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√яui⇔ё:様の詩のページです。 しんり 人生
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―終わった。 リンは倒れていたが、気を失っているだけだった。 それを見て、安堵した。 「大丈夫ですか?」 フードを被った小さな少年が歩み寄ってきた。 「ええ、助かりました。」 「その傷…。こちらまでいらして下さい。」 小さな家屋に二人を案内し、少女をベッドに降ろす。 一息を吐こうとした時、突然重そうなドアが閉められた。 「ケイトさん。」 「…!?どうして、僕の名前を…?」 「お二人はどうして此処にいらっしゃったんですか?」 そう言いながら、部屋の隅のテーブルから、 救急箱を重そうに運んでくる。 「貴方には関係の無い事です。」 「ルカ様の救出…ですよね。」 救急箱から消毒液や包帯などの一式を取り出し、 慣れた手つきで応急処置を施していく。 「…!?お前は何者だ…!」 少年の手を払い、咄嗟に距離をとる。 「そんなに驚かないで下さい、私は貴方たちの敵じゃない。」 「何を知っている!」 「知っているも何も、僕がルカ様をこちらに連れてきたんです。」 救急箱に一式を閉まっていく。 そこには、几帳面な性格が表れていた。 「どういうつもりだ!」 ―「お二人は、此処がどんな場所かご存知ですか?」
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その男は王宮の敷地の東のはずれ、一般には存在すら知られていないその 場所へ向かいひた走っていた。 国の極秘事項であるがゆえに、このことを知っている者はほんの一握りで あったが、今回の決定はその者達を驚かすには十分な出来事だった。 この国には『盾』と呼ばれる武人達がいる。皇族と一握りの国の重臣が所有 している暗殺者で、彼らの仕事は主人の警護及び、命令に応じて対象を拉致、 暗殺すること。 数十年前の帝位継承争いでは、彼らを使っての暗殺合戦が裏で繰り広げられ て いた。それを制し帝の座を勝ち取ったのが今の陽光(ユェグァン)帝だ。 今回男が向かっているのが、皇族の闇の部署によって、王宮のはずれに造 ら れた『盾』の養成施設である。これから新人の『盾』を迎えに行くのだ。 その新人が何を驚かせたかというと、その者が女であること、さらには 女の身で帝の第二皇子である星光(シングァン)皇子の盾になったというこ と だ。金龍(ジンロン)が何を考えているかはわからないが、ともかくその 者 は、盾の長老が認めるだけの実力を持っているということだ。武人として の十 分な実力を認めること、盾の名を与えることについては彼が一任されて いるた め、他の者が口を挟む余地は無い。 男は、目指す建物が近付いてくるのに気付いた。あと数分駆ければ到着す る だろう。彼自身、史上初の女の盾に、個人的に興味があった。どのように 戦う のかや選ばれた理由も気になったが、それ以上に、強いかどうかが非常 に気に なった。それを確かめるべく男は道中を急いだ。 しばらく駆けて、男は目的の場所にたどり着いた。どうみても古びた空き 家 にしか見えないが、この中にあるのだと長老は言っていた。 少し辺りを見回し、男は軒下に落ちていた10cm程度の長さの錆び付いた金 属 の棒を拾い上げ、教えられた通りに、腐ってぼろぼろの窓枠を叩いた。 『コツ、コツコツ、コツ、コツ』 しばらく何も起こらないかに思えたが、数秒後、押し殺した男の声が 聞こえた。「誰だ?」 男は答えた。「最長老より、皇子様の盾を迎えに行くよう仰せつかりた。」 「どちらの皇子様だ?」少し間を空け、男は答える。「星光(シングァン) 皇子様です。」 「貴様、名は何だ?」「樫(ジィェン)と申します。」 一連のやりとりが終り、扉の鍵が開く音がした。男は肩の力を抜き、誰に も見られていないか確認し、中に入った。 中は薄暗く、遠くで微かに蝋燭の明かりが揺れている。先ほどの男が彼の 方を振り向き、ついてくるよう合図した。 進むには階段を通っていくらしく、樫(ジィェン)はゆっくりと用心しなが ら 降りていった。 次第に明るくなっていき、自分の腕を掴んでいる男の顔が見えるように なった。 歳は40歳程度だろうか。口元にヒゲをたくわえ、典型的な大男という体系 だ。 突然階段が終り、廊下に出た。そのまままっすぐ廊下を渡り、大男は 突き当たりの部屋の扉を開けた。 中には女が一人立っていた。10代後半で鋭い目つき、身長は150を少し超え るといったところだろうか。一緒に来た大男が声をかけた。 「こいつだ。さぁ、連れて行け。」それを聞いて、樫(ジィェン)は鼻を 鳴らした。 「ご冗談を。私をからかわないでください。もしこいつがそうなら、猿に だ ってばれますよ。どう考えても気配が強すぎます。こいつ、女官宮の警護 兵でしょう。」 それを聞くと、大男は突然大きな声で笑い出した。「ふっはははは! さすが だな!いやぁすまん、これも必要手続きでな。気を悪くするな。」 そう言うと、部屋の中の女を追い払い、廊下に向かって手招きした。 「おい、入ってこい。」 その女が入ってきたとき、樫(ジィェン)はしなやかな柳の木を思い出し た。歳は20を少し超えたほどだろうか。短く切った黒い髪から細い三つ編み が 二本流れている。 黒い目は穏やかさをたたえ、身のこなしには全く無駄がない。 普通なら女官だと思い込みそうな身なりだが、下位であっても盾の一人で ある 彼には女が盾であることがわかった。「・・・・こいつか」 彼の呟きに、大男が答えた。「こいつ、なんてふうに呼ばない方がいい ぞ。 なにしろこの歳で既にあんたより上位の名を持っているからな。」 樫は女に問うた。「『名』を教えてくれ。」 「豹(バオ)」女は答えた。「蒼豹(ツァンバオ)だ。」 NEXT 2話
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「チェインさん・・・」 「な、何だ?」 「これは、本物なのでしょうか。それとも、私が夢を見ているのでしょうか?」 「二人がまったく同じ夢を見るわけがないだろ・・・」 「それに、今私達がいるのは普通の世界ではなく、時空ですよ」 「では、認めないといけないんですね」 アブソーはそう言って、目の前の『何か』を見た。 「これは――・・」 +++ 三人は再び、あの屋根の上にいた。 タイニーにクルーは一緒に来るか、と聞いたところ、 「私は残って、もう少し犯人について調べてみるよ。あの巨木とゆっくり話したいしね」 微笑みと共に、そう返ってきた。 「では、皆さん。行きましょう」 「おう」 「は、はい」 ――・・・おや? アブソーはワープをするためにチェインと手を繋いでいたのだが、 微かにその頬は赤かった。 ――もしかして・・・もうすでに彼らは両思いなのでは・・・? クルーはふとそう思ったが、アブソーの思想をみて考え直す。 ――いや・・・彼女、の方は自覚はしていない、のでしょうか。 そして、クルーはあることに気付いた。 ――・・・チェインはいつ己が恋をしていることを知ったのでしょうか? タイニーが気付かせたのでしょうか? と思ったときには、移動はすでに完了していた。 +++ 何も無かった。 土と空気と空しかなかった。 他には何も存在しなかった。 アブソー達が着いたのは地平線まで続く大地だった。 大地、といってもそこに緑はなく、周りを見渡しても茶色い地面しか視えなかった。 「何も無いです」 「・・・誰もいないんじゃねえか?」 「妖精を探すのにも苦労しそうですね」 それぞれが思ったことを口にだしていた時―― 『それ』は突如、上から現れた。 +++ 「でわ、認めないといけないんですね」 アブソーはそう言って、目の前の『何か』を見た。 「これは、ドラゴンだということを――・・」 『何か』もとい、ドラゴンは、 そのガラスのように煌く鱗と、力強い翼を持っていた。 そして、ドラゴンは三人が呆気にとられている中で 己の翼を動かして、少しだけ風を創り、地に足を着けた。 「クルー、あれって・・・」 「ドラゴン。伝説上の怪獣。翼と大きな爪を持ち、中には炎を口から吐くものも存在する、らしいですよ」 「・・・誰がお前の知識を披露しろって言ったんだよ」 「そういうことではないんですか?」 その時、アブソーは気付いた。 「あ・・・チェインさん・・・・あれは」 「お前も気付いたか」 「・・・・? 皆さん何を・・・」 そして、クルーも気付いた。 アブソー達の目線の先にはドラゴンがいた。 しかし、彼らが見ていたのはもう少し上だった。 ドラゴンの翼の間に、人が居た。 「ここの時空には、人がいるってことが分かってよかったな」 「だけど、あの人は良い人なんでしょうか?」 「・・・・」 クルーはじっと『彼女』を見つめていた。 「おい、クルーいきなり黙り込んじまってどうしたんだよ」 「・・・チェイン、あの人をもっとよく見て下さい」 「・・・女性のようですね」 「女性? ・・・まさか・・・・!」 『彼女』は突如ドラゴンの上で立ち上がると、颯爽と三人の目の前に飛び降りた。 クルーは『彼女』に手を差し伸べて、 「心配してましたよ」 優しく言った。 「ははは。二人とも・・・久しぶりだね」 『彼女』――ハートピア・ティーはクルーの手をとると、優雅に三人の下へ歩き始めた。 +++ 「私達を時空に飛ばした?!」 「そうですよ、ティー。チェインと私以外の八妖精は時空に飛ばされたんです」 「そんな簡単に時空に飛ばせるものなの・・・?」 「・・・あのよぉ・・・」 「ん? 何、チェイン?」 「た、高すぎねぇか?」 ティーを含めた四人は、先ほどのドラゴンの背に乗り、風のごとく雲の中を飛んでいた。 ドラゴンの背中は思った以上に面積が広く、四人がゆったりと座れるほどだった。 チェインのそんな言葉に、茶髪を結い上げているティーは軽く笑って、 「それぐらいで弱音なんか吐くなよ」 「よ、弱音じゃなくて・・・こいつが・・・」 チェインの腕にはアブソーが必死にしがみついていた。 「・・・この子って・・・あんたの子供?」 「違うに決まってるだろ!!」 クルーはティーにアブソーの事情を簡単に説明した。 そして、ティーは震える少女に近付いて、 「アブソー、か。・・・へぇ、人間界から来た少女ってわけか」 「は、はじめまして」 アブソーは涙眼でそれだけ言った。 「あぁ。高いところは苦手なんだね・・・待ってて」 そう言ったティーは、ドラゴンの頭の方に近付いて、言った。 「アルファ! もっと低く飛んでくれない?!」 ドラゴンにその声が届いたのか、 徐々に自分達が天から遠ざかるのがわかった。 アブソーはあらかさまにホッ、と胸をなでおろした。 そこでふと、クルーは疑問をティーにぶつける。 「ティー。何故このドラゴンの名前がアルファ、なんですか?」 すると、少女はさも当然という風に、 「だって、角がα【アルファ】の形に似てるだろ?」 笑って、言った。 +++ チェインの心臓は高鳴っていた。 さきほどまで自分の腕にからみついていた少女はおちつきを取り戻し、 今はおとなしくチェインの横に座っていた。 ――今思うと、あの状況はすごく恥ずかしかったな・・・。 チェインは隣の少女に目をやった。 ――俺はこいつのことが好き・・・か。 チェインは愛おしそうに彼女を見つめて、思った。 ――なら、こいつは俺のこと、どう思ってんだ? 風は、獅子が吠えるような音を出していた。 そんなオトの中を、四人と一匹は真っ直ぐに飛ぶ。 「おい、ティーは見つかったんだからもう妖精界に帰らないか?」 「しかし、ティーによると、もう一人ここに妖精がいる、ということです」 「だからその妖精も連れて行くために、こうやって迎えに行ってるのよ」 その時、チェインは遠くを眺めて、 「それらしきものは・・・どこにもないぞ」 ティーはふふふ、と笑って、 「まぁ、見てなって」 その言葉を聞いて、風をうけながら三人はじっと前を見る。 そして、茶色の地平線の上に、微かに黄色が現れた。 「あれは、なんでしょうか・・・」 「あれはね、アブソー。花だよ。」 ティーが答えた。 「花、ですか?」 「こんな荒地のようなところに、花なんて咲くのでしょうか?」 「クルー、少しは頭を働かせなよ」 四人と黄色の花畑の距離は、もうそれほど遠くは無かった。 「花がこんなところに咲くなんて、理由はひとつしかないだろ?」 クルーは少し考えて、 「・・・花が魔力を持っているから、でしょうか?」 ティーは指をクルーに向けて、 「ビンゴ!」 楽しそうに言った。 +++ ドラゴン――アルファから降りた四人は、空から見た花畑に近付いていった。 花はこげ茶色の円を中心として、黄色の花びらが何枚も付いていた。 その姿はまるで、 「太陽。みたいな形だな」 その時、アブソーは何か思い出したように、 「・・・ティーさん。私、これ視たことありますよ」 「だろうね」 ティーは花をビシッっと指差して、得意げに言う。 「この花は、ヒマワリ! 日に向かう葵と書いて、向日葵って言うんだ!」 +++ ――お客さんです。三人も。 ――嬉しいです。嬉しいです。 ――チェイン・アルターとクルー・アポトニティーです。私の友達です。 ――懐かしいです。懐かしいです。 ――そして、あの女の子。キレイな顔です。 ――かわいいです。かわいいです。 ――そして、私の愛しい人。ハートピア・ティー。 ――美しいです。美しいです。 ――私も、みんなのところに行きましょう。 ――楽しそうです。楽しそうです。 +++ 「あ、出てきたよ! もうひとりの八妖精が!」 ティーがそう叫んで、花畑の中を指差した先にいたのは―― ――宙に浮いているテディベア (またの名を、くまのぬいぐるみ) だった。 三人が呆気にとられる中で、ティーはテディベアを抱き上げて、言った。 「紹介します! マニです!」
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【暑さと向日葵の笑顔】 だる暑さの夏 例外なく夏真っ盛りを迎え連日の暑さに俺も夜影も水無月も仕事を放置する状態だった 「水無月…お前暑苦しい…」 三人で井戸からくんだ水に足を突っ込むが 数十分しか立ってないのにすでに温い… 「俺だって暑いんですから文句云わないでください」 汗を流しながらため息をつく水無月 真っ黒だから一番暑いんだよな 「あ、上総様」 さっきまで執務におわれていた上総様が部屋から出てきた 「お!三人揃って涼んでのか」 「大差変わりなく暑いですけど…」 ワクワクした顔をしながら上総様が近づいて来た。何企んでる… 「ぃよっし!暑いから水浴びするぞ!!」 「長…絶対参加ですかね」 「俺一人に任せるんじゃねーよ」 そうしてる間にも上総様は着物を脱ぎ、上半身裸と袴と言う なんとも微妙な格好で井戸まで走っていった 「元気ですねー…」 「長、いつもご苦労様です」 会話をしながら様子を見てると上総様が桶を持ってやってきた 何かと思い、顔を見るとニヤリと笑って思いっきり俺ら三人に水を掛けた 『…!!』 「あー…つめてっ…」 「三人で座ってんな!!遊ぶぞ!!」 驚いてる夜影と水無月を放置して濡れた髪を描き上げた 「よくも…やったなっ…!!」 さっきまで足を入れていた桶の水を仕返しとばかりに 上総様に思いっきりかけてやった 「ぬ!負けるか!!」 そう言いながら水を汲みに井戸まで走っていった その間に忍装束の上だけを脱ぎ、上半身裸になる 「いーんだよ!ほら、お前らもいくぞ」 裸足で駆け出し反撃開始! ---------- しばらくしてから、かなり濡れた上総様が帰ってきた 満足そうに笑いながら縁側に座った 「上総様、お茶と手ぬぐいです」 「おぉ!水無月すまない」 受け取りながら見つめるのはいまだに遊んでる長と夜影と言うより長を眺めてる 「弥助も夜影もいい体してるな!」 「弥助もじゃなくて、弥助はの間違いでしょ」 俺が小さく呟くと上総様の顔が真っ赤になった お茶を飲みながらいまだに赤い顔をした上総様を眺める 「長のドコがいいんですか…」 「そっ…それはっ…」 長が上総様を呼んだ。急いで立ち上がると上総様は長のもとに走っていった 「(おー、嬉しそうな顔しちゃって…これからどうなんのかね…)」 今度、長に聞いてみよっかな そんな事を思う晴天の空
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人間というものは実に「理不尽」である。 われわれヌイグルミはそのような理不尽さはない。ただあるのは、ほのかに香る、老人ホームの匂い… 「ホゥ…これがゲームセンター…」 雑居ビルが立ち並ぶこの日本の都市街では、至るところで所狭しと並ぶ「ゲームセンター」なるものを目にする。 このゲームセンター、パチンのような某隣国が利益を独占している似非賭博ではないものの、それ相応の中毒性を秘めた大変危険なプレイスである。(教育委員会報告書より) 「『シルヴィアさん』、ゲームセンターって行った事ないんすか?」 『勇人』は訪ねた。 彼らはとあるイザコザで、留学生とホームステイ先として同居している。 勇人というワッパは、どうもV系スタイルでキメている。黒くテカテカ光るジャケットのみを着て、下は短パン。顔にはオシャレタトゥであろうか?そんな服装でよく恥ずかしくないな! 一方、シルヴィアたんは、制服を着込んでいる。うんうん、くぁゆいくぁゆい。 誠にうらやましい…いや、にくたらしい光景である。彼、勇人がシルヴィアという留学生に場所を紹介するだけで、『デート』へとはや代わりするのだ。いやはや、厚いプラスチックの内側からでもこの虫酸はとどまることを知らないようだ。おい、狭いぞチキショ! 「おい、これは何だッ!!」 シルヴィアは高さおよそ2Mの立方体をキラキラ光るまなざしで指差した。プラスチックのガラスの中にはヌイグルミが潜んでいた。 そう、これこそわれの『ホーム』! そう、われはヌイグルミなのである! 名前はまだ…無いッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! え?何でヌイグルミが喋るかって?リクツは簡単だ。 われわれを作ってくださった『創生者様』は、丹念こめて、内職してくださるオバチャンだったからだ。 そういった『選ばれたもの』のみが自分の中に潜在意識を持つことが許される。その確立は10000個に1つといわれる。これはサイヤ人が、スーパーサイヤ人になれる素質をもっている子供を生み出す確率と同じである。まぁ、いわば『某玩具物語』のあの一家は、偶然に偶然を重ねた奇跡の物語といっていい。そういった面でもう一度借りてみると面白いかもしれない。「グッヘッヘヘア!!!俺のブーツにゃガラガラヘヴィ!!」 しかも、熟練すると、人の心まで読むことくらいできるようになるのだ。うーん!便利な作者のご都合主義!! もっとも、こういうやつらは『在庫連中』に多いわけだが、私は決してそうではない!! たまたまターゲットにならないだけだ!! 嘆く私を誰か掬え。UFOキャッチャーから声にならない叫びが聞こえた。 「あ?ああ、UFOキャッチャーじゃないっすか。お、今人気の『モグライス』じゃないっすか。」 「モグライス?」 私のUFOキャッチャーの前で二人が並んだ。右側のシルヴィアちゃんはかわいいなぁ~♪左の…なんだあのV系…ギターで脳天勝ち割りてぇ…割れたとたんアンプからキュィィィィイイイイイン!!!!ってなれよ… 「ほら、水曜のゴールデンでやってる『ゴールデンボールアワーのクッキンタイム』のイメージキャラクターっすよ。」 「あー、アレナ、アレナアレナ!アレ、面白いよな!番組がセコすぎて!」 シルヴィアは目を※ランランと輝かせた。確かにUFOキャッチャーの中にはモグライスが山盛りに詰まれていた。 (※ランランってのはキラキラの進化系だと思ってる) モグライスとは、上記番組のマスコットであり、ヌイグルミは毛が少なく黄色い配色であった。それはさながら金色のオムライス… そうすると小僧勇人がおもむろに小銭をぶち込んだ。このような表現をするのは何故かというと、私は男には掬われる気はないからだ。わがまま?男の哲学と言ってほしいね! ヴーン!ヴーン! 「隊長!クレーンが迫ってきてます!」 「…ヤバイ!あの眼!ホンモノだ!!全員退避!全員退避!」 「隊長!足が無いので動けません!」 回避不能! 回避不能! ガコンっ! 「何だこいつ?」 触れるな!ケガれる!ヤメロ!このモグライス様にFU星RE星RU星NA!! 「モグライス…じゃない…!?」 何度も落ちてきたキャッチャーを見る。キャッチャーには山詰めにされたモグライスどもがいた。が、落ちてきたこいつは明らかに違う。 「確かに違うな。」 茶ばんだ薄汚らしい配色のモフモフしていて、目玉が飛び出していたやつがそこにいた。 そして、妙に老人ホームの香りがする。 先ほど、落ちてきたと言ったが、「コレ」からは本当に「堕ちてきた」臭がした。と勇人は思った。 この得体の知れない『ブッタイ』(ヌイグルミではない)の鼻をシルヴィアはつかんだ。 それはさながら…まぁさながら…さながらだ。自分では言いたくないんじゃい。 「モグライスじゃないな…貴様何者だッ!!」 シルヴィアの声が電波にゲーセンに響いた。鼻をつかんで胴体をプラプラさせてみられたり、脅しかけてみたりされた。 私はアソコにいたんだから、アイツラと同じのモグライスだ!!そのはずだ!てかモグライスなんて名前今知ったけどね! その訴えも相手には通じない。何せ「トイ語」なのである。 英語とかガラガラヘヴィとかできる「某英名:木」は異常なのである。トイ語の周波数は恐ろしく低いため人間である限りほとんどの連中が聞くことができない。しいて言うならイタコとかできるんじゃないかな!周波数が低いから、まぁ聞き取れたとしても、恐ろしいほどのドス声である。かわいいだろう!覚悟しとけ。 「『モフラ』…」 シルヴィアはつぶやいた。 「も…ふら?」 聞き返す勇人。 「そうだッ!こやつの名前は、『モフライス』だ!!だからモフラだ!!こいつが今、そうワッチに教えてくれた!!」 え?? えっえ?? え??ちょっとまってよ、 L I T T L E W A Y ! ! ! ! 『言ってめえよ!!!』 ――人間というのは誠に、理不尽な生き物である。 我が名は…「モフライス」。老人ホームスメルの孤高なヌイグルミである… ---- 次回からは一話完結に入っていきます。 お好きに閲覧してくださるとうれしいですぅ!><
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手ではとれないから 差し伸べるだけ 何時か届くといいなと 思うだけ あの青と白の綺麗なキャンバスに色を加えたいなと 思ってみたりして 笑って 灰色の黒い様なキャンバスから 水のような雫が落ちる その落ちた雫を踏んで とても楽しそうに笑う子供を見て 今日も平和だなと思って 明日も平和だといいなと 願ってみる――
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考えてみると不可解である。 気づいてみると不思議である。 解ったときには――非日常である。 ……いや、否。 解ってしまった、か。 私は駅のホームにいる。 隣町に在る、おばあちゃんの骨を訪ねるのだ。 季節は晩冬。 風が強かった、寒くはなかった。 こちらのホームには私以外に、(私が確認できる限り)老人が三人。対して向かいのもう一つのホームには、老若男女、人が沢山立っている。当然のことだが私と同じように、機械的に淡々と走るあの鉄の塊を待っているのだろう。 「…………」 そういえば。 人は何故死ぬのか、生きるのか、居るのか――存在するのか。 そのどれもが不可解な問題――疑問。 それらについて真剣に考えていた時期がある。 といっても、それは私が昔小学生のときに思った事であったので――所詮、飽きやすい子供。結局結論は出なかった。 今考えれば、所謂若気の至りなのか――だが、それよりも、私は何故いまさらそんな思い出を思いだしたのかが、不思議でならない。 しかし少なくとも、それは何となくではないと気づく。 向かいのホーム。 何時の間にか、電車は通過していたらしく、人は綺麗に消え去ってしまっている。 あれだけの人数を一瞬にして持ち去ってしまうのだ。 恐ろしくてたまらない。 不可解で、たまらない。 だから思い出したのだ、私は。 そしてそれは、突発的に、刹那に。 「……ならば」 生きるって、何だ。 死んだら――解るか? と、思った瞬間。 私は一歩、一歩、一歩――! 歩く。 進む。 暗い、横穴へ。 知りたい。 知りたい。 どうしようもなく知りたい! この世の森羅万象を余すことなく解りたい! 足の裏が盲目者のための黄色いブロックにつく。おそらく、あと大股で二歩。確か電車はもうそろそろで――。 「……私は、さっき何て思った?」 多分、いや、確実に。 森羅万象、と。 お墓参りを何故するのか、死んだ人の御加護を望むためか。 風は何故吹かなければいけないのか、自然が生み出す副作用なのか。 解らなかった。 答えは、出なかった。 そして同時に、解ってしまった。 私は――無知だと。 何が――森羅万象だ。戯言も絵空事もいいところじゃないか。 しかし。 だけど、そういうことだと、どうだとしても。 今私がが立っている場所は、きっと一種の境界線。 「――私は、そうか」 まだ死にたくない、のか。 と。 目の前をビュンと横切る――私の死神。 折角来ていただいて申し訳ないのですが。 君の役目はありません。 君に御用はありません。 お騒がせしました、御免なさい。 「…………」 先ほど私は、『これ』を恐ろしいといったけれど、躊躇無く乗ってしまった。自分でも矛盾した行動だとは思う。そう、自分で思っただけで――何故矛盾が生まれたかは、解らない。 「私は、死にたいよ……」 けどそれは、この世の全てを知ってからにしておこう。 嗚呼、死が待ちどうしい。 死んだら全てが解りそう。 根拠は無いけど――解らないけど。 どうしようもなくそう思った。 これが私の生きる理由。 これが私の生きる言い訳。
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明るい。 目を閉じているこの状態でも朝だと分かる。 カーテンもまだない窓からは、太陽の光が何も遮る事無く降り注ぐ。 ベットには薄い布団が一枚しか用意されてなく、かなり寒いし、ベットも硬くて、体が痛い。 時間は?ポケットの中に寝ていた間押しつぶされていた携帯を取り出す。時刻は七時五分。ルールの五分を過ぎている。まあこの程度なら権一もまだ危害を与える行動はしていないだろう。それに出てから帰ってきているのか。もしかしたらまだいない可能性もある。 私が部屋を確認すると、あのまずいメロンジュースと弁当が一個なくなっていた。つまり帰ってきて、誰かが私の部屋に入って来ているということだ。権一か、或いは例のマフィアか。前者だろう。それにしても権一は女の子の部屋に無断に侵入する行為も躊躇わずに行うらしい。私も「子」って歳じゃないけど。 まあ入ってきたにしても居るかの確認くらいだろうが、私は寝ていてその間の確認はできないが、多分ルールくらいは守る男だとは思う。だが、この五分間の間に入ってきていたのだとしたら、何かしているかもしれない。 私は部屋をひとつひとつ確認してみる。盗聴器の一つや二つくらいは有るかも知れないが、いちいちこんな事を気にしていたら埒が明かない。それに連絡ならこの他の場所で取ればいい。 それにしてもどうしてあのジュースを選んだのか、もしかしたら権一も好きなのかも知れない。それなら意外な発見だ。 とりあえず、まずは起きることにしよう。まずはそれからだ。 一階まで落りると、堅そうな木の椅子に座りながら権一がテレビを見ていた。見ているのはワイドショーで、司会はあの年収数億という稼ぎでありながら、庶民を名乗る胡散臭いおっさんだ。権一はそれをつまんなさそうに見ていた。ちなみに私は生理的にこのおっさんが嫌いだ。 まあ朝のこんな時間なんてどこも同じようなものだろう。 そして一面を見渡すと、色々な家電製品が揃っていた。権一が買ってきたのだろうか。まあそれ以外に考えられないのだが。 「おはよう」 こんな奴に挨拶するのもあれだが、礼儀も時には必要だ。 「……」 予想通りの無視だ。別に返してほしいわけでもなかったわけだが、もしを想像すると何故か滑稽に思える。 そこで私は鍵を渡すのを思い出した。鍵は二つありどちらも複製の物で、マスターキーはお父様が持っているのだろう。それは部屋に置いたままなので、二階に取りに戻る。 「はいこれ」 権一に鍵を差し出す。 だが反応はない。 「聞いてるの?」 私は手を肩に掛けようとしたが、ルールに触れてしまうのを思い出し、権一の前に立った。 「……聞いてる」 権一はそうは言うが、受け取る気どころか、動く気配すら見せない。とりあえず隣にあった椅子にでも置いておこう。失くしたとしても私は無視する。 それにしても、こんな生活が始まったが、別に特に変わったことはない。それどころかすることがなくて暇だ。確かにすることはあるが、まず何をしたら見当もつかない。それは多分権一も同じだろうから、テレビをみて寛いでいるのだろう。それとも或いはもう手は打っているのだろうか? ……駄目だ。こんな生活していたら全てを疑って深読みしすぎて、気疲れしてしまう。 今は何か事が起こるまで気楽に行ってもいいのではないだろうか? とりあえず私もテレビに目を向けると、芸能人が結婚したという報道がされていた。今は見たくなかった気分かもしれない。よく考えたらこいつと結婚した後はどんな生活になるのだろうか、一回も考えたことなんてなかった。どこかに幽閉でもしてしまおうか?それもそれで駄目な気も自分でもしてきたが。 そして後の幾つか内容も日常的な話で、強盗が捕まっただとか、景気問題だとか、歴史ある資料館が閉館したなどで、今の私には全く必要のない内容ばかりだ。それ以前に必要のある話題なんて取り上げられたら、それこそ問題という状況だ。落ち着いていけば問題は無いはずだ。 まあ今のところは何もないのだろう。部屋に戻って朝飯にでもしようか。 ♯ 俺は今からすることは決まっている。 例のマフィアを潰す。それだけだ。それさえ行えば、別に輪廻に手を出さずとも勝手にこの話は無かったことになる。 そもそも発端はこのマフィアの脅威に対するものだ。それならばそれを潰せば全てが終わる。後は勢力の衰えている、瀬戸組は放っておいても廃っていくだろう。 これに関して言えることは、例のマフィアのボスを見つけたとしても、瀬戸組は完全に潰すことはしないだろう。さっき言ったとおり、潰れてしまう事は、瀬戸組にとって苦しくなってしまうだろう。だが、全く手を出さなければ瀬戸組が逆に押されるという展開になり、園芝組にもその勢力は来るだろうから、生かさず殺さずといったところか。 何にせよ例のマフィアが全ての鍵を握っている。早く見つけ出さなければ。 だがまだ派手に動いているということもなく、手を出そうにも本部がどこにあるかさえよく分かっていない。それ以前に実態もきちんとした形で掴めていないのが実情だ。 朝鮮系というのも奴等が名乗っているだけで、本部が朝鮮半島にあるとも限らない。だが捕まえた奴等は基本的に朝鮮系で、他にはアフリカ系くらいしかいなかった。それから朝鮮に何人か偵察を放っているのだが、例のマフィアは朝鮮では全くと言っていいほど活動はしていないようだった。名前すらほぼ認知されていないようで、他の国にも向かわせたが全くだった。つまり日本国内だけで動いているようだ。もちろん状況なら日本に本部を構えていると考えるのがいいだろう。だが、ひとつ疑問に残る事がある。人員だ。これはとても重要な話で、朝鮮ですら名前が多少認知されているだけで、募集などは一切なかった。じゃあ日本国内では?それは無いだろう。募集なんてあったらすぐに気づくだろう。 今は動きがあるまで待つしかない。 そんな事を考えていたら二階から誰かが降りてくる足跡が聞こえてくる。ここには俺と輪廻しかいない。 輪廻は右手にコンビニ袋、左手にはゴミ袋を提げて降りてきた。 輪廻は階段を降り切るとその辺に放っておいた昨日俺が食べた弁当のゴミをゴミ袋に入れた。そして例の紙パックの飲み物に手を掛けた。が、すぐに下ろした。ゴミだと思って捨てようとしたのだろうが、その中にはまだ大量には飲み物が残っていた。 「残ってるけどまだ飲む?」 それは俺に言ってるのだろう。 「いらない」 「不味かった?」 「味覚を疑うな」 俺は正直に言った。正直飲めたものじゃなかった。まあ俺もこいつの味覚を確認せずに選んだのが悪かった。 「味覚はあなたよりはマシだと思うけど? 適当に選んだ私も私だけど」 つまりこいつも味なんて知らずに買ったのか。それなら納得がいく。じゃあこれを作った奴の味覚を疑うとするか。 「いらないなら捨てておくから」 そう言って台所に向かい、紙パックの中の液体を全て捨てた。そのままそれを潰して、ゴミ袋に入れる。 「ところで聞いていい?」 「なんだ?」 「何で居間なんかにテレビを置いてるわけ? あなたの部屋だけに置いた方がいいんじゃないの?」 「そんなことの理由か。いいだろう、答えよう。自分の部屋に置いたとしても音が漏れて意味もない。ヘッドフォンなんてしたら、テレビ以外の音に反応が出来なくなる。最後にこれはただの娯楽だ」 あ、こいつ娯楽なんて取るんだって顔を輪廻はしていた。こいつはいろいろ顔に出るな。 「娯楽ねー」 「他に何かあるか?」 「ないけど、頼みならあるわ」 面倒な奴だ。 「買い物行くわよ」 そういえば昨日そんな事を言ってたな。まあ今出来ることはない、それなら衣食住でも整えておくとしようか。 ♯ 同刻――。 面白いように、描いた通りに事が進む。 順調すぎて恐ろしいくらいだ。 すべて順調だ。園山組も大した事などなかったし、結婚を破棄させる件もうまくいっている。 だが、これでいい。これでいいのだ。 私が誰だか奴等も到底掴めまい。 さて、そろそろ遊戯を始めるとしようか。私の野望のために。 私は電話を取り出し何人かを収集をかけ、あの二人を襲わせに向かわせた。 「さぁ、革命の始まりだ!」 私としたことがあまりに興奮しすぎて、つい小さい声だが叫んでしまったが、誰もいないので気にすることもない。 私も私で行動を起こさせてもらうか。 ♯ 外は嫌になるくらい日が指しているが、冬という季節には勝てずやはり少し寒い。 といってもまだ十一月だ。そこまで着込む必要もないが、少し上着を着ておかなければ肌寒くはある。 もちろんいきなり同棲させられるとは思ってもいなかったので、今着ているものしかない。権一も同じ様で、昨日と同じ服を来ている。 とりあえず今日はまとめて全部買うことにしている。権一は電化製品しか買ってなかったので、家具やさっき言った服、そして食べ物。衣食住全部だ。 これだけ買えば帰る頃には夜にでもなっているだろう。 もちろん組に頼んで適当に持って来てもらってもいいが、権一の場合容赦なく銃をぶっ放すと思いやめておいてるが、服は自分で選びたい。一応女の子だし。 ちなみに今は玄関を出たところで権一が来るのを待っている。また誰かに電話しているようで、すぐに来ると言って待っていた。 「すまない」 権一が玄関を出てきた。 「誰と電話してたの?」 「愛人」 ジョークも言えるようだ。 権一は家に鍵をして、私の前に立った。 「行くぞ」 そして偉そうだ。 私たちは最寄駅のJRの長浜駅に向かう。行先は米原なので、時間はそんなにはかからないだろう。 なんなら米原に家を構えてほしかったが、いろいろ事情もあるのだろう。 まあ家から駅が近いというのは楽だ。 長浜は新快速が延長されて止まるようになってから、京都大阪方面へ通勤で使用する人が増えていたり、多少の賑わいはあるようだ。 そこで一つ思い出したことがある。何気に米原がJR西日本と、JR東海の境界で、長浜は東海側にあたる。 結構どうでもいい事だけど、私はIC○CAだが、権一はSu○caを取り出した。 「どうした?」 「何でもないわよ」 ちなみに相互利用されているので、どちらでもいける。 そう言いながら電子音を鳴らして改札を通る。 時間は九時くらいで通勤ラッシュの時間を過ぎてはいるが、ホームには多少まだ人は多くいる。 ちょうど電車も来て乗り込むが、もちろん席には座れる事はないので立っておく。 そこから十分近くで米原についた。 米原は大きい駅なだけあって、賑わいもある。 というか駅舎が大きくて、ややこしかったりもする。 「で、どこに行くんだ?」 「適当に」 権一は頭を押さえた。正直駅が大きいという理由だけで来て、探せばあるだろうという考えだった。新幹線も止まるようだし。 無かったら無かったで、別の場所にいけばいいだけだし。 私たちは見知らぬ場所に足を踏み出した。っていうほど大げさなものじゃないけどね。 ♯ 「まずは服を買いましょう」 何処にあるのかも分からないのに、輪廻は言う。しかし服屋なら大抵の場所にあるだろう。もっとも俺は服装はあまり気にすることはない。基本的にスーツを着ている。動きやすいし、客人を招くときにも向いている。 自然に輪廻を先頭に俺が後ろからついて行く。当たり前なのだが輪廻の赤く長い髪は人目を惹く。髪が左右に靡く度に、老若男女問わず目を向けているのが窺える。彼等から見て輪廻はどう思われているのか、珍走団のメンバーやヴィジュアル系バンドあたりだろうか。それなら俺はどうだ?あまり考えたくはないが、あまり良い様には思われてはいないだろう。まあ正解なのだが。 「まずはあそこに行きましょう」 輪廻が指を指した店に入ることになった。 俺はさっき言ったとおり服に関心がないので、ファッションなんてものには疎い。そんな俺を傍目に輪廻は服を見ている。この店は女性用ばかりで、俺には全く必要な場所ではなかった。そしてあまりにも場違いだろう。 「彼氏さんですか?」 少しの間立ち尽くしていた俺に声がかかった。この店の店員だ。多分彼女が彼氏を余所に服を漁っていると思われたのだろう。 「近しいところです」 俺はそういう曖昧な返答をした。ここで肯定しておいた方が怪しまれないだろうが、相手がこいつだと思ったら気が引けたからだ。だが、店員もよく分かっていないようだ。とりあえず俺は輪廻の方に向かう。 輪廻は右往左往しながら服を見ている。俺から見たらどれも似たようなものだ。 「決まったか?」 俺は後ろから声をかけた。 「何言ってるの、まだ入ったばかりじゃない」 店に入ってから二十分弱くらい経っているのだが、女性の買い物は長いものだ。そして輪廻も残念なことに例外ではないようだ。 その後も何度も試着して、一時間以上経ったところでやっと決まったようだ。両手一杯に服を抱えてレジに向かっていた。その姿は凄く滑稽に見えた。 レジの人はその量に驚いてはいたが、仕事なので会計をする作業に入る。結構な量なので、袋に入れる人も大変そうだった。 「合計二十一万四千八百円です」 やっと終わったようだ。そこで輪廻はクレジットカードを出した。もちろん黒の。 予想通り店員は驚いていた。あまり普通には目にかかれないからだ。 そして店員に見送りされてやっと出る事が出来た。 「じゃあ持って」 何にかけての「じゃあ」なのか分からないが、要は持てということらしい。ずうずうしい。 「自分で持て」 「レディーに重いもの持たせる気?」 「自分で持て」 「ケチ」 俺は決してケチではない。当たり前の事を言っているだけだ。だが、確かに結構な量を買い込んでいたので重そうなのだが、一体何着買ったのか。 「それじゃあ次行くわよ」 輪廻は相変わらず前で歩く。そして俺は後ろからついて行く。 そして輪廻は一つの店に先に入って行った。俺はその後から入っていく。女性用下着の店に。 「恥ずかしいでしょう」 入ったところで輪廻は振り返り俺の方に向かって言う。 多分男がこんな場所に入ったら、恥ずかしいと思うと決めつけているのだろう。世間的には間違ってはいないだろうが、俺にとってはただ単に縁のない場所と思うくらいだ。 「で」 俺はそれだけ言った。 そうすると輪廻はブラジャーをいくつか持ってきた。 「どれがいいと思う?」 色は黒、白、ピンク、水色の四色で、どれも単色のブラジャーだ。しかしカップが少し大きめな気もする。だが輪廻は良くいえば「スレンダー」、悪く言えば、 「貧乳」 「死にたいの?」 間髪入れずに笑顔で言う。 まあ見た目だけでよく分からずに、適当に言ってみただけなのだが、どうも図星だったようだ。「貧乳」が。 「でも貧乳と言われるほど小さくはないわよ」 しかしすぐに気にしていないように、平然そうに言う。しかしこめかみが少し震えているのが分かる。 「俺は胸の大きさなんて物は気にしない。要は権力だ」 「あなたらしい決め方ね」 何故か輪廻は落ち着いていた。表情が忙しい奴だ。 それから俺を無視して、試着もせずに適当に下着をレジに持っていく。 さっきと同じように、黒のクレジットカードに驚くという事もあったが、ここでの買い物は先ほどに比べてすぐに終わった。 「食事でもしましょう」 時間は十一時を過ぎそうなところで、そろそろ飲食店も混むような時間帯だ。 「そうしようか」 俺はその意見に頷いた。 午前は輪廻の買い物だけで時間を使い終わった。 ♯ 「どこで食べる?」 私はここから近くにある場所ならどこでもいいと思っていた直後だった。 爆発音がした。あまりにも大きな音で、音の先にはトラックが炎上していた。 「え?何これ?」 あまりにもいきなりで驚いた。私はトラックの周辺に集まった野次馬に交じり、トラックを確認した。不幸にも近くを歩いていた人が何人か倒れており、酷いのは体の一部が吹き飛んでいる。野次馬は阿鼻叫喚な者や、どこかに電話している者、何を考えているのか写メまで取ってる奴までいる。 野次馬の話を訊くと、トラック自体には誰にも乗っていなかったようで、いきなり爆発したそうだ。多分爆発物を仕掛けられていたのだろう。だが何故こんな場所でなのか? しかしテロの可能性もある、それ以外にも、 「伏せろ!」 権一が後ろから飛びかかってきた。 その直後私の近くにいた人が叫ぶ。状況が分からないが、沢山いた野次馬達が一気に散り始める。 「走れ!」 私は言われるまま立ち上がり、権一の後ろを追いかけていく。しかしあまりに野次馬が多く集まっていたらしく、前がつっかえているようだ。 「こっちだ!」 店と店の間の狭い通路に入り込み、ある程度行ったところで足を止めた。 「はぁ、はぁ、はぁ」 私は息を整えてる間に権一は拳銃を取り出す。 「はぁ、はぁ、ちょっと待ってよ、どういうことか説明してよ」 「お前はそっちの組で救援を呼べ!」 状況は把握しきれてないが、緊急という事は分かる。私は指を鳴らすと護衛に来ていた二人が現れる。 「これで足りるかしら?」 「車を用意しろ」 「なんなのよもう、車は用意してあるわよね?」 「輪廻様こちらに」 護衛を用意しておいてよかった。そして私は実感した。私は狙われていたということ、あの時何かが私に向かって来ていて、権一がいなければ私が負傷していたのだろう。そしてマフィアとの戦いが始まっているという事を。それを想うと私は今更体が震えあがる。怖い。今まで私は護られて育ってきたようなもので、いきなり狙われるような事は無かったのだ。 「……案内して」 私は冷静を取り戻し二人に言う。 二人は銃を取り出し、私と権一の前後を挟み走って移動する。爆発の後とはいえ、銃なんかを持っていると人目を惹いたり、逃げ出す者もいる。しかし今はそんな事を気にしている暇はなく、ただ走るだけだ。 私たちは車に乗り込み発進する。 「お前ら気付かなかったのか?」 「申し訳ありません」 乗ってそうそう護衛の二人に権一が説教をしている。 「はぁ、はぁ、まだあまり理解出来てないのだけど、説明お願いできる?」 「お前はスナイパーに狙われていたんだよ」 「スナイパー? じゃああの爆発もそうなの?」 「そうだろうな、あの爆発で注意を向けて、狙ったのだろう。それで且つ足も止めることも出来た。動くものより動かないものの方が当たりやすいしな」 「そういうこと、でもよく気付いたわね」 そうだ、あの状況でよく気付けたものだ。 「確かにあの爆発に目がいくが、あまりにも不自然だ。それに俺達を狙っているという可能性は外せないからだ。でも伏せたのは実は勘なんだがな」 勘って……、あの何でもないような状況だったらどうするのだろうか、まあ普通に立ち上がって何も無かったかのようにするでしょう。 「しかし狙撃主は確認する暇は無かったのは失態だったな、お前らはどうだ?」 「そちらも申し訳ありませんが」 護衛の一人が運転しながら答える。 「ですがこれからどこに向かいますか?」 「俺の組の方に向かってくれ、そっちの組長も呼んでおく」 「はい」 そういうと、権一は携帯を取り出し電話を掛けた。 それにしても私はとても情けない。何も出来なかったのだ。権一がいなければ死んでいたし、もし一発目が当たらなくても、二発目が撃ち込まれていただろう。本当に、今まで自分を過大評価していたのだろう。それを思い知った。目頭が熱くなり涙が零れそうになる。 「泣くな」 いつの間にか通話を終えていた権一が私の頭を撫でていた。 「泣いてないわよ」 「強がるな、所詮弱かったってだけの話だ」 「うっさいわね、あんたなんかに慰められたくないわよ」 でも私は弱かった。こんな奴と思っていた奴よりもとても測れないくらいの差で、こいつがあまりにも頼もしいと、思ってしまった。 「……馬鹿だな私……どうしようにもないくらい馬鹿だ」 「馬鹿は馬鹿なりに出来る事があるだろう」 つい思っていたことが声に出てしまっていた。それも誰にも言ったことのないような弱音を吐いてしまっていた。弱音か、小さい頃に吐いた気もするけど、それ以外は無かったな。ずっとちゃんとやってきたんだ。それでも所詮私のやってきた事は簡単な事ばっかりだったのだろう。 「臭いセリフ吐くんじゃないわよ」 私は出かけていた涙を拭い権一の方を向いた。 「…………」 「ばーか」 ♯ この席に集まったのは五人だ。 俺、輪廻、親父、輪廻の親父、そして、 「何故お前がいるんだ」 「金になりそうだからさ」 気に食わない。何故此処にこんな奴がいるのか。 園芝組若頭 獅戸兇鑢、俺と同じ立ち位置にいるやつだ。こいつはやたら金に執着心があり、武器の取り引きを主にしており、海外の戦争時の武器の取り引きには必ず名前が有る。そしてこんな状況でも金にしようとする。だが親父が呼んだらしい。明らかに何かをしようとしているような奴を。 「つまり奴等は本気という事だな」 「そのようだな」 俺は親父に相槌を打つ。粗方の事は車の中で説明しておいた。 「あとお前が見失った狙撃主なら見つかった。だが、身体中に爆薬を仕込んでおって自滅しやがった。始めから捕まる事を想定していて、捕まっても喋らない様にしていたんだろう。自滅を図るまでの忠誠心は中々だが、そのお陰でこっちもその爆発で負傷した者がでた。軽傷という事だが休養を取って貰った。こいつ等の話では狙撃主は顔を包帯で巻いており、顔すらも晒しておらず、国籍等の手掛りにすら成りそうではない。それと回収した銃は口径十二mmのライフル銃で、銃その物は調べてはみたが該当する物が無かった。恐らくオリジナルという可能性もある。入手経路は不明だ」 親父は俺が来る間にここまで掴んでいたのだ。これが園芝組十八代目組長である、宮左御極陽の凄さの一つだ。しかし何故兇鑢を呼んだのか分かる。武器の取引となれば専門の分野だからだ。 「兇鑢」 「経路を探ったが、このモデルに一致するものは無かったぜ。恐らく国内製造の一品物だろうな。国外からの輸入なら何かしら確実に情報が残る。大量生産というのも同じくだ」 「そうか」 親父は兇鑢から目を背け白夜の方に目を向ける。 「私の方では全くです。それに極陽さん以上に情報を集められませんよ。後どうせ一緒に西側からの入手経路も洗ってるのでしょう」 それにしてもこの白夜というのは話し方に拍子抜けする。あまりに緊張感のないように見える。娘が狙われたというのにこの状態だ。だが、昔からこんな人だというのを知っているし、俺が生まれる前の話も親父から聞いている。 「白夜さんといえども西ですからもちろん調べさせてもらいましたとも」 そう兇鑢が言う。当たり前の事だった。交友を築こうとはしているものの、まだ敵対関係にあるからで、信頼し切る事も出来ない。まだそれだけの関係という事だ。 その後も話合ったが、輪廻はその間一言も話す事はなかった。 話し合いも終わり俺はここにいる理由は無くなったので帰る事にしようと思ったが、輪廻は白夜と話をしていた。極陽も兇鑢と何処かに行ってしまっていたので、俺は輪廻を待つことにした。 輪廻と白夜は俺の近くで座って話しており、俺にもその会話が聞こえる。その内容はやはり親なのか、白夜は輪廻の状態を心配していた。相変わらず緊張感の無さそうな話し方だったが、しっかり心配はしていたようだ。 「権一君今回は本当に有難う。君のお陰で娘は無事に助かったよ」 「…………」 俺は何も言わない。俺自身もこの男をあまり信頼していない。こういう男ほど何を仕出かすか分からないが、あくまでそれはフィクションの中だけの話だ。しかし俺はそれ抜きでこの男を良く思っていない。簡単に言うと生.理的に受け付けないというものだろう。 「話は終わったなら行くぞ」 俺は先に部屋を出た。その後に輪廻は白夜に一言言って着いてきた。 「お腹減った」 この女はさっきの席では黙っていたと思ったが、車に乗り込んで来て口を開いた早々これか。そしてさっきまでの暗い顔では無く普段の人を見下す様な顔をしていた。暗いままでははりあいがなかったが、これはこれで少しいらつく。むしろ普段より増してだ。だが俺も食事を取りたいと思ったのは同じで、あの後すぐに此処まで来たのだ。そして時間は午後五時を回っており、もう晩飯のような時間帯だ。これならば此処で食べて行こうとも思ったが、親父の事なので他人を持て成す様な事をしないだろう。 「それではどこかに寄って行きましょうか?」 「そうして頂戴」 「畏まりました」 そういうと護衛の男は車を発進させた。 「あ、服忘れた……」 今更気づいたようだ。恐らく狙撃されて走った時にでも忘れたのだろう。俺も一々そんなことを気にしてられなかったので、あくまで可能性だが、あの時既に手には握って無かった気がするが、無くなってしまえばどこで忘れようが関係なかった。 「最悪、また買いなおさなくちゃ」 また付き合わされるのだろう予感がしたので先手を打っておく。 「すまないが、一緒に衣食住が揃う所に寄ってくれないか?この時間ならまだ大丈夫だろう」 護衛はミラーで輪廻の顔を見据えた。輪廻は縦に顔を振り、護衛も頷いた。 「それでは大型のホームセンターでもよりましょう」 「そうしてくれ」 これで後は二人別々に行動出来るだろう。 俺達はまだこのだけは夜は共に行動を続ける。
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齧った 模られた色彩 所詮似せて創られた 交されない密葬 真実は永遠に騙る 総てを覗く鏡 映るのは私ではない 上空に啼く鳥は遠くの世界を観る