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制圧部隊は狩り尽くされた。獣たちの歯牙にかかって。 そして獣たちは復讐を果たすため、この管理区画へ向かっている。 所長室へ研究員のひとりがそれを慌てて知らせに来た。 それを聞いて男は意味ありげに歪んだ笑みを顔に浮かべてみせる。 「所長、お気を確かに…」 心配した部下たちがそっと声をかける。 しかし、男は決して気が触れて笑い出したのではない。 これで邪魔な制圧部隊は消えた。一人残らず! もう誰も”主”に事態を報告できるものはいない。”主”は制圧部隊の長からしか報告を受け取らないからだ。 こんどこそ私の椅子を脅かすものは完全になくなったのだ。 「残すは脱走した失敗作どもだけですね。いいでしょう……ここまで昇ってくるがいい。一人残らず処分してあげますよ! はっはっははははは!」 部下たちは様子のおかしい所長に戸惑うばかりだ。 だが何もおかしいことなどない。なぜなら、これこそがこの男の本性だったからだ。 子は親の背中を見て育つ。逆を言えば、親もまた子に似ているのだ。 そう。根本的にこの男は同じなのだ、頭一つだけを残して消えてしまったあの男と……。 しかし、その事実をこの男はまだ知らない。 「さぁ、おまえたち。直に失敗作どもはここへ攻め込んでくるでしょう。すぐに迎え撃つ準備を整えるのです!」 そして男は笑う。 愚かにも勝利を確信して笑う。 傲りは身を滅ぼすとも知らずに。 『神への冒涜』九人目「解放軍 / Go our Way」 アダモフの死を乗り越えて解放軍は行く。アダモフの遺志を継いで我らは行く。 目指すは3階管理区画。目的は研究責任者。 今こそ復讐を。 アダモフの分も重ねて倍にして返してやるのだ。 東西二手に分かれて階段を駆け上る。 左右から挟み撃ちにしてやる作戦だ。 段を上り切り一気に攻め込む。その先に待ち受けるのは―― 「おや……早かったじゃないか」 「なんだ、合流してしまったのか?」 見知った顔に突き当たった。 「まさか何もないってわけじゃないだろうな。ここまで来てそりゃねぇぜ」 東西の階段から上って突き当たるまでは一直線の一本道。 途中に扉やそれに準ずるようなものもなかった。 「そうだ、たしかここの見取り図を拾ってただろう。あれは今誰が持ってるんだい?」 メルが聞くと同行していた仲間のキメラの一人が見取り図を取り出した。 いや、三人と言ったほうが正しいかもしれない。 「わたしらが持ってますよ、姐さん」 山羊の頭が答えた。 「ミランダ、例のやつを頼む」 続いて獅子の頭が言う。 「あいよ、このたてがみの中にしっかりと……ほら、これさ」 そして蛇の尾が見取り図を取り出してメルに渡した。 ”彼ら”は1つの身体に3つの頭を持つ。そしてそれぞれが別々の意識を有する。 すなわち、獅子の頭のホセ。山羊の頭のアンドレ。そして蛇の尾のミランダ。 彼らはいわゆる典型的なキメラだった。 研究者の手によって戯れに融合させられてしまったのかもしれない。 三人がいかにして一個体にされてしまったのか、その過程は実験を執行した研究者たちにしかわからない。 見取り図を受け取る。 確認すると3階通路にはひとつだけ部屋への入り口があることが記されている。 唯一の扉を潜って細い通路を進んだ先の大部屋。そこが目指すべき管理区画だ。 大部屋のさらに奥には所長室や倉庫などがあるらしい。 改めて今いる通路を見渡すが、見取り図にあるような扉はどこにも見当たらない。 「どうなってるんだ? 扉なんてどこにも……」 「待って。そこの壁少し変じゃない?」 目を凝らしてよく見ると、壁に細い線のような筋が見える。 手の自由になっている仲間のキメラがその壁を調べてみると、壁が開き小さな端末が姿を現す。 「これは…」 端末には小さなモニタと、数字やいくつかの文字が印されたパネルが設けられている。 パネルを操作するとモニタ上に入力した文字や数字が並んでいく。そして…… 『Error:パスワードが違います。正しいコードを入力してください。(3回の失敗でロックされます)』 さらによく調べると端末が現れた壁の近くにも同様の筋が見える。 「こいつ……開くぞ!」 「ふぅん。どうやらこの先が目的の場所のようだねぇ…」 「回数制限があるから、百打ちゃあたるってわけにもいかないな」 失敗作たちは皆が表の病院から騙されて連れてこられたか、確保班に拉致されてきたものばかりだった。 当然ながらパスワードなど知るはずもない。 エイドの死体から回収した書類を取り出し確認するが、そこにもそれらしいものは記されていなかった。 「仕方ないね、下手に弄るわけにもいかない。建物内を探して回るのがいいだろうね。もしかしたら何か手掛かりがあるかもしれない」 しかし、制圧部隊は掃討したもののまだ気は抜けない。 研究所内の壁は抉られ、血は飛び散り、研究者の亡骸はあちこちに転がっている。それは制圧部隊に襲われるよりも前からすでに確認できた。さらに腐臭を放ち仲間たちを怒り惑わせたあの肉塊も……。 未知の”先客”がいるのは間違いない。そしてそれが味方であるとも限らない。 目的を果たすためには全滅だけは避けなければならなかった。 そのために一同はさっきと同様に二手に分かれて一方は探索に、一方はこの場に残り、交代で情報収集を行うことにするのだった。 「しかし……アダモフの件は残念じゃったのぅ」 キメラの一人、ディエゴが口を開いた。 爬虫類のような容姿をしている。あるいは伝承上の竜とも言えるかもしれない。 メルがその言葉に返す。 「そうだね…。アダモフのおかげであたしたちはあの地下牢から脱出できたんだ。アダモフのためにも、あたしらは絶対に研究者どもに屈するわけにはいかない。これはアダモフの仇打ちでもあるんだ」 「彼の遺志は残されたわしらで継いでやらねばのぅ…」 メルたちは端末の前に残っていた。 今はテオの率いるグループが情報収集に向かっている。 「テオ、大丈夫かな…」 「きっと大丈夫じゃよ。彼はアダモフに代わって本当によくやってくれておる」 竜は心配するメルを優しく励ます。 もうずいぶん長い時間が経ったような気もしたが、アダモフがやられたのはついさっきのことだ。 誰もがまだその心の傷から立ち直れてはいないのだ。 「そう……だね。辛いのはみんな同じなんだものね。あたしがしっかりしなきゃ……」 そう言ってはみせるが、ディエゴには彼女こそがもっとも辛そうに見えた。 あたしにはテオという旦那がいる。 これはもちろんそういう気持ちから来るものじゃない。 でも、たしかにあたしにはアダモフに対しての特別な感情があった。 アダモフは希望だった。 彼がいてくれたおかげであたしは立ち直ることができたんだ。 大げさかもしれないけど、アダモフは言わば命の恩人。 そんな彼にあたしはなんとかお礼をしてやりたかった。そのためにこの脱出を提案したんだ。 なのに、そのせいでアダモフは―― メルは責任を感じていた。 アダモフが犠牲になったのは自分のせいではなかったのかと……。 「姐さん、落ち込んでる暇はなさそうですぜ」 双頭のキメラがそんなメルに注意を促す。 先ほど見取り図を手渡してくれたキメラだ。 彼の示す先を見ると、その先に見覚えのないキメラの姿がゆらりと揺れていた。 獅子の頭のホセを見ているとアダモフを思い出してしまい、居た堪れない気持ちになってしまうがそうも言っていられない。 「あれは……人狼? ということはあいつもあたしらと同じ被害者だね」 それは狼と人間が混ざり合ったような姿をしていた。 目はどこか虚ろで、舌はだらりと涎を垂らしながら伸びている。 「気を付けてください。あいつ……なんか様子がヘンです」 「そのようだね。あんたたちは下がってな! まずはあたしが話してみる。敵と決めつけるにはまだ早いよ」 メルはしっかりと相手を見据えて、慎重にその人狼へと近づいて行く。 仲間たちは揃って相手を睨みつける。 もしあれが敵だとわかれば、いつでも攻撃できる体勢だ。 制圧部隊との戦いではアダモフの死によるショックで忘れてしまっていたが、こちらの手にはアマンダのライフルや、デテンが遺した非適応薬の麻酔銃もある。いざというときはこれで……。 万が一のことがあってもすぐに回避できる程度の間合いを残してメルは立ち止まる。 四足のメルに対して人狼は二足で歩くことができるらしい。メルは人狼を見上げる形になるが、それにしてもずいぶんと大きな相手だった。 解放軍にも似たような容貌のキメラはいたが、それに比べると幾分か華奢にも見える。しかし身の丈は軽く2メートルは超えているようだ。 「ウウ……グルル…」 人狼は後ずさる。 気にせずメルは話しかける。 「待ちな。あんたは何者だい?」 人狼は何も答えない。 かまわず続ける。 「怖がらなくていい。見たところ、あんたもあたしらと同じようだけど…。もしそうならあたしらは味方同士だ」 だが油断はできない。隙は決して見せない。 人狼の爪や毛皮が血に塗れていることをメルは見逃したりなどしない。 「ガウゥ……ク、来るナ……」 さらに人狼は後ずさる。ずいぶんと怯えているような様子だった。 しばらくの沈黙。 虎と人狼が睨み合う。 「何をそんなに恐れるんだい? もう怖がる必要はない。あたしたちは仲間だ。そうだ、もしよかったらあたしらと一緒に……」 メルは人狼に向かって一歩踏み出した。 すると、 「ウググ……グァァオオォォォオオオゥ!!」 突然、人狼が虎に飛びかかる。 爪を立てた腕が迫る。 咄嗟にそれをかわす。 狙いを外した腕は床にぶつかる。 ぶつかった床は鋭い鉤爪に抉られて穴が開いた。 「姐さん、危ない!」 飛び出してきたキメラの獅子と山羊の双頭が人狼にぶつかる。人狼は弾き飛ばされ壁にぶつかり倒れた。 双頭のキメラはすかさずそこに覆いかぶさる。 獅子が人狼の首筋に牙を立て…… 「待って! その子を殺してはだめ!!」 慌てて獅子の頭がぴたりと動きを止める。 その隙を狙って人狼が噛み付きにかかるが、山羊の頭突きがそれを阻む。 人狼はその一撃によって気を失った。 一方、蛇の尾が声の主を確認する。 人狼のさらに向こうには白衣を纏ったニンゲンの姿が見えた。 白衣の女は壁際に追い詰められていた。 周囲を獣やキメラ、ゾンビたちが取り囲む。逃げ場はない。 気を失った人狼は医療用のチューブで拘束されていた。これもエイドの死体から回収したものだ。 虎はあからさまに敵意を見せつけながら女にさらに詰め寄る。 「それで、あんたは何だい? 殺しちゃいけないってのはどういう意味だい? ちゃあんと説明してもらおうか!」 不機嫌そうに虎の尾が逆立つ。 周囲からは唸り声が聞こえてくる。 「私は……八神。この研究所で働いている者よ」 「科学者ダと! 敵だ、殺セ殺セ!」 「コノ恨ミ、晴ラサデオクベキカ!」 獣たちは口々に咆えてかかる。 虎はそれを一喝した。 「黙りな! まずは話を聞こうじゃないか。礼はそのあとでたっぷりしてやるよ…。それじゃあ八神、殺しちゃいけないってのはどういうことなのか、わかりやすく教えてもらおうじゃないか。それはどういう意味だい?」 八神は素直に尋問に応じる。 「ええ。まず予想はついているでしょうけど、彼はあなたたちと同じく被検体になった一人よ。私たちは被検体Yと呼んでいた……」 八神はこれまでの経緯を話し始めた。 被検体Yがジェームスと共に実験室から脱走した後、エイドは担当していたジェームスを追った。 八神は被検体Yを追おうとしたが所長からの呼び出しがかかったので、被検体Yの追跡は部下たちが引き継いだ。 しかし部下たちは、被検体Yの手にかかってみんな殺されてしまった。 八神は所長からすべての責任を押し付けられてしまう。 彼女に拒否するという選択肢はなかった。彼女は所長に逆らうことができない。 なぜなら八神は所長に弱みを握られているからだ。 八神は表の病院で働く優秀な医者の一人だった。 しかしある日、八神は医療ミスを起こしてしまったのだ。 院長は病院を守るため、被害者の家族に金をつかませてその事実をもみ消した。 そして院長はなんとその金を八神に全額要求したのだ。とても個人が支払えるようなものではなかった。 途方に暮れる八神。 そこに研究に協力すれば助けてやると声をかけたのがこの研究所の所長だった。 願ってもない話だった。八神は喜んでその話を受けることにした。 こうして借金は全額返済された……かのように見えた。 しかし八神にとっては借金を返す相手が院長から所長に変わったというだけのことだったのだ。 研究所が八神の借金を肩代わりしたかわりに、その分だけ八神は研究に手を貸さなければならなかった。 研究の内容を知らされて八神は愕然とした。 医者ともあろう者が、患者を実験台にするような非人道的な実験など認められるわけがなかった。 所長は協力を断れば医療ミスの事実を世間に公表すると八神を脅した。もしそうなれば院長にどんな目に遭わされるかわかったものではない。 さらに所長はもし借金が返済できなかった場合には、八神にその身体で不足分を支払ってもらうと付け加えた。 その意味するところは、八神が実験の被検体になるということだ。彼女も適応者だったのだ。 だから八神は所長に逆らうことができない。 こんな研究には反対だった。こんなことが裏でまかり通っているなど信じられなかった。 その片棒を担がされることなど到底容認できるようなことではなかった。 しかし八神は逆らうことができない。許された選択肢はただ素直に頭を下げて「はい」と答えることのみ。 半ば強制的に、八神は所長の奴隷としていいように使われてきたのだった。 八神は所長に言われるがままに動かざるを得なかった。 すべての責任を負わされた八神は所長に代わって上からの命令を遂行しなければならない。 命じられたのは、制圧部隊が到着するまでに事態を収拾しろということだ。 まずは逃げ出した被検体Yの確保、処分。 それからこの研究所は破棄されることに決まったため、すべての痕跡の抹消。それには失敗作たちの処分も含まれた。 失敗作たちのことを研究班のデテンに任せた八神は、記録の抹消のため一人で自身の研究室に向かう。 所長に呼び出され管理区画に向かう前に、八神は偶然アマンダが人狼を狙撃するところを目撃していたので油断していたのだ。 被検体Yは死んだと思っていた。 たしかに被検体Yは頭を銃で撃ち抜かれていた。 だが、生きていた! エイドの研究室の前を通りかかった八神は人狼に襲われてしまう。 人狼の牙が、鉤爪が迫る。 もうだめかと思ったそのときだった。 人狼は八神の顔を見るなり、突然頭を抱えて苦しみ始めたのだ。 研究所内に人狼の咆哮が響き渡る。 そして苦しそうに呟き始めた。 「ウ……ググ。オ、レハ……イヤ、私ハ……ウウウ…。オマエハ……ヤ、ガミ。知ッテイル? 思イ出セナイ……ヤガミ、ヤガミ。ヤガミヤガミヤガミ……デモ確カニ知ッテイル…!」 (この子、もしかして記憶が戻りかけている!?) もはや人狼に敵意はないようだった。 八神の顔をじっと見つめながら、何度も何度もその名を繰り返す。 そこに突然響いてくる声。 『我々は制圧部隊だ! 無駄な抵抗は止めて、直ちに投降せよ!!』 人狼は驚いて飛び上がった。 敵ダ。敵ガ来タ。 俺ヲ脅カス敵ダ。 奴ラ、俺ヲ殺シニ来タンダ――! 本能的に危険を察知する。 ふと八神と目が合う。 「ヤガ、ミ……?」 これが誰なのか、自分とどういう関係にあたる者なのかは未だ思い出せない。 しかし今はこれが自分の知っている人だとわかる唯一の相手だ。 この人を危険に晒してはならない。この人を守るべきだ。 不意にそんな考えが脳裏に湧き起こる。 「きゃっ。な、何を!?」 「グルル、ル…。ヤガミ、守ル」 人狼は八神を抱え上げると急いで制圧部隊から遠ざかった。 背後からは、解放軍と制圧部隊との戦いの音が聞こえてきていた。 「この子は私を匿ってくれていたの。この子は悪い子じゃない、私にはわかるわ。だから殺しちゃいけない! さっきは……あなたたちを制圧部隊だと勘違いしただけよ、きっと」 「そうかねぇ。その言葉、果たしてどこまで信じられたものか…」 メルは訝しむような目で八神を睨む。 その眼には深い憎しみの色が見て取れた。 八神は獣たちをかき分けると、被検体Yの前に立ちはだかって庇ってみせる。 「お願い、殺さないで! 私はこの子が不憫でならない…」 「不憫だって? あんたたちが手を下したくせによくもそんなことが言えたもんだね!」 「それは……わかっているわ。でも私は逆らえなかった。私は弱かった。脅されていたとはいえ、自分が助かるために多くの罪もない被検者たちを生贄に捧げてきてしまった。それが私の罪だということはよくわかってる。仕方がなかったと言って逃げるつもりはないわ。でも過去を悔いても今となってはどうしようもない。だから、せめて私はあなたたちの力になりたい。それが私のせめてもの罪滅ぼしのつもりなのよ」 「それで? あたしらをどう助けてくれるっていうんだい」 「知っている限りの情報はすべて教えるわ。私は研究班じゃないから、あなたたちを元に戻してあげられるかはわからないけど、資料なら残っているものはすべて提供すると約束する」 「ふん。それだけかい?」 その程度のことじゃ自分たちの怒りは治まらないとでも言いたげに、虎はさらに鋭く八神を睨み付ける。 「……もちろんこれだけじゃないわ」 八神は覚悟を決めて一人頷く。 彼女は悔いていた。いつも自分を責めていた。 いつでも所長の言いなりになっている自分が赦せなかった。 あの男さえ……あいつさえいなければこんなことにはならなかった。 所長がいなければ私は今頃、院長に要求された借金で首が回らなくなっていただろう。 たしかに院長の要求は不当なものだったかもしれないが、私が医療ミスという過ちを起こしたのは紛れもない事実。責任が自分にあるならその報いは甘んじて受けよう。 自分が助かるために犠牲者を増やしてしまったことも私の罪。その報いも当然受けるつもりだ。 だが所長に押し付けられた責任の報いを受ける義理は私にはないのだ。 所長の脅迫が怖くて私はその押し付けを撥ね除けることができなかった。 そして事態の収拾を命じられたが、それよりも先に制圧部隊が到着してしまった。 制圧部隊は解放軍が一掃したが八神はその事実を知らない。しかし、それはどちらでも同じことだ。 あの男、所長は失敗を犯した八神を口封じのために消しにかかることだろう。彼女を被検体とすることで。 もはや退路はない。 ならばこれしか生き残る道はなかった。 あいつさえ……あの男さえいなければ……。 「私はあの男が憎い。あの男さえいなければ私は苦しまなくても済むのに…!」 八神は一瞬その瞳に憎しみの色を宿すが、すぐに冷静さを取り戻すと解放軍に文字通り力を貸すことを申し出た。 「私も戦うわ。あなたたちは所長を倒すつもりなんでしょう? 私もあの男には因縁があってね。目的は同じはずよ」 「そんなこと言っといて、あとから裏切ろうなんて考えちゃいないだろうね」 虎は値踏みするかのように白衣の女を睨み回す。 しかし覚悟を決めた女もまたしっかりとした目で虎を睨み返す。 「皮肉にもあたしらはあんたたちのおかげで牙も爪もあるんだ。あんたを喰い殺すことなんて簡単にできちまうんだからね! よーく、肝に銘じておくんだね」 「もし私が裏切ったと見なしたならすぐにでも私を好きにするがいいわ」 どっちにしたって私にはもうこれ以外の道なんか―― 「後悔したって知らないよ」 「……いいでしょう。そこまで言うのなら、まずは誠意を見せます。私はその端末のパスワードを知っているわ。それをあなたたちに教える。これで少しは信頼していただけるかしら」 「ふん、まだあたしはあんたを仲間と認めたわけじゃないからね!」 一人と一匹の睨み合いは、情報を集めに出ていたテオたちが戻ってくるまでしばらく続いた。 テオたちが合流し、八神や被検体Yのことをひとしきり説明した。 手掛かりを探しに出ていた仲間たちもメルと同様、八神を信用し切れないところがあった。 しかしパスワードの手掛かりになるものは何一つ見つからなかったので、それを教えてくれるという条件を呑んでしぶしぶ味方に迎え入れた。 「それじゃあ、さっそく開けてもらおうじゃないか。見せておくれよ、その誠意ってやつをさ」 「わかったわ」 八神が端末に近づく。 するとそのとき、拘束されていた被検体Yが意識を取り戻して暴れ始めた。 「こいつ! 厄介だな。こいつも連れていくのか? 錯乱しているじゃねえか。こいつはもうだめだろう、いっそひと思いに……」 仲間の一人が麻酔銃を向ける。 「だ、だめよ!」 八神はその前に立ちふさがる。 彼女は数多くの被検体に手を出してきてしまっていた。 そのすべての被害者に彼女は責任を感じていたが、もはやどの失敗作が自分の手にかかったものなのかはわからなかった。それほどまでに多くの犠牲を出してきた研究だったのだ。 被検体Yはそんな八神が唯一覚えている自分の生贄。 せめてこの子だけはなんとしても救ってやりたい―― 八神はこの人狼にとくに特別な感情を抱いていた。 仲間の一人と八神が睨み合う。 それを仲裁したのはディエゴだった。 「まあまあ、お二人さん。少し落ち着くのじゃ。わしは昔、催眠術を嗜んでおってのぅ。ここはひとつ、わしに任せてもらえんかの」 そう言うなり、竜は人狼の瞳をじっと見つめる。 人狼は怯えていた。 八神のことはまだよく思い出せないが知っている相手だ。唯一、安心できる相手だ。 だが、このまわりに取り囲んでいるやつらはなんだ。 この目の前にいる鱗だらけのやつはなんだ。 知らない知らない知ラナイ。 怖イ怖イコワイ。 未知なる存在は恐怖を生む。なぜなら、それがどういうものなのか把握できないから。どういう動きをして、どう対処すればいいのか。自分に対して害はあるのかないのか。何をされるのかがわからないから。 だから恐れる。怯える。恐怖する。 もしかしたらこいつは自分を獲ッテ喰ウかもシれない。襲わレるかもシレナイ。敵カモシレナイ! ヤラレテカラデハ遅イ。 喰ウカ、喰ワレルカダ。 ナラバヤラレル前ニヤルシカナイ。 己ノ身ヲ守ルタメニ、ヤルシカナイ! 「グルルル……」 思わず唸り声が喉の奥から漏れる。瞳孔は大きく開き、心臓は激しく脈打つ。 いつでも敵の攻撃を避けられるように。いつでも飛びかかれるように。 きつく拘束されているので見動きは取れない。が、決して隙は見せない。周囲を警戒して意識を張り巡らせる。 「ふむ」 竜はそんな人狼の様子を見ると、屈みこんで目線の高さを座らされた体勢で拘束を受けている人狼の目の高さに合わせる。 竜の大きな前脚が伸びる。人狼の顔に影を落とす。 ――ヤラレル! 人狼は身を捩りその影から逃れようとするが、竜の指示によって他のキメラたちに身体を取り押さえられてしまい、それも適わない。 せめて一矢報いてやると牙を剥くが、影はその上を通り過ぎ頭上から迫ってくる。 思わず身を縮こまらせる。固く目を閉じる。 すると、ひんやりとした感触。 竜の前脚は優しく人狼の両瞼を覆った。 「グル……る、るるる……る」 自然と唸り声が収まっていく。 続いて何か別の声が聴こえてくる。 耳を傾ける。どうやら目の前のこいつが発しているもののようだということはわかった。 相手が何を言っているのかは理解できない。頭に入ってこない。 しかし、それは柔らかく温かい声だった。どこか心地よい感じさえする。 その声が身体を包み込む。声が心地よい。無意識のうちに尾が揺れる。 「がうぅ……」 不思議と心が落ち着いていった。固くなった心が解きほぐされていく……。 「さぁ、目を開けなされ」 声だ。 久しぶりに”ことば”を聞いた気がする。 解かる。これは私にも解かるぞ。 覆いかぶせられていた影の気配が遠のく。そっと瞼を開く。 目の前には相変わらず見慣れない異形のものたちの姿。取り囲まれている。 しかし、不思議と恐れはなかった。 「……ここ…は? どうして私はこんなところに。おまえは……誰だ?」 周囲を見回す。知っている顔は……ひとつだけあった。 そうだ、あれは八神だ。 だが八神とは誰だ? 確かに八神を知っている。しかし思い出せない。 「一体何があったんだ。急に頭が痛くなって、身体の様子がおかしくなって、それから……だめだ、思い出せない」 八神が声をかけてくる。 「そう…。だったら、あなたはそれを思い出さないほうがきっと幸せよ……」 もし自分が大変なことをしでかしていたと思い出してしまったら、こんどこそ彼の精神は崩壊してしまうかもしれない。 心配する八神をよそに、仲間たちは歓声を上げる。 「やるじゃないか、じいさん!」 「すげー。治しちまったぞ!」 「いやいや、大したことじゃないわい」 「おい、こいつも見てやってくれよ。おれの相棒なんだが、ゾンビ化しちまって精神が不安定なんだよ」 「こっちもお願い」 「こいつも頼むぜ」 「これこれ、そんなに一遍にできんじゃろう。戦いが終わってからにしなされ」 急に株の上がったディエゴは仲間たちに引っ張り蛸にされていた。 ふと、ある臭いが鼻をくすぐる。不思議と安心できる臭いだ。 人狼の目の前にこんどはテオが立つ。 「よう。良かったな、自分を取り戻せて。おれはテオだ。おまえは」 自分に話しかけているのだということに気付いて恐る恐る口を開く。 「わ、私は……わからないんだ。ここがどこなのかも、自分が誰なのかも」 「へぇ。記憶喪失ってやつかい?」 その質問に八神が答える。 「彼は、その……”処置”を受ける以前の段階ですでに記憶を失っていたの。確保班……他の研究員が彼を病院へ連れてきた。名前は私も知らない」 「誘拐か。本当に最低だな、おまえら科学者は」 狼が八神を蔑んだような目で睨む。 「否定はしないわ…。受けている報告では、彼はこの研究にとって都合の悪い”事故”を起こしたらしいけど、詳しい内容は知らされていない」 「そうかい。まぁ、そんなことはおれには関係ねぇがな。それじゃあ、おまえ。名前がないなら何て呼べばいい?」 人狼は好きに呼んでくれてかまわない、と答えた。 そこでテオは彼をルーガルと呼ぶのはどうかと提案した。 「るー、がる?」 ルーガルとは狼男を意味する。 テオの祖国の言葉だ。『loup-garou』と書く。 「よし、ルーガル。おまえもおれたちと共に闘ってくれねえか。おれたちをこんな目に遭わせたやつに復讐してやるんだ。元に戻れる方法がないかも探す。こんな研究、潰してしまったほうが世のためだぜ」 「復讐か……。私はおまえたちのおかげで自分の心を取り戻すことができたんだ。それなら私はその恩を返さなければならない。わかった、協力する。私も共に闘う」 こうして人狼ルーガルも解放軍の仲間として加えられた。 どうせ記憶がないのだ。他にいくあてもない。 あるいは彼らと行動を共にするうちに、記憶を取り戻せるかもしれない。 「それにしても驚いたわね。まさか彼が生きていたなんて」 ふと八神がそう呟いた。 八神は確かに人狼がアマンダに頭を撃ち抜かれるところを目撃した。 人狼が倒れ、ぴくりとも動かなくなったのを確かにその目で見た。 しかし人狼は蘇り、自身の研究室へと向かう八神に鉢合わせ、ついさっきまで制圧部隊から彼女を庇い匿っていたのだ。 「もしかしたら……きっとこれは副作用が出たのね」 テオがそれを問い詰める。 「副作用? 約束だろ、話してもらおうか」 「もちろんよ」 この研究所で行われていた実験の目的は3つ存在した。 第一目標は『野生生物に匹敵する強靭な肉体を持つ強化軍隊を得る』こと。 第二目標は『完全獣化させて敵の目を欺く野生部隊を得る』こと。 そして、この第二目標の段階で生み出されたのがテオたち失敗作であり、その初期段階の頃はキメラやゾンビたちが生み出されていた。 ここまでは、解放軍の面々もエイドから手に入れた資料で知っていた。 しかし、さらに第三目標が存在していたのだ。 ゾンビを生みだした失敗で偶然にも不死の副作用が得られたことを知った上層部は、これまでの目標とは別に新たな目標を設置した。 それはこの副作用だけを取り出して、不老不死の薬を開発することだった。 これまでの研究とは逆に全く獣化させることなく、しかし副作用だけは残す。 その研究の過程で被検体とされたのがジェームスや人狼ルーガルだった。 第二目標達成以後に行われた実験にも関わらず、ルーガルが人間と狼の混ざり合った中途半端な姿と化したのはこのためだ。 第二目的についてはほぼ完成形だった薬品に、さらに手を加えたまだまだ研究段階の薬品だったため、その負担に耐えきれなかったジェームスは無残な肉塊へと成り果て、ルーガルは精神に異常をきたしてしまったのだ。 「不老不死だと。ばかばかしい」 テオはそれを鼻で笑った。 「私だって、なんと愚かしいことかと思ってる。人には神によって定められた寿命というものがある。それを覆そうなんて……おこがましいにも程がある!」 かつて原初の人間、アダムとイヴは禁断の果実を口にするという罪を犯した。 それが神の怒りに触れ、そのときから人間は限られた寿命を生きることになったのだ。 「神の定めに逆らうなんて、まさしく神への冒涜よ! それに上層部の頂点に立つ男。会ったことはないけど、自分を主と呼ばせていたわ。自ら神を名乗るなんて許されない!」 「へぇ。こんな研究をやってたわりには、ずいぶん熱心なんじゃねえか」 「私はその”主”が憎い。あの男…所長が憎い。この研究が憎い! ……これが私があなたたちに協力する理由よ」 「……わかった。少しだけは信じてやってもいい」 「それはありがたいことね」 狼と女は互いに冷淡なようすで言葉を交わした。 八神は改めて壁の端末に面すると、慣れた手つきでパスワードを入力していく。 入力を終えると端末の隣の壁は静かに開き、奥へと続く通路が姿を現した。 「いよいよだ…。あんたたち、油断するんじゃないよ!」 メルが音頭を取り、解放軍はついに目的の管理区画へと突入する。 今まさに、決戦は始まろうとしていた。 To be continued... 神への冒涜10
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KP ディズム PL&PC 高田健志:レスバス たけぉ:ジャクソン なな湖:ギルバート・シューティングスター 配信 2022/03/27 19 00- 新クトゥルフ神話TRPG『冒涜都市Z~深碧の魔境~』なな湖,たけぉ,高田健志 ハッシュタグ #高田探検隊 イラスト zoo :@mdrkwgk ツイート セッション告知 "――失われた神話を探検せよ。" キャラクター紹介 "──未知数。" 感想 ディズム / たけぉ / なな湖
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『神への冒涜』六人目「デテン / the Anathema」 デテンもまた研究班における非常事態マニュアルに則して行動していた。 八神に頼まれたとおり、彼自身と八神の端末内データを抹消させると、書類や私物をまとめいつでも脱出できる準備を整えた。しかし、彼の仕事はこれで終わりではない。 デテンは非適応薬を麻酔薬の代わりに麻酔銃に込める。これで準備完了だ。 たしかにこれは研究班としての非常事態マニュアルの指示だったが、あくまでこれはデテン自身に課せられた仕事ではなかった。しかし、被検体Yの襲撃によって研究班が彼一人となってしまった今は、それを彼がなんとかしなければならなかった。 麻酔銃と弾薬、そして予備の非適応薬を手にしてデテンは地下二階へ。 地下二階―― そこは隔離フロアと呼ばれている。 そこには実験のいわゆる”失敗作”が閉じ込められていた。 実験とはすなわち、強化軍隊計画のことである。 強化軍隊計画―― この計画の第一目的は『野生生物に匹敵する強靭な肉体を持つ強化軍隊を得る』ことだ。 適性のない者にここで研究されている薬品を投与すると、その者はすぐにショック死してしまう。たとえ適性があったとしても、中には精神が錯乱して暴走したり、死んでしまう者もいる。これが経過1だ。 経過1をクリアすると、次に外見に変化が表れ始める。ここで錯乱したり暴走するものは処分対象だ。これが経過2である。 続いて経過3では、さらに変化が進み人間と獣が混ぜ合わさったような特徴を持つ姿になる。そのまま、精神が崩壊したり暴走したりしなければ経過4、獣人の完成である。これを以って目的1は達成される。 身体のどこに変化が表れるのか、またその程度はどのくらいのものなのかは個体差がある。例えば頭部が牛化したならば、それは神話にも登場するようなミノタウルスとなる。しかし、それはもう神話ではない。研究がさらに進み変化の度合いを制御できるようになれば、ミノタウルス兵団を組織することだって可能になるのだ。 続いて計画は目的2へと移行した。 すなわち『完全獣化させて敵の目を欺く野生部隊を得る』ことだ。例えば人のことばを完全に確実に理解して、その命令に忠実に従う猛獣がいればこれほど強力なものはない。 経過3の時点で、想定していた以上に変化を遂げてしまう個体が存在した。それがこの目的2を誕生させることになった。 投与する薬品の量を増やし、完獣化を目指した。これを経過5とし、経過1と同様に錯乱や暴走がなければこれはクリアとなる。薬品の量が増えたため、当然ながら失敗作の数は増えた。この段階を突破するまでに多くの被検体が処分されることになった。 目的2では、人のことばを完全に確実に理解できるだけでなく、命令者に常に忠実である部隊を作る必要があった。したがって、投与する薬品にも催眠性の成分を含ませて、より忠実になるように調整された。その成果で錯乱や暴走を抑えられるようになり経過6へと進んだ。しかし、この催眠性の成分が逆に良くなかった。 一見、被検体は大人しくなったかのように見えたが、逆に自我すらも失ってしまう個体が増えてしまった。これは失敗である。これではまるで、生きる屍ではないか。 さらに改良が進み、とうとう完全に被検体を獣化させることに成功した。この結果を以って、目的2が達成されたかのように見えた。しかし、これには決定的な欠陥があった。 完獣化に成功したと思われた個体はどれも数日としないうちに肉が腐り落ちて、まるでゾンビのようになってしまった。こんどこそ、本当に生きる屍ではないか。 さらに驚くことに、これらの個体はどう処分しても決して死ななかった。”絶対に死ねない”という驚愕の副作用を生み出してしまったのだ。我々はなんと、本当にゾンビを生み出してしまったのだ。 これは目覚ましい成果だが、軍部はこれを良しとしなかった。不死身のゾンビ兵はたしかに無敗の兵力と成り得るが、しかしゾンビたちもまたほとんど自我というものを失ってしまっているようだった。 これではたとえ決して死ぬことのない無敗の兵力ではあっても戦力にはならない。無敗かつ無勝の兵力。ただの的にしかならなかった。 これを受けてさらに研究は進められ、とうとう経過7に至る。完全に人の意識を保ちながら完全に獣の姿をした存在を生み出すことに成功した。これを以ってして目的2は達成された。催眠性の成分を取り除いたことが成功に繋がったのだ。 ただし、あくまで完全に人の意識を保った状態なので、被検体の混乱や精神へのダメージは基本的に避けられない。これ以上は我々の研究分野ではないので、そこから先は精神の専門家に任せることにして、ひとまず研究は完成ということになった。 だが、もちろん研究が完成してもそれが完了というわけではない。さらなる改良を求めて、新たに目的3が設置されることになる。その目的3を達成させるのが現在の目標だった。 ここまでの過程において、とくに経過6~7にかけては大量の失敗作が生まれることになった。 その大量の失敗作を処分するにはコストも時間も足りなかった。それゆえに、その失敗作たちは処分されるその日をただ待つためだけに、この地下二階の隔離フロアで生かされているのだった。 その地下二階にデテンは足を踏み入れる。 酷い悪臭だ。隔離フロアは実験班が管理しているはずだが、とてもまともな管理がなされているようには見えなかった。 隔離フロアとは言ってもただ暗い地下室に檻が並べられ、その中に失敗作たちが適当に詰め込まれているだけの状態に過ぎなかった。 ランプの類は非常灯以外には一切備え付けられていない。 デテンは懐中電灯を手に暗い檻の間を歩いていく。いくつもの光る眼がその姿を睨みつける。 研究班として非常事態マニュアルに指示された残る仕事。それは、この失敗作たちの一括処分だった。研究所を廃棄する場合、すべての痕跡を抹消しなければならない。それには当然ながら失敗作たちも含まれた。 暴走する個体は危険なので実験直後にすぐに処分されたが、そうではない個体は次々とここに放り込まれた。 経過6から経過7にかけて発生した失敗作がほとんどだったので、一見ただの獣そのもののような個体から中途半端なもの、まるでゾンビようなもの、なぜかキメラのようなものまで存在していた。 失敗作たちを唯一、”獣人”と呼んで特別な感情を寄せていたデテンにとっては彼らを処分することは心苦しかったが、非常事態マニュアルには従わなければならない。そうしなれば、彼がそれなりの処分を受けることになってしまうからだ。そうでなくても、このような研究が世間に明るみになってしまえば、それに関わっていた彼自身もただでは済まないだろう。 だから、デテンにはこうするしかなかった。失敗作たちをすべて処分するしか選択肢がなかった。 「……悪く思うなよ。これは仕方ないことなんだ」 非適応薬を装填した麻酔銃を手近な失敗作に向けて構える。 「おい、ちょっと待ちな」 しかし、それを止める声があった。 「誰だ…!?」 目を凝らして辺りを見回すが、隔離フロアには自分以外の人影は見当たらない。 「こっちだよ」 声は檻の向こうから聞こえてくる。 そうだ、ここにいるのは経過6から7……つまり、実験後期の暴走の危険性のない失敗作たちなのだ。何も自我や意識のないゾンビたちばかりではない。中には人としての意識をほとんど完全に保ちながら精神の崩壊や暴走も回避した、ほぼ完成形の失敗作も存在するのだ。つまり、99%は完成しているほぼ正常な、しかしあと一歩及ばなかっただけでここに放り込まれてしまったような者もいるということだ。 本来なら、身体の構造の違いからことばは話せなくなるはずだ。 だが、ここは失敗作たちの掃き溜め。中には”ことばが話せる状態だった”からこそ、失敗作と見なされた者もいる。 「人の姿を見るのは久しぶりだなぁ。なんせ、ここは……こういうやつらばかりだからな」 檻の向こうから一匹の獅子が話しかけてくる。 「……悪いが、おまえたちと話をしにやってきたんじゃない」 「そう冷たいことを言うなよ。こっちはいつも真っ暗闇の中で退屈してたんだ。…何か面白い話でも聞かせろよ」 獅子は低く唸り声を上げながら、不機嫌な様子をアピールしてみせる。 どうせ相手は檻の中だ。抵抗される恐れはない。 「残念だが、とうとうおまえたちの処分の日が来た…。それだけだ」 デテンはもちろん、彼らがすべて元々は人間だったということを知っている。 だから、そんな彼らを処分することはとても心が痛んだ。せめて会話の相手をしないことで、余計な感情を排除して冷徹に速やかに仕事を終えて、早くここを脱出してしまうつもりだった。それに八神が助けを必要としているかもしれない。 しかし、そんなことはお構いなしにその獅子は会話を続ける。最初のことばに返事を返してしまったのが失敗だった。 「ほう…。最後の審判の日かい、そいつは面白い。まさか、生きてるうちにその日に立ち会えるとは思ってもみなかったねぇ」 「話はここまでだ。覚悟ができてるなら文句はないだろう。悪いけど……これが僕の仕事なんだ」 デテンは一方的に会話を打ち切り麻酔銃を獅子に向ける。 「まぁ、そう慌てなさんな。最後に言い残すことばを考える時間ぐらいはくれるんだろう?」 「…………好きにしろ。なるべく早くな」 「ふん、認めてくれるのかい。変わったやつだな」 獅子は何か裏があるのではないかとしばらくデテンを睨みつけていたが、ふと何かを思いついたようで再び口を開いた。 「なぁ、あんた。ひとつ、俺と取引をしないか?」 「取引だと? そんなことをして何になるんだ。そんなことをしたって……運命は何も変わりやしない」 「まぁ、話だけでも聞いてくれよ」 獅子はその取引の内容を話し始めた。 「俺たちをここから出してくれ」 「そんな取引できるわけがない」 「まぁ、最後まで聞いてくれ。見たところ、あんたはそこまで俺たちに敵意や恐れはないようじゃないか。本当に変わったやつだ」 「僕から見れば、そんな状態になって冷静を保ってられるおまえのほうが変わったやつさ。僕は直接、実験を執り行うところにはいなかったけど、ほとんどの犠牲者が暴れたり心がおかしくなってしまったりしたと聞いてる」 「それもそうだ。あんたらのお陰でたしかに普通じゃないぜ、俺たちはな」 獅子は皮肉って言った。 「あんたは自分のしていることに納得してるのか? 俺にはどうも、そのようにはみえないね。心のどこかでは不満を抱えながらも、どこか仕方なく上司のことばに従ってはいないか?」 デテンはそれに思い当たる節があった。 「そ、それは……否定はできない。だが、世の中とはそういうものだ」 「人間の世の中は、な」 「…………」 「どうだ、少し悪戯をしてその上司を困らせてやらないか?」 獅子はにやりと笑いながら言った……ように見えた。 「イタズラだなんてそんな。子どもじゃあるまいに」 「言い方が悪かったか。上司に仕返しをしたいとは思わないか? 例えば……俺たちをここからこっそり逃がす、とかな」 「それはできない! この研究が公になれば、たしかに上層部は大混乱に陥るだろう。たしかに……あのいけ好かない所長が慌てふためく姿は見てみたいもんさ。あいつはいつも他人に責任を押し付けてばかりだ。今日だって八神さんが……。いや、だが、その取引にだけは応じられない!」 ついうっかりと洩らしたその情報を獅子は耳聡く聞きつけて追及する。 「なぜだ? その所長さんを懲らしめてやりたいんだろう」 「この研究が公になれば、その関係者だってただでは済まないだろう。もちろん僕も。………八神さんだって」 「つまり、あんたは自分の身の保証が心配なんだろう。それなら、そんなあんたに打って付けな話があるぜ」 獅子の話はこうだった。 まず、デテンが彼らを解放する。 そして彼らはあからさまにその姿を人前に晒し、怪しい研究が行われているということを近辺に露呈させる。 それはたちまちニュースとなって世界に知れ渡るだろう。上層部も大騒ぎだ。 しかし、人間が獣になったなどと、そんなおかしな話を誰か信じるだろうか。たしかに、それはこうして事実として目の前に存在している。それを見せつけられてしまえば、たとえどんなに信じられなくても、それが目の前にある以上は信じざるを得ない。 だが、それはあくまで”見せつけられた者”だけに限っての話だ。たかだか一部の町の数十人程度がそれを”見た”と騒いだところで、世間一般の常識というものはそう簡単にひっくり返るようなものではない。 ある人は夢か幻覚でも見たんだろうと言うだろう。 ある人は愚かな世迷言だと笑うだろう。 ある人はあの町のやつらは揃って頭がおかしいのだと哀れに思うだろう。 人の噂も七十五日とは言うが、一時は騒ぎになろうともそんな噂もすぐに他の真新しい噂に呑み込まれてうやむやになってしまう。あるいは都市伝説としては残るかもしれないが、所詮はその程度なのだ。 記憶というものは日とともに曖昧になっていくもの。それを直に”見せつけられた者”たちも次第に世間の流れに呑まれて、もしかしたらあれは本当に幻だったのかもしれないと思うようになるだろう。そうして、またひとつの噂が塵となって消えるのだ。 だが、上層部ものたちはそうはいかない。なぜなら、彼らはそれを事実として”知っている”のだから。 たとえ世間がそれを忘れようとも、上層部はそれを忘れることができない。これまで以上に、秘密が外部へ漏れることに心配を抱くようになるだろう。そして、その失態を引き起こした者は上の者たちによって間違いなく”処分”されることになるはずだ。 さて、ここでその処分を受けることになるのが誰か考えてみようか。 責任というものは、その名の通り責任者が背負うものだ。たとえ責任者がどう言い逃れしようと、秘密の露呈はこの研究を指示する者たちにとっては見逃しかねる忌々しき事態となり、無能な責任者にはとても任せていられないとして間違いなくその所長が処分されることになるだろう。 「こうしてあんたは自らが罰せられることなく、まんまとその所長だけを狙って失脚させることができるんだ。もちろん、噂を引き起こしたあとは俺たちも人目につかないように最大限の注意を払う。俺たちだって、できることならこんな姿を人目に晒したくはないんだ。…服も着てないしな、がははは!」 「そんなことが……実際に可能なのか?」 「ああ、約束しよう。あんたは俺たちに自由を与える。その引き換えに俺たちはあんたの上司を失脚させる。上司が変われば環境も変わるだろうし、こんなところさっさとやめちまって他の町で新しい人生を始めるのも後はあんたの自由だ。どうだ、悪くない相談だろう?」 デテンの心は揺れていた。 彼は密かに八神に想いを寄せていた。そんな八神は所長に何か弱みをつかまれているようで、いつも所長の言いなりになっていた。そんな八神の力に彼はなりたかった。八神を助けてやりたかった。そしてあわよくば、その想いを彼女に伝えて……。 「……いいだろう。その取引、乗ったぞ。ただし……条件がある」 「言ってみろ」 「おまえやその後ろにいる、一見すればただの動物にしか見えない連中は解放してやってもいい。黙っていれば誤魔化しが利くからな。だが中途半端な者やキメラ、ゾンビたちはだめだ。万が一のときに潰しが利かない。それから、自分の意識がはっきりしてないやつもだめだ。自分をコントロールできなくて、ふらふらとまた表に出てきてもらっては困る」 「こいつは手厳しいなぁ……」 獅子はしばらく考え込んでいたが、とうとう折れてその条件を飲むことにした。 「会話も成り立たなかったり、生きてるのかどうかすらわからないようなやつもいたが、こんなところでも一緒に暮らした仲間たちだ。そいつらを見捨てるようで後味は良くないが命あっての物種だ。どうせここにずっといたところで、遅かれ早かれ死を待つだけだ。そうするぐらいなら、俺は自由を選ぶ。いつだって自由には代償が必要になるもんさ…。わかった、その条件を認める」 「商談成立だな。所長の件はよろしく頼むぞ?」 「いや、まだだぜ。まずはこの檻を開けてくれないか。あんたの誠意ってやつを俺に見せてくれよ。そうしたら、俺もあんたを信じてやる。そうして初めて俺たちの商談は成立するんだ」 「ああ、待ってろ。すぐに開けてやる」 デテンは懐中電灯で壁を照らしながら鍵の在り処を探す。 地下一階から降りてきてすぐのところに鍵の束は掛けられていた。 「こいつがそうだな」 リングに数多くの鍵がまとめられている。とくにプレートなどは付いていないので、どれがどの鍵が見当もつかない。 デテンはひとつずつ鍵を確かめて獅子のいる檻を開けようと試みる。 「ちがう。これもちがう。…またハズレか」 「おいおい、早くしてくれよ、旦那ぁ。俺の気が変っちまう前によろしく頼むぜ」 「待ってろ、すぐに見つけて……あった。こいつだ! 喜べ、開いたぞ!」 カチリと小気味のいい音を立てて鍵が回り檻の扉が開かれる。 「おう、ありがとよ。他の檻も頼むぜ」 「任せろ」 デテンは次々と檻の鍵を開けていく。 失敗作たちは失敗の時期によって分けて檻に入れられていたので、約束通りの一見しただけではただの獣にしか見えない者たちの檻だけを開けることができた。 「これで最後だな」 鍵の開く音が静かな地下室に反響する。 「ご苦労さん。これで晴れて俺たちは自由だ」 「これで文句はないだろう。僕は僕の役目を果たした。次はおまえたちの番だ」 「ああ……そうだったな。ところで、旦那。契約を交わす時に忘れちゃならない大事なことがあるってのは知ってるか?」 「うん? そりゃあ、まぁ…。お互いに合意して、お互いが約束を守ることだろう」 「半分は正解だ。だが……半分はずれだぜ!」 獅子は突然デテンに飛びかかると、一息にその首筋に牙を立てた。 デテンは驚く暇もないうちに静かに息を引き取った。 「答えの発表だ。もう半分の正解はあとで言い逃れできないように裏を取っておくことさ。契約書を書かせるとかな! ……もっとも、生憎俺たちはもうペンを持つことも文字を書くこともできないんだがな!」 それを合図に、檻に閉じ込められていた他の失敗作たちが歓声を上げる。 「うまくいったな!」 「やったぜ、新鮮な肉だ!」 「おい、誰かこっちに鍵を回してくれよ! 俺はまだ”手”が使えるから、自分で檻を開けられる。他のまだ開いてない檻も開けてやれるぜ!」 失敗作たちが次々に歓喜の声を上げる。 「まあまあ、落ち着けって! こいつはまんまと俺たちを解放してくれたんだぜ。その功績に敬意を表して、こいつの亡骸はきれいなままにしてやろうじゃないか」 「だが俺はおまえのとこの檻と違って、ロクな飯にもありつけなかったんだぜ! いいじゃねぇか、ひと口ぐらい…。俺はもう我慢の限界だ。それとも何かい、代わりにおまえの脚に齧り付いてもいいってのか?」 「それなら俺を見てみろ! どうだ、この痩せた身体! もうほとんど骨と皮しかねぇ!」 「おまえゾンビ化してるんだから、そもそも肉なんかねえじゃねぇか! やめろ、新鮮な肉が台無しになっちまう!」 「オニク!」 「マンマ!」 「マルカジリ!!」 失敗作たちが今までの鬱憤を晴らすかのように次々と叫び喚き啼き声を上げて騒ぎ立てる。 「しかたねえやつらだなぁ…。好きにしろよ。だが……最初の一口は俺が貰ったァァァ!!」 「させるかぁ!!」 ささやかではあるが、文字通り動物の謝肉祭だった。 ヒトとしての意識は保っていても、もはやそれは既に獣だった。 「さすがだねぇ! やるじゃないか、アダモフ」 獅子に話しかけてきたのは一匹の虎だった。 アダモフと呼ばれた獅子は親しそうにその虎に返事をよこす。 「ああ、メルか。あんたの考えてくれた作戦のお陰さ。俺はただ台本通りに役を演じただけだぜ」 「いくら台本が良くっても、それを演じる役者がいなくちゃ幕は上がらないさ。ま、もちろん、あたしの台本は完璧だったけどね」 「おいおい、自分で言うかよ」 メルにこんどは狼が声をかけた。被検体Yのような狼男ではなく、歴とした狼だった。 「なんだい、文句でもあるのかい。テオ~? 空腹のあまりに気を失ってた恥ずかしい奴はどこのどいつだったっけねぇ」 「うるせぇ。おまえだって、腹の虫をぐるぐる鳴らしてたくせによ」 「やかましいねぇ…。喰っちまうよ!!」 「やってみやがれ!!」 テオと呼ばれた狼とメルと呼ばれた虎は仲が良さそうにじゃれ合った。檻の中での付き合いはどうやら短くはないようだった。 「ほっほっほ、若いとはいいもんじゃの」 それを温かい目で………これはなんと呼べばいいだろう。キメラだろうか、それとも伝承によるならば竜と呼んだほうが相応しいだろうか。そんな姿をした生き物が、それを見守っていた。 「ディエゴさんか。ああ、もちろん、ここからは若い者の力に任せてもらおう。だが、見たところあんたもなかなか強そうだ。良ければ俺たちに力を貸してくれ」 「もちろん、そのつもりじゃぞ。この老いぼれで役に立てることがあるならのぅ、ひょっひょっひょ」 今や、キメラたちやゾンビたちの檻も解放され、失敗作たちはそれぞれが自由を得た。 「いや、まだだ。あの憎き研究者どもに復讐をしてからだ!」 「そうだね。それに、もしかしたら元に戻れる方法があるかもしれない。今こそ奴らに思い知らせてやるよ!」 そうだそうだ、と獣たちは次々に声を上げる。ことばを話せない者は咆えてそれに賛同する。 「おい、名役者! 一発やってくれよ!」 誰かが声を上げた。 「ご指名だぜ、大将」 「俺、こういうの苦手なんだけどな…」 そう言いつつもアダモフは満更でもないといった様子だった。 アダモフが皆の前に歩み出ると自然と騒ぎは静かになる。 「よ、よし。いいか、みんな! こうして俺たちはついに長く夢見てきた自由を勝ち取った! これでもう何も俺たちを縛るものはない! だがおまえたちは憎くないか、俺たちをこんな目に遭わせたやつらが!! おまえたちは許せるか、多くの仲間たちを処分していったあいつらを!! このまま逃げ出したければそれも自由、怖ければ隠れていても俺はそれを咎めない。だが、もし俺たちと共に戦ってくれる意志のあるやつは、どうか俺たちに力を貸してくれ!! まずは頭を討つ! 偉いさんは最上階ってのが相場だ。一気に攻め上がってやろうぜ!!」 「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」 獣たちは揃って雄叫びを上げた。 こうして、獅子アダモフを筆頭に解放軍は結成されたのだった。 解放軍は責任者に復讐を果たすべく、隔離フロアから一気に飛び出していった。 残されたのは、無残にも喰い散らかされたデテンの亡骸だけだった。 To be continued... 神への冒涜7
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Sacrilege Jormungand / サクリエイジ・ヨルムンガンド 作品名:シルヴァリオ・ラグナロク 使用者:セシル・リベラーティ シルヴァリオサーガに登場する能力。 星辰光の一つ。 星辰略奪能力。 +詠唱 創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星 鼓動を刻んだその刹那、定められるは禍津の予言 約束された災禍の使者に大地で生きる資格なし 暗く冷たい海の底まで鎮められ、蛇は呪いに身を焦がす 忘れはしない、許しもしない、軋む鱗に猛る牙 瞼に焼き付く中津国が憎悪の炎を滾らせるから 我が死を望むか、神々よ ならば覚悟は出来ていような? 約束された因果応報 天魔と堕ちる予言を目指し、大蛇は脱皮を繰り返すのだ 無限に長く、巨大化していく怨嗟と体躯 まだ足りぬ、もっと、もっと、もっと、もっと──喰らって蠢き、もう遅い 世界蛇は完成した 小さな地表(ほし)を見下ろしながら、悪意を塗して舌が鳴る さあ、いったい誰から呑み込んでやろう 超新星(Metalnova)──神聖冒涜(Sacrilege)、国津喰蛇の呪怨継ぎ(Jormungand) 能力についての詳細ステータス 吸精瘴気 欠点 使用者との関連性スメラギの第一使徒の系譜 元ネタ 関連項目 関連タグ リンク 能力についての詳細 ステータス 基準値 C ■■■■■■■ 発動値 A ■■■■■■■ 集束性 D ■■■■■■■ 拡散性 E ■■■■■■■ 操縦性 C ■■■■■■■ 付属性 A ■■■■■■■ 維持性 A ■■■■■■■ 干渉性 E ■■■■■■■ 吸精瘴気 相手の星辰体を略奪する瘴気を生成する奪った星辰体をそのまま使うことも貯蔵することも可能。 纏った瘴気に触れた者は活力を奪われ、逆に簒奪者は強化されるという吸血鬼じみた異能は、一言で 表現するならエネルギードレイン。交戦相手を餌に変えられる特性から乱戦や、とりわけ対格上に向 いている。 欠点 使用者の容量を超える貯蔵や強化は不可能略奪速度も相手が強いほど遅れる。 無尽蔵に殺せば殺すほど精強になると錯覚されがちな能力だが、吸収側のセシル自身にキャパシティ があるため無理な強化はまず不可能。加えて略奪の速度についても自身より強大且つ、実力差がある 相手ほど降下するという常識的な誓約も付き纏う。 使用者との関連性 スメラギの第一使徒の系譜 スメラギの使徒に対して絶大な効力を発揮する神祖や他の神祖の眷族には通常の効果となる。 アメノクラトはスメラギが操作するため、アメノクラトへは特効となる。更にアメノクラトを通じて他の機体や世界樹を活動停止に追いやることも可能。 結晶樹の苗たるアメノクラトと感応し、それどころか相互情報通信網を利用し て全機体を無力化するという慮外の現象を起こされるなど、想像してもいなかっ た。 神殺しの特性の付与個別ルートではラグナと子を成したことで遺伝子情報を通じて接続破断能力を獲得している。 明らかにそれは接続破断。神殺しに類した権能だろう。 本家本元には及ばずとも確実に特異点への干渉を断つ特殊性が、セシルの一 撃には宿っていた。 元ネタ ヨルムンガルド(Jörmungandr) 北欧神話に登場する毒蛇の怪物。別名を世界蛇、ミドガルズオルム。 関連項目 星辰光 神聖冒涜、国津喰蛇の呪怨継ぎの能力分類。 関連タグ シルヴァリオサーガ 吸精 瘴気 能力 リンク Wikipedia ヨルムンガンド
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747 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ 1fb3-E6HK)[sage] 投稿日:2018/06/24(日) 23 53 34.48 ID bdhsz2RM0 困ったというか笑えたことがあったので書いてみる。 システムはBBTで場所はコンベ。 登場人物は俺、A、困、GM、その他。 Aは落とし子のキャラを作った。 落とし子というのはクトゥルフの邪神のハーフとか、そういうのと融合してるとか、まあそういうのを表すクラス。 でもって、冒涜的儀式というアーツを使った。 使うとシナリオ間、種別邪神のキャラクターがパワーアップするという特技である。 このとき、Aは 「おお、なんとおぞましく冒涜的な儀式であろうか。だがPC諸氏の正気を保つため、あえて詳細は語るまい」 的なことを言ったわけだ。 で、それに困が絡んだ。 ちゃんとやれよ、と。 俺もGMも他PLも止めたが、止めなかったので根負けし、Aは描写をすることにした。 儀式の内容として、プロ野球の試合に代打として出場、釘ストラディバリウスでホームランを決めるということをやった。 (元ネタは楽しい甲子園とのことらしい) で、俺、GMその他は大笑いしてたんだが、困は切れた。 「クトゥルフ馬鹿にしてんのか」 それに対して、Aは 「クトゥルフ神話とプロ野球とヴァイオリンに対してこの上ない冒涜なんだから間違ってねえだろ。 つーか、てめえが正気失ってるじゃねえか。だから詳細は語るまいと言っただろうが」 このやり取りで俺らは完全に腹筋が死んだ。 こう言われて困は黙ってしまい、俺らに皆に詫びを入れて普通にゲームを再開した。 このあと、協力的だった、とか進行を助けたのポイントは辞退したことを考えると、困ったちゃんとしては極めて小物ではあると思う。 スレ455
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進化前フレーバーテキスト クラス:ネクロマンサー コスト:2 レア :シルバー アミュレット:効果 相手のターン終了時 ネクロマンス 4 ゾンビを一体を出す。 概要 性能や運用法、イラストについて語ろう! 進化後フレーバーテキスト 名前 コメント
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KP ディズム PL&PC マフィア梶田:カジタ 祁答院慎 健屋花那:垰屋花那 配信 2022/09/29 20 00- 新クトゥルフ神話TRPG『冒涜都市Z~深碧の魔境~』マフィア梶田,祁答院慎,健屋花那 ハッシュタグ #カジケドスコ探検隊 イラスト zoo:@mdrkwgk ツイート 告知 セッション告知 "――失われた神話を探検せよ。" 祁答院慎 / 健屋花那 感想 ディズム / マフィア梶田 1 / 2 (健屋花那) / 祁答院慎 / 健屋花那 1 / 2 立ち絵 カジタ / 祁答院慎
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システム クトゥルフ シナリオ名 冒涜的な伝承者 絶滅したはずの二ホンオオカミ、それが生きているらしいので、調査してほしいと 学会から依頼があった。 ある村のある廃館から夜な夜な鳴き声が、そして周りにはオオカミっぽい 動物の足跡が・・・君たちは廃館を探索し、無事帰ってくることができるのだろうか。 静かな廃館に今日も動物の遠吠えが聞こえてくる。 ワオ~~ン、テケリ・リ、ワオ~~ン、テケリ・リ クトゥルフTRPG 冒涜的な伝承者 「まずはなんとかして館に入らないといけないが?なんでドアが壊されているんだ?」 そこにはバールのようなものが静かに、そして威圧的に落ちているのであった。 内容 バールのようなものを使って、先に館に侵入した泥棒がいます。 もちろん襲われる生贄枠なので助けられるかはGM次第です。 ショゴスを二ホンオオカミ型に加工した者がいますので、そいつを どうにかする事が最終的な目標になるでしょう。
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KP ディズム PL&PC テラゾー ズズ 影。 配信 2022/10/01 19 00- 新クトゥルフ神話TRPG『冒涜都市Z~深碧の魔境~』テラゾー,ズズ,影。 ハッシュタグ #テラズズカゲ探検隊 イラスト 猫白々:@ToMaoPai ツイート 告知 セッション告知 "――失われた神話を探検せよ。" 猫白々 感想 ディズム / テラゾー / ズズ / 影。