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亜人盟約(檀語:ptaiex-ziidagaiu、プタイエシ=ツィーダガイユ)とはニーネン=シャプチ主導の下、タシュトヘム宙圏を中心に結成された陣営である。 亜人による権利保障を目標とし、亜人(爬虫類人、獣人、鳥人など)の種族を保護、権利向上を標榜に掲げている。他方では民族主義的な団結と見なすこともある。 第二次宇宙大戦後、ヴァルエルク共和国主導の戦争裁判によって解体処理された。 目次 概要 加盟国 成立までの歴史タシュトヘム宙圏安全保障条約 ガニュー経済体制協力機構 下部組織タシュトヘム宙圏安全保障条約機構 ガニュー経済体制協力機構 関連項目 概要 亜人盟約の目的は亜人による権利保障を目標とする。この時の「亜人」とは大宇宙銀河に普遍的に見られるヒューマノイド種族ではなく、むしろそれ以外の(ニーネン人類を含む)様々な種族・人種のことを指す。 国際的な振る舞いとしてはタシュトヘム宙圏の地理的な安全保障の側面が強く、専門家によれば「亜人の保護はあくまで大義名分に過ぎず、本質的にはタシュトヘム諸国家の安全保障が目的である」という意見もある。 また、とりわけ反ヴァルエルク共和国路線を取ることが多い陣営としても知られているが、盟主のニーネン=シャプチはヴァルエルクに対してやや穏健な態度を取る。 加盟国 ニーネン=シャプチ 亜人盟約の盟主。 ロフィルナ連邦共同体 ギゼヴトラ・ZHL条約に調印しておらず、ZHL兵器を保有していると見られる。ヴァルエルク共和国とは険悪な関係の時代の方が多い。 サニェーラ独立国 交通インフラ国家。中立的な外交路線ではあるが、ヴァルエルク共和国に対しては極めて強硬な姿勢を見せる。 アクース連合 労働組合による政治を行っている。国家社会主義系統・開発独裁制の多い亜人盟約では協調を取りやすい。 成立までの歴史 タシュトヘム宙圏安全保障条約 シンテーア暦1665年 サニェーラ、ニーネン=シャプチ、ロフィルナの三国間で締結された条約。 サニェーラ独立国銀河鉄道庁が運輸産業における国際的な安全保障に関する担保を国内で提案したことが発端となり、三国間の首脳会談が行われ、草案が決定されたことで締結された。 三国間で相互軍事同盟が締結され、「相互の緊密な連携」が強調された。また、メルベルトゥルス常任最高議長の決定によりロフィルナ側はベロゼア鉱石の輸出を、ラーオル最高国家指導者の決定によりサニェーラ側は装甲列車の一部譲渡をそれぞれ行うなどして歩み寄りを見せた。 ガニュー経済体制協力機構 シンテーア暦1680年 下部組織 タシュトヘム宙圏安全保障条約機構 1665年に締結・発効された条約を元に結成された組織。相互軍事同盟のために軍事面や交通インフラ面での調整を行う組織である。 亜人盟約の前身の組織として位置づけられることもある。 ガニュー経済体制協力機構 1680年に締結・発効された条約を元に結成された組織。元々は1679年のジエール帝国連邦でのダーケフオス危機の救済を行うための関税同盟であったが、その役割を終えた後はタシュトヘム宙圏安全保障条約機構加盟国の関税同盟として調整され、ニーネン=シャプチ、ロフィルナ、サニェーラの経済協力の場となった。 現在ではアクース連合が加わり、各国の生産力や亜人盟約全体の資源算出量向上へとつながった。 関連項目 大宇宙の陣営
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現在発売されているDVD版の声優と、日本初放映時の声優が異なっているのは権利関係が原因。 日本初放映時の放映・版権は、製作元のMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)が持っており、日本での放映・販売権をトランスグローバル社が持っていた。 しかし、1985年にMGMをテッド・ターナー氏が買収。 *1 (現在MGMを名乗っているのは、かつてのユナイテッド・アーティスツ) その結果、1985年以前のMGM作品の権利は、米・タイム・ワーナーグループのターナー・エンタテインメントが保有することになった。 *2 CS放送のカートゥーン・ネットワークもターナ・エンタテイメントの傘下である。 更に考察すると、日本国内ではシリーズ毎に放送局が変わっており、テレビ局間の利権も関係しているのではないかとも推測される。 ※1 テッド・ターナー(Ted Turner、本名 Robert Edward "Ted" Turner III) アメリカのメディア業界人。実業家。CNNの創業者。 ※2 タイム・ワーナー(Time Warner Inc.,NYSE TWX) アメリカの総合メディア企業。雑誌「タイム」や映画会社「ワーナー・ブラザーズ」、ニュース専門チャンネル「CNN」、「AOL」などを擁する複合企業体。 予備知識の部屋に戻る
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子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算(第4条)(後編) (子どもの権利と公共予算 前編より続く) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則 57.前掲第II節で明らかにしたように、委員会は、締約国には、自国の予算編成過程において、子どもの権利を実現するのに十分なやり方で歳入創出および支出管理を進めるための措置をとる義務があることを強調する。委員会は、子どもの権利を実現するための十分な資源の確保を達成するには、条約の一般原則および予算原則(有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性)を考慮することも含め、多くの方法があることを認識するものである。条約の締約国は、子どもの権利を実現する予算上の義務を果たすことについての説明責任を有する。 58.委員会は、条約の一般原則および以下の予算原則を自国の予算編成過程に適用することに関して各国がすでに専門的知見および経験を有していることを認識する。締約国は、優れた実践の共有および交流を進めるよう奨励されるところである。 A.有効性 59.締約国は、子どもの権利の増進につながるような方法で計画、策定、執行およびフォローアップを進めるべきである。締約国は、自国の文脈における子どもの権利の状況を理解することに対して投資するとともに、子どもの権利の実現に関わる課題の克服のために戦略的に立案された立法、政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう求められる。締約国は、予算がさまざまな集団の子どもたちにどのような影響を与えているかを常に評価するとともに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、自国の予算決定が最大多数の子どもたちにとって可能なかぎり最善の結果につながることを確保するべきである。 B.効率性 60.子ども関連の政策およびプログラムのために投入される公的資源は、費用に値する価値を確保するような方法で、かつ子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務を念頭に置きながら、管理されるべきである。承認された支出は策定された予算にのっとって執行することが求められる。子どもの権利を増進させるための財およびサービスは、透明なやり方でかつ時機を失することなく調達されかつ提供されるべきであり、また適切な質を備えているべきである。さらに、子どもの権利に対して配分された資金は無駄に使用されるべきではない。締約国は、効率的な支出の妨げとなる制度的障壁を克服する努力を行なうべきである。公的資金の監視、評価および監査は、健全な財務管理を促進するチェック・アンド・バランスとなるようなものであることが求められる。 C.公平性 61.締約国は、資源の動員または公的資金の配分もしくは執行を通じ、いかなる子どもまたはいかなるカテゴリーに属する子どもたちも差別してはならない。公平な支出とは、必ずしも子ども1人ひとりに同じ金額を支出することを意味するわけではなく、むしろ子どもたちの実質的平等につながるような支出決定を行なうことを意味する。資源は、平等を促進するため、対象の公正な設定に基づいて用いられるべきである。締約国には、子どもが自己の権利にアクセスするさいに直面する可能性があるすべての差別的障壁を取り除く義務がある。 D.透明性 62.締約国は、厳格な検討に対して開かれた公的財務管理の制度および実践を発展させかつ維持するべきであり、公的資源に関する情報は時宜を得たやリ方で自由に利用可能とされるべきである。透明性は、効率性ならびに汚職および公的予算の誤った管理との闘いに寄与し、ひいては子どもの権利の増進のために利用可能な公的資源を増やすことにつながる。透明性はまた、行政府、立法および市民社会(子どもたちを含む)が予算編成過程に意味のある形で参加できるようにするための前提条件でもある。委員会は、締約国が、子どもに関連する公的な歳入、配分および支出についての情報へのアクセスを積極的に促進すること、ならびに、立法府および市民社会(子どもたちを含む)の継続的関与を支援しかつ奨励する政策を採択することの重要性を強調するものである。 E.持続可能性 63.現在および将来の世代の子どもたちの最善の利益が、あらゆる予算決定において真剣に考慮されるべきである。締約国は、子どもの権利を直接間接に実現することを目的とした政策の採択およびプログラムの実施が継続的に行なわれることを確保するような方法で、歳入を動員し、かつ公的資源を管理することが求められる。締約国が子どもの権利に関連する後退的措置をとれるのは、前掲パラ31で述べたような場合のみである。 V.公共予算における子どもの権利の実施 64.委員会は、本節において、公的予算編成過程を構成する以下の4つの段階との関連でどのように子どもの権利を実現すればよいかについて、より詳細な指針および勧告を提示する。 (a) 計画 (b) 策定 (c) 執行 (d) フォローアップ 〔訳者注/図は略。PDFファイル参照〕 65.本節で焦点を当てるのは国レベルおよび国内下位レベルの公共予算編成過程だが、委員会は、国際協力を通じて条約の実施を促進することも締約国の義務であることを強調する [19]。このような協力は、該当するときには、国レベルおよび国内下位レベルの予算で目に見えるようにされるべきである。 [19] 前掲第II節および条約第45条参照。 66.委員会はまた、条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、予算編成過程全体を通じて部門横断型の、省庁間および機関間の効果的な調整および協力を図ることが重要である点も強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルでそのような調整を維持するために、資源を利用可能としかつ情報システムの整備を図るべきである。 A.計画 1.状況の評価 67.予算の計画のためには、経済状況についてならびに現行の立法、政策およびプログラムがどの程度十分に子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足しているかについて、現実的な評価を行なうことが必要である。国は、マクロ経済、予算および子どもの権利の状況の現状および将来の見通しの双方について、信頼できる、時宜を得た、アクセス可能な、包括的なかつ細分化された情報およびデータを、再利用可能な形式で保持しなければならない。このような情報は、直接間接に子どもの権利を対象とし、かつこれを増進させる立法、政策およびプログラムを策定するために根本的重要性を有する。 68.締約国は、予算の計画にさいし、過去(少なくとも過去3~5年)、現在および将来(少なくとも今後5~10年)の状況を考慮に入れながら、さまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の状況を詳しく検討するべきである。子どもたちの状況についての信頼性がありかつ有益な情報へのアクセスを確保するため、締約国は以下の措置をとるよう促される。 (a) 子どもに関わる人口動態データその他の関連データの収集、処理、分析および普及のために設置されている統計機関および統計制度の権限および資源を定期的に再検討すること。 (b) 子どもたちの状況に関して利用可能な情報が、さまざまな集団の子どもたちおよび条約第2条の差別の禁止の原則を考慮するうえで有益なやり方で細分化されることを確保すること(前掲第III節Aも参照)。 (c) 子どもたちの状況に関する、利用者にやさしくかつ細分化されたデータを、国レベルおよび国内下位レベルで予算編成に関与する行政府職員および立法府議員ならびに市民社会(子どもたちを含む)に対し、時宜を得た方法で利用可能とすること。 (d) 子どもたちに影響を与えるすべての政策および資源のデータベースを設置しかつ維持することにより、対応するプログラムおよびサービスの実施および監視に関与する人々が、客観的なかつ信頼できる情報に継続的にアクセスできるようにすること。 69.締約国は、以下の措置をとることにより、予算決定が子どもたちに与えた過去の影響および今後与える可能性のある影響を調査するべきである。 (a) 過去の公的歳入徴収、予算配分および支出が子どもたちに与えた影響についての会計検査、評価および研究を実施すること。 (b) 子どもたち、その養育者および子どもの権利のために活動している人々との協議を行ない、かつ、予算決定において当該協議の結果を真剣に考慮すること。 (c) 予算年度全体を通じて子どもたちと恒常的に協議するための現行の機構を再検討し、またはそのための新たな機構を創設すること。 (d) 子どもの権利に関わる効果的な予算計画を支えるために新たな技術を活用すること。 2.立法、政策およびプログラム 70.財政問題、予算編成手続または子どもの具体的権利に関連する立法、政策およびプログラムは、子どもたちに直接間接の影響を及ぼす。締約国は、すべての立法、政策およびプログラムが条約およびその選択議定書にしたがったものとなり、子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の現実を反映し、かつ子どもたちを害しまたはその権利の実現を妨げないことを確保するため、あらゆる可能な措置をとらなければならない。 71.委員会は、マクロ経済および財政に関する立法、政策およびプログラムが、子どもたち、その保護者および養育者に直接間接の影響を及ぼしうることを認識する(保護者等は、たとえば労働立法または公的債務管理による影響を受ける可能性がある)。締約国は、子どもの権利の実現が損なわれないことを確保する目的で、あらゆる立法、政策およびプログラム(マクロ経済および財政に関するものを含む)について子どもの権利影響評価を実施するべきである。 72.子どもに関連する立法、政策およびプログラムは、国際開発協力に関する決定およびその運営ならびに国際機関における締約国の構成員資格の一部に位置づけられるべきである。国際的な開発協力または金融協力に関与する国は、当該協力が条約およびその選択議定書にしたがって進められることを確保するためにあらゆる措置をとるよう求められる。 73.委員会は、必要な財源の水準を確認すること、および、予算計画担当者ならびに行政府および立法府の関連の意思決定担当者が実施のために必要な資源について十分な情報に基づく決定を行なえるようにすることを目的として、締約国が、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムの提案について費用見積もりを行なうことの重要性を強調する。 3.資源の動員 74.委員会は、子どもの権利のために利用可能な資源を維持するうえで、歳入動員および資金借入れに関する締約国の立法、政策およびプログラムが重要であることを認識する。締約国は、税および税外収入等を通じて国レベルおよび国内下位レベルで国内資源を動員するため、具体的かつ持続可能な措置をとるべきである。 75.締約国は、子どもの権利を実現するために利用可能な資源が不十分であるときは、国際協力を求めなければならない。そのような協力においては、受入国とドナー国の双方とも、条約およびその選択議定書を考慮に入れることが求められる。委員会は、子どもの権利の実現のための国際的または地域的協力には、対象を明確にしたプログラムに対する資源の動員、および、徴税、脱税との闘い、債務処理、透明性その他の問題に関連する措置も含まれうることを強調するものである。 76.子どもの権利に関する公的支出のための資源の動員は、それ自体、第IV節に掲げた予算原則を遵守するやり方で行なわれるべきである。資源動員システムにおいて透明性が欠けていれば、非効率、誤った財務管理および汚職につながる可能性がある。これが、ひいては、子どもの権利に支出するために利用可能とされる資源が不十分になってしまうことにつながりうるのである。家庭の支払い能力を考慮しないさまざまな税制は、不公平な資源動員につながりうる。そのために、すでに乏しい財源しか有していない人々(そのなかには子どもを養育している人々もいる)が不相応な歳入負担を負うことになりかねない。 77.締約国は、以下の措置をとることにより、自国が負う実施義務と一致するやり方で利用可能な資源を最大限に動員するべきである。 (a) 資源の動員に関連する立法および政策について子どもの権利影響評価を実施すること。 (b) 歳入の垂直的な(国の異なる段階間の)分配および水平的な(同じ段階における諸部局間の)分配の双方に関する政策および方式を債券投資、かつ、これらの政策および方針において居住地域が異なる子どもの間の平等が支持されかつ増進させられることを確保すること。 (c) 租税に関する立法、政策および制度を立案しかつ運営する自国の能力を再検討しかつ強化すること(脱税を回避するために諸国間で協定を締結することも含む)。 (d) あらゆる段階で、非効率または誤った管理を理由とする資源の無駄を防止し、かつ汚職または不法な実務と闘うことにより、子どもの権利を前進させるために利用可能な資源を保全すること。 (e) 第IV節に掲げた予算原則をあらゆる資源動員戦略において適用すること。 (f) 自国の歳入源、支出および負債が現在および将来の世代にとっての子どもの権利の実現につながることを確保すること。 78.委員会は、国が債権者および貸方に代わって行なう持続可能な債務管理が、子どもの権利のための資源の動員に寄与しうることを認識する。持続可能な債務管理には、借入れおよび貸付けに関する明確な役割および責任を定めた透明な立法、政策および制度の整備、ならびに、債務の管理および監視が含まれる。委員会はまた、持続可能性を欠いた長期債務が、子どもの権利のために資源を動員する国の能力にとっての障壁となりえ、かつ、子どもに悪影響を与える課税および受益者負担につながる可能性があることも認識するものである。したがって、債務協定との関連でも子どもの権利影響評価を実施することが求められる。 79.債務救済は、子どもの権利のために資源を動員する国の能力を高めうる。締約国が債務救済を受けたときは、当該救済の結果として利用可能となった資源の配分に関する決定において、子どもの権利が真剣に考慮されなければならない。 80.締約国は、天然資源の通じた資源動員に関する決定を行なうさい、子どもの権利を保護しなければならない。たとえば、そのような資源に関する国内的および国際的取決めにおいては、それが現在および将来の世代の子どもたちに及ぼす可能性のある影響が考慮されるべきである。 4.予算編成 81.予算編成方針および予算案は、国にとって、子どもの権利に対する自国の決意を、国レベルおよび国内下位レベルの具体的な優先課題および計画として実現していくための強力な手段である。締約国は、以下の措置をとることによって、予算関連の方針および提案を、子どもに関わる予算の効果的な比較および監視を可能にするような方法で作成することが求められる。 (a) 分野別分類(部門または下位部門)、経済的分類(経常費および資本支出)、行政上の分類(省庁)およびプログラム別分類(プログラムに基づく予算編成手法が活用されている場合)などの国際的に合意された予算分類システムを、それが子どもの権利と両立するかぎりで遵守すること。 (b) この一般的意見との一致を確保する目的で、予算編成方針および予算案の作成に関する行政上の指針および手続(標準ワークシートおよび協議対象関係者に関する指示など)を再検討すること。 (c) 分類システムをさらに再検討することにより、そこに、最低限、後掲パラ84に掲げたすべてのカテゴリーにしたがって予算情報を細分化した予算項目および予算コードが含まれることを確保すること。 (d) 自国の予算項目および予算コードが国レベルおよび国内下位レベルで対応していることを確保すること。 (e) 利用者にやさしく、時宜を得ており、かつ立法府、子どもたちおよび子どもの権利擁護者にとってアクセス可能な予算編成方針および予算案を公表すること。 82.予算編成方針および予算案には、子どもの権利に関わる自国の義務を国がどのように果たそうと計画しているかについての必須情報を伝えるものである。締約国は、予算編成方針および予算案を活用して以下の措置をとることが求められる。 (a) 子どもたちに影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように資金の手当てをされ、かつ実施されているかについて説明すること。 (b) どの予算配分が子どもたちを直接対象としたものか、明らかにすること。 (c) どの予算配分が子どもたちに間接的に影響を与えるか、明らかにすること。 (d) 過去の予算が子どもたちに与えた影響についての評価および監査で得られた知見を提示すること。 (e) 子どもの権利を前進させるために最近とられた措置またはこれからとられようとしている措置の詳細を示すこと。 (f) 子どもの権利に関わる支出のために利用可能な資源の過去の状況、現在の状況および将来の見通しならびに実際の支出についての財務データおよび解説を提示すること。 (g) 成果および子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)への影響に関する監視ができるよう、子ども関連のプログラム目標を予算配分および実際の支出と関連づける実績達成目標を定めること。 83.予算編成方針および予算案は、子どもの権利関連の団体、子どもたちおよびその養育者にとって重要な情報源である。締約国は、この点に関わる利用者にやさしくかつアクセス可能な情報を作成し、かつそれを公衆に向けて普及することにより、自国の管轄内にある人々への説明責任をいっそう果たすことが求められる。 84.明確な予算分類システムは、子どもたちに影響を与える予算配分および実際の支出が予算原則との関連でどのように運用されているかについて、国およびその他の主体が監視するための基盤となる。そのためには、最低限、予算項目および予算コードにおいて、計画されている支出、予算として策定された支出、改訂された支出および実際の支出であって子どもたちに影響を与えるもののすべてが、以下の要素によって細分化されていなければならない。 (a) 年齢(年齢層の定め方が国によって異なっていることは認識する)。 (b) ジェンダー。 (c) 地域(たとえば国内下位レベルの地域分類による)。 (d) 権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの現在の分類および将来的に考えられる分類(条約第2条を考慮するものとする。第III節Aも参照)。 (e) 歳入源(国レベル、国内下位レベル、国際地域レベルまたは国際レベルのいずれであるかを問わない)。 (f) 国レベルおよび国内下位レベルの担当部局(省庁など)。 85.締約国は、予算案において、子ども関連のプログラムのうち民間部門への委託を提案するものまたはすでに委託済みのものがあればそれを明らかにするべきである [20]。 [20] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、パラ25参照。 86.委員会は、予算における子どもの権利の可視化に関してもっとも進んだ取り組みを行なっている国では、予算編成に対するプログラム基盤アプローチを適用する傾向があることに留意する。締約国は、このアプローチに関する経験を共有し、かつ、それを自国の状況に適用しかつ適宜修正するよう促されるものである。 B.策定 1.立法者による予算案の吟味 87.委員会は、国レベルおよび国内下位レベルの立法者が、子どもたちの状況についての詳細かつ利用者にやさしい情報にアクセスでき、かつ、予算案がどのように子どもの福利の向上および子どもの権利の増進を図ろうとしているかについて明確に理解することの重要性を強調する。 88.国レベルおよび国内下位レベルの立法者には、子どもの権利の視点から予算案を吟味し、かつ、必要なときは、さまざまな集団の子どもたちにとって予算配分がどのような影響を持ちうるかについて究明するための分析または調査研究を実施しまたは委託するための、十分な時間、資源および自律的権限も必要である。 89.立法者が子どもの最善の利益に奉仕するという監督者としての役割を果たせるようにするため、立法機関およびその委員会の構成員には、予算案が条約の一般原則および予算原則と一致するやり方で子どもの権利を前進させることを確保する目的で、予算案について質問し、これを検討し、かつ必要なときは予算案の修正を要請する権限が認められるべきである。 90.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府(関連の立法委員会を含む)について以下のことを確保することにより、立法府の構成員が、予算立法の成立前に、予算案がすべての子どもたちに与える影響について分析しかつ討議するための準備を十分に整えられるように貢献するべきである。 (a) 子どもたちの状況に関する、わかりやすく利用しやすい情報にアクセスできること。 (b) 子どもたちに直接間接に影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように予算項目に移し替えられているかについて、行政から明確な説明を受けること。 (c) 予算過程において、予算案を受け取り、これについての検討および討議を行ない、かつ子どもに関連する修正を策定前に提案するための十分な時間を与えられること。 (d) 予算案が子どもの権利にとって持つ意味合いに光を当てる分析を独立の立場から行ないまたは委託する能力を持つこと。 (e) 市民社会、子どもの擁護者および子どもたち自身を含む国内の関係者を対象として、予算案に関わる公聴会を開催できること。 (f) たとえば立法府の予算局を通じて、前掲(a)から(e)で述べたような監督活動を行なうために必要な資源を有すること。 91.締約国は、予算の策定段階において、国レベルおよび国内下位レベルの予算に関して以下のような文書を作成しかつ配布するべきである。 (a) 一貫した、かつわかりやすいやり方で予算情報を分類していること。 (b) 他の予算案および支出報告書との矛盾を回避することにより、分析および監視の便が図られること。 (c) 子どもたちおよび子どもの権利擁護者、立法府および市民社会がアクセス可能な刊行物または予算概略を含んでいること。 2.立法府による予算の策定 92.委員会は、立法府によって策定される予算が、計画されている支出および実際の支出との比較ならびに子どもの権利との関連における予算の実施の監視を可能にするようなやり方で分類されることの必要性を強調する。 93.策定された予算は、国ならびに国レベルおよび国内下位レベルの立法機関にとってきわめて重要な公文書と見なされるのみならず、子どもたちおよび子どもの権利擁護者を含む市民社会もアクセスできるようにされるべきである。 C.執行 1.利用可能な資源の移転および支出 94.締約国は、子どもの権利を前進させるための財およびサービスが購入されるさいに金額に応じた最大の価値が確保されるようにするため、透明かつ効率的な財務機構および財務制度を採用しかつ維持するべきである。 95.委員会は、締約国には、公共支出が有効性および効率性を欠いていることの根本的原因(たとえば、財またはサービスの質の貧弱さ、財務管理または調達のための制度の不十分さ、漏損、時機を失した移転、役割および責任の不明確さ、情報吸収・応用力の弱さ、予算情報システムの貧弱さならびに汚職など)を明らかにしかつ是正する義務があることを強調する。締約国は、子どもの権利を前進させるための資源を浪費したときまたはその管理を誤ったときは、これがなぜ生じたかを説明し、かつ原因にどのように対応したかを示す義務を負う。 96.子どもたちを対象とする政策およびプログラムには、所期のすべての受益者を予算年度内に計画どおりに網羅することができず、または意図していなかった結果につながる可能性もある。締約国は、必要なときに介入を図り、かつ迅速な是正措置をとることができるよう、執行段階において支出の成果を監視するべきである。 2.予算に関する中期報告 97.締約国は、策定された予算で定められているように子どもの権利を前進させるうえで見られた進展を国および監督機関が追跡できるようなやり方で、子どもに関連する予算についての恒常的な監視および報告を行なうべきである。 98.委員会は、予算報告が時宜を得たやり方で公に利用可能とされること、および、当該報告において、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムに関連して策定された予算、修正された予算ならびに実際の歳入および支出との間にある食い違いを浮き彫りにすることの重要性を強調する。 99.委員会は、締約国が、子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析が可能になる予算分類システムを活用すべきであることを強調する。 3.予算の執行 100.締約国は、さまざまな集団の子どもを対象とする歳入徴収ならびに実際の支出の対象範囲および成果を、予算年度中および複数年次について、かつ、たとえばサービスの利用可能性、質、アクセス可能性および公正な配分の観点から、監視しかつ分析するべきである。締約国は、そのような監視および分析(民間部門に外部委託されたサービスに関するものを含む)を実施するための資源および能力が整えられることを確保するよう促される。 101.締約国は、策定された予算の実施状況を恒常的に監視し、かつ公に報告するべきである。これには以下の措置が含まれる。 (a) さまざまな社会部門を横断する形で、さまざまな行政段階において予算で策定された内容と実際に支出された内容とを比較すること。 (b) 予算年度の中間期までに実際に行なわれた支出、動員された歳入および生じた債務を網羅した包括的な中期報告書を刊行すること。 (c) 中期報告書をより頻繁に(たとえば毎月または四半期ごとに)刊行すること。 102.締約国は、子どもたちを含む市民社会が公的支出の成果を監視できるような、公的な説明責任を確保するための機構を設置する義務を負う。 103.締約国は、子どもの権利に関わる実際の支出との関連で規則および手続が守られること、ならびに、説明責任の履行および報告に関する手続が遵守されることを確保するための、内部的な統制および監査の手続を整備するべきである。 D.フォローアップ 1.年度末報告書および評価 104.年度末予算報告書により、国は、国レベルおよび国内下位レベルで、子どもの権利に関わる歳入、借入れ、国際協力および実際の支出についての説明責任を果たすことが可能になる。年度末予算報告書は、市民社会および立法府が、過去の年の予算実績を吟味し、かつ、必要に応じ、子どもたちおよび子どもの権利関連のプログラムに対して行なわれた実際の支出についての懸念を表明するさいの基盤となるものである。 105.委員会は、締約国が、年度末報告書において、子どもの権利に影響を与えるすべての歳入徴収および実際の支出についての包括的な情報を提供すべきであることを強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府向けに利用者にやさしい報告書を発表するとともに、年度末報告書および評価を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 106.国および独立の評価機関が行なう評価およびその他の態様の予算分析は、歳入徴収および実際の支出がさまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)に及ぼす影響についての貴重な洞察を提供しうる。締約国は、以下の措置をとることにより、予算が子どもたちの状況に与える影響についての恒常的な評価および分析を実施しかつ奨励するべきである。 (a) そのような評価および分析を恒常的に実施するための十分な財源および人的資源を配分すること。 (b) 予算過程全体を通じてそのような評価および分析の知見の厳密な評価および検討を行ない、かつ、それらの知見に関連して行なわれた決定を報告すること。 (c) 子どもの権利に関連して行なわれた実際の支出の有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性について評価する、独立の評価機関(研究機関など)を設置しかつ強化すること。 (d) 子どもたちを含む市民社会が、たとえば子どもの権利影響評価を通じて、評価および分析に貢献できることを確保すること。 2.監査 107.最高監査機関は、公的な歳入徴収および支出が策定された予算にしたがって行なわれているか否か検証することにより、予算過程においてきわめて重要な役割を果たす。監査においては、支出の効率性または有効性を調査し、かつ、特定の部門、国の統治機構または分野横断的な問題に焦点を当てることも可能である。子どもの権利との関連で行なわれる専門監査は、国が子どもに関する公的な歳入動員および支出を評価しかつ改善するうえで役に立ちうる。締約国は、監査報告書を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 108.委員会は、最高監査機関は国から独立しているべきであり、かつ、独立した、説明責任の履行につながる、かつ透明なやり方で子ども関連の予算に関する監査および報告を行なうために必要な情報および資源にアクセスする権限を認められるべきであることを強調する。 109.締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関する公的な歳入徴収および支出に関連して最高監査機関が果たす監督の役割を支援するべきである。 (a) 最高監査機関に対し、時宜を得たやり方で、包括的な年次会計報告書を提出すること。 (b) 最高監査機関が子どもの権利に関連して監査を実施するための資源が利用可能とされることを確保すること。 (c) 実際の支出が子どもの権利に与えた影響に関連する監査に対し、公的な応答(国が監査の知見および勧告にどのように対応するかを含む)を行なうこと。 (d) 国の職員が、立法府の委員会に出頭して、子どもの権利に関連する監査報告書において提起された懸念に応答する能力を有することを確保すること。 110.子どもたちを含む市民社会は、公的支出の監査に対して重要な貢献を行ないうる。締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関連する実際の支出の評価および監査への参加に関して市民社会を支持し、かつそのエンパワーメントを図るよう奨励されるところである。 (a) このような目的で公的な説明責任を確保するための機構を設置するとともに、これらの機構がアクセス可能であり、参加型であり、かつ有効であることを確保するために定期的にその再検討を行なうこと。 (b) 国の職員が、子どもに関連する公的支出の監視および監査を行なう市民社会および独立機関の知見に対し、十分な識見のあるやり方で応答する能力を有することを確保すること。 111.締約国は、子どもの権利に関連する従前の公的な資源動員、予算配分および支出に関する監査の内容を、予算過程の次の段階で参考にするために活用するべきである。 VI.この一般的意見の普及 112.委員会は、締約国が、この一般的意見を、自国のすべての行政部局、行政段階および行政機構、子どもたちおよびその養育者を含む市民社会、ならびに、開発協力機関、学術研究機関、メディアおよび民間部門の関連する部分を対象として広く普及するよう勧告する。 113.締約国は、この一般的意見を関連の言語に翻訳するとともに、子どもにふさわしい版を利用可能とするべきである。 114.この一般的意見に関連する最善の実務のあり方を共有し、かつ一般的意見の内容についてあらゆる関連の専門家および専門職員を研修するためのイベントが開催されるべきである。 115.委員会は、前掲のすべての関係者に対し、この一般的意見の内容に関連した優れた実務のあり方を共有するよう奨励する。 116.締約国は、委員会への定期報告書において、自国が直面する課題ならびに自国の予算および予算過程でこの一般的意見を適用するためにとった措置についての情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
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ここに保有資産を載せます。 保有資産 マイル お金 猫士 資源 食料 燃料 生物資源 乗り物 収支 0 0 0 0 0 0 0 0 1月16日 変動値 マイル お金 猫士 資源 食料 燃料 生物資源 乗り物 収支 0 0 0 0 0 0 0 0 保有資産 マイル お金 猫士 資源 食料 燃料 生物資源 乗り物 収支 0 0 0 0 0 0 0 0
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【権利(霧島、他一部)】強化>放出 【権利(怪物強、鎮魂(ゼリキン、チカブム、ケルベロス))】放出>強化(ただし条件が揃えば鎮魂怪物も放出が↑) から 【権利】 [怪物強、鎮魂(※1)] 放出>強化 [霧島、他一部(※2)] 強化>放出 ※1 ゼリーキング、チカブム、ケルベロス ※2 xxx(その他の対象) ただし、条件が揃えば鎮魂怪物の木も強化>放出 【放出の有利な条件】取り巻きがいない 【強化の有利な条件】取り巻きがいる
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ここに保有資産を載せます。 保有資産 マイル お金 猫士 資源 食料 燃料 生物資源 乗り物 収支 0 0 0 0 0 0 0 2 乗り物内訳 装甲兵員輸送車*1 キャットバスケット*1 1月29日 変動値 マイル お金 猫士 資源 食料 燃料 生物資源 乗り物 収支 0 0 0 0 0 0 0 +2 設立時の輸送 装甲兵員輸送車*1 キャットバスケット*1 保有資産 マイル お金 猫士 資源 食料 燃料 生物資源 乗り物 収支 0 0 0 0 0 0 0 0
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子どもの権利委員会・一般的意見20号:思春期における子どもの権利の実施(後編) 一般的意見一覧 (思春期の子どもの権利 前編より続く) IX.子どもに対する暴力 あらゆる形態の暴力からの保護 49.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および有害慣行についての一般的意見18号(2014年)に掲げられた、あらゆる形態の暴力を終わらせること(あらゆる場面における体罰を法律で禁止することを含む)およびあらゆる有害慣行を変容させかつ終わらせることを目的とした包括的な立法上、行政上、社会上および教育上の措置に関する勧告を参照するよう、求める。締約国は、防止およびリハビリテーションならびに被害を受けた思春期の子どもの社会的再統合に関する制度的プログラムの規模拡大のために、いっそう多くの機会を設けなければならない。委員会は、防止戦略および暴力被害者に対する保護対応の策定に思春期の子どもたちの関与を得る必要があることを強調する。 X.家庭環境および代替的養護 親および養育者への支援 50.子どもに安全、情緒的安定、励ましおよび保護を提供する親および養育者の役割は、思春期全体を通じて依然として重要である。委員会は、条約第18条第2項および第3項に掲げられているように親および養育者に適切な援助を与え、かつ、第27条第2項と一致するやり方で、最適な発達のために必要な支援および生活条件の提供に関して親を援助する締約国の義務が、思春期の子どもの親についても平等に適用されることを強調する。このような支援においては、思春期の子どもの権利および発達しつつある能力、ならびに、思春期の子どもが自分自身の生活に対して行なう貢献度の高まりが尊重されるべきである。各国には、伝統的価値観の名のもとで、暴力を黙認しまたは容認し、家族環境における不平等な権力関係を強化し、かつ、そのことによって思春期の子どもから基本的権利の行使の機会を奪うことがないようにすることが求められる [24]。 [24] A/HRC/32/32 参照。 51.委員会は、思春期の子どもたちが暮らしている、デジタル時代とグローバル化を特徴とする環境と、思春期の子どもたちの親および養育者が成長した環境との間で分断が大きくなりつつあることの重要性に対し、締約国の注意を喚起する。思春期の子どもたちは、世代間の理解を阻害しうるグローバルな商業世界(この世界は、親またはコミュニティの価値観に媒介されないままの場合もあれば、これらの価値観による統制を受けている場合もある)にさらされており、かつその影響を不可避的に受けている。このような状況の変化は、思春期の子どもと効果的なコミュニケーションを図り、かつ子どもの生活の現在の実情を考慮に入れたやり方で指示および保護を提供する親および養育者の能力にとって、課題を突きつけるものである。委員会は、各国が、世代間の経験の相違への対処に役立てるために必要な指針、援助、研修および支援はどのようなものかについての調査を、思春期の子どもたちならびにその親および養育者とともに実施するよう勧告する。 代替的養護を受けている思春期の子ども 52.大規模な長期入所施設で生活している思春期の子どもが十分な成果を達成できていないこと、および、程度ははるかに弱まるとはいえ他の形態の代替的養護(里親養護および小規模集団養護など)を受けている思春期の場合も同様であることについては、相当の証拠が存在する。このような思春期の子どもは、成績の低下、社会福祉への依存、ならびに、住む場所の喪失、収監、望まない妊娠、早期の出産、有害物質の誤用、自己危害および自殺のリスクの高まりを経験している。代替的養護を受けている思春期の子どもは16~18歳になった時点で離脱を求められるのが通例であって、支援システムまたは保護を欠いており、かつ自分自身を守るためのスキルおよび能力を獲得する機会も与えられてこなかったことから、性的虐待および性的搾取、人身取引および暴力の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれる。障害のある思春期の子どもは、コミュニティで生活する機会を否定されて成人施設に移送されることが多く、そこで引き続き権利を侵害されるおそれがますます高まる。 53.各国は、代替的養護を受けている思春期の子どもの支援に対する強い決意を示し、かつそのような支援への投資を増やすべきである。里親養護および小規模ホームを優先する方針を補完するものとして、差別と闘い、思春期の子どもが置かれている個別の状況が定期的に検討されることを確保し、これらの子どもの教育を支援し、自己に影響を及ぼす手続において真の発言権を認め、かつ、複数回の移動を回避するために必要な措置をとる必要がある。各国は、施設措置が最後の手段としてのみ用いられることを確保するとともに、秘密が保持される苦情申立て機構および司法へのアクセス等を通じ、施設で生活しているすべての子どもの適切な保護を確保するよう、促される。各国はまた、代替的養護を受けている思春期の子どもの自立を支援し、かつそのライフチャンスを高めるための措置、および、代替的養護を離脱するのに十分な年齢に達するなかでこれらの子どもが直面する特別な脆弱性および不安定性に対処するための措置もとるべきである。 54.代替的養護を離脱する思春期の子どもには、移行の準備、就労、住居および心理的支援へのアクセス、家族との関係修復への参加(これが子どもの最善の利益に合致する場合)ならびにアフターケアサービスへのアクセスに関わる、子どもの代替的養護に関する指針 [25] に一致する方法で提供される支援が必要である。 [25] 国連総会決議64/142付属文書。子どもの権利委員会の一般的意見9号も参照。 思春期の子どもが世帯主である家庭 55.相当数の思春期の子どもが、自らが親であるために、または親が死亡しもしくは失踪しまたは存在しないために、家族の主たる養育者となっている。条約第24条および第27条が求めるところにしたがい、思春期の子どもである親および養育者に対しては、子どもの健康、栄養および母乳育児に関する基礎的知識が提供されなければならず、また自らが責任を負っている子どもへの責任を果たせるよう援助するための適切な支援、ならびに、必要なときは栄養、衣服および住居に関する物質的援助が提供されなければならない。思春期の子どもである養育者が教育、遊びおよび参加に対する権利を享受するためには、追加的な支援が必要となる。とくに、各国は、ライフサイクルの重要な段階における社会的保護のための支援策を導入し、かつ、思春期の子どもである養育者に特有の要求に対応するべきである。 XI.基礎保健および福祉 保健ケア 56.保健サービスが思春期の子どもに特有の健康上のニーズに配慮して整備されていることはまれであり、この問題は、年齢、性別および障害ごとに細分化された人口動態上および疫学上のデータおよび統計が存在しないためにいっそう悪化させられている。思春期の子どもが援助を求めても、法律上および金銭上の障壁、差別、秘密保持および尊重の欠如、暴力および虐待、スティグマならびに保健ケア関係者による審判的態度を経験することが多い。 57.思春期の子どもの健康に関わる状況は、主として、個人、同世代、家族、学校、コミュニティおよび社会の各レベルに存在する、行動および活動によって媒介された社会的および経済的決定因子ならびに構造的不平等の結果である。したがって、締約国は、思春期の子どもたちと連携し、今後の包括的な保健政策、プログラムおよび公衆衛生戦略の基盤とするため、思春期の子どもの健康問題の性質および程度ならびに思春期の子どもがサービスへのアクセスにあたって直面している障壁についての、多面的な関係者による包括的検討を実施することが求められる。 58.自殺、自己危害、摂食障害および抑うつのような精神保健上の問題および心理社会的問題は、思春期の子ども、とくに脆弱な状況に置かれた集団の子どもの健康障害、疾病および死亡の主たる原因である [26]。これらの問題は、遺伝的、生物学的、人格的および環境的原因の複雑な相互作用から生じ、かつ、たとえば紛争、避難、差別、いじめおよび社会的排除の経験ならびに身体イメージに関わる圧力および「完璧」志向の文化によっていっそう悪化させられている。レジリエンスおよび健康的発達を促進し、かつ精神的健康障害からの保護につながることがわかっている要因としては、重要な大人との強い関係およびこのような大人からの支援、肯定的な役割モデル、適切な生活水準、良質な中等教育へのアクセス、暴力および差別からの自由、影響力の行使および意思決定の機会、精神保健に関する知識、問題解決および対処のスキル、ならびに、安全かつ健康的な地域環境などがある。委員会は、各国が、過剰な医療化および施設措置ではなく公衆衛生および心理社会的支援を基盤とするアプローチをとるべきであることを強調する。親、同世代の子ども、より幅広い家族および学校の関与を得た統合的な思春期精神保健ケア制度、ならびに、訓練を受けたスタッフによる支援および援助の提供を通じた、包括的な部門横断型の対応が必要である [27]。 [26] 到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)、パラ38参照。 [27] A/HRC/32/32 参照。 59.委員会は、各国に対し、思春期の子どもを対象として、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる、ジェンダーおよびセクシュアリティに配慮した包括的な政策を採用するよう促すとともに、思春期の子どもがこれらの情報、物資およびサービスに平等にアクセスできないことは差別にあたることを強調する [28]。このようなサービスにアクセスできないことは、思春期の女子が、妊娠および出産の際に死亡しまたは重大なもしくは生涯にわたる外傷を負う危険性がもっとも高い集団になることを助長する。思春期のすべての子どもが、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる、無償の、思春期の子どもへの反応性が高くかつ差別のない、オンラインでも対面でも利用可能なサービス、情報および教育にアクセスできるべきである。これには、家族計画、避妊(緊急避妊を含む)、性感染症の予防、ケアおよび治療、カウンセリング、受胎前のケア、母子保健サービスおよび生理衛生に関するものが含まれる。 [28] 経済的、社会的および文化的権利に関する差別の禁止についての社会権規約委員会の一般的意見20号(2009年)、パラ29参照。 60.セクシュアル/リプロダクティブヘルスならびにこれらに関わる権利についての物資、情報およびカウンセリングに関しては、第三者による同意または許可の要件などのいかなる障壁も設けられるべきではない。加えて、たとえば思春期の女子、障害のある女子ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもがこのようなサービスにアクセスする際に経験する、スティグマおよび恐怖の障壁を克服するために特段の努力が必要である。委員会は、締約国に対し、女子が安全な中絶および中絶後のサービスにアクセスできることを確保するために中絶を犯罪化し、思春期の妊婦の最善の利益を保障する目的で法律を見直し、かつ、中絶関連の決定において思春期の妊婦の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保するよう、促す。 61.科学的根拠および人権基準を基盤とし、かつ思春期の子どもたちとともに開発された、年齢にふさわしい、包括的かつインクルーシブなセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、必修学校カリキュラムの一環に位置づけられるべきであり、かつ、学校に行っていない思春期の子どもにも提供されるべきである。ジェンダー平等、性の多様性、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる権利、責任のある親としてのあり方および性的活動ならびに暴力の防止に対して、また若年妊娠および性感染症の予防に対して注意を向けることが求められる。情報は、思春期のすべての子ども、とくに障害のある思春期の子どもにとってのアクセシビリティを確保するため、代替的形式で利用可能とされるべきである。 HIV/AIDS 62.思春期の子どもは、AIDSによる死亡数が増加している唯一の年齢層である [29]。思春期の子どもは、抗レトロウィルス治療にアクセスし、かつ治療を受け続けるうえで課題に直面する場合がある。HIV関連の治療にアクセスするために保護者の同意を得なければならないこと、情報を開示されるおそれがあることおよびスティグマを付与されることは障壁の一部である。思春期の女子は人口比に照らして不均衡なほどの影響を受けており、新たな感染者数の3分の2を占めている。思春期の子どものうち、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーである子ども、金銭、現物または好意と引き換えにセックスをする子どもおよび薬物静注を行なう子どもも、HIVに感染するリスクがいっそう高い。 [29] http //apps.who.int/iris/bitstream/10665/112750/1/WHO_FWC_MCA_14.05_eng.pdf?ua=1, p.3 参照。 63.委員会は、各国に対し、思春期の子どもの多様な現実を認めて、これらの子どもが、訓練を受けた要員(これらの者はプライバシーおよび差別の禁止に対する思春期の子どもの権利を全面的に尊重するものとする)によって提供される、秘密が守られるHIV検査およびカウンセリングサービスならびに科学的根拠に基づくHIV予防・治療プログラムにアクセスできることを確保するよう、奨励する。保健サービスには、HIV関連の情報、検査および診断、避妊およびコンドームの使用に関する情報、ケアおよび治療(HIV/AIDSのケアおよび治療のための抗レトロウィルス薬その他の医薬品および関連技術を含む)、適切な栄養に関する助言、霊的および心理社会的支援、ならびに、家族、コミュニティおよび自宅を基盤とするケアが含まれるべきである。HIVに特化した立法のうち、意図せずにHIVを感染させたことおよび自分がHIV感染者である旨を明らかにしなかったことを犯罪とする法律の見直しを検討することが求められる。 思春期の子どもによる薬物の使用 64.思春期の子どもは、薬物の使用へと引きこまれる可能性および薬物関連の危害を受けるリスクが大人よりも高く、かつ、思春期に開始された薬物の使用は依存へと至ることがより多い。薬物関連の危害を受けるリスクがもっとも高いことがわかっている思春期の子どもは、路上の状況にある子ども、学校から排除された子ども、トラウマ、家族の崩壊または虐待の経験がある子どもおよび薬物依存に対処中の家族と生活している子どもである。締約国には、麻薬および向精神薬の不法な使用から思春期の子どもを保護する義務がある。締約国は、このような有害物質ならびにタバコ、アルコールおよび溶剤の使用に関わる思春期の子どもの健康権を確保するとともに、予防、ハームリダクション(危害軽減)および治療のためのサービスを、差別なく、かつ十分な予算を配分して整備するべきである。思春期の子どもとの関連では、懲罰的または抑圧的な薬物統制政策に代わる措置をとることが歓迎される [30]。思春期の子どもに対しては、有害物質の使用から生ずる害の防止および最小化を目的とする、科学的根拠に基づく正確かつ客観的な情報も提供されるべきである。 [30] A/HRC/32/32 参照。 受傷および安全な環境 65.不慮の事故による受傷または暴力による受傷は、思春期の子どもの死亡および障害の主たる原因のひとつである。不慮の事故による受傷のほとんどは、路上での交通事故、溺水、火災、転落および毒物摂取によって生じている。締約国は、リスク低減のため、部門横断型の戦略を策定するべきである。このような戦略には、保護装置の使用を義務づける立法、飲酒運転および免許発行に関する政策、教育、スキル開発および行動変容に関するプログラム、環境への適応、ならびに、受傷した者のケアおよびリハビリテーションのためのサービスの提供を含めることが求められる。 十分な生活水準 66.貧困の影響は思春期において深甚な意味合いを有しており、極度のストレスおよび不安定感ならびに社会的および政治的排除につながることもある。経済的苦境に対処するために思春期の子どもが余儀なくされるまたは自らとる戦略には、学校を中退すること、児童婚または強制婚の対象となること、性的搾取または人身取引の対象となること、危険なもしくは搾取的な労働または教育の妨げとなる労働に従事すること、ギャングの構成員になること、民兵に加入することおよび移住することなどがある。 67.各国は、身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達のためにふさわしい生活水準に対するすべての子どもの権利を想起するよう求められるとともに、思春期の子どもおよびその家族が基礎所得の安定を保障され、経済的衝撃および長期の経済的危機から保護され、かつ社会サービスにアクセスできるようにする、社会的保護の最低基準を導入するよう促される。 XII.教育、余暇および文化的活動 教育 68.普遍的、良質かつインクルーシブな教育および訓練に対する権利を保障することは、思春期の子どもの直近の発達および長期的発達を確保するために各国が行ないうる、単独の投資としてはもっとも重要な政策投資であり、とくに中等教育の肯定的影響を明らかにする証拠はますます増えつつある [31]。各国は、すべての者が広く利用できる中等教育を緊急に導入するとともに、高等教育を、すべての適切な方法により、能力に基づいてすべての者がアクセスできるようにするよう、奨励される。 [31] www.unicef.org/adolescence/files/SOWC_2011_Main_Report_EN_02092011.pdf 参照。 69.委員会は、女子および男子の平等な就学を達成し、かつ初等教育後も女子が教育を受け続けるようにするうえで多くの国が直面している課題を深く懸念する。女子の中等教育への投資は、条約第2条、第6条および第28条を遵守するために必要な公約であり、児童婚および強制婚、性的搾取ならびに若年妊娠から女子を保護するのにも役立つとともに、女子およびその子どもの将来の経済的可能性を高めることに相当に貢献する。女子にとっての障壁となっている法的、政治的、文化的、経済的および社会的障壁を克服する目的で、肯定的なジェンダー関係および社会的規範を促進し、性暴力およびジェンダーを理由とする暴力(学校におけるものを含む)に対応し、かつ、肯定的な役割モデル、家族支援および女性の経済的エンパワーメントを促進する戦略への投資も行なわれるべきである。さらに、各国は、就学しない男子および在学し続けない男子の人数が増えていることを認識し、その原因を特定し、かつ、男子の継続的教育参加を支えるための適切な措置をとるよう求められる。 70.委員会は、周縁下された状況に置かれている思春期の子どもであって中等教育進学の機会を与えられない子ども(貧困下で暮らしている子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、マイノリティに属する子ども、心理社会的障害、感覚障害または身体障害のある子ども、移住している子ども、武力紛争または自然災害の状況下にある子どもならびに路上の状況にある子どもまたは働いている子どもなど)の人数が多いことに、懸念とともに留意する。集団化された集団が教育へのアクセスについて直面している差別に終止符を打つための積極的措置が必要である。このような差別を終わらせるための手段には、現金移転プログラムを設けること、マイノリティおよび先住民族の文化ならびにすべての宗教コミュニティの子どもを尊重すること、障害のある子どものインクルーシブ教育を促進すること、教育制度におけるいじめおよび差別的態度と闘うこと、ならびに、難民キャンプで教育を提供することなどが含まれる。 71.識字能力を身につけないまままたは資格を取得しないままの早期退学の水準の高さに鑑み、学校への継続的参加を妨げる障壁について思春期の子どもたちと協議するための取り組みが行なわれるべきである。委員会の見るところ、助長要因には次のようなものがある――授業料および関連費用が必要であること、家庭の貧困であることおよび十分な社会的保護制度(十分な健康保険を含む)が存在しないこと、女子のための十分かつ安全な衛生設備が設けられていないこと、妊娠した女子生徒および母親となった女子が排除されること、残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける処罰が根強く使用されてること、学校におけるセクシュアルハラスメントを解消するための効果的措置がとられていないこと、女子が性的に搾取されていること、環境が女子の包摂および安全に資するものになっていないこと、教授法が不適切であること、カリキュラムが関連性を有しておらずまたは時代遅れになっていること、生徒を自分自身の学習に関与させられていないこと、ならびに、いじめが行なわれていることである。加えて、学校には、思春期の子どもが仕事および(または)家族のケアの責任と教育を両立できるようにするために必要な柔軟性が欠けていることが多く、思春期の子どもは就学関連費用を負担し続けることができなくなる場合がある。各国は、条約第28条第1項(e)およびSDG〔持続可能な開発目標〕4にしたがい、これらのすべての要因への対処、ならびに、就学および通学の状況の向上、早期退学の減少および退学した者への教育修了の機会の提供を目的とした、包括的かつ積極的な措置を導入するべきである。 72.委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に対して注意を喚起する。委員会はそこで、教育は子ども中心の、子どもにやさしい、かつ子どものエンパワーメントにつながるようなものでなければならないと主張するとともに、より協働的なかつ参加型の教授法の重要性を強調している [32]。中等教育のカリキュラムは、思春期の子どもが主体的参加の力を身につけられるようにし、人権および基本的自由の尊重を発展させ、市民的関与を促進し、かつ思春期の子どもが自由な社会で責任ある生活を送れるようにすることを目的として立案されるべきである。思春期の子どもの可能性を最大限に発達させ、かつこれらの子どもが退学しないようにするため、思春期の子どもの学習能力、同世代の仲間とともに活動する動機およびエンパワーメントを活用し、経験学習に焦点を当て、かつ試験を限定的に用いるような学習環境を確保する目的で、学習環境のあり方の検討を行なうことが求められる。 [32] 教育の目的に関する子どもの権利委員会の一般的意見1号(2001年)、パラ2参照。 教育から訓練および/またはディーセントワークへの移行 73.思春期の子どもの相当数が教育もしくは訓練を受けておらず、または就労していないことから、成人期への移行にかけて不均衡なほどの水準の失業、不完全就労または搾取につながっている。委員会は、各国に対し、就学していない思春期の子どもがディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に移行することを促進する目的でこれらの子どもをその年齢にふさわしいやり方で支援する(教育法と労働法の整合性を確保することも含む)とともに、これらの子どもの将来の就労を促進するための政策を採択するよう、促す [33]。条約第28条第1項(d)にしたがい、各国は、思春期の子どもが教育上および職業上の情報および指導を利用しかつこれらにアクセスできるようにするべきである。 [33] 持続可能な開発目標のターゲット8.6は「若者」(15~24歳の思春期の子ども)に関連したものである。国連総会決議70/1参照。 74.教育および訓練は、公式なものであれ非公式なものであれ、現代労働市場で必要とされる21世紀型スキル [34] を目的として設計されなければならない。これには、ソフトスキルおよび転換可能なスキルをカリキュラムに統合すること、経験学習または実践学習の機会を拡大すること、労働市場の需要に基づいて職業訓練を発展させること、起業、インターンシップおよび実習に関する官民パートナーシップを確立すること、ならびに、学業上および職業の機会に関する指導を提供することが含まれる。各国はまた、労働組合および職能団体への加盟に関する権利を含む就労者の権利についての情報も普及するべきである。 [34] 「21世紀型スキル」とは、今日の世界、とくに大学プログラムならびに現代的職業および職場で成功するために決定的に重要であると――教育者、学校改革論者、大学教授、雇用主等によって――考えられている、一連の幅広い知識、スキル、労働習慣および性格特性をいう。 余暇、レクリエーションおよび芸術 75.休息および余暇に対する思春期の子どもの権利、ならびに、思春期の子どもが、オンラインとオフラインの双方で、遊び、レクリエーション活動および芸術活動に自由に従事しかつ参加する権利は、思春期の子どものアイデンティティの模索にとって根本的に重要であり、思春期の子どもが、自己の文化を模索し、新たな芸術形態を創り出し、人間関係を形成し、かつ人間として成長していくことを可能とする。余暇、レクリエーションおよび芸術は、人間の尊厳、最適な発達、表現の自由、参加およびプライバシーに対する権利にとって根本的に重要である、自分はかけがえのない存在であるという感覚を思春期の子どもに与えるものである。委員会は、これらの権利が、とくに女子について、思春期において広く軽視されていることに遺憾の意とともに留意する。公共の空間で思春期の子どもたちに恐怖および敵意が向けられており、かつ思春期の子どもにやさしい都市計画、教育施設および余暇施設が存在しないことは、レクリエーション活動およびスポーツに従事する自由の妨げとなりうる。委員会は、条約第31条に掲げられた諸権利、および、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)にまとめられている委員会の勧告に対し、各国の注意を促すものである。 XIII.特別な保護措置 移住 76.生活水準の向上、教育または家族再統合を求め、出身国の内外に移住する思春期の子どもの人数が増えつつある。多くの子どもにとって、移住は重要な社会的および経済的な機会を提供してくれるものである。しかし、身体的危害、心理的トラウマ、周縁化、差別、排外主義、性的搾取および経済的搾取、ならびに、国境を越える場合には入国管理当局による摘発および収容を含むリスクを突きつけるものでもある [35]。移住者である思春期の子どもの多くは、教育、住居、保健、レクリエーション、参加、保護および社会保障へのアクセスを否定されている。サービスに対する権利が法律および政策で保護されている場合でさえ、思春期の子どもは、そのようなサービスへのアクセスに関して行政上その他の障壁に直面する場合がある。身分署名書類または社会保障番号を要求されること、有害かつ不正確な年齢鑑別手続がとられていること、金銭面および言語面の障壁があること、ならびに、サービスにアクセスすることによって収容または退去強制の対象とされることなどである [36]。委員会は、移住者である子どもについて詳細に述べた委員会の包括的勧告を参照するよう求める [37]。 [35] www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2012/DGD2012ReportAndRecommendations.pdf 参照。 [36] Fundamental Rights Agency, "Apprehension of migrants in an irregular situation - fundamental rights considerations"(2012年9月9日付)参照。https //fra.europa.eu/sites/default/files/fra-2013-apprehension-migrants-irregular-situation_en.pdf より入手可能。 [37] www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2014/DGD_report.pdf 参照。 77.委員会は、条約第22条において、難民および庇護希望者である子どもがその権利を享受し、かつ国際難民保護体制を通じて与えられる追加的保障措置の利益を受けられるようにするためには特別な措置が必要であることが認められていることを強調する。難民および庇護希望者である思春期の子どもは、国外追放のための迅速手続の対象とされるべきではなく、むしろその入国を認める方向で検討がなされるべきであり、また、子どもの最善の利益についての判断が行なわれ、かつ国際的保護の必要性が確認される前に送還されまたは入国を拒否されるべきではない。自国の管轄内にあるすべての子どもの権利をその地位にかかわらず尊重しかつ確保する第2条上の義務にしたがい、各国は、難民および庇護希望者である思春期の子どもであって保護者のいない者および養育者から分離された者ならびに移住者の双方を規律する、年齢およびジェンダーに配慮した立法を導入するべきである。このような立法は、最善の利益の原則を土台とし、出入国管理法上の地位の決定よりも保護のニーズの評価を優先させ、出入国管理関連の収容を禁止し、かつ、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)の勧告を参照しながら、これらの思春期の子どもが有する特別な脆弱性に対応するものであることが求められる [38]。各国はまた、思春期の子どもを移住へと向かわせる諸要因、ならびに、親が移住した場合に残された思春期の子どもが直面する脆弱性および権利侵害(退学、児童労働、暴力および犯罪活動の被害の受けやすさならびに負担の大きい家事責任を含む)に対処するための措置も導入するべきである。 [38] 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)参照。 人身取引 78.多くの思春期の子どもが、経済的理由または性的搾取を目的とした人身取引の対象とされるおそれに直面している。各国は、子どもの売買、人身取引および誘拐に関するデータ収集のための包括的かつ体系的な機構を確立するとともに、当該データが細分化されることを確保し、かつもっとも被害を受けやすい状況で生活している子どもに特段の注意を払うよう、促される。各国はまた、被害を受けた子どもを対象としたリハビリテーションおよび再統合のためのサービスならびに心理社会的支援への投資も行なうべきである。脆弱性および搾取が有する、ジェンダーを基盤とする諸側面に注意を払うことが求められる。国内の人身取引および国際的人身取引双方の危険性を親および子どもたちが理解するようにするため、ソーシャルメディア等も通じた意識啓発活動を行なわなければならない。各国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准し、かつ、同議定書にしたがって立法の調和を図るよう促される。 紛争および危機 79.武力紛争および人道上の災害の状況により、社会的規範ならびに家族およびコミュニティによる支援体制の崩壊がもたらされている。そのため、思春期の子どもであって避難民となった子どもおよび危機の影響を受けている子どもの多くが、大人としての責任を引き受けることを余儀なくされ、かつ性暴力およびジェンダーを理由とする暴力、児童婚および強制婚ならびに人身取引のおそれにさらされている。さらに、このような状況に置かれた思春期の子どもは、教育、スキル訓練、安全な就労機会、ならびに、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる適切なサービスおよび情報へのアクセスを否定され、かつ、孤立、差別およびスティグマ、精神保健〔上の問題〕ならびにあえてリスクを冒す行動に直面する可能性が高い。 80.委員会は、人道プログラムにおいて思春期の子どもの特有のニーズおよび権利への対応が行なわれていないことを懸念する。委員会は、締約国に対し、保護システムの開発および設計ならびに和解および平和構築のプロセスにおいて主体的役割を果たす体系的機会が思春期の子どもたちに提供されることを確保するよう、促すものである。紛争後および移行期の再建への明確な投資は、思春期の子どもたちが、自分の国の経済的および社会的開発、レジリエンスの構築ならびに平和的移行に貢献する機会ととらえられるべきである。加えて、緊急事態対応準備プログラムでは、思春期の子どもたちの脆弱性および保護に対する権利のいずれをも認識し、かつ、コミュニティの支援およびリスク緩和の援助に関してこれらの子どもたちが果たしうる役割を認めながら、これらの子どもたちに対応することが求められる。 軍隊および武装集団への徴集 81.委員会は、思春期の男子および女子が、ソーシャルメディアの利用等も通じて、国の軍隊、武装集団および民兵に徴集されていることに深い懸念を表明するとともに、すべての締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう促す。委員会はまた、思春期の子どもが、テロリストのプロパガンダ、過激主義的見方およびテロ活動への関与にそそのかされやすいことも懸念するものである。思春期の子どもをそのような活動への参加に駆り立てる要因を模索するための調査研究が思春期の子どもたちとともに実施されるべきであり、各国は、社会的統合を促進する措置に特段の注意を払いながら、当該調査研究で得られた知見に応じた適切な対応をとるべきである。 82.各国は、軍隊および武装集団に徴集された思春期の子ども(移住の状況にある子どもを含む)の回復およびジェンダーに配慮した再統合を確保するとともに、あらゆる敵対行為において、かつ和平または停戦に関わる武装集団との交渉および協定において、思春期の子どもの徴集または使用を禁止するべきである [39]。各国は、支援介入の持続可能性および文化的適切性を確保する目的で、平和運動に思春期の子どもたちが参加する機会、および、地域コミュニティに根ざした非暴力的紛争解決に対する同世代間働きかけアプローチを支援するよう求められる。委員会は、締約国に対し、思春期の子どもに対して行なわれた紛争関連の性暴力、性的搾取および性的虐待ならびにその他の人権侵害の事案について迅速かつ適正な対応がとられることを確保するため、断固たる措置をとるよう促すものである。 [39] A/68/267、パラ81-87参照。 83.委員会は、世界の多くの場所で、思春期の子どもがギャングおよびパンディーヤ〔訳者注/ギャングを意味するスペイン語〕に引きこまれていることを認識する。これらの集団は、社会的支援、生計維持手段、保護およびアイデンティティの感覚を、合法的な活動を通じてこのような目標を達成する機会が存在しないなかで提供してくれることが多い。しかし、ギャングの構成員が生じさせる恐怖、危険、脅威および暴力の雰囲気は、思春期の子どもの権利の実現を脅かすものであり、思春期の子どもの移住を助長する主要な要因のひとつである。委員会は、攻撃的な法執行アプローチに代えて、少年の暴力およびギャングへの加入の根本的原因に対処する包括的な公共政策の策定をいっそう重視するよう、勧告する。学校、家庭および社会的包摂のための措置を重視しながら、危険な状況に置かれた思春期の子どもを対象とする防止活動、思春期の子どもにギャングを離脱するよう奨励するための支援介入、ギャングの構成員の更生および再統合、修復的司法、ならびに、犯罪および暴力に反対する自治体連合の創設への投資を進めることが必要である。委員会は、各国に対し、ギャングの暴力に関連する理由で自国を離れることを余儀なくされた思春期の子どもに正当な考慮を払い、かつ、このような子どもに難民資格を付与するよう、促す。 児童労働 84.委員会は、思春期のすべての子どもに経済的搾取および最悪の形態の児童労働から保護される権利があることを強調するとともに、各国に対し、条約第32条第2項ならびに国際労働機関の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)の規定を実施するよう促す。 85.年齢にふさわしい形態の労働への導入は、思春期の子どもの生活において重要な発達上の役割を果たすのであって、これによって思春期の子どもはスキルを身につけるとともに、責任を学ぶこと、ならびに、必要なときは、家族の経済的安寧に貢献し、かつ自らの教育へのアクセスを支えることができるようになる。児童労働に反対する行動は、学校から労働への移行、社会的および経済的開発、貧困根絶プログラム、および、良質かつインクルーシブな初等中等教育への普遍的かつ無償のアクセスを含む、包括的措置から構成されるべきである。思春期の子どもには、国内法上の最低就労年齢(これは国際基準および義務教育に整合したものであるべきである)に達した段階で、教育ならびに休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する権利を正当に尊重されながら、適切な条件下で軽易労働を行なう権利があることを強調しておかなければならない。 86.委員会は、各国が、思春期の子どもの生活において労働が果たす積極的役割と、義務教育に対する思春期の子どもの権利を差別なく確保することとの間でバランスをとることに向けた経過的アプローチをとるよう勧告する。学校教育およびディーセントワークへの導入は、思春期の子どもの生活において、その年齢にしたがって両方を促進するための調整が図られるべきであり、またそのような労働を規制し、かつ思春期の子どもが搾取の被害を受けた場合に救済措置を与えるための効果的機構が導入されるべきである。18歳未満のすべての子どもを危険な労働から保護する旨を、具体的な有害労働の明確な一覧とともに規定することが求められる。有害な労働および労働条件を防止することに向けた努力が、家事労働に従事している女子およびその他のしばしば「不可視化された」労働者に特段の注意を払いながら、優先課題として行なわれるべきである。 思春期の子どもを対象とした司法 87.思春期の子どもは、法律に触れたことによって、犯罪の被害者もしくは証人として、または養護、監護もしくは保護のようなその他の理由で、司法制度と関わりを持つ場合がある。思春期の子どもが、被害者としても犯罪加害者としても権利を侵害されやすい立場に置かれにくくするための措置が必要である。 88.締約国は、条約第37条および第40条ならびに少年非行の防止に関する国連指針に一致するやり方で社会的要因および根本的原因に対応するため、修復的司法、司法手続からのダイバージョン、拘禁に代わる措置および予防的介入を重視する包括的な少年司法政策を導入するよう促される。少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に掲げられた勧告にしたがい、焦点は、テロリズムに分類される活動に関与した思春期の子どもを対象とするものも含む、更生および再統合に当てられるべきである。拘禁は、最後の手段として、かつもっとも短い適切な期間でのみ用いられるべきであり、また思春期の子どもは成人とは分離して収容することが求められる。委員会は、18歳未満のときに行なった犯罪について有罪とされたいかなる者に関しても死刑および終身刑を禁止することが絶対要件であることを強調するものである。委員会は、刑事責任年齢を引き下げようとしている国が多いことを深刻に懸念するとともに、各国に対し、刑事責任年齢を漸進的に18歳まで引き上げるよう奨励する。 XIV.国際協力 89.委員会は、条約の実施は締約国にとって協力的な営みであることおよび国際協力が必要であることを強調する。委員会は、締約国に対し、思春期の子どもの権利の実施について貢献を行ない、かつ、国際連合および地域機関の技術的援助を適宜活用するよう奨励するものである。 XV.普及 90.委員会は、締約国が、この一般的意見を、すべての関係機関、とくに議会およびすべての段階の行政機関(省庁および自治体/地方当局内の部局を含む)、ならびに、思春期のすべての子どもに対して広く普及するよう勧告する。委員会はまた、この一般的意見を関連のすべての言語に翻訳するとともに、思春期の子どもにやさしい版および障害のある思春期の子どもにとってアクセシブルな形式として刊行することも勧告するものである。 更新履歴:ページ作成(2016年12月25日)。
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移住労働者権利委員会・一般的意見2号:非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利 国連子どもの権利委員会の関連文書一般的意見6号(2005年):出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い 一般的討議勧告(2012年):国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利 移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会 CMW/C/GC/2(2013年8月28日/原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 目次 I.はじめに(パラ1-5) II.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する規範的枠組み(パラ6-12)A.条約第3部(パラ6) B.その他の国際法文書(パラ7-12) III.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利に関連する条約上の保護(パラ13-79)A.基本原則(パラ13-17)1.入国および滞在を規制する権限(パラ13) 2.法令遵守義務(パラ14) 3.正規化(パラ15-16) 4.国際協力(パラ17) B.差別の禁止(第2部)(パラ18-20) C.市民的および政治的権利の保護(第3部)(パラ21-59)1.暴力からの保護(パラ21-22) 2.恣意的な逮捕および拘禁からの保護(パラ23-35) 3.非人道的な取扱いからの保護(パラ36-47) 4.追放手続における保護(パラ48-59) D.経済的、社会的および文化的権利の保護(第3部)(パラ60-79)1.労働の搾取からの保護(パラ60-66) 2.社会保障に対する権利(パラ67-71) 3.緊急医療ケアに対する権利(パラ72-74) 4.教育に対する権利(パラ75-79) I.はじめに 1.国際的情報源によれば、世界の国際移住者の10~15%は非正規な状態にあると推定される [1]。もっとも、非正規移住の性質そのものにより、この現象の規模についての信頼に足るデータを見出すのは困難である。就労先を求める多数の若年男性(若年女性も増加しつつある)を開発途上国経済が吸収できない一方で、人口の減少および高齢化により先進国の労働人口は減少しており、そのため多くの経済部門で低技能および中技能の移住労働者への需要が生み出されている。しかし、正規の移住経路はその需要に見合う形で拡大されていない。その結果、雇用者はしばしば、不足を補うために非正規な状態にある移住労働者を頼りにすることとなる。 [1] International Labour Office, International Labour Migration A rights-based approach (2010), p. 32. 2.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員が自国の領域に入りまたは滞在することを抑止するため、各国は、非正規移住の犯罪化、行政拘禁および追放のような抑圧的措置にますます頼るようになりつつある。非正規移住の犯罪化は、非正規な状態にある移住労働者およびその家族は「不法な」二級の個人であり、または職および社会給付を求める不公正な競争相手であるという公衆の見方を助長促進することにより、反移民的な公的言説、差別および外国人嫌悪を煽ることにつながる。さらに、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員は、公共役務の提供者もしくはその他の公的職員によってまたは私人によって出入国管理当局に通報されることを恐れながら生活しているのが一般的であり、そのため基本的人権へのアクセスおよび司法へのアクセスを制限され、かつ労働その他の態様の搾取および人権侵害の被害をいっそう受けやすい立場に置かれる。 3.「非正規な状態にある移住労働者」という用語は、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(以下「条約」)第5条で定義されている。同条の定めによれば、移住労働者またはその家族構成員は、就業国の法律およびその国が当事国である国際協定にしたがい、入国し、滞在しまたは報酬を得る活動に従事することを許可されていないときは、資格外であるまたは非正規な状態にあるとみなされる。 4.委員会は、「非正規な状態にある」(in an irregular situation)または「資格外(である)」(non-documented)という用語が、これらの者の地位に言及する際の適正な用語法であるとの見解に立つ。非正規な状態にある移住労働者について説明するのに「不法(な)」(illegal)の語を用いることは、これらの者を犯罪と関連づけて考えることによってスティグマにつながる傾向にあるため、不適切であり、避けるべきである [2]。 [2] 国連総会決議3449、パラ2参照。 5.移住労働者の状態は、正式に認められていないやり方で就業国に入国したことからその国で滞在し、在留しまたは働くことを許可されていないために非正規なものとなることもあれば、滞在許可期限を超過し、もしくはその他の点で滞在許可条件に違反したために非正規なものとなることもある。正規な移住者も、疾病のため、または自分自身もしくは家族構成員に影響を与えるその他の予見不可能な事情により、自らの過失によらずにその地位を失うことがありうる。委員会は、移住者が、その滞在態様の如何を問わず、非正規な状態にあることを理由として条約第3部で保護されている基本的権利を奪われることがあってはならないことを強調するものである。 II.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する規範的枠組み A.条約第3部 6.条約第3条は、非正規な状態にある者を含む、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利を保護している。第3部で保護されている権利のほとんどは、市民的および政治的権利に関する国際規約ならびに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約を含む一群の国際人権条約と共通である。第3部で保護されている市民的および政治的権利のなかで、身体の自由および安全についての移住労働者の権利(第16条)ならびに自由を奪われた移住労働者が人道的に取り扱われる権利(第17条)は、この権利保有者集団の状況を考慮して文脈に応じた修正が行なわれている。やはり他の人権条約では明示的に保護されていない移住労働者の具体的権利としては、身元関連の書類を不正に没収されまたは破棄されることからの保護(第21条)、ここの追放手続における手続的保障(第22条)ならびに領事的または外交的保護および援助を求める権利(第23条)が含まれる。すべての移住労働者の経済的、社会的および文化的権利のなかでは、文化的アイデンティティを尊重される権利(第31条)ならびに就業国での滞在の終了時に所得および貯蓄を移転する権利(第32条)が条約に固有である。加えて、第3部では情報についての権利が定められており(第33条)、かつ就業国または通過国の法律を遵守するすべての移住労働者およびその家族構成員の義務が確認されている(第34条)。 B.その他の国際法文書 7.委員会は、条約は保護の最低基準を定めているにすぎないことに留意する。第81条第1項では、締約国が、移住労働者およびその家族構成員(非正規な状態にある者を含む)に対し、当該締約国の法律もしくは実務によって、または当該締約国について効力を有するいずれかの二国間条約もしくは多国間条約によって、この条約に掲げられたものよりも有利な権利または自由を認めることは、何によっても妨げられないと規定されている。委員会は、条約に基づく国の義務は、その国が締約国となっている中核的人権条約および他の関連の国際文書との関係で理解されなければならないとの見解に立つものである。これらの条約は、それぞれ別でありかつ独立しているとはいえ、補完し合い、かつ相互に強化し合っている。 8.非正規な状態にある移住者に対して他の国際人権条約で保障されている権利は、条約第3部に掲げられた対応する権利よりも範囲が広いことが多い。これらの条約には追加的権利も掲げられている。これらの条約で保障されている権利は、一般的には、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生またはその他の地位(在留資格を含む)に関わるいかなる種類の差別もなく、すべての者(移住者および国民でないその他の者を含む)に適用される。 9.たとえば、市民的および政治的権利に関する国際規約は、平和的集会に対する権利、自由に婚姻する権利ならびに配偶者間の権利および責任の平等に対する権利、特別な保護に対するすべての子どもの権利、法律の前の平等および法律による平等な保護に対する権利ならびにマイノリティの諸権利について、より幅広い範囲の保護を規定している。加えて、規約に掲げられたその他の権利(結社および労働組合を結成する権利ならびに家族の保護に対する権利など)は、正規な状態にあるか非正規な状態にあるかにかかわらず、すべての移住労働者に適用されるものである。他方、条約では正規な状態にある移住労働者と非正規な状態にある移住労働者が区別されている。規約および条約のいずれも、移動の自由および居所の選択の自由に対する移住者の権利は、当該移住者が締約国の領域内に合法的にいるかぎりで保護している。 10.同様に、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約も、同盟罷業をする権利、自由に婚姻する権利、母性保護に対する権利、子どもおよび青少年の特別な保護に対する権利、十分な生活水準(十分な食料および衣服を含む)に対する権利ならびに一定の文化的権利を含む、より幅広い一連の権利を定めている。条約は、正規な状態にある移住労働者との関係でしか、このような権利について定めていない。加えて、規約は、労働の権利、職業指導および職業訓練に対する権利、労働組合を結成する権利、家族の保護に対する権利、居住の権利ならびに文化的生活に参加する権利を認めている。条約は、正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員との関係ではこれらの権利を認めている。加えて、条約第3部に掲げられた経済的、社会的および文化的権利のほとんどは、それに対応する規約上の権利よりも適用範囲が狭い。 地域人権条約 11.地域人権条約は、すべての移住者をルフールマン〔移住者の生命・自由等が脅かされるおそれのある国への追放・送還〕 [3] および集団的追放 [4] から保護している。しかし、個別の追放手続における手続的保障措置として地域人権条約に掲げられているものが適用されるのは、締約国の領域内に合法的にいる移住者のみである [5]。欧州社会憲章で保護されている諸権利は、「外国人(他の締約国の国民であって関係締約国の領域内に合法的に居住しまたは正規に労働する者に限る)」または「合法的にその領域内にいる」移住労働者もしくはその家族に適用される [6]。ただし、欧州社会権委員会の見解では、欧州社会憲章は、在留資格を有していない子どもの移住者のうち脆弱な立場に置かれたカテゴリーの子どもにも適用されるとされる。さらに、教育に対する権利は、すべての地域人権システムにおいて、移住者としての地位の如何を問わず、移住者であるすべての子どもに保障されている [7]。 [3] 欧州人権条約第3条、米州人権条約第22条(8)、人および人民の権利に関するアフリカ憲章(アフリカ憲章)第5条参照。 [4] 欧州人権条約第4議定書第4条、米州人権条約第22条(9)、アフリカ憲章第12条(5)、アラブ人権憲章(アラブ憲章)第26条(1)参照。 [5] 欧州人権条約第7議定書第1条、米州人権条約第22条(6)、アフリカ憲章第12条(4)、アラブ憲章第26条(2)参照。 [6] 欧州社会憲章第19条(4)-(9)および附則参照。 [7] 欧州人権条約第1議定書第2条(欧州人権条約第14条とあわせて解釈した場合)、アフリカ憲章第17条(1)、子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章第11条参照。また、改正欧州社会憲章第17条(2)に関する欧州社会権委員会の先例、米州人権条約第19条に関する米州人権裁判所の判例も参照。 国際労働機関 12.国際労働機関(ILO)の国際労働会議が採択する国際労働基準は、別段の定めがある場合を除き、非正規な状態にある者を含む移住労働者に適用される。8つのILO基本条約 [8] に掲げられた労働における基本的原則および権利は、国籍および移住者としての地位の如何を問わず、すべての移住労働者に適用される。労働における基本的原則および権利に関するILO宣言(1998年)ならびにそのフォローアップにより、ILOのすべての加盟国は、これらの条約に掲げられた基本的権利に関わる原則を促進しかつ実現するよう要求されているところである。雇用、労働監督、社会保障、賃金保護、職業上の安全および健康の分野ならびに農業、建設業、旅館および飲食店ならびに家事労働等の部門における、一般的に適用される他の多くのILO基準および移住労働者についての具体的規定を掲げる基準は、非正規な状態にある移住労働者にとって特段の重要性を有する [9]。最後に、労働移動および非正規な状態にある移住労働者の保護についての国内法および国際政策を立案するに際し、各国は、就労目的の移住に関するILO第97号改正条約(1949年)[10]、劣悪な条件の下にある移住ならびに移住労働者の機会および待遇の均等の促進に関するILO第143号条約(1975年)ならびにこれらに付属する第86号勧告および第151号勧告も指針としなければならない。 [8] 強制労働に関する第29号条約(1930年)、強制労働の廃止に関する第105号条約(1957年)、就業が認められるための最低年齢に関する第138号条約(1973年)、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する第182号条約(1999年)、結社の自由および団結権の保護に関する第87号条約(1948年)、団結権および団体交渉権に関する第98号条約(1949年)、同一報酬に関する第100号条約(1951年)、差別(雇用および職業)に関する第111号条約(1958年)。 [9] たとえばILO条約第19号、第91号、第95号、第110号、第121号、第129号、第131号、第155号、第167号、第172号、第181号、第184号、第189号、第200号および第201号。 [10] 第97号条約は、原則としてある国の領域内に合法的にいる移住労働者にしか適用されないが、締約国に対し、移住労働者が非正規な状態に陥るのを防止する効果を有する措置をとるよう求める若干の規定も含まれている。 III.非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利に関連する条約上の保護 A.基本原則 1.入国および滞在を規制する権限 13.条約は、国境を管理し、かつ移住労働者およびその家族構成員の入国および滞在を規制する締約国の主権と、条約第3部に定めるすべての移住労働者およびその家族構成員(非正規な状態にある者を含む)の権利の保護との均衡を図っている。この均衡は条約第79条に反映されている。 2.法令遵守義務 14.条約第34条は、条約の第3部のいかなる規定も、移住労働者およびその家族構成員の、いずれかの通過国および就業国の法令を遵守する義務またはこれらの国の住民の文化的アイデンティティを尊重する義務を免除する効果を有するものではない旨、定めている。就業国またはいずれかの通過国の法令を遵守する義務には、国の安全、公の秩序または他の者の権利および自由に対するいかなる敵対行為もとらない義務が含まれる。 3.正規化 15.条約第35条は、第3部においてすべての移住労働者およびその家族構成員の権利が移住者としての地位の如何を問わず保護されていることについて、非正規な状態にある移住労働者またはその家族構成員の状態が正規化されることまたはそのような正規化に対する何らかの権利があることを意味するものとして解釈することはできない旨、明らかにしている。締約国は、移住労働者またはその家族構成員の状態を正規化する義務は負っていないものの、自国の領域内にいる移住労働者またはその家族構成員が非正規な状態にあるときは常に、当該状態が固定化されないことを確保するための適切な措置をとらなければならない(第69条第1項)。したがって締約国は、これらの者の入国の事情、滞在期間および関連の考慮事項(とくにその家族状況に関連するもの)を顧慮しながら、適用される国内法および二国間または多国間の協定にしたがい、個別事案ごとにこれらの者の状態を正規化する可能性を検討するものとされる(第69条第2項)。締約国が国内法で移住労働者の正規化について定めている場合、非正規な状態にあるすべての移住労働者およびその家族構成員が当該正規化手続に差別なく効果的にアクセスできること、および、当該手続が恣意的に適用されないことを確保しなければならない(第7条および第69条)。 16.委員会は、正規化が、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員が有する極度の脆弱性に対応するもっとも効果的な措置であることを想起する [11]。したがって締約国は、移住労働者およびその家族構成員が非正規な状態に置かれ、またはそのような状態に陥るおそれがある状況を回避しまたは解決するための政策(正規化プログラムを含む)を検討するべきである。 [11] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ52。 4.国際協力(第4部) 17.締約国は、国際移住の健全、公正、人道的かつ合法的な条件を促進するにあたって協力するものとされる(第64条第1項)。移住労働者およびその家族構成員が、労働市場の――あらゆる技能水準に関する――実際のニーズまたは想定されたニーズおよび資源に基づいた正規の移住経路にアクセスできることを確保する、調整のとれた政策(第64条第2項)は、そのような協力の重要な要素である。正規の移住経路を利用可能とすることにより、締約国は、不法なまたは秘密裏に行なわれる移動および非正規な状態にある移住労働者の就労を防止しかつ解消するという目的(第68条)にも貢献することになる。 B.差別の禁止(第2部) 18.差別の禁止の原則は、あらゆる国際人権文書および国際連合憲章の中核である。条約第7条は、差別禁止事由に国籍を明示的に含めている。諸条約機関も、差別の禁止について、法律上の地位および資格の有無の如何を問わず、移住労働者を含む国民でない者も含まれると解釈してきた [12]。条約第3部に掲げられた権利は、非正規な状態にある者を含む、すべての移住労働者およびその家族構成員にも適用される。したがって、国籍または移住者としての地位に基づくいかなる異なる待遇も、そのような待遇の理由が法律で定められており、条約上の正当な目的を追求するものであり、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例している場合を除き、差別に相当する [13]。 [12] 経済的、社会的および文化的権利における差別の禁止に関する社会権規約委員会の一般的意見20号(2009年)、パラ30。 [13] 差別の禁止に関する自由権規約委員会の一般的意見18号(1989年)、パラ13、および、教育への権利〔経済的、社会的および文化的権利における差別の禁止〕に関する社会権規約委員会の一般的意見20号、パラ13参照。 19.第7条は、締約国に対し、条約で定められた権利を、すべての移住労働者およびその家族構成員に対し、差別なく「尊重しかつ確保する」ことを要求している。第7条は自律的権利を規定したものではない。その適用は、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利であって、条約(およびとくに第3部)で保護されているものに限定されている。第7条は法律上の差別および事実上の差別の両方を対象とするものである。この文脈において、法律上(de jure)とは法律に存在している差別をいい、また事実上(de facto)とは、公式にまたは法的に認められてはいなくとも事実として存在しておりまたは〔差別的〕効果を有している差別をいう。締約国は、自国の法令および行政実務において移住労働者およびその家族構成員が差別されないことを確保することにより、差別の禁止を尊重しなければならない。委員会は、法律上の差別に対応するだけでは事実上の平等を確保することにならないとの見解をとるものである。したがって、締約国は、移住労働者に対する事実上の差別を引き起こしまたは固定化する諸条件および態度を防止し、減少させかつ解消するための積極的措置をとることにより、すべての移住労働者を対象として条約上の権利を保護しなければならない。 20.第7条は、移住労働者に対する直接差別および間接差別の両方を禁じている。他の国際人権機構の先例にしたがい、移住労働者に対する間接差別は、法律、政策または実務が、額面通りには中立のように見えても、移住労働者の権利に対して不相応な影響を及ぼす場合に生ずる〔ものとする〕。たとえば、就学のために出生証明書を要求することは、そのような証明書を所持していないことが多い(またはその発給を拒否された)非正規な状態にある移住労働者に、不相応な影響を及ぼす場合がある。 C.市民的および政治的権利の保護(第3部) 1.暴力からの保護 21.非正規な状態にある移住労働者、とくに女性は、私人(雇用主を含む)および国の官吏の双方から不当な取扱いおよびその他の形態の暴力(たとえば性暴力、殴打、脅迫、心理的虐待および医療ケアへのアクセスの否定を含む)を受けるおそれがいっそう高い状況に置かれる。締約国は、第16条第2項に基づき、すべての移住労働者およびその家族構成員を暴力、身体的傷害、脅迫および威嚇(公務員によるものか、私人、私的集団または私的組織によるものかを問わない)から保護する義務を負う。この義務により、締約国は以下の措置をとるよう要求される。 (a) そのような行為を禁止する法律を採択しかつ実施すること。 (b) 虐待および暴力の事件を効果的に捜査すること。 (c) 責任者を訴追し、かつ適切な刑罰を持って処罰すること。 (d) 被害者およびその家族構成員に対し、十分な賠償を行なうこと。 (e) 公務員を対象として人権研修を実施すること。 (f) そのような行為を防止する目的で、国の代理機関の行為を効果的に監視し、かつ私人および私的主体の行為を規制すること。 22.締約国はまた、ヘイトクライム、憎悪の扇動およびヘイトスピーチ(政治家によるものおよびメディアにおけるものを含む)など、移住労働者およびその家族構成員(とくに非正規な状態にある者)に対する人種主義、外国人嫌悪または関連の不寛容のあらゆる表出と闘うこと、ならびに、そのような行為の犯罪的性質に関する公衆の意識を高め、かつ移住労働者の人権の尊重を促進することを目的とした、効果的な措置をとることも要求される。 2.恣意的な逮捕および拘禁からの保護 23.第16条は、身体の自由および安全に対する移住労働者およびその家族構成員の権利を保護する(第1項)とともに、移住労働者の身元管理は法律の定める手続を遵守して行なわれなければならない旨、定めている(第3項)。第16条第4項は市民的および政治的権利に関する国際規約第9条第1項を補完するものだが、移住労働者およびその家族構成員は、「個別にも集団的にも」恣意的な逮捕または拘禁の対象にされないことを付けくわえている。移住労働者およびその家族構成員(非正規な状態にある者を含む)の逮捕および拘禁は、恣意的にならないため、法律によって定められ、条約上の正当な目的を追求しており、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例していなければならない。 24.委員会は、ある国の国境を公的に認められていないやり方でもしくは適正な書類を所持せずに越えることまたは滞在許可期間を超えて滞在することは犯罪ではないと考える。非正規な入国を犯罪化することは、非正規な移住を管理しかつ規制する締約国の正当な利益を超えており、かつ不必要な拘禁につながる。非正規な入国および滞在は、行政法上の違反行為となる場合はあるものの、それ自体は人身、財産または国の安全に対する犯罪ではない [14]。 [14] 移住者の人権に関する特別報告者が人権理事会に提出した報告書(A/HRC/20/24)、パラ13参照。 25.第16条第4項は拘禁が認められる理由を定めていないものの、移住労働者およびその家族構成員は、法律の定める理由および手続によらなければその自由を奪われないと規定している。さらに、拘禁は、法律によって定められ、条約上の正当な目的を追求しており、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例するものでなければならない。 26.委員会の見解では、自由に対する権利を制限するいかなる収容措置または非収容措置も、例外的であり、かつ、常に詳細なかつ個別の評価に基づいてとられるものでなければならない。当該評価においては、いかなる自由の制限についても、その必要性および適切性(当該制限が達成されるべき目的に比例しているかどうかも含む)についての検討が行なわれるべきである。比例性の原則により、締約国は、移住労働者の拘禁を最後の手段としてのみ行ない、かつ、追求されている目的を達成するために強制の度がより低い措置で十分な場合には常にそのような措置(とくに非収容措置)を優先させるよう、要求される。そのようなあらゆる場合に、個々の事案ごとにとりうる、侵襲および制限の度合いがもっとも低い措置が適用されるべきである。 27.移住者の行政拘禁は、当初は合法的でありかつ恣意的ではなくとも、締約国がしかるべき正当化事由を示すことのできる期間を超えて継続するときは、恣意的なものとなりうる。そのような状況が生じないようにするため、行政拘禁の期間の上限を法律によって定めるとともに、しかるべき正当化事由がなければ、被拘禁者は当該期間の終了と同時に自動的に釈放されなければならない。行政拘禁が無期限に行なわれ、または過度に長期に及ぶことがあってはならない。移住労働者を拘禁し続けることの正当化事由は、恣意的とみなされるであろう長期のかつ正当化されない拘禁を防止するため、定期的再審査の対象とされるべきである。移住労働者の予防拘禁は、曖昧な基準に基づく長期の拘禁につながることが多い。したがって、そのような拘禁は、条約第16条が規定するすべての手続的保障を遵守しながら、事案ごとの個別評価の後にかつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれるべきである。拘禁されている移住労働者にはどうしようもない理由によって追放命令を執行できない場合、無期限に続く可能性がある拘禁を避けるため、当該移住労働者は放免されなければならない。 28.第16条第5項は、締約国に対し、逮捕される移住労働者およびその家族構成員に、逮捕のときに、かつできるかぎりその者の理解する言語で、逮捕の理由を告げることを要求している。さらに、逮捕された者は、自己に対する被疑事実を、その者の理解する言語で速やかに告げられなければならない。この義務を遵守するため、締約国は、統一告知書式(とくに利用可能な救済措置に関する情報を記載したもの)を、当該締約国において非正規な状態にある移住労働者がもっとも頻繁に使用しまたは理解する言語で作成することを検討するべきである。ただし、このような統一告知書式は、事実関係の情報および逮捕に関連する法的理由を記載した逮捕令状の発行を補完するものであることが求められる。 29.第16条第6項に基づき、収容および未決勾留の対象とされた移住労働者およびその家族構成員が有する一定の権利の保障は、犯罪の嫌疑をかけられまたは犯罪を行なったいかなる者に対しても適用される。 30.第16条第7項は、自由を奪われた移住労働者がその出身国またはその利益を代表する国の領事機関または外交機関と通信する権利を定めている。同項はまた、締約国に以下のことも要求している。 (a) 当該移住労働者の要請がある場合に、その逮捕または拘禁について当該当局に遅滞なく通知すること。 (b) 当該人物と当該機関とのいかなる通信についても、その便宜を図ること。 (c) 当該人物に対し、この権利および適用される他の条約に基づく諸権利を遅滞なく告知すること。 (d) 当該当局の代表者との連絡および会見を行ない、かつ当該人物の法的代理の手配を当該代表者とともに行なうこと。 31.拘禁された移住労働者が前掲(c)の諸権利を効果的に利用できるようにするため、締約国は、関連の情報を遅滞なく――すなわち、自由を奪われる施設への収容と同時にまたは収容後まもなく――、かつなるべくその者の理解する言語で、提供しなければならない。前掲(a)との関連では、委員会は、拘禁を行なった国が当該機関と接触するのは拘禁された移住労働者の明示的要請がある場合に限られなければならないことを強調する。とくに、保護のニーズを有している移住労働者については、当該移住労働者が知らないままにかつその同意を得ずに当該当局に知らせてはならない。 32.第16条第8項は、逮捕または拘禁によって自由を奪われたすべての移住労働者およびその家族構成員が、当該拘禁が合法的であるかどうかについて裁判所が遅滞なく決定できるよう、裁判所において手続をとる権利を定めている。裁判所は、拘禁が違法であると認めたときは、拘禁された移住労働者の釈放を命じなければならない。委員会としては、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の必要的拘禁は、当該移住労働者が有効な入国許可を得ずに締約国に入国したかどうかの形式的評価しか司法審査の対象にできず、当該拘禁が第16条第4項と両立しない場合にも釈放の可能性がないときは、第16条第8項と両立しないと考える。 33.委員会は、出入国管理上の目的のみを理由として逮捕されかつ拘禁されたいかなる者も、当該逮捕および(または)拘禁が合法的であり、かつ引き続き必要であるかどうかを審査すること、および、無条件の釈放および(または)強制の度がより低い措置が妥当である場合には当該措置を命ずることを目的として、裁判官または司法権を行使することが法律によって認められている他の官吏の面前に速やかに連れていかれるべきであると考える。拘禁が引き続き必要かつ合法的であるかどうかのさらなる審査が、裁判官または司法権を行使することが法律によって認められている他の官吏によって定期的に行なわれるべきである。自由の優先の推定が排除されるべきであることを示す立証責任は、拘禁を行なっている機関が負わなければならない。移住労働者は、拘禁の合法性を争うため、弁護士による代理および助言に、必要なときは無償でアクセスできなければならない。子ども(およびとくに保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子ども)は、出入国管理上の目的のみを理由とする拘禁の対象に、けっしてされるべきではない。 34.条約第16条第8項は、このような手続に参加する移住労働者が、そこで用いられる言語を理解しまたは話すことができない場合に、必要であれば自ら負担を要求されることなく、通訳者の援助を受ける権利を定めている。委員会の見解では、締約国は、入管拘禁施設に収容されたすべての移住労働者(自主的帰国を選択する者を含む)が、とくに領事機関の援助を受ける権利、自己の拘禁の合法性を争う権利および(または)釈放される権利、庇護を要請する権利ならびに人身取引の被害者または証人が利用可能な保護措置について情報を得る権利との関連で、自己の権利をその者が理解する言語で速やかに告知されることを確保するための効果的措置をとるべきである。 35.第16条第9項は、違法な逮捕または拘禁の被害を受けた移住労働者およびその家族構成員が賠償を受ける、執行可能な権利を定めている。この権利は第16条違反に依存するものではない。逮捕または拘禁が国内法または国際法に基づいて違法であったと認められれば十分である。締約国は、賠償を受ける権利が権限のある国内機関において効果的に執行できることを確保しなければならない。締約国はまた、移住労働者およびその家族構成員が、その請求が検討されている間は追放されないことも確保しなければならない。 3.非人道的な取扱いからの保護 36.条約第17条第1項にしたがい、締約国は、自由を奪われた移住労働者およびその家族構成員を、人道的に、かつその固有の尊厳および文化的アイデンティティを尊重しながら取り扱う義務を有する。自由を奪われた移住労働者およびその家族構成員の固有の尊厳を尊重するため、締約国は、適用される国際基準にのっとった十分な条件を義務として確保しなければならない。このような条件には、たとえば、十分な衛生設備、入浴設備およびシャワー設備の整備、十分な食料(食事に関する宗教的戒律を遵守する者のための適切な食料を含む)および飲料水、親族および友人と通信する権利、資格のある医療従事者へのアクセスならびに信仰を実践する十分な機会が含まれる。同項はまた、締約国に対し、これらの移住労働者およびその家族構成員が看守または他の被拘禁者もしくは同房者によるいかなる形態の非人道的な取扱い(性的な暴力および虐待を含む)を受けないことを確保するように要求している。したがって、締約国は以下のことをしなければならない。 (a) 監督職員その他の職員の研修を行なうこと。 (b) 移住労働者が自由を奪われている場所またはその可能性がある場所を定期的にかつ独立の立場から監視できるようにすること。 (c) これらの移住労働者が効果的なかつ独立の苦情申立て機構にアクセスできること(弁護人および通訳者へのアクセスを含む)を確保すること。 (d) 移住労働者またはその家族構成員が自由を奪われている場所における拷問および他の形態の不当な取扱いについての苦情を調査すること。 (e) 責任者を裁判にかけること。 37.条約第17条第2項は、罪を問われている移住労働者およびその家族構成員は有罪の判決を受けた者から分離され、かつ、有罪の判決を受けていない者としての地位にふさわしい制度の対象とされなければならない旨、定めている。加えて、罪を問われている少年は成人から分離され、かつ可能なかぎり迅速に審判の対象とされなければならない。 38.第17条第3項は、行政拘禁の非刑罰的性質を明らかにしている。同項では、移住に関連する規定に違反したことを理由として拘禁された移住労働者またはその家族構成員は、実行可能なかぎり、有罪の判決を受けた者または未決勾留者とは分離して収容されるものとする旨、規定されている。このような拘禁が長期間続きうることに鑑み、移住者である被拘禁者は、そのためにとくに設けられた特別施設に収容されるべきである。さらに、移住労働者およびその家族構成員は、安全な収容および良好な秩序を確保するために必要な程度を超えるいかなる制限または厳格な対応にも服させられるべきではない。委員会としては、締約国は行政拘禁に代わる手段を求めるべきであり、かつ行政拘禁は最後の手段としてのみ用いられるべきであるという見解をとる。 39.委員会は、移住労働者の行政拘禁は原則として官立施設で行なわれるべきであると考える。民間が運営する移住者収容施設は、監視の観点から特段の困難を生じさせる。締約国は、人の拘禁を民間営利企業に外部委託することによって人権法上の義務を免れることはできない。締約国は、このような機能を民間企業に委ねるとしても、条約第17条で規定されている、拘禁された移住労働者の権利の尊重を確保しなければならない。締約国は、拘禁施設の職員が人権、文化的感受性ならびに年齢およびジェンダーに関わる考慮事項について研修を受けることを確保しなければならない。 40.第17条第4項は、刑事司法制度の本質的目的、すなわち罪を犯した者の矯正および更生を強調している。罪を犯した少年は、成人から分離されるとともに、その年齢および法的地位にふさわしく、かつ、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則を含む国際基準にしたがって取り扱われなければならない。 41.第17条第5項は、拘禁および収監の対象とされている移住労働者およびその家族構成員に対し、家族構成員による面会について国民と同一の権利を保障している。締約国の法律で、自由を奪われた国民に対して一定の面会の権利(面会に訪れた家族構成員との直接の接触等)が付与されているのであれば、拘禁または収監の対象とされている移住労働者(非正規な状態にある者を含む)に対しても平等な権利を確保しなければならない。締約国は、面会権の平等な享受を妨げる実際上の障壁(家族構成員にとってアクセスが困難となる遠隔地での拘禁等)を取り除くことにより、拘禁された移住労働者に対する事実上の差別を撤回しなければならない。 42.第17条第6項は、締約国に対し、自由の剥奪によって家族構成員、とくに配偶者および未成年の子どもに生じる可能性がある問題に注意を払うよう要求している。委員会としては、このような場合、締約国は行政拘禁に代わる措置を模索するべきであるとの見解をとる。行政拘禁は、配偶者および子どもにとって、経済的にも心理的にも甚大な影響を及ぼすことが多いためである。 43.第17条第7項には、拘禁または収監の対象とされている移住労働者およびその家族構成員は同様の状況にある就業国または通過国の国民と同一の権利を享受できなければならないと定める、具体的な差別禁止規定が掲げられている。この規定は、第17条に掲げられたもの以上の追加的な手続的保障(電話等によって外部と通信する権利、保健専門家へのアクセスおよび教育に対する権利等)を、それが国民に対しても提供されている場合には、拘禁された移住労働者に対して適用する効果を有するものである。 44.この規定は家族拘禁の問題を提起するものでもある。一般的原則として、子どもおよび子どものいる家族は拘禁されるべきではなく、締約国は、子どもおよび家族が関係する場合には、拘禁に代わる措置を常に優先させるべきである。家族拘禁が避けられない場合、子どもの拘禁は、子どもの権利条約第37条(b)にしたがい、「最後の手段として、かつ最も短い適当な期間でのみ」用いられなければならない。さらに、子どもの権利条約第3条第1項で定められているように、子どもに関わるすべての行動において、子どもの最善の利益の基準が第一次的に考慮されなければならない。締約国は、拘禁された子どもが人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ年齢にふさわしいやり方で取り扱われ、かつあらゆる法的保障を提供されることを確保するものとされる(子どもの権利条約第37条)。したがって締約国は、子どもにふさわしい生活区画を整え、かつ教育、遊びおよび余暇のための便益にアクセスできるようにするとともに、親とともに拘禁されている子どもの場合には特別な家族区画においてこのような対応をとらなければならない。子どもは、分離が子どもの最善の利益のために必要である場合を除き、親の意思に反して親から分離されるべきではない(子どもの権利条約第9条第1項)。保護者のいない子どもに対しては法定後見人を任命し、拘禁施設外で子どもをケアする義務を委託するべきである。 45.締約国はまた、拘禁された女性の移住労働者女性の特別な状況も考慮しなければならない。締約国は、男女別の施設を確保し、ジェンダーに固有の保健サービスが提供されることを確保し、かつ、妊婦、授乳中の母親および幼い子どもがいる母親の具体的ニーズにも対応しなければならない。国は、女性の移住労働者が分娩まで数か月である場合または授乳中である場合、その拘禁を避けるべきである。女性被拘禁者の処遇および罪を犯した女性のための社会内処遇措置に関する国際連合規則(バンコク規則)は、このような状態にある国にとって有益な指針を提供している。 46.拘禁は、脆弱な状況に置かれたカテゴリーに属する移住労働者にとってとりわけ有害となり、その心身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。このような移住労働者およびその家族構成員としては、拷問の被害者、保護者のいない高齢者、障害のある人およびHIV/AIDSとともに生きている人などが考えられよう。脆弱な状況にあって自由を奪われた人々を保護するために、十分な保健サービス、医薬品およびカウンセリングを含む特別措置がとられるべきである。さらに、障害のある移住労働者および障害のあるその家族構成員に対しては、他の者との平等を基礎としてその人権および基本的自由を享受する権利を確保するための「合理的配慮」 [15] が行なわれるべきである。 [15] 障害のある人の権利に関する条約第2条。 47.第17条第8項に関して、委員会は、「移住に関する規定の違反の有無を確認する目的」の拘禁には行政拘禁の全期間が含まれており、したがって、行政拘禁の対象とされた移住労働者およびその家族構成員は、当該拘禁から生じたいかなる費用も負担を負わされてはならないと考える。 48.自由を奪われた移住労働者が、その苦境および不確定な事情のゆえにとりわけ脆弱な状態にあることに鑑み、委員会は、拷問ならびに他の形態の不当な取扱いおよび虐待を防止するうえで独立の監視が重要であることを確信する。国内人権機関、関連する市民社会の主体、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)、赤十字国際委員会および〔国際連合〕高等弁務官事務所は、移住者が拘禁されているまたはその可能性があるすべての場所に広くアクセスできるべきである。 4.追放手続における保護 49.条約第22条は、正規および非正規の移住労働者ならびにその家族構成員のいずれについても、集団的追放を禁止し、かつ個別の追放手続における手続的保障措置を定めている。第22条が規制しているのは手続のみであって追放の実体的理由ではないが、同条の目的は、恣意的追放を防止し、かつ一定の状況において追放からの実体的保護を提供するところにある。第22条は、国内法で追放と述べられているか他の文言が用いられているかにかかわらず、移住労働者の義務的出国を目的とするすべての手続に適用される。 追放からの実体的保護:ノンルフールマン 50.国際的および地域的な人権法および難民法に掲げられたノンルフールマンの原則とは、いかなる者についても、いかなる方法によるかにかかわらず、その者が迫害または深刻な人権侵害を受ける真のおそれがある国または領域に強制的に送還することを禁じたものである。委員会の見解では、この原則は、拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰(送還先の国で移住者が非人道的なかつ品位を傷つける環境で拘禁され、または必要な治療が受けられないことを含む)のおそれならびに生命に対する権利が脅かされるおそれを含む(条約第9条および第10条)。この原則はまた、個人がその後のルフールマンから保護されない状況にも適用される。委員会は、追放が家族および私的生活に対する権利への恣意的干渉となる場合には移住労働者およびその家族構成員は保護されるべきであるとの見解をとる。非正規な状態にある移住者およびその家族構成員であって国際保護のニーズを有している者も、追放から保護されるべきである。 集団的追放の禁止 51.条約第22条第1項は、集団的追放を明示的に禁止し、かつ、追放の各事案の審理および決定が個別に行なわれることを要求している。締約国は、自国の追放手続において、移住労働者1人ひとりの個人的事情が真正にかつ個別に考慮されるようにするための十分な保障が定められることを確保する義務を有する。この義務は締約国が実効的に管理しているすべての空間について適用され、これには公海上の船舶も含まれる場合がある [16]。 [16] 欧州人権裁判所・Hirsi Jamaa and Others v. Italy事件判決(申立番号27765/09、2012年2月23日)参照。 個別の追放手続における手続的保障 52.第22条第2項は、「権限ある機関が法律にしたがって行なう決定によって」実行される追放だけを認めることによって、恣意的追放を防止しようとしている。第22条第3項は、追放に関する決定が、当該移住労働者に対し、その者の理解する言語で、ならびに、書面による告知が義務的でない場合でもその者の要請があるときは書面によっておよび国の安全を理由とする例外的事情がある場合を除いて決定理由とともに、伝えられるべきことを規定している。これらの権利は、移住労働者がこのような決定に関する主張を準備できるようにすることによって適正手続を確保するために、重要である。これらの権利について決定が行なわれる前にまたは遅くとも決定が行なわれる時点で告知される当該者の権利も、同じ目的に役立つ。 53.自己が追放されるべきではない理由を提出し、かつ権限ある機関に自己の主張を審査させる権利(第22条第4項)には、追放の決定について審査が行なわれている間、当該決定の執行停止を求める権利が含まれる。決定の執行停止は、手続の期間中、当該者の地位を正規化するものではないが、最終決定が行なわれる前に締約国による追放が行なわれることを防止するものである。条約第83条にしたがい、締約国は、効果的な救済(条約で認められている権利および自由を侵害された移住労働者およびその家族構成員が、権限ある機関による審査を受ける権利を含む)を提供する義務を有する。委員会は、移住労働者およびその家族構成員に対し、審査を受ける権利の実効性を確保する目的で、追放からの当該救済措置を追求するための十分な時間および便益が与えられなければならないことに留意するものである。このような便益は、必要なときは法的援助および通訳者による援助を受ける権利が含まれるべきであり、かつ、当該事案の事情によって必要とされるときは無償とすることが求められる。追放の決定を審査する権限ある機関は、理想としては裁判所であるべきである。条約第22条第4項に基づいて追放に不服を申立てる権利は、「国の安全に関するやむを得ない理由」による場合のほかは制限できない。 54.条約第22条第5項は、すでに執行された追放決定が後に取り消された場合、党会社は法律にしたがって補償を求める権利を有すると定めている。追放を行なった国は、たとえば法的代理人を任命することによって、追放された者が国外から補償の請求を行なうために必要な便益を与えられることを確保しなければならない。さらに、追放を行なった国は、当該者による再入国を否定するために従前の(取り消された)決定を援用することはできない。 55.第22条第6項は、追放決定の当事者に対し、出国の前または後に、自己に帰すべき賃金および受給資格を有するその他の給付の請求ならびに未処理の責任を清算する合理的機会が与えられるべきことを規定している。この規定は、劣悪な条件の下にある移住ならびに移住労働者の機会および待遇の均等の促進(補足規定)に関するILO第143号条約(1975年)第9条第1項の規定をあらためて定めたものである。請求、賃金およびその他の給付を清算する機会は、実際上、効果的なものでなければならない。移住労働者は、いったん出身国に帰還すれば、就業国で法的請求を行なう際にしばしば問題(高額な争訟費用または証拠提出上の困難を含む)に遭遇する。したがって締約国は、可能なときは常に、移住労働者およびその家族構成員に対し、追放の前に賃金および給付の請求を行なう合理的期間を与えるべきである。締約国はまた、移住労働者によるこれらの請求に対応するための、期間を定めたまたは迅速な処理の対象とされる法的手続も検討することが求められる。加えて、締約国は、出身国に帰還した移住労働者が、侵害についての苦情を申立て、かつ未払いの賃金および給付を請求するために就業国において司法にアクセスすることができるよう、二国間協定を締結するべきである。 56.第22条第7項は、追放決定の対象となった移住労働者およびその家族構成員が、追放決定の執行を妨げないことを条件として、出身国以外の国への入国を求めることができる旨、定めている。移住労働者およびその家族構成員によるこの選択の行使は、当該第三国の同意を条件とする。 57.第22条第8項は、移住労働者およびその家族構成員はその追放にかかる費用の負担を免除される旨、定めている。追放を行なう国は、移動にかかる費用を移住労働者およびその家族構成員が自弁するよう求めることはできるものの、移住労働者に対し、その追放につながった法的手続の費用またはその行政拘禁の費用の支払いが求められてはならない(第17条第8項も参照)。ただし委員会は、自らの責によらずに非正規な状態にある移住労働者(たとえば契約期間終了前の整理解雇による場合または雇用主が必要な書類の作成を怠った場合)については、移動の費用も含めて追放費用を負担させられるべきではないことに留意するものである。 58.第22条第9項は、第22条第6項および第25条第3項を補完する形で、移住労働者およびその家族構成員が、賃金および「受給資格を有するその他の給付」(社会保障給付または当該給付との関連で行なわれた拠出金の償還を含む)を受け取る権利等の既得権を奪われるべきではない旨、述べている。したがって締約国は、移住労働者およびその家族構成員が、追放前に受給資格が生じた社会保障給付の額についての情報にアクセスできることを確保するべきである。 領事保護 59.条約第23条は、追放決定の対象となった移住労働者およびその家族構成員が、自己の権利について遅滞なく告知され、かつ出身国の領事機関または外交機関の保護および援助を依頼できなければならない旨、定めている。同条はまた、追放を行なう国の公的機関に対し、この権利の行使の便宜を図ることも要求している。したがって、追放を行なう国は、当該者に対し、遅滞なく、すなわち当該者に対して追放決定の告知を行なう時点でまたはその後ほどなくして、かつ、なるべくその者の理解する言語で、この権利を告知しなければならない。追放を行なう国は、当該者と出身国の領事機関または外交機関とのいかなる通信についても、その便宜を図らなければならない。 D.経済的、社会的および文化的権利の保護(第3部) 1.労働の搾取からの保護 強制労働および義務的労働ならびに児童労働からの保護 60.条約第11条は、締約国に対し、移住労働者が行なわさせられるあらゆる形態の強制労働または義務的労働を禁止するための効果的措置をとるよう要求している [17]。これには、たとえば債務奴隷制、旅券の取り上げおよび不法な監禁が含まれる。第21条は、締約国に対し、雇用主および募集業者が移住労働者の所有する渡航書類または身分証明書類を没収しまたは破棄しないことを確保するよう要求している [18]。締約国は、法執行官を対象として研修を行なうとともに、家事労働 [19] および一部の形態の興行など移住労働者(とくに女性の移住労働者)が多数を占める職業が労働法によって保護され、かつ監察の対象とされることを確保するべきである [20]。 [17] ILO第29号条約(前掲注8参照)。 [18] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ39参照。 [19] 家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)。 [20] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ41参照。 61.条約第25条第1項(b)は、就労の最低年齢に関する法令が子どもである移住者にも平等に適用されるべきである旨、定めている。当該最低年齢は、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)第2条にしたがい、15歳を下回ってはならない。さらに、条約第11条にしたがい、締約国は、子どもの移住労働者が、いかなる形態の奴隷制、買春またはその子どもの教育、安全、道徳もしくは健康を危うくする労働(長時間労働等)からも保護されることを確保する義務を有する [21]。締約国は、子どもの移住労働者を暴力から保護し、かつ、教育、余暇および労働衛生に対するそのような子どもの権利を確保しなければならない。 [21] ILO第182号条約(前掲注8参照)。 平等な待遇 62.第25条第1項は、移住労働者が、その地位の如何を問わず、報酬、その他の労働条件および就労条件について国民と平等の待遇を享受する旨、定めている [22]。締約国は、就労許可を持たない移住労働者が自国の労働市場にアクセスすることを拒否できるものの、いったん雇用関係が開始すれば、当該雇用関係が終了するまで、すべての移住労働者(非正規な状態にある者を含む)は平等な労働な条件および就労条件を享受する資格を有する。第25条第1項(a)および(b)に列挙された労働条件および就労条件は非網羅的な例である。平等な待遇の原則は、母性保護など、国内法および国内実務にしたがって労働条件または就労条件と考えられる他のいかなる事項も対象とする。 [22] 差別(雇用および職業)に関するILO第111号条約(1958年)。 63.締約国は、雇用主に対し、自由な、公正なかつ全面的同意のもとで締結された契約のなかで、移住労働者(非正規な状態にある者を含む)の就労条件を当該労働者の理解する言語で明示的に明らかにし、当該労働者の職務、労働時間、報酬、休日その他の労働条件を略述するよう要求するべきである [23]。締約国は、賃金を支払わないこと、支払いを出国まで延期すること、移住労働者がアクセスできない口座に賃金を入金すること、または移住労働者(とくに非正規な状態にある者)に対して国民よりも低い賃金を支払うことを禁止するために効果的な措置をとるよう求められる。締約国はまた、移住労働者が日常的に働いている場所の監察を強化するとともに、労働監察官に対し、移住労働者の移住者としての地位に関するデータを出入国管理当局と共有しないよう指示することも求められる [24]。工業および商業における労働監督に関するILO第81号条約(1947年)第3条第1項(a)にしたがい、労働監察官の第一義的職務は、労働条件および就業中の労働者の保護に関わる法規定の執行を確保することであるためである。 [23] 移住家事労働者に関する委員会の一般的意見1号(2011年)、パラ38および40参照。 [24] 前掲、パラ41および49-50。 労働権の平等の水平的効果および執行 64.第25条は、国民と移住者との間における報酬その他の労働条件についての待遇の平等を定めるとともに、私的な雇用契約においても、移住労働者の地位の如何を問わず、この権利を保障している。第25条第3項では、雇用主は、移住労働者の滞在または就労にいかなる非正規な点があっても、これを理由として、いかなる法律上または契約上の義務も免れず、かついかなる形でもその義務を限定されない旨、述べられている。締約国は、非正規な状態にある移住労働者との私的な雇用契約において平等待遇原則から逸脱した雇用主に対する適切な制裁を規定するとともに、これらの労働者が、その権利を侵害された場合に、退去強制を恐れることなく労働裁判所その他の司法的救済措置にアクセスできることを確保しなければならない(第83条)[25]。委員会は、この規定を実効あらしめるため、締約国は、とくに非正規な状態にある移住労働者を雇用していることで知られる産業において、効果的な職場監視システムも整備しなければならないという見解をとる。 [25] 前掲、パラ49-50。 労働組合に加入する権利 65.団結権および団体交渉権は、移住労働者が、とくに労働組合を通じて自己のニーズを表明しかつ自己の権利を防御するために必要不可欠である [26]。条約第26条は、自己の利益を保護する労働組合その他の団体に加入する、すべての移住労働者の権利を掲げている。第26条は、労働組合を結成する権利の保護については定めていない。ただし、この規定を他の国際人権文書とあわせて解釈すれば、両方の文書の締約国である国にとっていっそう幅広い義務が生じることがある。たとえば、結社の自由および団結権の保護に関するILO第87号条約(1948年)第2条と市民的および政治的権利に関する国際規約第22条第1項はいずれも、非正規な状態にある移住労働者に適用される。第26条はまた、法律にしたがって設立された労働組合および他のいかなる団体の会合および活動にも参加し、かつその援助を求める移住労働者の権利も保護している。締約国は、団体交渉権を含むこれらの権利を確保し、移住者としての地位の如何を問わず移住労働者の自己組織化を奨励し、かつ、援助を提供しうる関連の団体についての情報を移住労働者に対して提供しなければならない [27]。 [26] 前掲、パラ45。 [27] 前掲、パラ46-47。 66.第26条第2項について、委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第8条第1項(a)と市民的および政治的権利に関する国際規約第22条第2項でも同様の制限が定められていることに留意する。委員会は、何が条約第26条第2項に基づいて許容される制約にあたるかを解釈する目的で、関連の条約機関の先例を参照するよう求めるものである。 2.社会保障に対する権利 67.社会保障について、条約第27条第1項は、すべての移住労働者およびその家族構成員が、就業国で適用される法律ならびに適用のある二国間条約および多国間条約に定められた要件を満たすかぎり、就業国の国民に認められているものと同一の待遇を受ける権利を有する旨、定めている。締約国が、事前の拠出金の支払いが条件とされているか否かにかかわらず社会給付の支払いについて定める法律を制定しており、かつ関係の移住労働者が当該法律に定められた要件を満たしているときは、締約国は、当該移住労働者について当該給付からの恣意的排除または当該給付へのアクセス制限を行なうことはできない。差別の禁止は社会保障に対する権利にも適用されるためである。したがって、国籍または移住者としての地位に基づくいかなる区別も、法律で定められ、条約上の正当な目的を追求し、当該特定の状況において必要であり、かつ追求される正当な目的に比例したものでなければならない [28]。締約国には、その他の点では同様の状況にある者同士の違いによって異なる待遇が正当化されるか否かおよびどの程度正当化されるかを評価するにあたって一定の裁量の余地が認められているが、もっぱら国籍または移住者としての地位に基づいて行なわれるそのような異なる待遇がどのように第7条および第27条と両立するか、説明しなければならない [29]。 [28] 前掲注19、Koua Poirrez v. France事件判決(申立番号40892/98、2003年12月30日)、パラ39参照。 [29] 前掲、Gaygusuz v. Austria事件判決(申立番号17371/90、1996年9月16日)、パラ42。 68.第27条第1項では、社会保障に対する移住労働者の権利は適用のある二国間条約および多国間条約に服し、かつ、出身国および就業国の権限ある機関はいつでも、この給付の適用様式を決定するために必要な取決めを行なうことができる旨、定められている。ILO・労働移住に関する多国間枠組みで勧告されているように、締約国は、移住労働者(適切なときは非正規な状態にある者を含む)を社会保障の対象とし、これらの者に対して社会保障給付を行ない、かつ社会保障受給資格の移管を可能とする目的で、二国間、地域間または多国間の協定の締結を検討するべきである [30]。ただし、第27条第1項について、就業国が出身国と互恵協定を結んでいないというだけの理由で、移住労働者が、就業国で適用される法律に基づいてその他の点では受給資格を有する給付を剥奪されるという解釈を行なうことはできない [31]。 [30] ILO「労働移住に関する多国間枠組み-労働移住に対する権利基盤アプローチについての非拘束的原則および指針」(ジュネーブ、2006年)、指針9.9。 [31] 前掲注19、Koua Poirrez v. France事件判決、パラ39。 69.第27条第2項では、適用される法律によって移住労働者およびその家族構成員に対する給付が認められない場合、当該締約国は、国民との平等な待遇を基礎として、当該給付との関連で当該移住労働者等が行なった拠出に相当する額を償還する可能性を検討しなければならないと述べられている。これとの関連で、締約国は、当該拠出金の償還が不可能と判断される各事案において客観的な理由を示さなければならない。移住労働者または家族構成員による当該拠出金を償還しない旨の決定においては、その国籍または移住者としての地位を理由とする差別が行なわれてはならない。さらに、委員会は、移住労働者の社会保障給付受給権は職場の変更による影響を受けるべきではないと考える。 70.第27条第2項で「拠出」に言及されていることは、第27条第1項にいう「社会保障」とは拠出方式の社会保障制度のみをいうことを意味するものではない。このような狭い解釈は、「社会保障」が「社会保険を含む」ことを認めている経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第9条に反するものである。規約第9条が、法律上の地位および資格の如何を問わず、すべての移住労働者に適用されることを想起し、委員会は、条約第27条にいう「社会保障」にはすでに設けられている非拠出型の社会給付も含まれ、かつ、非正規な状態にある移住労働者は、適用される当該締約国の法律で受給権が定められているかぎりにおいて、当該給付に差別なくアクセスできなければならないと考える。 71.委員会は、極度の貧困および脆弱な状態が生じている場合、締約国は、非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員に対し、緊急の社会的援助(障害のある者に対する緊急サービスを含む)を、それが必要とされる期間、提供するべきであると考える。委員会は、たとえ非正規な状態にある移住労働者の多くが拠出方式制度に参加していなくとも、これらの移住労働者は間接税を支払うことによって社会保護のための制度およびプログラムへの資金供給に貢献していることを想起するものである [32]。 [32] 経済社会理事会に対する国際連合人権高等弁務官の報告書(E/2010/89)、パラ46参照。 3.緊急医療ケアに対する権利 72.条約第28条は、移住労働者およびその家族構成員が、国民との平等な待遇を基礎として、その生命の維持のためまたは回復不能な健康被害を回避するために緊急に必要とされるいかなる医療ケアも受ける権利を有する旨、定めている。ただし、第28条を他の国際人権文書とあわせて解釈すれば、両方の文書の締約国である国にとっていっそう幅広い義務が生じることがある。経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第12条は、到達可能な最高水準の健康に対するすべての者の権利を定めている。したがって締約国は、すべての者が、その移住者としての地位の如何を問わず、少なくとも最低水準の保健ケアに差別なく効果的にアクセスできることを確保する義務を負う。経済的、社会的および文化的権利に関する委員会は、これにはプライマリーヘルスケアならびに予防的、治療的および緩和的保健サービスが含まれると考えている。子どもの権利委員会は、子どもの権利条約第24条に基づき、移住者であるすべての子どもは国民と同一の保健ケアを受ける資格を有するとしている。そのため締約国は、とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員が必須医薬品にアクセスでき、かつ移住者である子どもが主要な感染症の予防接種の対象とされることを確保しなければならない。締約国は、移住者である女性が、産前産後の適切な保健ケア、安全なリプロダクティブヘルス・サービスおよび緊急産科ケアにアクセスできることを確保しなければならない。 73.委員会は、緊急医療ケアに対するアクセスが、国民との平等な待遇を基礎として、したがって差別なく、すべての移住労働者に対して確保されなければならないと考える。医療ケアは必ずしも無償である必要はないが、待遇の平等により、移住労働者およびその家族構成員に対しても、料金の支払いまたは支払い免除について国民と同一の規則が適用されなければならない。締約国は、非正規な状態にある移住労働者に対して過剰な料金を請求すること、または即時の支払もしくはサービス提供前の支払い証明を要求することを禁止するべきである。料金を支払えないことを理由に緊急医療ケアが提供されないことはあってはならない。締約国はまた、提供される医療ケアについての情報および健康権に関する情報が移住労働者およびその家族構成員に提供されることも確保するべきである。締約国はまた、移住労働者およびその家族構成員のための保健ケアに関する、文化的に配慮された研修が医師および保健専門家を対象として実施されることも確保するよう求められる。 74.第28条は、移住労働者に対するこのような医療ケアを、当該移住労働者の滞在または就労が非正規であるという理由で拒否することを禁じている。締約国は、保健ケアを出入国管理の手段として利用するべきではない。そのような対応は、実質的に、非正規な状態にある移住労働者が退去強制を恐れて公的保健ケア提供機関に接触しようとしないことにつながる。この目的のため、締約国は、患者の移住者としての地位に関するデータを出入国管理機関に報告しまたはその他のやり方で出入国管理機関と共有することを公的保健機関に対して要求してはならず、保健ケア提供機関もそのような対応を要求されるべきではない [33]。さらに、締約国は、医療ケアを提供する施設に対してまたはその近辺で出入国管理法制執行のための組織的行動を実施してはならない。このような対応は、移住労働者およびその家族構成員が当該ケアにアクセスすることの制限につながるためである。 [33] 前掲注12、パラ43参照。 4.教育に対する権利 75.条約第30条は、移住労働者のすべての子どもが「当該国の国民との平等な待遇を基礎として」「教育にアクセスする基本的権利」を保護している。第30条はまた、公立の就学前教育機関または学校へのアクセスが、当該の子ども自身またはその親の移住者としての地位に不利益となってはならないとも定めている。委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第13条にしたがい、締約国は、移住者としての地位の如何を問わず移住労働者の子どもを含むすべての者に、無償のかつ義務的な初等教育を提供しなければならないとの見解をとるものである。したがって、締約国は、直接的な就学の負担(授業料など)をすべて撤廃し、かつ間接的負担(教材費および制服費など)の悪影響を緩和する義務を負う。移住労働者の子どもによる中等教育へのアクセスは、国民との平等な待遇を基礎として確保されなければならない。したがって、国民である子どもが無償の中等教育にアクセスできる場合は常に、締約国は、移住労働者の子どもによる平等のアクセスを、その移住者としての地位の如何を問わず、確保しなければならない。同様に、締約国が種々の形態の中等教育(職業教育を含む)を提供している場合、当該教育を移住労働者の子どもに対しても利用可能とするべきである。同じ原則が、無償の就学前教育または奨学金制度についても適用される。したがって、締約国は、国民である子どもが無償の就学前教育または奨学金にアクセスできる場合には常に、移住者としての地位の如何を問わず、移住労働者の子どもによる平等なアクセスを確保しなければならない。 76.委員会は、移住者である子どもが、たとえば人種、民族、ジェンダーおよび障害を理由とする複合的形態の差別の被害を受ける可能性があることに留意する。平等待遇原則により、締約国は、教育制度における、移住者である子どもに対するいかなる差別も撤廃することを要求される。したがって締約国は、学校教育における隔離および移住労働者の子どもに対する異なった待遇基準の適用を回避するとともに、移住労働者の子どもに対して教室で行なわれるいかなる形態の差別も撤廃しなければならない。締約国はまた、これらの子どもに対する差別を防止するための効果的なプログラム、政策および機構を確保する必要もある。 77.委員会はまた、教育へのアクセスを確保するために、締約国は、児童生徒またはその親の正規な地位または非正規な地位に関するデータを出入国管理機関に報告しもしくは出入国管理機関と共有することを学校に要求し、または学校施設に対してまたはその近辺で出入国管理法制執行のための組織的行動を実施してはならないとの見解もとる。このような対応は、移住労働者の子どもによる教育へのアクセスの制限につながるためである。締約国はまた、学校管理者、教員および親に対しても、そのような報告または共有を行なうよう要求されてはいないことを明確に告知するとともに、これらの者を対象として、移住労働者の子どもの教育権に関する研修を実施することが求められる。 78.条約第45条第3項にしたがい、母語および母文化の教育を促進するよう努める就業国の義務の明示的対象とされているのは正規な状態にある移住労働者の子どもであることに留意しながらも、委員会は、自己の文化的アイデンティティを尊重される権利(第31条)はすべての移住労働者およびその家族構成員(子どもを含む)が有するものであることを強調する。これらの2つの規定を、すべての子どもに適用される子どもの権利条約第29条第1項(c)の規定とともに考慮し、委員会は、正規の資格を有する移住労働者の子どもであって母語を同じくする者に対してすでに母語による指導が利用可能とされているときは、非正規な状態にある移住労働者の子どもに対しても当該指導を確保するべきであるとの見解をとる。 79.法律上の身元は、多くの基本的権利にアクセスするための前提条件となっていることが多い。非正規な状態にある移住者の子ども、とくにそのような移住者の存在を承認していない受入国で出生した子どもは、生涯にわたって権利を侵害されやすい状態に置かれる。締約国は、移住労働者の子どもが、その親の移住者としての地位の如何を問わず、出生後間もなく登録され、かつ出生証明書その他の身分証明書類を提供されることを確保する義務を負う(第29条)。締約国は、子どもを登録するために在留許可証を提示するよう、移住労働者に要求してはならない。このような対応は、実質的に、非正規な状態にある子どもの移住者から出生登録に対する権利を奪うことにつながり、これによってこのような子どもが教育、保健サービス、就労その他の権利へのアクセスも否定されることにもつながりうる。移住労働者が子どもの出生登録義務を遵守しなかったことが、その子どもを教育から排除することの正当化につながることはあってはならない。 更新履歴:ページ作成(2014年10月13日)。/訳語の「不正規」を「非正規」に修正(2018年4月7日)。
https://w.atwiki.jp/public_monar/
このページは、「のまネコ」問題に代表されるコピーレフト・公有著作権の権利保護を実現する広報活動のまとめページです。
https://w.atwiki.jp/kasin/pages/29.html
保有県城 現在保有している県城はありません 所在地 製造兵器 所在州 座標 管理者 01. 所在地 () 所在州 378,-378 管理者 02. 所在地 () 所在州 -77,582 管理者 03. 所在地 () 所在州 277,-24 管理者 04. 所在地 () 所在州 277,26 管理者 超光馬 将軍鎧 虎亀鎧 短鉄剣 虎影刀 超光馬 霧露馬 中型投石車