けてくれたのだ。 少なくともあの無礼なまりさ共よりは好感が持てる。 そういえば子供は大丈夫だろうか、慌てて子供の無事を確認したが、子供の様子がおかしいことに気づく。 見ればずっと帽子のないまりさを見つめているのだ。 そして子ぱちゅりーは呟いた。 「まりさ……?」 「はやくにげてね!! ゆっくりしないでにげてね!!」 目の前の帽子のないゆっくりは逃げるように促し、立ち上がろうとしている三匹のまりさと対峙する。 帽子がなくても判る。あの透き通るような声、あの日差しのように輝く金髪、あれはまりさだ。ずっと会いたかった世界で一番大好きなまりさだ。 もう会えないかもしれないと思っていた。最後に出来れば一目でいいから会いたいと思っていた。 そんな願いが通じたのか、まりさと出会えた。帽子がないことが何だというんだ。そんなの関係ない。 子ぱちゅりーは涙を浮かべ、背一杯叫ぶ。 「まりざあぁぁぁ!!!あいだがっだあぁぁぁぁ!!!」 子まりさも涙を浮かべていた。 もう自分のことなど判ってくれないと思っていた。まりさでない何かだと認識されると思っていた。 でも、ぱちゅりーは自分の事を判ってくれた。それがなにより嬉しかった。 同時に思う、絶対に守って見せると。 そう心で誓い、体制を整え始めたまりさ達を見据え、構えた。 「ゆ゛っ!! いきなりまりささまになにをするんだぜ!!」 「ゆっくりできないゆっくりのくせに、なまいきなんだぜ!!」 「ぜったいにゆるさないんだぜ、ゆっくりできないゆっくりはゆっくりしね!!」 戦いが始まった。 「むきゅ、だいじょうぶ?」 親ぱちゅりーが子ぱちゅりーに話しかける。元々体の弱い上、先程の体当たりでボロボロになった自分達はお荷物でしかない。 今戦っているまりさには悪いが、後でお礼をしよう。そう判断してここから立ち去ろうとした。 だが、子ぱちゅりーの様子がおかしい、まりさに会えてうれしいのはわかるが、今はそれどころではないというのに。 しかし原因は違っていた。 「おかあさん……うごけないの……」 「むきゅ!?」 よく見ると、足元がほんのり黒ずんでいた。 どうやら吹っ飛ばされて着地した際に、何か鋭利なものを踏んでしまって足元から餡子がでているようだ。 これではこの子は動けない。かといって今の自分には持ち上げていく体力もない。 結局は、まりさが勝つように祈るしか方法はなかった。 まりさは必死だった。負ければぱちゅりー達がどんな酷い目にあわせられるかわからない。負けるわけにはいかなかった。 幸いにも、まりさ達は自分勝手に体当たりしてくるだけなので、攻撃は少し横に飛ぶだけで簡単にかわすことが出来た。 しかし、自分よりも少しだけ大きい相手な上、三匹相手に戦っていてはなかなか有効的な打撃は与えられない。 このままではいずれ自分が力尽きてしまう。そう考えたまりさは一つの賭けに出た。 今まで飛び跳ね回っていたが、急に動くのを止めた。 「ゆっへっへ、さっさとかんねんするんだぜ」 「ちょこまかとうっとうしかったけど、これまでなんだぜ」 「これでとどめなんだぜ、ゆっくりしね!!」 それをみたまりさ達は、相手が疲れて動けなくなったと思い込み勢いをつけて突進する。 ゆっくりできないゆっくりを自分の手で倒せば、れいむだってよろこぶだろう。三匹のまりさは我先にとまりさに向かっていった。 そしてその内の一匹が体当たりを仕掛けた時── 「ゆゆっ!?」 目の前にいたはずのゆっくりできないゆっくりが消えた。代わりに見えたのは大きな木。 勢いあまってまりさは激突してしまう。 「ゆぶっ!!」 後から来た二匹のまりさもその勢いを止めることはなく、体当たりをしていた。その結果、一匹のまりさは二匹のまりさから体当たりを受け、失神してしまう。 どこにまりさは消えたのか? 残った二匹が周囲を見渡そうとしたその時。 「ゆべぇ!!」「ゆぎゃあ!!」 まりさは、上から降ってきた。 消えたと思っていたのは、ただとても高くジャンプしただけの話であった。 そして着地の足場として一匹のまりさを踏みつけ、さらにその反動でもう一匹のまりさに体当たりをした。 これが決め手となって、三匹のまりさはそれぞれ気絶してしまった。 まりさ自身は深く考えていないだろうが、上からの攻撃は中々に有効である。 特にゆっくりまりさは前傾姿勢で突進をすると、帽子のつばによって死角ができる。 そのため、上からの攻撃に気づきにくい。気づかなくても弱い攻撃は帽子が弾いてくれるのだ。 だが、成体に近いゆっくりの、ジャンプによる衝撃は強く、さすがに帽子といえど耐えられない。 そのため、対まりさ相手には体当たりを誘っての踏みつけは有効である……と言えるかもしれない。 勝った……これでぱちゅりーたちは助かる……。 そう思って振り返る。そこにはまだ、ぱちゅりー親子の姿があった。どうやら様子がおかしいようだ。 どうしたんだろう? 心配してそばに寄ろうとして── 以前受けたような強い衝撃が、体を襲った。 「もうだいじょうぶだよ!! ぱちゅりー、あんしんしてね!!」 親れいむは満面の笑みで子ぱちゅりーに話しかける。 おかあさんが来たからには安心だよ、とアピールしているようである。 だが帰ってきた言葉は親れいむにとっては予想外な言葉だった。 「どうじでごんなごどずるのおぉぉぉ!!!」 「ゆゆっ!?」 子ぱちゅりーは泣いている。なんで?どうして? 親れいむの頭は混乱した。 そこに親ぱちゅりーが話しかける。 「むきゅ、れいむ……なんてことをしたの……」 「ゆ? ゆっくりできないゆっくりからぱちゅりーをまもったんだよ!!」 「それはごかいよ、あのこはわたしたちをたすけてくれたのよ」 「ゆゆっ!? でもあれはゆっくりできないゆっくりだよ!?」 「そんなことかんけいないわ!!」 れいむは狼狽した。どうして怒られなければいけないのだ? 遠くからぱちゅりーの声がしたので、急いでここまで駆けつけてきた。 そこにはゆっくりできないゆっくりに襲われているぱちゅりーの姿が見えたではないか。 とっさに助けるために体当たりを仕掛けたのに、帰ってきたのは非難の言葉だ。 ゆっくりできないゆっくりを排除してなんの問題があるのだ?むしろ感謝されるべきではないのか? そんなことを考えていると後から子供達がやってきた。 「おかーさんまってー」 「ゆっ、ぱちゅりー。だいじょうぶ?」 「あそこにゆっくりできないゆっくりがいるよ!!」 「ほんとだ、きっとぱちゅりーをいじめたのはあいつだね!!」 「ゆっくりしね!!」 子供達がゆっくりできないゆっくりに襲い掛かる。 だが親ぱちゅりーはボロボロの体を必死に動かして子供達の前に立ち塞がった。 「むきゅん、だめよ!! まりさにてをだすのはゆるさないわ!!」 「おねえぢゃんだぢやめでー!! まりざをいじめないでー!!」 必死になってぱちゅりー達は子供達を止めようとする。 子供達はその言葉を聞いて混乱する。 (あれはまりさ? ゆっくりできないゆっくりはまりさ? まりさはゆっくりできないゆっくりなの?) そして親れいむも混乱する。 (どうしてぱちゅりーはとめるの? ゆっくりできないゆっくりをやっつけるのはいいことだよ?) そして答えが出そうで出ない、葛藤の最中── 「ゆっ、ゆっくりできないゆっくりをまもるぱちゅりーはゆっくりできないよ!!」 「「「「「「ゆゆ?」」」」」」 突然、れいむ親子の後ろのほうから声がした。後ろを振り返ると、そこにはれいむの姿が見えた。 親れいむは見たことのあるれいむに安心し、それでいて言葉を返す。 「ゆ? れいむ、どういうこと?」 「かんたんなことだよ!! れいむのことをばかにしたまりさや、ゆっくりできないゆっくりとそこのぱちゅりーはぐるだったんだよ!!」 「ゆゆっ!?」 れいむの説明を聞いて、親れいむに電流が走る。 ゆっくりできないまりさ、ゆっくりできないゆっくり、それらをかばうぱちゅりー。 簡単な事じゃないか、全部れいむ達をゆっくりできなくさせる悪い奴らだったんだ。 全てを理解した親れいむの行動は早かった。 「むきゅ、なにをいって──」 親ぱちゅりーが反論を述べようとするが、それを遮る様に親れいむが体当たりを仕掛けていた。 「れいむのおかげでりかいしたよ!! うらぎりもののぱちゅりーは、ゆっくりしね!!」 「「「「「お、おかーさん???」」」」」 目の前の出来事に頭が着いていけない子れいむ達。 それを払拭するかのように、親れいむは自分にとって都合のいい解釈を子供達に話す。 「ゆっ、このぱちゅりーはれいむたちのことをばかにしてうらぎったくずゆっくりだよ!! いっしょにこらしめようね!!」 「「「「「わかったよおかーさん!!」」」」」 「むきゅうぅぅぅぅぅ!? やめてえぇぇぇぇぇ!!!」 (けっかおーらいだね、あのようすぜったいなにかしっているよ) ゆっくりできないゆっくりが現れた時には焦ったけど、結局れいむ達がやっつけた。 そしてぱちゅりーたちはまりさについて何か知っているようだ。こらしめたらゆっくりと居場所を問いただせばいい。 (まったく、れいむからまりさをうばうなんておろかだね。そのためにみがわりのゆっくりをよういするなんてなんてゆっくりできないやつだね!!) このぱちゅりー達はれいむから愛しのまりさを奪い、隠している。れいむの頭の中ではそうなっていた。 「むきゅぅん!! むぎゅっ!! ぎゅー!!」 「やめでええええええぇぇぇぇぇ!!!」 子ぱちゅりーは家族を必死に止めようと叫ぶ。しかしその声は家族達には届かない。 それでも子ぱちゅりーは懸命に叫ぶ。自分の体のことなど省みずに。 そんな子ぱちゅりーにも衝撃が訪れた。 「ぶぎゅぅ!?」 「ぎゃあぎゃあとうるさいんだぜ」 「まりささまをばかにするからいけないんだぜ」 「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしぬといいんだぜ」 いつのまにか起き上がっていた三匹のまりさ達が、子ぱちゅりーを突き飛ばしたのだ。 餡子を撒き散らしながら転がっていくその光景を見て、ゲスまりさ達はゲラゲラと笑いだした。 (ゆっ……) 笑い声が聞こえる。一体何が起こったのだろうか。 子まりさはゆっくりと意識を覚醒させていく。 (そうだ、ぱちゅりーは!?) まだ目が霞んで周りが見えないが、辺りの状況を子まりさは確認しようとする。 体中から痛みが走る。まともに動くことすら間々ならない。 それでも必死になって前方を見る。徐々に視界がはっきりとする。 だが、そこには信じられない光景がそこには広がっていた。 (ぱ……ちゅ……り……?) まず目に飛び込んできたのは、見慣れた帽子だった。よく見ればその帽子は所々黒ずんでいる。 帽子の周りにも同じような黒い物体が点々と散らばっている。 帽子の影に隠れているのは、ただの大きな黒い塊だった。 次に見えたのは、その傍で餡子だらけで倒れているゆっくりの姿。 そしてその光景をみて馬鹿笑いしているゆっくり達。 (う……そ……だ……) まりさは理解してしまった。 目の前に横たわる物体が何者かであると。 その傍で傷だらけで倒れている者が誰であるかを。 それをみて笑うもの達の存在を。 (うそだあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!) 子まりさの悲しみの心を映すかのように、空は泣いていた。 「ゆっ、つめたいよ!! あめがふってきたよ!!」 「あめはゆっくりできないんだぜ、さっさとかえるんだぜ」 「みんな、おうちにかえるよ!! おかーさんについてきてね!!」 「「「「「わかったよ、おかーさん」」」」」 突然の雨に、ゆっくり達は急いで住処へと帰っていった。 笑い声の響いてた広場は、一瞬にして静寂を取り戻した。 次? 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注意書き 舞台について特に決めてはいませんがたぶん幻想郷の外だと思います。 人間に飼われるゆっくりがいます。 虐待描写は温めです。 前半は特にいじめとか言った描写はありません。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ん?なんだ、ゆっくりか…」 俺が大学のレポートを作成していると窓からゆっくりれいむが入ってきた。 まあ、特にゆっくりが嫌いというわけでもないし、汚れているというわけでもない、荒らしたり自分の邪魔をしないのであればそのまま放っておこうと思った。 「えーと…財務管理財務管理…」 教科書をめくり索引から項目を探す。 「おにいさん!!ここはおにいさんのおうちなの?」 「そうだよ」 無視して自分の家宣言されても困るので適当に答えておこう、あ、財務管理、5ページか。 「ゆ…あまりひろくないけどとてもゆっくりしたおうちだね!!」 「そりゃどーも、でもおまえの家よりは広いぞ?」 「そーだね!!!」 なんだ、理解はしていたのか、じゃあいいや、レポートを書こう。 しばらくれいむは黙って俺の方を見ていたがしばらくして俺に声をかけてきた。 「おにーさん!ゆっくりしてる!?」 何度も教科書とレポート用紙を見比べ、ペンを走らせる俺がゆっくりしてないように思えたのだろう、事実俺は今ゆっくりしていない。 「いや、あまりゆっくりしてないな」 「どおして!?ゆっくりしよう!!ゆっくりしていってよ!!」 そんなこと言ってもレポート書かないわけにはいかないし、でも急いで書くものでもなかったので、休憩がてらこいつと少し話してもいいかなと思った。 「じゃあどうすればゆっくりできるんだい?少し教えてほしいな」 「ゆゆ、そうだね…」 れいむは顔をしかめながら、しばらく考えた後答えた。 「おひるねをするとゆっくりできるよ!!」 「パスだ、俺に昼寝の習慣はない」 夜眠れなくなって授業中に寝てしまい、先生に怒られるのは嫌だからね。 「ごはんをたべるとゆっくりできるよ!!」 「却下、さっき昼飯を食ったばかりだからこれ以上は食べれない」 「ゆゆゆ…おにいさん、てごわいね…」 何が手ごわいんだよ、何が。 「そうだ!すっきりすればゆっくりできるよ!!」 「!?!?!?」 「ゆふふふ、すっきりすることにきづいたれいむはさすがゆっくりしてるね!!」 「俺には…」 「ゆ?どうしたの、おにいさん?」 「俺には…すっきりする相手がいないんだよぉ…」 お兄さんは泣いてしまいました。 「そう、おにいさんにはすっきりするあいてがいないんだね…」 「うぅ…」 ちくしょー、今まで親戚以外の女性に振れたこともない、俺の心の傷を掘り返しやがって… 「でもれいむにはすっきりするあいてがいるよ!!まいにちまりさとちゅっちゅしてすっきりするよ!!それもれいむもまりさもまだわかいからにんっしんしないすっきりだよ!!」 なんだよ、その「まだ社会人じゃないので避妊しています」みたいな言い方は!?それに毎日やってるのかよ!? ああ、なんだろう、たかが饅頭の癖になんだか怒りが込み上げてきたぞ…? 「ちゃんとにんっしんしないれいむはとてもゆっくりしてるでしょう!!じゃあれいむはもうかえるね!!かえってまりさときょうもすっき…」 「饅頭が調子に乗ってんじゃねえぇー!!」 俺はれいむの顔面をがしりと掴むと全力で窓の外に放り投げた。 5秒ほどそのままの体勢で固まってた俺は、レポートを書くために椅子に座った。 「……ふぅ、すっきり、さて、レポートレポート…」 俺ったら学生の鏡だねぇ、さて、財務管理は… 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!!!や゛め゛て゛え゛ぇぇぇ!!!」 「な、なんだぁ!?」 急に窓の外から悲鳴が聞こえてきた、俺はあわてて窓の外、悲鳴をした方向を見る。 「い゛や゛だぁぁぁ!!す゛っき゛り゛し゛た゛く゛な゛い゛い゛ぃぃ!!!」 「はぁはぁ、しょたいめんのありすにいきなりちゅっちゅしてくるれいむかわいいいぃぃ!!すっきりしよぉねえぇぇ!!」 なんと、さっき投げたれいむをありすが襲っていた、どうやら俺が投げたれいむがありすに命中、ちょうど口と口がぶつかる形になってありすが発情したのだろう。 まったく、この饅頭はどうしてこう俺の目の前ですっきりの話をしたがるんだろうか、すっきりしたがるんだろうか? というか白昼堂々、何の遮蔽物もないアスファルト上で交尾するっておかしいだろ? 「んほぉぉお!!いいよぉ!!れいむ!!れいむぅう!!」 「い゛や゛だあ゛ぁぁぁ!!すっきりしたら…しんじゃう゛う゛よ゛ぉお゛ぉお゛!!!!」 最初は放り投げただけで許してやろうと思ったのに…目の前で交尾なんかされては俺の怒りは有頂天だ。 交尾に夢中で周りを見る余裕がない二匹に近づいた俺は金属バットで二匹まとめて叩き潰した。これでゆっくりレポートが書ける… そう思ってレポート用紙を見るとおかしなところに気づいた、途中から文章が同じことの繰り返しを延々と描いているだけになっている… きっと、れいむの話に適当に答えている時にレポートに対する注意がそがれたのだろう… 「やっぱり最初から追い出しとくべきだった!!あの饅頭がぁ!!」 結局、レポートは書き直す羽目になった。 あとがき 普通な虐待ものを書こうと思ったのですが… 虐待描写って難しいですね。 9月4日 1724 セイン このSSに感想を付ける
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前 静けさを取り戻した広場で、一つの陰が動き出す。 動き出した影は別の影へと歩みだす。 そして影は互いに寄り添うように、一つになる。 そのまましばらく時が経過し── 一つの影は再び分かれ、歩みだした影は広場から消え去っていく。 影が歩みだした時、既に雨は止んでいた。 後編 あの日の出来事から数日が経過した。 森はいつもと変わらぬ朝を迎える。 「ゆっくりしていってね!!」 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 れいむ親子も例外ではなく、朝から元気よくいつもの挨拶をしていた。 「おかーさん、おなかすいたー」 「「「「おなかすいたー!!」」」」 「ゆっ、まっててね。すぐにあさごはんにするよ!!」 ゆっくりは起きてすぐ朝ごはんを食べる。いつもと変わらない習慣だ。 親れいむがご飯を子供達に与えようと食べ物の保管庫へと足を運ぶ。 そして子供達の前に食べ物を置いていった。 「さあみんな、ごはんをたべるよ!!」 「「「「「ゆゆーっ!!」」」」」 れいむ一家団欒の食事が始まる。 ゆっくりという名に相応しくなく、その食事はものの数十秒で終わってしまった。 「ゆっ、みんなゆっくりできた?」 食べ終えた子供達にゆっくり出来たかどうか確認する親れいむ。 しかし── 「おかーさん、ぜんぜんたりないよ!!」 「れいむたちをがしさせるき!?」 「もっとれいむたちにごはんをもってきてね!!」 「ゆゆっ!?」 子供達からの講義に、親れいむは慌てふためいた。 今まで食事の量は親ぱちゅりーが管理していたために、食事の量は適切に保たれていた。 、しかし親ぱちゅりーが居なくなってからは親れいむが管理することなったが、ちゃんと管理せず無計画に食べたいだけ食べる生活が続いた。 子供たちはそれを普段の量と勘違いしてしまったようだ。 本来ならばここで親ぱちゅりーが子供達を止めるのだが、その親ぱちゅりーも今はいない。 親れいむはそんな子供達の抗議を聞き、保管庫へと足を向ける。だがそこには少ししか食べ物が残ってなかった。 (ゆぅ……あとでいっぱいあつめればだいじょうぶだよね!!) 楽観的思考で残りの食べ物を持ってきた。 「ゆっ、しょうがないね。みんなでわけてたべてね!!」 「おかーさんありがとう!」「おかーさんやさしーね」「ぱちゅりーおかーさんとちがってゆっくりできるね」 「あんなのれいむたちをゆっくりさせなくておやじゃなかったよね」「ゆっくりー!!」 子供達の喜ぶ声に、親れいむは満足そうだった。 食事も終わって、親れいむは狩りに出かけた。 子供達も狩りにいくように誘ったが、 「もっとゆっくりしたいよ!!」「おかーさんがたくさんとってくればいいよ!!」 等と言い出したため、結局子供たちはお留守番となった。 お昼過ぎになって、親れいむは帰ってきた。 さっそく取ってきた食べ物を分け与えるが、子供たちはまたもや不平不満を言い始めた。 「こんなにすくないと、ゆっくりできないよ!!」 「おかーさんもっとれいむたちにごはんをちょうだいね!!」 親れいむは困り果てた。もう保管庫に食べ物はまったく無いのだ。 申し訳なさそうに子供達にこれ以上食べ物は無いと言うことを伝えた。 だが子供たちは納得しなかった。 「なんでだべものがないのおぉぉぉぉ!!」「おがーざんがだぐざんどっでごないがらだあぁぁぁぁ!!」 「ゆっ!! はやくたべものをたくさんとってきてね!!」「れいむたちはここでまってるよ!!」「ゆっくりー!!」 「ゆゆっ!?」 結局親れいむはまた狩りに出かける事になった。 付いていく子供は当然おらず、再び全員がお留守番という名目で遊んでいた。 そうして親れいむの帰りを待っていたその時、一匹のゆっくりが巣に近づいてくるのに、子れいむの一匹は気づいた。 「ゆっ、ぱちゅりーがきたよ!!」 「「「「ゆゆっ!?」」」」 自分達の妹であるぱちゅりーだ。れいむ達はそう確信する。死んだと思っていたぱちゅりーがまさか生きていたなんて── れいむたちは身構えた。 「ゆっ、ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりでていってね!!」 「「「「でていってね!!」」」」 「まって、ぱちゅりーはれいむたちのためにたべものをもってきたんだよ」 「「「「「ゆゆっ!?」」」」」 たべものという言葉にれいむ達は反応した。 どうやら間違いに気づいてお詫びの品として食べ物を持ってきたらしい。れいむ達はそう判断した。 「いいこころがけだね!! とくべつにゆるしてあげるからさっさとたべものをちょうだいね!!」 「「「「ちょうだいね!!」」」」 「こっちだよ、みんないちれつにならんでついてきてね!!」 ぱちゅりーと呼ばれたゆっくりの言いつけに従い、子れいむたちはぞろぞろと列を作って移動する。 誘導した先には食べ物が積み重ねられていた。 「はやいものがちだよ、ゆっくりたべていってね!!」 「「「「「ゆゆーーーーーっ!!!!!」」」」」 その言葉が引き金となり、子れいむたちは我先にと山に群がっていく。 当然一列に並んでいたため、先頭と最後尾では距離が違う。 必然的に最後尾のゆっくりは遅れてしまうが、そのゆっくりに声をかける。 「れいむ、れいむ」 「ゆっ!! じゃまをしないでね!! さっさとどいてね!!」 「れいむはとくべつだから、むこうにかくしてあるたべものをみんなあげるよ」 「ゆゆっ!?」 「こっちだよ、ついてきてね」 そう言って一匹のれいむを別の場所へと案内した。 先に食べ物に突撃したれいむ達は、この出来事にまったく気づかなかった。 「ほら、あそこだよ」 「ゆー!!」 れいむは歓喜した。先程と同じくらいの量の食べ物がそこには積まれていた。 もう我慢できないとばかりに食べ物へと突っ込んだ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~」 お決まりのセリフを言い、心底ゆっくりするれいむ。 夢中になって食べ物を食べ続ける。そんな様子を見てぱちゅりーと呼ばれたゆっくりはれいむの後ろに近づき── 枝を思いっきり突き刺した。 「ゆぶえぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!」 「……」 「いだいぃぃいだいよおおおおおおお!!」 「……うるさい」 「ゆ゛ぎゃぁぁあああぁぁぁぁ!!!!!」 目の前のクズが悲鳴を上げる。実に不愉快だ。 黙らせるために枝を左右に動かす。さらに声が大きくなった。 こんな行為の何処が楽しいのだ? 何処が面白いのだ? どうして笑うことが出来るんだ? 理解できない。したくもない。 「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ!!!」 「……うるさい」 「やべっ、やべでえぇぇぇぇ!!!」 「……うるさいよ」 「おがっ、おねがいじまずぅぅぅぅぅ!!!」 「……」 「だずげでぐだざいぃぃぃぃぃ!!!」 「だまれえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 「ゆ゛へ゛は゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!」 怒りに耐え切れず、枝を力任せに薙ぎ払う。 ああもう耳障りだ、鬱陶しい。憎たらしい。 何故謝る? 何故許しを乞う? 何故助かろうとする? そうした者達を嘲笑いながら止めをさす奴らにどうしてそんな資格があるというのだ!! 「ゆ゛っ……もっど……ゆっ……」 「……」 初めて同じゆっくり、しかも元家族に近かった者を殺しても、特に何も感じなかった。 目の前に横たわるのは、りぼんの付いた餡子の塊としか思えなかった。 無造作にりぼんを餡子から離すと、残りの四匹のれいむのいる場所へと向かった。 戻ってくると、そこには四匹のれいむが奇妙な行動を起こしていた。 「げらげらげらげら」 一匹のれいむは笑いながらあちこちを飛び跳ねている。 「……」 一匹のれいむは泡を吹いて仰向けに倒れている。 「すーやすーや」 一匹のれいむは笑い声が五月蝿いにも関わらずぐっすりと眠っている。 「ゆ゛っ………………ゆ゛っ………………」 一匹のれいむはじっとしているが時折痙攣するような動きを見せる。 その光景をみて、思わず呆れてしまう。 (ぱちゅりーおかあさんがくちをすっぱくしておしえてくれたのに……) れいむ達の奇妙な行動の原因は、毒キノコだった。 一応親ぱちゅりーから教えてもらったはずであるが、見事に忘れていたらしい。 (むくわれないね) そう思うと、持っている枝でれいむ達を淡々と殺し始めた。 「ゆっくりかえったよ!!」 二度目の狩りを終えて親れいむは帰宅した。 しかし親れいむは様子がおかしいことに気づく。愛しいわが子からの返事がまったく聞こえないのだ。 「ゆゆ? かくれてないででてきてね!!」 懸命に住処を捜索するが、誰も見つからない。 気のせいだと自分に言い聞かせ、同じ場所を隅々まで探し回っていたが、ついには感情を爆発させてしまった。、 「どうじでごどもだぢがいないのぉぉぉぉ!!」 しばらく泣き叫び続けていた親れいむであったが、泣き止むと空腹感に襲われた。 昼からずっと跳ね回り泣き続けていればお腹が空くのも無理は無いだろう。 むーしゃむーしゃと自分で取ってきた餌を食べてゆっくりし始めた。 「ゆっ、そうだ!! こどもたちをさがすよ!!」 自分の欲望が解消されて、親れいむは今一番しなければいけない事を思い出す。 思い立ったら即行動だと言わんばかりに飛び跳ねる。 そして自分の家の入り口から出た時、見慣れた帽子が目に飛び込んできた。 「れいむおかあさん、ただいま」 「ゆっ!? ぱちゅりー!?」 間違いない、あの帽子は自分の生んだ子ぱちゅりーだ。 でもぱちゅりーはゆっくりできなかったからお仕置きして外に追い出したはずだ。 どうしてもどってくるの? れいむには理解できなかった。 「あのね、ぱちゅりーがわるかったんだよ、はんせいしたんだよ。だかられいむおかあさんにあやまりにきたの」 「ゆゆっ!?」 どうやらぱちゅりーは謝りに来たらしい。伴侶であったあのゆっくりできないぱちゅりーと違ってとてもゆっくりした子ではないか。 きっと無理矢理あのゆっくりできないぱちゅりーが嘘を言って連れてったのだろう。れいむはそう解釈した。 「わかればいいんだよ!! ぱちゅりーはいいこだね!!」 「ありがとうおかあさん! それでね、ぱちゅりーからなかなおりのぷれぜんとがあるんだよ」 「ゆっ!?」 「でも……おかあさんをびっくりさせたいから、ちょっとうしろをむいててね」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 親れいむは後ろを振り向いた。そして感動していた。 れいむによく似ていて、なんていい子なんだろう。外見がぱちゅりーに似てなければもっと良かったのに。 それにしてもプレゼントとは一体なんだろう。お花かな?キノコかな?珍しい果物かな? 今か今かと親れいむがワクワクしながら待っていると── 背中から鋭い痛みが走った。 「ゆぎゃあああああああああああ!!!!」 親れいむは痛みに驚いて跳ね回り、後ろを振り返った。 そこには我が子と思っていたゆっくりが、枝を咥えていた。 親れいむはすぐに自分の背中を刺したのが、我が子であることに気づいた。 「どうじでごんなごどずるのおぉぉぉ!!!」 「──どうして? どうしてわからないの? ばかなの?」 「ゆぎいぃぃぃぃぃ!! ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!」 親れいむは怒りで頭に血が上っており、全力で目の前の敵に飛び掛る。 成体の体当たりだけあってスピードもそれなりに早く危険な一撃だ。 だがぱちゅりーの帽子を被ったゆっくりは、ぱちゅりー種らしからぬ運動神経でこれを横に避ける。、 「ゆっぎいぃぃぃ!!! よげるなぁぁぁああああ!!!」 親れいむは次こそは当てると意気込んで、体当たり攻撃を仕掛ける。 しかし再び避けられて当たらない。また同じことの繰り返しであった。。 一方的な攻防がただ続くだけだが、このままいけば体格差や種族差からして、親れいむよりも先に子ぱちゅりーの方が体力が尽きることは間違いなかった。 「ゆっ……ゆっ……」 しかし徐々に親れいむに疲労の色が見える。 目に見えて体当たりするスピードや跳ねる高さが落ちていくのが判る。 疲れてしまい、目線を敵から地面に向けたところで親れいむは気づいた。 「ゆ゛っ!! なにごれぇ!!」 地面には点々と、黒い物が散らばっていた。 恐怖で思わず体を後ろに引こうとしたとき、背中に激痛が走る。 親れいむは思い出した。自分は背中に傷がある。その状態で激しく動き回ったらどうなるか── 「いまごろきづいたの?」 「ゆぎゃあぁあぁぁぁあ!!!」 親れいむが全てを悟ったときにはもう遅かった。 枝を突き出して突進してくるゆっくりを避ける体力は残っておらず、そのまま攻撃を受けて悲鳴を上げる。 その一撃で遂にれいむは動く体力は全て奪われてしまった。 「ゆびーっ、ゆびーっ」 「れいむおかあさん、ぷれぜんとはまだあるんだよ、ここでゆっくりしていってね」 これ以上何をされるのだろうか、親れいむは恐怖を感じていた。 ゆっくりできない奴は何処かに消えたらしく、今が逃げるチャンスだった。 だが、もう這いずる気力も湧き上がらず、結局ぷれぜんとを待ち続ける事になった。 そして、恐怖のゆっくりが帰ってきた。 「ぱちゅりーかられいむおかあさんにぷれぜんとだよ!!」 そう言って差し出されたそれは、親れいむを絶望へと突き落とす。 「い゛や゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! ! !」 それは五つの餡子のついたリボンだった。差し出されたどのリボンにもれいむには見覚えがある。 いなくなったと思っていた愛する子供達のリボンだ。そしてリボンから出る匂いが意味することは一つ。 全てを理解した瞬間、親れいむは泣きながら叫んでいた。 それを見てリボンを持ってきた者は不快そうに呟く。 「そんなになけるんだね……かぞくなんてごみだとかんがえているくずだとばかりおもってたよ」 「でも……だったら……」 「どうじでばぢゅりぃだぢをごろぜるんだあぁぁあぁああぁああああ!!!!!!!!!」 後に残るは六つのリボンと一つの黒い物体だけだった。 次 このSSに感想を付ける