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そろそろ電車が来る時間だ。 「行かなくちゃ」 「行くな」 「ここにいろよ」 「明日は仕事だ」 「サボっちゃえよ」 「ダメだよ、そんなの。大人として」 「いいだろ、それくらい」 律は手を離してくれない。 「律…ありがと」 「大丈夫。もう大丈夫だ」 律は何も言わずに下を向いたまま私の手を握っている。 「本当だ。本当にもう、大丈夫だから」 本当。私は大丈夫。 生きてゆける。 こうして律が…強く私の手を握ってくれた。それだけで。 律の手の温かさを忘れずにいられたら、私はきっと、大丈夫。 律のカバンから軽快な音が鳴り出す。 「オイ、律。電話じゃないのか?」 「…いい。大丈夫」 「私のことはいいから電話に出ろよ」 「いいってば」 「…アイツからなのか?」 「…」 律は電話に出ようとしなかった。 けれど一瞬、私を握る力が弱くなった。 その時私はスッと手を引き、 私たちの手と手が離れた。 電話が鳴り止む。 「電話、してやれよ」 「ああ、あとでな」 冷えきっていた手は律のおかげで温かさを取り戻していた。 「行くよ」 「…」 何も言わず俯いたままの律に背を向けて、私は歩き出した。 「…信じていいのか?」 後ろから律が私に声をかける。 「本当に大丈夫なんだな?」 振り返ると、律は顔をあげていた。 気のせいか、瞳は赤くうるんでいる。 「うん、本当だ」 「そっか」 律は笑った。私も笑った。 「そうだ、律」 「なんだ?」 「さっき言わなかったことだけどさ」 「うん」 「私さ… 律のことが好きだ、」 ようやく、言えた。 「近くにいても、遠くに離れていても。 昔も、今も、 これからも、ずっと。 律のことが好きだ」 律は一瞬ちょっと驚いた表情をしたけれど、すぐにニカッと笑って言った。 「うん。知ってた」 「そっか」 「あったりまえだろ!わかるよ、澪のことは……なんだって…でも」 「でも?」 「うれしい!すっげーうれしい!」 「そっか」 「私も、澪のこと大好きだぞ!」 律がどういう意味で私の言葉を受け取ったのか、それは私にはわからない。 ただこれだけはわかる。律の好きと私の好きは違う。 律が恋をしている相手は、私じゃない。別の誰かだ。 そしてその誰かも律に恋をしている。 二人は愛し合って、結ばれる。 いいんだ。もういいんだ。 踏切の信号機が鳴りだした。 雪のせいで電車が遅れていたらしい。 どうやら間に合ってしまいそうだ。 「じゃあな。少しだけど、律に逢えてよかったよ」 「私も澪に会えて嬉しかった。次はゆっくり会おうぜ」 別れの挨拶を交わし、振り返ることもなく、急いで電車に駆け込む。 電車が出発してからしばらくたつと、指先はまた冷たくなっていった。 律の体温はもう、残っていなかった。 おわり。 あとがき おしまいです。 以前書いたものの加筆修正ですが、一応澪誕SSです。 お付き合いくださりありがとうございました。 戻る
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ふぅっと吹いて 七色に光るシャボン玉 ふわっと浮かんで ずっとずっと飛んでいく 君の笑顔をうつして 私の泣き顔をうつして 青い青い空の向こうまで 連れていってよ さよならシャボン玉 きっと涙が乾くころには パチンと弾けてさよなら 「……二番はないんだ」 「ああ、出来る時は一気に出来るんだけど」 「切ない詩だねー」 「でも、前向きに書いたつもりだよ」 作詞ノートには、澪ちゃんの一番大切にしているものが詰まっていた。 ぽわぽわしていて甘い、ムギちゃんの紅茶が欲しくなるような世界観の詩もあれば、 強い決意の現れている一途でひたむきな詩もあった。 それら一つひとつが澪ちゃんを構成している感情だったし、澪ちゃんの想うことのすべてだった。 だから私は、ノートに私の名前が書いてあるのを見て驚いた。 「このページ、なに?」 真っ白なページの中央に「平沢唯」とだけ書かれている、それだけのところがあった。 「え、ああ、これは……考えごとをしている時に書いたんだ。唯ってなんだろうなってさ」 「しがない女子高生でございますー」 「ふふふ、そうだな。それだけのことだ」 「ふーん」 一通りノートの鑑賞を終えたので、寝ることにした。 澪ちゃんはベッド。私はお客様用のお布団に横になった。 「電気消すぞ」 「うん、おやすみ澪ちゃん」 「おやすみ唯」 真っ暗になる。暗闇ってスクリーンみたいだ。虚空をじいっと見つめているだけで今日あったことが次々と思い出される。 眠気が来るけど、このまま寝てしまったらつまらない。もっと澪ちゃんと話したい。 なにを話そうかなぁと考えていると、澪ちゃんから話が振られた。 「……さっきの、嫌じゃなかったんだ」 思わず背筋がビクリと震えてしまった。 まだ目が慣れない中で、私のきぬ擦れが大きな音を立ててしまった気がする。 澪ちゃんの声はじっとりと湿っていた。 「さ、さっきのって……お風呂場の?」 「うん」 「でも私、澪ちゃんに酷いこと……」 スプリングの軋む音。 ベッドの上で澪ちゃんがこちらを向いたのが気配で分かった。 「私は嫌じゃなかった私が嫌なんだ」 「それって、どういう……」 「そのままの意味だよ、唯。私たち、もう少しだけ友達でいような」 私にはよくわからなかった。 澪ちゃんがなにを言いたいのか、なにをしたいのか。 「それって……少し経ったら澪ちゃんと友達じゃいられなくなるってこと?」 「……もっと、仲良くなろう。もっとお互いを知って……唯を大切にしたい」 「澪ちゃん」 私は澪ちゃんのほうを向いた。 目が慣れてきて、澪ちゃんの顔がうっすらと見える。 今夜は月が明るい。 カーテンを透かして、月光が私と澪ちゃんの影を写していた。 その二つの影を重ねるのを、私は躊躇わなかった。 (Melody-A) 去る7月25日をもって、いよいよ桜ヶ丘高校は夏休みに突入しました。 私たちけいおん部は先日の飛び入りライブの打ち上げ―――もとい反省会―――を行うために、夏季強化練習合宿を計画しました。 驚いたことに、この合宿の企画者は唯先輩です。あのちゃらんぽらん……ではなくて、天真爛漫な唯先輩が、 真面目に練習をするための合宿を自ら立案するなど、けいおん部にとって天地創造以来の衝撃であったことは言うまでもありません。 あのライブでの思い出が、唯先輩にとってそれほど苦いものだったということでしょうか。 ともかく私たちはムギ先輩のご厚意に完全に甘える形で、琴吹家プライベートビーチの一角、立派な造りのコテージをお借りし、 三泊四日の合宿に臨むこととなりました。 「うわぁー! 海だぁー!」 律先輩が白い砂浜を海に向かって走って行きます。ビーチサンダルの轍が、一直線に残ります。 唯先輩も負けじと追いかけて、二人の足跡は線路のように平行線を描きました。 流石は琴吹家と言ったところで、きめ細やかな砂一杯の浜と、眼下に打ち寄せる白波は、太陽の光を反射して美しく輝き、 まるで天上の楽園を再現したかのごとき絶景です。どこから移植してきたのか、ヤシの木まで堂々と生えています。風景だけなら南国でした。 「まったくあいつらは……。私たちで、荷物は運んでおこう」 澪先輩が指示を出します。日差しの強い今日の暑さに対抗するためか、澪先輩は長い黒髪を後ろで一つに束ねています。 いわゆるポニーテールです。いつでもきりっとしている澪先輩の雰囲気がさらに研ぎ澄まされていて、私はなんだか緊張してしまいます。 心拍数が上がって、呼吸が早くなって、顔が火照って、落ち着きません。 そんな私の動揺に、澪先輩は気付いているのでしょうか。いえ、気付いてくれるのでしょうか。 肩掛けの大きなボストンバッグを二つ持って歩き始めた澪先輩の後に続きながら、私はつまらないことを考えずにはいられませんでした。 ムギ先輩がコテージの鍵を開けて扉を開くと、木の匂いがふわりと薫りました。 深い森の中のような、安らぐ匂いです。中は広く、応接室やリビングの家具は、ほとんど木製で統一されていました。 「わぁあ、素敵ですね!」 私が感嘆すると、ムギ先輩は微笑みます。高級な統一感のあるコテージですが、ムギ先輩の目にはどう映っているのでしょう。 律先輩の話によれば、去年の夏合宿であまりに豪勢な宿泊所を提供した琴吹家に、ムギ先輩は「今年は普通のところでお願いします」と 釘を刺しておいたらしいのです。 これが「普通」だとすれば、庶民たる私は嫌味の一つでもこぼしたくなるものですが、 ムギ先輩の毒気のない笑顔には何も言えなくなってしまうのでした。 私たちは二階の寝室まで荷物を運びました。二人部屋が三つほどあります。 一つの二人部屋を何とか三人で使って、一人で寂しく泊まることがないようにしようと、澪先輩が言いました。 「あ、唯ちゃんとりっちゃん」 ムギ先輩が窓の外を指して言いました。波打ち際で遊んでいる二人は既に水着になっています。 お互いに水を掛け合って、なんだか少女漫画に出てくる恋人同士の戯事みたいです。 「私たちも行こうか。練習は……まあ、後にしてさ」 澪先輩が言いました。私は澪先輩が練習を提案すると思っていたので、少し意外に思いました。 「さんせ~い!」 ムギ先輩が片手を挙げて言いました。 ムギ先輩の笑顔に促されて、私も渋々(本当に渋々ですよ)練習よりも海を選ぶことに決めました。 「あずさー! そんなに走ると危ないぞー」 律先輩がなにか言っていますが、気にしていられません。 だってこんなに広い浜辺なんですから。どれだけ走り回ったところで罰なんか当たらない―――と、足に何かが絡みついて。 「にゃあああああ!?」 私は見事に転んで、ごろごろと砂の上を転がってしまいました。 「はっはっは、言わんこっちゃない。大丈夫か?」 律先輩が後ろから歩いてきて、私に何かを見せました。浜に打ち上げられた海藻です。 私の足に絡んだのは、その海藻のようでした。 「うう、痛いです。砂まみれです」 「じゃあ海に入って綺麗にしようじゃないか」 そう言って私の両脇に手を差し込む律先輩。 「へ、ちょ、律せんぱいっ!」 律先輩は私を抱えると、ぐるぐると回し始めました。私の身体のなんと軽いこと。 そのままハンマー投げのように放たれた私の身体は、宙を飛びました。 ああ、すごい、飛んでる!―――それは束の間で、あっという間に海へざぶんと落ちました。 唯先輩たちはお互いに日焼け止めローションを塗っていました。 澪先輩が砂浜に敷いたシートの上に寝そべり、その背中に、唯先輩が白濁とした粘液を垂らしています。 ムギ先輩はその一部始終を克明に記録するべく、息を荒らげながらカメラを回していました。 「ビーチバレーやるぞー!」 律先輩の鶴の一声で、種目が決定しました。私たちは砂浜にコートを作って、チーム分けをしました。 じゃんけんで負けてしまった私が審判となり、第一戦はムギ先輩・律先輩ペアと澪先輩・唯先輩ペアの試合となりました。 なんでも器用にこなしてしまう律先輩は、がんがん鋭い球を打ち込みます。 試合開始後、あっという間に律先輩らのチームが一ゲームを奪取しました。 「まだまだだな、澪」 「何を言っているんだ、律? 勝負はこれからだ!」 珍しくヒートアップしている澪先輩ですが、なにか策があるのでしょうか。 二ゲーム目、サーブ権は澪先輩たちのチームに移ります。 ボールを持った澪先輩は、コートのバックラインからかなり深い位置に立ちました。 風のないことを確かめると、天高くボールをトスします。助走をして勢いをつけると、澪先輩は跳躍し、 ゆっくりと落ちてきたボールにしならせた腕を力強く叩きつけました。鋭い弾道で放たれたボールは、相手コートに突き刺さりました。 「うわ! 澪ちゃんすごい!」 唯先輩が歓喜の声を上げます。律先輩とムギ先輩はボールに全く反応できず、その場に立ち尽くしていました。 やがて我に返った律先輩が、澪先輩に尋ねました。 「澪、バレー部にでも入ってたのか!?」 「いや、その……漫画に憧れたことがあって。サーブだけは練習して上手くなったんだ」 「あー、小五のときか」 律先輩はなにやら納得して頷いていました。そういえば、律先輩と澪先輩は幼馴染でした。 二人の付き合いはとても長いのでしょう。私の知らない澪先輩のことを、律先輩に聞いてみたいと思いました。 「まあそういうわけだ、サーブが回ってくればこっちのもの!」 「なん……だと?」 澪先輩は意気揚々としています。これは分からなくなってきました。 審判でありながら、私は楽しく観戦できそうだとわくわくしました。 勝負はまだまだ、これから! ―――果たして、勝ったのは律先輩チームでした。 澪先輩は確かにサーブは上手でした。サーブは。……私が説明しなくても、なんとなく察してくれるとありがたいです。 先輩方は一試合終えて、もうへとへとに疲れているみたいでした。「私もビーチバレーしたいです」とは言いづらい雰囲気です。 そもそも私たち文化部は、体育の時間以外ほとんど運動する機会がありません。すぐに疲れてしまうのも、当たり前のことでした。 「このまま休憩も兼ねて、お昼寝でもしましょうか」 私が提案すると、皆こっくりと頷いて、パラソルの影に敷いたシートに横たわりました。 五分もしないうちに、唯先輩は寝息を立て始めています。この浜辺に来るために朝は早かったせいでしょう。 ふと気付くと私以外、皆眠りに落ちていました。私は苦笑して、夢の中で先輩たちと会えるかなと考えながら、瞼を閉じました。 柔道の試合に無理やり出場させられる悪夢から目覚めると、私は唯先輩に絡みつかれていました。 まだ唯先輩は寝息を立てています。文字通り寝技です。すでに日は水平線の向こうに傾き、あたりは暗くなり始めています。 身体が冷えるので、私は先輩方を起こしました。 「んー? もう朝?」 「寝ぼけてないで起きてください。もう夕暮れですよ唯先輩」 水着からシャツに着替えた後、ムギ先輩の提案で、バーベキューをすることになりました。 円形のバーベキューコンロや炭への着火剤など、必要なものはすべて揃っていました。琴吹家恐るべしといったところでしょうか。 皆でさっそく準備に取り掛かります。まずはコンロの準備です。 新聞紙を使ってなんとか小さい炭に着火させることが出来ました。火を大きくするには時間がかかりそうです。 私たちはその間にコテージのテラスにテーブルを出して、即席の料理場を設けました。 それから食材を室内の冷蔵庫から取り出して、調理台の上に並べます。野菜類は唯先輩と律先輩が担当することになりました。 唯先輩がオニオンスライスで号泣している一方、律先輩はそつなくどんどん野菜を刻んでいきます。その手際はとても素早いものでした。 まじまじとその作業を見ていると、私の視線に気付いた律先輩が顔を上げました。 「そんなに見られると、なんか緊張するな」 「あ、すみません。先輩が、まさか料理が得意だなんて意外で」 「んー? それはどういう意味だ、中野?」 律先輩の右手の包丁がきらりと光りました。笑いながらこめかみに青筋を立てる律先輩の複雑怪奇な表情を前に、 私は蛇に睨まれた蛙のごとく動くことが出来ません。 「ほら、律。手が止まってるぞ」 そこへ、火の番をしていた澪先輩の注意が飛びました。律先輩は投げやりに「はいはい、りょーかい」と返事をして、再び調理に戻りました。 私はほっと溜息をついて、心の中で澪先輩に感謝しました。 「梓も手伝ってやってくれ。唯のほう、大変そうだし」 唯先輩は二個目の玉ねぎにやられて涙が止まらず、右も左も明日も見えないような有様でした。 おそらく人一倍、目や鼻が敏感なのでしょう。 「先輩、玉ねぎは切った断面をまな板にふせておくといいですよ」 玉ねぎを切ったとき、目が染みて涙が出るのは、切り口から玉ねぎの成分が気化するためです。 切り口をふせておけば、ある程度症状は改善します。 唯先輩が持ち直し、私が手伝って、作業効率があがりました。すぐに全部の野菜を切り終えました。 解凍したお肉には、ムギ先輩が味付けをほどこしました。 まだ焼いてもいないのに、食欲を刺激する香辛料の匂いが、お肉のタレから漂います。 「よし、火は大丈夫。そろそろ焼こうか」 澪先輩からのGOが出ました。 「よっしゃあ! 肉だー、肉をよこせ!」 律先輩が先陣切って網へお肉を投下しました。じゅぅう、と美味しそうな音がして、香ばしい匂いが立ちのぼります。 「えーい!」 律先輩と比べるとどこか迫力に欠ける掛け声とともに、ムギ先輩も負けじと野菜を投下します。 火の通りにくい野菜は中心に、すぐに食べられそうな野菜は外側に、私は菜箸で移動させます。 あたりはすっかり日が落ちて暗くなりました。私たちの中心で燃えている炭火が、温かい明かりとなっています。 それとは対照的に、月の光はどこか冷え冷えとしていて、蒼い海を薄ぼんやりと照らしていました。 波の音は静かに響きます。私たちの会話がなんとなく途切れる瞬間に、優しく聞こえてくるのです。 ―――― 「しずふぁな場所だね」 唯先輩が大きめのお肉を頬張りながら呟きました。 「ここは、あたりに民家がないのよ。一人で泊まると、とっても静かで、世界中にたった一人だけ取り残された気分になれるの」 ムギ先輩は説明しました。その表情は少し物憂げです。 「ムギ先輩、ここに一人で泊まったことがあるんですか?」 私が尋ねると、ムギ先輩は苦笑いを浮かべました。 「うん、一度だけね」 ムギ先輩は昔を思い出すように、夜空を見上げました。それにならって、私も夜空の星を眺めます。 街中で見るよりもずっと綺麗に輝いていました。 「東側陣営確保!」 「ふははは唯め、そんな野菜の多い領土を選びおって! ほい澪、野菜」 「野菜も食べなって、律」 律先輩と唯先輩の牛肉争奪戦が始まり、一気に賑やかになりました。 今のこの雰囲気が、けいおん部のあるべき姿なのかもしれません。 「ずるいですよ先輩方! 西側陣地もらいます!」 私は笑いながら、牛肉争奪戦への参加を表明しました。 ※未完結 戻る
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元スレURL 吟子「なかったの。おばあちゃんが好きだった企画、女神天国が」 概要 活動記録2024年度 第1話パロ 吟子のためにラブライブの歴史を紐解く花帆たち タグ ^日野下花帆 ^百生吟子 ^蓮ノ空 ^ほのぼの 名前 コメント
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律「王子様と結婚するとか言ってた癖に結局澪もあれなんだな」 澪「……悪かったな」 律「悪いよ。こんな事なら私だって……」 澪「私本当はさ、律の事が好きだったんだ」 律「えっ……」 澪「でも踏ん切りがついたんだ梓のおかげで」 律「……」ブルブル 澪「律?」 律「うわあああぁん!!」ダー 澪「何だあいつ……祝福してくれると思ったのに」 …数日後 律「はぁ……頭いてぇ……スキーはしゃぎすぎたか」 律「暇だ……澪なら見舞い来るかな?いや梓とデートかも知れん」 …… 律「くしゅっ……ぐぅ~……きっつー」 聡「姉ちゃん~お客さん来てるよ」 律「なっ何ぃーっ!?」 和「ども~」 律「何だ……和かよ……」 和「あらあらご挨拶ね。シュークリームいらないの?」 律「いる。いります」 和「いや土下座までしなくてもあげるわよ」 律「天使かあんた」 和「やっすい天使ね」 和「具合悪そうね。風邪でも引いたの?」 律「見りゃわかんだろ」 和「これは看病フラグってやつね。燃えてきたわ」 律「いやもう帰っていいよ。移しちゃ悪いし」 和「何よ!私のシュークリームだけが目当てだったのね!?」 律「まあぶっちゃけそうなるな」 和「ひどい!鬼!悪魔!メット!」 律「最後のが何気に一番傷ついたぞ」 和「とにかく風邪を引いたんなら身体を温めなきゃダメよ」 律「帰らないのかよ」 和「ほらふとん入って」 律「お節介だな……まるで澪みたいだ」 和「私も唯に世話焼いてきたからね」 律「こりゃダメな男に引っかかるタイプだ」 和「そう?じゃあやっぱり女である律と付き合いたいわ」 律「何でそうなる」 和「いいじゃない。私が変な男に引っかかってもいいって言うの?」 律「その詰め将棋みたいな返し方はやめろ。頭痛いんだ」 和「あら大変。私身体を温めるいい方法を知ってるんだけど」 律「一応聞いてやる」 和「簡単よ。二人で抱き合って温めるの、裸で」 律「一人でやってろ」 和「そう?それじゃ遠慮なく」 律「ちょっどうして服を脱いでる!?正気か!?」 和「律の為なら何だって出来るわ」 律「誰も頼んでねえ!」ベシッ 和「ぐすっ……親にも叩かれた事ないのに」 律「ウソはやめろ。ウソ泣きもやめろ」 和「何で応えてくれないの私の気持ちに」 律「あ~……分かったよ。付き合うよお前と」 和「えっ?ええっ!?ホント?ちょっと録音させてもらっていい!?」 律「ウソじゃねぇよ……そこまで必死にならなくても」 和「やった!嬉しい!末永くお願いしますあなた!」 律「結婚するとは言ってねえ」 和「風邪で弱ってる所だから押して正解だったわね!」 律「その台詞は心の中にとどめておけよ」 …駅前 梓「澪せんぱ~い!」 澪「あっ、梓~!」 梓「待たせちゃいましたか?」 澪「ううん、ぼ~っとしてるの好きだから別に」 梓「そうなんですか?」 澪「そうだよ。歌詞の事とか梓の事とか考えてた」 梓「わ、私の事!?えっそんな……どんな!?」 澪「梓がタイヤキからパカッと登場するんだ」 梓「サザエさん?」 梓「あの澪先輩……腕を組んでもいいですか?」 澪「そっかもう恋人同士だったな。いいぞ」 梓「ゆ、夢みたいです」ギュッ 澪「大げさな……」 梓「ずっとこのままでいたい」 澪「そ、そうか?」 梓「澪先輩のストラップ的なものとして生きていきたい」 澪「こんなかわいいストラップなら歓迎するぞ」 梓「はぅっ」ドキッ 梓「かわいいって言った!澪先輩が私をかわいいって!」 澪「かわいいよ梓」 梓「はうぅっ!」ドキドキッ 澪(本当にかわいい……)ドキドキ 梓「澪先輩もき、きき綺麗です!」 澪「ありがとう」ニコ 梓「ぐはぁ!」 澪「だ、大丈夫か梓」 梓「やばい幸せすぎて死ぬ!死ぬぅ!」バタバタ 澪「あ、梓……流石に恥ずかしいから……」 …… 律「……ん……寝てしまったのか……ってまだいたのか和」 和「髪下ろした律は新鮮で飽きないわ」 律「うるせー……もう遅いぞ早く帰ったらどうだ?」 和「安心して。泊まってってあげるわ」 律「断る。私の貞操が危ない」 和「いいじゃない恋人同士だもの」 律「やる気満々かよあぶねえ」 和「随分ね……もしかしてまだ澪に未練があるのかしら?」 律「……ねぇよ、ねぇ。とっとと帰れ」 和「ふぅ……分かったわ。今日の所は引き揚げましょう」 律「ああまたな」 和「またね律」 律「ああ」 和「……またね」クルッ 律「ああ……」 和「……またね」クルッ 律「うん……」 和「……またね」クルッ 律「……」 和「……またね」クルッ 律「帰れ」 …… 梓「今日はすみません澪先輩……私ばっかりはしゃいでしまって」 澪「何言ってるんだ。私も楽しかったぞ梓」 梓「でも……」 澪「梓、ちょっと目を閉じて」 梓「え?はい」 澪「……」チュッ 梓「ひゃっ!えっあのっこれって……」 澪「お、お別れのキスだっ!じゃあまた後で電話するから!」タタッ 梓「ハ、ハイ……」ポー そしてなんやかんやあった冬休みも終了し新学期が始まった。 憂「ねえお姉ちゃんのマフラーちょっといい?」 唯「ん~?どうするの?」 憂「こうやって私のマフラーとねじれさせて……完成!」 唯「中尾彬だね!」 憂「中尾彬だよお姉ちゃん!」 唯「おいおい、こんな事してたら遅刻するじゃないか」 憂「お姉ちゃんの物真似かわいい!」 唯「なんだよそりゃ似てないって事かい?」 憂「かわいいよお姉ちゃん!」 …… 澪「和おはよう」 和「おはよう……機嫌よさそうね澪」 澪「分かる?ふふっ梓がかわいくってさ~」 和「へぇ~、良かったじゃない」 澪「うん。この間も私にクッキー焼いたりしてくれてね」 和「それは意外ね。クールな子かと思ってたけど」 澪「そうなの!結構情熱的なんだ梓って!」 和「ほうほう。まあうまくいってそうで何よりね」 和「所で言ってなかったんだけど、私も律と付き合い始めたから」 澪「……はい?」 和「これで澪と変な感じになったら嫌だなって思ってたんだけど、どうやら大丈夫そうね」 澪「じょ冗談だろ?だって律は女の子には……」 和「それは澪の思い込みよ。私達は愛し合ってるわ」 澪「は、ははは……そう、そうなんだ」 和「澪は祝福してくれないのかしら私達の事?」 澪「すっするよもちろん!うん!おめでとう和!」 和「ありがとう澪。嬉しいわ」 …… 律「おい~す」 唯「おはようりっちゃん、今日も元気だねぇ」 律「何だそれ?」 唯「俺の物真似が分からないって言うのかい?えぇ?」 律「分からない」 紬「私もあいにく……」 唯「どうせそう言うと思ったよ……全くどいつもこいつも鈍い連中だねぇ」 律「でも何かかわいいな」 紬「ええすっごく」 ……昼休み 和「律~♪」 律「うわっ和!」 唯「あっ和ちゃんだ~」 和「愛妻弁当よ!」 唯「ほほう~、うまそうだねぇ」 和「ん?中尾彬ね」 唯「そうだよ!やっぱり和ちゃんだよ~!」 律「中尾彬だったのか……」 和「律、澪に私達が付き合ってる事言ったからね」 律「えっええっ!?」 唯「そうなの!?二人付き合ってるの!?」 律「なっ何で澪に言うんだよ!関係ないだろ!」 和「関係なくはないわよ。友達だもの」 律「んな事言ったってさぁ~……気まずくなるの嫌だなって」 和「大丈夫よ澪も祝福してくれたわ私達の事」 律「そ、そう……そうなのか……」 唯「あう~……もしかして私だけ付き合ってる人いない……」 …音楽室 さわ子「おおムギちゃん似合うわ王子様コス!」 紬「うふふそうですか?」 さわ子「ええ!グリフィスっぽい!」 紬「グリフィス?」 さわ子「まあその人、厳密には王子様じゃないんだけど」 紬「今度教えてくださいね、さわちゃん」 さわ子「うん。食べさせてグリフィス様~」 紬「うふふ、あ~んして」 …放課後 唯「あずにゃんかわいい」ガバッ 梓「やめてください唯先輩マジで」 唯「ええ~、そんな冷たい事言わないでよぉ~!」 律「しょうがないよ唯。もう梓は澪と付き合ってるんだし」 澪「みんな待ったか?」ガチャ 梓「澪先輩っ!」ヒシッ 澪「ふふっ梓、びっくりするだろ」 唯「うう……孤独……孤独じゃあ~!」 紬「どっちにしても私得」 さわ子「唯ちゃんにはさ~、憂ちゃんがいるじゃない」 唯「え~、憂は妹だよぉ~」 紬「そんなの関係ない」 唯「ムギちゃんは心広いからそう言うんだろうけど」 律「いや多分それ違うぞ」 梓「澪先輩、私膝枕して欲しい膝枕」 澪「はいはい……梓は甘えん坊だなあ」 律「ちょっと部内でいやらしい行為はやめてくれます?」 紬「まあまあまあ」 澪「律、私は今来たばかりなんだゆっくりさせてくれ」 律「へえ~、いっつも練習練習言ってた人が変われば変わるもんですねぇ~」 梓「律先輩妬いてるんですか?」ゴロゴロ 唯「うう……澪ちゃんの膝枕……あずにゃん羨ましいよう」 さわ子「唯ちゃん暇なら私とコスプレごっこする?」 律「別に。部内の風紀が乱れるのを部長としてほっとけないだけだよ」 澪「ひ、久々におもしろいギャグだな律……」プクク 紬「りっちゃんおもしろい!」 澪「律、大体お前だって和と付き合ってるんだろ?聞いたぞ」 律「うっ……それがどうした」 唯「コスプレ?やるやる!」 梓「へえ~!そうだったんですか律先輩!おめでとうございます!」 さわ子「何か要望ある?」 澪「全く女の子同士が変だとか言ってたやつがね」 律「だ、だって澪が……」 唯「中尾彬!」 澪「私?私は関係ないだろ」 さわ子「却下」 唯「ええ~!ぶぅ~ぶぅ~!」 律「ああそうだよ!澪なんかより和の方がずっといいからな!へへっ!」 澪「そうだよね……和なら律の面倒見てやれるよね……」 律「あ、あれっ?」 梓「澪先輩を悪く言うなんて最低のデコギンチャクです」 律「聞いた事がない様な悪口言われた……」 唯「どうせあれだろ? りっちゃんなんかデコって言っておけばいいって思ってんだろ?えぇ?」 さわ子「中尾彬ね」 紬「分かるんですか!」 …… 和「律~!」 律「あれ和?どうしたの?」 和「生徒会終わったから急いで来たのよ。まだ帰ってなくて良かったわ」 律「そっか私らも今丁度終わった所だ。一緒に帰るか?」 和「ええ!」 澪「梓、私達も一緒に帰ろう」 梓「どこかゆっくり出来る所に寄って行きませんか?」 唯「……」 紬「唯ちゃん私で良かったら一緒に帰ろ?」 唯「ムギちゃあああああぁん!!」ガバッ …… 梓「あの澪先輩……」 澪「ん?何だ梓?」 梓「澪先輩はやっぱりまだ律先輩の事好きなんじゃ……」 澪「そ、そんな訳ないだろ。今の一番は梓だよ」 梓「……信じていいんですよね?」 澪「当たり前だろもう……」 梓「絶対?」 澪「ははっかわいいやつ」ナデナデ 梓「えへへっ」 梓「澪先輩はカッコいいから……私じゃ勿体無い位に」 澪「私なんて怖がりだし臆病だしあがり症だし……結構カッコ悪いよ」 梓「でも不安なんですいつも」 澪「私だって梓が唯に取られないかって心配してるんだぞ」 梓「ま、まさか!あれは唯先輩が無理矢理……」 澪「あ~ずさっ!」ガバッ 梓「はうぅっ!」 澪「へへ~、唯の真似だ」 梓「……」カー 澪「あっごめんどっか痛くしたか?」スッ 梓「はっ離しちゃ嫌です」ギュッ 澪「……」 梓「澪先輩……」 澪「離さないよ……私の梓だから」 梓「嬉しい……」 澪「ああ私も」 梓「具体的に言うとタイヤキ30個分の嬉しさ……」 澪「ふふっじゃあ私は50個分……」 …… 律「なんだかんだ言って和っていいやつだよなぁ」 和「あら褒めてくれてるの?ありがとう」 律「いやホントに私なんかのどこがいいんだか」 和「全部よ全部」 律「それって適当すぎるだろ」 和「澪を忘れるまで時間がかかるかも知れないけどね」 律「あはは、面目ないな~」 和「ふふっ気にしないで。私は我慢強いし気長に待つわ」 律「心配する必要なんてないよ和」 和「そう?」 律「澪は澪で……きっともう梓の方が大事だよ」 和「そうかしらね」 律「そうだよ。私なんか梓に比べたらメットだし」 和「根に持つのね結構」 律「だから私は澪の邪魔はしちゃ……いけない……」ポロポロ 和「……律って無神経そうで、変にそういう所が繊細よね」 律「わ、悪かった……なぁ」グスグス 和「ううんそこが好きよ……律」 律「ううぅっ!……和ああああっ!!」 和「よしよし」 律「うえええええぇん!!」 …… 唯「いえ~ただいま~!うい~!」ガチャ 憂「お姉ちゃんおかえり!ご飯にする?お風呂にする?それとも」 唯「憂!」ガバッ 憂「えっええ~!?」 唯「やっぱり私には憂が一番だよぉ~!」 憂「や、やだお姉ちゃんったら……私もだよ」ポッ これにて全員カップル成立!おめでとう! おわり 戻る
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戻る 前シリーズに恥じないクオリティなんだけど、生々しい部分で好みが分かれるかも。具体的にいうと律が不甲斐なく、梓が小憎らしい(律視点的に。梓視点でいえば律も少々腹立たしい)。でもさわちゃんとムギは幸せそうだし、展開しだいでは和的には大変幸せなのは間違いない。 -- (名無しさん) 2010-02-19 09 00 17 会話のテンポがいいから読んでて気持ちイイ -- (名無しさん) 2010-07-14 22 04 40 適頃 -- (名無しさん) 2010-08-24 17 02 00 ドロドロしてて少し気持ち悪かった でも和ちゃんがかわいい -- (名無しさん) 2010-09-26 21 23 33 うーん… -- (名無しさん) 2010-09-30 20 46 59 なんかいろいろと面白い話だったな。 -- (通りすがり) 2010-09-30 23 10 37 紬‥ 唯‥ -- (名無しさん) 2010-10-21 06 11 28 ミオアズが半端 -- (名無しさん) 2011-01-27 15 56 55 澪梓確かに半端だなー もうちょっと頑張ればいい感じにまとまったぞ!きっと! てかムギさわのさわちゃん 某作品でかなりかっこよかったからそれが残っててギャップすごいww あなたの誕生日はいつかしら だっけw -- (ねむねむ) 2011-04-01 20 25 48 良かったよ、いろいろと -- (ぴ) 2011-05-08 14 12 13 この梓、なんかかわいい。 ところで憂はガチャピンってどういう意味か、誰か教えて! -- (名無しさん) 2011-07-13 09 12 23 どんなスポーツもこなせるって意味かと。 -- (名無しさん) 2011-07-17 01 48 12 ↓ あぁ、そう言うことかありがとう。 この梓が好きって書いたけど、この和も最高だな! -- (名無しさん) 2011-07-19 01 34 04 澪梓半端だけどまぁ良かった。 そしてモノマネする唯がかわいい。憂も。 -- (名無しさん) 2011-11-02 16 44 36 澪梓よかっただけに中途半端でもったいないな -- (名無しさん) 2011-11-20 04 57 29 全カプ組ませりゃいいというワケではないという見本である -- (名無しさん) 2011-11-24 14 51 13 和ちゃんいい役してるなwww -- (名無しさん) 2011-12-09 06 28 13
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ブランド アトリエさくら #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (000.jpg) ジャンル アドベンチャー 原画 黒石りんご シナリオ づか 発売日 2023/1/27 価格 2,800円(税別) 選評 【2023】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 1本目 https //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1675258385/ 520:好きだった幼馴染がクラスメイトのオモチャになっていた件 選評:2023/04/10(月) 19 12 04 ID SCREiyyg 好きだった幼馴染がクラスメイトのオモチャになっていた件 発売日 2023年 1月27日 定価 3,080円(税込本体価格) ジャンル アドベンチャー 原画 黒石りんご シナリオ づか あらすじ(公式) 主人公・功太と結花は隣同士の幼馴染。 お互いの両親が不在がちだったこともあり、よく家を行き来して兄妹のように育った。 だが、功太は結花のことを兄妹としてだけではなく、いつからか女の子として意識をしていた。 結花は昔からとても恥ずかしがり屋で、恋愛方面ではとても初心。 ドラマでキスシーンが流れただけで、顔を真っ赤にして目を背けてしまうほど。 そんなこともあって関係が壊れるのを気にして、功太は結花に気持ちを伝えてはいなかった。 焦らず、ゆっくりと関係を深めていければ…… そんなことを考えながら過ごす結花との日々。 ………… だが、知らない間に、結花は変わってしまっていた。 それに気づいた時には、すでに―― 問題点 本作最大の問題点を語る前に 皆さんは『淫らに堕ちる、最愛彼女』という作品をご存知、あるいは覚えているでしょうか? 最愛彼女は2019年にアトリエさくら Team.NTRから発売されたエロゲであり KOTYeにて選評が送られた作品である 本作をプレイした直後、ゲームの導入時点で最愛彼女と同じ始まり方をし、最愛彼女と似たような展開で進む これだけならそういうこともあるだろう、と思える そしてゲーム最初の選択肢、友人からヒロインのことをどう思っているのかと聞かれるシーンがこちらである + ... imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (001.jpg) そして『淫らに堕ちる、最愛彼女』での選択肢はこちら + ... imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (002.jpg) まさかの導入や展開だけでなく選択肢や背景まで一緒である この流用は過去作のプレイヤーでしか気づけないものであり 旧作のファンやブランドのファン、ライターのファンを舐め腐った行為であり ユーザーに対してあまりにも誠意に欠ける行いといえる また最愛彼女はタイトルに対して選評で淫らに堕ちないし、彼女でも無いと評されていたが 本作も別に大してオモチャになっていない ルートは主に2つ(即終了の主人公告白ENDもある) 乱交ENDと妊娠END 乱交ENDでは 間男とのフェラを目撃したクラスメイトに「俺らともセックスして欲しい」と頼まれ ヒロインが特にためらわず二つ返事で了承する。なんで? 押しに弱くて、なし崩しにビッチになっていくというよりは、最初からそういう性癖だったとしか思えない 話自体もオモチャというよりただのビッチである 妊娠ENDはヒロインと間男との純愛で 妊娠も修羅場でもなんでもないただの失恋で 間男とも責任とり学校を中退して就職している 2周目ではヒロイン視点が追加され 主人公視点かヒロイン視点かを選ぶ選択肢が増えるのだが その選択肢の数が尋常じゃなく多い まとめ 近年ヤバい作品を排出し続けているアトリエさくらの中でも づかシナリオは比較的安定して良作を出していたが 今までのアトリエさくらに無いタイプのクソゲーの誕生となった ネタ切れとはいえ過去作から流用し、その結果できたシナリオ自体もお粗末で 完成したものはクソゲーをリメイクして作られたクソゲーであった
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なぁ、律。覚えてる? 私は、覚えてるよ。 ……… ………… 「なあ、律」 「なんだ?澪」 「私たちもさあ…いつか恋人ができたり、結婚したりするのかな?」 「…なんだよ、急に」 「いや…なんか不安になるじゃないか。一生ひとりだったらさみしいなー…とか」 「大丈夫だろ、ほとんどの人が結婚できてるんだから」 「でも…」 「それに澪なら選びたい放題だろ。モテてたんじゃん、中学の時」 「自分の好きな人と恋人になれなきゃ意味ないだろ」 「…ま、そりゃそうだな」 「そうだよ。好きな人とじゃなきゃヤダよ」 「ん?待てよ。てことは… …自分が好きになった相手も自分のこと好きじゃなきゃダメってことか?」 「…うん」 「…」 「…」 「それ、めちゃくちゃハードル高いだろ!」 「だから心配してるんだよ!」 「ああー!私ゼッタイ無理だ!恋人も結婚もできる気がしない!」 「私もだ…」 「だいたい私のこと好きになってくれる奴なんて… …ホントにいるのかな…想像できねーよ…」 (そんなことないと思うけど…)ボソッ 「何か言った?」 「言ってない!」 「…はあ」 「…はあ」 「…」 「…」 「…じゃあさ、こうしよう」 「?」 「30歳になった時、お互いに恋人もいなくて結婚の予定もなければさ…」 「…なければ?」 「私たち二人で一緒に暮らそう!」 「縁起でもないこと言うな!」 30歳で未婚なんて、別に珍しくもない時代だけどな。 私は律の頭をはたいた。 それはいつもの光景だった。 そして、二度と戻らないしあわせな少女時代だった。 ***** 1月14日。 この冬初めて降った雪が、生まれ育った町を銀世界に変えていた。 私は桜ヶ丘に帰ってきていた。 大学を卒業して以来、お盆とお正月にさえ帰ってくることがなかった、 久しぶりの故郷。 雪がどんどん降ってくる。 コートにマフラー、耳あてまでしているのに体が震える。 こんなに寒いところだったっけ? まるで私の知らない町みたいだ。 母は迎えに行くと言ってくれたけれど、私は断った。 久しぶりの桜ヶ丘を、私は歩いて帰りたかった。 帰り道、少し寄り道をして懐かしい家の前で足を止めた。 ピンポーン。 インターホンを鳴らす。 このベルを鳴らすのは何年振りだろう?高校時代以来だから… 『はい、どなたですか?』 「あ、澪です。秋山澪です。お久しぶりです」 『澪ちゃんって…あの澪ちゃん!まぁまぁまぁまぁ久しぶりね!!今玄関開けるわね!』 ぱたぱたと家の奥から駆けてくる音がして、ガチャッと扉が開いた。 何年振りだろう。 久しぶりに会う田井中のおばさんは、相変わらず元気でキレイなままだった。 「うわぁ~澪ちゃん久しぶり!綺麗になったわねぇ…でもどうしたの、突然?」 「お久しぶりです。すみません急に来たりして…」 「何言ってるの、全然構わないわよ!何かあったの?」 「ちょっとこっちに帰ってくる用事があったものですから…律、いつも何時くらいに帰ってきますか?」 「最近忙しくしてるみたいだからね、今日もたぶん…帰ってくるのは遅いんじゃないかしら」 「そうですか…」 「ごめんね。もしかしてあの子、澪ちゃんと約束してた?」 「いや!違うんです。私も何も連絡してなくて…本当に急に帰ってきたものですから…」 「そう、悪いわね」 「いきなり顔見せてびっくりさせてやろうかなーって思って…また私の方から律に連絡してみます」 「家で上がって待っていてくれてもいいのよ?」 「いえ、でもウチで両親も待ってますから…じゃあ…」 「あ、そうだ澪ちゃん」 「はい?」 「お母さんから聞いたわよ。おめでとう」 おばさんはにっこりと笑った。 私はそれに応えるように曖昧に笑いながらお礼を言った。 律は去年の春、桜ヶ丘に帰ってきたらしい。 転勤で勤め先がこの近くになったそうだ。 元旦に届いた律からの年賀状でそれを知った。 私は律に会いに帰ってきた。 律に会うためだけに。 伝えなくちゃいけないことを伝えるために。 ***** どうやら私はまわりの人とはちょっと違うらしい、ということに気がついたのは、 大学生活も終わりに近づいた頃だった。 通っていた大学は女子大だったけれど、 高校生とは違い、さすがは女子大生。 恋人を持つ周囲の友人たちは少なくなかった。 恋愛? 私にとってそれはあくまで物語の中のお話。 自分から遠く離れたことだと思っていた。 私以外のけいおん部のメンバーも、大学に入りたての頃は私とそんなに変わらないくらいの意識だったと思う。 だって晶が高校時代の先輩とどうこう~、なんてレベルの話で盛り上がるくらいだったから。 でもまわりの環境は少しづつ変わってゆく。 部活やバイト、晶たちの高校時代の友達。 人脈が広がるにつれて、私たちも少しづつ男性と接する機会が増えていった。 2回生の夏頃だっただろうか。 私たちの中で初めに恋人ができたのは律だった。 なんだか急に私のまわりの世界が変わってしまいそうで、 とても恐ろしいことのように思えた。 けれど、まず初めに打ち明けてくれた相手が私だったこと、相手の男性は私は勿論、唯もムギも梓も知っている人だったことは、まだ救いだったかもしれない。 対バンで知り合ったその人は、元気いっぱいドラムを叩く律に惚れたんだってさ。 生まれて初めて男子に告白された律が私にこのことを相談してきたときの、 真っ青で追いつめられたような表情が忘れられない。 てっきり必修授業を落として留年でも決まったかと思った。 律は「なんて返事したらいいかわからない」って言ってたけど、 律も相手に好意を持っていることは知っていた。 私は背中を押してやった。 心の内側はバラバラになりそうだったのに、努めて平静を装い、 親身に相談に乗る頼りになる親友を演じていた。 私は律の不幸を願う人間にはなりたくなかった。 でも、精一杯の笑顔を作ろうして… 泣いた。 涙が止めらなかった。 私の泣き顔を見て律も泣き出した。 変な奴。 生まれて始めて告白されて恋人ができたっていうのになく奴があるか…バカ。 二人はうまくいっていた。 見ていてこっちが恥ずかしくなるくらい。 でも、恋人ができたからといって、 律と私たちの関係には、大した変化も見られなかった。 少しだけいっしょの時間は減ったけど、 お菓子を食べて、くだらないことおしゃべりで盛り上がって、みんなで演奏して… 律は律のままだった。 私は安心した。 律はどこにもいかない。 恋人ができたって何も変わらない。 私の隣にいてくれる。 律は私に彼のことをよく話していた。 付き合いが長くなるにつれ、主にそれは愚痴になっていったけれど、 聞かされる方になってみれば、それはのろけ以外の何物でもなかった。 律の彼からもよく、相談を受けた。 喧嘩の仲裁も何度立ち会ったか知らない。 こいつらが結婚することになったら、ご祝儀の2割くらいはもらう権利があるんじゃないかと思ったくらいだ。 唯はこう言った。 「澪ちゃんは二人のキューピットだね!」 ムギは言った。 「結婚にはご両親だけじゃなくて、澪ちゃんのおゆるしも必要ね♪」 梓は…別に何も言ってなかったかな?忘れた…。 『本当に結婚することになったら、誰より先にまず私に報告しろよ。約束だぞ』 …なんて笑いながら話を合わせて言ってみたっけ。ハハ… そしたら律の奴。照れちゃって… 『結婚なんて…先のことは…わかんねーし……』 バカ。律のバカ。バーカ。 私が二人を結びつけた。 律に恋人ができたことで、一緒にいる時間は減ったけれど、 却って親友としても結びつきは強くなった… そうだろうか? 律は律のまま、ずっと変わらない? そんなバカな。 人は変わる。律も変わる。 律の中には私の知らない律が生まれ始めていた。 私は気づいていた。 私が知らない律。 彼だけが知っている律がいること。 少しづつ少しづつ律は変わってゆく。離れてゆく。 私が二人を結びつけるほど、律は私から離れていった。 なあ、唯。私はさ、キューピットなんかじゃない。 ピエロだよ。 私は耳を塞いだ。 私の心の内側の、奥の方から響いてくる音を遮るために。 気づきかけた真実から目をそらし、 反対に深く深く奥の方にしまい込んで、 そっと扉に鍵をかけた。 ***** 3回生に進級する頃になると、みんなそれぞれに決まった恋人ができた。私にも。 他人から見れば、それは自然なことなのだろう。 私だっていつまでも高校時代の人見知りの秋山澪じゃない。 男子とだって普通に喋る。それくらい平気になった。 やさしい人だった。 一緒にいて楽しい人、私を大切にしてくれる人…それが私の恋人。 まだあの頃はウブだったから、好きだと言われるまで相手の気持ちには気がつかなかった。 彼を異性として意識したことはなかった。 ましてや付き合う相手として考えたこともなかった。 でも嫌な相手じゃなかったし、断る理由もないと思って私は首を縦に振った。 私もこの人に恋をするのだろうか? これから好きになってゆくだろうか? 私が告白を受け入れる返事を伝えると、彼は大げさに万歳して喜びを露わにした。 それから…二人で一緒に出掛けたり、手をつないだり、キスしたり、 セックスもした。 普通のカップル。「まともな」…大学生のカップルだった。 でも、それがなんだというのだろう。 昔、夢に見ていた恋物語を自分自身で体感しているような感覚は一切なかった。 いつか訪れるのではないか、と期待していた彼への恋情は、 姿を現す兆しすらいっこうに見せなかった。 大人の恋と子供が憧れていた恋は別物なの? 決まったレールの上を走るように、お約束事をこなしてゆく。 デートして、キスして、セックスをして…やがて結婚でもする、 結婚したら子を産み、育て、年をとり、死ぬ。 大人の恋とは社会的営みの、「まともな」人生の通過点でしかない…。 それが普通? レールから外れたところにある恋は存在するのだろうか? あったとして、存在を許されるのだろうか? 結婚もできず、出産もできず、周囲に祝福されず、世間に承認されず、蔑まれ…「まともに」生きていれば約束されるはずのしあわせすら手放して、それでもそうせざるにはいられない、そんな恋はあるのだろうか? 手をつないで二人で出掛けることすら憚られる恋なんて… 私にはわからなかった。 恐ろしかった。 そんなことは考えたくなかった。 みんなと同じように生きよう。 そうだ、それが「まともな」生き方だ。 私は、恋をしていなかった。 いや、恋をしたかったんだ。 「まともに」生きていくために彼に恋をしたかった。 でもできなかった。 そんな私と反対に彼は…私の「恋人」はそうではなかった。 たぶん…本当に恋をしていた。 彼は…今になって思えば…強い愛情を注いでくれていたんだと思う。 いつも私を楽しませようと精一杯頑張ってくれていた。 そして、 私が微笑むと、本当にしあわせそうに笑ってくれた。 私は人として彼に好意を持っていた。 彼となら、ずっと一緒にいてもいいかもしれない。 それくらい彼に好意を持っていたのだ。 けれど、それでも。 私は彼に恋をしていたわけではなかった。 私は「男女交際」という舞台の上で、恋人役を演じているだけだった。 あるとき彼はこういった。 『キミが何を考えているかわからない』。 彼の私に向ける熱情に対して、私の彼への態度は、実に冷静であり続けた。 次第に彼は、私の自分に対する愛情の注ぎ方に不満と不信を募らせていった。 彼は誠実だったんだろう。そして賢明だった。 私が自分に対して恋情を持っていないこと、今後も持つ可能性がないことを悟った彼は、自ら幕引きを買って出た。 どうやら私は、与えられた役を上手く演じられていなかったみたいだ。 「恋人」という役柄を上手く演じきれば、 「結婚」という次の舞台に上がることを許される。 それは世の中の約束事。 けれど私は失敗した。 こうして、大学卒業を前にして私は初めての恋人と別れることになった。 私は一滴の涙も流さなかった。 みんなは泣くこともできないくらいショックだったのだ、と思ったのか、 やさしい言葉をかけ、慰めてくれた。律は一晩中側にいてくれた。 でも私はちっとも悲しくなかったのだ。 だって私は「失恋」していないもの。 私は「まともに」生きることを願った。 外れることが怖かったから。 レールに乗って。 自然に。普通に。 「まともな」恋がしたい。 人一倍恋に憧れていたはず私は、外れることを恐れ、自分の恋に背中を向けた。 それとは反対の遠いところへ、必死に走ってゆこうとしていた。 ***** 1月14日、夜。律とのメール。 …今、桜ヶ丘に帰ってきてるんだけど、明日会えないか?… 返事はなかなか返ってこなかった。 これほどメールの返事を待ちこがれるのは、初めてケータイ電話を持ったとき以来のような気がした。 日付が変わる頃になり、ケータイがブルッと震えた。 律からの返事。 …返事遅れてゴメン!澪、帰ってきてるのか!会おう会おう!!夜なら空いてるから大丈夫だ、せっかくだしどこかでおいしいディナーでも… …何かっこつけてんだ律。普通のところでいいよ、そうだ!久しぶりにMAXバーガーはどうだ?… …えーっ!この年になって晩飯がハンバーガーって… …文句言うなよ、いいじゃないか久しぶりなんだし、高校生の気分に戻って、さ… …まぁ澪がそういうなら、じゃあ18時な、遅れそうになったらまたメールするからな!… …ああわかった、じゃあな、また明日… 律と会える。明日、律と会える。 いや、もう今日だったな。 ***** 社会に出てから、私は何人の異性と付き合っただろうか。 年齢を重ねるに連れて、どうやら私は異性の目から見てなかなか魅力的に見えるらしい、ということを学んだ。 それと同時に付き合い方、あしらい方も覚えていった。 私は恋を知りたかった。 「まともな」恋。 しあわせな恋。 私も、彼も、まわりのみんなもしあわせになる恋。 よかったね、って祝福されて、ありがとう、って返事ができる…そんな恋。 最初のときと同じように、不快ではない相手からアプローチがあったときは、なるべくそれを受けることにした。 一緒にいる時間が増えてゆく過程で、恋とは何かわかるかもしれない。 そうして何度同じことを繰り返しただろうか。 でも、どうしても私には恋ができない。 自然に恋ができない。 「まともに」恋ができない。 私が付き合った相手は、全員向こうから言い寄ってきたくせに、 別れを告げるのも全て相手からだった。 いや違った。 別れを告げることなく別の女と付き合いだした男もいたな。 比較的長く付き合ったこともある。 共に過ごした時間が長くなれば情が湧く。 たまには、この人となら結婚してもいいかもしれない、と思っていた男もいた。 でも相手はそうじゃなかった。一緒にいる時間が増えるほど、 相手の男は私の心の内にある空虚に気づいてしまったのだろう。 この女は自分を見ていない。そう気がついたのだろう。 自分と向き合ってくれない相手とはこれからも一緒にいられない。 その男も賢明だった。 学生時代に付き合った男と同じように、私が相手を見ていないこと、 今後もその可能性がないことを知って、離れていった。 確かに私は相手の男をきちんと見ていなかった。 今まで付き合ってきた男たち、誰一人とも向き合ってこなかった。 私は見つめていたのは、少女の頃、胸の中に宿った幻だけだと気がつき始めていた。 でもそれは幻。 現実になることはない。 「まともに」生きていくために、現実にするわけにも、いかない。 2
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***** 20時ちょっと前。律から電話がかかってきた。 『悪い!今近くまで来てるんだけど、雪のせいで渋滞しちゃっててタクシー動かないんだ…悪いけど間に合いそうにない!』 「…わかった。私も急に会いたいなんて言って悪かったよ。 今後帰ってくるときは前もって連絡するようにするな」 『ホントごめんな…次はゼッタイにこの埋め合わせするから!』 それでも私は待っていた。 律はもう来ないって、わかっているのに。 私はまだ店を出る気にならなかった。 もう少し待とう。 もしかしたら律が来てくれるかもしれない。 律は近くまで来てる、って言ってた。 あと少し…あと少し待っていたら律が…。 … …… ……… ………… …………… ……………… ………………… …………………… 20時半を少し回った。律は来ない。 私は店を出た。外では雪がちらちらと降っている。 私は風邪を引いたのだと嘘をつき、仕事を休んだ。 いや、風邪気味だったのは本当だ。 やっぱり半乾きの髪をそのままに、冬空の下、あわてて帰ったのはよくなかった。 有給休暇を使うのははじめてだった。 寒いので少し早足で駅まで向かう。雪のせいか、人通りが少ない。 着の身着のまま帰郷したものだから、手袋を忘れてきた。 そのせいで、手が冷たくて仕方ない。 律の言った通り、道は混んでいる。 ついてない。こんな日に限って雪が降るなんて。 昔はいつでも一緒にいたのになぁ。 あの頃、逢いたい時に律に逢えない日がやってくるなんて想像もできなかった。 サク サク サク サク サク… サク…サク… 雪を踏みしめる足音が近づいてきたことに気がつき、私は立ち止まった。 そして空を見上げて大きく息を吸う。 それから、うつむいて息を吐き、唇をきゅっと結んで、振り返った。 「よ、久しぶりだな、律」 「うわっ!なんでわかったんだ!」 「…わかるよ。律の足音は」 「ハァハァ…エスパーかよ…せぇーっかく驚かせようと思ったのになぁー」 そう言って律はいたずらっぽく笑った。 きちんとメイクをして、カチューシャなしに前髪を綺麗に整えた律はすっかり大人の女性の雰囲気をたたえていたけれど、 笑顔は私の知る明るくてキラキラした律の笑顔そのものだった。 どれくらい走ってきてくれたのだろう。 随分と息が荒い、いくつもいくつも白い息を吐きだした。 「お、おい、大丈夫か?」 「…いや…もう…走った方が…ゼェゼェ…早いと思ってさ。 店に寄ったらもう…澪いなかったし、急げば間に合うかなーって…」 「まったくもう…無理するなよな…」 胸の奥の方から温かいものが広がっていくのを感じた。 「だって…澪に会いたかったから。 このチャンスを逃したら今度いつ会えるかわかんないし」 「おおげさだな、律は。逢おうと思えばいつだって逢えるだろ」 「何言ってんだ。けいおん部OGの集まりにもぜーんぜん顔出さないくせに。 唯もムギも梓も、みんな寂しがってるぞ」 「ああ、ゴメンな…忙しくてな…」 ずっと逢うのが怖かった。 律に逢うことで、自分の本心に気づいてしまうのが怖かった。 律だけ避けて他のみなに会う不自然をごまかすために、私はずっとけいおん部の誰とも会わないようにしてきた。 「6年振り…だったっけ?」 「7年振りだ。梓の卒業以来」 「ありゃ?そうだったっけ?…そぉかぁー私たちも年取るわけだよなぁー…」 「そうだな。でも律も大人になったな」 「そう?」 「うん。ホント。それにきれいになった、びっくりしたよ」 「…な、なんだよ急に…///誉めたって何にも出ないぞ?」 頬を赤く染めながら照れる律。こういうところは昔から全然変わらないな…。 「いいよ。何も要らない。律に逢えたんだから。私は十分だ」 「おっと、忘れるところだった。渡すものがあったんだった」 「なんだ、やっぱり誉めたお礼に何かくれるのか?」 「いや…そうじゃなくて…」 そういいながら律はカバンの中をごそごそとあさると、可愛らしくラッピングされた小箱を取り出した。 「澪、誕生日おめでとう!…はい、これ」 「え…」 「ごめんな。今日会えるってわかってたら、もっといいもの準備できたんだけど」 「プレゼント買うために寄り道してて澪に会えなかったら元も子もないところだったぜ…」 「あれ…澪?」 「あらら?」 「…あれー…泣いてるの?秋山さん?」 「泣いてない!ちょっと風邪気味なだけだ!」 「ホントかなぁー??もしかして感動しちゃったー??」 鼻をズルッとすすって私は顔をあげた。 「律のバカ」 「バカとはなんだ、バカとはー!」 バカ。こんなことされたら、もう…私… 「誕生日プレゼントなんて、もうそんな歳じゃないだろ、私たち」 「ま、そうかもな」 「…でも」 「…でも?」 「…すごくうれしい。ありがと、律」 「…へへ」 「覚えてくれてるとは思わなかった」 「覚えてるに決まってるだろ。毎年ちゃんとメールしてるじゃんか」 「…そうだったな」 言わなくちゃ。 今、言わなくちゃ。 これを逃せば、きっと一生伝えられない。 「なぁ、律」 「なんだ?澪」 「今日帰ってきたのには理由があるんだ」 「どうしたんだよ、改まって」 「約束…覚えてるか?」 「約束…」 私は覚えてるよ。 「ああ、覚えてる」 …覚えてて、くれたんだな。 「伝えたいことが…あるんだ」 「実は、私も」 まさか、まさか、ね。でも、律も…律も私と同じ気持ちなら。 「澪から言えよ」 「いいよ、律から言って」 「澪から」 「律から」 「いや、ここは『秋山さん』からでしょう!」 「学校か!バカなこというな。じゃんけんするぞ。負けたら先に言う」 「わかった。じゃーんけーん…」 「「ぽん!」」 私はグー。律は…チョキ。 「私か…」 「なんだ?伝えたいことって?」 「うん…私な…」 「うん」 「私…」 「結婚するんだ」 「…え」 「って言ってもまだもうちょっと先のことだけどな…」 「…そうか」 「まず誰よりも先に、澪に伝えたかったんだ」 「約束…しただろ?」 「…うん」私は小さく返事をした。 「あ、ちなみに相手は……」 大学時代からずっと付き合っていたらしい。 初めて付き合った相手と結婚か。よかったな、律。 「ゼッタイ別れると思ってたよ」 「うお!ひどい言い草!…ま、でも確かにアイツに私はモッタイナイかもな!」 「逆逆!愛想つかされないように気をつけろよ」 落ちてゆく気持ちを持ち上げて、必死で軽口を叩く。 足ががくがくと震えるのはたぶん、寒さのせいだけじゃない。 私、ちゃんと笑えているかな? 「おめでとう…律」 「ありがと、澪」 「よかったな、好きな人と結婚できて」 「ん…ああそうだな。ずっと…好き………だったからな」 年甲斐もなく頬を真っ赤に染める律。 いくつになっても少女のようだった。 「式では澪に何か余興をやってもらいたいなー」 「それはヤダ」 「思い出ビデオには伝説の学園祭のライブを…」 「やーめーろ」 律…律…もう手に届かないところに行ってしまうんだな…律…。 「じゃあ次は澪の番だな」 「ん?」 「いや、だから澪の番」 「何?」 「何か伝えなきゃいけないことがあるんだろ」 「あ、ああ…」 それはもう、何の意味もないことだった。 「やっぱりいいよ」 「は?なんだそれ…」 「大したことじゃないから。ちょっと律をからかいたかっただけだ」 「はぁ!?久しぶりに会ってすることかよ…」 「昔から散々からかわれてきたんだ。たまにはいいだろ?仕返ししたって」 行かなくちゃ。もうすぐ電車がやってくる時間だ。 「私はてっきり… 澪も結婚するって話だと思ってたよ」 「……知ってたのか」 「澪ん家のおばさんに聞いた」 風が。冷たい風が吹いている。 「なぁ~んで言ってくれないんだよ?」 「…別に、大したことでもないから」 「大したことだろ」 「大したことじゃないよ。結婚くらい、ほとんどの人がしてることだろ?」 「まあそりゃあ…そうだけど…さ」 伝えなくちゃいけないことは、伝えられない。 知られたくなかったことは、知られてしまった。 「お祝い…したいじゃんか」 「…ありがと」 「結婚式、日取りがかぶらないようにしないとな」 「…そうだな」 「呼んで…くれるよな?」 「…もちろんだ」 この話、やめようよ、律。こんなこと伝えるために帰ってきたんじゃないよ。 「あのさ」 「ん」 「もしかしてだけど…」 「…嫌なのか?」 「え?」 「結婚、したくないのか?」 したくないよ。 私は律といっしょにいたい。 昔みたいに律といっしょにいたい。 今ままで我慢してた分、これからずっと、側にいたいんだ。 「そんなわけないだろ」 「なら…いいけど」 言えるわけない。律のしあわせを壊したくない。 「大丈夫か?」 「何が?」 「いや、その…いろいろと。急に帰ってくるしさ。 結婚するのにちっとも嬉しそうじゃないし…心配になるだろ」 「やさしいな、律は」 大きく息を吸い込んで、吐き出して、言葉を紡ぐ。 笑顔をつくりながら。 「私は大丈夫。元気だよ」 ちゃんと、笑えているかな? 「…なあ澪」 「その…相手のこと…好きじゃないのか?」 「…」 なんで…なんで…どうして?「好き」って言えないのだろう? どうしても言えない。 やっぱりこういうときに…嘘がつけない。 だって好きじゃないもの。私が…好きなのは… 「辛かったら…結婚、やめちゃえよ」 「無理だよ、今さら」 「好きな人じゃなきゃ、イヤなんだろ」 律…あのときのこと…、覚えててくれたのか? 「逃げちゃえよ」 「できないよ」 律は私の手を握った。ぎゅっと、力を入れて強く握った。 「…つめた。凍っちゃいそう」 「…心があったかいんだよ。私は」 「ハハ…唯がそんなこと言ってたな、高校ん時だっけ?」 律は俯いてじっと手を見ている。重なった手。私と律の手。 5
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***** 1月15日。 雪はやんでいる。 当たり前だけど今日は平日。律は仕事。 でもちょっと早めに上がってくれるみたい。 うれしいな。待ち合わせは、18時。 雪の通学路を歩く。 3年間、この道をふたりで歩いて通った。 あの頃、毎日のように見慣れた風景が、今はこんなに懐かしい。 つるっ。 うわっ。 周りをキョロキョロ見ていて足元がお留守になっていた。 凍った道に足を滑らせて危うく転ぶところだった。 そういえば昔もこんなことがあったな。 私が滑って転びそうになって、律にしがみつこうとして律まで巻き込んでふたりで転んで…。 思い出し笑いをかみころす。 今はしがみつく相手がいないんだ。転ばないように気をつけなきゃな。 少し早い時間に着いた。 律が来るまでコーヒーを一杯だけ注文して席に着く。 放課後のファーストフード店は女子高生でいっぱいだ。 大きな声で笑い、はしゃぐ彼女たち。 制服の着こなしが自分が高校生だった頃とはちょっと変わっていることに気がついて、時間の流れを感じる。 自分もかつてあの中にいた。 あんなふうに笑っていた。 昨日も今日も明日も…同じような毎日が永遠に続くように思えてならなかった。 「今」が「過去」になるなんて思いもしなかったそんな頃があった。 随分早く着いてしまった。 まだ約束の時間まで30分もある。 ぼんやりと窓の外を見やる。 また少し、雪が降り出していた。 ***** 私に好意の眼差しを向けてくる相手は、異性に限らなかった。 女子高女子大と7年間女の園で暮らしていたから、 所謂同性愛者がいることは知っていた。 けれど、私自身が同性に対して特別な感情を抱いたことはなかったし、 昔からそういうアプローチはなくなかったけれど、丁重にお断りしてきた。 私は外れることが怖かった。 私が恋をする相手は異性でなくてはならなかった。 同性が同性に恋をする…世の中にそういう恋が、愛が、存在するのだと頭で理解していても…私自身が嫌悪を抱いていないとしても…まわりはどうだろう?はたして世の中は許してくれるだろうか? 世界の多数派からこぼれ落ちた存在を許容してくれる場所はあるのだろうか? あったとしても私はそこにたどり着くことはできるのだろうか? 私は怖かった。 だから、考えることをやめた。 とにかく、深く深く気持ちを心の奥にしまい込んだ。 ***** そんな私の前に現れたのは高校時代の同級生、佐々木曜子だった。 恥ずかしい思い出を披露すると、高校時代の私にはファンクラブなるものが存在した。 結成に至った理由はここでは明かせない。 元来照れ屋だった私にとって、その存在は黒歴史。 彼女はその一員だった。 彼女が私に憧れの視線を向けていたことは知っていた。 あの日、高校卒業以来初めて会った彼女は、もう立派な大人の女性だった。 あれは偶然の出逢いだったのだろうか? あの日、直前になって約束をすっぽかされた私は、 ひとりで喫茶店でコーヒーを飲みつつ本を読んでいた。 そんなときたまたま同じ店に入ってきた高校時代のクラスメイトに声をかけられるなんて。 出来過ぎた偶然じゃないだろうか。 最初、彼女のことがわからなかった。 曜子は曖昧な笑顔を見せた私の表情を見て、そのことを悟ったのだろう。 寂しそうに笑い、高校時代にクラスメイトだった佐々木曜子だと名乗った。 「私は後ろ姿を見てすぐに秋山さんだ、ってわかったよ」 「あの頃から素敵だったけど…本当にきれいになったよね」 曜子はそういって笑った。 彼女の笑顔と言葉には、普通の女友達のものとは異なる意味合いが含まれていることを、私は感じ取っていた。 「もし、よかったら…」彼女は言った。「ちょっと映画でも見に行かない?」 どうせ予定はなくなったのだ。私は彼女の申し出を受けた。 映画はありきたりなラブストーリーだった。 映画の登場人物たちは、どうしてこんなに…自然に…「まともな」恋ができるのだろう。私にはわからない。 まったく持って退屈な展開。 眠たくて仕方がなかったけれど、さすがにそれは誘ってくれた曜子に悪い。 うつらうつらしながらも、寝落ちしないように2時間をやり過ごした。 「退屈だった?」 「え?いや、そんなことなかったよ」 どうやら曜子にはバレていたらしい。 「うそ。秋山さん、寝てたじゃない」 「あ…ごめん」 「ううん、いいの。だって私が無理に誘ったんだし。でも意外」 「なにが?」 「だって、秋山さん。こういうラブストーリー好きかなって思ってた」 十年だぞ。 人が変わるには十分すぎる時間だ。 でも、高校時代の私は、いつかこんな映画みたいな恋をするんだって、 当たり前のように信じていた。 「せっかく誘ったのにごめんねー…そうだ、お詫びに晩ご飯おごるよ」 「いいよ、悪いし」 「なにか予定、あった?」 「ないけど…悪いよ」 「じゃあ、割り勘でいいから付き合って。いいでしょ、久しぶりに逢ったんだし」 こんなに積極的な子だったろうか?いや…そもそも私は曜子のことはあまりよく知らなかった。 それに人は変わる。 十年だぞ? 人が変わるには十分すぎる時間だ。 断る理由のなかった私は、曜子に付き合うことにした。 なかなか雰囲気のあるレストランでディナーを済ませると、彼女はちょっと飲み直さないかと私をバーに誘った。 もうこうなったら、最後まで付き合うつもりで私は彼女についていった。 「映画にレストラン、最後はバー。いかにも定番のデートコースね」 「…そうだな」 「相手が私で残念?彼と一緒に来たかった?」 「そんなことないよ。久しぶりに同級生に会えて嬉しい。楽しいよ」 「そう?ありがと。お世辞でも嬉しい。私も秋山さんに逢えて…嬉しい」 曜子は笑った。 彼女は笑うとき、けして私の瞳から目を離さない。 私はいまさらながらこのときに初めて、なんだか急に緊張したように胸の鼓動が早くなるのを感じた。 「顔が赤いよ、秋山さん。大丈夫?」 「うん、大丈夫。そんなに飲んでないから」 「そう?あまり無理、しないでね」 曜子はそういいながら、カウンターの左隣りに座った私の背中をさすってくれた。 その撫で方は、私の体をさわる時の男のそれとよく似ていた。 「でもちょっと残念だな」 「何が?」 「さっきの話。さらっと流されちゃったけど…恋人、いるんだね」 「まあ、ね。もういい年なんだし」 「そうよね、いるわよね。恋人くらい」 私には曜子の意図がよくわかった。 羽虫のように私に寄ってくる男たちは、こんな風に私を口説くことがあったから。 それに気づいた私は、少し意地の悪い質問をしようと考えた。 「佐々木さんは?恋人、いないの?」 「今はね」 「前はいたんだ。どんな人?」 「いいじゃない。そんなこと。もう忘れちゃった。それより秋山さんは?」 「え?なに?」 「…結婚とか…しないの?」 上目遣いをしながら曜子が尋ねる。 「うまくいけばね。でもよくわかんないかな」 「どうして?何か問題でもあるの?」 「いや別に…何もないよ。たぶんうまくいってる」 その時付き合っていた相手は、本を読むことが好きな、のんびりとして穏やかな男だった。 毎日真面目に働き、帰宅して料理を作り、洗濯を欠かさず、休みの日には部屋をきれいに掃除して整理整頓を怠らず、少しの余暇に読書を楽しむ男だった。 ときに、私をアクセサリーのように…ただ美しい女を横に携えて町を歩きたい…そんなくだらない願望を隠すこともない破廉恥な男もいたけれど、彼はそんな男ではなかった。 彼が、顔を真っ赤にして私に愛を告げてくれたことは、私にとっても嬉しい出来事だった。 いろんな男たちが(ときには女たちも)私に言い寄ってきたけれど、彼ほど真剣なまなざしを向けてくれた人はいなかったように思う。 私は素直に嬉しかったのだ。でも。 私は恋をしていなかった。 彼に恋することはできないでいた。 残酷だけれどもそれは真実だった。 彼がそれに気がついていたかどうか、私にはわからない。 けれど、彼は自分が愛されていなくても、 私が側にいてくれさえすればそれだけでよいのだ、と多くを望んでいないようにも見えた。 彼も、私と同じなのかもしれない。 私がそうであるように、彼も都合の悪い真実から目を背けていたのかもしれない。 この女は自分を愛していない、 そして自分は一生愛されることもないのかもしれない、 という疑念を封じ込めて、私と付き合っていくことができる男のように思えた。 彼となら、恋をしなくても自分の「役柄」を全うできるような気がしていた。 ちゃんと次の舞台に上がることが出来るような気がしていた。 彼となら…結婚して出産して子供を育てて…「まともに」暮らしてゆける。普通に。 恋なんて必要ないじゃないか。 私たちは必要以上に恋愛に縛られ過ぎている。 恋なんてしなくたって生きてゆける。 そう、恋をするより「まともに」生きて幸せになる方が、よっぽど大事なんじゃないか…。 恋って、どんなものなんだろう。一体、なんなのだろう。 それがわからないのだとしたら、私にとって大切なのは、「普通」をはみ出さず、「まともに」生きていくことだった。 彼はいつだって私を大切にしてくれた。 酒の付き合いもほどほどに、約束の時間に遅れたこともなく…今日がはじめてだ。 約束を違えたのは。急な仕事って言っていたけれど…。 「どうしたの秋山さん。ぼうっとして」 「ごめん、なんでもない」 「何か悩みでもあるんじゃないの?」 「ないよ、ないない」 「そう?ならいいんだけど…でも秋山さんも結婚かぁー」 「いやまだ決まったわけじゃないから」 「いずれはそのつもりなんでしょ?」 「うん。たぶん…」 「たぶん、って何よ…好きなんでしょ?彼のこと」 なんでこの歳になって、こんなときに上手にごまかすことすらできないのだろう。 私は変なところで自分に正直だった。 答えに詰まって返事の遅れた私の隙を、曜子が見逃すはずはなかった。 「…好きじゃないの?」 「そういうわけじゃないんだけど…」 「そうかしら?秋山さん、自分に嘘ついてるでしょ」 そう言って、曜子はまた私の瞳をじっと見つめた。 私の神経を逆なでした彼女の図々しい物言いに、腹が立って強い口調で言い返す。 「そんなことない。久しぶり会った佐々木さんに何がわかるんだよ」 「興奮しないで、秋山さん」 手をぎゅっと握られる。心臓を鷲掴みにされたみたいだった。 「私にはあなたの考えていることがわかるの、あなたの本当の気持ち」 「何がわかるっていうんだよ!なんでそんなことが言えるんだ!」 「わかるわ。だって私…ずっと澪のこと見てたもの」 曜子はごく自然に…まるで昔からそうしていたかのように、私を下の名前で呼んだ。 「気づいてなかった? そうよね、あの頃の澪は私のことなんて少しも見てくれなかった。 ずっとあの人のことばかり見てたもの。 でも今は違うわ。 今、私は澪を見てる。 そして澪は私を見てる。 そうね、私なら教えてあげられるわ。 澪も、澪の彼も知らない本当のあなたの気持ち。 私が教えてあげる」 曜子はそう言って、蠱惑的に微笑んだ。 獣を相手に隙を見せてはいけない。 わかっていたはずのに油断した私が悪かった。 今までまとわりついてきた獣(男共)と勝手が違うのは、 相手が同性で旧友だったことだ。 うさぎだと思っていて気を許してしまっていた。 けれど曜子は狼だった。 十年のときを経て、彼女は立派な獣になっていた。 狼は、期を見て牙をむき、私に噛み付いた。 私は振りほどくことができずそれに飲み込まれていった。 ***** 17時55分。律からのメール。 『悪い!残業が長引いて帰れそうにない!もうちょっと待ってもらっていい?』 おい。5分前に送る文面じゃないだろ。 『わかった。でも新幹線の時間があるから、待てるの20時までだぞ』 ブーッブーッ…返信早いな。 『な、なんとかその時間までには…ガンバリマス』 おい。それ、ちょっと待つじゃないだろ。まったく律の奴… でも高校時代と変わらないやりとりに、私はしあわせを感じていた。 3
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1 2 3 4 5 NL要素あり 澪ちゃん誕生日 2015/01/15 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421328455/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る ある意味衝撃的な誕生日ss -- (名無しさん) 2016-01-13 23 11 59 これ誕生日に持ってくるのはとも思うけど、出来はいいんだよなぁ。 -- (名無しさん) 2015-11-22 23 27 43 脇役に良いキャラがいるよね。 -- (名無しさん) 2015-04-20 01 20 00 澪はこの後どうなるんだろう… -- (名無しさん) 2015-01-28 01 50 30 この澪サイコパスっぽいな。 気の毒だけど、好きにはなれない。 曜子の方が変則的だが愛情深い。 -- (名無しさん) 2015-01-23 00 33 43 このタイトルのドラマの登場人物の冬彦さんに因んで何故豊崎愛生のニックネームに豊彦が定着した? -- (名無しさん) 2015-01-22 17 40 42 最後は律も!で終わってほしいとは思ったし、誕生日にはふさわしくないかもしれないけど、 内容自体は完成度高いと思うけどね。 -- (名無しさん) 2015-01-22 00 41 09 救われないなぁ -- (名無しさん) 2015-01-20 15 39 45 読ませる話だが、後味はよくないね。 最後は澪にとってもいい終わり方でいてほしかった。 これほど曜子が魅力的でしっかりしたキャラを持ったss も初めてだ。 -- (名無しさん) 2015-01-19 01 27 22 んー…これをわざわざ澪誕にしなくてもなぁ 普通に祝ってあげれば良いのに。 -- (名無しさん) 2015-01-18 23 27 17