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ID 国 名前 年齢 軍事 内政 忠誠 俸禄 兵数 鉄砲 0 北陸奥 伊達晴宗 32 5 7 0 0 10 0 1 伊達実元 24 8 4 0 0 10 0 2 鬼庭良直 38 8 3 12 1 10 0 3 中野宗時 46 1 9 0 0 15 0 4 氏家隆継 37 6 1 0 0 10 0 5 大崎義直 34 4 4 0 0 15 0 6 葛西晴信 17 5 3 0 0 20 0 7 南陸奥 葦名盛氏 30 7 6 0 0 10 0 8 相馬盛胤 22 10 2 0 0 15 0 9 結城晴綱 29 2 4 0 0 15 0 10 二階堂盛義 22 5 3 0 0 15 0 11 畠山義国 17 2 1 0 0 10 0 12 田村隆顕 28 3 8 0 0 10 0 13 出羽 最上義守 30 1 5 0 0 5 0 14 氏家定直 47 5 7 10 1 5 0 15 小野寺景道 17 6 5 0 0 20 0 16 武藤出羽守 26 5 3 0 0 15 0 17 上山満兼 27 4 2 0 0 10 0 18 常陸 佐竹義昭 20 8 6 0 0 15 0 19 佐竹義里 38 7 5 0 0 15 0 20 小田氏治 17 7 4 0 0 20 0 21 江戸忠通 44 6 6 0 0 20 0 22 水谷正村 31 7 3 0 0 10 0 23 下総 足利晴氏 43 3 3 0 0 15 0 24 佐々木大学助 31 4 2 0 0 10 0 25 足利頼純 15 2 3 0 0 15 0 26 結城政勝 32 5 4 0 0 15 0 27 千葉胤富 23 4 5 0 0 10 0 28 上総 里見義尭 39 6 6 0 0 10 0 29 里見義弘 21 7 5 0 0 10 0 30 正木時茂 36 7 4 11 3 10 0 31 正木時忠 32 5 6 9 3 10 0 32 武田信政 47 4 4 0 0 15 0 33 武田国信 41 3 6 0 0 10 0 34 下野 宇都宮広綱 7 1 1 0 0 5 0 35 芳賀高定 23 4 5 13 2 10 0 36 塩谷義孝 46 5 3 12 1 5 0 37 佐野昌綱 24 7 5 0 0 15 0 38 那須資胤 26 6 4 0 0 15 0 39 小山高朝 43 5 4 0 0 15 0 40 大田原縄清 27 5 7 0 0 15 0 41 上野 山内上杉憲政 28 1 5 0 0 10 0 42 小幡憲重 27 9 4 5 2 5 0 43 長野業正 44 14 3 9 2 5 0 44 長尾憲景 40 5 1 0 0 20 0 45 由良成繁 45 7 6 0 0 20 0 46 赤井照景 23 6 5 0 0 20 0 47 武蔵 扇谷上杉憲賢 49 3 3 0 0 10 0 48 太田資正 29 10 10 10 5 5 0 49 上田朝直 57 4 5 5 3 5 0 50 成田長泰 43 4 4 0 0 15 0 51 太田康資 35 7 5 0 0 15 0 52 藤田康邦 39 4 3 0 0 10 0 53 大石定久 29 4 2 0 0 10 0 54 相模 北条氏康 36 12 12 0 0 10 0 55 大道寺盛昌 48 7 7 13 3 5 0 56 遠山綱景 34 9 3 12 2 5 0 57 内藤大和守 39 6 2 10 1 5 0 58 北条綱成 36 12 4 16 4 10 0 59 笠原美作守 39 7 6 11 1 5 0 60 富永直勝 42 8 5 12 2 10 0 61 駿河 今川義元 32 6 16 0 0 15 0 62 今川氏豊 27 1 6 0 0 5 0 63 関口氏広 36 2 3 12 3 5 0 64 瀬名氏俊 28 4 4 15 3 5 0 65 鵜殿長照 30 6 4 9 3 10 0 66 安倍元真 38 5 2 12 2 5 0 67 葛山氏元 33 5 9 8 5 15 0 68 遠江 朝比奈泰能 46 6 3 0 0 20 0 69 小笠原氏清 31 6 2 0 0 15 0 70 松井宗信 51 4 5 0 0 15 0 71 飯尾賢連 30 5 2 0 0 15 0 72 三河 松平親乗 31 4 5 0 0 10 0 73 酒井正親 30 5 4 14 1 10 0 74 松井忠次 29 6 3 15 1 10 0 75 一向一揆 30 1 1 0 0 30 0 76 菅沼定村 31 4 2 0 0 10 0 77 一向一揆 30 1 1 0 0 30 0 78 水野信元 29 7 5 0 0 20 0 79 尾張 織田信友 26 2 4 0 0 5 0 80 織田信長 17 10 14 0 0 20 1 81 林通勝 36 4 7 10 2 8 0 82 平手政秀 59 3 9 16 1 7 0 83 織田信安 35 3 2 0 0 15 0 84 織田信光 29 7 4 0 0 20 0 85 織田信清 19 4 2 0 0 10 0 86 山口教継 46 2 3 0 0 5 0 87 一向一揆 30 1 1 0 0 20 0 88 美濃 斎藤道三 57 15 15 0 0 10 1 89 斎藤義龍 24 12 6 0 0 10 0 90 明智光安 35 5 5 5 5 5 0 91 安藤守就 44 5 10 0 0 15 0 92 稲葉良通 36 10 5 0 0 15 0 93 氏家直元 36 9 5 0 0 10 0 94 蜂須賀正勝 26 6 5 0 0 10 0 95 伊勢 北畠晴具 48 5 4 0 0 5 0 96 北畠具教 24 6 4 0 0 5 0 97 木造具政 21 4 6 0 0 5 0 98 一向一揆 30 1 1 0 0 20 0 99 関盛信 29 4 4 0 0 15 0 100 長野藤定 26 6 2 0 0 15 0 101 九鬼浄隆 21 4 2 0 0 15 0 102 甲斐 武田信玄 30 10 15 0 0 10 0 103 武田信繁 26 12 11 0 0 10 0 104 飯富虎昌 45 14 3 10 2 10 0 105 馬場信春 36 9 11 15 1 5 0 106 穴山信友 47 6 10 9 2 5 0 107 小山田信有 32 12 6 10 4 10 0 108 南信濃 小笠原長時 37 8 4 0 0 10 0 109 木曽義康 37 7 4 0 0 10 0 110 小笠原信貴 31 5 5 0 0 10 0 111 保科正俊 42 9 2 0 0 5 0 112 諏訪頼豊 26 6 4 0 0 10 0 113 北信濃 村上義清 48 14 7 0 0 10 0 114 楽岩寺光氏 47 9 2 6 2 10 0 115 高梨政頼 43 7 6 6 2 10 0 116 屋代政国 24 6 3 0 0 10 0 117 相木昌朝 45 4 3 0 0 10 0 118 蘆田信守 23 8 2 0 0 10 0 119 越後 上杉謙信 21 16 8 0 0 10 0 120 柿崎景家 25 15 1 9 2 10 0 121 宇佐美定満 50 3 13 13 2 10 0 122 直江実綱 44 8 6 14 2 5 0 123 吉江宗信 46 8 3 10 1 5 0 124 上杉景信 19 7 8 0 0 10 0 125 長尾政景 26 10 9 0 0 15 0 126 新発田長敦 39 8 2 0 0 10 0 127 中条藤資 58 8 5 0 0 10 0 128 色部勝長 43 9 4 0 0 10 0 129 越中 神保長職 31 6 5 0 0 10 0 130 一向一揆 30 1 1 0 0 20 0 131 椎名康胤 29 5 5 0 0 10 0 132 能登 畠山義続 42 3 5 0 0 10 0 133 一向一揆 30 1 1 0 0 20 0 134 加賀 富樫晴貞 31 2 1 0 0 10 0 135 富樫泰俊 40 1 2 9 5 5 0 136 一向一揆 30 1 1 0 0 50 0 137 一向一揆 30 1 1 0 0 50 0 138 越前 朝倉義景 18 1 4 0 0 10 0 139 朝倉教景 74 11 6 10 5 10 0 140 朝倉景連 32 7 5 10 4 10 0 141 青木景康 34 2 7 6 2 5 0 142 一向一揆 30 1 1 0 0 40 0 143 朝倉景紀 41 7 2 10 3 10 0 144 一向一揆 30 1 1 0 0 30 0 145 印牧美満 46 5 6 8 2 10 0 146 武田義統 26 6 2 0 0 10 0 147 北近江 浅井久政 27 4 6 0 0 10 0 148 浅井忠種 33 6 7 10 3 10 0 149 赤尾清綱 24 9 4 0 0 10 0 150 雨森弥兵衛 46 7 6 0 0 10 0 151 海北綱親 50 11 3 0 0 10 0 152 南近江 六角定頼 57 7 7 0 0 10 0 153 六角義賢 31 5 6 0 0 10 0 154 後藤賢豊 38 5 5 7 4 10 0 155 進藤賢盛 32 5 4 7 4 5 0 156 三雲定持 38 6 3 8 3 10 0 157 山中大和守 28 6 2 6 2 5 0 158 蒲生定秀 43 6 7 5 5 10 0 159 山岡景隆 26 5 3 7 3 5 0 160 一向一揆 30 1 1 0 0 20 3 161 山城 足利義輝 15 7 3 0 0 5 0 162 京極高吉 43 1 5 9 5 5 0 163 伊勢貞孝 39 4 4 10 5 5 0 164 三淵晴員 51 6 5 9 5 5 0 165 岩成友通 27 6 4 0 0 20 0 166 比叡山門徒 30 1 1 0 0 20 0 167 丹波 波多野晴通 44 5 5 0 0 10 0 168 赤井家清 26 5 3 0 0 10 0 169 蘆田国住 17 4 2 0 0 10 0 170 摂津 細川晴元 38 4 6 0 0 10 1 171 香西元成 34 6 5 6 2 10 0 172 細川元常 69 8 6 12 5 10 0 173 伊丹親興 19 4 2 0 0 10 0 174 池田長正 26 5 2 0 0 10 0 175 明石祐行 32 5 1 0 0 10 0 176 一向一揆 30 1 1 0 0 30 3 177 河内 三好長慶 29 5 8 0 0 5 1 178 三好長逸 26 4 6 10 3 5 0 179 細川氏綱 37 1 1 1 5 5 0 180 三好康長 32 3 9 8 5 10 1 181 三好義賢 24 8 7 0 0 10 1 182 大和 松永久秀 42 7 11 0 0 10 2 183 細川藤賢 34 2 5 7 1 10 0 184 松永左門 19 5 6 0 0 10 0 185 筒井順政 25 3 3 0 0 15 0 186 越知家増 36 3 4 0 0 15 0 187 紀伊 畠山高政 25 3 5 0 0 10 1 188 遊佐長教 27 5 6 5 3 10 1 189 鈴木佐大夫 26 7 3 7 1 10 1 190 一向一揆 30 1 1 0 0 30 3 191 高野山門徒 30 1 1 0 0 30 3 192 丹後 一色義幸 47 2 5 0 0 10 0 193 逸見昌経 41 4 3 0 0 10 0 194 山名祐豊 40 1 5 0 0 5 0 195 但馬 山名豊弘 36 3 3 0 0 5 0 196 垣屋光成 54 4 2 0 0 10 0 197 因幡 山名豊定 39 3 5 0 0 15 0 198 南条宗元 30 5 2 0 0 10 0 199 出雲 尼子晴久 37 2 4 0 0 5 0 200 尼子国久 61 10 8 16 5 5 0 201 尼子誠久 32 9 5 16 4 5 0 202 宇山久兼 35 4 7 12 2 5 0 203 本城常光 27 9 1 5 2 5 0 204 三刀屋久祐 22 5 4 4 1 5 0 205 赤穴久清 22 7 1 4 1 5 0 206 三沢為清 15 6 2 4 1 5 0 207 石見 小笠原長雄 40 2 3 0 0 5 0 208 吉見正頼 39 5 2 0 0 10 0 209 播磨 浦上政宗 38 5 5 0 0 10 0 210 浦上宗景 33 7 6 0 0 10 0 211 浦上国秀 28 6 4 0 0 10 0 212 別所村治 49 5 3 0 0 10 0 213 上月陸奥守 39 2 2 0 0 10 0 214 魚住吉長 35 3 2 0 0 10 0 215 小寺政職 46 4 1 0 0 15 0 216 黒田職高 27 5 8 0 0 10 0 217 美作 赤松晴政 39 2 4 0 0 10 0 218 赤松政秀 27 5 1 10 2 5 0 219 後藤勝基 32 4 4 0 0 10 0 220 備前 宇喜多直家 22 8 13 0 0 15 0 221 沼本房家 19 7 1 0 0 10 0 222 金光宗高 38 4 5 0 0 10 0 223 中山信正 39 3 6 0 0 10 0 224 備中 三村宗親 49 5 4 0 0 10 0 225 庄高資 30 3 5 0 0 10 0 226 石川久孝 31 3 4 0 0 10 0 227 備後 江田豊前守 32 2 3 0 0 5 0 228 祝甲斐守 36 4 2 8 4 5 0 229 山内隆通 22 6 4 0 0 15 0 230 杉原理興 33 4 8 0 0 15 0 231 安芸 毛利元就 54 14 14 0 0 10 1 232 毛利隆元 28 8 8 0 0 10 1 233 福原貞俊 31 9 7 15 2 5 0 234 小早川隆景 18 9 11 16 5 10 0 235 吉川元春 21 13 7 16 5 10 0 236 桂元純 26 7 6 12 3 5 0 237 周防 陶晴賢 30 13 4 0 0 15 1 238 青景隆著 27 4 3 9 3 5 0 239 陶持長 54 3 4 5 5 5 0 240 江良房栄 37 9 5 5 5 10 0 241 宮川房長 29 4 9 9 4 10 0 242 弘中隆兼 33 7 3 9 4 10 0 243 長門 冷泉隆豊 38 4 1 9 2 5 0 244 貫隆仲 33 3 2 9 2 5 0 245 大内義隆 44 2 2 0 0 10 1 246 杉興運 36 2 6 8 8 10 0 247 阿波 細川持隆 41 2 4 0 0 1 0 248 久米義広 44 3 1 9 5 1 0 249 足利義維 43 1 2 0 0 5 0 250 安宅秀興 52 4 2 0 0 5 0 251 讃岐 十河景滋 48 5 4 0 0 15 0 252 香川元景 37 4 2 0 0 20 0 253 伊予 河野通直 43 4 3 0 0 15 0 254 河野通存 36 5 2 0 0 15 0 255 宇都宮豊綱 18 6 1 0 0 20 0 256 土佐 長曽我部国親 47 6 7 0 0 10 0 257 安芸国虎 40 8 1 0 0 10 0 258 本山茂辰 28 6 3 0 0 10 0 259 一条兼定 9 1 1 0 0 10 0 260 豊前 宇都宮長房 45 5 4 0 0 15 0 261 貫隆資 24 3 1 0 0 15 0 262 赤尾賢種 37 4 1 0 0 15 0 263 杉重矩 57 5 6 0 0 15 0 264 豊後 大友宗麟 21 8 11 0 0 10 2 265 田北鑑生 45 8 9 12 8 5 0 266 吉弘鑑理 42 9 7 12 7 5 1 267 大内輝弘 31 6 6 12 3 5 0 268 立花道雪 38 15 8 16 6 5 1 269 志賀親守 52 7 6 8 4 5 0 270 佐伯惟教 52 11 4 10 5 5 0 271 田原親宏 36 8 6 7 5 5 0 272 筑前 秋月文種 32 5 4 0 0 15 0 273 立花鑑載 42 6 2 0 0 10 1 274 高橋鑑種 21 6 3 0 0 10 1 275 宗像氏貞 19 3 5 0 0 10 0 276 原田隆種 38 4 1 0 0 10 0 277 筑後 少弐時尚 25 2 2 0 0 15 0 278 筑紫惟門 21 4 1 0 0 15 0 279 蒲池鑑盛 31 5 2 0 0 15 0 280 肥前 龍造寺隆信 22 13 7 0 0 20 2 281 松浦隆信 27 4 3 0 0 10 1 282 大村純忠 19 3 4 0 0 10 1 283 有馬義貞 30 9 7 0 0 15 1 284 江上武種 37 6 5 0 0 15 1 285 肥後 相良晴広 39 5 4 0 0 10 1 286 上村頼孝 33 2 5 5 5 10 0 287 阿蘇惟前 48 3 3 5 5 5 0 288 名和行興 26 4 1 5 2 5 0 289 菊池義武 46 6 5 0 0 10 1 290 赤星親家 37 2 4 0 0 10 0 291 隈部親永 31 4 3 0 0 10 0 292 阿蘇惟将 27 4 7 0 0 10 0 293 甲斐宗運 36 13 6 0 0 10 0 294 日向 伊東義祐 39 7 5 0 0 10 0 295 土持親成 37 8 6 0 0 10 0 296 伊東祐俊 31 6 1 9 3 10 0 297 大隈 肝付兼続 40 5 6 0 0 10 1 298 肝付兼盛 18 6 5 5 5 10 1 299 薩摩 島津貴久 37 6 10 0 0 10 2 300 島津忠将 32 11 4 16 5 10 1 301 伊集院忠倉 33 9 8 0 0 10 1 302 伊集院忠朗 56 11 3 0 0 10 2 303 島津実久 43 7 2 0 0 10 2 304 菱刈隆秋 35 7 3 0 0 10 2
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二章 非常によくわからん。よくわからんが一つだけ言える、俺は幸せ者だ。 まさかあの日の帰り道に朝比奈さんのほうからデートに誘われることになるなんて夢にも思わなかったさ。 そして今日はデートの日。俺と朝比奈さんが共犯で探索活動をさぼった日だ。 ハルヒに絞られるだろうな……いや、しょうがない。 ここは気分を変えて朝比奈さんとのデートを楽しむ事だけに全てを注ごう。 「す、すいませぇ~ん」 朝比奈さんが小走りでこっちに向かって来た。 暑いにもかかわらず、肌の露出が少ないのはやはり日焼けを気にしているのだろう。 ただ、間違いないのは何を着ても似合うということだ。 「ふぅ…ふぅ……ま、待ちました……かぁ?」 息を途絶えさせながら上目遣いで俺を見てくる。もう、3時間くらい待たされても許してしまうだろう。 「いえいえ、今きたばかりですよ」 こう言うのが礼儀だろう。 その礼儀が正しかったのか、朝比奈さんはニッコリと俺に微笑んで言った。 「よかった!それじゃあ……行きましょう?」 出だしからこの幸せ感……一日で幸せを全て使い果たしそうで怖いな。 今日のデートの行き先は、俺の脳内では決まっていた。 午前中は朝比奈さんの要望でデパートで買い物。そして、午後は湖に行くつもりだ。 いつぞやの合宿での《船は浮力で浮いてる》ってのを簡単に体験させてやろうと思った次第だ。 何しろ、あそこは涼しいし人が少なくて落ち着く。 そんなわけで、まずはデパートに行くのだが……。 俺達は裏道を通り、さらに裏道を通った。何故なら探索に出ているであろう三人に見つかったら全てが終わるからだ。 俺と手を繋ぐ朝比奈がクスクスと笑いだした。 「うふふ……。なんか、恋愛ドラマで駆け落ちする二人みたいです」 まったく……ビビってるのは俺だけですか。朝比奈さんとなら駆け落ちも悪くないな……なんて考えてる内にデパートに着く。 畜生、駆け落ちにしとけばよかった。 デパートで何を買うかと思えば…やっぱりお茶だった。 お茶の銘柄などさっぱりわからない俺は、朝比奈さんに腕を引かれるがままだった。 「次のお茶はこれでいいですかぁ?」 だから香りも銘柄もわかりませんよ。 「俺は朝比奈さんが選んだのならなんだっていいですよ」 俺がそう言うと、朝比奈さんは顔を赤らめてレジに走って行った。……ちょっとクサかったか。 その後は、デパート内で昼食を食べ、二人で色違いのお揃いのストラップを買った。 「涼宮さんには内緒ですよ?」 えぇ、もちろんですとも。それより、俺が思うのはほんとのカップルみたいなことをしてるなって事だけだ。 朝比奈さんが俺を?……都合がよ過ぎる考えだな。 俺達はデパートから出て、警戒しながらも湖に向かって行った。 「ふわぁ……すごい広くて…涼しくて…きれいです」 と言うのが未来人から見たこの湖の感想らしい。 まぁ、この説明通りの所だ。俺が休日にシャミセンや妹の相手をするのが面倒な時にお世話になる場所。 環境は良いが、人が少なすぎるためボート屋は開店休業状態である。まぁ、そのおかげで一日ボートの上で寝て過ごすなんてことも出来るわけだが。 そんなボート屋に向かう為に曲がりくねった湖沿いの道を歩く。普段なら20分で着く道を、野草や花を見つける度に朝比奈さんが立ち止まるので1時間程かけて歩いた。 ボート屋の親父に金を払い、ボートに乗り込む。やはり気をつけなければならないのは朝比奈さんだろう。 「わ、うわわわっ!」 予想通りにこけそうになる所を、俺は抱き留めた。 「気をつけてくださいよ。その服高そうですし」 「あ……は、はい。ありがとう……」 かなり接近して朝比奈さんの顔が赤くなる。とうとう俺にも古泉並の魅力が備わったか……とはいかなかった。 自分の顔もみるみる赤くなるのがわかり、すぐに離れて顔を逸らしてしまった。なんて情けない男だ。 そこから漕ぎだすこと10分。湖の中心近くでボートを止めた。 「あ、え?此処で止まるんですかぁ?」 俺に疑問を投げ掛ける朝比奈さんをよそに、ボートの上に寝転がる。 「まぁ、気にしないで俺と同じようにしてください。俺の腕に頭のせていいですから」 完璧な作戦。当初から見せる予定だった景色にプラス腕枕。役得だな、俺。 二人でボートの上に寝転がり、空を見上げた。 「すごい……」 広がる青空、聞こえるのは鳥の囀り。俺にしてはいい場所を見つけたなとつくづく思う。 「こうしてると世界に一人だけ……いや、今なら二人きりしかいないって思いませんか?」 そう言うと、沈黙が走った。俺は空を見続けたままだから朝比奈さんの表情がわからんがマズいこと言ったか? まぁいいか。今はゆっくりとこの景色を堪能しますか。 しばらく経つと、俺は目を瞑って音を堪能することにした。 今日はせっかくハルヒが居なくてくつろげるんだ、ストレスを全部捨てないとな。 瞼の裏からさしこんでくる光がなくなった?……雲でもかかったか? 俺が目を開けると、朝比奈さんが上に居た。 ……瞬間、キスされた。 「は、はいっ!?いきなり何ですか!?」 「あ…キョ、キョンくんそっちは!!」 参ったね。 視界がグルッと回り、俺は頭から湖の中に落ちて行った。やれやれ……幸せなのか不幸せなのか。 俺は沈んで行く中でそんなことを思っていた。 「……っくしょい!」 「あの……大丈夫ですか?」 大丈夫なわけがない。いくら夏だからといって、水浸しのまま歩いていたら風邪だってひくだろう。 「あはは……まぁ、どうにか大丈夫です」 「ほんとにごめんなさい……。キョンくん見てたら……我慢出来なくなっちゃいました」 我慢出来なくなった?それって俺に気が……。 「あ、あ、それじゃわたしはこれでっ!帰ったらお風呂でしっかり暖まってくださいねっ!!」 顔を真っ赤にしたまま朝比奈さんは走り去った。……あ、コケた。 まぁいい、とりあえずは帰って風呂だ。そろそろ本格的に寒くなってきたぞ。 家に帰り、妹の追撃を振り切り風呂に入った。 そこで一つ思い出した。俺は携帯を開けてみる。 ディスプレイが真っ暗だ……これはマズいね。午前中、ハルヒからの連絡はなかったが間違いなく夜にはくるはずだ。 『あんたなんで来なかったのよ!!』ってな。しかし、携帯が壊れているということはだ、間違いなく俺が携帯の電源を《故意に》切っているとあいつなら思うだろう。 ………仕方ない、学校の日に朝イチであいつに謝ろう。 もちろん、嘘を混ぜながらな。 週明け、学校に行くと俺はまず驚いたね。 閉鎖空間から帰って来た日のように、ハルヒの頭がちょっとしたポニーテールだった。まぁ、いつもの気まぐれだろう。 「あ~、ハルヒ。おはよう。実はだな、俺の携帯が水没して壊れていたんだ……悪かった」 「あら、そう。だからアレだけ電話してやったのに繋がらなかったんだ」 なんか…不機嫌と言うか…落ち込んでないか?こいつ。 「なぁ、ハルヒ。だから俺、携帯買いに行くから一緒に行かないか?」 ハルヒの元気がないと、こっちの調子が狂うようになっちまったからな。いろいろな所に連れ出せば元気を出すかもしれん。 「あたし……いいわ。ちょっと疲れてるの」 ……やはりおかしい。粘るか。 「そんなこと言うなよ。団長だろ?団員の言う意見には耳を傾けろよ」 「団長の意見は最優先なのよ。あたしが行かないって言ったら行かないの」 「じゃあ……ついて来てください、お願いだ」 ハルヒの顔が少し迷いの表情になった、もう一押しか。 「晩メシ……奢るぞ?」 「む……晩ご飯だけ?」 「なんならお前の好きな物一個だけなら買ってやる」 「……そこまで言うならついてってあげるわ、しょうがないわねっ!」 ハルヒはそう言うと、少しだけ普段の笑顔に戻った。やっぱり、こうでなくちゃ張り合いないな。 こうして、俺は放課後ハルヒと出かける事になった。 ……朝比奈さんの事については保留しておこう。 三章
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「古泉一樹は私のもの。誰にも渡さない」 これは長門。 「そ、それはこっちのセリフです!古泉君は私のです!」 これは朝比奈さん。 「ちょっと待て。古泉は俺のものだぞ」 これは俺。 今日の部室にはハルヒと古泉の姿は無く、俺と長門と朝比奈さんだけである。 ハルヒは担任からの呼び出し、古泉はそれが原因で発生した神人狩り。 なぜ俺たち3人が喧嘩してるのかというと、朝比奈さんのある一言が発端だった。 「古泉君がいないと寂しいです~、死んでしまいそうです~」 「ちょっと待ってくださいよ朝比奈さん。ひょっとして古泉の野郎のことが好きなんですか?」 「そうですけどぉ、、何か問題があるんですか?」 「この時間では恋人とか作るの禁止じゃなかったんですか!?」 「そうですけどぉ、、我慢できなくて・・・古泉君がいないと私・・・」 「なんで古泉の野郎なんですか!!」 朝比奈さんが半泣き状態になりながら 「あの・・キョン君ごめんなさい・・・私・・・キョン君に気持ちには応えられない」 「早く古泉のことは諦めてくださいよ。未来人はこの時代では恋愛禁止ですよ」 「ごめんなさい・・・私、キョン君にこと好きじゃないの。」 「はぁ?何を言ってるんですか?」 「え?何って・・・?キョン君わたしのこと好きなんじゃ・・・」 「違いますよ。俺も古泉のことが好きなんですよ」 その言葉を聞いた朝比奈さんは急に挙動不審になった。 「きょ、きょ、きょ、きょ、キョン君・・・・・・ウホッ?」 昨日の友は今日の敵。 まさに今の俺にとって朝比奈さんは敵である。 たとえ上級生だとしても敬語で話す必要は無い。 「そうだけど、何か問題でもあるのか?」 急に乱暴な口調になった俺に対して朝比奈みくるは更に挙動不審になった。 「あの、、キョン君、、そういうのは止めといた方がいいと思います。 やっぱり、、その、、ウホッ!はまずいと思います・・世間体とか・・・」 朝比奈ミクルは慎重に言葉を選びながらそう言った。 「ならお前はどうなんだ?未来人なのに、この時間で恋愛をしてもいいのか?」 「ダメですが、、でも、、もう我慢できないのです!」 「なんだと!自分のときだけ都合いいこと言って!」 そして俺と朝比奈ミクルは取っ組み合いの喧嘩になった。 もちろん俺が優勢である。 どうせ未来人だし、やってしまっても法は適応されないし、何かあったら長門に頼めばいい。 そして俺は調理場においてあった包丁を手に取り、朝比奈ミクルを刺そうとしたその時 誰かの手が俺を止めた。 その手の主は長門だった。 そして、「私も古泉一樹のことが好き」と言った。 「争いはしない方がいい。もしSOS団の1人でも欠けたら世界が崩壊する。 そうなれば古泉一樹にも会えなくなる」 さすが長門だぜ・・・ 俺はちょっと熱くなりすぎてたな。 朝比奈さんはオシッコを漏らしながらヒイヒイ泣いていた。 「もう大丈夫だぞ朝比奈ミクル。もう変なことはしない」 「ウゥ・・本当ですか・・・?」 「とりあえずトイレに行ってパンツを脱いでこい。ここで脱がれると吐き気がする。 女の着替えほど気持ち悪いものは無いぜまったく」 数分後、朝比奈ミクルはトイレから帰ってきた。 その直後、長門が口を開いた。 「私にいい考えがある。ここは公平に勝負で決めるべき」 その後、俺の教室で何やら勝負をしようといった長門は1人で 俺の教室に向かって歩いていった。 教室には谷口と国木田がいた。 「あれ?キョン、何やってんだ?」 「朝比奈さん、長門さん、こんにちは」 2人はそう言った。 長門はそんな2人を無視して 「我々3人は今から勝負をするから出てって」と言った。 そして朝比奈ミクルが 「私と長門さんとキョン君とで古泉一樹君を賭けて勝負するんです」 開いた口がふさがらない谷口と国木田 「キョン、、お前、、古泉のことが好きなのか? でもお前、、男だよな?実は女だったというオチはないよな?」 「今まで黙っててスマなかった。実は俺、ウホッ!なんだ」 「キョン・・・お前、、なんで今まで黙ってたんだよ」 「そうだよキョン。別に隠し事しなくてもいいのに」 「でも、、いろいろまずいだろ・・」 そして谷口と国木田が2人同時にこう言った。 「気にするなって、俺らもそうだから!」 話をまとめると、こういうことだ。 谷口と国木田は入学式当日から付き合ってたらしい。 そしてそれを俺に隠してたと。 「キョン、お前、古泉を狙ってるのか?あれは俺のランキングではAAAだぞ」 「そうなんだ、、でも・・・」 「ならさ、3人で小泉君にいたづらしない?」 国木田は3人で分け合おうという考えを提案した。 しかしその直後、俺と谷口と国木田と朝比奈ミクルは 何かの力によって黒板へ叩きつけられた。 「・・・」 その力を放ったのは長門だった。 結局、古泉は長門の物となった。 しかし肝心なのは古泉自身の気持ちである。 いくら長門が強くてもそんなのは関係ない、古泉の気持ちが第一である。 そして俺たちは文芸部室へ戻ることにした。 部室の扉を開こうとしたとき、中から変な声が聴こえてきた。 「あぁぁぁ!もっと激しくぅぅぅ!」 俺は扉を開けた。 なんと部室の中でハルヒと古泉がセックスをしていたのである。 「あんた達なんの用?じゃまだからさっさと帰ってよ」 「これはこれは、、恥ずかしいところを見られてしまいましたね」 古泉の裸を見た俺と谷口と国木田は理性を抑えることが出来ず、 服を脱いで全裸になって古泉のほうへ走っていった。 朝比奈ミクルと長門も我慢できずに服を脱いで全裸になって古泉の方へ走っていった。 俺は古泉を押し倒し、古泉の顔の上にまたがった。 「さぁ舐めろ」 谷口は古泉の両足を持ち上げ尻の穴に挿入しようとしている。 「力を抜け」 国木田は古泉の棒を嘗め回している。 「気持ちいいだろ?」 その次の瞬間である。 国木田の体が中に浮き上がり、窓の外へ飛んでいってしまった。 そして庭にゆっくりと着地した。これも長門の仕業だろう。 長門は今度は谷口の方を睨んだ。 谷口はガクガクと震えていたが、なかなか長門は力を使おうとしない。 古泉の裸を見たせいで&部室が不思議なパワーで溢れ返って 長門の力を減退させてしまっているようだった。
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収穫 ハルヒは自分の農地を見に行かねばならないので鶴屋さんと交代した さて麦畑が黄金色に輝くイングランドの夏はそろそろ収穫の季節である。伯爵の直営畑では、朝比奈さんの主張により、今年からは執事さんをはじめ騎士さんに兵隊さんの城の住人が総出で麦刈りを手伝わされることになった。身重にも関わらず朝比奈さんは自らも刈り入れに出ると言い出し、伯爵がハラハラしつつ侍女を何人もお供させようとしたが本人が怖い顔をして断り、俺だけが畑についていった。 夜明け前の朝早くからマナーハウスの前で机を並べ、日雇い労働者を受け付ける。俺がここに落ちてきた頃に修道院の領地でもやってたやつな。 俺は鎌をにぎり農夫にまじって小麦の茎を刈り取りに参加した。ハルヒが何本もの鎌を同時に操りオリャーと奇声を発しながら刈り取っている後ろで、朝比奈さんがヨタヨタと地面のデコボコに足を取られながら刈穂を束ねていた。 「朝比奈さん、大丈夫ですか。あんまり無理しないほうが」 「だ、大丈夫だけど、ちょっと体のバランスが……」 といいつつガニ股で歩いている。胎児が成長するにつれて重心が移動するのでどうも勝手が悪いのらしい。 遠くの教会で九時の鐘が鳴り、休憩と軽く揚げパンのおやつが配られたが、エールも牛乳も飲めない朝比奈さんは冷ましたお湯を飲むしかないようだった。 休憩が終わって作業が再開したとき、朝比奈さんが急にお腹を抑えて座り込んだ。 「す、涼宮さんちょっと……」 「ど、どうしたのよみくるちゃん! ひょっとして産気づいたの?」 ハルヒが鎌を放り出して走り寄ってきた。 「キョン救急車! 救急車呼んで!」 アフォかお前はと突っ込むのを忘れていた俺も慌てて修道服のポケットをまさぐった。 「ち、違うの涼宮さん」 手招きする朝比奈さんは頭を寄せるハルヒの耳元でゴニョゴニョとナイショ話をし、ハルヒは大きくうなずいて麦の束をかき集めに走った。 「まさかここでお産なのか」 いくらなんでも早すぎじゃないだろうか。ハルヒは朝比奈さんの周りに三匹の子豚みたいな、吹けば飛びそうな麦わらの垣根を作った。ドクター長門を呼ぼうかと思ったが今日は大工ギルドにでかけていて一緒に来ていない。鶴屋さんを呼んだほうがいいんじゃないかと言おうとすると、 「しーしー。いいのよ、さっさと作業に戻りなさい。こっち見んな」 しーしーって、ああなるほど。おしっこか。胎児が膀胱を圧迫するので妊婦さんはおしっこが近いらしい。
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あたしは今、朝比奈さんと二人で居る。 どうしてって、それは不思議探索の籤引きの結果だからなのよね。 あたしと朝比奈さんが二人ってことは、残り三人は……、ってことになるんだけど、まあ、たまにはこういうのも必要でしょう? 前へ進むにしても、諦めるにしても、長門さんにはもう少し刺激が必要だと思うもの。 「へえ、先輩ってこういうお店が好きなんですね」 恋のバトルになるかならないかという長門さん達のことを頭の隅に置きつつ、朝比奈さんに連れられるまま入ったお店は、小洒落た雑貨屋さんだった。 こういうところって、元々決められたデータを元に再構成されているあたしにはあんまり縁が無いところなのよね。 「うん、そうなんです。……朝倉さんはこういうところにはあんまり来ないんですか?」 「あ、はい」 「何だかちょっと意外ですね」 「そうですか?」 「うん、朝倉さんって、女の子らしい女の子だなあ、って思っていたから」 朝比奈さんはほんわかした口調を崩さないまま、ちょっと小首を傾げた。 仕草が一々可愛らしいけど、それが同性から見ても嫌味に見えないのは、彼女がまだ、庇護欲を誘う子供っぽい存在だからかも知れないわね。これがもう何年かしたら、事情が違ってくるのかしら? あたしは一応、数年後の彼女の姿を知っているんだけど。でも、全体的な形はともかく、この世界での彼女があっちの世界での彼女と同じになるって保証はどこにも無いのよね。 だってここにいる朝比奈さんは、ただの普通の女の子なんだもの。 「そんな事無いですよ。あたし、勉強とかばっかりですから」 「そうなんだ……。でも、偉いんですね。朝倉さん、成績もいいんでしょう?」 「大したものじゃないですよ。SOS団で数えたら多分一番下ですしね」 長門さんは成績は優秀な方だし、涼宮さんと古泉くんは進学校の生徒の中でも成績上位者の部類だもんね。『優等生』として振舞っているあたしは、確かに成績は良い方なんだけど、でも、それはやっぱり『普通』の範囲のものなの。 「でも、それはほかのみんなの成績が良いからじゃあ……」 「あ、先輩、これ可愛いですね」 これ以上突っ込まれるとちょっと面倒かなあと思ったあたしは、少し強引に話を変えさせてもらった。あたしが指差したのは、小さなオルゴール。 「あ、本当……。良いなあ、こういうの。あ、子守唄が入っているんですね」 朝比奈さんがオルゴールを持ち上げ、裏に張ってあるラベルを見て確認する。 子守唄、か。そういう知識は、多分、あっちの世界の朝比奈さんには無かったものよね。 これも、長門さんが再構成した『朝比奈みくる』の一部……、そういうことなのかしら。 「懐かしいなあ。子供の頃、よくお母さんに歌ってもらったんです」 朝比奈さんは穏やかな微笑を浮かべたまま、オルゴールを鳴らした。 音楽が鳴り始め、それに合わせて朝比奈さんが歌詞を口ずさむ。 それは、あたしの中に有る知識を探れば存在するもの。けれど、あたしの記憶とは縁の無いもの。 「……朝倉さん? 何だか難しい顔だけど、どうかしたんですか?」 オルゴールの音が途切れ、歌を口ずさむのをやめた朝比奈さんが、少し不思議そうな顔であたしのことを見上げてきた。 「あ、いえ、何でも無いです……」 「あの、もしかしてこういうお店は苦手だったんじゃ、」 「いえ、そんなことありませんっ」 「それなら良いんだけど……。あの、無理してわたしに合わせなくて良いですからね。もし行きたいところが有ったら、ちゃんと言ってくださいね」 朝比奈さんは外見がそうであるようにその仕草や態度も結構幼い方なのに、こうして時折、年相応かそれ以上にも見えるような大人っぽいな部分を見せてくる。 何だか、不思議な人よね。 やり難いなあって思うわけじゃないんだけど、掴めるようで掴めないとでも言うのかなあ。 「はい……。でも、あたし、特に不満があるわけじゃないんですよ」 「本当?」 「本当ですよ、先輩。あ、雑貨屋さんも良いですけど、他の所も案内してもらえませんか? あたし、前から先輩って服のセンス良いなあって思っていたんで、参考にしたいんです」 「あ、うん、じゃあ、案内してあげるね」 朝比奈さんはこくりと小さく頷くと、オルゴールを棚に戻して、お店を出て通りを歩き始めた。あたしは、そんな、高校二年生にしてはどこか頼りなさげな彼女の後ろを、追い越さないように着いて行く。 朝比奈さんが普段着ているような服があたしに似合うとは思えないんだけど、でも、身近な人がどんなところで服を買っているかっていうのを知るのも、悪い事じゃないわよね。 綺麗な服を着て、それで何かをするというわけでも無いんだけど。 「んっと、朝倉さんにはこういうのが良いと思うんですけど……」 服屋に入ったら、朝比奈さんは早速あたしに服を選んでくれた。 へえ、結構似合うかも……。ひらひらした可愛い系の服なんて着たこと無かったけど、意外と悪くないかもね。 「あ、良かったらプレゼントしますよ。ここ、そんなに高くないですし」 「え、でも、」 「あ、それとも、迷惑ですか?」 「いいえ、そんなことないです。すっごく嬉しいです」 ……うん、嬉しい、と思う。 おかしいな、あたしは、そんなことを感じたりしないはずなのに、 「良かった、じゃあ、会計を済ませてきますね」 「ありがとうございます、先輩」 不思議、ありがとう、なんて言葉が自然と出てきちゃった。 どうしてかしら……、変なの。 そろそろ集合時間だからということで、あたし達は駅前に向って歩き出した。 朝比奈さんは何だかとっても嬉しそうだし、あたしも、何となく、その、嬉しい、って気持ちの理由が分かるような気がしていた。ううん、違うな。多分、あたしも『嬉しい』んだ。 朝比奈さんが、あたしに優しくしてくれたから、かな……。 ……おかしいなあ、あたしは、ただの装置の筈なのに。 この世界を守るための、ただの道具の筈なのに。 それなのに……、どうしてだろう。 作り物で有ることを自覚しているあたしと、自分が作り物だらけで再構成されたことを知らない朝比奈さん。 あたしは確かに、元々、彼女に対して何らかの感情を持って居たのかも知れないけど……、でも、どうしてそれが『嬉しい』になるんだろう。 ……ねえ、どうしてかな? 終わり
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出会い う~ん、どこなのかな~ …ひゃあっ?急に声を出すと、びっくりしちゃいますよ~…脚?わたしの脚に何か…裏側に…?あやや、こんなところに貼ってありました~ マイページ 通常 せ、先輩、どこ見てるんですか~!え? ほえ?後ろに何かついてますか~? あやや、こんなところのいたんですね~ わわ、先輩!取るのは自分でやります~! 今度は間違えないように渡さないと。 日直 登校 朝 えへへ、先輩と一緒なら探し物も楽しい…かもです♪ ユズちゃんも可愛いって言ってたシールなんですよ~ 笛ラムネを食べて一度落ち着きましょー ピィ~ピィ~♪ 探してない所ですか?えっと…靴の裏!ありません~ こんなに探しても見つからないのは、どうしてでしょう? 昼 ゴチッ。う~ うつむいてたら頭をぶつけちゃいました~ ス、スカートをめくるんですか?!…え、シール? さすが先輩!必ず見つけてくれると信じてましたぁ~ こんなところにいたんじゃ、わからないはずですね~ こういうのをことわざで確か…灯台…なんでしたっけ? 夜 はわ~ やっぱり先輩は目の付け所が違いますよねぇ~ 探し物のコツは、意外な場所を探す、ですね! 先輩が見つけてくれて、宝物がもっと宝物になりました♪ 先輩が優しいのは…わたしだから…ですか? 先輩のおかげでスッキリ眠れそうです~ むにゃ… アルバイト 先輩と働いてると、楽しくて時間があっという間に過ぎちゃいます~ 好感度レベルアップ 好感度MAX …これは、貼られたわけじゃなくて、どこかでくっついたんですよね~凪子ちゃん先輩とは、まだ会ってませんし…はい、どこかお出かけ中みたいですね~一緒に貼ってたらよかったんですけど、わたしが遅くなっちゃったので…でも、これで全部見つかりましたからね~ 後で皆そろった時に、一緒に貼り直します。…その前に、先輩も何か貼りませんか~? デート 約束 先輩のお電話だったら、いつでも大歓迎ですよ~ たくさんお話しましょうね~♪先輩と一緒なら、どこでもいいですよ~ 行ったら、きっと楽しいと思います。わかりました、空けておきますね~ えへへ、先輩との約束、楽しみだな~♪ 当日 先輩お待たせしましたぁ~ 先輩に見せたいシールがあったんですけど見当たらなくて…探してたら遅くなっちゃいました~ …見つけた場所ですか?それが意外な所に… ボス戦 開始 あや?なんで、わたしの後ろにくるくる回り込むんですかぁ?はわわ、やめてくださ~い。 勝利 敗北 バトル 開始 意外な所に勝つ方法ありです~ 声援 勝利 さすがは先輩です~ 先輩の弱点は探しても見つからないですね。 あやや…あっという間すぎて、先輩が勝つところを見逃してしまいましたぁ… 敗北 あやや、先輩が負けちゃうなんて…意外なところに弱点があったんですね~ 後ろも注意しなくちゃダメですよ~?次は頑張りましょ~ タッチボーナス ひゃあっ?
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「じゃあ、明日にでも図書館に行くか。久々に休日なんだ。たまにはおめかししてこいよ」 そう言って、彼は帰って行った。 「……おめかし?」 わたしはそう呟いた。《おめかし》って何?よくわからない、もし彼がわたしが《おめかし》することで喜ぶとしたら……誰か教えてほしい。 わたしは辺りを見回す。最初に帰ったのは古泉一樹と彼。まだ、涼宮ハルヒと朝比奈みくるは来てないはず。 わたしの視界に入る一人の影。小柄な人物だとわかり、朝比奈みくると判断した。 「あ、長門さん。涼宮さんはちょっとやることがあるから先に帰ってていいって言ってましたから……帰りましょうか」 わたしは再び歩きだした朝比奈みくるの手を掴んだ。 「ひぇっ!どどどどうしたんですかぁ?」 「………《おめかし》ってなに?」 朝比奈みくるは驚いた様子から、キョトンとした様子に代わり、わたしを見つめていた。 「なに?」 「ふえっ!あ、すいません……。えと…《おめかし》っていうのはなんと言うかですねぇ、普段と違う格好とかをして着飾って出かけたりすること……かなぁ」 なんともはっきりしない答え。でも、なんとなくわかった。彼はたぶんわたしに制服以外の物を着て、図書館に行こうと言っている。 わたしが図書館に行く時はいつも制服だから、彼はそう言った……と思う。 「あ……もしかして長門さん、明日キョンくんとお出かけなんですか?」 「……どうして」 「え…いや、なんとなくですけど……うれしそうだから、です」 こういう所は鋭い、朝比奈みくるの意外な一面。 「そうだ!長門さん、明日は何時に待ち合わせですかぁ?」 なんなのかわからない。……特に隠す必要はないから答えるけど。 「正午に喫茶店」 「よかった!明日わたし朝から長門さんの家に行きますから待っててくださいね?」 そう言うと、朝比奈みくるは走り去った。いったい何を考えているのだろうか。 「あれ?有希、あんたまだ居たの?まぁいいわ、どうせだし途中まで一緒に帰りましょ」 わたしは頷き、涼宮ハルヒと一緒に帰った。 明日は彼と図書館へ。この間の探索で朝比奈みくると涼宮ハルヒに選んでもらった洋服を着ていこう。値札は取ったから……アイロンをかけてしわを取っておかないと。 「おじゃまします」 午前10時。朝比奈みくるはなにやら大きめの荷物を持って、わたしの家にきた。 「うふふふ……長門さん、《おめかし》の時間です」 「……?着替えるにはまだ早い時間」 「違いますよぉ、これです!お化粧しましょう!」 朝比奈みくるの持ってきた大きめな荷物。その中には化粧品などがいろいろと入っていた。 「お化粧……わたしが?」 朝比奈みくるはニッコリと笑って答える。わたしでもかわいいと思う程、素敵な笑顔だ。 「はいっ!ほら、早く座っちゃってください!」 言われるがままに座ると、朝比奈みくるがわたしの顔をペタペタと触ってきた。 「長門さんの肌、きれいですねぇ……髪もきれいだし羨ましいです」 「……わたしはあなたが羨ましい。明るい性格に、かわいい顔。発育のいい体」 わたしは朝比奈みくるに少しだけ憧れている。彼の目を釘付けにできる人間だから。 「そんな……。っていうか長門さん、発育のいい体ってオジサンみたいです」 そう言うと、朝比奈みくるは荷物からなにやら取り出して、わたしの顔にいろいろと始めた。 わたしは知識がないから為されるがまま。正座のままでそのまま化粧を施された。 「うん、こんな感じかなぁ……。やっぱり元が良いとお化粧は楽しいです」 わたしは鏡を覗き込んだ。 いつものわたしとは何処か違う感じのするわたしがそこには写っていた。 頬を少し朱に染めている化粧のせいだろうか、なんだか別人が写っているように思える。 「気に入って……くれましたか?」 朝比奈みくるがわたしの顔をおずおずと見てくる。 「……けっこう」 「よかったぁ!あ、お洋服はどうしましょうか?」 わたしにはない満面の笑みを浮かべて聞いてきた。着ていく洋服は決めているので、それを見せて返事の代わりにした。 「あ、それはこないだのですね?気に入ってもらえたならうれしいです」 「……着替えてくる。待ってて」 そう言って部屋を移動して着替えた。まだ着慣れていないせいか、少し動きにくい。 着慣れない服の所々を引っ張りながら、朝比奈みくるのもとに戻った。 「あ、長門さんかわいいです。似合ってますよ!」 彼女は優しく微笑んだので、真似をしてわたしも微笑んだ表情を作って答えた。 「……ありがとう」 朝比奈みくるは驚いた表情で、頬を赤くしてこっちを見ていた。 「……どうしたの?」 「ふえっ!な、長門さん、今の表情すっごくかわいいですっ!見とれちゃいました」 女の彼女が女のわたしに見とれるということもあるらしい。わたしにはよくわからない概念。 「長門さん、そろそろ時間だからわたしは帰りますね?あと、お出かけが終わって帰ったらこれでお化粧を落としてくださいね」 そう言うと、彼女は化粧を落とすための物を置いて出ていった。 時間は11時、いまから向かえば問題なく間に合う。 わたしは家を出て喫茶店に向けて歩きだした。 喫茶店の前に彼は立っていた。わたしが遅れてしまった、不覚。 「……少しおくれた」 彼は口をパクパクさせている。驚いた時の彼の表情だ。 「長門……メチャクチャ綺麗だぞ。いや、綺麗っつーか、かわいいっつーか……」 なにやらゴニョゴニョと呟いている彼にわたしは言った。 「《おめかし》してみた。……うれしい?」 「……うれしい、かな。俺のためにしてくれたのか?《おめかし》は」 「……そう。あなたが休日だから《おめかし》をしてこいと言ったから」 わたしがそう伝えると、彼はわたしの頭を撫でながら微笑んだ。 「そっか。よし、お礼に飯奢ってやる。そしたら図書館に行こうな」 わたしは少しだけ頷いて答えた。彼がよろこんでくれてよかった。 その後、喫茶店で昼食を取り、図書館に行った。 図書館ではいつも通りにわたしは本を読み続けた。時折、様子を見にくる彼が頭を撫でてくれると気持ちよかった。 こうして、閉館時間まで幸せな時間を過ごした。 閉館間際にわたしは本を借りる。彼が作ってくれた貸し出しカードを使うことで、わたしはうれしかった思い出を思いだせるから。 「長門、満足できたか?」 優しい彼の声。今日は涼宮ハルヒはいないから、少しだけわがままを言おう。 「……まだ」 わたしの言葉を聞き、彼はやはり不思議そうな顔をした。 「まだ……って、あとは何がしたいんだ?」 「家まで……送って」 彼の表情が驚きに変わり、そして優しい独特の微笑みに変わった。 「よしわかった。さ、行こうぜ」 彼がわたしの手を取る。今日だけの、休日で二人の時だけのわがまま。 それを聞いてくれる彼を想い、わたしは少しだけ強く手を握り返した。 「着いたぞ、長門」 彼はわたしに声をかけた。今日が終わる、少し残念。 わたしは頷いて、オートロックの玄関に近付いて行った。 「長門!今日のお前は輝いてたぞ!また……《おめかし》しろよな!」 わたしの後方5メートル辺りから彼の声が聞こえてきた。このまま無視したらダメ。 何か……言わなくちゃ。 わたしは思いだした。朝に、朝比奈みくるに向けて送った、朝比奈みくるから学んだ微笑みの作り方を。 そして、広く使われていて最も柔らかいイメージだと思う別れの挨拶を。 わたしは振り返り、彼の目を3秒程見つめた。 「………ばいばい」 朝比奈みくるに向けた笑顔より、もう少しだけ微笑みながらわたしは彼に別れを告げた。 おわり
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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ「プロローグ」 「第一章」 「第二章」 「第三章」 「第四章」 「第五章」 「第六章」 「第七章」 「エピローグ」 挿絵口絵 挿絵 登場人物 後に繋がる伏線「第五章・第六章」(伏線) 「第七章」(伏線) 「エピローグ」(伏線) この巻にて回収した伏線「プロローグ」(回収した伏線) 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第7巻。2005年9月1日初版発行。 表紙 通常カバー…朝比奈みくる 期間限定パノラマカバー…橘京子、谷口 タイトル色 通常カバー…青 期間限定パノラマカバー…紫 その他 本編…422ページ 形式…長編 目次 プロローグ…P.5 第一章…P.58 第二章…P.112 第三章…P.162 第四章…P.224 第五章…P.265 第六章…P.319 第七章…P.265 エピローグ…P.401 あとがき…P.428 裏表紙のあらすじ 年末から気にしていた懸案イベントも無事こなし、残りわずかな高一生活をのんびりと楽しめるかと思いきや、 ハルヒがやけにおとなしいのが気に入らない。 こんなときには必ず何かが起こる予感のそのままに、俺の前に現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。 しかも、事情を全く知らない彼女をこの時間に送り出したのは、なんと俺だというのだ。 未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?大人気シリーズ怒涛の第7弾! 出版社からのあらすじ 残りわずかな高一生活をのんびりと過ごすはずだった俺の前に現れたのは、8日後の未来から来た朝比奈さん!? しかもこの時間へ行くように指示したのは俺だというのだ。8日後の俺よ、いったい何を企んでるんだ!? 内容 シリーズ中最長編の巻。この巻では、朝比奈みくるメインでストーリーが進んでいく。 時系列では、第6巻『動揺』収録の「朝比奈みくるの憂鬱」の直後となり、冒頭では『消失』での伏線を回収する回想シーンが挿入されている。 新たな伏線が多く張られる巻でもある。 あらすじ 章ごとに記載。また、ネタバレ記述があるので、原作未読の場合は注意。 「プロローグ」 +... 時は2月3日。キョンの回想から始まる。 1月2日、キョンは長門、みくるとともに12月18日へと時間遡行する。長門の行為によって変わってしまった世界を再改変するためだった…… 「第一章」 +... 節分から数日が経過した日の夕方、キョンは部室へ向かうと、掃除用具入れの中から音がする 不審に思ったキョンは中を確かめてみると、そこには朝比奈みくるがいた。みくるはキョンも一緒に隠れるようにと言い、2人で掃除用具入れに入る。 しばらくして、部室に入ってきたのはまぎれもなく朝比奈みくるであった。 みくるが2人。掃除用具入れから現れた自分は、8日後から時間遡行した未来のみくるであり、時間遡行をするように言ったのはキョンだというが…… 「第二章」 +... 学校に登校したキョンは、いつものように自分の下駄箱を開けて靴を履き替える。 だが、そこには朝比奈さん(大)からの指令書(#1)が入っていた。放課後、キョンは指令書に書かれていた道具を取りに家に帰り、 自転車で長門のマンションへと向かう。 8日後から時間遡行したみくるとともに、指令書に書かれている場所に向かう。 その後、鶴屋邸へと向かい、キョンは8日後から時間遡行してきたみくるを預かってもらえるよう頼む。 「第三章」 +... 翌日、学校に登校したキョンは、自分の下駄箱を開けて靴を履き替える。そこにはまたしても朝比奈さん(大)からの指令書(#2)が。 指令書(#2)をクリアするため、みくる(みちる)とともに鶴屋家の私有山へと向かうが…… 「第四章」 +... 翌朝、キョンは目覚まし時計を止めに来た妹によって起こされ、SOS団一行で鶴屋山へと向かう。土、日曜日の件について話すハルヒ。 解散後、キョンは帰宅し鶴屋邸に電話をすると、みくる(みちる)が電話に出て、明日の件についての話をするのだが…… 「第五章」 +... 土曜日の朝、キョンは自転車で駅前へと向かい、SOS団のメンバーでいつもの喫茶店へ。 12時に再び集合した際に再びクジを引くと、今度は長門と一緒になり、長門とともに市内図書館に行く。 中で待っていたみくる(みちる)はキョン達の元へと駆け寄る。キョンとみくる(みちる)は指令書(#3)をクリアするため目的地へと向かい、 指令書(#3)に書いてある物を探すが、なぜか見つからない…… 「第六章」 +... 日曜日の朝、キョンは自転車で駅前へと向かい、SOS団のメンバーでいつもの喫茶店に入る。ハルヒの作ったクジを引き、長門と一緒になる。 キョンは長門とともに市内図書館に行く。指令書(#4)をクリアするため、その場所へと向かう。後にみくる(みちる)と合流する。 だが、朝比奈みちる誘拐事件が起こる。みくるを誘拐した犯人を追うため、キョンは新川の運転するタクシーに乗車し、古泉、森園生とともに みくるを誘拐した車を追うが…… 「第七章」 +... キョンは長門とともに駅前に戻り、ハルヒは総員解散を告げる。 翌日、キョンは駅前に向かい、鶴屋山を登り、指令書(#2)で行った場所を掘ると、箱のようなものが出てくる。その中身は… 日没後、キョンは自転車で長門のマンション近くの例のベンチに向かう。そこには朝比奈さん(大)がいた。 だが、彼女の言っていることは、これから起こる出来事らしいが…… 「エピローグ」 +... 次の日の昼休み、鶴屋さんが1年5組の教室に来る。キョンに用事があるらしく、薄暗い踊り場にキョンを連れて話を始める。 鶴屋山にて、本物の鶴屋家の宝が出てきたらしい。 その日の放課後、ハルヒはSOS団プレゼンツをする。それは、当たりのクジを引くと、みくるから手渡しでチョコがもらえるというものだった。 だが、参加者が多かったため、いつ終わるのかも分からない。長門に情報操作をしてもらったキョンは、みくるの手を引っ張ってを部室に連れて行き、 時間遡行をするように頼む。 8日前に時間遡行したみくる。少ししてから再び、掃除用具入れの中から音が聞こえる。そこに登場したのは…… 挿絵 口絵 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹(プロローグ) ⇒ 朝比奈みくる(みちる)(第一章) ⇒ キョン、長門有希(第一章)、朝比奈みくる(みちる) ⇒ 長門有希、朝比奈みくる ⇒ 挿絵 「プロローグ」 P.57…SOS団 ⇒ 「第一章」 挿絵なし 「第二章」 P.143…朝比奈みくる(みちる)、鶴屋さん ⇒ 「第三章」 P.197…涼宮ハルヒ、キョン ⇒ 「第四章」 挿絵なし 「第五章」 P.291…未来人 ⇒ 「第六章」 挿絵なし 「第七章」 P.381…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 ⇒ エピローグ 挿絵なし 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる(=朝比奈みちる) 古泉一樹 鶴屋さん 朝比奈さん(大) 谷口 国木田 キョンの妹 森園生 新川 多丸圭一 多丸裕 シャミセン ハカセくん 未来人 誘拐少女 後に繋がる伏線 「第五章・第六章」(伏線) 対立組織の登場・目的 ⇒第9巻『分裂』にて半分回収 「第七章」(伏線) 朝比奈さん(大)の言う「とても強力な未来」 ⇒未回収 「エピローグ」(伏線) 鶴屋山で発掘された謎のオーパーツ ⇒未回収 この巻にて回収した伏線 「プロローグ」(回収した伏線) 第4巻『消失』にて、もう一度12月18日に時間遡行しなければならないこと ⇒長門の行った時空改変を元通りに戻す 第4巻『消失』にて、ハルヒの見た謎の少女の正体 ⇒長門有希 刊行順 <第6巻『涼宮ハルヒの動揺』|第8巻『涼宮ハルヒの憤慨』>
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人の口に戸は立てられないとはよく言ったもんだ。 膝枕事件の翌日には既に俺とハルヒは学校公式に付き合っている扱いになっていた。 新聞部にはインタビューされるわ、クラスからは祝福を受けるわ。 仕舞いには見ず知らずの上級生からまで、 「ほら…あの人が…」「あぁ…あの涼宮の…」「普通そうなのに…すげぇよな…」 などとヒソヒソ囁かれる始末。 俺はその噂を沈静化するのを諦めていた。 どーせすぐ飽きるだろう。 …いたたまれないのは確かだが。 そんな俺だったが…最近、ハルヒの夢をよく見る。…むやみやたらと。 …その意味はあまり深く考えないようにしていた。 膝枕事件の事は耳に入っているハズだろうに、古泉と長門は何も言わなかった。 長門はともかくとして、古泉は何か言ってくるかと思ったがそれも無し。 ただ朝比奈さんには「頑張ってくださいねっ」と極上笑顔で言われてしまった。 …何を頑張れってんだ? 当のハルヒはと言えば、新聞部のインタビュアーをぶっ飛ばした後はおとなしくしている。 というか、最近の故障っぷりから考えればおとなしくしすぎだった。 俺が話し掛けても心ここに在らずといった様子。 部室でもいつもの席に座り、パソコンをイジっているだけだ。 たまにチラチラと俺の方を伺っているのが激しく気になるが、俺が目を合わせると慌てて視線を逸らしてしまう。 …何がしたいんだかね。 † 10月23日、くもり † なんなの? なんだってのよ! なんであたしがこんなにキョンごときを意識しなきゃなんないワケ!? …でも、しょーがないじゃない。 …キョンが側に居ると、落ち着かなくてしょうがないんだから。 どうしてもアイツの事が気になってしまう。 …キョンの事ばかり考えてしまう。 キョンが散々キャラじゃないって言ってたけど、あたしだってそう思うわよ。バカ。 …あたしらしく、しなきゃね。 …キョンはあの時、あたしのコト、トクベツな存在だって言った。 たぶん、そういう意味。 だったら、あたしはあたしでいたい。 キョンがトクベツと言ってくれた、あたしで在りたい。 …って、こんな事考えてる時点であたしらしくないじゃない! もっとこう、ガーッていって、バーンッてすればいいのよ! どーせキョンだってあたしの事が好きなんだろうし。 うん、明日っからまたキョンをユーワクしてやるんだから。 ハルヒの故障はもはや末期的なものになっていた。 おとなしいと思ったのはここ数日だけで。 ある日の朝、家を出てすぐの通学路でハルヒを見かけた。 「キョ、キョンじゃない。久しぶり、奇遇ねっ!」 久しぶりと言ったが、おもっくそ前日も会っていた。 それに奇遇と言うがハルヒの家は、全然別の方向だったハズだ。 「なんなら…一緒に学校行く?」 流石に断る理由も無かったので、並んで歩いていると、 「…あんたが繋ぎたいっていうなら手、繋いであげてもいいわよ?」 との言葉。 …そっぽを向いていたが照れてるのがバレバレだった。 …そんな事言われたら、握らない訳にはいかないだろうが。 俺が黙ってその手を握ってやれば嬉しそうな横顔。 …なんなんだろうね、これは。 別の日の昼飯時。 「…ねぇ。キョン。これ、ちょっと作り過ぎちゃったんだけど。良かったら食べる?」 …差し出された弁当箱は前の時と全然量が変わっていなかった。 ちょっと作り過ぎてあの量が出来上がるなら、この世に貧困なんて言葉は存在しないだろう。 クラスからは相変わらずのひやかし。…谷口が挙動不審なのも相変わらず。 だが、違った事がひとつだけ。 「う、うるさいわね! あんた達!」 …ハルヒがクラスメイトに反応した。 クラスの連中はそんなハルヒに一瞬だけ静かになったが、その後は更にひやかされていた。 …火に油を注ぐようなもんだ。 しかしハルヒも、クラスの目を気にするようになったんだなと感心した。 先日、俺の机に弁当を叩き付けたハルヒとはまるで別人だ。 …正直に言えば。 …あえて言えば。強いて言えば。どっちかと言えば。 最近、そんなハルヒの事が可愛いんじゃないかと錯覚する時がある。 ……俺もずいぶん病んで来ているのかも知れない。 そんな、ある日の事。 ガチャ 部室の扉を開けるとそこには朝比奈さんと長門、古泉が居た。 …ハルヒはまだ来ていないらしい。 「あ、キョンくん。今日は遅かったんですね」 「えぇ…ちょっとホームルームが長引いたもので」 編み物をしていた朝比奈さんが立ち上がり、コートを脱ごうとしていた俺を手伝ってくれた。 …あぁ、やっぱり朝比奈さんは気の付くいい奥さんになるだろうな。 毎日帰ってくると、おいしい料理とあったかい風呂と朝比奈さんが待っていてくれる。 朝比奈さんと結婚する奴からは良妻税を取るべきだ。 それにしてもハルヒは部室に居ると思ったがな。 ハルヒの指定席は空だった。 アイツが部室に居る時は大体起動しているパソコンも電源が落とされたまま。 「あ…。…ふふっ」 俺のコートを椅子にかけながら、朝比奈さんが急に微笑んだ。 …俺の顔に何か付いてるってのか? 「どうしたんですか? 急に」 「…今、キョンくん、涼宮さんの事考えてたでしょ?」 朝比奈さんの指が軽快に揺れる。 …えーと、だな。なんで分かったんだろう。 まさか朝比奈さんにも隠された新たな能力が!? …って、そんなにホイホイ隠された能力が出て来てたまるか。 蟲寄市じゃあるまいし。 「図星、ですか?」 俺が黙っていると朝比奈さんがイタズラっぽく言う。 …隠すのもアレか。 「えぇ…まぁ。ハルヒはホームルームが終わると同時に扉を蹴破る勢いで出て行きましたから。 てっきり先に部室に来てると思ったんですが。というか、何で分かったんですか?」 「えへへっ。それはね? キョンくんが涼宮さんの席をあっつーい視線で見てたからですっ」 …熱い視線て。 「でも…、わたし達が居るのに、やっぱり涼宮さんが居ないと寂しいんですね…」 朝比奈さんが悲しそうに眉をひそませる。 「って何でそうなるんで―――」 「ねぇ、古泉くん、聞きました? 涼宮さんが居ないとキョンくんは寂しいんだそうですよっ?」 かと思えば楽しそうに朝比奈さんが古泉に話を振る。 なんだか今日の朝比奈はヤケにテンションが高いな。 その表情が変声期のカメレオンみたいに変化する。 …つーか、俺はドン無視ですか。そうですか、そうですね。 「嗚呼…それは悲嘆すべき事態ですね…。ですが、やはり学校公認のお二方。片時も離れて居たくは無いのでしょう」 古泉も古泉でニヤニヤしながら、大袈裟に芝居がかった口調でホザく。 その目の前の机にはチェスの板が広げられていた。 …お前はゲームの相手が欲しかっただけじゃないのかと。 「…あつあつ」 …あまつさえ、あの長門までもが本に視線を落としたままポソッと呟いたが、ありがたく聞き流す事にした。 「あの、何か誤解してるようですけど。俺とハルヒはそんなんじゃありませんから」 朝比奈さんに向けて。ひいては長門と古泉にも向けての言葉。 「そんな、隠さなくてもいいじゃないですかっ!」 えーと。俺が何を隠してるっていうんでしょうか。 「えぇ。もう事は学校全体にまで知れ渡っているのですから。 あなた方は……いえ。特にあなたは、もう少し自分に素直になられた方が良いのでは?」 したり顔の古泉の援護射撃。 …聞いた所によると、やたら爽やかなイケメンがその噂をせっせと助長してるって話もあるらしいんだがな。 「…俺のどこが素直じゃないっていうんだ」 椅子に座りながら憮然と答える。 「それです。あなたが素直で無いという事をあなた自身が認識していない。これはいけません」 古泉が間髪入れず反論してきた。 …まるで答えが用意してあったかのようだ。 俺はかなりの勢いで自分の気持ちに素直に生きていると思っていたがな。 平々凡々、日々平穏。それが俺のモットーで。 …そのモットーは最近、全くと言っていいほど役に立っちゃいないが。 「いいじゃないですか、涼宮さんにあなたの本当の気持ちを伝えてあげれば。 きっと彼女も喜ぶと思いますよ?」 …俺の本当の気持ちって何だそりゃ。 「…お前はよっぽど俺とハルヒをくっ付けたいらしいな」 「いえいえ、僕個人がではありません。学園全体の総意として、ですよ」 サラッと髪を払う古泉。 …余計タチが悪いわ。 「…あ」 俺と古泉の会話を立ったまま聞いていた朝比奈さんが俺の顔を見て、何かに気付いたように呟いた。 いや、正確には俺の胸辺りを見て言った。 なんだ? 胸毛でも漏れてるか? …ってどんな剛毛だ。俺はミスターサタンか。 「朝比奈さん、どうしました?」 「ほら、ここ…、ボタンがほつれちゃってます」 朝比奈さんが俺の制服のブレザー、そのボタンの一つを指差す。 見ればそのボタンは確かに外れかけ、ブラブラしていた。 「あぁ…」 「えへへっ、ちゃっちゃと直しちゃいますねっ」 朝比奈さんは、部室に備えられた朝比奈さん専用裁縫道具箱をカチャカチャと鳴らし出す。 「いえ、いいですよ、これぐらい。外れてる訳じゃないし」 「いいえ、だーめですっ!」 俺は軽い気持ちで言ったのだが、パッと振り返った朝比奈さんに強い口調で返されてしまった。 「やっぱり身だしなみというのは大切だと思うんですっ。 涼宮さんも彼氏さんがだらしない格好してたら、げんなりしちゃうと思いますし」 ……誰が、誰の彼氏ですって? 今、俺の耳がおかしくなっていなければとんでもない発言が聞こえたような気がするんですが。 しかし朝比奈さんはそんな俺に構わず、道具箱から針と糸を取り出すと、椅子を引き寄せ俺の隣に腰掛けた。 「あのー…朝比奈さん?」 「じっとしてて下さいね? すぐに済みますから」 朝比奈さんは俺の制服を手に取り、有無を言わさずスッとボタンに針を通した。 …あー…なんだこれは。 …なんというか。マジで新婚さん気分だ。 朝比奈さんのきめ細かい指が踊り、リズミカルに表へ裏へと針を通す。 その度にボタンはしっかりと留められていく。 「…えーと、すみません。こんな事して頂いて」 「ふふっ、いいんですよー。キョンくんにはかっこいいキョンくんで居て欲しいですからっ」 …近距離みくるビームが眩しいっす。 それにしても、かっこいい俺とはどういった意味なんでしょうか。 何やら深読みしてしまうんですが。 というか。ボタンをちゃんと付けてるとかっこよさが上がるのでしょうか。 まほうのじゅうたんとかもらえちゃうんでしょうか。 むしろ、俺のかっこよさはボタン一つで左右されるものなのでしょうか。 それって微妙じゃないっすか? ソイツってホントにかっこいいんすか? …つか。そんな事よりも。近い。 繊細な仕事をしているのだから、その距離が近いのは当然なのだが、朝比奈さんの睫毛の数まで数えられそうだった。 しかも朝比奈さんは多少前傾姿勢になっているので、そのメイド服と相まって朝比奈さんの身体的特徴が暴力的なまでに強調されている。 …パ、パイレーツ・オブ・カリビアンッ! …海賊がどうしたってんだ。 ガチャッ! 「みんな、遅れてゴッメー…! ………ン」 俺が朝比奈さんの体の一部に目を奪われていると、部室の扉が勢いよく乱暴に開かれた。 この扉をそんな開け方をする人間を俺は一人しか知らない。 ハルヒだ。 マズイ。 ………って何がマズイんだ? ……別に何もマズくない…ハズだ。 …なんで俺は今、マズイだなんて思ったんだ? だが、すぐ側に居た朝比奈さんは目に見えてうろたえていた。 「す、涼宮さんっ、これはその、ち、違うんですっ!」 朝比奈さんが慌てて俺から体を離す。通されたままの糸が俺の制服を引っ張った。 「…みくるちゃん。何が違うの?」 ハルヒが扉に手をかけたまま、そう言った。 …なんというか、その顔が恐ろしく無表情だった。 …あまり見ないな。ハルヒのこんな顔は。 「あのっ、これは、ボタン、そうっ、ボタンをっ!」 「…それぐらい見れば分かるわよ。キョンのボタン、付けてあげてたんでしょ?」 あたふたする朝比奈さんとは正反対にハルヒが淡々と答える。 …その声にもあまりにも抑揚が無かった。声に感情が無い。 まるで長門のような喋り方をする。 コイツの中ではものまねでもブームなのか。 ぶっちゃけ似てないぞ。 「ハルヒ、遅かったな。てっきり俺より先に来てるもんだと思ってたが」 俺がそう言うとハルヒは「…ちょっとね」とだけ答え自分の席に着き、パソコンの電源を入れた。 CPUファンが低い唸り声をあげる。 「えと、あの、そのっ」 朝比奈さんはそんなハルヒと俺を交互に見やり、ずいぶんと慌てている。 「…朝比奈さん? どうしたんですか?」 俺が声をかけると朝比奈さんは、 「えぇと…そうだっ、あの、涼宮さん、か、代わりますかっ?」 ハルヒの方に針を差し出しそう言った。 というか朝比奈さん、伸びてる、伸びてるんですが。 …つか、代わるって何をだ? …ボタン付けか? …どうしてだ? 「…いい。あたしよりみくるちゃんの方が上手いと思うし」 しかしハルヒは、朝比奈さんの方を見もせずにパソコンの画面を凝視したまま、その提案をあっさりと断った。 …たぶん、まだ立ち上がってないと思うんだがな。 「…朝比奈、さん」 それまで黙って俺達の様子を伺っていた古泉が声を発した。 先程までと違い、その表情が険しい。 朝比奈さんが弾かれたように古泉の方を見ると、古泉は「早く」とでも言うかのように彼女の手元に視線を移した。 「じゃ、じゃあ、すぐ付けちゃいますねっ」 古泉の視線に触発されるように朝比奈さんがボタン付けを再開する。 「あ、あれ? えと、えっと…」 だが、先程引っ張ったせいか糸が絡まり、その作業は、はかどらないようだった。 カチカチカチカチカチカチカチカチ …静かな部室にハルヒのクリック音だけが響く。 …というか。 なんだってこんなに静かなんだ。 長門はいつもの事としても、古泉も何も言わずにチェスの駒をなぶっていた。 朝比奈さんはあぁでもないこうでもないと必死になってボタンを付けてくれている。…そんなに慌てなくても良かろうに。 そうして。 部室で常に騒がしくしているハルヒが今日は異常におとなしい。 ハルヒが部室に来てから恐らく15分程度。入ってきた時に喋ったっきり黙りこくったまま、パソコン画面と睨めっこをしている。 …状態異常(黙)にでもかかってんのか? 「なぁ、ハル―――」 カチッ! …沈黙に耐え切れず俺がハルヒに話しかけようとした時、叩くようなクリック音が響いた。 「…ハ―――」 カチッッッ!!! …打てば響く。まるで返事のようにタイミングよくクリックが返って来る。しかも左クリックがぶち壊れそうな勢いだ。 恐らく、そのクリックの意味は「話し掛けるな」か「黙れ」。 …どっちも似たようなもんだが。 …やれやれ。何をそんなに苛立ってるんだか。 その内、ESCキーどこいった!? なんて言い出すんじゃねぇだろうな。 つか、空気が重い。 …いや、重いんじゃないか。 やたらと乾いている。 指先がチリチリする。 口の中はカラカラだ。 目の奥が熱いんだ。 クックックッ……黒マテリア。 「…帰る」 あまりの居たたまれなさに脳内ソルジャーごっこで遊んでいると、ハルヒが来たばかりだというのにスクッと立ち上がった。 「…古泉君。電源、落としといて」 ハルヒが伝える。 …やはりその声にはまるで感情が見えない。 「…御意に」 古泉も短く端的に返す。 その内ハルヒが荷物をまとめ、カバンを手に取り、扉を開けた。 「…ハルヒ」 その背中は明らかに話し掛けるなと言っていたが、俺は思わず話し掛けてしまっていた。 「…何?」 ハルヒが振り返らないまま機械的に返事をする。 …ってちょっと待て。 俺は、なんで引き止めたんだ? …帰るっていうなら帰らせればいい。 …帰らせればいいハズだ。 ……何も、おかしい所なんか、無い。 「…いや、何でもない」 「…そ」 ハルヒは短くそう言い、結局振り返らないまま部室を出て行った。 …なんだこの後味の悪さは。 「ひぇぇぇん! ど、どうしましょう!?」 ハルヒが扉を閉めた途端、朝比奈さんがヤケに慌て出した。 顔の回りに汗マークが出るほどの焦りっぷりだ。 「あ、朝比奈さん?」 「ご、ごめんなさいっ、キョンくん! わ、わたし…わたしぃ…」 …なんで俺が謝られてるんだ? 朝比奈さんの目には涙が浮かんでいた。 「と、とにかく落ち着いてください、朝比奈さん」 …ヴーッ…ヴーッ…ヴーッ… 俺が朝比奈さんを慰めようとした時、携帯の震える音が聞こえた。 振動しているのはどうやら古泉の携帯らしい。 しかし古泉は鳴りっ放しの携帯を見ようともしないまま「ふぅー…」と大きく溜息を吐き、天井を仰いだ。 「…これは…参りましたね」 …そこに先程のニヤけ面は欠片も残っちゃいなかった。 あるのは苦悩。 ……何が参ったっていうんだ? …何もおかしい所なんて無い。 ……無い、ハズだろ? なのに。 …なんだってんだこの焦燥感は。 パタン …長門が、本を閉じた。 ◆ 10月31日、曇天 ◆ 気付いた。 部室の扉を開けた時、その時のキョンとみくるちゃんを見たら気付いてしまった。 キョンはあたしと居る時にあんな顔をしない。 …だからってベツにキョンはみくるちゃんが好きってワケでも無いと思う。 そんなに短絡的なおめでたい頭は持ち合わせてない。 ユキと一緒に居る時にしか見せない顔もあるんだと思う。 あの時キョンが言った、トクベツって言葉。 でもそれはたぶん、みんながトクベツって意味。 あたしも、みくるちゃんも、ユキも、古泉君も、鶴屋さんも、妹ちゃんも、あたしの知らない誰かも。 キョンにとってはそれぞれが、それぞれのトクベツ。 …イヤになるほどアイツらしい。 だから、気付いてしまった。 キョンは…あたしのコトが好きってワケじゃないのかも知れない。 …自惚れじゃなく、良くは思ってくれてると思う。 けれどそれは、きっと恋愛って感情じゃない。 舞い上がってたのは、あたしだけ。 …つまんない。 あの日からハルヒの故障は更に進化したようだった。 …いや、むしろ修理されたのかも知れない。 俺や、他の誰かが話し掛けてもひどく淡々とした態度。 ハルヒの方から話し掛けてくる事は皆無。 …その様子はハルヒと出会ったばかりの頃と似ていた。 あの頃と違う所があるとすれば一つ。ハルヒは俺の目を見なくなった。 あの頃のハルヒはそりゃ不躾に、まるで射殺すかのように俺の目をガッツリ睨んで来たが、今ではその目を合わせようとしない。 ただの一度たりとも。 …その横顔からは何も読み取れなかった。 部室でも重たい空気。 長門は普段と変わりなかったが、朝比奈さんも何やらいたたまれないようだった。 …俺だってそうだ。 あれだけ騒がしかったハルヒが終始無言なんだからな。 古泉はと言えば、その出席率が異常なまでに低下していた。 一週間に一度、姿を見ればいい方だ。 だが古泉は古泉で様子がおかしい。 たまに学校に来て、部室に顔を出したかと思えば、何も言わずにただじっとそこに居る。 その視線がヤケに鋭い。そうしてそれは時に俺を射抜いた。 …何か、言いたい事でもあるのだろうか。 古泉はひどく疲れた顔をしていた。 …あのハルヒの様子を見れば古泉が何をしてるのかは簡単に予想がついたが。 …なぁ、ハルヒ。お前は何をそんなに苛立ってるんだ。 …俺に、何か出来る事は無いのか。 ■ 11月10日、たぶん雨 ■ キョンの目が見れない。 キョンはあたしのコトが好きって思ってた時は何も考えずにどんどん突っ込んでいけたのに。 ブレーキが掛かる。 何だかうまく話せない。 肌の裏側がザラザラする。 キョンと話したい。 最近よくキョンからもらったペンダントを触っている自分に気付く。 …絆。 …あたしらしさって、なんだっけ。 よく分からなくなって来ている。 キョンと、話がしたい。 後編4
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【みくる視点→ハルヒ視点】 ピンポーンとインターホンの音が鳴ってまもなく、キョンの妹ちゃんの声がした。 『はーい』 「あ、妹ちゃん?あたしだけど。」 『ハルにゃん!今開けるね~』 中からドッタッタと木製の床を走る音が聞こえた。 「わあ、みくるちゃんに有希ちゃん、古泉くんも! どうしたのー?」 「あのね妹ちゃん、キョン、居る?」 「キョンくん? 居るけど……部屋から出てきてくれないのー。」 あたしたちは顔を見合わせた。やっぱりキョンが部屋で…… 「ちょっと上がらせてちょうだい。」 「どうぞー!」 「じゃあちょっとお邪魔するわね。」 「お、お邪魔します……」 「お邪魔します。」 「………」 キョンの部屋に案内してくれた妹ちゃんは実はね、と前置きして 「キョンくん、なんか冷たいの……。今はお母さんもお父さんも居ないから、一人で寂しかったとこなんだよ。」 「まったくキョンったら……根性から叩きなおさなきゃいけないようね!」 キョンの部屋のドアからはなんとなくどんよりとした雰囲気が漂ってた。この名交渉人涼宮ハルヒがキョンを救い出してみせるんだから! 「キョン? あたしよ。」 中からの反応はなし。シカトとはいい度胸ね。 「聞こえてるんでしょ? とりあえず、出てきなさいよ。」 「……なんで来たんだ」 聞こえてきたのは、明らかにいつもより暗くて湿った感じのキョンの声だった。 「あんた、無断で学校休んでどーするのよ。SOS団部室には必ず一日一回は来ること――」 「――くだらないんだよ、そんなの!」 「えっ……」 「SOS団なんてもうやってられっか。」 「な、何よそれ!! あんたは団員第一号なのよ!? そんな事、もう言わないで!」 「……もう俺には関係ない。」 「キョン……」 「……他の奴らも居るのか。」 「ええ、みんなあんたを心配して来てくれたの。」 「よくお前らも付き合ってられるよなぁ。あんなくだらない活動に。」 「……あなたはこのSOS団の活動を少なからずは楽しんでいた……違いますか?」 「古泉か……それは違うな。俺はただ付き合いまわらされていただけだ。」 「僕は、あなたと一緒に活動していた頃は楽しいと思っていましたがね。」 「……」 「5人揃ってこそSOS団なのです。あなたが居なければ……」 「……よく言うよな。本当の目的は違うくせによ。」 「キョンくん! あなたはそんな事言う人じゃありませんよ……一体、どうしちゃったんですかぁ?」 「朝比奈さん、俺はあなたが思っているようなお人好しじゃなかった、ってことですよ。」 「キョンくん……そのっ、えと、うぅ……」 みくるちゃんは今にも泣きそうな顔で拳を震わせていた。 「ちょっとキョン! あんた、いつからそんな生意気になったわけ!?」 「ハルヒ、俺はもううんざりしてるんだよ。お前の面倒事にな。」 「はあ……!?」 「その団の目的はもう果たしてんだからもういいだろ。」 「……え?」 「ああ、知らなかったんだよな。そこにいる朝比奈さんや古泉は実は…!!」 突如、あたしの目の前が真っ暗になる。意識を無くした。 【ハルヒ視点→古泉視点】 「未来人と超能力者なんだよ!!」 ……言ってしまいましたね。もう僕はどうすればいいか…… 恐る恐る涼宮さんの反応を見ようとした僕ですが、涼宮さんは本を片手に持っている長門さんに抱きかかえられていました。 「……これは一体?」 「涼宮ハルヒを一時的に気絶させた。彼の言葉を聞かせない為。」 さすが長門さん。判断と行動の速さが天下一品です。 「今の言葉は度が過ぎている。これからは注意するべき。」 「やっぱり長門も居たのか……お前らも大変だな。」 「涼宮ハルヒの観測はわたしの義務。別に大変でもない。」 「ああ、そうかい。でもその自己中女にはうんざりしてるんだろ?」 「そんなことは、ない。」 「もうやめましょう長門さん。涼宮さんも気絶してしまいましたし……ここはもう帰ったほうがいいかと。」 まあ長門さんが気絶させたのですがね。 長門さんがゆっくりと首を縦に振って涼宮さんの体を僕へ差し出しました。 それを僕が受け取るとまた読書に移り……って、やはり僕が運び役ですか…。 「きっとあなたが考えを直さないかぎり、涼宮さんは何度でも来ると思いますよ。では、僕たちはこれで。」 「………」 涼宮さんが泣きながら気絶していたことを、彼には伝えないことにしておきます。 次の日。やはり彼は学校には来なかったようです。 いつもの顔が1つなくなったSOS団に、更に暗くなるニュースが届きます。 「今日、涼宮ハルヒは学校を休んだ。」 それは長門さんの口から発せられたもので、僕にはその顔に困ったような表情が微かにあったように見えました。 「困った状況になりましたね……」 「今日はどうしますかあ……?」 その時、予想はしていたいつもの携帯の着信音が鳴り、僕は「すいません、バイドです」と言い残して閉鎖空間へ行くことに。 「な、長門さん……どうします?」 「………」 「……か、帰りましょうか。」 【古泉視点→みくる視点】 何もできなかったその日の夜、わたしは重大な事に気付いて、思わず一人言を口走ってしまいました。 「キョンくんが死んでしまう三日後って……明日の事!?」 どうしよう、未来のわたしが言ったことだから……このままじゃ本当にキョンくんは……自殺でもしてしまうんでしょうか。 わたしはずっと考えていました。夜が明ける頃まで、ずうっと。でもようやく結論が出て、わたしは覚悟を決めました。 だって、キョンくんが死んじゃうのは嫌だから。 翌日、キョンくんと涼宮さんはごく普通に登校して放課後に部室に集まりました。 何故かって?そもそもわたしが、キョンくんが引き篭もる事自体を無くしたんだもの。そう、今日から4日後にまで戻って…。 もちろん許されることじゃないというのは分かってました。でも、わたしにはこれしかできなくて……。 【みくる視点→キョン視点】 放課後の活動中、尿意に襲われた俺はトイレに向かった。その途中に、予測もしてなかった人物と出会った。 未来の朝比奈さんである。聞くと、俺が一人で部室から出てくるのを伺っていたという。 「今回はなんですか、朝比奈さん。」 何度か会ってるせいか、俺には最初に未来の朝比奈さんと出会った時に感じた緊張感というものが無くなっていた。 「実は……わたし自身のことについてなんです。」 「朝比奈さん自身のこと?」 「ええ、キョンくん、あなたには自覚がないかもしれませんが……キョンくんの死を阻止しようとして過去のわたしがやってはいけないことをしてしまったんです。」 ん、なんだなんだ? 俺の死? それを今の朝比奈さんが阻止してくれたって? それは有難いことだが…やってはいけないこととは? 「事の発端が起こる前の過去まで戻って、その後の未来を変えてしまったんです。」 「は、はあ……」 「あまり理解してませんね。これからわたしが話すこと、集中して聞いてください。」 俺は全てを話された……らしい。俺が引き篭もろうとした(まったく、俺は何をしようとしてたんだ)事からハルヒたちとの口論までの話や、朝比奈さん(小)が過去に戻ってした事。 まあ結局全細胞を集中させたが2割程度理解できなかった部分もあったが、まあいいだろう。 「過去のわたしには、これから未来へ戻って厳重な処罰が与えられると思います。」 「厳重な処罰とは?」 「禁則事項です。」 「もう一度ここへ戻って来られるんですか?」 「禁則事項です。」 「……もしかして、死刑の可能性も。」 「……ありますね。かなりの確率で。」 「禁則事項です。」という言葉が帰ってくると予想していたが、朝比奈さん(大)は素直に答えてくれた。 「でも、未来のあなたが存在するということは、今の朝比奈さんは死んではいない……ということですよね?」 「そうとも限らないんです。」 「へ?」 「予期されぬ過去の言動は、未来に繋がる可能性があるんです。つまり、未来が変わってしまう可能性が。現に、わたしの過去にはこんな事はありませんでしたから。」 ……ええと、つまりもし朝比奈さん(小)が死刑にされてしまえば、朝比奈さん(大)も消えてしまう可能性がある、と。 「その通りです。」 『可能性』というフレーズが随分多かった会話だったが、だいたい理解できた。……じゃあこれはかなり危険な状況なんじゃ。 「ええ、そうですね……過去のわたしのことだから、絶対みんなに言わずに未来に帰っちゃうと思うから……。」 「それはもう阻止できないんですか?」 「……過去にでも戻らない限り、絶対。」 「……そうですか……。」 頭が不安がよぎった。いや、さっきから充満しているのかもしれない。 朝比奈さん(小)が未来へ帰って死んでしまう……?そんな事、俺は考えたくなかった。 朝比奈さん(大)が未来へ帰っていく。今回はヒントくれなかったな……もしかして、この情報自体がヒントだったのだろうか。 俺一人の力でどうにかするなんてこと、できやしない。それは前々から分かっていた事だ。 頼れるのは一人しかいまい。 俺はトイレを済まし、活動終了の時刻まで部室で待つことにした。 「随分長いトイレね。」 「ちょっとな。」 「ちゃんと手洗ってきたでしょうね!」 「あ……ああ。」 忘れてた。ま、まぁ……いいだろ。 この時はまだ朝比奈さんはメイド姿で部室に居た。いつ帰るんだろう? という疑問が頭の中で渦を巻いていた時、小声で朝比奈さんの声が聞こえた。 「あっ、そろそろ時間……」 確かに聞こえたその言葉。未来に帰る時間とみて間違いはないだろう。 「ごめんなさい、今日は用事があってこれで失礼します……」 「みくるちゃん、用事って?」 「禁則事こ……あ、えっと、家の用事で。」 「っそ、なら仕方ないわね……今日の分、明日ちゃんと働くのよ! いい?」 「……は、はい。」 朝比奈さんは頭をガクッと下ろしてそう言った。だが、どうせ途中で帰ってしまうなら今日部室には来ないはず……朝比奈さんはそういう人だ。 きっと名残惜しかったのだろう。朝比奈さんは制服を手に持って「じゃあ、トイレで着替えてきますね。」と言い残して部室を出て行った。 ……朝比奈さんが帰ってしまう。 条件反射で俺は部室を出た。もちろん朝比奈さんを追うためさ。 「キョン、何処いくの!?」 「トイレだ!」 「さっき行ったじゃない!」 「手を洗い忘れた!!」 「はあ?」 上手く口実を作ってハルヒの制止攻撃を受け流す。部室を出ると栗色の髪を揺らして歩く朝比奈さんが目に入った。 「朝比奈さん!!」 「ひぇっ……!」 可愛らしい顔がこちらを振り向く。両肩を掴もうとしたが、手洗ってなかったんだっけ。 「今から……帰ってしまうんですか。」 「……!どうしてそれを……?」 「俺には朝比奈さんの事はなんでもお見通しですよ。」 少し言ってみたかった言葉だ。俺の脳内ではこの後に朝比奈さんが照れ出すというシナリオが組み立てられていたのだが、朝比奈さんはしょんぼりと顎を引いた。 「ごめんなさい。勝手にこんな事を……。でも、わたしが居なくても全然大丈夫、でしょう?わたしなんか、別に……」 「何を言ってるんですか! あなたはSOS団に必要不可欠ですよ!」 たとえそれが違ったとしても少なくとも俺にはそうであることは間違いない。 「嘘です! わたしはただ、皆さんにお茶を出すくらいしか……。必要とされていない存在なんです……!」 朝比奈さんがこんな事を考えていたとは……予想外だ。 「皆朝比奈さんを必要としてますよ。ハルヒも長門も古泉だって、もちろん俺も!」 「……ごめんなさい!!」 突如腹部あたりに痛みが染み渡る。ああ、また朝比奈さんに殴られる事になるとは… 少し腹を抱える俺をよそに、朝比奈さんは時間移動を始めた(のだろう)。 「待ってくださ……朝比奈さん……!」 くそ、さっきのパンチが効いたぜ。あの細い腕であんな剛拳を放つ事ができるなんて… 「さようなら、皆さんによろしくね。」 「朝比奈さん!!」 朝比奈さんは音も無く光の中に消えていった。…残る手段は絞られた、か。 「手を洗うのにそんなに時間がかかったのかしら?」 ああ、すっかり忘れてた。もう一度本当に手を洗いに行くのは不自然か? 「何してたのよ!」 「別に大したことじゃねえよ。」 「そんな答えが許されるとでも思ってるの?だいたいあんたは……」 ハルヒは俺の無責任さに説教を始めた。俺は簡単にそんな話は聞き流したね。 部室の時計が活動終了の時刻を指した。ハルヒを先頭に、古泉と長門が部室を出て行き、その後に俺が続く。 が、ここで何もしなかったら何の意味もない。俺は小声で長門を引き止めた。 「なに?」 「あのさ、お前も…知ってたりするのか?」 「なにを」 「朝比奈さんの事だよ。」 「知っている」 なら話が早い。お前になんとかできないものなのか? 「できないこともない。けれど、この時空の流れの歴史を書き換えてしまうことになる。」 「やっぱりそれってまずいのか?」 「まずい」 「でも……お前も朝比奈さんの事が心配だろ?」 ここで長門が首を横に振ればもう終わりだと思ったけどな。長門はそんな非情な奴じゃない。 「心配」 「今度美味しいカレーでも奢ってやるよ。行ってくれるか?」 「いく」 「そうか、ちなみにどこ――まあ、この場合過去と未来とカレー屋という選択肢があるわけだ――に?」 「未来に。」 俺はてっきり過去かカレー屋へ移動するのかと思っていた。未来ってことはやっぱり…… 「朝比奈みくるがいる未来。」 だよな。俺がここで行かないわけがない。 「じゃあ目を閉じて」 「ちょっと待て。」 「なに?」 「またこの空間ごと凍結とかしたりするんじゃないだろうな。」 「しない。ここを凍結するのはあまりにも無理矢理。」 「そうか、なら続けてくれ。」 ふっ、と体が浮いたような感じ。何回も味わっている時間移動の感覚だ。これに慣れてしまっている俺はある意味――でなくともか――凄いのだろうな。すっかり未来人気分だ。 そんなに長い時間がかかったようには思えなかった。数分くらいかな? 俺は足で地面に立っている感触を掴んだ。 五感の内のひとつに異常に反応する匂い。まろやかなような、香ばしいような、それでいて辛そうな匂い…… 俺は目を開けて呆然とした。 「……あれ?」 「……間違えた」 頼むぜ長門、ここは明らかにカレー屋の厨房だ。しかもいつの時代かさえ分からん。 そしてまたさっきの感覚が俺を包む。さっきの移動時間が短かった理由が分かったね。今回は何十分もかかったような感覚だ。 着いて目を開けた先には、いつも見ている光景が広がっていた。そう、文芸部室。 「また間違えたんじゃないだろうな」 「違う。間違いなく未来。」 じゃあここは何年か後の文芸部室なのか? 長門、説明してもらわないと分からん。 「朝比奈みくるが行った未来と同じ時間平面にわたし達はいる。ターゲットを朝比奈みくるだけに揃えたから、何年後なのかは分からない。」 「朝比奈さんは何処なんだ?」 「探すしかない。」 また随分と難易度の高いミッションだな。まぁ長門が傍に居るなら何でもできそうな気分になってくる。俺は暗くなりかけていた気分を一掃し、明るい声を放った。 「じゃ、行くか!」 未来からのメッセージ 後篇へ