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インデックス、と今も呼ばれる少女が居る。 本名などもう覚えていないし、今ではこの名前の方が馴染み深い。 だから、調べれば判るかもしれない本名も、調べようとは思わなかった。 と言うより、今現在、彼女の頭は別のことで悩んでいた。 「…困った…、調子に乗って買いすぎちゃったかも」 いっぱいに詰まった買い物袋が二つ三つ。 一年前は家事など縁も所縁も無かった彼女だが、今ではその料理の腕は折り紙付きである。 が、家主がレベル6になって莫大な奨学金をもらえる様になった今でも、長年(現在進行中)染み付いた不幸体質から来る倹約姿勢は健在で。 そんな環境で教育された十万三千冊の魔道書を記憶する家事手伝いは、特売の戦利品のビニール袋4袋を前に腕組みをしていた。 「…困った。困ったよー」 言いながら、袋から一本のキュウリを取り出す。 「人が困ったって言ってるんだよ、ステイル!」 投げ放たれたキュウリは芸術的なブーメラン曲線を描いて裏路地への角に飛び込み、 「ぐは!?」 ぱこん、という音と共に男の悲鳴を上げさせた。 「な、何をするんだ、君は」 「そーいうステイルこそ、そんなところで何してたのか説明して欲しいかも」 「いや、単に通りがかっただけなのだけれどね」 目立たない位置から彼女の護衛をしている(つもりの)ステイルは、白々しく言う。 「うん、年頃の女の子を物陰からじっと見つめてタイミングよく現れるのは、通りがかるとは言わないかも」 「む。しかしだね、君の立場は一年前以上に微妙な――」 「世間一般では、ステイルみたいなのをストーカーって言うんだと思う」 「んな!? え、英国紳士としてそんな男の風上にも置けない真似はしない! 断じてしないぞ!?」 大慌てで誤解を解こうとするステイル。が、インデックスは半眼で彼を見上げると、 「英国紳士っていうのは、禁煙地帯でタバコを吸うの?」 「うぐっ」 「タバコさえ無かったら、インデックスさんも鬼じゃないから、ストーカーの話は水に流してあげるよ」 ステイルは咥えているタバコを意識して、手に取る。 まだ火をつけたばかり。十分吸える。何より、学園都市ではタバコが買える店が少なすぎる。 「…くっ」 「さあ、選ぶと良いよ。ここでタバコを捨てて英国紳士の看板を守るか、タバコを捨てずにストーカーだって私に追い返されるか!」 心なしかインデックスは楽しそうである。 「ああもう、仕方がない!」 「あ、ポイ捨ては禁止だよ。携帯灰皿は?」 「~~~~!!」 最近妙にこんな調子だ。そんな都合のいいものは持っていないステイルは、念入りにタバコの火を踏み消すと、わざわざ拾い上げて近くのゴミ箱に放り込んだ。 「ヨロシイ」 「全く、いつから君はそんなに喫煙に厳しくなったんだ」 「タバコの煙はよくないんだよ。食べ物だって臭いが付いて美味しくなくなるし」 「ニコチンとタールのない世界は地獄と言うんだ」 「ステイル、ステイル、そーいうのを、『負け惜しみ』って言うんだよ。とーまやみことちゃんも言ってた」 「……あいつらめ」 舌打ちするステイル。 「さ、荷物持って帰るの手伝って」 「何で僕が。しかもそれを食べるのは奴だろう」 「む、そういうこと言うなら、お礼にご馳走してあげようと思ってたけど、キャンセルになるかも」 「さぁ、行こうじゃないか。どこまで運べばいいんだい?」 インデックスの手料理という誘惑にあっさりと敗れ去った不良神父は、さっさと買い物袋を取り上げる。 「で、察するに今日の当番は君なのかい?」 「そーだよ。献立は決めてないから、特別にステイルが食べたいものを作ってあげるよ。何がいい?」 「そうだね。何でも良いが、あいつが嫌いなものをフルコースにしてくれると有難い」 「またそういうこと言う」 長身の神父と銀髪の少女は、不釣合いなバランスの中、のんびり歩いて帰っていく。
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作者:◆PLwTfHN2Ao 【1】 【2】 真っ暗な夜。 ときどき黒い雲の合間に、紅い月が見える。 人気の無い薄汚れたアーケード街。 黒服のタルベロス戦闘員や、虎型キメラを小太刀で斬って捨てるイサミ。 爆発する戦闘員。 次々に増えていく戦闘員。 「フォーメーション6!」 数百人の戦闘員達が、素早くフォメーションを変える。 取り囲まれるイサミ。 (アンドロイドじゃし、キリがないのぉ) イサミが重心を落とし、二刀流の小太刀を構える。 ドンドンと増えていく戦闘員達。 「後がつかえとるけん、一瞬で終わらせちゃるけんのぉ」 フッとイサミの姿が消える。 『熱感知システム起動……』 戦闘員達の目が青く光り出す。 キョロキョロと首を動かす戦闘員。 「無駄じゃて!いくら見えても、反応出来なければ意味がないんじゃて」 バッサバッサと胴体と腹部が切り離されていく戦闘員達。 「小娘も心配じゃし、ちゃちゃっと片付けにゃーの」 狼型キメラが身構える。 誰も居ない闇乃森林公園。 森とアスレチック施設や公園が外観を損なわないように融合されている。 広い公園にアタッシュケースを抱えて立っている藤林。 消えかかった外灯。 「本当にここで合ってるんだろうな」 プリンターで印刷された紙をポケットから取り出す藤林。 グシャグシャの紙。 地図の真ん中の部分が赤丸で囲まれている。 「おっかしいな……」 ボーンボーンという音。 3時を指す時計。 ビュンとふく風。 藤林が思わず手で顔を覆う。 いつのまにか大時計の前に、ヤマトと弥生が立っている。 「この時間にここにアタッシュケースを持ってるってことは、彼が運び屋だろうね」 無言で腕組みをしている黒装束に身を包んだ弥生。 二人に気がついた藤林が恐る恐る近づく。 「アンタらか?買い手ってのは?」 弥生が素早く抜刀し刀を藤林の首筋に突きつける。 少し切れ血がジワッと出た首筋。 「何すんだよ!」 「不用意に近づけば斬る」 チェッと舌打ちする藤林。 「ゴエモン君から聞いてない?合言葉」 「ああ、そういえばあのオッサン言ってたな」 「じゃあ始めるよ?」 頷く藤林。 「紅い月の下で」 「悪魔が笑う」 ヤマトが満足そうに頷く。 刀を鞘にしまった弥生が、アタッシュケースを受け取る。 「おい!バイト代はどうなるんだよ」 「あれ貰ってないの?」 「あのオッサンからは半分しか貰ってねぇよ、アンタから半分貰えってさ」 手を出して報酬を要求する藤林。 「困ったなぁ~。今は持ち合わせないから、僕の出世払いじゃ駄目かな?」 「ふざけんな!こっちはすぐ金がいるんだよ!!!」 顔を真っ赤にしてヤマトに詰め寄る藤林。 ヒュンという音。 「危ない!」 突然ヤマトを突き飛ばす弥生。 外灯に背中をぶつけるヤマト。 鼻先を通過した鎖分銅が地面を割る。 鼻血を出す藤林。 「そこまでよ!ようやく追いついたわ!ドグマ幹部ヤマト・ナギサ、 そして裏切り者雪白弥生!今日こそ成敗してやるわ!」 茂みの中から、赤を基調とした歌舞伎役者のようなメイクをした初芽が姿を見せる。 「転校生???」 首を傾げる藤林。 声の主を見て驚く初芽。 「藤林君!何故ここにいるんですか?まさか既に貴方ドグマの一員?」 「ドグマ?何のことだよ! 俺はただバイトでオッサンからオッサンにアタッシュケースを届けただけだ」 「それ中身なんだか、知ってて言ってませんよね?」 「なもん知るか!俺は金さえ入れば良いんだよ!」 「それはねぇ~。とある研究組織の偉い人の発明品で盗難届が出てるんですよ」 呆れたようにため息をつく初芽。 「こんな時間に夜遊びなんかして、せっかく更生したとご両親も喜ばれていたのに……」 「だから、知らなかったんっつのぉ!バイト代が良かったんだよ!」 「こんな夜中に、ただアタッシュケースを運ぶだけで高額報酬って怪しいと思わなかったんですか? 「思わなかったからここに居るんだよ!」 「頭の中はお花畑ですわね!!!」 素早くダッシュし、藤林の前に立つ初芽。 ヤマトが地面に置かれたアタッシュケースを拾って歩き出す。 「ちょっと待ちなさい!」 初芽の制止を無視してスタスタと歩き出すヤマト。 「バフ課の人かぁ。任せても良いよね?」 答えを言う前に刀を抜く弥生。 初芽が薙鎌でそれを受け止める。 ガシャンと言う刀身のぶつかる音。 「今日は悪いけど急いでるんだよね」 フフフと笑いながら歩き出すヤマト。 クナイがヤマトの進行方向の地面に突き刺さる。 慌てて右足を引っ込めるヤマト。 紺のスーツ姿の服部が闇の中から姿を現す。 「君は誰だい?見掛けない顔だね」 「答える義理は無い!」 「つれないなぁ……」 「コソ泥風情が興味を示す筈がないと尾行してみれば、ドグマに繋がっていたとはな」 「ゴエモン君死んじゃったの?」 「俺の任務はドクトルJのあらゆる不安要素を排除することで、 コソ泥の始末ではない。ここまでいえば要件はわかるな?」 アタッシュケースを背後に回すヤマト。 「これは渡さないよ?」 「ドクトルJの発明品と研究データ。力尽くでも奪還する」 戦闘を始めるヤマトと服部。 何が何やら分からず右往左往する藤林。 地面に置かれたアタッシュケース。 「下がって!」 初芽が自分よりはるかに大きな藤林の首根っこを掴む。 「どうすんだよ転校生!」 「そのデブを守りながら、この私に勝てるとでも思っているの?」 不気味に笑い間合いを詰める弥生。 「あの~藤林君、50m全力で走れますか?」 「当たり前だろうが!デブなめんなよ!!!」 背後の茂みを顎で指す初芽。 「あそこに原付が隠してあるんで、ケース持って逃げてください。 もちろん今夜私を見たことは内緒ですよ」 「でもよぉ」 弥生を見つめる藤林。 「民間人の藤林君を巻き込むわけにはいきません」 「そうだけどよぉ……」 「よそ見とは、偉くなったもんだな!」 目にも写らぬ速さで居合いを繰り出す弥生。 藤林の目には瞬間移動をしたようにでも見えたのか地面に尻餅をつく。 左肩を抑えながら地面に片膝をつく初芽。 「早く行ってください……」 「お……、おうよ……」 地面に置いてあるアタッシュケースを拾い、走り出す藤林。 藤林に向かってクナイを放る服部。 鎖分銅がクナイを弾く。 「邪魔はさせないわよ」 「お前一人で三人を相手にするつもりか?」 次々にクナイを放る服部。 「く……」 歯軋りする初芽。 「よそ見している暇はないぞ」 弥生が初芽に斬り掛かる。 クナイを弾く音。 恐る恐る目を開ける藤林。 「何で小僧がここにおるんじゃい?」 イサミが首を鳴らす。 「先公!」 「あらら~、もう来ちゃったの?」 ヤマトがイサミに斬り掛かる。 それを小太刀で防ぎ、逆の手で斬り付けるイサミ。 「あれれ?さっきから気になってたけど、僕の能力発動してないみたいだね」 「何をぶつくさ言っとるんじゃい」 「まぁ、お互い能力使えないんなら五分ってことだからしょうがないか」 「五分じゃと?」 「え?」 「ワシ等一班がどうして最強と言われるかわかるか?」 「能力が凄い人ばっかり集まってるとか?」 「違うんじゃな、ワシ等15人は全員何らかの古流武術の心得があるけんのぉ」 「武術?」 「そうじゃ、能力にあぐらを掻いてるような奴はおらんっちゅうことじゃ」 距離を取ろうとするヤマト。 「従って能力が使えんくらいで狼狽えること等ありえん」 イサミが腹部に蹴りををいれる。 地面に倒れるヤマト。 真紅の目をした服部が藤林に近づく。 「痛い目に合いたくなければ、それを渡すんだ!」 「何を偉そうに!丸腰なら俺だって!」 藤林が服部に殴りかかる。 軽々とそれを交わし、カウンターをとる服部。 「ふん、体重差考えてみやがれ!」 ふてぶてしく笑う藤林。 無表情で藤林の胸部に一撃喰らわせる服部。 「ば……ばかな」 藤林が仰向けに倒れる。 「発勁とは珍しいもん使いよるのぉ……」 藤林の前に立つイサミ。 その横を素通りする服部。 「体重差など、俺には関係無い……。 約束通り返して貰う」 「ワシらは別にそれをどうこうするつもりは無いんじゃがな」 アタッシュケースの前で止まる手。 「証拠品と押収し人の目に晒すのであろう?」 「まぁ、中身は見るじゃろうが……」 「俺の役目はドクトルJの研究を望まぬ形で世に晒さぬようにすること 最悪の時には闇から闇に葬るように依頼を受けている」 「いったい何もんじゃい?」 「俺の名は服部政宗……」 「覚えておこう……」 アタッシュケースを拾い、暗闇へと消える服部。 「あああ……、逃げられちゃった」 ヤマトが起き上がり服をはたく。 「これ以上の戦闘は無意味だな」 「弥生ちゃんがこの人達全員斬ってくれれば、すぐ追いかけれるんだけど?」 フンと鼻で笑いながら、肩で息をしている初芽とにらみあう弥生。 「こいつ一人ならいざ知らず、流石の私も二人は厳しいな」 両手をあげるヤマト。 「大人しくお縄につくんじゃな」 イサミがヤマトに小太刀を向ける。 「それは嫌だよ。まだバフ課にいくには早いもん」 「どういう意味じゃ?」 「内緒!それじゃ!」 煙玉を地面に叩きつけるヤマト。 一瞬周囲が閃光に包まれ、玉から煙が勢いよく飛び出てくる。 「しもうた!!」 「またね~」 イサミが目を瞑り大きく舌打ちする。 煙が晴れると、そこには初芽が倒れていた。 続く 登場キャラクター イサミ 藤林段蔵 雪白弥生 ヤマトナギサ 甲賀初芽 服部政宗 上へ
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黒の契約者 ◆CAP.3FrrY. 錆付いた配管が幾重にもうねり一体を成す、まるで鉄でできた獣の腹の中のような様相の工業区。 夜の下でも明かりは絶えることなくその異形をシルエットとして浮かび上がらせているそこで鉄獣の咆哮が激しく木霊していた。 「次弾装填シークエンス、完了。目標の位置をお願いします」 「2時の方角、距離は400メートル」 荒廃した世界を駆け抜ける一騎の紅狼(戦車)――R・ウルフの中で二人の少女が言葉を交わす。 ひとりの少女は葛原未来。影を写し取ったような漆黒のゴシックドレスに身を包み、少女ながらにして戦車を乗りこなしている。 もうひとりの少女は銀(イン)。夜空を写し取ったような真黒のドレスに身を包み、その能力でナビゲーターを務めている。 「発射します!」 言い終わると同時に戦車が激しく揺れ、次いで遠くでそれが炸裂する音が届く。彼女達は戦車を駆って敵と戦っていた。 「状況を」 「目標、消失。…………再度、出現。方角は6時。距離は200メートル」 銀の報告を聞いて葛原未来は舌打ちをして戦車を旋回させる。遠心力が発生し、銀が足をつけていた消火バケツの水がたぷんと揺れた。 二人が戦っているのはそれぞれが大事としている人物の為にだ。 葛原未来は信奉する百舌谷小音を優勝に導くため。銀は黒(ヘイ)と合流するために今は葛原未来に従っている。 そして二人の黒い少女は今、黒い魔女と戦っていた。 魔女の名前はゾウナと言う。その色は闇だ。 世界中の心の中から生まれる怒り、憎しみ、悲しみ、あらゆる怨念が集まってできたそれにもはや色はなく、ただの闇としか形容できない。 そしてゾウナは魔王であり、神への反逆者でもある。常に世界を暗黒の下へ沈めようと画策しているし、今もそうしようとしている。 「どうした……小娘ども……」 魔王の声が蠱惑の響きで夜を震わせる。悪の声、闇の声は、心を持つものならばそれはまるで極上の蜂蜜のように甘く触れられてしまう。 その声を紅狼の咆哮が打ち消し、さらにゾウナの姿を砲弾が紙のように千切る。 だがしかし、少女たちがいくら戦車の砲弾を撃ち込もうとも魔王は費えず、それどころか数を増して姿を増やしていく。 「……なにを……恐れている……」 工業区の中を逃げ惑う紅狼を囲うように魔王の影が集まってくる。ゆらりゆらりと手が伸びてくる。優しく。赤子を抱くように。ゆらりゆらり。 少女たちを絡めとろうと、その間際まで伸びて、そして彼女達の乗る鋼鉄の箱をすり抜けて……届いた。 しばらくして、紅い戦車は――いや、かつては紅かったが今は真っ黒に染まった戦車はゆるやかな速度で工業区を南へと走っていた。 二人の黒い少女を乗せて。闇に心を拐かされた、とても平時では考えられない愉快そうな笑みを、狂喜の笑みを浮かべた二人を乗せてゆるやかに走る。 「ゾウナ様に生贄を」「悪の心を」「月の青い雫を」「呪文を」「そして儀式を」「世界を」「世界を」「無にするために」 人は誰しも、ゾウナの、悪の力に飲み込まれる。無意識のうちにゾウナに手を貸し、そしてゾウナを愛するようになる。 【C-9 工場区/一日目 深夜】 【葛原未来】 [状態]:体力ゲージ満タン [装備]:Rウルフ(黒)@メタルマックス3、不明(あるかもしれないしないかもしれない) [道具]:不明(あるかもしれないしないかもしれない) [基本方針]:ゾウナ様のために他の参加者を殺す。 【銀】 [状態]:体力ゲージ満タン [装備]:消火バケツと水@現実、不明(あるかもしれないしないかもしれない) [道具]:不明(あるかもしれないしないかもしれない) [基本方針]:ゾウナ様のために他の参加者を殺す。 【ゾウナ】 [状態]:体力ゲージ無限 [装備]:不明(あるかもしれないしないかもしれない) [道具]:時の鍵@ナムコクロスカプコン ※時々倒された時に落とす。、不明(あるかもしれないしないかもしれない) [基本方針]:出会った相手を手駒にして、殺し合わせる。 ※ゾウナの設定はアークが気をきかせてFC版設定を取り入れたので、 倒すごとに分身の増えるゾウナが1/nの確立で落とす時の鍵を、会場のどこかにある鍵穴に刺さないと倒せません。 男達の激闘 <前 次> 原作設定を重要視するゲーム会社の鑑3
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第491話:紫煙―smoke― 作:◆5KqBC89beU 島を覆い始めた霧の中、甲斐氷太はA-2にある喫茶店の前に立っていた。 (さて、今度こそ誰か隠れててくれねえもんかね) 適当に周囲を探索して回り、しかし誰とも会わないまま、甲斐は今ここにいる。 途中、争うような喧騒を耳にしてはいたが、甲斐は無視した。いかにもカプセルを のませにくそうな参加者にわざわざ会いにいく気は、とりあえずない。逃げるために 遠ざかるつもりも、とりあえずないが。 今のところ、甲斐の目的は、悪魔戦を楽しめそうな相手を見つけることだった。 風見とその連れを殺したいとも思ってはいるが、再戦できるかどうかは運次第だ。 故に、甲斐はただ黙々と探索を続けていたのだった。 (……ウィザードの代わりなんざ、いるわきゃねえけどな) カプセルは、のめば誰でも悪魔を召喚できるというようなクスリではない。 悪魔を召喚する素質のない参加者にカプセルを与えても、悪魔戦は楽しめない。 何が素質を決定している因子なのか、甲斐は明確には知らない。しかし、精神的に 不安定な者は悪魔を召喚できるようになりやすい、という傾向なら知っていた。 戦えない者なら、この状況下で精神的に安定しているとは考えにくく、悪魔を召喚 できるようになる可能性が高い。また、そういう相手にならカプセルをのませやすい。 (弱え奴が隠れるとしたら、こんな感じの、中途半端な場所の方が好都合だろ) 立地条件のいい場所には人が集まりやすい。誰にも会いたがっていない者ならば、 他の参加者が滞在したがりそうな場所を避けてもおかしくない。 この辺りの市街地は、便利すぎず、かといって不便すぎることもない。 大都会というほどではないものの、それなりに建物があって隠れ場所には困らず、 物資を調達しやすそうだ。しかし、島の端なので逃走経路が限られており、遮蔽物の 乏しい西には逃げにくい。強さか逃げ足に自信がある者なら、ここより南東の市街地に 向かいたがるだろう。この場所ならば、弱者が隠れていても不思議ではない。 『ゲーム』の終盤から殺し合いに参加しようとする者や、休憩しにきた殺人者も、 ひょっとしたら隠れているかもしれないわけだが。 カプセルを口に放り込み、甲斐は喫茶店の扉を開けた。 結局、喫茶店には誰も隠れていなかった。 (面白くねえ) どうやら、現在A-2の市街地には他の参加者がいないらしい。 甲斐は苛立たしげに舌打ちし、いったんここで小休止することにした。 (もう、いっそのこと……いや、それとも……) 思案しながら甲斐は煙草を取り出し、口にくわえて、店のガスコンロで点火する。 煙が吸い込まれ、吐き出される。 (あー、くそ、体のあちこちが痛え) 喫煙の合間にカプセルを咀嚼する姿は、どうしようもなくジャンキーらしい。 しばらくすると、東の方から盛大な破壊音が聞こえてきた。 破壊音が近づいてこないと確認し、甲斐はそのまま煙草を吸い続けた。 【A-2/喫茶店/1日目・17:55頃】 【甲斐氷太】 [状態]:左肩から出血(銃弾がかすった傷あり)/腹に鈍痛/あちこちに打撲 /肉体的に疲労/カプセルの効果でややハイ/自暴自棄/濡れ鼠 [装備]:カプセル(ポケットに十数錠)/煙草(1/2本・消費中) [道具]:煙草(残り11本)/カプセル(大量)/支給品一式 [思考]:次に会ったら必ず風見とBBを殺す/とりあえずカプセルが尽きるか 堕落(クラッシュ)するまで、目についた参加者と戦い続ける [備考]:『物語』を聞いています。悪魔の制限に気づいています。 現在の判断はトリップにより思考力が鈍磨した状態でのものです。 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第490話 第491話 第492話 第503話 時系列順 第510話 第469話 甲斐氷太 第513話
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魔機那戦記#6前半 「チ…誘ってんのか?」 ギルバートは謎の魔機那を追って山の奥深くへと来ていた。謎の魔機那はたまにこちらを見ては距離を確認し、止まったりして奥へ奥へと向かっていく。 そして大分歩いた頃急に視界が開ける。その光景に崖かと思ったが、どうやらかなり開けた場所の様だ。木々が薙ぎ倒され、地面は抉り取られている。まるで巨大な「何か」が墜落した様だ。とギルバートは思った。 その瞬間強制的に通信回路を開いた者が居た。どうやら謎の魔機那から通信が届いたらしい。 しかし、魔機那から通信などおかしい。そもそも無人の魔機那にはAIはあっても、通信などする訳がない。ともかく通信を開くことにした。 『……敵魔機那をヒト型“デストロイヤー”と断定。リンクキー波照合、先程の妨害したパイロットと断定。』 どうやら人が乗っているようだ。しかし、リンクキー持ちは大抵MBTに保護され魔機那使いへと訓練される。その為、自然なリンクキー持ちは、自分がリンクキーを持っている事すら知らず人生を終える。 しかし、このパイロットは声も幼く、女の声のようだ。 『この私のミッションを妨害した罪は重い。Rシリーズの名に掛けて貴様を…死刑に処する。』 「何だって!?つか、お前のミッション妨害した覚えねーし!!」 しかし敵機は問答無用で両手にマシンガンを構えるとそれを乱射してきた。それを避けつつ、現在の自機の状態を見る。まずは“クレイモア”は先程の戦いで失ったしまった為接近戦は控える。 他に残っている武装は、腿部にあるハンドガンと、腰に付いているミサイルポッド。あとは腰のアタッチメントに装備されているマシンガンだ。 ならば武装から考えられる行動は…銃撃戦しか有り得ない。 ギルバートは“デストロイヤー”の腿部に手を伸ばし2丁の拳銃を取り出した。そしてそれを2丁拳銃(トゥーハンズ)で構え乱れ撃つ。 そして一瞬の隙を付き、腰のミサイルポッドを開く。解き放たれた四つの弾頭は、ある距離になるとその腹中からさらに四つの弾頭を解き放つ。 ーーーー多弾頭ミサイルだ。 計16発のミサイルが忠実に与えられた使命を果たすべく敵魔機那へと向かう。しかし、ミサイルは何の戦果を上げることなく爆炎へと姿を変えた。 敵魔機那は両手のマシンガンと肩部のキャノンで全弾を打ち落とす。しかしキャノン砲から迸ったのは実弾ではない。 空間を斬り裂く輝く光の矢。ビームだった。 「ビーム兵器!?なんであんなスペシャルな武器をアイツが持ってやがるんだ!」 そう。ビーム兵器は基礎理論こそ完成しているのだが、西暦から真歴にかけて未だ実現しない夢のような兵器だ。 それを持っているなど…普通の女じゃないな。とギルバートは確信する。しかしこの女は何故俺を呼んだのだろう?と疑問が思考を満たす。 しかし、煙を突き抜けてきたビームが弾を吐き出し使い物にならなくなったミサイルポッドを貫通した衝撃で我に返った。そして用を更に成さなくなったミサイルポッドをパージして2丁拳銃で再び敵魔機那へと撃っていった。 『この障害。なかなかやる。』 と謎の魔機那ーーーーマシン型“ラウンド・オブ・32”のコックピット内でRシリーズのR-32は敵魔機那に賞賛とも侮蔑とも取れる発言をした。 私はヴォルロック様の命により巨大魔機那の監視を命ぜられていたのだが、奴等が巨大魔機那を破壊したために失敗に終わってしまったのだ。 「やはり……貴様等劣等種は……死刑に処する!」 R-32は再び肩のキャノンから熱線を吐き出す。しかし敵魔機那は、やはり避けて尚も拳銃で撃ち返してくる。更にGPもそろそろ少なくなってきてしまった。こうなれば……とR-32はその白い両目で敵機を睨み付ける。そしてーーーー使った。 「何なんだよ!あのビーム!」 ギルバートはこの数分で三度目の舌打ちをした。あのビーム砲が怖く、なかなかハンドガンが致命傷を与えられる距離に近づけない。 すると急に魔機那のフットワークが重くなる。異変に気づきコンソールパネルをタッチして機体状況を確認する。するとやはり脚部動力系にエラーがある。 「なんでだ?俺はずっとリンクしていたはず…なのに気付けなかった。」 敵魔機那のせいだろうか。しかしこのままにして置いてもしょうがない為、リンクキーでその箇所を直す。 その時だ。 「な、なんだ?この痛みは……うっ、……」 ギルバートの頭に激痛が走る。そしてそれは頭を割らんとばかりに痛みを増した。 「うああああああああああっ!!!」
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そして――…… 「やあああああー!」 喉も裂けよと絶叫を上げて、ティーダはデスピサロに飛びかかった。 いかづちの杖を振り上げて。精一杯の勇気を振り絞って。 「ティーダ…!」 アルスは驚きの声を上げ、ティーダを静止するように右手を上げた。 ただ上げただけではない。ティーダを助けるため、彼は“力”を解き放つ。 「イオラ!」 アルスの声を聞いて、デスピサロは舌打ちしながら飛びずさる。直後、デスピサロの立っていた空間が破裂した! 爆風がボロボロになった城を更に危なっかしく揺さぶって、ティーダは驚きと衝撃に足を止めた。 アルスは鋼の剣を下段に構え、デスピサロに向かって走っていく。 デスピサロは、いい度胸だとでも言う風に唇を歪めて、今度はアルスに向かって飛ぶ。正義の算盤を右手で槍のように構えて。 お互いの武器が敵に向かって牙を剥き、煌めきが凶器…もしくは狂気となって突き出される。 しかし、その一撃が命を絶ち斬る事は、無かった。 ぼぉんっ…! デスピサロの左手から何かが落ちたと思った瞬間、目の前が灰色に包まれた。 危険を感じたアルスは立ち止まり、ティーダはアルスの名を叫ぶ。 デスピサロは3回分の狼煙にまとめて呪文で火を付けて、即席の煙幕としたのだ。 デスピサロはまるでネコのような身軽さで、頭上の謁見の間に飛び上がると、転がるように旅の扉に飛び込んだ。 今の脆弱な身体では、どうやら二人同時に相手にするのは骨が折れる。進化の秘宝を手に入れてから、ゆっくりと…じっくりと、とどめを刺してやる。 ピサロは、ザックの中の本を意識した。その本の中の有る一節。 進化の秘宝の研究時にも何度か聞いた覚えのある名前…『光の玉』。 (人間ども…ゾーマとやら…心の準備をしておくといい。究極の進化を目の当たりにして、恐れおののき許しを請う準備をな…!そして……?そしてだと…) 光の渦の中、ピサロは…闇の帝王デスピサロは、笑った。 大声で、さもおかしそうに、嘲笑する。 脆弱な人間を。愚かな大魔王とやらを。そして何より、こんな状況下であってもロザリーの事を考えている事に気づいた自分自身を。 ティーダとアルスは、煙幕が晴れてもしばらく動かなかった。 あちこちの擦過傷が、律儀に痛みを伝えてきているのに今更ながら気づく。 「ごめん。」 ティーダは、それだけを言った。それだけしか言えなかった。 なけなしの勇気を総動員してしまったせいで、どうやらあの恐ろしい…と、肌で感じた…男を逃がしてしまった。 アルスは、生き残るためにアイツを殺すつもりだったのに。 彼が生きている事…無事に逃げた事に、『殺さずにすんだ』とほっとしている自分が、何だかよく分からない。 「……。」 アルスはしばらく沈黙していた。ティーダはその沈黙が続く時間が嫌だった。 だけど、その沈黙の中でティーダは自分の考えをゆっくりと…まとめ上げていた。 「……行こうか。」 ティーダの考えがまとまるのを待っていたかのように…実際、待っていたのだろう…アルスが、言った。笑顔で。 それに答えてティーダも笑う。ただ、力のない笑みだった。 二人はゆっくり立ち上がり、旅の扉へ歩を進めた。 【デスピサロ 所持品:正義のそろばん 『光の玉』について書かれた本 基本行動方針:所持している本を手がかりに進化の秘法を求める 最終行動方針:なんとしてでも生き残る】 【現在位置:新フィールドへ】 【アルス 所持品:小さなメダル 鋼の剣 第一行動方針:仲間を集める 基本行動方針:弱きを守り悪しきを裁く 最終行動方針:何らかの方法でサバイバルを中止、ゾーマを倒す 【ティーダ(落ち込み気味) 所持品:いかずちの杖 基本行動方針:仲間を集め、何らかの方法でサバイバルを中止する 最終行動方針:何らかの方法でサバイバルを中止、ゾーマを倒す 【現在位置:新フィールドへ】 ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV ティーダ NEXT→ ←PREV アルス NEXT→ ←PREV デスピサロ NEXT→
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メイド姿の女性が、戦車を連れた柄の悪い男達と対峙していた。 男は、“人間狩り”と称し片っ端から人々を虐殺し、連れ去っている。 この女性も目をつけられたのだ。 「姉ちゃん、そこのタンクに乗ってくれねえか?ひゃひゃひゃ」 「私、この国に来たばかりで右も左も分かりませんの。 どうか、ご容赦願えませんでしょうか?」 柄の悪い男達――グラップラーの目的は、人間を狩り実験材料とすること。 こんな言葉では見逃してもらえるはずもなく、問答無用の構えをとっている。 「そうですか、それでは致し方ありません。 この国に来てからというもの不愉快なことばかり、手加減は出来かねますが…よろしいですね?」 ロベルタはそう言うと、真紅の傘を持ち上げ…… 「そんな物でどうっ―」 引き金を引いた。 グラップラーAは、傘に偽装されたショットガンをまともに受け、全身から血を流し3mほど吹き飛んだ。 グラップラーBとCが、それを見てからマシンガンを構えたが、ロベルタはつぎはぎだらけのトランクからロケット弾を発射。 二人の背後にあった戦車は火を吹き、爆発炎上。二人は、その爆発に巻き込まれ、絶命した。 脅威は去った。しかし、ロベルタは警戒を解かなかった。 炎上する戦車の向こうに、モヒカン頭の巨大な人が見えたのだ。 身の丈は、二畳ほど。青い耐火スーツに身を包み、背中にボンベを背負っている。 炎でゆらめく姿が、その異様さを際立たせていた。 「ふしゅるるるるるる……。邪魔する奴は、殺す! この、テッドブロイラー様が丸焼きにしてくれるわ!! ガガガーーっ!!」 自らを『様』をつけて呼んだテッドブロイラーは、腕を突き出すように前に出し、手首の辺りにある管から炎を噴射した。 「がはは!逃げろ、逃げろ!!早く逃げないと、真っ黒こげだガガーっ!」 炎がロベルタに迫ったが、彼女は避ける素振りを見せなかった。 そして、炎が直撃。ロベルタは黒焦げには……ならなかった。 それどころか、衣服には焦げ目一つついていない。 「貴様、何故?」 これには、さすがに驚いたテッドブロイラー。 「貴方が、知る必要はありませんことです」 ロベルタが、両腕を張るように伸ばすと袖からハンドガンが飛び出た。 そして、銃撃。 しかし、テッドブロイラーの装着しているプロテクターは戦車の砲撃ですら弾いてしまう。 ハンドガンでは、効果がない。 ロベルタは、内心で舌打ちしたとき、テッドブロイラーは咆哮した。 「モヒカンスラッガーーーっ!」 意表をつかれた一撃。 まさか、モヒカンが外れて高速で飛んでくるとは予測できなかった。 ロベルタは、顔面にまともに攻撃を受けてしまった。 テッドブロイラーは勝利を確信した。 モヒカンスラッガーは、鉄板を簡単に両断するほどの威力をもつ。 生身の人間がくらえば真っ二つになり終わりだ。 それでも、ロベルタは立ち上がった。 攻撃を受けた傷の部分からは少量の出血をし、超合金を覗かせて……。 自分の顔に手をあて、ロベルタはわなわなと震え始めた。 そして―― 「貴様、何でできているんだ!?ガガガーーっ!」 腕から炎を噴射し、ロベルタを牽制する。 しかし、炎の行く先にはロベルタは居なかった…。 何かがテッドブロイラーの耳元で囁かれた。 ――全ての不義に鉄槌を そして次の瞬間、銃声とともに背負っていたボンベが大爆発を起こし、テッドブロイラーは爆散した。 その炎の中でロベルタは、不気味に立っていた。 【三日目 茨城県水戸市 12時】 【ロベルタ@ブラックラグーン】 [状態] サイボーグ 顔面に傷 [装備] 耐火、防弾メイド服 傘偽装ショットガン(防弾性能付) [道具] 支給品 [思考]1 若様を探す 2:邪魔者の排除 【グラップラー@メタルマックス2】 【グラップルタンク@メタルマックス2】 【テッドブロイラー@メタルマックス2】 【野比玉子@ドラえもん】
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クリスマスまであと1ヶ月を切った。今まで特に興味のあるイベントでもなかったけれど、人つきあいが多くなってからはこういうこともやってみたくなった。 しかし、私の手にはこの紙袋は大きすぎる。いや、ただ単に買いすぎただけか。 「いいんだよー?」 「グリーンダヨー」 突然の声、電気石だ。さっそく私の手元が気になるらしく、紙袋に目が移る。 「クリスマスツリーの飾り」 「ぴかぴか?」 「ある」 「ふさふさ?」 「もちろん」 「ん……」 どうやら電気石はこのツリーを気に入ってくれそうだ。となると、やはりここは……。 「飾りつけ、手伝って」 「いいんだよー」 「グリーンダヨー」 「おかえり虎眼……あれ、電気石?」 「ん」 「ツリーの飾りつけ、手伝ってもらう。上がって」 私の後に続いて、電気石が靴を脱いで家に上がる。ちゃんと靴をそろえておくあたり、マスターのしつけはいいようだ。 「ふーん、しっかしホントに仲良しよねぇ」 「……心の友?」 「ジャイアニズム?」 「……似た者同士ね、あんたら」 どうしてそこで呆れるのだろうか。まぁ、仲がいいと言っていると思っておこう。 「まぁ、あたしたちだけじゃアレを飾るのは無理よねぇ。虎眼石ったら、馬鹿みたいに大きな木を切り倒してきてさぁ」 人間よりわずかに大きなニレの木……私たちからすればかなりの大きさのツリーが、リビングで皆を出迎える。 「……おっきい」 「でしょー。まったく、加減っていうもの覚えなさいよねー」 「黒曜石のところに持っていく。これぐらい派手な方がいい」 その言葉に、置石が目を丸くする。 「はぁ!? これを外に持ち出すって……しかも飾りつけして?」 「派手なクリスマスプレゼント」 「今すぐやめなさい」 「置石は思いやりが足りない」 「こんなもの持っていく方がどうかして……あーっ、もう電気石飾りつけしてるしっ!」 「おっきい♪」 脚立や椅子など、足場になる物を持ち出しての飾りつけ。そこには、先ほどからオリジナルの飾りを用意してくれた瑪瑙が加わっている。4人がかりならきっと作業も早い。 「わざわざありがとう」 「ううん、気にしないで。ただこのことはあまり公に……って、無理か」 「ふーん、これ瑪瑙の手作りかぁ。ほぉほぉー、マスターにはオリジナルの編み物かなぁ?」 「そ、それはその……もう、からかわないでよっ」 図星だろう、そうに違いない。 「ふさふさー」 「あまりそこにつけすぎると足りなくなる……置石、電飾のコードを電気石に近づけない」 jm0459.gif 「えー、いちおう点灯チェックしなきゃダメでしょー? それに電気石なら電気代かからないし」 「ホントは悪戯するつもりなんでしょ?」 何をするのかは分からないが、置石のことだから当然だろう。案の定、置石が舌打ちをしながら電飾を元の場所に戻す。 「でも、今年のクリスマスは虎眼石も加わるんだね。いつもよりにぎやかになりそうで楽しみだよ」 「あたしは毎年顔出してるけどねー、虎眼石ってあまり騒がしいの好きじゃないみたいで。でもホント、どうして今年は積極的なのさ?」 なぜ積極的か……きっと今までと一緒だったら、こんなことはしなかったと思う。クリスマスに興味を持ったきっかけ……。 「ぴかぴかー……んー?」 「電気石、これもお願い」 「うん」 強いて言うなら、電気石が私を描いてくれたから……かも知れない。だから、この場合電気石のおかげということになるのか。 ……プレゼント、用意しよう。今までより、たくさん。 「ねー虎眼石ー、何があったのさ?」 「……心変わり」 「はぁ? まぁ、あんたの唐突な行動は今に始まったことじゃないからいいけどさ」 「ははは。じゃあ今年はご馳走いっぱい用意してもらわないとね」 「その準備には是非ともあたし置石を」 「ぜ、全力で遠慮するよ……」 ……クリスマス、楽しみだ。 「じんぐるべーる?」
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作:プラスマイナス PM.17 30 ボード学園校庭 数時間前まで学園の生徒で溢れていた校庭も、今や常識を超えた戦場へと姿を変えていた。 仮面ライダーシキ、レンゲルと異能怪人オカルト、プテラの戦いは熾烈を極めた。 双方一歩も譲らぬ攻防で長く膠着状態が続いていたが、次第に優劣がはっきりとし始めた。 異能怪人であるオカルトとプテラは、お互いの戦闘スタイルや能力を把握している事もあり個別に戦いながらも時折見せるコンビネーションで徐々に優勢となっていた。 逆に仮面ライダーであるシキとレンゲルは、お互い全くの初対面であり足並みを揃える事が出来ずに劣勢となっていた。いや、正しく言えばレンゲルは協力しようと努力していたが、シキは全く協力する気がなかったのだ。 深緑のライダー、レンゲルは主にオカルトと対峙していたが、オカルトに憑依され操られているギャレンを傷付けぬように戦っているので、主導権をオカルトに握られっぱなしであった。 漆黒のライダー、シキは主にプテラと対峙しており飛行能力を持つプテラの空中攻撃に苦戦しつつも、持ち前の戦闘勘と能力でほぼ互角の戦いを繰り広げていた。 「あぅ!!」 ギャレンの銃撃を食らい、レンゲルは後退した。銃撃はガードしているので大きなダメージは無いが小さなダメージでも受け続ければ身体にガタがくる。 事実、レンゲルは一方的な攻撃を受け続け徐々にふらつき始めていた。序盤は隙を見てギャレンの身体からオカルトを追い出すつもりだったが、オカルトは全く隙を見せないのだ。 一瞬、隙を見つけられてもそれはオカルトのフェイクであり、そこを突けば計算された攻撃を食らう。 「はぁ…はぁ…」 (突破口が見出せない。一体どうすれば…) レンゲルは咄嗟に茂みの中に隠れギャレンの攻撃をかわした。そして茂みの中から様子を窺う。 ギャレンは茂みに銃口を向けつつも、こちらの出方を窺っている様子だ。 つまりお互いに膠着状態になったのだ。レンゲルにとっては一旦呼吸を整える良い機会だった。 (…レンゲルの力はこの程度か。特に警戒する必要はないな) オカルトは茂みに銃口を向けつつも、内心では関心を失いつつあった。 SB社とボードのライダーについては事前に調査済みだ。その性能、能力、さらに装着者の身辺に至るまで調べつくした。この街で活動するには必要な事だったからだ。 しかし状況はオカルト達の予想を超える展開を見せている。 未知のライダーに組織、得体の知れない怪物などが出没しているらしい。こちらではまだ確認できていないが、街中に張り巡らした探知結界はその存在をオカルトに知らせている。 個人的には非常に興味をそそられるが、自分を含めた異能怪人は創造主アリスの命ずるままに行動する。特に忠誠心を刷り込まれた訳でもないのに何故か全員がアリスに従う。 考えてみれば妙な話だが、それを疑問に思う者は皆無だ。特にカルテットという異能怪人は。 『ぐあぁ!!』 オカルトが考えていると、プテラがそばに吹っ飛ばされて来た。随分とやられたようだ。 見ると対峙していたシキもボロボロになっている。 これだけで両者がどれだけの死闘を繰り広げたかが見て取れる。 (やはり…問題は月宮とバックにいる一ノ宮か…) オカルトは内心分かりきった事を、と思いつつ再度認識した。 ―奴は危険だ オカルトは銃口の先をレンゲルからシキへと変える。そして迷わず引き金を引く。 「ちっ!!」 シキはボロボロの身だったが、素早く銃撃をかわし偶然にもレンゲルの隠れる茂みに飛び込んだ。 『プテラ、お前は先に退け。あとは我がやる』 『はぁ!?何言ってやがる!!オレはまだやれ…』 プテラは反論しようとするが、オカルトはそれを制止した。 『今はやれても後が出来なければ意味が無い。これは本番でもなければ練習でもない。単なる戯れだ。ここで全力を出す必要は無い』 『……ちっ!!』 オカルトの言葉にプテラは若干納得がいかない様子だったが、結局舌打ちだけするとそのまま翼を広げ飛び去った。 「ちっ!!」 茂みの中からそれを見ていたシキも何故か舌打ちをした。 無論、プテラが去ったのが原因である。 (あの単細胞なら口を簡単に滑らせたのに…不気味ヤローじゃ簡単にはいかないな) 因みに言っておくが、「不気味ヤロー」とはオカルトの事である。刹那はオカルトをそう呼んでいる。 オカルトの相手が一筋縄ではいかない事はシキも過去の戦闘から知っている。オカルトは特殊能力を駆使するタイプで、直接戦闘タイプの自分とは相性がイマイチだ。 今はどうやら他人の身体を使っているらしいが、それも射撃タイプ。やはり自分とは相性が悪い。 「まさかアイツ、こうなると分かってたのか…」 オカルトなら有り得ない事でもない。嫌な奴だ。 茂みの隙間から様子を窺うと、オカルトはこちらの出方を見ているらしい。 このまま飛び出せば狙い撃ち、かといって待ち続ければやがて銃撃で強制的に茂みから追い出されるだろう。 結局先手を取るのはオカルトだ。まったくもって不愉快な話である。 「ちっ!こうなったら…」 「あの…」 「何だ!!」 どう考えても八方塞な状況の中で話しかけられたので、シキは思わず怒鳴った。 話しかけたのはレンゲルだった。 実の所、不穏な風を読み駆けつけたが、レンゲルには現在の状況があまりよく見えていないのだ。来て分かった事は4つ。 1つめは未知の敵が現れた事。今のところ目的は不明。能力的にはオルフェノクやアンデッドと同等かそれ以上に見える。 2つめは同じく未知の仮面ライダーが出現した事。こちらも自分達の知りえないタイプの仮面ライダーである。怪人達は「月宮」と呼んでいた。 3つめはギャレンが敵の術中に嵌り、その意思と関係無く操られているという事。対峙しただけでも分かる。ギャレンの背後に見え隠れする別の存在が。 4つめはこの仮面ライダーと怪人はお互いに敵対している事。それもかなり深い因縁のある関係らしい。 「あの人は私の知り合いなんです。何とか助けたいんです」 「そんな事知るか!こっちは忙しいんだよ!!」 レンゲルの懇願もシキには届かない。というか聞く耳すら持たない。 しかしレンゲルも引かなかった。 「それなら一緒に戦いましょう!お互いの敵は同じはずです!」 「・・・・・・くそっ!」 シキは少し考えると、不満げな表情をしながらも渋々認めた。 オカルトは相変わらず銃口を茂みに向けながら、状況を静観していた。 シキとレンゲル。次はどのような手で来るのか。 そう考えていると、シキとレンゲルが同時に茂みから飛び出した。 『同時攻撃でこちらを撹乱する気か…だが!』 オカルトの標的は初めから決まっている。今後の障害となりうる者。 仮面ライダーシキ、月宮刹那だ。 オカルトは迷わず銃口をシキに向け、銃撃を放つ。 「ぐわっ!!」 シキは銃撃をまともに食らい、衝撃で吹っ飛ばされる。 しかしその間にレンゲルがオカルトに迫った。 「はあっ!!」 『ぐうっ!!』 レンゲルの一撃にオカルトは存外あっけなく吹っ飛ばされる。しかしこれは故意に攻撃を受けたのだ。 「くっ!」 レンゲルは攻撃を成功させたのに表情は曇る。やはりギャレンの身体を傷付けるのは気が進まない。 しかしシキが言うには、ギャレンを救う為にある程度のダメージは必要らしい。 「ごめんなさい、さくらさん!後でちゃんと謝ります!」 レンゲルは謝罪しながらも攻撃を続けていく。といっても致命傷になるような攻撃はしない。ある程度は防げるように手加減をしているのだ。 『貴様…月宮と組んだな。愚かな事を…』 「…?それはどういう意味ですか?」 『お前はあの女の恐ろしさを知らんのだ。橘さくらの開放を望むなら、すぐに後悔する事になるぞ』 レンゲルがオカルトの言葉に疑問を感じていると、体勢を立て直したシキが割り込んできた。そこには鬼気迫るものがヒシヒシと感じられる。 正直、レンゲルはその異常なまでの気迫に圧倒されていた。一体両者の間にはどのような因縁があるのか。 「オカルト!!お前ら一体どこまで調べた!!カンケルは今どこにいる!?」 『残念ながら、お前に教えるほどの事は分かっていない。その様子ではお前たちも大した情報は無いようだな』 「黙れ!!」 シキの拳がギャレンの顔面を捉える。まったく容赦の無い一撃。 ギャレンは口から吐血しながら豪快に吹き飛ぶ。さらに追撃の蹴りがギャレンの腹を何の迷いも無く直撃する。 『ぐはぁ!!』 ギャレンはさらに吐血しながら後退する。徐々に足元がふらつき始めた。 シキの猛攻は続き、血も涙もない非情の攻撃がギャレンに繰り出される。 「ちょ、ちょっと待ってください!!このままじゃさくらさんが!!」 「うるさい!!!!」 止めに入ったレンゲルの言葉も完全に無視しシキは攻撃を続ける。 パンチ、キック、パンチ、またパンチ…さらに強力なアッパーがギャレンの顎を確実に捉える。鮮血が宙を彩り、遂にギャレンが地に倒れる。 「『ぐ…ぁ…』」 (ダメージを受けすぎた…このままでは…憑依状態を保てん…) 大ダメージを受けた影響か、既に憑依状態にも変化が見えていた。 声もさくらとオカルトの両者のものに分かれつつあり、姿もギャレンとオカルトの姿がダブって見え始めている。 レンゲルもその変化に気付き、シキを止めようと必死になっていた。 最早言葉ではシキを止める事は出来ない。強引にでも静止しなければさくらの生命が危ない。 しかし中々うまくいかない。小柄なレンゲルに比べ長身のシキの方が体格で勝っている。それ以上に何と言ってもシキの驚くべき気迫が問題だった。 「お願いです!!もうやめて!!じゃないとさくらさんが!!」 「うるさい、離せ!!離さないとお前もぶちのめすぞ!!」 もう滅茶苦茶だった。 オカルトは憑依状態の維持が困難になり、最早立つのもやっとである。 シキはそんなオカルトを倒そうと暴れまわり、完全に暴走している。 レンゲルはそんなシキを止めようと必死となり、戦闘時よりも疲弊していた。 この状況を最初に打破したのは最悪な事にシキだった。 突然シキの身体から黒い気のような物が放たれ、その衝撃でレンゲルは吹っ飛ばされた。 「こ、これは一体!?」 驚くレンゲルをよそに、シキの殺気もピークを迎えた。それと同時に全身に纏う黒い気が、全て右足に集中する。 「ダークライト……ノワール!!」 シキが空高く跳躍する。右足がより黒く染まっていくのが見て取れる。 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして鋭い黒の一撃が、風を斬る速度でギャレンを直撃した。 「きゃあ!!」『ぐっ!!』 「さくらさん!!」 シキの強烈な蹴りをまともに食らい、遂にオカルトとギャレンは完全に分離した。しかし両者とも大ダメージは必至であり、ギャレンは大地を倒れ伏せたまま立ち上がる様子を見せず、オカルトもフラフラと幽霊の如く立ち上がった。 「ちっ!!」 そんなオカルトを見てシキが苦々しく舌打ちをする。この様子から察するに、シキはオカルトを殺すつもりだったようだ。さくらも一緒に。 シキの様子からそれを読み取ったレンゲルはすぐさまギャレンに傍に駆け寄り、シキを非難の眼差しで睨み付ける。 しかしシキはそれを意に介さず、未だオカルトに対して臨戦態勢をとり続けていた。 『・・・・・・・・・』 だが、憑依が解けたオカルトは無言を貫くとそのまま姿を消してしまった。どうやら撤退したようだ。 それと同時にシキも変身を解き、刹那の姿へと戻る。 「くそっ…また逃げたか…」 刹那は苦々しく呟くと、その場を早々に後にしようとする。 異能怪人に逃げられてしまったので、最早ここに用はない。ならばもう一度街に出てカンケルを一刻も早く探さなければ。 しかし刹那の前に同じく変身を解いた美月が立ち塞がった。その表情には困惑と非難の色が入り混じっている。 「ちょっと待ってくだ…」 「邪魔だ」 ドスッ!! 鈍い音と共に、美月は地面に膝を付く。刹那の拳が鳩尾を正確に捉えたからだ。 「ぐっ…ま、待って…」 美月は痛みに呻きつつも、刹那を止めようとするが、刹那はそれを完全に無視して足早にボード学園を後にした。 その後、美月の連絡を受けた木場夕菜が現場に駆けつけ、重傷のさくらは病院へと搬送された。 PM.18 00 町郊外 「く…そ…」 人気のない裏路地で、刹那は脇腹を押さえ苦痛に満ちた表情で悶えていた。 よく見ると、脇腹からは血が滲み出ており、黒いスーツを一部変色させていた。 実はプテラとの戦いで、プテラの鋭い爪が刹那の身体を捉えていたのだ。しかし刹那はその痛みに耐え、最後まで戦い抜いた。 カンケルに対する執念が彼女をここまでさせているのだが、ついに耐え切れず、こうして人目を避けて痛みを堪えていた。 「こんな…所で…早く…カンケルを…」 刹那は早々にこの場を後にしようと立ち上がる。しかし… 「うぐ!!」 ダメージは想像以上に大きいようだ。結果、痛みから刹那はすぐに座り込んでしまう。 その間にも傷口から出血が続いており、このままでは命に関わるかも知れない。 「はぁ…はぁ…」 徐々に意識が遠のいていく。視界がぼやけ始め、頭も回らなくなってきた。 「カン…ケル…」 ドサッ!! 刹那は最後の瞬間までカンケルの事を考えながら、ついに意識を失い地面に倒れ伏せた。 時刻不明 場所不明 仄暗い場所。 人気などまったく無く、ジメジメとした陰気な場所。 異臭が立ち込めドロドロとした水が溢れる場所。 『キシュゥゥゥ』 そこに響き渡る異形の叫び。しかし姿は見えない。 だが気配はする。一匹や二匹などではない。少なくとも数十匹はいるだろう。 『キシュゥゥゥ』 再び響く異形の叫び。滅びの使徒たちの叫び。 この存在を知る者は少ない。そして気付かない。 滅びの時が刻一刻と進み、世界が恐るべき病魔に蝕まれている事に。 真の恐怖とは、誰にも知られる事無く静かに、ゆっくりと進行していくのだと。 ←第1章第25話「友人のために/名無き者はただ傍観して……」第1章第27話「」→
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Searchin ! 声をかける人かける人、みんなどこかゆらゆらしていて奇妙だ。 知らないと言って脅えるように逃げたり、 逆に掴みかかってきたり、 まるっきり無視したりする。 そして答えた誰一人として『冬』を知らなかった。 自分さえ『冬』が何者かわからないのだから仕方ないのかもしれない。 でも、いや、見つけなくちゃならないんだから頑張らないと。 ぽつんと小奇麗な家を見つけた。聞き込みのターゲットに決定。 塗装のはげたドアをノックノック、出てきた美人にとりあえず口許は笑顔を。 「あのうお尋ねしても宜しいでしょうか」「宗教勧誘ならお断りしますけど」 「ちがいますちがいます、幻は人探しをしてるだけです」「はぁ」 美人は目をぱちくりした。妙なものを見るような目で人を見る。 「鉄、お客さんですか」 奥にミイラ男が二人見える。青いのと黒いの。あと隅のほうにもう一人黒いの。 「あーうん、お客さん上がります?」 「いえ、お尋ねしたいだけなので結構です」 営業スマイルはまだキープ中。しかしこれからがやっと本題に入るところ。 「『冬』という人をご存知ありませんか?」「しらない…よなぁ?」 美人は部屋を振り返った。青ミイラが首を振る。隅からはか細い声で返事があった。 黒ミイラはドアの向こうの、幻の背後を見ていたけど、しらないと言った。 ごめんなさいという美人に礼を言う。いつまでこんな問答を繰り返せばいいのか。 「そうでしたか、ありがとうございますお邪魔しました」 黒ミイラが声を上げた。 「鉄、逃げてください!」 「ん? おあ!?」 美人が避けるのが遅れたら恐らく幻ごとぶっとばされただろうけれど、幻も避けたので損害は門柱だけだった。 爪の腕が頭上をびゅんっと薙ぎ払う。 背後には舌打ちをする影、背中に骨のツバサが生えている。 「んだよ、お前」「……そっちが何、幻に何の用だ」 「お前見てるとボッコボコにしたくなる」「そんな物騒な」 言うか言わないかのうちにもう一度頭上で風が鳴いた。 美人は奥へ引っ込んで台風でも来た時のように皆をあつめている。 これ以上他人の家をどうこうするのも申し訳ないので、大きく飛んで家から離れた。 「…殺したくなる何だこれマジでイライラするほんとお前なんなんだよ」「幻のセリフだ、そんなこと」 骨ドラゴンは加速して距離を詰めてくる。頭を庇ったら左腕が逝った。 血が遠慮なくぶしゃっとかそんな音で出てきて、視界に赤くまだらが出来た。 痛くはないけど動かせないのがいやだ。 腕を捕まれたまま電流を流す。ドラゴンは一瞬で手を引いた。 「いて、人間じゃないのかよ」「人間だよ、幻は…でも幻は人間じゃない」 左腕が持ち上がらない。でも、一本あれば電撃を放つには十二分。 「先を急ぐんだ」 球電がぎゅんっと飛んだ。ドラゴンにブチあたると綺麗に広がった。 「"でんじほう"!?」 ばりばりぱりぱりと綺麗に青い火花がはじけて、ドラゴンは氷付けになったように固まった。 言葉も吼えられなくなってぱくぱく金魚を演っている滑稽な姿に敬礼。 「アデュー、哀れなドラゴンゾンビ」 幻は地面を華麗に蹴った。探し続けなくっちゃあ、ならないのだ。 左腕はぶらぶらするけれど、まあ、痛くないしそのうち治るだろう。 まだまだ先は遠い見通し、しかしこれより開幕也。 一方で嵐の去った鉄宅。 「あの男、二つにぶれて見えましたが」 冥は鉄に問いかける。 「…ふつーの男だったぞ? 目は包帯でぐるぐるだったけど」 「包帯?」 ますます不可解な疑問が増えていく。 「…翼、だいじょうぶかなあ」 飴の呟きも紅の脅えた呼吸音も。それ以外はぜんぶぜんぶ静寂できれい。 (青い、美しい目をしていた気がしたけれど) 疑問も静寂で、問いかけすら存在しないから答えも静寂だった。 他方どことも知れないまっくらくらがり路地の奥。 振り下ろした鉄槌の断末魔に縋りついて、ゆらり延びた影が立っていた。 「まほろはどこにいるのかなあ」 その答えは何れ、明白に。