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作 S・F (7jLusqrY) 場所 分家・SSスレ SS 001-006 1 SS 001-006 1あとがき SS 001-006 2 SS 001-006 2あとがき
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3月16日。 現在確実なのは、この時空転移によって地球からこの惑星へとやってきたのが北海道、本州、四国、九州、沖縄と、その他日本が領有している島嶼であるという事だった。 日本政府が領有権を主張している北方領土と竹島もその中に含まれていたため、竹島は駐留している韓国警察及び、 震災当時に付近を航行中だった海洋警察庁の警備艦が存在を確認されている。 北方領土もロシアの住人と、やはりロシアの沿岸警備隊がそのまま付いてきている状態となっていた。 彼らは今の所、本国と切り離された状態であることは認識しているが、今なお日本に対してそれぞれの領有権を主張している。 日本政府は彼らに対し、ひとまず意思を尊重、配慮して現状を維持しひとまずこの問題を置く事を決定。 そっちに関わっている暇が無かったし、彼らが意地を張れるのもどうせ時間の問題である。 時空転移した先の世界は地球によく似ている。 ロシア・朝鮮半島・中国ににた大陸東部の地形は既に確認された通りであり、 北海道宗谷岬の沖には樺太に相当するらしき島影が見え、日本の西端である与那国島の向こうには台湾のような島がある だがひとつ、不明な点があった。 ここまで地球に酷似した惑星なら、元々この世界には日本列島は無かったのか? それとも時空転移の際にそっくりそのまま、こちらの列島が我々の元居た地球に交換の形で転移してしまったのか? そこだけは、まだこの時点では判明していなかった。 既に日本政府は震災以後の異常事態に対して情報を完全に公開し、日本列島が地球とは異なる惑星に時空転移したこと、 そして、世界から孤立したために資源や食糧の輸入がストップし危機的状態に陥った事、それを踏まえ、 当面の危機を乗り越える間は経済を統制することなどを宣言していた。 しかし、国民は宣言をしたものの何の事態の進展もないままの政府に対し不信感を強めていき、野党も表面上は この危機的状況に対して震災前の対立姿勢を一転、与野党は一致して危機状況対応対応特措法の早期成立に合意したものの、具体的な状況の解決策には激しく対立を続けていた。 断たれた資源や食糧をどこから調達するのか、という事については、やはり現地で手に入れるほかに道は無い。 この惑星のロシア・韓国・中国に相当する地域にもどうやら人が居住し、なんらかの国家組織が存在するというのは推測できたが、 それらとどうやって接触を図り、国交を結んで資源や食糧を買い付けるのかには様々な議論が飛んだ。 そもそも、この惑星、この世界の住人達は他者に対して友好的な存在なのだろうか? 突然出現した日本国を警戒し、攻撃を仕掛けてこないとは言い切れないだろうか? 彼らの文明水準は、木造帆船などが確認されていることから高くは無いのではないか? もし国交を結ぶ事ができたとして、資源や食糧は必要な量を調達できるのか? また、日本まで輸送ができるのか? 既に国内の一部では不安から明日にも全ての資源がなくなるかのようなデマが飛び交い、個人・家庭ごとに物資の買占め・買い置きや値上がりなどが始まっていたが、それでも暴動や略奪に発展しないのは流石は国民性と言えた。 ネットは回線が重すぎて、その大部分が静かだった。 それまで国民同士を繋いでいたソーシャルコミュニティなどが半分以上機能しなくなり、新たな国内サーバーが設置されるなど改善に努めていたが、震災前のネット状態を取り戻すのはまだ難しかった。 一部の国民は日本が資源と食糧を手に入れるためにはこの世界の海外に進出しなければならない事を知っていたし、TVに出演する専門家たちもその必要性を強く説いた。 その一方で、それは武力侵略に繋がり憲法違反になる可能性や、自衛隊が戦前の軍部の暴走を踏襲することを警戒して反対する声も あがり、TVの報道番組内でも専門家同士が激しい議論に発展することも度々あった それを見た視聴者から、ネット上の掲示板に議論や質問が飛び火する事もあり急激なアクセス数の増加により折角新設したサーバーが度々落ちると言った事も幾つか発生した。 しかし、それら掲示板の中の特定のごく一部は、まるでこういう事を予期していたかのように、妙に落ち着いていた。 「まさかリアルでF世界への転移が起こると思って居なかった」 「まだF世界と決まった訳じゃないだろ」 「宇宙の何処かの別の惑星説があるけどそれにしては大陸の形が地球と似すぎ そこでパラレルワールド説を推す エルフがいるかは知らんけど」 「帆走飛行船がある程度にはファンタジーな世界である事は確実。 なんにせよこっちの世界の生物とか国家とか産業の情報がまだ何にも無い 早く調査しろよ」 「衛星写真で人が住んでそうな所とかわからんの?」 「わかっても文明が中世レベルだと都市の規模が小さすぎて判りにくい 観測機飛ばして航空写真が欲しい所」 「竹島一緒に召喚されてて韓国ザマァw あいつら水や食糧の補給無くなってどうやって生きるのw」 「そういや在日外国人どうすんだろ ニュースとかで何にも言われないけど」 「言ってはなんだが、こういう事がリアルに起こって一気に活気を取り戻したな 懐かしい名前が一杯だ、過去の住人や職人が殆ど戻ってきてるんじゃないか」 「それにしても内閣の対応が悪すぎる 俺らはこの先の展開がある程度予見というか予習できてるけど、首相や官房長官は危機感とか現実感とか無いんじゃないか?」 「現実に起こってみると全く笑えない しかも今の与党とか少しも期待できない」 「だれか首相官邸にここの作品や議論のログと、『ゲート』の1~3巻を送ってやれよ」 「やっぱ自衛隊は中世的なこっちの世界の軍と戦うことになるんだろうか? 海外進出するにしても、向こうが攻めてくるにしても」 「日本が転移したんじゃなくて、こっちの世界の連中が日本を呼んだってのはあるかもな スレタイ通りに そしたらF世界軍との戦争はありうる」 「何の目的で呼んだのかによる。 勇者様呼ぶつもりで日本を召喚しちゃったのかもしれないし、魔王と戦うかもしれんぞ」 「とりあえず地本に連絡してもし召集があったら応じる旨を伝えてきた。 予備自に出番があるか知らんけど」 「営内から書き込んでるが、災害派遣に出ている連中の他は『待機中』だ。 外出許可が当分下りない身の上だよ。 あと、海岸線とか警戒しなきゃいけないと思うんだが海保と警察任せなのが歯がゆい。 日本の警察じゃ沿岸監視に手が足りないだろう」 「今から自衛隊入って間に合うかな…」 「問題はだ。 本スレでも分家でもさんざん言われてきた事だけど、このままだと日本は資源を得る前に崩壊する。 民間への燃料供給規制が始まって、海外の輸出先も無くなった工場とかが停止して石油や電気の消費量を抑えようとしてるけど 国会中継とかの政治情勢見てるとSSみたいに転移してすぐ、資源をえるために海外進出ってすんなり決まりそうにない」 「食糧は来年以降持たないな。 石油は下手すると半年。 こっちの大陸で原油が手に入っても、石油にして日本まで持ってこれるようになるには相当な時間が要る。 石油採掘施設と精製施設を急ピッチで建設して、港湾整備…」 「マンパワーをつぎ込みまくって強引に突貫工事……結局時間が無さすぎるか」 「地球と地形が同じなら、地下資源の埋蔵地域はほぼ同じと考えられる。 調査や試掘をすっ飛ばせるのは救いだな」 「原発止まってるのが痛い。 夏には電力不足で本気で死人が出るぞ」 「風力と太陽光発電を増設しまくるって案が出てる。 正直足りな過ぎるけど。 あと人造石油と石油藻のプラントを大量に建設する動きもある。 なんだかんだ省庁とか企業はやれる事に動き始めてるな」 「この際数万人規模の犠牲者は避けられないべ。 あとはどのようにして、被害や犠牲を少なくして日本をギリギリ生き延びさせる所まで持っていくか。 既に10人が死ぬのが確実で、残り人数は30人、救助が遅れると一人ずつ死んで行くとしても助ける行動のスタートが早ければ最終的な被害は少なくなる」 「でも俺らがこうして議論したって現実的にできることって何にもなくね」 「…やりようによっては、あるかも知れない」 「何があるってんだよ?」 「情報戦…? 国内向けの」 ネットの片隅で、空想ごとが現実になったとき、同様に空想ごとを現実化しようと動き始めた連中が居た。 3月17日。 福岡市内の繁華街の薄暗い路地裏を、外套を纏いフードを目深に被った不審な人間たちが疾走していた。 既に節電計画が段階的に始まり、店舗の半数以上が営業を停止し明かりの極端に少なくなった繁華街は表通りすら暗く、裏通りはいつにも増して暗い。 先頭の一人が水溜りを飛び越え、続く一人はそれを踏み込んでパシャという音と水しぶきを上げ、後尾の一人は脇に避けた。 彼らの後ろから、二人組みの警察官が「止まれ! 止まりなさい!」と叫びながら追って来る。 震災及び転移以後、全国各地で治安が悪化の傾向を見せ、特に在日外国人の一部による窃盗などが多発しているために県警察は特に警邏行動に力を入れていた。 そんな中、まだ気温の低い3月とはいえ頭から足元までをすっぽりと覆う外套に身を包んだ怪しい三人組を見かけたため、職務質問をしようと近づいて声を掛けた所、彼らが急に逃げ出したため、追いかけることになったのだ。 若い巡査とベテランの巡査長の二人は全力で彼らを追う。 路地の先で道はT字路に分かれており、追われる三人組は一瞬だけ立ち止まってお互いに視線を合わせると、示し合わせたかのように1人と2人に別れて別々の方向へと走った。 2人組みは真っ直ぐ、1人の方は横道へ。 それを見てベテランの巡査長は無線機を使い、彼らが二手に分かれたことを付近にて応援に駆けつけているだろう別組の同僚に伝え、自分たちは2人の方を追うべくそのまま真っ直ぐの道を選んだ。 警察官のペアがT字路を通り過ぎた時、横道に逃げていったはずの外套を被った1人が戻ってきて外套を跳ね上げて棒状の物体を警察官たちの背中へと向ける。 後ろを走っていた若い方の巡査がそれに気づいて振り返るよりも早く、棒の先端…卵型の金属物体が取り付けられたそこから青い光が迸り、光が稲妻へと変化して若い巡査を襲った。 後輩でもある相棒の悲鳴に、ベテランの巡査は振り返る。 若い巡査の体からは肉の焼け焦げる異臭と共に煙が立ち上り、衣服や肌が黒く焦げた状態で、数秒の間彼は立ち尽くしていたものの、やがてゆっくりと倒れて力を失った。 ベテランの巡査の後ろでも足音がし、逃げていた2人の不審者が戻ってきた事を彼は知った。 そして、その手に小ぶりの、暴力団関係者が所持しているドスにも似た刀剣が握られているのも。 無線機で応援を……いや、拳銃を抜き、威嚇、そうじゃない発砲……その思考の一瞬の刹那、巡査は飛び込んできた凶漢の突き出す刃を腹部に受け、何度も抉るように突き上げられて絶命した。 警察官2名を殺害した不審者たちは、お互いに汗の流れ強張る顔を見合わせながら、日本語にどこか似た部分のある言語で言葉を交わした。 「タイカでも無い。 ウルシアでも無い。 都市の様子はまるで第3期文明の遺跡を蘇らせたかのよう。 民の話す言葉、髪や目、肌の特徴は、しいて言うならば我らもしくはヤウフに似ている。 一体こいつらは何者で、どこの国から来た人間なのだ」 「少なくとも、わずかな間に本国を侵略し、これだけ大きな町を作り上げられる技術と国力を持った恐るべき相手だというのは確実です」 「わからぬ。 だが、考えなくてもいい。 我々の任務は、見たものをありのままに報告するだけでいい」 この日、福岡県警は2名の殉職者を出し、容疑者と思われる不審な三人組が緊急手配されたが、その行方はようとして知れなかった。 また、この三人組以外にも同様の格好をした不審な複数の人物が目撃され、市民や警察官による通報や目撃報告が相次いだ。 しかし、それらが報道され警察が一般市民に不審者への警戒を呼びかける頃には、彼らは来た時と同様、数隻の小船にて沖合いの船へと脱出していた後だったのである。 おまけ 直前までちょっと迷った物 251の会話、現地語版 「タイカであなー ウルシアであなー みやこんさまばまあででーさんきぶんめいばいづかをふっかあせたさま やっこばはなすもんば、へえこやまあこ、はだばふうば、よってゆうならわがへだんばヤウフのよった いっで、こんらはなにもんで、どこんくにがらばぎだやっこだのよ」 「すらずんば、しいたらまんにほんもをおかし、こんばがったらまじをたてんばわざどぢからばもった、こわがやっこだばいうんはきまりだべさ」 「げえさん んだも、だあもつかんでえが わがらのかせぐば、みだもんをそんもんにおりつだわずだけでえが」 …そのまんまだと何を話してるのかさっぱりだし、 ()付きで日本語訳を併記しようと思ったけど、それだったら日本語訳そのままでいいんじゃないかと思って 結局投下では 251のようにした
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732 :303 ◆CFYEo93rhU:2013/12/13(金) 23 10 55 ID txgvgQ0.0 これだけ待たせておいて投下量これだけかよ! というお叱りは覚悟の上ですが、今回の投下は以上です。 前回から投下間隔が空いているので、実は投下済みの部分を再投下してる気がしないでもない。 また本編中に出てきていない北部戦線が主攻なのにポゼイユ付近の描写で右往左往しているのは、単純に私の技量不足です。 667-680 銃(武器)自体の性能向上もそうですが、ドクトリン面での改良も一つの方法論と考えています。 将兵の練度次第で、既存の武器でも戦闘効率は高まるでしょうから。 リンド王国製ライフルドマスケット等は、あくまで習作というか“ライフル工房(ライフル銃身工場)”の生産ライン構築というのが第一義です。 ライフルといっても後装式のドライゼ銃かスナイドル銃くらいのレベルにないと、そこまで大幅な戦力強化にはならないでしょうが、大砲と同程度の 射程が確保できるライフル銃があれば、局所的には敵砲兵を無力化する事も可能なので、習作といっても全く実戦で使い物にならない訳でも無いでしょうし。 737 :303 ◆CFYEo93rhU:2013/12/24(火) 21 31 44 ID /cUjTbSQ0 NORADによる例の追跡劇がクライマックスの時期ですね。 子供の頃は、夜の数時間の間にプレゼントを配り終えるのは無理だろうと思っていましたが、 地球の自転と日付変更線があるので日本はとっくに昼間でもまだ夜の地域があって間に合う訳だ。 大人になってから知って驚いたのは、トナカイは架空の動物だったという事です。 700 243さん、投下乙の挨拶が遅くなってすみません。 「ふははは!どうだ!これで明るくなったろう!」 「どうだ、明くなつたろう」というフレーズには哀愁が……。 734-736 報告ありがとうございます。 念の為、私303と件の作者様は別人です。 744 :303 ◆CFYEo93rhU:2014/01/16(木) 21 06 58 ID /cUjTbSQ0 あけましておめでとうございます。 新年最初の投稿として、外伝的掌編を投下します。 739 空を飛ぶ鹿はいたんですか!? 空を飛ぶ竜もいますか!?(錯乱) 皇国召喚版の飛竜は最大速度120km/hですが、トナカイは余裕でマッハのようですね。鹿に負ける竜。 設定を考えた時に、実在する(した)鳥や過去に実在した恐竜や翼竜を参考に、飛行速度は最大限 盛ったつもりでしたが、そうかトナカイを参考にすればファンタジーっぽかったんだなぁ(遠い目) 740-743 “自衛隊がF世界に~”系の作品はここ2、3年の間に書籍化(小説、漫画化)されたものがあり、 一部ではアニメ化希望の声もあるようですから、ニッチな業界ではあるものの需要はあると思っています。 戦記小説や歴史関連の書籍は、だいたいの書店の片隅に置いてありますし、大型書店やアニメ専門店だと 萌え系軍事書籍もありますから、私のようなライトなミリオタが生まれやすい土壌は整っている感じですね。 ここは皇軍スレなので、萌え×皇軍の話として『艦娘』の畝傍ちゃん(皇国召喚版)とか妄想する303です。
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西暦2021年2月16日 18:20 ゴルソン大陸 日本国西方管理地域 ゴルシアの街南東8km地点 「なんだこれは?」 その異常さから調査終了までは発見当時を維持されている死体たちを見つつ佐藤は口を開いた。 ゾンビや身の毛もよだつ化け物、もちろん通常の死体も見慣れている彼にとってもなお、目の前の光景は異常だった。 親が子を、子を親が、とは20世紀末から21世紀初頭の事件でよく耳にしたが、それを一つの村レベルで、というのは聞いたことがない。 「生存者はありません、全員が互いに殺しあって死亡したようです」 集落の中を調べていた二曹が報告する。 火災のおかげで発見できたこの小さな集落は、自衛隊の製作した地図に記載されていないものだった。 しかし、そこにあったのは恐らく数時間前までは生存していたであろう人間たちの残骸だけである。 「ですが、これは」 「わかっている、あそこを見てみろ」 佐藤が指差した先には、およそ10歳前後の少女数名によって討ち取られた老人の死体が転がっている。 老人の持つショートソードによって反撃を受けた少女たちは、その時の負傷が原因で失血死したらしい。 対して少年たちは、別の大人によって攻撃を受け、相打ちとなったようだ。 その隣では、なべや包丁を持った母親たちの集団が、激烈な白兵戦の末に全滅したらしい姿がある。 「この村でアニメとゲームとインターネットが流行っていたのが原因だな」 「きっと漫画も流行っていたんでしょうね、それでどうしますか?」 佐藤の呟きに適当に返しつつ二曹は尋ねた。 このような異常な状況は全く想定されていない。 尋ねられた佐藤は周囲を見回した。 ゾンビ化されては困るため、死体の焼却は決まっている。 だが、それだけではこの異常な状況を放置することになる。 魔法的なものが原因だったら仕方がないが、まずは違う原因から探るか。 「食料と水のサンプルを取れ、薬草の類もあればそれも。 死体は全て一箇所に集めて焼却しろ。一度町に戻り、その後に再度調査とする」 「死体を焼いてしまってよろしいので?」 「あえてゾンビを出現させる必要もないだろう。 体組織のサンプルをとりたいところだが、我々では何をどうしたらよいのかわからん。 直ぐにかかれ」 直ちに作業が開始された。 彼らは焼失していない全家屋からサンプルになりそうなものを回収し、それをできる限りの方法で密閉した。 その間にも死体は集められ、弔いの言葉と共に焼却された。 「直ぐに出発する、周辺警戒を怠るな」 一通りやるべき事をやった彼らは、逃げ出すように村を後にした。 「そうです、明らかに異常な事態です」 無線機へ報告する二曹を後ろから見つつ、佐藤は先ほどの情景を思い出した。 大人も子供も、老人までも、誰もが互いに殺しあう状態。 一体何をすればそのような事が起こりえるのだろうか? ただ殺しあったわけではない。 彼は死体たちの表情を思い出した。 笑うという表現が正しく思えないほどに、誰もの口が裂けんばかりに開かれていた。 「報告終わりました、街のほうでは異常はないようです」 通信を終えた二曹が報告する。 「よろしい、とりあえず原因が特定されるまでの期間、基地内の人間は浄水器を通した水と本土から持ち込んだ糧食以外の摂取を禁止しよう」 「水の中に何か怪しげなウイルスでも?」 「それはわからんが、違ったら勿体無いで済むだけの話だ。 俺の部下たちが笑みを浮かべて殺しあう可能性は最低限に抑えたい」 「了解しました、徹底させましょう」 西暦2021年2月16日 20:15 ゴルソン大陸 陸上自衛隊大陸派遣隊第一基地 第一会議室 「困りますねぇ、こういうものを持ち込まれますと」 会議卓上に置かれた白い粉末を眺めつつ外務省の鈴木は言った。 大陸で続発している集団暴走事件、その原因を探るべく情報本部と共同で調査を行っていた彼に入った報告は、実に不愉快なものであった。 「ええと『狂王の笑み』でしたっけ?」 書類を確認しつつ目の前に置かれた物質の名前を読む。 それは遥かな昔、放蕩の限りを尽くした独裁者が作らせた麻薬だった。 使用した者の思考を研ぎ澄まし、感情を豊かにし、無尽蔵の力を与えるという完璧な秘薬である。 「全く、よくもまあ下劣な作戦を思いつくものです」 呆れたように言い放った彼の前には、捕縛されたエルフ第三氏族の女性三名がいた。 全員が縄で縛られ、手錠を掛けられ、猿轡を噛まされた上に目隠しをされている。 「常用者は支離滅裂で攻撃的な思考をするようになり、それでいて何もかもが楽しくなる。 筋肉を傷つける程の怪力を振り回し、周囲にいる人間全てが倒すべき敵に見えるようになる」 鈴木の目は冷たくなっていく。 「それを、こともあろうに民間人居住区の水源に散布するとはね。 ますますもって生かしておくわけにはいかない存在ですね、あなた方は」 彼は後ろに控えた情報本部の要員たちに合図した。 「必要な手段を取って情報を収集してください。 その後の処理はお任せします」 彼の合図を受けて男たちは無言でエルフたちへ歩み寄った。 公式には、彼女たちはこの時に死亡した事になる。 「鈴木さん、これからどうするんですか?」 いつぞやの派手な格好をした彼の部下が尋ねる。 廊下を歩く彼は、いつの間にか東洋人的な笑みを浮かべる標準的官僚に戻っている。 「井戸の中に放り込んでおけばOKなんていうトンでもない麻薬の撲滅ですよ。 まあ、実働するのは自衛隊になりますがね。 外交ルートから圧力を掛けようにも、この大陸にはわが国以外の国家なんてありませんから」 「麻薬、この世界にもあるんですね」 「それはまあ、文明社会があり、薬学が存在していればありえない話じゃないでしょう?」 彼の言葉を聴いた部下は、暫し考え込んでいる。 「室長」 「なんだ?」 いつになく改まった声音で声を掛けた部下に、彼は真面目な声音で答えた。 「あれ、利用できませんかね?」 「利用、というと?」 真面目なままの声音で返されたことに部下は安堵の笑みを浮かべる。 「麻薬を使って敵国を足元から破壊ですよ! 少ない労力で最大の効果ってやつです。 うまく浸透させれば敵国軍を内部から瓦解させることもできますし、外貨の獲得にもきっと役立ちます!」 笑顔で恐ろしい事を言い放つものだ。 部下の顔を見つつ彼はそう思った。 「最低でも八つの集落で散布されたという事は、原材料がこの大陸でも十分供給できるに違いありません。 さっきのエルフたちを締め上げて早急な確保が必要です!」 部下の女性は、相変わらずの笑みのままそう言い放った。 西暦2021年2月16日 20:18 ゴルソン大陸 陸上自衛隊大陸派遣隊第一基地 ヘリポート 部下の女性の提案を聞きつつ、鈴木はヘリポートへと到着した。 周囲では完全武装のまま警戒に当たる警務隊員の姿が点在している。 作戦行動中は、いかなる場所にあろうとも警戒を怠ってはならない。 これは大陸へ派遣された自衛官たちの共通認識だった。 「大変興味深い提案ではありますが、却下ですね」 鈴木は真面目な表情を消し、東洋人的笑みで答えた。 「私の部下ともあろう人間が、高々数年程度の短い期間の利益しか見ることができないとは。 嘆かわしいを通り越して、私は悲しいですよ」 わざとらしく目頭を押さえ、首を振る。 「いいですか?我が国は、誇り高い勝利だけが許されるのです。 もちろん、圧倒的な武力を背景にした強圧的な外交もですけれども。 麻薬王、などという称号は、世界の覇者を目指す我が国には相応しくありません」 「ですが!」 部下の女性は食い下がった。 「君も外務省の人間なのですから、5年10年と近い未来を見るのではなく、50年100年先を見て物事を考えなさい」 「もちろん未来を見据えての話です。 海上自衛隊の簡易戦闘艦拡張による通商破壊、航空自衛隊では戦略爆撃隊の編成とそれによる国土の破壊。 自衛隊が想定しているものは、確かに大きな効果があるという認識は私も持っています」 「それでいて、どうして麻薬をばら撒こうと?」 改めて部下の提案に興味を覚えた鈴木は、再度真面目な表情を浮かべた。 「援護射撃ですよ」 「援護射撃?」 自分の言葉に不思議そうに聞き返した鈴木に、部下の女性は笑顔で答えた。 「自衛隊の軍備拡張計画が終了し、全面戦争に突入すれば、必ず我が国は勝利するでしょう。 私はそれについて何の疑いも持っていません。 しかし、WW2型艦艇の大艦隊を建造し、戦略爆撃機をどんなに揃えても、最後は銃を持った自衛隊員が皇帝の前まで行く必要が出てきます。 その時に備え、敵国を内部から破壊するという今からできる援護射撃です」 「未来の世界大戦を見据えてならば、その案は非常に魅力的でしょうね。 しかし、さらにその先を見た時にはどうでしょうか? 我々は、自分たちのばら撒いた麻薬と、そして麻薬をばら撒いたという事実と戦わなくてはなりません」 そこまで未来の事を考えてどうすると反論しようとした部下を、鈴木はジェスチャーだけで押さえつけた。 「私たちは、50年100年先の子孫たちに謝罪や賠償をさせるわけにはいかないのです」 彼の言葉に、部下は黙らなかった。 「そんな事、我々が軍事的に圧倒的な存在となれば気にする必要などなくなるではないですか?」 「それでも、人道的に胸を晴れない事をすれば、子孫たちに負い目を負わせてしまう。 我々がやって良いのは、我々の世代で清算できる程度の悪行までです。 申し訳ありませんが、麻薬王になる夢は捨ててください」 最後の一行を断ち切るような口調で言い放つと、鈴木はヘリポートの方を向いた。 彼らを運ぶための輸送ヘリコプターは、その輪郭が視覚できる距離まで接近していた。 西暦2021年2月20日 23:45 日本本土 東京都千代田区外神田某所 秋葉の原事務販売5F 「予算いったねー」 真夜中だと言うのに全員が揃っている事務所の中で、今年49歳になるこの会社の社長は、朗らかな笑みを浮かべて言った。 鉛筆からサーバーまで、事務に関連する様々な物を取り扱うこの会社は、大陸でのK級販売品貿易に参加し、大きな利益を得ていた。 K級販売品とは、普通に販売しても問題がない物品の事を指している。 例えばコピー用紙やボールペンが該当する。 リバースエンジニアリングのしようがない、あるいは行ったとしても意味を成さない物品が指定されている。 日本国内では個人でも一山いくらで購入できるありふれた物だが、中世程度の技術力しか持たないこの世界ではそれらは金貨をいくら積んでも惜しくない夢の商品になる。 この世界に来てある程度時間のたった日本国は、専売制に戻った塩はともかくとして、民間企業の生き残りを図るためにそれらの物品の輸出を行っているのだ。 ある程度以上の供給を行えば価格は低下するのが当然であったが、救国防衛会議は諸外国に対しての談合には一切の制限を行わなかった。 日本円に換算して1円でも多く、外貨を獲得する必要があったからだ。 「来月の臨時ボーナス、期待していますよ」 彼と歳が一つしか違わない課長がコーヒー片手に言う。 安価な外国製品の供給が途絶えた時には倒産を覚悟した彼らだったが、その心配は必要なくなった。 そもそもが、事務用品という物は常に需要が存在する。 それは、日本列島が別世界に召喚されるという異常事態であっても例外ではない。 外国が消滅しても、官公庁も民間企業も組織として成り立っているうちは常に消耗品を使用し続ける。 確かに予算の関係から高額な電子機器の売り上げは激減したが、継続しての売り上げは立つのだ。 そうして細々と生き延びようとしていた時に政府から来た海外輸出の話。 その内容は、驚くべきことに日用品と金を交換するという夢の様な話だった。 他の会社と共にそこへ参入して半年。 国内の金の換金レートが下落した事から利益は減った。 しかし、レートが下がったとは言っても金である。 以前に比べれば多額の現金が入るようになった。 結果として、従業員規模60人のこの会社は臨時ボーナスを期待できる状況となる。 「はいーお水お待たせしました!」 既に自分だけ飲んだのだろう、口元を濡らした23歳の女性社員が、水道水を満載したボトルを持って登場する。 「じゃあ乾杯しよう!」 社長が叫ぶと同時に、このフロアにいた全員がコップを持って殺到する。 ボトルの中身を分配し、社長が音頭を取って乾杯する。 一気に飲み干し、彼らは直ぐに仕事へ戻った。 何時になっても疲労を覚えない、どんなに働いても脳が冴え渡る現状を好ましいと考えつつ。 同様の光景は、このビル全てで見られた。 他のフロアにテナントとして入っている企業でも、どういうわけだか水道水が一番人気となっていたのだ。
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11 名前:魔術師1 (zbg2XOTI) 投稿日:2004/04/22(木) 18 44 [ .x0B7VLM ] 最近仕事とかであまり時間も無いので少しづつ投下。 世界観や状況設定などは元1だおー氏他のコテ諸氏本スレで議論された内容をかなり参考にしています。 話を作る上でかなり調度よかったので。 大陸の東部を支配する『帝国』が枯渇する魔力資源問題を解決するために、魔力の消費されていない異世界から環状列島を実験的に召喚したのは今から20年前。 召喚が行なわれた直後、召喚された列島を領有していた国家、『日本』は元の世界、諸外国との連絡や資源・食料輸入を絶たれ経済危機に瀕したこの状況を打開するため、大陸に進出し資源や食料を求める方針にでた。 当初は『帝国』との交渉による平和的解決が叫ばれたが、『帝国』側が強硬的態度に出たため交渉は決裂。 最初の接触の時点での、不幸な軍事的衝突の経緯も加わり、両国は全面戦争に突入する事になる。 日本側は、『帝国』の異質な魔法技術や原始的白兵戦に苦しめられたものの、高度な科学技術と近代兵器の火力により、わずか数ヶ月で『帝国』領土の3分の2を制圧。 『帝国』内部の分裂・反乱も加わり開戦より1年経たずして『帝国』は崩壊した。 その後、大陸奥に逃れた帝国残党の抵抗は続いたが、日本は大陸東部の広大な肥沃な領土を手に入れ、これにより資源と食糧の問題は一応の解決を見る。 日本は占領した領土をいくつかの殖民領と、土着の異世界生物種の自治領に区分し、日本国領土として統治下に入れた。 だが、この戦争により自衛隊員に数千人の殉職者が、そして一時的な資源と食糧不足による民間人に数万人の餓死、凍死者がでたことも明記しておく。 12 名前:魔術師1 (zbg2XOTI) 投稿日:2004/04/28(水) 23 53 [ WRJfIr7s ] 植民地領や自治領においての異世界種族の扱いは、日本国民となった以上は一応形式上の人権は保障された。 しかし、日本人や、元『帝国領民』の人間種に比べれば明らかに差別を受けている現実があった。 資源と食料を求め、それを搾取するために進出してきた日本人からは、「異世界の、人間とは異なる異種知性体」としての恐れと嫌悪、元『帝国領民』からは、帝国支配時代から続く人間種選民思想ゆえの蔑視。 しかしそれでも、日本本土に移住した異世界種族に比べれば随分と豊かで穏やかな生活水準といえた。 『帝国』との戦争が中期ごろ、日本に亡命を求めてきた異世界種族の家族数世帯がいた。 『帝国』に迫害され、奴隷扱いされている獣人族の、人狼族と呼ばれる氏族だった。 彼らは、自衛隊が占領した『帝国』領地の領民・奴隷を解放し人権を保障しているのを聞きつけ、難民として保護を求めに来た。 当初日本政府はこれを受け入れ、その後これをきっかけに獣人を始めとした『帝国』に迫害を受けている異世界種族が次々と流入する事になる。 最初は表面上穏やかにこれを受け入れてきた政府だったが、亡命希望者が増えるに連れ、人間とは異質の文化と、人間より優れた身体能力や特殊能力を持つ異世界種族に危機感を覚え始めた。 流入してきた彼らが、もし日本国内で犯罪でも起こそうものなら手が付けられなくなる… 人類が始めて接触した、知性を持つ異種族。 しかも、人間以上の能力を持っている。 政府は、そして国民は彼らに恐れと疑いを抱いた。 すぐに、彼らが国内で犯罪や破壊活動などを行なわないよう、対策が考えられた。 検疫の強化。 入国審査の条件の厳格化。 入国する異種族に対する、能力の封印措置。 そして、一般市民との隔離。 交戦中の『帝国』の破壊工作員の潜入を防ぐ対策と同時進行で、それは行なわれた。 結局、日本国に亡命・移住を希望する異世界種族はその危険度の分類に応じて占領地での入国審査、そして国内での隔離区域での審査を通った後、 彼らの能力を抑制する魔力拘束具をつけた上で入国が許可される事になった。 13 名前:魔術師1 (zbg2XOTI) 投稿日:2004/04/29(木) 00 10 [ WRJfIr7s ] 異世界種族が国内で姿を見られる事が多くなってから間もなく、それは起こった。 原因は、異種族、未知のモノに対する怖れ、そして、政府の対応の仕方とメディアがそれを煽った事、そしてさらにインターネット上での様々な情報や憶測が飛び交い、イメージだけが先行した事による物だった。 現在でこそ異種族といえども、種族に差はあれどその思考形態や文化に人間と大きな差が開いているというわけでもなく、理解の範疇を超えているというような事は無いと知られているが、当時はそうでもなかった。 異種族=異質な力を持つ危険生物としての認識が普通だったのである。 故に、異種族に対する潜在的、あるいは顕在的恐怖とともに、蔑視の風潮が世論を占めていた。 折りしも、資源と食料を求めるために異世界に進出して土地を占領せねば、数千万人の人間が餓死するという状況下ゆえに、異世界種族<<<(越えられない壁)<<日本人という図式、あるいは異世界種族は敵という認識と世論が広まりつつある時期でもあった。 そして、インターネット上の某巨大掲示板のとある板にて、このようなスレが立てられることになる。 『危険生物駆除スレ』 悲劇は、その「オフ会」と呼ばれた一連の計画、それが実際に実行されたことから始まる。 序章部分の1、此処まで。
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湯飲みに玄米茶を注ぎ、缶から取り出した昆布の粉をさらさらと入れる。 自身のカップには健康と美容のために、食後に一杯の紅茶。 ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で。 「総理、国会で“日本以外の世界が滅んだ”と伝えたのですがよろしかったのでしょうか。 変化した人類、ミュータントや超能力者、『魔術』に関する発表は 後の障害者差別問題に繋がりかねない発表でしたが」 「んー。説明しなければならんかね」 武原は湯飲みに付けていた口を外した。 「茂人君とは秘密を共有するもの友人同士、腹を割って話しをしなければいけないと思っていた。 の、前に、敬語は止めてくれんかね。肩が凝る。突っ込みをどんどん入れてくれ。遠慮はいらん」 「最低限の礼儀は弁えているつもりです」 「父にそっくりだな。ときに君は、差別やテロリズムがどのように産まれるか知っているかな」 お茶請けに置いてあった煎餅を齧った。 ばりぼりと一枚食べ、答えた。 「富の不平等」 「違う、それは増える要因であって原因ではない。 イランやイラクで暗躍していたテロリスト、外務畑の君なら彼らを知っているな」 間髪入れずに言葉が返ってきた。 答えを予想していたようだ。 ロシアン・ティーを飲んで喉の煎餅を流し。 少し考え、答えを返した。 「自爆テロやゲリラを支持しているのはエリート層でしたね」 「ビンラディンやザルカウィ、ムジャヒディン、皆世間で金持ちと呼ばれるやんごとない方々だよ。 学生運動や共産主義に取り付かれ、火炎瓶を投げた昔の青年達も大学生を中心とした 知識人と呼ばれる人々だった」 「しかし、直接犯行している方々は違います」 「君らしくない答えだな。現代のテロリストは訓練所で生活し教育された人々だ。 衣食住を保障された手に職のあるテロリストだよ。実態は知っているだろうに」 「だとすると身体的特徴や住む地域に関しても違いますね。テロリズムは国際化していますし、 中東のテロのために協力する日本人も居ますから。 日本でも、沖縄人でない方々が在日米軍基地に対し毎年反対集会を開いてますね」 今時のテロリストは訓練施設や学校で勉強する。 民兵組織に入り、経験を積んでから仕事としてテロ活動を行う者も居る。 テロ組織そのものが学校や養護施設をもっているなどざらだ。 彼らは場合によっては仕事の斡旋までして、スカウト、社交界でのパトロン集めさえ行う。 他国の賛同者を集め、爆弾政策や軍事教練をして、目的の組織などへ潜り込ませる。 アメリカの炭素菌テロでは一時期、在住アメリカ人のテロリストやアメリカ系○○人のテロリストが 持て囃された。彼らは正規の教育を受けていて、生活には困らない身分の人間だった。 アメリカ人と同じ白人だったので、黒人差別などとも縁遠い存在だった。 「もし、富の不平等が原因なら、共産圏にはテロが起こらないはずだね」 「チェチェンですね。ロシア与党の掲げる公約の一つにテロとの戦いがありました」 世間では忘れられつつあるが、近年まで出兵までしてテロとの戦いをロシアは行っていた。 ほんの少しの特殊部隊や工作員を派遣するのではなく、 戦車や戦闘ヘリまで出した軍を中心とする本格的な戦闘である。 「すると君はテロリズムは何処から産まれると思うかい」 「歴史ですか。積み重なった認識のずれが蓄積され、地震の活断層のごとく テロや差別に波及する…ですか」 「ああ。ミュータントに対する発表だけが、決定的な差別へ繋がるわけでもない。 “これから”が大事なのだ」 おかわりの紅茶にブランデーを入れた。 美味しい紅茶が飲めるのは生きている間だけだ。 「政治家としての意見ですね。でも差別は存在する」 「直接外と関わっている君らしい意見だ。“これから”はこれから幾らでも修正が効く“これから”だ。 ミュータント超能力論の根元、もとい“日本以外の世界が滅んだ設定”は嘘と 君も理解していると思う。“後付設定”で幾らでも引っ繰り返せる。 嘘だからいつか見破られるだろう。見破られるのが一ヶ月か十年後か知らないがね。 とりあえず、今のところ考えているテレビ対応としてダークエルフ達との接触がある。 染色体異常、超能力と異形の体との固定観念を持っていた国民に ダークエルフ達を見せたらどうなると思うね? 人類ではありえない超能力を駆使する美男美女、 ファンタスティックなんとかなスーパーウーマンだよ。 TVや国民受けはいいだろう。第一印象を良くしてからドワーフや異種族を紹介してもよかろう」 ダークエルフのカイを会ったときには驚いた。 美幼女だったのである。幼女に美を付けるのは変な表現だが、カイに限ってはしっくり来る。 黒桐から見せられた写真を見てもっと驚いた。ダークエルフ美女軍団だった。 某ゲームの影響でウィルスや遺伝子変異が異形しか産まないと 固定観念を持っている日本人には頭を殴られる衝撃になるだろう。 エルフはTVにぴったりな存在であるはずだ。 悪く見積もっても、そこらのお笑い芸人かタレントか判別に困る女よりよほど美人であるのは間違いない。 「見破られる嘘を付くメリットがありません」 「日本は資源が無いと飢え死にする。突然異世界に転移させられた=資源の場所なんかわかりません、 これから探します、と 戦争で地形が変わった=資源の場所はわかります、 いずれ力ずくの交渉でもなんでもして手に入れます。どっちを国内に発表するかだな」 日本の富は貿易で成り立っている。決してアメリカやロシアのような自己で完結した文化圏ではない。 『祖国がなくなったと知った外国人』や輸出企業は大混乱だ。資源を輸入していた業者達も全滅する。 補給先が無くなったと確定した先で始まるのは、槍と馬に代わる、銃と車を使った食料と資源の奪い合い、 現代の三国志だ。外国人たちは各々のコミュニティを造り、自衛する。 在日米軍に日本国内で独立されては堪らない。 米軍の将校に「あなたの信頼する合衆国は消滅しました」と言ったらどんな顔をするだろう。 日本本土の治外法権な基地に隠してある核爆弾でも持ち出して脅迫してきそうだ。 『文明は滅んでも、世界に人は残る』完全な異世界では救いが無い。 『元の世界が残っている』からには『元の生活に戻れる希望ができる』異世界はそんな幻想すら許さない。 せめて、見切りがついてから海外状況を発表したいと考えたのだろう。 底のない絶望だけを見せられて打ちひしがれるのと底に希望を見つけるのとではどちらがマシかだ。 「だったとしても、悪手でしかありません。 資源を集めるにしても確保のためのインフラ整えるにしても、政府だけでやれる事には限界がある。 地形、現地住民との会話、物品、常に見破られる可能性があります。露見後は政変ですね」 「私は漫画の主人公ではないのだ。常に完璧な答えを出してくれる神が居たら、 喜んで従いたいぐらいだよ。嘘を付いたのは自衛隊をエルブ王国へ派遣するための理由付けだ。 それにゼロからインフラを整えるとこから開発始めようとは思わん。できても途中で資源切れになる」 石油については北海道油田の増産やガス油田が開放されたため、多少は備蓄が伸びた。 それでも、埋蔵量が不安だ。早急に安定が必要だろう。 幸運にも千島にロシアが唾を付けていた埋蔵量が十分な油田がある。 それがあるから良いとして、問題は石油精製施設と千島の採掘施設だ。 日本には一応、精製プラントは存在するし稼動も可能だが、日本全土の需要を満たすためには追いつかない。 プラントは補助程度に使われていたものであり、本格稼動を目的としていなかった。 千島についてはロシアが長年あると決めて、原油の値が下がったため放り出した開発があるだけで、 プラントそのものはできていない。早急な完成が必要である。 農村部では凍死が出るかもしれない。 今年の冬は寒くなるだろう。 このように、資源が見つかっても、採掘や精製するために本格稼動するまで時間が掛かる。 それまでどうやって乗り切るかが課題だ。 プラントなどが出来るまで、当分は中世レベルの化学力の粗悪品を買い付けなくてはいけないだろう。 当たり前だが、質の高い大量の鉄鋼や精製済みのガソリンなどは当分、望むべくも無い。 全て自国で精製しなくてはいけないのだ。 「短期的な視点です。長期的に情報操作は害悪だと考えます」 「無論だ。日本全部滅亡と仮定した場合の対応は“現時点の基本方針”であるし、 “情勢がまだはっきりしていない”。従って異常生物などの問題が明確になりさえすれば、 後は“柔軟に考える”と私は新聞の取材で答えた」 よく政治の場で使われる“適切に対応致します”“前向きに検討いたします”は玉虫色の言葉だ。 聞き手によって好きに受け取れるし、責任を追及されてもあいまいの霧で煙にまける。 「情報を段階的に開放し、ゆくゆくは異世界について理解を浸透させたい。ですか?」 「茂人君。君はなかなか理解がはやい。“情勢がまだはっきりしていない”のを逆手にとれるなら 好きな情報を流せる、不確定情報ならば間違っていてもシラが切れる。 情報を間違ったら自衛隊や分析していた専門家達のせいにすればいい。ミサイルの誤報みたくな。 今は情報が錯綜しているから。どうとでもできる」 「黒いですね。大人の事情を垣間見た気がしますよ」 これやったの絶対総理だろ・・汚いなさすが総理きたない。 だます為に嘘付くのは馬鹿。 真の嘘吐きは思わず騙してしてしまってる真の嘘吐きだからもててるのだという事実。 「なあに、かえって免疫が付く。この程度を黒いと言うのなら政界を生き残れんよ。 私は海外について判明した情報から最新のものを順次国民に流していくつもりだ。 竜の生態、魔法の種類、遺伝子解析、風俗や技術。国をあげての調査は国民も望んでいる」 「後付設定でいくらでも自由に情報を流せるわけですか」 「流さなくていい。ころあいを見て、上がってきた情報に許可の首振りだけすればいいのだよ」 「いつ嘘がばれても、対応策と保身は完了してる。ですね」 「まあな。他にもあえて情報を確定しない、次々に新情報が放送されることによるメリットもある」 「不確定性ゆえの空想ですか」 茂人は手さばきあざやかに、愛知県西尾産の茶をいれた。 武原は差し出された茶をひと口すすって、茂人に話した。 「国民を飽きさせないための娯楽としての海外情報。 まるで中世ファンタジーな世界は視聴者にも興味深い。TVも稼げる、不満も反らせる。 停滞した経済活動の再開。 異世界の生態や動植物の研究は民間にも任せる、我々の住む世界とは全く異なった物達だ。 しばらくは特許や新技術で新聞は賑わうだろう。 当然、病気や寄生虫が怖いから対策のしっかりした一部の大企業だけになるだろうがな」 そういって、畳の上にあぐらをかいて玄米茶をすすった。 「情報の切り張りと編集に演出、まるでTV番組ですね」 「行き過ぎた政治は娯楽になるとどこかの哲学者が予言してたな、まだメリットはあるぞ。 政府発表である、日本以外滅亡という真実を持った嘘は不信を産む」 「デメリットでしかありませんね」 「不信は疑惑を産み、新たな説や技術を産み出すだろう。 より良い説を選んで採用して行けばいいのだ。 我々が現在、『異世界召喚』と呼んでいる説は、たった2週間の間の情報だけで組み上げられた説だ」 「召喚されたのではなかったんですか!」 どんっ!と和風テーブルを叩いた。 カップに入った茶が飛び散る。 武原は慌ててお絞りでテーブルを拭いた。
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16 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 14 04 [ I0lzEwTo ] 皇軍スレvol.7 418の続き、あちらに投下するのはややスレ違いになってきたので、 こちらを間借りさせてもらいます。 ……とてもSSとは呼べない、殴り書きで恐縮ですが。 17 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 24 21 [ I0lzEwTo ] 皇軍スレのくろべえさんの作品を大元に、かなりのネタが組み合わさってます。 それでは。 帝國が消失し、その際の激戦で世界が荒廃してしまってから早60年。 生き残った列強各国は、帝國が残した科学技術の内のいくつか(蒸気機関とか)を習得し、 わりと復興していた。 そんな中、帝國本土のあった場所に、新たな日本が出現する。 対米戦争に敗北し、以後60年間アメリカの庇護の下で平和を享受していた“正史”日本国である。 海外との連絡が全て不可。 衛星も一切反応がない。 実際に船や航空機を出してみても、朝鮮半島も中国大陸もない。何もない。 異世界に放り込まれたことを知らない彼らは混乱の極みを経験していた。 その状況下、かつての日本海上を警戒していた護衛艦みょうこうは、北西方向から日本に近づいてくる 一隻の不審船を捉える。 18 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 25 34 [ I0lzEwTo ] 「右舷75度、不審船を目視で確認」 「不審船はどのような形状か」 「……帆が張られたマストを二本確認、帆船のようで……いえ! マスト後方に大型の煙突を確認。 その船型は、まるで……」 「まるで、何だ。報告は正確にせよ」 「は。その、あえて似ているものを挙げるとするなら……いわゆる“黒船”に近いかと」 「……。その“黒船”の所属がわかるような旗、あるいはマーキングのようなものは見えるか」 「船体にそれらしきものなし。旗も確認できず……あ! 今メーンマストに旗が掲げられました!」 「日の丸! 不審船のマストに掲げられているのは、日の丸です!!」 「……どういうことだ」 ※調査船上では、国旗掲揚と共に船長以下全員整列で君が代を熱唱中。 19 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 26 33 [ I0lzEwTo ] その後、なんだかんだで接舷。 拡声器で船名と所属、目的を尋ねられた調査船一行は初めて聞くネイティブの日本語に感動し、 本日二度目の万歳三唱。 だが、どう見ても日本人でない一行が日本語で「大日本帝国万歳」「天皇陛下万歳」を絶叫する姿に、 みょうこう乗組員達は「何なんだこいつら?」と困惑する。 さらに、その後の一行とみょうこう艦長の接見では両者の話が見事なまでに噛み合わず ますます不審がられてしまう。 一行が持ってきていた写真や、日本語で書かれた書物などを提供し、紆余曲折を経てようやく両者ともに 「平行世界の、帝國とは異なる日本なのか。でも、日本には変わりないから良いか」 「戦前の日本に世話になったと言っているが、我々とは違った世界の日本なんだろう(無理矢理納得)。 なるべく早く彼らの“組織”とやらと接触して、詳しく調査を行う必要がある」 と状況を理解し、調査船はみょうこうと共にいったん日本本土へ。 20 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 31 59 [ I0lzEwTo ] 調査隊転じて使節団となった一行は写真や本、伝承で知る日本とのあまりのギャップに困惑しつつも 政府関係者と接触、世界の現状を訴えて速やかなる世界進出を提言する。 しかし当然ながら政府はなかなか動こうとしない。 ダークエルフの長老らも本土に招聘されて情報提供と強力を申し出るも、かつての帝國とあまりに違う日本人達に、 不満を募らせていく。 それでも備蓄の石油は減る、食糧は絶対的に足りない。 何もしない結果は、誰の目にも明らかだ。 政府はようやく、日本国民生存とダークエルフら抑圧されている民衆の保護を名目に、まず自衛隊の大陸派遣を決定する。 上陸前、「旧日本軍の支配地域」と聞いて「反日教育」というキーワードが浮かんだものの、予想に反して行く先々で こっちが引くほどの大歓迎を受ける自衛隊。 だが新しい地域に進出するたびに「大日本帝国万歳」という横断幕が掲げられていて、いいかげん説明するのが めんどくさくなってくる。 そして時を経ずして日本復活は全世界に知れ渡り、獣人とダークエルフ、かつての邦国の人間が続々と進出地域に集ってくるようになる。 「自分達は帝國人じゃない」といってもお構いなしに彼らは、自分達を慕ってくる。 戦闘らしい戦闘もなく、開墾や飛行場設営、道路整備といった地味な作業ばかりの毎日だが、国内で色々言われていた今までとは違う、 キツイが働き甲斐のある毎日に、隊員達はある種の充実を感じるようになっていった。 だが、平穏な日々は長くは続かない。 帝國じゃないといっても聞かないのは、列強も同じだった。 21 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 34 26 [ I0lzEwTo ] 帝國の復活を認めない列強は日本側の交渉に応じず、列強の侵攻開始をもって日本は自衛権を発動。 ついに戦闘が始まった。 日本側は当初こそ圧倒的な「次元が違う」技術差と戦術で優位に立つが、補給が続かず、なかなか攻めきることが出来ない。 逆に、日本との戦い=聖戦と幼少時から教え込まれているF世界住民の命を顧みない戦術は、 日本側にじわりじわりとダメージを与え、自衛隊員に大量の銭湯恐怖症患者を出させるほどだった。 戦場は、徐々に泥沼の様相を呈するようになる。 ――そんな中。 22 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 35 19 [ I0lzEwTo ] とある月の明るい夜、宮中の一角で、御歳14歳になられた秋篠宮親王殿下の御子息が、どこからか聞こえてくる「奇妙な声」に 耳を傾けていた。 その「声」曰く、 「この世界に日本をつれてきたのはある邪悪な魔神である。その魔人を倒せば日本はもとの世界に戻れる。 そして、その魔人を倒せるのは天照大神の力を正統に受け継ぐ男子、つまり殿下をおいてほかにはいない」 と。 その声の主は、日本から遠く離れた小さな国で、昏々と眠り続ける一人の男だった。 我らが辻ーんである。 煎餅魔神の影響で不老不死となった辻ーんはその魔力を次第にコントロールできるようになり、 ある日思い立った彼はその全エネルギーを集約して究極召喚魔法を発動させた。 日本国を召喚したのは、何を隠そう辻ーんその人だったのである! さしもの辻ーんも強力すぎる魔法の発動で昏睡状態になり、その魂だけが千里を超えて日本へと帰還した。 だが、アメリカに敗れた日本、戦いを知らず、平和を享受してきた日本人の姿に辻ーんは絶望する。 この国は日本であって日本帝國でない……。 戦いを望まぬお優しい陛下と陛下の民を戦乱の世界に連れて来た小官は大逆人である。 罰を受けねばならぬ。 そして、一刻も早くこの日本を元の世界へ戻さねば……! 23 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 36 44 [ I0lzEwTo ] 今回の召喚魔法はマナを使わず、煎餅魔神の存在を媒介にして魔界から取り出した魔気をエネルギー源としている。 それは今現在も継続中である。 つまり、魔法を使った小官の身体が消滅すれば、日本をこちら側へ引っ張っている力も消滅し、 自動的に日本は元の世界へと戻る。 簡単な話だ。小官が死ねばよい。 だがそれが出来る者は…… 一人居られる! こちらから出向くことはもはや不可能、不敬ではあるが、御身に来て頂いた上で草薙の剣で小官を突いてもらわねば……。 ならば、小官が梅雨払いをつとめよう。魂だけとはいえ、それなりの力はある。 辻ーん早速国から側近の獣人とダークエルフ、それにドラゴンを護衛に遣し、自らは殿下の説得にかかる。 ……自分がその魔神だとは告げず。 男と生まれて、獣人とダークエルフ、おまけにドラゴンを仲間に、ファンタジー世界で大魔王を倒せと頼まれて断る法はない。 殿下は迷うこともなく、目を輝かせて、辻ーんが拍子抜けするくらい簡単に応じた。 かくして殿下の冒険が始まった! 24 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 37 44 [ I0lzEwTo ] ――以下大幅略で最終局面。 「無理だよ……出来るわけないよ……魔神が辻ーんだったなんて、こんなの……酷すぎるよ……!」 「小官は大罪を犯したのです、殿下。そしてこの小官を罰することのできる人間は、殿下。貴方のみ……」 「そんな……!」 「殿下が小官に草薙の剣を振り下ろせば、全てが終わるのです。日本は元の世界に戻り、殿下の臣民もまた平和な生活に戻れるのです。 それにご安心を。この小官が消えてなくなるわけではございません。肉体は滅ぶとも、精神は永遠でございます」 「じゃあ、ダークエルフや獣人のみんなはどうなるの?」 「彼らはこの世界の住人……日本が消えれば、また以前のように流浪の民となるでしょう」 「……そんなの、もっと嫌だ! ずっと一緒に旅をしてきた、シンディやガリルや……旅の途中で出会ったダークエルフの人たち…… みんな、見捨てるってことじゃないか!」 「畏れながら殿下、我らのことはどうかお気になさらずに」 「左様。殿下のお心遣い……それだけで我ら数万の同胞が救われましょう」 「どうしてみんなそんな悲しいこと言うんだよ……! 仲間じゃないか、僕達は……!」 「殿下……」 「……辻ーん、日本が好きだといってくれる人たち、日本がないと生きていけない人たちを、みんな置き去りにして…… 僕達だけ逃げろって言うの? この僕に、そんな酷いことをしろって言うの?」 25 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 39 41 [ I0lzEwTo ] 「答えてよ、辻ーん!!!」 「……」 「……本当に、他に方法は何もないの?」 「その者が……」 「?」 「小官が消滅するとき、この世界にとどまりたいと願っていれば、その者はこの世界にとどまることができます」 「本当に?」 「本当です殿下。元の世界との“縁”を絶つかどうかは、その者の心次第なのです」 「建物や船や道具なんかは?」 「所有者がとどまりたいと願えば、その所有物も同様です。……さすがに日本列島そのものは確実に消え去りますが……」 「……よし、わかった! それだけ聞けば十分!」 「殿下、何処へ!?」 「日本に戻る。戻って、このことをみんなに知らせて、残りたい人と帰りたい人を分ける。残りたい人は大陸に、 帰りたい人は日本にいてもらう。そして準備が終わったら、もう一度ここへ来て……全てを終わらせる」 「殿下……」 「それから、僕は残るよ、辻ーん。お姉さまやお父様……お母様は反対するだろうけどね。この世界の、日本を好きでいてくれる人たちは みんな曾お爺様のことを尊敬してるみたいだった。天皇制がどうとか難しいことはわかんないけどさ。 ……多分、僕が残ってれば、国の形が違っても、住んでる人たちはちょっとは安心できると思うんだ」 「……感服いたしました、殿下。その暁にはこの辻ーん、全身はなくとも、全霊でお遣え奉ります」 「うん、ありがと。 じゃあ……行こうか!」 26 名前:418 投稿日:2006/05/12(金) 21 43 11 [ I0lzEwTo ] ――今度こそ続かない。 全てが思いつきで構成されてます。完全なネタとして割り切ってくだされば幸いですw 33 名前:418 投稿日:2006/05/13(土) 11 04 14 [ i3AOIi5Y ] ちょこっと設定。 読んだらわかるけど、これ現在から15年ほど未来の日本が召喚されてますw 15年の時間差で、食糧問題解決の技術や非石油依存型エネルギー開発とかが今より少し進んでたり、改こんごう級が配備されてたり。 あと、日本本土が井戸の役割を果たして、現実世界の未使用状態の高濃度マナが世界に拡散し、魔法が一部復活してたりします。 それから、ラストに関して。 「日本国が“帝國後”の世界に召喚」された場合、帰還がかなっても、帰還できなくても、どちらにも悲劇が待っているわけです。 一般国民は帰還を熱望しているはずだし、逆に大陸に進出した日本人や自衛隊員には、Dエルフ達を見捨てることが出来ない者も 多数出てきており、そして実際、Dエルフらは日本がなければ人並みの生活すら送れない。 どちらに転んでも、ハッピーエンドは無い。 しかしその、1かゼロかの選択を迫られる中で、その中間のギリギリの妥協点を探り、現実的な決断を下す。 正に、日本人的解決法だったわけです。 召喚したのが辻ーんだったから可能なオチですがw 34 名前:418 投稿日:2006/05/13(土) 11 18 50 [ i3AOIi5Y ] あ、それから、 旅の途中で悪徳領主が支配する町に立ち寄って 「この御紋章が目に入らぬか!」 「!!!」 「ここにおわすお方を、何方と心得る! 日本国第2位皇位継承者、秋篠宮親王殿下が御嫡男にあらせられるぞ!!」 ド―――――――――――ン! っていうのもやってみたかったなぁw 以上!
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8月12日、午前8時 サイフェルバン南飛行場 ここサイフェルバン南飛行場には陸軍第790航空隊が、急造された滑走路の脇に 所属機をずらりと並べていた。この日は雨だった。 「では、ちょっと司令部に行ってくる。」 航空隊司令官のビリー・ゲイガー大佐がそう言って、サイフェルバンの中央にある 司令部に出かけていった。 その光景を、愛機のB-25を機内で点検しながら見ていたポール・フランソワ大尉は、 後ろにいるドイツ系アメリカ人のトニー・バイエルン軍曹に声を掛けた。 バイエルン兵曹は新人で背が低いために、仲間からはちびのトニーとあだ名されている。 「なあトニー。最近おかしくないか?」 「え?何がっすか?」 「航空隊司令さ、5日前から3回も司令部に出かけている。この間はずっと指揮所に 張り付いていたのに、ここ数日はずっとおでかけだ。」 「そういえば、何か多いですよね。」 バイエルン軍曹は首をひねる。だが、歴戦の猛者であるフランソワ大尉は自信ありげに言った。 「トニー、もしかしたら、近いうちに俺たちの出番があるかも知れんぞ。」 「なぜ分かるんです?」 「まあ、俺が今考えたんだが、作戦前には必ず高級将校があちらこちらに飛び回るもんなんだ。 高級将校がそこらに飛び回るとしたら、次に来るのは作戦だ。ダンピール海峡の爆撃作戦でもそうだった。」 フランソワ大尉は、1942年に陸軍飛行中尉として前線任務についた。 8月になると、フランソワは南西太平洋軍所属のカクタス航空隊に配属され、B-26に乗って日本軍と渡り合った。 その後、ダンピール海峡海戦やニューギニアの爆撃作戦にも参加し、今では第790航空隊 でも屈指のベテランパイロットとして知られている。 フランソワ大尉の左頬には痛々しい傷跡がある。その傷跡は、ニューギニアで日本軍の戦闘機、 隼の機銃弾でつけられた傷である。 その後、なんとか基地まで辿り着いたものの、機体はひどく損傷し、後日廃棄されている。 搭乗員は彼と2人が生き残った。 44年4月に第790航空隊に転属になり、4月29日にクェゼリン環礁の飛行場に配属となった。 そしてこの召喚に巻き込まれたのである。 召喚された当初、陸軍航空隊の乗員たちは口々に召喚した魔道師たちを罵った。フランソワも、 「所詮、剣と盾しか使わん奴らに、俺たちが出て行く必要が無い。元の世界のほうが危険だが100倍ましだ。」 と、皮肉を言ったものだ。 しかし、バーマントという敵は意外に発展した国で、航空機や強力な軍艦で、第5艦隊の 新鋭軽巡や新鋭戦艦などを相手に猛然と戦いを挑んでいる。 陸軍航空隊も、戦闘機主体の第774航空隊が王都上空戦で敵飛空挺集団を相手に 暴れ回って全滅させる快挙を上げた。 それに対し、召喚した側のヴァルレキュアは、文字通り剣と盾が主体で、文字通り中世の軍隊を持っているに過ぎない。 大砲は装備しているが、威力はバーマント軍の砲に劣る。 銃器の開発も急いでいるというが、こっちはまだ実用化のメドに至っていない。 あらゆる点でバーマントに遅れを取っているが、軍はとても精強で、少ない兵力にも関わらず装備に 勝る大国バーマントを四苦八苦させている。 この事には誰もがバーマントを賞賛している。 それはともかく、陸軍航空隊の爆撃機乗り達は内心不満だった。 主に活躍しているのは第58任務部隊や護衛空母の航空隊ぐらいで、陸軍航空隊はあまり敵と戦っていない。 唯一、B-24爆撃隊によるララスクリス、クロイッチ空襲が1回だけあったほどで、 あとは基地で座学やイメージトレーニングなどの訓練に勤しんでいるだけであった。 だが、その悶々とした日々も終わるかもしれない。フランソワ大尉はそう思ったのだ。 「近いうちに何かあるな。」 「何かですか・・・・・例えば、どこぞの大きなダムを吹っ飛ばすとかですか?」 「スキップボミングでか?」 「そうです。最近敵さんもスキップボミングを活用して、海軍の駆逐艦や軽巡、空母 を痛めつけたそうです。なんか敵に持ち技をパクられたような気がして、仕方がないと思うんすよ。」 「俺も同感だね。まあ、バーマントはあの技を自分で開発したのだろうが、ここはいっちょ 本家の技を敵さんに見せたいものだな。本物のスキップボミングを。といっても、 何を攻撃するか分からんから、スキップボミングを見せられんと思うがね。」 フランソワ大尉はぶすりとした口調で言った。だが、近々出撃があるのは間違いないだろう。 フランソワはそう確信しながら、計器の点検を続けた。 8月13日 午後4時 この日の夕刻、魔道師のレイム・リーソンが、リリアとマイントを連れてインディアナポリスにやってきた。 3人は作戦室に案内された。作戦室には第5艦隊司令長官であるスプルーアンスとその幕僚、 それに第58任務部隊司令官ミッチャー中将とバーク参謀長が座っていた。 「かけたまえ。」 スプルーアンスは空いている3つの席に座らせた。 「さて、本題に入ろう。君たちが呼ばれたのは、ある事を確認しようと思ったからだ。」 「ある事とは、元の世界に帰る方法・・・・・ですね?」 レイムがそう聞くと、スプルーアンスは頷いた。 「そうだ。リーソン魔道師、何か方法はあるかな?」 その問いに、リーソンは待ってましたとばかりに口を開いた。 「方法はあります。私はここ2ヶ月間、召喚魔法を応用した帰還魔法の基礎を開発していました。 開発には私と他の魔道師で行いました。現在、工程は3割がたが終わっています。」 レイムの答えに、米側一同からほっとするようなため息が漏れた。 レイムらが来る前に、彼らはもし彼女が帰る方法が無いと応えていたらどうなったかと色々討議していた。 まず第1案がバーマントを攻略した後、バーマントの領土を一部割譲してそこに新たな国家を作るか。 第2案がヴァルレキュアの庇護の下にそのままそこに住み着くか。 しかし、珍しいことにどっちの案でも結論は見出せなかった。そうして延々と話し合っている うちにレイムらが来たのである。 「現状でいくと、帰還魔法の完成には早くて4ヶ月、普通で行くとあと半年かかります。」 「そうか。」 彼女の言葉を聞いて、スプルーアンスは満足そうな表情を浮かべた。 「君たちの努力に、私が全米軍を代表して礼を言う。ありがとう。」 スプルーアンスはわずかに頭を下げた。 (これで兵の士気もなんとか保つことができる) スプルーアンスは、ここ最近兵の士気が落ちてきているという話を聞いている。 士気は依然高いものの、中にはこの戦争に悲観的な感じを抱くものも少なくない。 だが、これからは違う。帰る方法は確実にあるのだ。 レイム達には多大な負担を掛けることにはなるが、それでも頑張ってもらうしかない。 「ちょっと聞きたいことがあるのだが」 その時、ミッチャー中将が声を上げた。 「君たちの製作する帰還魔法だが、その魔法というものは元の時間、つまり召喚された5月の時点 に戻るのかね?」 ミッチャーの問いにレイムは表情を曇らせた。 「実は、元の時間に戻すのは、はっきり言って不可能です。」 彼女はその後、理由を長々と説明した。レイムの話によると、召喚された時の日付は5月。 今は8月である。仮に今帰るとしても、元の召喚された時間には戻ることができず、 現世界でも時間の進んだ時間にしか戻れないのである。 例を挙げれば、1944年5月に召喚され、異世界で半年を過ごしたとする。 そうすると、異世界から戻るときは、現世界の半年後、つまり1944年11月に戻るというわけだ。 これはいくらレイムらでもどうしようもなく、第5艦隊幕僚は、ややがっがりした。 (しかし、ようやく道が開けてきた。バーマント国内には、ジュレイ中将の言う革命グループも 存在しているという。我々は確実に、この戦争を終わりに導くことができる。そして、元の世界に戻ることができる。) そうスプルーアンスは確信した。 その後も、今後の作戦内容などについて、2時間ほど彼らは話し合った。
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92 :創る名無しに見る名無し:2014/06/17(火) 01 17 46.50 ID 67YYssxz 空中大陸の進行ルートに穢れた大地と呼ばれる広大な毒沼が広がっている地域がある。 そこは、沼地から湧き出る瘴気に当てられた変異した生物が生息しており、現地民も滅多にそこに近寄らないため、周辺国からも重要視されていない場所であった。 だが、大陸の地殻の海域に突如出現した謎の島国にとって、とても興味を引いた場所でもあった。 「異世界と言っても、見慣れた様な地形が広がっているだけと思っていたけど、こういう場所を見ると異世界って感じがするねぇ。」 「本当に見ているだけで息苦しくなってくるよ、禍々しい光景だ。」 現地調査のため訪れた、学者で構成された現地調査隊は穢れた大地の禍々しい光景に息をのんでいた。 「魔物だっけ?なんでも、魔鉱石に被曝して凶暴化した大型生物がわんさか生息しているらしいじゃないか」 「地球の常識では当てはまらない化け物ばっかりだからね、気を付けないと危険だよ。」 「一応、自衛隊の人が目を光らせてくれているから、幾らか安心できるけど、やっぱり不安だよね。」 「銃弾弾く虫が生息している時点で安心出来んよ、まぁそんなこと言っていても資源の調査は進まんから、さっさと始めてしまおう。」 地質調査、生物サンプル、気象観測、様々な用途の器材をトラックから降ろしていると、突如遠方で黒い水しぶきが上がり、調査隊の視線がそこに集まる。 「な・・・なんだ!?」 「でかいミミズ!?なんて大きさなんだ!?」 「警戒態勢!くそっ、調査を始めてそうそう化け物かよ!」 巨大なミミズの様な生物は、地中から突如現れ、コケを食べていた大トカゲを丸呑みにし、再び黒い水しぶきを上げ、地中へと潜っていった。 「こっちには気づいていないみたいだが、大丈夫なのか?地中にあんなのが生息しているなんて聞いてないぞ?」 「それにしても、少し掘っただけで黒い液体がにじみ出てくるが、本当に油田があるのかね?成分を調べてみないと何とも言えんが・・・。」 「現地民が試料として寄越してくれた黒い液体は炭化水素を含む混合液だ、ここで採集したものと同一のものと判明したのならば原油とみて間違いないだろう。」 「やや内陸になってしまうが、油田がもし確定したのならば、安泰とまでは行かないが、大分希望が見えてくるだろうさ、問題は先ほどの様な原生生物なんだが・・・。」 「石油プラントをここに建設したとしても、野生動物の襲撃で施設が破壊されることも起こりうるだろうな、何にしても一筋縄ではいかんという事か・・・。」 数日後・・・事態は起こった。 「はぁはぁーー・・・ああーー・・・うおー」 どす黒く染まった迷彩服と土色に顔を染めた自衛隊員が最寄りの駐屯地の医療施設に運び込まれ、意識混濁の重症を負っていた。 「大丈夫か?しっかりしろ!」 「くそっ、例の巨大生物か!?一体何をやられたんだ?」 「調査隊をかばって巨大生物が吐き出す液体を浴びたらしいのです、恐らく毒か何かかと・・・」 「毒の成分はわかっているのか?早く処置しなければ手遅れになる!」 「現在血液検査中です、そもそも初めて遭遇する生物の毒素なんてわかりやしませんよ!」 「畜生、何てことだ!とにかく、急がせろ!!」 突如、自衛隊員の容体が悪化し、天を仰ぐように体をくねらせ口から黒いあぶくを吹き出し始めた。 「あうおぉぉーー!うぐごげぇーーー!」 「おい!大丈夫か!しっかりしろ!」 「ぐ・・げっ・・・・げびっ!!!」 体をのけぞらせ口から黒い液体を吐き出すと、体中から黒く変色した体液を吹き出しながら、見る見るうちに黒く溶けた肉片となり、無菌テント内は大参事となっていた。 「う・・・うぅっ・・・・お・・おえぇぇ!」 「なんだこれは・・・一体何なんだ!!」 「ありえない・・・・こんな・・・こんなこと!」 遺体や血液中から見つかった物は、毒素などでは無かった、この世界特有の嫌気性の細菌で、あらゆる物質を分解し、黒く禍々しい汚泥へと変貌させてしまう危険生物であった。 「現時点で治療法は見つかっていない、しかし、なんて凶悪な菌なんだ。」 「あの化け物が吐き出す液体は、この菌の培養液、恐らく体内にこの菌を培養するための器官があるのでしょう」 「何にしても、この地の生物は危険すぎる、未開の地の調査は犠牲がつきものとは言え・・・こんなことは・・・。」 「原住民はかの生物のことを蝕怪虫と呼んでおります、彼らも時々この生物による被害が発生しているとか・・・。」 「今更そんな情報を・・・・しかし、このままでは調査どころではないぞ?あの化け物を何とかしなければ!」 自衛隊に犠牲者が出たことで、調査隊のベースキャンプは物々しい雰囲気に包まれていた。 「いくら周辺警備のためとは言え、戦車まで用意するなんて・・・。」 「まぁ、乾燥してヒビが割れている場所と、ぬかるんでドロドロになっている場所と極端な地形だからなぁ、キャタピラが無いと動きにくいんだろう」 「それにしても、74式とは・・・まぁ、本土防衛用に10式が動かせないのは分かるし、数が揃っているのは未だに74式だし、仕方ないのかもね。」 「61式が送られてくるよりはマシでしょう、何にしてもあんな化け物が生息している以上、慎重になるに越したことはありません。」 「61式をなめるなや・・・。」 「おい、押さえろ、学者連中につっかかっても意味がないぞ」 「チッ、わかっている、化け物め・・・見てろよ、今度襲いかかってきたら105mmライフル砲をぶち込んでやる」 明朝、ベースキャンプ近くの毒沼で揺れを観測し、地響きの起きた場所へ重装備の部隊を派遣した。 「状況を報告せよ」 「毒沼に変化なし、ごく少数、毒沼に生える草を食べる動物が確認できますが、例の巨虫は確認できず。」 「了解。」 「まったく、馬鹿でかいサソリは居るわ、生き物を溶かすミミズは居るわ、本当に異世界は物騒だわ。」 「ゴジラを相手にするよりはマシと思ったほうが良いでしょう、銃が効く相手なら何とかなります。」 「ははっ、そんなこと言っていると、その内、熱線やビームを撃ってくる化け物が出てくるぞ?」 「止めて下さいよ、本当に出てくるかもしれないじゃないですか、ましてや異世界ですし。」 グボオオオオオオオオオオォォォォォォ!! 突如黒い水しぶきとともに現れ、遠方で草を食んでいた山羊のような野生動物に蝕怪虫が食らいついた。 「なっ!?」 「や・・・奴が現れた!早く車内に戻れ!」 「いや、この距離には流石にいきなりやって来れないだろう、俺が監視する、砲撃の準備をしておけ!」 双眼鏡で確認すると、山羊のような野生動物は、蝕怪虫の口から逃れようと暫く暴れるが、その内、目や鼻・口などから黒い液体を吐き出し、溶けながら蝕怪虫飲み込まれていった。 「なんてえげつない捕食の方法だ・・・照準を合わせろ、外すなよ」 「了解!」 再び、地中に潜ろうとする蝕怪虫、しかし、大気を裂く音と共に、側頭部が突如破裂する。 グボオオオオオオオオオオォォォォォォ!? どす黒い血飛沫を上げて、その巨体を大地に横たわらせ、痙攣すると次第にどす黒いヘドロ状の物体に溶け始め、魔石と思われる鉱物器官のみを残して原型を失った。 後の調査で、元々この生物、蝕怪虫は食物連鎖の頂点にある生物で、個体数もそれほど多くないため、新たな個体が縄張りを作らない限り、襲撃は起こらないと判明した。 その他にも石油の海を泳ぐ生物は多数存在し、調査の障害になるのだが、それはまた別の話。 アビスワーム 別名.蝕怪虫 和名:ジュウユオオナマコ 重油の海を泳ぐ巨大な軟体生物、地球でいうナマコに近い生物だが、隔離された環境で独自に進化した。 普段は地下を掘り進みながら地中の微生物をこしとって捕食しているが、大型動物も襲うことがあり、体内に共生した微生物を含む重油を吐きつけ、弱ったところ土ごと捕食する。 地底での生活が長いため視覚はなく、太陽光線を微妙に感じる細胞を残すのみで、振動や熱に反応して獲物を探す。 体内に特殊な微生物を培養させる器官があり、この微生物を浴びると体内から分解され、どろどろの黒ずんだ炭化水素の塊にされてしまう。 この生物の生息地は穴だらけであり、原油の底なし沼が点在している。 あとがき まさに、フォールアウトのミュータントクリーチャー FF8のオイルシッパーをモデルにしております。 本来こんな過酷な環境に大型の生物が生息できるはずないのですが、魔鉱石による突然変異で適応してしまうものがポチポチ存在する模様。 いわゆるテキオー灯ですね、地球の生物に対しては効果が薄いものの一部の研究施設で魔光の照射で、微生物レベルでは変化が確認されております。 見つかっても、ただでは、石油は手に入らないです。異世界は厳しい 石油合成できるじゃないか! 確かに、炭化水素の塊に分解されますが、黒い汚泥=原油とは限らず、精製しても車などが動かせるか未知数です。 っというよりも、重鉄騎みたいにあらゆるものが分解されてしまうアウトブレイク状態にならないか不安が残りますね。(重鉄騎の場合はシリコンカビが世界中のマイクロチップなどを分解しておりましたが 何にしても扱い次第でかなり、危険な事になりかねないのでペスト菌並みに厳重管理する必要があるかもですね。 生ごみ処理 その発想はありませんでした、しかし使い方によっては確かに便利かもしれませんね。 異世界の国々から見るとどう見ても黒魔術か何かにしかみえませんがw ちなみに、異世界では毒矢に使われ、その入手の難易度・危険度と殺傷力の高さから非常に高値で売られています。(ただし、嫌気性の細菌なので長時間空気に晒す事で、失活して効果が薄くなってしまったものが多数 うーむ、ネタのストックが不足気味・・・資料を読む時間もあまり無いです。 人魚・サハギン・ハーピーと来たから、そろそろナーガかラミアあたりが出現しても良い頃なのかな?(ポジション決めてませんが うーむ、ラミアかリザードマンを登場させたいけど、どういう名称にするべきか・・・。 ちなみに、リザードマンは恐竜人間みたいな生物で、いわゆるリクビトやウミビトと別の起源をもつ知的生命体です。(彼らでいうウミビトに当たる種族にサハギンみたいなのが居ます。 海の国のサハギンが、ウミウロコビトなら普通のリザードマンはウロコビトになるのかな? ところで、ラミアの居そうな場所ってどこだろう、洞窟?それとも亜熱帯? 細菌 実際かなり有益な価値があると思われますが、実際にどのような炭化水素の塊を作り出すのか判明していない以上、ホイホイ利用するわけにもいかないので、研究は必要になりますね。 しかし、危険がつきものとは言え、独自の生態系が出来上がるほど広大な原油の海が地底に眠っているのは魅力的かもしれません。 クリーンな万能エネルギーの魔鉱石が実用化されたら、原油は化学工業用に使われるようになっていくのでしょうけど。 出現予定のモンスター うーむ、ワーム系モンスターは出現させたけど、残るはシーサーペントやグリフォンなどでしょうかねぇ・・・。 自衛隊の知識が、まだあんまり無いので変に知ったかぶって書くのもあれだし、異世界人の日常パートでお茶を濁すべきか・・・。(日本の異世界での影響をちまちま散りばめつつ そう言えば、異世界人が乗る乗り物に走竜が居た様な・・・ランポスやらロードランナーやらに似た姿のをイメージしているけど、登場の機会がないOTL ところで、ファンタジー世界の人が乗り物とする動物ってオーソドックスなものでドラゴンやら巨鳥などが居ますけど、本当にファンタジーの世界の生物なんだなぁ、と思う乗り物ってどういうのでしょうかね? 変わったもので、FF9のガルガントみたいな巨大甲虫があるけど・・・。 シーワームやフライングワームやスネークワームは居るかもしれませんね。 基本的に浮気性な遺伝子を持つ生物が多い気がします。(白菜なみに 別種に見えて実は人種の違い程度しか遺伝子が離れておらず、交配可能・・・みたいな生物が多いですね。 うむ、ネタ切れかもしれません・・・暫く充填期間に入るかもです。(某所で地味にモチベーション削られていますが、それも関係しているかも 異世界で大日本帝国を復活させる予定はありませんよ。
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「ほうほう、これがテレビというものか」 興味深げに右から左からテレビカメラを眺め回すのはロゼッタだ。カメラマンが困惑した表情を浮かべている。 「中尉、それはカメラです。テレビに映すための道具です」 「なんと、ではわたしは今お茶の間にこの姿を晒しているという事か」 解説を入れる青谷。上陸以来何度こうやって解説したかわからない。 ちなみに使節は彼女一人ではない。というよりかなり大規模である。無駄に多いと言い換えていい。 大陸に存在するラウジッツ以外の主な国家は元より、 星の数ほど存在する小領邦が片っ端から使節を送り込んで来たのだ。 その中でもロゼッタの好奇心たるや凄まじいものがあり、 日本に上陸してからは嵐のような勢いで説明をぶつけてくる。付き合う青谷はへとへとだ。 『使節としての仕事はどうしましたか』 と皮肉を言えば、 『大使がいるぞ!』 と元気に返された。 じゃあ一体貴女の役割は何なのかと青谷は問い詰めたかったが、ハンバーガーを片手にコーラをがぶ飲みする 女三銃士を見ていると脱力の余りに何も言えなくなった。上陸一時間で馴染みすぎである。 もしやと思っていたが物見遊山が大きな目的だったらしい。 目立つ格好で自衛官を引き連れ、うろうろとその辺をぶらつく姿は容易に目立ち、 駆けつけてきたマスコミがカメラとマイクを突きつけるに至って、青谷はもうどうにでもしてくれという気分になった。 「初めまして! 日本人の諸君! わたしは帝国の使者ロゼッタだ!」 よく通る声でカメラに向かって語るロゼッタ。 「この世界へようこそ! 我々はあなた方を歓迎する。仲良くしよう!」 だが、国民向けの使者としてはこれ以上の適材はないかもな、と思い、青谷は苦笑した。 この分なら大陸との関係も楽観視していいのかもしれない。青谷も、テレビを見る人たちも皆そう思った。 吉田の戦場は行政の場だけではない。国会もまたそうだった。 転移という異常事態にも関わらず吉田率いる与党の動きは早く、これほどの事態にも関わらず国内の治安が保たれ、 外交的にも成功を収めているのは、外交下手を指摘されてきた日本政府としては異例なまでの優秀さといって よかったが、それでも社会に歪みは出る。 貿易商社の類は大打撃を受けた。多国籍企業もまた壊滅的被害を蒙っている。 中小企業の多くは経営が立ち行かなくなった。 また、抱えていた外国資産が全て紙くずと化した衝撃は極めて大きく、 総じて経済界は大混乱である。首を括るものも多数出た。 それらに対する対処は、今のところ未定である。そして、何よりも食料への不安。 当然、野党は与党を攻撃した。 「総理! 総理はこの未曾有の大混乱の責任をどう取られるお積りですか!?」 ヒステリックに叫ぶのは野党連合第二席に位置する民社党の党主。きゃんきゃんと吼える姿は 躾けもされず、甘やかされ放題で育ったプードルやスピッツを思わせる。だが顔は遥かに醜悪だ。 「食料の備蓄はもう僅かしかないって言うじゃないですか! それにエネルギーも! 普段からキチンと蓄えておかなかった政府の責任じゃないですか!? えぇ!? 巷じゃ食料不安から暴動が起こったり犯罪が頻発したりして、国民は不安な夜を過ごしているんですよ!?」 殆どヤクザじみた口調にあわせ、そうだそうだ、責任を取れ。という怒号が沸き起こる。 (なら普段からお前らもそう主張しておけ) 責任を回避するつもりはない。だが事が起こってから鬼の首でも取ったように正義の味方気取りで 問題を指摘するのはどういう根性なのだろうか。大体テレビ中継もされている場で、食料不安だの 暴動だのとがなり立てて国民を不安にさせるのが吉田には腹立たしい。 内心の怒りを隠しながら答える。 「その件に関しましては全責任は我々にあると強く認識しております。 ゆえに、この問題の解決に全力を尽くし、大陸との貿易を強化することによって、 国民の皆様に変わらぬ日々を送っていただけるよう、尽力する次第で御座います」 責任をとれていない、詭弁だ、辞めちまえ。という野次の中、吉田は着席する。 「総理! それに自衛隊です! この世界の人たちは酷く遅れてるんでしょう!? だったら自衛隊のような過剰な戦力は不要です! 不要! とっとと軍備を縮小したらどうですか!? 彼らに無用の脅威を抱かせる原因になります! それとも総理は大陸侵攻でも企てているのですか!?」 「そのような事実は一切存在しません。また自衛隊は大陸諸国との協議を経た後、 十分な信頼関係が醸成されたと判断されれば、段階的に必要なレベルまで縮小する予定であります」 やはり馬鹿だ。大陸侵攻を企てているのか、だと。 企てているに決まっている。ただし飽くまで可能性のひとつとして、だ。 突如として外交が完全に行き詰まり、食糧供給が止まって緊張が高まったならば、 1億2千万の人口を食わせることは不可能になる。もしそうなったなら吉田は悪名を被ろうと、 大陸に侵攻することをためらうつもりはなかった。 無論、吉田としては大陸との協調が最善と信じているが、 オプションの一つとして、その考えは常に頭に置いているのである。 (もっとも、防衛大臣の言によれば難しいようだが) 兵力が足りません。無理です。その一言につきた。自衛隊の兵力は25万。予備を併せても30万程度。 日本を防衛するにも若干の不足を感じるのに、増してや大陸に侵攻して土地を占領するなど夢物語だった。 もっとも大陸は自衛隊の戦力の実態を掴めず、過剰評価している。 現状では戦わないほうがブラフとして有効ゆえ、その意味でも戦争はありえなかった。 (しかし、野党がヒステリックなのはいつものことだが、ここのところは特に酷いな) 異常事態なのだから当然と言えば当然、と思う一方、やはり腹立たしくもある。 このような時なのだから批判を繰り返すだけでなく、何か建設的な意見を言うべきではないか。 今は与野党共に難局に立ち向かうべき時なのに。 へこましてやる。そう思いながら吉田はマイクの前に進み出た。 「ご批判を色々と頂戴いたしましたが、さて、では野党にお聞きしたい。 この危機を乗り切るため、野党としてはどのような案をお持ちでしょうか?」 「それはですね! 自衛隊を削減して! 憲法九条を死守して! 無駄遣いを減らして!」 「自衛隊の削減は現在検討中です。また無駄遣いとは何でしょうか? 具体的に仰って下さい。 そして憲法九条は本件には無関係と考えます」 醜悪なプードルが口をぱくぱくさせている。吉田は少し溜飲が下がった。 「政府としては食料の輸入のほか、野菜工場に品種改良など、多角的にこの問題に取り組んでおります。 エネルギー問題に関してはそもそも大陸側に我々にとって有益なエネルギー資源を採掘する技術がないため、 難航しておりますが、当面は電力供給の時間的制限などで乗り切り、 技術供与とその後の貿易で解決する予定であります。もっとも、同じ資源が存在すれば、ですが。 さて、野党としてはいかがお考えですか? 是非お聞かせ願いたい」 プードルは何も言い返せない。視線で殺してやると言わんばかりの顔で睨むばかりだ。 吉田は冷笑し、着席しようとして、 「案ならあります」 横合いからの声に引き止められた。 「民栄党の田中です。発言をさせていただきたい」 (野党連合のリーダーか) 厄介な奴が来たな、と思う一方、案があるのなら是非聞かせて欲しいと吉田は思った。 民社党のプードルとは違う。田中は実力ある政治家だ。 かなり強引な手も使うが、政治家としての手腕は吉田も評価している。 「首相、輸入だ何だといっても、それでは国民は安心しません」 「どういうことでしょうか?」 「国民は気付いてしまったのですよ。自分たちの国がいかに危うい基盤に載っているかを」 確かにそうだ。今まで何の心配もなく食料が手に入り、電気を無制限に使って何の疑問も覚えなかった 国民は、今回の一件で自分たちの国の欠陥を認識した。 この国だけでは、食料を供給できない。エネルギーもだ。国際社会とはそういうものだが、もうそれがない。 新たな世界で生活するに当たって、国民は自給自足を望むようになってきている。 だが現実問題としてそれが不可能だからこそ、吉田は大陸との協調を望んでいるのだ。 「仰る事は正しいと思いますが、では我々はどうすれば?」 「簡単なことです」 田中は自信満々といった様子で答えた。 「我々には自衛隊があるじゃないですか、アレを有効活用するのですよ」 アンシャム伯領は大陸でもっとも小さな独立国である。 その面積は日本で言う和歌山市の半分程度、人口は一万人にも届かず、これといった産業もない。 だが、その歴史は大陸でも最も古く、権威もまた皇帝家を越える程であり、外交交渉の地として幾度も選ばれてきた。 そのアンシャムはこの日、ひとりの客人を迎えていた。 「我が家の蔵書室はお気に召しましたか、皇帝陛下」 館の主人アンシャム伯爵が林立する本棚の森の中に佇む客人に挨拶をする。 ユグドラ帝国皇帝、ルクツァ一世がそこにいた。手元には数冊の本がある。 「ああ、帝都の図書館もこれほどのものはない。流石、古代帝国の末裔だけはある」 行政府で執務を行っていたアンシャムは不意の訪問を受けていた。事前の連絡もなければ、供回りも僅か、 お忍びであることは明らかである。相手が相手ゆえ、先に自分の城館で待って貰うよう伝えていたが、 行政府から駆けつけてみれば、何故か皇帝はたった一人で蔵書室にいた。 「それで、ご用向きはいかに? まさか我が家で本探しではありますまい」 「いや、そのまさかだ。わたしは望んでいた本を貴公の蔵書室から見つけたよ。これだ」 ルクツァが手元の本を示す。『トールボット物語』、『ファルデアの神話』と記された古めかしい本がそこにあった。 「貴公はこの本を知っているか?」 「はぁ、一応は。しかし荒唐無稽で、とても皇帝陛下のご興味をひくとは」 「少し読んでみろ」 気は進まなかったが、アンシャムは差し出された『トールボット物語』を開く。 ルクツァの示した二冊の本は何れも遥か太古にまとめられた神話や民話の類だ。 『トールボット物語』は英雄騎士物語。『ファルデアの神話』は古代に信仰されていた神々の話である。 中々面白いエピソードもあるが、総体として幼稚であり、 子供の寝物語には丁度いいが、立派な大人の読む本ではない。 だが、読み進めるうちにアンシャムは目を見開く。 「ご冗談を、これは新しく書き下ろされたものではないですか」 その本は見かけこそ古めかしいが、中身は彼の知る物語とは別物だった。 読み物として面白い。苦難、裏切り、友情、逆転、勝利。様々な困難に打ち勝ち、 勝利する英雄トールボットが活き活きと描かれている。 オリジナルがエピソードの集合体だったのに対して、こちらは海の向こうからやってきた 国ほどもある悪竜との対決という点で首尾一貫しているらしく、読み応えがありそうだ。 「その通り。こちらの本も少し目を通せ」 言われて『ファルデアの神話』をぱらぱらとめくる。 (やはり、違う) 意味不明で未整理、矛盾が多かった上にエピソードがそれぞれ独立していたオリジナルの神話より 遥かに読みやすく、体系的に整理されている。 何より、善なるファルデア神と悪なる海神との善悪二分論が旧来の神話との決定的な違いだ。 「皇帝陛下、こんなものが我が家で見つかるわけがありません」 「だろうな、だが、これは貴公の家で見つかったものなのだよ。貴公がその保障をしろ」 「仰る意味がわかりかねます。それでは神話伝説の捏造、歴史の捏造です」 「今まで誰も省みることのなかった過去だ。捏造して何が悪い」 ルクツァの怜悧な目がアンシャムを貫く。アンシャムの背に冷たい汗が流れた。 ルクツァは25歳。アンシャムより20程若い。だが、時折見せる視線は確かに皇帝のそれだ。 「詰まらなさの余りに図書室に放置された神話など不要だ。これから新しく古い神話を我々は研究する必要がある。 私はその二冊の本を始め、多くの『古い』本を国中、いや、大陸中の大学にばら撒き、いずれは農夫の子でも知る 程のものとする」 「何故、そのようなことをする必要が? こんな古い物語だというのに」 「転ばぬ先の杖という奴だ」 ルクツァは不機嫌そうに眉を寄せた。 「『この世界の人たちは酷く遅れてるんでしょう!?』か。舐めたことを言ってくれる。 だが我々が奴らに対抗するには、団結する必要がある。個別ではとても勝てない……」