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自己板コテまきひとの初恋の女の子の名前=保健室の先生 『自己板コテ』まきひとの名前一覧
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{表の世界の戦闘} 現在、俺がいる所は神姫センターにいる。 細かく言うと神姫センターの中にあるオフィシャルバトルという部屋に居る。 この部屋には巨大な箱型の筐体がいくつもあり、その中で武装神姫達が戦うバトル用の室内みたいなもの。 ルールは簡単。 武装神姫同士がバトルし、力尽きた神姫が負けというシンプルな勝敗だ。 オーナーの場合、基本的に神姫が闘っている間はオーナーはただ見てるだけ。 観戦というべきかな? ある程度オーナーからの指示とか命令を言ってよいとも聞いたし、まぁ司令塔みたいなもんだな。 俺はそんな部屋の中が見渡せる場所の椅子に座って煙草を吸ってた。 勿論喫煙用の席でだ。 ん、何故俺がこんな所にいるかって? 一応バイトだからといって、俺はこいつ等(アンジェラス達の事)のオーナーだからなぁ。 ズーっと部屋の中で遊ばせとくのも、ちょっとなぁ~、と思い俺は神姫達にこう聞いた。 「お前等、バトルに興味あるか?」 言ったあげく、この場所に来てしまったというわけ。 あの時のクリナーレの様子は凄かった。 『やっと闘えるよー!』と言いながらはダンベルをブンブン回しながら、はしゃいでいたもんなぁ。 そして以外にも、気が弱いパルカがバトルに興味があるという事。 アンジェラスやルーナについては、バトルする否かは俺の意志に従うまでらしい。 そんなアンジェラス達は今俺の両肩にチョコンと座ってワクワク、ウキウキしているご様子。 …そろそろ行くか。 煙草を灰皿に入れ、立ち上がる。 そのまま寄り道せずに、他の人が使ってなくて空いている筐体の目の前で立ち止まる。 ふむ、中はゴーストタウン…かぁ。 よく出来てる。 俺がフムフムと筐体に興味を示してると、クリナーレが俺の頭に上り騒いだ。 「ねぇねぇ、アニキ!ボクが一番最初に闘っていい?」 どうやらクリナーレの奴は初陣したいらしい。 その発言を聞いた他の神姫達も。 「ご主人様、我侭は言いません…ですけど、やっぱり一番最初にご主人様と一緒に闘いたいです!」 「アタシもお姉さまと同意権ですわ」 「お兄ちゃんのためなら、私、頑張ります!」 アンジェラスは俺の目の高さに合わせ、リアウイングAAU7を使って空中停止しながら言う。 ルーナは俺の右耳近くで言い、パルカは左耳近くで言う。 俺は溜息を吐き、空中停止しているアンジェラスを右手の手の平に着地させる。 「あのな~お前等。対戦相手がいないのに、そーハシャグなよ。誰が初陣を切るかは俺が決める。だから大人しく待ってろ」 『は~い』と四人一斉に言う俺の神姫達。 意気投合してるなぁ~。 おっとー。 対戦相手が来たみたいだ。 年齢は俺より上のサラリーマンぽい人だった。 軽く挨拶してお互いのどの神姫と闘わせるか話す。 対戦相手のオーナーレベルは中の下ってな感じだな。 相手の神姫は悪魔型のストラーフかぁ。 レベルは…20。 攻撃・命中・回避・防御も全て平均的。 LP・SPはレベル無し。 さて、誰で初陣を切るか…。 アンジェラスは近距離・中距離・遠距離で斬撃・射撃が得意、何処でも攻撃できる万能型。 クリナーレは近距離で打撃が得意、高い攻撃ができる近距離型。 ルーナは中距離で斬撃が得意、ヒット&ウェイでトリッキーな攻撃ができる中距離型。 パルカは遠距離で射撃が得意、スナイパーな攻撃ができる遠距離型。 ん~どれも利点があるけど、相手の武装が気になる。 さぁ誰を選ぶか…。 「相手の武装が解らないからここはアンジェラスで」 「接近して相手をすぐ倒すクリナーレで」 「トリッキーな攻撃で相手を翻弄させるルーナで」 「相手を寄り付かせないで倒すパルカで」
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{アンジェラスとGRADIUS} 「ここが…アンジェラスがいる所か…」 今の俺はあるシャッターの目の前に立っていた。 そのシャッターは今までの…クリナーレ達のシャッターとは比べれものにならない。 頑丈・セキュリティー、何もかもレベルが違うのだ。 シャッターには『One』と書かれていて、そこにクリナーレがリアパーツに付いてるチーグルで殴りまくっても傷一つつかない。 クリナーレ達のシャッターと同様にシャッターの横にあるIDカードを通す機械があったが、カードを機械に差し込み引いても拒否されてしまった。 俺が持っているIDカードではセキュリティーレベルが低くて通れないのか、もしくは俺が奪った事が敵にバレてIDカードの使用を停止させたと考えた方がいいだろう。 どちらにせよ、このシャッターを開けなければアンジェラスを助け出す事が出来ない。 実は先程からルーナがネット能力を使ってIDカードを通す機械から侵入し、なんとかセキュリティーを解除しようとしているのが、如何せん苦戦している。 その間は立ち往生。 俺は何もする事が無くてただ突っ立てるだけ。 クリナーレとパルカは警戒しながら敵の偵察。 畜生。 こうも何もできないと自分が腹ただしい。 「…アンジェラス」 シャッターを見つめ、小声でそう言った。 後はお前だけを助け出せば終わるんだ。 こんな所でくすぶってなんかいられない。 …やっぱり『アレ』を使うべきなのか……。 徐にズボンの後ろにくくり付けてるコンバットナイフみたいな形をしている物に手が触れる。 これは出来れば使いたくない武器だ。 この武器は全てのシステム・プログラムを真っ白に消してしまうナイフなのだ。 通称、フォーマットナイフ。 読んで字の如く、このナイフに刺された機械類は全てがフォーマットされてしまう。 何も機能しないただの固まりにしてしまう訳だ。 例えば、パソコンの何処にでもいいからこのナイフを突き刺す。 するとパソコンのデータやシステム、何もかも全部消えてしまう。 そのようなシステムがこのナイフにプログラムされているのだ。 勿論、精密機械で出来ている武装神姫にも有効。 ただし、使用回数は二回。 二回以上使ってもただのナイフでしかない。 だから慎重に使わないといけない。 もし使い所を間違えれば、自分が命取りになるのだから。 「…躊躇しすぎかな」 もし、これは本当に『もし』の話だが…ルーナが今やってるセキュリティー解除の手伝いが出来るかもしれないのだ。 IDカードを通す機械にフォーマットナイフを刺し込めばセキュリティーは消えるだろう。 だが、それと同時にシャッターを上げるシステムを消してしまうかもしれない。 そうなるとシャッターを開ける事が出来なくなり結果的にアンジェラスを助け出す事が出来なくてしまう。 そしてそうなる予想は十中八九。 考えたくないが、一緒にシステム事消してしまうなのだろーよ。 でもこのままルーナにネット能力を使わせるのもマズイ。 ネットの能力を使うと必要以上に疲労してしまい、神姫の内臓電池がすぐに切れてしまうのだ。 一応、特殊な神姫としてそこら辺の対策はされてると思うが、そうなってしまう話もなくはない。 さぁ、今はこの場で使うべきか、使わざるべきか…。 …フッ…何迷ってんだが、俺らしくもない! 「どけ!ルーナ!!」 俺は決意し迷わずズボンの後ろに付けているフォーマットナイフを取り出す。 取り出したフォーマットナイフを右手に持ちかえる。 「ダーリン、何する気!?」 「セキュリティーを消滅させる!お前が接続したままナイフを使うと、お前まで消してしまう!!だからドケ!!!」 ルーナは俺の言葉を信用してさっきまで接続していた機械から退く。 完全にルーナが離れた事を確認すると、俺はIDカードを通す機械にフォーマットナイフを突き刺した。 その瞬間、機械から煙と火花が噴出す。 火花で俺の右手と右腕が軽い焼けどを負ったが、こんなの怪我のうちに入らない。 さて、効果は果たしてあるのか少し不安感を持ちながらフォーマットナイフを引き抜く。 「ルーナ!すまないが、またネットに侵入してくれないか?」 「任せなさい!」 ルーナは再び機械に右手を触れさせ侵入する。 するとどうだ。 さっきまでビクともしなかったシャッターが開いていくではないか。 どうやらセキュリティーだけのシステムをフォーマットできたみたいだ。 これでアンジェラスに会えに行ける。 「クリナーレ、パルカ戻って来てくれ!ルーナもだ!!シャッターが開いたから入るぞ!!!」 俺の右横にクリナーレとルーナ、パルカは左横に来た。 ちゃんと戻って来たか確認すると俺は全速力でシャッターの中へ駆け出して行った。 シャッター中の部屋はクリナーレ達の部屋とはレベルが違う構造だった。 精密機械のコンピュータ、ケーブル、パイプ管などなど。 そして部屋の真ん中には大きな試験管、その中には見た事のない真っ白の武装に身をつつんだアンジェラスが目を瞑っていた。 「アンジェラスー!」 俺は大声を出しながらアンジェラスに走り駆け寄る。 その時だった。 視界に一人の人間の後ろ姿が入る。 女の人で白衣を着ていた。 その女の人は俺がガキの頃から知ってる人間だった。 「姉貴!?」 足を止めて自分の姉に声を掛ける。 女の人は振り返り、困った顔をしながら俺を見た。 「タッちゃん。…やっぱり来ちゃったのね」 斉藤朱美、俺の実の姉その人だった。 「姉貴がどうしてここにいやがる!」 「それはこっちのセリフよ。タッちゃんこそ、こんな大事…いえ、犯罪を犯してまで来たの?」 俺は姉貴に睨みつけながらゆっくり歩みよる。 姉貴は悲しそうな声で俺に言う。 「アインを取り戻しに来たの?」 「アイン?俺はアンジェラス達を取り戻しに来ただけだ!」 「病院で手紙見なかったの?」 「手紙を見たからこそ来たんだ!…ッザケンジャねぇーぞ!!俺の神姫達を処分するなんてよ!!!」 「タッちゃんの神姫じゃないわ。名実とともに我が社の神姫よ。…九年前にタッちゃんが偶然アインのオーナーになっただけ」 「九年前だろうが、この会社のだろうが知ったこっちゃねー!アンジェラス達は俺の武装神姫だ!!」 「はぁ…相変わらず頑固ね」 「ほっとけ。それより今すぐアンジェラスをあそこから出しやがれ!」 俺は姉貴の首元にフォーマットナイフあてがう。 すると姉貴には俺が今まで見た事のない顔をした。 冷徹で人を見下すような顔だ。 「実の姉である私を武器をむけるの?」 「…ウ、五月蝿い!即刻処分を中断し、アンジェラスを解放しろ!!」 「もう遅いわ」 「エッ…!?」 低い声で言った姉貴の声から聞きたくない言葉が耳に入った。 もう遅いわ、だと? もう既に処分したという事なのか? もう間に合わなかったのか? もう…。 「そ…そんな……嘘だ!ハッタリだ!!」 「私は嘘をつかないわ。ほらこの通り」 姉貴は近くにあったパソコンのディスプレイに指差す。 そこにはデリートコンプリート、という文字が点滅していた。 デリートコンプリート…消去完了…。 おいおい…まさかそんな! 頭の中がグチャグチャになっていく。 現実を認めたくない。 否定、拒否…受けとめたくない。 理解したくない。 信じたくない。 「姉貴!アンジェラスの何を消しやがった!!」 フォーマットナイフを首元からどけて胸倉を掴みかかる。 「タッちゃんが今、頭の中で否定しているそのものよ」 「ッ!?」 姉貴の奴は澄ました顔でいいやがった。 こ、この女ァ! 今まで怒りを溜め込んでいた袋がブチ切れてような感じが身体全体に走る。 「畜生!」 ズガン! 俺は姉貴の胸倉を掴んでいた手を一度放し、その手で殴った。 殴られた事によって姉貴は派手にフッ飛び壁に当たりズルズルと倒れる。 実の姉に暴力を振るったのは生まれて初めてだった。 「アンジェラス…嘘だろ?」 ヨロヨロとアンジェラスが入った容器に近づく。 大きな試験管の容器に姉貴を殴った手が触れる。 ここまで来て…そんな終り方…ねぇだろ? おい、こんなバッドエンドなんかあるかよ。 「アンジェラス…俺だよ。お前のご主人様だぞ。迎えに来てやったんだぞ。笑えってくれよ。微笑んでくれよ」 「………」 俺が声を掛けてもアンジェラスは何も言わない。 目を瞑ったまま何も…。 「俺さぁ、お前と最初に会った時、幼かったけど…お前の事が好きだったんだよ。…その時のお前はアインだったみたいだったけど、俺はお前に名前をつけてやったよな、アンジェラスって。もう俺の中ではアインなんて関係ないんだよ。アンジェラスというお前が好きなんだよ!」 「………」 「そして、九年後に再開してまた同じ名前をつけてやったよな。ショックで昔の事を忘れてたみたいだけど全部思いだしたから…だから…だから俺はここまで来たんだ!お前の事が好きだから!愛してるんだ!!!」 「………」 「お願いだから…目を開けてくれよ!アンジェラスーーーー!!!!」 涙が出しながら限界まで発声器官を使い大声で叫ぶ。 喉が潰れてもかまわない程に。 ズルズルと大きな試験管にもたれかかるように膝をつき嗚咽する。 ここまでなのか…そう思ってしまった。 もうあの頃には戻れないのか、と…。 何もかも俺の心に絶望に満ちた瞬間。 「泣かないで…私の大好きなご主人様…」 声が聞こえた。 ははっ…とうとう幻聴まで聞こえてきやがったのか。 脳が壊れたのか耳が壊れたのか…もうどうもでいい。 「悲しまないで…私はここにいます」 「……あっ…」 涙でよく見えなかったけど、その光景は俺の記憶という名の細胞に焼き付ける光景だった。 容器の中にいるアンジェラスの身体全体が光っていたのだ。 その中でも一番白く光輝いてるいたのは右胸だった。 あの場所は武装神姫の一番大事な部分…CSCの部分。 「そんな…ありえないわ。全てのデータを消去したはずなのに」 後ろで驚いた姉貴の声が聞こえたがどうでもいい。 俺は立ち上がり涙を袖で拭う。 その時、大きな試験管の容器に亀裂が生じた。 亀裂の隙間から容器に入っていた液体が音をたてながら出てくる。 今にも容器が破裂しそうな勢いだ。 「アンジェラスーーーー!!!!」 俺は両腕を広げて叫んだ。 その瞬間、容器はガシャーンという強烈な音ともに破裂し四方八方に飛び散る。 白い光も飛び散る。 液体も飛び散る。 でも俺は気にしないでそこに立っていた。 何故なら…。 「ご主人様ーーーー!!!!」 アンジェラスが俺に向かって飛び込んできたからだ。 笑顔で目にはいっぱい涙をためながら…。 胸に飛び込んできたアンジェラスはしっかりと俺の服を掴み、二度と離れまいと力をいれる。 俺も同じ気持で両手でアンジェラスを優しく包み込む。 「会いたかった!会いたかったです、ご主人様!!」 「俺も!俺もだ!!」 「ボクもだよ!」 「お姉様!よかったですわ…無事で!!」 「アンジェラス姉さんー!」 皆で激しく抱きしめ合う。 あぁー、これで…これで全てを取り戻せたんだ。 やっと…やっとだよ。 「そんな…こんなバカなことが…データがまだ残ってたというの?」 後ろの方で今この状況を受け入れることが出来ない姉貴が驚愕したままだった。 「ありえない!ありえないわ!!」 「じゃぁかーしぃー!姉貴は少し黙ってろ!!」 俺は四人の神姫を抱き、姉貴の方に振り返り宣言した。 「愛だ!俺達の愛でアンジェラスは消されなかったんだよ!!」 歯の浮いた事を言った。 木っ端恥ずかしいがそう宣言したかったのだ。 だって今の俺は嬉しくてたまらない状態なのだから。 奇跡としか言えない状況でもあるけど、俺は愛の力だと信じたい…いや、信じているのだ! 「アニキ…恥ずかしくないのか?」 「かなり恥ずかしいと思いますわ。でも、ダーリンらしいかも」 「お兄ちゃん、今はいいですけど今度から周りの事も考えてくださいね。恥ずかしいです」 「お前等、恥ずかしいって言うなよ!俺は本当にアンジェラスの事を愛してるんだから!!なぁ、アンジェラス!!!」 「はい!はい!!私も愛しています!!!」 「うわっ…アンジェラスも平気で恥ずかしい事を言うよ…」 クリナーレがアンジェラスの発言にビックリするけど、すぐに満更でも表情に戻る。 「さぁ帰ろうぜ。俺達の家に」 「「「「はい!」」」」 でも俺はこれだけの事をしでかしたんだ。 人を殺し、会社に損害を与えた。 充分犯罪者になりえる。 例え無事に家に帰れなくても悔いは無い。 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!! 「ナッ!?」 足場がいきなり揺れだしバランスを崩しそうになる。 でもなんとか両足で踏ん張りバランスを保つことができた。 地震か? と、一瞬頭の中で過ぎったが地震にしちゃあ揺れの現象が少しおかしい。 「…まさか!?」 アンジェラスは俺の腕から抜け先程のパソコンに行く。 いったい何が起こってるんだというのだ。 俺もアンジェラスの後を追いかけパソコンのディスプレイを見る。 画面表示されていたのは一つのウィンドに0、1の羅列がダラダラと書かれていて次々に映し出されていく。 これが俗に言う機械語というヤツか? で、その数字を瞬時に把握しながら読み飛ばしていくアンジェラス。 流石、というべきなのか、凄いというべきなのか? まぁアンジェラスも一応機械だしそのぐらいの事ができるのかな。 「ウ~ッ。何書いてるのか全然分からないよ~…」 「姉さん…情けないです」 あ、分からない神姫もいるのね。 「!? ご主人様!早くこの場から離れま―――」 ゴゴゴゴ!!!! さらに地震が酷くなり右膝をついてバランスをとる。 しまった! これでは走ること、いや、立つことすらできないぞ! 畜生、いったいなにが起こっているのだというのだ! 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
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武装神姫のリン 第18話「アキバ博士登場」 今日は神姫バトルの公式戦の日。全国で一番神姫センターが賑う日。 そしてウチもそれの観戦に向かおうとしている。いちおう今日の大会からリンの出場停止期間(開発にかかわっていたためだ。)も終わりを告げたのだが、今回は花憐に生のバトルを見せようということになった。 リンもまだ感覚(セカンドで中盤以上になったために最近はリアルバトルが多めになってきている。)が花憐の世話やらで鈍るというかなんというか、まあ以前の100%の力を発揮することがまだ難しい。 そんな状態でバトルに出たとしても勝てる見込みは少ないし、またリンが傷つく所を花憐にはあまり見せたくない。 花憐も同じ武装神姫であってバトルについての知識はあるが、まずはホンモノを見て慣れさせていこうということになった。 で会場へはやっぱり公共機関が最適ということで今回は大きめ会場を目指す、その過程で"あの"秋葉原駅に来たわけだが… 「おとうさ~ん、人がいっぱいだよ~~」 俺の肩の上ではしゃぐ花憐が前方を指差す、たしかに人が多い。なんかイベントでもあったっけか?? 「マスター、アレを。」 花憐の横に座るリンがその右側の看板を指す。 「武装神姫第1弾のパワーアップユニットN-01,02入荷。本日分は300個限り。」 そういえば、アレの発売日だったっけな今日は。 見たところ並んでいるのは学生とか俺ぐらいの会社員だった。売れ行きは好調らしく、それをみたら安堵の息が漏れた。 「ああ。アレ発売したんだ~亮輔の血と汗の結晶だね。」 と茉莉も喜んでくれているらしい。 「もちろんですよ、茉莉。だってマスターが3ヶ月もひっきりなしにトライアルや改良にいそしんだ物です。」 「トライアルはリンの仕事だったろうに。普通に考えてリンの功績の方が大きいだろ?」 「そんな。マスターこそ~」 「いやいや、ここはやっぱりリンが…」 そのとき俺は気付いてしまった、俺の背中にささる視線、とても鋭く強いソレに。 ふと辺りを見回す。しかし人が多すぎてその視線の主がドコにいるのか判らなかった。 しかし数分でその視線は消えた。 そうして駅から歩くこと数分。ヨド○シアキバの最上階にある特別会場にたどり着いた。 ここで大会が行われる。予選は無論バーチャルだが準決勝以上は中央の特設リングで行われるため、この時点でもリングを囲む客席は空席がまばらな状態だった。なんとか2人分のスペースを見つけて場所取りを終える。 で茉莉、ティア、花憐に席を任せて俺とリンは飲み物を買いに席を離れる。 やっぱりさっき感じた視線が感じられる。そいつは明らかに俺、もしくはリンを狙っていると思えた。 心身は全く健康なのになんとなくいやな感じ、もしくは怖気とかそういうものを感じるのはたいてい見られてる時だと茉莉から聞いている。 まあアイツは高校時代、日々痴漢と戦っていたらしい。その茉莉が言うのだから間違いはないだろう。 でそろそろ戻ろうかと思ったとき、また気配が消えた。 そして自販機でも買い物を追えた俺は違和感に気付く。家を出るときは何も入れていないはずの上着のポケットに手紙らしきものが入っていた。 それを開く。 ~~ 午後13時までにBブロックナンバー12にエントリーしろ、そうでなければ家族の安全は保障できない。 また家族に参戦の理由を聞かれた場合もこの手紙の件は伏せること。その場合も安全の保障は無い。 なおエントリーする神姫は燐とする。それ以外は認めない。 T.A ~~ 見たところ脅迫されているみたいなんだが…午後13時ってなんだよ。 まあ午後1時か13時の間違いだろうとは思うが…しかし燐の装備は家においてあるわけで。 一応ココはヨド○シだ、神姫にパーツを買うことはできるが手入れが行き届いていないパーツでどれだけやれるか… と思案をめぐらせて見るがいい答えは出ない。 っと、リンが俺の耳を引っ張る。 「っつ、リン。なんだ?」 「マスター、あの人です。」 リンが指差した先にいるのは…小山。そう、茉莉の(元)先輩にして俺のライバル(思いっきりあっち側の一方通行だが)だ。 そいうえばアイツ、遂にセカンド昇格らしい。レオナ装備パターンも意外にも洗練されてきてるし。 手入れも俺並かそれ以上の丁寧さだと聞いている。 アイツなら…いや、アイツに頼むのだけは勘弁してほしいんだけど。背に腹は代えられなかった。 小山が人ごみに入った。あの中なら多少は声を出しても気付かれないだろう。幸いにもあの視線は感じない。 しかし遠くから監視してるかもしれないため、注意して小山の横に着き小さめの声で呼びかけた。 「おい、小山。」 「あっ、とう…」 スッと先に書いたメモを見せる。 『茉莉が危ない。力を貸してくれ。あまり大きい声は出すな。』 「おい、どういう…」 「なぜかわからんが脅迫されてる。試合に出ないと家族の保証は無いぞってな。で、装備を貸して欲しいんだ」 「なんで茉莉ちゃんに危険が迫るんだ。」 「理由がわかれば苦労はしない。だた俺かリンにそいつは何かあるんだろう、ここまでして試合に出させようとしてる。ご丁寧にブロックやナンバー指定でな。」 「最初から大会に出るために来たんじゃないのか?」 「ああ、今日は観戦目的だったんだ。けどこういうことになっちまった。下の階で新しく買うこともできるがチューニングするヒマがない。でレッグユニットだけでいい。貸して欲しいんだ。」 「……わかった。茉莉ちゃんのためだ。1式を喜んで貸そう。」 「ありがとうございます。このお礼は必ず。」 リンも俺の上着の影からスッと小山に頭を下げる。 「とりあえず今日の大会はキャンセルして、茉莉ちゃんのそばに居てやる。だから席の場所を」 小山と茉莉が2人きり(ま、ティアが居るから大丈夫だと思うけど…なんか癪だな。)になるのはいやだが今は頼れる人間が居ないのでしかたない。 「東スタンドのH-12番だ、あと茉莉には参戦の理由は会場をみたらウズウズしてきたらしいとか言ってくれ。真実を言ったらやばいかもしれない」 「OK、20分後にレオナを西トイレの奥から2番目の個室に待機させる。そこで受け取りを。」 「ほんとうにすまない。」 「いや、気にするな。茉莉ちゃんのためだからな。」 「じゃあ1度離れるぞ。」 「ああ、レオナ。」 「うん、ボクがんばるよ。」 そうして人の流れにそって別々の行動を取る。 オレはまず下の階に向かい、公式のストラーフ付属のリボルバーを1丁調達する。これぐらいなら残りの時間でも調整は可能だった。多少扱いがパイソンより難しい(というよりは銃身の長さの関係でバランスが違うのが違和感を生む)が燐は基本的に2丁拳銃使いだ。神姫の状態をいつもと同じに近づけてやるのが俺に出来る数少ないことだ。 その後にレオナから時刻どおりにストラーフの装備1式(ご主人様によって徹底的にメンテナンスされた特別版 レオナ談)を受け取って受付へ、さすがに登録カードはどんなサービスを受けるときも必要なので常に持っている。 そして手紙の指示どおりにBブロックのナンバー12へのエントリーが終った。あとは試合を待つだけだが…そこに小山が走ってきた。おい、見つかったらどうす…あ。 「藤堂亮輔!!」 装備を受けとったときにレオナから聞いていたことを思い出す。 「ご主人様が今茉莉さんと接触して"頼まれて貴方を探してる"。適当な時に接触してくるから適当に話しをあわせて、って」 タイミングが向こうもちとはいえ、俺も多少テンパってるらしい。 「なんだよ、小山。」 「いや~偶然茉莉ちゃんに会ってね。そしたらお前がリン君と共に失踪したと聞いたから探していたのさ。」 おい、そっちもいつもと口調が全然違うぞ。どこのお坊ちゃん系キャラだ。と突っ込みはナシ適当に話をあわせる 「…すまない、茉莉には会場を見てたら俺もリンもウズウズして、結局出場しちゃったって伝えてくれ。」 「お、おい! 伝えろって…」 「よろしく~」 そのまま走り去り、俺は演技を終えた。小山はいかにもそれらしくふんぞり返って帰っていく。 これで安全とはいえないけど、なにもしないよりはマシだと思えた。そうして燐の試合開始時間が近づいてくる。 そして約半年振りの燐の公式戦が始まった。 初戦の相手は関係なさそうだった、いつもと違う地域のために初見の相手だったがマスターが女の子だったので違うと思う。試合は燐の勝ち。なぜかレオナ向けにチューンしているはずのパーツが今の燐にはとてもフィットするらしい… 確かにほんの少しの調整は加えた(せいぜいビスの締め直しとか)がここまで合うとは思わなかった。 そのまま意外なほど順調に燐は準決勝へ…つまり中央の特設リングでの試合となる。 なんでだ、この大会はちゃんとセカンドレベル設定なのに簡単にココまで(今までと比べて)上がっていいものか?と思っていた。 しかしの理由も次の試合で明かされることになった。 即ち、あの手紙の主が次の相手だった… 「それではセカンドリーグのBブロック準決勝戦、第2試合。選手の入場です!!」 俺は反対側に立つ男…じゃない リングの脇にあるオーナー用の机…神姫の状態をモニターするディスプレイとサイドボードが設置されている、サイドボードに現地調達した武装を入れて、ディスプレイに掛けられていたインカムを装着して俺は向こう側の神姫のマスターを見る。 コートのように長い白衣を着込んだ、まさに博士だった。 ランクを見ると…ヤツの神姫であるヴァッフェバニーのコロン…兎型の標準アーマーが緑に着色されており、右手にソードオブガルガンチュアを持っている。バックパックにも標準のミニガン等がマウントされている。かなりバックパックが大きいがスラスターもあるみたいなのでバランス型と見るほうが良さそうだった…はリンより上位だった。その差は3桁に上る。 このランクならファーストでもある程度は闘えるレベルだろう。 コロンの鋭い眼光は俺…ではなくまっすぐにリンを見ている。 「エエエエェェェェクセレントォォォォォォ!! その黒い肢体、流れるような空色の髪、穏やかな中に確かに強い意志を秘めたる瞳、己のマスターを愛する心。ドレをとっても最高の芸術…実にすんばらしいぃ!!!!」 いきなり"博士"が叫びだした…アイツなんだ? 「おおっと!! アキバ博士の十八番の相手神姫品評が早速飛び出したぁ! しかし対戦相手の藤堂亮輔氏は事情が良くわかっていないようです!!」 実況の言うとおり全く事情の飲み込めない俺だったが、リンをなんか侮辱されたような、なんとも言えない不快感が胸の辺りにたまっているのを感じていた。これがアイツの十八番…プロレスとかの試合前の挑発とかと同じものか? 「さて、悪魔型のリンさん。この試合で貴女をボクのモノにしてあげるのであ~る。」 プッツン。基本的に温厚な俺でも切れた。 「うっせぇ!! 人の神姫を勝手にいやらしい目で見るな!! お前なんだろ?俺のこの大会に出るようにし向けたのは!!」 「ご名ィィ答ゥゥ!!! このアキバ博士、山田隆臣がであぁぁぁるぅ!もちろんキミの愛するリンさんを貰うためにぃぃぃね。」 「勝手に決めるんじゃねえ!こっちは頭にきてるんだ、あと手紙にかいてるイニシャルと本名違うぞ!!」 「はて…3時間も前のことなど覚えてないのである…見たところ家族云々を気にしてる様であるが、あれは全くのうそなのであ~~~る。」 …ここまでコケにされたことはさすがに人生を二十数年やってるが無かったぞ。これはもうアレか…アレなんだな。よし。 「あ、そうであった、リンさんが今まで闘っていたのは私の部下で、もちろんわざと負けるように仕向けていたのである。」 ………もう俺に言葉は要らない、アイツをにらみつけるだけでいい。そう思った。リンもさすがに怒ってるらしい。 「マスター、私どころかマスターをも侮辱しているあの態度…気に食わないです。」 「ああ、俺も同じだ。叩き潰してやろう。さあ行こうか、リン」 「はい、マスター!!」 空高くジャンプ。そのまま宙返りを決めてフィールドに立つ燐。これを見る限り燐は絶好調の様だ。 ブランクも取り戻せたのか、はたまた先ほどの挑発で微妙な緊張が切れたのか…それはどっちでも良かった。 燐の意志を確認し、次に俺は実況および司会に試合を早く開始するように伝えた。目線だけで。 「おっと、時間が押しているので早速試合開始です。 『黒衣の戦乙女』燐VS『緑の恐怖』コロン…試合開始です!!」 やっとのことで試合開始だ、俺は敵の位置を確認する…全く動いていない。それだけの自身があると見た。 そういえばアイツは曲がりなりにもこの地区で最強の部類に入る(セカンドリーグで)だろう、ランキングで3桁の差だから無理も無いのかもしれない、でも…燐はその間にべーオウルフとの戦いや強化パーツのトライアルのためのトレーニングを初め、公式戦に出られなかった半年間はバトルではないにしろさまざまな経験を積んでいる。だから本来の意味でランキング分の差が絶対的なモノでは無いと思っている、それは燐も同じだと思う。 そうでなければ、上位ランカー相手に一直線に迫っていくことは無いだろう。 ただ、俺とて燐の精神状態が完全に把握できているわけではない、だから指示を出しておく。 「燐、確かにむかつくヤツだが実力は折り紙つきだ、わかってるとは思うけど怒りのままに突っ込むな。冷静にだぞ。」 「わかっています、ただ相手を視認しない限り安心は出来ないので…」 「ああ、ギリギリの距離で止まってまずは適当にSRGRでもぶっ放してやれ。」 「はい。」 そうして燐は疾走する。フィールドは久々のゴーストタウン仕様。この会場はコロシアムフィールドを使わないことで有名でいつも何かしらの障害物が存在するフィールドが設置されている。で今回はそれがゴーストタウンだっただけのこと。 多少足場が悪いが今の燐には気にならない。なぜなら完全に足をつけるわけではなく、次々と小さなジャンプをする要領で走っているからである。事実燐の走った地面にはサブアームのヒールの形はつかず、一点の穴が存在するのみ。 燐はつま先のみを地面に接することで力の加わる範囲を小さくしてその力を全てジャンプ力に変える術を身に着けた。以前はどうしても地面と接する時間が多く、その分パワーのロスが起こっていたそうだ。 それゆえに、今の燐の速度は半年前の公式戦の時に比べ1.3倍になっている。 バサーカ装備の神姫としては最高レベルであり、スピードが持ち味のであることの多いセカンド以上のハウリンにもなんとか追いすがることが出来そうだった。 そいて遂に敵のコロンを目視できる距離になる、燐は走り幅跳びのように両足を前に投げ出して着地、ソレと同時にSRGRを発砲。 2発のグレネードランチャーがコロンに向かっていく。しかしそれは着弾することも無く、ソードオブガルガンチュアで叩き切られていた。 しかしそれでもコロンは動かなかった。 「挑発しているのですか?」 そう言って燐は一足でジャンプ。一気に距離を詰め、フルストゥ・グフロートゥで切りつける。 しかしことも無げにそれは受けられ、しかもそのまま押し返された。質量では明らかに燐の方が重い。そのはずなのにこうして力負けしていることが信じられない。 「燐、一度距離を取れ。」 自分でも力負けを感じていた燐はすぐにバックステップ。そのまま体操の競技のように後方に宙返りを行って後退する。 「…弱いですね。」 無機質な声、感情を押し殺している…漫画とか映画で見る暗殺者とかに似ている声を出してコロンは言う。 「まだこれからです!!」 そして燐は側にあったビルの残骸を蹴って加速。何回かの水平ジャンプでコロンの裏を取る。 「ハッ」 そしてセカンドアームで手刀を作って突き出して突っ込んだ。 「押しが弱いと言っている。」 またコロンに弾き返された。吹き飛ばされるということは無いがどうしても力負けしている…どういうことだ。 推測しているヒマも無く、すでにコロンはミニガンを構えていた。 「さあ、これを抜けられますか!!」 ミニガンからは通常弾では無く、散弾が発射される。 威力自体は弱いが重要な可動部に当たればそれで燐の最大の持ち味である機動性が失われてしまう、それはなんとしても避けないといけなかった。 「燐、大幅に後退。出来るだけ距離を置くんだ。」 「は…はい!!」 回避行動がギリギリで間に合って燐の素体や可動部のダメージはゼロだが、弾を受けるために前に突き出したセカンドアームの装甲には無数のヘコミが出来ていた。やはり威力は弱いようだが弾をばら撒かれると辛い。 いまはビルの物陰に身を潜めているが時間の問題だろう。 しかし俺は燐が物陰に待機するような状況をあまり経験したことが無い、どちらかというと相手が隠れることが多かった。やはり強い。 完全に燐の得意なクロスレンジに持ち込ませない上に、なんとかクロスレンジに持って行ってもパワー負けするのだ…負けはしないが埒が開かない。 「燐、やっぱりあっちの対策は完璧だな。しょうがない。サイドボードのアレを使うぞ。」 俺は苦肉の策として燐にアレを装備させることを決めた。 ~燐の19「覚醒」~
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自己板コテまきひとの初恋の女の子の名前=超能力者の女の子 『自己板コテ』まきひとの名前一覧
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猛り狂いし、地を灼く竜(前編) その日、私・槇野晶は神姫達が目覚める前から大忙しであった。何しろ、 彼女らが重量級ランクに挑む日なのだ。リサーチしたデータと自己鍛錬の 経験……そして私自身と彼女らの“技術”が、勝敗の全てを握っている。 ノウハウなど存在しないも同義。正直、全員未知の荒野へ旅立つ気分だ。 ならば、出来る準備を可能な限り行うしかない。それが明暗を分けるッ! 「充電完了、システム起動──ふぁ……おはようございますですの~♪」 「む、起きたかロッテ。アルマとクララも、起こしてやってくれんか?」 「はいですの!マイスター、寝ないでずっと準備していましたの……?」 「……仮眠は少々取ったが、結構ギリギリだな。しかし頑張らねばッ!」 そして朝日を迎える内に、前日まで練習尽くしだった“妹”達も次々と 目覚めてくる。それと前後して、“プルマージュ”の最終調整も完了。 本来は“アルファル”も同時使用出来るのだが、今日は敢えて使わぬ。 “プルマージュ”に皆が慣れているか、その力を引き出せるかが肝要。 それを見極めてからでも、決して遅くはないはずだ……という訳でッ! 「よし、皆着替えと洗浄は終わったな?忘れ物も……有無、無しッ!」 「“プルマージュ”達も、コンテナでちゃんと寝てるから大丈夫だよ」 「それじゃ皆、行きましょう?……あたし達の、新しいステージにっ」 「はいですの~♪どんな姉妹達がいるのか、今から楽しみですの~♪」 コンテナの増加で更に巨大化した、キャリアを引っ張りつつ店を出る。 旅行鞄風のコレに、神姫達の武装パーツは無論の事……着替えや相棒の “アルファル”と“プルマージュ”が、更には各種電装機器や充電用の 小型バッテリーまでも搭載されている訳で……流石にデカくて重いッ! 「ふぃぃ……流石に私の背丈に迫る勢いの荷物、骨が折れるな……」 「どうせなら駆動系付けて、マイスターが乗っちゃえばいいんだよ」 「それも手だが、アキバの雑踏では些か危険だろう……だが、ふむ」 「乗れないにしても、モーターで車輪の動きを支えられませんか?」 「電気自転車みたいな感じですの。あ、付きましたのマイスター!」 そんな他愛もない雑談で辛さを紛らわせつつ、神姫センターへ入店する。 流石にこの時期ともなれば、空調は暖房か……快適だな。私はマフラーを 外し、“妹”達のコートも脱がせる。その下にあるのは、“フィオラ”。 あくまでもエントリーは“可憐・華麗”に。その拘りは貫きたいのでな! 「バトルの申し込みは先程終わらせた。誰が一番に来るかは分からぬ」 「い、一番にあたしが来る可能性もあるんですね?……緊張しますっ」 「確率三分の一だから、そこまで気張らなくてもいいと思うんだよ?」 「そうですの~♪対戦相手が何時見つかるかの方が、心配ですの……」 『槇野晶さん、アルマの対戦相手が見つかりました。オーナー席へ~』 「ひゃいっ!?あぅぅ……やっぱり一番でした。気合、入れないとっ」 なんだかんだでアルマは緊張しているのだろう。私は彼女を抱き上げて、 優しくエントリーゲートに降ろし、アルマの武装ケースをサイドボードに 差し込む。リサーチした寸法通りに、箱はピッタリと収まった。完璧だ! 「大丈夫だ。私達が見守っている……存分に、蹴散らしてこいよっ!!」 「は、はいッ!恥じない戦いを、してきます……じゃ、行ってきます!」 私達三人の笑顔に見送られて、アルマはゲートの奥へと降りていった。 彼女の意識は、ヴァーチャルフィールドへと遷移し……戦いが始まる! しかし、見守っていた私は……重要な事実を告げなかったのだ。迂闊! 『アルマvsガルラ、本日の重量級リーグ第4戦闘、開始します!』 「で、出番ですね……」 『なお、ゲートより神姫は高速射出されます。衝撃に備えてください』 「──────へ?」 「そう言えば……アルマ、開始と同時にファフナーを呼ぶのだ!」 「は、はいぃぃっ!?」 『3……2……1……GO!!』 「きゃ、ああぁぁぁぁ~っ……!?」 そう、重量級ランクでは目方のバラツキが大きくなりがちである。故に、 神姫達はリニア射出により、ゲートから一定速度で強制排出されるのだ。 開始時の相対距離をある程度一定に保つ事で封殺を防ぐ、等の名目でな。 だが生身でそれを受ければ、障害物や床に激突してしまうのだ……むう。 「ひゃあぁ……ファフナーッ!?」 『グルル……グルォォォオンッ!!』 「きゃっ!?ふぅ、た……助かりました」 しかし気の利く様になった“相棒”が、即座に彼女をピックアップする! そこへ、近くの岩山から対戦相手となる神姫の声が響いた。今回は誰だ? 「無様ね。貴女、この戦場は初めてなのかしら?」 「ッ!?貴女が対戦相手のガルラさん、ですね?」 「そう、苛烈なる鳥の女帝……それが私、ガルラ!」 少々ナルシストの入ったその神姫は、“神姫パーツ流用組”らしかった。 来年発売の限定バージョン・エウクランテ及びイーアネイラを意識した、 黒と紅に彩られた第五弾のリペイントパーツ。更に、それを覆う様にして 全身に纏ったティグリースとウィルトゥースの装備……頭部は、禍々しい アレンジのバイザーに覆われており、口と金のポニーしか見えぬ作りだ。 だが改造パーツとは言え、その娘は紛れもなく公式パーツを用いていた! 「ふぅん。通常ランクでは一応セカンドなのね、貴女……?」 「お陰様で……でも、そんな“常識”が通用しない事は弁えてます」 「そう。なら話が早いわ……ここでの流儀、見せてあげましょうッ!」 「手合わせ、願います……行きましょう、ファフナー!」 『“W.I.N.G.S.”……Execution!』 『グルォォォォォォンッ!!!』 “朱天”由来の大剣を振るう鳥の女王を目の前に、アルマは怯まない。 “フィオラ”から追加パーツ付きの“シルフィード”に姿を変えた上、 ファフナーの背中に己の太腿から下を“合体”させた。これが、第一の 戦闘形態。竜騎士の型……“ドラグーン・シルエット”である!付属の “センチュリオン”と“ティンクルスター”を携えて、彼女が構えた。 「なるほど、騎乗型なのね……しかし、その程度見飽きたわ!」 「あたし達を、普通に見ない方が良いですよ……参りますッ!!」 『グルォォォオンッ!!』 ──────竜の騎士として、誇り高くあろうね。 次に進む/メインメニューへ戻る
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八畳の部屋に響いたのは、ぱり、という固い物を噛み切る音だった。そのまま音はぱりぱりと続き、飲み込まれてから言葉が続く。 「……大会? ショップで?」 向かいに座る少女の誘いに、峡次は馴染みの店の名前を出してみる。 「駅前のセンターだよ。昼からなんだけど、峡次も来ない?」 彼女が誘う大会といえば、意味するところはただ一つ。 三人分の姿が囲む卓袱台の上。四人分の食器の合間で食事を摂っている、四人の小さな少女たち……神姫の大会の事に違いない。 「俺ぁバイトだから無理。倉太さんか鳥小さんと行ってきなよ」 中央に置かれた玉子焼きの大皿に箸を伸ばしつつ、峡次は卓袱台を囲む残りの二人の名を呼んだ。 「だって、鳥小さんはバトルしないでしょ」 呼ばれた鳥小は口をもぐもぐ動かしながら、無言で首を傾げてみせた。相棒の金髪の神姫も、卓袱台の上で姿勢良く座ったまま、無言で箸を動かしている。 「それに倉太は、また今日から研究室で泊まりなんだってー」 少女はそう言うと重心を後ろへずらし、そのまま遠慮無く倒れ込む。 もちろん畳の上に倒れたりはしない。少しへたれた白いシャツの胸元に、後頭部をぽすんと埋めるだけ。 「ごめんね。研究、忙しくってさ」 彼が倉太。場にいる四人目。 卓袱台を囲む人影が四人ではなく三人に見えたのは、彼の膝の上に少女が腰掛けていたからに他ならない。 「って、平然と俺の皿から取らないでくださいよ倉太さん。まだあるじゃないですか、玉子焼き」 「僕、端っこが好きなんだよね」 少女を膝の上に乗せていることなど気にも留めず、倉太は薄く焼かれた玉子の切れ端を美味しそうに頬張っている。 見ている峡次や鳥小が何も言わないのは、これがいつもの光景だからだ。 「うー」 「ほら千喜、そんなに暴れると……」 「つまんな……んぶっ!」 もちろん、膝の上で暴れる千喜の頭が倉太の顎に下から頭突きをぶちかますのも、いつもの光景だ。 「そうだ、峡次さん。あれ」 だから、悶絶する倉太と少女を前にしても。 峡次の前にちょこんと腰掛けている引っ込み思案な少女さえ、いつも通りのままだった。 「おお、そうだ。プシュケ」 「なんですの? 峡次さん」 いきなり呼ばれた自分の名前に、プシュケは口元を拭いていた手を止める。彼女は千喜の神姫だが、主の心配をする気はあまりないようだった。 「これなんだけどさ」 だがそんな彼女も、峡次とその神姫から渡された物には……。 「これは……え?」 思わず言葉を失っていた。 「それ、ノリコ用の……?」 ようやく食事を終えた金髪の神姫も、続く言葉を見つけられない。 「……フィールドシュナイダー」 黒鞘に納められたそれは、神姫の身長に匹敵する機械式の大太刀だ。内部のマガジンに高電圧のユニットを装填することで、ただでさえ大きな斬撃力を数倍に跳ね上げる機構を持つ、一撃必殺の重武装。 「……いいんですの? ノリコ」 その大太刀は、峡次がやがて来る自らの神姫のために特別に誂えたものだと聞いていた。この街に来る前から大切に組み上げ、調整していたそれを……。 ノリコは、他人に譲るという。 「私、近接武器は使えませんから。良かったら、使ってください」 確かにフォートブラッグは砲戦能力に特化している分、他の武装の扱いは不得手だ。 適性だけで見るのなら、近・中距離を得意とするジルダリアタイプのプシュケの方が、相性が良いのは間違いないが……。 「それにプシュケ、前からハイパーモードまでに使えそうな武器、探してたろ?」 「それは、そうですけれど……」 それも、間違いではない。 ジルダリアの真価は、背面武装を駆使した高速立体戦闘だ。しかし、そのシステムを起動させるまでには幾分かの時間が必要となる。 特に瞬発的な火力にも乏しいジルダリアとしては、機体状況に関係なく大攻撃力を叩き出せるこの武器は、喉から手が出るほど欲しいもの……ではあるのだが。 「けれど、それは……」 峡次の神姫に与えられるはずの武器。 ノリコのための、大太刀だ。 もしプシュケが主からもらえるはずだった武器を、他人に渡す事になったとしたら……絶対に、うんとは言わないだろう。それが例え、何の役にも立たない武器だったとしてもだ。 「……もらってください、プシュケさん」 それを、ノリコはくれるという。 「本当に、いいんですの?」 ノリコはバイザーを落していない。だから、表情も隠れていない。そんな彼女の澄んだ瞳にあるのは、少し寂しげな……けれど、それ以上にある、喜びの色。 「はい。峡次さんには私のための武器、ちゃんと作ってもらい……ひゃっ!」 その言葉を遮ったのは、プシュケの頭上から伸びた細い指だった。 「いーからもらっときなさい、プシュケ」 ノリコの頬をそっと撫でている千喜のナゲヤリな言葉に、プシュケは呆れた顔を隠せない。 「これは命令よ。アンタが貰わないんなら、あたしが貰って使わせるから」 「千喜……」 恐らく、千喜はノリコの心を『読んだ』のだろう。その彼女の内面を読み取ってなお、貰っておけと言うのなら……プシュケにそれ以上、断る理由はない。 もしノリコが無理をしていると読んだなら、その瞬間に峡次は千喜に殴り飛ばされていただろうから。 「コイツにはちゃんと専用の武器、作るから。余り物で悪いけど、プシュケは遠慮無く使ってくれ」 「……そこまでおっしゃるなら、試させていただきますわ」 受け取った大太刀は、普通の太刀より随分と重かった。機械的な増強があるから当然ではあるのだが、大会で使う前にシミュレーターで調整をしておく必要がありそうだった。 「さて。それじゃ、私はそろそろ出掛けないと……」 事の流れを見守っていた鳥小の言葉に時計を見れば、思った以上に時間が過ぎている。 「俺も部屋に帰ります。ノリコ、行くぞ」 「はいっ!」 卓袱台を立とうとする鳥小に、峡次とノリコも続いて立ち上がる。 「行ってらっしゃーい」 「僕もぼちぼち出ようかなぁ……」 「……いや、私の部屋なんだから、二人も出ていきなさいよ」 マイナスから始める初めての武装神姫 その13 二階に上がって扉を開けて。 「ほほぅ。本当に来たですか、新入り」 挨拶を制して掛けられたのは、びっくりするほど上から目線のそんな言葉だった。 「いや、ちゃんと来ますって。ミドリさん」 ただし、目線は上でも物理的な視線はかなり下。事務机の上に広辞苑を載せてその上に乗っかっても、身長六十センチのミドリではまだ峡次の目の高さには届かない。 「早かったのね、武井君、ノリコちゃん」 「おはようございます!」 「あ、碧さん。おはようございます」 一方こちらは、ミドリとは全くの逆。 社長という立場のはずなのに、フランクな物言いの碧はその気配を全く感じさせない。その若さと合わせ、知らない者が見れば内勤担当の若手スタッフとしか思わないだろう。 「それでね、悪いんだけど、私……これから出掛けてくるから」 その若き女社長の指先でくるくると回るのは、自転車の鍵よりはるかに大きな車の鍵だ。 「後のことはミドリに任せてあるから、頼むわねー」 ジーンズにスニーカー。事務所にいるときと同じ、とてもフォーマルとは言えない格好のまま、碧は事務所を悠々と後にする。 「え、あ、ちょっと碧さんっ! せめてジムさんとかキリコさんじゃないんですかっ!」 その問いに答えるのは、ばたんと閉じた扉ではなく。 「みんなとっくに仕事に出掛けているのですっ!」 机の上に仁王立ちになったままの、六十センチの小さな姿。ばさりとひるがえるスカートの裾が、机の上に積んであった書類の束を景気よく吹き飛ばす。 「役立たずに居場所なんか無いのですよ! とっとと研修を始めるのです!」 ひらひらと舞う書類を見なかったことにして、ミドリは偉そうに平たい胸を張ってみせる。 それに答えるように開いたのは。 「碧さんっ!?」 いま閉まったばかりの、事務所の扉だった。 そこに立っていたのは、当然のように碧ではない。 「戻りまし……た」 身長は峡次と同じくらいだろう。短めの髪に、保温性より通気性を重視した薄手の軽装も、峡次とさして変わりない。 ただ一つ違うのは、その人物が少女だった、ということか。 「……誰?」 驚いているらしい割には変化の薄い表情に、むしろ峡次のほうが戸惑い気味に。 驚かないのはこの場ではただ一人、事務机の上のミドリだけ。 「百式。ちょうど良かったのです」 「この人が……百式さん?」 ノリコも彼女を見るのは初めてだったが、その名前だけは聞き覚えがあった。 峡次が初めてトイズ・メッセンジャーに来た時、急に休むことになったスタッフの名前だ。彼女の欠席があったからこそ峡次の採用が決まった面もあるのだから、ある意味トイズで一番因縁のある人物……と言えなくもない。 「何ですか? ミドリさん」 「こいつの面倒、お前が見るのです。初めての後輩なのだから、研修してやれです」 いきなりの無茶振りにも、百式と呼ばれた少女は表情ひとつ変える様子がない。 「……まだ私、仕事が残ってるんですけど」 「実地でいいのです。今日一日、こいつを連れ歩くのですよ!」 ばさりとひるがえるスカートに、今度は机の上のペン立てが吹き飛んだ。 「……今日、お昼までなんですけど」 百式はそう呟くと、事務所の隅にあるホワイトボードにちらりと視線を向けてみせる。 彼女の言うとおり、百式と書かれたマーカーから伸びる青い矢印は、十二時のラインでぴったりと止まっていた。 「……じゃあそれでもいいのです。昼からプライムが来るから、後はあいつにやらせるのです」 百式の矢印から入れ替わるように伸びる真っ赤な矢印とマーカーを見て、ミドリはもう一度スカートをひるがえす。 机の上から、今度は『FAX済み』と書かれたゴム印が飛んでいった。 「あの、いきなり実地って……仕事ですか? 研修って、もうちょっといろいろ説明が……」 「どーせ居眠りするに決まってるから、そんなものいらないのです! 百式もいいですねっ!」 百式はいつの間にやら峡次の脇を抜け、事務所の隅に置かれた冷蔵庫をがさがさと漁っている。 「……邪魔にならないなら。行くわよ」 結局スポーツドリンクらしきボトルをひとつ取り出すと、そのまま開けっ放しになっていた出口へと。 「あ、はいっ」 それを峡次も追い掛けようとして……。 「ちょっと待つのです!」 ミドリの声に、足を止める。 「何ですか、ミドリさん」 廊下の向こうからは、百式が事務所の階段を降りる音が聞こえている。乗り気でない彼女のことだから、追い付かなければ先に行ってしまうかもしれない。 「その前に、ミドリをさっさと床に下ろすのです!」 「え……? 降りられないんすか?」 事務机の高さは、ミドリの身長より少し高い程度しかない。峡次はもちろん、身長十五センチしかない神姫のノリコでさえ、軽く飛び降りられる高さだ。 「ミ……ミドリたちドールのボディはとっても繊細でデリケートなのですっ! つべこべ言わずにとっとと下ろすのですよ!」 どこまでが本当なのかは分からなかったが、ドールの機構が繊細だというのは峡次も聞いたことがある。本当にこの高さから落ちたら、膝関節が壊れてしまうのかもしれない。 「……はいはい」 なんとなく、人間用のドアを跳び蹴りで開けていた事があったような気もしたが……あえて思い出さない事にした。 片手で持つのは流石に気が引けたので、ふわふわのドレスに覆われた脇の下にそっと手を入れてみる。 「こらっ、そんな持ち方するんじゃないです! ちゃんとだっこするのです!」 「……はいはい」 ばたばたと暴れるミドリに言われるがまま、峡次は膝の裏に右腕を回し、残る左手で小さな背中を抱えるように支えてみた。 「……やればできるじゃないですか」 それで合格だったのか、ミドリは今度は妙にしおらしく、峡次の右肩にきゅっとしがみついてくる。 「…………」 そこに、ふと、視線。 ミドリを抱きかかえたままその源に視線をやれば、事務机の上に立っているノリコと目が合った。 どうやら三人が話している間、飛んでいったペンや書類を集めてくれていたらしい。 「どした、ノリ」 「……いえ、べつに」 それだけ言うとノリコはバイザーを下ろし、机の上から峡次の肩へひょいと飛び移ろうとして。 「チビチビ神姫! お前はこっちなのです!」 踏み込んだ足とミドリの声は、全くの同時。 「はいっ!?」 だが、踏み込んだ足はもう止まらない。思わず揺れた踏み切りの具合を重心の切り替えで慌てて修正し、目標点を峡次の肩から床の上へと切り替える。 マオチャオほどではないにせよ、ノリコの体は宙を何度かくるくると回り、無事床へ。かなり無理のある軌道修正だったが、二、三度たたらを踏んで、何とか体勢を整える。 「お前は別にやる事があるのです! 新入りは百式の言うことを良く聞くのですよ!」 階段を慌てて駆け下りて、最後の三段は一気にジャンプ。 たたらを踏んで体勢を整えた所で、そこにいたのは件の少女だった。 「えっと……」 「百式でいい。みんなもそう呼んでるし」 トイズのメンバーは、全員がメイドハンマー参戦者だ。男性陣のケンプやキリコもそうだったが、女性スタッフの百式も例に漏れず、ユニット名がそのまま通称になっているらしい。 「じゃ、百式さん。今日は……」 備品庫らしい棚を漁っている百式は、峡次のほうを振り返る様子もない。 「私、説明とか苦手だから……今日はとりあえず、付いてくるだけでいい。プライムさんは教え方上手だから、詳しい事はプライムさんに聞いて」 ようやく振り返った百式は、備品らしき物体をそっと峡次に手渡した。 「……これは?」 「ナビ。さっきの子、来ないんでしょ」 「ええ。でもこれがナビ、ですか」 両手に収まるほどの黒い箱だ。底に自転車に取り付けられる金具が付いている点を除けば、なだらかな流線型を描くそれは、車のフロントをそのまま切り取ってきたようにも見える。 箱の背面側、切断面に当たる場所に液晶パネルが組み込まれているから、そこに地図が写るようになっているのだろう。 「紙の地図の方が良い? それとも、東京の道は全部覚えてる?」 そう問う百式のロードにも、峡次に渡された黒い箱と同じ物が取り付けてあった。 そちらは既に起動状態にあるらしく、液晶パネルには……なぜか地図とは全く関係のない、オーディオのボリューム表示のような図形が映し出されている。 「百式さんは、ナビに百式とか使わないんですか?」 「……普通のGFFはそういうこと向きじゃないから。さっきの神姫を使う気なのかもしれないけど、慣れるまではそれ使って」 「……了解です」 先輩に倣ってロードのステムに箱を取り付け、スイッチをオンにする。AI搭載型の音声対話方式らしく、ボタンはその一つしか付いていない。 やがて液晶パネルに例の奇妙な図形が浮かび上がり、フロントに刻まれた溝の間を、赤い光がゆっくりと左右に往復し始めた。 「おはようございます、マイケル」 そして、第一声。 「……マイケル?」 「このナビのAI、安物だから。男の人はぜんぶマイケルかデボンなの」 意味が分からない。 「彼はニューフェイスですか? ボニー」 そのうえ、液晶パネルのボリューム表示はAIの音声出力と同期しているらしく、AIが声を放つたびにメーターが上下していたりする。 「……ボニー?」 「ちなみに女の人はぜんぶボニーかエイプリル」 「…………」 買った方も買った方だが、作った方も作った方だと峡次は思った。 「初めまして、マイケル。私はKnight Industries Two Thousand Thirty Two。K.I.T.T.T.T.と呼んでください。キットでも結構」 「どんだけT略すんだよ」 「野暮なツッコミはレディに嫌われるもとですよ、マイケル」 呼称設定は出来ないクセに、こちらのツッコミはジョークで受け流せるらしい。妙にアメリカンナイズされた口調で、キットと名乗ったAIはメーターを上下させている。 「…………他にナビないんすか?」 無言で指差した百式の先を見てみれば。 キットと同じ黒い箱が、備品庫の上の棚にずらりと並べてあった。 「無いよりはマシだから。行くわよ」 どうやら選択の余地はないらしい。 「……ういっす」 早く一人前になって、ノリコにナビを頼もう。 走り出す百式の背中を追い掛けながら、峡次は本気でそう思うのだった。 窓の外を、峡次のロードが走っていく。 角を曲がって見えなくなったところで、ノリコはようやく部屋に視線を戻した。 「あの、ミドリさん……」 「なんなのですか、チビチビ神姫」 散らばった書類を拾い集めながら、ミドリはノリコの問いに返事を寄越すだけ。 「ジムさんやキリコさんは、マスターと一緒にお仕事してるんですか?」 トイズの社内にいるのは、今はノリコとミドリだけ。百式も百式を連れてはいないようだったが、かといってマスター待ちの彼らが社内にいる様子も見当たらない。 「あいつらは戦闘用モデルだから、普段から起動したりはしないのですよ。ロッカーに入ってなければ、家にあるんじゃないのですか?」 「そうなんですか……」 窓枠からひょいと飛び降り、ノリコも散らばったボールペンを拾っていく。大して重いものではないが、神姫の身ほどもあるボールペンはバランスを取るのが少々面倒だ。 「どうしたですか。ミドリだけじゃ不満ですか?」 「そうじゃ、ないんですけど……。他のフィギュアのかたとお話しする事とか、滅多にないですし」 学校でも巴荘でも、神姫と話す機会はいくらでもある。だがノリコにとって、それ以外の規格のAI……ドールやGFF、SRWの人工知能と話をするのは、トイズに来てからが初めてだったのだ。 「でも、いつでも起動させてもらえないのって、寂しくないんですかね?」 椅子を踏み台に机の上に飛び上がり、ペン立ての中にボールペンを放り込む。ついでにミドリが机に書類を載せようとしていたので、机の上から書類を引き上げてみた。 「そんなこと、あいつらに聞かないと分からないのです。……でもあんまり難しいこと考えると、フリーズするですよ?」 最後にゴム印を置いて、机の上の惨状は何とか片付いたらしい。 机の上に伸ばしてくれたミドリのてのひらに載って、ノリコも床へと下ろしてもらう。 「ま、メイドハンマーが始まればイヤでも話すのです。それよ……り……………」 言葉を詰まらせたミドリの表情はわずかに歪み、動きも鈍くなっている。 「……ミドリさん?」 その症状は神姫と全く同じ。 典型的な、電圧低下症状だ。 「……碧のバカ、充電忘れてるのです……っ! チビチビ神姫!」 「は、はいっ」 脇机の引き出しから取り出した小さな箱とケーブルを、ミドリは床に投げ出した。投げると言うより落すと言うべきその動きは、ミドリの手に力がほとんど入らなくなっている事を示している。 「そっちのコンセントに……っ、このアダプターを……繋ぐ…です……」 ミドリは出したままの引き出しに寄りかかったきり。もはや自力で立つ事も厳しいらしい。 「え……? ミドリさん、有線なんですか?」 アダプターを組み立てて、コンセントにプラグを差し込んで。ノートPCのそれと組み立て方は同じだから、さして困ることはなかったが……。 「有線で何か文句あるですか! ドールの消費電力は、チビチビと違って大きいのですよっ! さっさと……繋ぐ、です……っ」 「って、どこに……?」 神姫の充電は非接触型だ。クレイドルにお尻を乗せておけば、勝手に充電してくれる。 けれど、有線式だというドールのミドリにはそれらしき外装部は見当たらない。 「ここ……です………」 そう言ってミドリが示したのは、スカートの中。 「ミドリじゃ、手が届かないですよ……んっ」 力の入らない手で何とかスカートの裾をたくし上げ、その内側にノリコを招き入れる。 「で、でも、私も……手が届かないですよ……」 スカートの中に入ったは良いが、六十センチドールの足は神姫の身長よりもはるかに長い。足首やすねあたりにコネクタがあるならともかく、ドロワーズに覆われてない所にそれらしき箇所は無いように見えた。 「もぅ……使えない、のです……これで、いい……ですか……?」 小さな舌打ちと共に、はるか頭上にあった白布の天幕がゆっくりと降りてくる。周りを囲むスカートの布地がたわみ、折り重なり、入り込む光が遮られ。 「あ……はい……」 ノリコはバイザーを下ろして視界のモードを暗視モードへと。自身が高い温度を発しないドール相手なので、赤外線ライトを併用したアクティブモードにすることも忘れない。 「も、もぅ……。恥ずかしい、ですから……さっさと、やるですよ……」 真っ白なドロワーズに覆われた小さなお尻は、小刻みに震えている。無理な姿勢で力が入らないのか、本当に恥ずかしいのか……いずれにせよ、峡次には見せられない光景だと、ノリコは思った。 「ミドリさん……あの……」 「なんなのです、か……もぅ……っ」 「このパンツ……どうやって、脱がせるんですか……?」 たっぷりとした布の幕が折り重なるドロワーズを脱がせる作業は、どうみても神姫一人の作業量を超えている。せめてストラーフやムルメルティア、グラップラップのサブアームがあれば何とかなるかもしれないが……。 「ぬ……っ、脱がせる必要なんか、ないです……っ! ん……っ、お尻の方、に……ちゃんと、穴……がぁ……」 ミドリに言われるがまま。ふりふり揺れるドロワーズの布をかき分けていけば、布の合間に小さな切れ目が開けられていた。 「あ……ありましたぁ……」 布幕の合間に埋もれてしまわないよう片手を突っ込んだまま、脇の下に挟んでいたコネクタケーブルを取り上げる。 「ひぁ……っ! さ、触ってないで……んっ、は、早く……挿れる、です……。も……電池、が……」 「え、っと……こうやって……」 意外と古い世代のドールなのだろうか。指先に伝わるのは、金属質のジャックの感触。 「……ぁ、ひ……っ! こ、こら……ぁ……。そ、そこ……なの、で……す」 向きや極性があるかと思ってジャックの表面をつるりと撫でれば、ミドリの口から漏れるのは甘い声。特に変わった突起などは無いようだから、とりあえず差し込んでみれば大丈夫そうだ。 「えい……っ!」 昔ながらのプラグ式のコネクタを突っ込んで、接続。 「んふ……ぅ……っ!」 それと同時に、周りを囲む布の天幕がぐらりと傾ぐ。 どさ、という思ったよりも軽い音がして、ミドリはその場に倒れ込んだ。 「だ、大丈夫……です、か…………?」 ノリコは崩折れた布の天幕から抜け出し、バイザーを跳ね上げる。 「大丈夫な……わけ……ない、ですぅ………。ミドリ、だって……恥ずかしいこと、くらい……んっ……あるの、です…よ………」 顔の側に回り込んでみれば、倒れたままのミドリはお尻を天井に突き上げたまま、荒い息を吐いていたが……少なくとも、憎まれ口を叩く程度の余力は残っているようだった。 「んぅ………この事は、内緒に……する、ですよ……?」 「あ……。はい」 だが。 「やあ、今日も一日頑張ろう! サイ○トロン戦士、アターック!」 扉を開けて大股で入って来たその男に投げ付けられたのは。 悲鳴をまとって飛翔する、ノリコだった。 戻る/トップ/続く
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リンク名 ? いつか光り輝く 真面目な振りしておバカなネタの為だけにでっちあげられたお話。 画面サイズはXGA以上を推奨。 1.0 別の何か 2.0 あかいそら 3.0 遺品 ※HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとクロスオーバー 3.5 ラジヲ 武装神姫・お手紙相談室 4.0 融合~GとG ※HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとクロスオーバー 凪さん家の十兵衛さんの第九話<GとJ> とリンク 人物設定 神姫(?)設定 装備品設定(暫定) 今日 - 人 昨日 - 人 累計 - 人 あちらの書き込み見ました。 いいネタなので様子見て使えそうならそのうち使おうと思っておりましたよ。 その辺どうなんでしょう、センセ(笑) -- Gの人 (2006-11-05 13 03 05) うわ。読みづらいから編集で改行したら履歴に載ってしまいました(汗)重ね重ね失礼。 -- Gの人 (2006-11-05 13 07 30) あふれ出る妄想を止める権利も術も、誰も持ち合わせてはいないのです。 -- 柏木ががが (2006-11-05 22 19 46) こちらにも。確認しましたー。わざわざお手数掛けて申し訳ないです。(礼)ネタは有り難く(笑) -- G (2006-11-06 01 05 01) 名前 コメント
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何かを得るためにはそれ相応の代価を支払はなければならない 7月26日(火) そして次の日、私はまたあの騒音の中にいた。耳が痛くなってきそうなほどの音量で、様々な音が混ざり合っている。やっぱりこの空間には慣れそうにない。 「そう? あたしは慣れてるけど」 「私は二回目」 「私に関しては初めてですよ……」 肩に乗ったシリアが、私の顔を支えに座っている。冷たい指の感触が頬に伝わる。 「大丈夫?」 「うん、なんとか……」 シリアもこの空間には馴染めそうにないな、と思いながら私は神姫バトルのコーナーを見た。 今日もいい賑わいを見せている。中学校や高校が夏休みに入ったためか、若いマスターが多く見受けられた。中には親子連れの姿まである。 ちなみにお金に関してだが、ちゃんとリアルマネーだ。さすがにゲームセンター側としても運営が成り立たなくなってしまっては困るだろう。 だが神姫センターでの買い物にはspt(神姫ポイント)を使うらしい。これはバトルに勝てば手に入り、また運営にお金を払えばもらえるそうだ(倍率は0.2倍だとか)。 ただまあ、神姫バトルでリアルマネーを賭けた勝負は禁止らしい。3年前にはちらほらやっていたらしいが、今は警察の目が鋭くなっていてここ最近では数は少なくなったとか。全部華凛から聞いた。 「これって交代制だよね?」 「そうよ、沢山いても回転率次第で早く回ってくるから、今のうちに用意して起きなさいよ?」 相変わらず天井に吊られているモニターを見る。なるほど、確かに画面右上には時間制限のような数字が見える。300秒らしい。つまりいくら長引いても5分で片がつく作りになっているようだ。 つまり私の番が回ってくるまで軽く時間がある。それまでに私は華凛に聞きたいことがあるのを思い出した。 「華凛、神姫持ってないんだよね?」 「んー? ないわねー」 華凛はあくまでモニターから目を離さずに生返事した。 「じゃあ、なんでこんなに神姫に詳しいの?」 「…………」 華凛はモニターを見たまま黙っている。だがその横顔には戸惑いの色がハッキリ見て取れた。 「……知りたい?」 その時、華凛の声が幾重にも重なったゲームの音に遮られずにやけに鮮明に聞こえた。何か、変な気分だ。まるで、知ってはならないことを知ろうとしているような―― まるで、華凛の嫌な過去を知ろうとしているような、そんな感覚。 私は、華凛のことはだいたい知っている。私のことは話したし、華凛のことも話してもらった。 だが、まだ私の知らない華凛がどこかにいるようだと薄々思っていた。まだ私は、親友のことを全部知っていない。 「……知りたい」 私はそう答えた。華凛が進んで話してくれるなら、私も黙って耳を傾けた。だが、今はそうではない。私から求めている。今までにない緊張感が、私の体の中に走る。 「…………」 華凛は目を閉じた。逡巡しているようにも見える。やがて、ゆっくりと目を開いた華凛は、 「えいっ」 私の頬を両手で引っ張っていた。 「そっかー、知りたいかーっていうか柔らかっ、あ、なんかクセになりそう……」 「か、かふぃん?」 しばらく私の頬をむぎゅむぎゅと引っ張った後、ようなく華凛は離してくれた。 「あー、柔らかいわね、いやホント。マシュマロみたいってこういうこと言うのね」 「……痛い」 「ごめんごめん。で、なんであたしが神姫に詳しいかだったわよね?」 「うん、そう」 「それはね……」 「……それは?」 華凛は十分に間を取ってから話しだした。 「実は、あたしも神姫が欲しいのよ」 「……?」 それがどう神姫に詳しいことに繋がるのだろうか? 「あたしって下調べとかは結構するからね、神姫が欲しいから、色々調べたのよ」 仁さんも色々教えてくれたし、と華凛は語った。確かにあの人の神姫の話は面白い。調べているうちに詳しくなったと華凛は語った。 だが、なんだかんだ言って今の理由は嘘だろう。華凛が私の考えてもいることが分かるように、私だって華凛が嘘をついているかどうかぐらいすぐに分かる。 華凛は嘘をついている。でも、その意味まではわからない。 (話したくなったら、話してくれるよね……) 私は華凛がいつか話してくれると思いながら、自分の番を待った。 (何で……話せなかったんだろう……) あたしの隣にいる小柄な少女は、緊張した面持ちで自分の神姫と話している。 それにしても、なぜあたしは樹羽に話せなかったのだろう。 (神姫……か) 神姫を見ていると、不安になってくる。その小さな体は簡単に壊れてしまいそうで―― (違う……そうじゃない……そんなの言い訳だ) あたしはもう一度樹羽を見た。さっきよりは緊張はほぐれ、真っ直ぐ前を見ている。 あの真っ暗な部屋で塞ぎ込んでいた子が、2週間も経たないうちにここまで成長するとは、あたしも驚いた。 違うな、多分これが本当の樹羽の姿なのだろう。自分の殻を少しずつ割って、ゆっくりと本来の樹羽が出てきているのだ。 (この調子で行けば、夏が終わる前に樹羽の引きこもりは治るわね……。そしたら、あたしは……) そこまで考えて、あたしは頭を振った。今からそんなことを考えても仕方がない。 だが静かに迫るその時を、あたしはただ待つしかなかった。 直前の人がバトルを終え、私の番が回ってくる。 相手は青年だった。椅子に座り、対戦相手を待っている。ポケットからイヤホンを出そうとしたが、こちらの姿を確認すると黙ってまたポケットにしまった。 少し背が高い。それにしっかりとした目、キレのある顔立ち。なんだかんだ言って、つまりかっこいい人だった。 だが、なんとなく近寄りがたいオーラが出ている。私が声を掛けようか悩んだが、 「よろしく……お願いします……」 とだけ言った。だが、声が小さかったせいか、相手には聞こえていなかったらしい。 私の中で気まずさが残った。どうしようか悩んでいると、後ろから声がした。 「あれ? 東雲じゃん。何やってんの?」 華凛だった。後ろから対戦相手をに話し掛けている。話し掛けられた方は、華凛を見るや、目を見開いた。 「あ、秋已? お前こそ、神姫も持ってねぇのに何やってんだよ?」 「あたしは付き添い。本命はこの子」 東雲と呼ばれた人は、こちらを改めてみた。 「てことは、やっぱり対戦相手ってことか。俺は東雲榊(しののめさかき)。よろしくな」 「奏萩樹羽……よろしく……」 適当な言葉が見当たらず、私はそう答えた。東雲くんは肩をすくませると、 「シンリー、対戦相手だ」 と台に向かって言った。 台には一人の神姫の姿があった。普通の神姫より少し小さい。黒いポディに金髪。生では初めて見るが、アルトアイネス型の筈だ。 シンリーというらしい彼女は台の上で何やら書いていた。神姫サイズの小さなノートに、何やら走り書きのような文字がちらほら書いてある。 「ちがう……こうじゃない……もっとこう、テーマを絞って……」 ああでもないこうでもないと何やらぶつぶつ呟いている。 「な、なにがあったんだろう……」 「さあ」 シリアも対戦相手に挨拶しようと出てきたが、肝心の対戦相手が取り込み中だ。 「ちょっと東雲、どうしたのアレ」 「ああ、あいつ作曲出来てな、最近スランプらしいから気分転換に来たんだが……」 気付けばネタ帳を持ち出し、気分転換にならないらしい。 「曲作れるんですか? すごいですね」 シリアは初対面の相手に普通にしゃべっている。社交性はシリアの方が上だな、やっぱり。 「ああ、ネットで『Day Black』って偽名であげてるよ」 『Day Black』、直訳すると、『東雲』になった筈だ。 「そう、なんですか……」 シンリーはまだぶつぶつ言っている。あれでバトル出来るのだろうか? 「バトルは、出来るの?」 疑問をそのまま口にしてみる。すると、東雲くんはちゃんと答えてくれた。 「出来るっちゃ出来るな」 「何よそれ、つまり100%じゃないってこと?」 「ま、そうなるな。だけどナメんなよ。強いぞ、俺たちは」 にやりと笑う東雲くん。 「いいじゃない、その勝負、乗ったわ!」 「華凛、戦うの私とシリア」 だが華凛はそんなことお構い無しでことを進めた。気付けば椅子に座って、ヘッドギアを着けている自分がいる。 「シリア、行ける?」 ポッドに収納されたシリアに尋ねる。 『私は問題ないよ。でも、シンリーさん大丈夫かなぁ?』 耳元のスピーカーからは、シリアの心配そうな声が聞こえてくる。 「相手のことを考えるのはいいけど、バトルには集中しよう」 『うん、そうだね。集中集中……』 私もあの状態のシンリーは気になる。だが、対戦相手なのだ。やるなら、全力でやらないと失礼だろう。 私はボタンを押した。既に聞きなれたアナウンスが流れ始める。 『…3、2、1、0、RideOn―――』 そしてカウントがゼロになり、私の意識は神姫にライドした――。 東雲と樹羽の勝負が始まった。あたしはモニターで二人の勝負を観戦している。 (また、やってしまった……) 昔から挑発には弱く、すぐに受けてしまう。これは樹羽の勝負なのに、何やってるんだろうねあたし。 (でもまだあたしが引っ張らなきゃいけない時期か、さすがに一人でゲーセン行けって言うのは時期尚早よね……) モニターの中の樹羽は、武装を展開している。まもなく戦いが始まるだろう。 (それにしても、樹羽のあの能力だけは予想外だったわね……) 通常、人の脳では指示することの出来ないブースター部分に指示を送ることが出来る。これは普通に身に付くものではない。この能力を使いたいからといくら努力しようとも無いものはどうしようもない。 (樹羽は……普通じゃない……) だからどうと言うわけではないが、やはり気にはなる。 (でも、本人も知らない能力だし。樹羽のお母さんに聞く? いやいや、そんなこと聞けないでしょ) 結局あたしは、樹羽の能力については何もわからないままなのであった。 第六話の2へ トップへ戻る
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自己板コテまきひとの初恋の女の子の名前=細川美樹 『自己板コテ』まきひとの名前一覧