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2009年8月28日発売。 メインビジュアルは体育会系女子中学生“明音鈴” 『瞬間、まっすぐ、突き抜ける』 E.G.O. 阿羅耶識 WIZ-DOM ダークロア 極星帝国 イレイザー ビジュアルフレーム E.G.O. 2411 メモリロイド 2412 ミニパト 2413 特撮少女 2414 スク水ウェイトレス 2415 ヴォーカロイド 2416 ライフセーバー 2417 救命ドクター 2418 正義のヒロイン“ジャスティスハート” 2419 体育会系女子中学生“明音鈴” 2420 特務刑事“氷上純” 2421 超絶絶断剣ネオカイザーブレード 2422 サイキッカー・ストラップ 2423 正義のヒロイン“ジャスティスハート” 2424 体育会系女子中学生“明音 鈴” 2425 特務刑事“氷上純” 阿羅耶識 2426 少林少女 2427 侠客座頭 2428 見習い式使い 2429 お稲荷看板娘 2430 竜巫女 2431 式神狼式 2432 マタギ 2433 遠見士“三ツ谷泰恵” 2434 電脳巫女“宮村林檎” 2435 桃少女“坂田桃華” 2436 桜吹雪 2437 阿羅耶識のお守り 2438 遠見士“三ツ谷泰恵” 2439 電脳巫女“宮村林檎” 2440 桃少女“坂田桃華” WIZ-DOM 2441 バレエ少女 2442 ホムンクルス・バブル 2443 包帯女子高生 2444 悪魔メイド 2445 魔法学院生 2446 アラガントデビル 2447 ホムンクルス・ドラゴン 2448 個人授業天使“ザドキエル” 2449 リッチ“エメ・マインタイル” 2450 エクソシスト“ジェシカ・コールマン” 2451 マジカルステージ 2452 ブルーストーン 2453 個人授業天使“ザドキエル” 2454 リッチ“エメ・マインタイル” 2455 エクソシスト“ジェシカ・コールマン” ダークロア 2456 グザファン 2457 ビーチヴァンパイア 2458 モデルフォックス 2459 幽霊ウェイトレス 2460 日焼け鬼 2461 ラストフルデビル 2462 マーメイドメイド 2463 アヴァターラ“マッツィヤ” 2464 正義の女神“テミス” 2465 ゴシックヴァンパイア“レイチェル・ルォノヴァーラ” 2466 ガイアの抱擁 2467 スティル・スティール 2468 アヴァターラ“マッツィヤ” 2469 正義の女神“テミス” 2470 ゴシックヴァンパイア“レイチェル・ルォノヴァーラ” 極星帝国 2471 スワロウテイル・フェアリー 2472 アンデッドノーブル 2473 ブラッドファイター 2474 清め巫女 2475 もぐらシスターズ 2476 アラビアンエンジェル 2477 黒色槍騎兵 2478 パニッシャー“ビビアン・フューリー” 2479 ダークプリーステス“ギイェルミナ・アルゴラブ” 2480 魔眼“バロール” 2481 討伐令 2482 スケープゴート・ペンダント 2483 パニッシャー“ビビアン・フューリー” 2484 ダークプリーステス“ギイェルミナ・アルゴラブ” 2485 魔眼“バロール” イレイザー 2486 手乗りドラゴン 2487 アンドロイドOF 2488 クローンパイロット 2489 スペースドクター 2490 シージュボーグ 2491 アンドロイドバニー 2492 アンドロイドプロジェクター 2493 アンドロイドクリエイター“ジャラ・スマルト” 2494 ネオロイド“オスト・アインス” 2495 スペースラミア“DA” 2496 プロヴィデンス 2497 ブラック・クリスタル 2498 アンドロイドクリエイター“ジャラ・スマルト” 2499 ネオロイド“オスト・アインス” 2500 スペースラミア“DA” ビジュアルフレーム 2501 体育会系女子中学生“明音鈴”
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小さな子供が泣いている いつまでたっても、泣き止む気配がない 命が助かったと言うのに、何故、泣き続けるのか これだから、人間は理解できない 「……いつまで泣いてんだ、うるせぇぞ」 「うー………うー!」 ぐずぐずと泣き続ける子供 頬を濡らし、眼を腫らし いつまでも、いつまでも、泣き続ける 「…うー………セシリア、なんて……嫌いだ……っ」 「さっきからそれしか言ってないだろ、お前」 戻ってきてから、ずっとそうだ 自分を殺そうとした、あの若き魔女 それを嫌いだと、言い続け しかし 「嫌いなら、嫌い続ければいい。目障りなら殺せばいい。今までお前がそうしてきたようにすればいいだけの事だろ」 「うー、うー………でも、セシリア…姉さん………うー……」 ……また、これだ 自分は、この幼すぎる魔法使いの生い立ちや、アモン卿が拾ってくるより前の事など、知らない 聞いてもいないし、知るつもりもない ただ あのセシリアと言う若い魔女が、このカラミティ・ルーンと言う幼い魔法使いにとって、特別な存在である事も事実らしい だから、完全に嫌いきれない 口では「嫌いだ」と言いつつも、完全に敵だと認識できないのだ ……だから あんなにもあっさりと、殺されかけたのだ あの馬鹿な魔女、「教会」なんかの流言に踊らされて 本気で、カラミティを殺そうとしていた 本気の殺気と遊びの殺気では、本気が勝つに決まっている 想いによる魔法の力で戦いあうなら、なおさらだ 今のままでは、また、いつか 二人が戦いあえば、カラミティは負けるだろう 今度こそ、殺されるかもしれない 「………ったく」 あぁ、だから 元人間だった奴は、面倒くさい 「おら、いつまでも泣くな。うるせぇ」 ぼす、と乱暴に頭を撫でる びくりと、小さく体を跳ねらせて、カラミティがこちらを見上げてきた 金色の目には涙がたまり、大粒の雫となって零れ続けている ……魔法使いや魔女が流す涙は、魔力の塊 魔女が涙を流せば、魔力を失うと言う話すらあると言うのに……泣いて、何の意味があるのか、さっぱりわからない ただの、魔力の無駄遣い、存在を削る自殺行為でしかない 「あのセシリアは、お前の姉なのか?」 「……うー……」 こくり、と カラミティは頷いてきた 実際に血のつながっている姉なのか、それとも、姉同然な存在だと言う意味なのか…どちらなのかはわからないし、今はどうでもいい 「お前は、姉を嫌いたくないんだな?」 「…うー………セシリア、姉さんを……嫌いになりたくない。父さんも母さんも、もういないから…………セシリア姉さんしか、いないから…嫌だ…」 ぼろぼろと、再び涙をこぼし始める あぁ、面倒臭い 「…なら、「セシリア」を嫌えばいいだろう、「姉さん」ではなく」 「…………?」 小さく、首を傾げてくる 疑問が生じた事で、新たな涙が生まれない 「……魔法を教えてやる。簡単な魔法を」 それは、誤魔化しの魔法 いや、本当は魔法ですらない、言葉遊び 「お前が嫌いなのは「セシリア」。お前が好きなのは「姉さん」」 だが こいつにとっては、充分に魔法になるだろう 幼い心を保っているこいつにとっては、充分に効果があるはずだ 「区別しちまえ。「姉さん」を嫌いたくないなら「セシリア」を嫌えばいいんだよ」 「区別?……うー……」 「名前には、意味がある。わかっているだろう?」 こちらの言葉に、カラミティは頷いてくる 名前には、意味がある 魔法を扱う者にとっては、特にそうだ カラミティ自身が、カラミティ・ルーンと言う偽りの名前によって真の名前を隠しているように、名前に意味を見出す そんな、カラミティだからこそ 名前で、呼び方によって、同一の相手であっても区別する それは、充分に可能だ 「お前が嫌いなのは、お前の話を聞かずに、お前の主張を信じずに、一方的に嫌って殺そうとしてくる「セシリア」」 「……うー」 「お前が好きなのは、お前を話を聞いてくれて、お前の主張を信じてくれる、お前を好いて護ってくれる「姉さん」」 「うー……「セシリア」は、俺の事が嫌い、俺も、嫌い……「姉さん」は、違う。「姉さん」は俺の味方……」 言葉を、一つ一つ、かみしめるように ゆっくりと、カラミティは呟いていく 所詮、誤魔化し 呼び方で区別しようとも、それが同一の存在である事に変わりはない あの若い魔女は、本気でカラミティを殺そうと、消そうとしていた だから、カラミティの言う優しい「姉さん」は、もう存在しないと言ってもいいだろう それでも 「……うー!「セシリア」は、嫌い。俺の敵。「姉さん」は、好き。俺の味方!」 「あぁ、そうだ。今日、お前を殺そうとしてきたのは「セシリア」、「姉さん」ではない。だから、お前は「セシリア」だけを嫌えばいい。「姉さん」を嫌う必要はない」 「「セシリア」は嫌い。「セシリア」を嫌えばいい。「姉さん」は嫌いじゃない、嫌わなくて、いい」 そうだ、と 同意してやるとカラミティの表情が、明るくなってくる ……単純で扱いやすい 「これが、呼び方の魔法。呼び方で区別する魔法、簡単だろう?」 「うー、簡単。すぐ、覚えられるし、使える」 「…そうだ。その魔法を、ずっと使っておけ。そうすれば、お前は「姉さん」を嫌わずにすむからな」 ……そうすれば こいつは、あまり泣かずにすむだろう 完全に泣かなくなる訳ではないだろう こいつとて、根っこでは、「セシリア」と「姉さん」は同一人物だと理解しているのだから それでも 表面上だけでも、区別してしまえば あの女の本気の殺気に、こいつは対抗できるようにもなる むざむざと殺されやしない もし こいつが「セシリア」を殺してしまったら ……その時は、その時だ 「おら、もう泣くなよ。うざい」 「うー、泣かない。「姉さん」に嫌われた訳じゃないなら、泣く必要、ない」 嬉しそうに、笑う 心の底からほっとしたような笑顔 ………だから、人間は単純だ こんな簡単な誤魔化しでも、どうとでもなるのだから 「泣き止んだなら、とっととアモン卿やデモゴルゴーンの婆のところにでも行ってこい。お前の事うざい程心配してたぞ。こっちに被害飛んでくる前に何とかしてこい」 「うー、わかった………クロ兄は、一緒に来ないのか」 「あいつらと顔合わせても面倒くせぇだけだ。誰が行くか」 こちらの言葉に、しばし、カラミティはぐずってみせたが やがて、思い直したように、歩き出す 「それじゃあ、クロ兄、また後で」 「……うぜぇ。二度と来るな」 さっさと行け、と 追い出そうとすると カラミティは、嬉しそうに、笑って 「……それと。俺を悪い魔女の「セシリア」から助けてくれて、ありがとう」 と 馬鹿のような感謝の言葉を、述べてきて 「いつか、今度は。俺が、クロ兄を助けるからな。カラミティ・ルーンの名にかけて」 と、そう告げて ようやく、部屋を出た …やっと、部屋に静寂が戻る 「…馬鹿か。好きで助けた訳でもねぇのに、わざわざ感謝する必要なんざあるか…………うざってぇ」 自分の呟きは、暗闇に吸い込まれ 誰にも届かず、自信の心にすら届かずに、虚無へと消えた to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
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魔法使いチーム(主人公) 名前 効果 魔法使いチーム(主人公) かしこさ+HP450UP 条件モンスター(魔法使い(主人公)+この中から2体) No 名前 相性 第3の技 M-001I スライム ●■□ M-002I スライムベス ■ M-003I メタルスライム ■ M-005I タホドラキー ■ ルカナン→メラミ呪文 敵単体 炎呪文 M-007I ストーンマン M-008I ゴールドマン M-009I スライムナイト ● とつげき→イオ呪文 敵全体 爆発呪文 M-011I ホイミスライム M-015I さまようよろい キングダムソード→メラミ呪文 敵単体 炎呪文 M-017I ギガンテス ぶんまわす→バイキルト呪文 味方全体 バイキルト M-019I キラーマシン M-020I おどる宝石 ■ メラ→ベギラマ呪文 敵全体 灼熱呪文 M-021I ベビーサタン ●■ M-022I じんめんじゅ 枝のムチ→ほのおのおどり特技 敵全体 炎 M-023I しにがみきぞく M-025I プチアーノン ■ M-026I マドハンド ■ M-032I くさった死体 ▲ M-035I 海竜 M-036I キメラ M-038I ヘルパイレーツ M-040I ドラキーマ ■ はばたき→たつまき特技 敵全体 風 M-041I ひとくいばこ ギラ→メラミ呪文 敵単体 炎呪文 M-043I プリズニャン ● M-045I きめんどうし M-049I あくましんかん M-050I パンドラボックス M-053I 死霊の騎士 ヒャド→ヒャダルコ呪文 敵全体 氷呪文 M-054I アークデーモン M-056I どろにんぎょう M-061I ダークランサー M-062I シルバーデビル M-001II だいまどう ▲□ ギラ→ベギラマ呪文 敵全体 灼熱呪文 M-003II キースドラゴン M-006II エビルスピリッツ M-007II イエティ スノーボール→ヒャダルコ呪文 敵全体 氷呪文 M-009II 炎の戦士 ▲□ M-010II アンクルホーン M-013II マネマネ ●■ M-014II ラリホービートル ●■ ラリホー→ラリホーマ呪文 敵単体 眠り M-015II ポイズンリザード M-019II ひとつめピエロ ■□ メダパニ→メラミ呪文 敵単体 炎呪文 M-020II ばくだんいわ M-023II ゴースト ●■ M-025II コドラ ■ バーニングテール→ギラ呪文 敵全体 灼熱呪文 M-028II スライムつむり ■ ドリル・ストライク→ヒャド呪文 敵単体 氷呪文 M-029II メイジキメラ M-030II ベレス デスサイズ→デイン呪文 敵単体 雷呪文 M-032II アームライオン ● M-035II てっきゅうまじん ▲ アイアンスロー→大鉄球特技 敵全体 打撃・爆発/物理的行動不能 M-038II カロン ■▲ M-043II きとうし M-045II ドラゴンライダー M-046II ピクシー ●■▲ M-047II シャドーサタン まがまがしい光→ヒャダルコ呪文 敵全体 氷呪文 M-048II ホースデビル M-049II マンドレイク M-051II メタルドラゴン M-052II ソルジャーブル M-058II ビックアイ M-059II ドラゴンゾンビ M-060II エリミネーター ▲ M-062II スモールグール ■ なめまわす→メラミ呪文 敵単体 炎呪文 M-065II リザードマン ▲ らいめい斬り→デイン呪文 敵単体 雷呪文 M-067II イーブルフライ ■ M-069II ダッシュラン M-070II ギズモ ■ M-073II れんごくちょう M-075II ねこまどう M-076II キャタピラー ● ボミオス→メラミ呪文 敵単体 炎呪文 M-080II なげきのぼうれい M-083II きりさきピエロ M-085II ナイトリッチ M-088II モーモン M-089II アルゴリザード メラミ→アルゴンハート M-096II ヘルビースト ジゴフラッシュ→ぶきみな眼光 M-095II デンタザウルス 他相性について 魔法使いが属する以下の相性モンスターを揃えると更に能力アップする。 ●印 草原 / 森チーム HP240UP ■印 ミニモンスターチーム HP5%UP ▲印 人型モンスターチーム ちからUP □印 モリーレンタルチーム(Ⅱ) 勇気UP 仲間は、だいまどう、スライム、スライムナイト、ナイトリッチがお勧め。 他には、ピクシーやゴーストがいいだろう。 よろいは、まどうしのローブや、ドラゴンローブがお勧め。 回避率を活かすなら、みかわしのふく、しのびのふくがよい。 盾は、せいどうのたてがお勧めだが、好みや相手に応じて変えよう。
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『降星々の消影者(シューティング・スターアラナイズ)』 葉仙星影 達人(アデプタス)――第5階梯書警 機関:戸口所属 大法典神野支部副責任者 年齢不明 表の顔 とある大企業の社長 大法典神野支部に所属する戸口の魔法使い。 葉仙氷華の夫であり婿養子である。 大法典神野支部の副責任者を務めており、仕事は主に魔法災厄対処後の魔法隠蔽処理の指揮や神野市内に存在する異端者との交渉、次代の魔法使いの芽の勧誘を仕事にしており、それに加え書警としての魔法災厄の対処のため神野支部内にいることは少ない。 仕事が多忙であるが、家族の時間は出来る限り確保しようとしている。 彼もまた元訪問者で、まだ若かった頃に書警のエースとして活躍していた時に氷華と出会い、一目惚れ。そのまま勢いでアタックし続けながら外堀を埋めていき、見事無事に恋人同士になり、数年後結婚をした。 魔法使い同士の夫婦からは珍しく娘3人と息子1人がいて、全員早々に第3階級まで上り詰め、それぞれ活躍している。
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厄介な事は、どうしてこうも重なるのか セシリアは、今の状況に軽く頭痛を覚えていた 「「教会」の……よりによって、エイブラハム・ヴィシャスと、その部下が、学校町に入り込んできただと……しかも、ここまで堂々と……っ!」 調査課経由で、セシリアの下に回ってきた情報 エイブラハム・ヴィシャスとその部下の「13使徒」が、正体を隠しもせずに、学校町にひりこんできたという事実 ……今までも、エイブラハムの子飼いと思われる下っ端の下っ端な「教会」所属の人間や契約者の存在は、ちらほらと確認されてきてはいたが 「13使徒」クラスとその上司がここまで堂々とやってくるなど、今まで例がない …目的は、何だ? 正体を、隠そうともしていない 何かに、誰かに、自分達の存在をアピールしている? そうだとしたら、何の為に? そもそも、これは「教会」上層部がすべて関わっているのか? それとも、エイブラハムの独断か? どちらにせよ、非常に厄介な事態だ エイブラハムは、かつて積極的に魔女狩りをおこなっていた、強硬派の筆頭だ とうに都市伝説に飲まれた男であり、数百年は生きている しかも、飲まれた直後に「奇跡」を行ったとして、「教会」の救世主候補の一人でもあるのだ そんな男が、学校町に… 「…「教会」からの返答はまだ、か……あぁ、エーテルの奴が、また忙しくなりかねんな。大門 大樹も、確実に胃痛を抱えているだろうな……」 小さく、ため息をつく 本当、どうして……学校町という場所は、ここまで厄介事ばかりを引き寄せるのか 「呪われているのではあるまいな」 独り言のように呟きながら、セシリアは現時点で分かっている情報から、連中の戦力と目的を割り出そうとする そうしていると………ひらり 彼女の視界に、漆黒の蝶が入り込んできて がたん!と、セシリアは思わず立ち上がる 「……っ貴様、どこから入り込んだ!?」 防音が整ったその室内で、叫ぶセシリア 初めは一頭だけだったはずの蝶は、いつの間にやら群れを成していて……それが、一か所に集まっていき、散った時には、そこに人影がある …カラミティ・ルーン セシリアにとって特別な因縁のある、その魔法使いの、いつもの出現パターンだ ……そこまでは、百歩譲ってよいとしよう だが、厳重なセキュリティで囲まれているはずの、「組織」上層部の執務室まで、どうやって入り込んできた!? 「どこから、って、俺様は大魔法使いのカラミティ・ルーン様だぜ?そこがどれだけ厳重に守られていようが、関係ねぇ。俺様の素敵な魔法をもってすれば、鍵も何もかも自由自在なんだからな」 その高い身長よりまだ長い杖を手に、カラミティは笑う ぶかぶかのローブの下では、じゃらじゃらと魔法的価値の高い装飾具が音を立てている……どこで手に入れたやら、また、数を増やしたな カラミティが所有している魔法的都市伝説の数を考え、セシリアは頭痛が強まった錯覚を覚えた いや、実際、強まったのかもしれないが 「……何をしに来た」 警戒を強めながら、セシリアはカラミティをはっきりと睨み付けた 何をしに来たのか、知らないが…どうせ、ロクな事ではあるまい セシリアは、そう考えた だから、こそ 「何って、手伝い」 と カラミティが口にした、その言葉に………あっけにとられる事になる 「………は?」 「だから、手伝い。手間取ってんだろ?エイブラハムと「13使徒」に関する情報について」 手伝ってやる、と カラミティは、当たり前のように言ってきた 手伝う、だと? カラミティが? …なぜ、何の為に? 「何を企んでいる」 「何だよ。俺様、何も企んでないぞ」 心外だ、とでもいうようにカラミティは言ってくるのだが セシリアは、それを信じることができない 相手は、カラミティ・ルーンという魔法使いなのだ その言葉を、鵜呑みにするわけにはいかない 「この混乱に乗じて、何かしでかすつもりか?……それとも、報酬でも要求するか?」 「だから、何も企んでないって。セシリアが大変そうだから、手伝ってやるだけだぞ」 再び、否定の返事 …だが、セシリアは警戒を解かない いつでも、カラミティの動きに対応できるように いつ、カラミティが魔法を使ってきても対応できるように ……いつでも、カラミティを攻撃できるように 最大限の警戒心をあらわにする 「…この状況でお前が動くなら、こちらにも考えがあるぞ?」 「っ何も企んでないって、言ってるだろ!」 警戒を解こうともしないセシリアの態度に、カラミティが声を荒げだした 怒っている…というよりは、癇癪を起こした子供ような、そんな様子 だが、セシリアは、それに気づけない 「信じられるとでも、思っているのか?」 「信じないのかよ!?」 「今まで、お前はこちらに信じてもらえるような事をしてきたか!?」 自然と、セシリアも声を荒げてしまう そんなセシリアの様子に、カラミティはうー、とますます癇癪を強めたような様子を見せるのだが……セシリアは、まだ、気づけない 「お前はいつもいつも!余計な事か厄介な事ばかり起こして!!昨年より、学校町に執着しているようだが……たとえお前が何か企もうとも、あの街はそう簡単に思うようにはならんぞ!!」 感情的に叫ぶセシリア ……その直後に、ようやく気づく カラミティの、癇癪を起こしたような表情に ……カラミティの、傷ついたような、表情に その、表情に かつて、無数の屍の上に立って泣いていた、弟の表情を、思い出して 「…ぁ………すまん、言い過ぎ………」 「っ何だよ!!俺は、ただ、セシリアを手伝ってやりたかっただけなのに!お前達の言うような悪い事なんて、するつもりなかったのに!!」 ひら、と 漆黒の蝶がカラミティの周囲に出現しだす うーうーと、癇癪を起しているカラミティの姿が、蝶の群れで隠されていく 「ッカラミティ、待て……」 「どうして、セシリアはいつも俺の事を信じないんだよ!あの時から、ずっとずっと……っ!!」 『---っ何でだよ、俺は、皆を護ったのに、助けたのに…!…………どうして、そんな事、言うんだよっ!?』 屍の上で泣いていた弟 向けられる悪意の理由がわからず混乱していた泣き顔が………今のカラミティの様子に、重なって ずきり、セシリアは、罪悪感を覚える セシリアが言葉をつづけられずにいる間にも、カラミティの言葉は続く 「……セシリアなんか、嫌いだ。大っ嫌いだ!!!」 『………みんな、嫌いだ。父さんも母さんも、セシリアも…………みんな、大っ嫌いだ!!!』 泣きながら、消えてしまった弟 あの時と、同じように 「……ぁ」 正気に戻って、セシリアが手を伸ばした時には……もう、遅い カラミティの姿は、完全に漆黒の蝶の群れに包まれて……群れが散った時、もう、そこにはカラミティの姿はなかった あの時と同じ 弟が、自分の前から消えてしまった時と………まったく、同じように、消えてしまった 「………私、は」 …なぜ 信じてやれなかったのだろうか カラミティは、彼が言ったように、本当に何も企んでいなかったのかもしれない 本当に、純粋に……ただ、こちらを手伝おうとして着ていただけなのかもしれない なぜ、信じてやれなかったのか もし もし、あの言葉を信じてやっていたならば…… 自分達は……和解、できたのだろうか? 考えても、答えは出ない ただ、自分一人だけが、そこに残されて …ひら、と 最後まで残っていた漆黒の蝶も、結局、幻のように、消え失せてしまって 結局、言葉をかけることすら、できなかった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い その後柊達は五体満足でタルブ村へと到着する事が出来た。 ……ただ、少なくとも肉体的には問題はなかったが同行した二人は精神的に傷を負ってしまった。 その理由は言うまでもなく、空中で制御を失ったガンナーズブルームの墜落未遂である。 眼前に迫ってくる緑の大地を垣間見てまずシエスタが失神した。 一番前でその光景を目の当たりにしたルイズは失神することさえできずに放心状態で固まっていた。 柊は力の抜けたシエスタの腕を捕まえながらルイズを抱きすくめ、墜落直前でどうにかこうにか制御を取り戻し着陸させたのだ。 その後気を失っているシエスタを前に抱き、代わりにルイズが後ろに乗って改めてタルブ村へと再出発したが、ルイズは村に着くまで一言も言葉を発しなかった。 ただ体に回された腕は今まで以上に柊に強く組み付き、背中に感じるルイズの心臓の動悸は壊れた目覚まし時計のようにがなりっぱなしだった。 そして村に辿り着いた後、ルイズは気を取り戻したシエスタと口を揃えて言った。 「もう箒には乗らない」 しかし残念ながら、帰りにもこの箒に乗らなければならないのであった。 ともかく、タルブ村に到着した柊達はシエスタに案内され護神様とやらの社へと足を運んだ。 そこはシエスタの話にあったとおり、タルブ村のはずれにある小高い丘の上にあった。 村と広い草原が一望できるいわゆる絶景という奴で、通り抜ける爽やかな風にルイズはピンクブロンドの髪を揺らしながら嬉しそうに辺りを見回す。 一方の柊は、その社に目が釘付けだった。 まるでそれしか眼に入らないかのように立ち尽くし、大いに眉を潜めてそれを凝視している。 回りの景色に眼もくれない彼にルイズは少し口を尖らせたが、気を取り直してその社へと歩を進め、そこに突き立っている真っ赤な柱を叩いた。 「……これ、門なの? 塀も何もないし……変なの」 言って彼女はその赤い柱を見回す。 その柱は一本だけではなく数メイルはなれた場所にもう一本立っていた。 両者の天頂部分に乗っけるようにして横向きの柱が二本立っており、見れば確かに彼女の言うとおり門のようにも見えた。 柊は盛大に息を吐き出した後、あきれ返った声でルイズに言った。 「……こいつは鳥居って言ってな」 「トリイ?」 「そう。鳥が居るって書いて鳥居……まあ漢字なんてわからねえだろうけど」 ルイズが首を傾げて見やる柊の後ろでシエスタが得心したように手を打った。 「ああ、そういえばいつも鳥が羽を休めていたりしてます。なるほど、それで鳥居なんですね」 「まあそれだけじゃねえけど……ってか、」 神が通り本殿へと至る道。神を『取り入る』が故に『とりい』とされる説もあるが、そんな薀蓄は柊にはどうでもいい。 柊は肩を震わせてうな垂れ――そして丘に響き渡るような怒声で渾身の叫びを放った。 「なんで神社なんだよっっ!!!?」 そう、目の前にある護神の社は紛う事なき日本の伝統建築、神社なのである。 「洋風ファンタジーな世界なんだから普通ストーンヘンジとか神殿とかだろ! なんで神社仏閣とかおっ建ててんだよ、おかしいだろ!? なにが『樽武神社』だ、ふざけやがって!!」 「ヒイラギさん落ち着いて!?」 顎束に取り付けられた額面(ご丁寧に漢字だ)を睨みつけながら柊は唸る。 こんな世界観無視のナメきった真似をするのは魔王以外に考えられない。 憤る柊はシエスタに宥められながら本殿へと足を運んだ。 流石に彼のよく見知っている幼馴染、赤羽くれはの家――赤羽神社のそれよりかなり規模は小さいが、それなりに神社の体裁を取り繕っている。 賽銭箱やら鈴緒やらまであってそれがまた柊の神経を逆撫でするのだが、そんな事情を知る由もないルイズは興味深そうにその社を見て回っている。 「変なの。これ、玩具?」 「あ、あっ、ミス・ヴァリエール、そんな乱暴に扱わないで下さい……!」 どこか楽しそうに鈴緒をがらんがらん鳴らしまくるルイズにシエスタは青くなって叫ぶ。 それを見て柊は思わず渋面を作ってしまった。 子供の頃に彼女と同じような事をやって、くれはの母親である赤羽 桐華の説教とその妹である藤乃の鉄拳制裁を食らったのを思い出したのだ。 懐かしい記憶がよぎって柊はどうにか平静を取り戻し、気を取り直すように大きく息を吐く。 「で、これがその護神様っていうのが住んでる社?」 「あ、はい。そうです」 鈴緒で遊ぶのに飽きたのか、次いでルイズは本殿の方に眼を向けた。 格子戸の向こうに見える薄暗い部屋を覗き込んだ後、彼女は無造作に戸を開け放ってその中に入っていった(しかも土足)。 渋面の柊とシエスタを他所にルイズはずかずかと本殿に上がりこみ、中央でくるりと回って内部を見渡した。 大きさは大体十メイル四方と言ったところで、燭台がいくつか並ぶだけで他には何もない、がらんとした場所だった。 正面の天井近くに小さな棚が設けてあるだけで、他に眼を引くものは何もない。 ルイズはつまらなそうに鼻を鳴らすと、外で立ち尽くしている二人を振り返った。 「誰もいないじゃない。どこにその護神様がいるのよ」 しかし当の柊とシエスタは神妙な顔でルイズを見やるだけだ。 いや、よくよく見ると二人は自分を見ている様子ではなかった。 改めて回りを見渡したが、特に気を引くようなものはなにもない。 そんな時、シエスタが柊に向かっておずおずと声をかけた。 「……ヒイラギさんなら、わかりますよね?」 「……ああ」 外から本殿をじっと見つめながら、柊は頷いた。 「『月匣』だな」 魔王――侵魔達がファー・ジ・アースに侵入するときに構築する結界。それが月匣である。 月匣の内部は一切の常識が排除され創造者の都合のいい法則に基づく世界が構築される。 外から見た月匣の大きさと内部の大きさが違うのは当然として、時間の流れさえも都合のいいように改変されてしまう。 ちなみにこの月匣を簡易に身に纏ったものが、柊達ウィザードの纏っている月衣である。 シエスタはこの月匣を感知して護神とやらのいる『場所』に入り込んでしまったのだろう。 「ルイズ、ちょっと外に出ろ」 「? 一体何よ……」 不満げに外に出てきたルイズを確認すると、柊は本殿の格子戸を締める。 そして一度深呼吸した後、再び格子戸に手を伸ばした。 訝しげに見つめるルイズの視線を受けながら、柊はゆっくりと格子戸を開いていく。 「……え!?」 ルイズは眼を丸めた。 格子戸が『その向こうの風景ごと』押し開かれたのだ。 現れた新しい景色は先程の部屋とは全くの別物。 切り出した石で敷き詰められた長い長い通路だった。 ルイズは慌てて走り出して本殿の側面に回ったが、当然ながら本殿の奥行きは先の見立てどおり十メイルほどしかない。 柊達の下に戻り、改めてその通路を見やる。 別に下り坂になっているという訳ではないのに、その通路は果てなく真っ直ぐに伸びていた。 「な、なにこれ! どうなってるの!?」 ルイズは驚きも露に柊を見やった。 しかし柊は彼女の目線に答える事なく、周囲を見渡して眉を潜めた。 (……紅い月が昇らねえ?) ファー・ジ・アースにおいて月匣が展開される場合、その状況に関わらず天には血のように紅い月が現われる。 これは単に月が紅く染まる訳ではなく、本当に月が出現するのだ。 たとえ昼間であってもお構いなしに空に紅い月が浮かび上がるし、場所にしてもそれが海の底だろうが宇宙空間であろうが例外はない。 ここがファー・ジ・アースではない異世界だからだろうか。 シエスタに眼を向けると、彼女もまた柊ほどではないではないにせよ小さく首を傾げていた。 「どうかしたか?」 声をかけると、 「……いえ、気のせいだと思います。私が最後にあの方の下に訪れたのは結構前ですから……」 「……?」 「ねえちょっと、どうなってるのよ!」 無視された格好になるルイズが棘の入った声で叫んだ。 柊は意識を切り替えて彼女に振り向くと、 「まあとにかく、これが『護神様』の住んでる所に続いてる道って事だよ」 納得いっていないルイズを促して現われた月匣へと足を踏み入れた。 ※ ※ ※ ひんやりとした空気が流れる通路を三人は歩いていく。 灯のようなものはなかったがどうも通路全体が仄かな光源になっているらしく、視覚面では特に不都合はない。 代わり映えしない通路に歩を進めながら、先頭を歩く柊は二人に顔を向けて言う。 「……気を付けろよ。この手の月匣には何があるかわからねえから なあっ!?(↑)」 柊の体が床を突き抜けて消えていった。 「ヒイラギ!?」「ヒイラギさん!?」 ルイズとシエスタの二人が慌てて柊の消えた床に走り寄った。 床から響く柊の悲鳴がだんだんと遠ざかり、そして消えていった。 「な、何これ……幻影? 床は見えてるのに、床がない」 「お、落とし穴でしょうか」 床に手を突っ込みながらルイズ達が驚愕の声を上げていると、後方から何かが派手な音を立てて落ちてきた。 柊だった。 「ヒイラギ、大丈夫?」 「く……くっそぉ……やってくれるじゃねえか……!」 そして三人は再び通路を歩き始めた。 先程の罠がきいたのか、ルイズとシエスタは少しだけ怯えた表情で床を凝視しながら柊の後に続いている。 しかし柊 蓮司は百戦錬磨のウィザードである。 彼はこの手のフォートレス――迷宮状の月匣――の仕掛けを熟知していた。 例えば今のように、最初に落とし穴を仕掛けておいて注意を足元にひきつけておくのならば次に来るのは―― 「天井!!」 柊は身構えて天井を見上げた。 側面の壁が迫り出して柊を跳ね飛ばした。 「どふっ!?」 「ヒイラギ!?」「ヒイラギさん!?」 柊の体が反対側の壁に叩きつけられ、同時に壁面がぐるんと回って柊を飲み込んだ。 壁から響く柊の悲鳴がだんだんと遠ざかり、そして消えていった。 三人は改めて通路を歩き始めた。 先程までの罠が効いているらしく、ルイズとシエスタは怯えた表情で辺りを必死に見回しながら柊の後に続いている。 しかし柊 蓮司は熟練のウィザードである。 彼は素早く床と天井、側面を調べて罠がない事を確認する。 安全を確かめて息を吐き、自慢気に二人を振り返った。 前方から爆走してきたデスローラーに柊は背中から轢き倒された。 「ごはっ!!」 慌てて壁に張り付いた二人の間をデスローラーが駆け抜け、柊はそれに巻き込まれてぐるんぐるんと回転しながら今まで歩いてきた通路を逆走し最初の落とし穴の中に消えていった。 「ヒイラギさん……」「早く帰ってきなさいよー」 気を取り直して三人は更に通路を更に進む。 眼に見えるほどの緊張感を漂わせて周囲を警戒しつつ進む柊の後ろを、適当に雑談しながらルイズとシエスタが歩く。 やがて長い通路の突き当たりが見えた。 そこは右に向かってL字状になっており、柊達の真正面、突き当りの壁には何やら張り紙がしてあった。 その張り紙にはこう記されている。 『隠し扉。 左の壁に注意せよ』 「ち、力強く書いてあるわね……」 張り紙の記述に眉を潜めながらルイズは呟いた。 この時柊に電流走る……! 「読めた……っ!」 彼の魂に刻まれた記憶とでも言うべき何かがこのトラップの構造を完璧に見抜いたのである。 「張り紙につられて左を見たら、右から火矢とかが飛んでくるんだろ……!?」 柊は会心の笑みを浮かべつつ突き当たりに踊りだし、右に伸びる通路の方を向いて身構えた。 左の壁がぱかっと開いて巨大な鉄球が吐き出され、柊の後頭部を直撃しつつ彼の体を押し潰した。 「左に注意って書いてるのになんで右を見るの? 馬鹿なの?」「ヒ、ヒイラギさん……」 「どうしろってんだよ、ちくしょう!!」 鉄球の下で喚く柊を半眼で眺めつつルイズは溜息をついた。 そして彼女は隣にいるシエスタに眼を向けて、尋ねる。 「あんた、よくこんな所通って行けたわね……」 すると彼女は困ったように首を傾げて今まで通った道を見やりながら返した。 「いえ、私の時はこんな罠とかありませんでしたし、通路もこんなに長くなかったです……」 「え?」 ルイズは眉を潜めた。 と、不意に何処からか流麗な女の声が通路に響き渡った。 『この地に住む稀人ならばともかく、ウィザードが侵入してきたのだ。警戒するのは当然だと思うがね』 「!?」 驚いてルイズは周囲を見渡す。 しかし当然ながらこの場に居るのは自分とシエスタと鉄球に潰された柊だけ。 響いた謎の声に反応したのは、シエスタだった。 「護神様!」 彼女は僅かに顔色を青ざめさせて、虚空に向かって声を上げる。 「申し訳ありません。私、あれほど言われていたのに言いつけを破ってしまって――」 『いや、構わないよ。なまじ余計な事を言って惑わせた私の責任と言うべきだろう。それに……』 そこで護神は一度言葉を切った。小さく含み笑うような吐息が漏れ、ソレは再び言葉を紡ぐ。 『柊 蓮司ならば特に問題もない』 「あん……?」 鉄球を押しのけて立ち上がった柊が眉を寄せた。 聞いた事のない女の声だった。少なくとも彼が今まで出会った魔王ではない。 デルフリンガーを出しておくか少し迷ったが、シエスタが眼に入って柊はその動きを中断した。 柊の挙動に気付いていたのか、護神は再び小さく笑った。 『結構。ならばキミ達を我が領域へと招待しよう』 涼やかな声が響くと同時、張り紙のあった壁が光を放ち大きな扉へと変貌した。 「な、な……」 「……護神様とご対面って訳か。鬼が出るか蛇が出るか……」 驚きに眼を見開くルイズをよそに、柊は不敵に笑うと扉に手をかけた。 扉が大爆発した。 柊は避ける間も悲鳴を上げる間もなく爆炎に呑み込まれた。 『……フォートレスではトラップ探知をしろというのに』 ※ ※ ※ 「オラァッ!!」 裂帛の気合で柊は扉を蹴破った。 荒く肩で息をしながら怒りに眼をぎらつかせてそこに踏み込んだ柊の身体に、シエスタは縋りつきながら叫ぶ。 「ヒイラギさんやめてください! 落ち着いてっ!!」 「うるせえ、護神だかなんだか知らねえがぶった切ってやるよ!!」 「ヒイラギ、キャラが変わってる! 落ち着きなさい!!」 月衣からデルフリンガーを取り出そうとする腕を捕まえながらルイズも叫ぶ。 そんな風にもみ合いながら柊が敵を発見すべく周囲をすると、動きをぴたりと止めた。 ルイズも彼に倣って辺りを見渡し、呆気に取られる。 そこは学院にあるルイズの部屋のような洋式の広間だった。 ただ彼女の部屋よりも遥かに大きく、そして置かれている調度品も一目でそうとわかるほどに高級なものだ。 壁の一面はガラス張りになっており、その向こうには先程まで彼らがいたタルブの草原を背景にバルコニーと大きなテーブルが添えつけられている。 あの丘には古ぼけた社以外には何もなかったはずなのに、何故かこうしてその草原を臨める豪奢な部屋がある。 全く意味がわからなかった。 そして部屋の奥、まるで王族のそれのような天蓋付きのベッドには一人の女性が腰掛けていた。 彼女は鷹揚に立ち上がると清水のような流麗な動きで柊達の下へと歩み寄り、艶然とした微笑を柊に向けた。 「初めまして、と言っておこう。よもやこのような場所でキミに出逢う事になるとはね……つくづく異世界に縁のある男だ、柊 蓮司」 それが自分に向けられたものではないにも関わらず、ルイズは彼女から直接紡がれた声音に心臓が跳ねるのを感じた。 陽光に照らされたように輝く長い長い翡翠の髪。 眼もくらむような白磁の肌。茶と紫のオッドアイ。 薄絹一枚という扇情的な衣装でありながら、纏う空気はそんな下世話な感情を催す事さえ憚られるような清廉さを漂わせている。 そう、端的に言ってしまうならばシエスタ達がそう呼び讃え祀っているような、まさしく神がかった美貌の女性だった。 「……フール=ムール……だったか?」 そんな彼女の視線を直に受けてなお動じず、柊は探るようにして声を出した。 "風雷神"フール=ムール。 『公爵にして伯爵』という裏界でも類を見ない二つの号を併せ持つ魔王。 二つ名の通り天候を自在に操り、また男女の仲と死者をも司るという正真正銘の古代神である。 ファー・ジ・アースを攻め滅ぼさんとする侵魔達の中にあって極めて珍しい中立派でもあり、かつては人々に篤く信仰されていたともいわれている。 現在ではその人間達に倦んでしまい己の領域から出る事はほとんどなく、喚ばれぬ限りは人間達にはめったに干渉することはないらしい。 「いかにも。が――」 それを受けて護神――フール=ムールは小さく頷いた後、ほんの僅かに顔に陰りを見せて柊から視線を外した。 柊は眉を寄せて彼女の視線を追う。 その先には……両の手を胸の前で組み、感動した面持ちでフール=ムールを見つめるシエスタの姿があった。 柊の視線に気付いた彼女は喜びも露に柊に一歩踏みより、上ずった声を漏らす。 「ヒ、ヒイラギさん。護神様のお名前はフール=ムール様と仰るのですか……!?」 「あ、あぁ。もしかして知らなかったのか?」 「はい。護神様は名乗るような名は持っていないと……。か、感激です。護神様の御名を知る事ができるなんて……!」 感動と畏敬に身震いしながら呟くシエスタを見やって、フール=ムールは物憂げな息を一つ吐き出した。 「この世界における始祖ブリミルしかり、具体的な『名』を持つモノへの信仰は偶像崇拝に繋がるからね。百年かけて『現象としての神』を定着させていたのだが」 「う……すまねえ」 「構わないよ。それよりシエスタ、私の名を呼ぶのはいいが、くれぐれも他言はせぬよう。それと、久しぶりに紅茶を淹れてもらえるかな」 「は、はい! かしこまりました!!」 シエスタは跳ねるように身を揺らすと深々と頭を垂れ、そして入ってきた扉から出て行った。 あの向こうには通路しかないはずだが、おそらく今は厨房だかどこだかに繋がっているのだろう。 月匣の中でならその程度の構造変化など珍しくもない。 シエスタが部屋から辞したのを見届けると、フール=ムールは改めて柊と――そしてルイズを見やると僅かに眼を細めて笑った。 その微笑に不快さは感じなかったもののその意図がわからず首を傾げるルイズをよそに、フール=ムールは踵を返しバルコニーへと向かう。 「立ち話もなんだし、こちらでゆっくりと話そうか。フォートレスを通って疲れているだろうしね」 「仕掛けたお前が言うなよ……」 毒気を抜かれた柊が盛大に溜息をついて彼女の後を追って歩き始めた。 ルイズもそれに追随しながら、柊の袖を軽く引いて囁きかける。 「ねえヒイラギ」 「あ? どうした?」 「……あのヒト、本当にカミサマなの?」 「正真正銘の神様だよ。もっとも俺達にとっちゃあんまありがたくねえ神様だけどな」 柊はしかめっ面をしながらそう言って、頭をかく。 しかしルイズとしてはそれを鵜呑みにする事ができなかった。 確かに、人間離れした美貌の持ち主だという事は疑いようもない事実だ。 だが、だからといって『神様』だのというおとぎ話じみた事を認めるのは難しかった。 異世界とかなんとかの話も十分におとぎ話めいているが、『本物の神様』まで出てくると流石に話がぶっ飛びすぎている。 ハルケギニアにも始祖ブリミルや彼に虚無を授けたという神の存在が謳われてはいる。 が、実際に王家の祖となったブリミルはまだしも、『神が実在するか?』と問われるとルイズとしても返答に詰まらざるを得ない。 それが異界の神であるというなら、尚更だ。 部屋からバルコニーへ場所を移し、柊達はフール=ムールとテーブルを挟んで相対する形で椅子に腰掛ける。 そして彼女は口の端を歪めると、こう切り出した。 「まずは私の身の証から立てた方がよいのかな?」 どうやら二人の会話を聞いていたらしい。 気まずそうに眼を見合わせる柊達を見つめて、フール=ムールは愉しそうに笑みを零した。 「それは構わないが、どうすれば信用してくれるかね? ラ・ローシェル辺りを跡形もなく吹き飛ばして『キミが見たいと言ったから町が滅んでしまったよ』とでも言えばいいのかな?」 「……、」 まるでからかうような言い振りにルイズの頬が引きつった。 無論それは恐れをなしたのではなく、頭にきたからだ。 ちょっと冷静に見れば安い挑発でしかないが、残念ながらルイズはそれを軽く受け流せるような少女ではなかった。 彼女はふんと鼻を鳴らすと、負けじと挑発的な笑みを浮かべて言う。 「流石にカミサマは言う事が大きいわね。……上等よ、やれるもんなら」 「待て待て待て!!」 慌てて柊は割って入った。 言葉を遮られて不機嫌に睨みつけてくるルイズに柊は叫ぶ。 「コイツ等は本当に"できる"んだから迂闊な事言うんじゃねえよ!?」 「……ふむ、そうだね。私としても護神という立場上あまり剣呑な事はしたくないのが正直なところだ」 一つ頷いて口を挟んだフール=ムールにルイズは口を尖らせ、薄桃の髪を苛立たしげにかきあげて彼女に向かって口を開いた。 「……何よ。だったら何でもいいから神様らしい凄い事やってみせなさいよ」 「……」 すると彼女は細い指を顎に添え、興味深そうな目線でルイズを見やった。 まじまじと観察するように見られたルイズは眉根を寄せ、口を開こうとした。 が、それを遮るようにフール=ムールは漏らす。 「なるほどね。外見もそうだが、中身もよく似ている……どうやらカリンの血を一番濃く継いでいるのはキミのようだ」 「カリ……え?」 その言葉にルイズは思わず眼を丸めた。 そして今度はルイズがフール=ムールを観察すようにじっくり見やると、おずおずと尋ねる。 「お、お母様を知ってるの?」 「カリーヌ・デジレは古い友人だよ。彼女がキミぐらいの頃、『色々と』相談をうけたものさ。さっきのキミみたいに不機嫌な表情で、しかしプラムのように頬を染めて語るあの子はとても魅力的だった」 「な、なにそれ……」 少なくとも彼女の知る母の姿からは想像もできない描写を語られルイズは小さく呻いた。 「ついでに言えば、私は小さい頃のキミに逢った事もあるのだよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。もっともキミは覚えていないだろうがね」 重ねるように名乗っていないフルネームまで言われてしまって、ルイズはもはや絶句するしかなかった。 そんな風に固まっている彼女を見やってフール=ムールは懐かしそうに眼を細めると、次いで蟲惑的な笑みを浮かべて大きく頷いた。 「……よかろう。ならばキミの母君の時と同じ手法をとる事にしようか」 「え?」 「は?」 言葉の意味を理解できなかった柊とルイズをよそに、フール=ムールはゆっくりと腕を持ち上げた。 つられて動く二人の目線の先、掲げられたフール=ムールの手が動き、指を弾いた。 バルコニーに鈴のような音が鳴り響く。 と同時に。 「きゃぁっ!?」 小さな悲鳴と共に、テーブルの上に白いナニかが落ちてきた。 唐突に出現したソレに柊とルイズはぽかんとしたまま固まった。 ややあってソレはもぞりと動き、身を起こす。 それは純白のドレスを身に纏い、紫紺のマントを羽織った見目麗しい少女だった。 彼女は片の手を栗色の髪に添えて小さく頭を振る。 「……誰だ?」 身なりからしてルイズに負けず劣らずのお嬢様なのだろう。 ふとルイズに視線を向けると、彼女は大きく口と眼を開き、彫像のように固まったままテーブルの上の少女を凝視していた。 恐らく何が起こったかわかっていないのだろう、テーブルの上の彼女は透き通るような青い瞳でぼんやりと周囲を見回し――ルイズと眼をあわせた。 「……あら? 貴女、もしやルイズ・フランソワーズ?」 知ってるのか、と柊が問いかけようとした瞬間、背後で派手な音が響き渡った。 顔を向ければ紅茶の用意をしてきたシエスタがこちらを凝視したまま立ち尽くしていた。 シエスタはティーセットを取り落とした事にも気付かず、ルイズと同じような表情で柊達を――厳密にはテーブルの上に鎮座している少女を愕然と見つめている。 「な、なん、あ、ああ、ア……っ」 シエスタは彼女の事を知っていた。 もっともそれは知り合いなどという畏れ多い関係ではなく、絵画などで一方的に知っているだけだ。 おそらくこの国に居るほとんどの人間がそうだろう。 そう、すなわち彼女は―― 「アンリエッタ、王女殿下……」 シエスタは戦慄と共に呻いたあと、ふっと糸が切れたように卒倒してしまった。 「王女、殿下ぁ……!?」 つまりは王様の娘。 慌ててテーブルの上の王女殿下とやらを改めて見やると、彼女の栗色の髪には小さな冠が載せられており、視線を落とせばテーブルの上に彼女のモノだろう、立派な水晶が嵌められた杖が転がっていた。 流石の柊も戦慄と共に息を呑まざるを得なかった。 ルイズは顔を真っ青にして両の手でバンとテーブルを叩き立ち上がると、頭に疑問符を三つほど浮かべているアンリエッタの向こうで平然と様子を見ているフール=ムールを睨みつけた。 「あ、ぁああぁぁあアンタなんて事してるのよぉおおお!!!」 しかしフール=ムールは意にも介さず、楽しそうに笑いを漏らして首を小さく傾げた。 「何でもいいからやってみせろと言ったのはキミではないか」 「それはっ、でもっ、だからって、こんな、姫様をこんな場所……、っ?」 叫びながらルイズははたと気付いた。 こんな場所。そう、ここはタルブ村なのである。 アンリエッタ王女がいるのは王都トリスタニア――いや、少し前にゲルマニアに訪問していると聞いたのでそちらか――とにかく、どちらだろうとここからはかなり遠くには違いない。 そんな遠くに居るはずのアンリエッタをここに連れてきたというのか。 どうやって? どんなに速い騎獣を使ってもそんな事はできない……それこそ柊の持つ箒を使ったって不可能だ。 というか、そもそもフール=ムールはここから一歩も動いてすらいない。 しかも、アンリエッタはいきなりテーブルの上に現れた。 サモン・サーヴァントの魔法みたいな事をしたのか。だがゲートのようなものは何もなかった。 何がなんだか全くわからない。 ただルイズが確実にわかるのは―― 「あの、ルイズ? 一体何が起こっているのです? 何故貴女がここに? というか……ここはどこ?」 目の前に不安そうな表情で見つめてくるアンリエッタ王女がここにいる、という事だ。 唐突にこの場に現れたという事は、元々アンリエッタの居た場所では唐突に彼女が消えたという事になるのだろうか。 彼女の立場上、人目がつかない場所で一人になれる時間などそうそうない。 恐らく元いた場所には、臣下なり侍従なりがそれなりにいただろう。 トリステイン国王女アンリエッタ・ド・トリステイン、忽然と姿を消す。 大騒ぎで済まされるレベルの話ではない。 その主犯は目の前にいるフール=ムール。 そして予期せずとはいえそれを教唆したのはこのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 ヴァリエール家終了のお知らせである。 「……お わ っ た」 ルイズは糸の切れた人形のように椅子に崩れ落ちた。 そしてそのままずるずると滑り落ちていく。 「しっかりしろ、ルイズ!?」 「ああっ、ルイズ!? せめて説明をしてくださいまし!」 泡を食ってルイズに詰め寄る二人をよそに、それまで沈黙を保ち暖かく見守っていたフール=ムールが声を上げた。 「まあ落ち着きたまえ。それとアンリエッタ、そろそろテーブルから降りた方が良いのではないかね?」 「え……あ、っ」 落ち着きはらったその声でようやく自分の状況を理解したのか、アンリエッタははっとして慌ててテーブルから身体を下ろした。 手早く髪を撫でつけドレスの乱れを正し、恥ずかしそうに頬を染めてフール=ムールに視線を向け――眼を丸めた。 「……フール=ムール様?」 「久しぶりだね、アンリエッタ。随分と美しくなった」 アンリエッタは照れ臭そうにはにかむと、ドレスの裾をつまんで礼儀正しく頭を垂れる。 「お久しぶりです。母より話は伺っておりましたが、本当に貴女は変わらないのですね。十余年前に逢ったあの頃の美しい姿のまま……まるで悠久と謳われる水の精霊のようですわ」 「変わらぬモノはそれを見る者の裡で色褪せ朽ちていくだけさ。変わり往くモノはその瞬間瞬間に至高の美しさを放つもの。……あの頃や今のキミのようにね」 「まあ、お上手ですのね。貴女が殿方であればこの胸がときめいておりましたわ」 アンリエッタが花を咲かすような笑みを浮かべると、フール=ムールは眼を細めて口の端を歪めた。 そんな二人に、柊がおずおずと手を上げながら口を挟んだ。 「な、なあ、フール=ムール。あんた、この国の姫さんとも知り合いなのか……?」 「彼女というよりは王家の者と言った方が正しいかな。この世界に落ち着くにあたって少々縁ができたのだよ」 言ってからフール=ムールは鷹揚に立ち上がるとアンリエッタへと歩み寄り、彼女の栗色の髪を優しく梳いた。 「すまなかったね。すぐにもとの場所に戻してあげよう。訳がわからないと思うが、まあ夢を見たとか犬に噛まれたとかその程度に思ってくれ」 「あ……はあ」 当然と言えば当然のようにアンリエッタは首を捻った。 そして彼女ははたと気付くと、僅かに表情を強張らせてフール=ムールを真摯に見つめる。 「あの、フール=ムール様!」 「ん?」 「このような時に巡り逢えたのも神と始祖の思し召し――王家と親交ある貴女に折り入って相談したい事があるのです」 「……ふむ?」 フール=ムールはじっと見つめてくる青色の視線を受け止め、僅かに沈黙する。 そして彼女は小さく息を吐くと、アンリエッタに告げた。 「まあいいだろう。今回の非礼の侘びとして話は聞くよ。だが生憎今は先約があるのでね、それが終わったらこちらから伺おう」 『姫様よりこっちを優先するなんて何考えてるのよ!』 とルイズなら叫びだしそうだったが、彼女は今―― 「あーあー聞こえない聞こえなーい」 テーブルの下にうずくまって耳を塞ぎ、現実逃避の真っ最中だった。 「……わかりました。お待ちしております」 安堵の表情を浮かべてアンリエッタが一礼すると、フール=ムールは小さく頷いてから軽く彼女の頭を撫でた。 同時にアンリエッタの身体を包むように光が灯り、その姿が虚空に掻き消える。 そしてバルコニーに静寂が戻った。 消えたアンリエッタの残滓を名残惜しむかのように立ち尽くすフール=ムールと、呆気にとられたままの柊と、テーブルの下に隠れたルイズ。そして入り口近くで卒倒しているシエスタ。 ちょっとした嵐が通り過ぎた後のような光景だった。 「さて、これで信じてくれたかな?」 何事もなかったかのように振り返り、フール=ムールが口を開いた。 既に彼女――彼女のような類の常識外れの存在を知っている柊は諦めの表情で息を漏らし、テーブルの下にいるルイズを見やる。 「どうだ、ルイズ?」 「……」 無言のままルイズはひょこりと立ち上がった。 そして椅子を立て直してそこに座り、柊を見やって首を捻る。 「何が?」 「いや、だからコイツの事だよ。姫さんを引っ張り出したじゃねえか」 すると彼女は――怪訝な顔で更に首を捻った。 「なにそれこわい。姫様なんてここにいるはずないじゃない」 「なかった事にした!?」 愕然として柊は呻いたが、ルイズは本当に意味がわからないといった表情で柊を見返す。 ……もっとも、青ざめた表情は戻っておらず頬がひくついている以上隠していないも同然なのであるが。 それを見てフール=ムールはふぅむと唸り顎に手を添えた。 そして思案顔でさらりと言う。 「ならば今度はアルビオン王かゲルマニア皇帝でも招聘するかね? ガリア王やロマリア教皇でも構わないが。……あまりお勧めしないがね」 「嘘です信じます!! カミサマ超凄い!!!」 間髪いれずにルイズが叫ぶと、フール=ムールは満足そうに頷いて笑みを浮かべた。 同性でも思わず胸が高鳴るような美しい微笑だったが、今のルイズにはとてつもなく恐ろしいものに見える。 「信じてくれて何よりだ。……ちなみにカリンの時は時のトリステイン国王、フィリップ三世だった。彼は楽しんでいたが、カリンは卒倒してしまったよ」 ははは、と懐かしそうに笑いながら席に戻るフール=ムール。 一方ルイズは、 「うっ、うぅうっ……わたしを常識の世界に帰して……」 肩を震わせながら両の手で顔を覆い、さめざめと泣き始めてしまった。 心の底から同情を禁じえない彼女の姿を横目で見やりつつ、柊はフール=ムールに向かって声をかける。 「お、おい……お前、そういう性格の奴だったのか……?」 知る限りフール=ムールは『静かなる支配者』とも渾名される魔王であり、このような騒ぎを起こすような存在ではないという印象が強いのだ。 すると彼女はそんな柊の知識を不本意だと言わんばかりに嘆息すると、答えた。 「我は不変なるモノを好まず、不確かで移ろいゆくモノをこそ愛でる。静かなのは結構だが、停滞を生む静寂は好むところではない。 だから内輪で騒ぐ分には私は寛容だよ。それを外にまで波及させてしまうのは本意ではないがね」 「外から一国の姫さんを拉致って来て言う台詞か……?」 半ば呆れを含んだ調子で柊が漏らすと、フール=ムールは肩を竦めた。 そして出来の悪い生徒を諭すような口調で彼女は言葉を紡ぐ。 「やれやれ、状況に対して脊髄反射的に突っ込むのはキミの美点であり欠点だな。そんなだからベルやアンゼロットにいいようにからかわれるのだよ」 「ぐっ……!?」 「冷静に考えたまえ、柊 蓮司。月匣の内部においては時間の流れが無意味な事など、知らぬはずもないだろう?」 「……う」 「彼女が『ここ』にいた時間など、『向こう』ではほんの瞬き程度でしかない。加えて言えば、彼女は今ゲルマニアからの帰国途上……専用の馬車の中だ。 自ら晒さぬ限り、他者に姿を見られる事はない。無論消えた瞬間も、戻った瞬間もね」 「……」 「その程度のことはちゃんとわきまえてやっているよ。彼女を選んだのも面識のある相手だったゆえだしね。まあルイズ・フランソワーズが本気で諸王を呼べと言ってきたら流石に困っていたのだがね」 それがないという事までちゃんと読みきっていたのだろう、フール=ムールは台詞ほどには困った様子を見せずにちらりとルイズに眼をやった。 そのルイズはもはや彼女の声も届いていないのか、テーブルに顔を突っ伏したまま肩をふるふると震わせていた。 フール=ムールはルイズを愛おしげに見やって微笑むと、改めて柊を見やった。 「さて、他に突っ込みたい所はあるかね?」 「……いや、いい……」 ぐうの音も出せなかった。 何をどうつっこんでも通用する気がしない。 久方ぶりに覚えた圧倒的な脱力感に肩を落としながら柊は答えた。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
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autolink DC3/W18-054 カード名:天才美少女魔法使い リッカ カテゴリ:キャラ 色:赤 レベル:2 コスト:2 トリガー:1 パワー:8500 ソウル:2 特徴:《魔法》?・《生徒会》? 【自】このカードがアタックした時、クライマックス置場に「孤高のカトレア」があるなら、あなたは相手の控え室のカードを1枚まで選び、山札の上に置き、自分のキャラすべてに、そのターン中、パワーを+1000。 助けに来たわよ、ピーター・パン♪ レアリティ:U illust.CIRCUS 12/05/21 今日のカード ドジっ子探偵 シャロの互換能力を持つリッカ。トップ盛りしつつ、パワーパンプを行う。 ただしシャロは自分をパンプするのに対し、リッカは全体に+1000。あまり変わらないと思いがちだが、CX値を含めて3体展開してパンチすれば シャロは+5000・3000・3000に対し、リッカは+2000・3000・4000とリッカの方がどうしても二手遅れてしまう。 さすがにRRとUとでは、性能に差が出ても仕方ないのだが、こちらの対応CXは扉と差別化が図られている。 どちらが使いやすいかはお好みで。 ・対応クライマックス カード名 トリガー 孤高のカトレア 扉
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シェリー・ルブラン:正義の剣 攻略 合計40枚+09枚 上級03枚 守護天使 ジャンヌ 堕天使マリー 神聖なる魂 下級18枚 オネスト×2 慈悲深き修道女×2 聖騎士ジャンヌ×3 聖騎士の盾持ち×2 聖騎士の槍持ち×3 (D) 花騎士団の駿馬×3 フルール・シンクロン×3 魔法12枚 大嵐 サイクロン 神剣-フェニックスブレード×2 増援 D・D・R×2 ハリケーン 未来融合-フューチャー・フュージョン 融合×2 ライトイレイザー 罠07枚 自由解放×2 (D) チェーン・クローズ フローラル・シールド×2 理想のために リビングデッドの呼び声 エクストラ09枚 ケンタウルミナ×3 聖女ジャンヌ×3 フルール・ド・シュヴァリエ×3
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フラソヌールで自費出版された小説。 著者は不明、出版された冊数は五冊のみ。 【内容】 独り身を貫いている魔法使いの中年男が街中で出会った一人の少女に恋をした。 男は年甲斐も無く告白しようと悩んだが、少女には既に想い人が居るらしい。 だが同時に少女のそれは決して叶う事のない想いであると知る。 しかし男は少女を応援し、見守る事を決意。 最後には少女は幸せを掴みとり想い人と結ばれ、中年男はそれを見届け賢者となった。 後年、舞台演劇にもなってフラソヌールの歌劇場で上演された。 関連 フラソヌール共和国 目次に戻る
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魔法使いハウルと火の悪魔 キャラクター コメント ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作のファンタジー小説。1986年刊。日本語訳書が1997年に出版された。翻訳者は西村醇子。 2004年に本作品を原作として、スタジオジブリのアニメーション映画『ハウルの動く城』が制作され、本作品を映画を通して知ったという人も少なくない。ただし、『ハウルの動く城』では戦争を舞台背景とするなど原作と大きく異なる部分もある。 キャラクター 色違いサーナイト:ソフィー・ハッター ブビィ:カルシファー ノクタス:かかし 分類が「カカシぐさポケモン」 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 登場人物 ハハコモリ:ファニー・ハッター ジャノビー:ジャスティン王子 -- (ユリス) 2021-03-07 13 56 29 登場人物 エイパム:マルクル -- (ロケット・ガチャット) 2021-03-07 01 05 12 草案 グレイシア:ソフィー・ハッター 性格おくびょう エルレイド:ハウル エーフィ:レティ・ハッター ムウマージ:サリマン アルセウス:荒地の魔女 声つながり -- (ユリス) 2012-08-19 20 19 58