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0345:鵺野鳴介、復活ッッ 静かだ・・・・。 何も存在しない、真っ暗な空間。音も大地の感触も無い、ただ自分だけははっきりと見え認識できる世界。 (ここが死後の世界とやらだろうか・・・・では彼らもここにいるのだろうか・・・・?) 鵺野鳴介はぼんやりと考える。 この気違いじみたゲームでかれは愛する妻を、生徒を、強敵(とも)を失った。 そして自分はこのよく分からない空間に一人ぼっちで存在している。 (ゆきめ、郷子、玉藻・・・・許してくれ) 涙が出てきた。その場に居合わせなかったとはいえ、親しかった人物に何の手助けをしてやる事もできず、死なせてしまった自分の無力さを呪って泣いた。 (少なくとも玉藻と別れなければ・・・・あいつは・・・・あいつは死なずにすんだかもしれないのに・・・・) 溢れる涙を拭おうと左手を顔にやるが触れられない。我に帰ると左手が消滅しているのに気がついた。 『ようやく気がついたウガか、0能者』 声のする方向を見るとそこには鬼がいた。昔話の通りに天を突く巨大で身につけているのは腰巻一丁の姿で仁王立ちしている。 (覇鬼!? 何故お前がここに!?) 『それはこっちのセリフだウガ。キサマいつまでこんな所でめそめそしているつもりだウガ?』 (待ってくれ、そもそもここは何処なんだ? 今までおまえとは全く会話できなかったのに何故今になって話せる!?) 『ここは夢の中だウガ。どうやらあの野郎共が強過ぎる力をおさえているようだウガ。俺にできるのはこうしてキサマが寝ている間を選んで接触する事くらいだウガ』 (そうだったのか・・・・) この世界では能力の制限がかかっているらしいとは聞いていたが覇鬼にもそれが及んでいたと考えもしなかった。 『落ち込んでるヒマは無いウガ。キサマにはやらねばならん事があるだろうが』 (やることなんて、今の俺にやるべき事なことなど・・・・!?ッ) 突然覇鬼は鵺野の襟首を攫み上げた。巨体に攫み上げられ足が中に浮く。 『失望させるな0能者!! 仮にキサマは妹に、眠鬼に認められた男ウガ!! こんな処で倒れアイツを悲しませるマネは許さんウガ!!』 怒り狂う覇鬼は何度も見てきたが今回のような激しさは初めてだった。 不意に体中に衝撃が走った。覇鬼に地面へ叩きつけられたようだ。何も無い空間に叩きつけられるのは妙であるが。 (お、お前に何が分かる!? 今までダンマリ決め込んでいたお前に何が分かる!?) すぐに立ち上がり覇鬼の腹部辺りを乱打する鵺野。鬼の手も使えず、只の人間の拳では覇鬼には肩叩きにもならない。 やがて無駄な打撃を止めた。崩れ落ち腰巻をしがみつき鵺野はすすり泣く。その様子を見て覇鬼は口元を歪めた。 『フン、まだ怒りをぶつける元気はあるようだウガ。もう少し様子を見てやってもいいだろうウガ』 しがみつく鵺野を振り払い覇鬼は踵を返す。そして滑るように空間はと消えていく。 『もし力を欲するなら封印を解け。今一度力を貸すウガ』 (待ってくれ! この俺に一体何をしろと云うんだ!) 『甘えるな0能者! そのくらい自分で考えろ! まぁ精々精進するウガ』 (待ってくれ覇鬼! 覇鬼――――!!!) 全力で鬼の後ろ姿を追いかけるが差は広がる一方だ。そして――――は暗黒へと消え去った。 「覇鬼! 待って・・・・ハッ!」 波の音が聞こえる。どうやら瀬戸大橋の橋桁にいるらしい。周りは既に漆黒に塗り替えられ今は深夜である。 「覇鬼・・・・お前は俺に活を入れてくれたんだな・・・・ありがとよ」 長年付き合ってきた鬼に感謝し、左手を確認すると紙片が握られている。内容は深刻だった。我を忘れた自分は両津に気絶させられ、その間に大変な事になったらしい。ことの発端を作った乾は責任を感じ殺戮者に一人で挑むつもりだ。 「・・・・クッ! このままでは公主さんと乾君が危ない、早く・・・・!?」 行かなければならない、だがそうもいってられないようだ。瀬戸大橋を本土側から渡ってくる者の気配を感じた。向こうもこっちに気がついたらく、歩みを止めた。 (どうする? 交渉するか? それともここで戦うか・・・・?) 「何と・・・・ヒル魔殿が!? 間に合わなかったか・・・・」 瀬戸大橋を大半を渡ったところで第四目の放送、淡々と発表される死者の中に蛭魔妖一の名を確認して剣心は落胆した。 今頃はセナは自分と同じ、いや付き合いが長い分深く悲しんでいるだろう。 それにして主催者たちの悪辣ぶりには反吐が出る。死者一人の蘇生という“ご褒美”をチラつかせ殺し合いを激化させるとは。 (今まで頑なにゲームを拒否していた者でも友の蘇生にすがりくき、手を染めるかもしれぬ。そして拙者も・・・・) 今でこそ“志々雄の所業と同じ事”と切り捨てられるが、万が一完全に抜刀斎なってしまったら・・・・! 剣心は僅かに身震いする。 心の中で死者への黙祷を捧げると剣心は考える。蛭魔の死が確認された以上、ここで引き返すべきだろうか。 ナルトの名は呼ばれなかったが少なくとも四国には殺戮者が存在している。彼も無事とは限らない。 このままナルトの回収と蛭魔の敵を討つべく四国へのり込むか? 目を閉じて時間にして約10秒思考する。 (きっかり一時間、ナルト殿を捜索する。可能ならヒル魔殿の亡骸を回収する!) 時間を限って四国へ乗り出す事を選択した。 とりあえず走った。たいした時間もかからず四国の地を踏む寸前、それを感じた。 (・・・・只ならぬ気配。かなり近い。橋の下でござるか・・・・?) 今の自分には折れた刀は既に廃棄していので武器になりそうな物は刀の鞘しか所有していないが、ハッタリくらいにはなりそうだ。 で、どうするか? ゲームに乗っているなら輩なら最悪回れ右する選択肢もある。自分の脚力なら逃走は可能だろう。だが相手に戦う気が無いならこちらも交戦の意思は無い事を伝えなければ今後よけいな誤解を生むかもしれない。 迷っている内に下から何か投げられてきた。確認すると石を紙で包んだ物である。紙にこう書いてあった。 “こちらに戦う意思は無い。願わくば交渉したい。返答されたし” ホッと胸を撫で下ろし剣心も返事を書き石を包んで橋の下に落とす。 しばらくして闇の中から男が一人現れた。構えは取らず自然体である。 「手紙にも書いた通り交戦の意思は無い。俺は鵺野鳴介、手を貸してほしい」 「拙者は緋村剣心と申す。こちらにも戦う意思は無いでござる。とりあえず四国の状況を教えてくださらんか。」 【香川県/瀬戸大橋付近/深夜】 【緋村剣心@るろうに剣心】 【状態】身体の至る所に軽度の裂傷、胸元に傷、精神中度の不安定 【装備】刀の鞘 【道具】荷物一式 【思考】1、姉崎まもりを護る(神谷薫を殺害した存在を屠る) 2、小早川瀬那を護る(襲撃者は屠る) 3、力なき弱き人々を護る(殺人者は屠る) 4、人は斬らない(敵は屠る) 5、抜刀斎になったことでかなり自己嫌悪 6、早急に瀬那の元へ帰還 (括弧内は、抜刀斎としての思考ですが、今はそれほど強制力はありません) 備考:折れた日本刀の片割れは廃棄 【鵺野鳴介@地獄先生ぬ~べ~】 【状態】やや疲労 【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ~べ~ 【道具】支給品一式(水を7分の1消費。) 【思考】乾、竜吉公主を助けに行く
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雨の降る昼、いったいどうする ◆TPKO6O3QOM キュウビの忌々しい声が聞こえなくなったのを確認して、カエルは横線の引かれた名簿に目を落とした。十五の命が新たに散り、丁度半分の者が命を落としたことになる。あと二十ニの命が消えれば、このふざけた呪法は終わる。 それを面白がっているキュウビの首を討ち落としたい衝動を、カエルは深い吐息と共に抑え込んだ。とはいえ、この地での知り合いの全てを目の前で失った彼にとっては、今回の放送は単なる事実確認以上の意味合いは無かった。他者から比べれば、大分楽な身の上だろう。死者の読み上げが死亡した順番らしいことに気づけたのも、己が精神的に余裕があったためだ。 雨はまだまだ続きそうであった。ただ、雷を伴うような代物ではないらしい。放送の直前、大地を揺るがすような雷音が轟いたが、それ以降は静かなものである。 しかし、だからといって、目的もないのに外出するのは自殺行為でしかない。地下の鍾乳洞の探索も保留せねばならないだろう。水没の危険は勿論のこと、自分の位置が地図で確認できない以上、闇雲に進むことはできない。近くに禁止区域が設けられたのだから尚更だ。 一先ず、カエルは腹ごしらえをすることにした。とはいえ、事前に確認した食料はあまり食が進むような代物ではなかった。しかしながら、贅沢を言っていられる状況でもない。 カエルは数個の硬いパンと共に、蛙の腿肉を香草と一緒に焼いたものを取りだした。今の姿の己にこんなものを与えてくるとは、やはり、あのキュウビの根性は修復不可能なほどにねじくれているようだ。 冷えた油が白く固まっているそれを摘み、食い千切る。 それらとパンを水で流しこんだ時、小屋の扉が音を立てた。軋みと共に扉が引かれ、外の雨音と冷気が小屋の中に入り込んでくる。 骨を投げ捨て、剣の柄に手を掛けたカエルの眼に入ってきたのは、柔らかそうな体毛を雨に濡らした子供の獣だった。毛の脂のせいだろうか。雨に濡れても、獣の体毛は膨らみを保っている。 「こんにちはー。カエルさんはひとりなの?」 子供はカエルの存在に気付くと、円らな瞳を一、二回瞬かせてから、唇毛をふぁさと揺らし、のんびりとした口調で挨拶をしてきた。 子供に続いて入ってきたのは、白い狼だ。幾つか戦闘を繰り広げて来たのか、所々に巻かれた布は泥水に汚れ、後ろ足を引きずっている。最初の場所でキュウビに躍りかかって行った、アマテラスという狼だろう。詳細名簿とやらには白い狼が他にも認められたが、大きさからみて間違いないはずだ。 しかし、だからといって、こちらに無害とは限らない。探していた相手ではあるが、それがこちらに友好的である必然は無い。脳裏に浮かぶのはギロロたちの姿だ。カエルは気付かれないよう重心を僅かに移動させる。 と、アマテラスはその大きな体躯に似合わない、人懐こい動作で尻尾を振って見せた。敵ではないと、安心しろとでも言うように。その間の抜けた表情に気勢を殺がれ、カエルは構えを解いた。 こちらの返事がないことを不思議に思ったのか、子供が首を捻りながら、少し大きな声で同じ言葉を繰り返してきた。聞こえなかったとでも思ったのだろう。こちらが警戒していたことにも気付いていない様子だ。これまで生き残ってきたのが不思議なほどに警戒心がない。よく言えば純真無垢、悪く言えば盆暗だ。 胸中で苦みを掻き消し、カエルは肩を竦めた。 「見ての通りさ。俺は……名前もカエルだ。そっちは?」 「ぼくはぼのぼの。こっちはオオカミさん」 ぼのぼのの言葉にアマテラスが一声咆えた。ぼのぼのはアマテラスの名を言わなかった。アマテラスに言うなとでも釘を刺されているのだろうか。 そのアマテラスはというと、後ろ足の痛々しい傷をぺろぺろと舐めている。 見かねて、カエルはアマテラスにケアルガを掛けた。柔らかい光が身体を包む。 しかし、その身に刻まれた傷は全く治った様子がない。魔法の発動はしたが、その効果は発現していない。 一方で、カエルは不愉快な倦怠感が身体に纏わりつくのを感じていた。思えば、ウォータガを使ったときにも同様の違和感はあったのだ。 どうやら、今の身体は、理由は分からないが、本調子とはいえないようだ。もっとも、魔法の効能がないのは、相手にも問題があるのかもしれないが。 仕方なく、カエルは支給品にあった栄養剤を皿に注いで、アマテラスの前に置いた。気休めではあるが、回復魔法の効果が見込めない以上、体力を回復させるより他に法がない。 液体の臭いに鼻を動かしているアマテラスから目を逸らし、カエルはぼのぼのに向き合った。 「よし、じゃあ、ぼのぼの。休む暇なくて申し訳ないが、幾つか話をしよう。まず、ここまでどうしてきたか、教えてくれ」 ぼのぼのは、いいよ。と頷いた。 「あのね。ぼく、ガッコウに戻ろうとしたんだけど、そうしたら、このオオカミさんと、大きなスナドリネコさんみたいな子がね、喧嘩してたの。それで色々あって、気付いたら崖の上だったんだ。まだ大きなスナドリネコさんは居たから、オオカミさんとここに逃げて来たの」 ぼのぼのは茫洋とした口調で、滔々と喋った。カエルが聞きたかったのはこれまでの経緯なのだが、そうは受け取ってもらえなかったらしい。今の言葉から分かったのは、ぼのぼのとアマテラスが出会って間もないということのみだ。名前を言わなかったのは、単にまだ知らなかっただけのようだ。 質問の仕方を変えるか。しかし、ぼのぼのの様子から、こちらの意図する情報を引き出すのは困難に思えた。簡単な質問から先に片づけて行った方がいいだろう。カエルはデイバッグから詳細名簿を取り出し、床に座ったぼのぼのの前に広げた。 「知り合いや、見たことがある奴はいるか?」 ぼのぼのの告げた者達の中にアライグマが居た。直接は知らないが、ツネ次郎の仲間だった参加者だ。仲の良い友達であったらしく、研究所に墓を作ったことを教えると、ぼのぼのは僅かに表情を曇らせた。変化に乏しいが、それが多分彼なりの哀しみなのだろう。 また、警戒していた因幡てゐという女は、彼に良くしてくれたらしい。意外とここに書かれていることは当てにならないのかもしれない。仮に事実であっても、その者の本質ではない可能性が高いと見た方がいい。 ムックルの項目に警戒とだけ付け加え、カエルはぼのぼのとの情報交換を切り上げた。知り合いを絡めれば、カエルが欲しい情報を引き出せるだろう。ただし、彼は今回の放送で、親しい知り合いを二人失っている。そして、訊き出そうとすれば、否が応にも、その二人に触れることになる。死を知って間もない子供にはきついだろう。 カエルはアマテラスに視線を移した。横になっていたアマテラスは、視線に気づいたか、ぱっと顔を上げた。その深い色の瞳を見つめるが、それでオオカミの思考が伝わってくるわけではない。神様と書かれていたのでひょっとしたらと思ったのだが、そういった便利な能力はないらしい。 貝を石で割り出したぼのぼのに声をかける。 「……ぼのぼの。悪いが、通訳してくれないか? 俺には狼の言葉が分からなくてな」 ぼのぼのは貝を食べるの止め、しばし中空を見つめた後で応えた。 「ぼくもわかんないよ」 「な、なんだと?」 思わぬ返答に、カエルの声は高くなった。ぼのぼのは、ツネ次郎と同じように獣と人の両方の言葉が分かる存在とカエルは考えていたのだが、違うのだろうか。ぼのぼのは続ける。 「初めて会ったときにもアマテラスさんとお話しできなくて、おかしいなあって思ったの。他の皆とはお話できるのに、どうしてなんだろう……?」 彼自身、不思議に思っているようだ。カエルは問いを重ねた。 「……他の、その、なんだ。獣たちとは会話できるものなのか? 熊とか、猪とか」 「できるよー。今だって、カエルさんとお話してるじゃない」 「いや、まあ、それはそうだが……それでも、こいつの言葉は分からんと?」 「うん。……ごはん、食べていい?」 「……ああ。食べるといい。ゆっくりとな」 嘆息を溢し、カエルはアマテラスの前にしゃがみ込んだ。アマテラスは瞳を輝かせている。犬が何か面白いことを期待しているときの、あの瞳だ。 通訳もないとなると、複雑な意思疎通は不可能だし、得られる情報も限られてくる。キュウビが何者であるかなど、最も知りたかった情報をアマテラスから聞くことは出来ないということだ。 可能なのは、知り合いの確認だけか。カエルは詳細名簿を広げ、アマテラスに知り合いが居たら教えてくれ。と伝えた。アマテラスは、最初の頁にあるぼのぼのに対し、一つ吼えた。これが返事らしい。グレッグル同様、こちらの言葉は理解してくれているようだ。 アマテラスの知り合いは、ぼのぼの、アライグマ、ニャース、楽俊、シロ、ムックルだけだった。内、手を組めそうなのはニャースのみだ。 知り合いの確認だけで済んでしまった情報交換に肩を落とし、カエルは名簿を仕舞った。貝を食べ終わって満足げなぼのぼのにアライグマのことを伝えてやる。 「ぼのぼの。アマテラスはアライグマと会ったそうだぞ」 「そうだよ。アマテラスさんと初めて会ったとき、アライグマくんと一緒だったんだよ」 「ん? おまえ、アライグマとは再会できなかったと言っていなかったか?」 「言ったよ。最初の真っ暗い所で別れたあと、アライグマくんとは会えなかったんだよ」 「……そういうことか」 キュウビのデモンストレーションの場で、既にぼのぼのはアマテラスと逢っていたということらしい。もしかすると殺された栗鼠も、ぼのぼのの知り合いだったのかもしれない。それを訊く気にはなれないが。 他にすることはあるだろうか。少々多すぎる荷物を、彼らに譲るくらいであろうか。こちらの情報を明かした所で、彼らには話のタネになる以上の意味はなさそうだ。首を振って、頭を掻く。 ふと、ぼのぼのがアマテラスに語りかけている言葉が耳に入る。 「――ラスさん。ぼく、ガッコウに戻らなくちゃ。多分、あの大きなスナドリネコさんはいないよ。ケロロさん待ってるし、ニンゲンさんが死んじゃうかもしれないし。アマテラスさんも一緒に行こうよ」 ニンゲン――ぼのぼのはそう言った。そのことを考える前にカエルは訊き返していた。 「ぼのぼの! ニンゲンが死ぬってのは、どういうことだ?」 ぼのぼのはきょとんとしながら、ゆったりと答えて来た。 「ガッコウにね、ニンゲンさんがいたんだよ。いたそうな傷がいっぱいあって、ケロロさんがてゐさんを呼んでこいってぼくに言ったの。てゐさんはコヒグマくんのおとうさんの傷も診てくれたんだよ。でも……てゐさん、キツネさんに名前を呼ばれちゃった」 俯いたぼのぼのに、アマテラスが気遣うように鼻を鳴らした。 それを横目に、カエルは思案する。ニンゲンという参加者は居ない。ニンゲンとは、すなわち人間と見て間違いないだろう。この地に、"人間"がいる。それも、名簿にも載っていない存在がだ。 ここから脱出する鍵になるか。それとも、キュウビの罠か。 しかし、足を踏み入れねば両者を判別することすら出来ない。 「ぼのぼの、俺も一緒に行こう。その人間に俺も会ってみたい」 カエルの申し出に、ぼのぼのは二三首を捻った。 「カエルさんは、ケガとか分かるの?」 「まあ、多少はな」 「それじゃあ、カエルさんも一緒に行こう」 言うが早いか、ぼのぼのはアマテラスの背に乗った。アマテラスはカエルへ顔を向けると、一つ吼えた。そして、誘うように尻尾を揺り動かす。 「……乗れっていうのか?」 もう一度、アマテラスが吼える。カエルはデイバッグを抱え、アマテラスの背に跨った。意外にもアマテラスは二人の重みに砕けることなく、雨の中に割としっかりとした足取りで踏み出していった。 【C-6/一日目/日中】 【カエル@クロノトリガー】 【状態】:健康、多少の擦り傷、疲労(小)、魔力消費(小~中)、びしょ濡れ、アマテラスの背の上 【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし 【所持品】:支給品一式(食料:パンと蛙の腿肉料理)、ひのきのぼう@ドラゴンクエスト5、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0~2、確認済)、石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0~2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1~3、確認済)、スピーダー@ポケットモンスター×6、グリンガムのムチ@ドラゴンクエスト5、ユーノのメモ 【思考】 基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する 1:学校へ行く。 2:ニャースの捜索。 3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。 4:余裕があれば鍾乳洞内を調べる。 ※ツネ次郎と情報交換をしました。ぼのぼのとアマテラスの知り合いを把握しています。 ※異世界から参加者は集められたという説を知りました。 ※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。 ※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。 ※ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、チョッパー、ケットシー、因幡てゐ、ラルク、ムックルを危険ないし要警戒と認識しました。 ※ログハウスの下にある鍾乳洞は抜け道のようなものと推測しています。 ※死者の読み上げが、死亡した順番であることに気付きました。 ※アマテラスがオープニングの時点で意思疎通が出来なかったことを知っています。 ※制限に気が付きました。 ※回復魔法の効果の発現が遅くなっています。しかし、本人は回復魔法の効果がなくなっているかもと思っています。 【ぼのぼの@ぼのぼの】 [状態]:健康、戸惑い、アマテラスの背の上 [装備]:無し [道具]:支給品一式、ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、貝割り用の石@ぼのぼの、貝×4 [思考] 基本:殺し合いはしない。 1:学校に戻る。 2:てゐについていきシマリスとヒグマの大将が生き返る者の所まで案内してもらうはずだったのに。 3:殺し合いに乗っている者がいたら、このナイフを使ってとめる [備考] ※アニメ最終話48話後からの参戦です ※支給品の説明書は読んでいません。 ※銀に不信感を持ちましたが悩んでいます。 ※ケロロ軍曹と情報交換をしました。 ※体を洗ったので、血の臭いは殆ど落ちました。 ※第一回放送、第二回放送を聞きましたが、あまり理解していません。 ※ムックルを危険人物と認識しました。 【アマテラス@大神】 【状態】:全身打撲(中・治療済) 、胴に裂傷(小)、後ろ足に裂傷(中)、体力回復・治癒促進中 【装備】:所々に布が巻かれている。ぼのぼの、カエル 【道具】:なし。 【思考】 基本:打倒キュウビ。絶対に参加者を傷つけるつもりはない。 0:?????? 【備考】 ※アマテラスの参戦時期は鬼ヶ島突入直前です。そのため、筆しらべの吹雪、迅雷の力は取り戻していません。 ※筆しらべの制限に気付いているかもしれません。 ※キュウビの目的について、何か勘付いているかもしれません。 ※筆しらべ「光明」と「月光」で昼夜を変えることはできないようです。 ※筆しらべ「桜花」で花は咲かせられるようです。 ※筆しらべは短期間に三回使うと、しばし使えなくなるようです。爆炎などの大技だと、また変わってくるかもしれません。 時系列順で読む Back RAINLIT DUST/――に捧ぐ Next 蛙人乱れし修羅となりて 投下順で読む Back RAINLIT DUST/――に捧ぐ Next とても優しい瞳をしてたあなたが歌う―― 093:背なの上のぼの ぼのぼの ひとつ火の粉の雨の中 093:背なの上のぼの アマテラス ひとつ火の粉の雨の中 087:GREN~誤解の手記と鍾乳洞~ カエル ひとつ火の粉の雨の中
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● Tさんはオルコットと彼の軍勢の侵攻を食い止める為に、桃の結界内から光弾を間断なく放っていた。 光弾がオルコットの≪ジュワユーズ≫の死角に回り込むように襲いかかり、≪キョンシー≫達が桃の結界の領域ギリギリまで接近してから飛び出してオルコットへと攻撃を加える。 目に見えて決定的な負傷を与えられてはいないが、徐々に、しかし確実にオルコットは押されていき、やがてこの一連の戦闘が始まってから初めて、オルコットが桃の結界の最前線から退いた。 引いたオルコットを叩き潰そうと≪キョンシー≫達が四方から襲撃する。≪桃源郷≫の桃の木で作り上げられた退魔の武具が一斉に振るわれた。 しかしそれらの攻撃を防ぐ者達がいた。 「≪冬将軍≫の凍死兵……!」 桃の結界の領域とオルコットとの間にあるオルコットが退いた事によってできた空間。そこを埋めるように展開した凍死兵達が≪キョンシー≫の攻撃を防いだのだ。 オルコットを守る壁となった彼等は、≪キョンシー≫達と桃木の力に及ばず砕かれていきながら、それでも打撃と銃撃で対抗してオルコットを守りきった。 ……まずいっ! オルコットに大技を振るう時間を稼がれてしまう。そう危惧を抱きながらTさんは光弾に≪ケサランパサラン≫による幸福を祈祷する。 ――オルコットに当たり、彼の加護を吹き飛ばす事が出来れば幸せだ! 「≪キョンシー≫達! 退け!」 言いながら光弾を放つ。 無事な≪キョンシー≫達がその場を離れ、光弾が幸せを履行しようと倒れた凍死兵達の向こうで≪ジュワユーズ≫を振り上げているオルコットへと飛んで行き、 「遅い!」 ≪ジュワユーズ≫の、幾つもの色彩を孕んだ刃が解放された。 色彩の刃は≪ジュワユーズ≫の剣身から伸長し、光弾を切断、更に刃は一直線に≪桃源郷≫の地盤ごと桃の木々を吹き飛ばした。 自身でも結界を張ってオルコットの一撃をこらえたTさんは、今の一撃を受けての桃園の状況に絶句する。 「これは……」 オルコットが先に放った、自身の後方を完全に鋤き返す一撃程の範囲ではないものの、オルコットの前には十数メートル幅で桃園の地を掘り返して強引につくられた道ができていた。道の先は徹心のコテージを破壊して止まっている。 ――舞ッ! 咄嗟に視線を向ける。舞は由実と共に掘り返された道の近くでユーグとモニカの傍にいた。 ユーグがどう転ぶのかは分からないが、少なくともモニカと、それに戦闘要員ではない舞やリカちゃん、戦闘は不可能なケウや由実がこの場で巻き込まれて死ぬのを黙って見ている事はあるまい。 そう判断してTさんはオルコットへと意識を集中し直す。 ……今ので≪キョンシー≫達が飛ばされた。再び取り囲む陣形を組むまでは待っては……くれないか。 オルコットは僅かに息が上がっている程度で特に疲労が濃いという調子でもない。どうやらあの色彩の刃は一度形成してしばらく経つと剣身より先に伸長した刃は消滅するようだ。現在オルコットの手にある≪ジュワユーズ≫の刃は通常の剣と同程度の長さしかない。 ……連続して振るわれないのは助かるが……いや、結界を砕くために色彩の刃の力を爆発させなければ刃も長く維持できるのか? 相手の武器は強力だ。過小評価だけは避けなければならない。そうTさんが思っていると、オルコットが静かに、そして重々しく宣言する声が聞こえた。 「私の勝ちだ」 ……なに? 「……どういうことだい?」 土砂を払って砂埃の中から現れた徹心が、掘り返された道をオルコットに幾分か近付いていきながら訊ねる。 返答を、オルコットは一つの行動をもって示した。 ≪ジュワユーズ≫、その握りの先にある黄金の柄頭へと手をかけたのだ。 ≪ジュワユーズ≫の柄頭には≪聖槍≫が仕込まれている。かの剣に伝わる伝承に思い至った瞬間、Tさんと徹心は叫んだ。 「その場からモニカを連れて離れろ!」 「モニカを結界の中にでも収めるんだ!」 柄頭が≪ジュワユーズ≫から引き抜かれる。握りの中から現れたのは短剣のような刃物――槍の穂先だ。 「桃園の結界が阻まないのならばこの距離、契約を結ばせる条件には十分だ」 穂先がその先端を、掘り返された道を通してモニカへと向けられる。 「さぁ、結んでもらおうか――我が悲願への鍵、≪聖槍≫との契約を!」 ● 突然轟音と共に強引に掘り返された地面と、破砕されたコテージのありさまに驚いていたモニカ達は、一直線に続く掘り返しの始点から聞こえてきたオルコットの言葉に咄嗟に警戒の身構えをした。 モニカはユーグの衣服を握りしめ、彼の顔を不安げに見上げる。 ユーグは戦場の方に目を向けて、 「そうきましたか……!」 言葉を零し、モニカに手を伸ばしてきた。 「お嬢様、今結界を――」 「え?」 それよりも早く、モニカの体を無形の衝撃が襲った。 「――――ッ!」 自分の中に何かが流れ込んでくるようだ。そう思い、モニカは似たような感覚を以前にも感じた事を思い出す。 あの時は自分の内から目覚めようとする力だったが、今度は外からモニカを刻みつけようとするかのような力だ。 「あなた……は……」 モニカは自身の中で居場所を確保しようとする力の名を呟いた。 「あなたが、≪聖槍≫――」 力の圧力に押されてモニカの意識が薄れていく。平衡を失い、体が倒れる。 ……あ。 意識を失う直前、倒れ行く体が抱きかかえられる。その手の主がユーグであると確認して、モニカは大丈夫、と口を動かした。 ――ぜったいにもどってくるよ……。 ● モニカが倒れたらしい事が舞や由実の叫び声で分かる。 どうやら脅しやはったりなどではなく、本当にモニカに≪聖槍≫を契約させるつもりらしい。 ……今からモニカの所へ行って結界を張れば救えるか……? おそらく無駄だろう。モニカへと≪聖槍≫の力が流れて行くのをTさんは感じとった。モニカの内側へと≪聖槍≫は既に侵入してしまっていると考えていい。未だ世界をリセットする為の≪杞憂≫が発動していないところを見ると、どうやら契約はまだ完全には成立してはいないようだが、 ……やられた。 睨みつけるTさんへと、オルコットはこれ見よがしに≪聖槍≫の穂先を示した。 「本来ならば≪ジュワユーズ≫の中に収められている劣化品のため、≪聖痕≫を刻む程度の事しかできない≪聖槍≫だが、ウィリアムの研究とモニカの血縁、そして天帝が所持していた≪杞憂≫。これらと合わせてモニカの精神を媒介にすれば≪聖槍≫は完全な顕現を果たす」 「そして世界の理は改められるというわけか……」 「抵抗をしているようだが、もう時間の問題だ。無駄な事はやめてお前達も契約が成立するまで待つがいい」 「そうはいかない」 徹心が手振りで≪キョンシー≫達に指示を出す。果敢に攻め込む≪キョンシー≫達に続けて指示を出していきながら徹心はTさんに言う。 「Tさん、オルコットを倒すんだ! 契約が完了する前に≪聖槍≫を破壊する! 契約の媒体が無くなれば契約も棄却されるはずだ!」 「了解した!」 焦りと共にTさんは身を弾く。行く先は凍死兵達と共に佇むオルコットのもとだ。 ぶつかり合う。 ● 「おい! モニカどうした!?」 突然ぶっ倒れたモニカに声をかける。意識が無いのか返事をしないモニカを揺り動かすフィラちゃん。でもいっこうに目を覚ましそうにない。ケウが鼻を寄せて、騎士のおっちゃんを見上げた。騎士のおっちゃんは頷いて、 「≪聖槍≫だ……」 「え? ≪聖槍≫ってオルコットの持ってるっていうモニカに契約させられたらやばいっていう、あの?」 「ああ……」 騎士のおっちゃんはなんか難しそうな顔でモニカを見ている。それでもなにか手を出そうとしているようには見えない。 「おい、なんとかなんねえのかよ?」 「無理だ」 にべもなく言っておっちゃんは首を振った。 「契約が結ばれかけている。こうなってしまえばもうこちらからは手を出せない」 「てめえ、この期に及んでなんか隠してたりしねえよな」 「ない!」 鋭く言われて俺の過熱しかかった言葉も収まる。 「……悪い」 「いや、私を疑う判断は正しい」 そう言いつつおっちゃんはモニカをフィラちゃんに預けて複雑そうな表情を浮かべた。 小さく言う。 「……お嬢様、死に損なってしまった私を置いていかれるのですか?」 こんな事を言う奴を疑えるわけがねえだろうが……。 俺もモニカを見守る。 どうか無事で帰ってこいよ……! ● 上も下も、水の中なのか遥か宇宙なのか、それすらも分からない暗い暗い不定形の世界。そこでモニカは一人漂っていた。 体には緩やかな脱力と抗いがたい眠気が、心にはこれまでに感じた事もない程の平穏があった。 心配事も恐れもなにも存在しない世界。 ……ここはどこだろう? 一瞬湧きあがったその疑問は吟味される間も無く、平穏と眠気の中へと溶けて消えてしまう。 ……みんなは……? フィラちゃん……ユーグおじさん……? 新たに浮かんだ疑問ごと包みこんでしまうかのように、そして眠りを促すかのようにモニカの体を暖かい力が包み込んだ。 更なる平穏と体の安堵が訪れる。 ……あたたかい。 それは幸せと呼んでもいい状態だ。モニカは体を包み込むこの感覚に全てをゆだねて眠ってしまいたいという欲求を受容しようとして、 「――でもね」 小さな唇が強固な意志をもって言葉を紡ぎ出す。 それに反応してモニカを包んでいた力が離れていった。 それを暗い世界で知覚して、モニカは言葉を続ける。 「ごめんね、あなたたちをほんとうの目的のために使いたくはないの」 まだ夢うつつの意識でモニカはそう言い、 「おいで」 闇の中で手を広げた。 それと同時にモニカの周りを戸惑うように巡っていた力に変化が生じた。 力が二つに分かれたのだ。 一つはモニカのもとへと流れ、もう一つはモニカの正面の宙空に留まる。 その宙空の留まった力へとモニカは、不定形の世界で体を起こして頭を下げた。 「あなたは、わたしじゃあつかえないの……大きすぎる力……ユーグおじさんがずっとむかしに信じてた人たちがのこしたもの……」 いまや覚醒を果たした意識でモニカは言う。 「わたしは、あの世界が好きです」 それは拒絶の宣言となり、 「≪杞憂≫」 言葉に応えて不定形な世界に半透明の柱が幾本も屹立した。 同時に天が、それを意味する天井がモニカの頭上に展開していく。それを暗い世界で感じとりながらモニカは続ける。 「だから、この世界からわたしは、出ていきます」 天井が全天を覆い尽くしていく。 そして天が崩壊した。 柱が粉々に破砕し、天が落下して地を割り砕いていく。 暗い世界に亀裂が入った。 亀裂から光が差し込んでくる。 その光がモニカの意識を押し上げていく。その感覚を全身で味わいながら、モニカは形のない、しかし確かにそこにいた何かに向かって謝罪した。 「せっかくのゆりかごの世界を……ごめんね――――」 ● 目を覚ましたモニカは、心配そうな顔でのぞきこんでいた由実と目があった。 「……あ」 目を見開いて彼女は確かめるように名を呼ぶ。 「モニカ……?」 「フィラちゃん……?」 揺り籠の世界での眠気の残滓がモニカの言葉を若干間延びしたものにする。あの世界で脱力を経験したせいで疲れと心労を自覚してしまい、体が重い。 そうモニカが思っている間に、由実はモニカを抱きしめた。 「よかった……っ!」 目を覚ましたモニカを由実が抱きしめる様子を呆然と見守っていた舞とリカちゃんが、ユーグに問いかける。 「こりゃあ、オルコットが≪聖槍≫の扱いをミスったって事でいいの……か?」 「そうなの?」 「いや……」 こちらも、半ば呆然とユーグは答える。 「確かに≪聖槍≫はモニカお嬢様と契約を結ぼうとしていた。お嬢様が強制的な契約をご自分の意志で跳ねのけたとしか考えられん……信じがたい事だ」 「ユーグおじさん……?」 何やら驚いているらしいユーグや舞に、モニカは笑顔でブイサインを作る。 「えへへ……ただいま、みんな」 ● 「信じられん……」 戦闘を行いながらモニカが意識を取り戻し、≪聖槍≫との契約を弾かれた事を悟り、オルコットは呟いた。 ……ウィリアムの報告では精神的には≪杞憂≫の暴走を抑える程の強さを持つらしいが……まさかこれほどとは……。 「しかし現実だ……モニカの精神力の勝利だな」 何度打ち合っても未だに倒れず、モニカが復帰した事で余裕も取り戻したTさんの言葉に苦く笑ってオルコットは返答する。 「まったく、予想を上回る事ばかりだ……しかし」 オルコットは≪聖槍≫の先を再びモニカへと向けた。 「再び契約を強制すればいいだけの事だ。精神力もそのうち消耗しよう」 「そうはさせん――!?」 Tさんが結界を張ろうとするためか手に光を宿して動きかけ、その動きを止めた。 オルコットもその突然の停止の理由を理解する。モニカが居る位置に黒い霞のカーテンのようなものが現れているのだ。 それはどうやら舞、リカちゃん、ケウや由実ごとモニカの周囲を囲んでいるらしい。 ……あれは、 内心で唸り、オルコットは呟く。 「……バフォメットの気配……ユーグ、いや、≪テンプル騎士団≫か」 「その通りです。オルコット様」 声がして、≪ジュワユーズ≫で掘り返されてできた道を一人の男がやってきた。 ほとんど砕け散った鎧に身を包んだ騎士、ユーグだ。 「私の麾下、40といったところでしょうか。Tさんとの戦いの後で未だに動く事のできる者達に結界を張らせました」 こちらに近付いて来ながら重ねられる言葉に頷き、オルコットは言う。 「そうか……≪テンプル騎士団≫は私の敵になるか……」 「オルコット様のやりかたを間違っているとは言いません。少なくともすぐに理想を達する手段としては多少強引だろうとオルコット様の手段は最善です。しかしモニカお嬢様が、私の主が、テンプル騎士団の末裔が、この世界に、この世界の人々に愛着があるそうで。 それに、無理な契約の断行はお嬢様の精神を眠りではなく、殺し、消滅させかねません。精神の消滅はオルコット様も望んでおられないでしょう?」 「ふむ、たしかにそうだが……ユーグよ、それは贖罪か?」 ユーグはどうでしょう、と小さく頭を振った。 「ただ、手の届く範囲から少しずつ変えていこうとお嬢様はおっしゃった。――私は新たな可能性を視てしまったのです。オルコット様」 「あの娘に我々が諦めた道を歩ませるのか? あのような脆そうな娘に」 「我々≪テンプル騎士団≫は、絶対と謳われる存在を信じて裏切られ、このような存在に身をやつしてしまったのです。一見か弱く脆い者に賭けてみるのもまた一興でしょう。――それに、モニカの精神面の強固さはオルコット様もたった今目の当たりにされたはず」 そう口にするユーグに迷いは無い。それを見とって、オルコットはそうか、と得心する。 「騎士は娘の意思を守る騎士として在るか……エルマーも喜ぶだろう」 そう言って、オルコットは手にした≪聖槍≫の穂先を自身に向けた。 「――しかし」 躊躇なく穂先を己の体に突き刺す。 空気が破裂するような音が響いて、瞬時にオルコットの体中に裂傷が走った。 「何を……!?」 状況を見守っていた徹心が瞠目し、Tさんが警戒も露わに口を開く。 「≪聖痕≫か……っ!」 「その通りだ……!」 オルコットの全身に走った裂傷が複雑な紋様を描き、淡い光を放った。それは≪ジュワユーズ≫による加護と混ざり合って彼を鎧う色彩の加護を更に重厚なものへと変えていく。 それらの加護を纏って、オルコットは≪ジュワユーズ≫を構えた。 「ユーグよ、お前達が再びその道を歩もうとするのが≪テンプル騎士団≫の出した結論だというのなら、徒労に殉じる道が始まる前に私がお前達をまとめて消してやろう」 そして、 「モニカを守ろうとするTさん、徹心、他の者達も斬る。そうすればモニカも精神力を削がれよう――その時こそが≪聖槍≫との契約の時だ!」 ≪ジュワユーズ≫が輝きを増す。もはやいくつなのか数える事も叶わない量の色彩を歓喜の名のもとに放ち、オルコットに際限なく力を供出していく。 「――ッ!」 色彩の刃を振るった。 一番近くにいたTさんの首を狙って放たれた一閃は、彼の力が付与された木剣によって受け止められる。 色彩の刃と木剣の加護が干渉し合う音を聞きながら、オルコットは強敵に満足を思い、歩みを再開した。 「往くぞ! ここが私の意地の張り所だ!」 前ページ次ページ連載 - Tさん、エピローグに至るまで
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それは『希望』という名の 「あの崩れ様…とんでもないなぁ」 スタンは北、正しくは北々東に向かって走っていた。 目指すは少女の放送があった地、シースリ村。 だが消えてしまったミントを捜しながら来ているため、距離としてはさほど大きくは進んでいなかった。 未だ彼女の影も見つからない。 今スタンがいるのはE2エリア、丁度イーツ城の少し先を通り過ぎた辺りであった。 思えば、 「ここにもいない…どこ行っちゃったんだろ、ミント…」 などと呟きながら、隠れやすい森にいる可能性を考え森を通ってきたが、気付けば抜けてしまっていた。 遠くには碧海も見え、微かな潮騒も聞こえる。 地図を広げ現在地を確認する。 F2。なんかイーツ城から遠ざかっているような気がするのは気のせいだろうか? 肝心のイーツ城は、辺りを見回せば見つかったのだが。 ──直後、少女の声が響き、彼の瞳に城から昇る光の束が宿った。 背後を振り返る。 彼の前に広がっていたのは、だだっ広い土地だった。 …いや、正しくは「だだっ広くなってしまった土地」だった。 本来なら目の前には、城がそびえ立っていた筈なのだから。 再び前に向き直り、走りながら思慮を巡らせる。 休んでいた筈の彼女は一体どこに? あの眠り様からして簡単に起きるとは考えられないし、第一ひとりだけで動くとは思えない。 ということは、あの洞窟にまだ誰かいた? そいつがミントを? これしか考えられなかった。 そしてふと思う──今過ぎた城に、ミントがいたとしたら? 心を過ぎる疑問。 あの崩落じゃ、助かる確率は低い。まさか、まさか。 一度胸に浮かび上がった疑念は、瞬く間に膨らんでいく。 …このままじゃミントが危ないんじゃ! スタンは急ブレーキをかけ、方向転換しイーツ城に一直線に走り出した。 放送のあった村、ジョニーのことが気掛かりなのも確かだ。 あの放送、間違いなくマーダーを呼び込む。 でも、俺みたいにシースリ村に向かう人は、きっと沢山いる。その人達が守ってくれる筈だ。 こうして逆走すれば、後ろにいるかもしれないマーダーの存在に気付けるかもしれない。 それにミントの状態を知ってるのは俺だけ。つまり、ミントを助け出せるのは俺だけなんだ。 スタンはそう自分に言い聞かせた。 放送の少女ファラだってゲームに反対する者の一人。 他にもこのゲームに反対している人はいる。大丈夫、大丈夫だ。 根拠のない理由ではあったが、スタンはまだ見ぬ人々を信じた。 信じること、信じ続けること。それが1番の強さ──これが彼の信条なのだから。 イーツ城であった地は、もうすぐ目の前に迫っていた。 「こりゃ酷いな…」 城の惨状を改めて見たスタンの第一声がそれだった。 確かに崩れ始めた城の姿を遠目には見ていたが、ここまで荒れているとは思わなかった。 何というのだろうか、一言で説明すれば「砂に帰した」というような感じだった。 所々、僅かに残った城壁があるくらいで、あとは城であった面影もない。 辺りは煙っぽいというよりは埃っぽく、軽く咳込んだ。 こんな所にミントはいるのか? あんな光の柱の近くにいたら、流石に…。 胸の疑念は絶望感へと化す。 更に近寄ってみると、そこに何かの塊があった。近寄って見てみる。 亡骸だった。それも── 「マグニス…!」 ジースリ洞窟で戦った、ジーニアスを殺したあのマグニスだった。 切り刻まれたような裂傷が全身にあった。剣の金創とは違う…ということは、術? 一体ここで何があったんだ? 疑問と警戒を胸に秘め、辺りを散策する。 また、何か塊があった。それも2つ。 予想はついていた。あとは、誰なのか。 恐る恐る、見てみる。 「違…う」 不本意ながら安堵の息を漏らしてしまった自分が嫌になった。 1人は細身の男で、両目がなかった。 もう1人は、見覚えがあった。 「…バルバトス…!?」 自分達を殺そうとした2人組の内の1人、戦った人物、マグニスと共にいた男、バルバトス=ゲーティア。 あの男はかなりの実力を持っていた。それが、死んだ? 一体誰が? 城を壊すほどの力の持ち主? それは誰? そんな奴に勝てるのか? そんな奴と会ったらミントは? …ミントは? 「誰か! 誰かいないのか!? ミントっ!!」 気付けば叫んでいた。頼む、答えてくれ。その一心で。 しかし、返ってくるのは静寂だけ。 その静寂が、スタンの心に追い撃ちをかける。 そんな、一体どこに! 確実にスタンの心に焦りが広がり、判断力を失わせていく。 ひょっとして既に手遅れなのでは? そんな考えさえ頭を過ぎる。 焦りは、自然に自責へと変わろうとしていた──その時。 彼の目にまばゆい赤の煌めきが差し込んだ。 光の源を見る。それは、指に嵌めてあるガーネットの輝きであった。 たぎる炎のような赤。それはスタンに別の意志をもたらし、そしてその意志は炎の如く燃え照り始めた。 …落ち着け! まだ分からないじゃないか! そう言わんばかりに首を振る。 何早とちりしてるんだ。ミントがここにいたっていう証拠はない。こんなに不安がる必要もないんだ。 手を握り締める。目を閉じて、一度深呼吸する。 そして目を開ける。そこには、いつものスタンがいた。 「よし! もう少し捜してみよう!」 頬をぱん、と叩き、気持ちを入れ直す。 そう、大切なのは信じること、信じ続けること。さっき思ったばかりじゃないか。 こんなんじゃルーティに怒られても仕方がない。 …挫けたりするもんか。せめて、泣くのは元の世界に帰ってからだ。 そう決めてスタンは再び探索を始めようとした──が。 不意に違和感が襲った。何かが、足りない。 そう、バルバトスの近くにあの兵器がない。 それ以前に、今まで見つけた骸の近くには支給品袋がなかったのだ。 ──誰かが通った? それとも、ここに…。 刹那、スタンを影が覆った。 「…!?」 咄嗟に前方へ飛び込むように跳躍する。 素早く後ろに振り向けば、そこには白い装束に金髪のロングヘアーの少女が佇んでいた。 最初、スタンは遂にミントを見つけたと思った。しかし彼女と違う点が幾つもあった。 赤い瞳、翼によく似た背の光、小柄な体格からしてとても持てると思えない、榴弾砲の姿。 そして、ひどく冷たい彼女の瞳。 【スタン 生存確認】 状態:軽い損傷 所持品:ディフェンサー ガーネット 第一行動方針:状況の把握 第二行動方針:演説が行われた場所へ移動 第三行動方針:ミントの救出 第四行動方針:仲間との合流 現在位置:E2イーツ城跡 【コレット 生存確認】 状態: TP3/4 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視) 所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(残弾0) 、苦無(残り1) 基本行動方針:防衛本能(攻撃意思に対する完全抹殺及び不明瞭な干渉に対する威嚇) 第一行動方針:スタンの戦闘意思確認(相手の行動によっては排除) 第二行動方針:非戦闘状態ではリアラに同行する。 第三行動方針:同状態でリアラを完全に見失った場合リアラを捜索する。 第四行動方針:??? 現在位置:E2イーツ城跡 前 次
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流転する運命 信じがたい事態が起こった。 ジューダス達が向かうシースリの村から、突如として大音量の放送があった。 ミクトランのそれとは明らかに違う、少女の、必死な声。 希望を訴え、呼びかけを行う彼女の言葉は、はっきりとジューダス等四人に聴こえた。 その呼びかけに強く反応したのはロイドで、 慌ただしく村の方向と仲間を交互に見ながら、動揺を隠しきれずにいた。 一緒に行動することになったヴェイグは、表情一つ変える事無く、黙って少女の言葉を聞いていた。 ジューダス自身は、表面上は静かにしながら、内心は黒い影が覆っていた。 それは呼びかけを行った少女等に対する不安よりも、 一緒に居る仲間達への不安の方が大きかったかもしれない。 事実、少女の呼び掛けにロイド以上に取り乱したのは、他ならぬ少女の仲間、メルディだった。 「ファラ・・・ファラがあそこいるよ!早く、早く行こうな!」 村の方向を指差して、オーバーアクション気味に騒ぎ立てる。 放送をした少女の声は不自然に途切れ途切れで、 彼女の状態が危険域であることを示していた。 「そ、そうだぜジューダス。まさか俺達が行こうとしてた場所にもう人が居たなんてな、早く助けに行ってやろうぜ!」 ロイドも便乗して声を上げる。 対する二人は、じっと黙っていた。 「・・・引き返すぞ」 仮面の男が口を開いた。その声はいつもより暗く、沈んでいた。 「え?」 きょとんとした目で仮面の男を見つめるロイドとメルディ。 「さっきの呼びかけを聴いただろう。あそこにはまず間違いなくやる気のある奴が集まってくる。行くのは自殺行為だ」 メルディはその言葉が理解できないといった風に、不安定に立っている。 やがてロイドが啖呵を切ったように喋りだした。 「な、なに言ってんだよジューダス!聴いただろ、あの人、協力しようって! 俺達と協力できる人じゃないか!それに、あの人、すごく苦しそうだった、早く助けに・・・」 「無駄だ、もう遅い。確かに僕達は協力者を求めていたが、こんな形で合流するのは危険すぎる」 「でもよ、でも、それに、あの人、メルディの仲間らしいじゃないか!助けてやらないと可哀想だろ!」 ジューダスは静かに頭を振った。仮面に付いたひも状の飾りが、大きく揺れた。 「行けば、死ぬ。間違いなくあそこは戦場になる。僕は、のこのこと出て行って死ぬつもりは無い」 その声ははっきりと、冷たい響きがあった。 ある意味でジューダスの言葉はとても現実的なものだった。 ジューダスはロイドとメルディを死なせたくは無かった。 しかし仲間との再会を強く望み、その死を怖れるメルディと、 希望、或いは優しい理想を捨てきれないロイドに、その言葉は届かなかった。 別れの時が近付いていた。 「メルディはいや、ファラが死ぬの、いや!あっち行くよ!」 紫髪の少女は子どものように駄々をこねた。 その意思はとても強固なもので、誰にも止められないものだった。 仲間と再会できないこと、仲間の死を怖れているのだった。 微かに、メルディの体から黒い光が見えた気がした。 「ジューダス、俺は行くぞ。仲間になれる人達が居るのに、それを黙って見過ごすことなんて、出来はしない。 その人たちが危険な状況にいるってんなら、尚更見捨てれるもんか」 仮面の男がロイドを正面から見つめた。 その仮面の奥に垣間見える、沈んだ瞳。 「・・・死ぬぞ」 「そんなこと、俺がさせない。希望を捨てないで、力を合わせようとする人たちを、絶対に死なせやしない」 ロイドの言葉は強い響きを持っていた。 既にかなりの数の死者が出ている中で、彼の言葉は甘すぎた。 それでも、目の前のこの状況で、何もしていないでいられる彼でもなかった。 そしてそんな彼の性質を、ジューダスは多少なりとも理解していた。 もう何を言っても無駄だと、望みを捨てないロイドを止める術など無いと。 いや、そもそも希望にすがることの何が悪い? 或いは最初から分かっていたのかもしれない。 放送が聴こえた時点で、こうなることは必然だったかもしれない。 別れの時が訪れた。 「・・・そうか。なら勝手にするがいい。僕は僕で行動する。お前達はお前達で好きにするが言い」 ジューダスが言い放った。 それまで黙りこくっていたヴェイグは、ちょっと驚いて仮面の男を見た。 メルディはほとんど泣きそうな顔で、男達の顔を順々に見比べた。 ロイドは唇をぎゅっとかみ締めると、ジューダス等に背を向けた。 「行こう、メルディ。お前の仲間を、助けに行こう」 「あ・・・うん・・・」 二人は静かに駆け出した。 やがて、その姿が森の中に消えた。 ジューダスは瞼を閉じ、顔をうつむけて、悔やむように小さく呟いた。 馬鹿、と聞こえた気がした。 「いいのか?」 ヴェイグが仮面の男に語りかけた。 仮面の男は顔を上げ、青髪の男を見つめた。 「お前も行きたいのであれば、止めはしないぞ」 「いや・・・俺としても、迷っているのが本音だ」 彼の胸の中で、かつて先程の少女と同じように、皆に演説を行った女性の姿が思い出されていた。 色んな状況の違いはあれ、あの時はなんとか大切な人を助けることが出来た。 しかし、今この状況において、果たして万事が上手くいくであろうか? 「これから身を隠す。今のに釣られた奴等が、あの村へ移動しようとして鉢合わせるかもしれないからな」 無感情にジューダスがそう言い、ロイド達が消えたのとは別の方角へ歩き出した。 ヴェイグはしばらく迷い、とりあえず仮面の男に付いていった。 【ジューダス:生存確認】 状態:健康 所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール 基本行動方針:ミクトランを倒す 第一行動方針:身を隠す 第二行動方針:協力してくれる仲間を探す 第三行動方針:ヴェイグと行動 第四行動方針:ロイド達が気になる 現在位置:B5森林地帯 【ヴェイグ 生存確認】 状態:右肩に裂傷 所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル) 基本行動方針:生き残る 第一行動方針:身を隠す 第二行動方針:ルーティのための償いをする。 第三行動方針:ジューダスと行動 第四行動方針:呼び掛けが気になる 現在位置:B5森林地帯 【ロイド:生存確認】 状態:健康 所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー 基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る 第一行動方針:シースリ村に向かい、協力者と合流 第二行動方針:協力してくれる仲間を探す 第三行動方針:メルディと行動 現在位置:B5森林地帯からC3村へ移動中 【メルディ 生存確認】 状態:TP消費(微小) 背中に刀傷(小)左腕に銃創(小) 僅かにネレイドの干渉 所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱 基本行動方針:元の世界へ帰る 第一行動方針:シースリ村に向かい、ファラと合流 第二行動方針:ロイドと行動 第三行動方針:仲間と合流する 現在位置:B5森林地帯からC3村へ移動中 前 次
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050 Desiderium ◆cHCCzl86Lw 今も憧れを抱いている。 最初の願いを思い出す。 死にたくない、生きたい、そういう単純なものだったように思う。 助けて。と、そう、私はあの日、願ったのだ。 生か死かの取捨選択。考える余裕すら無く、必死に口にした気持ち。 それを後悔しているわけじゃないけれど。 結果として生きる事になった今が、辛いと感じる日もあって、寂しいと泣いた夜もあった。 救えなかった誰かに、目の前で取りこぼしたものを前に、無力に打ちのめされたことだってあった。 だから今も、私は信じている。 いつか小さなころ、膝を抱えながら観たテレビ画面のそのむこう、何も知らない私が信じて、憧れていたもの。 煌びやかに、鮮やかに、華やかに、そして綺麗に。 別世界で踊る、少女達の姿。 私の憧れ。 私の希望。 私のユメ。 胸に抱いて、瞳に移して、今の私に、するりと重ねて。 「私は巴マミ」 そして名乗ってみせるのだ。 「キュゥべえと契約した、魔法少女よ」 ★★★★★ コンクリートの上、紅い水溜りが広がっていく。 「ぁ……あ、あ……」 目の前で倒れ伏した少女の身体を中心に、じわりじわりと流れる血。 命が終わる瞬間だけが、このとき園田海未の視界を独占していた。 通いなれた学校。 踏みなれた屋上の床に尻餅をついたまま海未は、震えながら目に焼き付ける事しか出来なかった。 美遊・エーデルフェルトという少女の死を 先程まで、まるで夢を見ているような心地だった。 叩き付けられた殺意への畏怖。 自分の命が終わるかもしれないと本気で恐慌し、必死に逃げた。 まるで悪夢。けれどそれらすべてを吹き飛ばすような、圧倒的非現実があった。 目の前で行われた、曰く魔術、魔法のステッキ、魔法少女。 変身し、使いこなし、守ってくれた。 怪物のように恐ろしい存在に退かず立ち向かい、助けてくれた小さな少女の奮戦。 鮮やかな淡い光、ペガサスの飛翔。 色鮮やかな非現実に僅か、のぼせるような感覚に陥っていたのは確かだった。 つい先ほど、一瞬にしてその存在が無残に息絶えるまでは。 今やここに残るのは、死、だけ。 命の終わりという、明確な事実。 助けられて、守られて、そしてもう助からない。 何も出来ないまま死なせて、取り返しはつかない。 そういった形の圧倒的な現実のみ。 場所が見慣れた音ノ木坂学院の屋上だったこともより拍車を掛けていた。 先程まで海未を包んでいた浮遊感の、介在する余地はもはや何処にも無い。 「返事を……してください……」 海未には分かっていた。 目の前の少女がもう息絶えていることくらい。 少女の肌をズタズタにした裂傷。流れ続ける大量の血液。ピクリとも動かない全身、開ききった瞳孔。 どう見ても死体、生きているわけがない。 けれど近寄れない、確認するのが怖くて、認めるのが嫌で動けない。 「お願い……ですから……」 少女は死んだ。園田海未を助けて死んだ。助けたから死んだ。 助けなければ、死ななかったかもしれない。私のせいで、死なせてしまった。 そう考えてしまうのが、とてもとても怖かったから。 動かない死体の返事をずっと待ち続けて。 だけど、ここに、彼女の死を受け止める存在は、もう一つ。 『美遊様……』 カレイドステッキ・サファイアは悼むように名を呟く。 それは海未の発したものとは違う、離別の痛みを受け止める呼びかけだった。 「……ごめん……なさい……」 だから海未も受け入れるしかなかった。 受け止めるしかなかった。 少女が死んだという紛れもない事実を。 「ごめんなさい……」 美遊・エーデルフェルトは園田海未を守って、死んだ。 その事実を受け取り、やはり耐えきれず涙がこぼれた。 あの時、自分にも何かできたのではないか、そうすればこの結果は変わっていたのでないか。 そういった根拠のない後悔に押しつぶされそうになりながら、 海未は僅かに顔を上げて、残された物を見つめる。 「私にも……何か……出来ていれば……」 美遊・エーデルフェルトの死と、彼女手を離れ、足元に転がるカレイドステッキ・サファイア。 そして残された、最後の言葉。 「サファイアを、お願い――――」 「私は……」 手を伸ばさなければ。 震える足を動かして、近づかなくてはと強く思う。 あの杖を拾わなければならない。そうすることがせめてもの、と。 「私は……っ!」 それでも、体は動かない。 全身を、冷たく凍えるような感情が支配する。 もう取り返しのつかない哀しい事実を、一人ではどうしても受け止めきれずに。 「―――――」 その時、こつり、と。 頭上で靴音が鳴ったような気がした。 音を追うように、海未が見上げると――― 「あなたは……?」 視線の先、屋上の更に高所に位置する、 落下防止用フェンスの上に一人、金髪の少女が立っていた。 夜天の下。 ベレー帽にコルセット、スカート、そして目を引く胸元の黄色いリボン。 淡い輝きを放つ、クラシカルで華やかな立ち姿はまるで、昔見たテレビの中の――― 「私は巴マミ」 フェンスから床に降り立ち、海未の目を真っ直ぐに見つめて彼女は名乗る。 「キュゥべえと契約した、魔法少女よ」 いつか幾人もの少女が胸に抱いた、憧れの名を。 ★★★★★ 今も憧れを抱いている。 だからこの場所で、私のすることは決まっていた。 初めから選択する余地は、たぶん無かったんだと思う。 最初の願いを決めた時とあるいは同じくらいに。 「魔法少女……あなたも……なのですか?」 目を丸くして、私を見つめる人。 この瞬間、出会った誰かに、私は手を差し伸べたい。 素性も、年も、名前すら知らない赤の他人。 だけど私は、助けたい。 今にも悲しみに潰されそうなこの人を。 「……助けてください」 縋るように手を伸ばす、名前も知れない目の前の誰か。 その願いを。 私は微笑んで受け入れた。 だって、それがいつか、私の憧れた在り方で――― 「ええ、もう大丈夫です」 魔法少女は、夢と希望を叶えるものだから。 【G-6/音ノ木坂学院屋上/深夜】 【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:健康 [装備]:変身状態 [道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3 [思考・行動] 基本方針:夢と希望を叶える魔法少女として在る。人を守る。 1:目の前で泣いている人の保護。 2:身を守るすべのない人を助けたい。 3:名簿内の知人が気になる。 [備考] *参戦時期はテレビ版2話終了時あたり。 【園田海未@ラブライブ】 [状態]:疲労(大)、足に擦り傷 [装備]: [道具]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード・ライダー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、基本支給品(美遊) [思考・行動] 基本方針:死にたくない 1:助けて…… 2:μ sの皆を探したい [備考] *サファイアによってマスター認証を受けました。 *サファイアの参戦時期はツヴァイ終了後です。 時系列順で読む Back オフライン Next 偽りの悪評 投下順で読む Back 輝【くのう】 Next 濁【こたえ】 GAME START 巴マミ 059 だってだって噫無情 012 Brave Shine 園田海未
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原点 ◆3k3x1UI5IA ……その薄暗く、粉っぽい、殺風景な倉庫の中に、それらは無造作に転がっていた。 何の変哲もない、ごくごくありふれた、数本の金属バット。 少年は、しばし動きを止める。 彼らしからぬ、何かを惜しむような、懐かしむような、微妙な表情。 「……思い出すね、姉様。『僕たち』の、『私たち』の『始まり』を」 ガラガラと音を立てて扉を開き、少年は体育倉庫に足を踏み入れる。 あたりにはハードルやら、跳び箱やら、ボールの入った籠やらが散在しているが、それらには目もくれず。 少年――名簿の上では『ヘンゼル』として登録されている――は、そしてそっと金属バットを拾い上げる。 ずしり、とした手ごたえ。冷たい手触り。 『あの時』と変わらぬ、金属の棒。 『あの時』から月日が流れ、『彼ら』は多くのものを失った。 涙を忘れた。恐怖を忘れた。過去を忘れた。空の青さを忘れ、太陽の眩しさを忘れた。 自分たちの本当の名前さえも忘れてしまった。 それらを失った代わりに、世界の『真理』を知った。何が起こっても笑っていられるようになった。 自ら受け入れ、堕ちていった暗黒の闇。 その『始まり』を思い出し、少年はうっとりとした笑みを浮かべる。 幼い顔には似つかわしくない、とろけるような、淫靡な微笑み。 少年は唄うように囁く。この場所・この時間に居ない、過去の『彼女』に向かって、優しく囁く。 「大丈夫だよ、姉様。これは『仕組み』なんだ。 殺して殺されてまた殺す、世界はそうして円環(リング)を紡ぐんだ」 『あの時』は、両手で構えるのがやっとだった。 ふらつきながら、泣きながら、拘束されている相手に振り下ろすのが精一杯だった。 そんな、子供の手にはいささか余るような凶器を、しかし少年は片手で構えて軽く素振りする。 重さ・長さ共に丁度いい。素振りの度に脇腹は痛むが、これなら戦える。 反対側の手にももう1本拾って持ち、二刀流の剣士のように構えてみる。……いけそうだ。 普段愛用していた2本の手斧のように手に馴染む。 『あの時』から――強要された『最初の人殺し』の時から比べれば、少年は確実に強くなっている。 だって…… 「だって、僕らはこんなにも人を殺してきたんだもの。いっぱいいっぱい殺してきている。 だから……!」 * * * 逃走を決断したヘンゼルだったが、しかし一直線に逃げるほど彼は単純ではない。間抜けでもない。 逃げるに際し一番怖いのは、背中から狙撃されることだ。 『魔法使い』は、言ってみれば射程も性能も分からぬ銃火器を持っているようなもの。不安は尽きない。 森に逃げ込んでも、例えばロケット砲のような高威力の『魔法』があれば、森ごと吹き飛ばされるかもしれない。 次に怖いのは、複数の追っ手に追いつかれること。 バルキリースカートが万全で、全てのアームを「脚」として使えればかなりの速度が出せる。 けれど、今はそれは望めない。 生身の足で走ろうにも、折れた肋骨がかなり痛む。短距離ならともかく、長距離走は正直言って辛い。 だからヘンゼルは、あえて逆を突いた。 わざわざ派手に学校を囲む塀を飛び越えて見せた後、その陰に隠れて方向転換。 塀の陰に隠れてしばらく小走りに走って、別の所から、今度はこっそり塀の内側に戻る。 こうすれば敵たちとの直線距離は縮まってしまうが、相手の死角に隠れつつ、その動きを見ることができる。 しばらく追っ手の有無を確認しようと、体育館の陰に身を寄せて、ついでに武器でもないかと覗いてみて…… そして、発見した体育倉庫。発見した金属バット。 本当は思い出などに浸っているヒマはない、と分かっているのだが、ついつい昔のことを思い出してしまう。 彼が『ヘンゼル』になった頃のことを思い出してしまう。 そして同時に、最愛の存在のことも。 * * * 「姉様はどうしているのかな。『魔法使い』相手じゃ姉様も勝手が違うだろうし、うまくやってればいいんだけど」 未だ会えない双子の片割れのことが気にはなるが、でも実のところ、さほど心配してはいない。 彼女の強さは誰よりも彼がよく知っている。彼女1人でも、簡単に殺されるとは思えない。 ただ、自分がそうであったように、未知の力持つ相手を『殺しきれない』こともあるのではないか――? 彼としては、そちらの心配の方が強い。 「この世界は、殺すか殺されるかしかないんだ。だから殺そう、もっと殺そう。僕らが殺そう」 自分に言い聞かせるように、少年は囁く。 体育倉庫の薄闇の中に、泣きながら別の子供にバットを振り下ろす、自分自身の幻影を一瞬だけ垣間見て―― 少年は、それでも微笑む。どこか寂しさのある笑顔で、それでも微笑む。 「さて……これから、どうしようかな。あの『魔法使い』のお兄さんたちとは、まだ会いたくないんだけど」 どこかで非常ベルらしき音が鳴っている。逃げてきた校舎の方だ。 また何か状況の変化があったのだろうか? いくら自分好みの武器を手に入れたと言っても、さっきの『魔法使い』たちに正面から遭遇するのは避けたい。 核鉄の治癒効果が働き始めているとはいえ、傷はまだ痛むし、バルキリースカートも損傷したままだ。 どうやら追っ手もないようだし、最初に考えていた通り、学校から離れて休息を取るのが一番だろう。 が――このベルの音が気にならないと言ったら、嘘になる。 もしも混乱が起きているなら、それに乗じれば楽に殺せるかもしれない。沢山殺せるかもしれない。 薄暗い倉庫の中、少し迷った彼は、そして……。 【D-4/学校・体育館体育倉庫/1日目/真昼】 【ヘンゼル@BLACK LAGOON】 [状態]:中度の疲労。脇腹に裂傷及び肋骨数本を骨折(無茶をすれば動ける程度) [装備]:金属バット×2@現実、天罰の杖@ドラクエⅤ、バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、 [道具]:支給品一式、スタングレネード×7、殺虫剤@現実、 [思考]:久しぶりに昔のことを思い出した……。 第一行動方針:学校から離れて休息する?(バルキリースカートも回復させたい) 第ニ行動方針:学校校舎の非常ベルが気になる? 第三行動方針:『魔法使い』に関する情報を集める(『魔法』関係者は警戒する)。 基本行動方針:いろんな人と遊びつつ、適当に殺す。 [備考]:バルキリースカートの使用可能なアームは2本。 メロを魔法使いだと認識しました。 殺虫剤を「魔法封じスプレー禁超類」だと思っています(半信半疑)。 逃げるかどうか、逃げるとしたら逃走方向は次の書き手さんに任せます ≪141 真実は煙に紛れて(4) 時系列順に読む 144 三宮紫穂の憂鬱(前編)≫ ≪141 真実は煙に紛れて(4) 投下順に読む 143 Fighting orchestra/戦奏(1)≫ ≪136 嘘とブラフは言葉、意識させれば力 ヘンゼルの登場SSを読む 158 運命のルーレット廻して(前編)≫
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そして誰かいなくなった ◆1yqnHVqBO6 「ガキの頃、遠い異国の地で両親を殺された。 殺したのは神を信じるクソッタレ達さ」 「それで、お前はどうしたんだ?」 「神を信じるヤツらを片っ端から殺した。 巻き添えになった連中も大勢いたけど そんなのはわたしの知ったことじゃない」 「赤き血の神も神を信じるのか」 「お前、そういうの言ってて混乱しないか? バカは信じるんだよ。 誰かが自分を救ってくれるってな」 「おかしくないか?」 「あ?」 「お前がやってることが復讐だとしたら 両親を殺した連中だけを殺せばいいだけだ。 そうでなくても、神を信じる者だけ殺せばいい」 「そうだな」 「だがお前の“願い”はその先にあるんだろ」 「そうだ。神を殺す。神の座を手に入れてな」 「神を殺す……どうしてだ?」 「ああ?」 「神が最初からお前と関係ないのなら。 お前を救いはしないとわかってるなら 神を殺す必要はないだろ。神を信じてないんだから」 「違う。わたしは神を殺して神を信じる奴を――」 「信じようと信じまいと 神と会ったことあるやつなんていねえよ。 ウリュウ・ミネネ。オレにはお前が……」 「わかった。もういいだろ。 お前が知りたがっていた“願い”は教えてやったんだ。 あとは契約通りわたしの言うことを聞けばいい」 「誰よりも神に救われたかったようにしか見えねえ」 大きな音を立てて鳴り響いたレオの頬。 殴った反動で少し擦り剥けたみねねの拳。 「痴話喧嘩してる場合じゃないでしょ」 北岡が割り込んできたのは沈黙の中。 「誰かが大学の前を通ってるみたいよ?」 ―――――――――― 七原が死んだ。 その事実が杉村の脳をぐるぐると駆け回り 脳を不快に揺さぶる。 視界が歪んで吐きそうになり、口を抑えて堪えた。 「大丈夫? ヒロキ」 優しく手を繋いできた雛苺が 心配そうに杉村を見上げる。 彼の膝より少し高いくらいの大きさしかない 彼女の表情は痛いほど 杉村の心情を慮っているのが見てとれた。 「ごめんな。大丈夫。 平気だよ、俺は全然」 雛苺の頭を優しく撫で杉村は微笑む。 根が繊細で人付き合いも得意ではない彼だが 浮かべた微笑みはなんとか形になっていたはず。 それでも、雛苺は彼から離れず。 杉村の手を一層強く握った。 「ヒロキ」 なだらかな丘陵。 照りつける太陽は、 もう疑いなく紛い物なのだろう。 偽物だと意識すると それの発する熱が煩わしく感じられた。 このゲームは杉村達が参加していた 糞益体もないゲームとは違う。 川田章吾もいない以上、 七原が順調に脱出の道を 進めていたと思えるほど楽観的ではない。 けれども、杉村は心のどこかで信じていた。 七原なら何かやってくれるはずだと。 かつて自分に道を示してくれたあの男ならと。 緩やかな斜面を登ったキャンチョメは 少し後ろを歩く二人へ振り返る。 「大切な人が死んだら。 その人を想っていた人も死ぬのかな」 逆光に照らされてキャンチョメの顔は見えない。 しかし、その声音には 壊れそうなほどの無垢が感じられた。 「そうじゃない、キャンチョメ。 俺の親友は家族が目の前で殺されても 必死に生きようとしてた」 「ゼオンは強かったんだよ凄く」 ゼオン・ベル。 たしかガッシュの兄だという人物だ。 キャンチョメが言うには訳あってガッシュを憎悪していたが ようやく和解し、魔界に帰ったらしい。 と言っても、魂としてではあるが。 何か、言わなければならない。 杉村は口を開き言葉を発しようとしたが、 喉に栓が詰まったようになり。潰れた吐息しか出ない。 杉村が焦燥を感じ始めたそのとき。 爆音とともにノイズ混じりのダミ声が聞こえた。 「こんにっちはあ~~~~! 私はテロリスト「雨竜みねね」です! お前たちは今私の標的になりました~!」 猛スピードでこちらに向かってくる オープンカーが杉村たちの前に現れた。 運転手は深緑の装甲に身を包んだ おそらくは仮面ライダーなる存在。 そしてその隣に立つのは拡声器を手に 大声を張り上げる眼帯をつけた女性。 「なっ!?」 驚愕のあまり杉村は思考が停止してしまった。 こんな平野で拡声器を使うのは愚策だ。 禁止エリアと南東に現れた謎のオブジェを見ても 南東に向かおうとする参加者はかなり多いはず。 「選択肢は二つ! おとなしく降伏して情報を吐き出すこと! もう一つは抗戦して捕虜になってから情報を吐くこと!」 車が杉村たちの横を走りすぎると 後方で大きく旋回し再びこちらに向かってくる。 「どっちでもDEAD ENDは決まってるんだけどな!」 突如として現れた襲撃者たちに対応すべく 杉村はデッキをバックルに挿し込み変身する。 キャンチョメたちを庇おうと前に出ると。 目前に接近したスポーツカーを底からの打撃で 掬い上げようと杉村は重心を低くする。 杉村の背後から膨大な熱気が感じられ 思わず意識を遮られ振り向いてしまう。 失態に気づくもどちらに対応すべきか迷った 杉村は振り返る途中の姿勢で固まってしまった。 「フォウ・スプポルク!」 隣から声が聞こえ、 杉村はキャンチョメに助けられたと知り。 地面に大きな車の影が射し、 雛苺が失態をカバーしたことを悟った。 雛苺の蔓によって天高く持ち上げられたスポーツカー。 奇襲を仕掛けてきた男はキャンチョメの術によって 炎の剣が霧散し、一瞬だが動揺を見せていた。 「雛苺! 車ごと捕らえてくれ!」 蔓がスポーツカーごと襲撃者たちを包み込んだのを背に 杉村は地上に残った男へ攻撃を仕掛ける。 突き出すのは鋼の拳。相手も装甲に包まれている。 一撃ならば相手を殺さずに無力化できると踏んだ。 狙いは肩。 キャンチョメの術により剣を喪った相手に防ぐ術はない。 毎日練り上げてきた突きが吸い込まれるように進む。 「あめえよ」 だが、それを半歩だけ身を捻り躱した相手が 続けざまに杉村の胸へと裏拳を叩き込む。 「ぐっ……!」 予想外の反撃に杉村は大きく後退しようとしたが 腕を相手に掴まる逃れることができない。 「俺は防人だ、仮面ライダー」 裏拳に使った左手で右腕を封じられた杉村は 畳み込まれるように至近距離からの肘鉄の連打をくらう。 「俺の中には今までの防人たちの戦闘経験がある」 的確に防御の隙を縫って出される攻撃に 杉村は為すすべなく打たれるのみ。 「剣術だけじゃねえんだよ」 杉村の腕から手を離すと両手を腰に構え、 強く地面を踏みしめると 防人レオは両掌を杉村の腹部に当てる。 産みだされた衝撃は絶大。 胴体が陥没する錯覚を覚えながら 杉村は地面を転げまわる。 「これで終わりか? 弱いぞ」 拍子抜けに溜め息をついて レオは杉村が倒れている方へと歩く。 「闘いに迷いでもあるのか。 これなら龍騎の方が遥かに強かった」 レオの手に再び炎が集まり 粘土のようにこねて剣へと形を変える。 レオの追い打ちを防ごうと キャンチョメがレオの前に立ちはだかる。 「機械……ではなさそうだな。 お前も抵抗するか。ならやってみろ」 「フォウ・スプポルク!」 キャンチョメの手から光と音が放たれ 先ほどと同じようにレオの剣を覆い、霧散させる。 「さっきと同じ手じゃねえか」 鼻で笑い、レオは一瞬で間合いを詰めると キャンチョメの首筋に手刀を打つ。 「コポルク!」 しかしその一撃は空を切り レオの視界からキャンチョメの姿は消え失せた。 「ディマ・ブルク!」 レオの周囲を取り囲む8体のキャンチョメ。 その全てが実体を持ちレオへと襲いかかる。 舌打ちして、周囲に炎を撒き散らすと 跳躍し、キャンチョメたちから離れる。 「……強いな。おまえの“願い”が知りたくなった」 もう片方の手にも炎の剣を生み出すと 二刀流の構えをとり、キャンチョメの分身たちと対峙する。 「オレと闘え」 その言葉を背後に置き去りにするほどの速度で、 レオはキャンチョメへと躍りかかり―― 「ゲームセットだレオ!」 襲撃者、雨竜みねねの声で踏みとどまった。 声のした方を見るとそこにいるのは 蔓すべてを焼き払い。 雛苺を取り押さえたみねねと 少し離れたところから 興味なさげにあらぬ方を見ている 仮面ライダーゾルダ、北岡の姿。 「抵抗すればこいつを殺す! 大人しく降伏しな!」 冷酷な笑みに歯を剥き出しにして みねねは勧告する。 その要求に従って キャンチョメは分身を消し、ひとりに戻った。 「ひな、いちご……」 腹部を抑え、声を絞り出す杉村。 瞳には敗北感がありありと浮かんでいる。 「相手は子供みたいよ?」 事態を静観していた北岡が口を挟んだ。 「嫌ならすっこんでろ」 煩わしげに北岡を一瞥した みねねはもがく雛苺の口を抑え、 目の前に手榴弾をちらつかせ。 ひたひたと雛苺の丸い頬に冷たい手榴弾をあてる。 「やめろよ! 雛苺から離れろ!」 これから受けるだろう行為を想像するだけで 足が震えても必死にキャンチョメは抗議する。 「なんで……そんなことをするんだお前たちは」 動かない手足、 やけに重くなっていく体に不甲斐なさを覚えつつ。 杉村はみねねに問う。 「状況を受け入れな。 弱いからお前たちは負ける。それだけのことだ」 「……それで納得できるわけないだろ!」 「納得しようがしまいがゲームは進む。 言っとくけどあたしたちはまだ誰も殺しちゃいないよ」 「つまりは口だけっていうね」 「黙ってろクソ弁護士」 痛いところを突かれ、憮然と北岡に返事し。 みねねは肩を竦めると改めて杉村たちに告げる。 「諦めな。お前たちはここで死ぬ」 「――――ディカポルク」 その声にはたしかに怒りが混じっていた。 強い、強い、怒りが。少年の口からでていた。 その時、天を衝く程の巨人がその場に現れた。 大きさは30メートルを優に超えている。 巨人、キャンチョメは拳を引くと 力任せに雛苺ごとみねね達に叩きつける。 それを防いだのはレオの炎。 しかし、腕をこんがりと焼くかと思われた キャンチョメの腕は炎を通さず。 蜃気楼のように揺らめくのみ。 「幻影か」 「コポルク」 「痛っ!」 突然の巨人の出現に呆気にとられたみねね。 指先までよじ登っていた 小さなキャンチョメに気づくことができず、指先を噛まれた。 「ヒロキ!」 ――FREEZE VENT―― キャンチョメの機転に呼応して 杉村はカードをデッキに挿し込む。 現れた白銀の大虎が吹雪を伴う冷気を吹きつける。 草木すらもたちまちに凍りつき、 バリバリとした音とともにキャンチョメは雛苺を抱えて走る。 「逃げよう!」 杉村に半ば押し付ける形で雛苺を預けると キャンチョメは杉村の背中を押すように走る。 「逃すかよ」 だがそこを先回りしていた レオが杉村の頭部へと回し蹴りを放つ。 軽く、速度もなかった攻撃を杉村は前転で避ける。 「おまえは逃さない」 だが後続のキャンチョメに そのままつま先の向きを変え。 踵落としをすると抉られた 大地や草木がクリスタルのように砕け散り宙を舞う。 「レオ! おまえはそのまま二人を追え!」 みねねの指示にレオは一瞬反抗の意思を見せたが 大人しく従い、杉村達を追う。 「キャンチョメ!」 「行って! 後で追いつくから」 「二対一でやる気か?」 遠くに消えていく杉村たちの背を見送ることもなく。 キャンチョメはみねねと対峙する。 「…………二対一?」 場に満ちる緊張感にそぐわぬ仕草で キャンチョメは首を傾げる。 その反応にみねねは巨人の出現から 北岡の姿が見えなくなっていたことを思い出し。 首筋をちくちくとした違和感があるのに気づいた。 手をやってみるとそれは紙切れであり。 『体調が優れないんで帰るよ。 同盟は破棄ってことでごめんね。 PS、べつに子供を傷つけたくないとか そういうのじゃないからね。勘違いしないでちょうだいね』 「あんのクソ弁護士があ!!」 みねねは怒りのあまり置き手紙をびりびりに引き裂き 紙切れを地面に叩きつける。 「おまえはここで倒す!」 「あー、そうですかー。 これ、レオも知ってて置いてったよなあ。 いいね。いいねえ。雨竜みねねらしくなってきたっ!」 ヤケクソに叫び散らしつつ、冷静に爆弾と日記を手にし みねねは次の一手を考え始めた。 【D‐6/一日目/日中】 【キャンチョメ@金色のガッシュ!!】 [状態]:健康、力への渇望、全身裂傷、疲労(中)、心の力消費(中) [装備]: キャンチョメの魔本@金色のガッシュベル!! 、粘土@現実、ポップコーン@現実 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:仲間を探す 1:みねねを倒す。 [備考] 何故かパートナーがいなくても術が使えることは理解しました。 本がフォルゴレ以外でも読めると知りました。 フォウ・スプポルクを修得 参戦時期:ファウード編以降 【雨流みねね@未来日記】 [状態]:疲労(小)、色々と考えたい [装備]:MKⅡ手榴弾[4個]@現実 BIM(烈火ガス式)[7個]@BTOOOM!、拡声器(現地調達) [道具]:基本支給品一式、逃亡日記@未来日記、 [思考・状況] 基本行動方針:優勝して“神”を殺す 1 キャンチョメを対処する [備考] ※参戦時期は原作六巻以降のどこかからです。詳しい時期は後の書き手にお任せします ※龍騎の世界観、城戸、秋山、浅倉についての大体の情報を得ました。(霧島については聞いていません) ※カードデッキは他人が使うと死ぬと誤認しています。 ※仮面ライダーデッキを誰でも使えると知りました ※未来日記で周囲に杉村たちしかいないことを確認済みです。 【D‐6→E-6/一日目/日中】 【レオナルド・エディアール@WaqWaq ワークワーク】 [状態]:軽度の打撲、 [装備]:アシャ@WaqWaq ワークワーク、 [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 基本行動方針:頭スッキリ。お目々パッチリ。俺、どうしよう? 1:杉村たちを追う。 2:キャンチョメに興味があるがお預け。 3:他の“神”らしき女にも会いたい。 4:防人以外にも戦えるやつがいるみたいだ 。今はどうでもいいが ※由乃の返り血を浴びています。 【雛苺@ローゼンメイデン】 [状態]:疲労(中) [装備]:なし [道具]:基本支給品、クレヨン@現実、人参@現実 [思考・状況] 基本行動方針:誰も傷つかない世界が欲しい。 1:東へ逃げる ※シュナイダーの愛称はウマゴンでいいよねと思っています。 【杉村弘樹@バトルロワイアル】 [状態]:疲労(大)、精神的疲労(小)、心の力消費(中) 、全身裂傷、 指の爪剥離 [装備]:英雄の証@ブレイブ・ストーリー~新説~ 、仮面ライダータイガのカードデッキ [道具]:基本支給品×2、 [思考・状況] 基本行動方針:どう、すれば…… 1:東へ逃げる 2:時間を見つけて仮面ライダーとしての力の使い方の練習をしたい。 3:城戸真司に会えたら霧島美穂からの伝言を伝える 4:もし、桐山が琴弾を殺したのだとしたら、俺は…… [備考] この殺し合いを大東亜帝国版プログラムだけでなく、 それとよく似た殺し合いの参加者も集められていると暫定的に推測しています。 仮面ライダーへの変身の仕方を理解しました。 カードの使い方も大体把握しました。 参戦時期:琴弾と合流後、桐山襲撃直後 【D‐6→???/一日目/日中】 【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】 [状態]:疲労(小) 、 [装備]:カードデッキ(ゾルダ) [道具]:基本支給品一式、マスターキー@オリジナル、黒のアタッシュケース 香川英行のレポート? [思考・状況] 基本行動方針:??? 1 子供殺すとかないって [備考] ※参戦時期は劇場版開始前のどこかからです。詳しくは後の書き手にお任せします。 ※未来日記の世界観、雪輝、由乃、来須、マルコ、愛のみねね視点で知っている大体の情報を把握しました。 ※逃亡日記は所有者の逃走経路を予知するものだと勘違いしています。 ※香川英行のレポートに仮面ライダーの弱点が書かれていると 北岡は言っていますが真っ赤な嘘です。 ポツンとひとり 投下順 けれど彼は前を見る ポツンとひとり 時系列順 けれど彼は前を見る ☆北岡秀一☆ 北岡秀一 First bet 雨流みねね PARADIGUML レオナルド・エディアール けれど彼は前を見る 歩くような速さで 雛苺 杉村弘樹 キャンチョメ PARADIGUM
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ゆっくりいじめ系1918 ダメな子 1より続く 「むきゅ! 戻ってきたわね、お兄さん!」 「……ああ」 体が弱いぱちゅりー種にしては、ずいぶんと元気がある。閉じこめられた精神的重圧 ……ゆっくり出来ないストレスとやらを、感じていないかのようだ。 「ぱちぇには全部わかってるわ。だから、ぱちぇを選ぶと良いのよ」 「違うわ! お兄さんは、とかいはなありすを選ぶべきよ! いなかもののむさいお兄 さんも、ありすの導きでとかいはに生まれ変わらせてあげるわ!」 「まりさは役に立つよ! 狩りだって上手だし、それにすっごく強いんだぜ!」 「れ、れいむが……ぃだいぃいいい! い、痛くて、ゆっくり上手に喋れないよぉ……」 「「やっぱりれいむは無能ね」」 「ゆがぁあああ……!」 「……何の話だ?」 「お兄さんは、とてもゆっくりしたカップルを、ここから出してご馳走をくれてゆっく りさせてくれるって言ったわよね?」 後半の、「ご馳走」だの「ゆっくり」だのは言った憶えもないが、とりあえず「似た ようなことは言った」と頷いておく。 「お兄さん、新しいゆっくりの世話をしたいのでしょう? なら、ぱちぇにしなさい。 賢いぱちぇが、お兄さんを奴隷として上手に使ってあげるわ」 「ぱちゅりーなんて、すぐにしんじゃう役立たずよ。それにお兄さんはもう、ありすの とかいはな魅力にメロメロでしょう?」 「「(ぱちぇ/ありす)は、まりさを選ぶから、これでカップルは決まったわね!」」 「ゆ? じゃあ、まりさはどっちでもここから出られるんだね? 安心したよ!」 「ゆぁあああ……ど、どぼじで……でいぶはぁ……?」 自分こそが俺に選ばれると、自信満々のぱちゅりー種とありす種。まりさ種は、どち らにしても自分は安泰だとくつろぎ始める。そして、れいむ種はひたすら打ち拉がれて いた。 「どうして俺が選ぶような話になっているのか、よくわからないんだが……れいむは、 自分をアピールしたりしないのか?」 「ゆ……? れ、れいむを助けてね……!」 「そうじゃなくて、れいむの良いところ、優れたところは? 俺はともかく、まりさへ のアピールにはなるだろう?」 「ゆぅ……ゆ〜……れ、れいむは、とってもおしゃれで……」 「おしゃれなんて言えないわ。言わないでしょう、れいむ? とかいはなありすから見 れば、れいむのおしゃれなんて顔を舐め回してリボンを気にするだけだもの」 「ゆぐぅう……! で、でも、れいむは……か、狩りは、まりさほどじゃないけど……」 「むきゅ、正確に言いなさい。まりさには遠く及ばないほど鈍くて、ぱちぇの様に頭を 使うことも出来ないでしょう」 「ゆうう!? そ、そうだけど……で、でも、ぱちゅりーより……」 「ぱちぇは、この豊富な知識と冴える英知で、動きが鈍くてもご飯を集められるわよ。 れいむは何も出来ないけど」 「ゆぅ……れいむぅ……」 「ま、まりさ……! まりさなら、れいむの良いところを知ってるよね? れいむの良 いところを、みんなに言ってあげてね! れいむが素敵でゆっくりしてるって、みんな に教えてあげてね!」 「むきゅ? でも、さっき酷い顔でまりさを罵っていたわよ」 「ぐちゃぐちゃの汚い顔で、とってもいなかものだったわ」 「ゆ〜……あれは汚かったよ」 「ゆぁああああ……!」 言われたい放題だ。しかも反論できないらしい。 それにしても、俺がゆっくりの中から誰かを選んで……とか……そういえば「新しい ゆっくりの世話」とか言っていたか。 そのことを、なぜそんな話になったのかぱちゅりー種に訪ねると、得意げな顔でふん ぞり返って見せた。 「むきゅん! 賢いぱちぇには余計な説明は不要よ。低脳なお兄さんの説明じゃ、余計 に伝わりにくいわ」 「怒らせたいのか、俺を?」 「むきゅっ!!? ち、違うわ! お兄さんの気持ちはわかっていると言いたいのよ! おバカな頭でゆっくり理解してね!」 「よくわかった。怒らせたいんだな」 「むきゃぁああああっ!? 違うわ違うわ! お兄さんは本当に低レベルな理解力ね! ぱちぇの言うことがわからないなんて、さすがは愚かな人間だわ! ゆっくり説明して あげるから、良く聞きなさい!」 「いや、いいよ、もう」 「むきゅー!? むきゅー!? むきゅー!?」 「そうかそうか、無休で……休みなく回して欲しいか。いいぞ。引き千切れるまで回し てやる」 「むっっっきゅぁあああああっ!?」 蓋をずらして、ぱちゅりー種を鷲掴みにして持ち上げた。蓋を再び閉めたとき、ぽつ りと、れいむ種が呟く。 「ぱちゅりーの言い方じゃ、お兄さんがゆっくり出来ないのも当然だよ……」 「……どうして、そう思うんだ?」 ぱちゅりー種を振り回そうとする腕を止めて、囲い越しにれいむ種へ顔を近づける。 問いかけに、後頭部の穴の痛みに耐えながら、顔を上げてれいむ種がこちらを見てきた。 れいむ種は弱って声が小さくなっているから、しっかり聞き取ろうとしているのに、 鷲掴みにされたぱちゅりー種が、やかましく何度も咳き込んでいる。叫びすぎたせいだ ろう。 時折体内のクリームを咳とともに吐き出すほど激しいもので、どうにも煩いので腕を 張ってちょっと体から遠ざけた。 「バカとか……ていのーとか……ゆっくりできない言葉だよ……それくらい……れいむ、 わかるよ……」 「その通りだ。ぱちゅりーなんかより、れいむの方が賢いんじゃないのか?」 「むきゅああ!? ばがいわないでげべげふっごふげふがぼっ!」 「落ち着け。咳込みすぎて、途中から何を言ってるのかわからないから」 「むひゅ〜……むひゃ〜……で、でいぶが……れいむ、ぐぁ……げふげふっ! れいむ が、ぱちぇより、かしこい、なんて、そんな……ぜひゅ〜ぜひゅ〜……」 しばらくの間、ぱちゅりー種の呼吸が落ち着くのを待ってみる。何を言っても余計に 興奮させるだけのように思えたし、それで咳き込み続けられても面倒なだけだ。 鷲掴みにされたまま、ぱちゅりー種が宙ぶらりんの状態でぜーぜー言っているのに、 「お兄さん、やめてあげてね」も「ぱちゅりー、ゆっくりしてね」も聞こえてこない。 「ふんっ、やっぱりぱちゅりーは弱っちくてダメね。とかいはなありすに酷いことを言 うから、そういう目に遭うの。ゆっくり理解できたら、これからはありすのことを崇め なさい」 ありす種は、何度も何度も嘲笑い罵り続けている。 ぱちゅりー種が「ボキャブラリーも貧困な低脳」と言っていたが、確かに語彙は少な そうだ。 「ま、まりさはグルグルしないでね! グルグル回されると、ゆっくり出来ないよ!! まりさをゆっくりさせてくれないのなら、お兄さんはゆっくりしないで早くしんでね!」 まりさ種は、ひたすら自分のことばかりを言っている。 自分は助けてくれと懇願するだけなら聞き流しても良いが、必ず俺への罵倒も混じる。 ぱちゅりー種がなぜこうなっているのか、理解していないのだろうか。 「……ゆ」 れいむ種は、冷ややかな目でぱちゅりー種を見ているだけだ。後頭部の穴が痛いのだ ろう、あまり喋りもしないし、動きもしない。 そういえば、れいむ種を回しているときも似たり寄ったりだったか。立場は変わって いるが…… 「そろそろ落ち着いたろう、ゆっくりキチンと答えてくれるかな?」 「むぎゅ……だ、だから、お兄さんは新しいゆっくりが欲しいんでしょう? ゆっくり したカップルの、ゆっくりが欲しいんでしょう?」 「なんでそうなるんだ?」 「無能なクソめーりんに、飽きたから……」 「……ほほう」 「むぎゃ!? ……ゆゆ?」 鷲掴みに、ぶらりと下げていただけのぱちゅりー種を、一度上へ放り投げるようにし て持ち上げ、両手で受け止め、持ち直す。 ちょうど俺の目線に来る高さへ持ち上げると、ぱちゅりー種が勢い込んで喋りだした。 「ぱちぇは、賢いの! 無能で喋れもしない、弱いクソめーりんなんかより、ずっと素 晴らしいわ! 役にも立てるの! だがら゛げふげふっ! ごぶっ!」 口角泡を飛ばす……という言葉があるが、今のぱちゅりー種はまさにそれだった。 大声で喋るたびに俺の顔へ唾がかかり、咳き込み始めてかかる唾の量が増え、その上 激しく咳き込んだときはクリームまでぶっかけられた。 気色悪いことこの上ない。 「……だいたい、わかった」 「ぐぶっ! げほけほ……むぎゅ……ぞぉ……そうなのね、やっとぱちぇの言うことが ゆっくり理解できたのね」 「ああ、どんな見当違いをやらかしてるのか、よくわかったよ」 「むきゅ?」 「そういえば、お前達は『お空を飛んでるみたい』って喜んだりするよな。こういうの」 ゆっくりと優しく、両手で支えたぱちゅりー種を上下してやる。ふわり、ふわりとい う感じを与えられるように。 「むきゅ……そうね、これは素敵よ。お空を飛んでいるみたいだわ。自分で動かなくて もいいから、ゆっくりしていられるの。ゆっくりしていても、ゆっくりと景色が変わる のが、とっても気持ちいいのよ」 「じゃあ、もっとお空を飛ぶと良い」 「むきゅ!? むきゃっ……!」 ふわりと宙へ、ぱちゅりー種を放り投げる。途切れた悲鳴を残して、ぱちゅりー種は 高く舞い上がった。 天井なんて上等なものはない。2階建てとは言わない、せめて屋根裏部屋がある一軒 家にと願いはするが、ここは住んでる俺が見てもボロ屋なのだ。ただし、剥き出しの梁 が見えている構造なので、上方は十分に広い。 「ゅぁぁあああああああむぎゅっ!?」 まっすぐ上へ、梁を超えて屋根裏に届くかというほど高く舞い上がり、まっすぐ落ち てきたぱちゅりー種を、上手く衝撃を殺すようにして受け止めてやる。 目を回して「むひゅーむひゅー」と息を荒げているぱちゅりー種の様子に気付かない のか、まりさ種とありす種が歓声を上げ、騒ぎ出した。 「すごいよ、お兄さん! とってもゆっくりお空へ行って、ゆっくり降りてきたよ!! 今度はまりさにそれをやってね!」 「ありすよ! とかいはなありすは、とかいはらしくお空を飛ぶ感覚を味わうべきだわ! さぁ! ゆっくりしないで、ありすに空を与えなさい!」 今のが「ゆっくり降りてきた」ように見えたのだろうか? それに「空を与えろ」と は大きく出たものだ。 「まぁ、待て。ぱちゅりーが、もう一度やって欲しいと言うかもしれないだろ?」 「そんな弱っちいクズはどうでもいいから、とかいはのありすをもてなすべきだって、 どうしてお兄さんはわからないの? いなかものにもほどがあるわよ!」 「む……むきゅ……ぱちぇには、刺激が強すぎるわ。ありすみたいなクズはどうでもい いけど、まりさにやってあげて」 「ゆゆ〜ん! ありがとう、ぱちゅりー! まりさ、ぱちゅりーが大好きだぜ!」 「ま、まりさぁあああっ!? ありすとの愛はどうしたのぉおおお!?」 「そんなの初めから無いわよ。まりさ、お礼には及ばないから、ぱちぇと交代して……」 「ぱちゅりーも、遠慮するに及ばないぞ」 「……むきゅ?」 「ほれ、もう一回行ってこい」 「いいぃいいぃいらないぃぃんむきゃぁあああああああっ!?」 今度は狙いをつけて、先ほどよりも慎重に放り投げた。 「むきゅっ!?」 狙い通り、一番太い梁にとすんとぱちゅりー種は着地する。 投げた勢いがちょうど切れて、落ち始めるところで梁に着地できたはずだから、それ ほど衝撃もなかっただろう。 「むきゅ? ここはどこ? 暗いわよ? それに、地面が細い……お、大きな穴がある わ!? いつの間に!?」 「お〜い、穴じゃないぞぉ。下を見てみろ」 「むきゅきゅ? 穴の中から声が……むきゅぁああああぁおえげふげぶっ! ごふ!」 「咳き込んでる場合じゃないだろ」 「お、降ろしてぇえ! こんなところじゃ、ぱちぇはゆっくり出来ないわぁあ!」 「そこまで誰もいけないから、飛び降りろよ」 「ム゛リ゛い゛わ゛な゛い゛でぐほげほがへ!!」 「大丈夫だって。こっちで受け止めればいいんだから」 「げふっ……こほっ……ほ、本当に? ホントでしょうね? ぱちぇは賢いから、嘘な んて見抜いちゃうわよ?」 「他には方法もないぞ? そこはネズミの通り道だから、のんびりしてると食われるだ ろうし」 「むきゅあ!? じゃ、じゃあ、飛ぶわ……飛ぶわよ? ちゃんと受け止めるのよ!?」 「はいはい」 「ゆっくりやさしく受け止めるのよ!」 「注文が多いな」 「い〜ち……に〜の……むきゅ!」 「注文が多いが、頑張れよ、まりさ」 「ゆあ!?」 「むきゅ?」 数瞬。 「むぎゅべっ!?」 グシャともベシャともつかない音とともに、土間の床へ追突したぱちゅりー種が短い 声を上げた。顔から床へ突っ込み、衝撃でクリームが周囲へ飛び散っている。 「あ〜あ。まりさがちゃんと受け止めてやらないから」 「ま、まりさが!? どうしてまりさなの!? まりさ知らないよ!?」 「知らないってことはないだろ」 ぱちゅりー種の様子を確かめながら、おざなりに言った俺の言葉を、れいむ種が引き 継いだ。 「まりさは……ぱちゅりーと、仲良くゆっくりするんだよね……なら……まりさが弱い ぱちゅりーを助けるのは、当然だよ……」 「…………」 「ゆぁああ!!? そ、そんなの、ぱちゅりーが勝手に言ったことだよ!! まりさは 弱っちいぱちゅりーなんて好きじゃないんだぜ!」 「むっ、むげぅ……!」 「そうよ、何言ってるの。まりさはありすと一緒に、ここから出てお兄さんにお世話し てもらうのよ。ぱちゅりーなんか助ける必要ないわ」 「む……げぅう……!」 まりさ種とありす種の発言に、ぱちゅりー種がビクビクと反応する。一見したときは 中身を撒き散らして完全に潰れたかと思ったが、まだ生きているようだ。 ただし、お得意の「むきゅ」とかいう発声が出来ないほどの重傷ではあるようだが。 「ば……でぃざぁ……ひどぃ……むぐぅ……」 ひっくり返してみれば、歯はボロボロに欠け、顔中に裂傷をこさえている。無事とは とても言えない有様だ。 飛び散ったクリームの大半は、墜落するときに吐いたものなのだろうが……今も裂傷 から、ジクジクとクリームを滲ませている。 「ほら、まりさの大好きな、賢いぱちゅりーだぞ」 「ゆぁああああああっ!?」 言いながら蓋を開けて、まりさ種へ傷だらけでクリームに汚れたぱちゅりー種を押し つける。 「ぎだないぃいいいっ! ぎぼぢわるいぃいいいい!」 「どぼじでぞんなごどゆぐべげほがほげへべっ!」 人間で言ったら、血塗れの脱力した他人が覆い被さってきた感じなのだろうか。 だからって、傷ついている相手の意識があるのに「汚い」「気持ち悪い」なんてこと は、人間ならば……仮に思っていても、言わないだろう。 「汚いぱちゅりーはゆっくりしないで、ありすのまりさから離れてね! ふんっ!」 「ぶぎゅっ!」 傷だらけの友人──友人のはず、だよな?──を、ありす種は体当たりで突き飛ばす。 つくづく、相手を思いやるという情が、欠如した連中だ。 「さぁ、次はまりさだったな。お空を飛ぶといい」 「ゆぁああっ!? や、やめてね! やめてね! まりさ、お空なんて飛びたくないよ! ぱちゅりーみたくなりたくないよ!」 「でも、まりさはぱちゅりーが大好きなんだろ? だったら、おそろいが一番だ」 「いやだよ! おそろいってなに!? わからないこと言わないでね! 変なことを言 うお兄さんはゆっくりしないでさっさとしんでね!」 「……とかいはなありすなら、知ってるよな?」 「ゆうっ!? あ、ありすは、空なんて飛びたくないし、弱っちいぱちゅりーは大嫌い よ!?」 「そうじゃなくて、カップルはペアルックでお洒落するのが“とかいは”だろう?」 「ゆ……? ぺあるっく……? ペアルックね! わかるわ! とってもとかいはよ!」 「ほらな、まりさ。だから、まりさはぱちゅりーと同じ目に遭わなくちゃダメなんだ」 「いやぁああああっ! いやだっでいっでづのに、なんでわがらないの、ごのジジイ! バガなの!? じぬの!?」 「大丈夫よ、まりさ! まりさはぱちゅりーなんて大嫌い、とかいはなありすを愛して るって言えばいいのよ!」 「ゆ? ど、どぼじで……?」 「ペアルックだからよ!」 「わがらだいよ……」 「ありすとカップルになれば、まりさもとかいはになれるのよ。ぱちゅりーみたいに、 ボロボロで汚くなる必要はないわ」 「ゆ……そ、そうだね! ありすと一緒なら、ありすは怪我もしてないから、大丈夫な んだね!」 「むぎゅ……ばでぃざぁ……!」 「……」 勝利を確信した表情のありす種。救われた表情のまりさ種。傷だらけの体に追い打ち の言葉を受けたぱちゅりー種。 れいむ種は、また冷ややかに眺めているだけだ。 「ちょっと待ってろ、れいむ」 「ゆ……」 ゆっくりいじめ系1920 ダメな子 3に続く
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『DIO』 【真昼】C-3 紅魔館 レミリア・スカーレットの寝室 「ぬぅ……ッ!? ガ……ハァ……! ハァ……!」 薄暗い寝室の壁に、西洋ランプに照らされた大きなシルエットが映される。 影絵は大きく揺らめき、歪に形容された口角から覗く牙と思わしき先端からは幾粒もの雫が滴っている。男の血であった。 「ク…………フゥー……! …………クク」 影の持ち主は自分の顔面、その左半面を憎々しげに掴み、男性にしてはいやに美しい爪をこれでもかと食い込ませている。その長い指の隙間それぞれから血流がジワジワ枝分かれしながら生み出され、唇や顎を伝ってベッドシーツを赤黒く染めているのだ。 ひとしきり苦しんだだろうか。半分まで覆われた視界のまま、男は気でも違ったかのように笑みを零し始めた。 「ククク……! クハハハ……ッ! フッフッフ……!」 やがて男は自らに食い込ませていた爪を外し、狂笑と共にその全容を明らかにする。 妖艶とも評された彼の顔立ちは、今やその半分がドス黒い血に塗れていた。左瞼の上から、まるで恐竜の爪か何かに引っ掻かれたかのような切り傷が、縦一文字に大きく線引かれている。 潰されているのだ。その男───DIOの左眼球は、突然に切り開かれた裂傷によって使い物にならなくなっていた。 どう見ても大事だという容態とは裏腹に、男は視界の半分を血塗れとしながら、どうしようもない嬉々を隠すことなく振り撒いていた。 「今……『空条承太郎』が死んだ。この左目、そして首のアザによる疼きで理解(わか)る……!」 DIOはたちまちにベッドから飛び降り、誰とも見ていない寝室の中、観客すら居ないたった一人のステージ上で空を仰ぎ、両の腕を広げ上げた。 スポットライトを浴びた孤独な演者が眉を開く。眼中に受けた代償など眼中にも無いとでも言わんばかりに、狂喜に満ちる。 人を辞めた吸血鬼DIOにとって、ジョースターの名が持つ意味は深く重い。始まりのジョースター、『ジョナサン』から初めて敗北を味わったあの日から、ディオは、DIOは、『運命』に固執し始める事となる。 克服すべき恐怖。乗り越えるべき宿命。DIOにとってジョースターは、生涯を賭して必ず倒さねばならない敵ッ! 「乗り越えたぞ……! 100年掛かってしまったが……今ッ! オレはジョースターを超えたッ! 堂々と! 正面から! 勝ったッ!!」 愉悦に浸らないわけがない。 快哉を叫ばないわけがない。 諸手を挙げないわけがない。 宿願なのだ。苦渋を舐めさせられた存在なのだ。ただの一度として勝てなかった一族なのだ。 その相手に───── 「勝ったッ!」 「運命を克服したぞッ!」 「ジョジョにッ!」 「ジョースターにッ!」 「勝利者はこのオレだッ!」 「乗り越えたのはこのDIOだッ!」 「フーハッハハハハハァァーーーーーーッ!!!」 静寂を憚らない唯独りの狂笑が、紅魔を支配した。 歓喜はまるで人間のそれの様に。男は唯々、満悦に浮かれた。そこに悪辣な計謀も、最悪の意志も、差し込まない。 倒すべき宿敵を、討った。彼にとって、男にとって、拳を握りあげるには充分すぎる戦果が得られたのだから。 先程流された放送にて、承太郎の名は呼ばれていない。ジョニィなる未知のジョースター姓の名はあったが、その事実はディエゴの口から直に伝えられている。 だが今……なんの前触れなくDIOの左目から突如として血が噴出した。先の戦いで承太郎のスタープラチナから受けた最後っ屁による裂傷だったが、それは巫女の血を吸い完璧に癒やした筈だった。 「クク……なるほど。執念の篭った傷は癒えにくいと耳にしたことはあるが、あながちオカルト話でも無さそうだ」 生涯分の笑いを吐き出したと言えるほどに笑い尽くしたDIOは、左目をガリガリと掻き毟りながら低めのデスクに腰を落とした。 流石は承太郎と称えるべきか、ただでは死ななかったらしい。奴はしっかりと置き土産を遺し逝ったのだ。まさに大健闘と言えよう。 左目がこれでは難儀だ。等価交換とも言える代償だが、果たして一人二人の血を吸った程度でこの傷は塞がってくれるだろうか。 ……安いものだろう。眼球の一つや二つ、本当に安い出費だ。なんなら手足だって厭わない。 ───二人目だ。これでジョースター抹殺は、二人目。 「何処の馬の骨かは分からんが、件のジョニィを討ったのはチルノとこいしだったか。そして承太郎はこのオレ自らが。悪くないペースだ」 取り出した名簿と地図を叩きつけるようにデスクに敷く。自らに流れる血をインクにしてDIOは、名簿の「空条承太郎」の欄に爪先で激しく横引いた。 今にも軽快な口笛を吹き荒らしでもしそうな顔色で、次にDIOは地図を見やる。大雑把な星痣レーダーによればだが、消滅しかけていたアザの反応はこの紅魔館をグルリと一周し、一度北に向かった後に南下していた。 そして暫くの時を置き、完全に消滅。同時に開いた左目の傷を考えれば、間違いなく死んだのは承太郎だという確信があった。 そして収穫はそれだけに終わらない。アザの反応といえば、承太郎の死より前にも一度、数多に散らばっていた反応が一つ、消失していることをDIOは確認している。 アザの一つにはプッチが混ざっている為、ジョースターの誰かとは限らないが……しかし高確率であの一族のものだろう。放送直後の出来事なのですぐさまの人物確認は難しいが。 だが、まだ『居る』。ジョースターはこの地に、まだまだ多く居る。5人か6人か……正確な所は未だ掴めないが、これでは真の『勝利』とは言えない。 ジョルノをジョースターの一人としてカウントするべきかは判断の困る所だが、とにかく目標は『全ジョースターの抹殺』。さっきまでは高らかに大笑いしていたが、こんな所で勝った気になっていてはまた100年前の焼き直しだ。 「……しかし驚いた。まさかあのヴァニラ・アイスがやられるとは」 今回の放送において最も驚愕した事が、DIOが一番に信頼を置く部下『ヴァニラ・アイス』脱落の報。彼は間違いなくDIOの切り札であり、おいそれと失っていい人材ではない。 スタンドの凶悪さ然り、ある種異常なまでの忠誠心然り。チルノとこいしを質屋に入れたってヴァニラ程の男は到底買えないだろう。それ程に惜しい部下を易々と手放した。あまりに手痛い打撃だ。 いったいどこの誰が奴を討てたというのか。カイロの時はポルナレフ・アヴドゥル・イギーらにやられたと聞いたが、この殺し合いにも奴らに匹敵する戦力が居ることは確かだ。 チルノ。古明地こいし。極めつけにヴァニラ・アイス。 確定したジョースター二人の脱落に対しこちらの戦力は三人削られたと言えよう。DIO陣営は、頭領を除けば後はプッチ、ディエゴ、青娥の三人。恐竜化させた八雲紫と、アヌビス神でチェーンアップを施した宇佐見蓮子を加えれば五人。不満とまでは言わないが、より万全を期すならもう少し補充を加えたい所だ。 とはいえ生憎と日中に出歩ける体質ではなく、お眼鏡に叶う人材を見繕う勧誘にも中々精を出せない。こいしを連れてきた時のように、プッチがその役目を担ってくれるのなら幾分は楽なものなのだが。 「……となれば、やはりメリーか」 壁に背を預けながら、DIOは深い思案に沈んでいく。現状、DIOに出来る事で一番実を結べそうなものがメリーを手中に収めることである。 それは戦力の増強という即物的な目的でなく、ともすればそれ以上の魅力がメリーという少女には内包されている可能性があるからだ。 『境目を見る能力』……なんとも曖昧で、要領を得ない名称だが、事実DIOはその能力を彼女との最初の対話によって実体験したようなものだ。 肉の芽の中に侵入し、まるで我が夢の如く意思を顕現させ体験する。本来は絶対に侵入不可である結界を越えて、精神だけを飛ばしてきたというのだ。 境目を超える。一言に言うが、それは一体どういう事象を起こすのか? メリーは、あの目で、あの足で、“何処まで”行けるのか? そしてそれは、DIOの目的にどう関与できるか? 果たして利用に足る存在なのか? まだ、分からない。分からないからこそ、手に入れる価値は大いにある。 八雲紫との関係にしたって捨て置けるものでは無い。あの二人を『引力』の様に引き逢わせてみよう。そこから生まれる『何か』は、きっとDIOにとっても意味のあるモノとなるだろう。 「精々、大親友を籠絡しておいてくれよ。───蓮子」 じっくりと。 メリーという、まだ見ぬ天下一品の料理を下ごしらえするかのように、焦らずゆっくり味を付けていき───最後に盛り付けてみせよう。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 【真昼】C-3 紅魔館 レミリア・スカーレットの寝室 【DIO(ディオ・ブランドー)@第3部 スターダストクルセイダース】 [状態]:左目裂傷、多少ハイ、吸血(紫、霊夢) [装備]:なし [道具]:大統領のハンカチ@第7部、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、頂点に立つ。 1:天国への道を目指す。 2:永きに渡るジョースターとの因縁に決着を付ける。 3:神や大妖の強大な魂を3つ集める。 4:ディエゴたちの帰還を待ち、紫とメリーを邂逅させる。 5:ジョルノとはまたいずれ会うことになるだろう。ブチャラティ(名前は知らない)にも興味。 [備考] ※参戦時期はエジプト・カイロの街中で承太郎と対峙した直後です。 ※停止時間は5→8秒前後に成長しました。霊夢の血を吸ったことで更に増えている可能性があります。 ※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。 ※名簿上では「DIO(ディオ・ブランドー)」と表記されています。 ※古明地こいし、チルノの経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民、幻想郷についてより深く知りました。 また幻想郷縁起により、多くの幻想郷の住民について知りました。 ※自分の未来、プッチの未来について知りました。ジョジョ第6部参加者に関する詳細な情報も知りました。 ※主催者が時間や異世界に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。 ※恐竜の情報網により、参加者の『6時まで』の行動をおおよそ把握しました。 ※八雲紫、博麗霊夢の血を吸ったことによりジョースターの肉体が少しなじみました。他にも身体への影響が出るかもしれません。 ※ジョナサンの星のアザの反応消滅を察していますが、誰のものかまでは分かってません。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 『マエリベリー・ハーン』 【真昼】C-3 紅魔館 吸血鬼フランドール・スカーレットの部屋 空を旅するのも、遠い地の果ての友と会話するのも、かつては夢想の戯れだった。 人類は皆、夢を魅続けてきたのだ。そして、翼を生やしたいと願ってきたのだ。 とうとう彼らの謳う科学は、人々を宇宙へと駆り立てた。子供たちの夢はやがて知識となり、知識の集合体が科学の翼となった。 我々に必要な物は、『夢』である。 そして夢へと羽ばたくには、『翼』が必要である。 「ねえメリー? 元気出しなって。私がついてるじゃないの」 ここは夢なのかな。それとも現かしら。 今、私は夢の中の胡蝶なのか。それとも胡蝶の見る夢の中のメリーなのか。 胡蝶の夢。夢と現の『境目』が判然としない事を喩えた故事。 「ねえメリー? 知り合いや友達が死ぬって凄く悲しいことよ。でも仕方ないじゃん。DIO様にとっての邪魔者だったんだからさあ」 今の私に、境目を見る能力はあってないようなもの。ここが夢なのか現実なのかすら、分かり得ないでいる。 胡蝶のように、空を翔ぶ羽が欲しい。堕ち続ける親友の手を取って、あの空へと羽ばたけるような羽が……翼が欲しい。 「ねえメリー? 私の話聞いてる? 私はね、メリー。本当に貴方のことを想って言ってるのよ」 一足先に夢から覚めた我が親友・宇佐見蓮子。 いまだに夢を捨てきれない私・マエリベリー。 人間は空を飛ぶ為に、空を翔んだ。今の私があの空を駆けるには、夢が必要なんだ。 それはきっと、子供のように無邪気な夢。混じり気のない、純粋無垢な夢こそが翼を創る原動力。 ああ。だとしたら、何ということだろう。 私にはこの夢を直視する勇気が足りない。ツェペリさんが語ったような勇気が、私には足りないんだ。 いや、少し違う。この勇気を、私は一体何処に向けて解放すればいいのかが分からない。標が無いんだ。 勇気を絞って空を翔んだ先が……『悪夢』だとしたら。私は今度こそ、暗黒の空に向かって永遠に堕ちていく。それが何よりも、怖い。 ───このマエリベリー・ハーンには……『夢』が無い。 満天の輝きで暗闇を穿つ、何処に立とうとも決して見失わない黄金のような夢が……私には足りていなかった。 私には…………羽が無い。空に堕ちる蓮子の手を取る為に翔ける、羽が。 「ねーえーメリーー?? いい加減に私と───」 「うるさい。蓮子の声で、私に話し掛けないで」 拒絶。虫のように絶え間なく鳴き続ける、蓮子にとても良く似た声を私はこれ以上耳に入れたくなかった。私の頭の中は……もう、パンクしそうだ。 ───第二回放送。その死者の読み上げの中に、神子さんの名前があった。 「豊聡耳、さんだっけ? あの邪仙の弟子みたいな人だって聞いたけど」 「……貴方達が、あの人を……殺したの?」 ひまわり畑で起こった忌まわしき出来事が、頭の中で再生される。神子さんは、ポルナレフさんの肉の芽を消滅させた功労者の一人で、私たちの集団のリーダーみたいな役を担っていた。 女性なのに気丈で肝が座ってて、だけども奔放でどこか子供っぽいところもあって。人の上に立てるカリスマを備えてる……そんな人だったと思う。 私なんかより、全然強い女性だった。あのひまわり畑で青娥って人と……蓮子が襲ってきた時だって、率先して皆を守りながら戦っていた。 あの人が……死んだ? 「本当はね、メリー以外の奴らは全員殺す予定だったんだけどね。ていうか、殺したと思ってたんだけど」 死んだ。殺された。全員殺そうとしていた、と……蓮子はあっけらかんに喋っている。何事でもないように、大学のカフェで会話するかのように、彼女の表情は日常のそれと大差ない。 唯一、瞳の中には何も映っていないことを除いては。 「青娥さんの秘中の策でね。てっきりあの場の全員を化け物が喰べちゃったと思ったんだけどなあ。まさか一人も呼ばれないなんて。結局、成果は青娥さんが直接殺した女一人だったわけね」 阿求も、幽々子さんも、ポルナレフさんも、ジャイロさんも、みんな殺そうとしていた。そう、言っている。 「正直、ビックリしたのはこっちの方よ。一筋縄じゃあいきそうにないわね、アイツら」 DIOに支配されていることは分かっている。ポルナレフさんの時を考えれば、肉の芽の支配力が尋常でないモノだということは身に染みていた。 それでも、そんな言葉をよりによって蓮子の声で聞きたくなんてなかった。 「ひょっとしたらメリーを奪い返そうとここまでやって来るかもね。まあDIO様だっていらっしゃるし、もし来たって私がこのアヌビス神で返り討───」 「いい加減にしてよ」 限界が来ていたのかもしれない。あるいは、最初から私の頭は限界だったのかも。 気付いたら私は蓮子の前に立っていた。 「どうして……? どうして、そんな酷いことが言えるの?」 「酷い? メリー。酷いっていうのは……」 怖気もせずに、蓮子は下ろしていた腰を上げ、私と同じ目線まで立ち上がってきた。気持ちの悪い微笑まで携えて、小刻みに震える私の頬に指をそっと当てながら彼女は言い返す。 「貴方の方よ。……酷いじゃないメリー。どうして貴方は私と一緒になってくれないの?」 感情の不存在(バーチャル)。 蓮子の意志は、今や現には無い。遠い遠い境目の向こう側に、漂うように堕ち続けている。 この虚無の瞳の中へ、私は手を伸ばせない。結界の向こうへと翔んでいけない。 「そんなにアイツらが大事? 私よりも?」 「アンタは……蓮子じゃないわ」 「蓮子よ。貴方の大好きな宇佐見蓮子。ほら、よく見てみてよ……」 蓮子のしなやかな指が、私の頬をツツゥと伝い唇へと触れてくる。私の指が(自分で言うのも何だけど以前に蓮子から言われた)ピアニストのように綺麗で繊細な指だとしたら、彼女はバイオリニストのように細長く、ちょっぴり力強い指をしている。 それが今、私の唇を柔らかく押し付ける様になぞっていく。傍から見れば、私たち二人はとても蠱惑的に映るんでしょうね。 「ねえ……見てよメリー。私を、見て……」 反対側の手で、蓮子は私の肩をグイと掴む。そして、そっと……少しずつ……蓮子は私の身体を自分の方へと寄せてきた。 まるで舞台で見たロミオとジュリエットだ。この場合ロミオは蓮子で、ジュリエットは私になるのだろう。次第に私と蓮子は抱き合わせる様な形を取っていた。どうしてだか、腕に力が入らない。これ以上、蓮子を拒絶できない。 彼女の左腕が、私の肩から背へと絡ませながら降りていく。優しげでありながらも、強く……強く撫ぜられる。 「ねえ……来てよメリー。私の中に、来て……」 近い。蓮子の顔が、とても近い。鼻と鼻がくっ付きそうなくらい。 官能的だった。未だかつて見たことのない親友の妖艶な姿が、私の瞳を釘付けにした。女同士であることも忘れ、私の内の情欲が蓮子を求め始めていた。 「一つになろう。……メリー」 突き放さなければならない。これは仮初の姿だ。私の弱みに付け込んだ、甘い蜜を垂らした毒々しい花弁なのだ。 心では分かっているのに……身体は、肉体は、蓮子を受け入れる姿勢から離れようとしない。彼女の何処までも底深い瞳の色に、私は惹かれ始めている。 「あ……っ れん、っ、こ……やめ……!」 「やめない……ほら」 視界がぼやけ始めた。今にも口付けを交わせる距離で、私の理性と全身が蕩け始める。柔らかな繭の中にでも包まれたような、初めての極楽が全身を覆う。 まず嗅覚。目の前の蓮子の匂いが鼻腔を刺激し、小さな声が漏れた。甘美な果実を絞り出したようなフェロモンが私をすぐにも虜にさせる。……蓮子って、こんな匂いするんだ。 次に触覚。蓮子の右手が、私の首に添えられる。いつの間にか私の両腕は自然と彼女のシャツの下をまさぐり、腰まで回っていた。いつまでも触れていたくなる温かな餅肌が、益々私の情欲を刺激する。……離したくない。 更に視覚。今の蓮子は女の私にすらも余りに魅力的に映った。こんなにも綺麗な瞳を、私自身の色に染め上げたいという独占欲まで湧いてくる。……本当、素敵よ蓮子。 そして聴覚。蓮子の心臓の音が、私の鼓動と重なる。吐息の音一つ一つが、狂おしく刺激的なリズムを奏でた。色の篭った嬌声は果たしてどちらのものだろう。……どっちでもいいや。 最後は───味覚。黒っぽい服装の癖に、肌だけは新雪みたいに透き通っている彼女。その雪の上に仄かな艷を塗る朱唇が…… 私の─── 唇に─── 愛し合う男女の様に絡み付いたまま、私の口は塞がれた。 「ん……!? ん……れ、ん……!」 「ん……ぁ、メリィ……! は、ぁ……」 紛れもないファーストキス。痺れる様な感触が私の口内を伝い、自分でもよく分からない声と弛緩が顔を出した。 蓮子は私の唾液を貪るように求めて吸い付き、同じように私も蓮子の肉体を求め始め─────── 私は、頭の中が真っ白になって。 上気する蓮子の吐息を感じながら、なすがままにされて。 吸い込まれる。 ───私は星を見ていた。 廃れた神社の、長ったるい石段の上に腰掛けて。空には満天の星空。横には……大好きな親友がいて。 恋人みたいに指と指を絡めて、私と蓮子は冬の寒天の下で暖をとっていた。暖かい手だ。冷えきった心には丁度良い。 「今年も、メリーと一緒に年越せたね」 ねずみ色の空を仰ぎながら、蓮子は言った。その横顔が、私にとってはなにより愛おしい。 「あけましておめでとう、蓮子」 私は二度と離さない。この手を、この人を、二度とは。 「うん。……Happy New year。おめでとうメリー」 私も───────堕ちよう。蓮子と一緒に……ずっと。 「そして……Happy New world。『新たな世界』よ」 ずっと。 ずっと。 ずっと。 ずっと。 ずっと。 「───────いらっしゃい。メリー」 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 ずっと一緒。 どこか遠くの空の下。除夜の鐘は止むことなく鳴り続けていた。 「カタン」 ───────はっ!? 意識が戻れば、そこは草臥れた神社でなく、さっきまでの子供部屋。眼前には蓮子が。いつの間にか私は、親友から押し倒されていた。 いや……そんな事より……! 「さ、触らないでっ!」 「ありゃ」 一気に現実を自覚する。私は今……今まで、何を!? 驚きのあまり腰に跨っていた蓮子を突き飛ばし、私は壁まで海老みたいに後ずさった。口元には“何故か”ベトベトした液体のような……いや、忘れよう。覚えてるけど忘れよう。さっきのはナシ。ノーカンだ。どうかしてた。悪夢よ。 「ちぇ~。もう少しだったのに」 おどけた様子で立ち上がった蓮子は、たいした動揺も焦りも見せずにケロッとしてみせる。 ゾッとした。今、“もう少し”と言ったの? もう少しで、私は………… 「なーんでそっちに戻っちゃうかなあ。……私の魅力がまだまだだった? 女としての自信失っちゃうわ」 蓮子は帽子を被っていなかった。さっき、私がまんまと溺れてる最中に彼女がそっと外したんだ。 そして、『視た』。 蓮子の額に巣食う、悪魔の………… 「あ、あっち行ってっ! それを私に……見せないでッ!」 誘われたのだ。蓮子を支配する肉の芽を直視し、私は再びあの夢の中に誘われた。 打って変わって私の体は震え始める。動悸も止まらない。本当に危なかった。蓮子は───いや、DIOは、私の『境目を見る能力』を逆手に取って強制的に『あっち側』へと引き摺り込もうとしてたんだ。 後一歩で、恐らく私はあのDAY DREAMからは戻ってこれなかっただろう。蓮子と永遠に仲良く空を堕ち続けていたに違いない。 偶然にも何かの物音で私は覚醒できた。命拾いした。 (……いえ、偶然、だったのかしら) 物音のした方向を見やると、そこには『傘』が床に転がっていた。壁に立てかけられたそれが、ズルリと倒れたんだろう。 (あれ……? あんな傘、私は紙から出した覚えないんだけど……) 私の支給品───『八雲紫の傘』。 ミステリアスな装飾を施した、けれども普通の傘。まさか傘に命を救われるなんて中々無い体験だけども。 八雲、紫さん……? 貴方が、助けてくれたの? 倒れた傘を、壊れ物でも扱うようにゆっくり持ち上げてみた。本当に至って変な所はない傘に見える。どこか守り神のような、神秘的な雰囲気だ。……気のせいかもしれない。 (八雲、さん。私、貴方と逢ってみたい。……助けて) ぎゅっと胸に抱いた傘へと、私は想いを寄せる。勇気だけでは、人は空を翔べない。この空を翔けるには、光が必要なんだ。 道を照らす黄金の光こそが、闇を祓う唯一の標。悔しいけど、それは私一人じゃ叶わない夢。 (助けて……助けてください……! お願い、誰か……) もう、限界が近いかもしれない。私も、蓮子も、このままだと完全に堕ちてしまう。 恐怖に負けちゃう……! DIOの手に、堕ちちゃう……! 「メリー……怖がらないで? ね、そんな傘なんか捨てちゃってさぁ────私と一緒になろ?」 いや……いや……助けて……! お願い…… 誰でもいい……私と、蓮子を……助けてください……! ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 【真昼】C-3 紅魔館 フランドール・スカーレットの部屋 【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】 [状態]:精神消耗、衣服の乱れ、『初めて』を奪われる [装備]:なし [道具]:八雲紫の傘@東方妖々夢、星熊杯@東方地霊殿、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。ツェペリさんの『勇気』と『可能性』を信じる生き方を受け継ぐ。 1:蓮子を見捨てない。 2:八雲紫に会いたい。 [備考] ※参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。 ※『境目』が存在するものに対して不安定ながら入り込むことができます。 その際、夢の世界で体験したことは全て現実の自分に返ってくるようです。 ※ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。 ※ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。 【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】 [状態]:健康、肉の芽の支配、衣服の乱れ、『初めて』を得た [装備]:アヌビス神@ジョジョ第3部、スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部 [道具]:針と糸@現地調達、基本支給品、食糧複数 [思考・状況] 基本行動方針:DIOの命令に従う。 1:メリーをこのまま閉じ込め、篭絡する。 [備考] ※参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。 ※ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。 ※「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」は会場内でも効果を発揮します。 ※アヌビス神の支配の上から、DIOの肉の芽の支配が上書きされています。 現在アヌビス神は『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』『銀の戦車の剣術』を『憶えて』います。 175:mother complex 投下順 177:かぜなきし 175:mother complex 時系列順 177:かぜなきし 138:侵略者DIO ディオ・ブランドー 185:魔館紅説法 138:侵略者DIO 宇佐見蓮子 185:魔館紅説法 138:侵略者DIO マエリベリー・ハーン 185:魔館紅説法