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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Piece9◇幸せの価値(死逢わせの勝ち)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「へへっ、見たか! 俺のミラクルサイクロンシュート!」 ピースサインを高く掲げて、須藤らとは若干離れた位置にその男は立っていた。 ワイシャツを脱ぎ、素肌にブレザーだけという奇抜な服装――されどその理由は腹部を見れば一目瞭然。 腹部に巻かれた少し赤く滲んだ御世辞にも丁寧とは言い難いグルグル巻きの包帯。ブレザーをボタンは一個も閉められていないため、重傷の痕跡は衆目に晒される。 何故ワイシャツの方を着なかったのだろうか、という疑問も抱いたが、須藤にとってそれはこの際どうでもいい。 彼がそこにいた。 その事実だけが、重要なのだ。 銃撃の痕跡か、穴のあいた紺色のブレザー、薄汚れた紺色のズボン。皮肉にも白い包帯がよく映えるその服は須藤も見知った服装。 左胸に装飾された校章にはホームベース型を背景に黄金色に照らす三日月が描かれている。 ――それはまさしく、私立三日月中学校の制服で、今現在須藤が着衣しているそれと同一だ。 須藤が知る限り、この場でその制服を着ている可能性がある人物はただ一人、それは――――。 「――――浅倉ッ!?」 「おうよ、俺は御指名通り浅倉翔様よ。元気してたか須藤くんや」 同級生、浅倉翔。 見知った狐目が、須藤を捉える。 尖った目つきでこそあるが、そこに不良と面向かった時に感じるような威圧感や恐怖心は湧かない。 優しげに見つめるその瞳には敵意など一切含まれていなかった。 ――怪我を負っているけれど、いつも通りの浅倉翔が、そこにいる。 「ま、感動の再会は終わってからのお楽しみだ。――まずはあいつを片付けるぜ、須藤」 手足、首をぐるぐると回しながら、浅倉は須藤に呼び掛ける。 あいつ――サッカーボールで手首を狙われ、遠くに弾き飛ばされた拳銃を拾おうとする早野正昭を片付けようと。 「おうよっ、背中は任せるぜ元サッカー部主将!」 「任せろってんだ! 俺を誰だと思ってやがる!」 「心強い友達だよ!」 「お互い様だぜ!」 互いに鼓舞するように叫び続け、声を掛け合う。 意味なんてないぐらいくだらなくて、内容のない掛け合いであったけれど、それは不思議と力になる。 友達が近くにいる――そんな事実が互いを鼓舞する。 それほど付き合いが深い仲だったかと言うときっと違うのだろう。 須藤凛にとっては津村匠。 浅倉翔にとっては宇田川龍馬。 もっと仲のいい人物は確かにいる。いるには違いない。 だがしかし――――彼らには彼らなりの繋がりがあり、三日月中学3年D組流の友情タッグは、そんじょそこらの危機には屈しない! 須藤凛と浅倉翔の両名は、互いに共鳴し合い、叫ぶ。 「「じゃあ行くぞ!!」」 ――須藤は同田貫を強く握りしめ、早野に向かって駆け寄った。 ――浅倉はそんな須藤に続くように地を蹴った。 浅倉に武器と言えるものはない。 強いて言えて先ほどのサッカーボールであるがそれは先ほど蹴飛ばしてしまったので手元、足元にはない。 故に獲物は拳のみ。 手負いの身でありながらも彼が戦うには徒手空拳しか選択肢はない。 言葉にしなくとも見ただけで判断できる。 須藤がこの場に置ける切り込み隊長になることは自ずと彼らの中で決められた。 浅倉と比較し怪我は浅く、刀が獲物の須藤の方が間合いに入り攻撃を決めやすいのは自明の理――。 地面が蹴る音が迫る中。 早野は僅かに慌てつつ、弾き飛ばされた銃をようやくといったところで拾い上げる。 瞬時に構えようと引き金に指を掛けた――――だが、既にその頃には、須藤は間合いに這入り込んでいた。 なまじ、50M走6.2秒を謳っている訳ではない。彼の動きは、文句のつけようがないほどに、速かった。 重たき刀を振り上げる。 加藤清正には大分劣る刀捌きではあるが、一撃を与える分には申し分ない。 一縷の光が刃に瞬く。 光は泡沫のように消えていき――刹那、早野の腕を目掛け、剣は振り下ろされた。 「――ちっ」 舌を打ちつつ、早野は間一髪のステップで須藤から距離を開ける。 だが銃を撃たせまいと、須藤の猛攻は止まることは決してない。――避けられた分だけ、また詰め寄る。 須藤は第二撃を振るいつつ、声を張る。 「浅倉、続けよ!」 連携攻撃を決めようと、浅倉に呼び掛ける。 相手が銃な以上、ジリ貧な攻防では不利になっていく一方。 叩き返すのならば一気に攻め立てる方がいいに決まっている、この優位な状況のままに終わらせる――それが須藤の考えであった。――同時に、浅倉の考えでもあったのだ。 浅倉も同じことを考えて、同じように立ち回ろうと考えていた。 ――だが、それはうまくきまらなかった。 「…………あ、……れ……?」 須藤の後方。 浅倉翔が立っていた座標から、物音が一つ零れる。 ドサァ、と大きな音を立てて体勢を崩し、蹲る。 「浅倉!?」 「お、おかしいな……」 走れるわけがなかったのだ。 よもやここまで来るのにも相当苦労していたはずの彼が、走ろうだなんて作戦としてあまりにも破綻している。 容貌から分かるほど酷使された身体は、脳の言うことをまるで利こうとはしない。 そもそもの前提で、彼の傷は尋常じゃない。 シャツが血塗れになり、切るのを躊躇われるほどに、傷を負っていた。 死神のような狐、数多の殺害人数を誇る小神さくらと競り合って、たかだか一中学生、変哲もない彼が無傷で済むわけがない。 彼の体は、限界を迎えた。――迎えて、しまった。 「こ、こんなはずじゃあ……」 苦虫を噛みしめたような顔で、拳を握りながら浅倉は漏らす。 先ほどのミラクルシュート――命名通り奇跡的な命中と威力の伴った強力なシュートは、言わば火事場の馬鹿力。 最期の気力をフルに使いきったということ。 修学旅行前日、あれほど頑張っても打てなかったシュートのさらにその進化系を打てただけでも本来であればもうけものなのだ。 ――それ以上は、ただの高望みでしかない。そんな現実が、浅倉を突き詰める。 そして。 そんな隙を易々と見逃すほど、早野も殺人に対する覚悟を決めていないわけではなかった。 彼には、それほどまでして叶えたい望みが――あるのだから。 「――――隙だらけだ!!」 今までの小さなステップとは違い、大幅に身体を揺らす。 須藤が浅倉の状況に驚いて油断をしている隙に、五歩ほど離れた位置に立つ。 引き続いて俊敏な動きで銃を構えると――銃口から一発、銃弾が排出される。 浅倉は腹の辺りに刺さる激痛に小さな呻き声を落とす。 片手で背後に残る疵口を摩ると、熱いぬめり。 間違いなく、もはや新鮮味の欠片もない浅倉自身の、血液。 「「っ――!」」 浅倉と同時に、須藤の息を飲む音が顕著に聞こえる。 実際には五秒と満たない僅かな時間であったのだろうが、須藤は浅倉が撃たれるシーンを魅入られるように視界から外せなかった。 立ち上がろうと踏ん張っていた浅倉を、容赦なく撃ち落とす銃撃。 ――もう二度と見たくもない血液の乱舞が、再度彼の眼前に繰り広げられていて。 ただそれだけで、須藤の視界は真っ赤になった。 「てんめえぇぇえええええええええええええええ!!」 怒号。 次いで斬撃。 怒りに任せてのあまりに考えなしの行動。 直線的な斬撃は、いくら力が入ろうとも早野には届かない。 「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!」 何度も何度も、刀を振るう。 その度に刀は空を斬り、須藤の苛立ちを増長させる。 友達を撃たれたという事実はそれほどまでに重たく、故に裁くべきだと刻苦する。 血眼になって、心の思いゆくままに銀の軌跡を描く。 そんな時である。 粗雑に振るっていた刀の腹が偶然にも早野の右手を打ち抜いた。 醜い音が響く。――骨が砕ける音。 早野は痛みのあまり、思わず銃を再度落としてしまう。 そのまま左手で右手を抑えつつ、痛みに悶え苦しむ。 須藤は、大きく呼吸を繰り返しながら、その様子を見つめる。 どう見たところで演技ではなさそうな態度。事実彼の手には大きな手応えが生じていた。 十中八九、彼の刀が彼の手を砕いたのだろう。 冷静な彼なら、申し訳なく思うなり、一先ず武器を回収したりとできた。 だが、今の彼は違っていた。 怒りに心頭まで浸かっていた彼に、冷静な判断を求めるのは酷である。 「浅倉!」 彼を無害に出来たと判断し終えると。 早野に対し何をする訳でもなく、彼に背中を見せながら、浅倉の元に駆けつけていた。 浅倉の事が心配でならないと言った様子で、駆けつける。見方によっては正しい判断だ。 だが、今回の場合、それはあまりに無鉄砲といえる。 ――早野の右腕を封じたとはいえ、銃を没収させるわけでも左手を封じたわけではない。 攻撃だったら、まだやりようが早野にはあった。 (……そういうのを、愚の骨頂って言うんだよ!) 震える右手の痛みをこらえつつ、近くに転がるM4カービンを拾い上げる。 流石に右手並の精密さは期待できないであろうが、それでもここからの距離であれば十分である。 今もまだ背中を見せる須藤を捕らえようとして、銃口を定めている最中――。 「そこまでじゃ、先の青年」 逞しき声が鼓膜を叩く。 早野は驚いた様子である場所を見つめる。 そこに立っていたのは――先ほどまで仮眠をとっていた加藤清正の姿。 「……発砲音をここまで間近で聞いて起きんわけがないからのう」 蓄えられた顎鬚を掻きながら綽々とした態度で、されど威圧のある視線は早野を捉える。 急遽早野は銃口を須藤から清正の方へと向け、威圧を威圧ではねのける。 されど加藤自身は銃口を向けられてもものともせず。 冷静な面持ちで、早野の凶行を改めてもらおうと、奮い立ち声を張り上げた! 「……では、おぬしには……わる…………」 声は張り上げて、そのまま続かなかった。 ――発砲音。 加藤清正の声を遮り轟く銃声。 それらが意味することは凄まじく明瞭――銃弾が加藤清正の腕に炸裂する。 「鬱陶しい」 早野は、一蹴した。 なにかが始まるよりも前に、全てを吹き飛ばす。 極めて利己的だが、合理的な行動でもある。 一々ヒーローの変身シーンを待つ奇形の悪人などテレビの中でしか存在しない。 ――先手必勝と言う言葉があるように、どのような手段にしろ、先手を打つことには意義が大いにある。 されど彼は加藤清正。 元殺し屋の能力なき異能者。 銃弾であれば、おそらく加藤清正程の人間であれば避けることも叶ったかもしれない。 それでも避けることが出来なかった。 いや、台詞の途中だったからと気を抜いていた訳ではない。 敵を前にして、気を抜かすなんというヘマを犯す間の抜けた奴ではない男だ。 されど避けれなかった理由。そんなものは簡単で。 ただ単純に、小神さくら戦で負った足への傷が癒えきってなく、動いた瞬間に激痛が走り動けなくなった。言葉にすればそれだけのこと。 あれほど深々と貫いたのだ。その感覚は当然の感覚であり、どんな人間に対しても、彼と同様の傷を負ったら、激しく動くことはまず無理だ。 それでも、彼は拳法の達人ではなく、剣法の達人。 獲物に剣があれば、銃弾を弾く作業ぐらいは楽にこなすことはできただろう。 ――しかし今の彼には、獲物はない。彼の獲物であった剣、同田貫正國は今現在須藤が握っている。 徒手空拳となり、なおかつ足の自由が利かないとなると、もはやなす術は一つ。 胸や頭、致命傷となる様な箇所に被弾をしないことぐらいしか、彼に出来ることはない。 実際彼は胸に飛来した銃弾を何とか左腕で止めきることが出来た。 人目を付けさせて須藤と浅倉の逃亡時間を稼いだはいいが、手出しが全くできない状況へと陥っている。 加えて言うなら、須藤たちは――その場から動く気配はない。どのような事情があるのかは加藤からは判別できないが、それには苛立ちを覚えずには居られなかった。 ――銃弾はもう一発放たれ。 「……がっ、は…………」 加藤清正、凶弾に倒れる。 今度は腹に穿たれた弾丸を防ぎきれず、再度地面に平伏せる。 単純な力量で言えば無比の実力を誇る加藤清正は、何もできないままにその場に堕ちる。 (……) 無言のまま、早野は標的を引き返す様に須藤らに向けた。 須藤は浅倉の元へと辿りつき、加藤が撃たれたのを知ってか知らずか、浅倉の身体を揺さぶり続けている。 ふとして浅倉と目があう。 瞳には既に、最初に見せていた活力はない。 虫の息、という言葉がこれほどまでに似合うものはそうそうないであろうほど、蒼白した顔。 早野は疲弊を含んだ溜息を零し、慣れない左手に引き金を掛けた。 「いい加減に死ねよッ!!」 銃弾は吸い込まれるように、早野に背中を見せて浅倉の身体を抱える須藤の背中に奔る。 風を切る音が聞こえ、音速で迫る。 幾ら須藤とて背中に目があるわけではない。――排出された銃弾を避ける術など一つもない。 ――ただ、浅倉は違う。 ――銃口がこちらに向いたのを見ていた浅倉翔と言う男には、『須藤に銃弾をあてさせない』手札があった。 ――その名も、『自己犠牲』。 銃声が響く、一秒前。 浅倉は瞬時に須藤のネクタイと肩に手をやり、須藤の身体を強引に沈める。 完全に力の抜け切っていた須藤を沈めるのにさほど力は必要なく、簡単に須藤の身体は地面を這った。 しかし放たれた銃弾は止まるわけではない。 グングンと進軍していき、直線的な動きで――須藤のその先にいる浅倉を狙う。 須藤は、直ぐ様顔を上げる。 だけどその時には、全てが終わっていた。 浅倉の胸に、血の華が咲いていた。 あまりにも簡単に、浅倉翔は被弾した。 須藤凛ら六人が小神さくらの猛攻を僅かな損傷を受けながらも防ぎきったのに対して。 丹羽雄二が天王寺深雪の狂気性を鎮めきったのに対して。 丹羽雄二らが小神さくらの襲撃を往なしきったのに対して。 須藤凛が先ほどまで早野正昭の銃撃に対し押しきっていたのに対して。 ――――浅倉翔と言う人物は、あまりに慈悲なく、被弾した。 遅れて、浅倉は背中から地面に倒れ、震える手で胸を抑える。 止まない血の流れ。 滞ることない命の損失。 自らの命が――もう直なくなるであろうことは、容易に想像つく。 それでも浅倉は綻んだ。 彼の顔は、後悔なんて微塵も感じられないほど満足げである。 「…………は、はは」 笑みがこぼれる。 どうしようもないほど、瀕死に至った彼は笑う。 決して自我が崩壊したわけではない。 彼はブレザーのポケットに手を突っ込んで、ある機械を取り出す。 「わりぃな……須藤」 その機械を、須藤の方へと差し出して、 とても死ぬ寸前とは思えないほど活き活きと、普段の調子で話しかけてくる。 気味が悪いほどにいつも通りの口調。 理由なんて単純で、浅倉は湿っぽいものを好まなかった。 自らの死に、必要以上の傷は負ってほしくない、その一心で無理をしてでも、『いつも通り』を演じきる。 「どうでもいいこと、いうけどさ………俺は嬉し……かったんだ。お前は『あんなこと』をされても……俺を友達って思って……くれた、本当嬉しかった」 振り返る。 過去に巻き込まれていた殺し合いを。 強いられたとはいえ、弟を殺し、あまつさえ須藤凛にまで凶行を及ぼうとしたあの時を。 あの時確かに、浅倉は須藤を殺そうとしたのだ。 きっとそのことも須藤は理解しているはずである。だからこそ、逃げたのだろうから。 しかし今は、隣で戦ってくれた。 浅倉を心配してくれる。――――昔のいざこざなんて『なかったこと』にしてくれる。 そのことが、浅倉にとってとても嬉しいものだった。 須藤の優しさが、どうしようもなく彼の心に響きわたって。 ――本当に素晴らしい友達に巡りあえたことが素直に嬉しくて。 「だから……こそ……俺はこういうべきなんだろう」 一度瞳を閉じて、流れる走馬灯を見る。 宇田川との色々。 須藤との色々。 クラスメイトとの色々。 確かに家庭の事情で、全てに満足できる事情ではなかったけれど。 それでも、死に瀕して、改めて考えるとその生活は、とても充実していて、華やかだった。 人を殺して、一度は色を失せた人生に、間接的とはいえ再び色を取り戻す切っ掛けとなった人物。 須藤凛。 そんな彼に、彼はここに来てからずっと。 ずっと言いたかったことを言うのだ。 飾り気なく、素直な気持ちを――――須藤凛と言う友達に。 「ありがとな、須藤」 ――――浅倉翔の贖罪の旅路は、ここに幕を閉じた。 最期の最期で、浅倉翔は救われて、終焉を迎える。 「……は。」 須藤凛は、浅倉の言葉を受け入れて、声を漏らす。 何を言っているんだよ、そう言いたかったけど言えなかった。 いろんな感情が交錯して、無茶苦茶に掻き乱された彼の頭では何も考えることが出来ない。 須藤凛と浅倉翔(フタリ)が須藤凛(ヒトリ)になった、この喪失感。 現実味の得ない虚無感に、ただただ須藤は言葉を漏らすだけ。 「なんだよ……あの時って。……お前は俺に何をしたってんだ」 言葉を連ねる。 今の彼には、それしかできなかった。 目の前に広がる死を受けきる止めることが出来なくて。 幾ら『死体には慣れた』と錯覚しようとも、友人の死を目の前で繰り広げられて、平常を保てるほど――彼は常軌を逸していない。 彼は、須藤凛は、『変哲もない中学生』なのだから。 実際のところ。 須藤凛の混乱を増長させている事実がある。 浅倉翔が以前参戦した『戦闘実験第六十八番プログラム』。この存在に対する記憶の有無。 須藤凛は参加していない。 浅倉翔は、参戦していた。 ――――俗に言うところの、時系列の違い。それが須藤をひたすらに惑わせる。 浅倉翔の死と、浅倉翔の真意の汲めない発言の掛け合わせは、須藤をこれでもかと、責め立てる。 「答えろよ……」 無論答えれるわけがない。 彼は死んだのだ。 もはや彼が再び口を開くことはない。 後戻りができない。 取返しのつかない。 それが生命の終わり――死なのである以上、浅倉が再び動く道理はない。 須藤の気持ちは高まるばかり。 今この場に須藤だけが生きていることに対する葛藤は降り積もる。 徐々に、されど着実に。 須藤の心は悪辣に犯されていく。 「答えろよ――――浅倉あぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 絶叫。 須藤の思考が赤から黒に染まる。 切羽詰まった須藤が最終的に残されていた行為は、叫ぶ事しかなかった。 身体を乱暴に揺さぶるが、反応はない。 今もまだ流れ続ける血液が、飛び散るだけ。 ここに来る過程で募っていた苦痛が爆発する。 ――たとえばそれは、殺し合いそのものであったり。 ――たとえばそれは、一刀両断らの喧騒であったり。 ――たとえばそれは、飯島遥光の離脱劇であったり。 ――たとえばそれは、浅倉翔の死であったり。 「――――ッッ!!」 眦に煌く一縷の涙が、今更ながらに目の前の現実を急速に実感させる。 どれだけ過酷であろうとも現実逃避の許されない、紛うことなき辛辣な現実を、受け入れなければいけない。 故に須藤もまた、その事実を認めてしまった。 浅倉翔が亡くなった事を、認めてしまった。 襲いかかる無力感で、須藤はうずくまって、大声で泣き喚く。 早野はそんな須藤を一瞥し。 眉間に皺を寄せながら、銃口を向ける。 「…………ごめんな」 小さく呟くと。 彼は引き金に手を掛ける―― ――直後の事であった。 ――――バラララララララッ! 別方面。 加藤とも須藤とも、よもや早野とも違う方角から轟く弾幕音。 位置的に表して、早野の左。 即座に早野は左へと向き直して、銃を構える。 そこから現れたのは、一人の青年だった。 「……ちっ、ちょっと遅れちまったみたいだな」 僅かに筋肉質な体つきをして、どこか怠惰な雰囲気を纏った青年。 彼に――早野は見覚えがある。 あれはまだ、バトルロワイアルが始まって間もなくのこと。 紅狐、小神さくらとの逃亡劇の先にいた青年であった。 静かに怒りに似た、されどどこか自責するような念を秘めていた瞳は実に印象的であった。 「……よ、誰がいるかと思ったらお前か」 「……そうだ俺だよ」 名を丹羽雄二。 偶然とはいえ先に早野自身が名前を騙った人物本人。 二、三時間ほど前に邂逅を果たした男と、巡りあう。 (……ふーん) とはいえども、全てが全ておなじであったかというと、違う。 男の風貌は以前とは異なっていた。 まずは見た目から、着替えたのか以前の服と異なり、今はパーカーを羽織っており、 殺し合いと言う事実に向きあったのか、新たに銃を構えていた。 されど早野が一番目についたのは、そこではない。 そんなものは瑣末な問題だ。 「随分と面構えが変わってんな」 「御蔭様でな」 彼が一番不思議に思ったのは、彼の瞳である。 やり場のない怒りを込めていたあの時とは違う。 ――輝かしい意志が煌いていた。 「お前はどうして、殺し合いに立ち向かう」 「別に。俺は俺のしたいことをするだけだ。――ま、一応理由づけはしておくぞ。――とある男に人無を倒してくれって頼まれたから俺はひとまず殺し合いを否定する!」 だからこそ、苛立たしくもある。 自分と同じ匂いがした男がこうも輝かしく変貌するという事実に、妬みすら感じる。 後戻りが出来たという、自分とは異なる身の立場に、身勝手ながらに嫉妬する。 彼が後戻りするための道を全てを壊したことはわかっているけれど。 「……そーかよ」 怠惰な雰囲気とは相反する熱き信念を前に、思わず早野の殺意は殺がれる。 自分自身と対比して、劣等感が湧き立ち、自らの惨めさが打ちひしぐのを増長する。 それでも。 それでも彼はたった一つの残された道を歩かなければならない。 優勝して、あの時彼が殺してしまった命に謝らなければいけないのだ。 使命感が身体を動かす。 銃を動かす。 連動するように、丹羽もまた、早野に向けて銃口を向ける。 「「…………」」 膠着状態。 なにかを喋るわけでも、或いは引き金を引く訳でもない。 何も起きない、無の時間。 そんな中、沈黙を破ったのは、早野だった。 「……はあ、こうしてても仕方がねえよな」 銃口を降ろす。 いや、それだけに止まらず銃そのものを仕舞い始めた。 この場に置いてそれが意味することは降参の意。 幾ら奇襲をしかけようと思っても、タイムラグは大きすぎる。 簡単に丹羽に攻撃を許してしまうだろう。 早野は丁寧に、ポケット、さらには袖口まで見せ、敵意を伏せたことを証明する。 訝しげに丹羽は尋ねる。 「……どういうつもりだ」 「どういうつもりも何も、俺が不利だと感じたから退くだけだよ。今の俺は体調が万全な訳じゃないし」 早野は苦痛の表情を浮かべながら右手をぶらぶらさせる。 変な方向へ曲った指は、右手が骨折していることを示していた。 先ほどまで左手で握り、それほど訳なく銃撃を浴びせ続けていたが、それでもこの場は一旦退くことを表明す。 「じゃあな」 「……達者でな」 別れの言葉を掛けると、スタスタと早野は歩みを進める。 念には念を置き銃口を向けるが、敵意を感じないまま、本当にそのまま早野正昭は戦線から抜け出していった。 あまりに呆気ない終わりを目の当たりにして、若干呆然としつつ、直ぐ様意識を目覚めさせる。 視線を、先ほど絶叫をあげていた少年の方へと向ける。 紺色のブレザーに紺色のズボン。その少年に抱えられて倒れている――否、どうみたところで死んでいる少年を一瞥すると、胸のあたりに狭山から聞いた通りの校章が見える。 どうやら、彼らは――狭山の通う学校、三日月中学の生徒であるらしい。 (……つっても、この再会は狭山には酷っつーもんだよなあ) なにせ、「浅倉」と叫んでいたことから、死んだのは浅倉だと察し付く。 確かに狭山から知人だと、会いたい人だと聞かされた名である。 ……だがこのタイミングの再開は、何も生み出さないだろうと、推察するのは容易なことだった。 「――――はあ、はあ、大丈夫ですか!? 丹羽さん――」 それでも、現実の悪魔は、何処までも劣悪に微笑んだ。 そこにあったのは、天王寺深雪――――ひいては、狭山雪子の顔だった。 「――――須藤、くん? 浅倉……くん?」 問いかけるそのか細い声は、一面を凍らせた。 時系列順で読む Back 失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 Next 失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 投下順で読む Back 失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 Next 失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 加藤清正 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 璃神妹花 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 須藤凛 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 銀丘白影 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 小神さくら 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 丹羽雄二 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 天王寺深雪 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 浅倉翔 070失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 稲垣葉月 070失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 狭山雪子 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 東奔西走 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 早野正昭 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』 070:失踪する思春期のパラベラム『心的爆撃』 被験体01号 070:失踪する思春期のパラベラム『君に愛を、心に銃を』
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登録日:2009/08/18(火) 20 01 14 更新日:2021/04/07 Wed 01 07 07 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 18禁? 4コマ ヤングマガジン 下ネタ 俺のバイブル 別冊ヤングマガジン 妹 妹は思春期 思春期 氏家ト全 泣きながら一気に読みました 漫画 講談社 週刊ヤングマガジン 氏家ト全の4コマ漫画。別冊ヤングマガジンで2001年20号からスタートして、ヤングマガジンに2002年27号から移籍、2007年52号で連載が終了した。 単行本は全10巻。 作風は4コマのギャグ漫画。エロネタがメインだがパンチラ等直接的な描写は少なく、下ネタが多い。 この作品のノリは、作者の後の作品である『女子大生家庭教師濱中アイ』や『生徒会役員共』に受け継がれた。 ただ掲載誌が青年誌のためか、下ネタは前者二つに比べより直接的で、伏字も無い。 ちなみに、作者は「それぞれの作品の世界観は一緒」との事。 作品の特性上、アニメ化はされなかったが、生徒会役員共においてゲスト出演として、城島兄妹と叶ミホが出演した なお、外伝として『妹はひまわり組』があるが、登場人物がほとんど違うのでこの項目では省くとする。 【登場人物】 城島カナミ この漫画の主人公兼ヒロイン。 男性経験が無いくせに、性知識が半端なくある所謂耳年増キャラ。 しかし何故か頭が良かったりする。 城島シンジとは兄妹関係に当たる。 なお氏家作品でよく見かける「処女なのにドン引きするぐらいの耳年増、そして何故か頭がいい」キャラ、所謂「思春期キャラ」は彼女が最初に当たる。 城島シンジ もう一人の主人公。ツッコミ役。 年相応の性知識を持っておるが、カナミ程ではない為、毎度妹(及びその周りの人)の思春期ネタに突っ込むという苦労人である。 城島カナミとは兄妹関係に当たる。 変態キャラが多いなか、稀に見られる常識人であるが、ドMでアナル好き。 …常識人? 矢野アキ カナミのクラスメイトで本作品のお色気担当。 彼女の周りがドン引きするぐらいの思春期のため、シンジ以上の苦労人。 彼女曰く「名前もそうだけし容体も男っぽい(意訳)」と言ってるが相当なばいんばいんである。 その為か周りの貧乳共に妬まれており、セクハラ紛いな事をされている。 マリア先生のお気に入りで、(性的な意味で)狙われておる。 黒田マナカ カナミの幼稚園時代の親友。 外伝である妹はひまわり組から登場。 例に漏れず彼女も思春期キャラで、毎度エロボケをかましている。 意外にも小説家志望で、学校で小説を書いている…が小説といっても官能小説である。 官能小説に対する意気込みは凄く、ネタ収集の為ラブホに行ったりもしている。 なお何故か貞操帯を着けている。 岩瀬ショーコ カナミのクラスメイト。 氏家作品の中でも珍しく彼氏持ちであり非処女。 (教師キャラ(小宮山・横島ナルコetc)や道具で処女を失ったキャラ(轟ネネetc)を除けば建て主の知ってる限りではショーコだけである) 最初の頃は比較的常識人だったが、巻数が進むにつれ彼氏とのノロケ話による下ネタ発言が多くなってきた。 彼氏の趣味か本人の趣味かは分からないが、露出やSM等、相当マニアックなプレイをこなしている。 なお彼氏は女子高校にいるとの事。 ……えっ? 金城カオル 単行本5巻からショーコの紹介で登場。矢野アキと同じくボーイッシュな顔立ちでスカートを履いて無ければ男と間違えられるらしい。 また作中随一の乙女心の持ち主で、未だにサンタクロースを信じている。 ピュアなため、カナミ達のエロボケを理解できなかったり、真に受けてしまったりしている。 なお彼女のようなスポーツウーマンでピュアなキャラクターは生徒会役員共に登場している三葉ムツミに引き継がれている。 叶ミホ 当初憧れの先輩であるシンジにアプローチしても毎回ダメになるいたいけキャラとして書かれていた。 しかし、回を重ねるに連れてどこかおかしくなっていき、挙げ句の果てにはシンジに「妹と同類」と思われてしまった。 それもこれも小宮山先生・マリア先生のせいである。 なお彼女が出ているときのタイトルは、殆どか「いたいけな〇〇〇」である。 【補足】 全日本妹選手権!!の堂高しげるやみなみけの桜場コハル等の合作もある。 なお桜場コハルとの合作の際は妹は思春期は1、2コマの部分、みなみけは3、4コマ目の部分を書いた。 追記・修正お願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ツッコミ役・妹持ち・割とイケメン・フラグ体質って事でタカトシとシンジが互いの苦労を語り合う話が読みたい -- 名無しさん (2014-01-11 03 22 21) ↑ただの自虐風自慢なんですがそれは…… -- 名無しさん (2014-01-13 15 49 36) タカトシに比べるとシンジって普通にダメな感じだから、存外普通にボケとツッコミが成立しそうなのが何とも。 -- 名無しさん (2014-01-17 14 35 10) いたいけな○○シリーズが好き。 -- 名無しさん (2014-11-11 17 26 09) 妹の同級生に飯を作ってもらう時があったが兄貴は兄貴で料理そこそこは作れるんだよな。 -- 名無しさん (2018-01-19 23 29 41) 名前 コメント
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【思春期】 799 :名無したちの午後:2009/09/18(金) 01 21 22 ID BZDW76hk0 需要不明だが、個人的な良体験版でもまとめてみる。 テンプレだと概要はわかっても深い内容はわからんしね。 主人公が興奮していることを重視するタチなので、ちょっと偏ってるかもしれん。 思春期 Hハプニング満載。ヒロインの羞恥、主人公の興奮度ともに文句なし。 偶然見てしまったヒロインの裸を、 後で乳首からスジまで克明に思い返して描写してくれるあたり最高。 232 :名無したちの午後:2009/12/29(火) 22 16 15 ID Otj+hm5Z0 ちょっと聞きたいんだが 学園もの+同居+風呂場遭遇のシチュあるやつってなにかない? 235 :名無したちの午後:2009/12/29(火) 23 17 02 ID tdmJ/TMS0 232 思春期 体験版に入ってるのでおぬぬめ 222 :名無したちの午後:2008/01/11(金) 09 51 00 ID KBdTsREE0 219 俺もそういうの好きだわ ウィズアニバーサリィーの風呂覗きで誰を注視するかの選択とか 思春期で誰をオカズにして抜くかの選択とか 選択肢で性的な視線の対象を選べるのってなんか好きだ
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思春期 560 :名無したちの午後 :2005/10/05(水) 11 26 41 ID WSReiJv90 思春期ってどうだった? コキシチュが豊富だったら、買おうかと思ってるのだが。 561 :名無したちの午後 :2005/10/05(水) 16 18 28 ID SLOt+5Vn0 560 指マン、挿入、フェラ、アナルがメインで、手コキは一回だけ・・まぁその一回は良かったが。 露天風呂で二人とも全裸で、まだ処女のすずめが背後から抱きついて、好奇心満々で。 ttp //www.rune.jp/products/rune/018sisyunki/event/cg/suzume1.jpg 一個の作品としては、買って満足してるけど、このスレで紹介するようなもんではないな。 みあに足コキされたかったよ・・orz 関連レス
https://w.atwiki.jp/818hr/pages/524.html
思春期 思春期 RUNE 05/09/29 主人公は、都心近くの住宅地に家族と暮らす、ごく普通の学生。そんなある日、 「妹だよ~!」なぜか父親が家に連れてきた女の子。そして次の日、「妹だ よ~!」再び父親が連れてきた別の女の子。さらに次の日、「妹だよ~!」「 3人目かよ!」。こうして、合計 4人になってしまった妹たちと暮らす毎日は!? ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 思春期に結構B1なシーンがあるな。このスレ的にRuneは結構優秀な希ガス ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) ルーンの思春期。B1ゲームとしてなかなか良質。あくまでHR狙いのゲーム ではないけど、ほんわか純愛系が好きな人なら、純愛+B1のコンボは、なか なかグッとくる。こういう系統が好きでHR属性持ちなら、おすすめ。セクー スしながら俺の子を孕みたがる妹達というのはイイね。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 完全近親なの? ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 収穫?、本格?それとも・・・? ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 確か義理 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 完全ネタバレ/ 近親スレをよく読むとわかるけど、「思春期」は、義理と主人 公は思わされているがENDまで見ると実は100%実の双子だよな何をどう 考えても……という作りの話。実。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) うほっ!マジですか!特攻します ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 水を差すようですが、実妹は孕みません。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) Σ(゚д゚lll)ガーン ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 「思春期」の智恵理ルートがHRエンドなんだが……途中HRセリフがまった くないorz まあ実に自然な形でラストのHRに繋がっているので変にとっ てつけたようなHRセリフ言わないのが物語読ませゲーとしては作品の完成度 を高めているのだが…… やるだけやりまくったらあとはボテ絵もなしでいき なり妊娠発覚エンドってなにそのマグロHR?
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思春期組 概要 その名の通り思春期にあるキャラクター達……ではなくその中でも各組織の新人(ルーキー)的なキャラクター達の友人グループ。 以前はルーキー組とも呼ばれていたがルーキーではないキャラも加わったのでこちらの名称で呼ばれるようになった。 舎弟気質なものが多いためかシェリンを始め女子には頭が上がらないことが多い。 というか年齢が近く、絡みやすいのかシェリンに引き連れられて行動することが多い。 主な該当者 サジェス 傭兵ギルド「ファントム」所属。 ひyなネタにはあまり耐性がなく、そういう話題になると筋トレして必死に頭の中身をずらそうとするくらい思春期。 最近は女体化の呪いを受けてシェリンの幼馴染や友人ルフトに何かと絡んで腐女子のエサになったり、ツェット達のよからぬ妄想に登場したり。 戦闘能力が他の面子よりもワンランク上だったり、比較的落ち着きのある性格だったりで暴走しがちな友人たちのブレーキ役になることも多い。 ツェット 傭兵団「ドレイク」所属。 美人には弱い思春期であり戦闘力は発展途上のルーキー。 対極の属性を持つロッジュは親友かつライバル。 ゴーレムのエコーに惚れ、妖刀の金食蟲を持ち、幼馴染にムイールのネリーがいるなど非人間の女の子に何かと縁がある。 おかげでネリーからは「そんなに生身じゃない女子が好きなんですかアナタ」と言われてしまったり。 ルナール imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s_runa3.jpg) 所属は特になく、ルーキーでもないが他の面子とつるむ機会が多いため思春期組に含まれる。 女性的な容姿だがスタイルのいい女子には弱いむっつりスケベな思春期。 スタイル抜群で何かと絡む機会の多いシェリンに気があるようだが先方は全く気付いていない上に幼馴染くんという強大なライバルが行く手を阻む。 頑張れルナール。 ロッジュ 所属組織は特にないが田舎から飛び出してきたルーキー。 他の面子同様ボインや美人に弱い思春期。 対極の属性を持つツェットは親友かつライバル。 ルーキー 思春期 新人 用語辞典
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ししゅんきぼーかろいど【登録タグ PENGUINS PROJECT VOCALOID し 初音ミク 曲】 作詞:PENGUINS PROJECT 作曲:PENGUINS PROJECT 編曲:PENGUINS PROJECT 唄:初音ミク 曲紹介 思春期の甘酸っぱい未熟さが懐古心を刺激する。 2番では声が歌詞の内容に合わせて大人っぽくなる。 歌詞 (PIAPROより転載) 私は 思春期 恋に恋する 季節 一番 好きなのはキミ? それとも そんな私かな "心が ゆがんでる" そうキミに言われた午後に 駆け出して海を見に行ったよ 元町の坂道 欲しいものはすべて 人が欲しいと思うもの 何ひとつ手に入らないまま くちびる かんでた 「そのうちわかることだよ」なんて 大人はすまして話すけれど そのうちじゃなくて 今をどうすればいいの? 心の中 霧に包まれて 明日のことさえ わからないの だから私 恋をしているフリする わかる? 私は 思春期 恋に恋する 季節 一番 好きなのはキミ? それとも そんな私かな 海へと 吹く風 やんで 夜が来るけど このまま 帰りたくない どこにも キミのところにも "子どもが 泣いている" あなたがそう言った午後に 駆け出して海を見に行ったの 元町の坂道 欲しいものはすべて みんなで欲しいと思うもの 一緒に探して見つからない そんな日々が好き あれから何年も時が過ぎ 今ではすべてが笑い話 三人で過ごす日々のむこうに 遠く あのころの私にこんなこと 伝えても多分怒るだけね 「あなたもそのうちにわかることなのよ」 ねえ あなたは 思春期 嵐の中の 季節 未来が 今見えずとも どうか思いつめないでね いつかは あなたの となりにいるだれかと 心の 霧が晴れたら 二人で何かできるかも ボーカロイドは 今が思春期 たとえ未来が 見えなくても テクノロジーや法律、社会… 何かを変える、何かが変わる… コメント 中学生とか高校生にもっと聞いて欲しい曲。 -- 名無しさん (2008-10-31 07 10 56) 模範的な歌 -- 名無しさん (2009-06-15 16 22 15) これはもっと色んな人に聞いて欲しい -- もちいちご (2010-11-25 23 06 13) 最近の一押し曲。 -- 名無しさん (2010-12-14 23 20 37) 名前 コメント
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妹は思春期をお気に入りに追加 妹は思春期のリンク #blogsearch2 Amazon.co.jp ウィジェット 妹は思春期のキャッシュ 使い方 サイト名 URL 妹は思春期の報道 12・11開幕「東京ドキュメンタリー映画祭2021」全57作品を紹介 - MOVIE Collection [ムビコレ] 摂食障害で命の危険 それでも「カロリーを減らさなくちゃ!」と病棟を全力疾走する17歳女性患者 - 読売新聞 電車の中で、赤ちゃん連れのママが「すみません」→男性の気遣いに21万人が「素敵!」「こういう嘘はついて良い」(まいどなニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 12月3日の関連記事スクラップ/日大前理事長宅に3回目の家宅捜索・工学部ルートも解明へ(石渡嶺司) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 性教育の「10の悩み」サッコ先生が答えます 親子のこんな場面が伝えるチャンス - 東京すくすく 弟の死後、甥(7)と姪(3)は「俺が引き取りたい」と…28歳独身男性が「2児の父になる」ことを決断できたワケ(2021年11月28日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース 愛の力で剣が強くなる、ノッツの新連載「好き好きだいちゅきつよつよソード」が大王で - マイナビニュース 愛の力で剣が強くなる、ノッツの新連載「好き好きだいちゅきつよつよソード」が大王で(コミックナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「カメラが回ってないところであんなに泣いたのは初めて」 ジュリアン・ムーア&エイミー・アダムスが語る『ディア・エヴァン・ハンセン』の魅力(ぴあ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「悩みがあった」思春期の心の変化にどう対応すれば 「積極的に声掛け」「見守る方がいい」街では様々な声(メ〜テレ(名古屋テレビ)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 錦鯉・長谷川もファンだった武田久美子のアイドル時代 同期には“銀蝿の妹”も(2021年11月24日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース 「トワイライト」に『ウォールフラワー』、『カオス・ウォーキング』まで!心の葛藤を描く「ヤングアダルト小説」が原作の映画たち(MOVIE WALKER PRESS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 長谷川京子さん「人生をサバイブする力は自信があります」|VERY(magacol) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース アニメ『カッコウの許嫁』妹ヒロイン“海野幸”メインの新PVが公開! - 電撃オンライン シリーズ累計200万部突破!電撃文庫『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』より新規フレグランス商品が11月17日(水)販売開始! - PR TIMES <カッコウの許嫁>小原好美が“3人目のヒロイン”海野幸に テレビアニメ追加キャスト(MANTANWEB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「海街diary」の姉妹で誰が好き? 姉妹4人を解説!(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「体重が減るのが今の私の支え」…有名進学校の女子高校生が体重31キロ、生理も止まるまでやせたわけ - 読売新聞 〈新作紹介〉『フォーリング 50年間の想い出』あの名優がこの名優を主演に初監督した、父子の長年にわたる葛藤と絆 - マイナビニュース 本仮屋ユイカ、11年ぶりに妹・リイナとテレビ共演 失恋直後の仕打ちに恨み節「一生忘れないですね」 - goo.ne.jp 本仮屋ユイカ、“失恋直後のしっぺ返し”で妹リイナに恨み節「一生忘れないですね」 - テレビドガッチ <ナイツ・塙宣之>出身地は「千葉」に兄・はなわからクレーム 歌詞の“ウソ”告発も(MANTANWEB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース <NANAMI>堀北真希さんの妹がドラマチックな“ときめき”メーク おでこ見せで大人っぽく(毎日キレイ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース Sexy Zone佐藤勝利、思春期は中島健人&菊池風磨が伝授「独特な彼らに独特な思春期を教わりました…」(オリコン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 兄 松本潤& 妹 榮倉奈々が禁断のキス...事後シーンに心臓爆発な映画『僕は妹に恋をする』 - トレンドニュース 「アイドルや男子の話ばかり」女子の会話が苦痛な中1長女が不登校…診察室で「妹はずるい!」と - 読売新聞 妹は思春期とは 妹は思春期の97%はツンデレで出来ています。妹は思春期の1%は月の光で出来ています。妹は思春期の1%は度胸で出来ています。妹は思春期の1%はかわいさで出来ています。 妹は思春期@ウィキペディア 妹は思春期 楽天売れ筋ランキング レディースファッション・靴 メンズファッション・靴 バッグ・小物・ブランド雑貨 インナー・下着・ナイトウエア ジュエリー・腕時計 食品 スイーツ 水・ソフトドリンク ビール・洋酒 日本酒・焼酎 パソコン・周辺機器 家電・AV・カメラ インテリア・寝具・収納 キッチン・日用品雑貨・文具 ダイエット・健康 医薬品・コンタクト・介護 美容・コスメ・香水 スポーツ・アウトドア 花・ガーデン・DIY おもちゃ・ホビー・ゲーム CD・DVD・楽器 車用品・バイク用品 ペット・ペットグッズ キッズ・ベビー・マタニティ 本・雑誌・コミック ゴルフ総合 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ 妹は思春期 このページについて このページは妹は思春期のインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される妹は思春期に関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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うつ病をきちんと治療し、治す! このサイトはもはや現代病となった忌まわしきうつ病を治療克服するための情報交換サイトです。しかしうつ病はずっと治らなかったり、再発したり、抗うつ薬の副作用に苦しめられたり、なかなか治療効果が上がらないのが現状です。より効果的なうつ病治療を目指すための口コミ情報交換サイトとして活用してください メニュー おすすめうつ病治療法&克服法体験記(掲示板)あなたがうつ病を改善・克服した方法、治療法の体験記を書き込んで下さい。うつ病治療の情報交換の場です。 うつ病体験記・克服体験談・情報サイトリンクうつ病を扱っているサイト・ブログ うつ病の体験記が掲載されているサイト・ブログ うつ病治療に成功した方のサイト・ブログ 抗うつ薬副作用情報抗うつ薬の副作用情報をまとめています そもそもうつ病って何?(WIKIPEDIAから引用) うつ病 うつ病(うつびょう、鬱病、欝病)とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患である。 アメリカ合衆国の操作的診断基準である DSM-IV-TR などでは、「大うつ病」(英語: major depression)と呼ばれている。 うつ病は、従来「こころの病気」とされてきたが、最近の研究では「脳の病気」ととらえ、うつ病患者の脳内に不足している脳内物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど)の分泌を促進させる薬物療法などが主流になってきている。 あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在する。うつ病を反復する症例では、20年間の経過観察で自殺率が10%程度とされている。 なお、男女比では、男性より女性のほうがうつ病に罹患しやすいとされている[1]。 世界保健機関 (WHO) の診断基準については、ICD-10による気分障害の分類を参照。 概要 うつ状態には、次のような性質のものがある(うつ状態を呈するからといって、うつ病であるとは限らない)。 一過性の心理的なストレスに起因するもの(心因性のうつ、適応障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など) 自律神経失調症・パニック障害など、他の疾患の症状としてのもの 季節や生体リズムなど、身体の内部の変調によって生じるもの(内因性うつ病) こうした様々なうつ状態のうち、臨床場面でうつ病として扱われるのは DSM の診断基準に従って、「死別反応以外のもので、2週間以上にわたり毎日続き、生活の機能障害を呈している」というある程度の重症度を呈するものである。 疫学 DSM の診断基準を用いたうつ病の有病率についての 12 の疫学的研究を見ると、ある時点で過去1ヶ月以内にうつ病と診断できる状態であった人の割合は、1.0% - 4.9%であり、おおむね約2.8%が平均的な調査結果であった。 また、生涯のうちにうつ病にかかる可能性については、近年の研究では15%程度という報告が多い。また、日本で2002年に行われた1600人の一般人口に対する面接調査によれば、時点有病率2%、生涯有病率6.5%とされている。 これらの研究結果から、ある時点ではだいたい50人から35人に1人、生涯の間には15人から7人に1人がうつ病にかかると考えられている。 症状 うつ病の症状を理解するには、大うつ病についての DSM-IV の診断基準[2]を参照すると良い。 DSM-IV の診断基準は、2つの主要症状が基本となる。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」である。 「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。 「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。 この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされている。 これら主要症状に加えて、「抑うつ気分」と類似した症状として、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「自殺念慮・希死念慮」などがある。 これらのグループの症状をまとめると「気分が落ち込んで嫌な毎日であり、自分には存在している価値などなく、死にたいと思う」という訴えとなる。 「興味・喜びの喪失」と類似した症状としては、「気力の低下と易疲労性」、「集中力・思考力・決断力の低下」がある。このグループの症状をまとめると「何をしても面白くなく、物事にとりかかる気力がなくなり、何もしていないのに疲れてしまい、考えがまとまらず小さな物事さえも決断できない」という訴えとなる。 さらにこれらの精神症状に加えて「身体的症状」として、食欲、体重、睡眠、身体的活動性の4つの領域で、顕著な減少または増加が生じる。訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていれない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものである。 DSM-IV では、主要症状1つを含む5つの症状が2週間以上持続することが、大うつ病診断の条件となっている。 子供のうつ病 12歳未満の児童期は 0.5% から 2.5%、12歳から17歳の思春期以降では、2.0% から 8.0% の有病率が認められる。 軽症のうつ病ではイライラしたり、少し落ち込んでいるようにみえたりするだけでうつ病体験を言語化しないことが多く(発達段階によっては出来ない)、頭痛や腹痛等の身体症状や不登校等の行動面での変化が特徴である。 投薬治療はフルオキセチンやセルトラリンなどのSSRIが推奨されているが、思春期前の子どもへのパロキセチンの投与は慎重に行われるべきである。SSRIの投与により改善が見られない場合には、他のSSRIや三環系抗うつ薬などへの変更が推奨される。 精神療法は、児童期では認知行動療法,青年期では認知行動療法と対人関係療法の有効性が認められている。 家庭や学校などの日常生活における環境を整えることも、回復を促す上で有効である。 分類 うつ病・うつ状態には、様々な分類がある。 まずうつ状態そのものの分類は大きく分けて、症状の重症度で区分する分類と、成因で区分する分類に分かれる。 DSM-III以降の米国精神医学会のうつ病分類では、うつ病性障害は、「ある程度症状の重い大うつ病」と「軽いうつ状態が続く気分変調症」に2分されている。 一方古典的分類では、疾患の成因についての判断が優先され、「心理的誘因が明確でない内因性うつ病」と、「心理的誘因が特定できる心因性うつ病」の2分法が中心となっている。狭義には前者が’うつ病’とされ、心因性のものは‘適応障害’などに分類されることが多い。 DSMなどの症状のみで判断する分類は、客観的であり、研究には適している。一方、臨床場面では、心理的誘因の評価は不可欠であり、むしろ治療的にはこちらの判断のほうが重要である。例えば、‘心因性のうつ’では原因から遠ざかれば一晩で元気になる可能性もあり、治療や環境変化などへのレスポンスが大きく異なっている。 さらに、うつ病の長期経過による分類がある。すなわち、躁状態を呈する躁うつ病、うつ病を繰り返す反復うつ病、再発のない単一エピソードうつ病の区分である。まず、長期経過の中でうつ状態に加えて躁状態も生じる場合には、躁うつ病(別名:双極性障害)と呼ばれる。これに対して、うつ病を繰り返し生じる場合には、反復性うつ病と呼ばれる。この反復性うつ病は、遺伝研究などによって、躁うつ病と根本的には同一の疾患であるとされている。一方、再発のないうつ病は、単一エピソードうつ病と呼ばれ、躁うつ病とは異なった疾患であると考えられている。 経過 「誰でもかかる可能性がある」「かかりやすい」ことを表した『うつ病は心の風邪』という言葉が、一部における「うつ病は放っておいても簡単に治る」「気の持ちようでなおる」という誤解に繋がっているが、風邪と違って時間がたてば自然に治る類の病ではない。 かつては、電気けいれん療法、ロボトミーしか効果の証明された治療法が無かったが、その後抗うつ薬が登場し薬物療法が発達した。過去に比べれば、うつ病に対する治療法は確立されてきている。 うつ病では、6ヶ月程度の治療で回復する症例が、60ないし70%程度であるとされ、多くの症例が、比較的短い治療期間で回復する。しかし、一方では25%程度の症例では、1年以上うつ状態が続くとも言われ、必ずしもすべての症例で、簡単に治療が成功するわけではない。また、一旦回復した後にも、再発しない症例がある一方、うつ病を繰り返す症例もある。このように、様々な経過をとる可能性があることは認識しておく必要がある。 成因 うつ病の成因論には、生物学的仮説と心理的仮説がある。 ただいずれの成因論もすべてのうつ病の成因を統一的に明らかにするものではなく、学問的には、なお明確な結論は得られていない。 また治療にあたっては、疾患の成因は必ずしも重要なものではない。スキーで骨折したのか、階段から落ちて骨折したのかによって、治療が変わるものでもない。治療場面では、なぜうつ病になったかという問いよりも、今できることは何かを問うべきである。この意味で、成因論は、学問的関心事ではあるが、臨床場面での有用性は限定的である。 生物学的仮説は、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、現在も活発に研究が行われている。モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれるセロトニンの代謝に関係した薬物の売り上げ増加に伴い、セロトニン仮説がよく語られる。また近年、海馬の神経損傷も話題となっている。ただ、臨床的治療場面を大きく変えるほどの影響力のある生物学的な基礎研究はなく、決定的な結論は得られていない。 一方心理学的・精神病理学的仮説としては、テレンバッハのメランコリー親和型性格の仮説が有名である。これは、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、職場での昇進などをきっかけに、責任範囲が広がると、すべてをきっちりやろうと無理を重ね、うつ病が発症するという仮説である。なお、決してすべてのうつ病がこの仮説に一致する訳ではない。 また、認知療法の立場からは、人生の経験の中で否定的思考パターンが固定化したことがうつ病と関連しているとされている。 生物学的仮説:脳の海馬領域における神経損傷仮説 うつ病の神経損傷仮説:近年MRIなどの画像診断の進歩に伴い、うつ病において、脳の海馬領域での神経損傷があるのではないかという仮説が唱えられている。[3]そして、このような海馬の神経損傷には、遺伝子レベルでの基礎が存在するとも言われている。[4] 心的外傷体験が海馬神経損傷の原因となるという仮説:また、海馬の神経損傷は幼少期の心的外傷体験を持つ症例に認められるとの研究結果から、神経損傷が幼少期の体験によってもたらされ、それがうつ病発病の基礎となっているとの仮説もある。 心理学的仮説:病前性格論 心理学的成因仮説の代表は、病前性格論である。うつ病にかかりやすい病前性格として、主に、メランコリー親和型性格、執着性格、循環性格、が日本では提唱されている(米英圏では強迫性)。しかし、近年はうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、下記の性格に該当しないうつ病患者が増加している。 メランコリー親和型性格はドイツの精神科医テレンバッハ (H. Tellenbach) が提唱したもので、秩序を愛する、几帳面、律儀、生真面目、融通が利かないなどの特徴を持つ。主として反復性のないうつ病を呈するとされる。 執着性格は下田光造が提唱したもので、仕事熱心、几帳面、責任感が強いなどの特徴を持つ。反復性うつ病ないし躁うつ病の病前性格の一つであるとされる。 循環性格はエルンスト・クレッチマー (E. Kretschmer) が提唱したもので、社交的で親切、温厚だが、その反面優柔不断である為、決断力が弱く、板挟み状態になりやすいという特徴を持つ。躁うつ病の病前性格の一つであるとされる。 治療 治療の基本方針 心理的葛藤に起因しない内因性うつ病の場合 治療方針は、基本的に一般の病気と同じである。すなわち、病気であることを本人・家族が納得し、「無理をせず、養生して、薬を飲んで、回復を待つ」ことである。 内因性うつ病の症状は、"気の持ちよう" "努力"などで変えられるものではない。変えられないものを、変えようと無理をすれば、症状を悪化させる。むしろ、変えようとせず、憂うつな気分に逆らわず、十分な休養を取りながら、回復を待つべきである。 うつ病の症状の一つに、将来を悲観してしまうことがある。病気のため、もう治らないとしか考えられなくなることも多い。しかし、うつ病はいかに重症でもいつかは改善するものである。いつかは良くなるという希望を持つことが重要である。 またあせって人生の決断を下さない方がよい。例えば転職・退職、離婚などの重要な決断はなるべく後回しにする。一般にうつ病のため判断能力は低下していることが多く、適切な判断が下せないことが多い。 家族など周囲の人たちも、長い目でうつ病患者を見守ることが求められる。「頑張れ」や「甘えるな」という言葉は、患者自身の力ではどうしようもない今の状態を、今すぐに自分の力で変えるようにと、無理を求めるものとなる。そして、このような言葉は、患者を追いつめ、最悪の場合、自殺の誘因とならないとも限らない。患者のみならず、周囲の人々も、患者がうつ病であり、患者自身の力では今の状態から抜け出せないことを受け入れ、長い目で回復を信じ、あせらないことが必要である。 「気の持ちようではないか」「旅行にでも行って気分転換してはどうか」といった言葉も、適切ではない。うつ病でなくとも、嫌なことが起きれば、嫌な気分になるし、そういった一過性の軽い抑うつ気分は多くの人が経験する。これらの言葉は、うつ病もそれと同じように対処すれば良いものと見ている。しかし、長期間に及ぶような酷いうつ状態(つまりうつ病)の場合には、適切な治療なしには気の持ちようを正すこともできず、旅行に行く気力も出ないため、これらの言葉はかえって患者を苦しめる。患者がこれらのアドバイスを受け入れられるほど回復したかどうかの見極めが大切である。 治療の前提として、治療の基本的原則について、しっかりと医師が説明を行い、患者が納得して治療に取り組むことが必要である。また、投薬についても、医師がしっかりと説明する必要がある。患者も、分からないことは質問していくことが必要である。こうした医師と患者のコミュニケーションが治療の成功には不可欠である。 心理的葛藤に起因すると思われる心因性うつ病の場合 心理的葛藤に起因すると思われるうつ病では、原因となった葛藤の解決や、葛藤状況から離れることなどの原因に対する対応が必要である。なお、一人一人の患者においては、心理的葛藤が原因と考えるべきものなのかどうかの判断は、かなり難しい。このため、この判断は、精神科医の助言に従うのが良いであろう。 入院・外来などの治療設定の選択 入院するかどうかなどの治療設定の選択をする場合には、症状の重症度の判断が重要である。ただし、専門的に見てかなり重症であると判断されるうつ病を、家族や周囲の人が、軽く見ることは多く、専門医を受診し、診断を受けることがまずもって必要である。特に、「死にたい」とか「消えてしまいたい」「自分は居ない方がいい」などの希死念慮や自己否定的な内容を口にする場合には、自殺の危険性があり、すみやかな受診が必要である。 治療開始の時点では、自殺の危険性が高い重症例であるか否かがまず評価され、自殺の危険性が高い重症例では、入院治療が必要となる。特に危険性が高い場合には、電気けいれん療法を行うと、自殺の危険性は軽減されるとされる。 自殺の危険性はないが、日常生活に著しい障害が生じている場合には、仕事を休んだり、主婦であれば家事を誰かに手伝ってもらうなど、社会的役割を免除してもらい、休養する必要がある。 日常生活における障害が軽い軽症例では、これまで通りの生活を続けながら、治療を行うこともある。 いずれの重症度でも、内因性うつ病においては、薬物療法を行うのが原則である。 治療法各論 薬物療法 うつ病に対しては、抗うつ薬の有効性が臨床的に科学的に実証されている。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1ないし3週間の継続的服用が必要である。このことをしっかりと理解して服薬する必要がある。抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多い。これに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多い。なお、抗うつ薬による治療開始直後には、年齢に関わりなく自殺の危険が増加する危険性があると米食品医薬品局(FDA)から警告が発せられた。又、近年セント・ジョーンズ・ワートを始めとしたハーブの利用にも注目が集まっているが、有効性はまだ不明である。 認知行動療法 外界の認識の仕方で、感情や気分をコントロールしようという治療法。抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。対人関係療法も認知行動療法の要素を持つ。 精神療法 いわゆる「カウンセリング」と言われるもの。 電気けいれん療法(ECT) 頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こす事で治療を行う。薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。有効性・安全性とも高い治療法であり、保険診療でも認められている。 経頭蓋磁気刺激(TMS) 頭の外側から磁気パルスを当て、脳内に局所的な電流を生じさせることで脳機能の活性化を図るもの。保険は未承認。 その他、実験的段階にあるものや、限定的に行われる治療法として以下のようなものもある。 断眠療法 文字通り、睡眠を断つ治療法。「徹夜明けでハイになる」というものに近い。短期的には一定の効果があるが、再発率が高い。 光療法 強い光(太陽光あるいは人工光)を浴びる治療法。過食や過眠のあることが多い、冬型の「季節性うつ病」(高緯度地方に多い冬季にうつになるタイプ)に効果が認められている。 運動療法 音楽療法 最終更新 2008年6月1日 (日) 12 14。 抗うつ薬一覧:デプロメール、ルボックス、パキシル、ジェイゾロフト、プロザック、イミドール、アナフラニール、アモキサン、ルジオミール、テトラミド、テシプール、トレドミン、エフェクサー、シンバルタ、レスリン、デジレル、ドグマチール、アビリット、ミラドール、リーマスなど 抗不安薬一覧:デパス、リーゼ、コレミナール、グランダキシン、ワイパックス、ソラナックス、コンスタン、レキソタン、セラニン、セパゾン、エリスパン、セルシン、ホリゾン、ランドセン、リボトリール、メンドン、コントール、バランス、セレナール、メレックス、セダプラン、メイラックス、レスタス、セディール html2 plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 うつ病治療克服掲示板 うつ病回復情報交換掲示板 うつ病掲示板 鬱病掲示板 鬱病情報交換掲示板 鬱病治療情報掲示板 うつ病回復役立ち掲示板 うつ病を治す掲示板 うつ病から回復する掲示板 うつ病を克服する掲示板
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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――――Piece4◇盲信癖(猛進撃)―――― ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 血に濡れた少女、天王寺深雪は当然の話だが相応の警戒心を抱いていた。 さもありなん。 目を覚ましていたら、覚えのない人間が眼前にいて自らはどうも違う場所に運ばれている、終いには手首を縛られていると来た。 このことを知ったら彼女じゃなくとも恐慌の一抹ぐらい抱くだろう。 丹羽雄二とて同様の理解を得ている。 彼とて鈍感ではない。――少女が恐怖を抱くことなど予想済み。 故に出来る限り怖がらすまいと、チェーンソー含め武器と言える武器はディパックに仕舞っていたのだが。 どうにもあまり効果はないとみた。丹羽はそれも仕方ないか、と適当に済ますが見方によっては適切な判断でもあった。 しかしこのまま黙っていてもしょうがない。 判断に辿りついた丹羽は天王寺に向かって彼なりの優しさを出来る限り体現したような口調で話しかけた。 「……んで、天王寺は」 「…………」 勢いよく怪訝さが増幅していた。 あまりの不自然さに天王寺の本能が危険だと察したのだろうか。 丹羽も悟ったのか一つ息を吐くと普通の声で話を続ける。 「そんでだよ、天王寺とやら……。……おまえはあそこで何を見た……」 「あそこって……」 「決まってんだろ、隣の住宅――つってもわからんか。あれだ、茶と白が混じった様な狼ともう一人死んでいった男。そしておまえの三人。 おまえらはあの家のリビングでなにをしてきた。……あ、言っとくが下手な嘘はつかない方がいいよ。俺はあの場面に実を言うと遭遇してたからな」 「…………っ! ……別に」 明らかな挙動不審。 彼女が目指すところの『殺戮機械』とはおよそ程遠い。 今更になってぶり返す気持ちの悪い感触。 ナイフを人体に刺したあの感触。ゴムを貫くのとではわけが違う。 つい先ほどまで牧歌的とは縁がない会話とはいえ、会話をしていた人間を刺す――行為そのものに感じる、怖くなかったはずの罪悪感。 よもや一度は恐怖でたじろいだほどの相手を討ち取ったのだ。本来であれば、彼女はここで喜ぶべきだった。 ――阿見音様のために貢献できた、と。 なりふり構わず笑い過ごせばどれだけよかったことなのだろう。 しかし彼女は、笑えない。 思い返したところで、彼女にとっての笑える要素など何一つない。 冷酷さに特化したとは、何を間違っても言えない行い。 『機械らしさ』なんていうものは、やはりどこにもない。 あるのは謂えて――『人間らしさ』。何処までも現実は皮肉なものであった。 最終的に、思い出しては身を震わすしか、彼女は行動を起こせない。 これがゲームのキャラであったら、所謂バグというやつなのか。……きっと違うのだろうけど。 人間として、正常通り動いている感情に、故障などどこにもないのだ。 丹羽が感付くのに、時間など無用。 声は愚か、肩も明白に震わす天王寺を見て、彼女も被害者の一員ではないと悟る。 無論のこと、死体そのものを思い出して恐怖に打ちひしがれてる、とも考えられなくもないが、それなら「別に」などと言うあからさまな隠し文句をいう必要を感じない。 丹羽ならば、と考えた時、する行為はむしろ逆。少しでも他人に悲痛の声を吐き捨てて、自分の心を楽にしたいと考える――というよりも考える余裕もなく吐き捨てているだろう。 ――あの男の加害者であると同時に、この無情なる現実の被害者側と判断するには、彼なりに材料は揃っているようだ。 とはいえ、ここで焦るのは良くない。 どちらが有利かだなんて自明の理。 それこそ彼が『最期』に出遭ったようなロボットじゃない限り、まだ交流を試みて損はない。 ――言葉が通じるのであれば、急ぐ必要性はまだ存在しない。 ゆっくりと、問いただす。 「……別に、ってことはないはずだ。あそこで人が一人死んでるんだ。天王寺が関係無いことはないはずだよ」 「……私が何かしたって言うなら、あなたはどうするの?」 それは親からの仕置きを怖がるような子供の態度そのもの。 恐る恐るといった形で、威厳の片鱗なんてどこにもない。 ――丹羽が出遭ったロボットと、彼女の『機械らしさ』を比べるのもあまりに過酷なことだけれど、丹羽もちょっと拍子抜けしてしまう。 所詮は子供。 何を目的に生きて、殺して、今ここにいるのかはわからないけれど、精神的な年齢は子供そのものであった。 ならば。 ならば丹羽にとっても話は簡単だ。 「別にどうもしないさ。――強いて言うなら俺の監視下に置かせてもらう。危険な奴を野放しにできるほど俺も馬鹿じゃないからな」 ただ一つ。 天王寺深雪の心を少しでも緩めれてあげれば、そう思う。 ……無論として、自分が襲われないためだとか、河田にこのまま会わせたくないだとか。 理由としては沢山あるのだけれど――同時に、丹羽の甘さともいえる優しさがそこに宿る。 ――優しさを知らない少女には、優しさを教えるべきである。 否、本来の優しさを表せない少女には、優しさの表し方を教えるべきである。 「そしたら、あなたは私に絶対に襲われる。適当な石でも拾ったら、私は絶対に貴方を殺す」 「やってみろよ――生憎だがそこで殺されるほど俺もお人好しじゃねえし、なにより天王寺に俺は殺せない」 「……何を根拠に」 「人一人殺した程度で、そんな震えているお人好しに、俺は殺されたりはしない。おまえは誰も殺せやしない」 丹羽も、人の事を言えるのだろうか。 数時間前に感じた、何が正しいのか分からなくなる自分に対する不信感。 早野に対して、言えなかったわだかまりが、再度自らの前に顕現する。 ――はたして、そうなのか。実際人を一人殺したであろう人間が、躊躇うのか。 正義ぶっている自分が、本当に正しいのか――間違ってはいないのか。 天王寺は、喚いた。 「私はお人好しなんかじゃない! 阿見音様の為に! 私は全員殺すんだッ!!」 「…………」 耽る。 少女の剣幕に押された訳ではない。 違う、そうじゃない。 丹羽は、途中出てきた人物の名前に注視する。 阿見音様――様は敬称であろうから阿見音――名簿を見るに恐らく阿見音弘之。 この人物が、恐らく天王寺と言う幼く身柄を、いいように改造し(いじくっ)たのだろう。 こんな、人殺しを強要させられるような、幼児離れした思考回路を植え付けたのだろうことが優に予想付く。 もしかすると彼女らの間にも何かそれを上回る事情があったのかもしれなかった。 でもだ。だったとしてもだ。それはやはり丹羽からしてみれば、 (……胸糞悪いな……) 許せれる話であるとは限らない。 別にこれが幼児だから、というわけでもないが、それでもこんな幼き子供に常人離れした考え方を叩きこんだ存在を許せるはずもない。 ――河田遥風に言うのであれば、絶対不許。 それは正義感だとかいう話より、モラルだとか社会常識だとかそんな域の議題に感じた。 ……先ほどまで悩んでいたことがどうでもよくなるぐらいに、彼は怒りを覚えた。 何が正義だとか、何が正しいだとか。 そんな道理を踏みにじるかのように、阿見音という男は狂っているのだろう。 およそ先入観も入り乱れた勝手な憶測にすぎなかったが、その一言と、今までの天王寺の姿だけ見てこの結論。 そこまで考察して、打ち切った。 彼は何も阿見音という人物をどうこうするつもりなどないし、するにしたって考え過ぎだ。 良心の呵責か、自己嫌悪か。はたまた煮詰ったのか。 理由はどうであれ、これ以上、『今』は関係ない阿見音のことを考えるのはいただけない。 彼の言葉がようやく発せられる。 「それで……阿見音とかいう奴が喜ぶと思ってんのかよ」 よくもまあのうのうとそんな戯言が吐けるものだ、と丹羽自身で愕然とする。 つい先ほどまで悪く考えていたのだが、手のひら返して『善人』として扱う。 立派な嘘つきだ。 ――数時間前に抱いた疑念は、どうやら解へと結びついたようだ。 (……まったくもって、俺には糾弾する権利なんてないよな……) 天王寺は考える態度など一切見せずに。 反射ともいえるべき速度で、丹羽への返答を返した。 瞳には、よほど丹羽の瞳よりも確固たる意志「だけ」は秘められている 「信ずる者こそ救われる、そして戦った者こそ多くの救いを敷くことができる。――それが私たち。だから私は、阿見音様を信じる。――戦う」 宗教と言うのは厄介だ。 いや、この言い方は些か適切ではない。 宗教性の薄いと思われがちな日本でも、普段の日常生活に置いて宗教に接する機会は少なからずある。 たとえばクリスマス。 意味合いは非常に変わり果ててしまっているが元を辿ればキリスト教。 日本には様々な宗教――仏教にしろキリスト教にしろ――錯綜しているが、それでも宗教に馴染んでいる。 故にここでは宗教と言うのは適切ではないだろう。 狂信者。 文字通り、狂ったまでに信じる者が、厄介なのだ。 この場合、天王寺深雪はそれだ。 阿見音という男を、盲目的に信じてやまない。 人を殺せと命じられたら――人を殺そうとするほどに。――殺『そう』とするほどに。 「……なんで、天王寺はそこまで阿見音ってやつを崇める? 人を殺『す』までに」 「…………」 一瞬詰まる。 そうなのだ、天王寺は既に一人の参加者を殺したのだ。 本人の内奥から湧き出た殺意が、そうさせた。 決心が、追いつかないままに一人の参加者を殺した。 ……何故だか、湧き立つはずもないのに、天王寺は悲しさを身に浴びる。 覚悟した上の殺害行為。 錯乱しての殺害だったとはいえども、元より彼女はそのつもりだった。 なのにどうしてこうも戸惑うのか。 もっと胸を張って、言い切ればいいじゃないか。 この男に殺されるかもしれないという恐怖心が勝っているのだろうか? ううん、とそこまで天王寺は考えた辺りで打ち切って、否定する。 彼女は元より阿見音の為ならば死ねるような人間だ。 名誉ある殉職であれば、喜んで買いでるような常軌を逸した人間である。 そのつもりであったのに。 ……何を恐れるのだろうか。天王寺自身、疑問ばかりが湧いて出る。 何故だか不安になる。 これは本当に正しいことなのか。疼く思いは容赦なく心を叩く。 阿見音は天王寺のコウイを望んでいるのか。このコウイは本当に正しいのか、不安になる。 故に自分自身を確かめるように。 自己を保つように、アイデンティティを振り返るために。 丹羽の問いに答える。自分が正しいと、再び言い聞かせるために。 「私はあの人に助けられた。だから、その恩義に応えるのは当然のこと」 そうだった、と思い出した訳ではないが、再認識する。 天王寺は、阿見音に恩義を尽くす――責任がある、と。 その一方で、丹羽はやはり首を傾げるほかない。 助けてもらったから、他者を殺す。 そんなのは、正しいと言えるのか。可能性としてでも、存在するのか。 ――存在は、するのだろうし、あながち間違ってもいないのだろう。現に目の前に、その理論を貫く少女がいる。 ただ、正しいのか。 たとえば、河田遥。 恩着せがましい言い方にはなるが、あの少女は、丹羽に助けられた存在だ。 丹羽としてもその自覚はあるし、あるが故に、放って置けないのであるのだが、ともあれ。 その場合の河田遥の行動指針を考えてみる。 仮に天王寺の弁を通したとしての、河田の行動。 ――丹羽の為に、河田はなりふり構わず他の参加者を殺している。 (……あり得ない) 考察した次の瞬間には、その案を葬った。 それぐらいに分かりやすく、河田は好き好んで人を殺せるような、人間ではなかった。 ――自らの、丹羽雄二と言う人間と、ロボットのような男を殺した時の顔を思い返せば、あまりにも分かりきっていたこと。 じゃあ、と。 先ほどあった青髪の若者に対しての自分はどうなのだろうか。 結果からしたら、丹羽はあの男に命を救われたも同然なのだ。 故にあの男の為に、人殺しに奔走するのか。 (……それはねえよな……) 同じく、思いついた瞬間に取り下げる。 確かに見逃してもらったとはいえども、だからといってそうとはならない。 理論だとか言う前に、感覚としてそれはおかしかった。矛盾といっても過言じゃないほど、おかしな行動である。 なら、天王寺ならばその理屈はまかり通るのか。 阿見音に助けてもらったからと謂って、人殺しを正当化する。 はたして、正しいのか。 ……。 いや、その答えはあまりにも。 「そんな理屈、通らないよ」 明瞭だった。 「お前は人を殺した。それは確かだし、俺としてもそれを許す気はさらさらねえ。でも過ぎたもんは過ぎたもんだ。 これ以上俺からとやかく言われたところで、お前はうざったらしく思うかもしれねえな」 「…………」 ふと丹羽は胡坐から、近くに在った椅子へと座り直して、目線を天王寺の高さと合わせた。 その行為に、不思議と天王寺は息を飲んだ。澄んだ瞳は、眠たそうに濁った丹羽の瞳と、ぶつかった。 丹羽の言葉は続いた。 「でも、人を殺す理由に人を使うな。それも恩人を。自分の行動ぐらい、自分で責任とれよ」 それ以外にも、様々な考えが交錯したものだが、それでも丹羽の中でこの考えが際立った。 先に挙げた例でいうならば、河田が仮に人を殺していたとしても、丹羽の所為だと思うと、それは居た堪れなかった。 責任転嫁だとかそういう話ではなく、純粋に、自分の存在が河田を殺人鬼に変えたと、苦しくて仕方なかった。 天王寺の顔が、変わった。 思わず、天王寺の思考は弾けた。 その言を受け入れてしまったのなら、自分の価値が――なくなるから。 利用されるしか能がない天王寺にとって、その言葉は、耳に痛かった。 「俺からのアドバイスだ、阿見音という人物が大事なら、守った方がいい。それは確かだ。――――"何を犠牲にしても"守り通すくらいの覚悟も、もってもいいんだと思う。 だけど、お前が最悪の方法を執ったりなんかしたら、きっと阿見音は《憎む》よ。お前の事 」 奇しくもそれは、阿見音という男が河田に向けた言葉の正反対のものだ。 阿見音と言う男を訝しげに考える丹羽からしてみたら、本当に憎むかも理解しえない。 だけど、丹羽だったらいい気はしないから。 この場では、そう天王寺に訴えた。 ――その言葉に天王寺は、唸った。 「そんなことない……お前に何がわかるッッ!」 心からの言葉であり、何故だか阿見音と言う人間まで馬鹿にされたような錯覚を覚え。 本能から直結して、言葉となって放たれた。 その信愛はそれほどまでに確固たるものであり、敬愛は計り知ることのできないほどに、膨大だった。 中学生ほどとは思えないほどの鬼のような気迫を纏った言葉に多少威圧される。 ……だが、ここで小学生にビビり負けるほど丹羽と言う男も腐ってはおらず、一笑すると、答えた。 「何も知らねえよ。だから一般論を述べただけだ。――悪いが俺は人に説くほど立派な人間でもねえし、悟ってもねえよ。だけどな。少なくても俺は、そう思うんだよ」 それでも丹羽の答えは丹羽の答えで。 天王寺がいくら言おうとも揺るがすつもりは毛頭なかった。 そしてそれは。逆の立場も然り。 「それは違う……! 違う違う違う!! 私は阿見音様のために動きたいから動くんだ! それが私の答え! いけないのか」 「それはお前の答えじゃないだろ。阿見音とかいう奴が用意しただけの答えだ。納得もいかない命令に従うな」 「うるさいっ! 私は――私は! 阿見音様のためだけに……」 その声自体、震えていた。 強がり以外の何者でもないことぐらい、察しれた。 どんなに背伸びしようとも、やはり子供は、子供なのだ。 (……なんだよ、はぁ) 思わず息つくと、濁った瞳は逸らさぬままに、自らのディパックより一本のダガーと、銃を取り出し、椅子から立ち上がる。 「……っ」 縛られているなりに臨戦体勢を構えて、緊張で喉を鳴らす天王寺。 しかしそんな心配をよそに、丹羽がしたことは極めて無害なもの――むしろ天王寺に好機を与えるものだった。 のこのこと近づくと、天王寺の手足を縛っていたタオルをダガーでさらに裂き、ダガーをソファに突き刺した。 「…………?」 行動の意図が読めない。 その不安が、脳を支配する。 それでも丹羽の顔は変化の兆しを見せず、淡々としたもので。 ――口が動く。 「あぁもうわかった。お前は阿見音とやらに尽くす。十分理解できた。――なら試しに天王寺深雪」 銃を地面に置く。 手を頭の後ろに回す。 分かりやすい降伏ポーズのまま、気だるそうな瞳は揺るがず。 坦々と吐き捨てる。 「そのナイフで、俺を殺してみろよ」 安っぽい、挑発を。 □ 天王寺深雪 □ 私にとっての阿見音様――阿見音弘之様は。 掛け替えのない存在であり、無類の恩人であり、私が尽くすべき唯一の人間だ。 とある雪の日。 あの人が私を拾ってくれたその時からの恩義を果たすべく、今日までの私がいて、今からの私だっている。 とてもじゃないが、代替のつかない素晴らしき人間であることなんて、もうとっくの前に。 十年か。二十年か。或いは百年か。はたまた一億年と二千年前からか、ともあれ、私は知っている。 知らないわけが、なかった。 この恩義を忘れるだなんてことは、未来永劫絶対にない。 故に私が信念を曲げることも、未来永劫絶対にない。 阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様 阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様 阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様阿見音様。 心象で阿見音様を思い浮かばせ、私の気持ちを確固たるものにする。 人を殺したからなんだ。 人を殺したからなんだ。 ひとをころしたからなんだというんだろう。 私は例え間違っていた事をしていたんだとしても。 後悔なんてしない。後悔なんてあるわけない。 阿見音様に尽くせたと思うと、私の行動は決して無駄ではない。 むしろ大きくプラスに傾いたんだ。なにせあんなに変な、理解不能な男を始末出来たのだから。 なにも、おかしいところなんてない。 強いて言うならあの狼みたいな変な生き物を始末できず、倒れてしまったのは反省すべき点だった。 けれど私はそれに上回る功績を挙げた。 自分で自分を誉めてもいい様な、れっきとした快挙なんだ。 私は今ここで死んだって悔いはない。 ――いや、悔いはある。最後まで阿見音様の御供をできなかったことや、参加人数を考えれば過不足な始末人数。 けれど阿見音様のために尽くし、阿見音様のために燃え尽きたことに遺憾の意を示すことなんて、ない。 どうやら、この男は私の鬼一樹月殺害現場に居合わせていたそうだし、みすみす見逃してもらえるとは思えない。 ならば殉職でも、差支えない。最期まで阿見音様のために尽くせたという最大の勲章を手に入れることで、私は満足なんだ。 あとはどうか阿見音様が死なない様に――そう願うだけ。もはや私には抗いの余地すらない。手足を縛られ、武装を持っていかれた以上、私に太刀打ちできる隙はない。 まったくもって、嬉しい限りだ。私は死にますが、どうかご無事でいてください。 ――――と、思っていたのはつい先程までの事。 「そのナイフで、俺を殺してみろよ」 ――え? と言葉になりそうだったのを、ぐっ…っと必死に咽喉で堪える。 男は私の近くにダガーを刺し、五歩ほど下がり、銃を置いて手を挙げる。 さながら――いや紛うことなき降伏のポーズ。 理解不能だった。 しかも私の拘束まで解き切って。 まるで私に殺されたい、というパワフルマゾヒスティック思考というよりも、超弩級自殺志願症であるかのよう。 しかしそれにしては、まるで陰鬱な覇気もない。 「どうした? 足でも痺れたか?」 にぃっ、っと物凄く不器用で引きつってるようにも見える――だけど一番最初に見せたそれよりかは、だいぶ自然で素敵な笑み。 一見して爽やかな好青年にも見える それでいて、「俺を殺せ」と命令してきた。 もう一度言う、理解不能だった。 完全に私をおちょくっているかのような態度だった。いや、ようなではない。おちょくっている態度だ。 この男が何かしらの体術に秀でていて、それ故に小学生ぐらいの私にダガー一本持たせたところで、返り討ちなど余裕である。そうであるなら理解はし難いが納得はいく。 だが、男は違った。丹羽雄二だとか名乗っていた男は違ってしまった。 「あ? 信用ならないのか。ならいいよ。座ってやる」 座った。再び胡坐を掻いて、座った。 ――訂正、理解不能プラス気味が悪い。 この男は知っているはずだ。 私が鬼一樹月さんを殺したことを、知っているはずだ。 私が人を殺せることを知ってなお――何故このような態度を示す? 生憎ながら私のデータベースには、載っていないきみの悪い行動パターン。 …………。 …………いや。 「――きゃははは」 笑い声を挙げて、馴染みはないが特別不慣れでもないダガーを握って、ソファから抜き出した。 そう、殺せばいいのだ。 殺せば今考えていたことが、すべて『無用』という形で処理できるじゃない。 私は絶体絶命のピンチから無事脱出し、丹羽という男を殺すことに成功する。まさしく一石二鳥。 殺せばいい。 殺せば解決する。 殺せば全て片付く。 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ――――。 自分の体に鞭打って、ベットから降り立ち上がる。 どうやら寝違えたり、変な場所を痛めたことはなさそう。 改めて男の風姿を見定める。 全体的には気の感じれない、眠たげで怠惰なオーラ。 極端と言うほどではないが腕にばかり集まった筋肉をみると、事務業ではない力仕事。 工事現場や工場で働いている人なのかもしれない。眠たげな視線が、まるで働き者とは思わせないけれど。かといって自殺志願にも見えないわけだ。不思議。 と、見回している内に気付く。 この男、一向として私の瞳から視線をずらそうとしない。 感覚としては、「ジロジロ」っていうよりも、「ジーッ」みたいな? 思わずうろたえる。 瞳からは、眠気と反して一切の諦めや闇を見出せない。 自ら殺害を要求しといて、その視線を向けられると、どうにも居心地が悪い。――まるで私が殺さないと信じているかのような、そんな瞳が――痛い。 ……? 痛い? なんで痛いの? どの道私は今からこの男を殺す。同情の余地を与えてはいけない。 分かっているし、行動に示しているはずだ。――なのにどうしてこんなに痛いの? こんなに苦しいの? 私はこれからも人を殺さなくちゃいけない。阿見音様の為に。きっとそれはこの殺し合いに関わらず、だ。 「……殺せないよ。おまえには」 ふとこの男は漏らした。 私の瞳を貫いたまま、確固たる意志を秘めてそう呟いた。 おかしな事を言う。 私は現に一人殺したし、これからダガーをもって殺そうとしているのに。 殺せないわけがない。どう足掻いたところで、しくじるわけがない。 なのにこの男は、殺せないと断言した。先ほどまで感じられた眠気など霧散して。 この男は何をもって、私を信じているのだろう。 よもや私の良心に期待しているのか。だとしたら最高に滑稽だ。――そんなもん、とうの昔に私の中には存在しないのだから。 「そんなわけない。私は今からおまえを望み通り殺す」 「だったらさっさとやれよ。お前に良心や優しさなんてもんがないんだとしたら、とっとと殺せよ」 言われなくても殺します。 私はあなたを殺します。揺るがない。 あなたが何を言おうとも、何を信じようとも、何をモットーとしてようとも。 私は阿見音様の為に、丹羽雄二。あなたを殺す。 できる限りに的確に、あらん限りに綿密に――仕損じなく殺害する。 「でも、おまえはできないよ。――俺はそう思っとく」 だから。 だからそんなことを言わないでください。 私は阿見音様の為に彼を殺す。 私を信じる彼を殺す。 どこにも慈悲のかけようのない私を信じて殺す。 妄信してる彼を、妄信している私が殺す。 殺す――殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。 繰り返す。繰り返して、意志を固めても、どうにも意志が定まらない。 普段なら簡単にできることが、甚く難しい。 痛い。 どうしてだろう。 どうしてこうも胸が締め付けられるんだろう。 理解不能だ。――今度は自分自身に。 痛い。 ギリギリと心が抉られていく。締めつけられていく。 違う、私が求めているのはこうじゃない。 こんな気持ちじゃない。もっと冷たく、冷血な、無残な、不様な殺意だ。 私に生きる意味をくれた人。 阿見音様の為に、私は誰でも殺すし、誰でも不幸にする。 なのに。わたしは、どうしてこんなに。 「――じゃあ、殺(や)れよ」 なのに。なのにどうして阿見音様以外の人間に、こんなにも温かな感情を抱くんだろう。 信頼に満ちただけのただの言葉が、どうしてこんなに。 ――――嬉しいんだろう? 「う、うぅぅううう……」 唸っていた。 知らず知らずのうちに唸っていた。 壊れていく。 《――――ころせ》 ここでこいつを殺さなければ私のアイデンティティが崩れ去る。 阿見音様に使えるという、白鷺教としてのキャラクターが、脆くも屠られようとしている。 なのにどうして後一歩が踏み出せない。 踏み出さなくちゃいけないのにもかかわらず、歩みが滞る。 ここで不可解で不愉快な戯言(ノイズ)を叩きだす蓄音機(この男)を殺さなきゃ、私はこわれる。 阿見音様のために尽くすという『私』が、崩れ去る。 怖かった。 そんな現実が待ち構えていると思うと怖くて仕方がない。 ――だけどそれとおなじほどに、彼を殺すという行為も底しれぬ怖さがあった。 なんでだろう。 なんでこんな有り触れたような男に、こんな気持ちを抱かなければいけないんだろう。 《――――ころせ》 手に残った人肉の感触が脳を刺激する。 鬼一樹月を殺した時の感触が支配する。 カニバリズム信仰なんてない私には、その感触が耐えるに堪えない。 気持ち悪く気色悪い感覚が、今まで感じることのなかった露悪的な感触が蘇り、ダガーを握る右手を震わす。 震えた剣先の焦点がことごとくずれて、なかなか攻撃へと、殺害へとシフトしない。無論、この男は一歩たりとも動いていない、一挙一動たりともしていない。 なのに私の剣先は、彼の額を、目玉を、喉を、心臓を、腕を、腹を、足を、髪すらをも焦点として合わせれない。 ――今までの破壊活動で、こんな風になったことなんてないのに。――鬼一樹月の刺殺を思い出しては、言い表せない悪寒がゾクリと肌を舐める。 ――阿見音様の為に、阿見音様の為に。 言い聞かせるが、私を再び衝動的に動かすことはできなかった。 ――殺せ、殺せ。 言い聞かせるが、脳裡で拒絶反応を引き起こす。 《――――ころせ/ころせない》 ダガーを落とす。 落とす、というよりも落ちた。 何故? 理由がわからない。 けれど再び握ろうとも思えない。 阿見音に尽くす、その一心で今まで私は戦ってきた。 それはこの殺し合いが始まる前からも、彼に拾われてきたときからずっと。 そして、揺るがない目標であり、目的であったのに。 離反する理由がわからない。 離反する理由はないはずなのに。 遅れて、ダガーが落ちる音がした。カチンと冷たい音。 その瞬間、曇っていた私の視界が、荒波に流され、クリアとなった。 モノトーンになっていた景色に、色が取り戻される。 「……」 刹那。突きささる。 見透かした様な、男の瞳。 なにが、私の何処に同情の余地があったんだろう。 信頼できる根拠も論拠も証拠もどこにもないのに、私のなにが男をそこまでさせたのだろう。 この気持ち悪いほどに心地いい、温かい、理解し難い信頼はどこから湧いて出たのだろうか。 そしてどうしてこうも、私は――。 「お前は、俺を――もう誰も殺せないよ」 簡単なんだろう。 思えばそれは、最初からだけど。 あの日――雪の日に、阿見音様に拾われた日からずっと。 私は――阿見音様の期待を裏切ったのに、底の方から安堵が湧き出ていて、最高に、惨めだ。 惨めで、教徒失格で、こんな無様な様が阿見音様にばれたら、もう一生口を利いてくれないのかもしれない。――それでも。 それでも、どこか心温まる自分がいることを偽ることが出来なくて。 私の心(盲信癖)は、この場をもって、決壊した。 《――――ころせない》 時系列順で読む Back 疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 Next 疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 投下順で読む Back 疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 Next 疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 加藤清正 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 璃神妹花 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 須藤凛 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 飯島遥光 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 銀丘白影 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 一刀両断 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 小神さくら 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 須牙襲禅 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 丹羽雄二 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』 068:疾走する思春期のパラベラム『ブラインド・ジャスティス』 天王寺深雪 068:疾走する思春期のパラベラム『デンジャラス・ラビット』