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368 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 04 34.91 ID D8fOFD+Io 「……京介氏、今のこの状況を説明していただけますかな?」 深刻な(眼鏡で眼は見えないが、多分そうであろう)表情をした沙織が俺の顔を仰ぎ見る。 俺よりも身長が高いはずの沙織が俺の顔を仰ぎ見ている理由は、今現在、沙織はがっくりと項垂れており、一方の俺が膝立ちで辺りを見回している最中だったからだ。 「俺とお前が手錠で繋がれている」 現状を端的に、しかし的確に示す。 「その通り。しかし、それでは50点でござる」 だが、沙織はそれでは不満なようだった。 沙織は、やれやれ――といった感じでこめかみを抑え、首を横に振る。 「さらに言えば、“手錠の鍵と思われる物”があそこに落ちている」 「う~む、75点。もう一声!」 これでも不満なのか。 それにしたって、沙織は何でこの状況でこんなに落ち着いていられるんだ。 「壁に隣接した太いパイプがあり、俺側の手錠から延びる鎖は、パイプと壁の間にある細い隙間を通ってお前側の手錠へと繋がっている。……これでいいか?」 ちなみにパイプの裏の隙間はとても狭いため人間は行き来できない。 「ブラボー! おめでとう京介氏! 100点でござる!!」 「何もめでたかねえよ!」 何なんだよこの状況は!? 俺は自分のベッドで寝てたはずだろうが! それが何で目を覚ましたらこんな状況になってるんだよ!? あれか? 昨日寝る前に、あやせたんでちょっとフヒヒな妄想しちゃったのが悪かったのか!? だとしたらあんまりだ! 夜な夜な俺の枕元に現れるあやせたん(幻想)を前に健全な男子高校生が我慢できるわけが―― いや、落ち着け。落ち着くんだ京介。今、大事なのはそこじゃない。 大事なのは、この現状をいかにして打破するかだ。 それに、そんな理由で俺がこんなところに連れてこられたのだとしたら沙織まで巻き添えをくってる説明がつかねえ。 これが沙織だけなら身代金目的にの誘拐なんだろうけどさ。 「その通りでござる。京介氏がそのあやせたんとやらでどんな妄想していたのかは存じませんが、これはもっと別の――そう、いわば我々は選ばれてしまったようです」 「選ばれた……だと……?」 会話しているうちに項垂れた状態から幾分か復活を遂げた沙織が、現状で得られる情報、そして自らの推察も交えて、今俺たちが置かれている状況を語っていく。 なかなか現状を冷静に把握できない俺は、ただただ沙織の話を聞くことしかできなかった。 「そうでござる。わざわざ、こんな手の込んだ仕掛けを用意したり、拙者たち本人にすら気づかせないままここへ移送する手際の良さから考えて、これは用意周到な計画的犯行と言わざるをえません」 「あ、ああ。確かにな」 「そして、こんな風に綿密な計画を立てる犯人がこの状況に陥れる相手を適当に選ぶでしょうか?」 「いや、普通はそいつらのことを調べるなりなんなりして、それから――」 と、ここまで喋ったところで沙織が持ち前の明るい大きな声で俺の話を遮った。 「その通りでござる! 拙者たちは犯人による調査の結果、まさに“選ばれた”のでござるよ!! いわば大当たりでござる!!」 選ばれた。 沙織がこれまでに何度か繰り返したフレーズ。 普段ならば抽選に当たったとか、誰かと付き合うようになったとか、壮絶な死闘の末に討ち倒されたかに見えた魔女が実は精神体として生き残り転生のための器としてごく普通の少女に云々、そんなときにお目にかかるフレーズだと思う。 だが、俺たちがおかれている状況は、とてもじゃないがそんな幸せそうな状況とは無縁に見える。 「犯人の目的はわかりませぬが、わざわざ拙者と京介氏を“選んだ”ということはまず、間違いないでござる。そして、一見何の関係性も持っていそうにない凡庸男子高校生と美人お嬢様をセットにするからには少なくとも犯人は“拙者たちの関係”を知っていると見るべきです」 まさにその通りだった。非の打ちどころのない完璧な推理だ。 こんな状況でも冷静さを失わない。さすが沙織。 沙織の推理を聞いて、俺もようやくまわりが見えてきた。なので、ふと湧いた疑問を沙織にぶつけてみようと思う。 369 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 05 33.93 ID D8fOFD+Io 「ところでさ」 「なんでしょう?」 「なんでおまえが、俺があやせで妄想してた知ってるの?」 「そこですか、京介氏…………」 再び――いや、さっき以上にがっくりと力なく項垂れる沙織。 沙織はこんなリアクションだが、俺にとっては重要な問題なんだ。 ここから無事に帰ることができたとしても、このことが外部、特にあやせ本人や桐乃にバレた場合、最悪俺の人生は終わりを迎える。比喩的な意味ではなく。 「どうなんだ、沙織……!」 目覚めて10分ほどで早くもこの状況が生み出す狂気に支配された俺は、じりじりと沙織に詰め寄っていく。 幸い――いや、この場合は不幸にも、が正しいだろうか。沙織と俺は手錠によって繋がれており、沙織は逃げることすらままならない。 恐らく、この時の俺はとんでもない悪人面をしていたのだろう。 「ひっ……や、やめ……やめて……くだ……さい…………京介さん」 沙織はいつものぐるぐる眼鏡をかけているにも関わらず、お嬢様モード全開で完全に怯えてしまっている。 沙織の目の焦点は定まらず、視線を左へ右へとせわしなく動かしている。 その姿が、わずかに残っていた俺の良心にぐさりときた。俺は、何をやっているんだ。 「……すまん、沙織。俺、どうにかしてたみたいだ」 「えっ?」 「すまん、俺が悪かった。……言い訳になっちまうけど、そんな怯えさせるつもりはなかったんだ」 俺の謝罪の言葉で沙織がホッと胸を撫で下ろしたのがはっきりとわかった。 こんな状況においてさえ、沙織は“沙織・バジーナ”を演じていたから忘れていたんだな。……言い訳にもならないけどさ。 こいつの素の顔は、引っ込み思案で、超絶照れ屋で、友達思いのお嬢様なのだ。 いきなりわけもわからずこんな所に連れてこられた不安は俺の比ではなかったろう。 それなのに、こいつは、俺を不安にさせまいと“いつもの沙織”を演じてくれていたのだ。 もしかすると意図的に“選ばれた”等のポジティブなイメージの単語を使って現状を説明してくれたのかもしれない。 「よかった……いつもの京介さんに戻ってくれたんですね。……ほんとうによかった」 そして、俺を責めることもなく――ただ、笑って許してくれる。 「すまなかった。この通りだ」 精一杯の謝罪の念をこめて頭を下げた。今の俺にできることはこれしかなかったからだ。 そして、ここから無事に帰ることができたら――その時に、改めて謝罪と口止めをさせてもらおうと思う。 そう。今は沙織がなぜ俺の妄想を知っていたか、なんて些細なことに過ぎないのだ。後でしっかり追及はするけども。 「あ、頭を上げてくだされ京介氏! ……それに、もとはと言えば拙者の言が原因でござるゆえ、ここはお互い手打ちということで」 「ありがとな。そうしてくれると助かる」 「いえいえ。あ、ちなみに京介氏の疑問に一応答えておくと――」 「あれ? 教えてくれるの?」 これは以外な展開だ。だが、それゆえに僥倖とも言える。 ついでに口止めをしてしまおう、そうしよう。口止めはできるだけ早い方がいいもんな。 「ええ、もちろん。それはですね…………単に京介氏が心の声をダダ漏れにしておったのが原因でござる。」 「ダダ漏れ!? 全部!?」 どの辺りの話だ!? と、思ったがここへ来てからそれを声に出してしまった可能性があるのは、現状把握を行って沙織に100点と褒められた直後くらいだが。 ……ふぅ、なんだ、脅かすな。それなら大した情報は洩れてないな。……いや、十分に恥ずかしすぎる事態ではあるんだけどね。 「はい。『ふひひwwwあやせた~んwww今行くよ~』から、『おいおい、口では嫌――」 「ストオオオオオップ! そこまで!? そこまでダダ漏れだったの!?」 俺、そこまで声に出してたの!? ここへ来てからは妄想自体はしてないのにそこまで!? って言うか、なんだよそのシチュエーション!? 1つ目は覚えがあるが……2つ目がけしからん! 今度使おう。 「ごほん」 わざとらしく咳払いを一つ。勿論、俺がだ。 これ以上この空気に耐えられない! 「さて、この状況。どうやって脱出しようか。沙織君」 まずは形からということで、口調だけでも知的な紳士を装ってみたのだが、一向に名案は湧いてこなかった。 当然といえば当然の結果だけどな。 「まずはあの鍵を入手しないことには、なんともしがたいでござるな」 「ああ。悲しいが、その通りだな」 370 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 06 39.06 ID D8fOFD+Io 鍵の方へと向きなおる。 鍵は俺たちの正面にぽつんと置かれており、鍵までの距離はざっと10mくらいだろうか。 次いで俺たちを繋いでいる鎖を見る。こちらも長さは10mくらいだろうか。 「俺たちのどちらかが壁にぎりぎりまで寄って、もう一人が手を伸ばせば届くんじゃね?」 ごく普通の、誰でも思いつくような提案。 この作戦を図解するとこうなる。 _ _ |パ| |パ京 | | | | | ⇒ | | | | 沙 京 | | | | 沙 鍵 鍵 「とりあえずやってみるでござる」 「おう、そうだな」 そして、俺たちはおもむろに立ち上がり――二人とも壁に密着し腰を下ろした。 「おまえが行くんじゃねーのかよ!?」 「行くわけないでござろう!? 罠かもしれぬというのに、京介氏はあれをか弱き乙女に取りにいかせるのですか!」 「誰がか弱き乙女だ! それは眼鏡をはずしてから言え! だいたいリーチだっておまえの方が長いじゃねえか!」 「なっ!? 拙者だって好きで大きくなったのではありません! 気づいたら大きくなっていたんです!!」 今、外野から突っ込みが入るのが聞こえたぞ。沙織は女の子はお嬢様なんだからお前がやれだと? 馬鹿いうな。さっきこそは沙織の優しさに感動したもんだが、それとこれとは話が別だ。 沙織は、今、沙織・バジーナであって槇島沙織ではないのだ。 それに、こうして騒いでいた方が不安も紛れるんだよ。沙織もわかって付き合ってくれてるんだろうぜ。 そのまましばらく互いに文句を言い合っていた俺たちだったが、この不毛な争いは沙織のある行為によって、いとも簡単に幕を下ろすことになる。 「京介さん。お願いしますわ」 「…………ちくしょう……それは反則だろ」 そうひとりごちて、立ち上がり、鍵の方へ歩いていく。 改めて辺りを見回したところ、新たに気づいたことがあった。 「あれ? あそこにあるのって出口じゃね?」 俺たちが先ほどまで座り込んでいたパイプとちょうど反対側の壁。俺たちの正面にドアらしきものがちらりと顔を覗かせている。 今まで気づかなかったのは反対側の壁一面には様々な物が雑然と置かれており、うずたかく積み上げられていたからだ。 さらに言うならば、きょろきょろと辺りを360度見回しても窓およびそれとおぼしきものは確認できなかった。 「鍵さえ入手できれば脱出はできそうだな」 勿論、あのドアがロックされていなければの話ではあるが。 そんなことを考えながら歩いていき、鍵の目前せまったところで、突然、がくんと手錠の嵌った方の腕を引っ張られた。 「うおっと。沙織か? どうし――」 振り返って見てみると、沙織の腕がパイプにぴっちりと押し当てられている。 当然、手錠を嵌められた方の腕が、だ。 「沙織? まさか……」 「そのまさかでござる。この手錠を繋ぐ鎖、どうやらぎりぎり鍵に届かない長さにしてあるようです」 「ははは、まさか。大丈夫。頑張れば届くって」 俺は務めて、そしてこの場には不釣り合いなほど明るくそう言い放ち、じりじりとすり足で鍵ににじりよる。 ぎしっ。 手錠が嫌な音を立てて軋む。ここからでは手を伸ばしても届きそうにない。 念のため、足を伸ばしてもみるがやはり届かない。 鍵まではここからさらに1mほどの距離があるため、沙織のリーチをもってしても届くことはないだろう。 「くっそ……ぐぬぬぬ」 力を込めて手錠で拘束された腕を引く。なんとしてもあの鍵を手に入れて脱出しなければ。 そんな思いが俺を突き動かしていた。 が、しかし―― 371 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 08 00.36 ID D8fOFD+Io 「いっ、痛いです。京介さん」 「へっ?」 再度振り返って見てみれば、沙織が苦悶の表情を浮かべていた。 し、しまった。何も考えてなかった。 俺が引っ張れば引っ張るほど手錠は沙織の腕を圧迫していたのだ。 「それに拙者、こういうプレイは初めてでござるゆえ……ここは一つ。…………もう少し……優しく……してください」 「こんなときに何言ってんだおまえ!?」 「あ、もちろんこういうプレイに限らず拙者は色々と未経験でござるよ?」 「誰もそんなこと聞いてねえ!」 ガタタン! 沙織のアホな台詞に反応したかのように、俺の背後、つまり出口の方から大きな物音が聞こえてきた。 バッと振り返ってみるが、積み上げられた荷物が崩れたとか動いた気配はない。 となると―― 何かいる! 「お、おい! 誰かいるのか!?」 声を大にして呼びかけるが一向に返事はない。 返事がないとうことは動物か何かだったのだろうか。あるいは、俺たちをこんな目に合わせた犯人――だろうか。 どちらにせよ、返事がこない以上協力は望めない。 自分たちの力でどうにかしてあの鍵を手に入れなくては。 「…………あっ」 「どうされました、京介氏?」 「ふっ、名案思いついちゃったぜ」 ぐっと親指をたてたポーズで沙織を見る。 そして、俺はおもむろに―― 服を脱ぎだした。 「きょ、京介さん!? 一体何をなさるおつもりですか!?」 「うん? 見てわかんないか?」 「ひっ!? あ、あああ、あの! ……私色々初めてでその……まだ早いと言うか……と、とにかく落ち着いて下さい!」 なぜか沙織の慌て振りは相当なもので、いつものぐるぐる眼鏡はずり落ち、もはや完全に素のお嬢様状態に戻ってしまっている。 「何を慌ててるんだおまえは。シャツを脱いだだけだろ」 淡々と服を脱ぎ、てきぱきと作業をこなす俺を尻目に沙織は部屋の隅で小さくなって震えている。 「ううっ…………ごめんなさい……きりりんさん、黒猫さん」 目をきゅっときつく閉じ、なぜだか知らないが桐乃と黒猫に謝っていた。 ただ、一つ気になるのはさっきから“フーッ、フーッ”という獣が威嚇するような、あるいは黒猫に『桐乃は実は隠れブラコンである』という設定の漫画を見せられた時の桐乃のような息遣いが聞こえてきていることだった。 「まじでなんかいるんじゃねえだろうな、ここ」 早く脱出しなくては。 「さっ、準備できたぞ」 「ひっ!? お、お父様お母様。結婚まで操を守ると言う教えを守れず申し訳ございません。でも私、京介さんとなら……」 向こうで完全にトリップしている沙織を放置して、手錠が沙織を苦しめない範囲で鍵に接近する。 そして、シャツで作った投げ縄を鍵に向かって投げた。 もちろん裾の部分は掴んだままだぞ。遠くに投げてしまって回収不能なんて馬鹿なことはやらないからな。 シャツは袖の部分が互いに結ばれており、袖と襟裳の部分で輪っかができている。 その輪っかの内側の部分に鍵を引っかけてずるずると引っ張りこちらへ引き寄せようと言う腹積もりだ。 もちろん、即席の輪っかな上に元がシャツなので鍵は思うように引き寄せられはしないだろうが、地道にやれば問題ない。 とりあえずの目標達成はすぐそこまできている。 するっ。 「ん?」 一瞬鍵を輪っかの内側に捉えたかに見えたのだが、俺が投げたシャツは鍵をとらえることはなかった。 372 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 08 48.77 ID D8fOFD+Io 「ははは、俺も沙織に続いておかしくなったかな?」 シャツを手繰り寄せ手元に回収し、もう一度投げてみる。 が、今度は完全に届かない。 そして、これはできれば認めたくないのだが……先ほどまでと比べて明らかに鍵が遠ざかっている。 「なんだこりゃ!? 鍵が逃げた!」 我ながらアホな台詞だったと思う。だが、事実なのだから仕方がない。 「くっそおおお! 負けてたまるか!」 謎の対抗心を燃やした俺は、あろうことかズボンまで脱ぎ捨てシャツに結んでいく。 今の俺の恰好は、俗に言うパンイチである。 「ふはははは! これでリーチはさっきの倍以上! 俺から逃げられると思うなよ!」 首を洗って待ってろよ、鍵たん! スイッチがすっかりONになってしまった俺は、意気揚々と“輪投げ”を再開する。 距離が少し離れたせいか少しばかり命中率が悪い。 しかし、3回目の投擲にてついに、鍵を捉えた。 ――かに見えたのだが、鍵はまたしてもするりと輪っかを回避し、さらに遠くへと逃げて行った。 「があああ! やっぱり逃げやがった! 犯人か? 犯人の仕業か!?」 パンイチで絶叫する俺。 隅っこできつく目を閉じ震えている沙織。 実にシュールな光景だが、こっちはそれどころではない。 「沙織! お前も脱げ!」 こうなったらお前の服も貸してもらう! 「わかりました京介さん。……私も、覚悟を決めます」 俺の暴走っぷりが最高潮に達しようとしたその時、特大の声が室内に響いた。 『こ、この変態! ちょっと待てっての! ……いや、待ちたまえ!』 「だ、誰だ!?」 慌てて辺りを確認する俺。 まるで犯行に及ぶ寸前でヒーローに邪魔された犯罪者さながらの対応である。 『我々が何者か……そんなことはどうでもいいのだよ』 「我々?」 『あっ』 『ば、莫迦。ちょっと変わりなさい』 どうやらこの声は室内のどこかに隠されたスピーカーから流れてきているみたいだった。 聞き取れる声は変声機のようなものを通しているのか、おかしな声色となっている。ほら、よくテレビとかである“プライバシーのため声は変えてあります”の時に聞こえてくる声みたいな感じだ。 そのため声の主が男か女かすら判別できない。 ただ、恐らくこいつが俺たちをこんな状況に陥れた犯人と見て間違いないだろう。 「ふむ」 奴らは“待て”と言った。これはこちらの行動が奴らに筒抜けであることを窺わせる。 どこかで見ているのだろうか。ならば犯人は意外と近くにいるのかもしれない。 そして、“我々”と名乗ったことから犯人が複数犯であることも確認できた。 その直後にもう一人の犯人にたしなめられていたことから、その言はこちらのミスリードを誘うものではないはずだ。 犯人の横槍によってスイッチがOFFになった俺の頭は落ち着きを取り戻し、その思考は冴えに冴えていた。 「ふっ、らしくなってきたじゃないか」 こんな状況だと言うのに、恐怖は微塵も感じない。犯人がどこか間抜けっぽいのもその原因の一つだろう。 『お待たせしたわね』 『ちょっと、口調』 『あ……ま、待たせたな』 な? 間抜けっぽいだろ? あと、今の口調からして犯人のうち少なくとも一人は女だな。いや、オカマの線もあるけどさ。 沙織は犯人を“綿密な計画を立てる”と評したが、これなら案外どうにかなるんじゃないかと思うんだ。 「おまえらの望みはなんだ! こんなことをして何が望みだ!」 ここぞとばかりに強気に出る俺。 少しくらいは沙織に頼りになるところも見せたいしね。 373 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 09 34.15 ID D8fOFD+Io 『君たちには、いや、実際に参加するのは君だけだがね、高坂京介君。君にはあるゲームに挑戦してもらう』 俺の名前を知っている? やはり沙織の推理通り、犯人はこ俺たちの素性についてある程度の知識を持っているようだ。 同時に、俺と沙織が選ばれたのには何かしらの意図があることになる。 「……ゲームだと?」 『そう、ゲームだ。なに、難しいことではない。君と共に天上への扉を開くに相応しい人物は誰なのか……君自身に選んでもらうのだよ。それが終われば君たちは解放しよう』 「天井への……扉?」 屋根裏的な? 『違う! 天の上と書いて天上だ!』 何キレてんだよ。 それに、えらく分かりにくい言い回ししやがって。おまえは黒猫か。 『こほん。……では、そのゲームを始める前にまずやってもらいたいことがある』 「な、なんだよ」 『……ふ、服を着なさい』 「げっ!? 忘れてた!」 ―――――――― 「おい、準備できたぞ。早くゲームとやらの説明をしろ」 そそくさと着替えを終え、わざと居丈高な態度を取る。 別に誰かの真似をしているわけじゃないぞ。 俺がいつまでも不安がっていたら沙織までも不安になってしまうだろう。ゲームとやらに参加するのは俺だけだと言うのだから、せめてその俺が不遜に振る舞うことによって沙織を不安がらせないようにと考えたのだ。 だから、俺がこんな態度を取るのはあくまでもそういう理由からで、パンイチでかっこつけてたのが恥ずかしくて誤魔化しているわけじゃあない、ということを理解してほしい。 「京介氏……」 「心配するな沙織。どんな無理難題がこようとおまえだけは守って見せるさ」 「……はい。せっ……いえ……私も京介さんを信じています」 ふっ、決まったね。こりゃあ沙織も惚れちまったかもしれねえな。 『……………ふん、その態度がどこまで続くか見物だな。さっさとゲームの内容を発表させてもらうぞ』 俺たちの芝居じみたやりとりが気にくわなかったのか、いきなり不機嫌な態度になる犯人。 意趣返しってわけじゃないが、少しだけ犯人にやりかえすことができた気がして少しすっとしたぜ。 『ふふふ、ルールは簡単だ。君は“ある順番”で人物の名を告げていくだけでいい』 「ある順番?」 『そうだ。今から挙げる人物を“君が君自身の人生に必要だと思う順番”に並べ替えてその順位を下から発表してもらう。どうだ? 簡単だろう?』 なんだ? “俺の人生に必要だと思った順番”って。 「おい、“必要だと思った順番”ってどういう意味だ?」 『チッ……察し悪いなぁ。そのまんまの意味』 俺が問い返すと、さきほどまで喋っていた奴とは別の奴が口を挟んできた。 恐らく、最初に『我々』というワードを口にしてしまうことで、複数犯であるということを俺たちに悟らせてしまい窘められた方の犯人だろう。 「だから、そのまんまの意味ってなんだよ。そもそも、どういう基準で選べってんだよ」 俺がさらに詰め寄ると、犯人はイライラを爆発させた。 『そんなのはあんたが勝手に決めなさいよ! せっかくこっちは一位に選ばれた人間を祝福してやろうって決めたのに!』 ……なんだろう。この、胸に広がる懐かしい苛立ちは。 目を閉じれば、まるで誰かの顔が目の前に浮かんでくるようじゃないか。 オラ、こいつと話してるとなんだかイライラしてくるぞ。 ともあれ、今の犯人との会話は俺に、“必要だと思う順番”考える上での重要なヒントをもたらしてくれた。 深呼吸をして軽く気分を落ち着けてから、俺はこう切り出した。 「一位になったやつは祝福されるって言ったな? そりゃ、どういう意味だ?」 『あっ』 『……まったく、あなたはひっこんでなさいな』 『ぐぬぬ』 露骨な、あっ。これほどわかりやすい奴もそういないだろう。 そして、またしても相方らしき人物に窘められている。 これ以降、便宜的に怒られた方の犯人を犯人A、窘めた方の犯人を犯人Bと呼ぶことにする。 どうでもいいけど、こいつらのやりとりって、どっかで聞いたような気がするんだよなあ。それも身近なところで。 ……まあ、今はそれは別にいい。それよりもはっきりさせておかねばならないことがある。 374 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 10 54.47 ID D8fOFD+Io 「祝福って一体何をされるんだよ」 ぎりっ、と拳を強く握り犯人たちに問いかける。 どこか間抜けっぽい印象を受けるとはいえ、人攫いをやっちまう程の連中だ。 祝福と言えば聞こえはいいが、実際何をされるかわかったもんじゃない。 『こほん。それは私から説明しよう。なあに、物騒な話じゃない。呼んで字のごとく、本当にただの祝福だよ。おめでとうと言ってあげてもいいし、関わるなと言われればもう君たちの前に現れることもしない。君と君が選んだ人物には手を出さないと誓おう』 「その言葉、本当なんだな?」 犯人の意思を再確認する。こんなことをしても大した意味なんてないのはわかっていたが、それでもせずにはいられなかった。 すると、なぜか犯人はどこか悲しげな声で『……ああ』と答えたのだった。 「じゃあ、選ばれなかった人間は?」 続いて質問をする。これが一番大事な質問だ。 俺に“選ばれた人間”が安全だとしても、その裏では“選ばれなかった人間”がいることになる。 数の問題ではないが、人数的に“選ばれた人間”よりも多いと予想される“選ばれなかった人間”の安全だけは絶対に確認しなければならない。 『安心したまえ。我々はそちらにも手を出したりしない。大事なのは君が“誰を選ぶか”なのだから』 犯人の言葉を信じるなら、これでこのゲームとやらで俺の周りの人間が傷つけられる心配はなくなった。 もちろん完全に信用はできないし、そもそも他に何ができるというような状況にもないのだが。 『ただ――』 「ん?」 『選ばれなかった人物の心が強くなかった場合、その人物身の安全は保障できかねる』 「なっ!? 話が違うじゃねえか! さっき手を出さないと言ったばかりだろ!」 当然のように抗議する俺。こんなことをして犯人の怒りを買うことにでもなったら一大事なのだが、体が勝手に反応してしまっていた。 だいたい、心が強くなかった場合ってなんなんだ。意味がわからねえぞ。 『我々は手をださんよ。全てはその人間自身が決めることだ』 「くっ……わけわからねえこと言いやがって」 くそっ、犯人の目的がさっぱりわからねえ。 俺にもそのまわりの人間にも手を出さない癖に身の安全は保障しないと言う。 一体どういうことなんだよ。 『あ、ちなみに』 俺が犯人の目的について頭を悩ませていると、犯人Aが声をかけてきた。 『ある人物に関してだけど、その人物が選ばれなかった場合、あんたの身の安全が保障できなくなるからそのつもりで』 「おいちょっと待て! さらりと大事なこと言ってんじゃねえよ!」 なんだそりゃ!? これって、ひょっとしてそのある人物とやらを無事に当てるゲームなの!? 俺の突っ込みはむなしく響くばかりで犯人側からの返事はない。 心臓はバクバクだ。 「黙ってないで説明しろって!」 『うっさいなあ。つまり、Nice boat.ってことだって』 「なんだよナイスボートって!?」 “いいボート”ってなんですか!? 俺は湖に遊覧にでも出掛けるの!? 『それでは、ゲームを始めよう』 俺の質問を完全に無視して進行しようとする犯人B。 「待ってくれ! せめてナイスボートについての説明を――」 『却下』 追いすがる俺を犯人Aがばっさりと切り捨てる。そのままがっくりと項垂れる俺。 こうして、少々――いや、かなり理不尽ではあるがようやくゲームが開始されたのだった。 ――――――――――――― 『では、君に選ばれる候補となる人物の名を教えてあげよう』 「……」 一体どんな奴らが候補に挙げられるのだろうか。 家族か、クラスメイトか、それとも得難い友人達か……。 いずれにせよ、俺はそいつらに優劣をつけることを強要されることになる。 俺の人生においてあいつはこいつよりも必要ない。そんな判断を下さねばならない。 今までそんなこと考えたこともないし、できることなら考えたくもないことだった。 『一人目は高坂桐乃――君の妹だ』 「……っ! てめえ、桐乃は無事なんだろうな!?」 375 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 12 50.49 ID D8fOFD+Io 淡々と妹の名を告げる犯人B。 その言葉を聞いて、頭に血が上っていくのがわかった。気が付けば俺は拳を痛いほど握りしめている。 『……何ニヤついているの』 あ? 誰がニヤついてるって!? 今、俺はどこからどう見てもキレて…… 『えっ!? だ、誰もニヤついてなんかないってば!』 「は?」 聞こえてきたのは犯人Aの素っ頓狂な返事。 『……まあ、いいわ』 「おい、今のはなんだ。それと、桐乃は無事なのか?」 『……さあ、次の人物だ』 「待て、話を逸らすな!」 俺にとっては大事なことなんだよ! 『も、もう。しつこいってば! 元気にしてるから大丈夫!』 犯人Aが早口でまくしたてる。 くそっ。今はこいつの言葉を信用するしかないのか。 『さて、二人目だが……黒猫、と言えばわかるかな?』 「黒猫だと!?」 沙織は俺と一緒に拘束され、桐乃の名前が出てきた以上、黒猫の名前が出て来ることは半ば必然と言えた。 まさか、いつもの4人組がターゲットにされることになるなんて……。 「念のために聞いておくが、あいつも無事なんだろうな?」 できるだけトーンを低くした恫喝するような声色で尋ね、何かあればただじゃすまさない――ということを言外に匂わせる。 こちらが圧倒的に不利な立場なのを全く意に介さない喋り方だ。 こちらはまだ犯人の目星すらついていないというのに。 だけど、そう言わずにはいられなかった。かっこつけたかったとか、正義感だとか、そういう理由じゃない。 みんなが無事に元の生活に戻る。そのために、今するべき最大限の努力をするべき。そう思った。 『……っふ、無事さ。今のところはね』 『ニヤけんなっての』 「……」 どうやら犯人Bもニヤついているらしい。犯人の目には、こんな状況で強がる俺が滑稽に映っているのかも知れない。 いや、実際のところかなり滑稽だろう。だが、そんなことはどうでもいい。 大事なのは、みんな無事に元の生活に帰ることなのだから。 『これから名前を読み上げるたびに“無事なのか”と確認されるのは面倒だ。だから先に断っておく。先も言ったが、我々は君たちに以外には手を出していないしこれからも出すつもりはない。これを理解しておいてくれ』 どうやら、俺の行動はお見通しらしかった。 こう言われなければ、俺は確実に名前が挙がる毎にその人物の無事を確認したことだろう。 『では一気に名前を挙げてしまおうか。ふふ、しっかりと魂に刻み込みたまえ』 厨二病にかかっているような電波がかった台詞。 おまえはどこの黒猫だ、と思わず突っ込みたくなる。 『先の2名と、槇島沙織、田村麻奈実、新垣あやせ、そして……』 ここまで一息で喋った犯人は、なぜかそこで名前の列挙をストップさせた。 『……どうする? 入れておく?』 『あ~、どうしよ。この人たちって脈あったっけ?』 『私に言われてもわかるわけないでしょう』 『じゃあ、一応入れといたらいいんじゃん? どうせ名前借りるだけだし』 『それもそうね』 謎のやりとりをする犯人Aと犯人B。 何を入れるって? 脈がある? ……はっ!? まさか、脈がない=死んでるってことじゃないだろうな!? 「おい! おまえら――」 『ああ、さっきの脈云々は生死に関係ないから安心なさい』 どうやら、俺の思考回路は本当に筒抜けのようだった。 376 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 14 20.33 ID D8fOFD+Io 『では、君に選んでもらう人物を改めて発表しよう。高坂桐乃、黒猫、槇島沙織、田村麻奈実、新垣あやせ、来栖加奈子、ブリジット=エヴァンス、赤城瀬菜、伊織・F・刹那――以上の人物を君の人生に必要な順に並べ替えてくれ』 「……多いな、おい」 『あんたが優柔不断なのが悪いんじゃん』 「なんで俺のせいになるんだよ」 その人物をチョイスしたのはおまえらだろうが。 『では、君にしばしの猶予を与えよう。よく考え――』 「その必要はないぜ」 『えっ?』 「俺の心はもう決まってる」 『う、嘘……』 「嘘じゃねえ。確かに、以前までの俺なら迷って決められなかったさ。だけどな、俺は誰かさん達に教えられたんだよ」 だから、あいつらを見習ってみようと思う。 自分の欲しい物を全て手に入れようとして何が悪い。あっちを立てればこっちが立たないなんて知ったことか。 「よく聞けよ! 俺の人生にはなあ…………今名前が挙がった人間全員が必要だ!!」 『『「はあ!?」』』 驚きを隠せない犯人たち。なぜか沙織まで驚いている。 「その中の一人でも欠けたら俺の人生はつまんなくなっちまう。だから、俺はそんなのは認めねえ。何かを諦めるなんてことは絶対にしねえ! いいか! 俺はな、優柔不断なんじゃなくて強欲なんだよ!! わかったか! ふははははは!」 『『「…………」』』 絶句する犯人たちと他一名。 無茶苦茶な言い草なのはわかっているが、これがあいつらと一緒にいて得ることができた俺の答えだった。 『はあ……何ソレ。まあ、あんたらしいけど。あ~あ、結局失敗じゃん』 『優柔不断も言い様ね。実にあなたらしいわ』 「まったくです。ですが、そこが京介氏のいいところ――と言えなくもないでござる」 「えっ? おまえら、何言って……」 がちゃり。 「えっ?」 混乱する俺に追い打ちをかけるように、既に手錠が嵌められた方の腕とは反対側の腕に手錠がはめられる。 そちらを見てみれば、そこには“手錠をはめていない”沙織が立っていた。 「えっ? ……ええっ!?」 事態の展開に頭がついていかない。 どういうこと!? いつの間に沙織は鍵を手に入れたの!? 「その顔。まだわかっておられないようですな」 こんな口ωをして、にやーと笑う沙織。 「ど、どういうことだ?」 「ふふふ。全ては狂言。あるいは幻想。……要するにお芝居でござる」 「はあ!? 今までの全部がか!?」 「はい! いやあ、京介氏も中々かっこよかったでござるよ。“心配するな沙織。どんな無理難題がこようとおまえだけは守って見せるさ”(キリッ」 「うわああああ! 殺せ、いっそ殺せえええ!」 いつぞやの瀬菜のように発狂しだす俺。 ようやくあの時のあいつの気持ちがわかったよ。そりゃ悶絶もするわ。 「はっ!? じゃあ、まさか犯人ってのは……」 「きりりん氏と黒猫氏です」 「うおおおおおおおおお!」 この世に神はいないのか! このままじゃ恥ずかしさで死んじゃう! 「おまえら、いったい何の恨みがあってこんなことをしたんだ!」 恨みを晴らしたいなら殴るとかで肉体的に晴らしてくれ! 精神的に追い詰めるのは止めろ! 377 ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 2011/05/20(金) 21 16 10.14 ID D8fOFD+Io 「いやいや、何も京介氏に恨みがあってこんなことをしたわけではありませぬ。……そりゃあ、いつまでもはっきりしない京介氏をちょっとくらいは恨んだりしたこともないわけではないですが……。あ、ちなみに黒猫氏の口調の先生はフェイトさんという方だそうですぞ」 あの人も一枚噛んでたのかよ! ……よくよく考えればこの茶番に気付くべきヒントはそこかしこにちりばめられていた。 犯人の片方は時々ギャルっぽい口調で喋ったりするし、もう一人は厨二病を患ってるし、犯人たちのやりとりは桐乃と黒猫のやりとりそのまんまだし、その上沙織は何故かやたらと落ち着いてるし……。 極めつけはこれだ。この部屋の出入り口には“内側から”ドアを隠すように障害物が雑然と置かれている。 これは、ドアを閉めた後に“室内の”人間が障害物を積み上げたことを意味する。 そして、室内には俺と沙織だけ。答えはもう明白だ。 そしてこれは今気が付いたんだが、ちらりと見えるこのドアを目を細めてよく見てみると、蝶番が“室内側”についている。つまりこのドアは室内側に向かって開くドアなのだ。 だから、ドアを閉める前に積み上げてからドアを閉めるなんて方法はとれなくなっている。これも“沙織共犯説”を裏付ける証拠といえるだろう。 「うふふ。ごめんなさいね、京介さん」 気が付けば、沙織は眼鏡を取り髪を下ろし、沙織・バジーナから槇島沙織へと変身していた。 「これは、私からのお詫びの印です」 そう言って沙織は、頬に軽く触れるだけのキスをした。 「なっ!?」 『ああっ! あんた今何した!?』 『沙織! あれほど抜け駆けはなしといったでしょう!?』 「あら、これも“当たりくじ”を引いた人間の役得というものですわ。そう。言わば私は“選ばれた”のですから」 『『ムキー!』』 勝ちほこる沙織と、悔しがる桐乃&黒猫。実に珍しい構図だ。 「あ、京介さんはもう少しそうして反省してて下さいね」 沙織はそう言い残すと、がらがらと障害物を排除しそのまま部屋を出て行った。 沙織の不意打ちによって思考停止状態に追い込まれていた俺は、沙織を呼び止めることもできず、静かに沙織を見送った。 「……いったい俺に何を反省しろってんだ。ちくしょおおおお! 誰か助けてくれええええええ!」 ようやく意識を取り戻した俺は、覚えのない罪で罰せられる自身の身の不運を嘆くしかなかった。 優柔不断√おわり
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やさおとこつかさくんはゆうじゅうふだんすぎます 6【登録タグ じんたね や ライトノベル ラブコメ 小説 本】 優男司くんは優柔不断がすぎます(七) 著者:じんたね 本紹介 サンプル コメント 名前 コメント
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ミスト 「はーい!」 「…こんな時間に誰だろう? アンジェリカはまだ勤務時間のはずだし…」 シェルディア 「はーい!ミスト!」 レム 「こんばんは、お兄ちゃん!」 ミスト 「シェルディア! レム!ふたり揃って何の用だ…?」 シェルディア 「引っ越しの挨拶に来たんだ」 ミスト 「引っ越し?お前達はダンナーベースに居候してたはずだよな?」 「どこに引っ越すんだ?」 シェルディア 「507号室!」 ミスト 「507号室?どこの507号室だ…?」 「…って、まさか!?」 シェルディア 「隊長さんとアンジェリカの部屋が505号室、 ミストが506号室…」 レム 「で、私達が507号室だよ!」 シェルディア 「ミストと アンジェリカだけが お隣同士なんてずるいもん!」 ミスト 「ず、ずるいって…」 レム 「お隣さんなら、いつでも遊びに来られる!」 シェルディア 「何だったら、毎日ご飯を作りに来てあげてもいいよ?」 ミスト 「あ、いや、間に合ってるから…」 レム 「そうだ! いっその事、ベザードの時みたいに 3人で暮らそうよ! ねっ?」 ミスト 「ねっ? じゃなくてさ…」 アンジェリカ 「ちょっと!何やってるの、ミスト!」 ミスト 「アンジェリカ!隊長!」 シェルディア 「…ちょうどいいタイミングね…」 エルリック 「シェルディア君に、レム君じゃないか。 いったいどうしたんだね?」 レム 「あのね、私達507号室に 引っ越してくる事にしたの!」 シェルディア 「よろしく。 ミストのお隣さん」 アンジェリカ 「ちょ…ちょっと、これってどういう…。 …悪ふざけのつもり?」 シェルディア 「…真剣だよ」 アンジェリカ 「えっ?」 シェルディア 「ミストは 渡さないからね!」 レム 「ミスト兄ちゃんはほんとはお姉ちゃんの事が 好きなんだから!」 ミスト 「お、おい! 何を言い出すんだ!」 シェルディア 「ボクもアンジェリカもお隣同士…条件は一緒。 これからがほんとの勝負だからね!」 アンジェリカ 「いいわ。その勝負、受けて立つわ」 ミスト 「お、おい。アンジェリカまで 何を言い出すんだよ」 アンジェリカ 「あなたは黙ってて。 これは女同士の戦いなんだから…」 ミスト 「た、隊長! 助けて下さいよぉ!」 エルリック 「お、俺の専門外だな。この戦闘に関してはお前が処理しろ」 「報告書の提出は見逃してやる」 ミスト 「そ、そんなぁ…」 シェルディア 「負けないからね、絶対…!」 アンジェリカ 「どの口がそんな事を言うのかしら…!?」 ミスト 「う、うわぁぁぁ…。これから先、 どうなっちまうんだ!?」
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111 :離婚さんいらっしゃい :2008/07/01(火) 09 41 26 俺30歳 嫁30歳 娘5歳 同棲4年、結婚7年目でおととい離婚した。 昨日から浮気相手だった女性と一緒に住みだした。 激しく後悔している 113 :111 :sage :2008/07/01(火) 13 09 51 112 復縁しようと思えば簡単なんだ。 ただ浮気相手の気持ち考えるとできねぇ。 たしかに自業自得だな・・・。 勢いで離婚するのはマジ止めた方がいいな 自分では大人だと思ってたけど、俺まだまだガキだったみたいだわ 121 :111 :2008/07/02(水) 13 07 12 元嫁の好きなとこは、顔とやさしさ。 嫌いなとこは、素直じゃないとこ。SEXが嫌いなとこ。 今の同棲相手の好きなとこは、性格と価値感が合うのとSEXの相性がいいとこ。 嫌いなとこは、顔。 性格と価値感とSEXの相性で今の相手を選んだんだけど 顔って結構気になるんだなと痛感中。 元々の離婚理由は、喧嘩が増えて勢いで離婚って感じなんだけど 離婚が決まってからは喧嘩もなくなってた。 その辺りで、もう一度やり直そうって言えば戻っていただろう。 でも、今の相手の方が幸せな生活が送れそうな気がして言うか迷ったけど言わなかった。 それと、この人の愛情に答えてあげたいって気持ちもあって今の相手を選んだんだ。 128 :111 :2008/07/03(木) 10 18 41 127 :123 :sage :2008/07/02(水) 21 14 50 124は 123へのレス? 嫁の嫌いなところSEX嫌いって 嫁のSEXの相手はあなただけなんだから お互いにどうすればよくなるか努力すればよかっただけ 性格と価値観が合うって言うけど それって結局家庭生活・日常生活からの逃避が可能だから 居心地のいい逃げ場としての言い訳に過ぎないよ 人間の価値観なんていい加減なもの まるきり同じ価値観の人間なんていないし 物の価値なんて生きてれば歳によって徐々に変わる 離婚の理由は喧嘩が増えてってあるけど それってお互いの意見を述べ合うからぶつかり合うのであって 離婚が決まり喧嘩がなくなった=もうどうでもいいってこと あなたがやり直そうと思ったところで、女が決意した別れは翻らない 今の相手のほうが幸せな生活が送れそうな気がしてというけど 結局ケンカばかりで妥協案・解決方法が見いだせないから 楽なほうへ逃げた、それだけでしょ 具体的な解決方法は全く出ていない この人の愛情に答えてあげたいなんて、ただカッコつけてるだけ ダラダラ長文ゴメン 124 おそらく復縁できると思う。これは自分が勝手に思っているだけではなく 元嫁の言動でわかるんだ。 127 アンカーミスです^^; すごくわかりやすい説明ありがとうございます。 言ってる事、ほとんど当たってる・・・。 SEXについては色々努力したつもりなんだ。 ただ元嫁の方が、そこまでしてしなくても・・・。って感じで あまり協力してくれなかったんだ。 離婚が決まり喧嘩がなくなった=もうどうでもいいってこと これについてなんだけど、喧嘩がなくなったのは、お互い素直じゃないので 喧嘩なくなって仲良くなる→じゃあ離婚しなくていいじゃん。 という流れに自然と持っていこうとした結果だと思うんだ。 過去何回かこの流れで離婚を止めたので。 実際先月くらいに、元嫁が夏休みの予定とかの話を出してきたりしてたんだ でも俺が「離婚するんだし別々に過ごすだろ?」とか言ったりした事もあった。 この人の愛情に答えてあげたいなんて、ただカッコつけてるだけ これについては、さすがにカッコつけたいだけで同棲を始めたりはしない。 本当にそう思ったんだ。俺もこんな形の愛情があるとは信じてなかったよ。 すごく一途で深くて、心が動かされたんだ。 結局は俺の考えが浅かったんだな。 日曜日に元嫁が遊びに来るらしいんだ。 元嫁「子供が家に遊びに行ってみたいって言うから子供だけ行かせるね」 子供は5歳なので複雑な電車の乗り継ぎをして来れる訳がない 俺「一緒に来ないと一人じゃ無理だよ」 元嫁「じゃあ一緒に行こうかな」 ホントは最初から一緒に来るつもりなのにこういう言い方する 前は、最初から素直に言えばええやん!!って思ってたのに 今は、かわいらしいと思える。 人間って不思議。 そして今激しく後悔。 これは元嫁との思い出が輝いて見えてるだけなのかな? 136 :111 :2008/07/03(木) 19 14 35 色々反応ありがとう。 129 私なら、長く暮らすことを考えても価値観が一致しているほうをとるけど。 俺もそう思って同棲始めたんだ。 でもどっか違うんだよ。 しゃべってて楽しいし、TV見てて笑うとこも同じ。 だけど女性といる感じがしないんだ。 なんていうかパートナーって感じに思えてきて・・・。 同棲相手とわかれて、籍を入れないまま元妻とつきあったら? たぶん、元妻とは距離をあけていたほうがうまくいくタイプなんじゃないの? それ考えたんだけど、今の相手の気持ち考えるとどうしてもできないんだ。 一緒に同棲できたのがホントうれしそうで・・・ だけど、こんな気持ちで一緒にいるのも可哀そうだなとか思う。 もう何を悩んでるのか、どうしたいのかわからんね・・・ 131 あなただけじゃないと思う。 でも、本音でしゃべったら意外と誰でもムカツク奴になれると思う。 こんなとこで偽善ぶっても仕方ないからわかりやすく思ってる事書いた。 137 :111 :2008/07/03(木) 19 15 19 132 価値観がいや顔が嫌 誰でもそうやって相手を選ぶものと思ってた。 俺はまず顔を見る。そして性格とかかな。 性格がいいなら顔は多少妥協できるけど、逆は嫌だ。 あっちがいいかもこっちがいいかも これも誰でも思うものと思ってた。行動に移すかどうかは人それぞれだろうけど。 俺が行動に移したのは、3年間考えに考えた結果なんだ。 この男の文面からはどちらの女に対する愛情など微塵も感じないし失礼なんだよねどっちが自分幸せになれるかなーって打算ばかり働いていて 相手の人格や気持ちなんか考えちゃいない すまない。 あまり文章力ないんだ。 ただ感じれないかもしれないけど愛情はあるんだ。 同棲相手に対する愛情は少し違った形かもしれないけど。 どっちが幸せになれるかって考えるのはダメなのだろうか? 結婚してたからダメなのか? 133 前は結構してたんだ。 でも元嫁、行為の時に痛みがあるんだ。 病院行ったら手術しないといけないって言われて それが怖いし、そこまでしてしなくてもって事で回数が減っていったんだよ。 最初は痛くないようにお互いに努力してたんだけど、子供産んでからはほとんどしてない。 ただ二人目が欲しいからって狙った日にしたりはしてた。 俺の予想でしかないけど、痛いからしたくないんだと思うんだ。 無理してしてた事もあったし。 135 俺なら二人目かな。 残らず使い切るのはどうかと思うけど。 143 :111 :2008/07/04(金) 10 12 38 昨日、元嫁から連絡あった。 家庭を壊さないようにあなたがどれだけ努力してたか気付いた。 これからは自分も努力するから戻らないか?って内容。 俺どうしたらいいんだろう。 元嫁の様子からすごく気持ち的に変わった感じを受けた。 戻ってもまた繰り返しって事にはにはならない気もする。 正直戻りたい。 だけど、今の相手に言うのが残酷すぎる。 言った後どうなるか想像つかない。 10年間、浮気したのは今の相手一人で、 頻繁に会っていたって感じじゃないけど付き合いは長い。 4年くらいかな。 どっちを選んでも後悔するのかな。 140が言うように後悔こそが人生なのかな。 それならどっちも選べねぇ。もう後悔はしたくない。 もう少し考えてみようと思う。 150 :111 :2008/07/04(金) 12 36 53 144 他の人の意見が聞きたいだけなんだ。 別に人に決めてもらおうなんて思ってないんだ。 あと何も知らない誰かに聞いてもらいたいだけなのかな。 145 そうゆう話よく聞くな。 でも今回の俺は当てはまらない。 心の中で決めているならこんなとこ来ない。 あと抵抗している訳じゃなくて、情報が少ないせいか勘違いされてる時があるので 訂正してるだけなんだ。 納得いく意見もあるし。 146 一般的にみてすごく正論だと思う。 でも、それ言い出したらこのスレって何なの?って話じゃないかな? みんな考えに考えた結果、後悔しないって思ったから離婚してるはず。 あと、本当に中途半端な人なら嫁と別れずに浮気を続けるんじゃないだろうか。 普段はこの辺の板は来ないし、書き込みとかもしてないんだ。 みんなイライラしてたらごめんよ。 なんか荒れそうな感じだから来んなって言うならもう来ないよ。 152 :111 :2008/07/04(金) 12 46 42 147 なんかありがとう。 148 それいいな。 でもその後の押しが強い方にいってしましそうだな・・・。 俺、愛情を感じれば感じるほど好きになるとこあるし。 ありがとう参考にするよ。 149 人の心を弄んでいるといつか墜ちるよ。 もう罪は確定してる。罪を重ねて罰を受ければいい。 すまない、よくわからない・・・ できたらわかりやすく頼む。 156 :111 :sage :2008/07/04(金) 13 33 59 155 どれだけの気持ちを持って接すれば愛してると言うのかわからないけど 俺の中では二人共愛してる。 浮気がばれた時に相手(妻)が傷つくことなんかお構いなしだったわけだろ? お構いなしじゃない、浮気相手と会った後は二度と会わないって毎回思う。 相手にも慰謝料などは俺が払うって言ってあった。 浮気する人で、お構いなしって人いるのかな。 結局自分のちんぽの処理だけじゃないか、かんがえてる事はよ。 当たってるかもしれん。 浮気なんて最初はそんな感じで始めるんじゃないだろうか。 そりゃ、自分の幸せ考えるなとは言わんよ。 でも、相手の幸せも同時に考えるのが愛ってもんなんじゃないの? 一応考えてるつもりだ。 考えてるなら浮気なんかすんなとか言われたら返しようがないけど。 自分の幸せだけ考えてるなら、速攻で元嫁んとこ戻ってる。 157 :離婚さんいらっしゃい :sage :2008/07/04(金) 15 03 26 >相手にも慰謝料などは俺が払うって言ってあった。 それって共有財産からなら嫁(元嫁)の事考えてないことにしかならんわな。 本来なら浮気相手から100取れるのが、お前がこっそり払った(事にした) せいで+-0にしかなってないわけだ。 それこそ嫁の事(生活)どうでもいい表れでしかないが。 お前の貯金からでも同じ、それは本来お前がそのまま嫁に払って、 浮気相手にもはらわせるべきものだろ、嫁の事考えてるなら。 たんにチンポ脳で、浮気相手にかっこつけたいのを正当化しようとすんじゃないよ屑 >相手にも慰謝料などは俺が払うって言ってあった。 慰謝料払わなければいけない立場にする事自体が愛してなくて、 欲望のチンポ脳だけだろ。と言ってるんだが?理解できない? 本当に浮気相手好きなら、先に離婚した上で初めてやってもいいわけでな。 >考えてるなら浮気なんかすんな このままだよ。 浮気する事自体嫁に不誠実。 浮気相手として付き合うこと自体、同棲相手に不誠実。 愛してるって言うには、”相手に誠実であること自体が不可欠”じゃないの? 162 :111 :sage :2008/07/04(金) 15 14 30 157 すまないがあなた理想論ばっかだ。偽善ぶってるようにしか見えないよ。 男と女ってそんな浅いもんじゃないと思う。 ただ世間から見るとあなたの言ってる事が正しいと思う。 173 :111 :sage :2008/07/04(金) 16 05 18 みんな頼むから落ち着いてくれ。 別に煽ってる訳じゃないんだ。 結婚の理想の形って相手だけの事を思ってお互いが幸せになる努力することだと思うんだ。 でもそれが難しいから浮気だとか修復できないような喧嘩とかがあると思うんだ。 男なら性欲は少なからずあるだろう。それを俺は抑えれなかった。 似たような奴は結構いると思う。 反省して二度としない奴。バレなければいいと続ける奴。バレて大変な事になるやつ。 色んな奴がいると思う。 浮気は一切ダメってのが理想でそれが一番いいってのもわかる。 だけど俺はバレなければ続けていいと思うタイプの人間だ。 家庭に一切影響を与えずに家族が幸せを感じていれば家族にとっては浮気していないのと同じだ。 ただ、自分がその罪悪感に耐えれればだけどな。俺は耐えれなかった。 離婚理由はそれもある。 性欲だけ満たすなら離婚せずに浮気のままの関係でいけたはずだ。 離婚を決めたのは色々な要素があるんだ。 SEXだけじゃないのはわかって欲しい。 あと慰謝料の話がここまで大きくなるとは思わなかったけど 払ってあげるって言ったのは普通じゃないのか? なんか初めて書き込んでこんなにレスもらえるとは思ってなかった。 ありがとな。 110 :離婚さんいらっしゃい :2008/06/30(月) 23 11 57 正直思い出します。 俺の場合思い出すというより後悔? 元嫁ごめんな、やっぱりお前が運命の女だったんだなって。 こうして日々徐々に生命力が減退してゆき、無気力になり めでたくダメ社員が出来上がりました。離婚したい。 189 :111 :sage :2008/07/04(金) 18 51 04 話がズレ過ぎて俺にはもう無理だ。 110とかみたいに本音でしゃべってる人がいると思ってたから 思い切って書き込んだけど、みんな常識的な事書いて叩くだけなのか? 今までのみんなのレス全部間違ってないと思うよ。 ただそんなに素直に真っ直ぐ人を愛せる奴ばかりじゃないと思うんだ。 そんな奴ばっかだったら俺が完全におかしいと思う。 そんな奴ばっかじゃないから男も女も浮気するんじゃないか? もう何が言いたいのかわからんけど、色んな愛の形があっていいと思う。 とりあえずなんか場違いみたいだから、またROMに戻るよ。 迷惑かけてすまなかった。
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幕末時空の迷い人(三本鳥居の神社跡 ネップウ限定) 時空の漂流者(三本鳥居の神社跡 ライメイ限定) ほっこり茶話会(川沿いの街道 東側) 武士道フォロワーズ(新選組の屯所前) 夜明けを待つ人々(千枚田のカカシ坂) 南極の流氷(二条城 ライメイ限定) 幕末 時空の迷い人(三本鳥居の神社跡 ネップウ限定) キャラ名 ポイント 可能章 条件1 条件2 条件3 条件4 備考 バチョウ 3300 優柔不断レーダー 選手:キョウイ 赤い食券販売機の写真 名作格闘ゲームの話題 メアリ 2200 優柔不断レーダー 選手:エルフ 選手:ホロウ 選手:ヘンジ きみしま 770 優柔不断レーダー もっと目にいい話題 洗濯日和の話題 - うえの 2200 優柔不断レーダー 選手:カヌー 選手:ターコイズ トーチャンの宝物 ともか 770 優柔不断レーダー 選手:かざまつり 選手:かいおう 選手:カオル カミキリ 770 優柔不断レーダー アウトドアの話題 かくれんぼの話題 巨大なフルーツの写真 むつお 440 優柔不断レーダー 選手:たかだ 選手:うしろむき やんちゃ時代の話題 けものづか 1430 優柔不断レーダー 選手:マジシャン 選手:ライオウ - モンク 770 優柔不断レーダー 選手:ウィッチ うがい手洗いの話題 - ゲンジン 770 優柔不断レーダー 選手:まりも アウトドアの話題 トーチャンの宝物 すなが 440 優柔不断レーダー 選手:はやた 選手:コンバット - ビジュ 1430 優柔不断レーダー 選手:マリス 未来ファッションの話題 - トンボ 440 優柔不断レーダー 選手:ハッチ 選手:ひこうし 巨大なフルーツの写真 ゴウト 110 優柔不断レーダー 選手:トラ 選手:ひつじ 珍しいペットの話題 上へ 時空の漂流者(三本鳥居の神社跡 ライメイ限定) キャラ名 ポイント 可能章 条件1 条件2 条件3 条件4 備考 チョウウン 3300 優柔不断レーダー 選手:キョウイ 選手:みくに - リアンノン 3300 優柔不断レーダー 選手:エルフ 選手:ホロウ 選手:ヘンジ くれの 440 優柔不断レーダー もっと目にいい話題 テストの話題 - しらさぎ 770 優柔不断レーダー 選手:かざまつり 選手:かいおう 選手:カオル まさき 1430 優柔不断レーダー 選手:カヌー 選手:ターコイズ トーチャンの宝物 はりたち 3300 優柔不断レーダー アウトドアの話題 音楽ジャンルの話題 巨大フルーツの写真 むろい 1430 優柔不断レーダー 選手:たかだ 余ったハードルの写真 やんちゃ時代の話題 ロビン 1430 優柔不断レーダー 選手:マジシャン 選手:さるわたり - ゴリ 1430 優柔不断レーダー 選手:ウィッチ 珍しいペットの話題 - じすい 440 優柔不断レーダー 選手:まりも アウトドアの話題 トーチャンの宝物 れいの 220 優柔不断レーダー 選手:はやた 幕末の怖い話題 - おがなみ 220 優柔不断レーダー 選手:マリス いにしけの健康法の話題 - カマキリ 770 優柔不断レーダー 選手:ハッチ 特訓コンプリート 巨大なフルーツの写真 ホーク 440 優柔不断レーダー 選手:トラ 鳥の手当ての話題 珍しいペットの話題 上へ ほっこり茶話会(川沿いの街道 東側) キャラ名 ポイント 可能章 条件1 条件2 条件3 条件4 備考 クローブ 770 みやびな和傘 茶屋の写真 選手:カトー - チャイ 770 みやびな和傘 茶屋の写真 選手:アーチェリ - マサラ 3300 みやびな和傘 茶屋の写真 選手:ドクローヌ ヒツジの写真 きつね 440 みやびな和傘 選手:ごえもん 珍しいペットの話題 - ふくろう 220 みやびな和傘 赤きポスト伝説の話題 珍しいペットの話題 - ラクーン 440 選手:ライオウ 鉄塔からの風景写真 あぶらとりシキガミ 珍しいペットの話題 ライオウ 770 選手:ふくろう 選手:きつね 城を見守る松の写真 珍しいペットの話題 あおおに 220 みやびな和傘 選手:カッパー 明鏡止水の写真 - カッパー 10 - - - - バトルスカウト くもり 10 - - - - バトルスカウト タイフーン 440 みやびな和傘 選手:くもり 余ったハードルの写真 - あめ 440 みやびな和傘 選手:くもり 雨の日の過ごしかたの話題 カカシの写真 かみなり 770 みやびな和傘 選手:くもり 発声練習の話題 - はれ 770 みやびな和傘 選手:くもり 旅行の話題 - 上へ 武士道フォロワーズ(新選組の屯所前) キャラ名 ポイント 可能章 条件1 条件2 条件3 条件4 備考 きねつき 440 勇猛果敢な手ぬぐい 選手:にっぱち 雨の日の過ごしかたの話題 誠の写真 にっぱち 10 - - - - バトルスカウト こんと 440 勇猛果敢な手ぬぐい 丑寅の灯ろうの写真 消波ブロックの写真 5色のノボリの写真 としひと 1430 勇猛果敢な手ぬぐい 選手:にっぱち 鳥の手当ての話題 誠の写真 おくみや 1430 勇猛果敢な手ぬぐい 気合の写真 選手:てっかめん - おきちゃん 770 勇猛果敢な手ぬぐい 気合の写真 評判の占い師の話題 - しゅうほう 440 勇猛果敢な手ぬぐい 気合の写真 美人画の写真 - テンタクル 440 勇猛果敢な手ぬぐい 選手:まんぼう かくれんぼの話題 - ふか 220 勇猛果敢な手ぬぐい 選手:まんぼう 貴重な山菜の話題 - まんぼう 10 - - - - バトルスカウト ぴらにあ 770 勇猛果敢な手ぬぐい 選手:まんぼう 新発売のお菓子の写真 - こんどう 4000 エンディング後 勇猛果敢な手ぬぐい 選手:こんと 誠の写真 - おきた 4000 エンディング後 天才剣士の話題 屯所のもみじの写真 伝説の刀鍛冶の話題 おきたに会おう!(新選組の屯所) 鍵キャラ 上へ 夜明けを待つ人々(千枚田のカカシ坂) キャラ名 ポイント 可能章 条件1 条件2 条件3 条件4 備考 にぞう 770 維新のにぎりめし 選手:かつら お稽古ごとの話題 おおきな地図の写真 おりょう 3300 選手:せんじろ 選手:たかもり 選手:にぞう 女子サッカーチームの話題 せんじろ 770 維新のにぎりめし 選手:かつら 和歌の話題 - たかもり 440 維新のにぎりめし 選手:かつら かくれんぼの話題 - かつら 10 - - - - バトルスカウト びゃっこ 2200 維新のにぎりめし 選手:すざく サッカーバトル中級者 - すざく 10 - - - - バトルスカウト やみね 2200 選手:びゃっこ 選手:せいりゅう 選手:げんぶ 実力派サッカーチーム せいりゅう 2200 維新のにぎりめし 選手:すざく かけだしサッカーチーム - げんぶ 2200 維新のにぎりめし 選手:すざく シュートが得意 - ほうちょう 2200 維新のにぎりめし 煮える大釜の写真 消波ブロックの写真 - ドナベ 770 維新のにぎりめし 煮える大釜の写真 八丁味噌の話題 - ユウキ 1430 維新のにぎりめし 煮える大釜の写真 城の守りの話題 - ジャミ 770 維新のにぎりめし 煮える大釜の写真 白黒つけたい話題 選手:シュルリ なかおか 2600 エンディング後 維新のにぎりめし 選手:おりょう 悪運が強いヤツの話題 - さかもと 4000 エンディング後 維新のにぎりめし 元祖木戸川漬 外国語の話題 さかもとに会おう!(料亭) 鍵キャラ 上へ 南極の流氷(二条城 ライメイ限定) キャラ名 ポイント 可能章 条件1 条件2 条件3 条件4 備考 シド 4000 トンコツ味のシロップ 選手:ていおう - - ツキオ 2600 トンコツ味のシロップ かくれんぼの話題 - - コウゾウ 1400 トンコツ味のシロップ 木彫りのシカ - - クシナ 2600 選手:シド 選手:ツキオ 選手:コウゾウ 鳥の手当ての話題 ノブキ 4000 トンコツ味のシロップ お笑いの話題 - - ヤマキ 6000 トンコツ味のシロップ 戦国時代の怖い話題 - - ミズチ 1400 トンコツ味のシロップ 皇帝ペンギンくん2号 - - ノゾム 6000 選手:ノブキ 選手:バンドウ モテる男子の話題 - ツユキ 6000 選手:ミズチ 選手:ヤマキ 選手:しにが - バンドウ 2600 トンコツ味のシロップ 風が強い日の話題 大理石の話題 - サバキ 4000 選手:ノゾム 選手:ツユキ 城を見守る松の写真 - 上へ
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20◇珈琲牛乳 娯楽施設、B-2地区の二階。 ここのA-1方面の入り口から少し階段を上った場所には、小さな喫茶店のテナントが入っている。 誰でも気軽に、笑顔で落ち着いた時間を過ごせるように。 そんなコンセプトで設計されたこの飲食店は、 ほんわかな明かりの照明、木のテーブルなど細かいところにまで配慮が行き届いていて、 見事な落ち着き空間を娯楽施設の一角に作り上げている。 ――だが、喫茶店の窓側の席に座り、曇った灰色の空を見上げているとある参加者にとっては、 この空間ですら落ち着いてなど居られなかった。 「死んだ……四人……マジかよ……」 やりきれない気持ちを口に出しながら、男は木のテーブルの下で思わず両手を握りしめる。 この、ファッション雑誌に載っているような小奇麗な服をそれなりに着こなし、髪をワックスでそれなりに逆立てて、 いわゆる雰囲気イケメンの格好をしている男は優柔不断といった。 先ほど行われた”放送”は彼にとって大きな衝撃を与えた。 禁止エリアに選ばれないと思っていたA-1が選ばれたことなんかはどうでもよく、 ”放送”は、そこで発表された四人が死んだという事実は、ここが殺し合いの場であると彼に知らしめた。 それでも逃げるようにして彼は窓から灰色の空を見上げていたが、 久しぶりに聞いた奇々怪々な白衣の女の声が耳の奥にこびりついて離れない。 『ずいぶん娯楽として楽しむことができました』……そう白衣の女は言っていた。 どこかから、ずっと見られているのだ。 現実に引き戻された思考が、考えてみれば当たり前のことを呟く。 (そうだ、最初に言っていた。これは”実験”だって。あいつらにとってオレたちは、実験動物なんだ。 少なくとも、人間だとは思われてないんだな。四字熟語だ。って文字じゃんそれ。ははは……) 白衣の女はこうも言った。 『”もうこの実験も、かなりの回数を重ねてきましたが”――こんなに早く死んでいくのは初めてかもしれませんね。』 これも言われてみればだが、この”実験”が行われるのは、初めてではないのだ。 当たり前だ、たった一回の実験でデータをとっても信憑性は薄いだろう。 何回も実験を重ねて……何人も何人も死んでいって、それでようやく奇々怪々たち幻想言語学者の実験は完成する。 十六人も一気に行方不明になれば警察が動くはず。 きっと、逃げ回っていればいつか助けが来て、自分たちを救ってくれるはずだなんて。 優柔不断がひそかに思っていた浅い考えは鼻で笑われてしまった。 相手は、ただの狂人じゃない。計画的かつ理性的な狂人なのだ。 からからだ。乾いた喉を潤したくなった。 優柔不断は席を立ち、店員なんて当然いない喫茶店のカウンターを一足飛びにジャンプする。 調理場の床を踏むと目の前にコーヒーカップがあったので、彼はコーヒーを入れることにした。 おいしい淹れ方は知らないが、確かコーヒーは好きな方だった。 ところどころ実験用に”調整”されて抜けている記憶にいらだちながら、お湯を沸かし、フィルターを用意する。 そこからはまあ、適当に。ごぽ、と一つ怪しい音をさせて、優柔不断はコーヒーを注いでいった。 カップに入れたコーヒーは、店内のほんわかした光の陰になって黒く、黒く澄んでいる。 その黒に自分の顔が映りそうになったので、思わず優柔不断は目を逸らした。 だめだ。濁っていないと、自分の顔が映ってしまう。 優柔不断は冷蔵庫に向かい、牛乳を取り出すとカップに無理やり注いでいく。砂糖のない、即席コーヒー牛乳だ。 飲んでみると、正直言って微妙な味がした。 (――不味いことをしちまった。本当に、不味いことを) コーヒーと牛乳を持って席に戻ると、 優柔不断の目に入ったのはテーブルの上に置いた日本刀だ。 立派な日本刀の刃には赤黒い錆のようなものがところどころこびりついていて、先端に行くほどそれは多い。 それは、人を斬った時に刃についた血が固まったものだ。 最初から少しばかり付いていたが……今は、彼がこの日本刀を拾ったときについていたものより多い。 それはなぜか? 理由を彼は”知っている”。 でも、思い出すわけにはいかなかった。 思い出したくなどないのだ。 見つめて向き合うなんて無理だ、優柔不断な自分に、そんなことが出来るはずがない……。 「あ」 優柔不断は日本刀をデイパックにしまおうとして、不意に吐き気を覚えてよろめく。 光の角度の関係で。 先ほどまでは見えなかった、窓ガラスに映る自分の姿を見てしまったのだ。 「あああ……!」 そこに居たのは血の気の引いた顔をした自分だった。 恐怖におびえて、元から情けない顔をさらに情けなくした、でも偽物じゃない本物の優柔不断自身だった。 血の気の引いた顔の代わりに、ファッション雑誌で見たような服を合わせて着こんだ一張羅はひどく血にまみれて赤い。 優柔不断の血ではない。死んだ心機一転の血だ。 胸に日本刀を刺して、抜いて、びゅーっと出てきた血だ。べったりとついていた。 当たり前だ、なぜなら心機一転を刺したのは紛れもなく優柔不断自身であり、 返り血をもろに浴びながらおかっぱ頭の男がぴくぴくとその体を痙攣させて動かなくなるところまで無表情に見つめていたのも、 間違いなく優柔不断と四字熟語を付けられてしまった自分自身なのだから。 さっき流れた放送、 奇々怪々が嬉々として発表した四人の死亡者のうち一人を殺害したのは、優柔不断なのだ。 逃げ続けていたその事実が――窓ガラスに映る自分の姿を見たことで、改めて彼の心を刺した。 《どんな刃物の攻撃も通じない》ルール能力を持っていても、精神的に刺される。 スタンスが元に戻ってしまった彼の心を、刺してしまう。 ◇◇◇◇ ”四字熟語が消える”とは何か? 喫茶店備え付けのトイレに入り、さっき飲んだコーヒー牛乳もどきを吐き出している優柔不断は、 それがどういうことなのかを身を持って体験している。 放送で読み上げられた四つの名前。 そのうち、心機一転の名前が読み上げられる前までは、優柔不断のスタンスは反転したままだった。 だが――”放送で名前を呼ばれた四字熟語は、娯楽施設から消える”。 そして四字熟語のルール能力は、能力である以前にルールだ。 つまりこの二つを踏まえれば、答えはこうだ。 ”四字熟語が消えると、その四字熟語が発生させていたルールが消える”。 心機一転が発生させていた《胸に手を当てた参加者のスタンスを180度反転させる》というルールは、 彼の名前が店内放送で呼ばれたあの瞬間に消えたのだ。 「……オレは……なんで、なんであんなことを……うえぇえっ! かはっ、はぁっ、あ……うえっ」 だが優柔不断にそれを知るすべはない。 誰にも自分のルール能力を説明することなく心機一転が死んでしまったため、 彼自身はあの出来事を、”殺されそうになったからついカッとしてやってしまった”ということにしている。 ルール能力によって考え方が反転していたなんて普通の人間は考えない。 だから、優柔不断はこう思うことすらできない。 ”あれはルール能力のせいだから、仕方のないことだった”と思うことすら、許されないのだ。 もう、元のスタンス……殺し合いから目を背ける、なんて甘い考えに戻ることもできない。 優柔不断はどうにかなってしまいそうだった。 人を一人殺してしまったという事実が、彼の心をぐちゃぐちゃに握りしめて離さない。 第一放送で呼ばれた名前は、 東奔西走、猪突猛進、心機一転、一望千里の四人。 この四つの四字熟語が及ぼしていた影響(ルール)は、彼らの名前が呼ばれた時点で消えた。 ……そう、消えてしまった。 あまりにも唐突に、気付かないくらいいきなり。ここにいる優柔不断がスタンスを元に戻されたように。 同じくB-1地区、その一階では、とある少女もスタンスを戻されてしまっていた。 正気に戻されてしまっていたのだ。 もう、取り返しのつかないことをたくさんしてしまったというのに。 すべて自分が自分の意志でやったこととして、これまでの出来事が少女には襲いかかった。 少女――勇気凛々には。それはあまりにも重い。 でも彼女は、重みを軽くできるルール能力も、迂回させるルール能力も持っていないのだ。 さあ、カメラを戻そう。 そしてあの正しすぎる少女の顛末を、見届けよう。 【B-1/娯楽施設二階・喫茶店】 【優柔不断/フリーター】 【状態】憔悴 【装備】日本刀 【持ち物】激辛よもぎ団子×1 【ルール能力】どんな刃物でも断たれない身体を持つ 【スタンス】……。 酒二無二 前のお話 次のお話 三人死亡 前のお話 四字熟語 次のお話 因果往訪 優柔不断 鬼気迫る 用語解説 【コーヒー牛乳】 牛乳にコーヒーや砂糖で味付けした飲料のこと。 2003年にできた規約により、牛乳100%のものにしか「牛乳」と表記してはいけなくなったため、 現在では商品名でコーヒー牛乳という表現はあまり見ない(できない)のだとか。 言われてみればいつも飲んでいるのはカフェオレとかミルクコーヒーとか、「牛乳」とは書かれてなかった
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20◇珈琲牛乳 娯楽施設、B-2地区の二階。 ここのA-1方面の入り口から少し階段を上った場所には、小さな喫茶店のテナントが入っている。 誰でも気軽に、笑顔で落ち着いた時間を過ごせるように。 そんなコンセプトで設計されたこの飲食店は、 ほんわかな明かりの照明、木のテーブルなど細かいところにまで配慮が行き届いていて、 見事な落ち着き空間を娯楽施設の一角に作り上げている。 ――だが、喫茶店の窓側の席に座り、曇った灰色の空を見上げているとある参加者にとっては、 この空間ですら落ち着いてなど居られなかった。 「死んだ……四人……マジかよ……」 やりきれない気持ちを口に出しながら、男は木のテーブルの下で思わず両手を握りしめる。 この、ファッション雑誌に載っているような小奇麗な服をそれなりに着こなし、髪をワックスでそれなりに逆立てて、 いわゆる雰囲気イケメンの格好をしている男は優柔不断といった。 先ほど行われた”放送”は彼にとって大きな衝撃を与えた。 禁止エリアに選ばれないと思っていたA-1が選ばれたことなんかはどうでもよく、 ”放送”は、そこで発表された四人が死んだという事実は、ここが殺し合いの場であると彼に知らしめた。 それでも逃げるようにして彼は窓から灰色の空を見上げていたが、 久しぶりに聞いた奇々怪々な白衣の女の声が耳の奥にこびりついて離れない。 『ずいぶん娯楽として楽しむことができました』……そう白衣の女は言っていた。 どこかから、ずっと見られているのだ。 現実に引き戻された思考が、考えてみれば当たり前のことを呟く。 (そうだ、最初に言っていた。これは”実験”だって。あいつらにとってオレたちは、実験動物なんだ。 少なくとも、人間だとは思われてないんだな。四字熟語だ。って文字じゃんそれ。ははは……) 白衣の女はこうも言った。 『”もうこの実験も、かなりの回数を重ねてきましたが”――こんなに早く死んでいくのは初めてかもしれませんね。』 これも言われてみればだが、この”実験”が行われるのは、初めてではないのだ。 当たり前だ、たった一回の実験でデータをとっても信憑性は薄いだろう。 何回も実験を重ねて……何人も何人も死んでいって、それでようやく奇々怪々たち幻想言語学者の実験は完成する。 十六人も一気に行方不明になれば警察が動くはず。 きっと、逃げ回っていればいつか助けが来て、自分たちを救ってくれるはずだなんて。 優柔不断がひそかに思っていた浅い考えは鼻で笑われてしまった。 相手は、ただの狂人じゃない。計画的かつ理性的な狂人なのだ。 からからだ。乾いた喉を潤したくなった。 優柔不断は席を立ち、店員なんて当然いない喫茶店のカウンターを一足飛びにジャンプする。 調理場の床を踏むと目の前にコーヒーカップがあったので、彼はコーヒーを入れることにした。 おいしい淹れ方は知らないが、確かコーヒーは好きな方だった。 ところどころ実験用に”調整”されて抜けている記憶にいらだちながら、お湯を沸かし、フィルターを用意する。 そこからはまあ、適当に。ごぽ、と一つ怪しい音をさせて、優柔不断はコーヒーを注いでいった。 カップに入れたコーヒーは、店内のほんわかした光の陰になって黒く、黒く澄んでいる。 その黒に自分の顔が映りそうになったので、思わず優柔不断は目を逸らした。 だめだ。濁っていないと、自分の顔が映ってしまう。 優柔不断は冷蔵庫に向かい、牛乳を取り出すとカップに無理やり注いでいく。砂糖のない、即席コーヒー牛乳だ。 飲んでみると、正直言って微妙な味がした。 (――不味いことをしちまった。本当に、不味いことを) コーヒーと牛乳を持って席に戻ると、 優柔不断の目に入ったのはテーブルの上に置いた日本刀だ。 立派な日本刀の刃には赤黒い錆のようなものがところどころこびりついていて、先端に行くほどそれは多い。 それは、人を斬った時に刃についた血が固まったものだ。 最初から少しばかり付いていたが……今は、彼がこの日本刀を拾ったときについていたものより多い。 それはなぜか? 理由を彼は”知っている”。 でも、思い出すわけにはいかなかった。 思い出したくなどないのだ。 見つめて向き合うなんて無理だ、優柔不断な自分に、そんなことが出来るはずがない……。 「あ」 優柔不断は日本刀をデイパックにしまおうとして、不意に吐き気を覚えてよろめく。 光の角度の関係で。 先ほどまでは見えなかった、窓ガラスに映る自分の姿を見てしまったのだ。 「あああ……!」 そこに居たのは血の気の引いた顔をした自分だった。 恐怖におびえて、元から情けない顔をさらに情けなくした、でも偽物じゃない本物の優柔不断自身だった。 血の気の引いた顔の代わりに、ファッション雑誌で見たような服を合わせて着こんだ一張羅はひどく血にまみれて赤い。 優柔不断の血ではない。死んだ心機一転の血だ。 胸に日本刀を刺して、抜いて、びゅーっと出てきた血だ。べったりとついていた。 当たり前だ、なぜなら心機一転を刺したのは紛れもなく優柔不断自身であり、 返り血をもろに浴びながらおかっぱ頭の男がぴくぴくとその体を痙攣させて動かなくなるところまで無表情に見つめていたのも、 間違いなく優柔不断と四字熟語を付けられてしまった自分自身なのだから。 さっき流れた放送、 奇々怪々が嬉々として発表した四人の死亡者のうち一人を殺害したのは、優柔不断なのだ。 逃げ続けていたその事実が――窓ガラスに映る自分の姿を見たことで、改めて彼の心を刺した。 《どんな刃物の攻撃も通じない》ルール能力を持っていても、精神的に刺される。 スタンスが元に戻ってしまった彼の心を、刺してしまう。 ◇◇◇◇ ”四字熟語が消える”とは何か? 喫茶店備え付けのトイレに入り、さっき飲んだコーヒー牛乳もどきを吐き出している優柔不断は、 それがどういうことなのかを身を持って体験している。 放送で読み上げられた四つの名前。 そのうち、心機一転の名前が読み上げられる前までは、優柔不断のスタンスは反転したままだった。 だが――”放送で名前を呼ばれた四字熟語は、娯楽施設から消える”。 そして四字熟語のルール能力は、能力である以前にルールだ。 つまりこの二つを踏まえれば、答えはこうだ。 ”四字熟語が消えると、その四字熟語が発生させていたルールが消える”。 心機一転が発生させていた《胸に手を当てた参加者のスタンスを180度反転させる》というルールは、 彼の名前が店内放送で呼ばれたあの瞬間に消えたのだ。 「……オレは……なんで、なんであんなことを……うえぇえっ! かはっ、はぁっ、あ……うえっ」 だが優柔不断にそれを知るすべはない。 誰にも自分のルール能力を説明することなく心機一転が死んでしまったため、 彼自身はあの出来事を、”殺されそうになったからついカッとしてやってしまった”ということにしている。 ルール能力によって考え方が反転していたなんて普通の人間は考えない。 だから、優柔不断はこう思うことすらできない。 ”あれはルール能力のせいだから、仕方のないことだった”と思うことすら、許されないのだ。 もう、元のスタンス……殺し合いから目を背ける、なんて甘い考えに戻ることもできない。 優柔不断はどうにかなってしまいそうだった。 人を一人殺してしまったという事実が、彼の心をぐちゃぐちゃに握りしめて離さない。 第一放送で呼ばれた名前は、 東奔西走、猪突猛進、心機一転、一望千里の四人。 この四つの四字熟語が及ぼしていた影響(ルール)は、彼らの名前が呼ばれた時点で消えた。 ……そう、消えてしまった。 あまりにも唐突に、気付かないくらいいきなり。ここにいる優柔不断がスタンスを元に戻されたように。 同じくB-1地区、その一階では、とある少女もスタンスを戻されてしまっていた。 正気に戻されてしまっていたのだ。 もう、取り返しのつかないことをたくさんしてしまったというのに。 すべて自分が自分の意志でやったこととして、これまでの出来事が少女には襲いかかった。 少女――勇気凛々には。それはあまりにも重い。 でも彼女は、重みを軽くできるルール能力も、迂回させるルール能力も持っていないのだ。 さあ、カメラを戻そう。 そしてあの正しすぎる少女の顛末を、見届けよう。 【B-1/娯楽施設二階・喫茶店】 【優柔不断/フリーター】 【状態】憔悴 【装備】日本刀 【持ち物】激辛よもぎ団子×1 【ルール能力】どんな刃物でも断たれない身体を持つ 【スタンス】……。 酒二無二 前のお話 次のお話 三人死亡 前のお話 四字熟語 次のお話 因果往訪 優柔不断 鬼気迫る 用語解説 【コーヒー牛乳】 牛乳にコーヒーや砂糖で味付けした飲料のこと。 2003年にできた規約により、牛乳100%のものにしか「牛乳」と表記してはいけなくなったため、 現在では商品名でコーヒー牛乳という表現はあまり見ない(できない)のだとか。 言われてみればいつも飲んでいるのはカフェオレとかミルクコーヒーとか、「牛乳」とは書かれてなかった。 本編一覧へ 四字熟語ロワTOPへ 非リレーロワTOPへ
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【ゲーム】ゼロヨンチャンプRR(SFC) 【作者名】やまじゅん 【完成度】更新中(08/06/01~) 【動画数】 【part1へのリンク】 【マイリストへのリンク】http //www.nicovideo.jp/mylist/6950873 【備考】 名前 コメント
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まだwiki更新されてない話の死亡者も含みます。 ネタバレ注意 第一放送までの死亡者 場所 死亡者 加害者 死亡話 死因 C-2 屋上駐車場 猪突猛進 紆余曲折 04 急曲直下 転落死 B-3 駐車場D地区 東奔西走 傍若無人 06 張子の車 斧による斬殺 A-1 心機一転 優柔不断 11 因果往訪 日本刀での刺殺 B-1 中央大通り一階 一望千里 勇気凛々 13 お仕舞い りんりんソードで斬殺 第二放送までの死亡者 B-1 中央大通り一階 酒々落々 勇気凛々 21 三人死亡 りんりんソードで斬殺 B-1 中央大通り一階 軽妙洒脱 勇気凛々 21 三人死亡 りんりんソードで斬殺 C-2 屋上駐車場 破顔一笑 傍若無人 21 三人死亡 斧による斬殺 A-2 駐車場A地区 鏡花水月 先手必勝 26 永久凍土 銃殺 B-3 駐車場D地区 先手必勝 切磋琢磨 29 確定申告 禁止エリアへ殴り飛ばす 第三放送までの死亡者 B-1 娯楽施設入口付近 青息吐息 傍若無人 30 第二放送 斧による斬殺 C-1 中央階段下広間 切磋琢磨 一刀両断 39 最終戦Ⅲ 一刀両断 C-1 中央階段下広間 傍若無人 一刀両断 39 最終戦Ⅲ 一刀両断 C-1 中央階段下広間 優柔不断 紆余曲折 41 最終戦Ⅴ 銃の腔発による事故死の誘発 41◆最終戦Ⅴ まで反映 ネタバレ名簿 ●青息吐息/●一望千里/○一刀両断/○紆余曲折 ●鏡花水月/●軽妙洒脱/●酒々落々/●心機一転 ●切磋琢磨/●先手必勝/●猪突猛進/●東奔西走 ●破顔一笑/●傍若無人/○勇気凛々/●優柔不断 【死亡 十三人/残り 三名】 殺害数順 順位 人数 該当者 殺害した対象 生存状況 スタンス 1位 3人 勇気凛々 一望千里、酒々落々、軽妙洒脱 生存 対主催 3人 傍若無人 東奔西走、破顔一笑、青息吐息 死亡 ジョーカー 3位 2人 紆余曲折 猪突猛進、優柔不断 生存 生き残る 2人 一刀両断 切磋琢磨、傍若無人 生存 紆余曲折の盾 5位 1人 優柔不断 心機一転 死亡 対主催? 1人 先手必勝 鏡花水月 死亡 マーダー 1人 切磋琢磨 先手必勝 死亡 己を鍛える
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◇オープニング No タイトル 登場人物 投下日 00 都市伝説 奇々怪々、紆余曲折、焼肉定食 2011/10/10 ◆第一放送まで No タイトル 登場人物 投下日 01 邂逅一番 東奔西走、切磋琢磨 2011/10/11 02 顔面隠し 一望千里、破顔一笑 2011/10/14 03 反転少女 心機一転、勇気凛々 2011/10/16 04 急曲直下(前)急曲直下(後) 猪突猛進、一刀両断、紆余曲折 2011/10/19 05 曇天霹靂 優柔不断、破顔一笑 2011/10/21 06 張子の車 東奔西走、切磋琢磨、傍若無人 2011/10/23 07 幻影水鏡 心機一転、鏡花水月 2011/10/25 08 酔狂少女 勇気凛々、酒々楽々 2011/11/02 09 重い荷物 一望千里、軽妙洒脱 2011/11/12 10 手を繋ぐ 一刀両断、紆余曲折、破顔一笑、切磋琢磨 2011/11/18 11 因果往訪 優柔不断、心機一転 2011/11/21 12 遺棄消沈 破顔一笑、傍若無人 2011/11/23 13 お仕舞い(前)お仕舞い(後) 一望千里、軽妙洒脱、勇気凛々、酒々落々 2011/11/29 14 第一放送 奇々怪々 2011/11/29 ◇第二放送まで No タイトル 登場人物 投下日 15 真打登場 先手必勝、青息吐息 2011/12/25 16 舞台装置 鏡花水月 2012/01/03 17 一発殴る 軽妙洒脱、酒々落々、勇気凛々 2012/01/06 18 取捨選択 一刀両断、紆余曲折、切磋琢磨 2012/01/08 19 酒二無二 軽妙洒脱、酒々落々、勇気凛々 2012/01/13 20 珈琲牛乳 優柔不断 2012/01/15 21 三人死亡 軽妙洒脱、酒々落々、勇気凛々、傍若無人、破顔一笑 2012/01/26 22 戦乱の演 先手必勝、青息吐息、鏡花水月 2012/02/12 23 仲間意識 一刀両断、紆余曲折、切磋琢磨 2012/02/27 24 完全試合 先手必勝、青息吐息、鏡花水月 2012/03/14 25 鬼気迫る 勇気凛々、傍若無人、優柔不断、一刀両断 2012/03/21 26 永久凍土 先手必勝、青息吐息、鏡花水月、切磋琢磨、紆余曲折 2012/03/26 27 蓬平団子 優柔不断、勇気凛々 2012/03/30 28 焼魚定食 傍若無人 2012/03/30 29 確定申告(前)確定申告(中)確定申告(後) 先手必勝、青息吐息、紆余曲折、一刀両断、切磋琢磨、奇々怪々 2012/04/162012/04/172012/04/19 30 第二放送 青息吐息、傍若無人 2012/04/19 ◆第三放送まで No タイトル 登場人物 投下日 31 生員集合 切磋琢磨、紆余曲折、一刀両断、勇気凛々、優柔不断、傍若無人 2012/05/22 32 最期通牒(未) 2011/06/02 33 休憩時間1/2/3/4 2012/09/12~ 34 最終戦Ⅰ 35 最終戦Ⅱ 36 最終戦Ⅲ 37 最終戦Ⅳ 38 最終戦Ⅴ 39 第三放送 ◆ゲーム終了まで No タイトル 登場人物 投下日 40 ◇◆◇◆