約 4,681,528 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2917.html
※うんうん設定が一部あります。 ※人間が一部出てきますが虐待お兄さんではありません。 ※中心となるゆっくりは虐待されません。 ※以下の条件が許容できない方は見ない方がいいかもしれません。 ゆっくりすること 野原の真ん中にまりさとれいむはいた。 常に一緒にいて、いつでもゆっくりしていた。 そんな2匹はゆっくりする事が生きがいなのだ。 ある時広場に1匹のまりさが現れた。 「ゆっくりかりをするよ!」 どうやら虫や花を狩って食料にするようである。 「なんでかりなんてするんだろうね」 「れいむもまりさも、かりなんてしないけどゆっくりしてるのにね」 くすくすと笑う2匹。 まりさにその声が聞こえてくる。 「なにがおかしいの?」 「かりなんてしてどうするの?」 「かりをすればたくさんごはんがてにはいるんだよ?しらないの?ばかなの?」 そのまりさの言葉に思わず目が点になり、直後笑う2匹。 「あはははは、ごはんだって、まりさはおかしいね!」 「な、なんでわらうの!?」 「わざわざごはんなんてものをほしがって、しかもてにいれないといけないなんて、まりさはゆっくりしてないね!」 まりさは信じられなかった。 自分は狩りも上手くて群でも結構人気のあるゆっくりだ。 狩りが上手い事は自分がゆっくり出来ている証だったのだ。 それを全否定される。 あまつさえゆっくりしていないなんて言われたのだからたまったもんじゃないだろう。 「まりさは、まりさは、むれでいちばんなゆっくりなんだよ!?」 「むれ、だって。まりさはおかしいね!」 「れいむたちはゆっくりできればいいんだよ?なのにむれたりかりをしたり、ぜんぜんゆっくりしてないね!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉ」 まりさは目に涙を浮かべ、野原から去っていった。 またあるときは頭に蔓をつけたれいむとちぇんがやってきた。 「ゆゆ~、れいむのかわいいあかちゃんゆっくりうまれてきてね」 「ちぇんとはにーのあいのけっしょうなんだねー、わかるよー」 幸せそうにしている2匹。 「あのれいむはあたまからつるなんてはやしてるね!」 「ほんとうだね!ゆっくりできてないね!」 まりさとれいむの声に、この番は反応した。 「ゆ?ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 挨拶を交わす4匹。 「ところでれいむはなんであたまからつるなんてはやしてるの?」 「れいむはにんっしんっしてるんだよ。かわいいあかちゃんをうむんだよ」 「「は?」」 馬鹿を見るような目で番を見つめる2匹。 「れいむがあかちゃんをうむ?どうしてそんなことをしないといけないの?」 「あかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!かわいいんだよ?」 「いいこにそだてるんだよーわかるよー」 「あかちゃんをうんでそだてるなんてゆっくりできてないね!」 「そうだね!ゆっくりできてないね!」 「わからない、わからないよー」 可愛い赤ちゃんや子育てを否定されたちぇんとれいむ。 勿論そんな事をされたら頭にくる。 「ゆがぁぁぁぁ!あかちゃんをばかにするなぁぁぁぁ!」 「やっぱりれいむはゆっくりできてないね!」 「そういうれいむとまりさはつがいじゃないのー?」 「つがい?どうしてつがいにならないといけないの?れいむとまりさはゆっくりしてるんだよ?」 「わからないよー」 結局憤慨したれいむとうなだれたちぇんはゆっくりできないまま野原を後にした。 またある時はレイパーありすが2匹に襲い掛かった。 「んほぉぉぉぉぉぉ!!!」 「体をこすりつけるなんてゆっくりできてないね!」 「なにしてるかわからないけどまりさたちはここでゆっくりしてるよ!」 「すっきりー!」 何ともない2匹を尻目にすっきりするありす。 しかし頭から蔓が生えたりにんっしんっのような状態になる気配はない。 「すっきりがたりないのかしら、とかいはのてくですっきりさせてあげるわ!」 「すっきりだって、ばかみたいだね」 「ゆっくりできてないんだね!」 その後もありすはすっきりしまくった。普通のゆっくりなら黒ずんでしまう位。 しかしいくらありすがすっきりしても、この2匹から蔓は生えてこない。 「なんであがぢゃんでぎないのぉ!?」 「あかちゃんなんてできるわけないよ!」 「ただゆっくりしてるだけなんだよ!」 「べとべとしたものをだすなんてありすはゆっくりできてないね!」 結局ありすは枯れ果てたような何かを悟ったようなえもいわれぬ顔になりふらふらとどこかへ消えていった。 ある時は赤れいむが目の前で排泄をしていた。 「ゆっきゅりうんうんしゅるよ!ちーちーするにぇ!」 「「うんうんとかちーちーとかするなんてゆっくりできてないね!」」 「にゃんでぇぇぇぇ!?」 赤まりさはショックを受けた。 うんうんやしーしーは巣の中ではやってはいけない事で、他の場所なら問題はないと教わっていた。 しかし目の前の2匹はうんうんとしーしー自体をする事がゆっくり出来ていないと言ったのだ。 「しかもそれがあんこ?さとうみず?」 「そんなのはおまんじゅうだよね!ちいさいしたったらずなれいむはおまんじゅうなんだね!!」 「れいみゅおまんじゅーさんじゃないよぉぉぉぉ」 饅頭といわれた赤れいむは涙を流しながら親元へ去っていった。 その後親れいむが文句を言いに来たが、ゆっくりしていないと言われ、またゆっくりプレイスを探す事を否定され怒りながら去っていった。 その内冬が訪れる。 2匹は変わらず野原だった所でゆっくりしていた。 「ゆっくりできてるね!」 「そうだね!ゆっくりできるね!」 「お、冬に外に出てるゆっくりなんて珍しいな」 2匹の目の前に人間が現れる。 「ゆっくりしていってね!」 「おにーさんはなにをしてるの?」 「俺?俺は冬篭りしているゆっくりを探しているんだ」 「ふゆごもりしてるゆっくりはゆっくりしていないゆっくりだね!」 男は驚いた。 この2匹は寒さをものともしないどころか冬篭りをするゆっくりをゆっくりしていないときっぱり言い張ったのだ。 「それじゃあさ…」 男は自分の知っているゆっくりに関する事について2匹に聞いた。 おうち宣言、畑荒らし、捕食者、雨で溶ける…etc その全てをこの2匹は「ゆっくりしてないね」と切り捨てたのだ。 「そっか、お前達みたいなゆっくりが増えたらいいんだけどな」 「おにーさん、ありがとう!」 「それじゃ俺は仕事があるからな、ゆっくりできてないゆっくりを捕まえてくるさ」 「がんばってねおにーさん!」 男は去り、白銀の世界で2匹はゆっくりし続けた。 ちなみに、この2匹に関わったゆっくりの行方を知る者は、誰もいなかった。 そして春。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりなかまをさがすよ!」 「ゆっくりかりをするよ!」 今年もまたゆっくりできていないゆっくりが溢れる。 しかし2匹には関係のないこと。 関わってきたとき位はゆっくり出来ていないと教えてあげる事は出来るが… ゆっくりはゆっくりさえしてればいい、この2匹にはそれが全てなのである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 原点回帰? ゆっくりしていないゆっくりはいじめがいがありますね。 自分達がゆっくりしてなくてもゆっくりしていると言い張るのはどうなんでしょう? 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり ゆっくりを育てたら。 ありす育ての名まりさ 長生きドスの群 メガゆっくり ゆっくり畑 益ゆっくりと害ゆっくり ゲスの行き着く先 つかれたまりさ 噂・ゲスの宿命 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1821.html
※現代社会に当然のようにゆっくりがいます。 ※オリ設定満載です。 ※ぬる虐めです。ボリュームも少なめです。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気がする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして、私はよくわからない成り行きでそのゆっくりを9匹も飼う羽目になってしまった普通の女子大生だ。 「あ~・・・お酒が飲みてぇ・・・」 私の家にゆっくりがやって来てはや2ヶ月。ここ最近全くお酒を飲んでいない。 それまでは毎日リットル単位で酒盛りしていたのだが、連中の食費を捻出するために真っ先に嗜好品のための出費を切ってしまった。 そんな訳で、齢20にしてアル中同然の私の我慢はもはや限界。 しかし、たとえゆっくりと言えど2ヶ月も付き合っていれば愛着は湧く。 今更捨てるわけにもいかず、かといって「1杯だけ」と言ってお酒に手を付ければ転がりやすい坂式にまた飲みたくなるのは目に見えていた。 「あ~・・・ゆっくり酒飲みてぇ・・・」 再び呟くが、流石にこればっかりはどうにかなるものでもない。 ため息をつきつつ、しばらくボーっと空を眺めていたが、10分ほどして飲みたい衝動が落ち着いてきたところでのっそりと立ち上がる。 そして、「さて、今日も頑張るか」と誰に言うでもなく口にしたそのとき・・・ 「ゆっくりしていってね!」 「んあ?」 これでもかというくらい聞きなれたその挨拶に反応した私はすぐさま視線を地面に落とし、きょろきょろと足元を見回した。 そこにいたのは見たこともない大きな2本の角の生えた下膨れのどこか既に出来上がった感のある顔饅頭。 見たことはないが聞いたことはある。確かこいつはゆっくりすいかだ。 「なんだ、ゆっくりか」 「おねーさん、ゆっくりしていってね!」 「はいはい、ゆっくりしていってね・・・ん?」 少しでも目の高さをあわせるためにしゃがみこんだ私に満面の笑みと二度目の挨拶を向ける。 すると、私を“ゆっくりできるもの”と認識したすいかはふらふらと酔っ払いの千鳥足を髣髴とさせる足取りで私の傍へ寄ってきた。 「・・・あんた、酒臭いね?」 「あたりまえだよ!すいかゆっくりできるおさけをもってるもん!」 「・・・・・・ほうほう」 そうかそうか、お酒を持っているのか。 しかし、相手はゆっくりだ。お酒を製造する技術があるとは思えず、また保管する技術もあるとは思えない。 となると、こいつの言う「持っている」の意味するところは一つしかない。 「・・・いただきます」 「ゆっ?!いだい、いだいよっ!ゆっぐぢやべでね!!」 「む~しゃ、む~しゃ・・・なるほど酒饅頭か」 すいかに向かって手を合わせてから、彼女の他のゆっくりより弾力のある頬を少しちぎって食べると口内にご無沙汰だったような気がしなくもない風味が広がってゆく。 「ん~・・・でも、これはお酒とは言いがたいなぁ・・・」 「おね゛ーざん、なにずるの!?すいがおごっだよ!!」 なまじ酒の味がするだけに酒を飲みたい衝動が緩和されるどころか一層フラストレーションが溜まる。 一方、すいかは私のそんな身勝手な不満に気づく様子も無く、“ぷっくううううぅぅっぅぅぅううぅぅぅぅ~”と頬を膨らませて膨張していた。 さっきまでは角を除けば普通のゆっくりよりやや小柄なくらいだったのに、今やすいかの頭頂部は私の腰の高さにまで達している。 「みっぢんぐばわーしたすいかはこわいんだよ!はやくあやまってね!」 「ん、ああ・・・ごめんごめん」 鬱陶しいのでさっさと謝るとすいかはいっぱい溜めた空気を吐き出し、すぐに元の大きさに戻った。 なるほど、すいか種は他のゆっくりの頬のような伸縮性が全身に備わっているらしい。 元の大きさに戻ったすいかはお約束のゆっくりを浮かべ、何故かプルプルと震え始める。 「ゆゆっ!おこったら、おさけがのみたくなってきたよ!」 「・・・そうかそうか」 その言葉を聞いた瞬簡にもし、万が一にも「酒よこせ」と抜かしたら踏み潰そうか・・・などと考える。 しかし、すいかが取った行動は私の想像とは異なるものだった。 「ゆっ・・・ゆっ・・・ゆ~っ!」 元気良く叫んだ瞬間、ポロッと右側の角が取れ、ころころと地面を転がる。 そして、すいかは取れた角を咥えると、細い先端部を噛み砕いた。 「ご~くご~く・・・うめぇ~♪」 よくも飲みながら喋れるものだ、などと思いつつもある確信を得た私はすいかの左側の角を引っこ抜く。 それから、実はかりんとうで出来ている角の先端部を噛んで潰し、その中の空洞を覗き込んでみた。 「ゆぎゅ!おねーさん、なにずるの!?」 「おおっ!お酒が入ってる・・・」 15cm以上はあろうかと言うすいかの角のなかをいっぱいに満たす液体。 しかも、なかなか美味しそうな匂いがする。 もはや飲め飲めモードに突入した私は、すいかの文句を聞き流しつつ、一気に酒を飲み干した。 「ご~くご~く・・・うめぇ~!」 「ゆううううううう!すいかのおさけだよ!かってにのまないでね!?」 傍らで空気を吸って膨張したすいかが何か言っているが、何かアレなスイッチの入ってしまった私の耳には届かない。 爛々と目を輝かせながらすいかの頭を見てみると、信じられない事に、なおかつありがたい事にもう右の角が再生していた。 というわけで、引っこ抜きそして飲む。 量はしっかり回復していたものの、さっきのより味は悪い。 なるほど、ある程度寝かせておかないと味が良くならないのか。 「やめでえええええええええええ!?」 しかし、それでも十分飲める程度の味だ。気にするほどのものでもない。 再びすいかの頭を見てみると今度は左の角がきっちり再生していた。 本当にありがたい。これで久しぶりに心行くまでゆっくりとお酒が楽しめる。 「ひゃあ、我慢できねぇ!酒盛りだぁ!!」 「これぢゃゆっぐぢできないよおおおおおおお!!」 人目もはばからずに叫んだ私は相変わらず膨らんで威嚇しつつも泣きじゃくるすいかの左の角を引っこ抜いた。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ この後、我に返ったお姉さんはお詫びも兼ねてすいかを家に招待することになる。 彼女の家を気に入ったすいかも住み着いて、家計が更に逼迫することに。 それでも、彼女にとって水さえあれば酒を作れるすいかは最高のゆっくりだったという。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/190.html
前書き このお話は現実世界にゆっくりが出現したような世界観で書かれています。 ゆっくりを飼い始めて1ヶ月ぐらいだろうか。 留守中にどこからか入り込り込んだゆっくりが布団で寝ていたときは驚いたが、 急いで台所を確認するがあらされた様子はない。 インスタント食品ばかりでゆっくりが食べられるようなものが無かったのが幸いした。 帰ってきた俺の気配に気づいたゆっくりが目を覚ます? 「・・ゆ?おじさんだーれ?ゆっくりできるひと?」 お決まりの台詞だ。 「ちらかってるし、ごはんもないけど、ゆっくりしていってね!」 確かに散らかっているが、お前が言う事じゃない。 起きたゆっくりがおもむろに動き出す。 「ゆ!」 ドーンと体当たりすると積んでいた漫画や雑誌の山が崩れだす。 ゆっくりはあたりをキョロキョロと何かを探しているようだった。 「ゆー、やっぱりごはんがないよ。」 「おじさん、ここはあんまりゆっくりできないところだから、 べつのところでゆっくりしたほうがいいよ!」 そう言うと今度は脱ぎっぱなしの洋服をくわえブンブンと振り回し始める。。 「おい!やめろ!」 あせって、ゆっくりを掴み取る。 「ゆ、ゆっくりはなしてね!れいむはおなかがすいたの!ごはんがないとゆっくりできないよ!」 「お前、お腹すいているのか?」 「すいてるよ!ゆっくりなにかたべさせてね!」 「あ、ああ、なにか食べさせてやるよ」 先に言われてしまったが、とりあえず何か食べさせてみよう。 冷蔵庫をあけ探してみるが、自炊などしないのでろくな物が無い。 「ああ、これなんていいかな。」 手にした食べ物をゆっくりに差し出す。 「ゆっくりたべさせてね!」 そう言ってゆっくりは口を大きく広げる。 こいつのあごの間接はどうなっているんだろうか。 「・・・・・・」 しらばらくそのままにしてみると、ゆっくりのまん丸な目がこちらを向く。 その目が徐々に早くしろよと言いたげなふてぶてしい物になる。 いいかげんに口に入れてやると、むしゃむしゃと幸せそうに味わいだす。 「うまいか?」 俺の問いかけに無言で口をあける。 「うまいか?」 もう一度聞くとさっきと同じような目をこちらに向ける。 俺が用意したご飯を食べ終えたゆっくりは窓際の日光がさしている所まで行き昼寝を始めた。 満足したのだろう。カビの沸いた蜜柑でもおいしいようだ。 それから今日までゆっくりは俺の生ごみ処理機として暮らしてきた。 もっとも、与えるのはカップメンの残り汁やまずくて食べられなかったコンビニの新商品ぐらいだった。 おなかがすいたと不満を漏らす事もあったが、目をつぶらせオレンジジュースと偽り水を流し込めばそれで満足していた。 さすがにおにぎりの包み紙や弁当の容器は食べられないようだが、小さいものであれば無理矢理の飲ませることもできる。 使用済みの丸めたティッシュやお菓子用の小さい包装紙はゴミとして出す必要がなくなった。 ゆっくりを飼ってから最初の冬を迎える。 家にはエアコンやファンヒーターといった都会派な暖房器具は無い。 暖をとるには一人用のコタツしかない。 昼間、日光がさしている時はそうでもないが夜になるとコタツ無しではいられない。 今夜もいつもの様に冷えてきた。 「さむいよ!ゆっくりさせてね!」 そういってコタツに入ろうとするゆっくり、 しかし、一人用のコタツは俺の足だけでいっぱいでゆっくりが入るスペースは無かった。 コタツ布団をもぐるだけでならスペースはあるが、 ゆっくりは真ん中のヒーターの下に移動しようとグイグイと押してくる。 かかとを落とすと静かになるのでそのまま蹴り出す。 そうすると静かになるので、そのまま蹴り出す。 ある日、帰ってくるとゆっくりの姿が見当たらない。 寒い外から帰って来た俺にはそんな事よりコタツが先だった。 カバンを置いてイソイソとコタツにもぐりこむ。 ああ、暖かい。ここが俺の桃源郷、体が温まるまでここでしばらくゆっくりしよう。 だが、待てよ。小さい一人用のコタツでもこんなに早く暖かくなるだろうか。 スイッチを切り忘れたか?いや、出かける前に切った記憶はある。 それに、なんだろう?このあったかいぷにぷにした物体は・・・。 コタツの中をみるとゆっくりがいた。 まさか、こいつが勝手にスイッチを入れたのだろうか・・・。 「ゆ?おじさん、おかえり!おなかすいたよ!ごはんまだ?」 「うるさい!おまえは出ろ!」 「ゆぐ!」 ゆっくりをコタツからけり出すと、ピョンピョン跳ねながら怒りをあらわにした。 「そこはれいむのゆっくりぽいんとだよ!おじさんはでてってね!」 「そんなにゆっくりしたいなら、おそとでゆっくりするよいいよ!」 「ゆっくりできないひととはいっしょにいられないよ!とっととでてってね!」 「そうか、おまえあったかい所でゆっくりしたいんだな・・・。」 「そうだよ!だからおじさんはでてってね!」 「ゆっくりするならもっといいところがあるよ。」 「ゆ?いいところ?だったらはやくあんないしてね!」 俺はコンロに鍋を置きその中にゆっくりを入れ蓋をしめる。 「ゆ!くらいよ!ここどこ!」 「おのれ謀ったなゆかり!だがこれで勝ったと思うな!」 「人の世に闇がある限り私は何度でも蘇る!」 「せいぜいその時まで・・・」 「ゆっくりしていってね!!!」 途中から訳のわからないことを喚きだすが、無視して火をつける。 火をつけて3分・・・・ 「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」 火をつけて5分・・・・ 「ゆふーzzZ・・・ゆふーzzZ・・・」 火をつけて10分・・・・ 「ゆ?あっあつよ!!ここどこ!ゆっくりだしてね!!!」 火をつけて15分・・・・ 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!あ”つ”い”-!!た”し”て”ー!!こ”こ”か”ら”た”し”て”ー!!!!」 「お”し”さ”ん”た”す”け”て”ー!!あ”つ”い”よ”ーー!!!!」 助けを求めてきたところで蓋をあける。 暑さに震えているゆっくりだが、俺の顔を見るといくらか安堵した顔をみせる。 「あ”あ”あ”・・・、お”し”さ”ん”た”す”け”て”・・・」 俺は鍋一杯になるまで水を入れてやる。鍋の温度は下がり水はぬるま湯になった。 ゆっくりはぬるま湯につかって気持ちよさそうにしていた。 「出してやろうか?」 「ゆ?もうちょっとここでゆっくりするよ!あとでだしてね!!」 「そうか、じゃあここでゆっくりしね」 「うん!ゆっくりしてるよ!!」 鍋に再び蓋をする。ゆっくりがまた何か言っているが気にせず蓋に重しを乗せておく。 10分ぐらい足っただろうか。 「おじさん!だして!そろそろだしてね!」 「はやくだして!ださないとゆっくりさせてあげないよ!」 「ゆ!ゆぐ!からだがとけるよ!はやぐたすけで!!」 いつの間にか静かになっていた。 時計を見ると水を入れてから30分ぐらいだ。 俺が静かになった鍋の蓋をあけるとそこには・・・・ Fin 後書き どうみてもお汁粉です。本当にありがとうございました。 設定として必要ないのですが、登場したゆっくりは一応霊夢です。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/627.html
※現代社会に当然のようにゆっくりがいます。 ※オリ設定満載です。 ※ぬる虐めです。ボリュームも少なめです。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気がする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして、私はよくわからない成り行きでそのゆっくりを9匹も飼う羽目になってしまった普通の女子大生だ。 「あ~・・・お酒が飲みてぇ・・・」 私の家にゆっくりがやって来てはや2ヶ月。ここ最近全くお酒を飲んでいない。 それまでは毎日リットル単位で酒盛りしていたのだが、連中の食費を捻出するために真っ先に嗜好品のための出費を切ってしまった。 そんな訳で、齢20にしてアル中同然の私の我慢はもはや限界。 しかし、たとえゆっくりと言えど2ヶ月も付き合っていれば愛着は湧く。 今更捨てるわけにもいかず、かといって「1杯だけ」と言ってお酒に手を付ければ転がりやすい坂式にまた飲みたくなるのは目に見えていた。 「あ~・・・ゆっくり酒飲みてぇ・・・」 再び呟くが、流石にこればっかりはどうにかなるものでもない。 ため息をつきつつ、しばらくボーっと空を眺めていたが、10分ほどして飲みたい衝動が落ち着いてきたところでのっそりと立ち上がる。 そして、「さて、今日も頑張るか」と誰に言うでもなく口にしたそのとき・・・ 「ゆっくりしていってね!」 「んあ?」 これでもかというくらい聞きなれたその挨拶に反応した私はすぐさま視線を地面に落とし、きょろきょろと足元を見回した。 そこにいたのは見たこともない大きな2本の角の生えた下膨れのどこか既に出来上がった感のある顔饅頭。 見たことはないが聞いたことはある。確かこいつはゆっくりすいかだ。 「なんだ、ゆっくりか」 「おねーさん、ゆっくりしていってね!」 「はいはい、ゆっくりしていってね・・・ん?」 少しでも目の高さをあわせるためにしゃがみこんだ私に満面の笑みと二度目の挨拶を向ける。 すると、私を“ゆっくりできるもの”と認識したすいかはふらふらと酔っ払いの千鳥足を髣髴とさせる足取りで私の傍へ寄ってきた。 「・・・あんた、酒臭いね?」 「あたりまえだよ!すいかゆっくりできるおさけをもってるもん!」 「・・・・・・ほうほう」 そうかそうか、お酒を持っているのか。 しかし、相手はゆっくりだ。お酒を製造する技術があるとは思えず、また保管する技術もあるとは思えない。 となると、こいつの言う「持っている」の意味するところは一つしかない。 「・・・いただきます」 「ゆっ?!いだい、いだいよっ!ゆっぐぢやべでね!!」 「む~しゃ、む~しゃ・・・なるほど酒饅頭か」 すいかに向かって手を合わせてから、彼女の他のゆっくりより弾力のある頬を少しちぎって食べると口内にご無沙汰だったような気がしなくもない風味が広がってゆく。 「ん~・・・でも、これはお酒とは言いがたいなぁ・・・」 「おね゛ーざん、なにずるの!?すいがおごっだよ!!」 なまじ酒の味がするだけに酒を飲みたい衝動が緩和されるどころか一層フラストレーションが溜まる。 一方、すいかは私のそんな身勝手な不満に気づく様子も無く、“ぷっくううううぅぅっぅぅぅううぅぅぅぅ~”と頬を膨らませて膨張していた。 さっきまでは角を除けば普通のゆっくりよりやや小柄なくらいだったのに、今やすいかの頭頂部は私の腰の高さにまで達している。 「みっぢんぐばわーしたすいかはこわいんだよ!はやくあやまってね!」 「ん、ああ・・・ごめんごめん」 鬱陶しいのでさっさと謝るとすいかはいっぱい溜めた空気を吐き出し、すぐに元の大きさに戻った。 なるほど、すいか種は他のゆっくりの頬のような伸縮性が全身に備わっているらしい。 元の大きさに戻ったすいかはお約束のゆっくりを浮かべ、何故かプルプルと震え始める。 「ゆゆっ!おこったら、おさけがのみたくなってきたよ!」 「・・・そうかそうか」 その言葉を聞いた瞬簡にもし、万が一にも「酒よこせ」と抜かしたら踏み潰そうか・・・などと考える。 しかし、すいかが取った行動は私の想像とは異なるものだった。 「ゆっ・・・ゆっ・・・ゆ~っ!」 元気良く叫んだ瞬間、ポロッと右側の角が取れ、ころころと地面を転がる。 そして、すいかは取れた角を咥えると、細い先端部を噛み砕いた。 「ご~くご~く・・・うめぇ~♪」 よくも飲みながら喋れるものだ、などと思いつつもある確信を得た私はすいかの左側の角を引っこ抜く。 それから、実はかりんとうで出来ている角の先端部を噛んで潰し、その中の空洞を覗き込んでみた。 「ゆぎゅ!おねーさん、なにずるの!?」 「おおっ!お酒が入ってる・・・」 15cm以上はあろうかと言うすいかの角のなかをいっぱいに満たす液体。 しかも、なかなか美味しそうな匂いがする。 もはや飲め飲めモードに突入した私は、すいかの文句を聞き流しつつ、一気に酒を飲み干した。 「ご~くご~く・・・うめぇ~!」 「ゆううううううう!すいかのおさけだよ!かってにのまないでね!?」 傍らで空気を吸って膨張したすいかが何か言っているが、何かアレなスイッチの入ってしまった私の耳には届かない。 爛々と目を輝かせながらすいかの頭を見てみると、信じられない事に、なおかつありがたい事にもう右の角が再生していた。 というわけで、引っこ抜きそして飲む。 量はしっかり回復していたものの、さっきのより味は悪い。 なるほど、ある程度寝かせておかないと味が良くならないのか。 「やめでえええええええええええ!?」 しかし、それでも十分飲める程度の味だ。気にするほどのものでもない。 再びすいかの頭を見てみると今度は左の角がきっちり再生していた。 本当にありがたい。これで久しぶりに心行くまでゆっくりとお酒が楽しめる。 「ひゃあ、我慢できねぇ!酒盛りだぁ!!」 「これぢゃゆっぐぢできないよおおおおおおお!!」 人目もはばからずに叫んだ私は相変わらず膨らんで威嚇しつつも泣きじゃくるすいかの左の角を引っこ抜いた。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ この後、我に返ったお姉さんはお詫びも兼ねてすいかを家に招待することになる。 彼女の家を気に入ったすいかも住み着いて、家計が更に逼迫することに。 それでも、彼女にとって水さえあれば酒を作れるすいかは最高のゆっくりだったという。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1948.html
* 一応『ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 』からさらにさかのぼります。 物語的には第一話、というよりプロローグで、町れいむ一家はお休みです。 * このシリーズにあるまじきことですが、自然の脅威はゆっくりを襲いません。 * 前回説明不足だったので補足。主役のれいむ一家は、3ヶ月毎に1世代移行します。 つまり、春の赤れいむ=夏の親れいむです。 以降季節が変わるたびに主役も次世代へと受け継がれる予定です。 サブキャラのゲスまりさとゆうかりんは同一ゆっくりですが。 『春の恵みさんでゆっくりするよ』 D.O 『・・・○○地方一帯に森ゆっくり注意報が発令されました。 地域住民の皆さまは戸じまりに十分留意して、食品やコワレモノはゆっくりが届かないところに・・・』 「ほぉ。今年もゆっくりの季節か。春だなぁ。」 「何のんきなこといってるんですかっ、もう。また庭に物がおけなくなるわぁ。」 「ええー。ボクたのしみー。おおきくなったらゆっくりせいそうのおじさんになるんだー。」 「四十八!変なこと言ってないで早く学校行きなさい!遅れるわよ!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」 「ゆっくりしていってね!ゆゆーん、かわいいおちびちゃんだよー。」 「「「きゃわいきゅってごめんなしゃい!!!」」」 「おちびちゃん、すーり、すーりしようね!」 「「「しゅーり、しゅーり!ちあわちぇぇぇぇえええ!!!」」」 ころす 3月の終わり。 山では雪解けも終わり、 すっきり―の季節を迎えていた。 森や山では、野生のゆっくり達が冬ごもりから解放され、 春の草花をモリモリ食べてはすっきりー。 越冬失敗によって9割以上が永遠にゆっくりする彼女たちも、この時期には勢力を取り戻すのだ。 * o + # * o 取り戻しすぎるのだ。 自然の中では赤ゆ達がはしゃぎまわる喧騒に包まれているころ、 町のゆっくり達は様子がどうも違う。 では、町中の広場、そこの公衆便所裏にあるれいむのおうちをご覧いただこう。 「すぴー、すぴー。ゆっくりー。」 寝ている。 断わっておくが、別に彼女は怠惰なゆっくりではない。 近年町ゆの間で生まれた新たな習性、『春ごもり』を行っているのだ。 町ゆ達は寒い冬の間も活動を続ける。 秋にごはんがたくさん手に入るわけでもないのだから、おちおち冬ごもりなどと言っていられない。 その一方で、冬の間はクリスマスケーキ、正月のモチやおせち、節分の豆と恵方巻、バレンタインのチョコと、 ゴミ捨て場から、十分な『あまあま』が手に入るのだ。競争相手もとっくに激減しているのでほとんどいない。 あとはおうちの床下に穴を掘り、雪と一緒に食糧を埋めてしまえば、 2月の終わりから4月の初めあたりまでゆっくりしていられるわけである。 しかし、町ゆ達はゆっくりするために春ごもりをするわけではない。ではなぜ。 * o + それは、自然界のゆっくりには起こり得ない切実な問題、『食料不足』が春の町を襲うからだ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」 「ゆゆーん。あれがにんげんさんのまちさんだよ!」 「まちしゃんはゆっくちできりゅの?」 「ゆっくち!ゆっくち!」 この森れいむも、赤まりさと赤れいむを頭に乗せて町までやってきた。 理由は、群れ全体の非常用食糧保管庫で、無断でむーしゃむーしゃしたためだ。 早い話が追い出された。 その割に悲壮感がないのは、何と言っても春だからだろう。 春のゆん口爆発によって、自然界では群れの間引きが行われる。 別に大した罪でなくても、無能というだけで群れを追い出されることもあるくらいなので、 れいむへの仕打ちは妥当な方だ。 ただし、ゆっくりの群れでは通常、掟を破っても命までは奪わないので、事実上は追放刑が極刑であるが。 自然、人間さんの町を目指して、多くのゆっくりが家族連れでやってくることになる。 目的は様々だ。 人間さんのあまあまに味をしめたもの。 漠然と都会派に憧れるもの。 人間さんはまりさの奴隷だぜ、なもの。 ゲス・ぼせい(笑)・レイパー行為がとがめられ、群れから追い出されたもの。 一つ確かなことは、ゆっくりしたゆっくりは町になどやって来なくてもゆっくり出来ているということ。 そもそも開拓者精神など、ゆっくりには過ぎた代物なのだ。 『ゆっくり警報が発令されました。本日○○時以降、虹浦町内における、登録車両以外の使用を禁止します。』 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆゆーん。まちさんについたよ!」 「にんげんしゃんがいっぴゃいだよ!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 「ゆっゆーん。あまあまがいっぱいだよ!きっとにんげんさんが、れいむたちによういしてくれたんだね!」 れいむの目の前には商店街。 町は、ゆっくりスリップによる事故防止のため、原則車両の使用が禁止されている。 そのため歩行者が目立つが、それ以上に目立つのはれいむより先にやってきたゆっくり達だ。 彼女たちはてっとり早くあまあまを手に入れるため、れいむ同様、商店の陳列棚に狙いを定めていた。 というより、最初から自分たちのためのご飯だと思っている。 青果店でよだれを垂らしている、あのまりさ一家もだ。 「ゆふぅーん。あまあまがまりさたちをまってるんだぜ。」 「「「「「ゆっくちいただきましゅ!」」」」」 ぺたぺたぺたっ!ぺたん、ぺたん。・・・? 「とうめいなかべさんがじゃまするんだぜ!にんげんさん!ゆっくりあまあまをちょうだいね!」 「ゆっくちちたあまあましゃんをちょーらいにぇ!」 「・・・はーい、お買い上げありがとやんした―!」 「「「「「「むししないでねぇぇえええ!」」」」」」 陳列棚はガラスケース付きだ。保冷のためではあるが、対ゆっくり用でもある。 ブロロロロロロロロ・・・・・・・・・・・・・・・ 『ゆっくり清掃、ゆっくり清掃、ゆっくり清掃です。』 「清掃お願いしゃーす!」 「はい、こちらですね。」 見た目は青く塗装されたタンクローリー、側面にはニコニコゆっくりマークと『ゆっくり清掃』の文字。 そのタンクから伸びる、直径30cmほどのフレキシブルチューブの先端には、 太さ6cm、長さ50cmほどの筒先が取り付けられている。 青い作業服を着た清掃員は、親まりさに筒先を向ける。 「ゆゆっ?おにーさん、ゆっく」 ブヂュンッ!ズゴゴゴゴゴォォォォオオオオ! 親まりさは、自分よりはるかに細い筒の口に、勢いよく吸い込まれていった。 原型を保つことなく。 「ゆ?ゆ・・・おきゃあしゃんぎゃぁぁぁああああ!」 「はい、君らもね。」 「やめちぇぇぇええええ!」 ブヲォォオオオオオオ!しゅこん。しゅぽぽぽん。 「ゆっくちかくれちゃよ!」 「でみょ、おきゃあしゃんぎゃ・・・。」 「こっちの隙間にもいるかな?」 ブォオオオオ。しゅぽぽん。 「これで終わりですかね。ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「あっ、まだいた。」しゅぽん。 「はい、終わりましたー。」 「ご苦労さんっす。ゴミ掃除にもなるからありがてえっすよ。 今年の森ゆっくりはどんくらい続きやっすかねぇ。」 「そうですね。私どもは、二週間も続かないとみております。」 「あっ!ゆっくり清掃のおにーさんだー!かっけー!」 「こんにちはー。」 「ねーねーおにーさん!ゆっくり清掃の人って、どうすればなれるのー?」 「・・・そうだね。たくさんお勉強して、ご飯を好き嫌いしないとなれるよ。」 「うん!ぼくがんばる!じゃーねー!」 「おい、儚井。おめぇかっこつけてんなー。」 「まあ、市役所の職員が持ち回りでやってるって、なんか夢ないでしょ。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おきゃあしゃん。あにょあおいにんげんしゃん、ゆっくちきょわいよ。」 「ゆ、ゆぅ。あのおにーさんにはちかづかないようにしようね。」 「ゆあーん。おなきゃしゅいちゃよー。」 せっかく人間さんの町にやってきたのに、あまあまはもらえず、 怖いお兄さんが青いすぃーでうろついている。 とりあえずなにがむーしゃむーしゃしないとゆっくりできない。 幸い、町中には植栽やら芝生やらが多い。味さえ我慢すれば・・・ 「むーしゃ、むーしゃ、しあわ・・・ゆげぇ。」 「ゆびぇぇぇぇ・・・えれえれ。」 「もっちょゆっくち、しちゃかっちゃよ・・・。」 「おちびちゃん、おちびちゃぁぁぁああああん!」 赤まりさ退場。 「どぼぢで、どぼぢでくささん、へんなあじするのぉぉおおおお!」 この時期、町の植栽や芝生では、石鹸水とトウガラシ成分を含んだ防虫剤が散布される。 別に効果が強いわけでも、安価なわけでもなく、防ゆっくり効果が高いという理由で、 年間を通じてこの時期だけ売り上げを伸ばすのだ。 ゆっくりからすれば、辛くて苦くて変な味がする。 赤ゆならば、餡子を吐き出して絶命する程度に。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆぅぅぅぅ、おちびちゃんがぁ。」 「まりしゃおにぇえちゃんがぁ」 「むほぉぉおおおおおおおおおお!」 「「ゆゆっ!」」 れいむ親子がとっさに電柱の影に身を隠すと、その向こうにはおなじみのレイパーありすがいた。 住宅の柵の隙間に体をねじ込むようにして、何やら家の中を見ているようだ。中からは飼いゆっくりの声が聞こえる 「むほぉぉおおおお!とかいはなれいむねぇぇえ。すっきりしましょぉぉおおおお!」 「おにぇえしゃん。おしょとにきもちわりゅいありしゅがいりゅよぉ。」 「あれはね、れいむ。なまはげありすっていうの。」 「にゃまはげ?」 「そうよ。あのありすは、お友達のありす達と違って気持ち悪いでしょう。」 「なにいってるのぉぉおおおお!ありすはとってもとかいはでしょぉおおお!」 「なまはげありすはね、お姉さんの言うことを聞かない悪いゆっくりだとね。 無理矢理すっきりして、食べちゃうのよぉ(笑)!」 「ゆあーん。にゃまはげしゃんはゆっくちできにゃいよぉ。」 「大丈夫よ。れいむはお姉さんの言うこと聞ける、とってもいい子でしょ。」 「ゆん!れいみゅはしゅききらいしにゃいよ! おにぇーしゃんのものはこわしゃないよ!とっちぇもいいこだよ!」 「ほうちぷれいなのねぇぇええ!もえるわぁぁぁああああ!」 『・・・・・・ゆっくり清掃、ゆっくり清掃、ゆっくり清掃です。・・・・・・』 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆぅぅぅ。れいぱーもこわいけど、あのあおいすぃーはもっとこわいよ。」 「おきゃーしゃん・・・おにゃきゃすいちゃよ。」 れいむ達は商店街、住宅地を逃げ回り、いつしか大きな川の河川敷までたどり着いていた。 だが、普段であれば雑草が生い茂る河川敷も、先着の森ゆっくりたちによって雑草が食らい尽され、黒い土をさらけ出している。 大抵の森ゆっくり達は、れいむ達と同じ道をたどってきたのだ。 「ゆぅ・・・ゆゆっ!かわさんのなかにまりさたちがいるよ!」 「ゆっくちしたくさしゃんをとっちぇるよ!」 澄み切った青い空を映す川では、多くのまりさ達が帽子に乗って川の中に進み、豊富に生えた水草を収穫していた。 食料の見当たらない町をさまよい続けたれいむ達にとって、白馬にまたがる英雄に映ったことだろう。 「まりさぁ・・・れいむたちにもごはんさんをとってほしいよ。」 「ゆふん!まりさとしても、なんとかしてやりたいところなんだぜ。 でも、ただってわけにはいかないんだぜ!」 「?」 「まりさは・・・じつはずっとゆっくりするおあいてがいないんだぜ。 れいむはなかなかのびれいむなんだぜ!まりさとずっとゆっくりしてほしいんだぜ!」 「ゆゆーん。れいむはいいよぉ。」 結婚のバーゲンセール。 ともあれ、つがいとなるなら話は早い。まりさはもっと狩りに精を出すことにした。 れいむは、堤防の上の道からまりさに声援を送る。 「まりさー、いっぱいむーしゃむーしゃさせてね!」 「あたらちいおとーしゃん、かっこいいにぇ!」 「ゆっゆーん!まりさにまかせるんだぜー!」 『プォーーーーーン。○○時から、町内ゆっくり洗浄を実施します。 ○○川の水門を開放するので、××橋から△△橋の間では、河川敷から退去して下さい。・・・』 それからちょうど30分後、町中の排水溝・側溝、小川から大きな川まで一斉に大量放水が開始された。 ゆっくり洗浄。 通常は梅雨・秋雨の時期に、○○川に設置された水門を一斉開放して、 堤防に巣穴を掘るゆっくりを流しつくす作業を示す。 だが、この時期は特別に、町中の水路という水路に一斉に水を流すことで、 内部を住処にしようとする森ゆっくりを駆除する。 市の財政としてはありがたくないが、町がきれいになるということで、市民には割と高評価を受けている。 れいむは、つがいとなったばかりの伴侶が彼方まで流れていく様を、茫然として眺め続けていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− * o + 3日後、れいむ親子は生きていた。 ただし、町に来てからむーしゃむーしゃは一度もしていない。 赤れいむなどは、れいむの頭の上で、ほとんど動くこともできないほどに衰弱しきっていた。 「ゆぅ・・・ゆっ!あれは、にんげんさんのごはんさんだよ!」 目の前では、まさに今、人間さんが生ゴミを捨てようとしていた。 人間さんはゆっくりできない。3日の町での生活で、れいむ親子は身にしみるほどに理解していた。 人間さんが、生ゴミの入った袋をゴミ集積用カーゴに入れ、屋内に入っていくのを息をひそめて確認した後、 れいむ親子はカーゴに這い寄った。 「「「「「「わかるよー。」」」」」」 「「「「「「ごはんさんだぜぇぇえええ。」」」」」」 「「「「「「とかいはぁぁぁあああああああ!」」」」」」 「ゆっ!?」 当然れいむだけではなかった。 カーゴに群がるゆっくり達。その姿は飴に群がるアリの様で、少なくともゆっくりはしていなかった。 「ゆっきひぃ!あかないよっ!ごはん、ごはんぅぅうう!」 「ゆっぐぢぃ!ゆっぐぢぃ!」 カーゴにはダイヤル錠がつけられていた。 実のところ、この町のゴミ集積場には錠前がつけられてはいても、 普段ならば面倒臭がって施錠まではされていないことが多い。というより施錠しない。 町の人間さんは、春の始まりとともに思い出すのだ。 ―――そういえば、ゆっくりって、春の始まりあたりになると、途端にゴミの漁り方が汚くなるんだよなぁ――― 「ゆっぐじざぜでぇぇぇええええ!!!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− れいむが町へやってきて4日が経った。 れいむは今、駅のコンコースにいる。 赤れいむはもういない。 永遠にゆっくりしてしまったから、むーしゃむーしゃした。 どうして、こんなことになったの? どうして、にんげんさんのまちには、ごはんさんがないの? どうして?はるさんはきたよ?どうして・・・。 れいむは自分に残された最後の力を振り絞っておうたを歌う。 れいむの前には猫缶の空き缶。 れいむのおうたをきいて、ゆっくりできたらごはんさんをちょうだいね。 駅には、ラジオのノイズのような雑音が響いた。 ね、ゆっくりできたでしょ?ごはんさんをちょうだい。 かすむ視界、その目の前には一人だけ、人間さんが立っていた。青い服を着た人間さんが・・・ 『・・・・・・ゆっくり清掃、ゆっくり清掃、ゆっくり清掃です。・・・・・・』 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 『・・・○○地方一帯に発令中でした森ゆっくり警報が解除されました。・・・』 毎年3月の終わりに町にやってくる、総勢数万とも言われる森ゆっくり。 彼女たちの5月までの生存確率は、この数年では絶無である。 1000分の1、10000分の1ではない。ゼロだ。 だが、生き残る可能性がゼロかというと、そうではない。 10年近くも前に一匹のぱちゅりーが森から移り住み、 極上の運と稀に見る知性、多くの仲間の助けの中で生き延び、 体高50cmを超えるほどに成長した末、ついに森へと生きて帰りついた例もある。 今年は、第2のぱちゅりーが現れただろうか。 まあ、どうでもいいことだ。 これから始まる物語の主役は森のゆっくり達などではなく、 町で世代を重ね、儚い命を精一杯燃やしながら生き続ける、 あの、町れいむの一族なのだから・・・・・・ お蔵入りしかけたSS。仕上がりがやっつけ気味かも。 理由は簡単、人間さんの手を煩わせ過ぎです。 森れいむも好みじゃないし。 あと、『竜巻』の回で、真の都会派教育(笑)という反応だったので補足します。 真の都会派教育をうけたありすは、既婚ゆっくりは襲いません。 むほぉぉおおお、は警告シグナルです。本気で嫌がるといつもの都会派に戻ります。 町ゆが絶滅しないために、未婚の町ゆたちに赤ちゃんを授けてくれるコウノトリさんなんですね。 子育ては基本的に手伝いませんが。 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順) 春-1. 本作品 春-2. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業 夏-2. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね D.Oの作品集
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/231.html
前書き このお話は現実世界にゆっくりが出現したような世界観で書かれています。 ゆっくりを飼い始めて1ヶ月ぐらいだろうか。 留守中にどこからか入り込り込んだゆっくりが布団で寝ていたときは驚いたが、 急いで台所を確認するがあらされた様子はない。 インスタント食品ばかりでゆっくりが食べられるようなものが無かったのが幸いした。 帰ってきた俺の気配に気づいたゆっくりが目を覚ます? 「・・ゆ?おじさんだーれ?ゆっくりできるひと?」 お決まりの台詞だ。 「ちらかってるし、ごはんもないけど、ゆっくりしていってね!」 確かに散らかっているが、お前が言う事じゃない。 起きたゆっくりがおもむろに動き出す。 「ゆ!」 ドーンと体当たりすると積んでいた漫画や雑誌の山が崩れだす。 ゆっくりはあたりをキョロキョロと何かを探しているようだった。 「ゆー、やっぱりごはんがないよ。」 「おじさん、ここはあんまりゆっくりできないところだから、 べつのところでゆっくりしたほうがいいよ!」 そう言うと今度は脱ぎっぱなしの洋服をくわえブンブンと振り回し始める。。 「おい!やめろ!」 あせって、ゆっくりを掴み取る。 「ゆ、ゆっくりはなしてね!れいむはおなかがすいたの!ごはんがないとゆっくりできないよ!」 「お前、お腹すいているのか?」 「すいてるよ!ゆっくりなにかたべさせてね!」 「あ、ああ、なにか食べさせてやるよ」 先に言われてしまったが、とりあえず何か食べさせてみよう。 冷蔵庫をあけ探してみるが、自炊などしないのでろくな物が無い。 「ああ、これなんていいかな。」 手にした食べ物をゆっくりに差し出す。 「ゆっくりたべさせてね!」 そう言ってゆっくりは口を大きく広げる。 こいつのあごの間接はどうなっているんだろうか。 「・・・・・・」 しらばらくそのままにしてみると、ゆっくりのまん丸な目がこちらを向く。 その目が徐々に早くしろよと言いたげなふてぶてしい物になる。 いいかげんに口に入れてやると、むしゃむしゃと幸せそうに味わいだす。 「うまいか?」 俺の問いかけに無言で口をあける。 「うまいか?」 もう一度聞くとさっきと同じような目をこちらに向ける。 俺が用意したご飯を食べ終えたゆっくりは窓際の日光がさしている所まで行き昼寝を始めた。 満足したのだろう。カビの沸いた蜜柑でもおいしいようだ。 それから今日までゆっくりは俺の生ごみ処理機として暮らしてきた。 もっとも、与えるのはカップメンの残り汁やまずくて食べられなかったコンビニの新商品ぐらいだった。 おなかがすいたと不満を漏らす事もあったが、目をつぶらせオレンジジュースと偽り水を流し込めばそれで満足していた。 さすがにおにぎりの包み紙や弁当の容器は食べられないようだが、小さいものであれば無理矢理の飲ませることもできる。 使用済みの丸めたティッシュやお菓子用の小さい包装紙はゴミとして出す必要がなくなった。 ゆっくりを飼ってから最初の冬を迎える。 家にはエアコンやファンヒーターといった都会派な暖房器具は無い。 暖をとるには一人用のコタツしかない。 昼間、日光がさしている時はそうでもないが夜になるとコタツ無しではいられない。 今夜もいつもの様に冷えてきた。 「さむいよ!ゆっくりさせてね!」 そういってコタツに入ろうとするゆっくり、 しかし、一人用のコタツは俺の足だけでいっぱいでゆっくりが入るスペースは無かった。 コタツ布団をもぐるだけでならスペースはあるが、 ゆっくりは真ん中のヒーターの下に移動しようとグイグイと押してくる。 かかとを落とすと静かになるのでそのまま蹴り出す。 そうすると静かになるので、そのまま蹴り出す。 ある日、帰ってくるとゆっくりの姿が見当たらない。 寒い外から帰って来た俺にはそんな事よりコタツが先だった。 カバンを置いてイソイソとコタツにもぐりこむ。 ああ、暖かい。ここが俺の桃源郷、体が温まるまでここでしばらくゆっくりしよう。 だが、待てよ。小さい一人用のコタツでもこんなに早く暖かくなるだろうか。 スイッチを切り忘れたか?いや、出かける前に切った記憶はある。 それに、なんだろう?このあったかいぷにぷにした物体は・・・。 コタツの中をみるとゆっくりがいた。 まさか、こいつが勝手にスイッチを入れたのだろうか・・・。 「ゆ?おじさん、おかえり!おなかすいたよ!ごはんまだ?」 「うるさい!おまえは出ろ!」 「ゆぐ!」 ゆっくりをコタツからけり出すと、ピョンピョン跳ねながら怒りをあらわにした。 「そこはれいむのゆっくりぽいんとだよ!おじさんはでてってね!」 「そんなにゆっくりしたいなら、おそとでゆっくりするよいいよ!」 「ゆっくりできないひととはいっしょにいられないよ!とっととでてってね!」 「そうか、おまえあったかい所でゆっくりしたいんだな・・・。」 「そうだよ!だからおじさんはでてってね!」 「ゆっくりするならもっといいところがあるよ。」 「ゆ?いいところ?だったらはやくあんないしてね!」 俺はコンロに鍋を置きその中にゆっくりを入れ蓋をしめる。 「ゆ!くらいよ!ここどこ!」 「おのれ謀ったなゆかり!だがこれで勝ったと思うな!」 「人の世に闇がある限り私は何度でも蘇る!」 「せいぜいその時まで・・・」 「ゆっくりしていってね!!!」 途中から訳のわからないことを喚きだすが、無視して火をつける。 火をつけて3分・・・・ 「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」 火をつけて5分・・・・ 「ゆふーzzZ・・・ゆふーzzZ・・・」 火をつけて10分・・・・ 「ゆ?あっあつよ!!ここどこ!ゆっくりだしてね!!!」 火をつけて15分・・・・ 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!あ”つ”い”-!!た”し”て”ー!!こ”こ”か”ら”た”し”て”ー!!!!」 「お”し”さ”ん”た”す”け”て”ー!!あ”つ”い”よ”ーー!!!!」 助けを求めてきたところで蓋をあける。 暑さに震えているゆっくりだが、俺の顔を見るといくらか安堵した顔をみせる。 「あ”あ”あ”・・・、お”し”さ”ん”た”す”け”て”・・・」 俺は鍋一杯になるまで水を入れてやる。鍋の温度は下がり水はぬるま湯になった。 ゆっくりはぬるま湯につかって気持ちよさそうにしていた。 「出してやろうか?」 「ゆ?もうちょっとここでゆっくりするよ!あとでだしてね!!」 「そうか、じゃあここでゆっくりしね」 「うん!ゆっくりしてるよ!!」 鍋に再び蓋をする。ゆっくりがまた何か言っているが気にせず蓋に重しを乗せておく。 10分ぐらい足っただろうか。 「おじさん!だして!そろそろだしてね!」 「はやくだして!ださないとゆっくりさせてあげないよ!」 「ゆ!ゆぐ!からだがとけるよ!はやぐたすけで!!」 いつの間にか静かになっていた。 時計を見ると水を入れてから30分ぐらいだ。 俺が静かになった鍋の蓋をあけるとそこには・・・・ Fin 後書き どうみてもお汁粉です。本当にありがとうございました。 設定として必要ないのですが、登場したゆっくりは一応霊夢です。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4216.html
「む~しゃ♪む~しゃ♪しあわせ~♪」 「おいしいね!ありす!」 「まりさ!ご飯を食べたら一緒にひなたぼっこしましょうね?」 ある春の日の森の中 日に照らされた野原で2匹のゆっくりが仲良く食事を取っていた。 とても楽しそうにニコニコとお喋りをしながら草を食べる2匹は 誰が見ても幸せそうに見えるだろう。 「ゆふー!お腹いっぱいだよ!幸せー!」 ご飯を食べて直ぐにころんと野原に横になる二匹。 彼等の属する群れは(といってもたった4匹だけだが) いつもこの様なゆっくりした生活を送っている。 日が昇ってからゆっくり外に出て、 その辺りに生えている雑草をついばみ、 お腹が膨れたら横になってお昼寝をする。 余りにも無防備でゆっくりとしたその姿は 獰猛な野生動物でさえゆっくりさせてしまう。 そしてお昼過ぎに起きては4匹で遊んで、 夕方になったらまた巣で食べる為のご飯を口の中や帽子の中に詰めて 巣へと持ち帰り、身を寄せ合って眠るのだ。 どこまでも争いの無い平和な森の中。 4匹のゆっくりは皆、幸せ一杯に暮らし、 どんな時でもゆっくりしていた。 只一つの例外を除いて 怖い人間とゆっくりするには 古緑 「ーゆッ!ありす、ありす、起きてね!」 「ゆ!もう起きてるわまりさ!」 何かカサカサと物音を聞きつけた2匹が 全くゆっくりせずにお昼寝から目を覚まし、 全くゆっくりせずに樹の陰まで跳ねて隠れる。 樹の陰に隠れたその2匹の視線の先には 30歳程の背の高い、籠を背負った人間の姿。 「やっぱちょっと探したぐらいじゃ 見つからないモンだな…」 そう言って男は腕を組んで大きく溜め息を吐いた。 籠を背負った人間の目的は山菜探し。 しかし、他所の村の人間から聞いた『ゆっくり』という 人の言葉を解する生物を山菜探しのついでに一目見たくなった男は 少し山奥の方まで探索しに来たのだ。 「(やっぱり人間さんだね…)」 「(しー、まりさ、静かに ゆっくり出来なくなっちゃうわよ…)」 樹の陰にその身を隠して男を覗く二匹のゆっくりは ゆっくりらしからぬ小声で話し合う。 かつてこの群れがここでは無い、違う山に居た時 ある事件から『人間はゆっくり出来ない』と言う事を思い知らされた結果 群れの4匹は人間に近寄らなくなり、 新しい住処も人の姿の見られない山の中に作られた。 この群れと人との交流は今までのところ全く無い。 「しょうがねーか…帰ろっと…」 そう独り言を言って引き返していく男を4つの目で見つめながら 2匹のゆっくりは音を立てない様にそろそろと樹の陰から這って出ていった。 「「(そろーり…そろーり…)」」 「人間さん、もう行ったのかな…?」 「(しー!まりさ、まだ油断しちゃ駄目よ!)」 「(ご、ごめん…)」 2匹のゆっくりは念入りに、 男が見えなくなるぐらい、ゆっくりとその背中を見送ると 「誰もいないよ!またゆっくりしようね!」 「れいむとぱちぇも起こしてきて 皆でゆっくり大会しましょ!」 念には念を入れて、 場所を移してまた遊び始めた。 あの男は決して、ゆっくりに対して悪意を持って来たなんて事は無かったし この二匹のゆっくりも、あの男が自分達を殺しに来たとまでは考えていなかった。 だが、それでもゆっくり達は今の群れの皆で平和に暮らせていれば十分幸せだし、 この群れの4匹にとっては今でも人間と接触する事は恐怖でしかない。 「皆でず~っとゆっくりしようね!」 「明日も、明後日もず~っとゆっくりしようね!」 このゆっくり達は今のまま4匹だけの群れで、 今のままこの野原で暮らすだけで十分幸せなのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「父ちゃん!ゆっくりは見つかった?」 「あーいや、駄目だな、 諦めな、多分あの山にはいねぇよ」 「ちぇー…」 「まぁそうむくれんな そういや○○んトコの犬が子犬産んだって言うからよ 一匹貰って来てやるよ!欲しがってたろ?」 「本当!?飼っても良いの!? やったぁ!流石お父さん!!」 「世話はちゃんとお前がやれよ」 「あぁアンタ!帰ってたの! もう風呂出来てっから ○○と一緒にちゃっちゃと入ってきちまいなよ」 「ただいまカーちゃん! ま、取り敢えず風呂入ろうぜ お前も入りな」 人もまた、 ゆっくりがいなくても十分幸せだった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ しかし4匹のゆっくり達の 不満も不安も争いも無い、平和なゆっくり達の群れはある日 唐突にその姿を変える事になった。 「「「ゆっゆゆー!」」」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆ!何なの?何なの?」 ある晴れた日。 騒がしい音によって4匹のゆっくりはお昼寝から起こされた。 起きた4匹のゆっくりの視線の先には ゆっくりプレイスである野原の中で歓喜の声を上げる、20数匹のゆっくり達。 その種はれいむ、まりさ、ありす、みょん、他様々。 冒頭のありすとまりさ、そしてぱちゅりーとれいむの4匹だけでゆっくりしていた このゆっくりプレイスに、他所の山から急に20数匹程のゆっくりの群れがやって来たのだ。 「ゆー!ぱちぇ! ここはすごいゆっくりぷれいすだね! ここをまりさ達のゆっくりぷれいすにするよ!」 新しくこの群れに来た大きなゆっくりまりさが 元々のこの小さな群れのリーダー的存在であったぱちゅりーに向かってそう言った。 先住者に対して礼儀も遠慮もないその台詞から 『どんな群れ』なのかは聡明なぱちゅりーにはある程度想像がついた。 「む…むきゅぅ…」 このぱちゅりー、目立たないがよく見ると頬に酷い傷痕がある。 ぱちゅりーだけでは無く、まりさやれいむ、ありすの4匹のゆっくりは かつて人間に群れごと殺されかけた過去を持ち、 生き残った4匹で命からがらこの山へと逃げてきた末に、群れを築いたのだ。 『人とはゆっくり出来ない』と言う4匹の考えはこの過去の経験から来るものだった。 「わ…分かったわ…ゆっくりしていってね…」 まるで脅迫を受けた様に怯えた表情で ぱちゅりーは大きなゆっくりまりさに向かって承諾の返事を返した。 実際にこの群れに反抗しても無駄だと確信しての返事だったが、これは正解だった。 反抗しようものならそれを上回る反撃が待っていた事だろう。 その返事を聞いた大きなゆっくりまりさは満足そうに頷くと 周りのゆっくりに向かって次の様に言った。 「やったね皆!これでゆっくり出来るよ!」 「「「ゆゆ~ん♪」」」 「まずは住むのに良さそうな巣を探そうね!! 今日のご飯はぱちゅりー達から御馳走になろうね!」 新しく来た群れのゆっくり達がそれぞれに散って行き、 住み着くのに良さげな穴を探して行く。 その様を不安げに眺める4匹のゆっくり。 「ぱちぇ、コレは一大事だよ…」 「分かってるわ…」 人に恐怖を抱く4匹は皆、この事態に対して不安を抱いていた。 なんせたった4匹だったぱちゅりー達の群れは 一挙に30匹近くの群れに膨れ上がったのだ。 こんなに急に群れの人数が増えるとさぞ目立つ事だろう。 かつて自分達の生まれ育った群れを滅ぼした人間に見つかる可能性が増してしまう。 不安になったぱちゅりーは、大きなゆっくりまりさに怯えてはいたが 新しくなるであろう環境に直ぐに適応出来る様にゆっくりまりさに対して質問をする。 「ねぇまりさ…どうしてあっちの山からこっちに来たの? ゆっくり教えてね?もしかして…」 「ゆ?そんなの決まってるよ! ご飯が少なっちゃったんだよ! あっちのお山さんはゆっくり出来ないね! それに人間さんまで意地悪するんだよ!」 どうやら群れに新しく来たゆっくり達は あまり物事について深く考える事はしない様だった。 そして『ゆっくりしてない』、そう4匹は感じていた。 この時、今度は『人間』と言う言葉を聞きつけて 不安になったゆっくりれいむが大きなゆっくりまりさに向かって質問しようとした。 「ねぇ、『人間さんの意地悪』って…」 「とにかく! あんなゆっくり出来ないお山さんになんて居られなかったんだよ! …ゆ!あそこは良さそうな穴だね! ここをまりさのゆっくりプレイスにするよ!」 疲れてお喋りが面倒になったのか、大きなゆっくりまりさは強引に話を打ち切り 近くにある最も大きな穴に向かって跳ねて行った。 そこはぱちゅりーとれいむのお家。 初めてこのゆっくりプレイスに辿り着いて皆で家を探した時、 まりさとありすが見つけたお家なのに まず体の弱いぱちゅりーにと、譲ってくれた大事なお家だった。 「むきゅぅ!駄目よまりさ! そこはぱちゅとれいむのお家なのよ!」 「ゆ?何言ってるの? まりさが見つけたんだからここはまりさのお家だよ? ぱちゅりーは馬鹿なの?」 「…むきゅぅ~……」 反抗しようにも、どう見てもこのゆっくりまりさは 自分達よりも体格も大きいし、また新しく来た群れの数も多い。 それに元々この群れにいた4匹のゆっくり達は皆気が弱く、 戦いには向かない性格だった。 結局、争いなんてゆっくり出来ない事は真っ平御免な4匹は 新しく来たこの大きなゆっくりまりさに群れの主導権を任せ、 暫く様子を見る事にした。 この時点で4匹の頭の中には『群れを出よう』等という考えは無かった。 なにせあの日、人間から命からがら逃げ出した先で ようやく見つけたゆっくりプレイス、4匹の新しいゆん生の始まりの地。 見捨てるには愛着を持ち過ぎてしまっていたのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 幸運な事にぱちゅりー達が思っていたよりも 新しい群れのゆっくり達は身勝手では無かった。 暫くの間はぱちゅりー達にも不満は無く、ゆっくり出来ていた。 だがやはり先住者と余所者との混じり合の中で ゆっくり間の違いはあらゆる所で生じてしまう。 その中で最も目立ったものは食生活のギャップだった。 「ぱちゅ達はいつもそのご飯を食べてるね! そんなのでゆっくり出来てるの?」 「むきゅ…?この草さんは美味しいのよ?」 「あんまり美味しくないよ… この辺のご飯はゆっくり出来ないよ!」 「あっちで採れたご飯は もっとゆっくり出来たのにね!」 4匹が新しく来た群れに対して感じた、自分達との最も大きな違い。 それは新しく来た皆は揃ってグルメな事だった。 新しく来たゆっくり達は この辺の草を食べる事はせず、美味しい虫や花ばかりを食べている。 しかしそれらの美味しい物を食べても尚、彼等は不満そうにしていた。 元々の群れのれいむやまりさは不思議に思っていた。 草は美味しいし、滅多に食べられないけど花や虫なんてもっと美味しいのに、と。 「………」 しかしぱちぇとありすは薄々感づいていた。 彼等の求めている物に。 新しく来たゆっくり達はかつての生活の中で『あれ』を食べていたのではないかと。 ぱちゅりー達の嫌な予感が的中するのは それから少しゆっくりしてからの事だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 風の強い日だった。 新しいゆっくり達が来てから3週間程経ち、 段々と新しい群れにも馴染み始めてきた頃。 暮れて行く太陽の下、ぱちゅりーはゆっくりしながら 大きなゆっくりまりさがやけに嬉しそうに野原に跳ねて来るのを見た。 「ゆゆー!皆!見つけて来たよ! ちょっと遠かったけど、この辺にもあったよ! ゆっくり出来るご飯だよ!」 「………?」 そう言って狩り(元々の群れには無かった言葉)をして来た 現リーダーであるゆっくりまりさがその帽子の中から出したもの。 「ほらこれ! 久しぶりのゆっくり出来る美味しいご飯だよ!」 「む”む”ぎゅう”う”ぅ”ぅ”!!?」 大きなまりさが帽子から出したそれを見て ぱちゅりーは少量の中身と共に驚愕の悲鳴をその口から吐き出した。 まりさが嬉しそうに持ってきた物は、かつて見た人間の主食である野菜。 食べると非情にゆっくり出来ると言われているご飯だが、 コレは人間の食べ物であり、人間はこれしか食べない。 そしてこれを自分達が食べると 食い扶持を減らされた事に腹を立てた人間達が自分達を皆殺しに来る。 つまり、美味しいご飯だが これを群れの誰かが食べ続けると人間が自分達を滅ぼしに来る悪魔の植物。 そういう災厄を呼ぶ植物だとぱちゅりーは認識していた。 (人間達がぱちゅりー達4匹の群れを滅ぼしに来たのは 群れの中の一部のゆっくりがこの植物を何度も何度も人間の近くから取って来たからだと ぱちゅりー達は知っている) 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~!」」 「うっめコレめっちゃうっめ!まじぱねぇ!」 呆然とその災厄の植物を食べ始める皆を眺める4匹のゆっくり達。 この4匹は決してその植物に手をつけよう等とは考えない。 かつてそれを食べた仲間のゆっくり達が殺された過去の記憶が それを食べる事を拒否するのだ。 そうとも知らずに野菜を頬一杯に詰め込んだ大きなゆっくりまりさは ぱちゅりー達に向かってニコニコと笑いながら言った。 「ゆ?どうしたのぱちゅ? れいむも、まりさも、ありすも、 遠慮しないで食べて良いよ! コレは美味しい草の在処がまた見つかったお祝いだよ!」 「「これからはずっとゆっくり出来るよ!」」 草や虫を食べてる時にも見せない笑顔を見せながら群れの皆はそう言った。 『これからはずっと』 これからはずっとそれを食べるつもりなの? その災厄の植物を。 ぱちゅりーは新しく来た群れのゆっくり達の嬉しそうな食事風景を 虚ろな表情で眺めながら気を失い、ころんと横に転がった。 『む~しゃ♪む~しゃ♪しわせー♪』  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「む…きゅ…むきゅぅ…」 「ぱ…ぱちゅ…しっかりしてね…? ゆっくり気を確かにね…?」 元々の群れの3匹が失神したぱちゅりーを巣まで運んでいく。 この3匹は皆、もうここには居られない事を確信していた。 直ぐに、とは言わないがやがて人間達はここに来るだろう。 あの日の様にー 『だずげで!!許じでぇ”え”ぇえぇえ!!』 『喧しいんだよゴミ虫が 群れの在処まで案内すりゃ助けてやるっていってんだろうが』 何かしら?騒々しいわね… れいむ、ゆっくり起きてね?もうお昼よ? 『ゆゆぅ…』 『ごごをまっずぐだよ”!!』 『おぉ、アレか! オイ皆!見つかったぞ!』 むきゅ?人間さん?ゆっくりしていってね! ほられいむ、挨拶しなさい、お客さんよ 『ゆゆー!ゆっくりしていってねー!』 人間さんが群れに来るなんて初めてだわ! 遠慮せずにゆっくりしていってね! ねぇ、人間さんはー 『…フン、じゃあな金髪饅頭 お務めごくろーさん』 『ゆぴ』 …む…きゅ…?まりさ…? 『……ゆ?まりさお姉ちゃん…?』 『これ以上俺等の食い扶持を減らされちゃたまんねーんでな 悪く思うなよ』 ぱちゅりーの夢の中、今にも降り出しそうな曇り空の下。 目の前に広がる光景。人間の足の下のもの。 『ゆっくり出来るご飯を見つけたんだぜ』と自慢していたまりさだったもの。 人間に向かって命乞いした末に群れを売って結局殺されたまりさ。 そして男の脚と脚の間から見える、次々に殺されていくかつての仲間達。 ゆっくりぱちゅりーは夢の中でうなされながら その日の光景を再度見ていた。 そして夢の中の場面は変わり今の群れの野原。 あの日の様に群れに来た人間が、あのリーダーまりさを野原に放り投て踏みつぶす。 そして一人、また一人と殺される群れの皆、壊されるお家。 『ありす!!まりさぁああぁ!!ゆっぐりじで!!ゆっぐりじでいっでぇ!!』 『逃げでばちゅりぃ!!逃げでええぇぇえ!!』 ーーそして幼馴染みのまりさやありすまで踏みつぶした 人間達の無表情な目が、自分に向いたかと思うと 大きな足の裏が自分の帽子に向かってゆっくりとーー 「む”ぎゅゅうううぅぅうぅぅ!!!」 「ぱちゅ!?大丈夫!? ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「む…きゅ…」 ぱちゅりーが悪夢から目覚めると 体には何枚もの葉っぱが掛けられており、子供の頃より共に育ってきた皆が 心配そうにぱちゅりーの顔を覗き込んでいた。 「ぱちゅ…?起きたの…? ゆっくり出来なくなっちゃったよ…」 ゆっくりまりさが悲しそうな顔でぱちゅりーに向かって唐突に言った。 それは何もかも省略した台詞だったが、 ぱちゅりーにも、他の2匹にもその言葉の意味は容易に理解出来た。 皆あのリーダーまりさが持ってきたものを見て、同じ危機感を覚えたのだ。 ぱちゅりーはそれを聞いて、迷う事無く決断した。 あの悪夢を正夢にしたくない。 それは何よりも優先させるべき心からの願いだった。 「分かってるわ…皆、群れを出るわよ…」 「…ゆん、ぱちゅもそう言うと思ってたよ」 「残念だけどここではもうゆっくり出来ないわね…」 「他にもゆっくり出来るところはあるよ! 頑張って皆で探そうね!」 4匹の心は通じ合っており、誰もNOは言わない。 同じ環境で育ち、同じ地獄を見て来た仲間達なのだから。 恥ずかしがりやで皆と中々打ち解けなかった、でも本当は優しいありす。 社交的な性格でこれまでずっと皆を笑わせてくれたまりさ。 前向きな性格でいつも自分を元気づけてくれたれいむ。 その皆で必死に探し出したゆっくりプレイス。 捨てるのは余りに惜しいけど命には代えられない。 あの日の惨劇を繰り返すわけにはいかない。 「また、皆でゆっくり探しましょう… ぱちゅ達の、本当のゆっくりプレイスを!」 「「「ゆっくり頑張るよ!!」」」 次の日の朝、ぱちゅりー達4匹は 新しく来た群れの皆とも相談する事無く、 ひっそりと群れを出て行った。 かつて、ぱちゅりーはありすと一緒に『話題のご飯』を食べに行った際に 畑の近くで、野菜を持ち上げている人間の姿を見た事があった。 『人間もあそこに生えているご飯を食べるのね』 二匹がそんな感想を抱きながら人間を眺めていると、 その齧られた野菜を見た瞬間、人間が見た事も無い様な怖い顔に変わったのを見て 怖くなったぱちゅりーとありすは群れへと引き返し、 あそこに行くのを辞める様に皆に説得しようとした事があったが、それは徒労に終わった。 群れの皆にとって、ゆっくり出来るものが近くにあるのに我慢する道理は無い。 それはきっとリーダーまりさ達の群れも同じ。 ぱちゅりー達はあの草に魅入られたゆっくり達に 何を言っても無駄だと知っていたのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ゆゆー?ぱちゅ達がいないよ?」 「またお昼寝でもしてるんだよ! そんな事よりゆっくり狩りに行こうね!」 それから数日が過ぎ、群れの皆はぱちゅりー達4匹が居なくなった事に気付くが そんな事には全く気にせずにまた人里まで降りて行く。 だが、群れのゆっくり達は気付いていなかった。 段々と自分達の群れの数が減っていっている事に。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ぱちゅりー達が新しいゆっくりプレイスを探し出したのは 群れを捨ててから僅か4日後の事だった。 「ゆぅ…ゆぅ…」 「頑張ってねれいむ!きっともう少しでゆっくり出来るよ!」 傷つき、消耗し、もう跳ねるのも辛そうに眉を垂らすゆっくりれいむ。 それを励ます帽子無しのゆっくりまりさ。 4匹はもう満身創痍。 体力は既に限界を迎えつつあった。 「ごめんね…まりさ、ありす、ごめんなさい…」 「いいよぱちゅ!ゆっくりしていってね!」 そして誰よりも、 元々あまり運動に向かないぱちゅりーの体は碌に動けるものでは無くなっていた。 移動の際に誤って底部を尖った石に突き刺してしまい、殆ど動けなくなってしまったのだ。 まりさの帽子を地面に敷き、それを二匹がかりで引っ張るその姿は まるで人間が怪我人を担架で運ぶかの様。 あまりにも速度を失ったゆっくりプレイス探し。 だが、それもようやく終わろうとしていた。 「…ゆゆ?ぱちゅ!ここは…?」 「むきゅ…!そうね…皆、ここはきっと良いゆっくりプレイスになるわ…」 『ゆっくり』を嗅ぎつける勘に従って移動する事4日。 ようやく前のゆっくりプレイスにも劣らぬゆっくりプレイスを見つけ出した4匹。 川も近くにあり、柔らかい草も沢山生えており、近くに広場もある。 嬉しい事に4匹皆で暮らせそうな小さな洞窟まである。 何よりも4匹の勘が『ここはゆっくりプレイス』と教えている。 洞窟の事も考慮すれば、数日前に捨てたゆっくりプレイスよりも良い所かもしれない。 「でも…ぱちゅ、ここは…」 「………ゆっくり出来ないよ…」 だがそれは、近くに人間の家さえ無ければの話。 そのゆっくりプレイスから僅か100m足らずの所に人の民家らしき建物がある。 その上そこと洞窟との間には障害物も無く、 人が見ようと思えば自分達は丸見えである。 「ゆうう…こんなにゆっくり出来そうなのに…!」 「静かにしてれば気付かれずに暮らせないかしら…?」 「駄目だよ…!見つかっちゃったら 今度こそゆっくり出来なくなっちゃうかも…」 「…残念だけどここは駄目ね…他の所を… ゆ…いたぃ…!」 しかし、ぱちゅりー達の体力は限界を迎えつつある。 何しろあの群れから抜けてから4日間もの間ゆっくりしてないのだ。 4匹全ての体力、そしてゆっくり分は直ぐにでも枯渇しようとしていた。 「…ぱちゅ、人間が近くにいるけど 今日だけは静かにここでゆっくりしよう? このお家の中でゆっくりしてればきっと見つからないよ!」 「むっきゅ…」 『ゆっくりしたい』と言う本能から来る 『一晩でもここに留まりたい』と言う欲求。 しかし人間に対する恐怖もある。 その狭間でぱちゅりーは葛藤したが、 自分が余りにも足手まといになっていると言う自覚から 今回は僅差で本能が勝ったようで、ぱちゅりーはまりさのその言葉にゆっくりと頷いた。 「むきゅ…何か…何かゆっくり出来ないわ…」 しかしぱちゅりーは頷く瞬間、 周囲の雰囲気がゆっくり出来ないものに変わったのを感じ取った。 ゆっくりプレイスの中にいるのに何故かゆっくり出来ない。 何かゆっくり出来ない雰囲気がこの辺りに立ちこめている。 「ゆ…ゆ…」 ふとぱちゅりーがその顔を上げると3匹が皆、 ぱちゅりーの後ろを見て目を見開いている。 まるで人間の様に、とんでもなくゆっくり出来ないものがぱちゅりーの後ろにいるかの様に。 「…むきゅ?」 不思議に思ったぱちゅりーは深く考える事もせず、 ゆっくりと後ろへと振り返った。 「おい皆!!これゆっくりじゃねぇの!?」 「ああ?本当だ!?何でこんなトコに4匹もいんの?」 「 」 「 」 「 」 「 」 振り向いた先にいたのは人間の子供達が数人。 恐れていた人間にあっさりと見つかってしまった事で ぱちゅりー達の残り少ないゆっくり分は一瞬で無くなり、 4匹は仲良く揃って気を失った。 後編へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1970.html
前 日が落ちて月が輝く夜。 子ぱちゅりーは眠れなかった。 今日、まりさに言われたことが頭から離れなかった。 夢じゃないかと何度も思った。その度に壁に軽く体当たりして、夢じゃないと理解した。 あの時の言葉をゆっくりと思い出す。 それは、ぱちゅりーが一番望んでいた夢。 それは、ぱちゅりーが常に思い描いてた夢。 それは、ぱちゅりーが何処かで諦めてた夢。 だがぱちゅりーはその夢を現実として掴もうとしている。 ああ、自分はなんて幸せなゆっくりなんだろう。 この先ちょっと不安もあるけど、それ以上に期待のが大きい。 目の前には自分が望んでいた世界があるのだ。 何を恐れる必要があるのだろうか。 これからの生活を想像しつつ、ぱちゅりーは思う。 このままずっとゆっくりできたらいいな── 日付が変わり、森が照らされる朝── 「ゆ~んゆ~ん♪ ゆっゆっゆ~ん♪」 歌らしき物を口ずさみながら、あの子まりさは森の中を進んでいた。 その姿は、全身一杯で喜びを表現しているようにも見えた。 「ゆっ、きょうはこのあたりでたべものをとるよ」 そう独り言を言う子まりさ。別に誰か傍にいるわけではないのだが、これがこの子まりさの一つの癖なのだろう。 そして歩いているときから目星をつけていた茂みをじっと観察し始めた。 そうして実にゆっくりすること三分、微動だにしなかった子まりさが勢いよく茂みに飛び掛る。 茂みからは虫達が逃げ出してきた。まりさはその虫達を眺めつつ、自身も茂みから出る。 口には既に捕獲した虫がいたが、それを吐き出してから別の逃げ出した虫に飛び掛る。 そうして同じ事を繰り返し、数匹の虫が手に入った。 茂みに入ったときに少しだけ浅い傷が付いたが、放っておけばすぐに直るだろう。 吐き出した虫を一箇所にあつめ、別の茂みにターゲットを移し、再び同じ事を繰り返す。 子まりさはこの方法で、他のゆっくりよりも多くの餌をとっていた。 そんな子まりさに、一匹のゆっくりが近づいてきた。 「まりさ! きぐうだね!!」 「ゆっ、れいむおかあさん。おはようございます」 愛するぱちゅりーの親である、れいむであった。 親れいむは一旦立ち止まり、まりさの方を向いて話しかけた。 「まりさはきょうはここでかりをするの?」 「ゆっ、そうだよ。れいむおかあさんもここでかりをする?」 「れいむはもうすこしすすんだとこでかりをするよ。まりさはここでがんばってね!!」 「ゆっくりがんばるよ!!」 挨拶もそこそこにして、親れいむは来た方向とは逆に飛び跳ねる。 そうして親れいむが去ろうとした時、子まりさが話しかけた。 「あとでれいむおかあさんのおうちにいくね!!」 「ゆっ、わかったよ!!」 そう言葉を交わし、二匹は離れていった。 一匹になったとき、親れいむはポツリと呟いた。 「これでゆっくりできるね」 れいむは昨日の出来事を思い返していた。 れいむが怒りに身を任せていた時、その声は聞こえた。 「あのまりさがいるから、ゆっくりできないのね?」 突然親れいむの後ろから、声がかかる。 「ゆっ! だれなの!!」 親れいむは驚いて、声を荒げて振り返る。 そこには同じゆっくりの種類であるれいむがこちらを見ていた。 鬼のような形相をしていたが、れいむは怯えることもなく話しかける。 「ゆっくりおちついてね、れいむはれいむのみかただよ」 (みかた? どういうこと?) 親れいむはれいむの言った言葉の意味が即座に理解できなかった。 「あのまりさがいるから、ゆっくりできないのね?」 れいむは何事もなかったかのように、もう一度同じ言葉をかける。 ようやく親れいむは、れいむが何を言っているか理解した。 「ゆっ、そうだよ、あのまりさがいるからゆっくりできないんだよ!!」 先程まで知らないゆっくりがいきなり話しかけてきたので警戒していたが、 まりさの事を話そうとしていると理解した瞬間、先程の光景を思い出したのか、怒りに震え始めた。 そして震え始めた親れいむをみて、れいむは話しかける。 「あのまりさ、れいむにとてもひどいこといってたよ」 「ゆっ!?」 怪しげな笑みを浮かべて。 「あのまりさ、れいむのこと、のろまでぐずなゆっくりだっていってたよ」 「ゆぐうぅぅぅ!!?」 まるで目の前の愚か者を嘲笑うかのように。 「とってもあたまのわるいおばかさんだっていってたよ」 「ゆゆゆゆゆゆ!!!」 鳴き続ける玩具を見て楽しむかのように。 「えさもろくにとれないごみくずだっていってたよ」 「ゆがあああああああああああああ!!!!!」 喜々としながら、語り続けた。 「まりざめ!!まりざめ!!ゆるぜないいいいいい!!!」 れいむの話を聞いた親れいむは、その怒りを抑えることは当然できず、辺りに撒き散らす。 今にも怒りで餡子が飛び出さんというほどの勢いだ。 そんな様子を見て、れいむは笑顔を向けて話しかける。 「れいむたちがゆっくりするために、いいほうほうがあるんだよ!!」 「ゆゆっ!?」 自分がゆっくりできる。その言葉を聞き親れいむは興味を示す。 そんな反応を見て、れいむは親れいむに近づき、小さな声で話し始めた。 「ゆっくりりかいしたよ!!」 話を聞き終えた親れいむは、とてもご機嫌だった。 「ゆっ、こんだけあればじゅうぶんだね!!」 狩りを終えてまりさはご機嫌だった。目の前に虫や花、木の実やキノコなどが山となって詰まれている。 口で持っていくには少し多いが、まりさには帽子がある。この中に入れて持っていけば大丈夫だろう。 今日はなんだか天気がよくない気がするから早く帰ろう。そう思い帽子を外して急いでその中に食べ物を詰め始めた。 ガサガサと音がして、思わずまりさはその音のする方へと振り向いた。 そこには同じゆっくり種であるまりさが三匹いた。 「ゆっ、しらないまりさたちだね。ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 お決まりであるフレーズを言い、子まりさはまた食べ物を詰める作業に戻ろうとする。 しかしその前に、三匹のまりさの内一匹が子まりさに話しかけた。 「ゆっゆっゆ、ここはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!! ゆっくりしたいならそのたべものをよこすんだぜ!!」 「ゆっ?」 子まりさは意味が理解できなかった。このまりさは何を言っているんだろう。 「ゆっ、ここはみんなのゆっくりぷれいすだよ?」 「うるさいんだぜ、さっさとそのたべものをまりささまによこすんだぜ!!」 「ゆっ、すこしならわけてあげるよ、ちょっとまってね」 要するに食べ物が欲しいのだろう。少しくらいならいいか、と子まりさは思い、帽子と食べ物の山の方に向き直す。 そして完全に食べ物の方向に体を向けると── 体に強い衝撃が走った。 「ゆぶぇっ!!」 「なにをねぼけたことをいってるんだぜ、ぜんぶにきまってるんだぜ!!」 「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」」 一体何が起きたのか、子まりさは状況が把握できなかった。 (たしかたべものをわけようとして、どれがいいかえらんでたら、きゅうにいたくなって── きづいたらこうなってて、まりさたちがわらっていて、まりさがめのまえにむかってきて──) 「ゆぶぁっ!!」 再びまりさの一撃を受けて子まりさは吹っ飛んだ。 成体に近いが、それでも一回り小さい子まりさは成体まりさの体当たりに耐え切れず、意識を失ってしまった。 「ゆっゆっゆ、まりささまにさからうとこうなるんだぜ、このたべものはありがたくもらっていくんだぜ」 「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」」 子まりさが意識を再び取り戻したとき、そこには何もなかった。 太陽が高く昇った頃、親れいむが沢山の食べ物を持って帰ってきた。 「ゆっくりかえったよ!!」 「むきゅ、おかえりなさい」 「「「「「「おかーさんおかえりなさい!!」」」」」」 家族に迎えられ、上機嫌の親れいむは今日の成果である食べ物を見せる。 「ゆっ、きょうはたいりょうだよ!!」 「わー!」「すごーい!」「いっぱいだねー」「さすがおかーさんだねー!」「ゆっくりー」 「むきゅ、やればできるじゃない」「おかあさんすごいね!!」 口々に家族が褒め称える。ああ、こんなにもゆっくりできたのは何時以来だろうか。 親れいむの心は満たされていた。 いつもより豪華な昼食を済ませ、各々が自由に過ごし始める。食べ物の蓄えもまだあったはずだ。今日はゆっくりしてても大丈夫だろう。 親れいむはそう考えを言うと、子供達は賛成した。伴侶であるぱちゅりーも何も言わなかった。 日が傾くにつれ、親れいむは子ぱちゅりーと親ぱちゅりーの様子がおかしいことに気づいた。 他の子供達は思い思い外でゆっくり遊んでいるのだが、なぜか子ぱちゅりーは外に佇んでただ遠くを見渡しているようであった。 親ぱちゅりーは、そんな子ぱちゅりーに寄り添うようにしている。 親れいむはそれが気になり、親ぱちゅりーと子ぱちゅりーに話しかけた。 「ゆっ、ゆっくりしていないけどどうしたの?」 「むきゅん。れいむ、きょうまりさがおひるすぎにきてくれるはずなのにこないのよ」 「ゆゆっ!?」 れいむは驚いた、なぜまりさを心配するのか、まりさのことでゆっくりできなくなるのか、まったく理解できなかった。 「ゆっ、きっとわすれちゃったんだよ!! だからまりさはほうっておいて、ゆっくりしようね」 「ゆっ!? ……ま……まりざ……どうじで……」 「そんなことないわ、だいじょうぶよ。まりさはちゃんときてくれるわよ」 なんで子供が泣きそうになっているのかれいむにはまったくわからなかった。 そんなれいむを責めるようにぱちゅりーは文句を放つ。 「れいむ……どうしてそういうことをいうの……?」 「ゆっ、れいむをばかにしたまりさなんてしらないよ!!」 「むきゅ!?」 親ぱちゅりーは驚いた。あの優しい子であるまりさがそんなことを言うはずがないと思っていた。 「ほんとうにまりさはれいむのことをばかにしたの?」 「そうだよ!! そういっていたってほかのれいむからきいたんだよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 そう親れいむは言うと、さっさと住処へと戻っていった。 残された親ぱちゅりーは、曇った空を見つめながら、しばらくその場で考え事をし始めた。 そして、行動を開始した。 「おかーさん、おかーさん」 「ゆっ? どうしたの?」 「ぱちゅりーおかーさんとぱちゅりーがでかけてくるっていってたよ」 「ゆゆっ!?」 驚いた親れいむはすぐに外に出る、そこにはぱちゅりーの姿は何処にもなかった。 「どうしてとめなかったの!!」 「ゆゆっ!? だって……ぱちゅりーおかあさんだからだいじょうぶだって……」 親れいむは怒るが、子供は当然の事をしただけである。親が出かけるのに止める子はいないだろう。 「ゆっ、とにかくおいかけるよ!! どっちにいったの!!」 「あっちのほうだよ」 「ゆっ!! みんな、ぱちゅりーをおいかけるよ!!」 そうしてれいむ親子はぱちゅりー親子を追いかけ始めた。 ただし焦っているのはれいむだけで、子供達はなんで追いかけているのかまったく理解していなかったが。 「どういうことなの!? ゆっくりせつめいしてね!!」 「ゆっ……そ、そんなこといわれてもわからないんだぜ……」 時間はまだ太陽が高い位置に留まっている時まで遡る。 先程まで子まりさが倒れていた場所で、言い争う声が聞こえる。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさ達である。 どうやられいむがまりさ達にむかって問い詰めているようだ。 「れいむのいったとおりに、たべものをもらおうとしたんだぜ」 「そしたら、なまいきにもまりささまにさからってきたんだぜ」 「おろかなまりさはかえりうちにあって、そこでぶざまにのびてたんだぜ」 「ならまりさがそこにいるでしょおぉぉぉぉ!!」 「ゆっ!? そんなことしらないんだぜ」 「おおかたれみりゃあたりにでもくわれたんだぜ」 「あんなよわっちいまりさなんてどうでもいいんだぜ! それよりいっしょにゆっくりしようなんだぜ」 (ちっ、やくにたたないくずゆっくりめ……) れいむは目の前の三匹のゆっくりまりさを蔑んでいた。 こいつ等のせいでれいむの考えた完璧な作戦が台無しだ。れいむは本気でそう思っていた。 れいむはまりさ達に、親れいむが見つけたゆっくりまりさを気絶させて、食料を奪い取るように指示していた。 そして気絶させた後に、れいむに知らせるよう手筈を整えていた。 その後れいむはまりさの傍に寄り添い、看病することにより、好感度をアップさせ、二人で一緒にゆっくりする計画を立てていた。 だが実際には、食料を強奪したまりさ達は食料のことで頭が一杯になり、居場所を知らせた親れいむ共々分配を先に済ませてしまった。 その際に突如風邪が吹き、戦利品の山がバラバラと飛んでいってしまったために集めるのに時間がかかってしまった。 結果、気絶したまりさが目を覚ますまでに、れいむはたどり着くことはできなかった。 「ゆっ、とにかくあのまりさをさがすよ!!」 「ゆゆっ? なんでさがすんだぜ?」 「あんなまりさはどうでもいいんだぜ」 「そうなんだぜ、もうたべものはいっぱいあるんだぜ、ゆっくりしようなんだぜ」 (わたしのびぼうとたべものめあてのいやしいゆっくりが……) 「ばかなの? あのまりさはたべものをいっぱいもってたのよ? おうちにもたくさんあるはずよ?」 「ゆっ!! それをうばえばもっとゆっくりできるんだぜ!!」 「さすがれいむなんだぜ、あたまもよくてきれいなんだぜ!!」 「そうときまればさがすんだぜ!!」 れいむは内心嘲笑っていた。やはりこいつらも馬鹿で愚かなゆっくりだと。 賢い私にはつりあわないが、馬鹿なおかげで利用しやすい。せいぜい手駒として利用させてもらおう。 私に似合うのはまりさだけ、ああ何処にいるの? 愛しいまりさ── 「どうして……どうして……」 子まりさは森の中を彷徨っていた。その姿にいつもの元気な様子はなく、絶望を浮かべていた。 「どこにあるの……まりさのぼうし……」 そう、目を覚ましたらまりさの帽子が食べ物と共に無くなっていたのだった。 ゆっくりは、生まれたときから身に着けている装飾品で固体を見分けると言われている。 その装飾品を何らかの理由でなくした場合、いくつかの例外はあるが、基本的に他のゆっくりからは判別が付かなくなる。 それだけでなく、なかには同じゆっくりであるはずなのに、ゆっくり出来ないものとして認識されてしまい、攻撃や差別を受けるケースもある。 ゆっくりにとって装飾品は命の次に大事であり、これがないとゆっくりはゆっくりできなくなる。 食べ物は代わりがあるが、自分の帽に代わりはない。今まりさは、自分の帽子を必死に探していた。 「これじゃあゆっくりできないよ……」 半ば諦めかけているが、もしかしたらという気持ちでまりさは進む。しかし探す当てなどあるはずもなく、ただ闇雲に歩き回っているだけだ。 できることならば帰りたい。しかし帽子のない今それもかなわぬだろう。 帽子を探すことだけにとらわれていたまりさだが、ふとあることに気が付く。 (そういえば、このあたりは……) まりさはいつのまにか、ぱちゅりーと良く遊んでいた広場に出ていた。 そこに探している帽子は落ちてるはずもなく、あるのは楽しかった思い出だけだ。 (ぱちゅりー……) できることならば今ぱちゅりーに会いたい。だが今会えば何を言われるかわからない。 自分だと判ってもらえないならばまだいい方だ。一番怖いのは、自分だと判らないとはいえ、愛する者から嫌われることだった。 (しかたないね……) そう思いその場からまりさが去ろうとしたその時── 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 (うん、ぱちゅりーのこえだ……ぱちゅりー!?) まりさは驚いた、そして迷ってしまった。 ぱちゅりーに会いたいという気持ちと、会ってはいけないという気持ちが葛藤し始める。 その間にもまりさを呼ぶ声は近づいてくる。 結局どうすればいいかわからなくなり、その場から動けないでいた。 どれくらい時が経っただろう、まりさは決断を下した。 (このままわかれたほうが、ぱちゅりーにとってしあわせだよね……) そういえば、もう自分を呼ぶ声も聞こえない。 きっとどっかに行ってしまったんだろう。まりさは安堵した。 もう約束を果たせない自分はぱちゅりーと会ってはいけない。そう思いこの場を去ろうとしたその時。 「むきゅううううううううううううん!!!!!!!」 まりさは考えることもなく、声のする方に走っていった。 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 時は少し遡る。まりさがぱちゅりーの声を聞いて考え事をし始めた頃── れいむとまりさのグループもまた、その声を聞いていた。 「ゆっ、まりささまをよぶこえがきこえるんだぜ」 「あっちからきこえてくるんだぜ」 「にんきものはつらいのだぜ」 勝手なことを言っているまりさたちを余所に、れいむは別のことを考えていた。 もしかしてこの探している声は、かっこいいまりさの言っていた、ぱちゅりーではないかと。 どうやらぱちゅりーもまりさを見つけていないらしい。 それならそれで考えがある。れいむはそう思うとまりさ達と共に声のする方向に向かっていった。 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 子ぱちゅりーは叫んでいた。自分の体が弱いこともかまわずに、力の限り声を出し続けた。 そんな我が子と共に親ぱちゅりーもまた、まりさがいないか周囲を注意深く観察しながら進んでいた。 「むきゅん……まりさ……どこにいるのよ……」 あの優しくて賢いまりさが約束を破るはずなんてない。きっと何かあったに違いない。 ぱちゅりーの親子はそう判断し、まりさを探していた。 (そういえば、このちかくでまりさとよくあそんだっけ……) 子ぱちゅりーは思い出す。この近くにまりさが家族と暮らしていたときに良く遊んでいた場所だと。 あの時自分は他の子供より体力がなく、激しい運動はできなかったために、その光景を見ていることが多かった。 元気一杯遊んでいる皆をみて羨んでいた。自分も沢山遊ぶことのできる体が欲しいと思っていた。寂しかった。 そんな子ぱちゅりーを見かねたのか、まりさは一緒にいてくれた。 子ぱちゅりーはその行為が嬉しかったと共に、申し訳なくも感じていた。 一度まりさに他の皆と遊んだほうが楽しいのではないかと聞いたことがある。 その問いに、まりさは笑顔でこう答えた。 「ぱちゅりーといっしょにいたいんだよ!! ぱちゅりーがゆっくりできていないのをみてると、まりさもゆっくりできないんだよ!!」 その言葉がどんなに嬉しかっただろう。あの時の感動を忘れることなんてできない。 今の私があるのはまりさのおかげだ、そしてこれからも私にはまりさが必要だ。 それなのに何処に行ってしまったというのか、何か良くない事でも起こってしまったというのか。 どうか無事であることを願いつつ、子ぱちゅりーはまりさを呼びかける。 「まりさああぁぁぁぁぁ!!!」 「どうしたんだぜ?」 「まりささまのとうじょうだぜ!!」 「もうあんしんするんだぜ!!」 その呼びかけに答えるかのように、三匹のまりさと一匹のれいむが姿をあらわした。 れいむは言葉を発することもなく、ただ二匹のぱちゅりーを眺めているだけだ。 「ゆっ……ごめんなさい。べつのまりさをさがしていたの」 「むきゅん、ごめんなさい。わるぎがあったわけじゃないわ」 ぱちゅりー親子がまりさ達にむかって謝罪の言葉を述べる。 しかし、その言葉にまりさたちは激昂した。 「ゆっ!? なんなんだぜ、このまりささまをよんでおいて、かんちがいですまされるとおもっているのかだぜ!!」 「しゃざいのほかにもばいしょうがひつようなんだぜ!!」 「たべものをたくさんもってきたらゆるしてやるんだぜ!!」 わけのわからない理論を展開するまりさ達に、ぱちゅりー親子は困惑した。 なんだこのまりさは、あの優しくて賢いまりさとは似ても似つかわしくないではないか。 これ以上こいつらに関わっている暇はない。そう考えていると、まりさ達の後ろにいたれいむが話しかけてきた。 「ゆっ!! あなたたち、まりさをさがしているの?」 「……むきゅ、そうだけど……」 「そのまりさ、どんなまりさだった?」 このれいむには話が通じそうだ。親ぱちゅりーはそう思い、特徴を話し始める。 「むきゅん……とてもたくさんのたべものをかれる、はだやかみがきれいなまりさよ」 「「「ゆゆゆっ!?」」」 説明になっていない説明だが、ゆっくりまりさ達にはどこか思い当たることがあるようで、あからさまに表情を変えた。 それを見た親ぱちゅりーは、このゆっくり達は何か知っているのではないかと感じ取った。 ただ、れいむだけは微笑んでいる。 「ゆっくりりかいしたよ……ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!」 「むきゅ!?」 れいむは何を言っているんだ? ぱちゅりー親子はれいむが何を言っているか理解できず、戸惑っていた。 その隙をのがさずに、まりさ達が襲い掛かる。 そして、隙だらけのぱちゅりー親子はまりさ達の体当たりを受けた。 「むきゅううううううううううううん!!!!!!!」 ぱちゅりー親子は声を上げながら吹っ飛んでいった。 「ゆっゆっゆ、まりささまにけいいをはらわないなんておろかものなんだぜ」 「まりささまでなく、あんなよわっちいまりさをよびかけるなんてみるめがないんだぜ」 「まりささまをばかにしたつみはおもいんだぜ、しけいなんだぜ」 目の前でまりさ達がぱちゅりー達を攻撃している光景を見て、れいむは思う。 (こういうとき、ばかなまりさはべんりだね!! このぱちゅりーをけせば、あのまりさをうばうてきはいなくなるよ!!) 自分が描いていた予想通りの展開になり、れいむはほくそ笑む。 このままぱちゅりーがゆっくりと死んでいくのを見届ければいい。そう思い眺めていると── 黒い帽子が目の前に飛びこんできた。 「ゆぶうぅぅ!!?」 吹き飛ばされる一匹のまりさ。おもわずれいむはそれを避ける。 そしてまりさが飛んできた方向に視線を戻す。 すると他のまりさも倒れているではないか。 そしてぱちゅりー親子に立ち塞がっているゆっくりが一匹── 「ぱちゅりぃをいじめるなあぁぁぁ!!!」 そのゆっくりは、金色の髪をなびかせて此方を見据えていた。 「むきゅぅん……たすかったわ……ありがと」 親ぱちゅりーお礼をいった。見ず知らずの帽子のないゆっくりまりさとはいえ、自分達を助けてくれたのだ。 少なくともあの無礼なまりさ共よりは好感が持てる。 そういえば子供は大丈夫だろうか、慌てて子供の無事を確認したが、子供の様子がおかしいことに気づく。 見ればずっと帽子のないまりさを見つめているのだ。 そして子ぱちゅりーは呟いた。 「まりさ……?」 「はやくにげてね!! ゆっくりしないでにげてね!!」 目の前の帽子のないゆっくりは逃げるように促し、立ち上がろうとしている三匹のまりさと対峙する。 帽子がなくても判る。あの透き通るような声、あの日差しのように輝く金髪、あれはまりさだ。ずっと会いたかった世界で一番大好きなまりさだ。 もう会えないかもしれないと思っていた。最後に出来れば一目でいいから会いたいと思っていた。 そんな願いが通じたのか、まりさと出会えた。帽子がないことが何だというんだ。そんなの関係ない。 子ぱちゅりーは涙を浮かべ、背一杯叫ぶ。 「まりざあぁぁぁ!!!あいだがっだあぁぁぁぁ!!!」 子まりさも涙を浮かべていた。 もう自分のことなど判ってくれないと思っていた。まりさでない何かだと認識されると思っていた。 でも、ぱちゅりーは自分の事を判ってくれた。それがなにより嬉しかった。 同時に思う、絶対に守って見せると。 そう心で誓い、体制を整え始めたまりさ達を見据え、構えた。 「ゆ゛っ!! いきなりまりささまになにをするんだぜ!!」 「ゆっくりできないゆっくりのくせに、なまいきなんだぜ!!」 「ぜったいにゆるさないんだぜ、ゆっくりできないゆっくりはゆっくりしね!!」 戦いが始まった。 「むきゅ、だいじょうぶ?」 親ぱちゅりーが子ぱちゅりーに話しかける。元々体の弱い上、先程の体当たりでボロボロになった自分達はお荷物でしかない。 今戦っているまりさには悪いが、後でお礼をしよう。そう判断してここから立ち去ろうとした。 だが、子ぱちゅりーの様子がおかしい、まりさに会えてうれしいのはわかるが、今はそれどころではないというのに。 しかし原因は違っていた。 「おかあさん……うごけないの……」 「むきゅ!?」 よく見ると、足元がほんのり黒ずんでいた。 どうやら吹っ飛ばされて着地した際に、何か鋭利なものを踏んでしまって足元から餡子がでているようだ。 これではこの子は動けない。かといって今の自分には持ち上げていく体力もない。 結局は、まりさが勝つように祈るしか方法はなかった。 まりさは必死だった。負ければぱちゅりー達がどんな酷い目にあわせられるかわからない。負けるわけにはいかなかった。 幸いにも、まりさ達は自分勝手に体当たりしてくるだけなので、攻撃は少し横に飛ぶだけで簡単にかわすことが出来た。 しかし、自分よりも少しだけ大きい相手な上、三匹相手に戦っていてはなかなか有効的な打撃は与えられない。 このままではいずれ自分が力尽きてしまう。そう考えたまりさは一つの賭けに出た。 今まで飛び跳ね回っていたが、急に動くのを止めた。 「ゆっへっへ、さっさとかんねんするんだぜ」 「ちょこまかとうっとうしかったけど、これまでなんだぜ」 「これでとどめなんだぜ、ゆっくりしね!!」 それをみたまりさ達は、相手が疲れて動けなくなったと思い込み勢いをつけて突進する。 ゆっくりできないゆっくりを自分の手で倒せば、れいむだってよろこぶだろう。三匹のまりさは我先にとまりさに向かっていった。 そしてその内の一匹が体当たりを仕掛けた時── 「ゆゆっ!?」 目の前にいたはずのゆっくりできないゆっくりが消えた。代わりに見えたのは大きな木。 勢いあまってまりさは激突してしまう。 「ゆぶっ!!」 後から来た二匹のまりさもその勢いを止めることはなく、体当たりをしていた。その結果、一匹のまりさは二匹のまりさから体当たりを受け、失神してしまう。 どこにまりさは消えたのか? 残った二匹が周囲を見渡そうとしたその時。 「ゆべぇ!!」「ゆぎゃあ!!」 まりさは、上から降ってきた。 消えたと思っていたのは、ただとても高くジャンプしただけの話であった。 そして着地の足場として一匹のまりさを踏みつけ、さらにその反動でもう一匹のまりさに体当たりをした。 これが決め手となって、三匹のまりさはそれぞれ気絶してしまった。 まりさ自身は深く考えていないだろうが、上からの攻撃は中々に有効である。 特にゆっくりまりさは前傾姿勢で突進をすると、帽子のつばによって死角ができる。 そのため、上からの攻撃に気づきにくい。気づかなくても弱い攻撃は帽子が弾いてくれるのだ。 だが、成体に近いゆっくりの、ジャンプによる衝撃は強く、さすがに帽子といえど耐えられない。 そのため、対まりさ相手には体当たりを誘っての踏みつけは有効である……と言えるかもしれない。 勝った……これでぱちゅりーたちは助かる……。 そう思って振り返る。そこにはまだ、ぱちゅりー親子の姿があった。どうやら様子がおかしいようだ。 どうしたんだろう? 心配してそばに寄ろうとして── 以前受けたような強い衝撃が、体を襲った。 「もうだいじょうぶだよ!! ぱちゅりー、あんしんしてね!!」 親れいむは満面の笑みで子ぱちゅりーに話しかける。 おかあさんが来たからには安心だよ、とアピールしているようである。 だが帰ってきた言葉は親れいむにとっては予想外な言葉だった。 「どうじでごんなごどずるのおぉぉぉ!!!」 「ゆゆっ!?」 子ぱちゅりーは泣いている。なんで?どうして? 親れいむの頭は混乱した。 そこに親ぱちゅりーが話しかける。 「むきゅ、れいむ……なんてことをしたの……」 「ゆ? ゆっくりできないゆっくりからぱちゅりーをまもったんだよ!!」 「それはごかいよ、あのこはわたしたちをたすけてくれたのよ」 「ゆゆっ!? でもあれはゆっくりできないゆっくりだよ!?」 「そんなことかんけいないわ!!」 れいむは狼狽した。どうして怒られなければいけないのだ? 遠くからぱちゅりーの声がしたので、急いでここまで駆けつけてきた。 そこにはゆっくりできないゆっくりに襲われているぱちゅりーの姿が見えたではないか。 とっさに助けるために体当たりを仕掛けたのに、帰ってきたのは非難の言葉だ。 ゆっくりできないゆっくりを排除してなんの問題があるのだ?むしろ感謝されるべきではないのか? そんなことを考えていると後から子供達がやってきた。 「おかーさんまってー」 「ゆっ、ぱちゅりー。だいじょうぶ?」 「あそこにゆっくりできないゆっくりがいるよ!!」 「ほんとだ、きっとぱちゅりーをいじめたのはあいつだね!!」 「ゆっくりしね!!」 子供達がゆっくりできないゆっくりに襲い掛かる。 だが親ぱちゅりーはボロボロの体を必死に動かして子供達の前に立ち塞がった。 「むきゅん、だめよ!! まりさにてをだすのはゆるさないわ!!」 「おねえぢゃんだぢやめでー!! まりざをいじめないでー!!」 必死になってぱちゅりー達は子供達を止めようとする。 子供達はその言葉を聞いて混乱する。 (あれはまりさ? ゆっくりできないゆっくりはまりさ? まりさはゆっくりできないゆっくりなの?) そして親れいむも混乱する。 (どうしてぱちゅりーはとめるの? ゆっくりできないゆっくりをやっつけるのはいいことだよ?) そして答えが出そうで出ない、葛藤の最中── 「ゆっ、ゆっくりできないゆっくりをまもるぱちゅりーはゆっくりできないよ!!」 「「「「「「ゆゆ?」」」」」」 突然、れいむ親子の後ろのほうから声がした。後ろを振り返ると、そこにはれいむの姿が見えた。 親れいむは見たことのあるれいむに安心し、それでいて言葉を返す。 「ゆ? れいむ、どういうこと?」 「かんたんなことだよ!! れいむのことをばかにしたまりさや、ゆっくりできないゆっくりとそこのぱちゅりーはぐるだったんだよ!!」 「ゆゆっ!?」 れいむの説明を聞いて、親れいむに電流が走る。 ゆっくりできないまりさ、ゆっくりできないゆっくり、それらをかばうぱちゅりー。 簡単な事じゃないか、全部れいむ達をゆっくりできなくさせる悪い奴らだったんだ。 全てを理解した親れいむの行動は早かった。 「むきゅ、なにをいって──」 親ぱちゅりーが反論を述べようとするが、それを遮る様に親れいむが体当たりを仕掛けていた。 「れいむのおかげでりかいしたよ!! うらぎりもののぱちゅりーは、ゆっくりしね!!」 「「「「「お、おかーさん???」」」」」 目の前の出来事に頭が着いていけない子れいむ達。 それを払拭するかのように、親れいむは自分にとって都合のいい解釈を子供達に話す。 「ゆっ、このぱちゅりーはれいむたちのことをばかにしてうらぎったくずゆっくりだよ!! いっしょにこらしめようね!!」 「「「「「わかったよおかーさん!!」」」」」 「むきゅうぅぅぅぅぅ!? やめてえぇぇぇぇぇ!!!」 (けっかおーらいだね、あのようすぜったいなにかしっているよ) ゆっくりできないゆっくりが現れた時には焦ったけど、結局れいむ達がやっつけた。 そしてぱちゅりーたちはまりさについて何か知っているようだ。こらしめたらゆっくりと居場所を問いただせばいい。 (まったく、れいむからまりさをうばうなんておろかだね。そのためにみがわりのゆっくりをよういするなんてなんてゆっくりできないやつだね!!) このぱちゅりー達はれいむから愛しのまりさを奪い、隠している。れいむの頭の中ではそうなっていた。 「むきゅぅん!! むぎゅっ!! ぎゅー!!」 「やめでええええええぇぇぇぇぇ!!!」 子ぱちゅりーは家族を必死に止めようと叫ぶ。しかしその声は家族達には届かない。 それでも子ぱちゅりーは懸命に叫ぶ。自分の体のことなど省みずに。 そんな子ぱちゅりーにも衝撃が訪れた。 「ぶぎゅぅ!?」 「ぎゃあぎゃあとうるさいんだぜ」 「まりささまをばかにするからいけないんだぜ」 「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしぬといいんだぜ」 いつのまにか起き上がっていた三匹のまりさ達が、子ぱちゅりーを突き飛ばしたのだ。 餡子を撒き散らしながら転がっていくその光景を見て、ゲスまりさ達はゲラゲラと笑いだした。 (ゆっ……) 笑い声が聞こえる。一体何が起こったのだろうか。 子まりさはゆっくりと意識を覚醒させていく。 (そうだ、ぱちゅりーは!?) まだ目が霞んで周りが見えないが、辺りの状況を子まりさは確認しようとする。 体中から痛みが走る。まともに動くことすら間々ならない。 それでも必死になって前方を見る。徐々に視界がはっきりとする。 だが、そこには信じられない光景がそこには広がっていた。 (ぱ……ちゅ……り……?) まず目に飛び込んできたのは、見慣れた帽子だった。よく見ればその帽子は所々黒ずんでいる。 帽子の周りにも同じような黒い物体が点々と散らばっている。 帽子の影に隠れているのは、ただの大きな黒い塊だった。 次に見えたのは、その傍で餡子だらけで倒れているゆっくりの姿。 そしてその光景をみて馬鹿笑いしているゆっくり達。 (う……そ……だ……) まりさは理解してしまった。 目の前に横たわる物体が何者かであると。 その傍で傷だらけで倒れている者が誰であるかを。 それをみて笑うもの達の存在を。 (うそだあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!) 子まりさの悲しみの心を映すかのように、空は泣いていた。 「ゆっ、つめたいよ!! あめがふってきたよ!!」 「あめはゆっくりできないんだぜ、さっさとかえるんだぜ」 「みんな、おうちにかえるよ!! おかーさんについてきてね!!」 「「「「「わかったよ、おかーさん」」」」」 突然の雨に、ゆっくり達は急いで住処へと帰っていった。 笑い声の響いてた広場は、一瞬にして静寂を取り戻した。 次 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/958.html
注意書き 舞台について特に決めてはいませんがたぶん幻想郷の外だと思います。 人間に飼われるゆっくりがいます。 虐待描写は温めです。 前半は特にいじめとか言った描写はありません。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ん?なんだ、ゆっくりか…」 俺が大学のレポートを作成していると窓からゆっくりれいむが入ってきた。 まあ、特にゆっくりが嫌いというわけでもないし、汚れているというわけでもない、荒らしたり自分の邪魔をしないのであればそのまま放っておこうと思った。 「えーと…財務管理財務管理…」 教科書をめくり索引から項目を探す。 「おにいさん!!ここはおにいさんのおうちなの?」 「そうだよ」 無視して自分の家宣言されても困るので適当に答えておこう、あ、財務管理、5ページか。 「ゆ…あまりひろくないけどとてもゆっくりしたおうちだね!!」 「そりゃどーも、でもおまえの家よりは広いぞ?」 「そーだね!!!」 なんだ、理解はしていたのか、じゃあいいや、レポートを書こう。 しばらくれいむは黙って俺の方を見ていたがしばらくして俺に声をかけてきた。 「おにーさん!ゆっくりしてる!?」 何度も教科書とレポート用紙を見比べ、ペンを走らせる俺がゆっくりしてないように思えたのだろう、事実俺は今ゆっくりしていない。 「いや、あまりゆっくりしてないな」 「どおして!?ゆっくりしよう!!ゆっくりしていってよ!!」 そんなこと言ってもレポート書かないわけにはいかないし、でも急いで書くものでもなかったので、休憩がてらこいつと少し話してもいいかなと思った。 「じゃあどうすればゆっくりできるんだい?少し教えてほしいな」 「ゆゆ、そうだね…」 れいむは顔をしかめながら、しばらく考えた後答えた。 「おひるねをするとゆっくりできるよ!!」 「パスだ、俺に昼寝の習慣はない」 夜眠れなくなって授業中に寝てしまい、先生に怒られるのは嫌だからね。 「ごはんをたべるとゆっくりできるよ!!」 「却下、さっき昼飯を食ったばかりだからこれ以上は食べれない」 「ゆゆゆ…おにいさん、てごわいね…」 何が手ごわいんだよ、何が。 「そうだ!すっきりすればゆっくりできるよ!!」 「!?!?!?」 「ゆふふふ、すっきりすることにきづいたれいむはさすがゆっくりしてるね!!」 「俺には…」 「ゆ?どうしたの、おにいさん?」 「俺には…すっきりする相手がいないんだよぉ…」 お兄さんは泣いてしまいました。 「そう、おにいさんにはすっきりするあいてがいないんだね…」 「うぅ…」 ちくしょー、今まで親戚以外の女性に振れたこともない、俺の心の傷を掘り返しやがって… 「でもれいむにはすっきりするあいてがいるよ!!まいにちまりさとちゅっちゅしてすっきりするよ!!それもれいむもまりさもまだわかいからにんっしんしないすっきりだよ!!」 なんだよ、その「まだ社会人じゃないので避妊しています」みたいな言い方は!?それに毎日やってるのかよ!? ああ、なんだろう、たかが饅頭の癖になんだか怒りが込み上げてきたぞ…? 「ちゃんとにんっしんしないれいむはとてもゆっくりしてるでしょう!!じゃあれいむはもうかえるね!!かえってまりさときょうもすっき…」 「饅頭が調子に乗ってんじゃねえぇー!!」 俺はれいむの顔面をがしりと掴むと全力で窓の外に放り投げた。 5秒ほどそのままの体勢で固まってた俺は、レポートを書くために椅子に座った。 「……ふぅ、すっきり、さて、レポートレポート…」 俺ったら学生の鏡だねぇ、さて、財務管理は… 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!!!や゛め゛て゛え゛ぇぇぇ!!!」 「な、なんだぁ!?」 急に窓の外から悲鳴が聞こえてきた、俺はあわてて窓の外、悲鳴をした方向を見る。 「い゛や゛だぁぁぁ!!す゛っき゛り゛し゛た゛く゛な゛い゛い゛ぃぃ!!!」 「はぁはぁ、しょたいめんのありすにいきなりちゅっちゅしてくるれいむかわいいいぃぃ!!すっきりしよぉねえぇぇ!!」 なんと、さっき投げたれいむをありすが襲っていた、どうやら俺が投げたれいむがありすに命中、ちょうど口と口がぶつかる形になってありすが発情したのだろう。 まったく、この饅頭はどうしてこう俺の目の前ですっきりの話をしたがるんだろうか、すっきりしたがるんだろうか? というか白昼堂々、何の遮蔽物もないアスファルト上で交尾するっておかしいだろ? 「んほぉぉお!!いいよぉ!!れいむ!!れいむぅう!!」 「い゛や゛だあ゛ぁぁぁ!!すっきりしたら…しんじゃう゛う゛よ゛ぉお゛ぉお゛!!!!」 最初は放り投げただけで許してやろうと思ったのに…目の前で交尾なんかされては俺の怒りは有頂天だ。 交尾に夢中で周りを見る余裕がない二匹に近づいた俺は金属バットで二匹まとめて叩き潰した。これでゆっくりレポートが書ける… そう思ってレポート用紙を見るとおかしなところに気づいた、途中から文章が同じことの繰り返しを延々と描いているだけになっている… きっと、れいむの話に適当に答えている時にレポートに対する注意がそがれたのだろう… 「やっぱり最初から追い出しとくべきだった!!あの饅頭がぁ!!」 結局、レポートは書き直す羽目になった。 あとがき 普通な虐待ものを書こうと思ったのですが… 虐待描写って難しいですね。 9月4日 1724 セイン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3351.html
『一緒にゆっくり遊ぼうね』 周囲の山々の桜が散り始め、景色が日々変化する春の日。 天気も良いので散歩でも出掛けようと家の裏口から外に出た私は二匹の妖精と出会った。 裏庭にある一本の松の木、その木陰にゆっくり二匹が身を寄せ合ってゆっくりと休んでいた。 一匹は紅を基調としたリボンを付けたゆっくりれいむ。 もう一匹は黒いトンガリ帽子を被ったゆっくりまりさだ。 ゆっくりとはこの村の長老いわく饅頭の妖精らしい。 「ゆっくりしていってね!!!」と鳴き、ゆっくりすることを好む大人しい妖精。 山の中ではよく見かけるが、こうして村で見るのは割と珍しかった。それも我が家の裏庭で。 自らの巣の周りで落ち着いていることの多いゆっくりが遠出することは少ない。 しかしこの二匹は見た感じでは子ゆっくりのようだ。 きっと蝶々でも追いかけて遊んでいるうちにここまで来たのだろう。 害は無いし放っておいても良いのだが、その前にちょっと遊ぼうかな。 私が子供のころは山でゆっくりとよく遊んだものだった。 と言う訳で春の陽気でうとうと眠りかけている二匹に近づくと、二匹は私に気付いて顔を上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 これがゆっくり式の挨拶だ。 れいむは眉毛をシャキーンとして、どこか勝気な笑みを浮かべて元気に叫ぶ。 まりさはふてぶてしさを感じさせる表情だけど、一方で親しみも感じる控え目な笑顔で叫んだ。 挨拶の時は二匹の間に一定の距離を取るのがゆっくり式だ。 「ああ、ゆっくりしていってね」 「ゆっ!」 「ゆっくり!」 二匹は私の返事を聞いて満足したのかピョンと垂直に跳ねて短く鳴いた。 その後は再び二匹寄り添って元の位置に戻った。 しかし眠そうだった先程とは違ってニコニコと私を見上げている。 一緒にゆっくりしようと誘っているようだった。 私はそんなれいむを持ち上げる。 バスケットボールぐらいの大きさのれいむはとても軽く、そして柔らかかった。 「ゆゆ? ゆっくりしていってね!!」 私の顔の高さまでれいむを持ち上げて目を合わせると、れいむは元気な鳴き声を上げた。 「ゆ、ゆっー。 まりさもゆっくりしたい!」 まりさは持ち上げられたれいむが羨ましいらしい。 れいむを見上げながら私の足元でピョンピョン跳ねていた。 「まりさは後でな」 私はまりさにそれだけ伝えるとれいむをさらに持ち上げた。 高い高いの要領だ。ゆっくりはこれが好きなのだ。 「おそら! おそらをとんでるみたい!!」 「ゆぅー、まりさも! まりさもとびたいよ!!」 れいむもやはり高い高いが好きなようで、清々しい笑顔を見せる。 まりさもそれを見て羨ましいレベルがMAXだ。 しばらくれいむにお空体験させた後は再び顔の高さまでれいむを下ろす。 「ゆっくりできたよ!!」 頭上で何度も「おそらをとんでるみたい」と言ったのだから報告せずともそれは分かる。 わざわざ報告してくるのはゆっくりなりのお礼かな。 お礼もいいけど今度は私が楽しむとしよう。 私は両手でれいむの両頬を支えるようにれいむを抱えている。 そこから親指で柔らかいれいむの頬をプニプニ突く。 「ゆにゅ?」 プニプニプニ 「ゆゆゆ」 「おお、柔らかい。たまらん」 今度は片腕でれいむを抱えて頬を軽く摘まんでみる。 やはり柔らかい。この柔らかさは女性の乳房を彷彿とさせる。 「ゆー、ゆー」 れいむは大人しくスキンシップを受けていた。 それに私の腕に抱えられて安心できるようで、眠たそうな顔をしていた。 が、ここで不意打ち。強めに頬を抓って見た。 「ゆ"!? いたい!」 ビクーンと体を硬直させて痛みを訴えた。 もがいて私の腕から逃げようとする。 「おっとっと… ごめんよれいむ」 「ゆっ…ゆっくりー!」 謝るとすぐにれいむは落ち着いた。 単純である。 しかし強く抓った時の反応、良かったな。 また見たいと思ってしまうぐらいに。 だけどこれ以上はやめておこう。 感情を抑えきれなくなるかも知れないし。 それよりも今まで無視していたまりさの「まりさもあそんで」という訴えは激しさを増していた。 そろそろ可哀想になってきたし、まりさとも遊ぶとしよう。 なので眠り始めたれいむを地面に降ろす。 「ゆ?」 突然の地面にれいむは驚き、きょとんとしていた。 対してまりさは… 「ゆっくりしていってね!!」 私の腕に飛びついて来た。 よっぽどれいむが羨ましかったのだろう。 キラキラとした瞳は「はやくあそんで」と言っているようだった。 「よーし、次はまりさの番だぞ」 「ゆー!!」 今度はまりさを持ち上げ、れいむと同じように遊んだ。 いや、違うな。 れいむよりも三回ぐらい多く頬をぎゅって摘まんだ。 粒のような涙を浮かべて泣き出しそうになったのでそこで止めたが。 その後はまりさも降ろしてやり、適当な野菜を分け与えた。 二匹は遠慮していたが、目の前に置いてやるともそもそと食べ始めた。 食べ終わればもちろん、 「しあわせー!!」 これである。 二匹の爽やかな笑顔を見ると野菜をあげた甲斐があるというものだ。 「それじゃ出かけるから今日はお終いね」 「ゆ? ゆっくり! いっしょにゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしようよ!!」 どうやら気に入られたみたいだ。 もっと一緒にいてと引き留められた。 「用事があるんだよ。だからまた明日な」 「あしたゆっくりしようね!!」 「しようね!!」 私は二匹に別れを告げると当初の予定通り裏山へ散歩に出かけた。 散歩中、私の頭には抓られたゆっくりの泣きそうな顔が何度もチラついていた。 それからというもの。 毎日れいむとまりさは裏庭の木陰に来るようになった。 山か何処かに巣はあるようだが、日が出ている間はここで過ごしている。 最初の数日は私を見ても遊んで欲しそうにこちらを見ているだけだった。 そんな二匹を放置するのも可哀想なので適当に遊んであげた。 草笛の吹き方を教えてあげたり、ホッペを指で突いたり… 抱っこして一緒に木陰で寝たり、デコピンしたりした。 ちょっと痛がることをしてしまったが私なりの可愛がり方なのだから仕方がない。 それに痛いことをしても謝れば二匹はすぐに笑顔になって許してくれた。 そうやって遊んでいるうちに最近は二匹の方から私を誘うようになった。 まだ扉をノックしたり家の中の私に呼び掛けはしないけど、 私が姿を見せるとピーンッと背筋を伸ばして飛び跳ねてきた。 「ゆっくりしていってね!! きょうもゆっくりしようね!!」 「ゆっくりしていってね!! きょうはおにーさんのぼりしたいよ!!」 「ははは、よしよし」 二匹の頭を軽く撫で、私と二匹の遊びの時間が始まる。 れいむとまりさの要望を聞きつつ、一緒になって遊んでやる。 犬なんかと違って喋るので、ペットというよりも子供と遊んでる気分になる。 これはこれで楽しかった。 楽しいはずなのだが……私は物足りなさを感じるようになっていた。 私が楽しいと感じるのはゆっくりに対して意地悪したときだけなのだ。 例えば頬を何度も突っついて嫌がる顔を眺める。 それでも頬を突っついて涙目になってもまだ続ける。 「や、やめてね…」 「ゆゆ、おにーさんゆっくりしようよー!」 二匹が私の行為に対して拒絶の意を口にしてようやく止める。 気付けばゆっくりの頬が赤く腫れていた。 他にも楽しそうに笑ってるゆっくりを捕まえてデコピンをくらわせた。 思いきり力を込めた渾身のデコピンだ。 「ゆびぃっ!!」 ひと際高い声で叫んだゆっくりはプルプル震え、次第に涙目になる。 そしてとうとう我慢できなかったのかポロポロ涙を流して泣き出してしまった。 「ゆぅぅぅ! ゆぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりしてね!! ゆっくりしてね!!」 イヤイヤしながら泣き喚くゆっくり。 最高だった。悪いことをしたなと思ったが、心が昂るのを確かに感じた。 このまま思いきり殴ったらどうなるだろうと考えると本気で興奮した。 でも、その日はそれ以上何もせずにデコピンしたゆっくりに謝った。 本当に痛かったらしく、すぐには許してくれなかったが。 しかしこの日、私は自分の心に芽生える気持ちを確かに感じた。 私はゆっくりの泣き顔が好きなんだ。 無邪気に遊んでと跳ね寄ってくる二匹のゆっくり。 その無垢な笑顔をぐしゃぐしゃにしたい。 そんな自分の気持ちに気付いてからは毎日が物足りなかった。 日を追うごとに強くなるこの想い。 「お前たち、楽しいかい?」 「ゆー! おにーさんといっしょ! すごいゆっくりできるよ!!」 「たのしーよ!! あしたもあしたのあしたもずっとゆっくりしようね!!!」 もう、我慢できなかった。 「そうか。 ところでさ。私の家に来ないか? 私の家で遊ぼうよ。なっ?」 「ゆー? でもいーの??」 「もちろんさ。お前たちが来れば嬉しいし、ゆっくり出来るからね。 来てくれるかい? 来てくれるよね?」 「ゆっ、まりさはおにーさんのおうちでゆっくりしたい!!」 「れいむも! れいむもゆっくりするー!!」 私の事を信頼し切った二匹を我が家に誘うのは簡単だった。 裏口の戸を開き、家に入るよう促すと二匹は元気に家の中へと駆けていく。 家に入ると私に振り向いて「ゆ!」と鳴く。 私はそんな二匹に続くと鳴き声の代わりにピシャリと戸を閉める。 「ゆっくりびっくり!」 戸の閉まる音に驚いている二匹を抱えて部屋へと連れて行く。早足だ。 二匹はキョロキョロと部屋の様子を眺めていた。 初めての人間の家には気になる物がたくさんあって目移りしてしまうのだろう。 「さ、ここで遊ぼうな」 「ゆっくりしていくね!!」 家の奥、寝室としている部屋に二匹を連れ込んだ。 襖を閉めれば六畳ほどの閉じられた空間になる。 ここなら存分に私も楽しめるし、二匹は決して逃げることは出来ない。 「ゆっくりあそぼうね!!」 「まりさ、おもしろいのみつけたよ!! それであそびたいよ!!」 「ゆゆ、れいむもみつけたよ! もーいっかいみたいよ!!」 「はは、でもダメだ。 どうしてもやりたい遊びがあってさ」 私は二匹の傍に屈むとまずはまりさに手を伸ばした。 「ゆっくりあそんでね!!」 「ああ、遊ぶとも」 まりさの後頭部を掴んで床に押さえつける。 「ゆ"?」 苦しいようでくぐもった声を上げた。 でも少したりとも逃げようとはしない。 まりさは私を信じてくれている。 意地悪程度ならするけど本当に酷いことはしないって信じてくれてる。 でもごめんねまりさ。 もう自分の心に嘘は付けない。 だから殴るね。 まりさを押さえ付けていない方の手を振り上げ、拳を握る。 狙うのはまりさの頭だ。 何をするんだろうと大人しく待っているまりさの頭に狙いをつける。 帽子があるけど構わない。 気持ちのままに殴りつけるだけだ。 ズンッ 「…っゆ"」 鈍い音と声が部屋に響いた。 泣かせて怯えさせるのが目的だから手加減している。 だがまりさのクッションのような柔らかい頭には私の拳骨がめり込んでいた。 帽子越しでもまりさの体温、震えを拳から感じられる。 「ゆ? ゆゆ? まりさ…?」 呆然としているれいむを余所に私は拳をゆっくりと上げた。 しばらく震えるだけのまりさだったが、間を置いてまりさの泣き声が漏れ始める。 「ひっ…ゆひっ…ひっ……」 おっと忘れちゃいけない。 私はまりさの頭を片手で掴み、顔を私と向き合わせた。 もちろん泣き顔を見るためだ。 だが残念なことに、まりさは私の顔を見ると少し安心したような表情になった。 もしかすると私が殴ったこと気付いてない? だったら仕方ない。 今度はまりさにも良く見えるように目の前で拳を握る。 それからゆっくりと腕を引いて―― 再び殴る。 「………!!!」 顔面中央、人間で言えば鼻の辺りを思い切り殴り付けた。 まりさは悲鳴も出せなかった。 「やめてね! ゆっくりやめてね!!」 れいむは泣きそうな顔で私に縋りついた。 のんびり屋のれいむも私がいつもと違うと気が付いたらしい。 いつもの意地悪と違い、本気で傷つけようとしているということを。 私は縋るれいむに腕を横薙ぎにぶつけて振り払った。 れいむの番はまだ先だ。 「あ"あ"あ"ーっ! いだいよぉぉ!!! ゆ"ーっ!!」 と、これはまりさだ。 殴りつけたショックから立ち直り、後頭部と顔面の痛みにようやく泣き出した。 大粒の涙をボロボロ流し、大口を開けて泣き叫ぶ。 いい顔だ。もっと殴りたくなる。 まりさの目の前に拳を突き出して、再び殴ると意思表示する。 「ひっ、や、やめて…ね。 いたいのやだよぉ。おにーさんやめてよぉぉぉ」 まりさは怯えていた。 意地悪を嫌がるのとは違う。 危害を加える者へ恐怖。それと単純に痛みに対する恐怖だ。 さっきと同じで腕を引くのを見せ付ける。 それを見たまりさはビクリとひと際大きく体を震わせた。 この後どうなるかはついさっき身を持って知ったのだから当然の反応か。 下半身を振って本気で逃げようとする。だが体の構造上、頭を掴まれては逃げようがない。 「や、やあぁぁ!! やだぁぁぁ!! いたいのやだよぉ!! やめてやめでよぉぉぉ!!!」 もはや出来るのは泣き叫ぶことだけだ。 まりさは私に泣き付いて止めてとお願いする。 「ゆっくりじようよ! おにぃさぁん!! いっじょにゆ"っぐりじだいよ! じよう"よ"! ゆっぐりぃぃぃぃ!!」 「ゆっくりしてるさ。 まりさを殴るととってもゆっくり出来るんだ」 そして殴る。 今度は左頬だ。 「あ…ひ…あ"あ"ぁ"ぁ"ーっ!!」 「楽しいなぁ」 また殴る。 今度は右頬。 「あ"あ"ーっ! あ"ぅ"あ"ーっ!!!」 もっと殴る。 「あびぃっ! びいぃぃぃ!!!」 まだ殴る。 「ゆ"や"あ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"!!!!」 まりさが泣くのでさらに殴る。 「あ"びゅっ、びぶっ…あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!」 殴り続けた。 「ゆっくりしようよぉぉ!! ゆっくりしてってよぉー!!」 れいむは部屋の端で叫んでいる。 私を恐れ、決して近付いては来ない。 そろそろあっちも苛めようかな。 すでにポンコツ顔のまりさを床に投げ捨てる。 「ゆ"…ゆ"ぶ…」 もはや虫の息だ。 れいむに気付いてよかった。 れいむが叫ばなければついつい殺してしまったかも知れない。 「じゃあ今度はれいむの番だね。 お兄さんとゆっくり遊ぼう」 「あ、あそぶの? ゆっくりあそぼうね…?」 本当に言葉通り「遊ぶ」と勘違いしたらしいれいむは少し笑顔が戻る。 このまま油断させて捕まえてもいいが… 「れいむもいっぱい殴ってあげるね。 まりさと同じように痛い思いさせたげる」 「…ゆ? や、やあぁぁ…」 れいむは一転顔を真っ青にすると襖にグイグイと体を押し付けて逃げようとする。 だが襖は押しても開くことは無い。もし開き方を知っていてもれいむの力じゃ襖を動かせない。 「ほーら、捕まえちゃうからね」 「ゆっくりぃぃ… こないで、こないでよぉぉ」 れいむは腰が抜けたのかズリズリと這って私から逃げる。 跳ねても遅いゆっくりが這ってはさらに遅い。 簡単に追いつけるけどあえて追いつかない。 ギリギリれいむが逃げれるスピードで追いかける。 「やだあぁぁっ… ゆっぐりざせでよ"ぉぉ」 まだ殴ってもないのにれいむは泣きじゃくっていた。 よっぽど怖いんだろうなぁ。可愛いなぁ。 でもそろそろいいかな。 ヒョイっとれいむの頭を掴んで持ち上げる。 「あ… あ"あ"あ"あ"あ"!!! はなじでね! ゆっぐりじでね"っ!!」 まりさと同じように下半身を振るれいむだがもちろん逃げられない。 這うほどに愛しい床から離れ、めでたく私とご対面だ。 「やあ、れいむ。逃げるなんてひどいじゃないか。 でもこれでやっと一緒に遊べるね」 「ゆ"う"ー! ゆ"う"ー!」 れいむは滝のような涙を流しながら縮こまっていた。 体を強張らせて私に怯えた瞳を向けている。 「そんなに怖がらないでよ。 さっきのは嘘さ。ほらナデナデしてあげるよ」 「ゆ"あ"あ"……ゆ?」 予想外の言葉に泣き止んできょとんとする。 「怖がらなくて、いいんだよ。 一緒にゆっくりしようね」 「ゆゆ…ほ、ほんと?」 「ごめん嘘だ」 バチンッ れいむが体の力を緩めた瞬間、れいむの左頬に平手打ちをかました。 「あ…ゆ? う"う"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」 バシンバシンッ 何度も何度も左頬だけにビンタする。 まりさに対しては握り拳の剛の暴力を、れいむに対しては平手打ちの柔の暴力を与える。 「いだい"っ! い"だい"っ! やぶぇでね"っ!! びぃぃぃ!! うぶっ!!」 泣こうが叫ぼうがビンタを続ける。 れいむの左頬が真っ赤になっても止めない。 ビタンビタンッ 「びゅぶぅぅぶっ! ゆぎゅう"っ!!」 バンッバンッ 「ひぐっ、ひぐっ、ゆ"ぶぅぅっ!!」 何度も何度も叩き続ける。 まりさと同じように飽きるまでずっとビンタを続けた。 止めた頃にはホッペは腫れあがり、張りが出て硬くなっていた。 「あびゅ…ゆびゅぶ…」 顔の左右のバランスがおかしくなったれいむは声もまともに出ないようだ。 涙も枯れたのか、ほとんど涙を流さない。 視線を私から逸らしてこの暴力が終わるのを待っているようだった。 「ふぅ…」 そろそろいいだろう。 私も散々殴って腕が疲れたし、十分すっきり出来た。 れいむをまりさの傍に投げ捨てると、私は壁にもたれ掛かって休むことにした。 さて、あの二匹はこの後どうしようかな。 「れ、れーむ…ゆっくりしてってね…」 なんて考えているとまりさはボコボコの体で痛むだろうにれいむへと擦り寄る。 れいむを苛めている間に多少回復したのだろうけど、それでもその動きは弱々しかった。 「ゆぶ、ゆ"、ゆ"っぐい"…」 対するれいむは息も絶え絶えといった感じだ。 だというのにまりさの言葉に返事をするとは大したものだ。 「れ"い"む"ぅ…れ"い"む"ぅ"… ゆっぐりじでよ"ぉ…」 「ゆ"、ゆ"ぐ…ゆっぐ……」 始めて会った時のように身を寄せ合う二匹。 ただ前とは違って安らぎの要素は何一つ無い。 今私が話しかけたらきっと怯えて悲鳴を上げるだけだ。 そんな二匹を家に置いておいても疲れそうだ。 私は立ち上がると二匹に近づく。 「ゆ、ゆ"、ごないで…」 「あ"あ"…あ"ぁ"ぁ…」 また殴られるのかとビクついて逃げようとする二匹をそれぞれ片手で持ち上げる。 イヤイヤと泣き叫ぶ二匹を外へと連れて行く。 足を使って襖を開き、裏口の戸を開け、二匹を裏庭の松の木の傍へ投げ捨てた。 「あ"、ゆ"、あ"…」 「ゆー、ゆぅぅ…」 二匹は木陰で休むことは無く、ズリズリと這って逃げていく。 巣がある方向に進んでいるのだろう。 少しでも早く安らげる場所へ帰ろうとボロボロの体で這ってゆく。 私はそんな二匹を黙って見送った。 二匹は一度も振り返ることは無く、体の痛みに震えながら茂みの向こうへ姿を消した。 それからあの二匹は裏庭に姿を現すことは無かった。 そりゃそうだろう。顔が変形するぐらいに何度も暴力を振るったのだから。 最後はあんな状態だったし、すでに死んでいてもおかしくない。 やっぱり飼えば良かったかなぁ。 適度に可愛がって適度に虐めれば長持ちしたろうに。 思えば思うほど勿体ないことしたなと思う。 裏庭の松の木もどこか寂しげに見えた。 だが二匹が去ってから十日目。 裏庭の松の木、その木陰にゆっくりがいた。れいむとまりさの二匹だ。 私をじっと見つめている。 しかし何でここに? あんなに痛めつけたというのに。 初めは違うれいむとまりさかと思った。 でもれいむの左頬は右のそれより一回り大きく膨れている。 まりさの顔は所々デコボコで、帽子は凹んでる。 どう見てもあの二匹だ。 二匹は私を警戒しながらも私がどういう行動に出るのか様子を見ていた。 もしやたった十日という短い時間で私を許したのか? それでいて仲直りしようとでも思ってるのか? だとしたら…私も同じ気持ちだ。 仲直りしたかった。 「れいむ、まりさ」 「…ゅ」「ゆ」 私は二匹の名を呼ぶと、今日の散歩の昼飯をそっと取り出した。 れいむとまりさの元へは近付かない。 多分二匹はまだ私を恐れてる。なので無暗に近づかない。 「あの時はごめんよ。 痛かったよな。本当に悪かったって思ってるよ」 私はこれでも本気で謝っていた。 二匹とはまた遊びたい。あの素敵な時間を再び過ごしたい。 だから仲直りしたい。 「ほら、仲直りの印に一緒にご飯食べよう。 その後はゆっくりしような」 「ゆゆ…」 「ゆ? ゆー」 二匹は小さな声で鳴き合っていた。 相談しているようだ。 「もうあんな事したりしないよ。 明日も明後日も、十日後もずっと一緒にゆっくりしよう」 「ゆっ」 「ゆゆ」 れいむとまりさは頷き合うとおずおずと私の元へ歩んできた。 まだ十分に跳ねることが出来ないのか、単に慎重なのかゆっくりと這ってくる。 私は笑顔で、餌を差し出す姿勢のまま二匹を待ち続ける。 「ゆっ…」 「ゆー」 近付いてきた二匹にご飯を手渡して食べさせる。 少し遠慮がちに微笑みながらもぐもぐとお握りを食べてくれた。 私はそんな二匹の頭を撫でようと頭上に手を掲げた。 「ゆ!?」 二匹はビクッと震えたが逃げだすことは無かった。 フルフル震えていたが、ナデナデを続けると震えは徐々に収まった。 「ゆっくり! ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしようね!!!」 そのまましばらく撫で続けるとようやく二匹は満面の笑顔を咲かせ、十日振りの挨拶をしてくれた。 「ああ、ゆっくりしていってね」 「ゆー!! おにーさんゆっくり!」 「ゆっくり! ゆっくりできるよ!!」 ピョンピョンと二匹は飛び跳ねた。 仲直り出来たのが嬉しいのか、二匹は少し涙目になっている。 でも跳ねれるぐらいに元気になったようで何よりだ。 これなら少し強めに暴力を振っても大丈夫だろう。 十日とは言わなくとも数日は我慢したのだ。 今日だってゆっくりを探しに散歩へ出ようとしてたぐらいだ。 でもその必要はもう無い。 きっとしばらくは無いはずだ。 「私の家で遊ぼうな。 れいむとまりさが好きな遊びをしてあげるよ。 その後は…その後はもっと楽しいことをしよう」 「ゆっくりあそぼうね!!」 「ゆっくりたのしみ!!」 私は無邪気に喜ぶ二匹を抱えて我が家へ迎え入れる。 れいむとまりさは幸せで安らげる時間と痛くて苦しい時間を交互に過ごすことになるだろう。 虐めて仲直りして、私を許した所でまた虐めて仲直りする。 あれだけ酷いことをしても十日で許してくれたのだ。 この虐めと仲直りのサイクルは長く続くに違いない。 どこまでもお人好しなこの二匹が真に私を拒絶することはあるのだろうか。 もし私を許してくれなくなった時、それはきっと別れの時だ。 「ゆ? おにーさんゆっくりしてるの?」 「ゆゆ、ゆっくり? まりさもゆっくりするよ!」 考え込んで足が止まっていた私に二匹が声をかけてくる。 「ああ、ごめんごめん。何でもないんだ。 それよりも早く遊ぼうね」 「あそぼうね!!」 「れいむたのしみ!!」 本当に楽しみだ。 可愛いれいむに可愛いまりさ。 これからも一緒にゆっくり遊ぼうね。 終 by 赤福 たまには普通の虐待を。