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タグ 歌手名T 歌 曲名 作品名 ジャンル カラオケ 瑠璃色の雪 ~ふりむけば隣に~ 瑠璃色の雪 ~ふりむけば隣に~ おっとり
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作品名:瑠璃色にボケた日常 使用者:紺野 孝巳 瑠璃色にボケた日常に登場する術技。 「葉」を「刃」に換えるといった言葉遊びによる一時的な概念置換。 使用者は野球少年だったため意思を凝縮させた光の球を作り出す。 当たれば爆発し、そこに貯めた人々の思いを直接伝える。 術技について言霊を物質に宿す術 物質置換 《言霊球》(コトダマ)一球入魂 元ネタ 関連項目 関連タグ リンク 術技について 言霊を物質に宿す術 名前を利用した言霊の武器化使いこなせば言霊だけではなく様々なものを置換できる。 「言霊を物体や物質に宿す手法のことよ。同じ響きを持つ名称を『見立て』に使い、その 存在を置き換える。言霊の基本よ」 (中略) 「例えば、声の出ない人が言葉を琴波に置き換え、演奏によって言霊を操った事例がある わ。ある人は意思を石に込め、投石による除霊をしたとか。紺野くんが使ったのもその一 種──亜流の霊導ね」 物質置換 言霊から物体を置換するあらゆるものを武器に出来る。 「券を剣に、釜を鎌に、土を鎚に、柿を火器に。お主の武器はそこら中に転がっておる。 その場その場でいかに機転を利かせ、いかに活用するか──その発想力こそが、言霊使い の本髄と知れ」 「はあ」 「言霊とは、意思の発露である。その凝塊こそが、言霊である」 「はあ」 「この音は、そんな言霊の風濤に満ちておる。すなわち言霊使いとは──あまねく意思を 御する『秀真の申し子』なり」 《言霊球》(コトダマ) 一球入魂 人々の意思を凝縮した光の球接触と同時に爆発する。 見ると、孝巳の右手に淡く光る球があった。野球のボールとさほど変わらぬ大きさの、 灼熱にグツグツと煮え滾る球があった。 (中略) 弾が光の尾を引き、唸りを上げて瑠璃と翠の間を駆け抜ける。二人の意思を込めたその 輝球は、瑠璃の父の胸板ど真ん中に確かに吸い込まれ、そして。 爆ぜた。 直後、強烈な爆風が巻き起こる。肌を焼くような熱の奔流が瞬く間に周囲を包み込み、 孝巳たち三人はコンクリートの地面を紙クズのように転がった。 元ネタ 言霊 日本呪術において言葉に宿るとされている霊的な力の事。 関連項目 関連タグ 光弾 瑠璃色にボケた日常 精神攻撃 術技 魔球 リンク
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制作プロジェクト 巨大建造物 再現建造物のプロジェクトリストです。 制作内容は再現の場合のみ記入。 巨大建造物遂行中プロジェクト和風城 大迷宮(仮) 再現建造物遂行中プロジェクトムジュラの仮面の世界 機動六課隊舎 巨大建造物予定のプロジェクトドット絵島 再現建造物予定のプロジェクトシン 時のオカリナ アースラ 巨大建造物遂行中プロジェクト 和風城 制作者:チルツー 制作内容 制作状況 他の制作プロジェクトと並行建設 完成予定:未定 大迷宮(仮) 制作者:瑠璃恋詩 制作内容 超広域にわたる大迷宮です。メビウスの輪や罠といった物など、いろいろと制作予定。 制作状況 他の制作プロジェクトと同時建設。迷宮作りが迷宮入りしとるわい( 完成予定:未定 再現建造物遂行中プロジェクト ムジュラの仮面の世界 出展:ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 制作者:チルツー 制作内容 制作状況 和風城とともに同時建設中。 完成予定:未定 機動六課隊舎 出展:魔法少女リリカルなのは StrikerS 制作者:瑠璃恋詩 制作内容 隊員の隊舎や外観(道路)も可能な限り再現。内部構造はほとんどが私のイメージによるものになると思われます。 制作状況 大迷宮とともに同時建設中。 完成予定:可能であればβ1.8アップデート前までに完成させたい。 巨大建造物予定のプロジェクト ドット絵島 制作者:瑠璃恋詩 制作内容 瑠璃恋詩 s 第1ホームが立つ島を完全整地し、さまざまなドット絵を作って行きます。 (※)読みは「どっとえじま」です。「どっとえとう」ではありません。 制作予定:巨大迷宮・機動六課・アースラが完成し次第だが、実質未定。 再現建造物予定のプロジェクト シン 出展:FF-X 制作者:チルツー 制作内容 制作予定:現在制作中のムジュラが完成し次第制作開始予定 時のオカリナ 出展:ゼルダの伝説 時のオカリナ 制作者:チルツー 制作内容 制作予定:シンが完成し次第制作開始予定 アースラ 出展:魔法少女リリカルなのはシリーズ 制作者:瑠璃恋詩 制作内容 外観、及び可能な範囲の内観。StS仕様で作りたいと思います。 制作予定:機動六課が完成し、β1.8アップデートが来次第制作開始予定。 テンプレート 遂行中用 *** 出展: 制作者: 制作内容 制作状況 完成予定: 予定用 *** 出展: 制作者: 制作内容 制作予定: (※)出展は再現の場合のみ利用してください。また、アスタリスクの前のスペースは消してください。
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フリムファクシ シークレットレア 必要魔力 22 近距離 攻撃 防御 TOTAL 親愛度MAX 5576 8279 13855 9000 誕生日 10月2日 身長 162cm 体重 48kg 3サイズ スキル 天駆ける夜の閃き効果 敵に大きなダメージを与えて、長い間スキルを使えなくする強化後スキル 天翔ける夜の導き手効果 敵にかなり大きなダメージを与えて、長い間スキルを使えなくする 親愛度 コメント 低 貴方がワタシの新しいマスターか?ワタシは神々のために夜を運ぶ者、フリムファクシだ。召喚されたからには、マスターのためにできる限りのことはしようと思っている。まずは一戦交えて、ワタシに相応しいマスターかを試させてもらおう! 中 ワタシは常に臨戦態勢なのだが、戦はまだ始まらないのか?まさか…用もないのに召喚したなんてことはないだろうな?このままワタシの天駆ける剣術を披露せず終わる、なんてことはありえないぞ? 高 ようやく戦が始まるのだな!この時を待ちわびていたぞ!ワタシもマスターの相棒として一役買わせてもらおう…なに?危ないから下がっていろだと!?何を言っているんだ、共に戦ってこそ相棒というものだろう!? 嫁 マスターの言う相棒というのは、バディの意味ではなくお嫁さんという意味だったのか…!?ふ、ふむ…なるほど…マスターがそれを望むのであればワタシは構わないぞ…むしろ、ワタシだってそっちの方が…い、いや、なんでもない… 親愛度 セリフ 低 早く戦いがしたいぞ、マスター。ワタシの相手になってくれないか? 剣を交えれば、その人の力量がわかるというものだ ワタシはこう見えても馬の化身だ。ふふっ、驚いたか? マスター…どうにも視線がやらしいぞ?ジロジロ見すぎだ 中 マスター。ワタシが剣の稽古を付けてやってもいいぞ 力を示せば、貴方をマスターだと認めてやるぞ? 大地を湿らせるのはワタシの役目なんだ。これが意外に忙しい む…そろそろ天駆ける時間か…それじゃ、また後で 高 ワタシの髪を整えるのも、マスターの立派な役目だぞ? マスターとならうまくやっていけそうだが、優しすぎるのは心配だな そろそろ天駆ける時間なのだが…マスターも一緒にどうだ…? 早くマスターと共に戦いたいものだな。血が疼いてしまう 嫁 ワタシとマスターが力を合わせればなんだってできるな、ふふっ マスターのためならなんだってするぞ。それがワタシの役目だ マスターは夜を駆ける馬…なんですね… ワタシがマスターのお嫁さん…そうか…ふふっ、ふふふっ… スキンシップ後 朝 マスターは朝から大胆だな…もう、しょうがないな… 夜 夜はワタシの時間だ。天の散歩にでも行くとしよう、マスター なでなで ワタシの髪はたてがみと同じものだと思ってくれてかまわないぞ… その他 誕生日 誕生日か···実は、新しい武器がほしいのだが···ダメだろうか···? スキンシップ朝:マスターは朝から大胆だな…もう、しょうがないな… -- 瑠璃 (2015-06-04 11 33 04) スキンシップ夜:夜はワタシの時間だ。天の散歩にでも行くとしよう、マスター -- 瑠璃 (2015-06-04 11 33 59) なでなで:ワタシの髪はたてがみと同じものだと思ってくれてかまわないぞ… -- 瑠璃 (2015-06-04 11 34 40) 親愛度中コメント:ワタシは常に臨戦態勢なのだが、戦はまだ始まらないのか?まさか…用もないのに召喚したなんてことはないだろうな?このままワタシの天駆ける剣術を披露せず終わる、なんてことはありえないぞ? -- 瑠璃 (2015-06-04 12 17 07) 親愛度中台詞:マスター。ワタシが剣の稽古を付けてやってもいいぞ」 「力を示せば、貴方をマスターだと認めてやるぞ?」 「大地を湿らせるのはワタシの役目なんだ。これが意外に忙しい」 「/む…そろそろ天駆ける時間か…それじゃ、また後で -- 瑠璃 (2015-06-04 12 21 07) 間違えました。「」はどの台詞にもついていません -- ↑ (2015-06-04 12 21 47) 親愛度中台詞:マスター。ワタシが剣の稽古を付けてやってもいいぞ/力を示せば、貴方をマスターだと認めてやるぞ?/大地を湿らせるのはワタシの役目なんだ。これが意外に忙しい/む…そろそろ天駆ける時間か…それじゃ、また後で -- 再投稿 (2015-06-04 12 23 49) 親愛度高コメント:ようやく戦が始まるのだな!この時を待ちわびていたぞ!ワタシもマスターの相棒として一役買わせてもらおう…なに?危ないから下がっていろだと!?何を言っているんだ、共に戦ってこそ相棒というものだろう!? -- 瑠璃 (2015-06-04 12 41 23) 親愛度高台詞:ワタシの髪を整えるのも、マスターの立派な役目だぞ?/マスターとならうまくやっていけそうだが、優しすぎるのは心配だな/そろそろ天駆ける時間なのだが…マスターも一緒にどうだ…?/早くマスターと共に戦いたいものだな。血が疼いてしまう -- 瑠璃 (2015-06-04 12 56 37) 親愛度嫁コメント:マスターの言う相棒というのは、バディの意味ではなくお嫁さんという意味だったのか…!?ふ、ふむ…なるほど…マスターがそれを望むのであればワタシは構わないぞ…むしろ、ワタシだってそっちの方が…い、いや、なんでもない… -- 瑠璃 (2015-07-10 10 05 28) 親愛度嫁台詞:ワタシとマスターが力を合わせればなんだってできるな、ふふっ/マスターのためならなんだってするぞ。それがワタシの役目だ/マスターは夜を駆ける馬…なんですね…/ワタシがマスターのお嫁さん…そうか…ふふっ、ふふふっ… -- 瑠璃 (2015-07-10 10 10 13) 名前 コメント
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しずるり探偵団の再推理 真木ハルコの学友、つまりラクティ☆パルプの友人である蝦保江瑠璃奈は推理する。 大納言先輩を襲撃して大怪我をさせた謎の襲撃者は誰か。 確実なのは――大納言先輩が、隠しごとをしているということだ。 犯人が大会参加者だと先輩が推測した根拠は何なのか。 瑠璃奈は見舞いの際にそれとなく訊ねてみたが、はぐらかされてしまった。 先輩は、犯人が誰かを知っているようにも思えたが、それ以上追及はできなかった。 犯人を絞り込む際に、知人を除外していたことが間違いだったのではないか。 妃芽薗学園に部外者が出入りすることはあまり多くない。 学内の者が犯人だったと考える方が自然だったかもしれない。 高等部の天奈生徒会長の能力は、他人の技を本人以上の精度で再現するものである。 大納言先輩の速さを真似て、一方的に叩きのめすことも可能かもしれない。 しかし、闇討ちをする動機はあるのだろうか。 友人の海老原静穂に頼んで天奈会長の周辺を調べてもらうと、恐ろしい事が明らかになった。 一般生徒には伏せられている陰惨な事件。旧校舎でのハルマゲドン。 死亡者には、阪海文香、矢達愛雨など中等部の生徒も含まれていた。 暗い気持ちで死亡者リストを見ていた瑠璃奈と静穂は、その中に気になる名前を見つけた。 “神足跳瑠”――ラクロス部のエース、光璃先輩の双子の姉である。 神足跳瑠は、棒高飛びの選手だった。 棒高飛びと言えば「弾むす」こと多居炭武々花が有名だが、競技の実力では跳瑠の方が上だったようだ。 だが、多居炭武々花には爆乳という圧倒的アドバンテージがあり、不運にもキャラの被った跳瑠は日陰者だった。 そして――旧校舎で死んだ。 ラクロスを基礎としたスピードタイプの我流格闘術。 大納言先輩と光璃先輩の戦闘スタイルは非常によく似ている。 そして、大納言先輩には西洋騎士のようなフルフェイス・ヘルム型アイガードのインパクトがある。 しかも中学生離れした巨乳を持ち、仮面の下の素顔は美人という噂だ。 キャラ被りで自分が埋没することを、光璃先輩は恐れたのではないか――。 ここまで推理した瑠璃奈は、静穂の立派な胸と自分の貧相な胸を見比べた。 胸の大小などが理由で殺意を抱くなどということがあるだろうか。 ――ないとは言い切れない、と瑠璃奈は思った。
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蘇芳の魔術回路が再構築され、再び魔術が使えるようになるまでは時間が掛かる。 その間はヴァイオレットが魔術についての基礎やアドバイスをすることとなっている。 そのついでに、グルメ島内部についての詳しい説明もするとのことだ。 その間瑠璃とインディゴはこの島を離れ、任務を再開している。 裏の世界ではかなり有名な傭兵部隊のため、依頼は日々絶えない。 主力である幹部の3人が数日欠けただけでも仕事に支障が出る。 そのため、何もすることのない瑠璃とインディゴは先に戻ったというわけである。 ~なんやかんやで、短期強化レッスン開始から10日後…~ グルメ島の入り口に一機の飛行機が着地する。 飛行機の扉が開き、中から降りてきたのは蘇芳瑠璃。 おそらく蘇芳とヴァイオレットの様子を見に来たのだろう。 「銀成長したかしら。10日間も時間与えてやったんだから強くなってるはずよね」 「あ、でももしかしたらすでに島内の生物たちに美味しく頂かれちゃってる可能性もあるわよね。性的な意味d」 「んなわけないでしょーがっ!!」 「チッ、生きてたのね」 「チッって聞こえた!今舌打ち聞こえた!」 「んなことしてないわよアホ妹。《触手植物ゲロエ》に襲われてしまえばよかったのに」 「そんなの棲んでるのこの島!?」 「捕獲対象が女のみ、という偏食生物。しかも食べるんじゃなくて××したり●●しちゃったり…」 「会いたくない会いたくない!そんな生物と遭遇したくない!」 「しかも捕獲レベル23」 「強っ!!なんでその植物そんなに都合がいい成長遂げちゃったのさ!!」 「シャキシャキとした食感と謎のネバネバが美味」 「食べられるんだ!ていうかネバネバってなんか嫌っ!」 「…ま、この話はこのくらいにして。どうかしら、選定の湖は越えられたの?」 「え?あーえっと………」 「はぁ?まだ越えられてないの?馬鹿なの?カスなの?(ピー)なの?死ぬの?ていうか死になさい」 「…そこまで言うことないじゃん」 とりあえず状況説明。 あれから七日後、つまり一週間後に魔術回路の再構築は完了した。 その翌日から蘇芳はヴァイオレットと共にグルメ島内部での修行を再開した。 新たな魔術回路は魔術の使用効率を潤滑にし、同威力の魔術でも少ない魔力で使用できる。 しかし一言で言ってしまえばそれだけであり、別に魔術が強くなるとかそういうことはない。 ここから先は術者本人のレベルアップが必要なのである。 「で、なんで全然強くなってないのよ」 「だって、魔力の使用量が減ったってだけじゃ何も強くなってないじゃん」 「馬鹿なの貴方、馬っ鹿じゃないの。またはアホなの?」 「そんな天才ランナーみたいな言われ方されても……」 「インディゴの魔術はあくまで土台作り。強くなれるかどうかは魔術師次第よ」 「私次第、かぁ。でもどうすればいいのかとかわかんないし」 「わかんないなら答えを見つけに行くまでよ」 「行くって…どこに」 「グルメ島内部以外にどこがあるのよ。さ、いくわよ」 「うえぇ~。あのさ瑠璃姉、私三時間くらい前に行ったばかりで…」 「無理矢理ボコボコにされてズルズル引きずられながらつれてかれるのと、 同意の上で私についてくるの。どっちがいいかしら?」 「後者でお願いしますです」 「それじゃあ行きましょう。お風呂は川でいいし、食料も内部で調達して、あとは…」 「ちょい待ちちょい待ち。いきなり何の話を」 「ああそうよね。テントは必要かしら」 「そうじゃなくて!お風呂とかそういうのは外に戻ってくればいいんじゃないの?」 「甘っちょろいこといってるんじゃないわよ。あっち側で生活したほうがその分時間短縮できるでしょーが」 「酷い、酷いよこの姉……私を殺すつもりだよ……」 「さ、行きましょ」 巨大な扉が大きな音を立てながら開いていく。 瑠璃は内部に意気揚々と進んでいく。楽しそうだ。 蘇芳は泣きそうな顔をしながら瑠璃の後ろをついていった。 「ええっ!?ラピス先輩と銀さん、島内に行っちゃったんですか!?」 「はい、一時間ほど前に扉を通って内部に行かれました」 ヴァイオレットと黒服の男が扉の隣に建てられた宿泊施設で話をしている。 先ほどまでヴァイオレットは休息のために昼寝をしていた。 しかし起きてみたら蘇芳がいない。施設内を探し回ったがいない。 島内部に行った可能性もあるかもしれないと考えたが、一人で行くわけがない。 いろいろと考えていても時間が過ぎるだけなので、職員を捕まえて話を聞いた。 そして現在の状況をやっと知ることができたということだ。 「そうですか…わかりました」 「どうなされますか?ヴァイオレット様も内部に向かわれますか?」 「いえ、ボクはいいです。姉妹の仲を邪魔するのも悪いですし」 「左様ですか。では何か甘いものでもお食べになりますか?」 「そうですね……ではザッハトルテとコーヒーを。種類はお任せします」 「かしこまりましたヴァイオレット様」 一礼すると黒服の職員はヴァイオレットに頼まれたものを取りに、部屋から出て行った。 ヴァイオレットは近くの本棚から一冊の本を取り、ソファーに座った。 読んでいる本の表紙には可愛らしい少女のイラストが描かれている。 どうやらそれはすべてがライトノベルのようだ。 本屋に置かれているような巨大な本棚は、すべてライトノベルで埋め尽くされていた。 「空いた時間は有効に使わないと。さ、読みましょうか」 ヴァイオレットがペラリと表紙を捲ったとき、ドアをノックする音が聞こえた。 返事を返すと、先ほどの職員がワゴンを押して部屋に入ってきた。 ワゴンにはケーキとコーヒーの入ったポット、カップが乗っている。 ケーキをフォークと一緒にテーブルに置き、カップにコーヒーを注ぐ。 最後にミルクの入った入れ物と角砂糖をヴァイオレットの前に置いた。 「どうぞ、ヴァイオレット様」 「ありがとうございます」 さっそくコーヒーにミルクと角砂糖をドバドバ入れ始めた。 多い、多すぎる。コーヒーよりもミルクと砂糖のほうが多いんじゃないかと思う。 すべての砂糖とミルクを入れ終わると、その「コーヒーだった液体」をゆっくりと口に流し込む。 コーヒー本来の香ばしさも苦味もなにもない。唯の甘い液体だ。 「はぁ、おいしいですねぇ」 「ヴァイオレット様。お言葉ですがカフェオレのほうがよかったのでは」 「………それもそうですね」 ケーキを口に運びながらヴァイオレットは答えた。 その次からヴァイオレットはカフェオレを頼むようになったらしい。 「それにしても、ボクの出番、これで終わりなような気がします……」 場所は変わり、グルメ島内部。 現在位置は『捕食者の森』。 島内を進み、最初の『草食野原』を越えてすぐの場所だ。 『草食野原』は草食系の生物が多く生息している。 大人しく、温厚で、人を襲うことはめったにない。ぶっちゃけ危険性ゼロ。 捕獲レベルは1にも満たないような生物ばかりなので、素人でもあっさり捕獲できたりする。 そしてこの『捕食者の森』は…。 「ここ正直私くるの嫌なんだよね」 「まだレベルは低いでしょ。ここで弱音吐いてどうするのよ」 蘇芳と瑠璃が森の中を進んでいる。 足取りは軽い。臆することなくずんずん進む。 「レベルとかそういう問題じゃなくてさ……ここの果物とか野菜とか植物とか」 「おいしいわよね」 「そーゆーことじゃなくて。いろいろとさ……危険ってことっ!」 後ろを振り向くと同時に“アームズメイカー”で剣を作り出し、振るう。 蘇芳の真後ろまで近づいていた《食人リンゴ:捕獲レベル3》が真っ二つにされる。 林檎の中からみずみずしい果汁がほとばしる。さわやかな香りが周囲に漂う。 真っ二つになった一方をキャッチすると、すかさずかぶりついた。 「いただきますっ。シャグシャグ…んまい」 「機内で食べてた果物も生えてるわよー?そんなのよりも美味しいのもあるし」 「倒したからには責任持って食べないと。ごちそうさま」 蘇芳はバスケットボールほどの大きさもある《食人林檎》を一分で食べきった。 その直後、空気でも読んでいたのか、別の植物たちが物陰から現れた。 巨大なハエトリグサ《オオグイグサ:捕獲レベル4》 まるで悪魔のハロウィン気分《デビルジャックランタン:捕獲レベル3》 全部眼球みたいな見た目がキモい《ガン見ブドウ:捕獲レベル2》 回転しながら突進してくる《ドリルニンジン:捕獲レベル5》 などといった様々な植物が次々に蘇芳と瑠璃を「食べようと」襲い掛かる。 そう、この森に存在する植物たちはすべてが「肉食」なのだ。 「ほら、あーやって面倒だから嫌なの」 「あーはいはいそうね。ならちゃっちゃと抜けちゃいましょうか」 「りょーかいっ!」 肉食植物たちとの戦闘を切り抜け、蘇芳と瑠璃は森を無事抜けた。 森のトンネルを抜けると向こうは別に雪国とかではなく、小高い丘がある。 この丘には蘇芳がギリギリ倒せた《ウシノシシ》ぐらいのレベルの生物が生息している。 さらに進み、その丘を越えた向こうにはだだっぴろい湖があった。 もしかしてこれ琵琶湖より広いんじゃねーかオメーといわんばかりのサイズの湖。 湖には三メートルおきぐらいに、五メートルほどの広さの浮島がいくつもある。 そして水中を覗くと無数の生物たちの姿が見える。 そう、この湖こそが『選定の湖』である。 「ついたついた。意外とテンポ速かったわね」 「るりふぇふぇいるふぁふぁひゃふひんひひふぁふぉ」 (瑠璃姉がいるから百人力だよ) 先ほどの森で倒した果物を食べながら蘇芳が喋る。日本語でおk。 流石に普通の植物や野菜をそのまま食べるのはキツイので、生で食べられる果物だけを持って来た。 《ガン見ブドウ》が美味しいんだけどキモイ。食べようとするたびにこっちみんな状態。 いろいろと話をしていると食べるのか喋るのかどっちかにしなさいと瑠璃に怒られた。 食べることにした。 「むぐむぐ……もしゃもしゃ……げふぅ。ごちそうさまでした♪」 「ゲップしてる銀なんて、衛くんが見たらどう思うかしらね」 「出るものは出るの。しょーがないじゃん」 「衛くんに嫌われちゃうわよー?」 「嫌われたりなんか……って瑠璃姉後ろぉ!!」 湖に背を向けて立っていた瑠璃の背後で巨大な水しぶきがあがる。 現れたのはシマウマのような模様をしたシャチ《ゼブラシャチ:捕獲レベル13》 ゼブラシャチは巨大な口を開いて瑠璃に喰らい掛かる。 「…ったく。うっさい魚ね。ちょっと黙ってなさい」 懐に手を突っ込みながら振り返る。 取り出したのは短機関銃、イングラムM10。 襲いくるゼブラシャチの顎を蹴り上げ、その土手っ腹に銃弾を叩き込む。 無数の弾丸を喰らったものの、いまだゼブラシャチの勢いは衰えない。 再び瑠璃に向かって牙を剥き、全力で襲い掛かる。 それを見た瑠璃は一度右足を後ろへと下げた。 「“鎌鼬”」 ――刹那。目にも留まらぬ速度で瑠璃の右足が動く。 それと同時にゼブラシャチが瑠璃に噛み付く。 しかしその直後、ゼブラシャチの体が真っ二つに割れた。 瑠璃は何事もなかったかのようにそこに立っている。 「ちょっとお腹空いたし、これ食べましょうか」 「なにこの人チート」 そこら辺から木片を拾ってきて、魔術で火をつける。 先ほど真っ二つにしたゼブラシャチをさらにぶつ切りにし、魔術で作った串に刺す。 塩コショウで軽く味付けをし、いよいよ焼き始める。 「わー、おいしそうな香りがしてきたぁー。そろそろいいかな?」 「まだまだダメよ。あと3分くらいしっかり焼かないと生臭くてとても食べられないわよ」 「えーでもぉー………ええい頂きぃ!」 「あ、ちょっと」 我慢できずに蘇芳が串をひとつ手に取り、肉にかぶりついた。 一度は幸せそうな表情を浮かべたものの、すぐに微妙そうな顔へ変化した。 「まじゅい……。ってゆーか生臭い………」 「血の気が多い生物だもの。いろんな意味で。しっかり焼かないと食べるのには向かないわよ」 「なるほどなるほど」 今度は中までキチンと火が通るようにじっくりと焼く。 待ちきれない気持ちを押さえつけ、目の前で肉が焼きあがるのを待つ。 じゅわじゅわと表面から肉汁が溢れ出し、周囲に香ばしい香りを漂わせる。 「わぁ、おいしそう。今度こそ、そろそろ大丈夫だよね瑠璃姉?」 「そうね、大体そんなものかしら。召し上がれ」 「わーい!いっただきまーすっ!」 ゼブラシャチの串焼きを一本手に取り、かぶりつく。 噛み締めるたびに肉汁が溢れ出し、口の中に旨みが広がる。 「魚っぽい味かなって思ったけど、どっちかというとお肉っぽいね」 「シャチはどっちかといえば魚じゃないから。肉っちゃあ肉ね」 「おいしー♪でも食べてると飲み物とか欲しくなってくるね」 「飲むものならあそこにあるじゃない。いっぱい」 串焼きを食べていた瑠璃が湖を指差す。 無論、あそこには今でも無数の化物たちが蠢いている。 安易に近づけば怪物にガブリとやられ、水中に引きずり込まれるだろう。 そうなってしまえばあっというまに餌となってご馳走様ご愁傷様。 「えっと……あそこだけは嫌だ」 「それじゃああっち。あっちのほうに小さな泉があるから、そっちで飲んでくるといいわ」 「わかった。ちょっと行って来るね」 瑠璃が指差した方角に進むと、確かに泉があった。 ぐるりと周囲を見渡すと、危険な生物はいなさそうだ。 泉に近づき、手のひらで水をすくって飲む。 冷たく、透き通った水は渇いたのどを潤した。 「あーおいしー。ここって水も美味しいんだ」 「ひんやりしてて気持ちいいし、なんなら水浴びとかしたいかな」 「でもそんなことしてたら誰かに見られ……瑠璃姉しかいなかった」 「せっかくだから、ここの水ちょっと持っていこうっと」 魔術で水筒を作り出し、水を汲む。 ついでにもう一度、手ですくって水を飲む。 今まで飲んだどんな水よりも美味しい。 水道水やミネラルウォーターなど比較にならない。 極上の水に満足し、瑠璃の元へ戻ろうと立ち上がった。 泉から離れようとしたとき、草むらの影にあるものを発見した。 「卵、かなこれ?なんの卵だろ」 草むらにあったのはひとつの卵。 大きさは握りこぶしよりも一回り大きいほど。 形状は細長く、表面に雷のような模様が見られる。 「見た感じは鳥の卵っぽいけど、それにしちゃ妙に形が細長いし」 「細長い卵……蛇?蛇の卵って食べられるのかな」 「それにこの雷模様。なんなんだろ、わかんないや」 「そうだ、瑠璃姉に聞けばなんかわかるかも!」 さっそく卵を持っていこうと、その卵に手を触れた、その時だった。 ――パキッ 「……へ?」 「……で、中からそれが出てきて、なんとなく見守ってたと」 「うん」 「無事に孵化できたみたいだからその場を立ち去ろうとした」 「そう」 「でもそれはあんたのことを親だと勘違いして付いてきちゃった、と」 「いえす」 蘇芳の足元を一匹の蛇がちょろちょろしている。 蛇は全身が白い鱗で覆われているが、ところどころに黄色い鱗がある。 黄色い鱗はまるで雷のようにも見える。 「まさか《雷電蛇》に懐かれるとはね。それめっちゃレアよ」 「レアって、どのくらい?」 「そうね、今のところ10匹くらいしか捕獲されてないわ。捕獲レベルは18って指定されてたはずだけど」 「すごっ。そんでそんなの見つけた私もっとすごっ」 「はいはい、さらに懐かれちゃったあんたはすごいわよー」 蘇芳が足元の雷電蛇の幼蛇に余っていたゼブラシャチの肉をちぎってあげる。 幼蛇はうれしそうに肉を咥えるとそのまま呑み込んだ。 ある程度餌をあげると満足したのか、蘇芳の足元でとぐろを巻いて寝た。 「瑠璃姉、この子めっちゃ可愛いんだけど」 「懐きすぎよ。なんなのそれ、犬か猫なの?蛇の懐き方じゃないわよ」 「どうしよこの子、飼っちゃおうかなぁ……」 「悪いけど、ここからの生物の持ち出しは許可がいるのよ」 「やっぱりかぁ。許可って誰から貰えばいいの?」 「COLORSの幹部。つまり私とか」 「……つれてっていい?」 「ちゃんと飼えるならね。いいわよ」 「やった!ありがとう瑠璃姉!」 意外とあっさり許可してくれた。蘇芳としてはまた無理難題を押し付けてくると思っていたのだが。 何はともあれ、新しく雷電蛇が蘇芳の家族の仲間入りをした。 「とりあえず雷電蛇の生態とかについての説明をするわね」 「お願いします瑠璃姉」 蘇芳と瑠璃が焚き火を挟んで地べたに座っている。 蘇芳の膝の上には雷電蛇の幼蛇がいる。 未だに気持ちよさそうに眠っている。 蛇が寝ている姿ってどんな感じなのかはよく知らないけども。 「まず雷電蛇はその名の通り体内に発電機を持っているわ。 でもデンキウナギとかみたいに体から発生させるってわけじゃないの。 毒蛇はどうやって毒を注入するか、知ってるわよね」 「えっと、ガブッって噛み付いて牙から注入」 「正解。それと同じように、噛み付くことで対象に電撃を流すの」 「ほうほうなるほど。大人になるとどのくらいおっきくなるの?」 「あんまり大きくはならないわね。大体300センチくらい」 「十分おっきいような気もするけど…。アナコンダとか考えるとちっちゃいのかな」 膝の上の雷電蛇の頭を撫でる。 今の大きさは大体30センチ程度。 つまり成長すると現在の10倍ほどまで成長するということだ。 「兎に角、その子に名前でもつけてあげたら?名無しじゃかわいそうでしょ」 「名前。名前……かぁ………」 「そういえば銀ってネーミングセンス皆無だったわね。ハリネズミだってはりりんだったし」 「ほ、ほらコキュートスがいるよ!あれかっこいいでしょ!」 「メタルドラゴンに名前付けたのはお父様、でしょ。今回こそはいい名前付けてあげなさいよ」 「いい名前、いい名前、いい名前…………」 「シビシラス、シビビール、シビルドン。とかどうかしら」 「ポケモン!?」 「もういいやボルト!ボルトで決定!」 「まぁ、いいんじゃないかしら。妥当ね」 「よっしゃー!よろしくねっボルト♪」 先ほどまで寝ていた雷電蛇、ボルトが目を覚ました。 ボルトはするすると蘇芳の体を登っていき肩の辺りまでやってきた。 そしてその長い舌で蘇芳の頬をペロリと舐めた。 「ひゃあっ!くすぐったいよボルトー」 「……本当になんなのかしら。アレって犬とかがやることよね。懐いてるってレベルじゃないわよ」 「お母さんに懐くのは当然だよー♪」 「あ、それで思い出したわ。本物のお母さんはどうするのよ」 「へ?本物って?」 「卵があったんでしょ。だったらその卵を産んだ親の雷電蛇がいるでしょ。場合によっては血眼になって探しているかもよ?」 「―――あ」 噂をすればなんとやら、近くの草むらが揺れる。 現れたのは、言うまでも無いが大人の雷電蛇。 おそらく、多分、いや間違いなく、ボルトの親だろう。 雷電蛇は蘇芳を見ると体を持ち上げて威嚇行動をする。 「あわわわわ、ご、ごめんなさいっ!本当は私も連れてくるつもりはなかったんですけど勝手についてきちゃったっていうか」 「蛇に言葉が通じるわけないでしょ…………銀、下がりなさいっ」 「へ?え、ちょっとうわぁ!」 瑠璃が蘇芳の服の襟首を掴み、そのまま後ろへと跳んだ。 その直後、先ほどまで蘇芳が立っていた場所に「何かが落ちてきた」。 現れたのは10メートルほどもある、蝙蝠のような翼を生やした黒い虎。 「あれは…《シュヴァルツタイガー》よね…。おかしいわね、アレはもっと奥地の生物のはず……」 「瑠璃姉、あれの捕獲レベルはいくつくらい?私的には17くらいかなーって」 「25よ」 「……え?なにそれ。あそこの湖でアベレージ15でしょ?おかしいおかしい!アレ強すぎでしょ!」 「私でも正直アレとは関わりたくないわ。倒せないってわけじゃないんだけどね。 雷電蛇だけでも面倒なのに、あんなのまで来たら面倒すぎるわ」 「ど、どうしよう瑠璃姉……」 「どうするって、ここは一旦引くのが建設的でしょうね。逃げるわよ」 「うんそうだね!逃げよう…ってそういえばボルトのお母さんっぽい雷電蛇は!?」 雷電蛇はシュヴァルツタイガーの真後ろ、ちょうど死角になる位置にいた。 威嚇行動をとっていた雷電蛇は、突然現れた強敵にも畏怖することはなかった。 徐々に後方から近づき、シュヴァルツタイガーの脚を攻撃圏内に捉える。 思い切り脚に噛み付き、某電気ネズミばりの電撃を流し込む。 シュヴァルツタイガーは多大なダメージを食らってひるんだ。 「おぉー!お母さん蛇強いっ!」 「いいえ、あの程度でシュヴァルツタイガーがやられるはずないわ」 足元の雷電蛇に気づくと、シュヴァルツタイガーはすぐさま猫パンチを喰らわせる。 猫パンチ、というと響きは可愛らしいが、実際はそんな甘っちょろいものではない。 10メートルもの巨体から繰り出されるそれは衝撃波を伴いながら雷電蛇の胴体に叩き込まれた。 数十メートルほど殴り飛ばされた雷電蛇は近くの樹へと叩きつけられ、動かなくなった。 「勝負ありね。さ、銀、あいつが雷電蛇に気を取られている隙に逃げましょう」 「う、うん。行こっボルト!……ボルト?」 蘇芳の肩に乗っているボルトが突然威嚇行動をとり始めた。 無論、蘇芳でも瑠璃に向けてでもない。シュヴァルツタイガーへ向けてだ。 蘇芳のことを親だと思い込んでいるものの、生物としての本能か、自分の本当の親が倒されたことを理解したのかもしれない。 自らに向けられる敵意を感じ、シュヴァルツタイガーがこちらを向いた。 「面倒なことしてくれちゃって…。スタングレネード投げるから、その隙に逃げるわよ」 「……ゴメン瑠璃姉。私、戦うよ」 「何言ってるのよ。あんたの実力じゃアレには勝てないわよ」 「ボルトだって勝てないってわかってるのに立ち向かおうとしてる。それなのに私が戦わないでどーすんのさ」 「…死んでも知らないわよ。今回ばかりは私も助けない、いいわね?」 「いいよ。自分で選んだんだもん、後悔はしないよ」 シュヴァルツタイガーが身を低くし、戦闘態勢をとる。 それには一部の隙もなく、油断もなく、慢心もない。 ただ、自らに敵意を向ける対象を狩るためだけに、猛獣は吼える。 蘇芳の、まさに命を賭けた決戦が始まる。 「“シルバーブリッツ”!!」 蘇芳の指先から鋼鉄の弾丸が放たれる。 銃弾の先端は先鋭化されており、空気抵抗を減らしつつ殺傷能力を上げてある。 格段に速度と威力が向上した弾丸は、音速を超える速度でシュヴァルツタイガーに迫る。 だが、弾丸が当たったと思った直後、その姿が消えてしまった。 消えたはずのシュヴァルツタイガーは、いつの間にか蘇芳の目の前まで迫っていた。 先ほど雷電蛇に対し猛威を振るった猫パンチが、今度は蘇芳に振るわれる。 すぐさま反応し、後ろへ跳ぶが、僅かに脇腹を爪が掠った。 服が破れ、皮膚が切れ、肉が抉られ、血飛沫が舞う。 無論、その程度の傷であれば、治癒速度を活性化することによってすぐに再生するのだが。 そのほんの一瞬の出来事で、蘇芳はシュヴァルツタイガーの強さを悟った。 格が違う。圧倒的なまでに。 「瑠璃姉、アレの生態の説明をしてほしいんだけど」 「シュヴァルツタイガー、この島『最速の生物』よ。勿論、速さだけが強さじゃないけどね」 「最速……全体的に魔術が遅い私には強敵ってわけか」 再び蘇芳がシュヴァルツタイガーと向き合う。 相手もそれに応じるかのように、蘇芳をじぃっと見つめる。 黒い体とは対照的な紅く輝く眼からは今まで感じたことのないほどのプレッシャーを感じる。 ただ睨まれているだけだというのに、身体が動けなくなりそうだ。 (でもどうしよう…。そうだ、避けられるなら一度拘束するのがいいかな?) 「そうと決まれば!“ランダムマイン”!!」 シュヴァルツタイガーの周囲に地雷をばら撒く。 すかさず反応し、一度跳躍して別の場所へ着地する。 蘇芳はその瞬間を逃さなかった。 「これでオッケイ!“グレイプニル”!!」 シュヴァルツタイガーの足元から鋼鉄のワイヤーが飛び出す。 だが蘇芳は肝心なことを忘れていた。 シュヴァルツタイガーの持つ、漆黒の翼のことを。 そのことに気づいたのは、既に空へと舞い上がりグレイプニルを回避された後だった。 「くっそー。やっぱり、一筋縄じゃいかないかぁ…」 蘇芳が戦闘を始めてから30分ほど経過した。 瑠璃は少し離れた場所にあった樹へ登り、遠くから観戦している。 戦況は一言で言えば、明らかに劣勢。 蘇芳が何度も魔術を放っても、異常なまでの俊敏さですぐに回避される。 それとは逆に、シュヴァルツタイガーの攻撃が速過ぎて避けられない。 反応するどころか、まず見えない。気づいたら目の前にいる。そんな感じだ。 向こうが無傷なのに対し、こちらは既に何回も攻撃を喰らって、そのたびに回復。 このままでは蘇芳のスタミナが切れるのも時間の問題かもしれない。 「やっぱり、ダメそうね。どうしようかしら、助けないとは言ったけれど。 でも見殺しってのもアレよね。……ふわぁ…。 眠くなってきたわ。寝よ」 大きなあくびをしたと思ったら、そのまま樹の上で寝始めてしまった。 蘇芳とシュヴァルツタイガーの戦いは続く。 正直、この戦いの結果は見えているも同然だ。 レベルアベレージ15の湖を進むことの出来ない蘇芳が、捕獲レベル25の生物に勝つことなど無理だ。 捕獲レベルは捕獲の難易度を示すが、大半は強さを示す指標となる。 単純にレベルが高ければ、それだけの強敵だということだ。 捕獲レベル5を瞬殺できても、捕獲レベル15には大苦戦してしまう。 たった10でこれだけ違うのに、さらにそれ以上ともなれば不可能に等しい。 もう諦めてしまおうか、そう蘇芳が思ったときだった。 シュヴァルツタイガーの攻撃を避けた直後、ガクリと膝をついてしまう。 「あ、あれっ?おかしいな、脚が、これ以上、動かないや……」 蘇芳の身体に、とうとう限界が来たのだ。 そのことを察したのか、シュヴァルツタイガーが一度動きを止めた。 そしてあざ笑うかのように、ゆっくりと、ゆっくりと蘇芳へと歩を進める。 一瞬で命を奪うのではなく、徐々に恐怖を味あわせてから狩る。 シュヴァルツタイガーにとって、狩りとは娯楽であり、楽しみであるのだ。 徐々に近づく絶望に、蘇芳はもはや言葉が出なくなっていた。 脚は少しも動かない。這いずって逃げることもできるだろうが、すぐに追いつかれる。 もはや助かる術は何も残っていない。ただ、捕食されるときを待つだけだ。 やがて、蘇芳の目の前でシュヴァルツタイガーが歩みを止めた。 右前足を高く振り上げ、蘇芳へと狙いを定め、振り下ろす。 死にたくない。まだ、こんなところで死にたくない。 蘇芳の頭の中はそれでいっぱいだった。 右前足が目の前へと迫り、死ぬと思ったとき、 蘇芳の中で、何かが目覚めた。 結論から言うと、蘇芳がシュヴァルツタイガーに潰されることはなかった。 攻撃をやめた?わざと外した?力づくで防いだ? どれも違う。そのどれとも違う。 答えは単純明快、振り下ろされる右前足を切断した。 ただそれだけだ。 「……そっか。そういうことか」 蘇芳の目の前に前足が迫ってきたとき、あることが蘇芳の頭をよぎった。 こちらから攻撃をしても簡単に避けられてしまう。 ならばあちらから攻撃してくる瞬間を狙って攻撃すればいい。 あちらの攻撃が速過ぎて避けられず、少しでもあたれば致命傷。 ならばこちらの身体をより強化してやればいい。 どうしても、どうあがいても魔術を使うだけでは勝てない。 ならば、自分自身をより強くしてやればいい。 気づいたときには、蘇芳の右腕は鋭利な剣へと変貌していた。 「新魔術“ヴァリアブルブレード”ってところかな…?」 シュヴァルツタイガーが口を開き、鋭い牙を剥いて襲い掛かる。 蘇芳は右腕を元に戻すと、そのままの体勢で立ち止まった。 無防備な蘇芳にシュヴァルツタイガーが噛み付いた。 だが、すぐに噛み付くのをやめ、蘇芳から離れた。 シュヴァルツタイガーの口からは多量の血が流れている。 そして蘇芳の身体からは無数の針が生えている。 噛み付いた瞬間、その針が口内に突き刺さったのだ。 「これは“ニードルコート”とかがいいかな?」 右前足を失い、口内に傷を負っても、なおシュヴァルツタイガーはひるまない。 翼を広げ、天を仰ぎ見、周囲が揺れるほどの咆哮をあげる。 この島の強者としてのプライド、それだけがシュヴァルツタイガーを突き動かす。 空へと舞い上がり、蘇芳へと決死の突進を仕掛ける。 「……多分、キミのおかげで私は強くなれたんだと思う。ありがとう。そして……さようなら」 右腕を後ろに下げ、渾身の力を込める。 鋼鉄が右腕を覆い、その形状を変化させていく。 それは蘇芳の体よりも大きい、巨大な射出式の十字架型の槍。 高速で襲い来るシュヴァルツタイガーに狙いを定め、右腕を突き出す。 「“クロスジャベリン”!!!」 十字槍はすさまじい勢いで蘇芳の右腕から射出され、シュヴァルツタイガーの胴体を貫いた。 嘆くように吼え、傷口からおびただしいほどの血を溢れさせ、シュヴァルツタイガーが倒れた。 しばらくの間もがいて立ち上がろうとしていたが、やがて力を失い、動かなくなった。 絶望的に思われた戦いは、最後の最後で番狂わせを起こして幕を閉じた。 樹の上で居眠りをしていた瑠璃が目を覚ます。 頭がぼうっとした状態で、なんとなく周囲の様子を窺う。 しばらくして、周囲の妙な静けさに違和感を感じる。 「……おかしいわね。起きる前は銀が戦ってたはずなんだけど……ふわぁ…。 あれかしら、銀食べられちゃったのかしら。あ、あらやだよだれ」 口元のよだれを袖で拭う。 樹から飛び降り、先ほどまで銀たちが戦っていた辺りまで移動する。 大分薄れてはいるが、辺りにはまだ血の臭いが残っている。 辺りを見ていると、あるものを発見した。 血痕だ。どうやらそれは湖へと続いているらしい。 後を追って進んでいくと、やはり湖へとたどり着いた。 「あらあら、銀ったら湖の生物に引きずり込まれちゃったのかしら。可愛そうに。なむなむ」 「人を勝手に殺すなぁー!!」 湖を眺めている瑠璃の後ろから銀が現れる。 肩には相変わらずボルトが乗っている。 どうやらこの辺りで焚き火をしていたようだ。 手には何かの骨付き肉を焼いたものを持っている。 「あら、いたの銀」 「いたよ!勝手に殺さないでよ!」 「はいはい。ところでシュヴァルツタイガーは?逃げたとか?」 「これ」 手に持っていた骨付き肉を見せる。 これ、とか言われても正直わからない。面影とかないし。 残念ながら味で判断もできない。食べたことないし。 が、蘇芳の後ろに肉片と骨の残骸が見える。 あの骨格を見る限りはシュヴァルツタイガーと断定して間違いないだろう。 「……へぇ、倒せたの。やるじゃない銀」 「へへーん。私だってやるときはやるんだよー。極限の戦いの中での成長!ジャンプ的展開!」 「はいはい。よかったわねー」 表面上は普段どおりの反応だったが、内心瑠璃は驚いていた。 自分としても戦闘を避けたいシュヴァルツタイガーをたった一人で倒した。 少し前までは湖の生物すら倒せなかったのに。 ここまでの成長は、正直予想外だった。 ~それから数日後…~ 「お疲れ様でした銀さん。やっと訓練終了ですね」 「うん、ありがとヴァイオレットさん、瑠璃姉」 「ちょっと銀、私のほうが懇切丁寧に特訓してあげたじゃない」 「ああごめん。瑠璃姉には感謝してるって」 「というか、ヴァイオレットはラノベ読んでただけよね。禁書とシャナ、あるだけ読破したんだったかしら?」 「うっ……だ、だってラピス先輩が特訓をしているならボクの出番はありませんし」 「言い訳乙。なんのためにあんた連れてきたのよ」 「じゃあ先輩もなんで来ちゃったんですか!」 「暇だったから。それだけよ」 「ラピス様!飛行機の用意ができました!搭乗なさってください!」 「ありがとう。さ、銀行くわよ」 「うん。じゃヴァイオレットさん、またね」 「はい。会えたらまたどこかで」 飛行機に瑠璃と蘇芳が搭乗する。 乗ってまもなく飛行機が離陸する。 蘇芳はボルトに餌をあげている。 瑠璃は何か考え事をしていたようだが、やがて蘇芳に話しかけた。 「銀。今から学園へ帰るわけだけど、ちょっと私サプライズ思いついちゃったのよ」 「サプライズ?なにさそれ」 「かくかくしかじか。というわけで協力してくれないかしら?」 「まるまるうまうま。なるほど、面白そう」 「でしょ?久々の学園への帰還なんだから、劇的じゃないと、ね」 瑠璃と蘇芳が不敵な笑みを浮かべた。 飛行機はグルメ島からどんどん離れていく。 遠ざかっていくほど小さくなっていき、やがて見えなくなってしまった。 「じゃあねグルメ島。楽しかったよ」
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蘇芳の魔術回路が再構築され、再び魔術が使えるようになるまでは時間が掛かる。 その間はヴァイオレットが魔術についての基礎やアドバイスをすることとなっている。 そのついでに、グルメ島内部についての詳しい説明もするとのことだ。 その間瑠璃とインディゴはこの島を離れ、任務を再開している。 裏の世界ではかなり有名な傭兵部隊のため、依頼は日々絶えない。 主力である幹部の3人が数日欠けただけでも仕事に支障が出る。 そのため、何もすることのない瑠璃とインディゴは先に戻ったというわけである。 ~なんやかんやで、短期強化レッスン開始から10日後…~ グルメ島の入り口に一機の飛行機が着地する。 飛行機の扉が開き、中から降りてきたのは蘇芳瑠璃。 おそらく蘇芳とヴァイオレットの様子を見に来たのだろう。 「銀成長したかしら。10日間も時間与えてやったんだから強くなってるはずよね」 「あ、でももしかしたらすでに島内の生物たちに美味しく頂かれちゃってる可能性もあるわよね。性的な意味d」 「んなわけないでしょーがっ!!」 「チッ、生きてたのね」 「チッって聞こえた!今舌打ち聞こえた!」 「んなことしてないわよアホ妹。《触手植物ゲロエ》に襲われてしまえばよかったのに」 「そんなの棲んでるのこの島!?」 「捕獲対象が女のみ、という偏食生物。しかも食べるんじゃなくて××したり●●しちゃったり…」 「会いたくない会いたくない!そんな生物と遭遇したくない!」 「しかも捕獲レベル23」 「強っ!!なんでその植物そんなに都合がいい成長遂げちゃったのさ!!」 「シャキシャキとした食感と謎のネバネバが美味」 「食べられるんだ!ていうかネバネバってなんか嫌っ!」 「…ま、この話はこのくらいにして。どうかしら、選定の湖は越えられたの?」 「え?あーえっと………」 「はぁ?まだ越えられてないの?馬鹿なの?カスなの?(ピー)なの?死ぬの?ていうか死になさい」 「…そこまで言うことないじゃん」 とりあえず状況説明。 あれから七日後、つまり一週間後に魔術回路の再構築は完了した。 その翌日から蘇芳はヴァイオレットと共にグルメ島内部での修行を再開した。 新たな魔術回路は魔術の使用効率を潤滑にし、同威力の魔術でも少ない魔力で使用できる。 しかし一言で言ってしまえばそれだけであり、別に魔術が強くなるとかそういうことはない。 ここから先は術者本人のレベルアップが必要なのである。 「で、なんで全然強くなってないのよ」 「だって、魔力の使用量が減ったってだけじゃ何も強くなってないじゃん」 「馬鹿なの貴方、馬っ鹿じゃないの。またはアホなの?」 「そんな天才ランナーみたいな言われ方されても……」 「インディゴの魔術はあくまで土台作り。強くなれるかどうかは魔術師次第よ」 「私次第、かぁ。でもどうすればいいのかとかわかんないし」 「わかんないなら答えを見つけに行くまでよ」 「行くって…どこに」 「グルメ島内部以外にどこがあるのよ。さ、いくわよ」 「うえぇ~。あのさ瑠璃姉、私三時間くらい前に行ったばかりで…」 「無理矢理ボコボコにされてズルズル引きずられながらつれてかれるのと、 同意の上で私についてくるの。どっちがいいかしら?」 「後者でお願いしますです」 「それじゃあ行きましょう。お風呂は川でいいし、食料も内部で調達して、あとは…」 「ちょい待ちちょい待ち。いきなり何の話を」 「ああそうよね。テントは必要かしら」 「そうじゃなくて!お風呂とかそういうのは外に戻ってくればいいんじゃないの?」 「甘っちょろいこといってるんじゃないわよ。あっち側で生活したほうがその分時間短縮できるでしょーが」 「酷い、酷いよこの姉……私を殺すつもりだよ……」 「さ、行きましょ」 巨大な扉が大きな音を立てながら開いていく。 瑠璃は内部に意気揚々と進んでいく。楽しそうだ。 蘇芳は泣きそうな顔をしながら瑠璃の後ろをついていった。 「ええっ!?ラピス先輩と銀さん、島内に行っちゃったんですか!?」 「はい、一時間ほど前に扉を通って内部に行かれました」 ヴァイオレットと黒服の男が扉の隣に建てられた宿泊施設で話をしている。 先ほどまでヴァイオレットは休息のために昼寝をしていた。 しかし起きてみたら蘇芳がいない。施設内を探し回ったがいない。 島内部に行った可能性もあるかもしれないと考えたが、一人で行くわけがない。 いろいろと考えていても時間が過ぎるだけなので、職員を捕まえて話を聞いた。 そして現在の状況をやっと知ることができたということだ。 「そうですか…わかりました」 「どうなされますか?ヴァイオレット様も内部に向かわれますか?」 「いえ、ボクはいいです。姉妹の仲を邪魔するのも悪いですし」 「左様ですか。では何か甘いものでもお食べになりますか?」 「そうですね……ではザッハトルテとコーヒーを。種類はお任せします」 「かしこまりましたヴァイオレット様」 一礼すると黒服の職員はヴァイオレットに頼まれたものを取りに、部屋から出て行った。 ヴァイオレットは近くの本棚から一冊の本を取り、ソファーに座った。 読んでいる本の表紙には可愛らしい少女のイラストが描かれている。 どうやらそれはすべてがライトノベルのようだ。 本屋に置かれているような巨大な本棚は、すべてライトノベルで埋め尽くされていた。 「空いた時間は有効に使わないと。さ、読みましょうか」 ヴァイオレットがペラリと表紙を捲ったとき、ドアをノックする音が聞こえた。 返事を返すと、先ほどの職員がワゴンを押して部屋に入ってきた。 ワゴンにはケーキとコーヒーの入ったポット、カップが乗っている。 ケーキをフォークと一緒にテーブルに置き、カップにコーヒーを注ぐ。 最後にミルクの入った入れ物と角砂糖をヴァイオレットの前に置いた。 「どうぞ、ヴァイオレット様」 「ありがとうございます」 さっそくコーヒーにミルクと角砂糖をドバドバ入れ始めた。 多い、多すぎる。コーヒーよりもミルクと砂糖のほうが多いんじゃないかと思う。 すべての砂糖とミルクを入れ終わると、その「コーヒーだった液体」をゆっくりと口に流し込む。 コーヒー本来の香ばしさも苦味もなにもない。唯の甘い液体だ。 「はぁ、おいしいですねぇ」 「ヴァイオレット様。お言葉ですがカフェオレのほうがよかったのでは」 「………それもそうですね」 ケーキを口に運びながらヴァイオレットは答えた。 その次からヴァイオレットはカフェオレを頼むようになったらしい。 「それにしても、ボクの出番、これで終わりなような気がします……」 場所は変わり、グルメ島内部。 現在位置は『捕食者の森』。 島内を進み、最初の『草食野原』を越えてすぐの場所だ。 『草食野原』は草食系の生物が多く生息している。 大人しく、温厚で、人を襲うことはめったにない。ぶっちゃけ危険性ゼロ。 捕獲レベルは1にも満たないような生物ばかりなので、素人でもあっさり捕獲できたりする。 そしてこの『捕食者の森』は…。 「ここ正直私くるの嫌なんだよね」 「まだレベルは低いでしょ。ここで弱音吐いてどうするのよ」 蘇芳と瑠璃が森の中を進んでいる。 足取りは軽い。臆することなくずんずん進む。 「レベルとかそういう問題じゃなくてさ……ここの果物とか野菜とか植物とか」 「おいしいわよね」 「そーゆーことじゃなくて。いろいろとさ……危険ってことっ!」 後ろを振り向くと同時に“アームズメイカー”で剣を作り出し、振るう。 蘇芳の真後ろまで近づいていた《食人リンゴ:捕獲レベル3》が真っ二つにされる。 林檎の中からみずみずしい果汁がほとばしる。さわやかな香りが周囲に漂う。 真っ二つになった一方をキャッチすると、すかさずかぶりついた。 「いただきますっ。シャグシャグ…んまい」 「機内で食べてた果物も生えてるわよー?そんなのよりも美味しいのもあるし」 「倒したからには責任持って食べないと。ごちそうさま」 蘇芳はバスケットボールほどの大きさもある《食人林檎》を一分で食べきった。 その直後、空気でも読んでいたのか、別の植物たちが物陰から現れた。 巨大なハエトリグサ《オオグイグサ:捕獲レベル4》 まるで悪魔のハロウィン気分《デビルジャックランタン:捕獲レベル3》 全部眼球みたいな見た目がキモい《ガン見ブドウ:捕獲レベル2》 回転しながら突進してくる《ドリルニンジン:捕獲レベル5》 などといった様々な植物が次々に蘇芳と瑠璃を「食べようと」襲い掛かる。 そう、この森に存在する植物たちはすべてが「肉食」なのだ。 「ほら、あーやって面倒だから嫌なの」 「あーはいはいそうね。ならちゃっちゃと抜けちゃいましょうか」 「りょーかいっ!」 肉食植物たちとの戦闘を切り抜け、蘇芳と瑠璃は森を無事抜けた。 森のトンネルを抜けると向こうは別に雪国とかではなく、小高い丘がある。 この丘には蘇芳がギリギリ倒せた《ウシノシシ》ぐらいのレベルの生物が生息している。 さらに進み、その丘を越えた向こうにはだだっぴろい湖があった。 もしかしてこれ琵琶湖より広いんじゃねーかオメーといわんばかりのサイズの湖。 湖には三メートルおきぐらいに、五メートルほどの広さの浮島がいくつもある。 そして水中を覗くと無数の生物たちの姿が見える。 そう、この湖こそが『選定の湖』である。 「ついたついた。意外とテンポ速かったわね」 「るりふぇふぇいるふぁふぁひゃふひんひひふぁふぉ」 (瑠璃姉がいるから百人力だよ) 先ほどの森で倒した果物を食べながら蘇芳が喋る。日本語でおk。 流石に普通の植物や野菜をそのまま食べるのはキツイので、生で食べられる果物だけを持って来た。 《ガン見ブドウ》が美味しいんだけどキモイ。食べようとするたびにこっちみんな状態。 いろいろと話をしていると食べるのか喋るのかどっちかにしなさいと瑠璃に怒られた。 食べることにした。 「むぐむぐ……もしゃもしゃ……げふぅ。ごちそうさまでした♪」 「ゲップしてる銀なんて、衛くんが見たらどう思うかしらね」 「出るものは出るの。しょーがないじゃん」 「衛くんに嫌われちゃうわよー?」 「嫌われたりなんか……って瑠璃姉後ろぉ!!」 湖に背を向けて立っていた瑠璃の背後で巨大な水しぶきがあがる。 現れたのはシマウマのような模様をしたシャチ《ゼブラシャチ:捕獲レベル13》 ゼブラシャチは巨大な口を開いて瑠璃に喰らい掛かる。 「…ったく。うっさい魚ね。ちょっと黙ってなさい」 懐に手を突っ込みながら振り返る。 取り出したのは短機関銃、イングラムM10。 襲いくるゼブラシャチの顎を蹴り上げ、その土手っ腹に銃弾を叩き込む。 無数の弾丸を喰らったものの、いまだゼブラシャチの勢いは衰えない。 再び瑠璃に向かって牙を剥き、全力で襲い掛かる。 それを見た瑠璃は一度右足を後ろへと下げた。 「“鎌鼬”」 ――刹那。目にも留まらぬ速度で瑠璃の右足が動く。 それと同時にゼブラシャチが瑠璃に噛み付く。 しかしその直後、ゼブラシャチの体が真っ二つに割れた。 瑠璃は何事もなかったかのようにそこに立っている。 「ちょっとお腹空いたし、これ食べましょうか」 「なにこの人チート」 そこら辺から木片を拾ってきて、魔術で火をつける。 先ほど真っ二つにしたゼブラシャチをさらにぶつ切りにし、魔術で作った串に刺す。 塩コショウで軽く味付けをし、いよいよ焼き始める。 「わー、おいしそうな香りがしてきたぁー。そろそろいいかな?」 「まだまだダメよ。あと3分くらいしっかり焼かないと生臭くてとても食べられないわよ」 「えーでもぉー………ええい頂きぃ!」 「あ、ちょっと」 我慢できずに蘇芳が串をひとつ手に取り、肉にかぶりついた。 一度は幸せそうな表情を浮かべたものの、すぐに微妙そうな顔へ変化した。 「まじゅい……。ってゆーか生臭い………」 「血の気が多い生物だもの。いろんな意味で。しっかり焼かないと食べるのには向かないわよ」 「なるほどなるほど」 今度は中までキチンと火が通るようにじっくりと焼く。 待ちきれない気持ちを押さえつけ、目の前で肉が焼きあがるのを待つ。 じゅわじゅわと表面から肉汁が溢れ出し、周囲に香ばしい香りを漂わせる。 「わぁ、おいしそう。今度こそ、そろそろ大丈夫だよね瑠璃姉?」 「そうね、大体そんなものかしら。召し上がれ」 「わーい!いっただきまーすっ!」 ゼブラシャチの串焼きを一本手に取り、かぶりつく。 噛み締めるたびに肉汁が溢れ出し、口の中に旨みが広がる。 「魚っぽい味かなって思ったけど、どっちかというとお肉っぽいね」 「シャチはどっちかといえば魚じゃないから。肉っちゃあ肉ね」 「おいしー♪でも食べてると飲み物とか欲しくなってくるね」 「飲むものならあそこにあるじゃない。いっぱい」 串焼きを食べていた瑠璃が湖を指差す。 無論、あそこには今でも無数の化物たちが蠢いている。 安易に近づけば怪物にガブリとやられ、水中に引きずり込まれるだろう。 そうなってしまえばあっというまに餌となってご馳走様ご愁傷様。 「えっと……あそこだけは嫌だ」 「それじゃああっち。あっちのほうに小さな泉があるから、そっちで飲んでくるといいわ」 「わかった。ちょっと行って来るね」 瑠璃が指差した方角に進むと、確かに泉があった。 ぐるりと周囲を見渡すと、危険な生物はいなさそうだ。 泉に近づき、手のひらで水をすくって飲む。 冷たく、透き通った水は渇いたのどを潤した。 「あーおいしー。ここって水も美味しいんだ」 「ひんやりしてて気持ちいいし、なんなら水浴びとかしたいかな」 「でもそんなことしてたら誰かに見られ……瑠璃姉しかいなかった」 「せっかくだから、ここの水ちょっと持っていこうっと」 魔術で水筒を作り出し、水を汲む。 ついでにもう一度、手ですくって水を飲む。 今まで飲んだどんな水よりも美味しい。 水道水やミネラルウォーターなど比較にならない。 極上の水に満足し、瑠璃の元へ戻ろうと立ち上がった。 泉から離れようとしたとき、草むらの影にあるものを発見した。 「卵、かなこれ?なんの卵だろ」 草むらにあったのはひとつの卵。 大きさは握りこぶしよりも一回り大きいほど。 形状は細長く、表面に雷のような模様が見られる。 「見た感じは鳥の卵っぽいけど、それにしちゃ妙に形が細長いし」 「細長い卵……蛇?蛇の卵って食べられるのかな」 「それにこの雷模様。なんなんだろ、わかんないや」 「そうだ、瑠璃姉に聞けばなんかわかるかも!」 さっそく卵を持っていこうと、その卵に手を触れた、その時だった。 ――パキッ 「……へ?」 「……で、中からそれが出てきて、なんとなく見守ってたと」 「うん」 「無事に孵化できたみたいだからその場を立ち去ろうとした」 「そう」 「でもそれはあんたのことを親だと勘違いして付いてきちゃった、と」 「いえす」 蘇芳の足元を一匹の蛇がちょろちょろしている。 蛇は全身が白い鱗で覆われているが、ところどころに黄色い鱗がある。 黄色い鱗はまるで雷のようにも見える。 「まさか《雷電蛇》に懐かれるとはね。それめっちゃレアよ」 「レアって、どのくらい?」 「そうね、今のところ10匹くらいしか捕獲されてないわ。捕獲レベルは18って指定されてたはずだけど」 「すごっ。そんでそんなの見つけた私もっとすごっ」 「はいはい、さらに懐かれちゃったあんたはすごいわよー」 蘇芳が足元の雷電蛇の幼蛇に余っていたゼブラシャチの肉をちぎってあげる。 幼蛇はうれしそうに肉を咥えるとそのまま呑み込んだ。 ある程度餌をあげると満足したのか、蘇芳の足元でとぐろを巻いて寝た。 「瑠璃姉、この子めっちゃ可愛いんだけど」 「懐きすぎよ。なんなのそれ、犬か猫なの?蛇の懐き方じゃないわよ」 「どうしよこの子、飼っちゃおうかなぁ……」 「悪いけど、ここからの生物の持ち出しは許可がいるのよ」 「やっぱりかぁ。許可って誰から貰えばいいの?」 「COLORSの幹部。つまり私とか」 「……つれてっていい?」 「ちゃんと飼えるならね。いいわよ」 「やった!ありがとう瑠璃姉!」 意外とあっさり許可してくれた。蘇芳としてはまた無理難題を押し付けてくると思っていたのだが。 何はともあれ、新しく雷電蛇が蘇芳の家族の仲間入りをした。 「とりあえず雷電蛇の生態とかについての説明をするわね」 「お願いします瑠璃姉」 蘇芳と瑠璃が焚き火を挟んで地べたに座っている。 蘇芳の膝の上には雷電蛇の幼蛇がいる。 未だに気持ちよさそうに眠っている。 蛇が寝ている姿ってどんな感じなのかはよく知らないけども。 「まず雷電蛇はその名の通り体内に発電機を持っているわ。 でもデンキウナギとかみたいに体から発生させるってわけじゃないの。 毒蛇はどうやって毒を注入するか、知ってるわよね」 「えっと、ガブッって噛み付いて牙から注入」 「正解。それと同じように、噛み付くことで対象に電撃を流すの」 「ほうほうなるほど。大人になるとどのくらいおっきくなるの?」 「あんまり大きくはならないわね。大体300センチくらい」 「十分おっきいような気もするけど…。アナコンダとか考えるとちっちゃいのかな」 膝の上の雷電蛇の頭を撫でる。 今の大きさは大体30センチ程度。 つまり成長すると現在の10倍ほどまで成長するということだ。 「兎に角、その子に名前でもつけてあげたら?名無しじゃかわいそうでしょ」 「名前。名前……かぁ………」 「そういえば銀ってネーミングセンス皆無だったわね。ハリネズミだってはりりんだったし」 「ほ、ほらコキュートスがいるよ!あれかっこいいでしょ!」 「メタルドラゴンに名前付けたのはお父様、でしょ。今回こそはいい名前付けてあげなさいよ」 「いい名前、いい名前、いい名前…………」 「シビシラス、シビビール、シビルドン。とかどうかしら」 「ポケモン!?」 「もういいやボルト!ボルトで決定!」 「まぁ、いいんじゃないかしら。妥当ね」 「よっしゃー!よろしくねっボルト♪」 先ほどまで寝ていた雷電蛇、ボルトが目を覚ました。 ボルトはするすると蘇芳の体を登っていき肩の辺りまでやってきた。 そしてその長い舌で蘇芳の頬をペロリと舐めた。 「ひゃあっ!くすぐったいよボルトー」 「……本当になんなのかしら。アレって犬とかがやることよね。懐いてるってレベルじゃないわよ」 「お母さんに懐くのは当然だよー♪」 「あ、それで思い出したわ。本物のお母さんはどうするのよ」 「へ?本物って?」 「卵があったんでしょ。だったらその卵を産んだ親の雷電蛇がいるでしょ。場合によっては血眼になって探しているかもよ?」 「―――あ」 噂をすればなんとやら、近くの草むらが揺れる。 現れたのは、言うまでも無いが大人の雷電蛇。 おそらく、多分、いや間違いなく、ボルトの親だろう。 雷電蛇は蘇芳を見ると体を持ち上げて威嚇行動をする。 「あわわわわ、ご、ごめんなさいっ!本当は私も連れてくるつもりはなかったんですけど勝手についてきちゃったっていうか」 「蛇に言葉が通じるわけないでしょ…………銀、下がりなさいっ」 「へ?え、ちょっとうわぁ!」 瑠璃が蘇芳の服の襟首を掴み、そのまま後ろへと跳んだ。 その直後、先ほどまで蘇芳が立っていた場所に「何かが落ちてきた」。 現れたのは10メートルほどもある、蝙蝠のような翼を生やした黒い虎。 「あれは…《シュヴァルツタイガー》よね…。おかしいわね、アレはもっと奥地の生物のはず……」 「瑠璃姉、あれの捕獲レベルはいくつくらい?私的には17くらいかなーって」 「25よ」 「……え?なにそれ。あそこの湖でアベレージ15でしょ?おかしいおかしい!アレ強すぎでしょ!」 「私でも正直アレとは関わりたくないわ。倒せないってわけじゃないんだけどね。 雷電蛇だけでも面倒なのに、あんなのまで来たら面倒すぎるわ」 「ど、どうしよう瑠璃姉……」 「どうするって、ここは一旦引くのが建設的でしょうね。逃げるわよ」 「うんそうだね!逃げよう…ってそういえばボルトのお母さんっぽい雷電蛇は!?」 雷電蛇はシュヴァルツタイガーの真後ろ、ちょうど死角になる位置にいた。 威嚇行動をとっていた雷電蛇は、突然現れた強敵にも畏怖することはなかった。 徐々に後方から近づき、シュヴァルツタイガーの脚を攻撃圏内に捉える。 思い切り脚に噛み付き、某電気ネズミばりの電撃を流し込む。 シュヴァルツタイガーは多大なダメージを食らってひるんだ。 「おぉー!お母さん蛇強いっ!」 「いいえ、あの程度でシュヴァルツタイガーがやられるはずないわ」 足元の雷電蛇に気づくと、シュヴァルツタイガーはすぐさま猫パンチを喰らわせる。 猫パンチ、というと響きは可愛らしいが、実際はそんな甘っちょろいものではない。 10メートルもの巨体から繰り出されるそれは衝撃波を伴いながら雷電蛇の胴体に叩き込まれた。 数十メートルほど殴り飛ばされた雷電蛇は近くの樹へと叩きつけられ、動かなくなった。 「勝負ありね。さ、銀、あいつが雷電蛇に気を取られている隙に逃げましょう」 「う、うん。行こっボルト!……ボルト?」 蘇芳の肩に乗っているボルトが突然威嚇行動をとり始めた。 無論、蘇芳でも瑠璃に向けてでもない。シュヴァルツタイガーへ向けてだ。 蘇芳のことを親だと思い込んでいるものの、生物としての本能か、自分の本当の親が倒されたことを理解したのかもしれない。 自らに向けられる敵意を感じ、シュヴァルツタイガーがこちらを向いた。 「面倒なことしてくれちゃって…。スタングレネード投げるから、その隙に逃げるわよ」 「……ゴメン瑠璃姉。私、戦うよ」 「何言ってるのよ。あんたの実力じゃアレには勝てないわよ」 「ボルトだって勝てないってわかってるのに立ち向かおうとしてる。それなのに私が戦わないでどーすんのさ」 「…死んでも知らないわよ。今回ばかりは私も助けない、いいわね?」 「いいよ。自分で選んだんだもん、後悔はしないよ」 シュヴァルツタイガーが身を低くし、戦闘態勢をとる。 それには一部の隙もなく、油断もなく、慢心もない。 ただ、自らに敵意を向ける対象を狩るためだけに、猛獣は吼える。 蘇芳の、まさに命を賭けた決戦が始まる。 「“シルバーブリッツ”!!」 蘇芳の指先から鋼鉄の弾丸が放たれる。 銃弾の先端は先鋭化されており、空気抵抗を減らしつつ殺傷能力を上げてある。 格段に速度と威力が向上した弾丸は、音速を超える速度でシュヴァルツタイガーに迫る。 だが、弾丸が当たったと思った直後、その姿が消えてしまった。 消えたはずのシュヴァルツタイガーは、いつの間にか蘇芳の目の前まで迫っていた。 先ほど雷電蛇に対し猛威を振るった猫パンチが、今度は蘇芳に振るわれる。 すぐさま反応し、後ろへ跳ぶが、僅かに脇腹を爪が掠った。 服が破れ、皮膚が切れ、肉が抉られ、血飛沫が舞う。 無論、その程度の傷であれば、治癒速度を活性化することによってすぐに再生するのだが。 そのほんの一瞬の出来事で、蘇芳はシュヴァルツタイガーの強さを悟った。 格が違う。圧倒的なまでに。 「瑠璃姉、アレの生態の説明をしてほしいんだけど」 「シュヴァルツタイガー、この島『最速の生物』よ。勿論、速さだけが強さじゃないけどね」 「最速……全体的に魔術が遅い私には強敵ってわけか」 再び蘇芳がシュヴァルツタイガーと向き合う。 相手もそれに応じるかのように、蘇芳をじぃっと見つめる。 黒い体とは対照的な紅く輝く眼からは今まで感じたことのないほどのプレッシャーを感じる。 ただ睨まれているだけだというのに、身体が動けなくなりそうだ。 (でもどうしよう…。そうだ、避けられるなら一度拘束するのがいいかな?) 「そうと決まれば!“ランダムマイン”!!」 シュヴァルツタイガーの周囲に地雷をばら撒く。 すかさず反応し、一度跳躍して別の場所へ着地する。 蘇芳はその瞬間を逃さなかった。 「これでオッケイ!“グレイプニル”!!」 シュヴァルツタイガーの足元から鋼鉄のワイヤーが飛び出す。 だが蘇芳は肝心なことを忘れていた。 シュヴァルツタイガーの持つ、漆黒の翼のことを。 そのことに気づいたのは、既に空へと舞い上がりグレイプニルを回避された後だった。 「くっそー。やっぱり、一筋縄じゃいかないかぁ…」 蘇芳が戦闘を始めてから30分ほど経過した。 瑠璃は少し離れた場所にあった樹へ登り、遠くから観戦している。 戦況は一言で言えば、明らかに劣勢。 蘇芳が何度も魔術を放っても、異常なまでの俊敏さですぐに回避される。 それとは逆に、シュヴァルツタイガーの攻撃が速過ぎて避けられない。 反応するどころか、まず見えない。気づいたら目の前にいる。そんな感じだ。 向こうが無傷なのに対し、こちらは既に何回も攻撃を喰らって、そのたびに回復。 このままでは蘇芳のスタミナが切れるのも時間の問題かもしれない。 「やっぱり、ダメそうね。どうしようかしら、助けないとは言ったけれど。 でも見殺しってのもアレよね。……ふわぁ…。 眠くなってきたわ。寝よ」 大きなあくびをしたと思ったら、そのまま樹の上で寝始めてしまった。 蘇芳とシュヴァルツタイガーの戦いは続く。 正直、この戦いの結果は見えているも同然だ。 レベルアベレージ15の湖を進むことの出来ない蘇芳が、捕獲レベル25の生物に勝つことなど無理だ。 捕獲レベルは捕獲の難易度を示すが、大半は強さを示す指標となる。 単純にレベルが高ければ、それだけの強敵だということだ。 捕獲レベル5を瞬殺できても、捕獲レベル15には大苦戦してしまう。 たった10でこれだけ違うのに、さらにそれ以上ともなれば不可能に等しい。 もう諦めてしまおうか、そう蘇芳が思ったときだった。 シュヴァルツタイガーの攻撃を避けた直後、ガクリと膝をついてしまう。 「あ、あれっ?おかしいな、脚が、これ以上、動かないや……」 蘇芳の身体に、とうとう限界が来たのだ。 そのことを察したのか、シュヴァルツタイガーが一度動きを止めた。 そしてあざ笑うかのように、ゆっくりと、ゆっくりと蘇芳へと歩を進める。 一瞬で命を奪うのではなく、徐々に恐怖を味あわせてから狩る。 シュヴァルツタイガーにとって、狩りとは娯楽であり、楽しみであるのだ。 徐々に近づく絶望に、蘇芳はもはや言葉が出なくなっていた。 脚は少しも動かない。這いずって逃げることもできるだろうが、すぐに追いつかれる。 もはや助かる術は何も残っていない。ただ、捕食されるときを待つだけだ。 やがて、蘇芳の目の前でシュヴァルツタイガーが歩みを止めた。 右前足を高く振り上げ、蘇芳へと狙いを定め、振り下ろす。 死にたくない。まだ、こんなところで死にたくない。 蘇芳の頭の中はそれでいっぱいだった。 右前足が目の前へと迫り、死ぬと思ったとき、 蘇芳の中で、何かが目覚めた。 結論から言うと、蘇芳がシュヴァルツタイガーに潰されることはなかった。 攻撃をやめた?わざと外した?力づくで防いだ? どれも違う。そのどれとも違う。 答えは単純明快、振り下ろされる右前足を切断した。 ただそれだけだ。 「……そっか。そういうことか」 蘇芳の目の前に前足が迫ってきたとき、あることが蘇芳の頭をよぎった。 こちらから攻撃をしても簡単に避けられてしまう。 ならばあちらから攻撃してくる瞬間を狙って攻撃すればいい。 あちらの攻撃が速過ぎて避けられず、少しでもあたれば致命傷。 ならばこちらの身体をより強化してやればいい。 どうしても、どうあがいても魔術を使うだけでは勝てない。 ならば、自分自身をより強くしてやればいい。 気づいたときには、蘇芳の右腕は鋭利な剣へと変貌していた。 「新魔術“ヴァリアブルブレード”ってところかな…?」 シュヴァルツタイガーが口を開き、鋭い牙を剥いて襲い掛かる。 蘇芳は右腕を元に戻すと、そのままの体勢で立ち止まった。 無防備な蘇芳にシュヴァルツタイガーが噛み付いた。 だが、すぐに噛み付くのをやめ、蘇芳から離れた。 シュヴァルツタイガーの口からは多量の血が流れている。 そして蘇芳の身体からは無数の針が生えている。 噛み付いた瞬間、その針が口内に突き刺さったのだ。 「これは“ニードルコート”とかがいいかな?」 右前足を失い、口内に傷を負っても、なおシュヴァルツタイガーはひるまない。 翼を広げ、天を仰ぎ見、周囲が揺れるほどの咆哮をあげる。 この島の強者としてのプライド、それだけがシュヴァルツタイガーを突き動かす。 空へと舞い上がり、蘇芳へと決死の突進を仕掛ける。 「……多分、キミのおかげで私は強くなれたんだと思う。ありがとう。そして……さようなら」 右腕を後ろに下げ、渾身の力を込める。 鋼鉄が右腕を覆い、その形状を変化させていく。 それは蘇芳の体よりも大きい、巨大な射出式の十字架型の槍。 高速で襲い来るシュヴァルツタイガーに狙いを定め、右腕を突き出す。 「“クロスジャベリン”!!!」 十字槍はすさまじい勢いで蘇芳の右腕から射出され、シュヴァルツタイガーの胴体を貫いた。 嘆くように吼え、傷口からおびただしいほどの血を溢れさせ、シュヴァルツタイガーが倒れた。 しばらくの間もがいて立ち上がろうとしていたが、やがて力を失い、動かなくなった。 絶望的に思われた戦いは、最後の最後で番狂わせを起こして幕を閉じた。 樹の上で居眠りをしていた瑠璃が目を覚ます。 頭がぼうっとした状態で、なんとなく周囲の様子を窺う。 しばらくして、周囲の妙な静けさに違和感を感じる。 「……おかしいわね。起きる前は銀が戦ってたはずなんだけど……ふわぁ…。 あれかしら、銀食べられちゃったのかしら。あ、あらやだよだれ」 口元のよだれを袖で拭う。 樹から飛び降り、先ほどまで銀たちが戦っていた辺りまで移動する。 大分薄れてはいるが、辺りにはまだ血の臭いが残っている。 辺りを見ていると、あるものを発見した。 血痕だ。どうやらそれは湖へと続いているらしい。 後を追って進んでいくと、やはり湖へとたどり着いた。 「あらあら、銀ったら湖の生物に引きずり込まれちゃったのかしら。可愛そうに。なむなむ」 「人を勝手に殺すなぁー!!」 湖を眺めている瑠璃の後ろから銀が現れる。 肩には相変わらずボルトが乗っている。 どうやらこの辺りで焚き火をしていたようだ。 手には何かの骨付き肉を焼いたものを持っている。 「あら、いたの銀」 「いたよ!勝手に殺さないでよ!」 「はいはい。ところでシュヴァルツタイガーは?逃げたとか?」 「これ」 手に持っていた骨付き肉を見せる。 これ、とか言われても正直わからない。面影とかないし。 残念ながら味で判断もできない。食べたことないし。 が、蘇芳の後ろに肉片と骨の残骸が見える。 あの骨格を見る限りはシュヴァルツタイガーと断定して間違いないだろう。 「……へぇ、倒せたの。やるじゃない銀」 「へへーん。私だってやるときはやるんだよー。極限の戦いの中での成長!ジャンプ的展開!」 「はいはい。よかったわねー」 表面上は普段どおりの反応だったが、内心瑠璃は驚いていた。 自分としても戦闘を避けたいシュヴァルツタイガーをたった一人で倒した。 少し前までは湖の生物すら倒せなかったのに。 ここまでの成長は、正直予想外だった。 ~それから数日後…~ 「お疲れ様でした銀さん。やっと訓練終了ですね」 「うん、ありがとヴァイオレットさん、瑠璃姉」 「ちょっと銀、私のほうが懇切丁寧に特訓してあげたじゃない」 「ああごめん。瑠璃姉には感謝してるって」 「というか、ヴァイオレットはラノベ読んでただけよね。禁書とシャナ、あるだけ読破したんだったかしら?」 「うっ……だ、だってラピス先輩が特訓をしているならボクの出番はありませんし」 「言い訳乙。なんのためにあんた連れてきたのよ」 「じゃあ先輩もなんで来ちゃったんですか!」 「暇だったから。それだけよ」 「ラピス様!飛行機の用意ができました!搭乗なさってください!」 「ありがとう。さ、銀行くわよ」 「うん。じゃヴァイオレットさん、またね」 「はい。会えたらまたどこかで」 飛行機に瑠璃と蘇芳が搭乗する。 乗ってまもなく飛行機が離陸する。 蘇芳はボルトに餌をあげている。 瑠璃は何か考え事をしていたようだが、やがて蘇芳に話しかけた。 「銀。今から学園へ帰るわけだけど、ちょっと私サプライズ思いついちゃったのよ」 「サプライズ?なにさそれ」 「かくかくしかじか。というわけで協力してくれないかしら?」 「まるまるうまうま。なるほど、面白そう」 「でしょ?久々の学園への帰還なんだから、劇的じゃないと、ね」 瑠璃と蘇芳が不敵な笑みを浮かべた。 飛行機はグルメ島からどんどん離れていく。 遠ざかっていくほど小さくなっていき、やがて見えなくなってしまった。 「じゃあねグルメ島。楽しかったよ」
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最新のコメントが一番上にくる掲示板です。あまり「掲示板」ページが活用されてないのでここに持ってきました。いたずらが多いようなら考えます。 -- (ゆず) 2009-09-08 00 23 59 公式のクランBBSに募集を出しました。リンクのところも変更しといたのでメンバーの方は一度確認してください。 -- (マリメリ) 2009-09-08 13 50 47 失礼します。公式BBSの掲示板を拝見しましてCelestial-Force様に興味がありますので書き込みさせていただきます。正式には今週の金曜日23:00頃に内緒を入れさせていただこうと思うので、詳細はその時によろしくお願いします。 -- (澪) 2009-09-10 01 13 39 書き込みありがとうございます!金曜日23時ごろですね。お待ちしておりますので内緒よろしくお願いいたします~。なお内緒は「マリア・メリア」か「瑠璃唖」までお願いします! -- (マリメリ) 2009-09-10 10 59 11 澪さん、書き込みありがとうございます。本日23時ごろですね。お待ちしております。 -- (瑠璃唖) 2009-09-11 16 37 25 体験中ですが脱退します。お世話になりました! -- (グラ) 2009-09-17 15 05 12 グラさん、短い間でしたけど体験お疲れさまでした。またどこかで見かけたら、お声掛けてくださいね^^ -- (瑠璃唖) 2009-09-17 16 43 35 さそり座の旗破壊要員育成完了。ゆずパラのほうも62になってHP増量しました。 -- (ゆず) 2009-10-31 00 33 57 年明けまで繋げなさそうです.ごめんなさい~&よいお年を! -- (千の人) 2009-12-15 23 50 49 すっかりLHご無沙汰してます。てか、みんなもうINしてないなぁ~ -- (瑠璃唖) 2010-04-01 10 33 13
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タグ 明るい 曲名E DAMにて配信中 歌 榊原ゆい 作詞 榊原ゆい 作曲 DJ SHIMAMURA 作品 夜明け前より瑠璃色なOP 「夜明け前より瑠璃色な」音楽集 -Lunar Passport-
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ルリコンジキニョライ(瑠璃金色如来) 仏説無量寿経に登場するゴジュウサンブツ(五十三仏)の一。 別名: ルリコンジキブツ? (瑠璃金色仏)