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仮面ライダーレーテンは、追い詰められていた。 学校帰りのショッピングセンター。モンスターは三体。連携攻撃で行き着く暇もない。 カードも使い果たした。ソードベントはへし折られ、シュートベントは命中せず、ストライクベントはバイザーに入れることすらできず取り上げられてしまった。 モンスターの爪が、レーテンの鎧を削り火花を散らした。それが繰り返し、レーテンの体はボロボロだ。 「うぅ…」 半泣きだ。三匹も一気に相手にするんじゃなかった。もう逃げるしかない。 しかし逃げるにしても三匹のモンスターに囲まれている。 これは遂にヤバいのではないか。モンスターはグルルと喉を鳴らしながらじりじり迫ってくる。 「大変そうだな、木馬」 後ろの方から聞こえた声に、レーテンは振り返った。コツコツと足音も聞こえる。 商品棚の奥から現れたのは、仮面ライダーウィグリだった。 「たすけてぇ」 名前を呼ぶより速くこの言葉が思い浮かんだ。その声に力はなかったが、必死だった。 「え?なに?助けてほしいの?」 ウィグリはわざと聞き返す。 「たすけてぇ」 「俺としてはお前、早く死んでくれた方がいんだけど」 ウィグリの脳裏には、ゲームマスター神崎四郎の言葉がフラッシュバックしていた。 ーお前には戦う意志がある。…戦えー 今の彼の自信の源であるカードが腹部で脈打つ。 「どうしてもって言うんなら助けてあげましょう」 「マジで!?」 「貸しにしとくぜ」 この糞女を葬るのは自分だ。それまでは手の内を見られたくない レーテンの体の粒子化はすでに始まっていた。 「よし、こんどオナニー手伝ってあげる」 「黙れ糞女ぁ!!」 「じゃあねぇ」 レーテンは女子トイレに駆け込んだ。 鏡の外、木馬愛花がエスカレーターにかけていくのを確認した頃には、じりじりと迫っていたモンスターたちはもう目の前だった。 「よし…」 ウィグリは腹部のデッキからカードを取り出す。真新しい、青く輝く翼のカード。 カードがある、ただそれだけで突風が起こり、三匹のモンスターは百円ショップの商品と一緒に吹き飛んだ。 左腕のバイザーが中途半端な大きさの盾の形に変化した。色はウィグリの黒とカードの青。 中央の切れ込みにカードをベントインする。 「サバイブ」 違和感バリバリの機会音声。変化したバイザーの出っ張った部分を右手で掴み引き抜く。 ウィグリの体に趣味の悪い金色の鎧が装着される。 言うなれば、仮面ライダーウィグリサバイブ。 エクスイーグルの爆炎とサバイブの疾風。 引き抜いた盾の一部は剣になり、熱風を帯びる。 ただならぬ雰囲気と強風に圧されモンスター達は動けない。 「おい、こねぇのか」 趣味の悪い青と黒の剣でモンスター達を指しつつウィグリは言った。 モンスターは低く、喉をならす。 熱風がおさまった瞬間、三匹の内一匹がウィグリ目掛けて飛びかかる。続いて他の二匹も。 正面を向き見栄をきり、 「はんっ」 剣を片手で構える。最初に来た一匹。ウィグリサバイブは体をひねり、剣を左から右へ振り抜いた。 体から火花を散らし、倒れふす一匹目。 続いて二匹目と三匹目。右側の二匹目に向かって剣を振り、少しタイミングをずらして左側の三匹目に蹴りを入れた。 二匹目は火花を散らし一匹目の上にかぶさるように落ち、三匹目は十数メートル吹き飛んだ。 やっぱり体がよく動くようになってる。 「こんなもんじゃないぜぇ」 ウィグリサバイブは二匹重なったモンスターに向き直り、剣を左腕の盾におさめた。 デッキからカードを引き抜くと盾におさめた剣の柄の部分に差し込む。 「エクスベント」 いつも通りのコール。 飛び出してくるエクスイーグル。しかしすぐにエクスイーグルの外見は剥がれ落ち、脱皮のように新しい姿が現れた。 「やっぱりお前もか!」 自分が強くなったなら、モンスターだってそうなるはずだ。根拠のない確信だったが、今の彼には根拠など必要ない。 「いくぜぇ!エクスレイダー!!」 エクスレイダーの翼には、巨大な送風機が着いていた。 「あそこだ!」 ウィグリサバイブが指し示したモンスターの足元で爆発が起こる。爆風で吹っ飛ぶ間もなく、送風機から発生した竜巻に爆風ごと巻き込まれ、空中に舞い上がる。そしてみるみるうちに体が溶けはじめ、二匹のモンスターは爆発した。 一気に二匹。残りの一匹はやっと起き上がったところだ。 「あいつもいくぜ!」 モンスターのコアを食らうエクスレイダーに顎で指図すると 「ファイナルベント」 全く容赦は無かった。 モンスターとの距離は20メートルほど。ウィグリサバイブが跨ると、エクスレイダーはバイクに変化した。先程と同じくモンスターの足元を爆発させ、竜巻の中に閉じこめる。 「はあぁぁぁあッ!」 ウィグリサバイブは前輪を浮かせる。所謂ウイリー。 そのまま押し潰すと、鈍い感触のあと、モンスターは爆発四散した。 三匹目のコアにありつくエクスレイダーを横目に、ウィグリサバイブは粒子化が始まった右手を見つめた。 「時間制限はアリか…」 しかしその手をギュッと握りしめると、こみ上げてくる笑いが我慢できなくなった。 「あっはっはっはっはっはっはっ!!いっひっひっあっはっはっはっはっはっはっ!!」 ライダーバトルに勝ち残るのは自分だ。それを確信した笑いだった。 今度の彼の自信には、しっかりと根拠が存在した。 自分の強さという根拠が。
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603: ooi :2017/03/05(日) 14 32 37 タルテソス夢幻会1 憂鬱本編で日本を世界1位の列強へ押し上げる事となった夢幻会の面々はそれぞれ天寿を全うして半ば生涯現役ともいえる超ハードワークから解放された。 しかし、夢幻会の面々は八百万の神様によって新たな転生先を決められていた事をあの世で知る事になろうとは誰1人とて予想出来なかったのである。 夢幻会が新たに転生したのは「ふしぎの海のナディア」に登場するタルテソス王国である。 首都は古代アトランティス人が地球にやって来た時に乗っていたノアの箱舟の1隻であるブルーノアである。 アニメ本家ではエルシス・ラ・アルウォール前国王(ネモ船長)がブルーウォーターを引き抜いてブルーノアのバベルの光を暴走させた事で滅んだ王国である。 夢幻会が初めてタルテソス王国に転生してきたのははるか昔の1400年の事であった。 この時には憂鬱本編でお馴染みの人々は転生しておらず、憂鬱本編夢幻会の超初期のメンバーや他の世界線(ネタスレ、大陸スレ)の転生者に若干の史実転生者が含まれる感じであった。 夢幻会の面々はタルテソス王国が古代アトランティス人の技術力の恩恵を受けて一般的な先進地域より軽く200年進んでいる事を知り、先ずは自分の生活を安定させてからタルテソス王国への接近を開始した。 この時期の国王や重臣が温厚だった事やタルテソス王国の重臣に転生した人物も居た事から転生してから10年後には国政への介入を行っている。 夢幻会は古代アトランティス人の技術をお借りしてタルテソス王国の領土を約半世紀掛けて大西洋まで広げ、自身が持っていた各種技術を活かして日本との繋がりを得ようとした。 夢幻会からすれば、列島日本が生き残る為には19世紀までに出来る限りのチート化を成し遂げなければならないと感じていた。 その為には、過労死を辞さない覚悟で働く事も厭わなかったのである。 無論、古代アトランティス人の技術を解明する為の発掘もアニメ本家のネオ・アトランティス以上に行っている。 この結果、1510年にタルテソス王国使節団が日本に到達するに至った。 使節団はアトランティス人のチート技術を用いた排水量1000tの蒸気機関付き帆船15隻で編成されており、標準装備としてボルトアクション小銃(グラース銃相当)を持った兵士が2000名含まれている。 これは、古代アトランティス人の科学力を1世紀近く掛けて解明した事によるチートの加速によって西暦1500年にはタルテソス王国が約350~400年先の技術をモノにしていたのが大きいだろう。 タルテソス王国使節団が来航した時の日本は戦国時代の初期である。 時の将軍であった足利義稙は、見た事のない大型船に乗り、見た事のない高威力の武器を持った彼等を味方に引き入れれば自身の権力基盤の強化にも繋がると考えてタルテソス王国との友好を結ぶべきと考えた。 足利義稙の権力基盤たる武力の面を支えていた大内義興や細川高国もタルテソス王国との貿易の利益を考えて同調した事で国交を結ぶに至った。 ちなみに、夢幻会の面々が通訳や副使として同行しているので言語の壁はそこまで無かった。 無論、危険だと考える人間も多く居たがタルテソス王国の軍事演習でその武威を見てからは沈黙している。 室町幕府はタルテソス王国の使者を朝廷にも連れて行き、朝廷にもタルテソス王国と国交を持つ有用性を熱心に語り、後柏原天皇もタルテソス王国の寄進によって1511年に即位式を行うのが可能となった事で上機嫌になっており、直ぐに了承する詔勅を出している。 翌年に史実同様に船岡山の戦いが起きているが、タルテソス王国の兵士も足利義稙に味方した結果、足利義澄方の軍勢の8割が戦死している。 この結果、足利義稙は将軍職復帰を史実以上に盤石にする事となった。 また、タルテソス王国が持ってきていた小銃5000挺とその弾薬が贈られた事で軍事力の中核を担っていた大内義興が兵力の半数と共に帰国しても問題無くなっている。 残り半数は足利義稙が頼み込んだ事で入れ替えの兵がやって来てからの帰国となった。 タルテソス王国の使節団もこの年に帰国する事となる。 この際、タルテソス夢幻会のメンバー数人と各種専門家20名程度が日本に残って幕府や朝廷のアドバイザーとして赴任する事となっている。 使節団は帰国の際に各地へ寄り道して様々な種苗を持ち帰っている。 帰国後、独自の品種改良を行ってタルテソス王国と日本の国力上昇に繋げる農業革命を実現している。 室町幕府はタルテソス王国の支援で半世紀の間に近代化を徐々に進め、大内氏や細川氏を中核とした幕府軍は1595年に蝦夷地(北海道)に到達した。 到達後、室町幕府将軍の足利義輝は大政奉還を行って朝廷へ政権を返上し、アドバイザーであるタルテソス夢幻会メンバーによって国号を大日本帝国に変更している。 この時、明朝と些か不穏な空気が流れたがタルテソス王国のお陰で順調に帝国への脱皮を果たした。
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この場を借りてのついで① 昔書いた唯「レジェンド!」で没にしたネタ 梓「トンちゃんが脱皮してる…」 梓「!?」 梓(トンちゃんの背中にチャックが!?) 梓「」ドキドキ ジ・ 梓(DXダイムゲン!?)ジャーン〈ナニスルンダヨ! 澪「ト…」 澪「トンちゃんって男の子だったんだな!」 梓(そこなの!?) 天に輝く五つ星! 五星戦隊!ダイレンジャー! この場を借りてのついで② 昔書いた唯「レジェンド!」で最後におまけとして書こうと思ったけど眠すぎて断念したネタ (地球戦隊ファイブマン編のその後~) ニャーニャーニャーニャー 憂「部室が梓ちゃんで埋まっちゃった…」 梓「いや、私ではないよ…」 梓「それにしても、37匹か…」 梓「あれ、でもここには36しかいないな」 純「何言ってんの、あんたが1号でしょ」 梓「」 憂「12号も無事でよかったね!」 12号「ニャー!」 黒「…」ガチャ 梓「あれ、最後に真っ黒な子がきた…」 梓「よしよし、おいで」 純「あ!梓、ちょっと待った!」 梓「え?」 黒「フシャー!」 梓「わわっ!?」 純「あーもう、それは戦闘に特化した『黒あずにゃん』だよ」 梓「そういう事は早く言ってよ!」 憂(戦闘…?) 純「あ、そうだ!この子達を使って、部員を募集したら?」 梓「どうやって?」 純「例えば…」ジャカジャカ ニャーニャーニャーニャーニャーニャニャー♪ニャーニャーニャーニャーニャニャー♪ニャーニャーニャニャニャニャニャニャニャー♪ニャニャニャニャニャニャニャー♪ 純「どう?」 梓「…………」 梓「いける!」 そして~ 純「あずにゃん17号の、火の輪くぐり~!」ゴオオ 憂「右手に見えますあずにゃん28号にハンカチをかけて、3つ数えると…」 憂「なんと、あずにゃん31号になってしまいました~!」 梓「さあ、みんなで大縄飛びの練習だよ!」 憂「梓ちゃん、また黒がさぼってるよ」 梓「もう!」 梓「にゃー!にゃにゃにゃにゃー!」 黒「チッ…、ウルニャーニャ…」 さわ子「…いつからここはサーカスになったのかしら?」 この場を借りてのついで③ 昔書いたオモッチャマ「放課後ティータイムだコロンの」その後 (我等がヤッターマンの活躍により、さらに結束を強くした放課後ティータイムこと軽音部は、毎日新曲作りに励んでいた!) 律「よし…。いい感じだな」 澪「それじゃあ、一回合わせてみよう」 ♪ ウハハ ウハハ ウハハのハ 私達天才! うんうん とってもプリティー! うんうん 放課後ティータイム~ 私達 私達 百合百合よ~ まどか☆マギカをぶっとばし それいけ それいけ 軽音部 うん!たん! 軽音部~! ♪ 律「いい…」 澪「ああ、ちょっと書いた覚えのない詞があったけど、よかったな」 梓「私達の方向性も決まりましたね!」 唯(う~ん…。なんか、違和感があるような…) 澪「それにしても、最近新しい詞のアイディアがどんどん浮かんでさ」 律「ああ、この前見せてもらった『ウー・アー・軽音部』よかったぜ!」 梓「『これまた軽音部』もよかったですよ!」 唯(言ったほうがいいかなあ…。でも、みんな盛り上がってるし…) 紬「でも、まずはこの『それいけ軽音部』をしっかり練習しよう」 律「ん…?ムギ、そのペンダント綺麗だな」 紬「あ、たまにはお洒落してみようと思って…。どうかしら?」 梓「すごく似合ってますよ」 律「その光ってるの宝石か?すごい綺麗だな」 紬「え?う、うん」 唯「すごく高そう…」 紬「ま、まあそれなりに…(本当は1000円で買ったガラス玉なんだけど…)」 ドガーン!ボカーン! 律「何だ!?ガス爆発か!?」 紬「外からよ!」 律「何だありゃ!?」 唯「でっかいトンちゃんだ!」 マージョ「フッフッフ…。あそこにダイナモンドがあるんだね?」 グロッキー「はい、間違いありません」 グロッキー「それでは、とりあえず呼び掛けてみましょう」ポチッ グロッキー「あ~あ~、もしもし亀よ亀さんよ、ただ今マイクのテスト中~」 澪「喋った…」 ダダッ 唯「あ、さわちゃんだ」 さわ子「ちょっと、ここは学校よ!用がないなら、早く出ていきなさい!」 律「珍しく先生っぽいな」 マージョ「フフン、マイクをお貸しっ!」 マージョ「あ~あ~、聞こえるかい?私達の目的はダイナモンドさ」 マージョ「そこにいる誰かが、持っているのは分かっているんだ。大人しくダイナモンドを渡せば、何もしないよ」 梓「ダイナモンド…?」 さわ子「そんなもんないわよ!」 マージョ「おや、そうかい。少し痛い目に合わせてやらないと、わからないようだねえ」 マージョ「お前達!」 グロッキー「ヨイヨイサー!」 ワルサー「ホイホイサー!」 ゴゴゴ… 律「う、動きだしたぞ!」 ボカーン!ドカーン! 紬「また爆発!?」 ジャーン 澪「今度は、でっかいバッタだ!」 マージョ「あれはタイムボカン2号、タイムドッタリバッタリ!」 グロッキー「ドタバッタンです、マージョ様」 マージョ「どうでもいいんだよそんな事!おのれ~、また邪魔しにきたね!」 マージョ「お前達、今日こそ息の根を止めてやるんだ!」 グロッキー「お任せくださいマージョ様、このスッポンモドキメカの恐ろしさを見せてやります」 律「何だ?戦うつもりか?」 唯「私トンちゃん応援しよう!」 梓「どうみても悪役ですよ…」 続く? ありがとうございました 戻る
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「投影、フューチャータイム! 誰じゃ?俺じゃ?忍者! フューチャーリング、シノビ!シノビ!」 【ライダー名】 仮面ライダーウォズ フューチャーリングシノビ 【読み方】 かめんらいだーうぉず ふゅーちゃーりんぐしのび 【変身者】 白ウォズ黒ウォズ 【スペック】 パンチ力:18tキック力:44.5tジャンプ力:ひと跳び87.4m走力:100mを1.6秒 【基本形態】 仮面ライダーウォズ 【声/俳優】 渡邉圭祐 【スーツ】 永徳 【登場作品】 仮面ライダージオウ(2019年) 【初登場話】 EP18「スゴイ!ジダイ!ミライ!2022」 【詳細】 ウォズがビヨンドドライバーのマッピングスロットにシノビミライドウォッチをセットし変身したウォズの派生形態。 複眼センサーには「シノビ」という立体的な文字が収まっている。 未来に存在する仮面ライダーシノビの力を投影し、その能力を獲得した姿。 シノビ同様の機動力の高さを売りとし、隠密戦闘や変わり身等の忍術を駆使した戦闘を得意とする。 専用武器は基本形態同様にヤリ、カマ、ツエの3つのモードを持つ「ジカンデスピア」。 この姿では主にカマモードで戦う。 【各部】 頭部は仮面ライダーシノビの能力を付与したキャリバーS/FS。 額のクロックブレードSはシノビの能力が追加されたクロックブレードSシノビとなり、全ての周波数帯での通信が可能であり、 デジタル化や暗号化された情報も傍受してしまう。 「シノビ」の文字がトラックアイとして配置されたインジケーショントラックアイ・シノビは10km先の木の葉を見分ける視力を持ち、 暗視モード、透視モードといった複数のチャンネルを状況に合わせて使い分けることで様々な状況下に対応できる。 ウォズのフューチャーリング形態は仮面ライダージオウ、仮面ライダーゲイツなどのライダーアーマーに比べると置き換わっている部分はあまり多くない。 主に頭部と両肩、エクスパンションバンドライナーの部分がセットしたミライドウォッチのデータで、そのライダーの機能を付与する形状に変化する。 仮面ライダーシノビのミライドウォッチデータでエクスパンションバンドライナーはシノビアーマーライナーへと変化。 光学迷彩装置、ステルス機能など仮面ライダーシノビが有する隠密活動に適した特殊装備のほとんどを内蔵する。 胸部装甲にはホーミング機能を持ったシノビシュリケンがあり、ブーメランのように投げても使用者の手元に戻す事が可能。 仮面ライダーシノビの全能力は両肩のシノビショルダーに収められ、この部分の機能によって忍術を現実化し使用する。 相手の影に潜んだり、分身するなどアナザーシノビ以上の高度な忍術を行使可能にする。 必殺技は「忍法時間破壊の術(忍法時間縛りの術)」。 武器の必殺技は「一撃カマーン」。 【活動履歴】 EP18にて登場。 アナザーシノビになることを拒否した神蔵蓮太郎の言葉を受けて仮面ライダーシノビになる未来が確定したとして白ウォズによってシノビミライドウォッチが誕生。 アナザーシノビを上回る機動性で終始圧倒し、神蔵蓮太郎がすでに戦意を喪失していたこともあって一方的な戦いを繰り広げ撃破した。 アナザーリュウガ戦でも変身するが、攻撃反射能力に苦戦。 分身して複数の方向からの同時攻撃を繰り出すも、本体の位置を見抜かれ反射した攻撃を集中して食らう羽目になってしまう。 変身者が黒ウォズに切り替わっても変わらずに変身しているが、ゲイツリバイブ疾風のスピードはこのフォームの機動力を遥かに凌駕するものであり、初戦では敗北したものの、反動の激しいゲイツリバイブを使わせたことで体力を削るという目論見自体は成功した。 ディエンド戦では召喚された仮面ライダーアクセル、仮面ライダーバースと対戦。 アクセルとバースのコンビネーションに翻弄され、スキを突いたディエンドのディメンションシュートが直撃し倒れ伏すも実際は演技であり、変わり身の術を使って油断したディエンドをジカンデスピ(カマモード)で切り裂き盗まれたゲイツライドウォッチなどを回収した。 アナザーアギト戦でも変身。 ゲイツリバイブと機動力に優れたフォーム同士、撃破数の勝負に出て複数に分身した状態でアナザーアギトの大群に突っ込み、一撃カマーンを発動して大量に撃破した。 EP37では地球に飛来する隕石と共に地球にやってきたワームが脱皮し、クロックアップに対処するため変身。 時間を引き伸ばすことで超高速移動するゲイツリバイブ疾風はともかく、スピード自体ではクロックアップより遅いはず(空中戦闘時のシノビの飛行速度までは不明)だが、それにも関わらずクロックアップしたワーム成虫態の動きに追従し撃破に成功している。 以後は強化形態のウォズギンガファイナリーが主体になったのであまり登場しない。 『ゲイツ、マジェスティ』では白ウォズが変身する形態として登場、ディエンドと対決、隙をついてライダーの力を奪い取ることに成功。 『小説 仮面ライダージオウ』ではウォズギンガ系以外でフューチャーリング形態で唯一変身に使用しており、そこからギンガファイナリーにフォームチェンジする。 【余談】 雑誌「宇宙船」によると、仮面ライダーウォズのスーツは該当箇所のパーツを取り替えることで撮影に対応しているとのこと。 具体的には上記の頭部、胴体中央部のパーツ、両肩となる。 なお、「フューチャーリング」という言葉は、「未来(Future)」とテーマ収集から転じて「客演」などを意味する「フィーチャリング」とかけた造語。 意味合いを読めば、「未来からの客演」となるか。フューチャーリングシノビであれば、「未来から(仮面ライダー)シノビの客演」という意味ともとれる。 劇場版のジオウではワクセイフォームが登場していたためか、シノビフォームという名称がパンフレットで記述されている。
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ニーズヘッグ 能力:大地・魔 武器:牙(非常に硬いユグドラシルの根をかじる事が可能な強度を誇る牙) 所持アイテム:ニーズヘッグの牙・脱皮した皮・ニーズヘッグの血 生息地:ユグドラシア下層“ウルドの泉” 所持技 かじる:対象にかじりつき攻撃をする。大ダメージ+HP吸収 食べる:かじるの強化版。凶悪ダメージ+HP吸収+麻痺+恐怖 叩きつける:尻尾から胴体にかけて鞭を撃つような攻撃 威嚇:精神を揺さぶる恐怖の咆哮。全体恐怖 スパーリングクエイク:暴れ回り地面を揺らす地属性広範囲技 詳細 巨大な黒い蛇の魔物 主に見かけるのは泉の近くよりもユグドラシアの根元である 戦闘に入ったならば相応の討伐作戦と実力を持って居なければ勝つのは難しいが 大抵は冒険者に襲い掛かるよりもユグドラシアの根をガブガブして、その事に夢中になっている事が多いため、 相当ニーズヘッグに近づかない限り戦闘に入る事は無い 但し、一度戦闘に入ればその好戦的な性格のままに冒険者に攻撃をしかけてくるだろう フレースベルグ 能力:嵐・炎・氷河 武器:くちばし(まるで自分が天空の王であるかのように誇示する鋭利なくちばし) 所持アイテム:フレースベルグのくちばし・天空の翼(エアレイドの飛行力強化) 生息地:ユグドラシア上層“フレースベルグの園” 所持技 豪風:彼の大きな翼による羽ばたき。風属性のダメージと共に吹き飛ばし効果 疾風:豪速な移動。その進行方向に立っていてぶつかったならばひとたまりも無いだろう 吹雪:氷属性の豪風。豪風のダメージに追加効果で凍結。また、HP減少を与える 灼熱:火属性の豪風。豪風のダメージに追加効果で炎上(HPダメージ。行動不能)を与える なぎ払う:その巨大な翼によるなぎ払い。範囲物理攻撃 突く:鋭利なくちばしによる突攻撃。単体凶悪攻撃 詳細 蒼炎の羽に包まれた魔鳥。その体長は5M前後か 鋭利なくちばしに巨大な羽。力強い足と爪が武器となる。 妖精からは聖獣と崇められ、年に一度、妖精が収穫した食物を供物として献上する事が風習としてあるようだ その妖精の代わりに、ユグドラシア上層に侵入する異端者を排除する。という契約をしているのではないか。という説も有力 蒼炎は不思議と熱く無く、フレースベルグの意思により絶対零度をも超える極寒になったり、全てを溶かすマグマよりも熱い極熱になったりすると言われている(が、これは流石に過剰表現だろうと思う) フレースベルグ自体は草食で、主にユグドラシアの葉を食べている。 世界樹と呼ばれるユグドラシアの葉を食べているおかげか、人間・妖精・魔物・動物・または他の次元の生物等など、多くの言語を理解する知識があると言われている ひょっとしたら、話せば理解の深い魔物かもしれない。と、推測してみたり ジュデアマキシア 能力:天・大地 武器:- 所持アイテム:複翼竜の白翼膜・複翼竜の装甲殻・竜王種の血(※) 生息地:砂漠およびその周辺 所持技 サマーソルト:空中で後方宙返りをしながら巨大な尻尾を叩きつける ウィングストーム:翼で強烈な突風を発生させて敵を吹き飛ばす ドラゴンハウリング:強力な咆哮で周囲の障害物を見境なく吹き飛ばし、破壊する エリュシオン:口内より強大な紫電の塊を放射し、地面に着弾すると同時にそれが広大な範囲にわたって拡散される 詳細 砂漠でも最大級の大きさを誇るサンドイーターを捕食する大型複翼竜。 一生の殆どを空中で過ごしている所為か、その生態は殆ど謎とされている。 性格は外見に似合わず大人しいが、時折砂の村サンドヴィレッジを襲うこともあり、その兆候である村の上空の旋回が見られると、迎撃依頼が各地の街へと依頼される。 迎撃依頼のランクはS。 全身を覆う白銀の外皮装甲は並外れた強固さを誇り、大砲の砲弾が直撃しても傷ひとつ負わず、焦げ跡だけを残したのみだったとされる。 危険度でいえばグランドラグーンと同等かそれ以上なので、例えSランクの支援士であろうとも、本種にむやみに喧嘩を売るような馬鹿な真似はやめておいた方がいいだろう。 また地底洞窟のメギド・ボルカと同じく、現在の人間の技術では『殺しきれない』種族の1つでもある。 ※本種の血は外気に触れると数秒で蒸発する性質をもつため、本種から血を採取するのはほぼ不可能だろう 聖神竜グランディエル 能力:神聖 武器:- 所持アイテム:聖竜の鱗、聖竜の牙、竜神種の血 生息地:天壌 詳細 太古より伝説に残る光の竜神種。 根本的に人智を超えた戦闘力を持ち、現在の人間の力では殺すことはおろか気絶させることすら不可能とされている。 知能は極めて高く、世界の守護者の一柱として数えられることも。 噂によれば、光の満ちる天壌への道、それを抜けた先にいると言われている。 某司書の召還する同名の竜は、彼の力のほんの一旦を映したものに過ぎない 血が与える力は【再生】 魔神竜ルードゼルク 能力:深淵 武器:- 所持アイテム:魔竜の鱗、魔竜の牙、竜神種の血 生息地:魔界 詳細 グランディエルと対を成す闇の竜神種。 戦闘力と言う意味では聖竜と互角で、太古の彼らの戦いは聖魔大戦などと呼ばれているとかいないとか。 この世界のどこかにある亜空間、闇が満ちる魔界と呼ばれる場所にいると言われている。 血が与える力は【腐食】 炎神竜ヴァンエルニ 海神竜アクエリエイス 氷神竜グラキアス 雷神竜トーラバルト 風神竜アークヴェイル 地神竜ロストガイア
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チラ裏みたいなもんで、単なる覚え書きです。 ストーリーに直接の関係は殆どありません。 概観 鬼といえば一般にはさまざまなバリエーションが存在しますが、イメージとしては角が生え、鋭い爪と牙を持った人型の怪物とて描かれる事が多く、スレの鬼は基本的にそのイメージを踏襲しています。 厳密に言えば上記のイメージは丑寅の方角を鬼門と呼ぶことから、牛の角に虎革の腰巻をつけ、仏教で言う羅刹のイメージが混ざり合って生まれたものです。 また、西洋でいう悪魔と呼ばれる存在とは基本的に同一であると考えます。 これは日本における鬼の語意には「強い」「悪い」と言う意味が含まれて居ることに起因し、聖なる者、もしくは人に対して悪にあたるものの象徴をひっくるめて"鬼"と定義しているからです。 西洋に在る場合を悪魔、東洋に在る場合を鬼、と言うわけです。 よって自キャラの鬼は基本的に羊の角に牙と爪、真紅の瞳に悪魔の尾と言うのがデフォルトの造形です。 蛇 まず、このスレにおける鬼を語るに当たって、「蛇」について記述しなくてはなりません。 蛇という動物は文明社会では実感がわきませんが、世界各国の宗教、神話に置いて特別な動物として扱われています。 足を持たない長い体や毒をもつこと、脱皮をすることから「死と再生」を連想させること、長い間餌を食べなくても生きている生命力などにより、古来より「神の使い」などとしてヘビを崇める風習が世界各地で広がっていったからです。 同時に、後発したユダヤ、キリスト系の宗教では既存の宗教観に反発するために「悪魔の使い」とされています(邪神から派生した龍の解釈が東と西で対照的なのもこのためかと)。 聖と悪の象徴という二つの側面を持った存在というわけです。 死と再生の象徴としてはアスクレピオスやカドゥケウスの杖が有名ですし、豊穣の神としての神話も多く伝わっています。 ですがキリスト教において蛇といえば、ルシファーに下ったリリスが遣わし、イヴに知恵の実を齧るよう唆した蛇の話が有名です。 この蛇のエピソードは人を楽園から追放すると同時に、神の奴隷ではなく、自分で考える力を持ったひとつの存在へと人を昇華したという見解もあります。 ここではこのキリスト教の蛇をベースに、蛇神信仰が本来持っていた死と再生を司るという要素をプラスしています。 これらによって、神の子にして、知恵の実を口にしたが永遠の生命を持たない「人間」<=>悪魔の使いで、知恵の実を人に食べさせて自身は永遠の命を持つ蛇、という対比を造っています。 その他の神話における蛇 日本神話における八岐大蛇(豊穣の神) ギリシャ神話におけるテュポーン(最強の怪物)、ウロボロス(無限の象徴) 北欧神話のミドガルズオルム(ラグナロクの引き金) インド神話のアナンタ(世界を支える大蛇) マヤ神話のククルカン(創世に関わる) 等がありますが、多くが「巨大である」「多頭である」という特徴をもっているため、自分としては思い切って、これらは全て同一視して考えています。 デフォルトとしてはやはり「八岐大蛇」をベースに組み込みたいわけですが、それがどうしたのかというと後述↓ 鬼の誕生 スレでは基本的に日本三大悪妖怪の一人、「酒呑童子」を機軸に置いて設定が造られています。 酒呑童子の誕生については諸説ありますが 八岐大蛇の子供説 八岐大蛇が、スサノオとの戦いに敗れ、出雲国から近江へと逃げ、そこで富豪の娘との間で子を作ったといわれ、その子供が酒呑童子という説もある。その証拠に、父子ともども無類の酒好きであることが挙げられる。 越後の国の若者説 絶世の美貌をもっていたことから数々の女性達に言い寄られ、それを断ったことから女性達の怨念を受けて鬼と化した。 この二つの説をベースにしています。 ここで、前述した蛇=八岐大蛇のスタンスを踏まえて 蛇=神、人との対照存在…その子供=鬼=悪の象徴みたいな構図をぼんやりと設定しているわけです。 八岐大蛇(スサノオの敵)=リリスの蛇(ルシファーの嫁)=テュポーン(ギリシャの神の天敵)=ミドガルズオルム(ラグナロクの引き金)--------→の子が鬼=邪悪なスタンスの象徴なんですよ。というのがまず一つ。 もう一つ、越後の国の話での「怨念集合体説」も要素としては取り入れています。 ここから、「鬼は、人の歪んだ愛情、恐怖、憤り、疑心暗鬼のような感情が生み出すんだ」という定義を定めています。 とりあえず鬼ってなんなのよ とりあえず、このスレにおける鬼の存在は アンチ・人間 なわけです。 そのせいで人間が目を背けたくなるマイナスな要素(嫉妬、怒り、疑心)なんかを抱きやすくなります。 激情に駆られると周りが見えなくなったり、短絡的、破滅的思考が多くなったり、やたらと世界にとってマイナスな能力を手に入れたりしてしまいます。 だからといって、別に根っからの悪かというとそうでもないのですが。 鬼は素質さえあればどんな人間でも変異する可能性があります。 溜められた鬱憤や、誰も信じられない疑心暗鬼、吐き出しても収まることを知らない怒りなどがその人を満たし、何かの拍子に"人間からズレ"たら、鬼と定義しても良いでしょう。
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変若水(おちみず、をちみづ)とは、飲めば若返るといわれた水。月の不死信仰に関わる霊薬の一つ。人間の形態説明の一部としても形容される。 月夜見の持てるをち水 日本神話における月神、ツクヨミも変若水の信仰に関わりを持っており、『萬葉集』の中で「月夜見」は、若返りの霊水「をち水」を持つ者として登場する。巻13の歌には、 「天橋(文) 長雲鴨 高山(文) 高雲鴨 月夜見乃 持有越水 伊取來而 公奉而 越得之(旱)物」 天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも 月夜見の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも(3245) 反歌 「天有哉 月日如 吾思有 君之日異 老落惜文」 天なるや 日月のごとく 我が思へる 君が日に異に 老ゆらく惜しも(3246) という歌が見られ、年老いていく人を嘆いて、どうにかして天にいる「月夜見」が持つという「をち水」を取り、あなたに奉りたいと若返りの願望を詠んでいる。万葉集中に「をち水」を詠んだ歌は幾つか見られ、 「吾手本 將卷跡念牟 大夫者 變水白髪生二有」 我が手元 まかむと思はむ ますらをは をち水求め 白髪生ひにたり(巻4・627) 「白髪生流 事者不念 變水者 鹿煮藻闕二毛 求而将行」 白髪生ふる ことは思はず をち水は かにもかくにも 求めてゆかむ(巻4・628) 「従古 人之言来流 老人之 變若云水曽 名尓負瀧之瀬」 古ゆ 人の言ひける 老人の をつといふ水ぞ 名に負ふ瀧の瀬(巻6・1034) とある如く、いずれの歌にも年老いた者を若返らせる「をち水」を求める切実な心が詠み込まれている。 新井秀夫は、論文「「月夜見の持てるをち水」小考」(「日本文芸研究」1991年4月)において、民俗学の見地から、元旦に一年の邪気を払う「若水」を汲む行事が日本各地で多数採取されていること、そして『延喜式』『年中行事秘抄』や佚書『月舊記』などの文献に平安時代の年中行事として、立春の日に行われる「供若水」が見られることを指摘し、古代日本に季節が新しく生まれ変わるのと同じように、春の始めに聖なる水「若水」を汲み、身心を清め生気をたくわえるいわゆる「若水」信仰の存在を考察している。そして、ある種の水を若返りの水として神聖視する信仰は、万葉集においては「変若水」や若返りを詠んだ歌に散見されており、単純な文学的表現とは考えにくいので、これらの歌表現の背景に「若水」信仰が存在したのではないかと考察している。 アカリヤザガマの若水と死水 「月と若返りの水」の結びつきは、ロシアの東洋学者ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・ネフスキーが著した『月と不死』(東洋文庫)に採集された、沖縄の民族伝承にも語られている。 太古の昔、宮古島にはじめて人間が住むようになった時のこと、月と太陽が人間に長命を与えようとして、節祭の新夜にアカリヤザガマという人間を使いにやり、変若水(シジミズ)と死水(シニミズ)を入れた桶を天秤に担いで下界に行かせた。「人間には変若水を、蛇には死水を与えよ」との心づもりである。しかし彼が途中で桶を下ろし、路端で小用を足したところ、蛇が現れて変若水を浴びてしまった。彼は仕方なく、命令とは逆に死水を人間に浴びせた。それ以来、蛇は脱尾して生まれかわる不死の体を得た一方、人間は短命のうちに死ななければならない運命を背負ったという。 月と太陽の慈悲がかえって人の死という悲劇の誕生となったが、神は人を哀れみ、少しでも若返りできるよう、その時から毎年、節祭の祭日に「若水」を送ることとなった。これが「若水」の行事の起こりである。 若水信仰の起こり 中国の古い伝説には若返りの仙薬の話が幾つもあり、『淮南子』には、姮娥が西王母の「不死の薬」を盗んで月の世界に走った話がある。このような仙薬の話が、若返りの薬の発想の由来となったとも見られる。これと同じ発想の話は世界中に広がっており、フレイザーは死の由来話を分類して、蛇など脱尾する動物にからむ「蛇と脱尾(脱皮?)」型と、月の満ち欠けを人の死の由来を結びつけて考えた「月盈虚」型に分けている。アカリヤザガマの話は両者の結合した形となっており、しかもその話の結尾が若水の行事の由来話となっている。 このように古くから世界中で月と不死・再生が結び付けられて来たのは、月の盈虚が見せる死と再生の姿であろうと考えられている。月は新月から上弦の月、満月、下弦の月、新月…という満ち欠けのループを繰り返している。すなわち、月が満月という盛りを過ぎて衰え、下弦の月となってしまいには新月として消えてしまうが、また三日月として夜空に復活する、というループが直接に死と再生を想起させ、そこから更に不死と不老を願う観念と結びついて、「若水」の信仰が成立したと考えられる。
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『抜け殻』『脱皮』『小箱』の続きになります。 ======== 『空蝉』 「緊急事態です!」 暑い日だ。燦々と輝く日差しが降り注ぐ部室に、爛々と目を輝かせる古泉がいる。 「どうした、古泉」 「どうも、機関の非主流派が橘の手の者と通じているようで、あなたのことを狙っているとの情報が入りました」 橘? あの機関の敵対組織のやつか? 「ど、どういうことだ?」 「最近の安定した状況に、機関の存在意義が危ぶまれていると勝手な解釈を……」 「それで、俺を狙ってハルヒを焚きつけようというのか?」 どうしてみんなハルヒにちょっかいを出したがるんだ。酷い目に遭うのはいつも俺なのに。 「とにかく、差し迫った危険を回避するためにあなたは身を隠す必要があります」 「どうすればいい?」 古泉は長机を回りこむと、ぐっと俺に近づいてきた。そして、ポケットから小さな箱を取り出すと、俺の目の前に差し出した。 「ここに僕の抜け殻があります、これを被って僕に成りすましてください」 「何?」 「あなたと僕では、ほぼサイズ的には問題ないと思います。ごく一部分を除いては」 「一部分ってどこなんだよ」 「まぁまぁ。とにかく服を脱いで裸になってください。そして、これを身に着けるんです。一部分も含めてです」 「こ、こら、それ以上変に近づくな、自分でできる……」 「いえ、あなたはただじっとしていればいいんです、フフ」 「やめろ、古泉! ベルトから手を離せ!」 「いいじゃないですか、お手伝いしますよ」 「や、やめろおぉぉぉぉぉー」 ……ぉぉぉぉおおおお、お? 視界の中に見慣れた天井の模様がはっきりしてきた。暗い……、夜か? ここは、俺の部屋? どうなっているんだ? 今のは……、そうか、夢、か……。 ベッドから身を起こして時計を見ると三時だった。 いやな夢だ。なぜ俺が古泉にズボンを脱がされなければならないんだ。しかもあいつは自分の抜け殻を着ろと迫ってきた……。 俺は額の冷や汗を右手で拭うとベッドから降りて机の前に行き、引き出しの奥から、三つの小箱を取り出した。 これのせいであんな夢を見たのか……。 成り行きで手にすることになった、宇宙人と未来人の抜け殻が入った小箱を、俺はぼんやりと見つめている。 成り行き? いや、長門が半ば強引に……、でも、俺にも興味があったのは事実だ。まだ、小箱の中身を三つを並べてじっくりと眺めてみたことは無いけれど。 『緊急事態に陥った時に使って』 先日の長門の言葉が思い出された。とりあえず、しばらくの間は、常に持ち歩いた方がよさそうだ。緊急事態が起ころうが起こるまいが、この小箱の存在を誰かに知られるわけにはいかないしな。 ふぅ、もう一眠りできるだろうか? 小箱を引き出しにしまい、俺は再びベッドに潜り込んだ。 結局、その後もたいして眠れなかった。おかげで、今日は授業中も寝てばかりだった。なに、普段と変わりないって? ほっといてくれ。 「あんた、相変わらずよく寝るわねー、どっか悪いんじゃない?」 午後の授業が始まる前のことだ。俺の後ろの席のハルヒはあきれた様子だった。 「いろいろ苦労があるんだよ」 「なにが苦労よ。ホントに苦労してるんなら、寝てるヒマなんかないわよ」 「へいへい」 当面の苦労の種は、かばんの中の三つの抜け殻だが、なぜそんなものを俺が手にする事態になったか、ということについて「なぜなぜ」と、とことん辿っていくと、行き着く先は、ハルヒ、お前にぶち当たるんだぜ。すべての道はハルヒに通じている。責任とってくれよな。 「なに? なんか言いたいことでもあるの?」 「いいや、なんでもない」 「ふん」 ハルヒはプイっとふくれて窓の外を見ている。でも、心底怒っているわけではなく、会話を楽しんだ、と言う感じのリラックスした横顔だった。 その後の午後の授業も記憶がはっきりしないうちに終了したようだ。気がつけばすでに放課後モードになっていた。 「じゃ、お先」 「うん、あとで」 掃除当番のハルヒを残して、俺は教室を出て部室へとむかった。ハルヒは結構律儀に掃除はしている。適当に理由つけてサボったりしそうにも思えるんだが、こういうところも常識が支配しているようだ。その勢いで、妙な灰色空間など出現させないでいて欲しいわけだが、その辺は古泉の守備範囲なので俺としては深入りはしないし、したくもない。 いつものようにノックして部室のドアを開けると、デフォルトの長門に加えて珍しく古泉も来ていた。いつもの笑顔に少し怪しい光を感じたが、それは昨夜の夢のせいかも知れない。朝比奈さんもまだのようなので、おいしいお茶はいましばらくお預けだ。 「よお、早いな」 「どうもです」 古泉は少しばかり頭を下げた。 「涼宮さんは掃除ですか?」 「そうだ、まじめにやっているようだな」 俺はいつもの場所に腰を下ろした。長門は、普段どおり丸テーブルの横でなにやら分厚い本に目を落としている。たまにはマンガでも読んでみてはどうだ、と言ってやりたいね。結構気に入るかもしれないしな。 一方、古泉は長机の上で組んだ指先をじっと見つめていたが、顔を上げるとすこしばかりまじめな表情で静かに話し始めた。 「涼宮さんがいらっしゃる前にお話ししておこうと思うのですが、実は、あなたに危機が迫っているようなのです」 「なに? 俺に?」 長門も少し驚いた様子で顔を上げた。 古泉は軽く腕組みし、やや伏し目がちに物憂げな様子で続けた。 「機関の非主流派の一部が、例の橘の手の者と通じているようで……」 ん、あ、あれ? どこかで聞いたような状況……。 「どうやら、最近の安定した状況に対して、機関の存在意義が危ぶまれていると勝手な解釈をしているようです」 な、な、な、なにぃ? 「そこで、涼宮さんを焚きつけてコトを起こすために、あなたに危害を及ぼそうと……」 そこで古泉はぐっと体を乗り出すと、少しばかりいつものニヤケ顔に戻った。 「でも大丈夫です、フフ」 眼前に迫ってくる古泉の笑顔に、昨夜の夢に登場した古泉の危険な笑顔が重なって、俺の背中に電気が走った。思わずズボンのベルトを確認し、少しばかり後ずさりすると、俺は叫んだ。 「ま、ま、待て、まさかお前の抜け殻を被って身を隠せ、なんて言うんじゃないだろうな!?」 「は? 僕の抜け殻? 何のことですか?」 あっけにとられた古泉がぽかんと口を開けた後ろから、長門の声がかぶさってきた。 「彼は今、わたしの抜け殻を持っている」 「な、長門さんの抜け殻? なんですか、それは?」 こんな表情の古泉など見たことが無い。狐と狸に同時につままれたようだ。 どうやら古泉は俺のズボンを強引に下ろそうとしているわけではないことははっきりした。とりあえず落ち着いた俺は、椅子に座りなおすと、古泉に面と向かい、状況を説明することにした。 「うん、いや、実はな……」 俺は例の抜け殻のことをかいつまんで古泉に話した。古泉は、時折、「ほぉ」とか「なるほど」とか、大げさに相槌を打ちながら話を聞いていたが、最後に、 「安心してください、僕は脱皮はしません。あなたと同様にこの時代を生きる普通の人間ですので」 そういって、いつもの笑顔で微笑んでいた。 「頼むぜ、お前の抜け殻まで俺は持ち歩きたくはないからな」 古泉は無言で肩をすくめて苦笑いを見せたが、すぐに真顔になって話し始めた。 「いずれにせよ、あなたに危険が迫っていることは確かです。どうやら長門さんの抜け殻をうまく利用することも考えないといけないようです」 「同意する」 「長門……」 「そろそろ涼宮さんも掃除を終わってこちらにこられる時間です。続きは、よろしければ長門さんのご自宅で、いかがですか?」 古泉の問いかけに長門は間髪を入れずに答えた。 「わたしは構わない」 「わかったよ、なんだか知らんが、俺もヒドい目には遭いたくないからな」 「では、今日の解散後にあらためて長門さんのところに集合しましょう」 「朝比奈さんはどうする?」 「そうですね、とりあえず僕たち三人だけでいいんではないでしょうか」 「同意する」 再び即答する長門。 うん、そうだな。ここに朝比奈さんが入っても、申し訳ないが正直役に立つとは思えない……。古泉の言う通り、俺たち三人でコトに当たるのがよさそうだ。 「じゃ、よろしくな」 その後すぐにハルヒと朝比奈さんが前後して部室に到着した。そして、いつもと変わらぬように団活動にいそしんだ俺たちは、長門の合図と共に今日のメニューを終了し家路についた。 坂の下で解散した一時間後、俺と古泉は長門のマンションのリビングでコタツ机の定位置に座っていた。このコタツ机とも長い付き合いになるわけで、おのずと座る位置が固定してしまっている。慣れとは恐ろしいもので、たまに違う位置に座るとなんとなく落ち着かない気がするようにさえなった。 今、その机の上には、長門が出してくれた三つの湯飲みと、例の三つの小箱が並んでいる。古泉は長門の抜け殻の入っている青い箱を手に取ってしばらく観察しいていた。 「そうですか、これがTFEI端末の体表保護皮膜ですか」 「あとそのピンクのやつが朝比奈さんの、えっと、SPSだったっけ?」 長門の方に振り向いて確認してみると、即座に応答が返ってくる。 「そう、Surface Protect Shield」 「それが入っているらしい。俺も実物はまだ見ていないんだが」 朝比奈さんが『見ないで』と言ったので今のところ俺はその言葉に忠実に従っている。箱の中になにが入っているか確認したわけではないが、生真面目な朝比奈さんのことだ、きっときれいにたたまれた朝比奈さん自身の抜け殻がそっと納められているはずだ。 「先ほどの話だと……」 古泉は、手にした小箱を再び机の上に置いた。 「中に入ることができるそうですね」 「彼は、わたしの中に入ろうとした」 「『わたしの抜け殻の中』だ」 俺は少しばかり情報の伝達に齟齬が発生しそうな言い回しを修正した後、話を続けた。 「長門は小柄なんで、抜け殻の中は狭いんだ。肌に密着するし大変だったんだ。片足入れるだけでも結構時間がかかった」 俺はあの夜のことを思い起こした。右足だけ抜け殻に入れたところで抜けなくなってしまったことを。そして、夜中にここまで駆けつけて、長門が俺の太ももをサワサワしてくれたおかげで、やっとのことで俺も脱皮することができたことを……。 「大丈夫、少しばかり情報操作を行うことにより、抜け殻の着脱は以前より容易に行うことができるようになるはず」 「そうすると、後は衣装ですね」 古泉は俺と長門を交互に見ながら、自信たっぷりに頷いた。 「幸い、長門さんはほとんどいつも制服をお召しです。つまり、あなたの体のサイズに合わせたセーラー服があれば、いつでも長門さんに成りすますことができます。すぐにでも機関の方で用意させましょう」 「おい、待てよ、すると俺は抜け殻と一緒にセーラー服まで持ち歩く必要があるわけか?」 「当然です。さらに言うなら、必要に応じて長門さんと行動を共にした方がいいですね」 「長門と?」 「長門さんになりすまし追っ手を振り切るためには、まずは長門さんと行動を共にしないと意味がありません」 ふむ、そりゃそうだ。俺一人のときにいきなり長門に変身したら怪しいことこの上ない。 「今週末は、久々に例の不思議探索が予定されています。入手した情報によると、どうやらその日に何か計画されているようです。おそらく、探索が終了し解散した後、あなたが一人になった時を狙ってくるのではないかと予想しています」 古泉は、一言一言を噛みしめる様にはっきりと話すと、湯飲みを手にしてお茶をすすった。一瞬の静寂が無機質なリビングを包み込んだ。 「残念ながら、連中がどのような手段で来るかまではわかっていません。とりあえず探索終了後、敵の出方を見るために、長門さんと一緒に少しばかり街中を歩いてください」 「了解した」 長門は小さく肯いた。何かこう闘志というか決意に満ちた無表情だった。 「機関のものも適切に配置させます。うまく、連中の裏切りの証拠を入手できれば、今後の動きも抑えることができます」 ううむ、それってつまり……、 「……俺は囮か?」 「すみません」 申し訳なさそうに頭を下げた古泉だが、静かに頭を上げると力強く宣言した。 「しかし、当初予定していなかった長門さんの抜け殻を使うことによって、危険度はかなり緩和されると思われます。大丈夫です、あなたに危害が及ぶようなマネはさせません」 「わたしもついている。安心して」 長門が漆黒の瞳を輝かして俺のことをじっと見つめている。そんな長門は小柄ながらもとてもたくましく見える。長門がそういってくれるなら、それは俺にとって十分な重みを持っている。 「わかった、任せる。よろしく頼む」 翌日の放課後には、古泉から俺サイズの北高指定セーラー服が届けられた。 今、かばんを開けられると、俺は『変態』の称号をほしいままにできそうな状況ではある。女性の抜け殻三つにセーラー服だ。しかし、これらのアイテムは俺の身の安全のために必要なものらしい。あぁ楽しきかな、この日常……。 そして、毎日かばんの中身を気にしているうちに、あっという間に週末がやってきた。 ======== 週末、天気はよかったが俺の気分は晴れなかった。 そういえば久しく不思議探索はやっていなかったので、なんとなく新鮮な気もするのだが、やっぱり俺の奢りからスケジューリングされていたので、結局は、以前と一緒だった。 ただひとつ違うのは、今日は、俺に危機が迫っているらしいということだ。ただし、それも探索終了後ということなので、それまではごく普通に振舞わなければならない。 例の小箱と変装用のセーラー服は駅のロッカーに入れておいた。普段手ぶらで探索に来ているので、今日だけ紙袋をぶら下げるわけにもいかないからな。探索終了後に取り出して、長門と一緒に街中をうろつく予定だ。 ハルヒは、久々の探索と言うことで、すこぶる上機嫌だった。さらに午前の探索は、珍しく俺とのペアになった。いろいろありそうな今日一日のことに思いを巡らし若干ブルーな俺に、 「どうしたの、元気ないわね。あたしが元気あげようか?」 などと優しい言葉をかけてくれる。普段からこれくらいのことをしてくれれば、俺も苦労することは何もないのだが。 「お前の元気を貰ったら、俺はオーバーフローしてしまうよ」 「ははは、じゃあほどほどにしておいてあげるわ」 確かに、今日のハルヒからはいつも以上に、こっちまで元気させてくれるオーラが湧き上がっているのを感じる。午前中、一緒にあちこち回っているうちに俺の気分にも少しばかり晴れ間が差してきた。 午後は、長門と古泉と一緒の組になった。どうも、長門がくじ引きに少し細工をしたようだが、まぁ、いいだろう。俺たち三人は喫茶店に入って、今日のこの後の段取りについて、もう一度確認した。 「すでにあなたには尾行がついているようですね」 「ほんとか、古泉?」 「おっと、なるべく普通に話してください。二、三名が入れ替わりながらずっと尾行(つけ)ているようです。それ以外にも何人かいるようですが、まだ全貌はつかめていません」 せっかく午前中にハルヒに貰った元気だったが、一気にしぼんでしまいそうな感じだ。いったい、俺をどうしようと言うのだ。 「とにかく、普段どおりにしていてください。解散後もできるだけ長門さんと行動を共にしてください」 「わかったよ。長門、よろしくたのむ」 「了解した。大丈夫」 その後は三人でできるだけ人の多いところを選んで探索を行った。もちろん、万が一のことを考えてのことだったが、特には何も起こらなかった。確かに、万能宇宙人と、機関の主流派が一緒じゃ手出しはできまい。 「今日は、久しぶりに楽しかったわ。やっぱり不思議探索は我がSOS団の活動の原点ね」 午後の探索も終了し集合場所に集まった俺たちを前に、ハルヒは満足したように宣言した。 「今日は解散! お疲れー」 「お疲れ様でしたー」 朝比奈さんと一緒に去っていくハルヒの後姿を見送りながら、いよいよこれからが俺にとって本番であることを自覚し、少しばかり身が引き締まる思いだ。 「では、僕も失礼します。この後は長門さんにお任せして、僕はバックアップの方に回ります。大丈夫です、安心してください」 俺は機関に百パーセントの信頼を置いているわけではないが、SOS団結成以来のゴタゴタを通して、古泉のことは良き戦友として信頼してやってもいいと思っている。 「頼むぜ、古泉、長門」 そして、長門だ。この万能有機アンドロイドには俺は言葉にならないぐらい世話になっている。何か恩返しができればいいんだが、俺にできることは残念ながらほとんど何もないのが悔しい。 「例のものを……」 俺は長門と一緒に、駅のロッカーから小箱とセーラー服の入った紙袋を取り出すと、街の探索を再開した。 その後、しばらくウィンドウショッピングしたり、喫茶店でコーヒーを飲んだりしたが、俺は気が気じゃなかった。長門はいつもの様に終始無表情だったが、おそらく全身全霊をかけて周囲の状況を探り続けていたのだろう。 「なぁ、長門」 「なに?」 「やっぱ尾行されているのか?」 「店の外に一名、さらにその後方に二名。ただしそのうちの一名は古泉一樹側のもの」 「そ、そうなのか」 ううむ、どうしようもないな。長門がいてくれて助かった。俺一人だと、あっという間に敵の手に落ちて、すき放題されていたことだろう。 喫茶店を出てしばらく歩いていたが、そろそろ、街は暮れなずんできた。いつまでも長門といれば俺はおそらく安泰だが、ここは囮となって今後の憂いを排除する方向に持っていかないと、いつまでたっても危険と隣り合わせの追われる立場だ。 ふと隣の長門を見ると、漆黒の大きな瞳の輝きが五割ほど増しているのがわかった。何かある。 「どうした? 長門……」 「徐々に追っ手が間合いを詰めている」 「なに、ほんとか?」 「人数も増加している。危険」 「お前と一緒なら大丈夫だろ」 「そう。だが、彼らは、あなたがわたしと別れて一人になる時を待っている。そして、その時が近いと判断している」 「じゃあ、そろそろ……」 「そう」 通りを曲がると、急に人通りが少なくなった。しばらく行くと、長門が、 「こっち。ここに行く」 といって、俺の手を取って右側の建物に入ろうとした。 「おい、どこに……、って、これラブホ……」 「そう、ここで休憩」 「いや、あの、ちょ、ちょっと待て……」 「待てない」 こんなところを誰かに見られたらどうするんだよ、という突っ込みを入れる隙もなく、俺は長門に引っ張られるままにラブホテルに連れ込まれてしまった。 しばらくは何がどうなったのかよくわからなかった。ロビーのようなところの各部屋を紹介するパネルを操作しているうちに、気がつけば、シックな内装の少し大きめの部屋の、やはり少し大きめのベッドに長門と並んで腰掛けていた。 こんなところに長門と二人でいるなんて、なんか場違いだ。危険が迫っていることも忘れて、思わずあちこちきょろきょろしてしまうのが情けない。 テレビドラマなんかで見たことのあるようなケバケバしさはなく、全体的に落ち着いた感じのする部屋なのだが、妙に大きい鏡とかベッドの枕もとの用途のわからないスイッチ群とかが、怪しげな雰囲気を醸し出している。 「何がなんだかわからん」 「はじめて?」 「そうだよ」 「そう、わたしもはじめて」 そのわりにはチェックイン(というのか?)の手際はよかったな。長門のことだから何か情報操作でもしてくれたのだろうか。 「変装してすぐに出て行く必要はない。少しばかり時間をつぶし、相手の注意を引いてからの方がよい」 ベッドの縁にちょこんと座った長門は、隣に座っている俺の方を見上げながら少し首を傾けて言った。 「せっかくだから、少し休憩していく?」 二・三度まばたきした長門の大きな瞳に壁際の間接照明の明かりが映り込んでなんとなく潤んで見える。 「え、え、休憩って?」 「そう、休憩」 いや、あの、長門、それって……、えっ? 長門はそのまま仰向けにベッドの上に倒れこむと、組んだ手をおなかの上に載せて天井を見上げている。 「天井も鏡……」 その言葉で俺も見上げてみたが、確かに鏡だ。ベッドの上の長門と、首だけ見上げている俺の姿が映っている。 「なぜ?」 「ん、なぜって言われても……」 「不思議……」 長門はそうつぶやくとそっと瞳を閉じた。 「おい、長門……」 淡い灯りのなかで、長門の白い頬にやや朱みが差しているのがわかる。制服の胸元のリボンがゆっくり上下しており、やがてゆったりとした寝息が聞こえてきた。どうやら本当に休憩するつもりのようだ。 「……長門」 宇宙人製万能有機アンドロイドとしてかなりのエネルギーを使って、ここまで俺のために注意と警戒を払っていてくれたんだろう。さすがの長門でも少しばかり疲れたに違いない。 「すまんな、長門……」 俺はしばらく長門の寝顔を見つめていた。が、長門が初めて脱皮した日の俺の部屋のベッドで見たうつぶせ姿の白い裸身が浮かんできて、どうにもこうにも頭の中で妄想と言う名の大竜巻が暴れまわっている。こんな時に俺って奴は……。 「も、もういい。俺も寝る!」 勝手に宣言した俺は、長門の隣に寝転がると少しばかりの眠りに落ちたようだった。 「……ねぇ、お・き・て」 ん、あぁ? 「そろそろ、時間。お・き・て」 目を開けると、俺のことを覗き込む長門の黒い瞳が視界に入った。さらにその後方では、ぼんやりと目を覚ましつつある俺の姿が、天井の鏡の中に映りこんでいた。 「……な、長門?」 何か妙に甘い起こされ方をしたような気がするのは、夢の続きだったのかも知れない。俺はゆっくりと上体を起こすと、長門の方に振り返った。すでに長門からは戦闘モードに突入したような力強さが感じられる。やはり夢だったのか……。 「着替えて」 長門は、青い小箱とセーラー服の入った紙袋を俺に手渡した。 「えっと、服は全部脱いだ方がいいか?」 「その方が抜け殻が肌になじむと思われる」 「そ、そうか」 「手伝う?」 長門は、じっと俺の目を覗き込むように問いかけてくれたが、長門の前で素っ裸になるわけには行かない。 「いや、いいよ、あっちで着替えてくる」 俺はあわてて小箱と紙袋を受け取ると、洗面所の方に飛びこんだ。 それにしてもどこに行ってもでかい鏡がある。こういうところはどこもそうなのか? それともこの部屋だけのことなのか? 俺は小箱を開けると、長門の抜け殻を取り出した。ふわっという感じで広がると、以前に見た透明な長門が現れた。 まさか本当にこれに全身入ることになろうとは……。 俺は服を脱ぎ捨てると、以前と同じように抜け殻の背中の裂け目から右足をそっと入れた。今度は、長門が何か細工をしてくれたようで、前と比べると、あっさりと右足を入れることができた。ふくらはぎを触ってみたが、やはりキメが細かくつややかな肌だ。 おっとそんなことを確認している暇はない。 俺は、左足も同じように突っ込むと、太ももの辺りを手繰りあげながら、腰から下を抜け殻の中に納めようとした。さすがに太ももも腰回りも小さかったが、抜け殻は弾力よく伸びて、俺の下半身はすんなり納まった。 よし、このまま一気にいくか。 今度は上半身だ。長門と俺では十センチ以上の身長差があるので、肩の位置は結構違ったのだが、やはりこの抜け殻はよくできている。グーンと伸びて結局、両手と頭を入れるのにも苦労はしなかった。まぶたと鼻の位置を合わせるのに少しばかり手間取ったが。 ふぅ、入った……。 入ってしまえば締め付け感は少しもない。俺は、口の辺りのしわを延ばしつつ、ゆっくりの目を開けて、鏡に映った自分自身の姿をそっと見つめた。 そこで見たのは、洗面所の蛍光灯の明かりの中で、つややかで滑らかな白い肌が輝いている長門の姿だった。 もっとも、全体的な体つきは小柄な長門ではなく、俺だった。ふたまわりぐらい大きな俺が入ったおかげで抜け殻は伸びきってしまい、せっかくの胸もぺったんこだ。ただし、先端の薄いピンクの小さな突起だけははっきり残されている。 思わず指でつまんでみたが、ぺこっとつぶれてしまった。そりゃそうだ、抜け殻なんだからな。 さらに視線を下のほうに向ける。 当然ウエストラインにはくびれも変化もない。そしてもっとも神秘的な場所なんだが、こればかりはどう表現してよいものか……。所詮中身は男だ、根本的な造りが違う。あとは想像してくれ。 すまん、長門。 そういえば、この状態ではトイレにも行けない。先に用を済ましておくべきだった。 そんなことを考えながらひと通り観察が終了したので、俺は紙袋から制服を取り出した。その時、白いものが床に落ちた。さすがだ古泉、下着まで用意していたのか。 少しばかりレースで縁取られた純白の女物のパンツをはく。このパンツは古泉の趣味なのか、それとも森さんあたりが用意してくれたものなのか。小さいくせにきちんとはくことができた。抜け殻同様によく伸びるようだ。 ブラは入っていなかった。どうやら、ブラをする必要がないことに古泉は気づいていたと見える。あらためて言おう、さすがだ古泉! その後、どうにかセーラー服を身に着けた。短いスカートがどうもなじめない。女性たちはよくこんなスカスカするものをはいていられるもんだ、無防備なことこの上ない。 最後に紺のソックスをはいて、あらためて鏡の前に立ってみた。 うーん、でかい長門だな、やっぱり。 顔の輪郭は違うが、個々のパーツは長門そのものだし、セーラー服を着ると、体のラインが隠される。スカートから伸びる足も、皮膚の色と質感だけは長門と同じだ。太さはどうしようもない。スカートでなくパンツルックだとごまかせそうだな。 俺は、鏡の前でくるっと一回りして、ポーズを取ってみた。さらりとたなびくショートカットの髪、そして、一瞬舞い上がったスカートの中に白い下着が見えたような気がしてドキリとする。 鏡の中の俺に向かって、首をかしげて軽く微笑んでみる。ふむ、長門が微笑むとこんな感じなのか。か、かわいいじゃないか……。 いかん、いかん、あれは俺自身だ。俺は決して変な趣味はない。 「よし」 気合を入れた俺は洗面室を出て、長門の待つベッドルームへと向かった。 「すまん、待たせた、な、な、長門? その格好……」 ベッドの横で振り返った制服姿は、長門ではなくて喜緑さんだった。 「喜緑江美里の抜け殻を着た、……あなたもセーラー服がよく似合っている」 さすがに俺が長門の抜け殻を着るより、喜緑さんの抜け殻を着た長門の方が遥かによくマッチしている。どこからどう見ても喜緑さんだ。 その喜緑長門は、俺のことをじっと見つめている。何か珍しいものでも見るような表情に思えたのは、俺が気にしすぎているからか。 「あなたがここを出てしばらくしてから、わたしはこの格好で出る。できるだけ人の多いところを通ってわたしのマンションに向かって」 そういって、喜緑長門はマンションの鍵を俺に手渡した。 「ここを出るときには、見た目が小さくなるように、少し体を縮めた方がいい」 「うん、わかった。じゃ、行ってくる」 「気をつけて」 おそらくは古泉側の誰かが俺のことをフォローしてくれているはずだ。頼むぞ、古泉。 俺は、少し体を縮めるようにしながら、できるだけ自然な感じでラブホテルを後にした。追っ手が来ているかなんて俺にはわからない。長門に言われたように、人通りの多いところを選びながら長門のマンションを目指した。 長門に変装しセーラー服まで着ているので周囲の視線が気になって仕方がなかった。どれほどの時間が経過したかもわからないし、どこをどう通ったのかもわからないまま、やっとのことで長門のマンションが見える所まできた。もう少し、向こうの角を曲がってちょっと行けば、エントランスだ。だんだん歩みが速くなる。 ついには少し小走りになって角を曲がった瞬間、誰かに腕をつかまれた。 「うぐっ?」 「そんなにあわててどうしたんですか?」 聞きなれない太い声が耳元で聞こえた。 「どこで手にいれたのか知りませんが、妙なものを着ていますね。すっかり出し抜かれるところでした」 「誰だ?」 「名乗ったところであなたはご存知ないですからね、どうでもいいじゃないですか」 しまった、角を曲がるときには注意しろ、と言われていたのに。ここまできて油断した。 「離せ!」 「それは無理な注文です」 「くっ!」 ごつい腕に両肩をがっしりとつかまれて俺は身動きが取れなかった。長門、古泉、頼む、早く来てくれ! 無駄な足掻きと知りつつも、俺は何とか振りほどこうともがいていた。 と、その時、 「あれ、長門さん、どうしたの?」 どこかで聞いたことがある声がして、俺は頭を上げた。 「あ、あ、朝倉ぁ!?」 ======== マンションのエントランスの方からゆっくり歩いてきたのは、制服姿の朝倉だった。 なぜだ、なぜ朝倉がこんなところに。 やばい、ますますやばい。すでに機関の非主流派は情報統合思念体の急進派とも連携していたというのか? くそっ、ここまでか……。 「誰だ、お前は!」 男が朝倉に向かって叫んだ。 おや、こいつは朝倉を知らない? 「それより、あなたは何? 長門さんをどうしようというわけ?」 ん、どういうことだ? この朝倉は……。 朝倉が一歩前に進み出ると、俺の肩をつかんでいた男の力がフッと抜けたのがわかった。俺は男の手から抜け出すと、転がるようにして朝倉の背後の電柱の影に駆け込んだ。 「わたしと戦うつもりなら、容赦はしないわ」 朝倉は以前に俺を襲った時と同じ様に、にこやかな微笑みを浮かべながら男との間合いを徐々に詰めている。 「……TFEI端末か?」 男はふり絞るようにつぶやくと、ゆっくりと後ずさりを始めた。 「そうね、あなたたちの言葉を借りるなら、そう言うことになるわね」 朝倉は、今にも飛びかかろうとする猫科の動物のように体を少し縮めた。 「ちっ」 男が後方に走り出そうとした瞬間、白い影が曲がり角から飛び出して男の足を払った。 勢い余った男は地面の上で二回転ほどして受身を取ったところで、今度は別の影が飛び出してきて後ろ手に男を押さ込んだ。 「き、喜緑さん!」 俺は思わず叫んだが、最初の影は、喜緑さんの格好をした長門だ。二番目の影は白いブラウスにタイトスカート、そして髪をポニーテールにまとめた、できる秘書風OLの姿に変身した森さんだった。 「大丈夫?」 喜緑長門がスカートの埃を手で払いながら、電柱の横でしゃがみこんでいる俺に近づいてきた。そして、俺の前に立っている朝倉を見つめると、わずかに頭を下げた。 「朝倉涼子……ありがとう」 「え、え、え?」 「うん、気にしないで。それよりホントに大丈夫? えっと、とりあえず大きい方の長門さん」 この朝倉は味方なのか? それとも休戦中の敵なのか? どうして復活したんだ? 少なくとも俺の見た目は今は長門のはずだ、中身が俺であることを知っているのか? 差しのべてくれた朝倉の手をつかんで、やっとのことで立ち上がった俺は、目の前で微笑みながら俺のことを見つめている朝倉を見つめ返した。あまりに疑問が多すぎる。 その時、背後から森さんの声がした。 「とりあえず後はわたしたちが何とかしますから、まずは長門さんのマンションに行ってください、って、ぐ、動くな、このぉ」 あの大男が森さんに押さえ込まれて身動きができないようだ。ポニーの髪を揺らしながら男に馬乗りになっている森さんのどこにそんな力があるんだろう。不思議な人だ。 「さ、早く!」 「了解した」 喜緑長門と朝倉に支えられて、俺は長門のマンションのエントランスを目指して走り始めた。一見、仲の良い女子高生三人組だが、見た目はともかく中身は大違いなんだけど。 やっとのことで、長門の部屋にたどり着くことができた。朝倉がいることだけが腑に落ちないのだが、喜緑長門はそんなことを何も気にしていない様子だった。どういうことだろう。 リビングに入ると、喜緑長門はまだ疑問を抱えたままの俺に振り返った。 「とりあえず、着替えては?」 「うん、そうだな、そうする」 「和室を使って」 長門はもともと俺が着ていた服が入った紙袋を手渡すと、和室に案内してくれた。 「たぶん、問題なく脱げるはず。もし、うまくいかない時は呼んで」 「わかったよ」 和室の襖を閉めてセーラー服から脱ぎ始めた。結局スカートだけは馴染めなかったな。これを着ることはこれで最後にしたい。俺はそんな思いを胸に秘めながら、背中の部分をぐっと開き、長門の抜け殻からの脱皮を始めた。 長門が言っていたように、特に苦労することも無く、するすると抜け殻から出ることができた。そういえば、肌に密着していたのに、汗ひとつかいていない。なんという通気性に優れた素材なんだろう。 長門の抜け殻と制服をたたんでリビングに戻ると、長門も朝倉もいなかった。別の部屋で、長門の脱皮と着替えでも手伝っているのだろうか? 何とか危機は乗り切ることはできたようだな。全身の力がどっと抜けた俺は、コタツ机でグターとのびていた。しばらくすると、廊下から長門と、その後ろからもう一人、見たことのある姿が……。 「え、あれ? 喜緑さん?」 長門はすでにもとの長門の姿に戻って、キッチンへお茶の用意に行った。と、言うことは、この喜緑さんの中身は朝倉なのか? いったい誰が誰なのかわからなくなってきたぞ? 「大丈夫でした? キョンくん」 「本物の喜緑さん、ですか? それとも朝倉……」 「うふふ、ほら、これを見てください」 そういって喜緑さんが手を広げると、ぱぱぱっと透明なものが大きく広がった。 こ、これは……。 「そう、朝倉涼子の体表保護皮膜です」 「な!」 コタツ机の上に横たわった朝倉の抜け殻を、俺は呆然として眺めていた。 「さっきの朝倉さんは、実はわたしだったんです。だって、長門さんがわたしに成りすましていたから、やっぱり、二人同時に登場したら変じゃないかなって」 いやいや、こんな抜け殻があること自体、十分変ですよ、喜緑さん……。 「朝倉さんはずいぶん前に、長門さんに情報連結を解除されてしまいましたが、保護皮膜はなぜか情報統合思念体によって保管されていたみたいです」 喜緑さんは朝倉の抜け殻を再び小さくたたむと、水色の小箱を取り出してその中にそっとしまった。 「驚きました?」 「はぁ、それはもう」 朝倉が現れた時、俺はもうすべて終わったと、一度はあきらめたんだから。 「それにしても危ないところだった」 お茶を持ってリビングにやってきた長門は、そういいながら腰を下ろした。 「朝く、いや、喜緑さんが来てくれたおかげでホントに助かりました」 俺も、あらためて喜緑さんに頭を下げた。 「いいんです。気にしないでください」 長門が淹れてくれたお茶はおいしかった。おかげで、心の底から一息つくことができた。長門も喜緑さんも、静かにお茶を飲んでいたが、やがて喜緑さんが俺の方に向かってにっこり微笑んできた。 「わたしたちの体表保護皮膜を集めているそうですね?」 き、喜緑さんまで何を言い出すんですか……。 「いや、別にそういうわけでは……」 「よかったらこの朝倉さんのものも持って帰ってください」 喜緑さんは水色の小箱を差し出した。 「そんな、別に俺は……」 「また、何かのときに役に立つこともある。あなたは持っておくべき」 「『持っておくべき』ってなぁ、長門……」 「いらない?」 一ミリほど首を傾ける長門。 「え?」 「いらない?」 「えーっと……」 「いらない?」 「…………い、いります」 またしても、俺の負け。三顧の礼かよ、まったく。 そんな俺たちの様子をニコニコして見つめていた喜緑さんだった。 その後、家に帰る俺を、念のため、といって喜緑さんと長門がエスコートしてくれた。万能有機アンドロイドとはいえ、女性二人に家まで送ってもらえて、なんとなく歯痒い様な嬉しい様な妙な気分だった。 やっと、我が家へ、俺の部屋に無事に帰りつくことができた。それにしても長い一日だった。 結局、今、俺の手元には、俺が身につけた長門の抜け殻と、長門が身につけた喜緑さんの抜け殻と、喜緑さんが身につけた朝倉の抜け殻と、そしてまだ現物は見たことがない朝比奈さんの抜け殻が残されている。特に真ん中の二つは微妙にコレクターズアイテムとしての価値が高まったような気がするな。 そうだ、もう一つおまけに俺サイズの北高指定のセーラー服とレースつきパンツもあった。……誰か欲しい奴はいるか? これらのスペシャルアイテムを俺はどうすればいいんだ? 毎日かばんに入れて持ち歩けというのか。と、言うか、持ち歩かざるを得ないではないか。うぅむ、教科書すらろくに入っていないかばんに、こんなものを入れておかないといけないなんて……。 「あーあ、もう、どうでもいい、なるようになれ、だ……」 四つの小箱はまた机の引き出しの奥に入れた。セーラー服は紙袋に入れたまま、クローゼットの奥に押し込んだ。くたくたに疲れた俺は、深い深い眠りについた。 そんな怒涛の週末が終わって、月曜日を迎えた。 ハルヒはその週末以降もずーっと機嫌がいいようで、授業中、しょっちゅう俺の背中をつついては、楽しげにいろいろ話しかけてきた。頼むから先生の話を聞かせてくれ。 え、いつも寝てるだけだから一緒だろって、ほっといてくれ。 そして、あっという間に放課後になった。 掃除当番のハルヒを残し、部室へと向かっている途中で、古泉と出会った。 「よお、古泉」 「あ、先日は、お疲れ様でした」 俺は、古泉と並んで歩きながら、週末の騒動の結末について尋ねてみた。 「結局、機関の非主流派とやらは何とかできたのか?」 「えぇ、あなたを見失った後、連中、あわてて行動を始めましてね……」 そこで古泉は俺の方に振り向いて軽く頭を下げてにっこり笑った。 「最後は少し危ないところでしたが、長門さんと森さんのおかげで、首謀者も捕まえることができました。あなたのおかげです。ありがとうございました」 そうか、あの大男が黒幕だったのか。 「そういえば、森さんの話によると、あの時もう一人、北高の制服を着た女性がいたとか」 「うん、あれか、あれはな……」 と、ここで古泉の携帯が鳴った。 「すみません、失礼します」 古泉は携帯を耳にあて、少し横を向いて会話している。 「え、えぇ。本当ですか? はい、わかりました。すぐに伺います」 通話を終えた携帯をポケットにしまいつつ、古泉の笑顔に憂いが宿った。 「久しぶりに閉鎖空間が発生したそうです」 「はぁ? どういうことだ。ハルヒはすこぶる機嫌がよかったぞ」 俺はついさっき別れたばかりのハルヒの姿を思い出した。ほうきを握り締めて、阪中と何か楽しげに話をしていたが……。 「とにかく行ってきます。涼宮さんにはよろしくお伝えください」 「わかった、気をつけろよ」 「ありがとうございます。それにしても、ここに来て閉鎖空間とは。皮肉なもんです」 古泉は力なく笑っていた。確かに、安定状態が続くことを嫌った非主流派の企みが潰えたとたんに閉鎖空間が発生するなんて……。 「僕も何か身を守ることのできる抜け殻が欲しいですね、では」 そう言いながら古泉は階段を駆け下りて行ってしまった。 抜け殻、か……。 今、俺のかばんの中には、四つの抜け殻が入っている。さすがに今日はセーラー服は置いてきたが。それにしても、まさかの朝倉の抜け殻まで手に入ってしまった。これらの抜け殻のおかげで俺は危機から脱することができたわけだが、あんな風に役に立つとは思いもしなかった。 それにしてもどういうことだ? なぜ急に閉鎖空間が発生したのだろう。 教室に戻ってハルヒの様子を見に行くことも考えたが、俺はひとまず部室でハルヒを待つことにした。何か気に入らないことがあるのなら、きっとドアを蹴破る勢いで部室に飛び込んでくるはずだ。対処するのはそれからでいい。 部室には、長門とすでにメイド姿に変身していた朝比奈さんが座っていた。 「こんにちは、キョンくん」 「どうも、朝比奈さん」 俺は朝比奈さんに軽く会釈していつものようにかばんを置くと、やはりいつものように本を読んでいる長門を見た。 「よお、元気か?」 「元気」 あいかわらずの平板な表情の長門を見ていて、あのラブホテルの鏡で見た、俺自身が変身した長門(俺)の笑顔を思い出していた。もし長門が表情豊かに微笑むならば、きっと今以上に輝いて見えるに違いない。えーっと、仮定法過去だったっけ? 「古泉くんは?」 「急にバイトが入ったそうで……」 「えっ!」 朝比奈さんと長門が驚いたように顔を上げた瞬間、ばこーんという大音響と共に部室の扉が吹き飛んだ。 「キョーーン! そこにいるの!?」 ものすごい勢いで飛び込んできたハルヒは、俺のネクタイを握りしめると長机の上に俺をねじ伏せた。 「な、何をする! どういうことだ!」 「ええい、問答無用よ、これからあたしの質問にきりきり答えなさい!」 「落ちつけ、問答無用なのか答えなきゃいけないのかどっちだ!」 「キョン、あんたこの前の不思議探索のあと、有希と一緒に、ラ、ラブホテルに行ったわね!」 「なっ?」 「えっ、キョンくん……」 「阪中さんに聞いたわ、あんたが強引に有希を引っ張り込んだところを見た人がいたって! どういうことよ、あんた、有希に無理やり変なことをしたんじゃないわよね?!」 ちょ、ちょっと待て! 行ったのは事実だが、俺たちは何もしていないし、そもそも、俺が引っ張り込んだんじゃない、俺が長門に引っ張り込まれたんだ。誰だ、いい加減なことを阪中に伝えた奴は! それにあそこに行ったのは必要に迫られて仕方なくだなぁ……、なんて、言い訳はできない。くぅー、どうすればいい? 俺はそっと長門の方に助けを求める視線を向けたが、長門は相変わらずの無表情だった。 「有希! 大丈夫だった? キョンに何かされなかった?」 ハルヒの問いかけに、長門は小さくつぶやくように答えた。 「そこで、彼はわたしの中に入った」 「ふへっ?」 「な、ながとぉー!」 前にも言っただろ、『わたしの抜け殻の中』だぁぁぁ…………。 もはや簡単には修正できないほど、情報の伝達に齟齬が発生してしまった。 激しく往復ビンタを食らわせた後も、ハルヒは俺のネクタイを締め上げながらなにやら叫んでいた。そんな目に遭いながら、俺にもしものことがあったら、かばんの中の四つの小箱はどうなるのだろう、なんて事が頭の中を駆け抜けていった。 誰かに見られたら、俺は怪しげな脱皮を繰り返す『完全変態』だと思われるではないか。いやいや、蛹にはならないようだから『不完全変態』か、困ったもんだ。 結局、どんなに手を尽くしたところで、最後にひどい目に遭うのはやはり俺ってことだ。あぁ、いっそ、俺自身の抜け殻を身代わりに残して、しばらくどこかに雲隠れすることができたらどれほどいいだろう……、やれやれだよ、まったく。 Fin.
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CS Pop`n music 12 いろは 2006/3/2発売! 公式サイト http //www.konami.jp/bemani/popn/gs/12/index.html システム概要 テーマは「和」 AC版での「NET対戦」にあたる対戦モード追加。CPUキャラ2人との対戦。 ゲームモードに「SPECIAL」が新設。スタディランド-キャラクターガイド-オマケがここに移動 他に、「POP`N REQUEST」「MINI GAME」を収録。 マラソンモードもここに出現する。 AC版のチャレンジモードへの2曲保証の追加を反映しているため、1曲目で落とすとコンテニューが発生せずそのままプレイが継続する。その代わり、AC版同様にEXステージが出せなくなる。また、CS版では「同一曲の連続選択=不可」で固定されているため、1曲目で落とした場合、ゲームオーバーになるまで1曲目で選んだ曲を選び直せなくなる。CS11以前のチャレンジモードでは無限コンテニュー制が前提のため、1曲目から何度でも、直前に選んだ曲も含めて選び直せていたため、この点は劣化点となってしまっている(CS11以前のノーマルモードにおける欠点をそのまま引き継いでしまっている) 譜面スクロール速度がACカーニバルより若干速い HS5-6、S乱は最初から使用可能 版権担当キャラは最初から選択可能 オプション設定のGAME LEVELが8段階に変更デフォは3。AC仕様は4(推定) キャラクター選択にランダム機能追加。 レベル表記はカーニバルの仕様。 クラシック11EXのレベルが42に変更。判定が少し甘くなった。 カウボーイHのレベルが31に変更。 コンテンポラリーネイションEXのレベルが41に変更。 ビビッドEXの譜面が一部変更。 CSエンディングが全部で4種類ある。スーツとモリーが戦うバージョン、戦わないバージョン、互いにすっぽかされるバージョン2種類の計4種類 特にモリーがすっぽかされるバージョンは必見。 パンキッシュガールは出現条件が厳しく常滞するのが難しいため、やったことがない人も少なくない。 収録曲一覧 AC12曲(23) エイジロック メッセージソング ブルースロック シンフォニックテクノ 琴フュージョン 流星RAVE アカペラ フロウビート トーキョーロマン プロポーズ キッズマーチ ヒーリングデュオ ダイナマイトソウル ハイパージャパネスク アジアンコンチェルト ポジアコ ビビッド ヒップロック3 ロックビリー J-ロックφ K-ダンス ビワガタリ オンセンラップ CS12曲(11) プリティ雅 昭和怪奇譚 セタガヤ系 ビジュアル艶歌 R&B&M 三味線ブラザーズ チンドンダンス 上京ラップ スローライフ 萌えポップ J-パンキッシュガール AC11再録曲(10) グラディウス トザン ねぶた ホラ-2 ナニワヒーロー ナンキョク メサリミ 大河 REMIX テクノボー ドラムンフライ CS11再録曲(4) フレンチメルヘン クラシック11 コンテンポラリーネイション2 カウボーイ AC12版権曲(6) キミョウ エヴァ クレヨンしんちゃん バブルバスガール ドラゴンボールZ クリィミー AC12隠し曲(22) ゴエモン ショータイム サイバーガガク ひなまつり ソツギョウ ハイパーロッケンローレ ヴィヴァーチェ UFOテクノ タナバタ ビーチ ハッピーキュートコア J-ソウル ガムラン 敬老パンク ハロウィン にょろロック ラメント J-ジャズ セツブン クリスマスプレゼント オオミソカ ニンジャ卍ヒロイン CS12隠し曲(4) 必殺スパイ むしばワルツ アスレチックミート フォレストスノウ ポップンリクエスト旧曲(9) (聴くと元気が出る曲) ハイパンク(9) ユーロビート(8) ソフトロックLONG(7) (ポップンが好きになった曲) ヒップロック(6) トランス(6) J-テクノ(1) (畳の上であそびたい曲) 禅ジャズ(10) エンカREMIX(5) ショウワカヨウ(7) ee`MALL曲(4)移植曲である「Sweet Illusion」と「airflow」はジャンル名ではなく曲名で表示される。 スウィング歌謡(花見で一杯) ションボリ(純勉夏) Sweet Illusion(from GF8dm7) airflow(from IIDX8th) エキスパ旧曲(4) オンド J-ポップ エンカ パラパラ ミニゲーム旧曲(2) フレッシュ コンテンポラリーネイション 連動曲(3) スカ ハードカントリー パンキッシュガール CS新曲情報 CSいろは新曲 ジャンル名 曲名 アーティスト 担当キャラ N H EX BPM スローライフ 甘い時間(pop'n mix) BE THE VOICE オリビア 13 26 34 128~256 セタガヤ系 東京ガール(pop'n mix) metro/trip ピルティ 13 26 30 138 R&B&M ドンパン節 笛吹二朗とドンパン・リスペクツ テクノスターズ 14 24 32 98~124 J-パンキッシュガール 脱皮-Knock Out Regrets- MAKI@TOGO.BAND スピンキー 15 29 35 180 萌えポップ オヤシロのムスメ 後藤沙緒里 みここ 15 23 28 189 三味線ブラザーズ 大桟橋(伊呂波調) 内田兄弟 内田一門 16 26 33 156 上京ラップ 俺ら東京さ行ぐだ(I'LL GO TO TOKYO!) ノーボトム! MC.TOME 16 28 40 140 ビジュアル艶歌 月影華(TSUKI-KAGE-BANA) 丸山和嘉 深川ふなを 17 28 36 152 チンドンダンス TIN-DON-DANCE ノーボトム! YANARY 18 30 36 145 昭和怪奇譚 鹿鳴館の怪人 リシャール秋田 文彦さん 18 28 35 180~190 プリティ雅 突確全回転! マロンちゃん みやびさん 20 34 40 196 CSいろは隠し新曲 ジャンル名 曲名 アーティスト 担当キャラ N H EX BPM パンキッシュガール Knock Out Regrets MAKI@TOGO.BAND スピンキー 14 31 37 180 むしばワルツ 僕の名前は勇気鈴木歯科クリニック編 ゆうき。 小山明美 17 25 30 140 必殺スパイ お仕置き忍のテーマ 000七 スーツ対モリー 19 32 37 120~153 フォレストスノウ 月雪に舞う花のように 猫叉Master 智羅 21 34 40 70~125 アスレチックミート 一発逆転!××だらけのハッピー大運動会!! P-4 laboratory bengbeng 21 36 41 190~200 CSいろは隠しコース 1 2 3 4 景コース 必殺スパイ むしばワルツ アスレチックミート フォレストスノウ 倭コース オンド J-ポップ エンカ パラパラ 解禁イベント「ポップン秘伝忍法帖」 AC版の同名の店舗対抗イベントがベース。 1 2 3 4 5 6 7 8 春 ヴィヴァーチェ 必殺スパイ ひなまつり ショータイム ソツギョウ サイバーガガク ハイパーロッケンローレ スウィング歌謡 夏 UFOテクノ むしばワルツ タナバタ ビーチ 景コース ゴエモン ハッピーキュートコア ションボリ 秋 Jソウル 倭コース アスレチックミート ガムラン ハロウィン 敬老パンク Sweet Illusion 冬 クリスマスプレゼントAC Jジャズ フォレストスノウ にょろロック セツブン ラメント オオミソカ airflow 忍 ニンジャ卍ヒロイン HELL HELL12 初回特典サウンドトラック ※全てロング曲 1 脱皮~Knock Out Regrets~ 2 僕の名前は勇気~鈴木歯科クリニック編~ 3 ふたりのマニフェスト 伊東家 公式サイトより 「Dance Dance Revolution STRIKE」のセーブデータがメモリーカードにあると「Dance Dance Revolution STRIKE」に収録されている「J-PUNKISH GIRL」の英語バージョンが登場 「GuitarFreaksV DrumManiaV」のセーブデータがメモリーカードにあると「スカ(GFDM)」と「ハードカントリー」が登場 ミニゲームのクリア特典 ミニゲーム「ししゃものネコ缶」をクリアするとフレッシュが登場 ミニゲーム「イマ様の緑化運動」をクリアするとコンテンポラリーネイションが登場 ※緑化運動は二人プレイで始めて片方放置すると選択肢が一つ減るので少し楽になる ※更に、同じ色は連続で来ないので、↑と組み合わせると実質的に3択となる 忍法帳の最速解禁法 バトルモードで短い曲3曲(J-テクノ→J-ソウル→トザン)を放置 ハイスピは付けると巻物のスクロールスピードが上がるので付けない 隠し出現コマンド 12348876 AC隠し曲 78987179 CS隠し曲 38877966 芋隠し曲 82347699 エキスパ隠しコース&曲&HELL譜面 97976868 パンキッシュガール 38271619 スカ&ハードカントリー イマ様&ししゃもは現時点では解禁コマンドなし コマンドで出した曲は常駐しないが、オリコに登録すれば残せる アナコン対応表 2 4 6 8 1 3 5 7 9 L1 ↑ △ R1 L2 ← - ○ R2 ○はセレクトを押しながら入力 DDR Strike 隠し解禁条件 (データ連動不使用時) 1: チャレンジモードのステージ1またはステージ2の曲選択画面で"4466373728(ポプコン)"もしくは"上上下下左右左右L1R1(パッド)"を入力する。 2: J-パンキッシュガールをプレイし Great、Good、スコア の合計の下3桁が105 (バトル時は2人とも満たす) ※手順2ではEX譜面をGREAT 1だけ出して放置する方法が一番簡単。 GFDM V 隠し解禁条件 (データ連動不使用時) 1: チャレンジモードのステージ1またはステージ2の曲選択画面で"4466373728(ポプコン)"もしくは"上上下下左右左右L1R1(パッド)"を入力する。 2: にょろロックをプレイし Great、Good, Combo の合計の下3桁が555になる。 (バトル時は2人とも満たす) ※手順2は最初から277コンボまでつないでから放置する方法が比較的簡単。5ボタン譜面では不可能。 ※N譜面なら間奏が終わる直前の赤2連打までを取れば277コンボ。 両方とも放置が有効なのはステージ1のみ(必ず次のステージに進める為) カレンダーの裏 適当に情報を書き殴っておく場所。いわばチラシの裏だが、いろはなのでカレンダーの裏 情報が纏まったら削除する事。 ポプコン・アケコンでオプションのハイスピードを選択する時 左青ボタンで減少、右青ボタンで増加というAC仕様になった 忍法帖全てクリアで未プレイEX解禁 上記+リクエスト曲制覇でマラソン解禁(ミニゲーム曲・連動曲は出さなくてもいい) リクエスト曲&ミニゲーム曲&連動隠し曲は忍法帖を全て埋めても出ない マラソンは全99曲(連動の3曲は出ない) 未クリアのミニゲーム曲も道中に出るが、クリアしても解禁しない 対戦におけるオジャマ攻撃「キャラクターポップくん」の仕様が変更された。 AC版では攻撃受けると自分の使用キャラのキャラクターポップ君が降ってきたが、対戦相手2名のキャラクターポップくんに変化する。両方共1Pカラーで振ってくるため慣れない内は結構キツいかもしれない。下段が初期状態で3位枠(青・マッチング画面左側のCOMキャラ)に配置されたキャラ、上段が3位枠(黄・マッチング画面右側のCOMキャラ)に配置されたキャラ(対戦終了時の順位は無関係)になるのでプレイ開始前のマッチング画面でどのキャラがどの配置になるのかを把握しておくとよい。色々ポップ君使用時に振ってくるキャラクターポップも同じ仕様に準ずる形となる 対戦の強制Low-SPEEDは、ステージ3位を取った上で総合1位になると獲得出来る 「なまえ」カテゴリにおいて、 「airflow」「SweetIllusion」はそれぞれのジャンル名(インストゥルメンタル/スイートポップ)で並んでいる Jジャズの曲名がバナー・演奏中表記共に「Thinking of You」に変更(以前は「Think of You」だった) スピンキーに3Pカラーがある MZDは使えないが、キャラクターガイドで11の各リミックスバージョンを見る事が出来る ウサおくんのLOSEがAC13で追加されたものになっている アスレチックミートの元ネタ 順 曲名 作曲者名 1 クシコスの郵便馬車(クシコスポスト) ヘルマン・ネッケ 2 天国と地獄 ジャック・オッフェンバック 3 オクラホマミキサー アメリカ民謡(作曲者不明) 4 見よ勇者は帰る ヘンデル
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『抜け殻』『脱皮』『小箱』の続きになります。 ======== 『空蝉』 「緊急事態です!」 暑い日だ。燦々と輝く日差しが降り注ぐ部室に、爛々と目を輝かせる古泉がいる。 「どうした、古泉」 「どうも、機関の非主流派が橘の手の者と通じているようで、あなたのことを狙っているとの情報が入りました」 橘? あの機関の敵対組織のやつか? 「ど、どういうことだ?」 「最近の安定した状況に、機関の存在意義が危ぶまれていると勝手な解釈を……」 「それで、俺を狙ってハルヒを焚きつけようというのか?」 どうしてみんなハルヒにちょっかいを出したがるんだ。酷い目に遭うのはいつも俺なのに。 「とにかく、差し迫った危険を回避するためにあなたは身を隠す必要があります」 「どうすればいい?」 古泉は長机を回りこむと、ぐっと俺に近づいてきた。そして、ポケットから小さな箱を取り出すと、俺の目の前に差し出した。 「ここに僕の抜け殻があります、これを被って僕に成りすましてください」 「何?」 「あなたと僕では、ほぼサイズ的には問題ないと思います。ごく一部分を除いては」 「一部分ってどこなんだよ」 「まぁまぁ。とにかく服を脱いで裸になってください。そして、これを身に着けるんです。一部分も含めてです」 「こ、こら、それ以上変に近づくな、自分でできる……」 「いえ、あなたはただじっとしていればいいんです、フフ」 「やめろ、古泉! ベルトから手を離せ!」 「いいじゃないですか、お手伝いしますよ」 「や、やめろおぉぉぉぉぉー」 ……ぉぉぉぉおおおお、お? 視界の中に見慣れた天井の模様がはっきりしてきた。暗い……、夜か? ここは、俺の部屋? どうなっているんだ? 今のは……、そうか、夢、か……。 ベッドから身を起こして時計を見ると三時だった。 いやな夢だ。なぜ俺が古泉にズボンを脱がされなければならないんだ。しかもあいつは自分の抜け殻を着ろと迫ってきた……。 俺は額の冷や汗を右手で拭うとベッドから降りて机の前に行き、引き出しの奥から、三つの小箱を取り出した。 これのせいであんな夢を見たのか……。 成り行きで手にすることになった、宇宙人と未来人の抜け殻が入った小箱を、俺はぼんやりと見つめている。 成り行き? いや、長門が半ば強引に……、でも、俺にも興味があったのは事実だ。まだ、小箱の中身を三つを並べてじっくりと眺めてみたことは無いけれど。 『緊急事態に陥った時に使って』 先日の長門の言葉が思い出された。とりあえず、しばらくの間は、常に持ち歩いた方がよさそうだ。緊急事態が起ころうが起こるまいが、この小箱の存在を誰かに知られるわけにはいかないしな。 ふぅ、もう一眠りできるだろうか? 小箱を引き出しにしまい、俺は再びベッドに潜り込んだ。 結局、その後もたいして眠れなかった。おかげで、今日は授業中も寝てばかりだった。なに、普段と変わりないって? ほっといてくれ。 「あんた、相変わらずよく寝るわねー、どっか悪いんじゃない?」 午後の授業が始まる前のことだ。俺の後ろの席のハルヒはあきれた様子だった。 「いろいろ苦労があるんだよ」 「なにが苦労よ。ホントに苦労してるんなら、寝てるヒマなんかないわよ」 「へいへい」 当面の苦労の種は、かばんの中の三つの抜け殻だが、なぜそんなものを俺が手にする事態になったか、ということについて「なぜなぜ」と、とことん辿っていくと、行き着く先は、ハルヒ、お前にぶち当たるんだぜ。すべての道はハルヒに通じている。責任とってくれよな。 「なに? なんか言いたいことでもあるの?」 「いいや、なんでもない」 「ふん」 ハルヒはプイっとふくれて窓の外を見ている。でも、心底怒っているわけではなく、会話を楽しんだ、と言う感じのリラックスした横顔だった。 その後の午後の授業も記憶がはっきりしないうちに終了したようだ。気がつけばすでに放課後モードになっていた。 「じゃ、お先」 「うん、あとで」 掃除当番のハルヒを残して、俺は教室を出て部室へとむかった。ハルヒは結構律儀に掃除はしている。適当に理由つけてサボったりしそうにも思えるんだが、こういうところも常識が支配しているようだ。その勢いで、妙な灰色空間など出現させないでいて欲しいわけだが、その辺は古泉の守備範囲なので俺としては深入りはしないし、したくもない。 いつものようにノックして部室のドアを開けると、デフォルトの長門に加えて珍しく古泉も来ていた。いつもの笑顔に少し怪しい光を感じたが、それは昨夜の夢のせいかも知れない。朝比奈さんもまだのようなので、おいしいお茶はいましばらくお預けだ。 「よお、早いな」 「どうもです」 古泉は少しばかり頭を下げた。 「涼宮さんは掃除ですか?」 「そうだ、まじめにやっているようだな」 俺はいつもの場所に腰を下ろした。長門は、普段どおり丸テーブルの横でなにやら分厚い本に目を落としている。たまにはマンガでも読んでみてはどうだ、と言ってやりたいね。結構気に入るかもしれないしな。 一方、古泉は長机の上で組んだ指先をじっと見つめていたが、顔を上げるとすこしばかりまじめな表情で静かに話し始めた。 「涼宮さんがいらっしゃる前にお話ししておこうと思うのですが、実は、あなたに危機が迫っているようなのです」 「なに? 俺に?」 長門も少し驚いた様子で顔を上げた。 古泉は軽く腕組みし、やや伏し目がちに物憂げな様子で続けた。 「機関の非主流派の一部が、例の橘の手の者と通じているようで……」 ん、あ、あれ? どこかで聞いたような状況……。 「どうやら、最近の安定した状況に対して、機関の存在意義が危ぶまれていると勝手な解釈をしているようです」 な、な、な、なにぃ? 「そこで、涼宮さんを焚きつけてコトを起こすために、あなたに危害を及ぼそうと……」 そこで古泉はぐっと体を乗り出すと、少しばかりいつものニヤケ顔に戻った。 「でも大丈夫です、フフ」 眼前に迫ってくる古泉の笑顔に、昨夜の夢に登場した古泉の危険な笑顔が重なって、俺の背中に電気が走った。思わずズボンのベルトを確認し、少しばかり後ずさりすると、俺は叫んだ。 「ま、ま、待て、まさかお前の抜け殻を被って身を隠せ、なんて言うんじゃないだろうな!?」 「は? 僕の抜け殻? 何のことですか?」 あっけにとられた古泉がぽかんと口を開けた後ろから、長門の声がかぶさってきた。 「彼は今、わたしの抜け殻を持っている」 「な、長門さんの抜け殻? なんですか、それは?」 こんな表情の古泉など見たことが無い。狐と狸に同時につままれたようだ。 どうやら古泉は俺のズボンを強引に下ろそうとしているわけではないことははっきりした。とりあえず落ち着いた俺は、椅子に座りなおすと、古泉に面と向かい、状況を説明することにした。 「うん、いや、実はな……」 俺は例の抜け殻のことをかいつまんで古泉に話した。古泉は、時折、「ほぉ」とか「なるほど」とか、大げさに相槌を打ちながら話を聞いていたが、最後に、 「安心してください、僕は脱皮はしません。あなたと同様にこの時代を生きる普通の人間ですので」 そういって、いつもの笑顔で微笑んでいた。 「頼むぜ、お前の抜け殻まで俺は持ち歩きたくはないからな」 古泉は無言で肩をすくめて苦笑いを見せたが、すぐに真顔になって話し始めた。 「いずれにせよ、あなたに危険が迫っていることは確かです。どうやら長門さんの抜け殻をうまく利用することも考えないといけないようです」 「同意する」 「長門……」 「そろそろ涼宮さんも掃除を終わってこちらにこられる時間です。続きは、よろしければ長門さんのご自宅で、いかがですか?」 古泉の問いかけに長門は間髪を入れずに答えた。 「わたしは構わない」 「わかったよ、なんだか知らんが、俺もヒドい目には遭いたくないからな」 「では、今日の解散後にあらためて長門さんのところに集合しましょう」 「朝比奈さんはどうする?」 「そうですね、とりあえず僕たち三人だけでいいんではないでしょうか」 「同意する」 再び即答する長門。 うん、そうだな。ここに朝比奈さんが入っても、申し訳ないが正直役に立つとは思えない……。古泉の言う通り、俺たち三人でコトに当たるのがよさそうだ。 「じゃ、よろしくな」 その後すぐにハルヒと朝比奈さんが前後して部室に到着した。そして、いつもと変わらぬように団活動にいそしんだ俺たちは、長門の合図と共に今日のメニューを終了し家路についた。 坂の下で解散した一時間後、俺と古泉は長門のマンションのリビングでコタツ机の定位置に座っていた。このコタツ机とも長い付き合いになるわけで、おのずと座る位置が固定してしまっている。慣れとは恐ろしいもので、たまに違う位置に座るとなんとなく落ち着かない気がするようにさえなった。 今、その机の上には、長門が出してくれた三つの湯飲みと、例の三つの小箱が並んでいる。古泉は長門の抜け殻の入っている青い箱を手に取ってしばらく観察しいていた。 「そうですか、これがTFEI端末の体表保護皮膜ですか」 「あとそのピンクのやつが朝比奈さんの、えっと、SPSだったっけ?」 長門の方に振り向いて確認してみると、即座に応答が返ってくる。 「そう、Surface Protect Shield」 「それが入っているらしい。俺も実物はまだ見ていないんだが」 朝比奈さんが『見ないで』と言ったので今のところ俺はその言葉に忠実に従っている。箱の中になにが入っているか確認したわけではないが、生真面目な朝比奈さんのことだ、きっときれいにたたまれた朝比奈さん自身の抜け殻がそっと納められているはずだ。 「先ほどの話だと……」 古泉は、手にした小箱を再び机の上に置いた。 「中に入ることができるそうですね」 「彼は、わたしの中に入ろうとした」 「『わたしの抜け殻の中』だ」 俺は少しばかり情報の伝達に齟齬が発生しそうな言い回しを修正した後、話を続けた。 「長門は小柄なんで、抜け殻の中は狭いんだ。肌に密着するし大変だったんだ。片足入れるだけでも結構時間がかかった」 俺はあの夜のことを思い起こした。右足だけ抜け殻に入れたところで抜けなくなってしまったことを。そして、夜中にここまで駆けつけて、長門が俺の太ももをサワサワしてくれたおかげで、やっとのことで俺も脱皮することができたことを……。 「大丈夫、少しばかり情報操作を行うことにより、抜け殻の着脱は以前より容易に行うことができるようになるはず」 「そうすると、後は衣装ですね」 古泉は俺と長門を交互に見ながら、自信たっぷりに頷いた。 「幸い、長門さんはほとんどいつも制服をお召しです。つまり、あなたの体のサイズに合わせたセーラー服があれば、いつでも長門さんに成りすますことができます。すぐにでも機関の方で用意させましょう」 「おい、待てよ、すると俺は抜け殻と一緒にセーラー服まで持ち歩く必要があるわけか?」 「当然です。さらに言うなら、必要に応じて長門さんと行動を共にした方がいいですね」 「長門と?」 「長門さんになりすまし追っ手を振り切るためには、まずは長門さんと行動を共にしないと意味がありません」 ふむ、そりゃそうだ。俺一人のときにいきなり長門に変身したら怪しいことこの上ない。 「今週末は、久々に例の不思議探索が予定されています。入手した情報によると、どうやらその日に何か計画されているようです。おそらく、探索が終了し解散した後、あなたが一人になった時を狙ってくるのではないかと予想しています」 古泉は、一言一言を噛みしめる様にはっきりと話すと、湯飲みを手にしてお茶をすすった。一瞬の静寂が無機質なリビングを包み込んだ。 「残念ながら、連中がどのような手段で来るかまではわかっていません。とりあえず探索終了後、敵の出方を見るために、長門さんと一緒に少しばかり街中を歩いてください」 「了解した」 長門は小さく肯いた。何かこう闘志というか決意に満ちた無表情だった。 「機関のものも適切に配置させます。うまく、連中の裏切りの証拠を入手できれば、今後の動きも抑えることができます」 ううむ、それってつまり……、 「……俺は囮か?」 「すみません」 申し訳なさそうに頭を下げた古泉だが、静かに頭を上げると力強く宣言した。 「しかし、当初予定していなかった長門さんの抜け殻を使うことによって、危険度はかなり緩和されると思われます。大丈夫です、あなたに危害が及ぶようなマネはさせません」 「わたしもついている。安心して」 長門が漆黒の瞳を輝かして俺のことをじっと見つめている。そんな長門は小柄ながらもとてもたくましく見える。長門がそういってくれるなら、それは俺にとって十分な重みを持っている。 「わかった、任せる。よろしく頼む」 翌日の放課後には、古泉から俺サイズの北高指定セーラー服が届けられた。 今、かばんを開けられると、俺は『変態』の称号をほしいままにできそうな状況ではある。女性の抜け殻三つにセーラー服だ。しかし、これらのアイテムは俺の身の安全のために必要なものらしい。あぁ楽しきかな、この日常……。 そして、毎日かばんの中身を気にしているうちに、あっという間に週末がやってきた。 ======== 週末、天気はよかったが俺の気分は晴れなかった。 そういえば久しく不思議探索はやっていなかったので、なんとなく新鮮な気もするのだが、やっぱり俺の奢りからスケジューリングされていたので、結局は、以前と一緒だった。 ただひとつ違うのは、今日は、俺に危機が迫っているらしいということだ。ただし、それも探索終了後ということなので、それまではごく普通に振舞わなければならない。 例の小箱と変装用のセーラー服は駅のロッカーに入れておいた。普段手ぶらで探索に来ているので、今日だけ紙袋をぶら下げるわけにもいかないからな。探索終了後に取り出して、長門と一緒に街中をうろつく予定だ。 ハルヒは、久々の探索と言うことで、すこぶる上機嫌だった。さらに午前の探索は、珍しく俺とのペアになった。いろいろありそうな今日一日のことに思いを巡らし若干ブルーな俺に、 「どうしたの、元気ないわね。あたしが元気あげようか?」 などと優しい言葉をかけてくれる。普段からこれくらいのことをしてくれれば、俺も苦労することは何もないのだが。 「お前の元気を貰ったら、俺はオーバーフローしてしまうよ」 「ははは、じゃあほどほどにしておいてあげるわ」 確かに、今日のハルヒからはいつも以上に、こっちまで元気させてくれるオーラが湧き上がっているのを感じる。午前中、一緒にあちこち回っているうちに俺の気分にも少しばかり晴れ間が差してきた。 午後は、長門と古泉と一緒の組になった。どうも、長門がくじ引きに少し細工をしたようだが、まぁ、いいだろう。俺たち三人は喫茶店に入って、今日のこの後の段取りについて、もう一度確認した。 「すでにあなたには尾行がついているようですね」 「ほんとか、古泉?」 「おっと、なるべく普通に話してください。二、三名が入れ替わりながらずっと尾行(つけ)ているようです。それ以外にも何人かいるようですが、まだ全貌はつかめていません」 せっかく午前中にハルヒに貰った元気だったが、一気にしぼんでしまいそうな感じだ。いったい、俺をどうしようと言うのだ。 「とにかく、普段どおりにしていてください。解散後もできるだけ長門さんと行動を共にしてください」 「わかったよ。長門、よろしくたのむ」 「了解した。大丈夫」 その後は三人でできるだけ人の多いところを選んで探索を行った。もちろん、万が一のことを考えてのことだったが、特には何も起こらなかった。確かに、万能宇宙人と、機関の主流派が一緒じゃ手出しはできまい。 「今日は、久しぶりに楽しかったわ。やっぱり不思議探索は我がSOS団の活動の原点ね」 午後の探索も終了し集合場所に集まった俺たちを前に、ハルヒは満足したように宣言した。 「今日は解散! お疲れー」 「お疲れ様でしたー」 朝比奈さんと一緒に去っていくハルヒの後姿を見送りながら、いよいよこれからが俺にとって本番であることを自覚し、少しばかり身が引き締まる思いだ。 「では、僕も失礼します。この後は長門さんにお任せして、僕はバックアップの方に回ります。大丈夫です、安心してください」 俺は機関に百パーセントの信頼を置いているわけではないが、SOS団結成以来のゴタゴタを通して、古泉のことは良き戦友として信頼してやってもいいと思っている。 「頼むぜ、古泉、長門」 そして、長門だ。この万能有機アンドロイドには俺は言葉にならないぐらい世話になっている。何か恩返しができればいいんだが、俺にできることは残念ながらほとんど何もないのが悔しい。 「例のものを……」 俺は長門と一緒に、駅のロッカーから小箱とセーラー服の入った紙袋を取り出すと、街の探索を再開した。 その後、しばらくウィンドウショッピングしたり、喫茶店でコーヒーを飲んだりしたが、俺は気が気じゃなかった。長門はいつもの様に終始無表情だったが、おそらく全身全霊をかけて周囲の状況を探り続けていたのだろう。 「なぁ、長門」 「なに?」 「やっぱ尾行されているのか?」 「店の外に一名、さらにその後方に二名。ただしそのうちの一名は古泉一樹側のもの」 「そ、そうなのか」 ううむ、どうしようもないな。長門がいてくれて助かった。俺一人だと、あっという間に敵の手に落ちて、すき放題されていたことだろう。 喫茶店を出てしばらく歩いていたが、そろそろ、街は暮れなずんできた。いつまでも長門といれば俺はおそらく安泰だが、ここは囮となって今後の憂いを排除する方向に持っていかないと、いつまでたっても危険と隣り合わせの追われる立場だ。 ふと隣の長門を見ると、漆黒の大きな瞳の輝きが五割ほど増しているのがわかった。何かある。 「どうした? 長門……」 「徐々に追っ手が間合いを詰めている」 「なに、ほんとか?」 「人数も増加している。危険」 「お前と一緒なら大丈夫だろ」 「そう。だが、彼らは、あなたがわたしと別れて一人になる時を待っている。そして、その時が近いと判断している」 「じゃあ、そろそろ……」 「そう」 通りを曲がると、急に人通りが少なくなった。しばらく行くと、長門が、 「こっち。ここに行く」 といって、俺の手を取って右側の建物に入ろうとした。 「おい、どこに……、って、これラブホ……」 「そう、ここで休憩」 「いや、あの、ちょ、ちょっと待て……」 「待てない」 こんなところを誰かに見られたらどうするんだよ、という突っ込みを入れる隙もなく、俺は長門に引っ張られるままにラブホテルに連れ込まれてしまった。 しばらくは何がどうなったのかよくわからなかった。ロビーのようなところの各部屋を紹介するパネルを操作しているうちに、気がつけば、シックな内装の少し大きめの部屋の、やはり少し大きめのベッドに長門と並んで腰掛けていた。 こんなところに長門と二人でいるなんて、なんか場違いだ。危険が迫っていることも忘れて、思わずあちこちきょろきょろしてしまうのが情けない。 テレビドラマなんかで見たことのあるようなケバケバしさはなく、全体的に落ち着いた感じのする部屋なのだが、妙に大きい鏡とかベッドの枕もとの用途のわからないスイッチ群とかが、怪しげな雰囲気を醸し出している。 「何がなんだかわからん」 「はじめて?」 「そうだよ」 「そう、わたしもはじめて」 そのわりにはチェックイン(というのか?)の手際はよかったな。長門のことだから何か情報操作でもしてくれたのだろうか。 「変装してすぐに出て行く必要はない。少しばかり時間をつぶし、相手の注意を引いてからの方がよい」 ベッドの縁にちょこんと座った長門は、隣に座っている俺の方を見上げながら少し首を傾けて言った。 「せっかくだから、少し休憩していく?」 二・三度まばたきした長門の大きな瞳に壁際の間接照明の明かりが映り込んでなんとなく潤んで見える。 「え、え、休憩って?」 「そう、休憩」 いや、あの、長門、それって……、えっ? 長門はそのまま仰向けにベッドの上に倒れこむと、組んだ手をおなかの上に載せて天井を見上げている。 「天井も鏡……」 その言葉で俺も見上げてみたが、確かに鏡だ。ベッドの上の長門と、首だけ見上げている俺の姿が映っている。 「なぜ?」 「ん、なぜって言われても……」 「不思議……」 長門はそうつぶやくとそっと瞳を閉じた。 「おい、長門……」 淡い灯りのなかで、長門の白い頬にやや朱みが差しているのがわかる。制服の胸元のリボンがゆっくり上下しており、やがてゆったりとした寝息が聞こえてきた。どうやら本当に休憩するつもりのようだ。 「……長門」 宇宙人製万能有機アンドロイドとしてかなりのエネルギーを使って、ここまで俺のために注意と警戒を払っていてくれたんだろう。さすがの長門でも少しばかり疲れたに違いない。 「すまんな、長門……」 俺はしばらく長門の寝顔を見つめていた。が、長門が初めて脱皮した日の俺の部屋のベッドで見たうつぶせ姿の白い裸身が浮かんできて、どうにもこうにも頭の中で妄想と言う名の大竜巻が暴れまわっている。こんな時に俺って奴は……。 「も、もういい。俺も寝る!」 勝手に宣言した俺は、長門の隣に寝転がると少しばかりの眠りに落ちたようだった。 「……ねぇ、お・き・て」 ん、あぁ? 「そろそろ、時間。お・き・て」 目を開けると、俺のことを覗き込む長門の黒い瞳が視界に入った。さらにその後方では、ぼんやりと目を覚ましつつある俺の姿が、天井の鏡の中に映りこんでいた。 「……な、長門?」 何か妙に甘い起こされ方をしたような気がするのは、夢の続きだったのかも知れない。俺はゆっくりと上体を起こすと、長門の方に振り返った。すでに長門からは戦闘モードに突入したような力強さが感じられる。やはり夢だったのか……。 「着替えて」 長門は、青い小箱とセーラー服の入った紙袋を俺に手渡した。 「えっと、服は全部脱いだ方がいいか?」 「その方が抜け殻が肌になじむと思われる」 「そ、そうか」 「手伝う?」 長門は、じっと俺の目を覗き込むように問いかけてくれたが、長門の前で素っ裸になるわけには行かない。 「いや、いいよ、あっちで着替えてくる」 俺はあわてて小箱と紙袋を受け取ると、洗面所の方に飛びこんだ。 それにしてもどこに行ってもでかい鏡がある。こういうところはどこもそうなのか? それともこの部屋だけのことなのか? 俺は小箱を開けると、長門の抜け殻を取り出した。ふわっという感じで広がると、以前に見た透明な長門が現れた。 まさか本当にこれに全身入ることになろうとは……。 俺は服を脱ぎ捨てると、以前と同じように抜け殻の背中の裂け目から右足をそっと入れた。今度は、長門が何か細工をしてくれたようで、前と比べると、あっさりと右足を入れることができた。ふくらはぎを触ってみたが、やはりキメが細かくつややかな肌だ。 おっとそんなことを確認している暇はない。 俺は、左足も同じように突っ込むと、太ももの辺りを手繰りあげながら、腰から下を抜け殻の中に納めようとした。さすがに太ももも腰回りも小さかったが、抜け殻は弾力よく伸びて、俺の下半身はすんなり納まった。 よし、このまま一気にいくか。 今度は上半身だ。長門と俺では十センチ以上の身長差があるので、肩の位置は結構違ったのだが、やはりこの抜け殻はよくできている。グーンと伸びて結局、両手と頭を入れるのにも苦労はしなかった。まぶたと鼻の位置を合わせるのに少しばかり手間取ったが。 ふぅ、入った……。 入ってしまえば締め付け感は少しもない。俺は、口の辺りのしわを延ばしつつ、ゆっくりの目を開けて、鏡に映った自分自身の姿をそっと見つめた。 そこで見たのは、洗面所の蛍光灯の明かりの中で、つややかで滑らかな白い肌が輝いている長門の姿だった。 もっとも、全体的な体つきは小柄な長門ではなく、俺だった。ふたまわりぐらい大きな俺が入ったおかげで抜け殻は伸びきってしまい、せっかくの胸もぺったんこだ。ただし、先端の薄いピンクの小さな突起だけははっきり残されている。 思わず指でつまんでみたが、ぺこっとつぶれてしまった。そりゃそうだ、抜け殻なんだからな。 さらに視線を下のほうに向ける。 当然ウエストラインにはくびれも変化もない。そしてもっとも神秘的な場所なんだが、こればかりはどう表現してよいものか……。所詮中身は男だ、根本的な造りが違う。あとは想像してくれ。 すまん、長門。 そういえば、この状態ではトイレにも行けない。先に用を済ましておくべきだった。 そんなことを考えながらひと通り観察が終了したので、俺は紙袋から制服を取り出した。その時、白いものが床に落ちた。さすがだ古泉、下着まで用意していたのか。 少しばかりレースで縁取られた純白の女物のパンツをはく。このパンツは古泉の趣味なのか、それとも森さんあたりが用意してくれたものなのか。小さいくせにきちんとはくことができた。抜け殻同様によく伸びるようだ。 ブラは入っていなかった。どうやら、ブラをする必要がないことに古泉は気づいていたと見える。あらためて言おう、さすがだ古泉! その後、どうにかセーラー服を身に着けた。短いスカートがどうもなじめない。女性たちはよくこんなスカスカするものをはいていられるもんだ、無防備なことこの上ない。 最後に紺のソックスをはいて、あらためて鏡の前に立ってみた。 うーん、でかい長門だな、やっぱり。 顔の輪郭は違うが、個々のパーツは長門そのものだし、セーラー服を着ると、体のラインが隠される。スカートから伸びる足も、皮膚の色と質感だけは長門と同じだ。太さはどうしようもない。スカートでなくパンツルックだとごまかせそうだな。 俺は、鏡の前でくるっと一回りして、ポーズを取ってみた。さらりとたなびくショートカットの髪、そして、一瞬舞い上がったスカートの中に白い下着が見えたような気がしてドキリとする。 鏡の中の俺に向かって、首をかしげて軽く微笑んでみる。ふむ、長門が微笑むとこんな感じなのか。か、かわいいじゃないか……。 いかん、いかん、あれは俺自身だ。俺は決して変な趣味はない。 「よし」 気合を入れた俺は洗面室を出て、長門の待つベッドルームへと向かった。 「すまん、待たせた、な、な、長門? その格好……」 ベッドの横で振り返った制服姿は、長門ではなくて喜緑さんだった。 「喜緑江美里の抜け殻を着た、……あなたもセーラー服がよく似合っている」 さすがに俺が長門の抜け殻を着るより、喜緑さんの抜け殻を着た長門の方が遥かによくマッチしている。どこからどう見ても喜緑さんだ。 その喜緑長門は、俺のことをじっと見つめている。何か珍しいものでも見るような表情に思えたのは、俺が気にしすぎているからか。 「あなたがここを出てしばらくしてから、わたしはこの格好で出る。できるだけ人の多いところを通ってわたしのマンションに向かって」 そういって、喜緑長門はマンションの鍵を俺に手渡した。 「ここを出るときには、見た目が小さくなるように、少し体を縮めた方がいい」 「うん、わかった。じゃ、行ってくる」 「気をつけて」 おそらくは古泉側の誰かが俺のことをフォローしてくれているはずだ。頼むぞ、古泉。 俺は、少し体を縮めるようにしながら、できるだけ自然な感じでラブホテルを後にした。追っ手が来ているかなんて俺にはわからない。長門に言われたように、人通りの多いところを選びながら長門のマンションを目指した。 長門に変装しセーラー服まで着ているので周囲の視線が気になって仕方がなかった。どれほどの時間が経過したかもわからないし、どこをどう通ったのかもわからないまま、やっとのことで長門のマンションが見える所まできた。もう少し、向こうの角を曲がってちょっと行けば、エントランスだ。だんだん歩みが速くなる。 ついには少し小走りになって角を曲がった瞬間、誰かに腕をつかまれた。 「うぐっ?」 「そんなにあわててどうしたんですか?」 聞きなれない太い声が耳元で聞こえた。 「どこで手にいれたのか知りませんが、妙なものを着ていますね。すっかり出し抜かれるところでした」 「誰だ?」 「名乗ったところであなたはご存知ないですからね、どうでもいいじゃないですか」 しまった、角を曲がるときには注意しろ、と言われていたのに。ここまできて油断した。 「離せ!」 「それは無理な注文です」 「くっ!」 ごつい腕に両肩をがっしりとつかまれて俺は身動きが取れなかった。長門、古泉、頼む、早く来てくれ! 無駄な足掻きと知りつつも、俺は何とか振りほどこうともがいていた。 と、その時、 「あれ、長門さん、どうしたの?」 どこかで聞いたことがある声がして、俺は頭を上げた。 「あ、あ、朝倉ぁ!?」 ======== マンションのエントランスの方からゆっくり歩いてきたのは、制服姿の朝倉だった。 なぜだ、なぜ朝倉がこんなところに。 やばい、ますますやばい。すでに機関の非主流派は情報統合思念体の急進派とも連携していたというのか? くそっ、ここまでか……。 「誰だ、お前は!」 男が朝倉に向かって叫んだ。 おや、こいつは朝倉を知らない? 「それより、あなたは何? 長門さんをどうしようというわけ?」 ん、どういうことだ? この朝倉は……。 朝倉が一歩前に進み出ると、俺の肩をつかんでいた男の力がフッと抜けたのがわかった。俺は男の手から抜け出すと、転がるようにして朝倉の背後の電柱の影に駆け込んだ。 「わたしと戦うつもりなら、容赦はしないわ」 朝倉は以前に俺を襲った時と同じ様に、にこやかな微笑みを浮かべながら男との間合いを徐々に詰めている。 「……TFEI端末か?」 男はふり絞るようにつぶやくと、ゆっくりと後ずさりを始めた。 「そうね、あなたたちの言葉を借りるなら、そう言うことになるわね」 朝倉は、今にも飛びかかろうとする猫科の動物のように体を少し縮めた。 「ちっ」 男が後方に走り出そうとした瞬間、白い影が曲がり角から飛び出して男の足を払った。 勢い余った男は地面の上で二回転ほどして受身を取ったところで、今度は別の影が飛び出してきて後ろ手に男を押さ込んだ。 「き、喜緑さん!」 俺は思わず叫んだが、最初の影は、喜緑さんの格好をした長門だ。二番目の影は白いブラウスにタイトスカート、そして髪をポニーテールにまとめた、できる秘書風OLの姿に変身した森さんだった。 「大丈夫?」 喜緑長門がスカートの埃を手で払いながら、電柱の横でしゃがみこんでいる俺に近づいてきた。そして、俺の前に立っている朝倉を見つめると、わずかに頭を下げた。 「朝倉涼子……ありがとう」 「え、え、え?」 「うん、気にしないで。それよりホントに大丈夫? えっと、とりあえず大きい方の長門さん」 この朝倉は味方なのか? それとも休戦中の敵なのか? どうして復活したんだ? 少なくとも俺の見た目は今は長門のはずだ、中身が俺であることを知っているのか? 差しのべてくれた朝倉の手をつかんで、やっとのことで立ち上がった俺は、目の前で微笑みながら俺のことを見つめている朝倉を見つめ返した。あまりに疑問が多すぎる。 その時、背後から森さんの声がした。 「とりあえず後はわたしたちが何とかしますから、まずは長門さんのマンションに行ってください、って、ぐ、動くな、このぉ」 あの大男が森さんに押さえ込まれて身動きができないようだ。ポニーの髪を揺らしながら男に馬乗りになっている森さんのどこにそんな力があるんだろう。不思議な人だ。 「さ、早く!」 「了解した」 喜緑長門と朝倉に支えられて、俺は長門のマンションのエントランスを目指して走り始めた。一見、仲の良い女子高生三人組だが、見た目はともかく中身は大違いなんだけど。 やっとのことで、長門の部屋にたどり着くことができた。朝倉がいることだけが腑に落ちないのだが、喜緑長門はそんなことを何も気にしていない様子だった。どういうことだろう。 リビングに入ると、喜緑長門はまだ疑問を抱えたままの俺に振り返った。 「とりあえず、着替えては?」 「うん、そうだな、そうする」 「和室を使って」 長門はもともと俺が着ていた服が入った紙袋を手渡すと、和室に案内してくれた。 「たぶん、問題なく脱げるはず。もし、うまくいかない時は呼んで」 「わかったよ」 和室の襖を閉めてセーラー服から脱ぎ始めた。結局スカートだけは馴染めなかったな。これを着ることはこれで最後にしたい。俺はそんな思いを胸に秘めながら、背中の部分をぐっと開き、長門の抜け殻からの脱皮を始めた。 長門が言っていたように、特に苦労することも無く、するすると抜け殻から出ることができた。そういえば、肌に密着していたのに、汗ひとつかいていない。なんという通気性に優れた素材なんだろう。 長門の抜け殻と制服をたたんでリビングに戻ると、長門も朝倉もいなかった。別の部屋で、長門の脱皮と着替えでも手伝っているのだろうか? 何とか危機は乗り切ることはできたようだな。全身の力がどっと抜けた俺は、コタツ机でグターとのびていた。しばらくすると、廊下から長門と、その後ろからもう一人、見たことのある姿が……。 「え、あれ? 喜緑さん?」 長門はすでにもとの長門の姿に戻って、キッチンへお茶の用意に行った。と、言うことは、この喜緑さんの中身は朝倉なのか? いったい誰が誰なのかわからなくなってきたぞ? 「大丈夫でした? キョンくん」 「本物の喜緑さん、ですか? それとも朝倉……」 「うふふ、ほら、これを見てください」 そういって喜緑さんが手を広げると、ぱぱぱっと透明なものが大きく広がった。 こ、これは……。 「そう、朝倉涼子の体表保護皮膜です」 「な!」 コタツ机の上に横たわった朝倉の抜け殻を、俺は呆然として眺めていた。 「さっきの朝倉さんは、実はわたしだったんです。だって、長門さんがわたしに成りすましていたから、やっぱり、二人同時に登場したら変じゃないかなって」 いやいや、こんな抜け殻があること自体、十分変ですよ、喜緑さん……。 「朝倉さんはずいぶん前に、長門さんに情報連結を解除されてしまいましたが、保護皮膜はなぜか情報統合思念体によって保管されていたみたいです」 喜緑さんは朝倉の抜け殻を再び小さくたたむと、水色の小箱を取り出してその中にそっとしまった。 「驚きました?」 「はぁ、それはもう」 朝倉が現れた時、俺はもうすべて終わったと、一度はあきらめたんだから。 「それにしても危ないところだった」 お茶を持ってリビングにやってきた長門は、そういいながら腰を下ろした。 「朝く、いや、喜緑さんが来てくれたおかげでホントに助かりました」 俺も、あらためて喜緑さんに頭を下げた。 「いいんです。気にしないでください」 長門が淹れてくれたお茶はおいしかった。おかげで、心の底から一息つくことができた。長門も喜緑さんも、静かにお茶を飲んでいたが、やがて喜緑さんが俺の方に向かってにっこり微笑んできた。 「わたしたちの体表保護皮膜を集めているそうですね?」 き、喜緑さんまで何を言い出すんですか……。 「いや、別にそういうわけでは……」 「よかったらこの朝倉さんのものも持って帰ってください」 喜緑さんは水色の小箱を差し出した。 「そんな、別に俺は……」 「また、何かのときに役に立つこともある。あなたは持っておくべき」 「『持っておくべき』ってなぁ、長門……」 「いらない?」 一ミリほど首を傾ける長門。 「え?」 「いらない?」 「えーっと……」 「いらない?」 「…………い、いります」 またしても、俺の負け。三顧の礼かよ、まったく。 そんな俺たちの様子をニコニコして見つめていた喜緑さんだった。 その後、家に帰る俺を、念のため、といって喜緑さんと長門がエスコートしてくれた。万能有機アンドロイドとはいえ、女性二人に家まで送ってもらえて、なんとなく歯痒い様な嬉しい様な妙な気分だった。 やっと、我が家へ、俺の部屋に無事に帰りつくことができた。それにしても長い一日だった。 結局、今、俺の手元には、俺が身につけた長門の抜け殻と、長門が身につけた喜緑さんの抜け殻と、喜緑さんが身につけた朝倉の抜け殻と、そしてまだ現物は見たことがない朝比奈さんの抜け殻が残されている。特に真ん中の二つは微妙にコレクターズアイテムとしての価値が高まったような気がするな。 そうだ、もう一つおまけに俺サイズの北高指定のセーラー服とレースつきパンツもあった。……誰か欲しい奴はいるか? これらのスペシャルアイテムを俺はどうすればいいんだ? 毎日かばんに入れて持ち歩けというのか。と、言うか、持ち歩かざるを得ないではないか。うぅむ、教科書すらろくに入っていないかばんに、こんなものを入れておかないといけないなんて……。 「あーあ、もう、どうでもいい、なるようになれ、だ……」 四つの小箱はまた机の引き出しの奥に入れた。セーラー服は紙袋に入れたまま、クローゼットの奥に押し込んだ。くたくたに疲れた俺は、深い深い眠りについた。 そんな怒涛の週末が終わって、月曜日を迎えた。 ハルヒはその週末以降もずーっと機嫌がいいようで、授業中、しょっちゅう俺の背中をつついては、楽しげにいろいろ話しかけてきた。頼むから先生の話を聞かせてくれ。 え、いつも寝てるだけだから一緒だろって、ほっといてくれ。 そして、あっという間に放課後になった。 掃除当番のハルヒを残し、部室へと向かっている途中で、古泉と出会った。 「よお、古泉」 「あ、先日は、お疲れ様でした」 俺は、古泉と並んで歩きながら、週末の騒動の結末について尋ねてみた。 「結局、機関の非主流派とやらは何とかできたのか?」 「えぇ、あなたを見失った後、連中、あわてて行動を始めましてね……」 そこで古泉は俺の方に振り向いて軽く頭を下げてにっこり笑った。 「最後は少し危ないところでしたが、長門さんと森さんのおかげで、首謀者も捕まえることができました。あなたのおかげです。ありがとうございました」 そうか、あの大男が黒幕だったのか。 「そういえば、森さんの話によると、あの時もう一人、北高の制服を着た女性がいたとか」 「うん、あれか、あれはな……」 と、ここで古泉の携帯が鳴った。 「すみません、失礼します」 古泉は携帯を耳にあて、少し横を向いて会話している。 「え、えぇ。本当ですか? はい、わかりました。すぐに伺います」 通話を終えた携帯をポケットにしまいつつ、古泉の笑顔に憂いが宿った。 「久しぶりに閉鎖空間が発生したそうです」 「はぁ? どういうことだ。ハルヒはすこぶる機嫌がよかったぞ」 俺はついさっき別れたばかりのハルヒの姿を思い出した。ほうきを握り締めて、阪中と何か楽しげに話をしていたが……。 「とにかく行ってきます。涼宮さんにはよろしくお伝えください」 「わかった、気をつけろよ」 「ありがとうございます。それにしても、ここに来て閉鎖空間とは。皮肉なもんです」 古泉は力なく笑っていた。確かに、安定状態が続くことを嫌った非主流派の企みが潰えたとたんに閉鎖空間が発生するなんて……。 「僕も何か身を守ることのできる抜け殻が欲しいですね、では」 そう言いながら古泉は階段を駆け下りて行ってしまった。 抜け殻、か……。 今、俺のかばんの中には、四つの抜け殻が入っている。さすがに今日はセーラー服は置いてきたが。それにしても、まさかの朝倉の抜け殻まで手に入ってしまった。これらの抜け殻のおかげで俺は危機から脱することができたわけだが、あんな風に役に立つとは思いもしなかった。 それにしてもどういうことだ? なぜ急に閉鎖空間が発生したのだろう。 教室に戻ってハルヒの様子を見に行くことも考えたが、俺はひとまず部室でハルヒを待つことにした。何か気に入らないことがあるのなら、きっとドアを蹴破る勢いで部室に飛び込んでくるはずだ。対処するのはそれからでいい。 部室には、長門とすでにメイド姿に変身していた朝比奈さんが座っていた。 「こんにちは、キョンくん」 「どうも、朝比奈さん」 俺は朝比奈さんに軽く会釈していつものようにかばんを置くと、やはりいつものように本を読んでいる長門を見た。 「よお、元気か?」 「元気」 あいかわらずの平板な表情の長門を見ていて、あのラブホテルの鏡で見た、俺自身が変身した長門(俺)の笑顔を思い出していた。もし長門が表情豊かに微笑むならば、きっと今以上に輝いて見えるに違いない。えーっと、仮定法過去だったっけ? 「古泉くんは?」 「急にバイトが入ったそうで……」 「えっ!」 朝比奈さんと長門が驚いたように顔を上げた瞬間、ばこーんという大音響と共に部室の扉が吹き飛んだ。 「キョーーン! そこにいるの!?」 ものすごい勢いで飛び込んできたハルヒは、俺のネクタイを握りしめると長机の上に俺をねじ伏せた。 「な、何をする! どういうことだ!」 「ええい、問答無用よ、これからあたしの質問にきりきり答えなさい!」 「落ちつけ、問答無用なのか答えなきゃいけないのかどっちだ!」 「キョン、あんたこの前の不思議探索のあと、有希と一緒に、ラ、ラブホテルに行ったわね!」 「なっ?」 「えっ、キョンくん……」 「阪中さんに聞いたわ、あんたが強引に有希を引っ張り込んだところを見た人がいたって! どういうことよ、あんた、有希に無理やり変なことをしたんじゃないわよね?!」 ちょ、ちょっと待て! 行ったのは事実だが、俺たちは何もしていないし、そもそも、俺が引っ張り込んだんじゃない、俺が長門に引っ張り込まれたんだ。誰だ、いい加減なことを阪中に伝えた奴は! それにあそこに行ったのは必要に迫られて仕方なくだなぁ……、なんて、言い訳はできない。くぅー、どうすればいい? 俺はそっと長門の方に助けを求める視線を向けたが、長門は相変わらずの無表情だった。 「有希! 大丈夫だった? キョンに何かされなかった?」 ハルヒの問いかけに、長門は小さくつぶやくように答えた。 「そこで、彼はわたしの中に入った」 「ふへっ?」 「な、ながとぉー!」 前にも言っただろ、『わたしの抜け殻の中』だぁぁぁ…………。 もはや簡単には修正できないほど、情報の伝達に齟齬が発生してしまった。 激しく往復ビンタを食らわせた後も、ハルヒは俺のネクタイを締め上げながらなにやら叫んでいた。そんな目に遭いながら、俺にもしものことがあったら、かばんの中の四つの小箱はどうなるのだろう、なんて事が頭の中を駆け抜けていった。 誰かに見られたら、俺は怪しげな脱皮を繰り返す『完全変態』だと思われるではないか。いやいや、蛹にはならないようだから『不完全変態』か、困ったもんだ。 結局、どんなに手を尽くしたところで、最後にひどい目に遭うのはやはり俺ってことだ。あぁ、いっそ、俺自身の抜け殻を身代わりに残して、しばらくどこかに雲隠れすることができたらどれほどいいだろう……、やれやれだよ、まったく。 Fin.