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Aが求めるもの/悪魔のしっぽ ◆7pf62HiyTE 「ただいまー」 その声と共に帰宅した長い髪を背中で束ねた少女は早々に道着に着替え―― 「破っ!!」 その一撃で重なった石ブロックを粉砕する。 「あー、調子いい」 と、 「まーたあかねはー。んなことばっかやってるからまともにモテないのよ」 そう声を掛ける少女がいた。 「よけーなお世話よ。あたしはおねーちゃんと違って男なんか大っきら……」 「……どうしたのよ? 何人の顔じろじろみているのよ」 「……う゛ーん……何か引っかかる様な。なびきおねえちゃんの声聞いていたら何か湧き上がる様な……」 「それ失礼だと思わない?」 そう、それは何ら変わらない―― そして何時もの様に学校へ―― 「天道あかねが来たっ!!」 校門前にユニフォームを纏った多くの男子が待ち構え―― 「天道あかね!」 「学校にはいっちゃいかーん!!」 「君は狙われているんだーっ!!」 行く手を遮っていく―― 「どいてっ、遅刻しちゃう!」 「待てい!」 「天道くんっ!!」 「力づくで止めてやる!」 「ほかのやつに倒されるくらいなら、ぼくの手にかかって…」 だが、その程度の相手に倒されるわけも―― 「毎朝大変ねー、なびきの妹さん」 「あかねなら大丈夫だって」 その言葉通り、全て撃退し長い髪をたなびかせながら―― 「あーもう毎朝毎朝、うっとおしいっ……男なんて……大っき……」 「まったく無粋な連中だな。みんな君に勝ったあかつきには、交際を申し込むつもりらしいが…」 「あ、九能先輩。おはようございます……というか……」 そうあかねに話しかけてきた男は―― 二年E組九能帯刀、剣道部主将高校剣道界期待の超新星、人呼んで(?)風林館高校の蒼い雷―― 「さて…天道あかねくん」 加えていた薔薇をあかねへと投げ渡し、 「お手合わせ願おうか」 「……九能先輩がその元凶なのよね……」 そう、 『あかねくんと交際したくば戦って勝て! それ以外の交際申し込みはぼくが許さん!!』 そう青年の主張を繰り出して来たからなのだ――だが御覧の通り毎朝毎朝この激闘の攻撃は繰り返されている、つまり交際希望の男子生徒軍団そして九能に対し―― 「勝てちゃうのよねー、なぜか」 というわけでこの朝も完全敗北した九能は、 「5枚一組三千円」 「おうっ、なんたる猛々しさ。買おう」 クラスメイト(あかねの姉)からあかねの写真を購入したのであった。その変態性故に―― 「九能は風林館高校最強の男だが」 「同時に最悪の変態だ」 男子生徒達はあかねを諦めず明日も挑むだろう。そう、これからもずっと―― 「誰が変態だ!」 そしてまた九能もまた、あかね『だけ』を求め続けるだろう―― その一方―― 「やあ、あかねちゃん」 「あ、若先生、こんにちわ」 「こんにちは」 小さい頃からケガをした時世話になっている骨接ぎの東風先生を前に言葉が出ない――そんなあかねをよそに、 「最近来ないね。ケガしてないの?」 「はい、だってケガするようなことしてないし…」 それは先程男子生徒軍団をぶちのめした少女とは思えない表情だった――そう、あかねは東風先生に―― だが―― 「あ、そーだあかね。学校の帰りに…東風先生のとこに寄ってくんない? 借りっぱなしだった本。返して来てほしいんだけど」 他意の無い純粋な頼み事である。だがあかねにとってはある意味では都合の良い話であろう。しかし、 「かすみおねーちゃん自分で行きなよ。あたし、きょうはちょっと…」 「そお? じゃ、しょーがないわね」 そう断るあかねだった――もっとも結局、ちょっとしたケガをしてしまい向かってしまったわけだが―― 「ごめんくださあい」 「(おねえちゃん)」 「やあっ、かすみさん、えっときょうは…」 東風先生の表情が明らかに変化している―― 「あの、借りていた本と…あの、お口に合うかどうか…」 そう手作りクッキーの包みを出す―― 「やあ、これはマスクですね。うん、口にぴったりだ」 それは包みです。 「いえ、そうじゃなくてね」 そして口に、 「おいしい」 「お皿です、それは」 食べられません。 「東風先生っていっつもおもしろいかたねえ」 「そお? おねえちゃんがいない時は、違うんだけどなあ。じゃ、あたし先に帰るね」 「どうしたのかしら、一緒に帰ればいいのに」 ちなみにこの時、接骨院に他の患者が来る事は無い。 「今、ヘタに踏み込んだら命にかかわる」 「東風先生も普段は名医なんだがなー」 そう、それぐらい東風先生はあかねの姉であるかすみを――それをあかねは理解している―― ずっと小さい頃から―― 「それじゃあかねちゃん、お大事にね」 「東風先生さよーならー」 「あら、あかね」 「あ、かすみおねえちゃん」 「またケンカしたの? いつも妹がすみません、東風先生」 「はあ、まあ、その、なんです」 「(先生…)」 理解していたのだ、最初から――だが、 「あかねは本当に男の子みたいね」 「もっと女らしくしないと、東風先生に嫌われちゃうわよ」 「(髪をのばせば…あかねだっておねえちゃんみたいに…)」 そう、だからこそ髪を―― それでもその想いが報われる事は無い―― その長い髪をなびかせ―― 「天道あかねが来たっ!!」 「天道あかねっ! おれと交際…」 同じ事を繰り返す――そんな日々の繰り返し―― 「あーもう、うっとおしいっ……男なんて……大っき……」 夢というのは呪いと同じともいえる―― 呪いを解くには夢を叶えるしかない―― だが、途中で夢を挫折した者は一生呪われたまま―― そう、何かの切欠が無い限りは―― 例えば、クラシックギタリストの夢を絶たれた男が、同じ夢を持つ者に出逢える様な奇跡が起こるかの様に―― そういう出会いの奇跡が起こらない限り――あかねの呪いは解ける事は無いだろう―― だが、例え呪いであってもこれもまたあかねにとってかけがえの無いものに違いは無い―― なびきに九能、かすみと東風先生、彼等との日々もまたあかねにとっては大切なものなのだから―― Scene03. One Day , One Dream ~君がいない世界~ 「ん……うん……」 そしてショートカットの少女は意識を取り戻す。 あかねは周囲を見回す、近くに池がある事からH-5にある池近くという事だろう。 「東風先生……」 どうやら夢を見ていた様だ、長い――そんなに昔でも無い気もしたが、遠い遠い昔の事の様に思える。 「確か……」 何故自分は意識を失っていたのだろうか? 記憶の意識をたぐり寄せる。 「そう、確かあの機……」 『機械』と言おうとしたが言葉として紡がれないでいた。 「……仮面ライダーをこわ……倒した後……」 それから先の記憶が無い。恐らくNちゃんの力を限界以上まで引き出した故に制御しきれず意識を失ったのだろう。 「ぐっ……」 全身を動かす――ダメージで上手く動か――と思いきやそれほど激痛は感じない。 「躰が軽い……どうしてかしら……」 あれだけの激闘だったのに何故負担が無く、むしろ調子が良くなっているのだろう。流石に不思議に感じるが、 「ううん……気にしちゃだめ……」 そう、そんな事は些細な事だ。時計を見る。もう少しで16時という所だろう。 「行かないと……」 そう言って近くに落ちているデイパックを拾う。 「あら?」 そんな中、近くに箱が落ちているのを確認する。仮面ライダー二号が持っていたものだったのか? ともかく箱の中身を確かめる。中には説明書きもあったが…… 「何よ……これの何処が……」 説明書きの内容と中身のギャップからあかねは失望していた。 ともかくその箱をデイパックに仕舞う。無用の長物とはいえ捨て置く理由は無いだろう。 『進め……貴様の求めるものの為に……』 「そうよ……行かないと……」 足を止めるわけにはいかない。あかねにはやらなければならない事があるのだ―― 自身にとって大切な日常を守り、そこへ帰る為に――参加者達を壊し優勝しなければならないのだ―― 『壊せ、貴様にとっては只の『機械』なのだろう……』 声に刃向かう事は無い。それはあかね自身が感じていた事なのだから―― 「東風先生やかすみおねえちゃん達を……守らないと……」 そして森へと戻る、 「そう……あそこにはダグバの仲間がいる……それを壊さなきゃ……」 何の為にダグバを? それを考えようとしたが思考を振り切る。 考えるまでも無い、壊さなきゃ守れないからだ―― 故に少女は進む。自分達の大切な日常を壊す『機械』を壊す為に―― 『進め……闇黒皇帝の忠実なる……『壊れた機械人形』……ファウスト……』 自身もまた壊れた『機械』に成りはてている事に気付かぬまま―― さて、読者諸兄の中には今の彼女の状態について理解出来ていない所もあるだろう。 恐らく読者諸兄が感じている最大の疑問点はこの一点に尽きるだろう。 『今の天道あかねは早乙女乱馬の事を忘れているのでは無いか?』 そう感じている方が多いだろう。何しろ、先程までは散々乱馬達を取り戻す為に戦っていながら、今の彼女の口から彼の名前が出る事は無い。 だがその答えはNoだ、あかねは乱馬の事を決して忘れてはいない。 そう、考えない様にしていないだけの話だ。 人の心の力を甘く見てはいけない。 プリキュアの光の力やダークメフィストの闇の力がどれだけのものであっても、それは良くも悪くも人の心を増幅するものでしかない。 言ってしまえば只の薬に過ぎないのだ。薬は所詮、元々持っている力を補佐する程度のもの。 どれだけ強い光が闇を浄化しようとしても、決して闇の力は消えない様に。 どれだけ深い闇が光を飲み込もうとしても、決して光の力は消えない様に。 人が持つ光と闇は決して消えないのだ。 例えプリキュアの力で浄化されようともあかねが自らの願いを諦めなかったのと同じ様に―― 例え闇があかねを冒そうとも、一番大切なものだけは決して冒されはしないのだ。 あかねだってそこまでバカじゃない。 自分の行動が根本的に矛盾し破綻している事に薄々気付いていた。 『機械』だから壊したって問題無い? 例えそうでも、その『機械』である仮面ライダー二号が人々を守る為に戦っていた事は理解している。 それを壊す事で彼によって守られる筈だった人々を犠牲にした事に違いは無い。 しかし『機械』を壊しただけだと納得しないとあかね自身が元の日常に帰れなくなる。 だからこそそう納得させる事で、自身の行動を正当化しようとした。だが―― 相手の正体も確かめず勝手に『機械』と断定し有無を言わさず壊したあかねはどうだろう? 人々の役に立つ『機械』だってある、にも関わらずそれを機械的に壊す―― それを行うあかねの方がよっぽど『機械』だろう。壊されるべき―― だからこそ考えない様にしていたのだ。それに気付いてしまったらもう本当に戻れなくなってしまうから―― 乱馬の為、例えそうだとしてもそれを乱馬が求めるわけがないのだから―― しかしそんなメッキなどすぐに剥がれてしまう―― 自身の罪などすぐに突きつけられる―― 左翔太郎は言った、 『天道あかね……お前の罪を数えろ……!』 彼女の罪は一体何か? ドーパントとなって彼女を信じる仲間達を泣かせた事か? 『天道あかね……彼女は既にアインハルト・ストラトス、梅盛源太……そして早乙女乱馬の生き様を泣かせた……』 『ああ……わかっているぜ……フィリップ……!』 そう、それ以上に早乙女乱馬の願いを踏みにじっている事が最大の罪だ。 翔太郎だってあかねがそこに至った経緯は理解しているし自身にも責任がある事は理解している。それでも、いやその罪を数えたからこそあかねにその言葉を放ったのだ。 そう、翔太郎も――いや翔太郎だけじゃ無い、佐倉杏子達は皆自分達の罪を数え、数え切れなくてもそれと向き合い乗り越え前に進もうとしている。 だからこそのその言葉だ―― しかし未だあかねはその罪を数えようとせず逃げている、 どれだけ逃げても再び突きつけられあかね自身を苦しめるとしても―― それはある意味呪いとも言える。その呪いを解く術は自らの罪と向き合うしかないが――その為には何かが必要だろう。 そう、東風先生への想いを振り切った時の様な切欠が―― 気が付いた方も多いだろうが、あかねの夢の中での彼女の髪は長かった。 しかし、現実のあかねの髪は御覧の通り短い。 何故、夢の中でのあかねの髪は長かったのだろうか? その答えはあかねの髪が短くなった理由にある。 あかねの髪は乱馬と響良牙との対決の際に、良牙の放った鋭利な傘によって断ち切られている。 あかね自身当然のことながらショックであった が、逆にこれが良い切欠となったのも事実である。 元々あかねが髪を伸ばしていたのは東風先生への想い、つまりは恋心によるものだ。 しかし東風先生の想いは昔も今もかすみに向いており、あかねの方に向くことは絶対にあり得ない。 あかねは最初から勝ち目のない戦いをしていたのだ、そしてそれはあかね自身理解している。それでも心の何処かで諦めきれなかったのだろう。 そう――それを断ち切る切欠となったのだ。偶発的に起こった断髪は―― つまり、乱馬と良牙がその呪いから解放したという事だ―― だが、夢の中でのあかねの髪は長かった――それが意味する事は? そう、夢の世界では早乙女乱馬、そして彼と深い関係にある響良牙の存在は消えている。 いや、それどころか乱馬に深い関係のある人物全てが存在していないと言っても良い。 その世界では乱馬と良牙が存在しないわけなのでその対決によりあかねの髪が断ち切られる事は無い。 だからこそあかねの髪は長かったというわけだ。 繰り返すが別にあかねは乱馬の事を忘れているわけではない。むしろ今でも深く想っている。 だからこそ、その存在を考えない様にしているだけなのだ。それ故に彼女の思考から乱馬及び良牙の存在が消えているのだ。 先に説明した通り、人の心はそこまで弱いわけじゃない。大切なものはそうそう簡単に壊れたりはしないのだ。 それを守る為の措置といっても良いだろう。 そう、結局の所、どれだけ正当化してもあかねの罪は決して消えやしない。それだけ闇が深く浸食しているのだ。 それでも乱馬や良牙への想いは穢させない――それ故に、乱馬達への想いをかつて抱いた東風先生達への想いへと差し替えたのだ。 無論、それが許される事ではないし、只の逃避に過ぎないだろう―― だが、幾ら見て見ぬフリをしていても何れその罪は突きつけられる。 何かの切欠で乱馬や良牙の事を考えてしまい、その罪で苦しむ事になる。 そう、未だ良牙は健在、あかねは知らないが良牙は人の心を失った死人や、人の記憶や体を奪われた機械、彼等が人として足掻き続けた事を知っている。 良牙にとって彼等は『機械』であっても『人間』以外の何物でも無かった。そしてその生き様を受け継ぎ、同じ様に心を受け継いだ仲間達と共に進み続けている。 出会える可能性は決して高くは無い。だが決して低くも無い。何にせよその時が来ればもうあかねは逃げる事は出来ない。 その時が来ればもう無視は出来ないのだ。 その時に罪を数え、連鎖を切らない限り―― 天道あかねに掛けられた呪いは解けず、決して救われる事は無い―― Scene04.EGO~eyes glazing over 「ようやく動き出したか……」 流石にあかねとの戦闘でのダメージもそれなりにあった故、黒岩は少し離れた所であかねの様子を確認しつつ躰を休めていた。 Rナスカを一蹴し完全勝利したメフィストは早々にトドメを刺そうとした。しかし、その直前―― 「ぐっ……ダグバ……」 そう無意識下の内に呟いた言葉を耳にした瞬間、考えたのだ。 「事情は知らんがこの女……ダグバに恨みがあるらしい……恋人でも殺されたか……」 それに気が付いた時、メフィストの脳裏に1つ考えが浮かんだ。 どのみちこの女は死に体、だがこのまま捨て置くよりも利用した方が良いのではなかろうか? 「それに、この力を試してみたい所でもあるからな……」 「う……あ……」 そう、黒岩は『闇』をあかねに注ぎこんだのだ―― 聡明な読者諸兄は既におわかりだろう。 黒岩は手駒として――いや、闇黒皇帝の忠実な臣下としてあかねをファウストにしようとしたのだ。 そう、かつてのメフィスト溝呂木眞也が自らの目的の為に孤門一輝の恋人である斎田リコを、この地においても美樹さやかを傀儡としてファウストにした様に―― しかし同時に疑問に感じている方も多いだろう。 それが本当に可能かどうかだ。 さやかがファウストになった時、ファウスト化の条件として『骸である人間』が必要であった。 つまり死者で無ければファウストに出来ないという事だ。 だが、デスゲームの性質上、死者の蘇生は最大級のタブー、それ故に実質的に死者蘇生に限りなく近いファウスト化は基本的に不可能とされている。 では何故さやかはファウスト化出来たのか? 一応、さやか達魔法少女は魂がソウルジェムによって分離しているから、肉体的には死亡している故に可能だった――そう理由付けは成されている。 だが――果たして本当にそうだったのか? その時さやかは実質的に死亡していたのか? そもそも魔法少女が肉体的に死亡しているという表現自体ある意味微妙な表現ではなかろうか? 確かに自身の身体の変貌にさやか自身ゾンビみたいだと言い放ったからそう考えるのも道理と言えば道理。 が、客観的に見れば普通の人間と躰の構造が違うだけの人間でしかないのではなかろうか? そういう魔法少女しかいない世界にとってはそういう表現が的を得ても、特異な存在が数多く存在するこの状況下においてはそうは言い切れないのでは? そう、本質的にはショッカーに改造された改造人間である仮面ライダーに近いと言えよう。 そもそもBADANに改造された村雨良ことZXはその躰の殆どを機械にされており自らの記憶は別のメモリーキューブとして収められている。そういう観点で言えばZXは魔法少女と躰の構造は殆ど変わらない。 ある意味ではZXもまたゾンビと言えるのではないか? 実際、この地においても記憶が無い故に死人の様な表情をしていた。 また酵素の力で無理矢理躰を機能させている大道克己といったNEVERも実質的には死人と変わらない。 こういう観点で言えば、NEVERや仮面ライダーも躰だけで言えばファウスト化の条件は満たしているとも言えよう。 さて、今一度さやかの状態について振り返ろう。 誤解されがちだが、さやかの躰はゾンビと表現されていても肉体機能は人間のそれと殆ど変わらない。 その特異性故に誤解している人も多いが魔法による回復力が無ければ回復力も人間と違いは殆ど無い。 これはその事実に気付くまで、さやか、巴マミ、それに杏子が人間と殆ど同じ様に過ごしていた事からも明らかだ。 つまり、この地においてはさやかは死人の一種であるゾンビというよりはむしろ回復力の高い人間と言った方が正しい。 事実として、さやかが闇を注ぎ込まれた時、さやか自身の魔法の特性(回復特化)によりさやかのダメージは回復に向かっていた筈だ。それを死人と表現するのは些か勇み足とも言える。 長々と説明したがつまりはこういう事だ、ファウスト化する条件は――『死体、あるいはそれに近い状態にある生物』と解釈する事も可能かもしれない。 勿論、これ自体は元々の世界における条件とは違い、死者蘇生が不可能なこの地における特例かも知れないことを付記しておく。 では今のあかねに当てはめてみよう。 結論から述べれば、今のあかねの肉体の状態は非常に危険だ。 危険の伴うT2ガイアメモリの連続使用、それも常人では耐えきれないレベル3のRナスカを乱用している。 それが可能としたのは伝説の道着のお陰ではあるが、それでも彼女の肉体には致命的なダメージが蓄積されている。 ある意味、伝説の道着によって生かされている状態とも言えよう。 加えて、二号やガウザー、それにメフィストとの激闘によるダメージも甚大、それこそ一歩間違えればその生命力が尽きていても不思議は無い。 そう、今のあかねは先程黒岩が表現した通り死に体、ある意味ではゾンビに近い状態とも言える。 加えて、ガイアメモリによる毒素や黒岩の指摘もあり彼女の精神は限界を超えて摩耗しきり、その闇を広げている。 その観点で言えば限りなくファウストの素体としては都合が良すぎる存在だ。 それ故に、ファウストの力はあかねに注ぎ込まれた――そのお陰で結果としてあかねの体力はある程度回復している。 とはいえ、それで完全にファウストになったかどうかはまた別の話だ。前述の様に致命的な状態とは言え死亡しているわけではない。 完全に支配出来ているかどうかも不明瞭だ。黒岩の声は届いているが洗脳状態にあるわけではないし、当然ファウストへの変身が可能とも限らない。 ともかく今後については別にして、あかねの中にファウストが眠っている。今はそれだけ理解していただければ十分だ。 その闇の種子が芽吹くかどうかは別の話、このまま眠るだけかもしれないし、ファウストとして覚醒するかもしれない。 それはここから先の物語が示してくれるだろう。 「せいぜいこの俺の為に働いて貰うぞ……我が忠実なる配下よ……」 黒岩は考えた。この後自身はガドルにダグバ、そしてウルトラマンとの戦いが控えている。 メフィストの力は絶大だが、それでガドルやダグバに届くかは不明瞭。更に戦力を増強する必要がある。 だからこそ、ダグバに対し恨みを持つあかねを自身の配下に選んだのだ。 とはいえ最初から全てを狙っていたわけではない。 あかねの精神をここまでえぐる事が出来たのは黒岩が元々世知辛い人間社会で生きるダークザイドのカウンセリングをしていて経験からだ。 カウンセリングという事は相手の心を理解した上でそれを助けるというもの、つまりあかねに行った事はそれの逆ベクトルの行動だ。 あかねの心を理解した上でその矛盾を突きつけ精神にダメージを与える。別に壊す事に悦楽を感じているわけではないが、手段としては有用だと感じていた。 そしてたまたま戦力として使えるから配下にした、それだけの話だ。 「そう……ガドルもダグバもウルトラマンも通過点に過ぎない……この力を以て大黒岩帝国を作り上げる……この闇黒皇帝がな……そしてこの手に総てを手に入れる!!」 そう、ウルトラマンの光の力も欲していたが、黒岩にとってはそれも過程に過ぎない。 よくよく考えて見れば、ガドル戦の前後の辺りの記憶がいまいち曖昧だがそんな事は俗事に過ぎない。 重要なのは野望を果たす為に進み続けることだ。それ以外は通過点でしかない。 そんな黒岩にとって真に敵としている者は只1人―― 「涼村暁……超光戦士シャンゼリオン……」 此処にはいない宿命のライバルへと宣言する。恐らくはそのノーテンキラキラぶりで変わらず人に迷惑を掛けつつ光り輝く道を進んでいるのだろう。 途中でのたれ死んでいるのならば所詮それまでの存在、思い出として記憶には留めておくが気にする必要は無い。 なんにせよ、奴が光で自分が闇なのは最初から決まっていた。 闇と光は表裏一体、互いが引き合うのは当然の理だ、 「知っているか! 貴様が光の道を進み続けるならば俺は闇の道を行く、そしていずれ真の闇黒皇帝となり、貴様との雌雄決するであろう、そしてその瞬間が真の大黒岩帝国建国の日だ! その日は何れ全宇宙世界における祝日となり人々が祝うであろう、その時を待っていろ!!」 【1日目 午後】 【H-4/池沿い】 【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】 [状態]:頭部・腹部を中心に全身に裂傷(ラーム吸収や闇の力によりある程度回復)、凪のラーム吸収、メフィストの闇を継承 [装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、デリンジャー(2/2) [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1 [思考] 基本:闇黒皇帝として総てを手に入れ大黒岩帝国を建国する。 0:壊れた機械人形ファウスト(あかね)を配下にしガドル及びダグバ戦に備える。 1:宿命のライバル涼村暁との決着をつける。まぁどうせアイツは変わらずバカやっているだろう。死んでいたらそれまで、気にする必要は無い。 2:人間でもダークザイドでもない存在を一応警戒? 3:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる。 4:桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのなら闇黒皇帝として利用する。 5:ネクサスの力を得る。だがそれは通過点に過ぎない。 [備考] ※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。 ※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました) ※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました 。 ※暁は違う時間から連れて来られたことを知りました。 ※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。 ※森林でのガドルの放送を聞きました。 ※西条凪のラームを吸収しました。吐き出したり、死亡したりすれば凪にラームが還ります。 ※ダークメフィストの力を継承し、ダークメフィストツヴァイとなりました。そのため、ウルトラマンネクサスの光への執着心も生まれています。溝呂木が使ったような生身での特殊能力も使えるようです。 ※メフィストの力を継承した時の記憶が若干欠落しています。その為、石堀の正体を失念しています。 ※あかねにファウストの力を植え付けました。(本当の意味で死亡しているわけではないので)彼女が真にファウスト化出来たかは現状不明ですが、現段階でも推定1エリア程度ならば声を届かせる事は可能です(但し、洗脳が出来るとは限りません)。 それに伴い、現状あかね以外の参加者をファウスト化させる事(闇化能力発動)は不可能です。但し黒岩はまだそのことに気付いていません。 Scene05.闇黒皇帝 さて――御覧の通り、あかねも黒岩も目先のガドル戦へと向かっていた。 その時刻は16時から数分前、近い内に新たな戦いが繰り広げられる可能性はそう低くはない。 とはいえ、今はまだそれを語るべき時では無い。焦ることは無い、長い物語だ、じっくりと紡いでいこうではないか。 ところで、メフィストとなった黒岩とRナスカとの戦いは描かれていないことに気づいているだろうか。 とはいえそれは仕方が無い。当の本人であるあかねはその事を覚えていないのだから。黒岩以外覚えては―― 否、目撃者はいた。 『Formidable enemy terrible darkness emperor Mephisto ...(闇黒皇帝メフィスト、恐ろしい強敵だ……)』 そう、あかねの懐で身を潜めていたフェイト・テスタロッサのデバイスバルディッシュが大体の事を把握していた。 といってもそこまで語れる内容はない。 何しろ、Rナスカになったまでは良かったが―― 結局その段階で意識は途切れ暴走状態に陥ったのだ。 暴走状態とはいえ既にボロボロの状態、その攻撃に精細さはなく、一方的にメフィストの攻撃を食らい続け倒されただけの至極単純な話だ。 そして、そのままファウストの力が注ぎ込まれるのを目撃した(この表現も少々おかしな気もする)というわけだ。 勿論何をしたかまでは知らない。ただ、あかねがこの戦いを覚えていない事から魔法の類いを使い記憶操作を行っただろうと推測していた。 その後の動きが何処か虚ろになったのもその影響かもしれない。 本来ならばバルディッシュ自身も何かすべきだったかも知れないが武器としての機能が破壊されている以上、どうする事も出来ない。 いや、例え何か出来てもあかねに力を貸す事だけは絶対になかった。というか戦いに巻き込まれてこのまま破壊されても良かった所だ。 実の所、人間の心を持たないインテリジェンスデバイスでしかないバルディッシュにしては少々おかしな話だが……元々良い印象を持っていなかったあかねに対し嫌悪感を抱いていたのだ。 その理由は至極単純、あかねが他の参加者全てを『機械』と断じて平然と破壊しようとしたからだ。 一応、気まぐれにバルディッシュも一度だけ確認するかの様に声を掛けたのだ。しかしあかねは全くそれを気にも留めなかった。 お陰でバルディッシュは完全にあかねを敵と断定した。 そうだろう、あかねは躰の構造が人間と違うというだけで『壊しても構わない機械』と考えたのだ。 バルディッシュの周囲には人間とは言えない者が多い。 自身を作り上げた山猫をベースにしたプレシア・テスタロッサの使い魔リニス、 犬をベースにした使い魔でフェイトの相棒とも言えるアルフ、 しかしバルディッシュ及びフェイトにとってはかけがえの無い家族ともいえるべき存在だ、人間ではないとしてもだ。 そんなバルディッシュが他者を『機械』と断じて自身の行動を正当化しようとするあかねを許せないと思うのはそうおかしな話じゃ無い。 大体、あかねはフェイトとユーノ・スクライアの無残な死体を見ている筈だろう、それの何処が機械だ? 黒岩が言っていたがどんなバカだってそれを機械という奴はいない筈だ(実際、後々そのバカこと涼村暁がちゃんと埋葬している、勿論機械だと思ったりはしていない)。 どれだけバカな事を言っているのだと、それはひょっとしてギャグで言っているのかと思う。 事情があるのは理解はしているがここまで意固地になって自身を正当化するのに怒りを覚えていた。 主と声が似たプリキュアに言わせれば『堪忍袋の緒が切れました』といっても良いだろう。 それぐらいブチキレテいたと言っても良い。ある意味黒岩の言葉で若干溜飲が下がったとも言える(ただ、その黒岩が危険人物なので喜んで良いのかは微妙) とはいえバルディッシュの感情問題はどうでも良い。正直状況は良くは無い。 果たして左翔太郎と佐倉杏子は無事なのだろうか? 杏子は乗っていたわけなのだから敵対しているかも知れない。 そう思うとどうして良いかわからない所だ。 そもそも現状から動けない以上どうにもならないのだが――それは今更言っても仕方が無い。 そんな中、バルディッシュはあかねが先程見つけたものがどうにも気にかかったのだ―― そう、それは先の戦いであかねが黒岩のデイパックを落としたときに零れ落ちたもの。 黒岩もそれは気付いていたが自身にとっては不要なもの故に別段気にも留めなかったものだ(だからこそデイパックは回収したがそれは回収していないのだ)。 そして、あかねにとっても無用の長物―― いや、おおよそ殆ど総ての参加者にとっては無用のもの、つまり役に立たない道具だ。 だが――恐らく、この地においてこの道具こそ相応しいものはないとも言える。 では、その道具が何かを公開しよう。 それは『evil tail』、直訳すると悪魔の詩で寓話の題名やアイテム名に昔から使われていた言葉。 そしてそれはミュージアムの元締にして園咲家当主園咲琉兵衛が行おうとしたガイアインパクトにとって必要な重要な道具という事だ。 ちなみに説明書きには『園咲琉兵衛がガイアインパクトに必要としていた大事な道具』としか書かれていない。 だがその正体は―― 1本の刷毛――文字の入った―― 確かに誰が見ても無用の長物だ、期待外れの代物と言っても良い、黒岩もあかねも失望しただろう。 その文字を見てもだからどうしたとしか言いようが無い。 では、果たして本当にそうなのだろうか? 『That is ...name(アレは……名前)』 書かれていた文字は『冴子、らいと、わかな、琉兵衛、文音』、それを見た瞬間、バルディッシュは理解したのだ。 そう、そこには園咲家の家族の名前が刻まれていたのだ。冴子は参加者の一人、そして『らいと』が冴子の弟来人ことフィリップを示しているのは翔太郎達との会話で耳にしている。 故にそこに刻まれているのは園咲家の家族という事を看破したのだ。 実は、ガドルに襲撃される少し前、こんなトークもしていたのだ。 『けどよ、家族なのはともかくとして兄ちゃん達の敵なんだろ、本当に信用できるのかよ?』 『私は信じてもいいと思う……』 『フェイト……そうだね、僕もそう思うよ』 『家族総出でドーパントだっけ、そんな怪物にしている連中なんて本当に信用……大体フィリップの兄ちゃんだって利用されていたんじゃねぇのかよ。大事な家族だったらそんな風に……』 『ま、杏子の言う通りだな……だが、冴子や琉兵衛、それに若菜姫……そしてシュラウド……フィリップの母親も心の何処かで家族仲良く暮らしたかったって思うぜ』 『なんなんだそのシュラウドって珍妙な名前は……いや別に本名聞く気ねぇけど』 『でも杏子、やっぱり家族だったら本当は……』 『まぁいいけど、せいぜい寝首をかかれない様にしとけよ』 『ああ、判っているそんなヘマをする気はねぇよ』 そんなやり取りがあったのだ。恐らくあの時シュラウドと呼ばれていたのが文音の事だろう。 冷静に考えて見れば何を考えてシュラウドと名乗ったのか(事情はともかく何故シュラウドという意味で)理解に苦しむがそれは別の問題だ。 重要なのは園咲家の家族の名前が刻まれた『evil tail』は何なのかだ。何故それがガイアインパクトにとって大事なものなのだろうか? まず、悪魔の尻尾という名前の性質上、それがまじないの品の類という事は推測出来る。では一体何をまじなったのだろうか? 推測するに――それはそこに描かれた家族が無事である事ではなかろうか? となれば何故それが必要となるのか? 詳しい事は不明瞭だがガイアインパクトはミュージアムにとって最重要案件だったのだろう。何としてでも果たさねばならない――例えて言うならプレシア・テスタロッサがジュエルシードを何としてでも集めようとしたのと同じ様に―― そう思考した瞬間、『evil tail』が何かを理解したのだ。 理由はどうあれ琉兵衛はガイアインパクトを成そうとしていた。だが、その過程で家族はバラバラになってしまった―― それでも琉兵衛は止められなかった、家族すらも平然と犠牲にしてしまう怪物となってしまうのを―― だからこそ『evil tail』が必要だったのだ。家族が仲良く暮らしていた時、人間だった時の感情を忘れない為に―― きっとそれは誤魔化しに過ぎない。だが、誤魔化しでもなんでもそれが最後の良心であったのは間違い無い―― 何の力も無い、まやかし程度の力を持たないそれを求めたのがその証拠なのだから―― 恐らくそれが支給されたのは、例え過酷な状況故に修羅の道を歩む事になったとしても―― それを見て、人間だった感情、最初の頃の感情を忘れないで欲しいという主催側からのささやかな救いだったのかも知れない。 だが余りにも皮肉な話だ。 人間から怪物へと変貌していく黒岩やあかねは全く『evil tail』の意味を理解出来なかったのに、 只の機械でしか無いバルディッシュが(断片的に情報を得ていたとはいえ)その意味を理解したのだから―― 願わくば――出来うるならば――バルディッシュは翔太郎及びフィリップの力になりたいと思う―― そう――重なったのだ、彼等とフェイトが―― 成果が上がらぬ故に娘であるにも関わらず辛い仕打ちを行ったプレシア、それに憤るアルフだったがフェイトは応えたのだ。 『ヒドイことじゃないよ、母さんは私の為を想って……』 『想ってるもんか、そんなこと! あんなのタダの八つ当たりだ!』 『違うよ……だって親子だもん……ジュエルシードはきっと母さんにとって凄く大事なものなんだ……ずっと不幸で哀しんできた母さんが……私、何とかして喜ばせてあげたいの……』 そう、真意はともかくプレシアの所行は母親のそれではなく怪物と言っても良い、だがフェイトはそんな彼女を信じ続けたのだ。 きっとそれと同じなのだ――園咲家とそれを信じるフィリップとその相棒の姿は―― 恐らくフェイトもそれを願う筈、故に彼等の力になる事が自身の残された仕事だと―― だがそれが果たせる可能性は限りなく低い、状況が上手く動かなければどうにもならない。 だから今は祈り、願うしかない――例え儚くとも―― 『Wish them luck , Left and Right , Detective of one with two people ... (左と右、2人で1人の探偵、彼等にご武運を……)』 その祈りが届く様に――1人の男がが悪魔のしっぽに家族の幸福を願ったかの様に―― 『これはね外国で見つけた魔よけ、悪魔の尻尾だ。これに自分の名前を書いて……家族全員で祈ればずっとずっとみんな一緒だ』 【H-4/森】 【天道あかね@らんま1/2】 [状態]:ファウストの力注入による闇の浸食(進行中)、肉体内部に吐血する程のダメージ(回復中)、ダメージ(大・回復中)、疲労(大)、精神的疲労(大)、胸骨骨折、 とても強い後悔、とても強い悲しみ、ガイアメモリによる精神汚染(進行中)、伝説の道着装着中、自己矛盾による思考の差し替え [装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは [道具]:支給品一式、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス、evil tail@仮面ライダーW [思考] 基本:"東風先生達との日常を守る”ために”機械を破壊し”、ゲームに優勝する 0:森を進みガドルやダグバとの戦いに備える。 1:ダグバと遭遇した時は倒す。 [備考] ※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。 ※伝説の道着を着た上でドーパントに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。 また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。 ※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。 ※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。 ※第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。 ※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。 ※殺害した一文字が機械の身体であった事から、強い混乱とともに、周囲の人間が全て機械なのではないかと思い始めています。メモリの毒素によるものという可能性も高いです。 ※黒岩によりダークファウストの意思を植えつけえられました。但し、(死亡しているわけではないので)現状ファウスト化するとは限りません。 あかねがファウストの力を受ける事が出来たのは肉体的なダメージが甚大だった事によるものです。なお、これらはファウストの力で回復に向かっています。 完全にファウスト化したとは限らない為、現状黒岩の声が聞こえても洗脳状態に陥るとは限りません。 ※二号との戦い~メフィスト戦の記憶が欠落しています。その為、その間の出来事を把握していません。但し、黒岩に指摘された(あかね自身が『機械』そのものである事)だけは薄々記憶しています。 ※様々な要因から乱馬や良牙の事を思考しない様になっています。但し記憶を失っているわけではないので、何かの切欠で思考する事になるでしょう。 【バルディッシュについて】 ※ガドルとの戦いで破壊されたのは刀身部分です。その為、武器としての使用は不可能です。具体的にはスタンバイフォーム(待機状態)以外はほぼ使用不可能という解釈で構いません。 ※現段階で魔法のサポートがどれだけ出来るかは不明です。勿論、リンカーコア所持者でなければ使用はまず不可能です。但し対話によるサポートは可能です。 ※周囲の状況をずっと把握しています。その為、放送の内容も把握しています。 ※自己修復機能により自己修復は一応進行中ですが魔力によるブーストが無ければ使用出来るレベルまでへの回復はまず厳しいでしょう。 ※バルディッシュはフェイトの最期の願いを叶える為、翔太郎及び杏子の力になる事を目的としています。また、家族を信じたいフィリップ及び翔太郎の心情を理解した事で彼等に協力したい意志はより強くなりました。 但し、マスターであるフェイトが死亡している為、現状このまま何も出来ずに破壊されても構わないと考えています。 ※(フェイトを含めた参加者を機械扱い、機械を平然と壊す思考をする)あかねに嫌悪感を抱いています。その為、彼女に協力する意志は全く無く、むしろ敵対したいと考えています。 【支給品紹介】 evil tail@仮面ライダーW 黒岩省吾に支給、 園咲琉兵衛がガイアインパクトの為に必要としたもの、説明書きにはこれだけ書かれている。 但しその正体は琉兵衛が外国で見つけた魔除け悪魔の尻尾と呼ばれる刷毛、 琉兵衛によると自分の名前を書いて家族全員で祈ればずっと一緒という話で、園咲家5人(琉兵衛、文音(シュラウド)、冴子、若菜来人(フィリップ))の名前が書かれている。 実質問題、何の力も持たない只の刷毛でしかないが、家族を犠牲にし続けてきた恐怖の名を持つドーパントである琉兵衛は自身の変貌を恐れ、幸せだった頃の家族の象徴であるこの刷毛を求めていた。 ある意味では怪物に変貌していく恐怖の帝王に残った最後の人間の心の象徴だったのかもしれない。 ちなみに、翔太郎は琉兵衛ことテラー・ドーパントの力で恐慌に陥り戦行動不能状態に陥り、琉兵衛の手に落ちたフィリップの言葉を聞いても動けなかったが、これを見た事でその謎を確かめる為に園咲家に向かう程度に行動力を取り戻している。 Scene06.悪魔のしっぽ 時系列順で読む Back Aが求めるもの/やがて怪物という名の雨Next 確認 投下順で読む Back Aが求めるもの/やがて怪物という名の雨Next 確認 Back Aが求めるもの/やがて怪物という名の雨 黒岩省吾 Next 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) Back Aが求めるもの/やがて怪物という名の雨 天道あかね Next 愛
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Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE MainScene01 天駆ける超人 時間は少々前後するが、モロトフは先程G-8にある中学校から南下しH-8にある風都タワーへと辿り着いた。 勿論これ自体には間違いは無い。だが、1つ冷静に考えて見て欲しい。 その間に位置するG-8からH-8の道中の一点において数人もの参加者が集結しており今まさに戦いが起ころうとしていた、あるいは現在進行形で起こっていた。 同時に隣接エリアであるG-9では1つの戦いが、それも雷が鳴り響く程の激しい戦いが―― 何が言いたいかおわかりだろうか? モロトフはそれに一切遭遇する事、いや一切認知する事無く迅速に移動し風都タワーへと辿り着いた。 百戦錬磨かつ自ら完全なるテッカマンを自称するモロトフにしては些か注意が欠けているとは思わないか? 何故か? 幾つか理由があるがここでは2つ提示しよう。 1つはこのフィールドの広さにある。 これに関しては何度か説明はしているものの多くの読者諸兄の中には忘れている方も多いだろうが、今一度思い出して欲しい、 以前、モロトフはある参加者との戦いで半径数キロのクレーターを作り上げI-5エリアを崩壊させた。 正確な大きさは明言してはいないが数キロというからには下手をすれば直径にして10キロ強のクレーターが崩壊したと言っても良い。 最小で考えても直径で5キロ弱は確実に崩壊させたと考えるのが自然だ。 だが、それだけの大きさであってもI-5エリアの大半に収まっている。もう、何が言いたいかおわかりだろう。 つまり、1つのエリアは1辺の長さが数キロ(下手をすれば10キロ強)あるという事だ。 同時にそれは1エリア強程度しか離れていない中学校から風都タワーの距離も数キロあるという事を意味している。 同一エリアにいたとしても数キロも離れている、それならば早々都合良く遭遇しなくてもおかしくはないしむしろ自然と言えよう。 戦いの音や雷鳴に関してもそれだけ距離が離れているならば余程感覚が鋭いか、あるいは余程注意していなければ知覚出来なくても仕方が無い―― そしてここでもう1つの理由が重要となる。 実はモロトフ自身、出来るだけ早く事に及びたかった。その為できうる限り迅速に向かいたかった。 と、ここで1つ気になる事もあった。 それはこれまで何度か戦った中で気づいた事だが――自身の能力が抑えられているらしい。 それに憤りを感じるがこの際今は良い。重要なのはそれを失念したまま戦えば何れ足をすくわれかねないという事だ。 そこで、自身にかけられた制限を確かめる為にも―― モロトフは一旦、テックセットを行いテッカマンランスへと変身しとある事を行ったのだ。 クラッシュイントルード――クリスタルフィールドを形成し、装甲を変形させた上での超高速による突撃――その衝撃波等により一度に多勢を排除する事も可能なテッカマンの技の1つだ。 「ふむ、やはり何時もよりは威力は抑えられているか……だが脆弱な人間共にはこれだけでも十分だ」 実際に行った後、ランスはこう口にした。その言葉どおり威力は若干抑えられているのを実感した。 それでも、並の相手ならば十分武器にはなるし、数キロの距離も極めて短時間で移動できた事に違いはない為さほど大きな問題はないだろう。 何にせよ、風都タワーまで数百メートルの地点にまで到達した、ランスは一旦テックセットを解除しデイパックからパンと水を取り出しそれを口にしながら歩く。 このままテックセットしたままでも良かったが、テックセットしている間は消耗が激しい。ここまでの激戦を踏まえても栄養補給は必要だ。 かといってテックセットしたままでは食事がしにくい(というより全身を装甲で覆っているから当然と言えば当然だがまず不可能)、故に一度テックセットを解いたのだ。 何しろこれから行う事を踏まえれば、中途半端な力しか出せなかった――ではあまりにも格好が付かない。そう考えたというわけだ。 かくしてその少し後、モロトフは風都タワーに辿り着き、再びテックセットを行いボルテッカを放ち、風都タワーを瓦礫へと完全崩壊させたのだ―― が、ここで1つ冷静に考えて欲しい。 クラッシュ・イントルードはその性質上、非常に目立つ技とも言える。 他の参加者にそれを知覚されるリスクは考えなかっただろうか? 結論から述べよう。モロトフは別に構わないと考えていた。元々拡声器で参加者に自身の存在を知らしめるつもりだったのだ。 自身の姿が見られているのならばむしろ好都合だ、是非来てくれ、返り討ちにしてやると言いたい所だ。 言ってしまえば――モロトフは自身に絶対的な自信を持っていた。ラダムの中でも唯一無二の実力を持っていると――それ以外の連中など烏合の衆に過ぎないと―― だからこそ、一見すると無謀で愚かな行動ではあってもそれを迷うこと無く実行できたのだ―― そして物語は再び本来の時間へと戻る―― SubScene01 焦燥 疾走 振動 「はぁ……はぁ……」 全身に激痛が奔る―― それでも沖一也こと仮面ライダースーパー1は警察署へと走る―― 致命的な失策だった、怪人を力の持たない孤門一輝達や子供達のいる警察署方向に向かわせてしまう事になってしまった―― 件の怪人は自分の動向から目的地が警察署だと看破していた様だ。加えて放送でのボーナスを踏まえるならば向かわない理由は無い。 (注.実際は放送の意味には気付いていないが沖にそれを知る術は無い。また、最悪を考えるならば気付いていると考えるべきである) ともかく、可能な限り急ぎ奴よりも先に警察署に向かわなければならない。 「(奴は俺達が考えている以上に危険な存在だ……)」 その戦闘能力は言うに及ばない。だがそれ以上に恐ろしいのはその思考だ。 自身の快楽の為だけに強い者と戦いそれを倒す、その為ならば手段を一切選ばない危険な思考だ。 思い返せば先の戦い、自身の電撃攻撃で強くなった事からスーパー1にも雷を浴びせてきた。その目的はスーパー1を倒す為では無くスーパー1を強化する為―― 勿論、それでスーパー1が強くなるファンタジーがあるわけも無いが、奴は出来れば良いと考えそれを試したのだろう。 そして自身を見逃したのも自身をより強くなる存在であると願ったからでしかない―― では奴は次に何をする? どうやって自分を強くするつもりだ? 心技体の3つの要素から考えてみよう。 体……まずこれは不可能だ、短時間で肉体を強化する方法など存在しない。電撃で強化されるというのは例外中の例外、またそういう道具があるなら既に使っている筈だ。 技……戦闘技術が一朝一夕で身につく事などあり得ない。付け焼き刃だけで強化出来るほど甘くは無い。 となれば――心、それに働きかけるつもりなのだろう。 そう、奴はスーパー1を精神的に追い詰める事で強化を図ろうとしているのだ。 先の戦い、奴が『楽しい』という理由で戦う、あるいは人々の命を奪う事を聞いた時、自分は強い怒りともいうべき憤りを感じた。 それを見て奴はスーパー1を強いと評価しつつ、もっと強くなる事を期待したのだ。 それを踏まえて考えれば、奴は他の参加者を惨殺する事で自身の怒りあるいは憎悪へと働きかけ強化させるつもりなのだろう。 憎しみや怒りに囚われるつもりは無いがその感情が強い力を生み出す事は否定できない。奴のやろうとしている事は理にかなっている。 その手始めとして警察署にいる仲間達を血祭りに挙げるということなのだろう。あくまでもスーパー1といった強者に憎しみを抱かせ強化させる為に―― その思考故に奴は何としてでも自分が止めなければならない。警察署にいる面々では到底奴には勝てないだろう。 一応、事前の話し合いで明堂院いつきと蒼乃美希の両名が警察署に向かう手筈にはなっている(ただ、彼女達の性格上、深追いして戻るのが遅れる可能性もある――が、ここではこれ以上は考えない)。 確かに両名ともにプリキュアでその実力は相当なものなのは沖も理解している。 だが、彼女達を奴と戦わせるわけにはいかない。彼女達の力では奴には届かない、もちろんそれも大きな理由だ。 しかし一番に重要なのは彼女達は戦うには余りにも優しすぎるのだ。 人々を守るという意味では仮面ライダーとプリキュアは非常に似ている。しかしプリキュアはその名の通り、悪意を持った敵すらも癒やし浄化した上で救う、それが最大の特徴だ。 それ自体はむしろ非常に素晴らしいことだと思う。人々を守るとはいえ仮面ライダーの力の根本は破壊でしかない。 しかしプリキュアの力はそうではない、彼女達の力は浄化あるいは救済の力だ。 本当の意味で必要な力はむしろ彼女達の力と言ってもよい。 が――奴を相手に出来るかどうかは全くの別問題だ。 恐らく彼女達は奴をも救おうとするだろう。しかし、その願いは確実に奴には届かない、そしてその甘さが――彼女達を殺す事となる。 そう、哀しい事だが、彼女達の優しさが奴相手には完全に邪魔でしかないのだ。 優しさが必要無いとは言わない、だが優しさだけでは何も守れない、何も救えないという事なのだ―― 何度も繰り返すがだからこそスーパー1は走るのだ。 しかし他にも懸念はある。 確か放送では警察署にいる筈の仲間の1人である早乙女乱馬の死が伝えられていた。 何故警察署にいる筈の彼が? 何かの理由で警察署を離れその先で殺されたのか? もしくは警察署で殺されたのか? 仮に後者だとするならば――自分達が離れた後、何者かが襲撃した事になる。 そうなると、そこにいる仲間達がそのまま警察署に留まっている保証は何処にも無い。 いや、仮に前者だったとしても襲撃が無いという確証は何処にも無い。 放送前に襲撃が、あるいは放送直後現在進行形で襲撃されている可能性は多分にあるだろう。 何しろ奴の動向関係無く警察署は狙われているのだ。元々自分はそれから守る為に動いていた筈ではなかろうか。 だからこそ今は急ぐのだ、既にもう手遅れかもしれないが―― それでも守れると信じて―― だが、間に合った所で守れるのか――? メンテナンス無しでの長時間にして連続した激闘の結果、自身の能力は大分低下している。ファイブハンドの能力は使用不能、素のスピードやパワーにしても低下は避けられない。 今変身を解除した場合、再度変身が可能という保証すら無い状態だ。 こんな状態で奴に挑んでも――返り討ちに遭うだけだろう。 「ぐっ……!」 不安を振り払いながらスーパー1は走る――全身が軋むような痛みを感じながらも―― 何時しかスーパー1の眼前には川が見えてきた。警察署のあるF-9に向かう為にはこの川を越える必要がある。無論、何カ所かに橋はかかっているが―― 「橋を探す時間も惜しい……」 橋の所まで移動する余力は無い。敵は既に橋を越えているかもしれないし、素直に橋を渡る殊勝な奴とも思えない。故に―― 「飛び越える……!」 全速力で駆け高く飛び上がる――幾らスペックが低下したとは言え、十数メートル程度の川ならば十分に越えられる筈だ。 だが、丁度飛び上がろうとした今まさにその瞬間―― 突如、大気を震撼させる轟音がスーパー1の耳に響く―― 「なんだ……この音は……!?」 音の感触から大分離れた場所から発せられたものだろう。 それ故に例え同じ距離に他の参加者がいたとしても彼等にも同じ様に聞こえるとは限らない(スーパー1が知覚できたのは改造等によって感覚が強化されているため)。 だが、この位置にいても大気が震えるほどの振動が響いてくることを踏まえるとその場所で何かが起こったのは確実だ。 「何かが崩れていく……何が……うっ……!」 その時――急激に力が抜けていくのを感じた―― 「そんな……まさか……!」 チェックマシンによるメンテナンスを怠った事による身体能力の急激な低下、それが最悪のタイミングで起こったのだ。 偶然? 違う、それはある意味必然だ。 奴との戦いの後も、持てうる限り全力で走った。それ故にそれでなくても消耗していた体は加速度的に悪化していく。 それに加えての全力での跳躍、これでは無理が来てもおかしくはなかろう。 更に――轟く轟音によって一瞬程度ではあったが意識が外れていた―― 故に、崩れた体勢を整えるのにも間に合わせられず―― そのまま川の中間へと落ちて行った―― 川の流るる音が響く―― それ故に、直後響く『声』は仮面ライダースーパー1、あるいは沖一也に届く事は無い―― MainScene02 迫り来る闇 そこにはほんの数分前まで風の都、すなわち風都を象徴する巨大な建造物風都タワーがあった―― だが、それは無情にも1人のかつて人間であったテッカマン、テッカマンランスことモロトフによって崩れ去った。 そして瓦礫に座り、テックセットを解いたモロトフが静かに食事をしていた。 右手にパンを左手にペットボトルの水を持って。 「恐らくあと30分……いや、15分もしないうちに来るだろう」 風都タワーの崩壊に加え拡声器による呼びかけ、それを認知出来うる範囲は非常に広い。 市街地の大体半分に届いていると考えて良いだろう。 同時に風都タワーの様に明らかに目立つ建物が突然消失すれば流石に異常に気付く。 参加者はこぞって集結するだろう。 冷静に考えて見れば、主催者共の思惑に乗っているだけの様な気もするが、集った虫螻共を一方的に蹂躙し自らの力を主催者共に示すのもまた一興。 本当に上なのか誰なのか思い知らせようではなかろうか。 「確かにプリキュアとか魔法少女とか虫螻にしては強大な力を持つ者がいるのを少しは認めても良い……だが、我らがラダムのテッカマンには遠く及ばない」 慢心せずに戦えば例え相手がプリキュアや魔法少女であっても負ける事は無い、モロトフはそう断言する。 「唯一の懸念はブレード……」 最大の問題はブラスター化という高い代償と引き替えに膨大な力を得たテッカマンブレードだ。 その力が絶大で自らを凌駕するのはモロトフ自身身を以て知っている。流石にそれに対し考え無しに勝てると思う程モロトフは自惚れてはいない。 だが、歪な進化故に高い代償を得ているのだ。それ故にテッカマンエビルは肉体崩壊によって――死んだ。 それを踏まえて考えてもブレードも致命的とも言える大きな欠陥を抱えているのは間違いない。 それはエビルとの戦いの後、何も見えず聞こえない状態で只地を這い回るだけの無様なブレードこと相羽タカヤの姿からも証明されている。 エビルのものとは若干違うだろうが、戦士としてはあまりにも不完全な状態に違いは無かろう。 エビルから聞いた話では元々自分達の司令官であるテッカマンオメガからもブラスター化については反対しており、ブラスター化したブレードに関してもそこまで問題視はしていなかったのだろう。 それ故に、絶対に勝てない相手――ではないとモロトフは考えていた。 「そう……勝つ方法は2つ……1つは持久戦に持ち込む事だ」 ブラスター化のもう1つの弱点、それは長時間の変身は不可能という事だ。元々ブレードは不完全なテッカマン故に30分しか活動出来ない。 が、ブラスター化をそれだけの時間行うのは不可能だろう。 エビルとブレードの戦闘時間はブレードの限界時間と同じ30分、だが最初からブラスター化していたわけではなくその途中、そして戦いが終わり、ブレードは無様な姿を晒したのだ。 それを踏まえ、ブラスター化出来る時間は10~20分程度だろう。仮にこの読みが間違っていたとしてもどちらにせよ30分の制限時間からは逃れられない。 要するにそれだけの時間逃げ切れれば勝てるという事だ。凶悪な力を持つボルテッカも回避すれば何の問題も無い。 「………………だが、只逃げ回る事が勝利と言えるのか?」 勿論、不完全故の弱点を突くという意味では間違ってはいない。しかし余りにも後ろ向き過ぎるやり方は正直モロトフ自身気に入らない。 「私にも気に入る勝ち方と気に入らない勝ち方がある……となるともう1つの方法か……」 かつてブラスター化したブレードに破れた時の事を思い返す。 あの時は自身の渾身のボルテッカすら一切の傷を与えられず、圧倒的な力で返り討ちに遭った――正直思い出すのも忌々しい記憶だ。 ここで重要なのは此方の最強の攻撃力を誇るボルテッカを以てしても全くダメージを与えられなかったという事だ。 では、ブラスター化したブレードにダメージを与える事は不可能なのか? 答えはNoだ、例えブラスター化で装甲を強化した所でそれを越える威力を持つ攻撃を放てばダメージは与えられる。 それはブラスター化した事でパワーを強化したエビルが身を以て証明してくれた。 が――最大の問題はそこだ、どうやってボルテッカを越える威力を持つ攻撃を放てば良いというのだと。 ボルテッカは体内で生成されるフェルミオンと呼ばれる反物質を一斉に放つ砲撃だ、例外が無いでは無いが基本的に全てのフェルミオンを一度に放出する性格上、一度のテックセットで放てるのは一回限り。 唯一の例外が使用者の意志でフェルミオンの起動やエネルギー量を自在にコントロールできるエビルのPSYボルテッカである、当然これは例外なのでランスには不可能である。 つまり全エネルギーを放出するボルテッカはランス、というよりテッカマンにとっての最強の攻撃なのだ。それ以上の威力を誇る攻撃など可能なのか? 「それ以前にだ。例え幾ら威力が高くても当てる事が出来なければ意味などない……」 そう、ブラスター化したブレードのボルテッカも回避すれば問題無いと説明した通り、幾ら強力な攻撃でも命中しなければ無意味だ。 「……いや、方法はある筈だ。方法さえわかれば、有能なるこの私に出来ない事などない……」 だが、未だその方法を見つけ出せないでいた―― その時―― 「君がこの塔を崩したのかな?」 その声にモロトフが振り向くと、 「ふぅん……君なら僕を笑顔にしてくれるのかな?」 白服の優男が静かに立っていた。外見上は只の優男にしか見えない。 それ故、何時ものモロトフならば只の虫螻の1人としか認識できないだろう。 だが――その優男が放つ異様な雰囲気がそうさせてくれなかった―― 「……!」 口調こそ穏やかではあるが雰囲気だけで理解した。 目の前の優男は想像を絶する程の危険人物だ。 モロトフは見ただけでそれを理解したのだ。 故に―― 「何者だ……貴様?」 虫螻の名を問う事などまずあり得ない。それでも問わずにはいられなかった―― 「ダグバ……ン・ダグバ・ゼバ……リントからは未確認生命体第0号と呼ばれているけど……うん、好きに呼んで構わないよ」 SubScene02 転換 読者諸兄はこの展開に少々疑問を感じている事だろう。 電撃や冷気を操るリントとの戦いを終えた後、ン・ダグバ・ゼバは警察署方面に向かっていた。 そのリントが最初自身に構わずそこに向かった為、その場所には何かがあると考えていたからだ。 つまり、何故警察署方面に向かった筈のダグバが真逆の方向にある風都タワー跡に現れたのかという事だ。 風都タワーの崩壊、そしてランスの呼びかけを聞いたから? いや、それにしてはあまりにも早すぎる―― そう、そこにはある理由が存在していたのだ。 「あのリントが向かったのはあの方向……」 ダグバは早足で歩きながら考える。件のリントが向かおうとした方向に何があったのか? その方向には警察署がある。 警察署といえば、自分達グロンギのゲゲルからリントを守る為に戦うリントが集まっている場所だ。 確かクウガもまた彼等と組んでいた筈だ。 戦うリントやクウガが戦う理由、それはリントを守る為、それはダグバも理解している。 そして――リントが死ぬ事で彼等はより強い力を発揮する事も理解していた。 ゲゲルが進む度に戦うリント(警察)は新たな武器を投入し、クウガもまた新たな力を得ていた。 更にそれを裏付ける事例があった。 ゴ・ジャラジ・ダのゲゲルがそれだ。 流石に冗長化する為、細かい内容についての言及は避けるが、要点を纏めると、割と力押しによる手段の多いグロンギの中でも極めて陰湿な手段を取っていた。 その結果、比較的スマートな戦い方をするクウガにしては非常に珍しく、オーバーキルとも言える攻撃を叩き込んでいた。 つまり、リントを守れなかった絶望がクウガに力を与えていたのだ。 思えば、自身のベルトのバックルを破壊したリントもそれで力を発揮していた。 それを踏まえて考えれば、警察署に集まっているリントを殺すところを見せれば件のリントもきっと怒りでより強くなってくれるのではなかろうか? だからこそダグバは地図を広げながら足を進めていた。 「……そういえば……どうしてあそこに僕達がいたあの思い出の場所があるんだろう?」 今更ながらにD-6にあるグロンギ遺跡の存在が気になった。何故あそこに自分達の遺跡があるのか? 「まぁいいや」 が、本当に少し疑問に感じただけなので深く考えるつもりはない。そんな中、 「ん?」 ふと振り向くと何かの光が飛行しているのが見えた。中学校から飛んでいる様に見受けられる。 「あんなリントもいるんだ……」 その光は風都タワー方面へと向かい――消えた。 もうおわかりだと思うが光の正体はクラッシュイントルードを使用したランスの事だ。 中学校からダグバの現在位置は大分離れていたが、ダグバの極めて鋭い感覚ならば十分に捕捉できる範囲だ。ダグバは運良くそれを捉えたという事だ。 「どうしようか……」 このまま警察署に向かっても良かったが、今の光も気になった。 が、ほんの数秒考え、ダグバは進行方向を逆に向け走り出した。 確かに警察署に向かいそこにいるリントを惨殺すれば先程のリントを強化出来るかもしれない。が、それが自分を笑顔にさせるのは難しいのではと考えていた。 それよりも先の光の方が気になった。あれは明らかに未知の力を持ったリント、先程のリント以上の力を持っている可能性も否定できない。それはすなわち、自分を笑顔にしてくれるクウガに負けるとも劣らない存在かも知れないという事だ。 どちらを選ぶか――考えるまでもないだろう? ダグバにしてみれば警察署にいるリントを殺す事に執着するつもりはない。他に選択肢が浮かばないならばそれでも構わないが重要なのは強い相手と戦って笑顔になる事だ。 その過程で死ぬリントが1人だろうが3万人だろうが大した違いは無い。 そして目の前には先程のリントを越える力を持っているであろうリントがいた。目的地を変えるのには十分過ぎる理由だ。 故にダグバは駆ける、問題のリントの動きは速い、見失って戦いに間に合わないのでは興醒めも良い所だ。 だからこそ怪人態へと姿を変え、更に先程の戦いで得た電撃態へと変化し戦場を駆け抜ける。 その速度は速い――数キロある距離であっても短時間で走破出来るのだ。 目的地は十中八九風都タワー、そして後数百メートルの地点まで来た所でタワーが崩れ去るのを見たのだ。 「ふふふふふ……」 ダグバは笑う、 『愚かな蟻どもよ!この私の偉大なるショーを見てくれたかな?私の名はテッカマンランス!たった今この風都タワーを破壊してやった!』 タワーを崩した男が声を放っている。そうか、このリントが中学校からタワーまで移動しタワーを崩壊させたリントだったのか。 『ふははは、驚いているか?これこそがテッカマンの力!テッカマンの前には、いかなる抵抗も反抗も無駄だと分かってくれただろう!』 そのリントは自身の力に絶対的な力を持っている。これは期待出来るだろう。 『それでもなお、私に逆らおうというのなら…H-8、風都タワー跡へとやってくるがいい!』 そしてそのリントは戦いを望んでいる。願ったり叶ったりとはこのことだ。 しかも都合良い事にその呼びかけは確実に他のリントを招く。 わざわざ警察署に出向く必要なんて無かったのだ。 思えば何時も自分は待つ側だった―― だが今回は違う、出向く側なのだ。だからこそこう答えよう。一旦変身を解き―― 「待っててよ」 MainScene03 前哨 「ダグバ? 未確認なんとか? 待て、その名前……貴様、ゴ・ガドル・バとかいう小物の仲間か?」 「リントはみんな僕達を仲間だと思っているのかな……まぁ知り合いである事は否定しないよ……ふふっ……」 モロトフの問いに対しダグバは笑みを浮かべたままだ。 「何がおかしい?」 「君がガドルを小物と称した事さ、ゴオマをそう呼ぶならばまだわからないでもないけどね」 「事実を述べただけだ。有能かつ完全なるテッカマンであるこの私から見ればあんな虫螻、自信過剰の小物でしか無い」 「はっはっは……言うね」 「ほう、仲間を侮辱されて怒るかと思きや……笑うとは何を考えている?」 「いや、別に仲間ってわけじゃあない……それに別にガドルを侮辱されて怒るつもりなんてないよ……むしろ嬉しいんだ」 その言葉の意味をモロトフは理解出来ないでいる。 「どういう意味だ?」 「そうだろう、ガドルより強いってことは、僕を笑顔にしてくれるかもしれないじゃないか。それが楽しいんだ」 あまりにも意味不明な発言をするダグバにモロトフも戸惑う。 「その口ぶり……さぞかし貴様はあの小物よりも強いのだろうな?」 「そうだね、確かに僕はガドルよりも強い……さて、君は僕を笑顔にしてくれるかな?」 「それはひょっとしてギャグで言っているのか? 私はコメディアンでも大道芸人でもない。貴様を笑顔にする趣味も義理もない。むしろ貴様の顔を恐怖で歪ませる者だ」 そう言ってクリスタルを構える。 「もうやるのかい?」 ダグバとしてはもう少し待って他のリントが来てからでも構わないつもりだった。しかしモロトフはそうではないらしい。 「ふん、これからやってくる虫螻共に見せしめを用意する必要があるからな……テック・セッタァァァァァ!!」 その意味はダグバを血祭りに挙げやってくる他の参加者共に見せつける為だ。故にモロトフはテッククリスタルを作動させ自らの姿をテッカマンとしての姿、テッカマンランスへと変える。 「……まぁいいけど」 そう言ってダグバもまた怪人態へと姿を変える。 「ほう、それが貴様の本来の姿か、随分とみすぼらしいチンケな姿だな、そんなチンケな姿で何が出来るというのだ?」 今のダグバはバックルを破壊された事により本来の姿への変身が不可能である。それゆえ今の姿は言うなれば中間体とも言える。 「否定はしないよ……まぁこれはあるリントにやられたからだけど」 その言葉からランスはダグバは他の参加者によって弱体化させられた事を察する。 「ほう、どうやら貴様の底が見えたな。虫螻如きにしてやられているわけだからな」 同時にそれは目の前の相手が自身の敵では無いと判断させるものであった。そんなランスの挑発に対してもダグバは表情を変えることは無い。 「ところで、テックセッターだったかな? そんな言葉で姿を変えるリントにさっき……大体6時間ぐらい前にこのタワーで会ったけど」 「このタワー? 6時間前? まさか貴様もあの時タワーに来ていたのか?」 実の所、この両名が直接会うのは初ではあるが、大体6時間ほど前、彼等はこの風都タワーを訪れている。但しニアミスはしたものの直接相対したわけではない。 「君も来ていたんだ。まぁいいや。そのリントも君と同じ……テッカマン? なのかな?」 ダグバはその時同じフレーズで姿を変えるリントと遭遇した。その時の彼等の会話から判断してそれはテッカマンと呼ぶべきものなのだろう。 「まさか貴様もブレードに会ったというのか!?」 「君の仲間だったの? 安心していいよ、殺してはいないから。でも残念だな、殺していれば君も怒ってくれただろうに」 「何を勘違いをしている。奴は裏切り者にして不完全なテッカマン、我々ラダムのテッカマンの敵だ! 仲間などでは無い!!」 流石にブレードを同類と扱われた事について全力で否定するランスであった。 「リント同士でつぶし合うなんて変わっているね。まぁいいや、その口ぶりからすると君は完全ってことだね」 「その通りだ。私こそが完全で有能なテッカマン、そして貴様を殺す者だ」 「そう……それは楽しみだ」 「フフ……ブレードとの違いを見せてやる、貴様の命もここまでだ」 「期待しているよ、僕を笑顔にしてくれる事をね」 その言葉を皮切りに――ランスが動いた―― SubScene03 「何も考えずに泳げ!」 「がはっ!」 流されていく、スーパー1、いや変身を解除された事で沖一也の姿に戻った沖は川の中で藻掻く。 「ぐっ……変身が……ここまで機能が落ちていたとは……」 変身が解除されるほどの機能の低下にショックを隠しきれないでいる。 だが、今すべきなのはすぐにでも岸に上がる事だ。問題の奴が迫っているからだけではない。 このまま流される事自体が大きな問題なのだ。 流された先は海、警察署から離れてしまう事は言うに及ばない。 しかしむしろ問題なのは河口自体はG-9にあるが、少し流れた所にあるH-9は13時に禁止エリアとなる場所だ。 つまり、このまま岸に上がれず流され続ければ最悪禁止エリアに突入しそのまま自滅する事となるというわけだ(勿論、まだ13時ではないが時間の問題である) 「がぁっっ……」 川の流れが強い中、何とかして岸へと向かう。しかし度重なる激闘によるダメージとメンテナンス不足による不調による悪化は酷く、体を動かしても動かしても岸に近づけないでいる。 万全な状態であればこの程度の川などどうという事は無い。しかし今の沖には川を越える事すら難しい状態だったのだ。 「俺は……このまま……」 諦めたくなどない。しかし身体が言う事をきいてくれないのだ。このまま流されてしまうしかないのか―― 「すみません、本郷さん……貴方との約束も果たせず……」 その時であった―― 「え……」 遙か岸の向こう側に1人の男が立っているのが見えた。それは沖がよく知る人物だ―― 「本郷……さん……」 世界で一番最初の仮面ライダー、仮面ライダー一号、本郷猛の姿がそこにあったのだ。 「どうして貴方が……死んだはずの……」 実は死んでいなかった、確かにそういう解釈も出来なくは無い。だが、今の本郷はあの激闘から生き延びたにしては余りにも傷の痕跡がなさ過ぎるのだ。そう、無傷の状態だったのだ。 本郷は静かに沖を凝視するだけ―― 叱咤することも助言することも手を伸ばすことも川に飛び込むことも無く―― 余りにもお粗末な自身に何かするという事も無い―― 「何故……何も言ってくれないんですか……?」 只、見ているだけの本郷に対し流されながら沖はそう口にする。 結局、本郷との約束であるこれ以上殺し合いの犠牲者を増やさない、全ての命を守るという約束を果たせないでいたのだ。 罵倒してくれても構わないのに―― 「メンテナンス不足で限界を迎えた俺には出来なかった……もし、あの時貴方を助ける事が出来たなら……」 正直、沖自身何を言っているのかわかっていない状態だ。 だが、本郷の願いを裏切った故にあふれ出る言葉は止ま―― 「貴方がいてくれたな――」 だが、言葉は此処で止まる。 ふと気が付いたのだ。何故、本郷がいるならば打開できると考えたのだ? 冷静に考えて見よう。本郷は確かに仮面ライダー1号だ。その実力は後発のライダーに決して劣っていない。 だがそれは何故だろうか? 単純なスペックだけならば後発のライダーの方が、極端な話スカイライダーやスーパー1の方が上だ。 特殊な能力面においても自在に飛行ができるスカイライダー、ファイブハンドによる多彩な能力を扱えるスーパー1の方が秀でている。 素の姿としての能力にしても確かにIQ600にしてスポーツ万能ではあるが、体力面だけなら幼き頃から野生で育ったアマゾンの方が上であり、知識面においてはライダーマンこと結城丈二等も決して負けていない。 つまり、本郷がここまで秀でているという事は決して無いのである。にもかかわらず、何故本郷ならばと考えてしまったのだろうか? 「待てよ……確か本郷さんはずっとその身1つで俺がドグマやジンドグマと戦う前から戦っていた筈……」 繰り返すが本郷こと仮面ライダー1号が特別優れているという事は無い、単純ならスペックが上である沖達が苦戦していたならば、当然本郷も苦戦してしかるべきはずだ。 本郷が一番に優れているのは経験の数。確かにそれはある。 だがそれだけでは説明がつかない事がある。そう、本郷を改造したショッカー相手の時だ。 当時は一文字隼人以外の仮面ライダーはおらず、日本を一文字に任せた後は世界各地のショッカーに対し本郷はたった1人戦っていた筈だ。 頼れる味方など殆どおらず、特殊な能力も無い1号が何故その戦いをくぐり抜ける事ができたのであろうか? 「そうだ……本郷さんの一番の武器は改造された身体でも、熟練された技でも、膨大な知識でも、深い経験でも無い……一番の武器は……魂だ!」 魂つまりはSpirit、人間の自由の為に戦うその精神の強さ、それこそが仮面ライダーの真の強さであり、本郷がここまで頼れる最大の理由なのだ。 そして、それに気付いた時、沖は全力で川岸へと身体を進めていく。 「俺は心の何処かで頼り切っていたのかもしれない……スーパー1の改造された身体や赤心少林拳の技に……本当に重要な事はそれを扱う俺自身の精神である事を……俺自身が忘れていた……」 身体の痛みが消えたわけではない。だが、全く動かないわけではないのだ。この命が消えていない限りは何の問題も無い。 身体に宿るこの魂は未だ健在、それだけあれば十分だ。 流れの強い川を渡る事は容易ではない、しかし特別な力が必要というわけではない。 何も考えず、強き意志のままに泳げば十分に渡りきれる。 そして――沖の手が川岸を掴んだ。 MainScene04 ダグバの世界 大きな瓦礫が壁の様に立っている――そしてそこに、 「がはっ……」 テッカマンランスが磔にされていた―― 恐らく、読者諸兄の中にはこう思っている方もいるだろう。 『ランスがダグバに挑んだと思ったらいつの間にか磔にされていた』 その過程が描かれていない為、衝撃を受けた方も多いだろう。 だが、別にこれは大した問題では無い。 そう、金の力だけでは勝てなかったガドルに対し、さらなる電気ショックで金の力を強化し黒の金の力を得てガドルを打ち破ったクウガ、 にもかかわらずダグバに対しては何が起こったのか知り得ないぐらいに完全敗北した様に―― 要するに、それだけ圧倒的な結果だったという事だ。 本当に簡単に説明するならば、 ランスの攻撃はことごとくかわすあるいは防がれ、 空中戦を仕掛けようとも起こされた突風でバランスを崩された所に雷を落とされ、 そのまま壁に叩き付けられ奪われたテックランサーで刺され磔にされた。 事細かに説明する必要がないぐらい簡単な話だ。不思議なことなど何も起こっていない。 「バカな……」 有能なテッカマンである筈の自分が何も出来ずにこの体たらく、ランスは強いショックを隠しきれない。 「ふぅ……つまらないね」 見下した様にダグバが口にする。 「貴様……」 睨むランスに構うこと無くダグバはランスから距離を取る。 「おい……貴様……トドメはどうした?」 このまま殺されるのかと思いきや仕掛けてこない事に疑問を感じたランスはそう問いかける。 「後でね……君を殺す所をこれからやってくるリント達に見せつけないといけないからね、それまでは生かしておいてあげるよ」 「!?」 ランスにはダグバの言葉が理解できないでいる。 「君が殺される所を見たらリントはどう思うかな、きっと怒りに震え……強くなってくれるだろうね……」 どうやらダグバの目には自分も人間共も同じ『リント』にしか見えていないらしい。それがランスにとっては屈辱的だった。 「巫山戯るな、この私が虫螻共に哀れまれるぐらいなら今殺せ! そんな屈辱耐えられん!!」 「君じゃ僕を笑顔に出来ない……そんな君をただ殺したぐらいじゃ退屈なだけでつまらないよ……それに言われなくても殺してあげるよ。リント達の目の前でね、君が呼んでくれたリント達のね……」 ダグバはマイペースに近くに落ちているランスのデイパックを拾い上げる。 「ところで……さっきガドルを小物って呼んだけど、ガドルと戦ったのかい?」 「ふん、戦う必要などない、奴程度などこの有能な私の敵では……」 「なんだ戦ったわけじゃないのか、その様子じゃクウガとも戦っていないだろうね」 「クウガだと……何者だ、そいつは?」 「僕を笑顔にしてくれる最高の存在さ、君なんかじゃ足下も及ばないぐらいのね」 先程から目の前のダグバはランスを見下してばかりだ、 「そんな君でも、クウガやリント達の目の前で殺せば……彼等を強くするのに役立つと思うよ……そうだ、確かブレードっていう仲間のリントも来るかな」 「何を言うかと思えば……さっきも言ったが奴は裏切り者だ、仲間などではない」 「確か不完全とか言っていたけど……君が目の前で死んだら完全になってくれるかも知れないね」 「そんなメルヘンあるわけなかろうが!!」 「まぁ、実際僕も戦ったけど……でも大した事ない相手だったよ。つまらないね……」 ダグバは風都タワーで戦ったブレードの強さを取るに足らないものだと評価していた。実際、あの場ではブレードを含めた3人の参加者と戦ったが一番興味を惹かれたのは仮面ライダーWである。 「ブレードすらも……」 かつてのランスならばブレードを見下すこと自体に異論は無い。しかし今となってはその戦闘力だけは評価している故にブレードすらも見下すダグバに憤りを隠せない。 「でもおかしいな……」 「何がが?」 「不完全なテッカマンだから君よりも弱いってことだろうけど……その割には……君の方がずっと弱いね」 「!!」 例えそれが現実的な事実であっても、不完全なテッカマンであるブレードよりも下に見られる事は屈辱である。 「もしかして……テッカマンって弱いのかな? 完全なテッカマンである君がこの程度だから」 「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」 それがランスの逆鱗に触れた。優良種たるラダムのテッカマンが下に見られる事などあってはならない。 それ故にランスは激昂しめり込んでいる壁から抜け出そうとしている、しかし。 その直後、ランスに雷が落ちた。 「がばっ……」 「これで強くなってくれるんだったら良かったけど……君も違うみたいだね」 「貴様は何を言っているんだ……」 「僕もさっき偶然気付いたんだけど……どうやら僕やクウガ、それにガドルはこの力で強くなれるらしいんだ……」 そう言って今度は自分に雷を落とす。 「うん、何となく力を感じるよ」 「この男……」 余りにも規格外なダグバの言動に絶句してしまう。そんなランスに構うこと無くダグバはランスのデイパックからあるものを取り出す。 それはグリーフシードと呼ばれるものだ。 「ふうん、君もコレ持っていたんだ」 「それが何だというのだ」 モロトフ自身、支給品は確認しており、説明書きも呼んでいたが特別役に立つものでもなかったので今の今まで存在を忘れていたものだ。 「ソウルジェムの穢れをどうとか……たしか首輪の無いリントがそれを持っていたから、そのリントにとっては大事なものだと思うけど」 「首輪の無い……待てよ、確か……あの魔法少女……」 ランスは思い返す、確か先に戦ったマミと呼ばれる魔法少女の首には首輪が付いていなかった様な気がする(至近距離で嬲っていた為、そこまで確認出来ていた)。 「ふうん、魔法少女っていうんだ、まぁどうだって良いけど……そうだね……あの時戦った黒い服の女の子のリント……彼女との戦いの方が面白かったね」 「何!?」 ダグバの口ぶりから察するにダグバにとってはテッカマンよりも魔法少女の方が強いという事になる。 実際、ダグバは黒服の魔法少女との戦いでは完全な奇襲攻撃を受けたこともあり、その対応に少々頭を使っている。それ故に、ランスよりも楽しめたという評価なのだ。 「それにそのリントを助ける為に現れたキラキラした鎧を纏ったリント、僕を見ても平然と笑っていたあのリントも惹かれたなぁ。 それからタワーでの戦いの後、ガドルの所で戦った銀色のリントとの戦いも面白かった……」 「もう良い……やめろ……」 これ以上、ダグバの言葉を聞きたくは無い。だが、 「そしてこのベルトをほんのちょっぴりだけど壊してくれたリント達……彼等との戦いの方が君との戦いよりずっと面白かったよ」 「止めろと言っているのが聞こえんのか! 優秀なるこの私が……そんな虫螻共に劣る事など断じてあり得……!!」 次の瞬間、文字通りランスに雷が落ちた。 「えなぁぁぁ……」 「リントの言葉にこういうのがあるらしいね……イノナカノカワズ……君のことかな?」 その言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか――ランスは力無く項垂れた。 MainScene05 みつめてランス 「ううっ……」 屈辱だ―― 完全なるテッカマンにして有能であるこのテッカマンランスモロトフが何も出来ず一方的に嬲られるなど―― かつてブラスター化したブレードにしてやられた時は気が付けば一瞬でしかなかった。 だが今は違う、真綿で首を絞めるが如く、じわりじわりと辱められている。 本来ならばそれは自身の側だった筈だ、下等生物を一方的に蹂躙するのは―― だが、今は完全に立場が逆転している。自分の方が見下され一方的に陵辱されている。 「この私が……この私が……」 何より許せないのは奴が自分を虫螻共と同レベルと扱い、虫螻共を本気にさせる為だけの為に自分を生かし連中の目の前で惨殺するつもりだという事だ。 つまり、完全に奴の都合の良い玩具という事だ。 本当ならば、自分が奴をそう扱うつもりだったのに――これではあべこべではないか。 最後に奴は言った、自分が『井の中の蛙』だと 井戸の中を全て知り尽くしている蛙ではあっても、その外には広く大きな海が広がっている事を知らないという事柄から生まれた言葉だ。 その意味はつまるところ狭い見識に囚われ、他に広い世界を知らず、自分の世界が絶対だと思う様である。 認めたくは無いが、そうだったのだろう。 思えば人間共を舐めていたからこそブレードのブラスター化を許し返り討ちに遭った。 また、自分より完璧な存在などいないという思い込みがブラスター化したブレードに対する油断を産んだ。 そして今――自分はこの有様だ。 無論、テッカマンこそが最良という考えは変わらない。しかし、あまりにもそれに慢心しすぎてはいなかっただろうか? だからこそこの体たらくではなかろうか? 余りにも無様である。 しかし、遅かれ早かれこの結末は訪れるべき筈だったのも事実。 先に述べた通りダグバとモロトフは約6時間ほど前にニアミスしている。様々な運命の巡りあわせから相対する事は無かったがそれは偶然に過ぎない。 本来ならば6時間前にこの現実を突きつけられても不思議は無いのだ。 そして、ここで出会わなくともランスが拡声器を駆使し無節操に参加者を集め蹂躙しようとしていれば何れ強者との遊びを求めるダグバとの遭遇する事になる。 タイミングこそ偶然かもしれないが、起こる事だけは必然だったという事だ。 「情けない……あまりにも情けない……!!」 オメガに知って貰いたかったのだ、自分の有能さを―― 「私は!!」 その時、 「無様だな、ランス」 目の前に見知った男が現れた。 「貴様は……エビルか!」 その男はブレードことタカヤの双子の弟、相羽シンヤまたの名をテッカマンエビルである。 だが先に述べた通り、ブラスター化の副作用による限界を迎え死んだ筈である。 「ふん……あの世から私を迎えに来たつもりか?」 「もしくは笑いにきたとかか?」 「ぐっ……」 目の前のシンヤはどことなく穏やかな表情だ。 「冗談だ、大体死んだ男がのこのこ現れるなんて幻想あると思うか? 大方ランス、お前自身の心が生み出した幻かもしれないんじゃないか」 「私自身が貴様を……? それこそあり得ん話だな」 「だが理にかなっているだろう、俺の性格を考えてみろよ。ランスの所なんかに行くよりもブレード……タカヤ兄さんの所に顔を出した方が自然だろう」 「そもそもいる筈の無い人間が現れている時点で不自然だろうが……」 「まぁ俺が何故ここにいるのかなんてどうでも良い話だ。あの世からやって来た死神の使者と捉えても構わない」 そんなシンヤに対し、 「それで、貴様は私に何を求めているのだ?」 「どういう意味だ?」 「とぼけるな、原因など知ったことではないが貴様がこうして目の前にいるのには何か意味がある筈だ、答えろエビル!」 「………………まぁ、確かに言いたい事が無いわけじゃあない……」 「ならば!」 「だがランス……お前だってわかっているだろう、お前が素直に俺の言う事聞くのか?」 「それは……」 まずあり得ない。確かにモロトフとシンヤは同じラダムのテッカマンではある。それ故に共同作戦の時は共に戦うこともあろう。 だが、別段仲良しこよしというわけではないのだ。仲間と言えば仲間だがなれ合いの関係ではない。 「お前が何を求めているのか……そして何がしたいのか……それはお前自身の中にあって、既に決めていることじゃあないのか?」 「私自身が……?」 「まぁ俺から言わせて貰えば……奴に……ダグバに負けるなよ、ランス」 意外な言葉だった。まさかエビルから応援をしてもらえるとは。 「気持ち悪いな……」 「失礼な事を言うな……だが本心だ。アイツは俺達の事を何も見てはいない。アイツにとっては『クウガ』以外の奴は全て『リント』とかいうものだ……」 「そうだな……」 「俺達テッカマンが何かをアイツは何一つわかっていない、それを思い知らせてやれ……いやテッカマンの力じゃ無いか……ランス……いやモロトフ、お前の力をな!」 「私の……力……」 「出来る筈だ、お前が完全にして有能なるテッカマンならな……アイツにテッカマンランス、そしてモロトフの存在を思い知らせてやれ、リントとか呼ばれる有象無象じゃないこの宇宙にたった一人の存在である事を……」 「エビル……いや、シンヤ……」 「本音を言えば……俺だって悔しいんだ……アイツが兄さんを取るに足らない存在と言った事を……兄さんがあんな奴に負けるなんてこと無いのに……だからこそ兄さんの分までアイツに思い知らせてくれないか……」 そう言って頭を下げるシンヤであった。それに対し、 「ふん……貴様が言った事だ、私が貴様の頼みを聞く義理は無い……」 そう答えたものの、 「だが、奴に対しこのまま終わるつもりはない……そのついでならばやっても構わん」 再び立ち上がる事を口にした。 「感謝するよ……それから、もう1つ頼みがあるが聞いてくれるか?」 「聞くだけ聞いてやる。従うかどうかは別問題だ」 「大丈夫だ、きっと聞いてくれるさ……もし、兄さんが死んでこのままお前が生き残ったら……元の世界にいるオメガ……ケンゴ兄さんの事を頼む……」 それはオメガことシンヤ達の兄相羽ケンゴの力になってくれという事だ。 「言われずともそのつもりだが……何のつもりだ?」 勿論、ケンゴことオメガは司令官故に守るべき存在である事に違いは無い、それ故頼まれるまでもない事だ。 だが、それはシンヤ自身もわかっている筈だ、何故それを今更頼むのか? 「大した事じゃ無い、家族を守りたいと思う……それだけの話さ。結局俺はタカヤ兄さんの事ばかりでケンゴ兄さんには迷惑をかけた……ブラスター化にしてもケンゴ兄さんの反対を押し切って……俺は裏切り者さ…… だが、それでも俺にとってはケンゴ兄さんも大事な家族さ、だからこそ……モロトフ……お前に託す……俺にはもう出来ない事だから……」 「………………お前がどう思っているか知った事では無いが……オメガ様を守るのは私の使命でもあるからな、言われるまでも無い……まぁついでに貴様がそう言っていた事を伝えておいてやろう」 「すまないな……」 そしてゆっくりとシンヤの姿が遠ざかっていく、 「もうそろそろ俺も行かなきゃならないか……さっきも言ったが負けるなよ、ランス……」 「当然だ……」 「そしてもう無様な姿を見せるなよ……それじゃ行くよ……」 「一人で行って来い……そして、もう帰って来るな……」 その会話を最後にシンヤの姿は消えた。 結局の所、シンヤが何故現れたのかは不明瞭だ、 死に近づいていたモロトフの元に死後の世界から現れた幻だったのかも知れない、 もしくは、モロトフの弱い心がシンヤという形を成して現れた幻だったのかも知れない、 だが、どちらにしてもシンヤの言葉如きでモロトフの心が揺らぐ事は無いだろう。 そう、答えなど最初から、モロトフの心の中にあったのだ――シンヤの言葉はその心に炎をともす小さな火だったのだろう―― 故に―― 時系列順で読む Back 崩落の呼び声Next Uに一人だけの/COSMO BLAZER 投下順で読む Back 崩落の呼び声Next Uに一人だけの/COSMO BLAZER Back あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 沖一也 Next Uに一人だけの/COSMO BLAZER Back あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ン・ダグバ・ゼバ Next Uに一人だけの/COSMO BLAZER Back 崩落の呼び声 モロトフ Next Uに一人だけの/COSMO BLAZER
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ラブと祈里 さよならの言葉! ◆LuuKRM2PEg 六時間ごとに行われる放送はこれで三度目になるが、決して慣れたりなんかしない。むしろ、心があるのなら慣れるなんて絶対にあり得なかった。 桃園ラブは戦いに身を投じているが、あまり『死』という概念には縁がなかった。だから、この地で次々と人が死んでいく度に、強い精神的ショックを感じている。 東せつながまだイースだった頃に一度だけ死んだ。後で生まれ変わったが、悲しかったことに変わりはない。そんな出来事が、ここでは当たり前のように繰り返されている。 そして、この六時間で亡くなった人の名前が呼ばれた。一文字隼人や西条凪、それにテッカマンランスの最期が脳裏に蘇ってしまう。思い出すだけでも辛くなってしまうが、絶対に忘れてはいけなかった。特にテッカマンランスは、本当の名前がわからない。だからせめて、彼の言葉だけは背負わなければならない。 テッカマンランスにだって、もしかしたら帰りを待っている人がいるはずだ。だから、いつかその人のことも見つけて、最期を伝えなければならない。その人から憎まれることはわかっているが、伝えなければならない義務がある。そうしないと、待っている人はいつまでも前に進めないのだから。 「凪さん……ゆっくり休んでいてください」 そして今、ラブは涼村暁や石堀光彦と一緒に、埋葬した凪に祈りを捧げる。 彼女はこの島で姿を見たが、一度も話をしないまま永遠に別れることになってしまった。ン・ダグバ・ゼバという男が現れた時、驚かないでもっとしっかりしていれば彼女を守れたかもしれない……そんな仮定の話を考えただけで、心が更に抉られてしまう。 石堀の上司なのだから、絶対に悪い人ではない。少しでもいいから話をしてみたかった。 「ラブちゃん。君が副隊長のことで悲しんでくれているのはわかる……でも、すぐにここから移動しないと」 そんなラブの気持ちを察したのか、石堀が声をかけてくる。 振り向くと、彼も何処か表情を曇らせていた。やはり、信頼している上司を守れなかったことが、とても悔しいと感じているかもしれない。ダグバに殺されてしまった時だって、怒りを露わにしていたのだから。 「副隊長は俺達が悲しむこと望むような人じゃない。例え自分が死んだとしても、任務の遂行を優先する人だ……そんな副隊長の前でメソメソしていたら、余計に怒らせてしまうよ」 「石堀さん……」 「副隊長の為を本当に想ってくれているなら、ラブちゃんはラブちゃんの使命を果たすべきだ。だって君はプリキュアだろう?」 静かに叱咤をしてくれている石堀の表情は、徐々に真摯なものへと変わっていく。 そんな彼の補足をするかのように、今度は暁がひょうきんな笑顔と共に現れた。 「そうだよ、ラブちゃん! さっきも言ったけど、死んだ人達の分まで楽しまないと損をするだけだって。それに、石堀の言葉は正しいぜ? 俺、夢の中で凪に怒られちまったからさ……」 「夢の中で……?」 「そうそう。俺の事務所に朱美って女がいるけど、そいつと一緒に凪から怒鳴られてさ……もう大変だった! あの時は、確かほむらもいたような……」 「えっ? でも、美女が出てきたって言いませんでしたっけ?」 「あれ、そうだっけ? う~ん……もう、美女も凪達も出てきたってことでいいよ! どうせ、夢の中の話だし!」 「はぁ……」 相変わらず明るい態度で語る暁に、ラブはどう答えればいいのかわからなかった。 確かに夢の中の話をいつまでも覚えていたとしても、あまり意味がない。夢はどこまで行っても夢で、現実ではない。夢を忘れないことは大切だけど、今を頑張って生きることの方がもっと大事だった。 そう考えた瞬間、ラブはほんの少しだけ頬が緩む。気が付いたら、暁と石堀の二人に笑顔を向けられるようになっていた。 死んだ人間の前では不謹慎かもしれないが、いつまでも悲しんでいたら二人に失礼だ。それに、凪だって止まることを望んでいないはず。だから今は元気でいたかった。 「おっ! ラブちゃん、笑っているね!」 「はい。こんな時だからこそ、少しでも笑っていた方がいいと思ったから。美希たんも、つぼみちゃんも、いつきちゃんも、どこかで頑張っているかもしれませんし……みんなとまた会えた時に笑えなかったら、悲しくなるだけですから」 「そうそう! 君みたいな女の子は笑顔が一番! そうすれば、俺も石堀も笑えるし!」 「まあ、重い空気になるよりは、笑っている方がいい。そうすれば、緊張も解れて仕事が進むからな」 暁の言葉によって、石堀から感じられる雰囲気が軽くなったように見える。 本当なら、石堀だって暁のように明るい人間なのかもしれない。仕事の時は真面目だが、プライベートでは平穏な日常を過ごしているのだろう。そこには凪もいたはずだ。 だけど、彼の隣に凪はもういない。それはとても辛いはずなのに、石堀は気持ちを抑えている。同じように、暁だって人を殺したという十字架を背負ったけど、笑顔を見せてくれた。 そんな二人や失ってしまった凪の気持ちを尊重するならば、殺し合いを止める為に動かなければならない。ラブは改めてそう認識した。 「それと、ラブちゃん。君が言っていた、ラビリンスって奴らのことについて教えて貰ってもいいかな? 色々あって、聞けなかったからね」 「あっ、そうでした! ラビリンスのことですね……」 ラブは暁と石堀に話し始めた。 人工コンピューター・メビウスが率いる管理国家ラビリンスが全ての平行世界(パラレルワールド)を支配する為に、人々をFUKOにしようとしていたこと。そして、その為にナケワメーケという怪物で人々を襲っていたことや、既に死んだノーザがラビリンスの最高幹部だったことも話した。 そして、シフォンという妖精がインフィニティという無限メモリーにされてしまい、一度だけ全てのパラレルワールドを支配されてしまったことも話した瞬間、暁と石堀は怪訝な表情を浮かべる。 「支配された? おいおいラブちゃん、悪いけど俺達はそんなことをされていないぞ? それに、そんな訳のわからねえコンピューターの奴隷なんて、俺は死んでも嫌だって」 暁は当然の言葉を口にした。 「えっ? でも、あの時は確かに全パラレルワールドの支配が完了したって、ラビリンスが言っていたような……」 「そんなの、そいつらが勘違いしただけじゃないの? 俺はこの通り、ピンピンしているぜ! そんなコンピューターが来たって、逆に水をぶっかけて壊してやるよ!」 暁のような男がメビウスに支配される姿は確かに想像ができない。彼はいつでも自由気ままに生きているので、例えラビリンスが出たとしても普通に一日を過ごすはずだ。 あのウエスターだって、ラビリンスの幹部だった頃から四ツ葉町で楽しそうに過ごしていた時がある。せつなが言うには、人間界の文化を知ったからこそ本当の幸せを知ったらしい。 そんな暁とウエスターは気が合うかもしれない。ラブは何となく、そう思ってしまった。 「俺の世界でも、そういった事件が起こった報告はないな。何よりも、俺が所属している組織は外部からの侵入者を易々と見逃すほど、甘くはない」 「そうですか……なら、やっぱりラビリンスの勘違いだったのかな?」 「そうとも限らない。この殺し合いに集められた六六人の参加者は、世界だけでなく別々の時間から集められたようだ。だから、俺と暁はラビリンスの侵略が行われる前から連れて来られた可能性だってある。本当かどうかはわからないけどな」 「えっと……じゃあ、石堀さん達はこれからラビリンスに支配されるかもしれないって、ことですか?」 「そんなことはさせないさ。言っただろ? 俺の組織はそんなに甘くないって……それに暁の言うように、勘違いだって可能性もある。この世界に、完璧なシステムなんて存在しないのだから」 ラブの中に芽生えた暗い思考を振り払うように、石堀はフッと笑う。 そして、そのままラブの肩に手を乗せた。 「それに、俺達の世界がこれから本当に支配されるとしても、プリキュアがそれを止めてくれるのだろう? なら、俺達もそれに答える為に、頑張るつもりだ……暁だって、そうするだろ」 「当たり前だ! このシャンゼリオン様が、そんなヘッポコ機械に負けるわけあるか! というか、俺の力で逆にメンドリってコンピューターを支配してやるよ!」 「メビウス、だ。暁」 「あれ、そうだっけ?」 石堀の指摘に対して、暁はおどけたように笑いながら答える。 太陽のように明るい暁の態度を見て、ラブは思わず「ぷっ」と笑った。 「……メビウスですよ、暁さん!」 「あ、そう? でも、どっちでもいいじゃん! どっちにしたって、ラブちゃん達が倒してくれることは、確かだしさ」 「はい! あたし達が、二人の世界も守りますので!」 ラブは暁と石堀にそう答える。 プリキュアの守った平行世界(パラレルワールド)には暁や石堀もいる。そう思っただけでも、ラブは心が軽くなるのを感じた。 石堀の言うようにラビリンスに支配されていない可能性だってある。ラブとしても、その方が良かった。ラビリンスに管理されてしまっては自由な意思を奪われて、喜びも幸せも感じなくなってしまうのだから。 「よし。それじゃあ、そろそろ行こうか」 「はい」 石堀の言葉にラブは頷く。 最後にもう一度だけ、この地で眠る凪に手を合わせる。彼女の分まで生きると誓いながら。 数秒ほど経った後、彼女達はその場を後にした。 「そういえば石堀、これからどうするつもりだ?」 「まずは副隊長を殺したあの男の遺体を、俺が一人で弔う。その後は、禁止エリアに接触しないように街を捜索する予定だ。結城や沖一也という男が来ているかもしれないからな」 「ああ、そういえばここで合流する予定だっけ?」 「そうだ。結城にはあの屋敷で伝えたから、零と共に来るはずだ」 暁と石堀の話をラブは聞く。 結城丈二と沖一也。この二人も仮面ライダーで、一文字の後輩らしい。ここに来るまで、本当なら一文字は沖と合流する予定だったと聞いた。だけど、一文字は鳥のような赤い怪人に殺されてしまっている。二人にはそのことも話さなければならなかった。 元の世界で共に毎日を過ごした仲間が次々と死んでいく。祈里やせつな、それにえりかとゆりを失ったラブには辛さが痛いほどわかった。 「そっか。なら、あいつらも捜さないと……なあっ!?」 石堀と話をしていた暁は急に転んでしまい、奇妙な悲鳴を発する。 暁の持っていた大量の支給品が地面にばらまかれていく。しかしラブはそれに目もくれず、暁の元に駆け寄った。 「だ、大丈夫ですか暁さん!?」 「いたた……だ、大丈夫だってラブちゃん。ちょっと、つまずいて転んだだけだ」 「よかった……」 暁は服をパンパンと叩きながら立ち上がり、いつも通りの笑顔を向けてくる。 その姿を見て、ラブは安堵した。放送前の戦いの疲れがまだ残っていたらどうしようと思ったが、心配はないかもしれない。 疲れが溜まるのはよくないことだ。ラブだって、知念ミユキにプリキュアであることを知られる前は戦いとダンスの疲れが重なったせいで倒れたことがある。暁にはそうなって欲しくなかった。 「おい、暁。こんなに撒き散らすなよ」 「悪い悪い! いやいや、道具がありすぎるのも辛いね~! 四次元ポケットがあれば、こんなことにはならないのに」 「変なことを言っている暇があるなら、早く拾ってくれ」 「はいはい」 石堀に対して、暁は素っ気なく答える。 散らばったデイバッグに、ラブも手を伸ばした。 「あたしも手伝いますよ!」 「おっ、サンキュー!」 暁は朗らかに答えてくれた。 周囲を見ると、いつの間にか空いていたファスナーから中身が飛び散ってしまっている。水や食料、それに見慣れない支給品がいくつもあった。いくら男の人でも、これだけの量を一人で持つのは大変かもしれないから、少しくらいは持った方がいいかもしれない。 そんなことを考えていた時だった。 「これって、まさか……クローバーボックス!?」 ラブが視線を向けた先には白いオルゴールが落ちている。彼女はそれを知っていた。 四つ葉のクローバーの紋章が付けられているそのオルゴールは、かつてスウィーツ王国の長老であるティラミスから託されたクローバーボックスだった。 ラブは知らないが、それは暁美ほむらに支給されていた。ほむらにとっては武器とならず、関心を惹くような見た目ではないのでデイバッグの奥底に眠る結果になっていた。また、一度だけン・ダグバ・ゼバの手にも渡っていたが、彼にも興味を抱かれていない。関係のない参加者からすれば、ただの楽器に等しいのだから。 しかし、フレッシュプリキュアのメンバーにとっては違う。これは、たくさんの思い出が詰まった宝物と呼べるものだった。 ラブがクローバーボックスを拾うと、石堀が訪ねてくる。 「ラブちゃん、それを知っているのかい?」 「はい。これはクローバーボックスと言って、あたし達にとって大切なオルゴールなんです!」 「へえ……確かに、随分と綺麗だね」 「よかったら、演奏してみます? このハンドルを回せば、綺麗な音色が流れますよ」 「……まあ、息抜きとしてやってみるか」 そう言いながら頷く石堀に、ラブはクローバーボックスを差し出す。 しかし、彼の指先がクローバーボックスに触れようとした瞬間、バチリ! という電撃が迸るような音が鳴り響く。そして、石堀の手が弾かれてしまった。 「何!?」 「えっ!?」 石堀とラブは同時に驚く。 手を抑えている石堀は当然のこと、ラブも今の出来事を疑っていた。 「え、ええっ!? 何でクローバーボックスが石堀さんを弾いたの!?」 「それは俺の台詞だよ……これは、静電気じゃなさそうだが……」 「う~ん……クローバーボックスは悪い人が触ろうとしたら、バリアが出る仕組みになっているんです」 「何だと?」 ラブの言葉によって、石堀の目が一気に見開かれてしまう。 それを見て、ラブは気付く。今の言葉は、石堀を悪人だと決め付けているようなものだ。 「石堀さん、違います! これはその……決して石堀さんが悪い人だってことじゃありません! あれ、どうしたの? おーい! クローバーボックス~!」 ラブはクローバーボックスをまじまじと見るが、何か異常があるようでもない。壊れている所もないし、欠けているパーツだってなかった。 ぶんぶんと上下に振りながら「クローバーボックス~!」と呼び続けるが、何の反応もない。特別な力を持っているとはいえ、クローバーボックスはオルゴールなのだから喋る訳がなかった。 もしも、北条響達が変身するスイートプリキュアの持っているヒーリングチェストのように、クレッシェンドトーンのような妖精が宿っていたら話は違うかもしれない。しかし、クローバーボックスの中に妖精はいなかった。 「落ち着いてくれ、ラブちゃん!」 「だ、だって~!」 「なになに、どうしたの? 何の騒ぎ?」 ラブが石堀に反論しようとした直後、ひょっこりと暁が姿を現す。 そして、すぐにクローバーボックスを見つめてきた。 「おっ! ラブちゃん、いつの間にそんなお宝を持っていたの!?」 「えっ? これは暁さんの持っていたバッグの中に入っていたみたいですけど……」 「嘘、マジで?」 「はい」 「ふ~ん……まあいいや。それ、ちょっと見てもいいかな?」 その言葉とは裏腹に、暁はラブの返事を待たずにクローバーボックスを取ろうとする。だが、クローバーボックスは暁を拒絶するようにバリアを張って、勢いよく弾いた。 「うぎゃ!」 「あ、暁さん!?」 「い、今のは何だ!? この箱からバリバリ! って電気が出てきたけど!?」 「ええ~!?」 暁は驚いたように叫んだ後、フーフーと手に息を吹きかける。 ラブも困惑していた。どうして、クローバーボックスは普通の人間である二人にバリアを張った理由がわからない。暁と石堀は悪人ではないのだから、弾く必要はないはずだった。 クローバーボックスに何かあったのかと思ったが、ラブは何事もなく持っている。それもあって、疑問が更に強くなっていた。 「……もしかしたら、俺達の心にある闇に反応したのか? そのクローバーボックスってオルゴールは」 どうすればいいのかとラブが悩んでいる最中、石堀が声をかけてくる。 彼の言葉にラブは怪訝な表情を浮かべた。 「心にある、闇?」 「ああ。さっき、副隊長を殺されてしまった時、俺と暁はあの男に怒りと憎しみを燃やしていた。クローバーボックスはそれに反応して、俺達のことを敵と認識したのかもしれない」 「なるほど……でも、あたしだってあの人に怒っていましたけど?」 「それは、君がプリキュアだからじゃないのかな? 俺や暁はクローバーボックスのことを知らないけど、ラブちゃんは同じ世界の住民だ。だから、クローバーボックスも敵と思っていないかもしれない。これは、ただの仮説だけどな」 石堀の言葉にラブは頷くしかない。真相を確かめられない以上、他にできることはなかった。 クローバーボックスから信頼されていると石堀は言ってくれたけど、ラブは素直に受け止められない。別に聖人君子という訳ではないし、テッカマンランスやダグバを前にした時は激しく怒りを燃やした。石堀が言うように、それが原因で心に闇が宿ってもおかしくないのに、クローバーボックスから拒絶されていない。 もしかしたら、心の中にある怒りや憎しみに溺れないでみんなを守って欲しいと、クローバーボックスは願っているのかもしれない。そんな考えがラブの中で芽生えていた。 「何だかよくわからないけど、要するにそのオルゴールはラブちゃんしか持てないってこと?」 「そういうことになるな。音色も興味はあるが、それは後の楽しみにしておこう……そういう訳で、それはラブちゃんが持っているべきだ」 「そういう訳だから、よろしくね!」 暁と石堀の言葉にラブは「はい」と首を振る。 元々、クローバーボックスはラブが持っているのだから、断る理由などなかった。 「まあ、暁の場合は元々の下心や欲望もあったせいで、クローバーボックスに断られた可能性だってあるぞ」 「おい! 石堀、俺に喧嘩を売っているのか?」 「冗談だ。こんな時に無駄な戦いなんか御免だ……それと暁、俺はあの男の死体を処理してくるから、ラブちゃんのことを頼んだぞ」 「あの男……? ああ、あの変態野郎か」 「そうだ。すぐに戻るから、ちょっとだけ待っていてくれ」 そう言いながら背を向けた石堀は、ここから去っていく。きっと、祈里や凪の命を奪った男の所に行くとラブは察した。 処理という言葉を聞いて、一瞬だけラブは背筋が冷えたのを感じる。その時だけは、石堀の姿がまるでメビウスやクラインのように見えてしまった。相手が凪の仇だから怒って当然かもしれないけど、それでも薄気味悪い。 でも、暁と軽口をぶつけ合えるのだから、本質的には優しい人だろう。だから、ラブは石堀を信頼していた。 「石堀さん、大丈夫かな?」 「あいつなら大丈夫だって。それとも、心配?」 「……やっぱり、心配してしまいます。こんな所で一人になるなんて、危ないと思いますし」 「そっか。やっぱり、それが普通だよね。でも、あいつなら大丈夫……それを信じようぜ」 「そうですよね……」 暁の意見もわかる。石堀は特殊部隊に所属しているおかげで格闘技術はかなり高いし、仮面ライダーに変身して戦っていた。だから、どんな敵が来ても簡単には負けないし、その力で暁のことだって助けている。 信用しないのは石堀に対して失礼だ。ラブだって理解できるけど、やはり不安が芽生えてしまう。簡単に割り切ることはできなかったけど、ここでそれを口にしても空気が悪くなるだけだ。 彼の為にできることは、暁と一緒に待つしかない。何事もなく、無事に戻ってきてくれることを信じるしかなかった。 石堀が現れてくれることを信じながら、ラブはぼんやりと街中を見渡す。普通なら、こういう道には人通りが激しく、今の時間だったら買い物や帰宅をする人で溢れているはずだ。でも、この街には活気が感じられない。まるで、かつてノーザに見せられた偽のクローバータウンストリートに立っているようだった。 嫌な思い出が脳裏に蘇った瞬間、ここから少し離れた場所に奇妙な黒い塊が見る。それが何なのかが気になって、ラブは反射的に近付いて……絶句した。 それは、人の焼死体だったからだ。 「ひ、酷い……!」 あまりの凄惨さに、ラブは思わず両手で口元を押さえてしまう。 この世界に連れて来られてから、人の死体は何度も見てしまっている。だけど、誰だろうと顔の原形だけは辛うじて留めていた。しかし、目の前の死体は全ての尊厳を奪われたかのように、黒焦げになっている。 どうして、ここまでやる必要があるのかという疑問や怒り。そして、人の死を見てしまった悲しみが胸の中で湧き上がっていた。 「誰がこんなことをやりやがった……?」 そして、いつの間にか歩み寄ってきた暁も、倒れている死体を見て呟く。 彼もこれだけ傷付けられた死体を見たことがなかったのだろう。今回ばかりは、いつもの落ち着きが感じられない。ラブのように動揺していた。 この場で死んでしまった人の為にできることは、一刻も早く弔うこと。これ以上、放置していたら眠ることができないはずだった。そう思ったラブはリンクルンを手に取り、変身する。 「チェンジ・プリキュア! ビート・アップ!」 叫び声と共に、彼女の身体は桃色の光に包まれていく。しかし光は一瞬で弾けていき、桃園ラブはキュアピーチに変身した。 放送前に埋葬した少年と少女の時と同じように、キュアピーチはすぐ近くの地面に穴を掘る。プリキュアの力さえあれば、人を埋めるだけの穴を作るまで十秒も必要なかった。 手に付着した土を振り払って、彼女は遺体に目を向ける。よく見ると、頭と体が離れている。つまり、焼かれただけでは飽き足らず、首すらも斬られてしまったのだ。それを知った瞬間、キュアピーチは反射的に顔を顰めてしまう。 一体誰がここまで残酷なことをしたのか。こんな風にされなければならない理由が、この人にあったのか。この人にだって、元の世界で帰りを待っている家族がいたはずなのに、最悪の形で別れさせられるなんてあんまりだ。 疑問は増える中、キュアピーチの脳裏にダグバの姿が浮かび上がる。 『プリキュアも一人殺したよ。黄色い子だったね。君とよく似た姿をした……』 そして、同時にダグバの言葉が頭の中でリピートされた。 それによって、一つの可能性がキュアピーチの中で芽生え始める。 「もしかして、ブッキー……? ブッキーなの!?」 思わずキュアピーチは呼びかけるが、当然ながら答えは返ってこない。既に遺体となってしまったので、動くどころか喋ることすら不可能だった。 「ブッキー……? それって、祈里ちゃんのことだよね? じゃあ、ここにいるのってまさか……!」 「あたしも、わかりません。でも、そんな気がします……ここにいるのは、ブッキーだって……」 キュアピーチは曖昧な態度で、暁に答えることしかできない。 ダグバは祈里を殺したと言った。それに、ここはダグバが現れた場所とそこまで遠くない。だから、腕の中にいるのは山吹祈里かもしれなかった。ただの憶測なのはわかっているけど、完全に否定することはできない。 その推測は当たっている。キュアパインに変身した祈里はこのエリアでダグバと戦って、成す術もなく殺害されてしまい、そのまま超自然発火能力で死体を焼かれた。その後、沖一也が変身した仮面ライダースーパー1によって首を切断されているが、それを知るのは誰もいない。 ただ、ここで殺されたのは祈里であるかもしれないという可能性しか、得られなかった。 「ラブちゃん……」 「ごめんなさい、暁さん。心配させちゃって」 「えっ?」 キュアピーチの言葉によって、暁は呆気にとられたように口を開ける。 「さっき、石堀さんが言っていましたよね。凪さんって人は、あたし達が悲しむことを絶対に望まないって……それは、ブッキーも同じだと思います。ブッキーはきっと、あたしや美希たんが泣くことを、望んでいませんから……」 淡々と語りながら、キュアピーチは埋葬を行った。首が切断されてしまったので、頭と胴体を付けるように置く。こうしても、切断された首が元に戻る訳ではない。ただの気休めでしかなかったけど、キュアピーチはやらずにはいられなかった。 幼馴染の祈里が身体を焼かれて、無残にも首を斬られる……その辛さと苦しみは、想像することができない程に凄まじかったはずだった。 「ブッキー……ごめんなさい。あたし、ブッキーやせつな達のことを助けないといけなかったのに、助けられなかった……でも、あたしはブッキーの分まで頑張る。立ち止まらないから」 その言葉が終わると同時に、祈里の身体も完全に埋まる。 涙を流したりしない。必要以上に謝ったりしない。前をひたすら進むのだと祈里達に誓ったのだから、それを自分から裏切る訳にはいかなかった。 望んでいない形だけど、祈里と再会して別れを告げることができた。後は、彼女の遺志を受け継ぐだけだ。 「暁さん、ありがとうございます。付き添ってくれて」 「いいってことよ。祈里ちゃんもきっと、喜んでいるよ……ラブちゃんが来てくれたことを」 キュアピーチと暁は互いに笑顔を見せ合う。 しかしそれからすぐに変身を解いて、祈里が眠る土の下に目を向けた。 「ブッキー……さようなら」 別れの言葉を告げながら、桃園ラブはデイバッグからドーナツを一個だけ取り出す。 カオルちゃんの作ったドーナツは祈里も大好きでよく食べていた。だから、天国にいる彼女に届くことを願いながら、ドーナツを供える。 そして数秒間の黙祷を捧げてから、二人は元の場所に向かう。すると、タイミングを見計らったかのように石堀が戻ってきた。 「待たせたな、二人とも」 「石堀さん! よかった……」 「そんなに心配していたのか? 俺の方は別に何ともない……戦闘も起こらなかったからな」 その言葉通り、石堀の姿は何も変わっていない。何事もなく、ダグバの遺体を弔えたのだろう。 「それじゃあ、そろそろ行くとするか! 沖や結城達は、どこにいるかねぇ……」 「さあな。だが、予定さえ狂わなければ街に辿り着いているはずだ。あいつらはお前とは違って、基本的に約束は守るタイプだろうからな」 「……なあ、石堀。お前、やっぱり俺に喧嘩を売っているだろ?」 「冗談だって言っているだろ? いちいちムキになる所が、お前の悪い所だ……それじゃあ、いつまで経ってもバカのままだぞ」 「うるせえ!」 涼村暁と石堀光彦のやり取りを、桃園ラブは微笑みながら見守る。 この人達に出会えてよかったと心の底から思いながら。 ◆ 石堀光彦は同行者である涼村暁や桃園ラブと同行しながら、今後のことを思案している。表面上では『頼りになるナイトレイダーの隊員』という姿を装いながら。 ン・ダグバ・ゼバの遺体は海に放置している。人間の世界なら死体遺棄罪に問われるだろうが、ここではその罪を裁く者はいない。それに石堀自身、ダグバの死体を捨てたことに対して後ろめたさを覚える訳がなかった。 それよりも、今は他に懸念するべきアイテムがある。桃園ラブが持っているクローバーボックスという名のオルゴールだ。 (闇を拒絶するオルゴールだと……まさか、そんな楽器があるとは。やれやれ、面倒な性質を持っているな) ラブの信頼を得る為に、提案を受け入れてクローバーボックスを奏でようとしたら手を弾かれてしまう。恐らく、アンノウンハンドであることを見抜いた可能性が高い。抵抗自体はすぐに打ち破れそうだったが、一瞬だけでも拒絶されてしまったことが問題だった。 正体が知られてしまうと危惧したが、その直後に暁も弾かれたので今は誤魔化せている。ただの人間である暁も触れなかったのは疑問だが、もしかしたら主催者がプリキュア以外は触れないように細工をしたのかもしれない。 忌々しいと思った連中だが、今回ばかりはその働きに助かった。だからといって感謝はしないし、最終的に皆殺しにすることは変わらない。 (どうやら、いざとなったらメモレイサーを使う必要があるかもしれないな……クローバーボックスに弾かれたことを見られたのは、問題だ) デイバッグの中にはメモレイサーが入っている。これさえ使えば、クローバーボックスから拒絶されたという記憶を消すことができるだろう。尤も、これはリスクがあまりにも高すぎるので、仮に使うとしても最終手段だ。 参加者に隠蔽ができたとしても、既に主催陣営に知られてしまっている。もしも主催者が他の参加者に教えてしまったら何の意味もない。最悪、消去した記憶を復元させてしまう可能性だってあった。 ……そこまで考えて、石堀の中で一つの可能性が芽生える。 (記憶、だと……やはり、主催者にはメモリーポリスが関わっているのか? いや、最悪の場合、TLT自体が何者かによって乗っ取られた可能性だってある……そして、俺の記憶も操作したのか?) メモレイサーが手元にあるのは、この殺し合いにはTLTが関わっているからだと思っていた。しかし、情報を集めていると事態はもっと深刻な可能性だってある。 数多の平行世界を行き来するラビリンスや、ボトムやブラックホールのような宇宙規模の影響を齎す闇。あるいは、それらに匹敵する力を持つ何者かがTLTを制圧していることだって考えられた。もしくは、ダークザギが暗躍するより前から忍び込んでいた可能性だってある。 放送前に、どうして凪がウルトラマンの光を得られるのかという疑問を抱いたが、その途端にノイズが走った。もしかしたら、正体不明の黒幕がメモレイサーと同じような道具を使ったことによって、記憶にプロテクトがかけられたかもしれない。 だが、何の為にそれをする必要があったのか。知られることで、この殺し合いを根底から崩す原因となってしまうのか。放送で現れたゴハットという怪物は、9時以降に単独行動を続けていれば制限について話すと言っていたが、その状況になれば真実を知れるのだろうか? ……だが、ここでいくら考えても答えは見つからない。単独行動を出来る状況になるのかわからない現状では、どうしようもなかった。今は情報収集に専念するしかない。 例えるなら、放送で現れた男についてだ。 「そういえば暁。放送で現れたゴハットという奴はダークザイドを自称していたが、知っているのか?」 「あんな怪しげな男、俺が知っている訳ないでしょ! ていうか、関わりたくもねーよ!」 「そうか。だが、奴はお前のことを知っていそうだったが……もしかして、黒岩のように未来で会う可能性があるかもしれないぞ」 「マジかよ!? 勘弁してくれよ……」 暁はうんざりしたように深い溜息を吐く。いくらいい加減な暁といっても、あんな得体の知れない男は流石に受け付けないようだ。それは石堀も同じだし、あんなふざけた態度を取る怪物に見下されていると思うと、怒りが湧きあがってしまう。 だが、それが原因で感情を乱されてはまた足元を掬われる危険があった。凪を殺された時のように失態を犯さない為にも、石堀は心を鎮める。 「なら、ここで倒してしまえばいい。そうすれば、お前の未来だって変わるかもしれないし、これからの未来で奴の被害者が減るかもしれないだろう?」 「石堀さんの言う通りですよ! あたしも、暁さんと一緒に頑張りますから!」 「そっか……そりゃ、そうだ! そうした方が、一番早いよな! あんなオタクヤローはこの俺の手で、ぶちのめしてやるよ!」 ラブと共に助言をした瞬間、暁は一気に表情を明るくした。 やはり、この男は単純だ。単純だが、それだけに扱いやすい。暁はどうしようもないバカだが、ダグバを殺すことはできなかっただろう。ラブと同様、まだまだ利用することができそうだ。 利用価値がありそうな一文字隼人や村雨良は死んでいる。残念だが、放送で呼ばれてしまった以上は仕方がない。今は次のデュナミストと、他の仮面ライダーを始めとした協力者を探すべきだった。 目的を見定めながら、涼村暁と桃園ラブの二人を先導するように石堀光彦は歩く。その先に、復活の手がかりがあると信じながら。 【1日目 夜】 【H-8/市街地】 【備考】 ※山吹祈里の遺体が埋葬されました。また、埋められている場所にはカオルちゃん特製のドーナツ@フレッシュプリキュア! が一つだけ供えられています。 ※ン・ダグバ・ゼバの遺体は海に放置されました。 【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】 [状態]:疲労(中)、胸部に強いダメージ、黒岩への怒り、ダグバの死体が軽くトラウマ、嘔吐による空腹、ただし今は食欲減退 [装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、モロトフ火炎手榴弾×3 [道具]:支給品一式×7(暁(ペットボトル一本消費)、一文字(食料一食分消費)、ミユキ、ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦)、首輪(ほむら)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス、八宝大華輪×4@らんま1/2、スタンガン、ブレイクされたスカルメモリ、ランダム支給品0~4(ミユキ0~2、ほむら0~1(武器・衣類ではない)、祈里0~1(衣類はない)) [思考] 基本:加頭たちをブッ潰し、加頭たちの資金を奪ってパラダイス♪ 0:石堀やラブちゃんと一緒に、どこかに集まっているだろう仲間を探す。 1:別れた人達が心配、出来れば合流したい。 2:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。 3:黒岩との決着は俺がつける 4:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。 5:変なオタクヤロー(ゴハット)はいつかぶちのめす。 [備考] ※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。 ※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。 ※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。 ※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。 ※森林でのガドルの放送を聞きました。 【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、左肩に痛み、精神的疲労(小)、決意 [装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア! [道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×1@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─、クローバーボックス@フレッシュプリキュア! 基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。 1:どこかに集まっているだろう仲間を探す。 2:黒岩さんのことはひとまず暁に任せる 3:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。 4:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。 5:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。 6:犠牲にされた人達のぶんまで生きる。 7:ダークプリキュアとと暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。 8:どうして、サラマンダー男爵が……? [備考] ※本編終了後からの参戦です。 ※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。 ※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。 ※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。 ※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。 【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、頭痛 [装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー+ガイアメモリ(アクセル、トライアル)+ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ+T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW 、コルトパイソン+執行実包(2/6) 、ロストドライバー@仮面ライダーW [道具]:支給品一式×3(石堀、ガドル、ユーノ、凪、照井、フェイト)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、血のついた毛布、ランダム支給品2~8(照井1~3、フェイト0~1、ガドル0~2(グリーフシードはない)、ユーノ1~2) [思考] 基本:今は「石堀光彦」として行動する。 1:今は暁とラブの二人を先導しながら街を進む。 2:どこかに集まっているだろう仲間を探す。 3:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。 4:次のデュナミストがどうなっているか気になる。もし異世界の人間だった場合どうするべきか… 5:孤門や、つぼみの仲間、光を持つものを捜す。 6:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する 7:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。 8:クローバーボックスに警戒。 [備考] ※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。 ※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。 ※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。 ※良牙が発した気柱を目撃しています。 ※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました。 ※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。 ※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。 ※森林でのガドルの放送を聞きました。 ※予知能力に関する記憶が思い出せませんが、何故凪が光の継承者になった事を知っていたのか、疑問に思い始めているようです。 ※TLTが何者かに乗っ取られてしまった可能性を考えています。 【支給品解説】 【クローバーボックス@フレッシュプリキュア!】 暁美ほむらに支給。 シフォンと一緒に流星から現れた不思議な力を持つオルゴール。最初は長老のティラミスによって守られていたが、ある時からタルトに託される。 音色を奏でると、インフィニティとなったシフォンを元に戻す効果がある他、ラビリンスの作ったレーダーを狂わせることができる。 また、悪人が触れようとすると自動的にバリアが張られます。(どのくらいの基準で弾かれるのかは、後続の書き手さんにお任せします) プリキュア達が四人集まって、力を合わせれば合体必殺技であるラッキークローバー・グランドフィナーレを発動させることもできます。 時系列順で読む Back 空虚Next 解─unlock─ 投下順で読む Back 空虚Next 解─unlock─ Back ひかりのまち(後編) 涼村暁 Next 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) Back ひかりのまち(後編) 桃園ラブ Next 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) Back ひかりのまち(後編) 石堀光彦 Next 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編)
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4/4【キルラキル】 ○纏流子○鬼龍院皐月○満艦飾マコ○蛇崩乃音 4/4【魔法少女まどか☆マギカ】 ○鹿目まどか○美樹さやか○巴マミ○佐倉杏子 2/2【ハリー・ポッター】 ○ミネルバ・マクゴナガル○リータ・スキーター 2/2【東方Project】 ○二ッ岩マミゾウ○今泉影狼 2/2【ONE PIECE】 ○エンポリオ・イワンコフ○Mr.2・ボン・クレー 2/2【Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 ○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン○美遊・エーデルフェルト 2/2【らんま1/2】 ○シャンプー○早乙女乱馬 2/2【封神演義(藤崎竜)】 ○胡喜媚○楊ゼン 2/2【魔法少女おりこ☆マギカ】 ○呉キリカ○美国織莉子 2/2【魔法少女リリカルなのはシリーズ】 ○高町なのは○フェイト・T・ハラオウン 2/2【美少女戦士セーラームーン】 ○月野うさぎ○水野亜美 2/2【Dies Irae】 ○櫻井螢○ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン 2/2【戦姫絶唱シンフォギアG】 ○立花響○風鳴翼 2/2【GANTZ】 ○ぬらりひょん○鬼星人(変身) 1/1【魔人探偵脳噛ネウロ】 ○怪盗X 1/1【鋼の錬金術師】 ○エンヴィー 1/1【HELLSING】 ○アーカード 1/1【ハウルの動く城】 ○荒れ地の魔女 1/1【HUNTER×HUNTER】 ○ビスケット・クルーガー 1/1【NARUTO -ナルト- 】 ○うずまきナルト 1/1【鶴の恩返し】 ○つる 1/1【ナイトウィザード】 ○ベール=ゼファー 1/1【アイアンナイト】 ○ユキ 1/1【幽☆遊☆白書】 ○幻海 1/1【進撃の巨人】 ○アニ・レオンハート 1/1【うしおととら】 ○とら 1/1【テラフォーマーズ】 ○ミッシェル・K・デイヴス 1/1【ToLOVEる】 ○金色の闇 1/1【宇宙の騎士テッカマンブレード】 ○相羽ミユキ 1/1【キューティーハニーF】 ○如月ハニー 1/1【学園キノ】 ○木乃 1/1【大神】 ○妖魔王キュウビ 1/1【サモンナイト3】 ○アティ 1/1【BLACKCAT】 ○イヴ 1/1【Fate/タイガーころしあむアッパー】 ○カレイドルビー(遠坂凛) 1/1【チャージマン研!】 ○ジュラルの魔王 1/1【大乱闘スマッシュブラザーズX】 ○ゼルダ 1/1【ファイアーエムブレム】 ○チキ 1/1【眠れる森の美女】 ○マレフィセント 1/1【逆転裁判シリーズ】 ○綾里真宵 1/1【仮面ライダー555】 ○影山冴子 1/1【仮面ライダー龍騎】 ○霧島美穂 1/1【金剛番長】 ○香蜜詩織(文学番長) 1/1【遊戯王ZEXAL】 ○神代璃緒(メラグ) 1/1【神風怪盗ジャンヌ】 ○日下部まろん 1/1【竜†恋】 ○恋するドラゴン 64/64
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赤狼 ◆gry038wOvE この一戦は爆風に始まった。 土煙に木の葉の滓も混ぜ込まれ、土の表面とともにプリキュアたちのスカートが一瞬、浮き上がり、揺れた。 地面で爆弾が破裂したようだったが、違う。 見れば、ガミオの両拳が指先で硬く結ばれたまま、その地面に叩き付けられている。そこには地面の形に歪が生まれ、二人のプリキュアを遠ざけている。 「避けたか──」 ほんの一瞬前まで、その歪んだ地面の中心にはキュアムーンライトがいた。 先ほど、キュアムーンライトはガミオの言葉を合図に、真っ先に前を出て、脇腹に蹴りを入れた。続けて、追従するように、一秒遅れてガミオの懐に現れたキュアブロッサムがガミオの左頬を打った。 次の一瞬で、手足が増えて見えるほどの攻撃の連打を始めた。プリキュアの攻撃スピードは速く、ガミオの体を一秒で何打も狙った。──が、ガミオはそれを全て肘で受け止めた。プリキュアの攻撃を無力化するほどの硬い体表は、その中の血肉に僅かな震動さえ届かせない。 全ての攻撃を受け切った後、ガミオは、両掌を組み上げて、真上からキュアムーンライトを叩き付けようとしたのだ。その攻撃が、地面に穴を作っているという事は、ガミオが頭部だけを殴るのではなく、頭から足の指先まで叩き潰そうとした証だった。 「……!!」 キュアブロッサムは、ガミオの両拳が地についた意味を、遅れて理解した。 ──そう、その両腕だけで圧死させるつもりだったのだ。人一人の身体を、ひしゃげた肉片の飾られた血だまりに、変えようとしたのである。 「──何故、あなたはそうまでして戦うんですか!」 その惨状は、キュアブロッサムの精神を沸点に届かせた。 赫怒を填め込んだ語調に肩が揺れる。腕も言葉に沿うようにして、勝手に荒く動いていた。 激しい怒りを前にしても、ガミオは淡々と両腕を上げ、立ち上がるようにして直立体勢へと彼の恰好を変えるのみだった。 「お前は望まれないものの生き方を知っているか──」 ガミオは、逆にそう彼女に尋ねる。問われた本人も、返答が来た事を意外に思う心持だった。彼女も、そこに言葉を返す事はなかった。息と固唾を飲みこんで、当人が答えを言うのを待った。傍で、キュアムーンライトが怪訝そうな顔を浮かべる。 ガミオは、まるで呼吸をしていない人間のように言った。 「望まれないものは、小さな箱に閉ざされる。 箱の中には光は通らない、外の者からも俺の姿は見えない。 誰かに望まれ、箱が開けられぬ限り、光を浴びる事も、誰かの目に映る事もないのだ」 寂しい言葉だが、ガミオ自身は機械のようにそれを読み上げていた。あらかじめ決まった台本があるかのように、すらすらと台詞を舌に流していた。ブロッサムの方へと飛ばす言葉にも聞こえなかった。自分自身に対する言葉かも怪しいほどだ。 その言葉こそが、まるで誰にも求められないような──意味ありげでありながら、何の意味のないポエムのようだった。誰に対して投げかけられた言葉でもない。 「……だが、俺はここに光を浴びている。お前たちは俺を見ている。確かに目にしている。 それは誰かに望まれた、求められたという証だ。 俺を閉ざしていた箱は開かれた。そこには何か意味があるはずだ──」 ガミオは、全てを知っていながら、肝心な事を知らなかった。自分を望んだ存在は「誰」なのか。考えてみても一向にわからなかった。──しかし、その何者かの意思に答える気だけは十二分にあった。 それだけが、彼の生きる答えなのかもしれない。それだけが、彼が辿っていける糸──ある意味で悲しく、ある意味で最も楽な生き方だと言えた。 「究極の闇となる事──それが、箱を開けた者が求めた、俺の存在意義なのだ」 グロンギの王としての使命か、宿命か、──彼はそんな物に縛られていた。彼自身が苦痛とも感じず、まるで人間らしい感情を持っていなかったからか、誰かが意図的に彼を縛るというより、むしろ、誰にも縛られていないからこそ、グロンギの生き方から何処にも動かないようだった。 生まれないならば生まれないままで良かったが、生まれた理由があるのなら、それを果たす他なく、彼自身もそれに不満を感じていない。 「エターナルと、大道克己と同じ……!?」 キュアムーンライトが、眉間の皺を寄せ、奥歯を強く噛んだ。かつて、彼女が遭った男も、また同じように、己の存在意義を永久に世界に刻み付ける為に殺し合いに乗ったと語っていた。大道克己の事は、思い出すだけでも苛ってしまう程だ。──いや。 「……いや、私も……同じ……?」 しかし、ふと頭をよぎるのは、かつての自分の姿であった。サバーク博士の中に「存在」したいという気持ちが、かつてあった事だった。──いや、今も、心のどこかには、その気持ちある。 誰かの中に自分という存在を保たせる。そして、アイデンティティを確保する。自分という存在を他の誰にも重複させたくないという思いは、一人の人間としてサバーク博士の中に存在したかった、その気持ちに近い。 まだ僅かでもそれを心の中に秘めているからこそ、よくわかる。 「自分の存在を誰かに示す……それは間違った事ではありません。私も、みんなも、そうです」 隣で、キュアブロッサムが言う。彼女は、その時、キュアムーンライトの方を、一瞬ちらっと見つめた。 「私たちの事は、長い時間とともに、いつしか忘れられていきます。確かに、それは寂しい事です。その前に、少しでもいいから自分が生きた証をどこかに残したい気持ちもわかります」 それはキュアムーンライトへの慰めではなく、純粋な彼女自身の気持ちであった。 これだけ長い間生き続け、たくさんの人を知り、その人生を謳歌している。誰かの些細な優しさや、楽しいひと時に触れるたび、それがいつしか忘れ去られてしまう運命を呪いたくなる。 自分がいつか死に、いつか忘れ去られ、風化していってしまう事に怯えて眠れなくなる人もいるだろう。──それが当然である。 「しかし、私たちが残していくものの中には、消えないものも……消してはならないものがある。存在し続けなければならないものがある」 命はいつしか消えてゆく。しかし、命の尊さだけは消えない。 記憶もいつしか消えてゆくだろう。しかし、心は消えない。 彼女は勿論、消えていく物も守ろうとしている。命も守っている。体も守っている。花も守っている、人も守っている。 しかし、何より大事なのものは朽ち果てていかない物であった。 「それをあなたは自分のために消そうとしています。私たちが、させません!」 キュアブロッサムは、両足を開き、腰を落とし、右拳を体の前で曲げ、顎を引き、ガミオに怒鳴るように言った。何度、こうして、砂漠の使徒に啖呵を切っただろうか。花咲つぼみという女性は、気弱そうに見えて、その実、明確な意志が心の中にあるのだった。 「……やはり、お互い殺し合う定めのようだな」 ガミオも体勢を変えた。両腕を高く上げ、そのまま体の後ろに下げる。五本の指が全て開かれ、爪の尖った指先がよく見える。右足を前にだし、腰を落とし、獣のように、吠え損ねたような呻き声を喉元から発する。 これ以上、言葉はないという意味だった。うぐるるるる……。うぐるるるる……。喉の奥で木霊する。 「──殺し合いなんていう言葉は大嫌いですッ!」 再び、キュアブロッサムが駆ける。 パンチが飛ぶ。ガミオの胸に微かな痛みが宿る。しかし、ガミオは、キュアブロッサムの右手を掴んだ。その右手を強く握る。ガミオの握力が、ブロッサムの右手の骨に軋むような音を立たせる。数秒握れば折れるほど。 「くッ!」 「定めには抗えん」 「……私が、あなたに対して殺意を持たない限り……これは、殺し合いじゃない……!」 ガミオは、更に力を込めようとしたが、そこを真横からのキュアムーンライトの蹴りによって妨害される。四十五度、綺麗かつ円滑な落下の飛び蹴りと、鋭い爪先が、ガミオの頭に命中。数メートル、吹き飛ばされて煙が立ちこむ。 キュアブロッサムは右手の様子を見る。終わってみれば大事ではない。ガミオの異形の手の痕だけがくっきりと残っている。しかし、実は握られていたのはほんの一秒の話でしかないが、まるで数秒間握られていたようだった。 右手の痕を見て一瞬呆けるブロッサムを、ムーンライトが心配する。 「大丈夫?」 「モチのロンです!」 「そう……良かった」 相手の、ただ純粋な「力」。そこの強さが、先ほどからよく伝わっている。 あまり接近戦が好まれない相手であるのは、よくわかった。──しかし、どう攻撃を仕掛ければいいのか。 不用意に接近するのは危険。遠距離の戦法はどうだろうか。……いや、それも先ほど、ガミオはまるで、緩やかな水流に身を寄せただけであるように、平然と飲み込んでいた。 彼には、必殺級の技も無効。二人で戦うには分が悪いようであった。 「──オオゥゥ……」 ブロッサムとムーンライトは、ガミオの口から漏れた小さな声に、耳を傾げた。 何かを不都合に思っているようだった。 ガミオの視線は、二人には向いていなかった。彼の目が見つめているのは、二人のいる場所よりも少し後ろ。もう少し遠目だ。ガミオの目を彼女たちがどれだけ見ても、目は合わない。 しかし、背後から何かが接近しているとしても、ブロッサムたちは動けない。一瞬、目を離せば、ガミオは獣のように二人の目の前へと駆け出すだろう。 「……お前たちの仲間か」 ガミオが、キュアブロッサムに問う。 「え?」と、キュアブロッサムは、ガミオの一言に最初は戸惑った。 仮面ライダーエターナル、響良牙が助けに来てくれたのだろうか。 「──そうだ」 答えたのは、キュアブロッサムでもキュアムーンライトでも──仮面ライダーエターナルでもない。 その声の直後、何かが靡く音と人影が、二人の頭上を去る。二人のいる場所を飛び超えて、敵の胸元に向かっていくのは、白い魔法衣の男の後ろ姿。 空で刀を鞘から引き離し、白銀の刃がそのままガミオの胸の装飾に突き刺さる。 その刃は、その剣を持つ男にとっては、立つ鳥が残した羽毛よりも軽い。──そう、“彼にとっては”。 しかし、敵にとっては、ただの剣と同じように胸に刃の重さが圧し掛かるのだ。その剣は、持つ者によって重量を変える「ソウルメタル」という特殊な材質だった。 「鋼牙さん!」 それは、冴島鋼牙であった。 次に、鋼牙の左中指で、見知らぬ指輪が声を発する。──彼女たちは知らないが、それは魔導輪ザルバといった。 ザルバは彼女たちには脇目も振らない。ガミオの胸に突き刺さった剣を両手で構える相棒にだけ語り掛けた。 『鋼牙、ホラーじゃないが、こいつにもとてつもない邪気を感じる……』 「ホラーじゃないなら、何だ」 『こいつも、もともとは人間……かもしれない。俺にもわからない存在だ』 「もしや、薫が言っていた、未確認というやつか」 鋼牙はすぐに剣を引き抜いた。──ガミオは、剣が自分の体表を掠めたようにしか思っていないだろう。まるで、もう一撃当ててみろとばかりに、直立で鋼牙の瞳を見つめていた。 鋼牙は、魔戒剣の柄でガミオの顔面を叩く。 常人ならば、額が割れてもおかしくないような一撃。しかし、ガミオにとっては、その一撃はプリキュア以下のもの──さほど甚大な傷を生む事はなかった。 ザルバは言う。 『斬れ! 鋼牙。どっちにしろ、こいつはおそらく手遅れだ。斬るしかない』 「……」 『躊躇はするな。……こいつこそ、守りし者の天敵だ。ホラーと同じになった別世界の陰我の結晶みたいなもんだぜ。こいつはもうホラーも同じ、そしてお前は……』 一条と同じく、未確認生命体の殺害をやむなしとするザルバの判断。 鋼牙は、眉を顰める。彼の使命は、ホラーを狩り、人間を守る事。人間を斬る事ではない。 彼が斬れるのは、斬られる覚悟を確かに持っており、闇に堕ちた時に斬られる誓いを持つ者だけだ。──そう、魔戒騎士たちが、闇に堕ちた時の話である。 しかし── 「……ホラーを狩る、魔戒騎士だ」 仮にガミオがそのどちらにも該当しないとしても、鋼牙は覚悟を決めた。 柄から、刃へ。鋼牙は魔戒剣を再び持ち変える。この場に来てからは、そうした相手を斬る覚悟も必要だと知る。 『ま、同じ狼同士、仲良くしてもらいたいところだが、血の味を覚えちまった狼とは、分かり合える気がしないだろ』 そう言う、ザルバ。ザルバ自身も、ホラーである。もともと、人間とホラー自体は共存の道を歩んでいるが、ホラーの中には戒律に反して人を襲う者がいる。それをプリズンホラーと呼ぶ。鋼牙が狩るホラーはプリズンホラーであって、只のホラーではない。 そんな同族狩りに協力しているザルバらしい意見であった。いわば、彼も人間界でいう警察に近い存在なのである。 同族とはいえ、人の道を外れた者とは相容れない。ホラーに協力する人間は、鋼牙も何度見た事だろうか。──彼がそれと同じだというのなら。 鋼牙は少々、考えた。 「その通りだな、ザルバ。行くぞ!」 やや不本意ながらも、鋼牙は目の前のガミオに、再度剣を振るう。 敵が人間であるとして、もう助からないならば、やむを得ない。感情を亡失した大道克己や、暗黒騎士に成ったバラゴと同じ、「例外」だと言えよう。 剣はガミオの右肩を抉り、そのまま左の腰に向けて切り払われる。続けて、息をつく間もなく、もう一撃。反転した、左肩から右腰にかけての切り払い。ガミオの胸の×印が残る。 「効かん……」 ガミオはもう一歩、前へ。怯む様子はない。 鋼牙も左足を一歩下げ、顔の横に剣を持ってくる。その剣を物差しに、先端がガミオの喉元を捉えるようにして構えていた。 本来なら一分の隙もない構えではあるが、剣技そのものが効いていないガミオにとっては、隙の無さも全くの無関係であった。 『本当に全然効いてないみたいだぜ!』 「……何だと。このまま戦っても埒が明かないな」 やむを得ない、とばかりに鋼牙はすぐに戦闘方法を変える。 腕を頭の上に伸ばし、更にその手に強く剣を伸ばす。天にでも届かせようとしているのだろう。 「天」、「地」、そして、「魔戒」──全てを超越する光を得るために、鋼牙は魔戒剣で、空に円を描いた。 その一筆が空に金色の光の輪を残す。その輪から降り注ぐ光の残滓に、鋼牙は飛び込んでいった。常人では考えられない跳躍力で、鋼牙は光の輪を潜る。 そこを潜り抜けた時、鋼牙の姿はもう無い。 ──あるのは、その名の通り、黄金の輝きを見せた、黄金騎士ガロの鎧。 黄金騎士ガロが、この殺し合いの地に再びその姿を現した。 「なるほど、狼同士とはそういう事か。よく言ったものだな!」 ガミオは、駆け出すと空に飛び上がった。中空を彩る黄金騎士の体に飛びかかり、叩き落とそうとする。ガミオは空に浮く事もできたのである。 追って、二人のプリキュアが空に向かって地を蹴り上げる。 「はぁっ!」 「やぁっ!」 ガミオの体が黄金騎士の鎧へとたどり着く前に、両脇からガミオの元へと飛び上がる二人のプリキュア。──それぞれ、両足を前に出し、膝をガミオの脇腹に向けて素早く振るう。 ガミオの動きが、一瞬だが、止まる──。 「──そこだ!」 牙狼剣は、その一瞬の隙を狙い、ガミオの頭へと叩き付けられる。 「甘いッ!」 ガミオの頭部がダメージを受けるかと思えたが、それは甘い考えだった。剣には何かを切り裂くための刃があるというのに、その刃よりも硬い石頭が相手なのである。ガミオは傷を負う事もなかった。 ガロもソウルメタルの力を調整し、おそらく最大限、相手にダメージを与えうる形にしたはずであった。それも全く効いていない。 「くッ」 次の一手を考えた時──。 何か、黒い影が一瞬、ガロの前で旗めく。ガミオの背後に何かが居た。空中へと飛び上がった、第三勢力であった。 ──HEAT!!── ──Heat Maximum Drive!!── 突如、敵か味方か、何者かが鳴らした聞き覚えのあるガイダンスボイスが空に響いた。 その音は、ガミオの声にも微かに似た、中年男性の声のような低音であった。ガイアメモリが、こんな音をいつも鳴らす。今日一日、何度目かになるその声。 「うおりゃああああああああああああああああっっ!!」 次の雄叫びもまた、聞き覚えがあった。その声は忘れない。鋼牙にとっても、今日出会った少年の声、そのものだった。真正面を見れば、白い死神の仮面ライダー──仮面ライダーエターナルの姿があった。激情を練り混ぜた炎のパンチがガミオの背中で炸裂──烈しい炎がガミオの背中に伝う。 ガミオは、その声に思わず振り向いた。青色に変わった火炎の紋様が、ガミオの体を引いて、体の横に戻されたのがわかった。 この不意の攻撃に驚くのはガミオだけではなかった。ガロ、プリキュア問わず、その出現に驚愕する。 「仮面ライダーエターナル……!? お前は……響良牙か!」 「当たりだ!」 ガロも、それが、響良牙が変身しているエターナルであろう事は理解する。エターナルメモリを所持しているのは良牙だ。彼がそれに変身する決意をした事が意外であった。己の体一つで戦う自信を持っていた良牙である。 「ほ、本当に良牙さんですか……!? ほ、本当に一人でここへ来られたんですか……!?」 「し、信じられない……迷子にならないなんて!」 一方のプリキュア二人は、方向音痴たる彼がここまでたどり着いたという事実に、ショックを受けていた。本気で開いた口が塞がらないといった様子であった。思わず、良牙もあまりの茫然ぶりに恫喝する。 「おい、そりゃどういう意味だ!」 四人は、言いながらも、そのまま自由落下する。──自由落下中に起こっているのは、戦闘ではなく言い争いであった。 ガミオは、そんな四人の様子を見て、自らも念動力を抑え、地面に向けてゆっくりと降りていった。 ともかく、全員が地面につくと、今の少しの驚きと怒りは忘れられ、そのまま戦闘は再開する。 「……まあ、とにかくまたコイツをブチのめす機会がやって来たって事か……丁度良い」 エターナルは、指の関節を鳴らす。──運動不足ではないので、いまいちしっかり鳴らなかったが、肩を回すと少し音が鳴った。 目の前の怪物の全身を、エターナルの黄色い複眼が捉える。 真っ赤な体表に奢侈な装飾──その姿を見ていると、まるで、酔っぱらった成金にでも遭ったような気分になる。ただ、やはりその姿をよくよく見れば、やはり怪物には違いなかった。 「……おれは今、生まれて以来、一番気が立っている……!! 丁度、誰でもいいから、ブチのめしても構わない奴を一人くらいブチのめしたい気分なんだ……」 ガミオの周囲を、ざわめくような気が覆う。それが何なのか、まず真っ先に理解したのは黄金騎士の指に嵌めこまれた指輪だった。 それは、怒気であった──獅子咆哮弾で現れる重い気と同じように、良牙の中に在る怒りの気が、般若の表情でガミオに早速噛みついていた。ガミオは、すぐにそれを振り払う。 振り払われるが、この怒気には威嚇以上の意味はない。 そして、それは直接ガミオに向けられた怒りではなく、この殺し合いの主催を──殺し合いを強いる運命を呪った、あらゆる理不尽や悪意に向けられた怒りであった。 「──草食動物が肉食動物を喰らおうとするか!」 ガミオは、口の中に挑発じみた笑みを含んでいた。──ガミオには、その男が子豚のようにしか見えないのである。 たとえ、その姿が死神を模した仮面ライダーへと変身していたとしても。 結局のところ、ガミオにとっては、誰も同じだった。誰がかかって来ようが、結局は己の敵となる者を倒すだけ。 「全員纏めてかかって来いッ!」 ガミオは、そう唆した。 □ 99.9秒。それが魔戒騎士の鎧の装着タイムリミットである。 その時間は厳守されなければならない絶対の戒律がある。破れば、装着者の方が鎧に飲み込まれ、人を捨て、怪物へと成り果てる事になる。それを行ったのが暗黒騎士キバであり、先ほど黄金騎士の刃が貫いたバラゴという男であった。 その掟を破る機会は、金輪際、彼には訪れないだろう。 涼邑零、という男の手によって、冴島鋼牙が鎧の力から救われたあの日から、もう二度と。 「……ッッ!」 牙狼剣が貫く事ができない体表を持つ怪物が目の前にいたとしても、例外ではない。 タイムリミット、1分半。そのあまりにも短い時間設定の中で、鋼牙は敵将を葬らなければならない。 狙うのはガミオの右腕。牙狼剣は、素早く、吸い寄せられるようにしてそこを突く。 「でやぁっ!」 一方、同じくガミオの左胸を狙っているのが仮面ライダーエターナル。エターナルエッジがガミオの胸から何かを引き出さんとする。 良牙は、生来の戦闘能力そのものが非常に高い。生身では勿論、武器を使った戦法も得意だ。格闘新体操ですら一瞬でマスターするほどである。運動神経そのものも勿論高いが、何より、「戦闘」「格闘」となれば、乱馬と並ぶ達者な実力の持ち主だ。 ガロの動きに合わせ、当初狙っていた右腕から左胸へと軌道修正した。 ガミオに近づこうとも、ざくりという音一つしない。エターナルエッジを通さない頑丈な体であった。決してエターナルエッジが柔なわけではないが、ガミオの体はそれ以上であった。グロンギの王と呼ばれるだけはある。 「──フンッッツ……グレェェェ!!!」 そして、至近距離から、ガミオの右拳によって放たれる緑の電撃。そこから発生したプラズマは真っ赤な火柱へと転換される。そんな灼熱が二人の体を遠ざける。 火炎の直撃は回避するも、二人は何歩か後退する事になった。 「く……ッッ!!」 「火を出せるのか……!」 言いながらも、二人はその火を掻き消している。 ガロは火炎さえも斬る事ができた。鎧の表面を少し真っ赤な炎が燃やす。エターナルは、背中のローブで炎を払う。ガミオは、それを単なる回避術として使ったまでであって、攻撃性を求めてはいなかったようだ。回避された事自体に嫌悪感、不快感を示す様子はない。──もとより、彼がそんな感情を露わにするのかはわからないが。 二人が下がったのを見計らってか、二人のプリキュアが助走をつけて、ガロとエターナルの真上を飛んだ。脳内でガミオにぶつける一撃を頭の中でイメージし、その通りに、ガミオの体を蹴上げようとする。 「「はぁぁぁぁぁっっ!!」」 掛け声がガミオの鼓膜に響いてくる。二人の声が大音声になった次の瞬間には、ガミオの両腕には蹴りが叩き込まれていた。 キュアムーンライトが蹴る、右腕。キュアブロッサムが蹴る、左腕。 そのまま、その腕を足場に見立てて、蹴りの威力で跳ぶ。よろめくガミオの前に二人は着地する。 地面に着地した二人は、また次の瞬間には、同じ息の合った行動を取っていた。 二人、左を向きながら、ガミオの身体へと肘鉄を急がせる。右拳を左掌が包んだまま、しかし、優しくはなく、右拳を押し出すような力を左掌に込めながら──ガミオの胸元に少女の肘が殺到する。 「はっ!」 重い一撃。鈍い音とともに空気が揺らぎ、時が一瞬だけ止まる。二人のプリキュアはその一瞬の沈黙の後に、手足の殆どを動かしてガミオの体から離れる。 ガミオは、尚も顔色を変えない。 ガロとエターナルの元へと、後転しながら辿り着く。ガミオのその無表情を知ったのは、そこに辿り着いた後だった。 「……やはりお前たちの実力はその程度か」 「何……?」 ガミオの言葉は挑発的であった。そこにいる誰もが眉を顰めるだけの中、良牙だけは、その挑発に乗りかねない牽制をしていた。 しかし、ガミオにしてみれば、何となく呟いただけだったのかもしれない。 次の瞬間には、もう既にガミオは戦闘態勢へと戻っていた。 今後は、ガミオからの襲撃だった。 狙ったのは、月影なのは、という仮の名前を持つ少女だった。今はキュアムーンライトの衣装に身を包み、全く別の姿で戦っている。 そんな彼女を狙い目としたのは、ガミオ自身が、その存在に最も興味を持つ相手だったからだろう。本来存在しえない、──望まれているのか否かもわからない産物。それが彼女だ。その存在、その実力を試し、ガミオが消え去る時までには、共に消えていて貰おうと思ったのである。 「ウオオオオオオオオオオーーーーンッッ!!」 遥か遠方から聞こえるような咆哮。──ガミオの喉からの叫び。周囲の木々を揺らし、風を吹かせて響いていく。ふと、その場にいる誰かの背筋が凍った。 それが鳴りやんだか、鳴りやまぬか、というところで、キュアムーンライトの胸がガミオの拳に打擲される事になった。 「うぐっ……!」 一瞬、誰も何が起こったのか理解できなかっただろう。 瞬間移動的な速さ──いや、実際に瞬間移動と呼べるかもしれない。 グロンギの上位が持つ、その幻想のような加速、あるいは転送の力。王であるガミオが有していないはずがない。 それを利用してキュアムーンライトを殴ったのである。 「──はぁぁぁっ!!」 真横から一閃、現れたのはガロ。 ガミオの左半身を狙って、牙狼剣が振り上げられる。──それを、ガミオが肩を上げるようにして、左腕で防御する。硬い体表はソウルメタルの刃さえ通さない。 「うわぁっ!!」 キュアムーンライトの胸を殴った右腕はそのまま開かれ、鋭い爪で、一度、二度、三度と彼女の胸部をひっかく事になった。彼女の口から悲鳴があがり、三度目の引っ掻きによって、彼女の体は数メートル吹っ飛ばされた。 「な……大丈夫か!?」 その間、ガロはその左腕に阻まれて動く事ができなかった。鎧の中で眉を丸めながら、その腕に込める力を強めた。 ガロの両腕と、ガミオの左腕の力は拮抗。しかし、力の面では、どちらが勝ってもおかしくはなかった。 ガロは、一度刃を引き離し、再び体制を練り直してから、もう一度刃を振るう。 「お前はこの場で何一つ変わった形跡がないな。 お前から始まった物語は、一体どこまで続いていく……」 ガミオは、今度はその刃を腕で掴んで見せた。 「何を言っている……」 『こいつの話は聞くな、鋼牙! なんだか触れちゃいけない気がするぜ……!』 「……そうか」 そう答えたガロの右足が、ガミオの腹を力強く蹴る。ガミオの体は牙狼剣を離し、咄嗟に腹を抑えると真後ろに何メートルも滑っていった。 そこへ横凪ぎに剣を振るう。 一閃──ガミオの体に吸い込まれるように、可視光線と貸した斬撃がぶち当たる。 そこでガロの動きも変わる。 相手の動きを一瞬でも封じたならば、その次の一手を講じる。 魔導火のライターから緑の炎が噴出。ソウルメタルに生成された剣を、その炎が焼き尽くす。 「──はぁッ!」 ガロは剣で空に十字を描く。空に出来上がった十字は、そのまま、ガミオの体表へと距離を縮め、ガミオの体を貫いていく。 「ぐおッ!」 更に、その貫いた緑の炎は、生物のように空を飛ぶ。ガロは、その二つの炎に向けて飛び上がると、炎に向けて飛び込み、全身に緑の炎を同化させた。 自らの体に火を灯す様相は異常とも言えたが、これは彼の戦法のひとつ。烈火炎装であった。この炎は戦闘への気概を高める特殊な力を持っていた。 鎧の節目節目から緑炎を生じる彼の姿は、ガミオでさえ近づくのを躊躇うほどの気力に満ち溢れている。 牙狼剣がガミオの元へと距離を縮める。 「火には火だぁぁッ!」 ガミオの拳から発される炎。──しかし、今のガロの元にその炎が届くはずもない。 火炎は、緑炎に吸い尽くされ、その輝きを失う。ひとたび、いや、みたびは鋼牙も鎧の中で眉をひそめたが、烈火炎装された今のガロは、辛うじて耐えられるレベルであった。 またも、一閃。縦一文字に牙狼剣が、ガミオの頭部から腰のベルトへと。 「ウがァッ!」 炎に燃ゆる切っ先がベルトに辿り着こうとした瞬間、ガミオの両腕がベルトの前で交差される。交差された腕が防御壁となって、ベルトに緑炎が到達する事はなかった。 だが、ガミオの体の中央には、尚も緑の炎が小火として残ったままであった。 それが更に、ガミオの腕まで燃やす。 「くッ」 ガロも、ガミオの体の予想以上の硬さに一度、剣を退く。 その後には、既に次の一閃へと繋ぐ。──ガロの剣はまた、真一文字、横凪ぎ。 ガミオの胸元を緑の炎の残滓を残す。十時型に緑の炎を残したガミオは、流石に呻き声をあげ始めた。 『まずいぞ、鋼牙! 時間がない!』 「わかっている!」 『早く鎧を解除しろ、鋼牙ッ!!』 ガミオが苦しむのを横目に、ガロは後退、鎧を解除する。金色の輝きは消え、魔戒剣をその手に握る鋼牙の姿だけが、そこにあった。 少し時間を置いて、隙ができてからでなければ鎧は再装着できない。 「ウオォォォォォーーーーーーン」 ガミオの遠吠えが響く。 全身を焼き尽くさんとする緑の炎を必死に振り払おうと模索しているようであった。 緑の炎に包まれた体を掻きむしるように触れるが、それではキリがないほどに、彼の体は魔導火に蝕まれていた。 「よし、一気に畳みかけるぞ!」 次鋒のようにエターナルが地を蹴り、ガミオへと向かっていく。 引いていた拳は、ガミオの体に一発、力強く叩き込まれる。青い炎の拳が叩き付けたのは、やはりガミオの胸元の金の装飾。 すぐに拳を退いて、次は左足が高く上げられる。ガミオの顔面へと吸い込まれるように──しかし。 「フンッ!」 ──その踝を、ガミオが掌で受け止め、掴む。 「何っ!」 エターナルの驚嘆。 ガミオは、そのまま、エターナルの体を放り投げる。エターナルは空中で体制を立て直すが、そこへガミオが駆け出す。緑の炎は尚もガミオを蝕んでいるはずだというのに、彼を動かす戦闘の本能を崩す事はないようであった。 「はあああああああっっ!!」 次の瞬間には、プリキュアが二人、ガミオの体の前へと迫っていた。 ガミオもそれを、攻撃の直前で補足する。 「ウゥゥゥゥ……」 腰の真横に位置を変えた両腕。ガミオは、それを眼前に組み上げる。 そして、また彼女たちが駆け出してくる軌道に向けて拳を突き出す。 「ガァァァァァァァァッ!!」 ──そこから発される緑のプラズマ粒子。 それは一瞬で灼熱の火柱へと成り変わる──。 「きゃあっ!!」 そのマグマの如き高温は濁流となって二人の元へと突き進んでいく。 キュアブロッサムとキュアムーンライト、二人のプリキュアが咄嗟に回避運動を取ろうとするが、それが間に合わず。出来るのは、ダメージを深くするばかりの前進くらいだ。 当然、キュアブロッサムにはそんな判断はせず、その場にとどまるしかできなかった。 「なっ……!!」 二人のプリキュアは、先ほどまで進んでいた方向と正反対に押し上げられる。 なだれ込むような炎の圧力に屈し、二人の体は後方へと投げ出された。 何メートルも吹っ飛び、地面に叩き付けられ、変身が解除される。桃色と紫の輝くベールの姿に戻った二人は、地面で苦渋の表情を浮かべていた。 あまりの衝撃に足腰を痛め、二人はすぐさま立ち上がる事もできない。 「ウオオオオオオオオオオーーーンッッ!!」 ガミオ、駆ける。 目標は──そう、月影なのは。髪型を変身前のおかっぱ髪のまま、体を光り輝くベールに包んだ彼女に、次なる一撃を加えようと前進している。 そんな狙いを察知してか、冴島鋼牙がすぐさまガミオとなのはの間に入る。 厳格な目つきのまま、ガミオを凝視する鋼牙。その手には、魔戒剣が硬く握られていた。 「邪魔だッ!!」 ──が。 いくら鋼牙といえど、ガミオのような強力な怪物の突進を前に即座の対応は望めなかった。ガミオは足の動きを止めず、右手を前に突き出した。 鋼牙の左腕へと、ガミオの爪が食い込む。 真っ白な魔法衣を切り裂き、ガミオの鋭い爪が鋼牙の肌に触れた。──そして、そのまま乱雑に、ガミオは鋼牙の体を吹き飛ばす。 『鋼牙……!』 ザルバが咄嗟に声をかける。 鋼牙の左腕を駆け巡る、ガミオの鋭い爪の痛み。──鋼牙の体が背から木に叩き付けられる。 「……ッ!」 左腕に滴る血を気にかけるほどの余裕もなく、鋼牙は木の表面を滑り落ち、地面に落ちた。 倒れた鋼牙の視界には、ガミオがなのはの体へと近づいていく様子が見えた。 左腕を抑える暇もない。鋼牙は、右手に持った魔戒剣を杖にすべく、それを地面に突き刺した。 □ 「──あがッ!!」 ガミオは、なのはの首元を掴み、近くの木に向けて背中を叩き付けた。指の長さが首の回り一尺に足りず、木の皮を用いて、初めてなのはの首回りは全て塞がれた。 彼は、一向に他人をいたわる気持ちというのを持ち合わせなかった。 あまりにも雑多に、乱暴に、少女の体に暴力を振るう。 「リントでもクウガでもない……貴様らのような戦士に会えるとはな……!!」 「どういう、事……」 「……貴様はいてはならない者、そしてこの世界はあってはならぬ世界のようだ。まずは貴様から始末する」 この世界は勿論の事、その中でもとりわけ、「いてはならない者」──本来の歴史とは異なる「IF」の道を辿った者。それが彼女であった。ガミオは、その異端の臭いを鋭敏な嗅覚で感知し、こうして吊り上げているのかもしれない。 とにかく、ガミオが真っ先に滅ぼすべき相手は、彼女だと理解した。 この本来の裏で、二次的に存在する異常な世界を象徴する敵──それが彼女だ。 ガミオは、まるでこの世界の破壊者の役割を率先して行っているようだった。彼はその拳を首の真横で高く掲げる。 「やめろ……!」 「やめてっ!!」 鋼牙とつぼみ。この戦いで変身を強制解除された二人が、ぼろぼろの体を起こしながら叫ぶ。首の真横で、構えられた拳は、そのまま、なのはの顔面に向けて突き出されていく。 そこへ到達すれば、その頑健な拳になのはの顔が見るも無残な姿に潰される。そんなビジョンは明白だった。 しかし、それを止める術は、今は鋼牙とつぼみの手にはなかった。無力である事の残酷さに、両名の胸が、悪い意味で高鳴る。息を飲む。ガミオのパンチがなのはの顔に近づいていくたびに。 「──うおりゃああああああっ!!」 その時、一番美味しいところを持っていったのは、そこにいた仮面ライダーエターナル──響良牙だった。 彼とガミオの間には、尚も距離がある。その距離を一瞬で埋めた技が、彼が得意としていた戦法である。彼は果たして、どんな戦法を使ったのであろうか。 「何っ!!」 ガミオの右腕を襲ったのは、一メートル半ほどの巨大な黒いカッターであった。それがガミオの右腕に向けて、回転しながら斬りつけてきたのである。 ガミオの右腕は、表面を微かに抉られる事はあったが、その回転カッターによって切断に至る事はなかった。 ガミオの表面で少しずつ回転速度を落としていくカッター。それは、だんだんと本来の姿を現していった。 「……貴様ぁっ!!」 ガミオが、仮面ライダーエターナルの方を見れば、彼の姿はガミオの眼前にまで迫っている。唯一、先ほどと違うのは、エターナルの背中が真っ黒なローブを背負っていなかった事である。 そう、彼は背中のエターナルローブに「気」を注入して硬質化し、回転するカッターとしてガミオに向けて放ったのである。彼は、軟質の物体に気を送り込んで硬質化させる技術を持っていた。 風にひらひらと旗めくようなローブも、このように、一瞬にして頑丈な刃へと形を変える。 ──Eternal Maximum Drive!!── 「地獄を楽しみなーっ!!」 走行中、既にエターナルメモリのマキシマムドライブを発動していたエターナルは、そのままガミオの眼前でその技を放った。 エターナルレクイエム──青い光を伴った回し蹴りが、ガミオの首に叩き込まれる。 そこに耐衝撃性の首輪がなく、爆発に至らないのは残念だが、狙いとしては悪くなかった。生物の急所であるのは確かに間違いない。 足元に力を込め、一気に発散。 ガミオの首でも落とすかのような一撃が、そこで炸裂する──。 「うがああああああああああああああっっ!!」 ガミオが悲鳴とともに、遠くに投げ出され、ひとまずなのはがそこから助け出される。 ただ、どうも彼女は、むすっとした表情というか、唖然とした表情を崩せなかった。 そのエターナルレクイエムという技が、一種のトラウマとなっていたのだろうか。彼女が姉と呼んだ少女の命を奪った技が、まさにこのエターナルレクイエムだった。助けられたのを感謝したい反面で、それを素直に口に出せないような──発作的なもどかしい感情に襲われた。 ただ、良牙としても、呆然とする彼女に恩を売る気はなく、そんななのはの様子を気にかける事もなかった。 エターナルは、空を戦いでいるエターナルローブを掴みとると、それをまた背中にかけなおした。 「……はぁ……はぁ……なかなかの強敵じゃねえか、あの赤狼野郎は」 エターナルは、そう独り言つ。 目の前に吹き飛ばされたガミオは、すぐには起き上がらなかった。何とか倒したのだと安心したいところだったが、起き上がらないという事は動かなくなった事ではない。──そう、ガミオはまだ動いていた。 しかし、流石にダメージは大きかったのか、呻くような声をあげながら立ち上がっている。 「くっ……」 「……はぁ……はぁ」 それぞれ、体を痛めた様子ながら、鋼牙、つぼみ、なのははエターナルの元へと近づいていった。鋼牙は左腕から滴る血を、右手で止めている。つぼみは足を引きずるように歩いている。なのはは首をやられたせいか、むせ始めているようだった。 ガミオの死を見守るような気分であった。 彼が、果たして何者なのかはわからない。とにかく、ガドルの仲間らしいが、参加者にそんな相手はいない。何故、彼がこんな所に現れたのかは知る由もない。 しかし、それは決して終わりではなかった。 「……くっ……リントよ、勝ったと思うな……。これはまだ始まりに過ぎない……」 驚くべき事に、ガミオはよろよろとした姿ながらも立ち上がった。 まるで目の前の四人に何かを伝えるためだけに、エターナルたちの方を向いたようだった。……いや、もしかすると、端から彼は、何かを伝えるために彼らを襲ったのかもしれなかった。 その強さを、そして、それから始まる更なる恐怖を。 「……今日のところは見逃してやる。 いずれ、俺がガドルを倒し、再び究極の闇となるだろう……。 その時まで再戦はお預けだ……それまで、せいぜい究極の闇の泡を確かめていろ……!」 ガミオは、そう言うと、森の闇の中に消えていこうとしていた。 そんな彼の背中に、思わず良牙と鋼牙が「待て!」と叫んだが、それをザルバがすぐに制した。 『これ以上深追いするんじゃない。今回の戦いでの傷は結構深いぜ。 ……俺たちも警察署に戻った方がいい』 ザルバの言う事は尤もだった。 今のパーティは、良牙以外、全員今作られたばかりの生傷を負っている。この状態で戦っても、犠牲が生まれる可能性を高めるだけと言っていい。 あのまま放置するのも危険な気がしたが、自分たちの身の安全も当然、保守しなければならないのである。 「……待って」 その時、なのはが口を開いた。全員が彼女を凝視する。彼女は、ひどく疲れた様子だった。 当然とも言える。人間の体になってから、プリキュアとして戦ったのは初めてだ。かつてあれだけの激戦を繰り返してきたとはいえ、彼女はもう普通の人間に変わったのだ。 しかも、その初戦の相手がグロンギのン族なのだから、尚更負担は大きい。歴戦の勇士たる鋼牙でさえ、生傷を回避できなかったほどだ。 彼女は本題に入った。 「警察署に行く前に……寄りたいところが……」 その後、彼女は自分が寄りたい場所を三人に告げて、瞼を閉じ、倒れた。 □ ン・ガミオ・ゼダは、疲弊した体を木に靠れかけさせながら、何とか森の中を進んでいた。 体の傷は辛うじて、自己修復が進んでいる。参加者ではない彼の制限は他に比べても比較的弱く、ベルトがある限り、その回復スピードはダグバやガドルを凌駕する程度には早かった。 とはいえ、それでも彼の体に溜まった敗北の傷は、すぐには枯渇しなかった。 「……そろそろ、か」 ガミオは、それでも、確かな打撃を与えていたのを確信する。 確かに、先ほどの戦い、仮面ライダーエターナルによって敗北に導かれたのは確かだろう。 しかし、ガミオは敵方に確かな痛手を残したのを感じた。 「それが究極の闇……俺の真の力はまだ発揮できないが……充分だ」 ガミオの攻撃を、生身の人間が、素手で受けたならば、どうなるか──。 冴島鋼牙は左腕に、月影なのはは首に、ガミオの指で攻撃を受けていた。その際に、いずれも爪が二人を傷つけただろう。 「リントども、闇の力の欠片をその目に焼き付けるがいい……」 ガミオが齎す、「究極の闇」。それは、ガミオの体から発される黒い霧であった。 その効果は、その濃霧に巻き込まれた人間をグロンギへと変える事である。それは、当然、究極の闇の最悪の力として、「王」が二人いる現状では使う事はできなかった。 全ての参加者がグロンギと姿を変えてしまう地獄絵図にはならず、ガミオの黒い霧は発動できない事になっていた。 しかし、──それを、全ての参加者に与える絶望ではなく、ごく微弱な力の一部として使う事ができたならばまた話は別だろう。 ガミオ自身の体に或る黒い霧の遺伝子を、敵の傷を通じて体内や血液に混入する。 それは一種の毒物ともいえた。悪性の種子ともいえた。ガミオの体が作り上げる黒煙を、ほんの微かにだけでも他人に感染させる経路として、ガミオの技があった。 「これから更なる闇がこの世界を覆い尽くす……!」 冴島鋼牙は魔戒騎士、月影なのはは花の力によって生まれた人間。通常の人間に比べれば、その効果は遅れてやってくるだろう。──魔戒騎士などは、魔弾や毒なども通常効かない存在だという。両名ともに、根本的に効果が現れるのか否かも謎に思えるが、ガミオは確信を持っていた。 ガミオが与えた痛手は、やがてリントがグロンギとなって争い合う地獄絵図へと繋がっていく。究極の闇が完全復活すれば、霧に覆われた殺し合いの場で、正真正銘の殺し合いが始まるだろう。 ガミオは、その時を待つ。 「ガドル、いずれ貴様と──」 ゴ・ガドル・バ──改め、ン・ガドル・ゼバ。 究極の闇が発現するのは、別世界の王の栄華が終わり、ガミオが唯一無二の王となった時。その時、世界は王を認め、選ばれた闇を作り出す。 ガミオが勝てば、黒い霧がこの世界を覆う。 ガドルが勝てば、青空の下に夜の如き闇と異常気象が生まれるだろう。 ──彼との再戦の時、そして勝利の時を求めて、ガミオは森の中を彷徨った。 【1日目 深夜】 【現在地:不明(森)】 【ン・ガミオ・ゼダ@仮面ライダークウガ?】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大) [装備]:????????? [道具]:????????? [思考] 基本:この世界に存在する。そして己を刻む。 1:ガドルを倒し、究極の闇を齎す者となる。そして己の力と存在を証明する。 2:この世界にいてはならない者を──。 [備考] ※この殺し合いやこの「クウガの世界」について知っているかのような発言をしています。 ※黒い霧(究極の闇)は現在使用できません。もう一人のグロンギの王を倒して初めてその力を発現するようです。 ※この世界にいてはならない者とは、ロワのオリ要素や、設定上可能であっても原作に登場しなかった存在の事です(小説版クウガも例外ではありません)。 ※仮面ライダーエターナル、キュアムーンライト、ナスカ・ドーパントを「この世界にいてはならない者」と思っています。 ※首輪は存在しません。 ※黒い霧を発する事はできませんが、生身の状態でガミオの攻撃を受けて体内に微弱ながらその力を受けた場合は、通常よりスローペースながらグロンギの力に蝕まれていきます。 主な効果はグロンギ化ですが、作中ではグロンギにならずに死亡した人間もいるので、衰弱等の効果が現れる場合もあります。 □ なのはを背負って先頭を歩くのは響良牙だった。 そこに遅れて、つぼみと鋼牙が歩いてくる。歩きながらも、お互いの情報交換は欠かさなかった。それは、もはや悪いニュースの伝え合いのようなものである。 「……つぼみ。薫はどうした?」 彼がそれを訊かぬはずはなかった。この殺し合いが始まってから、殆どの時間、冴島鋼牙は誰と一緒であったか。──その人物はもうこの世にはいないと、告げなければならない。 放送まで時間があり、鋼牙に伝えるのは口頭によるものになってしまう。それは少し気が重い話だったが、つぼみは鋼牙の問いに答える事にした。 「……一条さんは、亡くなりました」 「何!?」 鋼牙が、足を止めた。つぼみの方を見て、目を見開き、意外そうな顔をしている。 殺し合いがこの瞬間も確かに進んでいる証であると言えた。ほぼ一日、共に行動し続けた一条薫が、自分の知らないところで死んだ事に驚きを隠せないようだった。 鋼牙たりとも、ショックは大きかった。 「私たちを逃がして……それで……」 「そうか……」 しかし、その衝撃を辛うじて飲み込んだ。 今行われているのは殺し合い。そして、それに巻き込まれた人間は、現状では生者より死者の方が多いほどであった。確かに、特に親しい真柄だった相手がその命を絶たれたのは不幸な話だったが、ここまで目の当たりにしてきた惨状から考えれば、珍しい事ではない。 ただ、一条薫の死はその中でも特別ショックが大きかったのは言うまでもない。 「彼もまた、守りし者だった……というわけだな」 死の経緯が、誰かを逃がしてのものだったというのは、一条薫らしいともいえた。 警察組織の人間として、その職務を全うした。それは、魔戒騎士の一生と同じであった。多くの魔戒騎士は、ホラーとの戦いで命を落としていく。 その胸には、必ずと言っていいほど、誰かを守る意志が刻まれていた。 その使命に殉じた男の死を、鋼牙はこれ以上否定する事ができなかった。 「一条を倒したのは……?」 言いかけたところで、ふと思い当たり、鋼牙は倒れている少女の姿を見つめた。 それは、無意識という奴に支配されての事だった。鋼牙は、教えられずともその少女の正体を、何となく察していたからだ。──鋼牙は、その少女がかつて黒衣に身を包んで人を襲っていたのを知っている。 だが、それを慌てて、つぼみが撤回する。 「違います! ……一条さんを倒したのは……」 「ゴ・ガドル・バとかいう奴だ」 良牙が横から口を挟んだ。彼の目は、鋼牙の目を見てはいなかった。 遠い向こうの景色を見ていた。 「さっきの奴と全く同じベルトをしていた。奴の仲間だっ……」 その瞳は遠くを見つめながらも、憎しみを帯びていた。自分の知り合いを殺した人間がまだ生きている事に、尚も怒りを募らせていた。 「ガドルはまだ生きていやがるんだ……いつかぶっ潰さなきゃならねえらしい」 「……わかった。いずれ協力する」 「それから、この娘はもう殺し合いに乗る事はないだろう。それだけは安心してくれ」 良牙はぶっきら棒に言った。 とにかく、彼女がもうダークプリキュアではない事だけは信頼してほしいのである。 良牙は、それ以上何も言わなかった。 『で、随分と紹介が遅れちまったが、一応俺も名乗っておいた方がいいよな?』 「……ああ」 『俺の名はザルバ。コイツの相棒だ。よろしく頼む』 ザルバの自己紹介は簡潔だ。鋼牙は左手を二人の目線の位置に上げた。 「……響良牙だ」 「花咲つぼみです。よろしくお願いします」 つぼみは笑顔で自己紹介する。 そんな横で、良牙が三角形のエンブレムを取り出した。 「バルディッシュ」 『Sure. I’m Bardiche』 それは、つぼみさえも知らない存在である。良牙がいつ手にしたのかもわからない、その物体につぼみは言葉を失う。 「マッハキャリバーさんじゃない……? 新たなデバイスですか?」 「ああ……さっき、ちょっと拾ったんだ……」 そう言う良牙の表情は、微かに物憂げだった。 その横顔の意味がつぼみにはわからなかったが、きっと彼がほんの数分の間に、何か新たな悲しみに直面したであろう事は間違いなかった。 彼が口にしない限り、つぼみはそれについて訊く事はできなかった。 □ 既に、そこは芝生を踏む余地もない、アスファルトに舗装された街の中であった。 警察署のある場所はとうに過ぎている。彼らがなのはの要望で向かったのは、警察署ではない。 そこは、F-10──港であった。 「……」 鋼牙も、ここまでの道のりでこの月影なのはと名付けられた少女に関する事情を耳に入れていた。彼女がかつてダークプリキュアであった事は、つぼみ経由で先ほど聞かされている。確かに、何となくその面影を残していたので鋼牙自身もどこかで察して、気にしないように戦っていた。戦いの中に、無用な言葉を発するのは無粋で命とりである。 鋼牙自身は、彼女の心変わりも一つの転生として、少し怪訝に思いながらも、認める事にした。先ほどの戦闘でも、彼女には鋼牙たちを陥れようという様子が見られなかったので、当面は敵となる事はないだろう。 何はともあれ、それぞれ、ふらふらになりながらも、なのはの希望通り、港にやって来る事ができた。 「おい、起きろ……!」 辿り着くと、良牙はすぐになのはを起こす。彼女の目は覚めぬままだった。 見れば、ひどくうなされているようだった。額には汗がのぼり、呼吸も切れ切れ。意識の有無さえわからないほどに喘ぎ、目を開ける事もおぼつかない様子で瞼の下に涙を見せている。 それが、「異常」である事に、良牙はすぐに気付いた。気づかない方がおかしいほどだった。 良牙は慌てた。 「……おい、大丈夫か!」 良牙は、その頬をはたこうとしたが──やめた。 自分では、力が出すぎる可能性がある。それはどうも苦手だった。彼の馬鹿力では、時たま、少し壁に触れただけのつもりが、瓦礫を生み出してしまう事があった。これは人体では喩える暇もなく危険だとわかるだろう。 隣で、つぼみが交代するようにして、なのはの頬を軽く叩いた。 彼女が目覚める事はない。仕方なしに、彼は水をかけて、彼女を起こした。起こさなければ危険な気がした。海水では可哀想なので、ペットボトルから出された水をなのはは顔にかけられる事になった。汗や涙は穢れを落とすようにして流れていった。 なのはが目を覚ますと、そこにはぼんやりと、良牙とつぼみの顔が映った。 外は星に満ち満ちていた。波の音が聞こえ、そこが海である事は容易にわかった。 そして、またそこが、かつて源太を殺害してとおりすがった場所であるのも、すぐにわかった。 なのはは、慌てて起き上がった。 「あ……」 体のバランスが崩れる。体の力が入らない。 人間の体で受ける身体的負担を、いま確かに実感した気がする。必要以上に肩や足が重かった。 いや、それはかつて味わった事のない痛みだった。ダメージ以上の苦しみや高すぎる体温が彼女の体を蝕んでいた。 「だ、大丈夫ですか!?」 その問いかけに、起き上がって頷く事で答えた。言葉を発すれば、体の奥から何かを吐き出してしまいそうなほど気分が悪かったのだ。 彼女は、ふらふらと水面に向かっていった。 そんな彼女の肩を、良牙が抑えた。 「……待て。ここで何をすんだ、……よ……」 言いかけた良牙の目の前。水面には、一人の人間が浮き上がっていた。 言葉を失う。──なのはが求めたのは、その死体だったらしい。彼女は、口を紡いでいるが、驚いた様子は見せなかった。 それはまだ、水の中で息絶えてからそう時間が経っていないようで、大きく膨らまず、腐敗もせず、人の形を残していた。 「源太……」 梅森源太──ダークプリキュアが殺した人間の名前であった。 彼がそこにいた。死亡から約六時間経過し、波に押されて港に引き寄せられていた。 源太を殺害したのは、他ならぬ彼女自身だった。彼女は一刻も早く、彼を寒い海中から引き出し、別のもっと温かい場所へと持ち運ぼうとしていたのであった。 つぼみや鋼牙も言葉を失った。 「すぐに……」 「待て、俺が引き上げてやる。……お前はここで待ってろ」 良牙が、水中に入っていこうとするなのはを制した。 主に肉体面で、彼女の状態は非常に悪いといえよう。今の彼女にあまり刺激を与えてはならない。まして、この夜水に晒すなど、危険そのものである。 今の良牙は、この水の中に入っていく事ができた。 「つぼみ、任せた」 「あ……はい!」 なのはの体重をつぼみの肩に任せると、良牙は上半身の衣服を脱ぎ始めた。水に入る準備であった。 良牙はタラップを見つけると、それを丁寧に辿っていき、水の中へとその半身を漬けた。 もう、彼は小さな子豚の姿には変わらなかった。そんな自分の体を見て、少しの感慨に浸るが、良牙はすぐにその死体のもとへと水をかいた。 「……」 誰もがその様子を黙って見つめていた。 良牙の手際は良かった。源太の首もとを片手で掴み、すぐにまたタラップのところまで泳いで、その男の死体を引き上げた。正直言って、感触はあまりよくなかった。良牙の指には、ただただ不快な柔らかい感触が残った。 つぼみが手伝おうとそこに寄ったが、良牙は掌を前に出して彼女を制した。 「つぼみ、寄るな」 「え……?」 「あまり触れて気持ちの良いもんじゃない」 水死体の不快な感触はあまり他人に味あわせたくはなかった。 「おい、なのは……この死体は、一体誰の死体だ? 落ち着いてからでいい……言ってみろ」 そう言われて、彼女は微かに黙った。 一瞬だけ脇目にそらした瞳を、再び良牙の方に向ける。その顔には、まだ水滴が残っている。 「……私が殺した、梅盛源太という人」 誰も意外には思わなかった。ただ、言葉は出てこなかった。 「……そうか。……わかった」 良牙は、梅盛源太の遺体をなのはの元に手渡した。 重く不快な感触の物体が、人から人の手に渡っていく。なのはは、力が足りず、一瞬バランスを崩した。それが罪の重さであった。 「ちょっと待ってろ。まだ、海の中には何か沈んでる。多分、その男が持っていたものだ」 良牙が再び、海の中にその身を投げ出した。今度は、丁寧な降り方ではなかった。大きな音と波を立てて、水に飛び込んだのである。 つぼみも鋼牙も、その飛沫に一瞬だけ目をやったが、またなのはの方へと視線を変えた。 彼女は、つぼみの体から離れると、体が安定しない様子ながら、源太の遺体のもとへと寄っていった。 「ごめんね……」 彼女は、そう言って源太の遺体を抱きしめ、涙を流す事しかできなかった。 人が人を殺す事──それは許される事ではない。罪は背負わなければならない。 そして、ダークプリキュアが殺したのは彼だけではなかった。 もう一人、ダークプリキュアは少女を殺している。──その少女の命の分もまた、月影なのはは背負わなければならず、謝らなければならない。 「本当にごめんね……」 謝罪の言葉とともに、少女の涙が、無念に散った男の肌に落ちていった。その涙が人の命を吹き返す魔法を持つ事はなかった。 ただ、その涙が落ちた時、その男は、「無念に散った男」ではなくなっていた。 □ 良牙は、またなのはを背負って歩いていた。彼女の身体の状態が非常に悪いため、結果的には源太の遺体は警察署まで運ぶのではなく、陸に上げて、放置するしかなかった。そのままでは可哀想なので、体の上から、彼の体を覆うようにして支給された黒子の装束を被せておいた。体が濡れたまま、温かみもない夜風の下に放置では流石に可哀想に思ったのだ。 先ほど、良牙は水の中に潜ったが、そこでは電話のようなボタンが備わった小さな機械が手に入った。おそらく、それは源太の生前の所有物だろう。なのはに確認を取ると、そのうち一つは源太が使用していたもので間違いないという事だった。 なのはの怪我は深刻だった。先ほどの戦いで受けたダメージがよほど強かったのか、一向に一人で立てるような様子を見せなかった。 人間になってからの初めての戦いだから──というのも、あるだろうか。 いや、それにしても、何処かおかしい気がしてならなかった。 「うっ……!」 そう思っていた時、横で鋼牙が突然呻くような声をあげて、崩れるように膝をついた。 左腕はとうに止血しているが、どうやらそこが痛んだようだった。 良牙とつぼみは怪訝に思う。 鋼牙はそんなに深刻な怪我など負わないと思っていたが、あの程度の一撃でこんなに苦しむだろうか。 『大丈夫か? 鋼牙……』 「ああ、問題ない……」 そう言って、再び鋼牙が立ち上がった。気を抜いただけのようだった。立ち上がると、いつもの屈強な鋼牙だった。 多少の痛みもまるで無いように振る舞えるのが彼だ。深刻な痛みならば通常は顔に出すだろう。 しかし、それでも二人の中では、厭な予感が消えなかった。 そんな不安を誰よりも抱えているのは、鋼牙の左手の指に嵌めこまれた魔導輪であった。 『鋼牙……。もしかして、さっきのあいつは、特殊な毒でも持っていたんじゃないか?』 ザルバのその一言に、その場にいる全員が顔を凍り付かせた。 『お前とあの子は、変身していなかった状態で奴から傷を負っている。姿を変えて戦っていた二人はピンピンしている……妙だと思わないか?』 鋼牙がそう言われて、自分となのはを見比べる。 確かにその様子は、受けたダメージに比べても不自然であった。 片手から流血しているだけならまだいいが、どうやらそれだけではないらしい。 「……奴に一杯喰わされたという事か」 『そういう事になる』 「まずいな……」 鋼牙は、自分の危機が迫っている時も冷静沈着であった。実感していないわけではないが、どんな時も強くあらねばならない事を信条とするのが彼だった。 ガミオは圧倒したと言えよう。しかし、ガミオの僅かな意地がこうして後を引く傷を齎している事は計算外だった。 「鋼牙さんは大丈夫なんですか?」 「……多少の毒なら、平気だ。だが、どうやらそういうわけでもないらしい。今は平気だが……」 「大丈夫じゃねえって事か」 良牙が事態を重く受け止めたようだった。 すぐにガミオを倒しに駆け出さんばかりであった。だが、彼がそうした行動を示す前に、鋼牙は先の行動を口に出して決めてしまう事にした。 「……とにかく、ひとまずは警察署に向かう。その後で奴を倒す」 「時間がねえんだろ!」 「一度落ち着いた方がいい。……安心しろ、警察署には仲間もいる。対策を練るのはそれからだ」 鋼牙は、何とか良牙を制した。 鋼牙は一度、警察署で他の参加者の姿を目にしている。主催に反抗する参加者の殆どがそこにいる事はわかっているのだ。 ガミオを倒すにしても、そこで一通りの事情を伝えた方が良いだろうし、何より深刻な怪我を負っているなのはをそこで何とかしなければならない。 「……わかった。どっちにしろ、急ぐしかないみたいだな」 良牙は、なのはを背負ったまま警察署に向けて駆けだした。 つぼみと鋼牙も彼の背中を追う事にした。 「あ、良牙さん。そっちじゃなくてこっちです!」 「ぬぁーっ! また俺はまたこんな間違いをーっ!!」 ──訂正。 良牙と鋼牙は、つぼみの背中を追う事になった。 【1日目/深夜】 【F―10/港付近】 【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、デストロン戦闘員スーツ着用 [装備]:プリキュアの種&ココロパフューム、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、こころの種(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!、ハートキャッチミラージュ+スーパープリキュアの種@ハートキャッチプリキュア! [道具]:支給品一式×5(食料一食分消費、(つぼみ、えりか、三影、さやか、ドウコク))、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、破邪の剣@牙浪―GARO―、まどかのノート@魔法少女まどか☆マギカ、大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー、反ディスク@侍戦隊シンケンジャー、デストロン戦闘員スーツ(スーツ+マスク)@仮面ライダーSPIRITS、デストロン戦闘員マスク(現在着ているものの)、着替え、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!、姫矢の首輪、大量のコンビニの酒 [思考] 基本:殺し合いはさせない! 0:警察署に向かう。 1:警察署に行った後、ガミオのもとに向かう。 2:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う 3:南東へ進む、18時までに沖たちと市街地で合流する(できる限り急ぐ) 4:……そんなにフェイトさんと声が似ていますか? [備考] ※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み そのためフレプリ勢と面識があります ※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。 ※良牙が発した気柱を目撃しています。 ※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。 ※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。 ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。 ※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。 ※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。 ※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。 ※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。 ※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。 ※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。 ※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。 ※全員の変身アイテムとハートキャッチミラージュが揃った時、他のハートキャッチプリキュアたちからの力を受けて、スーパーキュアブロッサムに強化変身する事ができます。 ※ダークプリキュア(なのは)にこれまでのいきさつを全部聞きました。 【月影なのは(ダークプリキュア)@ハートキャッチプリキュア!】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、人間化、ガミオのガス侵攻中 [装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア! [道具]:支給品一式×5(ゆり、源太、ヴィヴィオ、乱馬、いつき(食料と水を少し消費))、ゆりのランダムアイテム0~2個、ヴィヴィオのランダムアイテム0~1個(戦闘に使えるものはない)、乱馬のランダムアイテム0~2個、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン、ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW、霧彦の書置き、山千拳の秘伝書@らんま1/2、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ガイアメモリに関するポスター×3、『太陽』のタロットカード、大道克己のナイフ@仮面ライダーW、春眠香の説明書、ガイアメモリに関するポスター [思考] 基本:罪を償う。その為にもプリキュアとして戦う。 0:警察署に向かう。 1:ガミオに毒の浄化方法を訊く必要がある。 2:姉さんやいつきのようにプリキュアとして戦う。 3:源太、アインハルト…。 [備考] ※参戦時期は46話終了時です ※ゆりと克己の会話で、ゆりが殺し合いに乗っていることやNEVERの特性についてある程度知りました ※時間軸の違いや、自分とゆりの関係、サバーク博士の死などを知りました。ゆりは姉、サバークは父と認めています。 ※筋肉強化剤を服用しました。今後筋肉を出したり引っ込めたりできるかは不明です(更に不明になりました)。 ※キュアムーンライトに変身することができました。衣装や装備、技は全く同じです。 ※エターナル・ブルーフレアに変身できましたが、今後またブルーフレアに変身できるとは限りません。 ※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。 ※心が完全に浄化され、プリキュアたちの力で本当の人間の体を手に入れました。かつてほどの戦闘力は失っている可能性が高いと思われますが、何らかの能力があるのか、この状態では無力なのか、その辺りは後続の書き手さんにお任せします。顔や体格はほとんどダークプリキュアの時と同じです。 ※いつきにより、この場での仮の名前として「月影なのは」を名乗る事になりました。 ※つぼみ、いつきと“友達”になりました。 ※いつきの支給品を持っています。 ※プリキュアとして戦うつもりでいます。 【響良牙@らんま1/2】 [状態]:全身にダメージ(大)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意、男溺泉によって体質改善、デストロン戦闘員スーツ着用 [装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(ゾーン、ヒート、ウェザー、パペティアー、ルナ、メタル)@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは、 [道具]:支給品一式×14(食料二食分消費、(良牙、克己、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、バラゴ))、水とお湯の入ったポット1つずつ×3、志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×6@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、呪泉郷の水(娘溺泉、男溺泉、数は不明)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、特殊i-pod、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、双眼鏡@現実、ランダム支給品1~6(ゴオマ0~1、バラゴ0~2、冴子1~3)、バグンダダ@仮面ライダークウガ、evil tail@仮面ライダーW、警察手帳、ショドウフォン(レッド)@侍戦隊シンケンジャー、スシチェンジャー@侍戦隊シンケンジャー [思考] 基本:天道あかねを守り、自分の仲間も守る 0:ガミオに毒の浄化方法を訊く必要がある。 1:つぼみ、“なのは”とともに警察署に向かう。 2:あかねを必ず助け出す。仮にクウガになっていたとしても必ず救う。 3:誰かにメフィストの力を与えた存在と主催者について相談する。 4:いざというときは仮面ライダーとして戦う。 [備考] ※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。 ※夢で遭遇したシャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。 尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。 ※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。対し、エターナルとの適合率自体は良く、ブルーフレアに変身可能です。但し、迷いや後悔からレッドフレアになる事があります。 ※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。 (マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です) ※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。 ※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。 ※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。 ※あかねが殺し合いに乗った事を知りました。 ※溝呂木及び闇黒皇帝(黒岩)に力を与えた存在が参加者にいると考えています。また、主催者はその存在よりも上だと考えています。 ※バルディッシュと情報交換しました。バルディッシュは良牙をそれなりに信用しています。 【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ガミオのガス侵攻中 [装備]:魔戒剣、魔導火のライター、魔導輪ザルバ [道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1~3、村雨のランダム支給品0~1個 [思考] 基本:護りし者としての使命を果たす 0:警察署に戻る。 1:ガミオに毒の浄化方法を訊く必要がある。 2:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。 3:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する 4:後で制限解除の為に、どこかの部屋で単独行動をする。 [備考] ※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。 ※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。 ※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。 ※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。 ※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています ※零の参戦時期を知りました。 ※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。 ※つぼみ、一条、良牙と125話までの情報を交換し合いました。 ※もしかすると今回、つぼみと良牙のもとに現れるまでに鋼牙に架されている制限が解除されている可能性があります(おそらく三十分間単独行動していたため)。 【特記事項】 ※源太の遺体は、陸上に引き上げられました。彼の遺体の上には、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャーがかけられています。 時系列順で読む Back 孤独も罪も(後編)Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 - 投下順で読む Back 孤独も罪も(後編)Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 - Back 歪み 花咲つぼみ Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 - Back Pに翼/Place~ 響良牙 Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 - Back 歪み ダークプリキュア Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 - Back 壊れゆく常識 冴島鋼牙 Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 - Back 歪み ン・ガミオ・ゼダ Next The Gears of Destiny - 託される思い、激昂の闘姫 -
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解放(2) ◆LuuKRM2PEg ◆ (ほう……あのバイオレンス・ドーパントは洗脳されているだけでなく、その上で変装も行っているとは。どのような技術で行っているのか、実に興味深いですね) 井坂深紅郎が変身したウェザー・ドーパントは、村雨と呼ばれた仮面ライダーと思われる赤い戦士の宣言を耳にしてそんな感想を抱く。 この島には最初に戦った怪物や少女達のように、何らかの特異な能力を持つ存在が数多くいる。だから今更どんな相手と出会おうが驚かないと思っていたが、村雨の推測は実に興味深い。もしもバイオレンス・ドーパントを操っている溝呂木という男と接触できれば、進化の手段を得られるかもしれなかった。 その為にも交渉材料としてティアナ・ランスターとバイオレンス・ドーパントは勿論、ゼクロス達のグループにいる誰かを確保したいが、この状況で飛び込む訳にもいかない。ウェザーの力を最大限に使ったとしても、数も戦力は村雨達の方が圧倒的に上だった。生身の良牙や一条という男に稲妻を落としても、そこから村雨に攻撃されたら元も子もない。 とにかく今は、チャンスを窺わなければならなかった。あと一人、何らかの火種が欲しい。そうすれば、あの二人を確保する道筋が開ける可能性があった。 思案を巡らせていると、少し離れた場所で植物が揺れるのをウェザー・ドーパントは聞き取る。振り向いた先では、禍々しい形状の刀を構えた奇妙な怪物が歩いているのが見えた。 皮膚は平安時代の貴族が着るような衣服を彷彿とさせて、両肩には魚の頭蓋骨とよく似た装甲が飾られている。仮面のように動かない口元に生えた鋭い歯は、薄気味悪さを演出させていた。 (あれはドーパント……いや、何らかの怪物でしょうか? あの黒岩省吾が変身するような……) 一瞬、ガイアメモリによって生まれるドーパントと思ったが、あのような固体は見た事がない。むしろ、未知の存在であると考えた方が自然だった。 その怪物にはすぐに興味が惹かれたが、素性が分からない以上は迂闊に声をかけられない。そもそも理性があるのかどうかさえ、判別がつかなかった。 だからといって、このまま放置するのは惜しい。どうしたものかとウェザー・ドーパントが考えている。 ◆ 三途の池で身体を休めてから、筋殻アクマロはひたすら木々の間を歩いていた。 いくら知略を巡らせて殺し合いに優勝するとしても、たった一人ではやれる事に限界がある。スバル・ナカジマに邪魔者の排除を任せたが、もしも血祭ドウコクのような怪物と出会ったら一巻の終わりだし、既に殺されている可能性があった。 別に彼女一人が死んだところでどうという事はないが、そうなっては今後の戦いが不利になる。なので、今からでも代わりの戦力を探す必要があった。 捨て駒になるような弱者なら暴力で屈服させて配下にし、それなりの実力を持つ者ならば上手く同盟関係を結び、あの本郷猛達のように殺し合いを打ち破ろうとする集団があるなら取り入る。この状況では簡単にいかないだろうが、それでも行動しないわけにはいかない。 腑破十臓が死んで裏見がんどう返しの術が出来なくなった以上、地獄を齎すには主催者達の味方となる方法を取るしかないのだから。 (合流まで時間があるので遠回りしてみれば……おやおや、これはまた凄い状況になっておりますな) 志葉屋敷のある村に向かう前に、他の参加者を探す為にあえて遠回りをする形で森を歩いていたら、一触即発と呼ぶに相応しい舞台に辿り着いた。 ドーパントと思われる二体の怪物と、生身の男が二人と、仮面ライダーと思われる異形と、プリキュアと思われる少女が一人と、そしてアヒルが一匹だけ。どういう状況なのかは知らないが、そこにいる者達は睨み合っている。 恐らく、あそこで戦いが起こっていたのだろうが、何らかの要因で中断せざるを得なくなったのだろう。故に、あの状況は不安定となっており、少しの不確定要素が入れば一気に爆発する可能性もあった。 尤も、アクマロは下手に飛びこむつもりは無い。上手く行けばあの参加者達を一網打尽に出来るのは確かだが、何の策も無しに干渉したとしても袋叩きになるだけ。素性の分からない連中を前に下手な行動は選べないが、だからといってこのまま放置するのも惜しい。 もしも奴らが利用出来るのならば、今後の行動で利益となるかもしれないからだ。始めはこの外見で怪しまれるだろうが、正義の味方を気取る者達の同情を誘えるように振舞えばいい。 とはいえ、少しでも怪しまれたら即刻で切り捨てられるよう、常に優位な立場に立てるように地盤を固めなければならないが。 (どなたかあの場を引っかき回してくださる方はいないものか。例えるなら、あそこにいる白いドーパント……あの方が何かをしてくださるなら、我も行動に移せるのですが) 不意に、アクマロは参加者達が集まる舞台から視線を外して、少し離れた場所に目を向ける。そこには、アクマロと同じように戦場を覗いているドーパントのような白い怪物がいた。 もしかしたらあのドーパントも、あれだけ集まった参加者に興味を抱いているがどう対処するべきなのか、悩んでいるのかもしれない。そう、アクマロは推測する。 ノーザの時のように接触するのも悪くないかもしれないが、何を考えているのか分からない相手なので迂闊に近づけない。もしも優勝を目指しているのであれば、逆にこちらが利用されてしまう恐れもある。 (……仕方がありませぬ。どうやら、ここは引かざるを得ないようですな。何も手駒は奴らだけでは無い故、急ぐ事も無いでしょう) このまま膠着状態が続くのであれば、長居は無用だった。 あの参加者達は興味深いが、何らかのきっかけで戦いが始まっては飛び火する恐れがある。こんな所でダメージを追うのは御免だった。 そう結論付けたアクマロは物音を立てないよう、ゆっくりと歩を進める。無駄に時間を食っただろうが、安全を確保する事が何よりも重要だ。 そうして離脱出来るかと思った瞬間、アクマロは視線を感じる。それに気づいて反射的に振り向くと、戦場の中にいる鉄球を持ったドーパントが、こちらを見つめていた。 (気付かれた!? いや、たまたま目線が合っただけ……? どちらにしても、あのドーパントと我は離れております。ならば、焦る事も無いでしょう) アクマロはほんの一瞬だけ動揺したが、すぐに精神を落ち着かせる。 例えあのドーパントがこちらに気づいていたとしても、周りには囮となる参加者達が大勢いた。あのドーパントが動き出したとしても位置から考えて、その後に参加者達が食い止めるに違いない。 ならば焦る事も無いとアクマロが思った、次の瞬間だった。 「あ、ああ、あ、あ、あ……ああああああああああああああああああああ!」 視線を交錯させていた鉄球のドーパントがいきなり叫び、地面を蹴って一直線に突っ込んでくるのを、筋殻アクマロは見た。 ◆ 『こんなこと、俺はくだらないと思う! だから絶対、殺し合いなんてやめてほしい!』 あの五代雄介という男が最後に遺した言葉が、バイオレンス・ドーパントに変身したスバル・ナカジマの心の中でずっとリピートされていく。 愛する筋殻アクマロにとって邪魔者でしかないプリキュアの一人、キュアブロッサムの言葉を聞いてからずっとそうだった。彼女を叩き潰さなければならないのに、何故かこの腕が震えてしまう。もうこの手で多くの命を奪ってきたのに、今更どうしてこうなるのかがまるで理解出来なかった。 『もうやめてよ……スバルさん!』 美樹さやかと一緒に行動する際にその姿を騙った、鹿目まどかの声が脳裏に響く。 こんなのは幻聴だ。彼女の話を聞いても何にもならない。愛するアクマロ様の為にも、早く消えてしまえ。 『あなたはこんな事、本当は望んでないはずだよ!』 『そうよ! これ以上続けたって何の意味もないし……何よりも、つぼみだって悲しむ! だからもうやめて!』 鹿目まどかに続くかのように、今度は美樹さやかの声まで聞こえてくる。 もうやめろ。今更、どうして出てくるのか。あたしは参加者を皆殺しにすると決めたから、邪魔をするな。 彼女達の声を振り払おうとしても、それをすればするほど聞こえてくる。まるで、亡霊となって邪魔をしているかのようだった。 アクマロへの愛情と、犠牲者達の声。それらが心の中で拮抗して、彼女の動きを止める要因となっていた。 一体どうすればいいのか……そんな悩みが生まれて、不意に視線を移した頃に彼女は見た。 「あ、ああ、あ、あ、あ……」 ここから少し離れた場所に、愛する外道がいる。全てを尽くしてみせると誓った、筋殻アクマロがいたのだった。 その姿を見たスバルの胸は高鳴っていく。ああ、愛するあのお方が見ていてくれている。このまま他の参加者達を殺せば、アクマロ様はきっと褒めてくれるはず…… 『溝呂木眞也に成り済まし、一人でも多くの参加者を殺せ……』 しかし彼女の愛情は、脳裏に湧き上がった言葉によって途端に収まっていく。 『特に俺の偽物は優先的にだ』 続くように駆け巡る言葉によって、スバルを満たす愛情は瞬時に殺意へと変わっていった。 何故、全てを任せてくれた筈のアクマロ様があそこにいるのか? アクマロ様ならば迂闊に正体を悟られるような事をしない筈なのに、どうしてあんな所にいるのか? もしかしたら、あのアクマロは偽者なのではないか? 『俺の名を騙るような奴は、お前だって許せないだろ?』 「ああああああああああああああああああああ!」 その推測に至った瞬間、スバルは……否、バイオレンス・ドーパントは猛獣のような雄叫びを発しながら走り出していく。 そうだ、アクマロ様の名を騙る愚か者がいると、アクマロ様は教えてくれた。そしてアクマロ様は、そいつを優先的に殺せと言っている。だから、奴を殺さなければならない。 本当のアクマロ様なら、隠れている最中に姿を見られるような失態を犯したりなどしない。それも分からず、ただ姿を真似ているだけの奴が許せなかった。 (許さない……よくも、よくもアクマロ様を愚弄したな! 絶対に殺してやる!) 後ろにいるゼクロスという奴やつぼみの声が聞こえるが、バイオレンス・ドーパントはそれを無視して突き進んでいる。 彼女は知らない。今、そこにいる筋殻アクマロは彼女が愛情を抱いている本物である事を。しかし、幻覚を見せられている今の彼女は溝呂木眞也を『本物の筋殻アクマロ』と思い込んでいて、目の前にいる筋殻アクマロは偽者だと信じている。 その結果、溝呂木の口から出た全ての言葉が、アクマロの言葉となってしまっていた。 「があああああああああぁぁぁぁぁ!」 「くっ……!」 闇によって弄ばれている彼女は残酷な真実を知らないまま鉄球を掲げて、アクマロの頭部を目掛けて振り下ろす。しかし、その手に握る武器によって受け止められてしまい、鋭い金属音が響いた。 その形は、削身断頭笏と寸分の狂いがない程に同じ。その事実がバイオレンス・ドーパントを激高させて、力を更に込めさせる結果になった。 「アクマロ様の偽者が……私の愛するアクマロ様の姿を利用するなんて許せない……殺す、殺す、殺してやる!」 「まさか、あんたさんはスバルはん……何を仰るのです、我は……!」 「黙れええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 声や口調まで似せている目の前の異形に怒りを覚えて、バイオレンス・ドーパントは感情のままに鉄球を振るうが、削身断頭笏によって弾かれる。衝突によって火花が飛び散るだけで、ダメージを与えられない。 数合打ち合った後、偽物だがそれなりの実力を持っていて、まともに戦っていても勝てないと彼女は推測する。 ならばと思い、アクマロの肉体に絡み付いてその自由を奪った。当然ながら相手は足掻くも、痛む身体に鞭を打って渾身の力で投げ飛ばす。その甲斐があってかアクマロの巨体は宙に飛ばされ、そのままゼクロス達がいる戦場の地面へと叩き落とされていった。 「ぐっ……血迷ったのですか!?」 偽物が何かを言いながら立ち上がってくるが関係ない。この手で叩き潰すだけだ。 ゼクロスや良牙との戦いを経て、既に満身創痍となっている彼女がここまで出来たのは、アクマロへの愛があるからこそ。いつ死んでもおかしくない彼女が生き延びていられたのは、唯一にして絶対の感情が肉体を満たしているからだった。 無論、そうであっても肉体にせよソレワターセにせよ、酷使し続けていた事に変わりはない。あと少しの攻撃でも、まともに受けたら死んでもおかしくなかった。 しかし彼女はそれでも構わない。この愛が果たせるのであれば、いくら傷付いても惜しくはないと考えているのだから。 何も知らない者がそれを見たら、狂っていると思うかもしれない。しかし彼女は今の行動にどんな意味合いを持っていて、更にどのような結果を齎すのかを考えられない。アクマロの指令をただ果たすだけの機械でしかなかった。 これまでもそうだったし、これからもずっとそうであったのかもしれない。風によって流されていく粉塵の中から現れた、少女の姿を見るまでは。 「……あ、あ、あ、あ、あ?」 呻き声を漏らしながらもゆっくりと立ち上がってくるのは、バイオレンス・ドーパントにとって……否、スバル・ナカジマにとってよく知っている少女だった。 見なれた服装は着ておらず、髪型もどこか違う。しかし髪の色やその表情は、見間違えようがなかった。 そして、その姿を見た瞬間に、胸中を満たしていたアクマロへの愛や偽物に対する憎しみ、更にこれまで抱いていた殺意も、全てが払拭されていく。 「……ティア?」 何故なら、ずっと会いたいと思っていた親友のティアナ・ランスターが、そこにいたのだから。 ◆ 「子どもが……ドーパントだと?」 先程投げた衝撃集中爆弾によって舞い上がった煙の中から現れた少女を見て、ゼクロスは思わずそう呟いた。 発砲したあのドーパントの姿は何処にもなく、代わりにいたのはレオタードを纏った少女だけだった。一瞬、ドーパントがまた何か奇妙な技を使ったのかと思ったが、少女の傍らにはあのガイアメモリが落ちている。 つまり、ライフル銃のドーパントの正体は、ここにいるオレンジ色の髪の少女という事だ。 つぼみと同じ年頃に見える若い少女をどう対処するべきか? 無論、奪う者をこのままにするつもりはない。しかしだからといって、殺していいのかどうかは疑問だった。 『あの子、たちを、を見つけたら、……助けて、あげてください…………。 それが、仮面ライダーの、使命だと、思うから……』 少女の姿を見た瞬間、五代が遺した言葉がゼクロスの脳裏に過ぎる。 彼は命が尽きようとしていた時にも関わらず、大勢の命を奪った自分自身にまどかとさやかを助けろと言った。最後の最後まで、自分よりも他の誰かの事を考えていた。恐らくその中には、目の前の少女も含まれているかもしれない……そう思った瞬間、拳を振るう事が出来ない。 女の願いと五代の遺志がゼクロスの中で拮抗する中、キュアブロッサムが少女の元に駆け寄り、手を差し伸べる。 「大丈夫ですかっ!?」 「触らないで……っ!」 だが、それは乾いた音と共に呆気なく弾かれてしまった。 キュアブロッサムは反射的に手を引っ込める一方で、少女は殺意に満ちた瞳で睨み付けてくる。 「何よ……情けでもかけるつもり? 殺すなら、さっさと殺しなさいよ!」 「何を言ってるんですか!? そんなこと、出来る訳ありません!」 「ハッ、あたしには殺す価値すら無いって言うの? 随分と見下してくれるわね……!」 隠そうとしない苛立ちを発する少女は、キュアブロッサムから目を逸らしてガイアメモリに手を伸ばした。 しかしその指先が触れる前に、ゼクロスは素早くガイアメモリを拾い上げる。そのまま西条凪が持っていたジーンメモリの時と同じく、ガイアメモリを握り潰した。 鈍い音が響いた後に手を開いて、ガイアメモリの破片を地面に落とす。しかしゼクロスはそれに気を止めず、メモリの所持者である少女に目を向けた。 名も知らぬ少女はほんの少しだけ茫然としていたが、すぐにその小さな身体をわなわなと震えさせる。 「なっ……何てことするのよ!? あたしはそれを使って、あんた達を殺さなきゃいけないのに!」 「こんなのを使った所で、誰かに勝てる訳がない……例え人を殺せたとしても、お前自身がいずれ破滅するだけだ」 「そんなの知ったことじゃないわ! あたしは……あたしは兄さんが強いって事を証明する為にも戦い続けなきゃいけないのよ!」 そうやって絶叫する少女の瞳は猛禽類の如く鋭さを放っており、やがてポロポロと涙を零し始めた。 まるで平常とは思えない少女の様子に、ゼクロスは言葉を失う。そして同時に、ガイアメモリの恐ろしさを思い出した。 ガイアメモリを使うとドーパントになって力を得られる代わりに使用者の精神を著しく汚染させてしまい、最後に命を落としてしまうと言う話を五代から言った。 つまり加頭順は、最初から参加者達を罠に嵌める気でいたのだ。恐らく、薬物の中毒患者のように壊れさせて正常な判断力を奪い、反逆の手段を全て奪うつもりでいるのかもしれない。カメンライダーやプリキュアのように何らかの力を有する者ならともかく、一条のような何の力も持たない人間がこれを使ったら、集団が崩壊するきっかけが生まれるはずだった。 そしてこの少女も、ガイアメモリの過剰使用によって精神が壊れてしまったのかもしれない。一度そうなってしまっては、元に戻るまで地獄の苦しみを長い時間味わわなければならないだろう。最悪、一生戦わなければならない可能性だってあった。 そう考えた瞬間、少女に対する殺意が一気に薄らいでいく。彼女の凶行は決して許されないが、それでもこのまま倒した所で女は喜ばないかもしれなかった。 詳しい事情は知らないが、壊れるきっかけとなったガイアメモリを主催者から与えられなければ、まだこうならなかったかもしれないから。 ゼクロスがそう考えた瞬間、乾いた音が鼓膜に響く。それは、キュアブロッサムが少女の頬を平手打ちした音だった。 「ふざけないでください! お兄さんを……暴力の言い訳にしないでください!」 そしてキュアブロッサムは、瞳から涙を滲ませながら少女に怒鳴り始める。 それに驚いたのか、少女は目を見開いていた。 「何をするのよ……!?」 「あなたのお兄さんは、あなたがこうして傷つくのを望むような薄情者なのですかっ!?」 「なっ……兄さんは、兄さんはそんな人じゃない! 兄さんを侮辱するな!」 「じゃあ、どうしてあなたはお兄さんが望みそうにないことをしているのですか!? そもそもあなたのお兄さんは、自分の強さを誰かに見せびらかして喜ぶような人なのですか!? 他人に力を見せびらかす人が強いだなんて、私は絶対に思いません!」 饒舌になるキュアブロッサムからは、変身する前に見せた気弱な雰囲気は微塵も感じられない。だからといって憎しみは感じられず、むしろ少女の事を思っているようにも見えた。 ゼクロスは、どうしてキュアブロッサムがそこまでするのかが理解できない。そして兄妹や家族がどれくらいに大切な存在なのかも分からないのが、あまりにも惜しいと感じていた。 ただ、少女の気持ちだけは少なからず理解出来ている。BADANにいた頃、ずっと隣にいたミカゲの為に戦いたいと思った事が何度かあった。だから少女も、兄とやらの為にドーパントになってでも、戦ったのだろう。 キュアブロッサムの叱咤を前に青ざめる少女は、何も言えそうに無かった。その言葉が堪えたのか、狂気と殺意は少なからず和らいでいるようにも見える。 ゼクロスはそんな少女を見下ろしながら、静かに言葉を紡いだ。 「お前の兄とやらがどんな奴で、お前が兄の為に何をしようとしているのかを俺達は知らない」 「……だから、何なのよ」 「だが、お前の兄は……今のお前を見たら泣くんじゃないのか……?」 茫然とした少女に言い聞かせるかの如く、ゼクロスはそう告げる。 本当ならこんな事を言う義理など無いのだが、この少女をこれ以上戦わせてはならないと、ゼクロスは考えていた。恐らく少女にとっての兄とは、自分にとって泣かせてはならないあの女と同じような存在なのかもしれない。 少女に共感を抱いたのかは分からないが、とにかく止めなければならないような気がした。 (……これで、いいのか?) ふと顔を上げると、やはりあの女は笑っている。瞳から涙を流し続けているが、それでも笑顔を浮かべていた。 彼女は何も言わないし、こちらから問いかけても何も答えて来ない。しかし、奪おうとする者からみんなを守れば、笑顔でいてくれるのは確かだった。 女が何者なのか、ゼクロスは知らない。しかし、彼女の事を考えるとからっぽな筈の心は疼いて、涙を流させてはならない為の行動を取るようになってしまう。 だからドーパントになった少女も、殺す訳にはいかなかった。 「分かってるわよ、そんなこと……分かってるけど……あたしは……あたしは……!」 少女は涙を零しながらも呟くが、そこから先の言葉が出てきていない。 こうなってはもう、何も奪えない筈だった。ガイアメモリを砕いた以上、魔法のような幻影を使った所で何の脅威にもならない。逃げ出すような気力すらも、感じられなかった。 そんな少女から目を離して、ゼクロスは良牙の方に振り向く。するとその先には、鉄球のドーパントが謎の怪人と戦っているのが見えた。 見た所、アクマロの偽物と呼ばれた怪人がドーパントを押しているように見える。溝呂木との戦いで現れたまどかの変身したドーパントが忠誠を誓っていたので、奪う者である事に間違いはない。 しかし、何故あのまどかがアクマロを襲っているのかが理解出来なかった。 「チッ、何がどうなっている? アクマロって奴は敵なんだよな……? なのに、なんで同志討ちをしているんだ……?」 そして良牙も状況が読めてないようで、戦いを眺めているだけになっている。 ここで奴ら二人を纏めて倒す事も出来るが、もしもあれが何らかの罠だったら痛い目を見るかもしれない。故に、考えなしに乱入する事が出来ないが、ここで放置する訳にもいかなかった。 どうしたものかと、ゼクロスは考える。 (ん……何だ、この風の流れは?) 穏やかさを取り戻しつつある風の流れが、徐々に激しくなっていくのを感じた。それに伴って、森の中に差し込んでいた太陽の光が薄くなる。それに違和感を覚えたゼクロスは空を見上げると、巨大な暗雲が見えた。 突然現れた黒い雲によって光が遮られ、辺りが一気に冷える。それに驚愕する暇もなく、稲妻が落ちてきた。 「なっ!?」 「チッ!」 雷鳴が轟くと同時に、良牙とゼクロスは咄嗟に跳躍した瞬間、轟音と共に地面が砕ける。しかしそれで終わる事は無く、雷は暗雲からどんどん発せられていき、周囲の植物を無差別に焼き払っていった。 二人は持ち前の反射神経で回避行動を続ける中、嵐の勢いはどんどん激しくなっていく。吹き荒れる暴風によって木の葉は吹き飛び、ついには枝まで折れてしまった。 しかしゼクロスはそれに気を止めず、仲間達の方を振り向く。キュアブロッサムは未だに茫然としているオレンジ色の髪の少女を説得しているが、耳に届いているかなど分からない。一条も、アヒルを守る様に抱えながら、必死に暴風を耐えているようだった。 だが、安心は出来ない。もしも稲妻が彼らを襲ったら、命が危なかった。プリキュアは知らないが、生身の人間である一条と良牙やアヒルに落ちたら死ぬ以外に想像出来ない。 だから、彼らだけでもすぐに逃がさなければならなかった。 「おい、良! あれを見ろ……竜巻だ!」 「何?」 しかしすぐに良牙の狼狽するような声が聞こえたので、ゼクロスは振り向く。 すると、数メートル離れた先から、巨大な竜巻が生い茂った木々や大地を舞いあがらせながら、轟音と共に接近していた。 それは雷と同じく、時として人の命や建物に甚大な被害を与える自然現象の一種。しかし、こうして起こっている竜巻は自然の物とは到底思えなかった。つい先程まで空は晴天に恵まれていたのに、何の前触れもなく暗雲が現れて天気が急激に変わるなど、余程の外的要因が無ければ有り得ない。 もしかしたら、緑色のドーパントのように自然を操る力を持つ怪人が近くにいる。ゼクロスはそう推測するが、犯人を探す余裕などなかった。先程のように竜巻へ飛び込んでも、あの中にドーパントがいるとは限らない。 新たに現れた巨大な竜巻が周囲を破壊するのを前に、ゼクロスは思わず身構える。しかし次の瞬間、上空を覆う巨大な雷雲から閃光が迸って、雷鳴が轟いた。 そして、轟音と共にゼクロスの視界は光に飲み込まれた。 ◆ 晴れ渡った空だったにも関わらず、何の前触れもなく空が暗雲で覆われたのは筋殻アクマロも驚いたが、だからといって動揺などしない。 この地には奇妙な力を持つ者が数多くいるし、その中に天候を操る輩が混じっても不思議ではなかった。恐らく、隠れていた白いドーパントが力を発揮したから、この現象が起こったのだろう。 しかし、奴が動き出したのならばあまり長居は出来ない。もしも漁夫の利を得る為に仕掛けたのならば、殺される恐れがある。そう推測したアクマロは、スバルが変身したと思われる鉄球のドーパントを削身断頭笏で一閃した。惚れ薬で下僕にしたのに、敵と認識するならばもう用などない。ここで切り捨てなければならなかった。 怯んだ隙に胸部を蹴って吹き飛ばすと、ドーパントは竜巻に巻き込まれた事で一気に舞い上がる。その悲鳴は暴風によって飲み込まれる一方、アクマロは巻き添えにならないように背後へ飛んだ。 (この機を逃す訳にはいきませぬ……スバルさんは惜しいですが、我を裏切るのであれば仕方がありませんな) あの惚れ薬の効果はまだ続いていたような気がするが、考えてみれば説明書に全ての真実が書かれているとも限らない。了承も得ずに殺し合いを強いるような主催者なのだから、効果が発揮する時間が一時間足らずだったとしてもおかしくなかった。 しかしスバルが吹き飛んだ以上、真相がどうであろうと関係ない。今はこの場を乗り切る事が重要だった。 可能ならこの騒ぎに乗じて他の参加者を仕留めたいが、ここに味方はいない。単独で戦いに参加するなど、危うすぎる賭けだった。 荒れ狂う風に吹き飛ばされないよう、アクマロは両足に力を込めて前を進む。そんな中だった、木の陰に隠れて戦場を覗き見ていたあの白いドーパントが前に現れたのは。 「あんたさんは……!」 「御機嫌よう。私はずっと貴方に興味を持っておりましたよ……どうやら、ドーパントではなさそうですが、今は構いません」 まるで社交辞令のような態度で穏やかに語るが、その声からは邪念しか感じられない。きっと、あのノーザと同じで表面上は友好的だが腹の内は善からぬ事を考えているのだろう。 そして、白いドーパントは右腕を天に掲げると、アクマロの推測が真実だったとでも言うように暗雲から稲妻が放たれた。ただし、その標的はアクマロではなく、敵である筈の参加者達だったが。 「長々と話す暇はないので手短に言います……この私、井坂深紅郎と手を組みませんか?」 「……それは、どのような意味で?」 「言葉の通りですよ。私は貴方に興味があるので、共に戦いたいと思っているのです……無論、メリット与えるつもりです。この首輪を解体する為に、力となりましょう」 「それは、誠ですか?」 「私は機械工学やガイアメモリに関する知識を持っています。それさえ用いれば、状況を打破するきっかけを作れるでしょう……その為にも、貴方の力が欲しいのです」 井坂深紅郎と名乗ったドーパントは、雷を放ち続けながら綽々たる態度で語る。 その話は、もしも本当ならアクマロにとって非常に興味深かった。元々首輪について調べる予定だったし、その為に協力者が得られるのは有難い。そして幸いにも、こちらにはサンプルとなる首輪が多くある。それを利用すれば、取引の際に大きな力となるかもしれなかった。 この首輪さえ外せれば少なくとも主催者達に命を握られる事は無くなるだろうし、構造を知りさえすればあの血祭ドウコクを倒す糸口も掴めるかもしれない。 無論、その後には井坂という男を殺すつもりだが、それまでは協力関係にあるのもいいだろう。 「成程……宜しい、我もあんたさんの力となりましょう。この場では、協力者が大いに越した事はありませぬ……」 「それは嬉しい返事ですね。ではまずは、この場を切り抜ける為に力を合わせましょう」 「それもいいですが、まずはあんたさんの力ももう少し見せていただけませぬでしょうか? 我も、先程からあんたさんに興味がありましたので」 「ふむ……それは構いませんが、退かなくてよろしいのですか?」 「彼らを放置しては、邪魔者となるでしょう? 何、我も力を貸します」 「……それも、そうですね」 ドーパントが頷いた後、アクマロは仮面ライダー達の方に振り向いて、腕を翳した。そして、暗雲から降り注ぐ稲妻に合わせるかのように、アクマロも掌から雷を放つ。 これはアクマロにとって、井坂の品定めだった。いくら協定を結ぶとはいえ、数の不利を引っ繰り返す力を持たなければ、役に立つとは思えない。だから、ここで確かめる必要があった。 もしも戦いが不利になるのであれば、井坂一人を囮にして逃げればいい。それまでは、邪魔者どもを少しでも消耗させるだけだった。 時系列順で読む Back 解放(1)Next 解放(3) 投下順で読む Back 解放(1)Next 解放(3) Back 解放(1) 溝呂木眞也 Next 解放(3) Back 解放(1) 冴島鋼牙 Next 解放(3) Back 解放(1) 一条薫 Next 解放(3) Back 解放(1) 村雨良 Next 解放(3) Back 解放(1) 響良牙 Next 解放(3) Back 解放(1) 花咲つぼみ Next 解放(3) Back 解放(1) 志葉丈瑠 Next 解放(3) Back 解放(1) スバル・ナカジマ Next 解放(3) Back 解放(1) ティアナ・ランスター Next 解放(3) Back 解放(1) 井坂深紅郎 Next 解放(3) Back 解放(1) 大道克己 Next 解放(3) Back 解放(1) 筋殻アクマロ Next 解放(3)
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行き場を失った避難民 内容 Lv 195 受注NPC ダディ 完了NPC 記録兵の死体 悪臭が漂う死体、古い死体、融合した感染者、合成した感染者を各50体討伐。 報酬 経験値 50,000,000 冒険値 - DIL - - 残された痕跡 内容 Lv 195 受注NPC 記録兵の死体 完了NPC ムバン ドクター・ラボを討伐。 報酬 経験値 100,000,000 冒険値 - DIL - - 浄化 内容 Lv 195 受注NPC ムバン 完了NPC エリン 汚染された司祭を300体討伐。 報酬 経験値 100,000,000 冒険値 - DIL - - 新しく目覚めた意識 内容 Lv 195 受注NPC エリン 完了NPC エリン シーズの加護使用。 報酬 経験値 200,000,000 冒険値 - DIL - -
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登録日:2016/11/11 (Fri) 11 16 10 更新日:2024/05/03 Fri 21 40 59NEW! 所要時間:約 10 分で読めるモフ ▽タグ一覧 くまモン アニメ アニメ映画 キュアモフルン クマ クマ応援団 ダークマター トパーズの本気 ネタバレ項目 プリキュア モフルン 劇場版 映画 映画プリキュアリンク 東映 東映アニメーション 浪川大輔 涙腺崩壊 渡辺麻友 田中仁 田中裕太 神映画 魔法つかいプリキュア! 魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン! 一緒にいたいモフ♥ その願いが100年に一度の奇跡をおこす! 『映画 魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』とは2016年10月29日に公開された『魔法つかいプリキュア!』の劇場版作品。 脚本は田中仁、監督はタナカリオンこと田中裕太の『Go!プリンセスプリキュア』コンビが担当。 『プリキュアシリーズ』映画の第21作品目で『魔法つかいプリキュア!』のレギュラー単独映画。 タイトルの時点でネタバレ全開、宣伝CMで変身シーンと、変身後の姿を映すという隠す気0の代わりに、宣伝の段階で客の興味を惹く気全開である。 魔法界がメイン舞台であり、魔法界住人も多数登場するが、ナシマホウ界の住人と終わりなき混沌のキャラクターは登場しない。 クマのキャラクターが多数登場することから、熊本県のゆるキャラ「くまモン」をはじめとする日本中のクマキャラが「クマ応援団」を結成し、一瞬ながらゲスト出演している(*1)。 ♦あらすじ 魔法界に伝わる、どんな願いも叶えてくれるという伝説の「願いの石」。その復活を祝うため100年に一度開かれるという「大魔法フェスティバル」にみらいたちはやってきた。願いの石に向かって願い事をしていたところ、その石の力に選ばれたのはモフルンだった。しかし、モフルンは自分としての願いはなく、むしろみらいたちの願いを叶えて欲しいという。 その最中突然現れた謎のクマ、ダークマターが現れ、フェスティバル会場を襲う。みらいたちはプリキュアとなって応戦するが、ダークマターには刃が立たない。そしてダークマターは自らの願いを叶えさせるためにモフルンを連れ去ってしまい、みらいとリコはプリキュアに変身できなくなってしまう。 みらいたちはモフルンを救うため、探しに出ることになるが、そうした中でモフルンのある願いが石に通じ、奇跡をおこすことになる。 【登場人物】 ♦メインキャラクター 朝日奈みらい/キュアミラクル 主人公。100年に一度の「大魔法フェスティバル」に訪れた唯一のナシマホウ界側の人間。 自分が望む「願い」について考え込んでいたが、中盤以降にその答えに気付く。 モフルンとの友情が強調されており、作中でのモフルンとのやり取りは本編からの積み重ねの集大成とも言える。 十六夜リコ/キュアマジカル もう1人の主人公。魔法界に疎い3人への解説役。 本編初期のことを思い出す場面が多く、みらい同様に本編からの積み重ねが取り上げられている。 中盤で王道かつ盛大な死亡フラグを立てる。 花海ことは/キュアフェリーチェ 妖精から成長したはーちゃん。 モフルンが攫われて変身不可になった2人の代わりに中盤から戦闘に駆り出される。 モフルン 本作の実質的な主役にしてヒロインモフ。 校長先生から願いを聞かれた際の「ないモフ(真顔)」の三連発(全部1カメ&徐々にアップ)は笑いどころモフ。 ♦魔法界住人 校長 見た目は若い若作り爺。願いの権利を手に入れたモフルンの「ないモフ(真顔)」に困惑する。 今作の「ミラクルライト」の先導役。 フランソワ 諸事情で担当声優が変わった洋服店のオネェ系店長。 フェスティバルに普段着で来た3人に衣装をコーディネイトする。 教頭、アイザック、リズ 魔法学校の教師陣。フェスティバルに参加する。 ジュン、ケイ、エミリー 魔法学校の同級生。フェスティバルに参加する。教師陣とは違い普段着ではなくフェスティバル衣装を着飾っている。 ドンヨクバール 御輿と風船で作られた。前述の通り、終わりなき混沌のキャラは登場しないため、誰が造ったかは不明。 冒頭に登場し、ナシマホウ界の公園で暴れたが、プリキュア・ダイヤモンド・エターナルで倒された。 本作のオリジナルキャラクター クマタ 声:浪川大輔 モフルンが連れ去られた先の不思議な森にひとりぼっちで住む、首に赤いスカーフを巻いた黒いクマの男の子。自分を怖がらないモフルンと出会ってから次第に友だちになりたいと願うようになる。魔法を使うのが上手。 森のくま ダークマターから逃げ出したモフルンがたどり着いた先の森に住むクマたち。最初はモフルンを警戒していたが、その後モフルンと仲良くなり遊んだり踊ったりした。一方クマタに対しては恐れのあまり姿を見た途端隠れてしまう。 子グマ 声:菊地美香 モフルンと最初に仲良くなったクマの女の子。他のクマと異なりクマタを警戒するそぶりもなかった。が、親クマに引っ張られて離されてしまう。 フレアドラゴン 声:山本祥太 大魔法フェスティバルにいた、白い毛並みのドラゴン。炎を吐いてハート状にしてそこから光へと変化させるなどの曲芸を見せる。この時たまたまことはがドラゴンの意志を感じ、フレアドラゴンと共に魔法で芸を披露して喝采を浴びることになる。 ダークマター 声:??? 今回の事件の首謀者。アイマスクをかけた大柄な体躯をした黒い毛皮のクマ怪人。 願いの石に「全ての魔法使いを消し去る」と願ったが、選ばれず、願いの権利を得たモフルンに自分の願いを叶えさせようとする。 序盤に圧倒的な力でプリキュアをねじ伏せ、モフルンを攫った。 以下、ネタバレ。未視聴者は注意。 ダークマター 声:浪川大輔 「お前も俺から離れていくのか」 「なぜ、逃げる なぜ、恐れる」 クマタの正体。遙かな昔からいる存在であり、かつて魔法界の住人たちに魔法を通して交流を持とうとしたが、自身の怖い姿が原因で周囲から避けられて忌み嫌われるようになり、その結果魔法界の住人たちそのものを憎悪するようになった経緯を持つ。また、「人々から悪のクマ・悪魔として恐れられたが、いつしか姿を消した」とダークマターについて記された古代の書物が存在する。 戦闘能力は非常に高く、キュアミラクルとキュアマジカルを圧倒するだけでなく、キュアフェリーチェの攻撃すら通用しないほどの防御力を誇る。また、炎や風の系統の強力な魔法を発動することもできるほか、クマの影のような姿をした幻影の手下たちを生みだすこともできる。 クマタとしてモフルンに接し、自身の魔法を怖がらないモフルンに友情を感じるが、長年の迫害からヤンデレじみており、大人しく自分と一緒ににいるならプリキュアに危害を加えないと言う。しかし、忠告を無視したとしてリコを捕らえ、みらいを攻撃するが、それを見たモフルンのみらいを助けたいという「願い」からキュアモフルンへと変身したモフルンと激闘を繰り広げる。自分よりもみらい達を選んだモフルンに「俺のことを好きにならない奴は邪魔なんだよ」と言わんばかりの憎悪を向けて、自身の攻撃を避けずに受けて元のぬいぐるみ(話すようになる前の状態)の姿に戻ったモフルンを見て、自分の行動に後悔する。 モフルン/キュアモフルン 「モフモフモフルン!キュアモフルン!!」 「みらいと一緒にいたい、みらいを助けたい」と願いの石に願い生まれたモフルンリンクルストーンを使って変身する。変身後はダークマターと激闘を繰り広げるが、クマタの怒りを感じ取り、その思いを正面から受け止めるためにわざと攻撃を受け、変身が解けてしまう。 フレアドラゴン/ダークドラゴン みらい達の行く手を阻んだ漆黒のドラゴン。キュアフェリーチェと交戦するが戦っている際にその正体を察し、ピンクトルマリンの力によって浄化、元の姿へと戻り、プリキュアたちの移動手段となる。強力な火炎を発射して攻撃する。 以下、さらなるネタバレ キュアモフルン みらい、リコ、フェリーチェ、そしてクマタの呼び声によって復活することができ、再びキュアモフルンへと変身。 ミラクル、マジカル、フェリーチェと共に最終決戦に挑む。 シャドウマター 声:浪川大輔 本作の真のラスボス。自身の行動を嘆いたクマタが自身の能力に対する嫌悪から生まれた負の感情が具現化した姿。クマタの意志とは完全に独立して行動おり、制御不能。紫色をしたクマの影のような姿をしており、表向きは巨大な姿をしているが、その巨大な身体の中には本体といえる等身大のシャドウマターがいる。 その戦闘能力と破壊力は強大であり、本体であるダークマターをも軽く凌ぎ、キュアミラクル、キュアマジカル、キュアフェリーチェ、キュアモフルンを圧倒するだけでなく、全ての魔法を無力化できる能力をもつ。 物語終盤に魔法界を包み込むような暗雲となって魔法界の住人たちの応援によってプリキュアに変身した彼女たちと交戦になり、プリキュアたちとの激闘の末、「ハートフルスタイル」へと強化したプリキュアたちの必殺技である「プリキュア・ハートフル・レインボー」を受けて消滅した。 クマタ シャドウマターがプリキュアによって倒された後、魔法の能力が消滅して普通のクマになった。勇気をだしてクマたちに接触し、少しずつ周囲から受け入れられるようになった。奇しくもその中で最初に受け入れてくれたのは、モフルンと同じく魔法を使えた頃の自分を怖がらなかった子グマだった。 ♦プリキュア キュアモフルン 本作のゲストプリキュアであり、メインプリキュア。中盤でまさかの退場かと思いきや最終決戦で復活。戦闘は初めてにも拘らずダークマターとも互角に殴り合う戦闘力は凄まじく、フェリーチェ同様に無から物体を生成できる。戦闘では機動力重視のスタイルで俊敏な動きをしており、CGを使わずともヌルヌル動く、というか動きが速すぎて一度の視聴では動きの全てを追い切れない。 基本カラーは黄色基調で、元がぬいぐるみという無生物で中性的なイメージからプリキュアでは珍しいスカートではなくかぼちゃパンツ。宣伝でも既出していたが、ミラクル達のダイヤスタイルに相当する。 ミラクル マジカル同様にリンクルストーンによるスタイルチェンジが可能(ミラクル達の変身と連動)。初日に映画を見た視聴者からはサプライズだったが、公開初日翌日の放送回のOPでしれっとネタバレしてたりする。どこまでも隠す気0。 ルビースタイル ミラクル&マジカルと共にプリキュア名物重量挙げ…ではなく踏ん張り合戦をする。 サファイアスタイル 一瞬だけ登場。 トパーズスタイル 一瞬だけ登場。元々が黄色なので少々違いが分かりにくい。 キュアミラクル&キュアマジカル 中盤はモフルンが不在で変身できなかったため、出番は序盤と終盤。中盤に出番がなかった鬱憤を晴らすようにキュアモフルン同様にCGなしでヌルヌル動く。 ルビースタイル 肉弾戦で持ち前のパワーを発揮する。モフルンとの3人変身での炎に包まれての同時変身から戦闘が加速する。 サファイアスタイル 本来なら空を飛べるが、フレアドラゴンが乗り物役になったので後述のトパーズスタイルの必殺技で登場。 序盤のダークマター戦でも変身している。アングルの関係とはいえ吹っ飛ばされたミラクルの胸部が明らかに膨らんでてエロい。←ここ重要 トパーズスタイル 映画版補正かモフルンのおかげでパワーアップしたのかは分からないが、本編では武器や道具にし変化できない光の玉を4つに増やした上にモフルン含めて各スタイルの分身体に変形させる(計12人)という1人プリキュアオールスターズとかいうチート技をやってのける。 某所ではニチアサ繋がりで魔法使いの袋叩きや強欲な金食い虫に例えられた。しかし、登場時間の短さがが惜しまれるほどにその絵面は圧巻である。 キュアフェリーチェ ミラクル達が変身できない間の戦闘を担当。 映画公開の数話前でもドラゴンに好意を寄せられており、今作でも洗脳されたドラゴンを味方につけるドラゴンキラー。 ハートフルスタイル 映画版限定のフォームで「魔法つかいプリキュア オーバーザレインボー」の派生形態。モフルン以外の3人はアレキサンドライトスタイルにピンク色の羽がついた姿になり、モフルンも3人に合わせる形で姿を変化させ同様にピンク色の羽がつけられている。また4人ともハートフルリンクルストーンを胸元につけている。 【テーマソング】 正しい魔法の使い方 歌:渡辺麻友 作詞は映画公開当時に渡辺が所属していたAKB48の総合プロデューサーである秋元康が担当。なお、渡辺は本編38話「甘い?甘くない?魔法のかぼちゃ祭り!」にて、本人役でゲスト出演している(*2)。 【挿入歌】 ふたつのねがい 歌:朝日奈みらい(高橋李依)、モフルン(齋藤彩夏) 鮮烈!キュアモフルン 歌:五條真由美 キラメク誓い 歌:キュアミラクル(高橋李依)、キュアマジカル(堀江由衣)、キュアフェリーチェ(早見沙織)、キュアモフルン(齋藤彩夏) ♦余談 2016年7月16日に発売を開始した前売券は、発売初日2日間の累計販売枚数が31,740枚(親子ペア、小人、大人の3券種の合計販売枚数)を記録し、前年の『映画 Go!プリンセスプリキュア』と比較して423.1%を記録、秋公開のレギュラー単独作品では歴代1位、春のプリキュアオールスターズシリーズなどを含めた全21作品の中でも歴代3位となる好調な売れ行きを見せた。 2016年10月29・30日の公開初日2日間では、全国213スクリーンで13万9830人を動員し、興収1億6226万200円を記録、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第4位を記録した。これは前年比126%の記録となる。ぴあによる初日満足度ランキングでも満足度92.0を獲得し、第3位に入っている。また、11月1日までの上映時点でシリーズ累計観客動員が1500万人を突破している。 追記・修正は願いの石に想いを込めながらお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 乙と言いたいがネタバレ多いかも -- 名無しさん (2016-11-12 06 58 29) というか、ちゃんと新規項目申請したの? -- 名無しさん (2016-11-12 08 27 49) してないっぽいね -- 名無しさん (2016-11-12 11 55 00) キュアモフルンのほうきを使ったアクションが特に面白かった -- 名無しさん (2016-11-12 22 17 22) 戦闘がすごかったなあ -- 名無しさん (2016-11-13 23 39 02) ↑でもあのカット割ってキュアモフルンのサファイアスタイル見せる気なかったよね。アクション派手なのは結構だけどもう少しキャラを大事にしてほしい... -- 名無しさん (2017-02-10 18 10 38) ダークマターとはーちゃんって某カプコンの人気作品の最新作では兄妹なんだよな(中の人的に) -- 名無しさん (2017-07-15 21 29 54) キュアモフルン、映画限定キャラという事もあって権利関係が若干ややこしいらしいね ふたご先生も許可なしだと絵の公開が出来ない旨を語っていたし、去年のテレビ版オールスターズでも全身像の登場はなかったし… -- 名無しさん (2019-02-11 20 15 56) 名前 コメント
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TLD/035 U 小っちゃく変身 美柑/結城家 女性 パートナー 水兵服の美柑/結城家 女性 レベル 3 攻撃力 3500 防御力 6000 【ヤミさんこれどうなってるの!?】《小学生》《妹》 【サプライズ】【自】[相手のターンの、2回目か3回目のアタック終了ステップに、そのアタックがパートナーアタックの時] → あなたのリタイヤがすべて名前に“美柑”を含むカードなら、このカードをあなたのリングに置き、あなたのターンの終わりまで、このカードを+1500/+0。 作品 『To LOVEる-とらぶる- ダークネス』 備考 このカードをパートナーにしているカード 取得中です。 関連項目 取得中です。
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メタモルフォシス ―変身― アート・オブ・ブライス 著者 ジュンコ・ウォング 発行日 2013/10/5 発行所 グラフィック社 ISBN 978-4766125597 写真集 ○コメント○ ~実際に作ってみての感想やその他この本の情報をお気軽にどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る