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破壊臣に墓石 ◆xzYb/YHTdI E‐4にて、阿久根高貴は目を覚ます。 「っ!…そうだった。確か銃で撃たれたんだっけか。僕は」 自称皆を幸せにする者、供犠創貴のバトル漫画では ありえないような不意打ちにより、彼は倒れたのであった。 「さて、見事なまでに僕に何も残してはくれなかったみたいだな」 そう、今の彼の手待ちは空だ。 食糧も、水も、十字架も、それに2個もいらないような地図とかまでも。 容赦は一欠片もなかった。 「そうだな。この足だと何もできない。病院…はどこにあるのかな?」 それすらも今の彼には分からなかった。 仕方なしに適当に歩き始めた。 ◇ 「しかし、阿久根高貴とかいったか。その満身創痍の身体で 俺に襲ってくるとはな。なぜそんな早まった真似をする」 宇練銀閣は言う。 眠たそうにしながら。 一方、阿久根高貴は返す。 つらそうにしながら。 「どのみち僕の人生は短そうだったからね。 捨て身の方法をとらせてもらったよ。失敗だったけどね」 阿久根高貴は宇練銀閣を背後から襲った。 しかし失敗に終わった。 宇練銀閣は阿久根高貴の腹に鞘のまま突きで攻撃されたからだった。 「そうか。別にどうでもいいが」 「だろうね」 「さてとだ。今から俺はお前を殺す。 悪く思うなよ。お前が悪いんだからな」 なんの感情を感じさせない口調で言った。 それに一瞬阿久根高貴は目を丸くしたが、答えを返した。 「そうだね。じゃあめだかさんや、善吉君や、喜界島さんに、真黒さんもいるかな? その人たちに会ったらこういっておいてくれよ」 「何だ」 阿久根高貴は言う。 「僕はここまでだ。だけど今までの生活は楽しかった。 生徒会の絆は終わらない。僕たちはいつまでも仲間だよ。って伝えてくれ」 それは、完全に生を諦めた者の言葉。 仲間を傷つけようとした者の言葉。 もう終わってしまう者の言葉。 そこにはじまりなどない。 終わり。 ある1人の物語の終わりしか見えない。 終わりからは何も生まれない。 「そうか、ならば死ね」 この者も容赦なく1人の青年の物語にピリオドを打った。 ◇ 「またつまらぬものを切ってしまった」 そのセリフがまだ誰のものでもない時代を生きた者。宇練銀閣。 彼は今終わった青年から噴き出している血を眺めていた。 「しかし、阿久根高貴。こいつの死体はどうしようか」 誰もいない中。 独り言をつぶやく。 「こいつに墓石など似合いそうもないな。―――さてと行くか」 そういうと彼は因幡砂漠を目指し歩き始めた。 最後の最後で破壊臣は改心した。 墓石?ん?そんなものあるはずがないだろう。 【阿久根高貴@めだかボックス 死亡】 【1日目/黎明/F‐4】 【宇練銀閣@刀語】 [状態]健康 [装備]血濡れの刀@不明 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(1~4)、首輪 [思考] 基本:因幡砂漠を歩き、下酷城を探す 1:流れに身を任せる 2:斬刀を探す [備考] ※まだ刀は使える状態です 夢の『否定』 時系列順 狐の達観 夢の『否定』 投下順 狐の達観 反抗開始 阿久根高貴 GAME OVER 閃々響々 宇練銀閣 鷹と剣士の凌ぎ合い
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人喰い鳥 ◆mtws1YvfHQ 「時代の流れか」 真庭鳳凰は呟いた。 真庭忍軍の実質的な頭にして真庭忍軍十二頭領の一人。 十二頭領。 元々は頭領など一人しかいなかった。 しかしある時期、頭領を十二人に増やそうと言い、実行した。 その時期、その時代、敵対関係にあった相生忍軍との戦いに勝つため、実行した。 結果は大成功だったと言える。 個々の突出した能力を最大限に活かす事ができ、そして生き残った。 勝ち残ったと言っても良い。 「これもまた」 しかしそれが今ではどうだろう。 半日も経たずに参加している四人の真庭忍軍頭領の半分が死亡。 個々の能力が傑出しているからこその十二頭領。 それが脆くも半壊状態。 化け物だらけだから仕方がない、などと言う言い訳が立つわけがない。 卑怯卑劣を売りとしている忍者が力に圧倒されて負けたなど、笑い話にもなりはしない。ましてや、実質的な頭と言われている真庭鳳凰がそれではなおの事。 こんな現状で生き残れるのか。 勝ち残れるのか。 「思い上がっていたつもりなど、なかったのだが……」 神の鳳凰。 真庭忍軍で唯一、実在しない動物の名を冠する忍び。 なのに。 「このままでは犬で終わるな」 さも可笑しそうに笑い、空を見上げた。 竹の葉ばかりの空を。 しかし何処か力がないように見受けられる。 それに、普段は鋭い眼光も何処か鈍く見える。 そのまま左腕を掲げ、 「負け犬、噛ませ犬ではまったく――笑えぬ」 振り下ろす。 そして己の右腕を。 あたかもやり慣れているかの調子で。 斬り落とした。 回想――それは少し前の事だった。 真庭鳳凰は竹林の中を歩いていた。 ただ北へ。 ただ踊山の頂上へ向けて。 「……しかし、踊山の麓に竹林などなかった筈だが」 首を傾げながら。 相も変わらず色々と考えながら。 無意味に思い悩みながら。 竹林の中をブツブツと。 「む?」 不意に足を止める。 竹林の中にある不自然な光景。 薙ぎ倒された竹。 それも一本や二本ではない。 嵐でも通り過ぎたかのように大量の竹が中途から薙ぎ倒され、辺りに散乱していた。 耳を澄ませ、音を聞く。 気配もなく草を踏み締める音一つしない。 鼻を動かし、 「ふむ」 とだけ呟き、また歩き始める。 血の臭いの濃い方向へ。 気配を殺し、念のために炎刀を構えながら。 意外に早くそれは見付かった。 胸元から血を流し尽くした、しかしどこか満足げな顔をした娘。 遠目に見てもこれと言った持ち物は見当たらない。 顔色からして死んでいるようではあるが。 「………………」 一応の警戒をしながらにじり寄る。 警戒するまでもなく、完全に死んでいた。 しかしそれでも周囲を見渡し、やっと警戒を解いた。 一先ず近くで軽く観察をし、左腕を伸ばし、娘の致命傷となったであろう傷口に触れた。 そして発動した。 「ん――――」 娘の、いや、匂宮出夢の服に触れ、忍法記憶巡りが発動した。 巡る。 服の記憶を巡る。 放送の終わった頃へ。 放送の始まった頃へ。 ただ倒れたままの時を。 「――なっ!」 そして見る。 殺した、顔に紋様の刻まれた小さな少年を。 その少年と話をし、共に何処かへと去っていく、 「鑢七実!」 更に巡る。 竹林を歩き、途中で妙な娘と男と出会い、竹林に入り、雪上を歩み、かまくらで出会い、七実と共に歩いてきたこの娘。 おおまかにであっても把握した。 異常であると。 化物であると。 そして理解した。 やはり七実はそれ以上の天災であると。 「妙な者が……いや、妙な化物がやはり多いか」 そして、それらにむざむざ殺されないようにするためにはどうするか。 簡単だ。 ――回想、終了。 「――堕ちればいい」 異国の宗教にもある、天国から地獄に堕ちた天の使いのように。 十二の刀の一本を得て最強の座から自ら堕ちた堕剣士のように。 神などと呼ばれている今から。 「同じ化物にでも」 右腕を伸ばし、手近な竹を握る。 竹の握った部分は手の中で屑になり、上の部分はただ倒れる。 「――やはり付けてすぐでは制御が効き難い。が」 倒れた竹を無視し、そう言いながら手を握ったり開いたりと。 匂宮出夢の腕の具合を試し始めていた。 先ほど真庭鳳凰が自身の腕を斬り落としたのは周知の事実だろう。 そしてくっ付けた。 出夢の腕を死体から切り離して。 忍法命結び。 それを使って。 全力を出せば、 「それでも」 体を捻り、全身の力を込め、振るう。 片腕のない死体に。 人すらも喰い尽くす右腕を。 たったそれだけで、地面は抉れ、血肉が散る。 「十分な威力だ。なるほどこれが――《一喰い》か」 その光景に頷く。 予想通りの光景に頷く。 そして、首を振る。 「しかし、これではしばらくまともに物を持てぬな」 地面に落ちていた小石を摘まむ。 あっさり砕け散った。 思わず苦笑いが漏れる。 まだ力の制御がまるで利いていないことが難点ではあるが、それでも今の所は十分。 今後、更に化物の部品を結んで行けば良い。 優勝するにしろ、別の何かをするにしろ、どちらにしろ、どちらにしないにしろ。 強くなって損はない。 堕ちて行って損はない。 一先ず、何となく、支給品の中身を確認し、 「さて一先ず踊山を登ると――」 見付けた。 名簿を。 二枚目の名簿を。 「――ん? ん? あぁ、虚刀流に返し忘れていたか」 と言う事は放送でしかこの場にいる人間を把握できてない可能性がある。 その可能性しかないの間違いか。 見覚えのある名前のほか、知らない名前も多い。 だがそれでも見覚えのある名前が何人いるかだけでも知っておいて損はない、だろう。 「………………一応、探すとしよう」 片手で地図を広げる。 東に行くと言っておいたのだからまさか着いて来ているはずはない。 北は今しがたまで歩いていたが出会う事もなかった。 そして南は砂漠と海と行く意味を感じられない場所しかない。 そうなれば行っている可能性があるのは、 「西か――ついでに斜道郷壱郎研究施設とやらも見てみるか」 そうして、鋭い眼光をした真庭鳳凰は動き出す。 《人食い》の腕を得てどうなるのか。 それは誰にも分からない。 それでもその後には、胴を喰われた匂宮出夢の死体が残されていた、 【1日目/昼/E-8】 【真庭鳳凰@刀語】 [状態]健康、精神的疲労(小) [装備]炎刀『銃』(弾薬装填済み)、匂宮出夢の右腕(命結びにより) [道具]支給品一式×2(食料は片方なし)、名簿×2、懐中電灯、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、ランダム支給品2~8個、「骨董アパートで見つけた物」、首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1 [思考] 基本:優勝し、真庭の里を復興する 1:西へ向かう 2:本当に願いが叶えられるのかの迷い 3:今後どうしていくかの迷い 4:見付けたら虚刀流に名簿を渡す [備考] ※時系列は死亡後です。 ※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません ※「」内の内容は後の書き手さんがたにお任せします。 ※炎刀『銃』の残りの弾数は回転式:5発、自動式9発 ※支給品の食料は乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。 ※右腕だけ《一食い》を習得しましたが、まだ右腕での力の細かい制御はできないようです ※E-8の匂宮出夢の死体は半壊状態になっています 多問少択 時系列順 marshmallow justice 多問少択 投下順 marshmallow justice 立つ鳥 真庭鳳凰 稀少種(鬼性手)
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概要 西尾維新の『戯言シリーズ』の登場人物、零崎人識とジョジョ2部の主人公、ジョセフ・ジョースターのディスペクター。 ジョセフの「誇り高きジョースターの血統」に対して人識の「純粋な殺人鬼の血統」、人識の「鏡写しの存在と器用な手先」に対してジョセフの「シーザーを亡くした+義手」とディスペクトし合っている。 FT 黄金の意思はズタズタに裂かれ、鏡写しは命を落とす。 元になったキャラ 零崎人識 ジョセフ・ジョースター タグ ジョジョ ディスペクター ラノベ 戯言シリーズ 連結 名前 コメント
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概要 西尾維新の『戯言シリーズ』の主人公、戯言遣いがレクスターズになり、ジョジョ2部の登場人物、ワムウの力を纏った姿。 FTの「シーザーじゃない」理由は過去にシーザーがディスペクターになっている事が原因である。 FT ①風に流れるほど軽く、しかしその風すらも踊り出す。そんな、戯言。 ②普通そこはシーザーだろと言われても、ぼくには決める権利なんてない。ぼくに出来る事なんて、口先八丁の戯言と世界を救うくらいだもの。 ─戯言遣い 友を救いたいと思う心は彼奴にも負けんよ。それに、彼奴もじきに来るだろう。 ─ワムウ タグ ジョジョ スター進化 ラノベ レクスターズ 名前 コメント
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自己ノ紹介 絶対的に自己紹介じゃない自己紹介 名前:荻原 性別:女 怠惰でマイペース。 世間が嫌いで、でも人が好き。 ただし根性が無いので他人と付き合う事が出来ていない駄目人間。 口癖:「ムリ」「もうダメ」「めんどくさ」「どうでもいい」「どうしようもない」 ファンタジーの世界が好き。 神話の世界から平安時代、江戸末期を好む。 安陪晴明好き。 新撰組好き。 作家は小野不由実、西尾維新が好き ホラー嫌い 漫画とアニメを愛するヲタク 攻殻機動隊好き。 今敏監督作品が好き。 カオス原理は分らないが何か好き。 今観たいモノ 鉄コン筋クリート 大奥 パプリカ さくらん ブログ→Junk Human 何かあったらこちらから 名前 メールアドレス 内容
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殺人鬼の邂逅 ◆xzYb/YHTdI 「どこ行ったんだろうな。さっきの子」 「さあ。確かこっち方面には来てたけど」 「ならそろそろ見つかってもいい頃だろうがっ!!」 「僕に言わないでくれよ」 理不尽な物言いにたじたじ…というよりは殺したい気持ちを必死に抑えている僕 宗像形とその理不尽な申し立てをしている女の子は阿良々木火憐さん。 自称正義の味方らしい。ちなみにファイアーシスターズの実戦担当をやってるらしい。 それで僕たちは今地図上でいえばE‐7のあたりにいると思う。 そこでさっきの白髪の女の子を探している。だけど中々見つけられずにいた。 「う~ん。この辺にはいねえのかな?」 「そうみたいだね。じゃあ次に…」 僕たちは次の場所に向かおうとすると。 「ちょっと待つっちゃ」 「あ?なんだお前」 ある男の声によって、引きとめられた。 僕たちを引きとめたのは、麦わら帽子にスリーブレスの白シャツによれよれのズボン、 比較的線が細く華奢な男、そしてすこし赤く染まった釘バットのようなもの。 なんていうんだろう。何だろうこの感じ。 この男は危険で、危難で、物騒な感じで、そして、とても僕と似ている。 それは、どう考えても、良い事ではない。悪い事づくしだ。 「俺は零崎軋識だっちゃ」 男はそう名乗った。 「それであんたらに聞きたいことがあるっちゃ」 「ほう。何だ」 代表して僕が答えた。ちなみに火憐さんはというと既に臨戦態勢をとっていた。 …この男が危険なのを察したのだろうけど、人をみかけで判断するな。といい 僕に手をあげたばかりだろう。横暴だ。 まあ、この場合は正しい行動といえなくもないからいいけど。 僕はというとまだ大丈夫だ。さすがに犬死は勘弁だ。 「この辺でレン、なんか背が高くて背広着て、メガネ掛けた男か、 もしくはトキ、かなり黒の長髪にタキシードの奴だっちゃ そんな感じの奴見なかったっちゃ」 「生憎ですが、知りませんね。他をあたってくれますか?」 「そうか。ならそうするっっちゃ」 そういうがいなや零崎さんは釘バットを振りかざした。 が。あらかじめある程度は予想できていたので、僕は間一髪避けれた。そして 「ここは退くよ」 「へ?」 すぐに火憐の手を取り逃げた。 零崎さんは僕たちを追ってこなかった。 ◇ しばらく走って追ってこなかったのである程度で止まった。 「おい、なんで逃げたんだ!」 どっからどう見ても怒っていた。 「無理だよ。あの人にはどうやったって勝てない。退くべきだよ」 「え?でも悪者だぞ!」 「悪いけど、あの人は普通じゃないよ。雰囲気がやばい。 とてもあんな刀の寄せ集めで勝てるような相手じゃない」 「だけどさ!悪い奴を裁くのが正義だ!ここでやらなきゃいつやるんだよ」 「死ぬよ。冗談抜きで。それにあの人は既に人を殺している。 あの釘バット、血が付いてた。それに血のにおいもほのかに匂った。」 「だからどうした!!」 「は?」 「別にあたしも遊びで正義を語っているんじゃないんだ! 正しく、強く、悪者なんかに負けちゃあいけないんだ!」 「もう一回ゆうけど死ぬかもしれないんだよ。」 「ふん。だから愚門だぜ、宗像さん。正義は、勝つんだぜ」 「………わかった。逃げるのはやめよう。だけど火憐さんは駄目だ。危険だ」 話し合っても無駄だと感じた僕はそう言った。 けれどやはり、彼女は守りたかった。 「はあ?なんだ。あたしの力を疑ってるのか?さっきあんなにしてやったのに」 「いや。君の力は疑っていない」 「じゃあ」 「だけど、あの人は真正面から正々堂々いったところで犬死にするだけだ」 「じゃあどうすんだよ」 「だから本当はここで逃げるのが一番だから。でも 君がそう言うのであれば無理を承知でもやってやる」 「で、何であたしは行っちゃいけないんだ」 「はっきり言って僕の戦い方は一人の方がやりやすい。それに」 「それに?」 「あの女の子も放っておけないでろう。君が探すんだ」 「う~ん。大丈夫か。でも宗像さんがそういうのであればそうなんだな。 なにせあたしが認めた男の人なんだからな。ただし死体で帰ってくるなよ。」 僕は認められるようなことはしてないし、 励ましの言葉としてはいささか間違ってる気がするが。 「君は本当に無茶を言うね。まあ頑張るよ」 「じゃあ後は任せたぜ」 「ちょっと待って」 僕は彼女を引きとめる。 「なんだ?」 「よかったら、僕と友達になってくれないかな?」 「何言ってんだ?いまさらだろ」 本当に不思議そうな顔をしていた。 「…そうだったね」 「じゃあいってくるぜ」 そう言うと走ってどっか行ってしまった。 「……さて、面倒だ。さっさと殺して終わらせよう」 それは、殺人を一回もしたことが無い、殺人鬼のセリフだった。 そう言うと、僕は今走って来た道を引き返した。 ◇ 全く面倒なことを頼まれたもんだな。いや僕が自分から言ったんだっけ。 はぁ。だいたいあいつにどうやって勝てと言うんだよ。 殺人衝動こそあれど、自殺願望はないぞ。 でも、何だろう。あれだよね。人とこんなに関わりあえたのって、 生徒会以外だったら初めてだよな。そう思うと感慨深いね。 何はともあれさっさあいつを片づけて、火憐さんの元に急がなきゃな。 そう思えば、もう怖くはないな。あんな奴余裕だね。嘘だけど。 さてそろそろ…あぁいた。零崎さん。立ったまま手を顎にあて何か考えているご様子だ。 さっき言ってたレンさんとトキという人の事かな。まあどうでもいいが じゃあ、挨拶代わりといたしまして、よっと。 僕は刀2本をあの人に向かい投げた。 だが普通に弾かれた。というより砕けた。…当たり前か。 「そこにいるのはさっきの奴っちゃね」 「ああ、その通りだ。僕の名前は宗像形。以後よろしく」 「なんだっちゃ。せっかく見逃してやったちゃのに」 「なに。勝てると思ったから帰ってきただけさ」 「本気で思ってるっちゃ?」 「ああ。今から僕は」 「勝てると思うから君を殺す」「負けないと思うから君を殺す」 「君が危険だから君を殺す」「僕が危険だから君を殺す」 「君が異常だから君を殺す」「僕が異常だから君を殺す」 「君が生きているから君を殺す」「僕が生きているから君を殺す」 「君が死んでないから君を殺す」「僕が死んでないから君を殺す」 「君が僕と会ったから君を殺す」「僕が君と遭ったから君を殺す」 「君が僕と合ったから君を殺す」「僕が君と逢ったから君を殺す」 「君が僕と遇ったから君を殺す」「僕が君と在ったから君を殺す」 「僕のために君を殺す」「世界のみんなのために君を殺す」 「自己満足するために君を殺す」「自己嫌悪するために君を殺す」 「博愛主義だから君を殺す」「偏愛主義だから君を殺す」 「君がいるから君を殺す」「僕がいるから君を殺す」 「気分が舞い上がっているから君を殺す」「気分が悪いから君を殺す」 「愛しているから君を殺す」「憎いから君を殺す」 「何も無いから君を殺す」「何か有ったから君を殺す」 「君が人だから君を殺す」「僕が人だから君を殺す」 「君が鬼だから君を殺す」「僕が鬼だから君を殺す」 「君が悪だから君を殺す」「僕が正義だから君を殺す」 「君が正義だから君を殺す」「僕が悪だから君を殺す」 「君が中立だから君を殺す」「僕が中立だから君を殺す」 「君が敵だから君を殺す」「僕の敵だから君を殺す」 「君が味方だから君を殺す」「僕の味方だから君を殺す」 「君が裕福だから君を殺す」「僕が貧乏だから君を殺す」 「君が貧乏だから君を殺す」「僕が裕福だから君を殺す」 「君が平凡だから君を殺す」「僕が平凡だから君を殺す」 「君が天才だから君を殺す」「僕が馬鹿だから君を殺す」 「君が馬鹿だから君を殺す」「僕が天才だから君を殺す」 「君が強いから君を殺す」「僕が弱いから君を殺す」 「君が弱いから君を殺す」「僕が強いから君を殺す」 「君が怖いから君を殺す」「僕が怖いから君を殺す」 「君が穏やかだから君を殺す」「僕が穏やかだから君を殺す」 「運命だから君を殺す」「因果だから君を殺す」 「必然だから君を殺す」「偶然だけど君を殺す」 「月がきれいだ だから殺す」 「お腹がすいたな だから殺す」 「夢見が悪そうだ だから殺す」 「君とは友達になれそうだ だから殺す」 「殺したい だから殺す」 「そして、何より大切な友人からの頼みだから、君を止める まあ、厳密には違うけれど、僕は一度解放したら制御できないとおもうからね」 「…あんた、零崎に似てるっちゃ」 「よく分からないが礼を言っておくよ だから殺す」 そういって僕は刀を二本持ち、零崎さんに突っ込んでいった。 無論、そんなのが通じるわけでもなく 「遅いっちゃ」 なんとか、刀で防いだが、また二本なくなった。 だけど腐るほど刀はあるんだ。しばらくは突っ込むか。 ◇ どうだろう。刀は百本ぐらいはなくなったかな。 やっぱ駄目かな。なかなか勝てないね。だって向こうは無傷だし。 わかったことといったら零崎さんは僕とは違い、本物の殺人鬼だ。ってことぐらいだ。 本物と偽物。やっぱり違うなあ。 「いい加減にするっちゃ。大人しく殺されろだっちゃ」 「それは嫌だね。約束があるんだから だから殺す」 「もういいっちゃ。殺しにいくっちゃ」 零崎さんは、一気に僕に詰め寄ってきて、 あの釘バットのようなものを僕に向かって振りかざした。 「…あ」 そんな情けない声をあげてしまった。思わず目もつぶってしまった。 そうか、僕は死ぬのか。殺されるってこんな思いなのか。 なんか殺さないためとはいえ今まで悪いことしたなあ。 あーあ。せっかく友達が増えたのになあ。 火憐さん大丈夫かなあ。全くもって僕も弱いね。 やっぱり正義の味方には役不足だったな。 そうだよ。僕はいつだって悪者だったんだ。 人が近づいてきたら問答無用で武器を見せて、怖がらせて、 自分自身で結界を作って、僕はいつも一人だった。 一人で独り。孤独、それはとても、寂しいものだった。 それでも、このあいだ、人吉くんが手を差し伸べてくれて、 友達ができた。とても嬉しかった。 でも、もう終わりだ。終わってしまう。もう少し、楽しい学校生活を送りたかった。 ……おかしいな。いくらなんでも遅すぎる。 だいたい一秒にも満たない間に振りかざせるはずだ。 僕は目を開けた。そこには 正義の味方がいた。 …いや、まあね。ありがたいよ。ありがたい。 けどさ、今のはさ、綺麗に死ぬべきシーンじゃないかな。そういう雰囲気だったじゃん。 別に死にたい訳ではない。むしろ生きたいが。 今のこれが小説だったら、拍子抜けした人多いんじゃないかな。 僕は拍子抜けしたよ。 「なんでいるのさ。火憐さん」 「心配だったから見に来てやったぜ。ったくもう少しで死んでるところだったんだぞ」 零崎さんはというと吹っ飛ばされていた。どういう風にすればあんなに飛ぶんだ。 たとえどんな技だろうが不意打ちで出せるような技では無いと思う。 「やっぱどんなつえー奴でも脳震盪ぐれーはやっぱなるか。 う~ん。どうしようかな。叩きおこして説教でもするか」 「やめてほしいな」 僕は即答した。なんて危険なことを言い出すんだ。そんなことしたら僕は今度こそ死ぬ。 そして、この子どんだけ強いんだ。僕が守るなんておこがましいぐらいだ。 「じゃあいいよ。それよりあの子はこの辺にいなかったぞ」 「そう。ならここに用はないな。次に進もう」 「おう」 「それと火憐さん」 「ん?」 「悪いけど、体術の基本、ちょっと教えてほしいな」 「えーっとねー。まずは―――――」 彼女は使える情報から、とても真似できないような情報まで教えてくれた。 今回は失敗してしまったけど彼女を守りたい。 殺したい。だけども、守りたい。矛盾していると思う。 だけどその気持ちが一層強くなった。 偽物だけど殺人鬼が言うセリフでは相変わらずないけれど。 彼女が本物だろうが、偽物だろうが、それは多分関係無いだろう。 助けてもらった恩ではないだろう。 彼女に恋をしたわけでもないだろう。 別に理由はなんだっていいんだ。彼女は守りたい。 それだけでいいんだ。 だって友達なんだから。 【1日目/深夜/F-7】 【宗像形@めだかボックス】 [状態]疲労(中) [装備]千刀・?(ツルギ)×872 [道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2) [思考] 基本:殺したいけど、死なせたくない 1:火憐さんと行動、彼女を守る 2:誰も殺さない。そのために手段は選ばない 3:殺人衝動は隠しておく 4:機会があれば教わったことを試したい 【阿良々木火憐@物語シリーズ】 [状態]健康 [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:この実験をぶっ壊す。悪人はぶっ飛ばす。 1:宗像さんと行動 2:白髪の女の子と合流したい ◇ E‐7にて 宗像形と阿良々木火憐が去ってから数分後。 「愚神礼賛」こと零崎軋識が目を覚ました。 「…にゃ?俺は何をしていたんだっちゃ?」 前後の記憶があやふやのようである。 「…痛っ。頭が痛むっちゃ。何だっちゃ。思い出せない。 あの闇口衆を殺してから、適当に歩いて、………どうしていたんだっちゃ?」 その姿はあまりに生きた伝説とは程遠いものであった。 「まあいいっちゃ。レンとトキを探すっちゃ」 そう言って彼は歩き始めた。 運が良いのか悪いのか。宗像らとは違う方向に。 【1日目/深夜/E-7】 【零崎軋識@人間シリーズ】 [状態]頭に痛み、擦り傷、仲間が見つからないことへの焦燥感 [装備]愚神礼賛@人間シリーズ [道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2) [思考] 基本:他の零崎と合流(特にレンとトキ) 1:零崎一賊に牙を向いた不知火袴の抹殺。及びその準備 虚刀流、道を決める 時系列順 後悔と決意 虚刀流、道を決める 投下順 後悔と決意 「正義は必ず勝つんだぜ」 宗像形 図書館革命!? 「正義は必ず勝つんだぜ」 阿良々木火憐 図書館革命!? ランドセルランドの虐殺劇 零崎軋識 天災一過
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かいきバード ◆wUZst.K6uE まったく、いったい何度俺を走らせれば気が済むのか。 全国を放浪している身であるとはいえ、移動手段のほとんどが飛行機かタクシー、あるいは電車というこの俺が一日の間にこれほどの距離を自分の足で移動するというのは、実のところ生まれて初めての経験だった。 いや、生まれて初めてというのは嘘だが。 どっちにしても、長距離をわざわざ徒歩で移動するというのはどうにも性に合わない。そんなことを言うと俺がまるで虚弱体質のように聞こえるが、俺の場合は正確に言うと「金を使わず移動する」ことが性に合わないのだと思う。 別に浪費癖があるわけではないが、金は貯めるものでなく使うものだという思想を貫いている俺にとって、金を払えば済むところをそれを惜しんで払わずに済ますというのは金を浪費する以上に無駄な行為であるように思えてしまう。 節約しようとする意識自体を否定する気はないが、使うべき金を使わなかった結果として代わりに何を消費したのかお前は理解しているのかと、倹約家気取りの連中を見るたび俺は問い質したくなる。 金は万能だが、至上のものではない。それを理解しない連中が多すぎる。 まあ実際には俺はそんなこと全く思っていないのかもしれないし、徒歩で移動するのに抵抗があるのは単に疲れるからという理由かもしれないし、自分の足で移動するのも実はそれほど嫌いじゃないのかもしれない。 そもそもここで金の話をするのが間違っている。いちおう江迎のやつと最初に出会ったときに預かっておいた所持金が今の俺の懐にはあるが、ここから脱出した後でもない限り使う機会はまずないだろう。 つまりはただ言ってみただけだ。 俺の言うことを真面目に聞くのは、それこそ時間の浪費でしかない。俺が一人称を務めるパートを読む際には、それを十分に心に留めておくことを強くお勧めする。 「やれやれ……とでも言うべきところなのか、ここは」 ランドセルランドを去ってからどれくらい経っただろうか。 哀川潤と西条玉藻の二人組からまんまと逃げおおせた俺こと貝木泥舟は、ようやくちゃんとした道路がある場所へとたどり着く。 地図の性質上、名前の付いている場所以外で道路から外れたところを移動していると、自分がどこを歩いているのかわからなくなって不安になる。コンパスを見ながら歩けばいいのだろうが、どうにも面倒だ。 後ろを振り返ってあの散切り頭の少女が追ってきていないのを確認し、俺はようやく一息つく。近くの壁に背をもたれ、ペットボトルの水を一口飲む。 一難去ってまた一難とは言うが、こうも立て続けに厄介そうな相手と遭遇していては心休まる暇もない。 何事に対しても万難を排してから臨む主義の俺だが、今の調子では万難を排したところですぐに次の万難が怒涛のごとく押し寄せてきそうな気さえする。 万難排してまた万難。嫌がらせのような言葉だ。 まあ詐欺師という職を営んでいる以上、心休まる暇などあってないようなものだが。 犯罪者には常に心の不安が付きまとう。俺も詐欺師として生きる道を選択した時点で一生を不安とともに生きる覚悟はしているし、いつでも死ぬ覚悟はできている。善良な市民を食い物にするような生き方をするからには、そのくらいの覚悟は当然のことだ。 まあそれも嘘だが。 「さて、次はどこへ向かおうか」 俺は地図を開く。ランドセルランドから北東にまっすぐ進んできたはずだから、現在地はE-7とF-7の境界付近あたりだろう。道なりに進めば、南東なら図書館、西方向ならまたネットカフェに戻ることになる。 ネットカフェに戻る意味は今のところないから図書館に向かうのが順当だろうが、俺の目はもうひとつの場所、図書館とは正反対の方向に位置する施設を捉えていた。 斜道卿壱郎研究施設。 ネットカフェでパソコン越しに会話を交わした、あの玖渚友とかいう奴がいると言っていた場所だ。 すでにそこは禁止エリアに指定されている。とうに下山(「登山」の可能性もなくはないが)は終えているだろうが、問題は竹取山をどっち方向へと抜けていったかだ。 もし玖渚が俺のいる方向へ下山していたとしたら、位置的に見てまだこの周辺をうろついている可能性は、高くはないがありえなくはない。 一度は無視しておくことに決めたが、もしこちらから玖渚友を探すとしたら今が好機ではないか? しかし会ってどうする? わざわざ会いに行くメリットがあるか? いや、一応メリットはある。パソコン越しに会話したとき、あいつはすでに普通では手に入らないような情報まで数多く収集している様子だった。あれからおよそ6時間、新たな情報を入手している可能性はかなり高い。 情報を得るために会うだけでも有益と言える相手ではある。 話を聞くだけなら掲示板の連絡フォームを使えばいいのだろうが、重要な情報を聞き出すのが目的である以上、相手の用意したフィールドでの会話は望ましくない。できればこちらから不意打ちで会いに行くというのが理想だ。 俺から渡せる情報はほとんどないが、そこは俺、相手が喜びそうな情報くらい即興ででっちあげる自信はある。 バレた時が怖いが、その時はまあその時だ。 問題は、俺が玖渚友の人となりについてほとんど把握できていないということだ。相手を騙すには、相手について最低限の知識は得ておく必要がある。 俺が言うのも何だが、玖渚という奴はかなりの食わせ者だ。向こうが設えた場での会話だったとはいえ、俺が騙しきれなかった相手なのだから。 最終的に名乗っていた「玖渚友」という名前が本名だったのかどうかもまた、未だに明確であるとは言えない。さすがにそこまで疑っていたらキリがないだろうが。 今更だが、ここの参加者には俺との相性が悪い奴が多すぎる。 球磨川禊にしても、さっき出会った哀川潤にしても、俺が持つ詐欺師としてのテクがまるで役に立たない。どころか会話を交わす前から本能で「こいつは駄目だ」と直感できるような相手ばかりだというのだから空恐ろしい。 西条玉藻に至っては会話すらろくに成り立たないという始末。マンション付近で追いかけられた時と比べるとある程度まともな様子ではあったが(哀川潤がそばにいたせいだろうか?)、それでも逃げたのは正解だったと思う。 最初のときはナイフが役に立ったが、今度はメイド服が逃走の役に立ったというのだから、いやはや、人生何がどう役立つかわかったものではない。 メイド服に救われる経験など、人生で一度あれば十分だろうが。 唯一俺の手駒として機能していた参加者といえば江迎怒江だが、あれはあれで相性がいいとは言えない。 球磨川や哀川潤が「騙しにくい」なら、江迎の奴は「一方的に信じてくる」だ。こっちが騙すより先に勝手に信じてくるというのだから、球磨川たちとは真逆の意味で騙すことが難しい。 それどころか、たとえこちらから「信じるな」と言ってみたところでおそらく毫ほども意に介さない性格をしているというのだから、基本的に制御のしようがない。 つまりどちらにせよ扱いにくいことに変わりはない。俺のために働いてくれるぶん、江迎のほうがどちらかといえば重宝するだろうが。 ここには狂人しかいないのかと言いたくなる。 そんなことを言うと、まるで俺自身がまともな人間であると言っているように聞こえてしまうかもしれないが、そのとおり、俺は自分のことをまともな人間だと思っている。 詐欺師が何を言うか、などと言う輩がいたとしたら、それは詐欺師に対する誤解だと俺は言い返す。仮に詐欺師が狂人ばかりだったとしたら、そもそも詐欺という犯罪自体成り立っているはずがない。 まともな思考ができるからこそ人を騙せる。まともな人間にこそ人は騙される。 つまりはそういうことだ。 ゆえに俺は、正常な人間らしくこのバトルロワイアルに臨む。狂人に混じって殺し合いを演じる気は始めからない。まともに人を騙し、まともにここから逃げる策略を練る。 「そう、『騙す』――俺がやるべきことは、それに尽きるはずだ」 壁から背を離し、道路に沿って歩き始める。 足は自然と図書館のほうへ向いていた。今の時点で玖渚友と直接対峙するのは、やはりまだ準備が浅い気がする。 今まではほとんど逃げに徹してきたが、それもいよいよ限界だ。禁止エリアの数が増え、参加者の数が減るごとに状況は煮詰まってくる。殺し合いに乗る人間もここから更に増えるかもしれない。 そろそろ本格的に、ここから脱出するための策略を練らなければならない。 すなわち、主催者側と接触を図るための策略。 より直截的に言うなら、主催を騙すための策略。 正味な話、俺が自力で生き残るにはそれしかないと思っている。出会う奴出会う奴すべてを騙し続けていったところで、結局のところその場しのぎにしかならない。 それにさっきも言ったが、ここには俺にとって鬼門となる奴が多すぎる。一切の謙遜を抜きにして、俺が今生き残っていること自体が奇跡以外の何物でもない。 逃げ場のないこのフィールドの中にいては、遅かれ早かれ行き詰まることは確定している。ならば必然、外側に活路を求める以外にない。 主催者側に属する人間が何人いるのかはわからない。ただ、そのうち一人でも接触することができたとしたら、その時こそ俺の詐欺師としての本領発揮だ。 口八丁手八丁、なりふり構わず手段を選ばず、どんな手を使ってでも主催側に取り入ってみせる。 この殺し合いを止めさせるだとか、別にそこまでやる必要はない。俺に付いているこの首輪、これの外し方さえ聞き出せたらそれでいい。 この首輪さえ外すことができれば長居は無用だ。どうにか脱出の算段をつけてさっさとおさらばさせてもらう。 他の参加者たちを置いて俺だけ逃げるというのは良心が痛むが、さすがに全員まとめて救い出すほどの余裕はあるまい。仮にできたとしても、抱えるリスクがでかすぎる。 まあ当然、良心が痛むというのは嘘だが。そもそも俺に良心など残っていたか? 俺は阿良々木暦やその妹のような正義の味方ごっこをするつもりは毛頭ない。俺が誰かを助けるとしたら、それに見合った対価を支払ってもらった時だけだ。支払ったとしても助けるとは限らないが。 しかし実際のところ、主催者の影すらつかめていない現状においてはそいつらを騙して取り入ろうなどという戦略も机上の空論でしかないわけだが。 どの道、協力者を得ないことにはどうにもならない。 主催者にアプローチをかけるための協力者となると、また数が限られてきそうではあるが………… 「……そういや、掲示板はどうなっているんだろうな」 ポケットからスマートフォンを取り出し、掲示板のページを再び開いてみる。 参加者の数ももう20人そこそこまで減ってきているというのに、意外に利用している奴が多いものだ。携帯電話を持っている奴が俺以外にも割といるのかもしれない。 ……まさかすべて玖渚の自演とかいうオチではないよな? 若干の不安を抱きながら、新しい書き込みがないかチェックしようとする。 「――おっと」 そのとき急に足の力が抜け、前のめりに倒れこんでしまう。スマートフォンが壊れないよう庇った形になったせいで、スーツの袖が泥まみれになってしまった。くそ、ここから脱出する前にクリーニング代を請求してやろうか。 疲労がたまったせいで足がもつれたのだろうか、などと思いながら立ち上がろうとするが、どういうわけか両足ともにうまく力が入らない。それどころか腿のあたりにじわじわとした痛みを感じる。 まさか肉離れでも起こしたか? だとしたら厄介だな――と右足にそっと触れる。途端、ぬるりとしたものが指先を濡らすのを感じ、反射的にそちらを見る。 血だった。 両の太腿と、そこに触れた指先がじっとりと血で湿っている。 実は道路に血まみれの死体が倒れていて、それに躓いた際に血が付いてしまったのだった――などということはもちろんなく、正真正銘俺自身の血だった。 その証拠に俺の脚には、直径3ミリほどの小さな穴が空いていた。左右それぞれに一箇所ずつ、後ろから前へ、何かが突き抜けていったかのように。 ……銃創? 「見たところさほど手練というわけでもなさそうだが、一度痛い目を見ているのでな――念のため下手な動きができないようにさせてもらった」 声のするほうを振り返ると、そこには奇矯な衣服をまとった男が立っていた。 どことなく怪鳥を思わせる風貌と、全身に巻かれた鎖。両手には一丁ずつ拳銃が握られている。 それぞれの銃口から立ち上る硝煙が、まさに今発砲されたばかりだという事実を示していた。どこへと向けて発砲されたのかは考えるまでもないだろう。 「貝木泥舟だな。おぬしに恨みはないが、死んでもらう」 恐ろしく冷たい目をしたその男は、恐ろしく冷たい声でそう言った。 「…………」 やれやれ、どうやら早くも次の一難が大手を振ってご登場のようだ。 しかも今度の一難は、そう簡単に去ってはくれそうにない。 ◆ ◆ ◆ 「足を潰されても取り乱す気配を見せぬというのはなかなかに意外だな。貝木泥舟。どうやら我が思うほど、凡庸な人間というわけでもないらしい」 片方の拳銃をこちらに向けたまま、男は探るような目で俺を見てくる。 俺は地面に突っ伏したまま、その視線を受け止める。最初に「死んでもらう」と豪語されているだけに今すぐ頭を撃ち抜かれてもおかしくない状態ではあるが、先んじて足を潰した余裕か、会話を交わす気はとりあえずあるらしい。 こういう余裕は正直ありがたい。 俺に取り乱す気配がないとこいつは言ったが、そんなもの混乱が表に出ないよう無理矢理取り繕っているだけに決まっている。心中では、あまりに唐突過ぎる展開と焼けつくような両足の痛みで脳がオーバーフローを起こしかねない勢いだった。 まず、こいつはいったい誰だ? 参加者の一人であることは当然として、なぜ俺の名前を知っている? いや――名前が知られていることに特段の不思議はないのかもしれない。俺のことを他の誰かに聞いた可能性は十分にあるし(又聞きでなければ江迎か球磨川、あるいは戦場ヶ原あたりか)、ランドセルランドで俺がやったように、名簿の名前から類推した可能性もある。 いきなり初対面である俺を殺そうとしている理由もあえて考える必要はあるまい。「恨みはないが」と前置きしているところからしても、おおかた腕に自身ありで馬鹿正直に殺し合いに乗っている者のうちの一人だろう。 あえて他の可能性を考えるとしたら、こいつは他の参加者の誰かから――例えば戦場ヶ原ひたぎあたりから俺のことを抹殺するよう依頼を受けていて、今まで俺のことを探し回っていた――という可能性はどうだろう。 考えられなくはないが、さすがにそこまで愉快な展開を期待するのは贅沢がすぎるというものだろう。そもそもあの女は、殺意を抱くほど憎い相手なら自分の手で殺さないと気が済まなさそうなタイプだからな。 …………ん? 冷静に考えてみるとこの状況、不可解な点などひとつもないんじゃないか? たまたま行きがかった殺人者が、たまたまここにいた俺を射殺しようとしている状況。 文章にしてみれば一行でこと足りる。 なんだ、ならややこしくあれこれ考える必要などない。やはり足を撃たれたショックで混乱していたようだ。 実のところ、こいつが何者なのかも服装を見た時点で予想できているしな。 「……初対面の相手にいきなり銃弾とは、随分なご挨拶じゃないか」 最大限平静を装いながら俺は言う。足の痛みで額には脂汗が浮かんでいることだろうし、地面に這いつくばった姿勢のままなので、どう取り繕ったところで無様にしか見えないだろうが。 「いくら殺し合いの場とはいっても、礼儀や作法をおろそかにするのは感心しないぞ。まして俺のように人畜無害な、見てのとおり丸腰の人間に不意討ちでしかも銃とは、外道以下のやり方だな。 何があったのかは知らんが、ここに来るまでによっぽど怖い目に会ったと見える。お前は素人相手にすら警戒心を抱きながらでないと向き合えない、ただの臆病者だな」 心にもないことを俺はまくしたてる。精一杯挑発してやったつもりだったが、相手は眉ひとつ動かさず、瞬きひとつすることなく、虫けらでも見るように俺を見下すだけだった。それどころか、 「ふむ――おぬしもこの刀が『銃』であることを知っているのか。あのときの青年が炎刀の名を口にしたときも少々驚いたが……どうやら我の認識以上に、変体刀に関する知識を持っている人間がこの場には存在しているらしい」 などと意味不明なことを口走る。 炎刀? 変体刀? 刀が銃ってどういうことだ。 「それと貝木泥舟よ、我のやり方に対して外道などと難癖をつけるのは全くの見当違いだ。我らしのびは卑怯卑劣こそが売り。礼儀作法というのであれば手段を一切選ばないことこそが礼儀であり、不意討ち闇討ち騙し討ちこそが作法。それに異を唱えるなど笑止千万」 俺の適当な挑発に対して真面目に受け答えてくれるのはありがたいが、残念ながら全く興味はなかった。ネットの掲示板にでも書き込んでいてくれ。 しかしこの男、自分のことをしのびと言ったか? 妙な風体をしているとは思ったが、言われてみれば一風変わったしのび装束に見えないこともない。 どうやら最近の忍者は平気で拳銃を使うらしい。ドーナツを食う吸血鬼よりはリアリティのある話かもしれないが、まったく末恐ろしい世の中だ。 「さて、死ぬ前にいくつか質問に答えてもらうぞ、貝木泥舟」 「……さっきから俺のことを貝木と呼んでいるが、残念ながら人違いだ。俺の名前は鈴木と――」 言いかけたところで、男が一切躊躇する様子なく拳銃の引き金を引く。弾丸は俺の脇腹あたりに命中し、両足の痛みが消し飛ぶほどの痛みを与える。 「ぐ…………うっ!」 うめきながら俺は、腹を抱えて上半身だけうずくまるような格好になる。急所は外しているようだが、おそらくわざとだろう。 さすがは忍者、生かさず殺さずのテクニックにも長けているようだ。 「我に虚言は通用しないものと思え。これ以上無駄ごとを口にするなら、次は素手で肉を抉り取るぞ」 そう言ってしのびの男は地面から石をひとつ拾い上げると、それを右手の力だけで粉々に握り潰して見せた。 ……なるほど、見た目からは想像もつかないが、どうやらとんでもない怪力の持ち主のようだ。俺の身体など、片手だけで易々と解体してしまえるに違いない。 「ふむ……付け替えた当初と比べてだいぶなじんできたようだな。あのままでは炎刀を握ることすらままならぬ有様であったし、力の加減が利くようになったのはありがたい」 また何かひとりごとを言っているようだが、こっちは痛みでそれどころじゃない。そのまま一人で喋っていてくれればいいのに。 「我がおぬしの名を知っている理由を説明してやる気はない。おぬしがそれを知ったところで、我にとってもおぬしにとっても何の意味もないのだからな」 そりゃそうだ。俺もそんなことを説明してほしいとは思っていない。 しかしここで黙ってしまったら、こちらから口を挟む余地がいよいよなくなる。そうなればもう俺が助かる可能性はゼロだ。助からないにしても、このまま唯々諾々とこいつの言いなりになって死ぬというのは面白くない。 ここは小悪党らしく、あがけるだけあがいてみようじゃないか。 痛みをこらえながら、俺はなんとか口を開く。 「そうだな、俺がお前の名前を知っていることに何の意味もないようにな、真庭鳳凰」 ここでようやくしのびの男――真庭鳳凰の表情に、微細だが虚を突かれたような気配が見てとれた。よし、どうやら正解のようだ。間違えていたら最悪だったが。 「…………どこで我の名を知った」 自分では意味がないと言っておきながらそんなことを訊いてくる鳳凰。一方的に名前を知っていることで優位に立ったつもりでいたか、馬鹿め。 「いや、少し前にお前の仲間にたまたま会ってな。そのときにお前のことも聞いた」 言うまでもないが嘘だ。会ったことは会ったが、どっちもすでに死体だったからな。 しかしその死体を見たことでこいつの正体を看過するに至ったのだから、全くの嘘とは言えないのかもしれない。 ネットカフェとランドセルランドで見た「真庭」と同じく、残りの二人もあんな珍妙な格好をしているかどうかは正直微妙なところだと思っていたが、どうやらこいつらは全員が全員、こんな見た目から名前が推測可能であるような装束を身に着けているらしい。 こいつら本当に忍者なんだろうな? いまひとつ説得力に欠ける。 相手の顔色を窺いながら、俺はさらに嘘を重ねる。 「名前は確か狂犬と喰鮫と言ったかな。殺し合いに関してかなり乗り気でいるようだったから、俺が相手をしてやった。ちなみに言うが、挑んできたのは向こうのほうからだぜ。俺は仕方なく応じただけだ」 「ほう、それでその二人はどうした」 「殺した。俺が両方ともな」 ここでこいつが激昂して取り乱すような仲間思いの間抜けであったなら、俺が助かる可能性も0.01%くらいはあったかもしれない。しかし鳳凰は、俺の言葉に何ら動揺の気配を見せることなく、 「嘘だな」 と冷たく言い放った。 「真庭のしのびを甘く見るな。多少度胸は据わっているようだが、おぬしがそこまで腕の立つ人間とは思えん。あの二人はもとより、真庭の里の誰を連れてきたところでおぬしごときが敵うはずがない」 「は、偏見だな。人は見かけによらないものだぞ。こう見えて案外、武術の心得はある」 余裕ぶって笑ってみせたが、確実に相手の言うほうが正しいだろう。 実際の忍者がどんなものなのかなど知る由もないが、俺に勝てる要素があったとしたら精々逃げ足くらいのものだろうし。 「……とはいえ、俺の力だけで殺したわけじゃないのは事実だ。実を言うとその二人は、俺が会ったときにはすでに手負いの状態だったんだよ。他の参加者と戦闘した後だったのだろうな。 そいつらから聞いた話だと、喰鮫のほうは黒神めだか、狂犬のほうは――江迎怒江とかいう奴とやりあった後だと言っていたな。おかげで俺でも楽に殺すことができたぜ。俺が言うのもなんだが、まあお気の毒さまだな」 「…………」 「その証拠に――と言えるほどのものじゃないが、俺の荷物を見てみるといい。お前の仲間から奪い取ったぶん、通常より支給品の数が多いのがわかるはずだ」 そう言って、俺のすぐ傍に落ちている自分のデイパックを顎でしゃくってみせる。 こいつの仲間を殺した証拠にはならないにしても、「戦利品」の多さを示してやることで俺の実力について誤解を与えてやることくらいはできるかもしれない。 誤解は多ければ多いほどいい。 「…………」 鳳凰はしばらく疑わしそうな目でこちらを見ていたが、やがて「ふむ」とうなずき、 「そうだな……おぬしの言うことはどうにもあてにならんようだから、先に『視て』おくとするか」 などと言い、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。 そのままデイパックを拾うかと思ったそのとき、鳳凰は俺の脇腹あたり、つまり先ほど銃弾を撃ち込んだ部分を、右のかかとで思いきり踏みつけてきた。 「ぐはぁ…………っ!!」 せっかく麻痺しかけていた痛みが体内で爆発する。いや、本当に腹の中身が爆発したかと思った。内臓がすべて消し飛んだと言われても今なら信じてしまうかもしれない。 傷口からさらに血が溢れ出る。頭の中では絶叫しながらのたうち回っているつもりなのだが、実際には完全に息が詰まり、指一本すらも動かせなかった。 気を失わなかったのは見事だと言う外ない。俺でなく、こいつの技術がだ。 「重ねて言うが、妙な動きはするな」 念を押すように言って、鳳凰は左手の拳銃を懐にしまい、今度こそデイパックを拾い上げる。そして動けない俺をそれでも警戒するように、そのまま数歩ほど後ろに下がった。 すぐに中身を改めるかと思いきやそうはせず、なぜか左手でデイパックをつかんだまま静かに瞑目する。何かを念じているようにも見えるが、いったい何をしている? 隙だらけに見えるが、俺への警戒は解いていないのだろう。 未だ呼吸すらできない俺は、それをただ見ていることしかできない。 「――ほう、鑢七実と会ったか。あの化物と二度も顔を合わせて二度とも逃げおおせるとは大した健脚だな……七実の隣にいる刺青顔の少年は何者だ? まさかあの女に協力者がいるとでもいうのか? 随分な命知らずだな」 今度は俺のほうが虚を突かれる番だった。 さっき俺がやったような、断片的な情報から事実を推察するようなテクニックとは違う、事実そのものを知っていないとわからないはずの情報をこいつは今、口にした。 「なるほど、狂犬と喰鮫の所有物を得たというのは真実のようだ。しかし殺したというのはやはり嘘か。死体の傍らに放置されていたのをいいことに拾っただけのことを、よくもまあ『奪い取った』などと。礼儀作法を学ぶべきは、どうやらおぬしの側のようだな」 「…………」 ぐうの音も出ないとはこのことだった。何だこれは? 俺の記憶でも読んでいるのか? いや、こいつがデイパックに触れたときから語り始めたことから察するに、俺の記憶というよりは「俺の所有物の記憶」を読み取るような能力をこいつは持っているのかもしれない。 いわゆるサイコメトリーとかいうやつだ。 この手の超能力や心霊術の類は、大半がトリックを用いているだけの偽者と相場が決まっているものだが(俺も似たようなものだが)、俺の目の前にいるこいつは、まさか本物だとでも言うのか? 「……はっ、喰鮫や狂犬はおろか、まだ誰一人として殺してなどいないではないか。女子供にすら逃げの一辺倒とは大したものだ。武術の心得が聞いて呆れる」 俺は死刑宣告を受けた気分だった。 間接的にとはいえ俺のこれまでの行動をこれほど明確に読み取れるというのは、安易な嘘をついても逆効果にしかならないと宣告されたようなものだ。自分に虚言が通用しないというあれはハッタリでも何でもなく、ただの事実だったということか。 俺の処世術である「騙し」は、この時点でほぼこいつに殺されたも同然だった。 「嘘と騙しはしのびの常道。しかし下手な嘘ほど己の首を絞めるものはない。相手を騙しぬいてこそ嘘は嘘として価値を持つ。おぬしのやったことは、己の寿命を無意味に縮めたのと同じこと」 俺は言い返せない。 「つい数刻前にも、我を嘘で縛ろうと試みた男がいたな。だがそいつの辿った末路といえば、己の得物で勝手に自滅した上に我にかけた嘘も自ら無に返すという、救いようもないほどに無様な最期だった。 あの男がもう少し格調の高い嘘吐きであったなら、死した後でもなお、我に呪縛を遺すくらいのことはできたであろうに」 なるほど、最初にこいつが言っていた「痛い目」というのは多分そのことだろう。 こいつが他の誰かに騙されたばかりだった、というのも俺にとっては不運だったかもしれない。そうでなければこいつは俺に対してここまで警戒していなかっただろうし、いきなり発砲されるということも多分なかっただろう。 誰かは知らんが余計なことをしてくれたものだ。どうせ騙すなら最後まで責任を持って騙しきれ。 「どうやらこのまま尋問を続けても、おぬしの口からまともな真実は聞けぬようだな」 ひと通り記憶を読み終えたのか、鳳凰はデイパックを放り捨てる。 「しかし――この状況においてもなお虚言を吐き続けることのできるその精神だけは評価に値するといえよう。このまま殺しても構わんが、興が乗った。おぬしが口を開ける間に、少々試させてもらうとしよう」 俺に見せ付けるように鳳凰が右腕を構える。ただの人間の腕なのに、俺はそれに肉食獣の牙のような凶々しさを感じた。 「おぬしがこれ以上、嘘を吐くことを諦めて偽りなく我の質問に答えるというなら、これ以上苦痛を与えず、一思いに殺してやってもよい。 しかしあくまで嘘を吐き続けることを選ぶというのであれば、我はこの右腕でおぬしを死なぬ程度に喰らい続ける。おぬしの命が尽きるのが先か、はたまた精神が尽きるのが先か、ここで試してみようではないか」 「…………」 よくわからんが勝手に何か始めやがった。 何が「興が乗った」だ。今までの会話のどこに興が乗る要素があったというのか。そんなものに乗せた覚えはないぞ。 やはりこいつも狂人か。 しかしまあ、「嘘をつき続ける精神」とは随分と高く買われたものだ。こんなもの評価どころか非難するにも値しない、ただの悪癖だというのに。 俺は嘘を吐くことに何のこだわりもない。皮膚呼吸をするように嘘を吐く俺だが、もしここで命が助かるというならその皮膚呼吸すら止めることも厭わないつもりだ。 この男が本物のしのびだというなら、拷問の作法にも精通していることだろう。俺のちっぽけな精神など、ものの数分で崩壊してしまうに違いない。 俺にはもう、この男を騙すことはできない。悔しいがこいつの言うとおり、騙しきれない嘘に価値などない。そもそも俺は、嘘に価値があるとも思っていないが。 だから俺が今ここですべきことは、素直に許しを請うことだろう。恥も矜持もすべて捨て去って、質問には正直に答えるから命だけは助けてくれと、あるいは一思いに殺してくれと懇願する。それが俺にできる唯一にして最善のことであるはずだった。 億にひとつでも助かる可能性があるのなら、俺は迷わずそうすることを選ぶ。 足を潰され、嘘を封じられ、もはや一般人以下に成りさがった俺にできることは、それくらいしか残されていない。 少なくとも、この期に及んでなお意固地になって無意味な嘘を重ねるなど、考えうる限り最悪の手段だろう。寿命が少し延びる代わりに、地獄の苦痛を味わわされるだけだ。 俺が仕事で使うもうひとつの得意技である「偽者の怪異」も、ここではまず役に立たない。 指で突く隙を与えてくれないのは当然のこと、怪異でこいつに打ち勝つためにはこいつにとって有効な怪異を選んで使用する必要がある。今からそれを即興で用意しろというのは無理な話だ。 阿良々木暦の妹を刺すのに使った囲い火蜂も、こいつには通用するまい。相手は畏れ多くも、神獣の名を名乗っているような奴だ。 蜂が鳳凰に効くものか。 「…………」 出血で意識が朦朧としてくる。痛みはぼんやりとしか感じないのに、地面の冷たさだけはやたらはっきりと感じることができた。 かすんだ視界の中、鳳凰が近づいてくるのが見える。一歩一歩、まるでスローモーションのようにゆっくりと。 命乞いをするなら今のうちだ。ぼやぼやしていると、本当に口も開けない状態にされてしまうかもしれない。 「……ああ、そういえば」 繰り返すが、俺は嘘を吐くことに何のこだわりもない。矜持も、思想も、信念も、嘘に対して掲げられるものは何ひとつとして持ち合わせてはいない。 しかし。 それでも。 だからこそ。 俺はこいつの思惑通りになるのが嫌だった。撃たれたことも踏みつけられたこともどうでもいいし、これから殺されることも仕方がないと思っている。 ただ、俺の嘘吐きとしての属性をこいつに完全破壊されるのが我慢ならなかった。 「興が乗った」など、そんな思いつきの暇つぶし程度の理由で俺から嘘を奪おうとしているこいつの傲慢さが許せなかった。 こいつにはせめて一矢報いてやらないと気が済まない。俺はそんな俺らしくもないことを思った。 俺にも詐欺師としてのプライドというものが、もしかしたらあったのかもしれない。 死が眼前にまで迫ってきているというのに、俺はそれが少しだけ愉快だった。 「――鳳凰というと鳥の怪異として有名だが、元ネタである中国の伝承によると、キメラみたいに何種類かの動物の部位が繋ぎ合わさった姿をしているものらしいな…… 時代によって違ったりもするようだが、元々はたしか嘴が鶏で、顎は燕だったか? 他にも蛇やら亀やら混ざっていたような気がするが、よく覚えてねえな……」 俺まであと三、四歩ほどの距離で、鳳凰の足がぴたりと止まる。 「……何の話だ?」 「いや、別にどうでもいい話さ……ただ、鳳凰ってのはたしかに神の鳥ではあるが、そう聞くと案外、普通のものの寄せ集めでしかないように思えてしまうものだな」 あまりに脈絡のない俺の言葉に気がそれたのか、鳳凰の注意がほんの一瞬だけおろそかになる。 その一瞬を俺は見逃さなかった。 「だから鳳凰、お前に蜂は効かないだろうが――」 かちり。 脇腹を撃たれてからずっと身体の下で抱え込むようにしていた手で安全装置を外す。 そして「それ」を握った右手を勢いよく腹の下から引き抜き、 「――鶏よりも燕よりも強靭で獰猛な、鷲ならどうかという話だ」 俺に残されていた唯一の武器、デザートイーグルを鳳凰めがけて発砲した。 放たれた弾丸は、驚愕に目を見開く鳳凰の顔面、その眉間のど真ん中へと寸分狂わず命中し、そのまま頭部の上半分を木っ端微塵に吹き飛ばした。 ◆ ◆ ◆ というのはもちろん嘘で、俺の撃った弾丸は鳳凰にかすりもしなかった。油断はしていてもさすがは忍者、俺が拳銃を取り出した時にはすでに回避行動をとっていた。まあ避けなくとも当たらなかっただろうが。 非力な者がデザートイーグルを撃つと反動で肩が外れるとか後ろへ吹き飛ばされるとか未だに言われることもあるようだが、実際には撃ち方さえ間違わなければ女子供でも撃つことはできるらしい。 しかし今の俺の撃ち方は、うつ伏せのまま片手だけで、しかも無理に腕を伸ばした状態で発砲するという大口径拳銃の扱い方としてはおよそ最悪に近い形だったため、発砲の反動は覿面に俺の右腕へとダメージを与えていた。 肩が外れたかどうかはわからないが、筋くらいは痛めたかもしれない。ついでに耳栓なしで撃ったせいで耳が痛い。 俺が拳銃を持っていたことがよっぽど意外だったのか、鳳凰は反射的にといった感じで懐から拳銃を取り出し、俺に狙いを定める。 引き金が引かれる前に俺はせめてもの抵抗にと、もう片方の手で握っていたスマートフォンに拳銃の台尻を思い切り叩き下ろし、粉々に破壊した。 抵抗というにはあまりに子供じみているが、こいつに使われるくらいならこうしたほうがましだ。右腕に更なる激痛が走ったが、そんなことはもう気にならない。 ついでにこのデザートイーグルを可能な限り遠くへ放り投げてやろうかと思ったが、さすがにそこまでの猶予を与えてはくれなかった。 軽い発砲音とともに、鳳凰の拳銃が火を噴く。俺のときとは違って、弾丸は俺の方めがけてまっすぐに飛び、正確に頭部を撃ちぬいた。 暗転していく意識の中で、俺は何かをやりきったかのような満足感に浸っていた。状況的に言えば悪あがきに失敗してとどめを刺されただけのことだろうが、鳳凰にとっては「思わず殺してしまった」形だろうから、俺としてはしてやったりな気分だった。 負け惜しみにしか聞こえないだろうが、俺の銃撃がこいつに命中しなかったことも良かったと思っている。 他人の生き死にに何かを感じるような心が残っている俺ではないが、自分の手で直接誰かを殺すのはなんとなく嫌だった。 殺人者の肩書きを得るのが。 詐欺師という汚名を、殺人者というくだらない汚名で上書きするのが嫌だった。 俺は俺のまま、詐欺師のままで死にたかった。だからこのバトルロワイアルで一人も殺さないまま死ねたことに、俺は誇りすら感じていた。 こんなつまらないことに誇りを感じる自分の小ささに正直嫌気がさしたが、どうせ死の間際だ。何に誇りを感じてもいいじゃないか。 やるべきことをやったと言い切ることはできないが、今やりたいことはすべてやった。 安らかに死ぬにはそれで十分だ。 最後に走馬燈でも見ようかと思ったが、今までに騙してきた相手の恨み顔しか見える気がしないのでやめた。見ようと思って見れるものでもないだろうが。 だから代わりに戦場ヶ原ひたぎのことを思い浮かべる。 あの女が今も無事どうかはわからない。だが、俺はあいつが最後まで生き残れると信じている。俺がいなくても、きっと立派にやっていけるだろう――と、口に出したら歯が浮きそうな嘘を考えている自分がいることに安堵し、俺の意識は今度こそ闇へと落ちる。 地獄の沙汰も金次第と言う。貯金のない俺だから、江迎のやつから金をいくらかせしめておいて本当によかったと、あの頭のおかしい女に俺は少しだけ感謝した。 【貝木泥舟@物語シリーズ 死亡】 ◇ ◇ 後日談にもオチにもまだまだ早いが、もう少しだけ俺の一人称を続けさせてもらう。実は生きていたというオチではないから安心していい。 もう死んだのだからあとはナレーションにでもまかせてさっさと逝けと罵声が飛んできそうだが、残念ながらこの回では俺の行動に関する描写はすべて俺の視点から語ると決めている。たとえ神にもその役割を譲ってやる気はない。 なに、ほんの少し補足を入れるだけだ。 すぐに済むから、しばしご清聴願いたい。 鳳凰に脇腹を撃たれた後、俺がずっと両手で腹を抱えるようにしていたのは言うまでもなくデザートイーグルを取り出すタイミングを窺っていたからだが、実はもうひとつ理由がある。 俺が最後に銃の台尻で粉々に破壊したスマートフォン、あれを身体の下で操作するためだった。 俺が動けないがゆえの油断だったのか、それとも俺のことを不必要に警戒しすぎていたからなのか、鳳凰が俺に対して身体検査を一切しようとしなかったのは、俺にとって最大の幸運だったと言える。 もしされていたら、悪あがきの手段さえ完全に奪われていただろうからな。 で、スマートフォンを使って何をしていたかというと、玖渚が作ったあの掲示板に書き込みをしようとしていた。 ある意味ダイイングメッセージのようなものだ。ネット掲示板にダイイングメッセージ、なんとも現代的でいい感じじゃないか。 ただし身体の下で操作していたわけだから、当然画面もボタンも見えない完全ブラインドタッチだったので、ちゃんと文字が打てていたかどうかわからないし、そもそも書き込みができていたのかどうかも確認できていない。 これで投稿できていなかったら間抜けすぎる。 誤字だらけなのは仕方ないとして、最低でも投稿できていると信じたい。 まあ、あんな書き込みをしたところであいつにとって致命的となるわけでもないし、内容が信用されるとも限らない。むしろ無駄になる確率のほうが高いだろう。 だからこれもただの悪あがきだ。自己満足と言い換えてもいい。 何の意味も持たなくとも一向に構わない。 さてさて、死人があまりでしゃばるのも問題なので、言うことも言ったし今度こそ退場させてもらうとしよう。 これ以後は正真正銘、金輪際俺の出番が来ることはない――なんて俺がこんなことを言うと、ひょっとしたら嘘になるかもしれないけどな。 2:目撃情報スレ 4 名前:名無しさん 投稿日:1日目 夕方 ID:IJTLNUUEO E7で真庭法王という男におそわれた拳銃を持ている。危険 鳥のよな福をきている、ものの乃記憶を読めるやしい 黒髪めだかと組んん出いる可能性あり 付近にいるのは注意されたしい ◇ ◇ 「…………不愉快だ」 頭を撃ちぬかれた貝木泥舟の死体を見下ろしながら、鳳凰は憎々しげに呟いた。 その死に顔がなぜか満足げなものだったことも、鳳凰の苛立ちに拍車をかける。 「まさかこんな、口先だけの大法螺吹きにまたも一杯食わされるとは、例えようもなく不愉快だ……しかし、我のほうにも慢心があったことは認めざるを得まい。猛省せねばなるまいな」 鳳凰としては、まさか相手も『銃』を持っているとは思わなかったのだろう。 鳳凰の世界における『銃』が極めて特殊なものであるがゆえに、相手が同じ武器を所持しているという可能性を予想できなかった。 さらにその武器がいかに強力なものかを知っているがゆえに冷静さを欠き、急所を外す余裕もなく、反射的に撃ち殺してしまった。 あえて言うならもうひとつ、鳳凰が拳銃の存在を予想できなかった理由として、貝木の所有物に対する先入観が挙げられる。 忍法記録辿りによる先入観。 鳳凰の左手に宿る忍法、記録辿り。それは物に残された残留思念を読み取るものであり、当然のこととして読み取る対象物に関わりの深いものの記録しか読むことができない。 例えば貝木のデイパックであるなら、それをずっと所有していた貝木自身の行動の記録。あるいは、デイパックから出し入れされた物の記録。 もしデザートイーグルが貝木のデイパックに入っていた支給品だったとしたら、あるいは一度でもデイパックの中にしまわれていたとしたら、その記録を読み取った時点で十中八九、拳銃の存在には気付けていただろう。 しかしデザートイーグルが取り出されたのは、真庭狂犬のデイパックの中からだった。 加えて貝木はそれを自分のデイパックにしまうことなく、スーツの懐に入れて携行していた。 つまり鳳凰にとって不運なことに、そして貝木にとって幸運なことに、デザートイーグルに関する記録は貝木のデイパックにとって対象外の記録だったのである。 スマートフォンについても同様の理由だ。ただしこっちは、存在が読めていたところで何に使うものなのか鳳凰にはわからなかっただろうが。 鳳凰が貝木に対し身体検査をしなかったのは、むしろそれが原因だったのかもしれない。 なまじ記録を読むことができたことで、「貝木の所有物はすべてデイパックの中に入っている」という先入観を作ってしまったということ。 そこは完全に、鳳凰の油断であり慢心だった。 「……まあよい。生き残ったのが我であるという事実に変わりはない――それに、随分な収穫もあったことだしな」 鳳凰は貝木の死体を足で仰向けに転がすと、右手に握られたままの拳銃を力任せにむしり取る。 それを確認するようにしばらく眺めてから、近くの壁に向けておもむろに銃を構え、発砲した。 強烈な銃声とともに、弾丸は決して薄くない壁を優々と貫通する。銃声の残響があたりにこだまする中、鳳凰は彼にしては珍しく感嘆したような声を出した。 「素晴らしい……炎刀と比べて連射性こそやや劣るが、威力のほうは比べ物にならんな。これが手に入ったというだけで、わざわざこの不吉な男のもとを訪れた甲斐があったというものだ」 炎刀・銃の上位互換に当たる武器、鳳凰はデザートイーグルをそんなふうに解釈し、それを炎刀とともに懐へしまう。 その際、記録辿りでデザートイーグルの記録を読むことも忘れなかったが、先ほど貝木が撃った以外ではまだ一度も使われていない、という事実しかわからなかった。 さらに傍らへ放り捨ててあった貝木のデイパックを改めて拾い上げ、その中身を検分する。 基本の支給品以外では、日本刀、金槌、巨大な棍棒、予備の弾丸、金属で作られた諸々の道具、そして―― 「これが……誠刀・銓?」 説明書きを読んだだけでは疑わしかったが、記録辿りでその鍔と柄しかない刀を読んだことで「それ」が「そう」であることを確信する。 変体刀十二本がうち一振り、「誠実さ」に重きを置いて作られた日本刀、誠刀・銓。 炎刀の類似品だけでなく、誠刀までここで手に入るとは……。 「しかしこれは、戦闘に使える代物ではないな……当然、これが本物の完成形変体刀である以上、真庭の里の復興のため所有しておくことに変わりはないがな」 そう言って、誠刀を自分のデイパックの中へ丁重に納める。 さらにもうひとつ、鳳凰にとって不可解なものがあった。先端に針のついた透明の容器に入れられた、何かの薬品のような怪しい液体。 幸いそれも、記録辿りによって用途を確認することに成功した。ただしその内容は、投与しただけで「天才」を「凡人」に改変してしまうという、実に眉唾くさい代物だったが。 貝木の持ち物のうち、不要と思しきもの(地図や名簿など)を除いたすべて支給品を自分のデイパックへ移し変え、さらに今更ながら貝木の死体を検分する。しかし見つかったのは懐の中に入っていた紙幣と硬貨くらいで、めぼしいものは発見できなかった。 地面に散らばっているスマートフォンの残骸にも少し目を向けたが、それは無視しておくことに決めた。あの状況で優先して破壊するほどのものだったのかと少し気にはなったが。 念のため、貝木の身に着けている衣服などに対しても記録辿りを行使してみたが、得られた情報はデイパックを読んだときと大差なかった。 ただひとつ、少しだけ不可解に思うことがあった。 あの橙色の怪物と対峙する前、破壊される直前の建物と、その付近にあった自動車の記録を読み取ったときにも感じた違和感。 と言うよりは、この殺し合いの中において忍法記録辿りを行使するたびに必ず、その違和感はあった。 この場に用意されている物からは、すべて「新しい記録」しか読み取ることができない。 デイパックを含めすべての支給品、建物、さらに衣服の類ですら、その性質や用途はおおまかに読み取ることはできるものの、ここ数日以前の記録がまったく存在しない。 たった今読み取った誠刀・銓にしてもそうだ。それが本物の完成形変体刀であるということは理解できるのに、戦国の時代を渡り歩いたはずのその刀から、何の歴史も辿ることができない。 まるで。 まるでここに存在しているすべてのものが、例外なくこの殺し合いのためだけに作り出されたものであるかのように。 「…………やめておこう。これ以上、余計なことを考えるのは」 鳳凰はデイパックを静かに地面に置くと、瞑想するかのように両の目を閉じる。 「いらぬ雑念に囚われているから、こんな口先だけの輩につけこまれるのだ――我はもうこの先、誰の虚言にも踊らされぬ。迷いも油断も慢心も、この場ですべて消して失せよう」 そう言うと鳳凰は、右腕を天へと向けて高々と振り上げる。 そして竹取山で匂宮出夢の死体にしたのと同じように、その右腕を貝木の死体めがけて力の限り振りかざした。 《一喰い》(イーティングワン)。 破壊というよりは、それは爆砕。 力の制御が利くようになったはずのその右腕は、しかし出夢の死体のときより荒々しく、そして圧倒的に貝木泥舟の死体を爆砕した。 血も肉も骨も、すべてを霧散させんばかりの一撃。 デザートイーグルの威力など、まるで霞んでしまうような人外の破壊力。 地面深くまでめり込んだ右腕を引き抜き、血振りをするようにぶん、と振るう。 先ほどまで貝木がいたはずの場所には、千々に弾け飛んだ肉片と、申し訳程度に破壊を免れた貝木の身体、そして重機で掘削されたかのようにざっくりと抉られたアスファルトが残されていた。 「――これより我に迷いなし。ここに存在する全ての者を皆殺しにし、我の悲願を成就させる。それこそが我の進むべき唯一の道」 そのためなら我は、奈落にでも堕ちよう。 そう宣言した鳳凰の目には、もはやこの世のものとは思えないほどの深い覚悟が宿っていた。 闇のように深く、底知れない覚悟が。 「随分と時間を食ってしまったな……まあ急ぐ道理もあるまい。ゆっくりと確実に、一人ずつ消していけばよいだけのこと。派手に動いて周りに警戒されるのも好ましくない」 言いながらデイパックの中に手を差し入れる。 すでに所持品の数が尋常ではなくなってきているが、それがマイナスになるような真庭鳳凰ではない。もたつく様子もなく、すぐに目的のものを中から取り出す。 数刻前に西東天から鳳凰の手に渡った支給品、首輪探知機。 現在の区域であるE-7内に反応はないが、ここからF-7までは目と鼻の先だ。境界をまたげば、また誰かの名前を見つけることができるやも知れぬ。ついでに図書館とかいう場所を探索しておくのもよいか―― そんなふうに行動の指針を決め、首輪探知機を片手に歩き出そうとする鳳凰。 が、そこで何かを思い出したようにはたと足を止める。 「そういえば、これをまだ調べていなかったな」 そう言って取り出したのは、鳳凰の元々の支給品であるノートパソコンだった。 何に使うものかすら不明だったがゆえに調べることすらせず放置していたが、西東天がそれを見た際の発言からかなり利便性の高い道具であることは想像できた。 使い方さえ把握できれば、これも強力な武器となるかもしれない。 「どれ、読んでみるとするか……可能な限り、念入りにな」 もはやルーチンワークのような動作で、鳳凰はノートパソコンを左手でつかみ瞑目する。 それに残された記録を余すところなく掬い上げようと、左手に意識を集中させる。 深く、深く、深く。 記憶の残滓の中へ、己の意識を潜行させる。 数十秒か、あるいは数分か。それなりに長い時間をかけて、鳳凰はそれの記録を読み取った。 「…………なるほど」 しばらくののち、記録を辿り終えた鳳凰は閉じていた目を開き、静かにそう呟く。 そしてそのままノートパソコンを開くことも起動することもせず、それを自分のデイパックの中へそっとしまいこんだ。 「さっぱり分からん」 【1日目/夕方/E-7】 【真庭鳳凰@刀語】 [状態]身体的疲労(小)、精神的疲労(小)、左腕負傷 [装備]炎刀・銃(回転式3/6、自動式7/11)@刀語、デザートイーグル(6/8)@めだかボックス、匂宮出夢の右腕(命結びにより) [道具]支給品一式×6(うち一つは食料と水なし)、名簿、懐中電灯×2、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、 首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1、ノートパソコン@現実、けん玉@人間シリーズ、日本酒@物語シリーズ、トランプ@めだかボックス、鎌@めだかボックス、 薙刀@人間シリーズ、シュシュ@物語シリーズ、アイアンステッキ@めだかボックス、蛮勇の刀@めだかボックス、拡声器(メガホン型)@現実、首輪探知機@不明、 誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、デザートイーグルの予備弾(40/40)、 「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、ノーマライズ・リキッド、チョウシのメガネ@オリジナル×13、小型なデジタルカメラ@不明、 マンガ(複数)@不明、三徳包丁@現実、中華なべ@現実、虫よけスプレー@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、 食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、おみやげ(複数)@オリジナル、『箱庭学園で見つけた貴重品諸々、骨董アパートと展望台で見つけた物』」 (「」内は現地調達品です。『』の内容は後の書き手様方にお任せします) [思考] 基本:優勝し、真庭の里を復興する 1:F-7へ移動し、他の参加者がいたら殺しに向かう 2:虚刀流を見つけたら名簿を渡す 3:余計な迷いは捨て、目的だけに専念する 4:ノートパソコンや拡声器については保留 [備考] ※時系列は死亡後です。 ※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません ※支給品の食料は乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。 ※右腕に対する恐怖心を克服しました。が、今後、何かのきっかけで異常をきたす可能性は残ってます。 ※記録辿りによって貝木の行動の記録を間接的に読み取りました。が、すべてを詳細に読み取れたわけではありません。 ※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前、エリアの境界線が表示される。範囲は探知機を中心とする一エリア分。 拍手喝采歌合 時系列順 ×××××&×××××――「あ」から始まる愛コトバ 拍手喝采歌合 投下順 ×××××&×××××――「あ」から始まる愛コトバ 友情の手前、憎しみの途中 貝木泥舟 GAME OVER Let Loose(Red Loser) 真庭鳳凰 零崎舞織の暴走
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アニメ板は8p32行制限なので編集するときは気を付けてください スレ立て前は重複チェックをお願いします [部分編集] 第590話用 ※スレ番号がズレ続けるのを防ぐため早期に編集 関連スレ等、直前に確認・更新して下さい ↓↓スレタイ↓↓ 【化物語】<物語>シリーズ ファイナルシーズン第590話【続終物語】 ↑↑スレタイ↑↑ 1 [部分編集] !extend checked vvvvv 1000 512僕達と、育ち続ける物語。――――――――――――――――――――――――――――――――・荒らし、煽りは徹底放置。→削除依頼:http //qb5.2ch.net/saku/・法律に違反する画像や投稿動画の話題、URL貼りは厳禁。・sage進行推奨。メール欄に半角小文字で「sage」と記入。・次スレは 980が宣言後、1行目に「!extend checked vvvvv 1000 512」を入れて改行してからスレを立てる事。――――――――――――――――――――――――――――――――「続・終物語」2018年11月10日より全国30館にてイベント上映開始!■関連サイト公式サイト:http //www.monogatari-series.com/zokuowarimonogatari/公式Twitter:http //twitter.com/nisioisin_anime西尾維新オフィシャルサイト:http //ni.siois.in/ANIPLEX+公式通販サイト:http //www.aniplexplus.com/JZJpwKUr<物語>シリーズポータルサイト:http //www.monogatari-series.com/<物語>シリーズアプリゲームぷくぷく:http //monogatari-pucpuc.jp/まとめWiki:http //www40.atwiki.jp/nisioisin-anime/■前スレ【化物語】<物語>シリーズ ファイナルシーズン第589話【終物語】http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anime2/1536999327/ 2 [部分編集] ■スタッフ原作:西尾維新「続・終物語」(講談社BOX)キャラクター原案:VOFAN監督:新房昭之シリーズ構成:東冨耶子・新房昭之キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫総作画監督:西澤真也・宮井加奈美術監督:内藤健美術協力:飯島寿治美術設定:大原盛仁色彩設定:渡辺康子撮影監督:衛藤直毅CGディレクター:丸尾健士編集:松原理恵音響監督:鶴岡陽太音楽:羽岡佳アニメーション制作:シャフト■キャスト阿良々木暦:神谷浩史戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和八九寺真宵:加藤英美里神原駿河:沢城みゆき千石撫子:花澤香菜羽川翼:堀江由衣忍野忍:坂本真綾阿良々木火憐:喜多村英梨阿良々木月火:井口裕香斧乃木余接:早見沙織老倉育:井上麻里奈忍野扇:水橋かおり臥煙遠江:根谷美智子■主題歌オープニングテーマ「07734」歌:阿良々木暦(神谷浩史)エンディングテーマ「azure」歌:TrySailアプリゲームぷくぷくテーマソング「wicked prince」歌:princess a la mode■物語シリーズの関連商品の情報はこちら(まとめWiki)http //www40.atwiki.jp/nisioisin-anime/pages/31.html 3 [部分編集] ■関連スレ[ライトノベル板] 西尾維新 その303http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/magazin/1541865859/[アニメ映画板]【劇場版全三部作】傷物語 第22夜【Ⅲ冷血篇】http //medaka.2ch.net/test/read.cgi/animovie/1489106460/■キャラスレ【化物語】戦場ヶ原ひたぎ蕩れ34【I Love You】http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1475957233/【化物語】八九寺真宵ちゃんスレ17【噛みまみた】http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1475761542/【化物語】千石撫子(DJ NADEKO)18.6【なーでこーDa!Yo!】http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1501381080/【化物語】羽川翼21【女の子のお届けものです】http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1521513397/【化物語・傷物語】忍野忍はぱないの!可愛い16【キスショット】http //matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1499218234/ 4 [部分編集] ■FAQQ. 原作読みたいんだけど、何から読めばいいの?順番は?A. <物語>シリーズは、現時点で『化物語(上)(下)』『傷物語』『偽物語(上)(下)』『猫物語(黒)』 『猫物語(白)』『傾物語』『花物語』『囮物語』『鬼物語』『恋物語』 『憑物語』『暦物語』『終物語(上)(中)(下)』『続・終物語』 『愚物語』『業物語』『撫物語』『結物語』 『忍物語』『宵物語』の順で24冊が刊行されています。刊行順で読むことをおすすめします。 また、『化物語』『偽物語』アニメコンプリートガイドブック、アニメ<物語>シリーズヒロイン本、アニメ『鬼物語』、 『化物語[入門編]』、『化物語』『偽物語』PremiumアイテムBOX、映画『傷物語』ビジュアルブック には書き下ろしの短々編が収録されているほか、 アニメ『化物語』オフィシャルガイドブック、オリジナルドラマCD『佰物語』、アニメ『化物語』副音声副読本(上)(下)、 副物語(上)(下)アニメ偽物語&猫物語(黒)副音声副読本が刊行されています。 +旧テンプレ置き場 旧テンプレ置き場 1 {青春を、すべて見るまで終われない。 ■重要項目 【※実況厳禁】実況はアニメ特撮実況板(http //hayabusa.2ch.net/liveanime/)で行うこと。 2chブラウザの導入推奨。「人大杉」回避、特定ID・コテ隠滅、無料。(http //monazilla.org/index.php?e=109) 荒らし、煽り、コテハン、トリップ、beは徹底放置。→削除依頼:http //qb5.2ch.net/saku/ 未放送部分の原作バレ及びネタバレ自重。語りたい人は原作スレかネタバレスレへ。 ニコニコ動画やYouTube他、『違法な』ファイル共有に関する話題・URL貼りは厳禁。 sage進行推奨。E-mail欄(メール欄/メ欄)に半角小文字で「sage」と記入。 次スレは 970が宣言してから立てること。無理なら代役を指名。 テンプレはここからコピペする事→http //www40.atwiki.jp/nisioisin-anime/pages/12.html ■放送/配信情報 【化物語】2009年7月~10月まで12話放送 + 2009年11月3日~2010年6月26日まで3話Web配信(全15話) ニコニコチャンネル:http //ch.nicovideo.jp/channel/ch330 【偽物語】2012年1月~4月まで放送(全11話) ニコニコチャンネル:http //ch.nicovideo.jp/channel/nisemonogatari-anime 【猫物語(黒)】2012年12月31日22時~24時放送(全4話) ニコニコチャンネル:http //ch.nicovideo.jp/channel/nekomonogatari 【<物語>シリーズ セカンドシーズン】2013年7月(原作全6巻を2クールにて)放送開始 ■関連サイト 化物語公式:http //www.bakemonogatari.com/ 偽物語公式:http //www.nisemonogatari-anime.com/ 猫物語(黒)公式:http //www.nekomonogatarikuro-anime.com/ <物語>シリーズ セカンドシーズン公式:http //www.monogatari-series.com/2ndseason/ 傷物語公式 http //www.kizumonogatari-movie.com/ まとめwiki:http //www40.atwiki.jp/nisioisin-anime/ ■前スレ (略) 2 {■スタッフ 原作:西尾維新「化物語」「偽物語」(講談社BOX) キャラクター原案:VOFAN 監督:新房昭之. シリーズ構成:東冨耶子・新房昭之 キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫 シリーズディレクター:尾石達也(化物語)/板村智幸(偽物語) 総作画監督(偽物語):杉山延寛・山村洋貴. ビジュアルディレクター(化物語)/プロダクションデザイン(偽物語):武内宣之 音楽:神前 暁. 音響監督:鶴岡陽太 美術監督:飯島寿治 色彩設定:滝沢いづみ(化物語)/日比野 仁(偽物語) 美術設定(偽物語):大原盛仁. カラーデザイン(偽物語):滝沢いづみ 撮影監督:会津孝幸 編集:松原理恵 ビジュアルエフェクト:酒井 基. アニメーション制作:シャフト ■キャスト 阿良々木暦:神谷浩史 戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和 八九寺真宵:加藤英美里 神原駿河:沢城みゆき 千石撫子:花澤香菜 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏 戦場ヶ原父:立木文彦 阿良々木火憐:喜多村英梨 阿良々木月火:井口裕香 忍野忍:坂本真綾. 貝木泥舟:三木眞一郎 影縫余弦:白石涼子. 斧乃木余接:早見沙織 ■猫物語(黒) Blu-ray/DVD 第一巻「つばさファミリー(上)」2013年3月6日発売 Blu-ray版:¥7,350(税込) DVD版:¥6,300(税込) DVD通常版:¥5,250(税込) 第二巻「つばさファミリー(下)」2013年4月3日発売 Blu-ray版:¥7,350(税込) DVD版:¥6,300(税込) DVD通常版:¥5,250(税込) ■猫物語(黒) OP・ED曲 OP「perfect slumbers」作詞 meg rock/作曲,編曲 神前暁/歌 羽川翼(堀江由衣) 2013年3月6日発売 Blu-ray DVD 第一巻「つばさファミリー(上)」特典CDに収録 ED「消えるdaydream」作詞 こだまさおり/作曲,編曲 神前暁/歌 河野マリナ 2013年4月3日発売 Blu-ray DVD 第二巻「つばさファミリー(下)」特典CDに収録 ■化物語・偽物語の関連商品の情報はこちら(まとめWiki) http //www40.atwiki.jp/nisioisin-anime/pages/31.html 3 {■関連スレ [アニメ映画板] 化物語劇場版「傷物語」公開は2013年?(実質2スレ目) http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/animovie/1354732916/ [ライトノベル板] 西尾維新 その247 http //toro.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1367157867/ [声優総合板] 【偽物語】西尾維新アニメ声優総合スレ5【めだか】 http //uni.2ch.net/test/read.cgi/voice/1324194688/ [アニメ2板] 刀語 46本 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1367318723/ 化物語◇物語シリーズ ネタバレスレ 19冊目◆偽傷 http //awabi.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1337015529/ 化物語フィギュアスレ其ノ陸 http //toro.2ch.net/test/read.cgi/toy/1353835806/ [アニメ板 避難所] 偽物語 避難所 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/8291/1325955872/ [西尾維新 総合板] 化物語 避難所 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/8053/1256927161/ ■キャラスレ 【物語シリーズ】阿良々木暦スレ【変態】 http //uni.2ch.net/test/read.cgi/litechara/1304247557/ 【化物語】戦場ヶ原ひたぎ蕩れ31【ひたぎクラブ】 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1371820517/ 【化物語】八九寺真宵ちゃんスレ12【噛みまみた】(dat落ち) http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1350052046/ 【化物語】神原駿河に萌えるスレ5.1【偽物語】 http //uni.2ch.net/test/read.cgi/litechara/1325862506/ 【化物語】千石撫子(DJ NADEKO)16【なーてこーDa!Yo!】 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1360581514/ 【化物語】羽川翼14【黙っていてくれたら、私、なんでもするから】 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1358094977/ 【化・偽物語】忍野忍はぱないの!可愛い 【物語セカンドシーズン】 (実質11スレ) http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1372233802/ 【偽物語】阿良々木火憐 月火ファイヤーシスターズ5【化物語】 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1332303320/ 4 ■FAQQ. 何クール? 全何話? A. 化物語は「ひたぎクラブ」2話、「まよいマイマイ」3話、「するがモンキー」3話、「なでこスネイク」2話、「つばさキャット」5話 ――の1クール全15話構成です。第12話までTV放送して、残り3話は公式HPで無料配信されました。 偽物語は「かれんビー」7話、「つきひフェニックス」4話の1クール全11話構成です。 猫物語(黒)は「つばさファミリー」4話の構成です。 Q. アニメ化するのは『化物語』『偽物語』『猫物語(黒)』だけ?A. 2010年7月28日に、西尾維新アニメプロジェクト第3弾として『傷物語』の劇場版製作が発表 2013年1月10日に、『<物語>シリーズ セカンドシーズン』6作品が2013年7月より2クールにて放送されることが発表されました。Q. 原作読みたいんだけど、何から読めばいいの? 順番は? A. 物語シリーズは、現時点で『化物語(上)(下)』・『傷物語』・『偽物語(上)(下)』・『猫物語(黒)』・『猫物語(白)』・ 『傾物語』・『花物語』・『囮物語』・『鬼物語』・『恋物語』・『憑物語』の順で13冊が刊行されています。 刊行順で読むことをおすすめします。 また『化物語アニメコンプリートガイドブック』・『偽物語アニメコンプリートガイドブック』には書き下ろしの短々編が収録されているほか、 オリジナルドラマCD『佰物語』が刊行されています。 Q. ○○がわからないから教えて。 A. まず↓のまとめwikiのFAQを見て、それでも分からないなら質問してみて下さい。 http //www40.atwiki.jp/nisioisin-anime/pages/14.html Q. 原作では○○だぜ! A. 随分と元気いいね、何かいいことでもあったのかい?ここはアニメ本スレ。ネタバレするならネタバレスレへ。http //awabi.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1337015529/
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『家族』と『他人』 ◆ai0.t7yWj. 『零崎一賊』―――殺人鬼 血ではなく流血で結ばれた『家族』 彼らは、例外こそあるものの、皆が皆、後天的に『零崎』となっている。 だからこそ、軋識は思う。 もしかしたら、数時間前にあった彼は、『零崎』だったのではないかと。 まだ、『零崎』に目覚めていないだけだったのではないかと。 自分の『零崎』としての感覚が、彼を『零崎』として認識できなくても、 まだ目覚めていなかったのならば、それは仕方がない。 と、考えたところで、しかし、軋識は自らの考えを否定する。 だって、あんな奴が『零崎』なわけがない。 いつかの雀の竹取山で双識は、 『零崎』は全員が全員、D.L.L.R.シンドローム(殺傷症候群)の患者かもしれない、 などといったが、あのときの顛末を思い出すまでもなく、 その仮説を容易に否定できるだろう。 そう、あんなわかりやすい反証がいるのだから。 あの―――殺意の塊のような男が ”まだ”『零崎』に目覚めていないはずがあろうか。 なぜなら―――もし、彼の内側に『零崎』が眠っているのなら――― とっくに目覚めているはずだ。 あれだけの殺意を持つ男が、”人を殺して” なお、自らの『零崎』を押さえつけているなんて、考えづらいのだから。 まぁ、彼が『零崎』に目覚めていない『零崎』である可能性は零ではない。 たとえば――― 彼が”まだ一人も殺していない”なら とはいえ、そんなのはやっぱり仮説だ。 確かめるまでもなく、彼は大量の殺人を犯しているだろう。 人を殺していないはずがない。 あれだけの殺意がありながら、人を殺さずにいられるわけがない。 あの殺意を抑えることができるなんて、そんなのは――― 『異常』だ。 と、そこまで考えたところで、軋識は、考えるのを止めた。 「さて、どうするっちゃかね」 時刻はまもなく放送が始まろうかというところ。 場所はD-6、ネットカフェの前、 薄明るい空の下、零崎軋識は立ち止まって思案していた。 ◇ 『人識――家族と他人、どっちが大事っちゃ?』 つい、数時間前、人識にそう尋ねて以来、軋識は考えていた。 『家族』と『他人』、どちらが大事なのか。 『家族』――― 自殺志願(マインドレンデル) ―――零崎双識 少女趣味(ボルトキープ) ―――零崎曲識 『他人』 暴君 ―――玖渚友 三人の内、双識か曲識のどちらか、あるいは両方がいることは間違いない。 この六時間近くの間、手がかりをまったく得られずとも、 軋識の『零崎』としての感覚は”いる”と告げている。 一方、 暴君 は、いるかもしれないとは思うが、 いるという確実な根拠はなかった。 だから、確実にいるだろう『家族』を探すのが順当に思えた。 けれど、そう考える過程で軋識は――― 愚神礼賛(シームレスバイアス) 零崎軋識は――― 否、 街(バッドカインド) 式岸軋騎は――― 気付いてしまった――― 暴君 へと近づく方法を。 簡単なことだった。 自分と彼女をつなぐものは、ここに招かれる前も後も変わらない。 かつて世界を震撼させたサイバーテロ集団 ――― 同志(チーム) 式岸軋騎はその一員なのだから。 もし 暴君 がいるのなら、この会場のどこかから、ネットワークへともぐり、 何がしかの行動を起こすだろうことは想像にかたくない。 ならば、簡単なことだ。 こちらも同じようにもぐればいい。 もしもこの会場にネットワークが張り巡らされているならば、 高い確率で、 暴君 と接触することができる。 ―――おあつらえ向きのように、近くには『ネットカフェ』があった。 けれど――― そこで式岸軋騎は迷ってしまった。 いや、零崎軋識が迷ってしまった。 暴君 へ接触しようとすること。 それは、双識と曲識を裏切ることにならないだろうか。 先程、探すのは『家族』が順当と考えたが、 それは手がかりがない状態での話。 暴君 へと近づく手段を見つけてしまった今では、 むしろ、『他人』を探すほうが順当に思える。 否、 そうするべきなのだろう。 仮に 暴君 に接触できた場合、いや、接触できなくても、 ネットワークへともぐることは、 『家族』の手がかりを得られる好機であり、かつ、 主催者たる不知火袴に報復する上では、有益あのだから。 そう考えて、軋識はネットカフェへと歩みを進めた。 なのに――― 軋識はこうして、ネットカフェに入ることもなく、 立ち往生していた。 「………全く、馬鹿ばかしいっちゃ。ここまできて迷うなんて」 『家族』と『他人』、どちらか一方を選ぶ必要なんてないのだ。 実際、零崎軋識は―――そして、式岸軋騎は――― 今までどちらを選ぶこともなく、二つを両立させていたのだから。 それをゆるがせたのは、人識に放った問いもあったけれど、 つい先ほど会った、あの化け物女の存在も大きかった。 『あなた達、一賊の誰かがわたしの弟 ――七花と言うのですが―― を万が一にも殺したらとしたら』 『根こそぎ全員、殺します』 「きひひひ………、それは本来俺達『零崎』のセリフだっちゃ」 あの化け物女は、あくまで一側面においてではあるが、 ―――少なくとも、『家族』か『他人』かと迷っている自分よりも、 よっぽど『零崎』らしいと、軋識は思ってしまった。 「まぁ、なんにせよ、ここまできて回れ右なんて ばかばかしいな」 と、軋識の口調が変わった。 「もう放送も近い。まずは放送を聞いてからだ。 それから、中を探るか」 軋識は、ひとまず式岸軋騎として動くことを決めた。 そして、放送が始まった。 ◇ 『実験の最中だが、放送を始める。―――』 放送が響き渡る。 どうやら、最初とは違う者のようだ。 けれど、そんなことは些細なことだ。 報復対象が増えたに過ぎない。 『―――さて、まずは死亡者の発表――の前に、荷物を確認してみろ。 その中に白紙だった紙があるだろう? 今は参加者一覧――つまり名簿に変わっている筈だから確認しておけ。』 その言葉をきいて、軋騎はデイパックの中をさぐる。 そして、大した苦もなく、名簿を探しあてた。 そして、知る。 零崎双識 零崎曲識 ―――玖渚友 軋騎は思わず口元を緩ませた。 ―――あぁ、もうすぐ彼女に会える 「待っていてください、 暴君 」 そうしてネットカフェへと足を進めようとして、 『―――零崎曲識―――』 軋騎は止まった。 ◇ 思考が固まる。 自分は何を考えていたのだろうか。 何をしようとしてたのか。 ―――そうだ、歩いていた。 どこに? ―――ネットカフェへ 何のために? ―――会うために 誰に? ――― 暴君 に ならば、なぜ止まっている? ―――放送を聞いたから では、何を聞いた? 『―――零崎曲識―――』 ぐしゃり 手に持っていた名簿は握りつぶされ、 コンクリートの上へと落ちた。 「トキ―――、俺は―――、俺は―――」 口からこぼれ出る言葉は、されど、意味を紡がない。 悔しさ、悲しみ、嘆き、憎しみ、 そうした感情が胸のうちから湧き上がっていく。 そして、その想いは――― 「ゥ、ゥ―――、ゥゥゥゥゥゥウ!……………………………… ……………ゥゥ……ゥ……………………………………………」 しかし、その想いは吐き出されることはなかった。 ◇ いったい自分は何を考えていたのだろう。 『家族』か『他人』か、なんてことに頭を悩まさせ、 『家族』が死ぬ可能性を考えなかったなんて。 知っていたはずだ。 ここには、『化け物』がいることを。 数時間前、自分は会ったばかりじゃないか、『化け物』に。 あの『死色の真紅』にすらも匹敵するだろう、『化け物』に。 それなのに、曲識の名前が呼ばれる瞬間、 自分は 暴君 に会うことばかり考えていた。 「―――トキ」 嘆きたい 憤りたい 叫びたい けれど――― 自分にそんな資格はない。 ついさっきまで、自分は『他人』のことを優先して、 『家族』のことをすっかり忘れていた。 ―――そんな男に、どんな資格があるのか。 もう、遅い。いまさら遅い。 曲識は死んだ。 もうとりかえしはつかない。 もう、謝ることすらできない。 ならば――― ならば、せめて償おう。 式岸軋騎としての自分は捨て、零崎軋識としてのみ生きよう。 そうすることが、きっと償うことになると信じて。 「すまない、トキ」 零崎軋識は、そうして、ネットカフェに背を向けた。 ――― 暴君 に会うなんていう罪深いことは、もはや軋識には許されていないのだから。 そして、 「まってろ、レン、人識」 守ろう。 双識を、人識を、―――『家族』を 命に代えてでも守ろう。 『家族』を裏切ろうとした自分の命が、 『家族』より重いわけがないのだから、 そして、 「かるーく、零崎を始めてやるっちゃ」 殺そう。 殺して殺して殺しまくる。 強いも弱いも関係ない。 『死色の真紅』も、『化け物』だって関係ない。 自分には、選ぶ権利なんてないのだから。 自分は『零崎軋識』なのだから。 「―――零崎に歯向かった奴は、一族郎党皆殺しだっちゃ」 【一日目/朝/D-6ネットカフェ前】 【零崎軋識@人間シリーズ】 [状態]頭に痛み、擦り傷、強い罪悪感 [装備]愚神礼賛@人間シリーズ [道具]支給品一式(名簿のみ紛失)、ランダム支給品(0~2) [思考] 基本:一族郎党皆殺し 1:トキを殺した奴を探し出して一族郎党皆殺し 2:会場にいる『家族』以外の参加者を見せしめで皆殺し 3:『家族』(人識を含む)との合流、及び保護 4:零崎一賊に牙を向いた不知火袴およびその関係者を皆殺し。及びその準備。 5: 情報機器(暴君)に近づくのをできる限り避ける 6:もしも 暴君 に会ってしまったら……… ※名簿をざっと見ただけで捨てています。参加者の名前を把握していないかもしれません ※握りつぶされた名簿はネットカフェ周辺に転がっています 騙物語 時系列順 止まる足、進む訳 騙物語 投下順 止まる足、進む訳 天災一過 零崎軋識 神に十字架、街に杭
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忍者装束と機関銃 ◆ARe2lZhvho 砂漠と土の境目付近を北上しながら宇練銀閣は苛立っていた。 見つからない。 弾を当てる相手が見つからない。 球磨川禊という奇妙な洋装の少年と鑢七実という虚刀流の姉だったか――を殺し(たと思っ)て以降一向に獲物に出会えない。 いっそ人間でなくてもいいから試し撃ちでもしようかと銃を取り出してみるも周囲に動くものは見当たらない。 ならば、と空に銃口を向けるも雲が浮かんでいるばかり。 鳥は疎か虫すらいない状況に違和感を覚えるも大したことではないと切り捨てた。 しかし、一度出してしまった銃をそのまま仕舞うというのも癪に障る。 たまたま目についた木に照準を定め、引き金に指をかける。 機関銃であるため当然発射される弾丸は一発ではない。 何度かの衝撃の直後、響く軽快な音。 なるほど、一挺だけで撃つとこういう感触か、と納得しかけた瞬間―― 「に、にゃあああああ!」 悲鳴にしては変な声が聞こえ、 「い、いきにゃり何するんだにゃ!」 白髪で本来人間には無い場所に耳が生えた女が落ちてきた。 * 掲示板への書き込みを廃墟の屋上で済ませた後、ランドセルランドがある方向――北東だにゃん――に向かおうとした俺に刀野郎が声をかけてくる。 声と言っても俺の頭の中で響いているだけにゃんだけどにゃん。 「俺を消し去る方法だが、無いわけじゃあねえぞ」 またもや出鼻を挫くように言われたけどこれももう慣れたにゃん。 ……悲しい話だよにゃあ。 「ただ、今ここで教えちまってもすぐ実践できるわけじゃねえし、確証もない。そうだな……まずは一人殺せたら教えるってのでどうだ?」 「殺したら……って簡単に言ってくれるよにゃあ。そもそも誰でもいいから出会わにゃいと始まらにゃいにゃん」 「確かにその通りだな。というわけで、だ。東に向かうぞ」 「俺の意見は無視かにゃ」 「別に無視をしてるわけじゃねえ。ランドセルランドに行くなら北東に突っ切るのが最短距離だろうよ。ただ、その道を通ったところで誰かに出会えると思うか?」 「……可能性は低そうだよにゃあ」 「だが、一旦東に向かってそれから北上したらどうだ?大きい通りに出られる上、地図に乗った施設も近い。それに……」 「それに?」 「あそこに見える赤い点、あれって車ってやつだろ?中に乗ってるのが強いか弱いか、一人か複数かはわからないが確実に人はいる」 言われて目を細めると確かに赤い点が右から左に向かって動いてるにゃん。 右左ってのは俺から見てってことにゃんだけど。 「そう言われても移動手段が違いすぎるにゃ。向かったところで引き離されるのがオチにゃん」 「普通ならそうだな。だが、進行方向を見てみろ。こっからじゃよくわらねえが行き先は診療所かスーパーマーケットってとこのどっちかだろ。 どちらも立ち寄ったらしばらくは出て来ねえ場所だ。だったら今行けば間に合うんじゃあないのか? もし診療所を通り過ぎてランドセルランドに行くようだったら諦めろ。そうでなくても当初の目的地なんだから損はないと思うがね」 「……わかったにゃん」 また言い包められたようにゃ気もするけどにゃあ。 診療所はともかくスーパーマーケットがどんにゃとこにゃのかこいつわかってて言っているのが嫌らしいにゃ。 でも人間とは違う原理で体を動かしてる俺にゃん、ちょっと遠回りしたくらいじゃご主人の体が筋肉痛を起こすにゃんてことはにゃいにゃ。 屋上の端でしゃがみ込む。 目標、できるだけ遠くまで。 ぐっ、と足に力を込めて一気に跳躍したにゃん。 * * 着地。 地面が土だったのは助かったにゃん。 アスファルトじゃあ俺は無事でもご主人の体を痛める可能性は無きにしも非ずだったからにゃあ。 そのまま、歩き出そうとして―― 「おい猫、ちょっと待て」 また止められたにゃん。 これで何度目かにゃあ…… 「おいおい、俺はお前のためを思って止めたんだぜ?お前の頭じゃ時間がかかりそうだしちょっとそこの木に登れ」 「つーことはにゃんにゃ?説明したいことでもあるのかにゃ?」 「察しがいいじゃねえか、その通りだ。襲われるか話し合いになるかはわからねーがそのときに俺の話を聞く余裕なんてないだろう?」 「返す言葉もにゃいにゃん。一応聞いておくけどお前はあいつを知っているのかにゃん?」 あいつってのは遠くに見えた灰色の着物に身を包んだ長髪の(多分)男のことにゃん。 ここで話が長くにゃりそうだって言っていた以上知ってる可能性は高そうだったからにゃあ。 そしたら予想通り、 「おそらくは、だがな。違ってたところでさして困ることでもねえ」 返事が来たにゃん。 このまま突っ立って場合によっちゃ変にゃ独り言呟いているの見られたらたまったもんじゃにゃいからにゃあ。 俺は近くに生えてた木に登る。 それにゃりに大きい木で葉もちゃんと生い茂っているから外からは見えにくいだろうし地面で話すよりかは幾分とマシにゃん。 俺も外の様子を確認しにくくにゃるけどそこまで困るもんでもにゃいだろう。 話がとっとと済んでしまえば関係にゃいことだしにゃあ。 というわけで俺はさっさと質問に移る。 その方が刀野郎にとってもいいだろうからにゃあ。 癪に障る話だが。 「で、あいつは誰で、どんにゃやつにゃんだにゃん」 「十中八九宇練銀閣だな。支給品を見た感じだとこの時代はお前らの時代に生きてる人間が大半のようで俺達の時代からの人間が少数派みたいだ。 俺――つっても元は鳳凰の記憶だが見知った名前は真庭忍軍のやつらに幕府関係者のとがめに否定姫、昔とは違う名前だが左右田右衛門左衛門、それにその宇練銀閣。 俺の息子についてはさっき話したからもういいだろう?そうでなくても今は関係ない話だしな。 まずは真庭忍軍だが、こいつは頭領の中の頭領みたいな位置にいた男だ。そうでなくても全員互いに把握していたし装束も違うからこいつらじゃあないことは明らかだ。 んで、とがめと否定姫だが髪色がそれぞれ白髪と金髪だから違うだろう。そもそももう死んじまってるしな。 左右田右衛門左衛門は仮面をつける前か後かは知らねえが鳳凰とは一番関わりが深かった男だ、違うと断言してやる。となると消去法で宇練銀閣になるわけだ」 急に出てきた鳳凰って俺の知らにゃい人間だにゃん。 まあ俺には関係にゃさそうだからいいけどにゃあ。 今ここで聞いても俺の頭が情報処理の限界を迎えてオーバーフローを起こしそうにゃだけににゃりそうだし。 「そいつがその銀閣ってやつだったところで俺が困ることでもあるのかにゃ?」 「無いな、全く無い。そいつは元は斬刀・鈍って刀を持っていたが俺の息子に斬られたやつだ。 今から俺の息子に会ったところで勝てる気はしないし殺したところで全然困らねえ」 「一応聞いておくけどもしも違う人間だったらどうするんにゃ?」 着物ってだけで決めつけるのは危にゃっかしいよにゃあ。 人間野郎の小さい方の妹は普段は着物を着てるらしいし。 「そのときはそのときだな。まあ、弱そうなやつなら殺してしまっても構わねえし、利用できそうなやつならお前が俺の代わりに話せ。 考える頭はなくても伝える口はあるだろう?」 「今さりげにゃくひどいこと言われた気がするにゃ」 悔しいことに否定はできにゃいんだけど。 それにゃら、と時間も結構経ったし外の様子を確認をしようとしたときにゃ。 ガガガッ!という音と共に木が揺れる。 覗くために変にゃ体勢ににゃっていたからバランスを崩して手が枝から離れてしまったにゃ。 「に、にゃあああああ!」 足で踏ん張ってみたが虚しく滑り落ちたにゃ。 慌てて四つ足で着地。 にゃんだかんだ言っても俺猫だからにゃあ。 着地で失敗するとかありえにゃいんだにゃ。 銃声のした方向をきっ!と睨みつける。 「い、いきにゃり何するんだにゃ!」 そこにいた男は機関銃を携えてたにゃ。 あれ?これ今撃たれたら俺危にゃくにゃいか? * * * 以上、これが俺が木から落ちてきた理由にゃん。 猿も木から落ちると言うが猫も木から落ちるというのも当てはまりそうだよにゃあ。 でも、難にゃく着地できるあたり俺たちは落ちる前提でいるから諺にはにゃらにゃいのかにゃ? って悠長にこんにゃこと言ってる場合じゃにゃかったにゃ。 目の前にいるそいつ――刀野郎が言うにはおそらく宇練銀閣――は機関銃の銃口を俺に向けたままにゃんだから。 いきにゃり俺が落ちてきたことで呆気にとられていたようだが我に返られたらやばいにゃ。 「あー、お前、宇練銀閣でいいんかにゃ?」 先手必勝じゃにゃいけど会話の主導権ってのは握っておいた方がいいことくらいはわかるにゃ。 問題は俺に握れるだけの会話をする頭がにゃいことにゃんだけどにゃあ。 「あ?その通りだよ。お前は確か……真庭忍軍とか言ったか」 「服はそいつらの借りてるだけで俺はその真庭忍軍とかじゃにゃくてブラック羽川だにゃん」 あ……刀野郎の言う通りだったもんだからつい反射的に俺の名前言ってしまったにゃん。 よくよく考えてみれば名簿には俺の名前じゃにゃくてご主人の名前ににゃってるはずだしやっちまったかにゃ。 でもそんにゃ心配はどこ吹く風だったにゃん。 「ぶらっく羽川……ね!」 そいつの取った行動――機関銃を迷うことにゃく撃ってきたこと――に比べれば。 * * * * 宇練銀閣がブラック羽川との会話に応じた理由、それは単に気まぐれからだった。 殺すなら名前くらい聞いておいてもいいだろう――それだけの理由で。 だから、相手の名前を聞いてしまえばそれで用件は済むし一々名簿にあった名前かどうかを思い出す必要もない。 聞いた名前を復唱してから引き金を引くのに躊躇はなかった。 一挺で撃っても申し分ない威力。 先程の砂漠とは違い、大地は多少湿って重くなっているにも拘わらず土煙を巻き起こす。 永遠にも思われるような、しかし実際は10秒すら経過していない時間の末、カチンッという音と共に弾幕が止む。 「ああ、やっぱり撃つのは最高だ」 銀閣の顔は恍惚の表情を浮かべていた。 かつての彼を知る者なら人違いではないかと思ってしまうほどに。 それくらい、銀閣にとって衝撃的だったのだ。 『兵器』との出会いは。 「せっかくだから死体を確認しておくか。さっきの球磨川禊と鑢七実ってのは確認し忘れちまったからなあ」 「球磨川禊と鑢七実――お前今そう言ったのかにゃ?」 避けられる可能性を全く浮かべられなくなるくらいには。 * * * * * 「ありゃあやべえな、少しでもまずいと思ったらすぐ上に跳んだ方がいい」 俺が馬鹿にゃ頭を使いにゃがら銀閣と話しかけようとしてる(つってもすぐ終わったんだけどにゃ)間、刀野郎は何も言わにゃいと思ってたら思うことがあったらしい。 「俺の時代じゃあ主な武器は刀で銀閣も剣士だったはずだ。それなのに機関銃なんて物騒なもん持ってしかも半ば使いこなしてやがる。 何の素振りで撃ってくるかわからねえし一瞬でも危ないと思ったら上に跳んだ方がいい。できるだけ高く跳んでついでに後ろに回り込め」 無茶苦茶にゃこと言うよにゃあと思ってたけどこのときばかりは万々歳だったにゃ。 この助言をもらっていにゃきゃ銃身が動いた時点で跳ぶことができずに今頃蜂の巣ににゃってたかもしれにゃいんだから。 とっさのこととでそんにゃに高くは跳べにゃかったけど、後ろに回り込むことができたから上出来かにゃ。 いつの間にか銃声は止んでいたし後ろから見る限り隙だらけで最高だにゃんて暢気に言ってたから殺そうかと思ったとき―― 「――球磨川禊と鑢七実ってのは確認し忘れちまったからなあ」 鑢七実。 俺がらしくもにゃく俺の意思で殺したいと思っている相手。 そして今聞いた球磨川禊という男。 こいつはあのときにいた「三人目の男」じゃあにゃいのか? その考えに至ったとき俺は思わず質問してたにゃ。 「球磨川禊と鑢七実――お前今そう言ったのかにゃ?」 振り返った銀閣の表情には少にゃからず驚きが混じってたみたいだにゃ。 銃弾を避けられるとは思いもしにゃかったんだろう。 実際無傷で済んで俺もびっくりしてるんだからにゃあ。 ん?いつの間にこいつ機関銃をしまったんだにゃ? 「てめえ……どうして無傷で……まあいい、冥土の土産に教えてやる。球磨川禊と鑢七実の二人組はさっき俺がぶっ殺してやったよ」 二人組――一緒に行動してたってことは「三人目の男」はその球磨川でほぼ間違いにゃさそうだにゃ。 もう聞きたいことは聞けたし用済みだよにゃあ。 自然、足に力がかかる。 それを知ってか知らずか、 「おい、猫。今すぐ跳べ!」 と刀野郎の声がして、反射的に跳ぶ。 それとほぼ同時に、 「こう……やってなぁぁぁあああああーーーー!!!!」 まるで手品の様に出現した機関銃を銀閣が構え、引き金を引く瞬間には―― 「う る さ い」 俺の手がやつの体を真っ二つにしてたにゃ。 いつか人間野郎に対してやったのと同じように綺麗に上半身と下半身に別れて。 普通の人間が刀を丸飲みにゃんて大道芸人でもにゃけりゃそうそうできることでもにゃいからにゃあ。 背筋も真っ直ぐって感じじゃにゃかったし警戒はほぼゼロだったにゃ。 下半身とお別れした上半身はぶっ飛んで木――俺がさっきまで登っていた木にゃ――に叩きつけられている。 さすがに即死だったみたいで何も聞こえにゃいにゃ。 人間野郎とは違ってやっぱそうにゃるよにゃあ。 吸血鬼もどきだからあいつは切り離されても長々と生きていられたんだろうが。 「俺は上に跳べと言ったつもりだったんだがどうしてそっちに跳んだんだ?」 感慨に耽る暇もにゃく刀野郎は俺に聞いてくる。 仮にも殺したんだし他にかける言葉があってもいいと思うんだけどにゃあ。 「聞きたいこと聞いたから用済みににゃっただけにゃん。それにあれ以上話を聞くのは不快だったにゃ」 刀野郎の話から考えれば宇練銀閣が鑢七実より弱いことにゃんて考えるまでもにゃくわかったにゃん。 だからこそ、俺は話の途中であるにも拘わらず殺しに行ったんだからにゃあ。 「期せずして鑢七実のことを聞けたんだからなあ。で、お前は鑢七実が死んだと信じるのか?」 「わかってて聞いてくるのはやめて欲しいにゃ。お前はそう思っていにゃいだろうに」 「ご名答。銃なんかじゃ殺せやしねえよ。忍法足軽でも使ってれば掠りもしないだろうからな」 「仮に殺してたとしたら俺は結果的に鑢七実を超えたことににゃるんだろうけど全然実感が湧かにゃいにゃ」 「ならその感覚を信じておきな。賭けてもいいが次の放送で鑢七実と球磨川禊……だったか?の名前が呼ばれることはない」 「だろうにゃあ。こればっかりは俺も全面的に賛成にゃ」 「まあ、なんだかんだ言っても一人殺したんだ。教えてやるよ、俺を消し去る方法」 そういえばそんにゃ話もあったよにゃあ。 随分と鑢七実は俺の中でウエイトの大きい存在ににゃっていたらしい。 * * * * * * 「そもそも俺は四季崎記紀とは言っても所詮は毒刀に込められた本来の記紀の怨念みたいなもんだ。 わかりやすく言ってしまえば刀の毒ってやつだな。 そして、お前はその毒に冒された状態ってわけだ。 俺を消し去るってのはとどのつまり解毒してしまえばいい。 解毒と言っても薬を飲んではいおしまい、とは行かないけどな。 ただ、うってつけのもんが一つある。 それが王刀・鋸って刀だな。 毒刀の対極、毒気を抜くことに特化した刀だ。 そいつを探し出して握ればあっという間に俺は消え失せるだろうな。 但し、今すぐ使うってのはオススメしないぜ。 鑢七実との対決のときに俺がいないと困るんだろ? そうでなくても王刀の効果を考えるとお前まで引っ込めてしまう可能性も十分にある。 もしもそうなってしまったらお前のご主人様の生存確率は格段に下がるだろうな。 仮に王刀を手に入れても使うのは終盤だろうな。 さあ、どうするんだい子猫ちゃん?」 刀野郎のうっとおしい講釈がやっと終わったにゃん。 俺には三行以上の長い話は理解できにゃいって設定を忘れたのかにゃあ。 それでも大体言いたいことはわかったにゃ。 要はその王刀ってのを探せばいいんだろう? 鑢七実を俺が殺すと宣言した以上、まだこいつの力というか知識は借りにゃきゃいけにゃいんだし、優先順位としては鑢七実を探す方が上にゃ。 幸い球磨川禊という手がかりも手に入ったんだしにゃ。 「一応言っておくがその球磨川ってのは要注意人物だからな。鑢七実と同行してる時点で只者じゃねえんだからよ」 そんにゃこと言われるまでもにゃくわかってるにゃ。 どうすると聞かれても俺のやることは変わらにゃいからにゃあ、ご主人のために尽くすだけにゃん。 だから、ちょっとだけわがままを聞いてもらうにゃ。 鑢七実を殺してあの大男より上に立ちたいっていう俺のわがまま。 そうと決まれば移動するにゃん。 ここで方向転換するのは癪だからこのまま真っ直ぐ東へ。 「おい、行くのはいいが支給品は回収しないのか?機関銃がいらないってのはわかるが他にもいいもんあるかもしれねえだろ」 言われて気付く。 すっかり忘れてたにゃん。 そそくさと歩いて落ちていたデイパックを拾い上げる。 中をまさぐってわかったけど機関銃は二挺持っていたみたいだにゃん。 通りで撃った直後にゃのにも拘わらず弾丸を装填しにゃいで撃てた理由はこれかにゃ。 まあ、二挺目は撃たせる前に俺が真っ二つにしてやったんだが。 俺には到底使えそうににゃいけど放置して拾われるのも嫌だしいただいてやるかにゃ。 「んにゃ……」 地図や食料とは違う堅い触感。 取り出してみる。 「これはトランシーバー……かにゃ?」 他の人間とやり取りできるアイテム。 一つしかにゃいってことはもう片方を誰かがおそらく持ってるってことにゃん。 使うか、使わにゃいか。 その選択も含めて前途多難だにゃん。 ああ、そういえば。 どうして俺がらしくもにゃく不快ににゃったのか、やっと理由がわかったにゃん。 鑢七実があんにゃやつに何もできずに死ぬにゃんてありえにゃいって分かっていたからにゃ。 それくらい、俺はまだ見ぬそいつを高く評価してしまってるってことにゃんだろうにゃあ。 【宇練銀閣@刀語 死亡】 【1日目/午後/F-4】 【羽川翼@物語シリーズ】 [状態]疲労(小)、ブラック羽川、四季崎記紀と一体化?、体に軽度の打撲、顔に殴られた痕、騙された怒り、強い敗北感 [装備]真庭忍軍の装束@刀語 [道具]支給品一式×2(食料は一人分)、携帯食料(4本入り×4箱)、毒刀・鍍@刀語、 タブレット型端末@めだかボックス、黒い箱@不明、トランシーバー@現実、「ブラウニングM2マシンガン×2@めだかボックス、マシンガンの弾丸@めだかボックス」 [思考] 基本:ストレスを発散する 0:トランシーバー……どうしようかにゃあ 1:一度診療所かスーパーマーケットに立ち寄ってからランドセルランド近辺を主に探索する 2:球磨川禊の匂いを手がかりに鑢七実を探す 3:鑢七実、いーさん、黒神めだかを探し出して殺す 4:戦場ヶ原ひたぎを見つけ出して話を聞く 5:四季崎記紀を消し去るために王刀を探す(王刀については半信半疑) [備考] ※化物語本編のつばさキャット内のどこかからの参戦です。 ※全身も道具も全て海水に浸かりましたが、水分はすべて乾きました。 ※阿良々木暦がこの場にいたことを認識しました。 ※四季崎記紀がいた歴史についておおまかには聞きましたが、四季崎がどの程度話し、羽川がどこまで理解したかは後続の書き手さんにお任せします。 ※トランシーバーの相手は哀川潤ですが、使い方がわからない可能性があります。また、当然ですが相手が哀川潤だということを知りません。 ※道具のうち「」で区切られたものは現地調達品です。他に現地調達品はありませんでした。 * * * * * * * 自分で持ちかけておいて何だがここまでうまくいくとは思わなかったぜ。 しかし、宇練銀閣――元々鳳凰の知識が元とはいえこんなやつだという情報なんて聞いたことなかったんだが。 子猫ちゃんのご主人の知識を借りるなら生粋のトリガーハッピーってやつか。 まあ、どんなやつだったところで俺の息子にはふさわしくないから死んでくれて助かった。 報酬代わりに教えた王刀のことだって強ち間違いじゃあないしな。 ただ、一つだけ教えていないことがあるが。 王刀を使えば俺は消えるしおそらく子猫ちゃんだって消える。 そうなった場合、この会場で起こったことを覚えていられるかどうかってのは五分五分なんだよなあ。 覚えていれば愛しの恋人が死んだことも自分が人を殺しちまった記憶も全てそのまま襲いかかってくる。 運良く忘れられたとしても殺し合いの会場に何も知らないまま放り出されて恋人が死んだってことも後から降りかかってくる。 どっちに転んだとしても面白そうではあるんだよな。 いやいや全く、どちらだったところで俺はいなくなってるから確認できないのが残念でたまらねえ。 おっとっと、危ねえ危ねえ。 俺の本来の目的は俺の息子の成長を見ることだった。 うまく誘導したからしばらくは大丈夫そうだな、このままゆっくり居候させてもらうとするか。 【四季崎記紀@刀語】 [状態] ブラック羽川と一体化? [装備] [道具] [思考] 基本:息子(鑢七花)がどうなったのか見てみたい 1: 他にはどんなおもしろい奴がいるのか会ってみたい 2: 今は羽川翼のやりたいようにやらせておく [備考] ※新真庭の里で七花と戦った後からの状態です。 ※ブラック羽川を通じて羽川翼の知識や記憶を見られるようです。 ※ブラック羽川の体を完全に乗っ取れるかは不明です。 鏡に問う 時系列順 ――かもしれない何かの話 鏡に問う 投下順 ――かもしれない何かの話 猫の首に鎖 羽川翼 みそぎカオス トリガーハッピー・ブレードランナー 宇練銀閣 GAME OVER