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――「知の帰還」ねぇ。よりによってなんでこのタイミングで…… 始まりは、G.Mよりさゆみの元に送られてきたほんの一言の警告メールだった。 ――あぬみんよりちっこい魔道士なんて、まさ初めて見たかも 長きに渡る闇の封印を破り、彼女がM13地区へと姿を現す。 ――同期だから言うわけじゃないけど、そんな悪い娘じゃないのよ。ただ……天性のトラブルメーカーなだけ 彼女の暗躍により、仲間達の絆が無残にも引き裂かれていく。 ――はるなんだっけ? あんたのトークなかなか見込みあるね。オイラの弟子にしてやろっか 彼女の目的はいったい。 ――え、えりぽんなんて…………大っ嫌い!! そして生田は再び仲間の絆を取り戻し、この街に平和を齎すことができるか。 ――もうこれ以上、お前の好き勝手にはさせない!!! 「魔法使いえりぽん外伝 ~生田と知の魔法使い~」 Coming Soon(嘘)
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729 名前: NPCさん 2006/03/21(火) 20 43 35 ID ??? とりあえず、軽めの報告など。 旧版のD&Dの時代のコンベンションで、高レベル卓が立った。 もちろん、当時のD&Dに高レベルキャラ作成レギュレーションなんかはないのでキャラは持ちこみ。 シナリオ中盤、ダンジョンのトラップをどうするかで魔法使いとパラディンが大論争。 キャラならいいが、プレイヤーが切れてた。 ようは、モンスター作成の呪文で作り出したコボルトの群れを先に走らせ、落とし穴 などのトラップを発見しようとした魔法使いに対し作られたものとはいえ命は命だ、 そんなのはみとめられん!とパラディン様が爆発。 まわりがクリエイトで作ったもので、魔法の効果であって命ないからとか説得する ものの全然聞かないパラディンさま。 結局、PL同士の言い合いで切れた魔法使いがテレポートを使用、荷車もってきて それを押していって落ちれば落とし穴、これでいいんだでしょ!というあてつけを やってた。 周りで見てると、パラディン様もうちょっと頭柔らかくしようよというのが感想かな。 プレイ時間を30分近くとられて、2人とも困ったもんだなぁと思いながらみてた。 731 名前: NPCさん 2006/03/21(火) 20 51 32 ID ??? L-Gパラディソ様大暴走の巻 いるよなーこういう奴。 741 名前: NPCさん 2006/03/21(火) 21 10 06 ID ??? 当時は聞いても「さぁ?」と言いつつニヤニヤ笑い、実行後に 「パラディンのアレやソレは無くなったよ」と言うDMが主流だった希ガス、特にコンベでは 745 名前: 729 2006/03/21(火) 22 46 44 ID ??? ん~、捏造じゃなくそのままだよ。 なんで捏造だと思ったのか聞かせてもらえるとありがたい。 ぶつかった2人とも、それぞれ違うサークルでD&Dのキャンペーンやってた。 聖騎士サマ、魔法使いサマともに逸話の多い人物だったよ。 スレ93
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▽タグ一覧 『私はヒーロー、これといった名前はない』 『私はヒーロー、町を守る正義の味方だ』 『ヒーローといっても、私は怪獣と戦ったり悪の秘密結社を壊滅させるわけではない』 『目の前で困っている人を救い、平和な明日を報酬に生きていく存在、それが正義の味方だ!』 正義の味方とは『マスターさんは晩御飯に悩んでいる』に登場する劇中劇である。 概要 10年以上前に放送されたテレビドラマで全35話。 特殊な力はないが正義感を持ったヒーローが街の人々を助ける姿を描いており、あまり売れなかったがごく一部のコアなファンによって支えられている 藤丸立香もその1人であり、幼少期に正義の味方を視聴して主人公に憧れるようになり、常に正しく振舞おうとしている 立香にとって人生の全てであり、カルデアに入れたのはこの作品のおかげと言っても過言ではない しかしサーヴァント達からの評価は最悪で、中でもメイヴは「人形劇を見せられてるような3流の作品」と酷評している。 何故か立香の周囲ではドラマの内容に触れたがらず、親も制止していたとの事だが‥‥‥? 登場人物 「正義の味方」 主人公。名前は不明 赤いマスクをつけたヒーローで優しい性格をしており人を疑うことを知らないお人好し。 常人よりは優れた能力を持っているが戦うためではなく守るために使う 彼の性格に関してはマシュも「先輩が憧れるのも納得のもの」と賞賛されている 街で人々を出来る限り尽くしてきたが、立香の台詞を見るに最終話で死亡したとされる だが‥‥‥‥ 「街の人々」 正義の味方が助けていた街の人達。 トラックに轢かれそうになったり、川に落ちたり、様々な不幸に見舞われる +実は‥‥‥ この作品は正義の味方を市民がひたすら虐める内容となっている 立香が気付かなかったのはまだ幼く内容を理解出来なかったから、それと正義の味方に盲信して周囲が見えてなかったからだろう。 上記のトラック云々も実は当たり屋。 人々は正義の味方の優しさを利用し、ひたすら私欲のために使い潰していく その最終回も酷使されて死亡した正義の味方の代わりを待ち続けるという陰湿なバッドエンド。 そもそも正義の味方が死亡したのもここまでされるなら死んだ方がマシという俳優と脚本家のアドリブによるもの。 なお、立香の妹である藤丸立花は人々の醜さをこの作品で知って立香とは違う歪んだ正義に目覚めてしまった。 マスターさんは晩御飯に悩んでいる世界の監督は操り人形に過ぎず、本来は別世界の混沌のカレルカレンの作品である事が明かされたらしい。制作理由は「単なる暇つぶし」。 無関係な立香達からすればいい迷惑である。 名前 コメント
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クイズRPG「魔法使いと黒猫のウィズ」とは 「Kuma the Baer」から待望のクイズRPGが登場!クイズに答えながらクエストを進める冒険ファンタジー。 オンラインで全国のプレイヤーと協力・対戦もできる!知識を高め、白熱バトルを繰り広げよう! 「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」のダウンロードは無料。面倒な登録や難しい操作も不要です。 一流の魔法使いを目指し、ウィズとともに叡智の世界へ飛び込もう!! ~解きはなて!すべての知識が魔法になる~ 叡智の扉。それは、108の異界を繋ぐ全の円環。 扉は正しき理により解きはなたれ、神秘の力を具現する。 人は力を魔法と名付け、扉の解放者を魔法使いと呼称した。 これは、魔法が日常に寄り添う世界の とある魔法使いの物語―― 「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」は、クイズに答えながらクエストを進めるクイズ&カードバトルRPGです。 ゲームの舞台は魔法の息づく架空世界・クエス=アリアス。プレイヤーは魔法使いとなり、人びとからの依頼や 事件を解決したり他の魔法使いと知識を競ったりしながら一流の魔法使いを目指します。 ★基本ルールはクイズに答えるだけ! 「スポーツ」、「芸能」、「理系」、「雑学」などのジャンルを選び、出題されたクイズに答えよう! 正解すれば、カードに眠る精霊たちが具現化し、立ちふさがる魔物たちに攻撃を仕掛けます。 ★カードは合成で強化&進化! カードは「属性」「アンサースキル」「スペシャルスキル」といった要素を持ち、戦略的なデッキ構成を楽しめます。 GETしたカードを強化合成や進化合成でどんどん強くしていけば、無敵のデッキを組むことも可能!400種類以上の カードはどれも超美麗で、集めるのも楽しくなるはず! ★全国のプレイヤーとクイズ対決! オンラインでクイズ対戦を楽しめるトーナメント機能を搭載。 全国のプレイヤーとクエストに挑戦し、知識を競い合うことができます。 トーナメントは、いつでも楽しむことができ、上位に入賞すればゲームで使用できるアイテムをプレゼント! 一人でクエストを進めたり、多人数で白熱の知識バトルを繰り広げたり。思い思いのスタイルでゲームを 楽しもう! ★友達と一緒にゲームを進めよう! ゲーム内でフレンドをフォローしたり、フォローされたり出来ます。 フォローしたフレンドを応援すると、メイトをもらえます。 メイトがたまれば、ガチャを回すことができるよ! ▼▼▼プレイ前に読んでください▼▼▼ ★★★序盤を有利に進めるには?★★★
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autolink MM/W17-T13 カード名:正義の味方 さやか カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:8000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《愛》? 【永】他のあなたの《魔法》?のキャラが3枚以上なら、このカードのパワーを+1000。 これからも見滝原市の平和は、 この魔法少女さやかちゃんが ガンガン護りまくっちゃいますからね! レアリティ:TD illust. 12/02/06 今日のカード。 “ミルキィホームズ”シャロのように、特徴による制限で2/2サイズにパワーパンプされるキャラ。 シャロと違い、《魔法》?以外のキャラがいてもパンプアップする。 しかし他3枚以上なので、《魔法》?単でないと条件を満たすのは容易ではない。場が埋まらないとパンプされないという欠点もある。 ただ、ネオスタンはもちろん、《魔法》?のキャラはWサイドだけでもプールが膨大なので採用する機会は多いだろう。
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説明 概要 構築 プレイング サポートカード このデッキの弱点 派生デッキ【黒魔導の真髄】 【墓守の神官】 代表的なカード 関連リンク 説明 《黒の魔法神官》を召喚し、相手の罠カードを封殺しつつビートダウンするデッキ。《黒の魔法神官》の召喚条件の関係上、基本的に【魔法使い族】をベースとした構成となる。 概要 《黒の魔法神官》 効果モンスター 星9/闇属性/魔法使い族/攻3200/守2800 このカードは通常召喚できない。 自分フィールド上に存在するレベル6以上の魔法使い族モンスター2体を 生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 罠カードの発動を無効にし破壊する事ができる。 構築 《黒の魔法神官》はレベル6以上の魔法使い族2体を生け贄にするという厳しい召喚条件を持つ。上級モンスター2体を場に召喚する必要がある為出し難いのだが、幸い魔法使い族には《マジシャンズ・サークル》や《ディメンション・マジック》などの優秀な召喚サポートがある為キチンと考えてデッキを組めばやってやれない事は無い筈である。 また、折角召喚した《黒の魔法神官》を除去されては元も子もない為魔法をカウンターするカードや《レインボー・ヴェール》などの効果モンスター対策も必要となる。 プレイング とにかく《黒の魔法神官》を召喚しなければ何も始まらない為、高速でフィールドに2体の上級魔法使い族を揃える必要がある。投入する魔法使い族は割と自由に選べるので、デッキに投入した魔法使い族に応じた戦術を取ろう。どういう軸の構成にするかによって、戦術は変わって来る筈である。 サポートカード このデッキのサポートカードの中でも特にお薦めのものを紹介して置く。 ◦《究極封印神エクゾディオス》 簡単に場に出せる上級魔法使い族である為、このデッキでは3枚投入も可能である。このカードがあると、《黒の魔法神官》の召喚が随分楽になる。 ◦《山の新人神様 東風谷早苗》 単体でそこそこの攻撃力を持つ上、再度召喚する事でレベル7になれるのでこのデッキでは重宝する。ただし、このデッキに入る風属性や水属性のモンスターは《THE トリッキー》や《水晶の占い師》程度なので効果の発動は期待しない方がいいだろう。 ◦《魔法大学》 《ディメンション・マジック》の相互互換カードだが、このカードは特殊召喚したモンスターのレベルが上がる為《黒の魔法神官》と相性が良い。ただし、《ディメンション・マジック》と違ってアドを稼ぎ辛い事を忘れてはならない。 ◦《レベル・アワード》 下級魔法使い族に装備する事で簡単に《黒の魔法神官》の生け贄を用意出来る。ただし、単体では何の役にも立たず結果的にディスアドバンテージになるので注意する事。 このデッキの弱点 《黒の魔法神官》は召喚出来ればその罠封殺能力で暴れる事が出来るが、カウンター罠や既に発動している永続罠は止められず魔法やモンスター効果には無力である。故に罠を殆ど採用せずモンスター効果での除去を易々行って来る【帝コントロール】は天敵である。また、性質上罠カードを多用する為罠を封じられると厳しい戦いになる。 派生デッキ 【黒魔導の真髄】 【ブラック・マジシャン】をベースとした【黒の魔法神官】。《ブラック・マジシャン》の豊富なサポートを使える上、《ブラック・マジシャン・ガール》を召喚し《賢者の宝石》を使う事で即座に《黒の魔法神官》の生け贄を揃える事が出来る。《正統なる血統》を《山の新人神様 東風谷早苗》と共有出来、上級モンスターを場に出し易いので豊富な展開力がウリとなる。 【墓守の神官】 【墓守】をベースとした【黒の魔法神官】。【墓守】の展開力と墓地利用封じで優位な戦況を構築しつつ、《黒の魔法神官》を召喚するデッキ。《王家の眠る谷ーネクロ・バレー》が出てしまえば《墓守》の独壇場となり、墓地利用をメインとした相手に対して優位に戦える。尚、《墓守》には上級モンスターが《墓守の長》しかいない為必然的に《レベル・アワード》や《魔法大学》で下級《墓守》のレベルを上げて生け贄に利用する事になる。 代表的なカード 《黒の魔法神官》 関連リンク デッキ集
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第1話「使い魔は猛女」 トリステイン魔法学院に、今日も今日とて爆音が響き渡る。 「今度こそ、来なさい!」 桃色の髪の少女が一心不乱に呪文を唱え、手にした小さな杖を振る。爆発、轟音。 二年生に進級した際行われる、使い魔召喚の儀式。彼女はそれを失敗し続けていた。 「ゼロのルイズがまた1ゾロを振ったぞ!」 「魔法を失敗するたびに10点貰ってたらゼロのルイズは今頃10レベルだぜ!」 「1ゾロとか10レベルって何だよ?」 ルイズと呼ばれた桃色の髪の少女と似たような格好をした少年少女たちが、彼女を嘲笑する。 だがそれもごく一部、数人程度のことだ。それ以外の少年少女は白けた雰囲気を出していた。 「あー、ミス・ヴァリエール。もうすぐ日が暮れる、一先ず切り上げ明日にしてはどうだろう? 何も今日呼び出さなければ駄目、というわけでもないのだから」 一人だけ年齢も着ているものも違う、教師と思しき眼鏡をかけた中年の男がルイズに声をかける。 ちなみに、頭髪が実に寂しい。 「ミスタ・コルベール、あと一回! あと一回だけお願いします!」 「いや、しかしだね……」 ルイズがコルベールと呼んだ男に懇願する。白けた雰囲気の原因はこれだった。 最初のうちは皆が皆、嘲笑と罵声を浴びせていたものだが、何十回も続いたためいい加減飽きているのだ。 どんな面白い物事も、過剰となれば飽きが来る。 コルベールは教師としての権限を行使し、無理矢理やめさせても構わなかったが。 しかしルイズが、どれほど頑張っているか分かっているだけに、それが出来なかった。 「分かりました。しかし、次が本当の最後。これ以上は次の授業に差し支えかねない」 「はい! ……てぃび! まぐぬむ!」 嬉しそうに喜び、呪文を唱え始める。 (今度こそ、失敗するわけには行かないわ!) ルイズは心の中でそう強く誓い、一言一句、発音の一つ一つにまで気を遣い詠唱を続ける。 「いのみなんどぅむ、しぐな、すてらるむ、にぐらるむ、え、ぶふぁにふぉるみす、さどくえ、しじるむ! 来なさい! 私だけの、神聖で、美しく、強力な使い魔よ!!」 結論から言えば、また爆発した。 「詠唱も、集中も完璧なはずなのになんでよー!!」 都合50回目になる召喚も、失敗かと思いきや……。 「おい、何かいるぞ!」 「ゼロのルイズが成功した!?」 「この世の終わりだー!」 「エルフが降ってくるぞー!逃げろー!」 爆発で巻き上がった粉塵が晴れ、何かが召喚されたと気付いた生徒たちは、パニックに陥った。 中には満足げに頷いてる赤毛の女や、召喚には興味なさそうに本を読んでいる青髪の少女も居たことは居たが……。 「成功した、本当に、成功し……た……?」 「っててて……イリーナ、重い、潰れる、退け」 「なっ! 私はそんなに重くありません!!」 ルイズは召喚が成功した、その事実に感涙に咽び泣く一歩手前、と言ったところで聞こえる二つの声に首を傾げた。 晴れた粉塵から姿を現したのは二人の男女だ。 一人はどこか斜に構えた雰囲気を持つ青年、ヒースだった。地面に倒れ、杖を片手にもう一人の人物に乗っかられている。 もう一人は少女だ、元気が有り余っているというのが声からでも分かるほど元気な少女、イリーナ。 地面に倒れているヒースに馬乗りになる形で乗っかっており、重いと言ったヒースの腹を殴った。ヒースが口から泡を吹く。 「……あんたたち誰?」 ルイズがそう声を発すると、パニックを起こしていた生徒たちの間から大きな笑い声が上がった。 「召喚に成功したと思ったら呼び出したのは平民だ! ……平民だよな?」 「流石ゼロのルイズ! 俺たちに出来ないことをやってのける! そこに痺れる憧れない!……格好は平民みたいだけど一人は杖持ってるぞ?」 「実は前もって地面に隠れて貰ってて爆発の隙に姿現したとかじゃないだろうな! ……貴族崩れじゃね?」 人間を召喚したルイズを嘲笑しつつも、ただの平民とは思えないようで彼らはぼそぼそと会話を続ける。 そんな状況に気付いたのか、じゃれ合っていたイリーナとヒースは身を起し、これまたぼそぼそと何事か会話をし始めた。 「……ヒース兄さん、この人たち邪悪じゃないです」 「ふぅむ、成る程な。“ゲート”も閉じたようだ。魔術師ギルドっぽい雰囲気と状況から察するに、何らかのマジックアイテムによる事故か?」 「……私は誰って聞いてるの! 答えなさいよ!」 ルイズはイリーナが聞き慣れない言葉を発したあと、何故か頷きヒースと会話をするのを無視されたと思い叫ぶ。 「アー、相手に尋ねるときは自分から名乗るのが礼儀だと習わなかったか?」 ヒースに正論を言われ、ルイズはぐっ、と唸る。何故かこの男に言われると無駄に嫌だった。 「ミスタ・コルベール! 召喚のやり直しを要求します!」 「それは駄目です、ミス・ヴァリエール。 確かに人間、かつ二人を呼び出したのはどちらも前代未聞で例を聞きませんが、召喚されたことには変わりがない。 一度召喚されたものを使い魔とする、その伝統を曲げるわけには行きません。 使い魔は一人に一つ、二人いるのならどちらを選ぶかは貴女の自由だ。 さぁ、コントラクト・サーヴァントを」 素気無く却下を喰らい、ルイズは自らが呼び出した二人を見つめ、考える。どちらを使い魔として選ぶべきなのかを。 ヒースと呼ばれた男は杖を持っている。平民としか思えない服装から貴族では無いだろうが、杖を持っているのならメイジだろう。 そのヒースを兄と呼んだイリーナという少女。パッと見、杖を持っているようには見えないが兄妹ならば彼女も恐らくメイジだ。 魔法を使う使い魔。考えてみればこれほど凄い使い魔も早々居ないのではなかろうか? 相手が貴族崩れならば使い魔にしても問題はないだろう。 しかし念のために確認しておく必要がある。万が一にも貴族を使い魔になどした日には、大問題に発展しかねない。 「貴方たち貴族?」 「ふっ、初対面のお嬢さんに貴族と思われるほど、俺様はオーラをかもちだしているのか。流石俺様、凄いぞ俺様」 「違いますよ」 自己陶酔に浸るヒースのわき腹に肘を入れつつイリーナが否定する。 ならば問題は何も無い。そしてどちらもメイジならば、皮肉気で斜に構えた男などより、従順で素直そうな少女のほうを使い魔として選ぼう。ルイズはそう考えた。 何よりもファーストキスをあんな男に捧げるのは断固として嫌だ、女の子同士ならばノーカン。とも考えていた。 似たような年齢で発育も似たようなものだということで、親近感が沸いたのもあるかもしれない。 「感謝しなさいよ。貴族にこんなことされるなんて、普通一生無いんだから」 「はい?」 心の中でノーカンノーカンと呟きつつルイズは杖を振るう。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」 詠唱を終え、きょとんとしているイリーナの額に杖をちょん、と当てたあと、顔を引き寄せその唇に自らの唇を押し当てる。 「~~~~~~~~~~~~っ!?」 突然キスされたイリーナは混乱し真っ赤になった。心の中でレプラコーンとスプライトが盛大に踊り狂う。 横でその様子を見ていたヒースも、口をあんぐりと開き驚いている。 「な、な、な、な、な、な、行き成り何を……熱っ!」 唇が離され、盛大にパニックに陥っているイリーナの左手の甲に、紋章が浮かび上がる。 使い魔のルーン、コントラクト・サーヴァントによって刻まれる使い魔の証。 ちなみにイリーナは普段から手袋をしているため、ルーンが浮かび上がっている様子は分からない。 イリーナは左手を押さえ、顔を苦痛に歪ませる。 「使い魔のルーンを刻んでるだけよ。我慢しなさい、すぐ終わるわ」 「ちょっとまて! お前イリーナに何をした!!」 ルイズがキスをした途端、イリーナが痛みに襲われた。これで関連性を見出せないわけがないヒースはルイズを掴み上げる。 大切な妹分が何かされて黙っていられるほど、ヒースはお人好しではない。 「放しなさいよ! さっき言った通り使い魔のルーンを刻んでるだけ、害は無いしすぐ終わるわよ!」 ヒースを振りほどこうとし、意外なほど力があるためそれが適わず、仕方なく答えるルイズ。 「使い魔だぁ? 人間を使い魔にするなんて聞いたこと無いぞ!!」 「私だって聞いたことが無いわよ!」 「喧嘩はいけませーん!」 口論する二人の間に、ルーンが刻み終わり、いつの間にか復活したイリーナが割って入る。 「あーゴホン! 失礼」 イリーナも交えて三人でぎゃあぎゃあ騒ぐ中、コルベールがイリーナの左手を取り、手袋を外し使い魔のルーンを確認する。 「これは、珍しいルーンだな……兎に角、おめでとう、ミス・ヴァリエール。 コントラクト・サーヴァントは一度で成功したようですね」 「あ、はい!」 サモン・サーヴァントは何十回も失敗したが、コントラクト・サーヴァントは一度で成功した。 その事実は、ルイズの機嫌を良くさせるのに十分だった。 「馬鹿な!今度は一度で成功!?」 「ありえねぇ! 6ゾロ振りやがった!」 「だから6ゾロって何だよ!」 普段は耳障りな同級生の言葉も非常に心地が良い。ルイズは今、16年の人生の中で最高の気分だった。 「そこまで! 兎に角今日はこれにて解散。さぁ、教室に戻るぞ」 コルベールが手をパンパンと叩き、またパニックに陥りそうだった生徒たちを戻るよう促す。 次々と空へ上がり、飛べないルイズに嘲笑と罵声を浴びせながら生徒たちは去っていく 「……んだぁ、今の」 ヒースは困惑していた。魔法で空を飛ぶこと自体は驚かない、自分も可能なのだから。 しかし上位古代語ではない別の言語を用いてそれを成したのだから、魔術師のヒースからしたら驚愕ものだ。 詠唱、動作、あらゆる点で古代語魔法と異なる魔法。 マジックアイテムの線を考えたが、それならばこのルイズと呼ばれた少女が飛べない、というのは不自然だ。 「……行くわよ、付いて来なさい。あんたもよ」 空を飛ぶ生徒たちを見つめ、悔しそうに唇をかみ締めていたルイズが二人にそう命令し、歩き出す。 「……どうします?ヒース兄さん」 「どうするもこうするも、とりあえず付いていくしかないだろう。状況がさっぱり分からん。 “センス・イービル”で悪意が感知出来なかったんだ、危険は無いだろうからな」 「さっさと付いて来なさい!」 既に大分進んでいたルイズが叫び、慌てて二人は付いていくのだった。 「つまりここはハルケギニア大陸の、トリステイン王国にある、トリステイン魔法学院。二年生に進級した際行われる使い魔召喚の儀式でイリーナが呼ばれ、俺がそれに巻き込まれ、現在に至る、ということか」 「そうなるわね、っていうかだからあんたたち二人居たの……」 ルイズの部屋に辿り着き、イリーナとヒースは状況説明を受けた。 しかし聞けば聞くほど信じられず、ヒースは思わず“センス・ライ”を使ったがそこに嘘は含まれておらず、信じざるを得なかった。 「ヒース兄さん、ということはここはアレクラスト大陸ではなく別の大陸ということに!?」 「うむ、そういうことになるな。実に困った、ハルケギニアという大陸は、さすがの俺様も聞いたことも無い」 「こっちからしたら、アレクラスト大陸だとか、オーファン王国だとかのほうが聞いたことないんだけど」 お互い説明し合い、ルイズは二人が別の大陸から呼ばれたということ、イリーナとヒースはここが別大陸で、使い魔として呼び出されたということを理解した。事実は違うのだが。 またルイズに戻る方法は無いか、と尋ねたら「知らない」と言われ、当面は二人ともルイズの厄介になるとも決定した。 行く当ても戻る当ても今のところ無いのだから仕方が無い。 イリーナは使い魔、ヒースはその保護者という形だ。 「そういえば、あんたたち家名が違うけど……兄妹じゃないの?」 「両親が家族ぐるみの付き合いをしてまして……幼馴染なんです」 ルイズは眩暈がした。 メイジの妹だから同じメイジだろう、と考え、使い魔にしたら妹じゃありませんでした、などと言われたのだ。 単なる平民の可能性が極めて高くなり少し泣きたくなった。 「ま、魔法は使えるわよね? ね?」 「あんまり得意じゃないですけど、使えますよ」 ほっとした、ルイズは16年の人生の中で一番ほっとした。そしてほっとすると同時に眠気が全力疾走で襲い掛かってきた。 「……眠い、私寝るからこれ、洗濯しておいてね」 そう言ってルイズは服を脱ぎ始める。 「ひ、ヒース兄さん、見てはいけませーん!!」 先ほどからぶつぶつと何か考え事をしていたヒースが、イリーナのボディブローの直撃を受け、白目を剥く。 ヒースの身体が床から浮いたのは言うまでも無く、それを見たルイズは、ちょっと引いた。 「あ、あんた見た目よりずっと力あるのね……兎に角、これ洗っておいてね」 服を脱ぎ終わったルイズが、イリーナに下着や服を渡し、寝巻きに着替えベッドに潜り込む。 「へ? あ、はい。……あのー私はどこで眠ればいいんでしょうか?」 ぺっ、とルイズがどこからか取り出した毛布をイリーナに放り投げ、床を指差す。 「えーっと……分かりました」 気絶したヒースを引きずり、廊下へ放り出し、纏っていた自分のマントを毛布の代わりに被せ、就寝前の祈りをファリスに捧げる。 部屋へ戻ると、ルイズは既に寝息を立てており、安らかな寝顔をしていた。それを見てイリーナは微笑む。 「おやすみなさい」 野宿ですら慣れているイリーナにとって、雨風凌げる室内というだけで眠るには十分な環境だ。 毛布を被り、瞼を閉じ、目の前で消えたことで仲間を心配させて無いか思いつつ、サンドマンの誘いに身を任せた。 それから多少時間が経過し、廊下に放り出されたヒースが意識を取り戻す。 「……イリーナのやつ、思いっきり殴りやがって」 痛む腹をさすりながら愚痴る。最もイリーナの怪力を誰よりも知っている兄貴分はそれでも加減してくれたことは良く理解している。 本気で殴られた場合、冗談抜きで死にかねない。元々の怪力に一流の戦士としての腕が合わさったその拳は、凶器と呼ぶに相応しい。 「しっかし、ハルケギニア、ねぇ。使い魔の契約の仕方といい、空飛んだときの魔法といい、異なる魔法体系が出来上がってるのか?」 ヒースが知る使い魔の契約は半日も掛かる準備と、三日にも及ぶ儀式のすえ成立するものだ。 使い魔にする対象にしても、召喚するのではなく予め準備しておき、契約する。 今は亡き彼の使い魔である鴉のフレディも、とある事件に巻き込まれたとき……その事件の発端に関わっているのだから巻き込まれたというのは正確ではないが。 兎に角、雛鳥だったところを助け、そのまま育て上げて契約したのだ。 「どっちかというと、異世界とか言われたほうがまだ信憑性があ……るぅ!?」 ふと窓から空を見上げ、満天の夜空にこれでもかというほど目立つ、二つの月を発見し、目を見開く。 「いや、まて、落ち着け俺、月は一つのはずだ、だけど今は二つある、じゃあ何故?アレクラストじゃ角度的に重なって見えるから一つに見えてただけか?よし、それだな! それじゃここが異世界じゃないと実証ダ」 動揺しつつも魔法を唱えるヒース。 “ロケーション”。詳しく知る人物や物の方角をどれだけ遠く離れていても、知ることが出来るようになる古代語魔法だ。 咄嗟に思いついた敬愛する師を探る。 「……嘘だろ、おい」 反応はなし。それは即ち、この世界にそれが存在しない、ということだ。 ヒースは必死に頭を働かせる。 狩人として育った身でありながら、魔術師ギルドに特待生として迎え入れられた、その高い知能をフル回転させる。 「“ロケーション”で人物を探知できないということは、ハーフェンついに過労で死んだか?」 最高導師が病気で倒れて療養中だったり、次席導師が色々やって石になって死んだり、帰ってきた次期最高導師は宮廷魔術師になってギルドじゃあんまり働かなかったり。 そんなこんなで、馬車馬のごとく働かされているハーフェン導師が死んだ可能性すら考え、念のため今度は仲間の半分エルフにヒースは“ロケーション”を使う。 しかし反応はやはり無く、異世界であるという事実を補強するだけとなった。 「異世界とかどうやって戻ればいいんだ、“ゲート”なんて使えんぞ俺様」 頭をガリガリと掻きながら、方法を模索する。 「そうだ、“アポート”で適当なものを引き寄せて手紙で状況を知らせれば……あ、精神力足らんわ」 既に“ティンダー”“センス・ライ”さらに“ロケーション”を二回も使ったヒースの精神力は限界に来ており、後一度初歩の魔法を使っただけで気絶するほどだ。 具体的には精神力残り1点。 「あー……とりあえず寝るか」 焦ったところで状況が変わるわけでも無い、ヒースはそう考え一先ず眠ることを決めた。 イリーナのマントを被り、心の中でファリスに祈りを捧げ、こんな状況に妹分を一人だけ放り込まずに済んだことに安堵しつつ、瞼を閉じた。 用語解説 センス・イービル:ファリスの特殊神聖魔法。ファリスの定める秩序に反する思考をしている人物に反応する センス・ライ :古代語魔法。相手が嘘を喋っていれば嘘だと分かる。ただしどの部分が嘘か、などは分からず、本人が嘘だと思っていなかったり、紛らわしい言い回しだと反応しないことも ロケーション:古代語魔法。良く知る人物や物の方角を探る アポート:古代語魔法。自分の所有物を一時的に手元に引き寄せる。 場所がしっかりと分かっていないと不可能 スプライト:精神の精霊。羞恥心を司る。姿は透明なため見ることは不可能 レプラコーン:精神の精霊。混乱を司る。姿は全裸の小鬼 サンドマン:精神の精霊。眠りを司る。姿は全裸の小さな子供 へっぽこ冒険者と虚無の魔法使い 第2話(前編)
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DC4/W81-058 カード名:“恋”した魔法使い 有里咲 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:4000 ソウル:1 特徴:《Anniversary》・《魔法》 【永】記憶 あなたの思い出置場にカードがあるなら、このカードは次の2つの能力を得る。『【永】このカードは、色条件を満たさずに手札からプレイできる。』『【永】CXコンボ 舞台にこのカードがいるなら、あなたの「恋がはじまる瞬間」は、色条件を満たさずに手札からプレイできる。』 【自】CXコンボ このカードがアタックした時、クライマックス置場に「恋がはじまる瞬間」があるなら、あなたは自分の山札を上から4枚まで見て、《Anniversary》か《魔法》のキャラを1枚まで選んで相手に見せ、手札に加え、残りのカードを控え室に置き、そのターン中、このカードのパワーを+2000。 RR 私は、もう一つの世界の、もう一人のあなた SP この恋が、この奇跡が、私の中に尊く煌めくんだ レアリティ:SP RR サーカス 20th Anniversary収録 ・対応クライマックス カード名 トリガー 恋がはじまる瞬間 枝
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隣は魔法使いさん家DX 作品紹介 咲輝が! 七海が! 太陽が! ご近所さんと一緒にパワーアップして帰ってきた! 満を期して遂に再誕、 ファンタジーのロボット系ヒーロー風味ご近所物語第二弾! 今度は勇者にヒーロー、地球防衛軍や特殊戦隊その他もろとも てんこ盛りの超連編ですよ、奥さぁぁぁあああああああああん!! 基本情報 DLページ:http //www.geocities.jp/aoiaoikokoro/SRC.html ジャンル :ファンタジーのロボット系ヒーロー風味ご近所物語 話数 :7話まで公開中
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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い ニューカッスル城に滞在していた柊達にウェールズ王子帰還の報がもたらされたのは、陽が赤みがかった夕刻前の事だった。 しかしながらその報を受けた柊達に浮かんだ感情は喜びや安堵などではなく、疑念である。 というのも、ウェールズの帰還に先立って貴族派――レコン・キスタから王政府宛に書状が届いたのだ。 曰く、明日正午までに降伏を受け入れられぬ場合、攻城を開始する。 王党派の人間達からすれば『ついに』といった所だろうが、柊達からすれば正に文字通りの『計ったような』タイミングだ。 ここまで絶妙すぎると、自分達の動向の一部始終を完全に把握されている気さえもしてくる。 ともあれ、ウェールズ帰還の報を受けた柊達はとりあえず任務達成を優先すべく彼を出迎えに港へと向かおうとしたのだが、それを侍従たるパリーに止められてしまった。 他国より赴いてきた大使に帰還を迎えられるなどという事態は、国や王子の面子に関わるのだそうだ。 これに関してはタバサも口にはしないまでも同調の意を示したため、柊はそれに従うことにした。 改めて身分だの何だのいう肩書きに辟易した思いを募らせながら自室で待つことしばし。 部屋を訪れたパリーの案内によって柊はようやく目的の人物であるウェールズ王子と面会を果たすことになった。 「殿下、お連れ致しました」 柊達に充てられた部屋のそれとそう変わらない扉の前でパリーが言うと、部屋の中から澄んだ青年の声音が返る。 「通してくれ」 恭しく頭を垂れてパリーが扉を開き、柊達を促す。 部屋に足を踏み入れた柊は、ぎょっと目を剥いた。 彼の眼に真っ先に飛び込んできたのは部屋の主たるウェールズではなく、脇にいるピンクブロンドの髪の少女――ルイズだったのだ。 「な、なんっ……!?」 二の句が継げずに愕然と立ち尽くす柊を見やり、ルイズは傍目にそれとわかるような怒気を孕ませながら、しかし耐えるように歯を食いしばったまま口を噤み彼を睨みつける。 そんなルイズの隣には申し訳なさそうに佇んでこちらを見やる紫髪の少女――エリスまでいた。 その二人の後ろには見たことのない、口ひげを生やした長髪の青年。 彼が件のウェールズ王子かと思った直後、別の方向から声が上がった。 「よく来てくれた――いや、お待たせして申し訳ないと謝罪すべきだろうな」 そちらに眼を向けて、ようやく柊は自分が部屋の主を一番後回しにしてしまった事に思い至る。 艶やかな金色の髪を携えた精悍な顔つきの青年。 容姿や服装がどう、という事ではなく、一目見て彼がそうとわかってしまう、そんな雰囲気を纏っている。 即ち、彼こそがアルビオン国王の第一子たるウェールズ・テューダーなのだ。 「トリステインの大使殿が訪ねて来られたというのに席を外してしまうとは――この期に及んで思わぬ恥を晒してしまった」 「あ、いえ。連絡もなしに来たのはこっちですから」 するとウェールズは愉快そうに笑みを零すと、 「畏まる必要はない、普段通りにしてくれていい。そちらの方が私も気が楽だ」 「はあ……それじゃ、そういう事で……」 隣で柊を睨みつけていた誰かの視線が一層激しさを増したが、彼はあえてそれを無視した。 ウェールズ自身の言であるからして、流石の彼女も口を挟む事はできないのだろう。 「改めて名乗ろう。ウェールズ・テューダーだ」 「俺は柊 蓮司」 「……ふむ」 ウェールズは柊の紹介を受けた後、どこか観察するように柊に眼をやった。 訝しげに首を傾げる柊をよそに、彼は何か納得げに一つ頷いた。 「なるほど、佇まいからしてどう見ても平民だな。よもや貴族派の連中も君が親書を持っているとは思うまい」 「……そりゃまあ」 こちらの分類で言えば柊は正真正銘の平民である。 柊は思わず生返事を返してしまったが、ウェールズは気にする風もなく苦笑を漏らすと、継いで表情を引き締めて柊を見据えた。 「では、親書を拝見しよう」 「ああ、わかった」 言って柊は懐から親書を取り出してウェールズへと手渡した。 それを黙って見やっていたルイズが不意に声を荒らげる。 「ちょ、ちょっと! なんで花押が切れてるの!? あんたまさか――」 「いや、ミス・ヴァリエール。彼はそのような事はしていないよ」 詰め寄りかけたルイズを手で制したのはウェールズだった。 「パリーから話は聞いている。父が要らぬ気遣いをしてしまったようだね」 苦笑交じりに漏らしたウェールズの言葉に柊はどこか気疲れしたように頭を掻いた。 おそらくその辺りの事情を聞いていないのだろう、ルイズ達はどこか怪訝そうな表情を浮かべたのだが、ウェールズは委細構わずに親書に眼を通し始めた。 しばしの沈黙の後、ウェールズは僅かに眼を細めて囁くように漏らした。 「……そうか、結婚するのか。アンリエッタ……僕の可愛い従妹は」 返事を期待したものではないのだろう、ウェールズは再び親書を始めから読み始める。 声を出す事はおろか動く事すら憚られるような静寂の中、再読を終えたウェールズは瞑目し長く息を吐いた。 そして彼は柊達に背を向けると、部屋にたった一つ置かれた机に歩み寄りその引き出しから宝石箱を取り出す。 開かれた宝石箱の内蓋には女性の肖像画が貼られていた。 それは小さいものではあったが、その女性が誰であるかはこの部屋にいる全員がすぐに理解した。 彼が宝石箱から取り出したのは古ぼけた手紙。 何度も読み返したのだろう、擦り切れてぼろぼろになったそれを彼は硝子細工を扱うように繊細な手付きで開いた。 書かれた文面の一字一句を刻み込むようにして彼はその手紙を読み直した後、彼はいとおしげに手紙に口付けてから封筒に戻し、待ち受ける柊達に歩み寄った。 「これがアンリエッタ……王女殿下が所望している手紙だ。確かに返却する」 「……確かに受け取った。間違いなく姫さん――王女様に渡すよ」 「頼む」 ウェールズの言葉に柊は強く頷くと、手紙を懐――月衣にしまい込む。 それを見計らうように……おそらくはそれまでは我慢してしたのだろう、ルイズがたまらず声を上げた。 「殿下……王軍にはもはや勝ち目はないのでしょうか」 するとウェールズは少し驚いたようにルイズを見やったあと、むしろ清々しいとさえ思えるような表情で答えた。 「ないな。敵軍五万に対して我が軍は三百、兵法からしても論外というべき戦力差だ。これを覆すには万に一つでも到底足りはしないだろう。それこそ――」 言って彼は不意に言葉を切った。 四人が見やる中、ウェールズはどこか皮肉気に口元を緩めて続ける。 「……それこそ『奇跡』でも起こらねばな」 「……」 その言葉に返す言があろうはずもない。 そんなモノを持ち出さねばどうにもならない状況だという事なのだ。 しかし、その沈黙の中で一人だけ声をかける者がいた。 「『奇跡』とは例えば……『虚無』ですかな?」 「ワルド?」 それまでずっとルイズの後ろに控え沈黙を保っていたワルドだった。 唐突に出てきたその単語にルイズと柊、エリスは驚きを浮かべる。 そしてウェールズは―― 「ほう?」 興味深そうにワルドに眼を向けた。 この場の視線を集めたワルドは、ウェールズに一礼した後彼を真正面から見据えて口を開いた。 「レコン・キスタとの戦いは我がトリステインにとってももはや他人事ではございませぬ。それゆえ軍部ではかねてより情報を収集しておりました」 その集めた情報の中の一つにこんなものがあった。 曰く、レコン・キスタの首魁たるオリヴァー・クロムウェルは伝説の虚無を操る。 「虚無を……!?」 思わず呻いてしまったルイズに応えるようにワルドは頷き、そして改めてウェールズに目を向けた。 「軍部では四方山話として一笑に伏されてしまったのですが。……事実なのですか?」 ワルドの視線につられるように周囲の視線がウェールズに集まる。 すると彼は深く嘆息すると、静かに答えた。 「……さて。私は一度も見た事がないので判断はしかねる。もっとも、見ていた所で虚無は伝説の代物ゆえ、真偽の判別もできないがね」 ただ、と彼は言って拳を握った。 「真偽はともかく、こうして始祖の血統たる現王家に叛し、打倒するだけの戦力――貴族達を糾合しうる『何か』があるのは間違いないのだろうな」 「……なるほど」 当代のアルビオン王ジェームズ一世は決して名君ではなかったが、さりとて暴君や暗君の類でもなかった。 無論だからといって失政や内乱が一切なかった訳ではないが、歴史的に見てもそれらの数や規模は控えめと言ってもいいだろう。 彼の代に限って追い落とされる理由がないのだ。 「大した情報も渡せずに申し訳ない」 「いいえ。虚無か否かは置くとしても、その『何か』が噂の類ではなく実際に"ある"とわかっただけでも十分です」 「そうか。それならば我々も今まで生き延びてきた甲斐があったというものだな」 口の端を歪めて言ったウェールズにワルドは話の終わりを示すように深く頭を垂れる。 それを見届けてからウェールズは改めて部屋にいる一同を見渡した。 もはや特に語る事もないのだろう――いや、話を切り出したルイズだけは一人何かを堪えるように口を固く結んでいた。 ウェールズは彼女が何を言いたいのかをおおよそ理解していたが、あえてそれに気付かない風を装い全員に語りかける。 「さて。明日の決戦に際して今宵ささやかながら祝宴を催す手はずになっている。 やや礼を失しているが、君達大使の歓迎も兼ねたいと思っているので是非とも出席をお願いしたい」 また窮屈な思いをさせてしまうがね、とウェールズが含み笑いを漏らして柊に眼を向けると、彼は嘆息して肩を落とした。 そんな柊の姿を見届けてからウェールズは部屋を辞そうと歩を進めかけ、 「殿下!」 予想通り、ともいうべきルイズの声で足を止められた。 そして当然、そこから続けられる彼女の言葉もウェールズには予想できていた。 ゆえに彼はルイズが言葉を継ぐよりも先に彼女へ声を投げかける。 「それは聞けない話だ、ミス・ヴァリエール」 「――!」 機先を制されて言葉に詰まってしまったルイズを正面から見据えて、ウェールズは宣言する。 「私は王家としてのつとめを果たさねばならぬ。私はウェールズ・テューダーという個人である前に、このアルビオン国の王子なのだ。 たとえ"誰"に"何"を言われようとも、私はこの城から脱する事はしない」 「~~~っ」 ルイズは表情を歪めながらも、しかし一切の言葉を返す事ができなかった。 アンリエッタが親書をしたためた時の物憂げな表情、そしてそれを読み、そして目的の手紙を読んだ時の表情で二人の関係はほぼ類推できる。 だからアンリエッタが本当は何を望んでいるのかも、わかる。きっと親書にもそれを――亡命を薦める旨を書いていたはずだ。 だがウェールズはそれを一切口には乗せず、そしてルイズはその単語すら切り出す事さえ赦されなかった。 おそらく彼は彼自身が語ったように、ルイズに何を言われても決して聞き入れはしないだろう。 そしてこの城に留まって生き延びる可能性は、軍略にさほど明るくはないルイズから見ても皆無と断言できる。 そう、それこそ『奇跡』でも―― 「――虚無」 「……何?」 僅かに眉を潜めたウェールズに、しかしルイズはどこか熱に浮かされたように問いかけた。 「奇跡が起きれば……虚無があれば、勝てるのですね? 王子も生き延びられるのですね?」 「ミス・ヴァリエール……それはただの例え話だ。虚無などもはや伝説の中に消え、現実には存在しない。叛徒共のそれも別の類だろう」 ウェールズは宥めるようにルイズの肩に手を置こうとしたが、しかし彼女はそれを跳ね除けた。 驚きに眼を見開くウェールズに、彼女は自らの胸に手を当てて、叫ぶ。 「『虚無』はあります! ここにいます! わたしがその『虚無の担い手』です!」 「な……」 彼女の叫びにウェールズは絶句するしかなかった。 冗談としか言いようがない台詞ではあるが、冗談を言うべき場でも冗談を言うような少女でもない。 何より、激情を露にして宣言する彼女の表情は冗談ではありえない。 ルイズは呆気にとられたウェールズに詰め寄ると、更に声を荒らげた。 「殿下! 王家には始祖の名を冠するルビーと秘宝があると聞き及んでいます! それをお貸しください! さすればわたしが虚無を以って奇跡を起こしてみせます! この戦に勝利をもたらしてみせます! ですからどうか!」 「ルイズ、やめろ!」 流石に見かねて柊が割って入ろうとしたが、それを制するようにワルドが行く手を遮る。 「分をわきまえよ。従僕が主の口上を遮るとは何事だ」 「てめえ……っ」 僅かな殺気すら伴わせてそう言い捨てると、ワルドは腰に差した軍杖に手をかけてルイズと柊の間に立ちはだかった。 「ルイズさん、やめてください!」 今まで一言も口を挟めなかったエリスがただ一人ルイズの腕を取り制止しようと試みた。 だが、一度堰を切ったルイズの感情は自らでも止める術を知らなかった。 「邪魔しないで!」 ルイズは乱暴にエリスの手を振り払おうとしたが、普段の控えめな態度とは裏腹に掴まれた腕は強く振りほどけなかった。 それが返って苛立たしく、ルイズはエリスを睨みつける。 「どうして邪魔するのよ! わたしはただウェールズ様を助けたいだけよ!」 「それ、は……」 そこでエリスは口ごもってしまった。 実の所彼女が動いたのは柊が反対していたので反射的に追随してしまったにすぎない。 なのでルイズからそう言われてしまってはそれに反駁する事ができないのだ。 「わたしの力はきっとこのためにあるんだわ。ウェールズ様を危地からお救い差し上げ、そして姫殿下の御心を安らがせる……神と始祖はこの時のためにわたしに虚無を授けて下さったのよ」 自分に虚無の事を教えてくれた異界の神も、いずれ始祖の遺産に辿り着くと語っていた。 そして今、この手には始祖のルビーの一つがあり、始祖の秘宝も手の届く場所にある。 『運命』と言うのならば今この時が正にそうなのだ。 「……殿下!」 解かないエリスの手を無視してルイズはウェールズに眼を向け、訴える。 ウェールズは瞑目して静かに一つ息を吐くと、口を開いた。 「ミス・ヴァリエール、落ち着きたまえ。ミス・シホウにワルド子爵も。ヒイラギ、君もだ」 それは穏やかな口調ではあったが、有無を言わせぬ迫力を含んでいた。 俄かに慌しかった空気がどうにか静まり、部屋に静寂が下りる。 ウェールズはしばし間を置くように沈黙を続けた後、呟くように漏らした。 「……事実、なのであろうな」 部屋にいた人間の反応を見ればそれが芝居の類でないことは見て取れた。 その上でウェールズは改めてルイズに目を移し、語りかける。 「ミス・ヴァリエール。そなたはまことに虚無の系統を操る事ができるのか?」 平静さを幾分取り戻したルイズは恭しく頭を垂れ答える。 「今はまだ扱う事はできませぬ。しかし先程申しました通り、始祖の秘宝をお貸し頂ければ扱う事はできましょう」 「そうか……」 言ってウェールズは再び吐息し、何事かを考えるように瞑目した。 ルイズは頭を下げたまま彼の反応を待ち続け……そして、 「であれば、あのオルゴールをそなたに渡す事はできぬ」 「な!」 予想――というよりは期待――していた言葉とは反対の反応にルイズは思わず顔を上げてウェールズを見やった。 「何故ですか! 虚無さえあればこの戦いに勝つ事だってできるはずです! 偉大なる始祖の扱った、伝説の系統です!」 伝承だけにしか遺されていないので多少の誇張はあるのかもしれないが、それでも通常の魔法とは一線を画しているはずだ。 もはや常識的に勝ちの目が存在しない以上それに賭けて当然であるのに、それを試そうともしない。 彼女にはウェールズの意図が全くわからなかった。 「この戦いに勝つ、か。ならば問おう、ミス・ヴァリエール」 ウェールズはその顔にやや厳しさを乗せてルイズを見据えた。 「『戦いに勝つ』とはどういうことか、君は理解しているか?」 「そ――」 「戦いに勝つとはつまり、敵勢力を駆逐する事だ。この場合叛徒達の勢力約五万。その全てとは言わぬまでも、半数以上は打ち倒さねばならぬ。 すなわち少なくとも二万五千……それらを『打ち倒す』とはどういうことか、君は理解しているか?」 「……」 畳み掛けられるウェールズの言葉にルイズは顔色を失くし、絶句する事しかできなかった。 青ざめた彼女に向かって、彼は容赦なく宣告する。 「――私を含めた五百にも満たぬ者達のために、二万五千の人間を"殺す"事が、君にはできるのか?」 はっきりと口に出されたその言葉に貫かれ、ルイズは身体を大きく震わせた。 先程までの勢い込んだ表情はもはや見る影もなく、彼女は視線を彷徨わせ、何事かを言おうと口を開きかけ、しかし言葉にする事ができずに口を噤む。 噤んだ口の中で歯の根が合わず、カチリと鈍い音がルイズの頭の中に響く。 「……これは我々アルビオンの問題だ。トリステインの人間である君にそのような事をさせる訳にはいかぬ。ましてそれが一時の感情に任せた行動ならばなおさらだ」 諭すように語り掛けたウェールズの言葉にルイズは震える自らの手を握り締めたが、しかしやはり何も声を発する事ができず、ただできたのは顔を俯かせる事だけだった。 ウェールズはそんな彼女の小さな肩を優しく叩いた。 「君の力は我々などのような敗残者に使うべきではない。後に戦いを控えた君の故国、トリステインのためにこそ使うべきものなのだ。 始祖より受け継いだその虚無で、アンリエッタを助けてやってくれ」 そして彼はルイズの返答を待たずに歩き出した。 立ち並ぶ一同の前を通り過ぎて部屋の扉まで歩を進めると、彼等を振り返らないまま告げる。 「諸君等の部屋を用意するゆえ、晩の祝宴まで休んでおいてくれ」 誰からの返答もなかった。ルイズもまた、声を上げるどころかウェールズに背を向けたまま振り向く事さえできない。 ウェールズは扉を押し開き、部屋から出て行った。 扉がゆっくりと閉まり彼の姿が見えなくなる。 誰一人としてそれを止める事はできなかった。 ※ ※ ※ 主が退出した部屋の中には、重苦しい沈黙だけが残った。 人数だけは四人もいて、それぞれ相応に話すべき事があったはずなのだが、どう切り出すかを見出せずにいる。 最初に行動を起こしたのは、ルイズだった。 彼女は何かを堪えるように唇を噛み締め、俯いたまま誰にも目を向けずに部屋の外へと歩き出す。 僅かに覗く彼女の顔色は今だ元に戻ったとは言えず、その歩みもどこかおぼつかなかった。 それを支えようとエリスと柊が動きかけたが、真っ先に彼女の肩を抱いたのはワルドだった。 彼は拒絶を示すかのように柊に目をやると、ルイズの身体を支えながら部屋を後にした。 二人の退出を見届けてから、柊は大きく息を吐き出して肩を落とした。 「……柊先輩」 囁くような声に柊が振り向くと、そこには泣きそうな顔のエリスがいた。 彼女は柊よりも更に落ち込んだ表情で歩み寄ると、僅かに顔を傾かせる。 「私……また何もできませんでした」 「……しゃあねえよ。人間同士の戦争なんてエリスには無縁の事なんだしな」 「……先輩は?」 「戦争に参加した事はねえけど、ラース=フェリアで少しばかりな」 言って柊は宥めるようにエリスの肩を軽く叩いた。 落ち着きを取り戻したとは言わないが、ようやく顔を上げて見つめてきた彼女に、柊は気を取り直すように口を開いた。 「それより、何でエリス達がここにいるんだよ。なんか知らねえ奴もいるし」 「あ、それは……」 二人でウェールズの部屋を退出し、外で控えていた給仕に部屋を聞いた後廊下を歩きながらエリスは柊に事情を説明しはじめる。 柊達の後を追う事を諦めかけた時に現れたワルドの事からこの城に至るまでのおおよその経緯を話すと、柊は僅かに眉を寄せて考え込むような仕草を見せた。 「俺達……というか、ルイズの護衛か。姫さんはそんな事一言も言ってなかったけどな」 「そうですね。ルイズさんの部屋で解散した後に護衛の任を受けたそうですけど。先輩達だけじゃ不安だったそうで」 「……あのワルドってのがそう言ったのか?」 「え? はい」 「……。ふぅん」 「その、ごめんなさい。結局ルイズさんを止められなくって」 「気にすんな。そういう事なら仕方ねえよ」 強いて苦言を呈するなら何もエリスまで付いて行く必要はなかったという事だが、彼女の性情からしてルイズ達を放っておくことなどできはしないだろう。 柊が軽く頭に手を乗せると、彼女は少し恥じ入った表情になって顔を俯かせる。 「あ、あの。ところで柊先輩たちはどうやってここに来たんですか? 港にシルフィードがいましたけど、あの港って確か秘密の港だったはず……」 「ああ、ロングビル先生に教えてもらったんだよ。こっちでも色々あってな」 そう言って柊は自分達が辿ってきた道筋をかいつまんでエリスに伝える。 シティオブサウスゴータにてロングビル――マチルダと再開した事。 そして彼女の案内で同じファージアースから来た平賀 才人と出逢った事。 それを聞くと流石にエリスは目を大きく見開いて驚きを露にした。 「私達以外にもこの世界に召喚された人がいるんですね……」 「そうだな。どうやら虚無がこっちとあっちを繋いでる鍵らしい。帰る方法もその辺りにあるかもしれねえ」 「虚無が……じゃあ」 言いかけてエリスは何かに気付いたように声を止め、僅かに暗い表情を浮かべた。 ルイズが虚無の系統を使えるようになればファー・ジ・アースに帰る方法もわかるかもしれない。 加えて虚無がそれほどの――次元を超えて作用するほどの力であれば、使いようによってはこの絶望的な戦いでもあるいは覆せるのかもしれないのだ。 しかしそれは―― 「これで相手が魔王やら冥魔だってんなら無理に止めやしねえし、協力もすんだけどな……」 柊はエリスの思い至った事に応えるように呟き、はあと溜息を出した。 「流石にこうなると俺がどうこう言える問題じゃねえよ。どうするかはアイツが決める事だ」 柊があの時ルイズを静止したのは、正にウェールズが彼女に語ったとおりその場の勢いで決めるような事ではないからだ。 彼女がきちんとそれを考えた上で結論を出すのなら、それはもう自分がつべこべ口を出す事ではない。 「……じゃあ、柊先輩は」 ふとそんな声が背後から響いた。 柊がいつの間にか足を止めていたエリスを振り返ると、彼女は物憂げな表情を浮かべて彼を見やる。 「もしもこの後、ルイズさんがちゃんとそういうのを受け止めた上でウェールズ王子に協力するって言ったら……どうしますか?」 「……」 エリスの問いに柊は僅かに沈黙した。 そして彼は何かを期待するような視線を向けてくる彼女を見据えて、口を開く。 「……エリスはどうするんだ?」 逆に問われ、エリスは明らかに動揺した表情を浮かべた。 しかしこれは言っておかなければならないだろう。 「『この世界』はこういう事が起こりうる世界だってことだ。日本……『ファー・ジ・アース』とは違う世界なんだよ」 ファー・ジ・アース――とりわけ現代日本で生きている限りまず関わる事はないだろう問題だ。 これは一般人としての意味だけではなく、ウィザードとしての意味でも近しい。 何故ならウィザードにとっての倒すべき敵は世界の滅びを望む侵魔や冥魔であり、それらに従属あるいは賛同する者達だからである。 単純な善悪で判別しがたい状況というのはほとんど起こりはしない。 その点において柊はこのハルケギニアと似たような異世界である『ラース=フェリア』や『ミッドガルド』を経験していた。 そう考えればエリスにそれを言えただけ異世界経験が豊富なのも悪い事ではない――いや悪い事だが。 「お前はアイツの使い魔になって一緒にいるって決めたんだろ? だったら俺に聞く前に、まずお前が決めないとな。 今回だけじゃなく、また似たような事もあるかもしれねえし……その時にも俺がいるとは限らねえ」 「……!」 柊の言葉にエリスは雷に撃たれたように身を震わせる。 しかし柊は彼女の内情などを察する事もなく、肩を軽く叩いて語りかけた。 「お前が決めた上で相談するってんならいくらでも乗るし、協力だってするよ。……俺はお前の先輩だからな」 「……せんぱい」 再び歩き出した柊の背を見やって、エリスは改めてハルケギニアに来てから自分が柊に頼ってばかりだった事を思い知った。 だが、彼の言った通りルイズの使い魔になるのを決めたのは他ならぬ自分なのだ。 そして彼女とお互いに認められるような関係になろうとも誓った。 だから、ルイズがこれからどういう選択をするにせよ――この後どういう問題に直面するにせよ、まずは自分で決めておかなければならない。 (私は……) 「行こうぜ、エリス」 「……はい」 肩越しに振り向いて語りかけてきた柊を見やって、エリスは頷いて足を踏み出した。 ※ ※ ※ その夜、ニューカッスル城における最後の晩餐が盛大に催された。 恐らくはかつて彼等が行なっていた祝宴とは比べ物にならないほど質素な出来なのであろうが、 それでもそういったものとは縁がない柊やエリスにとっては盛大と言っても差し支えのない規模のものだった。 しかし柊にとっては同時に、これ以上ないほどの苦行の時間でもあった。 何しろトリステインの大使として壇上に上がり大々的に祭り上げられてしまったからである。 代わる代わる押し寄せてくる貴族や兵士達の挨拶を辟易しながらやり過ごし、ようやくお役御免となったのは一時間も経った後の事だった。 そして現在、柊は壁に背を預けて場内で繰り広げられる饗宴を見つめている。 先頃ウェールズに言われた事もあるだろうが、明日に潰える命と割り切って今を楽しむ彼等を見ていたたまれなくなったのだろう、ルイズは早々にこの場を後にし、エリスもそれを追って部屋へと戻っていった。 タバサは普段の影の薄さを利用でもしたのか、あまり誰からも相手をされず、そのくせちゃっかりと食うものだけ食ってさっさと姿を消してしまっていた。 そうして残ったのは柊と―― 「挨拶がすっかり遅くなってしまったな」 いっそ優雅と言ってもいいくらい軽やかな足取りで歩み寄ってきたワルドだった。 「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。明日までの付き合いになるだろうが、よろしくな」 「俺は柊 蓮司」 差し出された手を軽く握ると、少し力を込めて握り返された。 エリスからの話を聞く限り、こちらに対してはあまり良い印象を持っていないだろうことは予想できてきた。 「姫さんから護衛を頼まれたんだって?」 「ああ、王女殿下が寝所にお戻りになられる際に任を賜った。やはり護衛が平民一人とトライアングルとはいえ学生二人では心許ないと思われたのだろうな」 「……随分凄えタイミングだな」 あの時の密談が終わって部屋に戻る時に"たまたま"ワルドと出会い、そして任務を与えた。 いくらなんでもできすぎた話だろう。 しかしワルドは僅かに目を細め、不服と言わんばかりに柊を睨みすえた。 「そうでもなかろう。もしや君は、我々衛士隊が守るべき王女殿下が寝所より抜け出すのに気付かない、無能の集団だと思っているのか?」 「あ」 言われてみれば、と柊は思わず声を漏らしてしまった。 恐らくは箱庭育ちのアンリエッタが、護衛の兵士達を出し抜いて人知れずルイズの部屋まで辿り着くのは難しいだろう。 「敷地の外に出るようならお止めもしたが、寮ならばと見逃した。立場上同年代の少女達と話す機会など滅多になかろうからな。 とはいえ、やはり立場は立場。お戻りになられる時にお諌め申し上げたのだが、その時にな」 「……。すまねえ」 「構わんよ。任務が任務だけに、疑ってかかって然るべきだ。私が先に任を受けていれば当然君を疑ったし、連れて行きもしなかった」 やはり君は優秀な傭兵だな、と言い添えた上で、ワルドは声を低めて柊に言う。 「しかし、ルイズを置き去りにした点だけは看過はできない。効率の上では正しいのだろうが、王女殿下からの依頼である以上、傭兵の理屈だけで動く事は許されん。 先程の王子殿下の部屋でのやり取りもそうだ」 「……覚悟もしねえで勢いだけで戦争やらせろってのか?」 「彼女はラ・ヴァリエールなのだ、受け入れる度量はある。時期尚早ならば支えてやればよいだけの話……それが騎士たるものの役目だ。君は彼女の騎士にはなれん」 「騎士なんかなる気はねえよ」 射抜くようなワルドの視線に内心で辟易しながら柊が言うと、ワルドは眉を潜めてふんと鼻を鳴らした。 そして彼は柊に向かって手を差し出し、言う。 「ルビーと手紙を返してもらおう。アレはルイズが持つべきものだ」 「あ? 何言ってんだ、渡せるわけないだろ」 柊が嘆息しながら返すと、ワルドは僅かな怒気に顔を歪め、語気を強めて語る。 「ルイズに手ぶらで帰れというのか? 貴様は彼女の誇りを傷つけ、ヴァリエールの名に泥を塗るつもりか?」 「……ち」 思わず柊は顔を顰めて舌打ちしてしまった。 何かと言えば貴族だ家名だ誇りだと喧しくてしょうがない。 これに比べれば魔法学院にいる生徒達の方が遥かに可愛げがあった。 いい加減億劫になって柊は懐から水のルビーを取り出し、ワルドに放るように手渡した。 「これでいいだろ。姫さん……王女殿下から賜った証なんだからよ」 「……手紙はどうした」 「お前もあの時あそこにいたろ。王子さんは俺に手紙を渡して『頼む』と言った。お前だろうとルイズだろうと、この国の王様だろうと手紙は渡さねえよ」 「……不愉快な男だ。貴様はルイズの傍にいる事すらおこがましい」 明らかに敵意を滲ませてワルドはそう吐き捨て、水のルビーを握り締めて踵を返した。 一顧だにせず遠ざかっていく彼の背中を見送りながら、柊はもう一度舌打ちをして背を預けた壁にもたれかかる。 アレが一般的な貴族というものだとしたら、正直上手くやっていけそうもない。 ワルドの言ではないが、ルイズの傍にいると『そういう世界』に関わる事になりそうなので甚だ不安になってくる。 そんな暗澹とした未来予想図を垣間見て柊が気落ちしていると、不意に肩を軽く叩かれた。 「随分と疲れているようだね」 どこか楽しげに語りかけてくる青年――ウェールズの姿を見止めると、柊は肩を落として答える。 「……まあ色々とな」 「まあ普通平民がこのような場に出る事などまずないし、大使として壇上に上がるなどという事もないだろうからな」 それだけが理由という訳でもないが、別に説明する意味もないので柊は沈黙を保った。 するとウェールズにそれを肯定と受け取ったのだろう、破顔して持ってきていたワイングラスを柊に差し出した。 「しかし、流石に父と謁見までしては壇上に上がらせざるを得ないよ。この城に辿り着くまでに運を使い果たしてしまったようだね」 「……そうかもな」 愉快そうに笑うウェールズからグラスを受け取り、杯を合わせて半ば自棄気味にそれを飲み干す。 普段からあまり運の良い方ではないの思っていたが、今回に限って城の隠し港の存在を知りそしてここまで無難に辿り着けてしまったのだからウェールズの言葉を否定できなかった。 「しかし、よくもあの港の存在を突き止めたものだ。よほど王家に近くなければ知りえないはずなのだが……案内したミス・ロングビルとやら、一体何者なのだ?」 「……さあ。詳しくは俺も知らねえけど」 マチルダは今この場にはいない。どころか、パーティに参加してすらいなかった。 王との謁見の際も、ウェールズとの会見の際も、単なる案内人だからなどといって執拗に接触を拒んでいた。 王家に近しい者しか知らない港の存在を知っており、そして最近まで"土くれ"のフーケという盗賊に身をやつしていた経緯を考えれば、彼女にはかなりの事情があるのだろう。 そうなるとむしろ気になるのは、何故この場についてきたのか、だ。 単なる義理でついてきたとは到底思えなかった。 「元々あの人は魔法学院で教員やってたんだが、色々あって退職してな。んで、サウスゴータでばったり出くわしたんだよ」 「……サウスゴータ」 当たり障りのないように説明したつもりだったが、しかしウェールズの反応は違った。 彼は眉根をひそめ、顎に手を添えて何事かを考えるように頭を傾ける。 「……心当たりでもあったか?」 「……いや」 僅かな沈黙の後ウェールズは答えたが、その時見せた表情は言葉とは裏腹のものだった。 柊は思わずウェールズを覗き込んだが、彼はすぐにその表情を消して場内へと視線を巡らせた。 「それはそうと、やはりミス・ヴァリエールは退席してしまったようだな」 どうやらマチルダの事に関してはもう話すつもりはないらしい。 「……まあ、あんだけショック受けてりゃな」 柊がとりあえずそう答えると、 「彼女には酷な事を言ってしまったか」 ウェールズは物憂げな表情を浮かべて視線を落とし、空になったワイングラスを見つめた。 「だが彼女がまことに虚無を継いでいるのなら、いずれ否応なくそういう類の問題に直面する事になるだろう。乗り越えてくれるといいのだが」 言ってウェールズは口を閉ざした。 二人して喧騒に満ちた場内をしばし眺めた後、ふと柊は視線をウェールズに向けないまま尋ねた。 「王子さん。一つ聞いてもいいか?」 「ん? なんだ?」 「……もしルイズが"あの時"ちゃんと全部わかった上で協力を申し出ていたら、どうしてた?」 するとウェールズは僅かに目を細め、やはり柊には目を向けないまま答える。 「その時は助力を請うていただろう」 実際に参加させるかは置くとして、少なくとも実際の虚無がどれほどのものなのか確認はしていた。 しかし―― 「あのような顔をされてはな。おそらく彼女は人はおろか、動物の類さえ手にかけたことはあるまい」 「いいトコのお嬢さんみてえだしな……」 イーグル号において大使と名乗ってみたり、アンリエッタのために亡命を薦めようとしてみたり、彼女が正直すぎる事は容易に見て取れていた。 先んじて始祖の秘宝の貸与を拒否して見せたのも、彼女の『正直』な反応を見るためでもあった。 もしあの時に形だけでも取り繕い、受け入れる旨を告げられていれば話は違ったのだろうが―― 「もはや手遅れだ。実際"そうなった"時に出る被害の規模を考えれば、半日足らずの覚悟で担えるものではない。 "この後"彼女が協力を申し入れたとしても、私は聞き入れるつもりはない」 断言したウェールズに柊は何もいう事ができず、黙り込む事しかできなかった。 すると今度はウェールズが柊に向かって問いかける。 「逆に問うが、もしミス・ヴァリエールがあの時に協力を申し入れていたら、君はどうしていた?」 「そりゃ、手を貸したさ」 間をおかない返答にウェールズは驚きに目を見開き、そして口の端を歪めた。 「即答か。パリーも言っていたが、君は本当に忠義心に溢れているのだな。このような時でなければ是非親衛隊に名を連ねたい所だった」 「だから、そう言うんじゃなくってなぁ……」 先程のワルドとは全く違う方向性ではあるが、またしても出てきたその手の言葉に柊は辟易した風に嘆息し、頭を掻いた。 「忠誠だとか、貴族とか王家の何だとかそういうんじゃねえんだよ」 言って柊は腕を組み、やや不本意といった表情を浮かべて言葉を続ける。 「なんだかんだ言って俺もエリスもアイツの世話になってっから、手助けくらいはするってだけだよ」 「……」 するとウェールズは目を丸め、呆気に取られたように柊をまじまじと見つめた。 やがて彼は――唐突に大きな声を上げて笑い始める。 隣にいた柊は勿論、会話に立ち入る事を憚ってあえて見ぬ振りをしていた周囲の者達も思わず目を向けてしまうような、そんな大笑いだった。 「な、なんだよ……!」 「は、はははっ! いや、まさか……くくっ、『世話になった』と、そんな理由で五万の軍勢に立ち向かうというのか! 恐ろしい男だな君は!」 おかしなことを言ったつもりはないのに爆笑されて、柊は憮然となって顔を逸らしてしまった。 そんな柊をよそにウェールズは少しの間苦しそうに笑い続け、ややあってようやく笑いを収めると呼吸を整えるように幾度か深呼吸した。 そして最後に大きく息をつくと、気の晴れた表情で柊を見据えた。 「できるなら、もう少し早くに出逢いたかったな。親衛隊のような主従ではなく……そう、貴族や王家の何だとかではなく、一人の人間として友誼を交わしてみたかった」 「……そんなの、今からでも遅くねえだろ?」 嘆息して言った柊の言葉に、ウェールズははっと息を呑み、そして眩しそうに目を細める。 「……本当に、恐ろしい男だ」 言って彼は自らの指にはめた風のルビーを抜き取り、柊に差し出す。 振り向いた柊がそれを受け取ると、ウェールズは静かに告げた。 「ならば友人として、君に頼もう。それをアンリエッタに渡してくれ。『ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいった』と」 「……ああ」 「ミス・ヴァリエールを頼む。そしてできるなら……彼女と共に、アンリエッタを助けてやって欲しい」 「……。余裕があったらな」 ウェールズを見据えたまま柊は僅かに沈黙し、そう答えた。 それを聞いてウェールズは満足そうに笑みを浮かべる。 その返答は、彼が受け取った柊の印象からすればこの上なく十分なものだった。 ※ ※ ※ パーティの喧騒が細波のように響く中、城内の通路を一人の男が歩いていた。 その道中に兵士や避難民の幾人かとすれ違ったが、いくらか酒が入っている事もあって男の事を気にする風もない。 やがて男は人気が完全に途絶えた、とある部屋までやってきた。 頑丈な錠がかけられているが、見張りの兵士はいない。 男は思わず苦笑を浮かべてしまった。 この部屋は王党派が王都を追われた際に持ち出した宝物が収められた、臨時の宝物庫なのである。 錠はともかくとして見張りがいないなど言語道断というべきだろう。 とはいえ、わからない話ではない。 何しろ明日には滅んでしまうのだ、この期に及んで後生大事に宝物を抱える意味などもはやない。 そして艦艇に乗って脱出する非戦闘員は百人近くに及び、非常用の食料や物資も載せれば舟が二隻あっても宝物を載せる余裕はない。 つまり彼等にとってこの部屋と、その中にあるものは無用の長物なのだ。 ――宝物より避難民達を優先させたという点において、アルビオン王家は尊敬に値すると言ってもいいだろう。 もっとも、男にとってそんな事はどうでもいいことなのだが。 男が手にした杖を軽く振ると、錠は土に変貌しあっさりと崩れ去った。 仮にも王家の宝物庫の錠である以上、それには強力な『固定化』がかけられていたのだが、男にとっては何ら障害にもなりはしない。 通路に人影がないのを確認してから、男は宝物庫の中に足を踏み入れる。 既に半分ほどは物資として持ち出してしまったのだろう、宝物庫の中は王家のそれとは思えないほど閑散としていた。 男はそれらを一つづつ見やりながら部屋の中を巡る。 やがて男は棚にあった30セント程の大きさの箱へと辿り着いた。 それを手に取り、音を立てぬよう静かに開く。 中には絹に包まれたオルゴールが入っていた。 いっそ収められていた箱の方が高価と思えるくらいに、何の変哲もないオルゴールだった。 男はそれを恭しく手に取ると、歪に口の端を歪めた。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い