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LIVE FOR YOU (舞台) 2 ◆Live4Uyua6 ・◆・◆・◆・ ホテルより出立してより程なく。 朝日を受けてきらめく海面を右手に風を切って飛翔していた九郎とアルは、その目に目的地であるツインタワーを捉えた。 「油断をするな九郎。これからは敵地にあるぞ」 「合点!」 まだ1キロメートルと少しほど先に聳える双子のビルは、ケーキの上に立てる蝋燭ほどの大きさにしか見えない。 それを九郎は見る。否、九郎は――”視る”。 彼の全身を包む黒い表皮の上に刻まれた無数の神秘文字がちかちかと発光し、呪文を生み出し魔法陣を形作る。 術者の望むものを読み取り、膨大な魔術記録を検索し、該当するものが見つかれば”表皮”がそれを自動で”唱え”魔術を発動する。 それが魔術師と魔導書――”人書一体”であるということで、それは通常の魔術の道理を遥かに超越していた。 最早こうなれば、ただひとりの魔術師よりも、ただ一冊の魔導書よりも彼らは強力無比なのである。 「相手側も妾らがこちらから向かうと予測しておったか」 「けど、アンドロイドばっかりだぜ」 「ふむ。気兼ねなく鉄屑へと片してしまえるな」 応。と、九郎は翼で風を叩き加速する。 魔術師の眼で視る先。ツインタワーの中腹あたりにはデータで見たアンドロイド達が銃火器を構えて結集していた。 10……20……30……少なくともそれぐらいは、もしかすれば、いやおそらくはそれ以上の数がそこに並び、そして潜んでいるだろう。 聞いた限りではあの深優と同等かそれに近い性能を持っているという。ブラックロッジのやられ役とは訳が違うということだ。 だがしかし、彼らの言葉の通りにそれは難敵ではない。 人でないというならば魔術の力を全力で振るうことに気兼ねはなく、そして全力ならば――敵ではないからだ。 「――来るぞっ!」 後500メートルほどというところで、アンドロイド達の持つ銃火器が一斉に火を噴いた。 次の瞬間。横殴りに鉄礫の雨霰が九郎へと降り注ぐ。彼がただの人間であればこの次の瞬間にはこの世界より姿を消してしただろう。 ――『バルザイの偃月刀』 発声とともに手の内に現れた刀を九郎は振りかぶり、そして”空を切った”。 次の瞬間。殺到していた熱き弾雨はまるで見えない傘の上を滑るように九郎を”避けて”通りすぎる。 刀を振った時に発生させた極小規模の因果操作を行う防御呪文の効果である。 「あれみたくマシンガン一辺倒っていうなら、楽勝なんだけど――っと!」 物理的干渉を回避するはずの防御呪文の上で青白い火花が激しくほとばしる。 効果薄と見たのか、ツインタワーから九郎を狙うアンドロイド達は手にした銃器をより強力なものにしたらしい。 「たわけが! 油断するでない。いくら”制限”が緩くなったといっても完全になくなったわけではないぞ。 見誤れば死はすぐ其処にあると知れっ!」 首の横から九郎と一体化していたアルがミニマムな姿で顔を覗かせ、直接に九郎の耳へと苦言を叩きつけた。 九郎はアルに謝り、再び翼を強く叩きつけて高く上昇する。 弾雨から逃れ、さてならばどう上手くあのビルに接近できるのか、それを考えようとして九郎は地を爆走してくるそれに気付いた。 「アイム! ロッキンロオオオォォォオオオオオオォォォオオオオオオゥゥゥウウウウウウ――ルッ!!」 ギャギャギャ、ドッギャァ――――ァァアン! ペレロペロペロポロリロリ~~~~ンンンン! ギュゥ――ンンッ!! 「ひゃ――はっはっはっ! 遂に来たのであーる。この時が! クエスチョン! さて、どの時であるか? 回答までの猶予時間はナッシイイイイイイイイイイン……グッ! 我輩が答えまで言っちゃうもんね。 はい、ドクター・ウェスト君。答えは何であるかな? もっとも君ほどの頭脳を持ってすればお茶の子さいさいだろうがね。 おほほほほ、そんなことあるのであ~る! 答えは頭脳明晰単純明快安心会計家内安全――ずばり、我輩の時代が来たのであ~~~~~る!!!」 地を暴音爆走疾風怒濤にフィーバーしながらかっ飛ばすドクター・ウェストとそのマシーン達。 先頭からミニマム破壊ロボに、機関車、ショベルカー、ファイアーボンバー号と相変わらず奇麗に整列しながらの無謀運転。 誰が止められようか? 誰が止めようか? 如何にして止めようか? ……上空の九郎達は顔を覆って諦めていた。 「イッツ! スーパーウェストタ――イム! 合体承認! 今こそ我輩の真の実力を全力で披露する時であーる!」 ウェストの掛け声とスピーカーから発せられる合体のテーマに合わせ、縦列走行していた車両達が隊列を組み替えてゆく。 「さぁ、合体するであーる! ジャンジャンジャジャーン! レ――ッツ、コンバイ~~~ンッド! 天・才・合・体!」 破壊ロボを自ら操縦するウェストと、各機の操縦席に収まっていたブラックロッジ戦闘員らがペダルを踏むタイミングを合わせる。 その瞬間。背景はなにやらキラキラを輝く不思議時空と化し、火も噴いてないのに各機がロケットの様に舞い上がった。 見る見る間にガッコンギッコンと変形してゆくマシン達。 いささか質量保存の法則に抵触しているようなそうでないような、しかしこまけぇことは(ryと言わんばかりにダイナミックに。 小さな破壊ロボを核として2つに割れたトミーがボディとして覆いかぶさり、下半身からにょっきりと足が伸びる。 更には肩口にあたる部分にけろぴーが取り付き、アームをグイングインと振り回しながら一体化した。 そして、一塊の箱と化したファイアーボンバー号が背中へとぴたりとひっつき、ぶにょっと出てきたノズルから火を噴く。 加えて、一体化したマシンのいたるところからニョキニョキ生えたり引っ込んだり、ガッキンドッキンしたりして―― ――爆発炎上した。 「……あいつは本当に馬鹿か」 「知っておろうに……」 九郎と肩から顔を出している小さなアルの見下ろす先。そこからもうもうと黒煙が立ち上っていた。 合体に失敗したからではない。ドクター・ウェストは馬鹿であるがやはり天才でもある。そのような過ちを犯したりはしない。 ただ、至極単純な話として、ツインタワーの方よりロケット弾が撃ち込まれたのだ。 正義の味方?が変形合体してる最中に攻撃をしかけあまつさえ命中させてしまうのはタブーっぽくはあるが文句は言えないだろう。 何せ、互いの全存在を賭けた一大決戦なのである。戦場に奇麗も汚いもないということだ。 「けど……、これであいつがくたばるなら俺達はあんな苦労してないよなぁ」 「全くだのう」 九郎達が頷きあった次の瞬間。爆心地より旋風が巻き起こり、そこに黄金の破壊ロボ(勿論ノーマルサイズ)が姿を現した。 「うわはははははは! うひゃあ~~~、はっはっはっ! 絶好調であ~~~~る!」 全く無傷。完全にして黄金に輝く破壊ロボよりウェストの高揚した声が響き渡る。 ドリルを基本としてハンドやらミサイルやらなにやらを備えた幾本ものアームをわきわきといやらしく動かすとズンと一歩踏み出した。 それを合図にか、再びロケット弾が破壊ロボへと撃ち込まれ――次いで爆音……が、しかし――やはり無傷! 「ぶっひゃははははは! きかんきかんきかんであるなぁ~~~きかんしゃぽっぽー! 我輩の作ったロボは化物か?(疑問系)」 耳を澄ませば、ごうごうと風が轟くような音が破壊ロボの内側から聞こえてくる。 そして、ロボの装甲の表面を縦横無尽に流れる赤いエネルギーライン。 これらが、この”ドクター・ウェスト式ドリームクロス合体・G(何の略かはないしょ♪)破壊ロボ・おかわり3杯”が無敵である理由だった。 「ぐわはははっ! 我輩の最新でモードな破壊ロボに内臓した黄金動力・天地乖離す開闢のタービンの調子は陽あたり良好! だいたい無限大動力より供給されるオレ様バリアは、某配管工がラッキースターを獲得したが如くに無敵三昧。 つまるに、ここから先は我輩オンステージ! 我輩が勝ち。我輩が勝ち。そして我輩が勝つ。つまり、我輩の我輩による我輩の為のハッピーエンドにゴートゥー!」 では、シャイニングフィンガーを使うのあーる! という掛け声と共に突進してゆく黄金に輝くスーパーモードなG破壊ロボ。 浴びせられる鉛弾の雨も、火を噴くロケット弾も、対物ライフルも熱線もなんのその、彼の生き様のようにロボは驀進邁進してゆく。 「……色んな意味で負けちゃいられないな」 「ふむ。ここからは見せ場の奪い合いとなる。この勝負で先日の借りを返すぞ九郎!」 バルザイの偃月刀を構えなおすと、一際大きく翼で空を打ち、九郎達もドクター・ウェストに負けじとツインタワーへと突進を始めた。 ・◆・◆・◆・ 出発地点であった歓楽街のあるリゾートエリアより島の南西をぐるりと周り、数十分ほど。 恋人を背にスポーツバイクを駆るなつきの目に映る風景は一変していた。 歓楽街にあったような派手な看板や電飾の類。モダンアートのオブジェや配色のエキセントリックな建物などはもう無く、 今視界の中を流れるのは、石畳の灰色や煉瓦のくすんだ赤色。年季を感じさせる上品な建物の数々だ。 そして、通りから大きな広場へと出たところでなつきはそれに気付いた。 「…………!」 ”大聖堂”と地図上に記されている建物で、名前どおりに荘厳で、なつきにとってそこは印象深い場所であった。 思い浮かべるのは4日前。皆が集った教会からホテルへと向かう途中のこと。 あの中で、クリスは唯湖を想い、聞いているだろうと語りかけ、彼女のために彼自身が書いた曲を演奏して贈った。 そして、なつきは彼の真摯な想いを理解し、その一助となろうと彼の背を抱きながら決心をしたのだ。 今からそれを行うこと。来ヶ谷唯湖を救いに行くことに関して、もうなんらわだかまりは無い。 思念だけの存在となり残された想いを伝えてくれた棗恭介のこともあり、それは今やなつき自身の目的ともなっている。 なので、そこに不安や迷いはない。それなのに、あの大聖堂を見るとなつきの心はひどくざわついた。 ”クリス……死なないよな? ……ここにいるよな” あの時の問いに、クリスは確かな答えを返してはくれなかった。 それが、たった一言だけもらえなかったそれが、その空白がなつきの心をひどく不安にさせる。 近づきあい、触れあい、言葉を交わし、想いを交わして彼への理解を深めれば深めるほど、 あの時のあの一言の不在がまるで白いキャンバスに落とした一点の黒のように、浮かび上がり無視できないものへとなってゆく。 背中に彼の体温を感じる。確かに繋がっていると信じることができる。 けど、このまま離れずにずっと一緒でいられるのだろうか。 「(クリスは死なない。……死なせはしない。今も、これからも、ずっと――)」 なつきは首からかけたペンダント――錠と鍵が確かにそこにあることを確かめると、広場を渡り次の通りへと入った。 少しして、風景から街並みも消えなつきを先頭とした一行は山林の中へと入ってゆく。 申し訳程度に整えられた山道を、事故を起こさないようにと丁寧に右へ左へ、道の先を注視しなつきはバイクを進める。 その先に、玲二と彼のバイクの姿はない。後ろを振り返ったとしてもそこにも彼はいない。 彼はすでに歓楽街を抜けたところで別行動をとっている。そして―― 「深優ちゃん、がんばってねー!」 ――深優もまた今、愕天王から飛び降り、山の中へと姿を消した。 彼も彼女もここからは単独行動だ。 九郎達が北のツインタワーへと向かったように、彼らにもそれぞれ目的地となる別々の突入地点がある。 そして―― 「スピードをあげるぞ。クリス!」 ――なつきを先頭とする残りの面々が向かうのは、彼女にとっては因縁浅からぬ風華学園。 山道を抜け、再び市街へと出たところで彼女はアクセルを捻り再びスピードをあげた。 クリスの温かさを背に、決着の瞬間へと向けて自分と彼とを加速させてゆく――。 ・◆・◆・◆・ 赤。白。黄色。青と緑とそれ以外も、無数に無量に存在する華々しい光景。 風に吹かれ揺蕩う花弁の大海。その波の中を七色の波飛沫を巻き上げながら疾走するひとつの鉄騎があった。 モトクロスバイクに跨り、一路、南端の発電所を目指す玲二である。 色彩鮮やかな光景に決してそれだけ以上の気をとられることなく、油断の無い仕事人の姿勢を維持し彼は駆ける。 陽光を背に相貌を影と隠し、まるで場違いな亡霊かの様に、そしてそうだとしても亡霊の様に、彼は行く。 しかし、彼が行く島の南西は、花畑も向かう発電所も、もうすでに禁止エリアと指定されていたはずだ。 なのにどうして彼に嵌められた首輪は爆発せず、その首を跳ね飛ばしてしまわないのか? その理由は難しくない。答えは彼が殺害した最後の男。そして先日、霊となり再び合間見えたあの往生際の悪い男にある。 棗恭介――彼が持っていた携帯電話。彼から奪ったあれを、玲二が今持っていると、ただそれだけのことであった。 その携帯電話に内臓されていた特殊なアプリ――”禁止エリア進入機能”により、彼は禁止エリアの中を進む。 本来ならば参加者は進行できないはずのルート。 もしかすれば、相手側が事前には想定していなかったかもしれないルートからの奇襲。 それが最後のファントムである玲二に課せられた任務であった。 作戦を立案した九条により玲二に与えられた役割。それはただ彼がファントムとして、最後までそれを徹すること。 誰からの支援も無く、ただ孤独に任務に殉じ、最も危険な場所へと潜り込み、亡霊として標的の命を掠め取る。 彼はそれを望まれ、そして彼自身もそうすることを望んだ。 ファントム・ツヴァイへのミッションは――神崎黎人の暗殺。 玲二は往く。誰からも見えない亡霊の様に。 今はただの一発の弾丸の様に、標的である神崎黎人の心臓をめがけ、それを撃ち抜く為、ただ真っ直ぐと花畑を渡る。 命を刈るように花弁を散らし、亡霊は往く――。 ・◆・◆・◆・ ふと、深優は自らの肌着に掛けた手を止めた。 山頂の湖にほど近い、既に訪れる人もない神社。 いや、予定通りに事が進むのならば、もう人の訪れる事のない場所。 既に敵も味方も、誰一人この場を訪れる理由など無い。 (それは、そうなのですが…) わずかな躊躇の後、下着が半ば見える位置まで持ち上げられた肌着の裾から手を離す。 柔らかな布が肌を撫で、すべらかな腹を、臍を覆い隠し、スカートの上に重なる。 「…………」 理由は、無い。 これから少しの後、深優は湖底まで潜り、そこから主催者たちの本拠地に突入する予定だ。 なのだから、その為に潜水に適した装備を纏わなくてはいけない。 そして、その為のウェットスーツは既にデイパックから出してある。 だから、後はそれに着替えるだけでいい、のだけれど。 「…………」 ふたたび肌着に触れた手は動かず、逆にキュッ、と無意識に裾を握りしめる。 今、この場所に人気は無い。 太陽は眩しく、空は青く、気候は穏やか。 仮に周囲から誰か近づいてきたとしても、身を隠す場所も無い。 ただ、それは逆に言うなら、深優自身の身を隠すものも何も無い、ということ。 「…………」 無表情な深優の頬が、僅かに桃色に染まる。 見るものも無いのだから、気にする理由もない。 むしろ、こうして考えている時間が、逆に危険かもしれない。 篭城を決め込んでいるとはいえ主催側が気紛れを起こさないとも限らないし、あるいは暴発的に動くこともあり得る、のだけれど。 それでも、ほんの少し、ほんの少しだけ、羞恥を。 無防備に裸身をさらす事に、恥ずかしさ、という心を感じた。 そして、傍らに畳んであった服を再び手に取り、それを羽織る。 肌着のまま動く、というのも世間的にははしたない行為なのだから。 「別に、普段から何も無い所で脱ぐような事は、ありません……」 誰に対してでもない言い訳の言葉が、無意識に唇から零れる。 一般的なTPOは備えている。無論、人前で肌を晒す事も無い。 ただ、言い訳をするなら、今この場所には、誰も居ないのだ。 人に見られる恐れが無い場所なのだから、ただ適当に、最短距離の途中にあって、警戒しやすい場所を選んだ、それだけのこと。 その判断自体は、間違いでは無いと思う。 間違いは無い、と思うのだが……。 「…………」 無言で、木々の陰に荷物を降ろす。 本殿に入って着替える事も考えたけれど、建物の中には監視の目が光っている可能性が高いので、やめた。 敵とはいえ、不特定多数の相手に見せたいものでもないのだから。 丁寧に畳みながら服を脱ぎ、デイバックにしまっておいた大きめのバスタオルを、体に巻く。 (そういえば……) せめて下に着る水着くらいは、ホテルで着てきても良かったのかもしれない。 隠しているとはいえ、屋外で下着まで外すことは、多少恥ずかしい。 「碧……感謝します」 ダイビングスーツを用意した際に、下に着る水着を荷物に加えた杉浦碧の行動に、深優は人知れず謝意を示す。 同時に、余分になる訳でも無いのだけれど、どうしても必要というわけもない荷物まで揃える気にはならなかった過去の自分を恥じる。 機能的にはワンピースタイプの方が適している筈なのに、ビキニタイプを推した理由までは、図れなかったが。 ジ・ジ・ジと固めの音を立てながら、ファスナーを閉じる。 既に着替えは終わり、荷物もこうしてダイビングバッグに収めた。 手元にあるのは足ヒレとシュノーケル、エアは最低限の量しか用意していないけど、問題は無い。 訓練も無しの潜行も、それによる急速な圧力の変化といった人体の構造上の無理が多い行動も、私には何の問題も無い。 外見的には人と何も変わらないけれど、私の身体は人のそれよりも遥かに頑丈に出来ているのだから。 無論人としての機能も一通り揃ってはいるのけれど、それでも人とは明らかに違う。 人を模して作られた、ツクリモノノカラダ 「……っ!」 そのことに、不満を感じた事は無い。 感じる理由など、何一つ無かったのだから。 アリッサ様の為に作られ、その為に機能し続ける事に、不安すら感じた事はなかった。 不安を感じるという機構が、心という機能があることさえ、想像すらしなかったのに。 「アリッサ様……」 思い返すと、胸に痛みを覚える。 これが、心の作用なのだと、なんとなく理解している。 何度か、考えたことがあった。作り物の身体にも、心は宿るのかと。 心は、確かにここにある。 私は、私。 私は、アリッサ様の為に戦う。誰でも無い、私自身の心に従って。 たとえ最初は役割としてあった事でも、それは間違いなく私の望みに他ならない。 そして、もう1つ。 「玲二……」 心が、惹かれている。 適うことなど無いのに、惹かれている。 人間ですら無い、人に作られた私が、人を、感じている。 幼い日の人間が翼を夢想するように、私は人を夢想する。 例え私の身体が普通の人間と同じであったとしても、何も変わらないと理解していても、望んでしまう。 人である事を、アリッサ様と同じ存在になる得る事を。 人として、玲二の傍らに居られる事を。 私は、どれだけの期間、稼動し続けられるのだろう? 普通の人のように老いるのか、アル・アジフのように長い時を生きるのか、それともあと数年もすれば停止してしまうのか。 人と、皆と同じように、人でありたいと、そんな心を、感じる。 これは、私が人では無いからこそ、感じる痛みなのだろうか。 作られた私が、人を想うのは間違いでは無いだろうか。 アリッサ様の為に戦うというこの感情は、人として自然なものなのか。 碧が言ったように、遠くから思い続けるという事では耐えられないと感じるのは、私が人ではないからだろうか。 「わかりません……、私は……」 私自身の心が、判らない。 私自身の事が、まるで判らない。 判らない 判らない 「判らない、ですが……」 人間とは明らかに異なる私の身体。 けれど、だからこそ、今出来る事がある。 皆と、玲二と、……アリッサ様の為に戦うことが出来る。 それは、今ここにある深優・グリーアにしかできない事なのだから。 「そう、だから……」 今は、この身体に感謝しよう。 たとえその先に、さらなる苦しみが待っていたとしても。 ・◆・◆・◆・ 「おや、反応がひとつ足りないロボ。 これは壊れているのではないかマスター? なんならエルザが叩いて直してやってもいいロボよ?」 ふらりとモニターの前にやって来ては、そんなことを言うエルザ。そんな彼女の言葉にマスターである神崎はくすりと息を漏らした。 彼女は人造人間である。つまりは作られた存在であるわけだが、創造主がどう思ったかはともかくとして 彼女のセンスは中々にユーモアに溢れており、この状況だとそれも存外悪くないものだと神埼はそんなふうに思う。 「それは違うよエルザ。モニターは壊れてはいない」 「じゃあ、エルザの目がおかしくなってしまったロボか? だったら、至急直してもらわないと……あの、えーと……誰だったかロボか……?」 ふむと、目の前でぐるぐると頭を回し始めたエルザに神崎はひとつ溜息をついた。 自身のボディーガードとして常に帯同させてはいるが、元々が無理をしているせいかその分綻びがよく見えるようになってきている。 「それよりもエルザ。ひとつお茶を持ってきてくれないかな? 緊張すると喉も渇くものでね」 「最優先でそのコマンドを実行するロボ。……マスターは熱々の番茶がよかったロボ?」 紅茶だよ。と、そう言って神埼はエルザを一時下がらせる。 そして、周りが静かになると再びその双眸をモニターの方へと向けなおした。 「吾妻玲二……ファントム・ツヴァイか」 確かに、エルザが指摘したとおりモニターからは参加者の反応がひとつ消えていた。消えているのは吾妻玲二の反応。 もうすでに彼は退場してしまった――という訳ではない。島中に設置された監視カメラには彼の姿は捉えられている。 花畑を疾走する亡霊の姿はそろそろ発電所に到着するだろうと、そんな所にあった。 彼の反応がモニターに出ないのは、彼が”禁止エリア進入機能”を使用しているからだ。 単純な話で、その機能は禁止エリアに引っかからなくするために首輪から電波を発するのを停止させる。 故にモニターにも一時的ではあるが映らなくなるというわけである。 これでこちら側の虚を突けるかというと、そんなことは全く無い。実際に、彼の姿は監視カメラで捕らえられているからだ。 「――とはいえ、基地の中に入ってこられちゃあ困る。わよねぇ?」 「ええ、ですから”アレ”らを手配したわけですが。首尾はいかがでしょうか?」 ゆらりと現れた警備本部長の声に驚くでもなく、神崎は対応が済んでいるのかだけを簡潔に聞き返す。 彼女の言の通り、地下の基地内部にまで侵入されると彼を補足するのは難しくなる。 元々参加者らが行き交うステージであった地上とは違い、地下の基地内には監視カメラなどはほとんど存在しないからだ。 ならば、どうするか? 答えは難しくはない。 「発電所の地下へと”アレ”らを向かわせたわ。 元々こっちには深優ちゃんが来るかと想定してたけど、……まぁ、おあつらえ向きになったという形かしらね」 そう。進入口で待ち構えればいいのである。 いかに彼がファントムであろうとも、事実として地下への入り口がそこには一箇所しかない以上、通る場所は決まっているからだ。 ならば、そこに精鋭を送り込み見失ってしまう前に打ち落とす。それが神埼と一番地のとった策であった。 「もっとも、彼もわかってて飛び込んでくるんだろうからそうそう簡単には終わらないでしょうけれどもねぇ……」 どこか気だるげで、しかし隙を見せない表情でそんなことを言うと警備本部長はモニターの中の別の位置へと視線をずらした。 先ほど名前を口に出した、深優・グリーアの反応にである。彼女もまた玲二と同じように単独で行動している。 西側の街を抜けてより山の中へと入り、今は頂上に近い位置にある神社の傍にその反応があった。 無論、監視カメラでも彼女の姿は捉えられており、着替えの一部始終と新しい装備についてももれなく把握できている。 「まぁ、見ればわかるけど……山頂の湖から進入してくるつもりらしいわね。あの子」 「その可能性は低いと検討していましたが、彼女はあのルートをとった」 「湖はこの”本丸”の直上。つまり、進入さえできれば最短のコースとなる……できればの話になるけれども」 「できると判断したのでしょう。僕も可能だと思いますよ。彼女ならば」 山頂に大きくかまえたカルデラ湖。その湖底にはこの基地で使用する水を取り入れる取水口が存在する。 そこを潜れば基地内部への侵入は容易だ。 ただし、浅くはない湖を潜行し、すでに閉じられている取水口の隔壁をクリアする必要がある。 だがしかし、彼女はクリアするのだろう。彼女が人間でないゆえに。 「先程、取水口からのラインを停止しましたが……」 「白衣の連中が顔を真っ赤にしている姿が目に浮かぶわね。 湖からの取り入れている水って、ほとんどはシアーズのプラントで使用する冷却水用でしょう?」 「ええ。彼らのこちら側に対する感情はもう最悪です。全ての実験を停止させてしまいましたからね」 黒曜の君と警備本部長。互いに顔を合わせて笑いあう。 何がおかしいのか、そして笑っている場合なのか、それはわからなかったが、ただこの時は愉快な気持ちに身を任せていた。 LIVE FOR YOU (舞台) 1 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) 3
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LIVE FOR YOU (舞台) 2 ◆Live4Uyua6 ・◆・◆・◆・ ホテルより出立してより程なく。 朝日を受けてきらめく海面を右手に風を切って飛翔していた九郎とアルは、その目に目的地であるツインタワーを捉えた。 「油断をするな九郎。これからは敵地にあるぞ」 「合点!」 まだ1キロメートルと少しほど先に聳える双子のビルは、ケーキの上に立てる蝋燭ほどの大きさにしか見えない。 それを九郎は見る。否、九郎は――”視る”。 彼の全身を包む黒い表皮の上に刻まれた無数の神秘文字がちかちかと発光し、呪文を生み出し魔法陣を形作る。 術者の望むものを読み取り、膨大な魔術記録を検索し、該当するものが見つかれば”表皮”がそれを自動で”唱え”魔術を発動する。 それが魔術師と魔導書――”人書一体”であるということで、それは通常の魔術の道理を遥かに超越していた。 最早こうなれば、ただひとりの魔術師よりも、ただ一冊の魔導書よりも彼らは強力無比なのである。 「相手側も妾らがこちらから向かうと予測しておったか」 「けど、アンドロイドばっかりだぜ」 「ふむ。気兼ねなく鉄屑へと片してしまえるな」 応。と、九郎は翼で風を叩き加速する。 魔術師の眼で視る先。ツインタワーの中腹あたりにはデータで見たアンドロイド達が銃火器を構えて結集していた。 10……20……30……少なくともそれぐらいは、もしかすれば、いやおそらくはそれ以上の数がそこに並び、そして潜んでいるだろう。 聞いた限りではあの深優と同等かそれに近い性能を持っているという。ブラックロッジのやられ役とは訳が違うということだ。 だがしかし、彼らの言葉の通りにそれは難敵ではない。 人でないというならば魔術の力を全力で振るうことに気兼ねはなく、そして全力ならば――敵ではないからだ。 「――来るぞっ!」 後500メートルほどというところで、アンドロイド達の持つ銃火器が一斉に火を噴いた。 次の瞬間。横殴りに鉄礫の雨霰が九郎へと降り注ぐ。彼がただの人間であればこの次の瞬間にはこの世界より姿を消してしただろう。 ――『バルザイの偃月刀』 発声とともに手の内に現れた刀を九郎は振りかぶり、そして”空を切った”。 次の瞬間。殺到していた熱き弾雨はまるで見えない傘の上を滑るように九郎を”避けて”通りすぎる。 刀を振った時に発生させた極小規模の因果操作を行う防御呪文の効果である。 「あれみたくマシンガン一辺倒っていうなら、楽勝なんだけど――っと!」 物理的干渉を回避するはずの防御呪文の上で青白い火花が激しくほとばしる。 効果薄と見たのか、ツインタワーから九郎を狙うアンドロイド達は手にした銃器をより強力なものにしたらしい。 「たわけが! 油断するでない。いくら”制限”が緩くなったといっても完全になくなったわけではないぞ。 見誤れば死はすぐ其処にあると知れっ!」 首の横から九郎と一体化していたアルがミニマムな姿で顔を覗かせ、直接に九郎の耳へと苦言を叩きつけた。 九郎はアルに謝り、再び翼を強く叩きつけて高く上昇する。 弾雨から逃れ、さてならばどう上手くあのビルに接近できるのか、それを考えようとして九郎は地を爆走してくるそれに気付いた。 「アイム! ロッキンロオオオォォォオオオオオオォォォオオオオオオゥゥゥウウウウウウ――ルッ!!」 ギャギャギャ、ドッギャァ――――ァァアン! ペレロペロペロポロリロリ~~~~ンンンン! ギュゥ――ンンッ!! 「ひゃ――はっはっはっ! 遂に来たのであーる。この時が! クエスチョン! さて、どの時であるか? 回答までの猶予時間はナッシイイイイイイイイイイン……グッ! 我輩が答えまで言っちゃうもんね。 はい、ドクター・ウェスト君。答えは何であるかな? もっとも君ほどの頭脳を持ってすればお茶の子さいさいだろうがね。 おほほほほ、そんなことあるのであ~る! 答えは頭脳明晰単純明快安心会計家内安全――ずばり、我輩の時代が来たのであ~~~~~る!!!」 地を暴音爆走疾風怒濤にフィーバーしながらかっ飛ばすドクター・ウェストとそのマシーン達。 先頭からミニマム破壊ロボに、機関車、ショベルカー、ファイアーボンバー号と相変わらず奇麗に整列しながらの無謀運転。 誰が止められようか? 誰が止めようか? 如何にして止めようか? ……上空の九郎達は顔を覆って諦めていた。 「イッツ! スーパーウェストタ――イム! 合体承認! 今こそ我輩の真の実力を全力で披露する時であーる!」 ウェストの掛け声とスピーカーから発せられる合体のテーマに合わせ、縦列走行していた車両達が隊列を組み替えてゆく。 「さぁ、合体するであーる! ジャンジャンジャジャーン! レ――ッツ、コンバイ~~~ンッド! 天・才・合・体!」 破壊ロボを自ら操縦するウェストと、各機の操縦席に収まっていたブラックロッジ戦闘員らがペダルを踏むタイミングを合わせる。 その瞬間。背景はなにやらキラキラを輝く不思議時空と化し、火も噴いてないのに各機がロケットの様に舞い上がった。 見る見る間にガッコンギッコンと変形してゆくマシン達。 いささか質量保存の法則に抵触しているようなそうでないような、しかしこまけぇことは(ryと言わんばかりにダイナミックに。 小さな破壊ロボを核として2つに割れたトミーがボディとして覆いかぶさり、下半身からにょっきりと足が伸びる。 更には肩口にあたる部分にけろぴーが取り付き、アームをグイングインと振り回しながら一体化した。 そして、一塊の箱と化したファイアーボンバー号が背中へとぴたりとひっつき、ぶにょっと出てきたノズルから火を噴く。 加えて、一体化したマシンのいたるところからニョキニョキ生えたり引っ込んだり、ガッキンドッキンしたりして―― ――爆発炎上した。 「……あいつは本当に馬鹿か」 「知っておろうに……」 九郎と肩から顔を出している小さなアルの見下ろす先。そこからもうもうと黒煙が立ち上っていた。 合体に失敗したからではない。ドクター・ウェストは馬鹿であるがやはり天才でもある。そのような過ちを犯したりはしない。 ただ、至極単純な話として、ツインタワーの方よりロケット弾が撃ち込まれたのだ。 正義の味方?が変形合体してる最中に攻撃をしかけあまつさえ命中させてしまうのはタブーっぽくはあるが文句は言えないだろう。 何せ、互いの全存在を賭けた一大決戦なのである。戦場に奇麗も汚いもないということだ。 「けど……、これであいつがくたばるなら俺達はあんな苦労してないよなぁ」 「全くだのう」 九郎達が頷きあった次の瞬間。爆心地より旋風が巻き起こり、そこに黄金の破壊ロボ(勿論ノーマルサイズ)が姿を現した。 「うわはははははは! うひゃあ~~~、はっはっはっ! 絶好調であ~~~~る!」 全く無傷。完全にして黄金に輝く破壊ロボよりウェストの高揚した声が響き渡る。 ドリルを基本としてハンドやらミサイルやらなにやらを備えた幾本ものアームをわきわきといやらしく動かすとズンと一歩踏み出した。 それを合図にか、再びロケット弾が破壊ロボへと撃ち込まれ――次いで爆音……が、しかし――やはり無傷! 「ぶっひゃははははは! きかんきかんきかんであるなぁ~~~きかんしゃぽっぽー! 我輩の作ったロボは化物か?(疑問系)」 耳を澄ませば、ごうごうと風が轟くような音が破壊ロボの内側から聞こえてくる。 そして、ロボの装甲の表面を縦横無尽に流れる赤いエネルギーライン。 これらが、この”ドクター・ウェスト式ドリームクロス合体・G(何の略かはないしょ♪)破壊ロボ・おかわり3杯”が無敵である理由だった。 「ぐわはははっ! 我輩の最新でモードな破壊ロボに内臓した黄金動力・天地乖離す開闢のタービンの調子は陽あたり良好! だいたい無限大動力より供給されるオレ様バリアは、某配管工がラッキースターを獲得したが如くに無敵三昧。 つまるに、ここから先は我輩オンステージ! 我輩が勝ち。我輩が勝ち。そして我輩が勝つ。つまり、我輩の我輩による我輩の為のハッピーエンドにゴートゥー!」 では、シャイニングフィンガーを使うのあーる! という掛け声と共に突進してゆく黄金に輝くスーパーモードなG破壊ロボ。 浴びせられる鉛弾の雨も、火を噴くロケット弾も、対物ライフルも熱線もなんのその、彼の生き様のようにロボは驀進邁進してゆく。 「……色んな意味で負けちゃいられないな」 「ふむ。ここからは見せ場の奪い合いとなる。この勝負で先日の借りを返すぞ九郎!」 バルザイの偃月刀を構えなおすと、一際大きく翼で空を打ち、九郎達もドクター・ウェストに負けじとツインタワーへと突進を始めた。 ・◆・◆・◆・ 出発地点であった歓楽街のあるリゾートエリアより島の南西をぐるりと周り、数十分ほど。 恋人を背にスポーツバイクを駆るなつきの目に映る風景は一変していた。 歓楽街にあったような派手な看板や電飾の類。モダンアートのオブジェや配色のエキセントリックな建物などはもう無く、 今視界の中を流れるのは、石畳の灰色や煉瓦のくすんだ赤色。年季を感じさせる上品な建物の数々だ。 そして、通りから大きな広場へと出たところでなつきはそれに気付いた。 「…………!」 ”大聖堂”と地図上に記されている建物で、名前どおりに荘厳で、なつきにとってそこは印象深い場所であった。 思い浮かべるのは4日前。皆が集った教会からホテルへと向かう途中のこと。 あの中で、クリスは唯湖を想い、聞いているだろうと語りかけ、彼女のために彼自身が書いた曲を演奏して贈った。 そして、なつきは彼の真摯な想いを理解し、その一助となろうと彼の背を抱きながら決心をしたのだ。 今からそれを行うこと。来ヶ谷唯湖を救いに行くことに関して、もうなんらわだかまりは無い。 思念だけの存在となり残された想いを伝えてくれた棗恭介のこともあり、それは今やなつき自身の目的ともなっている。 なので、そこに不安や迷いはない。それなのに、あの大聖堂を見るとなつきの心はひどくざわついた。 ”クリス……死なないよな? ……ここにいるよな” あの時の問いに、クリスは確かな答えを返してはくれなかった。 それが、たった一言だけもらえなかったそれが、その空白がなつきの心をひどく不安にさせる。 近づきあい、触れあい、言葉を交わし、想いを交わして彼への理解を深めれば深めるほど、 あの時のあの一言の不在がまるで白いキャンバスに落とした一点の黒のように、浮かび上がり無視できないものへとなってゆく。 背中に彼の体温を感じる。確かに繋がっていると信じることができる。 けど、このまま離れずにずっと一緒でいられるのだろうか。 「(クリスは死なない。……死なせはしない。今も、これからも、ずっと――)」 なつきは首からかけたペンダント――錠と鍵が確かにそこにあることを確かめると、広場を渡り次の通りへと入った。 少しして、風景から街並みも消えなつきを先頭とした一行は山林の中へと入ってゆく。 申し訳程度に整えられた山道を、事故を起こさないようにと丁寧に右へ左へ、道の先を注視しなつきはバイクを進める。 その先に、玲二と彼のバイクの姿はない。後ろを振り返ったとしてもそこにも彼はいない。 彼はすでに歓楽街を抜けたところで別行動をとっている。そして―― 「深優ちゃん、がんばってねー!」 ――深優もまた今、愕天王から飛び降り、山の中へと姿を消した。 彼も彼女もここからは単独行動だ。 九郎達が北のツインタワーへと向かったように、彼らにもそれぞれ目的地となる別々の突入地点がある。 そして―― 「スピードをあげるぞ。クリス!」 ――なつきを先頭とする残りの面々が向かうのは、彼女にとっては因縁浅からぬ風華学園。 山道を抜け、再び市街へと出たところで彼女はアクセルを捻り再びスピードをあげた。 クリスの温かさを背に、決着の瞬間へと向けて自分と彼とを加速させてゆく――。 ・◆・◆・◆・ 赤。白。黄色。青と緑とそれ以外も、無数に無量に存在する華々しい光景。 風に吹かれ揺蕩う花弁の大海。その波の中を七色の波飛沫を巻き上げながら疾走するひとつの鉄騎があった。 モトクロスバイクに跨り、一路、南端の発電所を目指す玲二である。 色彩鮮やかな光景に決してそれだけ以上の気をとられることなく、油断の無い仕事人の姿勢を維持し彼は駆ける。 陽光を背に相貌を影と隠し、まるで場違いな亡霊かの様に、そしてそうだとしても亡霊の様に、彼は行く。 しかし、彼が行く島の南西は、花畑も向かう発電所も、もうすでに禁止エリアと指定されていたはずだ。 なのにどうして彼に嵌められた首輪は爆発せず、その首を跳ね飛ばしてしまわないのか? その理由は難しくない。答えは彼が殺害した最後の男。そして先日、霊となり再び合間見えたあの往生際の悪い男にある。 棗恭介――彼が持っていた携帯電話。彼から奪ったあれを、玲二が今持っていると、ただそれだけのことであった。 その携帯電話に内臓されていた特殊なアプリ――”禁止エリア進入機能”により、彼は禁止エリアの中を進む。 本来ならば参加者は進行できないはずのルート。 もしかすれば、相手側が事前には想定していなかったかもしれないルートからの奇襲。 それが最後のファントムである玲二に課せられた任務であった。 作戦を立案した九条により玲二に与えられた役割。それはただ彼がファントムとして、最後までそれを徹すること。 誰からの支援も無く、ただ孤独に任務に殉じ、最も危険な場所へと潜り込み、亡霊として標的の命を掠め取る。 彼はそれを望まれ、そして彼自身もそうすることを望んだ。 ファントム・ツヴァイへのミッションは――神崎黎人の暗殺。 玲二は往く。誰からも見えない亡霊の様に。 今はただの一発の弾丸の様に、標的である神崎黎人の心臓をめがけ、それを撃ち抜く為、ただ真っ直ぐと花畑を渡る。 命を刈るように花弁を散らし、亡霊は往く――。 ・◆・◆・◆・ ふと、深優は自らの肌着に掛けた手を止めた。 山頂の湖にほど近い、既に訪れる人もない神社。 いや、予定通りに事が進むのならば、もう人の訪れる事のない場所。 既に敵も味方も、誰一人この場を訪れる理由など無い。 (それは、そうなのですが…) わずかな躊躇の後、下着が半ば見える位置まで持ち上げられた肌着の裾から手を離す。 柔らかな布が肌を撫で、すべらかな腹を、臍を覆い隠し、スカートの上に重なる。 「…………」 理由は、無い。 これから少しの後、深優は湖底まで潜り、そこから主催者たちの本拠地に突入する予定だ。 なのだから、その為に潜水に適した装備を纏わなくてはいけない。 そして、その為のウェットスーツは既にデイパックから出してある。 だから、後はそれに着替えるだけでいい、のだけれど。 「…………」 ふたたび肌着に触れた手は動かず、逆にキュッ、と無意識に裾を握りしめる。 今、この場所に人気は無い。 太陽は眩しく、空は青く、気候は穏やか。 仮に周囲から誰か近づいてきたとしても、身を隠す場所も無い。 ただ、それは逆に言うなら、深優自身の身を隠すものも何も無い、ということ。 「…………」 無表情な深優の頬が、僅かに桃色に染まる。 見るものも無いのだから、気にする理由もない。 むしろ、こうして考えている時間が、逆に危険かもしれない。 篭城を決め込んでいるとはいえ主催側が気紛れを起こさないとも限らないし、あるいは暴発的に動くこともあり得る、のだけれど。 それでも、ほんの少し、ほんの少しだけ、羞恥を。 無防備に裸身をさらす事に、恥ずかしさ、という心を感じた。 そして、傍らに畳んであった服を再び手に取り、それを羽織る。 肌着のまま動く、というのも世間的にははしたない行為なのだから。 「別に、普段から何も無い所で脱ぐような事は、ありません……」 誰に対してでもない言い訳の言葉が、無意識に唇から零れる。 一般的なTPOは備えている。無論、人前で肌を晒す事も無い。 ただ、言い訳をするなら、今この場所には、誰も居ないのだ。 人に見られる恐れが無い場所なのだから、ただ適当に、最短距離の途中にあって、警戒しやすい場所を選んだ、それだけのこと。 その判断自体は、間違いでは無いと思う。 間違いは無い、と思うのだが……。 「…………」 無言で、木々の陰に荷物を降ろす。 本殿に入って着替える事も考えたけれど、建物の中には監視の目が光っている可能性が高いので、やめた。 敵とはいえ、不特定多数の相手に見せたいものでもないのだから。 丁寧に畳みながら服を脱ぎ、デイバックにしまっておいた大きめのバスタオルを、体に巻く。 (そういえば……) せめて下に着る水着くらいは、ホテルで着てきても良かったのかもしれない。 隠しているとはいえ、屋外で下着まで外すことは、多少恥ずかしい。 「碧……感謝します」 ダイビングスーツを用意した際に、下に着る水着を荷物に加えた杉浦碧の行動に、深優は人知れず謝意を示す。 同時に、余分になる訳でも無いのだけれど、どうしても必要というわけもない荷物まで揃える気にはならなかった過去の自分を恥じる。 機能的にはワンピースタイプの方が適している筈なのに、ビキニタイプを推した理由までは、図れなかったが。 ジ・ジ・ジと固めの音を立てながら、ファスナーを閉じる。 既に着替えは終わり、荷物もこうしてダイビングバッグに収めた。 手元にあるのは足ヒレとシュノーケル、エアは最低限の量しか用意していないけど、問題は無い。 訓練も無しの潜行も、それによる急速な圧力の変化といった人体の構造上の無理が多い行動も、私には何の問題も無い。 外見的には人と何も変わらないけれど、私の身体は人のそれよりも遥かに頑丈に出来ているのだから。 無論人としての機能も一通り揃ってはいるのけれど、それでも人とは明らかに違う。 人を模して作られた、ツクリモノノカラダ 「……っ!」 そのことに、不満を感じた事は無い。 感じる理由など、何一つ無かったのだから。 アリッサ様の為に作られ、その為に機能し続ける事に、不安すら感じた事はなかった。 不安を感じるという機構が、心という機能があることさえ、想像すらしなかったのに。 「アリッサ様……」 思い返すと、胸に痛みを覚える。 これが、心の作用なのだと、なんとなく理解している。 何度か、考えたことがあった。作り物の身体にも、心は宿るのかと。 心は、確かにここにある。 私は、私。 私は、アリッサ様の為に戦う。誰でも無い、私自身の心に従って。 たとえ最初は役割としてあった事でも、それは間違いなく私の望みに他ならない。 そして、もう1つ。 「玲二……」 心が、惹かれている。 適うことなど無いのに、惹かれている。 人間ですら無い、人に作られた私が、人を、感じている。 幼い日の人間が翼を夢想するように、私は人を夢想する。 例え私の身体が普通の人間と同じであったとしても、何も変わらないと理解していても、望んでしまう。 人である事を、アリッサ様と同じ存在になる得る事を。 人として、玲二の傍らに居られる事を。 私は、どれだけの期間、稼動し続けられるのだろう? 普通の人のように老いるのか、アル・アジフのように長い時を生きるのか、それともあと数年もすれば停止してしまうのか。 人と、皆と同じように、人でありたいと、そんな心を、感じる。 これは、私が人では無いからこそ、感じる痛みなのだろうか。 作られた私が、人を想うのは間違いでは無いだろうか。 アリッサ様の為に戦うというこの感情は、人として自然なものなのか。 碧が言ったように、遠くから思い続けるという事では耐えられないと感じるのは、私が人ではないからだろうか。 「わかりません……、私は……」 私自身の心が、判らない。 私自身の事が、まるで判らない。 判らない 判らない 「判らない、ですが……」 人間とは明らかに異なる私の身体。 けれど、だからこそ、今出来る事がある。 皆と、玲二と、……アリッサ様の為に戦うことが出来る。 それは、今ここにある深優・グリーアにしかできない事なのだから。 「そう、だから……」 今は、この身体に感謝しよう。 たとえその先に、さらなる苦しみが待っていたとしても。 ・◆・◆・◆・ 「おや、反応がひとつ足りないロボ。 これは壊れているのではないかマスター? なんならエルザが叩いて直してやってもいいロボよ?」 ふらりとモニターの前にやって来ては、そんなことを言うエルザ。そんな彼女の言葉にマスターである神崎はくすりと息を漏らした。 彼女は人造人間である。つまりは作られた存在であるわけだが、創造主がどう思ったかはともかくとして 彼女のセンスは中々にユーモアに溢れており、この状況だとそれも存外悪くないものだと神埼はそんなふうに思う。 「それは違うよエルザ。モニターは壊れてはいない」 「じゃあ、エルザの目がおかしくなってしまったロボか? だったら、至急直してもらわないと……あの、えーと……誰だったかロボか……?」 ふむと、目の前でぐるぐると頭を回し始めたエルザに神崎はひとつ溜息をついた。 自身のボディーガードとして常に帯同させてはいるが、元々が無理をしているせいかその分綻びがよく見えるようになってきている。 「それよりもエルザ。ひとつお茶を持ってきてくれないかな? 緊張すると喉も渇くものでね」 「最優先でそのコマンドを実行するロボ。……マスターは熱々の番茶がよかったロボ?」 紅茶だよ。と、そう言って神埼はエルザを一時下がらせる。 そして、周りが静かになると再びその双眸をモニターの方へと向けなおした。 「吾妻玲二……ファントム・ツヴァイか」 確かに、エルザが指摘したとおりモニターからは参加者の反応がひとつ消えていた。消えているのは吾妻玲二の反応。 もうすでに彼は退場してしまった――という訳ではない。島中に設置された監視カメラには彼の姿は捉えられている。 花畑を疾走する亡霊の姿はそろそろ発電所に到着するだろうと、そんな所にあった。 彼の反応がモニターに出ないのは、彼が”禁止エリア進入機能”を使用しているからだ。 単純な話で、その機能は禁止エリアに引っかからなくするために首輪から電波を発するのを停止させる。 故にモニターにも一時的ではあるが映らなくなるというわけである。 これでこちら側の虚を突けるかというと、そんなことは全く無い。実際に、彼の姿は監視カメラで捕らえられているからだ。 「――とはいえ、基地の中に入ってこられちゃあ困る。わよねぇ?」 「ええ、ですから”アレ”らを手配したわけですが。首尾はいかがでしょうか?」 ゆらりと現れた警備本部長の声に驚くでもなく、神崎は対応が済んでいるのかだけを簡潔に聞き返す。 彼女の言の通り、地下の基地内部にまで侵入されると彼を補足するのは難しくなる。 元々参加者らが行き交うステージであった地上とは違い、地下の基地内には監視カメラなどはほとんど存在しないからだ。 ならば、どうするか? 答えは難しくはない。 「発電所の地下へと”アレ”らを向かわせたわ。 元々こっちには深優ちゃんが来るかと想定してたけど、……まぁ、おあつらえ向きになったという形かしらね」 そう。進入口で待ち構えればいいのである。 いかに彼がファントムであろうとも、事実として地下への入り口がそこには一箇所しかない以上、通る場所は決まっているからだ。 ならば、そこに精鋭を送り込み見失ってしまう前に打ち落とす。それが神埼と一番地のとった策であった。 「もっとも、彼もわかってて飛び込んでくるんだろうからそうそう簡単には終わらないでしょうけれどもねぇ……」 どこか気だるげで、しかし隙を見せない表情でそんなことを言うと警備本部長はモニターの中の別の位置へと視線をずらした。 先ほど名前を口に出した、深優・グリーアの反応にである。彼女もまた玲二と同じように単独で行動している。 西側の街を抜けてより山の中へと入り、今は頂上に近い位置にある神社の傍にその反応があった。 無論、監視カメラでも彼女の姿は捉えられており、着替えの一部始終と新しい装備についてももれなく把握できている。 「まぁ、見ればわかるけど……山頂の湖から進入してくるつもりらしいわね。あの子」 「その可能性は低いと検討していましたが、彼女はあのルートをとった」 「湖はこの”本丸”の直上。つまり、進入さえできれば最短のコースとなる……できればの話になるけれども」 「できると判断したのでしょう。僕も可能だと思いますよ。彼女ならば」 山頂に大きくかまえたカルデラ湖。その湖底にはこの基地で使用する水を取り入れる取水口が存在する。 そこを潜れば基地内部への侵入は容易だ。 ただし、浅くはない湖を潜行し、すでに閉じられている取水口の隔壁をクリアする必要がある。 だがしかし、彼女はクリアするのだろう。彼女が人間でないゆえに。 「先程、取水口からのラインを停止しましたが……」 「白衣の連中が顔を真っ赤にしている姿が目に浮かぶわね。 湖からの取り入れている水って、ほとんどはシアーズのプラントで使用する冷却水用でしょう?」 「ええ。彼らのこちら側に対する感情はもう最悪です。全ての実験を停止させてしまいましたからね」 黒曜の君と警備本部長。互いに顔を合わせて笑いあう。 何がおかしいのか、そして笑っている場合なのか、それはわからなかったが、ただこの時は愉快な気持ちに身を任せていた。 LIVE FOR YOU (舞台) 1 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) 3
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【エーライツ評判】2009年エーライツプロデュース舞台/エジンバラフェスティバルガイド「Fest」にて最高の五つ星 舞台「Death of a Samurai」 予告ムービー エーライツプロデュース舞台公演として、初めてエジンバラ・フェスティバルへ参加し、注目作品のみが出演することができる「Pick of the Fringe 2009」への召集や、全13公演のチケット完売、また参加作品『Death of a Samurai』は現地のエジンバラフェスティバルガイド「Fest」にて最高の五つ星(★★★★★)評価を得るなど、各方面より予想以上の好評をいただきました。 【街頭パフォーマンスの模様】 【本公演の模様】 期待を上回る、更に言葉の壁を越えた、世界中の誰もが楽しめる舞台作品を日本の代表として上演。 舞台「Death of a Samurai」 エジンバラ最終公演前キャストインタビュー Death of a Samurai エーチームグループオーディション エーライツ エーライツ 評判 エーライツ噂 エーライツ所属
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設定 東京 おそらく作品公開時、2016年頃の姿にほぼ忠実 2021年シーンでも東京五輪の影響は見られない 瀧の住所は千代田区 瀧の高校は「都立神宮高校」 糸守 岐阜県Z郡糸守町(飛騨地方) 人口およそ1500人 地区:門入、坂上、宮守、親沢、ほか 【施設】 <絵として登場> 町役場 糸守小学校 糸守高校 宮水神社 中川精肉店 有坂電機製作所 門入橋 スナック マザー スナック 割愛 コンビニ アイショップ 中部電力糸守変電所 <話上・地図上に登場> 旧高山本線 モデル 糸守 町役場:和歌山県かつらぎ町役場 宮水神社:岐阜県飛騨東照宮? 中川精肉店:千葉県佐原市 コンビニ アイショップ:種子島のアイショップ 糸守周辺 岐阜県飛騨市(旧吉城郡古川町周辺) 瀧たちが記事を調べる古川図書館:飛騨市図書館 瀧たちが下りる駅:飛騨古川駅 瀧たちがタクシーに聞き込みする駅前:飛騨古川駅前 瀧が「やっぱ無理か…」と落ち込むバス停:落合バス停 三葉の最寄り駅:秋田内陸縦貫鉄道南前田駅 東京 瀧の最寄り駅:四谷駅 三葉in瀧の通学:新宿駅南口 瀧の高校内装:広島市立基町高校 天井の木組みがいいカフェ: 瀧のバイト先: 瀧の通学路: 瀧のマンション前の道:信濃町駅周辺 デート集合場所:四谷駅 デートスポット:六本木ヒルズ デートランチ:国立新美術館 デート後の歩道橋:信濃町南側の歩道橋 飛騨へ向かう駅:東京駅 その他 新幹線から見える車窓のビルと風車:豊橋駅付近 乗り換える駅:名古屋駅 乗る特急:ひだ5号
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LIVE FOR YOU (舞台) 9 ・◆・◆・◆・ 「まずは目の前の敵に専念するんだ!! 無理に祭壇に近づこうと思わないで! 桂ちゃんッ」 「は、はいっ」 「君は接近戦に弱い柚明ちゃんの護衛を! 柚明ちゃんは極力桂ちゃんから離れないで!」 「わ……わかったわ!」 那岐は的確に指示を出してゆく。 接近戦の桂。 中距離からの牽制と攻撃の那岐。 遠距離からの支援攻撃の柚明。 特に柚明は攻撃速度が遅いため桂の護衛は欠かせない。 那岐も鬼道を使う戦法のため、接近戦よりも中距離戦に長けている。 このメンバーでは前衛が不足しているのだ。 「こっのおおおおおおおおおお!!!」 桂は手にした九七式自動砲を敵の大群に向けて連射する。 大口径の対物ライフルでありながらセミオート。 つまり普通の自動拳銃のように引き金を引くだけで弾が放たれる。 螺旋状に回転する弾丸がオーファンに、アンドロイドに突き刺さる。 オーファンは一瞬のうちに光の粒子に還元され、アンドロイドの上半身がバラバラに砕かれる。 相手が人間でないのが唯一の救いだ。 カチッカチッ。 「もう弾切れ!?」 装填された7発を全て撃ち尽くす桂。 だが再装填する暇は存在しない。 「桂ちゃん! 上からオーファンが!」 那岐の声に見上げると狼のような姿のオーファンが三体。桂に飛び掛かり、爪を振り下ろしてきた。 「――ッ!?」 銃を捨て刀に持ち代えるもわずかに相手のほうがタイミングが早い。 しかし――! 宙に現れた無骨な直剣がオーファンを次々と刺し貫く。 そして次の瞬間、一斉に剣が爆発。オーファンは粒子となって四散した。 「桂ちゃん大丈夫!?」 「ありがとう柚明お姉ちゃん!」 柚明の周りに浮かぶ無数の剣。 柚明は剣の誘導制御を全てOFFにし、ただ直進のみにして術式を構築する。 誘導に回す魔力のリソースを全て剣の爆発力に注ぎ込む。 事前に飲んだ贄の血のおかげで、柚明に刻まれた魔術回路はスムーズに動き出す。 「桂ちゃんには指一本触れさせない……ッ!」 剣の七本同時発射。 ミサイルの様に剣が敵群に突き刺さる。 そして―― 「解放 ブレイク !!」 剣に込められた魔力を一気に解放する。 解放された魔力による小爆発がつぎつぎに巻き起こり、周りのオーファンやアンドロイド巻き添えにしてゆく。 「さっすが柚明ちゃんえげつない弾幕だねえ~、んじゃ僕も弾幕勝負と行くとしますか。桂ちゃん、ほんの少しでいいから僕の援護を!」 「わかったよ!」 那岐は攻撃の手を止め、術の詠唱に入る。 柚明の弾幕に阻まれた敵はここぞとばかりに那岐へと狙いを変えた。 踊りだす無数のアンドロイド、しかしそこに日本刀を携えた桂が割って入る。 桂に向けて銃を放つアンドロイド。しかし撃った瞬間には桂の姿はそこにいない。 超人的な脚力と銃口の向きによる着弾地点の予測。回避し、そして、 「はああああああああああ!!!」 横に縦にと薙ぎ払われる一撃にアンドロイドらは活動を停止する。 これだけのオーファンやアンドロイドを切り捨てても小烏丸は歯こぼれ一つせずに切れ味を誇っていた。 「うん、いい感じだね!」 刀を振るうたびに洗練されてゆく桂の太刀筋。 相変わらず身体能力に頼った強引な振りではあるが徐々に戦闘技術が蓄積された戦い方となってきている。 数日前とは比べ物にならない鋭さ。鬼になったとはいえ、元はただの女子高生がここまで短時間で上達するものだろうか? それは特訓に参加したアルも同じ感想を抱いていた。 これらは彼女の母親に起因する。 一ヶ月と少し前に彼女の母親が亡くなった。死因は過労が祟ってのこと。 母親の名前は羽藤真弓。旧姓――千羽真弓。 かつて十代にして千羽妙見流の全ての奥義を会得し、歴代最強とも称された鬼切り役。 その実力は現鬼切り役である烏月を、そして先代鬼切り役である烏月の兄である明良ですらも凌ぐ実力だったとされる。 それが桂の母親だったのだ。 真弓はその後、桂の父親と半ば駆け落ち同然に千羽党を抜け出し結婚したそうである。 桂を産んでからも彼女は翻訳業を営む傍らで鬼切りの副業をしていたのだとか。 もちろん桂は母親の素性は知らない。 しかし桂の中に眠る千羽の血は確かに存在する。 それがサクヤの血を受け入れたせいで目覚めたとして、何が不思議であろうか。 「桂ちゃん! 撃ち漏らしたオーファンがそっちに!」 柚明の声。 頭上からさっき相手した狼型よりもずっと大型の虎型のオーファンが咽喉笛を噛み千切ろうと桂に襲い来る。 桂は足元に放置してあった九七式自動砲の端っこを足で踏みつけた。 柚明の弾幕で敵が怯んでいる内に弾の再装填は済ませてある。 バンっと跳ね上がった銃が空を舞い桂の右手に握られた。 そして……長大な銃身を大口を開けて飛び掛る虎の口内に直接捻じ込み――引き金を引いた。 ボッ! オーファンの体内で弾丸が爆ぜる。 虎はなすすべもなく爆散し、光の粒子に還元される。 だがまだ一息つけない、桂の攻撃後に生じた隙を狙って今度はアンドロイドが飛び出してきた。 「この……っ」 銃から右手を離し、そのまま左手に添えられた刀を握り締め、左斜め下から右斜め上に逆袈裟に斬り上げる。 そのまま手首を返し再び袈裟懸けに斬り下ろす。 高速の二段斬りにあっというまにスクラップと化すアンドロイド。 だが力任せに振るった動きのせいで体制を崩す桂。 それを見逃さない敵。 さらに数対のオーファンが桂に迫る……! 「しまっ――」 柚明は目前の敵の対処ためにこちらの援護は出来ない。 思わず目を閉じる。 その瞬間、爆音と共にオーファンが消し飛んだ。 「な、何……?」 さらに一発、二発。 桂の後方から何かが凄まじい勢いで飛んでくる。 それは柚明の剣とは比べ物にならない弾速で飛来しオーファンを消滅させる。 その弾丸はあまりのスピードのために着弾してもそのまま敵を貫通し、後方の敵群すらも蹴散らしていった。 「ふう、危なかったね桂ちゃん。僕のほうは準備完了だよ。お疲れ様」 「那岐君……?」 振り向いた桂の視線の先には那岐が笑顔で立っていた。 そしてよく見ると那岐の全身から青白い放電現象が見え隠れしている。 パチパチと音を立てて、その余波がまるで電気風呂のように桂の身体にまで伝わっていた。 「電気……?」 「そう、僕の鬼道は雷も操れる。それの応用かな。ホテルに置いてあった小説を参考にした技なんだよね」 「へー……」 「さて取り出したるはカジノのメダル。タネも仕掛けもございません」 懐から取り出したメダルを親指ってピンと跳ね上げてキャッチする。 「ちょいとばかりマッハ以上の速度で飛んでいくけどね――!」 するとみるみるうちに那岐の右手のメダルに向かって放電が集中し、眩い光が放たれる。 「――名づけて 超電磁砲《レールガン》 なんてね」 一瞬のうちに音速の数倍に加速されたメダルが敵の大群に吸い込まれる。 そして衝撃と共に吹き飛ばされるアンドロイドの残骸。 「すっ……すごい、那岐君……」 「まだまだ行くよ!」 さらにメダルを連続して射出する那岐。 そして柚明から放たれる無数の剣戟。 爆発と衝撃が洞窟を揺らす。 二人から放たれる弾幕は見る見るうちに敵の数を減らしてゆく。 時折、弾幕を掻い潜った敵もいたがことごとく桂によって迎撃された。 そして敵の残りもわずかとなった時、 剣を射出する柚明の背後に忍び寄る影がいた。 「危ない柚明お姉ちゃん!」 桂は一気に距離を詰め、襲撃者に向けて袈裟懸けに刀を振り下ろした。 少し、変な感触だとその時は思った。 オーファンとも、アンドロイドとも違う感触が手に伝う。 「え……?」 ずるりと、袈裟懸けに斬られたそれの上半分が地面にどさりと崩れ落ちる。 斬った瞬間、生温かい液体が顔にかかっていた。 鉄の臭いと海の潮の香りを混ぜたような嫌な臭い。 この島で何度も嗅いだことのある嫌な臭い。 崩れ落ちた上半分と下半分から流れ出す液体は地面に大きな染みを作っている。 赤い、赤い、水溜り。 刃こぼれ一つしていない刀にねっとりと付着するモノ。 血。 血。 血。 人間の血―― わたしが斬ったのはオーファンでもアンドロイドなく―― 生きた人――間―― 「あっ……ああああ……わたし……わたし……ひ、人を……!」 カランと桂の手から刀が滑り落ちる。 膝がガクガクと振るえまともに立つのも苦しくなってくる。 「桂ちゃんしっかりして! ……!! オーファンが消えて……どうして!?」 オーファンだけではない、アンドロイド達も祭壇の奥の通路へ退いてゆく。 代わりに現れたのは一番地の戦闘員達。 だが戦闘員達は銃やナイフを構えているだけでこちらを攻撃をしようとはしない。 「チッ……そういうことか……神崎君も鬼畜な手を使うねえ……反吐が出る」 舌打ちし苛立つ那岐。 いつになくその嫌悪感を露にした表情を柚明は心配そうに覗き込む。 「どういう……ことなの……?」 「おそらく神崎君は祭壇を放棄した。残存するアンドロイドを撤退させたのが証拠さ」 「じゃあこの戦闘員達は……」 「皆と合流したければこの戦闘員を倒して行けってことさ、自分からは攻撃しない近づいた者だけ反撃せよという言霊付きでね」 「そ、そんな……! 言霊を解除する方法は……」 「残念だけど、無い。気絶させてやり過ごす方法も無理だね。痛覚が麻痺させられている。腕が折れようと足が砕けようとも向かってくる」 柚明はぎりっと拳を握りしめる。 ここにいる人間は哀れにも言霊によって操られた被害者。 組織に忠誠を誓う者ならある種の割り切りを持って対峙できるのだが 自らの意に反して戦わさせられる者達をを殺すことは―― 「明らか桂ちゃんを狙った揺さぶりだね。僕や柚明ちゃんだって殺すことに躊躇いがあるんだ。ましてや桂ちゃんは……」 桂を一瞥する那岐。 桂は突き立った刀を杖代わりにして項垂れている。 初めて人を殺したショックは計り知れないだろう。 「桂ちゃん……後は僕達が……」 「大……丈夫だよ、那岐君」 刀を抜いてゆらりと前方を見やる。 すっかり憔悴しきった表情だった。 そして―― 桂は刀を構えその身を翻すと、戦闘員に向かって一気に跳躍した。 「桂ちゃん!?」 桂の行動に驚愕する柚明と那岐。 戦闘員は銃で反撃を試みようとするも圧倒的に桂のほうが速い。 「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ……うっ……うああああああああああああああああああ!!」 いつかの玲二とファルの言葉がフラッシュバックする。 彼らの言葉を否定したくて、でもそんなものは生半可な覚悟で出来ることじゃないくせに、桂の絶叫と共に刀が横薙ぎに振るわれる。 白い閃光が戦闘員の身体を通り過ぎた瞬間、戦闘員の首が胴体から落ちた。 吹き上がる鮮血、その飛沫を受けながらも桂は次の目標へ。 縦に一閃、唐竹割りに左右に分割される身体。 横に一閃、吹き飛ぶ手足。 それでも戦闘員達は恐怖に慄くことも恐慌状態で逃げ出すこともなく無表情のまま反撃をしようとする。 しかしそれも暴風と化した桂の前では無意味な行為だった。 「なんで……どうして逃げないのっ!? 逃げないと死ぬんだよっ! わたしに殺されちゃうんだよ……! だから……早く逃げてよぉぉぉぉ!!」 残酷な死が目の前で幾度と繰り返されても逃げ出そうとしない戦闘員。 それを次々と斬り捨てていく桂の刃。 「わたしから逃げないと死んじゃうんだよ……! お願いだから逃げて……逃げてよぉ……」 ただただ一方的な虐殺が繰り広げられている。 桂の絶叫が洞窟に延々と響き渡ったまま。 その光景をどうすることもできず見守る柚明と那岐だった。 「やめて……もうやめてよ……もうこれ以上わたしに人を殺させないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 ・◆・◆・◆・ 立ち込める死の香り。むせ返るような血の臭い。 三十人近くいた戦闘員達はすべてもの言わぬ肉の塊と化している。 桂は祭壇の上で嗚咽を漏らしていた。 誰も悪くないのに、彼らは言霊で操られていただけなのに無残にも殺された。 その全てが桂によって殺されてしまった。 祭壇の上にいた陰陽師達はすでに全員が死んでいた。 アンドロイド達が撤退した時に自決を図ったのだろう。 もちろん自らの意志ではなく言霊によって―― 「バカだよね……勝手に飛び出して……結局みんなわたしが殺した。わたしが……!」 傍らに立つ柚明と那岐は桂にかける言葉が見つからない。 ただ自嘲めいた声で呟く桂の声を聞いてるだけだった。 「五人目ぐらいからね……まるでゲームみたいに感じてくるの。そんなこと……そんなこと感じたら駄目なのに……! 怖さも哀しさも麻痺してきてただ目の前のモノを斬ってるだけに感じてきて……それがすごく怖かった。 一人斬るごとに自分の心が死んでいくみたいだった。だから必死に来ないで逃げてと叫んで。 あはは……ならわたしが逃げればいいのに、戦わなければいいのに、殺さなければいいのに……っ……しなかった」 たった一振りで死んでいく人間を見て、桂はサクヤから受け継いだ力を思い知らされる。 そして何よりも自らを嫌悪しているのは、圧倒的な力をもって弱者を嬲ることに快感を感じていたこと。それを否定できないこと。 本当に嫌なら戦いをやめることが出来たはずなのに、出来なかった。 ――わたしは、誰も殺したく無い… 殺しあうのが、法律なら、そんなもの壊してしまえばいい。 人を殺すよりも、ほかほかのご飯を食べることの方が嬉しいもん。 以前、玲二に向けて言った言葉が脳裏に浮かぶ。 今となってはひどく滑稽な言葉だった。 平和な所からしか物事を見てなくて、自分が他者を殺すことなんて考えもしていなかった。 アルは言った。桂はもはやこちら側の人間である。此岸から彼岸へ身を投じてしまった。 そこに此岸の倫理は通用しなかった。生きるために他者を傷つけ、殺さなければならない。それを身をもって思い知らされた。 玲二のように完全に割り切れたらどんなに楽であろうか。 ただ敵を殺すだけの戦闘機械と成り果てたらこんなに苦しい思いをしなくて済むのに。だがそうなるためにはあまりにも桂は心優しすぎた。 此岸と彼岸の境界を身を置いて、生きるために他者の命を奪うたびに心が傷ついてゆくのが桂に課せられた試練だった。 「わかってたの……いつかこうしなきゃいけないことが来る。 これがわたしの得た力の『代償』なんだって、ずっとそれと向き合うことから逃げてきたんだもん……」 「桂ちゃん……」 柚明は一言だけ桂の名を呼んで彼女を優しく抱きとめた。 傷ついた彼女の心。しかしそうなることを選んだのは彼女自身の選択だった。 戦うことから逃げなかった彼女の意志を尊重したい。自分は傷ついた彼女が翼を休める場所でいい、静かに見守ることでいい。 「柚明お姉ちゃん……うぐっ……ううっうぁぁぁぁぁぁあああああああ……」 柚明の胸の中で桂は泣いた。 溜まった物を洗い流すように赤子のように泣き続けた。 ・◆・◆・◆・ 「ありがとう……柚明お姉ちゃん」 「桂ちゃん……もういいの?」 「うん、泣いてちょっとすっきりしたよ」 さんざん泣きつくしたため、桂の目は赤く腫れている。 「桂ちゃん……本当はね、僕は君に人を殺す覚悟なんてしてほしくなかった。後悔はしてない?」 「正直に言うと……殺したくない。戦わなくて済むならそのほうがいい」 「そりゃそうだ。僕だって好き好んで人を殺したくないんだからさ」 那岐は肩をすくめて笑う。 「(なるほど……そりゃアルちゃんが入れ込む理由もわかるよ)」 彼女は大丈夫だ。手に入れた力に溺れるようなことはないだろう。 さすがアルのお墨付きを与えられた娘だった。 桂の優しさ、桂の強さは長い時を生きてきた那岐にとってとても魅力的なものだった。 「わたしは……わたしはもう逃げない。 何のためにここにいるのか……その答えを自分で見つけるために……! そして大切な仲間達を守るために……!」 桂の金色の眼差しは曇り一つなく前を向いていた。 柚明は安心とほんの少しの寂しさを感じて桂を見る。 もう桂は守られる存在じゃないなんてとっくにわかっているけれど――。 「さてと、僕はここで少しやることがあるから二人は先に行ってくれないかな?」 そう言って那岐は祭壇の中心に立つ。 祭壇の床には円形の魔法陣が描かれている。 ルーン文字や漢字が書き綴られた複雑な魔法陣だった。 「これからこの島に張り巡らされた地脈を乗っ取る。うまく行けばオーファンをこちらの制御下に置けるからね」 「一人で大丈夫なの? わたし達も残って――」 「いや、ちょっと時間掛かりそうだからね。君達は先に行ってみんなと合流するんだ」 那岐の言葉に桂はこくんと頷く。 桂と柚明は仲間との合流を。 那岐は地脈の制御を。 言葉はいらない、今は課せられた役目を各々が果たす時。 だから―― 「行こう! 柚明お姉ちゃん!」 「ええ!」 頷きあう桂と柚明。 「那岐君……必ず生きて帰ろうね! 絶対……絶対だよ!」 「ほんっと桂ちゃんは優しい子だなぁ~。ほんと……好意に値するよ」 「コウイ?」 「好きってことさ」 「えっ……えーーーーーーっっ!!??」 面と向かって異性に「好き」などと言われてぽっとゆでダコのように染まる桂の顔。 それを見て那岐はくすくすと笑みを漏らす。 「あははっ冗談だよ冗談。でも桂ちゃんは僕の大切な『仲間』だよ。それに……いつか桂ちゃんにもお似合いの異性が現れるかもねっ」 「う、うん……」 「あー、でも最近は異性でなくてもいいのかな~? 弥生時代生まれの僕には21世紀の恋愛事情には疎くてねー……うふっ」 「???」 何やら思わせぶりなセリフだが桂の頭の上にはクエスチョンマークが浮かぶだけ。 どうやら本当に自覚はないのだろうか……? 「(うへぇ……あれを全部天然でやってるならとんでもない大物だよ……)」 少し柚明が不憫に感じる那岐だった。 「それじゃあ……わたし達行くよ。またね那岐君」 「またね、桂ちゃん」 再会を誓いあう三人。 桂と柚明は祭壇奥の通路に向かって走り出して行った。 ・◆・◆・◆・ ひゅんと音を立てて一条の線が空を疾走してゆく。 まるで、視界のその上に直接線を引いてゆくように、そして自身の上に線を引かれた者はことごとく血を吹いてその場に崩れ落ちた。 「はっ!」 掛け声ひとつでトーニャは跳躍。浴びせかけられる銃弾を回避すると、吹き抜けからそのまま上階へと飛び移った。 着地すると同時にアンドロイドが彼女めがけて狭い通路を突進してくる。 片手には分厚いブレード。人外の力で振るわれるあれを受け止める術はトーニャの中にはない。なので発砲した。 武器は多いにこしたことはないと、サブウェポンとして携帯してきた拳銃である。 しかしながら、ファントムでもないトーニャの放った弾丸は何もない場所を通り抜け命中しない。 アンドロイドは先のトーニャの様にそれを跳躍して回避し、勢いを殺すことなく空中を彼女へと向け突進してくる。 「パターン読め読めですよ!」 それを、一条の線――キキーモラが捕らえた。先の兵士達と同じく、線を引かれたアンドロイドは空中で無残を曝す。 無表情のバラバラ死体が、吹き抜けから下にばら撒かれ、床の上で派手な音を立てた。 結局の所。あの落とし穴による分断より2時間ほど経ったわけだが、未だにトーニャは誰とも合流できないでいた。 一度見失ったやよいはもうレーダーの中に入ってくることはなく、美希やファルも先ほど姿を消してそのままだ。 その他に関して言えば影も形も、である。彼女の持つレーダーはただ沈黙していた。故障や電池切れという訳でもない。 「さて、どうしたものか……」 彼女の立っている位置は突入地点である学園地下より、1kmと半分。一番地本拠地ももう目前というところである。 まばらだった襲撃も断続的に続くようになり、そろそろレーダーを確認している余裕もなくなってきたというところだ。 先に進めば、神崎が座する部屋まではそうもない。攻撃は牽制のそれから排除のものと変じ、僅かな余裕も失われるだろう。 「進むか、戻るか、はたまた待つか?」 それが悩ましい。果たして仲間達は皆どこにいるのか? 先へともう進んでいるのか。それとも、後に置き去りになっているのか、それとも今こちらへと向かっているのか。 わからなければ、進むことも戻ることも待つこともできない。そして指標であるはずのレーダーが今は役に立っていない。 「……いっそ、特攻覚悟で進みますか? いえ、短慮はいけません。時間をかけずに、けどよく考えませんと――と?」 役立たずだと断じ、もう鞄に仕舞ってしまおうかとそう思った時、レーダーが久しぶりに音を鳴らした。 映ったのは誰なのか? トーニャはすぐにそれを確認する。 「桂に、柚明……この位置は……?」 探知圏内の端っこを一瞬何者かが通り抜けた。見間違えでなければ桂と柚明。あの仲のいい2人である。 位置はトーニャがいる基地内の通路よりかはかなり遠い。また向かった方角もかなりずれていた。 「なるほど、川に落ちて……回り込んで、……ふむふむ」 再びトーニャは通路を駆け出した。向かう先は勿論、主催の中枢、番地本拠地である。 何も深く考える必要はなかったのだ。 最初のやよいだってそうだったし、美希もファルもそうで、桂や柚明も変わらない。皆、先へと進んでいる。 引き返そうなんて者は仲間のうちにひとりもいない。それが信じられるのなら、最初から考える必要はどこにも存在しなかった。 「ふふ。一番乗りはこのアントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナがいただいちゃいます。同士諸君。あしからず」 駆けて、駆けて、そして銀狐は門を潜り抜け、18の仲間。その中で一番乗りを果たした。 LIVE FOR YOU (舞台) 8 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) 10
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出演 デーモン閣下/白石隼也/福士蒼汰/高橋龍輝/清水富美加/吉沢亮 奥仲麻琴/戸塚純貴/高山侑子/入来茉里/足立梨花/坂本浩一監督 開催 2012年12月08日(土) 埼玉 MOVIXさいたま 12/08 (土) 1 09 00 (上映前) 東京 丸の内TOEI 12/08 (土) 2 09 00 (上映後) 新宿バルト9 12/08 (土) 3 13 00 (上映前) シネマサンシャイン池袋 12/08 (土) 4 12 30 (上映後) 渋谷TOEI 12/08 (土) 5 12 55 (上映後) チケット 公式サイト 関連商品 DVD コレクターズパックに公開初日舞台挨拶を収録 Blu-ray コレクターズパックに公開初日舞台挨拶を収録 LINK De☆View やっぱり太ももが満載!?『仮面ライダー』初日舞台挨拶 マイナビニュース デーモン閣下「ライダーのバイクも車検に通している」-映画 仮面ライダー MANTAN WEB 白石隼也:フォーゼ福士蒼汰の「キターッ!」にザキヤマネタで対抗 「ウィザードがクル~」 シネマトゥデイ デーモン閣下が「仮面ライダー」に素朴な疑問!バイクにナンバープレートがあるのはなぜ? 映画.com デーモン閣下、ライダーバイクに苦言!?「ナンバー外せないの?」 MEMO 2020-10-08 22 59 23 (Thu)
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※このページはネタバレ及び憶測の内容を含んでいますので、閲覧に関しては自己責任でお願いします。 [部分編集] 第一話『これからが彼女たちのはじまり』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 設定:地方出身でレッスンや仕事の時には遠くから通っている →【ランクF・ある日の風景1】、歌「団結」の歌詞等 元ネタ?:春香のカバンについているさつまいもがモチーフのキャラクターのストラップ →春香の中の人が芋好きなので、春香のカバンにも取り付けられた 星井美希 セリフ:「星井美希、中3なの。終わり」「あ、あと胸おっきいよ」 →【ランク外・ミーティング】 如月千早 設定:機械音痴 →【休日コミュ】 電気街に千早がプロデューサーと一緒に"PM3プレイヤー"を買いに行くというコミュがある 容量やメモリー等知らない言葉言われただけで、「私には無理」と簡単に諦めたりする描写など類似点がある 高槻やよい セリフ:「うわ~。なんか、そのセールスっていいですよね。」 →ゲーム内で楽曲の変更するときのセリフがやよいの場合「うわ~。なんか、○○って感じですねっ」というものがある 萩原雪歩 設定:男の人が苦手 →【ランク外・ミーティング】 セリフ:「オーディションの申し込みは友達がしてくれた。」 →【ランクF・ある日の風景1】 菊地真 設定:少女漫画好き →【ランクE・雑誌取材(期待の新人)】 元コミュでは少女漫画雑誌の『月刊・RaRaRa』となっている 設定:虫嫌い →【ランクF・ライブハウス】 設定:父親に男らしく育てられてる →【ランクE・ランクアップ】 水瀬伊織 設定:765プロ採用理由 →【ランクD・ランクアップ】 セリフ:『シャルル・ドナテルロ十八世』 →【ランクD・ある日の風景3】 三つ目の選択肢にて「絶対に忘れないから」を選択すると、聞くことができる +... …が、この選択肢はパーフェクトコミュニケーションにはならず、この時言った名前は原作ではとっさに思いついた偽名であるので、アニメでも偽名である可能性が高い セリフ:「私は、私の手で何か掴みたいと思ったんです」 →【ランクC・ある日の風景5】 三浦あずさ 設定:占い好き →【ランクF・雑誌取材(期待の新人)】 セリフ:「5年くらい頑張れば、なんとかなりますよね」 →【ランク外・ミーティング】 セリフ:「こうしてアイドルとして頑張っていると、きっと誰かが見つけてくれますよね」 →【ランクC・ランクアップ】 我那覇響 描写:飼っている動物をよく逃がす SPや2でも類似のコミュ多数あり 秋月律子 元ネタ?:漫画「アイドルマスター Innocent Blue for ディアリースターズ」でも双海亜美・真美の二人を持ち上げているシーンがある 音無小鳥 描写:小鳥の携帯電話の着メロが楽曲は「ID [OL]」 その他・モブキャラ 真と雪歩のインタビューをしているキャラクターの容姿がガミPこと坂上陽三Pに似ている 貴音のオーディション時に中村繪里子、今井麻美に似ている人物が登場している。←アイマスタジオ第15回にて本人たちがモデルであると確認されました 審査員の静止時のポーズが原作ゲームのものと同じポーズである。また女性審査員のCVはアーケード版でVO審査員の声を演じていた中村繪里子 【舞台背景】 765プロのあるビルや応接間について、一部芸能プロダクションアーツビジョンがモデルとなっている。(キャラクターを演じている声優の一部が同事務所に所属している) 冒頭の春香が自転車を漕いでいるシーンは神奈川県中郡二宮町にある吾妻山公園、また最寄駅は二宮駅である オーディションに落ちたあずさが迷ってたどり着いた「旅館西郷」は東京都杉並区にある「旅館西郊」がモデル 【その他の描写】 『アイドル』 それは女の子たちの永遠の憧れ。 だがその頂点に立てるのは、ほんの一握り…… そんなサバイバルの世界に、 13人の女の子たちが足を踏み入れていた。 アニメ冒頭で流される文章 これはゲーム「アイドルマスター」初プレイ時に表示される文章が元になっている [部分編集] 第二話『”準備”をはじめた少女たち』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 セリフ:「緊張しちゃって、心臓飛び出しそう」 →【ランク外・作曲家挨拶】 描写:転んでいる姿も撮影 →【ランクF・写真撮影】 星井美希 設定:メイクのセンス →【ランクF・買い出しコミュ】【ランクD・ライブ鑑賞(勉強)】 「うん。どの人に、どういうのが合うかとか、見ればわかるの」(どういうの=メイクの事) セリフ:「パシャパシャってリズムで撮ってね」 →【ランクF・写真撮影】 如月千早 セリフ:「笑顔が不自然だといわれました」 P「無理に笑わなくてもいいんじゃないか」 →【ランクF・写真撮影】 高槻やよい セリフ:「給食費がピンチです」 →【ランクE・ランクアップ】 元ネタ?:クマの着ぐるみ →【ランクF・写真撮影】 「クマと戦ってるトコとかのが、カッコよかったかも……」と言うセリフがある 描写:「ハイ、ターッチ!」 →【ランク外・作曲家挨拶】 双海亜美・真美 描写:メイク道具でいたずら →【ランクF・買い出しコミュ】 四条貴音 描写:バレエのポーズ →『アーケード版アイドルマスター』で没ネタの「たかね」というキャラクターの特技にバレエがある 音無小鳥 設定:昔の少女漫画的妄想 →2006年7月23日に行われた『THE IDOLM@STER 1st ANNIVERSARY LIVE』での小鳥の妄想 参考リンク→音無小鳥妄想絵図 その他 元ネタ?:撮り直す前の亜美真美の宣材写真、伊織・やよい・亜美・真美の化粧 →THE IDOLM@STER RADIO第64回での放送で三浦あずさ役のたかはし智秋が猿のコスプレをした。また同ラジオの第75回目如月千早役の今井麻美が強烈な化粧と胸部への詰め物をして放送をしたことがある ちなみに上記の二つはラジオのコーナーの罰ゲームであり、その時の今井麻美の容姿は通りすがりの子供に逃げられ、心にトラウマを植え付けるような容姿であった 【その他の描写】 伊織が「個性が、個性が大事なのよ」と言っている時のピラミッド型のもの。 →アイドルマスター2以外のゲーム版では『アイドルランク』というものがあり、またピラミッドは上に行くほど高いアイドルランクを示している。 [部分編集] 第三話『すべては一歩の勇気から』 +... 【劇中での元ネタ】 高槻やよい セリフ:「みんなで出かけるなんて、なんだか遠足みたいだよね」 →【ランクF・ロケバス】 萩原雪歩 セリフ:「穴掘って埋まってます」 →【ランクD・ラジオゲスト出演】他色々なコミュにおいてネガティブな選択肢を選ぶと聞ける場合がある またドラマCDやアイドラでも定番のネタである。 設定:犬嫌い →【ランク外・初対面】 描写:ステージで緊張、いつも以上にはっちゃける →【ランクE・ライブ(ライブハウス)】 描写:雪歩のステージ衣装 →雪歩が身に着けているアクセサリーの一部は原作ゲームに登場している(天使の羽根、ねねこの首輪、格闘の腕輪) またステージを見ている観客の中には同じくゲームに登場する「ねこみみ」のアクセサリーを着けているモブもいる 三浦あずさ 描写:おじさんからのプロポーズに答えてしまう →【ランクE・老人ホーム慰問】 プロデューサー 描写:Pが帰りの車で居眠り →各アイドルの【ランクF・ロケバス】、【ランクD:TV出演(ロケバス)】 ロケバスのコミュでは仕事に疲れたアイドルがバスの中で眠るものがいくつかある 【その他の描写】 挿入歌「ALRIGHT*」の途中で春香と真が浴衣に変身するシーン →春香と真がとっているポーズがそれぞれ仮面ライダー1号、2号の変身ポーズのパロディ [部分編集] 第四話『自分を変えるということ』 +... 【劇中での元ネタ】 如月千早 設定:一人暮らしをしている →アイドルマスター2よりの設定 その他・モブキャラ 元ネタ?:ディレクターの「”ガー”ときて”グー”となって”バーン”て感じなのよ」「おつかれちゃーん」 →それぞれのセリフが「きゅんっ!ヴァンパイアガール」及び、「MEGARE」の歌詞が元になっている? 【その他の描写】 劇中でのTV番組『ゲロゲロキッチン』のCM →CMでの『クマちゃん バーガーセット』のイラストが『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 02 高槻やよい』に描かれているハンバーガーにそっくりである また「Love Burger?」というフレーズは某ハンバーガーショップの「i m lovin it」というキャッチコピーを意識してのものだと思われる [部分編集] 第五話『みんなとすごす夏休み』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 設定:お菓子作りが趣味 →公式サイトのプロフィール、【ランクF・ミーティング】 セリフ:「私、マーメイ」「スパンコールの波間」 →楽曲「太陽のジェラシー」の歌詞 如月千早 セリフ:「私、泳ぎはあまり…」 →【8月の仕事】 このコミュに「泳ぎに自信はないので、期待しないでいてください」というセリフがある。ただし謙遜して言っている可能性もあるので、実際に泳ぎが不得意であるのかは不明 高槻やよい 描写:スクール水着 →【ランクE・写真撮影】 このコミュでやよいはスクール水着以外の水着を持っていないことが明かされている また名札の「高槻」の文字があるのはL4U「オールドスクールミズギ」だけである。無印や2の「スクールミズギ」や「765スクールミズギ」には名札がついていない 萩原雪歩 描写:怖い話が苦手 →【休日コミュ】友人と一緒にホラー映画を見に行くコミュ ホラー映画を途中で抜け出し「今夜は、一人じゃトイレに行けません」というほどの怖がり セリフ:「よっつ四葉のクローバー」 →【ランクD・ラジオゲスト出演】二つ目の選択肢で「仕方ない、放置しよう」を選ぶと聞くことができる また無印でランダムに送られるメールで雪歩作詞の「穴掘りの歌」だと判明する THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 09 萩原雪歩のトーク07にも収録されてる 描写:携帯の着メロはゲーム中のBGM「TENDER」 水瀬伊織 描写:うさぎのぬいぐるみと一緒にお風呂に入る →アイマスレディオ36回「お風呂で、う・ふ・ふ♪」のコーナーでいつも一緒にうさぎのぬいぐるみと一緒にお風呂に入っていると明かされる また伊織によると「JIS保護等級8級の防水性能だから、平気よ」との事 三浦あずさ セリフ:「ねこねこにゃんにゃん」 →アイマスレディオ9回「お風呂で、う・ふ・ふ♪」のコーナーであずさが拾ってきた子猫に飼い主が見つかったことに対しあずさがアニメと同様の歌を歌っていた 四条貴音 描写:視力が弱い →アイドルマスター2からの設定 設定:ラーメン好き →アイドルマスターSPストーリーモードでBランク時に発生するイベントで貴音に屋台のラーメンをおごるものがある。また2杯のラーメンを普通に平らげるほどであった ラーメンは貴音の中の人の好物でもあり、そのことから貴音の好物になったと言われている セリフ「王女だ、銀色の大食い王女だ」 →SPや2の劇中にて「銀色の王女」とファンの間から呼ばれている 秋月律子 描写;お風呂での鼻歌 →歌っている曲は「GO MY WAY!!」 [部分編集] 第六話『先に進むという選択』 +... 【劇中での元ネタ】 高槻やよい 描写:高いところが苦手 →ハプニング☆ロケのいくつかのSCENE、L4Uアイドラ「プリマシリーズやよい」 ハプニング☆ロケはアーケード版と連動した携帯サイトで配信されていたアプリゲームである 詳細はこちら ちなみに兄弟たち共に遊園地へ遊びに行く【休日コミュ】でも「私、あんまり、速いのとか高いのとか、得意じゃないし」というセリフもある 秋月律子 セリフ:「どうせなら、都内の一等地に事務所ごと引っ越しです」 →事務所移転イベント DS以外のゲーム版ではPランク(アイドルのプロデュースの成績により昇格する)によって、アイドル事務所を移転するイベントがある 音無小鳥 元ネタ?:荒木飛呂彦風の漫画妄想 →ニコニコ動画で4月17日に生放送された『iM@STUDIO サテライトステーション』にて「ふつおた(似顔絵付き)」のコーナーでリスナーから送られてきたイラストで、荒木飛呂彦風の絵柄でパーソナリティーの中村繪里子と今井麻美の似顔絵が送られてきた また今井麻美は荒木飛呂彦氏の「ジョジョの奇妙な冒険」のファンである [部分編集] 第七話『大好きなもの、大切なもの』 +... 【劇中での元ネタ】 高槻やよい セリフ:「もやし祭り」 →『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 02 高槻やよい』に収録されているトークパートに「もやし祭りが出来ちゃいますっ」というセリフがある セリフ:NO Make!!での「べろちょろ」 →やよいがいつも下げているカエル型のポシェットの名前 『MASTER ARTIST 02 高槻やよい』のトークパートや現在絶版である『スペシャルドラマCD/アン・ハッピーバースデー?』にて春香から誕生日にプレゼントされたものである ちなみに春香と春香の母の手作りである 水瀬伊織 設定:ジャンバルジャンという名の犬を飼っている →【ランクF・ライブ(ライブハウス)】 ジャンバルジャンという名のジャイアント・シュナウザーという種の犬を飼っている また「これならジャンバルジャンの住んでるとこのが、まだキレイよ……」というセリフも同コミュであるので、アニメ本編での犬小屋との大きさを比較するセリフの元ネタであるかもしれない 設定:豪邸に住んでいる →【ランクC・ある日の風景5】 描写:兄達にコンプレックスを持っている →【ランクD・ある日の風景4】 その他・モブキャラ ヤキニクマン →亜美真美の【ランクAorB・主題歌レコーディング】(SPではBランクのみ)やいくつかのCD等でヤキニクマンという、子供向けのヒーローアニメが放送されていることが話されている 設定:ヤキニクマンのCV(串田アキラ) →『THE IDOLM@STER MASTER LIVE 01』にて双海真美といっしょにヤキニクマン役の串田アキラが『おはよう!!朝ご飯REM@STER-A』を歌っており、串田アキラ本人もアイマスのライブにゲスト出演を果たしたことがある またアニメ本編でも響がTVつけた時にBGMとして『おはよう!!朝ご飯REM@STER-A』のイントロ部分がかかっている セリフ:ヤキニクパンチ →亜美真美の【ランクB以上・主題歌レコーディング】(SPではBランクのみ) このコミュにて「ダブル・ヤキニクパンチ」というセリフがある ちなみにヤキニクマンの主題歌を歌うのは双海真美である マスコットキャラ(ブンタ・アジゲ・モニョ) 「DJCD アイドルマスター ラジオフォーユー!VOL.1」の「アイドルマスター Radio For You! Vol.1 Radio For You! マスコット of you-i 」というコーナーでパーソナリティーの中村繪里子、今井麻美、仁後真耶子の三人が制作した番組のマスコットキャラクター 「DJCD EXTRA アイドルマスター Radio For You!KOTORIMIX」にてビジュアル化された。 またアニメでのCVは同パーソナリティー三人のラジオ番組「アイドルマスター Radio For You!」でのユニット名「you-i」からである 【舞台背景】 劇中に登場するやよいの家がある辺りややよいの弟を探している時に描写されている公園などのモデルは東京都調布市周辺である。 【その他の描写】 やよいの部屋に転がっている春香に似ている?人形のぬいぐるみ →ぬいぐるみの正体は『ののワさん』といい、元はゲーム版アイドルマスターの天海春香が口をワの字のように開けながら右上のほうへと目線を向ける仕草から『のヮの』という顔文字が生まれ、そこから『ののワ』さんという二次創作キャラクターが作られた。 響が三輪車に乗っているシーンに移っている車のナンバープレートは『足立区 841 く 00-72』 →841=やよい、く=「くっ」千早の口癖、72=千早に関係するある部分の数字である。 弟妹たちの寝室にある戦隊物のポスター →太陽戦隊サンバルカンが描かれている。また主題歌はヤキニクマンの声優である串田アキラが初めて担当した特撮ソングでもある [部分編集] 第八話『しあわせへの回り道』 +... 【劇中での元ネタ】 三浦あずさ 設定;親友の友美 →【ランクD・ある日の風景3】 描写:メールに書かれた結婚を抜け駆けしない約束 →【ランクC・ある日の風景6】 描写:石油王に求婚される →【休日コミュ】 石油王からあずさがプロポーズされてしまうコミュがある またこの休日コミュは「休日ブースト」がかかるコミュであり、無印版での休日ブーストとはアイドルが所属するユニットのイメージレベルが6週間上昇するもので、 アニメではあずさが所属する竜宮小町やあずさの知名度があがったと小鳥のセリフがある セリフ:NO Make!!での亜美のセリフ「人生初の彼氏」 →【ランクC・ある日の風景5】 このコミュで一度だけ告白され、デートをしたがすぐに振られてしまったことが明かされる [部分編集] 第九話『ふたりだから出来ること』 +... 【劇中での元ネタ】 双海亜美 描写;亜美と真美が離れたところでも同じ事を考えている →双海亜美、真美バースデーCDでも同様なやり取りがある セリフ:「灰色の脳細胞と七色の顔を持つ」「セクシー美少女探偵亜美 真美」「じっちゃんばっちゃんの名に掛けて」「月に代わって」「「犯人逮捕よ」」 →灰色の脳細胞はエルキュール・ポアロ、七色の顔は「多羅尾伴内の『七つの顔の男』」、じっちゃんばっちゃんの名にかけては金田一少年の事件簿の金田一一の「じっちゃんの名にかけて」、月に代わってはセーラームーンの「月に代わってお仕置きよ」のセリフや二つ名から 三浦あずさ 描写:さよならダイエットの日々 →【ランクF 運動】【ランクF 写真撮影】などのコミュにて自身の体型のことを気にしている描写がある [部分編集] 第十話『みんなで、少しでも前へ』 +... 星井美希 設定:運動神経が良い →【8月の仕事】 萩原雪歩 セリフ:真 伊織「雪歩はだまってて!!」 →曲「団結」中での春香と伊織のセリフが初出であり、M@STER LIVE02にて同様のセリフを真、伊織、千早、律子から言われる 設定:運動神経が悪い →【ランク・F 運動】 菊地真 描写:運動会で足を痛めてしまう →【10月の仕事】にて競技中に足を痛めてしまい、他の種目に出場する場面がある 三浦あずさ 設定:運動が苦手 →【10月の仕事】競争が苦手で運動会で一度も勝ったことがない その他・モブキャラ 876プロのアイドル →アイドルマスターDSに登場するキャラクター こだまプロの新幹少女「ひかり」「つばめ」「のぞみ」 →プロ名及びアイドルの名前は新幹線の名前からである バリュウム(ねっち)、綿野アキラ →『Perfume(メンバーである大本彩乃の愛称のっち)』と『錦野旦』の名前から 【その他の描写】 事務所対抗アイドル運動会 →【10月の仕事】にて美希、やよい、真、亜美・真美、あずさのコミュにて「事務所対抗アイドル運動会」を行う ジュピターのファンが掲げる「Wピースして☆☆」 →アイドルマスター2でJUPITERのメンバーをS4Uで使用した時に曲の途中でアピールするとWピースのポーズを取ることがある 借り物競走 →美希の【10月の仕事】で表ルートの場合『カッコイイ男性』、裏ルートの場合『私を大好きな人』と書かれた紙を美希が取り、選択肢でPを選ぶことが出来る [部分編集] 第十一話『期待、不安、そして予兆』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 設定:千早「どうしてアイドルになろうと思ったの?」 →【ランクD・ある日の風景3】【ランクC・ライブ(武道館)】 「この仕事をする前、ステージをTVで見てて、憧れて……」 萩原雪歩 描写:ダンスが他人よりも遅れズレてしまい、迷惑を掛けるのを気にしている →【ランクF・ミーティング】 萩原雪歩 セリフ:「うちはパパもママも病院勤めだから」 →【ランクD・ランクアップ】や【ランクC・ある日の風景5】において父親が医者であることが語られている 母親に関しては【ランクF・ある日の風景1】で「ママはお仕事してないから…」というセリフがある 【その他の描写】 クマのマークの引越社 →アリのマークの引越社のパロディ [部分編集] 第十二話『一方通行の終着点』 +... 【劇中での元ネタ】 星井美希 セリフ:「本日はみんなに、私のとっておきの恋バナを~♪」 →曲「Do-Dai」の歌詞、最初にM@STERverが音源化された『THE IDOLM@STER MASTER LIVE 03』では高槻やよい、双海亜美、星井美希が担当している 設定:カモの先生 →【ランクF ある日の風景1】 秋月律子 セリフ:「美希を見つけたら、首に縄を付けてでも連れてきてくださいね」 →SPのストーリーモードでも961プロに移籍した美希に対して「やっぱり、美希は、首になわつけてでも、765プロに引き戻さなかきゃ!」 というセリフがある 【その他の描写】 太鼓の達人9 →アイドルマスター、太鼓の達人は共にナムコ制作のゲームであり、アイドルマスターにはアクセサリーが太鼓の達人には楽曲の提供などコラボがなされている [部分編集] 第十三話『そして、彼女たちはきらめくステージへ』 +... 【劇中での元ネタ】 星井美希 セリフ:NO MAKE!!「実に春香らしいの」 L4U特典アニメでもコケた春香に対して美希が同じセリフを言う 音無小鳥 描写:ライブでのアナウンスを行う →実際のライブでも音無小鳥役の滝田樹里がMCを務めることが多く、M@STER LIVEシリーズのドラマパートでは毎回小鳥がMCを務めていた 【その他の描写】 サイリウム →会場にいる観客たちのほとんどは竜宮小町目当てなので、持っているサイリウムの色はイエロー(亜美)、ピンク(伊織)、パープル(あずさ)、ウルトラオレンジ(輝度が高くここ一番の盛り上がりの時に振る)であるのに対して、高木順二朗社長はステージの765アイドルごとにサイリウムの色を変えている 美希が「Day of the future」を歌い終えた後に観客が見ているパンフレット →あずさのポーズが実際の5thライブのパンフレットに載っているたかはし智秋のポーズと同じポーズをしている 美希が休憩している所の壁に貼られているセットリスト →「THE IDOLM@STER 6th ANNIVERSARY SMILE SUMMER FESTIV@L! TOKYO DOME CITY HALL」のセットリストを再現している(ただしBD/DVD版では劇中でのセットリストになっている) [部分編集] 第十四話『変わりはじめた世界!』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 小ネタ:「変装をしている春香」 →オーディオコメンタリーより春香が事務所に着いた時、帽子は外すがメガネを中々外さないのは「春香のメガネ姿が可愛いから、このままかけさせとこうと」という監督の考えから 【その他の描写】 電車に乗っている女子高生のカバンに付いているチャーム →ぷちます!に登場するぷちどる「はるかさん」「ちひゃー」「まこちー」「やよ」である [部分編集] 第十五話『みんな揃って、生放送ですよ生放送!』 +... 【劇中での元ネタ】 萩原雪歩 セリフ:「倍率ドン、さらに倍!!」 →TBSで放送していた「クイズダービー」というクイズ番組の問題時に言われる決まり言葉 菊地真 セリフ:「きゃぴぴぴー、えっへへー菊地真ちゃんなりよー」 →『MASTERLIVE02』にて同様のセリフがある 音無小鳥 設定:小鳥の趣味 →アイマスモバイルのヘルプページより「お笑いのビデオを見るのは好きですね。私の中のお笑いブームは不滅です!」というセリフがある 【その他の描写】 無尽合体キサラギのページで解説 元ネタ:あみまみちゃんその1、その2 →お笑いコンビ「ザ・たっち」のネタ、亜美と真美の趣味にモノマネがある 元ネタ:ラーメン二十郎 →実際にある「ラーメン屋二郎」のパロディ 元ネタ:あいぱっく →郵パック、昔天海春香役の中村繪里子と如月千早役の今井麻美が放送していた「PreStar」というインターネット番組で実際に起きた出来事が元ネタになっている また劇中で美希が「春香の衝撃映像を番組HPで配信!!みんなアクセスしてね」と言ったが実際に配信されている 休憩時間に美希の髪を整えているスタイリスト →美希の中の人である長谷川明子に似ている? [部分編集] 第十六話『ひとりぼっちの気持ち』 +... 【劇中での元ネタ】 我那覇響 描写:プロデューサーが手渡したお茶 →沖縄県ではジャスミン茶の事を「さんぴん茶」と言う、また2の響のコミュでもさんぴん茶をプロデューサーに買ってもらうコミュがある [部分編集] 第十七話『真、まことの王子様』 +... 【劇中での元ネタ】 菊地真 描写:スカートやぬいぐるみのような女の子らしいものを父親に捨てられる →【ランクF ある日の風景1】 描写:しつこいナンパの仲裁 →休日コミュの中にナンパされている女性を助けに行き、逆に女性から言い寄られるコミュがある 設定:空手道場に通っていた →【ランクC ある日の風景5】 プロデューサー セリフ:P「おほん、姫そちらではありませんよ」、真「ではあなたが王子様になって、白馬に乗ってくださいませ」 →真の休日コミュの中に遊園地でデートするものがあり、「白馬には、王子様が定番だろう。つまり、白馬は俺の物だ」 「真は、俺の後ろの馬車に乗ったらどうだ?」というセリフがある 【その他の描写】 小ネタ:DVDレコーダーの値段が76,500円と?6,100円 →765プロとおそらく961プロの名前から 元ネタ:少女漫画雑誌掲載作品 →劇中「月刊LaLaLa」=元ネタ「月刊LaLa」:冬目友人帳=夏目友人帳、鬼ちゃんと一緒に/鳥山ぱり=お兄ちゃんと一緒/時計野はり、図書館LOVE=図書館戦争 LOVE WAR 少女漫画ではないが、馬の☆プリンスさま=うたの☆プリンスさまっ♪(アニメ版の制作はアイドルマスターと同じ「A-1 Pictures」である) 小ネタ:王子様の昼下がりの台本 →17話の脚本 白根秀樹 絵コンテ・演出 柴田由香を捩り、「構成 柴田秀樹 音楽 白根由香」と書かれている
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舞台「アサルトリリィ・御台場女学校-The Singular Ability-」 舞台「アサルトリリィ・御台場女学校編」の第1弾。 メインビジュアル あらすじ(*1) LGロネスネス隊長船田純と初の船田姉妹、純を姉と慕う司馬燈、LGヘオロットセインツ副隊長川村楪の4人が外征からガーデンへ帰還中、御台場女学校の守備範囲でケイブが起こった。 LGロネスネスの残存メンバーと駆けつけたヘオロットセインツの菱田治、横山梓、河鍋薺、鈴木因が奮戦したが、治の様子がおかしくなる。 ケイブは収まったものの、このケイブの起き方が御台場迎撃戦の時と似ていることに違和感を覚えるリリィ達。 治は迎撃戦のある出来事により亡くなった幼少期からの親友、今村咲魅と交わした約束を思い出し、暴走してしまったのだった。 そんな治の前に咲魅が現れて…。 特異点リリィの集まる御台場女学校で起こる不可解なケイブ。 この裏にあるものは…。 ※ 舞台「アサルトリリィ The Fateful Gift」の後の物語となる。(*2) 公演情報 日程:2021年8月20日(金)~8月29日(日) 会場:紀伊國屋ホール CAST キャラクター キャスト SNS ビジュアル 使用CHARM 【LGロネスネス】 船田純 石井陽菜 Twitter 📷 フルンティング 船田初 西葉瑞希 Twitter 📷 ネイリング 司馬燈 野元空 Twitter 📷 ヴィンセツ・リーリエ 長沢雪 長谷川里桃 Twitter 📷 ヤールングレイプル 井草昴 海乃るり(22/7) Twitter ヒルドル 今村紫 高辻麗(22/7) Twitter ケラウノス 藤田槿 春咲暖 Twitter 📷 グラーシーザ 川端蛍 広沢麻衣 Twitter 📷 ベアグノズサクス 梢・ウェスト 有沢澪風 Twitter 📷 フェイルノート 【LGヘオロットセインツ】 川村楪 あわつまい Twitter 📷 フロッティ 菱田治 林田真尋 Twitter 📷 カラドボルグガラテイア 横山梓 野本ほたる Twitter 📷 ティルフィングR型 河鍋薺 河内美里 Twitter 📷 ブリューナク 鈴木因 白石まゆみ Twitter 📷 クルッジ 【その他】 ????(今村咲魅) 柴田茉莉 Twitter 📷 - 中原・メアリィ・倫夜 小野瀬みらい Twitter 📷 - スタッフ 原案:尾花沢軒栄(acus) 脚本:桜木さやか(ルドビコ★) 演出:佐野瑞樹 楽曲:谷ナオキ(HANO) アクション監督:加藤学 アクション指導:船木政秀 ダンス振り付け:藤堂光結(ToDo) 舞台監督:伊藤清一(a58b)/尾花宏行(a58b) 演出部:佐藤あやの/藤村嘉忠 舞台装置:石倉研史郎(a58b) 照明プランナー:樋口かほる(六工房) 照明オペレーター:大塚栞(六工房) ピンオペレーター:岩間愛美(六工房)/中村優陽 音響:長柄篤弘(ステージオフィス)/齋藤正樹(ステージオフィス) PAオペレーター:岡田悠(One-Space) WLケア:高島斎(ステージオフィス) サンプラー:早川迪(ステージオフィス) 衣装製作:車杏里/平野萌香 衣装進行:庭山美保/柴田あずさ/maigo ヘアメイク:工藤聡美 ヘアメイク現場進行:黒田はるな/木戸望/muu 演出助手:小林賢祐/内藤恵 武器製作:藤好信暁(セレソンアート工房)/柘植綾子(セレソンアート工房)/湯田商店(湯田昌次/上島純也/園田玲欧奈) 映像製作:坂内友樹/汐風有華 映像技術:釣田勇弥 配信:murasaki(AgGraph) 映像収録:渡邉和弘/安田慎/田中亮平 声の出演:田上真理奈 アンダーキャスト:一之瀬花音 トレーナー:木村剛人(ファミリー接骨院) スチール:小池博 宣伝美術:SE_TSU DESIGN 現場制作:池田千穂(High-position)/足立裕里 制作協力:MIMOZA 当日運営:大森晴香/小泉沙百合/田中翔太(企画演劇集団ボクラ団義)/飯島佳夏美(LUCKUP) アシスタントプロデューサー:高久健太 アソシエイトプロデューサー:中川秀平(アゾンインターナショナル) プロデューサー:林修司(ピウス)/早園正(アゾンインターナショナル) 企画・製作:ピウス 主催:ピウス/アゾンインターナショナル/acus 楽曲 オープニング主題歌 「背中を合わせて」 作詞・作曲・編曲:谷ナオキ エンディング主題歌 「蝶よ花よじゃいられない」 作詞・作曲・編曲:谷ナオキ 関連商品 映像ソフト 御台場女学校編「The Singular Ability」Blu-ray 購入はこちら サウンドトラック 御台場女学校編「The Singular Ability」オリジナルサウンドトラック 購入はこちら
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LIVE FOR YOU (舞台) 15 ・◆・◆・◆・ 「おや?」 閑散とした通路を疾駆する傍ら、手元のレーダーに新たな反応が浮かび上がった。 唯一、仲間と合流できるすべを持ちながら不幸にも未だ誰とも合流できていない、彼女。 銀のポニーテールを尻尾のように振り翳す――銀狐、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナが立ち止まる。 「桂さんに、柚明さん……そしてやよいさんですか。首尾よく合流を果たせたようですね」 メンバーの中でも随一の非戦闘員であるやよいが、桂と柚明の二人と合流できたのはトーニャにとっても僥倖だ。 あの二人がついていれば、滅多なことは起きないだろう。肩の荷が下りた心持に、トーニャは微笑を零す。 「……ええ。これ以上の犠牲は好ましくありませんからね。みなさんの士気にも、影響していなければいいのですが」 が、すぐに表情を辛辣なものに変え、憂いを呼び戻す。 「酷な話ですかね、それも」 敵本拠地に突入してすぐ、散り散りになってしまった仲間たち。 その内の何人かは、先ほど施設全体に響き渡ったある報告によって、多大なる影響を受けたことだろう。 第二十二回目となる、このような状況下でも律儀に進められた、正午を知らせる――放送。 玖我なつき、山辺美希、ファルシータ・フォーセット、以上三名、戦死の報せ。 「私たちにプレッシャーをかけるための虚言……と判断できれば気が楽なんですがね。 システム上、そのような真似は許されないはず。なら、これはもう覆らない事実として、受け止めるしかない」 気持ちの整理をつける意味での、淡々とした独白。 昼夜問わず皆の前ですとろべりっていたなつきも、 寺院で出会った頃から因縁を築いてきたファルも、 お調子ものでムードメーカー的存在だった美希も、 死んだ。帰らぬ人となった。もうお別れなのだった。 だからといって、くよくよ悲しんだり、嘆いたり、ましてや泣いたりなど、今のトーニャたちには許されない。 ここは戦場。そして敵地。明日は我が身を十分に自覚し、四方八方から迫る敵勢に対処しなければならない場。 ありとあらゆる感情を殺し、実直に行動すべきだ――と、トーニャはクールなロシアンスパイとしての自分に言い聞かせる。 「……さて、と。近くにいるというなら合流しない手はないですね。私も向かうとしましょうか」 レーダーに浮かぶ三人の反応は、今の離れつつある。 またもや合流を果たせず、ではいい加減コントだ。 トーニャは疾駆を再開せんと一歩目を踏み出し、 二歩目で踏み止まった。 「……あ」 前方、通路の先の曲がり角から、ひょっこりと顔を出した懐かしい姿。 自身とは対照的な、相変わらずの金髪。決して扇情的とは言えない、幼稚な裸ワイシャツ。 ふさふさとした金色の尻尾を、隠そうともせず無防備に晒すその存在へと――トーニャは行き会った。 ある種、トーニャ最大の標的でもある、彼女に。 (……“狐”はあなたのほうでしたね。そうそう、思い出しましたよ。私は狐ではなく“狸”……そういう配役でした) トーニャの眼前に、終生のライバルたる妖狐が現れた。 ・◆・◆・◆・ すず――それは武部涼一からもらった、人型としての彼女の名前。 愛着はあるし、捨てる気も毛頭ないし、その名で呼ばれることを至福と感じさえする。 だがそれも、彼に限った話。彼以外の大多数にその名で呼ばれると、正直虫唾が走る。 ゆえに、彼女との邂逅の瞬間、眉間に皺が寄るのはある意味必然と言えた。 「あー、すずたんだ~。こんなところでバッタリだなんて、運命的! トーちん嬉しくて泣けちゃいそう!」 通路上で偶然対面した、彼女――トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナは、裏声全開でそんなふざけた挨拶を放る。 すずは遠慮のないしかめっ面をトーニャに浴びせ、一言。 「気色わるっ……」 本心からの不快感を告げた。 「む。練りに練った再会の挨拶をそのような形で一蹴するとは、さすがはフォックスビッチといったところですね」 「…………」 「なんですか、その、私なんかとは口も利きたくないと言わんばかりの表情は。実にすずさんらしい。最高にして最低です」 減らず口を、と罵る気すら起きない。 戦場のど真ん中で、敵同士が遭遇した。だというのに、双方に殺気はない。 あるはただ、嫌悪と侮蔑を込めた眼差し、友愛と親和性を秘めたポーズ、不合致な組み合わせだけ。 「で、こんな場所でいったいなにを? まさか人材不足のため、あなたも戦闘員として借り出されたんですか?」 「――“黙れ”」 語る言葉は、力となる。 妖狐のみが持ち得る絶対服従の力――『言霊』。 逆らうことは不可能な命令として、すずはトーニャに“黙れ”と告げる。 「無駄ですよ。あなたも学習しませんねぇ。私が耳につけているこのインカム、わかりませんか? 対策は万全です」 しかしその言霊も、耳に直接届かなければ効果は適用されない。 初邂逅のときと同じく、トーニャの耳にはおかしな機械が装着されていた。 そのせいで、こんな初歩的な言霊も憑かせることができない。すずは歯がゆく思った。 「さて、“言霊で部下を自我なき操り人形に変えた”、でしたっけ。まったく、厄介なことをしてくれましたねぇ」 「…………」 「あなたがいなければ、城攻めも随分と楽になっていたでしょうに……こっちは早々に戦死者まで出る始末です」 「…………」 「そのことについて、然るべき始末をつけたいところですが……話す気がないとなると、待っているのはただの虐殺ですよ?」 調子ぶった態度のトーニャに、すずは内心、苛立ちを募らせるばかりだった。 しかし彼女の強気にも頷ける部分はある。なにせ、すずとトーニャの実力差は見るも明らか。 人工とはいえ、戦う術として人妖能力をマスターしているトーニャに、言霊を封じられたすずが勝てる道理はない。 相手側に、こちらを殺す気があるとすれば――すずの身は武部涼一の顔を再見することなく、むくろと化すだろう。 傍目から見れば、この状況はピンチなのだ。 逃げ出すなり、助けを呼ぶなり、そういったことをすずはするべきだった。 が、すずはなにもしない。むき出しの敵意を、目の前のいけ好かない女に向けるだけ。 その不遜な態度が、トーニャの失笑を誘った。 「……せっかくの知己との再会です。私としては、腰を落ち着けて話したいのですが。どうですか?」 選択肢を投げられる。 この場で死ぬか、話してから死ぬか。 もしくは、会話の末にこちらの懐柔でも狙っているのか。 どちらにせよ、すずの選択は既に決まっていた。 「……なら、おあつらえ向きの部屋がある。案内するから、ついてきて」 「やれやれ、やっとまともな言葉を返してくれましたか。いいでしょう、付き合いますよ」 すずはその場で振り返り、トーニャに背中を見せる。 トーニャは別段、不意打ちを仕掛けようともしない。 ただ黙って、すずの後ろをついていく。 「地獄の果てまでね」 そんな不穏な言葉を漏らしながら。 心底いけ好かないと思った。 ・◆・◆・◆・ ノブ式の扉を潜った先には、夢に描いたような子供部屋の風景が広がっていた。 四方の壁を埋めるのは、色鮮やかなイラストの数々。兎や小鳥が花畑で戯れている。 辺りには積み木やジグソーパズル、ぬいぐるみなどの玩具が無造作に散らばっていた。 「これはまた、えらくファンシーなお部屋ですね。いったい誰の趣味なんでしょう」 すずに案内された“おあつらえ向きの部屋”に入り、トーニャは感嘆。 敵のアジトにまさかこれほど場違いな一室があるとは、驚きだった。 「あ、大福」 カーペット敷きの床を土足で歩みながら、トーニャは部屋の中央に置かれた卓袱台の上を見た。 大福がぎゅうぎゅうに詰まった重箱がある。薄っすらとした赤みは、苺大福と見て取れるだろうか。 「それは命の。別に食べてもいいわよ」 「遠慮しておきますよ。毒でも入っていたらかないませんから」 のこのこと敵の誘いに乗ってはみたが、トーニャは罠の可能性を捨て切ってはいない。 おどけた態度の裏では、常に緊張と警戒を。他者を欺き、自分を偽ることは、スパイである彼女の本領だ。 すずはそんなトーニャに一言、「そう」とだけ言って、部屋の端に置かれたベッドに腰掛けた。 「で、わたしといったいなにを話したいって? さっさと済ませて」 「おお、この清々しいまでに偉ぶった態度。まったくもってすずさんそのもの。懐かしさが込み上げてきます」 「御託はいらない。本当はこうやって顔を合わせているだけでも不快なんだから」 「相変わらず傲岸不遜を絵に描いたような糞キヅネですねぇ。少しは我が身の心配をしたりはしないんですか?」 トーニャは入り口の近くに立ったまま、間に卓袱台を隔てて、ベッド上のすずに語りかける。 「私のスペックを知らないわけじゃないでしょう? 今すぐにでも、あなたの首をキュッとやることは可能なんですよ?」 てめぇなんざいつでも殺せるんだよ、という牽制。 すずは「ふん」と鼻を鳴らし、態度は依然、平静を保つ。 「だから、なに? 言っておくけど、わたしを殺したって意味なんかないわよ」 「おや、それはおかしな話ですね。戦争の最中、敵を屠ることに意味がないだなんて――」 「なんか勘違いしているようだから言っておくけど……わたしは、神崎黎人の味方ってわけじゃない」 出てきた言葉に、「おや」とトーニャは怪訝な表情を作る。 「妙なことを言いますね。なんですか、那岐さんや九条さんのように、神崎を裏切ってこちら側につく気でも?」 「ふざけたことを言わないで。わたしは神崎黎人の味方ではないけれど、おまえたちの味方というわけでもない」 すずは敵意を剥き出しにした瞳で、トーニャの顔面を射抜くように見る。 「わたしにとっては、人間なんてみんな敵よ……一人残らず死んじゃえばいいんだ」 恨みがましい呪詛が込められた、文面どおりの恨み言。 このすずは、トーニャを知らない平行世界のすず――だとしても、人間嫌いな点は変わっていない。 「……いったいなにを話したいのか、さっきそう訊きましたよね。いいでしょう、お答えします。 私が話題として挙げたいのはすずさん、なにを隠そうあなたのことなんですよ」 トーニャはにこやかに、憮然とした顔つきのすずとは対象になるよう、表情に気を配る。 「人間なんてみんな死んじゃえばいいんだ、ですか。矛盾した言葉だとは思いませんか? あなたが起こした行動は事実、神崎黎人への協力。毛嫌いする人間の手助けなんですよ。 真に人間を憎んでいるというのなら、あなたの言霊で片っ端から死ねと命じていけばいいじゃないですか」 すずは相槌の一つも打たない。黙って耳を傾ける。 「私にはまだ、そのへんの事情が見えてこないんですよ。あなたはなぜ、神崎黎人に協力しているのですか?」 それは、那岐や九条むつみも知り得ていない、おそらくは本人のみが知っているのだろう繊細な事情。 このすずは如月双七を知らない。が、境遇は違えどその中身、性格や能力、妖狐の本質までは変わっていないだろう。 だからこそ、ずっと気がかりだった。人間嫌いのすずが、神崎黎人という人間に協力している理由はなんなのか。 「……そういう盟約だからよ。神崎黎人に協力しろ。わたしはそういう風に言われただけ」 「質問の意図が読み取れていませんか? 神崎黎人に協力しろ。そんな戯言を、どうしてあなたが大人しく聞いているんです?」 トーニャの知るすずは、間違っても人間の言うことを大人しく聞くタマではない。 たとえそれなりの利得があるのだとしても、まず人間への不信感、嫌悪感が先に来るのが彼女の性分だ。 神沢学園生徒会の面々ならともかく、一番地などという得体の知れない組織に加担する理由など、考えられない。 「なにも……知らないくせに……っ」 訝るトーニャから視線を外し、すずは不快そうに舌打ちをした。 「わたしは“ある女”から神崎黎人に協力しろと言われた。喋れるのはそれだけ。 女の正体は誰なのか、見返りはなんなのか、全部まとめて他言無用。そういう盟約なの」 「すずさんの口にそこまで堅いチャックを施すだなんて、大層なやり手みたいですねぇ。 なるほど、薄っすら見えてきましたよ。あなたは神崎以外の誰かと、盟約とやらを交わした。 その内容は神崎黎人への協力。そして詳細は一切合財他者には語れない。そういうわけですね?」 すずは脚を組みなおし、短く一言。 「そうよ」 ちらり、と履いていない部分が見えたが、トーニャは自粛する。 「しかしそうなると、やはり“人間なんてみんな死んじゃえばいいんだ”というセリフは矛盾しています。 あなたの立場で考えるなら、神崎黎人が敗北してしまっては事でしょう。協力の意味がなくなってしまうのですから。 ましてや自分は味方じゃない、むしろ死ねばいいだなんて、それは盟約に背くことと同義なのではありませんか?」 「わたしにとって大事なのは、協力したという結果だけ。神崎の生死も、この争いの勝敗も、関係ないのよ。 現にわたし、もうお役御免なわけだし。ここの人間を言霊で人形に変えたのが、わたしの最後の仕事ってわけ」 「ははぁ。だからあんなところで油を売っていたわけですか。それはたしかに、あなたを殺しても意味なんてありませんね」 一連の会話の中から、キーワードを選別。 すず――いや、『言霊』という舞台装置の現状について、推察する。 「本当……こんな茶番、さっさと終わってほしいのよ、わたしは」 彼女に与えられた役割は、『言霊の使用』という一点に尽きる。 それ以外に存在価値はなく、戦闘員などでは絶対にありえない、ただ事が終わるのを待つだけの傍観者。 物語の中から外れた“自称幸運の女神”と同じく、彼女もそういう意味では、既に退場者なのだった。 「それについては同感です。こんなところで時間を取られている暇もない、というわけですな」 なら、悠長にしている場合ではない。 こうやって話している間にも、他の仲間たちは生き死にの場を駆け抜けている。 言霊という厄介な力を有していたすずは、幸いにもこの最終決戦に関しては不干渉を貫く気構えだ。 憂いが一つ取り除けただけでも収穫と考え、改めて戦地に赴くとしよう。 と、自己完結。 トーニャはすずとの因縁に、ここで一応の決着をつける。 「あ、苺大福一個もらっていきますね。こちとらお昼も満足に取れていないものでして」 「……いちいち断らなくていいから。とっとと出てけ」 「おお、ゾイワコゾイワコ」 卓袱台の上の苺大福を一つ、ひょいっと掴み口に含むトーニャ。 もごもごと咀嚼しながら、部屋の入り口へと向き直る。 「……うるさい奴っ」 ドアノブに手をかけたところで、ぼそっとすずが零した一言を、トーニャは聞き漏らさない。 苺大福の甘ったるい味を十分に堪能した後、これを嚥下。胃に栄養分が落とされていくのを実感。 「……そうそう。訊き忘れていたことが三点ほどありました」 ドアを開こうとした寸前、トーニャは顔だけをすずのほうに向け、訊く。 「“如月双七”という名前に、覚えはありませんか?」 含みを感じられない、無機質な問い。 「知らない」 すずは淡白にそう答えた。 「では、“如月すず”という名前はどうでしょう?」 同じ調子で、トーニャがまた尋ねた。 「……はぁ?」 すずは即答を返せず、間の抜けた声を発した。 「これも知りませんか。では、これが三つ目の質問になりますが――」 トーニャそっと、ドアノブから手を離した。 全身ですずのほうへと振り返り、口元に指を添える。 表情は妖艶な色で染まり、今度は含みありげに、もったいぶって質問を口にする。 「――あなたが持っている“すず”という名前。これ、いったい誰にもらった名前なんでしょう?」 瞬間。 ベッドに腰掛けていたすずの身が、跳ね上がった。 悄然とした顔つきで、トーニャの言動に衝撃を覚えている。 ――ビンゴ。 トーニャは胸中、来るべき延長戦への期待感に心を躍らせていた。 ・◆・◆・◆・ 「……その」 トーニャの思いもよらぬ言葉に、気づけば体は勝手に動いていた。 ベッドの傍、卓袱台を間に置いて、扉の前に立つトーニャの顔を睨み据える。 姿勢は正しく、口元は微かに笑んだ、挑発的で不敵な佇まい。 視界に入れておくだけでも苛立たしい、鬱陶しさに溢れた存在感。 「その名前で、わたしを……その名前を呼ぶな!」 感情を抑えきれず、すずは怒号する。 トーニャは顔色一つ変えずに、その必死な様を嘲笑った。 「それは命令ですか、“すず”さん? 言霊を封じられた小娘の戯言など、はたして何人が耳を貸すものか」 「またっ……!」 「それとも知らないんですか? 名前っていうのは、呼ぶためにつけられるものなんですよ」 退室する気はすっかり失せたのか、もしくは最初からポーズだけだったのか、トーニャは扉を背に文言を突きつけてくる。 「“すず”が嫌なら改名してはどうです。ファッキンフォックスなりフォックスビッチなり、素敵な候補はいっぱいありますよ」 反論する隙を与えない、怒涛の舌回し。 舌戦は、問答無用で相手を捻じ伏せられる術を持つすずにとって得意分野であるはずなのに。 黙れ、とでも。 死ね、とでも。 好きなように命ずればそれで済むだけの話なのに、叶わない。 盟約により、ここの職員たちに対して使用を禁じられていたのとは状況が違う。 言霊が、今一番殺してやりたい女に通じないという、歯がゆさ。 トーニャの言動が、すずの苛立ちを一層高まらせていく。 「大事な人にもらった名前なんて、捨ててしまえばいいじゃないですか」 そして――その一言で絶句した。 怒りを一時的に諌めた上での、驚愕。 まるで、こちらの胸の内を見透かしているような。 「おまえ、まさか……」 おそるおそる、口に出す。 共通点など、なにもなかった――はず。 とまで思って、一つだけ、あったことに気づく。 人妖。 人と妖怪の狭間をいく、あやかしならざるあやかし。 目の前のトーニャも、今はまだ会えない“彼”も。 同じ人妖――だから、どうだというのか。 考えたところでわからない。 わからないゆえに言葉にしてしまう。 「……涼一くんのことを、知ってるの?」 発言自体が、トーニャの仕掛けたトラップだとも気づかずに。 すずは敵対者に、絶好の考察材料を与えてしまう。 「涼一くん、涼一くんですか。なるほど……それが如月くんの本名だったというわけですね」 得心がいきました、とトーニャは揚々と頷いてみせる。 すずは棒立ちの状態で、彼女の挙動に目を見張った。 「ありゃ、急に大人しくなりましたね。言いたいことがあるならどうぞ」 「…………」 「沈黙、と。わからないでもないですが、ここは喋る場面だと私は思いますよ」 言葉が出てこなかった。 芽生えてしまった予感を意識すると、どんな発言も地雷となってしまいそうだった。 「質問は三つと言いましたが、追加でもう一つだけ訊かせてください。 あなたはこの儀式、いえ、殺し合いの実情をどれだけ把握しているんですか?」 すずは答えない。否、答えられない。 まるで“黙れ”という言霊が自分に返ってきたかのような、そんなありえない錯覚を覚える。 「その様子ですと、なにも知らないようですね。どこで、誰が、どんな死に方をしたのかも」 わざわざ頷かずとも、素振りだけでトーニャにはわかってしまうらしい。 すずの立場は、あくまでもゲストだ。命令されない限りは、直接的関与も避けてきた。 星詠みの舞という儀式にも、神崎の目的にも、人間同士の殺し合いにも、一切の興味はない。 「かわいそうに。心の底から同情します。せめてもの救いとして、あなたに教えてあげましょう」 トーニャが、笑った。 口元だけの微笑ではない、満面の笑み。 次に飛び出す言葉が恐ろしくなるほどの、前兆。 逃げ出したい衝動に駆られる。 もとより、退路などなかった。 逃げ出すわけにもいかなかった。 まだ。 まだ、彼を取り戻してはいないから―― 「如月双七……もとい、“涼一くん”は死にました。あなたが加担し、傍観していた、殺し合いの中でね」 ・◆・◆・◆・ 「……うそ」 傲慢な態度は崩れ落ち、鉄面皮は蒼白に彩られる。 待ち望んでいた豹変に、トーニャは顔面全体でほくそ笑む。 かつてのライバルがこんな顔を見せるとは、なかなかにそそられるものがあった。 「うそ、だ……だって、涼一くんはナイアが助けたって……全部終わったら、また会わせてくれるって」 「“ナイア”。ようやくその名前を出してくれましたね。裏で糸を引いていたのは、やはり彼女でしたか」 理解し、得心し、ようやく納得した。 すずもやはり、言峰綺礼やエルザと同じくナイアに使わされたゲストの立場。 そしてその境遇を甘んじて受けている理由は――“涼一くん”という人質の存在。 確信はなかったが、予想はできていた。すずが動く理由など、初めからそれしか考えられなかったのだ。 涼一くん――それは神沢学園生徒会所属、“如月すず”の兄である“如月双七”の本名に違いない。 あの兄妹がなんの目的で神沢学園に身を寄せていたのかは知っていたし、如月の姓が偽名であることにも気づいてはいた。 「双七、というのも珍しい名前ですが、いったいなにから取った名前なんでしょう。すずさん、知りませんか?」 「知らない……わたしは、双七なんて……涼一くん、涼一くんは……」 「やれやれ、メンタル面の弱い。そんなにうろたえた素振りを見ると……ますますいじめたくなっちゃうじゃないですか」 トーニャは、ここぞとばかりに畳み掛ける。 「まとめますよ。あなたが言う“涼一くん”。彼は“如月双七”という名前で、殺し合いに参加していました。 死亡が発表されたのは第四回放送時点。下手人は衛宮士郎という男。深優さんはその現場に立ち会ったそうです。 私はここでは如月くんと対面叶いませんでしたが、面識はあるんですよ。通っていた学校が同じでして。 信じられないかもしれませんが、すずさん。その学校には、あなたも通っていたんですよ。私と同じ制服を着てね」 華麗にスカートを翻す。白を基調とした神沢学園女子制服を、ワイシャツ一枚のすずに見せびらかすように。 すずは、トーニャのその様子を食い入るように見ていた。 「如月くん、いえ涼一くんの印象について語りましょうか。お人よし、優しい、泣き虫、このへんですか。 ええ、殺し合いの最中でもその善人っぷりは遺憾なく発揮されていたそうですよ。深優さんがその証人です。 施設のどこかに監視映像の記録とかないんですかね。どうせ暇してるんなら、今からでも見に行ったらどうで――」 言い切る前に、すずが動いた。 覚束ない足取りで一歩、カーペット敷きの床を強く踏む。 十分に溜めて、二歩。気が動転しているのか、走り出す様子はない。 ただ、言われたとおり事実を確認する意思はあるらしく、歩む先には部屋の扉があった。 トーニャはその扉の前に、立ち塞がるようにして君臨している。 「どけ……どきなさいよ……っ」 「凄まじい狼狽っぷりですね。その様子、私の知るすずさんが如月くんに向けていた執着心と、まさしく同等のものです」 「あんたなんて、知らない……! それよりも、涼一くん……涼一くんが生きてるって、確かめなきゃ……」 すずは今にも吐きそうなくらい、青ざめた顔をしていた。 なんて嗜虐心をそそる弱りっぷりだろう。 トーニャはゾクゾクと身を震わせ、つい、我慢しきれず、 「え――?」 すずの腹に、ローリングソバットを叩き込んでしまった。 ・◆・◆・◆・ 静寂だった室内が、喧騒に穢される。 蹴り飛ばされたすずの身は卓袱台を巻き込み、上に載っていた苺大福を撒き散らしながらベッドにまで転がっていった。 玩具で散らかっていた部屋に、大福の粉が舞う。潰れた苺が、床を汚す。トーニャは構わず、その上を踏み歩いた。 「失礼。蹴ってくれと言わんばかりの狐がいやがりましたので、つい」 舌が血の味を感じている。蹴り飛ばされた衝撃で口内が切れたらしい。 直接の打撃を受けた腹部は痛みを訴え、内臓はひっくり返った。口から軽く胃液が零れる。 傍にあったベッドのシーツを強く握り込み、すずは立ち上がり様にトーニャの顔を睨んだ。 ――――ヒュン。 その瞬間のことだった。 トーニャの背後で、一条の鋼線のようなものが動作。 目で追うよりも速く、それはすずの左目の前にやって来て――眼球を抉る。 「――がっ」 左の世界が赤く染まり、視界が半分、消滅した。 「っがああぁああぁぁぁぁぁぁああっ!?」 獰猛な獣のうめき声、とはかけ離れた、未成熟な少女の絶叫。 血の滴る左目を手で押さえ、すずはその場で蹲る。 眼球は眼窩の中で、潰れた苺大福と同じ風になっていた。 「すずさん。先ほどあなたは、“わたしなんか殺しても意味はない”と、そんな風に言っていましたよね。 それ、残念ながら間違いです。あなたを殺す意味は、ひぃふぅみぃ……五つ。少なくとも五つはあるんですよ」 這い寄るのは、銀のポニーテールを尻尾のように振り翳す――狸。 背中の辺りから伸びる、縄にも似た細く長いそれは――人妖能力『キキーモラ』。 「一つ。あなたは私のことなんて知らないかもしれませんが、私はあなたのことをよーく知っているんですよ。 人間が大嫌いだということも、生かしておいたらなにをしでかすかわからないということも。 私たちにはまだ、先のステージがあります。厄介者には生きていられると面倒……そういった意味での、始末」 キキーモラの先端には、鋭角なひし形をした錘のようなものが取り付けられている。 その先端だけが異様に赤く輝いており、なにかと思えば、すずの目を抉った際に付着した血だった。 トーニャは手足の所作もなく、己の意思だけを操縦桿として、キキーモラを繰る。 目にも留まらぬ速さで宙を舞うそれは、ざんっ、とすずの右耳を削ぎ落とした。 「二つ。あなたが一番地の職員に憑けた言霊。これはあなたを殺せば自然と解除されるものなんでしょう? なら、ここであなたを殺して、人間の戦闘員だけでも無力化しておけば、後々の攻略も幾分か楽になる」 すずの叫喚をバックミュージックに、しかしトーニャは表情一つ変えず、喋り続ける。 ひゅん――ひゅん――と、二人の周りを恒星のように回り続けるキキーモラ。 赤みを増した先端の錘は時折、付着した血液を室内に散らした。床や壁に斑点ができる。 「三つ。ある機関が妖狐を欲していまして。せっかくの機会なので、このまま持ち帰りたいという個人的欲望があります。 ただ、やはり生きたままというのは難しい。なので剥製にでもして、祖国と勲章のために鞄にでも詰めておこうかな、と」 トーニャの言動など、既にすずの耳には入っていない。左目と右耳から来る激痛が、理性すら奪おうとしていた。 この痛みをすぐにでも克服しなければ、迫る命の危機は回避できない。そう、本能では理解していても。 体は思うようには動いてくれない。繰り出されたキキーモラが一閃、すずの喉を裂いた。 「四つ。あなたという舞台装置がなければ、そもそもこんな殺し合いは成り立たなかった。 如月くんやみんなが死んだのは、つまりはあなたが存在していたからと解釈することができます。 “なんて迷惑な雌狐だ、死んじゃえばいいよ”。これは嘘偽りない私の本心。というわけで、殺します」 これではもう、喋ることはできない。 言霊を憑かせることも。 涼一くんと楽しくおしゃべりすることも。 なにもできない。 「五つ。あなたは個人的にムカつきます。これ以上、“如月すずさん”を穢さぬよう――ここで死んでください」 なにが。 なにが、いけなかったんだろう。 わたしなにか、わるいことでもしたのかな。 わたしはただ、りょういちくんにあいたかっただけなのに。 想いは報われない。母が人間に殺されたときも、同じような不条理を味わった。 まったく、人間って。 野蛮で、凶暴で、醜悪で、自分勝手で、なんて――おっかないんだろう。 死んじゃえばいいのに。 最期に勝ったのは、武部涼一への想いではなく、人間への憎しみだった。 ・◆・◆・◆・ ぽた、ぽた、ぽた、と。 心臓の中心を射抜いたキキーモラから、妖狐の血が滴り落ちる。 トーニャはしばらくそれを宙に浮かべたまま、停止。 キキーモラを収納しようともせず、ただ黙って立つ。 物言わなくなったすずの亡骸に、視線を落としながら。 「……さすがに、見知った顔を手にかけるというのは堪えますね」 所詮は平行世界の存在、と割り切って考えていたつもりだった。 いくらクールなロシアンスパイといっても、芯には熱い部分もある。 感情的な面では、やはり――いい気分にはなれない。 「と、感傷の時間はこのへんにしまして。とっとと次のフェイズへと進みましょうか。 桂さんたちの位置は……あや、やはり離れてしまいましたねぇ。仕方ありませんが」 手元のレーダーを確認してみるが、他の仲間の反応は綺麗に消えてしまっていた。 合流の目的は果たせなかったが、すずという一角を切り崩せたのは、一番地攻略の上でも大きな一歩となる。 彼女の死によって言霊は解除され、無理やり戦闘員に仕立て上げられていた職員たちは自我を取り戻すはずだ。 「後遺症が残るとも限りませんが、命令を聞くだけの殺人マシーンを相手取るよりはマシでしょう。 これで他のみんなに及ぶ被害も少なくなれば幸いなのですが……」 基地内をざっと回ってみたところ、警備についているのはほとんどが人間の兵士だ。 厄介なアンドロイドたちは皆、九郎や玲二たちが引きつけていると考えていい。 「心配してるだけじゃ始まりませんね。気を引き締めなおしまして、再出発といきますかぁ! ……と、その前に」 トーニャは扉に向かおうとして、またすぐに踵を返す。 床には血まみれのすずの亡骸が、今も横たえられている――ただし、その姿は先ほどとは別のものに変化していた。 「命を落として、人化が解けたみたいですね。これが妖狐……お偉方が垂涎していたサンプル、ですか」 人型を成していたすずの身は、本質である妖狐、幼い狐の姿へと戻っていた。 「動物虐待の趣味はなかったんですがね」 鮮やかな金の体毛は、満遍なく赤い血で汚れてしまっている。 見かけたのが街の路上だったならば、思わず黙祷せずにはいられない凄惨な死に様だった。 それを作り上げたのが自分だと踏まえ、追悼の意は述べない。 ただ、後々のことを考えて、すずの亡骸を自身のデイパックに仕舞いこむ。 「……墓など作ってやれないでしょうが、どうか化けて出ないでくださいよ」 これが、この地で出会ったすずに対して向ける、最後の言葉。 今度こそ、決着だった。 「さて、では改めて」 トーニャは、扉のほうへと向き直る。 ドアノブに手をかけ、軽くこれを捻る。 ノブを捻ったまま、扉を前に押して開く。 不意に、押す力に抵抗力が加えられた。 扉を前に開こうとしても、押し返される。 はて、とトーニャが違和感を覚える刹那。 「――ウゥ…………アアアアアアァァァァァァァァ!!」 部屋の外から、咆哮――と同時に、トーニャの眼前にあった扉が蹴破られた。 咄嗟に飛び退くも、一瞬で破壊された扉の木片が、トーニャへと突き刺さる。 いや、ここは施設内。扉は木製ではなく、鉄製だった。だというのに。 「あ……ぐっ!?」 細かく砕かれた鉄の欠片を全身に浴び、トーニャは玩具と苺大福と血痕で満たされた床の上を転がる。 「な、なに……が!?」 すぐに体勢を立て直そうと、腕と脚に力を込める。 その途中で、視界がありえないものを捉えた。 トーニャが潜ろうとした、扉の傍。 鉄扉を破壊して室内に入ってきた刺客は、異形。 二足で立つ人型、服装は千切れたベスト、銃器がぶら下がったベルト。 リアルタイムで爛れ、抜けていく髪に、紫と黒が混じったような禍々しい肌の色。 角。 爪。 牙。 獰猛な唸り声、左右で違う大きさの瞳、溶解液を思わせるほど酸度の高い唾液。 肩や膝の辺りは肌が隆起し、骨が飛び出したり、垂れたりしている。 一歩前に進むと、落ちていた積み木が踏み砕かれた。 言葉はどう考えても通じそうにない。 「…………」 トーニャは絶句する。 こんなものまで控えているとは――いや。 これは、人間が変質したものだ。オーファンとは違う。 人為的に作りだしたり、ましてや戦力として当てにするなど、できるはずがない。 「鬼退治は専門外なんですけど、どこに文句言えばいいですかね?」 目の前に立つあやかしの名は――『悪鬼』。 憎悪を糧として誕生する、愚かな人間の成れの果て。 最悪にして最凶の、難敵だった。 ・◆・◆・◆・ ――血まみれになって倒れていた人間が、朝の到来を察知したように自然と起き上がる。 ――肌の色を紫や黒、深い緑に変色させ、体の様々な部分を外に突出させながら、存在自体を変貌していく。 ――人であることを示す理知的な言葉は消え、代わりに獰猛な獣のうめき声が各所に木霊する。 このような場景が、多数。 戦場の状況。少数の精鋭たちと、多数の人形たちによる激しい攻防は、一つの区切りを迎えた。 機械仕掛けの人形がまだ幾らかの数を残す中、自我を奪われていた人形たちは、ある節目を境に一斉に事切れた。 彼ら人間の職員たちを、人形の兵士に仕立て上げていた張本人――妖狐のすずが死亡したことによって。 既に侵入者たちに殺されてしまっていた者も、まだ存命していた者も、皆呪縛から解放された。 ただし、呪縛からの解放が彼らにとっての安寧とは決して言えず、むしろ状態は悪化する。 すずが憑けた言霊が解かれたとき――その瞬間を鍵として、ある術式が発動した。 言霊によって操られていた人間たち、全員の悪鬼化である。 そんな罠があるとは露知らず、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナはすずを殺害することによりこれを発動させてしまった。 人間の悪鬼化は闘争本能と戦闘力を肥大化させ、言霊の人形兵士などとは比べ物にならないほどの障害となって立ち塞がる。 倒すことも、ましてや説得して人間に戻すことも困難な、厄介極まりない敵の出現だった。 自我を憎悪に喰われた鬼たちが、一番地基地内を暴れ回る。 生きている者を標的とし、殺し、喰らい、腹を満たすために。 完全なる無差別破壊、阿鼻叫喚のステージが、ここに完成した。 誰が死に、誰が生き残るかは、もう誰にも予測できない。 一番地職員の悪鬼化は、誰にとっても予想外の出来事だったから。 唯一の例外、言霊と共にこの世を去った、あの妖狐を除いては。 ――――死んじゃえばいいのに。 彼女の残した呪詛が、基地の中に浸透していくようだった……――。 LIVE FOR YOU (舞台) 14 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) ★