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前ページ次ページご立派な使い魔 「やめて、返してぇぇぇぇぇ!」 「グワッハッハッハ! 遠慮はいらぬぞ小娘、真っ白になるまで洗ってくれるでな!」 「あんたがそれを持って寮内を爆走するのが嫌なのよー! 返せぇぇぇぇ!」 朝も早くから、ルイズはマーラを追って寮内を走り回っていた。 明け方まで眠れなかったルイズは、ようやくうとうとし始めたところでマーラに昨日脱いだ下着を奪われてしまったのだ。 奴はその下着を頭に載せて、廊下を走り回っている。 この魔王にも手はあるのでそこに持てばよさそうなものだが、何故そんな場所に……被っているのか。 下着にゴム素材が使われているからだろうか? 「いやぁぁぁぁぁ! そんな姿で! 私のぱんつ被って走り回るなぁぁぁぁ! 「こっちの方が持ちやすいでな! さあ洗い場はどこかのう!」 「やめろぉぉぉぉぉ!」 マーラが頭にルイズのパンツを被って寮を暴走する。 その悪夢のような姿を見た友人のキュルケなどは、馬鹿にする以前に最早唖然として…… 「ルイズ、貴方……そんなモノを使い魔だなんて……」 「ツェルプストーは黙ってて! とにかくもう、マーラァァァァ! 止まりなさいよぉぉぉぉぉぉ……!」 駆け抜けていった一人と一体を見送りながら、キュルケは不思議と体中に熱が入るのを感じていた。 「凄い……あんなセクシーな使い魔、見たことがないわ。フレイム、貴方はどう?」 己の使い魔を持ち上げて、そう聞いてみる。 サラマンダーは、口をぽかんと開けたまま首を振った。 「そうね、あんなのどこにもいないわ。このハルケギニアのどこを探したって……ああ。 これはもう、微熱なんてものじゃない。女の本能を打ち抜かれた……わね。 ルイズ、やっぱり貴方はモノが違う……」 うっとりとした顔のまま、キュルケはマーラが走っていった方向を見続けていた。 あまりにもご立派なその姿に、魂を震わせていたのである。 実に始末が悪い。 「マ、マーラの奴、ど、どど、どこに、行ったのよ」 結局マーラを見失ってしまったルイズは廊下の隅でへたりこんでいた。 あんな大きなモノを見失うのもおかしな話だが、ただ、ルイズにとってあんなモノをあまり眺めたくない、という心理があったのも確かだ。 男性なら、毎日見慣れている姿でもあるにはあるのだが。……まあ男性でもあんなもんまじまじと見たくないだろうが。 「とにかく……一刻も早く私のパンツを取り返さないと…… あんなのに洗われちゃったら、もう二度とはけないどころか……」 あんなモノに下着を洗われてしまう女。 それは、もう、なんだ。貴族どころか人として終わりそうな気がしてならない。 「わ、私の人生のためになんとしても……」 そこで、ルイズは周囲の気配に気がついた。 朝っぱらから大声で走り回っていたせいか、非常に沢山の人々が部屋から出てきている。 そして、あられもない夜着姿のルイズを、不気味そうに眺めているのだ。 「何よ。文句でもあるの?」 みんな、ぶんぶんと首を振った。 寝不足の上、鬼気迫る表情をしていたルイズの迫力は、なまじの貴族をして怯えさせる効果があったのだろう。 「マーラ……逃がさないわよ、あのチ……卑猥な使い魔……」 このように寝不足は非常によくない。 言動が下品になるし、冷静な判断力もなくなるので、なるべくよく寝るよう心がけましょう。 一方その頃、見事ルイズをまいたマーラは悠然と洗い場に向かっていた。 「さて騒がしい小娘もまいたことじゃ。さっさと片付けてしまいたいが、細かい位置となるとどうも……む?」 前方にはメイドが一人。 手頃な生贄だとばかりに、マーラは触手の一本を伸ばして彼女の肩を叩いた。 とん、とん、と叩かれて、メイドは振り返ろうとしたが。 「…………!」 そこにいたのは。 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」 「ちと尋ねたいことがあるんじゃがな。時に……」 「い……」 振り向けば、そこには視界の全てを覆いつくすほどの、巨大なアレが。 「いやあああああああああああああああ!」 「ふむ……」 マーラは慣れた様子で、絶叫するメイドをまじまじと見つめる。 その仕草が更に、その、アレにまじまじと見つめられるというのが地獄というかなんというかで。 「いや、いや、いやあああああああ!」 命の危機は第一で、他にも貞操だとか、色々沢山の危機からメイドことシエスタは絶叫し続ける。 「やれやれ。騒がしいのう」 シエスタは、ここまで来ても気絶しない自分に少しだけ誇りすら持ちながら、絶叫を続ける。 するとマーラは、頭を軽く振ってみせた。 ぶるんぶるんと震えるマーラの頭の、その先からもやもやとしたものが出てくる。 「ひっ……!」 そのもやもやとしたものはシエスタにまとわりつき、今度こそ気絶すると思った彼女の中に入り込んできた。 「きゃあああああ! あ、あ……あ、あれ……?」 もやもやとしたものが入り込んでくると同時に、不思議と心が静まってくる。 それどころか、目の前のアレが、なんだか親しみのあるものにさえ見えてきた。 緑色でぷるぷるしているだなんて、まあ、とっても可愛い。 「あ……ああ。あの、急に騒いだりしてすみませんでした」 「構わんわな。そんなことより聞きたいことがあるんじゃが」 「なんでしょう?」 にこやかな笑顔も浮かべられる程だ。 シエスタは、自分でも不思議なくらい、このマーラに親近感を抱いていた。 そうよ良く見ればてかてかと艶があって、さわり心地もきっといい。 「我が主がな、これを洗濯するようにと言ったのでな。洗いたいんじゃが、場所を知っておるかな」 「はい! ご案内しますね、ご立派な方!」 態度も紳士的で、きっとこの人は凄くいい人。 お友達になれますよね! ええきっとそれはもう確実に。 あはははははははは。 ……ここで第三者が見ていたら、シエスタの異常に気づいただろう。 すっかり目がラリってしまっているこの姿は、どう見てもおかしいものだ。 これというのも、マーラが発射した誘惑の霧によるものなのだが、生憎ここに助けてくれるメイジはいなかったためこの有様である。 CHARM状態となっているシエスタに明日はあるのか。 「はー……」 とうとうマーラを見つけられなかったルイズは、朝から既にくたくたに疲れた体を引きずって、食堂にやってきた。 とりあえず何かお腹に入れないと、もう一歩も歩けない。 限界を感じながら辛うじて自分の席につくと、もう一度ため息をつく。 「あのぱんつ、気に入ってたのに。捨てなきゃならないのね……」 「勿体無いのう。真っ白に磨いてやったというに」 ぎこちない動きで首を横に向けると、床の上にマーラがそびえ立っている。 いつも嫌なところにそそり立っているのねと、ルイズは心から絶望した。 マーラが洗濯の後、ずっとCHARMしたままのシエスタから朝食の予定を聞きだし、ここに潜んでいたとはルイズは知らない。 「ああそう。揉み洗いとかしたのね?」 「徹底的にやったわな」 「……乾いたらすぐに燃やすわ」 並べられる豪華な食事を見ても、ルイズの心はちっとも晴れない。 せめて腹いせに、マーラには屈辱でも味わわせてやろうかと、パンを床に落としてみた。 「ほら、朝ごはんよ」 「別にいらんわ。小娘、お主からたっぷりとマグネタイトを頂いておるからのう」 「マグ……何? え? 私から頂いてるって何を?」 マーラはゆらゆらと揺れるばかりで、それには答えようとしない。 それがルイズにはますます気味悪く思えたが、とにかく腹ごしらえをしようと朝食にかぶりついた。 なるべく、視界の片隅で揺れているアレが見えないように気を使いながら。 前ページ次ページご立派な使い魔
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前ページ次ページご立派な使い魔 ウェールズに連れられて、秘密港からニューカッスルへと侵入する。 砲撃に晒され、見るも痛々しい城は、その中も重い空気が流れていた。 それでも、一同を出迎えた老メイジは、ウェールズの戦果を聞いてたちまち感激で顔をほころばせた。 「硫黄とは! これで我々の名誉も守られるというものですな!」 「それだけではないぞ、パリー。見ろ、あの御姿を」 「なんと」 老メイジは、ほころんだ顔をたちまち引き締めた。 そして曲がりかけていた腰をしゃんと伸ばすと、一直線に立ち上がり、叫ぶ。 「男子の本懐、これに優るところなし! お見事でございます、殿下!」 気づけば他の者達も、そうやって敬礼している。 マーラが入城してきただけで、城が蘇ったかのようであった。 「窮地において、これ以上の激励はない。よく来てくれたものだ…… で、何の用事だったかな? ミス・ヴァリエール」 「……ですから、大使として……」 どうもおざなりになっているが、本来アンリエッタの依頼が目的なのだ。 というか、ルイズ以外の誰もがなんだかその辺をテキトーに流しているように見える。 ワルドもどうもあちらに集中してしまっているし。それは、頼もしくもあるからいいのだけど。 「そうだった。船の上でも聞いていたね」 「そうです」 「ではこちらへ来るといい。自室までご足労願おう」 流石に、アンリエッタからの手紙を読む時はウェールズも粛々とした顔になった。 遠い地よりの手紙に、思うところは大きいだろう。 「なるほど……アンリエッタは、私の可愛いあの人は……結婚するのか」 「殿下……」 しばし、ウェールズは天井を見上げ、目を閉じる。 ルイズも声がかけられず、思案していたが、ウェールズはすぐに戻った。 そしてある一点を見て、静かに語り始める。 「アンリエッタは、さぞや美しくなったのだろうね」 「はい、こちらに来る前にお会いしましたが……それは、もう」 「そうか。……出るところは出て、くびれるところはくびれているのだろうね」 「はい、それはもう……はい?」 どーもウェールズの目線がおかしいと思ったら。 ルイズの隣に向いている。つまりマーラを見て、でもって、色々、連想するのがアレという訳か。 ……まあ、まあ、この程度は、人間というのは生理的に、自然にそうなってしまうのだから仕方ない。 ルイズもぐっと我慢の子である。成長しているようだ。。 「いや失言だった。……了解した。あの手紙は私のナニよりも大切な宝だが、姫からの願いとあれば返さない訳にもいくまい」 すぐに元に戻った。これには安心である。 やはり、ウェールズくらいとなるとそう簡単には欲望には流されないのだ。 ギーシュみたいなのとは違う、とルイズは感心する。 「宝箱でね。……ほら、これだ」 何度も読み返されたらしく、すっかりボロボロになったその手紙を、ルイズは丁重に受け取った。 よほど大事にしていたのだろう、ボロボロでも、大事なところは綺麗なままだ。 この手紙の様子から、ルイズは薄々と感づく。 きっと、姫さまとウェールズ皇太子は…… 「……私はこの城を枕とするつもりだよ」 「え……?」 穏やかにルイズを見つめていたらしいウェールズは、先回りしてそんなことを言う。 「アンリエッタには、幸せになってほしいからね」 「殿下、それは……!」 「……しかし、ね」 ウェールズの表情がわずかに翳る。 どうしたのだろうと、ルイズが思う間もなく。 「……やっぱり綺麗なのだろうな、アンリエッタは。 一目見たかったというのは正直なところだ。そして……」 「で……殿下。でしたら……!」 「あ……ああ、いや……」 わりと見もふたもないことを言いかけたウェールズは、慌てて口をつぐむ。 そして苦笑いを浮かべると、困ったように続けた。 「どうもな。ラ・ヴァリエール嬢。君の使い魔どのは罪作りだな」 「は? マーラが?」 「この御姿を見ていると、ついつい……はは。いや。 ……男の誇りだとか、名誉だとか。そういうもののない、裸の言葉が出てしまうんだ」 「で、でしたら……!」 「……あくまで、これは裸の言葉だよ。裸で町を出歩く変人はいないように、この言葉も……出来れば、君の胸の沈めてほしい」 「そんな、殿下……!」 これ以上話を続けられては敵わないと、ウェールズは手を振って静止した。 そして時計を確認すると、咳払いして誤魔化してから告げる。 「さて、そろそろパーティの時間だ。 是非とも楽しんでいってほしい。それと……使い魔どのには是非とも中心となって頂きたい」 「任せておくがよいわな」 マーラは反り返って承諾する。 ルイズは、実に複雑な気分だった。 きっと今のウェールズの言葉は、決して表には出さないものだったはずなのに…… マーラのお陰で引き出した本音といっても、この後を思うとどうにも……切ない。 で、そんな感傷もパーティ会場で散々に打ち砕かれた。 「ご立派様、我らにご加護を!」 「何者をも貫く硬度を!」 「下から一気に喉まで貫くご立派を!」 パーティ会場にいた王党派の人間、尽くマーラに寄ってさすりまくっているのだ。 宗教儀式とも呼べるような勢いがあるが、どういうパーティだこれは。 「い、今までの雰囲気はどうなっちゃったのよ?」 「分からないのかい、ミス・ヴァリエール」 なのだが、ギーシュはどこか悲しい目で言ってきた。 「生の象徴に向かって、死の祝福を願っているのだ。 これほどに悲しい、しかし雄雄しい景色もないよ……」 「そ……そうなの。……そう、ね」 まあ彼らも必死なのだ。 強がって笑ったところで、迫り来る死を恐れぬものはいない。 だからこそ、マーラの如きあまりにも立派なモノに祈りを託し、せめて自分が最後まで立派でいられるようにと願う…… 切ない祈りであることは、ルイズにもどうにか理解はできた。 ただ絵面がいかにも悪い。 「もうちょっとシリアスにならないものかしら」 「先生の御姿あればこその光景さ。これ以上のシリアスはないね」 「……そうなのかもしれないけど……」 悲しい話なのに。 ルイズは今、生と死に潜む喜劇と悲劇、その全てを目の当たりにしている。 生命も死も、いつだって喜劇と悲劇は隣り合わせ。涙と笑いは背中合わせに存在する…… それが真理なのだというのだろうか。そんな真理が、あるのか。それが世の中だというのか。 「……わたし、今、少し大人になった気がする」 「ふっ……かもしれないね」 ギーシュは、何故か儚い微笑みでルイズを称えた。 一人、ワルドは空を見ていた。 使うべき手札は揃っている。後は勝負に出るだけだ。 既にウェールズにも、明日の話を打ち明けた。 彼らの生き様に感動したので、是非ルイズとの結婚式をあげさせてほしい、という。その願いだ。 本来ならばそれにはもっと色々な意味を用意するつもりだったのだが、今はそうではない。 「全てはあれに勝ってから、だな」 己の左手を確かめる。 昨日から摂り続けたたっぷりの栄養のお陰で、今にも爆発しそうなほど身体が熱い。 この熱さはきっと明日にピークを迎える。その時こそ、だ。 「ふん……随分と張り切ってるじゃない」 「……ああ。張り切るさ」 気づけば、隣にフードを被った女がいた。 「私にまで素顔をさらして……随分とまあ、気合を入れたものね? 白仮面さん?」 「はは……君に隠す余裕すらないんだよ、今の僕には。 君も一度、あれと戦ったのだろう? ならばこの緊張感は理解できるはずだ」 「私の場合は……あれは、まあ……あの決着はね……いや。 ……セ、セクハラしないでほしいわ!」 「セクハラ?」 見ると、女……フーケの顔が真っ赤に染まってる。 「これは珍しい。君がそんな顔を見せるとは」 「う、うるさいね……」 フーケは、やりづらそうに顔を背ける。 「しかしその調子で大丈夫かね。明日の決戦で、また同じ結末とならないとも限らない」 「それは……あんたが手を打ってくれるんだろう?」 「まあ、そうだ……」 ワルドの眼下には、旅を共にしてきたグリフォンがいる。 「振動が伝わらなければいいのだろう? なら、手はある」 「……だといいんだけどね。まったく……私にこの城に来させるなんて、正気じゃないよ……」 城自体にも思うところはあるらしく、それでフーケは黙ってしまった。 ワルドは、ただ空を見上げるだけだ。迫り来る決戦に向けて…… そして夜が明けた。 「さて、ではワルド子爵からの頼みだ。 ラ・ヴァリエール嬢と子爵の結婚式を、この私、ウェールズ・テューダーが勤めさせて頂きたい……と思うのだが…… なんだね、この状況は」 翌朝。礼拝堂に集ったのは、ウェールズ、ギーシュ、キュルケ、タバサ…… そしてワルドとルイズ。更にマーラであった。 マーラとワルドは、礼拝堂の中心で静かに視線を交錯させている。 「結婚式の前に決闘を行うのですよ。言っておりませんでしたかな、殿下」 「そういうことじゃわな」 「いや、聞いてないんだが……というか、決闘? 何故ラ・ヴァリエール嬢の使い魔と子爵が……え? 結婚するのはラ・ヴァリエール嬢と子爵なのだよな?」 混乱しているウェールズに、ギーシュがそっと近づき、耳打ちする。 「恐れながら殿下。この私、ギーシュ・ド・グラモンが説明致します」 「あ……ああ。どういうことだね」 ギーシュは、薔薇をかざしながら続けた。 「恐れながら、これはトリステインに伝わるメイジの結婚の儀式にございます。 夫となるべきモノは、自らこそが妻をもっとも守れるものであると示すべく、妻となるべきモノの使い魔に戦いを挑む。 そして妻の使い魔を打ち倒してこそ夫となる……このような伝統なのです」 「なんと……初耳だな」 「そうでしょう。私が今作りました」 「っておい!」 「殿方、手加減してあげてねー」 「……子爵が生き残れるかどうか」 キュルケとタバサは、例によって呑気なものだ。 わりと他人事だから、というのもあるのだろう。 「マーラどの。……思えば、こうなることは予想できていた。 ルイズとはずっと離れていたけれど……気にはしていたんだ。 そのルイズが、驚くべき使い魔を呼び出したと、そんな噂は聞いていたよ。 そして今……目の前にいる。なるべくしてなった、と思うべきなのだろうな」 「ふむ。小娘を気にかけておったのか?」 「ええ。僕は僕なりにルイズを愛していましたよ……」 静かに、杖を抜く。 「……そしてこの旅だ。 ルイズは、予想よりもずっと可愛らしく育ってくれていた。 しかもまったく理由はわからないのだが、予想よりもずっと…… 僕に、甘えてきてくれたのです。抱きついたりしがみついたりしてくれた…… この感動が、ご立派な貴方にご理解いただけるかは、わかりませんが」 「グワッハッハ! 理解できようとも! ワシは本来そのような存在なるがゆえに!」 「本来……?」 「他化自在天。我が名の一つなり」 「……恐れ入りました。他者の楽しみすら己の楽しみとするとは」 そして。 ワルドは、みなぎる力を杖に込めて、構える。 「では……我が全力を尽くしましょう。ユビキタス・デル・ヴィンデ……!」 呪文とともに、ワルドの姿が5つに増えた。 風の奥義、遍在の魔法である。 「例え五倍に増えようとも」 「そのご立派には及びませんが」 「しかし、我らは」 「硬度、持続力、発射回数において決してひけはとらない」 「……である以上……」 更に、本体らしきワルドが指を打ち鳴らす。 すると礼拝堂の外からグリフォンが入ってきた。 「な、なんだあれは?」 驚くウェールズ。更に驚くべきことには、グリフォンには誰か乗っているではないか。 フードで顔を隠しているが、どうやら女らしい。 というか。あの顔立ちにはどことなく、キュルケ、タバサ、ルイズには見覚えがあった。 「あれ……ひょっとして、よね?」 「…………」 キュルケとタバサが目を細めてそれを睨んでいる、と。 五人のワルドの前方に、突如として巨大なゴーレムが姿を現す。 「ほほう……」 マーラは感心しているようだが、これにはルイズも驚いた。 「え、ええ!? ちょ、ちょっと、ワルド!?」 「君のためだ! 勝つ為に僕は全力を尽くす! そう…… 全てを投げ打ってでも、だ!」 そのゴーレムのかたちには覚えがある。 「……ってフーケじゃないのよ! あれ!?」 まさしく、フーケのゴーレムだ。それは。 礼拝堂には固定化もかかっていたはずだが、それを打ち破ったというのだろうか。 ……というか。なんでフーケがそこにいる? 「うるさいね! こっちも仕事なんだよ! 誰が好き好んでこんな城に……!」 「どういうことよ……フーケは捕まったんじゃ……」 「脱獄?」 もう無茶苦茶な状況になってきたが、ワルドは声を張り上げた。 「僕はどんな手を使っても勝利する! 正々堂々たる決闘においても、だ! どんな手でも! 小細工ではなく! 全ての力で! 僕は貴方を倒す! ……ご覚悟を、マーラどの!」 「面白いわな! 来るがよいぞ……ワルド!」 最後の戦いが、始まる…… 「……私の可愛いアンリエッタ。今頃ナニをしてるかなー」 ウェールズはもう訳が分からないので、アンリエッタを思い出していたらしい。 前ページ次ページご立派な使い魔
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前ページ次ページご立派な使い魔 ルイズは夢を見る。 いつしか見慣れた夢だ。 幼い頃からの思い出。辛いとき、悲しいときに逃げ込んでいた、あの中庭の船の中で。 ルイズがここにいると、あの方はきっと手を差し伸べに来てくれる。 霧を越えて、船の中へ。羽根付き帽子を被った、あの人が。 「ルイズ。また泣いているのかい」 「子爵さま、いらしてたの?」 いつものように、羽根付き帽子と、それから…… それから? どうした……ことだろう。 今日の子爵様の服装は、なんだかおかしい気がする。 「子爵さま? ……どうして、そんな暑苦しいコートを着ていらっしゃるの?」 真冬にまとうような厚手のコートを着用している。 コートにすっぽりと覆われた子爵の姿は、なんだか場違いに思えた。 「それはね、ルイズ」 子爵がコートの前を開き始める。 「……し、子爵さま?」 「これを君に見てもらいたくてね」 コートの下は。 ……ああ。 なんでそうなるんだろう。 「ところで僕の(ルイズ聞き取れず)を見てくれ。こいつをどう思う?」 「凄く……ご立派です……」 コートの下から出てきたものは、つまり、その、なんというか 「ぶわあああああああああ!?」 ルイズは物凄い勢いで目を覚ました。 悪夢にも程がある。 「な、なんてこと……なんてことなの……」 とうとう夢にまで侵食してきたのだ。この、またしても部屋の中で震えているアレが。 「ど、どうした娘ッ子?」 「今……酷い夢を見ちゃったの」 部屋の傍らにあるデルフリンガーを見て、ルイズは辛うじて心を落ち着けた。 本当に、この唯一の理解者がいなければとっくに狂ってしまっていたのではないか。 元凶はその近くにある、緑色のアレのせいだが。 「もう一刻の猶予もないわ。これを滅ぼさない限り未来はない……」 「けど……よぉ。娘ッ子。一体、何をぶつけりゃいいんだよ?」 「それなのよ……」 剣では届かない。ゼロの自分も及ばない。ドットのギーシュも役に立たない。 そしてトライアングルのフーケですら……勝てなかったのだ。 「トライアングルでも駄目なら、それ以上しかねーけど……」 「スクウェアクラスをぶつけないと駄目ね」 「って言ってもなぁ。誰か、助けてくれそうな知り合いはいるのか?」 「……それは……」 スクウェアクラスのメイジなどそうそういるものではない。 ましてや自分の為に命を賭けて戦ってくれるなどと、そんな物好きなメイジなど。 「……いたわ。一人だけ」 「おお! 意外と人脈広いな、娘ッ子!」 「ええ。あの方なら、きっと……」 そう。 今しがた夢の中でえっらい目にあった子爵さまだ。 「ワルド。あの人なら、マーラだって倒してくれるはずだわ」 「そいつは期待できるのかい?」 「もちろん。本当に、頼りになるお方なんだから」 問題はどうやって依頼するかということだが、それはまあ、後で考えればいいことだ。 今この絶望的な状況の中で見えてきた希望。ルイズには、それにすがるしか手段はない。 「見てなさいよ、マーラ……今度こそ人類の意地を見せてやるんだから」 「頼める奴ならいいんだけどな。俺も期待するしかねーな……」 その時こそ、あの悪夢から解放されるはずだ。 もう夢の中まであんなモノに埋め尽くされる人生は、心底勘弁してほしい。 ルイズの偽らざる心情であった。 その頃、フーケはチェルノボーグの監獄の中で神妙にしていた。 近いうちに裁判云々というが、まあ、それはそれとして。 「まったく……やってくれたわね、あの使い魔」 あの時を思い出すと、屈辱と怒り、恥ずかしさとあとその、アレで非常に複雑な気分になる。 「同意がないならそれは犯罪なのに……ああ、まったく……」 思い出しているだけでも顔が赤くなってくる。 どうにも口にしがたい記憶となってしまったのだ。 「あー……やだやだ。寝よ」 そうして横になろうとしたら、こつこつと足音が聞こえてきた。 すわ、刺客かと思って体を起こすと、格子の向こうに仮面をつけたらしい男が立っている。 「こんな夜更けに……まさかとは思うけど。私はそう安い女じゃないわよ」 「何を勘違いしているのか知らないが。そこから出る気はないかね」 「出ようって思って出られるんならそんな簡単なことはないでしょ」 「確かに。だがお前がそう望むなら出すことは簡単だ、マチルダ・オブ・サウスゴータ」 捨てなければならなかった名前を呼び起こされる。 フーケは、にわかに警戒心をあらわにした。 「あんた、何者?」 「それについては追々話すがね。いずれにせよ我々にはお前の力が必要だ」 「私の力? どうしてまた」 「お前のゴーレムの大きさが必要なのだよ」 男は、ふう、とため息をついた。 「あのご立派に対抗するには、ね」 最近の学院はあからさまにおかしい。 食堂ではやたらに精の付くメニューばかり出てくるし、学院長はセクハラし放題だ。 いや、それは元々か…… いずれにせよ、ルイズにとっては不愉快極まりなかった。 「本当にもう、どいつもこいつも……」 率先して取り締まるべき大人の、その学院長が暴走してどうする。 貴族たるべきものの義務がどうにかなってるんじゃないか、と、実に不機嫌だ。 「またイライラしてるのね、ルイズ?」 「何よぅ」 キュルケの言葉にも、不貞腐れて返す始末。 ルイズの荒れっぷりは尋常ではない。 「わかるわ。欲求不満なんでしょう?」 「……はあ?」 「あんなご立派なモノと一緒にいながら、手も足も出せない状態…… ずっとそれが続いているのだものね。欲求不満になってもおかしくないわ」 「何を……バカでしょ、あんた」 「いいえ。とうとうあのルイズにも大人への目覚めが始まった! って、喜んでいるところよ」 「こ……こここ、この、いいい色ボケツェルプストー! わたしを、あんたなんかと一緒にするんじゃないわよ!」 きーきーとやりあっていると、教室の扉が開いた。 そして入ってくる教師は、何故か非常に疲れた様子をしている。 「では授業を始める。……知っての通り。本当に……知っての通りのはずだが…… 私は『疾風』のギトー、だ。ギ、だぞ。ギ。濁るのは絶対に忘れてはならない」 自分の名前を紹介するだけなのに、随分と念の入ったことだと、生徒達は思う。 ただ同時に、ちょっとアレなことも想像した。 「……疾風の亀」 「誰だ! 濁音を抜いたのは!」 そういいかけたマリコルヌに突風が飛び、吹き飛ばされる。 ギトーはまたしても疲れた様子を見せた。 「濁音を抜くな。絶対に抜くな。それだけは忘れるなよ、生徒諸君」 荒い息をついている。 よっぽどそう呼ばれるのが嫌なのだろう。 「そんなことより! 授業だ授業。私の名前なんぞどうでもよろしい。 では……そうだな、ミス・ツェルプストー。最強の系統と言えば何かね」 キュルケはその疲れた様子のギトーに若干の哀れみを覚えつつ、軽く考えてから言う。 「アレじゃありませんの?」 指差して見せる。 その方向はルイズの、その隣だ。 今日も今日とて滾っている、あの使い魔である。 「……そんな系統はない。エロの系統なんてない! ないんだ! そういう話よりも真面目にだな……」 「じゃあ、虚無でしょう」 「伝説の話でもない! もう答えを言うがそれは風だ。風最強なのだ」 「でも……」 キュルケは妖艶に笑ってみせる。 到底、ルイズには不可能な仕草だった。 「最強というのなら、アレよりも先生はご立派なんですの?」 「……だから! 違うんだ! 私はキト……なんかじゃない! オールド・オスマンやらシュヴルーズやら……どうしてみんな私にセクハラばかりするんだぁ!」 ギトーが泣き出してしまった。 どうも職場の気まずい状況を垣間見た気がして、教室は静まり返る。 「あの先生まともな人かも……」 ルイズはちょっぴり嬉しくなっていた。 やっぱり、世の中そうじゃないといけないと思う。 こういう人が大多数をしめてなければいけない。 しかしこのままアレを放置していれば、世界の比率はおかしくなってしまうだろう。 「わたしが何とかしなくちゃいけないのね」 改めて、気合を入れるルイズである。 さめざめと泣いているギトーを放置もできず、教室が気まずい空気に包まれていると、そこに闖入者があった。 妙なカツラをつけたコルベールだが、その姿に生徒達はほっと安心する。 ギトーの姿がなんだか切なくて、息が詰まる思いだったから。 「ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」 「ああ……私をまともな名前で呼んでくれる数少ない恩人。ミスタ・コルベール。何事でしょう」 「今日の授業は全て中止です!」 コルベールは勢いあまってカツラを飛ばしたが、その勢いは留まるところを知らない。 「なんと、あのアンリエッタ姫殿下が、このトリステイン魔法学院にご行幸なされるのです!」 おお、と一同がざわめくが、それより先にギトーが反応した。 「なんですと! それは……それは問題ではありませんか!」 「その通り! 先日以来、学院長をはじめとして非常にその……破廉恥な振る舞いが多くなっているというのに! こんなところを視察されては、学院は破滅です!」 ルイズはまったくだと思ってうんうんと頷いた。 キュルケは、大げさなことをと思って呆れている。 どちらが正しいのかというとその判断は、とりあえず難しい。 「従って、こんな大事な状況なのですから、皆自重しなければなりませんぞ!」 「まったくです。ああ、まったくですミスタ・コルベール……」 「そして!」 コルベールが、ルイズをびしりと指差した。 「ミス・ヴァリエール。貴方とその使い魔は、決して姫殿下に姿を見せてはなりません」 「ええ!?」 これにはルイズも慌てて立ち上がった。 確かに、マーラをあの姫さまに見せるのはマズいだろう。それくらいは、ルイズにもわかっていることだ。 ……見せられない使い魔を召喚したのが自分だという事実にまたしても気が重くなる。それは、いいけれども。 「あんなモノを姫殿下に見せたら、たちまち軍が学院を包囲するでしょう」 セクハラにも程があるのは確かだ。 「ですが、ミスタ・コルベール。それなら使い魔だけ謹慎させていれば」 「使い魔とは一心同体。別々という訳にはいかないよ」 コルベールはそう言うと、躊躇いながら続ける。 「……君に罪がないのは知っている。しかし最早この学院は…… 責任を取れ、というつもりはない。だが……すまない、ミス・ヴァリエール」 「そんな……」 よろよろと、ルイズは席にもたれかかった。 もう本当に深刻だ、これは。 「ふん。まったくもって、モノの小さい話よのう」 「本当にそうですわね、殿方」 マーラとキュルケが話しているのを聞いても、ルイズはため息をつくばかり。 右も左も地獄ばかりだ。どうしてくれようか。 「ワルド……もう、貴方だけが頼みの綱よ……」 遠い空にいるはずの、婚約者を思うことだけが、今のルイズに可能なことだった。 前ページ次ページご立派な使い魔
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前ページ次ページご立派な使い魔 翌日は何事もなく過ぎた。 てっきり、ワルドがマーラに決闘を挑むかと思っていたルイズには肩透かしである。 「準備が必要だからね。僕は無謀な戦いを挑むつもりはない」 「準備? 一体どうするつもりなの、ワルド」 「まずもっと精力をつけないといけない。それからは……後のお楽しみさ」 そう言って、とにかく精の付きそうな料理ばかりを食べているのだ。 これにはルイズもがっかりしたが、しかし考え方を変えれば、それだけワルドが真剣ということにもなる。 「マーラとの戦いそのものは行うの……?」 「ああ。君の期待に応えてみせるさ、なんとしてでもね」 まだ見放されていない。 その事実に、ルイズはなんとか胸を撫で下ろした。 「せめてこちらの旦那が使い手だったらな。俺も手助けできたのによ」 「……それって、アレを斬るってこと? この間は嫌がってたのに」 「そりゃ俺だって覚悟は決めるよ。娘ッ子のひょろひょろ剣じゃどうせ斬れねーし、パスしたけどさ。 こちらの旦那だったらな、そりゃ、やれるかもって思うじゃねーか」 「そう……よね。ワルドなら、ワルドならきっと……」 「ああ、畜生。ほんと使い手だったらよ」 「……ところで使い手って何よ? なんか前にも言ってた気がするけど」 「え? ……あれ? 俺んなこと言ってたっけ?」 「……いいわよ、もう。貴方にはそういうの、期待してないし」 「ひでーや!」 剣としてはあまり役には立たなかったけれど。 これでも、ルイズはデルフリンガーに感謝しているのだ。 一人では耐え切れなかった、この生活。もし彼がいなかったらきっと自分も、ギーシュなどのように…… ルイズは首を振った。まだ、終わった訳じゃない。 「ワルドが勝ったら、その時は……デルフ、きっとわたし、貴方を使うのに相応しい使い魔を召喚してあげるから」 「お? おいおい、なんだよ気味悪りーな」 「ううん……なんでもない」 ルイズは、ただ、静かに待ち続ける。 一日暇だったわりに、夜になってもマーラを中心にしてギーシュとキュルケが盛り上がっていた。 一応、タバサもいるが、話には加わらず隅で本を読んでいる。まあ、いつも通りらしい。 それにしても聞こえてくる単語がいかにもな単語ばかりなので、ルイズは素通りしようと思ったが。 けれども、言わなければならないこともあると思いとどまる。 「マーラ。貴方に言わなきゃいけないことがあるわ」 「ほう。なんじゃな」 「わたし、ワルドと結婚するわ」 すると、マーラの様子はいつもとさして変わらなかったが、横のギーシュとキュルケが目を丸くした。 タバサも、本から顔を上げる。 「おめでとうミス・ヴァリエール! お似合いだよ!」 「そうね。どう見ても、あなたには不釣合いなくらいだけれど」 「……おめでとう」 級友はいずれも率直に祝福してくれる。まあキュルケはいつも通りだ。 「やはり、昨日の一夜で虜になったのかい? 衛士隊長のテクニックは大したものだな」 「いくら婚約者って言ったって、たった一晩でルイズを夢中にさせちゃうなんてね。 魔法衛士隊ってそんなとこまで鍛えられてるのね」 セクハラまがいのことを言うこの二人も、最近としてはいつも通りだ。 ……だからルイズも拳を握り締めてプルプルと震えさせたが。我慢である。 「めでたいわな。小娘が望むならば、女の妙技を伝授してくれようぞ」 こやつがこうなのもいつも通り。 ルイズは、叫びたい気分を堪えて話を続け…… 「まあ、殿方はそんなものまでご存知なの!? ぜひ、あたしにも教えて頂けませんこと?」 「グワッハッハ。なに、お主のレベルではとうに習熟していようが、小娘は初心であろうからのう。 それに対する程度のモノよ。お主が期待するような高度な技については、自力で学ぶ方が良い具合であろう」 「それもそうですわね。まあルイズのレベルでは……」 「ツェルプストーほんっきで自重しなさいよぉ!」 我慢したかったのだがつい声が出た。 (いけないわ。そうやってこいつらのペースに乗せられるからいつもおかしくなっちゃう。 ここはクールにならなきゃ……クールになるの、頑張れわたし) なんとか呑み込んで、ルイズは本題を告げる。 「でも結婚する前にね、ひとつ条件を出したの」 「条件? 一体全体、それは何なんだい?」 「あらまあ贅沢ねルイズ。そうやってお高くとまってると、お子様体型なのに行き遅れちゃうわよ」 「だからぁぁぁ……だ、だから、貴方達は黙ってて。 マーラ。……その条件は貴方に関わるわ」 ルイズの視線が、マーラと交錯する。 刃と刃を打ち合わせたような冷たい緊張感が場を支配した。 「ほほう。あやつとの結婚にワシが関わるとな?」 「貴方を倒したら結婚する……そう、約束したわ」 「なんだ。ミス・ヴァリエール、それじゃあ君は結婚する気がないんじゃないか」 「体のいい断り方ね。男殺しよね」 今注目すべきは、マーラのみだ。 ギーシュとキュルケはとりあえず放置しても問題ない。 そのマーラの反応は……ニヤリ、と笑ったように見えた。 「面白いわな。小娘の旦那として相応しきモノを持つかどうか見極めてくれようぞ」 「じゃあ……受けるのね?」 「小娘は我が主であろうに。ならば小娘の決めたことに従うまでよ」 「そ、そう……物分りのいい使い魔を持って、わたしは果報者な主人だわ……」 ワルドは……勝てるのだろうか。 いや。勝てるはずだ。きっと、勝つ。 ルイズはそう信じる。信じなければ、ならないのだ。 「何時になるかはまだ決まってないけど……きっと、近いうちになるはずよ」 「うむうむ、ならばワシも己をいきり立たせて待つとするかのう」 賽は投げられた。 ルイズは、ワルドの勝利を祈るしかない。 夜半になっても、これといって事件は起こらなかった。 襲撃など受けそうな気もしていたのだが……どうなったのやら、である。 「結局、あの賊はただの物取りだったようですね」 「らしいな。あるいは事情でも出来たのかもしれない。 例えば、強敵との戦いが控えているので、無駄に体力、魔力を消耗できないだとか…… 遍在ひとつの魔力も無駄に出来ないような感じで」 「随分と具体的な例ですね?」 「いやなに。賊の心境というのを慮っただけだよ」 相変わらず、ワルドは物を食べている。 今食べているのは爬虫類か何かの干物のようだが、妙な代物だ。 それを見るギーシュは、確かあれは絶倫の妙薬と言われるトカゲだったか、と記憶をめぐらせる。 「子爵、どうしたのです? そんなに精ばかりつけて」 「……君も聞いたのだろう? 僕はいよいよあれと決闘する訳だがね」 ワルドは、陰のある笑いを見せた。 その笑いにギーシュは感じるところがある。あの笑いは、そう。 いつかの自分と同じなのだ。 「お気持ちは理解できますよ。僕もあの方と一度、杖を交えたことがありますからね」 「それはなんとも……随分と勇ましいな、ギーシュくん」 「若気の至りですよ。しかし貴重な経験でもありました」 さて、それにしても何故ギーシュがワルドと語らっているのだろうか。 それはまさに、今のギーシュの言葉にこそ理由がある。 「経験者として忠告しますが、あの方に小細工を使っても無意味ですよ」 「だろうね。アレとは正々堂々と戦わなくてはいけない。それくらいは理解できるさ」 マーラと対峙したことのある一人としての、助言であるのだ。 ギーシュは今やマーラを師と仰ぐ人物である。 しかし、師を越えようとしない弟子など、そうはいない。 自らもご立派の道を究め、いつかはマーラ以上になろうと、そんな野心はギーシュにもある。 だからこそ、こうしてマーラに挑もうとするワルドに、言葉をかけにも来るのだろう。 「安心していてくれよ、ギーシュくん。僕とて勝算がなくて決闘を受けた訳ではない。 それに勝てた時に得られるものを思えば、この勝負、賭けのしがいもあるってものだろう」 「なるほど……流石は子爵」 ワルドは、干物を食べ終わると次にヘビが漬け込まれた酒瓶をあけた。 つくづく精力尽くしである。 「このままなら、恐らくは目的地で雌雄を決することになるだろう。 つまり明日、明後日ということになるかな…… 姫殿下からの依頼とルイズからの願い、この二つを同時に果たすという訳だ。光栄すぎて身が引き締まるよ」 「男冥利に尽きるというものですね」 「まったくだな……」 いかにも強烈そうな匂いのする酒を、ワルドはぐびぐびと飲み干す。 これにはギーシュも目を剥いた。ここまでやるとは。 「勝つよ、僕は。そうでなければ今後、胸を張って男でいられる自信がないからね。 ……はは、すまないなギーシュくん。君のような少年にまで心配されるとは」 「子爵。無理はなさらないように」 「心得よう」 窓の外に目をやる。 そこには一瞬、フードの人物がいたように見えたが…… すぐに、消えてしまった。 翌朝、枝が伸びる桟橋から、つつがなく船は出港する。 硫黄を運ぶ船に同乗する形なった訳だが、まあ、このご時世、客船などはそう出ていないものだ。 貨物船でも出られるだけマシだろうと、それは諦めることにする。 「なんだか、順調すぎて怖いくらいだね」 「まったくね。てっきり昨夜あたり、襲撃でもあるかと思ってたのに」 ギーシュとキュルケは呑気にそんなことを言っていた。 ただ、これはタバサも不思議そうな顔をしているから、この二人だけの認識ではないらしい。 「うん……いや、確かに本来ならば昨夜に…… ……まあ貴族派にも色々と事情があるのだろうね」 「そうなの、ワルド?」 「あ、ああ。やっぱりこう、なんだね。大変だ」 意味のない笑いを浮かべてワルドがぶつぶつと呟く。 その目がはっきりと充血しているのを見て、ルイズは少しいたたまれない気持ちになった。 「眠れなかったの?」 「まあその、色々緊張することも多いからね。 ……ニューカッスル。あそこへ行って、そこで……決着をつけるだろう」 「そう……」 両手で、ルイズはワルドの右手を握り締める。 「ルイズ?」 「頑張ってとしか言えないのが、もどかしいけど……頑張って、ワルド」 「……はは。一万人の味方を得た気分だよ」 こけた頬のまま、それでも目つきだけはギラギラとさせながらワルドが微笑んでみせる。 その微笑に、不意に影がさした。 何も、ワルドの表情が曇ったというのではない。 「な、なんだ……」 船員達が慌てている。 これは、どうやら…… 黒くタールを塗られた船が、じわじわと近づいてきている。 船員達は最初、貴族派の船と思った様子で、それはルイズも変わらなかったのだが…… 轟音とともに砲弾が飛んでくると、まったく違うことに気づく。 「まずいな。空賊か」 船員達は不安そうに黒船を見ている。 改めて周囲を見渡すに、空中で戦えそうなのは、まずワルド。 それからタバサもいるし、キュルケも炎を飛ばせばそれなりに戦えるだろう。 ギーシュは、まあ、砲弾の盾でも作らせておけばいい。 後は…… 「……マーラ、あんた空の相手に戦えるの?」 「温い温い。やろうと思えば容易きことよ」 「でも……」 今まで肉弾戦しかしていなかったのではないだろうか。 ルイズは不安を覚えたが、しかし、どうしたものか。 「戦えないことはない。しかし……あまり騒ぎを起こしたくもないな。 貴族派に目をつけられては困ったことになる」 ワルドの逡巡は、しかし、長くは続かなかった。 予想外に黒船の動きは早く、たちまち隣接されてしまったのだ。 ここから砲弾の雨を受ければ、嬉しくない結果が待っていることだろう。 「仕方ない、ここはワルキューレを……」 ギーシュがそう言って薔薇を振りかけたが、ワルドが静止する。 更にキュルケ、タバサにも、目線を送って動きを止めさせた。 「騒ぎすぎてもしょうがない。ここは交渉に賭けるしかないだろう」 この船の船員達も、ワルドに頷く。 貴族が五人、更に立派な使い魔がいるのだ。 彼らの指示に従った方が、結果として損害は少なくなるだろう。 そう思っての行動であった。 やがて空賊達が乗り込んでくる。 頭らしき、粗野な男が真っ先に進み出てきて、ルイズ達と船長をにらみつけた。 「船長はどこでえ」 「わ、わたしだが」 震える船長に、男は威圧を込めて問う。 「船の名前と、積荷は?」 「マ、マリー・ガラント号。積荷は、硫黄だ」 硫黄と聞いて、賊達はため息を漏らす。 「そ、それから……」 船長がルイズ達を見た。 積荷という訳でもないのだが、客であるし。判断に迷っての行動だろう。 しかしその船長の目線を男が追った時に、変化が起こった。 「ん、なんだ、貴族かよ……って」 ルイズ、ワルド、キュルケ、ギーシュ、タバサと眺めて……そして。 「お……おい、アレも積荷か?」 「あ、あれは、お偉い貴族様の……」 男がよろよろと近づいてくる。 ルイズは、咄嗟に声を張り上げた。 「下がりなさい、下郎!」 「下郎……確かにシモだが……」 その言葉にルイズはまた頬を赤く染める。 またかよ。最近このパターン多いな、と。 「……あんたは」 「ワシは魔王マーラなり。この小娘の使い魔なるぞ」 ああ……どうせきっと。この後はアレなんだ。 ルイズは泣きたくなった。 ご立派ご立派ってなんでそんな大きさにこだわるんだろう。誰も彼も。 「ワルド……わたし、泣きたい……」 「いや、泣く必要はないかもしれないよ」 優しく言うワルドの声に驚かされて、ルイズはもう一度男を見た。 すると。 「……なるほど。これは失礼した」 男が、頭に手をやると、その髪が剥がれ落ちる。 コルベールがつけそうな代物、つまりカツラだったようだ。 更にヒゲまで外す。 粗野だった男が見る見るうちに姿を変えて、金髪の美男子になってしまった。 「ど、どういうこと……?」 「貴方の評判はアルビオンにも伝わっている。『ご立派なルイズ』…… トリステインに並ぶもののない魔法使いとね」 「……違うわよぉ」 そして男は、静かに敬礼する。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官。 ……アルビオン王国皇太子。ウェールズ・テューダーだ」 「え……ええ?」 物凄い展開の速さである。 ルイズも、目を丸くするばかりだ。 「あ、あの……え? 皇太子さま?」 「そうだよ、ミス・ヴァリエール。噂どおりにご立派な方だな」 「いや、あの、それは……違いますけど……」 ウェールズは、改めてマーラを眺めた。 「やはり……噂どおり、いや、噂以上だ。 皆、見るがいい。この方を」 空賊達は、直立不動になってマーラに目を向けている。 「この方のこの姿。貴族派のようなモノどもでは、到底得られない滾りがあるとは思わないか。 最早疑うまでもなく、我らの味方だろう」 「確かに……」 「間違いありませんな」 話が早くて助かるが、それでいいんだろうか。 「歓迎するよ。ミス・ヴァリエール。 ……で、何の用事でアルビオンに?」 そっちを先に聞けよ! 嘆くルイズ。やっぱりこんなんばっかか。 ワルドはああ言ったが、でも泣きたい気分は変わらないルイズである。 前ページ次ページご立派な使い魔
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前ページ次ページご立派な使い魔 「で、ツェルプストーは何をしに」 「殿方! やはり一手お手合わせ願えませんこと?」 問いかけたルイズを華麗に無視して、キュルケはマーラに寄りかかる。 タバサは、友人のその姿に眉をしかめているものの、口出しはしていない。 「お主では到底入りきらぬとわかっていように、どうしたのじゃ」 「ええ。考えたのですけれど、殿方のその無数の触手ならと……」 「……一応、そっちは入る」 わざわざ色目を使いにきたというらしい。このキュルケは。 しかも、タバサを叩き起こしてまで…… ルイズはギーシュ以外にも頭痛の種が増えたと、どす黒いため息を吐き出した。 「グワッハッハ。確かにのう。よう考えたものだわな」 「でしょう? でしたら……」 「しかしな、赤毛の小娘。お主はまだまだ未熟ゆえに、ワシの一部であろうとも受け入れはできまいぞ」 「あ……あたしが未熟?」 はっ、と口を開けて驚くキュルケだ。 盲点を突かれた、とでも言うような。 「ただ受け入れられればよいというものではない。 お主が今まで積んできたあらゆる修練の……その全てが試されるのじゃ。 果たしてお主の歩んできた、全ての道は……ワシを受け入れる自信を生み出せるかな」 「そ……それは……」 キュルケの脳裏に浮かぶのは、これまで微熱とともに誘ってきた数多くの男達。 量も質も、決して悪いものではないと思える。 しかし……その全てが全身全霊を焼き尽くす業火だったのだろうか。 それは、決して肯定しきれないことである。 「あたしは……あたしは、殿方を受け入れるにはまだ自信がありませんわ」 「で、あろうさ。何、人の生は短いが、その密度は悪魔とは比べ物にならぬほどに濃いもの。 お主であれば幾たびかの試練を経て、ワシともやりあえるようになろうぞ」 「はい……!」 キュルケの目に、再び炎が宿った。 しかしこれは、微熱の炎ではない。百年を経ても燃え続ける執念の炎である。 「じゃあ帰るわ。お邪魔したわねルイズ」 「え」 「それじゃいきましょ、タバサ。殿方、必ずや数年後には……!」 「グワッハッハ。楽しみにしておるぞ」 言い残すが早いか、キュルケはまたシルフィードに乗り、その場を去ろうとする。 慌てて、ルイズはそのキュルケに掴みかかった。 「あ、あんた、本当にそのためだけにここに来たの!?」 「もちろん。朝方、ついに殿方を受け入れられる手段を思いついた! ってね。 そうしたら貴方達が出かけようとしていたから……」 「本気で……そのためだけに?」 タバサが、疲れた様子で顔を上げる。 「純粋にそれだけ」 「……わたしの周囲にまともな人間はいなくなっちゃったの?」 控えめにタバサが自分を指差しているが、ルイズは気づかなかった。 もうあまりのショックに、開いた口もふさがらない。 「は……はははは。なかなか情熱的なお嬢さんだね」 「あら、貴方は?」 見るに見かねて、ワルドがフォローに入ってくる。 枯れ木のようになっているルイズを、ワルドは庇うようにして立った。 「なかなか素敵な人ね。ねえ、情熱をご存知?」 「いや知ってはいるがね。しかしその、ご立派へ向けての腰掛けという扱いはご遠慮願いたいな」 「ふふ。そう、残念ね」 あまり残念でもなさそうにキュルケは笑う。 ワルドはその様子に一粒の冷や汗を流しながら、そっとルイズに囁いた。 「……なんというか、苦労していたんだね、僕のルイズ」 「……ええ……」 まあ、でも面白いからという理由で、キュルケとタバサも同行することになった。 お忍びの旅とかはどうでもいいのだろうか。 「もう、ここまで来たら諦めるしかないわ。そうよ、あいつさえ倒せばきっと……」 「期待できねー気もするけどな、娘ッ子」 とまあ、どうでもいいらしい。 宿に到着してもその様子は変わりなかったが、どうせ船が出るのは最速でも明後日という話なので、今日は休むことになる。 急ぎたいところではある。しかしこればかりは、どうにかしろと言ってどうにかなる問題でも……一応、ない。 ワルドは、そのあたりの事情を解説しながら鍵束を持ってきた。 「では部屋割りだが」 「わたし、ワルドと一緒の部屋がいいわ!」 「あら」 「へえ」 真っ先に手をあげたルイズに、キュルケとギーシュが目を丸くする。 同室を自分から申し出るとはなんとも大胆である。 「ルイズってば……とうとう春の訪れかしら」 「積極的な女性というのも悪くはないね」 冷やかしを受けても、ルイズは焦ったりはしなかった。 ただ言い返すのみである。 「ワルドはそんな人じゃないもの。色ボケのあんた達とは違うんだから!」 「は……ははは。そこまで信頼してもらえるのも、まあ、それはそれで複雑だな」 自分から言い出すつもりだったんだけどなあ、とワルドは首を捻った。 まあ手間が省けたと考えれば、それでいいのかもしれない。 「そうなると僕とルイズ。それから、キュルケとタバサ。……ええとだね、ギーシュと……」 「ふむ。いつも通り、ワシは小娘と同じ部屋で……」 「だ、だだだだダメよ! ダメなんだから! ほ、ほほほ、ほら! 婚約者と一緒なのよ!? いいいいくら使い魔ったって、そそそ、そういうのは、ダメ!」 必死になるルイズである。 旅先にまで来てこれと一緒に眠るなどとは、あまり考えたくもない。 そんなルイズに、意外なところから助け舟が出た。 「では、先生は僕と同室ということでは如何でしょうか。 先生のお話を一晩中お聞きするというのは、一度受けてみたかったのです」 なんとギーシュである。空気を読んだ発言だ。 しかも更に意外なことには、 「うむ、そうじゃな。いつも小娘の面倒ばかり見るというのも味気ないわな。 ギーシュよ、とくと語り聞かせてくれようぞ」 マーラまでそう言った。ルイズも、それには驚く。 「あ、あんた達……?」 「ふっ……流石に初夜を邪魔するほどには、ね……」 「最初の一回、未経験ゆえに不手際となる。これもまたよき経験なるかな」 またしても理不尽な誤解。 でも誤解でもなんでも、それで引き下がってくれるんならそれでいい。 そうも思った。 「……そうじゃないけどそれでいいわ」 「うーん……まあ、物分りのいいご友人と使い魔ということになるのかな」 ワルドもヒゲを掻きつつ、困ったように呟いた。 部屋に入って、二人きりになった途端、ルイズはベッドに倒れこんだ。そして手足を伸ばし、吐息をこぼす。 一方のワルドは椅子に腰掛けて、そんなルイズを観察している。 「ああ……開放感。どれくらい久しぶりなのかしら、こんなに素敵な気分……」 「どうしたんだい、ルイズ。随分嬉しそうな声を出して」 「だってワルド……」 ルイズは身体を起こすと、うっとりとした目をワルドに向ける。 「アレがいないの! すぐ傍に、あいつがいないのよ! こんな気分……ここまで爽快だなんて! 部屋がピンク色に染まっていないのって、こんなに素晴らしいことだったのね!」 「そ、そうなのかい。よ、良かったじゃないか」 「ええ、本当に……!」 すっかり顔が緩んでいるルイズだが、逆にワルドは顔を引き締めた。 そして一言一言を誤らぬように、ゆっくりと口を開く。 「ところでルイズ。君に、言いたいことがあるんだ」 「……?」 まだうっとりしていたルイズは、この口調に真剣さが含まれていることに気づき、改めてワルドを見た。 表情もきりりと引き締まっている。受け流していいようには見えない。 「どうしたの、ワルド?」 「この任務が終わったら、僕と結婚しよう」 結。 婚。 「え……」 「ずっとほったらかしにしていたことは謝るよ。でも、今の僕には君が必要なんだ。 君の力は、君が思っているほど小さなものじゃない」 「そんな、でも……」 ワルドの言葉は真剣そのもので、ルイズは夢を見ているのかと錯覚するほどだった。 それに結婚してしまえば、こんな生き地獄からも逃れられるのでは…… そんな夢想が一瞬にして広がる。しかしそれは、当のワルドの言葉で打ち砕かれた。 「実際、君の使い魔はあんなにも強大で、恐るべき力を持っているじゃないか。 使い魔を見ればメイジがわかるとは良く言うけれど、ルイズ。 君はまさにその……」 よりによって。 ここでマーラを持ち出してくるか。この男。 「……ダメよ」 「まさに君の実力を証明する、伝説……え? なんだい?」 「ダメ。今のわたしは貴方と結婚することなんて出来ないわ」 「……どうしてなんだい、ルイズ」 ワルドの表情が曇り、一瞬剣呑な輝きを帯びる。 が、ルイズはその表情に気づくこともなく、告げた。 「わたしの使い魔がいるんだもの。……アレがついてくる結婚生活なんて考えられない」 「……使い魔は常に一緒じゃないか。それは仕方ない……」 「仕方ないなんて割り切れないのよ!」 ルイズは。 気づかぬうちに手を振り、首を振って、全身でプロポーズを拒絶している。 「だからワルド! せっかくのお誘いだけど、わたし、受けることなんて出来ない!」 「ルイズ……じゃあ、どうすればいいんだ?」 「どう……すれば?」 ここだ。ここしかない。 「マーラを倒して。それが出来たらわたし、貴方と結婚する」 「き……君の使い魔を? あのご立派を?」 「そう……そしたら結婚でもなんでもするわ、わたし」 「なんでも、か。それはなんとも、楽しみなことだよ」 凍った表情で、ワルドは小さく呟いた。 そして同時に、 「アレに……勝つ。勝てるのか、僕が……」 全ての虚飾を取り払った『男そのもの』、その矜持が放った言葉だった。 前ページ次ページご立派な使い魔
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ごりっぱさま 非公式 FESにて追加された塔のペルソナの一「マーラ」の俗称。 愛称の由来はストレートな外観と、このペルソナを装着したままベルベットルームを訪れるとエリザベスが褒めてくれる事がユーザーに強烈な印象を与えたが故、である。 また、女性主人公でテオドアを選び、マーラ装着時にベルベットルームを訪れると窘められてしまう。 武器合体に使用すると拳武器「終極の魔手」を作成出来るが こちらはあまり直接的なデザインではない。 特殊合体で生み出す際に必要なペルソナは、男性器に関するものが中心。 インキュバス:男の夢魔。 モト:マーラの起源ともいわれる。 パズス:大蛇の男性器を隠しもつ。 クヴァンダ:瓶のような性器をもつとされる。 アティス:自らの性器を去勢した。
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【BEASTBIND TRINITYオンライン用キャラクターシート】 【基本情報】 キャラ名 :様々(吉良 立派) プレイヤー名:はち 年齢:様々歳(享年31歳) /性別:様々(生前は男性) /カヴァー:様々 スタイルクラス:アタッカー プライマリ:スピリット(幽霊)/セカンダリ:イレギュラー(魔剣) 種別:精霊・人間 初期人間性:58 【ライフパス】 出自:覚醒/失われた日々(憧憬) 邂逅:恐怖/千種 令 エゴ:この世への未練 変異:地が出始める 【能力値】 【肉 体】【技 術】【感 情】【加 護】【社 会】 基本能力値【 4 】【 3 】【 9 】【 7 】【 4 】 能力値B 【 2 】【 1 】【 4 】【 3 】【 2 】 アーマー値【 5 】【 4 】【 7 】【 6 】【 5 】 戦闘能力値 【白兵値】【射撃値】【回避値】【行動値】 元値 【 6 】【 7 】【 5 】【 11 】 修正値 【 6 】【 7 】【 5 】【 11 】 最大FP値:36/10 【アーツ】 名称 :種別:Lv:タイミング: 判定値 :対象: 射程 :コスト:効果 魔獣化 :自動:1: マイナー :自動成功:自身: なし : 2 :魔獣の姿となり、データが変更される アレナ展開 :自動:1: メジャー :自動成功:場面:シーン: 0 :アンノウンマンをエキストラ化 : : : - : - : - : - : - : ストライクフォーム :自魔:1: 常時 :自動成功:自身: なし : 0 :魔獣化中ダメージに+[最も高い【能B】]、魔獣化をセットアッププロセスで行える 万物の打倒者 :自動:1:判定の直後:自動成功:単体:シーン: 愛 :判定の達成値を-20、1シナリオ1回 魔獣の殺意 :自動:1:DRの直前:自動成功:自身: なし : 1 :ダメージロールに+1D6 : : : - : - : - : - : - : 幽体 :自魔:1: 常時 :自動成功:自身: なし : 0 :魔獣化中に受ける【肉体・技術】ダメージを-5、魔獣化のコストに+1(計算済み) すり抜け :魔獣:1:判定の直前:自動成功:自身: なし : 1 :ドッジと情報収集の判定を【感情】で行える : : : - : - : - : - : - : 魔剣の使い手 :自ア:1: 常時 :自動成功:自身: なし : 4 :魔器を選択してダメージ規準と属性を【感情】に変更、装備中のあらゆる判定に+1 人鞘 : ア :1: 常時 :自動成功:自身: なし : 2 :自身以外に【FP】を10得て自由に消費できる、シーン終了時ごとに完全回復する 魂喰らい :攻魔:1: メジャー :【白射】:単体: 武器 : 2 :ダメージを与えたら束縛を与える、エキストラの場合支配下となる 魔刃解 :20魔:1: マイナー :自動成功:自身: なし : 4 :魔器の攻撃力に+[【感B】+3] : : : - : - : - : - : - : 愛用の品 : ア :1: 常時 :自動成功:自身: なし : 2 :常備化アイテムを選択してダメージ+2 : : : - : - : - : - : - : 【装備品】 名称 : 種別 :判定値: 攻撃力 :ドッジ:G値:A値:行動値:射程:備考 素手 :武(白): 白兵 : 8+1D6 : - : 3 : - : 0 :至近:手とか足とか 殺人者のナイフ :武(白): 白兵 : 17+2D6 : - : 5 : - : 0 :至近:生前愛用し30名以上を解体したナイフ。銘刀相当品、魔器兼愛用の品 殺人者のナイフ(魔):武(白): 白兵 : 21+2D6 : - : 5 : - : 0 :至近:上記と同一装備。銘刀相当品、魔器兼愛用の品 様々な衣服 : 防具 : - : - : 0 : - : 4 : 0 : - :の霊力によって強化された衣服。呪衣相当品 : - : - : - : - : - : - : - : - : 【一般アイテム】 名称 :効果 思い出の品 :イニシアチブ/【FP】を[(絆の数)D6]点回復 通信機 :携帯電話 肉体のストック :部下/使用人相当品 血に濡れた手 :白兵攻撃ダメージ+2(計算済み)、古竜の鱗相当品 : 【設定】 30人以上を殺して解体した殺人者。ある日とうとう捕まり死刑を宣告され執行されるも、未練のあまり血迷い幽霊となる。 もっと殺したい、もっと犯したい、もっと楽しいことをしたい!死んで法に縛られなくなったバカヤロウは生前以上の凶行を重ねるようになった。 そんな日が長く続くはずもなく、今度は夜側の住人から制裁を加えられることになる。這々の体で逃げ出して、夜の側を理解するに至るがそれ以来の付き合いとして千種令には頭が上がらなくなってしまっている。 人鞘は彼に取り憑かれた哀れな犠牲者の人達。犠牲者の身体は完全な支配下となり良いように使われ、多少自我が残って居たのしてもその声は消して外に漏れることはない。 非変異時はその身体に残った記憶を頼りに完璧に「その人」を演じて居るが、変異するごとに徐々に地が出はじめる。 そして注意すべきは彼が取り憑いたとしても耐久力はただのニンゲンを超えるはずもなく、完全な使い潰し用になってしまっているということ。 安心して、あなたが死んでも代りはいるもの(シーン終了時的な意味で。 【セッションボーナス】 【成長記録】 【特記事項】 【コンセンサス一覧】 (是非やられたい5~NG1でどうぞ。3なら相手次第、と言う事あたりでしょうか) [洗脳]5[改造]3[尿意]2[排便]1[妊娠]5[ふたなり]4[和姦]5[羞恥]3 [触手]2[幼女]5[獣姦]5[近親]5[同性]3[寝取られ]1[強姦]5[流血]2 その他推奨・NG事項:カヴァーの外見が自在です、実親子動物できます。
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台湾独立派と日本右翼との提携 台湾独立派との提携強化を 永山英樹国民新聞 平成14年10月25日号 日本李登輝友の会」発足す国民新聞 平成14年12月25日号 国民新聞:台湾関連
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キャンペーン期間 2015年8月10日(月) ~ 2015年11月10日(火) メンテナンスまで 招待人数による報酬 招待人数 賞品 1人目 風車のかんざし【頭】 2人目 にんにん巻物 空【】 &300ジュエル 3人目 どろろん煙幕 type2【】 &300ジュエル 4人目 忍びわんこ【】 5人目 したっぱくのいち 空【服】 &600ジュエル &拡張クローゼット5 6人目 にんにん巻物 桃【】 &600ジュエル 7人目 どろろん煙幕 type1【】 8人目 忍びの武器【】 &900ジュエル 9人目 したっぱくのいち 桃【服】 &900ジュエル 10人目 立派なくのいち【服】 &拡張クローゼット5