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あげたかったのは、未来で ◆gsq46R5/OE 凡そ殺し合いの舞台には不似合いなオープンカーが、爆速と呼ぶべき猛烈な勢いで疾走している。 運転テクニックは決して上等なものではなかったが、そんなことは気にも留めぬとばかりに爆走する。 もしその進路上に人が居ようものなら撥ねてしまうのではないか。 「否ッ! 皐月様の盾であるこの俺が、守護るべき命を見落とすことなど有り得ん!!」 この光景を見れば誰もが思うであろう疑問を、運転手の青年は淀みなく切り捨てた。 事実、彼の運転は未熟な面が目立ち、感情の昂りがその動作にさえ現れているが……しかし猪突猛進とは言い難い。 鬼龍院皐月の盾として殺し合いに怯える哀れな者達を守ることは、彼にとって何を優先してでも遵守すべき命題だ。 それは、紆余曲折の末に目をかけていた後輩の命が危うい状況にあっても変わらない。 蟇郡苛という男の忠義は、断じて熱に浮かされた程度で見えなくなる程度の重さではないのだ。 しいて言えば、蟇郡の運転は『安全危険運転』。 言うまでもなく矛盾しているが、確かに彼はその言葉を地で行く走行を見せている。 止まらないし止まるつもりもない。今はただ、本能字学園の風紀部部長として―― 「満艦飾……!!」 下衆の道楽で命を脅かされている、善良な一般生徒を守らねばならない。 当然、彼女と一緒に居た二人の少女についてもそうだ。 臨也の言った通り、あのジル・ド・レェを名乗る男はどこまでもきな臭い。 風紀部部長として、皐月の失脚を目論む反乱者と幾度となく戦ってきた蟇郡には分かる。 あの男は殺し合いに乗っている。放送の意味合いは単純明快、誘蛾灯だ。 友人の安否を知りたがる心と、義憤に燃える皆の善意を利用した……あまりにも卑劣で狡猾な作戦。 「許さん……断じて許さんぞッ!!」 蟇郡苛の目が黒い内は、そのような蛮行を見過ごすわけにはいかない。 彼は阿呆ではない。 放っておけば殺し合いは着々と進行していくだろうと考え、香風智乃と出会う前から一切楽観視をしていなかった。 越谷小鞠という無力な少女が殺されたこともある。 ――蟇郡は憤慨していた。 繭の甘言に誑され、私利私欲の為に殺し合いを享受する弱い心の持ち主達へ。 皐月の言葉を借りるならば、まさしく『服を着た豚』と呼ぶに相応しい連中だ。 さしもの蟇郡も殺人の経験はなかったが、この極限状況下でそんな過ちを犯してしまえばどうなるかは想像に難くない。 箍が外れて倫理観は暴走し、次から次へと屍を積み上げる。 止めねばならない。断じて、これ以上そんな豚共をのさばらせるわけにはいかない。 ――蟇郡は憤慨していた。 そう決意していながら、未だ満艦飾と悪鬼、そして二人の少女へ辿り着けない自分へ。 不甲斐なさがひしひしと巨体へのしかかって来るのを感じるが、しかしこれ以上の速度は出せない。 ワープ装置のように利便性に富んだ備えがあれば話は別。 しかし無い物ねだりをしたところで、それがもたらす生産性は真実皆無だ。 だから蟇郡は、ただ四輪を走らせるしかない。それがいち参加者としての彼に出来る限界だった。 ――『――おはよう。午前6時、定時放送の時間よ』 その時、最も憎むべき女の声が蟇郡の鼓膜を叩いた。 それでも彼は速度を緩めない。 自分の使命を果たすべく最善を尽くしながら、忌まわしい声へ耳を傾ける。 挑発するような口振りに血管が浮き出そうになるが、蟇郡は努めて冷静を取り繕った。 それから禁止エリアの説明があって、橋が壊されたという話に移る。 蟇郡は地図を確認しなかった。 まだ時間に猶予はある上、何より片手運転はご法度。自動車学校へ通う者ならば常識だ。 やがて、死者の名前が読み上げられる。 彼はそれでも車を止めなかった。 越谷小鞠の名を聞いた時には少しだけ眉を顰めたが、あくまでそれだけだった。 死者の中に満艦飾マコの名前が出なかったことに対し安堵するような不謹慎な真似はしない。 だから速度も緩めない。車も止めない。 アクセルは踏みっぱなしだ。 次に、二人の名前が読み上げられた。 一人は知らない少女の名前で、もう一人はよく知っている少女の名前だった。 蟇郡が、これから、助けに行く少女の名前だった。 車が、停まった。 ● 蟇郡が放送局を目指すことに変わりはない。 あの場所には満艦飾マコと、インスマス面の外道が待っている。 しかし、彼は何があっても停車させないとまで意気込んでいた車を止め、あろうことかそれを降りてすらいた。 そして、ただ遠く――放送局がある方角を見据え、たそがれていた。 「間に合わなかった――いや」 交流があり、底の知れない女として一目置いていた少女が死んだというのに、彼は涙を流していない。 ただ、その強面はいつも通りの険しさの中に僅かな悲しみを飼っているように見えた。 「最初から、間に合う筈もなかったのだろうな。 折原臨也の言う通り、あくまで彼女達は誘蛾灯……俺としたことが、判断を早まったか」 その発言は、端からすれば冷徹なものにも聞こえたやもしれない。 だが、もしそれを彼の主君……鬼龍院皐月が知ったなら、きっと目を伏せこう言うだろう。 『愚かな』、と。蟇郡の真意にすら気付けぬか、と。 蟇郡は今、自身の判断を恥じている。 どれだけ怒り悔やもうと、失われた命は絶対に戻ってこない。 どんな魔法でも、摩訶不思議な服の力でも――『なんだかよくわからない何か』でも不可能だ。 そして蟇郡苛という男は今、殺し合いを打ち砕くことを使命として行動している。 ならば、単身移動手段を拝借してまで飛び出したのは言うまでもなく愚策だった。 自分勝手も甚だしく、とてもではないが風紀を重んじる人間のすることではないといえる。 彼はやがて静かに、自身の拳を握り締めた。 何から何まで大きな体だから、それは拳というよりもはや岩にさえ見えた。 握り締めた拳が、軋む。 みしみしと音を立てて軋む。 このまま砕けてしまうのではないかと思うほどに、硬く硬く力を込められ凝固する。 力が入るにつれて、落ち着いていた蟇郡の表情が熱を帯びた。 彼を満たしていく感情が何であるかなど、もはや改めて語るまでもない。 「満艦飾……――――うおおおおおおッ、満艦飾ぅぅぅぅぅぅッッ!!!!」 声の限りに叫んだ。 殺し合いに乗った輩に見つかるかもしれないとは思ったが、叫ばずにはいられなかった。 いや。 ひょっとすると、彼は。 その身体に漲り、今にも破裂しそうになっている怒りを――叫び声に釣られてやって来た、どうしようもない外道にぶつけて発散したかったのかもしれない。 言わずもがなそんな言動は、鬼龍院皐月のしもべとして……彼女と学園を守る盾として失格だ。 だが、それも致し方のないことだろう。 蟇郡苛は盾である。そしてそれ以前に、一人の人間だ。 そして彼は初めて、気心の知れた――まして守ると誓った人物を、理不尽に奪われたのだから。 むしろこれが当然の反応。 しかしそこは蟇郡。すぐに吼えるのをやめ、息を整え、愛車の模倣品へ凭れかかるように身を委ねた。 「すまない」 頭は下げなかった。 涙も流さなかった。 それでも蟇郡は、心の底から満艦飾マコに詫びた。 「だが、お前の犠牲……決して無駄にはせん」 再び拳を握る。 今度は暴力的な強さではなく、思いを込めて握り締めた。 怒りに駆られて暴れ回るのでは、愚かな殺人者と変わらない。 そんな存在が、鬼龍院皐月の盾を、本能字学園の風紀部部長を名乗っていい筈もない。 だから彼は、敢えて沸騰した煮汁のように湧き立った心を鎮めた。 それは少しの間身体の奥で渦巻いていたが――すぐ、気にならなくなった。 「さて、……行くか。あのような外道に死後を弄ばれるなど、お前も不本意だろう。満艦飾よ」 放送局へ行くことは変わらない。 満艦飾をちゃんと埋葬してやりたいという個人的な理由もあるし、ジル・ド・レェが討つべき敵であることへの確信も持てた。 ――本能字学園の生徒へ手を出し、あまつさえ死者の安息さえ弄ぶその行い。 「断じて許さん」 この本能字学園風紀部部長、蟇郡苛の目の色が黒い内は。 運転席の扉を開け、乗り込もうとした時。 蟇郡苛は、自分から見て右の方向よりやって来る、金髪のバーテン服を見咎めた。 こんな分かりやすい特徴を持った人間が、よもや会場に二人居るとは思えない。 蟇郡は閉めようとした扉を再び開けば、その男――越谷小鞠を殺して逃走した、目下ジル・ド・レェとさえ並ぶ最大級の危険人物……平和島静雄へと歩き出した。 ● 放送を聞き終えるまでに、静雄は六本の標識と二台の自販機を破壊した。 繭の声が聞こえた瞬間、まず『速度制限』の標識をついねじ切った。 煽るような口振りの挑発で、頭に血管を浮かべて煙草の自販機を拳一発叩き壊した。 死者を読み上げ始めた時に、「止まれ」の標識を引き抜いて地面へ叩きつけへし折った。 越谷小鞠の名前が呼ばれた時、缶ジュースの自販機を持ち上げて思い切りぶん投げた。 豪速で吹き飛んだ自販機は二本の標識を折ったところで、真っ二つになってやっと止まった。 「繭だか何だか知らねぇがよ……手前はアレだな。ノミ蟲野郎の次くらいにはブチ殺してえわ」 女に暴力振るうのは好きじゃない。 だが、あの糞女だけは話が別だ。 どんな事情があろうと、絶対に殺す。 泣こうが喚こうがブチ殺すと、平和島静雄は放送を聞き終え改めてそう思った。 折原臨也の名前は呼ばれなかったのに、越谷小鞠の名前は呼ばれた。 その事実を噛み締める度、静雄は全身の血管が切れそうな怒りに襲われる。 何故、あんな人を陥れるしか能のない男が生きて、何の罪もない少女が殺されなければならないのか。 理屈を付ける気にすらなれなかった。 そんなことをしていると、本当に脳出血か何かで倒れてしまいそうだった。 死ぬのは嫌だし、脳出血なんて怖すぎる。 第一、こんなけったいな場所で命を落とすなど死んでも御免だ。 「…………あ?」 放送が終わって静寂が帰ってきた筈の会場に、どこからか大きな音が響いている。 よく聞いてみると、どうやら人の叫び声のようだった。 野太い声だから女ではないだろうが、どうも剣呑なものを感じる。 どうせ道中だ。平和島静雄は、声の方向へ足を運んでみることにした。 オッサンだろうがなんだろうが、殺されそうなら見捨てるのは寝覚めが悪い。 逆に殺す側という可能性もある。それならそれで、心置きなくぶちのめすだけだ。 静雄は黙って歩いていく。 それから程なくして、オープンカーと、それへ乗り込もうとする男の姿を見つけた。 特に窮地にある風には見えない――しかし、その男は静雄を見るなり車を降り、近寄ってくるではないか。 当然、静雄に尻尾を巻いて逃げる理由はない。 足を止めずに進んでいけば、自然と男と向き合う形になった。 男は大柄だ。静雄も長身な方だが、相手は恐らく二メートル以上は優にあるのではないかと思う。 数秒の睨み合いがあって、それから男が問いかける。 「平和島静雄だな」 「だからどうした。何か用でもあんのかよ」 次の瞬間、静雄は――男の身長が、何倍にも膨れ上がるような錯覚を覚えた。 それは威圧感。平和島静雄ほどの男をして、只者ではないと悟らせる濃密なそれ。 ちとばかし骨が折れるかもしれねぇな……静雄はここまでは冷静だった。 「越谷小鞠を殺したというのは、本当か」 ――――その言葉を聞いた瞬間、ブチ切れた。 血が沸騰する感覚があった。 だが脳味噌は、体感ではマグマも目じゃない熱さに燃え滾っていた。 こいつは今、なんと言った。 越谷小鞠を殺したと言ったのか? よりにもよって、俺が? 意味を理解し、反芻する前に拳を放っていた。 人間へ本気で打てば死んでもおかしくない、鉄筋に容易く風穴を開ける拳が男の腹筋に直撃する。 「手前、喧嘩売ってるってことでいいんだよな? 俺がコマリを殺しただの、そんなふざけたことを宣うってことはよぉ。 俺とやり合いたくてノコノコ歩いてきたってことでいいんだよなぁ?」 「……答えろ」 しかし――男・蟇郡苛は倒れない。 壮絶な衝撃に肺の空気を吐き出すが、それでも静雄の拳を正面から肉体で止めている。 こんな経験は静雄にとっても初めてだった。 蟇郡にしてもそうだ。 極制服を纏ってもいないのに、極制服着用者を凌駕するレベルの腕力を振るわれた。 自分の極制服が防御に特化したものだったから良かったが、そうでなければ余裕は保てなかったに違いない。 成程、確かに聞く通りの男らしい。 だが蟇郡苛は、火に油を注ぐと分かっていて尚問い続ける。 「――平和島静雄ッ!! 貴様が、越谷小鞠を殺したのかッ!?」 拳が飛んだ。 受け止めた。 拳が飛んだ。 受け止めた。 制服の布地を掴み、思い切り投げ飛ばされた。 しかしすぐに立ち上がった。 平和島は既に噴火している。 彼は火口の溶岩が泡立ち破裂する音かと見紛うような声で言った。 「殺すわけが、ねえだろ」 殺すわけがない。 折原臨也へは何度も殺すつもりの暴力を振るった。 さっき殴りかかってきた男も、正直死んでいてもおかしくないと思う。 だが、越谷小鞠は彼らとは違う。 彼女は何も悪いことはしていない。 ただ人並みに笑い、怖がり、優しいだけの少女だった。子どもだった。 「俺が? コマリを? ふざけるのも大概にしやがれ! 聞きてえのはこっちだ! なんだって、アイツが殺されなきゃならなかった! 俺を殺したきゃ俺に喧嘩を売りゃいい! だがあのノミ蟲臨也はコマリを殺しやがった!! だから殺す! あの野郎は、俺が必ず探し出してブチ殺す!!」 しかし彼女は死んだ。殺された。 日常の領域へ踏み入ってきた理不尽な非日常に、あっけなく踏み潰されて消えた。 静雄は吼える。それを蟇郡は口を挟まず聞き、受け止め、頷いた。 『ノミ蟲臨也』の下りで、一瞬だけ眦を歪めたが……それだけだ。 「そうか」 蟇郡は頷いた。 静雄は、何澄ました面してやがると怒った。 彼の顔面を、思い切り殴り飛ばした。 蟇郡は抵抗しなかった。 奥歯が飛んで、殴られた箇所は赤黒くなる。 それを見て静雄は、怒りへ水を差された気分になった。 喧嘩に精通する彼には分かる。 今のは――今の受け方は、『わざと』食らう時の受け方だ。 「俺は越谷小鞠のことも、貴様のことも知らん。 だが、どうやら事実無根の疑いをかけたのは間違いないらしい。 今の一発はその罰として受けた。 平和島静雄。貴様には聞きたいことがあるが……行き先は何処だ?」 「……放送局だ」 「俺も同じだ。乗っていけ」 「おいコラ、待てや」 踵を返して車へ戻ろうとするその肩を、静雄が堪らず掴んだ。 彼の顔には苛立ちがある。だがそこには、僅かばかりの困惑も混じっていた。 「手前、俺を疑ってんじゃなかったのかよ」 「疑っていた。だが、間違いであると気付いた。だから――」 「だから、手前はどうやって俺がやってねぇと思ったんだ」 「……私欲で人を殺すような――そのような心の弱き『服を着た豚』の怒りではなかった」 蟇郡と静雄の視線が交錯する。 静雄の怒りは粗暴であったし、振るう暴力は確かに話通りのものだった。 しかしそれでも、亡き小鞠について憤慨する姿は、蟇郡には殺人鬼のそれには到底見えなかった。 「話は道中で聞こう。少し急ぎの運転になるが、安全運転には善処する」 「盛大に矛盾した発言だな……」 「悪いが、俺もあまりモタモタとはしていられんのだ。 倒さねばならん外道もいるし――弔わねばならない友もいる」 ……正直な所を言うと。 放送を聞く前の蟇郡であったなら、静雄を信用はしなかったかもしれない。 人を殺した挙句嘘をべらべら並べ立てる不届き者として、戦いへ持ち込んでいたかもしれない。 では一体何が、彼に静雄の怒りを理解させたのかといえば。 それはやはり、満艦飾マコの死以外にはない。 彼女の死を知り、蟇郡は一度激昂した。 静雄の怒りを目の当たりにして、その時の自分と彼の姿が重なった。 だから思った。 ――この男は、越谷小鞠を殺してなどいない……と。 「……そうかよ」 静雄もまた、蟇郡の発言を聞き彼の事情を悟った。 先の放送では、普通の死者と別枠で名前が読み上げられた参加者がいる。 大方あの二人は、放送局のジル・ド・レェが配信で撒き餌にしていた中の二人なのだろう。 そしてそのどちらかが、蟇郡苛の旧知だった。 彼もまた、殺し合いの中で喪失を味わっているのだ。 そう理解させられれば、さしもの静雄も怒りを引っ込めた。 示される通りに助手席へ乗り込めば、蟇郡の運転でオープンカーは走り始める。 かくして、激突は必至であった筈の二人は皮肉にも、死別を通じて道を同じくした。 静雄は、大男二人で隣り合わせたぁむさ苦しいな、と内心で愚痴をこぼした。 それから、本当ならばこの車の後部座席に、小さくて怖がりなメイド服の少女が一人乗るかもしれなかったと考えて。 溜息をついて、遠くの空を見た。 【F-6→F-5/朝】 【蟇郡苛@キルラキル】 [状態]:健康、顔に傷(処置済み、軽度)、左顔面に少しの腫れ [服装]:三ツ星極制服 縛の装・我心開放 [装備]:コシュタ・バワー@デュラララ!!(蟇郡苛の車の形) [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:三ツ星極制服 縛の装・我心開放@キルラキル [思考・行動] 基本方針:主催打倒。 0:放送局に行き、外道を討ち、満艦飾を弔う。 1:平和島静雄を信用。彼から話を聞く。 2:皐月様、纏との合流を目指す。優先順位は皐月様>纏。 3:針目縫には最大限警戒。 [備考] ※参戦時期は23話終了後からです ※主催者(繭)は異世界を移動する力があると考えています。 ※折原臨也、風見雄二、天々座理世から知り合いについて聞きました。 【平和島静雄@デュラララ!!】 [状態]:折原臨也およびテレビの男(キャスター)への強い怒り [服装]:バーテン服、グラサン [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:ボゼの仮面@咲-Saki- 全国編 不明支給品0~1(本人確認済み) [思考・行動] 基本方針:あの女(繭)を殺す 0:テレビの男(キャスター)をブチのめす。そして臨也を殺す 1:蟇郡と放送局を目指す 2:蟇郡の話を聞いておく [備考]: ※激昂・暴走状態はひとまずおさまっています。蟇郡との一件もあって、小康状態といったところでしょう。 時系列順で読む Back 貴方に穏々日和(やわ)らぐ Next ノーゲーム・ノーライフ 投下順で読む Back 女はそれを我慢できない Next ノーゲーム・ノーライフ 083 寸善尺魔 蟇郡苛 120 変態ではない!変身だ! 089 変わりゆく平和 平和島静雄 120 変態ではない!変身だ!
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406 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 20 49 09.51 ID ??? ちょっと流れ変える報告させてくれ。 サークルで一昨日あった事なんだがSW2.0のキャンペで、7LVのキャラ作成のレギュでやってたんだ。 その二話目でGMが困りの本性を発揮しやがった。 PC1 ファイター レンジャー エンハンサー リルドラ PC2 ファイター ライダー ドワーフ PC3 プリースト セージ 人(俺) PC4 ソーサラー コンジャラー エルフ PC5 フェンサー スカウト アルケミ グララン 相手はダークトロール*1 ボガードソーズマン*9(GMによるデータ改造でメイスを持って命中+1 ダメージ-2) 砦攻めの陽動部隊というシナリオで、中盤の戦いだった。 まず、敵の数が多過ぎ、しかも開幕は30m距離からなので先手を取ったは良いがロクに攻撃にいけず 前衛が突っ込んで行って袋にされるのも頭が悪いので前衛組は待機。PC2だけかばうを宣言。 俺は拡大/数のセイクリッドウェポンで支援。PC4はファイアボールを撃つがボガードソーズマン*4は落ちず、ダークトロールは言うまでも無く。 相手の手番でダークトロールが制限移動で前に出てフレンジィを自分達に(ダメージ上げの支援。メイスと合わせてソーズマンは弱体化分が消える) 結局命中が上がっただけのボガードソーズマンが手傷負ったにも関わらず全力移動で俺らの陣地まで入る。 すまん続く 408 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 20 58 34.05 ID ??? 続き こちらの手番になったが接敵されているため範囲魔法も放てず、地道に拡大/数のエネボで削るPC4と 拡大/数のフォースを撃つ俺。だがソーズマンはそれぞれ剣の欠片でHPが若干増えてて削りきれない。 基本HP21で死なず30以下のダメージで死んでたから多分1個ずつ入ってる(普通雑魚に入れるのはあり得ない) 結局ソーズマンが5体残る。 相手番でなんとダークトロールが残ったソーズマンにキュアハート。ダークトロールが回復に回るとかあり得ない。 そのままソーズマンは俺とPC4を殴り続け、2人落ちる。この時点でかなりやる気が無くなった。 結局、ダークトロールが降伏勧告を行い、俺らは捕虜となった。 その後、脱出ものになったが準備が悪くgdgdに。 中盤戦で、実際にダイスを振らせて負けイベントとか、後衛を集中狙いするとかはクソだし さらにメイスで命中上げて避けれる目を無くすとか卑怯臭いし、一撃で倒しきれない敵をメタって出してくる上に 何より、格下の敵に良いようにボコられるとか、PLのストレスを考えないクソGMだと思い知った。 409 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 20 59 27.59 ID ??? 実演? 411 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 04 46.51 ID ??? 実演でも捏造でもない。これマジなクソGMの話だ。 トリップは付けるの考えてなかったがこれで良いか? 412 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 07 42.13 ID ??? 大抵の場合このスレではその手の報告は「バランス取りをミスった事故」として片付けられる GMが「この程度で全滅とかないわwww」とか「ここはこのキャラがこれやって~(以下最適解)」とか言ってたなら話は変わるけども 413 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 10 50.15 ID ??? 412 ああ、終わった後皆で問い詰めたらGMの脳内最適解言われたよ。 しかも「まさかあそこでやられる事になるなんて」なんて、バランスを考えずにどの口が言うかと。 しかも最適解は普通辿り付かない答え。 GMの手元に第一話のデータがあって、それで倒せるデータだったとか言ってたが絶対嘘。 414 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 12 06.95 ID ??? 前衛と後衛が近すぎたんじゃね 415 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 21 46.43 ID ??? マップの管理の仕方にもよるけど、初手で前衛が9m前進しておけば良かったんじゃね ソーズマンと21m離れてれば、移動力20のソーズマンは攻撃できない 全力移動してきても、前衛×3とライダーの騎獣で8体止められる 1体は後衛まで抜けてきても、全力移動してるのでそのラウンドは攻撃できないから何とかなりそうな気がするけど 416 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 24 37.40 ID ??? 413 2話だって言ったけど1話はどんな感じだったん 俺的には降伏した後もgdgdしながらでもGMがちゃんと脱出シナリオやってるなら ただの経験不足から来るバランス取りミスった事故っぽいけど 417 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 26 22.25 ID ??? 415 マップは直線での管理だった。 初手で前衛が移動と言うが、ライダーが一応PC4をかばう宣言をしていたんで 前に出るのは不毛と踏んだ。 敵の数が多過ぎて前衛組が前に出ても止め切れなかったしな。 418 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 28 42.62 ID ??? 基本HP21で死なず30以下のダメージで死んでたから多分1個ずつ入ってる(普通雑魚に入れるのはあり得ない) 最近のサプリで雑魚キャラに欠片を一つだけ入れる強化を検討させる文章が存在するのでお前の常識が古い 419 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 28 58.88 ID ??? なあ、これって報告者が1R目にフィールドプロテクションかけて ソーサラーも拡大数あるみたいだしプロテクションにして 2R目でセイクリッドシールドかけたらいくらボガソーに殴られてもかなり止めるんじゃ…? もしくはソーサラーがブランドウェポンかけるか。 420 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 31 10.81 ID ??? これ以上報告者が頑張ると失敗するパターン 421 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 32 02.58 ID ??? ぶっちゃけその程度のバランスミスは困に含まれん気がするなあ GMの失敗ではあるかもしれんが、同じメンツで遊ぶなら初回なら多目に見ようぜ 失敗は誰にあってあるし覚えのあるやつも多かろ それを連発するなら困かもしれんがそうじゃないならそれを困と言われてもこっちが困る 422 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 35 19.83 ID ??? 単純な直線バトルなのに距離に気を配らない 火力にしか目を向けずに必要だった防御向上と弱体化を怠る 脳筋PTに頭を使うバトルを仕掛けたGMのミステイク 423 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 35 28.05 ID ??? 416 1話目は街に対して陰謀を巡らせて守りの剣をどうにかしようとする蛮族との戦い。 敵の数も少なく、やや物足りない感はあった。 418 そのルールは知ってるが世界観的にボガードソーズマンをそれぞれ欠片で強化とかあり得ないだろ。 それに強化されるとしてもボスの取り巻きであって、中盤での雑魚では決して無い。 この場合ダークトロールが欠片で強化されるのは分かるがソーズマン9体はやり過ぎ。 419 セイクリッドシールドとブラントウェポンで何とかなるとかGMも言ってたが 普通それより先に相手の数減らそうとするに決まってるだろ。 抵抗されたらおしまいな絡め手魔法より数減らす方が絶対得策。 424 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 37 56.61 ID ??? まぁ「次は楽しく遊べるようにがんばろうな」で終わる話だなぁ。 クソGMだの困だの言っちゃあかんよ。 425 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 38 28.85 ID ??? 423 君の言うことが正しい正しくないはともかくとして、 スレ住民の共感を得ることはもう無理だから適当なところで諦めた方がいいぞ 426 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 40 28.61 ID ??? トロールは戦を誉とする種族であって脳筋じゃない、トロールは神官戦士なんだし味方の回復、支援を行ってもなにもおかしくはない ファイター2人+フェンサーで前衛技能持ち3人いるんだから、ダクトローが態々制限移動で魔法使ってくれた=ボスは後方に控えて雑魚が突出してくる戦法取ってくれたんだから ファイターとフェンサーで4体ブロックした上でファイター一人をダクトロ足止め用に残し、確実に雑魚の数を減らしていけば特に問題ないだろうよ 特にセイポン使えるレベルならセイシーも使えるんだから、攻撃力低いソーズマン相手に使っておかなかったのが一番のミス 427 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 41 47.22 ID ??? 423 そのルールは知ってるが世界観的にボガードソーズマンをそれぞれ欠片で強化とかあり得ないだろ。 残念ながら最新の選択ルールだと障害になる全ての雑魚を欠片1個で強化することを検討しろと書いてるのよ 全部やれと書いてあるの、君は知らなかったのよ 428 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 42 38.47 ID ??? 425 10回や20回延々と格下の雑魚に殴られ続けて、結局相手に降伏する事を強いるのは困GMじゃないのか? 延々と殴られ続けてストレス溜まらない人間はいないと思うし、ましてや格下にやられるなんて 嫌がらせ目的以外の何者でも無いじゃないか。 430 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 43 05.55 ID ??? 423 少なくとも1話目は普通だったってなら、まあ2話目でうっかりしたってこったな 1話目でPLが物足りなさそうだったから2話では緊張感出したかったとかじゃないの このバランスを何度も続けて「お前ら馬鹿じゃねーのwww」とかあざ笑ったら困GMだが 緊張感出したいあまりに詰め将棋になってたってだけなら数回までは我慢してやってくれよ GMとして試行錯誤してる期間なんだろうしさ 432 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 45 17.13 ID ??? 428 相手の数が多いのは判ってたんだろ? 武器がメイスに変更されてて、命中が上がってる代わりに打撃点が下がってるとも教えてくれてたんだろ? 普通は防御固めてダメージ抑えつつ、相手戦力を確実に削って行く戦法取ると思うぜ 440 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 49 29.61 ID ??? 426 仮に俺らのミスがあったとしても、一手番ミスったら取り返しの付かない戦闘なんて強いるのは困じゃないか? 良くこのスレでも一度のミスで勝敗が決する戦闘をもちかけるGMはクソとかそんな意見があったし そういうもんだと思ってるが。 427 検討しろ、であって入れるべきだ、じゃない。 検討して導入するのもしないのもGMの勝手だとは思うが世界観的には剣の欠片持ってるのは そこまで多くない存在なんだから、そんなのが一つの砦に10体以上いるなんて不自然過ぎる。 430 詰め将棋になってただけならまだ良いんだけどね。 格下にボコられるってのがかなり苦痛なんだわ。しかもSW2.0はインタラプト魔法とかも無いから 20回ずっとGMが命中判定して6ゾロ狙いで回避判定して、ダメージ判定して…とやってると 手だし出来ない時間もかかるし、すごい時間を無駄にしてる感じもするんだ。 「こいつらには勝てないんでイベントで進めるよ」と言ってくれた方がまだマシ 441 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 50 19.96 ID ??? ボガードソーズマンは最大で4回連続攻撃してくるけど、攻撃力自体は2d6+3しかないからな このデータだと2d6+1、ダートロのフレンジィで+2されても2d6+3止まり セイクリッドシールドとフィールドプロクションを併用すれば4点ダメージを防いで、そこからさらに防具で止める ちゃんと補助魔法を使っておけば、数こそ多いけど一撃のダメージは7LvPCには微々たるものでしかないぞ 442 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 21 50 21.95 ID ??? 負けた戦闘に対して「負けると思わなかった」と言われると悔しさのせいで脳内補正がかかって 「こんな雑魚に負けるとかないわ~www雑魚乙www」に聞こえることがある それで余計悔しさが溜まって冷静になれない たぶんそんな感じ 453 名前:406=408 ◆5O.TIjZTpw [sage] 投稿日:2012/05/08(火) 22 09 32.25 ID ??? 分かった。俺らがミスった事でそこを付け込まれてやられた。それは分かった。 442で言われてる事が割と合ってるかも知れない。 だがこれだけは言わせてくれ、GMの脳内正解と合わなかったら全滅が見えるとか そういうのは困GMじゃないかと。 敵が数に任せて後衛ばかり集中攻撃も禁じ手だと思うし 同じエリア内にいるんだから前衛と後衛どちらを殴るかもダイスで決めれば良かったじゃんと思う。 もしくは蛮族は強い相手と戦うのが好きなんだから後衛より前衛を殴りにかかる。 PLがミスをしたならそのまま死にかねない行動を取るんじゃなくてもうちょい緩やかに補正する方法はいくらでもあると思う。 454 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 22 11 07.31 ID ??? うん、いいたいことを言ったんだから速やかに去ったほうがいいよもう 488 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 22 57 12.88 ID ??? GMが提案した2つの魔法は待機した2ターン目からでも使えるから 直接の敗因は報告主が敵HPの増強を読めずに追撃すれば倒せると思い込んで拡大フォースの追い打ちを選んだことだろう だから雑魚のかけら強化はルール通りであっても絶対に認めないしGMの言い出した補助魔法の選択も絶対見たくない心境なんだと思われ 493 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 23 01 17.72 ID ??? なるほど 敗着は2ラウンド目の報告者のフォース数拡大か 報告者アホだろww 494 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/05/08(火) 23 14 43.09 ID ??? そもそも取り巻きが命中振ってるんだから欠片入ってるの確定なのに 基本HP21じゃ落ちずに~なんて言ってる時点で…… スレ325
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それを知らず ◆2lsK9hNTNE 木々のひしめく森の中、鈍色の光りを放つのは伝説の刀鍛冶四季崎記紀が作りし完成形変体刀十二本の一つ、賊刀『鎧』。纏うのは人を人を喰らう生命体――アマゾンへと変貌させる溶原性細胞を内に秘める『オリジナル』のアマゾン、千翼。 まるで壁のような急勾配の坂を挟み、下で構えるのは剣を使わない剣法、虚刀流の七代目当主、無刀の剣士、鑢七花。 千翼が『鎧』を着るのは誰かを殺すための他に無く、七花の構えるも殺人剣術虚刀流を持って相対する相手を屠るために他ならない。 彼らがどのようにしてこのような状況に至ったのか、時間は少し巻き戻る。 PENTAGONでの激闘を終えた千翼は箱庭病院を目的地に定め歩いていた。 人を絶対に食べない決意を固める千翼だが当然腹は減るし体力も消耗する。リュックサックに入っている普通の食料は身体が受け付けないが、病院ならそれ以外の栄養源があるのではないかと考えたのだ。 後ろにそびえるPENTAGONを目印にすれば道を間違えることもなく進むことができた。それは鬱蒼とした森の中に入っても変わらない。もう少し暗ければそうはいかなかったかもしれないが、今は日に照らされたPENTAGONの威容が、振り向けば嫌でも目に入る。 七花を見つけたのはそうやって歩いて急勾配の坂を前に足を止めた時、坂の下を歩く彼の姿を発見したのだ。 山と病院と高い塔、どこか向かう悩んだ末に七花は塔――PENTAGONを選択したのだった。理由は見えていたからというただそれだけの理由だ。 しかし向かう途中で登るのが大変そうな坂にぶつかり、どこか他の道はないかと探しているのだった。 PENTAGONを背にして進む千翼とPENTAGONに目指す七花……出会うのは必然だったかもしれない。 千翼にとって幸運だったのは、その出会いが坂を挟んでのものだったことだ。坂の上にいた千翼は一方的に七花を見つけることができ、うつ伏せになって身を潜めた。 ここで千翼には二つの選択肢があった。 このままやり過ごすか。 それともここで七花を殺すか。 イユを生き返らせるためには全ての参加者を殺さなければいけないが、先程の戦いのダメージもまだ癒えていない。病院までは戦いを避けて進むのも一つの手だった。 しかし千翼が選んだのは前者であった。 理屈ではない。五月を殺した痛みが、重みが、千翼に人殺しから逃げる選択肢を許さなかった。 そうなるとまた別の二択が千翼の前に現れる。 賊刀『鎧』を着て戦うか、着ないで戦うかだ。 PENTAGONでの時のように戦闘中に着れる機会なんてそうそう無いだろう。着るなら戦闘を始める前だ。 しかし『鎧』を使うためにはあの姿――アマゾン態にならなければいけない。『鎧』で抑えているとはいえ制御の難しいあの姿にはできればなりたくない。 消耗しているとはいえ普通の人間相手ならアマゾンネオでも十分に圧倒できる。だが千翼はこの島に来てから何人も普通じゃない人間を何人も見てきた。むしろ普通の人間とほとんど会っていない。戦う力が全く無かったのは五月くらいのものだった。 千翼は前者を選ぶことにした。リュックサックを下ろし、なるべく音を立てないように『鎧』を着込む。ちょうど全て着け終えたところで七花が気づき、坂の上を見上げた。 「あんたは?」 「千翼」 七花の質問はいきなり現れた鎧姿に自然とこぼれただけで、具体的に訊きたいことがあったわけではない。それでも千翼は答えた。 「イユを生き返らせるために俺はお前を殺す」 自分への決意の言葉であったし、死ぬ前に理由くらいは教えておこうというせめてもの手向けでもあった。 人によってはここでイユという名が名簿に載っていたことを思い出し、その死を察することもできただろう。あいにく七花にそこまでの記憶力は無い。それでもイユというのが目の前の男にとって大切な存在だったということくらいはわかる。 この男は大切な存在を蘇らせるために戦っている。話し合いの余地は無い。もとより襲ってくる相手を説得できるような会話力など持っていない。 「そうか、おれは鑢七花だ」 七花は構える。 かくして話は冒頭に戻る。 にらみ合う二人。千翼が鎧の中で吠えた。その姿をアマゾン態へと変え、触手が鎧の隅々まで行き渡る。 賊刀『鎧』を纏う『オリジナル』の千翼、虚刀流七代目当主七花。戦いの幕が今ここに落とされた。 足が地を叩き重い鎧が中へ跳ぶ。 ここで少し補足をしておきたいのだが、賊刀『鎧』には詳しい使い方の書かれた説明書きのような物は付いていなかった。いや、付いているには付いていたのだが、名前や鎧の着方などが書かれていた程度でその詳しい構造までは書いていなかった。 『鎧』のその圧倒的防御力の秘密は”受けた衝撃を他へと逃がす”という性質にある。 『鎧』そのものは特別頑丈でなくとも、衝撃を受けないことで無敵となる。どんな衝撃にも耐えるではなく、むしろどんな衝撃にも耐えないからこその絶対防御――それが賊刀『鎧』だ。 しかしその性質も良いことばかりではなく弱点も持っている。衝撃を逃がす地面や壁と鎧が接していないと――例えば歩いて降りるのが困難な坂を下るために跳んだ千翼のように空中にいると――逃がす先を失った衝撃が逆に内部で爆発して装着者に生身で受けるよりも強いダメージを与えるのだ。 ようするに何が言いたいかと言うと。 千翼は敗北した。一撃で。 歴戦のライダーや鬼殺隊の剣士相手に圧倒した千翼は、鑢七花のたった一発の攻撃に倒れた。 アマゾン態が解除され、身体が地面を転がり仰向けになる。守るはずだった『鎧』からもたらされた衝撃に身体中が肉は裂け、骨は砕けた。人間ではあるば確実に死ぬところをこの程度で済んだのはさすがといったところか。 『鎧』の特性を知らない千翼には何が起きたのかさっぱりわからなかった。ただこれだけはわかった。 殺される。 このままだと自分は殺される。イユを生き返らせなければいけないのに。そのために五月まで殺したというのに。 呆気なく簡単に何も成せなかったまま、死を振りまいただけで死んでいく。何も始まらずに、ただ死んでいく。嫌だ。そんなのは嫌だ。生きたい。俺は生きたい。 立ち上がれない身体で千翼は這ってでも七花から逃げようとする。しかしぼろぼろの身体に『鎧』の重さまで枷となってうつ伏せになることすら叶わない。 一歩一歩する。七花の足音。死の足音。前に出て、彼は千翼の顔を見下ろして止まり――しゃがみこんで目の前に黒い板を見せてきた。 「あんたこれの使い方わかるか?」 「え?」 それはタブレットだった。千翼にタブレットを扱った経験はないが、長瀬たちが似たような物は使っていたし使い方は何となく知っていた。 「……わかるけど」 あまりに予想外の質問に千翼は何も考えずに正直に答えた。遅れてこれが自分の生死を分かつ質問かもしれないと気づいたが、時はすでに遅しだ。もっとも今回の場合は千翼の答えで正解だった。 「あんたおれの使ってくれないか?」 「は?」 「おれは本当もとがめに使われたいんだけどさ、さっき姉ちゃんにさらわれちまったんだ。どうにか取り戻さなきゃいけないんだけど姉ちゃんは強いし、おれは考えるのは苦手だからさ。取り戻すまでの間の仮の持ち主を探してたんだ」 いきなりと思える七花の言葉だが、一応彼なりの論理はある。 そもそも七花はとがめの代わりの持ち主を探すために動いていたのだ。千翼に対しても向こうからに敵意が無ければそのための話し合いをするつもりだった。 聞く耳持たなそうだったので応戦したが。しかし七花が殺す気で放った攻撃を受けながらも千翼は死ななかった。 襲ってくる相手を説得できるような会話力は七花にはない。だが叩きのめして身動きできない相手と話すくらいの会話力はある。 七花はとがめすら使い方を知らなかったタブレットを見せることで、千翼の頭脳を測った。タブレットの知識があるからといって、必ずしも頭がいいとは限らないことは七花にもわかっている。しかしとがめすら知らない知識を持っているということは、とがめに思いつけないことも思い点ける可能性があるということだ。とがめより自分を上手く扱える人間がありえない以上、それは大きな点だった。 もちろんどんなに自分を上手く扱えても危ない奴とは一緒にいられないが、七花から見た千翼は一撃で倒せた雑魚だ。死ななかったことには驚いたが体力だけいくらあったところで驚異ではない。 実際のところは倒せたのは完全に偶然であり、地面に接して『鎧』の特性が十全に発揮している今、とどめを刺すことすら一筋縄ではいかないのだが、そのことに七花は気づいていない。 断れば死ぬのだから絶対に断らないだろうという計算もあった。七花にさえできる簡単な計算だ。当然千翼にもできる。だが、 「なんで――自分を物みたいに言うんだ」 七花の言い方は千翼の癇に障るものだった。 「なんで――俺に使ってくれなんて言えるんだ。俺は皆を殺そうとしてるんだぞ!」 「うーん上手く言えないんだけどさ、ようするに俺は刀なんだよ。刀は一々斬る相手を選んだりしないだろ。そりゃもちろんとがめを殺せとか言われたら流石に断るけどさ」 生きているのに人であるにも関わらず、自分は刀であると、そう七花は言った イユは周りから物として扱われていた。死んで生き返った時に感情を忘れたから。二度と感情を取り戻すことのない動く死体だと。そう扱われた。 でもこの男は違う。感情はあるし、死体でもない。常人離れこそしているが生きた人間だ。なのにこいつは自分が刀だと主張する。イユは自分で主張することすらできないというのに。 イライラした。計算なんて関係ない。どんな利益があるとしてもこんな男となんて一緒にいたくない。 だが千翼は善逸を裏切った。五月を殺した。仲間を逃がすために一人残ったあの男も殺した。今更手段を選り好みするなんて、そんなことが許されるわけがない。 「……お前に指示をするのは構わない。でも持ち主にはならない。お前は人間として俺に協力するんだ」 だからこれが妥協点。物として扱わない。人として一緒にいてもらう。 「よくわかんないけど、それで別にいいぜ。それで俺は何をすればいいんだ?」 七花は深く考えずに適当に同意する。それもまた千翼には不快であったがこれ以上言い聞かせることは諦めた。 「……鎧を外すのを手伝ってくれ」 『鎧』は内部からしか開けることができない仕組みだが、今の千翼の力では外しても持ち上げることができない。 七花は言われた通りに、外した部位からリュックサックに片していく。全て片し終わったところでまた言った 「次は何をすればいいんだ?」 「俺をかついで病院に連れて行ってくれ」 「病院か。傷の手当をするんだな?」 「違う。栄養を取れる物を探すんだ。それがあれば傷は治せる」 七花の見立てではとても自然に治りそうな傷には見えなかった。 しかし七花は真庭蝙蝠のように理屈を無視しているとしか思えない忍法を使う者を知っているし、ここに来てからは火と弾が出る未知の武器や、とがめを襲ったどうみても人外の存在と接触している。本人がそういうならそうなんだろうと思うことにした。 「栄養が欲しいなら『たぶれっと』もあるぞ」 「タブレットなんかでどうやって栄養を取るんだ」 「ああ、いや、さっきの『たぶれっと』じゃなくて。俺の支給品にこんな物もあったんだよ」 そういって七花がリュックサックから取り出したのは、ビンに入った食べる方のタブレット。 「本来のは『なのろぼ』ってもんの栄養源として作られたらしいんだけどな、人間が飲んでも効果はあるらしいぜ。ただ一日が三つが限度で四つ飲むと頭が爆発するらしいけどな」 とがめは「そんな怪しい物飲めるか!」と言っていたが、千翼が飲むかどうかは本人が判断することだ。 タブレットの存在を知っている千翼からみてもそれは怪しいし、飲みたくない代物だったが、これ以上栄養が足らなくなるといよいよ人を食うことも我慢できなくなりそうだ。病院まで無事に辿り着ける保証もない。 千翼は意を決することにした。 「口に入れてくれ」 「わかった」 七花はタブレットを取り出そうとして、しかし蓋の開け方がわからず、千翼は回して開けるんだと教えた。 効果はすぐに現れた。自分の中でエネルギーが増えていくのを明確に感じる。傷の治りも目に見えて治っていく。空腹もいくらマシになったようだった。 扱いに注意は必要だし怖い代物だが、これは食事すらまともに取れない千翼にはこれ以上無い支給品かもしれない。 「すげえな。本当に治ってる」 七花も無邪気に感心している。 二人は知らない。このタブレットがとある世界のとある歴史において、史上最悪の厄災をもたらす原因の一つであったことを。 思えばこの二人はいつも知らないでいた。千翼は母が生きていたことを知らず、自分が溶原性細胞を振りまく存在であると知らず、鑢七花もまた英雄視していた父親がやったことの本当の意味をとがめと出逢うまで知らず、そして自分がどのような意味を持つ存在なのかも知らないでいた。 【C-7/1日目・早朝】 【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】 [状態]:ある程度の空腹、ダメージ再生中、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み [道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語 、ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード [思考・状況] 基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。 1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。 2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。 3:…………善逸、五月。ごめん。 4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。 [備考] ※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」 ※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。 ※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。 ※魔剣グラムは破壊されました。 ※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。 【鑢七花@刀語】 [状態]:健康 [道具]:基本支給品一式、アンデルセンのタブレット@Fate/Grand Order [思考・状況] 基本方針:姉ちゃんからとがめを取り戻す。姉ちゃんから。あの姉ちゃんから…… 1:姉ちゃんからとがめを助ける。 2:ひとまず千翼に従う。 [備考] ※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前 【ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード】 名前の通りナノロボ用のタブレットだが、ナノロボは普段人間が取っているような栄養も有効なので逆もOK、そういうことにしておく。 どうやらアマゾンとは相性が良いらしく、特に効果が高い。 Next 姉は祈り、弟は乗る Previous 君の知らないものばかり 前話 お名前 次話 禁断の華を手折るのならば 鑢七花 南海怨身八裂心技 PHANTOM PAIN 千翼 目次へ戻る
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「はーあ。ったく世界ってのは不思議なもんだよな」 溜め息混じりの気だるそうな声が、鬱蒼と茂る名も知らぬ木にかき消されて消える。 独り言が誰の耳にも届かなかったというのは実に好都合だが、彼にはそんなこと些事でしかなかった。いや、生物学上は『彼女』が正しいのだが、『人格』は確かに『彼』で正しい。 見た目小柄な少女――尤も、その体を拘束する拘束衣のせいで奇抜極まりない風貌になってしまっていたのだが――にとっては、殺し合いなどもはやどうでもいいことだった。 「人識の奴にあのおにーさんも呼ばれてやがるみたいだけどよ……こいつは僕が殺した筈なんだけどな」 訝しげに見つめるは『紫木一姫』の顔写真。 『曲絃糸』使いの化け物じみた戦闘能力を持つ少女――そして、彼が確かに殺した少女。 戦いに勝ちはしたが妹を失ったあの戦いのことを彼はしっかりと記憶していた。 だが、彼はそこでもう一度溜め息を一つ吐いた。 ―――まあ、僕が言えたことじゃねえんだけどな。 殺し名序列第一位《匂宮雑技団》の《人喰い(マンイーター)》匂宮出夢。彼は確かに、澄百合学園の体育館で――――橙色の最終に、殺された。 自らの十八番である一撃必殺の平手打ち《一喰い(イーティングワン)》を以ても勝利できずに、拳一つで腹を根こそぎにされて、確かに死んだ筈だった。 完膚なきまでの敗北で、匂宮出夢の人生は終わった筈なのに、出夢は今ここにいる。 脳内でこの有り得ない状況の解を模索してみても、どうにもしっくりくるものがない。 呪い名の連中の仕業か。 若しくはあの時死んだこと自体が夢だったのか。 どちらも有り得ない。 幾ら呪い名連中といえど、死人を生き返すなんて魔法みたいな芸当は出来ないだろう。 「………まあ、またどうせあんたが一枚噛んでんだろ、狐さんよ」 《人類最悪の遊び人》――――西東天。かつて自分の加入していたとある集団の大元。 他の誰に不可能だとしても、あの男ならば何かしらの手段で魔法的な展開を実現させてしまいかねない。むしろこんな悪趣味なゲームにあの男が絡んでいないはずがない。 そう考えると何だか無性にどうでもよくなってくるが――すぐに。 「考えても仕方ねえよな。ま、精々適当にぶらつくとするよ、ぎゃははは」 殺し合い。 死者の復活。 結局それは、匂宮出夢を根本から揺るがすには至らない。 積極的な殺し合いをする気もないが、別に正義のヒーローになりたいとも思わない。 ただあてもなくふらついて、流れに身を任せてやるとしよう。 その思考回路には一抹の不安もなく、ましてや自分の命の心配などまるでしていない。 ある意味では当然の話、まず匂宮出夢に打ち勝てる人間がこの会場に何人居るかも分からない。 ただ一度敗北したからといって、殺し名序列第一位の実力には何も影響しては来ない。 もし殺されそうになろうが、その時は改めて叩き潰せばいい。 出夢の思考回路はそこに完結する。 ドガァァン。 深夜の森を支配する木々のざわめきを切り裂いて、エリア一帯に響き渡る爆音。 煙が立ち上り、焦げ臭い臭いが薫り出す。 出夢の居た場所はモロに爆発を受けており、まず即死は免れないだろう。断末魔の一つもなく、森の中に再び沈黙が戻り始める。 「………まずは一人、ってところね」 左目に眼帯。どこかでミリタリーな雰囲気の女性がゆっくりと木陰から姿を現す。 雨流みねね―――未来を予知する日記を持つ国際手配中のテロリストである。 みねねが投擲したのは簡単に対人手榴弾。テロリストである彼女にとっては馴染み深い武器であったし、勿論殺傷能力だって十二分の威力を秘めた代物だ。 響き渡った爆音の反響が夜の闇に吸い込まれた時。 みねねの前方、爆発地点に一人の少女が立っている。 それは確かに手榴弾を喰らった筈の少女であった。が、どういう訳か煤を被っている以外に外傷はない。 "少女"はその可愛らしい口元を真横に引き裂いた笑顔を作る。 「こりゃあ随分なご挨拶じゃねーかおねーさん。いきなりこんないたいけな子供に爆弾投げつけるなんざ殺されたって文句は言えないぜ、ぎゃはははは」 みねねの顔が僅かに引きつる。目の前に居る存在の厄介さをやっと理解したようだ。 「………不意打ちで投げられた手榴弾の爆発をそうも完璧に避ける奴のどこがいたいけだ、クソガキ」 服のポケットからおもむろに携帯電話を取り出して軽く眺めて、みねねは出夢を見据える。 その瞳に乗せられている感情は明確に敵意。 匂宮出夢はここで改めて、目の前の女が《乗っている》と認識した。 どうも攻撃してくる様子がないところを見るに、出夢と殺し合う気はないらしい。 実の所種を明かせば、出夢は最初から何者かからの殺気を感じていた。 明確な殺気を感じていながら逃げ惑うことがないのは、さすが《殺し名》と言うべきか。 後は単純に―――とはいえ常人に真似出来る芸当ではなかったが―――、投げられた手榴弾の音に合わせて距離を取り、爆破してから爆破地点に戻ってあたかも爆死したかのように見せただけ。 言葉にすれば簡単なものではあるが、並の殺し屋なら失敗して敢えなく肉片だろう。 だがみねねに勝機がないとも限らない。 雨流みねねの持つとある《日記》があれば、如何に出夢が怪物じみていたとしてもかなり絶大なアドバンテージを得ることが出来る。こと《逃亡》においては右に出る者は居ない。 《人喰い》はその場から一歩も動きこそしないが、そこに隙は一切なく。 テロリストは静かに二個目の手榴弾を取り出して出夢を睨み付ける、そこには確かな自信があった。 片や余裕、片や――やはりある種の余裕があったといえよう。 「……だー、やめだやめ。初めから危ない橋は渡りたくないものね」 「懸命だと思うぜ、かくいう僕もあんま乗り気じゃなかったしな、ぎゃはは」 みねねは手榴弾をデイバックに戻し、携帯電話に記されている《日記》を確認する。 匂宮出夢からすれば警戒を解いた証だったかもしれないが、その《日記》に記されている事柄こそが雨流みねねの最大の切り札であり、同時に最大の弱点でもあるのだった。 いや……媒体の携帯電話そのものが最大の弱点というべきか。 「まあ少しお喋りとでも洒落混ませてもらいましょうか。丁度互いに《今は》やり合う気はないわけだし、情報交換しておくのも悪くはないだろう?」 「僕は構わねえぜ。ま、有益な情報なんざ一つくらいしか持ってねえけどよ」 「そうかよ。だがまずこちらから質問させて貰う――お前は何だ?」 お前は何だ。 その言葉の意味をすぐに察した出夢は、にやりとその少女の顔面を歪める。 まあそんな質問が出るのも無理はないよな、と心中では思っていた。 「僕は殺し屋だ。匂宮兄妹の兄の方。おねーさんもどうやら只の一般人って訳じゃなさそうだし、《匂宮》って言えば何となく僕が何者かは分かって貰えたろ、ぎゃははは」 全く分からなかったが、これ以上の詰問は無意味と判断する。 みねねとて一つの場所――或いは国――にいつまでも居座っている訳ではない、幾らテロリストとはいえ、裏社会の事柄に関して知らないことがあっても無理はない。 それに殺し屋なんて職業だ、そんなにほいほい身辺のことを話しはしないだろう。 幾ら何でも若すぎるとは思ったが、これ以上は時間の無駄である。 「で、その匂宮が持ってる《情報》ってのは何だ」 「あー……信じられなくても無理はねえと前置きしておく」 一呼吸。 「僕こと匂宮出夢は一度死んでいる。名簿にも僕が確かにこの手で《喰らった》奴の名前が載ってる――――因みに僕は腹を拳で根こそぎにされての失血死だった」 「…………成る程な、どうりでおかしな奴の名前が載ってる訳だ」 「驚かないんだな、《死人が生き返ってる》ってのに、ちょいと冷静すぎだろ、ぎゃははは」 これには流石の出夢も驚きだった。死者蘇生なんて圧倒的な非日常が今まさに目の前にあるというのにみねねは納得したような様子だ。 対する雨流みねねは、自らの中に渦巻いていた疑問が綺麗に解けるのを感じていた。 《サバイバルゲーム》の中で死亡した筈の男、《4th》こと来須圭吾。確かに消滅する瞬間を見届けた―――確かに《死んだ》人間の名が名簿に記載されている理由。 思えば至極当然、主催するのはあの使い魔、ムルムルだ。 時空と空間を統べる神、デウス・エクス・マキナに一番近い位置に居たあいつになら、因果律云々のちょっとした仕掛けで死亡する筈だった《ゲーム参加者候補》に延命処置か回復措置を取ることで今日この時まで保存していたと考えれば不思議はない。 「おいおい一人で納得してんじゃねえよ、僕にも説明してくれ」 話しても何ら問題はない。だがしかし、それをありのまま伝えるのはある種まずい。 《神》の使い魔が云々など伝えたところで引かれるかぶちギレられるかのどちらかだ。 仮に納得されても――《何故そんなことを知っているのか》を聞かれてしまえば最悪、《日記》について話さなければならないかもしれない。 優勝を目指すにあたり、いずれはこの殺し屋とも死合うことになる。 本当のところ、誰か適当な奴にでも殺されてくれれば一番有難い話なのであるが、出夢の実力から推測するにゲーム終盤まで生き残る可能性は十分にあるだろう。 ならば――自らの持つ秘策は、出来るだけ隠し通しておくに越したことはない。 もし情報を拡散されでもしたら目も当てられない、アドバンテージが一気にディス・アドバンテージに早変わりしてしまうことになる。 そして雨流みねねが取った選択は、単純なものだった。 安全性は確認できているからこそ、一切の恐れなく実行できる手段。 「じゃあな、匂宮出夢」 出夢の視界がたったの一瞬で白煙に包まれた。 スモーク弾。みねねも何度か世話になっている主に逃走用の小道具。 勿論普通なら背後の出夢に追い付かれる危険もあったろうし、出夢が本気で殺しにかかってくれば現在の装備で打ち勝つのはかなり無謀な挑戦だ。 では、何故自信を持って背中を向けて逃走なんてことが出来たのか。 それは全て―――雨流みねねの《未来日記》の性質に起因していた。 ■ 【未来日記(みらいにっき)】 一言で説明するならまさに言葉の通り《未来の事柄を表示する日記》。 選ばれし12人の日記所有者たちが《神の座》を巡り殺し合うサバイバルゲームにて用いられたそれは本来の未来とは分岐したこのバトルロワイアルにおいても所有者を助ける。 勿論デメリットも存在し、未来日記の所有者は日記が破壊されれば死ぬ。 自分の心臓が体外にもう一つ露出しているようなものである。 □ 「……ったく、情報だけ得て逃げるなんざ普段の僕なら殺してたぜ」 雨流みねねが逃げ去り、白煙も晴れてきた森の中――匂宮出夢は不満気に呟いた。 もしもいつも通りの《人喰い》だったなら今頃みねねは最悪肉塊になっていてもおかしくはない。 だが、今の出夢がみねねを見逃したのはとある理由からだった。 匂宮出夢にとって、雨流みねねとの情報交換は決して無益なものではなかったのである。決して明確な情報ではなかったが、みねねのあの不可解な態度からでも十分読み取れる。 この世界には、何かがある。 《殺し名》《呪い名》の域ではもはや説明さえできないような何かが。 根拠なんてものは《今ここに匂宮出夢が存在していること》で十分だ。 知る。 死人さえ蘇らせる世界の道理に反する理を知ってみたい。 これはもはや只の好奇心だった。 どうせ一度死んだ身だ、思う存分誰にも左右されずに動くのも悪くないだろう。 「えーと……ちょっといいかしら」 森の中に響くよく透き通った綺麗な声。 それに向かって振り向き、匂宮出夢はバトルロワイアル初の同行者を獲得する。 銀髪の美女。正確には人間ですらない人形が、そこにいた。 ◆ 出夢の追跡がないことと、《日記》にて危険がないことを確認して、ようやく一息吐く。 命辛々、というに相応しい邂逅であったが、得られた情報は決して無益なものではない。 死人が生き返っている―――それがムルムルの力であると仮説を立てられた。 即ちこの《ゲーム》を勝ち抜けば、雨流みねねの目的は達成できる。 「上等だ……サバイバルゲームだろうがルール無用の殺し合いだろうが、みねねの目的は何一つ変わりゃあしない」 自らを鼓舞するかのように敢えて結構な音量で独り言を言う。 テロリスト・雨流みねね。彼女の目的、それは――――《神を殺す》ということ。 自らの全てを奪った《神》を殺すことこそ、みねねの悲願。 「(匂宮出夢ねえ………あんな化物まで居るとなりゃあ結構難儀なことになりそうね、さすがにマシンガンで撃たれでもすれば死ぬだろうが……やっぱ手榴弾(こいつ)じゃ物足りないか)」 仕事の前には必ず成功した自分をイメージする。 参加者名簿を見る限り、雨流みねねの知る人物は四人といったところだ。 《サバイバルゲーム》にて敵対した日記所有者が三名、後は顔見知りの探偵が一人。 内一名はサバイバルゲームにて脱落、死亡した筈の人間である。 だがみねねが"9th"であった頃から危険視していた人物が、今のみねねにとっても最悪クラスの難敵といえた。 "2nd"我妻由乃。 と言っても本来の我妻由乃かは不明、《偽者》である可能性が非常に高い。 しかしその危険性は超一級、目的の為、愛する者の為なら手段を選ばぬ異常な少女。 匂宮出夢よりも、みねねには我妻由乃こそが最大の警戒に値する人物だった。 「だが…………あいつらも殺すことは変わらない」 "1st"にはある種の好感さえ抱いていたが、それも今は関係ない。 奴は甘い。恐らくこの殺し合いでも甘さを捨てきることができないはず。 そんなことで生き残れるほど甘いゲームではない――――きっと、些細なミスで破滅する。 2ndがなければ奴は無力に等しい。 容赦はしない。 神を殺す為に優勝してやる。 隻眼のテロリストは、闇の中で静かに動き出す――――――――。 【未明/B-1 森】 【雨流みねね@未来日記】 【装備 なし】 【所持品 M26手榴弾(残り二個)@現実、逃亡日記@未来日記】 【状態 健康】 【思考・行動】 基本 神を殺す為に優勝してやる。 1 匂宮出夢、我妻由乃には最大限に警戒。 2 もっと強力な武器を集める ※9巻、11thに手榴弾を投げる前からの参加です。 ◇ ―――聖杯戦争ではない。 アイリスフィール・フォン・アインツベルンは思考の果てにそう結論付けた。 理由は単純に、主催者を名乗る二人の人物は《第四次聖杯戦争》において名前すら挙がっていない人物であったからに尽きる。 彼女の夫、衛宮切嗣は優秀な《魔術使い》だ。 自らの魔術に驕らず、文明の利器を最大限に生かして戦う魔術師殺しの暗殺者。 更に彼の相棒というべき女性の力も相俟って、アイリスフィールたちは聖杯戦争におけるマスター達の素性を何のバックアップにも頼らずにある程度知ることができた。 その調査結果に、《フィアンマとムルムル》なんて人物は確かに居なかった筈だ。 素性の知れぬ輩も居るには居るが、あそこまで強大な魔術師が居たなら切嗣が察知しない筈がない。 「じゃあ……一体何が起きてるっていうの?」 理解不能。そんな四字熟語で、アイリスフィールの心境は説明できてしまう。 聖杯戦争関係者ですらない魔術師が、願望の成就などを語ることも、そして《願望器》を卸す為だけに生み出されたホムンクルスである自分がわざわざ呼ばれた意味も―――だが、何よりも不可解だったのは自らの体を蝕む異変が完全に消え失せていることだ。 《聖杯の器》であるアイリスフィールにとっては、体力の枯渇や体調の不良はまさにあるべくして起きた異変だった筈なのだが、何故かそれが全快している。 かの騎士王の宝具でさえ完全には癒せなかった不調を取り除くなど、有り得ない。 ―――フィアンマとムルムル、彼らは一体何者なのか。 少なくとも封印指定クラスの大魔術師であるのは明白だし、あの右肩に浮いていた歪極まりない腕、三本目の腕とでもいうかのようなモノは只の霊装でもなさそうだった。 宝具の域にさえ達するかもしれない、イレギュラーすぎる物質。 もしあの《第三の腕》が本来の使われ方をしたなら、きっと恐ろしいことになる。 「(切嗣……貴方ならきっと、このゲームに反逆するはず。大丈夫よ、セイバーと切嗣が居れば殺し合いなんて些細な障害に過ぎないわ)」 他には、強いて言えばあの豪放な征服王、イスカンダル。 あの大男も決して殺し合いに乗るような輩ではないだろう――――本来敵である存在だが、味方に付けられたなら相当頼もしい存在に早変わりだ。 決して、絶望的な状況ではない。 「(問題はこの首輪だけれど……こんな物でサーヴァントを殺せるなんてやっぱり信じられないわね……あの二人の言葉が真実なら、これを外せれば爆弾として利用できそう)」 尤も機械にはとことん疎いアイリスフィールに、そんなことは不可能だったが。 思う―――もしも聖杯で《争いの根絶》に成功したなら、こんな悲劇も防げたのか。 だとすれば、余計ここで死ぬわけにはいかない。 無様に逃げ惑ってでも生き続け、切嗣や他の参加者たちと共に帰らねばならない。 《器》である自分が死ぬことになろうとも、聖杯を切嗣の手に収めなければいけない。 幸い、只の無力な存在では終わらない、終わらせないだけの魔術はある。 《生き抜くため》に習得した術を使えば、殺し合いに乗った者を拘束することもできるはずだ。 かつて一度破られてこそいるが、それでも便利なことには変わらない。 その時、アイリスフィールはその可憐な顔面を訝しげに歪めた。 「言峰、綺礼――――――」 宿敵の名前を呟いたまさにその瞬間、彼女のやってきた森に白い煙が吹き荒れた。 思えば迂闊だったのだ、《大きな爆音がしたからとりあえず状況の確認を試みた》なんて、夫の衛宮切嗣が聞いたなら頭を抱えてしまうかもしれない。 煙に咳き込み、そして徐々に晴れていく視界に捉えたのは。 ―――幼い少女の、姿。 ◆◆◇◇ 「僕は匂宮出夢っていうんだ、ぎゃははは」 それが開口一番、アイリスフィールに放たれた言葉だった。 「私はアイリスフィール・フォン・アインツベルンよ、よろしくね、出夢ちゃん」 結論。アイリスフィールは匂宮出夢を信用した。 意外なことに、信用した理由は出夢の奇抜極まりない《服装》にあった。 拘束衣、そんなものを着ていては煙幕弾を撃つなどまさに不可能な芸当だ。 少なくともアイリスフィールの常識ではそうなっている。 それもそうだ、素手で拘束衣を引きちぎるような人間、しかも少女なら尚更そんな人間はいない。 「おいおいおねーさん。ちゃん付けはやめてくれよ、心は男の子だぜ」 「え……そうなの?」 世間知らずな彼女はただただ困惑せざるを得なかったが、とりあえず従うことにする。 「出夢くん……でいいわね、それじゃあ」 ぎゃははは、という出夢の笑い声が未明の森に響いていた。 しかしふと思い立ったようにアイリスフィールの方に向き直ると、笑顔のままで一つ、質問した。 「おねーさん、あんたってさ……死者蘇生のやり方って知ってる?」 【匂宮出夢@戯言シリーズ】 【装備 匂宮兄妹の拘束衣@戯言シリーズ】 【所持品 支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態 健康】 【思考・行動】 基本 ぶらぶらする。特に殺し合う気はないが、襲われたら容赦しない 1 おねーさん(アイリスフィール)から《自らの知らない常識》について聞く 2 《自らの知らない常識》を調べてみる 3 おにーさん(戯言遣い)、零崎人識については保留、無理には探さない ※『ネコソギラジカル』、死亡後からの参加です ※服装は『ヒトクイマジカル』、西東診療所での服装です ※主催者が《死者蘇生》の技術を持っていると確信しました 【アイリスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/Zero】 【装備 なし】 【所持品 基本支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態 健康】 【思考・行動】 基本 殺し合いには乗らずに、切嗣、セイバーと殺し合いを打倒する 1 出夢くんと行動してみる? 2 切嗣、セイバーを探す。他に信頼できそうな同行者も探しておきたい。 ※キャスター撃破後からの参加です。 ※体の不調は回復しており、少なくともバトルロワイアル中に進行することはありません。 【M26手榴弾@現実】 雨流みねねに支給。三個セットになっている。 マーク2手榴弾の後継として開発された代物で、《レモン》の俗称で呼ばれることがある。 【逃亡日記@未来日記】 雨流みねねに支給。所有者の《逃亡ルート》を予知する未来日記。 見える未来が三時間先までとなっており、破壊されれば当然所有者は死亡する。 【スモーク弾@未来日記】 雨流みねねに支給。逃走用の煙幕を発生させる。 原作では天野雪輝たちからの逃走に利用された。
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234p また梵天に生まれるには、有漏定(うろじょう)の引業の上に、 慈悲の行を加えて生まれるのです。 今、この貧しい女性が、子を思う慈悲心の故に梵天に生まれたのは、 通常のあり方とは違っています。 これについて章安の二つの解釈がありますが、 結局は子を思う慈悲心より他に何もありません。 思いを、 子供という一つの対境に集中する、これは定善(じょうぜん)に似ています。 ただひたすら子を思う、これはまた慈悲にも似ています。 ですから他の善根は無かったけれども梵天に生まれたものでしょうか。 また仏になる道は、華厳宗の唯心法界、三論宗の八不(はっぷ)中道、 法相宗の唯識(ゆいしき)、真言宗の五輪観(ごりんかん)なども 実際には叶うとは思えません。 ただ天台の一念三千こそ仏になる道であると思われます。 ところが、この一念三千についても、 私は少しも仏智をもって正しく悟っていません。 しかし、釈尊一代の経々の中では、 この法華経だけが一念三千の玉を抱(いだ)いています。 他の経々に説かれた教理は、玉に似た黄色い石です。 例えば、砂を絞(しぼ)っても油は出てこないし、 石女(うまずめ)に子が出来ない様なものです。 諸経は、智者でも尚、成仏出来ませんが、 法華経は愚人でも成仏の因を植える事が出来るのです。 「解脱を求めなくても、おのずから解脱に至る」等とはこの事です。 日蓮並びに我が弟子は、どの様な諸難があっても、 少しも疑う心がなければ自然に仏界に至るのです。 天の加護がないからといって疑ってはなりません。 現世の安穏(あんのん)でない事を嘆いてはなりません。 我が弟子にこの事を朝に夕に教えてきたけれども、疑いを起こして皆 信心を捨ててしまった事でしょう。 おろかな者の常として約束した事を真(まこと)の時には忘れてしまうものです。 妻や子をかわいそうだと思うから、 現世の生き身で別れる事を嘆(なげ)くのでしょう。 しかし、幾度(いくたび)もこの世に生まれ経てきた長い間には 何度も妻子との別れはありましたが、 親しんだ妻子とは心ならずも別れたのでしょうか。 いつも同じ様な別れだったのです。 ですから、この度(たび)こそ、我が法華経の信心を破らないで成仏し、 霊山(りょうぜん)に参って、返(かえ)って妻子を導きなさい。 48 適時(ちゃくじ)の弘教を明かす 疑って言うには、念仏者と禅宗などに対して、 無間地獄へ堕ちるなどと言っているのは、争う心があり、 きっと修羅道に堕ちるでしょう。 また法華経の安楽行品に 「好んで人及び経典の過失を説いてはならない。 また他の諸々の法師に対して軽んじたり自分を慢(まん)じたりしてはならない」 等と説かれています。 あなたはこの経文に相違しているから天に捨てられたのでしょうか。 答えて言うには「摩訶止観」に次の様に説かれています。 「仏が弘経の方法を説かれたのに二つの説がある。 一には摂受(しょうじゅ)、二には折伏(しゃくぶく)である。 安楽行品に『他の長所・短所をあげつらうな』という様なものは、 これ摂受の意味である。 涅槃経に『刀や杖を持って、謗法の者の首を切れ』というのは、 これ折伏の意味である。 与(よ)・奪(だつ)即ち相手の主張を認める立場と、 真実を明らかにして相手の主張を退(しりぞ)ける立場と、 その方法は異なっているといっても、共に衆生を利益(りやく)させる」 等と。 これを解釈して「止観輔行伝弘決(しかんふぎょうでんぐけつ)」には 「仏が弘経の方法を説かれたのに二つの説がある等について、 涅槃経に『刀や杖を持って』というのは、 涅槃経の第三の巻に正法を護る者は五つの戒律を持たず、 行儀作法を修めなくても良いと説き、 及び下(しも)の文に 『仙予国王は謗法の首を切った』等と説かれた文。 又同じく涅槃経に 『新医(しんい)は乳薬(にゅうやく)を禁止して、 もし更に乳薬を用(もち)いる事があればその首を断つべきであると言った』 等の文。 これらの文は全て正法を破る人を折伏しているのである。 一切の経論(きょうろん)はこの摂受(しょうじゅ)・折伏の二つの方法を出ない」 等と説かれています。 「法華文句(ほっけもんぐ)」には次の様にあります。 235p 「問う、涅槃経には国王に法を親しく授(さず)け付嘱(ふぞく)して、 弓を持ち矢を持って悪人を挫(くじ)き屈服させよ、と明かしている。 この法華経安楽行品には、 国王・大臣などの勢力ある者から遠ざかり離れて、へりくだり慈善の心を持て、 と説いて、涅槃経の剛と安楽行品の柔は非常に相反(あいはん)している。 どうして異ならないであろうか。 答える、 涅槃経にはもっぱら折伏について論じているが、 仏は衆生に対して平等に我が子を思う一子地(いつしじ)に住しているのだから、 どうしてまったく摂受が無い訳があろうか。 この法華経の安楽行品にはもっぱら摂受について明かしているが、 陀羅尼品(だらにほん)では、 法華経の行者を悩ます者の頭を七分になすと説いている。 だから折伏が無い訳では無い。 この二経は 摂受・折伏の一端をあげているのであり、摂受・折伏は時によるべきである」 等と。 章安大師が著(あらわ)した涅槃経の解釈書には次の様にあります。 「出家した者でも在家の者でも、法を護るには、 その根本となる心の所作を第一ととり、 事相の形式的な戒律などは捨て、教理内容を中心に大経を弘(ひろ)めるべきである。 だから『正法を護持す』というのは 小さな道義・戒律などに拘(こだわ)らない。 それで『行儀作法を修めなくても良い』と言うのである。 昔は時代が平穏で、法がよく弘(ひろ)まったから、戒を持(たも)つべきであって 杖を持(たも)ってはならなかった。 今は時代が険悪で正法が隠れてしまっているから、 当(まさ)に杖を持(たも)つべきであり、戒を持(たも)ってはならない。 今も昔も、共に時代が険悪であれば、共に杖を持(たも)つべきである。 今も昔も、時代が平穏であれば、共に戒を持(たも)つべきである。 戒(かい)と杖(つえ)、即ち摂受と折伏は、 時代によって取捨(しゅしゃ)するべきで、一向にしてはならない」 等と。 あなたの不審は、世間の学者も多分道理だと思っています。 また、どんなに諫(いさ)めたとしても、 日蓮の弟子達でさえこの考えを捨てきれません。 一闡提人の様な状態なので、まず天台・妙楽らの解釈を出して、 彼らの邪(よこしま)な非難を防ぐのです。 一体摂受・折伏という法門は、水と火の様に相容れないものです。 火は水を嫌い、水は火を憎みます。 摂受の者は折伏を笑い、折伏の者は摂受を悲しみます。 しかし無智・悪人の者が国土に充満している時は摂受を先とします。 安楽行品に説かれた様にです。 邪智・謗法の者が多い時は折伏を先とします。 常不軽品に説かれた様にです。 例えば熱い時に冷たい水を用(もち)い、 寒い時に火を好む様なものです。 草木は太陽の眷属なので、冬の月に苦しみを受けます。 諸々(もろもろ)の水は月の所従(しょじゅう)だから、 熱い時にその本性を失うのです。 末法には摂受・折伏共にあるべきです。 いわゆる無智・悪人の悪国と、 邪智・謗法の破法の国の二種の国があるからです。 日本国の今の世は、悪国か破法の国かを知らなければなりません。 49 折伏を行ずる利益 問うて言うには、摂受でなければならない時に折伏を行じても、 折伏でなければならない時に摂受を行じても利益はあるのでしょうか。 答えて言うには、涅槃経に次の様に説かれています。 「迦葉(かしょう)菩薩が釈尊に申し上げて言うには、 如来の法身(ほっしん)は金剛石(こんごうせき)の様に絶対に壊れない。 しかし、まだその理由を知る事が出来ません。 どういう訳でしょうか、と。 釈尊は言われた。 迦葉よ、よく正法を護持した因縁によって、 この金剛身(こんごうしん)を成就する事が出来たのである。 迦葉よ、我は正法を護持した因縁によって、今この常住で壊れる事のない 金剛身を成就する事が出来たのである。 善男子よ、正法を護持する者は五つの戒律を受けず、行儀作法を修めなくても、 当(まさ)に刀や剣(つるぎ)・弓矢を持って正法を護(まも)るべきである。 戒律を持った僧が、摂受を行じて種々に法を説いても、 やはり師子吼(ししく=折伏の事)をなす事は出来ないし、 正法に背く悪人を降(くだ)し伏(ふく)させる事は出来ない。 この様な僧は、自分自身を利する事も、 236p 衆生を利する事も出来ない。 当に知るべきである、この輩はなまけ者である。 よく戒律を持ち、清浄な行を護(まも)っていると言っても、当に知るべきである。 この人は正法を護る為に何もする事はないであろう。 時に破戒(はかい)の者があって、 折伏を行ずる人の語(ご)を聞き終わって皆共に瞋(いか)り、 この法師を殺害したとしよう。 この説法をした者は、たとえ命が尽きたとしても、 尚、戒を持ち自分自身を利し他をも利す者と名づける」 等と。 章安は 「摂受・折伏は、時代によって取捨(しゅしゃ)するべきで、 一向(いっこう)にしてはならない」等と言い、 天台は 「摂受・折伏は時によるべきである」 等といっています。 例えば秋の終わりに種子をまき、田畠(たはた)を耕(たがや)しても、 稲や米を得る事は出来ない様なものです。 建仁年中(けんにんねんちゅう)に 法然(ほうねん)と大日(だいにち)の二人が出現して、 法然は念仏宗を、大日は禅宗を興(おこ)し弘(ひろ)めました。 法然が言うには 「法華経は末法に入れば 『未だ一人も得道した者は無く、千人のうち一人も得道出来ない』教えである」 等と。 大日が言うには 「仏の心は、経文の外(ほか)に別に伝えられた」 等と。 それ以来、この二つの教義が国中に充満しました。 天台や真言の学者らが、念仏や禅の檀那(だんな)に諂(へつら)い恐れる様は、 犬が主人に尾を振り、ネズミが猫を恐れている様なものです。 そして国王や将軍に宮(みや)仕えして、 仏法を破壊する原因、国を破壊する原因となる様な話をよく説き、よく語っています。 この様な天台や真言の学者らは、 今世には餓鬼道(がきどう)に堕ち、 後生には阿鼻(あび)地獄を招(まね)き寄せるでしょう。 たとえ天台の学者が山林に交わって一念三千の観念観法をこらしても、 真言の学者が静かな所で身(しん)・口(く)・意(い)の三密の修行を、 油をこぼさない様な思いで行おうとも、 時代や機根を知らず、摂受・折伏の二つの法門を弁(わきま)えなければ、 どうして生死を離れられるでしょうか。 問うて言うには、 念仏者や禅宗などを責め立てて彼らに怨まれる事は、 どんな利益があるのでしょうか、と。 答えて言うには、涅槃経に次の様に説かれています。 「もし善比丘(ぜんびく)が、仏法を破壊する者を見ても、そのまま見過ごして、 厳しく責め、対治(たいじ)し、その罪を処分しないならば、 当に知るべきである、この人は仏法の中の怨敵である。 もしよく対治し、厳しく責め、その罪を処分するならば、 これこそ我が弟子であり、真の声聞(仏の言説を正しく聞き、実践する人)である」 等と。 また章安の著(あらわ)した涅槃経の解釈書には 「仏法を破壊し乱す者は仏法の中の怨敵である。 相手の悪を諭(さと)す慈悲心が無くして、 偽(いつわ)って親しむ事は、これはかえって彼の怨敵である。 よくその悪を糾弾・対治する者は、これこそ護法の声聞であり、 真の我が弟子である。 彼の為に悪を除いてやる事は、即ちこれこそ彼の親である。 よく悪を厳しく責める者は我が弟子である。 悪を対治しようとしない者は仏法の中の怨敵である。」 等と言っています。 50 結勧(けつかん) 法華経の宝塔品を拝見しますと、 釈迦・多宝・十方分身の諸仏が来集されましたが、 それはどういう意味でしょうか、 「法を永久に存続させる為に、ここに来たのである」 等と説かれています。 釈迦仏・多宝仏・分身の諸仏の三仏が未来に法華経を弘めて、 未来の一切の仏子即ち一切の衆生に法華経を与えようと お思いになられた御心(おこころ)のうちを推(お)しはかってみますと、 その慈悲心は、父母がその一人の子の大苦にあっているのを見て 救おうと思う心よりも強盛であると思われます。 それなのに法然は労(いたわ)しいとも思わないで、 末法には法華経の門を堅く閉じて人を入らせまいとせき止め、 237p 狂った子を誑(たぶら)かして持っている宝を捨てさせる様に、 法華経を抛(なげす)てさせてしまった心はまったく恥知らずで乱暴に思われます。 自分の父母を人が殺そうとしているのに、それを父母に教えないでしょうか。 悪子(あくし)が酔い狂って父母を殺そうとするのを止めないでいるでしょうか。 悪人が寺や塔に火をつけようとしているのに、止めないでおれるでしょうか。 一人の子が重病なのに、炙(やいと)をしないでおけるでしょうか。 日本の禅と念仏者とを見て制止しない者は、 これと同じ様なものです。 「慈悲心が無くして、偽って親しむ事は、即ちこれはかえって彼の怨敵である」 等と説かれた通りです。 日蓮は日本国の諸人にとって、主であり、師であり、父母です。 しかし、一切の天台宗の人は日本国の諸人の大怨敵です。 「彼の為に悪を除いてやる事は、即ちこれこそ彼の親である」等と。 道心(どうしん)の無い者は生死を離れる事が出来ません。 教主釈尊は一切の外道から大悪人と罵(ののし)られました。 天台大師は中国の南三北七の諸宗に怨(うら)まれ、 更に日本の得一(とくいち)に 「三寸に足らない下で釈尊の教えを謗(そし)り、五尺の仏身を断つものである」 と言われました。 伝教大師は奈良の諸宗の人々に 「最澄は未(いま)だ唐の都を見ていない」などと言われました。 これらは皆法華経の故ですから、少しも恥ではありません。 愚人(ぐにん)に褒められる事こそ第一の恥です。 日蓮が御勘気(ごかんき)をこうむったので、天台や真言の法師達は 喜ばしく思っている事でしょう。 それは恥知らずな、奇怪な事です。 法華経を弘通する為に釈尊は娑婆世界に生まれ、 仏法の為に羅什(らじゅう)は秦(しん)に渡り、伝教は中国へ渡りました。 提婆達多や師子尊者は仏法の為に身命を捨てました。 薬王菩薩は臂(ひじ)を焼いて供養し、聖徳太子は手の皮を剥(は)いで経を写し、 釈迦菩薩は自分の肉を売って供養し、 楽法梵志(ぎょうぼうぼんじ)は骨を筆として法を書き伝えました。 天台は「時に適(かな)うのみ」等といわれました。 仏法の弘通は時によるべきです。 日蓮の流罪は、今世(こんぜ)の小苦なので少しも嘆(なげ)くには当たりません。 後生には大楽を受けるのですから、大変な喜びです。
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実を言うと、水の中に入った経験が、ほとんどない。小さなころから体が弱かった私は、体育にまともに参加できた記憶が あまりないのだ。普段の体育などでもそうなのだから、水泳の授業ならなおさらだ。体操服に着替えて、日陰に座り込んで、 楽しそうに泳いでるみんなを眺めている私。毎年毎年、学校指定の水着を買うには買うのだけれど、一度も着られることのな いままにタンスの奥にしまわれていく。 そんな私でも、一度だけプールというものに行ったことがある。顔をつけて、水の中で目を開ける練習をして、それから浮 かぶ練習をした。不思議と、水中にいるのは楽しかった。重力が消えて、自分の重さがゼロになって、水の中で浮かんでいる、 そんな感触を、とても懐かしいと私は思った。 ふわふわと水の中に潜りながら、初めてプールに行ったのに、なぜか私は、それと似た感じを知っているような気がしたの だ。 私は求めていなかった(レイニーロジック・Ⅴ) 梅雨は、いつになったら終わるのだろうか。眠りから覚めて、カーテンを引いた私はまずそんなことを考えた。窓を叩く雨 粒の音が妙に大きく聞こえる。ぱたぱたぱた。そこに何か規則性のようなものを見つけようとして、すぐにそんなものあるわ けがないことに気付く。 パジャマを脱ぐと、昨日の晩枕元に用意しておいた着替えを手に取る。時間はいつもよりも早い。今日は私が朝食を作る番 なのだ。今まで、こっちの家に来るまではそんなことはしたことが無かったけれど、今はこなたお姉ちゃんに教えてもらいな がら、すこしずつ料理も覚えていっている。それは変化なのだろうか、と私は考える。きっと変化なのだろう。 着替えてリビングに降りると、エプロンを身につける。まだ誰も起きてきていないようだった。昨日の晩にセットしておい たご飯が炊けていることを確認すると、鍋に水を張って、火にかける。ご飯、お味噌汁、冷蔵庫から鮭の切り身、漬け物、あ とは納豆かな。本当に簡単なものしかできないけれど、お姉ちゃんもおじさんも美味しいって食べてくれるのが、私には嬉し い。 私は、何かをしている。 私は、誰かと繋がっている。 そんなことを、嬉しいと思ってしまう。それはいけないことなのだろうか。 少しだけぼんやりする頭を振って、私は手のひらの上でカットしたお豆腐を鍋の中に落としていく。こんなことに自分を肯 定してくれるものを求めてしまうのは、いやらしいことなのではないか、そんなことを考えながら。 おはよう、と声をかけると、普通におはようと返事が返ってくる。それは、私にはとても新鮮なことだった。中学のことは 教室では息を潜めていただけだったような気がする。いじめられていたわけではない。いじめられるほどには、私の存在は濃 くなかったのだろう。友達らしい友達もいなかった。その証拠に、高校になってからも付き合いのある中学時代の人は、私に はいない。ときどき、あの頃の私はいったい何をしていたんだろうという気持ちになってしまう。 そんなことを考えながら自分の席に鞄を置こうとすると、他のクラスメイトと話していたみなみちゃんと視線があった。軽 く、私に向かって片手を上げる。私はそんなみなみちゃんに手を振り返した。 みなみちゃんはこっちに来そうな様子だったけれど、私は手を振って、机の上に置いた鞄を空けると、筆記用具や今日の授 業で使う教科書を引っ張り出し始めた。そんな私の様子をみたみなみちゃんは、クラスメイトとの話に戻ったみたいだった。 何故そうしたのか、自分でもよく分からなかった。少しずつ、みなみちゃんが私から離れていく、そんな現実を想像してみ た。それはきっと、遠からず訪れる未来なんじゃないのかと私は思う。彼女は純粋で、優しくて、どこにも馴染めない私を放 っておけないだけなのだ。そんな関係はきっとすぐに破綻する。それを私は知っていた。いつだってそうだ。親切そうに私の 体が弱いことを気遣ってくれた人も、そのうちにいなくなる。それを悪いとか、嫌だとは思わない。ただ、そういうものだと 受け入れるだけだ。これまでそうやって生きてきて、これからもそうやって生きていくだけなのだろう。 私はいつも、無意識に誰かの庇護を当てにして動いているんじゃないだろうか。一度そんな風に考えてしまったら、もうそ れを止めることは私には難しかった。これまでの私が、その考えを肯定してしまっているように思えた。少なくとも、高校に 入るまでの私は、みなみちゃんに出会うまでの私は、そうだったはずなのだ。 自分の席に座って、私は自分の右手を見た。自分の手の向こうに、いつかの夕日が見えた。手を繋いだときの暖かさが世界 を塗り替えるように思い出せた。 『ゆたかの手は、あたたかいよ』 握って、開く。そこにはもういつかの夕日はない。手を繋いだときの暖かさもない。自分の体温があるだけだ。 いつだってそうで、これからだってずっとそうであるはずなのだ。 運命の出会いという言葉を、私は信じていなかった。けれどそれは、信じたいけれど、そんなことがあるはずがないという 意味で、信じていなかったのかもしれない。そんな思いの裏返しとして、私はいつかそんな出会いが自分にやってくるんじゃ ないかと夢を見ていたのかもしれない。 みなみちゃん。 出会った瞬間に分かっていたのかもしれない。 みなみちゃんは、私の『運命の人』だって。 それが、みなみちゃんにとっての運命だと思えるほどには、自惚れてはいないけれど。 「運命の人、かぁ」 きい、とこなたお姉ちゃんの座っている椅子が軋みながら回転して、お姉ちゃんは私に体を向けた。喉のあたりにつっかえ るようなものを感じて、私はけほんと小さく咳をした。 「そういうのってさ、お姉ちゃんはあると、思う?」 「あるんじゃないかな」 今日の天気の話でもするように、お姉ちゃんはさらりと私の言葉に答えた。 「その人を、好きになることも?」 「たぶん」 「ずっと、一緒にいたいと思っちゃうことも?」 「きっと」 「もっともっと、相手のことを知りたいと思っちゃうことも?」 「もしかしたら」 「もっともっと、相手に触れたいと思うことも?」 「可能性としては」 「要するに、えっと、その、」 「セックスしたくなるか、ってこと? それなら、まあ、あるんじゃない?」 その単語がお姉ちゃんの口から飛び出してきたことに、私は驚いた。お姉ちゃんがまったく表情を変えずに、いつも通りの お姉ちゃんのままでそんな単語を口にしたことに、私は驚いた。驚いて、驚いて、そして、私は理解してしまった。 「ね、ゆーちゃん、あるんだよ。そういうこと、きっと、あるんだよ」 「お姉ちゃん」 喉に何かが引っかかったような声で、私はお姉ちゃんを呼んだ。でも、私は頭のどこかで、自分の制御下にある意識の外で、 きっと理解していた。私の声は、お姉ちゃんには届かない。私のどんな言葉も、お姉ちゃんには届かない。 私は、お姉ちゃんと同じ場所に立ってはいない。 「同じだよ」お姉ちゃんは言った。「ゆーちゃんはもう、同じ場所にいるんだよ」 「違う」 「違わない」 お姉ちゃんは私から視線を外して、窓の外を見た。窓に張り付いていた雨蛙が、雨に押されるようにして張り付いていた窓 から飛び降りた。雨蛙のいなくなった窓を、雨が乱暴にノックしている。 「雨が落ちてくるのと、同じようなものだよネ」お姉ちゃんは小さく肩を竦めた。「空の上で、水蒸気が集まって、それが大 きくなって落ちてくる。重力に耐えられなくなって、落ちてくるんだよ」 私は小さく頭を振った。 「重力には、逆らえない」 違う、と私は言いたかった。それは違う、と言いたかった。言わなければいけないと思った。 「落ちていくのを止めることなんて、できないんだよ」 なのに、現実の私は、頭を横に振ることしかできなかった。声が出なかった。喉に何かが詰まったように、ひゅうひゅうと 今にも消えそうな吐息が漏れるだけだった。そんな私を、お姉ちゃんは見ていなかった。椅子に座ったまま、窓の外の景色を、 見ていた。お姉ちゃんの見ているものが、私には見えないんだと知った。 私は胸を押さえた。私とお姉ちゃんの会話は、もう終わっていた。どうしようもなく、終わってしまっていた。どこにも行 き場のない言葉と想いの残滓だけが、今この部屋の中を漂っていた。それを拾い集めたらどこかにいけるのだろうか、と私は 思った。何かに届くのだろうか、と私は思った。けれど、残滓は残滓で、もう捨てられてしまった言葉だった。もう戻ること のない想いの断片でしかなかった。 ごくん、と私は乾いた口の中から、無理矢理唾液を飲み込んだ。 「みなみちゃんに、よろしくね」 背中を向けた私にかけられた言葉は、とても優しくて、残酷な声色だった。振り返って、その言葉を言ったお姉ちゃんの表 情を見たいという衝動が、ほんの刹那にも満たない時間の間、私の全身を走り抜けた。精一杯の自制心を動員して、私はそれ をやり過ごした。この部屋の中に浮かんでいるものが、その言葉と一緒に私に絡みついてくるのが分かった。 落ちていく、と私は思った。 重力には逆らえない、という言葉を私は想った。 「……かがみさんに、よろしく」 そんな私の精一杯の抵抗も、部屋の中に浮かんでいるものの中の一つに溶けて、消えていくようだった。 こほん、と私はひとつ咳をした。 触れてはいけない。 そんなこと、分かっている。 分かっている、のに。 目を開く。結局まともに睡眠をとることはできなかったな、と私は思った。目を閉じると真っ黒な世界の中でいろんなもの がぐるぐると回っていて、それが私の中に入り込んでこようとしているように感じて、その度に目を開けて、そんなことを繰 り返していたら眠れるわけなんてなかった。 こほん、と咳をする。なんだか重く感じる体を引きずるようにしてベッドから降りた。 着替えてリビングに降りると、私の分の食事だけがテーブルの上に置いてあった。その傍に小さなメモが一つ。お姉ちゃん が先に家を出たこと。叔父さんは仕事の打ち合わせでそれよりも早く家を出ていること。私は用意されていた朝食を押し込む ようにして食べると、食器を流しにおいて、家を出た。 雨は、降り続いている。 バスから降りたところで、私はみなみちゃんの後ろ姿を見つけた。たくさんの同じ制服を着た同じような後ろ姿の中で、そ の人だけが特別だった。探す必要もなく私の目に飛び込んでくる。その意味を考えようとして、やめた。昨日のお姉ちゃんの 言葉の意味を考えようとして、やめた。 息苦しさを感じて、私は胸を押さえた。喘ぐように、酸素を求める。上手く息が吸えない。 声をかけたわけではないのに、何故かみなみちゃんがこちらを振り返った。私を見るその目が、驚きで見開かれている。あ まり表情を変えないみなみちゃんにしては珍しいな、と私は思う。 傘が、私の手から落ちた。 「ゆたか!」 ぐ、と引き寄せられるのが分かった。真っ白なものが私の視界いっぱいに広がった。のろのろと顔を上げると、私を見下ろ すみなみちゃんの顔があった。驚いたような、焦ったような、そんな顔。狼狽しているみなみちゃんの顔は、それでもやっぱ りきれいだった。私はきれいだと思った。どんなみなみちゃんも、きっときれいなんだろうと思った。 「みなみちゃんは」 「ゆたか」 「きれいだ、ね」 「ゆたか」 触れてはいけない、そんな風に言い聞かせていた私の手は、みなみちゃんの服の裾を掴んでいた。雨が私とみなみちゃんを 濡らしていくのが分かった。運命の人。重力。全てのものに存在する重力。引っ張り合う力。止めることなんて、できない力。 額に触れた、ひんやりと気持ちの良いみなみちゃんの手。 「熱が、ある」 ふわり、と体が浮かんだ。まるで重力が無くなったみたいな気分。ふわふわとどこかに浮かんでいるような感じ。ああ、と 私は思う。プールに行ったときのことを思い出す。慣れているように感じたのはこのことか、と納得する。わざわざ水の中に 入らなくても、私はいつも地上でふわふわ浮かんでいる。みなみちゃんに抱き抱えられて、私はふわふわと浮かんでいた。 「しっかり。すぐ保健室に」 雨が私を濡らしていくように、ふわふわ浮かんでいた私は落ちていくんだ、と思った。私を引っ張っているのはみなみちゃ んの重力だった。今の私にはそれだけだった。それしかなかった。 それだけが、求めてはいけないものなのだと知っていた。 それだけしか、私は求めていなかったのだと知った。 落ちていく、と私は思った。 みなみちゃんを巻き添えにして、落ちていく。 私はそのまま、みなみちゃんの胸に顔を埋めるようにして、目を閉じた。 ごめんなさい、と小さく呟いた。 頬を濡らしていたのは、雨だけだった。きっと、雨だけだったんだ。 空を見上げた。ハリガネのような雨が私に向かって降ってくる。 私を撃ち抜くように降ってくる雨。もっと、もっと痛くなればいい、と私は思って、 それが、お姉ちゃんの見ていた景色なんだと、知った。 コメントフォーム 名前 コメント ほかのみなゆたにない物哀しくもきれいな雰囲気を味わいたくて、繰り返し読んでます。この話、すごく好きです。 -- マシュラ (2008-09-18 22 20 06) ↑確かにプロ(という言葉が軽いものではないことはモノ書きのはしくれとして理解していますが)のレベルだと思います。 何より一人称で会話がギリギリまで削がれているのにストレスなく読める文章力は非常に羨ましいです。 ネットでのSSは読み手が我慢して読んでくれる文章量と表現がある程度決まっているのにも係わらず『読ませてしまう』実力… ヒントだけでもいいから自分に下さい(泣) -- 名無しさん (2008-04-01 14 08 46) 久しぶりに見直しましたがやっぱり驚異的に文章がうまい…… 暗い同性愛の話は苦手なのに読まされてしまいます -- 名無しさん (2008-03-05 02 43 52)
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ハルヒは黒猫を望んでたのに三毛猫しかいなかったのはなぜ? 940 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 23 25 ID F3OHvV/aO ハルヒは黒猫を望んでたのに三毛猫しかいなかったのはどういう理由から? 950 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 32 27 ID kFTOWMu90 940 謎だな まあハルヒは心底黒猫が欲しかったわけじゃないってことだろうな 959 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 43 09 ID 2B/CYs3FO 940 0.長門があえていない場所に誘導した 1.未来人が黒猫を隠した 2.ハルヒは珍しいものを引き寄せた、引き寄せられた 3.涼宮さんの深層心理は妥協してくれたようですね>● 4.偶然そこにいた。偶然そこにいなかった。 953 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 37 47 ID USOs6MRz0 ハルヒがいなくなった後に猫が喋ったり鳩が白くなってますね 果たしてこれは偶然なんでしょうか 955 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 40 46 ID gbj+BnWNO 953 速効性のあったみくるビームとの違いはなんなんだろうね。イライラの度合いが高いとすぐ効くとか? 961 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 43 49 ID kFTOWMu90 953 シャミセン曰く 「私自身、あの少女の前で話すとまずいことになる気がする」 らしいから黙ってたのかも 962 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 45 18 ID lSEx6FM30 941 皆スルーしてくれてたのに! 963 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 45 53 ID USOs6MRz0 んまぁ深く考えない方がいいんだろうな 970 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 50 40 ID N3SLGlt10 940,953 その辺の不完全性が実は別人の仕業でしたとか種々考えられる余地として残してるのかも 971 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 51 50 ID qQBFGSBa0 たまたま発見した説とか 973 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 52 09 ID RWSb81fP0 940 ハゲるんがクロネコより三毛猫の♂の方が希少価値が高いと思ったんだろ 976 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 53 58 ID lSEx6FM30 別にそれほどクロネコには固執してなかったんだろ? 978 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 55 11 ID aT8XrqJ50 自分が本当に不思議を発見してしまうと 何かが終わってしまうように無意識化で思ってるのかも>ハルヒ 982 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 14 58 13 ID kW714Afn0 976 じゃあビームには固執してたんだな。。全然ものの例えじゃねえw 987 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2009/09/12(土) 15 00 50 ID zYGn6aGm0 三毛猫だからにゃんこ先生思い出した 名前 コメント トップページ
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そして誰も東に行かなかった◆sUD0pkyYlo ――また、1人旅に戻ってしまった。 燃え続ける学校を背に、南に向けて歩を進める。 途中からは、細いながらも舗装された道。草原の中を、真っ直ぐ山へと向かう道。 もう、迷いはない。少年は拳を握り締める。 「見つけないことには……『アイツ』に合わせる顔がないからな」 『彼女』のために、『彼女』を見つけ守るために、李小狼は生きねばならない。 それは彼に命を「プレゼント」した灰原哀の遺志。 少年は歩みを進める。完全に癒えた身体、傷1つない両足で、足早に道を南下する。 やがて道路は山にブチ当たる。 山の裾、小さな森との境目付近に――あった。 遠目にはちょっと分かり辛い、隠れるように佇む、しかししっかりした作りのトンネル。 学校から南に続いていた舗装道路は、その黒い口に飲まれるようにして消えている。 彼の推測通りだ。ギュッ、と手の中の六角形の板を握り締め、彼は呟く。 「さくら……待ってろ……」 少年は、そして人の気配のない薄暗いトンネルの中に、迷いのない足取りで入っていった。 * * * ――また、1人旅に戻ってしまった。 少年は草原を駆けながら、ぼんやりと思う。 これから自分がやろうとしていることに、意味はあるのだろうか。何度も自問する。 けれども、彼は元々、深く考えることが苦手だ。すぐに舌打ちをする。 「しゃーないわ。あいつらの話聞いてもすっきりせんのやから」 このまま闇雲に進んでも、標的の人物とは会えないかもしれない。 会えたとしても、彼の目的は果たせないかもしれない。 果たせたところで、得られるものなど何ひとつないのかもしれない。 こんな非生産的な行動を取るくらいなら、シャナたちとの合流を図った方がいいのかもしれない。 あるいは、『彼女たち』と行動を共にしていた方が良かったのかもしれない。 それでも、狗族の血を引く少年は、草原を駆ける。 犬上小太郎は『親友』の死に関わった者を求めて、学校から北上を続ける。 「ネギが追って行ったって言う、『黄色い服の人形』、そして『もう1人』……。絶対、逃がさへんからな……!」 * * * ――また、最初の2人に戻ってしまった。 2人が出会ってから今まで、いろんなことがあった。 森の中で、「激しい戦い」をした。その相手であった灰原哀は、やがて大事な仲間になった。 学校に来た。激しい戦いを繰り広げた。共に戦う仲間も増えた。 火事になった。逃げ出した。そして――何人も、死んだ。 尖った耳を持つ少年は、山道を先を歩く少女の後姿を、何の気なしに眺める。 直後、不意に少女がこちらを振り向いて、視線が合う。意味もなく頬が赤くなる。 「みぃ? どうしたのです、リンク?」 「な、なんでもないよ」 目を逸らせば進路の左側、ちょっとした岩山のふもとには、燃え続ける学校。 振り返れば……学校の向こう側、目を凝らさねば分からないが、5つの土饅頭。リンクは口の中で小さく誓う。 「……梨花は、ボクが守るから」 「ん? 何か言ったのです?」 最初の2人に戻ってしまった。けれども、2人は出会った時のままの2人ではない。 深めた想いを胸に、学校の裏山を半ば越えるようにして西を目指す。 北と南にそれぞれ歩を進めた2人の少年の分も、彼ら2人がしっかりしないと―― * * * ――時は少しだけ、遡る。 まだ火災の続く学校の東。地図の上ではE-4の西半分に相当する、ちょっとした平原の中。 4人の少年少女たちが、揃って土を弄っていた。 「……それは幻術やないか? 俺も専門外やから、そう詳しくないんやけど」 「まぼろし? でも、殴った感触もはっきりとしてたし……」 「でも、3人の見聞きしたモンがそこまで食い違うってのは、他にあらへんで。 高度な幻術やったら、視覚だけやのうて、聴覚や触覚も騙せるらしいし」 「みぃ、するとあの変態ハゲ坊主が居た時のことは、全て怪しくなってくるのです」 「そうだね。ひょっとすると、最後に吹っ飛ばしたってのも……」 「……いや、それだけは本当であって欲しいのです。でないと困るのです」 ざく、ざく、と土を掘る音に混じって、会話が交わされる。互いの知識と推測を交換する。 保健室で戦った『一休』が「幻術の使い手」だった――なるほど、当事者でない小太郎だからこその発想。 その発想も、生き残った3人の話を聞きだすだけの、十分な時間があればこそ生まれたもの。 また、小太郎も単に聞き手に回っていただけではない。彼の方もその知識を大まかに語っていた。 小太郎が直接会った人々。紫穂が「見た」情報。そしてなのはから聞いた、山小屋にいる人々の話。 気持ちの整理をつけるために始まった埋葬作業だったが、それは同時に、知識の共有にも繋がっていた。 手裏剣。折れた包丁。落ちていた木の枝。 いずれも土を掘り墓を作るための道具としては、イマイチではある。 それでも、4人がかりなら交代交代で作業を進められる。傷の手当てなども同時に進められる。 途中から土を「掘る」のではなく「盛る」方をメインにすることで、憂鬱な作業も終わりが見えようとしていた。 裏庭から担いで運んできた、救えなかった少年・猪名寺乱太郎。 首と胴体の離れた姿の、返り討ちにあったらしいネギ・スプリングフィールド。 下半身しかこの世に残らなかった、勇敢な少年探偵・江戸川コナン。 同じく下半身だけを残して消え去った殺人鬼、ヘンゼル。 そして――李小狼の傷を癒すため、なのはの手でトドメを刺された、灰原哀。 ヘンゼルを他の4人と同等に扱うことに抵抗を感じない者はいなかったが、それでも、放置はできなかった。 やがて、5つの土饅頭が一応の形になってきた頃。 たとえ野生動物が居たとしても、簡単には掘り返されはしないだろう、と思えるようになった頃。 少年のうちの1人が、口を開いた。 「みんなには、悪いけど――ここから先、俺は1人で行こうと思う」 「え? でも……!」 「そうか。悪いが俺も、1人で行こうと思っとる」 「小太郎まで!?」 リンクは驚く。いや、いつまでもここでじっとしてても意味がないことくらい、彼にも分かる。 けれど、何故1人で動くというのだろう? リンクの傍らにいた梨花も、2人の顔を交互に見上げる。 「まあ……2人とも、止めても聞きそうにはないのです。 でも、せめて、それぞれ理由と目的くらいは聞かせて欲しいのです」 * * * 李小狼が今生きているのは、木之本桜のためである。 本当は、彼の方こそ死ぬつもりだった。彼の命を代償に、灰原哀を救うつもりだった。 けれども――哀自身が、それを止めた。小狼が呟いた「さくら」という1つの人名だけを根拠に、それを止めた。 小狼には、もう返す言葉がなかった。 だから……もう「さくらを探す」ことは、彼1人の個人的な問題ではなくなっている。 幼い姿ながらも、立派に生き、未練を口にしつつ、それでも「妥協」を選んだ、灰原哀の願い。 李小狼には、もうじっとしていることなどできなかった。 何を差し置いても、木之本桜を探す。見つけ出す。そして、守る。 そのためには――小太郎がもたらしてくれた情報が、役に立った。 廃病院を巡る人々の動き。そして、小太郎経由でもたらされた、山小屋の人々の動き。 これらを合わせて考えれば、島の北西に広がる森林地帯は、まず考えから外していいだろう。 これで、大雑把に言って、島の1/4が除外できたことになる。 そしてまた、小太郎から聞いた数々の情報は、小狼に発想の転換をもたらした。 自分自身の目で、島を全部見て回る必要はない。誰かと情報交換できれば、かなりの範囲を除外できる。 もしかしたら、誰かが桜と出会っているかもしれない。桜と会った人と、会っているかもしれない。 人の集まる所に行けば、それだけで一気に捜索が進むかもしれないのだ。 「俺はとりあえず、山の向こうの市街地に行こうかと思ってる。 人が集まってるだろうし、さくらにとって馴染みのある風景と言ったら、この学校か、あの街だと思うから。 地図を見るとD-5とD-7の間で道が途切れてるけど、たぶん山の下をトンネルが通ってるんだと思う」 トンネルがあるなら、そこを通れば一気に時間を短縮できる。街に直行できる。1人なら色々と身軽だ。 街に行けば、きっと「誰か」がいる。さくらが馴染みのある光景を求めて来ている可能性も十分ある。 李小狼は、もうじっとしていられる気持ちではなかったのだ。 * * * 犬上小太郎は、まだネギ・スプリングフィールドの死に納得できていなかった。 リンクと小狼の話で分かったのは、ネギが「黄色い服の人形」を追って飛び出していった所まで。 肝心のネギの死を見届けた者は、この場には1人もいない。 もちろん、状況と死んでいた場所から言って、その「人形」との戦闘で命を落としたのだろうが…… 最期の最期、彼が何を願い、どのように戦い、どのようにして死んでいったのか。それを知りたいと思った。 「現場の足跡とかを見るとな……少なくとも『もう1人』、誰かがおったんや。 お前らの言うとった『小柄な人形』のものやない、少なくとも俺らくらいの体格の足跡がな。 『カナ』とかいう『人形』の仲間なのか、たまたま出くわした第三者なのかは、分からへんが……」 ともあれ、ネギが死んだ時の経緯を知っている人物が、どこかにいる。それも、もしかしたら2人も。 元々、考えるより先に身体が動くような性格の小太郎だ。そうと気付いて、のんびりしていられるわけがない。 「足跡は途中で消えてて、追えんかった。けど、北の方に向かった所までは分かる。 シャナたちには悪いけど――俺は、ネギの死の真相が知りたいんや。何が何でも、知りたいんや」 「その『人形』か、あるいは『もう1人』に追いついて、見つけ出して、真相を聞いて…… それから小太郎はどうするのですか? 復讐でも、するつもりなのですか?」 今にも飛び出して行きそうな小太郎に、それでも梨花は1つだけ確認する。 もしも万が一、小太郎が復讐を、憎悪の連鎖を望んでいるなら、梨花たちは止めなければならない。 けれども、そんな梨花の問いに、小太郎は力なく微笑んで首を振った。 「いや……そんな心配そうな目で見んでも、分かっとるで。俺もちゃんと聞いたからな。 確か、『殺人が世界の仕組みだなんて、そんなわけねーんだよバーロ』、やったか? まあ俺も、ネギを殺したって聞いたら反射的にブン殴ってしまうかもしれんわ。それくらいは堪忍してや。 けど――絶対に、殺さへん。それは、約束する」 犬上小太郎の目的は、復讐ではない。 相手が『人形』なら、『女の子』の格好をしていてもスライムの擬装と一緒だ。 女は殴らない、という小太郎の個人的な誓いの対象からは外れる。そうなれば拳も出てしまうかもしれない。 それでも、彼は約束した。「復讐に駆られて殺すようなことはしない」と。 それが、難敵ヘンゼルを前に、命を投げ出した江戸川コナンの最期の願いだから。 ネギと共に行動し、ネギと共にリリスの殺人競争に乗ったはずの、少年探偵の魂の叫びだったから。 「そんでな――勝手なお願いして悪いんやけど、良かったらお前らは、シャナたちを助けてやってくれへんか? 先に行った高町なのはが、先に合流しとるかもしれへんけど、それでも……な」 小太郎の目的は、あくまで真相究明だ。1人でも戦える身ではあるが、無理してまで戦う気はない。 けれど、リリスと会うべくタワーに向かうシャナたちの方は、必ずや戦闘になる。 戦力は、多いに越したことはない。小太郎の代わりに、これまでの経緯や情報も伝えておきたい。 小太郎は、当面の行動方針のない梨花とリンクの2人に、その役目を託そうというのだ。 「あと、山小屋の連中とも合流できればさらにええ。 あそこにはシャナの探しとるコキュートスもある。吸血鬼の真祖もおる。戦える人間も何人かいるようや。 ここで起こったこと、これまでに起こったこと……誰かが伝えてやらなアカンやろ」 * * * 「みぃ、そうすると……とりあえず、西の方に行くのが良さそうなのです」 「そうだね。山の麓、広い道が走ってるあたりで合流、かな」 梨花とリンクは、地図を見ながら思案する。 今から廃病院に直接向かっては、16時までには辿り着けない。シャナ一行とは入れ違いになる可能性が高い。 けれど、廃病院にいるシャナ一行は、南に向かって移動するはず。どこかで森を抜け、広い草原に出る。 彼女たちの移動スピード次第ではあるが、森と山脈の間の平原地帯で追いつける可能性は十分にある。 それに、山小屋組も学校を目指して移動するはず、だという。 彼らもまた、どこかで山を降り、山と森の間の平原、太く広い道路の辺りに出てくるはずだ。 東に向かってくる彼らと、どこかで遭遇できる可能性は十分にある。 上手く行けば、廃病院の人々と山小屋の人々、双方と合流して大きな集団を作ることが出来るかもしれない。 そうすれば、この馬鹿げた殺し合いのゲームをブチ壊すという目的に、大きく近づくことが出来る。 ジェダへの反感は抱きつつも、具体的な対抗策を持たない梨花とリンクにとって、これは大きな意味を持つのだ。 * * * かくして――4人は南と北と西、3方向に向かって分かれることになる。 李小狼は、学校の東側を迂回して南下。トンネルを抜けて市街地に行き、『木之本桜』を探す。 犬上小太郎は、平原を北上。して『黄色い服の人形』や『その場にいたもう1人』を探す。 そして、リンクと梨花は、学校と岩山の間を抜け、神社の前を抜けて西に向かう。 分かれる前に、それぞれの荷物を分け合い、確認しあった。 共通支給品はほぼ1人分余っている。灰原哀の分だ。 水と食料は有り難く使わせてもらうことにして、4人がそれぞれ消費した分を補充したら、ほぼ無くなった。 食料以外は、哀の遺品代わりに梨花がそのまま保持。 ネギの手にしていた魔法の指輪は、特に使える者も居なかったため、遺品代わりに小太郎が引き取った。 その他、武器らしい武器で言えば…… リンクには『勇者の拳』がある。小太郎には手裏剣がある。これらはそのまま、それぞれが持つことになった。 そして小狼には、手元に残っていた『きせかえカメラ』と、あと1つ。 「その金属片な……確か、『ぶそーれんきん』とか言うと、武器になるらしいで。持っときや」 ヘンゼルが残した核鉄は、『剣』のカードを一休に奪われた小狼が持つことになった。 小太郎が教えた起動ワードは、グレーテルと対戦したシャナからの伝聞情報。 損傷は激しいし自己再生はあまり進んでなかったが、それでも何も無いよりは遥かにマシだ。 唯一、武器らしい武器が残ってなかったのは梨花だったが、彼女にはリンクがついている。 なんとなれば、『勇者の拳』を彼女に渡してあげて、リンクは『あるるかん』を操ってもいい。 「じゃあな。もし会えたら、シャナやエヴァたちによろしくな」 「もし、みんなが先にさくらに会ったら、その時は頼むぞ。きっと後から合流するから」 「2人とも、別れても『仲間』だからね。誰ももう、1人きりじゃない――そのことを、忘れないで」 「もしも『信じられそうな人』と会えたら、ボクたちのことも伝えておいて欲しいのです。 疑心暗鬼に陥らず、信じられるヒトの輪を広げること―― きっとそれだけが、この状況を脱するための唯一の方法なのです」 4人は未だ火災の続く学校を横目に、それぞれの方向に向かって歩き出し、そして――。 * * * 彼らには、知る由もない。 犬上小太郎の探す「黄色い人形」こと、ローゼンメイデン第2ドール金糸雀。 彼女は、彼らが「墓を作っている間」なら、確かに草原の北の方に居たのだ。 けれども、イエローと遭遇した彼女は、彼らが動き出すよりも早く、南に移動を開始。 地図の上では平原だが、小さな丘などもあり、必ずしも視界は開けていない。互いに見えない死角はある。 イエローと金糸雀は、そのまますれ違うようにして、同じE-4エリア内の東側の森に入ってしまったのだ。 小太郎が墓作りの時間を惜しみ、情報交換の時間も惜しんで北上していれば、きっと会えたに違いないのだが。 そして、李小狼の探す最愛の少女、木之本桜。 彼女は――南西の街になど、居なかった。 むしろ学校のすぐ近く。島の中央に広がる森の中で、激しい戦いに巻き込まれていたのだ。 けれども、森は深く、小狼は異常に気付くこともなく。森を左手に見ながら、そのまま南下してしまって―― 彼女に近づくどころか遠ざかっていることに、彼は気付かない。彼女のピンチにも、気付かない。 あるいは、もうちょっとあの場所に留まっていても事態は変わっていたのだ。 中央の森を中心に起こった戦いは、太陽が大きく傾きだした頃になって、一気に激しさを増す。 その頃まで墓の近くに留まっていれば、彼らも流石に戦闘の音や光に気がついただろう。 気付いていれば、そしてその中に飛び込んでいけば、彼らの目的は容易に達成されていたかもしれない。 あの一連の戦闘も、全く違う結末を迎えていたかもしれない――! だがこれは全て、終わってしまったから言えることである。 事態の只中にいる彼らには、想像することも出来ない。 特に目印もない、島中央の小さな森林地帯の中に、これほどまで多くの参加者が集まっているとは思いもしない。 だから、彼らはそこから遠ざかって――絶好の機会を掴み損ねて――。 * * * ……学校の裏山を抜ける小道は、少しばかり険しいものだった。道が登っている間は、西側もあまり見えない。 しかし下り坂に入れば一気に視界が開ける。 見えてきたのは――赤い鳥居を備えた、ちょっとした神社。 「へえ……何かの神殿、なのかな? 見たことない作りだけど……」 「――――ッ!!」 日本の神道式の神社の知識のないリンクは、興味深げにその様子を眺める。 そんな呑気なリンクの隣で、梨花はハッと何かに気づくと、いきなり駆け出した。 唐突に、何の前置きもせず、全力で。 「え? ちょっ、梨花ちゃん!?」 慌てて追いかけるリンクにも構わず、彼女は駆ける。 山を駆け下り広い境内に飛び込み、神社の中央、一番大きな建物の前で急停止し、そして。 「 ―――― 嘘 だ ッ ! ! 」 地形が違う。境内のレイアウトも違う。あの長い石段は、どこにも見られない。 だから、そんなはずは、絶対にない。ないはずなのだ。 けれども、その建物の形は、どう見ても――他ならぬ彼女が、見間違えるはずもないもので―― 「り、梨花ちゃん!? 急に走ったり叫んだり、いったい……!?」 「なんで……なんで、こんな所に――!」 いつもの年相応の猫を被る余裕もなく、リンクの問いかけに応える余裕もなく。 凄まじい形相を浮かべた梨花が、見上げたのは。 丸ごとそっくり移築でもされたかのような、古手神社の建物、にしか見えぬ存在だった。 【D-6/D-5とD-7を繋ぐ長いトンネル内/1日目/夕方】 【李小狼@カードキャプターさくら】 [状態]:健康。 [装備]:なし [道具]:共通支給品一式、きせかえカメラ@ドラえもん、バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金 [思考]:さくら……絶対に見つけるからな……! 第一行動方針:何を差し置いても桜を探し出し、守る。 第二行動方針:当面、南西の市街地を目指し、調べる。 第三行動方針:桜を保護できたら(あるいは、桜が死亡したら?)梨花たちと再合流を図る。 第四行動方針:信頼できる仲間を増やす(必ずしも行動を共にする必要はない) 基本行動方針:桜とともに島を脱出する。 [備考]:一休のことを、放火魔、かつ幻術能力を持った魔法使いの類だと確信しました。 シャナ一行の行動予定(16時に廃病院に集合、18時タワー到着を目指して移動)を知りました。 バルキリースカートは、アームのうち3本が破損した状態です(現在自己修復中) [備考]:D-6の山の下、D-5とD-7の道路を繋ぐように、南北に貫くトンネルがある様子です。 問題なく通過できるかどうかは、まだ分かりません。 【E-3/森と城の堀の間の平原/1日目/夕方】 【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】 [状態] 気が僅か、疲労(中) [装備] 手裏剣セット×11枚@忍たま乱太郎 [道具]支給品一式(水少量、パン一個消費)、工具セット、包帯、指輪型魔法発動体@新SWリプレイNEXT 未確認支給品0~1 [思考]:さて、どこまで逃げた? 第一行動方針:ネギの死の真相を知るために、「黄色い服の人形」と「現場にいたもう1人」を探す。 第二行動方針:ネギの件が一段落した後、シャナ一行あるいは梨花一行との合流を図る 第三行動方針:双葉に頼まれた梨々、小狼に頼まれた桜を探す。見つけたら保護する。 第四行動方針:信頼できる仲間を増やす(必ずしも行動を共にする必要はない) [備考]:紫穂に疑いを抱いていますが確信はしていません。 【C-4/神社境内(古手神社?)/1日目/夕方】 【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】 [状態]:左太腿に裂傷(止血済み)。歩行に少し影響。 右掌に裂傷(止血済み) [服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。 [装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル [道具]:共通支給品一式、あるるかん@からくりサーカス [思考]:ちょっ、梨花ちゃん!? いったいどうしたの?! 第一行動方針:梨花を守る。 第二行動方針:シャナ一行、あるいは山小屋組との合流を図る。 第三行動方針:もし桜を見つけたら保護する。 基本行動方針:ゲームを壊す 参戦時期:エンディング後 [備考]:一休のことを幻術を使うモンスターの一種だと認識しました。 シャナ一行の行動予定(16時に廃病院に集合、18時タワー到着を目指して移動)を知りました。 インデックスが持っているコキュートスを、シャナが求めていることを知りました。 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:全身に無数の打ち身と擦り傷(骨折などは無い)。激しい精神的動揺? [服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用。 [装備]:なし [道具]:共通支給品×2(食料は1人分)、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、 ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、(古手梨花の)平常時の服 [思考]: ―― 嘘 だ ッ ! ! 第一行動方針:目の前の神社を調べる? 第二行動方針:シャナ一行、あるいは山小屋組との合流を図る。 第三行動方針:もし桜を見つけたら保護する。 基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る。ゲームには乗らない。 参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前 [備考]:一休のことを、放火魔で変態で性犯罪者な幻術使いと認識しました。 シャナ一行の行動予定(16時に廃病院に集合、18時タワー到着を目指して移動)を知りました。 インデックスが持っているコキュートスを、シャナが求めていることを知りました。 [備考]: E-4、学校東側の平原に、乱太郎、ネギ、コナン、灰原哀、ヘンゼル、以上5名の遺体が埋められました。 土饅頭が5つ並んでいるだけで、墓標などは特にありません。 彼らが学校側を出発した「午後」の時点では、未だ校舎は燃え続けています。延焼の度合いは不明です。 [備考]: 小太郎と学校組の間で、かなり深い情報交換が行われました。 各人の備考欄に重要な所は書いてありますが、それが全てではありません。 それ以上の所は、後の書き手さんにお任せします。 [備考]: 梨花が外から見た限りでは、神社の建物は古手神社に酷似しているようです。 ≪166 全ての終わり、一つの始まり――そして誰かいなくなった(前編) 時系列順に読む 169 ここはG-1、海鳴温泉なの!≫ ≪167 少し遅い(前編) 投下順に読む 169 ここはG-1、海鳴温泉なの!≫ ≪158 運命のルーレット廻して(前編) 小太郎の登場SSを読む 175 第一回定時放送≫186 集結の夜≫ ≪158 運命のルーレット廻して(前編) 梨花の登場SSを読む 174 みんなそう呼ぶから(前編)≫ ≪158 運命のルーレット廻して(前編) リンクの登場SSを読む 174 みんなそう呼ぶから(前編)≫ ≪158 運命のルーレット廻して(前編) 小狼の登場SSを読む 175 第一回定時放送≫185 まっくら隧道≫
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すくいたかったのは【登録タグ VOCALOID v flower Δ す 曲 殿堂入り】 作詞:Δ 作曲:Δ 編曲:Δ 唄:v flower 曲紹介 Δです 今回は10秒の余裕を持たせた4分タイマーです(作者コメ転載) 歌詞 (piaproより転載) ふと 目が覚めた まただ またあの夢だ 時計を見る まだ 午前3時 窓の外を見上げた 切り取った 空に浮かんだ月があまりに綺麗だから 手を伸ばした こんな僕にも何だってできる そんな気がして 君はまだ起きてるかな 散々な毎日も 今だけは ちょっと放り出して 群青の中へ ここは世界で一番星が綺麗に見える場所 塞ぎ込んだ昨日も不透明な明日も 意味を持つんだ 僕ら確かに飛んだんだ 箒星を追いかけた もう少しだけ このままで このままで 切り取った 記憶のなかの君はいつも俯き加減で 人が怖くて 世界を嫌って 自分を呪った 教室の窓辺で ずっと空を見てた「未来なんて」が口癖の 意気地なしの出来損ない あれは僕だ この満天の星は僕の諦めた夢だ きらきら光った 色とりどりの星だ 意味を求めた 僕は救いたかったんだ 君の笑顔がみたかった もう少しだけ もう少しだけ 暗い 暗い 心の奥底 いつだって君は怯えてる 「何もかもが怖いんだよ」 あの日の僕だ 僕が救いたかったのは 僕が意味を求めたのは 僕が救いたかったのは 僕が救いたかったのは ここは世界で一番星が綺麗に見える場所 この心象風景は 僕らの空は 星が降るなか 僕ら手を繋いだんだ 箒星にさよならを 涙は宙に残して 白んでゆく 白んでゆく 白んでゆく 時計をみる もう 午前8時 すすり泣く声は止んだ 次の月夜まで ゆっくり おやすみ コメント ページできてる……!ありがとうございます、すき! -- 名無しさん (2019-08-23 17 14 39) 好きすぎる -- (2023-04-02 15 06 39) 星空が目に浮かんでくる -- 名無しさん (2023-09-21 01 56 12) 名前 コメント 、
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862 名前:『兄は逃げたが、逃げれなかった』[sage] 投稿日:2015/03/22(日) 19 24 54 ID T9V2PdK. [2/6] どうか、俺の話を聞いてくれないか? お前を、高校生での友達1号とみこんでの事だよ 俺には、中学生の妹がいるんだ 妹は3月31日生まれで、俺は4月1日生まれなんだよ そう、俺たちは双子 丁度、4月になりその1分後に俺が産まれ俺の方が1学年ほど上なのだ 妹が生まれたあと、もともと体の弱かった母は俺を産み直後に他界してしまった それから、家族は父親と祖父母のみである はっきり言おう 俺は、妹が怖いんだ え?なんで、妹が怖いのかって? それはお前、あれだよ 【ヤンデレ】だからだよ あ #65374;違う!惚気じゃないんだ それに、気付いたのは俺が中2の頃だったんだ 始まりは、小6 当時はまだ、ヤンデレなんて知らなくてな 妹に対するいじめから護ったりしていたから、ちょっと構ってちゃんだと思ったんだんだよ ある日、俺は好きだった女子に告白したんだ 相手は、二つ返事でOK 嬉しかったよ?初恋だったからさ だが、彼女の身の回りで変化が起きたんだ 863 名前:『兄は逃げたが、逃げれなかった』[sage] 投稿日:2015/03/22(日) 19 25 28 ID T9V2PdK. [3/6] 教科書は破かれるわ、上履き隠されるわ、etc.…噂にゃ裸の写真もばらまくぞとかも脅されたらしい で、止めて欲しかったら俺と別れろてさ こうして、俺の初彼女は付き合ってひと月で別れちまった その後は、家に帰って泣いたよ その日の妹の満面の笑みでの、『お兄ちゃん遊ぼ!!』は今でも覚えているよ あの、太陽な笑みには闇があったんだな… で、次にあったのが中2の頃だ 小6の頃の事があったから、恋愛からはかなり避けていたんだ まぁ、結果的に中2病を発症させたんだがな おい、哀れむ目は止めろ で、そんなある日の事だ 俺は何の気なしに、化学部の部屋に入って 黒板に痛い魔法陣を書いていたら、化学部の先輩に目を付けられてな で、何回か話している内に意気投合してよ お!これは、俺にもいよいよ春が来ても良いんじゃないか?と期待しかけてたんだけど、ある日突然にその先輩が居なくなったんだ 他の先輩に、聞いても曖昧な答えしか帰ってこない で、なんとか中2病ネットワークを駆使した結果 先輩は、売をやっていたかもしれない という、噂を聞いたんだ しかも、匿名で写真入りで学校に届いたらしい やむなく、先輩は転校 864 名前:『兄は逃げたが、逃げれなかった』[sage] 投稿日:2015/03/22(日) 19 28 52 ID T9V2PdK. [4/6] これだけだったら、妹を【ヤンデレ】とは疑わなかったぜ? だが、俺は見ちまったんだ 家のパソコンに、先輩の写真とホテルから出てくるおっさん&少女の写真があるのを…な そして、それらを使って完成した合成写真も見つかった そして、背後で『なぁ #65374;に、しているのぉ?お兄ちゃん。』 という、妹の声 怖かったね。もう、ガクブル それをきっかけ、に俺は妹の行動すべてが怖くなった 気付いたら、後ろにいる 部屋が同じだから、自家発電出来ないからさ、トイレでしようとするだろ? すると、寝てた妹が突撃してくんだよ 再三、寝てんの確認したのにだぜ? 他にも俺に関する資料か?が2TBもあるし… いや、2GBじゃないよ2TBだよ!! 怖すぎだろ!! だから、妹から逃げるために俺は青春をすてて全寮制の男子高校に入学したんだ 勿論、妹には内緒だ 知ってるのは、親父だけ 中学の頃の友にも口止めしといた で、卒業後はあわよくばそのまま県外に就職or進学しようと思ってんだ ふーん、大変なんだな。ま、友達1号として番号交換しね? いいぜ!あれ、着信?まだ、親父ぐらいにしか教えてないんだがな? ピルルル♪ピルルル♪ ピルルル♪ピルルル♪ ピルルル♪ピルルル♪ 発信【???】 ピ! オニイチャン、イマドコニイルノカナ? END