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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Piece10◇アクセル(悪/CELL)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 回想。 なぜ狭山雪子らと丹羽雄二が時間差を置いて登場したか。 それは丹羽らが、例の轟音の元へ向かおうと駆けていた時の事であった。 「――銃声、だな」 丹羽の耳に、早野が加藤清正を撃った銃声が入ってきた。 天王寺、狭山も同様なのか、頷いて丹羽の呟きに同意する。 先の轟音の位置も、情報が音だけということもあり、あまりはっきりしたものではない為、丹羽らはそこが先の轟音の元凶となった場所だと判断した。 実際には、音と元となる倒壊した電柱はその先であるが、彼らの知るところではない。 「……で、どうするんですか」 天王寺が二人に尋ねた。 銃声が聞こえた。恐らくは先の轟音の元凶の所在も分かった。 では、それからどうするべきか。 元より天王寺には、意見と言えるほどの意見がなかったが為に二人に任せようと問いたのだ。 「私は、一旦様子を見てからでもいいと思います……」 狭山は控えめに発言する。 天王寺は一理ある、と頷く。 相手はどのような輩かは不明であるが銃を持っていることは確かなのだ。慎重に動いても損はないだろう。 「いや、俺は一回隠れながらでも接近してもいいと思うぜ」 丹羽は狭山の意見に反対するように意見を述べる。 天王寺はこれまた一理ある、と頷き返す。 相手が銃を持ち、実際発砲したということは銃を所有するものは殺し合いに乗ってるという可能性も決して低くはない。 加えて言うなら、発砲されたということは撃たれた相手がいるということ。そのものを助けれるということだって、場合によっては出来るだろう。この男らしいと天王寺は黙考する。 「じゃあ、こうしよう」 丹羽は意見をまとめる。 ちなみに今はまだ路地裏でコソコソと移動していた最中。 先の音源は直ぐ近くだ。きっと十分もしないで辿りつけるだろう位置に彼らは立っている。 「俺はこの銃を持って今の銃声のところに近づいてみる。だから一旦狭山と天王寺はここで待機をしていてくれ」 イングラムM10を掲げながら弁ずる。 確かに理にはかなっている。 所有武器が強いて言えて丹羽が授けたスタンガンとカッター程度(丹羽がチェーンソーを授けようとしたら無理だと断わられた)の狭山と、 アンテニー・ダガーしか武装できていない天王寺が一緒に付いて行くより、よっぽど丹羽一人で行動した方がいいだろう。 銃を相手に、身体能力が高いわけでもなく近接武器しか装備できていない二人がついていったところで足手まといになるのは目に見えている。 一緒に行動する、見栄を張っていたにもかかわらずいきなり別行動するのも、これ如何に。などと言った思考がよぎったが、この場合それも仕方ないであろうと、落ち着いた。 だがしかし。 狭山はこの提案に付いて一つの懸念を抱いた。 「……でもそしたら、丹羽さんにもしもの事があったらどうするんです……?」 丹羽の安全性だ。 狭山は知っていた。 このバトルロワイアルには、常識に囚われない非日常めいた強者が多かれ少なかれ存在することを。 たとえば銃を持っていたところで、神社で暴れた行木団平やジャック・ザ・リッパーには簡単に平伏すこととなるだろう。 丹羽から見て、いままで強者と呼べたものは、殺戮機械(洲崎宏)と、殺戮機械(小神さくら)。確かに両名揃って銃をもってるからといって簡単にどうにかできる相手ではなさそうだ。 銃を持ってるから大丈夫。という思考回路も相当危ないものだろう、と丹羽は考え改め直す。 銃を持ってるからと言って、安全ではないのなら、どうするべきなのだろうか。 じっくりと考えを巡らせて、もう一度提案する。 「なら、俺がしばらく経っても戻ってこなかったら、それからどうするかはお前らで決めろ。……まあここは冷静に判断できそうな天王寺に頼むわ」 「……は?」 天王寺が理解不能と言った調子で相槌にもならなかった文字を零す。 丹羽と対面してから何度目だろうか、と考え、数え切れないほどあったな、と呆れを含む溜息を洩らす。 そんな天王寺の憐憫を知ってか知らずか、丹羽の言葉はそのまま続いた。 「そしたら……うん。俺に万が一にことがあったら助けられるかもしれない。もしくは逃げればお前らの安全はひとまず確保できる」 「い、いや待ってください!」 狭山から異論の声が上がる。 丹羽は不思議そうな顔をして、狭山の言葉の続きを促す。 近くの天王寺はすっかり傍観者の位置に立ち、誰を弁護する訳でもなく立ち尽くしていた。 狭山の異論の内容はこうだった。 「それじゃあ丹羽さんの安全の確保と言う意味では解決してません!」 その通りだ。 丹羽の後者の提案には前者の提案を前提としたもので、結局のところ丹羽の安全性が確保された訳ではなく。 加え増援するであろう狭山、天王寺両名の戦力は前述の通り期待できるものではない。 異論があがるのも当然の話であった。 対し丹羽もその意見は予測できたのか、間をおかず弁論を叙する。 「そうだな。確かにそうだ。……だけどな、狭山。このふざけた場所にいて、安全な場所がどこにあるんだ? 何処にいたって、悪いけど死ぬ時は死んじゃうんだよ。どんだけ生きたいと願ってても、どんなに安全性を確保したところで、死ぬときゃ死ぬんだ」 とても天王寺に風呂に入ることを提案した男のものとは思えない発言である。 あの時は血塗れの方が誤解を招きそうだったのもあり、正当性を兼ねることが出来ているのだろう、と天王寺は内心で推測していた。 推測したところでどうというわけではないが、天王寺は不思議と丹羽が言わんとすることを察す。 「そんな中で、……そうだな。後悔ないように俺は行動したいんだ。きっと……今、銃を撃った奴を、一見もせず放置しておくのは、きっと俺は後悔することになる」 天王寺の予想は、当たった。 実際『死ぬときは死ぬ』というのは間違いではなく、真理とも言える事柄だろう。 事実。丹羽雄二は今回のバトルロワイアルが始まってからここに至るまでに、大塚英哉と鬼一樹月の死と遭遇しているし、彼自身一度死を体験しているのだ。 死に対することで言えば、目の前の二人よりもよっぽど理解を得ている。 その中で、彼の決意はあくまでも自己満足から派生した彼なりの正義を貫きたかった。 たとえばそれは、河田遥を身を挺して護った時のように。 たとえばそれは、天王寺深雪を身の危険を顧みず更生させようとした時のように。 「……何があなたをそこまで突き動かすんですか」 「言っただろう……。俺はしたいことをするまでだよ」 狭山は彼の思考を不思議がる。 思えば最初に会った時も、彼は見捨てたほうが確実に逃亡成功率は高まるのにもかかわらず、天王寺の手を引き続けていた。 狭山だったらどうするか、と言うのはさておいて、彼の行動理念はどうにも理解出来るものではない。 とても、昨日まで変哲もない人々と、変哲もない生活を送っていた彼女には、分かりえない境地の思考だ。 それでも、信用できないかと言ったら、そうではない。 「……じゃあ、分かりました。そこまで強い意志があるのに私が止める義理はありません」 この場はこれで引いておいた。 彼女は、彼の言葉を覆すほどの強い意志をもっていた訳ではない。 彼女は、彼の意志を尊重と同時に、強固な意志を前に屈したのだ。 「我儘で悪ぃな……。……狭山の好意は素直に嬉しいよ」 「……礼を言われるほどの事はやってませんよ」 「そうかよ、じゃあ勝手に感謝しておくさ」 丹羽は微笑んで、天王寺の方へと視線を移した。 蚊帳の外で傍観者を気取っていた天王寺は急に話が振られ驚いた様子で丹羽を見る。 その様子を丹羽と狭山は微かに笑い、口調に笑いを残したまま丹羽は天王寺に言った。 「んじゃ、とっとと行ってするべきことをやってくるぞ。天王寺、狭山のこととか判断とか宜しくな」 「え、ええ。精々頑張ってください」 「そういうときは頑張ってね、でいいだろうに……」 嘆息。 狭山は二人のやり取りをどこか羨ましそうに見つめる。 その視線の居心地はあまりよろしくなかったのか、慌てた様子で丹羽は身体を例の発砲音の方へ向ける 「改めて、行ってくるよ……」 彼は言い残すと、今度こそ走りだした。 そして今に至る。 狭山と須藤の、再会へと。 □ ■ □ 丹羽雄二と天王寺深雪は同時に失敗を悟る。 判断は瞬時に行われ、刹那には結果が叩きだされていた。 ――その失敗は、丹羽や天王寺を傷つけるものにあらず。 「――――須藤、くん? 浅倉……くん?」 狭山がその言を洩らした瞬間。 誰よりも焦りの汗を流したのは、丹羽であった。 天王寺もまた、どうしましょうかといった青い顔で、丹羽にアイコンタクトで伝えようと試みる。 ――一向に解決案は、出てこない。打開策が見いだせない。 何に対して? ――決まっている。この須藤と狭山の邂逅と言う単純明快な事象に対しての、解決案、打開策。 「……狭山……さん」 須藤凛は、浅倉の死体を前に、顔だけをこちらに向ける。 泣き腫らしたその顔には、悲痛な笑みが浮かんでいた。 ――恐らくは、狭山に会えた嬉しさから、絶望の淵から見えた微かな光を縋った結果なのだろう。 それでも丹羽も天王寺も、そして狭山や須藤にとって。 望まない再会だったであろう。 少なくとも丹羽が須藤の立ち位置だったら、こんな再会は望まなかった。 こんなにも、悲しい再会は――心を痛めつけるだけなのに。親戚の葬式に顔を出すのとはわけが違う。 現実を直接受け入れなければいけない――そんな辛さに、変哲もない中学生が、耐えられるわけがないのだ。 よもや狭山は、本心から『友達に会いたい』と心底から願っていた――始末、この現状。……丹羽はそこまで考えて、一旦思考を閉ざす。 見れば、酸素の足りない魚のように、口をパクパクさせていた狭山から、ようやく言葉が紡がれようとしていたからだ。 「……ねえ、浅倉くんは……」 狭山が訊ねる。 いや、訊ねるというよりも、確かめる、と言う描写の方が適切だ。 ――浅倉翔の死は、あまりにも分かり易く見てとれた。この状態で生きている――と信じる方が間違っている。 血は今でもあふれ、須藤の服を巻き込んで浸食していく。 狭山だってそんな事は知っていた。 眼前で広がるこの景色を、見れないと言う方がおかしな話で、狭山が例から漏れるなんて事もない。 死んでいる浅倉翔を抱える、泣き顔でこちらを見つめる須藤凛の姿は、実にはっきりと。一分の訂正箇所もなく視認する。 それでも。 彼女は問うた。 受け入れ難い現実を、最後まで否定しようと。 言わば現実逃避をしたい彼女は、最後の藁(希望)に縋っていたかった。 ……だけど。 彼女が何を思おうとも、現実は揺るがない。 須藤の口から重々しく、事実が述べられる。 「……浅倉は死んだよ。……青髪の奴にたった今、殺された」 胸が裂けるような痛み。 四人が四人とも――須藤を含めて、その言葉が耳朶を通り抜けた途端に、楽天的なことは考えられなくなる。 緊迫された身体。 唇を動かすのすら、躊躇われる雰囲気の重圧。 空気に温度はあるのだろうか? そんな他愛のない疑問すら湧くほど、凍てついた空気。 少なくとも、丹羽と天王寺は二人の間に言葉を挟もうだなんて、とてもじゃないが思えなかった。 出来ることなんて何もない。 どうしようもないほど、今のこの現状は当人らの問題だ。 狭山と、須藤。そして浅倉の遺体を見つめる他に、彼らは凍てついた空間の中、行動できない。 「……、で」 最中。 狭山は口を開く。 マシュマロのように柔らかな唇は、端正な形を歪め、言葉を排出する。 されどノイズが混じったかのようにその言葉は何処に消えた。 「……なにかな」と、何も感じられない、まっしろよりも虚無な声で須藤は狭山に促す。 光失せた双眸を埋(うず)める浅倉を抱いて、須藤は未だ浮かべた涙を拭う。 されど狭山はそんな彼の悲痛な姿を見つめず、冷たき地面を向いたまま、声を絞り出す。 「なんで、須藤くんは……須藤くんは……! 浅倉くんを助けきれなかったの?」 「……え?」 柔らかな唇から漏れ出したとは思えないほどの、捩られた金属片のような――冷たさと、鋭さを纏う言葉を。 クラス一の美少女、とも謳われる綺麗に整った美顔を、酷く歪め、ありもしない責任の所在を、須藤に付きつける。 何よりもまず先に。 この場の誰もが負うべきでない責任を、須藤に擦り付ける。 本来はそうするべきではなかった。 ゆっくりと、ゆっくりと空気を和らげてから、落ち着いた状態で、話を進めていければ、それが最善だった。 けれど、狭山は既に我慢がならなかった。 ――どうしても理不尽に、それもよりにもよって級友の、浅倉がどうして死んだのかと言う、疑問を氷解させたかったのだ。 彼女の心は、友人の死を突きつけられて、それでもなお落ち着いてられるほど、異常じみていない。――違う、彼女は、あまりにも『変哲もない』学徒なのだ。 せわしなく転がり落ちる精神状態の中、彼女の言葉は、止まらない。――須藤に向けて、糾弾の弾丸を込めて――発砲する。 「だって! だって……なんで! 浅倉くんが死ななきゃいけないの!?」 期待していた。 狭山雪子は、友達に再び会えることに期待をしていた。 それは揺るがぬ本心で。 今の彼女の行動の主柱となっていた、と断言しても決して過言にあらず。 だからこそ、夢を見ていた。 全員が無事に、合流できる事を。 ――蜜のように甘く、見ていた。楽観視をしていたのだ。 彼女にとって、人が死ぬということは、常識の範囲外で。 あの非現実――馬鹿みたいな強者と巡りあってなお中途半端ながら無事に生きていた、という事実が、どこか狭山を油断させていた。 全員、何があっても無事でいるだろう――そんな意識を、無意識の奥底で芽生えさせていた、とでも言うべきか。 弾丸(コトバ)を鼓膜に受けた須藤は、呆然とその言葉を聞いた。 須藤はきょとんと、狭山の問いを吟味して、ようやくその意味を理解する。 そうでもしない限り、意味すらも解きえない理不尽な問いだった。 須藤は、考える。 ――そもそもどうして俺がここまで言われなきゃいけないんだろう、と。 そりゃそうである。 須藤だって別に浅倉を死なせたくて死なせたわけじゃない。 例え須藤に非が山のようにあったところで、究極的に悪いのは先の青髪――早野正昭に変わりない。悪意を以て殺したのは彼だ。 須藤にとっては最善を尽くしたつもりだった。 一生懸命に、浅倉と共に早野を打倒していた。 なのに。 憧れの狭山から向けられる視線は明らかに糾弾を意味している。 まるで自分がすべて悪いと言われているかのように――自分の無力さを突き詰められるかのように。 おかしい。 須藤は思う。 「……んだよ」 こんなのおかしい。 須藤は思う。 「…………なんで……俺が……」 何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。 須藤は思う。 「…………違、う…………べつに……浅倉は………」 だからだろうか。 須藤の顔から、狭山に会えて得た、僅かな安らぎの色が徐々に褪せていく。 ――先ほど飯島遥光と議論を交わした時のように、怒りに似た感情を顕わにさせす。 勢いのまま須藤は言葉を放つ。 「――――違うっ! 違う違う違う違う違う!!」 ――散々彼は、ここに至るまで疲労を積み重ねてきたとは言った。 そう、彼はここに来るまで、あまりに無茶をし過ぎてきた。 その疲れが、ここに来てもまた、足を引っ張る。――思考の短絡さや、本能に対する無抵抗を招く。 紅に染まる声が、張り上げられた。 「知るかよっ! んなもん俺が聞きてえよ!!」 頭の中で――弦が。 怒りの糸が弾かれる。 周りの景色から、彩りが消えていく。 まるで燃えるかのような紅蓮が、三度須藤の視界を支配する。 もはや彼にとって狭山雪子の事などどうでもよくなっていた。 彼の言に狭山の問いに対する解は含まれていない。 そうするまでの、余裕が欠落している。 今の彼には、自らを正当化するのに必死になった。 それを阻害する狭山のことなど、気にも止めようともしない。 ――俺は悪くない。悪くない。悪くない。 呪縛のように纏わりついた、呪(まじな)いの言は、いとも容易く須藤の正当化を助長する。 自分の行動を信じた、正当化ボーイの姿に、一時間ほど前の輝ける栄光は失せていた。 鋭い視線で狭山を睨む。 その瞳のどこにも、好意の文字は存在しない。 躍起となった心に、頭には冷静さが欠け、一つの、かつて命だったものに振り回される形で、須藤は――追随して狭山の理性が汚染される。 ただでさえ正常な思考が出来そうにないほどの驚愕の念は拍車がかかったように。 睨みつけられた狭山は、悲痛に声をあげる。 「知らないってわけがない! 浅倉くんのした……そんな浅倉くんを抱えて、なにも知らないわけがないでしょ!?」 狭山の恐怖は和らいでいた。――立腹に中和されていた。 さりとて心内は穏やかではない。 動揺は、波紋となり。波紋は、津波へと変わる。 大きく揺れ動いた、隙だらけだった感情は、あっという間に色合いを変貌させた。 ラブリーな天使は、一瞬にして翼をもぎ取られる。墜落した天使の先に待ち構えていたのは――行き止まりの現実だった。 「須藤くんを責めるなんて真似はしない。だけどワケぐらい話してくれたっていいじゃない!」 「だから知らねえっつってんだよ! 俺は悪くねえんだ!! どうしてそんな眼で俺を見る? 違えだろ、あいつら殺人鬼が悪いんだろうが!!」 荒げた狭山の声に、間髪もおかず須藤も意を吐き出す。 責める真似なんてしない――そんな微細な言葉すら、須藤の非を訴えているような気がして、気持ちが悪かった。 浮ついた彼の心には、如何なる言葉が通ることはない。 彼の心に入った傷も、心で縫い合わす必要がある。 だけど彼はそれを拒む。 呻きを砲撃に。 焦りを城壁に。 天守に佇む『須藤凛』という人間、人格を護るために、城は狭山の前に立ちはだかる。 「だからそれは話してくれなきゃわからないじゃない!」 堅牢にして荘厳と門を構える、心理の壁を崩す術を、狭山は知らない。 故に、彼女は門を崩さず、強硬突破を試みようとする。 それは須藤の反抗心をくすぐるだけで、最良の方法とは言わない。むしろ、改悪策ともとれるだろう。 懊悩としても、解は出ない。 どちらにしたところで、両者共々まともに話し合おうとする意が欠いている以上、この現状が解決する見込みなど――零に等しい。 丹羽も天王寺も、口をはさむ気配はなかった。 「んなもん分かるだろっ! 大体どうして俺が浅倉を殺さなきゃならないんだ、普通におかしいって。そんな眼で俺を見んなッッ!!」 須藤は分かっていた。 自分の言っている不条理さも、同時に狭山の言葉の節節から感じる正当さも、分かっていた。 この場で今、誰が悪いのか。 理解をしているし、須藤の大きく空振りした決意が全てを台無しに持っていったのも今では頭の奥底では理解は得てる。 現実に抗っている――なんていう格好いい言葉を使うつもりはない。 それでも認めたくなかった。認めてほしくなかった。 自分の失態が、浅倉の死を呼んだなんて、信じたくなかった。 その感情の理屈はあまりに単純で明瞭。説明不要なほど、簡単な理由。 幼稚な感情だとは、知っている。――それでも激情は滞ることを知らない。 命の重さは、須藤からしても、述べるまでもなく重い。 幾ら死体に見慣れてたとは言っても、重さが失われた訳じゃない。 知人――いや、それを上回る関係性でもあった浅倉が、目の前で死んで、須藤の心が揺れ動かないわけがない。 だからこその正当化。 奥底では理解しているからこそ、その事実を受け入れ難かった。 何度も何度も、心で唱える。 ――俺は正しい。 ――だからこそこうするしかないだ。 ――全てが丸く収まるためには。 ――この世界が、優しくあるためには。 ――【 全て 】を騙すしかない。 自分に対する正当化。 非情な現実に対する憤怒。 様々な思いが混濁したまま、須藤の時間は流れてゆく。 されど、押し問答も長くは続かない。 「もう、いいよ……狭山さん」 須藤はふと、流れを断ち切る。 話がかみ合ってない事――かみ合わせていないこと。 須藤はそんなことは分かっている。それでも、「どうして引いてくれないんだ」と引き際を失った狭山に対して、思わずにはいられない。 狭山とて、同じだった。皮相な考えが両者を支配する。 言葉の穂を狭山が継ぐ。 「私だって、もういい。……須藤くんがそこまで分からず屋だなんて、知らなかったよ」 「…………そっくりそのまま返してやる、一旦さ、どっか行ってくれよ」 ……傍らで、静かに傍観に耽っていた丹羽は、その言葉を呆然と聞いた。 いやいやいや、と内奥から今までの須藤と狭山の掛け合いを、否定する。 気持ち悪く空々しい二人の会話は、正直聞いていて、煩悶して苛立ちにも似た感覚が冴える。 どっちとも悪いところはあったが、だからといって、決別するほどの内容のある掛け合いとは見えない。 ゆっくりと話しあえば、絶対によりは戻せる――戻せはせずとも、回復は出来る。そのはずだった。 そう、流石にこのままではいけない、と。 丹羽が言葉を投げかけようとしていた時――声は隣からあがった。 「……それは、あなた方の望んだことなんでしょうか」 天王寺深雪は、心底不思議そうに二人に問う。 掌で銀髪をなぞりながら、真摯な瞳がそれぞれ二人を突き刺す。 「別に、それならそれでいいんです。私は、どうこう言う資格なんてないですから。 でも、本当にお二人はこのようなことをしたいって願っているんですか」 二人の視線の矛先が、天王寺に向く。 穿つように刺さる視線を意に介さないで、二人を見つめ続けた。 そんな天王寺の視線を受け。 二人の視線は、自ずと浅倉翔の元へと寄って行った。 ――――今、どんなことがしたいのだろう? 幼稚な疑問が、両者に生まれる。答えは明瞭で言葉にすれば呆気ないもの。 「狭山さんが、私と丹羽さんに向けていった『友達に会いたい』っていうのは、どうなったんですか。会えれば――それでよかったんですか」 「…………」 そうだった。 狭山は丹羽らにあった時の事を回顧する。 ――浅倉の死体を見て、現実逃避の靄が思考を汚染したあの時から、忘却に葬られた、願い。 友達に会いたい。 自分の本心からの願い。 会って、笑いあって、日常に帰る――それが、狭山雪子、唯一つの望み。 ――そうだ、諦めきれる望みではない。 今こうして、目の前には須藤凛がいるのだ。……全てが潰えたわけではない。 「須藤さんがどのような考えを持っているかは分かりませんけど、それでも友達思いなことはそこはかとなく伝わりました。 それでいて、どうしてこうして言いあっているんですか。こういうときは、喜ぶものじゃないのでしょうか」 須藤は黙す。 何を言おうともしない。 浅倉の死体を力強く抱きしめた以外に、行動に変わりはない。 ふと見ると、涙は乾いていた。 よほど、未だ生乾きの天王寺の髪の方が、湿っぽい。 「確かに人の死は重たいです――それは本当に、重たいものなんでしょう」 天王寺深雪は言いながら、顧みる。 そうだ、人の命は重い――ナイフで刺したら、ポンッっとなくなってしまうほど、儚く、それ故美しく、重い。 いつも行使していた、『任務』、『命令』とはわけが違うのだ。 身をもって知っている。 人の死が――退廃への道標となるのは、心がない。 「狭山さんにはもう一度言いますが、私は『したいこと』というのが、自分自身でわかりません。 だから本来は私がこのようなことを言う資格なんてないんでしょう」 彼女は、鬼一樹月の死を、殺害という事実はどのような道標となったのだろうか。 退廃だったのか。発展だったのか。 何が正しいのかは、天王寺じゃなかったとしても、おおよその人間が、大見得切って言えることではないだろう。 「――でも」 丹羽だって。 丹羽が正しいと思えることを言ったまでで、それが社会のすべてに通じるとだなんて、天王寺自身も含めて思っていない。 通じない相手には、通じないだろうし。 反感を買う相手には、買わす以上の意味など生まれない。 だけど。 否、それでも。 今の天王寺からしてみれば、狭山と須藤の言動は、当事者らが困窮をする以外の価値が、ない。あまりに儘ならない。 「――時には本心から、話すことは大事なはずなんです。とても私には、お二人が本心からお話しているようには思えません」 偽ることは、時として無為である。 天王寺は知っている――つい先刻までがそうだったのだから。 困窮の果てにいた彼女は、甚く感じることができたのだ。 「…………それは」 狭山は、洩らす。 その頭には落ち着きの色が徐々に姿を現す。 現実逃避の靄が、霧散する。 そうだ。その通りだ。 浅倉を悼む気持ちも大事だけど、須藤を蔑ろにする理由は何処にもない。 若干こじれてしまった仲を取り戻す必要がある。 決裂は、狭山の望むところではない。 改めて、須藤の顔に視線を移して――。 瞬間。 「うっせぇよっ! 何も知らねえ癖にウダウダ言ってんじゃねえ!」 吼く。 須藤の怒号が、三者の耳朶を強く叩く。 狭山の動きが止まる。 お構いなしに、浅倉の死体を強く抱きながら、須藤は続けざまに吐き捨てる。 「なんだなんだなんだよッッ。結局おまえらは俺が悪いって言いたいんだろ! 俺が、浅倉を護りきれなかったことを責めたいんだろ! こんなん誰も望んでなかったよ、狭山さんも、俺も! でも浅倉は死んだ。 そのことを責めてえだけなんだろッ! ああそうだ、俺が無力だから浅倉は死んじまったんだ! 重い命を奪ったのは俺も同然なんだよ!」 手のひらを返すような自供と同時に、それでも狭山たちの介入を拒む。 機械のように、停止した狭山とは裏腹に、あくまで人間らしく、動物らしく、鬱勃と放つ。 獅子の如く気迫に秘めた、ウサギに通ずる儚さ。 しっちゃかめっちゃかに掻き乱された心に余裕はありはしない。――他者の言を素直に受け入れるほどの、寛容でいて然るべき行いを執る猶予もない。 「勝手なこと吼えてんじャねーよ。俺の気持ちを勝手に改竄してんじゃねェ!! 分かった振りしてんじゃねえよ!! そういうんが一番ウゼェんだッッ!!!」 怖かった。 厭わしい感情の激流が、それでもなお止まる兆しを見せない。 固陋していく心の視野が、須藤の思考をますます短絡化への道へ誘(いざな)う。 凋落すべく思考は堕落の一路を辿って行く中、狭山は明らかに憮然とした態度で須藤の態度を噛みしめる。 これはもはや撞着ではない。 ただの、須藤凛の、独りよがりな現実逃避でしかない。 意志の疎通は、もはや不可能。 狭山はもとより。 天王寺はもとより。 丹羽だって、どう接すればよいのか、全くもって分からなかった。 ――繊細な年ごろと言えば、それまでなんだろう。 世の中には思春期と言う都合のいい言葉だって現に存在する。 無茶に溜めていた疲労が。 無茶に耐えぬいた徒労が。 彼を、穿つ。 「もう、いいよ……そうだね、須藤くん。わかった」 そんな須藤に向かう、狭山。 悟るように、諭すように須藤の言葉を受け入れる。 そして同時に――彼女のここにいる意志が、ここにいる意識が、ここにいる意味が、大きく揺れ動いたということだった。 「私は別に、須藤くんが嫌がるのなら、一緒にいようだなんて思わない。一緒にいたって仕方がないもんね」 一瞬。 語尾が強まる。 されどお構いなしに、天王寺が問う前よりも、修正不可能な状態で、言葉は続く。 「ごめんね。変に構ったりして。私が、悪かったです」 言葉は感情を伝える、コミュニケーションの道具である。 それは例え、真意じゃなくても。 それは例え、本意じゃなくても。 人と人は、所詮言葉でしか会話が出来ない以上、言葉で得た情報で、相手を理解するしかないのだ。 狭山が須藤が体験してきた経緯を察するには、須藤の言葉を聞かなければ始まらないし。 須藤が狭山の仲間を思ってきたこれまでを知るには、やはり狭山の言葉を留めなければならない。 逆もまた、同じだ。 「だから、優しい須藤くんのことだから、私のことを気にしてくれるかもしれなから、言っとくね」 二人の関係は形だけの悲劇に過ぎない。 二人の対立は言葉だけの悲劇に過ぎない。 だけどそれでも、一度決したものを巻き返すのは難しくて。 「――――須藤くん、私はあなたの事が大っ嫌いでした」 人と人は、不器用だった。 彼と彼女は、あまりに言葉を頼り過ぎた。 感情の正しい表し方。 少年少女は、それを理解していない。 だから、飯島遥光ともうまくいかなかった。 だから、一刀両断ともうまくいかなかった。 だから、狭山雪子ともうまくいかなかった。 もう、分かりきっていたことなのに。 それでも少年は、感情を制御できずに、ただ喚いた。 少女もまた、それを諭すような真似が出来るほど、成熟した人間ではない。 青い果実は、不味いのだ。 青い果実をかじっても、得られるものは不快感。 少年は。 少女は。 それを知らずに、互いの身をかじった。 「じゃあね。須藤くんも頑張って生きてください」 だから、悪の細胞は、急激に活性化する。 物語は――冗長な前ふりをもって、二人の中を決した。 それは、これまで須藤が掛けあってきた言葉の中で、最も軽い言葉で締められる。 狭山雪子は、後ろを振り返ることなく、立ち去った。 時系列順で読む Back 失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 Next 失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 投下順で読む Back 失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 Next 失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 加藤清正 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 璃神妹花 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 須藤凛 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 銀丘白影 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 小神さくら 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 丹羽雄二 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 天王寺深雪 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 浅倉翔 070失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 稲垣葉月 070失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 狭山雪子 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 東奔西走 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 早野正昭 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』 070:失踪する思春期のパラベラム『デイドリーム』 被験体01号 070:失踪する思春期のパラベラム『バーンアウト』
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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Piece12◇孕んだ悪(波瀾堕落)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「一発殴る」 「……っ」 狭山の背中が見えなくなった頃。 丹羽雄二は、須藤凛の胸倉をつかみ、頬を拳骨で一発殴っていた。 須藤は逆らうこともせず、素直に一発もらっていた。 ――喧嘩慣れしている須藤にとって、その拳を避けるのは、本来そこまで苦ではないはずなのに、だ。 胸倉を掴まれているため、吹っ飛んで勢いを殺すこともできない。 ありがままの丹羽の拳を、一身に受ける。 嫌な音がした。もしかしたら何処かの歯が折れたのかもしれない。 力仕事をしている丹羽の拳は、決して軽くない。 「……」 「……」 「……」 天王寺はその様に何を言うわけでもなく、静観する。 丹羽が殴る理由も、なんとなく察することが出来るし、須藤が先の様な言動を取った理由も――どことなくだが、掴めている。 天王寺だって、ついさっきまでは似たような態度を取っていたからである。 自らの忠誠心に従って、他人の言葉に耳すら傾けず、他者を排斥しようと奮迅した。 それが自分の本心じゃないと知らずに。機械と言うよりも、傀儡を演じた彼女は少なからず通ずるところはあると、一方的にだが思っている。 故に、どちらの味方もしない。 ただ見つめる傍観者。 ――自分の方針を定める為の、観測者。 丹羽は須藤の胸倉から乱暴に手を離す。 立つ気力は尽きたのか、須藤は重力に従い尻を地に付ける。 放心した、それこそ人形のように生気を感じさせない須藤を、鑑定するかのように見つめる丹羽。 「ふん」 息を吐く。 蔑視しているわけではなさそうだが、だからといって天王寺の時の様に同情――いや、改善させたいと言う気持ちを抱いている訳ではない。 今のこの現状は、紛れもなく、六割方須藤凛が悪いのだ。 阿見音という異分子の介入が、方針の大方を占めていた天王寺とは事情が違う。 ただ、それでも見捨てると言う行為が出来なかった彼は――お人好しと賞するべきか、バカと貶すべきか。 「須藤、俺はお前の事を何も知らねえよ。今回の事は、お前のあずかりしらないことだろうけど、俺にも責任がある。 だからお前を責めたりすることなんて出来ねえんだ。だから、今殴った事は本当に、申し訳ねえ」 「…………」 「もう過ぎたことを責めたってしょうがねえ事も分かってんだ。もうこれ以上俺はお前を責めたりしない」 「…………」 「でもな須藤、投げっぱなしで終わったら、もうそれを取り戻すことはできないぜ。 取り戻そうって頑張れば、取り戻すことだってできるんだよ」 丹羽の語らう姿を須藤は耳朶に入れているか入れていないか定かではないが、反応はない。 天王寺には、彼に心情がどういうものかわからない。 狭山に酷い事を言ってしまった後悔か。 狭山に酷い事を言われてしまった衝撃か。 浅倉を死なせてしまったことの懺悔か。 あるいはその全てか。あるいはそれとはまた別なのか。 ――会ったばかりの天王寺でさえ、須藤は「たくさんやらかした」んだと、憶測させるに十分だった。 「俺は、お前らの酸いも甘いも噛み分けることはできねえよ。お前らの仲を繕うことが出来んのはお前らだけだってこと、忘れんじゃねえぞ」 天王寺は傍で、丹羽の言葉を噛みしめる。 自分と阿見音弘之との関係性を顧みる。 天王寺と阿見音の関係は、破綻したわけではない。 それでも、天王寺は現に――阿見音の為ではなく、天王寺自身の為に動いている。 これを見たら、知ったら、阿見音はどのような言葉を言うだろう。 ――いや、それは考えるまでもなく、容赦の欠片もなく、阿見音は天王寺を切り捨てるのだろう。 そうなったら、天王寺は、どうなるのだろう。 人殺しは――やりたくない。阿見音には――捨てられたくない。 揺れる二つの思い。 須藤はきっとこんな気持ちなのだろうか。憶測では無い、ただ自分と彼を重ねただけの行為を経て、天王寺は特に何も思わなかった。 そんなこんな意識を外に置いていると、丹羽は苦虫を噛みしめたような顔で天王寺の手を掴んだ。 「行くぞ、天王寺」 「話は、終わったんですか」 「始まってもねえよ。――俺はもう一回こいつらを再会させなきゃ、あかんだろ?」 「それは私には分かりません」 「そっかよ」 「ところで、どうして私の手を掴むのですか」 「どうしてって、一緒に来てもらうためだろう。約束したじゃねえかよ」 自分のしたい事――を平然と言う丹羽に少しの呆れ、仄かに感じる温かさ。 自分のしたい事で悩む天王寺を前に――自分のしたい事をやって失敗を犯した須藤を前に行うはあまりに酷な、その行為。 それでもこの男には嫌味がなくて、ただ純粋に、この二人に怒って、心配して――その男を、頼ってもいいかもしれない、という本来あってはならない心が芽生える。 「……それじゃあ、行きましょうか」 「ああ、狭山を追いかけよう」 二人は沈む須藤の姿を、一度俯瞰し――狭山の消えた路地へと視線を移した。 最後に、丹羽は言った。 「じゃあな、須藤。また会おうぜ」 そして二人もまた、路地裏へと消えた。 残ったものは、須藤凛と――臥せた三体の身体。 内の一体、浅倉翔の死体を見て、須藤の瞳から輝きが失せた。 □ ■ □ 一人、須藤凛が絶望を噛みしめている最中。 彼の元に来客――もとい、帰還してきた人間がいる。 ダークスーツに陰気臭い顔、参加者なのに首輪すらしない囚われない無法の者。 銀丘白影だった。 「ふぅむ……」 目の前の惨状――彼の目からすれば或いはどうということでもないが、目の前に広げる光景に思わず言葉を漏らした。 須藤凛は、銀丘が返ってきたにもかかわらず死体の近くで言葉もなく跪き。 その須藤凛の近くで倒れている死体と言えば、須藤と同じ制服を羽織っており。 加藤清正は、銀丘が最後に見たそれよりだいぶ悪化した状態で横たわっている。 唯一変わりなく思えた、璃神妹花と言えば未だ寝息を立てているようだ。 なにかがあった事は、間違いなさそうである――。 「まあ、支障はない」 だが。 あくまで合理主義な彼は冷たく彼らを見捨てる。 銀丘白影は、一刀両断がこのグループを脱した瞬間に、縁を切ったのだ。 理由と言えるほど上等なものなどない。純粋に、彼らに付くことに安全性が失せたから。 加藤清正は騙すに容易い男で利用もしやすかったが、小神さくらの攻撃をまともに受け、戦闘をすることも簡単ではないことも想像ついた。 加え、銀丘からしてみれば気に食わない相手でこそあったが、実力は確かな一刀両断すらも離脱するという。 ――完全に須藤の傍らに身を置く理由はなくなったのだ。いたところですることは、子供の御守。――やってられないというのが、隠すまでもない本音。 「さて」 一言思考を区切るように呟くと、彼は動いた。 軽い歩調で須藤の傍らに立つと、同田貫正國を拾い上げて刃を確かめる。 どうやら、欠けているところはないようだ……。 と、一つの目的を達し、溜息を吐くとふと、彼の足元付近から声がした。 「あんた……」 「……む?」 暗い、淀んだ――いやその程度では生温いほど心地悪い沈んだ声。 とても数時間ほど前、あのグループを纏め上げた少年と同一人物とは思えないほど変貌した声に流石の銀丘も躊躇いを見せる。 「今まで何処に行ってた……。あんたがいれば少しぐらい……ッ! いや、こんなことには……」 本当に何があったのだろうか。 今ばかりは銀丘の興味もそそられた。 芯だけはしっかりとしていた少年をここまで改革する出来事とは如何に。 とはいえ、訊ねてまで聞きたいかと言えばそうでもないのだけれど。 素直に須藤の質問には答えておく。ただのきまぐれである。 「今まで俺は、お前が言っていた死体の処へ行っていた。……首輪のサンプルがあるとはいえ、これがインチキじゃないとは限らないからな。予備をもっておくに越したことはない」 発言に偽りはなかった。 彼は大塚英哉の場所に足を運んでいたのだ。 実のところ、須藤が――飯島のために死体を見せないために提案した時から、この考えはあった。 なんの支障もなければ素通りをしていたが、丁度いい事情が出来たために、彼は足を向けたというだけのこと。 誰よりも胡散臭い男に訝しがられるのも人無のカリスマの無さはそれこそ常人のそれを超えているのかもしれない。 「……ふーん、じゃどうして戻ってきたんだよ」 須藤の言葉から滲み出る敵意……否、八つ当たりの念。 怨めしそうな声色こそしているが、顔は一向に死んでいる少年、浅倉翔を向いて動かないので、立っている銀丘からは表情は読めない。 ……それでも恐ろしくその顔は歪んでいるであろうことは、想像に難くない。 銀丘は刀をディパックに仕舞い込みながら、呆れた口調で須藤の問いに返す。 「いや、恥ずかしい話ではあるのだが私は一つ勘違いをしていてね。……ついつい懐にあると思っていたナイフを没収されていたようなんだ」 ある世界、或いは時系列。俗に言うところのパラレルワールドに置いて。 常人――それすらも軽く超す異常性を有す楓坂闇薙とそれらに類する人物でさえも、見抜けなかったナイフの所在を人無は見抜いたということは銀丘にとっても予想外だった。 曰く、只のナイフと侮るなかれ、構成する物質から何から何まで吟味して作り上げた銀丘白影の自信作の荒事処理用の折り畳みナイフ。 それが盗まれたのは、銀丘にとっては痛いところである。 故に――と、銀丘の話は続いた。 「故に私は、加藤が持っていた刀を手に入れようと思ってな。――用途は無論、首の切断だぞ」 息を飲むというわけではなく静かに銀丘の言い分を聞いた須藤は力なく頷きを返すと、返事のないただの屍のように、虚空を据えていた。 つまらないものだな、と須藤に一瞥をくれると、彼はその場で耽る。 これからの行動に付いて、一旦心のうちで整理をしておきたかった、と言うのと同時に、純粋に身体を癒すためである。 (さて……これからどうしたものか) 手足を伸ばしながら、彼の脳は問題なく稼働する。 彼の視線の先には、小柄の少女が一人。――璃神妹花。 (あの少女をどうするべきか) 元よりこの一時的という形になってしまった六人パーティを結成する際、銀丘をはじめとして須藤や加藤でさえも懸念していた一つの危険因子。 それが彼女。 「うにゃー」という人知の範疇を超える《異常能力(サイキック)》という存在。 仲間で止まっていれば、彼も特別手出しをするつもりもなく、あくまで須藤らに世話係を任せるつもりであったが、 縁を切った今となれば、このままみすみす見逃すのは、如何なものなのだろうか。 人喰らいの触手。 正直、銀丘の攻撃が届くかどうかと言われると、彼自身自信を持って頷くことができない。 相手が固体のものであれば、力技で粉砕することは幾ら固かろうと数を以て粘れば、勝機は少なくはない。 しかし相手はあくまでゲル状。――対戦車ライフル、それに銀丘の爆弾でさえ、吸収してしまうのではないかと言う存在もまた無きにしも非ず。 付け加え、銀丘の攻撃は決して無制限に打てるわけではなく、ストックと言うものがある。 殺すのであれば、今、気を失っているこの時に殺すのがベストとも言えよう。 ――ただ。 (それでも、ここで野放しにしておいても、得がないわけではない) 殺すの一択しか視界に入れないようでは、あまりにも迂闊だ。 たとえばここで、殺さない場合の選択肢を選んだ未来を想像しよう。 璃神妹花は銀丘の目から見ても、異常なまでの精神的不安定さを有していた。 それもかなりの人間不信を抱いていることは、『丹羽雄二(早野正昭)』と対面した時の彼女を想起したら考え至るに容易い。 そんな彼女が、この場の景色を一目みて、どう思うのだろうか。 須藤凛。 一応は「お兄ちゃん」と慕い、数少ない《人喰らいの触手》を曲がりなりにも受け入れてくれた『何の変哲もない』人間。 そんな彼が、切羽詰まった顔をして、悲観に暮れていたら。 もっというなら、彼の傍らに転がる正真正銘、死を迎えた身体というワンアクセントが付属としてついてくる。 分かり易く、惨状を表現する舞台に目覚めて、彼女は何を思うのか。 加藤清正。 銀丘が出会う前から行動を共にして、それなりに順当に歩みを進めていた彼らの関係性。 恐らくは加藤の寛容さから生じた結果なのであろう。実際加藤は先の六人の中で一番心穏やかな人間であった。 『丹羽(早野)』と対面した際、彼は璃神に人とは何たるものかを説いていたものだが、今はこの状態。――矢が刺さり、銃弾に穿たれた。 人の凶悪性を知っていながら、凶悪性を否定した彼の末路を見て、璃神は何を思うのか。 ――答えは明確。 そんなもの、改めて彼女は人間に対して、失望を覚えるに違いない。 何も失望の矛先が須藤や加藤に向かうとは限らないとはいえども、他の参加者に敵意を顕わに《人喰らいの触手》の猛威を揮う可能性は重々ある。 銀丘ですら倒すのが困難な相手――例としてあげるなら人無結が最初にあげていた『ジャック・ザ・リッパー』なんかを楽に倒してくれるかもしれない。 璃神妹花の力は確かに強大なものであるが、所詮は子供。 精神に毒を加えるのには、このぐらいでも十分なくらいである。 ノーリスクで、ハイリターン、或いはノーリターン。見過ごしたところで、損することは何もない。 強いて言えて、後々彼が優勝まで目前と言うところまで生き残った時、彼女がまだ生きていたら対処が面倒になるだけの話。その時はその時である。 (――――さてはて、私はこれからどう立ち回るべきか) 彼の目の前に、再三現れる選択肢 ――ジョーカー。 ――偽善の勇者。そして独善の勇者。 ふむ。 と一つ息を漏らし、どうしたものかと疲弊まじりの溜息を立てた瞬間――――。 「あなた……銀丘白影さんね」 赤い髪の女と、三十路を越えたかどうかの精悍な面をした男が、現れた。 男の首を見て、銀丘は眉を、僅かにひそめた。 悪性を孕ませた須藤を前に、再三参加者が集い――戦乱を巻き起こそうとしていた。 須藤は何も言わずに、ただただ沈黙を保ち、浅倉翔を労わった。――そして、弔う。 波瀾万丈な堕落劇も、一旦これにて閉幕だ。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Epilogue◇終劇挽歌(襲撃/万化)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 【C-6/市街地/一日目/昼】 【飯島遥光@数だけロワ】 [状態]:不明 [服装]:永劫学院の女子制服 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3 [思考] 基本:生き残る 1:……? [備考] ※数だけロワ参加前からの参戦です。 ※石川清隆の外見のみ記憶しました。 ※須藤凛が年下とは知りません 【須牙襲禅@俺のオリキャラでバトルロワイアル】 [状態]:不明 [服装]:警察の制服 [装備]:イングラムM11(32/32) [道具]:基本支給品一式、イングラムM11のマガジン(2)、ランダム支給品×2、照り焼きバーガー入りタッパー(残りわずか)@四字熟語ロワ [思考] 基本 人を撃つ事を楽しむ。 1:……? [備考] ※ロワ死亡後からの参加です。 ※鬼一樹月、天王寺深雪の外見のみ記憶しました。また、鬼一は死んだと判断しました。 ※被検体01号を化物と判断、そしてそれに伴い被検体01号並の敵も倒せるもっと強力な武器があると判断しました。 □ ■ □ 【一刀両断@四字熟語バトルロワイアル】 [状態]:肉体的疲労(中)、肩に掠り傷 [服装]:特筆事項無し [装備]:模造刀 [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本:紆余曲折の盾になる 1:須藤との約束を果たす 2:紆余曲折、切磋琢磨との合流(紆余曲折を優先) 3:しばらくたったら須藤らと合流。ただし銀丘、テメーはだめだ 4:頃合いを見てA-6に向かう [備考] ※四字熟語ロワ23話「仲間意識」で刀を取りに行ったところからの参戦です。 ※小神さくらの外見のみ記憶しました。 ※四字熟語のルールは規制されていません。 ※ジョーカーの存在、および銀丘白影に疑心を抱いています □ ■ □ 【早野正昭@個人趣味ロワ】 [状態]:右手骨折、全身にダメージ(中)、精神疲労(大)、衣服が血塗れ [服装]:特筆事項無し [装備]:M4カービン(16/30) [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2 [思考] 基本:優勝して自らが殺した全ての人間を蘇らせる 1:当分は替えの衣服を探したい。 2:対主催グループに潜入して、隙を見て一網打尽にする [備考] ※個人趣味ロワ、死亡後からの参加です □ ■ □ 【東奔西走@四字熟語バトルロワイヤル】 [状態]:健康 [服装]:特筆事項なし [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×2 [思考] 基本 殺し合いを潰す。 1:一先ずは狭山雪子と他二名に追い付く。狭山が南北に行ったのならば協力者を探す。 2:出来ることならタクマを探す。 3:二人(行木団平、ジャック・ザ・リッパー)には警戒しておく。 [備考] ※四字熟語バトルロワイヤル、死亡後からの参加です ※ルール能力により東西にしか移動できません 【小神さくら@俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd】 [状態]:活動に支障をきたさない程度の全身打撲、左足に裂傷(処置済み・行動に若干の支障あり) [服装]:特筆事項なし [装備]:クロスボウ [道具]:基本支給品一式、クロスボウの矢、ランダム支給品1~2 [思考] 基本:殺し合いを遂行する。 [備考] ※俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd死亡後からの参加です ※支給品は確認しましたが、武器はもう残っていないようです □ ■ □ 【狭山雪子@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル】 [状態]:精神不安定 [服装]:三日月中学の女子制服 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、カッター、スタンガン、ランダム支給品×3 [思考] 基本 殺し合いには乗らない? 1:…………。 2:須藤くん……? 浅倉くん……? [備考] ※変哲もないオリキャラでバトルロワイアル参加前からの参加です ※支給品に武器の類はない様です □ ■ □ 【丹羽雄二@DOLオリロワ】 [状態]:健康、決意 [服装]:パーカー [装備]:イングラムM10(28/40)、 [道具]:基本支給品一式、携帯電話、お風呂セット、 コンドーム数十個、防犯ブザー、チェーンソー、現地調達品[市街地](X)@その他、ランダム支給品(1~4) [思考] 基本:殺し合いに乗るつもりはない 1:河田遥を探す。 2:俺がしたい事をする 3:天王寺深雪と行動、殺人をしようとした場合は容赦はしない 4:狭山雪子を探す [備考] ※DOLオリロワ死亡後からの参加です 【天王寺深雪@愛好作品バトルロワイアル】 [状態]:不安 [服装]:白のワンピース、スクール水着 [装備]:アンテニー・ダガー [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本: 私のしたい事を探す 1:狭山雪子を追う 2:阿見音様は…… [備考] ※ロワ参加前からの参加です。 ※須牙襲禅の外見のみ記憶しました。 □ ■ □ 【被験体01号@新・需要無しロワ】 [状態]:浅倉に対する多少の罪悪感。左腕、脇腹からわずかな出血 [服装]:特筆事項なし [装備]:鶴嘴 [道具]:基本支給品一式、栄養ドリンク(残り9本) [思考] 基本:あいつの鼻を明かしてやるぜ。殺人は……あんまやりたくないな 1:……こいつも首輪がない? 2:とりあえず落ち着くまでは稲垣葉月の保護。 3:この場を鎮める。 4:あの獣(須牙襲禅)とはもう会いたくねぇな [備考] ※ロワ参加前からの参戦です ※ジョーカーの特権として、首輪を装着していません 【稲垣葉月@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル】 [状態]:右頬に切傷、怒り、精神疲労(中) [服装]:特筆事項無し [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、治療道具、ランダム支給品1~3、 [思考] 基本:レックスに会いたい、死にたくない 1:この男(銀丘白影)を止める。 2:翔君……。 3:これが終わったら凛君とお話しする [備考] ※新訳俺オリロワ参加前からの参戦です。 ※高原正封の外見と名前を記憶しました。 ※須牙襲禅の容姿のみ把握しました。 【銀丘白影@サイキッカーバトルロワイアル】 [状態]:健康 [服装]:特筆事項なし [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ガソリン(5リットル)、首輪のサンプル、ラハティL-39(10/10) [思考] 基本:今はどうだろうな 1:……首輪がない? 2:一回目の放送までには『ジョーカー』か『偽善の勇者』かを決める 3:必要なくなりそうなので瑠神を排除する [備考] ※ロワ参加前からの参加です ※主催者と契約した『ジョーカー』なので首輪の解除と支給品での援助を受けています □ ■ □ ザーザーザー…… 『――あーあーテステス。ちゃんと撮れてるかなこれ。まあいいや、撮れてると信じよう』 『仮にこれを聞いている奴が須藤以外の人間だったとしたら、ここで即刻電源を閉じて須藤凛って奴に渡してくれ。ハズいから』 『…………』 『いいな、部外者は切ったな? 信じてるぞ? その良心に』 『さて、じゃあ須藤凛。俺だ。浅倉翔。ちゃんと記憶してるか?』 『俺は今、一刀両断さんらにお前の居場所を教えてもらって向かっている最中だ』 『さっきまでは稲垣葉月さんって人が一緒にいたけど、今は一刀両断さんらに面倒見てもらっている。つまり俺は一人。好き勝手ハズいことだって言ってやるよ』 『あ、ハズいつったってあれな、愛の告白とかじゃねーかんな? 期待すんなよ? 言えて酷く薄い酷薄だぞ?』 『……っと、まあ、あれだな』 『須藤、お前がこれを聞いているとき、お前がどんな事をしているかは知らん』 『一刀両断さんが言うにはお前は健気に殺し合いに対抗しているらしいから、あんま心配してないけど――仮にお前が殺し合いに乗っていたところで俺はそれを咎めるつもりはない』 『咎める資格もねえしな。まあそんなことを踏まえつつ、あんな襲うような真似をしておいて都合のいいことこの上ないけど聞いてほしい』 『まずは須藤』 『お前も災難だったな。ふと前の殺し合いから目を開ければ違う殺し合いだなんて、本当救えねーよな』 『そんで難易度急上昇ときた。馬鹿げてるにも程がある』 『これじゃあよ、お前を襲った意味も――龍磨を殺しちまった意味もない――誰が望んだんだよこんな畜生展開』 『お前も見ただろ、龍磨のその……あれ……死体。そうだよ、あれは俺が殺したんだ』 『それから、お前も殺そうとした。悪かったと思ってる。俺が悪いとも思ってる。理解してくれなんて言わない。だけどはっきりさせておきたかったから』 『お前に殺意を以て迫った事は明瞭にさせておくべきだったと分かっているから、言わせてほしい』 『津村が理不尽に死んで、龍磨が殺されたところを見て、それでも殺意を剥きださなかったなお前』 『どころか今は、一つのチームを纏め上げて奮起しているらしいじゃねえか』 『そういうところ、本当尊敬するよ。俺に出来なかった事を平然とやってのけるんだからよ』 『ったく普段の日常生活からそのやる気をもっと出せよなー』 『晴天見てめげてんじゃねえよ』 『……っと、どうにも一人で話してるとどう話せばいいか分かんないな』 『タイミング掴めないけど話題転換だ』 『一刀両断さんから伝言貰ってるぜ』 『お前らに何があったかは知らんけど、えーと確かな、「しばらく経ったら城にいるから会いに来い」だって』 『なんか、「流石に離れてる二人を護るのは無理だから」とかぼやいてたけどお前あんな格好いい女性に護ってもらってたの? すっげー羨ましいんだけど』 『なんだなんだ、これが人格者の特権か? ええ?』 『……だがな、須藤。俺も流石に本人の前では言ってないけど俺だって彼氏持ちらしいけど葉月さんって綺麗な人と一緒にいたんだぞ! はっはっは! どーだ須藤!』 『…………』 『何言ってんだ俺、一人で恥ずかしい。うわー穴があったら入りたいわ。一人で会話するとこんな惨めなんだな。嫌なこと知ったよ。うわー』 『まあいいや。言うことは言ったからな須藤』 『さっきも言ったけど、今向かう先で須藤が何をやってるかは知らねえけど。言ったからな?』 『きっとこれをお前が聞いているってことは俺は死んだんだろう』 『そうじゃなきゃこんなハズいもん誰かに渡すわけねーし』 『だからここで伝言を伝えたからな』 『さてとまあ』 『お前が俺を殺しにかかってきてもしょうがねえとは思うけど、一つ言っておくぞ』 『今の俺は、何があってもお前の味方だ。都合のいい事言うがお前や狭山や瀬戸には生きてほしい』 『この際、他の命なんてどうでもいい。お前を襲う人間がいたら、俺はそいつを即刻殺しにかかるだろうし、お前が命の危機にさらされていたら、俺は身を挺す覚悟はある』 『こんな事言うとさ、格好いいヒーローっぽいけど、お前の知ってる通り俺はそんな奴じゃない』 『それだけの罪を犯したんだ』 『俺の死に怒ってくれたり、泣いてくれるのは嬉しいんだけどさ。あんまり俺に囚われるなよ』 『無感動で全然いいんだよ』 『須藤』 『改めて言うが悪かった』 『もう一つ言いたいこともあるんだけど、それは直に言わなきゃ意味ねえし。とっておくよ』 『そろそろ録音を切るけど須藤』 『最後に励ましのエールだ。サッカー部元主将の俺のエールを聞きやがれ』 『――頑張れよ、須藤』 『んじゃ、じゃあな。また来世で』 ザーザーザー…… 【浅倉翔@変哲もないキャラでバトルロワイアル 死亡】 「 」 【C-6/市街地/一日目/昼】 【須藤凛@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル】 [状態]:顔に腫れ、体中にダメージ(大)、肉体的疲労(大)、精神的疲労(極大)、左肩に刺し傷(処置済) [服装]:三日月中学の男子制服 [装備]:トンファー@現実 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2、ボイスレコーダー [思考] 基本:…………。 [備考] ※変哲オリロワ参加前からの参戦です。 ※石川清隆の外見のみ記憶しました。 ※一刀両断のルール能力について聞いたようです □ ■ □ ――――そして、魑魅魍魎を抱きし彼女は目覚める―――― 【C-6/市街地/一日目/昼】 【加藤清正@DOLバトルロワイアル4th】 [状態]:睡眠、右腕、右足に矢疵(各々治療済み)、腹と腕に銃創 [服装]:特筆事項なし [道具]:基本支給品一式、同田貫正國、ランダム支給品×2 [思考] 基本:…… [備考] ※ロワ参加前からの参加です ※うにゃーの存在を良いモノと認識しました ※銀丘白影から『ジョーカー』について聞きました 【璃神妹花@サイキッカーバトルロワイアル】 [状態]:健康、眠気(小) [服装]:特筆事項なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×3 [思考] 基本:殺し合いをする気はない 1:……? 2:どーしよっかな、うにゃー? 3:うにゃーの≪食事≫を探そうかな? [備考] ※ロワ参加前からの参加です ※うにゃーを認識してくれる者は≪食事≫として見られません 【携帯電話】 丹羽雄二に支給。 黒色単色の折りたたみ式の携帯電話。 充電は満タンで支給されている。 以下機能。 通話:正常通り使用可能。ただし110番や参加者の元の携帯番号などバトルロワイアル外の電話番号には通じない模様 メール:使用不可、ただしメモ書きは出来る。 カメラ、マナーモードなどのその他設定は随時追記 【お風呂セット】 丹羽雄二に支給。 石鹸やシャンプー、リンス。洗顔フォームやシャンプーハットに至るまでお風呂で使うような道具を揃えた。 ちなみにどれもかしこもブランド物である。 ……人無は何がしたいのだろうか。 【コンドーム】 丹羽雄二に支給。 言わずもがな用途は性こry ちなみにそれ以外にも液体(健全)が大量に入れれたりするので使い道がないわけではない。 【スクール水着】 大塚英哉に支給。 小学生女子が着れそうなぐらいのサイズ。ちなみに世間一般的に言う旧タイプ。 胸のところには名前を書くところがあり所謂萌えを意識している気がする。 ……人無は何がしたいのだろうか。 【防犯ブザー】 大塚英哉に支給。 ボタンを押せば大きな音が鳴る。 大半の小学生が持っているであろうが、使い道は悪戯が多い模様。 【ボイスレコーダー】 浅倉翔に支給。 音声を記憶する装置。 今回支給されたもののサイズは手のひらサイズ。 【チェーンソー】 現地調達品。市街地にて丹羽雄二が回収。 基本的な構造などはDOL2ndにて支給されたそれと同じ。 【カッター】 現地調達品。市街地にて丹羽雄二が回収。 代えの刃は付属してなかった。切れ味はカッターのそれ相応。 一応人を殺せる凶器である。 【クロスボウの矢】 現地支給品。市街地にて小神さくらが回収。 なにやら例の四次元ポケ……バッグに有限はあるとはいえほぼ無尽蔵も同然の量の矢が入っていた。 ただし安物。割と簡単に折れたりする。だからといって殺傷能力は侮れない(使い手にもよる) 時系列順で読む Back 失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 Next 優しくキミは微笑んでいた 投下順で読む Back 失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 Next 優しくキミは微笑んでいた 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 加藤清正 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 璃神妹花 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 須藤凛 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 銀丘白影 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 小神さくら 078:四字熟語VS生体兵器 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 丹羽雄二 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 天王寺深雪 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 浅倉翔 GAME OVER 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 稲垣葉月 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 狭山雪子 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 東奔西走 078:四字熟語VS生体兵器 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 早野正昭 090:EVE 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 被験体01号 076:パラべラム・アライヴ『Down to Zero we go』
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思春期 男の子 ハニカミっち 活動時間:7~20時 おなか:60分毎に1つ減る フレン度:45分毎に3つ減る トイレ:120分毎に1回 ※お世話ミス回数によってまめっち・しんしっち・ききっち・スペイシーっちに成長するか変わる。 ぼくほしっち 活動時間:7~20時 おなか:60分毎に1つ減る フレン度:60分毎に3つ減る トイレ:120分毎に1回 ※お世話ミス回数によってくちぱっち・すのぼっち・ぐりぐりっち・ピポスペっちに成長するか変わる。 はっぱぼうやっち 活動時間7~19時 おなか:60分毎に1つ減る フレン度:60分毎に3つ減る トイレ:120分毎に1回 ※お世話ミス回数によってくろまめっち・くいしんぼっち・ござるっち・ペイントっち・アカスペっちに成長するか変わる。 女の子 パイナプっち 活動時間:7~19時 おなか:60分毎に1つ減る フレン度:45分毎に3つ減る トイレ:120分毎に1回 ※お世話ミス回数によってラブリっち・わたわたっち・ちゃまめっち・ふらわっち・あげっちに成長するか変わる。 さぼさぼっち 活動時間:7~19時 おなか:60分毎に1つ減る フレン度:60分毎に3つ減る トイレ:120分毎に1回 ※お世話ミス回数によってひめスペっち・もりりっち・ぺろっち・なちゅらっち・うわさっちに成長するか変わる。 ひねおねっち 活動時間7~20時 おなか:60分毎に1つ減る フレン度:60分毎に3つ減る トイレ:120分毎に1回 ※お世話ミス回数によってメロディっち・ぴちぴっち・しぐれひめっち・めめっち・まきこに成長するか変わる。
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大人思春期というものがあるそうですよ。 思春期というのは、子供のことを表しているもので、中学生くらいから高校生くらいの子供のことを言うのでは? しかし、最近では大人でも思春期というものがあるそうなのです。 大人思春期というのは、ホルモンバランスが変化しやすい更年期のことを言うみたいです。 言葉が変わるとなんとなくイメージが変わりますね。 10代後半くらいになるとホルモンバランスが変わりやすいため、思春期になって反抗期がきたりします。 大人だってホルモンバランスを乱す年齢があり、それが更年期なんだとか。 更年期と言われるとなんとなく落ちる一方という感じがしますが、大人思春期といわれるとまだまだ若いと感じさせてくれますね。 散歩
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スキル名 傷の治療 スキルタイプ 回復 効果 このカードのチームのヒットポイントを回復する 使用キャラ 魔女
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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Piece6◇無響(不器用)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「つーか、あいつどこ行ったの?」 開口一番。 飯島が立ち去って数分、壁にもたれかかり座り込んでいた須藤凛に、一刀両断は話しかけていた。 依然として、銀丘白影は遠くで見張りを続けているし、加藤清正と璃神妹花は彼らの近くで仮眠をとっている。 無論飯島遥光の姿はそこにはない――一刀両断の言う「あいつ」が飯島遥光なのだから。 須藤凛は、座り込んだまま、力なき声色で一刀両断の疑問に返事を添える。 「……さあね。このチームを抜けたいって言うから、抜け出してどっか行っちまったよ」 実際須藤凛が、これからの飯島遥光の動向について知っていることはこの程度のものしかない。 とはいえ予想できなくもない。 どっかに隠れて、彼女は須藤らの大躍進を待っているのかもしれない。 それに、走って追いかけたら、路地裏にでも入ってない限り、追いつくことは容易だろう。 しかし彼にはそれが出来なかった。 追いついたところで、何を話せばいいか分からないから。 話したところで、またしても突放されたらどうしようもないし、なにより飯島がいっていたように彼、須藤はこのチームのリーダーだ。 彼の勝手で動いちゃいけないのも、また道理。 確かに、このチームに対し、信頼関係がきっちりと深く成立していたら、多少の我儘もよかったのかもしれない。 だが生憎、このチームに信頼関係は希薄だ。もとよりそれが須藤の頭を悩ませる要因の一つとなっていたのだから、身をもって重々承知していた。 下手に手を加えれば、解(ほつ)れた糸のように、余計にバラバラと崩れていくかもしれない。 ――少なくとも、須藤はこのチームの存在が確固たるものだとは、信じていなかった。 「ふーん」 今まで同様に、自ら聞いておいて癖して、さほど興味もわいていなかったのか、その返事も生返事だ。 温度の変化を感じられない、どうでもよさのビンビン伝わる声色に、須藤は僅かに反応した。 「……なんで、一刀両断さんはそんな呑気なんですか。仲間が抜けたんですよ? もうちょっと反応があってもいいじゃないですか」 覇気のない声とはいえ、口調は真剣そのものだ。 見上げる形で、須藤の瞳は一刀両断の瞳を射抜く。その様は、憎々しげ。 ギリ、と噛み込める僅かな苛立ちを、惜しげもなく晒す。 「べーつにねえな。あたしにとっちゃどうでもいいっちゃどうでもいいしな」 須藤からひしひしと伝わる気持ちに気付きながらも、態度を変えるわけでもなく、 我が道を往く堂々さで、須藤の神経を逆撫でする言葉を発す。 ――須藤も、それを聞いて静かに黙っていられるほど、生憎心中は穏やかではない。 「……何でですか。今まで一緒にいた人でしょう!? 少しぐらいは……少しでもいいから思うことはないんですか!!」 「なにムキになってんだよお前は。一番最初にもいったかも知んねえけど、あたしが大事なのは紆余だけだ。ぶっちゃけそのほかは殺したって構わないぐらいだぜ」 突如剥き出しになる殺意。 思わず須藤は尻込みしてしまう。 ――実際、一刀両断とはそういう人間なのだ。加えて言うなら文字なのだ。 既にこの世に《一刀両断と言う存在は死んでいる》。 勿論ながらそれは一刀両断の価値観によって定まった事だし、一刀両断は生きていると言えば生きている。 ただ、彼女という死にぞこないは、紆余を護るという一点に置いて、せめてもの生き甲斐――死に甲斐を感じているのだ。 故に他者へ刃を向けることに容赦はしない。 それは、絶対的に揺るぎはしない、第一条件だ。 と――言いはしたものの、彼女の今のパーティは須藤を含むこの面子。 近くに紆余の姿は見当たらない。彼女のすることも、紆余を護る以外にも半強制的に広げなければならない。 「ま、別に今はいいけどな。あたしだって、飯島に離れられちゃ困るのはおなじだよ。――なにせ約束が守れない」 『まだあたしは貴方達を頼りにしてますよ』と遠回しな示唆。 将来的には打倒すべき人物らであろうとも、今は背中を預ける仲である。 ある程度の信頼は置かせておくのは、定石であろう。取り戻しがつかないほどにつき放す言動はない。 それいう打算を抜きにしたところで、須藤の言う通り、先ほどまで一緒に行動していたものが易々と死なれたりもしたら、寝覚めが悪いのも確か。 それも約束までされた“護る”べき相手ともなると、意味合いに一重も二重も重みは増すというものだ。 「約束ですか」 一応は弁えている一刀両断に対し。 疲弊した声色を隠そうともせず。 むしろ嫌味を含めた声で一刀両断の言を反復する。 須藤にとって、飯島とはその程度の間柄でなかった――冷酷な事実に正直落胆を覚えずには居られなかった。 「約束だろうが。お前から持ちかけてきたあの約束」 「……そうでしたね」 「お前は何に対して拗ねてんだよ……ったく」 心底呆れた様子で両者共々、たがいに対し若干の軽視の念を抱く。 須藤もさることながら、一刀両断も八つ当たりの感情が入り混じっている。 パーティメンバーの銀丘白影に対することは前提として、時間の割にあまり行軍が進んでいない件に関して、苛立ちや焦りが募りはじめていたからだ。 よもや今の須藤や加藤、ひいては璃神の状況からして、さらに進軍が遅れるのは目に見える。――この状況は、彼女にとってあまりにも手痛い。 今の状況、紆余曲折がどのような状況下に置かれているかわからない。 もしかしたら彼女の知る切磋琢磨のような心強い人物が傍らにいるかもしれないが、しかし逆の可能性を拭うにはあまりに情報が足りない。 詰まるところ、不安なのだ。 こうしている間にも、紆余曲折の生死が。 ――須藤たちとの約束とは違う、命にかけても守らなければいけない大切な約束。それを守り通すために。 盾として――そして、刃として。 このままグズグズしてはいられない――――。 それが最終的に一刀両断の下した結論である。 このままグズグズしていたら紆余曲折の生死抜きにしても、一刀両断の精神衛生上良いとは思えない。悪く思う。 「なあ、須藤」 「なんですか」 地面に向けられた光なき瞳を、一刀両断に向ける。 飯島を止められなかった自責感や無力感の全てが、淀んだ瞳に詰まっていた。 一刀両断は一瞬眉をひそめるが、おどけた調子に直ぐ様戻り、一言、須藤に伝える。 「あたし、一回ここ抜けるわ」 「……は」 お前は何を言っている、と声を大にして荒げたかったが、どうにもその気力がわいてこない。 しかしそれでも、その言葉をみすみすと看過する訳にもいかないのも節理。 ――大前提として、彼女が抜けたりなんかしてしまったら、最低限。 今の彼に置ける最低限の目標――早急なる主催、及び危険人物の対処の難易度が猛烈なる勢いで急上昇してしまう。 飯島遥光が、自らの感情を抑えて契られることとなった『約束』すらも守れない。 「だからさ、あたしは一回この集団から抜け出すっつってんだ。あー安心しろよ。お前との約束は守ってやる」 的外れな訳注を入れると、間もなく一刀両断の足が動く。 ポニーテールが須藤の前を躍り出る。 不規則な動きをしたまま、根元となる頭が動き、一刀両断が一歩踏み出した瞬間。 須藤は思い出したように気力を無理やりにでも引きずり出し、声を荒げ、引きとめる 「おい、あんた!」 ――いや、それは引きとめる、というよりかは 「あんたはどうしてそんなに毎回毎回自分勝手なんだよ! あんたは少しぐらい協調性とか知らねえのかよ! 遥光ちゃんがいたときだって、俺や清正さんの気持ちも知らず、隙あれば隙あれば白影さんと喧嘩ばっかりしやがって! 挙句の果てに、勝手にどっか行くだとか身勝手にも程があんだろうが!! 大体あんたが抜けたらこのパーティの戦力が大幅に下がるってのに……。 遥光ちゃんに俺は、俺たちは主催を倒してくれって頼まれたのに! それなのにあんたって奴は――――!」 積もり積もった愚痴や不満の解消でしかなかった。 引きとめる口実よりも、ただ単に今まで蓄積していた精神的疲労を放出しただけに過ぎない。 今もこうして、頻繁に休息する時間はとれている訳ではあるが、その度に須藤はなにかしら役を負うこととなり、実質休憩と言えるほど休憩を果たしていない。 心の整理は、実のところあまりついていなかった。 飯島が抜ける前――もっと言えば飯島に対する保護欲が増幅するよりも前に感じていた、一刀両断らに対する不平も解消しきれていない。 その不平は、飯島の理不尽な離脱劇によって痛めつけられた心には、あまりにも劇薬。 毒々しいより禍々しい。 混沌とする荒んだ気持ちは劇薬に対し強烈な反応を見せる。 一度放出したら、栓をするのは難しい。 もうこれ以上は言わなくていい、と自責をしようとも舌は勝手に動く。 須藤は立ち上がり、感情のままに吐き捨てる。拳を強く握って、腹から、目一杯に大きな声を放つ。 ――――チャキン。 ふとして、そんな金属音が響いた。 臨、と。 突如、一刀両断は再び踵を返す勢いのまま抜刀し、須藤の首に炯々たる刃を寄せる。 瞬間の出来事に須藤の反応はあからさまに遅れ、気付いた時には声も出なかった。 凛、と。 須藤の知るなかでは、一番冷たく。 背中に氷水を流されたかのように、背筋には冷たき悪寒が走り、心臓が飛び跳ねる。 かつて見せていた殺人者としての顔をのぞかせる。 笑みはない。おちゃらけた様子もない。 ――あるのは、おぞましき剣幕。 「とりあえず黙れ、そして落ち着け。見苦しいのは不愉快だ」 あまりに静かな声に、須藤は息を飲む。 蛇に睨まれた蛙のように、動けない――――。 この立場関係が、圧倒的な実力差、或いは能力差の表れなのだ。 形だけはリーダーと言う役を背負っていたとしても、いざとなったら何も口出しできない。 まとめ上げるにした所で、必要以上な口出しは……怒りを買うこととなったら、己の命の危機とも直結する――と言っても決して過言ではない状況。 故に避けていた。 己の命は惜しいものだ、と半ば諦めて、道中においては最低限の注意しかしてこなかった。 結果として、それがストレスとなり、須藤の感情を爆破させ。 同時に――一刀両断の尾に触れることとなってしまったのだから、その判断も選択ミスだったのかもしれない。 今更思い至ったところでどうしようもないし、刀を突きつけられているという事実は揺るがない。 ――――何もかもがうまくかみ合わない現実に内心で毒づいて、小さく溜息を洩らすと、ふと一刀両断が語りだす。 「お前ってさ、生きてることって何だと思う?」 柄にもなく急にどうした、と須藤は感じたが胸に秘めておく。 そんな須藤を知ってか知らずか、一刀両断は尋ねる形こそ取っていたが、口を閉ざす様子はない。 ――かつて紆余曲折に話したのと似たことを胸を張って言う。 「あたしはな、生きてるってのは肉体的に生きているのなんて正直二の次だと思っている。 心臓が動いている時然り、鼻や口で呼吸したりすること然り。脳が動いている時然り、な」 「俺はそうは思いませんけどね。人は死んだら生きられないんです。当たり前のことでしょう」 「ははっ、さてはお前幽霊も信じねえタイプだな」 久しく見せていなかった、笑みを浮かべると、刀を須藤の首から遠ざけて地面に刺す。 固い地面も、一刀両断の《ルール能力》によって容易く穿たれ、刀は屹立する。 須藤は敵意から解き放たれて、無意識だが見て分かるほど大きく安堵の意を示す。 一刀両断は微かに頬を歪ますと、話をつづきを述べていく。 「だけどな、須藤。人は死んでも何かしらで《生きていくんだよ》。否応がなしに、生きていたなら、肉体的に死のうが《生き続ける》」 「……どういう意味ですか」 「意味なんて簡単だよ。――人は誰かの心の中で《生き続ける》。死のうが、死ななかろうが」 あたしにとっての、猪突猛進みて―にな。 と須藤には聞こえないほど小さく、彼女は呟く。 臭い台詞を聞いて、須藤は「えーと……」と小さく唸るように言いながら、この台詞に対して、どう言うべきかと思考する。 一刀両断自身、その言葉が臭いことを察しているのか、話題を変えるようにとっとと話を進めていく。 「ま、別に死生観に付いて強要させようだなんて独善的なことはあたしもしねーさ。そこまで空気の読めない女じゃない」 「説得力が欠けますよ」 「言ってくれるじゃねーの。でだな、須藤。話が脇道にそれちまったが、そろそろ言うぜ」 「……」 須藤も空気が読めないわけではない。 毒づく訳でも、疲弊をのぞかせるわけでもなく、黙りこむ。 朗らかに笑みを浮かべていた一刀両断は一転し、そんな構える須藤に向けて、紆余曲折に投げかけた言葉を返す。 「人が生きているってのは、誇りを持っている時のことだ。生きる為に必要なのが誇り――誇りは、生きたいと願う理由のことさ」 「つまりは、あんなことしたいから生きたいって思う何かがあれば、人は生き続けるってことですか」 「そういうことだよ」 紆余曲折はこの言に対して、何よりもまず不思議に思った。 状況が特殊だったとはいえども、彼女が自分自身の事を《死んで》いるといったことに向かい、ただ単純に首を傾げた。 「……は、はは」 須藤凛はどうなんだろうか。 今まで、ここに至るまで沢山の出来事と巡りあってきた。 変哲もない中学生を変革させるほどに、インパクトのあるイベントに遭遇して、彼はどう思うのだろう。 《死》よりも死の縁に立ち会ってきた彼の答えは――。 「立派な考え方だと思いますよ。本当、綺麗な考え方だ。羨ましいぐらいに」 一拍置く。 僅かに須藤が息を吸う音が二人の間に流れる。 そんなことを一刀両断が知覚した瞬間、須藤の口は再び開かれた。 「だけど、それじゃあダメなんですよ」 理解しないものを拒絶。 同意しないものを排他。 首肯しないものを弾劾する。――それが正しさだと言わんばかりに。 きっぱりと否定の念を押す。 「結局誇りなんてなくても人は生きるんです。生き続けなきゃいけないんです。重荷は背負わなきゃ、ダメなんです」 「……お前はそんな人生を生きたいと思うのか?」 「いいえ、生きたくないですね。今の俺は死にたい気分ですよ」 その言は、須藤に誇りが欠けている――ということを意味する。 実際誇りは――つい先ほど、飯島が削いでいったばっかりであった。 「ですが、今の俺は誇りを抱くことさえ許されないんですよ。だけど俺には生きる使命がある」 「へえ、生きる使命だなんて一丁前にそんなもんがあるんだ。言ってみろよ」 「俺は遥光ちゃんに頼まれたんですよ。――必ず主催を倒すって。だから俺は遥光ちゃんを護るって誇りを捨ててでも、生きなきゃいけないんですよ」 飯島は須藤の誇りを削いだ――その代わりに、未来を託した。 それがたとえ独善的でも、他人任せでも、不名誉な重荷を抱えながらも――飯島は、須藤を『信頼』したのだ。 「ふーん」 興味なさげな一刀両断の返答に、再度苛立ちを募らせながらも、 踏みとどまって、されど八つ当たりでもするかのように、問うた。 「そういうあなたこそどういう目的をもって生きてるんですか」 「ったく勝手に話し始めておいてその言い草はねえだろうよ。まあいい。元々言うつもりだったけど――須藤、お前に一つ、言いたいことがある」 「言いたいことですか」 不服のありそうな視線を一刀両断にぶつけながら、言葉を吟味するように繰り返す。 されど意味がわかるわけでもなく、結局一刀両断の言葉を待つ羽目となった。 そんな一刀両断は、何ら感情が含まれない声で、返歌となる言葉を述べる。 「お前がどう捉えるかは分かんねえけど、あたしの言い分で言うなら――あたしはもう《死んでる》よ。もう修復なんて出来ないぐらいに。 殺した相手は紆余曲折。とはいってもあたしが殺意全開で襲いかかって、まあいろんな要素が噛みあったとしても、しょうがないことだったんだけどな。あいつにとっては」 「……じゃあ、あなたは今……今まで何をしてここにいるんですか」 尤もな質問。 一刀両断は迷うことなく、質問に刃を入れる。 「あたしは紆余に利用されるものだ。あいつの盾として、刀として、あたしはここにいるだけだ。 あいつが望めばあたしは死ぬし、あいつが望まなくともあたしはあいつを生き残らせたい。それ以上もそれ以下もない」 「……」 沈黙。 意味がわからない、と一蹴すると同義であった。 意に介すことはしない。 それは無駄であるから。 彼女の生きざまは、死にざまは、彼女(《紆余曲折》)のものであるからだ。 理解を得ようだなんて、一刀両断とて思っていないし、同情を買われるのはむしろ大きなお世話とも言えよう。 「まあ、あたしとお前はちょっとは似てたんだよ。――まあ、ちょっと似てただけだけどな」 「……」 「あたしは《死んだ》。だけど、お前はまだ《生きてる》んだろ? あたしとは違う。 ちったぁ、誇りをもてよ。須藤。今のお前には、正直《生きる》価値なんてあたしにはちっとも見えねえさ」 「……」 「鬱陶しいのは嫌いだが、夢をもって前に進む奴は嫌いじゃねえぜ」 「……」 ただ沈黙を通す彼に向けて。 決して真剣ではなさそうだけれど、それでもふざけているようには見えない。 一刀両断と冠するには、不似合いな曖昧さを含んだ表情で、言葉を吐いた。 「《死んだ》あたしでも、なにかの為に頑張ってるんだ。 《生きている》おまえがくたばってどうするよ。 せめてそういうのは『死に物狂い』で頑張ってから、弱音を吐くんだな――お前の頑張りなんて、まだまだだ」 ま、後はお前が勝手に考えろ。 と足を飯島が去った方向へくるり背を向ける。 言いたいことを言って、ある程度満足したのだろうか。 背中は何時の間にか遠く離れていて、彼女もまた、このパーティから脱した事を如実に表している。 「…………」 礼を言うわけでもなく。 反感を述べるわけでもなく。 ただ静かに、呆然と立ち尽くしていた。 一秒と経ち。 一刀両断が駆け始めた。 二秒と経ち。 髪の尾が豪快に揺れる姿を最後に見た。 三秒と経ち。 一刀両断は路地裏へと消えた。 何もできずに、棒立ちとなり何時までも一刀両断の消えていった路地を見つめる。 その行為によって、なにかが起こるわけでは無かった。 そうして数瞬を越し、須藤は拳を握り一刀両断との会話を振り返る。 一刀両断の言葉が、須藤にどのような影響を加えたのか。 明瞭だった。 未来、あったかもしれない未来で、正義の少女が感じたように、彼もまた――こう思う。 「なんであなたの言葉は――そんなに軽いんですか」 響かない。 想像を絶するほど、なにも響かない。 具体的には、彼女が《死んでいる》と言ったその辺りから、 彼女の言葉は、須藤の心に、突き刺さらなかった――彼女の銘に反するかのように断たれることがなかった。 だから須藤は怒れなかった。 響かない言葉に、激昂は出来ない。 彼女が最後に残して行った「正しいであろう言葉」に、何ら揺さぶられない。 よほど飯島の放った、詭弁に類す言動の方が、須藤には響いていただろう。 「……」 得体のしれない、不満足。 これが《死人》の言葉だとすれば――成程、言い得て妙である。 胸に残る、もやもやとした不明瞭なしこり。 だけど気持ち悪さを感じさせないほど、無感動。 「……でも」 それでも。 彼女の言っていることは、恐らくは正しい。 傍目から見て、間違っていた訳ではないのだ。――それは理解できる。故になまじ恐ろしいのだが、とりあえず置いておくことにした。 飯島遥光は、須藤のこんな姿を見たいと思っている訳ではないのだろう。 もっと輝かしい姿を、期待しているはずなのだ。 「そうだよな……」 確かに。 その点を踏まえれば、彼女との会話は、何ら意味のないものではなかったらしい。 彼が頑張る意義を、再び示してくれるほどには、価値は存在した。 「俺は……頑張らなきゃ」 意気込む。 ただそれだけのこと。 それでも大事なことだから。 彼は、近くに転がっていた同田貫を拾い、力強く握りしめる。 それはつまり、意を決し直した契り。 自らを鼓舞すべく行った、変哲もない行為だったけれど、それでも鬱蒼とした心境は、僅かに晴れたようである。 □ ■ □ 一人の青年がやってきた。 手に銃器。 瞳に殺意。 衣服に付着した乾いた血糊。 誰が見たところで、一目で危険な人間だと察知できるだろう、容貌に似合わないほどの修羅然とす青年。 「……」 ――青髪の青年、早野正昭。須藤らの前に、再び姿を現した。 「……」 無言。 先と打って変わって、あくまで冷血になりきろうとし、銃を構える。 的は、須藤凛。 銃口の延長線上に立つ須藤は、咄嗟に同田貫を構え直すが、それが意味を成さない事ぐらい知っている。 彼は剣で銃弾を弾く様な技はない。 思わず息を飲む。 変に動くのも賢くないが、だからと言って動かないのは愚の骨頂。 どうしたものか――。 と、須藤が悩んでいる間にも――早野は、覚悟を決めた。 「「……っ!!」」 早野と須藤の息の音が、閑静な住宅街に響く。 だけどそれも一瞬の事。 意を決した早野の瞳が、閉じられて。 連動するように、彼の指が動いた。 「――――シュゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウト!!!!」 ――直後。 乱入者が、姿を現した。 時系列順で読む Back 疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 Next 失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 投下順で読む Back その先にある、誰かの笑顔の為に Next 失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 加藤清正 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 璃神妹花 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 須藤凛 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 銀丘白影 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 小神さくら 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 丹羽雄二 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 天王寺深雪 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 053:死逢わせ 浅倉翔 070失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 053:死逢わせ 稲垣葉月 070失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 010:正義の味方 狭山雪子 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 010:正義の味方 東奔西走 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 055:アンハッピーリフレイン(前編) 早野正昭 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 053:死逢わせ 被験体01号 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』
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2015年10月8日更新 ■糖尿病性潰瘍や壊疽などに「創傷ケアセンター」糖尿病性潰瘍や壊疽■ 糖尿病が悪化しますと、動脈硬化が進んで足の血管が詰まり、皮膚や骨が膿む壊疽(えそ)を起こします。この場合は、足を切断するケースが多いです。 このような糖尿病性潰瘍や壊疽(えそ)の患者は増えており、70万人とも推定されています。このほか、動脈や静脈の血流障害による潰瘍、床ずれ(褥瘡:じょくそう)など、なかなか治らない傷を総称して「慢性創傷」と言います。 しかし、慢性創傷を治す体系的な技術や知識を持った医師は、日本にはほとんどいないのが実情です。担当の診療科も決まっていません。 内科は糖尿病の治療はできるが、足の傷は不得手です。一方、骨を治療する整形外科も、細菌感染を伴う場合は治療を避けがちになります。足の切断は、医師の治療経験が乏しい場合もあると言われてます ■創傷治療の「創傷ケアセンター」■ そこで、創傷治療が進んだ米国の医療マネジメント会社が、専門病院から検査・治療法などの情報を集め、日本の病院での治療に導入したのが「創傷ケアセンター」です。腐りかけた足などの「再生」を目指します。その最も重要な鍵となるのが「血流」です。 専用の検査機器で血流を調べ、ある程度血流があれば、腐った部分切除して組織の再生を促します。血流が足りないなら、バイパス血管を植えるなどの治療を行い、足の切断を回避します。 医療マネジメント会社は、このような治療手順書を病院に提供し、担当の医師や看護師には米国で研修を受けてもらいます。実際の診療では、傷の大きさ、状態などの診療記録を送ってもらい、問題点を指摘したうえ、米国の創傷専門医との電話検討会を通し、治療法について助言します。 練馬総合病院など比較的治療経験の長い全国5か所の創傷ケアセンターでは、14週間以内での治癒率は平均7割。別の病院で「足の切断が必要」と言われた患者のうち、4割は切断を回避できた。治療には保険が使えます。
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奇跡の治療 アイドレスWiKiの該当ページ 奇跡の治療(イベント) 要点:・青い光・医者?→医師 周辺環境:・戦場、傷ついた人 評価:なし 特殊: *奇跡の治療のイベントカテゴリは藩国イベントとして扱う。 *このイベントを取った国は、任意の1キャラクターを復活させることが出来る。ただし、光になっているキャラクターを復活させる場合は、復活先世界のアラダを撃退しなければならない。 →次のアイドレス:トラオ=テンダーブルー(ACE)、サーラ・サーシャ(ACE)、千葉昇(ACE)、滋賀小助(ACE) おまけ 派生元リスト 岩田裕→その前医師 知恵者 竜の飛ぶ空 猫野和錆2 バレッタ セイイチロー・黒崎2 和錆、国境なき医者→和錆、医療研究者→月子の和錆→猫野和錆2(プロモ前)→猫野和錆(プロモ前) 2010~2011年 年末年始ビンゴ大会の景品 迷宮競技会・賞品10階まで突破コースCセットダイス6 コメント ……鍋所得のイベント。ACE復活能力がある。なんだかんだとお世話になったイベントである。 治療しちゃうのさ。
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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Piece2◇行き着いた原罪(息ついた現在)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 眠たそうな瞳とは裏腹に、しっかりとした揺るぎなき決意を宿した、なんともあやふやな男の名前は、丹羽雄二と言う。 既に二時間ほど前になるのか。 さながら(実年齢は分からないが)少年かと見間違うような童顔に青髪を生やしたパーカー姿の男、所謂『マーダー』に出会い、 矢がぶっ刺されていた『死体』に遭遇してから、彼は実を言うと市街地から出ていなかった。 代わり映えのしない町並みを眺めながら、静かに歩き続ける。 理由としては、短絡なものなのだが、彼の最優先目的は一先ず河田遥という、殺し合いには乗ってないであろう絶対的信頼と、胸に抱く名状出来ないなにかを委ねた女の子を探すこと。 その為には、とりあえずは行く先、目的地を決める必要があったのだが、ある程度気持ちを落ち着かせてから考えてみると。 「……ここでいんじゃねえか?」 と、言う結論に落ち付いた。 前回のことを考えると、河田は丹羽を探そうと学校に向かっているかもしれない。 そうも考えてはみたものの、こちら――市街地の可能性だって捨てきれない。 どう考えたって、「人が集まるならどーこだ!」と問うた時、市街地の名前が上位クラスに入るのは明白。 河田が人の集まるところにわざわざ集まるか、と疑問が湧いて出たがそういうことは生憎分からない。 初めて遭った時から片時も離れなかったし、一番最初の遭遇者にして一番最後の遭遇者の殺人鬼以外には丹羽しかあっていないわけだ。 それだけでどうこうと判断するには、やはり決め手にかけるというもの。 そう思い、丹羽は何事もなければ放送の時ぐらいまでいようかな、と決めていた。 無論市街地と一口に行っても広いし、放送後、河田が生きてたとしてその後に市街地で入れ違いになろうとも、流石にそこまでは丹羽の知るところではない。 「……ふ~ん……」 とはいえ暇なものだ。 結果的には実際かれこれ二時間も市街地に留まっているのだから、何をするにしても退屈だ。 通常の彼であったら時間を惜しんで、惰眠を貪るかも(矛盾)しれないが、バトルロワイアルにおいてそれは死亡フラグのそれに近い。 なので、彼とてなにかをしようという当面の目標を掲げた時に真っ先に思い浮かんだのは、物資の調達である。 包み隠さず言うのであれば、不運なことに丹羽の支給品にも大塚の支給品にも、銃など言った銃火器は勿論刀のような刀剣類も存在しなかった。 あったのは、まず丹羽の支給品では――――携帯電話と、お風呂セット(石鹸、シャンプー等)と、何故かコンドーム数十個セット。大塚の支給品には、女性用スクール水着、防犯ブザー。 と、青髪の青年が予告した通り使えるのか使えないのか微妙なところなラインナップであったがどちらにせよ武器の類が見当たらなかったのは痛い。 だからこそ、丹羽にとっては物資の調達という行為はある種必然であった。 といっても物資の調達といっても派手なものではない。 近隣の住宅の一軒一軒粗方探すという、時間があるからこその探索方法をとっていた。 そんな中に舞い下りたのは、彼にとっては、見慣れた物――と言い変えてもよかった代物である。 「……チェーンソー……か……」 大剣、とも見てとれなくもない。 彼は柄の部分をもって、ギザギザと鋭き刃が煌かせる。 明るい赤に染められた機械部を握ると、ずっしりと重く、それでいて懐かしい重さだ。 連鎖的に、このチェーンソーと言うものも知らなかった河田の顔を思い出してしまった。 不思議そうに首を傾げていた、電波系漢字少女の、会いたいと希っている奴の顔を、脳裏によぎってしまう。 「……俺も重症だな……」 眠たげに、かったるそうに、無愛想に。 されど嬉しさを入り混じらせた、そんな不思議な声だった。 彼がその気持ちをなにか、と問われた時、どう答えるかは未だ分からない話。 しかしそれでも、彼の中で恋しいと思う程度には、立ち位置を確保してるのは確かであって。 「俺懸命頑張! ……なんてね…………」 「なんてね」と言う割には。 その瞳から燃える闘志が消え去ることは、ない。 静かに時は流れていく。 □ ■ □ 歩き始めてから一時間ほど経った頃だったか。 彼の身体は、熱気を漂わせるほど緊迫した面を下げ、一軒の住宅街の前で立ち尽くしていた。 (――はぁ、はぁ。……ここ……だよな……) 彼がこの住宅を、色々とすっとばして向かい始めていたのは、銃声が聞こえたからだ。 銃声が聞こえた! → 近づくか! というのも大変危険な思考回路だったが、彼にとっては重大なことだから。 『もし河田が撃たれてなんかしたら』、そう思うと、動かずには居られない。 彼がそこまでの熱血漢だったか、と言われたら彼を知るものであれば首を横に振るであろう。 しかしこのバトルロワイアル。なにもあるのは絶望だけではないのだ。――希望だって、育つ。そのことを忘れては、いけない。 眠たい、確かに今もいつも通りの眠気が容赦なく襲いかかる。――が、この場合の彼にとって、『河田と共に生き残る』という希望は、確かに実っている。 絶望に屈しないほどの原動力になっている。 とはいえども。 彼はただそれだけで我を忘れるような愚か者では決してなかった。 彼の手持ち武器は、チェーンソーただ一つ(今まで回った家で見つけた武器と言えばこれと強いて言えてカッターぐらいなものだった)。 相手が銃を所有していることは分かりきっていること。 そんな中で、堂々と突っ込んでいくのは自殺行為。 ……まあ、一回は自殺行為をして見事死んだ彼でこそあるが、いや。そんな彼だからこそここは慎重に出るべきだ。 自分にそう言い聞かせて、玄関の陰にひっそりと隠れ、こっそりと盗み聞きを試みる。 チェーンソー片手に、人家に耳を傾けている姿は傍から見たら不気味の一言だが、そうはいっていられない。 どうやら彼らが話に講じている場所は玄関からも近いらしく微かながらに声は聞こえた。 ただ内容までは聞きとれない。もどかしさが彼の本能をくすぐって、徐々に裏庭の方に体は動いていき、 (――ここだ!) とうとう彼はその場所に辿りついた。 ガラス窓から、こっそりと顔を覗かせる。 そこは見れば居間と呼べるような広く設計された部屋だ。 見たところ、今まで見てきた家の法則に則ってると考えると、そこはリビングだろう。と丹羽は結論付けて。 改めて、その部屋の惨状を観察する。――見る――観る――視る。 その末で出てきた感想としては、自分でもびっくりするぐらいにあっさりとするもので。 (――――狼? いや、そんな場合じゃないか……。……つか人が死んでる……?) 丹羽が見たときには、その狼は既に退散をしようとして、うつぶせに伏せている女の子は血が流れていない ……いや、流れてこそいないが、血の海によってそれが判断を悩ませる。……しかしその近くで倒れている青年は、明白に死んでいることがわかる。 あの狼が殺したんだろうか? とまで考えて、ようやく気付く。 (……っ! まだ生きてる!) 青年――鬼一樹月は、虫の息とはいえ一命は取り留めて――違う。 残り僅かの、風前の灯火をしっかりと灯している。 もう、僅か。 あと数分と経たずに消え失せそうな、繊細な、或いはそんなことなどもはや気にしなくていい脆弱な命。 (また……俺は……目の前で) 思い返すは、一番最初に出遭った、早野と、既に亡き者とされていた大塚の姿。 今も、また自らの前で人が死のうとしている。 ――前回の殺し合いでは味わうことのなかった体験であり、その分新鮮過ぎて、心に突き刺さる。 後悔や後腐れ。 こんな『気持ち悪い』体験は、彼とて既にうんざりだ。 ――そして河田をもし、こんな気持ちにさせてしまったとするなら、それは途轍もない後味の悪さが舌に残る。 そんな中で、彼は聞いた。 静かに響く、不思議と脳内に響く、懺悔――辞世の句――最期の言葉。 丹羽は名前も知らない、けれど恐らくは無念の内に死んでいくのだろう、そう思わせる儚げな声。 「ハァ……ハァ……残念だ……ここで……終わるか……」 息も立てずに静かに、丹羽はその場で男の声に聞き耳を立てる。 丹羽はもう彼については諦めているのか。それとも最期の言葉ぐらいは聞いてやろうと思ってるのか。 彼自身でも気持ちが整頓しきれていないために、よくわかっていない。 彼はどんな人間だったんだろう。 それでも、そんな疑問が、ふと湧き立つ。 将来有望な人間だったんだろうか。 実を言うと極悪人だったんだろうか。 はたは人間ですらなかったのか……。 そんなの知る由もない話だけれど。 それでもただ一つだけ、言えることだってある。 「誰……でも……良い……誰か…………この殺し合いを……人無を……潰……し……て…………く…………れ…………」 この人は、きっといい人だったんだろう。 類をみないほど、命を大切に扱える人間だったんだろう。 丹羽の中で、その言葉は深く、深く刻み込まれた。 壁に背を預けて。 されどチェーンソーは強く握りしめて。 溜息一つこぼすと。 「わかったよ……」 たった今息を引き取った鬼一に向かって、 いや、もしくは自分自身に言い聞かせる形で、静かに。 それはとても静かな声で、しっとりとさせる声で、決して気分を害すそれでもはない。そんな言葉を――繋いだのであった。 ゆっくりと、だけど着実に。 バトルロワイアルは進行されている。 殺し合いは、もうどこまでも後戻りなど出来そうにない。――丹羽雄二は改めて、そう認識した。 □ ■ □ その後、問題は幾つか――見方によっては山ほど積み残されていた。 死体の処理、埋葬は――以前同じくできないにしろ。 倒れていたもう一人は、そのまま放っておく訳には行くまい。 丹羽雄二は狼……須牙襲禅がこの場から本当に消え去ったのか入念に確認しつつ。 異様に重たい雰囲気の、件の部屋へと這入っていった。 あらかじめ知っていたとは言えれども、この惨状には思わず口元に手を添えてしまう。 異臭が、彼の嗅覚を攻め立てる。 何度嗅いでも、見ても、慣れないものであると丹羽は沈潜する。 その辺りまで思考が行き着いた辺りで、仕切り直してこの部屋の観察を始めた。 改めてみると、散らかりまくりである。 まず、彼が三軒もの家を荒しまくっても手に入れることのできなかった武器――銃器。 それが随分と粗雑に放置されていた。 近くには――これが鬼一を殺した凶器と推測できるほどに、血糊のべったりとついたナイフまで転がっているじゃないか。 無論、ここで彼がそれを拾わないという選択肢を選ぶ義理はない。 元より武器には困っていた身。 銃の入手と言うのは青年には悪いと丹羽も思いつつ、実にあり難い話でもあった。 と、銃とナイフを拾い上げてディパックに仕舞ったところで、 どうしても、視線は青年、鬼一樹月の方へと向けてしまう。 窓越しでは分からなかったが、腹のあたりにざっくりと空いた傷跡。 沈殿する生気なく握られた拳。力などまったく働かせず床に臥せている姿は、痛々しいを通り越して見ていて気持ちいいものではない。 何処か人間とは違う風には見えるけれど、生憎丹羽にはそんな事を考察する余裕などなかった。 既に歩く狼など人外を見ている云々以前に、こんな行く先々で人が死んでいたら、頭が痛くなるのも致し方ないだろう。 「……」 名前も知らない奴。 だけど遺言だけはしっかりと受け取った間柄。 そんな奇妙な繋がりを得た相手を、そのまま放置できるほど、未だ丹羽は冷酷な人間には成りきれていない。 妙なムズ痒さと、今更押し寄せる悲痛の思いのまま。 彼はしっかりと、手を合わせ、鬼一樹月の奮闘を称えて、追悼した。 このロワイアル二度目の追悼。何故だか親戚の通夜なんかでする追悼とはまるで違い、ずっしりと重たい。 本来であれば感じる重さは逆なのではないかと、丹羽自身思うが、それでもこの追悼には、それだけの重さがあったのだ。 そして、数秒。 丹羽も閉じていた瞼を開けると、以前の時と同じく、埋葬なんて出来ないし、している暇は生憎なかった。 短く息を吐くと、落としていた腰をあげて、顔を動かし、それを観察する。 鬼一という青年が作りだした血の湖にひったりと浸かって服は真っ赤に染まっていた。 見るからに幼い体型に、長く、煌びやかな銀髪が外国の人形を連想させる。 柔らかさをイメージするに難くない頬には、口元より涎が一筋零れていた。 どこか満更でもない夢を見ているのか、表情は言うほど固くない。 棒のように細い手足も、決して青白くはなったりしていなかった。健康的な色をしている。 「……うーん」 ならば彼はどうするべきか。 答えなんて、考えるまでもなかった。 □ ■ □ それからの丹羽の行動を記しておこう。 結論から言うに、丹羽雄二は少女、天王寺深雪を見捨てることを由としなかった。 優しさと言うより、自らの命を犠牲にしてまで誰かを救えるという彼の甘さなのだろうが、なんであれ見捨てることはしなかった。 ならば、どうするべきか。 男の思考は簡単にそちらの方へとシフトしていく。 そのことに何ら疑問も抱かず、適当な筋道を立てて、それを実行しようと、チェーンソーを仕舞い、 血の海で溺れる少女の矮躯を抱きかかえた。 彼の弾きだした方法とは以下の通りだ。 まずは、この住宅ではどうしても鬼一の死体と彼女が再び面向かうのは少女にとっては問題であろう、と考えた丹羽は、少女を別の場所に移そうと決めて、 先あたっては少女を隣の住宅に移そうと目論んだ。 その後の話をするのであれば、どうせ服は血などで汚れるであろうから住宅で漁って手に入れていた彼のサイズとも合う服に着替えて、 できれば少女の服も漁って用意するべきであろうな、とまでは考えついたがその先は生憎ながら未定だ。 その先の予定は、この抱えている少女に定められるものだから。 まあ、何はともあれとして済ませるべきことはとっとと済ましておこうと、足早にその場を立ち去り、隣の住宅へと這入って行く。 おおよその予想通りの構造をした住宅の構造をしていたために、何ら迷うことなく、ひとまず居間に配置されていたソファに置いた。 万が一のことも想定して、少女の手足をタオルできつく縛り、少女、そして青年から奪ったディパックは自分が保管しておくことにした。 眠っている、しかも拘束されたいたいけな少女を前にパンツ一丁でいる。 と描写すると実に変態的な男になってしまうが、今回の場合はそれが通用しない。 とはいえども。 実際変質者にも似ているということで、居心地がいいわけない。 身に沁みついた不快感(というと罪悪感が湧いてくるが)を振り落とそうと、風呂場に向かう。 ――どうせだから支給された風呂セットを使うか、何て暢気なことを思いついたが最後。 自然と彼の足は浴場に向かっており(一応追記しておくと、玄関のドアも含めて施錠は済ませてあるので万が一の場合も奇襲される心配はよほどない状態ではあった。だからといっても暢気な話だが)、 シャワーの水や湯が出ることを確認することを思うと、なんとも場違いなお風呂タイムへと変わって行った。 (……ふう) まあ、場違いとはいえども。 彼にとっては案外、丁度いい休息に、気分入れ替えになったのではないのだろうか。 どうであれ、死体を早々に二体も見て、精神的に疲れていないわけがないのだから。 水と一緒に、疲れを流れ落とすのもまた一興だ。 ササッと烏の行水よろしく、シャンプーも済ませ、石鹸で身体を洗い流すと、 とっとと出てって備え付けてあったタオルで体を拭いて、違う住宅で見つけたなんかオシャレな(と思った)パーカーを着こんで、ズボンも同じく適当にサイズの合うものを穿く。 以前まで着ていた服は、そのままゴミ箱に投げ込む。 「……うん」 と、髪もタオルで拭きつつも、彼はクローゼットや箪笥の並ぶ衣裳部屋へとやってきた。 理由は前述の通り、天王寺の服を探すためだ。 小、中学生ぐらいの体躯の服は、彼は当たり前なのだが持ち合わせていなかった。 「うーん……」 しかし、中々難航する。 彼とて懸命に探すが、なかなかそれっぽいのが見当たらない。 どうやら、家の構造は全く同じであるが、収容されているものは各々違うようである。 強いて見つけたのは、真っ白のワンピースである。 最初こそ、さすがにもっとあるだろう、と考えていたが、次第にいいんだろ、こんなんで。と彼は考え直し、その場を後にする。 途中寝室で毛布も見つけたので、それも遠慮なく頂かせてもらうと、彼女の元に戻り、毛布を掛けておく。 これで身体を冷やされても彼とて後味は悪いものなのだ。 ここまで、滞りなくイベントは終わり。 あとは、彼女の目覚めを待つだけだ。 彼は思考をそこまで行き着かせると、腰をおろして、ぼんやりと河田の事に想いを馳せ、静かに、彼女の目覚めを待っていた。 ――。 ――――。 ――――――。 「ん……んみゅみゅ……あと五分」 「……いやそこは起きてよ」 それから三十分ほど。 ふと、天王寺が寝言を零したと同時に。 さすがに痺れを切らした頃なのか、すっっごく眠たそうな声色で、丹羽も言葉を返して、天王寺の肩を揺らした。 三回ほど揺らした頃に、天王寺も目を覚ましてきたのか。 「……ふみゅぅ?」 寝ぼけているのか、謎の言葉を漏らして、丹羽の眠たげな瞳を覗く。 目をパチクリさせながら、丹羽と無言の会話をする。世間一般で言うアイコンタクト。 「……」 「……」 「……」 「……」 ……三十秒ほど経った頃か。 天王寺は一際大きな瞬きをしたかと思うと。 裏返った声で、彼に問う。 「――――! あ、あなた誰!?」 「……やっとかよ……。……俺は丹羽雄二だ」 毛布で身動きがロクにとれない自分の身を護るようにかざしながら。 やっとのことで意識を覚醒させた天王寺を丹羽は呆れながらも返事を返す。 邂逅からようやくというところで、 「――――それで、きみはなんていうんだい」 「……天王寺深雪だけど……」 自己紹介が終わったのであった。 ――――波乱があるなら、ここからだった。 時系列順で読む Back 疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 Next 疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 投下順で読む Back 疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 Next 疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 加藤清正 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 璃神妹花 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 須藤凛 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 飯島遥光 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 銀丘白影 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 一刀両断 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 小神さくら 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 須牙襲禅 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 丹羽雄二 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 天王寺深雪 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』