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狂科学者(ドクトル)は組織に仕える科学者である。 良心の歯止めのない悪の科学の粋を尽くし、数多の超兵器マシーンと薬物生成能力により、ヒロインを肉体から改造できる特徴を持った王道(?)のスタイルである。 その主たる任務はヒロイン怪人化改造計画だ。
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真心の説得【まごころのせっとく】 『2』で麻生華澄がバトルの際に使用する奥義。 「だめよ!暴力なんか、ふるったりして!反省しなさい!」という台詞と共に「仁・智・礼・信・義」と書かれた光を放つ球体5個を敵に示す。 すると、敵の頭上に「反省」という吹き出しが出現し、それが表示されている間は攻撃をしてこなくなる。 華澄と旧知の間柄であろう総番長が相手の場合は「かっ、華澄…」と、狼狽えたような台詞を聞く事が出来る。 バイト番長には無効化されるが、彼女(?)は華澄に名前で呼びかけており、ほとんど正体を自ら明かしてしまっている。 不良戦では、華澄の攻撃が非常に強力かつ不良が弱過ぎるのでバトルがすぐに終わってしまい、この奥義が発動される事は少ないと思われる。 教師だけあって、彼女の魔法はどれも最高レベルの物であり、MP(容姿)も安定して高い。 また、戦況に応じて主人公に回復魔法を使ってくれる事もあるなど、連れていると最も頼りになるキャラである事は間違いない。 主人公が強い時でも、総番長戦に一緒に来てもらえば更に楽に戦えるだろう。 しかし、説得というか説教で相手の動きを止めておきながら、 その隙に大きな雷を落としたり、火を放ったり、氷漬けにするのは、教師としては行き過ぎた体罰と言えなくもない。 関連項目 部活・趣味・バトル 麻生 華澄
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KGL/S79-003 カード名:会心の一撃 千花 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:2500 ソウル:1 特徴:《秀知院》?・《書記》? 【自】[手札を1枚控え室に置く]このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは自分の控え室の「ラブ探偵」を1枚選び、手札に戻す。 R:石上くん…きもーっ!あはは SR:私匂いますか?臭いですか!? レアリティ:R SR 「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」収録
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前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第42話 ブリミルの秘宝の秘密 バリヤー怪獣 ガギⅡ 登場! ハルケギニアは今、聖戦という巨大な嵐に巻き込まれようとしていた。 教皇ヴィットーリオの放った勅令によって、ハルケギニアのすべての国家に対エルフの挙兵が命じられ、史上空前の規模の戦争が巻き起ころうとしているのだ。 ”世界を覆う暗雲を作り出したのはエルフの仕業である。今こそハルケギニアの民は力を合わせてエルフを討つべし!” 教皇が見せたという天使の奇跡とともに、ハルケギニアの津々浦々にまで聖戦参加の激が届くのに時間は必要としなかった。 神に忠誠を示すための義勇兵として集まる人々や、功を狙った貴族や傭兵は即座にロマリアに従うことを高らかに叫び、ロマリアには膨大な数の兵力が集まりつつある。 むろん、エルフにはかつて人間は一度も勝利したことはなく、その圧倒的な実力を恐れる者も多かった。だがロマリアは神の祝福を受けた教皇の魔法はエルフの先住を上回ると高らかに宣伝し、同時に聖戦に非協力的な者は異端の疑いがあるとして、飴と鞭を使い分けて人々を意のままにさせていったのだ。 その巨大な流れはハルケギニアにとどまらず、噂に流れてサハラにも伝わっていた。 ネフテスの評議会では人間世界での大きな動きに、エルフの議員たちがどう対応するかの会議が開かれていたが、うろたえる議員たちに対してテュリューク統領は不思議なくらい悠然としていた。 「まあ諸君、そう金切り声をあげて議論しなくてもよかろう。もう少し落ち着いてみてはどうかね?」 「統領閣下、なにをのんきなことをおっしゃっているのですか。蛮人どもが我々に濡れ衣を着せて攻めてこようとしているのですぞ? 我々の兵力の再編がまだ中途半端な今、これは大変な事態ではありませんか!」 しかしテュリュークは気にした様子もなく、むしろできの悪い生徒に教え諭す教師のように言った。 「戦争になってしまえばその時点で終わりじゃよ。我々が勝つにせよ彼らが勝つにせよ、双方被害は甚大というものでは済むまい。そうなれば必ず第三勢力が漁夫の利を狙って割り込んでくるじゃろう。戦争の勝ち負けなど関係なく、それで世界は終わりじゃ」 議員たちは言い返しようもなかった。第三勢力がなにを指しているかということは今さら説明されるまでもない。戦争が始まれば、確実にテュリュークの言ったとおりになってしまうだろう。 「では議長、我々はこのまま手をこまねいて待っていろというのですか?」 「そうは言っておらん。しかし、我々から動くのはまだ早いということじゃ。しばらくは情報を集め、様子をうかがっておこうではないか。わしはすでにビダーシャル君に頼んで蛮人世界の動静を探ってもらっておる。どうやら蛮人たちの中にも、戦に反対の者がまだ数多くおるようじゃ。今は、彼らの行動力に期待してみたいとわしは思う」 「もしも、その蛮人の反対派が敗れた場合はどうするのですか?」 「説明しないとわからぬかね? だが、わしは賭けてみるだけの価値はあると信じておる。彼らの勇士はほんの少し前に、このアディールに乗り込み、我らエルフの心を動かすという大事を成し遂げた。その手腕にもう一度期待してみようではないか」 「ううむ……ですが、危険すぎる賭けではないでしょうか」 「当然じゃ、だが我々には効果的に蛮人世界に干渉する術がないのも事実じゃ。とはいえわしは、これがむしろいい機会ではないかとも思っておる。蛮人、いや人間たちが我々と対等な生き物であるか、それとも進んで自滅したがる愚かな動物であるのか、この騒乱を収められるか否かで本当にはっきりするじゃろうて」 そう言うとテュリュークは、乾いた喉を潤すためにテーブルの上に置かれていた茶をぐいっとすすった。その味は悪くなかったが、時間が経ちすぎていたために議員たちの心情を映したように生ぬるかった。 聖戦を起こそうなどというだけの兵力が、一朝一夕で整えられるわけがない。実際に奴らがサハラに侵攻してくるにはまだ数ヶ月の準備期間がいるはずだ。それだけ時間があるとも言えるが、一方的にこちらを敵とみなしてくる以上は話し合いが通用する相手とは思えないし、たとえば今から教皇を暗殺したりなどをやってみても火に油を注ぐようなものだ。かといって降伏などということができるわけもない。 会議はそのまま特に目立った成果もないままに閉会し、しばらく様子を見るという、なんの変化もないことをネフテスは続投しただけだった。 だが今はそれでいい。今下手に動けば、かえって聖戦推進の人間たちを刺激することになる。 「まったくわしも、大変なときに統領なんぞになってしまったものじゃわい。じゃが、もしも人間たちがこの難局を乗り越えることができたら、幾千年繰り返された彼らと我々との争いも終わりにすることができるやもしれん。やってみせい、小僧っ子ども、これから先の時代を作るのはわしらじゃのうてお前たちじゃからの」 はるか西の空を望んでテュリュークはつぶやいた。時代は入れ変わらなければいけない。古い世代から新しい世代へ、そして新しい世代が新しい時代を切り開くには試練を乗り越える必要がある。 若者が大人に成長して時代を切り開くか、それとも未熟な若者から脱皮できずに時代に押しつぶされて終わるか、歴史の女神は非情にジャッジを下すだけだ。 こうしているあいだにも、ビダーシャルは国境沿いのエウメネスという街を拠点にしてハルケギニアの情報を集めてくれている。 人間とエルフは完全に断絶されてきたというわけではなく、一部では交流が続けられてきた。商人の噂は、軍隊の伝達よりも時に速くて信頼性がある。ハルケギニアで何かあった場合には、ここが有力な情報源になるのだ。 商人の口を通じて、ハルケギニアの各国が武装を増強し続け、武器商人たちが需要に追いつけなくなっているという話が日々大きくなっていくのをビダーシャルは苦い面持ちで聞いていた。このままでは、このエウメネスまでもが戦火に巻き込まれてしまう日も遠くないことだろう。 だがそんなある日、変わりばえのしなかった情勢が大きく動いたことを知らせる情報が飛び込んできた。 「戦争だあ戦争だあ! 大変だあ! トリステインとアルビオンがロマリアとガリアを相手に戦争おっぱじめやがったぞお!」 話が入ってくると、ビダーシャルは即座に複数の人脈を通して話の裏を取り、信憑性の高い情報を纏め上げた。間違いなく、ハルケギニアの内部で激変が起きたらしい。しかも、自分たちにとって恐らくは追い風になるであろうことが。 「このとおりならば、聖戦とやらの計画も根底から見直さねばならぬだろうな。いや、教皇が真に悪魔的な存在であるならば、ようやくこれで対等な立場に持ち込めただけかもしれん。ともあれ、これを人間たちの『物語』で表すのならば『劇的な変化』というところか。思えば、直前にファーティマを送り込めたのも、大いなる意志の導きやもしれん」 人間たちが運命と呼ぶものがあるとすれば、それはなんと巧妙に作られているのかとビダーシャルは思った。 サハラを滅亡に導こうとする危機が目の前に迫っているというのに、自分たちができることは実質なにもない。あるとすれば、ハルケギニアに行っているファーティマやルクシャナたちの活躍に賭けるだけだ。 「大いなる意志よ、我が姪と友人たちに良き巡り合わせを与えたまえ、彼女らを守りたまえ」 西の空のかなたにいるであろうルクシャナたちの活躍と無事を願ってビダーシャルは祈った。 エルフが見守る中で、聖戦という最悪の運命の分岐点に立つハルケギニア。その内部では、まさに激動に言うにふさわしい騒乱が始まろうとしていた。 事の起こりはビダーシャルの知る数日前、トリスタニアで行われた女王アンリエッタの演説から幕を開ける。 「我が親愛なるトリステイン国民の皆さん、本日は皆さんに大切なお話があります。貴族、平民、老若男女問わずにすべての方々に聞いてもらうために、わたしはこうして場を設けました。わたしの声は魔法器具を通して、トリステイン全土の街や村にも同時に届けられています。どうか少しの間、わたしの声に耳を傾けてくださいませ」 嘘偽りなく、トリステイン全土に広がるアンリエッタの声。ラグドリアン湖から引き上げられた艦艇に取り付けられていたスピーカーを参考に作られた王立魔法アカデミーの努力の結晶は、まだ実験段階ではあるが十分にその性能を発揮してくれていた。 ただし、無線ができるほど便利にはまだできていないため、国の全土にケーブルを引くためにアカデミーと魔法騎士隊がこの三日ほど不眠不休で働いた。それだけのことをするほどに、これから始まる演説には価値があるということだろう。 「皆さん、今現在の世界を包む危機的状況は周知のことでしょう。そしてそれに対して、ロマリアの教皇聖下がエルフに対しての聖戦の参加を呼びかけていることも、知らない人はいまやいないと存じます。今日は、我がトリステインの聖戦に対する意思を、全国民に表明しようと思います」 やはりそれか、とうとう来たか、と国民の誰もが思った。 トリステインはこれまで、聖戦に対する意思を明確に表明せずにあいまいにしてきた。国外から入ってくる噂や新聞記事などでは、ゲルマニアで有力貴族が結集し始めたとか、ガリアで大衆を相手に志願兵を集めだしたなど、ぶっそうな話が次々に聞こえてきていたために、遠からずトリステインでも軍を大きく動かすだろうと皆が予想してきたのだが、とうとう来たのか。 ごくりとつばを飲み込む人間が、このときトリステイン中で星の数ほどいただろう。しかし喜ばしく考えている者はそうは多くない。戦争というものが、どれほどの負担を大衆にもたらすのかは、ハルケギニアの人間には身近な問題なのだ。 確かに世界の脅威は取り除かねばならない。自分の家族や恋人のためなら聖戦も辞さずと考えている正義感の強い者も多いが、犠牲なしで済ませることはできない。もしそんなことができるなら聖戦は教皇ひとりで十分だろう。 だがそれでも、女王が参戦の宣言をすれば、数多くの人間が聖戦に参加するだろう。空を不気味な虫の黒雲が包んで何ヶ月も晴れないという明確な危機感、ロマリアの教皇が奇跡を見せて元凶はエルフだと示したことによる敵愾心は、トリステインの一般市民にもそれほど強く根付いていた。 だが、トリステイン国民たちの予想は、女王の想像を絶する宣言によって打ち砕かれた。 「わたし、トリステイン女王アンリエッタ・ド・トリステインは、その名において宣言します。ロマリア教皇ヴィットーリオ・セレヴァレ聖下の発した聖戦への”不参加”を! そして今日この日を持って、教皇聖下に対して我がトリステインは宣戦を布告いたします!」 なっ!? と、数百万のトリステイン国民が貴族平民問わずに絶句し耳を疑った。 どういうことだ? 聖戦に不参加? それどころか、教皇に対して宣戦布告? つまりロマリアに、ブリミル教に反抗するということか? なぜ? 人々は混乱する頭で考えたが、納得のいく答えは女王が狂ったというくらいしか思いつかなかった。しかし、アンリエッタの言葉は冷静なままで、魔法の送話装置から続いた。 「驚かれたことと思います。しかし皆さん、わたしは決して乱心したわけでも、ましてブリミル教への信仰を失ったわけでもありません。ですがこれからお話することは、さらに皆さんを驚かすこととなると思います。ですがどうか落ち着いて、最後までわたしの話を聞いてください。はっきりと申し上げます。聖戦を布告したロマリア教皇ヴィットーリオは、人間ではありません! 我々の信仰心を利用し、自作自演の奇跡で騙して聖戦にでっち上げ、エルフと人間の共倒れを狙う異世界からの侵略者です!」 トリステイン全土に、悲鳴にも等しい叫びが轟いたのは言うまでもない。 教皇陛下が人間じゃない? 女王陛下は本当に狂ってしまったのか? いや、しかしそんな。 混乱する人々に対して、アンリエッタの言葉は続く。 「驚かれていることでしょう。わたしも最初は信じたくはありませんでした。ですが、考えてみてください。このハルケギニアを、ヤプールのような侵略者が我が物としようとするならば、誰を抑えるのが一番都合がよいのかと? そして、教皇が侵略者の手先であるという確かな証拠をお目にかけましょう。どうか、空を見上げてください」 人々は言われるがままに空を見上げ、屋内にいた者も一様に外に飛び出るか窓を開いた。 もう人々の関心はただ一点に集中していた。すなわち、ハルケギニアの民にとって絶対である教皇と、敬愛する女王のどちらが正しいのかと? それは自らの運命にも直結する。証拠を見せてくれるというのであれば、見ないわけにはいかない。 国民の関心を一身に集めたアンリエッタは、街を見下ろす王宮のバルコニーで今、トリスタニアの民の前に身をさらしていた。 「女王陛下! 女王陛下! 女王陛下! 女王陛下!」 アンリエッタの視界を、数え切れないほどの民衆が蟻の群れのように埋めている。トリスタニアの道という道には人があふれ、屋根にも多くの人が上っているのが見える。トリステインの人口からすれば氷山の一角に過ぎないはずだというのに、アンリエッタはまるで全世界の中心に自分が放り込まれてしまったかのような錯覚を覚えた。 ”お母様、ウェールズ様、どうかわたしに勇気をくださいませ” 表情には毅然とした気高さを見せながらも、内心では押しつぶされそうなプレッシャーとの戦いが続いている。いくら彼女が若くしての名君と世間ではたたえられていても、心のうちはまだまだ未熟さを残す十代の少女なのだ。 できるならば逃げ出したい。しかし、逃げるわけにはいかない。後ろでは、マザリーニ枢機卿や大臣らが緊張した面持ちで見守っているし、見えない場所でもカリーヌやアニエスらが万一の暗殺や妨害を未然に防ぐために張り込んでくれている。失敗したとしても二度目はないのだ。 民もまた、女王陛下の言葉を一言も聞き逃すまいと緊張して待っている。ただの戦争の話であれば、裏路地の浮浪者などは我関せずと昼寝でもしているだろうが、今回は事と次第によってはトリステインという国が文字通り消し飛ぶかもしれないという大事態だ、影響を受けない者などいるわけもなく、日ごろはふてぶてしい態度をとっている裏路地の武器屋の親父も落ち着かない様子で空を見上げ、荒くれの集まるチクトンネ街でも魅惑の妖精亭の全員が外に出て王宮の方角を望んでいた。 「お父さん……」 「大丈夫よ、ジェシカちゃん。私たちは女王陛下を信じる、それを忘れちゃいけないわ」 不安げな少女たちには、スカロンの厚化粧でたらこ唇な顔がなぜか頼もしげに見えた。なお、ドルチェンコ、ウドチェンコ、カマチェンコの三人は先日実験で屋根裏部屋を吹き飛ばしてしまったために店中の掃除をずっとやらされているが、まあこいつらは例外であろう。 誰もが、アンリエッタの言葉を今や遅しと待ち構えている。そしてアンリエッタは、従者に持たせてきた宝箱から奇妙な形の首飾りを出して高く掲げた。そう、才人が六千年前からミーニンに託して送ってきた、あの首飾りである。 「皆さん、この世には始祖ブリミルの残した四つの秘宝があることをご存知でしょうか。偉大なる始祖ブリミルは、その血を引き継ぐ我ら子孫のために自らの魔法の力を封じた秘宝を残しておいてくれたのです。我がトリステインには始祖の祈祷書が伝わっていることは知ってのことと思います。本来ならば、四つの秘宝を持つ四人の選ばれし始祖の子孫が世界の危機を救うはずでした。しかし、アルビオンは内戦で荒れ果てて秘宝すら行方知れずとなり、ガリアにはあの邪悪なジョゼフ王がのさばっています。残念ながら、始祖の秘宝が揃う望みはありません。教皇は、そこにつけこんだのでしょう。ですが、秘宝には実は五つ目があったのです。懸命なる始祖ブリミルは、世界に危機が訪れることがあったとき、万一に四人の子孫と四つの秘宝が揃わないことがあった場合のためを考えて、切り札を残してくれたのです。この始祖の首飾りがそれです! そしてこの秘宝に秘められた力と、始祖ブリミルの本当の意思を見てください」 アンリエッタはそう言うと、始祖の首飾りを高く投げ上げた。するとどうか、首飾りはひとりでにぐんぐんと空へと昇っていくではないか。 光りながら上昇していく首飾りを、トリスタニアの人々はあっけにとられて見上げ続けた。 そして、首飾りが不気味にうごめく虫の雲に到達したとき、奇跡が起きた。 「おおっ、そ、空が!」 首飾りが暗雲に触れた瞬間、まばゆい閃光が走り、空が晴れた。例えるなら、まるで油を張った水面に洗剤を一滴垂らしたときのような鮮やかさで、首飾りに触れたところから円形に暗雲が消滅していき、そこから青空が、太陽が輝きだしたのだ。 「おお、太陽だ! 太陽だ! お日様だ!」 今までどんなことをしても晴らすことのできなかった虫の雲が、始祖の首飾りから放たれる光にかき消されていく光景は見る間に広がり、トリスタニアからラグドリアン、魔法学院、ラ・ロシェールまですべてを含み、トリステインは懐かしの陽光に照らし出された。 人々は歓喜に震え、森は緑に輝き、動物たちは駆け、魚は水面に飛び跳ねて、久しぶりの生命の源泉をその身いっぱいに浴びる。 これは、これは奇跡か。女王陛下は、始祖の秘宝は奇跡を見せてくれているのかと、半信半疑だった人々は、アンリエッタの言葉を信じようと思えてきた。 そのときである。空を見上げる人々の耳に、ゆっくりとした若い男の声が聞こえてきたのは。 『皆さん、未来の皆さん。僕の声が聞こえていますか? 僕の名はブリミル。ブリミル・ル・ルミル・ニダベリールという者です』 え? 人々は自分の耳を疑った。今の声は、どこから? 空から? いやそれより、今の声が名乗った名前はまさか! 動揺する人々の耳に、空からの声は子供に語りかけるようにゆっくりと穏やかな声色で続く。 『未来の、僕がハルケギニアと名づけた土地に住む、僕らの子孫の皆さん。君たちからして過去の時代から、このメッセージを君たちに送ります』 過去の時代から!? ということは、やはり声の主は……始祖ブリミル! ハルケギニアの民にとって最大の聖人の言葉に、人々のあいだに緊張が走る。本当に始祖ブリミルなのか! そんなまさか……いや、聞いてみればわかる。 『僕らの血を次ぐ子孫の皆さん、残念ながら、この秘宝の封印が解かれ、このメッセージをあなたがたが聞いているということは、世界に未曾有の危機が訪れたことを意味するのでしょう。僕らの時代でも、世界は滅亡の危機に陥りました。僕は、君たち子孫にそんな辛い思いをさせたくはなく、僕の力の一端を封じたアイテムを後世のためにいくつか残すことにしました。この秘宝に封じた魔法はふたつ……そのうちのひとつ、記録(リコード)の力で皆さんに僕の声を届けています。そして、見てください』 空に、まるで天地を逆さまにしたように別の風景が蜃気楼のように映し出された。それは、荒れた空と荒廃した大地がどこまでも続き、廃墟と化した街々が連なるばかりの、滅亡した世界。その地獄のような光景に、人々は戦慄した。 『これが、僕らの生きている時代の世界です。今や、数百万を誇った世界の人口は、僕の仲間たちの百人ばかりを除けばほとんど残っていないでしょう。僕は、この世界を復興するために旅をしているのです』 完全に滅亡した世界の、あまりに凄惨な光景は、人々に今のハルケギニアの将来を想像させた。だがこれはハルケギニアの過去の姿だという。この光景を見ていたブリミル教の神父らの中には、これこそトリックなのではと疑いを持つ者も数多くいたが、そういえば始祖ブリミルがハルケギニアの基礎を築いたということはブリミル教の基本であっても、具体的に始祖ブリミルが何をやったのかということは、教義があいまいで彼らさえ知らなかった。第一、空に過去の風景を映し出す魔法など、始祖の虚無の系統でもなければありえない。 やはりこれは、始祖ブリミルの生前の肉声なのか……人々はごくりとつばを飲み込む。そして、始祖ブリミルの残したもうひとつの魔法とは。 『そして、この秘宝に込めたもうひとつの魔法の名は分解といいます。これは万物を形作る最小の粒に働きかけ、そのつながりを忘れさせてしまうのです。すなわち、この魔法を受けたものは、いかに頑丈であろうとも関係なく消滅してしまうのです。使いようによっては、非常に大きな力となってくれることでしょう』 始祖の声による説明に、平民はただ感心し、貴族たちはなんと恐ろしい魔法があったものかと戦慄した。 あらゆるものを、その強度を無視して消滅させる。そんなことができるのならば、まさに無敵ではないか。 しかし、ブリミルの声は人々に釘を刺すように重々しく響いた。 『ただし、心しておいてください。この秘宝に込められた力は無限ではありません。なによりも、僕はこの命のあるうちに可能な限りの遺産を君たちに残したいと思っているけれども、それを生かすも殺すも君たち次第だということを。遺産を平和のために用いるもよし、一時だけの儚い夢に費やすもよし、僕は君たちに道を示すことはできるけれども支配者ではない。どんな姿のハルケギニアを作っていくかは、子孫の君たち一人一人の選択と努力にかかっているんです』 ブリミルの口調は穏やかだが、中には断固としたものが込められていて、人々に重責を感じさせた。 『僕が名づけたハルケギニアで、どんな未来がつづられていくかは僕にもわかりません。なぜなら、未来は人間の自由な選択によって作られていくからです。そこに決まった未来なんてない。あなた方すべての小さな選択の積み重ねによって、未来はいくらでも形を変えていきます。僕らだってそうです……僕は、虚無の系統という大きな力を持って生まれてきましたが、僕は誰かに言われたわけではなく、ただ苦しんでいる人を少しでも救えればと思い、旅をしています。君たちの身に降りかかっている危機がどれほどのものであろうとも、まずは皆さんの誰もが心の中に持っている、小さな良心の訴えを聞いてから道を決めてください』 迷ったときの道しるべは、自分の心の中に用意されているものだとブリミルの声は言っていた。 『そして最後にひとつ、僕はこの時代のハルケギニアを、この命の続く限り立て直していこうと誓っていますが、人の人生は短く、君たちの世代までに問題を残してしまうかもしれない。だから、身勝手だけれど君たちにお願いします。僕が初めてこの地を訪れた頃は、この地は平和で、豊かで、誰もが幸福に暮らす素晴らしい世界でした。ですが、この時代の人間たちは、その幸せの大切さを当たり前に思いすぎ、守る努力を怠った結果、この世界はヴァリヤーグという強大な侵略者の手の中に落ちてしまいました』 ヴァリヤーグ……この時代のヤプールのような侵略者が、始祖の時代にもいたというのかと人々は思った。 『僕は残りの生涯の中で、なんとしてでもヴァリヤーグだけは倒します……だからお願いします。僕らの世代で起きた過ちを、未来で決して繰り返してはいけない。平和や幸せは、待っていれば来るものではなく、誰かに与えてもらうものでもない。この世界に生きるものすべてが苦しみながら手に入れるべきものなのです。そう、この世界は多くの人が苦しみながら生きている。最大の敵は常に自分自身……君たちがどんな敵を相手にしているにせよ、自分が苦しんでいるのと同じように誰かが苦しんでいることを忘れないでください。そうすればきっと、あなたは誰かに優しくなれる……僕だって、ひとりで戦っているわけじゃない。長い耳を持つ人、翼持つ人、ほかにも様々な人に支えられて生きています。いつかヴァリヤーグとの戦いが終われば、彼らの子供たちが皆さんにつながっていくのでしょう。そうして未来の世界で、僕らの子孫たちが互いに助け合って平和に生きる時代を作り、守ってください……それが僕の変わらぬ願いです』 ブリミルの言葉はそれで終わり、空からは幻影が消えて元に戻った。 人々は、まるで夢でも見ていたかのように呆けて固まってしまっている。今見たもの聞いたものが真実だったのか違うのか、答えられる者はいなかった。 しかし現実は常に人間の都合などお構いなしで歩を進める。始祖の首飾りの効力で晴れたと思われた空が、またも沸いてきた虫の雲によって覆い隠されていったのである。 「ああっ、空がっ! せっかく晴れたのに」 やっと見れた太陽を再び隠されたショックは大きく、ひざを突いて落胆してしまった者もいた。ようやく、我々の上に光が戻ってきたと思ったのに、また昼なのに闇に閉ざされなくてはいけないのか。 けれども、落ち込む人々を励ますように、再びアンリエッタの声が魔法の通信機材から流れ始めた。 「皆さん、今の光景を忘れないでください。あれこそが、時代を超えて今に届けられた始祖の力とその意思です。残念ですが、始祖の首飾りに秘められた虚無の魔法はあくまで始祖の力のほんの一部。暗雲を生み出す元凶が残っている限り、ハルケギニアに太陽を取り戻すことはまだできません。しかし、皆さんはご覧になったはずです。始祖ブリミルが時代を超えても伝えたかったメッセージを!」 人々ははっとして、たった今見て聞いたばかりの記憶を呼び起こし、アンリエッタの声に耳を傾けた。 「始祖ブリミルは、六千年の昔に、わたしたちよりさらに苦しい戦いを強いられながらも、わたしたちにこのハルケギニアという世界を残してくださったのです。そればかりか、遠い未来のわたしたちのことを案じて、こうして遺産を残してくださいました。なんという親心でしょう……この秘宝は、先日アルビオン王家の宝物庫の封印から発見されました。同封されていた、秘宝の使い方を記した手紙には、使い方に混じって現代のわたしたちを心配する言葉であふれていました。発見された秘宝は、わたしが今使ったものを含めてふたつ。今頃はアルビオンでも、我が夫であるウェールズ国王陛下が同じように秘宝の力を示していることでしょう」 そのとおり、アルビオンでもアンリエッタの言ったとおりに、ウェールズによって同じことが行われていた。 人々の反応もおおむね同じで、トリステインとアルビオンを合わせて数千万の人口がふたりの王族によって見せられた奇跡を目の当たりにして心を奪われていた。 これこそまさに奇跡、神の力だ……始祖ブリミルは、やはり偉大な聖者だったのだ。そしてトリスタニアやロンディニウムで直接始祖の首飾りを見た人々の中には、あのハルケギニアでは見たこともない不思議な色彩を放つ首飾り、あれこそ神の御技によって作られた神器だと、心から感動して涙を流していた者もいた。 が、彼らにはすまないことではあるが、始祖の首飾りにはあるとんでもない曰くがあった。 それは、六千年前のアルビオンでブリミルや才人たちがミーニンを封印する前のこと。才人は未来に当てて手紙を出すのはいいとしても、せっかくこの時代から贈り物ができるのだから、何かほかに役に立てるものがないかと考えた。そこでブリミルが才人に、僕が将来ハルケギニアで偉人扱いされているのならば、僕の魔法を込めた品を贈れば役に立つのではないかと提案したのだ。 「なるほど、そりゃあ名案ですね。あ、でも貴重な魔法の力をこんなことのために浪費させてしまったら」 「なあに、最近は温存できていたし、このオアシスでたっぷり休めたおかげで魔力は十分さ。仲間のために役立てなくて、なんの魔法だい? 遠慮なんかしなくていいよ、万一なにか起きてもサーシャも万全だし、なあ」 「はぁ、まったくあなたはほんとに楽天家でお人よしなんだから。まあいいわ、ただしせっかくやるならそれなりのものを残さないと未来に恥をかかせることになるわよ。なにかなかったかしら? と、言っても私たちの持ってるのはほとんどガラクタばかりだしねえ」 サーシャの言ったとおり、放浪の旅をしているブリミルたちには見栄えのいいものはなにもなかった。生きるために必要のないものは極力持たず、必要最低限の物資しかないのでは、いくらブリミルの魔法を込めても少々みっともない。 これは困ったな。才人はなにか適当なものはないかとパーカーのポケットの中を探ってみた。すると、しばらく触っていなかった内ポケットの中に手ごたえがあったので引き出してみたところ、ブリミルたちの目が丸くなった。 「おやこれは。ずいぶんと鮮やかな色の紐だねえ」 「こいつは……ああ思い出した! 俺のケータイにつけようと思ってた首掛けストラップだ。秋葉原でパソコンの修理のついでに買って、そのまま入れっぱなしにしてたんだった……ん? ブリミルさん?」 ここまで来たらおわかりであろう。ポリエステル製で鮮やかな色をしたネックストラップならば『現代』のハルケギニアでもありえない素材であり、わかりやすく派手なので適当だと即決されたのである。 そうなると後はブリミルもサーシャも切り替えが早かった。ネックストラップの色彩はそのまま目立つようにして、本来ならば携帯電話を下げるところにサーシャがありものの素材で『それっぽい』飾りを作って、ブリミルが魔法を込めることで、始祖の首飾りと銘打たれたマジックアイテムは完成したのである。 ちなみに製作時間は七十五分で、材料の値段は二本入りパック百五十円(税別)である。 「うーん、これはいい出来だ。僕が作った中では最高の出来じゃないかな。サーシャ、君はどう思う?」 「そりゃいい出来に決まってるじゃない。なんたってこの私がデザインしたのよ。サイトもほら、もーっと褒めてもいいのよ」 「は、はは、そうですね……なんだろう、この胸のチクチクする感じは」 未来を救う必殺のアイテムが完成したはずなのに、ぜんぜんありがたみというものを感じられなかった。ブリミル教徒であれば、たいへんに光栄な場面に居合わせられたのだろうけれど、才人の口からは乾いた笑いしか出てこない。 なんかこう、こういうものを作るときには特別な儀式とか、アイテムを秘境にゲットしに行くイベントとかがあってもよかったんじゃないか? いや、前に水の精霊の涙をもらいに行ったときの苦労を思えば、簡単にいくならそのほうがいいってわかっちゃいるんだけど、なんかこう……あるじゃんか。 魔法の力を秘めたアイテムというものは、おおかたのアニメやらゲームやらで特別な存在であるもんだろと才人は思う。それをこうもたやすく作るあたり、ブリミルはすごいメイジであるんだろうけれど、なんか納得いかない。 が、ブリミルとサーシャは才人の憂鬱などどこ吹く風で、始祖の首飾りが思ったよりうまく出来上がったことで気をよくしてとんでもないことを言い出した。 「ううむ、あまり試したことはなかったけど、僕ってマジックアイテム作りの才能があるのかもしれないな。よーし、こうなったら他にもいろいろ作ってみようかな。そうだ! 僕の魔法を記した本に、必要なときに大事なことだけ読める魔法をかけておけばなんかすっごく便利じゃないかな。名づけて始祖の祈祷書、なんちゃって」 「あんたの魔法を記した書って、あれあんたのばっちい日記帳じゃない。そんなのなら、子供たちのオルゴールに魔法をかけて鳴るようにしてよ」 「えーっ、そういうのはどっちかというと君の魔法のほうだろ。やっぱりこういうアイテムは趣がなくちゃいけないよ。そうだ、この城に鏡と香炉があったけど、それならどうかな」 「それって粗大ゴミ置き場に捨てられてたやつじゃないの。そういうのは趣じゃなくてただのボロって言うのよ。そんなものよりさぁ……」 と、ふたりはかんかんがくがく楽しそうにオリジナルの魔法アイテムの作成について話し合っていた。それを見て才人は「子孫の皆さん、本当にすみません」と、良心の呵責に涙さえ流していたという。 始祖の秘宝の誕生の秘密に触れているというのに、ぜんぜんワクワクもドキドキもしない。というか、こんなひどい光景を見たことがない。いわしの頭も信心という言葉もあるにはあるが……伝説の正体なんてこんなものかもしれないなあと、才人はぼんやりと思うのであった。 ただ、それでも才人はブリミルたちを悪くは思えなかった。 ”まっ、いいか。秘宝の正体なんて、未来じゃどうでもいいことだし。それに、ブリミルさん……首飾りが届くかわからないのに、未来に向けたメッセージは本気で考えてくれたもんな” ブリミルの仲間を思う気持ちは本物だと、才人は首飾りに記録の魔法でメッセージを残していたときの彼の真剣な表情を思い出していた。 思いが本物であれば、その見てくれなんかは些細な問題でしかない。たとえそれが、原価百五十円(税別)であったとしてもだ。 頭の中を切り替えた才人は、その後ミーニンを送り出した後に、再びブリミルたちと旅立つことになる。ハルケギニアの、まだまだ解き明かせない謎を探すために。 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
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壊れた心の鎖 No.174 種別 トリック 聖霊力 Lv6 HAND 0 Power 100 PowerBonus 500+活発 レアリティ コモン 勢力 ウァルキュリア 効果 戻る
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ある男の家に、一匹の赤ちゃんれいむがいた。 これは、ゆっくり愛好家である男の家に暮らしていたゆっくり一家の末子である。 一家が親子水入らずでハイキングに出かけたある夏の日、里一帯は午後から急な夕立に見舞われた。 それ以来、ゆっくり一家は帰って来なかった。 男は信じたくなかったが、おそらくは隠れる場所の無いところで雨に降られ、全滅したのだろう。 しかし生まれて間もないこの赤れいむだけは、部屋の物陰で寝過ごしており、 ハイキングに行きそびれて運良く生き残ったのであった。 家族がいつまでも帰って来ないことに、赤れいむは夜通し泣きじゃくり、男もつられて涙をこぼした。 男は、一家の忘れ形見であるこのれいむだけでも大切に育てようと思った。 さて、ある程度育ったゆっくりならいざ知らず、赤ゆっくりの育て方を男は良く知らなかった。 なので、母ゆっくり達がいた頃の飼育法を見よう見真似でやってみるしかなかった。 赤ゆっくりは食べ物をうまく消化出来ないことがある。 なので、食べ物は親ゆっくりが一旦咀嚼し、ある程度餡子に変えた状態で与えるのだ。 少なくとも、男が見ていたゆっくり親子はそのようにしていた。 男もそれに倣い、野菜など歯ごたえのあるものは、自分が咀嚼して吐き出したものを与えた。 本来ならすり鉢などですり潰せば良いだけだろうが、今は自分が親代わりなのだ。 ゆっくりなりの親子のコミュニケーションというのを体験させた方が生育上良いと思った。 赤れいむも、そうして与えられた物を喜んで食べた。 餡子には変わっていなかったが、噛み砕かれた食べ物は赤れいむでも消化出来たようだった。 そのように男は一つずつ、親ゆっくりから学び取った赤ゆっくりの育て方を実践していった。 半年が経ち、男の世話の甲斐あって、れいむも立派なゆっくりに成長した。 すでにバレーボールほどの大きさがある。親に似た、心豊かなゆっくりである。 度々外に遊びに行っていたので、運動能力も充分。虫を追いかけて捕まえることも出来た。 ある日れいむは、男に対してこのように言った。 「おにいさん、いままでれいむをゆっくりさせてくれてありがとう! れいむはもうひとりでもいきていけるよ!だからもりにいってみようとおもうよ! ばっぢがあるともりのゆっくりとゆっくりできないから、ばっぢをゆっくりとってね!」 突然の申し出に男は驚きつつも、言われた通りに飼いゆっくり証明バッヂを取ってやった。 「本当に行くのかい? ずっと家でゆっくりしていっても良いのに」 「ゆ!でもれいむは、おかあさんやおねえちゃんたちをさがしてみようとおもうよ! もうしんじゃったかもしれないけど、もしかしたらいきているかもしれないよ!!」 「そうか……一緒にいられないのは残念だが、そういうことなら仕方ない。 餞別にお菓子を持たせてあげよう。それと雨には気をつけるんだよ」 「ゆっ!おにいさんありがとう!れいむはいってくるよ!!」 またいつでも帰って来いよ、と言って男は旅立つれいむを見送った。 れいむがもらったお菓子は飴だった。れいむは飴を一粒舐めながら道を歩いていった。 しばらくして、近くに川の流れる林道に出た。この辺りはお母さんと一緒に一度来たことがある。 そう思って歩いていると、口から飴をこぼしてしまった。道を外れ、なだらかな坂を転がっていく飴玉。 れいむが目で追っていると、坂の下にいた二匹のまりさ達が飴を拾って舐めていた。 「しあわせー!」と言っては吐き出し、二匹で回し舐めしている。 そしてれいむと目が合った。せっかくなのでれいむも坂を下り、まりさに話を聞くことにした。 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「このへんではみないれいむだね!」 「れいむはにんげんにかわれていたんだよ。でもさっきひとりだちしてきたんだよ。 そのあめもにんげんがくれたんだよ」 「ゆっ!もっともってたらまりさにちょうだいね!」 「いいよ!でもれいむのしつもんにこたえてね! はんとしぐらいまえ、このあたりでゆっくりのいっかをみなかった?ばっぢをつけてるいっかだよ!」 「ゆゆ?まりさはむかしのことなんておぼえてないよ!」 「そういうのはぱちゅりーにきいてね!」 ということで、れいむはまりさ達の群れに案内され、群れの長であるぱちゅりーの前に通された。 ぱちゅりーは他のゆっくりに比べて知能が高く、記憶力も良いらしかった。 れいむが事情を話すと、すぐに答えが返ってきた。 「むきゅ!たしかにみたわね!このもりをぬけたはらっぱでゆっくりあそんでたわ!」 「ゆゆゆっ!ほんとう!?」 「ゆん!でもおおあめにふられて、みんなとけちゃったみたい。これがそのときのこったばっぢよ! にんげんよけになるかとおもったけど、ゆっくりだけではつけられないからとっておいてるの」 そう言うとぱちゅりーは、巣の奥から沢山の飼いゆっくりバッヂを運んできた。 ちょうど家族の人数分あり、親姉妹達のもので間違いなさそうだった。 れいむは親たちが生きているというわずかな可能性を断ち切られ、意気消沈した。 「ゆ~・・・やっぱりれいむのおかあさんたちはもういないんだね」 「ゆっ、れいむ!げんきだしてね!」 「まりさたちがともだちになってあげてもいいよ!!」 「むきゅ、そうね!いくあてがないなら、わたしたちのむれでゆっくりしてもいいのよ!かんげいするわ!」 「ゆっ!そうさせてもらうね!これからよろしくね!」 しかし家族の死を確認出来たことは、前へ進むために過去を吹っ切ったという意味も持っていた。 れいむは森の群れの中で、野生ゆっくりとしての新しい生活を始めた。 他のまりさと仲良くなってつがいになり、ゆっくりしたかわいい赤ちゃんを沢山産んだ。 時には他所の一家の親が狩りに行っている時、その子供の面倒を見たりもした。 長ぱちゅりーが体調を悪くした時も、群れのみんなで交代して看病をした。 家族を失ったれいむにとって、群れというコミュニティでの生活は、心の充足をもたらした。 れいむはとてもゆっくりできていた。 れいむが群れに馴染んで来てしばらくした頃、群れの中である奇病が報告された。 突然口の中が痛いと言い出すゆっくりが現れたのだ。 しかし一見口の中に怪我などはなく、原因は不明とされていた。 一応、ぱちゅりーが薬草として知られている草をいくつか食べさせたが、効果は薄かった。 発症したゆっくりの痛みは日に日に増していくようだった。 「ゆぎい゛ぃぃぃぃぃぃ!!いだい!!いだいよぼおおおぉぉぉ!!」 「まりさ!おちついてね!ごはんをたべてゆっくりねたらきっとなおるからね!!」 「いや゛だびょぉぉ!!ごばんだべだぐないぃぃぃぃ!!だべるどいだいのぉぉぉ!!」 「ゆゆっ・・・どうずればいいのお゛ぉぉぉぉぉ!?」 あるまりさの一家などは大パニックであった。大黒柱である親まりさが奇病を発症し、 三日三晩のた打ち回った挙句、やがて餡子を吐き出して死んでしまった。 それはれいむが初めてこの群れに来た時、友達になってくれたあのまりさであった。 こうなると群れは恐慌状態である。やがてその家の子まりさまでもが痛みを訴え出した。 「ゆ゛~!ゆ゛~!いちゃいよおかあしゃん!」 「ゆっくりでぎないよぉぉぉぉ!!」 「ゆゆゆ!みんながまんしてね!ゆっくりなおってね!なおらないとまりさおかあさんみたいにしんじゃうよ!!」 「「ばりざじにだぐないよぉぉぉぉぉ!!」」 「むきゅ・・・もしこのびょうきがどんどんうつったら、むれのみんながゆっくりできなくなってしまうわ。 かなしいけど、なおすほうほうがみつかるまでどこかにでていっていてもらうしかないわね」 「どぼじでぇぇぇぇ!?まりざだちなんにもわるいごどしでないよぉぉぉぉ!!」 「うるさいよ!おまえたちはいるだけであぶないんだよ!」 「まりさたちといるとゆっくりできないよ!ゆっくりでてってね!!」 病気を恐れた群れのゆっくりたちは、一家を追い出して隔離してしまった。 れいむは心苦しかったが、群れを守るためだと自分に言い聞かせ、みんなと一緒に病気の家族を追い立てた。 さて、そうなると事態は深刻である。痛みを訴えれば、病気の感染者として群れから隔離されるのだ。 事実、その後も激しい痛みを訴えたゆっくり達が、家族ごと群れから追い出され、森の奥へと隔離されていった。 そんな雰囲気の中なので、口の中が痛み出したゆっくり達も、しばらくは痛みを我慢して黙っていた。 発症するのは子ゆっくりや赤ゆっくりが多かったため、両親は喚くわが子の口を封じるのに一苦労である。 中には自分達が追い出されない為に、痛みを訴える子供達を巣の奥に押し込めておく親ゆっくりもいた。 それだけならまだしも、痛みに暴れまわるわが子を思わず押し潰してしまう親までいたのだ。 また今は健康な他のゆっくりも、どこから感染し、いつ自分も発症するかわからない。 自然とゆっくり同士のコミュニケーションは減り、群れの縄張りは静かになっていった。 今や群れ全体がゆっくり出来なくなっていたのだ。 「ゆぅ・・・なんだかむれがばらばらになっていくよ。これじゃゆっくりできないよ」 「みんながもっとゆっくりできればいいのにね・・・」 れいむたち夫婦も、巣に篭もってごはんをもそもそと食べていた。 群れ全体を包む緊張感の中での食事は、ちっともしあわせではなかった。 もうすぐ冬がやってくる。越冬の為にみんなで協力し合わなければならない時に、こんな調子では…… その時、子れいむの一匹が木の実を食べて「ゆ゛っ」と呻いた。 「おかあさん・・・なんだかおくちのなかがいたいよ・・・」 「ゆっ!?」 「まりさも!まりさもいたいよ!!」 「なんだかゆっくりできないよ!」 「ゆ゛ゆ゛っ!!おちついてね!!きのせいかもしれないよ!」 「ぎのぜいじゃないよ!!いだいよ!!ごはんだべられないよ!!」 「な゛んでぇぇえ゛ぇぇ!?でいむおながへっでるのに゛ぃぃいいぃぃ!!」 「い゛ぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!!」 次々に騒ぎ始める子ゆっくりたち。痛みを感じていない子ゆっくりも、病気のことは知っているのだろう、 痛みを訴える姉妹たちから離れ、親にすがりつくようにして震えている。 れいむはどこか他人事だと思っていた脅威が、とうとう自分達の家族を襲い始めたことに戦慄した。 そして何より、自分の口の中にも何か違和感があることに気付いてしまったのだ。 いや、以前から気付いていたはずだ。しかし無意識のうちに気付かないフリをしていたのだ。 いたいいたいと泣く子供達を見ているうちに、その違和感が痛みに変わっていくのを感じた。 「ゆゆゆゆ!れいむもなんだかいたくなってきたよ!!」 「ぞんなぁぁぁ!れいむまでびょうきになったら、まりざどうすればい゛いのぉぉぉぉ!!」 「おかあしゃん!いたいよ!こわいよ!!」 「ばりざじにだぐないよぉぉぉぉぉ!!」 「なにごれぇぇぇぇ!!れいむなんにもわるいごどじでないのにぃいぃぃぃぃ!!!」 「ゆ゛っぐりざぜでよぉぉぉおおぉぉ!!」 巣の中はパニック状態だ。痛み自体はまだそれほどでもないのだが、家族が群れから追い出され、 ゆっくり出来なくなるというビジョンの恐怖が、混乱に激しく拍車をかけていた。 そしてやがて待っているのは、苦しみのた打ち回った末、餡子を撒き散らして死ぬ運命である。 あまりの恐怖に錯乱した一匹の子まりさが、叫びながら巣から飛び出していってしまった。 「ゆゆっ!ゆっぐりまってね!!いまそとにでちゃだめだよ!!」 「ばりざぁぁぁぁあのあかちゃんをづがまえでえぇぇぇ!!でいぶだぢゆっぐりじだいよぉぉぉぉ!!」 「ゆっ・・・わかったよ!!みんなはここで静かにまっててね!!ゆっくりなおってね!!」 「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・」 錯乱状態のれいむに頼まれ、親まりさが飛び出した子まりさを連れ出すことになった。 親まりさが巣穴の外に出てみると、辺りに他のゆっくりの姿は見当たらない。どこも同じような状況なのだろうか。 しかしそれなら好都合だ。他のゆっくりに見つかる前に連れ戻してしまえば、追放は免れるかもしれない。 足跡を辿って子まりさを追っていくと、林道に差し掛かった辺りで一人の若い男に捕まっていた。 (ゆゆっ!?あれはにんげんだよ!ゆっくりにげるよ!!) もう親まりさの頭の中は、子まりさを見捨てて恐ろしい人間から逃げることで一杯だった。 しかし腐っても我が子のことなので、もう少し遠巻きから様子を見てみる。 人間は、掴み上げた子まりさに何やら話しかけているようだ。 「おいおい、全然ゆっくり出来てねえゆっくりだな。血相変えてどうした」 「ゆががががが!!ゆっくりはなじでね!!ぐぢのなががいだくてゆっくりでぎないんだよ!!」 「口の中? 口内炎かなんか出来たのか? どれ、ちょっと見せてみろよ」 と言うや、男は子まりさの口を顎を外すような乱暴さで、上下にがばっと開いた。 子れいむは「ゆ゛ぎっ」とうめきを上げ、親まりさも一瞬恐怖した。 「あ~あ、こりゃひでえ。見事な虫歯だな」 「ふ、ふじば?ひゃにひょれ!?ぶっふりえぎる?」 「何言ってんのかわかんね。口の中っつーか歯が痛いんだろ? 虫歯は歯の病気だよ。 しかしゆっくりも虫歯になんてなるんだなあ。歯磨きどうしてるんだ? お母さんが磨いてくれなかったの?」 「ゆぶっ!だじがにはがいだいよ!!ふしばってなあに?はみあきなんてきいだごどあいよ!!」 「お母さんも歯磨きしてないのか? とするとゆっくりにはそもそも虫歯という概念がなかったのかな。 確かに俺も結構色んなゆっくりを見てきたけど、虫歯の心配してる奴なんかいなかったな。 ま、お前らのことだからどうせ人間の食べてる物でも横取りして食ったんだろ。 人間の口には虫歯のばい菌がいるからね。それで移ったんだ。自業自得だね!」 「ゆ゛ゆ゛!!ばりざにんえんのものなんへとっへないお!!もうゆっふりはなしへね!!」」 「まあまあ、せっかくだから俺が虫歯抜いといてやるよ。そらっ」 そういって男は、子まりさの口から歯を一本ブチッという音を立てて抜き去った。 それも一本だけではなく、太い歯を何本も何本も。 抜かれるたびに子まりさは「い゛があああああああああああ」と悲鳴を上げていたが、男はケタケタ笑うだけだ。 歯茎に空いた穴から餡子が噴き出し、男の手を汚す。 結局5、6本の歯を抜いてから、男は子まりさをべしゃっと投げ捨てた。 「い゛がい・・・・いだいよぉ・・・」 「は~あ、元から苦しんでるゆっくりを虐待しても面白くないね。 まあ良い悲鳴聞けたし、もう帰っていいよ」 「ゆぎぎぎいぃぃ!!しね!!ゆっくりできないにんげんはゆっくりじね!!」 「ゆっくりはてめえらだけでしてろ、カス」 悪態をつく子まりさを男は爪先で蹴飛ばし、道を去っていく。 吹っ飛んできた子まりさは親まりさに激突し、二匹は「ぶげっ」とうめいて餡子を吐いた。 「お、おがあざんんんんん!!どうじでだずげてぐれながっだのぉぉぉぉぉ!!」 「じがだないでじょおおおぉぉぉぉ!!にんげんにづがまっだらしんじゃうんだよおおぉぉぉぉ!!」 「がわいいごどもをだずげるのはとうぜんでじょぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」 としばらく言い争ってから、親まりさは本来の目的を思い出し、 他のゆっくりが現れる前に、子まりさを巣へと連れ帰った。 巣ではれいむと子供達が痛みと恐怖に震え続けていた。帰って来た二匹を目に留めたれいむは慌てて駆け寄る。 「ゆゆっ!ほかのみんなにはみつからなかった!?」 「だいじょうぶだよ!でもまりさのこどもはにんげんにつかまっていじめられたよ。はをいっぱいぬかれたよ」 「にんげんに!?ころされなくてよかったね!!」 「ゆぐ・・・ゆ゛ぐぅ・・・」 れいむが帰って来た子まりさを見ると、口元を餡子まみれにして涙ぐんでいる。 しかし家を飛び出す前と違って落ち着いているようだ。痛みはどうしたのだろうか。 「ゆっ?まりさ、もうおくちはいたくないの?」 「いだいよ・・・でもにんげんにはをぬかれたらすこじおさまっだよ。 まりさはおくちじゃなくてはがいたかったんだよ」 「は?」 そう言われると、口の中でも特に歯が痛むような気がしてくる。 ゆっくり達が歯の痛みに気付けなかったのは、ゆっくり特有の鈍感さ、大雑把さに加え、 虫歯というものを知らなかったので、歯が痛むという感覚に馴染みが無かったからだ。 しかし言われてみれば段々そんな気がしてきたのだ。 「ゆゆっ!たしかにはがいたいきがしてきたよ!!」 「れいむ・・・れいむはにんげんにかわれてたっていってたよね?」 「ゆ?そうだけど、それがどうかしたの?」 親まりさのれいむを見つめる不穏な目つきに、れいむはたじろいだ。 「さっきのにんげんは、まりさのくちがいたいのは“むしば”だっていってたよ。 ゆっくりはむしばにならないのに、にんげんからうつったんだっていってたよ」 「ゆ・・・?なにいってるの?むしばってなあに?」 「とぼけないでね!!」 いきなり親まりさはれいむに体当たりした。 まさかそんなことをされるとは思っていなかったれいむは簡単に吹っ飛ばされ、 後ろにいた子ゆっくりもれいむにぶつかって転がっていった。 「きっとれいむがにんげんのくちについたものをたべたからいけないんだよ!! れいむがかみくだいたあんこをたべたあかちゃんたちにもむしばがうつっちゃったんだよ!! れいむがむしばをむれのみんなにうつしたんだよ!!」 「ゆゆ!?」 そういえば、お兄さんはゆっくりの親がするように、一度噛み砕いて柔らかくしたものをれいむに食べさせてくれた。 そして自分も同じように、自分の家族だけでなく群れの赤ちゃんたちに、噛み砕いた餡子を食べさせていた。 更にこれはれいむも覚えていないことだが、最初に痛みを訴え出したまりさはれいむの落とした飴玉を拾って舐めていた。 これにより、そのまりさの家族および仲が良い家族の赤ちゃんなどは細菌に感染していくことになる。 本来ゆっくりはミュータンス菌などの虫歯の原因になる細菌を保持していないので、 どのような生活を送っても虫歯に苦しむことはない。しかし、一度何かの原因で他の動物から細菌に感染してしまえば、 食べている側から食べ物を餡子に変換するゆっくりである、虫歯が進行していくのはあっという間なのであった。 「れいむのせいでむれのみんなはゆっくりできなくなっちゃったんだよ!! にんげんにかわれたきたないゆっくりはゆっくりしね!!」 「ゆゆっ!!?どうじでぞんなごどい゛うのぉぉおお゛ぉぉぉぉ!!」 「ゆ゛ぅぅぅ!!まりざだぢのはがいだいのもおがあざんのせいだよ!!」 「きちゃないおかあさんからうまれたかられいむたちもゆっくりできないんだよ!!」 「ゆっくりできないおがあざんはゆっぐりぢねぇぇ!!」 親まりさは親れいむに激しい体当たりを始め、子供達もそれに便乗した。 家族によって巣から追い立てられ、やがて森の広場まで追い込まれたれいむ。 いつの間にか一匹の子供がぱちゅりーを呼び出しにいっており、その報を聞いた他のゆっくりも集まっていた。 れいむはまりさや子供達に叩かれ続けながら、ぱちゅりーに涙目で訴えた。 「だずげてばぢゅりぃぃいいぃぃ!!でいむのかぞくがいじめるのぉぉぉ!!」 「むきゅ!れいむ、こんなことになってほんとうにざんねんだわ!」 「!?なにいってるのぱちゅりー!?はやくみんなをとめてね!!」 「うるさいよ!びょうきをもちこんだれいむはゆっくりしんでいってね!」 「おまえのせいでみんなゆっくりできなくなったよ!!」 「おお、きたないきたない」 「ゆっくいしんえね!」 大小さまざまなゆっくりがれいむを取り囲み、罵詈雑言を浴びせていた。 みんなの怒りの渦の中で、れいむの思考は真っ白になっていった。どうしてこんなことに? れいむは今まで群れの為によく働き、みんなとも仲良く出来ていたはずなのに…… 「れいむ!あなたのせいでむれはめちゃくちゃよ! にんげんのかいゆっくりなんてなかまにしたのがまちがいだったわ!!」 「なんでばぢゅりーまでぞんなごどい゛うのぉぉぉぉおおぉぉぉ!? でいぶなんにもわるいごどじでないよぉぉぉぉおお゛ぉぉぉぉ!!」」 「むぎゅうう!みぐるしいわ!!おまえをむれにおいていくわけにはいかないのよ!! ゆっくりしないででていきなさい!!ころされないだけありがたくおもってね!!」 「ぞんなああ゛ぁぁぁぁあ゛ぁぁぁぁぁ!?」 普段は温厚なぱちゅりーからは考えられないほどの暴言であった。 それもそのはず、実はぱちゅりーの歯も数日前から痛み出していたのだ。 虫歯の痛みとそこから来る怒りが、ぱちゅりーから冷静な思考力を奪っていた。 ぱちゅりーの合図で何匹ものゆっくりが飛び出し、れいむにボコボコと体当たりを仕掛けた。 れいむはそのまま巣の縄張りから押し出され、「にどとはいってこないでね!!」と唾を吐かれ、 ボロクズのように捨てていかれた。辺りには小雨が降り出していた。 「ゆぐうぅぅぅぅ・・・どぼじでごんなごどにぃぃぃぃ・・・」 れいむはまたしても家族を失ったのだ。それもみんなに憎まれるという最悪の形で。 残ったのは全身の傷と、口の奥底から無限に湧き上がってくる虫歯の痛みだけ。 とにかく、雨を凌ぐためにゆっくり出来る場所を探さなくてはならない。 れいむはべちょべちょになりながら、森の中を這うように跳ねて行った。 やがてれいむは、木の下に住居を構える一匹のまりさの姿を見つけた。 「ゆ!あめがやむまですこしやすませてね!」 「いいよ!ゆっくりしていってね!!」 まりさは快くれいむを受け入れてくれ、れいむにはそれが心に沁みて嬉しかった。 木の下の巣はとても暖かく、雨の冷たさに感覚を失ったれいむの肌をじわりと癒していった。 まりさはまだ少し小さいようだったが、他の家族の姿は見当たらなかった。 狩りにでも出ているのかと思ったが、この天気なら帰って来ても良さそうだし、巣の中も家族がいるにしては質素だった。 「いまからごはんにするところだよ!いっしょにたべようね!」 「ゆ~?まりさのかぞくはいないの?」 「ゆ・・・おかあさんもおねえちゃんもみんなおくちのびょうきでしんじゃったよ!」 「ゆ゛!?」 「まりさはげんきだけど、かぞくのびょうきのせいでむれからおいだされたんだよ。 だからほかのゆっくりとゆっくりするのはひさしぶりでうれしいよ!ゆっくりしていってね!」 一人で集めたであろう、とても多いとは思えない備蓄かられいむの分もご飯を並べ、 無垢な笑顔を向けてくる子まりさ。れいむは愕然としていた。このまりさは自分達が群れから追い出したまりさの子供であった。 そしてこんなに優しいまりさから家族を奪い、ゆっくり出来なくしたのは自分なのだ。 その自覚は、みんなにお前のせいだと喚き立てられるよりも、ゆっくり確実にれいむの心を苛んでいった。 「ゆっくりたべてね!」 「ゆっ・・・むーしゃ、むーじゃ、じあわぜぇぇ~~!!」 「ゆゆっ!そんなにおなかすいてたの?」 れいむの滂沱の涙に、驚きつつも楽しそうに笑う子まりさ。 れいむの歯は相変わらず痛んだが、そんなものは心の痛みに比べれば大した痛みではなかった。 食後も二匹は互いに頬ずりしたり、巣の中で飛び跳ねたり、お歌を唄ったりして過ごした。 子まりさとれいむにとって、久々に思う存分ゆっくりできる時間であった。 結局雨は夜まで降り続き、子まりさはれいむに泊まっていくよう促した。れいむもその言葉に甘えた。 二人は寄り添うようにして寝床に就いた。だが子まりさのゆぅゆぅという寝息が聞こえても、れいむは寝つけなかった。 「ゆ・・・なんでこんなことになったのかな・・・」 ゆっくりの口癖であるこれは、必ず物事の責任の所在をどこかに見つけ出すことで、 自分がゆっくりすることを正当化したがるという習性に由来するものである。 れいむはゆっくりの中では聡明な方であったが、所詮ゆっくり。餡子脳の限界には勝てなかった。 今までは自分が悪いのだという気がしていたが、断続的に自分を苛む虫歯の痛みが、 自らも理不尽な暴力の犠牲者であるというような被害意識を刺激し続けていた。 その感情はやがて、自分のかつての恩人であるお兄さんへの恨みへと転化していった。 そうだ。あのお兄さんが自分にばいきんを移したから、自分は今激痛に苦しまされている。 しかも仲が良かった群れをめちゃくちゃにし、この子まりさや自分から家族を奪い、不幸のどん底に追い込んだ。 全部あのお兄さん……いや、ばかなにんげんのせいではないか。 そのせいで自分は、多くのゆっくりの恨みを買い、要らぬ良心の呵責と歯の痛みに苦しまされているのだ。 自分には何の責任も無い。いやしくもゆっくりの親の真似などした、あの人間が全て悪いのだ。 朝になって目覚めた子まりさの隣に、れいむの姿は無かった。 小雨の夜のことである。 あるゆっくり愛好家の男の家の戸を、何者かが激しくどんどんと叩いた。 「誰だろう? こんな夜中に……」 夢の入り口から引き戻された男は、開ききらない眼を擦りながら玄関へと向かった。 新たに飼い出したゆっくりれいむも目が覚めてしまったらしく、不安そうに玄関を眺めている。 「ゆぅ・・・おにいさん、なんだろう?」 「ちょっと様子を見てくるから。れいむはそこでゆっくりしててね」 男の家は村の外れにある。通りがかりの旅人が訪ねて来たり、急病人に軒を貸すことも少なくない。 今回もその類だろうかと思いつつ、男は玄関の扉を開いた。 「ゆ゛がぁぁぁぁああ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!」 「うわっ!? ゆ、ゆっくり?」 飛び込んで来たのは、憤怒に顔を歪ませたれいむであった。 大きく剥かれた歯は虫歯によってガタガタに変形し、顔全体の禍々しさを一層増している。 そんなゆっくりの恐ろしい形相に男は気圧され、思わず腰を抜かしてしまう。 すかさず飛び掛り、激しく連続で踏みつける虫歯れいむ。 「おまえがっ!!おばえのぜいででいぶはぁぁぁぁっ!!」 「ちょ、ちょっと痛い痛い!」 「じね!じね!!ばがなにんげんはゆっぐりじないでじねぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!」 「ゆっ!おにいさんにらんぼうしないでね!!」 その様子を見ていた飼いれいむは、闖入者に体当たりをぶちかまし、家の外まで吹っ飛ばした。 水を吸ってぬかるんだ地面に叩きつけられた虫歯れいむは、泥まみれになりながらも起き上がり、男を睨み付けた。 その形相の異常さと、ゆっくりなんてどれも変わらんという理由から、男はそれがかつて飼っていたれいむだとは微塵も気付かなかった。 「ふぅ、びっくりしたなあ……有難う、れいむ」 「ゆっ!こんなにやさしいおにいさんをいじめるゆっくりなんてゆるせないよ!ぷんぷん!」 「ゆ゛ぎぃぃぃぃぃ・・・」 虫歯れいむは更に腹が立った。新しい飼いれいむは丸々と育っており、普段のゆっくりぶりが見て取れた。 自分が与えられていた幸せを取られたというような錯覚、何も知らずにゆっくりしている飼いれいむへの理不尽な恨み、 そして自分のことを完全に忘れ、新たな被害ゆっくりを生み出そうとしている男への怒り。 様々な感情が入り混じって、虫歯れいむの肉体は無意識のうちに全身全霊のタックルを繰り出していた。 これまで狩りでどんな大きな獲物を仕留めた時も、捕食種と戦いになった時も、このような攻撃は出来なかった。 そのような生涯最大の攻撃だった。これに当たって無事でいられる者はいない。そう確信できた。 男は玄関に立て掛けてあったつっかえ棒で、飛んでくる虫歯れいむを叩き落した。 「ゆ゛びぇっ!!」 「何があったのか知らないけど、人間に危害を加えるゆっくりを放っておくわけにはいかないな。 村の人達がゆっくりを危険視して、罪のないゆっくりまでも駆除されてしまう」 「ゆっ!ゆっくりのてきだね!ゆっくりしないでしね!」 軒先に飛び出し、虫歯れいむを容赦なく踏みつける飼いれいむ。 しばらく餡子を吐きながらうめき声を上げていた虫歯れいむだが、何度目かの踏み付けで、完全に潰れて絶命した。 「お疲れ様、れいむ。餡子の匂いがするとゆっくりが怖がるから、ちゃんと片付けておこうね。 もう遅いから、お前は先に寝床に戻って早く寝なさい」 「ゆぅ~~、おにいさん、れいむなんだかねむくなくなっちゃったよ。ねるまえにおはなしきかせてね!」 「ははは、しょうがないなあ。じゃあ今日はどんなお話をしようか」 飼いれいむと談笑しながら、死体を手際よく片付けていく男。 やがて玄関の戸が閉まると、後には何も残らなかった。 終わり このSSに感想を付ける
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ミキ・ヒロモリ 15歳(女性) オラシオンブリッジではサブオペレーターを務める。 破綻者揃いのブリッジ要員の中ではまともな感覚・性格の持ち主で『オラシオン良心の防波堤』と呼び親しまれている。 基本的にいじられキャラで、想定外の事態に直面するとアワアワとパニックを起こしてうろたえる。 好物は和食
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適 ワ 合成種類 販売 売却 合成 儲け 天心のカケラ 16 緑 レジェンド02 5,000 500 2,796 -2,296 ■販売場所 地下三丁目 ■落とす敵 名前 LV 出現場所 オーガー・シャドウ? 145 キョクチ/ペナン ■盗める敵 ■作るレシピ レジェンド02 適 ワ 合成種類 販売 売却 合成 儲け 緑ワクチン - - - - 50 - - 天叢雲×1 6 赤 レジェンド01 2,500 750 363 387 虹のカケラ×1 3 白 レジェンド01 3,000 500 246 254 ■使うレシピ 適 ワ 合成種類 販売 売却 合成 儲け 天心のカケラパック - 白 アルケミー04 - 3,600 19,672 -16,072 覇王の剣(覇者の剣) 22 赤 レジェンド03 55,000 16,500 6,000 10,500 クリスタルメイル 24 白 レジェンド03 75,000 22,500 22,869 -369 古龍の指輪 28 白 レジェンド03 - 140,000 13,971 126,029 エクスカリバー 33 白 レジェンド04 100,000 30,000 132,896 -102,896 雷神剣 36 黄 レジェンド04 - 103,950 26,488 77,462 風神剣 36 緑 レジェンド04 - 103,950 26,488 77,462 月影の糸 40 白 レジェンド04 - 500 3,896 -3,396 月光玉? 42 白 レジェンド05 - 333 9,396 -9,063 ジェイダイト? 42 白 レジェンド05 - 186 11,096 -10,910 孫六? 45 赤 レジェンド05 - 78,000 30,069 48,931 ネバーワールド覚書へ戻る
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崩壊/純化 ◆CKVpmJctyc 時間にして一分ほどだろう。 必要最低限、きわめて事務的な放送が島に響きわたり、すぐさま静寂を取り戻す。 死者を告げるイベントとしては、些か簡素すぎるそれは死者を人間らしく扱っていると言えるかどうか。 第一放送は数十分に及ぶ大々的なイベントであったのだが、ここにいる彼は知る由もない。 人間を切望し、人間に擬態する少年、黒須太一は放送が終わっても人形のように静止していた。 廃校の放送室で古くなったパイプ椅子に座り、放送機材の置かれた机に行儀悪く足を上げている。 いや、正確には静止しているのではない。静止して見えるといったほうが正しい。 外側から見てとれる『静』とは正反対に、彼の内側は様々なものがせめぎ合う『動』だった。 彼は、あらゆるものに解釈を求め、人一倍考える生き物だった。 主催者であるエイリアンは、初めに『殺し合い』をしろと言った。 殺せ、ではない。殺し合え、だ。 人間足り得ない太一には、眩しささえ感じられる行為である。 しかし、その人間らしい殺し合いの末に死んだ者は、終わったことを人間らしく告げられはしなかった。 太一は、放送部の俺が放送の何たるかを教授してやろうか、と笑うことにする。 「霧ちんが、ねえ」 たった今の放送で、死んだという事実が報告された佐倉霧。 『山辺美希』&『佐倉霧』でフラワーズ。愛らしいお花ちゃんたちの一輪が摘まれたらしい。 彼女は、いつも通り錆びたナイフのようだったろうか。 興味をひかれた精密さと繊細さからくる美しさを保ったままの佐倉霧だったろうか。 もしかして錆がとれ、煌くナイフのようになって一瞬の輝きの果てに死んだのか。 はたまた、無骨な丸太のようになり、救いようがないままに死んだのか。 ふうと溜め息を一つ。 おお、霧よ。死んでしまうとは情けない。どこかで聞いたような台詞が頭によぎる。 自分と他人の境界線をはっきり引く子であると認識していた。 どうせ人を信用できなくて死んじゃったんだろうなあ、と推測する。 そうだったら、実に霧ちんらしい。 「ふーん」 動きの見えなかった太一が、椅子の前足を上げ、ギコギコと前後に揺らし始める。 ここに集められた四つのかけらは、一つ欠けて三つになってしまった。 美しかった4――8――64。 しかし今は3――7――64。美しくないなぁと残念に思う。 佐倉霧の死に対して、どんな反応をすればいいだろうかと太一は考える。 選択肢はこうだ。 1.少女の死により侠気に染め上げられ、エイリアンの思惑通り殺し合いに乗ってしまう 2.愛と平和のヤングアダルトは、少女の死を乗り越え平和のために戦う ※侠気→太一語、狂気の誤字。か弱き少女の窮地を救えなかったことからくる狂気、かもしれない。 1も捨てがたくはあるが、やはり2だろうと結論付ける。 愛貴族としては初志貫徹し、仲間と共にエイリアンを打倒せねばならないのだ。 合言葉も忘れること勿れ。『友情は見返りを』『求めない』だ。 「ミキミキがエイリアンに喰われる前になんとかせねば」 フラワーズを二輪とも摘ませるなんて、そんな羨ましいことを他人にさせるわけにはいかない。 スーパーくのいちのほうは逆にエイリアンを喰ったりしそうだし、気にしなくていいだろう。 ガタンと椅子を両足とも着地させる。 待っているのは少年誌的な友情と努力の末の勝利に違いない。 さあ、人間やエイリアンとの交流を再開だ。 廃校を出る前に、最後のジャガイモを口に放り込む。 しっかりと咀嚼する。丁寧に丁寧に味合う。 しょっぱい。 でも、今まで食べたどんな料理よりも恍惚を覚える味だった。 「『佐倉霧』っと」 ◇ ◇ ◇ 太陽が高く高く南中すると同時に放送は始まり、あっけなく終わった。 左腕全体に布を隙間なく巻きつけた赤毛の少年、衛宮士郎は森の中でその放送を聞くこととなる。 士郎は、徐々に昇っていく太陽の陽射しから目を背けるように北上を続けていた。 半日前、正義の味方が死んだ場所を去り、サクラノミカタは桜を求め続ける。 そう、求めるものはたった一つ。向かうところに迷う要素はない。 しかし、その足取りは重く、横から押したら倒れそうな覚束なさがあった。 今、士郎の思考を支配してしまっているのは、自身の体の熱さだった。 熱の元凶である左腕を、ぎゅっと掴む。 マルティーンの聖骸布により拘束された赤い腕。 人には過ぎた力をもたらすサーヴァントの腕は、体の主を蝕まんと侵食を続ける。 しかも、一度拘束を解かれたせいで、その侵食は一気に加速していた。 そんな熱に精神をすり減らしていた士郎は、放送の開始にびくりと体を強張らせることとなる。 放送が完全に導入を省いたものだったおかげで、危うく記録をしそこないそうだったほどだ。 放送内容については、特段驚くところは存在しなかった。 浅間サクヤ――おそらくサクヤと呼ばれていた女の死亡を確認。 カラドボルグの砲撃の結果を見ずに、あの場を離れてたが、殺せていたことに安堵する。 残念ながらケイ、アルと呼ばれていた女の名前はなかった。 それでも最も強かったサクヤを倒せたならば、左腕を解放した価値もあったというものだろう。 もっとも文字通り身を削っての一撃であり、それくらいの成果はないと困るところではあるのだが。 (人を殺して安心……か) 十のうち十の人を救おうとした正義の味方は、もういない。 サクラノミカタにとって放送で重要なのは、桜が生きているという事実の確認だけだ。 そう、桜は第二放送で呼ばれていない。 第一放送を聞いていない士郎は、桜は生きているという儚い確信をつけて先へと進む。 北上を続けていた士郎の目の前には川が横切っていた。 地図を見て、この先には施設が複数あることを記憶している。 士郎は、そのどこかに桜がいることを期待せずにはいられない。 頂点に達した太陽に背を向けたまま、サクラノミカタは進み続ける。 ―――――――― CROSS POINT ―――――――― 黒須太一と衛宮士郎、相手を先に察知したのはどちらだったろうか。 人間離れした鋭敏な感覚を持つ太一か、英霊の力を引き出し始めた士郎か。 人間の姿をして人間に憧れる怪物か、人間の姿をして人間をやめようとしている剣か。 あるいは同時だったかもしれないが、重要なのはそこではない。 ここが二人の交差点であるということ、それだけが重要な事実だった。 二人のいる場所は、D-6にわずかに存在する舗装されているエリア。 そこで二人は対峙する。 衛宮士郎は、発見した男の容姿に覚えがあった。 その男の特徴は学生服に白い長髪。 これは、同行者の関係を結んだ支倉曜子から聞いた黒須太一の外見にぴたり一致する。 (こいつ、黒須太一……なのか?) 熱に浮かされつつも、士郎は警戒と思考を続ける。 曜子との同行者の関係は未だ破棄されてはいない。 仲間ではなく同行者という関係。 裏切りを肯定し、利害関係を有することのみを理由とした協調関係である。 よって、太一をどう処理するかの決定権は曜子にではなく完全に士郎にある。 本来ここで即殺しても構わないのだが、士郎はこの接触に一定の意味を見出していた。 一つは、先に述べた曜子との同行者契約だ。 当然、最終的には桜以外を皆殺しにするつもりではある。 だが、切り札の投影、左腕の解放は確実に自身を蝕んでいく。 全ての参加者といちいち戦っていては桜を守り通す前に擦り切れてしまうかもしれない。 戦力温存という意味で曜子との契約は生きてくる。 もう一つは、喉から手が出るほど欲しい桜の情報を持っている可能性があることだ。 明確に敵対している相手でなければ、まずは桜の情報を求めたい。 サクラノミカタの存在意義は、すべて桜に収束するのだから。 そんな中、二人の間で第一声が発される。 「やあやあ、突然だが地球平和のために働いてみないかね?」 当然ながら、いきなり地球平和を持ち出されるとは士郎は夢にも思っていなかった。 ◇ ◇ ◇ 目の前にいる赤毛の少年に地球平和を持ちかける黒須太一。 数十の選択肢を頭の中に用意しては切り捨て、その結果一番率直な挨拶を選ぶことにした。 それは傍から見たら道化でありながら、自分を安全に偽って見せてくれるものであるつもりだった。 彼は望んでやまない交流を始めようと擬態する。人間またはエイリアンとの交流だ。 「……はあ?」 士郎は突拍子のない言葉に、眉をひそめて困惑せざるを得ない。 正直関わり合いになりたくない手合いだという第一印象だった。 殺し合いに突然放り込まれて、頭のネジが何本か弾けとんだのかとすら思う。 そんな訝しげな表情を浮かべる士郎に焦って見せたのは太一だ。 左腕に布ぐるぐるファッションなんていう先鋭的な彼には合わなかったかと頭を抱える。 いや待て、今の言い方だと彼がエイリアンならば敵対するように思われたんだな、そう結論付けた。 「待て待て待て、短気を起こすんじゃない。 そう、俺はエイリアンでも差別しない主義に変わったんだ」 「…………お前、黒須太一か?」 士郎は、まともに話しても埒があかないのではないかと判断する。 とりあえず黒須太一かどうかを確かめることにした。 そして、出来れば黒須太一でなければいいと願う。 しかし、残念なことに、その願いは叶わない。現実は非情である。 「――――あ?」 名前を言い当てられ、太一は動きを止める。 こいつはなんで俺の名前を知ってるんだという疑問。 なんでだ、なんでだ、と考えるうちにある恐ろしい可能性に辿り着く。 まさか、人の心が読めるエイリアンなんじゃないかと。 恐ろしいなんていうものではなかった。 それはまずい。何がまずいって抱えている煩悩が全て白日の下に晒されるじゃないか。 ヤングアダルト候補生の太一としては由々しき事態である。 「うわぁ、俺の性癖とかばらしてまわるつもりなんだな!」 胡散臭くてしょうがないという表情を浮かべる士郎は、どうするべきかと悩む。 いや、まあそれは冗談としてだな、と太一が続けたのが微かな救いであった。 さすがに名前を当てられただけでエイリアン認定するほど、太一の電波感度は良くないのである。 「おい、桜、間桐桜という子を知らないか?」 会話が成立しない。 頭を抱えたくなる士郎だが、ひとまず最も必要なことをすることにした。 目の前の相手が頭がおかしかろうが、衛宮士郎にとっての至上目的を果たすために必要なこと。 喉から手が出るほどに欲しい桜の情報を求める。 間桐桜という名前は、太一にとって覚えがなくもないものだった。 実際に会ったわけではない。 しかし、第一放送の死亡者が書かれたメモに確かに存在した名前だった。 なので、こう答えることにした。 「残念、間桐は先程俺が食べてしまった。尊い犠牲に感謝せねば」 「――――な、に?」 士郎の心臓がどくりと大きく打つ。 胸の前で手を合わせる太一は、士郎の動揺など意に介していない。 間桐桜は、放送前に食べたジャガイモの名前でもあるのだ。 「遊び心の理解できんやつだな。ジャガイモの名前だ。大地の恵みだぞ」 「――っ、お前、ふざけるのもいい加減にしろよ!」 士郎が怒り出すのも無理はない。 半日が経っても最愛の人である桜は見つからない。 こんな状況下でおちょくるような態度をさらりと流せるほど、人間が出来てはいなかった。 (へえ、そんな怒っちゃうんだ) ふーん、へえー、と内心では冷めた目で太一は士郎を眺める。 きっと大事な人だったりするんだろうなあ。家族とか恋人とか。 いいな、いいな。羨ましいなと続ける。 少しだけ興味が出てくる。 じゃあ、こう聞いたらどんな反応を見せてくれるだろうか。 「で、その桜のためにお前は何人殺したんだ?」 「な?!」 太一は、別に士郎を人殺しと見抜いたわけではない。 だが、激情から驚愕へと士郎の表情は移り変わる。 元々、感情が顔に出やすい性質だった。 しまった、と取り繕って見せても、もう遅い。 にわかに鋭くなった太一の眼光が士郎を射抜く。 そんなあからさまな変化を見逃すことはしない。 ひょっとして本当に人殺しなのかなと推測する。 愛する人のために殺し合う。 それは、なんて人間らしい行為だろう。 もしかして、こういうのに霧ちんもやられたのかなと冷笑を浮かべる。 赤。赤みがかった髪、左腕を包む赤い布。 なんでこいつはこんなに赤いんだろうなという疑問が浮かぶ。 84%。 太一の中の大部分を占める怪物が鎌首をもたげてくる。 衝動が、人間を犯していく。 ――――――ああ、なんて壊したくなるんだろう。 しかし太一忘れたかと、ある目標が太一を踏みとどめる。 仲間を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。 こんなところで簡単に暴走するわけにはいかないのだ。 たとえエイリアンであっても、人殺しであっても手を取り合い強大な敵へと立ち向かう。 友情、努力、勝利を謳うのだ。 警戒心を隠そうとしなくなってるハイセンスな左腕の装飾を持つ彼とて手を取り合う例外ではない。 士郎が厳しい口調で何やら詰問してきても、太一は動じない。 思考のフェイズは、どうやって仲間にしようかというところに移っている。 少なくともお仕置きは必要である。 いらない殺しのせいで、エイリアン打倒が遠ざかった可能性は非常に高い。 そうだ。それなら――――――。 太一は思考しながら、ほどほどに神経を逆撫でしつつ士郎をあしらっている。 士郎も、いい加減太一に対し、接触している価値を見出せなくなってきていた。 だが、前後の文脈も関係なく唐突に耳にすることになった言葉に士郎は硬直せざるを得ない。 「その桜っていうの、もう死んでるのになあ」 ◇ ◇ ◇ 街を歩いていて見知らぬ相手から『あなたの恋人が亡くなったそうですよ』と聞かされたとする。 恋人が健康体であったことを前提とすれば、普通に考えて信じるわけがない。 まず、基本的に平和な日本でそうそう死ぬような事態には陥らないという社会性を根拠とする。 さらに、お前は俺の恋人の何を知っているんだという懐疑を根拠とする。 さて、今の衛宮士郎の場合はどうか。 ここは平和な日本ではなく、バトルロワイヤルという殺し合いの舞台だ。 残念なことに、人が簡単に死ぬ。それは第二放送によっても確認済みだ。 何より自身が複数の人間を手にかけており、安全地帯だとは口が裂けても言える場所ではない。 次に、間桐桜という名は士郎自身が告げているため、相手は恋人の名前を知っている。 死んだ者の名は放送で呼ばれるため、名前さえわかれば生死がわかる状態だ。 ここまでで前述の二つの根拠は使えなくなる。 放送。 その時間帯において死亡した者の名前を告げる、放送。 今の士郎には間桐桜が死んだという発言を戯言だと斬って捨てることが出来ない。 それは、士郎が第一放送を聞いていないという、この局面においては致命的な弱みから来る。 それでも、士郎は否定する。 せめて目の前の男の不審さを根拠に。 自分に必死に言い聞かせる。 サクラノミカタである衛宮士郎の存在意義のために。 「お前、冗談も大概にしろよ!」 掴みかからんばかりの士郎に対し、口角を吊り上げた太一は間髪入れずに切り返す。 「ウィンフィールド。 岡崎朋也。 リセルシア・チェザリーニ。 蒼井渚砂。 対馬レオ。 小牧愛佳。 向坂雄二。 宮沢謙吾。 さあ、お前が殺したのはどれだ?」 間桐桜の死を知らなかったことから、第一放送帯での死者は知らないのだろうと推測する。 『誰だ?』ではない。『どれだ?』という質問。 反応を見る。手応えはありだ。 「覚えがある名前があるんだな。 ちゃんと放送くらい聞いておかないとダメだよ、君」 太一も同じく第一放送を聞いていないのだが、自分のことは完全に棚に上げていた。 リセルシア・チェザリーニ。 この名前を聞いたとき、士郎はぴくりと反応を見せた。反応せざるを得なかった。 『り、リセルシア・チェザリーニ……です。リセって呼んでください。衛宮さん……で、いいですか?』 それは正義の味方の死に際に唯一立ち会った少女の名前。 第一放送前に士郎の手により葬られた少女の名前だった。 (じゃあ……桜は、本当、に、もう……?) 第一放送を聞き逃してから頭の片隅にあった最悪の想像が現実味を帯びてくる。 リセルシアの名前があることは、桜が死んでいるという発言の信憑性をグンとあげてしまう。 受け入れたくない。嘘に決まっている。 でも、否定する客観的材料を一つとして持ち合わせていない。 目覚めてから今まで、明確に敵対する相手のみと出会ってきた。 そのおかげもあって、サクラノミカタは桜のために無我夢中で戦ってこられた。 では。 桜を失ったサクラノミカタは一体何者だろうか。 衛宮士郎は一体どうやって自己を定義すればいいだろうか。 桜の死を知ってしまったら、そして認めてしまったら、彼は極めて宙ぶらりんな状態に追い込まれる。 「お、お前……」 「可哀想になあ。桜ちゃんのためにがんばってきたのに、もう死んでましたなんて」 認めるのか、と士郎は不毛な自問自答を繰り返す。 体の熱との相乗効果で、思考のヒートアップは止まらない。 動揺が強くなるにつれ、視界は赤く歪み始める。 「ぐ――――――、あ――――――!」 左腕を原因とする熱が勢いを増す。 痛みをもたらす極小の蟲がより活発になって細胞を食らう。 いや、それは誤認だ。 移植されたアーチャーの左腕による侵食は、今でも一定ペースで進んでいるに過ぎない。 勢いが増したように感じられるのは、侵食を抑えていた気力が削げたせいだ。 息が詰まる。 視界が歪む。 神経が痛む。 体中がザクザク突き刺された。 空気がまるで毒のように感じる。 時間が猛スピードで減速していく。 意識がボロボロとこぼれ落ちていく。 苦し紛れに左肩の結び目をきつくきつく引き絞る。 しかし、途切れ目が赤く擦れるだけで、侵食は一向に治まる気配を見せない。 それもそのはず、なにせ原因はそこにはないのだから。 侵食の原因は衛宮士郎の折れかかった心にある。 そもそも、人間を超える存在であるサーヴァントの体の一部を人間に移植するというのは荒業だ。 よほど強固な意志を持たない限り、わずかでも支配下に置くことなど不可能に近い。 それを、士郎は桜の救うためという妄執的とすら言える意志で凌いできた。 なので、それが揺らいだとき、どうなるかは自明であるともいえる。 桜の死を認めたくはない。 だが、それを否定する材料は決定的に欠けていた。 切継に拾われてから十年。 父の死後も妄信的に正義の味方を目指してきた少年がいた。 だが、一人の少女のために、彼はそのアイデンティティを捨て去ることになる。 彼を支える土台は、正義の味方から桜の味方へと移り変わった。 士郎は現状を受け入れようとしても、思考の混乱を抜け出すことが出来ない。 桜を失ったサクラノミカタの存在意義とは一体何だ? 「教えてやろうか? 今までお前のしてきたことは全部無駄だ。お前が殺した相手も無駄死にだ。 はっきり言ってやるよ。 ――――――お前の存在は、無意味で無価値だ」 左腕が痛む。 切り落としたいほどに痛む。 たった今何について考えていたかすら整理がつかなくなってくる。 なぜ、なぜ衛宮士郎は存在するのか。何のためにあるのか。何によって定義されるのか。 混乱する。混乱する。混乱する。 「お前、なんでまだ生きてるの?」 サクラノミカタの世界は崩壊する。 テレビの電源が切れるようにプチンと、衛宮士郎の意識は途絶えた。 ◇ ◇ ◇ あなたは人の心を喰う怪物だ。 黒須太一は、いつの日かある少女に評された。または評されることになる。 そして、それは太一本人も認めるところであった。 ある日を境に、太一の中の人間は16%を残して消えた。 太一の84%を占める怪物は、肉体的な攻撃性を持つだけではない。 人の心のヒビを広げ、潜り込み、喰らい尽くす。 太一の持つ怪物性の一つの側面だった。 「って、気絶かよ!」 倒れたナイスファッションセンスな少年を見下ろしながら、とりあえず突っ込みを入れてみる。 さぞかしショックだったんだろうな。 このまま放っておいたら、きっと彼はエイリアンに喰われていしまうだろう。 士郎に対し、攻撃性を剥き出しにした太一だが、そうなるのは本意ではない。 人間と手を組み、エイリアンとさえ手を組み、強大な敵と共に戦うこと。 その目的のため、太一は士郎を殺すつもりはなかった。 壊して、作る。 士郎を仲間にするために取った手段だ。 創造的破壊。イノベーション。 横文字使うと知的っぽいなと、ぷぷっと笑う。 さあどうしようかな、と考える。 壊す作業は完了し、作る作業に移らなければならない。 一連の作業は、ある種の純化だと思っていた。 エイリアンの思惑通りになってしまったバカな子を壊す。 そして、共にエイリアンと戦う仲間を作る。交流する。 (さてさて、っと) 太一は士郎をおもむろに担ぎ出す。 友情を紡ぐならどうするのがいいか。 しばらく歩けば温泉があるらしい。 ここは男らしく裸の付き合いで友好を一気に深めるという方法も取れる。 でも却下。 男の裸なんぞ別に見たくない。そこまで背負っていくのもめんどくさい。 すぐ近くにあった民家の前に着く。 玄関先にどさりと士郎を降ろす。 家の中をうろうろと徘徊。 発見、発見と呟いた後、台所を中継、足取りも軽く士郎の下へと戻る。 手にしているのは水が並々と入ったバケツ。 その水を士郎へと思いっきりぶっかける。 以下目覚めるまで繰り返し。 このずぶ濡れは俺とお揃いだな、と太一がにやりとしたところで士郎が重い目蓋を開けた。 ◇ ◇ ◇ 衛宮士郎は夢を見ない。 気絶してから間にどんな風景を挟むこともなく、士郎は再び太一と向かい合うことになる。 気を失う前に真っ赤に染まっていた視界は、覚醒の後わずかにだが正しい色に近づいていた。 多量の水を浴びて急激に体温を下げたからか、高ぶりすぎた感情が一度途切れて治まったからか。 虚ろな目を太一に向けながら、生きてるのかとだけなんとなく思っていた。 「なあ、面白いことを教えようか?」 目覚めに対する前置きをすることもなく太一が語りかける。 士郎は興味を持てなかった。 認めてしまった。否定し切れなかった。 間桐桜は、聞かされた通りに既に死んでいるのかもしれない。 存在意義をなくしたサクラノミカタは今更何を面白がればいいのか。 桜は、もう帰ってこない。 士郎の心を覆うのは虚無感。あるのは、ただ虚ろな伽藍堂。 そんな士郎に響く言葉など存在しないはずだった。 「実はな、間桐桜っていうのは死んでないんだ。少なくとも第一放送の段階では。 第一放送に死んだやつと絡めて言ってみたら見事に信じちゃうんだもんな」 笑いながら、ついさっきの発言を完全に翻す太一。 士郎にとっては再度の急展開ともいえなくはない。 が、精神状態からして簡単に士郎の心に届きはしない。 発言が二転三転し、聞く者に対して混乱を生じさせる。 重要な情報というのは、重要であるというだけで人は疑い深くなるというものだ。 先程徹底的に存在を揺さぶられた士郎は、ぼんやりとした頭を一度振るった。 被っていた水が飛沫となって地面を濡らす。 朦朧としていた意識が少しだけ明瞭になってきた。 もう一度、太一の言葉を咀嚼してみる。 今までの発言全てを思い返す。 嘘はどこにあるのか。 ただ遊ばれていただけなのか。 どれが真実だったとしても、俺は道化すぎるんじゃないか。 熱も少しだけ治まった頭で考える。 段々と視界と思考はクリアになってきた。 結局、桜が生きてるかもしれないと言われただけでこれかと自嘲する。 どれが虚言かも全くわからない状態であるというのにだ。 それほど、自分の中で桜が占めている割合は大きいのだろう。 もう一度頭を振り、次に相手の捉えどころを模索する。 自分の存在意義を一度崩壊させた相手を見極めなければならない。 目の焦点は次第に合い始め、士郎は太一のほうをじっと睨む。 太一は意識を取り戻した士郎を見下ろしながら、少しだけ様子を見ていた。 太一がこんなことを言い出した意図。 それはいわゆる優しい嘘のつもりだったろうか。 一つ間違いないのは、太一はエイリアン打倒のため士郎を仲間にしようとしているということ。 個でありたいという願いと他者との繋がりを求めたいという願い。 太一は士郎を喰い潰したくなる衝動を経ても尚後者を選択したかった。 「それで一つ提案がある」 君にとっても魅力的な提案だと、太一は前置きする。 これから始まるはずの交流。ゼロからもう一度作り上げての交流。 他者との繋がりを持ちたいという16%の願望を発露させ、魅力的であろう勧誘句を紡ぎだす。 太一にとってはエイリアンと戦う上でしっくり来る呼び名であった。 それがこの上ない皮肉であるとまでは、さすがに気付く余地はない。 響くのは士郎にとって、それほど昔ではない過去に、それでいて遠く離れた場所に置いてきた言葉。 「――――――正義の味方にならないか?」 【D-6 民家の前/1日目 日中】 【黒須太一@CROSS†CHANNEL】 【装備】:サバイバルナイフ、拡声器 【所持品】:支給品一式、ウィルス@リトルバスターズ!、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ 【状態】:疲労(小)、やや風邪気味(軽い発熱・めまい・寒気) 【思考・行動】 0:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。 1:拡声器を使って、人と交流する。 2:『人間』や『エイリアン』と交流を深め、強大な『エイリアン』たちを打倒する。 3:『支倉曜子』『山辺美希』『佐倉霧』と出会えれば、仲間になるよう説得する。 4:「この島にいる者は全てエイリアン」という言葉には懐疑的。 【備考】 ※第一回放送を聞き逃しましたが、死亡者のみ名前と外見を把握しました。 ※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。 ※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。 ※直枝理樹(女と勘違い)、真アサシン、藤乃静留、玖我なつき(詳細は知らない)、深優・グリーアを エイリアンと考えています。 ※スパイに関するルールはでたらめです。 【衛宮士郎@Fate/stay night[Realta Nua]】 【装備】:ティトゥスの刀@機神咆哮デモンベイン、木製の弓(魔術による強化済み)、赤い聖骸布 【所持品】:支給品一式×2、維斗@アカイイト、火炎瓶×6、木製の矢(魔術による強化済み)×20、 屍食教典儀@機神咆哮デモンベイン 【状態】:強い決意(サクラノミカタ)、良心の呵責、肉体&精神疲労(小)。魔力消費小。身体の剣化 が内部進行。脇腹に痛み。ずぶ濡れ。 【思考・行動】 基本方針:サクラノミカタとして行動し、桜を優勝(生存)させる 0:桜は生きてるのか? 正義の味方、だと? 1:参加者を撃破する 2:桜を捜索し、発見すれば保護。安全な場所へと避難させる 3:桜以外の全員を殺害し終えたら、自害して彼女を優勝させる 4:また機会があれば、支倉曜子の『同行者』として行動する事も考える 【備考】 ※登場時期は、桜ルートの途中。アーチャーの腕を移植した時から、桜が影とイコールであると告げられ る前までの間。 ※左腕にアーチャーの腕移植。赤い聖骸布は外れています。 ※士郎は投影を使用したため、命のカウントダウンが始まっています。 ※士郎はアーチャーの持つ戦闘技術や経験を手に入れたため、実力が大幅にアップしています。 ※第一回放送を聞き逃しています。太一が第一放送で死んだと言った名前はうろ覚え。 ※維斗の刀身には罅が入っています ※現在までで、投影を計二度使用しています 145 人と鬼のカルネヴァーレ (後編) 投下順 147 明日への翼 (前編) 145 人と鬼のカルネヴァーレ (後編) 時系列順 147 明日への翼 (前編) 137 例えば孤独なら傷つくのは、一人ぼっちの自分だけだと 黒須太一 [[]] 124 outbreak 衛宮士郎 [[]]