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演劇発表会『茨姫』 演劇発表会、当日 ステージには緊張の面持ちで全員が最終チェックを行っている。 特にあの脅迫状が届いた後だ。気をつけるに越したことはない。 実際に何度も意図的に傷つけられた物品があったため、その緊張感はただならぬものがあった。 「集合!」 迫の言葉に従い、舞台に立つ者、裏で働く者、全員がステージ裏に集まる。 迫は全員を一度大きく見回し、語りかける。 「いよいよ本番だ。みんな良くここまで練習について来てくれた」 一旦言葉を区切り、全員の顔を見回す。 「本来演劇部ではない人も含め、演技には相当無理な要求をした。 舞台装置にも無茶な要望を出した。だが、皆はそれに答えてくれた!」 もう一度、言葉を飲みこみ、もう一度全員を見る。 「――だから言える。この舞台は必ず成功する、と」 その言葉に、全員が静かに、しかし力強く頷いた。 迫もまた、全員に頷き返し、大きく息を吸う。 「さあ、一年にとっては初舞台だ。気負わず全力を出してこい!! 全員一丸となって、この舞台をやり切るぞ!」 そして迫は握り拳を天へと掲げる。 自然、全員が天に拳を掲げる。 「さあ、やるぞ!」 「はい!」「YES!」「おう!」「うっしゃー!」「いやっふー!!」 それぞれがはっきりと声を出し、迫の言葉に答える。 ――舞台『茨姫』がいよいよ始まった。 * * * 「始まったみたいだな」 『そうだな……妨害があるとしたら、そろそろか?』 「ああ、間違いないな」 電話越しに話すは台と那賀の二人。今、台、那賀、省の三人は別々の場所に陣取り、待機している。 敵の情報ほぼ全て握っている。さらには敵の作戦を逆手に取った対策を行っている。 後は実行するだけだった。 敵の作戦に合わせて別々に陣取り、演劇の邪魔をさせない。それが今回の作戦の目的。 そのためにしなければならないことは、まず、この舞台に敵を入れないこと。 そして、静かに、速やかに、敵を無力化することだった。 『そう言えば、ととろはそこにいるのか?』 「いや、いない。奴らの依頼主であり、脅迫主がいそうなポイントを何か所か指定した。いまはそこを回ってもらっている」 『なるほど』 那賀の疑問に台はあっさり答える。 今頃ととろは、全力でそのポイントへ向かい走っているはずだった。 那賀は、その回答に納得の言葉で返すと、言葉を続ける。 『なら隠すことなくいえるな』 「なにをだ?」 『お前も大概素直じゃないな、ってことだ』 「……なんだと?」 那賀の言葉に台が不審そうに聞き返す。 『わざわざ"自分の作品を壊されたくない"とかいいやがって。 素直にこの舞台を成功させたいといえばいいじゃないか』 「はっ! 俺はあくまで俺の作品を壊されるのが腹立つだけだ」 その言葉に鼻で笑うが、那賀の言葉は終わらない。 『馬鹿いえ、お前はそんな玉じゃねぇだろうが?』 「……」 台の言葉の嘘をあっさり看破した那賀の言葉に台は黙りこむ。 『理由は、やはりあいつか? この茨姫を皆とやりたかったあいつのためか?』 「……かもな」 『やはりか』 曖昧に濁す台の言葉に、那賀は断定で持って応対する。 ――数秒の沈黙。 「あいつは、なんで俺なんかに構ったんだろうな。演劇するには邪魔でしかないはずなのにな……」 『一年の時はお前、今以上に荒れていたらしいじゃないか。よくもまぁお前に近づく気になったもんだ』 「本当だな。あいつはいくら"おせっかい"だからってなぁ。 俺がリーゼントにすれば、引いて離れると思ってこの髪形にしたのに――」 『結局関係なかったと』 「余計色々言われただけだったな。あの説教は今でも頭に残ってる。延々と四時間だぞ。 こっちも意固地になってこの髪形を続けたがな」 『単純で浅はかだな。お前も』 「まぁ、馬鹿だからな俺たちは。自分で勝手に茨の城へとこもる程度には馬鹿野郎だ」 『違いない』 二人して忍び笑いを浮かべる。 「まったく、あいつしかり、鈴絵しかり、どうしようもなく駄目な俺達に構って来るやつがいるのは不思議だ」 『全くだ。普通なら避ける物だろうし、実際大多数はそうなんだが、残る少数が奇特過ぎる。 どうしてこうなった、と思うぞ』 そして、数秒の沈黙。 『ま、そんなおせっかいな連中が始めた演劇だ。こんなしょうもない事で駄目になったら腹が立つ』 「全くだ。だからこそ俺たちがすることは決まっているな」 『だな。だからここにいるわけだ』 それ以上の言葉は続かない。遠くでは、ブザーがなり、舞台が開く音がする。 『……待ち人が来たようだ。後はよろしく』 「ああ、どうやらこちらもきたようだ」 携帯電話を切り。台はガクランのポケットにねじ込む。 そして見つけた目標に視線を定め、するすると近づいて行った。 * * * 「ある国に中々子供のできない 王さまと お妃さま がおりました」 真っ暗になった舞台。今年も観客で完全に埋まった席も静かに聞いている。 朗々と読み上げるは迫。それは物語の始まりの声。 「あるとき お妃さまに女の子が生まれました。 王さまは 大喜びでパーティーを行うことにしました」 「王さまは、友達も、知り合いも、親せきも、たくさん呼んでお祝いすることにしました」 「その中にはその国に住む、7人の魔女も呼ばれていました」 まるで子供に聞かせるための口調。その言葉が途切れた時、舞台の上で動きがあった。 真っ暗な舞台に光が灯り始める。少しづつ明るくなるそこには絢爛豪華なホールがあった。 様々なドレスに着飾った人々が思い思いに雑談をしている。 王座に座るは王さまであり、お妃さまに抱かれた女の子も隣に座っていた。 7人の魔女に扮した霧崎、河内静奈、神柚鈴絵、秋月京、 真田アリス、ロニコ・ブラックマン、後鬼閑花 もそれぞれのドレスを着飾っている。 これは宴の場面。そこが物語の始まりだった。 数分にわたる雑談、多くは子供を誉めたたえ、国の発展を祝う言葉。 そこに一瞬のフラッシュが焚かれ、観客は、その一瞬の眩しさに目を細める。 観客の目が慣れる頃、そこまでいなかった最後の魔女――真田ウェルチがホールの中央に忽然と現れていた。 ウェルチはドレスの裾を上げ、ダンッ! とフローリングへ打ち付ける。 ホールはそれまでの雑多な雰囲気が一掃され、奇妙な静寂が残った。 「まったく……なんで私を仲間外れにするのかねぇ」 その言葉に王さま役の西郷猛は慌てふためき王座から駆け降りる。 そして最後の魔女に深く一礼をする。 「いや、これは申し訳ないことをした。今すぐ用意をしますのでお許しください」 「そうかね。なら期待しとくよ」 すぐさま、駆け寄るメイド服を着た少女――武政千鶴がやってくる。 「魔女さま、どうぞ」 その手に食器を乗せ、ウェルチへと渡す。踵を返すとメイド服をきた千鶴はそのまま舞台から歩き去る。 しかし、その食器は他の7人の魔女の純金の食器と違い、銀製の食器でしかなかった。 純金の食器は7人分しかないため、王さまとしてはそうせざるを得ない。 最後の魔女はその食器と他の魔女の見比べ、ため息を吐く。 「これは私を馬鹿にしているのかねぇ」 その言葉を聞いた、一人の魔女――真田アリスはすっと物陰に動く。 舞台の人間はその動きに気付いていないように演技し、観客もまたその動きに気付かない。 そして、舞台の上では魔女たちによる贈り物が始まった。 * * * 「さーて。ここから入って、あの馬鹿でかい板をぶっ倒せばいいんだな」 「これで一人20万なんだからボロイよな」 「違いねぇ。金持ってるやつは何を考えてるかわからんな」 こそこそと裏から中に入ろうとするチンピラが三人。 相談をしながら、静かに歩く。 「さて行きます――」 そのチンピラリーダーっぽい男の言葉は最後まで続かない。 顎に不意に掌打を当てられ、一瞬で脳しんとうを起こし、崩れ落ちる。 「なっ!」 「ば――」 一人の男が倒れたことで、残る二人は小柄な坊主頭の男をようやく認識する。 しかし、その時にはすでに男、省は次の行動を起こしていた。 倒した男には目もくれず、一歩棒立ちになった男に近づき、孤を描くように回転。 遠心力で威力のました蹴撃は寸分狂わず男の側頭部に強烈な一撃を叩きこむ。 あっさり意識をとばして崩れ落ちた。 ――二人目 「このや――」 三人目がようやく腕を振りかぶり殴りかかってくるが、省は左手一本で軽くいなす。 バランスの崩れた男の服を掴み、一気に首を締めあげる。 10秒とかからず落ちた。 あっさり全員の沈黙を確認すると、省はそれぞれの腕と足をガムテープでぐるぐると固定し、 邪魔にならない所に押し込んだ。 「……油断してたとは言え弱いっス。ま、おかげで音立てずにすんだっスけど」 手をはたき、次に備える。 「台さんの情報だとまだ来るって事っスからねぇ。面倒臭いッス。 それにしても一人に20万とかどんだけ金持ちなんすか」 そう、愚痴を言いながらも、また隠れるように動き始める。 「ま、これもウェルチさんのためッス。頑張らんとッス。……あ、しまった。魔女役全員の写真の予約忘れたッス。 また放送部員に頼まないといけないッスねぇ」 そんな駄目な欲望丸出しな愚痴を言いながら、省はその場を動かない。 * * * 「お姫さまは、世界で一番美しい女性になれるでしょう」 深くお辞儀をし、告げた魔女役は後鬼閑花。ドレスの裾を軽くつまみ、その後もう一度会釈をし、後に下がる。 「お姫さまは、天使のような心を持てるようになれるでしょう」 次に前に現れたのは河内静奈。丁寧に、一つ一つ言葉を確かめるように話し、再び下がる。 「お姫さまは、世界で一番優雅にふるまえる女性になれるでしょう」 神柚鈴絵が前にでると、柔らかな物腰で一礼すると、一歩下がる。 「お姫さまは、世界で一番踊りができる女性になれるでしょう」 霧崎がはっきりとした声で言葉を贈り、 「お姫さまは、世界で一番歌が唄える女性になれるでしょう」 秋月京がその子供を称えるように告げ、 「お姫さまは、世界で一番演奏ができる女性になれるでしょう」 ロニコが丁寧に告げ、後ろに下がる。 そして次に前にでたのは、ウェルチ。 甲斐甲斐しく頭を垂れ、ゆったりとした動作で近づいた。 その優雅な立ち振る舞いは、しかし次の言葉を持って終わる。 「お姫さまは15才の時、糸車の針に刺されて死ぬであろう」 その言葉は呪いの言葉。瞬間、騒然とする周囲をよそに、一瞬の閃光が走り、 目を開けた時にはすでにウェルチの姿は来たときを同様に忽然と消えていた。 「おお、なんということだ! 我が娘に呪いを掛けられるとは!」 王の慟哭が響き渡り、周囲の人間が右往左往する。 しかし、それを止めた声がある。最後の魔女を扮するアリスが進み出た。 「王よ。嘆くことはありません。私には姉の言葉を打ち消すほどの力はありません。 しかし、弱めることはできます。王女は死ぬのではなく、100年の眠りにつくだけになるでしょう。 そして、一人の王子によって目覚めることになるでしょう」 その言葉を最後に舞台が真っ暗になる。 場面が変わり、15年後の城の中が舞台になった。 * * * 「よう。ここから先は関係者以外立ち入り禁止だぞ」 那賀が声を掛けるは、二人組の男たちだった。 どちらもその声に一瞬押し黙ると、そのまま懐からナイフを取り出す。 しかし那賀は動揺しない。 「お前ら、無茶は止めとけ。その先は関係者以外立ち入り禁止だ」 念を押すように告げるが二人組の男は取り合わない。 「はっ! もちろん知っているさ。ただこれも依頼でねえ。はいそうですかと帰るわけにもいかないのだよ」 「そうそう、怪我したくなければ黙って見てるんだな。オラッ! どいてろ」 男二人はナイフも向けながら那賀にどけと命じる。 那賀はため息を一つ吐くと、素直にどいた。 「これが、最後の忠告だ。この先は関係者以外立ち入り禁止だ」 その言葉を無視し、二人は扉を開ける。 瞬間、二人は同時に腕を万力のような力で締めあげられた。 たまらず二人ともナイフを取り落とし、視線は力の現れた先を見た。 それはでかかった。2mを超す巨漢の男が一人立っていた。 ――美術教師は力を一切緩める事をせず、一言だけ告げた。 「ウェルカム」 そのまま二人の男は一瞬で扉の中に引きずり込まれる。 パタンと扉は閉じる。まるでその出来事がなかったかのように静けさが戻る。 那賀は、誰にも聞こえないようなちいさな声で呟く。 「だから言ったんだがな。止めとけ、と」 この場を任されたのは那賀だったが、脅迫騒ぎは当然教師にも伝わっていた。 始めは安全のために劇を止めることも検討されたが、真田基次郎や他の数人の教師が反対した。 いわく、 『学生が真剣にやっていることを教師が止めてはならない。教師がすることは、成功するようにサポートすることだ』 その後、この美術教師を含む何人かの教師もガードマンよろしく学生保護に回ると言うことで決着がついた。 その結果がこれである。 今頃、あのチンピラ達は魔人間に更生する程度の説教をくらっていることだろう。 「さて、俺はこんなに楽してていいんかな」 そう呟きながら、那賀はその場に立ち続ける。 新たな被害者が出ないよう止めるのが、彼の役目になっていた。 * * * 「ああ、お姫様、今日も元気でよろしいですね」 「おはようございます、今日もお仕事頑張って下さいね」 城の騎士役になっている山尾修が話し掛けるは王女役である黒咲あかね。 純白のドレスを身に纏い、気品すら漂わせて騎士へと笑顔を向ける。 城の通路を模した場面。そこをあかね歩くと背景もまたスライドし、本当に城の中を動いているように感じる。 次に現れたのは牧村 拓人。何故か侍女が着るスカートを着用しての登場だった。 「おや、お姫様。そんなに急いでどこにいくのですか?」 「お父様もお母様もいないから、お城を探検しているの」 「おやおや、怪我はしないように気をつけて下さいね」 「ええ、気をつけます!」 そうして、お姫さまはさらに歩いて行く。何人もの人と話し、城の中を探検する。 徐々に背景が変わり始め、いつの間にかそこは塔の先端にある部屋の中に移っていた。 そこには一人の女性がいた。アッシュブロンドの髪すら灰色のローブに隠し、糸車の前に座っていた。 お姫さまはその糸車に目を向けると、引きこまれるように近づいていく。 そのお姫さまの様子に気付いたかの様に、ローブの女性が声を掛ける。 「おやおや、お姫さまは糸車は始めてかい?」 「うん、そうなの。面白いね」 「そうかいそうかい、なら、もっと良く見せてあげようかい?」 お姫さまはゆっくり近づいていく。 さらにもっと良く見ようと近づいて手を伸ばす。 そして―― 「痛っ!」 突然の痛みに、あかねは指を抑えると、ぱたりと倒れた。 その瞬間、ローブを纏った女性が立ちあがると、笑い始めました。 「ハッハッハ! よーくお眠り、お姫様」 その言葉を残し、歩き去ります。 あかねが倒れたままの舞台。しかし背景ごと動きだし、ゆっくり回転、止まった時には城の全景になる。 さらにそれだけでは止まらない。 城の全景場面に待機していた、浅野士乃 、向田誠一郎、村上健といった村人役の面々も次々と倒れ出し、眠りについた。 さらには。ゆっくりと茨が城を覆っていき、舞台上が茨で完全に覆われ見えなくなる。 それは場面転換の合図。 次に開くのは100年後の世界。 * * * 「大丈夫? あかねちゃん?」 「うん、全然平気。これくらいなら」 ウェルチが心配そうにあかねの肩を見る。 その肩に服の上から針が刺さっていた。 あの針に刺される場面に重なるように、一本の針があかねの服へと刺さっていた。 ただし、その針は幸いにも服の上からであり、若干皮膚に触る程度ですんでいた。 「服を丈夫に作っておいてもらって良かった。血もでてないし、これなら大丈夫ね」 服に刺さっていたことが幸いした。もし、これが顔にでも当たっていたらかなり危険だっただろう。 しかし、周りに集まった面々の表情は渋い。 「……まさかここまで強硬手段にでるとは」 「でもこれならまだ嫌がらせレベル。捕まりたくはないから分からないように攻撃してるのね」 「タイミング良く、お姫さまが針を刺すシーンで良かったかもね。 もし別の場面なら他の観客も不審に思ったかもしれない」 迫がぎりぎりと歯ぎしりするような表情で呟くが、傍にいたアリスとあかねは別の分析をする。 「でも大丈夫。これで位置がはっきりしたから」 ウェルチがそう言い、ある観客席の一点を指す。 「ここにいるよ。後は、追い出すだけ」 「さすがアーチェリー部部長、あの針の弾道を予測できたか」 その言葉にウェルチは口の端を歪めて見せる。 「目の前で見てたからね。ふふ、これ以上の邪魔はさせないから」 * * * 再び舞台に光が灯る。 そこは山の風景が描かれた背景を背に、一人の王子が立っていた。 その王子である久遠荵は、大仰に辺りを見回すと中央に向かって歩き始める。 その反対側、そこからアッシュブロンドの髪を灰色のローブに隠した女性がやってくる。 そのローブの女性は王子の前で立ち止まると、王子に向かって語りかける。 「王子殿、この近くの茨の山。その中にある城に、大層美しいお姫様が眠っているそうな」 その言葉を聞き、王子は両手を振り上げる。 「眠っている……。それは可哀そうだ。助けなければ!」 王子はその状況を可哀そうだと思い、素直に助けに行こうと思い立つ。 「そうかいそうかい、ならばいってみるんじゃな。呪いがかけられて100年目、そろそろ時が来るじゃろうて」 しかし、続けて掛けられた言葉に、王子はに怪訝な表情を浮かべ、問い返す。 「あなたは、その話を深く知っている様子。どうしてその話を知ったのですか?」 「さてねぇ。大したことじゃありませんて。ふぇっふぇっふぇ……それでは失礼するとしようかの」 その一瞬、再びフラッシュが焚かれ、さらに一瞬静電気のような音がし、 次の瞬間にはローブの女性が舞台から消えていた。 「あの者は一体……。いや、それよりも今しなければならぬことは茨の森から女性を助ける事だ!」 王子は義憤に燃え、その眠る人々を助けるため、たった一人でその茨の森へ向かって行く。 * * * 「ちぃ、これでも止めないとわな……。今度はどいつを狙うとするか」 その男は観客席で周りに聞こえないよう小さく舌打ちをすると、針を輪ゴムに引っかけ、極少の弓矢にした。 周りに気付かれないように、手元でゆっくり狙っていく。 「ま、こんなんじゃせいぜい脅しにしかならんが、見つかるわけにもいかんしな。 公演が途中で中止になれば恩の字か」 捕まらないように、細心の注意を払い、気付かれないように事を運ぶ。 それが彼のやり方だった。 舞台の上では、ローブの少女と王子役の少女が話しをしている場面だった。 「さて、今度は王子役でも狙って見ますか」 誰にも聞こえない程度の小さな声で呟き、極少の弓を番える。 狙いをつけるために舞台を真正面から見つめていた。 ――突然のフラッシュにより目の前が真っ白になる。 だが、彼は慌てない。とっさに目を閉じ、フラッシュが収まるのを待つ。 しかし右手に何かを押しつけられるような違和感を感じ、突然の衝撃を全身に受けて、一瞬で意識を失った。 * * * 「なんで、巧先生ってこんなスタンガンもっているのかな?」 巧から貸し出されたスタンガンを引っ込めつつ心の中だけで悩む少女が一人。 それを実行した金城葎は巧先生がどう使うか真剣に考えていた。 だが、それも最初だけ。さっきの情景から一つのアイディアが生まれてしまった。 「今度、ととろちゃんのステッキで試そう」 聞く人が聞けば余りにも不穏な言葉をこぼしつつ、気絶した男の隣で舞台を見る。 これで彼女の役割は完全に終わり。後は観客として舞台を楽しむつもりだった。 * * * 王子が茨の森を進むと茨が王子を避けるようにして消えていく。 その中を王子は一瞬の躊躇もせず、ずんずんと進んでいく。 ついに王子は城にたどり着き、中へと入って行った。 王子は城の中を捜す。道々に眠っている人々がいたが、一旦それは置いてお姫様を捜した。 あのローブの女性が行っていたお姫様。彼女こそがこの城に起きている眠りから解放するカギだと直感していた。 そして、王子はお姫様の所へたどり着く。 塔の頂上で眠っていたお姫様を見つけ、さてどうするかと思案する。 「眠りから解放するには王子の心が必要です」 その声に驚き、振り向くと、そこには一人のブロンドの髪の女性が佇んでいた。 王子は驚きながらも、その女性に問いを向ける。 「あなたは一体……」 しかし、その女性はその問いには答えず、ただ微笑むのみ。 自分が言えることは言い終えたとばかりに。 王子は投げかけられた言葉を反芻し、一つの答えを得る。 眠るお姫さまにそっと口づけを―― その瞬間、お姫様の眠りは解け、森を覆っていた茨は消え、眠っていた全ての人は起き始める。 にわとりの声が響き、この城に目覚めがやってきた事を告げていた。 その中心では幸せそうに抱き合う二人の王子とお姫さま。 そして、カーテンが降り、劇が終わる。 ――観客席からは自然と拍手が起こっていた。 * * * 台は、ただそこに立っていた。 すでにだれも来ないその通路に一人、ホールから歓声と拍手が聞こえて来るのを感じながら立っている。 「どうやら、あいつの夢は守れたようだな……」 そう呟き、体からゆっくりと力を抜いた。 「流石に疲れた……後はととろに任せるとするか」 そして台は誰もいない道に座る。 台の役目。それはホールの正面から敵が暴れないようにするための牽制をするのことだった。 普通の観客には多少目を逸らされるが通れるように、邪魔をしようと企む奴らには徹底的にひるませるように。 細心の注意を払い、問題行動を起こさせないように威圧し続ける。 それを劇が終わるまでの間、一瞬の油断もなく行っていた。 * * * 次にカーテンが上げられたときには役者全員が横一列になっていた。 そして、舞台の全員が一礼を行う。 「ありがとうございました!」 たった一言に万感の思いを込めて。 ――舞台へ送られる拍手が一層強くなる。 そしてこの発表会、最後の幕が別の場所で始まろうとしていた。 * * * 図書館が見える校舎の屋上。そこには双眼鏡を覗き込む一人の少女がいた。 肩までかかる長さの黒髪を適当に縛っている。 体のラインは細い、というよりひょろいという印象が強い。 どこかぼうっとする表情を浮かべている。 おそらく、その少女の事を普通に見れば10人中7人は可愛いと評する程度の容姿ではある。 そんな、小等部の少女がそこにいた。 その少女は双眼鏡を覗き込みながらぶつぶつと呟いている。 誰にも聞かれると思ってもいないのか、案外大きめの独り言は延々と続いていた。 「あ、演劇無事に終わっちゃった……。みんな役に立たなかった。 うん、妨害受けてもやり遂げる猛はやっぱり素敵」 その少女にとっては妨害の成否すらどうでもいいことだった。 妨害が成功しても、彼女の脳内では『私の言うことを素直に聞いてくれた』 と、肯定的にとらえるであろうから。 彼女にとって西郷猛とは全肯定すべきものであった。 今回のような妨害行動も、その少女にしてみればただのスキンシップのような物に過ぎないのだった。 そこに周りの存在というファクターは一切含まれていない。 ただし、その少女は自分から猛に会いに行ったこともない。 いって見れば、どこまで行っても彼女だけしか存在しない世界。他人の事を一切考えない世界。 その少女だけに通じる少女だけの世界に足を踏み入れようとした、一人のカップルウォッチャーがいた。 「ぜいぜい……さ、西園寺 聖子! これ以上の狼藉は……ぜいはぁ、止めなさい!」 かなり息切れをしているカップルウォッチャーの言葉に、その少女は面倒臭そうに振り向く。 そこには、異様な風体をした女がいた。 鼻筋から上を覆うヘルメット、ハート型に抜かれた桃色のアイシールドのためにその正体は不明。 指定制服に羽織った丈の長い赤マント。 白い手袋を嵌めた手には、豪華絢爛な装飾を施された、素敵な魔法のステッキを携える。 カップルウォッチャーは燦然と輝く魔法のステッキを聖子と呼んだ少女に突き付け一歩近づく。 しかし、聖子はその姿を確認したとたん、あっさり興味をなくし、再び双眼鏡を覗き込んだ。 「ああ、早く猛君でてこないかな」 「待ちなさい! どうしてそういうリアクションができるのよ!」 しかし、その言葉にも反応はない。ただ、その少女は双眼鏡をのぞき続ける。 「……分かった。実力行使行きます」 謎の言葉をカップルウォッチャーは発した。 「……?」 その不穏な言葉に若干の疑問を浮かべる少女だが、やはり無視。 しかし、次に彼女の後で起こったことには反応せざるを得なかった。 「超高校級マジカルステッキ“レッドストリンガー”、モードスリー!!」 ♂と♀の意匠がひとつずつ、それにさらに♀を追加する。 がちんとはまったその形状は、一つの形をとっていた。 「三角形の恋の道! 恋の炎が燃えさかる! 」 その配置はトライアングル。 3つの意匠がステッキを中心に回転を始める。 「三つの心が揺れ動く! 恋する乙女が立ち向かう!!」 中心のレーザーポインタが聖子を照らす。 流石に慌てて回避をしようとするが、すでに遅い。 「進め! 突き抜け! 愛する人へ! 障害とばして駆け着けろ!!」 そして、3つの意匠が飛び出した。 「ラブチェーンバインド トライアングル!!」 そしてその軌跡は聖子を正確に包みこみ、逃げ場を完全に失わせ、巻きついた。 体中に鎖がぐるぐる巻きになり倒れ込む聖子。 その少女の見下ろすようにカップルウォッチャーは立っている。 聖子は不思議そうにカップルウォッチャーを見上げている。 「なんで邪魔をするの? 私、猛がいれば後はいらないのに」 心底疑問に思っている少女に向け、カップルウォッチャーは静かにいう。 「それは、あなたが恋をしているからです」 「……恋?」 「ええ、それは独占欲といってもいいかもしれない恋。 本当は近づきたいのに、自分が傷つきたくないから周りを傷つける茨で覆い、 好きな人を傷つけようとする、そんな恋。 あなたは実際に彼に面と向かってあったことがないでしょう?」 「うん」 カップルウォチャーの言葉にあっさり肯定する少女。 その回答にカップルウォッチャーは深く頷き、言葉を続ける。 「でもそれじゃ永遠に彼を手に入れることはできないの。 そんな離れて見てないで、徹底的にあってあって会いにいって、自分をアピールしなきゃ! だってあなたが欲しいと思ってる猛はあなたの事をしらないのよ」 「でも、嫌われちゃったら嫌だし」 始めて他人の事を考え、行動を渋る少女に、カップルウォッチャーはさらに熱弁を振るう。 「そう、身近にひと組知ってるわ。徹底的にそれを実行する奴ら。それはもう幸せそうよ。 もう一ついうと、すごく恥ずかしがり屋でも、積極的に行こうとする娘も知ってるわ。 そういう娘はね、みんな、みんな幸せそうなの。ただ、相手を見ているだけの時と比べて何倍も!」 それはカップルと見続けたカップルウォッチャーとしての言葉だった。 全く一遍たりともその言葉に迷いはない。彼女の明確な回答だった。 「……そうかな? 私も会いに行ったら幸せになれる?」 「当たり前。それは120%確実よ!」 「……そうかな?」 「そうよ! 今みたいな脅迫を辞めて会いに行けば、絶対幸せになれるよ!!」 自信満々に言い切るカップルウォッチャーに、聖子はやがてこくりと頷いた。 「なら、こんなこと止めるね。今度、猛に会ってくる」 「よろしい」 鷹揚に頷いたカップルウォチャーは鎖をはずす。 聖子は大人しく立ち上がり、ぺこりとお辞儀をすると走り去って行った。 「これで万事解決……かな?」 カップルウォッチャーとしては、実はちょこっと心配だったりはしている。 でも、とりあえずは無事に終わったことをホールにいる皆と喜ぶため、彼女もまた屋上から歩き去って行った。 そして、全てがここに終わる。 全員が頑張って、頑張って、精一杯努力した。その成果は確かに実ったのだった。 前:発表会前夜の異変 次:発表会後の放課後に
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※注意 現代ゆっくりモノ。でも舞台は山奥。 オリジナル設定あり。 歯の無いゆっくり設定です。 まりさの中身が黒ゴマのタレになってますが俺設定です。 秋。 山々は鮮やかに色付き、実り多きこの季節。 気候も穏やかで食べ物もおいしい、過ごしやすい時期ですね。 しかし、動物たちにとっては危急存亡の秋。 来たるべき冬に備えて、食べ物をこれでもかと集めなければいけません。 秋は動物たちの戦いの季節なのです。 世界の動物たちの生活苦をお茶の間にお届けするドキュメンタリー、 『地球・高みの見物』 本日のテーマはこちら。 「ゆっくりしていってね!」 そう、珍妙不可思議摩訶不思議和菓子、『ゆっくり』です。 日本の豊かな山々には今でも、多くのゆっくりが生息しているのです。 今日は皆さんとともに、ゆっくりたちの冬ごもりの様子を観察してみましょう。 ※ ここは日本のとある山、――その中腹。 登山道から離れた、人の手の入っていない山林です。 11月に入るとすっかり肌寒くなって、虫たちは一足先に姿を消しました。 紅葉も盛りを過ぎ、今は落葉の時期。羽のように舞い散る落ち葉が地面に降り積むと、 カサ……カサ……という囁き声があちこちから聴こえてくるではありませんか。 そんな絵葉書のような秋景色のなか、 斜面にぽっかりと開いた巣穴がありました。 ゆっくりの巣です。 その巣穴から今、一匹のゆっくりまりさが飛び出してきましたよ? 「ゆーーーーっ!」 まだ小さいまりさは、秋晴れの空を見上げて気持ちよさそうに伸びをすると、 くりくりしたおめめでお空にあいさつをします。 「ゆっくりしていってね! ――ゆ゛っ!?」 なんということでしょう。 横合いから滑り込んできた小鳥が、まりさをくわえて飛び去ってしまいました。 「ゆ゛ぅぅぅぅ! おりょしてぇぇ!!」 ぴちぴちとお尻をふって逃れようとするまりさ。 しかし小鳥はくちばしの先にまりさをぶら下げたまますっ飛んでいきます。 どこへ行こうというのでしょう。 厨性能リモコンカメラで追ってみましょう。 小鳥が目指したのは、少し離れた場所にある一本の木でした。 羽ばたきながら空中に留まり、なにやら枝を捜していますよ? 暴れていたまりさは、すでに危機感を忘れてお散歩気分です。 「ゆっ? ゆっ? おしょらをとんでるみた――い"っ…!?」 なんということでしょう。 電光石火の早業によってまりさは枝に串刺されてしまいました。 「ゆげぇっ! いぎぃ! いぢゃいよ!! おろじで! もうおうちかえりゅうぅぅぅぅ!!!!!」 激痛のあまり悶絶するまりさ。 なんとか逃れようと暴れますが枝が上下に揺れるばかり。 「ゆぎゅううういぢゃいぃ! うごがにゃいでしんじゃううううううぅぅぅ!!!」 枝の揺れによって傷口は広がり、ゆっくりまりさの命ともいえる黒ゴマのタレが撥ね滴ります。 そのことを理解したのか、それとも動けないほどに弱ったのか。 たっぷり5分ほど苦しんだ後、まりさはようやく身動きを止めました。 枝の動きが徐々に弱まって、やがて止まるまでにさらに30秒かかりました。 そこには……。 「ゆ゛……、ゆ゛……」 すでに虫の息。 砂糖水の涙とゴマダレの血にまみれ、苦痛に悶える表情は赤黒く、 ただただ中身を吐いてしまわないよう堪えることしかできない饅頭がそこにいました。 元凶である小鳥は、そんなまりさを散々つつきまわした後、 食べもせずに飛び去ってしまいました。 どうやら、モズだったようです。 モズには『はやにえ』と呼ばれる、餌を木の枝などに串刺して保管する習性があります。 よくよく見渡してみれば、この辺りの枝々には何頭ものゆっくりが刺さって居ました。 木の葉の降り積む音にかき消されてしまいそうな弱々しいうめき声が、 そこかしこから聴こえてくるのがお分かりでしょうか? このまりさは助からないでしょう。 我々にできることといえば、記憶力の悪さに定評のあるモズが、 早贄にしたまりさの位置を忘れてしまわないよう、祈る事だけです。 ※ ゆっくりの巣に戻ってみましょう。 巣の前にはゆっくりの家族が出揃っていました。 1番大きな1頭は親まりさ。 子まりさが2頭、子れいむが2頭。 さきほどの子まりさも合わせれば、計6頭のゆっくり家族です。 「いーち、にーぃ、たくさん……。 ゆ! みんなそろってるね! これからごはんをあつめにいくよ!」 親まりさは子供たちの顔を見回して、満足そうに頷きました。 子どもゆっくりが、その場で跳びはねながら騒ぎ立てます。 「ゆー! おにゃかすいたね!」 「れいむがいっぱいたべるよ!」 「まりさがさきだよ! おなかがすいたからみんなのぶんもむーしゃむーしゃするね!」 「ゆ! おかあしゃんはさっさとごはんをよういしてね!」 どうやら、頭の足りないゆっくりたちは1頭足りないことに気づかなかったようです。 親まりさを先頭に、今日の狩場へと向かいます。 たどり着いたのは、巣から15メートルほど離れた林の中。 木々に囲まれ、落ち葉の敷き詰められたそこは、ちょっとしたお庭のよう。 ぱっと見ではわかりませんが、木の実もキノコも豊富にありそうです。 落ち葉や木陰に隠れて、ゆっくりたちに探し出されるのを今か今かと待ち構えています。 「ゆっ! きょうはここでかりをするぜ! ごはんをここにあつめるんだぜ!」 なれた様子で指示を出す親まりさ。 子ゆっくりたちは飛び跳ねながら返事をします。 「「「ゆー! いっぱいたべるよ!」」」 ゆーゆー喜びに沸く子ゆっくりたち。 しかし親まりさは頬を膨らませると子どもたちを叱りつけます。 「まだたべちゃだめだぜ!! まずはふゆごもりのじゅんびがさきなんだぜ! かってにたべるわるいこにはおしおきだよ!」 「「「ゆー……。ゆっくり、りかいしたよ……」」」 子供たちは不満そうな顔。 しかしこの家族は親まりさの力が強く、表立って逆らうような子はいませんでした。 ※ 数時間後、受け皿にと敷かれた大きな葉の上には山の幸がひしめいていました。 艶めくドングリや肉厚の茸を中心に、クルミやマタタビ、アケビ、サルナシ、ケンポナシ……。 見ているだけでうきうきしてしまう御馳走の数々です。 元気よく跳ねていった子れいむが、どんぐりをくわえて戻ってきます。 子まりさがころころと胡桃を押し転がしてきます。 「ゆーー! おかあさんすごいよ!」 子ゆっくりが騒ぎ出しました。 親まりさがくわえてきたのは、柿ですね。 根っからのスイーツであるゆっくり達にとって、 あまあまの果実はこの上ないご馳走になります。 「「「やったね! きょうはごちそうだね!」」」 「もちろんだよ! かきさんはきょうじゅうにたべちゃうんだぜ! だからみんなもがんばってごはんをあつめるんだぜ!!」 士気の上がった子ゆっくりたちは、おうたをゆんゆん歌いながら食料集めに精をだします。 おや……? 1頭だけ騒ぎに参加していない子まりさがいましたよ。 木陰に隠れるようにして何やら怪しいそぶり。 近づいてみましょう。 「そろーり、そろ~り……」 地面に体を押し付け、高く上げたおしりをふりふり、はいずるようにして進む先には……。 キノコがありました。 赤くてイボイボしたキノコはそれなりに食いでがありそうです。 「これはまりさのなんだぜ……! だれにもわたさないよ!」 つぶらな瞳をきらきらさせながら、独り占めをもくろんでいます。 「ごはんはみんなまりさのだぜ! まりさをゆっくりさせられないおかあさんはゆっくりはんせいしてね! むーしゃむーしゃ!」 ためらいなくキノコにかぶりつきました。 その途端、あまりの美味しさにほろりこぼれる涙。 感動に打ち震えながら、子まりさは一心不乱にキノコを咀嚼します。 「ゆゅ~ん! しあわせ~! おいしいよ! このきのこすごくゆっくりしてる! これはきっとまつたけだね!」 ベニテングダケです。 有名なこの毒キノコは、意外にも強烈な旨み成分を含んでいます。 しかし、旨み成分の正体は毒素の一つイボテン酸。 食べれば急性アルコール中毒にも似た症状を引き起こします。 まりさにも、さっそく効果が現れたようです。 「む~しゃ……、ふぅ、む~しゃ……、ゆぅ……」 まりさはキノコを食べながら、よだれを垂れ流していました。 目からは涙がとめどなく溢れ、体の表面からは汗らしき砂糖水が噴き出しました。 とてもダルそうです。 「おいしくないんだぜ……。 これが『ひとりでたべるごはんはおいしくない』ってことなのぜ……? やっぱり、みんなといっしょにごはんにすればよかったね……」 子まりさは食べかけのキノコを放置して、家族の下に戻ろうとしました。 するとどうでしょう。 横倒しに地に転がり、そのまま動けなくなってしまいます。 「ゆ? ゆ……? どういうことなの……? めまいがするぜ……はきけもだぜ……この、まりさが、きぶんがわるいのぜ……?」 混乱するまりさ。そこにお姉さんれいむが通りかかります。 「まりさー! どうしてねてるの! おかあさんにおこられるよ! ぷんぷん!」 「ゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆん」 「まり、さ……?」 子まりさは横に転がったまま、細かく痙攣していました。 半開きの口からゆるゆると唾液を垂れ流しています。 目は虚ろ。力ない微笑みを浮かべる表情には生気が感じられません。 完全な前後不覚です。 「ゆー! おかーしゃーん!! まりさが……」 あわてて呼んだ子れいむのもとに、親まりさと子供達が駆けつけます。 痙攣する子まりさを見下ろすなり、親まりさは言いました。 「どくきのこをたべたね! もうたすからないよ!」 「どぼじでぞんなごどいうの! たすけてね! いもうちょまりさをだずげで!」 「おかあさんはたすけないよ!」 「「「ゆうぅ!! どぼじで!??」」」 とりみだす子ゆっくりをよそに、親まりさは冷酷なまでに冷静でした。 中毒を起こして横たわる子まりさを、無表情に見下ろします。 「このこは、だまってつまみぐいをしたんだぜ。 いいつけをまもっていれば、おうちでゆっくりたべられたのに……。 みんなよくみておいてね。わるいこはくるしんでしぬのぜ」 子ゆっくりたちは息を呑み、身を寄せ合いました。 家族に取り囲まれたまま、つまみぐいした子まりさは痙攣を繰り返します。 「おがあひゃんたしゅけれ、みふれないれね……」 ろれつの回らない声で助けを求めては、 しゃっくりのような痙攣を繰り返し続け、 後から後から湧いて出るガムシロップの汗に塗れながら、 子まりさはゆっくりと衰弱していきました。 「このぐず! きのこにゆっくりできなくされるなんて、ばかなこだね!」 「ゆぅ……! どぼじで、ぞんなごどいうのほ……」 「おまえが! ゆっくりできないわるいこだからだよ!」 「ゆ、ぅ……。ごべんだたい……。もう、……しにゃいきゃら……」 親まりさは死に行く子まりさに罵倒を続け、 子まりさは絶望と苦悶に抱かれたまま、 最後は『ぱぴぷぺぽ』と繰り返すだけの生物に成り果てました。 「……ほかのこどもたちは、あつめたごはんをおうちまではこんでね」 「「「ゆっ……! ゆっくり、りかいしたよ……」」」 子供たちは言いつけを守り、餌を口に含んで巣へと運び始めます。 子ゆっくり達がいなくなると、親まりさは枯葉を集めて、 壊れた子まりさの上に被せていきました。 ※ 集めた餌を口に入れて運ぶ方法はとても効率が悪く、 親まりさが帽子に入れて運べる分を合わせても、 何往復もしなければなりませんでした。 ゆ! ゆ! と鳴きながら巣穴に飛び込んだゆっくりは、 部屋の奥にある食料広場に餌を吐きためていきます。 しかし……。 「どうしたのぜ? はやくたべものをはきだすんだぜ!」 「ゆ……、ゆぅ~~! でてこないよ!」 子れいむの1頭が、運んでくる最中に食べ物をむーしゃしてしまった様です。 跳ねて動くゆっくりが口の中に物を入れて運べば、そういうこともあるでしょう。 まさかのミスに涙目になる子れいむを、親まりさは許しませんでした。 「ずるをしたね! ゆっくりしないで、もどってごはんをさがしてくるんだぜ!」 「ゆ゛!? わかったよ! おがあざんもてづだってね!」 「いやだね! ひとりでやるんだよ! できないのならでていってね!」 ぐずる子れいむを突き飛ばして巣の外に放り出しました。 あわてて巣に戻ろうとするれいむですが、 ふくらんで入り口をふさぐ親まりさに阻まれて入れません。 しばらくするとあきらめて、泣く泣く森の奥へと消えていきました。 親まりさは、わが子の後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、 巣の中へと引き返していきました。 ※ 自然は非情の世界です。 その自然界に生きる野生動物は、子供といえど甘えは許されません。 最弱の名をほしいままにするゆっくりともなれば、尚更です。 知恵のあるゆっくりは、冬篭りの時期になると子供たちを間引きます。 賢く従順なゆっくりを生かし、ぐずで反抗的なゆっくりを切り捨てます。 そうして群れを縮小し、生存の確率を高めるのです。 一見残酷なようですが、未熟な子どもたちを越冬させるのは至難の業。 それができるのは、このような厳しさを持った親ゆっくりなのです。 ※ 「ゆ……。おかしいよ……」 親まりさはおひるね中の子ども達を数えて、気づいてしまいました。 今日1頭死んで、1頭追い出し、 巣に残っているのは、たったの2頭……。 本当はもっとたくさんいたのです。 つがいの親れいむが筍を踏んで貫かれ、 手をこまねいているうちに青竹となった筍に乗って天に召されて以来、 親まりさはまりさ手一つで子ども達を育てました。 いち、に、たくさん……。たくさんのたくさん。 にぎやかなほどのたくさんの子ども達がいたはずなのです。 春が過ぎ、夏が来て、秋となり、冬を前にして たった2頭。 気づかぬうちにごっそりと居なくなっていたことに、親まりさは愕然としました。 「ゆぅ……」 気丈に振舞ってきた親まりさでしたが、ゆっくり限界が近づいていたのです。 「おがあじゃんんん」 残された子まりさと子れいむが擦り寄ってきます。 「どうしたの? ゆっくりねてていいからね!」 「しゃむいよおおおお」 「ゆ? どういうこと……!?」 寒さを訴える子ども達。確かに、巣の中は冷え切っていました。 感じる寒さをたどって、巣の入り口から外をのぞいてみると……。 「……どういう、ことなの……?」 雪が降っていました。 まだ11月だというのに、一足早い初雪が山に訪れたのです。 それも重く大ぶりなボタ雪が、風景を塗りつぶさんばかりに降りしきる有様。 これでは今日中に巣穴を閉ざさなければいけなくなるでしょう。 親まりさは巣の入り口から外を眺めていました。 自ら追いやった、あの子れいむが気がかりなのでしょう。 そしてついに、親まりさは判断を誤ります。 「みんな、おかあさんはそとにでてくるよ! どこにもいかないでまっててね!」 親まりさは吹雪く山野に臆することなく飛び出していきました。 ※ 厳しい親ゆっくりがいなくなった事で、巣にはだらけたムードが漂いました。 親まりさの厳しさによって統率していた群れです。 その頭がいなくなれば、気が緩むのも当然のこと。 「そろ~り……、そろ~り……」 まだ赤ゆっくりに近い子れいむが、地面を這うようにして進んでいます。 目指す先は当然、食料の山です。 「あんにゃにごはんをあつめたのに、あれしかたべしゃせてくれないなんちぇ、 おかあさんはけちだね! ゆっくりできないよ! れいみゅはしょだちざかりなんだよ……、あれっぽちじゃたりにゃいよ……!」 「きのうも、そのまえも、ごはんがすくなかったのぜ! これじゃまりさたちが『あじみ』してしまうのもむりがないことなんだぜ!」 子れいむの後ろから、止めるべき立場の姉まりさまでついていきます。 「そろーり! そろーり!」 「そろーり! そろーり!」 2頭は匍匐前進のかっこうで食料庫へと忍び寄っていきました。 ……食事量が少なかったのは、親まりさの知恵でした。 冬ごもり中の節約生活に向けて、体を慣らすためにした事だったのです。 そんな考えは露知らず、子ゆっくりたちは本能のままに行動します。 ついさっき追い出されたれいむや、命令無視で死んだまりさのことなど、 すでに餡子脳には記憶されていないのでしょう。 かくして餌山の麓にたどり着いたゆっくりたち。 よだれは止め処なく、瞳はゆっくりしたごはんの姿にきらめいていました。 バリ……、コリコリコリコリ……。 「ゆ?」 ゴリ、コリ、……サクサクサクサク。 餌の山の向こうから物音が聴こえてきました。 「ゆ!? むこうがわで、だれかがごはんをたべるおとがするよ!?」 「きっとまりさかれいむだね! ずるしたゆっくりにはおしおきだぜ!」 2頭のゆっくりは義憤にほほを膨らませ、いそいで不届き物の元へと跳ね向かいました。 そこには――。 ※ ところで話は変わりますが、 ゆっくりに『歯』は無い。という話をご存知でしょうか? 大根などをたやすく噛み砕く映像から、強力な顎を持っていると思われてきたゆっくり。 しかし解剖実験をおこなっても、歯にあたる部分は発見されませんでした。 これは、ゆっくりが噛み切る際に使うのが歯ではなく、 人間で言うところの唇にあたる部分だからです。 ゆっくりが口内で分泌する溶解液は、人体や動物にとっては害の無いものですが、 野菜や昆虫などに対しては強力な効果を発揮します。 この溶解液の力を借りて、野菜などを唇で挟み、溶かし切っていたのです。 野菜や虫を主食とするゆっくりには便利な能力ですが、問題が一つ。 ゆっくりは水に弱いという性質上、雨をやり過ごすための巣が必要不可欠です。 成体ゆっくりが出入りできるほど大きく、入り口が下向きで水が流れ込んでこないような。 歯もなく、爪もないゆっくりに、 そんなゆっくりプレイスを構築することが果たしてできるでしょうか? 当然、不可能です。 そのため、ゆっくりは他の動物の巣穴をたびたびのっとります。 あるじが居ない間に上がりこみ、帰ってきた巣の主を威嚇して追い返し、奪ってしまうのです。 ゆっくりが人に対して見せる『おうち宣言』は、 巣が必要不可欠でありながら自作できないゆっくりの、必死の行動だったのです。 ――これに目をつけた動物が『オオヤムジナ』です。 オオヤムジナはアナグマの一種で、鋭い爪を駆使して穴を掘り、そこを巣とします。 それだけならば普通の動物に過ぎませんが、オオヤムジナには特筆すべき習性があります。 ゆっくりに巣を貸すのです。 オオヤムジナはその穴掘り能力を使い、ゆっくりが住み着けるような巣をいくつも作ります。 入り口が下を向いていて雨水が入り込まず、広々としている快適な巣穴をです。 そしてそれらの巣と、オオヤムジナの巣は壁一枚を挟んで隣り合っているのです。 冬が始まり、ゆっくりたちが餌を集めて入り口を閉じ、冬ごもりに入ると…… オオヤムジナは奥から壁を崩して乱入します。 自ら逃げ道をふさいだゆっくりたちに逃れるすべはありません。 ゆっくりを先に捕食して、集めてあった食料は後の備えにします。 作った貸し巣穴にゆっくりが入居すればするほど、かれらの食料庫は充実していきます。 この習性が、アパートを貸す大家さんの家賃取立てに見えることから、 オオヤムジナの名前がつきました。 つまり、2頭の子ゆっくりが目撃したのは――。 ※ 2頭の子ゆっくりが目撃したのは、 冬ごもり前の食事量の少なさに不満を感じ、 親の居ぬ間に冬用の食料に手をつけていた、 『オオヤムジナ』の子どもだったのです――。 2頭の子ゆっくりは驚きました。 「ゆぅ! どうしておうちのなかにいるのぉぉぉぉ!!」 「さっさとでていってね! ここはまりささまのゆっくりぷれいすだぜ! あとかってにごはんをたべないでね! それはまりさのだよ!」 食って掛かったのは姉まりさです。飛び跳ねてムジナの足に体当たりをしかけ、 跳ね返されるやいなや、ほほを膨らませて威嚇を始めます。 ぎょろりと、 ムジナの子は首を振り向けてまりさを見下ろしました。 同じ子供といえど、ムジナの体長は30センチほど。 あんまんサイズの子ゆっくりなど食いでのある獲物に過ぎません。 しかし、生き物の顔の部分しか認識できないゆっくりは、 ムジナの顔の大きさだけを見て、格下と判断しました。 「ゆっゆっゆ! おまえなんてまりささまがけちょんけちょんにしてやるぜ!」 「ゆ~。おねいちゃんすごいよ! やっちゅけちゃえ~!」 雄々しい姉まりさの後に隠れて、子れいむは余裕の声援を送りました。 しかし、一陣の風が吹き抜け、 姉まりさの姿は空間ごと削り取られたかのように消え去りました。 「……? ゆ?」 事態を把握し切れず呆然とするれいむ。 その目の前に、湿った音響とともにかつての姉が跳ね返ってきました。 なんということでしょう。 斜めに入ったムジナの爪が下腹部と口とを深々と抉り抜き、 ぽっかりと開いた大穴から、ゴマダレが仰向けに倒れたまりさの顔面を流れ滴って、 頭の下敷きになっているおぼうしの中へと、とぷとぷ注ぎこまれているではありませんか。 「……ゆ、……ゆ゛んや゛ぁ~~~~!!!」 泡を食って逃げ出すれいむ。餌山の横を抜け、巣穴の出口へと跳ねていきます。 その間にも背後では暴力的な物音が聴こえ続け、 出口の前にたどり着いたれいむが足を止めて振り返ると、 見上げるようだった餌山の中腹を突き破って上半身をあらわしたムジナが、 口にくわえた瀕死の姉まりさを無惨にも噛み砕くところでした。 「ゆぎぃぃぃぃ!! たぁすげでねぇぇぇぇぇ!!!」 子れいむは狂乱状態で巣穴から飛び出しました。 外は一面銀世界。すでに冬といっていい状態です。 「おがぁぢゃあああああでいぶはあんなふうになりだぐないでずぅぅぅ!!!」 恐怖のあまり目から口からシロップを垂れ流して跳ねるれいむです。 あわてて跳ねると危ないですよ、 といっているうちに、雪に足をとられて転んでしまいます。 「ゆぅぅぅ! なにごれぇぇぇぇぇ!!」 冬を知らないれいむは、うかつにも坂道で転んでしまいました。 ころころころころ……、転がるうちに雪を集めていき、 斜面が終わって回転がとまるころには、サッカーボール大の雪玉になっていました。 厨性能カメラで中を透視して見ましょう。 「ゆぅぅぅ!? どういうことなの!?」 雪玉の中心で、逆さまのまま止まってしまったれいむが見えますでしょうか? 一心不乱に動きまわり、なんとか脱出しようとしています。 しかし、ゆっくりの能力では一度こうなってしまうと自力では逃げ出せないのです。 「ゆ? なんだか、つめたいよ! おみずさんが!?」 なんということでしょう。 ゆっくりのわずかな体熱によって、周囲の雪が溶けていくではありませんか。 「だずげでぇぇぇぇ!! どげじゃうよおおおおがあぢゃああああ!!!」 限られたスペースの中でぴこぴこ動いているのが確認できます。 ゆっくりが冬を苦手とする理由がこれです。 雪が積もっているということは、雨が降っているのと同じぐらい危険なのです。 この子れいむは助からないでしょう。 こうして、誰に供されるわけでもない氷きんときが、雪原にぽつりとあらわれるのです。 ※ 親まりさがもどってきたのは、そのすぐ後のことでした。 追い出されいむを探し出せないまま、落胆して戻ったまりさは、 巣の中で食事中のムジナと鉢合わせしました。 「ゆ!? ここはまりさたちのゆっくりぷれいす…… ゆううぅぅぅぅぅ!? こどもたちをどこにやったのおおおお!!!」 親まりさの威嚇はあろうことか功を奏し、子ムジナは逃げ去っていきました。 しかし、巣の中には無惨な子ゆっくりの残骸が散らばっており、 親まりさは子供たちの全滅を悟りました。 「ゆ……、ゆ……ゆううぅーーー……ゆううぅぅぅぅーー……。 あんまりだぜぇぇぇぇぇぇ…………」 まりさはさめざめと泣きました。 巣を空けてしまった後悔、非情な襲撃者への怒り。 今は無きつがいとの愛の結晶を、むざむざ全滅させてしまったという事実は、 まりさに暴れ狂うことすら許しませんでした。 ただ空っぽの巣のなか、さめざめと泣き続けるばかり……。 「ゆ! おかあさん?」 「……ゆ? ……――ゆ!?」 なんということでしょう。 親まりさが顔を上げるとそこには、 追い出したはずの子れいむがいたのです! あちこち汚れてふやけてひどい有様でしたが、 子れいむは雪の中を生きて戻ってきたのです。 「ごはんとってきたよ! ゆっくりごめんしてね!」 口の中の木の実を吐き出したれいむ。 何も知らないその顔は、達成感で輝いていました。 「でいぶううううううううぅぅぅぅぅ!!!」 たまらず駆け寄った親まりさが、れいむにすーりすーりします。 「ごべんねぇ! おがあぢゃんがわるがっだよ! もうどごにもいかないでね!」 「ゆ゛ぅう!? くすぐったいよ! あとおなかすいたよ! ごはんをさきにしてね!」 とまどう子れいむ相手に、親まりさは泣きながら擦り寄りました。 親の威厳もかなぐりすてて、ゆぅゆぅ、ゆぅゆぅと、 いつまでもいつまでもすりすりしていました。 ※ いかがだったでしょうか。 過酷な冬を乗り越えるための戦い。 海千山千の野生動物たちのなかで翻弄されながらも、 懸命に生きるゆっくりたちの姿をお楽しみいただけたのではないでしょうか。 親ひとり子ひとりとなったこのゆっくり家族はこの後、 互いに助け合い、協力しあって、 巣を代え、冬ごもりの備蓄をやり直しました。 なんとか冬を越すことができそうです。 家族を喪った哀しみは消えません。 それでもゆっくりできなかった家族の分まで、 ゆっくりたちはゆっくりするでしょう。 やがて冬が過ぎ、 野山に春が満ちた時、 ゆっくりは薄暗い巣穴のなかから、 陽光きらめく野山へと飛び出していくのです。 そして暖かな春が、いつまでもいつまでも続くようにと、願うのでしょう。 ――ゆっくりしていってね、と。 <地球高みの見物 完> (以下 未放送シーン) 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってよ!」 2月。 春を前にして、最後の大雪が山を襲いました。 夜の山を吹き荒れる、闇夜を塗りつぶさんばかりの白銀の猛吹雪。 スタッフは、以前取材したあのゆっくり親子の巣穴をたずねてみました。 「ゆっくりしてね!! れいむ、がんばってね!! もうすぐはるさんがくるからね……!!」 悲痛な叫びをあげているのは、厳しかった親まりさです。 頬は痩せこけ、目元には隈が、おぼうしもヨレヨレで、 ひどく疲れているのがわかります。 「ぐるぢいょぉ……。いだいぃぃぃ……。 おがっちゃ……だじゅげでねぇ……」 弱々しい声で苦痛を訴えるのは、生き残りの子れいむでした。 こんもりと盛られた枯葉のベッドに、ころり横たわっています。 虚ろで淡い微笑みを浮かべ、細かい痙攣をくりかえしています。 異常なのは体中に浮き出た『血管』。 そして、つむじのあたりから生えた植物の双葉……。 未発達な子どものゆっくりが木の実などを食べた際、 うまく消化できないまま種子を取り込んでしまい、 体内で温められ、発芽してしまうケースがあるのです。 子れいむの下腹部あたりに、痛々しく浮き出た血管のようなもの。 これは植物の根です。 餡子と皮の間に根が張り巡らされているのです。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりねていれば、すぐによくなるからね! さあ、これをたべてげんきになってね!」 子れいむを不安にさせまいと、親まりさは無理に微笑んでいます。 残りわずかな餌山の中からどんぐりを選び、口移しで食べさせようとしましたが、 ぽろり、と子れいむの口から転げ落ちてしまいました。 「……もっちょ、ゆっぐり、じだがっだ、よっ……!」 この子れいむが春を迎えることは無いでしょう。 春が近づいて暖かくなればなるほど、 育つ根に餡子をこねくり回され、養分を吸い上げられ、 みるみるうちに太っていく根によって、 やがては内側から引き裂かれてしまうのです。 救いであったはずの季節は死神となって、 子れいむを迎えに来るのです。 「おぢびじゃんんんんんんんんんんんんんん!! はるさんがくればゆっくりできるよ! だからそれまでがまんしてね! はるさんはゆっくりしないではやくきてね!」 家族を喪った哀しみは消えません。 それでもゆっくりできなかった家族の分まで、 親まりさはゆっくりするでしょう。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってよ……!」 やがて冬が過ぎ、 野山に春が満ちた時、 親まりさは薄暗い巣穴のなかから陽光きらめく…………。 <ゆっくり高みの見物 完>
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作者:2スレ7氏 ミレトスの城下町に入って西の裏路地を進み、夕日の光が弱くなるままに延々と暗く なっていく貧民街。その北部にある一角にたどり着けば、罪人を収容するための刑務所 を目にすることができる。ロプト帝国も華やかなりしころの遺産。あるいはグランベル 王国の時代にも、少数派に成り下がった暗黒教団に対しての拷問と虐殺が行われた、表 向けにはできない差別意識を腹いっぱいになるまで満たすことのできる血塗られし建造 物。時代の影に隠れて多くの悲鳴と絶望を飲み込み続けてなお顔色一つ変えなかった石 造りの監獄がそこにある。ダゴンはにんまりと笑い、そして扉に手をかけた。 ギギィ。 道幅こそ大人が五人は並んで通れるほどの規模だったが、天上は低い。暗さも相当な ものである。遺跡を活用することによって道順を知り尽くしてきたダゴンにとっても、 深緑のローブの中から不安をまったくにじませないで歩くことは難しい。それほどに不 気味な建物であり、それほどに呪われた場所なのだ。暗黒教団と解放軍とに等しく流血 を強いてきたその場所には、今現在、三人の解放軍に属する少女達が捕らえられている。 真っ黒な通路の先から、魂までもを凍らせるような痛々しい悲鳴が聞こえてきた。 「ラクチェ殿は大人気ですなあ」 古木をこすり合わせるような声で話しかけてくる老人に、ダゴンは粘度の高い笑みを 返してやった。紺色のローブの下から枯れ木のような腕を伸ばし、わざわざ灯火を手渡 してくれたバラン老に目線で礼を返して、黒髪の剣士が囚われている地下牢の前へと目 を向ける。 数人の若者達が、ラクチェを犯していた。 狭い牢の中で何人もの男達がうごめき、精液にまみれたラクチェの一糸纏わぬ身体を、 ぞんぶんに征服して楽しんでいるのが見て取れる。 気持ちはわからなくもない。 仲間を殺されたという復讐の念もなくはないだろうが、剣士としての訓練で引き締ま ったラクチェの健康な身体はどんな無茶な行為でも飲み込んでしまうほどに素晴らしい ものだったし、適切な調教も施されていたので、抱き心地の点ではそこらの娼婦などは 全く比較にならない。 「いやいや、あのアイラ殿の娘ですからな。イザーク王家の末裔だけあって、ラクチェ 殿の身体は素晴らしかった」 「はっはっはっ、ダゴン老もなかなか若い。あれほどのじゃじゃ馬に一番乗りなど、私 には恐ろしくて出来ませんな」 「おうおう、それはもう、ひとえに恋のなせる業でありましてな。あの美しきラクチェ 殿の処女蜜を吸うためなら、このダゴン、なけなしの勇気をふるうぐらいは決して厭う ものではありませなんだわ」 「…………処女はそれほどに?」 「よいものですぞ、あれは。今ではすっかり肉奴隷ぶりが板についてしまったラクチェ 殿でありますが、最初のころの瑞々しい悲鳴は、もう、聞くだけで、この老骨の身が十 歳は若返ったほどですからのう」 ぐっぐっ、と、くぐもった笑い声を発したダゴンだったが、急に真面目な顔をしてバ ランへと向き直った。 「それで、今日も私が頂いてよろしいのですかな? 順番からすればバラン殿が一番槍 をつとめるのが道理というものですが?」 「ほほほ。このバランは犯され抜いた少女に調教を施すほうが好きでしてな。いや、あ のラクチェ殿など、はじめは尻に指を入れられるだけで泣き叫んだものですが、今では すっかり後ろのほうまで反応するようになりました。若い女の子は飲み込みが早くてい い。裏切り者のヨハルヴァの上に黄金色のシャワーを浴びせてやった時など、もう、二 人して喜びの涙を流しておりましたからなあ」 恍惚とした表情で過去の思い出を追憶するバランに対して、ラドンは苦笑を返した。 「まったく、バラン殿は人を喜ばせるのがお好きですな」 「はっはっ、若くないものですから。さてさて、そういうことですから、今日のフィー 殿も、ダゴン殿が自由にむさぼって下さってかまいませんぞ?」 「……でしたら、お言葉に甘えますか」 「こちらへ。フィー殿も、首を長くして待っておられることでしょう」 長きに渡って続いてきた解放王セリスとロプト帝国皇子ユリウスとの戦争も、ようや くその結末が誰の目にも明らかにあらわれつつあった。 解放軍はベルルーク城からミレトスへと出撃し、その前にある大平原でロプト帝国軍 に対して全軍を動員しての決戦を挑み、これに敗北した。聖戦士達の多くもすでに戦死 し、かろうじてアレスとシャナンだけがベルルーク城に立てこもっているのみとなって いる。一気呵成に壊滅の憂き目に遭うことも十分にありえた解放軍がまだ生き延びてい るのは、ひとえにロプト帝国皇子ユリウスその人が決着を先延ばしにしているからに他 ならない。 「もっと絶望させてからの方が、面白いだろう?」 そういったユリウス皇子は、今は先の戦争で捕らえたアルテナなどの身体をお楽しみ のようである。篭城しているだけの敵などは時間を置けば攻めずとも自滅するのが目に 見えているのであるから、軍を動かす者の立場からしても、それは合理的な判断だった といえるだろう。 「…………殺しなさい! 虜囚の辱めを受けてまで、生き延びようとは思いません!」 牢獄の床の上で細い腕を鎖に繋がれながら、少女は決然とダゴンに向けて言い放った。 声にも身体にも瑞々しい張りがある。胸甲や衣服なども虜囚生活が短いことを示すかの ように清潔であったが、さすがに武器だけは取り上げられているので、彼女は丸腰であ る。 少女の名は、フィーと言った。 故シレジア王国レヴィン王子の娘であり、かつては解放軍の天馬騎士としてロプト帝 国軍を苦しめた、歴戦の武将でもある。 「ほほ…………元気がよろしいですな、お嬢さん。しかしそれは薄情というものでしょ う。あなたのお仲間のラクチェという少女は、あなたの分まで男達の欲望を受け止めて くれているというのに」 「…………っ!! ラクチェに何をしたの!!?」 「いやいや、別段、何も。ただ、あなたのこれからの態度によっては、そのようなこと もありえるということです」 ダゴンはにやにや笑いながら怒りの炎を目に宿している少女に目を向けた。細い手足 を拘束されて牢につながれている姿が天上の妖精のように可憐で美しい。憎悪にかみ締 められた唇から香るような生気が感じられる。短いスカートの切れ目からは、白い陶磁 器のような染み一つない綺麗な肌が見えていた。 「さて、フィー殿。虜囚生活は退屈でしょうし、ここは一つ、私とゲームをしませんか?」 「ゲーム、ですって…………」 「ええ。世が世ならば王女であった貴方を、このまま繋いでおくのも心苦しいですから な。貴方が勝ったらこの場所から解放してさしあげましょう。私が勝ったら…………ま あ、何でも、言うことを一つ聞いて頂くということでどうでしょうか?」 顔を険しくして考え込んでいたフィーだが、やがて、はっと何かに思い当たったよう に表情をこわばらせ、そして、首を振った。 「ふざけないで。そんな条件、とても信じられない」 「まあ、信じる信じないはご自由に。しかしただのゲームなのですから、暇つぶしぐら いにはなるでしょう。長らく刺激のない生活を送っていると頭がおかしくなりがちです からな。捕虜の精神面でのケアも、私の仕事なのですよ」 「…………貴方の言うことが本当なら、条件をもう少し対等にしなさい」 「対等、とは?」 「あなたに私の解放を決める権限なんてあるわけがないでしょう。せいぜい、ここでの 生活を向上させるぐらいが関の山なんじゃないの?」 「ふむ…………」 一瞬何を言われたのかわからなかったダゴンであるが、わずかな沈黙の後、それがも っともな発言であることを理解できたので思わず笑ってしまった。よく考えてみると、 解放軍の指導者や武将などは、みな、普通では考えられないほどに若い戦士達ばかりな のだ。 「…………ははは、これは見くびられたものですな。しかし心配は無用です。私はこれ でもマンフロイ大司教に次ぐ権力を持った帝国の司教ですぞ。フィー殿のような小物ぐ らい、私のサジ加減一つでいかようにでも解放して差し上げます」 「小物……ね。いいわ。ゲームを受けましょう。私が小物かどうか、すぐにわからせて あげるから」 決闘の申し出を受けて視線に覇気をたぎらせているフィーの言葉に、ダゴンは唇に好 戦的な笑みを浮かべながら頷いた。罠にかかった獲物を見る時ほど心が浮き立つものは ない。バランなどとは違い、ダゴンは無抵抗の少女の悲鳴などにはまったく興味がない 老人であった。無力でちっぽけな若者が必死で希望にすがりつく様を楽しみ、それを圧 倒的な力で蹂躙することこそが、彼の生きがいであった。 「では……ルールを説明しましょう。よろしいですかな?」 「ええ。聞くだけは聞いてあげるわ」 「なに、ごくごく単純な決闘ですよ。貴方は素手、私は魔法。この狭い牢獄の中で戦っ て、最初に立ち上がれなくなった方が負けです。どうです、簡単でしょう?」 「…………ずいぶん、私に不利な条件ね」 「武器を与えたりすれば戦士である貴方の方が有利ですからな。それに、貴方は捕虜な のです。これぐらいのハンデはむしろ当然というべきでしょう。ああ、いちおう、この 錆びたナイフぐらいなら使ってもかまいませんが」 目の前に現実の武器を与えられたことによって、フィーは戦士としての気配をみなぎ らせながら承諾した。 「わかった、決闘を受けるわ。面白いじゃないの。天馬騎士の動きが、ペガサス前提の ものだなんて勘違いをしているところがね」 一般に、天馬騎士はペガサスから降りてしまえば一般人の少女とかわらない強さであ るといわれている。が、それも程度の問題で、フィー程の戦士であれば地上に降りたと しても十分な脅威になる。ましてやダゴンは接近戦に弱い魔道師だ。鎧や肩当ても着用 している彼女の戦闘力は、錆びたナイフ一本だけが武装だとしても決してあなどれるも のではない。 「ほほ、フィー殿を軽く見ているわけではありません。ある程度拮抗している相手だか らこそ勝負がおもしろくなるのです」 「いいわ。ところで、まさかこの鎖を外さずに勝負しろとは言わないわよね?」 「すぐに外してさしあげますよ」 「ふん…………後悔しても、遅いわよ」 ガチャガチャ、と鎖に鍵を差しこみ、二つの手枷を解放する。フィーの両腕を縛って いた鎖が音を立てて床に落ちた。自由になった彼女はゆっくりと立ち上がり、牢の入り 口へと目を向けたが、そこにはマンフロイ大司教に勝らずとも劣らない魔術師であるバ ラン司教が立っている。探るような表情をしていたので、脱出の機会をうかがっている ことは特に注意しなくても見て取れた。 「ああ、逃げてもたぶん無駄ですぞ。ここの警備はずさんですが、女の子が一人で逃げ 切れるほど酷くもありませんから」 「わかってるわよ。そんな卑怯なことはしない。正々堂々と勝負しましょう」 錆びたナイフを握り締めて、フィーは決然と言い放った。凛としたその表情といい、 バランスよく肉のついた身体といい、無駄な力の入っていない構えといい、彼女が油断 できない強敵であることを雄弁に物語っている。 「…………さて、合図はどうしますか。もう始まっているということでよろしいか?」 「ええ。行くわよ」 「どうぞ」 返答も終わらぬうちにフィーは間合いをつめて飛び込んできた。いい判断である。魔 道師を相手にして、距離をとっての戦いには万に一つの勝ち目もない。 ザクゥッ!! ボロボロに錆びたナイフが、ダゴンの枯れ木のような腕に突き刺さった。 (…………甘すぎる!) ダゴンは失望と共に身体を入れ替えてフィーの突進を受け流した。舞うような一歩踏 み込んで身体を密着させ、同時に高速詠唱によってヨツムンガンドを胸甲の上から打ち 込む。猛烈な手ごたえを感じた。至近距離からの一撃を受けて吹き飛んだフィーは壁に 叩きつけられ、暗黒魔法を浴びた者特有の真っ黒な血を口からごぽごぽとこぼし、そし て激しく咳き込んでいる。 「ゲホゲホッ!! ……っ、う、ぐああああっ!!」 「つまらない……まったくつまらないですな、フィー殿は。老人だからといって甘く見 ましたか。ラクチェ殿はまだ、この私の暗黒魔法の一撃に耐えることができましたぞ?」 侮蔑の言葉に反応して、フィーは歯を食いしばりながら立ち上がった。しかしその行 為には意味がない。もう一撃をなんとか打ち込もうとナイフを手に近寄ってくるが、踏 み込むための足が完全に殺されている。 赤ん坊のはいはいかと錯覚するような遅さであり、かわすのは容易かった。ふらふら とよろめきながら近づいてくるフィーの腕を取り、そのまま石床へと叩きつけて魔力を こめた手をかざす。首筋に放出寸前になっている暗黒魔法を近づけられた彼女の表情は 死を覚悟した絶望に染まったが、もちろん殺したりするつもりはまったくない。軽く手 を振って魔力を拡散させ、同時ににんまりと笑ってナイフを取り上げる。 「勝負あり、ですな」 腰にのしかかって宣言すると、フィーは悔しそうに唇を噛んだ。 「…………武器さえまともなら、あなたなんか!」 「ははは、それは醜い弱者のいいわけというものですぞ。ラクチェ殿などは、あんなボ ロボロのナイフでこの私を極限まで追い詰めるほど奮闘しましたが?」 「もういい……たしかに、その通りだしね」 「では、負けを認めるのですな?」 「まいった。私の負けよ」 「ほほほ、これで決着がつきましたな。それでは約束通り、なんでも言うことを聞いて もらうことにいたしますか」 暗黒魔法の威力を受けて胸を大きく上下させていたフィーだったが、その防具の留め 金を外されて肩当てや胸甲を取り上げられると、さすがに表情を強張らせた。 緑の布越しに胸や腹を軽くなでてやると、瞳が不安げに揺れてくる。 「ま、まって……何を、する、つもりなの?」 「ははは、いや、それは聞かなくてもわかりそうなものですがなあ。これからじっくり と、貴方の身体を楽しませていただくつもりですが」 「…………っ!! じょ、冗談じゃないわ! や、やめて……やめなさい!!」 「別に同意を求めるつもりはありません。約束を破るのは聖戦士達のお家芸ですからな あ。あのラクチェ殿も、なんでも言うことを聞くといっていたのに、涙を流しながら抵 抗して破瓜の血を流しておりましたわい」 「な、なんてひどいことを!! あっ……う、ううっ!! 許さない! それ以上触っ たら、わたしは、あなたを許さないから!」 必死で腕に力を込めて抵抗するフィーだったが、すぐに咳き込んで口から血を吐き出 した。肺を傷つけている少女の力などはまったく警戒に値しない。スカートのスリット から指を入れ、まばゆいほどの太ももを丹念になでてやる。下着の上から尻を鷲づかみ にして、じっくりと愛撫し、首に舌を這わせていく。 「……ううううっ! くっ、い、あ…………ふっ、あっ! …………くううっ!!」 「ほほほ…………いや、天馬騎士などというのはペガサスに頼り切った贅肉だらけの身 体をしているかと思いましたが、全くそのようなことはありませんな。肌の弾力が実に 心地よいですぞ」 「くっ! …………ひ、卑劣よ! 捕虜を辱めるなんて、恥を知りなさい!」 「ははは、組み伏されて愛撫されながらそんなことを言っても、滑稽なだけですぞ。あ あ、バラン司教。腕を押さえておいてもらえませんかな。これから下の方を責めてみた いので」 「ほっほっ、よいですとも」 「や、やめて! やめてよっ!!」 暴れるフィーの上半身を押さえつけてもらってから、ダゴンは緑色のスカートをめく りあげた。白い下着を股の下までずりさげ、あらわになった真珠のような肌の中にある 茂みに舌をはわせて、ねちねちと刺激を加えてやる。 「……ふうううぅっ!! くっ! …………あ、あああっ!! い、いやっ……いやあ あああああっ!!」 「はっはっはっ、処女は反応が楽しくてよいですなあ。ピンク色のあそこに血がみなぎ っておるではありませんか」 「ダゴン老は本当に処女が好きですな」 「おうおう、この白い肌に朱がさしているところを見てくだされ。この女、天馬騎士で ありながら、どうやら淫乱の才も有しておるようですぞ」 「まっこと、けしからんですなあ。清純そうななりをしておるくせに」 「いやまったく」 「う…………あっ、あああっ!! ぐううっ……うああああああああああああああっ!!」 瞳に涙を浮かべて身体をばたつかせているフィーの衣服を剥ぎ取り、ダゴンは遠慮な く秘所に指を突き刺した。唾液で湿らせた穴にずぶずぶと入っていく。そのたびに悲鳴 と膣の収斂が起こり、若々しい肉がビクビクと痙攣した。ダゴンは歓喜の念に身体を震 わせながらあわただしくローブを脱ぎ捨てて、自らの年齢に不相応なほどに立派な一物 をフィーの秘所にあてがい、感動で胸をいっぱいにしながら腰を進めていく。 「え……や、やだっ…………やめてっ! お願いだから、それだけはっ!!」 「ほほほ、いきますぞ」 「う、うそっ!! 冗談でしょ!? …………あ、うああっ……ぐうっ!! あ、くっ… …あ、ああ…………うああああああああああっ!!!」 ずぶずぶと進入する性器を飲み込んでいる膣が、痛々しいほどに締め付けてきてダゴ ンの進入を拒んでいる。 「ほっほっ、まだ半分も入っておりませんぞ。しかし大変な名器ですな、お嬢さん」 「くううっ!! あっ……はあああぁっ!? や、やめて…………やだ……やめてええ えええええええっ!!!」 「ああ、なんて暖かい膣だ。王女殿の中とはこのようなものなのですなあ」 「いや……いやあぁ…………っ!! あっ、あっ、や、やだ……ぐうっ! はああああ ああああああああああっ!!」 引き締まった腰に手を伸ばし小ぶりな尻にぐっと爪を立てる。腹や太ももを押さえつ けるように揉んでいくと真っ白な肌が小刻みに震えてきた。汗を浮かべている皮膚に舌 を這わしてなで回し、薄く赤い唇にも唾液を流し込んでやる。涙を溢れさせている頬に 口付けると、悲しそうに目を閉じて必死に膣をしめつけた。 「ああ、ああ、吸いつくようですぞ。鍛えられているだけあって素晴らしい締め付けで す。伊達にペガサスの背中を股で押さえているわけではないということですか」 「どうして…………どうして、こんなことができるのっ!? ……この…………ケダモ ノっ!!」 「ほほ、あなた方の時代にも、我々暗黒教団の少女達は破瓜も終わらぬうちにこのよう な目に合わされてきたのではありませんか。それから考えれば、この程度のことで文句 を言われる筋合いはありませんな。まあ、しかしそれなりに楽しめましたよ、あなたは。 白馬に乗ったフィー殿はまぶしいほどに輝いておりましたが、今後はその美しさをこの 地下牢の中で発揮してくださいませ」 「な……なにを…………くあああああっ! う……あっ…………言っているの?」 「いえいえ。我が軍の中にも大空を鮮やかに駆ける王女殿を汚してやりたいと考えるや からは大勢いましてな。いつまでも私が独り占めするわけにもいきません。さあ、出し てさしあげますから、後で感想でも聞かせてくださいませ」 「や、やだ…………」 「いきますぞ?」 「……や、やだ…………やだやだぁっ!! やめてえええええええええええええっ!!!」 ドピュドピュ! ドビュウウゥゥッ!! ダゴンのペニスが膣の奥深くで欲望を解き放ち、白濁の液体がフィーの中にどんどん と注ぎ込まれた。 「あ…………あ、ああ…………」 ぐったりと足を投げ出して脱力した少女の腹や太ももに口づけをして、ダゴンはゆっ くりと立ち上がる。その表情は若々しい肉体を陵辱した満足感に晴れ晴れとしていた。 それからはバラン司教とかわるがわるにフィーの身体をもてあそんでいたのだが、しか し、ふと牢の外に立っている魔力の波動を感知して、急に表情を不愉快そうに歪める。 何時の間に現れたのか。 ワープの秘術を使って地下牢の最奥までやってきた雷神イシュタルが、怒りに満ちた 表情でバランとダゴンとを睨みつけていた。 「終わりましたか、バラン殿」 「…………覗き見とは、趣味がよろしくありませんな」 「軍議に出ていただきたいと申し上げたはずです。それが、このような場所で捕虜の虐 待に興じておられるとは!」 切れ長の美しい睫毛が完全に逆立っている。唇も苦々しそうにゆがめられており、空 気中を飛んでいる精霊がぴりぴりとした緊張を周囲に放っていた。黒を基調としたドレ スが生命力に溢れた少女の美しさを見事に際立たせている。不可能なことであると知り ながら、ダゴンはこの可憐な少女に空想の中で何度肉棒を突きたててやったかわからな い。 「申し開きをしていただけるのでしょうね! 明日はもう、ベルルーク城への遠征がは じまるのというのに!」 裂帛の気合とともに放たれた言葉を無視してフィーの胸を揉んでいると、イシュタル は白雷を思わせる光沢のある手袋を突き出し、トールーハンマーの詠唱を口にした。 閃光が走った。 バランとダゴンの眼前で真っ二つに割れた青白い稲妻は、地下深くにある牢獄の壁に 吸い込まれ、そして轟音を巻き起こす。 ドゴオオオオォンッッ!! 雷精の余波を受けたフィーの身体がびくりと跳ね上がったが、マジックシールドに長 けた教会の司祭であるダゴンとバランだけは、吹き上がった埃を煩わしそうにローブの 袖で抑えつつイシュタルの暴行に顔をしかめている。 「…………それ以上の狼藉は許しませんよ!」 「狼藉、とは、何をもってそういわれるのか?」 「無力な婦女を力でもって犯すことを狼藉というのです。ダゴン司教ほどの方が知らな いはずがないでしょう!!」 「ほほほ、私は禍々しい異教の神を信じている哀れな小娘に対して説法を施しはしまし たが、狼藉などという醜い行為は一度もしたことがありませんな。いかなユリウス皇子 のおぼえめでたきイシュタル殿といえども、それは暴言というものでしょう」 「ふざけないで! ロプトウスだけが神ではない!!」 常識では考えられないほどの暴言にさすがにダゴンも顔をにがくした。しかし理解は できた。イシュタルの言ったセリフは暗黒教団の司教を相手に対するにはあまりにも激 しすぎるものであったが、それだけに彼女の怒りの程をよく表していたともいえるだろ う。 「どのような事情であれ、弱者を守って生きていくのが力あるものの本来の姿というも のです。ダゴン司教のされていることは説法などではありません。それは陵辱です!」 「ほ、ほ、ほ…………イシュタル殿が言ったのでなければ二日と生きていられないよう な言葉ですな。しかしイシュタル殿。これは正当な権利というものではありませんか?」 「…………正当、ですって?」 「しかり。かつてグランベル帝国が栄えていた時代、我々暗黒教団がどのような仕打ち を受けていたかは十分にご存知のはず。我らはロプトウス神を信じているだけで石を投 げられ、火にくべられ、釜でゆでられてきたのです。時代と共に澱のように降り積もっ てきたその怒りを発散させることは、正しい行いであれこそすれ決して非難されるよう な事柄ではありませぬな」 「そ、それは! その女の子とは関係ないではないですか! ダゴン司教はロプトウス 教団でない者を皆殺しにするおつもりなのですか!?」 顔を蒼白にして叫ぶイシュタルに、ダゴンは諭すように右腕をかざして言った。 「いえいえ、このダゴン、信心厚きとはいえそのような不可能をまじめに考えるほどボ ケてはおりませぬ。しかし私もまた、親兄弟や友をやつらに殺されてきた被害者である ことに変わりはない。そのような過去の理不尽に対して誰かを攻撃せぬわけにはいかぬ のです。差別に対して攻撃で返すことは決して愚かな行為ではありません。それは当然 のことです」 「…………間違ってる。そんなの、間違っています! それでは憎しみは終わらないで はありませんか!!」 イシュタルは少女らしく潔癖な正義でもって糾弾したが、それは潔癖であるがゆえに、 まったくダゴンの心には響かない。 「侮辱されたことに反撃するのは自衛であり知性であって、間違いではありません。ま あ、イシュタル殿に理解していただかなくても結構。あなたのように聖戦士としての寵 愛と憧憬を受けて育った女性にはわかりますまい。私はただ、聖戦士達だけをよりごの んで愛する神などという偽善者の手によって理不尽に与えられた差別されるものとして の立場を、わずかに元の状態に戻そうとしているに過ぎませぬ」 「ならば! 何故このような人の目につかない地下牢でそれを行うのです! 心に後ろ 暗いことがなければ堂々としていられるはずではないですか!」 「ほほ、私はどちらでもかまわないのですぞ。もっと公の場で犯されることを、このフ ィー殿も望んでいるとイシュタル殿は言うのですかな?」 はっと表情を強張らせてイシュタルはうつむいた。なすすべなく蹂躙されたシレジア 王国の王女に対して、同じ聖戦士として憐れみの念を禁じえないのであろう。実際、イ シュタルもまたこの運命をたどる可能性はあった。彼女がユリウス皇子の寵愛を受けず に解放軍にその身を投じていれば、きっと聖なる武器を没収されてフィーと同じような 憂き目にあっていたに違いない。 「……ダゴン殿の言うことはそれなりにわかります。確かに売り言葉に買い言葉ではあ りました。しかし、何も無力な女子供まで復讐の対象にしなくてもいいでしょう。その 少女も、戦士としての死を与えてやればそれで足りるはずではないですか」 イシュタルは沈鬱な表情で呟いた。どのような立場の者に対しても一定の理解を示す ことができる彼女の情の深さは人としては立派なものであったが、世の中には理解する 必要がない人物もいるということを、この若い少女は知らなすぎた。 「ははは、イシュタル殿は無茶苦茶をいいますなあ。子供の言葉と思って聞いておりま したが、もうこれまで。異教徒などは絶望して苦しむのが仕事ではありませぬか。かつ ての罪を苦痛で清算することこそが彼らに与えられた唯一の幸せなのですぞ」 「…………っ!!」 本音を隠そうともせずにフィーの髪を掴み首筋を嘗め回すダゴンを見てイシュタルは 憎悪を込めた視線をぶつけてきた。しかし、彼女はそれ以上何もしなかった。できなか ったのである。義憤に駆られてトールハンマーを使ったりすれば、それで破滅すること になるのはダゴンとイシュタルの二人だけでは済まないのだ。 イシュタルの心には聖戦士としての正義が深く刻まれている。その彼女ですらダゴン ほどの悪を成敗することができなかったのはひとえに教会の権威とマンフロイ大司教の 力を恐れるが故であった。領地を没収されてユリウスの愛人の地位に落とされるなどと いうことがあっては彼女一人の身が滅びるだけではおさまらない。彼女には愛すべき家 族があり、友人があり、庇護を求めてあえいでいる部下や領民がいたのだった。 「…………まあ、そう固くならずともよろしいではありませんか。教会の軍は帝国とは 別個に、しかし決して足並みは乱さずに動きます。ベルルーク城に立てこもる解放軍の 残党など、三日のうちにはこの世から消え去っていることでしょうよ」 「わかりました……期待していますよ。私は帝国軍を率いて明日、ミレトスを発ちます」 「承知いたしました。暗黒教団の働きぶりにご期待あれ」 返事もせずにワープの魔法によって去っていったイシュタルに対して唾を吐き、ダゴ ンは呪いを込めて叫んだ。 「小娘が! ユリウス皇子の寵愛をかさにきおって!!」 目の前に倒れているペガサスナイトの少女とイシュタルとを重ねあわせ、あの生意気 な女を犯すことの喜びを存分に満たした後、少しだけ溜飲を下げたダゴンは落ち着いて 地下牢を出発し、解放軍の残党から見目麗しい少女を捕らえて楽しむために、ミレトス の暗黒教会支部にて各将を招集した。 続きを読む
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Pathfinder RPG Bestiary 第1刷 更新1.2 - 2011/09/12公開 この文書はPathfinder RPG Bestiaryの第1刷から第3刷への更新である。ページ数が太字の項目は新しい更新である。 更新 (訳注:原文(PRD)に適用されている項目は灰色で表示) 10ページ - エンジェル:アストラル・デーヴァのデータ・ブロック、技能の行、“〈脱出術〉+9”を削除して〈知識:宗教〉のボーナスを“+19”に変更。 11ページ - プラネターのデータ・ブロック、準備している呪文の下、1レベルの行の後に“0レベル(回数無制限):ディテクト・マジック、ピュアリファイ・フード・アンド・ドリンク、ステイビライズ、ヴァーチュー”を追加。 12ページ - エンジェル:ソーラーのデータ・ブロック、遠隔攻撃の行、“+31”を“+31/+26/+21/+16”に変更。準備している呪文の下、1レベルの行の後に“0レベル(回数無制限):ディテクト・マジック、ピュアリファイ・フード・アンド・ドリンク、ステイビライズ、ヴァーチュー”を追加。 16ページ - アント:ジャイアント・アントのデータ・ブロック、特殊能力の毒の項、頑健 DCを“14”に変更。 17ページ - エイプ:ゴリラのデータ・ブロック、CMB の行、CMB を“+5”に、CMD を“17”に変更。 19ページ - アルコン:ハウンド・アルコンのデータ・ブロック、近接の行、グレートソードのダメージを“2d6+3”に変更。 20ページ - アルコン:ランタン・アルコンのデータ・ブロック、オーラの行、義憤のオーラの DCを“13”に変更。 21ページ - アルコン:トランペット・アルコンのデータ・ブロック、近接の行、武器のダメージの後に“/19~20”というクリティカル可能域を追加。準備している呪文の下、1レベルの行の後に“0レベル(回数無制限):ディテクト・マジック、ピュアリファイ・フード・アンド・ドリンク、ステイビライズ、ヴァーチュー”を追加。 24ページ - アザータ:ブララニのデータ・ブロック、技能の行、〈飛行〉ボーナスを“+22”に変更。 25ページ - アザータ:ガエルのデータ・ブロック、AC の行、 AC を“28、接触16、立ちすくみ26(+4反発、+1【敏】、+1回避、+12外皮)”に変更。遠隔の行、攻撃ボーナスを“+14遠隔接触”に変更。準備している呪文の下、2レベルの行、“エイド”の後の“(2)”を削除。1レベルの行、“サンクチュアリ(DC15)”を削除。 1レベルの行の後に“0レベル(回数無制限):ディテクト・マジック、ピュアリファイ・フード・アンド・ドリンク、ステイビライズ、ヴァーチュー”を追加。 26ページ - アザータ:リレンドのデータ・ブロック、修得呪文の下、3レベルの行、“キュア・シリアス・ウーンズ”を追加。 27ページ - グレーター・バーゲストのデータ・ブロック、近接の行、爪の攻撃ボーナスを“+14”に変更。擬似呪文能力の下、チャーム・モンスターとクラッシング・ディスペアの DCを両方とも“DC18”に変更。 34ページ - ビーヒアのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、ブレス攻撃の情報の末尾に“1d4ラウンドに1回”を追加。感覚の行と技能の行、〈知覚〉判定のボーナスを“+8”に変更。 37ページ - ボガードのデータ・ブロック、近接の行、舌の攻撃ボーナスを“-1”に変更。 38ページ - バグベアのデータ・ブロック、技能の行、技能を“〈威圧〉+7、〈隠密〉+10、〈知覚〉+8”に変更。宝物の行、“木製ヘヴィ・シールド”を“木製ライト・シールド”に変更。 42ページ - ケンタウロスのデータ・ブロック、移動速度の行、速度を“50フィート(鎧装備時35フィート)”に変更。 45ページ - チョーカーのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、特殊攻撃のリストの締めつけの後に“つかみ(大型)、”を追加。 47ページ - クローカーのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+8”に変更。 51ページ - クロコダイル:ダイア・クロコダイルのデータ・ブロック、技能の行、 “〈隠密〉-6(水中では+2)”を“〈隠密〉+0(水中では+8)”に変更。 52ページ - サイクロプスのデータ・ブロック、近接の行、グレートアックスの攻撃ボーナスを“+11/+6”に変更。 53ページ - ダーク・クリーパーのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+12”に変更。 55ページ - ダークマントルのデータ・ブロック、イニシアチブの行、イニシアチブを“+6”に変更。AC の行、AC を“15、接触13、立ちすくみ13(+2【敏】、+2外皮、+1サイズ)”に変更。基本攻撃の行、CMB を“+1(組みつき+5)”に、CMD を“13(足払いされない)”に変更。技能の行、技能を“〈隠密〉+10、〈飛行〉+5、〈知覚〉+4”に変更。 55ページ - ダークマントルのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、特殊攻撃のリストの締めつけの後に“つかみ(任意のサイズ)”を追加。特殊能力の行とその下のつかみの段落を削除。 57ページ - デーモン:ババウのデータ・ブロック、近接の行、ロングスピアのダメージを“(1d8+7/×3)”に変更。 63ページ - デーモン:マリリスのデータ・ブロック、近接の行、尾の打撃の攻撃ボーナスを両方とも“+17”に、叩きつけ(×6)の攻撃ボーナスを“+22”に変更。擬似呪文能力の節、プロジェクト・イメージの DCを“24”に変更。 64ページ - デーモン:ナバッスゥのデータ・ブロック、AC の行、AC を“22、接触14、立ちすくみ18(+3【敏】、+1回避、+8外皮)”に変更。技能の行、種族修正の項に“+8薄暗い照明での”を追加。 64ページ - デーモン:ナバッスゥのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD を“29”に変更。 67ページ - デーモン:シャドウ・デーモンのデータ・ブロック、特殊能力、日光による無力化の項、2文目、“移動アクションまたは攻撃アクション”を“移動アクションまたは標準アクション”に変更。最後の文、“サンビームやサンレイ”を“サンビームやサンバースト”に変更。 69ページ - デーモン:ヴロックのデータ・ブロック、特殊能力、朦朧化の絶叫の項、2文目、DCを“21”に変更。 70ページ - デロのデータ・ブロック、遠隔の行、リピーティング・ライト・クロスボウのダメージを“1d6”に変更。 72ページ - デヴィル:バーブド・デヴィルのデータ・ブロック、特殊能力の節、以下の段落を追加: つかみ(変則) バーブド・デヴィルは、中型サイズまでの敵に対して、つかみ攻撃を行うことができる。 82ページ - ディヴァウラーのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+6”に変更。 83ページ - ディノサウルス:ブラキオサウルスのデータ・ブロック、 感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを“+28”に変更。 86ページ - ディノサウルス:トリケラトプスのデータ・ブロック、 感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを“+24”に変更。 87ページ - ドッグ:ライディング・ドッグのデータ・ブロック、脅威度を1に変更。経験点の行、経験点を“400”に変更。 93ページ - アダルト・ブラック・ドラゴンのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+20”に変更。 93ページ - アダルト・ブラック・ドラゴンのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMB を“+22”に変更。 94~95ページ - クロマティック・ドラゴン:ブルー・ドラゴンのデータ・ブロックすべて、技能の行、ボーナスは変更せずに、“〈Appraise〉”を“〈はったり〉”に変更。 94ページ - クロマティック・ドラゴン:ブルー・ドラゴンのテキスト、特殊能力の砂漠の渇きの項、最後の文、“(DCはそのドラゴンのブレス攻撃のものと同じ)”を削除し、文末に以下の段落を追加: このセーヴDCは【魅力】に基づいている。 95ページ - アダルト・ブルー・ドラゴンのデータ・ブロック、擬似呪文能力の下、マイナー・イメージの DCを“15”に変更。エインシャント・ブルー・ドラゴンのデータ・ブロック、この DCを“17”に変更。 97ページ - アダルト・グリーン・ドラゴンのデータ・ブロック、特技の行、“《武器破壊強化》”を削除。エインシャント・グリーン・ドラゴンのデータ・ブロック、特技の行、“《上級武器破壊》”を削除。 99ページ - エインシャント・レッド・ドラゴンのデータ・ブロック、特技の行、“《クリティカル体得》”を“《クリティカル熟練》”に変更。 99ページ - エインシャント・レッド・ドラゴンのデータ・ブロック、修得呪文の下、2レベルの行、ディテクト・ソウツ呪文とミスディレクション呪文の両方に“(DC17)”を追加。特技の行、“《朦朧化クリティカル》”を“《よろめき化クリティカル》”に変更。 101ページ - エインシャント・ホワイト・ドラゴンのデータ・ブロック、修得呪文の下、4レベルの行、“ディメンジョン・ドア”を追加。0レベルの行、“アシッド・スプラッシュ、”、“ゴースト・サウンド、”、“メイジ・ハンド、”、“メッセージ”を追加。 102ページ - ヤング・ブラス・ドラゴンのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD の後に“(対足払い28)”を追加。 103ページ - アダルト・ブラス・ドラゴンのデータ・ブロック、技能の行、“〈隠密〉+3”を削除、 エインシャント・ブラス・ドラゴンデータ・ブロック、修得呪文の下、5レベルの行、“プライング・アイズ”を追加。 106ページ - ヤング・カッパー・ドラゴンのデータ・ブロック、 特技の行、“《強打》”を追加。 107ページ - エインシャント・カッパー・ドラゴンのデータ・ブロック、“《上級武器落とし》”を“《武器落とし強化》”に変更。 108ページ - ヤング・ゴールド・ドラゴンのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、“80フィートの円錐形”を“40フィートの円錐形”に変更。 109ページ - エインシャント・ゴールド・ドラゴンのデータ・ブロック、 特殊攻撃の行、“120フィートの円錐形”を“60フィートの円錐形”に変更。特技の行、“《朦朧化クリティカル》”を“《よろめき化クリティカル》”に変更。 114ページ - ドラウのデータ・ブロック、hp の行、 “4(1d8)”を“5(1d10)”に変更。 114ページ - ドラウのデータ・ブロック、近接の行、レイピアの攻撃ボーナスを“+2”に変更。 115ページ - ドラウの貴族のデータ・ブロック、近接の行、レイピアの攻撃ボーナスを“+4”に変更。 117ページ - ドゥエルガルのデータ・ブロック、技能の行、技能を“〈威圧〉+1、〈隠密〉-3”に変更。 119ページ - イール:ジャイアント・モーレイ・イールのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD の後に“(足払いされない)”を追加。特殊能力のかじりつきの項、最後の文の“(攻撃+11、1d6+4)”を“(攻撃+11、1d6+3)”に変更。 124ページ - 中型ファイアー・エレメンタルのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD を“19”に変更。 124ページ - 超大型ファイアー・エレメンタルのデータ・ブロック、頑健の行、頑健セーヴを“+10”に変更。特殊攻撃の行、着火の DCを“18”に変更。 125ページ - グレーター・ファイアー・エレメンタルのデータ・ブロック、DR の行、 DR を“10/―”に変更。 126ページ - 中型ウォーター・エレメンタルのデータ・ブロック、 AC の行、立ちすくみ AC を“16”に変更。 130ページ - エティンのデータ・ブロック、近接の行、この項を“フレイル(×2)=+12/+7(2d6+6)”に変更。 133ページ - レイヴンのデータ・ブロック、技能の行、〈飛行〉技能ボーナスを“+6”に変更。ウィーゼルのデータ・ブロック、技能の行、〈脱出術〉技能ボーナスを+3に変更。 135ページ - フロッグ:ポイズン・フロッグのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD を“5(対足払い9)”に変更。 136ページ - フロフェモスのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、飲み込みの AC を“19”に変更。技能の行、〈水泳〉技能ボーナスを“+18”に変更。 138ページ - ゼラチナス・キューブのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD を“9(足払いされない)”に変更。 140ページ - ジンニー:イフリートのデータ・ブロック、技能の行、〈飛行〉技能ボーナスを“+13”に変更。 141ページ - ジンニー:ジャーンのデータ・ブロック、移動速度の行、移動速度を“30フィート、飛行20フィート(完璧);チェインメイル装備時20フィート、飛行15フィート(完璧) ”に変更。特殊能力のサイズ変化の項、2文目、“イフリート”を“ジャーン”に変更。 142ページ - ジンニー:マーリドのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、渦潮変化の DCを“22”に変更。特殊能力の荒れ狂う水の項、2文目、DCを“20”に変更。 143ページ - ジンニー:シャイタンのデータ・ブロック、特技の行、“《Improved Natural Attack》”を削除して“《突き飛ばし強化》”を追加。 144ページ - ゴーストのデータ・ブロック、頑健の行、反応セーヴを“+5”に変更。 146ページ - グールのデータ・ブロック、特殊能力の節、病気の説明文の1文目、DCを“13”に変更。頻度を“1回/日”に変更。 147ページ - ジャイアント:クラウド・ジャイアントのデータ・ブロック、特技の行、“《上級突き飛ばし》”と“《上級蹴散らし》”を削除し、“《突き飛ばし強化》”と“《蹴散らし強化》”を追加。 148ページ - ジャイアント:ファイアー・ジャイアントのデータ・ブロック、AC の行、AC を“24、接触8、立ちすくみ24(+8鎧、-1【敏】、+8外皮、-1サイズ)”に変更。 149ページ - ジャイアント:フロスト・ジャイアントのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+2(雪上では+6)”に変更。 154ページ - ギラロンのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMB を“+12”に変更。CMD を“25”に変更。 154ページ - ギラロンのデータ・ブロック、接敵面の行、間合いを“10フィート”に変更。技能の行、“〈登攀〉+14”を“〈登攀〉+12”に変更。 156ページ - ゴブリンのデータ・ブロック、近接の行、ショート・ソードの攻撃ボーナスを“+2”に変更。遠隔の行、ショート・ボウの攻撃ボーナスを“+4”に変更。 164ページ - ゴーレム:ウッド・ゴーレムのデータ・ブロック、頑健の行、意志セーヴを“+5”に変更。 167ページ - グリーン・ハグのデータ・ブロック、擬似呪文能力の下、回数無制限の行、“ディスガイズ・セルフ”を削除して“オルター・セルフ”を追加。 168ページ - グリフィンのデータ・ブロック、技能の行、〈飛行〉技能ボーナスを“+6”に変更。 169ページ - ハーフセレスチャル・ユニコーンのデータ・ブロック、特殊能力の行(訳注:おそらく特殊攻撃の行)、悪を討つ一撃を“(+4ダメージ)”から“(+7攻撃、+4ダメージ)”に変更。このページのハーフセレスチャルの作成の節、特殊能力の節、悪を討つ一撃の項を以下の通り変更: 悪を討つ一撃(超常):ハーフセレスチャルは1日に1回、即行アクションを費やして、ヒット・ダイスと同じレベルのパラディンとして悪を討つ一撃を行える。悪を討つ一撃は対象が死ぬか、ハーフセレスチャルが休息をとるまで持続する。 170ページ - ドラコリスクのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD を“23(対足払い31)”に変更。 171ページ - このページのハーフフィーンドの作成の節、特殊能力の節、善を討つ一撃の項を以下の通り変更: 善を討つ一撃(超常):ハーフフィーンドは、1日に1回、即行アクションを費やし、ヒット・ダイス数と同じレベルのパラディンの悪を討つ一撃と同等(ただし対象は善)の、善を討つ一撃を行える。善を討つ一撃は対象が死ぬか、ハーフフィーンドが休息をとるまで持続する。 173ページ - ヘル・ハウンド:ネシアン・ヘル・ハウンドのデータ・ブロック、技能の行、〈生存〉技能ボーナスを“+18”に変更。 175ページ - ホブゴブリンのデータ・ブロック、hp の行、hp を“17(1d10+7)”に変更。近接の行、ロングソードの攻撃ボーナスを“+4”に変更。遠隔の行、ロングボウの攻撃ボーナスを“+3”に変更。技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+5”に変更。 176ページ - ホムンクルスのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMB を“+2”に変更。 178ページ - ヒュドラのデータ・ブロック、頑健の行、頑健セーヴを“+8”に変更。 179ページ - ハイエナのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを“+8”に変更。特技の行、“《鋭敏感覚》”を削除して“《技能熟練:知覚》”を追加。 179ページ - ハイエナのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD の後に“(対足払い19)”を追加。ハイエナ:ダイア・ハイエナのデータ・ブロック、CMD の後に“(対足払い24)”を追加。 181ページ - インヴィジブル・ストーカーのデータ・ブロック、頑健の行、頑健セーヴを“+11”に変更。 182ページ - アイアン・コブラの説明文、アダマンティン・コブラの段落の後に以下の段落を追加: コールド・アイアン・コブラ(脅威度+0):このコブラの肉体攻撃はダメージ減少を克服する際、冷たい鉄として扱う。 182ページ - アイアン・コブラの作成のデータ・ブロック、術者レベルの行、アダマンティン・コブラの項の後に“8,000 gp(コールド・アイアン)”を追加。必要条件の行、コストの下、アダマンティン・コブラの項の後に“4,000 gp(コールド・アイアン)”を追加。 183ページ - コボルドのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを+5に変更。hp の行、hp を“5(1d10)”に変更。遠隔の行、スリングのダメージを“(1d3-1)”に変更。技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+5”に変更。 183ページ - コボルドのデータ・ブロック、言語の行、“共通語”を削除。 186ページ - ラミアのデータ・ブロック、頑健の行、頑健セーヴを“+7”に変更。近接の行、ダガーのダメージを“(1d4+4/19~20)”に変更。 187ページ - リーチ:ジャイアント・リーチのデータ・ブロック、頑健の行、頑健セーヴを“+5”に変更。 187ページ - リーチ・スウォームのデータ・ブロック、技能の行、“〈隠密〉+1(湿地では+9)”を“〈隠密〉+16(湿地では+24)”に変更。 191ページ - リノーム:アイス・リノームのデータ・ブロック、基本攻撃の行、“(組みつき+49)”を“(組みつき+44)”に変更。 193ページ - ライオンのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+8(下生えでは+12)”に変更。ライオン:ダイア・ライオンのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+7(下生えでは+11)”に変更。 194ページ - リザード:モニター・リザードのデータ・ブロック、特殊能力の下、“毒(超常)”を“毒(変則)”に変更。リザード:ジャイアント・フリルド・リザードのデータ・ブロック、AC の行、“+8鎧”を“+8外皮”に変更。 195ページ - リザードフォークのデータ・ブロック、近接の行、項全体を“モーニングスター=+2(1d8+1)、噛みつき=+0(1d4)、または爪=+2(1d4+1)、噛みつき=+2(1d4+1) ”に変更。技能の行、〈水泳〉技能ボーナスを“+8”に変更。 202ページ - メフィットのデータ・ブロック、AC の行、AC を“17、接触14、立ちすくみ14(+2【敏】、+1回避、+3外皮、+1サイズ)”に変更。 204ページ - マーフォークのデータ・ブロック、遠隔の行、ヘヴィ・クロスボウのダメージを“(1d10/19~20)”に変更。マーフォークのキャラクターの節、2段落目の後に以下の段落を追加: +2外皮:マーフォークは固い皮膚を持っている。 205ページ - ミミックのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを“+14”に変更。技能の行、〈知識:ダンジョン探検〉技能ボーナスを“+10”に変更。 206ページ - ミノタウロスのデータ・ブロック、近接の行、突き刺しのダメージを“(1d6+2)”に変更。 208ページ - モーグのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを“+23”に変更。 208ページ - モーグのデータ・ブロック、特殊攻撃の行、麻痺の DCを“21”に変更。 210ページ - ミイラのデータ・ブロック、特殊能力のミイラ腐敗病の項、1文目、頻度を“1回/日”に変更。 211ページ - ナーガ:ダーク・ナーガのデータ・ブロック、近接の行、噛みつきのダメージを“(1d4+2)”に変更、修得呪文の下、0レベルの行、“(6回/日)”を“(回数無制限)”に変更。 212ページ - ナーガ:ガーディアン・ナーガのデータ・ブロック、修得呪文の下、0レベルの行、“(6回/日)”を“(回数無制限)”に変更。“キュア・マイナー・ウーンズ”を削除して“ステイビライズ”を追加。 212ページ - ナーガ:ガーディアン・ナーガのデータ・ブロック、特殊能力の毒の項、頑健 DCを“21”に変更。 213ページ - ナーガ:スピリット・ナーガのデータ・ブロック、修得呪文の下、0レベルの行、“(6回/日)”を“(回数無制限)”に変更。“キュア・マイナー・ウーンズ”を削除して“ブリード”を追加。 216ページ - ナイトメア:コシュマールのデータ・ブロック、基本攻撃の行、“(+2対足払い)”を“(対足払い42)”に変更。 220ページ - オーガのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを+5に変更。 221ページ - オニ:オーガ・メイジのデータ・ブロック、擬似呪文能力の下、1回/日の行、“ディーパー・スランバー”を“ディープ・スランバー”に変更。 222ページ - オークのデータ・ブロック、感覚の行、“夜目”を削除、イニシアチブの行の下(訳注:防御的能力の行の下の誤り)に以下の行を追加: 弱点 光に過敏 222ページ - オークのデータ・ブロック、近接の行、ファルシオンの攻撃ボーナスを“+5”に変更。言語の行の下に以下の行を追加: その他の特殊能力 武器精通 231ページ - ラークシャサのデータ・ブロック、近接の行、ククリのダメージを“(1d4+4/15~20)”に変更。 235ページ - ライナセラスの動物の相棒の節、2段落目、能力値の下、“-4【敏】”を“-2【敏】”に変更。 238ページ - ラスト・モンスターのデータ・ブロック、近接の行、触覚の攻撃ボーナスを“+6接触”に変更。 241ページ - サテュロスのデータ・ブロック、AC の行、AC を“18、接触13、立ちすくみ15(+2【敏】、+1回避、+5外皮)”に変更。技能の行、〈芸能:管楽器〉技能ボーナスを“+19”に変更。 244ページ - シー・サーペントのデータ・ブロック、AC の行、“+17鎧”を削除して“+17外皮”を追加。近接の行、噛みつきのダメージを“(4d8+22/19~20、加えて“つかみ”)”に変更。特技の行、“《クリティカル強化”の後に“:噛みつき”を追加。 249ページ - ショゴスのデータ・ブロック、特技の行、“《朦朧化クリティカル》”を“《よろめき化クリティカル》”に変更。 255ページ - スネーク:ヴェノマス・スネークのデータ・ブロック、AC の行、立ちすくみ AC を“13”に変更。 256ページ - スペクターのデータ・ブロック、近接の行、非実体の接触の攻撃ボーナスを+10に変更。特技の行、“《武器の妙技》”を“《武器熟練:接触》”に変更。 259ページ - スクウィッド:ジャイアント・スクウィッドのデータ・ブロック、近接の行、触手のダメージを“(4d6+3/19~20、加えて“つかみ”)”に変更。特技の行、“《クリティカル強化”の後に“:触手”を追加。 262ページ - タラスクのデータ・ブロック、特技の行、“《朦朧化クリティカル》”を“《よろめき化クリティカル》”に変更。 265ページ - タイガー:ダイア・タイガーのデータ・ブロック、特技の行、“《鋼の意志》”を削除。技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+15(背高の草地では+23)”に変更。 266ページ - トリエントのデータ・ブロック、遠隔の行、岩のダメージを“(2d6+13)”に変更。 270ページ - ヴァンパイアのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを“+21”に変更。技能の行、〈知識:宗教〉を“+10”に変更。 271ページ - ヴァンパイア・スポーンの節、3段落目、““エネルギーに対する抵抗10”、“[冷気]に対する抵抗10””を““[電気]に対する抵抗10”、“[冷気]に対する抵抗10””に変更。3段落目の後に以下の段落を追加: ヴァンパイア・スポーンは、(訳注:PRDではこの位置に「ワイトの」を挿入している)同族作りの能力を持たない。 272ページ - ヴァルグイユのデータ・ブロック、AC の行、AC を“15、接触12、立ちすくみ14(+1【敏】、+3外皮、+1サイズ)”に変更。技能の行、技能を“〈威圧〉+5、〈隠密〉+8、〈知覚〉+7、〈飛行〉+13”に変更。 277ページ - ウィル・オ・ウィスプのデータ・ブロック、感覚の行と技能の行、〈知覚〉技能ボーナスを+17に変更。AC の行、AC を“26、接触26、立ちすくみ16(+5反発、+9【敏】、+1回避、+1サイズ)”に変更。 280ページ - ウォーグのデータ・ブロック、移動速度の行、移動速度を“50フィート”に変更。この変更はウォーグ:ウィンター・ウルフのデータ・ブロックにも繰り返す。 281ページ - レイスのデータ・ブロック、基本攻撃の行、CMD を“21”に変更。 283ページ - ジルのデータ・ブロック、技能の行、〈隠密〉技能ボーナスを“+14”に変更。 284ページ - ゾーンのデータ・ブロック、技能の行の後に以下の行を追加: 言語 共通語、地界語 292ページ - ステップ6の節、1段落目、3および4文目を削除。2文目の後に以下の文を追加: クラス技能はクリーチャーの種別より決められる(306~310ページのクリーチャー種別を参照)。(訳注:PRDには括弧の記述なし) 294ページ - 単純なテンプレートのアドヴァンスト・クリーチャーの節、再構築ルールの段落、“すべての能力値に+4”を以下の通り変更: すべての能力値に+4(2以下の【知】能力値は除く) 297ページ - ステップ2の節、3段落目、2文目、“その脅威度の英雄的な NPC”を“そのレベルの英雄的な NPC”に変更。 298ページ - 変身の節、1段落目、3文目の後に以下の文を追加: 特に記述がない限り、無期限に変身後の形態を維持することができる。 300ページ - 畏怖すべき存在の節、最初の段落の末尾、最後から2番目の文の前に以下の文を追加: セーヴに失敗した場合、4ヒット・ダイス以下の敵は恐慌状態に、それより高ければ怯え状態になる。 301ページ - つかみの節、1段落目、2文目の“特に明記されていない限り、つかみの能力はクリーチャーよりもサイズが小さな敵に対してのみ使用できる。”を削除。2段落目の後に以下の段落を追加: 特に記載がない限り、つかみはクリーチャーとサイズ分類が同じかそれよりも小さな相手に対してのみ行うことができる。クリーチャーが通常とはことなるサイズにもつかみを行うことができる場合、これはクリーチャーの特殊攻撃の行に記載される。 301ページ - つかみの節、最後の段落、“位置:個別の攻撃手段”を“位置:個別の攻撃手段および特殊攻撃”に変更。 302ページ - 肉体攻撃の節、1段落目、4文目、“攻撃ロールにクリーチャーの【筋力】ボーナスの1.5倍を”を“ダメージ・ロールにクリーチャーの【筋力】ボーナスの1.5倍を”に変更。 304ページ - 擬似呪文能力の節、2段落目、2文目を以下のとおり変更: “常時”または“回数無制限”の擬似呪文能力には使用の制限はない。特に断りのない限り、クリーチャーは“常時”の擬似呪文能力を自身自身にのみ使用することができる。 307ページ - 人造の節、特徴の節の下、5項目目、“病気”の前に“出血効果”を追加。 308ページ - 人型生物の節、4項目目、段落の最後に以下の文を追加: キャラクター・クラスと種族HDの両方を持つ人型生物は、これらの技能にそれらのクラス技能のリストを加える。 309ページ - 粘体の節、特徴の節の下、4項目目、2文目を削除。 310ページ - アンデッドの節、特徴の節の下、4項目目、“[即死]効果”の前に“出血効果”を追加。 311ページ - (アルコン)の副種別の節、瞬間移動の段落、“(超常)”を“(擬呪)”に変更。 311ページ - (エレメンタル)の副種別の節、1項目目、“麻痺”の前に“出血効果”を追加。 312ページ - (オーク)の副種別の節、最後の文の末尾に“(ハーフオークは“光に過敏”を持たない)”を追加。 314ページ - 《ふっとばし攻撃》の節、利益の段落、2文目、“敵はダメージを受け”の後に“(通常は叩きつけのダメージ+【筋力】ボーナス)、”を追加。 315ページ - 《肉体攻撃強化》の節、利益の段落、1文目の末尾に“(素手打撃を除く)”を追加。 315ページ - 《肉体攻撃強化》の節、最後の段落の後に以下の段落を追加: 特殊:この特技は複数回取得できる。効果は累積しない。クリーチャーが1回修得するたびに、この特技が別の1つの肉体武器に適用される。
https://w.atwiki.jp/f_go/pages/2874.html
ぜんぜんこっちくかわれてなくて草 結構いい強化じゃん - 名無しさん (2018-08-02 19 07 35) 真面目な話どう使えばいいんかね。フランのスカスカ三連打でちょっと便利くらいしか浮かばん - 名無しさん (2018-08-02 19 17 51) 一般にも書き込まれてたけど、弱体無効を自分にかけて宝具ぶっぱってパーティ立て直す的な感じ? - 名無しさん (2018-08-02 19 35 22) これだな 実際刺さるとこなら便利だと思う - 名無しさん (2018-08-02 19 37 56) そうとなると強化されて漸く対宝具性能がまともになった点と共存させ辛いのがな - 名無しさん (2018-08-02 20 01 54) 槍玉藻と結構相性いいと思う。女神変性のフォローとバスターバフができる - 名無しさん (2018-08-02 19 36 30) そもそも変性ってあんま使わないんだよなぁ。ほとんどNPチャージ補助して宝具連発で終わらせるし。婦長入れて変性活かすのとNPチャージ持ちの鯖入れるのってどんくらい効率変わってくるのかね? - 名無しさん (2018-08-02 21 21 50) 使わなくても十分強い関係上残り2騎のどちらかを変えても差はなさそう。槍玉藻婦長マーリンで変性クリまで活かすってんなら宝具が増えてかつNPも回収は出来るが婦長の事故が怖い - 名無しさん (2018-08-02 21 34 43) どちらにせよ変性はこのターンで確実にぶちのめす時しか使わないからスタンしようがしまいが関係ないんだよね - 名無しさん (2018-08-02 21 34 51) 宝具が増えるってか第二の宝具レベルの火力って事な。言葉が足らんかった - 名無しさん (2018-08-02 21 35 56) デメリット付き宝具の連打編成にオダチェン要員として挟んでも良いし、スキル撃ち捨て前提のオダチェンorデコイにしても良いし、マシュと鍛錬使って対デバフに寄せた耐久編成組んでもいいし、翁とか黒王みたいな特殊タゲ&搦手ドカ盛りの所に投げ込んでもいい - 名無しさん (2018-08-02 20 05 42) 婦長をB鯖へのバッファーとかヒーラーで使って居る人が結構多い事に驚いた - 名無しさん (2018-08-02 20 26 27) 普通にマーリンとタニキ挟んでサブアタッカーかつ幻術のCT稼ぎかつヒーラーそしてバッファーとして使ってるけど… - 名無しさん (2018-08-02 20 31 57) >幻術のCT稼ぎ そんな要素あったっけ? - 名無しさん (2018-08-02 21 25 43) 宝具での延命だろう。素殴りでも回復+攻50%ダウンで1Tは十分生き残れる - 名無しさん (2018-08-02 21 31 11) 言い方悪かったな、チャージ攻撃に幻術間に合わないときは宝具で対処してるって感じ - 名無しさん (2018-08-02 21 32 53) やるとしたら自身に弱体無効をつけて宝具で弱体解除する対デバフ戦闘。デバフ乱用の敵は攻撃頻度が少ないし脆いって点もある程度は許容出来る。ペアはマシュ玉藻。後は変則的にレオニダスマーリンでレオニダスを更に強化する運用もあり。デバフはじくようになれるし - 名無しさん (2018-08-02 21 10 00) 最近は殴りにデバフ付与効果を付けるタイプも増えてるのがな…… - 名無しさん (2018-08-02 21 19 31) それな。だが割かし連射の効く宝具で全体弱体解除はジャンヌ、剣式、婦長でその中だと被NPが高い婦長は相手によっては光る。えっ、式の方が打点も出るし安定する?分かる - 名無しさん (2018-08-02 21 26 30) 性能理論の方がまともに議論できそうだな。 - 名無しさん (2018-08-02 19 45 22) そもそも元々多くの周回で使うような鯖じゃないのにそこを気にするのはおかしいよなぁ・・・ 元々一部で輝く鯖なんだからできることが増えたのは活躍の場所が増えたってことだし - 名無しさん (2018-08-02 20 07 59) どっちかっていうとのその一部での輝きをさらに磨いて欲しかったんだけどナ - 名無しさん (2018-08-02 20 09 13) 個人的には3ターン周回できないクエで(マーリン孔明より素殴り強いので)1ターン目とかの雑魚散らし兼バフ要因として活躍してもらってたからむしろ周回に使えるようなバフやデバフが欲しかったな~とは思う - 名無しさん (2018-08-02 20 56 54) マーリン来るまでは吸わないバッファーさせてたわ - 名無しさん (2018-08-02 21 35 04) 結構喜んでる人多いけど冷静になって考えてみると問題点何一つ解決してないから仮に即死を使ってくる相手でも出番はなさそう - 名無しさん (2018-08-02 21 01 26) そこなんだよ。今回の強化で喜んでる人の多くは多分婦長使ってない。できることは確かに増えてて、そこ褒めたら良いじゃんって気持ちは分かるんだけどな - 名無しさん (2018-08-02 21 35 02) 普段から使ってると「フランの三連射ができます!!!」って言われても「いや別に婦長使わんでも同じようなクエ内容なら今までもできてたし…」って感じだし、どうせなら使う場面での精度をさらに上げてくれたほうが強化された!って感じるわけよな - 名無しさん (2018-08-02 21 37 00) 今後の環境次第じゃない、マーリンやジャンヌと差別化強まったのは良い事だ - 名無しさん (2018-08-02 21 40 03) 素殴りと宝具のダメージ自体は貧弱だけど宝具が即死効果付きで先頭のキャラしか狙わない とかいう相手が出たらぴったりだな - 名無しさん (2018-08-02 21 42 49) デバフが即死が宝具が対魔力がの前に素殴りで落ちるからな。しかも出来ることは素殴りを超えた先なのに自身でその穴を埋められない上最高コストという - 名無しさん (2018-08-02 21 40 34) 使ってる身としては嬉しかったかな。個人的にゃ一番のネックが宝具撃つ前にスタンないし宝具封印をくらうことだったからそれを防げるのはでかい。婦長使う時点でS1はほぼほぼ婦長に使うことになるから丁度いいし - 名無しさん (2018-08-03 03 51 03) 全てを生かそうとすると槍玉くらいしかうまくかみ合わないな。イリヤは確率とはいえ自前の薬でも弱体無効かけられるし。焦点がボヤけてる分高難易度のいろんなところで刺さりそうな弱くはない調整だとは思うんだけど、事故が怖い婦長のクラスと微妙に噛み合わないし、結局「それ悪くないけど婦長の強化としては求めてないわー(使えないとは言っていない)」なんじゃないかなあ - 名無しさん (2018-08-02 21 59 45) 使用感ほぼ変わらんからなぁ…強化後少し連れまわしたけど結局集中狙いされてGoAじゃ間に合わない鯖にS1使うのは変わらなかったし、厄介なデバフも大体全体で結局宝具で解除するから強化された気しねーわ - 名無しさん (2018-08-02 22 02 44) 結局の所ナイチンの唯一性は個人で相手宝具の威力を75%以上ダウンさせられるのと、味方に弱体無効を3回分付けられるって点で、これを微妙と言われてしまうのはまあしょうがない - 名無しさん (2018-08-02 22 09 22) また味方に付与できるBバフと弱体無効を有効活用しようとしても現状殆ど噛み合う鯖がいないって点も強化が来たのに残念なポイント - 名無しさん (2018-08-02 22 14 25) ただ大回復/弱体解除&無効/Bバフ支援/相手を選ばず殴れることができるのはナイチンの強みではあるし、使えねえ弱鯖って程では無いと思う - 名無しさん (2018-08-02 22 20 37) いやだからもともと弱い鯖じゃねぇだろって、だから他に強化待ちいんのに強化されたことにも驚きだしその内容がこれだしで言っちゃなんだが他の強化待ち金狂勢に悪いわ… - 名無しさん (2018-08-02 22 29 22) 言うてスキルにテコ入れ必要な金枠狂なんてベオぐらいじゃね?宝具強化なんて幕でも追加できるし、現状ナイチンにスキルテコ入れが来たのは別におかしかない。強化内容が微妙なのは同意 - 名無しさん (2018-08-02 22 39 51) 使用率も多分運営は見えてるだろうからアタッカーより癖が強くて婦長は低い気はしてる - 名無しさん (2018-08-02 22 56 01) 勿論支援型でモロに打たれ弱いってのはかなり痛いけど、他の支援型鯖も等倍で殴られて落ちるし、ナイチン使うなら〇〇でよくね?って言うのも分かるけど、皆が皆その〇〇を持っている訳でもないし、ナイチンが色々出来ることに変わりはないから光るか腐るかは個々のカルデアの状況によって違うんじゃないかな。個人的には星5の支援鯖が持ってて腐るって事はないと思う - 名無しさん (2018-08-02 22 33 01) 支援って言い方だとうちでは腐りガチだな。採用するときは殴れるという点を重視するときだわ - 名無しさん (2018-08-02 23 40 28) 敵宝具を75%カットするために二回デバフ通さないといけないのがまた辛いんだわ。相手が対魔力A持ってると0.8 * 0.8 = 0.64まで成功率が落ちる。レコードホルダー持てる余裕があるわけでもないから、宝具重ねた術ギルをアタッカーにして殺ボスを相手にする、ぐらいしか安定した運用が出てこない - 名無しさん (2018-08-02 22 30 33) これ強みとか言ってるけどOC300まで上げないと耐えきれないし最近の敵鯖なんて宝具前にバフかけて火力上げてくるから焼け水に石にすらならんという - 名無しさん (2018-08-02 22 40 29) さすがにOC1でも75%カットできるなら耐えれるよ。宝具前のバフが辛いのは同意 - 名無しさん (2018-08-02 22 42 50) 婦長だけで耐えようとするから辛いわけで、そこはマシュや公明との組み合わせで……。問題はクリ事故に怯えながら婦長を生かして宝具を受けるより、マーリンやダビデでかわしつつ殴り倒したほうが早いっていうゲームバランスなんだけど - 名無しさん (2018-08-02 22 45 03) 実用上はマシュ宝具とチェインしたりするから。ただ、そうやって防バフの上乗せ、デバフの補助、本人の守り、色々やっていくとアタッカーが一人もいなくなりがち - 名無しさん (2018-08-02 22 45 22) 色々試している内にナイチンが編成から消える…的なコメが過去ログにあったな。 - 名無しさん (2018-08-02 23 00 55) やりたいことはだいたいマーリンがいればできてしまうしな。規格外のアイツと比べるのはそりゃ分が悪いんだけど、Bバフしながら宝具を受けるっていう運用上の長所二つが被ってる - 名無しさん (2018-08-02 23 13 17) 実のところ器用貧乏だからな。回復もデバフもバフ撒きも弱体解除も出来ますよ!てな感じだけど、バフで宝具ぶっぱ補助するにはNPチャージが足りないし、自身の被ダメが大きくて回復は自分に使いがちだし、デバフと弱体解除は宝具内蔵でタイミングを選ぶし…… - 名無しさん (2018-08-03 00 06 12) 理論値だと火力で飛ばすが正解にまずなるから話題にはしないが敵狂に出すのも想定してるのかなと思わなくもない - 名無しさん (2018-08-02 22 58 46) 初心者なんですが、今回の強化ってダメなんですか?何が良くて何がダメなのか良くわかってないんですけど... 個人的には弱体無効3Tついてよかったねとしか - 名無しさん (2018-08-02 23 36 00) 弱体無効3回は割と破格 ダメとか言ってるのは火力以外見えない子だけで活躍の場は間違いなく増えたよ 槍玉とかリップとかと相性良くなったしね 女神変生みたいなデメリット付きスキルやフラン・キャットみたいなデメリット宝具増える度に重宝されると思う - 名無しさん (2018-08-02 23 46 34) リップは自前で十分じゃろ。キャットも3連射狙うようなNP効率じゃないし。 - 名無しさん (2018-08-02 23 50 58) あの子地味にCT噛み合ってないんだよ どうやってもCTがズレるから2回目のトラッシュ&クラッシュ使う時に居たほうが良い Bバフで星も吸わないしナイチンゲールは良い相方よ - 名無しさん (2018-08-03 00 23 44) ブレストバレーが先にチャージされるんだから先撃ちすれば良いだけだろ。3回/5Tだし。 - 名無しさん (2018-08-03 00 28 27) 先打ちして消える事も多々あるんだよ というか実際あるし 絶対否定しないと気がすまない人? - 名無しさん (2018-08-03 00 32 27) 多々あるなら運用を間違えてますよ。どうせ被虐体質も一緒に使っちゃうからなんでしょうけど、防御性能をスキルに大きく依存してるリップの場合は被虐体質とトラクラはセットで使わないと思った以上の被ダメをもらうことになりますよ。 - 名無しさん (2018-08-03 00 37 02) あと、リップのCTのズレが問題なのは被虐体質とトラクラの方だよ - 名無しさん (2018-08-03 00 33 27) デメリット宝具の例にキャット上げただけなのにそんなに噛み付くのは怖いわ - 名無しさん (2018-08-03 00 34 34) コイツ多分一般で暴れてたやつだからほっといたほうがいいゾ - 名無しさん (2018-08-03 00 35 04) ホイホイ強化されるのならその通りなんだけどね。実際にはなかなか強化の順番が回ってこない上、一部の例外を除き今のところ、宝具強化とスキル強化は各1回ずつなのでナイチンゲールの性能はこれでほぼ固定されてしまう。だったらもっと運用に幅ができるような、もしくは強烈な強みを持つような強化が欲しかったよね、という話。 - 名無しさん (2018-08-03 00 16 20) 脆い、不安定な宝具デバフ辺りの分かりやすい悩みが改善されてないからじゃねーの。散々脆い、すぐ落ちるって言われてたからな。貴重な強化枠潰して出来た仕事が今のところ周回のパーツってのが面白くないのもあんのかも - 名無しさん (2018-08-03 01 24 21) なんかこう、強化でもてはやされてる部分が降ってわいたフランとの兼ね合いだから面白くないというか。叫びが使える形の生かし方ができればもっと婦長のアイデンティティが生まれて面白くなるんだけどな。この先、デメリットが重い代わりに強力なバスター宝具の使い手が出てくるなら一気に化けそうだけど - 名無しさん (2018-08-03 00 32 59) 大英雄「呼んだか?」 いやそういう意味で言ってるんじゃないのは分かってるけど - 名無しさん (2018-08-03 00 37 21) ガチャ絞られてるこのゲームで限定星5と星4と特定星5礼装一種5枚集めてようやくこのキャラが「大」活躍させられますって言われて皆が皆納得するわけないからな - 名無しさん (2018-08-03 01 47 05) 今回の強化をおそらくは義憤から擁護してくださっている方を見ると、その人にとっては今までよっぽど婦長が無価値なキャラだったんだろうなって逆に悲しくなる - 名無しさん (2018-08-03 03 28 09) フラン論による擁護って、サンソンの医術あたりにこの効果がついてたら全く同じこと言われてたのが目に見えてるから釈然としない。効果自体はシステムにハマって使えるけど誰でもいいやんだから、婦長自体の強化を望んでた人からすると違うそれじゃないってなる。俺もパラケルススには手のひらクルーしたから人のことは言えないけどな - 名無しさん (2018-08-03 08 41 03) サンソンにこの効果ついてるの? - 名無しさん (2018-08-03 18 33 10) それ化ける要素薄くないか?デメリットが重かろうが宝具が撃てる時点でその想定してたキャラ仕事終わってるってのもあるけど、その後につながる要素があってようやく婦長が活きてくるから単純にデメリット重いだけなら婦長いらないよね - 名無しさん (2018-08-03 04 03 01) うn…うn?今の時点で連続で宝具撃つとかのメリットあるんだけどその辺りは完全に無視?フランの所で喜ばれてるのは主にソレなんだけど - 名無しさん (2018-08-03 06 55 20) 連続で宝具撃つだけならBBでも良いから3wave目がBBで火力不足になるようなところしか用ないのが現状 - 名無しさん (2018-08-03 08 58 56) っていうかね。俺の婦長はフランの強化パーツじゃねーんだよ。俺は婦長に前衛で頑張って貰いたいんだよ。周回でバフかけたらオダチェンで帰る役が出来ましたって言われて喜べるかタコ - 名無しさん (2018-08-03 21 01 28) 婦長は使ってるし大好きだけど、そのデメリットとやらが「NP、星補助、継続回復、無敵。クリバフ」を捨ててまで対処しなきゃいけないほど重いもので無いなら結局マーリンに枠を奪われるし、一回だけならアトラス服でも良い訳で、それこそ婦長のために誂えたような効果は必要になると思う。即死無効で普通に防げる自己即死とか - 名無しさん (2018-08-03 06 04 26) 正直絶対に死なせないなら即死無効よりガッツで良くね?と思う - 名無しさん (2018-08-03 06 54 36) CTがね。ガッツをつけていいCTじゃないから…… - 名無しさん (2018-08-03 19 18 35) そこに関しては正直運営サイドのガッツに対する評価が高すぎるだけなのではという気しかしない。アイリさんとかガッツ撒くだけならえらい性能持ってるけど(他の部分は弱いにしろ)翁の時にピンポイント起用するか大英雄を玩具にする遊びに重宝されてる程度で、普通に使う分には殆ど話題にすらならんわけで - 名無しさん (2018-08-03 21 16 33) 玉藻とかと組んだら3T効果3Tリキャストのガッツになっちゃうじゃろ - 名無しさん (2018-08-03 21 34 21) なったからなんだというのか。翁並の超回復量でもないなら追撃で普通に死ぬ可能性は常に残るだろ - 名無しさん (2018-08-03 22 03 47) ないだろうなぁ、それまでついたら通常がネックの玉藻マーリンですら落ちなくなるだろう。後はタゲ持ちと組ませたときに盾が死ななくなる - 名無しさん (2018-08-04 01 28 09) ん? タゲ持ちに使っても発動後のターンで普通に死ぬと思うが (タイミングがあえば2連続まで発動できるけど) - 名無しさん (2018-08-04 01 33 29) というか上でも言われてるけど、「サポ術で挟んでガッツリ支援すればガッツ連打で死ななくなる」程度の話なら宝具でそれなりの回復量の全体ガッツ撒ける人が既に居る$し、無敵貫通や防御無視が標準装備ってわけでもないなら無敵や防バフをばら撒いたほうが遥かに安定するし出来るキャラはそれなりにいる。回復量にもよるが単体ガッツ回せたところでバランスに殆ど影響ないだろ - 名無しさん (2018-08-05 11 53 37) 運営のガッツに対する熱い信頼を考えると難しいだろうなぁ… - 名無しさん (2018-08-09 00 16 42) 婦長、天使の叫びに単体NP+20とか付かないかなぁ……。自分に使って宝具打つにしてもいいと思うんだけど……でもシェイクスピアとも被るから無理かなぁ。 - 名無しさん (2018-08-25 16 05 52) 耐久とかデバフ成功率とか足りないものが多すぎて何から強化すれば良いのか分からない鯖。いっそS2も任意付与にしておまけにスター集中も付けてやろう(強欲) - 名無しさん (2018-08-30 14 56 42) だがスキル強化も宝具強化ももう貰っちゃったんだよなぁ… - 名無しさん (2018-08-31 16 45 58) 確かに婦長に3回目の強化与えるよりは未強化の強鯖を無難に強化して貰った方がいいか - 名無しさん (2018-09-05 13 44 05) 逆に言えば耐久かデバフ成功率のどっちか貰えてりゃ色々解決してたんだけどな - 名無しさん (2018-09-05 13 51 16) 現状は運が悪いと敵のチャージ溜まるまで生き残れない&運が悪いとデバフ弾かれて敵のチャージを耐えれないっていうどうしようもなさがな - 名無しさん (2018-09-06 10 42 01) 本人がバサカであることも踏まえると宝具での宝具威力orATKデバフはもっと数字が欲しい。素捨ステの高さ以外☆5感薄い - 名無しさん (2018-09-06 16 11 20) Wマーリンの代替として使ってる - 名無しさん (2018-08-30 15 42 20) うちではサポートをメインにしたらマーリンには勝てないから、Bバフや回復もできるアタッカーとしての面で使ってるわ。狂と人型特攻で広い範囲に高い打点はマーリンには出せないし。礼装は死の芸術がよくあう。 - 名無しさん (2018-09-06 15 33 00) 3T周回や高難易度には使いづらいけど、敵の編成がわからない初見のクエや、空の境界コラボのときの体力が低いけど各waveの敵数が4以上で、宝具よりも素殴りの方が楽な周回では輝くと思うわ。 - 名無しさん (2018-09-06 15 37 24) この人こそガッツが欲しい。自前の回復量は結構なもんだし、本人がガッツで粘れるようになれば活躍の場も広がるんじゃなかろうか - 名無しさん (2018-09-06 16 15 11) 婦長を入れて攻撃的に、はもうやる意味がないレベルでサポーターが増えたのでとりあえず無視として、まず生存させるという意味ではレオニダスが必須だと個人的に思ってる。んでレオニダス自体もダメを完全に抑えることは出来ず、1Tデバフしか持たない婦長と合わせると中長期戦はたとえ鍛錬でも落ちると踏んでるので初期服、絆婦長、メイドインハロウィンレオニダスまではマストだと思ってる。最後の1枠候補は玉藻、マーリン、アンデルセンで考え中。 - 名無しさん (2019-01-29 18 55 39) 性能欄でを勧めてくれた人かな、提案トンクス。他マスターの編成とか構築とか興味あったから嬉しい。 - 名無しさん (2019-01-29 21 31 49) レオニダスはBバフと盾役兼ねて良いですよね。この編成で興味があるのはやっぱり打点は婦長の役目?あと、レオニダスが盾役の場合、宝具発動までの婦長への被弾はどうするのかなと思って、どういう風にしてますか?あと、レオニダスのところはデオンとかでも良さそうですよねー。 - 名無しさん (2019-01-29 21 42 41) 盾役兼ねるってか盾鯖全員育てた身としてはレオニダスレベルで盾連打出来ないとどこかで回らないんよね。かの王だけ唯一4Tタゲ集中を持っているから(宝具3T+スキル1T)。んで打点面でも星を産めるレオニダスが頭一つ抜けてる。メイン火力はどちらかってと星を吸うレオニダスの役。25個+αで上手い事じゃぶれないと婦長に回らず案外伸びない。 - 名無しさん (2019-01-29 22 16 22) 続き。仰る通りレオニダスの宝具が回るまでは常に危険が付きまとうのでS2と最後の一枠で何とか凌ぐ。S2は主に防バフ目的で振ればまだ落ちにくいって印象。最悪はマスター礼装の回復や回避を婦長にぶつける。 - 名無しさん (2019-01-29 22 18 56) 後はまあ、上手くいかなかったらリトライだ!試行回数が全て! - 名無しさん (2019-01-29 22 20 30) なるほど、盾役のレオニダスがそのまま打点も担うとは考えもみませんでしたが、確かに全然いけそうですね!4Tタゲ集中すれば被弾でだいぶNPも稼げますし。そういう運用するとレオニダスに聖杯捧げたくなってきそうですね! - 名無しさん (2019-01-29 22 46 45) ようこそ、こちら側の世界へ…(現在90。次100予定) - 名無しさん (2019-01-29 22 53 28) 90から100 - 名無しさん (2019-01-29 23 27 08) まではまた壁が大きいですね。65から90にするのと同じ聖杯数ですし。 - 名無しさん (2019-01-29 23 28 24) 相方考察:マーリン。安定のように見えて実はややピーギー、他候補と比べて短期決戦寄りの組み方。魅力はS1の全体NP配布、S2の無敵、宝具の各リジェネ、クリバフによる打点。レオニダスが25個、マーリンが宝具毎に+5個むので欠片無しでもS3チャンスは多く突破力がある、がレオニダスのダメカ手段が1つしかなく、瞬間回復は出来ない為削り切られやすいのが難点。また相手によっては婦長が回らなかった時に無敵だけでは耐えきれず半壊してしまうので噛み合ってるようで意外と脆い組み合わせ。 - 名無しさん (2019-01-29 22 46 40) アンデルセン。マーリンから火力とNP支援を取った代わりに宝具で防御アップが増える組み合わせ。確率とはいえNPチャージのお陰でそこそこ維持がしやすく、防バフが付けば通常も安定し婦長宝具が重なればダメージをほぼ0にすることも。また低コストの為いざ崩れた時の後続に高コスト鯖を配置できるのが他にない強み。ただし打点が大きく下がり詰めに時間がかかる上NP周りはマーリンより厳しいので事故るときは事故る。 - 名無しさん (2019-01-29 22 52 19) キャス狐。他と打って変わって打点を犠牲に長期戦を前提とした組み合わせ。他にない魅力としては宝具遅延、即時回復、宝具のNP配布+ヘイストの他にレオニダスのAを強化出来る。S1*A50が乗ればまず宝具が打てるレベルまで溜められるので宝具展開までが早く、いざという時も宝具を遅らせ回復し(上記礼装ならS3が5000、宝具が4000スタート)、あわよくばレオニダスが宝具を重ねてもタゲが切れないなんて運用も可能。難点はキャス狐の弱点でもある序盤のエンジンがかかるまで。ここを凌げば恐らく何とかなる。 - 名無しさん (2019-01-29 23 01 13) 番外編:マシュ。オルテナウス前はベストパートナーだったのだが2章で使用できない為別枠にて。何といってもS1の防バフ、S2の無敵付与、S3のタゲ集中、宝具の防バフが重なり婦長だけで十分回復が回るようになるまさに盾師弟。またS1のダメカットは被弾するまで永続の為タゲのいかない婦長に重なり続けるので全体宝具だろうとダメを受け付けなくなる程硬い。どこに出しても通用するレベルではあるが打点は当然出ない。オルテナウス装備はタゲ集中が2個に増えるものの防バフが弱まってしまい押し切られやすいので優先度は下がる。 - 名無しさん (2019-01-29 23 08 07) たくさんありがとうございます。返信は規制明けで大丈夫です。レオニダスメイン構成になってますが、3鯖構成のシステムだからこそ、レオニダス王と婦長の相性の良さがよく伝わってきました。 - 名無しさん (2019-01-29 23 42 13) 実はレオニダスメインに見えて、そもそもレオニダスが生き残るには?となると婦長の回復がある事が前提なんですよね。セイバー型のカード編成、弱体無効付き4000回復、弱体解除付きの事実上1Tダメ無効の回復宝具とタンク(+準ディーラー)&ヒーラー(+準ディーラー)って考えられるんですよね。仰る通り双方共に相性がいいし役割がハッキリしてる - 名無しさん (2019-01-30 00 29 30) 私が使って楽しかったのは死の芸術@婦長、欠片@マシュ、プリコス@ジャンヌの耐久Aパでした。こちらの鯖の宝具は温存せず、ガンガン回していくのがコツだと思いました。婦長入りでも不沈編成できて、火力も出せて面白い。ジャンヌの宝具デバフスキルが活きる珍しい編成。 - 名無しさん (2019-01-29 21 43 43) 自分はカーミラ様主体で使ってて、そのサポート枠としてマーリンだとライダークラスに相性が悪いので婦長を使ってます。3体目はふーやーちゃんで3体とも星出し礼装して、婦長に星を吸わないおかげで2体の殺鯖にほぼ星が行き渡ってクリ確定殴りが楽しい編成でした。欠片やトゥリハスにてとかですね。 - 名無しさん (2019-01-29 23 53 30) レオニダスに美遊で、宝具回しまくれたりするのだろうか?(自信ない) - 名無しさん (2019-01-30 10 28 51) 凸プリコスならワンチャンありそうだとは思う。宝具効果中は毎ターン美遊が+24、つまりほっといても72までリチャージするからAチェ一回で再度展開は出来る。レオニダスも被弾込みで多分回せるかな。ただ美遊が被弾はしないからHP減るデメリットは無視出来る(ついでに婦長が宝具撃てば回復出来る)けどNPが回るってだけで婦長レオニダス美優だとマーリンより脆い。もし組むのを考えるなら婦長変えても厳しそう。 - 名無しさん (2019-01-30 15 30 41) 黒髭・婦長・盾鯖。黒髭と婦長の絆礼装を主体にした構成。基本は2人以外はタゲ集中サバを詰め込む。全体攻撃してくる相手にはマシュ入れる - 名無しさん (2022-02-24 20 54 52)
https://w.atwiki.jp/ssfate/pages/528.html
No.2040 ベイリン(弓) 前のサーヴァント:雑賀孫市 次のサーヴァント:エドワード黒太子 データ 関連項目 登場歴 データ ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓ ≪クラス≫:アーチャー ┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┓ 【真名】:ベイリン 【コスト】:40 【属性】:混沌・中庸 ┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┓ 【筋】:B(40) 【耐】:B(40) 【敏】:A(50) 【魔】:C(30) 【運】:E(10) 【宝】:A++(50) ┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫ 【特徴】:英霊(騎士) 【貯蔵魔力】:100/100 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ___ _ ‐. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .ミ、 /. /. . . . . . . . . . . . / . . . . .. . . . . . .\ / . . /. . . . . . . . . . . . /. . . . ., ‐\. . . . \ /. . . . ./. . . . . . . . . . ,. . . . / ∨ . . . \ , . . .. . . ,. . . . . . . . . . . . . i ./ ``'く 、 ,| . . . . . . \ | . . . . .i| . . . . . . . . . . . . . |' ,.斗=ミヾ | . . . . . . |ヽ_ノ | . . . . .i| . . . . . . . . . . . . . | 佗ハ ヾ}, . . . . . /、 .| | . . . /i} . . . . . . . . . . . |. 弋ン ' , . . . . ., !i! | . . . i、j . . . | . . . . . . . | / . . /-、 ! ! | . . . . .i|. . . . | . . . . . . . | , . . 仍ハ ,イ .! | . . . . .i|. . . . | . . . . . . . | /イ 7ン/ . . i! . オ . ∧. . . .| . . . . . . . | / , | . . . | / | . . . / . .∨ .! . . . . . . | _ _ | | . . . | / i!. . / . .∨i . .| . . . . . . . |  ̄ ,イ i! . | / ! / . .∨..」 . ! . . . . . . . ト、 / ! . . | |,> ’二| . .| . . . . . . . |≧s。.,, _.< | . . . | /二二二i! . .| . . . . . . . |][二=-_ | . . . | /二二二二三三/∨ . . . . . . . . |][二二=/ .| . . . | . /二二二二二二二三∨ . . . . . . |二>_ / | . . . | /二二二二二二二二二∨ . . . . . |-=二./. | . . . | ./二二二二二二二二二二}, . . . . | ̄}ニト.、 ! . . | /二二二二二二二二二Y ̄Y∨ . . | ̄ ̄ヽ二>、. ! . / 代理AA:GGOキリト(ソードアート・オンライン) ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【クラススキル】 ◆対魔力:C 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。 ◆単独行動:B マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【固有スキル】 ◆災厄の剣:A+ アーチャーの剣に宿る持ち主を害する呪い。所有者の“罪”に比例して増幅される。 A+ランクにもなれば最早その呪いは担い手と完全に同化し、周囲の者にすら多大な災いを齎すだろう。 ◆戦闘続行:A 往生際が悪い。 決定的な致命傷を「七度」受けてなお立ち上がる。 ◆魔力放出:A 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。 「災厄の呪い」を受容した事で身体の一部として扱えるようになった現象の延長。呪いを魔力として運用できる。 (自身に降りかかる不幸・災厄を防げるようになったわけではない) ◆蛮勇:B+ 周囲が見えない。後先を省みない攻撃性。 同ランクの勇猛効果に加え格闘ダメージを向上させるが、視野が狭まり冷静さ・大局的な判断力がダウンする。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ . ___ >´ ./ '' ,, ,. . . ...、 / // '' ,, / .、 ` ..、_ , ' / / / '' ,, ,' _ _ _ _ _ _ V` V、 .、- ' / / / / .'' ,, // ` 、リ.ム、 V / / / / '' ,, _ =ニニ二三三三三三二 l l l ム ` - ム jツ v .V / / / '' ,, /三三三三三三三三三三 l l l V l.,>、 l -`v .l > / / / '' ,, /三三三三三三三三三三三ニ l v l ` l ,心 v l lリ / / / _-=ニ '' ,, ____./三三三三三三三三三三三三ニ l l l .V lムツ リ ;´,i / / / /三ニ '' ,, ニ三三三/三三三三三三三三三二二二ニニ . j j ./ V `、 , -=三ニ -=ニニ=-_ / _ -_-=-__/=, ´/ '' ,, ニ三三三/三三三ニニ- ̄ / / / / V ト ニ/ニ/l三三/三tニ/三ニ=-´ // / v'' ,, 三三三/三三ニニ- ̄ ̄ / / / / V l三/l三l|ニl三/三//三ニ/ / /l l l lゞ,, ,, ,, ,, ''V三三ニ/ニ////l / // / /l / V三vl|三/三l/三三./ / / l .V \ .__ノ l l三./ニ//////l _ _ // / / / / / V三l三l三ニl|三ニ/l l / ̄`V.v l \ //三ニ/ _-< ` y / l l / / / 三vニV三l三ニl l l V l v \_ >─</三/_- V ヽ / / V V ./ / / ./ .lニ -_ニVニl三ニl l l ∧ l ___ _/ ./ V l / / k V / / / // /lニlニニ-_Vニl三l.\ l /` ` -─- _/ ./ l l .ノ / l \ V / /` ── ´ / /lニlニニニ/`vl三l \l 、.` ` ./ _ _ l l _ -;_'/´ \二´  ̄ / vl lニVニニ/ ̄ Vニ\ `〈 ` \_ l . ` - _ _ l l ´ ´ / `─´ 〔// j -=-´ ニ 、_ v `  ̄  ̄  ̄, < \ V´ ̄ .V_./ l三ニ=-≠ゝ\` _ _ , <´三ノ く l三三ニ/ニV`=--=<三三三l V、 V三/三三三V///∧三三ニl l < V三三三/ニV_ /三三/≧_ / l `V /三三ニ/三三三三三三l/////`< / / V . /三三ニl三V三三三三三l/////////<-= _/ \ l三三三l三ニV三三三三ニl///////////V ´ ´ ´ _-────- _ l三三三l三三三\三三三ニV///////////>-=ニ三三三三三三三三ニ> V三三ニl三三三三\三三三三ニ=-=ニ三三三三三三三三三三三ニ/ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【宝具】 ◆『災禍の咆哮(バリン・ル・サヴァージュ)』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:30人 数多を呪いで蝕む徒手。悲嘆汚染。 掴んだ物質を規格外の呪い──“災厄”の属性で侵し、それを自らの宝具として昇華させる宝具。 ただし汚染は自壊を齎す。保って数分が限度であり、リミットを迎えると自動的に“壊れた幻想”が発生する。 現在のアーチャーはこの欠点を、伝承にある『嘆きの一撃』で見せた「呪いの放出」という形で解決した。 掴み続ければ再びの汚染が始まり、再度の“装填”が完了する。 ──「失われぬ壊れた幻想」の完成である。 呪いの指向性を操るだけでも、それは災厄を受け入れたことに他ならない。 霊基には罅が入り、思考には黒いノイズが走る。 ────“災厄と共に歩む”。それは、幸せな結末の放棄そのもの。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【Weapon】 ◆『いつか尊き罪禍の槍(ロンギヌス)』 ランク:A++ 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人 宝具『流転の覇槍(ロンギヌス)』による一度きりの対国砲撃。“嘆きの一撃”。 聖杯城を粉砕し、三つの国を滅ぼし、癒えぬ呪いで土地を殺すという災禍の再誕。 伝承では一度きりの使用であるため、一度使うと『流転の覇槍』は消失する。 なお魔属性としてのかの槍は彼の宝具との相性が良すぎるため、アーチャーが触れるだけで数秒後に “嘆きの一撃”が発生してしまう。ゆえに彼は『流転の覇槍』を槍として扱えない。 ◆『災厄の剣(ディザスター・コロード)』 アーチャーが所有する漆黒の魔剣。 「この世で最も優れた騎士にしか抜けない」という強者の証明であると同時、 「自分が最も愛する者を殺害する」という呪いを宿す災いの象徴。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ,イ ニ=-...,,_ ,イ `ヽ. ̄ ̄"''‐.。,,_ ,イ { {、Y'"ヽ ヽ ヘ、 "''‐.。,, / ィ ハ 从 /`ヾ ヽ ヘ `ヽ /,ィ ,、 ', ', く,,zzzzzミ 、寸 , 、 ヽ /' ,' i ヾト| ',ヾ〃) ハ 》ヾ ', ト }ハ Y > _ {'. { {‐''ヾ',、ヾ、 \ゞソ ハ}/ .ム > _.. ‐''" ', { ハ l〃てハヾ、 `ヾ-=ゝ、_ j、./ >、 _.. - ''" _... - ''" l {.', トヾ ゞソ 、 ヽ ` ム >''" _.. - " ', { ', ヘゝ、_ ‐ ,イ >''" _.. - ''" ', { ',{ヽ ヽ `''‐ ´ ___/_|__ >''". _.. - ≧s 。 ',! ', ゞ、 ヽ、 /Y⌒ヾ───‐V >''". _.. - ''"‐=≦ ≧s 。 ', ヽ ,,,>゙ヾ ≧,ァ'/ヽゞ='=====‐''" _.. - ''⌒''‐-= ヽ `< ≧s ,ィニニニニニニニ=、二`ヽ〈. -''" _.. - ''"‐=< `'< ヽ `< _ ,イニニニニニニニニニ.>''" _.. - ''" >=-寸zx `"ヽ ヽ ヘ、 `寸 / ヾニニニニニニニ>''". 。s≦ \ ,.-'゙´ ゚ `寸ハ. ', ヽ ヘ. 寸 __,,イ ハ ≠,ィニ>''ヘ ',. 。s≦ニニニニニ\`>、 ',ニ} ', ヽ ',. `寸 ,,,-=ニア´ 、 ≠,イ ', __,〉-=ニニニニニニニニニニア⌒ヾ、 ヽ 。 ヾ! ', ', ', `寸 ムニア ≠,, ィ ', }‐くニニニニニニニニニニニニニ.弋ゞ=',ノ. / _ \}≫.、 ', ', `寸 . ムニ,'‐く≠ヘ ', j、_,ノ ノニニニニニニニニニニニニニニニニ三ヤ / ̄ `マニ≫、 } } `ヾ . __.. -‐''" ヘ、 、_ イ`¨ニム,イニニニニニニニニニニニニニニニニニニイ / マニニム"''‐.zz} }‐=======x . ィ′ _.. -‐''"ニニ´ニニニニニア⌒''----´`---、ニニニニニニニニニア' イ 、 ,,ィ マニ.リ '} }ニニニニニニニム 乂_..-''" 寸ニニニニニニニニア´ 寸ニニニニニア゙ イ ≧=‐=≦ マノ──‐,'リニニニニニニニニ〈 `¨''-===-''´ 寸ニニニ/ / ', ノア゙`ヾ=ニニ《_ノツ 寸ニ{ { /\|> 、 ',`‐"ノ′ 寸{ {.、 \ >...、 i`¨ ヾ、{ ゝ; > 7 ./ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【解説】 アーサー王伝説の初期に登場し、アーサー(アルトリア)のブリテン統一に大きく貢献した騎士・ベイリン。 「野蛮なベイリン(ベイリン・ル・サヴァージュ)」「双剣の騎士」などの通称を持つ。 その場の勢いで行き当たりばったりに行動する性質と、策略も無しに大抵の物事を解決できる高い戦闘能力、 そしてそこに持ち前の不運が組み合わさる事で、何をやっても災いを成す。そんな「災厄の騎士」としても 有名だろう。 王に忠を尽くし、国の為に行動し、そうしてとんでもない不幸に見舞われる。 それでもめげず、王の為にひたすら敵を斬って回るという不屈の男でもある。 ……どこかでめげていた方が格段に被害が少なかったのは間違いないのだが。 担い手で無いのにも関わらずかの聖槍を扱ったという常軌を逸したエピソード有り。 当然それによる被害も凄まじいものだったが。聖杯城を破壊して三つの国を滅ぼしたとかなんとか。 そんな災厄の騎士の最期は「親愛なる弟との相討ち」。 本人の猪突猛進な性格の所為でもあったのだろうが、しかしそれを考慮したとしてもあまりに報われない。 この人もこの人で、案外シリアス不幸なのである。 細かい部分以外では特に捻った解釈はしていないので、より詳しくはwikipediaや下記のページをお読みください。 http //www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/3320/arther3.html http //blog.livedoor.jp/distpiaruin/?p=18 「やる夫は剣を抜いたようです」というスレもオススメです。 2スレ目辺りからベイリンについての解説コーナーもあるので参考にどうぞ。 47スレ目(最終スレ):http //jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/otaku/12973/1333797748/ 【詳しい解説】 ・登場前の段階で青王の親類を殺して牢屋にぶち込まれる。罪1。 ・例の剣を抜いたまでは良かったが、その素晴らしさに魅入られたのか返却しようとしなかった。罪2。 . そこに宿る呪いを聞いても「俺ならなんとかなるからヘーキヘーキ」と軽く流す始末。妖精は苦笑い。 ・直後現れた別の妖精に「例の剣を持ちだした妖精か抜いた者の首をよこせ」と青王が要求される。 . 妖精=恩人故に青王は突っぱねる事が出来ず、しかし飲むわけにもいかないので思案。 . そこへ踏み出るベイリン。その「要求した妖精」が母を殺した者だったとかで躊躇なく殺す。罪3。 . 恩人殺し+騎士道的に流石にアレという事もあり青王おこ。 . 極刑でもおかしくなかったが、「親の仇を討った」という美徳でもあった為、「追放」程度で済ましてもらえた。 ・追放され彷徨っていると、「王の恩人を殺すとは何事か」とばかりにランソールという騎士に追いかけられる。 . 返り討ちにするが、過剰防衛でかつては仲間だった騎士を殺してしまう。罪4。 ・何故かその場に居合わせたランソールの恋人がショックのあまり自殺。罪5。 ・追放されちゃったけど王に尽くす気持ちは変わらないぜ! と青王の敵を単身撃破しに動く。 . なんやかんやで合流したベイランと共に、60の精鋭を連れたリエンス王をぶっ飛ばして生け捕りに。 . 降伏したリエンス王を青王の元に向かわせ、その流れでベイリンの活躍を青王が知る。ここにきて許される。 ・許された事を知ったベイリン。意気揚々と王城に向かう。 . ベイランとはたぶんこの辺で別れた。はしゃぐ兄を見失ってはぐれただけかも。 ・道中、ガーロンという騎士が透明になって闇討ちばっかして騎士を殺して回ってると聞く。 . ド許せん。義憤に駆られたベイリン、ペラム王の聖杯城で開かれた宴の場で堂々とガーロンを殺す。 . 城内では帯刀禁止なのに短剣を隠し持ってたのでペラム王おこ。罪6。弟(ガーロン)を殺されたので更におこ。 . 短剣も折られて万事休す、ベイリンは城内を逃げ回る。その最中に武器(聖槍)発見。ついでに聖杯も見つける。 . 槍を手にとってペラム王に突き付ける。そうしたらなんか城は崩壊してその周りの人々も国も滅びた。 . これが世に言う「嘆きの一撃」である。罪7どこじゃ済まない。 . その後、瓦礫の下からマーリンによって救出される。 . ちなみにペラム王は運良く大怪我で済んだ模様。癒えない傷を抱えながら細々と暮らすようになったらしい。 . 彼の次の出番は聖杯探索編。 ・「嘆きの一撃」の件で流石に意気消沈。 . 「これ程に呪われていては王の迷惑にしかならない」とようやく悟り、青王の元へ向かう事を諦める。 ・それはそれとして遠くで尽くす。ネロ(赤王に非ず)を倒しロット王に致命傷を負わせる。 . 撤退中のロット王に、ペノリア王(青王軍)がトドメ。青王が統一王となった。 ・ベイリン、当ても無く旅をしている最中に「黒騎士」の呪いを知る。「せめて人の役に立って死のう」と決意。 . 「黒騎士」と相討つ事で、その負の連鎖を止めんと奮起する。 . 「嘆きの一撃」事件で双剣以外を失っていたベイリン、呪いについて教えてくれた貴婦人に鎧や盾を借りる。 . そして「黒騎士」と戦闘。見事に力やタイミングを調整し、相討ちとなる。 . 死の間際に折角だからと黒騎士の名を訊く。正体はまさかの弟ベイラン。罪8。 . 流石の災厄、そろそろ笑えない。そのまま共に最期を迎えた。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ∨ . / . . .;i, .. .. .. .. . . .i . ;ハ . . . . . . | ... ... ... ∨ /....i. . . .| . . / i, .. .. .. .. . . .l/ ` 、 .. .. .| .. .. .. .. . l | . . i. . . . |. ./ i, . . . . . .| ` 、 . . | .. .. . . . l |i . l|. . . |/ i, ... . . . . l ` 、 | .. .. . .l |i . l|. . . / i, . . . . . . l `i| . . . . . l . |i . l| . . l 、__ノ i, . . . . . l ヽ、_____i| . . .l . |i ./| . .l 'i, . . . .l i| . . . l ハjV| . l x,,____ 'i、 . .l 、____,x i| . . ... l イ. | .li, ´¨¨¨^ \j ´¨¨¨^ i|l . . . .. .. ;l 」i | l|ハ j i|l . . . .. .i{. i| l|iハ, ,i|l . . . .. . i「` 、 i| l|i 込、 r-─ヘ .. イi|l . . . .. . i| } i| l|i }j」会x ,..'´ |i| . . i|l . i| j| l|i {\__}>-‐ ´ {i i「l;.i|、 j| l|i i}  ̄~~¨¨^^''''「 j|i i|_|i | \ 八Lノ{ー-=ニ二L.._ _」〈(|i i|_」i | \_ 厶≠八 _ ー┤}i|i i| |ノー-=ミ} ̄\ . ≠ニ=‐'´ `'ー-=ニL.._ __」〈(|i .i|_人 `'ー-==ニ二\ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【来歴】 王の為に生き、王の為に尽くし、王の為に諦めた。 かの王の凛々しい横顔に目を奪われ。その“理想的な”生き様に惹かれ。 ただのそれだけで、全てを捧げ従った男こそがこの“災厄”。 ただのそれだけで、人間としての愛情と、騎士としての敬愛を抱くようになった忠義の騎士。 それが、ベイリン・ル・サヴァージュ。最強を冠する双剣使いである。 あらゆる意味で好いていたからこそ、彼は王の為に働いた。 王を惑わす邪悪な妖精は、即座に斬って捨てた。 追放を言い渡されれば、何も言わずに受け入れた。 その「追放」の邪魔をした騎士は、問答無用で殺した。王の決定を覆そうとする方が、余程の悪だと断じて。 追放されようと、王に尽くす事に変わりない。王の敵を、殺して、殺して、殺して、殺した。 王が嫌う邪悪な騎士も、暗殺を以て死を与えた。「王の敵」に与える慈悲などは欠片も存在しない。 その「正しき行動」に反抗したペラム王も倒した。殺すまでは至らなかったが、充分な罰を与えてやった。 ついでに周囲も滅びたが、それは必要な犠牲だ。故にこれは、仕方のない事だったのだ。 ──そうして狂気は加速する。 そのまま狂喜は白熱する。 握る凶器を、災厄として。 「逢えぬ日々が想いを募らす」。そんな微笑ましい理由で、彼の心はより歪んでいった──。 ……しかし。 “嘆きの一撃”。かの大虐殺の一件を経て、その迷い無き意志に初めて揺らぎが生まれた。 「敵相手なら良い」 「けれど、王の近くでこのような被害を齎しては、それこそ王にとっての害にしかならないのではないだろうか」 「王の近くに居るだけで。王の傍で剣を振るうだけで。あのような“事故”を起こしてしまっては」 「それこそ、王にとっての“敵”に、他ならないのではないだろうか──」 単純な話。分かりやすい結論。 いつも通りの自己完結を終えて、彼は王の元へ戻る事を諦めた。 それでもなお、忠義心は失われず。 王の為にと。王に相応しい騎士であろうと。盲目的に、信じ続けて。 その後もひたすら、自分を貫き通して行った。 そうして、ある時。 王に仕える騎士を縛る“黒い鎧”の話を聞いて。自分なら解決できると確信して。 その鎧に捕らえられた哀れな者を解放すべく。王の駒を在るべきところに戻す為に。 鎧へと、挑みかかった。 ……結果は、辛勝。 解放どころか殺してしまい、自身も深手を負う有り様。 その上。手に掛けた騎士は、王の近くで仕えるべき強さをもつ弟・ベイランだった。 無様、どころの話ではない。 自分の弱さに嘆きを覚え。優れた弟を手に掛けた事に後悔し そして何より────遠く離れようとも王の害になってしまった事に、絶望した。 「──……ああ、これが災厄か」 「俺が剣を持てば、廻り廻っていつかは王に仇成す。そういう、呪い」 「そうして、いつかは“最も愛する者”を」 「──王を、殺す。のか」 ……結論に、至って。 全身を侵しつつある“鎧”の戒めを意にも介さず。 彼は、一切の躊躇いも無しに。 自らの首を────、断ち切った。 「全ての呪いを受け入れよう。数多の災厄を“俺”としよう」 「だから、“呪い”よ」 「ここで共に、朽ち果てよう──」 【能力】 宝具ブッパマシーン。雑に強い。 宝具化した宝具によって出来た傷は、「呪い」によって延々と強固に浸食され続けるため回復不可能。 A++ランク以上の浄化手段を用いるならば除去する事が出来る。 宝具化宝具の効果を受けた物質の神秘は、宝具にしてCランクに相当。それ以上なら据え置き。 ランスロットよりも高いのは聖槍という分かりやすくとんでもない武器を担い手でもないのに扱ったから。 武器としての『災厄の剣』は、そもそもこれ自体が呪いの元凶のようなものなので幾ら長く触れていようと 『災禍の咆哮』によるデメリットは発生しない。 宝具を作用させたら小ビーム出せるかも。さながら月牙天衝の如く。 例の「黒い鎧」の戒めもベイリン自身の“呪い”に混ざったので、その分更に呪いが強化されている。 その戒めの性質自体は元在る“呪い”によって分解・吸収されたので、戒めとしての効果は消失している。 現在、新たに受ける呪詛の類も同用に吸収される為、結果的に呪いに対する大幅な耐性を所有しているように なっている。……それをものともしない程に不幸、という意味でもあるが。 戦闘続行は「巨人を一撃で絶命させる程の傷を七ヶ所に受けてなお倒れず戦っている」というベイラン戦での 記述より。なおベイリンもベイリンで同じだけの傷をベイランに与えてたりする。 蛮勇:B+の「+」は精神汚染的なもの。青王を見つけたらちょっとオカシクなる。 精神干渉抵抗力も上がる。精神汚染だこれ。 隠しスキルに無窮の武練を所持。元祖「最も優れた騎士」は伊達じゃない。 ちなみにこの剣を“抜く”事が出来たのはベイリンとギャラハッドのみらしい。 なお天敵はそのギャラハッド。呪いの類を全部浄化される。嘆きの一撃なら或いは……? 【性格】 青王大好き。王の為に尽くし過ぎる系騎士。 追放後結局一度たりとも再開する事が出来ず、その結果敬愛を拗らせた。 要するにヤンデレ。或いは牛若の同類。 前述の通り、基本的な行動方針は「秩序・中庸」。しかしその平和や勝利を求める理由は全て「我が王の為」。 と言っても「王絶対主義」というわけでもない。 自分なりに「こっちの方が王の為になるだろう」と思ったら、王の反感を買おうとそっちを取るのである。 会話できる状況ならある程度は相談するかもしれない。 表面上は剣ベイリンさんと似たような蛮勇騎士なので、この本性を見抜くのは難しいと思われる。 なお、このベイリンは王が女性だとは気付いていない。 その上で、少年王に惹かれ憧れ焦がれ、想いを募らせ愛に昇華してしまった。 ので、「男だったら当然女性を好むだろう→女性的な姿になれば好かれて貰える可能性が上がるのでは……?」 と、そんな流れから女性的な格好をするようになったのである。 王の性別を知って可愛い姿を見てもそれはそれで受け入れる。凛々しくなくとも新たな一面として受け入れる。 凛々しい王が好きで惚れたけど可愛くて美少女してる王もそれはそれで! とはいえ王に対する愛情はあくまでプラトニックなもの。R-18な願望は皆無であろう。 剣を持つとロクな事にならないのは生前の最期にちゃんと理解する事が出来たので、 戦いと関係ない時は極力帯刀しないように心がけるようになっている。 剣を持たないだけで不幸を回避できるようになるわけではないが。 一人称は「オレ」。口調は剣ベイリンに準拠。ちょっとダウナー混じってる。 我が心と行動に一点の曇りなしなので自嘲はあまりしない。 【聖杯への願い】 形ある願いは持たないが、王への未練がきっかけとなり召喚に応じてしまう。 その後現代に召喚されるに当たって円卓崩壊について知った為、その過去を捻じ曲げたいという願いを抱く。 しかしそれでは根本的な解決にはならない。そもそも王が王じゃなくなるなんて考えられない。 だったら現代で王を幸せにすれば良いのではないか?(飛躍) と考えた結果、王と共に受肉し、自身の手によって幸せを与えたいという願いを抱くようになった。 その延長で、自身の王に対する愛情も満たされる事に気付いたのでモチベーションが更に上がっている。 【備考】 GGOキリトのAAを活かす為に自分なりの解釈でベイリンを作ろう!→この始末。 願いを簡単に言うと「現代で王の嫁になる」。倒錯オブ倒錯。 原作のどのルートの後だろうと迷惑だし原作以前の世界線だろうと迷惑極まる。 流石の災厄、どう転んでも不幸しかない。 『いつか尊き罪禍の槍』は少しだけアヴァロンを意識。理想郷ならぬ最下層。 セイバー、バーサーカーのクラス適性持ち。 『「槍」として扱う事が出来ない』という設定上、ランサーとしての現界は不可能。幸運:Eのクセに。 剣ベイリンさんとは世界線が違いますと一応。 あっちもあっちで傍迷惑だけどそれはそれとして真っ直ぐなので混同したら失礼かなって。 GOでランスロットのオーナーがAランクになってたのでこっちもA+くらいにしていいかもしれない。 嘆きの一撃は据え置き。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 関連項目 ベイリン同一人物 ベイリン(槍)同一人物 ベイラン弟 登場歴 【R-18】SS速報・鯖鱒wikiを使って、聖杯を廻る冒険へ【あんこ・安価】 第二回( 4889~8771) 【安価・あんこ】SS初心者の聖杯戦争【Fate・鱒鯖wiki】 http //yaruoshelter.com/test/read.cgi/yaruo001/1506594044/
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前ページ次ページ虚無の王 火の塔を過ぎた。 空を置き去りにして来た広場は、冷たい闇に沈んでいた。 僅かな物音、背筋を撫でる冷感、些細な切っ掛けが度々ギーシュを捕まえ、ヴェストリの広場へと振り返らせた。 神を信じて生きる少年は、その度に始祖を呪う言葉を吐き捨て、同じ数だけ、自身を悪罵した。 互いの名誉と生命とを賭けて戦うべき決闘の相手を、一人死地に残して来た。 貴族として、これ程恥ずべき事は無い。 だが、今、ギーシュを呵責するのは、もっと少年らしい、純粋な感情だ。 学生の姿は殆ど見られなかった。 幸福な恋人達が二人で迎える朝に備え、独り者が夜を諦めるには十分過ぎる時間だった。 「どう言う事なの!ねえ!」 気付くとアウストリの広場だった。 女神の様に美しい少女達は、揃って一人だった。 ルイズの声は、いつもより甲高かった。 その鋭さで、モンモランシーから彼女が知りもしない事実を抉り出そうとしていた。 ギーシュは空気を啜り込むと、拳を固く握った。 恋人を庇わなければならないし、不幸な仲間が、残酷な現場をその目にしないで済む様、取り計らってやらねばならなかった。 四つの目線が一度に振り向いた。 使い魔と、片思いの相手と、恩人と、恋人の悪友と。 それぞれの立場に従って異なる光を放つ目が、一つの事を聞いていた。 「ギーシュ!空はどうしたの!?」 「――――ルイズ。そして他の皆も。どうか、落ち着いて聞いて欲しい」 一番、落ち着かなければならないのは、他ならぬ当人だった。 心臓が胃を乱雑に蹴り飛ばして、ひっくり返した。 適切な説明の言葉は、どこにも見つからず、舌は空転するばかりだった。 「ギーシュ!ねえ!ギーシュ!」 再三再四の強硬な催促が、頭の中に積み上げられた積み木を滅茶苦茶にした。 「落ち着いて!落ち着いてくれ給え!大変な事が起きている!オールド・オスマンが彼を亡き者にしようとしているんだ!」 単純な少年の思考回路は、意図せずして正解を選び取った。 核心に飛び込めば、細部は自ずと着いて来る物だ。 ルイズの表情が、冷めた脂の様に固まった。 「……それ、どういう事?」 「王国のあちこちで暴動が起きているだろう。オールド・オスマンは彼が原因だと考えている」 「そんな筈無いじゃない!」 「300歳の爺さんが考える事なんて、僕に判るもんか!とにかく、学院長は本気だ。手勢を集めて、たった一人の平民を囲んでいるんだ!」 一つの魔法燈が、溜息と共に目を閉じた。 広場からは人影が消えていた。 役割を終えた灯が、一つ一つと消えて行く。 残るのは、五人を照らす二つだけとなった。 時が凍り付いた。 ギーシュは警戒した。 それは、項垂れた、敗者の沈黙とは違った。 放たれる寸前の魔法が、杖先で保つ静止の時間に過ぎなかった。 「何人?」 「50人以上だ。殆どは学生だが、教師も居る」 「場所は?ヴェストリの広場の、どこ?」 「……聞いてどうするんだ?」 ルイズはもう、ギーシュを見ていなかった。 夜空の色に染まった芝生の上を、魔法灯の光が嘗める様に移動した。 義理固い少年は、空との約束を思い出さなければならなかった。 「待つんだ!一体、どうする気だ!」 「決まっているでしょうっ。空は私の使い魔よ。使い魔を見殺しにするメイジは居ないわっ」 声だけが返って来た。 ルイズが一体自分の話をどこまで聞いていて、どこから聞いていないのか、ギーシュには判らなくなった。 出来もしない練金の魔法に指名された時だって、もう少しは動揺を見せた筈だった。 「言っただろう。オールド・オスマンは彼を亡き者にしようとしている!その為、50人以上もの手勢を集めている!そんな所に行ったらどうなるかくらい、判るだろう!」 空の言葉は、敢えて口にしなかった。 きっと、逆効果になる。 「勿論、判っているわっ。生命が惜しいなんて、貴族じゃないっ」 胸に刺さる一言だった。 勿論、ギーシュとて我が身可愛さに一人立ち去った訳では無かった。 絶えず、如何に生きるべきかを教えられて来た。それは、如何に死ぬべきかにも通じる。 だが、あの時、あの広場には、どんな生き方も死に方も埋まってはいなかった。 「彼は王権に唾する賊徒として裁かれるんだ!生命だけならいい!名誉だって失うかも知れない!」 「物事の価値は私が決めるわっ。貴族の誇りに、名誉や、まして生命より安い値を付ける気なんてないっ」 「貴女、こんな時まで素直じゃないわねえっ」 不意だった。 ルイズの隣に、キュルケの微笑が現れた。 「なによ、それっ!」 「別に。じゃ、行きましょうかっ」 「付き合う」 二つの真っ白な背中と、褐色の背中が遠離って行った。 ギーシュは一人立ち尽くしたが、それも一時だった。 彼には三人の乙女よりもずっと悩む時間が有って、なにより男だった。 「待ちなさいよ!どこ行く気!」 攻守が変わった。 最後まで残った魔法燈の中に、モンランシーが立っていた。 水精霊の様なドレスの中に、痩せぎすの影が浮かんでいた。 「決まっている。彼の所だ」 「何、言っているのよ!そんな所に行って、どうなるかくらい判らないの!あなたが言った事じゃない!」 「こんな事を言うと笑われるかも知れないがね。彼と居る時、僕は貴賤の別を忘れた。友情の様な物を感じていたんだ。主人であるルイズが行った。無関係な筈の二人だって行った。皆、女の子だ。ここで行かなければ、僕は一生、貴族を名乗れなくなる」 「何、気取っているのよ!似合わない!」 「そうだ。僕は気取っているんだ。そして、多分、それが貴族の務めなのだ」 「馬鹿じゃないのっ!」 モンモランシーは叫んだ。ヒステリックな声だった。 そして、女は一切の刺も含まぬヒステリーを起こせるものだ。 「私は行かないわよ……」 「勿論だ。是非、そうして欲しい」 「嫌だわ、男、て。残された者の事なんて、一つも考えないのね……」 「それは誤解だ」 昔から考えていた事が有る。 女は子を残す。教育を与え、一門に人士を残す。 では、男は? 「昔、金持ちの貴族に馬鹿にされてねえ。祖父や先祖を恨んだものさ。でも、今なら判る。男が子孫の為に残せる物は、誇り高き、勇敢な生涯だけなんだ」 行って来る――――そう言い置いて、ギーシュは三人を追った。 背後で最後の魔法燈が消えた。 モンモランシーはもう、何も言わなかった。 彼女は泣いているだろうか。仕方が無い。泣くのは女の仕事なのだから。 ギーシュは振り向かずに駆ける。杖を握る手に力が籠もった。守る杖後に憂い無し。騎士道精神揺るぎ無き。 戻って、自分に何が出来るだろう。ふと考えて、止めた。 想像を超えた事態に、想像を働かせる事は無駄だった。 名誉や尊厳を守る事ばかり考えて、逆にそれを失うのだとしたら、馬鹿馬鹿しい話だ。 どんな状況であれ、男は一人敢然と立てば良い。 二人の背中が見えた。ルイズとキュルケだ。 パーティドレスの背は、大胆に開かれていた。 或いは見納めかも知れない。せめて視線でくらいは、舐めても罰は当たらないだろう。 本塔を迂回した二人は、ヴェストリの広場への最短距離を選ばず、女子寮塔に向かっていた。 舞踏会に杖を持ち込む不作法者は、恐らくタバサ一人だった。 杖を携え、“牙”を華奢な脚に備えた少女の姿だけが無かった。 プライドが高ければ、我も強い二人が、タバサに抜け駆けを許すとも思えない。 その俊敏を活かして、状況を探りに行ったのなら、有りそうな話だ。 恐るべき破壊魔法を操る二人だが、脚力では流石にギーシュが上だった。 白と黒のコントラストも鮮やかな剥き出しの背中に、指を這わせて見ようとも思ったが、自分の年齢が、それを冗談で許してくれそうも無い事を思い出した。 その滑らかな肩を男らしく叩く事も諦めて、背後から声をかけた。 その声は、二人の耳に届かなかった。 当人の耳にさえ届かなかった。 もう一度、声をかけ直す事は勿論、今、自分がどこに居て、何をしようとしたのかさえ、綺麗に頭から消えた。 爆音が耳を劈いた。 本塔と火の塔の間に、もう一つの塔が聳えていた。 “塔”は三人に向けて倒れて来た。 誰も、動く事が出来なかった。 視野に墨がぶち撒けられ、硬い感触が頭を叩き、舌の上に砂が貼り付いた時にも、その正体が吹き上がる土砂である事に気づけなかった。 三人は激しく咳き込んだ。 粉塵が眼に食い込み、唾液をたっぷりと吸った砂が、どこまでも執拗に口腔を舐っていた。 目が開く様になったのが先か、砂煙が収まったのが先かは、誰にも判らなかった。 視野を取り戻した時、三つに増えていた塔は、一つに減っていた。 夜空に二つの月が並んでいた。 月の滴から生まれた巨大な龍は、その強暴な食欲を以て地上を食い荒らし、本塔も、火の塔も、広場の緑も、その一切を天に持ち去ろうとしていた。 「圓月杯!」 その光景は、フーケのゴーレムを丸飲みにした竜巻を、否応無しに連想させた。 学院長秘蔵の恐るべきマジックアイテム。 まさか、たった一人の平民相手にこんな物まで持ち出すとは、夢にも思わなかった。 烈風と土砂の城壁に、一つの影が浮かんだ。 黒いドレスから覗く白い背中が、妙に艶めかしく、鮮やかに見えた。 タバサだ。圓月杯の余波に巻き込まれたらしい。ギーシュは救出を謀る。 少年の勇気と献身は然したる意味を持たなかったが、正しく報われた。 彼女の使い魔シルフィードは彼よりも遙かに忠実に、機敏に、転落する主人のスカートを銜え上げた。 惜しむらくは、決定的な瞬間を記憶に刻むだけの余裕を、ギーシュが欠いていた事だろうか。 ヴェストリの広場から、砂が絶え間なく飛んで来た。 その多くは空気とぶつかり、砂埃となって舞い上がった。 大振りの粒だけが礫となって体を叩いた。 明日には青痣を覚悟しなければならないだろう。後、10メイルも前に居たら、皮膚に突き刺さっていたかも知れない。 ルイズの顔に、絶望感が滲み出した。 圓月杯の力が、貴族の矜持と、持ち前の強情を吹き飛ばした時、そこには17歳の少女しか残っていなかった。 ギーシュは反射的に飛び出した。鈍い頭に、珍しく虫の知らせが下りた。 御陰で、ルイズに一歩先んじる事が出来た。 「待つんだ!」 ギーシュはルイズを抱き留めた。 返って来たのは、無言の抵抗だ。それだけに直接的だったが、同じく興奮状態に有る少年は、ミミズ腫れ程度で怯みはしない。 「放してっ!」 「待てっ!落ち着くんだっ!あんな所に飛び込んだらっ……!」 「あそこに、空が居るのっ!」 つい、とキュルケが歩み出た。 燃え上がる情熱を身上とする女の眼は冷めていた。 平手が一閃。ルイズの恐慌と興奮とを断ち切った。 「キュルケ……?」 ルイズが声を落とした所に、もう一発。 「!……何するのよ!」 「少しは、落ち着きなさい。杖を持たずに、何が出来るつもり?」 「彼は大丈夫」 状況を確認して来たタバサの言葉に、ルイズから憑き物が落ちた。 仮にもヴァリエール公爵家の三女だ。 知性も教養もあれば、常人では正視も叶わない打撃とて、正面から受け止め、耐えるだけの精神は備わっている。 「……杖を取りに行きましょう」 もう、拘束は必要無かった。 取り敢えず、圓月杯の効力が収まるまで、出来る事は何も無い。 杖を手にする二人だけが残された。 タバサの無表情は、いつもながらに、その内心を窺う事を許さなかった。 眼鏡を外すと、こびり付いた砂を丁寧に落とす。 ギーシュは滅多に見る事が出来ない、その素顔に見入った。 彼女が言った事よりも、言わなかった事が気にかかった。 * * * 一つの広場と、二つの塔を食い散らかした巨龍が、不貞不貞しく蜷局を巻いていた。 “空”は土砂で濁り、手が届く先さえ見えそうも無かった。 満腹の竜巻がその目を閉じるまで、一同は巨大な石像の陰に身を潜めた。 変わり者の貴族が寄贈したと言うイーヴァルティの像だ。 左手を失い、凡人と堕した勇者は、メイジの弾除けが精々だった。 四人の心臓が刻む時間は、その長さと言い、形質と言い、まるで異なる物だった。 ギーシュは武者震いを起こして、突撃の時を待っていた。 方策は何一つとして思いつかなかったが、我が身に不幸が訪れた時に叫ぶ言葉だけは決まっていた。 女王陛下万歳!女王陛下万歳!女王陛下万歳!―――― キュルケは固く唇を結んでいる。杖先で発射の瞬間を待つ炎の様相だ。 ルイズは瞬きも忘れて、風の向こうを睨んでいる。そうする事で、中が覗けると信じているのかも知れない。 脱げ落ちた貴族の仮面を拾う事も忘れ、言い知れぬ不安と恐怖に小さな胸を痛める女の子の素顔を晒している。 純白のドレスは所々が破れていた。 白い肩には血がうっすらと滲んでいた。 風が若干衰えるのを目にして、飛び込もうとした代償だった。 眼前で最早何者とも知れぬ石像が真っ二つにへし折れるのを目にしては、退くしか無かった。 「ねえ。タバサ。空は無事なのよね?」 タバサは振り向いた。 ルイズの表情には覚えが有った。 物心付いて間もない頃だ。母が病気で伏せったと聞いた時、鏡の向こうに見えた顔だった。 「――――多分」 「多分、て!」 タバサは竜巻に向き直った。 シュヴァリエの少女は、危機を前にして、珍しく考え込んでいた。 脳裏で構築される複雑な思考は、実の所、単純極まりない事実を忌避しての物だった。 ルイズが先頭を切って飛び出した。 ギーシュは敢えて風上に立った。 砂が礫と化して頬に弾けた。 蹌踉け、蹌踉けて危うく庇う筈の乙女を押し倒しかけたが、それでも体ごと吹き飛ばされる程では無かった。 後からは二人が悠々着いて来た。 タバサが杖を振るった。 スカートを抑えたり、造花の薔薇を心配する必要は、もう無さそうだった。 グズグズの地面が、靴の中にこっそりと土を放り込んだ。四人は構わず進んだ。 レビテーションに無駄な精神力を費やしたくは無かった。 半ばを残した本塔を抜けた。 最初に息を飲んだのは、ルイズだった。 陰気な広場は、地獄絵図の様相を呈していた。 崩れた塔から、砕けた石像から、紫と黒のマントが垂れ下がっていた。 その上は見ない方が良さそうだったが、目を背けた時には、既に胃が横転していた。 ルイズは口元を抑えた。 俯いた時、誰かと目が合った。 錯覚だった。 どこの誰とも判らず、貴族かどうかも判別出来ないその男は、どんな物も見ていなかった。 「空ぁっ!」 声に涙が混じった。 足下には砂塵が立ち込めていた。 何も見えなかったが、恐らく、何も有りはしなかった。 狂風神の雫が、何もかもを風に溶かして、持ち去っていた。 粉塵の向こうに、影が浮いた。 堆く積もった瓦礫の上。見間違え様が無い。毎日、目にして来た姿だ。 「空っ!」 迷子の子犬が飼い主を見付けた時、ギーシュは思わず、その手を掴んでいた。 何かがおかしい。 あの影は、確かに空だ。その筈だ。 何故、頭があの高さにある? 「……なんや、ボーズ。ルイズ、来させるな言うたやんか。ホンマ、使えんやっちゃなあ」 ルイズは影とギーシュの間で目線を巡らした。 掴まれた手を、振り解く事はしなかった。 「空……?」 ルイズは影に向き直った。夢遊病者にも似た足取りだった。 その後に続いたギーシュに、その足取りを真似たつもりは無かった。 キュルケも同様だ。 タバサだけが、足にした“玉璽〈レガリア〉”に相応しい、鋭い眼を見せていた。 革ベルトを備えた、長大な杖が振るわれる。 砂塵が渦となって弾け飛んだ時、三人は声を失った。 瓦礫の山は、どこにも無かった。 そこには、精神力を最後の一片まで削り、遂には力尽きたメイジ。勇敢なる貴族達の体が、無造作に折り重なっていた。 「オールド・オスマン!」 ギーシュは叫んだ。 サハラのエルフでもここまではしないだろう、残忍と野蛮と侮辱の山。 その頂点に倒れるのは、齡300とも噂される学院長だ。 それだけなら、ルイズも、キュルケも、ギーシュも顔色を失い、為す所を忘れる事は無かっただろう。 義憤に燃え、その名誉を踏みにじられた貴族を悼み、救出を急ぐと共に、報復を誓った筈だ。 三人は恐る恐る目線を上げる。 そこには、今決して、目にしたくない人物が居た。 その安否に胸を痛め、探し求めた筈の人物が居た。 空は傲然、堆く積まれた貴族の上に座していた。 スニーカーは失われ、ジーンズはズタズタに裂けていた。 その下に、金属の脚が覗いた。 曲板が肋骨の様に機械部品を庇い、踵と爪先には大小の車輪が備えられていた。 「圓月杯」 タバサの声は、誰の耳にも届かなかった。 いや、誰の意識にも届かなかった。 空だけが表情を見せた。 義足の後輪には、確かに例のルーンが記されていた。 「さて――――」 空は目線を泳がせた。 誤魔化す素振りとは違った。 獲物を射落とした猟師が、ふと“空”に投げかける視線だった。 三人は空の声を待った。 その顔には、どんな表情も浮かんでいなかった。 羽ばたきが耳朶を打った。 反射的に伸ばした手を、ずしりと重たい感触が叩く。 ルイズの手に収まったのは、一冊の本だ。 装飾画家、細密画家、飾り文字画家、製本師。幾多の職人達の労苦が重なった古書は、見るからに豪奢な物だった。 「これ……?」 「始祖の祈祷書。四の秘宝の一つや」 「秘宝?」 「せや。四の担い手、四の使い魔、四のルビー、四の秘宝」 それは、誰も知らない筈の予言だった。 「担い手は、始祖の秘宝と始祖のルビーとを手にする事で、虚無の力に覚醒する。ま、そいつは学院の宝物庫に在った奴さかい。偽書の可能性も高いけどな」 何を言っている? 空の長広舌を、三人は呆然聞き流した。 鼻に圧迫感を伴う刺激が走った。急激に流れ込んだ血で頭がパンパンに膨れ、正常な思考を押し潰した。 空は続ける。 秘宝は単体ではその意味を為さない。必ず始祖のルビーと相伴わなければならない。 そして、ルビーはトリステイン、アルビオン、ガリアの三王家並びに、ロマリア教皇が所持している。 トリスタニアなら、目と鼻の先だ。 「奪って来るか?」 空は平然と言った。恐ろしい提案だった。 ルイズは足下が小舟の頼りなさで揺れるのを感じた。 何を言っている? 空は何を言っている? 「……どう言う事?」 肺からありったけの空気を集めて、漸く、それだけの声を絞り出した。 「思うとったより、鈍い奴っちゃなあ、ルイズ。見てみ」 空は左手を差し出した。 手背で、ルーンが不気味な光を放っていた。 「こいつはな、四の使い魔の一つ。ガンダールヴのルーンや。『始祖ブリミルの使い魔たち』にも載っとる」 「……それ、て……」 「決まっとるやろ。お前の系統は“虚無”や」 ルイズは固唾を飲んだ。 鉛の感触が、喉を押し広げて、胃に落ちた。 虚無? なんだ? 何の事だ? 空は何を言っている? 「な、何よ。何言ってるのよ……私の“道”は“爆風の道〈ブラスト・ロード〉”よ。あんたがそう言ったんじゃない……あんたが、そう言ってくれたんじゃない……!」 「何も知らへんかったからなあ。御陰で、ちょいと脇道に逸れとったわ。お前の力の正体判った以上や。もう、見当違いの手探り続ける意味もあらへんやろ」 「いやよ……」 声が震えた。 虚無は始祖ブリミルが操った伝説の系統だ。 十数年間の苦しみを贖うにも、ずっと自分を心配してくれていた家族を安堵させ、喜ばせるにも、自分を“ゼロ”と蔑んで来た連中を見返すにも、これ以上の物は無い。 だが、望外の幸運を、ルイズは喜んで受け止める気になれなかった。 半年間、二人で歩んで来た“道”を平然、脇道と言い捨てる空を受け容れたくなかった。 「私の“道”は“爆風”よ。私は“破烈の王”だわ。虚無なんて知らない」 「あんなあ、ルイズ。よう考えてみい。なして、6000年も経った今、ずーっと消えとった“虚無”が復活しようとしとると思う?」 ハルケギニアは、6000年もの間、他の文明圏との接触も殆ど無く、狭い半島に閉じこもって来た。 その文明は自重で歪みに歪んでいる。いずれ自壊自滅は免れないだろう。レコンキスタはその先兵だ。 「今、お前みたいな“虚無”の担い手が生まれとんのはや。もっぺん始祖の奇跡を再現しろ。もっぺん世界を作り直せ。そう言うこっちゃないんか?それがお前の運命やったら、貴族として逃げたらアカンやろ?」 後退ると言うよりも、倒れまいとする足取りだった。 ルイズは首を揺らした。 世界を作り直せ? その前は? 堆く折り重なった貴族達の上から、異邦人の冷たい瞳が降りて来た。 「いやよ……私は虚無なんて知らない……世界なんて知らない……」 「担い手はお前だけやあらへんで。ワイの知っとる限りでもう一人居る。ガリアの王様や」 ルイズよりも、タバサが反応を見せた。柳眉が僅かに跳ねる。 「やばいおっさんやで。レコンキスタも、あいつが糸引いとる。いつか、この国にかて手伸ばすやろ。あないなんに、この世界委ねてええんか?放っといてええんか?」 ルイズは力無く首を揺らした。その仕草には、どんな意味も含まれていなかった。 ただ、眼にした事、耳にした事、全てを受け容れたくなかった。 「ワイはどうなる?虚無の使い魔として、こっち喚ばれたんやで?その為に喚ばれたんやで?」 「違うっ!」 ルイズは体の中に残っていた、ありったけの声を吐き出した。 「違うっ。あんたは、虚無の使い魔なんかじゃないっ。あんたは……あんたは私の……」 滲んだ声が、目尻の涙に溶け落ちた。 空は頭を垂れた。重い溜息が、その広い肩を押し潰していた。 オスマンの剛腕によって狂った歯車を組み直す方法は、足下のどこにも転がってはいなかった。 とにかく、この時、この場にルイズが来てしまったのが致命的だ。 こうなると、選べる方法は限られて来る。 「――――どうしても、その気になれへんか?」 「だって!……私の“道”は虚無なんかじゃないもの!あんたは虚無の使い魔なんかじゃないもの!」 「そか」 空はそのままの姿勢で言った。 最後の風が、広場に舞い降りた。 土煙った“空”には、星が戻っていた。 二つの月が、消え去った本塔越しに光りを投げかけていた。 ルイズは肩の震えを大きな息で吐き出した。 頬に熱が溜まり、体の芯は凍て付きそうだった。 沈黙が重かった。 誰もが事態を飲み込めずにいた。 ルイズはもう一度、空に呼びかけた。呼びかけようとした。 「ルイズ。お前にはホンマ、感謝しとる。色々世話んなったし、ワイ学校通った事無かったさかい。ここは居心地ええ所やった」 ルイズは身を強ばらせた。 主人の心理が乗り移ったかの様に、心臓が身を縮こまらせた。 いつもの様に聞いていた礼の言葉。 今は絶対に聞きたくない言葉だった。 「空……」 無意識の一歩、縋る様な手振りを、空の目線が止めた。 力の無い、涙に滲んだ微笑が、足取りと共に凍り付いた。 「せやけどな――――」 立ち尽くすルイズに、空は言った。 「お前、もういらへんから」 足下が、パクリと開いた。 滑り落ちる視界に残る目には、どこかで見覚えがあった。 昔、家族と街に出かけた時の事だ。 しつこく付きまとう旅芸人を、従者が小銭を投げ付け、追い払った。 這い蹲って金を拾い集める無頼者に、姉エレオノールが見せた目――――。 学院の厨房からは、定期的に誰かが辞めて行く。 規則でも引退でも無い。 料理長のマルトーは、誰か一人に“使えない奴”と言う役割を回す。 ガス抜きの道具となった使用人は、やがて全ての自信を失い、本当に失態を繰り返し、逃げ出す様に辞めて行く。 一度だけ、目にした。立ち去り際の丸い背中に、厨房の一同が向けていた目――――。 耳の中で、何かが切れた。 ルイズは自分が泣いている事に気付かなかった。 自分が両膝を付いている事に気付かなかった。 どんな物も目に入らず、どんな音も聞こえなかった。 空は自身を、虚無の使い魔と称した。 真っ向否定したルイズは、一方で、彼が自分にとって何者であるのかを、断じる事が出来なかった。 心の中で、ヴァリエール家の三女と、一人の少女が葛藤を繰り広げていた。 「ワイが“空”の飛び方、教えたるっ」 「それはお前にしか出来へん、お前だけの魔法やろ。お前だけの“道”やろ」 「ルイズ~。急げ。特訓やで。特訓、特訓やっ」 「なんちゅーの?御主人様守るんが使い魔の仕事やろ」 「ルイズかて出来る事が有る。それで十分やろ」 「そんでも一切合切認めへん、言う親やったらな、そん時はワイが連れて逃げたるさかい。安心しとき」 「せやなあ……毎朝起きたら、おはよう、言うてくれる奴居るんは、悪くない気分やな」 脳裏に空との半年間が浮かんだ。 今なら判る。自分は、この異世界から来た奇妙な男を、本当の兄の様に感じ始めていたのだ。 なのに、たった一言が、この人生最良と思えた半年間も、共に歩んで来た道も、二人で交わした誓いも、自身の気持ちも、その全てを“嘘”に変えてしまった。 ルイズは泣いた。火が付いた様に泣いた。 信じ、頼り、慕った男の言葉が剃刀の鋭利さで思考を、年齢を裁ち落とし、貴族の令嬢を幼児に返した。 「空ぁぁぁっっっっ!!」 崩れ落ちた塔の狭間に、絶叫が木霊した。 「……貴方と言う人はっ!貴方と言う人はっ!」 ギーシュは半ば曇った視野で、空を見上げていた。 杖を手にする手が震えた。 体の中を、凍てつく様な霧を含んだ風と、激情の炎とが交錯した。 「彼女がどれほど、貴方の身を案じていたか!……どれほどの決心を持ってこの場に来たか!……それが、貴方には判らないのかっ!そんな彼女に、貴方はそんなにも残酷な言葉を投げかけるのか!」 「なんや、ボーズ」 空はゆらり、と立ち上がった。 「また、決闘かい?」 「これは決闘では無いっ。男の、いや、人としての道を踏み外した、貴方への裁きだっ!」 タバサの目は空の踵へ吸い込まれた。 ウィールのスカルマークが、おいでおいでと誘っていた。 圓月杯。狂風神の雫。 恐らく、あれがタルブには無かった“風の玉璽”だろう。 魔法の力を決して受け付けず、物理的な衝撃に対しても無敵に等しい防御力を誇る筈の本塔。 その外壁はめくり返され、上から半分は無造作にもぎ取られていた。 宝物庫の秘宝も、6000年間蓄えられた書物も、歴史の向こうへ消えてしまった。 広場?そんな物はどこにも無い。 “王”の力。 “玉璽”の本当の力。 この二つが得られるなら、タバサがその小さな胸に秘めてきた渇望は、容易く成就出来る。 空とルイズの関係が解消されるのも、寧ろ都合が良い。 都合が良いが……。 「でも、なんだか不愉快」 タバサは大きな杖を一旋させると、“玉璽”を転がした。 キュルケは唇を噛み締める。臼歯の間で、半年間の記憶と、諸々の感情とを磨り潰す。 赤い唇が破れ、血が滴り落ちた。 空の脚が、月明かりを冷たく弾いた。見たことも無い、不思議な金属は、銅鏡の様に磨かれていた。 脳裏に、甲斐甲斐しく車椅子を押すルイズの姿が浮かぶ。 「普通に立てるんじゃないっ!馬鹿にしてっ!」 ヴァリエール家との関係も、嘗てルイズに抱いていた反感も、腹の底で沸々燃える焼灼感の中で、忽ち灰に変わった。 恋に生きる女にとって、少女の純情を弄んだ空のやり口は、何よりも許せない物だ。 「何、腑抜けてるのよルイズ!あの男はもう、私達の敵よ!」 ルイズは弾かれた様に顔を上げた。 背筋が凍った。涙の隙間に、空の姿が土足で踏み入った。 自分を見下ろす目。ドブの様に濁った目――――。 (……誰、この人?) ルイズは胸の内で頭を振る。 (私、こんな人、知らないっ!) ――――To be continued 前ページ次ページ虚無の王
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『地獄の横断歩道』 39KB 虐待 不運 群れ 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ ドスまりさ 都会 現代 うんしー ただの大量虐殺SS 住宅街にはざわざわと、饅頭の喚き声が響き渡っていた。 ドスまりさに率いられた群れは立派な公害であったが、 ゆっくりたちにとってはゆっくりプレイスなのであった。 ここ数か月で発生し、ダンボールハウスがわらわらと立ち始めたこの群れである。 がっこうも設立され、順風満帆。 そして今日はなんと遠足の日なのだ。 ドスまりさからおちびちゃんたちへのゆっくりしたプレゼントである。 「だいじょうぶなの、ぱちゅりー?」 ドスは体を傾けたが、ぱちゅりーはあくまで自信家だった。 「むっきゅん、ゆうっしゅうなぱちぇならちゃんとおくりむかえできるわ!」 このあたりで一番大きなゴミ捨て場。 住宅街の群れ、おちびちゃん遠足の集合地点であった。 わらわらとちっちゃい子ゆ赤ゆたちがざっと100。 その周りには30ほどの親ゆたちがいってらっしゃいをしにやってきている。 がっこうのただ一人の先生、ぱちゅりーがこの遠足の責任者だ。 「ぱちぇをあまくみないでね、ドス! ぱちぇはけんじゃなのよ!」 「そこまでいうんなら、いいけど……」 そろそろ太陽が真上に上る。 ごちゃごちゃとつめあわさったまんじゅうが、 ぱちゅりーの背に向かってちょこちょこと動き回り始めた。 「ゆっくちいってくりゅにぇ!」 「ゆふふ、おちびちゃん、きをつけていってきてね!」 ----------------- 薄い雲と青くどこまでも広がる空。 わずかな風は静かに冷気をたたえている。 住宅街をぴょんぴょん歩く101の饅頭。 そんな秋も遠のき始め、そろそろ肌寒くなり始めるこの月であったが、 ぱちゅりーとおちびちゃんたちの心はるんるんと暖かく高揚していた。 「ゆっくちたのちみだにぇ!」 「まりちゃはこーえんしゃんでむちとりをちゅるのじぇ!」 「ありちゅはときゃいはなこーでぃにぇーちょをすりゅわ!!」 なぜならば今日は公園へ遠足にいくのだから。 葉っぱもお花も沢山の、公園へ行くのだから。 「みんな、ちゃんとついてきてるわね?」 「「「ゆっくちついてきてりゅよ!!!」」」 100匹のおちびちゃんたち。 にっこりしながらころがったり、ちょこまかしながら御返事する。 そのお返事はいつもより五倍元気なものに思えた。 住宅街の狭苦しいところを住みかとしているこのおちびちゃんたちにとって、 緑あふれる公園への遠足はそれはそれは楽しみなイベント。 緑の香りは、ゆっくりをひきつけてやまないものだ。 わくわくで元気いっぱい! しあわせを分け合うように、しゅーりしゅーりとほっぺをぷにゅぷにゅさせる。 こーりょこーりょ、うんうんたいちょー! ぱちゅりーはぐにゃりと縦に伸び、おちびちゃんたちを俯瞰して、 「いち、に、たくさん……むきゅ、みんなちゃんとついてきているようね」 全員無事についてきていることを確認し、ほっと息をつく。 一風ふいて、枯れ葉がおちびちゃんたちの頭の上をひらひらと舞っていった。 「はっぱさんが、ふぁーしてるよ!」 「「「ゆわあああ!! ちょぎょーい!!」」」 ゆったりもったり、旅は続く。 「しょろーり、しょろーり!」 「ぴょんぴょんするよっ!」 ゆっくちの煩いキンキン声が近づくと、別の群れのゆっくりがごあいさつ。 「ゆゆ! ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!」」」 おちびちゃんの集団はそれだけゆっくりできるものなので、 野良ゆはみんなゆっくりしてしまう。 先生ぱちゅりーもなんだか誇らしげだ。 住宅街の固い地面をなんとかかんとか攻略し、落ち葉をさくさく踏みしめて アスファルトをぽよぽよと跳ね、角を三つ曲がってゆく。 すると通りには大きめの建物が目立ち始め、四車線の大型車道にまでやってくることができる。 びゅんびゅん!! 「「「ゆううううう!?」」」 ここまではお散歩の延長線上にあったが、ここはちょっとゆっくりできない。 冷たい鉄の車が左右にびゅんびゅん走る忙しい場所で、 公園へ向かう道における最大の問題だった。 「むきゅ、みんな、ゆっくりとまってね! くるまさんがゆっくりするまでまつのよ!!」 「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!」」」 横断歩道の前で一斉に止まる101匹の饅頭ども。 すでにアスファルト表面のよごれであんよが茶色っぽくなっていたが、 わくわく感からかわがまま一つ言うこともなく、まだまだ元気である。 先生ぱちゅりーはもみあげをすっと上げて、信号を指す。 「あのしんごうさんがあかいときは、くるまさんがうごくときだからね! あおになったらわたるのよ!」 「「「それもききゃいしちゃよ!!」」」 大型トラックやバスが大声をあげながらゆっくちたちの前を通り過ぎてゆく。 ガタガタガタ! 地面がぐらぐらと揺れ、おはだがぽよぽよ波打つ。 排気ガスがもくもくと舞い、おちびちゃんたちの小さなおくちを汚す。 「けひょ、けひょっ!」 「きょわいいい」 「ゆっくちできにゃいいい」 車なんて初めて見たおちびちゃんなどは、吃驚してかたまり、泣きはじめたり。 ゆっくりには、特に大型車両などが、ドスより大きな怪物に見えるのだろう。 「だいじょうぶだよ! ぺーろぺーろ!」 「ここにいればゆっくりだいじょうぶだよ! しんぱいしないでね!!」 それをちょっと年長さんの子ゆっくりたちが、むねをはって学校仕込みの知識を披露しつつ フォローしてやっている。 「ゆぴぴぃ」 「ゆっくちー」 すーりすーり、しあわしぇー。 怖さ半分ゆっくり半分で、おしくらまんじゅうのようにすりすりまとってゆくおちびちゃん。 車がまばらになればまた、ゆっくりが怖さを上回ってゆき、 なんだかうれちーちーまでしたいきぶんになってしまう。 ちょろろろろ……。 「くちゃいいいい!」 「やめちぇえええええ!!」 またまたどよめく饅頭の群れだった。 しかしなんとゆっくりできる光景なのだろうか。 ゆっくりならばそう思うに違いない。 そんなゆっくりであるぱちゅりーもまた、微笑んでいたのだった。 やがて車の往来はまばらになり、全く無くなる。 ブルブルとやかましい音も収まり始め、しんと静かになってゆく。 ぶるるる、すとん。 車が止まったのである。 横断歩道のすぐそばに止まる車達は、微動だにせず、死んだように静まる。 赤ゆっくちも子ゆっくりも突然の変化に顔を見合わせた。 あんなに元気に動いていたのに。 ちょっと傾いて首(?)をかしげたり、のびのびぴょんぴょんしてみたりする。 そんなことも、溢れる好奇心のあらわれであった。 そしてほどなく横断歩道の信号が青に。 「むきゅ! いまよ! ゆっくりしないでわたるのよ!!」 「「「えいえいゆー!!!」」」 時間制限のある横断歩道という難所。 ここばかりはゆっくりしないことも必要だ。 ぱちゅりーたちはぴょんぴょんとあんよを働かせ、横断歩道にくりだしていった。 ぱちゅりーは虚弱だったが、成ゆであるためそれなりのスピードでぴょんぴょんすることができる。 駆け足は街で生き残るために必須の技術の一つである。 「むっきゅん、むっきゅん」 アスファルトの上をいつものペースで駆けてゆく。 早く渡り切ってしまわないと轢き殺されることを知っていたから。 多少の努力と訓練により、むっきゅりしたぱちゅりーでもゆっくりせず走ることができる。 このペースなら横断歩道を渡りきれるし、実際何度もわたってきた。 ぱちゅりーには妹や幼馴染が何匹もいたが、とろとろ跳ねるものから死んでいった。 少なくともぱちゅりーはそう思っている。 順調なペース。 しかし自分の事しか頭に無いところ、やはり餡子脳である。 「ゆっくちすすみゅよ!」 「しょろーり、しょろーり!!」 ぴょんぴょんずんずん進んでいくぱちゅりーに対して 赤ゆと子ゆの動きはもたもたしたものである。 まず歩道を降りる所からしてゆっくりだった。 「ゆええぇん、きょわいよおおお!!」 「だいじょーびゅだよ! ゆっくちぴょんすればいいだけだよ!!」 赤れいみゅが、赤まりちゃが、おねーちゃんたちに励まされながら飛んでいる。 歩道と車道の高低差は意外とあるのである。 だからこわいのだ。 特にピンポン玉サイズと形容される赤ゆっくりにとっては。 それゆえまず車道に降り立つために、心の準備とおもいきったジャンプが必要であった。 もにゅんもにゅんとバネのように餡子を働かせ、飛ぶ。 「ゆ、ゆ、ゆっくちー!」 「ぴょ、ぴょんぴょんしゅるのじぇえええ!!」 どすん! 「「「いちゃいいい……」」」 そんなことをやっているうちに時間はどんどん過ぎてゆく。 全ゆんが車道に降りた時、すでにもう30秒近く経過しており、 なのにまだ四車線のうちの一つ目に入った辺りでぷよぷよしているのだ。 「ゆっくち、ゆっくち!」 「しぇんしぇー! まっちぇー!」 体は小さく非常に遅い、まさに亀の歩みそのもの。 「まりちゃもうちゅかれたああ!! ゆんやああああ!!!」 「れいみゅはうんうんちゅるよ! ちゅっきりー!!」 立ち止まってだだをこねこねする糞もいる。 「むぎゅうううう!!! どぼぢておちびちゃんたちあんなにむこうなのおお!!??」 ぱちゅりーのクリーム脳は、そのもたもたさにやっと気がついたようである。 四車線道路の一車線目で100のおちびちゃん全てがよちよちと進んでいて、 先頭集団がようやく二車線目に入ろうかというゆっくりさ。 青信号はもう点滅を始めている。 ほどなく赤になり、車が走り出す。 絶体絶命だった。 ぱちゅりーは体をのーびのーびさせて赤ゆたちの注意をひきつけはじめた。 「むぎゅううう!!! おちびちゃんたち!」 速く走って、わたらせなければ。 ぱちゅりーの脳裏に撥ねられて死んでいった仲間たちの姿が浮かんだ。 「しんごうさんがあかになるのよ!! はやくわたってね! ゆっくりできなくなるわ!」 もちろん横断歩道の真ん中にいるぱちゅりーも危ないのは同じで さっさと渡りきらなければゆっくりできなくなってしまう。 だからぱちゅりーは、おちびちゃんたちを積極的に助けることはしなかった。 たしかにあの子たちはがっこうの大切な生徒たち。 でもどうせあずかってるだけのおちびちゃん、自分の命のほうが大切だ。 心の底ではそう思っていたのだろう。 ぱちゅりーは命の恐怖から、今までの倍以上のスピードで程へ駆け 早々に車道まで辿りついてしまった。 「ふう、むっきゅり……」 ほっと一息ついた。 しかしおちびちゃんは地獄のまっただなかにある。 「ゆわあああん!! ゆっくちしちゃいいい!!!」 「ゆっくちさせちぇえええ!!!」 ゆっくりできないという発言に泣き、暴れだしてしまう赤ゆたち。 ぴこぴこをふりまわすれいみゅ、もみあげをぽんぽんするまりちゃ。 がっこうの授業でも、車さんはクマのように襲い掛かってくると教えているし、 親や知り合いを車さんに殺されたおちびちゃんも多い。 だから殆どのおちびちゃんの足が恐怖ですくんで前進も後退もできなくなってしまった。 「ゆううう!!! れいみゅはちゅかれんたんだよおおお!!!???」 「おきゃあああしゃあああああん!!! まりちゃおんぶちてえええ!!!」 一方でますますわがままをいう赤ゆもいるし、なにがなんだか。 一方子ゆたちと言えば、 「だいじょうぶだよ! ゆっくりすすもうね!」 「ゆっくちぃ……」 「ぺーろぺーろ!! ゆっくりしようね!」 「ゆぴぃ……」 「わがままいわないでさっさとあるこうね!」バキッ 「ゆええええええ!!! いちゃいいいい!!!」 怯える赤ゆを勇気づけたり、なまけものにカツをいれたりするものがまず一組。 ぺーろぺーろしたりすーりすーりしたり、おけつで直接殴ったり。 なんとかしようとしているが、そんなことをしている時間が無いのは火を見るより明らかであろう。 「ぐずないもうとはおとりになってね! まりさはさきにいかせてもらうよ!!」 「ゆびいいい!! おねーちゃんまっちぇええええ!!」 「ぷっすー☆ おおのろまのろま」 「ゆえええん!! どぼぢでそんにゃこちょいうのおおおお!!??」 姉妹を見捨てて走り去るものが一組。 げらげらと笑いながら跳ね去ってゆく。 多少のゲス気質がみられる、というよりゲスそのものの行動だが、 いっそこういう行動にでるほうが生物としてはむしろ賢いかもしれない。 しかし無常である。 信号はすでに赤になって久しく、車はそろそろ動きだそうとしている。 どちらのグループも歩道には辿りつけそうにない。 「むぎゅうううう!!! ばっでえええええ!!!!」 歩道という安全地帯からぶよぶよと、ただ一匹車さんに呼びかける必死のぱちゅりー。 命をかけるほどではないにせよ、生徒であるおちびちゃんは大切だったし なによりもしあずかっているおちびちゃんになにかあったら……。 制裁される! 制裁! 制裁! 制裁! 保身からの行動だった。 「ぶぎゅううう!!! せいざいはいやあああ!!!」 赤信号とぱちゅりーの様子にいよいよ子ゆ赤ゆの一団もぱにっくに陥った。 じょろじょろじょろ! おそろしーしーがつめたいアスファルトのすきまに染みこんでゆく。 「ゆぎゃああああ!!!」 「どぼちてくちゃいにょおおおお!!??」 唸り声を上げ始める車さんたち、ぶるるんぶるんとガスを排泄する。 ぐるんぐるんとエンジンがあたたまり、タイヤがぐるぐる回り始める。 走る事をあきらめたいくつかの饅頭は、むしろ車に働きかけようとしている。 「ぷきゅううう!!」ブリ! 「くるましゃん、ゆっくちしにゃいとれーみゅおきょるよ!? ぴゅんぴゅん!!」びぢぢ! 「くりゅなああああああ!!!!」もりゅん! いくらかのおちびちゃんはおそろうんうんを垂らしながら 必死で追い返そうとぷくうううう、すなわち威嚇を繰り返す。 車はゆっくりゆっくりと、おちびちゃんの一団に向かって進みだした。 一般の人々にとって、害虫・野良ゆっくりの命など配慮に値しない物。 あなたはありさんの群れが砂糖にむかって行進しているという理由で車を止めておけますか? 車たちは、なんの躊躇いも無く殺戮を始めた。 まず犠牲になったのは一番近くに居たぷきゅー組である。 れいみゅの体に、その巨体の影が落ちた。 「ぷきゅうう!! ぷきゅうううう!! ぶぎゅっ!?」 「おきょるよおおお!! おきょ……ぎょっ!?」 必死で威嚇していたれいみゅ姉妹は無残にタイヤに潰され、 空気が一杯入っていたためか、破裂音とともに内臓餡子がそこらへ飛び散った。 餡子の雨が一瞬にして地面を汚す。 二車線目に辿りついていた運動神経のいいまりちゃたち、ちぇんたち。 そのしゅんっそくも車さんの前には無力だった。 「やぢゃあああああ!!! ばりちゃのほうにこにゃげべっ!!!」 「ぐるまさんやべちぇええええ……びょぢぢぢっ!!」 ひと足早く逃げ始めた子まりさの一団、右折車両に惨殺される。 「わがらにゃああああああ、あびょ!」 「ちぇんのしっぽしゃんぎゃああああ!!!」 「らんじゃばああああああああ!!」じょろろろろ ちぇんは即死するものと尻尾から徐々に削られるものに分かれた。 いずれにせよ様々な大きさの車の波状攻撃に殆どが餡子を散らした。 「あんよしゃんがねちょねちょしゅりゅううう!!」ねちょ 「ぺーろぺーろ……ぐざいいいい!! ぺーろ、ぺーろぉ、ぐざいいいぃぃ……」 おそろうんうんにあんよをとられ、逃げられなくなったありしゅもいた。 この二匹は姉妹であり、姉はその粘性の高いうんうんを取り払おうと けなげにいもーちょをぺろぺろしていた。 ゆっくりにとって、うんうんはものすごく臭う物である。 涙なしには舐め取れない。 しかし、その努力は無駄に終わる。 「ゆぴょ! びょぎっ!?」 「ぺーりょ、ぺーまぼっ!!!」 ときゃいはなレディーになることを夢にしていたありちゅ姉妹、轢き殺される。 群れ一番の美ゆん姉妹としての、幸せなゆん生は四散した。 仲のいい姉妹だったのに。 おともだちが死んでゆく状況という精神的重圧は、おちびちゃんのぱちゅりーには耐えがたい物だった。 ブチュ、ブチョチョ ある赤ぱちぇの姉妹は幼馴染のまりちゃが圧死するところをもろに見てしまった。 「んぎゅうううう!!!! んぎゅうううえれえれえれえれ……」 「んぎょおげえええええ!!」 「えれっ、えれれれ……」 飛び散る餡子カスとそれらにまとわりつく死臭に吐き気を催し えれえれと中枢餡を吐いてその短い一生を終えた。 赤ぱちゅりーや子ぱちゅりーのほとんども同じ道をたどったが、 生き残った者も大抵タイヤの牙から逃れられなかった。 「ぢんぼぉ……」 右頬四分の一を削り取られたみょん。 中枢餡を潰してもらえることも無く、延々と苦しんで死ぬ羽目になった。 死ぬに死ねず地獄を見るおちびちゃんも数えきれないほどだった。 遠慮なく行き交う車達。 留まったがために潰されるゆっくり、逃れようとして潰されるゆっくり……。 ブチッ ブチュン ブチョッ ベチャブチャ 「ゆぎゃああああああ!!! いだいいいいい!!!」 「いぼおおぢょおおおおおお!!!!!」 「どぼぢでごんなごどずるのおおおお!!!????」 黒白黄色の餡の花が、赤黒白のおかざりたちが道路をカラフルに染め上げてゆく。 ここまで色とりどりに汚れるのはなかなかない。 最初の30秒で60匹が命を落とし、残った時間で一匹づつ潰されていった。 「ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!」 「おねーちゃんゆっぐちしちゃだみぇええええ!!」 あまりにも簡単につぶされてゆき、最期まで生き残ったのはたったの八匹。 それも皆五体満足というわけではなく、餡子を減らしたり、皮膚が傷まみれだったり、 非ゆっくち症にかかっているものまでいた。 「むぎょっ! えれえれ……」 歩道でクリームを吐き出す先生ぱちゅりー。 「ゆぎゃああああ!!! ぼうおうちがえるううう!!!」 「ゆんやあああああ!!! おねーぢゃんぎゃあああああ!!!」 「ごんなのときゃいはじゃにゃいわああああ!!!」 「わがらにゃああああああ!!!!」 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 残ったおちびちゃんたちは汗もだらだら涙はぼろろ ムンクのようにどろどろと体をゆがませ、苦痛で甘味もたっぷりだ。 青信号になり車が止まったにもかかわらず、 あまりの精神的ダメージでもう動けそうにない。 すぐにでも餡子を吐いて死にそうな様子さえあった。 そのときである。 住宅街方面の道からのっそりと成ゆの一団が。 「やっぱりぱちゅりーだけにまかせるのはしんぱいだね!」 「そうだね、やっぱりドスもついていったほうがよかったね!」 ドスと、おちびちゃんたちのご両親たちである。 やはりぱちゅりー一人でおちびちゃんをまとめるのは大変であろうとやってきたらしい。 群れのドス、そして保護者のみなさま30匹はその餡咲き乱れる惨状を見て。 「「「……」」」 固まった。 しかし嗅覚と視覚ははっきりと現実をつきつけてくる。 「ゆぎゃあああああああ!!!!」 「なんなのごればあああああああああ!!!!!!」 「ぱぴぷぺぽ!!」 異様な死臭と、大量の死骸を見て驚きとともに叫んだ。 しかも良く見ればあれは自分達のおちびちゃんである。 「なんでえええええええ!!??」 「ゆっぐりできないよおおおお!!!!」 親ゆたちは一斉に、微塵もゆっくりしないで死骸の海へ駆け寄った。 残ったわずかなおちびちゃんが、自分のおちびちゃんであることを祈って。 「こわかっちゃよおおおお!!! おねーちゃんぎゃ、おねーちゃんぎゃああ……」 「ゆううう!!! れいむのおちびちゃん! ひとりだけでもぶじでよかったよぉおお……」 れいむのおちびちゃんは一匹を除いて皆死んでしまったらしい。 しかしこのれいむはまだ幸せな方だ。 中には…… 「ありずのとがいばなおちびちゃんどぼぢでじんじゃっだのおおお!!??」 「ゆぎゃあああああ!! ばりざのゆうじゅうなおちびちゃんがああああ!!!!」 一度に全てのおちびちゃんを失った親ゆもいる。 その中には、まむまむを潰されもう子供を作れない身であった親ゆもいる。 半分潰れてタイヤの跡がついた無残なおかざりにおいおいと泣きついている。 「おちびちゃんなおってね! ぺーろぺーろ!! どぼぢでなおらないのおおお!!???」 死を受け入れられず無駄なあがきをする個体。 「ゆふ、ゆふ、ゆふふふふふ!!!」 「ゆっぢ! ゆっぐぢ!」 ショックで狂ってしまう個体も。 しーしーをぶちまけて、汚らしい。 かけがえの無い命が無残に散っていったのだ。 群れのみんなの餡子はぐつぐつと煮えたぎることになった。 「ぱちゅでぃいいいい!!! こればどういうことだああああ!!!!」 怒りの第一の矛先は、監督責任のある先生ぱちゅりーへ向けられた。 「このゆっくりごろじいいいい!!!」 「じねえええええええ!!!」 「ごのげずがああああああああああ!!!!」 「なにがけんじゃだああああああ!!!!」 「おちびちゃんどぼぢでぐれるのおおおおお!!!??」 「ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 「ばがああああああ!!!!」 「げろぶぐろおおおおお!!!」 考えられる限りの罵声が浴びせられた。 「むぎゅ……ぱっちぇのせきにんじゃ……」 のーびのーび、ぱーくぱーくとしていいわけを探すぱちゅりー。 しかしこの場をうまく収める方法は全く思いつかなかった。 鬼意山に襲われたと言い逃れをしてなんとかごまかすつもりだったのに、 実際に現場を見られては、これはどう転んでもぱちゅりーが悪いということになる。 そもそもぱちゅりーは遠足の責任者なのだ。 こんな危険な道を選ばなければおちびちゃんは無事だったかもしれない。 「む、むっきゅりにげるわ!!」 ぱちゅりーは言葉に詰まって逃げだした。 捕まったら制裁され、殺される……かもしれない。 すくなくともあの様子だと死刑の見込みが高い。 そうでなくともこのことを責められながら暮らすのはゆっくりできない。 生存へ向けた打算からの行動であった。 別の群れにころがりこんで、ゆん生をやりなおせばいいや。 そんななまぬるい計画が餡の中でまとまりはじめたころ、 チリンチリン、グシャ。 「むぎょげえええ!!!」べちょ 「あっ、いきなり飛び出してくるなよ糞饅頭!」 ちょうど歩道を走っていた自転車に轢かれ、皮がびりびりになってしまった。 ぱちゅりーの行動はその寿命をわずかに縮めるのみであった。 自転車の重量で真っ二つになった体は、空しく風に乗ってぷるぷると震えていたが、 そのうち力尽きたのか全く動かなくなってしまった。 「……」 「……」 「……みんな、ぱちゅりーのことはわすれて、のこったおちびちゃんをたすけようね!」 さて、横断歩道の上には8匹のおちびちゃんだけではなく、 30匹の成ゆと、体長1メートル程度の中型ドスまりさがいる。 ぱちゅりーが死んだ今、どのゆっくりも車たちを恨めしそうに睨んでいる。 「ゆっくりしねえええ!!!」 「おちびちゃんをかえぜえええ!!!」 車にぽよぽよ体当たりを始めるゆっくりさえいる。 歯ぎしりの音がギリギリとうるさく響き渡っていた。 ドスはあたりを見回す。 「みんな、おこるきもちも、かなしいきもちもわかるけど、いまはおちびちゃんをたすけるのがさきだよ!!」 悲しみに暮れている暇はない。 ドスまりさは今のところ、あくまで冷静なのであった。 車さんはゆっくりしてくれないから、さっさと助けて撤収しなければならない。 信号が再び赤になるまで、制限時間は一分も無いだろう。 「じね! じねえ!」 言う事を聞かないゆっくりもいたが、それはほおっておくしかなかった。 「おちびちゃんはゆっくりしないでおかーさんのおくちにはいってね!」 「ゆうぅ! きょわかっちゃよおおお!!!」 「のこったかちゅーしゃさんはおちびちゃんのかたみさんにしておくわ……」 「おちびちゃんのおぼうしさん……」 ゆっくりたちはてきぱきと働き始める。 おちびちゃんの救助、死体やおかざりの回収など、まだやることがある。 (親ゆっくりは子供が死ぬと未練がましくおかざりをとっておく習性があるらしい) しかし許されている時間はあまりにも短い。 信号はまた点滅を始め、もう赤になりそうな気配だ。 「ドスにまかせてね!!!」 ドスは今に走ろうと待ち構えている車に、会心のぷくーをくわえた。 「ぷっくううううううううううううううううう!!!!!!」 一メートルをわずかに越すドスまりさが、ぷくーひとつで倍の大きさになってしまった。 「いまのうちにおちびちゃんをどうにかしてね! ぷくう!」 どうやらドスは車の通行を体づくで止めてしまうつもりらしい。 確かにこんな膨れたドスを轢いてしまえば車の前部がへこんでしまうかもしれないし フロントガラスがあんこまみれになるから、運転手は多分嫌がるだろう。 しかしドスがとうせんぼできるのは、せいぜい行き帰り四車線のうちのたった一車線ぐらいだ。 ププー、ぐしゃ。 信号はすでに真っ赤。 歩道へ向かうためドスの真後ろから離れ、隣の車線へ向かった一団が永遠にゆっくりした。 「ゆぎゃああああ!!! おがーじゃああああああ!!!」 「ゆっぐりできないよおおおおお!!!!」 「あぢずのとがいばなおちびちゃんがあああああ!!!」 せっかく助かったおちびちゃんを失うおかーさん。 せっかく再開できたおかーさんを失うおちびちゃん。 大人と子供、あわせて六匹、轢かれてあわれ。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 そして死体はさらに増える。 子供を失って狂った一団が自殺行為を始めたのだ。 「おちびちゃん、おかーさんもいまからそっちへいくよ……」 「おそらのゆっくりぷれいすさん、まっててね……」 プー、ぐしゃ ぐしゃぐしゃぐしゃ べちょん 六匹の親ゆたちは我も我もとタイヤに向かい、死んだ。 「なにじでるのおおおお!!?? おんこうなドスでもおこるよおおおお!!」 正義感の強いドスはとうとう怒りだす。 躊躇なくゆっくりを殺す車さんは非常にゆっくりできないものだった。 残酷な車さんたち! 悪びれもせず、ついには二度目の強行に及んだ! 人間さんの知り合いだからかんべんしてやろうと思ったが、 いや怖いのでかんべんしてやろうと思ったが、ドスはもう許せなかった。 ドス爆発! 饅頭にしては高めのその知性は義憤により崩壊した。 「せいっさいするよおおおお!!!」 そうしてなんと、ドスまりさは自分がとおせんぼした車線の先頭車両に 体当たりを始めてしまったのである。 人間さんのものに手を出すと言う禁忌。 普段のドスならもうちょっとマシな行動をとれたかもしれない。 「じね! じねええええ!!! むれのみんなをがえぜえええええ!!!!」 それなりの重量でがんがんぶつかるから、ぐらぐらゆれる。 まりさの柔らかめの皮のためダメージにはとぼしかったが……。 「ゆわあああ!!! かっきょいいいい!!!」 「どちゅー! くるましゃんをころちぇー!!!」 絶体絶命のこのタイミング、そこで始まったドスの攻撃。 「すごいよ! どすってつよいね!!」 「ゆっくちー!」 ゆっくりどもも勇気づけられたのか、にこにこわらってドスを応援し始める。 相手は反撃してこない。風は明らかにドスに味方をしていた。(ように見えた) 「まだまだいくよおおおお!!!」 今度は車に飛び乗って、プレス攻撃を仕掛けてゆくつもりらしい。 しかしこれは実現しなかった。 ドスの快進撃も、ここで終わり。 車の中の人間さんはドスの様子を見て危険を感じた。 このままじゃ車に傷をつけられかねないと思った。 急アクセルからの、車さんの体当たりが炸裂すると、 バァンと爆発音のような、破裂音の様な大きくゆっくりできない音がそこらじゅうに響いた。 1トンを超える鉄の塊が思いっきりぶつかってくるのだ。 ドスには勝ち目が無い。 餡子汚れが嫌だから今まで死なずに済んだのだ。 ドスのおなかは一撃で千切れ、餡子はぶちまけられる。 あたりの地面と車さんに餡子の雨が降る。 「ゆぎゃああああああ!!!! いだいいいいいい!!!!」 餡子を撒き散らし、ころげまわるドス。 餡子の跳ねる音がびちょびちょと聞こえてくる。 ドスは自分が傷つくような激しい戦いをしたことが無かったから、 体がちぎれるような痛みにうぶで、物凄く弱かった。 この世の終わりの様な痛みだとドスは思った。 どうにか逃れようと、だだっこのように暴れる。 ぷりん! ぷりん! それはゆっくりにとってまるで、暴れまわる象そのものなのであった。 「ゆぴいいいい!!! こっぢこないでねえ<グシャ>」 「ゆっぐぢできないよおおお<グシャ>」 「おがあじゃ<ベチョ>」 応援していた生き残りのゆっくりたちが、信頼していたドスにぷちぷちと潰されてゆく。 せっかく助かった命が無残な餡子ペーストに変えられてゆく。 「どずやべでえええええ!!!」 「でいぶのかばいいおちびちゃんがあああああ!!!!」 ドスは帽子が脱げてかぶりなおす余裕さえなく、同胞の悲鳴に耳を傾ける余地はなかった。 ゆっくりを叩きつぶす一つの凶器と化したドス。 群れが崩壊してゆく。 「ゆっくりにげるよ!」 「あんなどすはもういらないよ! ゆっくりしね!!」 要領のいいことにさっさと逃げ出すゆっくりもいた。 車一つ潰せない無能がどうしてドスをやってるの? 軽蔑の視線を向け、べろべろと舌を出し歩道の方へ駆けてゆく。 「ゆびゃ!」 「ゆびゅげ!!」 そんなゆっくりたちはみな潰された。 車がびゅんびゅん行きかっているドスのいない車線は、 ドスがたった今暴れ回っている車線よりよっぽど危ないということを忘れていた。 トラック・バス・タクシーに、様々な色の乗用車。 無残にぷちぷちと、命は消えてゆく。 ドスを突き飛ばした車はそのまま前進し、倒れたドスの上に乗り上げた。 回転するタイヤがガリガリとドスの肌を削り、中の餡子へずぶずぶと沈み込んでゆく。 「いだいいいいい!!! ごべんなざいいいい!!!!」 ドリルで筋肉を削られるような痛み。 壮絶だった。 もう土下座したい気分だった。 「どずがばぢがっでばぢだ!! ぐるばさんはゆっくちぢでばず!!!」 群れゆっくりをかばい、そして車を殺そうとした勇猛なドスまりさは、 あっというまにおさげをぱたぱたとさせて泣き叫ぶあわれな糞饅頭になり下がった。 「ぼうくるまざんにぷくーしばぜん!! たいあたりもぼうじばぜん!!」 目をつぶってぼろぼろと涙を流すが、そんなもの鳴き声だ。 1000キロの重量がどんどんドスまりさの形をひしゃげさせてゆく。 傷口からは止めどなく餡が流れ、今や中枢餡もいびつな形になって 意識がだんだんと混濁してくる。 いよいよタイヤが、中枢餡を削りだした。 しーしーとうんうんをぶりぶりぶちまけながら、大饅頭が不気味に痙攣しまくる。 ゆ゛っ、と一つ鳴く。だんだんと冷たく黒ずむ。 どうしてこんなことに……。 ドスはただおちびちゃんたちに遠足に行ってもらおうとしただけなのに……。 信号が明滅するだけの時間が過ぎる。 車の運転手が車をドスまりさからどけると、 そこには目玉がこぼれ、餡子の海と化したドスの死骸だけがあった。 成ゆも子ゆも赤ゆちゃんも、一匹も生き残っていない。 すべてぐちゃぐちゃに餡の海と化してしまった。 この日からゆっくりの高く騒がしい声が失せ、住宅街は静けさを取り戻しはじめた。 生後間もないゆっくり、未熟ゆ、足りない子など、 住宅街の群れのうち、おいてきぼりにされたわずかなゆっくりだけが生き残った。 残っているのはほんのわずかな、それも吹けば飛ぶようなお子様ばかりだった。 冬に備えて食料が貯めこまれているからすぐには死なないかもしれないが、 一月もすれば餓死してしまうだろう。 「ゆ~♪」 「ゆっくち~♪」 ダンボールハウスで調子っぱずれに歌い、ゆっくり過ごすれいみゅたち。 外を除けばみな夕陽のオレンジにそまって、何もかもが悲しく輝いている。 「たいようしゃん、きりゃきりゃしちぇるにぇー!」 れいみゅが一匹、ぴこぴこをわさっとさせながら、嬉しさに悶える。 その喜びもきっと長くは続かない。 親ゆを待ち続け、それでも決して帰ってこない。 住宅街に静寂が戻る日もきっと近いだろう。 【おわり】 さく とかいはうんうん ・最近の過去作さん anko2363 まりちゃはゆっぐぢしてるにょにいいい!!! (後) anko2363 まりちゃはゆっぐぢしてるにょにいいい!!! (前) anko2317 赤ゆのたのちいイス取りゲーム (後) anko2316 赤ゆのたのちいイス取りゲーム (中) anko2315 赤ゆのたのちいイス取りゲーム (前) anko2271 ゆっくりたちの地雷行進
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99: 700くらい :2020/03/08(日) 19 50 02 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 雛菊の華 開花編 ナスカ級の艦橋を破滅の光が照らしだす。 艦艇からは重厚に歩むように、MSからは軽妙に踊るように放たれる光。 宇宙空間では星が瞬かない。だからいつも満点の星空だ。 しかし今、コロニー出身者にとってはなじみ深いその景色を押しのけるように連合軍の艦隊が居並んでいた。 「ははは…ハはっハはハッはぁ!なんだ、一体どうしたんだこの数は…まるで2年前のようではないか!」 間違いなく自身を滅ぼすことになるだろうその場面で、それでもアラン・ガーランドは哄笑していた。 無論のこと、絶望に叩き込まれた狂気ゆえではない。その証拠に艦橋要員もみな一様に笑みを浮かべている。 いや、すでに誰もが狂っているのだろうか?あの戦争が始まった時から、あるいはそれよりずっと前から。 「はい、艦長。大洋連合軍だけではありません…今確認したところ大西洋連邦を筆頭に他の国々も確認できます」 「当然だ。奴らの面子を全力で貶めてやったのだからな。我々に注力せざるを得ないだろう」 重要なのはそれだけだ。愚昧なナチュラルが、押さえつけるべきコーディネーターを放り出して地球近傍まで戦力を回していること。 その、たった一つの事実が今は祖国よりも愛おしい。 こうして自制心を働かせていても口の端が吊り上がるのを抑えきれないほどに。 「圧制者というものは難儀な商売だなあ?占領地が反乱すると分かっていて、それでも挑発されれば叩き潰さざるを得んのだから」 「まったくです。こちらにナチュラルどもが目を向ければ向けるほど、祖国の独立運動が激しく燃え上がるというのに」 まあせいぜい野生同然の人間未満には苦労してもらうとしよう。 大義も知らない猿人が数を頼みに独立の戦士たちを押さえつけたところで、高潔なる義憤を失わせることなどできないのだ。 だがしかし、独立戦争に敗亡した祖国では、悲しいことに再度の蜂起がされていない。 まったくもって嘆かわしい話だ。ナチュラルの政府がいかに強権的に支配しているか、強烈な情報統制の中にあってもうかがい知れる。 愚かな連中はこちらの人間を買収した程度で誤魔化せると思っているのだろうが…あいにくコーディネーターはそこまで馬鹿ではない。 同胞だと思っていただけの元売国奴、そして現死者は連合軍に占領された祖国で善政が敷かれているなどと宣ったが。 「騙されるわけがないだろう…!?あれだけ独立への熱情に満ちていた祖国が、あっさりとナチュラルの軍門に下るはずがない!」 そしてあっさりと下ったわけではない以上、苛烈な抵抗運動があったはずだ。彼自身の常識的な考えに従えばそうなる。 いや、今現在もあるのだろう。それを弾圧しているのは…していたのは今目の前にいる連中なのだ。 100: 700くらい :2020/03/08(日) 19 50 46 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp だからこそ、彼は嗤う。これほどまでに嗤ったのは2年前のあの日、ろくに戦うこともできず敗亡の報を聞いた時以来だった。 「ははハッ…ァはハはハははぁっ!ハハッ…!」 色とりどりのプラズマやメガ粒子が艦を掠め、あるいはどこかを吹き飛ばして爆発させても。 最期の最期まで、アラン・ガーランドは哄笑しつづけた。 艦橋が炎で包まれる中、スポットライトのように戦場の光を浴びながら。 ────────── 時は少しばかり遡る。 急行する艦隊が準ホーマン遷移軌道で地球に落下しつつある頃、セルゲイ近傍での戦闘は佳境に入っていた。 一足早く地球低軌道に向かうセルゲイから見る地球は徐々に大きくなっていく。 月近傍の位置エネルギーが運動エネルギーに変換され、近づくにつれて急激に加速しているのだ。 (クソっ!こいつ、しぶとい!) 脳裏に叩きつけられる声。同時に放たれた幾筋もの閃光。 直前、イメージとなって予測されたそのビームを避けるように機体を滑らせる。 「はあっ、はあぁ…っ!」 何度目かになる交差、再度離れる十字目に追撃する余裕はない。 急激な加速度の変化は身体を蝕む。操縦桿を握る手が震え、視界が遠く滲む。 (光が!あぁ、熱いっ!かあさ) (ナチュラルどもが!この世から消えてしまえ!) だが声だけは聞こえてくる。怨嗟の声、恐怖の声。眼前の敵からは使命感と少しの戦意。 それらが頭に響くたびに苦しみが増してゆく。 だから、その攻撃は予測できていても反応できなかった。 コックピットを直撃するであろうメガ粒子の奔流をギリギリのところで回避する。 反射的に身体が動いたのは訓練の賜物か。 「…っ!」 片方のビームサーベルが爆散する。幸いにも損傷が本体に及ぶことはなかったが。 いや、それが本当に幸いだったのかどうか。あるいはここで死んでいた方がよかったのかもしれない。 101: 700くらい :2020/03/08(日) 19 51 27 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 弾かれるように後退するMA。迫るドライセン。 死を覚悟するが、そんなものよりも残酷な未来が訪れるのをスノウは半ば確信していた。 「ぁ…っ…!アアァァッ!!寒い、痛いぃっ!」 強制的に意識が書き換えられる感覚。モニターに映ったMSが歪む。 いや、とっくにスノウは目でモニターを見ていない。耳で音を聞いていない。 真っ暗な視界に白いノイズが雪のように走る。その吹雪の中を…”リックドムが”駆け抜ける。 ジャイアントバズの咆哮。ヒートサーベルの剣戟はあくまで牽制だ。 (何っ!?こいつ、今の連撃を!) あちこちで飛び回るのはハイザックだろうか?遠くから迫る敵意の群れもわかる。 「ぁぁ…ぁああぅ」 眼を血走らせ、うめき声をあげながら、しかし手指の操作だけは止まらない。 凍える宇宙の中で感じるのは雪のように堕ちてゆく喪失感だけ。 (…………!…………!) 四肢と機体の区別がつかなくなった時…誰かの声が聞こえた。 「ぁ…ぅぇ…て」 機械に心を覗かれる嫌悪感に呻きながら漏れたのは何だったのか。 スノウ自身それを自覚しないまま、意識はMAの生体部品へと成り下がった。 ────────── 戦闘中のMSデッキを様々な工具、部品、それに作業員があちこちに行き交う。 紐やテープで壁面につなぎ留められた道具類が無重力の中でたなびいている。 「だからぁっ!そんなことできるわけないだろうが!」 忙しなさに染まるデッキに一角、そこで何者かがヘルメットを突き合わせて怒鳴り合っていた。 ガラスを通して響いているのはくぐもった怒り。 「そんなこと言ってる場合かよ!コロニーが攻撃を受けてるんだぞ!?動かせるのは俺しかいないんだ!」 「増援は来る!子供が戦場なんかに出るもんじゃないんだよ!」 「それまでに被害が出たらどうするんだ!あそこには何百万の人がいるのに!」 ウィル・スプリンガーの胸中を暗い予感が過ぎる。 船体から鈍い重低音が突き上げるたびに、それは焦燥となって身を焦がした。 先ほどから断続的に感じる強い思念もそれを後押ししているのだろう。 「…ッ!クソッ!こうなりゃ無理にでも…!」 「あっコラ!チィッ、誰かこいつを止めろ!」 102: 700くらい :2020/03/08(日) 19 51 58 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 埒が明かないと焦るウィルが男の胸を蹴って加速。 そのままデッキの端に置かれていた白いMS…ブルームへと乗り込む。 すぐに動ける整備士が追いすがるが…その前に搭乗を許してしまった。 「機体チェック。メインカメラ、よし。駆動系、問題なし。左腕は…応急処置なのか」 仕方がない。この短期間で、切り飛ばされたマニピュレーターが修理されているだけで儲けものなのだから。 メインカメラに光を灯す。無機的な丸いモニターが各部に据え付けられたセンサーの画像を統合して周囲の景色を映し出した。 リニアシートに支えられたウィルにはまるで壁が透き通ったかのようにも見える。 「悪い。俺、行かないとだめなんだ。説教も処分も、後で受けるからさ」 身体全体を振って何かを訴える整備士たち。ゆっくりと右手を動かして彼らを除ける。 この機体…ブルームに乗って確信した。さっきまで曖昧な、漠然としていた直観が確信となってウィルに囁きかける。 機体に組み込まれたバッドシステムの補助だろうか? 先ほどまでよりもずっと強く感応波を感じる。まるで突き刺すように、叩きつけるように心が伝わった。 カタパルトに脚を乗せる。 もう一度メインカメラを向けると、観念したのか周りにたかっていた人々が離れていった。 『坊主…どうしても止められないんなら、これだけは言っておく』 「なんだ?」 『システムの補助があるからわかってはいるだろうが。脱出機構はL1とR1の同時押しだ』 自動で作動するが危ないと思ったらその前に脱出しろよ、と言い残して更に離れる。 ウィルはそれにどう返したものかわからず、ただ背中を見送った。 「…約束は、一度破っちまってるしな」 流れるように指を滑らせて発進準備。 「ウィル・スプリンガー!ブルームガンダム、出るぞ!」 直後、ウィルの主観は自身が背中から落ちつつあると訴えかけてきた。 無重力の中で加速度が現れたことで、その方向に重力が加わっているかのように錯覚したのだ。 上方…真っ暗な宇宙に星々が煌めく真空が迫りくる。 だがウィルには、まるでそれが降り注ぐ雪のように見えた。 (スノウ。待っててくれ…今、行くから) ────────── コロニー外壁から徐々に離れつつある戦場。 銃火が交わり、時折爆発で彩られながらFLUUのMS達はかろうじて規律を保ったまま後退しつつある。 死の花を咲かせているのはもっぱらゲイツや旧式のジン。 連合のMSはほとんど傷つかず、損傷したとしても撃墜までは至らない。 半ば以上に一方的ながらも組織的な戦闘を続けていられるのはその中心で暴れまわる大型MA…スノウの存在が理由として大きい。 巨体にものを言わせた出力でドライセンと渡り合い、時に味方MSを援護しながら戦う。 103: 700くらい :2020/03/08(日) 19 52 30 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp ただ、それでも限界はいずれ訪れる。兵器の性能に違いがありすぎるのだ。 MSの性能の違いが戦力の決定的差というわけではないが、だといっても限度はある。 『ガーランド少佐!もう…!』 『…チッ!ここまでか』 ただでさえ性能で劣っているのに、次々と撃破されることで数の差も広がってしまう。 無論、FLUUにとって望ましくない方向にだ。 埋めきれない戦力差が抑えきれない濁流となって押し寄せる。 じきにMSも母艦もそれに飲み込まれ、熱湯に入れた氷のように融けて消え去るだろう。 『どの道戦場での勝利は望めん。連合の主力が到着するまで粘りたかったが…!』 より多くの戦力を、より長く拘束するのが目標だった。 だが稼げる時間が短いのは承知の上でもある。限界が来た時に、どのような末路を選ぶのかも覚悟の上だ。 MS隊を纏うようにしていたナスカ級。ギリギリのところで踏みとどまっていた敗残兵たちの動きが変わる。 「アイザック大尉!俺だ!ウィルだ!」 『なっ!?ウィル、なぜここに』 白いMSが戦場に現れたのはその瞬間だった。動揺するドライセン…指揮が乱れる、ということにはならなかった。 しかし、それと最大加速で突っ込んでくるナスカ級駆逐艦に即座に対処できるかどうかは話が別だ。 『ああ畜生!言いたいことは山ほどあるが今は退避しろ!敵の最後の』 言い終わる前にビームが脇を掠める。それも大出力の、極太のプラズマの塊だ。 同時に一斉に突撃を開始するMS。その中で先陣を切るのは巨大MA…今、撃ってきたのは純白のスノウか。 ウィルは一瞬だけ回避機動で離れてしまったドライセンに意識を向け、無事を確認すると目の前の相手に集中した。 片方の…腕?らしき部位が破壊されている。数日前に追われた時には巨大なビームサーベルを生み出していた武装だ。 機体各部の純白は破片や掠り傷によって鈍色に濁り、歴戦の勇士かのような風格を漂わせる。 「スノウ。聞こえてるんだろ?俺だ、ウィルだよ」 電波だけでなく、呼びかける。感応波…スノウなら感じ取れるはずだ。 だが機体はどういうわけか沈黙を続ける。動きもしない。まるで抗うように。 その間にもナスカ級は全く速度を緩めることなくエンドラに向けて突撃する。 対処しようとするドライセンにジンやゲイツがまとわりつき、戦場は乱戦状態へと陥りつつあった。 (ウィル…ウィル・スプリンガー) 「そうだよっ。お前だってこんなことしたくないんだろう?争いなん」 て、好きじゃなかったはずだ。 そう言い終わる前に殺意の弾幕が押し寄せる。まるで拒絶するかのように、暴れまわるスノウ。 104: 700くらい :2020/03/08(日) 19 53 02 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 直観に従って機体を滑らせなければ喰らっていただろう。 狙わずに撃っているとはいえ、当たれば死ぬ。 「話をぉっ!連れ去られたんだったら戻ればいいだろ!!」 ブルームがウィルの脳内に戦術提案…却下だ。 コックピットを狙えば殺してしまうかもしれない! バズーカの爆風やバルカンで弾幕を張る。 牽制になればいいが…あくまで言葉で決着をつけたかった。 (遅い。ウィルは、遅すぎる) Gでリニアシートが軋み、それでも追い付けずに加速する。 白い閃光となって駆け抜けるブルーム…だが冷静さを取り戻したのかスノウの射撃も精度が上がっている。 「ああっ!そんなのわかってるよ!でも、まだ間に合うだろ!?」 傍にいるなんて耳障りの良いことを言って、約束を守れずに故郷でのほほんとしていた自分。 その間、彼女はずっと苦しんでいた。助けを求めても、誰にも手を差し伸べられず。 宇宙港で別れの日に告げた言葉が脳裏によみがえる。 何が元気でね、だ。人類の革新が、ニュータイプが聞いて呆れる。 「強化人間一人救えずに…!何がぁっ!」 距離を取って動き回り、狙いを絞らせない。 だがくるくるとコマのように旋回するスノウは的確に、片腕を失いながらもビームやバルカンで追い詰める。 (今さらっ。混ざり者がプラントで、どれだけ苦しかったと!) 「だからだよ!今度は!」 ビームの軌跡が見える。だが、無差別にばら撒かれるバルカンはついに避けられなくなった。 衝撃とともに鈍く破壊音が球状の空間に反響する。 コックピットは守れたが…これで左腕は使えなくなった。 元から応急処置だ。ここまで動いてくれただけでも満足するべきか。 残った右腕でビームライフルを引っ掴み、ついでに弾の無くなったバズーカをスノウに向けて蹴っ飛ばす。 こともなげに避けられた…まあ、白い悪魔みたいにはいかないか。 相変わらずコックピットを狙え、と囁くブルームガンダム。それを無視してあくまで武装だけを狙う。 MAはMSより小回りが利かない。普通ならNTの射撃をそうそう避けられはしないが、彼女は強化人間だ。 先読みしていたかのような動きで、踊るように掠めさせる。 お返しされるのはまた大出力のビーム。 「助け…ぐうぅっ!」 今度は腰部。右足のバランサーが狂ったみたいだ。 これでAMBACは右腕と左足だけ。 たった一機のMA相手に随分とボロボロになっている。もう、手加減できる段階じゃない。 105: 700くらい :2020/03/08(日) 19 53 35 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp (だから…!ウィルが憎、違うっ。わたしは、殺した…い?) その瞬間、目の前で座り込む少女の姿をはっきりと幻視した。 氷の結晶が降り積もる白と虚無の黒だけが全ての、モノクロの世界。 足元に繋げられているのは古めかしい鎖、ボロ切れを纏ってすすり泣いている。 それでも少女は、身を切る寒さよりも、自由を奪った鎖よりも、枯れてしまった一輪の花に涙を流している。 (雛菊…そうだ、あの花は雛菊だ) なんで今まで忘れていたんだろう?あれほど大事だったのに、この景色の名を。 (雪景色?いや違う) 「雛菊なんだ!そうだろっ!?」 ガンダムが提案するのはこの期に及んでも敵機の撃墜。そこにパイロットの生存は含まれていない。 それじゃあ駄目なんだ。彼女だけは…!観念しろよ、ガンダム! フットペダルを操作し、グリップを操作。真っ赤に警告するシステムを無視して、弾かれるように前へ。 ブルームガンダムが直線に駆ける。弾幕…最低限避けられれば! (ウィル!殺す…!お前を、殺) 急に視界が開けた。彼女の声も聞こえない。ただMS…ガンダムの意思だけが伝わってきた。 まっすぐ、透明に何もかもが見渡せるように。 今ならはっきり見える。俺にできること、しなきゃいけないこと、やりたいことの全てが。 ビームサーベルは手放した…これは必要ないものだ。 道筋は三次元的な軌跡となって脳内に投影される。それに逆らうことなく機体を滑らせた。 一寸違わず。少しでも外れれば、その時点でおしまい。 ビームを潜る。メインカメラが灼けた。まだだ、モニターに頼らなくても見える。 バルカンを庇う。ついに右腕も潰れて壊れたが、構うものか。 ビームサーベル…どうしようもない。振り切られる前に、懐に飛び込む! 「デイジイイィィィッ!」 銀色に汚れたMAと白いMSが衝突する。 両者のコックピットを揺さぶる衝撃。 破壊された左腕。右脚は突撃時の加速に耐えられずもぎ取られている。コードやパイプの端が空しく宇宙空間にたなびく。 めちゃくちゃに撃ち抜かれた右腕も、もはや原型をとどめていない。 だがMAは追撃せず、かといってMSが再び動き出すこともなく…。 しばらく両者は慣性のままに漂い、乱戦の続く戦場からゆっくりと離れていった。 ────────── 暗くもなく明るくもない。熱くもなく寒くもない。煩くもなく静かでもない。 何もない、虚無の空間。 ウィルが意識を取り戻した時、指先一本動かないのを自覚した。 (いや…取り戻してないんだ) 五感が消え失せ、身体がいうことを聞かない。心の鼓動だけが満ちている。 ドクン、ドクンと命の音が滲む。 「ムンゾと違ってプラントじゃ治療を超えた遺伝子の操作が一般的だった。目とか髪とか肌の色、頭の良さとか運動神経まで気軽に弄る技術」 だが、一般公開されたその技術は、数千万…いや数億の命を人為的な操作の末に産み出したその技術は、まだ欠陥の多い未完成の技術だった。 初期に富裕層がこぞって利用し、彼らの子や孫は優秀な遺伝子を携えて産まれてきた。 …出生率の低下という、種としての致命的な弱点と引き換えにして。 「コーディネイターの金持ちが子供を作れないなんてよくある話だった。亭主が不倫で隠し子を作ってしまうのも」 後者はナチュラルにもありふれている。前者も、プラントに比べれば少ないもののない話じゃない。 だからああいうことが起こるのは不思議じゃなかった。 ただ金持ちが死んで、その時発覚した唯一の子が隠し子だっただけのお話。 「…ただ、それだけの話。急死した金持ちの父がコーディネイターで。母はナチュラルの外国人だっただけ」 そして彼女は去った。開戦前のプラントに、コーディネイター至上主義が蔓延していた外国のコロニーに。 数年後、戦況の悪化から十代前半の少年少女までをもMSパイロットとして戦争に送り出すような国家に。 そして少女が苦しんでいる間、故郷の男の子は戦争なんて知らず、かつて約束した女の子をよそに暢気していただけ。 いつの間にか二重になった鼓動音が互い違いに脈を打つ。 ウィルの耳には今も何も聞こえない。目にも何も映らない。 106: 700くらい :2020/03/08(日) 19 54 19 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp だが心はそこにある。確かに感じ、触れ合える。 「来ないで。私の心に入り込まないでっ」 あかぎれした足が雪に埋まっている。寒さからか、飴細工のように儚い背筋が震えていた。 頭上には見渡す限りの星空。瞬きもせず輝く星々は美しいのに、誰にも触れさせない孤独な冷たさがある。 拒絶の言葉に構わず、ウィルは一歩一歩確かめるように歩み寄った。 積雪を踏みしめる軽い音が鳴るたびにスノウは肩を跳ねさせる。 「近づかないでっ。お前みたいな奴はっ、のうのうと平和を楽しんでたようなウィルは!」 「嫌いか?憎いか?俺のことが」 平和が憎いというなら仕方ない。世界と相いれないのなら、妥協できないなら行き着くところまで進まないといけないのだろう。 だがウィルはスノウがそうではないのだと思っていた。信じていた、と言い換えてもいい。 確たる根拠なんてない。 だが…。 「そんなに憎いんだったら俺の目を見て言ってくれ。そしたら帰るよ、このまま」 「………っ!!」 2歩か3歩か…それくらいの距離を開けてウィルは立ち止まる。 しゃがみこんで背を向けているスノウだが、動揺は伝わってきた。 答えを待つ間も雪は降り続ける。深々と冷たくなっていくウィルとスノウの精神世界。 しかし悲しそうに雫が落ちたスノウの足元だけは、少しだけ雪が融かされて雲のように消えていた。 「色々強化されたんだろ?耐Gでも俺より頑丈なんだったら、今からでも意識を取り戻せばいい。俺の身体をプラズマで焼き払えばいい」 「そんな、ことっ…!だって私、もう何人も殺して、戦友もっ、もう死んじゃって…!」 溢れだす言葉と共に涙が足元を濡らす。一面の銀色の中でスノウの足元だけが土を覗かせていた。 跳ねる肩は、震える背中は寒さからではない。悲しみをしゃくりあげて泣きはらすスノウ。 意識せずウィルの足は再び動き出す。 もう、スノウが拒絶することはなかった。 「本当は憎みたくないのに、殺したくないのに…っ!争いたくないのに争いたくなるのっ!」 「…俺にはどうしようもないかもしれない。スノウを救うことなんてできないかもしれないけど」 寄り添うことはできるはずだ。 そう言ってウィルはスノウと同じように傅いて背を撫でた。 絹糸のような髪を覆う薄い雪の層を払う。 かじかんだ指先で触れると、彼女の体温で暖められた。 「辛かっただろう?ごめんな、傍にいてやれなくて」 「う…ぅ。ぅぅううううっ!」 言葉にならない言葉でスノウは滝のように涙を流す。 大粒の雫が次々に地面に染みわたり、雪を押しのけていった。 怒り、悲しみ、安堵、後悔…様々な感情が灰色の凍った大地を温め、灰色の土を潤す。 107: 700くらい :2020/03/08(日) 19 54 50 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 声を上げて泣き続けるスノウを、ウィルは振り向かせる。 抵抗はない。頭を胸に押し付けて抱き着くスノウの背に腕を回した。 「ウィル…ウィルっ。ごめんね、ごめんなさい…っ!」 「謝らなきゃいけないのは俺だ。本当に悪かったよ、今度はもう離さないから」 流す涙はもう地面に滴らずにウィルの胸に滲む。次から次へと溢れる雫が暖かさを伝えている。 俯いて顔を見せないスノウ。その頭をそっと抱えて、上を仰がせた。 暖かい透明な水が頬を伝っている。だがその表情に悲痛さはなく、一心にウィルだけを見つめていた。 「ウィル。私…何人も殺したの。記憶も失くしたし」 「戦争だったんだ、仕方ないさ。それに記憶だって…ほら」 振り返って示すと白み始めた夜明けの空と、光を受けて輝きだす花たち。 雪解け水を花びらに湛えて陽の光を反射しているその姿はまるで宝石のようだ。 ウィルはその中の一つ…足元に咲いていた一輪を摘んで差し出す。 あの日のように。 「失くしたんだったらまた作ればいい。うまくすれば取り戻せるかも」 「この、花は」 「雛菊だよ。あの日の景色、やっと思い出したんだ」 太陽の目を意味する言葉が語源の花は、今やっと昇った日に照らされて咲き誇っていた。 あたりは一面の花畑。黄色い花芯を白い花弁が取り巻く。 彼方へと視線を向ければ白と黄が混じってクリーム色の絨毯となっている。 「もう。…遅いよ、ウィル。私はずっと大事にしてたのに」 「ごめん。だから迎えに行くからさ。だから、スノウ…」 頬に涙の跡が残る顔で見上げ、雛菊のように微笑む。 重なっていた鼓動が遠ざかる。その笑顔も霞んでいく。 「うん。待ってるよ、ウィル」 ────────── 橙とも赤とも取れない薄明かり。きぃんとした耳鳴りが煩い。 それが瞼の裏だと、聴覚が主に異常を訴えているのだと理解するのにどれだけかかったのだろう。 同時に脳裏を苛む頭痛をねじ伏せて目を薄く開けた。 …途端に後悔したが。 はっきりと意識を取り戻したら余計苦痛が増しただけだ。自覚できるくらいには回復した分、より悪質に。 全天周囲モニターの端々には真っ赤な警告が表示され、同時に鳴り響く騒音が機体のダメージを物語っている。 目覚めた瞬間、脳裏に叩きつけられる情報の津波。 ああ、わかってるよガンダム。言われなくても無茶をやったことくらい。 意識を向けるのも億劫なほどにウィルの脳内を埋め尽くすブルームガンダムの警告。 それらはすべて、敵パイロットを無傷で制圧するなんていう無茶苦茶な作戦を実行した代償だった。 「ったく、悪かったってば。機嫌損ねるなよ、ガンダム」 彼にしてみれば当然の怒りだろう。 せっかく勝率の高い戦術を提案したのにそれを却下された挙句、意味不明な目標のために無茶な戦術を提案させられたのだ。 それでパイロットどころか機体まで死にかけていれば文句の一つも付けたくなるというものだろう。 一つ一つ機能を切っていき、怒りに震える相棒を宥めたウィルはブルームのコックピットハッチを開放した。 機体から空気が抜けて音が遠くなる。身体を流されないようにしがみ付く。 その流れが収まった時、ぽっかりと口を開けた空洞からは漆黒の宇宙空間が広がっていた。 四角く切り取られた無限。その中にポツンと佇む、傷だらけのMAへと落ちる。 ゆっくりとスノウに近づく間、周囲を見渡す。既に戦闘は終わっているのか、無秩序な閃光は収まりつつあった。 この分だと自分もすぐに救助されるだろう。 ふと見上げると、頭上には大きな…曲線を認識できないほど大きな地球。 昼の面が彼方に消え去り、茜色の夕方を挟んで夜の面が顔を覗かせつつあった。 108: 700くらい :2020/03/08(日) 19 56 03 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 「っと、ついたな。スノウ…いるか?開けてくれ。俺だ、ウィルだよ」 通信回線を開いて訴える。聞こえてくれていたらいいが、そもそも聞く必要もないかもしれない。 ここまで近づいた今ならわかる。 機体のサイコミュに補助されなくても、少しだけ綻んだ心がMAの中に蹲っているのが。 中で操作したのだろう、警告灯が光ってからハッチが開く。 …気流に流されたのか小さな身体がまっすぐ飛び込んできた。 「ウィル、っウィル!」 「ああ。ここにいるよ、大丈夫」 宇宙服越しではさっきの交感ほどには触れ合えない。 言葉でしか語り合えず、心は建前に装甲されている。 それでも、目の前にいるという事実は何物にも代えがたかった。 しっかりと互いに抱きしめてその存在を確認する。 ウィルは腕の中の熱に、スノウは身を包む暖かさに身をゆだねながら。 ヘルメットをくっつけて接触通信で語り合う。 「ありがとう。ウィル、私を止めてくれて」 「スノウ…あのシステムが戦わせてたんだな。助けてほしいって聞こえたから」 「うん。あれを受けたら戦ったり殺したりすること以外、考えられなくなるの」 NTや強化人間を精神操作するシステム。 人の意思を捻じ曲げているのなら、そんな機械は人を支配しているのと何も変わらない。 「でもウィルのおかげで助かった。あのシステムも逆に利用して無理やり止めるなんて…」 「無我夢中だったけどな。本当に、あの時は何をやってるのか自分でもわかってなかったんだ」 ウィルはただ、強く願っただけだった。彼女に戻ってきてほしいと。 もう一度チャンスがほしいのだと。 「ガンダムが答えてくれたんだ。散々無茶させたけどな」 手足を失って漂うMSの姿。それに申し訳ない気持ちがなくはない。 星々を背にして、闇を背負って見つめる白いMS。 109: 700くらい :2020/03/08(日) 19 56 38 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 見上げているウィルに、何かを見下ろしているスノウが声をかけた。 「ねえウィル。見て…きれい」 胸の中から見上げていたスノウは、今は抱きしめているウィルの腕の隙間から顔を出して覗いている。 …巨大な、真っ暗でありながら眩く輝く地球を。 回転しているうちに足元に来た地球。自分の方が上下逆転したのだろう。 完全に宵闇に包まれた地球の向こうに太陽の光が沈み、幾億の人々が営む生命の光が眼下を照らし出す。 浮かぶ島嶼の灯は小さな花。大陸の巨大都市は大輪の花畑。 中心部のひと際輝く花芯に、衛星都市の花弁が寄り添う。 「ほらっ!ね、これお花畑みたい!」 「ぅわっ、ちょ!手を離したらまずいって!」 ウィルの腕から抜け出し、笑顔で地球を踏みしめるように動く少女。 バイザー越しでもわかる満面の喜び。 手を広げるスノウに、伸ばした手の指先だけをひっかけている少年は焦って引き戻そうとする。 真空の宇宙に、ゆっくりと雲のように流れるコロニーたち。 蝶々のように踊るのは連合の艦隊だろう。 足元には人の命が息づく地球と、光の花畑。 全てを背にして彼女は笑う。 「もう…っ危ないって言ってるだろ!」 「きゃっ!」 引っ掛かっていた指先を掴んで再び胸に抱き寄せる。 短く悲鳴をあげて、しかしすぐ顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。 「焦った?ねえウィル、心配してくれた?」 「うぅ…いやそんな、心配とか…」 そもそも一般人の自分より軍人のスノウの方が宇宙遊泳は上手なのだろう。 しかしどうしても心配になってしまう。 ばつが悪そうに眼を背ける。いたずらっぽい笑みのまま胸に頭を預ける。 すぐ近くにいると、互いの心音が音となって伝わってきた。 「ねえ、ウィル」 「…なんだ?」 「私、自分の名前覚えてないの」 ほら私ジャンキーだから、と冗談めかして言った内容は笑えない。 笑えない自虐ネタなど周囲はどう反応していいのかわからない。 沈痛な顔を浮かべようとして、しかし見つめる視線に思い直した。 彼女はそんなものが欲しいわけではないのだろう。 もっと楽しいこと、喜ばしいものを求めている。 「教えてくれる?私の名前」 「…ああ。スノウ、いやお前の本名は」 花言葉は美と純潔、そして平和と希望。 太陽の目を意味する言葉を語源とし、雪が融け、暖かくなる春に咲くその花の名前は。 デイジー・フローレス 「雛菊の華」 110: 700くらい :2020/03/08(日) 19 57 27 HOST 125-11-141-238.rev.home.ne.jp 以上です。本作の転載は自由です
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『休日日課』 24KB いじめ 虐待 番い 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 都会 現代 虐待人間 できるだけ、シンプル、テンプレ通りになるようにした…つもりです 俺は二十代後半で、社会人である。平日はただのサラリーマンとして働いているが、休日は違う。 俺は休日に、ある事をする。それは日課であり、近場の公園に住む野良ゆっくりを虐待する事だ。 俺の勤める会社は不景気の真っ直中にしては珍しく、土日祝日は労働せずに済む。 かといって、俺には娯楽はあまりない。映画や音楽を楽しむのもいいが、もっとそれ以上の刺激が欲しかった。 そんなある日、俺の趣味を増やす出来事が起きた。会社の帰り道、同僚達と飲み会を終えた後の話だ。 俺はウォッカや日本酒をチャンポン呑みした。その結果、ぐでんぐでんに酔っぱらってしまった。 ふらつく足で向かうのは、勿論自宅である。しかし、千鳥足なのでいつも以上に時間が掛かった。 時刻は未だ午後九時前だというのに、この様である。こんな状態で特殊製粉業を営む小指の無い方に絡まれたら、一溜まりもないだろう。 だから、俺は肩でもぶつからないように人通りの少ない路地を歩いていた。 「おい、ちょっとまつのぜ!」 誰かに呼び止められたので、ふらつきながらも周囲を見回した。しかし、声のした方向を探してみても何もいなかった。 「おい、きいてるのぜ!?」 再び声が聞こえた。その途端、俺は猛烈な吐き気に襲われた。アルコールは胃を荒らすのだ。 俺は耐えきれず、膝に手をついた。そして地面に向かって、胃の中の物を全て吐きだした。 「ゆぎゃあああああああ!!! ぎぼぢわるいいいいいいい!!」 またしても声が聞こえてきた。涙目になりつつも、俺は目の焦点を地面に合わせた。 そこにはゲロに塗れた、気持ちの悪い野良ゆっくりがいた。まりさであった。 「何だ、ゆっくりか」 ホッとして思わずそんな言葉が漏れた。もしこれが、「ファキンジャップぐらい分かるよ馬鹿野郎」と叫ぶ人だったとしよう。 まず、間違いなく俺の命はない。しかし、俺がゲロを吹っ掛けたのは幸いにしてゆっくり。 「ラッキーだったぜ」 「どこがらっきーなのぜ!? まりさ、こんなによごれちゃったのぜ!!」 何だか言葉の受け取り方によっては、いやらしい意味に捉えられなくもない発言だった。 それにしても、まりさは酷く怒っていた。 「悪い悪い、我慢できなくてな」 俺は手刀を切って、詫びた。しかし、まりさの怒りはヒートアップする一方だった。 「ゆっがあああああ!! そんなのでゆるされるとおもうのぜええ!!? あまあまよこすのぜえええええ!!」 「お断りします」 自身の意思よりも早く、俺の口から勝手にそんな言葉が出ていた。 「ゆうううううう!!? そんなことをいうやつは、せいさいするのぜ! ゆおおおおおお!!」 ゲロに塗れた野良まりさが俺に向かって突進してきた。まずい。このままでは俺の脚はゲロだらけになる。 そして、ゲロと千鳥足のコンボで帰宅する羽目になる。それだけは何としても避けたい。俺はふらつきながらも、何とか野良まりさの突進を避けた。 「ゆううううううう!!? にげるなのぜええええええ!!」 「だぜ」とか「のぜ」が口癖の野良まりさ。それは非常に誤解が生まれやすい言葉遣いである。 「にげるなのぜ」と言われた俺は、(お前は)逃げるなという意味ではなく、(まりさはこれから)逃げるという意味に捉えてしまった。 俺の解釈とは正反対に、俺の脚に突っ込み衝突する野良まりさ。少しだけ乾いたゲロが俺のスラックスに飛びかかる。 まりさはゲロの中の、何だかよく分からない物を顔面で潰した。全てが俺の脚で起きた事だ。 「うわあああああああああ!!!」 「ゆやああああああ!! やっばじぐざいいいい!!」 野良まりさが潰した謎の物体は、潰れた途端に異臭を発した。まるで臭い玉のようである。 俺はスラックスが汚れた事にもショックだったが、あまりの激臭が漂った事に関してもショックを受けた。 臭豆腐を食べたわけではないのに、胃で消化されかけたものがこんなにも臭いとは思わなかったのだ。 それは野良まりさも同様で、臭い物体が自分の顔面に張り付いた事にショックを受けていた。それ故の二人揃っての絶叫である。 「このぐぞじじいいいいいい!! ゆっぐじごろじでやるのぜええええ!!」 謎の激怒をした野良まりさは、バックステップで俺から距離を取ると再び突進してきた。 だが、俺もただの酔っぱらいではない。流石にスラックスを汚されたのと、ゲロをしたせいで酔いが覚めた。 俺は野良まりさの突進を再び避けると、近くの地面に落ちていたビール瓶を拾った。中身は空だった。 そして、俺は奇声を発しながらビール瓶を野良まりさの脳天に叩きつけた。 ビール瓶は割れなかったが、野良まりさが割れた。帽子が潰れ、頭全体がU字に凹んだ。 その衝撃のせいだろうか、目玉は勢いよく何処かへと飛んでいった。付け加えると食いしばっていた歯も粉砕された。 餡子が両目無き眼窩から、時間差でスプレーのように噴出された。俺が野良まりさをビール瓶で殴りつけてから、この間、三秒と経過していなかった。 野良まりさは一瞬の沈黙の後で、素っ頓狂な声で悲鳴を上げた。 「ゆ…ゆぎゃああああああああああああああ!! まじざのおべべがああああああああ!! はがあああああああ!!」 帽子が潰れた事について気付いていない事に突っ込もうとしたが、その必要性はないと感じたので俺は黙った。 「どぼぢで、どぼぢでごんなごどずるのぜええええええ!!?」 「いや、お前がしてきたんじゃん。しかも、帽子潰れてるし」 「ゆ゛うううううううう!!?」 しまった。帽子の件については言わないつもりだったのだが、妙な事を絶叫しながら尋ねてくるものだから言ってしまった。 口が滑ってしまった。その際、俺の手に握られていたビール瓶もうっかり滑り落としてしまった。 ビール瓶は再び、まりさの脳天めがけて落ちていた。鈍い衝撃音の後、野良まりさの眼窩から再び餡子が噴出していた。 「ゆぐぶううううううううううう!!!」 奇声を発する野良まりさ。俺の酔いはすっかり覚めてしまったが、何故だか快感を覚えていた。 ゆっくりを制裁するというか、嬲るというカタルシスに目覚めたのはこの時である。 「随分とまぁ、調子に乗ってくれたな」 俺はドスを利かせた声で、今し方失明した野良まりさに言った。すると野良まりさは、見えない事に対する恐怖心からかブルブルと震えた。 更に何か透明な液体を地面に滴らせていた。失禁していたのである。俺は思わず笑ってしまった。 「お、おでがいじばず…まじざがわるがっだでず…だ、だずげでぐだざい…おでがい…おでがいじばず…」 「だぜ、のぜ言葉」は何処へ行ったのだろうか。野良まりさはすっかり大人しくなっていた。 どちらにしてもしっくりこない表現ではあるが、しおらしくなっていた。そして俺に向かって命乞いをしていた。 眼球が無くても、声の方向で俺の位置を確認できるらしい。俺はそれに興味を持った。 俺は汚れたスラックスのことなどお構いなしに、足音を立てないようにそっと野良まりさの背後に回った。 「嫌だと言ったら?」 「ゆひっ!?」 今までと違う方向から声が響いてきたので、野良まりさは体を大きく震わせて驚いていた。 「お、おでがいでず! ま、まじざ、ごれがらまっどうにいぎまず!」 再び位置を変えて俺は発言した。 「真っ当に生きるって、どういう風に?」 「ゆひぃぃ!!?」 「ねえねえ、どういう意味よ?」 「ゆひはぁぁっ!!?」 「教えてくれないの?」 「ゆや…ゆや…」 「ねえねえ、教えてよ。潰しちゃうよ」 「ゆや…ゆや…ゆんやああああああああああああああああ!!!」 話にならず、この時間帯に大声で泣き叫ばれ続けるのは、近隣住民が迷惑する事間違いなしだろう。 俺は地面に転がるビール瓶を再び手に持つと、野良まりさを殴りつけた。 「ゆごっ!!」 一回。 「ゆごべっ!」 二回。 「ゆぐぶぇっ!!!」 三回。 「や、やべぶぼぶげっ!」 四回。 「も、もっどゆっぐびぶらっ!!」 殴り始めて五回目に野良まりさは息絶えた。最期の断末魔も碌に言えぬまま、気付けば黒い染みだけとなっていた。 俺は再びカタルシスを感じた。この言い知れぬ背徳と快感。俺の虐待癖はこれが切っ掛けで始まった。 休日日課 ポマギあき 土曜日。朝九時に俺は目覚めた。仕事疲れが残っていたが、二度寝をする気分にもなれない。 何も考えずボーッとベッドで横になっていると、腹の音が鳴った。時計を見ると既に十一時を回っており、昼前だった。 俺はベッドから起き上がるとシャワーを浴びて、動きやすい格好に着替えた。俺は財布と腕時計を身につけると、公園へと出かけた。 道中でコンビニに寄ると、菓子パンとコーラを購入した。そして改めて公園に向かう。 公園は休日だというのに人は殆どいなかった。というのも、ここには野良ゆっくりが数多く棲息している。 そのせいで子供達に危害が加えられないか心配する親御さん達は、決してここに連れてこない。 まして、カップルがデートに来るような場所でもない。仮にここでデートを行ったとしても、せっかくのキメた服装が餡子塗れになる。 なぜならば、ゆっくり達が人間に喧嘩を売り、人間がそのゆっくり達を足で踏み潰して殺すからだ。 例えば、今、俺はベンチに座っているの。菓子パンを貪りつつ、コーラを飲んでいる。そんな俺の前にゆっくり親子がいる。 そいつらは、俺に向かって声高らかにある要求をしている。 「あまあまよこせ!」 「あみゃあみゃよこちぇ!」 「よこちゅのじぇ!」 親れいむ、赤れいむ、赤まりさの三匹が俺を見上げる形で言ってくる。奴らの狙いは俺が貪る菓子パンだ。 当然、俺は奴らに菓子パンを差し出すつもりはない。菓子パンを食いながら、手で払う仕草をして、消え失せるよう伝える。 手を払う仕草を理解したようで、親れいむが下手くそな芝居を始めた。 「ゆゆ! れいむはとってもかわいそうなんだよ! だんなさんのまりさにはさきだたれて、のこったのはかわいいおちびちゃんたちだけ… でも、れいむはかりがとってもへたくそなんだよ…そのせいで、おちびちゃんたちはゆっくりできないんだよ…かわいそうでごめんね…おちびちゃん…」 俺は突っ込みたくなるのをグッとこらえた。話通りならば、親れいむはガリガリにやつれているはずだ。 だが、親れいむは誰がどう見ても肥えている。普通のゆっくりよりも、数十パーセント大きい。一方で、赤ゆっくり達の頬は痩けている。 「ゆゆ! おきゃあしゃん! ないちゃ、ぢゃめだよ!」 「ゆっくち、ちゅよくいきるのじぇ!」 何とも逞しい赤ゆっくり達だ。鳴き真似をする親れいむを必死に慰めている。励ましの言葉を掛けつつ、その小さな舌で親れいむの頬を舐める。 同情を引く作戦なのは最初から分かっていた。しかし、こうまでされると流石の俺も何か恵んでやらねばと思う。 俺は、いわゆる義理人情を重んずる人間なので、さっそく恵む事にした。 「分かったよ…そんなに辛いなら、恵んでやるよ……」 「ゆ!? ほんとに!? ゆーんとね、それじゃあ、とってもあまあまなごはんさんをちょうだいね! いっぱいでいいよ!?」 「分かった。いっぱいでいいんだな」 「ゆん!」 光り輝く笑顔の親れいむ。親れいむの顔を見て、幸せそうな表情をする赤ゆっくり達。 俺は不憫な家族に恵むために、飲みかけのコーラを親れいむの頭に掛けてやった。 「…………ゆ?」 シュワシュワという炭酸の音が響きながら、コーラは親れいむの顔面を伝って行った。 その内の数滴が、親れいむの眼球に入った。甘いが、炭酸。ゆっくりにとっては催涙ガスを浴びるようなものだ。 「ゆっぎゃあああああああああ!! れいぶのおべべがあああああああ!!」 「お、お、お、おぎゃあじゃんおぢぶびゅっ!!」 「ゆやあああああああ!! れいみゅがちんじゃぶびょべっ!!」 余りの激痛に、親れいむはそこら中をのたうち回っていた。滅茶苦茶な動きをするものだから、自らの赤ゆ達をうっかり潰してしまった。 親れいむの体に赤ゆ達だった残骸が付着していた。帽子やリボン、潰れた平べったくなった目玉に小麦粉の皮。そして小さな餡子。 炭酸が引ける頃、親れいむは目を見開いて絶叫した。 「どぼぢでれいぶのおぢびぢゃんがじんでるのおおおおおお!!? ごれじゃごはんざんもらえないよおおおおおおおお!! ……ゆはっ!?」 痛みのせいで、俺の存在を忘れていたらしい。本音をわざわざ大声で漏らした親れいむは、俺に気付くと息を呑んだ。 一方、俺はそれに対して手を横に振って答えた。 「大丈夫だよ。最初から、お前が赤ゆ達をダシに物を恵んで貰うのは分かってたから」 「ゆっぎいいいいいいいい!! はめやがっだなあああああああ!!」 「ハメるも何も……俺はお前にちゃんと恵んでやったじゃないか」 「なにをめぐんだっでいうんだあああああああ!!?」 「コーラをやっただろう。甘くてシュワシュワなんだぞ」 「ゆううううう!!?」 親れいむは自らの顔面に付着したものを舌で舐め取った。怒りに満ち溢れていた親れいむの表情は、見る見るうちに明るくなった。 「ししし、しあわせー!! も、もっとちょうだいね! そしたら、おちびちゃんのこともゆるしてあげるよ!」 「え、でも、お前が今食ったのって、お前の赤ゆ達の死骸だぞ」 「………ゆ、ゆげぇええええええええええ!!」 勿論、顔面にはコーラも付着していた。同様に赤ゆ達だった残骸も付着していた。 それにしても我が子の潰れた目玉を舌で掬って、美味いというだなんて酔狂なものだ。 親れいむは何とかして吐き出そうと、ずっと嘔吐いていた。俺はその隙に大声を出す。 「おーい、ここにゆっくり殺しがいるぞー! しかも、自分のおちびちゃんを殺した後に食ったぞー!」 「ゆげっ! ゆげぇ……ゆ、ゆうううううううう!!?」 慌てふためく親れいむ。俺の声を聞きつけて、どこからか数匹のゆっくりが集まってきた。 まりさが二匹、ありすが三匹、ちぇん一匹に、ぱちゅりーも一匹。いずれも小枝を口に咥えていた。 やがて、狼狽える親れいむが逃げられぬように、ゆっくりと円陣をつくり囲った。 「ゆっくりごろしはゆっくりできないのぜ!」 「しかも、おまえはげすでゆうめいなれいむなのぜ!」 「おちびちゃんごろしなんて、ぜんぜんとかいはじゃないわ!」 「とかいはっていうのは…おちびちゃんをおもいやってこそのとかいはよ!?」 「ゆやあああああああ!! ほんとうにおちびちゃんころすなんて、げすのきわみよおおおお!!?」 「わからないよー、なんでじぶんのおちびちゃんをころすのかなー?」 「おちびちゃんたちは、ゆっくりしていたのに…でも、もうかえってこないのね…むきゅ!」 「ゆわわわ…ま、まってね! これはちがうんだよ! そこのくそじじいが、れいむをはめたんだよ!」 徐々に距離を詰めてくる数匹に、慌てて俺のせいだと説明をする親れいむ。 一瞬数匹が、俺の目を見た。しかし、俺が首を横に振って否定すると再び親れいむに向き直った。 どうやら、この親れいむはゲスとして皆に知れ渡っているらしい。殺す理由が出来た以上、今の内にさっさと殺したいのだろう。 「まっでね…まっでね…」 「むきゅ! いくわよ!」 ぱちゅりーの掛け声を合図に、残りのゆっくり達は「ゆおおおおおおお!!」と声を荒げながら、親れいむに突進していった。 口に咥えた小枝が、ブスブスと嫌な音を立てて親れいむに刺さっていく。 「ゆぎゃああああああああ!! ゆぎいいいいいいい!!」 親れいむの悲鳴に混じって、小枝が刺さる音が不規則に何度も何度も聞こえてきた。 これが野良ゆっくりが行う制裁の現場なのだろう。俺は菓子パンを囓り、まだ幾らか残っていたコーラを飲み干した。 やがて制裁は終わったのか、数匹は義憤に駆られたような顔をしながら、四方八方へと去っていった。 残された親れいむは未だ生きていたが、最早虫の息であった。 「ゆっ…ゆっ…ゆっ…」 痙攣する親れいむに、俺は近づきそっと声を掛ける。 「シングルマザー、卒業おめでとう」 「ゆっ…ゆっ…もっどゆっぐじじだがっだ……」 俺の声が届いたかは知らないが、直後に親れいむは息を引き取った。せいぜい天国か地獄で、同じように物乞いでもしてるといいだろう。 俺は空になったコーラのペットボトルを見つめた。その先にはゴミ箱を横に倒して、中を漁るちぇんがいた。 先程の数匹とは別の、ゆっくりのようだ。俺はそのちぇん目掛けてペットボトルを投げつけた。 「わぎゃっ!!」 ペットボトルはちぇんに見事に命中した。ちぇんは、体を横にして痛みに震えている。 余程栄養が足らないのか、あるいは痛みに慣れていないのかは分からない。一向に回復する兆しがなかった。 俺はゴミ箱まで近づくと、倒れたゴミ箱を立て直した。 「わぎゃっ! ぶべっ!!」 ちぇんはゴミ箱の中にいたので、立て直した際に底部に顔面でもぶつけたらしい。悲鳴が聞こえた。 「わ、わぎゃらないいいいいいい!! いだいよおおおおおおお!!」 「ゴミ箱漁っちゃダメだろう」 「わ、わがらないいいいい!! もうずっどなにもたべてないんだよおおお!! みのがしてよおおおおお!!」 「ダメだダメだ。人に迷惑掛けて生きようだなんて、おこがましいだろ。ゆっくりのくせに」 「ぢぇんだっで…ぢぇんだっで…」 きっと来るだろう恒例の、お決まりの台詞が。俺の胸は謎の期待感に満ち溢れた。 「ぢぇんだっでわがらないんだよおおおおおおおおおお!!?」 「…………」 「………ゆはっ!?」 しばしの沈黙の後で、ちぇんが台詞を間違えた事に気付いたらしい。しまったという顔をした。 俺は何だか肩すかしを食らったような気分になった。トドメを指す気にもなれず、俺はちぇんに一言掛けた。 「ま、そこでゆっくりしていけよ。明日は雨らしいけども」 「ま、まっで! わがらないいいい!! ぢぇんはいぎでるっでいいだがっだんだよおおおおお!!?」 「言ったところで助ける訳ないけど、お前には凄くガッカリした」 「おでがいいいいいい!! ごごがらだじでえええええ!! わがっでええええええ!!?」 「無理無理、分からない。むしろ、分かりたくない」 「わぎゃああああああああああああああああああ!!!」 ゴミ箱の中で泣き叫ぶちぇんを尻目に、俺はゴミ箱を後にした。無論、散らばったゴミはゴミ箱の中に戻しておいた。 景観もさることながら、衛生も大事だ。ゴミに触れておいて、手を洗わないわけには行かない。菓子パンはまだ残っている。 俺は公衆トイレに行って、手を洗う事にした。洗面所。そこにもゆっくりはいた。 「ゆゆ! れいみゅのおうちしゃんに、なんのよう!?」 「ゆああああああああ!! おにいざん、おぢびぢゃんをおろじであげでぐだざいいいい!!」 まず、洗面所に赤れいむが一匹いた。そして、ここは自分の家だと主張している。 対してそれの親ゆっくりと思われる、比較的汚れていないまりさが俺に懇願していた。洗面所の赤れいむを降ろすようにと。 「……ま、いいけどな」 「あじがどうごばいばずうううう!! なんがのはずみで、あんなだがいどごろにいっぢゃっだんでずぅぅぅ!!」 洗面所と地面までは一メートル以上の高さがある。これを一体何の弾みで飛ばす事が出来たのだろうか。 まさかとは思うが、ゆっくりは不思議饅頭だ。某ゲームの壁に移動してロストする、バグの様な事が起きたのだろうか。 何はともあれ、赤れいむを降ろしてから手を洗おう。俺は赤れいむを指で摘むと、洗面所から持ち上げた。 「おしょらとんぢぇぶびゅうっ!!」 「あ……」 「ゆあ……」 別に意図があったわけではない。文字通り手を滑らしてしまったのだ。落ちたのは赤れいむ。 一メートル以上の高さから、タイル張りの地面へと落下した。当然、赤ゆの皮には耐えきれず弾け飛んだ。 俺とまりさの間に沈黙が訪れた。何を言うべきか困ったが、俺はとりあえず手を洗い始めた。 「ゆあ…ゆあ…ゆ…あ…あ…」 手を洗い終えても、まりさは放心状態だった。というか、気絶でもしているのだろうか。 白目を剥き、口を大きく開けてパクパクと動かしている。気色が悪かったので、俺はトイレにまりさを連れ込んだ。 「ゆあ…ゆ…あ、あれ…おちびちゃんは…?」 「ん? 死んだ」 「しんだ…ゆ…あ…あ…」 泣き叫ぶならともかく、放心状態になるのは余り気に入らない。俺はまりさをトイレに詰め込むと、「大」と書かれたレバーを引いた。 水がトイレに流れ始め、まりさはしばらく回転した。 「ゆご! ゆごごごごご!」 「ジョジ○かよ」 「ゆごぼぼぼぼぼぼ……」 やがてまりさは水流に飲み込まれていった。下水管を伝ってる最中に、溶け出して死ぬ事間違いなしだろう。 翌週金曜日。今日は祝日で俺は昼過ぎに目覚めた。シャワーを浴びて、着替えを済ます。 俺はタバコと財布、爪楊枝の束を持って公園へと出かけていった。ゴミ箱を覗いてみたが、チョコレートの香りで満たされていた。 残された帽子が、ちぇんが溶けて死んだ事を物語っていた。今日は何だか一服したい気分だ。 俺は公園に設置されている、喫煙ルームという場所に行った。喫煙ルームは自動ドアの付いた、全面ガラス張りのプレハブのような部屋である。 今の時代は分煙化というのが進んでいるそうだが、ここに来て一服する人間は殆どいない。なぜならば、ここにもゆっくりがいるからである。 「……ゆ…」 「うごげない…もうだめ…」 喫煙ルームの自動ドアは、感知式ではない。ドアノブが位置するべき部分に、ボタンが付いているのだ。 そこに触れる事で初めてドアは開く。そんなものだから、喫煙しようとする人間についていったゆっくりはここに閉じ込められる事になる。 先程も述べたとおり、ここを利用する人間は余りいない。だから、人間を恫喝しようと尾行したはいいが、出るタイミングを逃してしまう。 そうしてここに長時間閉じ込められるゆっくりは数知れずいる。喫煙ルームのベンチの下には干涸らびた、種類も分からぬゆっくりの死体が散乱していた。 自動ドア付近には、何とかして脱出しようとしたものの途中で力尽きたゆっくりの死骸が。そして灰皿には、何故か赤ゆっくり達の死骸が詰め込まれていた。 生きているゆっくりも、僅かながら存在している。しかし、その全てが虫の息である。 タバコが毒である事は周知の事実であるが、それはゆっくりにとっても変わらない。それどころか、ゆっくりにとっては猛毒である。 成体ならば徐々に体を蝕まれ、死に至る。それは人間と同じだ。しかし、赤ゆっくりは煙を吸い込んだ途端に、すぐさま餡子を吐いて死ぬ。 そんな煙だらけの場所に長時間閉じ込められれば、どんなに元気な個体でも体力は削られる。そして死ぬ。それは共食いを始めようとも変わらぬ事である。 俺は一服し終えると、火の点いたタバコを虫の息であるれいむに押しつけた。 「…ゆ……」 相当熱いだろうにも係わらず、れいむのリアクションはその一言のみだった。つまらないと思いながらも、俺は喫煙ルームを出た。 「ゆあ…まっで…まっで…ま」 後ろから動けずにいるまりさの声が聞こえてきたが、自動ドアが完全に閉まると同時に声は聞こえなくなった。 俺はベンチに向かうと、座り込んだ。瞬間、尻に痛みが走った。 「痛っ!?」 慌てて立ち上がり、ベンチを確認した。俺の座った場所には釘が一本、飛び出ていた。以前は見かけなかったが、老朽化のせいだろう。 というか、いつまで経っても掃除されないゴミ箱に加えて、ゆっくりの死骸が放置された喫煙ルーム。 一体、この公園の整地を任されている業者や行政は何をやっているのか疑問に思った。しかし、今はそれどころではない。 この公園には滅多に人が来ない。とはいえ、このまま釘を放置しておけば、いずれ誰かが怪我をするだろう。 俺のように尻に二つも開けられては困る。俺は近くの草むらへと走った。草むらにはダンボールがいくつもあった。 このダンボールにはゆっくりが棲んでいる。といっても、いずれも野良ゆっくりだ。俺はその内のダンボールを覗き込んだ。 「ゆ?」 「ゆ?」 「ゆ?」 「ゆ?」 四匹のゆっくりが同時に声を上げた。どうやら親子のようだ。親ありす、親まりさ。赤ありす、子まりさという構成だった。 俺は赤ありすと子まりさを無言で摘み上げた。 「ちょかいは! ちょかいは! ありしゅはとりしゃん!」 「ゆゆ! おしょらとんぢぇるみちゃい!」 遊んでくれると思ったのだろうか、子供達は笑顔ではしゃいでいた。一方、親ゆっくり達は慌てふためいていた。 「ゆわわわ! にんげんさん、おちびちゃんかえして!」 「ぷくぅするわよ! ありすのぷくぅはこわいのよ!?」 俺は親ゆっくりを無視して、子供達を抱えたままベンチへと走っていった。 「ま、まってええええええ!! かえしてええええええ!!」 「ぷくううううう!! ぷくううううう!! ぷ…まっでえええええ!!」 後ろから親ゆっくりの声が聞こえてきたが、俺は振り返る事もなくベンチへと辿り着く。 俺はベンチに子供達を乗せると、ポケットからライターを取り出した。 「ゆゆ! なにしょれ? ちょっちぇも、ちょかいはぢゃにぇ!」 「ゆっくちー! おにいしゃん、まりしゃとおいかけっこしようよ!!」 無視して俺は一匹ずつ、ライターで底部を炙ってやった。 「ゆびいいいいいいいい!! あぢゅいいいいいいいいい!! ありじゅのちょかいはなあんよじゃんぎゃああああああ!!」 「ゆうううううう!!? なにやっぢぇるにょおおおおおおおおおお!!?」 数分もすると、赤ありすのあんよは真っ黒焦げになっていた。赤まりさは狼狽えていたが、逃げようとはしなかった。 手間が省けたと思いつつ、俺は赤まりさにも同様の事をした。 「ゆやあああああああああああああ!! まりしゃのしゅんしょくしゃんぎゃああああああああああ!!」 「ゆっ…ゆっ…ちょかいはなありしゅが…なんぢぇ…」 二匹とも焼き終える頃、親ゆっくり達がようやく俺の下へと辿り着いた。 「ゆはぁ…ゆはぁ…お、おちびちゃんかえして! いますぐでいいよ!」 「が、がえぜ…ぶ、ぶぐぅずるぞ…」 「いや、ちょっとここに置いておくだけだから気にするなよ」 俺はそう言って二匹を飛び出た釘に刺した。二匹は団子のように上下に連なった。 「ゆびいいいいいいい!!」 「ゆっびいいいいいいいいいい!!」 「ゆううううううう!!? おぢびぢゃんどぼぢだのおおおおお!!?」 「どがいはじゃないいいいいい!! どがいはじゃないわああああああああ!!」 子供達の悲鳴が聞こえたものの、何が起きたか把握できない親ゆっくり達は泣き喚く事しかできなかった。 「これで、当面は安全だな」 わざわざ、ゆっくりの上に座ってズボンを汚すような人間は居るまい。俺は良い事をしたと頷くと、家へと帰っていった。 「まっでええええええ!! なにがおぎだのおおおおおお!!?」 「ゆっ…ゆっ…ゆっ…」 「もっちょゆっくち…」 「ゆやあああああああああああ!! あじずのどがいばなおじびぢゃんがああああああ!!」 背後から何か聞こえてきたが、俺に対する賛辞と捉えて俺は帰宅した。 翌週日曜日。俺はいつものように公園に向かった。だが、珍しく人であふれていた。 というよりも、人々が群がっているのは公園なのだが、公園入り口より先には行けないようだった。 気になったので人混みを掻き分けて、公園入り口まで辿り着く。そこには複数の警官が必死で、人々を押さえ込んでいた。 俺は喧噪の最中、警官に何があったのか尋ねてみた。 「あの、何かあったんですか!?」 「不発弾です! 危険ですから下がっててください!」 どうやらこの公園に不発弾が埋まっているらしい。公園の奥を見ると喫煙ルームの隣で、自衛隊員やら重機が忙しなく動いていた。 地面は大きな穴が掘られ、そこには大きな投下型の爆弾と思しき物体があった。英語で記述されていることから、どうも戦中に落ちた物らしい。 俺は今までその隣でタバコを吸っていたかと思うと、背筋がぞっとした。 しばらくして自衛隊員が爆弾に近づき、何か作業を行っていた。更にしばらくすると、作業していた隊員が大声を出した。 「信管外しましたぁ!」 随分と間抜けな声ではあったが、俺を含んだその場の全員がほっと胸を撫で下ろした。 やがて爆弾は大きなトラックに運搬されて、どこかへと消えていった。残された隊員達は重機を操って掘った穴を埋め戻していた。 だが、よく見てみるとそれは土ではなかった。 「ゆぎゃああああああああ!!」 「ぢゅぢゅぶれりゅううううううううう!!」 「おしょらとぶぎゅっ!」 「むぎょおおおおおおおおお!!」 「やべでえええええええ!!」 「どぼぢでご…ぐぎゃあああああああ!!」 「ゆっぎゃあああああああああ!!」 「ゆやあああああああああああああああああ!!」 「まじざのおぢびぢゃんがああああああ!!」 「わぎゃああああああああああ!!」 隊員達は土の代わりにゆっくりを埋め戻していた。俺は思わず、声に出していた。 「あれって土の代わりになるのかなぁ…」 その場にいた全員が俺の言葉に頷いた。それから二週間の間、公園では悲鳴が絶えなかった。 やがてそこは一家心中した家族の怨霊が出没するという噂が立ち、心霊スポットと化していた。 そこに訪れた際には、ゆっくりを木に釘で打ち付けて礼をしなければならないという。 それを行わなければ、一週間以内に尻に釘を滅多刺しにされて、呪い殺されてしまうというのだ。 馬鹿らしいと思いつつも、俺の尻に釘が刺さった事も事実だ。ゆっくり達をある意味釘で刺したのも間違いはない。 しかし、尻に釘が刺さったときも、釘にゆっくりを刺したときも周囲に人はいなかった。 一体誰が見ていたのか、皆目検討もつかなかった。その日は電気を点けっぱなしにした状態で寝た。 終