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第二十二章-第三幕- 払われぬ不安 第二十二章-第二幕- 第二十三章-第一幕- 戦力の根本的な不足を痛感した勇者軍は、脱走して 地中に隠れきってしまったアンノウン・ベビーの存在を やむなく放置し、一気にアーム城へ向かうために、 海洋戦力である旗艦『レッド・ワイズマンMk-Ⅱ』を 緊急で呼び出したのであった。 「おおーい!」 たまたま近くを運航していたのか、数時間ほどで レッド・ワイズマンMk-Ⅱ艦長、コンラッド=ワイズマンの声が 何やら遠くから響いてくる。すぐに艦影も見えた。 何故かコンラッドは赤ん坊を抱いている。 ほどなく接岸し、ゆっくりとコンラッドは降りてきた。 「いや、偶然近くを通っていて良かった良かった。 って、お前等どこ見てんの?」 明らかにジルベルト達の視線はコンラッドが抱いている 赤子に向いていたのは明白だった。 「……おお、エルリックの事な? 前報告したような気もするが、 充分に浸透してなかったか。ウチの拾い子で跡取りだぜ! よかったら船にいる間だけでも面倒見てやってくれよな!」 「あーぶー」 のんびりと挨拶するエルリックに、一同の顔がほころぶ。 次代の担い手がこんな所にもいたのだ。 ……よく思い出してみればそんな報告があったような気もしたが、 不幸な事にそんな事は誰も覚えていなかったのはご愛嬌である。 「ベビー……」 赤ん坊という語感が強く胸に染みるのか、 シルヴィア一人が浮かない顔をしていた。 「お、俺なんか悪いことしたっけ?」 慌てて慰め始めるコンラッドをリゼルがフォローする。 「ああ……ベビーって名付けた実験生物に脱走されて 結構へこんでるみたいなんです。コンラッドさんも エルリック君も悪くないです」 「……そうか……」 困ったような顔をして船員にエルリックを預けるコンラッド。 彼なりに一応、気は遣っているらしい。 「大福、きなこ、みたらし、黒ごま、行って」 ジルベルトの指示に従い、エルリックの護衛に回る猫四匹。 ……遊び相手、という方が正しいかもしれないが。 足りない頭なりに、ジルベルトはジルベルトで 気を遣っているのがそれなりに分かる一同であった。 しんみりしてきたが、そんなことにはお構いなく 船は目的地に向け進んでいく。 海沿いに建設されているアーム城は、上陸後すぐに訪問可能なのだ。 しかし、勿論穏やかな航海で終わるはずもなく―― ゴォォォォォオオオオオ……! 遠くから大きなエンジン音と共に戦闘機らしき機影が接近。 このタイミングでわざわざ勇者軍の針路に乱入となると、 部外者である可能性は低い。敵か、味方かである。 「総員、コンディション・イエロー! いや、レッドだ! 勇者軍にあんな航空戦力があった覚えは無い!!」 コンラッドが的確に指示を飛ばす。 勇者軍一同も速やかに迎撃態勢を取る。 だが、正直分が悪い戦闘になるのは明白だった。 戦艦の対空砲はともかくにして、対空迎撃手段がロクに無い。 空を飛べる面子もジルベルト以外にいなければ、 射撃もルシアぐらいしか使えない。 爆雷を多数投下されれば撃沈の危険がある。 「…………!」 アズール・アーマーを展開し、飛行可能状態になるジルベルト。 すると、敵戦闘機の機種を確認出来た。 ザン共和王国民政部制式採用対地戦用戦闘機である、 ペットネーム『ウィングマン』が4機、であった。 先程の『ホークマン』と違って、うち3機は無人機のようだった。 コクピット・ブロックに生命反応が無いのが分かったからだ。 ならば有人機である1機を除き、手加減の必要は一切無かった。 ぼごんぼごんぼごんぼごん!! 既に『ウィングマン』からは爆雷の投下が始まっている。 弾幕やルシアの射撃で、ギリギリ凌いでいるが、 それでも近くの海面に着弾したり、少数命中したりと 結構悲惨な事態に陥っている。小破というところか。 「対空砲火、弾幕薄い! 弾薬を惜しむな!!」 コンラッドの檄が飛ぶと、本気の射撃が始まる。 その頃にはジルベルトの空中戦も始まり、 砲剣ストレンジバスターの砲撃で一機目を爆砕していた。 対空砲火と魔法射撃などにより、二機目、三機目と立て続けに撃墜。 一気に戦局は優位に傾いたが、依然として諦めない 有人機の存在が鬱陶しかった。爆死させるわけにもいかず、 手を出しあぐねていると、相手は調子に乗って 機銃で牽制を仕掛けてきたりして、ジルベルトは 装甲の厚さで何とか凌ぐしかなかったりするのだった。 「てぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」 しかし、そこに空のスペシャリストである フローベール=エルデナントと愛馬のペガサス、ベアトリスが 味方の危機を知るや否や、全速で駆けつけた。 「フローベール!?」 防御に専念していたソニアが驚くが、フローベールは構わず、 突撃して『ウィングマン』のエンジンに槍を突き立てる。 「てやぁッ!」 大きくボディに切れ目を入れ、更にベアトリスが蹴飛ばすと、 鋸で切れ目を入れた角材が割れるように、敵機の一部が割れた。 「ちいッ!」 敵パイロットは早々に諦め、コクピットブロックごと射出し、 速やかに脱出を済ませた事によって命拾いをした。 「白兵戦要員、速やかに確保だ! 陸地に上がり次第、このボケをそこらに放り出せ!」 コンラッドの指示によって、敵パイロットを捕縛した。 フローベールとベアトリスが着艦した。 「あの、隊長、いきなり押しかけてすみませんでした!」 フローベールが申し訳なさそうに言う。 (むしろいっぱい助かったのー) と、さほど気にしてもいないジルベルト。 だが、フローベールは大慌てである。 「バスクがいい加減戻ってこないから、アーム城に 迎えに行ってみれば行方不明だっていうし、 その後何の情報もないし、困り果ててしまって…… お願いです、隊長! 情報何か持ってませんか!?」 「落ち着きなさい、フローベール」 と、ルシアが止める。 「私達も大した情報は持ってないわ。むしろそれから 結構な時間が経ってるからアーム城に行くべきじゃないかしら。 情報が更新されている可能性もあるかもしれないし、 何より今から私達もアーム城に行くんだから、ね。 だからフローベール。私達と一緒に各地を見て回りましょう?」 「わ、分かりました。こんな形で主力部隊入りなんて 予想もしてなかったですけど、バスクの事よろしくお願いします!」 ぺこり、とフローベールは挨拶する。 「一緒に戦うのは初めてですね、フローベールさん」 「よろしくお願いします、フローベールさん」 シルヴィアとリゼルも挨拶する。一応知り合い同士ではあるが、 こういうのも礼儀としては必要だろう。 こうしてコンラッドとフローベールを迎えた 勇者軍主力部隊一同は、通例ルートを大幅に無視し、 一気にアーム城最寄の陸地へと接岸に至るのだった。 立て続けに起こるトラブルに、不吉な予感は掻き消えぬまま―― <第二十三章-第一幕-へ続く>
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第十七章-第二幕- 人の業の光 第十七章-第一幕- 第十七章-第三幕- 勇者軍主力部隊ならびにアーム城主イスティーム王、 更に娘ユイナ王女は命尽きようとするキョウカ王妃を守りつつ、 懸命に治療行為に当たらなければならないという ギリギリの状態まで追い詰められてしまったのであった。 「脈拍、更に下がります!」 「止血を急ぐんだよ!」 「傷が広すぎます! 縫合、間に合いません!」 「王女の血がもつ間に何とかするんだ! 電気ショックも用意!」 「はい!!」 衛生兵や医師達の怒号が聞こえる中、 ただ淡々と時間は流れゆく。マキナも棒立ちのままだった。 組織の中で頂点に近い存在だったはずの自分の言葉さえ 聞かないほど、自軍の兵が浮き足立っているのだから仕方が無い。 「キョウカ……まだです、まだ死んでは……!」 イスティーム王が祈るようにキョウカ王妃の手を握り締める。 しかし、勿論彼女の意識が戻る事は無い。 更なる絶望が戦場を包もうとした、その時だった。 周囲の空気が一変した。 それを感じ取り、まず勇者軍主力部隊が戦う手を止めた。 その異常さに反応し、敵軍もつい戦いの手を止めた。 この修羅場にあまりにもそぐわない優雅な気配。 そして圧倒的な力量を示す存在の出現。 それがどこからか現れたのだ。 「この気配は……ッ!?」 ざわりと全身の毛を逆立てて反応するマキナだが、 その正体はすぐに現れた。勇者軍主力部隊の後方からである。 「珍しい事に、随分と苦戦していますのね……」 ふわり、と浮きながら現れたのは、 勇気と、技と、機智の象徴、地上最強にして絶対勝利の人業勇者、 業を愛でる剣こと、現勇者軍総帥、 エリシャ=ストレンジャーであった。 「総帥!!?」 あまりに唐突な出現に、一同が目を見張る。 よく見れば、傍には夫たるノエル=ラネージュもいる。 「あなたの大事な物を持ってきましたの、ジルベルト」 「母上……」 と、ソニアの父親の形見の銃を手渡す。 「ユイナママがー!」 「分かっていますの、ジルベルト」 そしてエリシャの手にはストレンジャー家の秘宝、 ストレンジャーソードが握られていた。 「総帥! ヒーラーとしての力が必要です! 妻を! キョウカを治癒して下さい!!」 イスティーム王が懸命に懇願する。 「いいえ、キョウカ王妃を救うのは ヒーラーの力ではありませんの」 そう言うと、エリシャは剣を構える。 「では、あの力を!?」 「私は信じておりますの。彼女の人業の光を」 ざしゅっ! 「何を!?」 キョウカの傷口に剣を差し込むエリシャにユイナ王女が驚く。 「いいから見てなさい、ユイナ。これから始まるんだ」 「何がですか!?」 「人の業の力が、総帥の魔力と融合した時、 それは計り知れない力となる。始まりますよ!」 ぽぅ…… 暖かな光がキョウカ王妃とストレンジャーソードを包む。 否、むしろキョウカ王妃からの 人の業の力をストレンジャーソードが纏い、 その力を治癒力としてキョウカ王妃に還元しているのだ。 「これは……」 キョウカ王妃の業の力はエリシャの予想を遥かに凌いでいた。 みるみるうちに血が止まり、 傷口も塞がり、血色が良くなっていく。 もはや傷跡さえ残る事は無いだろう。 「脈拍、一瞬にして正常化!? どうなっている!!」 「分かりません! 血圧も全て正常値に戻っています!」 「出血、完全に止まりました! 縫合、必要ありません!!」 「電子顕微鏡観測結果! 全ての新陳代謝が以前よりも活性化! 既に人間の常識さえ上回っているぐらいです!!」 「こんな魔法も道具も薬も聞いたことが無い! 一体どうなっているんだよぉ!?」 そのあまりの衝撃に、衛生兵達も混乱するばかりだった。 「凄い……これが総帥の力?」 ユイナ王女もただ唖然として見つめる他無かった。 「いいえ。これはキョウカ王妃の力ですの。 ここまで人の業を背負って生きてきた人は 私も初めてお目にかかりますの。 私はその人業の力を引き出したに過ぎませんの」 と、エリシャはようやくストレンジャーソードを 引き抜いて、キョウカの身体から離した。 そうしたそばから、わずかに残った傷口も消え失せる。 その後、きっかり三十秒後にキョウカ王妃は目を覚ました。 「……う……ん……あら? 総帥閣下?」 つい自分が死にかけた事さえ忘れて、驚くキョウカ王妃。 「キョウカ王妃、お久しぶりですの。 人の業の光、確かに見届けさせていただきましたの」 「総帥閣下が自ら救援に?」 「お届け物のついでですの。でも良かったですの。 無理をしては駄目ですの。今は休んで欲しいですの」 軽くハグして背中を叩いてやると、 エリシャの肥大化した母性本能が キョウカ王妃を包み込み、たちまちの間に休眠させてしまう。 「これで大丈夫ですの、イスティーム王」 「ありがとうございます、総帥!!」 イスティーム王、ユイナ王女共に最大級の敬意の込められた敬礼。 「お礼は彼に言うといいかもしれませんの」 と、少し困ったようにエリシャはバスクを指す。 「俺!?」 「彼の必死な救難信号が無ければ気付くのが遅れて 間に合わなかった可能性がありますの」 「ありがとう、バスクさん!」 泣きまくるユイナに抱きしめられ、ついついうろたえるバスク。 「あ、いや、俺、そんなに大したこと……」 「って、まったりしている場合でも無さそうよ!」 とんでもない救出劇を見せられ、ついつい攻撃の手が止んでいた ネイチャー・ファンダメンタルの兵士一同は改めて 攻撃態勢に入っていた。まだ相当数の兵士がいる。 「ジルベルト、これも使わないとですの」 「頑張るのですよ、ジルベルト!」 『分かったのー』 エリシャとノエルはストレンジャーソードも渡してくる。 それを受け取り、念を込めた。 カッ!! 閃光と共に、遂に覚醒する。砲剣ストレンジバスターが。 ガシャコン! そして鈍い音を立て、魔力弾がリロードされた。 いつでも発射する準備は出来ている。 「非戦闘員を傷付けてしまった事は我等の落ち度。謝罪をしよう。 だが、こうして助かったのを確認した以上、我々は再度攻撃をする! かかれ! 遺伝子調整生物全てを討ち滅ぼすのだ!!」 正々堂々とした戦闘状況に戦意を取り戻したマキナは、 再度攻撃指示を出し、兵士を鼓舞する。 「イスティーム王、ユイナ王女! キョウカ王妃を連れて下がれ!!」 ヴァジェスの指示が飛ぶ。 「後を任せます!」 そう言うと、イスティーム王達は キョウカ王妃を連れて再度退避する。 そうする間にも兵士達が猫達めがけて殺到してくる。 そこに割って入るジルベルト。目が本気であった。 すなわち、セーフティロックを解除し、最大出力で叩き込むのだ。 「終撃砲!」 ずっどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!! 凄まじい爆風が戦場を包む。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 爆風により、まずジルベルトが大きく吹き飛び、 ほぼ同時に何百人もの敵兵士が四方八方に薙ぎ散らされる。 その吹き飛んできた兵士にぶつかる事によって、 連鎖的に千人近い兵士が一瞬で戦闘不能になった。 味方の受けた衝撃も凄まじく、 ヴァジェスが大きく怯み、バスクとフローベールは落馬し、 ゼクウはその場で何とか踏ん張り、 サイモンもノエルも、リュミエルもギースも 派手に転倒し転がっていく。受け身を取るのも一苦労だ。 エリシャは何とかホバーで浮く事により、やり過ごしたが、 まともに耐える事が出来たのは、スプレッダー戦役に 出撃していたメンツのみであったほどである。 バクン! ぶしゅぅぅぅ!! 放熱板が開き、ストレンジバスターが猛烈な蒸気を吹く。 冷却時間が始まった証拠であった。 この一撃だけで物量戦の決着は着いていた。 元々対人用に作られていないだけに遠慮会釈の無い砲撃は、 敵をほぼ壊滅させるに等しい打撃を与えたのだ。 「くっ……だが、まだ終わりではないぞ!!」 デウス=エクス=マキナが強く叫ぶ。 「いいえ、ここで終わらせるわ! 全員、戦闘用意!!」 何故か元気良く叫ぶリュミエルにみんな苦い顔をするが、 とりあえず間違っていないので従う一同であった。 「攻撃、開始!!」 テディの号令で、エリシャとノエルを除く全員が マキナに向かい、一直線に突撃を開始した―― <第十七章-第三幕-へと続く>
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第十九章-第一幕- ネイチャー・ジモンの歓迎 第十八章-第三幕- 第十九章-第二幕- 勇者軍主力部隊は無人兵器をことごとく片付けて、 遂にネイチャー・ファンダメンタル本部と化した 惑星アース国際平和機構本部施設へと足を踏み入れた。 ここではヴァジェスもサイズが大きすぎるため、 人型となるドラグーン形態へと移行している。 「くそっ、広いな」 悪態をつくヴァジェスをテディが嗜める。 「向こうは人海戦術が得意なようだったからな。 これぐらいの巨大施設でなければ話にもならんのだろう。 ……まるでそのためにここが狙われたかのようでもあるがな」 「ついでというものでしょう。彼等の作戦目的上、 ここも狙われるのは必然だったと言えます。 接収目的で襲った、というわけでもないかもしれません」 キョウカ王妃が苦々しい表情で語る。 「雑魚みたいな部屋はあんたの部下だけで充分だろう。 俺達は重要な部屋を制圧するぞ。キョウカ王妃、教えてくれ」 エイリアがあまりの広さに、苛立ちを隠そうともせずに言う。 「今、全員の端末にここの地図を転送しています。少しお待ちを」 そう言うや否や、すぐに各員の端末に地図のデータが転送された。 「地図上で一階に明らかに大きい部屋が見えますね? それが中央の施設の管理区域です。全室をモニタリングする 機能や通信施設などを備えており、一番の重要地点です。 他の部屋は皆さんに任せて、勇者軍はそこを制圧しましょう」 『分かったのー』 元気良くジルベルトが応じると、他の者も頷く。 ……と、そこでふと気付いたように、キョウカ王妃が赤面する。 「私ったら……室内で乗馬しているなんて、 すっかりお行儀の悪いことを……」 「いやいや、そんな場合じゃないですから」 チトセに乗ったままのキョウカ王妃に対し、 冷静にイスティームがツッコミを入れる。 「……ユイナ王女にそっくりだなぁ……変な所が……」 と、ソニアとライナスは呟く。 中央管理室までにはそれなりの距離があるものの、 元が文化的な施設ということもあってか、大掛かりな 防衛兵器などは設置されたりしていないようだった。 フェイント的に使用されると、最弱のキョウカ王妃の身に 危険が及ぶので、勇者軍としては非常にありがたかったが。 そこで、明らかにネイチャー・ファンダメンタル軍とも、 惑星アース国際平和機構軍とも違う格好の兵士を見かけた。 「誰だ……お?」 「コンラッド君、待って待って」 コンラッドが警戒して攻撃しようとしたが、 メイベルが慌てて止めに入ったので躊躇したようだった。 「お父様の指示ですか?」 「へい、お嬢! ケヴィン様の指示で参りやした! 俺達も各部屋の制圧行動を支援しますぜ!!」 「やっぱり。ウチの施設でよく見る方ですもの。 うっかり攻撃されないように目立つ行動は控えて下さいね」 「へぇ、すんません。じゃ、俺はこれで!!」 どうやらアイリーン・マフィアが勇者軍の 直接支援に動いてくれているようだった。 この施設はアイリーン・マフィアからも そう離れていないとあって、他人事のように 見過ごしておく事は出来なかったのだろう、と メイベルが賢い事に全て察したのであった。 「っと、やべぇやべぇ。メイベル、お前んトコの奴か。 お前が気付かなかったら危うく仕掛けるところだったな」 「大体家に出入りするスタッフの顔は覚えているの。 さあ、これでより任務に集中出来るはずです。 急いで行きましょう!」 それから十数分後、勇者軍主力部隊は 惑星アース国際平和機構中央管理室に足を踏み入れた。 「疑」 突如としてそれまで黙っていたゼクウが喋る。 「疑わしいの? 何が?」 ルシアがその疑問自体を疑問に思って口に出す。 ジルベルトがその意図を読んで、メールで伝える。 『外の大軍団と無人兵器で 警戒態勢と迎撃態勢を整えたのは当然だ。 だが、それ以外の備えが無いのは いくら何でも疑問が残る、って』 考えてみれば当然の事だった。 今もバスクやキョウカ王妃の端末には、ひっきりなしに アイリーン・マフィアの構成員や惑星アース国際平和機構軍による 各部屋の制圧報告だけが、何の異常も無く淡々と行われている。 普通に考慮した場合はそれが一番異常なのである。 ネイチャー・ファンダメンタル軍による抵抗の報告さえ無いのだ。 残党がいくらかなりといてもおかしくはない。 まさか本当にマキナと幹部以外の 全戦力を投入したとでも言うのか。 それともそうせざるを得ないほど、 思ったより敵が消耗しているのか。 思考は堂々巡りになり、遂にイスティーム王が結論を出す。 「しまった、罠か!?」 そう叫んだ時にはもう遅かった。 ぶわっ! 「むっ、なんだこれは!?」 ギースが驚く間もなく、床に異常が見られる。 いきなり床が発光した。 それも部屋全体を大きく六つに分けて 六色へと発光する。驚かせるためだけだとしたら 非常に悪趣味だった。 だが、それほど生易しくもないようであった。 「よぉぉぉぉぅこそ、勇者軍主力部隊の諸君! 我々ネイチャー・ファンダメンタルの基地へと! だが生憎、ここには大した守りの施設も仕掛けも無い! それではあまりにも無礼であぁぁぁる!!」 妙にハイテンションなのは相変わらずであった。 ネイチャー・ジモンことラッカード=ジモンの声である。 どうやら通信設備を使ってこの部屋に声を送り込んでいるらしい。 「ネイチャー・ジモン! この施設は元々キョウカ王妃達のものだ! 使い物にならんなどと言うなら、 今すぐここから立ち去れ!!」 テディが怒りを露に叫ぶと、 意外にもジモンはまともに応じてきた。 「良かろう! というよりもうその施設には我々幹部を含め、 全てのネイチャー・ファンダメンタルの人員はおらぬ! そんなボロ屋、貴様等の好きにするが良いわ!!」 「意外に物分かりがいい……?」 「そんなわけあるか」 と、リュミエルの懸念をヴァジェスが即座に否定してのける。 「ただし、ここから無事に出られればだがなぁ!!」 バクン! ジモンがそう言い放つや否や、 六色に発光していた部分の床板が開き、 ぽっかりと六つの穴が出現。 「うおわっ!?」 誰の声かは知らないが驚愕する声が響く。 だがそんな声を聞く暇も無く、 各員が六つのグループに分かれて落下する。 「元帥閣下ぁ!」 「キョウカ!? ……間に合え、エア・フロート!」 落ち行く中で、かろうじてイスティーム王の声だけが響く。 キョウカ王妃は戦う能力も何も持たない凡人だ。 イスティーム王は即座に反応し、 浮遊魔法を幻杖レプリアーツから開放し、 キョウカ王妃と愛馬チトセをそれに包むことに成功した。 そして地下十五メートルほどの地点に落下した各グループ。 完全に勇者軍主力部隊は寸断されてしまったようである。 「ったた……」 ジルベルトをとっさにかばったせいで着地に失敗したソニアが 少し時間をかけて起き上がる。周りを見渡してみれば 『アンダーグラウンドゲートA』と書かれた表札を発見。 事実上のAルート、と見なしていいようだった。 「ジルベルト君、平気?」 (平気ー) ジルベルトはあっけらかんと返事してくる。 そこには、仔猫のあんみつを抱えたメイベルも着陸していた。 彼女はブースターを吹かして軟着陸したようである。 「他の皆さんは無事でしょうか……?」 「何言ってるのよ、メイベル。一騎当千の勇者軍なのよ。 それより無事に出られたら、なんて言ってたわね。 自分達が無事に出る事を考えた方が良さそうよ」 ジルベルトもうんうん、と頷く。 一方のアンダーグラウンドゲートBにおいては、 近くに寄り添っていたレイリア、エイリア、サイモンの三名がいた。 「……痛い……」 レイリアは壁蹴りで軟着陸。エイリアは鞭で電灯を絡め取り、着陸。 サイモンだけが自らの足一つで豪快に着陸し、足を痺れさせていた。 「お兄、だいじょぶ?」 「あまり無理をしない方がいいわ、兄さん」 「……っと、もう大丈夫だ。 これぐらいでへこたれるわけにもいかない。 だが、アンダーグラウンドゲートBという事は、 同じようなゲートが六つに分かれていて、 それぞれみんな同じように巻き込まれただろう。 僕達も速やかに出口を探して、とっとと脱出しないとね」 レイリアとエイリアは素直に頷いた。それが一番早そうだし、 何より上への移動手段も塞がれていたからである。 更に一方のアンダーグラウンドゲートCにおいては、 テディ、ドルカス、リュミエルの三名が それぞれ器用に着陸していた。 「ふう、まったく人騒がせな罠だこと」 と、冷静にドルカスが言い放つと、リュミエルはとにかく怒鳴る。 「湿っぽい! カビ臭い! こんなトコ嫌ぁー!」 「同感だ……早く外に出ないとな。 ドルカス、デリバリー・ランチャーはあるか?」 「あるけど無理よ、テディ。上は塞がれたみたい。 地道に外への道を探した方が早そうね。 そもそもここ、緊急脱出口として機能してたみたいだから」 「そうなの? ドルカスさん」 「私には見れば分かる。やたら頑強に補強してあるし、 これなら仮に私達が大暴れしてもそう簡単には崩れないわよ」 そこまで言うとドルカスはさっさと歩き始める。 「よし、行くぞリュミエル」 「偉そうにしないでよ、テディ!」 いまいち息の合わない二人が、ドルカスに続く。 更に一方のアンダーグラウンドゲートDでは、 イスティーム王と、キョウカ王妃。 そしてその胸に抱かれたジルベルトの仔猫四匹と、 愛馬チトセ、それにギースとコンラッドがいた。 「人の施設の緊急脱出口をこんな風に改造して……悪趣味ですわ」 「まあまあ、落ち着いて、怪我は無い?」 「ええまあ、元帥閣下のおかげで」 珍しく憤慨してキョウカ王妃が言うので、 イスティーム王はなだめるのに必死だった。 だがギースは別の所に着目する。 「脱出口、という事は出口もきちんと用意されているという事か。 むしろその出口に敵の幹部が控えている可能性がありそうです」 「鋭いね、ギース君」 「ジモンの言葉から推測しました。 無事に脱出出来れば、という事は そのまま素直に出す気は無い、という事でしょう。 なら組織最強レベルの戦力を出すのが筋のはずです」 「脱出路は六つ、幹部も六人か。だがマキナが カウントされていないのは気になる」 「今はそこまで考えても仕方がありません。 キョウカ王妃のこともあります。急ぎましょう」 「よし、ここはお前さんに任せるぜ、ギース!!」 ギースが先導し始め、コンラッドも同意したので、 二人はそれに従った。 更に一方のアンダーグラウンドゲートEでは、 フローベール、バスク、ヴァジェスと 愛馬のベアトリス及びヴィッセルが放り込まれていた。 フローベールはベアトリスの飛行で、バスクとヴィッセルは、 ワイバーン形態に戻ったヴァジェスに抱えられ、 全チーム中一番無難に軟着陸を成功させていたと言える。 「フローベール、上へ上がれそう?」 「……無理ね。上は蓋をされたみたい」 「ひひんばー」 ベアトリスも困ったように言う。ヴァジェスが応じた。 「俺達だけ飛んで上がっても他がそうはいかんだろう。 気に食わんが、このトラップに付き合ってやらんといかんな」 「どうしよう、こんな新米ばっかり残って……」 フローベールが自信無さげに言うのをヴァジェスが小突く。 「ここまで生き残った時点でお前等はもう精鋭の一人だ。 そんな弱音を吐くように鍛えた覚えは無いつもりだが?」 「はっ、はい!」 フローベールも、バスクも慌てて返答する。 「悪くない返事だ。ならすぐにここを出るぞ」 ドラグーン形態に戻ったヴァジェスが歩き始めると、 フローベールとバスクは慌てて付き従い始めた。 最後に、アンダーグラウンドゲートFでは ライナス、ルシア、ゼクウの三名が放り込まれていた。 ゼクウがその豪腕を持って他二名を抱えたまま、 壁蹴りを駆使して強引に着陸してのける。 「ふいー、びっくりした。うわっ狭っ。苦手なんだけどなぁ」 着陸するなりいきなり愚痴をこぼすライナス。 どうやら過去の経験がトラウマになっているようだった。 「愚痴ってる場合じゃないわ。 他の連中も出るために動くだろうし、 ウチ等は即席チームだけど、別チームに遅れは取れないわよ」 「進」 ルシアとゼクウはさっさと進み始める。 「置いて行かないでくれよ。待った待った」 と、ライナスも慌てて後を追う。 少し歩くとゲートらしきものが見えた。 手動で開く扉を何とか開けると、更に広い空間へと出る。 今までの部屋より更に補強され、頑強な床や天井が目立つ部屋だ。 「危」 ゼクウが警戒感を強めて言う。 ライナスとルシアも即座に臨戦態勢に入った。 アンダーグラウンドゲートFの部屋と同じように、 各チームの到達した部屋に、強い敵意が渦巻き始めるのだった―― <第十九章-第二幕-へと続く>
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第二十章-第四幕- 対たる蒼紅の鎧 第二十章-第三幕- 第二十章-第五幕- 「う……んん……?」 キョウカ王妃の胸に優しく抱かれたメイベルが意識を取り戻した。 アルヘイ島から大きく離れ、既に大陸へと戻っている。 「キョウカ様……戦況は!?」 キョウカ王妃は黙って顔で方向を示す。アルヘイ島の方向だ。 「あれは……!?」 メイベルも気が付いた。 あまりに巨大な竜が……否、龍がそこにいる。 「太古の昔にはあのような形の龍が多く版図を広げたと聞きます。 太古龍……エンシェント・ドラゴンというところでしょうか。 それにネイチャー・ファンダメンタルが 遺伝子調整を加えたのでしょう」 「大変……行かないと!」 「お待ち下さい、メイベルさん! スカーレット・アーマーも アースシールドも無いというのに、無茶はいけません!!」 「止めないで下さい、キョウカ様! 兄様が! みんなが……!!」 涙をぼろぼろとこぼしながら、 承諾を得るために説得するメイベル。 「キョウカ王妃の言う通りだ、メイベル、無理をしてはいけない」 「その声は……」 突如二人の前に姿を現した声の持ち主は―― 「疾風剣! 烈風剣! 疾風剣!! 烈風剣!!」 もはやなりふり構わず、 ライナスは突貫をかけて身体をひたすら切り裂く。 鱗が剥がれ、血は吹き出し、たちまち傷だらけになるマキナ。 だがあまりの巨体に、少々のダメージ程度にしかならないようだった。 しかも呪鞘カオスリキッドの力を借りてこの始末である。 それでも痛いのは痛いのか、マキナは時折怯み、 トップクラスのダメージソースを叩き出すライナスを狙う。 「させんぞ、マキナ!!」 そこへヴァジェスが割って入り、 大口径のレーザー・ブレスを放つ。 彼自身の必殺奥技でもあったが、流石にマキナは冷静に対処。 「レーザー・ブレス!!」 二人のレーザー・ブレスが同時に放たれ、 正面からぶつかり合うが、ヴァジェスのブレスがパワー負けし、 ヴァジェスは寸前の所で上空に退避して 難を逃れるのが精一杯であった。 「化け物か、こいつは!?」 「ふ、皮肉なものだな。普段化け物呼ばわりされ続けている 勇者軍に似つかわしくない台詞だ。言い慣れまい?」 「この期に及んでブラックジョークは 無しにしてほしいんだけど!?」 レイリアがとにかくありったけの火器を叩き込むが、 やはりライナス同様に、少々のダメージ程度が精一杯だった。 「どれ、少しは動くか」 マキナはロクに身体を動かしていなかったが、 派手に地面をはいずり始める。鱗も逆立ち、 文字通り逆鱗となって刃と化す。そのまま移動する事で、 勇者軍のかなりのメンバーが 砕けた破片によって傷まみれになる。 唯一無事なのは飛行している ヴァジェスとフローベールぐらいであった。 「動くだけで災害級の攻撃とはね……!」 リュミエルが愚痴りながらも攻撃の手は緩めない。 「もう手段は選べねぇ!! 親父、聞こえてるか! また出番だぞ!!」 『分かっています、コンラッド。 しかし到着に少し時間がかかります。 引き潮が終わっていないので 移動可能区域が限られているのです』 「……なるべく早くでいい、頼むぜ!!」 コンラッドが通信を切る。もはや猫の手も借りたかった。 一方で、エイリアやギースなど近接攻撃ばかりが得意で、 かつスピードとテクニックに特化したメンバーは 更なる苦戦を強いられた。 もはや回避に専念するより他無い、というほどの状況悪化ぶりだ。 かろうじてダメージソースとなっているのはエイリアだけで、 フローベールも、バスクも、ゼクウも手を出しあぐねていた。 「爆!」 ゼクウは早くもありったけの爆薬を叩き込むが、 それは辛うじてダメージソースとなった。 しかしそれだけで終わってしまう。 そして爆薬はもちろん無限ではない。 「例のスチールボールボム、とかいう兵器だったか。 あれの使い所を間違ったと見える。 友軍救出などという任務なら己の独力でこなせただろうに、 あのような兵器に頼ったのは……勇者軍よ、 明らかに君達の怠慢の結果と言えるだろう!」 「仲間を救出するために全力を尽くしただけの事なのよ!」 フローベールがマキナの爪を回避しつつも抗弁する。 「そうだ! ソニアさんが死んだりしていれば隊長が泣いた! キョウカ王妃が死んでいればイスティーム王や皆が泣いた! 俺やフローベールが死ねば親父もお袋もきっと泣いたさ!! みんなの親父やお袋、親兄弟がみんな泣くんだ! 本当は来たかったはずのメンバーも、ユイナ姫だって泣く! マキナ! お前にはそれが分からないのか!?」 「バスク……」 その剣幕にフローベールは驚いた。 これだけの事を言ってのける胆力が備わっている程に 自らの弟が成長を見せているとは思いもしなかったのだ。 「分かりたくても理解しようがあるまい! 我に親兄弟はおらぬ! 心を通わせた友も、今自らこの手でその命を絶ったのだからな! その道義を押し通す気ならば、我が命を絶ってそれを成せ!」 「もはやそうするしかあるまいな、マキナ」 と、ギースも同意する。 「それにスチールボールボムなど無くても俺達は勝つ!」 「是」 ギースにつられてゼクウも同意する。 「見るがいい! 僕達の後方より現れるは人類史上最強の私設軍筆頭! 勇気と、技と、機智との象徴にして、地上最強の勇者!! その名もジルベルト=ストレンジャーだ! 慄け天よ、震え地よ! 人よ命よ、始まりを見ろ! 我等が隊長殿のお通りだ!! 道を開けろぉッ!!」 これ以上無いほどの確信を持ってサイモンが呼ばわると、 後方からいよいよジルベルトが砲剣自身の推進力で飛翔し、 マキナの眼前へと躍り出る。 「ぬぅぅぅぅぅあああああああああ!」 マキナが最大出力でのレーザー・ブレスを放つが、 巧みに軌道を変え、ジルベルトは回避。 バキン! 魔力により生み出した魔力弾のベルトリンクを全てパージする。 それをマキナの背に叩き込み、即座に射撃態勢に移った。 「終焉来撃砲!!」 間髪入れず即座に全力砲撃。魔力弾も全て破裂し、 凄まじい爆発力と爆風を生む。 イスティーム王以下全ての人間が 大きく身じろぐわ、吹き飛ぶわ、転げ回るわの阿鼻叫喚だ。 「やったのか!?」 テディがその遠くまで見渡す視力で周囲を見回すが、 大量に出血こそしているものの、マキナは未だ健在だった。 それに比べ、ジルベルトは その魔力のほとんどを使い果たした。 「いかん、聖杯ライブチャージャーよ、力を!」 温存していた力を供給し、何とかジルベルトを通常の状態に戻す。 「くっ、だがこんな調子ではすぐに力が底を尽くぞ!」 テディまでもが遂に愚痴をこぼし始める。 「兄様ーッ!!」 するとそこに、何故かスカーレット・アーマーを着た メイベルが飛び込んでくる。壊されたはずなのだが。 「メイベル!?」 あまりにびっくりしてソニアもつい名を呼ぶ。 「アフターバーナータックルっ!!」 どごんッ! 赤き鋼鉄の塊と化したメイベルが体当たりをかける。 だが、速度はともかく、質量があまりに小さすぎた。 相手は8000トンクラスのエンシェント・ドラゴンなのだ。 それに比べて、メイベルは鎧を含めても200キロを下回る。 これではいくら速度が速かろうが、 人間に砂糖で攻撃するようなものだ。 「あーうぅ~……」 よろよろふらふらと着地し、何とか態勢を整えるメイベル。 一方、ジルベルトはこの隙に離脱を終えていた。 もっとも彼自身もメイベルが復帰した謎は理解できていないが。 「勇者軍サブメンバー、推参!!」 すると、引き潮だった地続きの道から勇者軍らしき人物が現れた。 先陣を切っているのはジルベルトの叔父、ケヴィンである。 「ケヴィン、どうしてここに!?」 ヴァジェスも流石に驚く。 「一筋縄ではいかない相手のようだからな。 無条件に信じて去っていったド天然姉貴の代理をしに来た。 俺はそこまでオプチミスト(楽観主義者)でもなくてね。 ……まあ性分だ。気にしなくていい」 「悪いが、この老骨も参加させてもらうぞ」 後ろにはその祖父、グスタフもいる。 いや、しかもそれだけではない。 エリシャの部下達となっていた者達どころか、 ジルベルトの祖父、エドウィンの部下だった者達まで、 いるわいるわ、総勢数十名規模の(勇者軍的な)大隊規模である。 「そうか、メイベルのアーマーはケヴィンさんが……!」 ルシアもようやく事情を察したようであった。 そしてケヴィン一行の最後尾にはキョウカ王妃とチトセもいる。 どうやら戦況の変化が気になって戻ってきたようだった。 「突撃だ、野郎共! 現役の若造共に遅れを取るな!」 「おおおおーッ!」 多くの英傑達がめいめいに攻撃ターゲットを分散し、 任意に攻撃を開始した。マキナは少々うろたえたが…… 「少々数が増えたぐらいでどうにかなるものか!」 とむしろ激昂し、地面へ潜る。 「なっ!?」 ソニアが驚愕する。あの巨体で地中へ潜るとは、 まさに常識の範囲外からの攻撃である。 ずどごぉぉぉぉん!! そして地下から飛び出て牙を剥く。 「うううおおおおおおおッ!!」 「テディ!」 カリン=カレン。テディの母親の悲鳴が響く。 マキナの口にくわえ込まれ、今にも噛み砕かれようとしていた。 しかしテディはすんでのところで手と足で踏ん張る事で、 上下から迫る牙の脅威から、何とか逃れていた。 実はライブチャージャーの生命力を放出し続けて成せる技であり、 ここでも彼は家宝に助けられたと言って良かった。 ずどごん!! 「!!?」 突然遠距離からミサイルと砲弾が飛び込んでくる。 マキナは衝撃に耐えかね、大口を開けてしまった。 その隙にテディは難なく脱出に成功したようだった。 「とっておきですよ……四大精霊元素爆裂剣!!」 同時にそれをフォローするために、 イスティーム王の幻杖レプリアーツが、 ストックしておいた、総帥エリシャの使う必殺奥技を叩き込む。 「カーティスか! ナイスタイミングだ!」 ケヴィンが素直に同僚の力を賞賛する。 が、その時、ケヴィンがジルベルトの立ち回りを見て気付く。 色こそ違うが、スカーレット・アーマーのフレームに似た何かを ジルベルトが振り回している。気にならないはずもない。 「まさか、あの形は……ジルベルト、すぐ来てくれ!」 その要請に応じて、ジルベルトは飛来する。 「?」 「ジルベルト、お前のその剣のフレームは…… まさか、スカーレット・アーマーなのか? その剣を交えて進化したというのか?」 「……」 ただこくこくと頷くジルベルト。そわそわしている。 前方では味方が奮戦しているのだ、 時間はかけられないのだろう。 「この設計図はスカーレット・アーマーの没デザインだ。 見てくれジルベルト。お前の砲剣とそっくりだろう?」 「!」 渡された図面を見ると、確かにそっくりだった。 「これは変形機構を備え、 武器と一体化するプランだったものだ。 ひょっとすると、お前の砲剣にその機能が備わっていないか? よく装飾やその他の部分を見直してみてくれ。 あるいは、そこに活路があるかもしれん」 慌ててジルベルトは砲剣のあちこちを見渡す。 中折れ式フレーム。砲撃用砲門、剣の刃、そしてセレクター。 更に見れば明らかに今までに無い 撃鉄らしき稼動部が入っている。 (……これかな?) ジルベルトがその撃鉄らしき部位を押し込むと、 絶壁砲剣『矛盾』を覆っていた スカーレット・アーマーがパージされた。 ジルベルトの魔力に反応して砲剣自体も、 そしてジルベルト自身も浮く。 (何、何、何!?) ジルベルトは内心慌てるが、もはや成り行きに任せるしかない。 すると装甲は鎧のような形となり、まず胴を包み、 腰を包み、両腕を、両足を、そして頭を包み込む。 それはさながら、スカーレット・アーマーの 再来のようであった。 「技術的難点から実現しなかったが、 まさか完成をこの目で見れるとは。 これはスカーレット・アーマーとは言い難いが、見事だ…… まさに、真紅の鎧と双璧を成すべき逸品だろう」 ケヴィンは驚きつつも賞賛する。 スカーレット・アーマーを模した全身鎧。 ただ違いは青い色と、そしてフルフェイスに近い兜である。 Y字型のスリットにより、 目と、鼻と、口の行き場だけが確保されている。 「そうだな、アズール・アーマーと呼ぶべきところか。 ジルベルト、その鎧がきっとお前を守ってくれる…… そしてそのアースシールドと砲剣もお前の力となる。 行って来い、そして必ず帰って来い!!」 「うん!」 ジルベルトはアズール・アーマーのブースターを吹かして飛翔。 青き空へ蒼き勇者が輝かしく飛び立ったのであった。 戦いは、いよいよ最終局面へと向かおうとしている。 <第二十章-第五幕-へと続く>
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二つ名:銀峰の勇者 名前: 詳細: 辺境の山岳の上で銀峰麦という麦を育て酒を造って売り暮らしていたところ神託を受ける。ただの農家の自分がなぜとは思うものの、魔界にも銀峰麦酒を売り込めるとわかって意気込んでいる その他:
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古典勇者♂ HP MP 攻撃力 防御力 精神力 敏捷性 炎 氷 雷 闇 死 毒 封 眠 混 弱 140 40 140 100 40 100 100 100 100 100 40 60 60 60 50 70 連続斬り 火炎斬り ドラゴン斬り 悪魔斬り 五月雨剣 鬼神斬り 唐竹割り 火炎連続斬り 【進化の秘宝】なし 【装備】
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DQMB モンスターバトルロードに登場する必殺技。 とどめの一撃でSPカード【ロトの紋章】をスキャンすると発動。 【伝説の勇者】、【ロトの血を引く者】、【ローレシアの王子】とロト一族の主人公が一堂に集結、 どんな大技を見せてくれるのかとwktkさせるが…各人がそれぞれのとどめの一撃の簡略バージョン(ただしローレシアの王子はギガスラッシュ)を浴びせるだけ。 ちょっとショボい。 余談だが、SPカード「ロトの紋章」に描かれたキャラクターはⅠ勇者だが、集結時に中央に立っているのはⅢの勇者になっている。 偉大なるご先祖に立ち位置を譲ったのだろうか。
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恋愛勇者/ Last Note. feat. GUMI(作詞・作曲:Last Note. ) ( 公式試聴ページ ) ( 初音ミクWikiでの解説 ) Lv CHAIN 譜面属性 BPM TIME Version Genre Illustrator Effect NOVICE 03 0530 190 BOOTH10 EXIT TUNESボーカロイド スオウ DJ UTO ADVANCED 08 0673 EXHAUST 12 0965 +難易度投票 NOVICE 選択肢 投票数 投票 詐称 0 強 0 中 0 弱 0 逆詐称 0 ADVANCED 選択肢 投票数 投票 詐称 0 強 0 中 0 弱 0 逆詐称 0 EXHAUST 選択肢 投票数 投票 詐称 0 強 0 中 0 弱 1 逆詐称 4 攻略・解説 譜面・楽曲の攻略についてはこちらへどうぞ 見辛さ解消の為に改行や文頭の編集、不適切なコメントを削除することがあります [NOV]SDVX入門としては地雷か。少し速い縦連、うねうねみーつまなど、レベル3にふさわしい配置か疑わしいところあり。曲を知っていれば問題ないか。 -- 名無しさん (2012-08-24 20 04 29) EXHのCHAIN数は965です。 -- 名無しさん (2012-08-25 00 02 34) [EXH]逆詐称な気がする。初めと終わりの鍵盤からすぐ摘みのさえミスらなければUCいけると思う。 -- 名無しさん (2012-09-05 18 34 50) 名前 コメント ※文頭に[ bgcolor(#aaf){NOV}]、[ bgcolor(#ffa){ADV}]、[ bgcolor(#faa){EXH}]をコピー ペーストすると見やすくなります コメント 楽曲やイラストなどのコメントについてはこちらへどうぞ [EXH]NEERになる要素が少ないので14クリア安定15少しクリア程度の地力でもPUCが可能 -- (名無しさん) 2012-08-24 20 01 16 凛花もwoundもすっ飛ばしてEXT譜面初UC。こんなこともあるんだな… -- (名無しさん) 2012-09-24 13 03 19 名前 コメント すべてのコメントを見る
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【作品名】騎士ガンダムシリーズ 【ジャンル】漫画 【名前】勇者エックス 【属性】サテライト族の勇者 【大きさ】青年並み 【攻撃力】月を破壊する魔力砲を騎士の状態で押し返した。 ・サテライトソード(レーザーソード)を所持 かすっただけでザイダリアの一部を消し去った。 炎や風や水など形なきものを斬ることができる。 円月剣:円を描きそこから無数のエネルギーを飛ばす ザイダリアの本体を一撃で消し去る程の威力がある。 騎士状態で放った円月殺法は山を吹き飛ばす威力があった。 最も弱い時に放った円月殺法(同じような技)でも20mはある敵を跡形も無く 消し飛ばし巨大なクレーターを作るほどの威力があった 100m以上はある城を跡形もなく消し去る攻撃を上回る攻撃以上の威力がある。 【防御力】月を破壊する超魔力砲が直撃しても勇者の鎧とサテライトソードが 消滅して騎士に戻っただけですんだ。 騎士の状態で月を破壊する魔力砲を押し返した。 100m以上はある城を跡形も無く吹き飛ばす魔力砲を防げるシールドを破壊する 魔界剣の衝撃波を防ぐ事ができる騎士の鎧以上の強度を誇る勇者の鎧を装備している。 【素早さ】月から星へと数秒で届く攻撃を数mの距離から避ける反応。飛行可能 魔術師の時に空から降りそそいだ光に反応し魔術シールドを展開できた。 魔術師状態のエックス以上の反応を持つ騎士エアマスターが 避けられない攻撃に反応しワープで回避したこともある。 【特殊能力】魔力を込めて相手に触れると相手をテレポートさせることができる。 月から惑星までテレポートさせた。 サテライトバリア:相手を守るバリアを出す。 バリアの中にいると安全だが身動きが取れない。相手に触れなくても使用可能 ・下記は魔術師状態での技 フラスペ:人間数十人を球体に囲み数km上空からすぐに地上まで戻した グフラスペ:数km上空から月まで城ごと数秒でワープした リカレビ:死んだ騎士レオパルドを蘇らせた 【長所】まさしく勇者という強さ 【短所】特に無し 【備考】通常の騎士は装備を変えることにより魔術師や闘士の力を得るが エックスは騎士の時に闘士状態でしか使えなかった騎士気功爆裂拳や 剣士状態でしか使えなかった円月殺法を使っているため 魔術師状態の技も使えると推測。 事実、魔法のような技であるサテライトバリア等も使用している エックスの基本的な強さは 勇者>騎士>魔術師>闘士>剣士 である。(この順番で成長したため) 【参考テンプレ】 【名前】大魔王ザイダリア(究極進化) 【属性】大魔王 【大きさ】月。本体は10m以上あり八つの龍と脳が剥き出しの化物 【防御力】月相応。ザイダリア本体はパワーアップ前で 月に底が見えない程の凄まじい大穴をあけるエネルギーと互角の エネルギー攻撃を連発で食らっても無傷。山破壊攻撃でも無傷 体全てを吹き飛ばされ肉片になったが脳が増殖して再生した 参戦 vol.118 718 vol.125 81 格無しさん 2019/07/14(日) 09 24 52.97 あと仮面ライダーに関係無いけどテンプレ不備あるのを以下に ルーシー wikiが開けないのでマリコなどのテンプレが分からない 勇者エックス 円月剣の弾速不明 ワルキューレ 亜光速の隕石が目の前まで来た状態って、隕石との距離はワルキューレの身長の200倍以上離れてたんだが 行動停止も行動不能時間の限界がテンプレに無い 劉王羽+砕紅龍 宇宙まで数十秒で出る速度の根拠が漫画から見つからない こいつwith紙飛行機 過去の栄光の自爆をくらった後に戦闘可能か分からない スペシャルステージまで暗転を挟んだので、時間経過しているはず フェンinニキ・ヴァシュマール 攻撃の殆どが弾速不明 ゲイナー・サンガwithキングゲイナー 発動時間、弾速不明 パワード・バターカップ 弾速不明 バトルフォースwithコンパチカイザ その他の技の武装もエネルギーを消費するのだが書いてない リョウ・ルーツwithEx―Sガンダム 弾速不明 オズヌ 弾速不明 1スレ 391 格無しさん sage 2007/07/15(日) 10 30 41 勇者エックス考察 ○ミリィ サテライトソード勝ち ×ワルキューレ 刻の鍵で負け ×龍虎王 龍王破山剣負け ワルキューレ>勇者エックス>ミリィ
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第十章-第一幕- 決着の前の小さな決着 第九章-第三幕- 第十章-第二幕- 勇者軍主力部隊は、ウィルスユーザーズ本部基地内戦闘において、 全ての幹部を撃退もしくは捕縛に追い込み、 また中央ホール内での戦闘も一通り決着が着きそうなこともあり、 事実上、ウィルスユーザーズを壊滅させる事に成功した。 全てのメインメンバー及び、ソニアが戻るべく走っている最中、 サブメンバー達が最後の数名を追い詰めていたのだった。 「ふんッ!」 ジークの斧の一撃が、最後の兵士を薙ぎ倒した。 「お、おのれ……!」 兵士はそれでも立ち上がろうとする。 倒れた者達も意識を取り戻し始め、 最後の抵抗を始めようとしていた。 「ちっ、しつこい!」 コンラッドもいい加減嫌になってきて愚痴をこぼす。 「そこまでだ!」 しかし、そこで鳴り響いたのはハートレオこと、 レオンハルトの声だった。 「我々、ウィルスユーザーズはここに解体を宣言する。 我々の負けだ。各員は自己の安全を図り、 速やかに脱出せよ!! 死ぬ事は許さぬ!」 「…………了解!」 兵士達はのろのろと起き上がり、体力のある者がふらつく者を 懸命に支えながら、ゆっくりと、しかし確実に撤退して行った。 「やったのね、お兄ちゃん達が!」 歓喜の表情でシエルが快哉をあげる。 「流石ですね、シルヴィアさんでさえ、一人で勝ってのけるとは」 リゼルも満足気に頷いた。 そこへ、まずジルベルトとソニアが現れた。 「みんな、無事なの!?」 「ソニアさん……大丈夫です……」 突撃のし過ぎでふらふらしているメイベルがよろよろしながら答える。 次いで、ユイナ姫が、ライナスが、レイリアとエイリアが、 最後にズタボロになったシルヴィア(足が遅い)と、 足を撃たれた怪我人のテディが出てきた。 「大変、怪我してるじゃない!! ヒールキャノン!!」 慌ててシエルが治療に向かう。 「ドルカスの奴が……もといブレインフォックスを逃がした! 奴め、生体兵器化したスプレッダーを 動かすつもりだ、気を抜くな!」 回復の呪文を受けながら、テディは状況を説明する。 一方、ズタボロのシルヴィアをリゼルが迎えた。 「大丈夫ですか、シルヴィアさん!」 「相性が悪かったみたいで……少し疲れました」 「無事ならいいんですよ」 そう言うと、頭を撫でるリゼル。 「そう言えば研究担当なのよね、ブレインフォックス…… えーと、何だったっけ、名前?」 ソニアが首をかしげる。 「各員の持ち寄った情報などをお互いに端末に転送しましょう。 スプレッダーが動くなら、それほど時間はありません。 やれる事をやっておかないといけませんね」 と、ユイナ姫が各員の端末にレオンハルトの情報を転送した。 それに倣い、他の者も情報を相互に転送し合った。 これで全員の情報の齟齬は無くなったと言っていいだろう。 テディの回復もほどなく終了した。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! 突然地鳴りが響き、建物自体に凄まじい振動が起こる。 バギン! 天井が砕け、機械化されたスプレッダーの成体、 メカ・スプレッダーが登場した。 傍らにはブレインフォックスこと、 ドルカス=ウィンチェスターもいる。 「行きなさい、メカ・スプレッダー! 勝利を私の手の中に!!」 「イエス、マスター・ブレインフォックス」 スプレッダーから声のような物が聞こえたが、ひどく機械的だ。 「人工知能を内蔵したみたいですね」 と、冷静にシルヴィアが分析する。 「流石にスターリィフィールド家のご当主は冷静みたいね。 獣を遥かに凌ぐ知性を秘めた上に、超合金である オリハルコニウムセラミカルチタン製のハニカム装甲を採用した、 私の可愛いメカ・スプレッダーに勝てるかしら!?」 「勝つ! でなければここまでの戦いが無駄になる!」 真っ先に動き出したのはテディだった。ハンマーが振り下ろされる。 がさがさがさがさ! しかし、メカ・スプレッダーは距離を取り、その巨体にも関わらず テディの的確な一撃を見事に回避しきってのけた。 「何ッ!?」 「俺が行く!」 続いてライナスが俊足――いや、瞬足とでも例えるべき その健脚で、瞬時にスプレッダーに追いつき、斬りかかる。 「疾風剣!」 じゃりじゃりがぎぃん!! 甲高い音を立てて、装甲に傷が付くが、被害はそれだけだった。 「ごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 新たに追加された機械多脚でライナスが薙ぎ払われた。 「だああッ!?」 無様に転がるが、流石にそれだけでは致命傷にはならないのか、 あっさりと立ち上がるライナス。 「なんという装甲だ!!」 ライナスが歯噛みする。 「一人一人では駄目だ! 一気に行くぞ!!」 ラティシアが特攻し、次いで全員が動き出す。 「機銃掃射!!」 ドルカスの指示にメカ・スプレッダーが反応した。 ばらららららららららッ!! まさに弾幕としか言いようのない機銃の乱射が飛び交う。 無秩序な射撃と跳弾によって、みるみるダメージが増える。 「危ないわ! あんた達、どっか行ってなさい!!」 シエルは慌てて、今までついて来ていた仔猫達を逃がす。 「うにゃー!」 流石の屈強な仔猫達も、たまらないと感じたのか素直に従う。 しかし、その弾幕を懸命に回避しつつ、ユイナ姫が接近。 愛馬チトセも多数の被弾をしながらも懸命に追いすがる。 「ウォータージェットスルーフ!!」 必殺の水圧突きが、装甲に穴を開けたが、ダメージは それが限界だった。誠に凄まじいとしか言いようがない。 ドルカスが更に指示を飛ばす。 「グレネード弾、散布!!」 「ラジャー」 メカ・スプレッダーが更に対地攻撃としてグレネード弾をばら撒いた。 どがんどがん!! 「きゃああッ!?」 ユイナ姫が愛馬チトセから落馬する。チトセが転倒したのだ。 爆風でダメージを受けたらしい。 「くそっ! 化け物め!!」 コンラッドの攻撃も効果が無い。 レイリアの対物破砕銃がいくらか装甲に 傷を付けるが、やはり中に届かない。 巨大な体躯に似合わず、機敏に動き回るせいである。 「クロスアイアンメイデン!!」 メカ・スプレッダー相手に猛威を振るったリゼルの魔法が炸裂する。 地面からは地割れの鋭角、そして空中からは氷柱が襲う。 しかし、刺さりはするものの、 その戒めさえもメカ・スプレッダーは 瞬時に破壊し、また機敏に動き回る。 「どうやったら倒せるんだ、こんな奴!!」 さすがにエイリアも対応に苦慮していた。 「ミサイル発射!!」 ドルカスの指示でミサイルが発射される。 「その驕慢が命取りだ! 隙有り!!」 エイリアはミサイルを数発ほど鞭で巻き取り、それを直に叩きつける。 ごばんッ!! 「損傷、軽微」 大爆発にも関わらず、メカ・スプレッダーはなおも怯まず動き回る。 「ボルトコンダクション!!」 ジークの奥技が電流を叩き込む。 しかし、メカ・スプレッダーはその電流を吸収すると蓄電、 間もなく、それを放電してのける。 ばぢっ!! 「あうッ!?」 その放電の猛威に、リゼルや、シエルなどがよろける。 機械多脚の攻撃も凄まじく、メイベルがこまめに動いて、 スカーレット・アーマーで何とか凌いでいるという状況だった。 ジリ貧である。 ジルベルトも、ソニアも懸命に攻撃していたが、 ストレンジャーソードをもってさえ、傷を付けるのが精一杯だ。 だが、一番の有効打なのは事実で、中にも若干の傷を与えていた。 (ソニアさん、前に出すぎないで!) 前に出ようとするソニアを押しとどめる。 しかしその隙がまずかった。 がごんッ!! 「…………ッ!?」 生々しく、そして鈍い音を立てて、ジルベルトの腰に、 メカ・スプレッダーの機械多脚の一撃が叩き込まれる。 凄まじい勢いで身体を打ち、びくりと痙攣する。 「ジルベルト君!? 嫌ぁッ!!」 攻撃を中止し、ソニアが絶叫をあげてジルベルトへと駆け寄る。 「死んでたり……死んでたりしないわよね!?」 しかしその懸念は無かった。息をしている。気を失っただけだ。 ホルスターに触れると、ソニアの父親の形見の銃が砕けている。 この銃が守ってくれた形になったのだろう。 「なんで、なんであんな無茶をするの!」 「それは……ジル君が、きっとソニアさんを好きだからです……」 ソニアが振り向くと、落馬してふらつく ユイナ姫と、愛馬チトセの姿があった。同じく傷だらけだ。 「私、本当は分かってたんです……ジル君は私を選ばない。 所詮彼にとっては妹みたいな存在でしかないんですから……」 「ユイナ姫……」 「この十数年間、ジル君は私をずっと守ってくれた。 だから、今度はあなたの想いでジル君を守って……!」 「……分かったわ」 ソニアは頷く。大切に温存していた究極の回復道具の一つである、 魔法の霊薬、エリクサーを投入してジルベルトに呼びかける。 「ジルベルト君……あなたはきっと、誰もが愛する人なの。 そういう人が私を大好きだって言ってくれるなら、受け入れるわ。 私だってあなたが好きだもの。だから……だから立ち上がって!」 「ストレンジャー家の筆頭を倒したのは私の科学力! 無駄よ! メカ・スプレッダーに勝てるわけないんだから!!」 自信を持って叫ぶドルカス。 「あなたは史上最強の勇者軍筆頭なの……私が大好きな男の子は、 あんな気色の悪い化け物に負けたりしないの!! 負けないで! 諦めちゃ駄目よ! ジルベルト=ストレンジャー!!」 ソニアの呼びかけが悲痛な色に染まっていく―― だが、ジルベルトの意識はそこには無かった―― そして場所は『勇者の館』へと移る―― 『勇者の館』とは、狭義においては、冥界に用意された 勇者軍メインメンバー用の魂の居住スペースのことを指す。 しかし、広義にはストレンジャー家直系の人間が誰しも持っている 精神世界さえも内包された存在であるのだ。 「よう、お目覚めか?」 仮面のサムライ姿の人物が語りかけてくる。 (誰?) ジルベルトの精神体は首をかしげる。 「今度の筆頭は随分と無口だな。俺はザイン=ストレンジャー。 有り体に言って、お前さんのご先祖様って奴かな」 (それはそれは、はじめまして) ぺこり、と頭を下げる。 ザイン=ストレンジャーは初代勇者軍筆頭である。 その彼が今もこうして冥界で 子孫を見守っているというのは有名な話だ。 (有名にしたのは彼の祖父、エドウィンであるが) 「おう、俺は礼儀正しい奴は好きだぞ。 ところでジルベルトとか言ったな? お前、こんな所で油売ってる場合か?」 (ちがう。僕はソニアさん助けに行くの) 「ふむ、女の名前だな……好きなのか?」 (厳しくて、気が強くて、よく怒られるけど……好き) 「はっは! 素直なモンだ! エドウィンの野郎とは大違いだぜ!」 爆笑するザイン=ストレンジャー。 (僕はここを出たい。死んだりしてる場合じゃないの) 「そうだな。さっきからお前の大事な人が呼んでるもんな」 ザインは笑うのをやめて、次元の壁を叩き壊した。 「ほら、行け。そしてストレンジャーソードの覚醒の時だ。 お前の母親は自分自身の分身とここで戦うなんていう 無茶な真似をしてくれたが、お前はそんなことせんでいい。 お前は自分の大事なものを、母親以上にちゃんと知ってるからな。 行くんだ――ジルベルト。俺の大事な子孫の一人。 ストレンジャーソードの進化の鍵は、お前の記憶の中にある。 それを忘れるな。急ぐんだ!!」 (お世話になりました) ぺこり、とまた頭を下げると、ジルベルトは次元の割れ目へ走った。 むくり、とジルベルトが目を覚ました。 「ジルベルト君!!」 苦戦を他所に、ソニアが泣きそうな顔で喜ぶ。 そして、ジルベルトはホルスターから砕けた銃を取り出した。 「ごめんなさい……」 悲しそうな顔で、ソニアに謝るジルベルト。 「いいの! いつ壊れるか分からない思い出よりも、私は 今、生きているジルベルト君が大事だから!!」 「……無駄にはしない、出来ない、したくない」 「え?」 ソニアの驚きを他所に、ジルベルトが ストレンジャーソードを抜いた。 すると、掲げられたストレンジャーソードが激しく光り始める。 それに驚いた勇者軍が動きを止め、ついでにメカ・スプレッダーも ドルカスも状況が把握できず、行動を停止する。 砕けた銃の破片が光るストレンジャーソードへと集まり、 更にストレンジャーソードは激しく発光し、閃光となる。 かッ!! フラッシュに誰もが目を閉じる。 そして光が収まった頃には、 ストレンジャーソードは変異を遂げていた。 「ストレンジャーソード……? いえ……」 シエルが呆然と呟く。ジルベルトの思考が流れてくるのだ。 「この剣は……この剣の名前は……」 シエルが、驚愕する。 「砲剣『ストレンジバスター』――」 「なッ!!?」 レイリアとエイリアが真っ先に驚愕する。 ストレンジバスター、それは勇者軍にとって忌まわしき名前である。 ストレンジバスターという機関が存在し、事故に便乗して レイリアに生体改造を施し、そしてエイリアをもクローンとして 生み出し、ストレンジャー家を滅亡に追い込むために、 それら全てを利用しようとした忌まわしき集団の組織名である。 二人にとっては気分のよかろうはずはない。 しかし、シエルはジルベルトを代弁する形で続ける。 「ストレンジャーとは異邦人――という意味合いを持つわ。 でも、一万年以上もの時間を人類と共に過ごし、そして 帰化――いえ、順化していったストレンジャー家の血脈は もはや異邦人と呼んでいいものか、 躊躇するほどに『人間』と化したの。 人類にとって、もはやストレンジャー家は 異邦人であってはならないわ。その願いを込めて、 お兄ちゃんが付けた名前だそうよ……」 そこまでの深い願いと意味合いがあるのならば、 レイリアとエイリアとしても、反論は出来なかった。 ジルベルトがゆっくりとメカ・スプレッダーへと歩みを進める。 「たかが剣が銃剣になった程度で、 メカ・スプレッダーに通じるわけが! 行きなさい、メカ・スプレッダー! 今度こそトドメよ!!」 「イエス、マスター・ブレインフォックス」 メカ・スプレッダーは機械化多脚をもって襲い掛かる。 「総員、ジルベルト君を援護よ! あの剣が勝負を決めるわ!」 ソニアの指示が飛ぶ。各員頷き、 ジルベルトをメカ・スプレッダーに近付けるべく、 必死の援護を再開した。 (ありがとう、みんな) ジルベルトは全員の援護で付いた装甲の傷めがけて、 ストレンジバスターの刃を叩き込む。 ざしゅッ!! わずかながら傷を付けた。そこまでが限界かと思われた。 「わずかな傷程度で、何を――」 ドルカスの声が終わるよりも早く、ジルベルトは ストレンジバスターに装備された『引き金』を引いた。 バゴン! バゴン! バゴン! 無茶苦茶な爆発がジルベルトの至近距離で三回起こった。 その衝撃波だけで、建物にヒビが入り、 そしてすぐに崩れ落ちる。味方まで軽く吹き飛んだ。 「損傷、甚大! 損傷、甚大! 損傷、甚大!!」 それだけでメカ・スプレッダーがのたうち回る。 一方のジルベルトはと言うと、黒煙の中から反動で出てきた。 凄まじい勢いで地を滑り、脚力だけで何とかそれを止めた。 黒煙が晴れてくると、装甲はボロボロに剥がれ落ちており、 その爆発力の凄まじさが伺える。 「なんて威力だ……! 滅茶苦茶じゃねぇか!!」 爆風だけで吹き飛ばされたものの、メイベルに支えられて 何とか打ち身だけは免れたコンラッドが呟いた。 「ば、馬鹿なの……!? あんな至近距離で砲撃なんて……! それも通常のミサイルなんて比較にならない火力で!!」 ドルカスも呆然とする。 「立ちなさい、メカ・スプレッダー! これぐらいで壊れるようには作ってないはずよ!」 メカ・スプレッダーはその声に応えてゆっくりと立ち上がる。 バクン!! ジルベルトはストレンジバスターの柄から中折りにした。 じゃらッ! 空薬莢を排出し、すぐマガジンから次の弾を装填する。 一発辺りの薬莢の大きさが清涼飲料水の缶より遥かに大きかった。 ガキャン!! 鈍い音を立てて、フレームを元に戻し、装填行動を完了した。 まさしく乱暴な武器であるが、 あの化け物に対しては相応しい武器だった。 ジルベルトは闘志を緩めず、メカ・スプレッダーのみを見つめていた。 「とんでもない武器になったね……」 ライナスも呟く。彼も吹き飛ばされたクチである。 「まさしく、勇者軍筆頭完全専用対宇宙巨大生物兵器群 超零距離戦闘用銃剣型最終究極決戦兵器というところですね――」 とんでもなく長いセリフでシルヴィアもその砲剣を表現する。 「だが、あの武器なら充分に勝機はある!!」 テディも立ち上がる。 「そうです、立ち上がりましょう!!」 シエルの治療を受け、ユイナ姫も再騎乗した。 そして全員が頷く。 「メカ・スプレッダー、行きなさい!」 ドルカスも押されながら、負けじと指示を出す。 今度ばかりはシエルでなく、 ジルベルトの意志をソニアが汲んで頷いた。 高らかな指示が壊れかけの建物に響く。 「総員、再度突貫! 確実にジルベルト君を奴の元へ届けるわ!」 「了解!!」 全員の声が唱和し、メカ・スプレッダーとの決戦は佳境に入る―― <第十章-第二幕- へと続く>