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配役 シンデレラ:かがみ 王子様:こなた シンデレラの姉:つかさ、みゆき、みなみ 魔女:ゆたか 王子の付き人:ひより 舞踏会の人A、B:みさお、あやの 牧師兼監督:パティ シンデレラの家。 今日はお城で舞踏会があります。シンデレラの姉たちは楽しそうに今日の舞踏会に着ていく服を楽しそうに選んでいました。 しかし、シンデレラは意地悪なお姉さんたちの命令で、お城に行くこともできず、今日も部屋の掃除をせっせとしていました。 「ああ、私もお城の舞踏会に行きたいわ…」 汚れた服を着た、紫色の髪のツインテールのシンデレラが言った。 そこへ、豪華なドレスに身を包んだ3人の意地悪なお姉さん(つかさ、みゆき、みなみ)達が部屋に入ってきました。 紫色の髪を短く切った女の子が言った。 「…こ、こら。さ、さぼてんじゃないわよ、シ、シンデデラ。は、はやく掃除を、し、し… …してね」 手に書いた文字(台詞)を見ながらそれを読むつかさ。 「…つかさ、棒読みもいいとこね」 「だ、だって台詞が覚えられないんだもん…」 「ここは、意地悪な姉がシンデレラをいじめるシーンなのよ」 「えぇ?…だって、お姉ちゃんをいじめるなんてできないよぉ…」 「お姉ちゃん言うな!今はあんたがお姉さんでしょ!」 「あ、そうだった。えっと…次の台詞は…ああ、これだ」 つかさが左腕の袖をめくって、そこに書いてある台詞を棒読む。 「えっと、次は…」 つかさはドレスをまくって右脚に書いた台詞を 「ちょっとは覚えろ!!文字を見ながら言うなっ!しかも体中に文字書き込んでお前は耳なし法一かっ!!」 「あらあら、シンデレラったら…うふふ」 みゆきが微笑んだ。 「…」 みなみはずっと黙ったままだ。 「ちょ、ちょっとあんたたち…今はシンデレラのお姉さんたちがシンデレラをいじめるとこなのよ。しっかりやりなさい!」 「で、でも、シンデレラが可哀想だよぉ…」 「…私も……そう思う……」 「…家庭円満じゃ話にならねえよ!」 かがみは、呆れながら言った。 「全くもう…!じゃあ、みゆき。お手本を見せてあげてよ」 「はい、分かりました」 「…そこの汚らわしい女!さっさと部屋の掃除と洗濯と皿洗いをなさい!!! あんたが舞踏会に行くなんて20年早いわ!!せいぜい外の虫とでも戯れているのね!! ホント、みすぼらしい格好ねえ、この醜いシンデレラ!!!ほーっほっほっほw」 「…」 一同、沈黙する。 「…うわ、すごっ… …じゃなくて、 『そ、そんな!ひどいわお姉様っ!』… と…」 「あら、みなさんどうかなさいました?」 「ゆきちゃん、かっこいい?」 「さすがネ☆ミユキ♪」 「パティ…もう少し抑えた文章にできなかったのか…?」 「昼ドラなら、このぐらい当然ナノデス☆」 「昼ドラじゃねえよ」 「こ、こんいちは…あの…私、魔女です…お困りですかシンデレラ…?」 間髪入れず、魔女の衣装を着たゆたかが現れた。 「ちょっと!まだこのシーン終わってないわよ!」 「むふふ、ゆーちゃん長門コス良いよ☆」 「…こなた!王子の出番まだだろっ!!!しかも、いきなりシンデレラ家に現れるなっ!! (…あ。そうだわ、台詞…) あ、あのう!私、お城の舞踏会に行きたいのですが…」 「…ゆたか…その衣装…似合ってる」 「えへへ…みなみちゃんも…そのドレス、とってもかわいいよ」 「…ゆたかも…すごくかわいい……」 二人が顔を赤く染めながら言う。 「みなみちゃん…」 「…ゆたか…」 ゆたかとみなみの二人は手を取り合った。そして顔を近づけ 「何でシンデレラの姉と魔女が恋に落ちてるのっ!!!」 「オリジナリティは必要デスよ、カガミ」 「何言ってんだあんた!!」 「いいなあ、二人とも…幸せそうで。ねえ、ゆきちゃん、私たちもあれやろうよ…」 「つかささん…」 「ゆきちゃん…」 つかさとみゆきの二人は手を取り合った。そして顔を近づけ 「姉同士で恋に落ちるなああああ!!!!!」 パティ「オリジナリティはry」 かがみ「何言ってんry」 私の姉や魔女たちが桃色の世界にぶっ飛んでいってしまったため、 疲れたかがみは仕方なく、衣装ケースの中からドレスを取り出し、それに着替え、徒歩でお城に向かうことになった。 城。 舞踏会の会場は、とても華やかで、大勢の着飾った女性たちが王子様の相手になるのを期待して、待っている。 そこへ、王子の衣装を来たこなたが現れる。 隣の、王子の付き人のひよりが尋ねる。「王子様、どの子とダンスをなさいますか?」 「う~ん…じゃあ、そこの!紫色で、ツインテールのツンデレ娘!!」こなたが、びしっとかがみの方を指さして言った。 (おいっ!) 「おお~さすが王子様オメガ高い!きっとあの娘は普段ツンツンしながらも、本当はあなたが告白するのを待ってるんだからね的な性格っすね!!」 「うむ、誘い受けというやつですな」 (おいっ!!!) かがみはこなたの前に来る。 「ずいぶんちびっ子な王子様ね」 「むぅ、冒頭からツッこみ姫だったくせに…」 「うふふ、何よオタク王子め」 かがみはいたずらっぽくこなたをからかう。 「さしずめ、かがみはツンデレ姫だね?☆」 「やっ…ほっぺたをつつくな!!///」 「…ラブな二人もイイデスケド、次のシーン早く行くネ」 パティが小声で言った。 赤面したかがみが否定ツッコミを入れようとすると、こなたは片ひざを付き、かがみの方に右手を伸ばして言った。 「おお、シンデレラ~貴女はなんと美しい~」 「何だかわざとらしいわね…」 「劇ってのはこれぐらい大げさなのがいいのだヨ、かがみん」 「名前を呼ぶな」 「おお、ツンデレラ~私と一曲踊って下さいな」 「ツンデレ言うなぁ!!!」 かがみがアホ毛の王子に目一杯ツッこむ。 「…お、王子様を殴るなんて…なんという修羅雪姫…」 一方その頃。 舞踏会で二人の様子を見るガヤの中に、着飾ったみさおとあやのがいた。 「あ~…暇だな、あやのぉ。背景も楽じゃねえぜ」 「せっかく劇に出演してるんだから、ちゃんとやろうよみさちゃん」 「でも、あたしら台詞もないんですぜ」 そして、二人は給食のソフト麺についての議論を始めた。みさおは生で食うのも結構うまいとか言ってる。 「だいたい、なんであんたが王子なのよ…」 「ひよりんの作った王子の衣装サイズがちっさくて皆着られなかったんだよ。私にはピッタリだったけどさ」 かがみはひよりの方を見る。 ひよりは、目を輝かせて手にスケッチブックを抱えながら親指を立て(…測ったなあいつめ) 「まあ、私は王子様やりたかったからいいんだけどね」 「えっ…そうなの…?こなたが…?」 「そだよ」 「…どうして?」 「かがみの相手になれると思ったからね」 「なっ!!!」 かがみの顔が一気に紅潮した。 「な~んて言うかと思った?おや、ずいぶんあせってるねえ~。むふふ、ねえ図星?図星?」 「違うわよっ!!バカっ!!」 その時、どこからともなく、ダンスミュージックが聞こえてくる。 「それじゃ踊ろっか?、かがみ」 「う、うん。でも…私踊れないんだけど…」 「だいじょ~ぶ。私に任せたまへ~」 こなたは、左手をかがみの背中をに回し、右手でかがみの手を握った。 「ちょ…ちょっとこなたぁ…///」 こなたは、かがみをリードしてステップを踏む。 「な、なんであんた踊れるのよ…」 「この日のために人知れず練習したのだヨ」 「こ、こんなくっついてなんて…ちょっと恥ずかしいな…」 「私たちがやってるのは『劇』なんだよ。照れることないさ?」 「か~がみん」 こなたとかがみは両手をしっかりと握ったまま、くるくると回る。 まるで、二人だけが別の世界にいるような感覚だ。 「ほらほら、回ってるよ~楽しいねぇ!かがみっ!」 「うふふっ…うん…」 こなたは回転するのをやめ、動きを止める。 「もうちょっと踊りかったんだけど、劇も進めないといけないネ」 一方その頃。 みさおとあやのは… 「昔、牛乳ビンのフタて集めてたよな~」 「あー、そういう人いたよね…」 「私さ、9年間で500個以上集めたんだぜ~!これ使ってなんか作れね~かな~?」 「みさちゃん中学の時まで集めてたの…?しかも、まだ持ってるのね…」 牛乳ビンのポンの会話で熱くなってた。 「おお、シンデレラ~、貴女はなんて素敵な女性なのでしょ~!どうか、私の妃になって下さい~!」 「は…はい!喜んで!」 「かがみ…結婚しよっ!」 「は、はい! …て、違うっ!!私はシンデレラだろっ!!」 「そんな照れなくてもいいってばぁ~。冗談をちゃっかり真に受けるかがみ萌えw」 「ばっ、バカっ!!まじめにやりなさいよっ!!///」 ゴーン…ゴーン…ゴーン… 大きな時計の鐘が夜12時を告げる。 「あっ!12時になっちゃったから(衣装自前だし、溶ける魔法もないけど、ストーリー上そういうものだから)帰らないと…!」 かがみは急いで城から出て、階段を駆け降りていく。 (ここで、シンデレラのガラスの靴が脱げて、階段に置いていく…と) 「ああっ!靴が脱げてしまったわ!どうしましょう!」 「…かがみ、何やってんの?イモ芝居恥ずかしいよ」 階段の上からこなたが冷めた顔で見下ろしている。 「…!! ぅうるさいっ!!」 かがみは、こなたにもう一足のガラスの靴をぶつけた。かがみは不機嫌そうに帰っていく。 「ちょ、ちょっとかがみ!一足でいいんだよ!裸足で帰るつもり!?」 こうして、かがみは両足裸足のまま、徒歩で家へ帰っていった。 シンデレラの家では、姉と魔女の2組のカップルがイチャついてた。 かがみは一人へこんだorz 次の日、お城の兵士が来て、ガラスの靴を(両足分)持ってきて、かがみが履いて、王子様と結婚することになりました(ばっさり)。 お城の結婚式 式場では、大勢の人が集まって、式が始まるのを待っている。 扉が開いて、結婚式のドレスを来たかがみが現れる。高貴な服を着たこなたが扉の前で迎える。 こなたはぽかんとしたような顔をして、かがみを見つめていた。 「…な…何よ?」 「かがみ… すごいきれい…」 「え…!」 こなたの頬が少し赤い。しかし、いきなりこんなことを言われたかがみの顔はもっと赤くなった。 「こ、こなたもっ!」 「…ふぇ?」 「こなたも…それ…かっこいいわよ… いつもよりはね…」 「そ、 そかな…えへへ…」 こなたは照れくさそうに頬をかく。 ウエディングドレスを着たかがみが、こなた王子と腕を組んで、赤い絨毯の上を歩いていく。 既にかがみの顔は真っ赤だ。 赤絨毯の両側には、大勢の人が二人を祝福している。 そこには、仲が悪い(はずの)シンデレラ姉たちや、背景(コラ)や魔女までいる。 一人、興奮してスケッチブックに筆を走らせてる人もいる。 赤い絨毯の先には、牧師の扮装をしたパティが二人を迎えた。 「やっぱりお似合いデスネ!二人とも可愛くて萌え萌えデ~ス♪」 「や…やめてよ、こっちはこれでいっぱいなんだから…」 赤い顔をしたかがみが顔を背ける。 「デハ…汝、柊かがみは、泉こなたを夫とすること誓いますか?」 「ちょ、いきなりかよ!前説もないのか!?」 「ソンナノ劇でやっても面白くないデス。無意味デス。とっとと進めるデス☆」 おかまいなしにパティはもう一度言う。 「汝、柊かがみは、泉こなたを夫とすること誓いますか?」 「…ち、誓います」 劇でも、こういうのはやっぱり恥ずかしい。 「では、汝、泉こなたは柊かがみを妻とすることを誓いますか?」 「誓います」 こなたは躊躇なく応えた。 「では、誓いのキスを」 こなたとかがみが向き合って、お互いの腕を掴む。 「ね…ねえ、こなた…まさか本当に…するの?」 かがみが小声で話す。 「ん~、ここまで来ちゃったんなら、しなきゃいけない空気になってるよねぇ」 「で…でもっ…!」 こなたはさらに顔を近づける。 「かがみが、どうしてもって言うならするフリだけでごまかすよ。私の事が嫌ならね?」 「べ、別に…こなたのことが嫌ってわけじゃなくて…その」 「かがみ」 こなたが今までに見せたことのない優しい声と優しい顔を見せる。 かがみの胸がどきっと疼いた。 「目、つむって」 なんで…こんなにドキドキするのかな…息が…うまくできない… こなたの顔がこんなに近いからなのかな… あ…あれ…私…目つむっちゃうんだ… でも、女の子同士だし… それに… それに… こなたとだったら… いっか。 かがみの目が自然と閉じる。 その時、私は一瞬「ありがとっ」ていう声を聞いた気がする。 こなたは私の頬に手を当てて、背伸びして顔を近づける。 唇に感触が… 私は… こなたと… キスした。 「…ふぁ」 こなたが顔を離す。かがみの頬に手を当てたまま小声で言う。 「…かがみ、顔すごい真っ赤だよ」 「しょ、しょうがないじゃない…!恥ずかしくてしょうがないんだから…!! そ、それにこなただって顔赤いわよ!」 「そりゃ、いくら私だって、かがみとキスすればさ…」 「ふふっ…あんたも、顔を赤くすることなんてあるのね」 かがみはこなたの額を指でつんと押しながら言った。 「むぅ~~~~デレるかがみも大好きだよぉ~~~~!!」 「こ、こら!王子が甘えてくるなぁっ!!///」 「いいじゃ~ん、私たち結婚したんだから♪」 「は、離れなさいってぇ~…!」 「かがみ~ん♪」 「Uum、二人だけの世界に入ってしまったネ☆」 「ぐぁぁぁぁっっっ…まさかこんな百合度の高い劇になるとは…感無量っス」 「ひよりんの期待に添えマシタ☆それに、コナタとっても幸せそうネ♪」 「そりゃかがみ先輩のこといつもツン(普段ツンツンしてるけど)デレ(本当は私のこと好きなんでしょ)て言ってるっスからねぇ~…」 「かがみっ!!」 「わっ!」 こなたは突然、かがみの手を握って、式場を飛び出して走り出す。 「こ、こなた…!?どこへ行くのよ!」 「どこまでもだよ!!これからもずっと一緒だよねっ!!…かがみっ!」 「…はいはい……うふふっ」 「ちょ、ちょっとどこへ行くっすか!!?先輩方!!??…あぁ…逃げちゃった」 「きゃあ~!!☆愛の逃避行ネ!ツンデレはチョット後押しすれば、スグくっつけられるのデス♪やっぱりアノ二人のカップルは萌えるのデス♪」 完。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!笑 -- 名無しさん (2022-12-27 09 45 58) 最☆高 -- 名無しさん (2021-02-02 23 19 38) 修羅雪姫誰うまwww -- 名無しさん (2021-02-02 19 20 25) フリーダム! w -- 名無しさん (2014-08-27 01 26 22) どこまでもだよ!!これからもずっと一緒だよねっ!!…かがみっ!」 「…はいはい……うふふっ」 あぁ…。やられたさ。 やられたよ俺は。バリバリときめいたよ。 -- 名無しさん (2013-12-10 21 05 52) シンデレラの内容完全無視ですね? -- かがみんラブ (2012-09-23 14 35 19) ↓ 川柳じゃんwwwwwww -- 名無しさん (2010-09-21 19 10 11) ツンデレラ 萌えすぎ俺は 死んでれら -- 名無しさん (2010-09-07 12 58 53) ツンデレラッスね -- 名無しさん (2010-08-14 13 45 24) さすがツンデレラ -- ナノルホドノモノデハナイ (2010-02-09 21 17 29) あれ。シンデレラSS二つ同じのがある…? -- 名無しさん (2008-12-30 15 50 36) 萌えた かなり萌えた! -- ルカ (2008-12-27 13 32 01) ツンデレラと王子様を描ける画力さえあれば…orz GJ!! -- にゃあ (2008-09-13 08 56 46) 修羅雪姫吹いたwww -- 名無しさん (2008-09-02 23 13 50) みゆきさんが‥‥‥‥‥ -- フウリ (2008-05-03 17 22 22)
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空はもう完全に暗くなっていた。 街灯が街を薄暗く照らす中を、私は走り続ける。 早いペースで吐かれる白い息が、夜の寒さを証明する。 はぁ、はぁ……げほっ……はぁ、はぁ………。 ずっと走り続けていたせいか、両脚に激痛が襲う。 体力も、とっくに限界を超えている。 「ぁっ………」 ふわりと私の身体が宙に浮き、そのまま地面に倒れる。 「いたた………」 こんな、なんにもないところで転んじゃうなんて……。 もしこなたに見られたら、またからかわれちゃうな……。 『かがみぃ~、こんなところで転んじゃうなんて、もしかして、ドジッ娘属性もあったのかな~? ツンデレにドジッ娘……。よくゲームにでてくるパターンだねぇ~?? また1つかがみんの魅力に気づいちゃったよ~♪ でも、俺の嫁なんだから、ちゃんと身体を大事にしてよね~?』 こなたのニヤニヤ顔と独特間の延びした声が浮かぶ。 ―――こなただけじゃない。 『信じてます、かがみさん』 うん―――。そうだよね―――。 『お姉ちゃんが、できないことなんてないよ!』 みんな、私を信じてくれてる――。みんな、私を支えてくれてる――。 『こなたを……頼んだよ』 近くからも―――。 『……あの子を……お願いします』 彼方からも―――。 みんなの気持ちを、無駄にできない。 私の覚悟を、曲げられない!! 「しっかり……しなさい……!今だけでいいから……!!」 振り疲れた腕を叱咤し、疲労困憊の脚に力を込め、なんとか立ち上がる。 痛っ……。 今までとは違う痛みを感じ、見ると、右脚から赤い鮮血が流れていた。 転んだ時に怪我しちゃったみたいね……。 でもこれくらい、どうってことない。 こなたへの気持ちを我慢していた頃に比べたら、ちっとも辛くない。 『わあぁ!お姉ちゃん、その脚どうしたの!?』 『かがみさん、すぐ消毒しましょう!菌が入ってしまうと大変です!』 『かがみん何してたの?もしかして獣人と戦闘してその程度の傷っていうわけじゃ……』 頭だけは、ちゃんと働くみたいね………。 『誰が戦闘するか!』 私も、『いつものみんな』の中に入る。 こなた、聞こえてる? 私はね、そんないつもの風景を取り戻しに来たの。 あなたを取り戻しに来たの。 わたしを―――――取り戻しに来たの。 それだけを、その場所だけを目指して、走り出した。 さっきまでの疲れが嘘のように消え、脚の傷の痛みなんて少しも感じなかった。 まるで、昼に屋上の空を祝福していた神様が、今度は私を祝福してくれてるみたいだった。 ―――ありがとうございます、神様―――。 心の中でお礼を言った。 見慣れた建物が、見えてきた。 そう、そこは―――学校。 やっと着いた……!! こんなにも望んで、強い思いを抱いて校門をくぐるのは、初めてだった。 「こなた……!!」 早く探さないと……!! 校舎の中は昼とは違い、多分つかさなら怖がってその場から動けなくなるくらい、真っ暗。 ………………私も正直、怖い。 けれど今はそんなこと言ってられない。 感覚を頼りに教室を目指し、月明かりに照らされた廊下を駆け抜け、扉を開ける。 そこには暗闇に覆われた光景が広がっていた。 「こなた……?」 呼び掛けた相手の有無を確認するように、名前を呼ぶ。 存在が認知出来るのは、机と椅子と窓と黒板。 ………こなたの姿はなかった。 まだ――。 まだ1つしか見てないじゃない。 まだこなたがいないって決ったらワケじゃないわ。 ――窓には、少し陰った月がうつっていた。 私はやみくもに探し回る。 けれどその姿はない。 こなた、何処にいるの……!? こなた、こなた、こなた……!! ねぇ、隠れてないで、出てきてよ!! こなた、お願いっ!!私の願いに応えて……!! 私はその名前を呼び続けた。 けれど声は闇に吸い込まれていくだけだった。 最後の教室――――。 私はすがるような思いで扉を開ける。 熱いものが込み上げてきて、視界が歪む。 そこにも、私の求めてる姿はなかった――――――。 まだ……まだ……。 そう思いたい。だけど、もう探す場所がない。 もう一度探してみよう……。 ほんの数十分前まで気にならなかった疲れと痛みが、徐々に襲ってくる。 それでも私は来た道を戻りながら、一つひとつ見て回る。 けれど、どこの教室もあるのは暗闇だけ。 漆黒の空にたった一つ浮かぶ光。 空の教室を見る度に、その光も暗雲に覆われていく。 さっきまで私の中であんなに強い意志という名の光を放っていた心は、 今ではとても弱々しい、今にも消えてしまいそうなほど儚いものになっていた。 スタートラインだった教室。 今、そこに私は戻ってきた。 これが最後。 ………怖い。 もしこなたがいなかったら………。 ううん、いない確率のほうが高い……。 『扉をあける』という、誰でも日常的にやっていること。 今の私にはそれが計り知れないほどの恐怖の対象だった。 ―――こなた―――。 震える手で、扉を開けた。 ――――あったのは、どこまでもつづく暗闇。 ………こなたぁ……。 ねぇ……どこなの……? ……もしかして……違ったの……? こなたの望んでいたことは、私の望んでいたことと違ったの……? 私の中の僅かな光さえも、闇に――――。 月明かりが照らす僅かな光の中。 そこにうつるもの――――。 私の心の闇の中を、一筋の光が差し込み始めた。 小さな身体。 蒼の長い綺麗な髪。 頭に象徴を主張するようにあるアホ毛。 右目の下の泣き黒子。 エメラルドグリーンの瞳。 私の目にうつるもの―――。 一筋の光が、一瞬で大きくなった。 「こなたぁっ!!!」 私はその名前を呼んでいた。 また走り出していた。 さっきまでの辛さを少しも感じなかった。 私の心は、完全に光を取り戻していた。 そこは―――― ―――3年C組。私のクラス。 こなたはいてくれた。 私が思ったところに。 その小さな身体をさらに小さくして、膝を抱えて座る姿がそこにあった。 「こなた……!」 私はただただ嬉しくて、その名前を呼ぶ。 「か、かがみ……?」 こなたは対照的に、暗く小さな声で私の名前を呼んだ。 「本当にかがみなの………?夢とかお化けじゃない……?」 「そうよ……」 「さっきのも、夢じゃなかったんだ……」 こなたはびっくりしたような顔になった。 「こなた……な、なにやってたのよ……?」 息があがってしまい、単純な言葉しか話せないのが、もどかしい。 「今日休んだ分のノート写させてもらいたいから、かがみが来るのを待ってようかなって……」 「何時間……待つつもりなのよ……!」 「6時間でも12時間でも24時間でも……。かがみが朝に登校するのを待ってるつもりだったよ。 ほら私、ネトゲのモンスターの出現待ちとかで、待つのには慣れてるしね」 放課後から朝まで。 半日を越える時間。 わざわざ制服をきているし、本気で待つつもりだったんだろう。 「もう……!何言ってんのよ……!」 こなたが言っていることが建前だっていうのは分かる。 ……何で……。何でそこまでするのよ……。 私のためにそこまでしてくれたのはすごく嬉しい。 だけど、こなたがそんな辛い思いするようなことしなくていいのに……。 悪いのは私なんだから、辛いのは私だけで良いのに……。 「……かがみはどうしてこんなところに……?もしかして、忘れ物? 人に見られちゃマズイ物だから、夜に取りに来たのかな~?」 「バカ……。アンタを探してたのよ……!」 「えっ………?」 こなたは驚いたような顔になる。 「かがみが、私を……?」 「そうよ!な、なんかおかしいの!?」 もう息は整っていた。 「かがみはやっぱり優しいね……。私なんかのこと、探してくれてたんだ……」 「当たり前じゃない……!」 だって、こなたに会いたかったから……! 「…………ありがとう」 「私がそうしたかったからやったのよ。だから、お礼を言われる資格はないわ」 そう、これは私の意志――――。 だから私は今、こうしてこなたの前にいれる。 「私もかがみに会いたかった……。だから、学校に来たんだけど、もう放課後で……。 かがみがいるわけなかったんだよね……」 「こなた………」 待たせてごめんね……。 もっと早く気づいてあげればよかったのに……。 「かがみ、ごめん」 「こなたは謝らなくていいの。だって―――」 「何も言わないで良いよ。私、分かってるから……」 「違うの!」 「私、何か怒らせることしちゃったんだよね。だから、私のこと、最近避けてるんだよね……」 「こなたのせいじゃ―――」 言い終わる前に、言葉が止まった。 小さな身体が、小さな声が、小さく震えていた。 「ごめん……ごめん……なさい……。私……何でも……するから……かがみが…… して……欲しいこと……絶対……するから……許して……かがみ……お願い……」 こなたが……あのこなたが、泣いてる……。 いつもふざけたことばっかり言ってるこなたが……。 いつも私の宿題を写してばっかりのこなたが……。 いつも猫口で私の名前を呼んでくれるこなたが……。 いつも私の隣にいてくれたこなたが……。 私の好きな――ううん、愛してるこなたが……。 そのこなたが、泣いている。 こなたに悲しい涙を流させてるのは誰――? ――私だ。 なら、私のすべきことは何―――? ――それは、私が一番よく知ってる。 「こなた、ごめんね………」 「えっ……?」 私は、こなたをぎゅっと抱き締めた。 「謝らなくちゃいけないのは、私……。ごめんね……。 私にもっと勇気があれば、こなたにこんな悲しい思いをさせずにすんだのに……」 「かがみ……どうゆう……こと……?」 私は、こなたを抱き締めていた手を離し、こなたと向き合う。 「私、こなたのことが好き。世界中で一番好き。誰よりもこなたを愛してる」 「えっぇっ……?」 こなたの顔が、見たことがないくらい真っ赤になっている。 「ずっと、自分の気持ちを抑えてた……。こなたに迷惑かかるって思って。 それにもし伝えて、それで断られたら、こなたと、それからつかさやみゆきとも一緒にいられなくなるって……」 辛かった。でも、それが最善の策だと思ってた。 「だから、こなたと少し離れて気持ちを消そうって思ったの。 でも逆に、気持ちはどんどん大きくなっていちゃって……」 そう、自分の気持ちにウソはつけない。 「こなたが今日休んで……つかさとみゆきに呼び出されたわ。 そこで二人に言われて、やっとこなたと向き合う勇気が持てたの」 こなたは呆然としていたけど、すぐハッとなったように慌て始める。 「でも私、背も小さいし、胸もないし、オタクだし、アニメとゲームとマンガの 話ばっかりだし、勉強出来ないし、宿題も写してもらってばっかりだよ……?」 「バカ……。そんなところも全部好きなのよ」 こなたの全部。良いところも悪いところも。 その全てを、私は好きになったんだ。 「かがみ……」 こなたが、顔を伏せる。 「でも、女………だよ………?」 こなたもやっぱりそう思ってたんだ……。 でも、私の答えはもう出てる。 「私もずっと悩んでた……。でもわかったの。 私は一人の人間として、こなたを好きになったんだから、性別なんて関係ないって」 「ぁっ……」 「だから、こな――」 「かがみッ!!」 こなたが抱きついてきた。 「私もかがみのことが好き!」 「こなた……!」 私もこなたを抱きしめ返した。 「私も怖かったんだ……!かがみ、普通に彼氏とか作りたいみたいだったから……。 だから、身近に自分のことを好きだと思ってる『女』がいたら、距離を置かれると思った。 そしたら、今までみたいに、かがみと一緒にいることも出来なくなる……。 それだけは、絶対嫌だったんだ……。だから、隠そうと思った。 少しかがみに触れたり、私の嫁だって言うくらいなら良いよね、って自分に言い聞かせて、 それで我慢しようとしてたんだ。でもかがみはそれも嫌がってるみたいだった――。 だから、もう私はかがみの近くにいることを諦めたんだ……。 もう、私にはかがみの近くにいる資格をなくしちゃったから……」 それって――――私と同じ―――。 「でも、私は耐えられなくなっちゃったんだ……かがみが近くにいてくれないことに。 資格がないのに会おうとするのは、違反だってわかってたよ。 でも、自分の心にウソをつけなかった。 だから、無理やりにでも明日学校にくるまで、かがみを待ってることにしたんだ」 すごい……。こなたは私と違って、強いのね……。 「こなたは、自分でちゃんと正しい答えをだせたんだ……」 「実は……そうでもないんだよね……」 こなたはあはは、と笑いながら言いにくそうに言った。 「えっ?」 「実は私も、つかさやみゆきさんに色々言われてね……。 でも私、悪い想像ばっかりしちゃっててさ。それじゃダメだ!って思って、 今日休んでずっと考えた。それで、行動に移そうって決めたんだ」 「そうだったんだ」 つかさ、みゆき……本当にありがとう。 もし二人がいなかったら、私たちはきっと今ここにいなかった。 二人には、感謝してもしたりないわ……。 「ね、かがみ。私からも言わせて」 その時のこなたの顔は、力強かった。 「う、うん……」 「私もかがみのこと、1億年と2千年前から愛してる!!」 こなたの言葉が、私の心に何度も木霊する。 ――嬉しい。 私とこなた、ちゃんと繋がってる。そんな気がする。 でも、不思議……。照れくさくなると、つい憎まれ口を叩いちゃう。 「もう、こんなときにもアニメネタか」 「いいじゃん。そうゆうところも好きでいてくれてるん……でしょ?」 「ば、バカ……。恥ずかしいこと言わせるな……」 「自分で言ったことなのに照れてるかがみ萌え♪」 こなたは、もういつものこなたに戻っていた。 「う、うるさいわね……!もう、せっかくのムードが台無しよ」 「むふふ、かがみ、かっこよかったよ~?あんなこと言われたら、誰でもイチコロだよ♪」 「そ、そうゆうこなたも、さっき私のお願い、なんでも聞いてくれるって言ったわよね」 「い、言ったけど、それが?」 泣いたことが恥ずかしかったのか、こなたは少し顔を赤くして言った。 「それじゃ、一つ聞いてもらおうかしら」 「でも良いの?一回限定だよ?」 「そんなこといつ言ったのよ?」 「七つの玉で召喚される大きな龍だって、一回でしょ?」 また適当な言い訳を……。 ま、でも良いわ。 何回でもだったら、何か弱味を握ってるみたいだし、それに―――。 「それじゃ、こなた……」 「かがみ、ここは全年齢対象の板だからね?それを踏まえた発言をしてよね?」 「そんな変なことなんて言わないわよ!」 もう……!まぁ、でも今の方がこなたらしいんだけどね……。 「で、なに?」 不思議そうに眺めてくるこなた。 私は、いつもと変わらない口調で言った。 「もう『俺の嫁』って言うの、やめてくれる?」 「えっ、なんで……?」 さっきまでの顔から一変、こなたの顔は不安の色に染まる。 色んな表情を見せるこなた。 もう少しこの顔をみていたい気もするけれど、憂慮したままじゃ可哀想だしね……。 「それはね――――こなたが『俺の嫁』だからよ」 ふふ、こなたがまた顔を真っ赤にしてる。 「か、かがみ……それって……」 私はそれ以上何も言わなかった。 お互いの考えは同じだから、言葉にする必要ないから。 「ねぇ、こなた」 「なに?」 「あれ、見てよ」 私がこなたを抱き締めていた片手で、ある物を指差した。 こなたが、うわぁっ、と驚いたような表情をする。 「満月だ……」 黒い夜空に浮かぶ、真ん丸な月。 さっきまであんなに翳っていたはずの光……。 それがいつしか、神々しく輝いていた。 吉田兼好は陰りがあるほうが良いって言ってたけど、私はそんなことないと思う。 だって――――。 「私たちの未来は、きっと円満よ」 「それは、鏡じゃ……?」 「月は私なの」 「え?それってどう言うこと?」 「……ヒミツ」 「むむ、隠し事なんて、酷いなぁ」 「仕方ないわね。こなたがウサギだからよ」 「えぇっ!何で私がウサギなのさ!」 「私に会えなくて、寂しくなって目を赤くしちゃったじゃない」 「むむぅっ……かがみのイジワル……」 「良いじゃない、好きな子にはイジワルしたくなるものよ?」 「それって、小学生の男の子と同じLvだよ……」 「な、何とでも言いなさい」 「むむむ~~」 私はこなたの耳元でこっそりと囁く。 「そうすれば、私たち、毎日一緒にいられるでしょ………?」 「うわ……か、かがみ、大胆……だね」 「ふふ、こんなときくらい、素直になってもいいじゃない?」 「やっぱり普段は素直じゃなかったんだね」 「ば、バカ………そうゆうのは言わないものよ……」 『色々』の一言ですませられないくらいたくさんのことがあった……。 そして私は今――――こなたとここにいる。 お父さん、お母さん。 『かがみ』って名前をつけてくれて、ありがとう―――。 私、神様の恩恵をうけれたよ―――。 私とこなたの回りにいてくれている、みんな――― ――――ありがとう―――― この世界には、約60億人もの多くの人がいる。 その60億人の中で、私とこなたは出会えた。 そして私たちは今――――‘辛’さが‘幸’せになった。 「こなた」 「何?かがみ」 「もうこなたのこと、離さないわよ」 「望むところだよ、かがみん♪」 わたしの目にうつるもの。 それは、泉こなた。 ――――最愛の人。 うつるもの-Oath of Eleven-へ続く コメントフォーム 名前 コメント b(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-01 23 49 50) 月は太陽の光をうつして輝く... つまりそういうことか -- 名無しさん (2021-01-24 18 21 31) やばい、感動してしもた…。 -- 名無し (2010-05-16 07 41 58)
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「かがみ。私からの誕生日プレゼントだよ」 そう言ってこなたは鞄の中からプラスチックケースを取り出した。 そして取り出したケースを開け、また中から出てきたのは白い箱。 ‥えらく大事にしてるなぁ、と思いながらその一連の動作を見ていると、 はい、と言って白い箱をこなたから手渡された。 「開けてみて、かがみ」 うん、と返事をしながら白い箱を開けてみる。 あんなに大事にしてるんだ、一体何が入っているのだろうと中を覗いてみると・・ 「これは・・星?」 中に入っていたのは星の形をした物体だった。 キラキラと多彩な色をしている。 両手で心地良く持てるようなサイズと重量感。。 「うん、星だよ。意表を突いてヒトデなんてことはないから安心して」 また何かのネタか、と思いつつも私は星を見ることに夢中だった。 なんだろう、何故か不思議なかんじがする。。 「こなた‥何なのコレ?」 思わず聞いた。 「その星は“Lucky Star”。幸せを呼ぶ、幸運の星だよ」 ‥幸運の星?おまじないか何かのアイテムだろうか。 しかし何故かただの星には見えない。 私はこの星を知っている――…? 「かがみ。」 こなたが突然、真剣な顔になる。 「かがみは可愛いよね」 「――なぁ!?‥」 一瞬、心臓が止まるかと思った。 急に真剣な顔して可愛いだなんて言ってくるもんだから。 頭のヒューズが1、2本飛んでしまったかもしれない。 「な、何いきなり変なこと言い出すのよ!」 「いや、かがみは凄く綺麗で可愛いなーと思って。それに優しいし、面倒見が良くて、おまけにツンデレでツインテールだし」 なにやら私を褒め出すこなた。 私はもう真っ赤になるしかなかった。 最後変なの混ざってたけど‥。 「頑張り屋さんだし、しっかり者だし、ウサギさんだし」 なおも続くこなたの褒め殺し。 あんたは私を羞恥死させる気か! 「だから、かがみはこの星を持つに相応しい人だと思うんだ」 こなたは至って真面目に言った。 「‥星を持つのに資格とかいるんかい」 私はたまらず突っ込みを入れたが、こなたは普通に「うん」と答えるだけだった。 「…ツンデレとかは絶対関係ないだろ」 「‥重要な事だと思うよ?」 なぜだろう…言ってる内容はかなりふざけてると思うのに、 こなたは真面目な態度だし、 この星を見てると実はふざけてないんじゃないかという気になってくる。 「…かがみ。私がみんなと陵桜で出会えたのは、私がこの星に願ったからなんだ」 「・・は?」 「毎日かがみと会って、つかさと一緒に登校して、教室でみゆきさんと一緒に4人で昼食を食べて・・ ――それは全部、私がその星に望んだからなんだ‥」 「・・何、どういう事?」 意味がわからない。こなたは何を言っているのだろう。 こなたがこの星に望んだから私たちは出会った・・? そんなバカな―― だけど、何故かこの星を見てるとそれは本当の事なんじゃないかという気がしてくる。 「かがみは学校楽しい?」 こなたが突然質問してきた。 「?!‥う、うん。楽しいわよ?」 「それも、楽しい学校生活をみんなが送れるように、私がその星に願ったから…」 …どうしてだろう。 よく分からないけどこなたは今とても重要なことを言っている気がする。 それに、私はやっぱりこの星を知っている‥‥‥。 こうして手に持つのは本当に初めてなんだけど、 星の存在は最初から知っていたような‥。 「…私なんて、その星がなければただのチビでオタクな人間でしかないよ」 「なっ…そんな事ないでしょ!こなたには良い所がいっぱいあるわよ!」 「…くふふ。ありがと、かがみん♪」 何故だろう。どうしてだろう。 とても重要な事を聞いている気がするのに、私は理解が追い付いていない。 この星を見た時から――私の中で何かが混乱し続けている。 私はこの星を知っていて――そうか、この星はこなたの持ち物だったんだ。 私はバラバラのパズルピースのたった一つだけを繋ぎ合わせる事ができた。 それは、星の持ち主がこなただったという事――。 そしてこなたに聞いた。 「…こなた、これ本当に私が貰ってもいいの?」 少なくとも、この星が私たちにとって重要なものであることは間違いない。 私はそれをなんとなく確信している。 そしてそれは、こなたが持っていた物だ。 「言ったでしょ、かがみ。その星はかがみが持つにこそふさわしい、ってね」 「でも…」 こなたは私の言葉を制した。 「それにね‥」と言って、こなたは一つ息を吸い直す。 「その星にも叶えられる願いには限度があるんだ。 私が望んだものは、その星の力でも届かなかった」 そう言って、ちょっとだけ悲しい顔をする。 「…あんた、一体何を望んだのよ」 「…べつに。ちょっと求め過ぎちゃっただけ」 この星の力を持ってしても叶えられない願いって何だろう。 聞いてる限り、そして私が感じてる限りでは、この星にはとてつもない力があるように思える。 だけど、もしかしたらこの星は万能ってわけではない‥? 知りたい。こなたの願いを―――・・・。 「こなた、あんたの願いが何なのか教えてよ」 「・・ちょっと場所変えようか」 ――――――――――― コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-04-24 01 35 08) 行きた〜い! -- かがみんラブ (2012-09-20 23 28 52)
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さてはて、いつまでも中編では流れに狂いが生じる。ここは敢えて後編と銘を打ち。合宿の最後を最終章、としたいと思う。 昨今の情報化社会、却って溢れかえっている情報のせいで、自分に何が必要で、何が必要でないのか混乱しそうになるが、或いは目標、というか到達地点が決まっている場合はそうでもない。 故に、その到達地点に向かう為に必要な情報は、常にチェックしておく必要がある。 例えば、 「みなみさん、以前小早川さんとお泊り会をしたことがありましたよね?」 今のみゆきのように。 「はい。それが……何か?」 みゆきの問いに微かに首をかしげながら、みなみは答えた。 「いえ、些細なことなのですが、その時一緒にお風呂に入りましたか?」 続けられた問いに、みなみはギョッ、或いはギクッと言った擬音が聞こえるほど動揺し、 「は、入りましたけど……そ、その、わ、ワワワ忘れ……私達は、何もしていませんよ」 「あ、いえ、その時、背中を洗いっこ……何てことはしなかったのですか?と聞きたかったのですが」 予想だにせぬ戸惑いに、みゆきは訝りながら、問いの核心を突いてみた。みなみは傍目にも分かるようホゥッと息を吐くと、 「はい。やりましたよ。ゆたか……可愛かったです」 と、超個人的な感想を加えて返してくれた。どこが可愛かった、とは聞かない。今は必要の無い情報だから。残念。 必要だったのは、一緒のお風呂、洗いっこという既成事実。みゆきは、そうですか、と答えて、この情報を記憶する。 さてもう一つ、情報化社会で生きぬくコツは、常にアンテナを高く持て。ということである。例えば周りの人の会話、聞いてみると案外面白いものだ。 「わ~、ゆたかちゃんの携帯の待ち受けって、みなみちゃんの写真なんだね」 「はぅっ!つ、つかさ先輩、見ないでくださいよぉ」 「ゆたかちゃん、みなみちゃんのこと本当に大好きなんだね」 つかさの言葉に、赤面し、今にも倒れそうなゆたか。慌ててみなみが支えて二人は抱き合う形となる。 成る程、人生とはどう転ぶか分からないものである。携帯、待ち受け。さて、必要になるかは分からないが、覚えておいて損は無い。 「あ、そうだゆきちゃん。お姉ちゃんとこなちゃん、呼んできてくれないかな?もうそろそろお風呂沸くから」 「はい、行ってきますね」 みゆきが先程かがみとこなたを見たのが凡そ一時間前。さてはて、今頃二人は何をしているやら。 (喧嘩……は先程の様子だとなさそうですね) 足取り軽く、でも慎重に、みゆきは二人がいる部屋へと向かった。 コンコン……と扉をノックする。一応、かがみとみゆきは相部屋なのだが、どんな時でも礼節を忘れない。 しかし、反応が無い。他の部屋、と言っても所詮別荘。数えるほどしかない上に、動く理由も無いだろう。外に出た気配も無し。 (はて?どうしたのでしょうか……) 若干の不安を覚えながら、開けますよ、と声をかけ、そうっと扉を開く。果たしてそこに、こなたとかがみはいた。 「まぁ……」 ただし、眠っていた。かがみがベットにもたれかかり、こなたはその膝を枕に、と言った状態で。スヤスヤと擬音ではなく本当に寝息を立てている二人が可愛らしい。 元々、互いの肩にもたれかかっていたのだろう。だが如何せん身長差がありすぎる。故に徐々にずれ込んで今の体勢に、と言った具合か。 やれやれ、とみゆきは息をつくと携帯を取り出した。こなれてきた操作をしつつ、思う。 (こんなに相思相愛なのに、本人達が気が付かないのが却って不思議なくらいです) 或いは、近すぎる故に気が付かないのかもしれないが。 とにかく、どちらかだけにでも早く自覚してもらいたい。 クルリと振り向くと、みゆきは二人を起こさないように慎重に部屋の外へでる。先程の失敗の事もある、ここは外陣要請をするべきかもしれない。 数回のコールの後、目的とする人物に繋がった。 「もしもし……」 ブーブー……と、どこかでバイブ音がする。それが自分の携帯から発せられているものだと気が付いたかがみは、薄く目を開け、まだ眠い頭を振って、通話ボタンを押す。 「もしもし?」 「あ、もしもし、柊?私、みさお」 誰? と一瞬思ったが、そこは長い付き合い(みさお談)薄ぼんやりと輪郭が浮かんできた。特徴的な八重歯、舌ったらずな口調。日下部みさおだ。 「あ~、日下部?何か用?」 まだ眠い、余程リラックスしていたんだな、と思いつつ、旧友に用件を尋ねる。どうせロクなことじゃないとは見当がついているが。 「あ~、もしかしたらそこに‘ウチ’のちびっ子がいねぇかと思って」 「こなたぁ?」 ちら、と膝元を見ると、いた。自分の膝を枕に寝ている。ぼんやりとした頭ではそれが何を意味するかは分からない。ただ、寝顔が可愛いなと思ったくらいだ。 「そうなんだよ。ウチのちびっ子に何回かけてもつながらないし、柊ならウチのちびっ子といつも一緒にいるじゃん?だからいるかと思って」 「あ、そう……」 会話を続けると段々頭がハッキリとしてくる。ふと、そこでみさおの言葉にいつもと違うニュアンスが含まれていることに気がついた。 「ちょっと待て、‘ウチ’のちびっ子ってどういうこと?」 すると、みさおは得意そうに、 「いやぁ、いつもちびっ子と私で柊の取り合いすんじゃん?でも決着はつかないわけよ。そこで、私は考えたね。なら、ちびっ子を私のものにしてしまえば、自動的に柊も私のものになるじゃんってね。だから、今からちびっ子に愛の告白タイム!」 と、答えてくれた。はぁ、とかがみは思う。呆れた話だ。 「そんな馬鹿なこと言ってないで、センターの勉強、進んでるんでしょうね?」 やれやれ、とかがみは首を振った。だが、 「なぁ、柊……」 突然みさおの口調が変わった。いつものふざけた感じなど微塵もなく、ただ、シリアスに。 「な、何よ……」 つられて、かがみも口調を切り替える。何だ、この感じは? 「好きな奴に好きって言うのは、馬鹿なことなのか?」 「え……?」 「私は冗談じゃそんなこと言わないゼ。柊のことも好きだし、勿論、生意気だけどちびっ子のこともな」 「ど、どうしたのよ、急に」 いつもの日下部らしくない、真面目な内容。ゴクリ、とかがみの喉が鳴る。こなたを好き?日下部が? 「柊にとってちびっ子ってなんなんだよ!?どうでもいい奴だって言うんなら、本当に私が貰っちゃうぞ!」 その言葉に、かがみの思考は停止する。どうでもいい?そんなわけ無い、感情が訴える。理性は常識を持って反論する。 「何言ってるのよ!女同士よ!ありえないじゃない!!」 「私が言ってるのは好きか嫌いか!それこそ今は関係ないだろ!」 好きか、嫌いか……先程、かがみは罰ゲームとは言え、こう言った。 ――大好きっ!! と。なら、答えは? 「……好き、よ。こなたのことは」 その言葉に、みさおは満足したように、 「ん~、じゃあライバルだな。どっちがちびっ子の親友ポジションに立てるか、勝負だ!柊!」 と言って、電話を切った。 親友ポジション? 「は?アレ?」 理性も常識を保ってなかったか、とかがみは思う。普通はそうじゃないか。 なんで、あんな受け答えをしたのだろう。いや、それより……。 かがみは、こなたを見る。スヤスヤ言ってるその顔を眺め。その小さな体を抱きしめる。 嫌だ、と思った。こなたが、誰かに取られるのが。何で?親友だから?感情の整理がつかない。抱きしめる手に力が篭る。 流石に、んみゅう、とこなたが目を覚ました。 「あ、あれ?かがみ?どうしたの?」 「分かんないわよ……私にだって」 さて、扉の向こう。少しだけ扉を開けてその様子を見守っていたみゆきは電話の相手――峰岸あやのに礼を言う。 「本当に、ありがとうございました。日下部さんも大変演技派で……はぁ、日下部さん、本気、ですか?」 「うん、みさちゃん。やるぞーって、待ってろ、ちびっ子って言ってる」 「そうですか……頑張ってくださいとお伝えくださいね」 苦笑しながら電話を切った。ある程度の事情を話して協力してもらっているみさおとあやのは心強い味方だ。かがみとの付き合いはみゆきより長いのだから。 今のは、みゆきが考えた大まかな流れをあやのに伝え、みさおが電話する。ちょっと過激なモーニングコール……のはずだったのだが。 「まぁ、大丈夫、でしょうね?」 少し自信の無い、みゆきだった。 「な、なんと、聞いてくれたまへ~!この別荘、一度に6人は入れるくらいお風呂がでかいんだよ~!」 さて、こう叫んだのはゆい。自室で寝ていたところを叩き起こされ、お風呂沸かしをしていたのだが、そのあまりの大きさに叫ばずにはいられなかったようだ。 でも、6人。現在この別荘にいる人間は7人。 「じゃあ、姉さん後で一人で入って」 と、こなた。 「ゴメンね~、お姉ちゃん。私、みなみちゃんとどうしても一緒に入りたいから」 「私も、ゆたかと一緒がいいので……すみません」 と、一年生コンビ。 「おっきなお風呂って海以来だよね」 「そうね~、あの時はあの時で色々大変だったわ」 「そうですね。ですが、今となっては良い思い出です」 他、3名。 「あ、あの~、もしもし?3:4に分けるとかそういう発想は無し?」 「ないです。じゃあ、姉さん後よろしく~」 そう言って6人は思い思いに話をしながらお風呂場へと向かっていった。 「ちょ……あんまりじゃない?」 その時、携帯に着信アリ。メールだ。送信者・黒井ななこ。件名・無題。内容『お互い、独りモンは辛いな~。同士よ!!』 「だから私人妻ですってば~!きよたかさ~ん!!」 さて、皆さんは空気というものをご存知だろうか?酸素、二酸化炭素、窒素等から構成されるアレではなく。所謂雰囲気、と言うものだ。 雰囲気というものは恐ろしいもので、一度流されてしまうと思ってもみなかった行動をしてしまう。 カポーン、と擬音が聞こえてきそうな大浴場、いや、もうこれは温泉というレベルに到達していると言っても過言ではないだろう。 とは言え流石に6人で入ると少々手狭、自然、密着した陣形を取る事になる。 「はぁ~、極楽極楽」 とはこなたの弁。彼女の頭にはタオルも載っており、もう完全にリラッコナ。 「そうね、今回ばかりはあんたに同意するわ」 かがみも、ほぅと息をついてこなたの言葉に頷く。ちなみに2人は隣同士に湯船に浸かっている。以前一緒に風呂に入った仲、なに、恥ずかしがることは無いさと気楽なものだ。 とは言え2人には、少し熱いように感じる。何故だろう、さあ何故だろう? ところで、冒頭、みゆきがお風呂についての話をしたのを覚えていらっしゃるだろうか?洗いっこがどうのというアレだ。さて、 「そういえば、以前、海に行った時は背中の洗いっこをしませんでしたね。どうです、つかささん、やりませんか?」 「あ、いいね~。やろうやろう」 そう言って湯船から上がる2人。この流れなら既成事実を持ってる2人も、 「ゆたか、私たちも……」 「うん、行こう、みなみちゃん」 湯船から上がる。残されたのはこなたとかがみ。もうお分かりだろう。雰囲気。皆がやるなら私たちもやらなくちゃいけないんじゃない?という集団心理。そして、これに流されやすいのは、かがみ。 「えと、こなた?」 「んぅ?」 人が抜けて広くなった湯船に肩まで浸かりながら、聞き返すこなた。身長が低い分、かがみからはちょっと見下ろす形。 「わ、私たちもよかったら……その、やらない?」 「な、なにをぉ!?」 ブハッっと湯が飛んできた。こなたが何でそんなに驚くのか、一瞬考え‘やらない’の一言に行き着く。 「洗いっこよ、洗いっこ!何考えてるのよ、全く」 普段、空気嫁なんて平然と言うくせに、こういうときだけは鈍いヤツだ。こなたは肩で息をしながら、 「そ、そだよね~……ビックラこいた」 そう言って、2人も湯船から上がり桶を持つ。こなたが座り、かがみが後ろに立った。 「じゃあ、背中から流すわよ」 少し、緊張する。スキンシップはあっても、地肌に触れるというところまでは中々行かない。 かがみは慎重に、且つ丁寧にこなたの背中を洗い始めた。先程のみさおとの会話も功を奏しているのか、こなたに構いたい、と無意識で感じているようだ。 「つかささんのお肌、綺麗ですね」 「えへへ、ゆきちゃんに言われるとなんか照れちゃうな」 さて、雰囲気、雰囲気。 「ゆたか、この前は、ゴメン。その……初めて、だったから」 「ううん、私こそ、ゴメンね。ああいうの、慣れて、なかったから」 雰囲気良好。ところで、2人の会話は、一緒にお風呂に入るのが初めてだった、と言う意味ですよ? 周りが何か話している、と、かがみの頭もパニックになる。何か話さなくちゃ、なにか話さなくちゃ。 「こ、ここここここなたって、えーと、ちっちゃい、よね」 ピク、とこなたの肩が動いた。 「うぅ、さり気に気にしてる事を。でもいいもん、ステータス、希少価値だもん」 唇を尖らせる。かがみは、そんな所も含めて、改めて、意識がハッキリしながら、思った。 「そ、そうじゃなくて……可愛いなって」 ハッとこなたの体が強張った。少し、肌の色に赤みが増したような気もする。 「な、何か言いなさいよ!こっちが恥ずかしいでしょ」 いたたまれなくなり、こなたに回答を促すかがみ。早く、早く……ドキドキする。 「萌えた、じゃダメ?」 上目遣いにそっと、呟いた。空気が霞んで見える、湯気のせい?それとも? さて、いい雰囲気。みゆきは少し口元を歪めて、微笑みを作る。 「つかささん、お鼻に石鹸の泡がついてますよ。取りますから、じっとしててくださいね」 「あ、ありがと~。なんかドキドキするね」 「そうですね~」 この流れ、次に来るのは、 「ゆたか、唇に石鹸の泡が……じっとして、今取るから」 「み、みなみちゃん……私も、みなみちゃんに取って、欲しい、な」 「ゆたか、目を閉じて。泡が入る」 「うん」 つと、近づきあう2人。そんな様子を見せられては、空気に流されやすいかがみも、黙ってはいられない。何か言わなくちゃ、なにか言わなくちゃ。 「ここここここここ」 「何言ってんの、かがみん」 「こなたの、ア、アホ毛にシャンプーが!今、取るから動かないでっ!!」 「え、シャンプーならいいって。あぁっ!」 スポン、とかがみに包まれる形となったこなた。素肌、密着、伝わる体温……隠された気持ち。 「「うきゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」 「ねえ、ゆきちゃん。お姉ちゃんとこなちゃん、楽しそうだね」 「はい、楽しそうで、何よりです」 にっこりと微笑むみゆきは、誰よりも満足そうだった。 ちなみにこなたかがみ、ついでにみなみゆたかがのぼせたのは言うまでも無いだろう。 1月12日・最終章~そして詰め将棋へ~へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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「はぁ……ダメ……だなぁ……」 私はそこに書いてあったアルファベットをみて、肩をがっくりと落とした。 こんなの……見せられないよ……。 「こなた、模試の結果どうだった?」 「ひゃぁっ!!」 びっくりして、素っ頓狂な声をあげてしまった。 「どうしたのよ?」 驚かせた張本人が、不思議そうに私を見つめる。 「か、かがみ………?」 私はその名前を遠慮がちに呼んだ。 「ん?」 「ごめん………」 私はうつむきながらそう言った。 「結果……悪かったの?」 かがみが心配そうな声で聞いてきた。 「うん………」 呟くくらいの声で返す。 「そっか………」 かがみと同じ大学にいくために、最近ほとんど毎日かがみの家に行って勉強を教えてもらっている。 今までじゃ考えられないくらい勉強した。 私自身も驚くくらい。 よくもこんなに続くなぁと思ったけど、その理由は分かりきってる。 ――かがみと一緒に大学生活を送りたい。 ただ、それだけ。 別に一緒の大学じゃなくても、会うことは出来るよ。 でも、私はかがみと少しでも長く一緒にいたい。 だから、頑張るって決めたんだ。 ―――その成果を試す最初の模試の結果がE判定。 やっぱり今さら無理なのかな……。 もとから私に才能なんてないし……。 中学の頃の保険があるわけでもないしね……。 「それじゃ、今日も頑張ろっか」 かがみは明るく言った。 けれど、私は言葉を返さなかった。……返せなかった。 「こなた?」 「かがみ……もう、無理……だよ」 私は、ポツリと言葉を零した。 「ど、どうしたのよ、突然」 かがみの言葉に、私の内に溜まっていた感情が溢れ出る。 「かがみに付きっきりで、ほとんど毎日教えてもらって……外が真っ暗になるまで頑張って……。 家に帰ってからも、今までネトゲとかアニメに使ってた時間も勉強し続けて……。 それなのに全然変わってないんだよ……!?やっぱり私には無理なんだよ!!」 かがみは悪くない。 むしろ、かがみの勉強を邪魔してしまってる分迷惑をかけてる。 頭では分かってるんだけど……。 それでも、私は自分の不甲斐なさをかがみに八つ当たりしていた。 そんな自分に対しても、自己嫌悪してしまっていた。 かがみは少しの間、黙り込む。 そしてゆっくりと口を開いた。 「………こなたが、そうしたいって言うなら、私は何も言わない」 かがみの言葉に言い訳するように言う。 「私の思いは変わってないよ……!でも、かがみに迷惑かけて、 それなのに何にも成果が出てないのが、悔しくて、申し訳なくて……!」 私の目から、いつしか涙が零れていた。 「こなた……何か勘違いしてない……?」 「えっ………?」 かがみは私をじっと見つめる。 「私がいつ………迷惑なんて言ったの?」 「だって、私のわからないところを教えてくれてるから、その間勉強出来ないし……」 「迷惑だなんて言った?」 「言ってないけど……………」 かがみは優しい笑みを浮かべた。 「迷惑なんて、思ってないわ。むしろ、嬉しいくらい。 だって、こなたが私のために頑張ってくれてるんだから……。 それなのに、なんで迷惑なんて思わなきゃいけないの?」 「かがみのためじゃないよ……。私のためだもん……」 「それが結果的には、私のためにもなってるのよ」 私は何も答えられなかった。 「それに、人に教えるのも勉強になるのよ」 少しの沈黙の後、ねぇ、こなた、とかがみは切り出した。 「勉強っていうは、そんな簡単に成果が出るものじゃないの」 「えっ……?」 「等比数列みたいに伸びるの。1・2・4・8……ってね」 等比数列……。この前、かがみに教えてもらったやつだ。 確か、増え方が曲線になったやつ。あんまり関係ないけど。 「こなたはまだ2。ここで諦めたら、そこで終わり。 でも続ければ次は4、その次は8、その次は16ってどんどん伸びるのよ」 「本当に……?」 「本当よ。………私たちの思いだって、そうだったじゃない……?」 かがみへ対しての思い。 それは気づいてからは、日に日にすごい勢いで大きくなっていた。 諦めなかったから、私は今かがみとこうしていられてる。 そっか……それと同じなんだね……。 「だからもう少し、頑張ってみない?」 「うん……私、頑張る……」 いつしか、私の涙は止まっていた。 「よしっ、じゃぁ今日も気合いれて頑張るわよ!!」 「おぉ~~!合格したら、かがみになんかご褒美もらおーっと♪」 「はぁ!?なんで私が!?」 「賭けしたら、やる気も上がるしね♪」 「もう……仕方ないわね……」 「むふふ、なにくれるの~?」 私が尋ねると、かがみは火がついたみたいに急に顔を真っ赤にした。 「そ、その………ス……」 「なに~?聞こえないよぉ~」 「き、きき、き、キス、して……あげる」 「キス~?もう何度かしてるしなぁ……そうだねぇ、婚約とかのほうがいいな~♪」 「こ、婚約ぅっ!?」 「どうせいつかはするんだし、良いでしょ?♪それに、等比数列みたいに伸びてこなきゃねぇ~?」 「か、考えとくわ!」 「照れるかがみ萌え♪」 「う、うるさい……」 かがみは照れてるのを隠そうとそっぽをむく。 その隙に、私は小さな声で言った。 「―――――」 「こなた、何か言った?」 かがみが真っ赤な顔のままこっちを向く。 「何でもな~い♪」 私はニヤリとしながらそう返した。 私はさっきの言葉を、そのりんごみたいな顔に向かって心の中で言った。 ――かがみ、ありがとう。大好きだよ。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-24 13 19 24) 合格後の二人も見たいです。 GJ!! -- 名無しさん (2010-07-29 16 59 51) 頑張って合格してくださいっ!!! -- 名無しさん (2010-05-17 18 26 19)
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「さってと、そろそろ寝ようかね~」 窓から差し込む朝焼けが眩しくなってくる頃、泉こなたは夜通しやり続けていたパソコンゲームのブラウザを閉じ、軽く伸びをした。 長い長い冬休み、一分一秒とて無駄には出来ない、遊び倒すぞ。と、豪語する彼女だが、流石に眠気には勝てない。 「ま、英気を養うのも必要だよネ」 誰に言うともなく言い訳をしながら、パソコンの終了コマンドを選択しようとした彼女の手が、ふと、止まる。 「そだ、英気を養うといえば……」 マウスを動かし、デスクトップ上の「kagami」フォルダをクリックする。 すると、ディスプレイ上にある画像データが表示された。 「くふふ~、か~がみん♪」 開かれた画像は、こなたの親友、柊かがみをデジカメで撮影したもの。それをこなたが編集したのだ。 ポッキーを食べてるところを撮られて慌てるかがみ。海でピースサインをしながら微笑むかがみ等々。その一瞬、一瞬の表情は、こなたの大のお気に入りだった。 「でも、何と言っても、これ」 照れながら、こなたからの誕生日プレゼントを受け取るかがみ。一見、表情からは大して喜んでいないように見えるが、内心はかがみの中の全米が拍手喝さいしているに違いないことは、付き合いの長いこなたには分かる。 「これこれ、この表情こそがツンデレの真骨頂だね~。かがみ、可愛いよかがみ」 『う、うるさい……』 ふと、かがみの声が聞こえた。そんな気がした。 「あれぇ、照れてんの?かがみ」 思わず、からかいたくなってしまう。悪い癖だとは分かっていてもやめられない。 『そ、そんなわけ無いでしょ』 「もぅ~素直じゃないなぁ、ツンデレかがみんは」 『ひ、人のことより、あんたはどうなのよ?』 「え、私?」 『そう、今日も夜通しゲームばっかで、宿題やってないんでしょ?』 「う……ま、まぁね」 『まったく、ホントあんたは懲りるって事を知らないんだから』 「いやぁ、気をつけないとって思ってるんだけどね、つい」 『なにが‘つい’よ』 「かがみが付いてるからね~♪例のヤツ、お願いしますよ、かがみ様」 『はぁ~、今回だけだからね?』 「やたぁ!ありがと、かがみ様」 『様はやめんか』 こんなやり取りがこなたとかがみの間では普通。周りからも仲の良い友達、と評判な二人。 だけど、こなたの中には友情、とは別にもう一つ、かがみに対してある感情を抱いていた。 本人も意識しないくらい、まだまだ淡く、幼い感情。しかしそれは、最初に芽生えた時よりは、確実に育っていた。 「かがみ……」 ふと、こなたの顔が赤くなる。画面上のかがみから、目がそらせなくなる。気付かず、こなたは画面に顔を近づけていった。 と、 「お姉ちゃん、誰かいるの?」 「うわっ!ゆ、ゆーちゃん!?」 急に背後から声をかけられ、飛び上がるこなた。こなたを呼んだのは現在泉家に下宿中、こなたの従姉の小早川ゆたかだった。 「ど、どうしたの、お姉ちゃん!?」 予想外に取り乱したこなたに、自身も驚きながらゆたかが訊ねる。ちょっと声をかけただけなのにそんなに驚くことだろうか? 「な、なんでもないヨ、それよりどしたの?」 「話し声が聞こえたから様子を見に来たんだけど……」 ここで、ゆたかがパソコンの画面に気が付いた。 「あ、これ、かがみ先輩の写真?」 「あっ!え、えっと、それは……」 「じゃあ、お姉ちゃんは写真のかがみ先輩に向かって話しかけてたってこと?」 隠してもしょうがない。こなたは素直に打ち明けた。と、ゆたかは、 「そっか、お姉ちゃんにも可愛いところがあるんだね、いい子いい子」 ……撫でられてしまった。自分より身長の低い子に。でも、恥ずかしくて今はそれどころじゃないのだが。 「そんなお姉ちゃんに、はい、プレゼント」 あろうことか、ゆたかはこなたの携帯電話を持ち、柊かがみの番号へと発信してしまった。 「頑張ってね、お姉ちゃん」 こなたの手に携帯を渡すと、ウィンクをして、ゆたかが部屋から出て行く。残されたこなたは呆然とするしかない。 かがみが出る前に切ってしまおうか?いや、それじゃ余計に変だ。えっと、じゃあ、どうすれば……。 そんな事を考えている間に、通話モードへ移行。携帯から、声が漏れ出す。 『もしもし、こなた?』 「あ、もしもし、かがみ……」 さあ、何を言おうか。そんなの考えるまでもない。話すことなら幾らでもある。学校でのこと、一緒に出かけること。かがみの声を聞いたら眠気なんて吹き飛んだ。 かがみと話していると、楽しい。一緒にいると、もっと楽しい。まずは、お出かけの話でもしようかな。 こなたは、大きく息を吸い込んだ。 「あのね、かがみ、お願いがあるんだけど……」 1月5日へ続く コメントフォーム 名前 コメント こなたのこういうとこってすごく可愛いと思うwゆーちゃんもGJ! -- 名無しさん (2008-06-07 22 59 11)
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「唐突ですみません」 何気ないみゆきの言葉でわたしは問題集を解く手を止めた。 今日はわたしの部屋で春休み明けテストに向けての勉強会。 勉強机に向かうわたしの後ろでは、会の参加者であるみゆきとつかさ、それにこなたが受験生の名に恥じぬ姿勢でいつもの白いミニテーブルに向かっている。 …はずなのだが、実際にテスト勉強をしているのはわたしとみゆきくらいで、あとの二人は必死に春休みの宿題と戦っている。 まあ学校が始まるのは週明けでまだ一週間ほどあるのだから、以前より少しは成長しているということだろう。 しかし、こなたの場合やっていることは相変わらずわたしのノートの写経なので、成長といってもジャワ原人とネアンデルタール人くらいの差でしかないのかもしれない。 「何か分からないことでもあった?英語だったら何とか答えられると思うけど」 椅子を回転させて勉強机に背を向けると、みゆきは小さく首を降った。 どうやら勉強に詰まったというわけではなさそうだ。 まあみゆきの実力からすれば当然といったところか。とほほ… 「ゆきちゃん何か忘れ物でもしたの?」 そのまま黙り込むみゆきを不思議に思ったのか、つかさが辞書を閉じて首を傾げる。 「何々?何かのドジッ子フラグ?」 意味不明なセリフとともにこなたも漫画から嬉しそうに顔をあげた。 (ん?漫画…?) 「って、あんた何漫画なんて読んでるのよ?!」 「え?いやーなんか勉強に疲れちゃってさ。骨休み、骨休み♪」 わたしのツッコミにこなたは悪戯を見つかった子猫のように笑った。 思わず頭の中で『見つかっちゃったにゃー』というセリフがアテレコされる。 ま、まったくもう!マジメにやっていると思ったらすぐこれだ。 「あんたはわたしの宿題写しているだけでしょうが!!」 「んで、あらためてどしたのみゆきさん?」 「スルーかよ!!」 そんないつも通りのわたしとこなたのやり取りを見て、みゆきは可笑しそうに微笑んだ。 「実はですね」 あれ?わたしはいつも通りのはずのその微笑みに小さな違和感を覚えた。 例えるなら硬度38のミネラルウォーターであるクリスタルガイザーを飲もうと思ったら、実は硬度60のボルビックだったといった感じだ。 しかし、そんな僅かな違いなどみゆきが次に発した言葉によって次元の彼方に吹き飛んでしまった。 「実は私、ずっと前から泉さんのことが好きだったんです」 「へっ?」 全世界マヌケな驚きの声選手権があれば間違いなくグランプリを取れる声とともにわたしは見事に固まった。 『2分の1』 「ゆき…ちゃん?」 つかさの呆然とした声でわたしはフリーズ状態から我に返った。 どうやら衝撃で呼吸も止まっていたらしく、慌てて息を吸うと今まで忘れていたアロマオイルの香りが鼻腔をくすぐった。 集中力が高まると聞き、勉強のためにと選んだペパーミントの清涼感でぼんやりとした頭が少しだけ覚醒する。 わたしが半生解凍状態まで回復するために要した時間は5秒くらいだろうか。 その5秒感――光が地球を35周半回る間、わたしは視界がブラックアウトして平行感覚すらなくなった世界の中にいた。 まずわたしの頭に浮かんだのは(あれ?『好き』ってどういう意味だったっけ?)という疑問だ。 最初の1秒間をフルに使ってわたしはみゆきの言葉の意味を思い出そうとする。 しかし直下型大地震が起きている頭ではその意味を探し出すのに永遠と思える1秒が必要だった。 さらに次の1秒で本当にみゆきが『その意味』で言ったのかどうかを確かめ、同じ時間をかけてその確認を終える。 最後の1秒間、混乱するわたしの心の中を『サキニ』『言わ』『Letter』だの『綿霜』『こなたが』『好』といった自分でも理解できないほど断絶した言葉や気持ちの段幕がまさに光の速さで駆け抜けていった。 その凄まじさはシューティングゲームなら怒りで画面を打ち砕きたくなるほどだ。 なぜそれらを避けようと思ったかは分からない。 ただその言葉や気持ちと向き合うことが怖くてわたしはひたすらかわし続けた。 おかげで我に返った後も、わたしは筋肉痛のようにギシギシきしむ心の痛みで動くことも出来ずにいた。 それでもなんとか視線だけは無理やりこなたの方に向ける。 今自分がどんな顔をしているのかよりもこなたがどんな顔をしているのかが気になったからだ。 こなたは… 「私もみゆきさんのこと好きだよ」 こなたはみゆきの方を向いて嬉しそうに笑っていた。 「こなちゃん?!」 つかさが心底驚いたようにこなたの腕に手をかける。 そしてすがるようにしがみつき、強くゆすった。 「ど、どうしたのつかさ!?」 驚くこなたの声。 あぁ、この光景には覚えがある。 子どもの頃『お母さんを独占したいとき』につかさはよくこうやってわたしやまつりお姉ちゃんにしがみついていたっけ。 わたしはそんなことをぼんやり考える。 そういえばお母さんたちに甘えたいときわたしはどうしていただろうか。 昔から甘え下手だったわたしはつかさをうらやましく思いながらじっと我慢していた気がする。 もっと他に考えることがあるんじゃないの?という心の声を無視して、わたしはギシリと椅子を軋ませて立ち上がった。 …つかさの真似をするならば、わたしはこなたとみゆきのどちらかの腕を取らなければならない。 しかしわたしはどちらの腕を『何と言って』取ればよいのだろうか? 何の『覚悟』もないわたしは立ち上がったまま動けずにいた。 「大丈夫だよ、つかさ」 こなたがよしよしとつかさの髪を撫で、しおれてしまったリボンを延ばす。 「『わたしも』つかさのこと好きだもん」 「え?こなちゃん『も』…って?…あっ!」 つかさの小さな声とともにリボンがピンと立ち上がった。 「あれ?つかさ分かっちゃった?」 何の話かさっぱり分からないが、そのセリフを聞いた瞬間つかさは顔を赤くしてこなたから離れようとする。 それをこなたは逆につかさの腕を取り、自分の方に引き寄せた。 「こ、こなちゃん…恥ずかしいよう」 「うむ、苦しゅうない!さあさあ、みゆきさんも近うよりんしゃい!!」 「それでは…失礼します」 唖然とするわたしに申し訳なさそうな視線を送りつつ、しずしずとみゆきがこなたの横にちょこんと座る。 「ふふふ…愛い奴じゃのう」 すかさずこなたはみゆきの肩に手をまわしてぐっと引き寄せる。 「きゃっ」 などと可愛い声を出してみゆきがこなたにぴとりとくっついた。 心なしかみゆきの顔も赤い気がする。 (何?何?なんなのこの状況は?!) 混乱するわたしは『右手にみゆき、左手につかさをかき抱くこなた(しかも二人とも頬を染めて)』という今の状況が全く理解できない。 ただ一つ分かるのは先程の空気が一変したということだけだ。 「どうしたのかがみ?かがみもこっちにおいでよ」 こなたがみゆきを抱いたまま右手でわたしを手招きする。 わたしは誘われるままに進み、こなたと膝を付き合わせた。 向かい合った膝と膝との間がコブシ一つ分もない距離でこなたはわたしの顔を正面から見つめる。 さっきまでは錆び付いているかのように軋んでいた心臓がまるで油をさしたかのように軽やかに鼓動を早めていく。 ちょっとそのスピードは早過ぎるくらいだ。 こなたのエメラルドに映った像でわたしは自分の顔が真っ赤になっていることを知った。 こなたは一瞬だけ目を閉じて軽く深呼吸した後、目を開けて優しく微笑んだ。 「かがみ大好きだよ」 思わず下を向いてしまった。 さらりとこなたが言った言葉がじわじわとわたしに染み込んでいく。 (や、やだ…なんなのコレ?) 自分の中から抑えきれない感情が溢れてくるのを自覚してわたしは怖くなった。 決して不快な感情ではない。 ただその勢いによって『わたし』というダムが決壊してしまいそうで怖かった。 「わ、わたしもゆきちゃんが大好き!!」 まるで何かに宣言するかのようにつかさがいきなり声をあげた。 「ありがとうございます。 先程泉さんがおっしゃったように、私も泉さんと同じ気持ちですよ」 ちらりと視線を上げるとニコニコといつも通りの笑みでみゆきが頷くのが見えた。 ふにゃ、という音が聞こえるようにつかさが茹でダコのように真っ赤になって崩れ落ちる。 それを見てこなたはつかさとみゆきから手を離し、少しだけ羨ましそうな顔をするとわたしの右耳に囁いた。 「かがみは言ってくるないの?」 こ、こいつはわたしに何を言わせるつもりなんだ?! ココで、つかさもみゆきもいる場所でナニを言えというんだ! 「ね…かがみ?」 うぅ…こなたの声がわたしの理性の抵抗力を奪っていく。 と同時に感情の水位はますます高まり、今にも言葉になってこぼれだしてしまいそうである。 「わ、わたし…」 「私?」 その圧力に負けてわたしが口をわすがに開くとこなたの瞳が輝いた。 「わたし…」 「わたしエイプリルフール大好き!!」 …このセリフはわたしのものでなくつかさのものだ。 コロリとみゆきの膝に頭を乗せ、コブシを空に向かって突き出し親指を立てている。 何を言うかと思えばエイプリルフールなんて…ん?エイプリルフール? がばっと立ち上がり、勉強机の上の携帯をとって今日の日付を確認する。 『4 月 1 日』 「今日はエイプリルフールじゃない!!」 「そうですね、日本では四月馬鹿、中国では万愚節、フランスではポワソン・ダヴリル(四月の魚)と呼ばれています。 一般的には『害のない嘘をついて人をからかう』というのが4月1日の慣習ですね」 怒りの叫びを上げるわたしにみゆきが解説を加える。 「そうじゃなくって!!どういうことなのよみゆき!!」 「実はですね」 そう言ってみゆきはテーブルの上の問題集をパラパラとめくり、小さなノートの切れ端を取り出した。 それには見覚えのある汚い癖字で『エイプリルフール記念・こなた専用ハーレム建設計画指令書』とデカデカと大きく書いてある。 自分の中の乏しい言語学の知識を用いて判読すると、そのタイトルの下にはどうやら 『指令1、みゆきさんの突然の告白で場を混乱』 『指令2、私の魅力でかがみとつかさをメロメロに(要:かがみからの告白)』 『指令3、みゆきさんを含めたハーレム完成』 『指令4、みんなで秋葉原デート♪』というような4つの指令が書かれているようだ。 というより!2以降は指令じゃないし!!『かがみからの告白』には蛍光ペンで下線が引かれているし!! 「ああっ!?みゆきさん!私まだかがみから愛の告白をされていないのにぃぃぃぃ!! あれ?!かがみ!?なんかパチパチ放電してるよ?!」 焦ったようなこなたの体内から怒りのスパークが湧き出る。 『怒髪天をつく』という言葉の意味をわたしは実感した。 今なら脱色せずとも金髪になることができそうだ。 「こなた?」 「は、はい!!なんでしょうかがみ様!」 ノーベル平和賞をもらえそうなほど優しさに満ち満ちたわたしの問いにこなたは直立不動の姿勢で答える。 「つまり全部ただの冗談だったってことよね?」 「う、うん。罪のないエスペラントジョーク(意味不明)だよ。 あ!でもハーレムを作りたかったのは本当だよ♪」 ギリギリギリ。 どこかで何かをすり潰すような軋轢音がする。 視界のすみではみゆきとつかさが青い顔で抱き合っているのが見える。 今日は春らしい暖かな陽気だというのにどうして二人は震えているのだろうか? 「そうね、すっごく可愛いウソだったわね…」 「だよね!だから全然怒る必要なんてどこ…に…も…って、あれ?かがみひょっとしてすごく怒ってる?」 「ウウン?ゼンゼンオコッテイナイワヨ?」 冷静に考えるとどうやらギリギリという音はわたしの歯ぎしりが原因らしい。 わたしは無意識に『あの言葉』を噛み砕き、すり潰そうとしているようだ。 「か、かがみ?目がマジだよ?それはもう種とか割っちゃいそうな勢いで」 冷や汗をダラダラと流しながら、こなたがぎこちなく笑う。 「ウウン?ゼンゼンオコッテイナイワヨ?」 ひきつる微笑みを浮かべるわたしにこなたは震えながら尋ねた。 「本当に?」 「だから怒ってないって言ってるでしょうがぁぁぁぁぁ!!!」 「わぁぁぁぁぁかがみのウソツキィィィィィィ!!」 結局、こなたは春休みの宿題を泣きながらも自力でやることにしたそうだ。 やっぱり宿題は自分でやるものよね、うん。 それと…どんなかたちであれウソをついたら駄目よね。 ばか… 終 おまけ 「…ところでつかさ?どうして気付いたときにすぐ教えてくれなかったのよ?」 「だって、こなちゃんにおねえちゃんには内緒にしてって頼まれたから…」 「ほほう…(ギラリ)」 「え?わたしそんなこと言って…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ…」 「それに、わたしもウソついてみたかったし…(チラリ)」 「つかささん、どうかしたんですか?」 「う、ううん!!な、なんでもない…」 「?」 「うー…なんでみゆきまで何でこの馬鹿のこんなアホな計画にのったのよ?」 「すみません、実は泉さんに『どうしても頬を染めて告白するかがみ(さん)が見たい』と熱心に頼まれたもので…」 「だって…デレデレのかがみが見たかったんだもん…って、ふみゃぁぁぁぁ…」 「ハァハァハァ…全くもう…」 「うぅぅ…あの時のかがみはあんなに可愛かったのに…」 「もう一発くらいたいの?」 「あぁ、あの時かがみが『わたし』の後になんて言おうとしたのか考えたら気になって夜も眠れないよ…」 「あ、あれは!『わたしはあんたのことなんて何とも思ってないわ』って言おうとしたのよ!!」 「おおっ!ツンデレktkr!!いやーツンデレってツン状態の時は基本的に嘘つきだよね。 だからおあいことで……ふぎゃぁぁぁぁぁ…」 エイプリルフール。 今日は罪のない嘘をついてもよい日。 けれどもその日に発した言葉が嘘かどうかは、いつも通り2分の1の確率でしかない。 実は昔、日本では4月1日は『日ごろの不義理を詫びる日』だった。 またイスラム教においてはこの習慣はコーランに著しく反しているため、強く禁止されているという。 それを知っている少女は心の中で微笑んだ。 (時々は自分の気持ちを『言葉』にして汲み出さないと、気持ちが溢れてしまいますものね) 了 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-18 08 00 48) つんでれかがみ萌え♪ -- 小谷 (2010-01-18 21 50 50) 面白かった! -- ひろ (2009-07-14 06 28 17)
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あと一年で受験。 私は溜息をつく。 …イヤだな。 現在高校2年の私は、親友のつかさと教室に一緒にいた。 今は昼休み。 お昼のお弁当も食べ終え、食後雑談していたのだが… 「あと、1年だね~」 なんてつかさが言うもんだから。 嫌なこと、思い出させないでよ。 「つかさは志望は専門学校だよね」 うん、とつかさ。 私はというと…未定。 漠然と進学、なんて思っていたもんだから勉強も適当にしてきてしまった。 今の成績じゃ、どこも行けない。 「あ~あ、どうしよ…」 とは言うものの、どう考えても答えは一つ、進学したいなら勉強しろということ。 でもどうやったらいいんだろうか。 はっきり言って検討がつかない。 「こなちゃん?」 黙っていた私につかさはどうしたの、と伝えた。 私は思っていたことを話した。 どう勉強したらいいんだろう。 誰かに教わりたいな、なんて。 つかさには悪いけど、あまりつかさに相談することじゃなかった。 だってつかさ、成績、私と同じなんだもん。 いいアドバイスは期待せず、心のわだかまりが少しでも消えたらいいな、なんて思って言った。 するとつかさは、私に言うのだった。 「こなちゃんに、いい家庭教師を紹介してあげるよ!」 ◇ その家庭教師は柊かがみさん。 つまり、つかさのお姉さんだ。 今は大学1年。 有名な大学に通う人だ。 依然、会ってつかさと3人で遊んだことがある。 ツンデレーな方だったなぁ…。 「あのね、お姉ちゃんすっごくわかりやすいから!」 つかさの話では、バイトがてら誰かの家庭教師をやろうかな、なんてこぼしていたそうだ。 その日私はよく考えてみた。 やっぱり、勉強、しなくちゃかな… でも、したいこと(ネトゲとかネトゲとかネトゲとか)沢山あるしなぁ… でもかがみさんが教えてくれる、そう思うと幾分抵抗が減った。 勉強に対して抵抗が軽くなる、そんなことは今まで一度もなかった。 これは、チャンスなのかも。 そう思い、私は決めた。 かがみさんに、家庭教師をしてもらおう。 ◇ 「久しぶり、こなたちゃん」 「久しぶりですねー、かがみさん」 土曜日の午後、早速私は教えてもらうことになった。 私の部屋にあがったかがみさん。 「じゃ、始めよっか」 早速始まる。 正直、かなりわかりやすい。 なんか、こう、私にピッタリな教え方とでもいうのかな。 あっという間に一時間たった。 お父さんがお茶とお菓子を部屋に持ってきたのをきっかけに、休憩になった。 「こなたちゃん、志望校は?」 「まだ未定…」 「そっか。まぁ、まだ時間あるしじっくり決めようね」 改めてかがみさんを見ると、美人である。それでいて、ツンデレ。 そんな家庭教師とのシチュエーション、これはフラグだよね…などとくだらないことを考えていた。 …私って不真面目だな~。 見ると、かがみさんはお菓子に手をつけていない。 「これ、嫌いですか?」 「あ…いや、そうじゃないんだけどね…」 否定するかがみさん。 …じゃ、なんで? 「いや、…だ、ダイエットしてるんだ…せっかく出してもらってるのに失礼だよね」 そう言って一口食べようとする。 …私は止めた。 「気にしないで残していいですよ?」 「でも…」 「ダイエット中なんだし…もしかして食いしん坊なんですか?」 「いや、違うよ?ていうかなんでそうなるのよ」 慌てて即答。 顔を赤くするかがみさん。 「別に隠さなくてもいいですよ?」 「ちーがーうー。いいでしょ、別にダイエットしてても」 ちょっとからかってみたくなった。 …ごめんなさい。かがみさん、許してね? 「今の反応、意味深…やはり」 「だから違うって!もぉ…」 「相変わらずツンデレですな~」 「相変わらずって何よ。私はツンデレなんかじゃないから、ね!」 「ムキになるとこがツンデレなんじゃん?」 「あーもう。違うとゆってるのに…というか敬語はどうした、敬語は」 「え~。敬語、無しじゃダメ?」 「…ま、いっか。つかさの友達だしね…」 「お、デレた」 「あーもう!馬鹿言ってないで再開するわよ、もう」 ふふ。かわいいな~、かがみさん。 ◇ 定期テストで信じられないくらい成績があがった。 いや、本当にビックリ。 「みてみて、かがみさん!すごいでしょ!」 土曜日、いつものごとく来たかがみさんに成績の結果を見せた。 かがみさんに教えてもらって2ヶ月。 こんな簡単に結果がでるとは思わなかった。 テスト結果を見せると、かがみさんはまるで自分のことのように喜んでくれた。 嬉しかった。成績がよかったのと、あとかがみさんが喜んでくれて。 「今日はじゃあ、お祝いしようか♪」 「え?」 お祝いって? 「今日勉強終わったら、2人でご飯食べに行こっか」 「…いいの?」 「だって、こなた頑張ったじゃない。たまには、ね」 …う、嬉しいよ…。 「ありがとう、かがみん♪」 「…か、かがみん!?」 頬を赤くするかがみさん。 「かわいいでしょ、その呼び名」 「は、恥ずかしすぎるわよ!やめてよね」 「じゃあとっとと終わりにして行こー行こー!」 「聞けよ!」 ◇ 夕焼けでもう闇に切り替わりつつある時間。 かがみさんは車を持っていて、いつもそれで家に来ている。 連れて行ってもらうのに、私は助手席に乗せてもらった。 車の中に入り、ふと気がつく。 ここ、かがみさんの匂いで一杯だ…。 そう思ったら、なぜかドキドキした。 「何食べたい?」 かがみさんの声で我に返る。 私は返事をした。 「…かがみかな?」 「ぶつわよ」 と、軽くわたしのおでこを小突きながら言った。いてっ。 「もうぶってるじゃん…」 「馬鹿言うな。てゆうか、ついに呼び捨てか」 「いーじゃん、もう♪」 「まったく…で、何がいいの?」 「お任せするよ。私はなんでも大丈夫だよ」 「…じゃあ、あそこにしよっかな」 そう言って、かがみは運転し始めた。 「どこに行くの?」 「私の友達のお母さんがやってるレストランで、パスタとかピザが美味しい所があるのよ」 「へ~。持つべきものは人脈だね。こうゆう時、迷わず行けるね」 「確かにそうね。あんたも減らず口叩いてないで、今のうちから友達沢山作っときなさいよ」 「ま、かがみんの場合飲食店の友達が多そうだねぇ」 「な、なんでよ?」 「ほら食いしん坊だからそうゆう関係の人が集まってくるのかな、なんて」 「うるっさい!」 ◇ きれいな外観の建物。オシャレ。 第一印象は、それだった。 着いたレストランは、とても上品だった。レストランというより、喫茶店に近い。 店内へ入ると… 「いらっしゃいませ…ってかがみちゃん!久しぶりね」 「どうも、おばさん。お久しぶりです」 「たまにはみさおと遊んでやってね…なんて、もう子供じゃないのに、昔のくせで…」 みさお、という人のお母さんなのか。 …なぜか、ムカムカした。 2人の会話を聞いて、なぜだか嫌な気分になった。 テーブルにつく。 私たちは2人、同じパスタを注文した。 私は聞いた。 「みさおさんって、誰?」 「私の中学と高校の同級生よ。とっても剽軽」 ますますムカムカするよ…なんでだ? 自然と口から質問がでる。 「今も会ってるの?」 「たまにね。大学は違っちゃっても、友達だしね」 “友達”。その言葉を聞いて、わたしのムカムカは消えていった。フェードアウト。 なぜか、よかった、なんて思ったりした。 「でも、その人かがみんのこと絶対好きだよね」 「え?なんで?」 「だってかがみ美人だもん」 ボンって音がするくらい、赤くなるかがみ。まさか自覚無しだったのか? 「何言ってるのよ…何も出ないわよ」 「でも、事実だよ?」 「うぅ~。あ、ありがと…。お世辞でも嬉しいよ」 だからお世辞じゃないって。赤くなるかがみは、めちゃめちゃ可愛らしかった。 「で、なんで日下部が私を好きなのよ?」 …日下部?あぁ、みさおさんのことか。 「だって、中高一緒で今も会ってるなんて…絶対そうでしょ」 かがみは怪訝な顔をして、そしてすぐに合点がいった表情になった。 「日下部みさおは女の子よ?」 …え!? あれ、そうなのか。 「そうなんだ…なんだ、勘違いしてたよ」 ふふっと笑うかがみ。 「まあ確かに男の子みたいな名前よね」 なんだ、そうだったのか。 だが、また疑問が浮かんだ。 浮かんだ?いや、ずっと気になってたことだ。 それは… 「じゃあさ、かがみ、今好きな人いる?」 心臓はなぜか、暴れていた。 ドキドキというかなんというか。 かがみが言葉を紡ぐ。 「…いないかな」 …そうなんだ。いないんだ…… 私はなぜか、ひどく安心した。 なんでだろう。 さっきから、私はどうしちゃったんだろう…。 答えが見つかろうとした瞬間、 「おまたせしました♪」 と、日下部さんのお母さんが前菜のサラダを運んできた。 ◇ 非常に美味しかった。 また、来たいな。 そう思えるお店なんて久しぶりだった。 今は帰り、車の中。 「こなた、あんたは今好きな人いるの?」 突然、助手席にいる私に言うもんだから、ビックリしてしまった。 そして、好き、という言葉に私の体は反応した。 「い、いないよ」 「お、なんだなんだ~?微妙にどもってるぞ?」 「いないってば~」 「ふふ、どーだか」 気づいてしまった。 私は、あなたに、 ――柊かがみに恋している、と―― だからあんなに日下部さんに対してムカムカしてたんだ。 嫉妬、してたんだ…。 かがみは、突然黙った私を怒ったと思ったのか、言った。 「…ごめん。嫌な気分にしちゃった…?」 申し訳なさそうに、不安げに言う。 私は慌てて、 「そんなことない!」 なんて言ったけど、あんまり効果はなかった。 「やっぱりあんたは弄るのが好きみたいね」 「まあ…そうゆう性分なのかな。かがみが弄られるの好きみたいに」 「なっ…。…もう突っ込むんめんどくさいんだが…」 「かがみん」 突然私が真面目な声を出したので、かがみは怪訝な顔をする。 「今日はありがと…。また、誘ってね」 そう言うとかがみは、すぐに莞爾として笑い、 「もちろん♪」 といった。 その笑みは。 とても。 とても、綺麗で…。 輝く、笑顔。 ますます私の心は、高鳴るのだった。 ◇ また土曜日、かがみはそう言って帰っていった。 私は果たして土曜日、同じようにかがみに接せられるのかな…。 そんなことを思いながら、家の前で去り行くかがみの車を見つめていた。 いつまでもそうしていて、見えなくなったところで、私は家に入った。 恋のアクセルへ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-05-31 07 26 52) まだ保管されてないけど避難所に続編あるよ! -- 名無しさん (2008-12-24 01 27 44) このアイデアはなかったなぁ‥‥ 続編期待です!! -- 名無しさん (2008-12-24 01 15 53) 続編期待して待ってます! -- 名無しさん (2008-12-22 21 15 56) 激しく続編希望 -- 名無しさん (2008-12-22 20 02 01) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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一週間前、隣のクラスの男子から手紙をかがみが受け取っているのを見た。 くわしくはよく知らない。けれど、ため息がその後増えたってことぐらいは知っていた。 青と黄色が目立つお店の看板が、お日様のひかりを浴びてぴかぴか光っていた。 私は今日の戦利品(臨時収入があったので今日は少し多め)を両手いっぱいに抱えて うす茶色の階段をうきうきと、それでも慎重に1歩1歩おりていく。 後ろをふと振り向くと、付き合ってくれたかがみが今日買ったばかりのラノベの最新刊をぱらぱらと捲っている。 「階段なんかで読んでると、つまづくよ?」 「・・・わかってるわよ。」 「もー、せっかちなんだから。かがみは」 まー、気持ちは分からんわけでもないんだけどね。最新刊は気になるもんだし からかうつもりで少し意地悪く笑うと、かがみはふん、と罰が悪そうにぱたんと本を閉じた。 閉じられる間際のラノベが立てた音はすこしつめたい。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 で、そのまま沈黙。ふう。 なんだかね、こういう空気は好きじゃない。言葉での説明は難しいんだけど一番近くて簡単な言葉は気まずい、だと思う。 かがみは私があの現場を目撃した事を知っている。話が終わった後、ぼけっと見ていた私の目と彼女の目とが合ってしまったのだった。 しょーがないよね、私はあわてて目をそらしてしまった。しばらく経ってちらりとかがみを見たら、あっちも気まずそうに目をそらしていた。 そんな感じのかがみを見たら、なんであろうと突っ込むのが私の習慣であり本分、そして逃れられぬ運命! ・・・・だったはず、なんだけど。口についてでたのは『よかったじゃん』というふつーの7文字。 でもそのときの夕日に照らされたかがみの顔が忘れられない。 そのくらい、あの7文字はあんなにもおもく、放課後で騒がしいはずの廊下に凛とひびいたのだった。 それから、私たちはふたりになると大抵こんな感じだ。気まずい。 それでいてなお、ふたりだけになりたがってもいるのか、一緒にいる機会は増えていった。 聞きたいことがたくさんあるのに、なかなか聞けないってのはもどかしかった。 なんか痒いところに手が~って感じで。 けれど、それよりも断然心地良い気分も味わえるから、私はかがみといたがるのかもしれない。 そんな彼女は私にとってとても良いともだちで、 それならば、かがみのことは黙って見守るのが最善なんだろう。 なのに 私は、そうしたくなかった。 理由なんか知らない。あ、その男子のことを私も好きだった。とか、そういうのはないから。名前知らないし。 『どうするの?』とか、まじめな話は嫌だからおちゃらけて 『今時ラブレターかあ、萌えの基本だね!女子だったら☆』 そうふざけてもいい。とにかく私の知らないままこのことが終わるのは嫌だった。 嫌ということばには語弊もあるかもしれない。 こう、複雑なんだけど。体じゅうになんだかどろっどろした黒いものが蔓延していく感じ。 どうすれば溶けて消えてしまうのか。私はバカだから分からなくて、たまっていくばかりだった。 最近はかがみのつくため息にさえ、それがどこかから沸いてしまうのだから重傷だ。 「かがみがハッキリしないからダヨ・・・。」 「は?・・なんか言った?」 「別に~~~~☆」 怪訝そうにわたしを見つめるかがみにふっと嘲笑を送って、とりあえず怒らせておく。 怒らせる理由?ないけど、そんなん☆←しつこい ええっと、そんなことより話題だ、話題。 なんにも話さず無言でいるなんて他人みたいだし。一緒にいる意味ないよね。 黙って意思疎通しあえる人はいいけどこっちはそうもいかないんだ。 きょろきょろ、話題を探す私の目の中に入ってきたものといえば 「可愛いよね」 「えっ?」 ラノベの表紙・・・そんなんしか無かったんだヨ~。 ぶつぶつ文句を言っていたかがみは良く聞こえなかったみたいで 何?と聞き返す。 せっかく話題提供したのに!と私は少しいらだちながら 「だから」 それ、という意味でかがみの持っているラノベを指でびしっと指し示す。 「かわいーな、と思って」 「ええっ!!!?」 突如、かがみが変な大声を上げた。 かがみの手から落ちたラノベが階段をばさばさと転げて私の足元まで落ちる。 「ほえ?」 唖然とする私。え?なにかしましたっけ。かがみは真っ赤になって落ちたラノベを見つめていた。 口を大きく開けて、あうあうとたまに小さく動かすかがみを、私は不思議そうにじっくり眺めた後、 小さいビルおよそ3分の1階分を落下して少し可哀想な姿になった新品の本をのろのろと拾って、はい、と差し出した。 頭ではまだなにかしたっけと、先ほどまでの行動を繰り返し思い出している。うーん? かがみもかがみでわれに戻ったのか、「お、おう」と平然とした態度を作って受け取った。 でも、顔はまだ赤い。そんで私はその理由をしらないから、たぶん赤くはないんだろうと思う。 だから、この理由はしらなくてもいいかなとしばらくして考え付いた。 こんな事があって、行けども行けども沈黙の道は続いている。終わりは必ずあるけども、けものみちより辛いよ。精神的に。 せっかく話題を提供してあげたのに、そりゃないんじゃないですか?とかがみのことを少しうらんだ。 じと目を送っても、彼女はまだ引きずっているのか耳を赤くして、私のほうを向こうとしない。むかり。 じゃ、困らせてやろう。と、馬鹿なことを考えた私は意地悪のつもりで かがみの腕にぎゅっと抱きついた。 瞬間、かがみの肩がびくっとなった。驚いたかがみはほんのり赤くしていた顔をもっと上気させて、 ていうか煙吐きそうなぐらい真っ赤にして、私に噛み付いてきた。 「にゃ、なによ・・・・っ。」 「(・・・・今噛んだ)ねえ、かがみ。」 「なに?」 「さっき階段でなに考えてたの?」 最高の笑顔(嫌な意味で)で言おうと思ってたんだけど、変だな 私のいやらしくゆがんでいるはず瞳はかがみでも、だれでもなく、ただ青い空をうつしていた。 真っ赤なかがみが、う、と詰まる。絡ませた腕がゆらゆらと揺れている。 彼女が腕をはずしたがっているのを感じて、私はさらに力を込めて抱きついた。 「恥ずかしいこと考えてたんだ。」 「なっ!?」 「男だ・・・ぜったい男だ・・。」 「・・・・・こなた?」 くふふ、と笑って言うつもりの言葉が、意に反して、つめたく私の口から吐き出されていった。 はっとしてかがみの顔を見ると赤い顔がだんだん凍りついて。私はあわてて取り繕うけれども あれ?なんか私必死な人にしかなってないよ? 「こなた」 「かがみさぁ、どーすんの?」 変わっていく顔を見て、私は目をあわせられなくなった。 だって、嫌な顔すんだもん。あの時と同じで、なにか言いたげでまじめな視線。 その顔を見ると、なぜだか胸が苦しくなった。 だから、目線を下におとして今までいえなかったことを私は漏らしてしまった。 「なにを?」 答えたかがみの声は少しうわずっている。 むりやり落ち着かせようとしている声はなんだか少し落ち着いた。 「少し前に手紙・・・もらってたやつ。あれさーやっぱりラブレターっしょ? やったねかがみ初ラブレターじゃん♪だから・・・さ、少し気になって。 ほんとに少しだけね。や、いまどきラブレターなんてなかなかないしさー☆」 あ、だめだ。めっちゃ、うわずってる。てかどうして手の震えが止まらないんだろう。止まれ止まれ、止まってよ。 どうしても駄目なら、それがかがみにはどうかつたわりませんよう。 どこかには落ちているであろう流れ星に勝手にお願いをしておいた。 どーせ勝手だらけな願いばかりなんだから一つくらい増えてもいいよね?許せ☆ かがみは、私の調子に気付いているんだかいないんだか 一呼吸置いたあとにぽつりと簡潔に言った。 「デートしてほしいんだってさ。明日。」 もっと強く抱きついたなんて、たぶん気のせいだと思う。 それでも、どうしても『良かったね』の一言がいえなくて黙り込んでいた私。 「・・・それで、ずっとお願いしたかったことがあるんだけど」 そんな私の手に手を重ねたかがみの顔を見ることが出来なかったことは、一生の後悔。 そのときはただ、あったかいなと寒くもないのにぼんやり思ってしまった。 真っ赤だけど大真面目な顔をしてかがみは私にひとつだけお願いをした。 「一緒について来てほしいの。明日・・・デ、デートに」 私がその言葉を理解するのにかかった時間、プライスレス。 いや、本当にはかりしれない時間を使った後。わたしは 「は?」 そんな間抜けな声を出したのだった。 デートに突如知らない他人が入るとか、ギャルゲだったらその時点でクソゲー決定 都合の良いゲームではそんなことはほぼ確実に起こらないわけだけれども。 現実でだって非常識だということぐらい、私にだってわかること。 この日はなんだか曖昧なお天気。あつくも、さむくもなく。 私のもやもやした気持ちをそのまま表したように灰色の雲が太陽をおおっていた。 駅の前、私の隣で落ち着きなく立っているかがみの服は うちに遊びに来るようなラフな格好なんかじゃなくて、洒落た薄紫のワンピース。 大人びた服装は珍しくて綺麗だったけど なんとなくいつものほうが好きかな、と思った。 「なんでだろうね」 「え?」 かがみがきょろきょろと回していた目を私に向けた。 その声や目には恐れにも近い不安の色が感じ取れる。よっぽど緊張しているようだ。 「かがみ。そーんな暗い顔しちゃそのワンピースに失礼だよ? せっかく年に数回しか着ないお出かけ用なのに。はーい、りらーっくす、りらーくす」 ぬふー、そんな息を吐き出しながらわたしが言うと、 かがみは小馬鹿にしたような目で私を見て、けれど案外素直に深呼吸をした。 「……そう言うあんたはまったく変わらんな。ジャージで来ないだけましだけど」 「そりゃかがみのデートだもん。私関係ないじゃーン?」 「…………」 何も考えずに言った言葉にかがみは、数秒固まって、それから気まずそうにうつむいた。 (あ、あれ?)予想外の反応にすこしだけ私がひるんでいたら 忘れものを思い出したかのようにかがみは頬を赤くした。 「う、うるっさいわね」 「……」 とってつけるように言ったかがみ。 わたしはからかう気をすっかりなくして、かがみはかわいいねぇ、と 女子のおきまりのような冗談を返した。 で、また訪れるいつもの気まずい沈黙。 つまらなくて隣を見るとかがみはまたそわそわを取り戻していた。 こんなふうにしているかがみは、たまにあるけど、なんだか子供っぽいと思う。 つかさのお姉ちゃんとしてのかがみも、私の悪友としてのかがみも、今ここにはいない。 子供っぽい彼女は、なんでか少しいらいらするけど、それでもどこかでかわいいと思ってた。でも ……そんなかがみも、いつか彼氏とかに取られちゃうんだね。 頭の中で、私自身の驚くぐらい意地悪い声がささやくように私に告げた。 近い未来かもしれないその時を想像してみる。相手は同じ学校か。うーん。 いつものように一緒にはお弁当、食べられなくなるのかな。 可愛げのない手作り弁当二人で食べたりして、あーん…は無いか。 帰り道では「さきに帰ってていいわよ」なんて私たちに言って、もじもじと彼を待ってみたり、 私は、つかさやみゆきさんと三人でごはんを食べて、時々色惚けたかがみをいじったりするのだ。 うん、楽しそう。かがみはきっともっとかわいくなって……… 考えれば考えるほど私の中には最近おなじみの感情がどろりとこみ上げてきた。 さみしい?憎らしい?悲しい?それともこの感情も嬉しいの一つだったりするのだろうか。 さまざまな感情はどれもこの気持ちにほんの少しずつ当てはまる気がした。 けれどどれもパズルのようにはぴったりと重ならないらしかった。 「………ふぅ」 もどかしさをはき捨てようと深く吐いた息と、緊張した誰かの声とがかさなった。 重なっても綺麗に溶け合うわけじゃないんだよね。 そう何かを諦めたように思いながら、私は笑顔をつくると肘でかがみをつついた。 「がんばるんだよ、かがみ」 「う、うっさい」 腕を動かした拍子に、普段は持ってこようとさえ思わないケータイがポケットから落ちて かしゃんとなんだかさみしい音をたてた。 「デ、デート?」 「そ、そう!あんたもついてきてって言ってんの!!」 「何言って」 「あんたが行かないなら、あ、あたしも行かないから!」 「は、はあ」 大丈夫だろうか、頭。少しいやかなり心配。 「かーがーみ、落ち着いて」 真っ赤になりながら『ついてこい』と同じ言葉を繰り返すかがみ。 せっかくの休日。ぶっちゃけ他人のデートに付いていくとか有り得ないし。 じゃ、『いかなきゃいいじゃん』って言えばよかったんだよね。 なのに結局は 「…わかった、行くよ。」 「や、約束なんだからね!」 「うぃうぃ」 ~絶対に、一人にしないこと!!~ 指きりまでして、ご丁寧に約束を取り付けられてしまったのだった。 ◇◇◇ 先ほどから小雨がぱらついている。 先ほど遠くに吹っ飛んでいったケータイが、私を呼んで、 いまだに場にそぐわない喧しくて明るい着信音を奏でていた。 そういえば、コレ随分昔のアニソンだ。なつかしい。 ふだん触らないからネ…。もう解約しようかなぁなーんて、 アスファルトに押し倒された私は、かがみに殴られながら、ぼんやり思っていた。 あの、なぜに私は殴られているのでしょうか?そんで なんでかがみは泣いているんでしょう。 私たちのそばでは手紙の男の子がおろおろとしている。 さっきまでは汚れ一つなく光っていた白いTシャツが彼の鼻血で真っ赤になっていた。 かわいそうに、キレたかがみを止めようとして殴られたのだ。 こんなに騒いじゃって、周りの視線も集めまくったし、 もうそろそろおまわりさんとか来ちゃうカモよ? なのに肝心のかがみは泣きじゃくって、わたしの胸をばしばし力任せに殴るばかりだった。 「あだっ、いだっ、ぐふっ、ひでぶっ!」 殴られるたびに私の口からお世辞にも上品とは言えない声が漏れる。結構本気で、かなり痛い。 かがみ、悲しいけどねここ骨と皮ばっかりなんだよ!肉とかないの! どっかのたゆんでぽよんな人みたいにはじき返したりできなああうらやましいなぁ!!って …そんなこと考えてる場合でもなかった。 「かが」 「嘘つき!」 名前を呼ぼうとした私の声をかがみが叫んで掻き消した。 どこのキャラよ。かがみ。確かに最近はやってるけどさ。 冷ややかな軽蔑にちかい視線を送るけど、かがみは殴る手を休めない。 「だから痛いってば!どしたのかがみ!!?」 かがみがひどく興奮しているから私は少しだけど冷静にいられのたかもしれない。 けど、手に負えなくなったかがみに心の中では怒ってる。これでも だって今日はボロも出さず良い友としてふるまっていたハズ。 休日にわざわざやって来てだよ?バカみたいに空気読んで茶化してみたり、むしろ超偉いほう。 嘘だって吐いてなんかないのに…「こなたの嘘つき!!」 「………はぁ?」 何それ? あまりの理不尽に対する怒りは爆発寸前。 冷静さなんてどこかに掻き消えてしまいそうだった。そして 「約束破るなんて、人じゃない!!!」 「……なにがじゃああああ!!!!!」 かがみのその一言がきっかけで限界突破した私たちは 通報でやって来たおまわりさんが数人がかりで止めてくれるまで 往来のど真ん中での大乱闘をやってのけたのだった。 そもそも、私は思っていたより優しいじゃないかと、デートの間自画自賛していたくらいだ。 相手の男の子は結構カッコ良かったし、数十分だけいっしょにいただけだけど かがみのこと、ほんとに好きなんだって分かった。 かがみへの細かい気配りが、第三者の私から見てもわかるもん。 あ、ちなみに私のことはかがみが伝えてなかったみたいで驚いてた。 最初は気まずそうだったけど打ち解けてくれて、いやー逆にほれぼれしちゃいますねーっ って感じ。すごくいいひとなんだ。このひと。 かがみもかがみでさっきまでとはうってかわって時間が経つほど どんどん気楽に話すようになってたし、これならオッケー? 私は彼らを茶化しながら、こっそり協力者にメールで合図をした。 「い・い・よ……っと。」 バイト先の子から嘘のヘルプをもらって、さっさと帰るぞ☆作戦。 合図をすると約束通りすぐに彼女は電話をかけてきてくれた。 大きめの着信メロディに、かがみたちが振りかえるのを確認したら 通話ボタンをおして、作戦開始。 「もしもし?」 「……どうしたんですカ?」 向こうの第一声は随分といぶかしげだった。 「は?」 「イヤ、声が…まあいいか、あの、スグに来てくだサーイ」 それから私と彼女はそれっぽいことを適当に話して電話を切った。 「こまったねー」 わざとっぽく顔も顰めたりして、本当に大変なのだと言葉以外でも伝える。 でもいまいち話を理解できなかったらしい彼らに、こほんと咳払いをして事を説明した。 「バイト先が大変なんだってさ」 「こなた?」 「私じゃなきゃ駄目って言うんじゃ、しょうがないよね?」 「……え」 「ごめんね~、じゃ、あとはふたりでよ・ろ・し・く~♪」 にやりと笑うと、男の子の方はなに考えたのか、真っ赤になった。 ……がんばれ、少年★上手くいったら一回ぐらい殴ってもいいよね? かがみはなんだか良くわからない表情で、ぼーっと私を見つめている。 「……それじゃ」 私は彼らに背を向けると、そのまま振り向かずにまっすぐ歩いた。 こっち側は駅じゃないけど、問題ない。どうせ、これからは暇なんだから。 そこらへん寄った後、家に帰って寝よう。その後ネトゲだ。うん。 「私って……けっこーいい人だったり?」 歩き出してから数十歩ぐらい。私の口はひとりでにそんなことをつぶやいた。 雨が一粒ぽつりと鼻に当たる。 「これもなかなか良い萌え要素……いやはや、また需要が上がっちゃうネ☆って誰のだよ!」 かがみが、突っ込みを入れるはずのところを自分で突っ込む。 かがみのあきれ顔が瞼のうらにきれいにうつった。あんたにはついていけんとため息をつく。 また、雨がぽつりと当たる。こんどは2、3粒同時に。 「………やだな、一雨くるのかなぁ。人気者が風邪ひいちゃだめ…だよねえ?」 ぽつ、ぽつ、ぽつ。雨はどうも続くらしい。 かがみの呆れ顔が、ぐにゃりとゆがんだ。目がどうにも痛い。 まばたきをし忘れていたことに、ふと気がついた。 「…………駅のほう向かって帰れば……よかった…かなぁっ」 どうしようもなく胸がつまって泣きたくなった。とても、息がしづらい。 「……………っ」 私は自分でもなんて言ったか分からないほどの短い言葉を、無意識にそしてちいさくつぶやき、 もう見えないはずの姿を見たくて、今更後ろを振り向いた。 刹那、ゆがんだ風景にうつったものは握りこぶしを作って私に突進してきていたかがみの姿だった。 景気よく空中にふっとばされた自分の体が地面に落ちるまで 私は殴られたんだとも思いつかなかったし痛いとも感じなかった。 別の感情で胸がいっぱいになったのだ。 …私としてはこんな気持ち認めたくもない、しかもすぐ怒りに変わったし。 その上ほんの数秒の間だけだった。 なのに私はあの時たしかに、 「かがみ…?」 からだの全てで嬉しいと感じたのだった。 こってり絞られたあと警察からようやく解放されて、降り始めからは大分時間がたったというのに、 まだ雨は止む気配もなく、ぱらぱらと降っていた。 罪のないあの男の子は早めに釈放された、いや、本当に悪いことしたなって。 彼は警察のいた間、ずっと泣きそうな顔でうつむいていた。 傘なんて持っていないのに、濡れながら二人で歩いた。 雨のつめたさを紛らわせるためにどちらともなくつないだ手があったかい。 殴りあったトコは痛いし、泣いたせいで目は真っ赤、おまけに濡れてびしょびしょで、なのに 心はひどくかるくなったんだから不思議だ。怒鳴ったからかな? ドロドロしたものが消えて、新しい、やさしい気持ちが入り込んでくる。 「なんかさー」 「うん?」 「寒いって感じるの、久しぶりダヨ」 「そーねー、夏ももう終わりか」 「うん」 「でも」 かがみが、私の手を少し強く握る。 「あんたの手はあったかいわね」 そうして優しく、嬉しそうに私に微笑んだ。 私の体はあったかいを通り過ぎて、かあーっとあつくなっていく。 「うん、ぽかぽかする」 でもそれがなんだか気恥ずかしくて、 私も少しだけ握る手のひらに力を入れた。 しばらくそのままだったけど、かがみの白っこくて細い指を見ていたら 私はふといいことを思いついた。 「かがみ」 「こなた?」 私は不思議そうなかがみの正面にさっとまわると、彼女の左手の小指と 自分の小指とをゆっくりと絡ませた。うん、これでよし。 かがみはよくわからずに、え?え?と焦った声を出している。 私は息をおおきく吸い込むと思いっきり声を出した。 「ゆーびきーりげんまん!うそついたらはりせんぼんのーます!!」 かがみも一緒に歌ってよ! そう笑顔で言うと、目をまるくしていたかがみは私につられて笑顔になった。 「「ゆびきった!!」」 こんなに楽しいことも最近なかったなぁ。ひさしぶりに私は子供みたいな大声で誰かと笑いあった。 かがみは、まだ絡ませている小指をどこかいとおしそうに眺めて、 (そんな目で見ていることがなんだか照れくさくて)体を火照らせた私に聞いた。 「でも、なにを誓うのよ」 「約束だヨ!」 ~絶対一人にしないこと!~ 「あの約束、破っちゃったから」 約束を二度と破らないって約束。 ごめんね、小指を絡ませたかがみの左手を私の右手でそっとつつんでそう言うと、 今度はかがみが何故か真っ赤になったあと、 泣きそうな顔で、けれどきれいに笑ってみせたのだった。 「それが、かがみと一番はげしく喧嘩したときの話」 「それって付き合う前の話?あとの話?」 つかさが眠そうな目を時たまぱちぱち瞬かせながらぼんやりと私に聞いた。 もうだいぶ体がソファに沈んでいる。このソファ気持ちいいもんね。今日は時間も遅いし。 私たちは今、かがみの帰りを『私たち』の家で待ってるところ。 「二週間後に告白されたんだよね」 私はかがみの大切な赤ワインをガラスのコップについでちびちび飲みながら。 かがみのベッド下にあったアレでナニで薔薇っぽい本をぱらぱらめくった。 「色々あったんだけどその話も聞く…?ってかがみ、おかえり~☆」 「おかえり、おねーちゃん」 ドアの開く音に振り向くと、話のメインヒロインが面白い顔をして 私の傍に丸まっている彼女の双子の妹を見ていた。 「ただいま…って、なんでつかさがここにいんのよ……」 「泊まりにきたんだよ~」 つかさは「おどろいた?」と寝ぼけ眼でにこにこしている。 「ふうん」 かがみはかわいい妹の用意したちょっとしたビックリが嬉しかったのか、 いつもよりは上機嫌に上着を脱ぎ捨てた。 つかさも姉を見れて満足なのかしあわせそうに眠りの世界に落ちていった。 「……むぅ」 その様子に少しだけやきもちをやいた私はたった今電源の切れたばかりのつかさの頬を 人差し指で起こさないように軽くぷにぷにと突く。 「つかさはかわいーよねー。たべちゃいたいくらい」 酔ったふりして、ふふふとやらしー笑みをこぼすとかがみが露骨に嫌な顔をした。 「……つかさとなにしてたの?」 「今はかがみの初デートについて語ってました☆!!」 「何話してんのあんた!!? てかつかさの前でそんな本読むなぁぁああああ!!!!!」 「ちなみに朗読会はすでに終わった・・・」 野太い声で言うと、かがみは全て終わったかのようにまっしろな灰となった。 まあまあ、と私はピンク色の本を放って、疲れきって座り込んでいるかがみに抱きついた。 「あんたといると疲れが取れる気がせん。離れろ。ついでに暑い」 「うぐ、つれないこと言うネ。 昔はあんなにかわいらしかった私の嫁はいったいどこに!? 初デートらへんのころはよかったなぁ!!かがみ→→→私って感じで!」 ふぅー、と悲しげに言ってみせると(気分は悲劇のヒロインだ。) かがみがあんたなにいってんの?みたいな呆れ顔で言った。 「……あんただって、あのときは私のこと好きだったでしょ」 「へ?」 思わず気の抜けた声が出た。あれ? 好きだなって気持ちが芽生えたのは告白された時からのはず。 「……初デートの時はともだちだったヨ?」 あのどろどろした気持ちは、親友が遠くに行ってしまうかもしれないと思ったときの寂しさだ。 そう言うとかがみはきょとんとした後、とても愉快そうに笑った。 今度は私がきょとんとする番だった。 「さすがにそんなあやふやなのに告白なんてしないって。リスク高いのに。 あのデートはあんたが、わたしのこと好きだって確認するためにOKしたんだから」 かがみは笑い過ぎでこぼれそうになる涙を指で押さえながら、勝ち誇ったようにそう言った。 「え、ええっ!?」 「あんたさ、待ち合わせ場所に来たときからずーっとすねた顔して私の後ろについて来るんもんだから、 これはいけるかな、って大分自信持ったときに限って帰ろうとするじゃない?…がんばれ…とか言うし…。 振り向きもしないでちっさくなってく背中見てたら『なんでよ!?』って……なーんか腹立ってきちゃってね」 思わず殴っちゃった、と笑うかがみさまの顔はとっても輝いてました。 あれ?友達…ともだちじゃなかった?でも、友達だけどなんかイライラしたような、 私の余裕がだんだん無くなっていく。あれ?あの時から私………かがみのこと? 私は開いたままふさがらない口をぱくぱくさせて言う事を捜したけれど、 こんなにも卑怯で、ずるくて、ツンデレで、ダイエット下手で、そんでもって 「…………むぅ」 本当に私のことが好きな、この策略家にはろくな反撃を思いつかなくて、 しかたないからくっついていた体を離してそっぽをむいてやった。 かがみのくすくす笑う声が、真っ赤になった私の耳になんだかくすぐったい。 「それじゃ、あの人本当に可哀想だよ」 「でも、そのおかげであんたがいま私のそばにいるならいいわ」 勝手だよ、そんなの。口を尖らせて言うとかがみはそうね、と苦笑いした。 私は、今どんな顔をしているんだろう。もうよくわからないや。 恥ずかしいし、むかつくし、あの子にごめんねって気持ちもある。 でも、もやもやした気持ちの中には幸せって気持ちのカケラがしゃくだけどやっぱりあって、 そんな私をかがみは変な顔と評してから、いつもより優しいキスをした。 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-16 02 11 54) 最高のこなかがSSですね -- 名無しさん (2010-01-28 22 28 07) gj -- 名無しさん (2009-12-20 04 03 18) これ良い・・・てか最高!! -- kk (2009-12-19 21 16 53) まだ出始めなのに上手いですな… -- 名無しさん (2009-12-19 19 44 07)
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268 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/18(金) 21 00 20 ID 06gy7yYk かがみに「こなたと会っちゃ駄目・連絡取るのも駄目」の刑を授けて様子を見てみたい 269 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/18(金) 21 09 52 ID PfUGAGkk 同じ刑を、こなたにも与えてみたい、かがみ禁断症状、ツンデレ禁断症状wwwww 270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/18(金) 21 10 31 ID GvipvYM6 268 かがみにとっては死刑宣告にも等しいな そしてそれが解除された後のこなたもただでは済まない 我慢していた反動が凄まじそうだ 271 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/18(金) 21 18 39 ID d+jNafvH 270 解除されたらあまりの反動で かがみ「がおー」 こなた「きゃー!(←逃げない)」 位、大変な状況になる。 272 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/18(金) 21 25 45 ID KmprnZTT かがみ「休み中あんたの顔を見ないで済むと思うとせいせいするわ」 こなた「うん、私もー!」 かがみ(…え!?) 数日後 (電話) かがみ「ちょっとアンタ!たまにはうちに遊びに来なさいよ!」 こなた「あれ~♪かがみんどうしたのかな~?(ニヤニヤ)」 274 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 05 31 15 ID U1OmnjmS 272 会えない寂しさの耐性はこなたのほうが上(気持ちを外に出さない)だけど 限界超えた時の感情のたがの外れっぷりはこなたの方がひどいよな。 275 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 06 15 22 ID GEYH/PG5 274 かがみは性的な方向で暴走して大変で こなたは子供みたいに泣きじゃくってずっとひっついてそうで大変だ 我ながら二人のイメージの差がw 279 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 09 16 53 ID h2Sqdmk5 かがみ「こちらかがみ。こなたがあまりにも可愛すぎる。性欲を持て余す」 280 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 09 18 48 ID ATaYNDhz いやぁ、手を繋ぐだけで大満足する 我慢我慢のかがみんも乙なもんだよ 282 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 11 15 09 ID oHsle4QB 274 修学旅行の時のこなたを思い出すんだ あんな一日にも満たない時間であれだと考えれば、長くなったらどうなることか 283 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 12 32 29 ID emwcyBJA 268 1日目 今日、「こなたと会っちゃ駄目・連絡取るのも駄目」の刑を受けた。 私をばかにしやがって。 2日目 昨日から、つかさがこなたに見える。 いったいわたし どうな て 3日目 みんな こなた みえ うれし です。 4日目 こな うま 285 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 13 02 31 ID UwXDQLsa 1日目 今日、「かがみと会っちゃ駄目・連絡取るのも駄目」の刑を受けた。 淋しがり屋のかがみの方から会いに来るに決まってるね 2日目 …もうすぐ今日が終わる。明日になればかがみの 方から来るよ 3日目 …かがみどうしたの? 私の事嫌いになったの? 4日目 会いたいよ、会いたいよかがみ~ もう許してよ。なんでもするからかがみに会わせてよ… 5日目 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ かがみお願いだから私の事嫌わないで… いい子にするからなんでもするから だから、だから、かがみと逢いたいよ 286 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/19(土) 13 47 59 ID +R9rKjDs 泣いた