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「ぅ暑ぃ…………」 艶のある黒髪をした色白の少年、雪がうだるようにそう呟いた。 パリっとしたブランド臭を感じさせる黒いシャツをラフに着崩した雪は、シャツの胸元を指先で摘み、パタパタと動かしてなけなしの風を送り込む。 だがそれも所詮気休め、というよりなまじ半端な涼気を得ても周囲の暑さを余計意識してしまい、逆効果となった。 もういっそこのまま永眠した方が楽じゃ無いか。そう思わせる程の異様な暑さと湿気は、比較的貧弱な部類に入る雪の体力と水分を奪っていき、時間が経つ事に花が萎れていくように、雪の体が身を預けるソファーへと沈んでいく。 彼が居る場所は東京都内にある大学病院の受付カウンター。 百人程を楽に収容出来る広大な空間は今、熱気と湿気による灼熱地獄と化していた。 真夏まっ盛りの身体を蒸発させるような熱気は、カウンター内に居る百人近い人々の密集効果により更に気温を上昇させ、汗を止め処なく流させる湿気は身体から汗を発汗させて大切な水分を蒸散させてゆく。 しかもどんどん酷くなっていく湿気は、もう何と言うかここに居る人達の汗によって無制限に上昇するんじゃ無いかという馬鹿げた考えを抱かせる程だ。 さて、真夏の病院と言えば平成の三大神器であるエアコンでガンガンに冷えた真夏のオアシスというイメージがあるのだが、この病院のカウンターがその定理に当てはまらない理由が幾つかある。 一つは昨日の記録的豪雨の中に混じった落雷による空調機能の故障。 厳密に言えば空調機能自体に故障した箇所は無いのだが、空調と電気を繋ぐ為の電線――、それが先日落ちた落雷による誤作動で過電流を起こし電線が焼ききれた事。 もう一つは、これは大変だ早くなんとかしないとと病院の関係者が朝方に急ピッチで電線を修理したは良いが、なんと故障は院内の空調を一括管理するコンソールまで広がっており、冷房を作動させたと思ったらなんと暖房が流れてしまった上、切ろうにもコンソールが一切の操作を受付けなくなった事。 それならば電源自体を切れば良いじゃないかと思うのだが、大学病院の電気系統システムというのはこれまたややこしく、冷房の電流を止めようと思えば、院内の電気を短時間だが止めてしまう事になってしまうのである。 なまじ生命維持装置等がある以上、たかが冷房の為に患者の命を危険に晒す訳にはいかない。 という事情があり訳で、院内の空調は暖房のまま放置されているのであった。 だが、そんな事情を知る由もない雪含め病院内に居る全員は、ただその地獄が終わるのを待つしか無いのである。 (暑い……順番もまだ来ないし、どうせなら何か飲み物でも買うか) ぐったりとしながらも雪はベンチから立ち上がり、人でごった返したカウンターの中を進む、入り口横の自動販売機には雪と同じように冷たい飲み物で暑さを逃れようと思った人たちが長蛇の列を作っていたが、これで暑さをしのげるのなら構わないと、10メートル程伸びた列の一番後ろに立とうと足を踏み出したところで、 ぎゅむ ――何かを踏んだ。 「ふぎゅっ!?」 そして何か妙なうめき声が聞こえた。 「なんだ? って、うぉ!?」 慌てて自分の足元を見ると、そこには橙色の水玉模様をした布に包まれた塊が――、いや、水玉模様のパジャマを着た小さな子が、気を付けの姿勢をしたままうつ伏せに倒れるという、俗に言う『土下寝』スタイルで地面に突っ伏していた。 雪の靴はその女の子の、綺麗な茶髪(地毛だろうか)を生やした頭の上に乗っかっていて、なんとというか傍目から見ると、凄く危険な状態だった。 とりあえず、このまま踏んでおく訳にもいかないので手早く足を退ける。 水玉パジャマの少女は、地面に突っ伏したまま眠っている様に死んでいる。 雪の喉はカラカラで、今すぐにでもこの暑さを凌ぐために自販機で水分補給をしたい。 流石にこの暑さだからといって、死んでいる訳では無いだろう。それに此処は病院、何かあればすぐに処置出来る。 結論、この子は放って置こう、触らぬ神に祟りなし。 雪は足音も静かに、再び自販機の列に並ぶ為に歩き出した、が、 踏み出した足を、今まさに通り過ぎようとした少女にから伸びた手に掴まれ、歩みが止まる。 (やっぱりこうなるか……) 若干予想はしていたが、踏んでしまった時点でもう逃れないのだろう。潔く一言謝って許してもらおう、そう思い口を開こうとした雪だが、 「いたいけな女の子を踏みつけておいて、知らぬふりして行っちゃうの? それってどうかなぁって私は思うんだけどね、やっぱり一般論を真に受けるのも駄目だって思うんだ、でもやっぱり頭を踏まれて存在スルーされるのは、踏まれた方も納得いかない訳で、つまりは自分の存在を主張する為に私はあなたに全力で存在をアピールしてみる!」 顔を勢い良く上げて開口一番マシンガントークを炸裂させた少女を見て、雪の中で積もりかけていた罪悪感の山が一気に瓦解していく。 ---- #comment
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静寂と言う時間が流れている、というわけでもないし。 沈黙と言う空気が泳いでいる、というわけでもない。 セシルがノアに優しく声を掛けてからのこの雰囲気はきっと――気まずい、と言う。 誰しもが言葉を発せずらくなった状態。 幾分かの時間、騒がしい森から(本来あるべき姿である)静かな森へと変わる。 ――と。 「御免……みんな」 ノアは俯いて、小さな声で、呟くように。 「ぼくがあんなに大声で喚いても……二人は、帰らない。迷惑をかけるだけだった」 「まあ、分かればいいのさ。さて、これからどうする?」 セシルはノアに巻かれていた鉄の蛇を手で触り、輪の花に変えると、ノアと零の顔を交互に見て問う。 すると、零は相変わらず落ち着いた声で。 「まずは、警察だろう。あの二人は迷子になっただけだろうから――日が暮れていたらまだしも、今は昼前。それほど緊急のことではないはずだ」 零の極めて冷静な判断と対処。 すると、それに対し。 「駄目だよ」 だがノアははっきりと、そう即答する。 焦燥の表情の彼。 これは迷子になったアイリスを一刻も早く見つけてあげたい――ということからの焦りでは無い。 それよりかはもっと、重大で、危険――何故ならば。 「聞いたんだよ、悲鳴を」 「悲鳴、だと……?」 すると、ノアは零に向き直り、 「ぼくの直ぐ近くで、アイリスとエレナが小さな声で叫んだんだ。だからぼくが慌てて振り向いたら――二人共、居なかった」 と言う。 「ああ、それならオレも聞いたよ。だからオレは先刻、探すとか見つけるとかじゃなくて――『救う』と、ノアに言ったのさ」 だから。 急ぎ、焦らなくてはいけないのだ。 何せ二人は『何者か』に襲われた可能性が高いのだから――! 「そういうことなら、警察に言っていたら確かに二人を救うには遅すぎるが――なら、どうする」 この広く深い森の中で、特定の人間を探すのは困難。 しかもその上――『何者か』に見つかったら、攫われた二人に危険が及ぶだけなのだ。 だが、そんな絶望的状況でも、セシルは言う。 「簡単なこと、さ」 そして彼は、ふいに懐から一枚のハンカチを取り出し、 「空飛ぶ絨毯にでも、乗っていくかい?」 +++ ウォールワットの奥に存在する、森林地。 そこには勿論、世に知られた千年樹がひっそりと在る。 だが――その傍に小さな湖が在るということを知る人は、少ない。 そんな秘境に、悪党共は居た。 「これを罪悪感と呼ばずに何と呼ぶって感じだな」 ルノワールは隣に在る、何故か死体のように手を組んで置かれたアイリスとエレナを見つめる。 「へえ、ルノワールみたいなゴーレムでも、そういう感情はあるんだねえ」 ジャイルは湖の水をすくい、その冷たさを楽しみながら意外そうにそう答える。 「ま、一応生き物だからな。あ、かといって、今更この悪事を止める気はさらさら無いぜ?」 そんなルノワールの言葉に、ジャイルは軽く笑って、 「そんなの、君の楽しそうな顔見ていれば、分かるよ」 会ってから約1日経っただけだというのに、早くもルノワールに親近感を抱くダークヒーローであった。 「…………ん」 と。 ルノワールの横に横たわるエレナが、身動きした。 そのことに、まだジャイルとルノワールは気付かない。 +++ ……………………。 確か私は。 アイリスさんとノア君と零君とセシル君と、森の中を歩いていたはずです。 あの有名な――千年樹を見るために。 だけど。 この状況は――どういうことでしょうか? と。 エレナはそんなことを考えながら、悪党共の会話に耳を立てる。 本来、こんなこと――他人の会話を盗み聞きするなどという、失礼な行為――はしていけないと重々承知はしている彼女だったが、状況が状況である。つまりは、緊急事態。 今エレナが分かっていることは。 己の隣で、親友のアイリスがまだ横になって眠っているということ。 男子三人衆は(あくまで今のところ)捕まっていないということ。 そして、自分達を攫った犯人は二人組、ということ――だけだ。 まあ、普通ならばこれだけのことが分かれば上出来だろう――それに何より、本来彼女は助けられるポジションなのだから、待っていればいいだけのことである。 だが、しかし。 エレナはそれでは満足しない。 これはノアやアイリスのように、騎士の血はどうたらとは関係なく――ただ純粋に、エレナのその真面目な性格だからこそである。 エレナは目を瞑ったままで――万が一にでも目が覚めていることに気付かれたら、どうなるか分かったものではない――不自然な動きをしないように細心の注意を払いつつも、しかし耳のみを外に向けて。 「――うさたん、これからどうするんだっけ?」 「……ルノワール。僕、今まで何回君に作戦を説明したっけ?」 「知らねえぞ」 「……ま、そうだろうけど」 そしてジャイルは呆れの溜息を吐き、「まあ、そんなことはどうでもいいんだけどさあ」と前置きをしつつ、何回目かの説明をルノワールに話し始める。 「まず、人質は確保したでしょ?」 「おお」 素直に頷く人型ゴーレムを一瞥し、可笑しいように少し微笑んでから、ジャイルは続ける。 「その後のこと、つまりはこれからのことだけど――絶対に残りの三人組はこの子達を探し回るから――」 「待て、うさたん」 と。 ルノワールは突然――話していたジャイルの口を己の手で塞ぎ、停止。 「…………?」 ジャイルは勿論、ルノワールの行動の意味が分からず、訝しげに彼を睨むことしかできない。 しかしそこで、ルノワールは言う。 「聞こえるか? うさたん」 「……なにほだ(何をだ)」 「五月蝿いぞ、うさたん」 「…………」 理不尽だ、と思いながら尚も、ジャイルは憎しみの念を持ってルノワールを睨み続ける。 すると、ふいに手が離された。 「へえー、成程。そっかそっか」 と、一人で何やらぶつぶつと独り言を言うルノワールに、今度は不気味の意で見つめるジャイル。 そして、彼――ルノワール=オブ=ゴーレムは。 とてもとても低く小さな、しかし恐ろしい声で、言う――エレナに向かって。 「ぎゃははは。おい、お前、起きてるんだろ?」 「――――え?」 ……長い前置きであったが、これにて水の泡となった。 黙っていればいいものを、反射的に声を出してしまったエレナは、しかし疑問に思って。 「な、何故、分かったのですか……?」 私は一寸も動いてはいなかったはずです。 と、彼女は続けた。 ジャイルはひそかに、それに賛同した。 確かに――彼女は動いてはいない。 何せ彼自身、ルノワールに話しているときでも、人質から目を離さないようにしていたのだから――だから、彼女は動いてはいないと言い切れる。 と。 そこでジャイルは思い出した。 それは真夜中の事。 『となると……ルノワールは些細な音でも、起きてしまうということになる』 『耳がいいのか?』 「そうか……『呼吸する音』か」 「お、さすが自称悪党だな、うさたん」 「自称じゃない!」 いや、どうみても自称だろう。 と、ルノワールは言葉には出さずツッコミ。 だがしかし、ジャイルの言っていることは現に正しかった。 エレナが寝ている時の規則正しいそれと、起きている時のそれとは――微妙に違うのだ。それに、状況が――状況である。意識するのも、仕方がない。 というわけで。 「ぎゃはは、もう一度、眠ってもらうぜ?」 と。 ルノワールが腕を振り上げた、その瞬間だった。 「――ちょっと待って、ルノワール」 と。 ジャイルがルノワールの背後から――どこか悪そうな声で、言う。 「ん? 急に何だようさたん。こいつを早く眠らせなきゃいけないのによっ」 「だから、それを待てと言ってるんだ」 そしてジャイルは己の癖毛白髪を掴むと、しばらく考えるように目を瞑る。ルノワールは手を振りかぶったままで、エレナは抵抗するために手を頭の上にかざしたままで、その様子を訝しげに見つめる。 そして、ふと。 悪党は言う。 「――その子を囮に使うっていうのは、どう?」 +++ 空飛ぶ絨毯。 それはあくまでも――空想上の乗り物である。いや、否。 空想上の乗り物であった、と訂正すべきである。 ノアと零とセシルはまさしく文字通りの――空飛ぶ絨毯に乗っていた。 しかし正確に言い表すならば――セシルが手品でハンカチを変えたものなのだが。 それはともかくとして。 現在男子三人衆は、アイリスとエレナの行方を捜している。 はたから見たらメルヘンでも、本人達は至ってシリアスである。 「だが……本当に飛ぶとは思わなかったな」 「そう? ま、最初に宣言しちゃったからね――オレは妖精界一のマジシャンになるって、さ」 「それより二人共、何か見つけた?」 そんなノアの不安そうな声に答えるように、零は静かに「……残念だが」と言い、セシルは肩をすくめて「まだだよ」と苦笑。そしてさらに眼下の緑を見つめて、 「ウォールワットの森林っていうのは癒されるし美しいけど、こんな状況だと鬱陶しく感じちゅうね」 おかげで、人っ子一人探せないよ。 と、セシルは締めくくる。 空を飛べば何かを発見できる可能性もあったが、それも意味のないことだと悟ったセシルは、徐々に絨毯を降下させていく。 「…………」 零はその間も必死に――手がかりを見つけようと、辺りを見渡す。 すると、 「――ぎゃは」 と、小さな笑い声。 零は反射的に声をしたほうを向くと――そこには奇抜な格好の人が、『飛んでいた』。 「……は?」 思わず素っ頓狂な声を上げる零。 しかしよくよく見ると、その不可解な人物は何を持っている。 ――いや、待てよ。あれはもしや。 「これ……だーれだ?」 二つに結った栗色の髪、そしてその髪の間から覗く怯えたような金色の瞳。 見間違うことなどありえない。 「エレナッ!」 零は叫ぶと居ても立ってもいられず――ルノワールに向かって、跳んだ。 身体が、空中に舞う。 「――れ、零君!」 と、思わずエレナは悲痛な声で叫ぶ――そして同時に、ノアとセシルは零が絨毯に乗っていないことと、エレナが何者かに捕まっている状況を迅速に理解した。 だが。 時すでに遅しというのは、まさにこのことである。 零の身体は急降下中、今から空飛ぶ絨毯で受け止めようとしても到底間に合わない。 そのことは一瞬で、ノアとセシルも、エレナとルノワールも――そして零本人も、分かっていた。 ――だから。 彼は、こう叫ぶ。 「エレナ、飛べ!」 「……え?!」 「いいから、飛んでくれ――俺を、信じて」 「……わ、分かりましたっ!」 そしてエレナは無我夢中で身体をよじらせる、ルノワールの手から離れるために。だがそこで手加減しないのがユノワールである。エレナはなかなか抜け出せない。しかも、零はもうエレナのすぐ上まで来ている。 と。 「エレナちゃん、気をつけろ、よ!」 絨毯の上に立ったセシルがそう叫び――そして、何かを空中に放り投げた。 何かとはすなわち、火の点いたマッチ。 しかし除々にマッチは形状を変えていき――最終的に火の鳥へと変化する。 「……あ、あ?! 一体何がどうなってるんだ?!」 ルノワールが叫ぶも空しく、火の鳥は一直線にルノワールの顔面に体当たり――! 「ぐうわああああ! 熱い熱い熱いだろおおおが!」 そして、ぎゃーぎゃーと叫ぶルノワールの腕の力が抜け――エレナはまっさかさまに、重力逆らうことなく、森へと落ちていく。 「――――!」 エレナはそして、己が今置かれた状況の重大さに気付き、すぐさま本能的に悲鳴をあげようとする……が。 その口を誰かが手で塞いでいた。 零の手だった。 「大丈夫だ」 と、まるであやすように零は言う。 零が目の前に居る。一緒に落ちている。 そのことを確認するとエレナは、安心したように意識を失った。 そしてすぐさま零は、エレナを抱きかかえ――そのまま緑の中へと呑まれていく。 二人は、落ちる。 +++ ――が、しかし。 零とエレナは、生きていた。 それには様々な要因がある。 まず、ノア達がアイリス達を上空から探すことを諦め、絨毯の高度を低くしていたこと。 そして何より、ウォールワットの大自然が、地面に落下するまで何度も衝撃を受け止めるクッションの役割をしたからであろう。 ちなみに、零はそこまで計算はしていなかった。 己が下に、エレナが上にくるように抱きかかえて、そのまま落ちてしまえば――下に居る自分がクッションとなって、少なくともエレナだけは助かるだろう、と。 落ちてから、しばらく経ち。 在る意味余韻に浸ってから、零はそして緑に囲まれた周りの情景を見渡し、呟く。 「……生きてたな、俺」 「……ん、ん?」 エレナは――自分が死ぬかもしれなかったという状況の直後だというのに――冷静な零の声に反応し、身体を起き上がらせる。 「……エレナ、大丈夫か?」 「……あ、はい。全然平気なのです、けど……零君は?」 「俺は、大丈夫だ。少し背中を打ったくらいで、何とも無い。骨も折れていないようだ」 「そ、そうですか……良かったのです!」 そして、心底安心したように微笑みを浮かべるエレナ。 その笑顔に零は見とれるわけでもなく惚れるわけでもなく――ただ、微笑み返した。 と。 そんな静かな雰囲気の中に――悪そうな声。 「あーあ、残念だったねえ、君達」 もう少し早く此処から逃げていればよかったのに。 そして赤眼白髪の少年――零とエレナとは初対面である――すなわち、ジャイルは緑の中から突如現れて、ニヤリと笑う。 「囮作戦――それはあの男子三人衆をなるべく分離させて、単体ずつで倒しやすいようにするためのものだったけど、この状況だと上手くいったみたいだねえ」 「……誰だ、お前」 「ん? 僕のこと? そうだねえ……僕は所謂、悪党だ」 得意げに、そして誇らしいようにそう名乗るジャイル。 そこには言いようの無い――ある種特殊な、無邪気さと邪悪さ。それらが微妙な比率で交わっているような、悪が潜んでいる……気がした。 そして――その瞬間。 地響きのような、『足音』が聞こえる。 「あ、話は戻るけど――僕の囮作戦には、もうひとつ目的があったんだ―― ――東の街、つまりは此処に落ちた黒い閃光から現れたゴーレムを、操ること」 そんなジャイルの言葉――しかし本来、このように作戦を敵にべらべらと喋ってしまうのは、半人前の悪党にとっては相応しくない行動である――が言い終わるか終わらないかのうちに、それは現れた。 一見すると木に見えるが、その形や色は見るからに不気味である。 しかし、零とエレナは、ゴーレムが目の前に現れたことよりも―― 「あ、アイリスさん!」 と叫ぶエレナの視線の先――木のゴーレムに埋め込まれているような状態で、アイリスは居た。今だに気を失っているようである。 「これだと、迂闊にゴーレムに攻撃できないな」 それよりも、俺一人で倒せるか……? さすがに零も、この状況で焦燥の気持ちは隠せなかった。 しかし、それでも。 零は近くに生えていた木の、なるべく丈夫そうな枝を折ると――それを両手で持って、構える。 それはまさしく――剣道の構え、そのものだった。 「……エレナ、安心しろ」 「だ、だけど、零君が危ないのです」 「大丈夫、俺は死なない……お前も、死なない」 そして零は、己の丈の二倍はある、そのゴーレムを見据えて―― 「俺が全力でお前を護ってやる」 そして、幕開けを告げるように。 いつかの、あの赤い絶望のように、ジャイルは堂々と、堂々と。 そして何より――楽しそうに。 「――さあ、喜劇のような悲劇を始めよう」
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「あー、もー、『灼熱』全然うれねえし・・」 ダイゴは一人ぶつぶつ独り言を言って内臓から湧いてきた金を集めていました。 内臓からは真っ赤に汚れた野口さんが顔を出していました。 相手が強いというのも考えものでした。 「オオオオオオオ、オ父サン、コ、コレハ・・」 黒人は固定しきれない震え続ける唇で犬に話しかけました。まるで陸に上がった直後の魚のように恐怖に怯え必死にもがいているような顔つきでした。 「うむ・・民主党のマークだ!!!」 犬の発言を黒人は予測はしていました。しかし、黒人は、 「OH!メェェーーーーン!!」 と言い放ち、あぶくを吹き出し、右手を前髪に添えて、おまけに一回転までして、昏倒しました。 「うぃっしゅ!これで、最後っと!」 一通り回ってきたダイゴが犬たちのほうへ近づいてきました。 「息子さんどうしたんっすか?」 「おい!ダイゴ!これを見ろ!」 華やかにあぶくを出して倒れている黒人を犬は無視してダイゴに話しかけました。 「これは民主党のマークだ・・この刺客は民主党からだ!なんというベタさだ!」 「なんすか?みんしゅとう・・みんしゅとう・・ああ!鬼のことっすね!?」 頭の足りないかわいそうなダイゴはしばらく考えた後ようやくそのマークをまじまじと見る気になりました。 「赤い・・丸・・っすね・・・・? ・ ・ ・ !! う・・あっ ああっあ!!!つ!!あああ!!!!!! うっがああああああああああ!!!!!!!!!!!!」 ダイゴは脳を無理やり絞られて引きちぎられる感覚がしました。(もっとも、これは単なる表現であり、実際のダイゴの脳はおそらくカメムシよりも小さい。) しぼって引き伸ばされてさらにそこに苦痛の嵐がやってくる・・そんな衝動がしました。 ブチブチブチと一つ一つの神経をむしり取られていくような苦痛・・ ダイゴは耐えられませんでした。 苦痛の連鎖がカルマと化し、ダイゴの頭をひねくりまわしました。 吐くにはけない・・まるで誰かが首を絞めているかのように・・ 眼に血管が血走るのが手に取るように感じられました。 キモチイイ・・ ドMのダイゴはしばらくして慣れてしまいました。 ダイゴはその苦痛の中で何かが浸みていくような感覚にようやく気付きました。 何かが自分に介入する感覚に。 苦痛の薔薇の棘が雁字搦めになって、ダイゴを締め付けました。 感じる・・ダイゴ。 そして、ゆっくりとダイゴは興奮の絶頂へ誘われました。 何か、自分が落ちていくような感覚を覚え、意識が絶頂に近づくに従って消えていきました しばらくしてダイゴは、ぼんやりとした頭でようやく意識を取り戻すことができました。 周りを見渡すと、そこは何故か一面真っ白な世界・・ 「なんすか・・?ここは・・あれ・・?犬もいねえし・・息子さんもいねえっすね・・?」 ダイゴは絶頂の後のゆらぎを抑えながら周りを見渡しました。 真っ白です。 世の中の白というものには、純白の白、正義の白、雪景色の白などがありますが、この世界はどうやら、『無機質の白』のような気がしました。 果てしない白い闇・・永遠と続くカルマ・・ 地平線までも白く、この世界に影はありません。あるのは、ダイゴの存在だけ。 今にもはかなく消えそうな圧迫感を覚えました。 ダイゴは四つん這いになって、吐いてしまいました。 血です。 体に限界が来ていたのです。いや・・・体は無傷でした。腕にも腹部にも痛みはありません。 ただ・・頭が引き裂かれ、それと同時に体が切り裂かれているように痛いのです。 「なん・・なんなんっすか・・?!」 ダイゴにはこの空間が理解できませんでした。 色があるのは、ダイゴと、床にちらばった自分の血痕・・ しばらくその血痕を見つめていると、だんだん『白』に飲み込まれてしまいました。 そうしてまたダイゴは孤独になったのです。 ダイゴは無機質の寒さを覚えました。次第に涙が零れてきました。冷たい涙です。 それもまた紅く紅く染まった涙でした。ダイゴはこれほどまでに孤独を味わったことは今までに無かったのです。 しかしこの孤独感は、何か、自分でありながら、他人の感情を本を読むようにして感じているような、感覚だったのです。 この苦しみを受けてる人が・・どこかにいる・・? ダイゴの考えは単なるカンでした。 ダイゴはどこからともなく足音が聞こえているという感覚に気付きました。 「やあ、実にスバラスィ世界だろ?」 そこには、顔面に『匿名希望』と書かれた不思議な『男』が立っていました。 男は、指を鳴らし、椅子を用意しました。 椅子は、真っ黒な漆喰で、固い椅子でした。それが2つ向かい合うようにして置かれました。 ダイゴが、この椅子を見て、腑に落ちない顔をしたので、匿名希望の男(略して、匿さん)は椅子をピンク色のソファに変えました。(べ・・別にピピピピンクだからって怪しい意味じゃないよ!) 「誰っすか・・?」 慎重に腰を掛けて、ダイゴは疑り深い眼をして向かいのソファに座る匿さんに慎重に話を切り込みました。何せここはさっきまで自分を孤独の奥深くまでねじ込んだ真っ白な何もない空間。疑うはずがありません。 「ん~、その答えは、『匿名希望』の意味ないんじゃなぁい?」 声を高くしたように聞こえました。それは王様が頭の足りないものに権利という名のもとに堂々と、そして干渉し、嘲るように話す言い方とそっくりだったのです。ダイゴはこういうプレイを昔栄貴にやらされたことがあったので、すぐにその傲慢っぷりに気がつき、構えました。 「じゃ・・じゃあここはどこなんっすか?まじちょ、マジバネェここからさっさと帰りたいんすけど・・」 こういう相手には傲慢には傲慢をぶつけるのではなく下の立場としてふるまうのが一番・・そうダイゴは学習していました。カメムシ級の脳みそサイズでもそのくらい分かるのです。 「こ こはぁ・・ふぅむ・・君の心の中に、僕がこの場所を作り、そこに君の心を入れ込んだってところかな?ドンダケーに簡単に言っても、コンダケー難しいんだけ どね!ほら、この世界地平線が見えないでしょ?それはさ、心っていうものが無限大だから、こうやって一部を借りて作る側も、距離なんて存在しなくなるん だ。」 ダイゴは、納得行ってしまった。何故か判ってしまったのでした。それは、とても自然に…人間が文字を気づけば覚えているように、それはもう心の中に存在していたのです。 これにはダイゴは戸惑いました。 戸惑うたびに、この世界は揺らぐような気がしました。いや、自分の存在が揺らいでいるのか…ダイゴには何かつかめてつかめないもどかしさがありました。 「・・それで、どうやったら出られるんすか!」 ダイゴは揺らぐ存在を振り切り、急に立ち上がり、頭に欠陥をたぎらせ、匿さんの胸倉を鷲づかみしました。 「いやぁ!!実に『いいことを教えてもらった』よ!ん~?出口?ヒ・ン・トは、君の『ココ』だよ♪」 中指を出してダイゴの胸を刺しました。 その中指はダイゴの胸を貫きました。それは果てしない乾ききった寒さが伝わりました。 とめどない心の血が流れおちました。苦しく寂しい静寂に一人笑う匿さんが一人。 ダイゴには理解できませんでした。例え心が直接接触しているにしても、彼の考えが理解できませんでした。 頭に響くのは、彼の快楽…理解できぬ一方的な残虐な快楽… ダイゴは崩れおちました。冷たい白の床に崩れ落ちました。 遠くまで延びる紅い紅い自分の血が横たわるかすれ行く自分の眼から見ることができました。 「じゃあ、ボクはもう行くからね♪」 これほどにまでない憎々しい言葉の槍を投げ刺し、白い空間から黒く深くぼやける穴を裂きました。 ダイゴは手を伸ばしました。必死に横たわる体を引きずり、震える指の先まで匿さんをつかもうとしました。しかし、匿さんはニヤニヤと嘲け、高々しい笑いを口を閉じて震えました。 匿さんは、ことごとくその指を踏みつけて、暗闇に消えていきました。 闇はしばらくして、白に飲み込まれました。 傷はしばらくして癒えました。 それは、ダイゴのカメムシ級脳みそのサイズのおかげでした。ここは心の空間、この身体の痛みも心からあらわれるものなのです! ミニサイズだったので、そんなことなど気にしなかったのです! なんという便利な心なんでしょう!皆さんも見習いましょう! さて、ダイゴは立ち上がり、出口を探しました。 小さな脳でやっとこらせで記憶した言葉… 「ヒントはココにある・・」 そうだ、とダイゴは自分の胸を押えました。 「胸・・なんすかね・・?」 しかし、ダイゴは悩みました。記憶したはいいが、それ以上のことはカメムシスペックでは解釈することができなかったのです! 「スタッフー!フタッフー!?」 ダイゴは叫びました。どうしても答えがほしいようです。 もちろん誰もいません。 「ちょっとぉ!ちょっと皆さん!どうしたらいいっすか!?」 ダイゴは読者に耳を傾けました。ブログでも書ければいいのですが、生憎ダイゴはパソコンを持ってません。しかし、なにやらダイゴは電波を受け取ったようです。 「え?胸だから才ッパイ!?マジスカ!でも、おれ、ミュージシャンやってっし、ボインじゃねえんすよ・・」 ダイゴは求めもしないニーズをやらかしました。
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紅兎(ホントゥ)は王宮の敷地内の近衛兵専用の兵舎に来ていた。王宮を騒がせたあの事件から、早くも10日が経過していた。あのあと虎は兵士数十名がかりで捕らえられた。幸い死者は出なかったものの、かなりの数の怪我人が出たらしい。蒼豹(ツァンバオ)もそのうちの一人だった。人づてに聞いたところ、かなりの重傷のようだが、死んではいないらしかった。心配ではあったが、あの後王族の警護は平時の数倍の厳重さだったため、今まで体が空かなかったのだ。事故として処理されているはいえ、万が一のことがあってはならないからだ。星光(シングァン)の命令という建前が無ければこうして様子を見に来ることはできなかっただろう。 『行ってこい』 『・・・・・・は?』 『仲間が心配だろう。お前は盾三人の中でも人一倍仲間に気を遣ってるから な。お前明日非番にしてやる。蒼豹の見舞いに行ってこい』 『・・・・・・しかし』 『いいから行け。お前が居ない間は近衛兵を増やすから大丈夫だ。 命令だ。行ってこい』 というわけで今蒼豹の居る兵舎の前に来ているのだ。中に入って廊下を進み 階段を上がる。二階の3つ目の部屋に、彼女の名が書いてある札が掛かって いた。 「蒼豹、紅兎だ。居るか?」 部屋の中からは、しばらく何の反応も無かった。留守ということは無いだろ うし、寝ているのだろうか? 紅兎が出直そうかと考えていると、突然何の前触れもなく引き戸が右側に開 いた。 「お前、居るなら返事くらいしろ」 蒼豹はボサボサに乱れた髪に薄い青の寝巻きを着ていた。少し痩せただろうか?蒼豹は紅兎の顔を一瞥して言った。 「・・・・・・入って」 紅兎は中に入って驚いた。物が異様に少ないのだ。中には布団と小さな箪笥 と煮炊きの道具が一揃いあるだけだ。紅兎は、この部屋の中での蒼豹の日常生活を容易に想像することができた。 「物が少ないな」 紅兎が正直に感想を述べると蒼豹は面倒くさそうに言った。 「必要な物しか置いてないから。・・・・・・で、何の用?」 「見舞いに来たんだよ。あの後どうなったか分からなかったから。俺も 殿下も、心配したぜ」 心配した、という言葉を聞いて蒼豹は微かに眉間に皺を寄せた。 「心配されるのは、慣れてない」 紅兎はフゥッとため息をつくと、話題を切り替えた。 「怪我の具合は?」 蒼豹は答える代わりに寝巻きの左側から体を抜いた。鎖骨の下辺りから包帯 が巻かれている。 『──────!』 紅兎は目を見開き、彼女の左腕を凝視した。そこに本来あるはずの腕は二の腕までしかなく、先まで包帯で巻かれていた。 「──────無いのか?」 紅兎が搾り出すような声で言うと、蒼豹はなぜか目を逸らして言った。 「刀ごと虎の口の中に腕を突き込んで、そのときに喰いちぎられた」 「なんて無茶を・・・・・・」 しかし、あのとき虎を止めるにはそれしかなかっただろうということは紅兎にもわかった。普通に戦って、人間が虎に勝てるはずはないのだ。 「傷口、痛むか?」 「痛まないと思う?」 「いや・・・・・・。治るのにどのくらいかかる?」 「それは、私が動けるようになるまでの時間?それとも復帰できるまでの時間?」 蒼豹の問いに、紅兎はたじろいだ。人とは自分の身に起こったことををこうも冷静に見ることができるのか。 「・・・・・・両方だ」 蒼豹はしばし思案顔になり、少しして言った。 「動けるようになるのは・・・・・・あと10日くらいかかる。復帰は、多分できないと思う。盾が隻腕では話にならないだろう」 紅兎は、容易に予想できた蒼豹の答えに、小さく呻き声を漏らした。分かってはいたが、改めて本人の口から聞くと、やはりこたえた。 紅兎の様子を見て、蒼豹が言った。 「心配しなくとも、殿下が新しい盾を入れて下さるだろう。私の代わりなどいくらでも居る」 「・・・・・・そういうことじゃない」 紅兎は蒼豹の言葉に苛立ちを覚えて言った。こいつは、何故こうも人の情が分からないのだろう。 「・・・・・・そういうことじゃないんだ。仲間が欠けるのは何度体験したって慣れることはない」 「そういうものなのか」 「そういうものだ」 紅兎はよろよろと立ち上がり引き戸に手をかけた。 「俺は帰る。今度殿下に自分で報告に行け」 「分かっている」 そう言うと、紅兎は帰って行った。 * * * * * * * * * 「・・・・・・ぐぅっ」 紅兎が出て行った直後、蒼豹は横向きに布団に倒れこんだ。 左袖を掴んだ手はぶるぶると震えている。 蒼豹は紅兎が帰ってくれたことに内心感謝していた。そろそろ耐えられない ところまで来ていたのだ。 幻肢痛。失ったはずの手足が痛む原因不明の症状である。最近、しばしば 何の前触れもなくやってきては蒼豹を苛むのだ。 「・・・・・・くそっ」 蒼豹はギリギリと歯噛みした。時たまやってくるこの痛みが、自分を笑って いるような気がしてならない。失った左腕が痛む度に蒼豹は身を焦がすほど の怒りと苛立ちを覚えるのだ。 左腕を失ったことで、盾としての自分の存在意義は無くなった。それも、全ては自分の弱さのせいだ。弱い自分が嫌だった。今こうして芋虫のように転がって呻くことしかできない自分が、どうしようもなく情けなくて、惨めだった。 * * * * * * * * * * 『蒼豹、お前、俺を舐め過ぎだ』 部屋の中から微かに漏れる声を聞きながら、紅兎は廊下の柱に寄りかかっていた。きっと自分と話してる間はやせ我慢してたんだろう。そのときも、時たま蒼豹が苦しそうに眉間に皺を寄せるのを見逃しはしなかった。 紅兎は柱から身を起こし、音を立てないよう気を付けて、歩いて部屋から離れた。 紅兎はゆっくり廊下を移動しながら心の中で呟いた。 『蒼豹、早く気付け。俺たちも殿下も、お前を捨てたりしない』 やっと書けた!!!実に3日掛かり! NEXT 16話まだできてないよ!そのうち書くけど!
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Gay-bar ★nao★ ここはOKAMAとかnaoとか呼ばれてる人の小説が置いてあるとこです。 べつに怪しいものはないから安心して読んでってねw ・メニュ~ 【クーリング・オフ】
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NAME ロット=ハープ JOB 白魔導士及び戦士 POSITION 味方 LEVEL 42 キャラ説明 魔王に壊滅させられた村から、青夢と二人逃げ延びた少女。国境で働く女兵士。 年の割りに背が低いこと(17歳で159cm)と、胸が無いこと、やや男勝りなことを気にしている。 実はとある有名魔術師の血筋だが、その実力は誰もが認める「平凡」。力の無さすぎる自分が嫌いとなり、補助のために体術及び槍術を会得、兵士となった。白魔法はある程度扱える。 戦う際にはウンディーネやアーチャーエルフ、ナイトを召喚し、共に戦う。基本は軽装備。 たまに黒く、S。 楽観的なイメージだが、実は結構深く物事を考え、自分の考えをしっかりと持っている。 高所恐怖症。たまにドジ。「ロットを怒らせると寿命が縮む」と言われるほど、キレたら怖い……らしい。一人称も変わるとか。 心から人を信じるという事がなかなかできない性格であり、本当の意味で心を許しているのは唯一青夢だけだったりする。故に人に冷たくあたる事が多く、仲のいい人物は少ない。 口癖は特に無いが、男口調染みており、また、地方の方言が時々混ざる。 (これはロットが有名血筋で都会住まいのため、地方に憧れていたことから。) 「青夢、行くよ。私だって早く闘いたくてウズウズしてんだからさ」 「こいつが……? こんなちっぽけなんで何ができるのさ」 「まあ、私もこれしか持ってないからね」 「別に。私がしたいことをやって何が悪い」 「あっはは! 青夢はたまにこうなんだよ、まあ慣れないか」 「……なあ、蹴り落としていいか? あたし今、すっごいムカついてるんだ」 ナイト ウンディーネ アーチャーエルフ
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有害物質が体内を巡った 呼吸が窮屈です 春風が運んだ残雪の温度 また肺を痛めた 煙草の煙や二酸化炭素 深呼吸をすれば酸素など持っていかれる それを見て今さら誰かが泣いたんだ 食べては、不味くて吐いた それほど容易く手に入る食糧 面倒だから、土へ還した それほど容易く放棄した空缶 それを見て、真似しか出来ないのを 起源が猿だからと笑えばいい いつだってそう、それが正解 僕が正解 「永久凍土が溶けました」 永遠なんてそんな脆いものですが まだ僕等は地球は廻ると信じてる 疑い深い僕等はまだ、それを疑おうとはしない
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セリックは、突き進んでいた。 前軍と右左軍の三兄弟を押しだすかの如く、前へと、突き進んでいた。 「おらっ、進め! 戦略上、奇襲状態なんだ! この機を逃すな、おらっ、行くぜ!」 兄アドルフ率いる歩兵は、急なことで戸惑ったのか、未だ恐慌状態に陥っている。 そのためか、ダナンもネアも、さくさくと突き進んでいた。 イースは、ど真ん中を突き進んでいる。 どうやら向こうの主力とぶつかったらしい。 若干侵攻スピードが落ちていた。 「おっしゃ、俺らも突っ込むか! イースの後詰め、行くぞ」 セリックが号令を掛ける。 後方にはまだ、テレシスの歩兵が居るので、後顧の憂いはなかった。 ダナンとネアの部隊は、どうやら突破に成功したようで、敵中央部の背後を突こうとしている。 と、敵が一斉に下がり始めた。 どうも、陣形を整えるためらしい。 イースがそれに乗じて、追いまくる。 だが。 「……!」 イースが、宙を舞った。 続いて、追従していた兵たちも、突き落されたり、はねとばされ始めた。 「セリックか……久しぶりだな」 「……アドルフ兄貴……!」 アドルフが、調練用の棒を二本、振り回しながら前に出てきた。 一本はどうやら、イースの物のようだ。 「うう……すいません、セリックさん……」 イースは立ち上がると、そのまま戦場を離れた。 調練用の武器を奪われたり、地面に落とした者は戦死扱いとなり、戦場を離れなければいけないのだ。 「なかなか、骨のあるやつだったが、それでも、俺の足元には及ばなかったな」 「ここで、アドルフ兄貴に出くわすとは、ついてねぇな……」 それでも、セリックは棒を構える。 と、アドルフの背後で喚声が上がった。 ダナンとネアの部隊が、救援に駆け付けたようだ。 二人がそれぞれの歩兵を引き連れ、先頭に立って突進してくる。 「ダナン、ネアッ! 先頭には立つ……」 その時には時すでに遅く、振り返ったアドルフによって、二人の棒は遠く離れた所に吹っ飛んでいた。 率いていた歩兵たちは皆四散し、ダナンとネアは唇を噛み、戦場から離脱をする。 「くそったれ、俺の兄貴ながら、とんでもないバケモンだな、おい……」 「次は、お前かな、セリック?」 「おう、やったろうじゃねぇか。上等だ!」 「ふん、来るがいいぜ」 二人が相対し、まさにその棒が錯綜する、その時だった。 ドドドドッ! 地響きがした。 音の方向を見ると、エルムッドの騎兵50が、事もあろうにシェルの本陣を突こうとしている。 アドルフは臍を噛みながら、セリックと打ち合う。 ここで背を向けて救援に行く訳には、行かないのである。 「こっちはこっちで、決着付けようじゃないか、セリック」 「兄貴……!」 歩兵同士の乱戦の中、それぞれを率いる将が一騎打ちを繰り広げている。 竜虎の戦い、とでも言うのだろうか。 持っている物が只の棒と知ってはいても、その恐ろしい殺気は、収まることはない 「っ! まだだ、まだ終わらせんよ、セリック」 一瞬の鍔迫り合いの後、アドルフが言う。 一合、二合と打ち合う二人。 その数は十合、二十合と数を増して行く。 「っはぁぁっ!」 「ぬっ……」 セリックの打ち込みを流すと、返す一刀でアドルフはセリックの首を狙う。 だが、とっさに石突きの部分に当たる柄で、セリックはそれを防いだ。 いつの間にか、両軍の歩兵は戦いをやめ、二人の戦いに息を呑んでいた。 暫く対峙した二人。 刹那、打撃音が二発。 一発は、木の音。 もう一発は、鈍い、まさに人体に当たった音だった。 エルムッドは駆けた。 作戦通りいけば、今はセリックが気張っているはずである。 エルムッドの作戦。 それは、『囮に見せかけた正面攻撃』に見せかけた、囮である。 即ち、250の歩兵は陽動である、とアドルフには見せかけておき、正面攻撃をする作戦。 さらにこれもまた見せかけであり、やはり本当の役割は囮、というものである。 この軍師顔負けの策戦は見事功を奏し、アドルフ率いる400の歩兵はセリックによって足止めされている。 「……シェルの旗を取るまで、持ってくれればいいが」 エルムッドは右手に剣を模した木刀を持ち、左手で後方の指揮を執った。 昔から乗馬に長けていたエルムッドは、腿の締め付けだけで馬に、自分の意思を伝えられるようになっているのである。 「……紡錘陣形、一気に突っ込むぞ」 シェルの陣まで後数百mに迫った時、エルムッドはそう言った。 騎兵の陣が、横列からエルムッドを頂点とした、三角形になる。 魚鱗の陣。 一年ほど前まで、デインガルドに留学していた際、シェル自身から教わった陣である。 しかし、これほど早く、この陣を使う機会に巡り合えるとは、当時は思っても居なかっただろう。 「見えた、牙門旗だ」 もはや、シェルの陣の牙門旗、いわゆる大将旗が肉眼ではっきりと見える位置まで迫っていた。 この大将旗を取られると、負けである。 エルムッドの牙門旗は、今はテレシスの歩兵50が、守っている手筈であった。 「……一気に、貫くぞ。殺.す気で、行け」 「了解っ」 エルムッドは、もはや後ろを振り返ることはなかった。 目指すは、ただシェルの牙門旗。 あの蒼い地の、チェック模様の旗。 もはやエルムッドは、それしか見えていなかった。 「前衛、大盾を前へ。中衛、楯の間より長槍を突き出し、迎撃態勢。後衛は、突破してきた敵の排除に努めよ!」 シェルの思わぬ事態であった。 思わぬ事態であったが、望んでいたことでもあった。 「一年でどれほど成長したのか、見せてもらうよ」 シェルは、手槍の長さの棒を構え、待っていた。 「シェイリル様、敵との距離、およそ数百mです! 衝突まで、見積もって三分!」 「報告、感謝する。引き続き、防御陣の構築を急げ」 「はっ」 報告の兵は、足早に去って行った。 シェルはそのまま目を閉じ、瞑想に入った。 すっと、潮が引くように、喧騒がシェルの周りから引いて行った。 最後に戦ったのは、何時だったか。 ああ、そうだ。 三ヶ月前の、叛徒討伐だ。 あの時は、アドルフの軍が活躍した。 俺は、何もできなかった。 あの時の無力感は、二度度味わいたくはない。 シェルは目を、見開いた。 喧騒が、シェルの周りに戻ってくる。 「シェイリル様、敵との距離、100mを切りました! 間もなく交戦に入ります!」 「俺も、出よう。俺だって、お前たちと戦いたいんだ」 「光栄ですが、シェイリル様。シェイリル様は、公爵子息に在らせられます。セプノンが、エルノーの中で戦いになるなど……」 「俺は今は、この軍の指揮官だ。つまり一兵士だよ。お前たちと、一緒だ」 シェルは薄く笑い、棒を持って後衛を抜け、中衛の位置にまで、出た。 「聞け、俺の兵たちよ!」 シェルの声が響く。 前に見える騎兵を見た。 もうすぐ先頭の顔が見えるほどに、近くなっている。 「俺は、今は兵士だ、お前たちと一緒に、戦う。だから、お前たちも、俺と一緒に戦え!」 その声の後、兵の歓声が響く。 ふと、先頭の騎兵の顔を見た。 エルムッド。 よく見知った、顔だった。 「来るぞ、お前たち! さあ、いざ、戦おう!」 同時に、騎兵と歩兵の先頭が、ぶつかり合った。 騎兵が数人、落馬した。 だが、エルムッドを含めた一部が、前衛と中衛を突破した。 エルムッドが、一直線にシェルの許まで来る。 「っらぁあぁああっ!」 シェルは、渾身の力で、棒を前に突いた。 何かに当たった。 手には確かに感触があった。 焼けるように首筋が痛い。 エルムッドに打たれたのか、兵に打たれたのか。 棒は、手から離すことはなかった。 空を見ていた。 瞼が重い。 眠くはない。 何かに引っ張られるように。 シェルの瞼が、閉じられた。 史無国 九へ
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なんだか、波乱の予感 …むしろ迷惑な話しだ ---- 視界テロリストが現れ、 吉祥の顔が露骨に歪む 「んもぅ!吉祥の旦那ったらいい男なんだからそんな顔しないのっ!御前くらいまったりしてればいいのにぃ」 「なぁ、穏…」 「刀貸すよ?」 「嫌よ!冗談だってばぁ!」 若干焦りながら、桜鬼が現れた理由を話し始めた 「忠秀様が御前と旦那、お呼びなのよ」 その言葉と共に、本日二度目である煙管が飛んだ 最小限の動きで回避した桜鬼は壁に刺さった煙管を 見て冷や汗をながした 「…で?俺らに江戸城に来いと」 「えぇ…まぁ」 ドスの利いた吉祥の声にびびりながら頷いた 「俺、パス。忠秀に関わるとロクなことねーし」 「ちょ、御前!」 「行く理由がない。店もあるしな。俺もパスだ」 「吉祥の旦那まで!」 あっさり、ばっさり切り捨てた二人に桜鬼はため息をついた 「第一…戦乱は終わった。あの頃みたく、俺が刀を振るう事も、吉祥が算盤以外を持つ理由がねぇ」 「…あながち、俺らに『潰し』をさせる気だろうが…興味がない」 壁から煙管を抜き、それをくわえて桜鬼の横を 過ぎようとした。 「…あの月夜叉…要が生きていても…?」 桜鬼が呟いた一言に二人は反応した 「月夜叉…」 「一月前からからしら?江戸郊外から始まったのよ。『月夜叉伝説』がね」 「…俺と穏で葬ったはずだ」 「そのはずなんだけどねぇ…波田屋の事件も月夜叉のせいじゃないかって。城の家老たちが騒ぎ出したのよ」 ヤレヤレ…とため息を付く桜鬼に対して 二人は何も喋らず十数年に葬ったはずの 金糸の髪を持つ一人の男を思い出していた 「それで、呼び出しか…」 「ご名答よ」 先ほどからしゃべらない吉祥見て穏は小さくため息をついた 「桜鬼、二、三日中には返事する」 「…そうね。一回退くわ。改めてお返事聞かせてね」 そう云って、桜鬼は黒い羽を残しながら 津神屋去った 【ざわめきを増す。】
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昔昔、あるところに「竹下」という老夫婦が住んでいました。 あるとき、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました。 おばあさんが川で洗濯をしていると ドンブラコ ドンブラコ とBIG PEACH が流れてきました。 おばあさんは、おじいさんと、貪り食い散らかそうと思い、家に持ち帰りました。 おじいさんは早速、特製のナタで桃を叩き割りました。 すると中から、新鮮な眼に余る血の噴出した哀れな赤ちゃんが出てきました。 おじいさんは、おばあさんの責任と言い逃れ、おばあさんは窃盗罪の罪に問われないよう、 必死で子育てをしました。 そして、必死の介抱もあってか、赤ちゃんはスクスクと育ち、 ミルクが欲しいときは「ウィイイイイイイイッシュ!ウィイイイイイイイイッシュ!」と泣き、 金が欲しいときは「ダイイイイイイイイイゴ!ダイイイイイイイイイイゴ!」と泣きました。 おじいさんは、ウィッシュにするか、ダイゴにするか迷いました。 しかし、やはり、世の中金が全てと知っていたおじいさんは、「ダイゴ」と命名しました。 竹下家は、お金はおじいさんが元総理だったので、年金でたんまりあったのですが、 しかし、ミルクは市販の粉ミルクではダイゴは受け付けませんでした。 困ったおじいさんは、近所の「影木栄貴」というお姉さんを無理矢理孕ませました。 そして、近所のお姉さんにダイゴを育てることにさせました。 金はあるのです。 ある日、おじいさんが、『芝刈りという名目の密猟』をしていたとき、 誰かに背後から襲われ、殺害されました。それは、おばあさんが川から桃を拾ってから20年目を迎えたころの事でした。 一方ダイゴは立派な身体付きとなり、お姉さんと竹下おじいさんとの間にできた息子と、 栄貴お姉さんが書く、『同級生プレイ』ものの同人誌のモデル餌食となっていました。 次の日、おばあさんが、お姉さんの家に駆けつけました。 「ダイゴ!ダイゴはおるかや!?」 おばあさんは白髪を振り回し血相を変えて叫びました。 「どうしたんですか?おばあさん、血相変えて・・金なら後5億6000万・・」 お姉さんは、自分の受けた屈辱を忘れることはできませんでした。 「か・・金なら必ず払う!ダイゴに話をさせてくれ!」 金なら・・という言葉に違和感を覚えましたが、お姉さんはダイゴを呼びました。 2階からは、とてつもない音量のギター音とボーカルの声がしていました。 しばらくすると、ギターは鳴り止み、ダイゴはその2階から茶髪に染めた頭を掻きながら降りてきました。 「なん、すか?おーう婆ちゃん おひさしぶりー!」 ダイゴはすっかり渋谷系と化してしまっていました。 おばあさんは、わなわなと手を震わせて、ダイゴに焦点を合わせているのか分からない目をしてブツブツ話を始めました。 「あ、あのな・・わしらがあんたを預けて、金をそこの影木に渡しておるのは、しっとろうな・・?」 ダイゴはしばらく頭に「?」の文字を浮かべましたが、隣で急かす目をしていたお姉さんがいたので、とりあえず、話のウマを合わせることにしました。 「あったりまえじゃーん!ばあちゃんにはお世話になってるよ!」 おばあさんは、この状況に気づいたのか気づかないのか、ますます震わせて言い放った。 「この・・この渡しておる金はな・・かの偉大な『私の夫である』竹下元総理の年金から来とるのじゃ・・つまり、お前らが幸せに生きとるのは、この『私の夫である』登の年金のおかげなんじゃ・・」 影木栄貴は身震いをしました。 彼女は、ダイゴと違い、2階でわけのわからないギターと歌の交錯をしている間、案外ネットとかでニュースを見るのでした。 そして、彼女の頭には最新のニュースが焼きついていたのでした。 「・・竹下登元総理大臣 鈍器で殺害・・」 栄貴はおばあさん並みに目を震わせました。 「ま・・まさか、私を犯し、ダイゴを預けたあの腐れジジイは、『竹下元総理大臣』だったのですか!?」 栄貴は、驚愕と恐怖の顔を何度も繰り返し、崩れ落ちました。 そして、おばあさんはボソボソと 「ニュースで公にはなっておらんが・・実は、総選挙を控えた麻生も・・行方不明だと聞いておる・・こうなってしまったら、『自民党』が崩れ去ってしまうのじゃ・・!!」 締めはやたらと強気で言葉を吐き捨てました。そして、おばあさんはダイゴを睨み、 「自民党が崩れてしもうたら、民主の独裁政権じゃ・・!!麻生を奪ったのも民主党という情報も来とる!これだけはなってはいかん!『偉大な』成果を見せた登の行為を無駄にするのじゃ!だからの・・」 おばあさんはそうして、ダイゴに懇願しようとしがみ付きました。 「だからの・・!!麻生を・・!麻生を助けてくれ!!」 そして、やっとダイゴが震撼しました。 ダイゴが震撼したのは、そのおばあさんの迫力にありました。 実のところ、ダイゴは政治のことをよく知りませんでした。おばあさんに人とは思えないツラと衝撃を浴びせられたので、しばらく呼吸を整え、ダイゴは切り替えしました。 「おばあさん、だからなんだってウィッシュ?年金は大丈夫なんっすよね?」 しがみつくおばあさんを、あたかも見下し始めたので、おばあさんは言います。 「民主党は・・民主党は、わしらから金を分捕る気じゃ・・そうして、中国朝鮮外交に金を注ぐらしい・・その証拠に、民主党内での、年金引き下げを批判するヤツラは内部でどんどん消されておる・・ワシら・・そう、ワシとおまえら一家は、民主党によって破滅の危機を迎えるのじゃ!」 「マジパネェっす」 ダイゴは生まれてこの方、ほとんど金ももらえないミュージシャンとなって、暇なら渋谷にお出向き、頼まれることといったら、栄貴のモデルだけという、何不自由ない生活を営んできたが、彼は、これほどにまでない衝動に駆られ、初めてだろうか・・とたんに怒りに火がつきました。 その火はほとんど燃え盛ることの無かったものでしたが、今回ばかりは、頭の中で回れば回るほど威力を増し、彼の脳内では、血管にマグマが流れ、瞳孔の火口には灼熱の炎が暴れまわりました。 そう・・ダイゴは金に貪欲だったのです。 おばあさんは、それをニヤリと笑み、その瞬間を逃しませんでした。 「民主党員は、『鬼が島』を工作本拠地としておる。そこに、民主党のボス、『小沢』もまた潜んでいるはずじゃ・・敵は精鋭の部隊が多数おるとの情報も来ておる。」 ダイゴは焦りました。そんな敵にダイゴはたった一人で立ち向かいのです。金のためとは言え命あってこそでした。 しかし、これもまた、おばあさんは瞬時にタイミングを見切り、続けます。 「心配は要らん・・鬼が島に向かう間にきっと仲間に逢えるはずじゃ・・仲間は『信頼する絆』によって成立するものじゃが、わしら竹下家の場合は、『コレ』を使う。」 そうして、くたびれたジャージズボンからおばあさんは袋を取り出しました。 「なんすか?これ?」 ダイゴはその袋を覗き込むようにして眺めました。 「『きび団子』じゃ!!ワシら竹下家のみが作ることができる宝食じゃ・・あと、これもやろう・・」 そうして、ダイゴに重々しい剣をおばあさんは渡しました。 「『聖剣エクスカリバー』じゃ・・」 「マジパネェ・・・この俺が、囲まれている!?」 数時間前・・ ダイゴはこの神々しい剣に酔いしれ、子供のように玄関でブンブン回して遊びました。 おばあさんは見事なフットワークでその刃を避け、 「さあ!ゆくのじゃ!そして、民主党の小沢を倒すのじゃ!!!」 と高らかにダイゴに空を指指しました。 ダイゴは重く艶やかに光るエクスカリバーを背中にかけ、魅惑の珍食のきび団子を手に持ち我が村を後にしました。 彼の後ろで、おばあさんと影木お姉さんのトランペット、即席で作った『ダイゴ応援歌』が遠くなっていくのが分かりました。 ダイゴは、戻って来れないかもしれないという不安にもまかれましたが、それでも国の存亡をかけて彼は立ち向かうのでした。何より、勇者ってかっこいいじゃないですか。 ダイゴが、しばらく歩いていると、どこからともなく、チャッチャラチャ~ン♪という携帯メロディのようなものが聞こえてきました。 すると、目の前には、『スライム』が立ち尽くしているではありませんか。 ダイゴは、「こいつを倒すと、経験値・・いや、金が内臓から出てくるに違いない」と思い、 ダイゴは切りかかることにしました。 スライムはおびえていました。 そして、スライムは「仲間を呼ぶ」を使いました。 するとどこからとも無く、見分けのつかない顔をした、スライムが出てくるではありませんか。 ダイゴはそのスライムまとめて切りかかりましたが、 スライムはおびえていました。 そして、スライムは「仲間を呼ぶ」を使いました。 そして、2匹が4匹になり4匹が8匹になる・・そうして、ダイゴは一挙に周りを制圧されてしまいました。 「マジパネェ・・・」 ダイゴは冷や汗を噴出しました。その冷や汗は止まることを知りません。 ダイゴは、必死に切りかかりました。しかし、倒しても倒しても、スライムは「おびえる」ばかり。 そして、また仲間を増やしました。ダイゴの見る光景には、一面の群がる青色のプニプニがウジャウジャしているのです。 次第に、そのスライムのぬめりによって、エクスカリバーの鋭利は鈍ってきました。 いくら聖剣といえど、半液状には弱いのです。 「もう・・もう負けてしまうんですか・・マジパネェっす・・」 ダイゴが諦めかけたその瞬間! 「boys be あんびしゃす!」 声の先には、太陽に背に一点の黒い影が・・! 犬の冒険・・・・・・・・に続く・・・