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冥界と現世の間にある、疑似東京。 もちろん、夜の更けぬ街も再現されている。 欲望が渦巻く世界があるのは、どの時空においても変わらないのだろう。 そんな、混沌より少し離れた人気のないビル。 そこでは、英霊と英霊がぶつかりあった後があった。 ◆ 「貴様…何を…」 「魔術師って金無いのね、まぁ、この宝石は売れそうだけど」 敗北した魔術師から金目の物を漁る女。 赤髪で、左目には眼帯を着けている。 「げろ…う…が…」 「お好きに行ってな、あたしは帰るから、いくよアサシン」 「…わかった」 女は自身のサーヴァントであるアサシンを連れ、去っていく。 手の甲についた武器を消失させて、消えていく。 ◆ 欲望渦巻く繁華街。 少女、結城奈緒とそのサーヴァント、アサシンは手慣れた手つきで進んでいく。 (まぁ、収穫は上々だね、アサシン) (まぁな…こちらとしても、貴様の生活が不安定になっては困るのでな) 敵主従の殲滅と金目のものの徴収。 それを繰り返す毎日。 ふと、大男に体があたった。 見るからに粗暴な金髪の外人。 「oh!嬢ちゃん、ぶつかっていてなんの謝罪も無しとは、日本人もすた…」 「アサシン」 その合図と同時に、男の腹より飛びててくるものがあった。 それは臓物…ではなく、金属で構成された物。 ナイフにフォーク、どれも鋭利な鉄や銀でできたもの。 「行くよ、アサシン、あたしはアイツラに復讐してやるんだ…この目の…敵を…!」 「…わかっている」 聖杯戦争とは別の争い、触の争い。 自業自得の傷の恨みを払さんと 左目を抑え、復讐を誓う。 しかし、横にいるアサシンからの評価は芳しくない。 (…口ではそう言っているが、ほんとは違うだろうに) アサシンは復讐者でもある、かつて不遇から抜けて出そうとした仲間の敵を討つために、自身のボスの寝首を狩りに行った。 (…貴様の本当の願いは復讐ではない…愛する者への情だ…) そう、アサシンはつぶやく彼女見ている。 愛する母の名をつぶやく彼女を。 (…まぁ、ここで俺が言っても、なんの特にはなりゃしない、ただ) 静かに霊体化をしながら思う。 (…呼ばれた以上、英霊の仕事も全うしてやる) アサシン、リゾット・ネェロ。 特殊な能力、スタンドを携え、この冥界下りの新たな参戦者となる。 【CLASS】アサシン 【真名】リゾット・ネェロ@ジョジョの奇妙な冒険 【ステータス】 筋力C 耐久C 敏捷C+ 魔力A 幸運D 宝具D 【属性】混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:B サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。 【保有スキル】 カリスマ:D 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。 カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。 直感:C 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。 未来予知を持つ敵に、優位に立つことができたことからこのスキルが付与された 反骨の相:B 一つの場所に留まらず、また、一つの主君を抱かぬ気性。 自らは王の器ではなく、また、自らの王を見つける事のできない放浪の星である。 同ランクの「カリスマ」を無効化する。 かつて、自身らの生活を守るために、ボスに逆らったことからこのスキルを得た。 【宝具】 『貴様の鉄分は、俺の武器だ(メタリカ)』 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:5m~10m 最大捕捉:1~ 【破壊力:C / スピード:C / 射程距離:C / 持続力:A / 精密動作性:C / 成長性:C】 群体形スタンド、特殊なタイプであり自身の中に入っている。 その能力は自分から磁力を抜糸、周りの鉄分を刃物に変え、敵に攻撃するというもの。 ある程度距離を詰める、敵に位置が発覚されやすいなどの弱点を持つも。 低い魔力消費で使用可能であり、アサシンの主武器にもなっている。 【weapon】 『貴様の鉄分は、俺の武器だ(メタリカ)』 【人物背景】 自身らの生活を守るため、組織にチーム丸ごと逆らった男。 敗退こそしたもの、その実力は本物であった 【サーヴァントとしての願い】 ボスへの復讐の舞台を作る 【マスターへの態度】 殺しを妨害しないなど、悪くはない。 ほんとの気持ちを教えてほしいが…嫌、サーヴァントの身が詮索することではないな 【マスター】結城奈緒@舞-HiME 【マスターとしての願い】 自分の目に手をかけた者への復讐…というのは建前、本当は母の回復 【能力・技能】 「HIME」 少女に与えられる特殊な能力。 武器型の装備エレメントと、自身の想い人を基に作られるチャイルド、その代償として、チャイルドが消滅すると、想い人も消滅する。 エレメントは手の甲を覆う、クロータイプの武器、腕の先から出るワイヤーは簡単に鉄骨を切り裂く チャイルドは蜘蛛型のジュリア、下腹部から剣が、胸部からは粘液を放つ。 【人物背景】 不良少女 自業自得の末、片目を失った少女 【方針】 優勝、ただそれだけ 【サーヴァントへの態度】 殺しもしてくれるし、強い優秀。 当分はこいつで十分。
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D.H.N俺 第6話「苦い休息」 シーンBGM http //www.youtube.com/watch?v=pD9YmhMDwKg feature=related 着任当時に着ていた青黒いロングコートを羽織って滑走路の先でごろりと寝転がっていた。 何するわけでもなく、タバコを軽くふかしているだけだ。 今日も快晴。 三日前のロマーニャに南下してきたネウロイの巣からまだ次の刺客は来ない。 その間にネウロイ襲来の予測を改訂し、予報がすでにでていた。 なぜか退屈に感じる、こういう平和が一番であるというのに。 俺「ふぅー……今日もたばこがうまい」 うまいと思われねばやってられない。 何かしらないが背後から視線を感じる、距離はわからない。 一体誰だ、こんな日につけ回すとは。 俺「くそっ、落ち着けない」 シャーリー「おれー。なにしてるんだ?」 俺「お、シャーリー。聞いてくれ、さっきからストーカーがいるんだ」 シャーリー「さっき中佐と少佐が俺のことを後ろで見張ってたぞ」 俺「あの二人か。ちょっと説教でもしないとな。よっと」 シャーリー「あ、待てよー。コーヒーいれてきたからもう少しゆっくりしようじゃないか」 俺「……それなら仕方ない、ありがたくいただこう」 タバコを地面に押し付け携帯灰皿に強引に押し入れる。 シャーリーはコーヒーが入ったカップを渡してきたあと俺の隣に何のためらいもなく座った。 軽く一口含んで飲み込む、心地の良い少々苦い味が口の中にひろがり口の渇きが潤ったので話しかけてみる。 俺「そういえば最近シャーリーと話す機会が多いよな」 シャーリー「そうだっけ?」 俺「いやまぁ気のせいかもしれんが……」 シャーリー「そうだと嬉しいもんだなー」 俺「ん?嬉しい?」 シャーリー「最初俺がここにはいったときはどうなるかと思ったし、私ですら仲良く出来るかわかんなかったからな」 俺「なんだ、そんなことか」 シャーリー「そんなことってなんだよー。俺は最初暗かったし……」 俺「こんな体になってから色々と経験してきたからな、もう慣れてるもんさ」 シャーリー「そうかぁ……」 俺「でもシャーリーが話し相手になってくれてよかったぜ。一人でもいるとだいぶ楽だな」 シャーリー「それはありがたいな。でもそれって私でよかったのか~?」 俺「もちろん。シャーリーのこと好きだしな」 シャーリー「え、えっと、何だ突然」 俺「いや、なんとなくな。シャーリーでよかったよ」 シャーリー「あ……ありがとぅ……」 俺「なんで赤くなってるんだ?」 シャーリー「な、なんでもない!あ、そういや今日は人が来るらしいぞ!」 俺「……人?」 シャーリー「私も詳しくは聞いてないんだ。……そういえば次の敵の来襲予報は三日後だっけ?」 俺「そうみたいだな。当たることに賭けるか」 時々外れる少々頼りない予報に賭けるというのは俺なりの皮肉だ。 カップを傾けてコーヒーを飲み干した後にシャーリーの顔をちらりと見る、何か落ち着かなさそうだ。 視線がかすかに泳いでいるし、指を何度も交錯させたりしているからだ。 俺「どうした?」 シャーリー「あ!いや、えっと……俺はその三日後の戦闘の翌日……その、空いてるか?」 俺「……その翌日に用事があるが、それを終わらせれば暇だ」 シャーリー「じゃあさ、一緒に買物にいかないか?バイクのある部品が買いたくてさ!」 俺「ああ、全然構わないが……朝のうちにブラッチャーノという街に寄っていってもいいか?」 シャーリー「もちろん。でも、何やるんだ?」 俺「その時に話すさ。そのあとはデートでもなんでもやってやるさ」 シャーリー「あははっ、デートか。楽しみにしとくよ」 俺「それじゃあそろそろ戻るか。暑いし」 シャーリー「そうだな!あたしはストライカーの整備があるからちょっと見ていくよ」 俺「じゃあ俺は談話室にでもいってるよ。それじゃあな」 シャーリー「うん、また後でな。ふっふっふふ~ん♪」タッタッタ 俺「……えらく上機嫌だな」 一方、ミーナと坂本は……壁にかくれて二人の動向を確認していた。 上官らしくはない行動を取りながらもミーナは続ける。 ミーナ「最近あの二人怪しいわね……ちょっと危険かもしれないわ」 坂本「……気のせいだろう」 ミーナ「いえ、これは……調査が必要よ」 坂本「むむっ……」 ミーナ「それと今日は誰がくるかは私いったかしら?」 坂本「ああ、あれだろう。確か―――」 ―談話室 シャーリーと色々と話した後、シャーリーは用事があるとのことなので別れた。 また建物に戻ってきて広間に入る。 並んだソファには宮藤とリーネ、リトヴャクとユーティライネンが座って雑談していたが、俺が入ると同時にユーティライネンが警戒し始めた。 俺は苦笑いしながら宮藤に視線で助けを求める。 宮藤「もうっ、エイラさん、俺さんをそんなににらんじゃだめですよ」 エイラ「こいつは男なんダゾー!」 俺「男だからどうだと言うんだ、まったく」 リーネ「俺さん、何か飲みますか?」 俺「ああ、ミルクティーをもらおう。で、なにを話していたんだ?」 サーニャ「ちょっと最近のペリーヌさんについて話していたんです」 俺「クロステルマンのことを?何故に?」 宮藤「ペリーヌさんの故郷はガリアなんです。ですからガリア解放後に支援をしていて……」 リーネ「あまり手持ちのお金がないので何も買えないようなので皆でなにかプレゼントでもしようかなーと思って」 俺「ほう、そりゃいいな。花でもプレゼントするのか?」 サーニャ「それでもいいんですけど……私たちはあまりそういう知識がなくて何がいいのか……」 エイラ「ツンツンメガネには何でもいいってー」 俺「なんでも喜んでくれると思うが……。他のものだと服とかか?」 宮藤「そうなりますね。俺さん、何かいい案ないですか?」 俺「ないな。そこまでクロステルマンと仲がいいわけでもない。ただ……」 リーネ「何かあるんですか?」 俺「写真たてでも買って……写真でも撮ればいいんじゃないか?」 エイラ「あいつのかー?」 俺「いやみんなで写真撮って飾ればいい絵になるだろう。それか花の苗とか種だな、さっき言った通り」 サーニャ「それもいいですね。喜んでくれそうです」 エイラ「じゃあこんど買いに行くか?」 宮藤「あ、それいいです!」 リーネ「それだとサーニャちゃんがいけないんじゃないですか?」 サーニャ「えっと、夜間哨戒がない日なら……そんな日ないけれど」 エイラ「それなんだよなー。それが問題なんだヨ」 俺「最近ネウロイの出現頻度も高まって夜間哨戒の日が増えてるから難しいな……」 宮藤「でもサーニャちゃん以外夜間専門のウィッチはいないです、俺さん」 俺「ふむ……短期間なら代わってやってもいいんだが……それでどうだ?」 リーネ「俺さんって夜間もいけるんですか!?」 俺「経験は何度もある。だがスーパーエース級の働きは期待するなよ?」 サーニャ「でも、悪いですし……それに私の仕事が」 俺「いいって。夜間専従の人は他の隊員と仲良くなりにくい。たまには皆と交流してこい」 サーニャ「本当に、いいんですか?」オズオズ 俺「いってこい。リトヴャクも息抜きしろ。楽しんでこい!」 サーニャ「ありがとうございます……俺さん」 宮藤「やったね、サーニャちゃん!今度行こうね」 俺「とりあえずヴィルケと話し合わないとな」 エイラ「お、おれ。俺ってばいいヤツだったんダナ……」 俺「リトヴャクへの配慮だ。エイラも一緒についていくんだな」 エイラ「もちろん!サーニャ、一緒に行こうな!」 サーニャ「うん……ありがとうエイラ」 エイラ「うぉぉぉおおお!」 リーネ「それじゃあどこに行きますか?!」 俺「おいおい、気が早いな。まだリトヴャクのかわりができると決まってはいないだろう」 リーネ「あ、すみません……」 サーニャ「ふふっ。あ、俺さん……私のことはサーニャでいいです……皆そう呼んでますから」 俺「そうか?まぁそれならいいか。じゃあちょっとヴィルケに頼んでくる」 エイラ「感謝するぞ、俺。私のこともエイラでいいからな!」 俺「おう。まぁはしゃぎすぎないようにな」 なんとなくで引き受けてしまったがよかったのだろうか。 まぁミーナと坂本にちゃんと話せば認めてくれるだろうし、理解してくれるだろう。 でも1つ問題があるな。 夜間哨戒に一人で出るのはさすがに危険だと言われそうであるから、もう一人誰かに頼まないといけないな。 短い期間だからそれぐらいならやってくれるやつも多そうだが……。 ミーナ、坂本は無理……ハルトマン、起きてられない……ペリーヌ、絶対無理だ……ルッキーニ、起きてない。 ってことは、頼んで聞いてくれそうなのは、シャーリーかバルクホルンだけか。 どっちかが引き受けてくれるといいんだが……。 ―執務室 コンコン ミーナ「どうぞ。入っていいわよ」 俺「失礼。ちょっと頼みごとがあってきたんだが、今、時間は空いてるか?」 ミーナ「ええ、まぁ少しなら全然大丈夫よ。どうしたの?」 俺「短期間だけ夜間哨戒をサーニャと変わって欲しい。それだけだ」 ミーナ「突然ね、一体どういう事情かしら?」 俺「サーニャにも休みを与えたい。俺はこの前ロマーニャに言ったから十分だ」 ミーナ「でも夜間戦闘のエキスパートはサーニャさんしかいないのだけれど……」 俺「俺も夜間戦闘は幾度となく経験した。ネウロイ化もあるし、敵に引けはとらない」 ミーナ「でも夜間にネウロイ化して飛んでいたら……他のウィッチに狙われるわよ?」 俺「……索敵にひっかかるということか」 ミーナ「そうよ。それに夜間に俺さんだけでは難しいわ」 俺「ならば人間の姿のままで大丈夫だ。ネウロイ化しなくても判別はつくしな」 ミーナ「どうやって判別を?」 俺「本能、というやつか。俺のコアが活性化状態でなくとも近くに同種のものが存在すればわかるんだ」 ミーナ「つまりコアとコアが共鳴……というかんじ?」 俺「離れているが、そういう感じでもかまわない」 ミーナ「本当かしら?」 俺「そこらへんは信じてくれても構わない。それともう一人、夜間哨戒任務に連れていきたい」 ミーナ「それには一体誰を推薦するつもり?」 俺「シャーリーかバルクホルンを頼みたい。何日かだけだ」 ミーナ「うーん、トゥルー……バルクホルン大尉は困るわ。こちらの火力が足りなくなる」 俺「なら、シャーリーか」 ミーナ「シャーリーさんがいないとルッキーニさんがちょっとね……」 俺「ふむ……仕方ない。それなら俺は日中も戦闘に参加しよう。それなら問題あるまい?」 ミーナ「それだと俺さんの体が心配だわ。それに戦闘で集中していなくても困るし」 俺「問題はない。もともとコアのおかげで何日か寝なくても活動は可能だ。ただ……」 ミーナ「ただ?」 俺「恐ろしく腹が空く。食事を多めにしてほしい」 ミーナ「それぐらいなら……いいけど。本当に大丈夫なの?」 俺「ああ、大丈夫だ。……随分と疑ってるが、もしかしてヴィルケは俺が過信してると思っているのか?」 ミーナ「少し、ね。それにあなたのこともあまり知らないし心配なのは確かよ」 俺「妙に優しいな。心配しなくても、俺は過信なんかしない」 ミーナ「この部隊にあなたが入ったからには私に監督責任があるわ。無茶はしないでちょうだい」 俺「申し受けた。何かあったらヴィルケの言うことを何でも聞こう」 ミーナ「あら、それならこの膨大な書類を一人で整理してもらうわ」 俺「……何かあったらな」 ミーナ「ふふ、それじゃあわかったわ。サーニャさんの申し出もあるだろうし、それを聞いて考えるわ」 俺「感謝する、ヴィルケ!」 ミーナ「あ、それと私のことはミーナと呼んでも構わないわ。あなたは軍属じゃないしからそこまで気にしなくてもいいわ」 俺「ほう、じゃあミーナ、頼んだ。融通がきく上官で助かったよ」 ミーナ「ふふっ、仲間思いの人で助かるわ」 俺「……まさか。きまぐれさ」 まったく、バカな話だ。 ミーナや坂本が面倒見切れない部分を勝手に俺が背負っているのだから、バカでしかない。 ちょっと気恥ずかしい雰囲気の中で、俺はミーナの机の側まで歩き卓上を見る。 俺「こんな膨大な書類を処理してるなんてな。有能だ」パサッ ミーナ「あら、そんなことないわ。……それより話は変わるけどシャーリーさんとはどうなのかしら?」 俺「どうなのって……別になんともないが。普通に親しいだけだ」 ミーナ「私的にはそうは思えないの。一度注意してると思うけど……」 俺「わかっているって。注意するならシャーリーにするんだな。……それじゃ俺はこれでおいとまするか」 ミーナ「俺さん、少し待って!」 俺「……なんだ?」 ミーナ「えっと、言いにくいことなんだけど……」 俺「シャーリーとあまり接触しすぎるな、か?」 ミーナ「……そうよ。ごめんなさい、何度も言って」 俺「いいさ、別に。だが俺は至って自然に接しているつもりだ。それでもシャーリーが接触してくるなら俺は拒まない」 ミーナ「それは……」 俺「逆に聞きたいが、なぜそこまで血眼になって注意しているんだ?」 シーンBGM http //www.youtube.com/watch?v=Cq7WptSK-BU feature=related 纏う雰囲気がぐらりと傾くように変わったミーナは、言葉を一回つまらせて飲み込む。 だが言葉を発しようとする、自分の中の迷いと正義とともに。 時間にして30秒ほどだろうか、日が雲に隠れていく部屋の中で、俺は黙ってミーナの次の言葉を待つ。 ミーナ「あの子たちに……私と同じ思いをしてほしくないの。大切な人がいなくなるなんてこと……」 俺(私と、同じ思い?) ミーナ「あなたならわかるでしょう?突然大切な人が隣にいなくなる寂しさと怖さが」 俺「……なんのことだ?」 ミーナ「あなたは、各地を転々として戦ったはずよ。その中で親しくなった人もいたでしょう?得たものもあるけれど……失った時も、あるでしょう?」 俺「……さぁ、どうだったかな」 ミーナ「あなたのことを探ったわ。あなたが軍人だった時の最後の戦闘記録を」カサッ 俺「これは……俺の記録か。ということは、知ったのか、全部」 ミーナ「全部ではないけど……俺さんの最後の戦闘記録は、あなたのカールスラントでの故郷で終わっている。その故郷は―――」 俺「―――壊滅した」 ミーナ「……え?で、でもデータには死亡者は数名だって……記載されているわ」 俺「くくっ、見栄だよ、上層部のな。俺が死んだと同時に街の人を守ったという事実を創り上げたのさ」 ミーナ「そんな……」 俺「ありえないだろ?馬鹿げたつくり話さ」 実にふざけた嘘の事実だ。 あの時の上層部は民衆の支持を得るのにとにかく必死だった、口から涎が垂れるほどに欲しがっていたのだ。 そこでちょうど邪魔だった俺の戦死報告が入る―――その事実が好都合だったのだ。 俺「実際は……ネウロイの攻撃によって何もかも消えた。俺と、俺の街、家族、友人たちと共にな」 ミーナ「そんな隠蔽が……。でも、だからこそ、いろんな場所で大切なものを失ったあなたなら……失う怖さはわかるでしょう?」 俺「それならつながりがなければいいってか?極論だな」 ミーナ「あの子たちには、あんな思いさせたくないの……!」 俺「ミーナにどんなことがあったかは知らない。だが人が選択した道の邪魔はやめておけ」 ミーナ「邪魔なんて……していないわ」 俺「俺はこの道を選んだ。他の隊員も様々な道を選ぶ。その道の前に立ちふさがるな。それが、どんなことだろうと」 ミーナ「でも……このままだと、シャーリーさんが同じ目に合うかもしれないのよ?」 俺「俺は、いつかあいつにすべて話す。それでも俺を選んでくれるなら俺は―――その業を背負おう」 ミーナ「……自重する気はないのね?」 俺「無論。ミーナ、あの子たちはミーナじゃない。それだけはわかってやってくれ」 ミーナ「……私はあの子たちの幸せを、選ぶわ」 俺「そうか、なら、それでいいさ。……しかし止めるならシャーリーに注意することだ。失礼する」 くるりと背を向けて去ろうとする俺の背中にミーナが言葉を投げ捨てる。 あなたは私と違うのね、と。 それと同時にカチャリと後ろで金属の音がなる、聞きなれた銃器物の音。 俺「撃ちたかったら撃て。だが、何も解決しないぞ」 ミーナ「約束して」 俺「なんだ?」 ミーナ「あの子たちを不幸にしないと」 俺「……」 ミーナ「私は本気よ。今ここであなたの心臓を撃つこともできる」 俺「……いっそ根源を絶つか?」 ミーナ「答えて」 俺「俺は―――」 本気のミーナに俺はどんな言葉を紡ごうとしたのだろう。 この先の誓いは言うこともなく、発せられることもなく、生まれることもなく打ち切られた。 沈黙を大きく引き裂き、舌打ちしたくなるほどうるさく唐突に開かれた執務室の扉に。 厳粛な雰囲気の中、テンション高め・キー少々高めの声が執務室に響き渡る。 ドガッシャァァァァァァァン……ギシギシギシ…… その発生から数秒後、どかどかと白衣の男が新しいスニーカーを履いて勢い良く入り込んできた。 後ろでツインテールに髪を結んだバルクホルンがそいつを追いかけてくる。 「やぁ!俺くん。元気かい?僕はね、最近風邪が治って元気になったよ」 バルクホルン「おい!失礼だろう!」 「まぁいいじゃないか。ツインテの君」ポンポン バルクホルン「貴様!いいかげん無礼だ!ええい!触るな!」ベシッ 「あてて……ん?あれ?大丈夫かい、俺くん。お取り込み中だったかい?」 俺「……ある意味グッドタイミングだが、なぜお前がここに?」 「いや何、僕の大切な研究の結晶を見に来たんだよ。調子はどうだい?」 俺「ミーナが呼んだのか?」 ミーナ「……ええ、色々と俺さんも大変だと思ったから」 「無視かい、俺君。まぁいいけど」 俺「ということは……」 バルクホルン「ああ、俺の体を調整するために今日からここにいてもらうことになる」 「そういうことだよ。よろしくね、俺くん、ミーナ君」 ミーナ「長旅ご苦労様です。ようこそお越しくださいました」 ……何か今日は目まぐるしい。 久しぶりに面倒くさくなって、ため息を大きく付いた。 俺のことを創った、生みの親というべき人間。 いつもどおりの通気性のよさそうなダークブラウンのズボンに、黒色のカッターシャツ。 そしてトレードマークのような白衣を羽織った姿。 それを一度手で大きく払ってなびかせる。 俺「……まったく」 研究者「どうやら、僕が言うまでもなく楽しんでいるようだね」 俺「貴様の気遣い通り、楽しんでいるさ」 研究者「色々とめんどそうなことになってたけどね?」ボソッ 俺「ふん、うるさい」 研究者「君の不器用が祟ったんだろうから何も言わないけど」 俺「……バルクホルンやミーナも知っていると思うが、一度俺から紹介しよう」 研究者「リベリオン国防高等研究計画局先進技術研究室、所属。天才にして、狂気のマッドサイエンティスト!そして、この世界の支配構造を―――俺「それ 以上はいけない」 研究者「邪魔をしてくれるな、俺くん」 俺「……俺を創った天才だ。だが人格に少々問題がある、気をつけるように伝えておいてくれ」 研究者「まぁよろしく頼むよ。機械や道具はすでにここに輸送させてあるから今日から調整にはいるよ」 バルクホルン「それはどのくらいかかりますか?」 研究者「まぁ半日ほどかな。色々とあるし」 俺「今日はネウロイも来ないしちょうどいいだろう」 ミーナ「わかったわ。でもどこでやるのかしら?建物内は無理ですが……」 研究者「いや外でテント張ってやるから心配無用だよ、電気も引くし。さて、早速俺君を借りていくよ」グイグイ 俺「……そういうことだ。さて、続きは次のその機会に持ち越しだ、ミーナ」 ミーナ「……わかったわ」 バルクホルン「?」 俺「……俺の最後の戦闘記録については、ある男がよく知っている。ネウロイ研究をしていた元空軍大将だ」ボソッ ミーナ「それって……まさか……」 ガチャ……バタン 研究者にせかされるように部屋を出る。 俺はヤツに近寄り、少しだけ疲れた表情と共に、感謝するとだけつぶやいた。 それを聞いた研究者は言い飽きたように、大変そうだねと返す。 研究者「さて、俺君。なんであの時調子を答えなかったのかい?」 俺「……少々調子がおかしい部分がある」 研究者「どうせ、君のことだ。"大技"ばかり使ってたんじゃないかい?ここのウィッチたちに負担がいかないようにさ」 俺「……」 研究者「君の身体はネウロイ化に対応しているとはいえ、所詮は人間ベース。限界があるんだよ」 そう、俺の身体は結局のところ人間の身体をベースにし強化、ネウロイ化に耐えられる強化人体を創り上げただけにすぎない。 そこに大型ネウロイさえも落とせる"大技"を使用する。 誰もが想像できる通り、それだけの代物を使うのであれば負担はつきものだ。 つまり……各部ネウロイ装甲で高エネルギーを使用・解放するたびに、俺の身体はボロボロになっていくということ。 ただし、普通のビームや、多少の近接戦なら何も問題もなく、これだけでも十分に大型ネウロイと渡り合えるのだが。 俺「知っているさ。それでも、俺はこれ以上誰も死なせやしない」 研究者「誰も死なせたくないのに、自分は死ぬつもりかい?」 俺「そうだ」 研究者「その矛盾は、いつか君を殺すかもよ?……さて、僕としてはまだ生きてもらわないと困るから」 俺「今すぐ調整に入るぞ。そして結果を残さないとな」 研究者「成果を残せば、ネウロイ化人間の量産が可能になるね~」 俺「ああ……その要が俺だからな。やらないと」 研究者「そして……僕がここに来たもう一つの理由もわかるかい?」 俺「任務……か。もしかして解析もろもろが済んだか?」 研究者「厄介だったけどね。色々とマロニーの研究記録を漁ってなんとか解析を済ませたよ」 俺「ということは、いつぞやの人型ネウロイは……?」 研究者「あれは純粋なネウロイだね、それも単純に人間の真似をしたものだ」 俺「501の報告と合わせると本当にネウロイは人の真似をしていたことになるな……不気味だが」 研究者「そして、巣が変わったけれど、ネウロイの興味対象は依然として人にあるはずだ」 俺「……つまり、人の真似をすることも。正確には、人型ネウロイの存在が……推測されるということか?」 研究者「向こうにもデータあるだろうし。まぁ確証はないけれど、たぶんね」 俺「そいつが……俺の撃破対象……俺の任務、か」 研究者「君の……いや僕達の真の目的は―――」 俺「わかっているさ。だから俺は……今、ここにいる」 研究者が俺の肩を軽くポンと叩く、励ましのつもりだろうか。 そんなことしなくても俺はやるつもりだ、何もかも、未来のために。 俺の任務は―――新しいネウロイの巣に予測されている人型ネウロイを完全に撃破し、さらに巣のコアを破壊することだ。 そして、最後に得たい"勲章"は『ネウロイ強化人間の増産』。 以前に人型ネウロイの報告があったが、恐らくその個体に近いものを大幅に進化させた人型が存在すると、と研究者は言う。 人型は巣に存在するネウロイの上位種であろう。 そしてそれを破壊したときにこそ……ネウロイの巣のコアを本格的に叩く。 それがいつかあるであろうネウロイの巣への全面攻撃作戦……最後の戦いだ。 その戦いが終わった時、俺は果たして―――。 何を思い、消えて行くのだろうか。
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【ミリマス】風花「甘くて苦いチョコレート」 執筆開始日時 2016/08/01 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470050136/ 概要 自宅の部屋の隅に座り込む私は、電気もつけていない部屋の中でチョコレートを口へと運びます。あの人の好きな食べ物が、いつの間にか私の好物になっていました。いつもなら私に元気を与えてくれるとろけるような甘さとほんのりとした苦さも、今日だけは私を癒してくれません。 …あんなこと言うつもりじゃなかったのに…… タグ ^豊川風花 ^横山奈緒 ^秋月律子 まとめサイト アイマスSSまとめ アイマスSSまとめサイト456P あやめ2nd アムネジアss大全 えすえすゲー速報 えすえすりんくす えすえすMode エレファント速報 おかしくねーしSSまとめ だる速 ひとよにちゃんねる プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! ポチッとSS!! SSまとめ みりえす!-ミリマスSSまとめブログ- もっと読みたい! SS古今東西 SSでレッツゴー SSびより SSまとめプラス SSマンション SS 森きのこ! wiki内他頁検索用 Pドル しんみり ミリオンライブ 作者◆CS7uVfQgX.氏 作者◆mLDidKKbwk氏 恋愛 豊川風花
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どれだけ前日の部活で疲れていても、 土曜日の朝は絶対に早く目を覚ます自信があった。 隣町のケーキ屋「メイプル」で一日に30個限定でしか作られない 特製ショートケーキを買うためなら、 筋肉痛の体で10キロ自転車をこぐことも 開店1時間前から行列に並ぶことも全然苦にはならない。 それだけメイプルの特製ショートケーキは、反則的においしいかった。 (でも……今日は、並ぶ人がいきなり増えたような……) 最前列にいる金髪の不良の人と目が会いそうになって顔を背け、 こそこそと行列の最後尾に並ぶ。 あの不良の人は常連さんで何度か顔を見たことがあるが、 彼以外で列の先端にいる人はほとんど知らない人ばかりだった。 口コミで有名になってきているのだろうか? だとしたら朝起きる時間をもっと早くしなくちゃいけないかな。 ため息を吐いていると5人ほど先に並んでいた 見知った顔の女性が話しかけてきた。 「小川さん、危なかったですね~。ちょうどあなたの場所が30人目ですよ」 「あ、安藤さん、おはようございます」 眠たそうな目を擦る彼女の名前は安藤優梨。 まだこのお店の行列がこんなに長くなかった時に知り合った、剣道の先輩だ。 その日は今日のように午後から部活があって、 ケーキを買った後家に帰って着替える暇がなかったので 制服で竹刀を持ったまま行列に並んでいたら、 安藤さんに声をかけられた。 高校と学年は違っても同じ部活をしていてケーキ好き (正確には安藤さんはスイーツ全般が好きらしい) という共通点のおかげですぐに意気投合し、 今では週に何度かメールをやり取りするぐらいに親しくなっていた。 「どうも全国ネットのテレビ番組でここのことが紹介されたみたいで、 今日は特に行列が長くなったみたいです。危なかったですね~」 あたしの後ろに店員さんが『本日特製ショートケーキ売り切れ』 と書かれた立て札を置くのを眺めながら、 ちょっぴり顔を斜めにした安藤さんが欠伸をした。 オレンジのノースリーブセーターの端から伸びた二の腕や 若草色のプリーツスカートの下から除く白く細い足には スポーツをする人らしく均整の取れた筋肉がついていて、 露出は抑えられているのにすごく健康的でどこか大人びた色っぽさを かもし出している。 そんな安藤さんが成明の制服を見てますます首を斜めにかしげる。 「おや、今日も午後から部活ですか?」 「ええ、多分走り込みをさせられるかと」 「へー、それはご苦労様ですね~。 ここへの往復だけで結構な運動でしょうに」 「でも、その分運動後ケーキをおいしく食べれるんです」 「ふふふ……」 にか~~と、彼女が笑った。大きな目と端正な顔で笑いかけられると、 同性なのに思わずどきりとしてしまう。 「あの……何かおかしなこと言いました?」 「いえいえ……ただ、少し前まで小川さんが部活のことを喋る時は いつも愚痴か悩み事ばかりだったので…… 随分楽しそうに部活のことを話すようになったなあと」 「ああ、……確かにそうでしたね」 部活は苦行以外の何物でもなかった。 あの時彼女と出会うまでは。 「今も、好きかどうかはわかりませんけど。 でも、部活をするうえでの目標ができたんです」 「それはそれは。いいことだと思いますよ」 それからは部活の先輩のことや、好きな音楽のことや、 学校で起きた面白いことなど他愛のない話をして時間をつぶした。 いつものように楽しい時間が過ぎ、 いつものようにおいしいケーキを買えるはずだった。 あの時事件が起きなければ。 「それでそのなくなったメガネがどこにあったかというと…… なんだか前がうるさいですね~」 おしゃべりをやめ前を見ると、列の最前列で あの不良の人とどこからか現れた中年の女の人が何か言い争いをしていた。 「……どこに目をつけてるの?」 「……だから、こんなものゴミと間違えるだろ?」 10メートル以上離れた場所まで聞こえる争い合う声は、 二人の興奮に比例してだんだんと大きくなっていった。 「朝っぱらから元気ですね~。うざいぐらいに」 「安藤さん、聞こえちゃいますよ!」 慌てて安藤さんの口を閉じさせようとした瞬間、 いきなり不良の人がこちらを指差した。 「あ、あの、ごめんなさい」 その剣幕に気圧されて何が起きているのかも分からず小さな声で謝ったが、 彼は大声で女の人にまくしたてた。 「あの子がかわいそうだろうが!」 それが、彼――清村さんと始めて言葉を交わした瞬間だった。 「そんなこと言われてもあの子が並ぶより先に 私がここに荷物を置くのが早かったんだから あの子がケーキを買えなくなるのは当たり前でしょう」 「だからさあ、めちゃくちゃだろう。荷物置いてたって こんなビニール袋ひとつ置いてただけじゃ誰も気づかねーっての」 不良の人が指差すアスファルトの上を見ると、 拳骨サイズのコンビニ袋がちょこんと置いてあった。 ぱっと見ゴミだと思ってもおかしくない大きさだ。 「どうやらあのおばさん、開店まで列に並ぶのがめんどくさくて 袋ひとつおいてどっかに行ってたみたいですね。非常識な」 安藤さんがやれやれとため息を吐く。 「だいたいなあ、一度トイレに行くぐらいならすぐ戻ってこれるだろ? 俺が見てた限りあんたは2時間近く列に並んでなくて、 それでいまさら列に堂々と割り込もうなんざちょっと常識がなさすぎだろう」 女の人は不良のお兄さんを馬鹿にするような目で見上げる。 「あなたのようにふざけた髪の色をした学生に常識をどうこう言われたくはないわ」 「な……俺の髪の色はかんけーねーだろ!」 不良のお兄さんの顔色が見る見る真っ赤になる。 しかし女性は全然ひるまず、大きな鼻の穴をふんと鳴らした。 「大体あの後ろの女の子も……なんだかねぇ、こんな朝早くから学生服で ケーキなんか買いに来て。学校に行く前からこんなとこで油売ってるなんて どうせろくでもない学校のろくでもない子なんでしょ。 全くうちのレイミちゃんの爪の垢でも飲ませてあげたいわ」 (なに言い争ってるんだろう) (なんかあの女の子が悪いみたいだ) (いや、あのおばさんが無茶言ってるだけだろ) (どっちでもいいよ) (もう開店時間過ぎてるぞ) (店員も困惑してるな。さっきおばさんが店員に「整理券配らない店も悪い」って文句言ってたぞ) (早くどっちか折れろよ) といったうんざりするような口調のヒソヒソ声とともに、 列に並んでいた人たちの視線が私に集まるのを感じた。 同時に、私の顔の温度が上がる。 「なんだか、むかつきますねー。……小川さん?」 私のせいで、皆がケーキを買えない。 「あの、安藤さん。私、帰ります」 「小川さんは、悪くないですよ?」 でも。 私がいなくなれば、この騒動も落ち着く。 私は、力なく笑う。 「あの、学校に持っていくもの忘れましたから。 だから、帰らないと」 まるで言い訳するように喋ると、私は振り向いて駐輪場へ向かって駆け出した。 背後から聞こえる不良のお兄さんの叫び声を振り切るようにして。 私はいつだって言いたいことが言えずしたいことができない子だった。 「運動部になんか入りたくない」と言えず流されるまま剣道部に入り、 友達に嫌われたくないから厳しい剣道部を辞められず、 そしてその友達に裏切られた時も何も言い返すことができなかった。 ――少しでも剣道を続ければ、私は変わることができるかもしれない―― 室江高校との練習試合でタマさんに会って、 少しでも彼女に近づきたくて厳しい練習を続けてきて。 あんなふうに強くなれなくても、何も言えなくて何もできない私より、 少しでも強くかっこよくなれるかもって思った。 (でも、結局私は――) 何も変わっていない。 何も変われない。 自転車のぺダルがいつもより重い。 ろくに汗をかいていないのに口の中がしょっぱい。 いつもなら一息で駆け上がれる傾斜20度の坂道がまるで壁のようだ。 坂の途中でふらふらとアスファルトへ足をつけた瞬間、大きな手が私の腕を掴んだ。 びっくりして振り向いた私の目の前にいたのは、さっきの不良のお兄さんだった。 顔がさらに真っ赤になって全身汗だくで、私の物よりふた周りは大きい自転車にまたがって、 彼はぎろりとこちらを睨んだ。 「へー、ふへぇー、よ、ようやく捕まえ、ぐふぇっ、ぐへっ」 咳き込みながら何事か喋っている。よく聞き取れないけど。 どうやらかなりの全力疾走で自転車をこいできたみたいだ。 「あ……あの…………」 わけがわからなくて言葉の出てこない私の腕を掴んだまま、 彼は私に自転車を降りるよう促した。 そのまま私は彼に半ば強引に引っ張られて、近くの公園のベンチに腰を下ろしていた。 30センチも背の高いよく知らない男の人に連れて行かれて 悲鳴ひとつ上げなかったのは、今思えば自分でもかなり危なっかしいことだと思う。 でも、昼の明るい時間と「メイプル」での彼の行動が、 私の中の彼に対する恐怖心を少なからず鈍らせていたのかもしれない。 それとも彼は私に理由ない暴力を振るう人ではないと、 あの時本能で悟っていたのだろうか。 「ほら、これ」 お兄さんの差し出したケーキの箱に、私は目を丸くする。 「あの……」 「食えよ」 箱をがさがさ開けながら、どこから取り出したのか ナイフとフォークを差し出しながらお兄さんは続ける。 「え、そんな、そんなの貰えません!」 「駄目だ。むしろ食わなきゃいけないんだよ」 「え……?」 「あのなあ、この特性ショートケーキはなぁ、 ちゃんと価値のわかる人間か、 それなりに対価を払った人間が食わなきゃ駄目なんだよ。 一流ホテル御用達メーカーの超高級クリーム。 フランスの本場レストランで修行したパティシエが作った最高のスポンジ。 有機栽培で一つ一つ丹念に作られたイチゴ」 なんか説明しているお兄さんの目がきらきらと輝いてきた。 よっぽど好きなんだな、特性ショートケーキ。 「とにかくだ、そーいうもんはちゃんと甘い物好きで 毎週買いに来る人間こそが食うべきだ。食えるべきなんだ。 それをあのばばぁテレビ見て来たんだろーが とにかくいちゃもんつけて俺の髪を馬鹿にしたり おとなしい子供をろくでもないとか言ったりふがあああぁぁぁぁ」 「あ、あの、落ち着いて、ふむぅ」 いきなり口の中にケーキの切れ端を突っ込まれて、私は目を丸くした。 だけどそれは一瞬で、私の口内に広がる甘美で芳醇なケーキの味に、 今までの態度を翻し私はゆっくりとそれを咀嚼する。 ああ、美味しい――――。 「な、うまいだろ」 私の口の中にフォークとケーキを突っ込みながら、お兄さんが笑いかける。 この味には、逆らえない。逆らいようがない。 それだけメイプルの特製ショートケーキは、反則的においしいかった。 「だから、遠慮すんなよ」 でも今日の特製ショートケーキは、いつものより もっともっと美味しい気がするのは、私の気のせいだろうか? 「中学生は高校生の言うことを聞いとくもん」 思わず私は口の中のショートケーキを噴きだしてお兄さんのせりふを止めてしまった。 「……っ、あの、よく間違われますけど、私は高校生で……」 目の前で私の噴きだしたケーキまみれになったお兄さんの顔を見て、 私の頭はお兄さんの顔より真っ白になった。 おいしいケーキと苦い恋-2
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2022年4月11日 出題者:りこまま タイトル:「このミスとっても苦いから」 【問題】 男は喜んだのもつかの間、天を仰ぎ、 「終わった…」と呟き涙を流した。 男に何が起こったというのだろう。 【解説】 + ... 「『この論文で得られた知見が未来の教育に活かされれば幸いである。』…っと。やった…!」 男はようやく30000字に及ぶ卒論を書き上げた。 「終わった…これで卒業できる……」 PCにかじりつきで目が疲れた男は目薬をさした。 ※タイトル 苦いから→二階から→目薬 配信日に戻る 前の問題 次の問題
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マサオ、ヴィータと合流し、野原しんのすけを探すことにした立香達は、元々東に進んでいた自分達と、北に進んでいたヴィータ達の間を取り、北東へ進むことにした。 結果、進路を北東にあるH-6 リテイル・ローを目的地とし、彼女達はバギーを走らせる。 余談だが、彼女達が乗るバギー♯9は、本来五人も乗れるほど広い車ではない。 だが五人中二人が子供なので(正確に言うと、一人は子供体系なだけだが)、後ろに少々狭いが三人乗ってもらうことで解決した。 ちなみに内訳は、運転席に立香。助手席にオグリキャップ。そして後ろに運転席側から足柄、マサオ、ヴィータの三人である。 戦闘力のある二人が窓側に座り、有事の際に対処すると同時に真ん中にマサオを置くことで、彼を脅威から守るための席順だ。 だがバギー#9の後部座席に三人が座るには、少々狭かった。 というより、足柄がスペースを取っていた。おかげでマサオは座席ではなく足元に縮こまり、ヴィータは席にこそ座っているものの艦装に圧迫されている。 これは足柄が太いということではなく、彼女の装備が問題だ。 足柄には、彼女の艦装が支給され、装備している。 その艦装は、彼女の左右に主砲を装備し、足には魚雷を装着しているのだ。 戦力として見るなら間違いなく強力だが、端的に言って、場所を食う。 「せめぇよ」 なのでヴィータは不満気に足柄を睨み、マサオも言葉には出さないが少々苦しい。 ヴィータはデバイスを携帯用に戻し、うさぎのぬいぐるみもしまって、車に乗る際にスペースを取らないようにしたのでなおさらだ。 「ご、ごめんね。今しまうから」 そう言って足柄はマサオ側の艦装をしまう。 これで少しスペースができたので、マサオとヴィータは一息ついた。 そこから話は野原しんのすけについてとなる。 探すとなった以上、やはり捜索対象についてよく知ろうとするのは当然の流れだった。 「それでマサオ君、しんのすけ君ってどんな子なのかしら?」 「そういや、あたしもその辺のことは聞いてねえな」 足柄の質問に、ヴィータが乗っかる。 しかし、マサオとしてはこの漠然とした質問に少々困った。 どんな子と聞かれても、しんのすけという少年は少々特徴が多すぎる。 なのでどう答えようかとしどろもどろになっていたが、ここで立香が助け舟を出した。 「足柄さん。それじゃ答えにくいですよ。 マサオ君。しんのすけ君の好きなものって分かるかな?」 「好きなもの? えっと、それならチョコビとアクション仮面と――」 立香の質問に、今度は淀みつつも答えるマサオ。 チョコビやアクション仮面が何か分からなかったものの、聞けばお菓子だったりヒーローものの特撮番組だったりと、五歳児の趣味と考えれば普通だ。 しかし最後に出てきたものに一人を除く女性陣は驚愕する。 「あ、あとキレイなお姉さん!」 「「「え?」」」 マサオの口から出た五歳児とは思えないワードに、マサオとオグリキャップを除く一同の声が一つになる。 ちなみにオグリキャップは、いきなりハモる三人を見て頭に?マークを浮かべていた。 困惑を抑えきれない立香は問う。 「お、お姉さんって何歳くらいの?」 「確か、前に最低でも女子大生って言ってたような……」 「うわぁ、話が合いそうなサーヴァント多そう……」 「どんな五歳児だよ」 どこか呆れ気味な立香と、思わずツッコミを入れるヴィータ。 ちなみに、彼女の周りにいる九歳児も大概年齢離れしているのだが、そんなツッコミを入れてくれそうな存在は、この殺し合いにはいなかった。 それはそれとして、しんのすけについてこれ以上聞きようがないと足柄達は判断し、話は彼の父親ある野原ひろしについて移った。 「野原ひろしがしんのすけ君のお父さんなのは聞いたけど、じゃあこのロボひろしってのは何かしら?」 「えっと、信じてもらえるかな……」 「いいから言ってみろよ」 言い淀むマサオに対し、発言をせかすヴィータ。 しかし、彼の口から飛び出た台詞は、一同を沈黙に追い込むに十分な衝撃を持つものだった。 「実は、前にしんちゃんのおじさんがロボットになったことがあって」 「「「「 」」」」 マサオの発言に声も出ない立香達。 しかし、そこから一番最初に立ち直り、質問をしたのは意外なことにオグリキャップだった。 「友達の父親がロボに、なったのか?」 「う、うん……」 「なぜだ?」 「さぁ……? それに、ちょっとしたら戻ったし」 「……期間限定?」 「バーゲンセールじゃないんだから……」 それから立香達はマサオに色々と質問をするが、大したことは聞けなかった。 そもそも、彼はロボひろしについてほとんど知らない。 彼の目線だと、ひろしはいつの間にかロボになり、ひげが付いたらなぜか性格が変わったので、友達としんのすけに協力して元の性格に戻した後はそれっきりだ。 少ししてからロボひろしはスクラップとなり、残ったのは人間のひろしだけ。 ロボひろしが本物のひろしの記憶をコピーしたロボットであることすら知らないのだ。 だから、マサオから見ればこの殺し合いには二人野原ひろしがいることになる。 これは一体どういうことなのかと、色々考える立香達。 単に同姓同名の別人なのか、はたまた平行世界のひろしなのか。 様々な可能性が浮かぶものの―― 「あぁもうめんどくせぇ! そんなもん、会ってみりゃ分かる話だろーが!!」 ヴィータが叫び、それに対し他の全員も返す言葉が無かったので、ロボひろしについての話は保留とし、一旦終わりにした。 代わりに、ヴィータが立香にあることを尋ねる。 「ところで、さっき平行世界とか言ってたけど、次元世界じゃねぇのか?」 「次元世界?」 ヴィータの質問に、立香がオウム返しに言葉を出す。 それに対し、ヴィータは面倒くさそうにしながらも簡単に説明を始めた。 次元世界とは、平たく言うなら立香の言う平行世界とそれほど違いはない。 強いてあげるなら、世界を管理する管理局の存在に立香が驚いたくらいだ。 だがヴィータの知識では、他の世界を認識し、移動手段もある『管理世界』と、それらが存在しない『管理外世界』の二つがある。 彼女から見れば、僅かではあるが魔力を感じる立香は魔導士で、横にいるオグリキャップは使い魔にしか見えない。 それをやんわりと否定したのは、使い魔扱いされたオグリキャップだ。 「ツカイマが何かは知らないが違う。私はウマ娘だ」 「ウマ娘ってなんだよ」 ヴィータは訝し気に問うが、それに対しオグリキャップは困った顔しかできない。 彼女からすれば、自身は生まれたときからウマ娘であり、世界に当たり前に存在するものでしかない。 それを何かと聞かれるのは、立香やマサオに人間とは何かを問うに等しいことだ。 これに明確な返答ができるのは、この場ではヴォルケンリッター紅の鉄騎 鉄槌の騎士であるヴィータくらいだろう。 一方、話にはロクに入れないマサオだが、ウマ娘の存在は”そういうもの”として受け入れた。 彼は友人の父親がロボになるなど、素っ頓狂な経験なら割とあるので、理解できなくてもありのままを受け入れるのに抵抗は薄い。 それにオグリキャップを見ていると、どこか友人であるボーちゃんを思い出すのも、受け入れられる一因だった。 だがそれはそれとして、ここで足柄がヴィータに問う。 「ヴィータちゃん、一つ聞きたいんだけどいいかしら」 「なんだよ」 「管理局ってのから見て、地球が管理外世界になっているのは聞いたけど、地球っていくつもあったりする?」 「……ハァ? 地球は一個しかねぇだろ」 足柄の質問の意図が分からず、困惑してしまうヴィータ。 対し足柄は、今まで見てきたものや立香達とまとめた情報を元にヴィータの発言を否定する。 なぜなら、立香、足柄、オグリキャップはそれぞれ違う世界の住人であるものの、彼女達の出身地は紛れもなく全員地球、それどころか日本だからだ。 ヴィータの言う管理外世界に地球がいくつもあるなら、立香達の証言は矛盾しない。 だがもし無いというのなら―― 「もうわっかんねー」 ここまで考えて、ヴィータは匙を投げた。彼女は元々そこまで考えるタイプでもないのだ。 それに色々ややこしそうだが、彼女からすれば結局のところ、聞いたことも無い管理外世界の話でしかない。 第一、管理局に見つかっていない管理外世界などいくらでもある。なら立香達の世界もそういうことでしかないだろう、と彼女は結論付けた。 「それよりマサオ、お前今の話分かったか?」 「えっと、難しいことは分からなかったけど、つまり皆別の世界の人ってことだよね」 「分かるのか?」 マサオが別の世界云々を理解していることに対し、未だ平行世界について理解できていないオグリキャップだ。 彼女の眼には紛れもなく驚愕が浮かんでいた。 そんなオグリキャップに対し、マサオはオドオドしながらも過去の経験について話す。 「実は僕、前に映画の世界に閉じ込められたことがあるんだ」 「映画の、世界?」 「なんだそりゃ」 マサオの言葉に困惑を隠せない立香とヴィータ。 そんな二人の視線に圧を感じ、なぜか目を背けながらマサオはその時のことを語った。 ある日、友達と町で遊んでいたら古びた映画館を見つけ、なんとなく入ってみると、そこでは荒野の映像がひたすら流れる映画が映っていた。 それをしばらく見ていると、なぜか映画の中の世界に入ってしまい、マサオ達は仕方なくそこで暮らすことに。 やがて元の世界のことも忘れかけたある時、彼らと同じく映画の中に吸い込まれた人々が、映画を終わらせて脱出することを思いつく。 その為に彼らは一丸となって、その映画の悪役に立ち向かった。 そして最後には悪を倒し映画はハッピーエンド、皆は元の世界に戻れた。 「って感じで……」 「ふーん。で、マサオはなんかしたのか?」 「えぇ〜!? 僕も結構頑張ったんだよ〜!!」 マサオが話し終えた後、ヴィータが彼に返した言葉に彼は泣きそうになる。 事実、彼は尽力した部類なのだが悲しいかな、五歳児の語彙力ではその辺りは全然伝わらなかった。 他三人も凄い話を聞いた、と思っても殺し合いとは関係なさそうだと結論付ける。 ただし―― 「映画の……物語の、世界……?」 立香だけは、関係ないと思いながらも、なぜか小さな引っ掛かりを覚えていた。 それからしばらく後、立香達は目的地であるリテイル・ローに到着した。 ちなみに意識していないが、彼女達が今いるのは西側の市街地である。 ここで一行はバギーを隅に寄せてから一度停止して、車を降りるか、乗ったまま街を進むか話し合おうとしたその時 ヌッ というオノマトペが浮かびそうな程唐突に、建物の陰から三メートルほどの人影が現れた。 黒い生地に白い丸模様を入れたワンピースを着て、髪を二又に分けた少女としか言えないあどけなさを持った人間。 立香達の中に知るものはいないが、誰であろう、シャーロット・リンリンである。 「でけぇ……」 「ヘラクレスより大きい……」 あまりに巨大な”少女”に、辛うじて声が出たヴィータと立香以外は何も言葉が出ず、一行はただ唖然としてリンリンを見つめていた。 しかし、彼女達にそんな時間はなかった。 なんと、リンリンがバギーを掴んだかと思うと 「お菓子……ヨコセ……!!」 お菓子を要求しながら車を揺さぶり始めた。 これにはたまらず、立香達は慌てて車を降りる。 「このヤロー!!」 そしてそのままの勢いでバリアジャケットを展開し、グラーフアイゼンをハンマー状に変形させて戦闘態勢を整えるヴィータ。 続くように足柄も、しまっておいた艦装を再び取り出し、腕に装着し直した。 「待って!!」 しかし戦闘態勢を整えた彼女達に対し、立香は咄嗟にストップを掛ける。 ここで立香が止めに入ったのには、当然の如く理由がある。 まず、彼女の最終目的は殺し合いを止めること。 その為に殺し合いに乗らない仲間を募るのが、彼女の選んだ手段である。 そして目の前の相手、リンリンは立香から見て、殺し合い以前の存在だった。 立香から見てリンリンは、飢えた獣である。 だからこそ、立香は待ったをかけたのだ。 どういう理由か知らないが、リンリンは酷くお腹を空かせている。 だがもし、リンリンが殺し合いに乗っているなら、自分達を問答無用で殺しにかかるのではないか。 殺し合いに乗っているとしても、問答無用ではない。 つまり、説得する隙がある。 ならばここは、リンリンの飢えを満たしてあげれば、こちらの味方につけることができるのではないか、と立香は考えたのだ。 だからこそ、彼女は彼に頼んだ 「マサオ君。グルメテーブルかけを出して」 「ハッ、ハイ!」 リンリンに怯えながらも、マサオはデイバッグから支給されたものを出し、彼女から少し離れた所に広げる。 その名はグルメテーブルかけ。 彼らとは違う世界の22世紀のひみつ道具で、言えばどんな食べ物でも出してくれるテーブルかけという、凄まじい代物である。 ここにたどり着く前に、未だ全ての支給品を確認していなかったマサオとヴィータは、足柄達に言われてデイバッグの中身を検めていたのだ。 それが功を奏した。 一方、リンリンは不機嫌だ。 何か出す素振りを見せるから待ったのに、出てきたのは単なる布。 甘いお菓子はどこにもない。 ならば用はない。こいつらも、さっきの奴と同じように殺してしまおうか。 リンリンの思考が殺意に染まり始めたその瞬間 「いちごのショートケーキをホールで」 立香がお菓子の名前を呟くと同時に、テーブルかけからお菓子が現れた。 ちなみに、ショートケーキのショートとは小さいという意味ではなく、脆いやサクサクした、あるいは短い時間で作れるという意味である。 なのでホール、つまり切り分ける前でもショートケーキと称することに矛盾はなかったりする。 それはそれとして、布からいきなりケーキが現れる光景には思わずリンリンも目の色を変えた。 リンリンの反応を見て、立香は得意気な笑みを浮かべて目の前の相手にテーブルかけの説明を始める。 「これはね、グルメテーブルかけって言って、食べたい料理の名前を言うと、それを出してくれる不思議なテーブルかけなんだ」 「すげぇ!! セムラ! セムラ!! クロカンボッシュ〜!!!」 立香の説明を聞いたリンリンは、目を輝かせてお菓子の名前を連呼する。 彼女の指名に応じてグルメテーブルかけは、オーダー通りにお菓子を次々と出現させていく。 ポコポコポコポコと、まるで泡のように。 「ホットケーキ!」 「ロイヤルプレジレントチョコビ!」 「大和パフェ!」 「ドーナッツ」 ここぞとばかりにヴィータ達もお菓子の名前を言って、リンリンに与えていく。 そうこうしているうちに気づけば、リンリン達が出したお菓子は、彼女の身長、三メートルを超えるほどに積みあがっていた。 「出しといてなんだけど、食いきれんのかよこれ……」 代表してヴィータが呟くが、思いはリンリンを除く五人とも一緒だった。 他のウマ娘の何十倍も食べるオグリキャップも、よく食べるサーヴァントや艦娘を知っている立香や足柄も、目の前のお菓子は大量というほかなかった。 あるいは、別の世界線の足柄なら、これほどの量を食べる艦娘にも心当たりはあったかもしれない。だがそれは別の話である。 一方、当のリンリンは目の前の山に、完全に心を奪われていた。 「いっただっきま〜す!!」 目を爛々とさせながら、お菓子を一つずつ手に取り、口の中に収めていくリンリン。 そのスピードは、さっきまで三メートルを超えていた山が、いつの間にか二メートル間近にまで低まるほどだ。 彼女の余りの健啖さと食べる速さに、立香達は最早言葉もなかった。 ◆ 最初はオレにお菓子をくれない悪い奴らだと思った。 だけどそんなことなかった。 こんなに美味しいお菓子を、オレに山ほどくれるなんて、間違いなくこいつらはいい奴らだ。 幸せすぎて涙が出る。 涙で前が見えやしない。 おれに優しくしてくれたマザーに、大好きな羊の家の皆と一緒だ。 こいつらなら、マザーの夢を手伝ってくれるかもしれない。 そうだ。そうしよう。マザー・カルメルの夢、全ての種族が同じ目線で暮らせる国を一緒に作ろう。 こいつらを従えて、悪い人間は殺して、夢の国を作るんだ。 途中なんだか少しだけ痛かったり、食べた時に苦いものも混じってた気もしたけど、きっと気のせいだ。 気づけば、目の前に合ったお菓子の山はなくなっていた。 もうなくなっちまったのか、と残念だったが、すげーうまかったし、お腹もいっぱいだから文句はない。 とりあえずお礼を言おうと、目の前にいるはずの五人に向き合おうとするリンリン。 しかし様子がおかしい。 まず、お菓子を出していた不思議な布がなくなっている。 次に、目の前にはなぜか四人しかいない。 その内一人、リンリンは名前を知らないが、立香の服はなぜかボロボロになり、体に怪我をして膝をついている。 次に一人、またも知らないが、ヴィータは立ったままリンリンを睨んでいる。 最後にもう二人、こっちも知らないがオグリキャップとマサオは震えていた。 特にマサオは涙を流しながらズボンを湿らせ、明らかに怯えた目でこちらを見ている。 とりあえず、リンリンは一番気になることを尋ねてみた。 「なあ、お前らもう一人いなかったか? どこいったんだ?」 彼女としては何気ない問い。しかしそれは地雷だった。 返答として、ヴィータの怒号が飛ぶ。 「……ふざっけんじゃねえ!!」 あまりの叫びに、リンリンは思わず怯んでしまう。 ひょっとしておれは何かやってしまったのではないか、と。 大丈夫だ。マザーならちゃんと言えば許してくれた。 こいつらだってきっとそうだ。謝れば分かってくれるはずだ。 リンリンはそう信じた。 だが彼女の思い通りにはならない。 「アイツは……足柄は……!」 覚悟しろ。 「てめぇが喰ったんだろうが!!!」 容赦ない現実が、彼女を責め立てる。 ◆ 時間は少しだけ巻き戻る。 お菓子の山が凄まじいスピードで減っていくのを、ただただ眺める立香達。 これなら食べ終われば話を聞いてもらえそうだ。 そう立香が思った直後 ガシッ 「えっ?」 リンリンの左手が、マサオの身体を掴んでいた。 そのままマサオは彼女の口へと、一直線に吸い込まれるように向かっていく。 大きく開いた巨人の口が、少年を今か今かと待ち構えている。 「ひいいいいいいい!! 助けてえええええええええ!!」 「主砲! 撃てー!!」 しかし、それを阻むものは当然いる。 足柄が主砲をリンリンの体に向け発射し、命中させた。 敵の爆砕を知らせるような重巡洋艦の主砲に相応しい爆音が、辺りに響き渡っる。 だがリンリンはマサオを手放す程度の衝撃しか受けておらず、彼女の身体には軽い火傷しか与えていない。 普通の生き物なら、下手をすれば跡形も残らない筈なのに。 「なんて硬さなの……!?」 「はっ!!」 足柄が凄まじい、というより生物にあるまじきリンリンの硬さに驚愕する横で、オグリキャップはひた走る。 そしてリンリンの手から離れたマサオを、地面に落ちる前に受け止め転身、リンリンから距離を取るべく再び走り出した。 同時に、立香とヴィータ、足柄もリンリンから距離を取ろうと移動する。 「っ!?」 しかしここで、足柄の左足の痛みが彼女の動きをせき止める。 この場でなければ、なんてことのない一時硬直。 されど捕食者のいる場で、被食者が足を止めたなら結末は一つ。 ガシッ 今度は足柄がリンリンに掴まれ、先程のマサオが辿りかけた結末へと進んでいく。 しかも彼女の両腕は、リンリンに拘束され主砲を放つこともできない。 艦娘として人間を超える力を持つはずなのに、振りほどくこともできない。 食べられる時間を少し遅らせるのが精一杯だ。 だが彼女には仲間がいる。 「おおおおおおお!」 リンリンから少し距離を取ったヴィータの足元に、橙色の魔法陣が展開されると同時に、彼女はグラーフアイゼンを天に掲げる。 そして体を回していくに合わせ、鎚の柄は何倍にも長さを伸ばし、頭部のサイズは何倍にも膨れ上がった。 この状態になったグラーフアイゼンを、ヴィータはリンリンに向けて全力で振り下ろす。 これがヴィータの魔法。 これぞ、鉄槌の騎士の真骨頂。 あらゆるものを壊す、彼女の全力。 「ギガント、シュラアアアアアアアアアク!!」 ヴィータの振り下ろした鎚の頭部は、リンリンの頭へと落ちていく。 これが命中すれば、さしものリンリンでもただでは済まないだろう。 命中さえすれば。 この瞬間、信じられないことが起こった。 それはこの殺し合いを経ない未来において、四皇となる資質か。 あるいは、食事を邪魔されたくないという人間の嫌悪か。 なんと、リンリンは己の身体を左側に少し逸らした後、逆手でグラーフアイゼンの持ち手を掴み、受け止めたのだ。 「嘘だろオイっ!?」 ヴィータがリンリンの行動に対し僅かに怯んだ刹那、彼女はそのまま鎚を振り回し、持ち手側にいたヴィータを近くの建物へと叩きつける。 リンリンは自身の数十倍の大きさを誇る巨人族の英雄、ヨルルを背負い投げできるほどの胆力を持つ。 ならば、たかが自分より数メートル大きい程度のグラーフアイゼンを受け止められない道理があるか。振り回せない道理があるか。 そんなものはない。彼女ならばそれができる。できてしまう。 「っ!!」 この状況において立香は、いや皆は近寄るのは危険、と判断していた。 だがここまでくればそうも言ってられない。 立香はレターを構えリンリンへと走り、オグリキャップはタスクを全て放つ。 だが砲弾すら大した痛手にならないリンリンに、牙がどれほど食い込むというのか。 事実、彼女には傷一つ負わせていない。それどころか何かされたとすら思っていない。 平時ならば風で飛んできた小さな砂利が当たった位の感覚はあったかもしれないが、お菓子を喰らうことしか意識のない今の彼女には毛ほども感じない。 そして立香も相手にならない。 リンリンが未だ放していない鎚を、今度はさっきの反対側へと振り回す。 それだけで立香は吹き飛ばされ、ヴィータとは反対側の建物へ叩きつけられ、地面へと伏せる。ここでグラーフアイゼンは元の大きさに戻り、リンリンは手放す。 「ぐっ……かはっ……!」 叩きつけられた立香は、意識は朦朧とし、体を震わせながら再び立ち上がろうとするも、血を吐いて止まってしまう。 本来、彼女が受けたダメージはただの人間に耐えられるものではなかった。 装備している悪魔の力があって初めて、かろうじて生きていられる程度のダメージに押さえ込めたのだ。 そんなこと、藤丸立香には関係ない。 目の前で仲間が殺されそうになっているのに、立ち上がれないことが恐ろしい。 自分の判断ミスで足柄が死にそうになっていることが、憎らしくして仕方がない。 だから彼女は己の死力を以って立ち上がろうとする。どれほど無意味なことであったとしても。 一方、何もできない足柄はただ皆を見つめていた。 未だ立ち上がれない立香とヴィータ。 恐怖で動けないマサオと、これ以上何も手立てがないオグリキャップ。 そんな彼女達を、足柄は恨まない。 確かに、彼女がリンリンに食べられるのは、結果論ではあるものの立香のせいと言えなくもない。 だがこんな状況、誰が予想できるというのか。 それに戦場に予想外は付き物だ。 どれだけ念入りに策を練っても、運や他の要因で狂わされるなどよくあること。 今回はたまたま、その結果足柄が犠牲になるだけ。 だから―― 「立香、あなたのせいじゃないわ」 足柄は自責の念で苦しみかねない少女に向けて、言葉を紡ぐ。 これがどれだけ相手に届いているか分からないが、それでも言わずにはいられない。 そうこうしていると、彼女の最期の時がやってくる。 まるで深淵に続く穴倉のような、リンリンの開けた大口に向かって、足柄は意志と無関係に吸い込まれていく。 彼女は願う。 どうか、立香達に勝利を。必ずこの殺し合いを打破して欲しい、と。 けれども―― (勝利だけが……私の誇りだったのに……っ) 皆をそこへ連れていく者が自分じゃないことだけは、たまならなく悔しい。 【足柄@艦隊これくしょん 死亡】 【残り98名】 やがて足柄とお菓子を食べ終えたリンリンは、彼女から見て不可解な現状に疑問を抱いて辺りをキョロキョロ見回す。 自らが起こした惨状に気付いていないその態度が、マサオとオグリキャップにはたまらなく恐ろしかった。 藤丸立香はそれどころではなかった。 やっと立ち上がれたヴィータだけが、リンリンを睨んでいた。 それに構わず、リンリンは四人に尋ねる。 「なあ、お前らもう一人いなかったか? どこいったんだ?」 何を言っている? ヴィータだけではない。立香以外の三人がそう思った。 「……ふざっけんじゃねえ!!」 だが、ここで怒りの堰が切れたのはヴィータだけだ。 「アイツは……足柄は……!」 そんなに知りたいなら教えてやる。 「てめぇが喰ったんだろうが!!!」 お前がやったことを、分かりやすく簡潔に。 そして時は現在に戻る。 「……は?」 ヴィータの返答に、リンリンは何を言われているのか分からなかった。 だが周りの顔色を見て、少なくとも冗談を言っているわけではないとは思った。 けれどそれは、恐ろしい事実を意味する。 人肉食。カニバリズム。 多くの世界で、時代で忌避される禁忌。 リンリンの頭では思いつきさえしない異常。 それを自身が行った。 「…………そだ……」 リンリンの息が荒ぶる。 決して受け入れられない事実を見せつけられ、体が必要以上に空気を求める。 目が血走る。 瞬きを忘れる。 耳が何も受け付けない。 そして―― 「うそだああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 三千世界のどんな爆音であろうとも、この叫びには届かないのではないかと思わせるほどの叫びを、リンリンは発しながらその場を全速力で逃げ出した。 リンリンの叫びで起こった風圧に吹き飛ばされ、なすすべなく地面を転がる四人。 この中で一番早く立ち上がれたのは、ヴィータだった。 「クソが……ちくしょう……」 彼女には、リンリンの叫びはただとぼけているようにしか見えなかった。 ふざけんじゃねえ、逃げんじゃねえと、怒りが抑えきれなかった。 「待ちやがれ、このヤロー……絶対、ぶっとばす……!!」 故に彼女はグラーフアイゼンを再び握り、リンリンを追うために空を駆ける。 お前を決して許しはしないと、己の赫怒と決意を籠めて。 一方、未だ立ち上がれない立香の考えはヴィータと異なっていた。 立香は、リンリンが本当に足柄を食べたことを認識していないと思っていたのだ。 なぜなら、彼女は似たような事例を知っていたからだ。 狂化。 それは、サーヴァントが保有するスキルの一つ。 バーサーカーのクラススキルであり、効果はスキルの高さの分だけ理性を奪い、その分サーヴァントのステータスを高めるというもの。 だが高さがEXの場合は事情が異なる。 この場合、喋ることはできても意思疎通が不可能なことが多いのだ。 ダメージを負うたびに幸運判定し、失敗すれば暴走する者。 我が子に関する事柄に関してのみあらゆる制御が通じなくなる者。 特定の相手と相対すると理性が吹っ飛ぶ者。 彼らと同じことが、お菓子に目を奪われたリンリンに起きていると立香は考えたのだ。 だがそんな思考に何の意味があるのか。 短い付き合いであっても大切な仲間をまたも失い、別の仲間がかたき討ちに飛び出した。 そして、立香は生前の足柄の想定通り、自責の念に苦しんでいた。 自分がマサオ君にグルメテーブルかけを出してもらわなければ、足柄は死ななくて済んだのではないか。 苦しくて辛くて、泣き出しそうになる。 だとしても―― 立香はこの後悔(いたみ)から逃げない。 立香はこの喪失(いたみ)を背負って生きていく。 そうでなければ、今まで歩いてきた道が無意味になる。 そんなことは、決してできない。 「ハァ……ハァ……」 だから立香は自身のデイバッグを漁り、和泉守兼定に支給された最後の支給品を取り出す。 それは、とある不思議なダンジョンにおいて、あるギャングのボスが食べると体力を回復させるアイテム。 カエルだった。 これを立香は貪る。 ガツガツと、とても年頃の少女がするものではない振る舞いで、生きたカエルをかみ砕いて胃に流し込む。 決して美味しいものではない。血生臭くて気持ち悪い。 カルデアのキッチンならもっとおいしい調理法を、きっと誰かが披露してくれるだろう。 それでも立香は食べた。 おかげで説明書きの通り、体力はわずかに回復した。 立ち上がるだけなら問題はない。 未だ体はフラフラするが、血を吐くこともないだろう。 ならば十分。バギーに乗ってヴィータちゃんを追い掛けよう。 そう言おうとして、立香はマサオとオグリキャップの方へ顔を向ける。 そこで見た。 「「…………」」 恐怖で顔を固まらせながら、立香をすがるように見つめる二人の姿を。 特にマサオは目で訴えていた。 行かないで、一緒にいて、と。 考えてみれば当たり前だ。 人が目の前で食べられる光景を見て、怯えない一般人なんていない。 そんな人に、一緒に行こうとは言えない。 だから立香は二人にこう声をかけた。 「マサオ君は、近くの建物に隠れてて。 オグリキャップは、マサオ君を守ってあげて」 「……分かった」 「え、立香さんは……?」 立香の言葉に素直に頷くオグリキャップに対し、マサオは懇願するように問いかける。 だがそんな希いを見なかったことにして、立香は強く言い切った。 「私は、ヴィータちゃんを追い掛けるよ。 何ができるか分からないけど、放っておくなんてできないから」 立香の言葉を聞いて、目を見て、二人は悟った。 決して彼女の意志を曲げることはできないと。 だから二人は立香の言葉に従い、近くの建物へと入っていく。 それを見送った立香は、ずっと訴えかけ続ける痛みを無視してバギー#9へ乗り込み、アクセルを踏む。 彼女の運転に、少し前にあったはずのおぼつかなさは最早存在しなかった。 ◆ 一人市街地を疾走するリンリン。 彼女は現実から逃げていた。人を食べたという現実から。 もしここにいるのが六十三年後のリンリンなら、知らないうちにどこの誰とも知らない奴を食べたとしても、気にも留めなかったかもしれない。 だがそうはいかない理由がある。 それは、リンリンにとって数時間前のこと。 マザーと羊の家の皆が、彼女の誕生日を祝ってくれた時のこと。 あの時、彼女は皆が作ってくれたバースデーケーキを夢中で食べていた。 あれは本当に楽しかった。 楽しくて、嬉しくて、思わず前が見えなくなるほど涙が出た。 そして食べ終わった時、皆は居なくなっていた。 これにさっき言われたことを合わせると、恐ろしい想像が浮かんでくる。 例え六十三年後のリンリンだったとしても、目を覆いたくなるような光景が。 もしかすると―― 「そんなわけない…… おれがマザーや、皆を食べるなんて……! そんなこと、あるわけねえ……!!」 大好きな皆を、大切な居場所を、自分自身の手で壊したかもしれない可能性など、考えたくもなかった。 【H-6 リテイル・ロー 市街地/早朝】 【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】 [状態]:ダメージ(小)、火傷(小)、満腹、憎悪、絶望(極大)、全力疾走中 [装備]:天逆鉾@呪術廻戦 [道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、輝子のデイパック [思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。 0:おれがマザーや皆を食べたなんて、そんなはずねえ!! 1:人間は殺しつくす。 [備考] 参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。 天逆鉾の効果により、ソルソルの実の力が封じられています。 どこに向かって走っているかは次の書き手氏にお任せします 【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態] バリアジャケット展開、ダメージ(中)、リンリンに対しての怒り(大) [装備] グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's [道具] 基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない)、うさぎのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん [思考・状況] 基本行動方針 主催をぶっとばす 1:あいつ(リンリン)を追い掛けて、ぶっとばす [備考] 支給品を全て確認しました 【藤丸立香@Fate/Grand Order】 [状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)、ダメージ(大)、無力感、自責の念 [装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9 [道具]:基本支給品×2(自分、兼定分)、クレイジーソルト、和泉守兼定(鞘なし) [思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。 1:あの子(リンリン)とヴィータちゃんを追い掛ける 2:足柄さん、ごめんなさい…… 3:ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。 4:恐らく、これは何らかの儀式では? 5:マサオくんを守るのは、オグリキャップに任せる 6:しんのすけという子を探す。その後マシュ、沖田さん、土方さん、『野原ひろし』を探す。ラヴィニアも確認はしたい。 7:ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…オグリキャップは大丈夫かな。 8:映画の世界という言葉がなぜか引っかかる [備考] ※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。 ※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。) ※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。 ※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。 【オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ】 [状態]:疲労(小)、複雑な心境、恐怖(大) [装備]:スタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、特別製蹄鉄付シューズ [道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み、お菓子の類ではない) [思考・状況]基本行動方針:とにかく生き残ろう。 1:カネサダ……アシガラ…… 2:マサオを守る 3:目的のために殺す『意思』…それを覚えて大丈夫なのだろうか。けれど…… 4:ヘイコウセカイって何だろう……? 5:あの男が説得された場合、受け入れられるか? [備考] ※参戦時期は西京盃後。 【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】 [状態] 恐怖(大)、失禁 [装備] ひらりマント@ドラえもん [道具] 基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない) [思考・状況] 基本行動方針 しんのすけ達を探す 1:ヴィータちゃん、立香さん、行かないで…… 2:しんちゃんを探したいけど…… 3:いざとなったらひらりマントで自分の身を守る 4:しんちゃんのパパが二人...? [備考] 支給品を全て確認しました。 ※足柄と彼女の艦装、彼女のデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品×1)、グルメテーブルかけ@ドラえもん はシャーロット・リンリンに食べられました。 ※シャーロット・リンリンの絶叫がH-6に響き渡りました。 【支給品紹介】 【グルメテーブルかけ@ドラえもん】 佐藤マサオに支給。 これを広げ、食べたい料理の名前を言うと、その料理が出てくるひみつ道具。 出てきた料理の味は絶品。また、現実に存在しない料理でも出現させることができる。 【カエル@ディアボロの大冒険】 和泉守兼定に支給。 なんてことのないごく普通のカエル。毒もない。 食べるとHPが50回復する。 本ロワでは、食べると少しだけ傷が治る。 059:喪失の果てに 投下順 061:The run-to escape from monsters- 049それは突然の出会いなの! 佐藤マサオ 093 メッセージは唐突に ヴィータ 足柄 GAME OVER オグリキャップ 093 メッセージは唐突に 藤丸立香 037殺し抗え、人であるがために シャーロット・リンリン
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「あったかいなぁ……」 一人ぼっちのお昼ご飯の後、まるでお昼寝中の猫のように陽だまりで丸くなる。 起きたのはついさっき。せっかくの休みだから、ってことで今日はお寝坊さんです。 お父さんは仕事で、ゆーちゃんは……どこ行ったんだろ? まぁ靴はさっき見たところ無かったし、みなみちゃんと遊んでるのかな。 しっかし、あったかいねぇ……。 西の方では桜が咲いたとか咲かないとかニュースになってたけど、まぁ確かに朝は布団から出るのはそれほど億劫でもなくなったし、今だって暖房無しでも十分あったかい。 でも、外は出たくないなぁ……。春一番ってやつ? もう、すっごい風強いし。 ご飯を食べてから30分くらい陽だまりでぐうたらしてると、珍しく手元に持ってきてたケータイがブルブルいっている。かがみんからだ。 「もしもーし」 「あら。あんたが電話に出るなんてひと雨来るかしら」 「むぅ、久々に電話に出たと思えば……」 「まぁいいじゃないの、久々に一発で繋がったんだし」 「で、どしたの?」 「あぁ、そうそう。うちに遊びに来ない?」 「えー……」 「何よその反応」 「だってさ、外絶対寒いじゃん。風強いし」 「あー、んじゃ私行くわ。いい?」 「おや、かがみんそんなに私に会いたいのかい?」 「うーん、まぁなんでもいいや。んじゃ行くから」 「待ってるよー、かーがみんっ♪」 ガチャ 「お邪魔しまーす」 「おかえり、あなた。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・tってちょっと反応してよー」 「あぁ、ごめんごめん。何かめんどくさくって」 そう言うとそそくさと靴を脱ぎ家に上がるかがみん。 「お菓子とか持ってくから部屋で待っててー」 「私も持ってきたからあんまりいらないわよ」 「またかがみんダイエット中?」 「うっさいわ!」 お菓子やらジュースやらを持っていくと、いかにも飛び乗ってきて欲しいと言わんばかりにかがみんはゴロゴロとしていた。 「両手がふさがってるからその要求には応えられないなぁ」 「なにがよ」 「抱きついてきて欲しかったんじゃないの?」 「はぁ? 何言ってんのよ」 「まぁまぁ」 そしていつもの感じで雑談モード。いつもより上の空のかがみんが気にはなったけど、きっと体重の事気にしてんだろなー、とか思ってた。 けど、突然かがみんは正座して 「そうそう、あんたに渡すものがあったのよ」 と、さっきよりも少し声を大きくした。 「? 何かマンガ貸してたっけ?」 「いやいや、そんなんじゃないわよ。ほいっ」 そうしてテーブルに置かれたのが手のひら大くらいの淡いピンク色の箱。なんだかやたら春っぽいなぁとか思った。 「なに? おみやげ?」 「今日は何の日?」 「ふっふ~♪」 「み○もんたか。はい、カレンダー見ましょう。今日は何の日ですか?」 「えーと、14日?」 「正解。んじゃ今日は何月?」 「3月」 「正解。んじゃ3月14日は?」 「……土曜日?」 「あんた、気づいてんでしょ? はい、正解はホワイトデーでしたー」 そういって開けた箱の中にはびっしりと生チョコが。ココアの香りがほのかに広がる。 「どしたの、これ?」 「どうしたって、お返しよ。バレンタインデーの」 「だ、誰が作ったの?」 「私に決まってるじゃない」 「だ、だってさ、悪いけどかがみんだよ? こんなにおいしそうなんだよ?」 「いい加減怒るわよ! と、とにかく食べなさいよ!」 そこまで言ってかがみんは俯いた。でも耳は両方とも真っ赤だ。 それにしても綺麗に出来ている。四角だけど不格好でなくて。 「そいじゃ、いっただっきまーす」 ぱくっ おぉ! うまい! 甘すぎないし、くどくないし、口の中でまろやかに溶けていく。 「かがみん、おいしい!」 「ホント? ホントに?」 「うん、ホント! かがみんやれば出来るじゃん!」 「あんたはいっつも一言余計ね。――よかったぁ……」 どうやらかがみん、徹夜してこれを作ったらしい。さらには、一切つかさの助言や手伝いを受けていないとのこと。 「すごいじゃん! いやー、うちの嫁、実はできる子でしたよ」 「……」 ……あれ? いっつもなら『いつアンタの嫁になった』突っ込んでくるんだけども……。 「――ねぇ、こなた? 話があるんだけどさ……」 「なにー?」 真剣に聞いて欲しいの、と前置きした思いつめた顔のかがみん。私の眼をまっすぐと見ている。 「――何でだか分かんないけどさ、このチョコ作ってるときさ、あんたの顔がやたら出てきてさ」 「うん」 「そして、何だかすごく恥ずかしくなった。もう、自分でもわかる位に真っ赤になってたと思う。――それで、気づいたの。やっぱり自分はこなたが好きだって」 「……うん」 「しかも、友達としてじゃなくって……えっと、そういうのじゃなくって……」 「……恋愛対象、として?」 「うん……」 「本当に好きな人としてこなたのことを想ってたんだなぁ、って……」 「……私、こなたが好き。友達としてじゃなく大好きな人として」 「そっか……」 そう言ってお互いに下を向いた。 正直、かがみと恋人同士になるということを全く想像したことが無かった。 もちろん、友達としては誰よりも好きだ。けど…… この沈黙を破ったのはかがみの方だった。 「……ごめんね、でも自分でも分からないの。こなたと付き合いたい、とか今まで思ったこともなかった。けど……」 「……けど?」 「好き。これだけははっきり言える。私はこなたが好き。大好き」 もう、かがみんのバカ。そんな面と向かってはっきりと言われたら……恥ずかしくてかがみのこと直視できないじゃん……。 「引いたならそれでいいよ。悲しいけど、それがあんたの答えなんだと思うし……」 そしてかがみはやりきった感を出しながら深く息を吐いた。 私はそんな一仕事終えたかがみの横に座る。 こんなこと言う前は真っ赤っかになって私の事もろくに見れなかったくせに、今では隣に私がいても堂々としているように見えた。 「……ねぇ、かがみ」 「ん?」 ちゅっ 「っっ!!!?」 私はかがみの唇にキスをした。私は告白を聞いてからずっとそうだったけど、これでかがみも一気に茹でダコみたいになる。 「……ありがとう。全然、引いてなんかないよ? これが私の気持ち」 「!!!?」 「……私もかがみのこと好きだよ。一番好き」 「でも、かがみとの恋人関係を私は今まで望んだことはなかった」 「……告白されてから、自分とちゃんと向き合ってみた。そしたらすぐに答えは出た」 かがみは真っ赤な顔で私の眼を見ていた。私の一言一言を聞き逃さないようにしていた。 「好き、だよ。かがみんのこと……でも、付き合う、っていうのは想像できない。だから、お互い好き同士でこれからありたい」 「……うん」 「そしてお互いが付き合いたいと思えるようになったら……付き合おう?」 「……うん♪」 そうして、お互いに合図があるわけでもなく目を閉じ、唇を重ねた。 ~~~~~ 「かがみんったらいつまでニヤニヤしてんの?」 「そういうあんたもよ。……ふふっ」 「♪ そうそう、バレンタインのお返しなんだけどさー……」 「あんた忘れてたんでしょ? それとも何かあるの?」 「あのー、かがみんの口に付いてるので……ダメ?」 「えっ?」 「あ、あのさっきの私の口にかがみんのチョコ付いててさ、それがチューしたときにかがみんに付いたんだけどさ……」 「……これはココアや」 「――んじゃあ、そのお返し……もうちょっと、欲しいんだけど……」 「……いいよ♪」 コメントフォーム 名前 コメント 甘い甘い話、、、、かがみ好き にはたまらないです。 -- チャムチロ (2012-09-04 21 45 25) いいね、こういう話www -- 名無しさん (2009-09-04 02 35 38) 甘いwww -- 名無しさん (2009-09-03 18 49 58)