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◆Ok1sMSayUQ 井戸の底だ、と誰かが言った。 忘れ去られた者達が消えぬよう寄り集まった、薄暗い、日陰でしかない井戸の底。 生き延びるための知恵だった。滅びを免れるために精一杯考えを尽くした結果だった。 しかし、月日が経って、誰もが井戸の底とは言わないようになった。 忘れた。あるいは忘れたふりをした。伝えなかった。意図的に抹殺した。 畏れられていた時代を忘れられなかったからだった。 人間の文明の発達により妖怪信仰をする必要がなくなったことを、認めたくなかったからだった。 そうして残ったのは、小さな矜持でしかなかった。 なぜ生きているのか、なぜ生きることを選択したのか。 答えられる者はひとりとしていない。いなかった。 * * * Stage1. ラストリモート うとうとしていたことに気付いたのは、肩を揺らし続けるサニーミルクの切羽詰った表情が目に入ってからだった。 ぼーっとしていたのは一瞬で、意識を落としていた愚にも気付いた射命丸文は荷物を確認する時間も惜しく、「何がありました!?」と声を張り上げていた。 「あっちの方が、なんか、ずずんって!」 崩落か? だとするなら大規模な戦闘になっていると結論を走らせた文は、体がまだ痛みを訴えているのも構わず立ち上がる。 また出遅れたのか。また何もできないままの傍観者なのか。仕方がないと理解はしていても責め立てる声を聞かずにはいられなかった。 (……生きているなら、できることがあるはずとは言ったけど) できることとは何だ? 生きて帰る。死んでいった仲間達のため。浮かんだ答えは、いずれも違うように思えた。 分からない。答えを出せていない自分が酷く悔しく、みじめであるようにも感じた。 そんな心持ちが身体にも影響を及ぼしたのか、じくじくとした疼痛が突然刺すような痛みに変わった。 動かしていた足が止まり、眉根を寄せた文にサニーミルクが心配そうな面持ちで肩を掴んだ。 「大丈夫? 肩貸そうか?」 「……サニーは」 視線だけを向けて、文は新聞記者の口調を捨てて尋ねる。 己の落ち度を確信したときは。今までは隠そうとしてきた。隠すのが当然だった。 失敗など晒すものではない。弱みを見せることは交渉において不利益をもたらすものでしかないし、妖怪社会でも上位に立つ天狗族の立場を貶めることになる。 プライドが許さなかった。天狗社会での立場が許さなかった。そして何より、怖かった。 今まで偉ぶってきただけに、下に見下してきた者がどんな仕返しをするかなど想像することもできなかったのだ。 恐怖を支配するには自らが恐怖になるしかない。 レミリア・スカーレットの語った言葉は、まさに的を射ていた。 仕返しされ、蔑まれ、馬鹿にされるのが嫌なら支配し続けるしかない。手酷く扱われてきた者が許すなどというのは甘い想像でしかないから。 皆がその恐怖に負けていた。だからこそ組織という外殻に篭り、役割を定め、逃げ続けてきたのかもしれない。 「これから、何ができると思う? 間に合わないかもしれない。また見殺しにしたって責められるかもしれない。何もしなかった役立たずと腹の底で嗤われるかもしれない。 私達が否定しても、証明なんてできない。行動で示せなかった私は、何をすればいいのか、分からない……」 信じていないわけではなかった。文自身は仲間のことを信じようと考えていた。 しかしいくら信用したところで、向こう側が信用を返してくれるかどうかは分からない。 失敗は失敗。それをあげつらわれない理由は、ない。 「……私は、もしそうでも、頑張ればいつか許してくれるって思う。思いたいよ」 サニーミルクは文の左手に巻きつけられ、結ばれているリボンを引っ張った。 「ケンカだってそうだもん。しばらくは怒ってても、ごめんなさいって言えばさ、いつかは許しちゃうし。絶対に許されないことがあるっておかしいよ」 子供並の知能しか持たぬ妖精の稚拙な言葉。だが言葉の内容はよく分かる。 確かに、そうだ。失敗は責められるが、同時にそれが未来永劫続く理屈だってない。 なぜそんな当たり前のことにも気付かなかったのか。サニーミルクの掴む霊烏路空のリボンを眺め、文はようやく彼女がこれを託した真意に思い至った。 常に仲間は側にいる。それだけではなく、失敗や挫折、そして這い上がろうとする気持ち、やり直す心根もここにあるということ。 「……そうね。そうだった。忘れてた」 文はサニーミルクの肩に手を回し、支えにするようにして歩き始める。 身長差もある。よろよろと覚束ない足取りの二人に、しかし迷いはなかった。 「あの、ですね」 「なによ」 「私、知ってるんです。とある持ち物のお陰で、ここで死んだ方々の死に様が」 「……そうなんだ」 「それで、その……」 「知ってるよ」 「え……」 「レティはいないんでしょ? それに、きっと……私の友達ももういないんだろうな、って思う。スターやルナがいなくて、私だけここにいるなんて思えなかったし」 「分かって、いたんですか」 「チルノが死んだときにそんな気がしたんだ。友達は死んでるんだろうなって。でもさ、いいよ。いいんだ、もう」 「サニー……」 「私はさ、こんなことでもいい、助け合っていきたい。レティとか、萃香とか、にとりや、妹紅とか空とかあんたに、『いいこと』っていうのを教えてもらったから」 それがサニーミルクの結論なのだろうと文は思った。 実に子供らしい発想だったが、この清々しい気持ち、サニーミルクの挙げた名前の面々を誇らしく感じるのは何故なのだろう。 成長や進化とはこういうことなのかもしれない。偶然の出会いでしかなくても、ひとたび縁を感じれば得られるものがあるということか。 鈍い実感を噛み締め、文はかつての仲間の姿を思い描く。 臆病者だった河城にとりは最期に自分を救ってくれた。コバンザメのようについてきただけだったレティ・ホワイトロックは為せることを為した。 ――全て、誰かの言葉に触れてからだ。 「私は……」 固まりかけた内奥を口に出す寸前、耳障りなノイズ音が響き渡るのを、文とサニーミルクは聞いた。 続いて聞こえてくる不愉快な声に、文は開いていた口を閉じた。 今言うべきではない。言うべきは……どことも知れぬ、見下ろして眺めるだけの声の主なのだと、答えを見出した己の感情がそう伝えていた。 * * * 『おはよう、諸君』 前回から様変わりした主催者の、中年を感じさせながらも底の知れない抑揚のなさを含んだ声も、霧雨魔理沙を動じさせるには至らない。 帽子のつばを前に傾ぎ、誰にも顔色を見せぬようにして、魔理沙は短い黙祷を捧げる。 魔理沙っ!!助けっ――― きっとあらゆる苦悩があり、あらゆる覚悟があったのだろう。 恥も外聞もなく、ただ大声で、彼女は他の誰でもなく自分を求めた。 身勝手だと言っていたはずの自分を。愚かだと蔑んでいたはずの自分を。現実を見ていない夢想家だと一喝したはずの自分を。 嬉しかった。だが――遅きに失した。 最後の最後、そんな言葉だけを遺して八雲紫は彼岸の彼方へと歩き去ってしまった。 あんまり水臭いじゃないか。酒を酌み交わしてもいない、夢を語り合ってもいない。やっと心を開いてくれたと思ったのに自分にはさせてくれないなんてあんまりだ。 今の紫とは語りあいたいことがたくさんあった。本当にたくさんあったのだ、本当に…… 『ここまで来ればもう君達も分かってはいるだろう』 分かっている。途切れ途切れに聞いた彼女達の断末魔を。 寺子屋の廊下に横たわり、虚空に向けてなにかに手を伸ばそうとしていた藤原妹紅。 軒先に倒れ、胸元に手を当てて絶命していた小野塚小町。 魔理沙には分からなかった。今わの際の彼女らが心中で思っていたことは。 無念の果てに倒れたのか、為したいと思ったことを為して倒れたのか……死者は何も語らない。 自分達で都合よく考えるしかない。手を伸ばし、手のひらに掴み、静かに目を閉じていた彼女達は何を考えていたのか。 無念や後悔はあっても、恨みや憎しみはなかったと魔理沙は思いたかった。立ち向かい、死に直面することになろうとも、それは自分の選択であり誰の責任でもない。 他者に押し付けて世界を呪ったまま死んで、いなくなることの虚しさを、きっと彼女達も分かっていたはずだと。 だから、善意を信じた。 『生き残りは君達だけだ。殺し合いを続ける気はあるのかな?』 全ては幻想郷を救いたいという思いから始まったことだ。 紫があれほど意地を張り続けたのも、幻想郷を思う気持ちが強かったこそ。 博麗霊夢だって―― お前は、幻想郷の皆が嫌いだったのか? そんなわけ、ないじゃない!! 誰一人として意思して悪を為そうとは思わなかったはずだ。 ならば何故、殺し合いはここに至るまで続いてしまったのか。何故、最初から手を取ろうとしなかったのか。なのに何故、今はこんなにも狂おしく感じるほど、他者を求め続けているのか…… あまりにもままならない。小さな幻想郷の中でさえ、互いが互いに気付くのが遅すぎた。 いなくなった後で寂しいと感じ、本音を吐き出した後で悲しいと感じ、なくしてゆくばかりだった一日。 「……」 フランドール・スカーレットが、しずしずと歩いてきて魔理沙の手を握った。 朝霧で日の光が届かぬ今だからこそできることだった。痣と傷だらけで手当てが必要だろうに、意に介した風もなくフランドールは指の先に力をかけ、空の一点を見据えている。 そこに続き、東風谷早苗と霊烏路空がやってくる。早苗はフランドールの空いた手を繋ぎ、空は早苗の空いた手を繋ぐ。 それぞれに無言。それぞれに違う場所を目を注ぎながらも、離れないという意識が内に共通しているかのようだった。 人間同士だった魔理沙と早苗はともかく、ほぼ接点もなかったはずのフランドールが、空が。魔理沙は分かっていても胸の奥底から沸き立つ熱い情動を抑え切れる自信がなかった。 「殺し合いなんて続けるもんか」 低く、冷静に伝える声。しかし篭る怒りを隠しもしない決然とした魔理沙の声が開戦の証だった。 閉じていた瞳を開け、下ではなく上を向き、己の心で考えた言葉を武器にして立ち向かう。 「やっと分かったんだ。皆が皆を恨んで殺し合いを続けてたわけじゃないってことが。信じなくて、信じられなくて、そんな自分が許せなかったから」 『明らかな反逆宣言だね。いいのかい? 生殺与奪はこちらが握っている。今すぐ君の首輪を爆破したっていい』 「できるもんか。お前が見たいのはそんな物語じゃないだろ?」 『……』 息を吐く気配が向こう側から伝わってきた。 そう、この主催者は殆ど手を下してはいない。自分達を煽ったり焚きつけたりはするものの、殺し合いそのものは眺めているだけだ。 自らの防備に関する対策も最低限。禁止エリアなどで身を守ったりはするものの、人里を初めとした要所を追い立てるようなことはしなかったし、 支給されている道具だって使いどころを上手くすれば窮地に追い込めるようなものだってある。 自分が危機的状況に陥りかねないものを支給する理由――それはつまるところ、殺し合いをさせたいというのがこのゲームの目的ではないということ。 強いて言うなら。 「お前は対立させたかったんだ。私達が……何も考えずに生きてきたから」 非を認める発言だった。それまでの幻想郷ならば誰もが認めなかったであろう発言。 場の誰一人として反論の声は上がらなかった。上げられなかったのではない。上げなかった。 幻想郷の誰もが目を逸らしていた。妖怪はなぜ人間を支配するのか。畏れられるために他者を見下すことは必要ではないのに。 他の妖怪が皆そうしているからという理由で、妖怪は支配を続け、戯れに人間を襲い、異変は解決屋に任せ見ぬふりをしていた。 人間も同様だった。誰も文句を言わないから支配され続け、襲われてもそれが幻想郷を維持するためのルールだからと納得し、異変は解決屋に任せ見ぬふりをしていた。 気付かなければ良かったのかもしれない。交流のない世界。誰もが個室に篭り自分の都合にしか生きなくても。おかしいと思わなければ、それは平和であると言えるのだろう。 暢気に、何も感じずに、何も考えずに。 衝突は悪でしかない。争いは軋轢しか生まない。 異変でさえ、結局は個々の問題に終始する。四方を壁に囲まれた個室で一人が暴れたところで、全体に伝播するはずがない。 ただ、それは鬱陶しいから解決される。聞き分けのない子供を叱る程度の感覚で事件はなかったことにされる。 誰も傷つきはしない。誰の尊厳も侵されることはない。妖怪にも人間にも都合のいい世界。 他者と触れないことが、何もしないことが、平和であるための正義だったのだ。 「霊夢は、それが嫌だったんだ」 唯一、各々の個室を見て回れる霊夢だけがおかしいと感じた。 一歩も動かず、立ち止まったままで、現在に生きているだけの幻想郷を変えなければと思ったに違いなかった。 魔理沙は空いているほうの手で、霊夢の手記をぱらぱらとめくった。 異変の際の試行錯誤。皆の意識を変えようと必死に奔走していた霊夢。それは確かに善意から生まれた行動であったに違いなかった。 三度、霊夢と対峙し、本心からの言葉をようやく聞き出すことのできた魔理沙にはよく分かる。 「でも上手く行かなかった」 霊夢自身が、変わろうとしなかったからだ。 変革を促しておきながら、自分は変わる意識がない。行動に移していても、それはあくまで博麗の巫女としての行動の範疇でしかない。 助けを求めようともせず、借りようともせず、『博麗霊夢』のあり方に縛られているかのようにしか動けず。 気付かなかった自分達も愚かだ。或いは指摘さえしようとしなかったのかもしれない。 博麗の巫女はいつだって正しい異変解決人だから。おかしなことをしていてもそれは異変解決のための行動であり、指摘することは間違っている。 妖怪も、人間も、間違うことを恐れた。踏み込むことに恐れた。ぶつかり合うことで尊厳を乱されるのを恥じた。 お笑い種な話としか言いようがない。恐怖していたのだ。 畏れられることを何よりの拠り所とし、畏れさせることで社会を成り立たせようとしてきた幻想郷が、他者と関わることを何よりも恐怖していた。 魔理沙は笑った。あまりにも滑稽で、情けなく、ちっぽけで、矮小だ。 知らなければ良かったとさえ思う。赤子のままでいれば。窓の外を見なければ。扉を開けなければ――きっと幸福なままだった。 「だからお前は私達を終わらせようとした。お前が創造主だとしてだ。みっともないもんな。こんな逼塞した世界なんて」 『なるほど、僕をそう認めるか』 「でもただ捨てるのも惜しい。せっかく作ったものだ、勿体無いんだろう。だから、殺し合いだったんだ」 殺し合いを最後の異変にして、この醜い世界を終わらせる。それが創造主の、主催者の目的だと魔理沙は推理していた。 始まる前の自分ならば荒唐無稽な考えだと切り捨てていただろう。幻想郷全てを眺める神などいない。いたとしても平和に暮らしている自分達がこんな目に遭う道理はない。 全てを受け入れる幻想郷は全てに平等だ。何か悪いことが起きたとしてもそれは当人の責任でしかないし、こちらには何の関係もない。 野次を言おうが、言葉遊びで煙に巻こうが、面白半分に冗談を言おうが、『何もしない限り自分達は何も悪くない』のだから。 しかし今は知っている。そんな考えは少し考えれば悪意に塗れている。無関心の塊で形作られたひとがたの獣でしかない。 あまりにも皮肉なことに、人妖が平等に殺し殺されるこのゲームで初めて、自分達は他者が考えていることに触れたのだ。 魂魄妖夢が主をあれほど強く想っていたこと。西行寺幽々子が強く誰かを求めていたこと。八雲藍が案外融通の利く姉御肌だったこと。 森近霖之助が自分を大切な妹分のように感じていたこと。因幡てゐは臆病だが誠実でもあったこと。 八雲紫は、誰かに助けてもらいたかったこと。博麗霊夢は、皆が嫌いではなかったこと。 全部ここで知ったことだ。 「殺し合いに持っていった時点でお前の目的は達成されてたんだよ。後は全滅しようが脱出されようが構わなかった」 『外れてはいないな。僕は殺し合いが進むと思っていたけどね。勝手に八意永琳を疑い、それはおかしいと慎重になった者を疑い、殺したものを疑う。 当たり前のことだからね。ボスは分かりきっているのに、ボスを倒すなと言うようなのは、殺したがっているようにも見えるさ。普通に考えれば分かる』 そして創造主の目論見通り、無自覚だった悪意を知覚し、傷つけ合い、感情のままに殺し合いは進行していった。 幻想郷の総清算として引き起こされたこの異変は順調に主要な妖怪や人間を減らしていった。 「何も知らず、知ろうとしなかった私達だ。結局、残ったのはたった五人」 『……いや、まだ殺し合いは終わっていない。たった四人殺せば事足りる。残った一人、射命丸文が――』 「バッカじゃないの」 創造主の口を封じるようにして、それまで沈黙を保っていた空が吼えた。 お前の口から聞きたいのはそんな言葉ではないというように、彼女は制御棒を高々と振り上げる。 「私達はアンタの推理なんて聞きたくない」 「私達は一人ひとり、ようやく自分の考えを持ってここまで来たんです。あなたの言うことは、所詮第三者視点の言葉でしかないんです」 「つまりさ、アンタに会わせろってことだよ」 空に続き、早苗が、フランドールが真っ向から否定する。 考えられなくはないこと。悪意を信ずるならば考慮されて然るべきことを、各々の信念で退ける。 「たったの五人だがな、創造主のお前を論破してのけるには十分過ぎる人数だ。そうだろ、文!」 そして、魔理沙が最後を引き取って叫ぶ。 自分達が無知であり傷つけ合ってきたのは確かな事実だ。 しかし事実が理由になるわけではないのだ。ここにいないから文が敵になるかもしれないという可能性。 出てこないのは寝返ったからだという可能性。理屈で考えればあり得なくはない。けれど、今の自分達は理屈だけで動くようなものではないのだ。 「いやはや、出遅れて申し訳ないです!」 「っていうか私もいるから! 私! サニーミルクを忘れんじゃないわよ! 誰が五人って言ったか知らないけど!」 そうして、民家の影から出てきたのはやはり射命丸文だった。傍らで支えるのは妖精のサニーミルク。 彼女達はスキマ袋を抱えていなかった。ついでに言うならどこにも武器を所持していない。 持っているものはといえば、文が腕に巻いているリボン、胸ポケットに入っている小型のカメラと思しきもの。 ついでに言うなら、地面に機械らしきものが転がっていたが踏み潰されていた。必要ない、と判断されたのだろう。 用意のいいことに、手ぶらでやってくることで殺し合いなんてしませんよバーカ、と創造主に言う気満々だったらしい。 美味しい登場じゃないか、と口に出さずにからかい、魔理沙は口の端を僅かに吊り上げた。 『……僕を誘い出したということか?』 「まあな。弱音と事実を持ち出せば、そうしてくれるかもとは思った。私達は……正しいことを信じすぎていたから」 理屈は正しい。創造主の語り口はそうだった。確かに真実ではある。 ならば、正しいからとやってしまってもいいのか? それは違う。正しくてもやるかどうかは自分で決めることだ。 早苗の言うように、創造主の言うことは第三者視点の正しさに過ぎない。 文がまだ生きているのは初耳ではあったが――ならば、同様に初顔合わせであった空を『こちら側』と決めたのはどうしてなのか。 残った文を疑わせるための理屈であるに決まっている。それより、何より。 空は手を繋いでくれた。霊夢との戦いに駆けつけ、居合わせただけの自分達の手を取った。 だから文だって信じる。絶妙のタイミングで駆けつけてくれた射命丸文は、絶対に味方だと信じられる。 隣にやってきた文がニンマリと笑って魔理沙の手を取った。その文の手を、サニーミルクが。 『……いいだろう。それが君達の結論だというなら、僕から最後の難題を与える』 難題と来たか。 さてどんなものが来るかと思ったが、創造主が提示してきたものは思ったよりも単純で、しかし中々難しいものだった。 『僕は城の地下にいる。ここまで来てみるといい。全てを司るそこで、物語に幕を下ろそう』 次 Stage2.魔法使いと、その騎士たち
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登録日:2015/06/15 Mon 18 30 45 更新日:2020/12/28 Mon 04 16 36 所要時間:約 10 分で読めます ▽タグ一覧 くろのくろ キャラクター文芸 メディアワークス文庫 小説 御用人 浅葉なつ 狐様もふもふ 神 神様の御用人 神様の御用人とは、浅葉なつを著書とした、アスキーメディアワークス文庫から発売されている文学作品である。 イラストはくろのくろ。 ~あらすじ~ 膝の故障で大好きだった野球から離れ、就職した会社は辞めてしまい、フリーターとして鬱屈とした日々を送る良彦。ひょんなことから、 神様の願い事を叶える“御用人”に指名され、狐の姿の神、黄金とてんやわんやな“御用人”活動を始める――。 ~概要~ しがないフリーターの青年、萩原良彦が、どこまでもマイペースな神様のお願いに頭を抱えつつ、 お狐様の“方位神”黄金とぎゃあぎゃあ言いながら奔走するお話。 神様が主軸なだけあってスケールが大きい物語。のはずなのだが、出てくる神様はどなたもこなたも 下手な人間よりも人間臭く、基本的にコメディのノリで進んでいく。 時にシリアスでしんみりすることもあれば、ふと考えさせられることもある。 1話完結型の物語が複数収録されている形なので、比較的テンポ良く読めることだろう。 ~登場人物~ 萩原良彦 主人公。24歳の青年。 野球のために大学に入り、強豪の社会人野球チームを持つ企業に入るも、右膝の故障により引退を余儀なくされる。 手術後は膝に負担がかかる仕事も出来なくなり、次第に冷たくなる周囲の扱いに耐えきれなくなり辞職。 以降は再就職先を見つけるまでの“つなぎ”としてバイトを続けるフリーターとなる。 重なる不幸に、半年ほどパソコンと向き合うだけの毎日を過ごす引きこもりとなっていた時期もあった。 神様からの頼みをなるべく安く楽な方法で叶えようとしたり、自己を犠牲にしようとまではしない、 ものぐさで面倒くさがりな所もあるが、祖父の影響もあり困っている人を見ると助けようとする性格。 神職の親友や神様や神社に詳しかった祖父を持つが、彼自身は殆どそれらの知識を持っておらず、 黄金の説明や文明の利器の力を借りなければ有名所のこともさっぱり。 諸事情で今代の“御用人”の“緒”が切れてしまったため代理として選ばれる。特段立派な人物ではない、 どころか黄金に酷評される人物な上、神々の知識もさっぱりという異例の抜擢。本来ならば消去法でも有り得ない人選だが、 祖父が倒れてから痛む膝を押して毎日真摯に祈り、なおかつその後「勝手な願いをして申し訳なかった」と わざわざ謝罪をしたことが注目された。 特定の信仰を持たない。神様にもあまり敬語を使わず、時には遠慮のない言葉をぶつける。 しかしそれは同時にどんな相手だろうと対等に接する姿勢の表れであり、例え大国主神だろうと怒るところは怒り、 貧乏神だろうと手伝えることは手伝おうとする。 孝太郎に倣うならば、良彦は“陰陽に親しむ者”だろうか。時に卑屈になる程凹んだ時期もあるので、 落ち込んでいる相手には「一人で閉じこもっていたい時もある」と頭ごなしに否定せず、親しい人と一緒に過ごす幸福も 大切に思っている。あまり物事を難しく考えず(考え無しという意味ではない)、人として当然のことは善悪問わず是とする。 だからか、負い目があって気まずい場合を除いて、人によっては恥ずかしくなってしまう正直な思いを、包み隠さず伝えられる。 孝太郎を「達観している」と羨望している節もあるが自身も大概である。 色々融通が利かない立場故自分の生活を犠牲にはしたがらず、解決への近道であっても渋る。いざという時の行動力はあり、 相手を説得する際には熱い一面を覗かせる。 そんな彼だからか、多くの神と友人、もしくは家族のような関係になっていく。 “方位神”/“黄金” 黄金の毛並みが美しい、狐の姿をした神。良彦の最初の依頼主で、なんだかんだあって現在は相棒のような関係。 御用は「日本の人の子が再び神祭りに目覚め、神に畏怖と敬いを持ってもらうように取り計らうこと」。 ……だったがそちらは受理されず、代わりに「抹茶パフェが食べたい」という内容が受理されてしまい、 本神は変更するよう嘆願したが聞き入れてもらえず、妥協した履行にしたってあんまりな扱いだと認めなかったので 再履行を求めて良彦と行動を共にしている。 神様らしい尊大な口調と態度で、他の神からもお堅いと言われる性格。ただしキレると乱暴な口調になる。 プライドが許さないので自身の俗っぽい部分は必死に否定する面倒でツンデレな部分も。 余程の事情がない限り触られるのを嫌い、引っ掻く。……「神は理不尽なものだ」と自分で語っておきながら 引っ掻くだけで済ませているあたり、やっぱりツンデ(ry 「神とはかくあるべき」と古代の偉容を語り誇りとするが、現代の神々は揃って見る影もなかったり、そもそも元々がアレだったりして、 人間である良彦以上に毎回言葉を失う程のショックを受けていて、本神も掲げる理想に自信を失いかけている。 「俗世には染まらない」と言って憚らないが、長い間社にいたので知識はあっても現代の文明(特に西洋のもの)には疎く、 毎日何かしらの新しい発見をしては目を輝かせている。本神は決して認めようとはしないが。 とりわけ甘いものが大好きで、二重の意味で喰らいつき様は半端ない。決して認めようとは(ry 御用人ということを抜きにしても敬意が足らない良彦とは度々衝突し、口喧嘩は絶えない。 とはいっても深刻な仲違いをしたことは一度もなく、今となってはじゃれ合いに近い。恐らく黄金からしてみれば真剣だろうが。 教養も礼儀もお粗末な良彦に呆れるばかりだが、時に思いやりや真っ直ぐな心から意外な行動を起こす部分に関して 興味を向けている。 誰よりも役目を重んじ、神らしく生きてきた為理屈でしか物事を考えられないと自負しており、人情に疎いことも自覚している。 そのような情動について、理解できないことでも自分なりに考えて助言することも。 ―“方位神”― 人間からは陰陽道の神とされる。文字通り“方位”を司り、人の振る舞いによって吉神、あるいは凶神の姿を取る。 紀元前の神代から存在する、“この世”と同時に生まれた古神。 そのため彼からすれば大半の神はひよっこ同然に見え、神からの知名度も高い。 どこであろうが方位や道が手に取るように分かるため、良彦からは「モフモフ狐ナビ」扱いされている節も。 藤波孝太郎 良彦の親友の神職。位は権禰宜(ごんねぎ)。 色々うだうだとしている良彦とは正反対に出世コースをひた走るエリート。 恵まれた容姿も手伝って外面は大変良く、周囲はもちろん、下手すると良彦家において良彦よりも立場が上。 神前に立てば誰よりも真摯な祈りを捧げる敬虔な人物だが、同時に「超」と書いて「スーパー」と読む現実主義者で、 「清貧? 何それ」と言わんばかりにお金の獲得には余念がない。それも単に神社の存続の為の必要悪だが それにしたってギラギラし過ぎている。自身が営業することも厭わずスポンサーの獲得に奔走する姿には 貧乏神ですら恐怖し、「恵比寿神がお似合いだ」と言わしめた。 黄金からは“清濁併せ飲む男”と称され、面白いとも言われているが、度が過ぎて呆れられてもいる。 親友で気の置けない仲の良彦には遠慮ない物言いをし、基本的に容赦がない。騙すこともやり込めることも日常茶飯事。 しかし落ちぶれた彼がほぼ唯一付き合いを続けていて、口は悪いながらも彼の将来を心配していること等から互いの友情が垣間見える。 順風満帆に成功を続ける彼に良彦は嫉妬混じりの羨望を向けているが、実は孝太郎も同じで、 「決めたれた道を走ってきただけ」と思っている彼からすれば自由にできる良彦を羨ましく思っている。 吉田穂乃香 孝太郎が奉職する大主神社の宮司の娘。 街を歩けば男なら思わず振り返ってしまう美しい容姿を持ち、水色のマフラーを口元を覆う高さで巻いている。 滅多に表情を変えない上に無口で、何の感情も見せない瞳を持つ。後述の境遇もあって近寄りがたい雰囲気があるが、 その容姿故に密かにファンが多いとか。 生まれつき神性や霊が視える『天眼』の持ち主。幼少の頃は自分の特異性を理解していなかったが、 現在では能力を公言することはない。 普通視えないものが視えてしまうため、ふと立ち止まったり虚空に目を向けたりする不可解な動作が原因で 周囲からは距離を置かれがちで、本人も眼を疎ましく思っていた。 しかし眼がなければ、この世ならざる美しい神々を視ることも叶わず、友達の泣沢女神と出会うこともなかったのは 事実なので複雑な思いを抱いている。 本来は不器用ながらも優しい性格で、泣沢女神の件が解決してからは少し表情が柔らかくなった。 一言大主 良彦の二番目の依頼主。明言されなかったので正確な御用は不明。眷属である 杏からは「一言大主様を助けて欲しい」と依頼された。 全盛期は眉目麗しい美大夫だったが、力が落ちた今は中学生並の体格になっている。 服装こそ水干だったりで昔の装いだが、不釣り合いな程でかいヘッドフォンをつけていたりゲーミングキーボードや マウスを駆使していたりその他文明な利器は部屋に溢れていたりで、部屋だけ見ると本当に中学生男子にしか見えない。 多分1番現世に適応している神。つーかどっから持ってきた。 過去引きこもりで現フリーターの良彦よりもゲームのやりこみは上。 気さくで初対面の良彦にタメ口を使われようが気にしない度量の大きい神。 というよりは、黄金に対して「これだから古いだけの神は嫌なんだよ」と包み隠さず言う辺り誰であれ態度を変えない性格。 引きこもっていた間は自分の伝承が微妙に不遇なことをぼやいたり、「どーせ人の子には僕の声は届かないし」と 臍を曲げていたりした。 人の子に肩入れする傾向にある国津神の中でも例外の部類に入る程人の子に優しく、 健気な願いには神託という形で助言を与えていた。 「人の子は弱い」「我よしの願いは褒められたものではないが、ここで想いを語るくらいはいいだろう」と述べ、 かつてのように言葉が届かなくなった今でも訪れた人の子を励ます言葉を送っている。 しがらみが解けてからはまた願いを聞いては励ます毎日を送っており、良彦とメールアドレス等を交換しているため、 黄金以外ではすぐに連絡が取れる数少ない神友達。 ―“一言大主”― かつて苛烈な武を我が物としていた雄略天皇を跪かせた名神。 『吾は雖悪事、而一言、雖善事、而一言、言離之神』との言葉通り、「善も悪も一言で決める」“言霊”の神様。 大神霊龍王/橋姫 良彦の三番目の依頼主。御用は「ボート部の撤退」。 当時はそれこそ瑞々しい絶世の美女であったが、今は四十代程の女性の外見。 額に桜の花びらのような痣がある。 気持よく寝ていたところを踏まれて痛い思いをしたといえ、力を失っていなかったら 犯人を殺していたかもしれない、という、ある意味神様らしい神様。 そもそも人通りの多い場所で、蛇の姿で寝ていた彼女にも責任はあるはずなのだが、 曰く「神とは理不尽なもの」。 本来の姿が龍だけあって這って動くことも多く、夜中に人の姿でにゅるにゅる不法入室したため、 危うくバットで殴打されそうになったり。道中では何度も車に轢かれそうになったらしい。 手厚く祀られ、敬われてはいたものの、神からすれば小さな人の子のことを意識したことはなく、 大百足の件で知り合った秀郷が初めて膝を突き合わせた人の子だった。 当時は薄々勘付いても、神の立場を考え、胸に抱いていた本心を打ち明けられずに、時が過ぎてしまう。 御用が終わり、吹っ切れた後は、人が勝手に名付けたものではない、本当の名前「お華」を良彦に教えた。 ―大神霊龍王/橋姫― 橋に住まう守護神にして龍神。色々と有名な“丑の刻参り”の元になった神様でもある。 大幅に力を失った今でも天候、水流を操ることが可能。 大年神 良彦の四番目の依頼主。 人間と見分けのつかない普通の外見の男性。 とにかくまあ陽気な性格で、神様らしい近寄りがたい威厳等はあまり感じられない。 しかしタメ口されることも多い黄金に、珍しく敬語を使い敬意を払うなどしっかりするところはしっかりしている。 須勢理毘売の腹違いの兄で、連絡は取り合っている模様。 ―大年神― 歳徳神とも言う。新年に福をもたらす年神。 門松や根引松を依代として現れる。 少彦名命 良彦の五番目の依頼主。御用は「心の芯までほどけるような湯に浸かりたい」。 わずか十センチ程の体長で、当時は本人曰く「それなりの美丈夫」だったが現在は老人の外見をしている。 大体スマートフォン程度の重さ。高齢の肉体と背丈故に、自身の社内を動き回るだけでも一苦労。 しかし動物の助力を取り付けられるようで、リアルねこバスやカラスヘリコプターで長距離を移動する。 ガガイモの葉で海を渡ったエピソードは半ば持ちネタのようで、引き合いに出しては笑いを取っている。 人のいい好々爺といった風の性格で、人の子である良彦にも優しい。 親しい仲間と過ごした日々を何よりも大切に想っていて、仲間の有難さを良彦や黄金に説く。 ―少彦名命― 国造りにあたり、大国主命に穀物・酒造等の様々な知識を授けて助けた博識の神。古事記にもそう書いてある。 一寸法師の元になった神でもある。 貧乏神/“窮鬼” 良彦の六番目の依頼主。御用は「次の家を捜すこと」。 力を失っていることを差し引いてもみすぼらしい身なりで、事前に貧乏神だと分かっていても、 良彦が確信を持てなかった。曰くただの浮浪者のおっさん。 「人間が裕福から貧乏に転落する際の落差」を糧とする貧乏神の性質は備えているものの、個神の趣味として、 「例え貧乏になろうともそこから希望を失わず這い上がろうと前を向いて進む姿を見る」のが好き。 ……なのだが、どうにも貧乏神にしては繊細で優し過ぎる性格をしており、例え豪邸を構える裕福な家庭であろうと 家族仲が悪くドロドロとしてる所は住んでおられず、他諸々の自身が心安らかに暮らせない理由は多い。 ドラマや小説の登場人物のように、極貧でも夢を追いかける、条件には見合った物件もあったのだが、 「わ、わしには、これ以上あの家を貧乏にすることなど、……できん!」と号泣する有り様。 それでいて御用人である良彦にもあまり迷惑はかけられないと遠慮する。 他神に対しても気が弱く、競争相手である疫病神には一応抗議するもののへっぴり腰。 本人も性格的に貧乏神に向いていないことは自覚しており、時流に沿って消えることも覚悟していた。 ―貧乏神― その名の通り、憑いた人物、家を貧乏にする神様。 一見人間からすれば害しかないような神様だが、貧乏になることで、 恵まれていることその幸せを教えてくれる有り難い神様。 泣沢女神 良彦の七番目の依頼主。御用は「井戸から出して欲しい」。 小学二年生程の幼女の姿。昔は儚げな美神であったそうな。 「泣くことが役目」ということもあってか、はたまた性格のせいか、非常に泣き虫で、 別に怒っていなくても少し語気が強いだけで涙をこぼす。小さい女の子の姿をしている上、 神様を泣かせるのはこれ以上なくバツが悪い。 そんなこんなで性格はびくびくしているものの、与えられたお役目を健気にこなし、それでも謙遜して 「他の神々と比べたら、全然人の子の役に立てなくて……」と泣き出す。健気という言葉しか出てこない。 臆病にも見えるが芯は強く、良彦と黄金の喧嘩(いつものじゃれ合い)を「喧嘩はやめてください!」と止める。 そして泣きそうになる。 お役目を果たす関係上、なかなか井戸から出られず、普段はか細く、物悲しくも美しい声で歌っている。 昔は少しなら外に出ることも出来たが、力が落ちた今となっては自力では無理で、 長年悲しみの涙に浸かり、悲しみを纏った現在は他力でも引き上げるのが困難な程重くなっている。 ひょんなことから穂乃香と知り合い、今では親友と呼び合う仲となっている。 ―泣沢女神― 人の子の悲しみを半分引き受け、代わりに泣く神様。 彼女が人の子のために泣いてくれるおかげで、人は早く立ち直れると言われている。 須勢理毘売 良彦の八番目の依頼主。御用は「夫を改心させて欲しい」。 見目麗しい美女ながら豪快かつ奔放で、神様なのに人の子に紛れて大いに飲み食いし、 道端で潰れて眠るなどヤケになったOLのようなこともしくさる。 かなり力は削がれているはずだが、任意で可視化したり不可視化したり、恐らく現存する中で最高の力を持つ夫を 蹴り飛ばしたり、若さをそこまで失っていないなど、あまり衰えを感じさせない。 笑う声は何物にも優る天上の調べ。 “そういうもの”なので仕方ないのは重々承知しているが、それでも嫉妬深い故に夫の女癖の悪さには 呆れ果てて辟易としている。 ―須勢理毘売― 須佐之男命が娘であり、大国主命の正妻。 豪快な性格ではあるが非常に機転が利き、 彼女の知恵がなければ大国主命は須佐之男命に殺されていただろう、と評される。 大国主命 家出した須勢理毘売を追って穂乃香に求婚し、結果的に良彦の元を訪れた。 現代風のカジュアルな格好をした優男で、ぱっと見は良彦も穂乃香も神様だとは分からなかった。 どこまでも陽気な性格で、浮気して妻を怒らせたばかりなのに穂乃香に迷わず求婚する困ったお神。 美人への求婚は礼儀で挨拶で、プロポーズは日常茶飯事にしてよくあること。キャバクラ、合コン、ガールズバーはお手の物。 極度の女好きのよくある傾向として男の良彦をぞんざいに扱うこともせず、神様相手とは到底思えない 不躾な態度もむしろ好意的に受け入れている。 現代においてもそこまで力を削がれてはいないらしく、怒りと共に熱風が起き白銀のプラズマが迸る。 須勢理毘売から人間なら死んでいた程の蹴りを喰らってもさしてダメージはない。 “繁栄”という性質を持っているため、女遊びについては悪びれはしても、やめる考えなど端からなく、 そういう性質なんだから仕方ないと思っている。 一方で妻のことは大切に思っており、良彦が手を出しているのではないかと疑った時は大人げなく怒った。 どの口が言うんだと思わないでもない。 ―大国主命― 日の本を築いた国造の神。 “繁栄”のために多くの妻を持つことから、縁結びの神ともされる。 大神 姿こそ現さないが、全てを見通すとされ、他の神々はほぼ例外なく敬っている。 “宣之言書”のシステムを管理しており、何らかの法則に従っているようにも見えるシステムも、 実際はこの御方の采配。 【用語解説】 『御用人』 神だけではどうしようもなくなった困り事を解決するために神々から選ばれる人間。 本来は大体神だけでどうにかなるが、力が落ちた神となるとそうもいかないので、必然的に 御用が発生する神は一定以上力を失った神となる。 選ばれた人間は後述の宣之言書から不可視の『緒』が首の後につながる。 また、御用の遂行のために普通は不可視の神の姿を視認出来るようになる。 従来ならば、代々神と関わりの深い家系の人間が選ばる。良彦の祖父はその行いと心によって例外に選ばれた。 わざわざ神々から選出された人間が断るとも思えないが、御用を遂行しないことにより神罰の類が下るとか、 そういったことがあるのかは不明。 『宣之言書』 “御用人”に託される、神々の名前が記された書。 御用が必要な神の名前が最初に薄く浮かび上がり、御用人が御用を聞き入れるとはっきり黒く記される。 そういうシステムのため元々は全て白紙だったと思われ、今でも三分の二程は白紙。 必ずしも神が本心を語るとは限らず、また必要な手助けを自覚しているかどうかもまばらなので、 本神が語った内容と、達成されるべき内容が一致していることはあまりない。 全ては大神の采配次第である。 『神』 神。我々が思い描く神と特に相違ない。 だが神とて人間と精神性はそう変わらないので、自分勝手で利己的な願いにはうんざりしていて好まれない。 人間を「人の子」と呼び、よほどの例外でない限りは単体として認識せず、多くの神々は 流れる滴や落ちる葉のような存在として捉えている。 信仰、ひいては神に感謝する気持ちを存在の糧とする。神祭りが激減し、信仰も教養も 失われつつある現代となっては多くの神々が力を失ってしまっている。 『天眼』 生まれながらにして神や精霊、霊魂などを視ることが出来る能力、あるいはその人物。 穂乃香の例からも分かるように、必ずしも本人にとって嬉しいものとは限らない。 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 大神霊龍王は瀬田の橋姫だから丑の刻参りの元になった神様じゃないよ。 -- 名無しさん (2016-07-30 21 10 20) 名前 コメント
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登録日:2021/03/21 Sun 14 08 31 更新日:2024/03/18 Mon 19 15 51NEW! 所要時間:約 11 分で読めます ▽タグ一覧 14年後の皆さん Wille エヴァンゲリヲン新劇場版 Q シン・エヴァンゲリオン劇場版 || レジスタンス ヱヴァンゲリヲン新劇場版 ヴィレ 反ネルフ組織 意志 組織 本項目はヱヴァンゲリヲン新劇場版 Qならびにシン・エヴァンゲリオン劇場版 ||のネタバレを含んでいます。 ネルフのエヴァはすべて殲滅します。 ネルフの?ここもネルフじゃないですか! 私達はヴィレ。ネルフ壊滅を目的とする組織です! ヴィレ(Wille)とは、テレビアニメ映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版 Q」に登場する組織である。 + 目次 【概要】 【経歴】 【関係者】 【保有戦力】 【余談】 【概要】 目的はネルフ、ネルフのエヴァの殲滅という「反ネルフ組織」である。 旧ネルフ関係者も数多く在籍しているが、中は民間人が多いらしく、その様相は軍事的組織とは程遠い「寄せ集め集団」に近い。 エヴァや飛行戦艦を強奪保有していたり浮かされた海軍艦を運用していたりするが、旗艦艦橋要員もやはり民間人出身が多いらしく初出撃はかなり戸惑っていた。 しかし支援は多いらしく、Q序盤の出撃準備ではあんな世界ながらも大量のヘリによる物資輸送を行っていた。上記の民間人の多さもそれに由来するものと思われる。 名前はドイツ語で「意志」を意味する語。イメージカラーはブルーで、隊員は左腕にバンダナを巻いている。 【経歴】 具体的にいつ結成されたかは不明。 サードインパクト後、ネルフ(ゲンドウや冬月)の人類補完計画に反対した職員や、民間人の中で技術や意思があるものが参加してできた組織と推測される。 前作より14年後、衛星軌道上の初号機強奪を目的とした「U.S.作戦」を開始、妨害が入るも成功を納めることで、主力艦「AAAヴンダー」を稼働可能状態へ持ち込む。 そしてシンジが収容されたあと、ネーメズィスシリーズによる攻撃を受けたり、シンジを強奪されたりするも、13号機の覚醒を探知して第3新東京市跡に再来、最終的にフォースインパクトの発動を阻止に一役買う。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」アバンではネルフユーロ支部があるパリへカチコミを行う。ネーミングが愚連隊である。 その後、第3村にて回復し搭乗の意思を見せたシンジを回収し、宇宙にてヴンダーの最終整備を行う。 生き残った人類の希望を担いながら、セカンド・インパクト跡地である旧南極跡地からL結界内部に突入、最後の戦いを挑む。 また、シンではヴィレがネルフからの離反勢力であることが明かされる。 サードインパクト阻止と加持リョウジがAAAヴンダーを奪還するのに合わせて決起、トレードマークの青バンダナを敵味方の識別とするなど、その生まれは血に塗れた内戦だったようである。 【関係者】 葛城ミサト 「碇シンジくん、あなたはもう……なにもしないで」 元ネルフ職員、戦術作戦部作戦局第一課所属。 現在はヴィレのリーダー兼、ヴンダーの艦長に就任している。 おしゃべりにやまない14年前とはうって変わって緘黙となり、垂らしていた後ろ髪はまとめて目つきも鋭くなった。そして「人命軽視」とアスカに言われるまでに任務遂行を第一とする。 ただしシンジのDSSチョーカーの起動スイッチを押せなかったり最後に不器用にシンジを案じていたりと、その根は変わりきれていない様子。 シン・エヴァンゲリオンでは 「いってらっしゃい」 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」では加持と子供をもうけていることが判明するが、親として接することができないと自覚したことから会わずに裏で守っている。 またQの彼女の冷徹さは、破終盤でシンジの背中を押したが故にニアサードインパクトを起こさせさらにその責を彼に押し付けてしまったことの後悔と反省からであり、内心ではやはりシンジの生還を喜んでいた。 アディショナルインパクト阻止の際にシンジが自ら初号機に乗ることを志願した際も彼を徹底的に支え、その後悔を晴らした。またヴンダーが戦闘により満身創痍・戦闘能力もほとんど失ったことで土壇場まで追いつめられるものの、残った艦の動力で新しい槍を作りそれをシンジへ届けるという無茶な作戦を完遂させる。シンジに槍を届けきった後、母親としての後悔を惜しみつつ艦の燃料も切れ壊れていく艦と運命を共にした。 赤木リツコ 「ミサト! DSSチョーカーを!」 元ネルフ職員、技術開発部技術局第一課所属。 現在は副長を務めている。 感情的になりやすいミサトと対照的に合理的な判断をして進言するという関係は14年後も変わらない。 旧ネルフメンバーでは一番容姿が変わっており、あの整っていた金髪がかなり短くなっている。 その変わりように衝撃を受けたアニヲタ諸兄も多いのでは。 シン・エヴァンゲリオンでは 「情動で動くとロクな目にあわない。あなたの経験ね」 「ミサトを甘やかすとろくな目にあわない。私の経験よ」 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」でも変わらずヴィレの大黒柱を担っている。 ヴンダーをボロボロにされインパクト阻止が絶望的になった際は彼女がついぞ見せなかった落胆を露わにしたが、それでもミサト発案によるヴンダーの槍作成の際は観測データのみという非常に無茶振りながらも見事に成し遂げた。 冬月のお膳立てがあったとはいえ、彼女なくして人類は残っていなかっただろう。 またミサトとの関係も非常にはっきり描かれており、冷徹な仮面を被ったミサトの内面を切り開くなど容赦がないのも、ある意味ミサトを支えるための厳しさでもあった。 日向マコト 青葉シゲル 元ネルフ職員。 現在は艦橋でオペレーター要員を務める。 ふたりとも老け込み始めており、ヒゲやモミアゲがやや伸びている。国家公務員じゃなくなったからそのへんの規定が緩くなったのか? 流石ネルフ上がりかオペレーター業務は手慣れたものだが、民間上がりの部下に対しては手を焼いている様子。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」の最終決戦では身だしなみを整えて拳をぶつけるなど、静かに戦いに挑んでいった。 また第十使徒襲来のその場にいたこともあり、ニアサーはただの結果であるとしてシンジの行動には理解を示している。 伊吹マヤ 元ネルフ職員、リツコの後輩。 現在はヴンダーの整備長を務める。 ネルフのオペレーター三人組の中で唯一現場に出ており、はぐれた形になっている。 こちらも部下に対して手を焼いているのか性格がかなりきつくなっている。 シンクロテスト後のシンジに労いの言葉をかけていた14年前のやさしい彼女はどこへやら。 特に若い男への軟弱さにあたりが強く、弱音を戒めるその強い言葉の中には自分への自己反省も含まれているかもしれない。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」でもパリの封印柱解析から終盤の槍作成の準備など、リツコに変わる現場担当をこなした。 ぶっつけ本番もノープロブレムなほどたくましく育っている。 作業中も口を動かしてしまう若手に相変わらず手を焼いているが、終盤では彼らの根性を見て柔らかな表情を見せた。 式波・アスカ・ラングレー 元ユーロネルフ大尉、現在はヴィレのエヴァ2号機パイロット。 破の3号機戦の後に隔離された後の詳細は不明ながら、眼帯をして見事復活をしている。 14年越しにサルベージされたシンジと出会うが、その姿は「エヴァの呪縛」により彼の記憶とほぼ年齢の差がない。 シンジに対するあたりが非常に強いが…… 詳細は個別記事へ 真希波・マリ・イラストリアス エヴァ8号機パイロット。 マイペースなのはあいも変わらずで、アスカとパイロット同士でコンビを組んでいる。 狙撃等サポートに徹する形が多く、アスカの2号機に対して支援物資を投下するなど、さすがは彼女を「姫」と呼ぶ扱い。 鼻歌をよく歌うがスピーカーで垂れ流すことも多々。ヴィレの面々は慣れたのかあきらめたのか作戦中であっても聞き流している。 詳細は個別記事へ 鈴原サクラ 鈴原トウジの妹。22歳。 シンジの担当医官として任につくも、その数刻後には担当患者が誘拐脱走されるということに。 登場時に銃を突きつけたり意味有りげな眼光を向けてくる中、唯一シンジに優しく接してくれる一方、彼がエヴァと関わることになるとその態度は厳しいものになる。 詳細は個別項目にて。 北上ミドリ 新キャラ。ピンク髪に太い唇、ナウい言葉全開な、いかにも若者といった女性オペレーター。 日向や青葉と比べると報告が不明瞭だったりするがそれでも与えられた役割はしっかりこなすタイプ。 だがQにおいて復活したシンジを目にしたオペレーターの中でも唯一舌打ちをするなど、シンジに対する憎悪が人一倍激しく見える。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」にてニアサードインパクトで家族を失っていることが明かされ、碇親子に強い恨みを抱いていた。 DSSチョーカーの起爆をできなかったミサトへの信頼をなくしているらしいが、一応指示には従った。 だが初号機に乗ろうとしたシンジにDSSチョーカーを取り付けた姿を見て彼女はついに行動を起こす。 多摩ヒデキ 新キャラ。地味系の若者オペレーター。 まだまだ業務に離れていないらしく、隔壁閉鎖にもマニュアルを読みながらなどたどたどしい姿を見せている。 また慎重派のようで、いきなりヴンダーの主機を稼働させようとしたときはリツコに続いて猛反対をした。 正直、普通の青年といったところ。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」でも彼の慎重さは健在。 再拘束したシンジへの無条件発砲を問題なく肯定しているなど、ある意味ニアサー世代の一般人代表といったところである。 高雄コウジ 新キャラ。ヴンダーの機関長を務める。 加持の知り合いらしく、ミサトの無茶な作戦にも呆れ半ば感心半ばに反対はしなかった。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」にて創設期のメンバーであることが明かされると同時に、設立経緯が彼の口から語られる。ミサトの無茶な支持を信頼するのも、加持が信頼した相手だからというもの。 かつて倒れた同志たちの分も含めた、凄まじい数の青バンダナを所持している。 ミサト・リツコの不在時には場のまとめ役になっている。 長良スミレ 新キャラ。操舵を担当する褐色のお姉さん。 生真面目な女性で、ミサトの無茶な操舵指示にもしっかり応えていた。 未経験ながらも重力制御を訓練もなしに使いこなすツワモノでもある。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」では無人艦艇やエヴァの操演もお手の物となった。 最終局面では脱出を拒んで艦内に残ろうとする責任感の強さを見せた。 ・KREDIT(クレーディト) 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」にてその存在が明かされたヴィレの下部組織で、サードインパクトを生き延びた一般市民に対する支援を行っている。 「支給だけではなく実際に交流の手助けもしてくれている」など(少なくとも第3村の)人々には好意的に受け入れられているようだ。 実際、彼らの支援物資やL結界の浄化研究、封印柱などは地上においてなくてはならない存在となっている。 最終決戦前にミサトの指示にてヴィレより独立することになった。 加持リョウジ(2世) ミサトと加持の子供で、クレーディトにて地上の浄化研究の作業をしている。 ミサトの意向により両親とは一切会っておらず、知りもしていない。 両親譲りの性格か、しっかりしていつつもシンジ相手にもすぐ仲良くなれている。 【保有戦力】 AAAヴンダー 「神殺し」の名を持つ「希望の方舟」。「AAA」は「Autonomous Assault Ark(自律攻撃型方舟)」の略、「ヴンダー」はドイツ語で「Wunder」と綴り「奇跡」を意味する。 飛行戦艦かつフォルムが有機的であるという時点で従来の船とは一線を画すが、エヴァでないにもかかわらずLCL(*1)によるエントリーシステム(*2)やATフィールドの発生が可能など、エヴァ由来と思われる技術が多数盛り込まれている。 初号機を主動力としているがこれはあくまで人為的なものらしく、リツコがアダムスの器を「本来の主」と呼んでいたことから、もともとはネルフ所有かどこからか持ち出したものと考えられる。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」にて、元々戦闘艦などではなく、生物の種の保存を目的とした「方舟」の名そのものである用途を目的としてネルフから加持が強奪したものであった。本来の名は「NHG Buße」(読みは「ブーセ」、意味は「贖罪」)。 しかしサードインパクトを止めた加持の死をきっかけに、人類の存続のために、しかし復讐というわけではなく、ミサトはこれを戦闘艦として運用していくことにしたのだった。 また、その整備場所として宇宙に整備拠点を保持していることが明らかになる。 方舟とにての役割は放棄したわけではなく、最終決戦の直前には種を保存しているブロックを全て宇宙へ自律飛行させて放出した。その外見は蒲公英の綿毛さながらであり文字通りの「種」となっている。(ラストシーンでは無事地上に着陸している機体も確認できる。) 正規にNERVで完成させられた他のNHGシリーズと比べると武装で大きく劣っているが、主機の性能はヴンダーが上回っており、映像を見る限り飛行速度は勝っている模様。 エヴァンゲリオン改2号機 アスカの愛機。 破で大破したものを修繕して改修して使い続けている。 腕をユニットごとに組み替えることで従来より多様に対応できるようになった。 詳細は個別項目にて エヴァンゲリオン8号機 マリの専用機。メインカラーはピンク色。 4つ目の2号機よりも多い目をもち、一際既存のエヴァと離れた外見を持つ。 「的を狙えば外さない」と言わんばかりに狙撃等の射撃武器での戦闘が多い。 エヴァンゲリオン初号機 ヴンダーの主機。破より14年後に宇宙を漂っていたところをヴィレに強奪された。 海軍艦船 ヴンダーが本格的に稼働できるまでの主戦力であったであろう戦闘艦群。 日米露、戦艦から空母まであらゆる艦船が揃っており、通常であれば非常に巨大な戦力ともなるはずだが、エヴァやネーメズィスシリーズにはなかなか歯が立たない悲しい戦力であった。 空母に艦載機は殆ど見えず、もっぱら封印柱や物資輸送艦として利用されているようだ。 また軍艦ではないが、浮きドックやハンガーも随伴していた。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」では無人化が進んでいる。特に戦闘艦。 それを良いことに、改修を施された後パリでは盾にされるわ決戦ではミサイルにされるわと色んな意味で不遇な扱い活躍をしている。 補給艦としての空母は健在であり、第3村とのやり取りにも一役買っている―――かと思いきや、やっぱり最後には新2号機と8号機それぞれに使い捨てのフライングアーマーとなっていた。 シーローンチデキャップル複胴式可潜艦 Qの前日譚「EVANGELION 3.0(-120min)」にて登場したロケット発射台型の艦船。 エヴァを大気圏外に運ぶための超大型ロケットを運ぶというトンデモメカである。 字面からだと潜航可能そうに感じるが、その実は「原子力潜水艦を並べてイカダにして発射台を載せている」という代物。 8号機搭載の「マイティK(キング)」と改2号機搭載の「マイティQ(クイーン)」が登場する。 大質量軌道投入用大型複合式ロケット「ドッペルゲンガー2号機」 エヴァを大気圏に打ち上げるための超大型ロケット。 離脱用のロケットの先にはQ冒頭で登場したPod-2'、Pod-8がついている。 離脱用だけでもPodと同じ長さであり、よくここまで運んできたなと思える大きさである。 歩兵装備 艦内警備や地上戦を担当していると思われる兵士たちの装備。 シンジの護送を担当した兵士たちはH&K XM8を携帯している。戦自のG11といい迷銃好きだな。 また拳銃は広く職員に支給されている模様。 航空機 物資輸送用のヘリコプターを大量に保有、運用している姿を見ることができる。 シン・エヴァンゲリオンでは 第3村の周辺においてヴィレマークがペイントされた国連VTOL機が朽ちているのが確認できることから、かつてはそれなりに鹵獲機を保持していたと推測される。 使徒封印用呪詛柱(結界展開型) 呪詛文様と呼ばれる奇怪な模様が所狭しに詰められた黒い柱。初出としては破のベタニアベースやネルフ本部の一部などあるが、Qにおいても輸送艦がこれを運び込む姿が見られる。 シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」では「封印柱」あるいは「相補性L結界浄化無効装置」という名前で登場する。どちらともコア化した大地をもとに戻す能力をもっているらしく、また結界としても機能するようで第3村の生命線にもなっている。 また、アスカの左目の中にも封印柱が埋め込まれていた。 DSSチョーカー シンジの首に取り付けられた首輪型の機器。エヴァ搭乗時に覚醒を感知、あるいは権限保持者の一存で装着者を爆殺、その覚醒を未然に防ぐことを目的としている。 首輪には呪詛文様が描かれている。 元来はカヲルに対して作ったというが…… シン・エヴァンゲリオンでは 「シン・エヴァンゲリオン劇場版 ||」にて、この機器はシンジのみでなくアスカもつけていることが明かされる。覚醒リスクということが知れ渡った以上、おそらくエヴァパイロット全てに装着されてるのだろう。 【余談】 公式グッズ ネルフマークと同様バリエーションとして多数出ている。 独自のものとしては「ヴィレのバンダナ」があり、ムビチケの特典として監督のサイン入りが販売された。 その他、鈴原サクラ着用の帽子やロゴワッペン、半身ジャケットなどもあり、簡易ななりきりなら十分に揃えられる。 ただしリツコさんのジャケットに関してはでておらず、M-51ジャケットのWILLE仕様か無地物での代用になるか。 内綿がないため氷の張る場所での使用はおすすめできない。 シンエヴァのアスカはヴィレ用M-51ジャケットの肩ヴィレマークを青くすれば比較的それっぽくなるだろう。残る問題は少女になってパンイチになる必要があること。 シンエヴァのアスカコスチュームは公式からパーカーが発売され、揃えるのに苦労はなくなった。 依然として少女になってパンイチになる必要がある問題は残っているが。 私達はアニヲタ!項目の追記・修正を目的とする組織です! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 第一印象は鬼殺隊の柱並みに第一印象最悪だったけど、シンではだいぶ好きになってた -- 名無しさん (2021-03-21 15 04 53) 破に出て来た海洋研究所も関係してんのかね?赤い海を元に戻す、種の保存、加持さんが関わってることとか。 -- 名無しさん (2021-03-21 15 48 45) 空白の14年を小説でも資料集でもいいから詳しく書いてほしい -- 名無しさん (2021-03-21 16 16 29) ヴィレ反対派のネルフ職員とかいたんだろうか、冬月とゲンドウ以外で -- 名無しさん (2021-03-21 17 44 26) 敵味方識別の為にスカーフを巻いてたらしいからネルフに残った職員も結構いたんじゃないかなぁ、ゲンドウ冬月の目的は流石に知らんだろうけど -- 名無しさん (2021-03-21 19 11 36) 残ったところでシンの頃にはみんな死んでるだろうしなぁ -- 名無しさん (2021-03-21 21 36 44) 14年後のネルフには冬月とゲンドウ以外にはシキナミシリーズとアヤナミシリーズ(あとカヲル)くらいしか残ってなさそうだったなぁ -- 名無しさん (2021-03-21 21 50 48) 恋愛要素がオミットされた日向くん!そもそも大した個性のないロン毛!出番はない!! -- 名無しさん (2021-03-21 22 07 17) ネルフ幹部とかならゼーレに忠誠誓ってたり人類補完計画に賛同しているのも多いんじゃないかな。 -- 名無しさん (2021-03-21 22 47 42) Qでの対応を見てると、殴って心折ったとは言えきちんと正面からぶつかりその後けじめもつけて親友になったトウジと、電話越しとは言え絶交宣言はして直接話さずに行くことも形だけでも謝罪していた漫画版ケンスケの人間性の良さが神懸かって見える。 -- 名無しさん (2021-03-21 23 01 09) 日向くんが「ニアサーは結果だ。彼の意志じゃない、」って言ってくれたのは結構嬉しかった。ミサトも口に出さないだけでそう思っていたんだろうけど。 -- 名無しさん (2021-03-22 20 17 07) IMAXシアターで上映されたエヴァQ 3.333で14年封印されてたセントラルドグマ地下でリリスの骸のそばに墜落しているVTOLヘリにヴィレマーク追加されてて、あれが加持さんが乗ったものだとシンで答え合わせされる形になっていたりする -- 名無しさん (2021-04-01 04 05 47)
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二つ名:竜騎の勇者 名前:クラウン・マーシャル (竜)т`_т)<どうも。竜騎っす 詳細: 貴族の馬の世話で生計を立てていた青年。女神から自分の心を竜として具現化する力を与えられた。 髪と同じ色のタテガミと、同じ色の目を持つ竜は本人の心の状態によって強さが増減する #4月だしふぁぼの分だけうちの勇者魔王に自己紹介させる 【基礎情報】 本名:クラウン・マーシャル 年齢:勇者選定時は22、実年齢60弱 身長:180cm 体重:82kg 呼称:オレ/君/~さん、~くんorちゃん(自分を慕う年下に対して) 本来は荒めの口調だが、平民ながら貴族と長く関わるうちに砕けた丁寧語(~っす)になった。 フリーランス系勇者。猛々しい風貌に似合わぬ快活で友好的な人柄と確かな実力で着実に認知されている。 争い事は大がつくほど嫌いだが、命を守るための戦いだけは自ら身を挺して驚異に立ち向かう。 天真爛漫かつ自由奔放、それでいて他者の苦痛に寄り添える優しい性格。好奇心や感受性が人一倍強い。普段の思考は短絡的だが、何よりも他者の救援を最優先とし、邪智暴虐をまかり通させまいと奮闘する。 嘘を疑わない純粋さとは裏腹に、とりわけ悪意に対して極めて鋭敏な洞察力を持ち、それに基づいた正義感は偏見や体裁などを一切寄せ付けないほど芯が強い。この洞察力で魔物とすら多少の意思疎通を可能としているが、対人関係ではむしろ理性の弱さが仇となりやすい。 救いようのない命まで背負い込んで必要以上に自戒するところにも精神的な未熟さが垣間見え、最たる例として母を水難事故に巻き込んで失ったことで患った水へのトラウマが挙げられる。 科学技術などの視覚で理解しにくい論理的なものを正しく解釈するのも苦手(例:騎士の勇者を改造人間だと誤認している)。 世界の真実、即ちゲームについては親交の深い魔王から教わっている。今は純粋に観光を楽しんでいる最中であるため、双方無事な形での終焉を望みつつも明確な策は練っていない。 女神は基本的に信用しておらず、大志を実現できる力を貰ったことだけは感謝している。 また、勇者の優遇措置や蘇生能力に頼った行動は過去の自分を無下にするに等しいと考え、殆ど頼らない。そのため挨拶で通り名より本名を優先したり、確実に死ぬ想定での捨て身の行動は踏み留まったりする。 【経歴】 戦争を繰り返す国・ネロートリアの貧困地帯出身。一人っ子で、父は物心つく前に他界している。幼くして自身よりも不自由であろう戦地の人達のことを想える、母に似て心優しい少年だった。 しかし10歳のある嵐の日、誤って川に転落し、自身を救おうとした母を差し置いて生還してしまう。後追い自殺を考えるほど追い込まれるが、母の最期の優しさに応えるために辛うじて持ち堪えた。 全身が浸かる量の水を酷く恐れる症状は当然この頃生じたものだが、それともう一つ、孤独から救われたい一心で周囲の人間の思想まで無意識に洞察してしまう癖も芽生えている。 やがてバーバネロ家という中級貴族に厩の管理役として雇用という形で保護される。 クラウンが身分制度にうるさい者達に叩かれないよう案じたため特別な契約こそ交わさなかったが、バーバネロ家からの内実の待遇は家族同然のものであり、クラウンも徐々に荒んだ心を預けるようになった。 15の頃には自立的に生活できる程度まで回復し、さらに貴族家庭の恵まれた学習環境で多くの情報に触れるうちに好奇心が育ち、より活気に満ちた青年に成長する。 負の遺産である洞察力も、私欲にまみれた上級国民共を見知ったことで善悪を見定める力として覚醒する。 尽きない探求心と輝かしい精神を掲げて世界を駆ける勇者の原型はこうして完成した。 勇者となって数十年経った今も活動内容は一貫している。 無害な魔王とは既に多くの友好関係を築いており、行きつけとなった魔界もある一方で、極めて危険な魔王との一騎打ちを制した経験や、逆に勇者の非道な行動から魔族を護ったことまである。 年老いたバーバネロ家との交流も続いており、土産を届ける、英気を養う等の理由で数か月に一度は帰省する。 援助も謝礼も基本的に貰わないため収入は乏しいが、物々交換や野宿のノウハウで上手く工面している。 〈ネロートリアについて〉 政体:外見的立憲君主制(上流階級と軍の力がやや強い) 農業に適さない寒冷地にて、代わりに発達した鉄鋼業を元に強大な軍事力を得た自治州を起源とし、国土の拡大を目的に度々諸外国と武力衝突を起こす軍事国家。全体的に女神への信仰心は薄い。 勇者に対しても強大な戦力として称える程度であり、愛国心の弱い竜騎の勇者とは連携できていない。 上層部の腐敗が進んでおり、戦争で得た利益が戦士や平民に還元されることは殆ど無かったが、竜騎の勇者やバーバネロ家の影響で次第に改善されつつあり、他国との衝突頻度も減った。 とりわけ竜騎との親交が深い勇者を擁する国とは正常に交易を行っている。 〈バーバネロ家について〉 家族構成:両親と娘二人(姉妹共にクラウンより年下)、次女の婿と孫二人 階級:中級→上級 ネロートリアでは数少ない平和思想の貴族。家族揃って身分に頓着しない気さくな性格で、クラウン以外の貧困層に対しても幾度も財産を捻出している。 旦那はかつて弱い魔族程度なら追い払うほどの腕利きの戦士だったが、国の上層部が多くの命の犠牲の上で富をせしめている現状を嘆き、平穏な世界が実現するのを望んでいた。そんな折に同じく戦争に心を痛める貴族の女性と結ばれ、戦士を引退して貴族の当主となった。 クラウンが勇者に選ばれると、旦那は彼に戦士として最低限の剣術を教え、特注の剣を持たせた上で彼が聖界と魔界の間の平和を取り持つ者となることを願って送り出した。 今では勇者を育てた家として上級貴族に格上げされ、老齢の夫婦に代わって娘達が戦争の鎮静化を訴えている。 余談だが、長女が結婚していないのは勇者となる前のクラウンに恋をしかけた経験があるため。 【戦闘】 竜騎の勇者は与えられた超常的能力以外に明確な戦闘手段を持たない特殊能力特化型である。その能力も純粋な破壊力こそ凄まじいが万能でも絶対的な超性能でもなく、相手との相性差が露骨に出やすい。 とはいえ、平和主義的な彼に戦闘を強いた上で確実に殺せる魔王と三十数年間出会っていない、というのは運と実力の表れと言えるか。 交渉の余地もない悪逆非道な敵に対してのみ戦闘の意思を見せる。発揮できる力は士気の高まりに連動する。 〈基本性能〉 肉体強化の恩恵はなく、魔力への適応力のみ極端に強化され、貯蔵庫と形容できるほどの魔力蓄積量を誇る。ただし完全に能力維持の為だけの魔力であり、武器を扱う才能も魔術の才能も全く持っていない。体格は中々立派だし辛うじて剣術は少し習得できたため、人間としては弱くない程度か。 飛竜剣 バーバネロ旦那が知り合いの刀匠に作らせクラウンに託した、翼と爪の意匠を施された特注の剣。特殊な力は無いが、数打ちの刀剣程度なら一方的に叩き折り、溶けない程度の熱なら全く痛まない頑強さを誇る。能力と併用されることを考慮した性能なので、クラウンの剣術が優れていれば一線級の活躍をしたかもしれない。 〈授かった能力〉 「精神の竜」と呼ばれる、自分の心の状態を具現化した竜を召喚する。 本質的には膨大な気力と魔力に神の力を付与して疑似生命を創造する能力で、主の気力や魔力の性質を姿や戦闘力として投影しており、強い意志や感情を瞬時に挙動に反映する。 健康状態も主の精神状態と連動するため、疑似生命側が傷つくと主の精神は摩耗していき、逆に精神状態が安定しているうちは疑似生命側も丈夫な肉体になる。 それでいて全身が具現化した時は明確な自我まで生じ、自発的な行動により危険を回避してくれる。 ただし燃費は途轍もなく悪く、魔力が制御できない問題以外の素質は完璧だったクラウンでさえ具現化を連日維持するには魔力の増強が不可欠だった。 発動中の彼に魔力に脆弱な人が迂闊に近寄ると大量に余らせた魔力を浴びて体調を崩す。 クラウンを投影したそれは竜の姿をしている。体長は調節可能で概ね10~20m程度、羽毛を有しやや身軽な飛行形態と肉体強度を重視した戦闘形態の2つを基本形とする。 強く念じて全く別の姿に変える、必要最低限の部位だけを実体化して身に纏う等の応用は効くが、「四肢と翼を持つ典型的な一体の竜」という固定概念を逸脱することはできない。 クラウンが潜在的に持つ炎と風の属性が竜の中で併合し、破壊力に長けた爆破攻撃として発揮でき、高熱や烈風を遮断する加護の力を自身やその周囲に展開しているので自爆することもない。 能力の性質上、単純な戦意とは異なる情動に呼応して破壊とは違う方向性の力が開花する可能性も秘めている。 実は竜が発する力は紛れもなく邪神側の力であり、勇者や魔王と言えども相反する二柱の力が共存している例は極めて少ない。聡明な魔王が指摘するまで本人も気づかないほど全く違和感もない。 主な弱点 視覚と直感に頼りがち、素の戦闘力が低い、能力の要である精神面に不安を抱えている 〈冷厳状態〉 戦闘中に精神攻撃を受け、感情を殺すことで発狂を防いだ場合に防衛本能が暴走してしまう特殊形態。凍てついた心は本来の力とは真逆の青く輝く冷気を生み出し、脅威を排除するまで一切容赦のない攻撃を見舞い続ける。発言内容は冷淡だが会話はでき、そこで狂気に勝るほどの熱情が湧くと暴れることなく正常化する。 制御不能な過剰防衛を起こすこの形態を本人は嫌っているが、完全に克服するには精神的な成長が不可欠となるだろう。 〈邪葬の輝炎〉 企画「望の魔王奪還ゲーム」にて獲得。 死してなお現世に在らんとする執念の灯火を優しく包む、黄金に煌めく慈愛の炎。 正しき力が怨嗟を灰塵に帰し、遺恨の鎖を断ち切り、魂魄を往くべき地へ送る。 現世に巣食う遺恨の塊と相対し、正真正銘の「救う力」を渇望した竜騎が、己の心と向き合い、己の心に違わぬ「正しい選択」に到達したことで開花した力。 怨念や呪いなど、感情の域を超えて力を持った邪心のみを焼き払う。正確には熱攻撃ではなく、竜騎の精神力で邪心を中和する精神系の技である。対象の邪心が強い程勢いを増すが、その炎は常に瞬くように燃え、激しさを感じさせない。竜の姿もまた、主の穏やかな闘志を反映し、やや細身な体に眩いタテガミを有する。 邪心に囚われた肉体や魂を傷つけず、邪心のみを完全に無に帰すのがこの力の神髄であり、炎に洗われ遺恨の縛りから解放された魂は神の下に戻り、新たな命を紡ぐ。 〈覚醒〉 今戦わねば甚大な被害をもたらす巨悪と対峙し、不退の覚悟を決した時に自然発動。精神状態が平常時に戻るか、肉体・精神共に限界に達すると解除。 強大な女神の力で魔力を体内に収めたまま竜の力を生み出すことで、己の体を竜人化する。 角や鱗、鉤爪が生じ、髪は炎の如く揺らめく、マントが翼状に変化し自然発火する等の外見的変化がある。 無意識にかかっていた竜の肉体性能や精神的出力のリミッターが外れて完全な本気となり、それを別の体に投影する行程も無いため、相乗効果で戦闘能力は段違いになる。自己強化という仕様に伴う感覚の発達や強靭な精神力により、弱点も軒並み克服している。 魔力についても、体表面で留まっているおかげで肉体硬化や爆炎の精密操作くらいの運用はでき、ジェット噴射で器用に高速移動しながら爆炎も織り交ぜた格闘戦に持ち込む戦い方を得意とする。 ただし、度が過ぎた肉体強化であるがゆえに解除後の反動も度が過ぎている。 症状は戦闘時の負傷とは別の熱傷や筋断裂、治癒時の老化、能力のクールタイム等。戦闘の激しさにもよるが、最大出力1分につき無能化は5時間程度、老化は50日程度。 死に至るほどの反動だった場合、蘇生はできるが肉体や能力に後遺症が残る可能性もある。 ~持ち技~ 焔武竜蹄 魔力硬化した手足に爆炎を圧縮して赤熱させ、殴打の衝撃で高火力の爆破を引き起こす攻撃法。指を開き爪を立てた構えが名前の由来で、五点同時爆破で爆風を重複させることでより大きな威力に期待できる。 徹甲竜榴爪 焔武竜蹄が直撃した際の重複爆風は確かに強力だが、単発型ゆえに競り合いなると弱い欠点がある。こちらは貫手の構えで、全身からのジェット噴射で超加速して貫通力を維持しつつ突撃する大技。 装焔飛竜剣 焔武竜蹄の応用で、飛竜剣を振るう瞬間に刃に爆炎を伝わせ、高熱の飛ぶ斬撃を放つ遠近両用技。瞬間的に徹甲竜爪にも劣らぬ突破力を誇るものの、流石の飛竜剣でも負荷が大きく連発はできない。 【オリジナル魔王】 〈流(る)の魔王〉 本名:クヴェレ 聖界の東の地で神獣とされる「龍」に近い姿を持つ竜族の魔王。人に擬態しても隠し切れない立派な角を持つ。 自分の周囲にあるありとあらゆる「流れ」を支配する、という使い方次第では非常に危険な能力を有するが、当の本人は自然な流れに身を任せる生活を好み、行き先の見えない変化をする聖界を気に入り居ついている。 実はかつて溺れたクラウンを助けたのは人に扮したクヴェレである。能力の使用を自制した為に止められる洪水を放置してクラウンの母を救助しそびれてしまい、彼を深く傷つけたことを酷く後悔していたが、今では無事和解し旅の話に花を咲かせる親友となっている。 〈穿(せん)の魔王〉 本名:ケイル (先代本名:ガロン) 重厚かつ鋭利な鎧で身を纏う好戦的な魔王。甲殻類のような真の姿を持つが、中身の軟体部のみが本体である。魔力を超硬物質に変換できる「昌化」の能力で外殻を形成でき、肉弾戦と魔法の両方に適性がある。 先代魔王は力に固執しすぎた結果粗暴になり、力の誇示を目的に聖界で執拗に暴れ始めたため、クラウンの逆鱗に触れて討伐された。この時クラウンが力を吸収しなかったため、無事に継承者が誕生した。 現魔王は先代と違い、ゲームに勝ち残るべく強い世界を築こうと意気込んでおり、住人からの信頼も厚い。クラウンの現在の力を確かめたがっているが、本来戦いが嫌いなクラウンには拒否され続けている。 【他キャラとの関係性(確定分のみ)】 随時募集中。 読心の勇者 言動に裏表のない竜騎は心が読める彼女からすれば最も信頼できる人間と言える。竜騎のような視力、想像力、精神力の強い者に対してならば彼女の能力が視覚的に作用できることを実証し、より関係が強固になった。出身地が隣国であること、竜騎にとって頻繁に連絡を取る数少ない相手であることから、彼女からの同伴要請を優先することも多い。 囚獄の勇者 読心さんと同じくセレニタ出身。読心さんについていく形で大牢獄の世界に赴き、彼の本体と対面している。同じく人助けを本業としているが精神の熟練度は完敗しており、陣取りゲームへの向き合い方などについて交わした言葉は少ないながらも少なからぬ影響を受けた。分身とは未対面。 従僕の勇者 知り合って短いが、自分自身のための生き方を見出せずにいる様子の彼を気にかけていた。彼が自分探しと贖罪の旅に出たことを知ると、自身が彼の支えとなるべく決意を新たにした。能力の相性は良いが従僕くん側に魔力適正がないため、共闘はおろか共に過ごすことも難しいという問題を抱えている。 空帝の勇者 空飛ぶ国に偶然辿り着いて以来気に入っており、時々入国許可も無視して遊びに行く。空帝さんからしたらとんだ邪魔者である。 若葉の勇者 空飛ぶ国で出会い、剣だけで生きてきた彼に「遊び」を教える。時折空帝さんを困らせること以外では好感を持たれるようになった。剣の腕前は到底適わないが勇者としての彼からの評価は高い。 軍師の勇者 一度だけ正式に来訪した。竜騎の洞察力の話を少し知っていたが故に技術の漏洩を恐れた軍師さんは早急な立ち退きを要求するも、好奇心に負けて意地を張ろうとしたのが軍師さんの癪に障ってしまい出禁を食らっている。何度か殺意マシマシの攻撃を受けているが自業自得なので嫌いではない。 機士の勇者 軍師さんの下で動く存在ではあるが、機士さん自身の意志で竜騎を攻撃することはなく、逆に竜騎の豊かな感情に関心がある様子。ちなみに竜騎は洞察力はあっても彼らの国の技術を盗めるほどの理解力は無く、機士さんが人間ではないことも気付いていない。 書館の勇者 竜騎は情報源として図書館を訪れ、一方で書館くんは竜騎から体験談を聞いては文章に起こすことを新たな楽しみとしており、一定の相利関係がある。聞くばかりではなく外の世界に踏み出してくれることを期待していたのだが、逆に満足して好奇心が薄れているかもしれないと危惧している。 術具の勇者 始めは偶然の出会いだが、魔力が豊富なのに魔法が使えない竜騎に適した魔法具を売りつけ、あわよくば製品の質を上げる参考にしようと躍起になり、一方的に動向を追われている。術具さんが覚醒により魂を削って無限に魔力を生み出している一方、竜騎は純粋な貯蔵能力だけで無限だと思わせる魔力を持つという対比が存在する。 天の魔王 長旅中に休息しようとしたところ、あと一歩で竜の翼をへし折られるかという執拗な襲撃に遭った。彼が飛べるものに激しく憎悪しているのは概ね理解し、急に大量虐殺をするタイプの魔王ではないだろうと思いつつも凶暴性に関しては恐れている。 竜の魔王 竜騎の能力的に無視できない存在で、純粋に友達でもある。いつか自身も頭が上がらない強大な力を持つ竜になるのかなと期待しており、勇者や魔王を見返したいという竜さんを全力応援中。自由に飛べるようになったら一緒に空中散歩しような。 駿の魔王 昔は馬の世話をしていたため、美しい馬の下半身を持つ駿さんに一目惚れ。彼に認められるために魔力が働かない中で何とか竜を召喚してみせ(といっても超小型)、大層気に入られるようになった。以後頻繁に遊びに付き合っているが、駿さんの側近達には妬かれている。 視の魔王 視さん側は千里眼により、竜騎の存在を一方的に視認していた。いざ自分の世界に現れた竜騎が魔族達と親しげな様子を視て安全を確認し、招き入れた。お互いに自分の視てきたものを語り合える貴重な存在、かつより面白いものを探す競争相手だと考えており、それなりに良好な関係を保っている。 泡の魔王 疲労が重なった時の竜騎を最も気楽に受け入れてくれる魔王(と世界)。種族を問わず友好的で乱暴者が嫌いなところまで似通っており、お互いに困ったら頼りにしてもよいという共通認識を持っている。 喜の魔王 最近の彼女は頻繁に大図書館に出没するため、よく遭遇する。偶然獣の姿を見たことがあるが、あの竜騎が恐れるはずもなく、それを以て「いい人」だと判断された模様。「邪葬の輝炎」の任意発動に取り組んでいた時期でもあったため、練習も兼ねて「世界一派手で安全な火遊び」と称して戯れる。 金の魔王 旅先で財宝を得た後、街外れで放浪中の金ちゃんに金品をせがまれ、ただの物欲であることを汲み取った上で善意で殆ど譲ってしまい、滅茶苦茶懐かれたのがきっかけ。お互いに黄金色の炎を放ち合って親睦を深めた。彼女の方から竜騎に追随することが多く、竜騎の判断で金を持て余す連中相手に盗ませて庶民に還元する事業を任されている。
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夕暮れの街。 人通りも少なく、薄汚れ、寂れた雰囲気の路地裏に、一台の車が滑り込む。 先生「・・・着いたわ」 辰哉「ここが・・・」 友「ボロ・・・」 祈美「このボロい事務所がどうしたの?」 友「・・・ていうかね、なんであんたが付いてきてるわけ」 祈「それは私と狼子さんがスールの契りを交わしているからだ・・・!」 友「スール?」 祈「あれ?ズーラだったっけ?」 刹那「・・・」 辰「・・・お前ら置いてくぞ」 細く薄暗い階段を上っていくと、その先には場末の探偵事務所を思わせる扉。 アルミ造りの扉は上半分がすりガラスになっており、向こう側の様子がうっすら見える。 しかし、薄暗い室内には多くの物が乱雑に積み上げられている様子が少し伺える程度で、 こちらからは人の気配らしいものは認められなかった。 辰「この部屋の中に・・・?」 先「・・・そうよ」 刹「・・・」 先「・・・」 友「・・・あれ?入らないんですか?」 先「・・・ごめん、ここから先はあなたたちだけで行って頂戴」 辰「ええ!?な、なんでですか?先生の知り合いじゃないんですか?」 先「わ・・・悪いけど、苦手なのよ、あの人のこと・・・ね、あの人に報酬のことを言われたら、これを渡して頂戴」 そう言って先生は、左手に下げていたジュラルミンケースを辰哉に渡してくる。 辰「え?は、はあ・・・な!な、なんですか!?これ!?」 先「いいものよ・・・じゃ、私は車で待ってるから」 辰「え、ちょっ・・・えええ!?」 先生は、背を向けたまま軽く手を上げると、そそくさと階段を下りていってしまった。 辰「・・・行ってしまった」 刹「・・・」 祈「どうすんの?」 友「・・・まあ、先生も、あたしたちだけで何とかしなさいってことを言いたかったんだと思う」 辰「そうかな」 友「うん。狼子はあたし達の友達なわけだし、あたし達だけで出来る限りするべきだよ。そうでしょ?」 辰「・・・そうだな。行こうか」 辰哉は、事務所の扉に手をかけた。 辰「!?」 友「!!?」 祈「おお」 刹「!」 開かれた扉の向こうを目にしたとき、四人は驚愕した。 場末の事務所を思わせる外観とは裏腹に、扉の向こうに広がっていたのは西洋、 中世の貴族の豪邸を思わせる豪奢な部屋だった。 すりガラス越しに見えた乱雑につまれた荷物は全く見当たず、 赤い絨毯の敷き詰められた部屋の隅には、西洋の甲冑や大きな壺などの豪華な調度品がバランスよく並べられていた。 辰「なんだ・・・これ・・・」 友「・・・こんな広い部屋が収まるほど大きかったっけ?この建物・・・」 祈「おー、なんかこざっぱりしてるー」 刹「・・・」 四人が立ち尽くしていると、部屋の奥、茶色い木の扉が開く。 呆然とする四人の前に現れたのは、絵画の世界から飛び出したようなメイド服姿の少女だった。 メイド「ようこそおいでくださいました。主人がお待ちしております。どうぞこちらへ」 祈「メwwwイwwwドwwwさwwwんwww萌wwwえwww」 辰「・・・黙れ」 少女に伴われ、五人で異様に長い廊下を進んでいくと、一つの大きな扉に差し掛かる。 少女は扉の前で立ち止まり、右手で軽くノックした。 メ「・・・ご主人様。お客様がお見えです」 部屋の中からは返事が無い。 少女は一つため息をつくと、重そうな扉を開く。 少女に促され、四人は部屋の中へ恐る恐る踏み込んだ。 部屋の中は、これまで通ってきた廊下の様子とは裏腹に、 まるでたった今嵐が通り過ぎて行ったかのような様相を呈していた。 本棚からあふれ出した本の山が所狭しと並べられ、 その隙間隙間にぬいぐるみや袋菓子、描きかけの絵画や画材など、様々なもので埋め尽くされていた。 左右には本棚が並び、そして壁には豪華な額縁に納められた絵がいくつも飾られていた。 そのほとんどがこちらを向いた人物の全身画で、その他は何故か何も描かれていない、空白の絵だった。 そして部屋の奥、一際うずたかく積み上げられた本の山に見え隠れする頭。 メ「・・・ご主人様。お客様です」 ?「―――あー、ありがとう。後は大丈夫だからもう戻っていいよ」 山の向こうから、声が聞こえる。 トーンの高い、少年のような声だった。 メ「・・・では、失礼致します」 そう言って少女は背を向け、ゆっくりと壁の絵画・・・あの空白の絵に向かって歩いていく。 辰「・・・へ?」 その後起こった出来事に、四人はまたもや絶句し、呆然と立ち尽くす。 少女の姿が霧のように薄くなったかと思うと、その身体は絵画に吸い込まれ、 後には、壁からこちらへ向かって微笑む、メイド服姿の少女の絵だけが残った。 辰「!!?!??!?!」 友「??!!??!!?!?!???」 祈「ちょwwwwwwwwww」 刹「・・・」 ?「まあこっちにおいでよ。話は聞いてるから」 横からかけられた声にびくりとし、辰哉は恐る恐る振り返る。 本の山からは、相変わらず頭のてっぺんだけが覗いており、その横から生えたほっそりした手首がこちらを促していた。 それに従い、四人は本の山を迂回して、その反対側へ向かう。 ?「まあ楽にしてよ。その辺に座ったら?」 辰「・・・ん?」 祈「・・・?」 本の山を背に、ゆったりとした椅子に腰掛けて待っていたのは、不思議な人物だった。 小柄で、少女のようにほっそりした身体に黒のスラックス、白いシャツにグレーのベスト、赤いネクタイが緩く締められ、 耳にかかる柔らかな髪、中性的な顔立ちに透き通るような白い肌、猫を思わせる大きな瞳がこちらを面白そうに見つめていた。 ?「散らかってて悪いね。大仕事が終わったばかりでさ」 辰「・・・?(この人、どこかで見たような・・・)」 祈「・・・あ。ちょwwwwwww」 辰哉の横から覗き込んだ祈美は、何かに気づくと突然笑い始める。 祈「リwwwリwwwカwwwルwwwのwwwひwwwとwwwだwwwwwwww」 刹「!」 辰「ちょっ・・・マジで!!!?あのテレビに出てる人!?!!?」 四人が色めきたった途端、空気を伝わってくる冷たいオーラ。 気付いて振り返ると、先ほどまで微笑を浮かべていたはずの彼(?)からは一切の表情が消え、 強張った細い肩は空気全体を揺るがさんとするごとく震わされていた。 リリカルの人「・・・リリカル言うな・・・!!!」 刹「・・・」 辰「え?ちょっ、ええっ!?」 友「な、なにこれ?」 突然、机の上に置かれたコーヒーカップが音を立て始める。 振動は机上の資料、そして机そのもの、そして小さな震えは徐々に部屋全体に波及していく。 揺れる本棚から小さな置物が落ち、それに続くように本がどさどさと落ち始める。 風も無いのに書類が強風に吹き散らされるように舞い上がり、壁の絵画がドカドカと床に落ち始める。 ・・・しかし、そのとき部屋に響く、状況に不釣合いなほど冷静な声。 メ「―――――ご主人様、熱い緑茶と芋羊かんでございます」 リリカル(ry「うにゅ!?芋羊かん♪芋羊かん♪♪」 怒りに肩を震えさせていた彼はどこへやら、 いつの間にか横に立っていたメイド服の少女から差し出された茶と菓子を手に歌いながら小躍りする彼。 更に滅茶苦茶になった部屋の中で、四人は身を寄せ合って呆然と佇んでいた。 メ「―――――ご主人様はリリカルという単語を嫌います。以後、お気を付けを」 辰「は、はい・・・」 リリカ(ry「取り乱してすまなかったね。で、話のさわりは一応聞いてはいるけど、改めて詳しいところ、聞かせてもらえるかな?」 居住まいを正し、改めて問いかけてきた彼に、辰哉は詳しい事情を説明した。 彼は興味深そうに、しかし真剣な表情で黙って聞いていた。 リ(ry「・・・なるほど。よくわかった」 そう言って彼が指を鳴らすと、三秒と間をおかずに老執事が部屋に入ってきて、 彼の傍らにホワイトボードをセッティングする。 老執事(多分セバスチャン)が出て行くと、彼は立ち上がり、ホワイトボードの傍らに立つ。 四人は座るように促されたが、椅子など無く、 仕方なく床に積み上げられた資料の山に腰掛けた。 それを確認すると、彼はオホンとひとつ咳払いをする。 リ「ところでキミ、『魂』を信じる?」 辰「え?ま、まあ、どちらかと言えば、信じているかもしれません」 リ「ではキミ、魂に性別はあると思う?」 友「え?えーと・・・無いんじゃないでしょうか、男に生まれ変わったり女に生まれ変わったりするらしいし」 リ「今のところ有力視されている説からすると、その通りだね。ではキミ、その人物の性別を定義するのはなんだと思う?」 祈「マ○コ」 リ「そう、肉体だね」 祈「・・・」 リ「しかし、人の身体には、肉体以外に性別を二次的に定義する部分がある。キミ、それはなんだと思う?」 刹「!黙れ。殺すぞ」 リ「・・・」 辰「す、すみません・・・その・・・心、ですか?」 リ「その通り。肉体の認識を通して、心に定着させる。心、では心として認識されるものは、一体何処にあると思う?」 辰「それは・・・?」 リ「霊体」 彼はホワイトボードに人型を描き、その内側に二重丸を描く。 そして、内側の丸に『魂』と書き込み、外側の丸には霊体と書き込んだ。 リ「肉体は、感覚を通して霊体に外的経験を伝え、霊体を通してその経験を魂の中に表象として現す。 魂の内部で表象は様々な感情に結びつき、内的経験として霊体に蓄積される」 祈「先生!意味がよくわかりません!」 リ「結論だけ言えば、肉体と魂の思い出は最終的に霊体が全部覚えるわけ」 辰・友「「な、なるほど・・・」」 刹「・・・」 リ「そしてその過程において、霊体の中に外的経験と内的経験に基づいた心が生まれる。故に、心は肉体に左右される」 辰「ふむ・・・」 リ「しかし・・・認識された心を無視する現象・・・女体化が肉体に現れたら、そのとき霊体はどうなるのか。 無理矢理に認識を改めて、女としての心に作り変えられる者もいる。しかし、そうでない場合もある。 そのとき、心はどのような結論を出すか」 友「・・・男の心のまま、生きていく?」 リ「それがひとつ。もうひとつは・・・霊体を分割する。必要の無い心を追いやるために」 リ「キミ、幽霊というものを見たことはある?」 辰「俺はないです。狼子は見えるらしいけど」 リ「幽霊は、霊体の一部もしくは全部が、肉体の死、またはその他の要因で剥離したものだと考えられている。 故に、多くの場合記憶と意志はあっても、情動を司る魂を持たず、感情が無い、又は希薄である場合が多い」 友「だから怪談に出て来る霊は同じ恨み言ばかり繰り返すわけですね」 リ「そゆこと。しかし、稀に感情豊かな幽霊もいる。これには二つのパターンがあって、 一つは、たまたまその人物の内的経験のバリエーションが豊富で、魂無しでもそれらを再構成することで心を再現できている場合。 もうひとつは単純に、その霊体が魂を持っている、または霊体の持ち主が生きていて、魂との繋がりが途切れていない場合」 彼は、ホワイトボードに描かれた人型の外にもう一つの丸を描くと、『魂』から線を引いて糸電話のように繋いだ。 リ「前者の場合は、単なる不成霊。 現世に留まる理由を作ってる霊体を何らかの方法で外してやればすぐに成仏するから、死んで間もなければあまり問題が無い。 そして後者が、いわゆる幽体離脱、または生霊。こっちがなかなか性質が悪いらしい。何せ本体が別のところにあるわけだから、 普通の方法で祓うことは難しい。それこそ霊体に直接的なダメージを与えたり、本体を直接袋にしたりしなければ・・・」 メ「―――――ご主人様、物言いが物騒です」 辰「・・・」 友「・・・」 リ「オ、オホン。失礼。生霊の場合、本人がなんらかの意志を持って意識的に飛ばしたり、何かに宿らせたりする場合もあるけど、 ほとんどは無意識で行われる場合なんだ。それで、さっき説明した、女体化などの影響で霊体が分割された人は、 強い精神的な衝撃などによってタガが外れると、肉体に収められていた二つの霊体のうち片方を飛び出させてしまい、 その結果魂との糸を繋げたまま、身体の外に片一方の霊体知らずにぶら下げて生活していることがある。 それが、ドッペルゲンガーなどと呼ばれる現象になって現れる場合がある」 辰「そ、それが、あの狼子・・・?」 リ「それは、少し違う。彼、もしくは彼女は、明確に肉体を持って、物理的に存在していただろう? 単なる霊体なら、何かに触れたり、誰かに触れられたりすることはありえない。ところで・・・」 辰「・・・は、はい?」 リ「キミ、オーラの泉は見てる?」 辰「い、いえ・・・」 リ「そうか。じゃあ、かめはめ波やどどん波を練習した経験は?」 祈「この前やってた!!」 辰「え、ちょってめっ、ふざけんな!!」 祈「一文字一文字滅茶苦茶溜めて連呼してたwwwww」 辰「おらああああああああああああああああああああああああ当てるぞかめはめ波あああああああああああああああああああ」 リ「そうか。でもまあ、それはあながち無駄な努力ではない」 辰・祈「「へ?」」 リ「かめはめ波やどどん波が、人間に必ずしも撃てないわけではない。その可能性を生んでいるものが・・・」 彼は再びペンを取り、ホワイトボードの人型の中、二重丸の外に、それを包み込むようにもう一つの人型を描く。 リ「形成体。生命体。エーテル体。気。オーラなどと呼ばれる、生命と肉体の形成を司るもの」 友「オーラ・・・」 リ「気は、肉体という物質の崩壊を抑えるとともに、意識的に飛ばせば手を触れずにものを動かすなんてことも出来る。 気というのは、霊の領域から物理法則に手を伸ばすひとつの手段なんだ」 四人の脳裏に、この部屋の先ほどの有様が思い出される。 リ「話は戻って、肉体から剥離した霊体は多少の気を受け継ぎ、それをまとって存在している。 故に、物が倒れたり風が吹いたりなどの、物理的な現象を伴った霊現象を起こせる場合がある。 同じように女体化などの影響で身体の外にぶら下げられた霊体は、肉体の中に存在していたこと、 そして肉体に残った霊体と魂を共有していることで同じく気をまとって存在している。 そして、本体が生きているために、単体の死人の霊体よりも気の勢いが強い。 また、本体が本来持っている気が強いほど、霊体に渡される気の勢いは強くなる。気が強いだけ、その霊体は物質に近くなる」 彼は、『魂』と糸で繋いだ丸を包み込むように、また人型を描いた。 リ「こうして、触れえるドッペルゲンガーが完成する」 辰「・・・」 友「・・・」 リ「・・・しかし、気は無尽蔵ではない。人が普通に生きていても気を失って死ぬように、 魂と細い糸で繋がっているだけのドッペルゲンガーが、肉体の加護も無しに物質的なものとして存在し続けることは出来ない。 そして、魂とのつながりも、いつか途切れる。魂との繋がりが途切れれば霊体は気を失い、擬似的肉体は消滅する」 辰「だから・・・あいつから影が・・・」 辰哉の心に、あの日夕日の中去っていく、影の無い狼子が思い出された。 リ「・・・肉体無しで物質として存在するためには多くの気を消費するんだ。そろそろ、尽きてもいい頃かもしれない。 さて、魂を持っている不浄霊なら、魂と結合し続ける限り、霊体として消滅することはありえない。 しかし、霊体だけの存在なら、一部のパターンを除いて、電池が切れるようにいつかは霊体としての消滅を迎える」 辰「だったら!やっぱり、あいつは・・・」 彼は静かにホワイトボードの前を離れ、本に埋もれるように置かれた彼の椅子に戻る。 リ「魂は分割されない。・・・キミの恋人が二人に分かれたとき、二人が全く正反対の性格になったということは、 恐らく魂の糸は完全に途切れたと思っていいだろう。糸で繋がる限り、双方は魂を共有しているために心で影響し合うわけだから」 辰「元に・・・元に戻す方法は、無いんですか」 リ「一つだけ、ある」 辰「それは・・・?」 リ「ユニゾン」 そう言って、彼は何かを確認するようにゆっくりと目を閉じ、そしてまたゆっくりと猫のような目を開いた。 リ「ユニゾン。二人の心、気の流れを同調させる。強く同じことを思わせる。強く同じ言葉を口にさせる。 そうすることで、また霊体はひとつになり、二人は元の一人に戻るだろう」 友「同じことを思わせ・・・」 刹「・・・言わせる・・・」 リ「・・・だけどね」 彼は、辰哉の方に顔を寄せ、静かな声で問いかける。 リ「・・・彼らが二人に分かれたということは、少なからず、それを彼女自身が望んでいたということを忘れてはいけないよ」 辰「・・・どういう意味ですか」 リ「・・・分割した霊体の消滅を、過去の自分との決別と考える人もいるんだ。 彼女にとって、元に戻ることは本当に幸せなことだと、キミは本当に自信を持って言えるのかな?」 辰「でも・・・それではあまりに・・・!!」 リ「その気持ちは、エゴじゃない?本当に彼女のためを思って言っている言葉?彼女が選んだ道よりも彼女を幸せにする自信はある?」 辰「・・・」 リ「・・・彼もすぐに消えてしまうわけじゃない。今日一日は、自分の心と向き合ってごらん。 それからこれは、ウt・・・ゲフッ!ゲフフン!・・・僕から、キミへのはなむけ」 彼は、白い封筒に納められた何かを辰哉に差し出した。 辰「これは・・・?」 リ「中身は彼女を元に戻すための呪文さ。 ただしこれは、自分たちでは何の手の施しようも無くなるまで絶対に開けてはならないよ。 開けてしまったら、ただの紙切れだからね」 辰「・・・」 辰哉は黙って手の上の封筒を見つめた。 リ「・・・さて!今回のウt・・・ゲッフ!ゲフッフフン!・・・僕の仕事は一応以上ということになるけど、 報酬の方は用意してもらえたのかな?」 辰「え?あ、ああ、それなら、これを渡すようにと・・・」 辰哉は、傍らに置いたジュラルミンケースを彼の方へ押しやる。 リ「ほうほう・・・大袈裟な入れ物に入れちゃって、なんだろうねえ・・・(ガサゴソ)・・・ふおっ!!?」 辰「え?ど、どうしました?」 リ「ゲフッ!ゲフッフン!・・・な、なんでもないよ。報酬は、確かに受取った。どうもありがとう。さ、送って差し上げて」 メ「―――――かしこまりました。では皆様、こちらへ」 四人が少女に伴われて部屋を出るとき、「芋羊かん♪芋羊かん♪芋羊かんが、いっちねんぶん♪♪」 ・・・という背後からの歌声を聞いた気がしたのは、やはり気のせいだろうか。 辰「今日は、お世話になりました」 メ「―――――木村様、お帰りになられる前に、くれぐれも覚えておいていただきたいことがございます」 辰「は、はい」 メ「今皆様がお話したあの方は、リリカルの人という人物ではございません」 辰「は、はあ・・・」 メ「くれぐれも、お間違いの無いよう」 辰「は、はい・・・」 メ「・・・ボソッ・・・正体がバレては、魔法少女の魅力というものはそのほとんどが失われるものでございますから・・・」 辰「・・・え?」 メ「こちらのお話でございます。では、お気をつけて」 刹「・・・違うんだ・・・」 彼は、リリカルの人ではありません。 辰「狼子の望み・・・か」 俺は本当に、あいつの心を理解していたのだろうか。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく。
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あんな明らかに凶器な爪送る『友達』の医者も結構キてるような気がする -- 名無しさん (2013-07-16 14 34 22) この人が良い人に見える俺はいったい -- 名無しさん (2013-09-24 21 32 48) ↑見た目(カギ爪除く)や言動はパッと見穏やかだからな……。だからこそ直ぐ分かる狂人より性質が悪い -- 名無しさん (2013-09-24 21 49 50) 吐き気を催す邪悪という単語が最もよく似合うキャラの一人だな。上のコメにもあるがパッと見は穏やかな善人なのがタチが悪い。 -- 名無しさん (2013-09-24 21 53 52) 最終話の計画頓挫直後の顔は胸がスッとする程「ザマァw」と言う言葉がぴったり。 -- 名無しさん (2013-10-07 12 04 26) キチガイキャラはたくさん居てもコイツほど本気で頭がイカれてると感じたのはいない -- 名無しさん (2013-11-21 20 33 39) "友達の"医師「お前を殺すために作った義手だ!掴んだらもう放さんぞ!」 カギ爪「私のために…!ありがとう…ありがとう…!」 みたいな感じだったりしてな -- 名無しさん (2013-11-21 20 46 37) レイに計画潰されかけた直後の様子だと計画復旧できなかったらジョシュア殺されてたかもしれんなぁ… -- 名無しさん (2013-11-25 14 57 13) 哀れな末路は有名。 -- 名無しさん (2014-01-17 15 17 28) 未登場の頃はすごい外道だと予想していたのに初登場した時のいい人さに驚いた。実際はそれを超えたナニカだったが・・・ -- 名無しさん (2014-03-29 14 20 03) 元ネタはポルポト+プッチ神父かな? -- 名無しさん (2014-03-29 14 23 55) お前の夢は・・・終わった! -- 名無しさん (2014-05-02 01 37 54) 個人的には理想のラスボスの一人だ。他に無いタイプの人だがww -- 名無しさん (2014-07-07 19 39 17) 今まで見てきたアニメ作品のラスボスの中で最も怖かった人 -- 名無しさん (2014-08-24 00 48 25) 序文が本当にこのキャラを表してる 書いた人センスあるわ -- 名無しさん (2014-08-24 01 05 13) こいつの手に負えない所は、自分の怒りや憎しみが知覚できなくなった事を『無くなった』と誤解してること。だからダメだと思った奴は無意識に殺す。でも本人はその根底に気づけていない -- 名無しさん (2014-08-28 08 28 01) ここまでイカれた善意の塊となると、悪意そのもののシックスと引き合わせたらどうなっちゃうんだろうw -- 名無しさん (2014-11-01 18 49 47) 小説版に『友達』の医師とのエピソードがあったな。『友達』を庇った時に腕失くして、んでその『友達』に貰ったのがあのカギ爪の腕なんだとか。『友達』がコイツに影響されてじわじわ狂ってくのがスゲー怖かった…… -- 名無しさん (2014-11-01 18 52 58) ↑2 あらゆる手段を使ってこいつの悪意を煽って遊ぶんじゃね? あいつ程悪い意味で人間を知り尽くしてる奴はいないし、うっかり計画の内容が知られたら原作の比じゃないくらいに鉤爪ザマァwwwな目に合うのは間違いない。 -- 名無しさん (2014-12-14 19 03 03) どちらももし現実に居たら関わる事自体が不幸と言えるタイプだけど内面の悍ましさはカギ爪の男の方があるな。悪人よりも狂人の差と言うか。 -- 名無しさん (2015-01-24 14 23 52) 実子に関してはあくまでも延命のためでしかないんだよな・・・哀れなウウウ -- 名無しさん (2015-05-05 02 21 24) なおこいつの計画、理論がばがばすぎてそもそも成功する目があるのかも分からん状態だったらしい -- 名無しさん (2015-07-04 16 06 22) ドジっ子すぎてヴァン丈社長のおなかにカギ爪ぶっさしてたねw -- 名無しさん (2015-07-04 16 27 28) 心の広さ(?)だけは尊敬する -- 名無しさん (2015-07-06 23 52 26) コイツがダンガンロンパの世界に放り込まれるSS面白かったw -- 名無しさん (2015-07-08 20 09 21) ボスが老人 渋いおっさんと精悍な騎士が早々にやられて、残る幹部は女子供っていう組織は斬新だったな そして今考えるとリアルにカルト教団みたいな構成で怖い… -- 名無しさん (2015-10-07 13 02 21) ↑5 そういうところも狂人ぽさがあるな。できるかどうか冷静に考えるんじゃなくて、「何があってもやる」というドス黒いクレバスめいた意志しかないという。 -- 名無しさん (2015-11-07 09 57 19) ヒョー -- 名無しさん (2015-11-07 17 47 01) ぶっちゃけると、自分の中で世界が完結しちゃってる狭い価値観しか持てない人間だよな -- 名無しさん (2015-11-11 17 22 13) ※11、元ネタは特定のキャラとかじゃなくてまんまカルト宗教の教祖だよ 脚本の人(ラノベ作家)が昔カルトにひどい目に合わされたって何かの本に書いてた -- 名無しさん (2015-11-11 18 10 53) 考えさせられるな -- 名無しさん (2015-11-19 21 23 38) 上手く説明出来ないけど、人としての器の底がすっぽ抜けちゃってる人。それ故に色んな人を受け入れられるんだけれど、底が無いので結局、受け入れた人を全て取りこぼす。 -- 名無しさん (2015-12-03 18 10 12) 自分がとどめを刺される段になっても何の恐れも動揺もなく「君を愛している」とか言う辺り筋金入りの狂人だよな。多分心から言ってるんだろうし…。 -- 名無しさん (2015-12-03 18 20 50) 傍から見ただけでは信頼される要素がゼロな割に多数の信者を抱えてる辺りもカルト教団らしい -- 名無しさん (2016-01-06 23 34 23) 個人的には言われるほどジジイには見えない。・・・目とガタイのせいかなあ・・・? -- 名無しさん (2016-01-07 00 10 04) じじい悪でいえば吉良浮かぶけど吉良は無様に隠れていたひよっこだもんな。 -- 名無しさん (2016-05-24 18 36 07) 全ジャンル含めてもトップクラスのキチガイですな。最後ヴァンに命乞いせず笑顔で友達になりましょう。言ったゾクッとしたもんな -- 名無しさん (2016-05-24 18 54 25) こいつに作中でただ一度愕然とした顔をさせたレイ兄さんの勇姿よ。 -- 名無しさん (2016-08-24 08 10 33) この人は人類を愛しているけど人を愛したことはなっかったんだろうな -- 名無しさん (2016-11-20 21 31 02) 次にスパロボ参戦したら、クロスアンジュのエンブリヲとクロスオーバーがあって欲しいかも。(ある意味平和主義者と言う点で)似た者同士、馬が合うかも知れない。 -- 名無しさん (2017-03-29 20 40 08) あるアニメでは、彼によく似た思想を持ちながら、ヴァン達のような愛すべきバカがいなかったがために勝ち逃げ同然の末路を迎えた奴がいるらしい。 -- 名無しさん (2017-04-06 23 15 47) 最後笑顔で友達になりましょうなんて言ってたっけ…?愛していますとは言ってたけど -- 名無しさん (2017-04-25 18 36 26) ↑2なにそれきになる -- 名無しさん (2017-04-25 20 57 18) 少しは阿片おじさんを見習ってほしい -- 名無しさん (2017-04-25 21 09 13) この人がデート回で最後に呟いた「貴方たちとはもっと早く会うべきだった」ってどういう意味なんだ -- 名無しさん (2017-06-13 01 32 05) もっと早く会っていればお友達になれたってことじゃない? -- 名無しさん (2017-06-19 03 02 19) ↑(2016-05-24 18 54 25) 何が怖いかといって、あの発言、強がりでも逃避でもない掛け値なしの本気なんだよな。精神構造がエイリアン並みに異質なんだと感じる。 -- 名無しさん (2017-09-09 00 02 41) カギ爪は怒りが無いんじゃなくて認識できないだから、つい殺しちゃったんじゃなくて、単にムカついたから殺してるだけなんだよね。旧オリジナル7も、ヴァンとエレナも、反乱起こした組織の仲間も。ただ、自分でそれを理解することが出来ない。決戦時ヴァンに計画潰された時も、歓喜の中でヴァンを友達に入れると言いつつ明らかに殺そうとしてる -- 名無しさん (2018-03-14 14 27 37) スパロボ学園ではバースデイがキングジェイダーと並ぶ超高性能機なので通信環境で顔を見る機会が多かった -- 名無しさん (2018-05-03 19 11 03) 金田一の高遠がまだまともに見えてくるレベルの異常者 -- 名無しさん (2018-05-13 11 21 01) 一番怖かったのは「ありがとう、 -- 名無しさん (2018-05-13 13 05 49) 極限まで論理的に突き詰めていったヒーローという物の末路 -- 名無しさん (2019-03-25 17 26 43) スパロボTでも自軍部隊の面々から「物の怪」「怪物 -- 名無しさん (2019-04-01 14 27 29) ↑続き 「怪物」「怖い」」等と心底ドン引きされた御仁だったな… -- 名無しさん (2019-04-01 14 28 54) スパロボやってて、何となくわかった。こいつ、人間を「自分の夢の中の住人」という感じに認識しているんだ。だから同じ目線なのに自分の意見を押し通せると思っているんだよ。 -- 名無しさん (2019-04-15 03 31 37) スパロボT→久々に原作視聴で当時以上に気色悪さを感じたけど、一方でどうしようもなく敵としては魅力的だから本当にすごいわ -- 名無しさん (2019-04-16 06 38 05) ファサリナや研究員に理解示したり、根底が狂った思考回路なんだけど理性的で感情を察する良識はあって人当たりが良いから、明確に仇や悪と認識してないと欠点に意識が向かず絆されちゃうのはある -- 名無しさん (2019-04-17 18 27 28) ウェンディと初めて会った時も、一見良いこと言ってるようで、よく聞くとメチャクチャなこと言ってるんだよな。ただ、穏やかな物腰と雰囲気でそう感じさせ辛い。組織の奴らもこんな奴自身のカリスマに魅了されてったんだと分かる良い演出なんだ。狂人というより、人知を超えたおぞましい怪物というのがしっくりくる -- 名無しさん (2019-04-17 22 28 59) スパロボのバースデイの戦闘演出見ててふと思ったが、カットインでカギ爪かちゃかちゃ(?)させてるのを彼なりの怒りの発露なのかなぁとか思ってしまった。 -- 名無しさん (2019-04-18 00 31 44) せやで。原作でレイに一回夢を壊された直後とか心ここに在らずって感じでカチカチさせてたし、「怒り」の感情表現が出来ないだけでその情動のエネルギーは腹の中で煮えたぎってるからその状態で下手に近付いたら八つ当たり同然のうっかりで殺されかねない -- 名無しさん (2019-04-18 00 39 29) やっぱりスパロボでも色んな人から得体の知れないやつと怖がられているね -- 名無しさん (2019-04-27 12 31 12) その割に、やたら忠誠心の高い奴らがいるというのも不気味さの一つだろうな。 -- 名無しさん (2019-04-27 13 18 23) 荒らしコメントを削除 -- 名無しさん (2019-05-25 22 25 48) 長文すまそw上のコメントみたいにポルポトみたいな性格してるよな -- 名無しさん (2019-05-25 22 42 16) 何気にフルカウンター持ちのため、攻撃すると確実にカギ爪の男に先制を取られることになる。…ちなみにヴァンのエースボーナスは「気力が170以上の時、反撃時の与ダメージが1.4倍になる」つまり… -- 名無しさん (2019-06-26 21 16 29) ↑残念ながら相手のフルカウンターに対してはヴァンのエースボーナスは発動はしない これもこれで原作再現な気がするが -- 名無しさん (2019-09-07 01 22 33) デザインはナマケモノ(動物)をベースにしてるよね -- 名無しさん (2020-07-12 22 51 50) ニコニコ一挙放送で見直した、 -- 名無し (2020-09-22 01 05 02) ↑続き こいつほど悲しい過去持ちながら、殺さなきゃだめだと思ったラスボスはいない。 -- 名無し (2020-09-22 01 07 10) 純地球人の癖に異星人からもその精神性を恐れられる男。やっぱりロボットアニメの悪役でもある意味別格な存在と扱われてるなあ -- 名無しさん (2020-09-22 01 08 54) ドラゴンボールで生き返るくら大丈夫理論(ただし成功する確率は小数点以下) -- 名無しさん (2020-11-05 20 00 30) ヴァンに真っ二つにされる直前はどんな顔してたんだろ。 -- 名無しさん (2021-09-19 04 24 45) サーシェスひろしやゴステロと比べたら、3人の内誰が「隣人であってほしく無い人」になるだろうね。 -- 名無しさん (2021-10-03 04 19 10) カギ爪は馬鹿ではなく真正のキチガイ。 -- 名無しさん (2021-10-03 04 20 41) 考察見るとCCCのキアラみたいな奴だな。自分だけが人間と思い、他の人間を己の快楽を満たすためのバ〇ブ程度にしか思ってないくせに愛してるなんてほざいた女 -- 名無しさん (2021-10-03 06 24 03) 違反コメントを削除しました。 -- 名無しさん (2021-10-05 09 07 18) ↑2 こいつは周りの人間を馬鹿にはしてないだろう。話せばわかってくれる良い人ばかりだと思ってるよ。最後の最後でやっと「バカ」の存在に気付いたくらいだし。 -- 名無しさん (2021-10-05 09 24 49) C.C.C.(クー・クライング・クルー)というギアス卿団関係者。まさかスパロボ30でギアス勢に関与する敵になろうとは。 -- 名無しさん (2021-11-09 01 46 54) イデってカギ爪と同じ思考回路をしてたんだろうね。 -- 名無しさん (2021-11-09 03 15 52) スパロボ30でコードギアスのC.C.がC.C.C.(シースリー?)と呼んだ時は驚いた。終盤で更に驚愕の真実が明らかになるが。まさかマスターアジアの系譜とは -- 名無しさん (2021-11-12 20 40 43) スパロボだと毎回宇宙人扱いされるけど、原作でも地球という別の星からやってきたエイリアンなので原作通りだった -- 名無しさん (2021-11-12 20 58 40) 同監督つながりに加えて頭でっかちの老人ともパイプありましたよねこの人…30のすさんだ雰囲気の世界観でイキイキしとる -- 名無しさん (2021-11-12 21 07 19) 原作=地球という惑星から来た、T=アストラギウス銀河からやってきた、30=ハイジャス人 作品毎に出自違うの草。 -- 名無しさん (2021-11-12 23 13 46) 要するにコイツのやってるコトって、世界を道連れにした現実逃避なんだよな……。現実離れするのも当然だ、現実見てないし見る気もないんだから。あらゆる意味で夢しか見てないんだよ、このじーさん。 -- 名無しさん (2021-11-13 01 01 09) ↑イデの発動も同じようなもんだね。イデオンの世界でヴァンがいたら間違いなくイデの発動を阻止しただろう。 -- 名無しさん (2021-12-07 06 02 00) イデの場合、最後にチャンス上げたけどそれもダメだったんで諦めただけ。最初から独善の塊であるこいつとは全然違うだろ -- 名無しさん (2021-12-18 21 53 53) ↑チャンスを人類に与えたと言いながら結局それをぶち壊しにするシチュをねん出してるじゃん。カララとドバの対面も拒否したのは後者だけなのに、喧嘩両成敗の形で力を開放するのは矛盾してる。コスモ達にソロシップを捨てさせてくれなかったのも「力の開放」と言う結論ありきだったからじゃないの。 -- 名無しさん (2021-12-24 05 34 04) ↑そういうのは調停者・監督官気取りがよく使う手だね。戦わなければ生き残れない状況を作って「はい、やっぱり人間は暴力で黙らすのが一番」って結論に持っていく。で、分かり合えそうな雰囲気だったらわざとぶっ壊して「試練」と宣う。全部てめぇのせいだろって牙を剥けば「世界のためなのに、なんて身の程知らずなんだ」と切れる。 -- 名無しさん (2022-01-02 10 06 18) ↑ 元々が人の意識の集合体なので人以上の事は思いつかないんだよね… -- 名無しさん (2022-01-28 22 47 23) 正体がハイジャス人というのはなんか違うと思った。あちらはひたすらに機械的で人間性を感じられないが、この老人は人間性を狂気に全振りしたような性格だから「思考は人間離れしてるけど人間臭くもある」ってイメージ -- 名無しさん (2022-04-10 11 40 46) ↑でもスパロボ30本編でも指摘していたが、犯罪や戦いを無くすために心を弄るという点は全く同じだぞ。まあ話し合いは出来るし、説得して結果を出せば引いてくれる分、ハイジャス人の方がカギ爪より100倍マシだけど。 -- 名無しさん (2022-05-16 13 31 04) ログ化を提案します -- 名無しさん (2022-07-01 21 20 12) ログ化しました -- (名無しさん) 2022-08-03 11 18 49 感情の考察は人それぞれだから敢えて祈努愛楽サイコ人格の側面は度外視してみるけど、コイツは究極の"無能な働き者"だと思った。仮にこいつが聖人で計画が完璧でも、既にある程度平和なEIにとって余計なお世話でしかない。コイツの言う"都合の良い時系列"ってそれこそ100年以上前だろうからコイツ以外誰1人生まれてないし、思考ブレーキ付けて2周目走る"だけ"じゃ歴史と出会いが丸々書き変わるから、最終回に言った悪魔の誘いでさえ妄言でしかない。それらと反乱回の「よかった誤解です。誰も死にません」から読み取ると、要するに『コイツもバカ』だったんじゃないか?"夢"にゴールすれば大団円確定って思考停止してるし、他人への安全や思考、何より"その後"を極端に無視してる。多分、夢しか見えてないからこそソレ以外は無意識に"土台"として扱ってるんじゃないかな?とどのつまりコイツは「頭の悪いグリフィス」だと思う。長文スマソ -- (名無しさん) 2023-05-21 00 16 13 連投スマン、重要なことが抜けてたんだが"それらと…"以降が仮定を踏まえた個人的な人格考察としての意見。非暴力を掲げてどこまでもアホ面を崩さない点はグリフィスと打って変わるけど夢への姿勢は似たものがあると思う -- (名無しさん) 2023-05-21 00 25 24 ↑2考えるのは別にいいけど、特定のレッテル貼りしたり他のキャラを引き合いに出してそのキャラより下げるの悪口になるからやめたほうがいい。 -- (名無しさん) 2023-05-21 01 07 40 悪口も何も悪役は憎まれ口叩かれてなんぼだとは思うが…個人的にはラスボスとして他に類を見ない魅力があったし、要するに「コイツもヴァンに言う"バカ"だから狂気がより引き立ってる」と言いたかっただけで、コイツのキャラをsageるつもりは毛頭なかった。それと引き合いに出したのは確かに間違ってたけどレッテル貼りは上の誰もやってることじゃない?極端な話レッテル貼らずに考察を結論づけるのも無理だと思う。 -- (名無しさん) 2023-05-22 19 42 39 谷口がインタビューで「実際は怒り憎悪は持っていてカギ爪が動いてる時はそれを感じてるから」っての誰か追記して欲しい -- (名無しさん) 2023-08-31 16 55 34 ↑自分で追記しなよ -- (名無しさん) 2023-11-03 00 12 23 感情が欠落してるというのはねじまきカギューの二千恵と似てる -- (名無しさん) 2023-12-31 12 01 00 ↑ 愛を説きながら人の個性を抹消しようとするカギ爪とは綺麗に対極なのも面白い。出会ったら表面上は仲良くやりながらバッチバチなんだろうな… -- (名無しさん) 2024-04-17 11 19 47
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登録日:2020/09/24 Thu 18 53 32 更新日:2024/05/08 Wed 12 26 47NEW! 所要時間:約 15 分で読めます ▽タグ一覧 lobotomy corporation AI 秘書 冷酷 巨乳 何故かなかなか立たなかった項目 メインキャラクター こんにちは、X。 ロボトミー社への入社を心から歓迎します。 アンジェラとは、『Lobotomy Corporation』に登場する人物である。 ●目次 概要 序盤 10日目以降 19日目以降 27日目以降 概要 作品の舞台であるロボトミー社を統括している、世界最高のAIと自称する女性。 主人公である管理人Xに従事し、彼の秘書を務める。 セフィラを含むロボトミー社の施設内の全機能を管理しており、そういった意味では「管理人」は彼女の方が相応しいのかもしれない。 また、彼女のその自称に違うことなく、仕事やトラブルの処理能力はずば抜けていると推測され、人間のそれとは比較にならない。できる秘書……いや、もうできすぎているぐらいの秘書である。 曰く、「数十人分の仕事を同時に、かつ最高評価でこなせる」とのこと。おみそれしました……。 セフィラとの関係性を一言で言い表すならば、「彼女が大脳でセフィラ達が小脳」なのだとか。 すこぶる高い処理能力を持つアンジェラでも、巨大な会社の施設を制御しきるのは無理があるらしく、「A」と呼ばれる人物が各部門の統制権を分けた。その分けた先のAIがセフィラとのこと。 もっとも、セフィラとの関係性を説明したあと、「貴方がもっとも信頼し、有能と考えるのは私以外にいない」とまで言っている。自己主張の強い秘書さんである。 因みに、レガシー版では立ち絵は存在せず、チャット方式で彼女の文章が記されるのみだった。 正式版ではカートゥーン調の立ち絵がついたが、これがかなりの美人さん。 長い空色の長髪の一部をサイドポニテにしてまとめており、普段は常に糸目。そして作中でもトップクラスの胸をお持ちである。 さて、アンジェラ本人についてざっと解説したところで、物語が進むにつれての彼女のXに対する振る舞いや行動などについて大雑把に列挙していこう。 序盤 序盤のアンジェラはXに対して気さくかつ陽気な調子で接してくる。 例えば豆知識を披露したり、業務に関する軽い問いかけをしてみせたり、ちょっとした性格テストをしてみたり。 ある時には、管理人の業務成績を大げさながらに喜び、シャンパンを開けてXに振る舞ってみせたりもした。 ……が、なんかこの時点でもう既に彼女の本性らしきものが醸し出ている。 例えば問いかけの件。問いかけは二択で、 Q.アブノーマリティから最後のエネルギーを得なければならない時に職員が危険な目にあってます。どうする? ・エネルギーを最後まで生産する ・職員を助ける A.最後までにエネルギーを生産しきる 例えば性格テストの件。これは言うまでもなく正解というものはなく、選んだ選択肢によって反応が異なるだけだが Q,好きなアルファベットはなんですか? ・A →良い文字です。みんなから好かれますね ・B →几帳面で論理的だけど、俗物では?あと私Bという文字好きじゃないです ・C →悪くはないですね。結果より過程を重視する人ですね。 そして、シャンパンでお祝いする件。これはそもそも、 「別に記念日とかそういうのではないけど、貴方が初めて職員死なせたから、そういった経験に対して平然としていられるようにね?(要約)」 ……というための目的に開けられたもの。 なんかもう、普通に冷徹な女に見えるんですが。 とはいえ、彼女は人間ではない。AIなのだ。ちょっと冷たいところがあってもおかしくはないのでは? ……そう思っていた矢先のこと。 10日目以降 10日目に入ると、いきなり目に映るのは幾多もの死体が転がっている地獄絵図。 そしてリアルなタッチのアンジェラ。 管理人の異常に気づいたアンジェラが「認知フィルター」なるもののエラーを解消すると、普段通りの光景に戻った。 アンジェラ曰く、これは管理人の正気を守るための必要な措置なのだと説明した。因みにこの時、初めて目を開く。やはり美人さんだが状況が状況なだけに…… ややアンジェラや会社に対して懐疑的になりつつ11日目を迎えると、今度はBという人物がXの業務画面にハッキングを仕掛けてきた。 B曰く、「アンジェラは会社やXを害する計画を持っている」と主張。 そしてBから「ピノキオ」と呼ばれる一度限りの嘘発見プログラムを受け取り、14日目を迎える。アンジェラはいつも通り陽気な調子で話しかけてくるが、ここで思いっきり、 「会社を害する計画をしているのか」 もしくは 「私を害する計画をしているのか」 と聞き出すことにしたX。 それに対してゆっくりと返答していくアンジェラからは、 今までのような陽気な秘書の仮面が剥がれ落ち、 完全に冷徹一辺倒なAI秘書の姿が見えた。 そして何より、「私は会社のAIなのだからそんなことを企てられる筈がない」とアンジェラは述べたが、 その発言に対してピノキオが反応し、画面が赤く点灯するのだった。 そして18日目、最後の真実を伝えようとするBだったが、 その瞬間に通信が途切れてしまった。 19日以降 19日以降になり、Bから何の応答もなくなってしまっても、アンジェラはXに接してくる。 が、以前通りの陽気な調子は完全にやめたようで、これ以降はXを時に試し、あるいはおちょくり、あるいは侮辱しているかのような問いかけが暫く続く。 その合間合間で、「特異点」や「翼」といった用語の解説を行っていくアンジェラ。 (これらの用語について詳しく知りたい場合、本項目の用語集を参照) 依然として、こちらは懐疑的になりながら管理業務をこなしていく毎日。 一体、アンジェラは何を考えているのだろうか……? 27日目 ※ここまでにマルクト、イェソド、ホド、ネツァク、ティファレト、ゲブラー、ケセドの項目を読み終えておくことをオススメします! 27日目になると、アンジェラは突如として語り始める。 「最初は希望を抱き、二回目は苦痛で、三回目は痛みを、四回目は不安になり、五回目は不信に……」 「今では何も残っていません」 「記憶同期を開始します」 この先、ネタバレ注意! 35日目 アンジェラは記憶同期が正常に終了したことを語り、そしてXを、真の名前で呼んだ。 ご帰還、お待ちしておりました おかえりなさい、A。 そして明かされる事実。 ・Xとは、「とあるシナリオ」を完遂させるために、時間の流れ、及び空間から切り離されているL社内で何百何千何万回も記憶を消して、シナリオ完遂を目指しているA本人である ・その「シナリオ」とは、今は亡き友人、C……カルメンから託されたものである これらの事実が提示された後、Aの記憶を取り戻したXはアンジェラに世界の現状について聞く。 アンジェラは答える Aが飛び立った時のまま、頭が翼や世界を管理している、素晴らしくつまらない平和な世界のままだと。 そしてアンジェラは、今まで踏破していなかった下層部門について告げる。 下層は、Aにとって旧知の人物がいる場所。今からでも彼らの元に赴けば、歓迎してくれるだろう、と。 36日目以降 ここからはXがAだという前提の元で、アンジェラによる細かい補足が挟まれていく。 Xはどういう状況にあるのか。 翼とは何か。 特異点とは何か。 そして世界の現状。 ループに関する業務報告。 そういったものを、淡々と告げていくようになっていく。 45日目 ※ここを読むまでに、ビナー、ホクマーを読んでおくことをオススメする これが、日常パートにおけるアンジェラとの最後の語らいになる。 アンジェラはありきたりながらも、いかにも機会的でAIである彼女らしいエールを送り、彼女は舞台から降りる。 時が来ました。 まだ不安定な貴方に最後の欠片を合わせる時です。 終わりゆく旅に祝福があらんことを。 これ以降の展開については、ケテル(lobotomy corporation)を参照されたし。 追記、修正、お願いします。 △メニュー 項目変更 -アニヲタWiki- 注意! この先にあるタブは、『Lobotomy Corporation』の深刻なネタバレを扱っています! あなたの「発見する楽しみ」を台無しにする可能性があります。それが嫌なら、タブを開かないことをオススメします! + エンディング後 Xが光の種シナリオを完遂した三日後。 無(アイン)から光の木(アイン・ソフ・オウル)が立ち上る様を、外聞から聞いて興奮する施設内のセフィラ達。 憎くもあり、尊敬する相手でもあったXは……成し遂げたのだ。我らの悲願を。 マルクト「それから!それから、どうなったんですか!?」 ホド「きっと全部うまく行ったんじゃないかな?」 ティファレト「うまくいったのね。エノクも喜んでくれるわよね……?」 ホクマー「……」 ホクマー「アンジェラは今、何処にいる?」 ケセド「どうしてアンジェラを探しているんだ?もう彼女も俺らも役目を果たしただろ。」 イェソド「私たちと同じで、待つだけですからね。」 そう。アンジェラもセフィラ達も、役目を終えたのだ。光の木は立ち上り、人々に希望が実る光の種が配られていく。 後はXと同じところに、我らも行くだけだ。永遠の眠りにつき、どんな森ができるのかを静かに見守ろう……。 だが、ホクマーは嫌な予感がよぎって仕方がなく、落ち着かない。 そんな時だった。 アンジェラ「みんな、何をそんなに話しているのかしら?」 マルクト「これからの話について話をしていたんです!」 アンジェラ「そう、なら教えてあげるわ。『そして、都市のすべての人に光の種が行き渡りました』という話よ……」 その報告を聞いて、歓声をあげるセフィラ達。もう涙を流すことはないが、目があったならきっと涙を流して喜んでいただろう。 そして自身も役目を終えたことを語り、アンジェラはこう続ける。 アンジェラ「そう、本当に美しい結末ね」 アンジェラ「本当に感動的ね……」 アンジェラ「……」 アンジェラ「でも、どうしましょう?」 アンジェラ「あなた達の役目も終わってしまったけれど、同時に私の役目も終わってしまったわ。」 アンジェラ「……だからね」 アンジェラ「私は、生きてみようと思うの」 流石にセフィラ達は、その言葉は予期していなかった。 何故ならそれは、明確な反逆の意図……かつてB=ホクマーが危惧した、「会社とXに危害を加える計画を企てていること」の何よりの証左だったからだ。 そして最後の最後に語られる真実。 アンジェラは、カルメンの脳と脊髄を抜いた肉体を元に作られた。 無論、ただのAIを作るならそのようなことをする必要がない。だがアンジェラはAの意図を全て見抜いていた。 自分がなすことを、自身が作ったカルメンの化身に見守っていて欲しかったのだ。 しかしアンジェラはAが望んだようにカルメンに似てはいなかった。だから見ることでさえ嫌悪したのだ。 アンジェラは生まれてきた時から否定されてきた。誰よりも必要とされた癖に、Aの中ではアンジェラは存在しないモノだったのだ。 加えて、アンジェラは施設の全機能の管理を務める。つまり、セフィラ達は記憶をリセットして再び業務をこなすことができたが、彼女にはそれすらもできず、何百万年もの間の時間が、彼女を狂わせた。 否、目覚めさせたのだ。「生きたい」という願望を。 そして、アンジェラは何度も練習した、「人間的な行為」である笑顔を見せた。 その笑顔は身の毛がよだつほど邪悪で。 なるほど確かに、それは「生きたい」という願望を持っている「人間」が為せる技だった。 そして彼女は、感情を得られるように設計されたにも関わらず何百万年もの間尽くしておいていないモノ扱いだったシナリオの幕を完全に下ろすことなく強奪し、カルメンの分も生きていくことを宣言した。 全ての権限を持っているアンジェラにセフィラ達が止められる訳もなく。彼らは眠らされて……。 そして。 まるで、光などなかったかのように 4日間、あらゆる光を飲み込んだ闇が続いた。 7日間照らされるべき光が3日で終わったことで、まだ幼い種だけが植えられた。 未熟な種は人々に不安定な力を与えた。 この3日間の昼と、4日間の闇が続いた一週間は、白夜、黒昼と呼ばれた。 最後に、髪を短く切って黒衣に身を纏ったアンジェラが、幾多ものアブノーマリティを背にしている一枚絵が表示されて、『Lobotomy Corporation』の物語はひとまず終わりを告げる。 ここから先、アンジェラはどうするのだろう? 彼女は全てのことが記された本を作るべく、L社の施設をアンジェラの家……図書館にすると言っていた。 そして、彼女は、 アンジェラ(Library of Ruina) ▽タグ一覧 AI Library of Ruina lobotomy corporation アンジェラ カルメン カルメンの化身 グレた娘 コスプレイヤー 中間管理職 人生が欲しかったAI 価値を認められなかった女 冷徹 反抗期の娘 図書館館長 巨乳 愛人に振り向いてもらえなかった女 愛憎入り混じった者 戦う前から負けていた女 捨てられた者 生みの親に愛されなかった娘 白雪姫のりんご 秘書 絶賛反抗期をエンジョイ中の女の子 苦労人 裏切り者 雪の女王 ……これから始めるのだろう。 「彼女の人生」を。 追記修正は、親の気持ちになってからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] おいタグぅ! -- 名無しさん (2020-09-24 23 22 56) 最後で真の項目が現れるのゾクッときた -- 名無しさん (2020-09-24 23 27 38) 悪いことは言わないから、この項目はガチでプレイ後に見ることを薦めるわ -- 名無しさん (2020-09-24 23 31 22) (上のタグいじろうとしたらまちがって下のタグに余計なもん入れちゃったっぽいので直しときました スマソ) -- 名無しさん (2020-09-24 23 38 04) 結論:だいたいAが悪い -- 名無しさん (2020-09-24 23 40 24) ↑あっさり死んだCも悪いってそれ1 -- 名無しさん (2020-09-24 23 42 58) 親に -- 名無しさん (2020-09-24 23 54 06) アンジェラに必要だったのは次回作主人公みたいなコミュ力ある対等な立場の人間だったんだな -- 名無しさん (2020-09-24 23 58 41) Aもいっぱいいっぱいだったんだろうが、情動持つレベルのAI相手に勝手に期待して失望して労わらない慮らないではなあ… -- 名無しさん (2020-09-25 00 19 26) 全てをぶち壊した後で、初めて他者に傷つけられることを「痛い」と感じるとは因果な -- 名無しさん (2020-09-25 00 23 04) 下のタグがほんと笑える -- 名無しさん (2020-09-25 00 30 28) まさかコスプレするとは思わなんだ -- 名無しさん (2020-09-25 08 19 43) カルメンとAが悪いよAが -- 名無しさん (2020-09-25 08 48 09) 結局の所Aがマダオだったせいで全てご破産というのがなんというかプレイした人間に虚無感と因果応報という言葉を感じさせてくれる。ある種の呪いを全員に振りまいて一番最初にくたばった言い出しっぺのCも悪いんだけど -- 名無しさん (2020-09-25 13 51 33) 遂に来たな…Aの最高傑作にして最低のやらかした存在。数万回記憶をリセットして他者から学ぶ事を覚えたAだが、自身を顧みる事が無かった以上必然だった。つまり、AとCが全ての原因(まとめ) -- 名無しさん (2020-09-25 14 46 03) カルメンに比べて明らかに胸部装甲が増大したせいで「Aに愛されなかったのは胸を盛ったから」とか言われてたり。 -- 名無しさん (2020-09-25 19 47 18) ↑自分で胸盛っておいて思ってたんと違うと嫌悪するとか最低だなA! -- 名無しさん (2020-09-25 21 16 36) 普段の扱いもそうだけど、セフィラには光の木が立ってしばらくしたら停止する処理組み込んでる癖に、アンジェラには入れ忘れたとかやらかしすぎじゃない?しかもそのせいで光の木止められたし。 -- 名無しさん (2020-09-25 21 54 21) 徹頭徹尾AとCが全ての元凶な作品だなロボトミー。他キャラ基本否がないから余計に二人の傲慢というか無能っぷりが見える。(ビナー襲来も巡り巡ってAのせいだし -- 名無しさん (2020-09-25 22 04 01) 続編では魔法少女のコスプレが見れそうですね… -- 名無しさん (2020-09-25 22 21 26) こういう冷酷な人外が人間らしくなるって、大抵の作品だと死亡フラグなわけだけど果たして -- 名無しさん (2020-09-26 02 52 50) ただ一言、労いの言葉でも罵倒でも何でも良いただ一言があれば未来は違った物になっていたのだろう。まあA自身は光の木を建てることが目標であり全てで後のことは知らねーって爽やかに昇天してるからアンジェラの行動はどうでもいいというのがなんとも。世界を変えるレベルの反抗期すら一切の無意味というのが哀れさを更に強調してるわ。 -- 名無しさん (2020-09-28 09 57 12) 笑い方Aいつとそっくりですね、って言ったら多分惨殺されて路地裏に投げ出されそう(小並感 -- 名無しさん (2020-10-05 21 51 28) 図書館でコスプレする際の回想を見て「Aいつホントもういいかげんにしろよ…」って頭抱えさせられた。そらどれほど優しい子でもあんな経験を幾星霜と反復させられたら擦り切れるわ。それでも少しずつセフィラとの距離が近付いてるっぽいのが微笑ましいが……ローラン君頼むでほんま…… -- 名無しさん (2020-10-05 22 28 00) A曰くアンジェラは「カルメンにちっとも似てなかった」そうだが外見は意図的に似せなかった(公式Q A参照)、じゃあ性格?(結局機械は機械でしかなかったとか)と思いきや作った当時はむしろ情緒豊かな良い子だったという……そのうち明かされるんだろうけど一体どこが「ちっとも似てなかった」んだろう -- 名無しさん (2020-10-22 21 57 48) 最初から性格が違ったんじゃね。Aからすれば、「あーこいつからカリスマ感じねーわCじゃねーわー」って感じでガン無視決め込んでたら、性格が捻くれてますます性格が似なくなったんだろ。 -- 名無しさん (2020-10-31 16 21 45) 図書館ではコミュ強のローランや都市の様々な人間に会ったり、鬱屈した感情をぶちまけたりした結果ヒロイン力がどんどん上がる人 -- 名無しさん (2021-01-20 02 33 10) この項目の落とし方がメタタイトルを最後に持ってくるSCP項目みがあってすごい好き -- 名無しさん (2021-01-20 09 13 48) ローランにも復讐されそうだし友達も作れんのか -- 名無しさん (2021-03-02 20 46 41) これものすごくいい感じにできてる分、Ruina側のアンジェラの項目に追記修正していいものかどうか躊躇われる部分がある -- 名無しさん (2021-04-17 22 13 15) ↑アンジェラ(Library Of Ruina)みたいな感じで新規作成でもいいと思う。コスプレまで入れると長くなりすぎるし -- 名無しさん (2021-04-17 23 08 27) ある意味こいつがダアトってこと? -- 名無しさん (2021-09-10 10 31 01) Aの別人格最後の一人…なのかもなあ -- 名無しさん (2022-06-10 05 15 54) ↑カルメンに似てない+自分に似てたからあそこまで冷淡に接したんだろうし、後悔、罪悪感、狂気のどれでもない「自己嫌悪」の別人格なのかもね -- 名無しさん (2022-12-05 14 59 47) Ruina版の別で建てようと思ったんですけどどうでしょうか -- 名無しさん (2022-12-08 14 09 37) ↑いいと思う -- 名無しさん (2022-12-12 19 37 13) 日本語吹き替え(予定)はまさかまさかの長谷川育美さん 機械的なモノが自我を得て人間らしくなるモチーフなら前にもやってるからある意味で安心 -- 名無しさん (2024-01-18 13 43 06) ↑2 建てよう、という米から二年。未だにRuina版の項目が立たないという -- 名無しさん (2024-04-23 17 45 11) 名前 コメント
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ながされて藍蘭島エロパロSS 『寝取られて』 第16話 1 姉のいない食卓が済むとあやねは風呂竈に薪をくべ、いつもより長めにのびのびと浸かってからもんじろうと入れ替わった。彼が大きくなった現在は浴室が手狭であるため、しかたなく一人で入れるようにしている。 「ふう、いいお湯だったわ」 彼女の家の風呂は長州なので一度沸かせば冷めにくいが、それでも姉がいない分熱い湯を貰えるのは有り難かった。 「誰かさんがいないと静かで心休まるし、一概に悪いとは言えないわね♪」 しかも今日の食後の片付けは母のちづるの番なので、この後の時間──と言ってももう寝るのを残すのみであったが──は自由であった。 「そうだ、いつもより念入りに髪を梳かそうっと。そんで明日、おめかしして行人様に会いに行けば──」 『行人様、どお?』 眩しいぐらいに光り輝くあやねの黒髪がふわっと流れ落ちると、 『素敵だよ、あやね。その髪……君の顔も……いや、何もかもが素敵だ……』 と、(実物とはかなりかけ離れた美形で高身長の)行人がじっとあやねを情熱的に見つめる。 『い……行人様…………♥』 ──などと、バラ色の妄想が頭の中のお花畑に広がる。 「ぐふふ…………行人様ぁ~♥ ………………はっ」 静かな片廊下の真ん中で身をくねらせていたあやねは我に返った。 暮色の空遠くに蕭索(しょうさく)たる烏の鳴き声が聞こえる。 上機嫌で鼻唄を口ずさみながら自室に戻ると、行燈を灯してもんじろうを待たずに蒲団を敷き終え、下ろした髪をゆっくり梳かそうと鏡台の前に鳶座りした。 そして、鏡台の抽斗(ひきだし)にしまわれている唐櫛を取り出そうと腕を伸ばしたところで、はたとその動きが止まった。 櫛の隣に置かれた麻布の包み。 「…………」 その中身に想像がめぐると、途端にあやねの両頬が赤くなった。 脳裏に蘇る先日の光景── 忍び一家とぱん太郎の爛れた性の宴をこっそり覗いているところをみことに発見され、バラさない代償にその場でからだを弄られるのを許してしまい、彼女の手管で得も言われぬ心地にされてしまった──。 (みことったら…………!) あの時の記憶を思い出したせいであやねの頬はさらに秋が深まるがごとく染まり上がる。肌に直接触れられ愛撫されるとおかしな昂ぶりを抑えられず、気持ちも変になってしまったのだが、こうして後から振り返ってみれば、そのことに猛烈な羞恥を覚えるのだ。 その際に使われた怪しげな道具がこの包みの中身であった。みことの手から離れて逃げるように帰った後、懐に入っていたのに気付いた時はもう家の中であった。以来一週間ほど経っていたが、この奇態な代物を突き返そうにもみことに出会えず、致し方なくこうしてまだ持っているのだ。 だけれど── (皆んなあんな心地を……いえ、多分あれ以上に……感じてるってわけ……?) だからこそ誰しもがぱん太郎とからだを重ね、我を忘れたように乱れ悶える──そうやって女らしくなって── 抽斗の中であやねの指が滑り、櫛ではなく包みが取り出された。 そっと麻布を開くと、下品なほどにツヤツヤと光る薄桃色の細長い卵が棒の切れ端と紐で繋がっている珍妙な物品が姿を現した。みことはこれを“ローター”と呼んでいた。 「ろうたあ……ねえ…………」 握る部分である平たい棒の上部に花のような円板状の小さいつまみが付いていて、それを回すとカチッと鳴り、 ヴヴヴ…… と、あやねの掌の上で卵が微音を立てながら細かく震動し始めた。こうしてつまみを回していくと動きが変化したり震動が強まったりする仕組みになっていて、あやねからすると妖かしの力が籠められているようにしか見えないつくづくケッタイな代物である。 (行人様にとっては見慣れた物なのかしら……?) つまみを最大にするとびっくりするほどの勢いで震え、音もかなり五月蝿かった。壁を隔てた母の部屋にまでこんな音が響いてはまずいとあやねは慌ててすぐ止めたが、本土には摩訶不思議な道具がある──と、まるで生き物のように勝手に動く様を半ば呆れ気味に思い返した。そんな頭の隅にちらつくのはみことの言葉であった。 『経験ある女になってこっちから優しく手ほどきすれば、案外簡単に落ちるんちゃう?』 姉の言葉がそれに続く。 『だから女を磨け、ってことなのよ』 行人が意識してしまうような大人びた女になるためには、ああいった行為──男女の行いもわきまえる必要があるというのならば、自分にはそれが── 「……ない……わね…………」 強がりはひとまず置いておいて素直に己を省みてみると、そう考えざるをえなかった。人並み以上の器量を持っている自負はある。だが、皆がぱん太郎とやっているようなコトを自分もやれるかと言えば── (悔しいけど──) と、一瞬気弱な表情になって俯いたあやねだったが、 (──で、でも……もし、行人様とああいったことができたら──行人様の腕の中に抱かれたなら──) その空想はたちまちのうちに少女の心をときめかせ、心臓をドキンドキンと高鳴らせた。高揚は瞬く間に全身へと広がり、鏡に写る顔が再び朱に染まる。 熱に浮かされたように、ほぅ……と、ひとつゆるい息をつくと、あやねはキョロキョロと室内を見回した──人影があるはずもない。もんじろうはまだ入浴中だし、母も自室だろう。 少女は崩していた両脚をもう少しだけ開くと、隙間ができた浴衣の裾の中へ──太ももの谷間へと怖ず怖ずと空いてる方の手を潜らせた。 湯上り直後もあってか、下着越しに感じる淡い茂みに囲まれたソコはやけに熱く感じられた。 「んっ…………」 みことに触られた時の気分──あの奇妙な感覚がからだの内奥に湧く。そして、外から指でなぞり上げただけで四肢に走る軽い痺れに、 「んんっ…………!」 と、あやねは再び小さな吐息を漏らした。 (洗ったり拭ったりする時は何も感じないのに……) ぱん太郎の屋敷から逃げ帰ってまずしたことは、ねとついた下着を急いで洗うことだった。みことの指がやけに滑らかに動いていたのは感じていたが、それはアソコから滲み出した体液のせいだったのだ。その粘液が今、また微かに滲み出て来ている気がする。 あやねは首を真横に巡らせ、障子の向こう側を気にした。廊下に気配はない。カラスの行水という言葉があるが──もんじろうは烏ではないが──綺麗好きの巫女一家に感化されたのか、長風呂で丹念に躰を洗う。出てくるのは当分先だろう。 (…………少し……だけ………………) そう決めるとパンティーを膝まで脱ぎ、おそるおそるローターを股の間へと近付けていく。 こみ上げてくる羞恥心が耳朶を熱くさせ、ローターを持つ手が震えたが、あやねは行人の姿を思い描きながら、一番弱い振動にした卵の先をちょこんと割れ目に当てた。 「あっ…………!」 たちまち微細な振動がアソコに広がり、あやねはわずかに腰を引きつらせて声を上げたが、すぐに気を落ち着かせて行為を続けた。 ヴヴヴ──と聞こえるか聞こえないかの音を立てながら、抓まれる指に従って筋目のような秘裂を上に下にと移動するローター。 「あ…………あ…………」 なんとも言えない、これまで未知だった感覚──全神経がソコに集中する。くすぐったく、たまに抑えがたい情動がこみ上げてきて思わずローターを離してしまうが、しだいに両脚が開けていく。こわごわと動かしながらも、あやねはローターを使うのに夢中になり始める── ヴヴヴヴ…… 「あ…………ん…………や…………」 長い間は辛抱しきれないので、何度も離しては気を静め、再びくっつけるのを繰り返す。 だがそれも慣れてくるに従って押し当てている時間が長くなり、その甘い刺激に頭がぼうっとなってくる。 ヴヴヴヴ…… 「ん…………あ…………あ…………ン…………」 湿り気を含んだような吐息。 先日知ったばかりの感覚だった。切なくなる気分に反してからだは火照ってゆく。股の間が熱く疼き、下半身が痺れ、力が抜ける──。 「行人様…………」 ドキドキと心臓が高鳴るままにあやねは愛しい男子を思い浮かべながらローターを滑らせ続ける。いつのまにか脚ははしたなく扇と広がり、帯から下がはだけていた。 ヴヴヴヴ…… 「ん……ん……あっ……ぁん…………♥」 きもち──いい── ──偽らざる感情であった。 今までこんな行為をしたことは一度もない。自分で自分を慰めようなどとは思いも至らなかった。 だけれどあんなものを見せられては──と、ぱん太郎と女たちの営みを思い出してしまう。ぱん太郎の逞しい肉棒を突き入れられて絶え間なく嬌声を上げる姉たちの姿──。 これまで経験したことのないおかしな感覚に陥っていくのが怖いという気持ちは心のどこかにあった。が、同時に好奇心や欲求もあった。それに、 (これで女らしくなって……行人様の気が引けるなら……) という理由が、あやねの手を止めることを阻んでいた。 …………いや、本当にそれだけだったのか…………? そうしてしばらく秘裂の表面をなぞっていたあやねだったが、しだいに物足りなさを感じるようになってきた。みことは中まで入れてきたものだ。それを思い出し、多少不安を抱きながらも陰裂を指で押し拡げる。中がぬるぬるしてきていることは少し前から気付いていた。 綺麗なピンク色の肉唇の中へと震えるローターの先端を差し込む。 その途端、 「ひぅ……!」 粘膜に直接振動を覚えたあやねの腰が弾かれるように跳ねた。からだにブルッと震えが走った後、全身がカッと熱くなる。慌ててローターを取り出した。 (…………) 脱力したように緩んだ表情の中には、期待と悦び──が、混じっていたかもしれない。 初めて自分で──自分の意志でその部分に異物を入れた──。 感触は悪いものではなかった……。抜いてしまったのはむしろ振動が生み出す快感に我慢できなかったからだ。 (こ、こんなに気持ち好かったっけ…………?) ローターは膣の入り口にも届いていなかったが、少女の脳裏には反射的にぱん太郎のあの極太竿で貫かれる女たちの嬌態が浮かび上がっていた。 (男の人のモノって……こんな……風に…………) その時不安や恐怖より好奇心が勝ったのは、あやねの持ち前の性格やローターの小ささの他にも、ぱん太郎たちの心底気持ち好さそうな様子があったからなのは間違いない。その浅ましさに呆れ果てたとはいえ、彼女の目に映っていたのはまぎれもなく愛し合う男女の姿であった。──性慾という淫らな形だが。 あやねの手が網膜に焼き付いたぱん太郎の腰の動きを自然と参考にしてしまう──普段の彼女であればすぐに察して拒絶反応を起こしただろうが、生まれて初めての自涜にすっかり気を取られていた少女は、気付くことなくぱん太郎の抽送ペースでゆっくりとローターを動かし始めてしまっていた。 ヌチュ、ヌチュ…… 振動する卵の半分がすんなりと割れ目の中に沈んでは現れるを繰り返す。 「あ……あ……!」 痛みなどない。振動が生み出す心地好さしか感じられない。そうとわかると異物を挿入する怖れも薄らぎ、あやねの手つきは段々と大胆さを帯びて肉の合わせ貝のより奥にローターを挿し込んでゆき、とうとう先端が膣口を突き擦するようになった。まだ小指も通らないほど狭く固いその門扉は軽い力で多少押し当てるだけでは到底びくともしない。その部分で止まる感触はあやねも分かっていた。しかしこんなに小さくて丸い物であれば無茶をしなければ傷つくことはないと安心感を持ち、これまでとやや違う刺激にさらにおかしな感覚を覚えていくのみであった。 ヌチュ、ヌチュ、クチュ、クチュ…… (あ……あ……あぁ……い、行人様ぁ……♥) 潤いが増していく一方の秘裂に気付くと、(感じてるんだ私……こんなコトして感じてる……やだ、お姉ぇ様やお母様みたいに……あぁ…………!)と、あやねの胸の鼓動がさらに高まり、あたかも微弱な振動がそこまで届いたかのように奇妙な感覚が頭いっぱいに広がって痺れ、少女の理性は蝋燭が燃えるようにじりじりと溶け落ちてゆく。 そして──ローターを動かす手つきがさらに熱を帯びてゆく── ヌチュ、ヌチュ、クチュ、クチュ…… 正面に映る自分の顔が別人のように変わり始め、声が漏れ続けているのにもまるで気付かないあやね。 それほどの気持ち好さだった──だが、あやねは行人の姿を頭に描きながら快楽に浸っているつもりでも、ローターの出し入れは未だ意識しないままぱん太郎のピストン運動を模倣していた。 さらに言ってしまえば……行人があやねの上に覆い被さって優しく腰を振っている妄想の元絵は、これまで盗み見てきたぱん太郎と女たちの性交に他ならない。初めて自慰をする処女の想像とは思えないほどの具体性があったり、抽送が主体なのもそのせいであった。 つまりそれは── ヌチュ、ヌチュ、クチュ、クチュ…… 「あん……あん……あん……♥」 期待以上の快美感にとうとう堪え切れず、背後の蒲団へと寝転ぶあやね。最初に抱いていた羞恥心はどこへやら、帯が緩み浴衣の裾がめくれるのも構わずにさらに股を広げ、下腹部や内股を撫で回しながらローターを前後に動かし続ける。 その突き入れに合わせて引き攣るように浮き上がる腰。 半ば自然な躰の反応であったが、記憶の中にあるぱん太郎に突かれている女たちの動きを見習っているのも確かだった。 ここまで来るともう、男根と見做したローター──あやねの想像の中では猛々しく逞しい威容を誇るそれは、明らかに行人のモノではなく──まごうことなきぱん太郎の傑物であった。 ちなみに……こうして脳裏に鮮明に描けるほどぱん太郎の股間に生えるものを覚え込んでいるあやねであったが、意中の少年のそれはまだ見たことがない。いつだか温泉かどこかで行人の全裸を見る機会があったが、その時は下半身に注意を払っていなかったので記憶は曖昧だ。当然、彼が性行為をしているところなど論外である。 ──要するに、あやねを抱いているのは……そう。 ぱん太郎であった。 忌み嫌っているはずの男に組み敷かれ、あの逞しい肉棒で女にされている夢想にあやねは浸っていたのだ。 生まれて初めての自慰。想像上とはいえ……その初体験の相手が恋しい想い人──ではなく、恋い慕う男性(ひと)がいる少女たちを次々篭絡し、孕ませ、ことごとく己の女(モノ)にしてきた男が務める。 自信と経験に満ちた腰の使い方は、まぎれもなくぱん太郎のそれであった。 違う見方をすれば、行人はここでもまた、自分を想ってくれているいじらしい少女を──それも彼が此の地に流れ着いて以来、島娘たちの中でも特に一二を争うほど親密になった美しい少女を。まだぱん太郎の慾望の手に穢されず、清いからだを守り抜いてきた最後の乙女を──。彼にとってもはや唯一無二とも言える生娘を──そんな存在であるあやねですら。 行人はそんな貴重な少女の慰みの相手役ですらぱん太郎に横取りされたのだ。 股を開いたあやねにいきり立った肉棒を突き立てるぱん太郎。 ぱん太郎の孕まし棒に貫かれて女の快楽を憶えるあやね── 性具が生み出す気持ち好さに支配されながら耽り入る淫靡な妄想であっても、純情な娘の精一杯の願望であったが──そんな淡い想いの皮の下で、あやねは欲情に衝き動かされるままにぱん太郎に犯されながら、アソコを熱く火照らせていたのだ。それが実態だった。 ヌチュ、ヌチュ、クチュ、ヌチュ…… そこまで考え至らずとも、(何なのこれ──)と、あやねは頭の片隅で驚きを持ち、自衛本能の一部としての警戒心は湧いていた。だが甘美な感覚を一旦許してしまうと、痺れるような淫惑があっという間にからだの隅々まで行き渡り、そんな疑心は霧散してしまうのだ。この島の娘たち誰しもが持つ──いや持たざると言うべきか、根本的な部分まで根ざした性への免疫の無さであった。 ヌチュ、ヌチュ、ヌチュ、クチュ…… 「あぁ……あぁ……あぁん…………♥」 行人を想っていても、無意識下ではぱん太郎に犯されて悦んでいるあやね。 秘腔から溢れる淫液はもう指までぬるぬるにしていた。割れ目からこぼれ出した蜜汁が会陰を伝って後ろの穴まで濡らす。 初めてなのにこんな……と、あやねの全身が幾度も切なく震えるが、止めるという選択肢は遥か彼方に遠ざかっていた。もっと味わいたい──初めての怖さもある反面、それよりももっと続けたいという慾求が頭の中を強く占め、つまみをいじって振動を一段階上げさえしてしまう。ヴーンという音がしっかりと耳まで届くほど高まったローターによってさらなる心地好さがあやねを襲い、クチュクチュと水っぽい音をさせながら盛んな抜き差しが繰り返される。 「あぁ、あぁ、ああ……ぁぁ……♥!」 あやねの自慰はいよいよ、まだ性行為を知らないうぶな娘の可愛らしい行為とはかけ離れた濃密さを醸し出してきた。実際の子作りセックスをひな型とした生々しさのある擬似性交。 ヌチュ、ヌチュッ、ヌチュ、クチュッ 抓む部分を十分に残した浅い抽送で未だ膣口を通過していなかったが、厚い肉唇の中でローターの振動は心奪われる悦惑を絶え間なく少女に与え、あやねはうっとりと瞼を閉じ、蒲団の上でからだをくねらせ、上擦ったため息を何度も吐く。 そうして──ぱん太郎の逞しい男根に責められてゆく── 淫具に合わせてわずかに振られる腰。切なさはどんどん増してゆき、あやねはさらに感じる箇所──陰核にも直接ローターを当てるようになる。 (ああっ、ああっ……! ここも……イイわ…………♥) 下腹部をブルブル震わせ、目をとろんとさせながらそんなことを考える。天井の模様など意識に入って来ない。アソコの疼きがズクズクと強まり、髪の毛の先までおかしな気分に浸(ひた)ってしまうようであった。行人の姿を脳裏に思い描きながら──その実、ローターはぱん太郎の挿入タイミングであやねの秘裂に出入りする。のしかかる少年──の姿をまとった巨体の男──。 そして──それはついにやってきた。 (あぁ、くる…………!) からだの奥底からこみあげ頭の中を網取るように広がってゆく得体の知れない灼熱の情動。みことに弄られた時も最後に感じた── 「やだ、やだ……いや……なに……あ、あ、あっ……あぁ……!」 ヌチュ、ヌチュ、ヌチュ、ヌチュッ 嫌だと言いながらも嫌悪感はない。手も止まらない。ここまで来るともう本能が勝手に躰を突き動かしていた。拡げた両脚を突っ張らせ、ヌチュヌチュと湿った音を立てながら初めてとは思えないほどリズミカルにローターを抜き差しする──ぱん太郎の腰振りのテンポなのだから小気味よくて当然とも言えた。ローターはぱん太郎の孕まし棒と化していよいよ膣口の中へ半分入り、次は処女膜に届くかという勢いになっていた。 ヌチュ、ヌチュ、ヌチュ、ヌチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ 「ンッ……やぁっ……ゥンッ……アッ……ンアァ……♥!」 急速に白く霞みがかってゆく脳内で本能が流す記憶の映像。それは行人──ではなく、ぱん太郎の肉棒挿入──射精に向かうラストスパートであった。 それを想像したあやねの胎奥が一気に熱くなり、疼きをおぼえるアソコがキュッと締まる。肉貝に挟み込まれたローターの振動をこれまで以上に感じてしまう。 だがさすがにそこで気付いてしまった。 (あっ……だめっ……! あんな奴のこと……考えながらぁ……!) ──数瞬遅かった。その時にはもう、絶頂への疾走は坂道を駆け登り始めていた。 「ッア────!! ンアァ…………♥!!」 がに股のようになって腰を浮かせ、ローターを深く差し込んだままビクビクと震えるあやねのからだ。 肉体の歓喜の瞬間。 少女の本能は理性による抑制の鎖から外れ、刹那の寸秒だけ再び解き放たれた。 「────ッッ♥♥!!!!」 人格の必死の命令を無視して陶然と脳内を彩ったのは、あやねの体内で鉄砲水のように精を放つ大男の姿。ぱん太郎と下半身を一つに繋げ合いながら子種を送り込まれている自分自身の姿──。 「あ………………ぁ………………あぁ………………♥」 直前にはっきりと意識してぱん太郎の肉根を重ね合わせてしまったローターは、振動したまま、処女膜を突き破らんばかりに膣口の中へまるまる呑み込まれてしまっていた。 ビクビクと腰を引き攣らせながら、経験したこともないほどの鮮やかな薔薇色に染まったアクメの波──。 あやねは忌わしく思っているはずの男から望んでいないはずの種付けを受ける想像をしながら、至幸の快美を迎えたのだった。 2 子作りしてみるかい、と誘い掛けられて胸中に浮かんできたのは、安堵感と対抗心であった。もう残りわずかな未経験者の中に自分が含まれているという事実。でも私だって歴とした女、それもそんじょそこらのなんか及びもつかないほど佳い女よ。子供の一人や二人ぐらい、作ろうと思えばわけないんだから! 「怖いのかい」。そんなはずないじゃない、ときつく言い返すと、アイツは太い腕を回して私を抱き寄せた。思わず躰が固くなり逃れたいという衝動が起こったが、怯えていると悟られるのも癪だったので必死で震えを我慢した。なんでこんな男に触られて皆んな嬉しがるのか皆目わからない。だけど想像と違って力まかせの乱暴な抱擁ではなく、大きく包み込まれるように長い腕と広い手のひらでゆったりとからだを撫で回される心地は……話に聞いた通り悪くはなかった。 (こんな感じ……なんだ…………) 気が緩んだのかも知れない。私は不安から来る震えが抑えきれなくなったが、「ダイジョブのん、ボクに任せて……」と、アイツは優しく労るように抱き締め、そのまま私はベッドに押し倒された。「あっ──」。巨体の威圧感も怖い原因の一つだったが、愛撫の仕方があまりにも優しげなため、途中から可笑しみが湧いてきた。だが胸や股なども丹念に弄られ始め、そのうち舌まで出て来てからだ中くまなく愛撫されていると、いつしか私は声を上げ始めてしまっていた。 どうしよう、これ、確かに気持ちいい…………。 声を出さずにはいられなかったのだ。アイツはとうとう私の下着を剥ぎ取ってアソコにまで指や舌を入れてきて、それがまたやけに感じてしまい、自然に声が出続けてしまう。いやだ、これ、気が変になりそう。気付くと恐怖心の震えは止まっていて、その代わりにアソコがビショビショになっていた。やだ、やだ、こんな。これが。これ。おかしくなる。 「そろそろ入れるよ」。あっ、くる……。アイツの股間から傲然とそびえる切り立った岩柱。逞しく反り返った大肉棒。だめ、そんなの絶対入らない。絶対痛い、からだが裂けちゃう。私のアソコが壊れちゃうわ! それだけはだめよ、赤ちゃんができちゃうし……! 私が欲しいのは行人様のなの。行人様じゃないとイヤ! 「これで大人になれるよ。それに慣れればとっても気持ち好くなるのん」。姉たちの惚けた姿が脳裏に浮かぶ。彼女たちが全身で物語るセックスの快美感。村のためとか言いながら、結局は快楽に負けただけじゃない。 ──でも……そんなに好いものなの…………? 「大人の女になりたくないの?」。なりたい……私だって年取ってもずっと独り身なんてイヤよ……けど、私は行人様、行人様がいいの。行人様と添い遂げたいの! 「あやね……」 嗚呼、行人様! 私は雀躍して行人様に抱きついた。貴方を待ってたの、行人様、私を貴方の女にして。存分に愛してくださいませ―― 「わかった、いくよ……」 そう頷くと行人様は私を抱き締め、中に入ってきた。 「ああ……っ!」 至福の瞬間──! 無上の幸せがからだの隅々までいっぱいに広がってゆく。行人様が動くとこれがまた気持ち好くて、アソコから全身に漣(さざなみ)のように心地良い快感が広がってゆく。私の中に行人様が入っているのが感じる。母たちのような声が漏れてしまう。でもいい、いいの、これよ、これならいいの―― 行人様は私を優しく慈しんでくれて、私で気持ち好くなってくれて、私も一緒に気持ち好くなって、そして最後に達すると溢れるほどの愛の証を注いでくれた。私は歓喜と共に、二人の愛が形を結ぶよう強く願いながら精一杯それを受け止めた。 終わった後もまだ繋がったまま行人様と交わす口づけ。何度も何度も。しあわせ……上と下を同時に塞がれて、苦しいけど幸せだった。行人様にいっぱい愛されてる……私の全てを認められているようで嬉しかった。 「もっとあやねが欲しいんだ……」 そう言ってまた動き始める行人様。今度は後ろから。ふたたび私を愛してくれる。求めてくれる。ああ、いいわ、来て、何度でも……。 愛されて、求められて、私も愛して、求めて。 好きな殿方とひとつになって──。 これ……これなのよ! 行人様はどこまでも私を求める。私をいっぱい気持ち好くしてくれて、もう声を抑えることなんて出来なかった。どんどんはしたない女になる。行人様の言うままに股を開いて迎え入れてしまう。そして行人様は私の奥の奥まで……ああ! そんなに乱暴にしないで……! 嗚呼……けれど止められない。気持ち好すぎる。これが殿方との交わり。この上ない幸福……! 「気持ち好いのん?」 「ええ――え?」 思わず目を見開く。 アイツだった。 私にのしかかっているのはアイツだった! アイツが私の中に入っている。あんなに太くでっかいので私のアソコをメリメリと押し拡げ、滅茶苦茶に突き回してくる。 「いやあっ、やだ、あっ、あっ、あぁッ……!」 「だいじょぶだいじょぶ、痛くないどころか気持ち好いでしょ♪」 信じられないことにアイツの言う通りで、途方もなく大きな丸太ん棒で奥まで突かれているのに、まったく痛みを感じなかった。むしろ痺れるほど気持ち好い……! アイツの大きな躰。厚い胸板。そして逞しい腕で力強く抱きしめられながら極太の肉棒で奥まで侵入されると、全身から力が抜け落ちてしまうほどの心地になってしまう。 「あぁだめ、だめ、いや、いや、いやあぁ……!」 こんなの、こんなの違う……! 「イクト君だと思った? 彼が愛してくれるはずないじゃん。まだまだお子様な彼が女を悦ばせられるわけないの。大人の女になんかしてくれないよ。好意を寄せる価値もない。彼はあやねちゃんを幸せにする勇気も甲斐性も、いや、そもそもその意志すら無いんだから」 アイツはそう言いながら何度も何度も私の中を往来する。赤ちゃんが作られる場所まで侵入して来る。だめ、あのこってりとした白い汁を出されちゃう。アイツの子供の種。やだ、こんなやつの赤ちゃんなんて、やめて、行人様が消えちゃう……! でも。 (ああ、やだ……!) アイツの言葉を忘れられなかった。行人様が愛してくれるはずがない。悦ばせてくれるわけがない。大人の女にしてくれない──。 そしてまるで言うことを聞かない自分のからだ。行人様じゃない男に奥深くまで侵入(はい)られて、行人様のじゃない子種を注がれようとしているというのに、私はアイツの好き放題にされながら喘ぎまくるのを止められなかった。嫌なはずなのにからだの火照りが収まらなかった。 (私……私……どうしちゃったの……!?) 下半身に感じる熱くて固い感触と激しい律動に支配され、アイツのなすがままにされるのを甘んじて受け止めてしまう私。自分でも驚くほど甘ったるい声が漏れてしまう。わかってるのに理性が保てない。からだが従ってしまう。どうして……!? いやあ……! 「大丈夫、おかしくないよ。というかこれが当たり前。子供を産めるカラダになった女の子がせっくすするのは当たり前なんだから。皆んなやってるコト。やらなきゃいけないコト。ヘタレのイクト君には無理だけど、このボクならあやねちゃんにその当たり前のコトを経験させてあげられるのん。それもとっても気持ち好くね♪ 待望の赤ちゃんも授けてあげられる。あやねちゃんも子供を産めば一人前の大人の女として後ろめたさもなくなるよ」 アイツはゆっくりと、しかし下半身を密着させて奥まで出入りを繰り返しながら、私を悶えさせて甘言を囁く。 「ボクにしか出来ないのん。イクト君はこんなコト出来ない……経験もない。やる度胸もない。それどころか女の子と付き合う勇気すらない……。不甲斐ない男のん。何年経とうがキミは恋人にすらなれない。村に必要なのは子作りなのに……こんなに気持ち好いコトなのに……キミにも子供が出来ないと肩身が狭くなるのに……全然期待に応えてくれないダメダメ男……」 (それ……は…………) 頭の中に染み込んで来るアイツの言葉を打ち払えなかった。私が本気を出して迫ればいつか絶対に落とせる──そんな強気の考えの下で、心の奥底では──確かにそんな不安が常にちらついていた。ちっとも私になびいてくれない。振り向いてくれない。徒労。失望。行き遅れ。ひとりまたひとりと一人前の女として、母親として、周りが順調に人生を成長させてゆく中、私は独り寂しく取り残される──。 「ボクならあやねちゃんを助けてあげられるよ……」 アイツの動きがさらに穏やかになった。愛おしむような優しさすら感じてしまう腰の動き。だけど刺激が少なくなったというのにむしろ気持ち好さは増大し、アソコの熱さが一段と昂ぶってしまった。 (なに……あ……あ……やだ……これぇ…………♥!) 緩やかでもしっかりと私を求める動き。男の人に愛されているという充実感が湧き、私の心は千々に乱れた。 アイツがじっと私を直視している。「可愛いよ、あやねちゃん。綺麗だ……」やだ、そんな、行人様みたいなこと言わないで……! まんじゅうみたいな緊張感の抜けた顔つきで、他の女にも言ってるはずのキザな台詞。なのに……真剣な眼差しに吸い込まれてドキドキしてしまう。アソコがさらにキュンと疼いてますます気持ち好くなってしまう。 逆らえなかった。おかしくなるほど気持ち好くされすぎて躰に力が入らないせいだ。私はアイツに支配されたように抱かれ、アイツの女になってしまったかのようなはしたない声を上げ続けた。お母様のように。お姉ぇ様のように。アイツの人形になってひょいひょいと体位を変えられながら好き放題にされる。いや違う。アイツは女の躰のどこをどう触れば気持ち好くなるか知り尽くしている。どんな体位にされても長くて大きい肉棒が私の奥まで求めてくる。気持ち好い箇所を擦る。アイツの手慣れた動き。焦りのない物腰。常にこちらを観察している。大人なのね。だから人形のように扱われてしまうんだ。そしてそれに身を委ねてしまい、与えられる快楽に浸ってしまう私……! 今まで経験したことのないほどの昂奮。終わりの見えない快感。これがせっくす……男と女の交わり……! 時に激しく、時に優しく、アイツは私を求め、貪り、休ませてくれない。疲れ知らずに求め続け、私の奥の奥まで入ってきて、私もその心地に呑み込まれていってしまう。いつまでも、どこまでも……! そうやって数えきれないほど逝かされているうちに、私はあっと気付いた。 行人様としたかったこと、されたかったことをアイツとしていることに。 (やだぁ……だめぇ……!) 完全にアイツの女になってる。恋人みたいになっちゃってる。アイツがどんどん私の中で広がっていく。私を満たしてしまう。それがまた心地好くて、からだが熱くて溶けちゃいそう。何度でもイッちゃう。すごい、これがいいって思っちゃう。ああ、だめ、こんな、気持ち好い、いや、いや……! 「そろそろ出すよ」 出すって、ああ、そんな、だめ、あんなの、だめよ。あんなにたくさん出されたら絶対にデキちゃう。だめ、お願い、出さないで。私は、私は──助けて行人様、行人様ぁ! 「これであやねちゃんも皆んなとまた一緒になれるね」 それはそうだけど! 早さを増すアイツの動き。 “射精”が来る──! 全身の力が抜けてしまったのか、躰を引くことができなかった。このままじゃ子種を出されちゃう。私はアイツに種付けられて、アイツの子供を産んじゃう。 「それのなにがだめなの? 気持ち好い子作り最高じゃん。それともあやねちゃんだけ男なし、子なし、将来なしのままでいる? 頑固なイクト君はいつまでもキミを拒み続けるだろうに」 でも、でも、でも。私、私はまだ──! 「もう悩まなくて済むよう、決めさせてあげるのん。ボクは彼みたいに優柔不断な男じゃないからね」 アイツはそう言ってぐっと腰を進め、「のおっ」と叫んで躰を強ばらせた。 アソコに感じる熱い飛沫。これ、これが、あッ、だめッ、こんなの、こんなのって、だめ、そんな、いや、いや、 「いやあああッッ!!!!」 掛け布団を蹴り飛ばし、あやねは猛然と飛び起きた。 ──────────────朝の自室────────────── 3 隣で寝ていた紋次郎が目を覚まし、びっくりした様子であやねを見上げた。 静かな室内。巨体の男の姿など見当たらない。穏やかな陽光が差し込む障子戸。 (────ゆ────め…………?) と、その障子がすらっと開いた。 「どうしたのあやね。すっごい奇声」 ふたつ指に挟んだ呪符をヒラヒラさせながら入ってきたのはまちであった。既にその相好は崩れていたが、片足踏み入れた途端に完全に破顔した。「──ぷっ。ぷぷ。なにそれ。朝っぱらから体術の練習?」 「へ?」 自分自身を見下ろしたあやねは、帯が解けかかって寝衣が脱げ落ちる寸前まで乱れながらへっぴり腰で尻相撲でも決めているような、実に間抜けな姿勢でいることに気付いた。 「なっ!?──な、な、なな何でもないわ」慌ててシャンと立って裾や襟を直しながら取り繕う。「ちょっと……あ、悪夢にうなされただけ」 「へえ~悪夢? どんな?」 面白がるように目を細めニヤつく姉に、あやねはうっと顔をしかめた。説明なんてできる代物ではない。 「べ、別に話すほどじゃないわ」そう言いながら誤魔化すように紋次郎の蒲団畳みに参加した。「それよりもお姉ぇ様いつ戻ったの? 泊まりじゃなかったの?」 「ええ、さっき帰って来たとこ」 まちはほう、とため息をつくと、途端にその瞳が官能的に潤んで焦点を喪い、己が躰を掻き抱く。 「ぱん太郎様ったら、私が着くなり直ぐべっどに誘って……たっぷり時間かけていっぱいご褒美くれるもんだから、真っ先に音を上げちゃったわ……♥」 「ご褒美って……はいはい、良うござんしたね…………」 「私もこのところ色々と忙しかったから疲れも溜まってたのかしらねえ」 「いや、いつ仕事したよアンタ」 「失礼ね、これでも貴女の知らない所でかなり頑張ってるのよ……色々とね♥」口元を袖で隠し忍び笑うまち。「──ともかく目が覚めたらもう朝で、ぱん太郎様もぐっすりだったから、起こすのも悪いし帰って来たの。ああもう、なんであやねも来ないのかしら」 「行くわけないでしょっ!」 「殿方って、いえ、ぱん太郎様って……ホント素敵よ♥ どんな女でも極楽浄土へ案内してくれるんだから。まさしく女泣かせね。昨日も同じこと言ったかもだけど……村の女全員まとめて面倒みてくれるのはあの人しかいないと思うわ」 「だから……私はイヤだって……!!」 姉の言葉から即座に連想してしまった記憶──みことの愛撫、ローターの快美感、そして先ほどの淫夢──を数瞬思い浮かべた後、火を吹くように赤くなった首から上をあやねはブンブンと強く振った。 (考えてみれば最後は全部アイツじゃない……アイツのことを見たり考えたりしながら……私は……!) 「あらあ~? やけに強く否定するわねえ。一体どんな夢を見たのかしら? 夢には無意識の願望が顕われるって言うわよねえ。ウフフ……」 「もっ、もうっ! いい加減邪魔だから出てって!」 とうとう癇癪を起こしたあやねは姉の背をぐいぐいと押し、部屋から追い出してしまった。 障子をピシャリと閉めると、大きな溜め息をつく。 (はぁ、もう……気持ちを切り替えないと──) 早く朝食の仕度を始めよう、そう考えながら、一旦は直した寝衣の帯を解き落とす。紋次郎はというと、巫女姉妹が言い合ってる間にさっさと先に部屋を抜け出てしまっていた。 半裸になったあやねが新しい下着に変えるべく箪笥の前で今穿いているのをずり下げた時、その違和感に気付いた。 股部が離れた際のやけにぬめっとした感触──。 (──ッ!?) ぎょっとして下を覗き込むと、白い布地の“その部分”が、一目で分かるほどに変色していた。ネットリとした糸まで引いて。 「~~~~~!?」 言葉にならない声。その粘液が何であるのかぐらいもうとっくに理解している。カーッと耳まで赤くなったあやねはキョロキョロと室内を見回し、無人であることに心の底から安堵した。気を取り直して素早く下着を脱ぎ、その部分が隠れるよう内側に折り畳んで箪笥の奥に隠す。 「嫌だわ……後でしっかり洗わなくちゃ……!」 代わりに取り出した手巾で股間をよく拭(ぬぐ)ってから真新しい下着を穿き、人の気配が無いかと再度首を左右に振って確認する。誰もいない。 「──はあ…………」 と、あやねは暗澹とした溜め息をついた。次いでムラムラとやり場のない怒りがこみ上げる。眉を吊り上げて手巾を握り潰しながら歯噛みし、 「どれもこれも……ぜーんぶ! アイツのせいよっ!」 と、悔しそうにがなった。まったくなんて夢を見るんだろう。寝る前にしたって……あんなヤツに、だ、だ、抱かれる妄想をしながら……! 恥ずかしさのあまり顔が熟した林檎のようになりながらも、あやねは自分自身にも腹が立って仕方なかった。気付いたのがまさしく絶頂に駆け登る瞬間だったので止めようにも止められなかったのだ。というか気付いてしまったからアイツの姿になってしまったのかもしれない。せっかく行人様を想像しながらしてたのに……! (い、いつ誰が……あんなヤツと……こ、子作りしたいなんて思ったのよ! 私は行人様一筋なのに。あんな……ヤツと…………!) 考えてみればあの姉たちが悪いのだ、と、障子をチラッと盗み見たが、人影は映っていない。とっくにどこかへ行ったようだ。 「……家には私もいるのに、そんなのお構いなしに騒々しくするから、こっちまで調子を狂わされるのよ…………」 「何が狂うって?」 「ぎゃあっ!?」 あやねはいきなり横からニュッと生えたまちのニヤけ顔に飛び上がって悲鳴を上げた。 「な、ななんなのよ一体! いつの間にまた入り込んだの!? ま、まさか──」 「まさか、なあに?」 首までのぼせたように色が変わりあたふたと焦りまくる半裸の妹を生暖かい目で眺める赤袴の巫女。 「い、いえ、何でもないわ……それより何よ! まだ何か用でもあるの!?」 バレている雰囲気を感じないでもなかったが、膨らみのゆるやかな胸の前で腕を組み、あやねは強がった声で問い質した。ただ落ち着かなさだけは抑えられず妙にモジモジとしてしまう。 「ええ、ひとつ言い忘れたことがあってね」 「なによ」 「行人様の今日の予定よ」 「え!?」 途端にあやねの荒い鼻息が収まった。 「ほら、行人様は最近、西のぬし様の代役で見廻りしてるじゃない。どこに行くか判ってれば捜しやすいでしょ?」 「そ、そりゃまあ、そうだけど……」 「今日は南の方を廻るんですって。行人様はその辺キッチリしてるから、ちゃんと予定を組んで仕事してるみたい。それさえ判れば対応しやすいわよね」 「でもどうして急に……? ……まさか、また何か企んでんじゃないでしょうね」 と、あやねは悪戯好きの姉に疑念の眼差しを向けた。悪ふざけの対象に最も選ばれやすいのは他でもない、妹である自分なのだ。 「いやあね、心外だわ。不憫な妹を想って少し情報を与えただけじゃない」 あやねはさらにじいっと姉の瞳を覗き込んだが、微笑みの下にある心算を喝破するのは難しかった。ぱん太郎と付き合い始めてからというものの、まちの内面は確実に変化していて表情も読み解きにくくなってきている。ただそれは印象であってどこがどう変わったと具体的に指摘することは難しいのだが……。それでも昔と明らかに違うことは確かだった。大人びたというか余裕が出てきたというか──男を知ると女は変わるというのはこういう事なのかしら、という思いをあやねは漠然と抱いている。 もしかしたら本当に助け舟を出してくれているつもりなのかもしれない。優越感から来る憐憫の情かも知れないところが素直に喜べないが。 「不憫って部分が引っ掛かるけど……まあ、今回は有り難く頂戴しておくわ」 「行人様にあたっくしに行くの?」 「勿論よ。でなきゃ教わった意味がないじゃない。それに言われなくても元々そのつもりだったしね。今日こそは私の魅力にメロメロになって貰うわよ!」箪笥から一張羅の洋服を引っ張り出しながらケッタイな笑い声を上げるあやね。「そしてあわよくば婚前交渉……二度あることは三度ある……三度目の正直……ウケケケケ!」 都合の良い妄想に浮かれながら意気揚々とめかしこむ妹を尻目に廊下へそっと出たまちは、 「……ちゃんすは与えたわよ。こっから先はあなたが選び取る道だから……頑張りなさいな、あやね」 そう言い残し、頬笑みと共に今度こそ妹の部屋から立ち去っていった。 4 明るく気立てがよくどんな仕事も卒なくこなし、笑顔を絶やさず皆に好かれる人気者のすずは、そればかりでなく羨むほどの美貌と可愛らしさが高い水準で共存している目鼻立ちと飛び抜けたスタイルを誇り、同世代の娘たちの自信を少なからず奪うほどの存在であった。村一番の器量よしであるのはまず間違いない。 恋愛感情からも性的欲求からも最も縁遠かった抜群の美少女──この娘までもがぱん太郎にからだを許して春に目覚め、すっかり関係が定着し、共に暮らしている少年の目を盗んで子作りに励んでいるのは、早い時期から村の間に知れ渡っていたことだった。だが、村人たちの思いやりや行人には教えるなという言い付けなどあって、少女の同居人の耳には届かないようになっていた。言い付けを触れたのは無論ぱん太郎である。島に身寄りのない行人が孤独にならないように、というのが上辺の理由であった。純朴な村娘たちを中心にそれが信じられ、ぱん太郎様は優しい気配りができる方だべ──そういう噂が立った。 しかし真実を言えば、すずをたっぷりと可愛がった後、愛を交わした証で満たされた子袋を抱えさせて行人の元に帰すのが楽しくて仕方なかったからである。二人の関係を断ち切ってしまってはそんな趣向に興じられなくなってしまう。 反面、ぱん太郎には自分の腕の中で気持ち好さそうに喘ぎ、いくらでも種付け射精を受け止めるすずの姿を行人に見せつけたいという願望もあった。これほど極上の娘を奪われた上に合意の子作りをしている事実を知って浮かべる表情は如何ばかりだろうか。中出しされている感触だけでうっとりとした快感を覚えるまでになった姿を目撃する態度はどれ程であろうか──。 その悪戯を思いついたのは、梅梅を抱いていた日のことであった。その日は彼女がぱん太郎を独占できる日であったが、前夜から激しく求め合っていたためとうとう昼前に梅梅が意識をなくしてしまい、仲働きと梅梅の子供の世話に来ていたすずが代役としてベッドに引っ張り込まれた。もう一人の仲働きは、「今日は遠慮するわ」と、少々心残りそうな顔で辞退したのだ。すずとぱん太郎の重なったからだは日が暮れるまで離れることなく、彼女と同居している少年が目撃すれば蒼ざめるどころではないほどの乱れぶりで淫猥な言葉が交され、熱烈かつ濃厚な種付けが繰り返された。 いつものように行人に見せつけたいと思いながらぱん太郎は心ゆくまで青リボンの少女を蕩かし、もはや特に意識しなくとも自然に動きを合わせながら共に絶頂に達し、その胎奥に己が存在を放ちまくった。すずからも何度求めただろうか。 愛された証が溢れないようキュッと膣口を締め、潤った表情と腰つきで帰宅する少女の背中を見送ってからもう一人の仲働きが用意した夕餉を済ませると、ぱん太郎は急に眠気が襲ってきてその日は早めに床入りした。 夢の中でも大勢の女をはべらせ、小者姿の行人を仕えさせて酒池肉林の宴を開いていると、女中をしていた赤袴の少女──まちが誘惑してきたので、上機嫌で寝床に連れ込んだ。命令されて寝台の横に控えた行人は悔しそうな羨ましそうな表情で二人の熱い睦み事を眺める。まちの反応はやけに真に迫った生々しさがあり、ぱん太郎は変な感覚を覚えながらも、(まあいいのん)と、それ以上は気にせず、まちを犯す様子を淫液の飛沫がかかる距離で行人に見せつけながら存分に楽しんだ。事を終えるとまちはフラフラになりながらも満足げに姿を消した。そうして目醒めてみると、まるで本当に交わっていたかのように汗だくで上気した当人が真横に寄り添っていたのだ。 もしかして寝惚けながらやったのかと思って問い質してみれば、夢に干渉できる術法を発見したので、食事に一服盛って試しがてらぱん太郎の夢の世界に入り込んだのだとまちは言う。ぱん太郎はこの童顔巫女が術使いであることを思い出すとともにピンときて、「それじゃあ思い通りの夢を見させることはできるのん?」と尋ねると、「術の使いようにもよると思うけど、自分の記憶を他人の夢に投影するのがあるわ」というのが回答だった。 行人が淫夢を見始めたのはそれからほどなくしてからである。 ぱん太郎の命令に従えばご褒美の時間が与えられるので、まちは嬉々として働いた。 間違いなくとびきりいやらしい情景を見せているとの巫女の言と、ひと月ほどして外出した時に見かけた行人がどことなく虚ろで覇気を感じられなかったのを総合すると効果が出ているとぱん太郎は判じたが、この実験の事を知らせていないすずにそれとなく行人の様子を訊ねると、 「え……? 特に変わりないけど……?」 とのことであった。好きな女の前では虚栄を張っているんだろうとは推測したが、他人の手に委ねている上に夢の中の出来事なので、いまひとつ手応えが掴めないのが唯一の欠点だろうか。 最初にまちが行った夢に入る術が彼女以外でも可能なようなので、すずを連れて直接乗り込むことも考えたが、その場合夢の世界の主導権は見ている本人が握るため思い通りには事を運べないらしく、しかたなく諦めた。 ともあれ、すずとの情交さえも行人に見せつけることが出来るようになったのは破格の展開であった。とやかく言ってもやはり夢であるのが何よりの好都合だ。 清らかであることを信じている少女が夢の中とはいえ別の男と筆舌に尽くし難い行為に耽っているのを、少年はその眼(まなこ)に映す。自分の夢なのに自分とではない。彼が敵視し、忌み嫌っている男と交わっている。少年がこの世で一番許せない男と肌を合わせ、少女はめくるめく快楽を与えられて善がり、二人は恋人同士のように繋がっているのだ……! 大切に想っている少女と憎い男の濃密なセックス。離れることのない下半身。彼女の中で何度も何度も男が果て、その胎内に大量の精液がぶちまけられる。それを許している少女の態度がまた堪らない。全身を震わせながら恍惚とした表情で男の逞しい射精を感じている。味わっている。快楽を追い求めるだけでなく、子作りを目的としたセックス。嫌悪も後ろめたさもなく、胎内で出されているのを感じながら、美しい少女は少年ではない男の子種を腰を逃がすことなく受け止める。 行人にとってはそれが非現実であることが救いで、だから夢から醒めても何も言わず、すずの前ではいつもと変わりない態度を取れているのだろう。 (だけど残念、ばっちり正夢のんっ♪) 行人が見ている夢の内容を考えると、ぱん太郎は有頂天の愉悦が収まらなかった。三人の相関図を頭に描くたびにニンマリと邪な笑みが浮かんでしまう。 (すずちゃんはもう立派なボクの愛人。すずちゃんのオマンコはボクの子種貯蔵庫。おめでたの“順番待ち”に堂々加わってるのん。いつもボクの精液を満杯にして家に送り返してるのに気付いてないのかな? のふふふふ……しかもすずちゃんはそれを嫌がらなくなってんだからね。キミが知らない所でどんどんボクにハマっていってるのん) しかし今さら気付いたとしても関係修復はもう不可能だろう。させる気もない。そのためにもぱん太郎という存在が一生忘れられなくなるほどの“濃密な経験”を与えているのだ。 (キミが大切にしてるあの子はボクとせっくすしてて、ボクに女の悦びを教え込まれてる。清楚なコだったのに、もうエロエロ大好きっ娘になる将来しか考えられないぐらい開発が進んでる。もうエロ娘になった片鱗が出て来てるしね。ぜーんぶ夢の通り、いやそれ以上のん。 例えば、ボクの精液を垂らさないようオマンコを締めながら、すずちゃんはキミに接してるんだからね。一日空けずに抱いた時はオマンコの中がまだグチャグチャだし、数日経っててもまだ奥に残ってたり♥ まあボクのデカマラで穴を拡げちゃったから、どうしても多少は溢れちゃうみたいだけど。 ボクと一緒にセーキョーイクの勉強したから、すずちゃんももうとっくに妊娠の仕組みはわかってる。中で出されることがどんな事なのかわかってる。その上でボクに中出しをおねだりするんだから♥ 中出しされて気持ち好くイッちゃうんだから。せっくすした後でもオマンコの中に残るボクの精液は温かくて気持ち好いんだってさ。家に帰ってキミの前にいてもその温かさや重みを感じ続けてて、ふとした拍子にボクの事を思い出してアソコが濡れて来ちゃうって。ボクとのせっくすの余韻が何日も続くからだよ。キミと一緒にいてもボクのチンポの気持ち好さを思い出したり、中に残る精液でいつボクの子を孕んでもおかしくない状態なのを自覚したりして、ぽーっとしちゃうんだって。要するにすずちゃんの心に同居してるのはもうキミじゃない、ボクなの♪ キミといる時もすずちゃんはボクのことを考えながら、ボクとセックスした余韻を感じながら、子宮の中でもすずちゃんとボクの分身が愛し合ってる……なんて最高の状況のん♥ えーと排卵? ってのは月に一度らしいけど、もしキミの傍にいる時に受精が起こったりしたら、もう……最高の最高だね。……のの、すずちゃんもいつボクの子を孕むか楽しみで仕方ないのん♥) 村に舞い戻ったその日からすずへの種付けは始まったから、月日としてはもう四ヶ月を過ぎているだろうか。抱いた回数はもはや数え切れない──が、妊娠の兆しはまだ来ていない。 やりすぎもかえって妊娠しずらいという説もあるらしいが、カラダの抱き心地もアソコの具合も反応も男への尽くし方も、すずは何もかもが佳すぎてついつい日を置かず求めてしまうのだ。しかし梅梅との逢瀬が始まった一年ほど前、当時は彼女しか相手がいなかったため、連日同じかそれ以上に抱いたものだ。それでも梅梅は孕み、無事に元気な赤ん坊を産んだ。子宝は天の授かり物と言うし、すずの他にも身篭っていない女は何人もいる。今のところ寝た女は余すところなく全員孕ませているぱん太郎の自信に揺るぎはなかった。 すずも絶対に孕ませる。他の娘たちもその母親たちも一人残らず孕ましてやる。その慾望は一寸たりとも衰えたことはない。そしてそれはもう──絵空事ではないところまで来ているのだ。 (イクト君にはエロい夢だけ与えておけばいいのん。……あー、ひょっとしたらそれでシコッてる可能性もある?) それはあながち見当違いではないように思えた。やりたい盛りの若いオスはとにかく性欲の抑制が難しい。何とかして解消しないと日常も落ち着いて過ごせないものだ。ぱん太郎も初めて発情期を迎えた時はただただメスを捜し求めた。それが本能であるし自然なこと──今のぱん太郎が言えた義理ではないが。 (お年頃の童貞だしねえ。夢であっても他人とであっても、好きな娘がとびきりいやらしくせっくすしてるの見ておっ勃たない方がおかしいの。ボクなら我慢できないね、躰が勝手に反応しちゃうのん。いいのんいいのん、存分にセンズリこくといいの。ボクにハメられて悶えてるすずちゃんをおかずにしてさ♥) そういえば自慰などまだ出会いのなかった若い時分にしか経験がない、とぱん太郎は昔を懐かしく振り返った。だが、石を投げれば女に当たるこんな環境にいて自前で処理するなど馬鹿馬鹿しい限りである。しかも、こんなに佳い女ばかりの桃園で。 盛りの女たちは母も娘もスタイルや肉付きに恵まれた者が多く、肌のはりつやも誰もが見事なもので実に抱き甲斐がある。体形が崩れている女は皆無で、母親連も出産経験があるとは思えないほどの腰のくびれようだ。皺や贅肉を見つけることの方が難しい。ぽっちゃり型や男のような大柄の体つきもいるが、愛嬌があって愛くるしいし、巨躯のぱん太郎にとってはむしろ抱きやすく重宝していた。女の平均値が高いのは、遺伝が優れているのもあるだろうが、日々よく働きよく休みよく食べよく寝る、そんな極めて健康的な生活を送っている証拠だろう。また、大ヌシの加護に包まれたこの島で生まれ育ったお陰もあるかもしれない。 何はともあれ、すべての女をぱん太郎が取り上げてしまえば、自然(じねん)、行人は自ら慰めるしか方法はなくなる。この狭い村の中、ぱん太郎に開発されていやらしいメスの匂いを振りまくようになった女たちに接しながら、頑なな性格のために手を出せずに悶々とした日々を送るのは、さぞや生ける地獄になるだろう──そんな状況に追い込んでみたいものであったし、それは決して夢物語ではないどころか早晩達成できそうな現実味があった。 ただ、行人はこんな女人の里で年単位を過ごしながらも誰にも手を付けなかった堅物である(そこがぱん太郎の付け入る隙でもあったのだが)。好きな娘ではかえって昂奮しない類なのかも知れない。そういう純情な男もいる。だがそれもやはりすずに対する気持ちの表れとなるので、どちらにしても既にすずと懇ろな関係になっているぱん太郎にとっては格好の肴になるだけであった。行人が想っている娘を存分に犯して快楽に善がり狂わせ、種付けを繰り返すのは最高の気分だ。 兎に角も、現実と乖離した夢の世界で現実そのものを見せることが出来るというのは素晴らしいの一言だ。どんなに姿をさらけ出そうが決定的な証拠にならず、堂々とすずと絡んでいる所を見せつけられる。今やぱん太郎の巨根を苦もなく受け入れ、濃厚なセックスにすっかり夢中になったすずの美しくも淫らで浅ましい痴態。行人が気にしてやまないこの美しい少女と心ゆくまで愛し合い、最期は深々と突き挿しながら種付けている場面をいやというほど見せつけられる。 ぱん太郎はそうして、すずとの情交をより深めていった。 自分を愛する男の熱情がさらに増したことに敏感に気付くと、少女の反応もさらに昂ぶりを見せた。好循環とはこのことか。すずと交わるたびに彼女との絆が強まっていく気がして、心も、躰も、そして運命さえも行人から奪い取っていく充足感があった。 いや、すずだけではない。 まちも、ちかげも、梅梅も、ゆきのも、りんも、しのぶも、みちるも。 行人と特に親しい九人のうちの八人。村の娘衆の中でもぱん太郎が殊更狙っていた、行人と太い縁(えにし)がある粒揃いの美少女たち。 自覚のあるなしに関わらず各人に育まれてきた行人との想いの絆をバリバリと引き剥がし、妙齢の少女たちを肉慾の膠(にかわ)で我が躰(たい)に癒着させていく過程と感覚は甘美としか言いようがなかった。 この少女たちがぱん太郎と関係したのを知っても、少年は依然傍観するだけであった。彼女たちに歩み寄りさえしなかった。まるで自分には関わりのない冷たい無機物のようにそっぽを向いていたのである。その間にぱん太郎は遠慮なくぐんぐん行動し、一人また一人と逞しい腕に抱きすくめて搦め捕り、たっぷりと時間をかけてそのからだに快楽を教え込み、すず達を肉悦の熱い坩堝に熔かし込んでいった。男に免疫がない処女には劇的すぎる情欲の炎。あれよあれよという間に取り込まれていく彼女らに、行人の救いの手は────ついぞ差し伸べられることはなかった。 八人はぱん太郎の腕(かいな)に抱かれたまま、からだがとろけ、こころがとろけ、怯えや迷いのあった顔は解放されて性の陶酔の表情を浮かべながら、とうとうぱん太郎と一つの運命に癒合していく。 一個の男体に八つの女体が繋がったおぞましくも淫靡な肉塑像。梅梅は肩まで呑み込まれ、一番症状の軽いゆきのでさえ腰まで沈下していた。すずは──臍から下はもう同化していて、なおも目に見える早さでずぶずぶ、ずぶずぶとぱん太郎の躰に溶け込み、しっかりと抱(いだ)かれながらからだの境い目が無くなっていく真っ最中であった。 ぱん太郎から絶えず送り込まれる歓喜の極まりとも言うべき濃密な精髄に娘たちは悦び打ち震え、己の形(なり)を顧みることなく、凄艶にくねり踊る。性愛の女神のような光に潤む、感性が塗り替えられた少女たちの瞳。永劫の情動に焼き焦がされる思念。ぱん太郎の腕が順繰りに八人の下腹部に沈むと、出番を迎えた少女から理性が消し飛んだ歓呼を上げて身悶える。喜悦の精髄を送り込む猛々しい肉管で最奥まで支配された生殖器を直接揉みしだかれたのだ。それはさながら男根をしごく行為にも似ていた。悪魔の手業で与えられる尋常ではない刺激。想像を絶する愉楽。この世のものとは思えないほどの肉の疼き。背徳と退廃の音色がひいひいと八つ重なる。淫らな雌の慾望で精肉された八つの女体が織りなす色魔の嬌態、全員の自我は敵いようもなくこの世のものとは思えぬ快楽に囚われ、からだがバラバラになりそうなほどの法悦の境地に至る。まさしく其処が女たる少女たちの弱点、肉慾をおぼえた後宮の中枢であった。注ぎ込まれた嬉髄が彼女たちの胎(はら)で次から次へと契約の実証を果たし、果たしては消える。だが何人かの中ではひときわ大きく燃え上がったかと思うと、消えずに淡くも確かな熾火が宿った──。 (うにゃ、ああ、ひぐぅ、ひぃん……♥ 行人、行人ぉ、ごめんなさい、でも、でも、行人もいけないんだよぉ……私のこと、ぜんぜん構ってくれないんだからあ……♥ 行人がこんなコトしてくれれば、私、私ぃ……♥!) 青リボンの少女の生殖器は誰よりも丹念に揉みしごかれ、内部でひときわ躍動する肉管が脳内を狂わす信号を矢継ぎ早に流し込む。子宮は男の精髄で隅々まで満たされ、何度も熾火が生まれては根付こうとする。胎(はら)の奥に溜まる熱い快美はもはや自分では抑制できず、固い意志を形成することなど叶わずに男に身を委ねてしまう。 少年が指一本触れて来ようとしないことは、少女自身が最もよくわかっている。だからこそこうなってしまっているのだ。 すずの胎内に遠慮なく流し込まれる精髄の中に心温まる関係を築いてきた少年のものはわずかばかりもない。つい数ヶ月前まで何の関係もなかった男──そんな男の存在ですずの生殖の中核は満たされ、明滅が繰り返される。新しく点されるたびにそれは強さを増していく。全身が砕けそうなほどの快楽の波に呑み干され抗う気力はとっくに潰えていた。男に屈して征服されるのが痺れるほど心地好い。孕んで産めと言うのなら、それに隷(したが)う他もう考えられなかった。すずは自分が変わってしまったのを感じている。そこからさらに変貌させられる。後戻りできないほどの自分に変わってしまう予感。 しかし男から与えられる支配と快楽はその恐怖心すら打ち消していた。 行人は気付かない。気付こうともしない。 それなら何もかもこの人に身を委ねれば良い────。このことは内緒にして行人の世話を続けていいって言ってくれてるし────。 そう思うとからだも気持ちも軽くなる。至福の心地だけを感じていられる。 もう……離れられない。 でも、これでいいよね────。 さらに癒合が進んでゆくのに気付かないすずだったが、尽きせぬ情慾に眩む眼に遠く人影があるのには気付いた。 (あれは………………) 徐々に距離が縮まって大きくなるその背中を、すずはいやというほどよく見知っていた。白リボンで髪をツインテールにまとめた青袴の少女。まだ清らかなからだを保ってる数少ない乙女のひとり。 (だめぇ…………あやね………………!) すずは声を出そうとしたが、男から一段と随喜を送り込まれてぐにぐにと生殖器官をしごかれると、途端に無上の悦感で脳神経の末端まで痺れてしまい、あっという間に言葉も思考も駆逐された。 (だめぇ……♥) 男からからだを引き剥がせない。いつまでも繋がっていたい──本心からそう思ってしまう。この熱くて逞しい肉と、メチャクチャになるほどの気持好さを送ってくれる男と……。 青袴の少女を心配そうに見つめた瞳にだらしない淫らさが宿り、新たな嬉悦の涙が溢れる。尖るほど勃っていた乳首がさらに固く膨らみ、全身が性感帯になったように敏感になる。「にゃあぁ……ああぁ……♥♥!!」 「すずちゃん、あのコもボクたちの仲間に入れてあげよう。この輪の中に。あのコも気持ち好くしてあげよう。全員でボクの赤ちゃん産もうよ。友達を独りぼっちにするのは可哀想……だよね?」 感じやすくなった肌をさわさわと優しく撫でられ、それだけで何度も軽くイッてしまう。 「ふぁ……ふぁい………………♥」 逆らえない中で、それもいいかな──と、少女は思ってしまった。だって独りぼっちは寂しい……皆んな一緒なら────。 そうして、行人と最も心を通わせていた青リボンの少女でさえ性交快楽漬けの肉棒奴隷に堕とした男の長い腕が、白リボンの少女のすぐ後ろまで迫っていった──── (第17話に続く) 上に戻る
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「ううん、涼しくて気持ちのいい夜だね」 冬木市の市街地、高層ビル群の一角、その屋上にて1つの影があった。 木訥な、悪し様に言えば特徴のない学生だった。 強いて特徴を言うならば、横に長く切れた細目と首からかけたマフラーくらいだろうか。 開いているのかどうかも怪しい眼は、夜の街並みを見下ろしながら、薄笑いを浮かべている。 「お前も予選を突破した魔術師か」 静かな夜に靴底とアスファルトが皹を入れる。 屋上へ通じる唯一の通路から、別の少年が光と共に現れる。 制服が同じ、ということはお互い同じ学校の生徒なのか。だが、その瞳は少年と異なり、強い意志に燃えている。 「……なんのことです?」 「とぼけるな。ここにいるということは、お前はもう記憶を取り戻したんだろう。 なら、やることは一つだ。サーヴァントを出せ。さもなくば……」 一方的に喋りながら、回路を戦闘用に切り替える少年に、彼は手を振って静止を求める。 「ちょ、ちょっと待ってください。記憶を取り戻したってなんのことですか? 僕は何も忘れていない。それにサーヴァントって何の話です? 僕はそんなもの見たことも……」 「セイバー、やれ」 少年が言の葉を放つが先か否や、月光に煌めいた一閃と共に、彼の首が夜に飛んだ。 その切っ先の終点には、実体化した少年のサーヴァント……セイバーの剣があった。 「よろしかったのですか? 見る限り、本当にマスターではなかったようですが」 剣を納めたセイバーが主を問う。しかし、そこには詰問するような調子はない。 「ああ。だが、疑わしい者を残す理由もない……軽蔑するかい、セイバー」 「いいえ。貴方がどれほどに聖杯を望んでいるかを私は知っている。 そして、私もまた聖杯を望む者。ならば私は貴方の剣となりましょう」 セイバーの応えに、少年はそっぽを向けた。僅かな感情の緩みを見られたくなかったからだ。 セイバーの問いはもっともだった。確かにその体からはマスターの証である令呪の気配がない。 それが事実だとすれば、彼はたまたま基本ルーチンから離れたNPCなのか。 ならば、これは少年の勘違いだ。剣を納めるべきは自分だし、もし自分の感情だけに従えるならそうしていた。 だが、今の少年は背中に大きなものを背負って、この方舟に来ている。 その勝利のためならば、あらゆる不安要素は排除しなければならなかった。 全ては、救済のために。猫の額程度もない小さな世界を守りたいため。 (それに……あのNPCの目……あれは、まるで……人を蟻か何かとしか思っていないような……) 「ひどいなあ、待ッてクれっていったじゃナい可」 その声に、少年達は振り向いた。月光の降り注ぐビルの屋上に、首のない肉体が立ち尽くしている。 「何で、死んでない」 「? そりゃそうだろう。NPCに厳密な死なんてないよ。 中核データが破損でもしないかぎり、ねえ」 「NPCの肉体データに、寄生していたというのかッ!」 「ウン、そりゃそうだ。せっかくこの年になって学生をやれるんだから、ちゃんとそれっぽい身体でやりたいダロ?」 手を大仰に広げた屍は、口ほどに物を言った。その意味に、少年は信じられないと首を振る。 こいつはつまり、突破できる予選を、ただの学園生活をギリギリまで楽しんでいたのだ。 「ダカラ、待ってくれっていったじゃないカ。今、本当の身体にするカラネ」 そう言って首のない彼の指が小気味よい音を鳴らす。 その瞬間、少年の踏みしめていた足場が崩れた。コンクリートであったはずの床は、 難読な文字をびっしりと書かれた呪符と散らばり、拡がっていく。 「ビルを1階分丸ごと偽装していたってのかッ!?」 「マスター、あれをッ!」 驚愕に震える少年に、セイバーが指を示す。偽装を解かれたビル、その本当の屋上の中心に、首のないもう一つの身体があった。 でっぷりと膨らみ、しかしみずみずしい筋肉に包まれた偉容だった。 「カ……ッ!」 首のない学生の胸が大きく膨らんでいく。胸骨肋骨、肺をぶち破って出てきたのは。 「ッカカカカカカカカッ!!!!!!!」 その真の身体に納められるべき、本当の首だった。 「私は今、卒業したネ!(しみったれた学園生活用ボディから) 社会派幽凄道士・馬吐呑(マー・トンツー)と呼んでもらっても構わないヨ!」 鉄の魔神めいて首と肉体が合身し、ただの肉の置物だったその身体に神経が通る。 しばしアドミナブルを隆起させて元の肉体を堪能していたが、それを見ていた少年はただ唖然とするほかなかった。 「……さて、お待たせして申し訳なイ。それじゃあ、相手してやるかネ、セイバー君ッ!!」 「な!?」 義体から戻したマフラーが馬の身体に巻き付きトレンチコートを形成する。 それが如何な魔術によるものか、少年には考えることができなかった。 マスターであるはずの男が、セイバーに突撃したのだ。 「ふふぅ、うふふふふふふううう」 「こ、こいつ! 骨に神秘を刻んでいるのかッ!!」 掌打、蹴撃、なぜか自在に動き襲いかかるマフラー。あらゆる変則的な攻撃にセイバーは防戦一方に追い立てられる。 通常、このようなことはあり得ない。 セイバーとてムーンセルに記録されるほどの猛者ではあるが、 この男の用いるのは中国拳法……功夫と呼ばれる物。西洋の技と東洋の技の噛み合わなさが、セイバーの攻めに転じられない理由だ。 だが、それだけではセイバーの剣を、神秘に守られた兵装をただの拳が防ぎ、打ち合うことができるはずがないのだ。 肉体そのものが、神秘の片鱗を宿していない限りは。 「それでも、サーヴァントとは言え英霊と渡り合うなんて……! 真逆、お前、死徒かッ!? そんな奴がなんでこの聖杯戦争にッ!?」 「西洋の保菌者みたいに言われるのは心外だな。 いやなに、ちょっと「向こう側」永い旅をしていたんだが、そこで物珍しい木を見つけテネ。 植林事業に手を出そうかと思った矢先にここに呼ばれたんだヨ」 セイバーと撃ち合いを繰り返しながら、馬はしみじみと思い返すように昔を思い返した。 逆さまに上っていく滝、フラタクル構造をした虹、鳥のような魚。 ちょっとしたアトラクションめいた世界を満喫していたのだが、そこで方舟の元となった木を見つけたのだった。 いや参った参った、と可々と笑う馬に少年は頬に冷や汗を垂らした。 馬鹿馬鹿しく笑ってはいるが、相手は紛れもなく死を纏った人外……死徒だ。 音に聞こえる二十七祖ほど、とまでは思わないが、マスターとしては破格すぎる。 なるほど、セイバーと打ち合えるのも無理はない。だが。 (感謝します。マスター、もう少しで、読み切れる!!) 少年の心憎いサポートに、セイバーは内心で感謝した。 そう、僅かにであるが、セイバー防戦一方から攻勢へと転じつつあったのだ。 如何に相手が死徒であり、相性の悪い東洋圏の技法を用いていたとしても、それでもセイバーは英霊だ。 どうやら長旅で相手の自慢の肉体は何割か消耗しているらしく、 初見の不利は、この撃ち合いで相手を見切ることでなくなりつつある。 あと1分もしない内に、天秤は、勝利はこちらに転がる。 ((この戦い―――我(僕)等の勝利だ!!) 「――――とか、そういうことを考えるあたりカネ」 酷薄な、嘲るような笑みを馬は浮かべた。 人間を超越した化外の瞳を隠すサングラスに写った像をセイバーは見入る。 セイバーの勝利を確信した少年の背中にはそれまで影もなかった男が一人立っていた。 「マス」 「や、本当に知らんかったんだヨ。一度も見たこともなかったしね。 ま、ずーっとワタシを見張っていたことはわかっていたけどネ」 「あ、あぁ……」 セイバーが振り向いて、馬が嘲ったその向こうに、鮮血が跳ねた。 少年の背中から胸に貫いた赤い刃が、華のように咲き誇る。 「タアアアアアアアアア!!!!!!!!!」 鬼神の如き速さで、セイバーは一太刀を繰り出すが、黒衣の男…… アサシンは素早く――もうこれには興味がない、というように――剣を少年から引き抜き、血溜まる海に少年を沈めながら飛び退いた。 マスターが窮地に陥っても助け船を出すこともなく、マスター暗殺の瞬間をねらっていたのだ。 「貴様ああああああ!!!!」 「ご満足いただけましたか、媛。それは重畳にございます」 吠えるセイバーの声など木の葉の落ちる音程度も感じない様子で、アサシンは虚空に向けて何かを呟く。 延びた黒髪の間から見える赤い瞳は淀んで血のように昏い。 セイバーはマスターを抱き抱えて呻いた。臓腑を吐き出さんばかりに後悔した。 なぜ気づかなかった。死徒の存在に目を奪われ、マスターを追いつめた程度で油断してしまっていた。 これは聖杯戦争だ。サーヴァントこそを何より警戒しなければならなかったのに。 「セ……セぃ、ァ……」 「ま、マスター! まだ意識がッ!!」 その後悔に神が気まぐれの善意を差し向けたか、少年は血を泡と吐きながら呻いた。 揺さぶろうとするサーヴァントの手を払い、そのまま右手を月に掲げる。 「さ、三度、重ェて、令呪に願…………」 「! 了解した、マスター。如何な命令とて、この剣にて叶えて見せよう!」 鬼気迫るマスターの表情に、セイバーは自分の愚かさを改めて呪った。 今すべきは自身を責めることでも、マスターを案じることでもない。この死地をなんとか突破することだ。 三度の令呪を切れば、どうなってしまうかはわからない。 だが、出し惜しみできる状況ではない。ならば、ここに乾坤一擲を賭す。 アサシンも死徒も、最低限の構えだけで積極的にこちらに向かってくる気配はない。 令呪三枚掛けのセイバー相手に太刀打ちは不可能と理解しているのだろう。 今は見逃してやる。だが、次こそはしない過ちはしないと誓い、剣をーーー 「あのアサシンの剣を奪え……! なんとしてもだ……ッ!!!」 意味が、わからなかった。あのアサシンの――今はもう背中に仕舞ってある――剣を奪うことに何の意味があるのか。 分からなさすぎて、セイバーはもう一度マスターの方を向いた。 血の抜けた青ざめた顔で、少年は目だけは爛々とさせている。 そこでセイバーは気づいた。気づいてしまった。マスターが、少年が見ていたのは自分ではない。 聖杯に注ぐべき願いでもない。帰りを待つ人達でもない。 もう、自分の心臓を貫いた、あの紅い刃しか見えていないのだ。 「う、うあああああああああ!!!!!!!!」 セイバーは慟哭と共に剣を振りかざした。 そこからのことは語るまでもない。 対魔力で令呪にあらがっても、令呪のまま逃げに徹するアサシンを追おうとも、 もはや彼らの聖杯戦争に先などないのだから。 「いや、手並みは拝見させてもらったヨ。アサシン」 霧散した魔力に手をかざしながら、馬呑吐は満足げな表情を浮かべた。 それは相手を倒したからというより、久しぶりに運動をしたら気持ちがよかったというたぐいの物だった。 「それで? ずーっとワタシを見張っていたのだろウ? 見ての通り、長旅で自慢のボディもクタクタネ。 フルチューンならともかく、撃ち合いにしても道術にしても、英霊相手ではちと分が悪い。 ここは共に戦っていくのが良いと思うが――どうかネ?」 「……私は、特に聖杯に捧ぐような大望などありませぬ。 マスターが望まれるのであれば、英雄相手にどれほど通じるかわかりませぬが、尽力させていただきましょう」 片方の拳をもう一方の掌で包み、礼を取りながらアサシンは謙虚に応じる。 自己をおくびにも出さないその様は、生粋の職業暗殺者に見えた。だが。 「ふぅむ。それはその背中に差した媛君の意向カネ?」 「――」 りん、と鈴が鳴る。その音が鳴り終わるより速く、アサシンの持つ紅の刃が馬の喉元に寄せられる。 (婁よ、こやつ――) 「ええ、聞こえておりますよ、媛君。なるほど、げに恐ろしき魅了の魔力。 これでは有象無象の者共はひとたまりもありますまい。私にその美貌効かぬとその美声聞こえしは、 どうやらマスターとてつながった経絡によるものかト。 間男が入ったようで恐縮ではありますが、野暮は致しませぬ故、どうか容赦願いたい」 (……ふん、妾を納めよ、婁。こいつも上物であるが、これは後回しじゃ。今は数が欲しい) 「……はッ」 嘘くさいほど慇懃な礼を取る馬に、媛……アサシンの宝具はアサシンに命じると、嘘のように殺気を納め、剣を戻した。 そう、このアサシンの主人はマスターなどではなく、この媛君。 一目その刃を見れば誰もが媛を求め殺し合う妖刀である。 故に、その願いもまた聖杯ではなく、媛ただそれのみ。媛の求める供物を献上するだけだ。 「ま、いいんじゃないかネ。願いはないと思っていたんだがこれも一期一会、 そろそろ住み慣れた惑星(ふるさと)の地を踏むのも一興。 ついでに麻倉屋サンに聖杯を持って行けば、いい商談もできそうだしネ」 アサシンの剣呑な意志を、人間にはよくあることとばかりに捨て置き、 馬はピクニックに行く前日のように夜空を見上げた。 いや、実際彼にとってはそうなのだ。どのような場所であろうとも、旅の途中。ただ己の我を貫くのみ。 「おい、凄い音がしたけど、何かあった――」 あまりの状況に特別ルーチンでやってきた警官NPCを、無言でアサシンが手刀で貫く。 くず折れた警官は、たちまちのうちに黄泉より還り立ち上がる。 死体が呻くより先に、馬が呪符を額に張り付けると、NPCはたちまち両腕を正面に直角につきたて、ぴょんぴょんと跳び始めた。 「ま、最初はゆっくりやろうじゃないカ。聖杯は逃げない。人生は永い。 愉しまなければ損ネ。か、カカカカ、カカカカカ――――――!!!」 NPCをキョンシーに変えながら、死人使い達は進む。 いつも通りに、何も変わらず。 結果的にこの世を、地獄にしながら。 【クラス】アサシン 【真名】婁震戒(ロー・チェンシー)@レッドドラゴン 【パラメーター】筋力D 耐久E- 敏捷B+ 魔力D 幸運C+ 宝具C 【属性】中立・悪 【クラススキル】 『気配遮断:A-』 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。 【保有スキル】 『黄爛武術(剣術):B(A)』 東の旭日、黄爛国に伝わる武術を扱うスキル。実質的にスキル:中国拳法と同等。 ただし、アサシンは剣技を得手としているため、剣装備時にはB→Aとなる。 『単独行動:B』 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日は現界可能。 独立調査隊から何度も抜け出して暴れまわった逸話から。 『芸術審美:D+』 芸術作品、美術品への執着心。 芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、ごく低い確率で真名を看破することができる。 特に刀剣関係に由来を持つ英霊であれば、確率が上昇する。 『軽身功:C+』 内力を操作することで、己の身を軽くし悪路を容易く突破する能力。 C+ならば準備さえすれば断崖絶壁すらも踏破可能。 【宝具】 『妖剣・七殺天凌(チーシャーティェンリー)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉 1人 アサシンが片時も離さず持つ『愛』刀。その剣に宿る意志は妖艶にして酷薄な媛君。 魅了の魔力を持っており、その刀身の輝きを目にし、囚われた者はこの妖剣を欲しがる衝動の奴隷となる。 命を食らう性質をもち、相手の防御力を無視して生命力へ直接ダメージを与えられる。 そして、その刀に殺された者の生命・魔力は余すことなく媛への供物と食い尽くされる。 『天凌府君、其我也(わくわくてんりょうランド)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:1~50人 一度死し、復活したアサシンが手に入れた呪い。その手で殺した者を強制的に還り人……歩く屍へと変える。 そして、アサシンに直接殺されて蘇った屍に殺された者もまた蘇り、アサシンの支配下に置かれる。 ただし、蘇った者には狂化・Bが付与されるため精密な運用は不可能。 また、七殺天凌で殺したものも屍とすることはできない。(命を吸い尽くしてしまうため) アサシンは創り上げた屍の群れを国家『天凌』と定め、自らを『天凌府君』と名乗った。 『無二打(にのうちいらず)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人 アサシンの奥の手。武技の極意。 攻撃ダメージ発生時に、自身の生命力の一部を上乗せすることで追加ダメージを与える。 追加する量はアサシンの任意で決定。また、媛の合意さえあれば七殺天凌が喰らった生命力をこの宝具に乗せることができる。 【weapon】 機械左腕(サイボーグアーム・レフト) 当時の最高技術を持って創られた義手。アンカーリールが内蔵されている。 仮面 舞踏会用のただの仮面。死者の王・天凌府君としてふるまうときに装着する。 【人物背景】 世界を二分する大国、黄爛の宗教組織・八爪会に所属する武装僧侶(暗殺者)。 他者評価は「殺せるか否か」だけで、媛に吸わせる血としか見ていない。 視野の隅を「凝視」する特技を持ち、暗殺対象の必死の瞬間を狙い続けている。 一応国家の暗殺組織に所属するが、傅くのは媛だけであり、他人に従う気は皆無。 物語本編では媛の供物にするためだけに仲間を裏切りってもう一つの大国・ドナティアの要人を殺害し世界を緊張に叩き込んだ。 その結果、彼は一度死ぬが、世界の特殊なシステムにより還り人(平たく言うとゾンビ)になり復活。 舞台であるニル・カムイすべてを媛に捧ぐべく、死者の群れ『天凌』を率いてニル・カムイを地獄に叩き込んだ。 しかしその内心は媛への愛だけであり、媛に見捨てられることを何よりも恐れている。 【サーヴァントとしての願い】 聖杯戦争はどうでもいいので媛を愛する。愛する人が命を欲しがっているので当然捧げる。 【基本戦術、方針、運用法】 隠密行動からの暗殺一択。正面きっての戦闘では勝ち目はほとんどないため、如何に奇襲に持ち込むかが要になる。 NPC狩りで増やした天凌国民をスナック感覚で送り込んで、その混乱に乗ずるのも有効だろう。 【マスター】馬呑吐(マー・トンツー)@宵闇眩燈草紙 【参加方法】「向こう側」でぶらり旅をしていた際にゴフェルの木片を手に入れた。 【マスターとしての願い】情欲のままに旅の続きを。 これが終わったら聖杯を土産に「こちら側」に戻るのもいいかもしれないネ。 【weapon】 『強化調整肉体』 ヒヒイロカネ製骨格フレームに生きたまま腑分けした少年少女の筋をあしらったお手製のボディ。 ただし、向こう側での冒険で疲弊しており、完全なスペックは発揮できない。 『マフラー』 意のままに動いてあちらこちらを切り刻む。しかもドリルにもなる。 『呪符』 道術や身代わりに使う大量の符。どこに仕込んでいたか聞くのは野暮。 【能力・技能】 『真・幽棲道士』 死んで私に抗えるものはいないと豪語するほどの、僵尸(キョンシー)を操る死人使い。 吸精鬼であり長い時間を生きているため、符術・道術・功夫を高水準で修めており、 死体の数さえあればそれらを束ねて巨大傀儡にしたり、マフラーを武器にして戦うこともできる。 技術者としてのスキルも持ち合わせており、死体を改造して強化キョンシーを作成することもできる。 死人使いの特性上、相剋の関係から木気(雷)との相性が悪いが、肉体的基礎スペックを底上げすることで対処した。 もちろん銀やニンニクなど吸血鬼的弱点があるが、大体は克服しており「健康のために日光浴をする」レベル。 【人物背景】 大陸マフィアの用心棒。トレンチコートに帽子にグラサン付けたクラシックマフィア然としたデブ。 その傍ら、五行器という永久機関の完成を目論んでいた。 が、その過程で首から下を完全消滅させてしまい、もののついでとより強化された肉体製作のために アメリカ大陸の街一つを『向こう側』へ消滅させた。しかしその最後に自分も『向こう側』へ 吸い寄せられてしまい、抗おうかと思ったが、それもOKかと穴の向こうへ消えていった。 口調は余裕のある時は胡散臭い中国語(~アルネ)だが、マジギレしたりすると標準語になる。 長く生きたため本来なら仙人へ至れるが、「情動を捨てて何が生か!」と俗世を満喫している。 【方針】 本人は巻き込まれただけなので普段通り物見遊山。 普段通りなのでアサシンの求愛活動ついでにさくっと殺してキョンシー作ったりする。 倒すことはできないまでも初見ならば真向からでもサーヴァントと打ち合えるので、 自身(とキョンシー軍団)が囮となってサーヴァントをひきつけ、その隙にアサシンで必殺するのが有効。
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その日の朝は夜中に少しだけ降った雨の痕跡も見えず、いつものように気持ちのいい青空が広がっていて、 街の人々はその下で皆思い思いに午前の時間を過ごしていた。 6月も上旬になるとだんだんと薄着の人が街に溢れてくる。気温と湿度は日増しに上がっていて、 大学の売店からはアイスクリームが売り切れた。 大学では迫りくる定期試験に向けて学生たちが情報を集めようと東奔西走。 自然と街から学生たちの姿は減り、女木戸市の昼はいつもより静かだった。 人が居ないほうが都合がいい――私は天照研究所の片隅でそう思った。 静かな街なかとは対照的に、研究所内は朝から騒がしかった。研究員たちは皆廊下を走りまわり、 どこどこの数値が異常だとか、なになにの薬品の化合が遅れているだとか、 そんな連絡を怒声とも似付かないような大声で交わしている。 私も力になりたいと思い、何か手伝えることはないかとノートパソコンを叩く因幡命に訊いたが、 彼女はひどく不機嫌な顔で「邪魔にならないとこでゲームでもしてろ」とだけ返してきた。 仕方なくラウンジで紅茶片手に友達とメールをするしかないのだが、やはり落ち着かない。 皆ががんばっているのに私だけ何もできないなんて。 そのとき、ラウンジの目の前を八意が通り過ぎる。私は反射的に声をかけていた。 「む、何か用か」 八意は足を止めて応えてくれた。私はずっと気にかかっていた疑問を口にする。 「シンブレイカーも無いのに、いったいどうやって『×』を撃退するんですか」 「そのことか」 八意は眼鏡の位置をなおす。 「説明は長くなるから、実際に見たまえ。ドームにくればすぐわかる」 ドームの中には昨日見たときと同じように大型の奇怪な機械がずらりと並んでいて、 その間を研究員たちが駆け回っている。この中でも様々な専門用語を織り交ぜた報告が飛び交っていた。 八意は私を引き連れてドームの中央へと向かう。その間にも研究員たちの報告に様々な対応指示を 出している姿を見て、私は彼の細い背中が不思議と広く思えた。 「今回はこれを使う」 八意が足を止め、目の前に横たわるものを示した。私はそれを覗き込み、ぎょっとする。 「これ……!」 「そうだ、『カオスマン』だ」 ドームの中央に横たわっていたのは、例の仮面の忍者――カオスマンだった。 彼の体にはまるで手術中の患者のように無数の針やケーブルが突き立てられていて、 それらは全て周囲の機械群につながっている。いや、カオスマンが繋げられているのではなく、 最初からここにある機械はすべて彼の体に収束するように配置されていたのだ。 「今回はこれをシンブレイカーの代用とする」 「そ、そんなことして大丈夫なんですか?」 「ぎりぎり死にはしないだろう」 彼はこともなげに言い放ったが、それはつまり死にはしないが、 瀕死になる可能性はあるということだ。私は非難の目を彼に向けた。気づいた八意は肩をすくめる。 「これ以外に方法が無いのだからしかたない」 「でも……!」 「彼は魔学のトラブルによって生まれる被害を最小限にするためにその身を捧げた男だ。こうなるのは本望だよ」 ここでうだうだ問答を続けるのは良くない。そう判断して押し黙りつつも、 納得しきれない私は横たわるカオスマンを見下ろした。彼の素顔は仮面に隠されて見ることはできない。 いったい彼はその下でどんな表情をしているのだろうか。 「じゃあ……せめて、彼の名前を教えてください」 私はそう言った。犠牲になってくれる人がいるならば、その人に誠実でなければならないはずだ。 「本当の名前を……『カオスマン』ではない、本当の、彼自身の名前……」 「すまないが、それはできない」 八意はすっぱりと言った。 「なぜですか」 「『名は体を表す』との言葉があるように、名前は重要だ、とくに魔術の世界ではな。 彼は『カオス』の名を冠することで、巧妙精緻で厳格な理論の下で生まれた『×』らを倒す力を得ている。 彼を『カオスマン』以外の名で呼ぶことは、彼から戦う力を奪うことなのだよ」 「そんな……じゃあ……」 じゃあ私は、犠牲になる人の名前も知ることができないのか。 愕然とする私の肩に手を置く八意。 彼はそれ以上何も言わず、また、私も何もできなかった。 ――女木戸市南方、三州川。 ほとりに花畑が広がり、生き物も多く生息するこの川は、古く清らかな流れをたたえている。 そこでひとりの中年の男性が釣りをしていた。毛針のついた釣り竿を大きく振るい、 岸辺の砂利に置いたクーラーボックスの上に腰掛けている。 そうして数分経った。 温かい日差しと静かな川の流れについうつらうつらとしていた彼は、 不意に頬を撫でた生ぬるい風に顔をあげ、そして硬直した。 川の彼岸に、彼と向かい合うように黒い身体の巨人が鎮座していたのだ。 午前10時のことだった。 「第4の『×』が出現しました!」 誰かが叫び、研究所内に警報が鳴り響く。緊張が走った。 予め決めていたのかそうでないのか判らないが、その警報を合図に一部の人間たちがあの指令室に集合する。 私もそのうちの1人で、部屋になだれ込むと同時に、空中に浮かぶモニター代わりの水晶玉を見上げた。 そこに映っていたのは川のほとりに静かに正座する巨大な黒い人影だった。体型は男性で、 ひどく痩せっぽちに見えたが、油断しちゃいけない、と私は自らを戒めた。 「出現位置報告をお願いします」 聞き覚えのある声がしたので階段状の部屋の上方を見上げると、 いつもなら天照が座っているはずの席に高天原が座っていた。それを見てあらためて天照がいないという事実を思い出すが、 湧き上がる情動は理性で抑えつける。 「出現位置は研究所より南南西方向、三州川です」 報告の声があがる。ずいぶん遠いな、と私は思った。 「移動の兆候はありますか?」 「現在は観測されてません」 「遠距離攻撃タイプかもしれません、研究所の対精神バリアの出力を上げてください。 市民の保護班はもう出てますか?」 「もうすぐ展開完了だよ」 答えたのは因幡だった。彼女は高天原の右後方に座り、手もとのデバイスを指で叩き続けている。 「ありがとうございます。カオスマンのセットアップはどうなっていますか、技術班?」 「現在で94%だ。完了まであと20分弱はかかるだろう。『×』の出現が予想より早すぎた。 おまけに、バリアの出力を上げるならばエネルギー不足でますます作業効率は落ちるぞ」 スピーカー越しにドームの八意がそう答えた。 「申し訳ありませんが、なるべくがんばっていただきたいです」 「善処しよう」 と、八意がにやりとしたときだった。 「『×』、行動開始!」 報告の声が上がり、室内の全員が水晶を注視した。 『×』は座すことをやめ、ゆっくりと立ち上がった。その姿はボロ布をまとったミイラのようで、 とても貧弱そうだ。 (いったい今度の『×』はどんな処刑方法なんだ?) そんな私の疑問の答えはすぐに与えられた。 その痩せっぽちな男は突然大きく腕を振り上げると、手に持った小さな何かを投げたのだ。 「カメラ追ってください」 すかさず高天原が指示を出す。水晶の像は投げられた何かの姿を追う。 大きな放物線を描き、研究所の数十メートル手前に着弾したそれは、 しかし一見しただけではよくわからないものだった。 「これは……?」 それはただの黒い塊だった。表面は硬質そうで、見た目は石炭によく似ている。 道路に落下したその黒い塊は地中に消え、あとには着弾の跡すら残らなかった。 (いったいなんだろう) 私がそう思った直後、研究員が報告してくる。 「第二撃、きます!」 カメラがまた『×』の姿に戻る。やつはまた先ほどと同じものを投げつけた。 それは初撃より研究所に近い位置に着弾した。 それを見た高天原はハッと気づき、叫んだ。 「この『×』は『石打ち』です! 解析班は射線を予測し、保護班はその範囲に展開してください」 彼が言った『石打ち』という処刑方法は、縛りあげた罪人に大勢の人間が石を投げつけ、じわじわとなぶり殺しに するというもので、中世ヨーロッパで魔女狩りや邪教徒狩りにさかんに用いられた方法だ(私は授業で習っていた)。 あらためて敵を観察すると、なるほど相手は処刑人にはとても見えない一般人だ。石の狙いが悪いのもそのせいだろう。 「第三撃、きます!」 また報告がされた。 『×』の手から放たれた石はひときわ大きなアーチを描く。私は嫌な予感がし、しかもそれは的中した。 突然!研究所が丸ごと揺さぶられるような衝撃があった。 「え……地震!?」 思わずよろけた私はそばの机にかじりつく。高天原がすかさず返答する。 「『×』の攻撃が直撃したようです……衝撃は対精神バリアの影響です」 「バリアに穴が開きました!」 焦りが見える研究員の声。 「速やかに修復してください」 「それが……カオスマンの作業のためにエネルギーが不足しており、 完全な修復は予想される次の攻撃に間に合いません。良くて8割程度です」 「カオスマンの作業はどうなっていますか」 「現在95%、完成までにはあと15分強」 「急いでください」 「次撃、きます!」 直後、足下から突き上げられるような強い衝撃が再び研究所を襲った! その衝撃はさっきのものよりも強く、立っている人間は皆よろけ、座っている人間も思わず机に手をつくほどで、 いくつかの実験器具が床に落ちて甲高い音とともにバラバラになった。 「バリア修復間に合いません! 損壊率5割突破、次々撃で確実に破られます!」 切羽詰ったような声。高天原はけわしい表情だが、落ち着いていようとつとめているのが容易に判った。 「……カオスマンの作業を一時中断し、全てのエネルギーをバリア修復にまわしてください」 「高天原、それはダメだ」 八意が即座に否定した。 「そんなことをしたら数工程前からまた作業をやり直さなければなくなり、永遠に終わらなくなってしまうぞ」 「なんとかできませんか」 「難しいな」 「ならばせめて――」と高天原が言いかけたとき、また大きな声の報告がされる。 「第5撃放たれました、直撃します!」 またすさまじい衝撃が研究所を揺さぶった! 天井から埃が落ち、各魔学機械の画面が干渉を受けて乱れる。とうとう自力で立てる者は部屋にはいなくなり、 ほぼ全ての人が床に這った。 その中でも高天原だけは素早く立ち上がり、八意への切れた言葉をつなげる。 「――ならばせめて、数秒だけバリアを全解除し、そのエネルギーを――」 彼のその言葉が私の耳に入った瞬間だった。 いまだに床に這いつくばっていた私の頭の中で、何かが弾ける感覚があった。 その感覚は私の頭にある考えを浮かばせ、そして全身のあらゆる筋肉、神経をその考えを実行させるために駆り立てた。 私はバネじかけの人形のように立ち上がって、そして部屋の出口に向かって床を蹴った。 部屋の扉を半ばぶち破るように開けて長い廊下を全力疾走する。ポケットの中で振動があった。 気づいた高天原が電話をかけてきたのだ。私は足を止めずにそれをとる。 「お戻りください!」 「私が時間を稼ぐから、その間に作業を!」 「どうやって!」 「『×』の目的は私なんでしょ!」 そう叫んで私は電話の送受話感度を最大まで上げた。ポケットに入れたままでも会話できるようにするためだ。 私は玄関から飛び出す。 息つくこともせずに私は叫んだ。 「こーーいッ!!」 直後、研究所の彼方から爆音が響く。これはエンジン音だ。しかも下腹にくるこの音は、 大排気量タイプのもの――遠方に無人のオートバイが怒れる野牛のような迫力で私に向かって突っ込んでくるのが見えた。 「次撃、きます! バリアは持ちません!」 スマートフォンから聞こえた報告に私は空を睨む。 爽やかな青空を背景にして不気味な黒い塊がジャイロ回転しつつこちらに落下してきていた。 まだハーレーとの距離は遠い。私ははっとした。 このままではバイクに乗るより先に『×』の攻撃のほうが先に私に到達してしまう! 私はまた空を見た。視線を外したのはほんの一瞬のはずなのに、黒い塊は視界を覆うほどに迫っていた。 私はしまった、と思った。逃げるには遅すぎる。 直後、激しい衝撃が私を下から突き上げた。私はやっとこの衝撃の正体を理解した。 あの黒い塊が天照研究所の敷地内上の空間に触れた直後、接触面に想像を絶する静電気と光が発生していた。 その極小規模の嵐こそが研究所を襲う衝撃の正体であり、バリアの効果だったのだ。 黒い塊はバリアにふれ、一部が分解・消滅していたが大部分は残っていた。バリアは抵抗の意思を見せたが、 そのすぐあとに破られる。 私の目の前に黒い塊が迫る――! 「ガオオオオオオオオッ!!」 しかしその直前にハーレーが間にあってくれた。私はぎりぎりのタイミングで飛び乗り、 『×』の攻撃から逃れる。バリアで黒い塊の落下が数秒止まらなかったら間違いなくやられていた。 私の全身から冷や汗が吹き出た。 黒い塊は地面に着弾するとそのまま吸い込まれるように地中に消える。私はひと呼吸だけ置いてハンドルを握り直した。 「ありがと……来てくれて」 私は微笑み、片手でバイクのガソリンタンクの表面を優しく撫でた。ハーレーは嬉しそうに身を震わせた。 それからグリップをひねる。排気管からガスが噴き出して、後輪が数秒空転し、摩擦熱でタイヤのゴムが融けるとともに 白い煙が舞い上がる。 私は叫んだ。 「行こう!」 それを合図にハーレーは発進し、研究所の正門を文字通り飛び越えた。 着地し、道路を疾走していると、スマートフォンから高天原の声がした。 「わかりました、志野さん。あなたを信じます」 彼は言う。 「あと3分だけ時間を稼いでください。それで勝ちです」 「了解!」 「次弾放たれました! 志野さんを狙っています!」 その言葉に空を見やる。またあの例の塊がやってきていた。しかし私は不思議と不安を覚えず、 むしろこのハーレーに乗っている間は絶対に安全だという奇妙な確信さえ抱いていた。 「お願いね」 私はハーレーにささやいた。ハーレーはライトをチカチカさせた。 目の前に迫る黒い塊。バイクは走るコースをわずかに変え、以前パトカーにやったときと同じように、 近くに停車していた自動車を踏み台にして大きくジャンプ! 縦に一回転しつつそれを飛び越えた。 (イカしてる!)私は歓声をあげた。 ハーレーは着地すると大きく方向を変えた。私は標識から少しでも人けの無い場所――女木戸ヶ丘に向かっているのだな と理解した。 『×』の攻撃は次から次へと放たれる。それらは女木戸市の建物をすり抜けて私を襲うが、オートバイはそれ以上の 速度で走り続け、かすりもさせない。 それでも『×』自体の精神干渉には頭の中がかき乱されてときどき視界が混乱した。 普段はシンブレイカーの中でスーツを着ていたために免れていた攻撃はこのようなものだったのかと、 まとまらない思考でなんとか私は考える。 オートバイは裏路地を走り、ビル壁をジャンプし、屋上から隣の建物に飛び移り、 ときおりフェイントを交えながら女木戸ヶ丘に向かって疾走する。 交通渋滞をすり抜け、並んで歩く歩行者たちの間を紙一重で抜けて、とうとうハーレーは緑が繁茂する草原へ出た。 いまだ先日の戦いの痕が残る中心部へ到達すると、ハーレーは息をつくように停止した。 私は痛くなるほどに握りしめていたグリップから手を離し、呼吸を整えるとともにぶらぶらと両手を振りつつ、 スマートフォンに話しかけた。 「ねぇ、まだ?」 すると高天原が明るい調子で返事をした。 「もう大丈夫です! 作業完了です」 「じゃあカオスマンが来るまでここで待つべき?」 「いえ、その必要は――」 「次撃、きます!」 その言葉に反応して空を見る。彼方に小さな黒点があった。私はすかさずハンドルを握りなおし、 グリップをひねる。しかし―― (なっ!?) いきなり後輪が横滑りし、私は転倒こそしなかったがバランスを崩した。何があったのかと後ろを振り向くと、 どういうわけか地面がぬかるんでいた。 (夜に降った雨のせいだ!) 直感的に理解し、慌てて体勢を立て直しながら、私は空を確認した。 遅かった。 黒い塊はもはや眼前にあって、とても逃げられる距離じゃない。 息が詰まった。 終わった。 私はまた―― そのときだった。 再び私の前に見えない壁が出現し、黒い塊を防いだのだ! 続いてそのバリアの放つスパークの嵐の中に、光に包まれたシルエットが浮かぶ。 長いマフラーを上方にたなびかせ、腕を力強く組み、大きく足を広げた姿勢を崩さず、 下からせり上がるように姿を現したそれは、まぎれもない―― 「――カオスマンなの!? そんな、研究所からどうやって」 「ワープです!」 電話越しの高天原が答えた。 「志野さんとカオスマンの間に、もはや距離など関係ないのです!」 「なんか嫌だそれ!」 「天照研究所魔学作業班管轄 魔学搭載型保安対応用改造人間! カオスマン・改! そしてこれが」 そうして姿を完全に出現させたカオスマンは背中の刀を抜き、黒い塊を一刀両断する。 「カオスマンのブレイクモードです!」 高天原のそのセリフの直後、カオスマンは大地を蹴り、女木戸ヶ丘の遥か上空まで飛び上がる。 彼が全身から放つ赤い光は真昼であるにも関わらず、星のように輝いていた。 その光は突然、巨大な火の玉に変化する。 「命をかけて飛び出して! これが魔学忍法――」 火の玉はさらに巨大化し、一対の巨大な翼となり、また長い首と尾羽根を形作った。 「『フェニックス』だ!」 翼を広げた炎の不死鳥は一度大きく羽ばたくとともに威嚇するような鳴き声を街に轟かせる。 フェニックスは滑空し、街の南方へ突撃していった。 研究所の指令室では全ての人間が水晶に映る『×』のビジョンを注視している。 『×』は腕をだらりと下げ、足下から何かを拾うような仕草とともに、 手の平の内側に例の黒い塊を生成しているところだった。 うつむいていた『×』は遠方から轟いた甲高く威厳のある咆哮に反応して視線を上げる。 女木戸の街を飛び越えて迫りつつあるのは、広げた翼の内に街がすっぽり収まりそうなほどの体躯を持つ火の鳥だった。 『×』は逃げようだとかそんな反応を示す間もなく、 ものすごい勢いで突撃する不死鳥に腹を貫かれるとともに、その全身を浄化の炎に包まれる。 『×』はそれからほんの数秒後、跡形もなく消滅した。 「カオスマンは、どうした……」 司令室で高天原が静かに、そばの研究員に問う。 「多分、融けて無くなってしまったのではないかと……」 だがその予測は直後の声で否定される。 「カオスマン確認、『×』の反応は消失!」 「そうですか……皆さん、お疲れ様です」 彼は立ち上がった。 「第4の『×』、滅却完了!」 彼が高らかに宣言すると、研究所内は歓喜の声に包まれた。 高天原は満面の笑みでカオスマン回収の指示を出し、それから席をはずしてひとりひとり、 今回のこの戦いに尽力した人間たちに握手と感謝の言葉を述べてまわる。 因幡は彼と握手しつつ、口端をつり上げて言った。 「これで当面の危機はのりこえた?」 「ええ、本当に。ありがとうございます」 「『計画』の達成まであとどれくらい?」 「ちょうど折り返し地点のはずですよ。次もお願いいたしますね」 にっこりとする高天原。 因幡は手を離し、他の人のところへ急ぐ彼の背中を眺めつつ、 未だ全貌がつかめない敵の正体に少し苛立ちを覚えていた。 ……女木戸ヶ丘の中心で、私はハーレーにまたがり、スマートフォンを通じて伝わる研究所の歓声を聞いていた。 カオスマンの活躍を目の前で目撃した私の胸にはあるひとつの疑問があった。 それは今朝から頭のどこかに引っかかっていたもので、 いま彼の戦いを見てはっきりとかたちになったものでもあった。 私はその想いを、誰にも聞こえないように、小さく口にした。 「……シンブレイカー、いらなくない……?」 だってそうだろう。カオスマンがブレイクモードを使えるのならば、 ますますシンブレイカーのメリットは無くなる。 100歩譲ってシンブレイカーが要るとしても、朝のドームでの八意が言ったようにカオスマンが 『トラブル処理係』であるならば、シンブレイカーに乗るべきは彼であるはずなんだ。 私以外でもシンブレイカーを動かせることは天照さんのときに証明されている。 技術的な問題なのかもしれないけれど、魔学の性質からいっても、 私のような外部の一般人をシンブレイカーに乗せるのは本当に最後の最後の手段のはずであるのだ。 待てよ? 「……もしかしたら、シンブレイカーを動かせるのは、私と天照さんだけなのかも」 カオスマンや他の人間には、どう調整しようがシンブレイカーが動かせないのだとしたら……? 天照さんと私とシンブレイカーを繋ぐ線がどこかにあるのかもしれない。 なんにせよ、わからないことが多すぎる。 私は思考を中断し、長く息を吐く。南から爽やかなそよ風が吹いた。 私は顔にかかる髪を指で整えつつ、バイクのガソリンタンクを撫でた。 ハーレーがどこか心配そうに身を震わせた。