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義理なさけ 山本周五郎 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)詰《なじ》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#8字下げ] ------------------------------------------------------- [#8字下げ]一[#「一」は中見出し] 梅雨があがって、にわかに日光がぎらぎらしだすと、庭にありとある花草や樹々がいっせいに活気をもりかえし、じっとしてはいられないというように枝も葉もぐんぐんと伸びはじめる。良左衛門には一年じゅうで最も好きな季節であった。単衣の裾をはしおり、菅笠をかぶり、朝から菊畑へおりてせっせと土いじりをしていた彼は、ようやく快いつかれを覚えだしたので、腰を伸ばしながら立ちあがった。 ――ひとやすみするか。喉も渇いていた、しきりに熱い茶がほしい、良左衛門は道具をそこへ置き、手をはたきながら内庭のほうへはいって行った。すると、ちょうどそのとき、しず[#「しず」に傍点]江という若い小間使が、人目を憚るような身ごなしで、廊下を小走りに奥の間のほうへ来るのをみつけた。なんの用があるんだ。奥の間には良左衛門と甲子雄の部屋しかない、そこへの取次は家士の役目で、小間使などのでいりは常から禁じてある。良左衛門は不審に思って、眼を細めながら見やった。……しず江はそれに気付かぬとみえて、すばやく前後を見まわして、甲子雄の居間へすべるようにはいった。 良左衛門は足ばやに内庭をよこぎり、広縁へあがる、とたんに部屋の中から戻って来たしず江と顔を見合せた、しず江はあっと云った、息の止まるような表情をしたが、ごめんあそばせと云ってすりぬけてゆこうとした、良左衛門はその肩をつかんだ、そして部屋の中へ押しいれると、うしろ手に障子をぴったり閉じた。 「なにをしにまいった」 「…………」しず江は崩れるようにそこへ坐った。 「ここは女どものまいるべきところではない、それは知っておるであろう、なんの用があってまいった、申せ」しず江は黙って平伏していた。そのかたちは「なにも申しあげられません」というかたい意志を表白していた。良左衛門は部屋の中を見まわした、北がわの小窓の下にある甲子雄の机の上に一通の封書が置いてあった。 「動いてはならんぞ」 そう云って封書を取って来た。おもてに若旦那さまとあり、裏にはしず[#「しず」に傍点]とだけ書いてある、良左衛門は封を切った。文言は短いものであったが、内容はまったく良左衛門を愕かせた、それには甲子雄が近く嫁を迎えるという話をたしかめ、自分との約束をどうしてくれるかと詰《なじ》ってある、そして最も重大なのは次の数句だった。……今日までは包みおり候もわたくし身ごもりましてはや三月にござそろ、この事よくよくお考えのうえ奥さまをお迎えあそばすよう、それによってしず[#「しず」に傍点]にも思案ござそろ。そこまで読んで来たとき、しず江がとつぜん前跼みになった、しかし良左衛門はすばやくその肩を押え、娘の右手をとってぐっと捻じあげた、しず江の手からばたりと懐剣が落ちた。 「ばかな事をする、うろたえるな」 「……申しわけがございません」しず江は両手をついてわっと噎びあげた。良左衛門は手紙を封に入れて坐り、ややしばらく、しず江の泣く姿を見まもっていたが、「悪いようにはせぬ、仔細を申してみい、甲子とはいつ頃からのことだ」「…………」「ずっと以前からか」しず江はかすかに頷いた、「身ごもっておるということに間違いはないのだな、よし、……そのほうに云うことはない、出来てしまったことは取返しがつかぬし、嫁取りまえにわかったのがせめてものことだ、決して悪いようにはせぬから、当分は誰にも知れぬよう身を慎んでおれ」 「どうぞ、若旦那さまをお叱りあそばしませぬよう」しず江は涙に濡れた眼をあげて訴えるような声で云った、「みんなわたくしが悪いのでございます、どうぞ若旦那さまをお叱りくださいますな、おねがいでございます」 「おまえがそれを心配することはない、ただ、むやみな者に知られぬよう慎んでおれ、愚かなまねをしてはならんぞ」 「……はい」しず江は涙をぬぐってしおしおと立ち去っていった。 中山良左衛門は小田原藩大久保家の江戸屋敷年寄役で、八百石の御納戸奉行を勤めていた。夫婦のあいだに甲子雄という子が一人あり、その春ふとした緑で主家の分家にあたる大久保出羽守家の用人、佐伯靱負の娘と縁談がととのい、近日うちに結納のとりかわしをするというところまで進んでいた。……甲子雄は二十四、佐伯の娘は二十ですこし年は長けているが、ひじょうな美貌とぬきんでた才芸とで、園生という名はこちらの屋敷まで聞えていた。 [#8字下げ]二[#「二」は中見出し] 困ったことになった。良左衛門はそこに坐ったまま、しばらくは立つことも忘れて考えこんだ。妻の八重は昨年の夏から病床にいた、丈夫なからだなら相談もできるが、いまこんな悪い話を聞かせることはできない。甲子雄は幼いじぶんからすなおな子供で、気持も明るく性格もきびきびと濁りがなかった。ひと頃は学問に熱中していたが、この数年は武芸に興味をもちだして、中条流の小太刀では家中ゆびおりの名をとっている。――こんな不埒なことをしているけぶりは微塵もなかったが、否、それが親の盲目というものかもしれぬ。 良左衛門はその年になってはじめて、わが子の心を見はぐったように思い、淋しさと腹立たしさとに身がふるえた、なによりも気にいらなかったのは、蔭でそういう事をしておきながら、佐伯との縁談を黙って承知した点である。そんな不心得者とは知らなかった。もう土いじりどころではない、彼はすぐに着替えをして、老職大久保玄蕃の家をおとずれた。玄蕃が佐伯との縁談の仲人だったので、理由を語って謝絶して貰うためだった。 甲子雄はいつものとおり元気に御殿をさがって来た、風呂の中では朗詠などをやっていた、良左衛門はその屈托のないのに呆れ、昼からの立腹を更に煽りたてられた。夕食が済んでからすぐ、彼は甲子雄を自分の居間へ呼んだ。 「碁のお相手ですか」そんなことを云いながらはいって来た甲子雄は、父のけわしい顔つきをみて驚いたようすだった、彼はしかし明るい眉をしてしずかに坐った。良左衛門はするどくその面を睨んでいたが、やがてしず江の手紙をとり出して投げやった。 「それを読んでみい」 「はい」甲子雄は封書をとりあげ、おもて裏をうちかえして不審げに父をみたが、すぐに中の手紙をぬきだして読んだ。……彼の表情はみるみる変った。二十四歳になる今日まで、良左衛門はわが子の顔にそういう表情のあらわれたのを曽て見たことがなかった。 「甲子雄、覚えがあろうな、覚えがあるか」 甲子雄は手紙をしずかに巻き、封へ入れて押しやりながら父を見あげた。 「父上、この書面はどうしてお手にはいったのですか」 「さような事はどうでもよい、覚えがあるかと訊いておるのだ」 「お言葉を返して恐れいりますが父上」甲子雄は押し返して云った、「どうして是がお手にはいったかをお聞かせください、誰かがお見せ申したのですか、それとも自身お手にはいったのですか」 「しず江が自分でそのほうの部屋へ持ってまいった、それをわしがその場で押えたのだ、そればかりではない、当人の口からも聞き取ってある、……これでもそのほう申しひらきができるか」 甲子雄は口をつぐんだ。彼には云うべき言葉がなかった、身に覚えのないことである。そう云ってもまるで夢のような話だった、彼は小間使の美しい顔を思い、手紙に書いてある文字の意味を思った、すべてが突然で、あまりに連絡がなくて、まるで印象がばらばらだった。みんな嘘です、そういうのは簡単である、しかしそれだけで父が信用するだろうか、もし小間使とつき合せられたとして、たしかにそういう事情があったと云われたとき、それをうち砕く言葉が自分にあるだろうか。 「返答のないのは覚えがあるからだな、甲子雄、男は男らしくしろ、覚えがあるのかないのかどうだ」 「……唯今は申しあげられません」 「どうして云えぬ、是ほど判然としてもまだ云えぬか、うろんなまねは赦さんぞ」 「うろんではございません」甲子雄は父をはっきりと見あげて云った、「わたくしにはわたくしで考えもございます、決して父上の御名を辱《はずかし》めるような事は致しません、しかし一度しず江に会いたいと存じます、その上で仔細を申しあげます」 「その必要はない、しず江の事はわしが始末をする」 「父上……」彼は膝をのりだした。 「佐伯との縁談も断わったぞ」良左衛門は声をふるわせながら云った、「そのほうも当年二十四歳になる、改めて小言を云わずとも善悪はわかる筈だ、八重は病床にいる、……父ひとりでかような心配をしたことだけ忘れるな」 「申しあげます、父上、しず江に会わせてください、ぜひとも会わなければならぬのです、おねがい申します」 「……会ってどうしようというのだ」 [#8字下げ]三[#「三」は中見出し] 「話したい事があるのです、訊きたいことがございます、どうか一度だけ会わせてください、父上おねがいでございます」 「甲子雄……」良左衛門は冷やかに云った、「おまえはお国詰めになる筈だ、四五日うちには小田原へ立てるよう、わしから御老職に願ってある、うろたえたまねをすると家名にかかわるぞ」 甲子雄は蒼白めた顔で父を見あげていた、良左衛門のほうが却ってたじろいだ、彼はふと眼をそむけながら、呟くように云った、「…かね[#「かね」に傍点]にそう申してみろ」甲子雄は会釈をしてすぐに立った。 かね[#「かね」に傍点]というのは婢頭で、十五年もこの屋敷に勤めていた。年も四十にちかい、母が病床の人となってからは一手に家政のきりもりをしているが、奥にも表にもなかなか重しの利く存在だった。……かね[#「かね」に傍点]は会わないほうがよいと云った、「お会いになっては事がもつれます、旦那さまとかね[#「かね」に傍点]で悪いようには致しません、どうぞこの事はこれきりでお忘れあそばせ」 「ばかなことを云ってはいけない」己はなにも知らないのだ、そう云いかけたが、甲子雄はここでもまたそれが云えなかった、「当人のおれに責任のあることだ、これは己としず江とのふたりの責任なんだ、父上やおまえだけで解決することがらではないんだ」 彼はどうしても会うと云い張った。かね[#「かね」に傍点]はそれでもならぬとは云えないので、 「ではお仏間においであそばせ、かね[#「かね」に傍点]がつれてまいりますから」 「きっとだぞ」念を押して彼はそのまま仏間へはいった。かなり待たせてから、ようやくやって来たかね[#「かね」に傍点]はひどく慌てていた、「若旦那さま、しず江がみえなくなりました」「……なに」「書置きを遺しております、着替えを持って出ましたようで、出奔したものと存じます」 「書置きはどうした」 「ただいま旦那さまにさしあげてまいりました」 甲子雄は立って、「すぐ宿元へ人をやれ」と云いすて、走るように父の居間へいった、良左衛門はそれを読み終ったところだった。「……父上」 「あれは出奔した、そのほうに呉々も詫びておる」 「それだけでございますか」 「ゆくえは捜してくれるな、その時が来れば詫びにまいる、と……それだけだ」良左衛門は書面を置いて、深く息をつきながら叩くように云った、「哀れなやつだ」 宿元へ人をやったがもちろんしず江はいってはいなかった。召使の者はたいてい小田原の人間なので、その点を折り返し調べさせたが、しず江は早くから両親がなく、遠い縁者がいるだけで、おそらく江戸うちに身を隠しているのだろうということだった。そういうごたごたした事が片付かぬうちに、甲子雄に国詰めの沙汰がさがった。それで心をのこしながら、彼は家士二名と下僕をつれて江戸を立った。 佐伯との縁談を父がこわしたことは、さして重大ではなかった。園生という娘の才媛の名はかねて聞いていたけれども、かくべつ妻にしたいという執着があったわけではない、それよりもいま甲子雄のあたまのなかはしず江のことでいっぱいだった。……彼女は三年まえ十五歳で小間使にあがった。眼の大きな、ふっくらとした顔だちで、笑うときにできる片笑窪《かたえくぼ》が云いようのない可憐な感じを与えた。婢たちを奥へでいりさせなくなったのは母が病みついてからで、そのまえにはしず江がよく来た。食事のしらせや茶のときにはきまって彼女がそう云いに来た。甲子雄はそれほど意にとめていたのではないが、しかし彼女を見ることは好きだった、しず江を見るとなんとなく心がゆるやかに温かくなるような気がした。……或るとき母が、父にむかってこんなことを云っていた。――あれはめずらしく心ざまのやさしい娘です、気に張りもあります、ああいう娘を娶る良人はきっと出世をしますよ。ほんの茶話であったが、聞いていた甲子雄はなるほどそうかもしれないと思った。 甲子雄はそういう風に彼女をみていた、それで父からあの手紙を見せられたとき、愕いたことは云うまでもないが、すぐに是にはなにか理由があると思った。彼にとっては根も葉もないぬれぎぬであったけれど、相手がしず江だけに、どうしてそんな大胆なことをしなければならなかったかということが知りたかった。そしていちばん強く脳裡にうかんだのは、あれはこの甲子雄を想っていたのではないか、ということだった。 [#8字下げ]四[#「四」は中見出し] 小田原へ着いた甲子雄は、ひとまず城中二の曲輪《くるわ》の長屋に落ち着いたが、間もなく願って城下に家を貰って移った。かくべつ役目はなかったので、若侍たちに中条流の手ほどきをするのと、三日にいちど登城するほかはからだがあいていた。それで菅沼小七郎という櫓番を勤める男にさそわれて釣りをはじめた、生れてはじめて釣り竿を持つのだが、城下近くに早川、酒匂という好い釣り場があり、魚も多かったのですぐにその面白さと味を覚えこんだ。 そうしているあいだにも、しかし彼はしず江のことが絶えずあたまにあった。佐伯との結納のとりかわしがさし迫っているとき、それをうちこわすような事を敢てしたのは、彼女が甲子雄を愛していたからではないか。甲子雄を他人に取られたくないという、思い詰めた、一途な考えから、前後を忘れてあんな大胆なことをしたのではないか。……そう思うといろいろな事に解釈がつく、そして望みどおり佐伯と破談になったと聞いて、こんどは自分のした事の重大さに気付き、いたたまれなくなって家出をしたのであろう。それに相違ない、しかしそんならなぜ、もっとはやくその気持を伝えなかったのか、娘のひとすじな気持を察すると、いじらしくなるだけ、それだけ、甲子雄は歯痒かった。母上もあのように御贔負だった、身分の違いということだって動かすべからざるものではない、世間に例のないことではないのだ、あの時あれほど大胆なことができるなら、もっと前にそれだけの勇気が出せた筈ではないか。 考えるだけ考えて、結局おもうのは一度しず江に会いたいということだった。そして彼女の心をたしかめたうえ改めて妻に迎えてもよいと思った。けれども江戸の家からはかね[#「かね」に傍点]が「まだしずの行衛は知れない」という手紙を一度よこしたきりで、夏を過ぎてもなんの知らせもなかった。……そして秋八月になると主君加賀守が参覲のいとまで帰国し、小田原城下はにわかに活気だってきた。 江戸から来た供のなかに、中小姓で矢野伊太夫という若者がいた。甲子雄とは親しく往来していた間柄なので、帰藩の騒ぎが落ち着くと歓迎の小宴を催すことになった、「それなら川原の菊屋がいい」菅沼小七郎が場所をきめた。それは早川の川原に臨んでいる料亭で、箱根へゆく客の宿もする、小七郎は釣りの往き帰りにたびたび寄ってなじみだった。 矢野はほかに三人ほど同僚をつれて来た。甲子雄も菅沼のほかに勝田、鹿野という若侍をさそった。座敷は川にのぞんだ二十畳敷で、瀬の音が部屋いっぱいに流れこんでくるし、昏《く》れゆく箱根、足柄の山々を一望に眺めるいい席だった……顔のそろったのは黄昏《たそがれ》まえで、みんな改めて名乗り合うまでもない間柄だったから、たちまち賑かな酒になった。灯がはいってからは座が一層うきたってきた、年頃もおなじぐらいだし、血気ぞろいで、酒はすばらしくはずんだ。鹿野安二郎は少し酒癖があるので、甲子雄はときどき、「おい鹿野、やりすぎるとまたしくじるぞ、今夜はあばれないようにしろよ」そう声をかけた。 「今夜はだいじょうぶです、なにしろ御師範がいるから、へたにあばれると捻られる、なま酔い本性たがわずですよ」安二郎はいい気持そうに笑っていた。彼は甲子雄から中条流のてほどきをして貰っているひとりだったのである。 「おい中山、貴公にちょっと話がある……」矢野がふと思い出したように、盃を持ってそばへやって来た、「貴公うまいことをしたぞ」 「……なんだ」 「あの佐伯の娘なあ、貴公と縁談がまとまりかけてだめになった」 「なんだ、よせよそんなつまらぬことを」 「ところがつまらなくないんだ、出羽侯の家中でずい一の才媛とよばれ、ずばぬけた美人と評判だったが、どう致しましてあれから間もなくばけの皮がはげて大変なことになった」酔っているから無遠慮だった。伊太夫はぐっと仰った盃を甲子雄にさしながら、「貴公との縁談が不調になると間もなく、あの娘は某侯の……これは云わぬ……某侯の家中で林……いやこの名も遠慮しよう、つまりさるところへ興入れをした、ところが五十日と経たぬうちに、あの娘に不義の証拠があらわれてそっくりそのまま実家へ送り戻しさ」 「そんな、ばかなことが」 「ばかな事じゃない、相手は佐伯の家のさむらいで、二年も前からの関係だというその証拠までちゃんと押えられたんだ」甲子雄はいっぺんに酔いのさめる気持だった、伊太夫は自分のことを誇るようにそう云った、「貴公あぶないところだった、中山は運がよかったと江戸では評判だぞ」 [#8字下げ]五[#「五」は中見出し] かくべつ執着のある娘ではなかった。しかしいちどは結納のとりかわしをしようとした相手である。甲子雄はその話を聞いて、自分が幸運だったと思うよりも、園生というその娘の不幸な身の上が哀れだった。ほんとうの仔細はわからないが、自分の屋敷の家士とまちがいがあったというのは恐らく事実だろう、ふたりの恋は許されなかった、そして娘はその恋を秘めて他家へとつがなければならなかった。そこには哀れな事情があるにちがいない、そうなるまでには、女も男もどんなにか苦しんだことだろう。甲子雄にはまずそれが考えられた。そして人間にはなんと多くの、それぞれのいのちがあることだろうと思った。 「恐れいりますが、どなたさまかちょっといらしって頂けないでしょうか」 座敷の障子をあけて、この家の女のひとりが顔をだした、菅沼がふりかえった。 「なんだ、なにか用か」 「いまおつれさまが向うで」と女は離れのほうへ眼をやった、「……うちの女中をつかまえて無理を云っていらっしゃるんです、まだ来たばかりで慣れない女中ですし、たいそうお酔っておいでなさるので、わたくしどもには手が出せません、可哀そうですからどなたかいらしって……」 「誰だそんな悪さをするやつは」小七郎はいならんでいる顔を見まわした、「いけない中山さん、鹿野ですよ」 「鹿野はいるだろう」甲子雄もすぐに見まわしたが、そこにいないのは安二郎ひとりだった。 「また癖がでたんですよ、あなたでなければおさまりません、いってください」 「めずらしくおとなしいと思えばよそを稼ぐか」甲子雄は苦笑しながら立った。 廊下を帳場とは反対のほうへまっすぐにゆくと、二間ほどのわたりがあって、川原の上へさしかけに造った離室に通ずる。女に案内されてわたりまでゆくと、もう安二郎の喚きたてる声が聞えた。……甲子雄はしずかにはいって行った。安二郎は大あぐらに坐り、ぐたぐたに酔った肩をつきあげながらわけのわからぬことを喚いている、それと斜交《はすか》いに若い女中がちいさく身を縮めていた、見ると右手をしっかり安二郎に掴まれているのであった。 「おい鹿野こんなところでなにをしているんだ、さあ、向うへいって呑まぬか」 「うるさい、拙者はいま詮議ちゅうだ」 「また癖をだしたな、なんの詮議だ」 「この女が」と安二郎は掴んでいる手を叩いて、「この女がわれわれの座敷のようすを窺っていたんだ、われわれの話を立ち聞きしていたんだ、だからいまその詮議を」「ばかげたことを云うな」甲子雄はふきだしながら、掴んでいる女中の手を放させようとした、「陰謀の集まりではあるまいし、聞かれて悪いような話はしておらぬ、つまらぬことを云わないで向うへゆこう」 「いやだ、詮議が済まぬうちは動かん」 「いいからこの手を放せ、おい、己は怒るぞ」逆に捻ったので、安二郎は女の手を放した、そのとき甲子雄は女中の顔を初めて見た、そしてあっと云った。 「おまえは、……しず江ではないか」 女は身を縮めたまま、逃げる隙を窺っていたようにぱっとはね起き、ものも云わずにわたりのほうへ走っていった、甲子雄は逃さなかった、廊下のかかりで追いつき袖をとってひき戻した。 「なぜ逃げる、おれは捜していたんだぞ」 「どうぞ、どうぞお放しくださいまし」 「放さない、聞きたいことを聞くまではどんなことがあっても放さない、どうしておまえは」 菅沼小七郎がそこへやって来た。 「どうしました中山さん」 「ああちょうどいい、向うに鹿野がいるからつれていってくれ、拙者はこの女にすこし話がある、ちょっと中座をするからとみんなに伝えて置いてくれ」 「承知しました」小七郎はこの場のようすが唯事でないのをみてとった、「あとはいいようにします」 「たのむ」と云い捨てて甲子雄は女の腕をとり、ほとんどひき立てるように廊下をまがっていった。 [#8字下げ]六[#「六」は中見出し] 夜風はもうはっきりと秋だった。星明りで、川原はかなり遠くまで眺めがきいた、淙々たる瀬音を縫って虫の鳴声がしきりだった。……菊屋の庭つづきを川原まで来て、甲子雄は足をとめながらふりかえった。 「それを知っていた……おまえがそれを知っていたというのか」 「はい存じておりました」しず江は俯向いたまま低いこえで云った、「わたくしの従姉が佐伯さまへご奉公にあがっています、その従姉からお嬢さまのお噂はうかがっていました、それで……若旦那さまとの御縁談がまとまっては大変だと思ったのです、そういうお身持の悪い方をお迎えあそばして、もし若旦那さまのお名に関わるようなことができては大変だと思ったのです」 「それであんなことをしたのか、あんな思いきったことを……」 「御結納が迫っていますし、わたくし愚かでございますから、ほかに思案がございませんでした、また事実を申しあげては、佐伯さまのお嬢さまの悪口を申すことになります、従姉の話は嘘ではないと存じましたけれど、それだけで、御大身のお嬢さまに瑾《きず》をつけるようなことは申しあげられません、……それでわたくし、あんなばかな事を致しました」 佐伯の娘の不身持を知って、甲子雄との縁談をこわそうと考えたしず江の、いかにも娘らしい一途な遣り方が、甲子雄にはいまいじらしく哀れに諒解された。ほかの者ならもっと別な方法があったかもしれない、しかし彼女の小さな胸にうかんだ思案はそのひとつきりなかった。事は急ぐ、しかも決定的でなければならない、そこでしず江は自分の恥を賭けてああいう思いきったことをしたのだ。 「わたくしの愚かな仕方のために、若旦那さまがお国詰めにおなりあそばしましてから、しず[#「しず」に傍点]もすぐおあとを追ってここへまいりました、松田の近くに遠い親類がございます、いちどそこへ身を寄せましたうえ、先月の末から菊屋へ働きに出ておりました、若旦那さまが、ときおり菅沼さまとお立ち寄りあそばすのを、知っておりましたから、そして、いつかその折があったら、おめにかかってお詫びを申しあげるつもりでおりました」 「ではさっき立ち聞きをしていたというのはほんとうだったのだな」 「はい、佐伯さまのお嬢さまの話をうかがったときは、わたくし、これでやっとお詫びのしるしができたと、うれしゅうございました」 しず江はそっと袖口を眼に当てた。甲子雄はその可憐な姿をみて、いきなり抱きしめてやりたい衝動をさえ感じた。 「ではさっき、なぜ逃げようとしたんだ」 「なぜでございますかしら」しず江は泣き笑いのような表情をした、「わたくし、自分でもわかりません、ただ恥かしくて、夢中でございました」 「なんだ」甲子雄は明るく胸の晴れたこえで高々と笑った、それから改めて云った、「よくわかった、詫びるどころか、こちらが礼を云わなくてはならぬ、いや礼のほかに聞いて貰いたいことがあるんだ、……しかし今夜はそうしている暇はない、あした改めて来る、あしたの晩にまた来て話そう」 「でもお詫びがかないましたのですから、わたくしは……」 「それよりもっと重大な話だ、そのためにおまえを捜させていたくらいなんだ、いいか、あしたの晩もういちど会おう、忘れずに待っていてくれ、わかったな」 「はい、……では、お待ち申しております」 「約束したぞ」甲子雄はつとしず江の手を握った。娘は身を縮めるようにしたが、そのまるい豊かな胸は大きく波をうっていた。 しかし、その明る夜、甲子雄がたずねて来たときには、もうしず江は菊屋にはいなかった、そして次のような手紙が甲子雄に宛てて残されていた。 [#ここから1字下げ] お心にそむき申しそろ、今宵お越しあそばされてなに事の仰せあるやは僭上ながらおよそお察し申し上げそろ、川原にてのお言葉の端々、うれしくもったいなく血も消ゆるばかりにて、身の果報にひと夜泣き明かし申しそろ、なれどもしず江はおなさけにあまえることはかなわずそろ、おなさけにあまえては己が身のため御縁談をこわし候ようにあいなり、義理あい立たぬ仕儀と存じ申しそろ。なにとぞしず[#「しず」に傍点]のことはお忘れあそばし、一日も早く江戸へおたち帰りのうえよき奥さまをお迎えあそばすよう、蔭ながらお家百年のご繁昌をお祈り申しあげそろ。 [#ここで字下げ終わり] 甲子雄は読み終るとすぐ帳場へゆき、松田の近くにあるというしず江の親戚の家をたずねてそこを出た。そして菅沼小七郎に馬を借り、夜道をかけて松田へむかった。甲子雄にとって、おまえのほかによき妻があると思うか。会ったらまずそう云おう、馬を駆ってゆく彼の頭はそのことでいっぱいだった。道草にはもう露がおりていた。……たずねゆく家に、しかしはたしてしず江はいるであろうか。 底本:「感動小説集」実業之日本社 1975(昭和50)年6月10日 初版発行 1978(昭和53)年5月10日 九版発行 底本の親本:「羅刹」操書房 1947(昭和22)年6月 初出:「羅刹」操書房 1947(昭和22)年6月 入力:特定非営利活動法人はるかぜ
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2月14日 「お疲れ様でーす」 番組の収録が終わり、みんな解散していく。 「おい、白石」 「なんすか? あきら様」 「ほらよ」 袋が白石みのるに投げつけられた。 白石が受け取ったそれは透明な袋で、中にはチョコが入っていた。 「義理チョコの余りだ。ありがたく受け取れ」 「ありがとうございます。しかし、あきら様も毎年大変ですね」 スタッフとか先輩タレントとかにせっせと義理チョコを配り歩いている小神あきらの姿を見ているだけに、白石からはそんなセリフがもれてくる。 「この業界で生きてくなら、これぐらいは浮世の義理ってやつだ」 「文字通りの義理チョコですね」 「まあな。で、今年も義理返しはあの可愛い彼女さんが作ってくれるんだろ?」 「そうなるとは思いますが」 「まあ、あの美味しい菓子が食えるなら、悪くない投資だな」 あきらは、そういうと足早に次の番組の収録現場に向かっていった。 なんだかんだいっても、あきらは人気高校生アイドル。仕事の日程はかなり詰まっている。 白石は、電車を乗り継いで、自宅であるアパートに帰ってきた。 「お帰りなさーい」 可愛い彼女、つまりは柊つかさが出迎えてくれた。 「ただいま」 部屋のテーブルの上に、夕食が並べられている。 なんつーか、既に夫婦も同然のような光景だが、一応同棲はしていない。しかし、通い妻も同然なのは確かだった(しかも、つかさの部屋はすぐ隣だ)。 問題は、つかさの方にその自覚があまりないということなのだが。 テーブルの横に、ダンボール箱が置いてあった。 「あっ、それ。今日、事務所から送られてきたみたい。チョコがいっぱい入ってたよ。白石君は、人気者だよね」 要するに、ファンからのバレンタインチョコだった。 つかさの様子に特に変わったところはない。彼女は、このようなことには寛容だった。 むしろ、白石の方が毎年戸惑っている。 あきらがある番組で盛大に暴露したせいで、白石に彼女がいる事実は、世間には周知のことだった。それなのに、毎年このようにチョコが届けられてくるのだから。 白石は、自分がことさらモテるような人間だとは思ってはいないから、なおさら戸惑うばかりであった。 ちなみに、つかさのチョコは朝一番で白石に渡され、既に白石の腹の中に収められている。つかさが料理学校で培ったスキルを惜しみなく投入したそれが、愛情のスパイス抜きでも、極上の味わいであったことはいうまでもない。 白石は、あきらからもらったチョコをテーブルの上に置いた。 「それ、あきらちゃんからもらったの?」 「ええ。義理チョコの余りだって投げつけられましたよ」 「あきらちゃん、毎年そういってるよね」 「そうっすね」 夕食のあとの食器洗いを終われば、つかさは隣の部屋へと帰っていく。 今日は、チョコが詰められたダンボールを持っていくため、白石もつきそった。 ダンボールにはあきらからもらったチョコの袋も詰め込まれ、つかさの部屋へと搬入される。 これらのチョコは、ホワイトデーの義理返しのクッキーを作る際の材料にされる運命にあった。 3月14日 「お疲れ様でーす」 番組の収録が終わり、みんな解散していく。 「あきら様」 「なんだ? 白石」 「義理返しですよ」 白石は、チョコクッキーが入った袋をあきらに手渡した。 ちなみに、ファンたちへの義理返しはメッセージカード(もちろんその内容は丁重なお断りの返事である)とともに、一斉配送されているはずだ。 あきらは、クッキーをひとつつまみ、口の中に入れた。 「うーん、口の中でとろけるぜ。料理番組に出したいぐらいだな」 「ありがとうございます」 「ホント、おまえなんかにはもったいない彼女さんだよな。この幸せ者が」 白石はひたすら照れることしかできない。 あきらは、ここで、この数年来の疑問をぶつけてみることにした。 「これの材料って、バレンタインでもらったチョコなのかよ?」 「ええ、そうっすけど」 (やっぱ、そうか。彼女さんの作ったチョコ以外のチョコは、白石の口に入ることはないわけだ。まあ、それぐらいの独占欲は当然だわな) 「それがどうかしたっすか?」 「いや、なんでもねぇよ」 (こいつは気づいてないみたいだな。この鈍感男め。やっぱ、おまえには、あの可愛い彼女さんはもったいねぇよ) そうは思っても口には出さない。 二人の仲を応援すると決めたのは、ほかならぬあきら自身だから。 数年前に、二人の交際の事実を盛大に暴露してやったのも、二人をアシストする意味があったのだった。 (案外モテるやつだからなこいつは) 「彼女さんにはお礼を伝えておいてくれ」 「分かりました」 あきらは、そういうと足早に次の番組の収録現場に向かっていった。 終わり
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「はぁ……」 溜息が僕の耳にこだまする。これで今日何度目だろうか。 あきら様は収録を前にして憂鬱になっている。 理由はわかる。今日の日付を考えればすぐに分かる事だ。 二月十四日。俗に言うバレンタインデーであり、あきら様の誕生日でもある。 恐らく、あきら様をメランコリーな気分にさせているのは前者なのだろう。 今日という日に限って『らっきー☆ちゃんねる』の収録があるのだから。 チョコを渡したい人にも渡せず、メランコリーな気分になっているのだ。 チョコを渡す本命、それは僕でも察しが付く。その相手は、キョンだ。 以前、僕の学校に遊びに来たあきら様は涼宮に目をつけられ――キョンと出会った。 その頃はあまり意識していなかったのだろう。出会った当初の彼に対する態度はそっけなく、彼ともそれほど接点は無かった。 しかし、しばらく僕の学校に顔を出していくうちにあきら様の目的はだんだんと変化していった。 初めはオープンハイスクールのような感覚で来ていたのだろうが、後に僕とはそれほど関わりの深くないSOS団に顔を出す事が多くなっていった。 目的はキョンである。 一度、僕もSOS団にあきら様と一緒にお邪魔させてもらった時、あきら様のキョンに対する態度が明らかに出会った頃と違っていた。 キョンと話すときのあきら様の顔と態度は明らかに「乙女」だった。 僕にも見せた事のない、初めて見る顔だった。 あの紅くリンゴのように染まる頬、キョンの顔を見たくても見れないもどかしそうな表情は、今でも鮮明に記憶に残っている。 っと、少し回想が長引いてしまった。 我に帰ったときには既に本番が迫っていた。 ふと気になりあきら様の方を見ると、依然上の空状態。 「あきら様、もうすぐ本番ですよ」 呼びかけるもしばらく返事が無い。が、しばらくして、 「ん?わ、わかってるわよ。そんな事」 と言って収録の準備を始める。 やはりと言うか、当然、あきら様の返事にはいつもの元気良さが無かった。 このままじゃあきら様は後悔する。そう思い、僕は例の人物に電話をかけ、本番に臨んだ。 収録が開始してもあきら様の上の空状態は直る事は無かった。 とは言っても、この番組のプロデューサーも誰も撮影をやめようとしないのは、こういったあきら様の情緒不安定(こう言うと失礼だが)な部分は慣れているのであるし、充分絵にもなるのだろう。 その為、今回も例にならい僕が番組を仕切り、番組を締めるといった感じで収録を終えた。 収録を終えた後、僕は例の人物の到着を待った。 間に合うのだろうかと不安げに思っていると、ドアがノックされる音がした。 「どうぞ」 その呼びかけに対しドアを開け中に入ってきたのはあきら様だった。 「どうかされましたか?」 あきら様に対し僕はそう尋ねた。するとあきら様は、 「あんた、今日が何の日か知ってる?」 と、逆に質問された。 「今日はバレンタインデーですよね」 そう笑顔で返事をするとあきら様の目つきが一気に変わった。 「あはは、冗談ですよ冗談。今日はあきら様の誕生日ですよね」 そう答えるとあきら様の目つきは一気に緩む。とは言っても落ち込んでいることに変わりはないのだが。 「そうよ。で、ちゃんと渡すべき物は用意しているんでしょうね?」 どうやら落ち込んでいてもプレゼントは欲しいらしい。ま、普通と言えば普通なのだが。 「あのー、それが用意できなかったんですよね」 「なんだって!?」 あきら様の怒号が飛ぶ。 「ま、また今度用意しますから。安心してください」 そう言うとあきら様は「あっそ」とだけ言った後、自分の鞄の中を漁り、あるものを取り出した。 「はい」 あきら様が差し出したのはチョコレートだった。 「これは……?」 「見ての通りチョコよチョコ。今日はバレンタインデーだから、一応渡しておくわ。義理だからね」 そう言って渡されたのは透明な袋越しに見える、少し形が歪なチョコだった。 そのチョコからはあまり普段は料理をしないと言っていたあきら様が一生懸命、自分なりに頑張って努力をしたのだというのが良く見えた。 僕には分かった。――これは本来義理では無いものなのだと。実際は別の人、つまり本命に渡す予定の物だったのだと。 「すいませんが、これは受け取れません」 「ああ!?なんだって?」 再びあきら様の表情が変わる。しかし僕はそれに動じずに話しを続ける。 「これは本来僕に渡す物じゃありませんよ。本当に渡す人がいるはずです」 「ばっ、そんなことは……」 「嘘をつこうとしたって無駄ですよ。だてにあきら様のアシスタントはやっていませんから。それに、あれほど普段は料理をしないって言っていたあきら様が手作りのチョコ を義理相手に作るはずがありませんよ。僕はこのチョコを貰った時に、あきら様がどれほどまでに一生懸命作ったのか容易に想像が出来ました。本命に対する思いは、本気な んだってね」 言いたいことを言い終えるとドアがノックされた。 「はい」 「はいるぞ」 その声と共に入ってきたのは僕が呼んだ電話相手、キョンだ。 「なっ、何でキョンが?」 あまりのことに驚くあきら様。その様子を見ながら僕は持っていたあきら様が作ったチョコをあきら様に返した。 「これを本来渡す相手が来たじゃないですか。さ、これを彼に渡すんですよ。これが、彼を呼んだ事が僕のあきら様へのバースデープレゼントじゃ、駄目ですかね?」 そう言って僕は立ち上がり、部屋を出ようとする。 「おい、俺を放っておいて何処へ行くんだよ」 「ちょっと、トイレだよ」 そう言い残して僕は長い長いトイレへと行った。 僕はあきら様がちゃんと事を成し遂げるのかと不安に思っていたのだが、思っていたことは杞憂で済んだらしい。 次の日からのあきら様はいつものように、いや、いつも以上に明るくパワフルになっていた。 そして、その日に僕はれっきとした市販の義理チョコを貰い、最後にこう付け加えられた。 「お返しは三倍返しだから。……あと、昨日はありがとう」 その言葉を聞いた僕は、笑顔を隠せなかった。 「アシスタントとして当然ですよ」 その言葉を聞いたあきら様も笑顔を浮かべた。 今日も楽しい収録になりそうだ。 作品の感想とあきら様へのバースデーメッセージはこちらにどうぞ
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《仏恥義理埠頭》 フィールド魔法 ①:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、アクションカードを使用できる。 アクションカードは1枚しか手札に加える事ができない。 タグ一覧 アクションフィールド フィールド魔法 魔法カード
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手作り義理チョコ(満天星版)(てづくりぎりちょこ(どうだんばん)) 里樹澪の手作り。 このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 この食べ物を口にするとその日はよく眠れる。 この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 L:手作り義理チョコ(満天星版) = { t:名称 = 手作り義理チョコ(満天星版)(アイテム) t:要点 = チョコレート,いろんなラッピング,小さな箱 t:周辺環境 = チョコを刻んでいる自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り義理チョコ(満天星版)のアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り義理チョコ(満天星版)の位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り義理チョコ(満天星版)の取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り義理チョコ(満天星版)の販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り義理チョコ(満天星版)の個数 = ,,,1000個。 *手作り義理チョコ(満天星版)の使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り義理チョコ(満天星版)の効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 *手作り義理チョコ(満天星版)の効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り義理チョコ(満天星版)の効果3 = ,,,この食べ物を口にするとその日はよく眠れる。 *手作り義理チョコ(満天星版)の効果4 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 *手作り義理チョコ(満天星版)の効果5 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 } t:→次のアイドレス = 感謝の輪(イベント) } 保有国一覧 藩国名 入手履歴 保有者 使用履歴 現在所持数 満天星国 10/02/10:5セット(5000個)購入 里樹澪 10/02/14:5セット使用 0 参考資料 ハニーキッチン アイドレスWiki:手作り義理チョコ(未掲載) アイドレスWiki:手作り義理チョコ(満天星版)(未掲載) 上へ 戻る 編集履歴:矢上麗華@土場藩国 (2010/04/02)
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手作り義理チョコ(FEG版)(てづくりぎりちょこ(えふいぃじぃばん)) 多岐川佑華の手作り。 アーモンド入りのトリュフチョコレート。 このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 この食べ物を口にするとその日はよく眠れる。 この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 L:手作り義理チョコ(FEG版) = { t:名称 = 手作り義理チョコ(FEG版)(アイテム) t:要点 = チョコレート,いろんなラッピング,小さな箱 t:周辺環境 = チョコを刻んでいる自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り義理チョコ(FEG版)のアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り義理チョコ(FEG版)の位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り義理チョコ(FEG版)の取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り義理チョコ(FEG版)の販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り義理チョコ(FEG版)の個数 = ,,,1000個。 *手作り義理チョコ(FEG版)の使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り義理チョコ(FEG版)の効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 *手作り義理チョコ(FEG版)の効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り義理チョコ(FEG版)の効果3 = ,,,この食べ物を口にするとその日はよく眠れる。 *手作り義理チョコ(FEG版)の効果4 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 *手作り義理チョコ(FEG版)の効果5 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 } t:→次のアイドレス = 感謝の輪(イベント) } 保有国一覧 藩国名 入手履歴 保有者 使用履歴 現在所持数 フィールド・エレメンツ・グローリー 10/02/11:2セット(2000個)購入 多岐川佑華 10/03/02:2セット使用 0 参考資料 ハニーキッチン アイドレスWiki:手作り義理チョコ(未掲載) アイドレスWiki:手作り義理チョコ(FEG版)(未掲載) 上へ 戻る 編集履歴:矢上麗華@土場藩国 (2010/03/10) イラスト:多岐川佑華@FEG
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手作り義理チョコ(羅幻版)(てづくりぎりちょこ(らげんばん)) 古島三つ実の手作り。 このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 L:手作り義理チョコ(羅幻版) = { t:名称 = 手作り義理チョコ(羅幻版)(アイテム) t:要点 = チョコレート,いろんなラッピング,小さな箱 t:周辺環境 = チョコを刻んでいる自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り義理チョコ(羅幻版)のアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の個数 = ,,,1000個。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の効果3 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 *手作り義理チョコ(羅幻版)の効果4 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 } t:→次のアイドレス = 感謝の輪(イベント) } 保有国一覧 藩国名 入手履歴 保有者 使用履歴 現在所持数 鍋の国 10/02/10:2セット(2000個)購入 古島三つ実 10/03/03:2つ使用 0 参考資料 ハニーキッチン アイドレスWiki:手作り義理チョコ(未掲載) アイドレスWiki:手作り義理チョコ(羅幻版)(未掲載) 上へ 戻る 編集履歴:藻女@神聖巫連盟 (2010/03/16)
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22代目スレ 2008/02/14(木) 【校門】 ユウカ「はい、これ」 ミナト「俺に?」 ユウカ「その、中に手紙入ってるから、あとで読んで」 ミナト「えっ、えぇっ」 ユウカ「ソーリー、ここではやめて、恥ずかしい」 ミナト「そんなっ、モジモジして!」 ユウカ「じゃ」 ミナト「マジでぇっ!? まさか俺、モテ期突入!?」 ドサッ アイミ「そんな・・・・・・」 【教室】 アイミ「そうだよね。しょうがないよね。 ユウカさん美人だしグラマーだし美脚だしパンクだしギターとか弾けるし。 あたしなんか、スポーツ系っていっても陸上部なのか水泳部なのかよくわからないし」 レイナ「アイミさぁ、あんた、たまにネガティブになるよね」 アイミ「ミナトにだって、一生に一回くらいモテ期があってもいいわけだし」 レイナ「たまに思うんだけど、あんた本当にあの男が好きなの?」 ユウカ「ハイ、ベーシストの彼」 キャクトラ「えっ、私ですか?」 ユウカ「これを」 レイナ「ストップストップ、ストォーップッ! あんたっ、ちょっとこっち来なさい!」 【校舎裏】 レイナ「なんなの、あんたは! 人間関係引っかきまわす使命でも帯びてるの!?」 ユウカ「いわれてみたら、なんだかそんなような気がしてきた」 レイナ「ヘンな使命感に目覚めないで!」 ユウカ「こっちだと、義理チョコっていうのを友達に配るんでしょう」 レイナ「友達なんかいないくせに!」 ユウカ「あたし、わりと簡単に傷付くからね」 レイナ「明らかに手作りじゃない! こんな手の混んだ義理チョコあり得ないから!」 ユウカ「3日間学校サボって、一生懸命作りました」 レイナ「あんた、努力する方向を間違ってる!」 ユウカ「チョコレートを渡すことで、友情が芽生えるんでしょ」 レイナ「友情とは違うものが芽生えるからね、これは!」 ユウカ「ハイ、エジュニア」 エリート兵の子(♂)「え、俺?」 レイナ「マジュニアみたいに呼ぶなぁっ!」 【喫茶店】 ユウカ「It s an unlimited supply~♪ And these no reason why」 イングレッタ「チョコレートなんか供えても、彼は帰ってこないと思う」 ユウカ「あんたもいる? チョコレート」 イングレッタ「いらない。それよりコーヒーを煎れて」 ユウカ「ナイショよ。ダディは紅茶以外出したがらないから」
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手作り義理チョコ(神聖巫版)(てづくりぎりちょこ(しんせいかんなぎばん)) このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 この食べ物を口にするとその日はよく眠れる。 この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 L:手作り義理チョコ(神聖巫版) = { t:名称 = 手作り義理チョコ(神聖巫版)(アイテム) t:要点 = チョコレート,いろんなラッピング,小さな箱 t:周辺環境 = チョコを刻んでいる自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り義理チョコ(神聖巫版)のアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の個数 = ,,,1000個。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の効果3 = ,,,この食べ物を口にするとその日はよく眠れる。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の効果4 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 *手作り義理チョコ(神聖巫版)の効果5 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 } t:→次のアイドレス = 感謝の輪(イベント) } 保有国一覧 藩国名 入手履歴 保有者 使用履歴 現在所持数 神聖巫連盟 10/02/08:1セット(1000個)購入 藻女 10/02/14:使用 0 参考資料 ハニーキッチン アイドレスWiki:手作り義理チョコ(未掲載) アイドレスWiki:手作り義理チョコ(神聖巫版)(未掲載) 上へ 戻る 編集履歴:矢上麗華@土場藩国 (2010/03/06)
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手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)(てづくりぎりちょこ(なにわあーむずばん)) 乃亜・クラウ・オコーネルの手作り。 オートミールや刻んだナッツなどを混ぜた、小さめでも食べ応えのあるチョコレートバー。 このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 L:手作り義理チョコ(ナニワアームズ版) = { t:名称 = 手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)(アイテム) t:要点 = チョコレート,いろんなラッピング,小さな箱 t:周辺環境 = チョコを刻んでいる自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)のアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の個数 = ,,,1000個。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の効果3 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ疲れが取れる。 *手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)の効果4 = ,,,この食べ物を口にすると少しだけ元気になる。 } t:→次のアイドレス = 感謝の輪(イベント) } 保有国一覧 藩国名 入手履歴 保有者 使用履歴 現在所持数 ナニワアームズ商藩国 10/02/12:2セット(2000個)購入 乃亜・クラウ・オコーネル 10/02/14:2セット使用 0 参考資料 ハニーキッチン アイドレスWiki:手作り義理チョコ(未掲載) アイドレスWiki:手作り義理チョコ(ナニワアームズ版)(未掲載) 上へ 戻る 編集履歴:矢上麗華@土場藩国 (2010/03/10) イラスト:乃亜・クラウ・オコーネル@ナニワアームズ商藩国