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遠距離恋愛の歌ってありますか? 435 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 18 03 56.96 O 遠距離恋愛の歌ってありますか? 娘。以外のハロの曲でも良いので、教えて欲しいです。 自分が知ってるのは、最近の愛ちゃんソロの「電話でね」くらいです。 436 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 18 18 02.24 0 松浦亜弥 遠距離の恋愛 http //www.youtube.com/watch?v=AOehYRq8InY 439 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 19 11 35.95 0 遠距離の歌ってわけじゃないかもだけど 会えない間の思いって意味では「声」もそれっぽいかな? http //www.youtube.com/watch?v=K7jdud-nvz4 440 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 19 21 02.76 O >>436 439 ありがとうございます! 遠距離恋愛じゃなくても、会えなくて寂しいみたいな曲とか良いですよね 442 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 19 27 43.01 0 声といえばこっちだろ http //www.youtube.com/watch?v=XrkBiYbLkng feature=related 443 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 19 37 54.25 0 >>439 歌詞とか覚えてないけど遠距離恋愛って聞いて俺もなんとなく声が思い浮かんだ 444 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 20 30 36.61 O 遠恋っていうと松浦さん多いかな スタンス違うけど「blue bird」とか カントリーの「二人の北海道」は個人的に好きだけど 445 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 20 36 00.15 0 大阪恋の歌とか遠距離恋愛がテーマだからな 446 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 20 43 38.77 O 確かに遠恋だがあれは失恋の歌だからなヘビーだよw 好きな曲だから春ツアー辺りで聞きたい 447 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 21 18 14.22 0 声ってあんま聞いたことなかったけど良い曲だな 449 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 21 39 19.42 0 声いいね >>442のガキさんも素晴らしい 452 名前:名無し募集中。。。 [] 投稿日:2011/03/28(月) 22 35 34.66 O >>447 6thの愛の第六感に入ってる曲だよ 自分は同じアルバムの独占欲なんかも好きなんだけどねw(遠距離とか全然違うけど) 編注 電話でね:モーニング娘。11thアルバム「Fantasy!拾壱」収録。高橋愛ソロ。 遠距離の恋愛:松浦亜弥 5thシングル「?桃色片想い?」のカップリング曲。 blue bird:松浦亜弥 4thアルバム「ダブル レインボウ」収録。 二人の北海道:カントリー娘。デビューシングル。 大阪恋の歌:モーニング娘。26thシングル。 関連 つんくの作品はよく歌詞がどうたらこうたら言われるけど 「秋麗」は普通に佳作じゃね? 89ハマリ [2011年]
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このページはこちらに移転しました 遠距離恋愛 作詞/Asa どうして別れが来るのでしょう 離れたくないのに 離れなきゃいけない 「また会えるから」 アナタそう言うけど いつまでも別れは 慣れそうにない 顔を見て話して 笑ったり怒られたり そんな何気ない日常を共にしたかった 「会いたい」と言って家飛び出して アナタに飛び込めたらよかったのに わたしたちにはそれが許されない 「またね」 それがルール 「サヨナラ」 は言っちゃいけない わたしたちはまた会えるから だから一時的なお別れ 涙堪え笑う アナタの笑顔に泣きそうになっても わたしは堪えて笑顔浮かべる 改札を潜り抜け もう一度だけ振り返る 彼が手を振り わたしも振り返した それ以上はいけない 心の中のわたしが叫ぶ だから走る 電車に飛び乗る わたしは泣いた いつかできるといいな 何気ない幸せ味わえるといいな その辺の恋人同士みたいな そんな幸せな恋を
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第五章 告白 ハルヒを抱き上げ、団長席に座らせ直したところで部室のドアが静かに開いた。 朝比奈さんが入り口で手招きしている。長門も居るようだ。 俺はハルヒを起こさないよう、静かに部室を出た。 廊下にはいつもの喧噪が戻っており、ここはもはや異常空間ではない事を感じさせる。 「キョンくん、お疲れ様でした」 「……現在より2分12秒前、すべての閉鎖空間の消滅を確認。またそれと前後して、この部室に展開されていた対情報シールドの消滅を確認」 そうか。とりあえず世界崩壊は避けられたようだな。 「……そう」 俺は盛大なため息をはき出した。 「ふふっ、キョンくん?」 朝比奈さんがきらきらした目で聞いてきた。 「は、なんでしょう?」 「どうやって涼宮さんの機嫌を直したんですか?」 どうしよう?正直に伝えた方が良いんだろうが…… 「実は……それなんですが……」 俺は先ほどまでの経緯をかいつまんで話した。 「……へたれ」 「……はぁぁぁぁ………」 何ですかその反応は? 「ああ、そうだ。朝比奈さん。ハルヒの面倒を見てやってくれませんか?」 「……キョンくん、それ本気で言ってるんですか?」 目をまん丸く見開いたと思ったら、憐憫と悲しみと侮蔑の表情をまぜこぜにした視線を送ってきた。そんな天然記念物のオオサンショウウオを見るような目で見るのは止めてください。マジでへこみますから。 「何のことですか?」 「……私、帰ります。涼宮さんはお任せしました」 「……帰る」 って、ちょっと待って!おい!二人とも! 普段の二人からは考えられないほどの速度で、朝比奈さんと長門は俺の前から姿を消した。 一人取り残された俺。どうしろってんだ、全く。 自分の鞄を部室に起きっぱなしにしていたことを思い出し、再び部室に入る。 ハルヒも起こさないといけないしな。 部室に入ると、ハルヒはまだ寝息を立てていた。 団長机からそっとハルヒの鞄を抜き取る。 目の腫れも殆ど引いて、普段のハルヒの顔に戻っていた。しかし、なんつー復元力だ、コイツ。でも……あんな精一杯の告白を受けた後だからか、いつもよりも遙かにかわいく思えた。これが恋愛フィルターってやつらしいな。以前谷口がそんなことを言っていた気がする。もっともアイツの場合はパターンが逆だが。 さて、どうやってコイツに俺の気持ちを伝えようかね? ハルヒはハルヒらしく、真っ正面から告白してきた。 俺はそれに答えなきゃならないだろう。 実際この17年という長いか短いかよくわからない生涯で、告白したとかされたとかの経験は一度もない。 自慢じゃないがな。だから、さっきのハルヒの告白は胸に来た。衝撃だった。情けない俺は、答えを言えずにフリーズしてしまったが、答えなんかもうとっくの昔に決まってる。 そんなことを考えながらハルヒの寝顔を見ていたら、とても幸せな気分になる。 人を好きになるって言うのはこんなに良い気持ちになれるものなんだな。 取り留めなくそんなことを考えていたらあっという間に時間が過ぎてしまったようだ。 さすがにもう起こさないと拙いだろう。俺は団長席で静かに寝息を立てているハルヒに声を掛けた。 「おい、ハルヒ」 ぴくっと肩が動き、のろのろとハルヒが顔を上げる。 「……ふぁ、キョン……あれ?あたし……」 寝ぼけ眼で周りを見渡し、はっとした顔で俺を見つめる。 「……夢……だったの?」 「何のこった。それよりハルヒ、鞄持ってきてやったぞ、少しは感謝しろ。あと、ヨダレ拭け」 一瞬にして夕日のように赤くなったハルヒは、バババッ!と音が鳴るような素振りで口元を拭いた。 「……この、この……バカキョン!乙女の寝顔を観察するなんて、サイテーよ!」 「すまんな、お茶入れてやるから機嫌直せ」 「あれ?みんなは?」 「全員用事があって欠席だそうだ」 「……ふ~~ん」 朝比奈印のお茶とは雲泥の差の味のお茶を入れ、ハルヒに手渡す。パソコンの起動を待っていたハルヒは、それを一気飲みしやがった。 「マズイ!お代わり!」と言いながら湯飲みを差し出して来る。 まずかったら飲まなきゃ良いのに。 「……喉が渇いてるのよ」 ああ、そうかい。 ネットサーフィンを始めたらしいハルヒにお代わりを注いで、団長机に置く。 さらなる注文がこないうちに、俺は自分用のお茶を持っていつもの席に移動した。 告白のことを色々考えあぐねていると、ハルヒがぶつぶつと何かを呟いているのに気がついた。 「……夢?……そんなはずは……でも鞄は……」 どうもハルヒは、俺への告白は夢だと思っているらしい。 なんとも都合の良い記憶だこと。 ハルヒがさっきのことを夢だと思っているなら、それはそれで方法はある。 「……みんなが来ないなら、アンタとここにいてもしょうがないわ。アンタの転校の件は、明日全員揃ってから話し合いましょう。じゃ、今日は解散!」 パソコンの電源を落とすと、ハルヒは立ち上がった。 タイミング的にはここだろうな。いや、ここしかないだろ? 鞄を掴み、スタスタと扉に向かうハルヒに、俺は声を掛けた。 「……あー、ちょっと待ってくれ」 「……何よ?」 脳内で必死に自分を鼓舞し、俺はハルヒの行く手を塞いだ。 「実はな、ハルヒ」 「……だから何?」 「転校前に、お前に相談に乗って欲しい事があるんだ」 「相談?」 訝しげにこちらを見るハルヒの顔。ちとアヒル口だがそんな顔も可愛いね。今更だが。 「誰にも言ってなかったが、実は俺、この高校に好きな子がいるんだ」 「……え……ふ、ふ~~ん、そうなんだ」 目が泳いでる。しかも、アヒルからペリカンになった。 「朴念仁のあんたがね……わからないもんだわ」 「で、だ。告白も出来ないうちに転校ってのがどうも心残りでな」 妙に明るい俺の口調に、ハルヒは面食らっているようだ。ハルヒは俺の顔から視線を逸らすようにして、言葉を紡ぐ。 「……さっさと告れば良いじゃない。転校まで時間ないんでしょ?」 「それはそうなんだが……でもな、仮に告ってOKもらっても、すぐ転校しちゃうだろ、俺?これって結構、悲劇のシチュエーションだと思わないか?だから、告白するべきかどうか悩んでる」 「……それもそうよね。でも、その好きな子とやらがあんたを受け入れてくれるとは限らないわよ?」 「ああ、その点は大丈夫。向こうの友人達から聞いたんだが、向こうも俺のことが好きなんだってさ」 その瞬間、こちらを向いたハルヒの眉はつり上がっていた。不機嫌モードに突入したようだ。 分かり易いねこいつは。 「じゃ、じゃあ、良いことじゃない、遠距離恋愛でも何でも勝手にすれば?あたしは関係ないから」 「待てよ。話は最後まで聞け」 俺の横をすり抜けようとしたハルヒの腕を掴む。 「……離しなさいよ」 「何言ってるんだ、まだ相談中だぜ」 「……聞きたくない」 ハルヒが泣きそうになっているのは、その声で分かった。 「SOS団団長様たる涼宮ハルヒは、団員その1兼雑用係の、この俺の相談を断るのか?」 「でもアンタ、転校しちゃうんでしょ?……SOS団じゃなくなるじゃない」 「あいにく、まだ転校してない。だからまだ俺はSOS団その1だ。違うか?」 逃げようとする素振りを見せなくなったことを確認して、俺はハルヒの手を離した。 「遠距離恋愛になることはわかっていて、それで相手が仮にOKしてくれたとしてだ。俺はその子とどういうつきあい方をすればいいと思う?」 「……そうね、例えば一年間遠距離で我慢して、二人で一緒の大学に行くとかすればいいんじゃない?」 おい、何だかお袋と同じ事を言い出したぞ、コイツは。 「そう……だな。でもな、向こうと俺の学力差はいかんともしがたい」 「何言ってるの。そんなもん一年もあればなんとか差を詰められるわよ。まああんただったら死ぬほど努力しないといけないだろうけど」 これもお袋と同じ回答だ。実は気が合うんじゃないか、こいつら。う~~ん、一緒の大学か……行けたら絶対楽しいだろうな。しかし…… うんうん唸っている俺を呆れたように見ていたハルヒは、盛大にため息をついた。 「……わかったわ。最後のアンタの願い、叶えてあげる!あたしがアンタの想い人との橋渡しをしてあげる!他ならぬキョ……団員その1の頼みだもんね!」 いつもより50%減、空元気の笑顔。こんな顔を見るなら、この小芝居、うたない方が良かったな。 「あたしはね、恋愛感情なんて……って、これ前に言ったわよね。でもそれが病気だったとしても、そういう目標を決めたときは有効に働くのよ。つまり、あの子と付き合いたい、一緒の学校に行きたいって気持ちが有るなら、勉強にも身が入るってもんだわ」 くるくると指を回して歩きながら説明を始める。お得意のポーズだ。 「そんなもんなのか」 「そんなもんよ。で、相手の志望校はどこなの?」 俺は、以前聞いたハルヒの志望大学の名前を口にした。 「あら、あたしと同じじゃない……ん?この高校であたし以外にあの大学を志望するような子って……もしかしたらアンタが好きな子って有希のこと?」 いきなりそこで自分を選択肢から外すか。 「違う」 「……ふ~~ん。でも、あんたと有希だったらお似合いよね。いつも有希のこと気にしていたみたいだし」 「だから違うって、長門じゃない」 ……あれ?今一瞬長門の悲しそうな顔が脳裏をよぎったぞ? 「そっか。じゃああとは阪中さん……じゃないわね。全然そんな雰囲気じゃ無いしね。特進クラスの子?」 「いや」 「……まさかとは思うけど、男?古泉くんとか?」 「断じて違う」 『おやおや、それはひどいですね』古泉のにやけ口調が脳内で再生されたが、無視。 ハルヒは部屋を歩き回るのを止め、人差し指をビシッ!と俺の鼻先に突きつけてきた。 「もう、誰なのよ?教えなさい!団長命令!」 「そうだなぁ……じゃあヒントを出してやるよ」 「あたしに当てろっていうのね?良いわよ!超・名探偵の名は伊達じゃないから!」 意味分からん。それに何だ超・名探偵って。 「ヒントその1。同学年の女生徒だ」 「……ぶつわよ」 これだって立派なヒントだ、お約束だがな。 「ヒントその2。美人でスタイルも良い。成績優秀、運動神経抜群だ」 「へえ~~、同学年にそんな子いたかしら?う~~ん……有希じゃないのよね……鶴屋さん……は違うし」 鶴屋さんは既にご卒業されているのですが? 「あ、分かった。引っかけ問題とはアンタもやるわね。確かに同じ学年とは言ったけど、同じ学校とは言わなかったもんね。佐々木さんでしょ?」 「なんであいつが出てくるんだ?……違う」 佐々木は、親友以外の何者でもない。ああ、そういえば引っ越しのこと伝えてなかったな。今日の夜にでも電話しておこう。 「ヒントその3。これが最後だぞ?」 「う~~ん、キョンに良いようにあしらわれているような気がするわ……ちょっとムカツクかも」 そりゃあ良かった……しかし、ホントに気付いてないのかこいつ。 「そいつは、俺と同じクラスで」 「……え?」 「1年の時も同じクラスで、しかもずっと俺の後ろの席で」 「そ、それって……」 「不思議大好き、宇宙時や未来人や超能力者を探してる」 「……」 「SOS団の団長様だ」 「……バカ」 「俺は、涼宮ハルヒを好きなんだ」 やっぱり恥ずかしいな、こういうのは。思わずハルヒから目を逸らしてしまった。 でも、俺の本心を伝えることが出来た。とうとう……と言うより、やっと、だがな。 ハルヒはと見れば、プチトマトより赤くなっていやがる。こういう所だけ見れば、普通の美少女女子高生なんだが。 「……却下……」 「……何?」 おい、まさか拒否られるとは思わなかったぞ?まてまてまて、じゃあさっきのおまえの告白は何だ?? もしかして夢を見ていたのは俺の方か? 「……却下だって言ってるでしょ、このバカキョン!平団員が団長に恋心抱くなんて…その、SOS団規則その3に抵触するわ!団員の恋愛禁止!」 ハルヒは俺にびしっと人差し指を突きつけてきたがその顔はまだ赤いままだ。 いや、それより俺の方が問題だ。 両思いのはずなのに告白を断られたっていう混乱から抜け出せない。 深刻だ。 やばい。 体が、小刻みにガタガタ震えているのがわかる。 頬を暖かいものが伝う。涙? 「え、キョン?……その……あの……あたし本当に嬉しかったよ?」 そんな俺の表情を見て、慌ててハルヒが声を掛けてきた。 ……気遣わないでくれよ、おおおおお俺はだだだだ大丈夫だ。 良かったな、おまえの告白斬り伝説にもう一人、キョンっていう間抜けなあだ名の奴が加わったぜ。 もういい、ほっといてくれ。 「……ねえ、キョン?」 「……何だ?」 いかん、声が震えてる。俺の声じゃないみたいだ。 「聞いて欲しいことがあるんだ」 ハルヒは俺の目を見てからそっと、俺の手を握った。 「さっき、あたし夢見てたの。キョンにあたしから告白する夢」 ハルヒから俺に告白したあの時のように、真っ直ぐに俺の顔を見ながら話し始めた。 「あたしもアンタが好き。たぶん、一年生の時に、初めて話しかけてくれたときから、アンタのことが好きになってたんだと思う」 「……」 「だから、アンタがあたしに告ってくれたのは嬉しい。本当に嬉しい。この状況を何度夢に見たか、アンタに教えてやりたいくらい」 そこでハルヒは、手を離して後ろを向いた。 「でもね、さっきの話じゃないけど、遠距離恋愛になっちゃうんだよ?GWとか長期休みの時はともかく、簡単には会えなくなるのよ?……あたしは、そんなのはイヤ。あたしは好きな人とはいつも一緒にいたいし、デートの時は手を繋ぎたい。一緒に、同じ道を歩んでいきたい、そう思っているの。でもね……遠く離れてしまったらそれが出来ない。手を繋ぎたくても繋げない。もしかしたら……相手の心が離れていくかもしれない。そんな思いまでして……アタシがあたしでいられなくなるなら、恋愛なんかはしたくない。恋愛感情なんかは、最初から無かった方が良い。だからあたしは……アンタとは付き合えない」 ふと頭の中に『一途』という言葉が浮かんだ。そうか、こいつは、実は古風な考えを持っているんだ。 そういえば、いつか古泉が言ってたな。 『涼宮さんはきわめて常識的な一面を持っています』 そっか。なら俺も答えなきゃな。答えなんか、これしかないじゃないか。 「……一年だけ待ってくれないか」 「……え?」 「つまり、俺が頑張ってハルヒと同じ大学に合格すればその時は、晴れて付き合ってくれるって事だろ?」 「……本気?」 「ああ、目一杯本気さ。俺だって、これから行く見知らぬ場所よりも生まれ育ったこっちの方が良い。それにハルヒと付き合えるんなら、一年間死ぬほど勉強しておまえと同じ大学に入ってやるくらい、容易いことだ」 「本当……?嘘じゃないわよね?」 「土壇場の俺の頑張りを、おまえは知ってるだろ?安心しろ、俺は絶対におまえの側に戻ってくる」 突然ハルヒが抱きついてきた。俺の胸に飛び込んできたその小さな体を、ゆっくりと抱きしめた。 「……このバカキョン……戻ってこなかったら死刑なんだから……」 小さく震える肩。ああ、コイツのためなら1年間の受験勉強なんて児戯に等しいさ。 「……死刑はイヤだからな。わかったよ」 夕日が差し込む部室の中で、俺はハルヒとキスをした。 下校途中のことだ。 「……ねぇ、キョン。何時引っ越すの?」 「ああ、予定では終業式が終わって1週間くらいしてからだ」 「意外と遅いのね」 「だが、俺はその前に向こうの高校の編入試験を受けなきゃならん。終業式が終わってから、すぐ向こうに行って試験受けて、またこっちにトンボ帰りだな」 「ふ~~ん。で、受かる自信はあるの?」 「何ともいえんが、公立校らしいから大丈夫さ」 実はあんまり自信が無いんだがな。 その言葉を聞いたハルヒは、俺の前に回り込んだ。 「キョン、あんたはその高校の成績トップクラスに入らなきゃだめよ!仮にもSOS団団員その1とあろうものが普通の成績で満足するのは無しだからね!でないと、あたしと同じ大学なんて100万年掛かっても 絶対無理だから!その高校のトップに君臨しなさい!これは団長命令よ!」 いや、無理だって。今回の試験だって多分ギリギリだし。それだっておまえや長門、古泉の協力があってこそ何とかできたようなもんだ。 「何言ってんの?あたしの志望大学に現役で入ろうなんて、公立高校ならトップクラスの成績じゃないとだめなのよ?そこら辺わかってんの?」 すいません、さっきの部室での誓い、撤回して良いですか? だが、そんな弱腰な台詞なぞ言えるわけもなく。 「わかったよ。せいぜい努力するさ」 ハルヒはいつもの100Wの笑顔を見せて、こう言い放った。 「終業式まであんまり時間無いけど、明日からSOS団全員でアンタの勉強見てあげる。うん、決まり!」 いや、待て待て待て。俺には安息の時間はないのか? 「却下。時間に余裕はないのよ。ああ、それと引っ越しの時は、勿論SOS団全員で手伝ってあげるから! あ、そうだ、鶴屋さんを呼ぶのは確定として……」 おそらく引っ越し時には、俺のプライバシーが尽く白日の下に晒されるんだろうな。 ……と、その前に愛用のDVDと写真集を谷口あたりに預けておかなきゃな。 その夜、俺は佐々木に電話を掛けた。もちろん引っ越しの連絡をするためだ。 「珍しいな、キミから電話を掛けてくるなんて。一体どんな話で僕の好奇心を満たしてくれるのかい?それとも何か相談事かな?涼宮さんたちと喧嘩でもしたとか?」 佐々木、実はな…… 昼間ハルヒに話したことと全く同じ事を伝える。 「……本当かい?嘘をついても許される日は、まだ先だと思っていたのだが」 本当だ。学校でもそのことで一悶着有って、大変だったんだぞ。 今日一日のダイジェストを佐々木に話すと、さもおかしそうに相づちを打つ。 「ふむ、なるほどね。涼宮さん相手だとキミも大変だ」 まあな。それでも、ずいぶんアイツは大人しくなったんだぜ? 「それにしてもキミが転校するなんてね。正直驚いたよ……ああそうか、なるほど、うーん。もしかしたらこれが僕に取っての分岐点かもしれないんだな」 は?何言ってるんだお前?一人で納得していないで、俺にも教えてくれよ。 「くくっ、いや気にしないでくれ。そうそう、キミも僕も受験生なんだから勉強を頑張らなくてはいけない。僕は、キミとまた会える日を楽しみに、日々勉強しているんだからね。じゃあ、お休み」 そう言って佐々木との電話は切れた。 くそ、訳のわからんこといいやがって。寝る前だってのに、頭が冴えてきてしまったじゃねーか。 第六章 2年生最終日へ
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第五章 告白 ハルヒを抱き上げ、団長席に座らせ直したところで部室のドアが静かに開いた。 朝比奈さんが入り口で手招きしている。長門も居るようだ。 俺はハルヒを起こさないよう、静かに部室を出た。 廊下にはいつもの喧噪が戻っており、ここはもはや異常空間ではない事を感じさせる。 「キョンくん、お疲れ様でした」 「……現在より2分12秒前、すべての閉鎖空間の消滅を確認。またそれと前後して、この部室に展開されていた対情報シールドの消滅を確認」 そうか。とりあえず世界崩壊は避けられたようだな。 「……そう」 俺は盛大なため息をはき出した。 「ふふっ、キョンくん?」 朝比奈さんがきらきらした目で聞いてきた。 「は、なんでしょう?」 「どうやって涼宮さんの機嫌を直したんですか?」 どうしよう?正直に伝えた方が良いんだろうが…… 「実は……それなんですが……」 俺は先ほどまでの経緯をかいつまんで話した。 「……へたれ」 「……はぁぁぁぁ………」 何ですかその反応は? 「ああ、そうだ。朝比奈さん。ハルヒの面倒を見てやってくれませんか?」 「……キョンくん、それ本気で言ってるんですか?」 目をまん丸く見開いたと思ったら、憐憫と悲しみと侮蔑の表情をまぜこぜにした視線を送ってきた。そんな天然記念物のオオサンショウウオを見るような目で見るのは止めてください。マジでへこみますから。 「何のことですか?」 「……私、帰ります。涼宮さんはお任せしました」 「……帰る」 って、ちょっと待って!おい!二人とも! 普段の二人からは考えられないほどの速度で、朝比奈さんと長門は俺の前から姿を消した。 一人取り残された俺。どうしろってんだ、全く。 自分の鞄を部室に起きっぱなしにしていたことを思い出し、再び部室に入る。 ハルヒも起こさないといけないしな。 部室に入ると、ハルヒはまだ寝息を立てていた。 団長机からそっとハルヒの鞄を抜き取る。 目の腫れも殆ど引いて、普段のハルヒの顔に戻っていた。しかし、なんつー復元力だ、コイツ。でも……あんな精一杯の告白を受けた後だからか、いつもよりも遙かにかわいく思えた。これが恋愛フィルターってやつらしいな。以前谷口がそんなことを言っていた気がする。もっともアイツの場合はパターンが逆だが。 さて、どうやってコイツに俺の気持ちを伝えようかね? ハルヒはハルヒらしく、真っ正面から告白してきた。 俺はそれに答えなきゃならないだろう。 実際この17年という長いか短いかよくわからない生涯で、告白したとかされたとかの経験は一度もない。 自慢じゃないがな。だから、さっきのハルヒの告白は胸に来た。衝撃だった。情けない俺は、答えを言えずにフリーズしてしまったが、答えなんかもうとっくの昔に決まってる。 そんなことを考えながらハルヒの寝顔を見ていたら、とても幸せな気分になる。 人を好きになるって言うのはこんなに良い気持ちになれるものなんだな。 取り留めなくそんなことを考えていたらあっという間に時間が過ぎてしまったようだ。 さすがにもう起こさないと拙いだろう。俺は団長席で静かに寝息を立てているハルヒに声を掛けた。 「おい、ハルヒ」 ぴくっと肩が動き、のろのろとハルヒが顔を上げる。 「……ふぁ、キョン……あれ?あたし……」 寝ぼけ眼で周りを見渡し、はっとした顔で俺を見つめる。 「……夢……だったの?」 「何のこった。それよりハルヒ、鞄持ってきてやったぞ、少しは感謝しろ。あと、ヨダレ拭け」 一瞬にして夕日のように赤くなったハルヒは、バババッ!と音が鳴るような素振りで口元を拭いた。 「……この、この……バカキョン!乙女の寝顔を観察するなんて、サイテーよ!」 「すまんな、お茶入れてやるから機嫌直せ」 「あれ?みんなは?」 「全員用事があって欠席だそうだ」 「……ふ~~ん」 朝比奈印のお茶とは雲泥の差の味のお茶を入れ、ハルヒに手渡す。パソコンの起動を待っていたハルヒは、それを一気飲みしやがった。 「マズイ!お代わり!」と言いながら湯飲みを差し出して来る。 まずかったら飲まなきゃ良いのに。 「……喉が渇いてるのよ」 ああ、そうかい。 ネットサーフィンを始めたらしいハルヒにお代わりを注いで、団長机に置く。 さらなる注文がこないうちに、俺は自分用のお茶を持っていつもの席に移動した。 告白のことを色々考えあぐねていると、ハルヒがぶつぶつと何かを呟いているのに気がついた。 「……夢?……そんなはずは……でも鞄は……」 どうもハルヒは、俺への告白は夢だと思っているらしい。 なんとも都合の良い記憶だこと。 ハルヒがさっきのことを夢だと思っているなら、それはそれで方法はある。 「……みんなが来ないなら、アンタとここにいてもしょうがないわ。アンタの転校の件は、明日全員揃ってから話し合いましょう。じゃ、今日は解散!」 パソコンの電源を落とすと、ハルヒは立ち上がった。 タイミング的にはここだろうな。いや、ここしかないだろ? 鞄を掴み、スタスタと扉に向かうハルヒに、俺は声を掛けた。 「……あー、ちょっと待ってくれ」 「……何よ?」 脳内で必死に自分を鼓舞し、俺はハルヒの行く手を塞いだ。 「実はな、ハルヒ」 「……だから何?」 「転校前に、お前に相談に乗って欲しい事があるんだ」 「相談?」 訝しげにこちらを見るハルヒの顔。ちとアヒル口だがそんな顔も可愛いね。今更だが。 「誰にも言ってなかったが、実は俺、この高校に好きな子がいるんだ」 「……え……ふ、ふ~~ん、そうなんだ」 目が泳いでる。しかも、アヒルからペリカンになった。 「朴念仁のあんたがね……わからないもんだわ」 「で、だ。告白も出来ないうちに転校ってのがどうも心残りでな」 妙に明るい俺の口調に、ハルヒは面食らっているようだ。ハルヒは俺の顔から視線を逸らすようにして、言葉を紡ぐ。 「……さっさと告れば良いじゃない。転校まで時間ないんでしょ?」 「それはそうなんだが……でもな、仮に告ってOKもらっても、すぐ転校しちゃうだろ、俺?これって結構、悲劇のシチュエーションだと思わないか?だから、告白するべきかどうか悩んでる」 「……それもそうよね。でも、その好きな子とやらがあんたを受け入れてくれるとは限らないわよ?」 「ああ、その点は大丈夫。向こうの友人達から聞いたんだが、向こうも俺のことが好きなんだってさ」 その瞬間、こちらを向いたハルヒの眉はつり上がっていた。不機嫌モードに突入したようだ。 分かり易いねこいつは。 「じゃ、じゃあ、良いことじゃない、遠距離恋愛でも何でも勝手にすれば?あたしは関係ないから」 「待てよ。話は最後まで聞け」 俺の横をすり抜けようとしたハルヒの腕を掴む。 「……離しなさいよ」 「何言ってるんだ、まだ相談中だぜ」 「……聞きたくない」 ハルヒが泣きそうになっているのは、その声で分かった。 「SOS団団長様たる涼宮ハルヒは、団員その1兼雑用係の、この俺の相談を断るのか?」 「でもアンタ、転校しちゃうんでしょ?……SOS団じゃなくなるじゃない」 「あいにく、まだ転校してない。だからまだ俺はSOS団その1だ。違うか?」 逃げようとする素振りを見せなくなったことを確認して、俺はハルヒの手を離した。 「遠距離恋愛になることはわかっていて、それで相手が仮にOKしてくれたとしてだ。俺はその子とどういうつきあい方をすればいいと思う?」 「……そうね、例えば一年間遠距離で我慢して、二人で一緒の大学に行くとかすればいいんじゃない?」 おい、何だかお袋と同じ事を言い出したぞ、コイツは。 「そう……だな。でもな、向こうと俺の学力差はいかんともしがたい」 「何言ってるの。そんなもん一年もあればなんとか差を詰められるわよ。まああんただったら死ぬほど努力しないといけないだろうけど」 これもお袋と同じ回答だ。実は気が合うんじゃないか、こいつら。う~~ん、一緒の大学か……行けたら絶対楽しいだろうな。しかし…… うんうん唸っている俺を呆れたように見ていたハルヒは、盛大にため息をついた。 「……わかったわ。最後のアンタの願い、叶えてあげる!あたしがアンタの想い人との橋渡しをしてあげる!他ならぬキョ……団員その1の頼みだもんね!」 いつもより50%減、空元気の笑顔。こんな顔を見るなら、この小芝居、うたない方が良かったな。 「あたしはね、恋愛感情なんて……って、これ前に言ったわよね。でもそれが病気だったとしても、そういう目標を決めたときは有効に働くのよ。つまり、あの子と付き合いたい、一緒の学校に行きたいって気持ちが有るなら、勉強にも身が入るってもんだわ」 くるくると指を回して歩きながら説明を始める。お得意のポーズだ。 「そんなもんなのか」 「そんなもんよ。で、相手の志望校はどこなの?」 俺は、以前聞いたハルヒの志望大学の名前を口にした。 「あら、あたしと同じじゃない……ん?この高校であたし以外にあの大学を志望するような子って……もしかしたらアンタが好きな子って有希のこと?」 いきなりそこで自分を選択肢から外すか。 「違う」 「……ふ~~ん。でも、あんたと有希だったらお似合いよね。いつも有希のこと気にしていたみたいだし」 「だから違うって、長門じゃない」 ……あれ?今一瞬長門の悲しそうな顔が脳裏をよぎったぞ? 「そっか。じゃああとは阪中さん……じゃないわね。全然そんな雰囲気じゃ無いしね。特進クラスの子?」 「いや」 「……まさかとは思うけど、男?古泉くんとか?」 「断じて違う」 『おやおや、それはひどいですね』古泉のにやけ口調が脳内で再生されたが、無視。 ハルヒは部屋を歩き回るのを止め、人差し指をビシッ!と俺の鼻先に突きつけてきた。 「もう、誰なのよ?教えなさい!団長命令!」 「そうだなぁ……じゃあヒントを出してやるよ」 「あたしに当てろっていうのね?良いわよ!超・名探偵の名は伊達じゃないから!」 意味分からん。それに何だ超・名探偵って。 「ヒントその1。同学年の女生徒だ」 「……ぶつわよ」 これだって立派なヒントだ、お約束だがな。 「ヒントその2。美人でスタイルも良い。成績優秀、運動神経抜群だ」 「へえ~~、同学年にそんな子いたかしら?う~~ん……有希じゃないのよね……鶴屋さん……は違うし」 鶴屋さんは既にご卒業されているのですが? 「あ、分かった。引っかけ問題とはアンタもやるわね。確かに同じ学年とは言ったけど、同じ学校とは言わなかったもんね。佐々木さんでしょ?」 「なんであいつが出てくるんだ?……違う」 佐々木は、親友以外の何者でもない。ああ、そういえば引っ越しのこと伝えてなかったな。今日の夜にでも電話しておこう。 「ヒントその3。これが最後だぞ?」 「う~~ん、キョンに良いようにあしらわれているような気がするわ……ちょっとムカツクかも」 そりゃあ良かった……しかし、ホントに気付いてないのかこいつ。 「そいつは、俺と同じクラスで」 「……え?」 「1年の時も同じクラスで、しかもずっと俺の後ろの席で」 「そ、それって……」 「不思議大好き、宇宙時や未来人や超能力者を探してる」 「……」 「SOS団の団長様だ」 「……バカ」 「俺は、涼宮ハルヒを好きなんだ」 やっぱり恥ずかしいな、こういうのは。思わずハルヒから目を逸らしてしまった。 でも、俺の本心を伝えることが出来た。とうとう……と言うより、やっと、だがな。 ハルヒはと見れば、プチトマトより赤くなっていやがる。こういう所だけ見れば、普通の美少女女子高生なんだが。 「……却下……」 「……何?」 おい、まさか拒否られるとは思わなかったぞ?まてまてまて、じゃあさっきのおまえの告白は何だ?? もしかして夢を見ていたのは俺の方か? 「……却下だって言ってるでしょ、このバカキョン!平団員が団長に恋心抱くなんて…その、SOS団規則その3に抵触するわ!団員の恋愛禁止!」 ハルヒは俺にびしっと人差し指を突きつけてきたがその顔はまだ赤いままだ。 いや、それより俺の方が問題だ。 両思いのはずなのに告白を断られたっていう混乱から抜け出せない。 深刻だ。 やばい。 体が、小刻みにガタガタ震えているのがわかる。 頬を暖かいものが伝う。涙? 「え、キョン?……その……あの……あたし本当に嬉しかったよ?」 そんな俺の表情を見て、慌ててハルヒが声を掛けてきた。 ……気遣わないでくれよ、おおおおお俺はだだだだ大丈夫だ。 良かったな、おまえの告白斬り伝説にもう一人、キョンっていう間抜けなあだ名の奴が加わったぜ。 もういい、ほっといてくれ。 「……ねえ、キョン?」 「……何だ?」 いかん、声が震えてる。俺の声じゃないみたいだ。 「聞いて欲しいことがあるんだ」 ハルヒは俺の目を見てからそっと、俺の手を握った。 「さっき、あたし夢見てたの。キョンにあたしから告白する夢」 ハルヒから俺に告白したあの時のように、真っ直ぐに俺の顔を見ながら話し始めた。 「あたしもアンタが好き。たぶん、一年生の時に、初めて話しかけてくれたときから、アンタのことが好きになってたんだと思う」 「……」 「だから、アンタがあたしに告ってくれたのは嬉しい。本当に嬉しい。この状況を何度夢に見たか、アンタに教えてやりたいくらい」 そこでハルヒは、手を離して後ろを向いた。 「でもね、さっきの話じゃないけど、遠距離恋愛になっちゃうんだよ?GWとか長期休みの時はともかく、簡単には会えなくなるのよ?……あたしは、そんなのはイヤ。あたしは好きな人とはいつも一緒にいたいし、デートの時は手を繋ぎたい。一緒に、同じ道を歩んでいきたい、そう思っているの。でもね……遠く離れてしまったらそれが出来ない。手を繋ぎたくても繋げない。もしかしたら……相手の心が離れていくかもしれない。そんな思いまでして……アタシがあたしでいられなくなるなら、恋愛なんかはしたくない。恋愛感情なんかは、最初から無かった方が良い。だからあたしは……アンタとは付き合えない」 ふと頭の中に『一途』という言葉が浮かんだ。そうか、こいつは、実は古風な考えを持っているんだ。 そういえば、いつか古泉が言ってたな。 『涼宮さんはきわめて常識的な一面を持っています』 そっか。なら俺も答えなきゃな。答えなんか、これしかないじゃないか。 「……一年だけ待ってくれないか」 「……え?」 「つまり、俺が頑張ってハルヒと同じ大学に合格すればその時は、晴れて付き合ってくれるって事だろ?」 「……本気?」 「ああ、目一杯本気さ。俺だって、これから行く見知らぬ場所よりも生まれ育ったこっちの方が良い。それにハルヒと付き合えるんなら、一年間死ぬほど勉強しておまえと同じ大学に入ってやるくらい、容易いことだ」 「本当……?嘘じゃないわよね?」 「土壇場の俺の頑張りを、おまえは知ってるだろ?安心しろ、俺は絶対におまえの側に戻ってくる」 突然ハルヒが抱きついてきた。俺の胸に飛び込んできたその小さな体を、ゆっくりと抱きしめた。 「……このバカキョン……戻ってこなかったら死刑なんだから……」 小さく震える肩。ああ、コイツのためなら1年間の受験勉強なんて児戯に等しいさ。 「……死刑はイヤだからな。わかったよ」 夕日が差し込む部室の中で、俺はハルヒとキスをした。 下校途中のことだ。 「……ねぇ、キョン。何時引っ越すの?」 「ああ、予定では終業式が終わって1週間くらいしてからだ」 「意外と遅いのね」 「だが、俺はその前に向こうの高校の編入試験を受けなきゃならん。終業式が終わってから、すぐ向こうに行って試験受けて、またこっちにトンボ帰りだな」 「ふ~~ん。で、受かる自信はあるの?」 「何ともいえんが、公立校らしいから大丈夫さ」 実はあんまり自信が無いんだがな。 その言葉を聞いたハルヒは、俺の前に回り込んだ。 「キョン、あんたはその高校の成績トップクラスに入らなきゃだめよ!仮にもSOS団団員その1とあろうものが普通の成績で満足するのは無しだからね!でないと、あたしと同じ大学なんて100万年掛かっても 絶対無理だから!その高校のトップに君臨しなさい!これは団長命令よ!」 いや、無理だって。今回の試験だって多分ギリギリだし。それだっておまえや長門、古泉の協力があってこそ何とかできたようなもんだ。 「何言ってんの?あたしの志望大学に現役で入ろうなんて、公立高校ならトップクラスの成績じゃないとだめなのよ?そこら辺わかってんの?」 すいません、さっきの部室での誓い、撤回して良いですか? だが、そんな弱腰な台詞なぞ言えるわけもなく。 「わかったよ。せいぜい努力するさ」 ハルヒはいつもの100Wの笑顔を見せて、こう言い放った。 「終業式まであんまり時間無いけど、明日からSOS団全員でアンタの勉強見てあげる。うん、決まり!」 いや、待て待て待て。俺には安息の時間はないのか? 「却下。時間に余裕はないのよ。ああ、それと引っ越しの時は、勿論SOS団全員で手伝ってあげるから! あ、そうだ、鶴屋さんを呼ぶのは確定として……」 おそらく引っ越し時には、俺のプライバシーが尽く白日の下に晒されるんだろうな。 ……と、その前に愛用のDVDと写真集を谷口あたりに預けておかなきゃな。 その夜、俺は佐々木に電話を掛けた。もちろん引っ越しの連絡をするためだ。 「珍しいな、キミから電話を掛けてくるなんて。一体どんな話で僕の好奇心を満たしてくれるのかい?それとも何か相談事かな?涼宮さんたちと喧嘩でもしたとか?」 佐々木、実はな…… 昼間ハルヒに話したことと全く同じ事を伝える。 「……本当かい?嘘をついても許される日は、まだ先だと思っていたのだが」 本当だ。学校でもそのことで一悶着有って、大変だったんだぞ。 今日一日のダイジェストを佐々木に話すと、さもおかしそうに相づちを打つ。 「ふむ、なるほどね。涼宮さん相手だとキミも大変だ」 まあな。それでも、ずいぶんアイツは大人しくなったんだぜ? 「それにしてもキミが転校するなんてね。正直驚いたよ……ああそうか、なるほど、うーん。もしかしたらこれが僕に取っての分岐点かもしれないんだな」 は?何言ってるんだお前?一人で納得していないで、俺にも教えてくれよ。 「くくっ、いや気にしないでくれ。そうそう、キミも僕も受験生なんだから勉強を頑張らなくてはいけない。僕は、キミとまた会える日を楽しみに、日々勉強しているんだからね。じゃあ、お休み」 そう言って佐々木との電話は切れた。 くそ、訳のわからんこといいやがって。寝る前だってのに、頭が冴えてきてしまったじゃねーか。 第六章 2年生最終日へ
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『ゆたか、そちらは今でも、雪が降っていますか?』 みなみちゃんからの手紙は、この季節はいつもそんな言葉からはじまっていた。 物の少ない殺風景な病室の窓から外を眺めてみる。 自然の豊かな土地に建てられたこの病院から見えるこの季節の景色は、いつも白銀の世界だった。 私がこの病院に入院してからもう3年以上になる。 陵桜学園を卒業し、大学生活が始まった矢先に私は病気で倒れてしまった。 心臓が極端に弱っていて白血球や抗体がなんとかかんとか…… 詳しい説明や病名は覚えていない。 知っていたところで病気が治るわけじゃないんだから、意味がないよ。 私の身体は大学生活をおくることが困難なほどまで体力を失い、入院せざるをえなかった。 私の病状に適した病院が関東近辺では見つからず、長期的に入院するなら自然の多いところのほうが身体にいい、という理由で、私は遠く離れたこの病院に入院したのだ。 空気がきれいで、設備と人材の整ったこの病院に入院するとき、私が一番悲しく思ったのはみなみちゃんと離れ離れになってしまうことだ。 当事、私達は付き合いはじめたばかりだった。 卒業式の後、星桜の下でみなみちゃんに思いを伝えた。 みなみちゃんも、私のことを好きだと言ってくれた。 そのときは、ずっとみなみちゃんのそばにいられることを疑わなかったのに、わずか数ヶ月で引き離されてしまうことになるなんて…… 携帯電話という通信ツールが広く普及されてからは、遠距離恋愛というのも昔に比べてずいぶん距離を感じないようになったと思う。 けど、そんな文明の利器が出回っている時代に、私とみなみちゃんはコミュニケーションのほとんどを手紙で行っていた。 理由は病院内での携帯電話の使用が禁止されているからだ。 今日本では、携帯電話の電波が医療機器に与える影響などが見直されて、携帯電話の使用を認めている病院もでてきているが、この病院ではそうはいかなかった。 年に一、二回みなみちゃんと会うときくらいしか私は携帯電話の電源をいれない。 私が手紙を書いて、看護師さんにポストに投函してもらい、みなみちゃんに届くのが二日後くらい。 そしてみなみちゃんが私に書いた手紙が届くのがさらに二日後くらい。 一つのやりとりをだいたい一週間かけて行うことが、私達の日常となっている。 そして今日も、みなみちゃんから届いた手紙を、私は読んでいた。 いつもなら、手紙が届いたときは心がうきうきし、読んでいるあいだは何物にも代えられない嬉しさで心がいっぱいになり、読み終わった後も暫くは幸せな気持ちに浸ることができる。 だが、今回に限っては少し事情が違っていた。 今日は12月20日。 私の誕生日だ。 みなみちゃんも、20日前後にこの手紙が届く事は分かっているはずなのに、この手紙には誕生日については一切ふれられていない。 みなみちゃん、私の誕生日……忘れてるのかな……? 別におめでとうの言葉を要求しているわけじゃない。 どれだけ成長しても、誕生日というのはやっぱり自分にとって特別な日だ。 その特別な日を一番好きな人に祝ってもらいたいと思うのは自然な事だと思う。 去年も、その前の年も、みなみちゃんは私の誕生日を忘れる事はなかったのに…… 最近、看護学校の実習が忙しいって手紙に書いてあったから、そのせいなのかな…… いつもは手紙を読み終わるとすぐに返事を書くのだが、今日に限ってそんな気分になれず、私はベッドに横になり布団をかぶった。 外は相変わらず雪が降り、景色を白く染め上げている。 埼玉ではこの季節でも滅多に雪なんか降らなかった。 手紙でみなみちゃんが言ってたような、天気の違い一つとっても、お互いの距離を感じずにはいられない。 次に目が覚めたとき、雪が降っていなかったら…空が蒼かったら…みなみちゃんが来てくれる…… 天気予報では明日も明後日も大雪だった。 あり得ないことと知りつつ、それでも私は願わずにはいられなかった。 次の日、天気予報通り空には灰色の雲が広がり、視界を覆うほどの雪が降り続いていた。 分かってはいたことだけど、手紙の事もあり、私はなんとなく憂鬱な気分でため息をついた。 そのとき、コンコン、と部屋がノックされた。 気付くと看護師さんが来る時間だった。 扉が開き、いつもお世話になっている看護師さんが顔をのぞかせた。 「おはよう小早川さん。今日は紹介する人がいるの」 「……以前おっしゃっていた、研修の方ですか?」 もうすぐ来年度からこの病院に勤める新卒の看護師さんが研修生としてくる事を私は知らされていた。 「そう。定時回診のあとで来るはずだから」 どんな人だろう。 優しい人だといいけど…… 定時回診が終わって暫くしたあとドアがノックされた。 「はい、どうぞ」 「失礼します」 ドアが開き、病室に入ってきたのは…… 「え?」 「来年4月からこの病院でお世話になります、看護師の岩崎みなみです」 白衣に身を包んだ、みなみちゃんだった。 「みなみ……ちゃん……?」 「この病院で看護師の求人があったの。 内定が取れて、春から働くんだけど、今日から暫く研修にはいることになってるの」 「みなみ……ちゃ……」 「だから……」 みなみちゃんは優しく微笑んで、私を抱きしめた。 「これからは、ずっと……」 看護師さんのことを白衣の天使って言うけど、このとき私はみなみちゃんのことが本物の天使に見えた。 「一緒だよ」 「みなみちゃぁん!」 「誕生日おめでとう、ゆたか。一日遅くなってごめんね」 「みなみちゃん……みなみちゃぁんっ!」 雪が降っていても、空が蒼くなくても、目を覚ましたらみなみちゃんが来てくれる…… だって、今日は遠距離恋愛の日…… FM長野の大岩堅一アナウンサーが提唱した記念日。 『1221』の両側の1が1人を、中の2が近附いた2人を表す。 遠距離恋愛中の恋人同士が、クリスマス前に会ってお互いの愛を確かめあう日。 一日遅れのハッピーバースデーと、少し早いメリークリスマス。 さすらいのらき☆すたファン氏に戻る コメントフォーム 名前 コメント これは、とても良い話。OVA化 して欲しい!あるいは原作コミ ックの短編で掲載して欲しいです! -- チャムチロ (2012-11-20 12 24 21) ゆたか&みなみの話で最も素晴らしい話だと思います GJです -- (2010-04-01 15 32 09) 素晴らしい。GJでした。 -- 名無し (2010-03-09 21 46 02) やっぱりゆーちゃんとみなみんの話は、最高です。 とても素晴らしいです。 -- みなみん愛してる (2010-01-08 20 30 52) これが「友愛」か -- 名無しさん (2009-12-22 02 42 46) 夜勤の休憩時間にホロリとしました。 ホントにアッーーー劇場と同じ作者とは思えないっすよ。 これからの作品も楽しみにしています。 -- 名無しさん (2009-12-22 00 05 54) いいお話でした GJです 1日遅れだけど ゆーちゃん誕生日おめでとう O(≧▽≦)O -- オビ下チェックは基本 (2009-12-21 23 20 07)
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プロローグ 季節は初春、3月中旬。先週行われた期末試験明けの球技大会も、我ら2年5組は男子サッカー・一回戦敗退/女子バスケットボール・優勝と、旧1年5組と全く同じ結果となってしまったのは、昨年と競技種目が違うとはいえ、なんとなく想定内ではあった。これで高校2年生としての行事は全て消化し、あとは来るべき春休みまで短縮授業という、来年は受験戦争という監獄に放り込まれること確定な我々の学校では最後のオアシスたる怠惰な時間を満喫することになる……はずなのだが、残念ながら、現在の俺はそのような穏やかな心境ではない。 何が何でも今日は部室に行き、おそらく、今日もそこに勢揃いしているであろう非日常的存在に、折り入って相談しなければならないことがあったからだ。 ああ、ちなみにハルヒは用事があるとかで本日は部室には来ない。 一応ノックをする。先月末に卒業してしまわれたとはいえ、それ以降も健気に毎日毎日、部室で甘露なお茶を煎れて下さる方が、万が一お着替え中と言うこともあるからな。 「はぁい」 甘いエンジェルボイスでドアが開く。麗しのマイエンジェル朝比奈さんだ。 窓のそばの席には長門、長机の向こう側には古泉、と全員既に定位置に付いている。 しかしこいつら、いつここに来たんだろうね?確か俺は、ハルヒの次くらいに教室を出たはずなんだが。 ハルヒは今日は欠席だと伝えながら俺もいつものパイプ椅子に座る。 何となく残念なような、ほっとしたような空気が流れた。 「……あ、お茶煎れますね?」 朝比奈印のお茶が運ばれてくるまで、俺が今抱いている相談事をどうこいつらに伝えるべきか考えていた。 運ばれてきたお茶を一口飲んで、全員を見渡す。いつもの面々、いつもと変わらない日々。 「涼宮さんが来ないなら……私も入学の準備とあるから、かえろうかなぁ」 全員にお茶を配り終わって手持ちぶさたそうな朝比奈さんが、自分の椅子に腰掛けながら呟いた。 この方は努力の甲斐あってか、地元国立大学に一発で受かった。合格発表の時の喜びようは尋常ではなく、合格発表祝いのパーティinカラオケBOXでは、同じ学校に合格した鶴屋さんと見事なデュエットまで披露してくれた。下手だから人前では絶対歌わないって公言してたのにな。それだけ嬉しかったんだと思う。 未来に帰らなくて良いのかね? 「そうですね、たまには午後まるまる自由時間というのもいいでしょう」 詰め将棋の解説本を読んでいた古泉は、本を閉じ鞄に仕舞い始めた。 こいつは特進クラスだが勉強に特に苦労している様子はない。このまま来年も笑みを絶やさず、ハルヒのイエスマンをしながら楽々と受験戦争を乗り切るんだろうな。以前聞いたら医者志望とか言ってやがったし。 忌々しいやつだ。 ぱたん、と本を閉じる音がする。どうやら長門も帰るらしい。 「……図書館に本の返却」 こいつも来年は大学生になるのかね?ハルヒの能力がある限り側にいて観測を続けるのだろうが、まさか大学でも北高セーラーと言うことはないだろうな。 古泉が席を立った音で我に返った。 「あーー、待ってくれ。実はみんなに相談したいことがあるんだ」 「珍しいですね。あなたから我々に相談事とは」 いつもの3割増し位の笑みを浮かべた古泉は、帰り支度を途中でやめ再び元の席に座り直した。さっきよりも俺の方に近いと感じるのは、気のせいだろう、たぶん。 俺はおもむろに口を開いた。 「実は、転校することになった」 クワ~ン、カラカラ…… 持っていたお盆を床に落として固まっている朝比奈さん。 「………」 いつもは本以外は興味を示さない長門も、この時ばかりは顔を上げてこちらを凝視していた。深海よりも深い漆黒の瞳には、驚きの感情が有るように見える。 「……それはいったいどういう事でしょう?」 さっきの3割増スマイルはどこへやら、初めて見る強ばった顔。ああ古泉。仮面が外れかけてるぞ。さっさと直せ。 「これは失礼しました。しかし、先ほどあなたは転校とおっしゃいましたが、僕の聞き間違いではありませんよね?」 一瞬にしていつもの0円スマイルに戻る古泉だが、目が笑っていない。 「ああ、聞き間違いじゃないさ。家族揃って引っ越すことになったからな」 俺はそこで一呼吸おき、もう一度古泉、長門、朝比奈さんの反応を見る。 「……キョ、キョンくん、それってホントなんですかぁ~~~」 「……状況説明を要求する」 「もう一度聞きます。どういうことなんですか?。詳しく教えて頂くわけには?」 ああ、もちろんそうしてやるとも。俺だって今更、しかもこの時期に転校なんぞしたくない。こいつらならもしかして、合法・非合法を問わない手段で、この状況を何とかしてくれるんじゃないかという一縷の望みをかけて相談に来たんだからな。 第一章 家庭の事情へ
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プロローグ 季節は初春、3月中旬。先週行われた期末試験明けの球技大会も、我ら2年5組は男子サッカー・一回戦敗退/女子バスケットボール・優勝と、旧1年5組と全く同じ結果となってしまったのは、昨年と競技種目が違うとはいえ、なんとなく想定内ではあった。これで高校2年生としての行事は全て消化し、あとは来るべき春休みまで短縮授業という、来年は受験戦争という監獄に放り込まれること確定な我々の学校では最後のオアシスたる怠惰な時間を満喫することになる……はずなのだが、残念ながら、現在の俺はそのような穏やかな心境ではない。 何が何でも今日は部室に行き、おそらく、今日もそこに勢揃いしているであろう非日常的存在に、折り入って相談しなければならないことがあったからだ。 ああ、ちなみにハルヒは用事があるとかで本日は部室には来ない。 一応ノックをする。先月末に卒業してしまわれたとはいえ、それ以降も健気に毎日毎日、部室で甘露なお茶を煎れて下さる方が、万が一お着替え中と言うこともあるからな。 「はぁい」 甘いエンジェルボイスでドアが開く。麗しのマイエンジェル朝比奈さんだ。 窓のそばの席には長門、長机の向こう側には古泉、と全員既に定位置に付いている。 しかしこいつら、いつここに来たんだろうね?確か俺は、ハルヒの次くらいに教室を出たはずなんだが。 ハルヒは今日は欠席だと伝えながら俺もいつものパイプ椅子に座る。 何となく残念なような、ほっとしたような空気が流れた。 「……あ、お茶煎れますね?」 朝比奈印のお茶が運ばれてくるまで、俺が今抱いている相談事をどうこいつらに伝えるべきか考えていた。 運ばれてきたお茶を一口飲んで、全員を見渡す。いつもの面々、いつもと変わらない日々。 「涼宮さんが来ないなら……私も入学の準備とあるから、かえろうかなぁ」 全員にお茶を配り終わって手持ちぶさたそうな朝比奈さんが、自分の椅子に腰掛けながら呟いた。 この方は努力の甲斐あってか、地元国立大学に一発で受かった。合格発表の時の喜びようは尋常ではなく、合格発表祝いのパーティinカラオケBOXでは、同じ学校に合格した鶴屋さんと見事なデュエットまで披露してくれた。下手だから人前では絶対歌わないって公言してたのにな。それだけ嬉しかったんだと思う。 未来に帰らなくて良いのかね? 「そうですね、たまには午後まるまる自由時間というのもいいでしょう」 詰め将棋の解説本を読んでいた古泉は、本を閉じ鞄に仕舞い始めた。 こいつは特進クラスだが勉強に特に苦労している様子はない。このまま来年も笑みを絶やさず、ハルヒのイエスマンをしながら楽々と受験戦争を乗り切るんだろうな。以前聞いたら医者志望とか言ってやがったし。 忌々しいやつだ。 ぱたん、と本を閉じる音がする。どうやら長門も帰るらしい。 「……図書館に本の返却」 こいつも来年は大学生になるのかね?ハルヒの能力がある限り側にいて観測を続けるのだろうが、まさか大学でも北高セーラーと言うことはないだろうな。 古泉が席を立った音で我に返った。 「あーー、待ってくれ。実はみんなに相談したいことがあるんだ」 「珍しいですね。あなたから我々に相談事とは」 いつもの3割増し位の笑みを浮かべた古泉は、帰り支度を途中でやめ再び元の席に座り直した。さっきよりも俺の方に近いと感じるのは、気のせいだろう、たぶん。 俺はおもむろに口を開いた。 「実は、転校することになった」 クワ~ン、カラカラ…… 持っていたお盆を床に落として固まっている朝比奈さん。 「………」 いつもは本以外は興味を示さない長門も、この時ばかりは顔を上げてこちらを凝視していた。深海よりも深い漆黒の瞳には、驚きの感情が有るように見える。 「……それはいったいどういう事でしょう?」 さっきの3割増スマイルはどこへやら、初めて見る強ばった顔。ああ古泉。仮面が外れかけてるぞ。さっさと直せ。 「これは失礼しました。しかし、先ほどあなたは転校とおっしゃいましたが、僕の聞き間違いではありませんよね?」 一瞬にしていつもの0円スマイルに戻る古泉だが、目が笑っていない。 「ああ、聞き間違いじゃないさ。家族揃って引っ越すことになったからな」 俺はそこで一呼吸おき、もう一度古泉、長門、朝比奈さんの反応を見る。 「……キョ、キョンくん、それってホントなんですかぁ~~~」 「……状況説明を要求する」 「もう一度聞きます。どういうことなんですか?。詳しく教えて頂くわけには?」 ああ、もちろんそうしてやるとも。俺だって今更、しかもこの時期に転校なんぞしたくない。こいつらならもしかして、合法・非合法を問わない手段で、この状況を何とかしてくれるんじゃないかという一縷の望みをかけて相談に来たんだからな。 第一章 家庭の事情へ
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07月 2007年 http //marigold.1000.tv/team_bitters/orekano/index.html 624 :名無したちの午後 [sage] :2008/09/07(日) 03 33 21 ID krEx1pSp0 オレカノのあゆむはNTRとかあるからあまりオススメはできないが 脇道に行かなければあらゆる所でラブラブエッチ三昧だな。 個別エンドも非妊娠エンド(流れ的におそらく正規エンド)と妊娠→出産エンドの両方あるし。 626 :名無したちの午後 [sage] :2008/09/07(日) 19 45 09 ID jCxsd0rE0 あゆむは幼馴染的要素以上に、遠距離恋愛的要素が強いのがタマに傷 けど、みやタンの艶技は明らかにNTRルートの方が燃えているんだよなあ イチャラブHという点では良い感じだが スレ的には関係ないがこんぶレベルまでいくと何か凹む
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第四章 想い 『もう少しましな伝え様は無かったのですか?』 心底疲れたといった声で、携帯の向こうの古泉が呟く。 『今日の1時限目の授業中に、突然閉鎖空間が複数発生しました。一つ一つの規模や速度はそれほど大きくないのですが、一つを崩壊させるとまたすぐに別の空間が発生するというイタチごっこでして……現在、機関総出で対応していますが、この発生ペースだといずれはまずいことになりそうです』 そうか、本当にすまんな……しかし、あいつの不思議パワーは減少しているんじゃなかったのか? 『確かに、我々の調査結果を見る限り、最近では最盛期の半分程度まで落ちていました。閉鎖空間発生も希な状態になってきていましたしね。しかし、今回のこの閉鎖空間の数は過去最大です。涼宮さんには、まだこれほどの力が残っていたんですね、驚きです』 あいつの力が復活したと言うことなのか? 『それは分かりませんが、今はこの事態を何とか収束させなければなりません。そうでなければ調査すること自体出来なくなりますからね。そこで、あなたの力でなんとか涼宮さんを落ち着かせてくれませんか?』 とは言ってもな。お前も知っての通り、今回の状況は俺の力じゃ何ともならんのだ。 『我々としても、あなたに今回の全ての責任があるとは考えていませんが、貴方でなければ涼宮さんを押さえることが出来ないと言うことも事実なんです。状況は一刻を争います。お願いします……すいません、それではこれで』 そこまで言うと、携帯は切れた。また新しい閉鎖空間が出現したらしい。 放課後となった教室でぼーっとしていても埒があかないので、俺は机に放置されていたハルヒの鞄を持って部室へと向かっていた。学食行って昼飯かっ込む気分じゃなかったしな。その最中古泉からの連絡が入った。それが先ほどの会話というわけだ。 あのバカ、あれから今まで閉鎖空間を出現させっぱなしだと?閉鎖空間連続発生記録にでも挑戦してるのか。 そんなことを考えながら歩いていると、部室棟への渡り廊下で朝比奈さんと長門が待っていた。 「……本日午前9 42から現在まで、閉鎖空間の異常発生を関知している」 ああ、知っている。さっき古泉に聞いた。 「現在まで確認された閉鎖空間は152……153個目の発生を確認」 なんですと??大量発生とは聞いたが、多すぎやしないか、それ? 「情報統合思念体も混乱している。通常、涼宮ハルヒの情報改変能力は『破壊し、創造する』方向、つまり『自分に都合の悪い情報を、都合の良い方に改変する』ことに向けられていた。しかし今回は『破壊』のみに向けられている」 破壊のみってことはつまり……あのバカが世界を滅ぼそうとしているってのか? 「……有り体に言えば、そう」 なんてこった。 「キョンくん、涼宮さんをなだめられるのは貴方しかいないんです。お願いします」 朝比奈さん、そんなに涙をいっぱいに溜めないで下さい。そんな貴女に惚れ直しちゃうじゃないですか。 「……現在部室棟の周りに対情報シールドが展開されている。従って現在部室内の涼宮ハルヒがどのような状況になっているかは、こちらからは確認できない」 対情報……なんだって? 「涼宮さんは、誰にも部室に来て欲しくないと思っているんです」 じゃあ、俺も入れないって事じゃないですか? 「……貴方は別。そもそもこの状態の原因を作ったのは貴方。貴方が現在置かれている状況には同情するが、それでも涼宮ハルヒへの情報伝達時に致命的なミスがあったと思われる。結果としてこの状況が出現した」 長門に同情されるとはな。で、また俺か。てか、事実を伝えるって、あれ以上なんて言えば良いんだ? 「涼宮さんにはどういう風に伝えたんですか?そこに、この状況を解決する鍵があるような気がします。詳しく教えてください」 俺は朝の教室から部室での出来事を包み隠さず二人に話した。 「……朴念仁」 「……それ以外の言葉は見つかりませんねぇ……」 なんだなんだ?何のことだ? ふと長門が虚空を見上げ、珍しく「焦り」の色を瞳に含ませた。 「……164個目の閉鎖空間発生を確認。このままでは古泉一樹らの処理能力を大きく超えてしまう。時間がない」 あわわ、という表現がぴったり似合う言動を行いながら、朝比奈さんが激励を飛ばしてくれた。 「キョンくん!私、信じてますから!キョンくんなら……あなたなら、きっとなんとかしてくれるって!」 「……貴方は涼宮ハルヒの『鍵』。忘れないで」 俺はため息をつき、部室棟へと歩き始めた。 SOS団室のある部室棟に入ると、違和感が体を駆け抜けた。 対情報ナントカのせいか、部室棟には人の気配がない。人の気配どころか、殆ど音が聞こえないのだ。本来なら部活をしている連中やブラスバンドの練習の音が聞こえてくるはずなのに、そんな音も聞こえない。 廊下を歩く俺の足音だけが響く。景色だけならいつもと全く変わりはないが、外界の音だけがしない。 正直、気味が悪い。 そんな静寂の中、さっさと扉をノックしよう……として止めた。文芸部室の中から、微かに音が聞こえる。 まさかこの状況でで心霊現象でもあるまいし、などとアホな考えを頭から追い出した。中にいるのはハルヒで確定なんだが、何やってるんだあいつ。俺は部室の前で聞き耳を立ててみた。 すすり上げるような音、くぐもったような声。 ハルヒ?泣いてるのか? 部室から漏れ聞こえるハルヒの声や涙をすすり上げる音に俺はショックを受けた。 あのハルヒが泣いている? いやそりゃハルヒだって女子高生なんだから泣くことはあるだろう。だが、過去にない規模の閉鎖空間を生み出し、更にわざわざ部室に対情報ナントカを張ってまで、この部室に籠もり、あれからずっと泣いていたのか、こいつは? 部屋の中から聞こえる涙声にちょっと入りづらくなった俺は、どうやってハルヒを落ち着かせようかと、色々考えていたのだが、こういう状況に全く慣れていないため良い考えは浮かんでこない。古泉あたりなら何か良い考えでも浮かぶのかもしれないが、あいにく今ここには居ない。 しょうがない、入るか。 俺は部室のドアをノックした。 「入るぞ」 「う゛ぁっ!キョ、キョン!?ま、ま、ま、待って、ちょっと待って!」 ガタガタ、ばたばたと部室の中から音がする。ドアノブを捻るが、鍵が掛かっていた。 「どうした、着替え中だったか?」 「うっさい!デリカシーのない奴ねあんたは!もうちょっと待ちなさい!」 「へいへい」 部室のドアに背を持たれかけさせて、横暴な団長様の許しが出るまで座って待つ。 結局、ドアの鍵を外す音がしたのは5分以上経ってからだった。 「どうしたんだ、一体」 部室に入ると、いつもの団長席にハルヒはいた。窓側の方を向き、こちらからは表情が伺えないが、右手に濡れタオルを持っているのが分かった。 「うるさい。あたしだって色々やることがあるのよ」 多分、まだ目が腫れているんだろう、こっちの方を向こうとはしない。さっきドタバタしていたのは、濡れタオルを作って目を冷やしていたのか。 「そっか。ああ、ほらこれ。お前の鞄だ」 団長席にハルヒの鞄を置き、いつもの自分の席に着く。 「……中見たりしなかったでしょうね!」 ハルヒはまだそっぽを向いている。どんな表情をしているのか、こちらからはよく見えない。 「人の鞄の中を勝手に見る習慣はない」 「……ふん」 静寂が場を支配する。朝の気まずい雰囲気が再現されたかのようだ。 「……あー、その、何だ。ハルヒ」 「……何よ」 「古泉たちに、例の件を話した」 「……そう」 再び沈黙。空気が重い。 「それと……朝のこと、悪かった」 俺の謝罪の言葉にぴくりと反応したが、返事は帰ってこなかった。 「実は俺もまだ混乱しててさ。一応、表面上は取り繕っているけど、本当は全然落ち着かないんだ。だから、もしかしたらお前を傷つけたかもしれん。謝る。この通りだ」 椅子から立ち上がり、どこぞの執事も真っ青なほど綺麗に、直立不動の状態から頭を下げた。 「……いいわよ、もう。謝られてもしょうがないし」 頭を上げると、ハルヒはこちらを向いていた。少し目が腫れぼったい。 「……あんたが教室に戻ったあと、色々考えたのよ」 俺が椅子に座り直すと、ハルヒはこちらの方を見ないようにして話し始めた。 「あたし、なんでこんなにイライラしてるんだろうって。それこそ中学校の時以来よ、こんなにイライラした気分になったのは。で、今日一日考えてみたの。ずいぶん考えたけどやっと結論が出たわ。あたしは……」 そこで一旦言葉を切って、ハルヒはこっちに向き直った。 「アンタが好き」 ハルヒの射すくめるような視線と考えてもいなかった爆弾発言で、俺はそこでフリーズしてしまった。 ハルヒが俺を好き?何故?WHY? イヤそれは俺だって若い健康な男子高校生であるからして女子からの告白なんぞを受けたいと思ったりもしているのだが何故それを今俺にしかも相手はハルヒだぞ?確かに黙っていれば一美少女女子高生だしスタイルも良いし勉強だって…… 混乱している俺の状態などつゆ知らずか照れ隠しなのか、ハルヒは言葉を続けた。 「そう考えると、辻褄が合うのよ」 その言葉で我に返った。辻褄て。恋愛感情を辻褄の一言で納得するのか。大体、恋愛感情なんて精神病の一種とか以前言ってなかったか? 「……そうね、確かに言ったわ。実際こんなに心が辛いなんて、恋愛はホントに病気の一種だわ……あんたが転校するって聞いてから、何だかもう、何もかも色あせて見え始めた。もうどうでも良くなったわ。それこそこの世界が無くなってしまっても良いって思った」 それで閉鎖空間大発生ですか。ホントに迷惑な奴だ。 「色々なことを考えたわ。今までのSOS団がやってきたことだとか、三年目のSOS団の活動計画とか、大学受験のことだとか。でもね、SOS団の……いえ、あたしの中には必ずアンタが居た。考えてみれば、SOS団設立のきっかけをくれたのもアンタだったわね」 ある意味、俺の中では最大の失策でもあったのだが。 まあ、それが特殊属性を持つ連中との邂逅と非日常への招待券だったと思えば十分おつりが来るさ。 「無人島にも行ったし雪山合宿もした。本当に楽しかったわ。このままずっと、この楽しさが続いていけば良いのにって思った。でも、みくるちゃんが卒業して気付いた。このままずっと続くと思っていたことが、そうでは無いって事に。知っていたけど考えないようにしてた」 ハルヒはふと立ち上がると、窓の方を向いた。 「でも、みくるちゃんは卒業してもこっちの大学だし、時々課外活動でも会えるだろうから、まだ猶予はある、楽しいことはまだまだ続けられるって、そう思った」 「ハルヒ?」 「……でもね」 あふれ出る感情を無理矢理押し殺したような声で、ハルヒは俺の言葉を遮った。 「キョンには、もう会えないかもしれない。もしかしたら終業式で最後になっちゃうかもしれない。そう思ったら……胸の中の何かが……あたしを支えてきてくれたものが、とても大切なものが……えと」 ぐしゅっ、と鼻をすすり上げる音が響く。 「……無くなってしまうことに気付いた」 一瞬の沈黙のあと、ハルヒはこっちを振り向いた。 「そしたら、あたしは、アンタの知っているあたしじゃなくなっちゃった」 いつもの100Wの笑顔ではなく、儚げな、今にも消えてしまいそうな笑み。 そしてその目からは、大粒の涙がぼろぼろとこぼれていた。 「キョン」 心の底から怒濤のような感情の流れが俺を支配する。 「アタシは、アンタが好き」 いつもの勝ち気なハルヒではない……この儚げな笑み。泣きたいのを無理矢理押し殺した、笑み。 こいつにはこの笑みは似合わない。 「優柔不断で」 真夏のヒマワリのような100Wの笑顔。あれこそがハルヒには似合うってのに。 「鈍感で」 抱きしめたい。 「文句が多くて」 守ってあげたい。 「理屈っぽくて」 コイツの側に居てやりたい。 「だらしないヤツだけど」 あの100Wの笑顔をいつもさせてやりたい。 「アタシは」 ハルヒの想いに応えてやりたい。 「アンタが好き」 俺も、ハルヒの事が…… 「ハルヒ、俺は……」 「言わないで」 「は?」 「別に返事を期待したワケじゃないから。ただね、ただキョンには覚えていて欲しい。アンタを大好きだった同級生がいたこと。涼宮ハルヒっていう…あたしがいたことを」 それだけ言うと、涙を拭こうともせずにハルヒはドアに向かって歩き始めた。 コイツ、俺の返事を聞かず、自分の想いだけを告げて別れるつもりか。 だが俺は、石化魔法でも掛けられたように、その場を動けなかった。 ハルヒが近寄ってくる。すれ違いざま、ハルヒは俺の唇にキスをした。 触れるか、触れないかの軽いキス。 ふわっとした香りと柔らかい感触、そして少しの塩辛さが唇に残った。 「さよなら、キョン」 それで石化が解けた。このまま行かせちゃいけない!ハルヒが一直線に気持ちを伝えてくれたんだ。 あんな顔をさせたまま別れちゃいけない!早く俺のこの気持ちも伝えてやりたい! 思わず振り向くと、ハルヒが部室のドアに手を掛けたまま崩れ落ちるのが目に入った。 「ハルヒ!」 慌てて抱き起こすが、そこには「くー、くー」と寝息を立てているハルヒの姿があった。 …………… 「まったく……手の掛かる団長様だぜ」 やれやれだ。 第五章 告白へ