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※東方キャラ登場注意 ※深く突っ込んだら負けです ※虐待分は少ないです 高速で低空を駆ける人間が一人。その人間は黒白で身を包み、箒に跨り宙を飛んでいた。 妖怪の山の麓。普通の人間はあまり立ち入れぬそこには、とあるゆっくりの群れがあった。 ドスまりさ。ゆっくりでありながら高い知能を持ち、ニメートルを越す巨体を誇る突然変異種。 黒白の人間──霧雨魔理沙は、そのゆっくりが統括するゆっくりの群れを目指していた。 途中出会ったなにやらハイテンションな豊穣の神やらドスの群れのゆっくりを適当に弾幕でボコって居場所を聞き出しながら、真っ直ぐに向かっている。 そうして見つけた。三メートル近い巨体を誇る、自分と似た帽子を被った饅頭を。 その巨大饅頭の周りには、小さいサイズのゆっくりが群らがって何やらゆーゆー言っているが、とりあえずそちらは関係無い。 加速。飛行速度を更に上昇させ、まっすぐドスに向かって突撃していく。 後百メートルというところでドスが気付いた。とてつもない速度で突っ込んでくる魔理沙に驚き目を丸にしている。 他のゆっくり達も気付き始め、ドスの後ろに隠れるように移動する。 「あれじゃ他が潰れるな」 当初のプランを変更。 このままドスに向かって突撃するはずだったのを、高速でドスの脇を駆け抜ける。 すれ違うようにドスの横を飛び、そのまま上昇。円を描くかのように空中で翻り、上空からドスまりさに向かって箒の先を向けた。 光符「ルミネスストライク」 箒を砲身として使い魔砲弾を発射。箒の先より放たれた光弾が真っ直ぐにドスの顔面に叩き込まれた。 「ゆぶっ!?」 『ドスぅ!?』 ドスまりさの顔面が陥没し、鈍い呻き声があがる。他のゆっくり達が驚愕の声をあげた。 そんな突然の出来事に思考が未だに追いついていないゆっくり達の前に、霧雨魔理沙は降り立った。 「よっ、お前がドスまりさか。初めて見るぜ」 つい今しがた攻撃をくわえたというのにやけにフランクに言葉をかける魔理沙。 当然ゆっくりの方は友好的になれるわけもなく、ギャースカ喚きたてた。 「ゆぅぅぅ、ドスになにするの!」 「ドスにひどいことするおねーさんは、ゆっくりしないでねっ!」 「れいむおこるよ、ぷんぷん!」 頬を膨らませたり擬音を口にしたりと些か間抜けな光景ではあるが、本人達は至ってマジメである。魔理沙はそちらに用は無いので無視。 当の攻撃を喰らった本人はといえば、多少顔が潰れて皮が少し破れてはいるものの、原型は留めており命に別状は無かった。 もっとも、それぐらい強い存在でなければ今回来た意味がない。 「さすがに丈夫だな。普通のゆっくりなら今ので潰れてるぜ」 感心したように魔理沙はドスまりさの頬をペチペチと叩く。 ドスまりさはようやく痛みから回復し、口を開いた。 「ゆぅ……お姉さん強いね」 「それほどでもない」 そう返しながら魔理沙は、ガシ、と開かれたドスまりさの口の端を掴んだ。 またもや突然の行動にゆっくり達はドスを含め驚いた。 「ドスにもうひどいことしないでね!」 「ゆっくりはなしてね!」 「ゆっ、お姉さん何するの!?」 「何って、お前のキノコをもらうんだよ」 それがどうしたと言わんばかりに答えて、魔理沙はドスまりさの口に腕を突っ込んだ。 ドスまりさには他のゆっくりとは違う能力がある。その中の一つがドスパークだ。 ドスまりさの口内にのみ生えるとされるキノコを材料に、噛んだり砂糖水を含ませたりすることによって、口から極太のレーザーを発射するものだ。 その名前と技の由来とされるオリジナルよりは威力、派手さ共に劣るとはいえ、本家よりも簡易な加工で魔法のような反応を示すキノコは貴重だ。 魔理沙は今回、ドスまりさの話を聞きつけ、そのキノコを手に入れようとこうしてドスまりさの元を訪れたのだった。 もっとも、せめて先ほどの攻撃を耐えるほどの強さを持つ者が自慢とする存在でなければ、魔理沙も興味は抱かなかっただろうが。 「おっ、これだな」 手探りでドスまりさの口内を弄って手に当たったものを引っ張り出す。それはやはり魔理沙も見たことのない化け物キノコだった。 魔理沙の魔法はキノコを原材料とする。 独自の調理法で何日も煮詰めてスープにし、それを数種類作ってブレンドし、数日掛けて乾燥させて固形物にしてようやく実験開始。 その固形物を使って様々な実験をし、その実験の中で稀に魔法らしい魔法が発動する。成功しても失敗しても本に纏めてキノコ採集から開始する。 そんな努力の結晶があの派手な魔法である。魔理沙はドスまりさのキノコは未だ魔法の実験に使ったことはない。 今はキノコ採集の段階。ドスまりさのキノコでドスパーク以外の魔法らしい反応が出るのか出ないのか。実験するまで定かではないがやってみる価値はあるだろう。 「やめてねっ、それがないとドスパークが使えないよ!」 「おっと」 ドスまりさは慌てて魔理沙の手からキノコをふんだくる。手に持っていたキノコにその大きな口で喰らいつく。 驚き魔理沙は手を引っ込めてしまい、キノコは再びドスまりさの口内へと収まった。 「こらっ、よこせ!」 魔理沙は再びキノコを奪おうとするが、ドスまりさは頑なに口を閉ざして魔理沙の腕を入れさせようとしない。 手で口を開こうとしても無駄。頬を殴ってみても魔理沙は腕力自体は普通の少女、あまり効果は無い。箒で殴ると痛みで顔をしかめたが口は開かなかった。 「ゆぅ! ドスをいじめないで!」 「ゆっくりしていってね、おねーさん!」 ドスまりさの群れのゆっくり達が抗議の声をあげるが、先ほどの攻撃を見て魔理沙の強さに怯えているのか直接くってかかろうとはしなかった。 「むぅ、しょうがない。殺してでも奪い取る」 魔理沙はミニ八卦炉を懐から取り出し、魔法の材料と共にドスまりさに向けて構えた。 ドスまりさは魔理沙の「殺してでも」という発言に反応し、慌てふためいた。 この距離、タイミングではドスまりさがドスパークを使おうとしても本家の方が速いだろう。いや、あまりの威力に後ろのゆっくり達も吹き飛んでしまう。 「やめてねっ! 殺さないでねっ! ドスのお願いを聞いてくれたらキノコをあげるよ!」 知識としてはその威力を知らないはずなのに、得たいの知れない恐怖に突き動かされドスまりさは懇願した。 群れのゆっくりは強く自分達の守護者であるドスまりさが命乞いをしている光景を信じられないといった目で見つめ、魔理沙はドスまりさの「お願い」という単語に反応して手を止めた。 「……取り合えず話だけでも聞こうか」 ミニ八卦炉を仕舞い、魔理沙は聞く。こんな饅頭ごときに魔法の材料を使うのももったいないし、考えてみれば零距離マスパでは威力が強すぎてキノコごと焼き払ってしまうだろう。 他の魔法にしても、ボムを消化せず目的の物が手に入れば、そちらの方が良い。 どちらにせよ、ドスまりさの「お願い」とやらの内容次第だが。 「…………実は」 ドスまりさが言った「お願い」とは、越冬についてと人里との係わり合いだった。 今の季節は秋。人間達は作物の収穫に喜び、ゆっくり達は来る冬に向けてせっせと食料を溜め込む時期である。 今年はゆっくりにとっても過ごしやすい年であったようで、ドスの群れもかなりの数のゆっくりが増えて肥大化した。 そのためなのか、豊富な秋の山の恵みをもってしても、冬篭りの餌集めは他のゆっくりとの競い合いになってしまっているらしい。 そんな中、山や麓近辺では他のゆっくりに食べ物をとられてなかなか採れないと判断したゆっくりが、今年は某姉妹の妹が狂喜するほど豊作だったのもあり、それを狙って遠出し人間の作物に手を出したというのだ。 当の盗みを働いたゆっくり自身は捕まって既にこの世を去っているが、これまで人間の所有物には手を出さないと人間達に思われていたゆっくりの心証は一変した。 作物や家畜の盗難被害など、この幻想郷では珍しいことではない。妖精が悪戯で盗んだり妖怪が力に任せて奪っていくこともある。 人間もそれが幻想郷の有り方として、またはしょうがないこととして受け入れている節がある。もちろん好ましくは思ってないだろうし、中には許容出来ない者もいるが。 しかし、これまで悪事を働いたことの無いものが悪事を働いたとして、たった一回の被害にしては印象が大きく落ちすぎた。 その上に妖精は逃げ足が速く妖怪は強く、しかも双方とも殺しても殺せない(妖精は肉体が死んでも生き返る。妖怪は五体が引き裂かれても復活する程タフ)存在であるのに対し、 ゆっくりは逃げ足も遅くしかも弱く死にやすい。 幻想郷だって弱肉強食。強い者が大きな顔をするのが自然。 大きく落ちた心証とその弱さ。更に被害に会った人物が声も大きく他の人間への大きい影響力を持った人物であることも加えられて、ゆっくりは種族単位で人里の多くの人々に虐げられるようになった。 中にはこれを機にゆっくりへの虐待行為に目覚めて処断する理由もないのにわざわざ群れへと出向いてゆっくりを甚振ったり殺したりする存在まで出たらしい。 ドスまりさはそんな自体を打破するべく、この度人里へと直接赴く決意をした。 ドスまりさが群れのゆっくり達と共に人里へと行き、盗難についてしっかりと謝罪をした上で、一つの提案をするらしい。 「提案、って何をするんだ?」 「ゆっ、もう人間さんの物には手を出さないから、人間さんも酷いことをしないでね、って協定を出すんだよ」 「……協定、ってかお願いだな、そりゃ」 立場が対等でないのだから、当然。協定ではなく弱者が強者へ慈悲と寛容を乞う嘆願である。 「ゆぅ……そうなんだよ」 ドスまりさはそこが心配らしい。 他のゆっくりの手前?協定?などという言葉を使ったが、これが一方的な要望であることはドスまりさとて重々承知している。 だから、人間の匙加減でどうとでもなる。そこがドスまりさの一番の悩みどころだ。 もし、聞き届けられれば御の字だが、そんなもの知るかと突っ返されたり、最悪それが相手を刺激して更なる悲劇が生まれないとも限らない。 「ドスは強いからもしかしたら大丈夫かもしれないけど、他の皆はゆっくり出来ないよ……」 このドスまりさは使命感と責任感に強いようで、群れのゆっくりがゆっくり出来るようにと心がけている。 「成る程、それでその可能性をどうにか出来ないかと、悩んでいたわけだな」 「ゆぅ……お姉さん、何とかしてくれる?」 ドスまりさのお願い、とはそれだった。 如何に賢いといえでもそれはあくまでゆっくりの範疇。妖精や人間の子供よりは頭が働くとはいえ、人間からしてみれば並だ。 「……なんで私に頼んだんだ?」 「だって、お姉さんはとっても強いでしょ?」 先ほどの高速飛翔とドスまりさへの強力な一撃。ドスまりさはそれにより、魔理沙が自分よりも遥かに上位の存在だと認識した。 だから、もしかしたら魔理沙なら自分が思いつかないような打開案を出してくれるか、もしかしたらその力を以って何か救いの手を差し伸べてはくれないだろうかと考えたのだ。 「ま、まぁな。それに私はなんでも屋だ」 ?強い?と言われて魔理沙も満更でもないようで、しばらく頭を抱えて思案する。 そして数秒の後、 「……ドス、ちょっとお前の『ドスパーク』とやらを見せてくれ」 ドスに向かい、そう言った。 「ゆゆっ、ドスパークはあぶないよっ!」 「ゆっくりできなくなるよ!」 「そうだよお姉さん、危ないよ!」 「あぁもう勘違いすんな。私に向かって撃たなくていい。空でも何もない所でもいいから撃て。見るだけだ」 「ゆぅ……それなら」 魔理沙はすす、とドスまりさの前から退き、ドスまりさは顔を若干仰角に上げる。 スゥ、と空気が入る音と共にドスまりさが大きく口を開いた。 その二秒後、バウッ、とドスまりさの口から太く煌くレーザー光が迸り、宙を駆け巡った。 「ふむふむ、なるほどなるほど。私ほどじゃないがなかなか派手じゃないか。やっぱり弾幕はパワーだぜ」 ならば、と魔理沙は一つの提案をする。 その提案はドスまりさも群れのゆっくりも、もしかしたら博麗の巫女でさえ驚愕するような内容であった。 だが、もしそれが上手くいけばそれ以上良いこともない。たとえ失敗しても、ドスまりさが当初懸念していた以上の事態の悪化は無いだろう。 「じゃあこれやるから、一日使って準備しな。明日決行だぜ」 「ゆっ? お姉さんも一緒に来てくれるの?」 「あぁ、私はこれを仕事を受け取った。明日は一緒についていって、見届けてやる。だけど、実際にやるのはお前らだぜ」 「ゆゆっ! 勿論だよ、有難うお姉さん! じゃあ約束通りキノコを分けて──」 「まぁ、待て。報酬は成功払いでいいぜ、とっておきな」 「ゆゆ〜、とっても優しいねお姉さん!」 「おねーさんはとってもゆっくりできるね!」 ドスまりさや他のゆっくり達から次々に讃えられ、褒められる。魔理沙はそんなゆっくり達の声を背に、群れから去って行った。 魔理沙はドスまりさにちょっとした興味が湧いた。面白い物が見れそうだし、失敗してもドスまりさは死なないだろう。 魔理沙にとっては一日目的の物を手に入れる日数が延びるだけであり、それ以外の損失は無い。 その上魔理沙の提案でドスまりさの悩み事が解決するなど、本気で考えてはいない。言うならば、気まぐれ。余裕ある強者の戯れである。 …………それに、人里に行った所で今回の主役はドスまりさだ。自分は後ろで眺めていればいい。あれと会うことも無いだろう。 魔理沙が去った後、ドスまりさは群れでもっとも賢いゆっくりぱちゅりーや、絵が得意というれいむ、文字が書けるというありすやまりさと一緒に明日の準備に取り掛かった。 作業を行なう皆の顔には、一様に希望が溢れていた。 そうして次の日。 人里の者は変わった光景を目にした。 「な、何だあれ……」 妖怪の山方面から来たそれらは最初妖怪かと思ったが、違った。ゆっくりの群れであった。 多数のゆっくりを従えて、三メートル近い巨体を誇るドスまりさがゆっくりと人里に向かって来ている。しかも頭の上に人間の少女を乗せて。 ゆっくりの歩みは遅い。 里の端に到着する頃には既に騒ぎを聞きつけた者達やゆっくりを目の敵にしている人達が人ごみを作り、近くに居た物好きな妖怪がいくらか野次馬に来ていた。 そしてその中には、上白沢慧音という、魔理沙と面識のある人物もいた。 「そこの白黒。これはお前の差し金か?」 やや苛ついた口調で、慧音は尋ねた。ドスまりさの頭の上に乗って来た魔理沙に。 「まさか。私は見物に来ただけだぜ」 軽快にドスまりさの頭上から降り立った魔理沙がにやけた顔で嘯く。ドスまりさの帽子は魔理沙が乗っていたせいか少しへこんでいた。 「話があるのは私じゃなくてこいつらだ」 魔理沙はそう言うとすっ、と下がった。その魔理沙と入れ替わるように、ドスまりさが巨体を一歩、デンと前に出す。その巨体に気圧されドスまりさ巨体に気圧されたのか、「うっ……」と慧音は少しうめいたがすぐに体勢を戻した。 そんな流れからか、自然とドスまりさの話は慧音が代表として聞く形となった。 ドスまりさからの話を聞いている間、人間は一応突然怒り出すとも手を出すこともなかった。ゆっくりを目の敵にしている人達もだ。 妖怪は何が面白いのかそれとも酔っているのかケタケタと笑って手に持った酒を飲んでいた。 話が終盤に差し掛かり、ただの弱者の懇願かと皆が思ったその時だった。 「だから、ドスが弾幕ごっこで勝ったら、皆そうしてね!」 ドスまりさが信じられないことを言った。 「…………はっ?」 表立ってドスまりさの話を聞いていた慧音も思わず呆けてしまった。いや、その場にいた誰もが同じような顔をした。ゆっくり達と魔理沙を除いて。 「だから、ドスが代表して決闘するから皆には手を出さないでね!」 「えっ、えっとちょっと待てドスまりさ。お前が弾幕ごっこをするって?」 「ゆっ!」 「…………スペルカードはあるのか?」 「あるよっ!」 ドスまりさがそう勢いよく答えると、傍らにいたぱちゅりーが、ついと一枚の紙を取り出した。 「昨日皆で作ったんだよ!」 その紙はちゃんとスペルカードルールに則って作成されており、餡光『ドスパーク』と技も明記されていた。 紙自体は昨日魔理沙に貰ったものだった。それに木の実をすり潰したものや草の汁などで描いてある。 昨日魔理沙がドスまりさに提案したのは、弾幕ごっこで一対一の決闘を挑めというものだった。 決闘に勝って、お願いではなく勝利の報酬として手出しをさせない。それが目的。 普通の戦いならドスまりさだけが突出したゆっくり達に勝ち目はない。だが代表者だけの決闘ならば、ドスまりさだけが戦えばいいので普通のゆっくりは傷つかない。 弾幕ごっこは妖精も人間も妖怪も、皆平等の決闘である。それに基本的に相手を殺してはならない(不慮の死はあるだろうが、少なくとも魔理沙は異変で相手を殺したことなど無い)。 だが、ドスまりさの提示した条件が気に喰わず決闘を拒否される可能性もあるし、代表者同士の決闘で他の人間が納得する可能性も百パーセントではない。 提案した魔理沙本人も冗談半分だった。 「……私が戦うのか?」 慧音はドスまりさと他の人間達に尋ね、双方とも肯定した。 「い、いや、それで皆が納得するかどうかは!」 集まってきていた人達には特に異を唱えるものはいなかった。皆ゆっくりが勝つとは思っていないし、慧音の強さも認めていたし、自分が戦うのも面倒と思っていた。 慧音は逃げ道が無いことを悟ると頭を抱えて、 「あぁ、分かった。私が戦う……。だが、ここに居ない人達が異を唱えたら、その人達にはちゃんとお前が頼み込めよ」 「ゆっくり分かったよ!」 人間側はゆっくり側と違って誰かが統治しているわけではないのだから、当然。ドスまりさもそれは分かっていた。 時間をかけて人里の中で誰か一人を選抜、とでもすれば別なのだろうが、そこまでしてもらうことはドスまりさは考えていなかった。 魔理沙は後ろで慧音の呆けた顔や困ったような顔、ゆっくりの弾幕ごっこという世にも珍しいものが見れる状況を楽しんでいた。 こうして半獣人対ゆっくりという変わった決闘が始まる。 ゆっくり側が提示した勝利報酬は『人間の所有物に手を出さない限りゆっくりを傷つけない』、宣言スペルカード枚数は一枚。 人里側(代表慧音)が提示した勝利報酬は『二度と人の所有物には手を出さない』、宣言スペルカード枚数は二枚。 流れ弾が当たらぬよう決闘場所は場所を移して人里から離れた草原。興味ある人間や妖怪は付いていき、残りは人里に残った。 飛べる物は上空から決闘の様子を面白そうに見守り、飛べない者は距離を取って遠目に眺める。ゆっくり達もドスまりさの後方で決闘を見守っている。 決闘自体は飛べないドスまりさを尊重し地上戦となった。 「それじゃあ、始めるぞ?」 「ゆゆっ!!」 やや疲れたような表情をした慧音とドスまりさが声を上げ、決闘が開始された。 餡光「ドスパーク」 開始早々ドスまりさが大声スペルカード宣言をした。様子見の通常弾幕も無しの必殺技使用だ。もっとも、ドスまりさにはこれしか技がないのだから当然なのだが。 口に咥えていたカードをポイ、と地に投げる。 そして口を大きく開き、ドスまりさの口の中で生えているキノコを材料に、ドスパークを発動させる。 二秒程ドスまりさの口内で眩い光が溜まったかと思うと、その光は指向性を以って勢いよく発射された。その光は真っ直ぐに慧音へと向かっている。 本家マスタースパークよりは威力も大きさも劣るが、それでも強力な攻撃にあることに変わりはない。直撃すればかなりのダメージを負うだろう。 しかし慧音はそれを容易に回避した。 「ゆゆっ!?」 驚愕するドスまりさだが、それは必然の結果だった。 溜めも長く太さもそれほど無い上に自機狙い。レーザー以外にはなんの弾幕もばら撒かれない攻撃など、避けてくれと言ってるようなものだ。 「ま、まだまだだよ!」 しかしドスまりさとて一度では諦めない。再びドスパークを慧音へと発射する。無論、それも当たらない。 再び目を丸くしたドスまりさは、再びドスパークを発射する。回避、当たらない。慧音はまったくもって余裕の態度でドスまりさの渾身の一撃を躱し続けた。 ドスまりさはその後一分間、意地になったかのようにドスパークを連射した。その全てを慧音は最低限の動きで避けた。 一切反撃することなく、ドスまりさが疲れて攻撃を途切れさせるまで避け続けた。避け切り弾幕攻略である。 「どうした? もう終わりか?」 ドスまりさがぜいぜい言って連射していたドスパークを止めたところで慧音は腕を組んで訊ねた。 ドスまりさが決闘前に宣言したスペルカード枚数は一枚。つまりこの数しか攻撃をしないという宣言だ。 スペルカードルール決闘はたとえ体力や余力が残っていても、最初に宣言した攻撃が全て避けられれば敗北となる。 つまり、このままではドスまりさの敗北なのである。慧音は一回の攻撃をせぬままに。 「ゆぐぅ……」 ドスまりさにとってドスパークは大技である。乾坤一擲の必殺技だ。本来連続で使用するような技ではない。 そんな大技を連射したことにより、ドスパークの反動もあってこれ以上ドスまりさはドスパークを撃つことは出来なかった。 これで、敗北。ドスまりさ達ゆっくりは最初に提示された通りに二度と人間の所有物には手を出すことは出来なくなる。 それでも、群れの皆を傷つけないで欲しい。その意思だけは伝えよう、とドスまりさが心中負けを認めたその時だった。 『ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』 ドスまりさの後方で決闘を見守っていた群れのゆっくり達が、鬨の声をあげながら跳ねて来たのだ。 その顔皆一様に鬼気迫っており、今にも慧音に食って掛かろうとしているようだった。 「ゆっ、皆!」 ドスまりさは止めようとした。これは一対一の決闘だ。他者の介入は許されない。 しかし、群れのゆっくり、先頭のれいむが言った言葉は、ドスが思いもしない内容だった。 「ゆぅぅぅ! れいむたちはドスのだんまくだよ!」 ドスまりさはれいむ達、群れのゆっくりを統括している。れいむ達はドスまりさによって守護されていると同時に、ドスまりさの部下のような存在でもあった。 つまりはドスまりさの持つ力の一つと、言ってもいい。 式神使いは自分の式を弾幕として放つことがある。つまり、れいむ達は自分達はドスまりさの所有する力の一つとして、自分達を弾幕に見立てて突撃しているのだ。 これには慧音も見守っていた人達も驚いたが、誰も止めることは無かった。 最初宣言した攻撃回数より多いが、それも妖々夢六面ボスや永夜抄六面ボスだってやっている。 慧音はこれぐらいならいいだろうと勝者の余裕から、人間達は無駄な足掻きをという呆れから、魔理沙や野次馬の妖怪達はこれは面白いという愉しみから。 誰も止めることなく、ゆっくり達は自身を弾幕と化した。 頭符「饅頭大行進」 「しかし……」 数が多いな、と慧音は呟いた。どれだけの規模まで肥大化したのか。今ここに来ているゆっくりの数は百近い。 これだけのゆっくりの体力が尽きるまで避け続けるのは、かなりの時間が必要だ。それは、あまりにも無為。 だから慧音は 「悪いが、弾消しさせてもらうぞ」 攻撃を選択した。 慧音は一枚のカードを取り出すと、それを宣言した。 光符「アマテラス」 慧音の周りから全方位に無数のレーザーが発射された。赤青の二色のレーザー群は、弾幕と化したゆっくり勢の突撃と真正面からぶつかった。 一対一の決闘だが、自分から足を踏み入れた方が悪い。ゆっくりに手を出さないという約束も、ドスまりさが勝ってからの話。 だからこの攻撃によって生まれた悲劇は、ゆっくり達自身の責任である。 『ゆぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!!』 先頭のれいむは右目を青いレーザーに撃ち抜かれた。その隣のまりさは赤いレーザーに眉間を貫かれた。 ありすは両頬を二色のレーザーによってそぎ落とされた。パチュリーは中枢餡を赤いレーザーによって吹き飛ばされた。 他のゆっくり達も皆、避けること叶わずその突撃の勢いと共に体を削がれた。 底部を削がれて動けなくなったもの。当たり所が悪く餡子を盛大に撒き散らしたもの。 第一波を避けつつも第二派で両目を失ったもの。頭部右半分を失ってもなお突撃しようとするもの。 だが、それも三十秒間慧音が攻撃を続けた後に無くなった。動くゆっくりが居なくなったのもあるが、 「ゆびっ!」 放ったレーザーの一本がドスまりさの右頬に着弾したからだ。 ドスまりさは全ての攻撃を行なっても慧音に一発も当てられていない。かつ慧音は一枚目の宣言でドスまりさに攻撃を当てた。 勝敗は歴然。勝者と敗者はここに決定した。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」 「ゆ゛あ゛ぁ……ゆ゛あ゛ぁ……」 「みえな゛い゛……でいぶのおべべ、みえない゛……」 「いじゃい……いじゃいよ゛ぉ゛……」 それでもレーザーの攻撃はかなり手加減されたものだった。並みのゆっくりでは致命傷になりえても、ドスまりさにはかすり傷だ。 頬にあたる僅かな痛みなど気にもしない。当然だ。目の前には同族の惨劇が広がっているのだから。 「でいぶ……ばりざ……ありず……ばぢゅり゛ー……」 死者は少ない。全体の一割にも満たないだろう。だが傷ついた者の大半はこれ以上放っておけば死ぬ者や、目や底部を失うという後遺症が残る者ばかりだった。 ドスまりさは眼前の死屍累々の様を見て嘆き、悲しんだ。なんで来たのかと。なんで、無謀な真似をしたのかと。 だがドスまりさだって分かっている。これはゆっくり達がドスまりさを助けたいと自ら選び行動した結果なのだと。 「さぁ、ドス。約束通りもう人の物に手を出さないでくれよ。他のゆっくりにも徹底させてくれ」 慧音はそれだけ敗者に言うと、背を向けて人里へと帰っていった。 決闘を見守っていた人達も、所詮ゆっくりかとぞろぞろと引き上げていく。面白がって眺めていた妖怪達も催しはこれで終わりかと退散していく。 残ったのはゆっくりの死体と重傷者、悲しみにくれるドスまりさと、 「よぅ、お疲れさん」 空中で一部始終を見ていて、ドスまりさの眼前に降り立った魔理沙だけであった。 「ゆっ……お姉ざん……」 グズッ、と涙をこらえてドスまりさは魔理沙を見る。 「ごめんね、折角いいアイディアをくれたのに……」 「気にするなだぜ」 「ゆぐっ、でも、失敗しちゃったからキノコは──」 「あぁあぁ、気にするな。私は仕事の成功でしか報酬は受け取らないぜ」 「ゆぅ……有難う、お姉さ──」 ドスまりさの言葉は中途で断たれた。何者かが発言に割り込んだわけでも、何か驚愕の出来事が起こって口をつぐんだわけでもない。 ただ、ドスまりさの右頬が大きく吹き飛ばされ、物理的に喋れなくなっただけだ。 ────ゆっ? ドスまりさの頭でも、すぐには理解が及ばなかった。戸惑いの言葉は口に出すことは出来なかった。 しかし、攻撃を受けてドスン、と後ろに倒れこんだ時には、魔理沙が魔法を放ってドスまりさの右頬を削り落としたかのように吹き飛ばした事を理解することが出来た。 ────どうして……? ドスまりさは理解できず、視線を倒れたドスまりさの、吹き飛び大きく口内が覗ける右頬側に歩いてくる魔理沙に向けた。 魔理沙はドスまりさと視線が合うと、なんでもないかのように言った。 「気にするな。キノコは当初の予定通り、もらうだけだ」 いわゆる、力づく。 魔理沙は口を閉じられた時の経験を生かし、閉じられても口内に手を突っ込めるように、右頬を消し飛ばしたのだった。 体=顔のゆっくりにとって、それは人間で言うならば右腕を肩から吹き飛ばされたに等しい。いや、もしくはそれ以上か。 魔理沙は倒れたドスまりさの傍らにしゃがみこみ、ドスまりさの口内に腕を突っ込んでいる。 「なんだよ、キノコ全然残ってないぜ。あれだけ連射すれば当然か」 魔理沙はわずかにドスまりさの口内に残っていたキノコを回収すると、スカートの中にそれを仕舞った。 そして未だ倒れているゆっくり達の死屍累々の中から死んだゆっくりをニ、三拾うとそれをドスまりさの口内に放り込んだ。 「ま、これでも喰って元気だすんだぜ。またキノコが生えてくる頃に貰いに来るから」 魔理沙はドスまりさにそれだけ言うと、箒に跨って飛び去っていった。 ドスまりさの回復力ならば、一週間もすれば右頬も元通りになるだろう。そうすればまたドスパーク用のキノコも生えてくる。 魔理沙の魔法研究実験には何度も何度も色んブレンドパターンや実験方法を試すため、幾つものキノコを必要とする。 ドスまりさのキノコの実験には、あれだけでは絶対に足りない。先ほど宣言した通り、再びキノコを奪いに来るだろう。 ドスまりさは全てに裏切られた気分になった。 信じていたのに。優しいと、ゆっくり出来ると思っていたのに。ドスまりさは泣き声をあげることも出来ず、ボロボロと涙した。 草原にはしばらくの間顔の一部を失って倒れたドスまりさと傷つき倒れた大量のゆっくり達が残っていたが、次の日には死んだゆっくりをその場に残して群れへと帰っていった。 残りの生涯、ドスまりさは人間の誰にも会おうとも、喋ろうと思わなかった。 しかし、ある一人の人間にはどれだけ会うことを拒否しても、それを回避することはついぞ出来なかった。 おわり ────────────── あとがきのようなもの ゆっくり虐待スレももう100。私はスレが10ちょっとの頃にこの界隈を知った新参者ですが、それでも感慨深い物があります。 このジャンルを知らなければ、これだけのSS、文章を書くことは無かったでしょう。それを思えばゆっくりが私にくれた物は多くあります。 上手くなるためには、多くの量を書くことは必須ですから。 決して歓迎されるジャンルではないですが、ゆっくり虐待に出会えてよかったと思っております。 それでは皆様、これまでご愛読ありがとうございました。 これまでに書いたもの ゆッカー ゆっくり求聞史紀 ゆっくり腹話術(前) ゆっくり腹話術(後) ゆっくりの飼い方 私の場合 虐待お兄さんVSゆっくりんピース 普通に虐待 普通に虐待2〜以下無限ループ〜 二つの計画 ある復讐の結末(前) ある復讐の結末(中) ある復讐の結末(後-1) ある復讐の結末(後-2) ある復讐の結末(後-3) ゆっくりに育てられた子 ゆっくりに心囚われた男 晒し首 チャリンコ コシアンルーレット前編 コシアンルーレット後編 いろいろと小ネタ ごった煮 庇護 庇護─選択の結果─ 不幸なゆっくりまりさ 終わらないはねゆーん 前編 終わらないはねゆーん 中編 終わらないはねゆーん 後編 おデブゆっくりのダイエット計画 ノーマルに虐待 大家族とゆっくりプレイス 都会派ありすの憂鬱 都会派ありす、の飼い主の暴走 都会派ありすの溜息 都会派ありすの消失 まりさの浮気物! ゆっくりべりおん 家庭餡園 ありふれた喜劇と惨劇 あるクリスマスの出来事とオマケ 踏みにじられたシアワセ 都会派ありすの驚愕 都会派ありす トゥルーエンド 都会派ありす ノーマルエンド 大蛇 それでも いつもより長い冬 おかーさんと一緒 byキノコ馬 このSSに感想を付ける
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「ゆ~♪むーしゃむーしゃ♪しあわせ~♪」 野生のゆっくりが味わえないご馳走を、まりさは口いっぱいに頬張る。 舌に広がる甘さは、自然界のどこでも手に入らないものだった。 まりさは涙を流して、自分の幸せを大事そうにかみ締める。 「ゆっゆ!!れいむにもちょうだいね!!ゆっゆ!!」 「はいはい、そう焦るなって」 「ゆっ!!むーしゃむーしゃ♪しあわせ~!!」 飼い主であるお兄さんは、まりさの隣にいるれいむにも同じように餌を与えた。 2匹が美味しそうに餌を貪り食う様子を見て、お兄さんも和やかな笑みを浮かべる。 食べかすを飛び散らしても、叱りつけるような事はしない。 どんなに食べ散らかしてもいいように、床には新聞紙が敷かれているのだ。 「「ゆっくりごちそうさま!!!」」 「沢山食べたね。そんなに美味しかったかい?」 「ゆっ!!とてもゆっくりできるたべものだったよ!!」 「あしたもたくさんよういしてね!!」 さすがゆっくり。お礼の言葉は無く、図々しい要求も忘れない。 お兄さんは苦笑いしながら、2枚の食器を台所へ運んでいく。その時だった。 ボソッ “また”だ。 部屋でゆっくりしているまりさの餡子脳に、何かが引っかかった。 お兄さんが小さな声で、何か言っているのが聞こえたのだ。 「ゆっ!おにーさん!!いまなにかいった!?」 「いいや、何も言ってないよ。まりさの聞き間違いじゃないか?」 「ゆぅ?……いわれてみればそうだったよ!ゆっくりごめんなさいだよ!!」 でも、確かに聞こえた。これは今に始まったことではない。 既に半日、まりさは同じような違和感を十数回感じた。偶然とは思えなかった。 ボソッ まただ。 どうやられいむは気づいていないらしく、遊具で遊んでいる。 気のせいなのだろうか。それとも、お兄さんが嘘をついているのだろうか。 でも、気のせいでないとしたら、それはお兄さんの口から発せられている声だ。 「ゆぅ……きっときのせいだね!!きにしないで、れいむとゆっくりするよ!!!」 まりさは、頭の中から不安感を拭い掃って、遊具で遊んでいるれいむのほうへ跳ねていく。 ボソッ その声は、今度はまりさには届かなかった。 「……まりさなんか死ねばいいのに」 「ある~ひ!!」 「「あるぅ~ひ♪」」 「もりのなか!!」 「「もりのなか♪」」 「くまさ~んに!!」 「「くまさ~んに♪」」 「であ~った!!」 「「であ~った♪」」 食事の片付けを終えたお兄さんが部屋に戻ってきて、まりさとれいむと遊んでくれることになった。 今は、お兄さんが歌う歌を真似して歌う遊びをしているところだ。 ぱんぱん手を叩いてお兄さんがリズムを取るのに従って、まりさとれいむは座布団の上でニコニコしながら歌っている。 「「「はなさくも~り~の~み~ち~♪♪くまさ~んに~で~あ~あった~♪♪」」」 歌い終えると、お兄さんはうまく歌えた2匹の頭を交互に撫でてやる。 「よーし、2人とも良く歌えたね」 「ゆゆっ!!たくさんれんしゅうしたもんね!!ゆっくりじょうずでしょ!」 「まりさもゆっくりれんしゅうしたよ!!ゆっくりほめてね!!」 お兄さんの指導の甲斐あって、2匹は人間が聞くに堪える歌を歌えるようになっていた。 そんな2匹も飼われ始めの頃は、不協和音を発してお兄さんを激怒させたものだった。 「さて、次は何を歌う?」 「ゆゆ~……まりさはおもいつかないよ!れいむは?」 「ゆんっ!!“だいちさんしょう”がいいよ!!とてもゆっくりしたうただよ!!」 大地讃頌。確かにゆっくりした歌ではあるが……きっと歌詞の意味は理解していないに違いない。 お兄さんは楽譜を開いて、歌う準備をする。ごほんと咳払いをすると、2匹の顔を交互に確認した。 「よし、それじゃ皆で歌うぞ」 ボソッ(まりさなんか死ねばいいのに) 「じゃあいくぞ。さん、はい!」 「ゆっ!!ゆっくりまってね!!!」 例の小さな声が聞こえた気がして、まりさは声を荒げた。 れいむとお兄さんは不機嫌そうな顔をして、まりさを見ている。 「どうしたんだよ。せっかくいい所だったのに」 「そうだよ!!ゆっくりじゃましないでね!!!」 「で、でも!なにかきこえたんだよ!!ゆっくりきこえたよ!!」 ぴょんぴょん大きく跳ねて、必死に自分の主張を理解してもらおうとするまりさ。 しかし、れいむとお兄さんには通じなかった。 「だから気のせいだって。さっきも言っただろう?」 ボソッ(まりさなんか死ねばいいのに) 「ゆゆっ!またきこえたよ!!きっとおにーさんだね!おにーさんなんていったの!?」 「僕は何も言ってないって。ったく……いい加減にしてくれよ」 お兄さんは、次第に苛立ちを露わにする。 その様子を見たまりさは、これ以上深入りするのは得策でないと感じ、何も言わなかった。 ボソッ(まりさなんか死ねばいいのに) 確かに、聞こえる。 そしてほぼ間違いなく、その声の主はお兄さんだ。 でも、お兄さん本人は“気のせいだ”“聞き間違いだ”と言って取り合わない。 「ははな~る~だいち~の~」「ふ~と~~こ~ろ~に~」 お兄さんやれいむと歌っている間も、その違和感は拭えなかった。 絶対に、お兄さんが何かを言っている。それは間違いない。 分からないのは“何を”言っているのかという点だ。 それがあまりにも気になって、歌い終わった後の遊び時間はあまりゆっくりできなかった。 ゆふぅ~とため息をついて、暗い顔のまま床を見つめるまりさ。 部屋の隅でぐったりしているまりさに、れいむが心配そうな声をかける。 「まりさ?…ゆっくりしてる?」 「ゆ…ゆゆっ?ゆっくりしているよ!!れいむもゆっくりしていってね!!」 ぴょんと飛び上がって、まりさは自分が元気であることをアピールする。 れいむに聞こえていないということは、きっと気のせいなんだ。 まりさはそう自分に言い聞かせて、就寝までの残った時間をゆっくり過ごすことにした。 でも、何故だろうか……とてもゆっくりしているはずなのに、心がゆっくり出来てない気がする。 「ゆぅ……なんだかゆっくりできないよ…」 きっと遊び疲れたんだ。そう結論付けたまりさは、ひとりで寝床へと向かった。 ボソッ 「まりさなんか死ねばいいのに」 夜。外は真っ暗。ゆっくりたちも眠る時間である。 まりさとれいむも例外ではなく、寝床でゆっくり眠る準備をしていた。 「まりさ!ゆっくりねむろうね!!」 「ゆ!!あしたもゆっくりしようね!!」 「よーし、電気消すぞー」 お兄さんがスイッチを押すと、室内の照明が落ちた。 まりさとれいむは、互いに寝床の藁を被せあい、ゆっくり目を瞑る。 「ゆぅ~ぐっすりぃ……」 「ゆっくりねむるよぉ……」 「おやすみ、2人とも」 お兄さんも、2匹の寝床のすぐ傍にあるベッドに潜り込む。 隣のれいむは既に眠り始めており、まりさも眠りに落ちるのは時間の問題だった。 「ゆぅ~すやすや~……あしたも、ゆっくりぃ…」 そうして、少しずつ意識が薄れていく……その時だった。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ゆゆっ!?そんなこといわないでね!!」 ぴょこっと身体を起こし、周囲を見回すまりさ。 今、明らかに聞こえた。とてもゆっくりできない言葉が、確実に聞こえた。 「ゆ?……ふたりともねむっているね!」 まりさが周囲を見回すと、れいむとお兄さんは寝息をたてていた。 れいむは藁の中に潜り込んでいるし、お兄さんも頭まで布団の中だ。 では一体誰が? 今まではお兄さんが小声で何か言っているのだと思ったが、そのお兄さんも今は眠っている。 やっぱり気のせいなのだろうか。 「ゆぅ…きっときのせいだね!ゆっくりねむるよ!!」 再び藁の中に潜り込み、目を瞑った時だった。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ゆゆっ!?だれなの!?そんなこといわないでねぇ!!」 先ほどよりも大きな声で、はっきりと聞こえた。 まったくゆっくり出来ない物騒な言葉を、誰かが言っている。 まりさは、何だか怖くなってぶるぶる震え始めた。 「ゆぅ…まりさ?ゆっくりねむってね?」 「おいおい、さっきからうるさいぞ?」 隣の藁から、もそもそっとれいむが顔を出す。同時に、ベッドの上のお兄さんもむくっと起き上がった。 まりさの大声で、れいむとお兄さんが起きてしまったようだ。 れいむはそれほどでもないが、お兄さんの方は眠りを妨げられてかなり苛立っている。 「ゆっ!!だ、だれかが、まままままりさがゆっくりできないことをいってたよ!!」 「はぁ?……お兄さんには全然聞こえなかったぞ?」 「ゆゆん!!れいむもきこえなかったよ!!ゆっくりねむっていたよ!!」 やっぱり。 れいむもお兄さんも、“そんな声は聞かなかった”の一点張り。 こうなると、やっぱりまりさの気のせいだったのでは、という気になってくる。 「ゆぅ…ゆっくりききまちがえちゃったのかな」 「たぶんそうだろう。……いい加減、そういうの止めてくれよな」 「ゆっくりねむるよ!!まりさはじゃましないでね!!」 お兄さんは少し低めの声でまりさに言い聞かせると、バサッと布団を被って寝転がった。 れいむも藁の中に潜り込んで、再び眠りにつく。 一人と一匹のその声にはどこか棘があって、“二度と起こしてくれるな”という気持ちが存分に篭っていた。 「ゆぅ…まりさもゆっくりねむるよ!」 れいむの後を追うように、まりさも藁の中へ潜り込んだ。 早くいい夢を見て、ゆっくり出来ない気分から逃れようという気持ちも、まりさの動作を速めていた。 遊び疲れていたので、ほんの数秒で意識が眠りの中へ落ちる。 「ゆぅ~…すやすや~……ぐっすり~……ゆぅ~」 「ゆぅ~……ゆぅ~……」 誰もが寝静まった部屋の中。 皆眠っているのに、誰かがこんな声を発している。 「まりさなんか死ねばいいのに」 しかし、とても小さな声なのでまりさを覚醒させるには至らない。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「まりさなんか死ねばいいのに」 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ゆぅ~……ゆぅ~……」 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ゆぅ~………う゛ぅん……」 呪文のように繰り返される言葉のせいなのか、まりさは時折寝苦しそうに身体を動かす。 それでも目を覚ますことはなく、まりさは眠り続ける。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ゆぅ~……ゆぅ~……う゛ぅぅぅ…」 「まりさなんか死ねばいいのに」 「まりさなんか死ねばいいのに」 低い声で、繰り返し、一定の間隔で、その声は発せられている。 それは、まりさが朝目覚める直前まで続いた。 ボソッ 「まりさなんか死ねばいいのに」 翌朝。 朝食を食べ終えた2匹は、ボールで遊んでいた。 まりさが顎の下でボールを蹴飛ばし、それをれいむが受け止めて同じように蹴飛ばす。 「ゆっくりぃ~!!」「ゆゆっ!!ゆっくりぃ~!!」 ぼいんぼいんと、弾力のある身体でボールを蹴飛ばしていく2匹。 その度にぶるんぶるん身体が震えて、発する声も微妙に震えるのだった。 「ゆふぅ~!ゆっくりつかれたね!!」「ゆっくりやすもうね!!」 ボールをたった4,5往復させただけなのに、まりさとれいむは疲労を感じているようだ。 これが野性だったら、おそらく真っ先に捕食種の餌食になるだろう。 2匹はゆふぅっと息を吐きながら、藁の上で並んでゆっくりしている。 その穏やかな顔は、抱きしめたくなるぐらい、あるいは握りつぶしたくなるぐらい、愛らしいものだった。 「ゆっくりたのしいね~!」「もっとゆっくりしようね~!」 互いに呼びかけあって、さらにゆっくりすることを約束する2匹。 しかし、まりさはれいむに黙ってはいるが、あまりゆっくり出来ない気分だった。 どうしてなのかわからない。わからないけど、心の中にもやもやがあって、それのせいでゆっくりできない気がするのだ。 それが一晩中聞かされ続けた“呪文”のせいであることに、まりさは気づいていなかった。 「ゆっ!!こんどはすべりだいでゆっくりしようね!!」 「ゆゆん!!いいかんがえだね!!れいむがさきにゆっくりすべるよ!!」 れいむに悟られないよう、努めて元気を出すまりさ。 そんなまりさを後ろから追い越して、れいむが滑り台の階段を一段ずつ跳ね登っていく。その時だった。 ボソッ(まりさなんか死ねばいいのに) 「ゆゆっ!?れいむ!!そんなこといわないでね!!」 「ゆ?まりさ?どうしたの!?」 声を荒げるまりさの元へ、れいむは滑り台を滑って降りていく。 事情が分からずぽかんとしているれいむに、まりさはぷんぷんと頬を膨らませながら詰め寄った。 「れいむ!!どうしてそんなことをいうの!?まりさがゆっくりできないよ!!」 「ゆゆ!?どうしたの!?れいむはなにもいってないよ!?」 そんなはずはない。今、確かに聞こえたのだから。 声はれいむのとはちょっと違う気もするけど、この場にれいむしかいないのだから、れいむ以外に考えられない。 「しねっていわないでね!!ゆっくりあやまってね!!まりさはゆっくりおこってるよ!!」 「ゆゆぅ!?わからないよ!?ゆっくりせつめいしてね!!」 れいむの方は、まるで状況が把握できていない。 そもそもれいむには、まりさが聞いたという声などまったく聞こえていないのだから。 それについて謝れといわれたところで、はいごめんなさい、と謝るほどれいむは呆けていない。 「ゆゆー!?あやまらないならゆるさないよ!!ゆっくりこらしめるよ!!」 「いいかげんにしてね!!れいむはなにもわるいことしてないよ!!」 一触触発の状態。ほんの些細なきっかけでも、2匹は取っ組み合いを始めてしまうだろう。 そこへ、騒ぎを聞きつけたお兄さんが朝食のカップラーメンを啜りながらやってきた。 「おいおい、さっきから騒がしいけどどうしたんだ?」 「ゆ!!れいむがゆっくりできないことをいったんだよ!!ゆっくりしかってね!!」 「れいむはそんなこといってないよ!!ゆっくりしてただけだよ!!」 2匹の言葉を聞くや否や、お兄さんは「またか」とため息をついてカップラーメンをテーブルの上に置いた。 割り箸だけを左手に握ったまま、まりさの目の前にお兄さんはしゃがみ込む。 「お兄さんに聞かせてみろ。お前はれいむが何て言ったと思ってるんだ?」 「ゆっ?!ゆゆゆ…“ゆっくりしね!!”っていってたよ!!すごくゆっくりできなかったよおっ!!」 「…………はぁ」 お兄さんは、がっくりとうな垂れて大きなため息をつく。 そして、テーブルの上に置いといたカップラーメンを手にとって、そのまま台所へ引き上げてしまった。 「ゆっ!?ゆっくりもどってきてね!!れいむをゆっくりしかってね!!」 「まりさ。何度でも言ってやろう。それはお前の聞き間違いだ。気のせいだ。OK?」 カップラーメンを全て食べつくし、ゆっくり2匹分の食器も持ってもう一度台所に向かうお兄さん。 まりさは自分の主張を受け入れてもらうべく、必死にお兄さんを追いかける。 「ゆ゛っ!ゆっぐりまっでね!!ま、まりざば…ほんどうにっ!!」 「はいはい、お前には聞こえたのかもな。僕とれいむには聞こえなかったけど」 「ゆ゛うぅぅぅぅ……!!!」 2枚の食器を洗いながら、お兄さんは抑揚のない声で頷く。 お兄さんがまったく信用していないことに気づいたまりさは、口をへの字に歪めながらじんわりと目を潤ませる。 そして、後からやってきたれいむにもう一度問い詰めるが、れいむは謝るどころかお兄さんに同調した。 「れいむはなにもきこえなかったよ!!きっとまりさがうそをついてるんだよ!!」 ぴょんぴょんと跳ねるれいむの隣で、まりさは「うそじゃないよ!」と反論しようとする。 しかし、それを遮るようにお兄さんは声のボリュームを上げた。 「この通り、そのゆっくり出来ない声とやらを聞いたのは、お前だけなんだ。 ということは……お前の気のせい、という結論以外ありえないんだよ」 ガチャっと、洗い終えた食器を重ねた、その瞬間。 ボソッ(まりさなんか死ねばいいのに) 「ゆ゛っ!!またきこえたよ!!!まりざなんかじね゛ばいいのに、ってぎごえ゛だよ゛お゛お゛ぉっ!!」 「はいはい、そうですか。まりさは誰かに嫌われるようなことでもしたのかな」 食器を拭き終えたお兄さんは、呆れかえった表情のまま米研ぎを始める。 まりさは「ゆ゛うううぅぅぅ!」と唸りながら、すりすりお兄さんの足元に顔を擦りつけ、必死に気を引こうとするが… お兄さんは、足元に押し付けられる軟らかい感触を完全に無視して、作業を続けた。 「どぼぢでむぢずるのおおおぉぉぉ!!!ほんどうにぎごえだんだよ゛お゛お゛お゛ぉぉぉ!?」 「うーん、ちょっと多く研ぎすぎたかな……まぁいいか」 お兄さんからのお墨付きをもらって無罪となったれいむは、とっくにその場から離れて部屋でゆっくり遊んでいる。 まりさは何度も何度もお兄さんに向かって叫んだが、お兄さんが反応を返してくれることは、ついになかった。 「ゆううぅぅぅ……ごれじゃゆっぐり゛でぎないよ゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉ……!」 叫び疲れたまりさは、ずりずりとお兄さんから離れてれいむのいる部屋に向かい……寝床の藁の中に潜り込む。 そしてぎゅっと目を瞑ると――― 「ゆ゛わぁ!!!ゆわ゛ぁ!!!なに゛もきこえ゛ない゛っ!!!ま゛りさはなにもきこえ゛ないよ゛っ!!」 いきなり大声で叫び始めた。こうすることで、例のゆっくり出来ない声を打ち消そうとしているのだ。 まりさには、耳を塞ぐ手も耳自体も存在しないから、音には音で対抗するしかない。 突然の大音量に驚いたれいむは、まりさに負けないぐらいの大音量で文句を言う。 「まりさ!!うるさいよ!!ゆっくりしずかにしてね!!」 「ぎごえないよぉ!!!まりざはなにもぎごえないよ!!!だれもはなしかげないでねっ!!!」 それでもれいむの抗議がまりさに伝わることはなく、まりさは喉を痛めるほどの音量で叫び続ける。 藁の中に潜り、目を瞑り、大声で叫び、何もかもを遮断して……そうまでして、まりさは“ゆっくり出来ない声”から逃れたいのだ。 だが、そんなまりさの努力はいとも簡単に打ち砕かれた。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ゆ゛っ!?ゆ゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅぅぅぅぅ!!??」 藁の中、自ら発する雑音を掻い潜り、その囁き声はもはや囁きではなく、確かな殺意としてまりさの心を傷つける。 他の誰も聞いていないのに、自分には聞こえる。聞こえているのに、お兄さんもれいむも信じてくれない。 挙句の果てに無視されて、まりさの存在すらも嘘だといわんばかりの扱い。 「ゆがぁっ!!!ぎごえないっ!!!ぎごえないよっ!!まりざのぎのぜいなんでしょ!!?だがらぎごえないよっ!!!」 聞こえるという事実を否定しようとするまりさだが、それは聞こえるという事実を認めているということに他ならない。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「まりさなんか死ねばいいのに」 「まりさなんか死ねばいいのに」 「ひっぐ……しにだぐない……まりざはじにだぐないぃ…ゆっぐぢじだいよ゛おぉ……!!」 誰か信じて。まりさは本当に聞こえるんだよ。 「まりさなんか死ねばいいのに」って誰かが言ってるのが、本当に聞こえるんだよ。 だから信じて。まりさの話を聞いて、ゆっくり出来ない声を聞こえなくして! お願いだよ。まりさを信じてね! まりさを無視しないでね!! 「まりさなんか死ねばいいのに」 まりさを…ゆっくりさせてね…… 「ゆ゛ぁっ……ゆ゛ぅっ……」 喉が潰れて叫び疲れたまりさは、気づかないうちに眠り始めていた。 昼食のときも藁の中から出てこず、夕食時にお兄さんに引っ張り出されるまで、まりさは眠り続けた。 それが、まりさにとって最後の安らぎだった。 「まりさなんか死ねばいいのに」 夕食。 「ゆ~♪もゅもゅ♪しあわせ~♪」 賞味期限が切れてから一ヶ月経ったお菓子を、とても幸せそうに頬張るれいむ。 その隣で、まりさはお菓子の山を見つめたまま、ずっとびくびく震えている。 いつ“あの声”が聞こえてくるのか分からない。それが怖くてゆっくりできない。 ゆっくりできない“あの声”が、まりさの心をここまで蝕んでいるのだ。 ボソッ(まりさなんか死ねばいいのに) 「びっ!?い゛や゛っ!!……ぎぎだぐない゛……ゆっぐりざぜでぇっ!!」 食事すらままならない状態。 声が怖い。声が聞こえてくるのが怖い。怖くて怖くて、ゆっくりする余裕がない。 まりさの両頬には既に涙の通り道が出来ており、それに沿って新たな涙が流れていく。 「ゆっぐりぃ……ゆっぐりでぎないいいぃぃ……!!」 好物のお菓子に口をつけることなく、まりさはその場ですすり泣いている。 れいむは心配そうなまなざしでまりさを見つめるが、すぐに視線をお菓子の山に戻す。 今のところ、興味は目の前のお菓子のほうに向いているようだ。 まりさの顔を見て若干表情を歪めたりしたが、すぐにむーしゃむーしゃと幸福を噛み締めながら微笑む。 「ったく、本当にどうしちゃったんだ?」 台所から、呆れ顔のお兄さんがやってきた。 れいむごとお菓子の山を部屋の隅に押しのけて、まりさの正面に腰を下ろす。 さっき無視したのがよくなかったのか、と心配しているのだ。 「なぁ、しっかりしろよ。きっと気のせいだって。まりs――― 「うわあああぁあぁああぁぁぁ!!!やめでやめでやめでぇぇぇ!!!ゆっぐじでぎないいいいいいぃいいいぃ!!!」 頭を撫でようとしたお兄さんの手を払いのけて、まりさは一目散に寝床へと跳ねていく。 そしてがくがく震える身体を藁の中にねじ込んで、完全に姿を隠してしまった。 「おーい、まりさー!!」 「いぎゃあああぁあっぁぁぁあ!!!まりざはまりざじゃないの!!!まりざじにだぐないいいぃいいぃぃ!!!」 その言葉の内容は、完全に支離滅裂。 だが、お兄さんには分かった。まりさは“まりさ”と呼ばれることをも恐れているのだと。 寝床の藁に潜り込み、帽子を深く被って、音という音を遮断しようとするまりさ。 それでもどうやら例の声が聞こえるらしく、びくびくっと震えながら泣いているのが藁の外からでも見てとれた。 “まりさなんか死ねばいいのに” もはや、まりさが恐れているのはこの言葉ではない。 “まりさ” 名前を呼ばれるだけで泣き叫ぶほど、まりさは心を病んでいた。 この調子で行けば、いずれは“ま”という声に怯えるようになり、最終的には聞こえてくる音全てに反応するようになるだろう。 音というのは、普通に生活していくうえでは絶対に遮断できないものである。 どんなに叫んでも、どんなに耳を塞いでも、音を完全に拒絶することは出来ない。 だから。 「まりさ」 「うがああじゃおあおあおあおあおあ!!!やべでおあおああおあおあおあお!!!」 暴れる。藁の中で、暴れる。 「まりさなんか」 「おにーざんだじゅげでえええぇぇぇええぇ!!!まりざなにもぎぎだぎゅないいいいぃいいぃぃ!!!」 とうとう寝床から飛び出し、出鱈目に跳ね回り始める。 「まりさなんか死ねば」 「うあああおああいううあおいあいおあいおあおいあ!!!うべええじぇおげじじえええおええじえいお!!!」 壁にぶつかっても、まりさは跳ね回るのを止めない。 「まりさなんか死ねばいいのに」 「あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!ゆっぐじじゅぜでえいえいえおえ!!! じねっでいわないでええいえいえおえおえおえおえおえおえお!!!!!!」」 まりさは一生ゆっくりできない。 まりさは一生怯え続ける。 一生聞こえ続けるであろう、ゆっくりできない音に。 そして、壁に50回以上体当たりして……ついにまりさは気を失った。 「あぁ、こりゃもうダメかもしれないな」 「ゆゆっ!?おにーさん!!まりさがおかしいよ!!ゆっくりたすけてあげてね!!」 お菓子の山を半分ほど残して、れいむがお兄さんの足元へ這ってくる。 まりさの変貌を見て、さすがに食事どころではなくなったのだろう。 お兄さんは、動かなくなったまりさの頬をつまみあげて、ぶらぶら揺すってみる。 頬の痛みにも、不気味な浮遊感にも、まりさは反応しない。 まりさが反応するのは音だ。意味を成さない声をあげて、その度に顔を歪ませている。 「ゆ゛っ!………ゆっぐっ!!……っび!?……」 意識は取り戻していたが、完全に壊れていた。 たった一つの言葉に、まりさの心は完全に壊されていた。 すりすりもすっきりも、きっと出来ないだろう。音が聞こえる限りは。 お兄さんは、ペットを心配する飼い主のような顔をして、れいむに告げる。 「まりさは病気になっちゃったんだよ。病院に連れて行ってあげよう」 「ゆっ!!ゆっくりなおしてあげてね!!」 悲しそうに叫ぶれいむを背に、お兄さんはまりさを摘んだまま台所へと向かう。 流し台の横で、まりさをまな板の上に横たわらせる。 帽子をつまんで脱がせるが、『ぼうしをかえしてね!!』などと叫んだりしない。 ただただ震え、意味のない声を上げるだけだ。 「ゆっ………ゆゆっ!!…ゆぐぶ!……」 お兄さんは、まりさの帽子の中から小型の音楽プレーヤーを取り出した。 一度記録した音を、何度も何度も再生することの出来る、とても便利な機械である。 ちょうどお兄さんがプレーヤーをまりさに見せつけた時、それは音を発した。 まりさが今まで恐れ続けた、例の声を、はっきりと発した。 「―――まりさなんか死ねばいいのに」 「っ……!!!」 まりさは叫ばなかった。叫べなかった。 事の真相を頭では理解しても、身体がその声を恐れていた。 その結果、まりさの頭と身体は連携できず、暴れることも叫ぶことも出来ない。 「なぁ、今までこんなこと言われて、どんな気持ちだった?」 「いっ……ど……ぅ゛…じ………で……?」 「って、壊れた状態じゃ答えられないか、アハハハ」 まりさにできたのは、目の前の真相を、目の前の現実を、目に焼き付けて、“耳に焼き付ける”ことだけ。 何が原因なのか、誰が犯人なのか、それがわかっても……全ては手遅れだったのだ。 「お前の反応、すごく楽しかったよ。今までありがとう……そしてさようなら」 グジャッ!グシャッ!グシャッ! お兄さんはつまらなそうな顔をして、まりさを麺棒でぐちゃぐちゃに潰した。無表情のまま、淡々と潰し続けた。 原形を留めないぐらい潰して餡子と皮の残骸と化したところで、無造作にゴミ箱へと流し込む。 普通なら潰す過程も楽しめるものだが、反応がなくてつまらないので、さっさと終わらせてしまった。 その動作に、何の躊躇いもない。 壊れたおもちゃに、興味は微塵も湧かないから。 「まりさは病院に連れて行ってあげたよ。早く治るといいね!」 「ゆゆん……まりさとまたゆっくりしたいよ!!!ゆっくりなおってね!!!」 口の周りに食べかすをつけたまま、れいむは寂しそうに呟いた。 れいむは知らない。まりさがもう二度と戻ってこないことを。 まりさがどんな風に苦しみ、どんなことを思いながら、潰れ死んだかを。 そして、自分がまりさの後を追うことになるということを……れいむは知らない。 ボソッ 「ゆゆっ!?おにーさん!!いまなにかいった?」 「いいや、何も言ってないよ。れいむの気のせいじゃないか?」 「ゆゆゆ……ゆん!!いわれてみればそうだったよ!!れいむがゆっくりまちがえちゃったよ!!」 あはははと笑いあう一人と一匹。 れいむは、お兄さんが小さな声で呟いた気がしたのだが、すぐに気のせいだと思い込んだ。 それかられいむとお兄さんは、気が済むまで遊んだ。 まりさが居ない寂しさを紛らわしてあげるために、お兄さんはひたすら遊んであげた。 れいむはとても楽しかった。まりさが居ないのは寂しいけど、お兄さんが遊んでくれるから。 しかし…… ボソッ まただ。 どうやらお兄さんは気づいていないらしい。 気のせいなのだろうか。それとも、お兄さんも気づいていて嘘をついているのだろうか? れいむには確かに聞こえている。何だかゆっくりできない、心に引っかかる声。 お兄さんの声にとても良く似ている、ゆっくり出来ない声が……微かに聞こえるのだ。 「……ゆっ!きっときのせいだね!!れいむはおにーさんとゆっくりするよ!!」 れいむは、頭の中から不安感を拭い去って、お兄さんの懐へと飛び込んだ。 ボソッ その声は、今度はれいむには届かなかった。 「……れいむなんか死ねばいいのに」 作:避妊ありすの人 作者当てシリーズ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11995/1227272050/ このSSに感想を付ける
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小ネタ。 注釈・他ゲームネタがあります。 「念願のドスまりさを手に入れたぞ!!」 「な、なぁ本当にそれドスまりさなんだよな?」 「えっ? だってこれ丸いし大きいしドスだろ?」 っ● ))…… 「馬鹿やろう! そいつはドスはドスでもDOS だぁぁぁぁぁ!!」 よい子の皆はDOS攻撃とドスまりさは間違えないようにしよう!! その後 「なんで間違えた……」 「レティ4つ分くらいのさむさに耐えかねて……」 若者置いてけぼり -- 名無しさん (2011-04-28 15 49 07) 名前 コメント
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ドスまりさがぶっ殺される話 5KB 村の入り口と森の入り口の中間点で座っている私。 「まだか?遅ぇなぁ……」 今日の朝から早起きして待っているのだが… 時刻はもう昼を過ぎる頃、長い間座りっぱなしで正直ケツが痛い。 早起きした直後はワクワクしていたが、今はもう待ち疲れてウンザリしている。 「はぁぁ~~~~、ん?」 凝りをほぐそうと背伸びしようとした瞬間、地面が規則的に震動をしている事に気付いた。 その震動が徐々に大きくなってきて―― 「ゆっ!ゆっ!」 森の入り口から、高さ5mはある巨大な物体が飛び出して来た。 にやけた下膨れの顔と辺りに響き渡る声で何か言っている。 「ゆゆっ!!にんげんさんだね!!まりさがおねがいするよ!!あの村でいちばんえらい人をよんできてね!!」 この物体が何なのか、読者の方にはもう分かっていると思われるが。 まあ一応言っておくと、この巨大な物体は……ドスまりさ。 まりさ種が異常進化して生まれるドでか饅頭である。 「私が村長です」 「ゆゆっ?そんちょうって何のこと?」 どうやら、このドスまりさはあんまり頭がよろしくない固体のようである。 バカがそのまま大きくなった固体や、人間に負けず劣らずの知能を持った固体など。 千差万別で、世の中に色々確認されているドスまりさの中でも、下の上?その程度の知能だろうか。 まあ、相当なバカではあるが、救い様の無い大バカでは無い。 救い様の無い大バカだったら、第一声は――― 「リーダーになって大変なまりさの為に、やさいさんを村からいっぱい持ってきてね!!」 ―――微妙な差異はあるだろうが、これに準ずる言葉を吐くだろう。 「一番偉い人って事だよ」 「ゆっくりわかったよ!!それで村長さんにおねがいが「条約結びたいんだろ?」ゆゆっ!?なんで分かったの!?」 「ドスが村に来る理由なんてそれぐらいしか無いからねー」 条約――大層な名前が付いているが。 要は、ゆっくり達と人間達の口約束である。 悪く言えば……ドスと村の間での『ごっこ遊び』 相互に干渉しないなどと人間風に文書で認めたとしても…… 条約を理解できない若いゆっくり。 群れを管理できない無能なドス。 これにゆっくりを良く思ってない村側の人間が加われば、むしろ条約は破られる為に存在していると言っても過言ではない。 (押すなよ!絶対に押すなよ!と同じネタ振りの類) 過去にも他のドスと他の村で結構な数の条約結びがあったようだが。 上手くいった例が0に近いのが笑えてくる所である。 現在で数えるほどしか起こっていないのは、ゆっくり種全体が学習しているからだとか…… 目の前のバカを見る限りそうとは思えないが。 「で、結びたい条約ってのはどんな内容なんだ?」 「それはね、群れがこまったときに――」 同じ事を何度も繰り返すなど、話し方が下手糞なドスの説明をまとめると。 人間とゆっくりは助け合う 人間はゆっくりをゆっくりは人間を傷つけない 条約違反が起こったら、違反した側が相手に謝罪と賠償をする。 である。 「条約の内容はつまりこう言う事だよな?」 「そのとおりだよ!!そんちょうさんは頭がいいね!!」 (ゆっくり基準で誉められても嬉しくないなぁ) 「さっそくで悪いんだけど、群れのみんなをむらの中にすまわせてほしいんだよ!!」 「……森で暮らせば良いじゃん」 「まりさの群れはしょくりょうのびちくに失敗したんだよ!!もうすぐ冬だからまりさの群れをはるまで助けてほしいんだよ!!」 群れの不始末のツケを人間に払わせる気満々かこいつ。 それを許すと際限無く付け上がっていくゆっくりの群れの未来が詳細に予知できる。 春までが、夏までになり、夏までが、秋までになり…… 目を閉じると、でいぶとばりざが村の中に大量発生している絵が浮かんで来た。 「……森に帰って食料の備蓄を全力で頑張れば?」 「なにい゛っでる゛のぉぉぉ!!まりさとじょうやぐむすんだでしょぉぉぉ!!」 「まだ冬じゃないからさ、頑張ればどうにかな『ズガアアァァァァアン!!!』 強烈な轟音。反射的に目を開くと前の木々が吹っ飛んでいた。 原因は一瞬で分かる、ドスまりさが放ったドススパークだろう。 「じょうやくを違反したらしゃざいとばいしょうだよ!!それを分かってね!!」 力で無理矢理押し通す気だろうが、その事のデメリットを何も分かってない。 「へーへー分かりました分かりました。取り敢えず村に付いて来てくれないか?」 「ゆ?何のために?」 「群れのゆっくりの為に広場に小屋を作ってやるからさ。まりさにはそれを手伝ってもらいたいんだよ」 「ゆ~ん、分かったよそんちょうさん!!」 今の怪し過ぎる申し出に了承しホイホイ付いて来る。 自分は、このドスまりさの知能をかなり高く見積もり過ぎていたようだ。 そして私とまりさは、人の数が奇妙な程に少ない村を歩き、中心部に到着した。 「ゆ~ん、これだけ大きければまりさの群れもよゆうでくらせるよ!!」 「まりさの群れの数は幾つ?」 「たくさんだよ!!」 「あー、うん、そう……」 「群れのみんなは、きれいでいいこばかりだから村長さんたちも気に入ってくれるよ!!」 「そーだねー」 「まりさはあの家にすまわせてほしいな!!」 「そーだねー」 適当に相槌を打ちながら、渦巻きを描くように広場を回って行く。 そして、人間でも気付かないぐらいに小さく付いた地面の印を見ると、足をドスまりさに気付かれないように止める。 付き従っていた人間が足を止めた事に気付かず、跳ねたドスまりさが着地しようとした次の瞬間――― ズボッ ――――――――― 「どうもお疲れ様です」「ありがとうございました」 「いやそんなに危険なモノでも無いっすから、ちょろいもんすよ」 「あのお化け饅頭が森に現れたと聞いて……数週間前から気が気じゃなくて……」 今、自分は本当の村長と話しをしていた。 側にはピクピクと震える奇妙なデカ饅頭が顔面を下にして土に埋まっている。 ……あの時、ドスまりさは落とし穴に足の前半分を入れてしまったのだ。 そうすると物理的に、顔を下にして落下する事になり、結果がこの様だ。 この落とし穴は一週間以上前から村の住人が総出で掘ったもので、何と、直径、深さ共にドスまりさより大きいのである。 底には「かえし」の付いた竹槍が無数に設置してあり、人糞が塗り付けてあるおまけ付き。 確実に殺す事を意識して作られており、これに顔面から突っ込んだドスまりさの今の心境はあまり想像をしたくはない。 「正直な話、楽な仕事だったっすよ。頭が良いゲスだったら大変な事になってましたけど。」 あそこで村の中にご招待が効かなかったとしても。 帰るドスまりさを尾行して、男衆の夜襲がかかるので……結局、ドスまりさは死ぬ事が確定してたようなものだったのであった。 「これから村長さん達は群れの駆除を?」 「ええ、リーダーを失った群れが混乱して暴走する危険性があるのでね」 「このドスまりさは?」 「変な虫が湧くといけないので、焼却した後に完全に土に埋めます」 聞きたい事も聞き終えてもう心残りは無い。 村長からの心ばかりのお礼を家で開ける事を楽しみにしながら町に帰る事にしよう。 宿で荷物を整えた後、村から出る時に、地面から響き渡るようなドスまりさの断末魔が聞こえた気がしたが。 後ろは振り返らなかった。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る まだ条約結んでないのに「条約違反」とはこれ如何に。(お兄さんは承諾してないし、人間サイドの条約結んでない) 結局ドゲスじゃないかww -- 2018-01-24 13 16 33 ドスかぁ…某氏のSSに出てくるスタンドゆっくり使ったら虐待の幅が広がるなぁ〜 -- 2016-09-12 18 34 25 ↓偽善者発見。 -- 2014-10-08 21 22 45 村長さんなんてことを -- 2014-09-15 21 16 59 C4使うとおもしろそうWWW -- 2013-07-13 15 20 41 ドスとかわさびを食わせれば死ぬんじゃね?おい誰かワサビパイブ爆弾もってこい -- 2013-06-26 09 07 32 最後はテンプレにつき、省略したんですね。わかります。 そして罠にかからなかったら糞つきの竹槍、 どう処分すんのかが気になります。 -- 2012-05-02 21 14 12 ↓で、「私が村長です」って、鬼意山、勇気有るよね~。 -- 2011-12-22 15 01 11 しかし高さ5mて…ちょっとした小屋くらいのサイズじゃないか。すげぇなドス… いくらゆっくりとは言えそのサイズのが歩いてたら恐怖を感じるわw -- 2010-09-06 00 43 16 あっさり風味で良い話だった 出来れば群れの駆除風景も見たかったかも -- 2010-09-04 23 35 25 もっと清潔な罠にしてあげて。 そのための焼却処分でしょおおおおお! -- 2010-09-04 17 50 09 >竹槍が無数に設置してあり、人糞が塗り付けてあるおまけ付き。 後始末する人が気の毒だから、もっと清潔な罠にしてあげて。 -- 2010-08-06 21 39 46 「わたしが村長です」 この時点でこの人間はアウトだろw -- 2010-07-07 13 05 29 良いねぇ、自分の不始末を他者へ擦り付けるクソドゲスの末路には相応しい最後w 群れのゆっくりも例外無くゲスなのは確定、無残に惨めにこの世の苦痛と言う苦痛を味わわせて虐待してやってくださいなw ヒャッハー!! -- 2010-07-07 02 50 25
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前? 注意!!! 俺設定大量 他作者様の設定パクリ過ぎ ご都合主義 微妙にHENTAIネタあり ドス設定有り 可愛がられるゆっくり有り むしろ虐待してないかも知れない 誤字脱字があるかも知れない fuku2193の続きです そんな駄文でも構わない方、「どんとこーい!!!」な上○次郎教授な方 どうぞご覧下さいませ 7.奔走 青年は見ていた ドスまりさと呼ばれている巨大饅頭が自分をはじき飛ばした事を、饅頭の帽子から自分の畑の作物がこぼれたこと、ゆうかを殺そうとしたまりさをつれて逃げたことを 青年はゆうかを抱え「ゆっくり研究所」と言う看板の立てられた建物に入った。 受付の女性はゆうかを見たとたんにただごとでないと察してくれたようで「博士!」と建物の主を呼んだ 呼ばれて奥からやってきた建物の主はははゆうかを見るなり「まだ生きているか?」と青年に聞いた 青年はこくりと頷くと主に連れられて奥の部屋に入った きっとゆうかは助かる、と信じて 「博士、ゆうかは助かるんでしょうか?」 青年は落ち着いて質問した 「お前がこいつを連れてきた時よりもずっとマシな状態だ。これならきっと助かるさ」 博士は笑顔で答え、今度は顔を引き締め青年に尋ねた。 「何があったんだ?」と 青年は起きたことをすべて話した。 ドスまりさの群れにより畑を襲撃されたこと。そして、襲われているゆうかを助けようとしたときにドスまりさに体当たりを当てられたこと 「お前・・・!怪我はないか!?痛いところ無いか!!?」 ドスまりさに体当たりされた。と言った途端に博士は血相を変えて青年の肩を掴み、尋ねた 「ちょっと転がっただけです、大丈夫」 力こぶを作り、大事無いことを博士に伝える青年、 博士は笑顔で「そうか、良かった・・・」と言って青年から離れた 「復讐する気か?」 「当たり前です」青年は無表情で答えた 「無理だな」 里の長から出た言葉は厳しい現実そのものであった 「ドスまりさが本当に襲撃したとは考えにくい。君が嘘をついているとは思わないが、君の話は憶測だろう? 憶測で信頼関係にヒビを入れるわけにはいかない。分かるだろう?」 青年は里の人間を広場へ集め、今日の出来事を報告し、ドスまりさの討伐を提案した。 血の気の多い連中や、ゆっくりが嫌いな少数は賛成したが里の長や年寄り達は青年の案を否定した。 ドスまりさを討伐するともなると里の人間が総出で行かなければならない。 確たる証拠もなく襲撃などもってのほか、とのこと 青年は高台から、集まった里の者すべてを見渡した。そして里の長の言葉の意味を理解し、うなだれた。 「君はしばらく説教が必要なようだな。これから私の家に来なさい」 長は集まった人間を帰らせ、青年を自宅へと連れ帰った 8.意外 洞窟の中では皆暗い表情だ 原因は言わずもがな今日の「人間の」畑の襲撃である 『どうしよう!? まりさ達が約束を破ったなんて人間に知られたらゆっくりできなくなっちゃうよ!!』 「すぎたことをこーかいしてもしかたないよ!」 ドスまりさを慰めるのはドスまりさが最も信頼するれいむ。このれいむは今回の襲撃の留守番を任されたゆっくり達を束ねていたいわゆる副リーダー的存在だ。 「むきゅ、れいむのいうとおりね! いまはにんげんにどうせつめいするかをかんがえましょう!」 すでに言い訳を考えることにシフトしようとしているのはドスまりさの側近のぱちゅりー。 襲撃の際に受けた傷はまだ癒えていないが群れの頭脳として出席しているようだ 「ゆっ! まりさいいことおもいついたよ!!!」 皆がどんよりとしている中で一匹のまりさが大声で発言した。 「またくずめーりんとばかちるのがやったことにすればいいんだよ!!! そーすればまりさたちはゆっくりできるよ!!!」 このまりさは親友のれいむと畑を荒らしたり、民家に押し入って住民にばれた際に必ずと言っていいほど群れにいないゆっくり種に脅されてやったと言い訳している。 本来、長であるドスまりさがたしなめ、何らかの罰を与えて再犯を防ぐべきなのだが、 群れのゆっくりにどうしても優しくしてしまうために罰などは以ての外、注意も軽くしかしない。 「まりさはばかね! まりさたちがにんげんのさとにいたずらしにいくたびにそれいってたから、もうだれもしんようしてくれないよ!!!」 幹部のありすがまりさの意見を打ち破る その後も「ゆうかがたべものくれないからわるいんだよ!!」だの「にんげんがありすたちのごはんをよういしないからこうなるのよ!!!」だのと身勝手な意見ばかり出た。 いつも良い意見を出してくれていたぱちゅりーは傷の調子が悪いのか、なかなか意見を出してくれない ドスまりさは本当に困ってしまった。 いままでも軽いいたずら程度に荒らすゆっくりはいた。そのたびにドスまりさが謝りに行っていた。 苦情が出てもドスまりさが出れば大抵の人間は萎縮して許してくれる。 『ゆー、今までは被害が少なかったからちょっと言えば許してくれたけど、今回のはやり過ぎだったよぉ、どお"じよ"お"お"ぉぉ!!!』 ついにドスまりさは身に迫る危険に涙を流した。 「大丈夫だよまりさ!!!きっとうまくいくよ!!!」 「そうだよ!!!やさしいドスまりさがいればなんとかなるよ!わかるよー!!」 副リーダーれいむや他のゆっくりたちは慰めてくれているが、問題は何も解決していない 「ただいま! ゆっくりもどってきたよ!!!」 元気に帰宅の挨拶をしたのは群れ以外のゆっくり種に罪をなすりつけようとしていたまりさの親友のれいむ 『「「「ゆっくりしていってね!!!」」」』 全員がゆっくり特有の挨拶を返す 「みんな!! いいにゅーすがあるよ!!! ゆっくりきいていってね!!!」 『ゆっくり早く聞かせてね!!!』 「さとのにんげんたちがれいむたちにふゆのごはんくれるんだよ!!!」 「「「「「ゆっ!!!」」」」」 「それにあのにんげんがみんなにれいむたちをころそーっていってたんだけどね!!! にんげんはみんなドスまりさをしんようするっていってだれもあいてにしてなかったんだよ!!!」 「「「「「『ゆ~~~~~っ!!!』」」」」」 群れ全体が歓喜に沸き上がった。 あれほど悲観していた食糧問題を人間達が解決してくれる上に、 里の人間は今日の襲撃の被害者よりもドスまりさを信用しているので攻め込まれたりはしないと言うのだから・・・ 9.夢 青年が里の長の家から出てくると、虐待お兄さんに声をかけられた 「こってり絞られたようだね。どうだい?久しぶりに僕の家に来ないかい?」 青年は彼の家に上がり、お茶を頂きながらしばらく話をした。 「そうか、君は決意したんだね」 虐待お兄さんは一通り青年の話を聞いて、悲しそうに言った。 「君がいなくなると寂しくなるよ」 青年の帰り際に虐待お兄さんはぼそりと呟く。 青年が見えなくなった頃に虐待お兄さんはどこかへ出かけていった。 彼を見かけた里の人間はきっとまた群れ以外のゆっくりを攫いに行くのだと噂した 青年は荒らされた畑を見ることなく家に入った。 そして、物置から狩りのためのボウガンを取り出し、矢をセットした。 そして外へ出て切り株に狙いを定め、トリガーを引いた。 ヒュッ! 青年の放った矢は切り株の右側に命中した。 試し撃ちを終えた青年は物置から古くなってしまった段ボールを取り出した。 夜も更け、ようやく青年の準備が済んだ。 青年が立ち上がろうとすると今日の疲れからか、意識は深淵へと堕ちていった・・・ 青年は夢を見ていた まだ幼かったあの頃、そばにはいつも両親がいた頃 親友とよく将来の夢を語り合ったこと 病気になったときには里一番の名医にとても苦い薬を笑顔で「美味しいお薬だよ」と言われて飲まされた。 苦いお薬が効いて、病気がすぐに治りみんなでお礼を言いに行ったこと 好きだったあの子に告白しようとしたら他の男の子とキスしているところを見てしまったこと 親友は慰めてくれた。両親には恥ずかしくて言えなかった。 そんな幼少時代の終わりとともに「アイツら」が突然現れた。 「アイツら」は最初のうちはただ変な饅頭生物として、子供に追っかけられたりするだけの存在だったが いつの間にか畑を荒らしたり、民家に押し入って中を荒らしたりするようになった。 そして、それに呼応するかのように周りで異変が起こり始めた。 とても優しく、みんなから好かれていた親友は「アイツら」を異常に敵対視するようになった。 最初はただ石を投げてぶつけるだけだったが、段々行為はエスカレートし、ついには生きたまま生皮をはがしているところを見てしまった 彼はみんなに対してはいつも通りの優しい奴だった。でも、「アイツら」をいじめているときは何かに取り憑かれているように人が変わった やがてみんなは彼を「おかしな奴だ」と罵るようになった。 母が突然倒れた。 父は母を看病し、里の名医のもとへ連れて行ったが彼のもとにはすでに母と同じ症状に苦しむ患者でいっぱいだった。 父は彼に聞いた「この病気は治るんですか?」と 彼は笑顔で「大丈夫、みんなをなおしたらきっと君らを治してやるよ!」と答えた。 結局里一番の名医は誰も救えなかった。母も、親友の両親も、 そして、父も 誰も彼を責めたりはしなかった。みんな彼が体を壊しながらみんなを助けようと必死になっていたことを知っていたから 彼は突然「これはきっとゆっくり達が持ってきた病気なんだ!」と騒ぐようになった。 そして、狂気に取り憑かれたように「アイツら」を殺してまわった。 彼の病院はいつの間にか「ゆっくり研究所」という看板が立てられ、いつも中からは「アイツら」の悲鳴が木霊していた そのうち里の人たちは彼が狂ってしまったんだと判断し、誰も彼に寄りつかなくなった そして、他の里の医者がやってきた。その医者は元名医を散々馬鹿にした。好きにはなれなかった。 里には孤児になってしまった子供達が沢山いた。 みんな遠くの孤児院に引き取られていったが、二人だけ里に残ると孤児院行きを拒否した 親友は博士と名乗りだした元名医と共に暮らし始めた。 彼らは「アイツら」を殺すことに生き甲斐を見つけたのだろうか、中からは絶えることなく「アイツら」の悲鳴が聞こえ、前を通ると餡子の臭いが漂っていた 両親の残してくれた土地と、教えてくれた畑の世話の仕方のお陰で何とか一人でも食べることは困らなかった。 元々森に近い場所だったから柵は両親が設置した後だったので、野生動物も「アイツら」も畑から作物を奪うことはできなかった。 少年から青年になる頃にはすべてが変わってしまっていた。 好きだったあの子は孤児院に引き取られ、向こうで結婚したらしい。相手は資産家の息子とのことだった。 親友と名医とはあまり会う機会が無くなってしまっていた。 彼らを拒絶したわけではない、ただ、忙しさの中にいなければ押しつぶされそうだったのだ やがて親友は元の家へ帰った。その頃には彼は「虐待お兄さん」と呼ばれるようになっていた。 彼の目にとまったゆっくり達を捕まえては虐殺していたから。 いつの間にかゆっくり達を飼い始める人間が増えた。 最初の内は傲慢な性格のゆっくり達を嫌う人間が容赦なく殺してしまっていたが、 他の里の「バッヂシステム」が来ると、一つの共存の形ができあがっていた。 博士はこれを由々しき事態とし、飼いゆっくりを何度か殺そうとした。 いずれも未遂だが、そのたびに博士は自警団に世話になった。 親友に「君は人のゆっくりを殺さないのかい?」と聞いたことがあった。 彼は「人の物には手は出さないよ。僕はルールを守るのさ」とけらけら笑いながら言った。 ある日何気なく森を散歩していたら、死にかけたゆっくりがいた。 別にゆっくりが好きだった訳じゃない、むしろ嫌いだ。 ただ、気まぐれでそのゆっくりを助けることにした。 しかし、このゆっくりをどうすれば助けることができるのかは分からなかった。 だが足は自然に「ゆっくり研究所」に向かっていた。 「いいのかい?里の人間が言ってただろ?"あそこにいるのはゆっくりを殺すしか脳のない老いぼれだ"って」 博士はつっけんどんに言い放った 「先生以外に治せる人がいるんですか?」 「里の真ん中あたりにいる医者は・・・腕は良いがあくまで人間相手だからなぁ、 まあ、ゆっくりに詳しいのは私くらいだろうな!そうだな"先生"なんて呼ばれたのは久しぶりだな・・・ 君と私の仲だ、治してやるよ。その死に損ない」 博士は気怠げな表情でゆっくりを抱え上げ、部屋の奥へと連れて行った 博士曰くに、ゆっくりは餡子が命の源であり、これが大量になくなったり、中枢の餡子が損傷すると死ぬと言うことを教えてくれた。 同時に質の良い餡子を本来容量よりも多めに入れると知能指数が上がることも教えてくれた。 彼は「治療の際にその処置もやっておいたよ。」と気怠げに話してくれた。 このゆっくりが意識を取り戻した後、2日すると本調子になったらしい、元気にぴょんぴょん跳ね回っていた 「森に帰りたいか?」 聞いてみた。答えはYesだった。 森に帰して数日後、畑仕事にむかうとあのゆっくりがいた。 (住む場所がないのだろうか・・・) こちらに気付くとゆっくりは一瞬警戒し、そして警戒を解いた。そしてまごつきながら何かを言おうとしていた。 「住む場所が見つからないのか?」 自然と口から言葉が出ていた。 「うん・・・」 「そこの土地があいてるけど使う?」 「いいの?」 「使ってないから構わないよ」 「!!・・・ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 住処を与えたのは助けたとき同様、気まぐれだった。 始めは、家に一緒に住まわせようとも提案したが、断られた。 何でも、そこまで世話になるのは申し訳ないとのことだった。 悪くない。そう思っていた。 朝、ゆっくりに与えた場所を見るとせっせと自分用の花畑を整備している。 昼近くになるとこっちの畑を見て、いろいろとアドバイスをしてくれたりもした。 口はあまり良くないが、植物に関しては人間よりよく知っているらしい。お陰でとれた野菜の味は前よりも良くなっていた。 そんなある日、畑に戻ると柵の中で他のゆっくりと対峙していた 慌てた、気がつくと侵入者を潰していた。 「ゆうか!大丈夫か!?」 「ゆー?怪我はないよ」 「よかった・・」 そういえば初めてこいつを名前で呼んだ これからはちゃんと名前で呼んでやろう・・・ その日を境にゆうかと寝食を共にするようになった。 ゆっくりの生態とかは親友や博士に聞いた。 病気や怪我の対処法はあまり実践する機会はなかったが、それなりに役に立った。 そして、里へ行き飼いゆっくりとして登録し、博士や親友に教わりながら人間のルールを教え込んでいった 博士に餡子量を増やして貰っていたためか、飲み込みは非常に早かった。 ゴールドバッヂの試験も一発で合格出来た。 その日から夜には「すっきりー」させてやった。日によっては一緒に「すっきりー」した。 やり方は博士が虐待用ゆっくりを使って教えてくれた。聞いてもいないのに人間とゆっくりが一緒に「すっきりー」するための方法や下準備まで教えてくれた。 「ゆー、お兄さん、バッヂ壊れちゃったよ・・・」 帰ってくるとゆうかはそういって留め具が壊れたバッヂを見せた 「分かった、明日新しいの貰いに行ってくるよ」 後ろでゆうかが玄関から見送っている。 (行くな・・・戻れ) 「お兄さん! 行ってらっしゃい!」 「それじゃあ、行ってくるよ。」 (戻れ! 戻るんだ! 頼む・・・行くんじゃない!!!) いくら意識しても体は行動を再現するだけで今の意思を反映してくれない。 闇の中にいた。どこからか声がする。呼ばれているのかな? 声の方へ向かう。ゆうかがいた。抱っこして頭を撫でてやる。 いつもならそこで泣きやむのだが、泣きやまない。 それでも撫で続けた。ずっと・・・ 続けていい? スレ内で「青年はHENTAIお兄さんなのか?」という疑問がありましたので答えます 当SS内では HENTAIお兄さん → 常日頃からゆっくりを性奴隷として調教したり、道行くゆっくり達をレイプすることで己の性欲を満たし、生き甲斐としている人物の総称 としています。 虐待お兄さんなどもゆっくりをレイプしたりすることがあるが、あくまで虐待の一環です このSSの主人公の青年はゆっくりとのコミュニケーションの一環として性行為をしているので一応HENTAIお兄さんには該当していません やってることはHENTAI行為そのものですけどね。 無駄に長くなっている気がするよ、先生・・・ 続き このSSに感想を付ける
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前 注意!!! 俺設定大量 他作者様の設定パクリ過ぎ ご都合主義 微妙にHENTAIネタあり ドス設定有り 可愛がられるゆっくり有り むしろ虐待してないかも知れない 誤字脱字があるかも知れない fuku2193の続きです そんな駄文でも構わない方、「どんとこーい!!!」な上○次郎教授な方 どうぞご覧下さいませ 7.奔走 青年は見ていた ドスまりさと呼ばれている巨大饅頭が自分をはじき飛ばした事を、饅頭の帽子から自分の畑の作物がこぼれたこと、ゆうかを殺そうとしたまりさをつれて逃げたことを 青年はゆうかを抱え「ゆっくり研究所」と言う看板の立てられた建物に入った。 受付の女性はゆうかを見たとたんにただごとでないと察してくれたようで「博士!」と建物の主を呼んだ 呼ばれて奥からやってきた建物の主はははゆうかを見るなり「まだ生きているか?」と青年に聞いた 青年はこくりと頷くと主に連れられて奥の部屋に入った きっとゆうかは助かる、と信じて 「博士、ゆうかは助かるんでしょうか?」 青年は落ち着いて質問した 「お前がこいつを連れてきた時よりもずっとマシな状態だ。これならきっと助かるさ」 博士は笑顔で答え、今度は顔を引き締め青年に尋ねた。 「何があったんだ?」と 青年は起きたことをすべて話した。 ドスまりさの群れにより畑を襲撃されたこと。そして、襲われているゆうかを助けようとしたときにドスまりさに体当たりを当てられたこと 「お前・・・!怪我はないか!?痛いところ無いか!!?」 ドスまりさに体当たりされた。と言った途端に博士は血相を変えて青年の肩を掴み、尋ねた 「ちょっと転がっただけです、大丈夫」 力こぶを作り、大事無いことを博士に伝える青年、 博士は笑顔で「そうか、良かった・・・」と言って青年から離れた 「復讐する気か?」 「当たり前です」青年は無表情で答えた 「無理だな」 里の長から出た言葉は厳しい現実そのものであった 「ドスまりさが本当に襲撃したとは考えにくい。君が嘘をついているとは思わないが、君の話は憶測だろう? 憶測で信頼関係にヒビを入れるわけにはいかない。分かるだろう?」 青年は里の人間を広場へ集め、今日の出来事を報告し、ドスまりさの討伐を提案した。 血の気の多い連中や、ゆっくりが嫌いな少数は賛成したが里の長や年寄り達は青年の案を否定した。 ドスまりさを討伐するともなると里の人間が総出で行かなければならない。 確たる証拠もなく襲撃などもってのほか、とのこと 青年は高台から、集まった里の者すべてを見渡した。そして里の長の言葉の意味を理解し、うなだれた。 「君はしばらく説教が必要なようだな。これから私の家に来なさい」 長は集まった人間を帰らせ、青年を自宅へと連れ帰った 8.意外 洞窟の中では皆暗い表情だ 原因は言わずもがな今日の「人間の」畑の襲撃である 『どうしよう!? まりさ達が約束を破ったなんて人間に知られたらゆっくりできなくなっちゃうよ!!』 「すぎたことをこーかいしてもしかたないよ!」 ドスまりさを慰めるのはドスまりさが最も信頼するれいむ。このれいむは今回の襲撃の留守番を任されたゆっくり達を束ねていたいわゆる副リーダー的存在だ。 「むきゅ、れいむのいうとおりね! いまはにんげんにどうせつめいするかをかんがえましょう!」 すでに言い訳を考えることにシフトしようとしているのはドスまりさの側近のぱちゅりー。 襲撃の際に受けた傷はまだ癒えていないが群れの頭脳として出席しているようだ 「ゆっ! まりさいいことおもいついたよ!!!」 皆がどんよりとしている中で一匹のまりさが大声で発言した。 「またくずめーりんとばかちるのがやったことにすればいいんだよ!!! そーすればまりさたちはゆっくりできるよ!!!」 このまりさは親友のれいむと畑を荒らしたり、民家に押し入って住民にばれた際に必ずと言っていいほど群れにいないゆっくり種に脅されてやったと言い訳している。 本来、長であるドスまりさがたしなめ、何らかの罰を与えて再犯を防ぐべきなのだが、 群れのゆっくりにどうしても優しくしてしまうために罰などは以ての外、注意も軽くしかしない。 「まりさはばかね! まりさたちがにんげんのさとにいたずらしにいくたびにそれいってたから、もうだれもしんようしてくれないよ!!!」 幹部のありすがまりさの意見を打ち破る その後も「ゆうかがたべものくれないからわるいんだよ!!」だの「にんげんがありすたちのごはんをよういしないからこうなるのよ!!!」だのと身勝手な意見ばかり出た。 いつも良い意見を出してくれていたぱちゅりーは傷の調子が悪いのか、なかなか意見を出してくれない ドスまりさは本当に困ってしまった。 いままでも軽いいたずら程度に荒らすゆっくりはいた。そのたびにドスまりさが謝りに行っていた。 苦情が出てもドスまりさが出れば大抵の人間は萎縮して許してくれる。 『ゆー、今までは被害が少なかったからちょっと言えば許してくれたけど、今回のはやり過ぎだったよぉ、どお"じよ"お"お"ぉぉ!!!』 ついにドスまりさは身に迫る危険に涙を流した。 「大丈夫だよまりさ!!!きっとうまくいくよ!!!」 「そうだよ!!!やさしいドスまりさがいればなんとかなるよ!わかるよー!!」 副リーダーれいむや他のゆっくりたちは慰めてくれているが、問題は何も解決していない 「ただいま! ゆっくりもどってきたよ!!!」 元気に帰宅の挨拶をしたのは群れ以外のゆっくり種に罪をなすりつけようとしていたまりさの親友のれいむ 『「「「ゆっくりしていってね!!!」」」』 全員がゆっくり特有の挨拶を返す 「みんな!! いいにゅーすがあるよ!!! ゆっくりきいていってね!!!」 『ゆっくり早く聞かせてね!!!』 「さとのにんげんたちがれいむたちにふゆのごはんくれるんだよ!!!」 「「「「「ゆっ!!!」」」」」 「それにあのにんげんがみんなにれいむたちをころそーっていってたんだけどね!!! にんげんはみんなドスまりさをしんようするっていってだれもあいてにしてなかったんだよ!!!」 「「「「「『ゆ~~~~~っ!!!』」」」」」 群れ全体が歓喜に沸き上がった。 あれほど悲観していた食糧問題を人間達が解決してくれる上に、 里の人間は今日の襲撃の被害者よりもドスまりさを信用しているので攻め込まれたりはしないと言うのだから・・・ 9.夢 青年が里の長の家から出てくると、虐待お兄さんに声をかけられた 「こってり絞られたようだね。どうだい?久しぶりに僕の家に来ないかい?」 青年は彼の家に上がり、お茶を頂きながらしばらく話をした。 「そうか、君は決意したんだね」 虐待お兄さんは一通り青年の話を聞いて、悲しそうに言った。 「君がいなくなると寂しくなるよ」 青年の帰り際に虐待お兄さんはぼそりと呟く。 青年が見えなくなった頃に虐待お兄さんはどこかへ出かけていった。 彼を見かけた里の人間はきっとまた群れ以外のゆっくりを攫いに行くのだと噂した 青年は荒らされた畑を見ることなく家に入った。 そして、物置から狩りのためのボウガンを取り出し、矢をセットした。 そして外へ出て切り株に狙いを定め、トリガーを引いた。 ヒュッ! 青年の放った矢は切り株の右側に命中した。 試し撃ちを終えた青年は物置から古くなってしまった段ボールを取り出した。 夜も更け、ようやく青年の準備が済んだ。 青年が立ち上がろうとすると今日の疲れからか、意識は深淵へと堕ちていった・・・ 青年は夢を見ていた まだ幼かったあの頃、そばにはいつも両親がいた頃 親友とよく将来の夢を語り合ったこと 病気になったときには里一番の名医にとても苦い薬を笑顔で「美味しいお薬だよ」と言われて飲まされた。 苦いお薬が効いて、病気がすぐに治りみんなでお礼を言いに行ったこと 好きだったあの子に告白しようとしたら他の男の子とキスしているところを見てしまったこと 親友は慰めてくれた。両親には恥ずかしくて言えなかった。 そんな幼少時代の終わりとともに「アイツら」が突然現れた。 「アイツら」は最初のうちはただ変な饅頭生物として、子供に追っかけられたりするだけの存在だったが いつの間にか畑を荒らしたり、民家に押し入って中を荒らしたりするようになった。 そして、それに呼応するかのように周りで異変が起こり始めた。 とても優しく、みんなから好かれていた親友は「アイツら」を異常に敵対視するようになった。 最初はただ石を投げてぶつけるだけだったが、段々行為はエスカレートし、ついには生きたまま生皮をはがしているところを見てしまった 彼はみんなに対してはいつも通りの優しい奴だった。でも、「アイツら」をいじめているときは何かに取り憑かれているように人が変わった やがてみんなは彼を「おかしな奴だ」と罵るようになった。 母が突然倒れた。 父は母を看病し、里の名医のもとへ連れて行ったが彼のもとにはすでに母と同じ症状に苦しむ患者でいっぱいだった。 父は彼に聞いた「この病気は治るんですか?」と 彼は笑顔で「大丈夫、みんなをなおしたらきっと君らを治してやるよ!」と答えた。 結局里一番の名医は誰も救えなかった。母も、親友の両親も、 そして、父も 誰も彼を責めたりはしなかった。みんな彼が体を壊しながらみんなを助けようと必死になっていたことを知っていたから 彼は突然「これはきっとゆっくり達が持ってきた病気なんだ!」と騒ぐようになった。 そして、狂気に取り憑かれたように「アイツら」を殺してまわった。 彼の病院はいつの間にか「ゆっくり研究所」という看板が立てられ、いつも中からは「アイツら」の悲鳴が木霊していた そのうち里の人たちは彼が狂ってしまったんだと判断し、誰も彼に寄りつかなくなった そして、他の里の医者がやってきた。その医者は元名医を散々馬鹿にした。好きにはなれなかった。 里には孤児になってしまった子供達が沢山いた。 みんな遠くの孤児院に引き取られていったが、二人だけ里に残ると孤児院行きを拒否した 親友は博士と名乗りだした元名医と共に暮らし始めた。 彼らは「アイツら」を殺すことに生き甲斐を見つけたのだろうか、中からは絶えることなく「アイツら」の悲鳴が聞こえ、前を通ると餡子の臭いが漂っていた 両親の残してくれた土地と、教えてくれた畑の世話の仕方のお陰で何とか一人でも食べることは困らなかった。 元々森に近い場所だったから柵は両親が設置した後だったので、野生動物も「アイツら」も畑から作物を奪うことはできなかった。 少年から青年になる頃にはすべてが変わってしまっていた。 好きだったあの子は孤児院に引き取られ、向こうで結婚したらしい。相手は資産家の息子とのことだった。 親友と名医とはあまり会う機会が無くなってしまっていた。 彼らを拒絶したわけではない、ただ、忙しさの中にいなければ押しつぶされそうだったのだ やがて親友は元の家へ帰った。その頃には彼は「虐待お兄さん」と呼ばれるようになっていた。 彼の目にとまったゆっくり達を捕まえては虐殺していたから。 いつの間にかゆっくり達を飼い始める人間が増えた。 最初の内は傲慢な性格のゆっくり達を嫌う人間が容赦なく殺してしまっていたが、 他の里の「バッヂシステム」が来ると、一つの共存の形ができあがっていた。 博士はこれを由々しき事態とし、飼いゆっくりを何度か殺そうとした。 いずれも未遂だが、そのたびに博士は自警団に世話になった。 親友に「君は人のゆっくりを殺さないのかい?」と聞いたことがあった。 彼は「人の物には手は出さないよ。僕はルールを守るのさ」とけらけら笑いながら言った。 ある日何気なく森を散歩していたら、死にかけたゆっくりがいた。 別にゆっくりが好きだった訳じゃない、むしろ嫌いだ。 ただ、気まぐれでそのゆっくりを助けることにした。 しかし、このゆっくりをどうすれば助けることができるのかは分からなかった。 だが足は自然に「ゆっくり研究所」に向かっていた。 「いいのかい?里の人間が言ってただろ?"あそこにいるのはゆっくりを殺すしか脳のない老いぼれだ"って」 博士はつっけんどんに言い放った 「先生以外に治せる人がいるんですか?」 「里の真ん中あたりにいる医者は・・・腕は良いがあくまで人間相手だからなぁ、 まあ、ゆっくりに詳しいのは私くらいだろうな!そうだな"先生"なんて呼ばれたのは久しぶりだな・・・ 君と私の仲だ、治してやるよ。その死に損ない」 博士は気怠げな表情でゆっくりを抱え上げ、部屋の奥へと連れて行った 博士曰くに、ゆっくりは餡子が命の源であり、これが大量になくなったり、中枢の餡子が損傷すると死ぬと言うことを教えてくれた。 同時に質の良い餡子を本来容量よりも多めに入れると知能指数が上がることも教えてくれた。 彼は「治療の際にその処置もやっておいたよ。」と気怠げに話してくれた。 このゆっくりが意識を取り戻した後、2日すると本調子になったらしい、元気にぴょんぴょん跳ね回っていた 「森に帰りたいか?」 聞いてみた。答えはYesだった。 森に帰して数日後、畑仕事にむかうとあのゆっくりがいた。 (住む場所がないのだろうか・・・) こちらに気付くとゆっくりは一瞬警戒し、そして警戒を解いた。そしてまごつきながら何かを言おうとしていた。 「住む場所が見つからないのか?」 自然と口から言葉が出ていた。 「うん・・・」 「そこの土地があいてるけど使う?」 「いいの?」 「使ってないから構わないよ」 「!!・・・ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 住処を与えたのは助けたとき同様、気まぐれだった。 始めは、家に一緒に住まわせようとも提案したが、断られた。 何でも、そこまで世話になるのは申し訳ないとのことだった。 悪くない。そう思っていた。 朝、ゆっくりに与えた場所を見るとせっせと自分用の花畑を整備している。 昼近くになるとこっちの畑を見て、いろいろとアドバイスをしてくれたりもした。 口はあまり良くないが、植物に関しては人間よりよく知っているらしい。お陰でとれた野菜の味は前よりも良くなっていた。 そんなある日、畑に戻ると柵の中で他のゆっくりと対峙していた 慌てた、気がつくと侵入者を潰していた。 「ゆうか!大丈夫か!?」 「ゆー?怪我はないよ」 「よかった・・」 そういえば初めてこいつを名前で呼んだ これからはちゃんと名前で呼んでやろう・・・ その日を境にゆうかと寝食を共にするようになった。 ゆっくりの生態とかは親友や博士に聞いた。 病気や怪我の対処法はあまり実践する機会はなかったが、それなりに役に立った。 そして、里へ行き飼いゆっくりとして登録し、博士や親友に教わりながら人間のルールを教え込んでいった 博士に餡子量を増やして貰っていたためか、飲み込みは非常に早かった。 ゴールドバッヂの試験も一発で合格出来た。 その日から夜には「すっきりー」させてやった。日によっては一緒に「すっきりー」した。 やり方は博士が虐待用ゆっくりを使って教えてくれた。聞いてもいないのに人間とゆっくりが一緒に「すっきりー」するための方法や下準備まで教えてくれた。 「ゆー、お兄さん、バッヂ壊れちゃったよ・・・」 帰ってくるとゆうかはそういって留め具が壊れたバッヂを見せた 「分かった、明日新しいの貰いに行ってくるよ」 後ろでゆうかが玄関から見送っている。 (行くな・・・戻れ) 「お兄さん! 行ってらっしゃい!」 「それじゃあ、行ってくるよ。」 (戻れ! 戻るんだ! 頼む・・・行くんじゃない!!!) いくら意識しても体は行動を再現するだけで今の意思を反映してくれない。 闇の中にいた。どこからか声がする。呼ばれているのかな? 声の方へ向かう。ゆうかがいた。抱っこして頭を撫でてやる。 いつもならそこで泣きやむのだが、泣きやまない。 それでも撫で続けた。ずっと・・・ 続けていい? スレ内で「青年はHENTAIお兄さんなのか?」という疑問がありましたので答えます 当SS内では HENTAIお兄さん → 常日頃からゆっくりを性奴隷として調教したり、道行くゆっくり達をレイプすることで己の性欲を満たし、生き甲斐としている人物の総称 としています。 虐待お兄さんなどもゆっくりをレイプしたりすることがあるが、あくまで虐待の一環です このSSの主人公の青年はゆっくりとのコミュニケーションの一環として性行為をしているので一応HENTAIお兄さんには該当していません やってることはHENTAI行為そのものですけどね。 無駄に長くなっている気がするよ、先生・・・ 続き このSSに感想を付ける
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前 注意!!! 俺設定大量 他作者様の設定パクリ過ぎ ご都合主義 微妙にHENTAIネタあり ドス設定有り 可愛がられるゆっくり有り むしろ虐待してないかも知れない 誤字脱字があるかも知れない fuku2193の続きです そんな駄文でも構わない方、「どんとこーい!!!」な上○次郎教授な方 どうぞご覧下さいませ 7.奔走 青年は見ていた ドスまりさと呼ばれている巨大饅頭が自分をはじき飛ばした事を、饅頭の帽子から自分の畑の作物がこぼれたこと、ゆうかを殺そうとしたまりさをつれて逃げたことを 青年はゆうかを抱え「ゆっくり研究所」と言う看板の立てられた建物に入った。 受付の女性はゆうかを見たとたんにただごとでないと察してくれたようで「博士!」と建物の主を呼んだ 呼ばれて奥からやってきた建物の主はははゆうかを見るなり「まだ生きているか?」と青年に聞いた 青年はこくりと頷くと主に連れられて奥の部屋に入った きっとゆうかは助かる、と信じて 「博士、ゆうかは助かるんでしょうか?」 青年は落ち着いて質問した 「お前がこいつを連れてきた時よりもずっとマシな状態だ。これならきっと助かるさ」 博士は笑顔で答え、今度は顔を引き締め青年に尋ねた。 「何があったんだ?」と 青年は起きたことをすべて話した。 ドスまりさの群れにより畑を襲撃されたこと。そして、襲われているゆうかを助けようとしたときにドスまりさに体当たりを当てられたこと 「お前・・・!怪我はないか!?痛いところ無いか!!?」 ドスまりさに体当たりされた。と言った途端に博士は血相を変えて青年の肩を掴み、尋ねた 「ちょっと転がっただけです、大丈夫」 力こぶを作り、大事無いことを博士に伝える青年、 博士は笑顔で「そうか、良かった・・・」と言って青年から離れた 「復讐する気か?」 「当たり前です」青年は無表情で答えた 「無理だな」 里の長から出た言葉は厳しい現実そのものであった 「ドスまりさが本当に襲撃したとは考えにくい。君が嘘をついているとは思わないが、君の話は憶測だろう? 憶測で信頼関係にヒビを入れるわけにはいかない。分かるだろう?」 青年は里の人間を広場へ集め、今日の出来事を報告し、ドスまりさの討伐を提案した。 血の気の多い連中や、ゆっくりが嫌いな少数は賛成したが里の長や年寄り達は青年の案を否定した。 ドスまりさを討伐するともなると里の人間が総出で行かなければならない。 確たる証拠もなく襲撃などもってのほか、とのこと 青年は高台から、集まった里の者すべてを見渡した。そして里の長の言葉の意味を理解し、うなだれた。 「君はしばらく説教が必要なようだな。これから私の家に来なさい」 長は集まった人間を帰らせ、青年を自宅へと連れ帰った 8.意外 洞窟の中では皆暗い表情だ 原因は言わずもがな今日の「人間の」畑の襲撃である 『どうしよう!? まりさ達が約束を破ったなんて人間に知られたらゆっくりできなくなっちゃうよ!!』 「すぎたことをこーかいしてもしかたないよ!」 ドスまりさを慰めるのはドスまりさが最も信頼するれいむ。このれいむは今回の襲撃の留守番を任されたゆっくり達を束ねていたいわゆる副リーダー的存在だ。 「むきゅ、れいむのいうとおりね! いまはにんげんにどうせつめいするかをかんがえましょう!」 すでに言い訳を考えることにシフトしようとしているのはドスまりさの側近のぱちゅりー。 襲撃の際に受けた傷はまだ癒えていないが群れの頭脳として出席しているようだ 「ゆっ! まりさいいことおもいついたよ!!!」 皆がどんよりとしている中で一匹のまりさが大声で発言した。 「またくずめーりんとばかちるのがやったことにすればいいんだよ!!! そーすればまりさたちはゆっくりできるよ!!!」 このまりさは親友のれいむと畑を荒らしたり、民家に押し入って住民にばれた際に必ずと言っていいほど群れにいないゆっくり種に脅されてやったと言い訳している。 本来、長であるドスまりさがたしなめ、何らかの罰を与えて再犯を防ぐべきなのだが、 群れのゆっくりにどうしても優しくしてしまうために罰などは以ての外、注意も軽くしかしない。 「まりさはばかね! まりさたちがにんげんのさとにいたずらしにいくたびにそれいってたから、もうだれもしんようしてくれないよ!!!」 幹部のありすがまりさの意見を打ち破る その後も「ゆうかがたべものくれないからわるいんだよ!!」だの「にんげんがありすたちのごはんをよういしないからこうなるのよ!!!」だのと身勝手な意見ばかり出た。 いつも良い意見を出してくれていたぱちゅりーは傷の調子が悪いのか、なかなか意見を出してくれない ドスまりさは本当に困ってしまった。 いままでも軽いいたずら程度に荒らすゆっくりはいた。そのたびにドスまりさが謝りに行っていた。 苦情が出てもドスまりさが出れば大抵の人間は萎縮して許してくれる。 『ゆー、今までは被害が少なかったからちょっと言えば許してくれたけど、今回のはやり過ぎだったよぉ、どお"じよ"お"お"ぉぉ!!!』 ついにドスまりさは身に迫る危険に涙を流した。 「大丈夫だよまりさ!!!きっとうまくいくよ!!!」 「そうだよ!!!やさしいドスまりさがいればなんとかなるよ!わかるよー!!」 副リーダーれいむや他のゆっくりたちは慰めてくれているが、問題は何も解決していない 「ただいま! ゆっくりもどってきたよ!!!」 元気に帰宅の挨拶をしたのは群れ以外のゆっくり種に罪をなすりつけようとしていたまりさの親友のれいむ 『「「「ゆっくりしていってね!!!」」」』 全員がゆっくり特有の挨拶を返す 「みんな!! いいにゅーすがあるよ!!! ゆっくりきいていってね!!!」 『ゆっくり早く聞かせてね!!!』 「さとのにんげんたちがれいむたちにふゆのごはんくれるんだよ!!!」 「「「「「ゆっ!!!」」」」」 「それにあのにんげんがみんなにれいむたちをころそーっていってたんだけどね!!! にんげんはみんなドスまりさをしんようするっていってだれもあいてにしてなかったんだよ!!!」 「「「「「『ゆ~~~~~っ!!!』」」」」」 群れ全体が歓喜に沸き上がった。 あれほど悲観していた食糧問題を人間達が解決してくれる上に、 里の人間は今日の襲撃の被害者よりもドスまりさを信用しているので攻め込まれたりはしないと言うのだから・・・ 9.夢 青年が里の長の家から出てくると、虐待お兄さんに声をかけられた 「こってり絞られたようだね。どうだい?久しぶりに僕の家に来ないかい?」 青年は彼の家に上がり、お茶を頂きながらしばらく話をした。 「そうか、君は決意したんだね」 虐待お兄さんは一通り青年の話を聞いて、悲しそうに言った。 「君がいなくなると寂しくなるよ」 青年の帰り際に虐待お兄さんはぼそりと呟く。 青年が見えなくなった頃に虐待お兄さんはどこかへ出かけていった。 彼を見かけた里の人間はきっとまた群れ以外のゆっくりを攫いに行くのだと噂した 青年は荒らされた畑を見ることなく家に入った。 そして、物置から狩りのためのボウガンを取り出し、矢をセットした。 そして外へ出て切り株に狙いを定め、トリガーを引いた。 ヒュッ! 青年の放った矢は切り株の右側に命中した。 試し撃ちを終えた青年は物置から古くなってしまった段ボールを取り出した。 夜も更け、ようやく青年の準備が済んだ。 青年が立ち上がろうとすると今日の疲れからか、意識は深淵へと堕ちていった・・・ 青年は夢を見ていた まだ幼かったあの頃、そばにはいつも両親がいた頃 親友とよく将来の夢を語り合ったこと 病気になったときには里一番の名医にとても苦い薬を笑顔で「美味しいお薬だよ」と言われて飲まされた。 苦いお薬が効いて、病気がすぐに治りみんなでお礼を言いに行ったこと 好きだったあの子に告白しようとしたら他の男の子とキスしているところを見てしまったこと 親友は慰めてくれた。両親には恥ずかしくて言えなかった。 そんな幼少時代の終わりとともに「アイツら」が突然現れた。 「アイツら」は最初のうちはただ変な饅頭生物として、子供に追っかけられたりするだけの存在だったが いつの間にか畑を荒らしたり、民家に押し入って中を荒らしたりするようになった。 そして、それに呼応するかのように周りで異変が起こり始めた。 とても優しく、みんなから好かれていた親友は「アイツら」を異常に敵対視するようになった。 最初はただ石を投げてぶつけるだけだったが、段々行為はエスカレートし、ついには生きたまま生皮をはがしているところを見てしまった 彼はみんなに対してはいつも通りの優しい奴だった。でも、「アイツら」をいじめているときは何かに取り憑かれているように人が変わった やがてみんなは彼を「おかしな奴だ」と罵るようになった。 母が突然倒れた。 父は母を看病し、里の名医のもとへ連れて行ったが彼のもとにはすでに母と同じ症状に苦しむ患者でいっぱいだった。 父は彼に聞いた「この病気は治るんですか?」と 彼は笑顔で「大丈夫、みんなをなおしたらきっと君らを治してやるよ!」と答えた。 結局里一番の名医は誰も救えなかった。母も、親友の両親も、 そして、父も 誰も彼を責めたりはしなかった。みんな彼が体を壊しながらみんなを助けようと必死になっていたことを知っていたから 彼は突然「これはきっとゆっくり達が持ってきた病気なんだ!」と騒ぐようになった。 そして、狂気に取り憑かれたように「アイツら」を殺してまわった。 彼の病院はいつの間にか「ゆっくり研究所」という看板が立てられ、いつも中からは「アイツら」の悲鳴が木霊していた そのうち里の人たちは彼が狂ってしまったんだと判断し、誰も彼に寄りつかなくなった そして、他の里の医者がやってきた。その医者は元名医を散々馬鹿にした。好きにはなれなかった。 里には孤児になってしまった子供達が沢山いた。 みんな遠くの孤児院に引き取られていったが、二人だけ里に残ると孤児院行きを拒否した 親友は博士と名乗りだした元名医と共に暮らし始めた。 彼らは「アイツら」を殺すことに生き甲斐を見つけたのだろうか、中からは絶えることなく「アイツら」の悲鳴が聞こえ、前を通ると餡子の臭いが漂っていた 両親の残してくれた土地と、教えてくれた畑の世話の仕方のお陰で何とか一人でも食べることは困らなかった。 元々森に近い場所だったから柵は両親が設置した後だったので、野生動物も「アイツら」も畑から作物を奪うことはできなかった。 少年から青年になる頃にはすべてが変わってしまっていた。 好きだったあの子は孤児院に引き取られ、向こうで結婚したらしい。相手は資産家の息子とのことだった。 親友と名医とはあまり会う機会が無くなってしまっていた。 彼らを拒絶したわけではない、ただ、忙しさの中にいなければ押しつぶされそうだったのだ やがて親友は元の家へ帰った。その頃には彼は「虐待お兄さん」と呼ばれるようになっていた。 彼の目にとまったゆっくり達を捕まえては虐殺していたから。 いつの間にかゆっくり達を飼い始める人間が増えた。 最初の内は傲慢な性格のゆっくり達を嫌う人間が容赦なく殺してしまっていたが、 他の里の「バッヂシステム」が来ると、一つの共存の形ができあがっていた。 博士はこれを由々しき事態とし、飼いゆっくりを何度か殺そうとした。 いずれも未遂だが、そのたびに博士は自警団に世話になった。 親友に「君は人のゆっくりを殺さないのかい?」と聞いたことがあった。 彼は「人の物には手は出さないよ。僕はルールを守るのさ」とけらけら笑いながら言った。 ある日何気なく森を散歩していたら、死にかけたゆっくりがいた。 別にゆっくりが好きだった訳じゃない、むしろ嫌いだ。 ただ、気まぐれでそのゆっくりを助けることにした。 しかし、このゆっくりをどうすれば助けることができるのかは分からなかった。 だが足は自然に「ゆっくり研究所」に向かっていた。 「いいのかい?里の人間が言ってただろ?"あそこにいるのはゆっくりを殺すしか脳のない老いぼれだ"って」 博士はつっけんどんに言い放った 「先生以外に治せる人がいるんですか?」 「里の真ん中あたりにいる医者は・・・腕は良いがあくまで人間相手だからなぁ、 まあ、ゆっくりに詳しいのは私くらいだろうな!そうだな"先生"なんて呼ばれたのは久しぶりだな・・・ 君と私の仲だ、治してやるよ。その死に損ない」 博士は気怠げな表情でゆっくりを抱え上げ、部屋の奥へと連れて行った 博士曰くに、ゆっくりは餡子が命の源であり、これが大量になくなったり、中枢の餡子が損傷すると死ぬと言うことを教えてくれた。 同時に質の良い餡子を本来容量よりも多めに入れると知能指数が上がることも教えてくれた。 彼は「治療の際にその処置もやっておいたよ。」と気怠げに話してくれた。 このゆっくりが意識を取り戻した後、2日すると本調子になったらしい、元気にぴょんぴょん跳ね回っていた 「森に帰りたいか?」 聞いてみた。答えはYesだった。 森に帰して数日後、畑仕事にむかうとあのゆっくりがいた。 (住む場所がないのだろうか・・・) こちらに気付くとゆっくりは一瞬警戒し、そして警戒を解いた。そしてまごつきながら何かを言おうとしていた。 「住む場所が見つからないのか?」 自然と口から言葉が出ていた。 「うん・・・」 「そこの土地があいてるけど使う?」 「いいの?」 「使ってないから構わないよ」 「!!・・・ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 住処を与えたのは助けたとき同様、気まぐれだった。 始めは、家に一緒に住まわせようとも提案したが、断られた。 何でも、そこまで世話になるのは申し訳ないとのことだった。 悪くない。そう思っていた。 朝、ゆっくりに与えた場所を見るとせっせと自分用の花畑を整備している。 昼近くになるとこっちの畑を見て、いろいろとアドバイスをしてくれたりもした。 口はあまり良くないが、植物に関しては人間よりよく知っているらしい。お陰でとれた野菜の味は前よりも良くなっていた。 そんなある日、畑に戻ると柵の中で他のゆっくりと対峙していた 慌てた、気がつくと侵入者を潰していた。 「ゆうか!大丈夫か!?」 「ゆー?怪我はないよ」 「よかった・・」 そういえば初めてこいつを名前で呼んだ これからはちゃんと名前で呼んでやろう・・・ その日を境にゆうかと寝食を共にするようになった。 ゆっくりの生態とかは親友や博士に聞いた。 病気や怪我の対処法はあまり実践する機会はなかったが、それなりに役に立った。 そして、里へ行き飼いゆっくりとして登録し、博士や親友に教わりながら人間のルールを教え込んでいった 博士に餡子量を増やして貰っていたためか、飲み込みは非常に早かった。 ゴールドバッヂの試験も一発で合格出来た。 その日から夜には「すっきりー」させてやった。日によっては一緒に「すっきりー」した。 やり方は博士が虐待用ゆっくりを使って教えてくれた。聞いてもいないのに人間とゆっくりが一緒に「すっきりー」するための方法や下準備まで教えてくれた。 「ゆー、お兄さん、バッヂ壊れちゃったよ・・・」 帰ってくるとゆうかはそういって留め具が壊れたバッヂを見せた 「分かった、明日新しいの貰いに行ってくるよ」 後ろでゆうかが玄関から見送っている。 (行くな・・・戻れ) 「お兄さん! 行ってらっしゃい!」 「それじゃあ、行ってくるよ。」 (戻れ! 戻るんだ! 頼む・・・行くんじゃない!!!) いくら意識しても体は行動を再現するだけで今の意思を反映してくれない。 闇の中にいた。どこからか声がする。呼ばれているのかな? 声の方へ向かう。ゆうかがいた。抱っこして頭を撫でてやる。 いつもならそこで泣きやむのだが、泣きやまない。 それでも撫で続けた。ずっと・・・ 続けていい? スレ内で「青年はHENTAIお兄さんなのか?」という疑問がありましたので答えます 当SS内では HENTAIお兄さん → 常日頃からゆっくりを性奴隷として調教したり、道行くゆっくり達をレイプすることで己の性欲を満たし、生き甲斐としている人物の総称 としています。 虐待お兄さんなどもゆっくりをレイプしたりすることがあるが、あくまで虐待の一環です このSSの主人公の青年はゆっくりとのコミュニケーションの一環として性行為をしているので一応HENTAIお兄さんには該当していません やってることはHENTAI行為そのものですけどね。 無駄に長くなっている気がするよ、先生・・・ 続き このSSに感想を付ける
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プラネット・ゆース ~ドスまりさ~ 12KB 観察 パロディ ドスまりさ 自然界 独自設定 環境番組風 二行作 ゆっくりの知られざる生態に迫る『YHKスペシャル プラネット・ゆース』。 本日は、その第三夜です。 第一夜は、wiki 594。第二夜は、wiki 675にて公開致しました。 一話完結ものに付き、未読でも、支障はありません。 内容には、『独自設定』『ネタ被りの可能性』『虐描写の物足りなさ』が含まれています。 ご容赦下さいますよう、よろしくお願い致します。 当局は、ゆ虐専門チャンネルではありません。 ゆ虐専門は『ゆナッフTV』を、すっきりーに関しては『パラダイゆch』をご利用下さい。 『YHKスペシャル プラネット・ゆース 第三夜 ~ドスまりさ たったひとつのゆっくりプレイス~』 広い岸壁。遥か上空からの映像です。 灰色の岩々に紛れるように、2つの黒い何かが見えます。 それは、まりさのお帽子。 ドスまりさの親子が、海を見ています。 何も、美しい景色に酔いしれているわけではありません。 親ドスが天気を読み、それを子ドスに教えているのです。 雨に弱いゆっくりにとって、天候はまさに死活問題。 群れを治めるドスまりさにとって、天気予報は必修科目です。 これから、このドス親子は旅に出ます。 一見地味な、天候の予測。 実はそれこそ、大冒険の始まりでもあるのです。 ドスまりさ。 ゆっくりの長となる生き物です。 近年、人里に下りてきては被害をもたらす、ドゲスや無能ドス。 これらは、正確には、ドスまりさではありません。 ドゲス等は、生物学的には、変異型大まりさ種と呼ばれます。 環境の変化等による突然変異によって、ドス化するので、こう呼ばれます。 変異は、身体能力の大幅な向上を促します。 しかし、思考能力の向上には、教育や経験が必要となります。 経験を伴わない肉体の躍進は、当然、慢心を呼び起こします。 これが、ドゲスに到るメカニズムなのです。 対して、先祖代々の餡統により、ドスとなるものがいます。 これが、本来のドスまりさです。 変異型と区別して、純ドスとも呼ばれます。 純ドスは総じて聡明です。 群れを正しく導き、特に天敵や脅威には敏感に反応します。 そのため、人間の前に姿を現すことは、ありません。 森の奥深くや、険しい山々に身を潜め、群れと共に生活しています。 こちらから、純ドスに接触を試みる研究者もいます。 しかし直接、コンタクトに成功したものは、いません。 これほどまでに警戒心の強い、純ドス。 カメラでの撮影は、不可能とされてきました。 それを可能にしたのは、人工衛星。 ゆーグル社の協力を得て、最新の超高感度カメラによる撮影を行いました。 人工物には繊細に反応する、純ドス。 そんな彼らでも、上空500kmからの視線を、感じることはできません。 最先端技術を投入して行われた、純ドス撮影計画。 しかし、実際にその姿をとらえるまでに、3年の歳月を要しました。 海にたたずむ、純ドスの親子。 この何気ない映像こそ、世界初の快挙なのです。 翌日。 ドスの親子が、驚くべき行動に出ます。 少し低くなっている岸辺に、2匹のドスが移動しました。 波しぶきがかかっていますが、お構いなしです。 なんと、親子は、大事なはずのお帽子を、海に降ろしました。 大小の帽子が、仲良く波間に浮かんでいます。 長い棒を、2つの口がくわえました。 そして、海へ向かって、飛びます。 一家心中ではありません。 驚くべきことに、2匹のドスまりさは、お帽子の上に下り立ちます。 そのまま、口から伸びる棒をオールとして、沖へ漕ぎ出すのです。 まるで、水上まりさのように。 ドスまりさ親子の旅。 それは、航海です。 あなたはきっと、こう思ったことでしょう。 ドスまりさの巨体を、あんなお帽子程度の浮力で、支えられるのか、と。 水上まりさとお帽子の関係は、ゆっくりの謎として、よく語られます。 明らかに、質量と浮力がつりあっていないからです。 ここに未検証ながら、ある仮説があります。 お帽子内部にはガスが溜まっている、という説です。 密封されたペットボトルは、見た目以上の浮力を持ちます。 水難事故の際、浮き輪の代わりに使用されるほどです。 そして、水上まりさとお帽子は、ぴったりと密着しています。 頭からお帽子を離さない時と、同じような接着作用が働いているのです。 つまり、水上まりさは、ちょっとした浮き輪の上に乗っていることになります。 気体である以上、空気が抜けて帽子が萎んでいくことも、考えられます。 そのため、まりさのあにゃる部分から、ガスが補充され続けているのではないか。 研究者の中には、そんな考えを持つ者もいます。 お帽子内部のガスの成分に、着目する人もいます。 驚くべき性質を持つ、未知のガスであるという、期待です。 しかし、水上まりさの脆弱さ故、調査は難航しています。 ドスまりささえ支える、お帽子の謎。 ゆっくりはまだまだ、ミステリーに包まれた存在なのです。 ドスまりさ親子の旅は、続きます。 沿岸部から出た彼らは、外洋に到り、さらに沖を目指します。 その時速は約4km。 人間の散歩と同じ速度です。 空は快晴。波は穏か。ドスにとっては、絶好の航海日和。 恐らくは、そんな天候を選んでいたのでしょう。 このような環境は、旅の終わりまで、続きました。 時折、海水が跳ねて、ドスゆっくりの皮膚にかかります。 しかし陽光が、あっという間に、それを乾かしていきます。 海の色が、深くなりました。 ここまで来ると、海の生き物の姿が、消え始めます。 シャチも出ません。 外洋は、まさに、海の砂漠。 2匹のドスは、オールを漕ぎ続けます。 休みなく続くその行為は、激しい疲労を伴うことでしょう。 しかし、親子の表情は、意外にゆっくりしています。 夜になりました。 2匹のドスは身を寄せ合います。 不思議にも、饅頭の塊は、少しづつ、沖へ沖へと流れていきます。 彼らは海流さえ、味方にしているのでしょうか。 暗くなると、ドスまりさの姿が、闇に溶けてしまいます。 衛星に取り付けられた赤外線カメラが、僅かにその輪郭を写すのみです。 オールだけは、離していないようです。 ゆっくりの歯は、意外に強いものです。 根野菜を噛み、棒を口でつかみ、オールにしたり、敵と戦ったりもします。 しかし、ゆっくりの顎に当たる部分には、骨がありません。 これでは、噛む力に負けて、歯がポロポロと抜け落ちそうなものです。 ドスまりさが眠りに付いている間に、その秘密を解き明かすことにしましょう。 ゆっくりの口の中にある白いものを、私達もゆっくりも、『歯』と読んでいます。 饅頭生物はそれを使い、咀嚼だけではなく、手の代わりに色々なものを扱います。 ですが、ゆっくりを研究する人々は、それが歯ではないことを、知っています。 実際には、爪に近いものです。 ゆっくりの『歯』は奥に行くにつれ、丸い曲線を描き、根元は外皮に直結しています。 他の動物と違い、口の中の皮から直接、生えてきているのです。 『歯』自体の強度は弱いものの、緩やかに湾曲した形状がバネとなり、衝撃を和らげています。 この弓なりの形は、グリップを強める効果もあるのです。 下の『歯』を支える皮膚は、あんよ周辺のもので、ゆっくりの中では一番頑丈な部分です。 この下顎ともいえる部位が、ゆっくりの噛む力の源となります。 いわゆるテコの原理を応用し、時には『歯』の強度をはるかに越えるものさえ、噛み切ります。 栓抜きを思い浮かべれば、分かりやすいかもしれません。 野生ゆに、硬いダイコンなどが食べられてしまうのは、このせいです。 ドス種のあんよは、巨大な重量を引き受けるほどの、頑丈さを誇っています。 それに連なる『歯』もまた、連日のオール漕ぎを苦にしない、強さを持っているのです。 外皮部分に深刻なダメージを受けると、『歯』も同時に機能を失います。 しかも抜け落ちる時は根元から剥離してしまうので、再生することもできません。 口からポロポロとこぼれ落ちる白いものを見て、誰もが『歯』だと思ってしまいがちです。 あらゆる常識に囚われないことが、ゆっくり研究の基本なのです。 ドス親子の旅は、2日間に及びました。 その行程はおよそ100km。 フェリーなら2時間程度の道のりですが、ゆっくりにとっては、命がけの航海です。 ある場所で、2匹のドスまりさは静止します。 おさげにオールを絡ませ固定し、留まる体勢に入りました。 そこは一見、何もない、単なる海のど真ん中に見えます。 解析の結果、ここはあらゆる水の流れが及ばない位置だということが分かりました。 波さえ穏かであれば、いつまでもそこで漂っていられる場所です。 ここに来て、彼らがまず行ったこと。 それは、平凡な、すーりすーりでした。 暖かな日差しの中、ゆっくりと、愛情を確かめ合っています。 それが一段落すると、口をパクパクと開き合います。 おうたを歌っているようです。 衛星カメラからの映像のため、音声は取れていません。 しかし、そのゆっくりとした表情は、俯瞰視点にも関わらず、鮮明に分かります。 ゆーグル社クルーの、技術の賜物です。 この光景だけ切り取れば、水上まりさ親子の、何でもないスキンシップに見えます。 実はこれこそが、危険を冒してまで旅をしてきた、ドス親子の目的なのです。 純ドスは、ゆっくりの長です。 それは、ゆん生の全てを、他のゆっくりに捧げることを意味します。 ドスとなったが最後、自分がゆっくりすることは、叶わないのです。 ドスはその巨体故、自然の驚異に、最もさらされます。 それにも増して恐ろしいのは、人間です。 発見次第、駆除されてしまうことを、純ドスのまりさは知っているのです。 これらの危機から群れと自分を守るため、純ドスは絶えず緊張していなければなりません。 どこかでこっそりゆっくりしようにも、特性が邪魔をします。 ドスのゆっくりオーラが、他のゆっくりを呼び寄せてしまうのです。 純ドスがゆっくりできる条件とは、ゆっくりにも、人間にも、天候にも邪魔をされないこと。 そんな条件を満たした数少ない場所が、ここ、外洋のど真ん中なのです。 大海原は砂漠や極北ほど過酷ではなく、遥か沖に到れば、生き物の数も少なくなります。 しかも今、ドス親子がいる周辺は、船舶の航行ルート等からも外れています。 母なる海。 それこそが、ドスまりさの、たったひとつのゆっくりプレイスなのです。 一昼夜かけて、他愛もない行為は繰り返されました。 変化は、翌朝、やってきました。 親ドスが、穏かな笑みを浮かべ、空を見ています。 子ドスは、泣いていました。 大きな方のドスが、おさげを振り上げました。 今まで旅を共にしてきた、ひとつのオールが、あらぬ方向へ飛ばされ、流されます。 親まりさが、目を閉じました。 金髪が風になびき、笑顔が、より鮮やかになります。 子ドスが、驚くべき行動に出ます。 そよぐ金髪ごと、親の頭部を、かじりました。 止めどなく涙を流しながら、まりさは、咀嚼します。 子は親を、食べ続けました。 時折、嗚咽しているのでしょう。 口の中の餡子が、ポロポロと海の中へ落ちていきます。 どんなに自分が減っていっても、苦悶ひとつ、親まりさは表しません。 笑み結ばれたままの口元が、人間の目には、より凄惨なものに見えてしまいます。 恐らく、親ドスは幸せなのでしょう。 それは同時に、中身がパサパサしておいしくないことも意味します。 この共食い行為には、どんな意味があるのでしょう。 世話品大学の滋賀博士は、こう分析しました。 「この一連の行為は、親ドスから子ドスへの、継承の儀式のようなものです。 子が親を生きたまま食べることにより、記憶餡を直接取り込むことができます。 経験と記憶が、完璧に受け継がれるのです。 純ドスが、ゆっくり種としては考えれないほど賢いことも、これで説明が付きます。 もうひとつ、考えられることがあります。 それは、食べることそのものを、忌避させることです。 純ドスには、あらゆるゆっくりが許されず、食事も例外ではありません。 第一、あれだけの巨体です。 無計画に食事すれば、あっというまに群れ全体が飢えるでしょう。 だからこそ、ここで食事そのものへの、トラウマを植えつけているのです。 もしかしたら、このたった一回の食事が、ドス一生分のカロリーとなるのかもしれません」 遂に親ドスの体が、半分以下になりました。 残された口元は未だ笑っています。 もう、生きてはいないでしょう。 子ドスは、泣き止んでいます。 記憶餡が、吸収・継承されたようです。 たったひとつになったドスが、再びオールをくわえます。 棒の先で、半分になった饅頭を突き、海へ落としました。 深い深い海底へ沈んでいく、親まりさ。 もしかしたら、たくさんのドスが、こうやって溶けていったのかもしれません。 新しいドスが、器用に親のお帽子をオールにひっかけて、被ります。 もし不意に雨が襲ってきたとしても、多少は防ぐことができるでしょう。 やや小ぶりだった子ドスの体は、一回り大きくなっていました。 その表皮も海と潮風にさらされて、厚く丈夫になっています。 ドスは、来た道を戻っていきます。 群れに、帰るのです。 陸にあんよを付き、群れへ入った瞬間から、ドスとしての生活が始まります。 とても、過酷なものです。 それでもドスまりさは、耐え続けることでしょう。 いつの日か、愛する我が子と共に、再びゆっくりプレイスを訪れる時まで。 偉大なる親と同じ場所に、還る日を夢見ながら。 『YHKスペシャル プラネット・ゆース 第三夜 ~ドスまりさ たったひとつのゆっくりプレイス~』 製作: YHK(ゆっくり放送協会) カメラ: 脳内 音楽: 脳内 特殊: 脳内 協力: ゆーグル 世話品大学 脚本・語り: 二行 収録: 餡小話 ふたばSS@WIKI 『プラネット・ゆース』第三夜、いかがでしたでしょうか。 次回の放送は、未定です。 取材が進み次第、公開して参ります。 リクエスト等ありましたら、是非、お寄せ下さい。 ありがとうございました。 (終) 【過去作】 ふたば系ゆっくりいじめ 833 俺持ってんの1円じゃなくて・・・ ふたば系ゆっくりいじめ 796 Detroit Yugyaku City 2 ふたば系ゆっくりいじめ 675 プラネット・ゆース 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※東方キャラ登場注意 ※深く突っ込んだら負けです ※虐待分は少ないです 高速で低空を駆ける人間が一人。その人間は黒白で身を包み、箒に跨り宙を飛んでいた。 妖怪の山の麓。普通の人間はあまり立ち入れぬそこには、とあるゆっくりの群れがあった。 ドスまりさ。ゆっくりでありながら高い知能を持ち、ニメートルを越す巨体を誇る突然変異種。 黒白の人間──霧雨魔理沙は、そのゆっくりが統括するゆっくりの群れを目指していた。 途中出会ったなにやらハイテンションな豊穣の神やらドスの群れのゆっくりを適当に弾幕でボコって居場所を聞き出しながら、真っ直ぐに向かっている。 そうして見つけた。三メートル近い巨体を誇る、自分と似た帽子を被った饅頭を。 その巨大饅頭の周りには、小さいサイズのゆっくりが群らがって何やらゆーゆー言っているが、とりあえずそちらは関係無い。 加速。飛行速度を更に上昇させ、まっすぐドスに向かって突撃していく。 後百メートルというところでドスが気付いた。とてつもない速度で突っ込んでくる魔理沙に驚き目を丸にしている。 他のゆっくり達も気付き始め、ドスの後ろに隠れるように移動する。 「あれじゃ他が潰れるな」 当初のプランを変更。 このままドスに向かって突撃するはずだったのを、高速でドスの脇を駆け抜ける。 すれ違うようにドスの横を飛び、そのまま上昇。円を描くかのように空中で翻り、上空からドスまりさに向かって箒の先を向けた。 光符「ルミネスストライク」 箒を砲身として使い魔砲弾を発射。箒の先より放たれた光弾が真っ直ぐにドスの顔面に叩き込まれた。 「ゆぶっ!?」 『ドスぅ!?』 ドスまりさの顔面が陥没し、鈍い呻き声があがる。他のゆっくり達が驚愕の声をあげた。 そんな突然の出来事に思考が未だに追いついていないゆっくり達の前に、霧雨魔理沙は降り立った。 「よっ、お前がドスまりさか。初めて見るぜ」 つい今しがた攻撃をくわえたというのにやけにフランクに言葉をかける魔理沙。 当然ゆっくりの方は友好的になれるわけもなく、ギャースカ喚きたてた。 「ゆぅぅぅ、ドスになにするの!」 「ドスにひどいことするおねーさんは、ゆっくりしないでねっ!」 「れいむおこるよ、ぷんぷん!」 頬を膨らませたり擬音を口にしたりと些か間抜けな光景ではあるが、本人達は至ってマジメである。魔理沙はそちらに用は無いので無視。 当の攻撃を喰らった本人はといえば、多少顔が潰れて皮が少し破れてはいるものの、原型は留めており命に別状は無かった。 もっとも、それぐらい強い存在でなければ今回来た意味がない。 「さすがに丈夫だな。普通のゆっくりなら今ので潰れてるぜ」 感心したように魔理沙はドスまりさの頬をペチペチと叩く。 ドスまりさはようやく痛みから回復し、口を開いた。 「ゆぅ……お姉さん強いね」 「それほどでもない」 そう返しながら魔理沙は、ガシ、と開かれたドスまりさの口の端を掴んだ。 またもや突然の行動にゆっくり達はドスを含め驚いた。 「ドスにもうひどいことしないでね!」 「ゆっくりはなしてね!」 「ゆっ、お姉さん何するの!?」 「何って、お前のキノコをもらうんだよ」 それがどうしたと言わんばかりに答えて、魔理沙はドスまりさの口に腕を突っ込んだ。 ドスまりさには他のゆっくりとは違う能力がある。その中の一つがドスパークだ。 ドスまりさの口内にのみ生えるとされるキノコを材料に、噛んだり砂糖水を含ませたりすることによって、口から極太のレーザーを発射するものだ。 その名前と技の由来とされるオリジナルよりは威力、派手さ共に劣るとはいえ、本家よりも簡易な加工で魔法のような反応を示すキノコは貴重だ。 魔理沙は今回、ドスまりさの話を聞きつけ、そのキノコを手に入れようとこうしてドスまりさの元を訪れたのだった。 もっとも、せめて先ほどの攻撃を耐えるほどの強さを持つ者が自慢とする存在でなければ、魔理沙も興味は抱かなかっただろうが。 「おっ、これだな」 手探りでドスまりさの口内を弄って手に当たったものを引っ張り出す。それはやはり魔理沙も見たことのない化け物キノコだった。 魔理沙の魔法はキノコを原材料とする。 独自の調理法で何日も煮詰めてスープにし、それを数種類作ってブレンドし、数日掛けて乾燥させて固形物にしてようやく実験開始。 その固形物を使って様々な実験をし、その実験の中で稀に魔法らしい魔法が発動する。成功しても失敗しても本に纏めてキノコ採集から開始する。 そんな努力の結晶があの派手な魔法である。魔理沙はドスまりさのキノコは未だ魔法の実験に使ったことはない。 今はキノコ採集の段階。ドスまりさのキノコでドスパーク以外の魔法らしい反応が出るのか出ないのか。実験するまで定かではないがやってみる価値はあるだろう。 「やめてねっ、それがないとドスパークが使えないよ!」 「おっと」 ドスまりさは慌てて魔理沙の手からキノコをふんだくる。手に持っていたキノコにその大きな口で喰らいつく。 驚き魔理沙は手を引っ込めてしまい、キノコは再びドスまりさの口内へと収まった。 「こらっ、よこせ!」 魔理沙は再びキノコを奪おうとするが、ドスまりさは頑なに口を閉ざして魔理沙の腕を入れさせようとしない。 手で口を開こうとしても無駄。頬を殴ってみても魔理沙は腕力自体は普通の少女、あまり効果は無い。箒で殴ると痛みで顔をしかめたが口は開かなかった。 「ゆぅ! ドスをいじめないで!」 「ゆっくりしていってね、おねーさん!」 ドスまりさの群れのゆっくり達が抗議の声をあげるが、先ほどの攻撃を見て魔理沙の強さに怯えているのか直接くってかかろうとはしなかった。 「むぅ、しょうがない。殺してでも奪い取る」 魔理沙はミニ八卦炉を懐から取り出し、魔法の材料と共にドスまりさに向けて構えた。 ドスまりさは魔理沙の「殺してでも」という発言に反応し、慌てふためいた。 この距離、タイミングではドスまりさがドスパークを使おうとしても本家の方が速いだろう。いや、あまりの威力に後ろのゆっくり達も吹き飛んでしまう。 「やめてねっ! 殺さないでねっ! ドスのお願いを聞いてくれたらキノコをあげるよ!」 知識としてはその威力を知らないはずなのに、得たいの知れない恐怖に突き動かされドスまりさは懇願した。 群れのゆっくりは強く自分達の守護者であるドスまりさが命乞いをしている光景を信じられないといった目で見つめ、魔理沙はドスまりさの「お願い」という単語に反応して手を止めた。 「……取り合えず話だけでも聞こうか」 ミニ八卦炉を仕舞い、魔理沙は聞く。こんな饅頭ごときに魔法の材料を使うのももったいないし、考えてみれば零距離マスパでは威力が強すぎてキノコごと焼き払ってしまうだろう。 他の魔法にしても、ボムを消化せず目的の物が手に入れば、そちらの方が良い。 どちらにせよ、ドスまりさの「お願い」とやらの内容次第だが。 「…………実は」 ドスまりさが言った「お願い」とは、越冬についてと人里との係わり合いだった。 今の季節は秋。人間達は作物の収穫に喜び、ゆっくり達は来る冬に向けてせっせと食料を溜め込む時期である。 今年はゆっくりにとっても過ごしやすい年であったようで、ドスの群れもかなりの数のゆっくりが増えて肥大化した。 そのためなのか、豊富な秋の山の恵みをもってしても、冬篭りの餌集めは他のゆっくりとの競い合いになってしまっているらしい。 そんな中、山や麓近辺では他のゆっくりに食べ物をとられてなかなか採れないと判断したゆっくりが、今年は某姉妹の妹が狂喜するほど豊作だったのもあり、それを狙って遠出し人間の作物に手を出したというのだ。 当の盗みを働いたゆっくり自身は捕まって既にこの世を去っているが、これまで人間の所有物には手を出さないと人間達に思われていたゆっくりの心証は一変した。 作物や家畜の盗難被害など、この幻想郷では珍しいことではない。妖精が悪戯で盗んだり妖怪が力に任せて奪っていくこともある。 人間もそれが幻想郷の有り方として、またはしょうがないこととして受け入れている節がある。もちろん好ましくは思ってないだろうし、中には許容出来ない者もいるが。 しかし、これまで悪事を働いたことの無いものが悪事を働いたとして、たった一回の被害にしては印象が大きく落ちすぎた。 その上に妖精は逃げ足が速く妖怪は強く、しかも双方とも殺しても殺せない(妖精は肉体が死んでも生き返る。妖怪は五体が引き裂かれても復活する程タフ)存在であるのに対し、 ゆっくりは逃げ足も遅くしかも弱く死にやすい。 幻想郷だって弱肉強食。強い者が大きな顔をするのが自然。 大きく落ちた心証とその弱さ。更に被害に会った人物が声も大きく他の人間への大きい影響力を持った人物であることも加えられて、ゆっくりは種族単位で人里の多くの人々に虐げられるようになった。 中にはこれを機にゆっくりへの虐待行為に目覚めて処断する理由もないのにわざわざ群れへと出向いてゆっくりを甚振ったり殺したりする存在まで出たらしい。 ドスまりさはそんな自体を打破するべく、この度人里へと直接赴く決意をした。 ドスまりさが群れのゆっくり達と共に人里へと行き、盗難についてしっかりと謝罪をした上で、一つの提案をするらしい。 「提案、って何をするんだ?」 「ゆっ、もう人間さんの物には手を出さないから、人間さんも酷いことをしないでね、って協定を出すんだよ」 「……協定、ってかお願いだな、そりゃ」 立場が対等でないのだから、当然。協定ではなく弱者が強者へ慈悲と寛容を乞う嘆願である。 「ゆぅ……そうなんだよ」 ドスまりさはそこが心配らしい。 他のゆっくりの手前?協定?などという言葉を使ったが、これが一方的な要望であることはドスまりさとて重々承知している。 だから、人間の匙加減でどうとでもなる。そこがドスまりさの一番の悩みどころだ。 もし、聞き届けられれば御の字だが、そんなもの知るかと突っ返されたり、最悪それが相手を刺激して更なる悲劇が生まれないとも限らない。 「ドスは強いからもしかしたら大丈夫かもしれないけど、他の皆はゆっくり出来ないよ……」 このドスまりさは使命感と責任感に強いようで、群れのゆっくりがゆっくり出来るようにと心がけている。 「成る程、それでその可能性をどうにか出来ないかと、悩んでいたわけだな」 「ゆぅ……お姉さん、何とかしてくれる?」 ドスまりさのお願い、とはそれだった。 如何に賢いといえでもそれはあくまでゆっくりの範疇。妖精や人間の子供よりは頭が働くとはいえ、人間からしてみれば並だ。 「……なんで私に頼んだんだ?」 「だって、お姉さんはとっても強いでしょ?」 先ほどの高速飛翔とドスまりさへの強力な一撃。ドスまりさはそれにより、魔理沙が自分よりも遥かに上位の存在だと認識した。 だから、もしかしたら魔理沙なら自分が思いつかないような打開案を出してくれるか、もしかしたらその力を以って何か救いの手を差し伸べてはくれないだろうかと考えたのだ。 「ま、まぁな。それに私はなんでも屋だ」 ?強い?と言われて魔理沙も満更でもないようで、しばらく頭を抱えて思案する。 そして数秒の後、 「……ドス、ちょっとお前の『ドスパーク』とやらを見せてくれ」 ドスに向かい、そう言った。 「ゆゆっ、ドスパークはあぶないよっ!」 「ゆっくりできなくなるよ!」 「そうだよお姉さん、危ないよ!」 「あぁもう勘違いすんな。私に向かって撃たなくていい。空でも何もない所でもいいから撃て。見るだけだ」 「ゆぅ……それなら」 魔理沙はすす、とドスまりさの前から退き、ドスまりさは顔を若干仰角に上げる。 スゥ、と空気が入る音と共にドスまりさが大きく口を開いた。 その二秒後、バウッ、とドスまりさの口から太く煌くレーザー光が迸り、宙を駆け巡った。 「ふむふむ、なるほどなるほど。私ほどじゃないがなかなか派手じゃないか。やっぱり弾幕はパワーだぜ」 ならば、と魔理沙は一つの提案をする。 その提案はドスまりさも群れのゆっくりも、もしかしたら博麗の巫女でさえ驚愕するような内容であった。 だが、もしそれが上手くいけばそれ以上良いこともない。たとえ失敗しても、ドスまりさが当初懸念していた以上の事態の悪化は無いだろう。 「じゃあこれやるから、一日使って準備しな。明日決行だぜ」 「ゆっ? お姉さんも一緒に来てくれるの?」 「あぁ、私はこれを仕事を受け取った。明日は一緒についていって、見届けてやる。だけど、実際にやるのはお前らだぜ」 「ゆゆっ! 勿論だよ、有難うお姉さん! じゃあ約束通りキノコを分けて──」 「まぁ、待て。報酬は成功払いでいいぜ、とっておきな」 「ゆゆ?、とっても優しいねお姉さん!」 「おねーさんはとってもゆっくりできるね!」 ドスまりさや他のゆっくり達から次々に讃えられ、褒められる。魔理沙はそんなゆっくり達の声を背に、群れから去って行った。 魔理沙はドスまりさにちょっとした興味が湧いた。面白い物が見れそうだし、失敗してもドスまりさは死なないだろう。 魔理沙にとっては一日目的の物を手に入れる日数が延びるだけであり、それ以外の損失は無い。 その上魔理沙の提案でドスまりさの悩み事が解決するなど、本気で考えてはいない。言うならば、気まぐれ。余裕ある強者の戯れである。 …………それに、人里に行った所で今回の主役はドスまりさだ。自分は後ろで眺めていればいい。あれと会うことも無いだろう。 魔理沙が去った後、ドスまりさは群れでもっとも賢いゆっくりぱちゅりーや、絵が得意というれいむ、文字が書けるというありすやまりさと一緒に明日の準備に取り掛かった。 作業を行なう皆の顔には、一様に希望が溢れていた。 そうして次の日。 人里の者は変わった光景を目にした。 「な、何だあれ……」 妖怪の山方面から来たそれらは最初妖怪かと思ったが、違った。ゆっくりの群れであった。 多数のゆっくりを従えて、三メートル近い巨体を誇るドスまりさがゆっくりと人里に向かって来ている。しかも頭の上に人間の少女を乗せて。 ゆっくりの歩みは遅い。 里の端に到着する頃には既に騒ぎを聞きつけた者達やゆっくりを目の敵にしている人達が人ごみを作り、近くに居た物好きな妖怪がいくらか野次馬に来ていた。 そしてその中には、上白沢慧音という、魔理沙と面識のある人物もいた。 「そこの白黒。これはお前の差し金か?」 やや苛ついた口調で、慧音は尋ねた。ドスまりさの頭の上に乗って来た魔理沙に。 「まさか。私は見物に来ただけだぜ」 軽快にドスまりさの頭上から降り立った魔理沙がにやけた顔で嘯く。ドスまりさの帽子は魔理沙が乗っていたせいか少しへこんでいた。 「話があるのは私じゃなくてこいつらだ」 魔理沙はそう言うとすっ、と下がった。その魔理沙と入れ替わるように、ドスまりさが巨体を一歩、デンと前に出す。その巨体に気圧されドスまりさ巨体に気圧されたのか、「うっ……」と慧音は少しうめいたがすぐに体勢を戻した。 そんな流れからか、自然とドスまりさの話は慧音が代表として聞く形となった。 ドスまりさからの話を聞いている間、人間は一応突然怒り出すとも手を出すこともなかった。ゆっくりを目の敵にしている人達もだ。 妖怪は何が面白いのかそれとも酔っているのかケタケタと笑って手に持った酒を飲んでいた。 話が終盤に差し掛かり、ただの弱者の懇願かと皆が思ったその時だった。 「だから、ドスが弾幕ごっこで勝ったら、皆そうしてね!」 ドスまりさが信じられないことを言った。 「…………はっ?」 表立ってドスまりさの話を聞いていた慧音も思わず呆けてしまった。いや、その場にいた誰もが同じような顔をした。ゆっくり達と魔理沙を除いて。 「だから、ドスが代表して決闘するから皆には手を出さないでね!」 「えっ、えっとちょっと待てドスまりさ。お前が弾幕ごっこをするって?」 「ゆっ!」 「…………スペルカードはあるのか?」 「あるよっ!」 ドスまりさがそう勢いよく答えると、傍らにいたぱちゅりーが、ついと一枚の紙を取り出した。 「昨日皆で作ったんだよ!」 その紙はちゃんとスペルカードルールに則って作成されており、餡光『ドスパーク』と技も明記されていた。 紙自体は昨日魔理沙に貰ったものだった。それに木の実をすり潰したものや草の汁などで描いてある。 昨日魔理沙がドスまりさに提案したのは、弾幕ごっこで一対一の決闘を挑めというものだった。 決闘に勝って、お願いではなく勝利の報酬として手出しをさせない。それが目的。 普通の戦いならドスまりさだけが突出したゆっくり達に勝ち目はない。だが代表者だけの決闘ならば、ドスまりさだけが戦えばいいので普通のゆっくりは傷つかない。 弾幕ごっこは妖精も人間も妖怪も、皆平等の決闘である。それに基本的に相手を殺してはならない(不慮の死はあるだろうが、少なくとも魔理沙は異変で相手を殺したことなど無い)。 だが、ドスまりさの提示した条件が気に喰わず決闘を拒否される可能性もあるし、代表者同士の決闘で他の人間が納得する可能性も百パーセントではない。 提案した魔理沙本人も冗談半分だった。 「……私が戦うのか?」 慧音はドスまりさと他の人間達に尋ね、双方とも肯定した。 「い、いや、それで皆が納得するかどうかは!」 集まってきていた人達には特に異を唱えるものはいなかった。皆ゆっくりが勝つとは思っていないし、慧音の強さも認めていたし、自分が戦うのも面倒と思っていた。 慧音は逃げ道が無いことを悟ると頭を抱えて、 「あぁ、分かった。私が戦う……。だが、ここに居ない人達が異を唱えたら、その人達にはちゃんとお前が頼み込めよ」 「ゆっくり分かったよ!」 人間側はゆっくり側と違って誰かが統治しているわけではないのだから、当然。ドスまりさもそれは分かっていた。 時間をかけて人里の中で誰か一人を選抜、とでもすれば別なのだろうが、そこまでしてもらうことはドスまりさは考えていなかった。 魔理沙は後ろで慧音の呆けた顔や困ったような顔、ゆっくりの弾幕ごっこという世にも珍しいものが見れる状況を楽しんでいた。 こうして半獣人対ゆっくりという変わった決闘が始まる。 ゆっくり側が提示した勝利報酬は『人間の所有物に手を出さない限りゆっくりを傷つけない』、宣言スペルカード枚数は一枚。 人里側(代表慧音)が提示した勝利報酬は『二度と人の所有物には手を出さない』、宣言スペルカード枚数は二枚。 流れ弾が当たらぬよう決闘場所は場所を移して人里から離れた草原。興味ある人間や妖怪は付いていき、残りは人里に残った。 飛べる物は上空から決闘の様子を面白そうに見守り、飛べない者は距離を取って遠目に眺める。ゆっくり達もドスまりさの後方で決闘を見守っている。 決闘自体は飛べないドスまりさを尊重し地上戦となった。 「それじゃあ、始めるぞ?」 「ゆゆっ!!」 やや疲れたような表情をした慧音とドスまりさが声を上げ、決闘が開始された。 餡光「ドスパーク」 開始早々ドスまりさが大声スペルカード宣言をした。様子見の通常弾幕も無しの必殺技使用だ。もっとも、ドスまりさにはこれしか技がないのだから当然なのだが。 口に咥えていたカードをポイ、と地に投げる。 そして口を大きく開き、ドスまりさの口の中で生えているキノコを材料に、ドスパークを発動させる。 二秒程ドスまりさの口内で眩い光が溜まったかと思うと、その光は指向性を以って勢いよく発射された。その光は真っ直ぐに慧音へと向かっている。 本家マスタースパークよりは威力も大きさも劣るが、それでも強力な攻撃にあることに変わりはない。直撃すればかなりのダメージを負うだろう。 しかし慧音はそれを容易に回避した。 「ゆゆっ!?」 驚愕するドスまりさだが、それは必然の結果だった。 溜めも長く太さもそれほど無い上に自機狙い。レーザー以外にはなんの弾幕もばら撒かれない攻撃など、避けてくれと言ってるようなものだ。 「ま、まだまだだよ!」 しかしドスまりさとて一度では諦めない。再びドスパークを慧音へと発射する。無論、それも当たらない。 再び目を丸くしたドスまりさは、再びドスパークを発射する。回避、当たらない。慧音はまったくもって余裕の態度でドスまりさの渾身の一撃を躱し続けた。 ドスまりさはその後一分間、意地になったかのようにドスパークを連射した。その全てを慧音は最低限の動きで避けた。 一切反撃することなく、ドスまりさが疲れて攻撃を途切れさせるまで避け続けた。避け切り弾幕攻略である。 「どうした? もう終わりか?」 ドスまりさがぜいぜい言って連射していたドスパークを止めたところで慧音は腕を組んで訊ねた。 ドスまりさが決闘前に宣言したスペルカード枚数は一枚。つまりこの数しか攻撃をしないという宣言だ。 スペルカードルール決闘はたとえ体力や余力が残っていても、最初に宣言した攻撃が全て避けられれば敗北となる。 つまり、このままではドスまりさの敗北なのである。慧音は一回の攻撃をせぬままに。 「ゆぐぅ……」 ドスまりさにとってドスパークは大技である。乾坤一擲の必殺技だ。本来連続で使用するような技ではない。 そんな大技を連射したことにより、ドスパークの反動もあってこれ以上ドスまりさはドスパークを撃つことは出来なかった。 これで、敗北。ドスまりさ達ゆっくりは最初に提示された通りに二度と人間の所有物には手を出すことは出来なくなる。 それでも、群れの皆を傷つけないで欲しい。その意思だけは伝えよう、とドスまりさが心中負けを認めたその時だった。 『ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』 ドスまりさの後方で決闘を見守っていた群れのゆっくり達が、鬨の声をあげながら跳ねて来たのだ。 その顔皆一様に鬼気迫っており、今にも慧音に食って掛かろうとしているようだった。 「ゆっ、皆!」 ドスまりさは止めようとした。これは一対一の決闘だ。他者の介入は許されない。 しかし、群れのゆっくり、先頭のれいむが言った言葉は、ドスが思いもしない内容だった。 「ゆぅぅぅ! れいむたちはドスのだんまくだよ!」 ドスまりさはれいむ達、群れのゆっくりを統括している。れいむ達はドスまりさによって守護されていると同時に、ドスまりさの部下のような存在でもあった。 つまりはドスまりさの持つ力の一つと、言ってもいい。 式神使いは自分の式を弾幕として放つことがある。つまり、れいむ達は自分達はドスまりさの所有する力の一つとして、自分達を弾幕に見立てて突撃しているのだ。 これには慧音も見守っていた人達も驚いたが、誰も止めることは無かった。 最初宣言した攻撃回数より多いが、それも妖々夢六面ボスや永夜抄六面ボスだってやっている。 慧音はこれぐらいならいいだろうと勝者の余裕から、人間達は無駄な足掻きをという呆れから、魔理沙や野次馬の妖怪達はこれは面白いという愉しみから。 誰も止めることなく、ゆっくり達は自身を弾幕と化した。 頭符「饅頭大行進」 「しかし……」 数が多いな、と慧音は呟いた。どれだけの規模まで肥大化したのか。今ここに来ているゆっくりの数は百近い。 これだけのゆっくりの体力が尽きるまで避け続けるのは、かなりの時間が必要だ。それは、あまりにも無為。 だから慧音は 「悪いが、弾消しさせてもらうぞ」 攻撃を選択した。 慧音は一枚のカードを取り出すと、それを宣言した。 光符「アマテラス」 慧音の周りから全方位に無数のレーザーが発射された。赤青の二色のレーザー群は、弾幕と化したゆっくり勢の突撃と真正面からぶつかった。 一対一の決闘だが、自分から足を踏み入れた方が悪い。ゆっくりに手を出さないという約束も、ドスまりさが勝ってからの話。 だからこの攻撃によって生まれた悲劇は、ゆっくり達自身の責任である。 『ゆぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!!』 先頭のれいむは右目を青いレーザーに撃ち抜かれた。その隣のまりさは赤いレーザーに眉間を貫かれた。 ありすは両頬を二色のレーザーによってそぎ落とされた。パチュリーは中枢餡を赤いレーザーによって吹き飛ばされた。 他のゆっくり達も皆、避けること叶わずその突撃の勢いと共に体を削がれた。 底部を削がれて動けなくなったもの。当たり所が悪く餡子を盛大に撒き散らしたもの。 第一波を避けつつも第二派で両目を失ったもの。頭部右半分を失ってもなお突撃しようとするもの。 だが、それも三十秒間慧音が攻撃を続けた後に無くなった。動くゆっくりが居なくなったのもあるが、 「ゆびっ!」 放ったレーザーの一本がドスまりさの右頬に着弾したからだ。 ドスまりさは全ての攻撃を行なっても慧音に一発も当てられていない。かつ慧音は一枚目の宣言でドスまりさに攻撃を当てた。 勝敗は歴然。勝者と敗者はここに決定した。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」 「ゆ゛あ゛ぁ……ゆ゛あ゛ぁ……」 「みえな゛い゛……でいぶのおべべ、みえない゛……」 「いじゃい……いじゃいよ゛ぉ゛……」 それでもレーザーの攻撃はかなり手加減されたものだった。並みのゆっくりでは致命傷になりえても、ドスまりさにはかすり傷だ。 頬にあたる僅かな痛みなど気にもしない。当然だ。目の前には同族の惨劇が広がっているのだから。 「でいぶ……ばりざ……ありず……ばぢゅり゛ー……」 死者は少ない。全体の一割にも満たないだろう。だが傷ついた者の大半はこれ以上放っておけば死ぬ者や、目や底部を失うという後遺症が残る者ばかりだった。 ドスまりさは眼前の死屍累々の様を見て嘆き、悲しんだ。なんで来たのかと。なんで、無謀な真似をしたのかと。 だがドスまりさだって分かっている。これはゆっくり達がドスまりさを助けたいと自ら選び行動した結果なのだと。 「さぁ、ドス。約束通りもう人の物に手を出さないでくれよ。他のゆっくりにも徹底させてくれ」 慧音はそれだけ敗者に言うと、背を向けて人里へと帰っていった。 決闘を見守っていた人達も、所詮ゆっくりかとぞろぞろと引き上げていく。面白がって眺めていた妖怪達も催しはこれで終わりかと退散していく。 残ったのはゆっくりの死体と重傷者、悲しみにくれるドスまりさと、 「よぅ、お疲れさん」 空中で一部始終を見ていて、ドスまりさの眼前に降り立った魔理沙だけであった。 「ゆっ……お姉ざん……」 グズッ、と涙をこらえてドスまりさは魔理沙を見る。 「ごめんね、折角いいアイディアをくれたのに……」 「気にするなだぜ」 「ゆぐっ、でも、失敗しちゃったからキノコは──」 「あぁあぁ、気にするな。私は仕事の成功でしか報酬は受け取らないぜ」 「ゆぅ……有難う、お姉さ──」 ドスまりさの言葉は中途で断たれた。何者かが発言に割り込んだわけでも、何か驚愕の出来事が起こって口をつぐんだわけでもない。 ただ、ドスまりさの右頬が大きく吹き飛ばされ、物理的に喋れなくなっただけだ。 ────ゆっ? ドスまりさの頭でも、すぐには理解が及ばなかった。戸惑いの言葉は口に出すことは出来なかった。 しかし、攻撃を受けてドスン、と後ろに倒れこんだ時には、魔理沙が魔法を放ってドスまりさの右頬を削り落としたかのように吹き飛ばした事を理解することが出来た。 ────どうして……? ドスまりさは理解できず、視線を倒れたドスまりさの、吹き飛び大きく口内が覗ける右頬側に歩いてくる魔理沙に向けた。 魔理沙はドスまりさと視線が合うと、なんでもないかのように言った。 「気にするな。キノコは当初の予定通り、もらうだけだ」 いわゆる、力づく。 魔理沙は口を閉じられた時の経験を生かし、閉じられても口内に手を突っ込めるように、右頬を消し飛ばしたのだった。 体=顔のゆっくりにとって、それは人間で言うならば右腕を肩から吹き飛ばされたに等しい。いや、もしくはそれ以上か。 魔理沙は倒れたドスまりさの傍らにしゃがみこみ、ドスまりさの口内に腕を突っ込んでいる。 「なんだよ、キノコ全然残ってないぜ。あれだけ連射すれば当然か」 魔理沙はわずかにドスまりさの口内に残っていたキノコを回収すると、スカートの中にそれを仕舞った。 そして未だ倒れているゆっくり達の死屍累々の中から死んだゆっくりをニ、三拾うとそれをドスまりさの口内に放り込んだ。 「ま、これでも喰って元気だすんだぜ。またキノコが生えてくる頃に貰いに来るから」 魔理沙はドスまりさにそれだけ言うと、箒に跨って飛び去っていった。 ドスまりさの回復力ならば、一週間もすれば右頬も元通りになるだろう。そうすればまたドスパーク用のキノコも生えてくる。 魔理沙の魔法研究実験には何度も何度も色んブレンドパターンや実験方法を試すため、幾つものキノコを必要とする。 ドスまりさのキノコの実験には、あれだけでは絶対に足りない。先ほど宣言した通り、再びキノコを奪いに来るだろう。 ドスまりさは全てに裏切られた気分になった。 信じていたのに。優しいと、ゆっくり出来ると思っていたのに。ドスまりさは泣き声をあげることも出来ず、ボロボロと涙した。 草原にはしばらくの間顔の一部を失って倒れたドスまりさと傷つき倒れた大量のゆっくり達が残っていたが、次の日には死んだゆっくりをその場に残して群れへと帰っていった。 残りの生涯、ドスまりさは人間の誰にも会おうとも、喋ろうと思わなかった。 しかし、ある一人の人間にはどれだけ会うことを拒否しても、それを回避することはついぞ出来なかった。 おわり ────────────── あとがきのようなもの ゆっくり虐待スレももう100。私はスレが10ちょっとの頃にこの界隈を知った新参者ですが、それでも感慨深い物があります。 このジャンルを知らなければ、これだけのSS、文章を書くことは無かったでしょう。それを思えばゆっくりが私にくれた物は多くあります。 上手くなるためには、多くの量を書くことは必須ですから。 決して歓迎されるジャンルではないですが、ゆっくり虐待に出会えてよかったと思っております。 それでは皆様、これまでご愛読ありがとうございました。 これまでに書いたもの ゆッカー ゆっくり求聞史紀 ゆっくり腹話術(前) ゆっくり腹話術(後) ゆっくりの飼い方 私の場合 虐待お兄さんVSゆっくりんピース 普通に虐待 普通に虐待2?以下無限ループ? 二つの計画 ある復讐の結末(前) ある復讐の結末(中) ある復讐の結末(後-1) ある復讐の結末(後-2) ある復讐の結末(後-3) ゆっくりに育てられた子 ゆっくりに心囚われた男 晒し首 チャリンコ コシアンルーレット前編 コシアンルーレット後編 いろいろと小ネタ ごった煮 庇護 庇護─選択の結果─ 不幸なゆっくりまりさ 終わらないはねゆーん 前編 終わらないはねゆーん 中編 終わらないはねゆーん 後編 おデブゆっくりのダイエット計画 ノーマルに虐待 大家族とゆっくりプレイス 都会派ありすの憂鬱 都会派ありす、の飼い主の暴走 都会派ありすの溜息 都会派ありすの消失 まりさの浮気物! ゆっくりべりおん 家庭餡園 ありふれた喜劇と惨劇 あるクリスマスの出来事とオマケ 踏みにじられたシアワセ 都会派ありすの驚愕 都会派ありす トゥルーエンド 都会派ありす ノーマルエンド 大蛇 それでも いつもより長い冬 おかーさんと一緒 byキノコ馬? このSSに感想を付ける
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犬と同じでゆっくりを飼うならばたまには散歩に連れて行ってやる必要はある。 とは言うもののゆっくりはそのゆっくりしたいという性質上犬ほど頻繁に散歩を必要とはしない。 まりさの散歩は多くて三日に一度ほどといったところで 僕にとって朝早くに連れて行くのはそれほど苦にはならなかった。 まりさを飼う前は毎朝犬のミケを散歩に連れて行くのが習慣になっていたのだから それほど早く歩かないし遠くにも行かないまりさの散歩はむしろ楽なくらいだった。 といっても、好きでもない相手の散歩に付き合うのはあまり楽しくないので ミケがいたころのように何か趣向を凝らすようなことはなく 適当に近所を一回りしてすぐ帰ってくるのに始終していた。 とはいうもののたまには外に連れて行くついでに遊ばせないとうるさいので 月に一回は僕か妹が公園にまりさを連れて行って遊ぶようにはしていた。 そして今日は僕がその番になったというわけだ。 「ゆっゆっゆ、まりさのすぴーどにめをまわさないでね!」 「いやゆっくりしろよ」 公園の中を縦横無尽に跳ね回りながらまりさは僕の動きを見て見下すような顔で見上げた。 「あ、ゆっくりだ!」 そんなぐだぐだな空気の中で時間が過ぎようとしていた時 突然かわいらしい声が割り込んできた。 「ゆっくりしていってね!」 まりさはとりあえずその幼児の方に振り向いて反射的に挨拶を返した。 「あ、お隣の…Aくんだったよね」 僕はまりさに興味津々の視線を向ける幼児に向かって尋ねた。 「これ兄ちゃんの?買ったの?」 僕の問いは無視してAは自分の興味の赴くままに まりさに駆け寄ってしゃがみ込んでつんつんとその頬を突っついた。 「ゆ!まりさはおにいさんのおやぶんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「ああ、家で飼ってるペットなんだ 今日は散歩でね」 さらっとまりさが身の程知らずな事をほざいているが無視して僕はまりさとの関係をAに話した。 「へぇーそーなのかー」 Aは話半分に聞きながら面白そうにまりさの頬を引っ張ったり突付いたりつねったりして弄繰り回していた。 まりさも最初はされるがままにしていたが段々と痛くなってきたらしくその内身を捩って逃げ出そうとし始めた。 「ゆ、ゆっふひやへへへ!」 「すごい!のびる!すごいのびる!」 顔の横幅が通常時の倍になるほどまりさの頬を引っ張ってAは目を輝かせ興奮気味に声を上げた。 「こら、Aちゃん!痛がってるからやめなさい!」 「あ、別に大丈夫ですよ」 見かねて止めに入ってきたAの母親に僕は宥めるように言った。 「じゃあほかのあそびしよ!」 あっさりまりさの頬を弄るのをやめて別の遊びを考え始めたAと 頬から手を離されてほっとしたまりさの顔を見て僕は少し残念に思った。 「ゆう、しかたないからまりさがあそんであげるよ」 まりさはやれやれという風に目を伏せてかぶりをふったが、頬が伸びてべろんと垂れてるままでは様にならない。 Aはそんなまりさを見てケラケラと笑うとこう言った。 「じゃあヒーローごっこやろ!兄ちゃんが怪獣ね!」 「え、ああうんわかった」 いきなり指差し付きでの大抜擢を受けて僕は少しびっくりしたものの 快くその申し出を受けることにした。 Aくんの母親が苦笑しながらすみませんとお辞儀をしたのでいえいえと手を振る。 「がおーたーべちゃうぞー」 「怪獣だ!やっつけてやる!バンバン!バンバン!」 とりあえず慣れないながらもたどたどしく怪獣っぽいことを言ってみると Aはお母さんから受け取ったビカビカ光って音のなる銃をこちらに向けて撃って来る。 「ぐぎゃーおー」 無論弾は出ないがとりあえず胸とか押さえて呻きながら痛がるフリをしてみると Aは嬉しそうにさらに素敵光線銃を乱射した。 「ゆ?ゆ?なにしてるの?まりさにもゆっくりりかいできるようにおしえてね!」 遊びの内容が飲み込めないまりさが僕とAを交互に見ながら困惑の表情を浮かべる。 「怪獣のお兄さんやっつけてるの!」 そんなまりさにAは限りなく単純明快に解説した。 「ゆっくりりかいしたよ!まりさもおにいさんやっつける!」 即座に理解したまりさは僕の足元に向かって体当たりを繰り返した。 「ゆっゆっゆないてあやまるならいまのうちだよ! いまならまりさのうんうんたべたらゆるしてあげるからね!」 「がーおー」 僕はなんだかイラっとしたのでごっこ遊びにかこつけてまりさを軽く蹴り飛ばした。 「ゆっべえええええええええ!?」 まりさは顔面を変形させながらゴロゴロとAの足元まで転がっていった。 「ど、どぼぢでま゛り゛ざおにいざんなんがにまげぢゃうのおおお…!?」 僕は今までは勝てると思っていたのか、と半眼でまりさを見下ろしながら心中で呻いた。 なんだか腹が立ってきたのでこのまままりさを中心に攻めようと両手を振り上げながら近づいていくと Aが膝を付いてまりさに寄り添いながら熱っぽく言った。 「このままじゃいけない!これをつかうんだまりさ!」 そう言って手渡したのは例のビカビカ光って音の出る素敵光線銃だった。 「ゆ…こ、これをつかえばいいんだね ゆっくりりかいしたよ…!」 まりさは苦しそうに体を起こすと口に素敵光線銃を咥えた。 舌をトリガーに巻きつけてトリガーを引くと光線銃は光りながらやかましく音を立てた。 「まりさにはむかったことをこうかいしてね!」 まりさは勝利を確信したのかニヤリと口許を歪めて言った。 「いっけー!」 「ぐあーやられたー」 Aの表情からああここは倒れとく場面だなと感じ取って僕は断末魔を上げながらその場にうつぶせに倒れこんだ。 服に砂が付いたがまあ別にお気に入りの服というわけでも無いので気にしない。 「ちぇっくめいと!」 僕はAがテレビで見た決め台詞をポーズつきでキメているのを見上げながら微笑ましい気持ちになった。 「ゆっへっへっへっへしょせんおにいさんはまりさのてきじゃなかったね!」 まりさが僕の背中に飛び乗ってドスドスと跳ねながら驕り高ぶった声で言った。 見るまでもなくふてぶてしい腹の立つ表情をしていることだろう。 苛立って険悪な表情を浮かべているのを純真なAに見られたくなくて僕は俯いた。 「兄ちゃん、つぎはなにしてあそぶ?」 そんな僕にAはとことこと歩み寄るとしゃがみ込んで顔を覗き込みながら尋ねた。 それを聞いて、多分まりさはきょとんとした表情をした後呆れ顔で言ったのだろう。 「ゆ?なにいってるの?おにいさんはまりさがやっつけてしんだんだからもうあそべないんだよ? そんなこともわからないの?なんなの?ばかなの?し」 「おっけー次は何して遊ぶ?」 僕は黒い笑みを浮かべながら 背中の上でしたり顔でほざいているであろうまりさを無視して起き上がった。 ゴロゴロと僕の背中を転がり落ちてまりさは地面にキスした。 「ど、どおいうごどおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 立ち上がって体の砂を払っている僕を見てまりさは目を見開いて大声を上げた。 死んでいたはずの相手が蘇ったことにまりさは戦慄した。 「さっきからなにいってんの?ごっこなんだからしぬわけないじゃん」 正論である。 「う゛ぞづぎいいいいいいいい!!ごれ゛づがえばおにいざんだおぜるっでいっだどにいいいいい!!」 あっさりと言ってのけるAをまりさは涙ながらに睨みつけながら批難した。 どうやら本当にアレで倒せると信じていたようだ。 純真、というには何か違う気がする。 「兄ちゃん、こいつ何いってるの?」 僕がリアクションに困っていると、Aは何やらみょんな物を見るかのようにまりさを指差した。 「あー、何なんだろうねほんと」 僕は返答に困って頭を掻いた。 「も゛う゛い゛い゛!お゛ばえ゛がら゛や゛っづげでや゛るう゛ぞづぎいいい!!」 そう言ってまりさは怒りを露にしながら 地面に落ちていた素敵光線銃を舌で拾うと、その引き金を引いた。 ビカビカと光りながら光線銃がけたたましく鳴った。 「バーリア!」 そう言ってAは空中に手で円を書いた。 そして悠然とまりさに近づいていく。 「どぼぢでぎがな゛いのおおおおお!?」 Aに何の変化も起こらないことにまりさは驚愕の表情を浮かべた。 「だってバリアしたもん」 正論である。 「も゛う゛い゛い゛!ごんな゛の゛い゛ら゛ない!!」 そう言ってまりさは役に立たない素敵光線銃を投げ捨てた。 「あー!せっかくかしてあげたのになんですてるのさー! それつかわないんならこんどはまりさが怪獣やってね」 そうしてAはその辺の木の枝を拾うとそれでまりさを突っつき始めた。 「でたな怪獣!くらえー!」 ツンツンペシペシと木の枝を振り回されてまりさは体中を赤く腫れさせながら言った。 「や゛べでよおおおおおおおおお!!! どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおお!?」 さっきまでの怒りはどこへやら まりさは涙を撒き散らして転がりながら木の枝の猛攻から逃げている。 自業自得だろと思いながら眺めている僕にAの母親が声をかけた。 「あの…あれいいんですか?痛そうですけど」 「いや、僕も普段思いっきりまりさと遊んであげあられないんで Aくんが一杯遊んでくれてるんでまりさも泣きながら喜んでますよ」 「そうなんですか、ごめんなさいね家ってペット飼った事無いからそういうのわからなくて」 そう言うとAの母も納得したようで息子の様子を眺めながらベンチで一休みし始めた。 「お゛に゛い゛ざんだずげでよおおおおおおおおおおおおお!!!」 心中で『ざまあみろ』と呟きながら僕はニコニコとAと遊ぶまりさを見守った。 「しゅーと!」 「ゆぽべ!?」 Aの遊びはいつの間にかサッカーになっていた。 Aが思い切りまりさを蹴ると美しい曲線を描いて宙を舞いながらまりさはゴミ箱にぶつかりその場にドスンと落ちた。 コテン、と頭の上にゴミ箱から空き缶が落ちる。 「そろそろ帰るわよ」 「はーい!」 母の呼び声にAは空き缶を拾ってゴミ箱に戻すと ボロボロになり体の至る所を赤く腫れさせて土まみれになった みすぼらしいゴミクズ状態のまりさを抱えて僕のところに駆け寄ると まりさを差し出しながら言った。 「ありがとう兄ちゃん!またこんどかしてね!」 「ああ、もちろん」 「も゛う゛や゛だあ゛ああああ゛あ゛あああああああああああ!!」 気絶状態からぱっと目を覚まして泣き叫ぶまりさを無視して、僕は家に帰っていくA一家を見送ったのだった。 このSSに感想を付ける