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パーティはどうやら食堂の上のホールで行われるようでした 着飾ったルイズの美しさにそれまでゼロのルイズと呼んでからかっていた同級生たちまでもが 群がってダンスを申し込んできます ですがルイズはそれを全部丁重に断りどうにかこうにかバルコニーに逃げてきました バルコニーから見えた景色の中に自分の使い魔も含まれていました 「・・・あいつが来るわけないわよね」 なんとなくこういうきらびやかな舞台に来ることを自分の使い魔は嫌っているの 目立ちたくないだけなのかどうなのか知らないが来ないものを期待するほどバカでもない その使い魔はなにをするでもなく、ただ星を見ていた 使い魔の男はなにをするでもなく学院の庭で星を見ていました (・・・俺の野望) その使い魔、ディアボロは少しばかり構想にふけていました (俺はなぜ野望の成就を目指したのだったか) 単純な考えでした。彼は己の野望を追い求めていました ですがそれは失敗に終わり、地獄を経てこの世界に来たのです 不意に自分を打ち倒した金髪の青年の言葉を思い出しました 「生き残るのは…この世の「真実」だけだ… 真実から出た『誠の行動』は、決して滅びはしない…」 ならばこの世界での生は自らが真実に到達したからだろうか 「そしておまえの行動が真実から出たものなのか それともうわっ面だけの邪悪から出たものなのか」 そうだ。簡単な考えだったのだから答えだって簡単だった (俺は・・・ただ幸福になりたかっただけではなかったのか?) 星を見上げる使い魔は答えに到達しました 自らを帝王にするという野望はただの幻想だということにして 今の自分は幸福にあろうとそう考えました この先、この世界で死にGERがまた発動したのならこの答えは一時のものでしょう ですが今は 「主人ルイズに仕える使い魔であるとしよう ―――なんだ。俺は彼女に好意を抱いているのか」 いたって他人事のようにそう言いました 「きっとお前も同じなのだろうな。ドッピオ」 自らのもう一つの人格に話しかけるディアボロ、返答はありません 「・・・・・だが」 一つため息をついてディアボロは 「・・・俺は幸福にあるべきではないな」 きっと彼は暖かくあることを恐れているのでしょう 自らの娘が出来たところで野望を成就させようとした自分は殺そうとしました 自分は幸福にあろうとすることは許されない 暖かさを拒絶した自分にはもう訪れさせてはいけない ・・・そう。幸福を得ようとした代償に大量の他者の幸福と暖かさを奪ってきた自分にその権利は無い 「・・・だが、お前はちがう。 ドッピオ、お前には権利はある」 もう一度、もう一つの人格に話しかけます。もちろん返答はありません 「お前は主人格である俺に命令されただけだ。おまえ自身の意思は介入していない ―――もしも、俺が消えてお前が残ることがあるのなら」 お前だけでも幸せになれ、その言葉をディアボロは心の中に止めておきました 特にやる事も無く星を見ていたディアボロの横に 「なにしてるのよ?ディアボロ」 自らの主人が来ていました 「・・・何もしていない。だがよく私だと分かったな」 ふとした疑問を主人にぶつけました 意識変更による多少の肉体の変換はありますが基本的に殆どドッピオと変わらないはずです 「分かるわよ。雰囲気っていうか周りの空気っていうか・・勘で分かるのよ」 「そうか」 会話はそこでとまりました。ディアボロは話すことなんてありませんので基本はルイズからの返答のみです 「・・・ねえ」 ふとルイズに話しかけられました 「何だ?」 簡単な返答を返します 「・・・頑張って、頑張りぬいた人が最後に報われないっていうの、どう思う?」 「それは仕方の無いことだったのだろう。所詮、努力を重ねたところでそれが叶うかどうかなど未知数だ 努力は単に成功率を上げるためにする行動だ」 「・・じゃあアンタはどうなの?」 「それも同じだ・・・だがそれが他者から奪い作られた努力なら別だ」 「でもアンタはフーケを倒したっていうのに・・・何にもないなんて」 ディアボロは目の前の主がただ報われないのが嫌なだけということを理解しました そしてこう答えました 「使い魔なのだから賞賛されるのは主だろう。私にはそれで十分だ」 「でも・・!」 「あと賞賛するのであればドッピオにしてくれ ―――私にはその資格はない」 そういってディアボロは寮へ歩いていきました (それでも・・・アンタだけが報われないなんて) ルイズには彼の言葉への反発しか生まれませんでした 「絶対に・・・認めない。アンタだけが報われないなんて」 そう言ってその背中を追って行きました ですがその後を追って部屋に行ってもディアボロはもう眠っていました 「・・このくらいならいいわよね?」 彼以外、誰もいない部屋でつぶやき 「・・今回は助かったわ」 そのお礼の言葉をつぶやきました
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第一話 僕は使い魔① 第二話 僕は使い魔② 第三話 ゼロのルイズ① 第四話 ゼロのルイズ② 第五話 メロンとメイド 第六話 当然の理由 第七話 使い魔の決闘① 第八話 使い魔の決闘② 第九話 使い魔の決闘③ 第十話 使い魔の決闘④ 十一話 虚無の曜日 第十二話 デルフリンガー
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カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌは考える。 妹はどうしているだろうか。 今頃は使い魔を召喚して、喜んでいるだろう。 今はそういう時期。自分の相棒となる使い魔を召喚する時期。 だが妹より年上のカトレアは未だ使い魔を召喚していない。 何故なら学校に行ってないからだ。 理由は引きこもりや、学校に行ったら負けかなと思っているのではなく、体が弱いために行けないのだ。 だから彼女は考える。学校に行っている妹の事を。 そして妹がどんな使い魔を召喚したのか想像している内に自分も使い魔を召喚したくなった。 本来はいけない事だが召喚だけして契約はしなければバレないだろう。 彼女を責める事は出来ない。彼女は自分の領地(それでも結構広いが)から出たことがないのだ。 このちょっとした好奇心と悪戯心から召喚のための魔法、サモン・サーヴァントを唱える。 使い魔が出てくるはずのゲートが開いた。何故か下に向かって。 そしてそこから現れたのは人間の男だった。それも超スピードで落ちてきた。 ぐしゃっと言う何かが潰れた様な音が鳴った。潰れたのは召喚された男らしい。 「え?え?どういうこと?」 おそらくは落ちている最中に召喚されたのだろうがカトレアにはそんな事知る由もなく、ただ混乱していた。 混乱から解けたカトレアはとりあえず治癒の魔法を男にかける。まだ息があったからだ。 そして男の傷はふさがって行く。 間に合った事に安堵したカトレアはちょっとした気の緩みから後ろに倒れこむ――が意識を取り戻した男が間一髪で支 えたので倒れなかった。 「ごめんなさい、体が弱くて…」 「そうでしたカ、どうすれば良いデスカ?」 「とりあえず…お屋敷まで運んでください」 「お屋敷?ああ、あれデスネ?」 男はカトレアを担いだままヴァリエールの屋敷に向かって歩きだした。 「そういえば…アナタお名前は?私はカトレアよ」 「トニオ・トラサルディーといいます。トニオと呼んでください」 屋敷に入り、カトレアの案内で部屋までたどり着く。 そして部屋のベッドに寝かせ、話が出来そうな状態になったのを確認してから質問を始めた。 「具合が悪いところスミマセン。ここは何処なのでショウ?ワタシはある鳥の卵をとるために崖から飛び降りたはずな のデスが」 「だから落ちてきたんですか?」 「ハイ、それでイキナリ地面が現れたのでぶつかって大怪我をしたはずなのですガ…」 「私が魔法で治したんです。怪我をしたのも私のせいですけど…」 「そうでしたカ、助けてくれてアリガトウゴザイマス」 カトレアは驚いた。自分が怪我をさせたというのにトニオは怒らなかったのだ。 「何かお礼をしたいデス。ちょっと両手を見せてくだサイ」 「え?あ、はい」 「フーム。体が弱いと言っていましたがソウトウですね」 「わかるんですか?」 「ワタシは両手をみれば肉体全てがわかりまス。ちょっと厨房をお借りしマス」 普通だったら初めて会った人間にそんな事はさせないのだが トニオは自分が召喚し、そして怪我をさせた人間だ。だから厨房を使わせるくらいなら、とカトレアは使用許可を出した。 数時間後 「出来ましタ!どうぞ召し上がってください」 料理が完成したらしい。 カトレアはちゃんと頂きますをしてから料理を食べた。 食べ終えたカトレアの体に異変が起こった。 体中にとてつもない痛みが走るのだ。 「こ…れは…?」 「落ち着いテ!痛みは一時的なものでス」 そしてトニオの解説が始まった。要約するとこれで健康になるらしい。 眉唾な話だったがカトレアは信じた。 数時間前に会ったとばかりだというのにトニオに奇妙な信頼を置いていたからだ。 そして痛みが収まり、カトレアは自分の体が健康になった事を実感した。 「すごい…これは先住魔法?」 「フム、実のところワタシにもよく分かってないのですが…多分そうでしょう」 「はあ…でもスゴイですね。こんな事ができるなんて!」 「スゴイ?…ワタシが?」 「そうですよ。こんな事他に出来る人はいませんよ。」 「……アリガトウゴザイマス」 トニオの目には涙が浮かんでいた。彼の料理は気味が悪いといわれ、認められなかったのだ。 それをカトレアは認めてくれた。それが嬉しかったのだ。 カトレアもまた泣いていた。自分のどうしようもない弱点であった原因不明の病気をトニオは治してくれたのだ。 それはつまり『普通の生活をする』という。彼女の望みを叶えた事になる。 互いに互いの最大の望みを叶えた。そんな二人が恋に落ちたのは当然だったかもしれない。 そしてトニオはヴァリエール家に料理人として雇われ、徐々にラ・ヴァリエール公爵に認められることになる。 パール・ジャムが先住魔法という事になっているため彼は普通の平民ではなく、元貴族かもしれないと言う事と 誰にも治せなかったカトレアの病気を治したと言うことからあまり話はこじれなかった。 最後にヴァリエール家で自分の子供達に囲まれながら寿命を迎えた彼の最後の一言をもってこの物語を終えようと思う。 「ここはもしかしたら異世界かもしれませン」 それは最初に気づこうよ、トニオさん。
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「あ…ありのまま、今起こった事を話すわ! 『呼び出したばかりの使い魔を叩き起こそうと思ったらいつのまにか息を引き取っていた』 な…何を言ってるのかわからないと思うけどわたしも何が起きたのかわからなかったわ… 頭がどうにかなりそうだった…」 こんなことを口走ってしまう程混乱したルイズは自分の部屋へ行き2時間眠った… そして…… 目を覚ましてからしばらくして 使い魔が死んだことを思い出し………笑った… 使い魔の死、それはメイジにとって半身の消失とも言える重大事だったが、 ルイズにとってそんなことは関係なかった、自らが望んだ再召喚の機会が向こうから転がり込んできたのだ 流石に死んだ使い魔には哀れさを感じたが、何もしていないのに死んだということは 呼び出した時点で致命傷を負っていたか、何か病を抱えていたのだと考えた‐つまりは自分に責任は無いということだと そう結論付けたルイズはまず中庭に向かい死体を埋葬することにした だが不思議な事に中庭についた時には使い魔の死体は影も形も無く消えていた そのまま部屋に戻ったルイズは今度こそ自分にふさわしい使い魔を召喚すべく杖を振るった 「な・ん・で、またアンタなのよ!」 振るった杖の先に現れたのは、先程呼び出し、そして死んだ筈の男だった 姿も態度も変わらないまま、一つだけ違うのは左手に使い魔のルーンが刻まれている点だけ そうすでにルーンが刻まれているのだ、ルイズと契約した証が そのことに気付いたルイズは嘆息した 誰も見ていないことを幸いに無かったことにもできない、ルーンの消し方など知らないからだ 諦めたルイズは男のことを問い質すべく声をかけた 「アンタ誰?」 「今度はどこに……ここはどこだ……」 「次はど…… どこから…… い…いつ「襲って」くるんだ!? 」 「オレのそばに近寄るなああ―――――――ッ!!」 自分の質問が無視されたこと、質問に質問が返されたこと、うるさいこと、 そしてそれが自分の使い魔であることにルイズはあっさりとキレた 「うるさ―――――――い!!」 「ここはトリスティン魔法学院学生寮のわたしの部屋」 「わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、 ヴァリエール公爵家の第三公女でアンタを使い魔として召喚したメイジよ、 つまり貴族でアンタの御主人様よっ」 矢継ぎ早に言葉を発して男を黙らせると、そのまま扉の外に蹴り出した 「とりあえずそこで一晩頭を冷やしなさい」 ルイズはそう告げると非情にも扉を閉じた 朝、あまりの寒さにルイズは目を覚ました 「うー、寒い」 吐く息が白い 「もう春だって言うのに何でこんなに寒いのかしら」 突然の寒さに疑問符を浮かべながらベッドから降り、身嗜みを整えたルイズは食事に向かうべく扉を開けた 開けた扉の向こうから真っ白に凍りついた使い魔が部屋の中に倒れこみ………ブチ割れた ■今回のボスの死因 季節外れの寒波で凍死………のち粉砕
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「成る程、ここが魔法とやらがある世界だというのは理解した」 少女に連れられた部屋の床に胡坐をかき、ヴァニラは憮然とした表情でベットに腰を下ろしたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、通称ルイズ、そして自称・ご主人様へ頷いてみせる 「分かった?平民が貴族の使い魔になるなんて普通じゃ考えられないことなのよ、感謝なさい」 ルイズの偉そうな態度に思わずプッツンしそうになるがここは堪える まだ聞きたいことがあるのに殺しては拙い、ここは冷静になるべきだ 「それで私はどうすればエジプトに、元の世界へ帰れる?」 この傲慢な貴族の小娘に構っている暇など無い、DIO様に万が一などありえないがまだ戦えるのなら直ぐにでもお傍に参じたい。切なる思いを胸に訊ねる しかしッ 「は?無理に決まってるでしょ。サモンサーヴァントで召喚された使い魔が帰れるわけ無いわ」 ルイズがさらりと告げた事実は忠誠心の塊であるヴァニラを凹ませるには十分ッ! しかしヴァニラは凹みはしなかった、逆に 「ふざけるなこの小娘がッ!!」 「きゃっ!」 突然の怒声と共に立ち上がったヴァニラに気圧され、ルイズは思わずベットの上に倒れる ガオンッ!! 「な、何よ突z・・・・」 気圧された事で貴族としてのプライドが若干傷付いたが直ぐにその考えを改めた 「・・・・何、これ?」 ベットに仰向けに倒れたままのルイズの視界に映ったのは見慣れた天井と、まるでワインの コルクを抜いたように綺麗に刳り貫かれた壁、そしてそこから覗く外の景色だった 「ちょっとヴァニラ、アンタいったい何したのよッ!?」 慌てて起き上がりヴァニラに詰め寄るが何故かヴァニラはヴァニラで驚いていた 「何だこれは!?」 長身の男が怯えたように身体を震わせるのは滑稽を通り越して異常ッ ましてやルイズにはその原因が見えないのだから尚更だ そう、原因はルイズに見えないもの 即ちヴァニラのスタンド、クリームだった 「小さい!縮んでいるのかッ!?」 この世界に来て始めた発動させたスタンドの姿は彼が子供の頃の状態に近かった もし元の大きさならルイズが倒れたところで問題なく亜空間にばら撒いていただろうが 生憎小さくなったスタンドではそれは叶わなかった 「何だか分からないけど・・・・・これはアンタがやったのね?」 ショックを受けているヴァニラにルイズは恐る恐る声をかける 「ああ、私がやった・・・」 ありえない、等とぶつぶつと呟きながら上の空で返すヴァニラを他所にルイズは 「凄いじゃないの!平民なんて使い魔にしてこれからどうしようかと思ったけどこれならキ ュルケにも・・・・・・」 泣きたくなるような小さな胸の中に青写真を描き、はしゃぎだした 「ヴァニラ!アンタこれから・・・・・あれ?」 青写真を現実にすべく使い魔に指令を出そうと現実に戻ったルイズ、しかし部屋には自分以外誰も居ない おまけにドアには鍵がかかっているし開錠もドアの開閉される音も聞こえなかった 他に出口といったら同じく鍵のかかった窓と 「・・・・・・まさか、この穴?」 壁にぽっかりと開いた穴の縁に触れてみるがとても人が、ヴァニラのような大男が通れるはずも無い 「いったいどこに消えたのよ・・・?」 ルイズの呟きは、壁に開いた穴から漏れる宵闇に、静かに溶けた To Be Continued...
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油断した、やはりあの鏡はスタンド攻撃だったか… 確かにさっきまで僕はイタリアのアジトにいたはずだが今いる場所はどうだ。 どちらが上か下かも分からない、いやそういった概念が無い場所と言った方がいいだろうか。 ともかく現在僕は、落下し続けている最中なのだ。それだけはハッキリと分かる。 次第に目の前が明るくなっていった空間が、意識を失う寸前に見た最後の光景だった。 なんだろう、笑い声が聞こえる。ここはどこだ?イタリアからそう離れていなければいいんだが… ゆっくりと、全神経を集中して上半身を起こしてみる。スタンド使いが近くに潜んでいるやもしれない。 細心の注意を払う…必要は無かった。取り囲む少年少女の傍には必ずとしてスタンド像が見える。 全員がスタンド使いとは…“一手”、遅れたか。 ここから一旦距離を取らなくては。出来るだけ遠くがいい。 しかし朦朧とした意識の中次に聞こえてきた言葉は、すぐ傍にいた(多数のスタンドに気を取られて気づけなかった) ピンク色の髪の少女の口から発せられた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」 油断とは続くものだ。次の瞬間その少女は何の躊躇いも無く唇を合わせてきたのだ。 それがスタンド発動の条件か。 「くッ、身体が……燃えるように熱いッ……」 同時に左手の甲に記号が刻まれるのを目に焼き付けながら、再度気を失ってしまった。 くそ…“二手”遅れた… 次に目を覚ました時いた場所はやはりいつもの場所では無かった。夢などと都合の良いようにはいかないのは充分承知。 今はこれまでの経験を充分に役立てる事が先決だ。決まっている、まずは“逃げる”だ。 「あ、目を覚まされたんですね!」 くッ、次から次へと敵が現れる。次は何のスタンドがでてくるんだ一体。 ドアを開け入ってきたのは一人のメイド。歳は…僕に近いようだ。 「お体は大丈夫ですか?どこか具合の悪いところはありませんか?」 やけに悪意を感じられないメイドだ。しかし注意を怠ってはならない。 予想にもしないスタンド攻撃が無いとは言い切れない。 「ここはどこだ?」 「ここはトリステイン魔法学院です。あ、申し遅れました。私、この学院で小間使いをさせてもらっています、シエスタと申します。 …学院中大騒ぎでしたよ。ミス・ヴァリエールが平民を使い魔にした、っていう。」 なるほど、あのスタンド攻撃がそれか。…人一人を使い魔にするだと?馬鹿馬鹿しいスタンドだ。 発動条件はあれど制限が見当たらないあたり、非常に強力なスタンドであることは間違いないな。 それにしてもトリステイン魔法学院?・・・ふざけた名前だ。どこかの宗教団体と関係するものだろうか? だとしたら厄介だな。国を相手にすることに繋がるかもしれない。 少なくともイタリアでは無いわけか、ここは。 ファミリーはミスタとトリッシュに参謀を任せてあるから一通りは普段通りに動いているはず。 だが急に行方を眩ました僕を探す為奔走しようとしているのかもしれない。 希望は“僕を探さない”だが、ミスタ達の性格を察すればそれは無駄だろう。 しかし闇雲な行動が危険であることはあの二人もこれまでの経験から承知のはず。 とにかく今は早くイタリアに戻る方法を見つけなければ。 鏡台に突っ伏せているさっきの女を見つけた。通常スタンドは本体を叩けば消えるはず…しかしだ。 1.“使い魔”とされた僕が“主人”であるこの女に手を出した時に危険が及ぶのだとしたら。 2.無事“主人”を倒した後も“使い魔”の属性が消えず、例えば決められた領域から外に出られなくなる、等の移動制限がかけられていたら。 以上二点が最大の疑問だ。不用意に手を出すべきではない。 そしてもう一つ疑問が。 「このベッドは彼女のものだろう。何故彼女はあそこで寝ているんだ?」 「ミス・ヴァリエールは一晩中寝ないであなたを看病していたんですよ。 きっと疲れているんです。」 …理解できない。他人を“使い魔”にするスタンドから見れば本体の性格は恐らく支配欲の塊。 その性格があってこそあのスタンド攻撃が成立するはずだ。 ならば何故僕に対して手厚く世話をする必要がある? しばらくして目を覚まし、むくりと起き上がった少女はこちらに詰め寄り、開口一番にこう言った。 「ま、ま、まさか、へ、平民の人間なんかが使い魔になるなんて思いもしなかったけど こ、これも何かの縁だと思って諦めるわ。今日、この時よりあなたは このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔なんだから。よろしくお願いね。」 「僕は敬意を払いたくもない自分より年下の女の子の使い魔なんかになりたくないね。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。」 「名前を呼ぶならルイズでいいわ。でも使い魔の願いなんてご主人様であるこの私が聞けると思う? こっちだってまさか人間が召喚されるなんて思ってもみなかったわよ! もうどうしようもないことなんだからあなたも受け入れなさいよ、もう!! だいたいあなた歳は幾つなのよ!?」 そこへシエスタが止めに入った。 「ミス・ヴァリエール。そろそろ朝食の時間です。用意をした方がよろしいかと…」 「ああ~!もう、分かってるわよ。ええっと、あなた。名前はなんて言うの? ずっと“あなた”で呼ぶのもどうかと思うわ。名前を教えなさい。」 「……ジョルノ。ジョルノ・ジョバァーナだ。歳は15。」 「変わった名前ね。しかも私より1つ年下じゃない、敬語を使いなさい。そもそも年上である以前に私は貴族なのよ、平民。 まだあったわ、あなたは使い魔で私はご主人様。…3つも理由があるじゃない。」 僕より1年先に生まれておいて常識知らずとは頭が下がるね。 「じゃあまずは使い魔としての最初の仕事を与えるわ。ジョルノ、着替えさせて。」 「…お断りします。」 「言ってくれるじゃない。じゃああなたは他に使い魔としての能力を持ってるの? いいえ持っているわけないわよね。既に試してみたけどあなたには主の目となり耳となる能力も無いようだし、 主が必要とする秘薬を捜してくる能力も無ければ、主を守ることも出来そうに無いわね、だってあなたは平民ですもの。 だからあなたには使い魔としてとても簡単な仕事を与えてあげることにしたの。 掃除、洗濯、着替えがあなたに与えられた仕事よ。文句を言わずにさっさとしなさい。」 よくもここまで噛まずにスラスラと喋られるものだ。 しかし流石に僕でも…もう限界だッ…… 「…嫌だと言っているッ!」 「はぁ?これから誰があなたを養うのか分かってるの? あなたは使い魔の癖に何もせずタダ飯を喰らうつもり!?」 「これ以上君の理不尽な話を聞き続けるのは精神的に参るね。 どうしても言うことを聞かせたいのなら君のスタンドを使って思い通りにしてみればいいじゃないか。」 「何を訳のわからないことを…ああもう遅刻しちゃうじゃない! もう、今回だけは大目に見てあげるけど今日の夜を覚えておきなさい!誰が上で誰が下なのか再認識させてあげるわ!」 スタンドが分からない・・・?まさかそんな。いや、試してみる価値はある。 像をイメージする。天道虫をモチーフにした人型のクリーチャー、スタンド名:ゴールド・エクスペリエンスが目の前に現れる。 「これが見えないのですか?」 静かに佇み前だけを見据えるG・Eを指差して聞いてみる。 スタンド使いならばスタンドが見えるはず。 「何言ってるのよあなた。まだ意識が朦朧としてるんじゃないの? そうか、だからまだ使い魔としての認識が…」 「ゴールド・エクスペリエンス!花瓶をアヒルに変えろッ!」 命令と同時に降り落とされる腕は正確に彼女の傍にあった花瓶を殴りつけ、ドグシャアと音を残す。 花瓶は衝撃を受けて宙に舞う。 「きゃあああっ!あなた、人の物に何して……え?確かに花瓶は吹っ飛んだのにジョルノは一歩も動いてない…何故!?」 「ミ、ミス・ヴァリエール、かかか、花瓶が!」 ゆっくりと、花瓶は粘土細工のように形を変えていき、やがて絨毯の上を歩き回るアヒルそのものに変化した。 アヒルから目を離せない二人はどうやら、本当にスタンド使いでは無いようだ。 G・Eに部屋内の生命エネルギーを感知してもらっているが、欠片ほどのエネルギーも新しく発生しないし 彼女らのスタンドを出して身を護ろうとする動作すら行われない。 「こ、これ、なんていう魔法なの?生き物を“創り出す”魔法なんていままで見たことも聞いたことも無いわ…」
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朝食を終えたルイズと康一は、授業が行われる教室へと向かっていた。 今後、どうやったらルイズと衝突せずに生活できるか、などと考えている康一。 ちびの癖に生意気な犬をどうやって躾けようかしら、などと考えているルイズ。 二人とも無言で、今後についてのことを一生懸命考えていた。 そんな二人の前に、一人の色気を放っている赤い髪のナイスボディな女性と、真っ赤な巨大トカゲが現れる。 思案に暮れていた康一は、目の前に現れた魔物とおっぱい星人に気づいておらず、 おっぱい星人の使い魔である、真っ赤な巨大トカゲと思い切りぶつかった。 「うわっ!?」 尻餅をつき、顔とお尻をさすりながら前を見ると、のっそりとした巨大トカゲが康一をジーッと見ていた。 「うわぁぁあああああっ!?」 その姿に思わず驚き、康一は半身起こしただけの状態で後ずさりする。 「あら、大丈夫? おチビちゃん」 「ちょっとキュルケ! 私の使い魔に何するのよ!」 「あら、余所見をしていたのは貴方の使い魔でしょ」 そう言って、キュルケと呼ばれた女性はせせら笑う。 康一は床に手をつきながら立ち上がり、ペコリと頭を下げて謝った。 「す、すみません、考え事をしていたもので……」 素直に謝る康一を見て、ルイズは不機嫌そうな顔をする。 「ちょっと! こんな奴に謝らなくてもいいの!」 「僕が余所見してたんだから、悪いのは僕だし、ちゃんと謝らなくちゃいけないよ」 そんなやり取りを見ながら、キュルケはニヤニヤと笑いながら康一を見ている。 「それにしても、平民を使い魔にするなんて、貴方らしいわ。さすがはゼロのルイズ」 「うるさいわね」 とっとと目の前から消えろと言った感じの表情で、ルイズはキュルケを睨みつける。 「ところでそっちのおチビちゃんは、誰かさんと違って随分と礼儀正しいみたいね。一瞬、どっちが使い魔なのか分からなかったわ」 立て続けに嫌味を言うキュルケに、ルイズは康一を指差しながら怒鳴った。 「こいつのどこが礼儀正しいのよ!」 「少なくとも貴方よりは品性があるわね」 「ど・こ・が! 目が腐ってるんじゃないの!?」 「あらあら、品性のかけらもない言葉遣いね、ヴァリエール」 余裕のある笑みを浮かべるキュルケと対照的に、ギリギリと歯軋りさせながら怒りの形相を浮かべるルイズ。 少なくとも、彼女達は礼儀正しくないよなぁ、などと思いながらルイズ達を見ている康一。 「何か用でもあるわけ!? 用がないなら鬱陶しいから早く私の視界から消えて」 「あら、用ならあるわよ。あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」 そう言って、巨大トカゲの頭を撫でるキュルケ。 「えーと、その大きなトカゲがキュルケさんの使い魔って奴ですか?」 康一は物珍しそうに、キュルケの隣でのっそりとしている巨大トカゲを見て言った。 「そう、素敵でしょ。火トカゲよー。見て? この尻尾。 ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?ブランドものよー」 康一は、あんなにそばにいて熱くないのかなぁ、などと思いながらサラマンダーに近づいた。 「凄いなぁ~、こんな生き物見たことないよぉ~。 カッコいいなぁ~」 「そうでしょ? 貴方、見る目があるわ。誰かさんと違って」 康一は、サラマンダーを触ったり撫でたりして、目を輝かせている。 自分の使い魔を称えられているキュルケも、気分よさそうに康一に色々とサラマンダーについての説明をしていた。 和気あいあいとした雰囲気の中、一人だけ暗黒の空気に包まれている者がいた。 他でもない、ルイズである。 目を逆三角形にしながら、康一の背中を引っつかんで自分のそばに引き寄せる。 「何楽しそうにおしゃべりしてんのよ! あんたは私の使い魔でしょ!」 「あら、私の使い魔になりたがってるんじゃないかしら? あなたと違って、魅力があるしね」 そう言われて、キッと康一を睨みつけるルイズ。 康一は、必死に顔を横に振って否定の意を表す。 「ハイ、そーです」なんて肯定したら、殺されそうな勢いだった。 「そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね」 「あ、広瀬康一です」 「ヒロセコーイチ? ヘンな名前ね。ま、覚えておいてあげるわ」 そう言うと、炎のような赤髪をかきあげ、颯爽とキュルケは去っていった。 大柄な体に似合わない可愛い動きで、サラマンダーがその後を追う。 「くやしー! ただ自慢しにきただけじゃない! 火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!」 「ま、まぁまぁ……」 ルイズは、自分をなだめようとしてくる康一を睨みつける。 「うるさいわね! 今日は晩御飯もヌキッ!」 「えぇ~ッ! 何でェー――ッ!?」 「ご主人様をそっちのけにして、他人と仲良くした罰よ! なによ、私にはあんな顔しない癖に!!」 そりゃ、キミがワガママ言うからだよ、などとは口が裂けても言えない康一。 これ以上刺激したら、もっと空気が悪くなりそうだ。 「行くわよ! フンッ!!」 ドッカドッカと、品性のかけらも無い歩き方で教室へ向かう。 康一は、どっと疲れたような足どりで、肩を落としながらルイズの後を追った。 重い空気の中、やっとのことで教室につく。 康一とルイズが中に入っていくと、先に教室にやってきていた生徒達が一斉に振り向いた。 そして、康一とルイズの姿を見るなり、クスクスと笑い始める。 そんな生徒達を無視して、康一は辺りをキョロキョロと見回す。 教室は、大学の講義室のようだった。 ちょうど、教室の真ん中くらいの所には先ほどのキュルケもいた。 周りには、数人の男が取り囲んでいる。どうやら相当モテるらしい。 よく見ると、皆、様々な使い魔を連れていた。 キュルケのサラマンダーをはじめ、フクロウや、巨大な蛇や、よく分からない謎の生物も沢山いた。 「へぇ~、色んな使い魔がいるなぁ~」 「あんたも使い魔でしょ。まったく、少しは自覚しなさいよ」 ルイズは不機嫌そうな声で答え、席の一つに腰をかけた。 康一も隣の席に座る。ルイズが康一の横っ腹を肘で小突いた。 「イテッ! こ、今度はなに?」 「ここはね、メイジの席。使い魔のアンタは床」 康一は、ムッとしながらも、床に座った。 机が目の前にあって窮屈だったが、康一は我慢する。 そうこうしている内に、扉が開いて、先生が入ってきた。 紫色のローブに身を包んだ彼女は、教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。 「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 ルイズは俯いた。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズが、康一を見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 キュルケの件もあって、かなり不機嫌だったルイズは、机をバンッ叩いて大きな声で怒鳴りつける。 「違うわ! きちんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができ……ッ! ッ!!」 突然、ルイズをバカにしていた男が、一言も喋れなくなる。 周りで笑っていた生徒は、突然喋らなくなった男を不思議そうに見ていた。 「フン! 言いたいことがあるなら最後まで言ってみなさいよ、かぜっぴきのマリコルヌ!」 マリコルヌと言われたその男は、反論しようとしたが、声が出なかった。 否、出ないというよりは、防音室にいる時のように、声が全く響かなかった。いくら喋っても、声が届かない。 「みっともない口論はおやめなさい。授業を始めますよ」 シュヴルーズは、こほんと重々しく咳をすると、杖を振った。机の上に、石ころがいくつか現れた。 「私の二つ名は『赤土』。 赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します」 授業は淡々と進んでいき、康一はその光景をボーっと見ていた。 『火』、『水』、『土』、『風』の四つの魔法があるだとか、『土』系統の魔法は重要だとか、そんな話だった。 「今から皆さんには、『土』系の魔法の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます」 シュヴルーズの話を聞いていた康一の横から、ルイズが話しかけてくる。 「ねえ」 「なに~? 今、先生が何かやってるみたいだよ。ちゃんと見なくていいの?」 「そんなことはいいの。あんた、さっき『何か』した?」 「『何か』って?」 「だから……さっき、マリコルヌがいきなり喋らなくなったでしょ?」 康一は、「ああ、あれね」と言った表情でルイズを見た。 「そうだね。何でだろうねぇ~。でもま、静かになって良かったんじゃない?」 「……そうね。ま、いいわ。良く考えたらあんたが何か出来るわけないし」 そう言って、ルイズは再び授業に参加した。 康一はエコーズで、マリコルヌに張り付いていた『シーン』という文字を密かに回収し、 誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。 「いくらワガママでも、自分の主人をバカにされるのは、気分が良くないからね……」 「……今、何か言った?」 「何も~?」 康一はとぼけたような声で言った。 ルイズが、康一を怪訝な目で見つめていると、シュヴルーズに声をかけられる。 「ミス・ヴァリエール」 「え……? は、はい!」 「今日はあなたにやってもらうわ。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 「え? わたし?」 ルイズは立ち上がらずに、困ったようにもじもじとしている。 その様子を見て、頭に?マークを浮かべながら康一は質問する。 「……行かないの?」 「……」 ルイズは康一の質問を無視し、困った顔をしているだけだった。 なかなか立ち上がらないルイズに、シュヴルーズは再び声をかける。 「ミス・ヴァリエール! どうしたのですか? 早く立ち上がってこちらに来なさい」 しかし、それでもルイズは立ち上がらない。 「ねえ、行かなくていいの?」 その様子を見ていたキュルケが、困ったような声で言った。 「止めた方がいいと思いますけど……」 「どうしてですか?」 「危険です」 キュルケがきっぱりと言うと、教室のほとんど全員が頷いた。 「危険? どうしてですか?」 「ルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ。でも、彼女が努力家ということは聞いています」 そういう風には見えないけどなぁ、などと思いながら康一はルイズを見る。 「さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」 「ルイズ。やめて」 キュルケが蒼白な顔で言った。 しかし、ルイズは立ち上がった。 「やります」 そして、緊張した顔で、つかつかと教室の前へと歩いていった。 せめて声援は送ろうと思った康一が、ルイズに向かって言う。 「頑張ってねー!」 しかし、周りの生徒たちは「余計なことを言うな」という顔をしている。 皆、何であんなにおびえた表情をしているのかなぁ? と康一は思った。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 こくりと頷き、ルイズが手に持った杖を振り上げた。 唇をへの字に曲げ、真剣な顔で呪文を唱えようとする。 すると、他の生徒たちが一斉に椅子や机の下に隠れた。 何で皆、机の下に隠れてるんだろう? と康一が思った瞬間――。 ドグォンッ! ――大きな音を立てて、机と石ころが爆発した。 爆風をモロに受け、ルイズとシュヴルーズ先生は黒板に叩きつけられた。 「うわあああああっ! な、な、何事!? まさか敵スタンドッ!?」 大きな爆発によって、康一は半ば混乱しながら、ACT2を出して辺りを見回した。 過去に、敵を爆破するスタンドに襲われた康一は、汗をダラダラと流しながら、攻撃に備えている。 もっとも、爆発を引き起こしたのはルイズなので、敵スタンドなど存在はしない。 そうこうしてる内に、驚いた使い魔たちがあっちこっちで暴れていた。 キュルケのサラマンダーがいきなり叩き起こされたことに腹を立て、炎を口から吐いた。 その炎で、マリコルヌが黒焦げになった。 マンティコアが飛び上がり、窓ガラスを叩き割り、外に飛び出していった。 割れた窓ガラスのシャワーがマリコルヌに全部突き刺さった。 「うわあああッ! そ、そこにいるのかッ!?」 窓ガラスの音に反応し、康一がACT2の音攻撃をする。 バゴーンという文字は、不幸にもマリコルヌに命中した。 口から血ベトを吐いて、痙攣するマリコルヌ。 駄目押しと言わんばかりに、割れた窓の隙間から入ってきた大蛇が、マリコルヌを飲み込んだ。 教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。教室の隅では、丸飲みにされたマリコルヌの救出活動が行われていた。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」 「ええい! ヴァリエールなんて退学になればいいんだ!」 「マリコルヌーッ! しっかりしろーッ! 食われちゃいかーんッ!!」 康一は呆然としていた。 誰かの攻撃かと思っていたが、生徒全員が口を揃えてルイズの文句を言っている。 つまり、さっきの爆発はルイズの仕業である可能性が高い。 至近距離で爆発に巻き込まれたシュヴルーズ先生は、ピクピクと痙攣している。 何やらうわ言で「ビ・チ・グ・ソ・が……」と言っているような気がしたが、康一は聞かなかったことにした。 一方、爆発を引き起こした張本人であるルイズは、煤で真っ黒になっていた。 ハンカチを取り出して、顔についた煤を拭うと、淡々とした声で言った。 「ちょっと失敗みたいね」 当然、他の生徒達からは猛然と反撃を食らう。 「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」 「そうだ! お前のせいで、マリコルヌが…マリコルヌがなぁ……!」 「いや、マリコルヌは生きてるぞ」 康一は、何でルイズが『ゼロのルイズ』と呼ばれて、バカにされてるのか理解した。 シュヴルーズ先生――この後、治療を施された。 マリコルヌ――再起不能。 To Be Continued →
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康一とギーシュが、ヴェストリの広場で決闘を始めていた頃、学院長室ではコルベールが泡を飛ばしてオスマン説明していた。 春の使い魔召喚の際に、ルイズが康一という平民を呼び出したこと。 そして、その康一に刻まれたルーン文字が気になり、それを調べると、『始祖ブリミルの使い魔たち』という文献に、全く同じルーン文字が載っていたことを。 「なるほどのう……」 オスマンは、コルベールが描いた康一のルーン文字のスケッチを見ながら呟き、言葉を続けた。 「して、これは何の使い魔のルーンなんじゃ?」 「それなんですが、ここを見て下さい!」 コルベールは、『始祖ブリミルの使い魔たち』に書かれていた、ルーン文字の項を開いた。 そこには、様々な使い魔に刻まれていたルーン文字が表のようになって載っていた。 その表の中に、康一の手に刻まれたルーン文字と全く同じルーン文字が載っている。 オスマンは、そのルーン文字を見ながら目を見開いた。 「ふむ……。ほほう、これは……」 「もうお分かりかと思いますが、このルーンは何の使い魔のルーンであったか、書かれてないんです!」 オスマンは、長い髭を弄りながら首を傾げた。 「妙じゃのう……。他のルーンは全て名前が記されておるぞ。 ここに書かれている『ガンダールヴ』とかな……。なぜこれだけ記されてないんじゃ?」 何も名前が記されてないルーン文字を指差して質問してくるオスマンに戸惑いながらも、コルベールは質問に答える。 「自分なりに、二つの仮説を立てて見たのですが……」 「ふむ、言ってみなさい」 コルベールは、禿げ上がった頭をハンカチで拭きながら言った。 「まず一つは単純なものでして、単に書き忘れたか、ここの文字だけ剥げてしまったか……です」 「なるほど。して、もう一つは?」 「召喚後すぐに、何らかの原因でその使い魔が死に至ったか……です」 コルベールは、コホン、と咳払いをしてから話を続けた。 「この場合、何の種類で、どんな能力を持っていたのかわからず、名を記すことすら出来なくなりますからね……」 オスマンは瞑っていた目を静かに開くと、悟ったように言った。 「つまり、こういうことか? 『あの平民は未知の能力を持った、未知の使い魔である可能性がある』」 「Exactly(その通りでございます)」 コルベールが頭を下げながら答える。 そんなやり取りが行われてる時、ドアをノックする音が聞こえてきた。 「誰じゃ?」 オスマンがドアの前までいくと、ドアの向こうからロングビルの声が聞こえてきた。 「私です。オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。 止めに入った教師がいましたが、生徒達に邪魔されて、止められないようです」 オスマンは、髭が揺れるほど深いため息をついて言った。 「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 『暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はいない』と聞き、 貴方もその一人よ、クソジジィ! と思いながら質問に答えるロングビル。 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 その名前を聞き、やれやれと言った感じで俯くオスマン。 「あの、グラモンとこのバカ息子か。あんな寄生虫なんぞ、放っておきなさい」 「しかし……」 「おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ? どうせマリコルヌのカスあたりじゃろう」 仮にも自分の生徒を、寄生虫だのカスだの酷い男だ……。などと思いながらコルベールは聞き耳を立てている。 「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」 オスマンとコルベールは顔を見合わせた。 「……なんじゃて?」 「ミス・ヴァリエールの使い魔の少年です。教師達が、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可がほしいと……」 オスマンの目が、鷹のように鋭く光った。 「アホか。たかがそんなことの為に、秘法を使えるか。もう一度言うぞ、放っておきなさい」 「……わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 コルベールは唾を飲み込んで、オスマンに質問した。 「オールド・オスマン、まさか……」 「うむ、その『まさか』じゃ。もしかしたら凄いものが見られるかもしれんぞ」 そう言って、オスマンは杖を振った。 壁に掛かった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出される。 「オールド・オスマン! 危険すぎます! 万が一、あのルーンにとてつもない能力が秘められていたら……」 「その時は私が責任を取ろう。私はただ純粋に、どんなものか見てみたいのじゃよ。キミだってそうだろう?」 コルベールは静かに目を瞑り、軽く頷いた。 オスマンは、鏡の前にあった椅子に座り、ギーシュと康一の戦いの様子を静観し始めた。 康一の怒りは頂点に達していた。 目の前いる男、ギーシュは何の関係もないシエスタを傷つけた。 彼女は気絶しただけで済んだが、もし当たり所が悪ければ最悪の事態もありえた。 「よくもシエスタさんを……」 そう言って、康一は怒りの眼差しでギーシュを睨みつける。 一方、ギーシュは突然の乱入者によって完全に動揺していた。 「ぼ、僕のせいじゃない……あ、あんなの予測できるはずがない……!」 ギーシュは、今まで女を泣かしたことは何度もあったが、殴ったりしたことは一度も無かった。 それは、貴族だろうと平民だろうと、美人であろうとブスであろうと例外は無い。 ギーシュにとって、女を殴ったり蹴ったりするのは、この世でもっとも最低の行為であると思っているからだ。 「あ、あれは……あれは不可抗力だ……」 しかし、不可抗力とはいえ、女を殴ってしまった事実は揺ぎ無かった。 康一は、どんどんギーシュに近寄ってくる。 ギーシュの頭の中は、後悔、混乱、恐怖といった感情がぐるぐると交差していた。 「ち、近寄るな……」 ガタガタと震えながら後ずさりするギーシュ。 康一が迫ってくる恐怖に我慢できなくなり、ギーシュの理性が弾けた。 「ぼ、僕のそばに近寄るなああー――ッ!」 鬼でも見たかのような表情で薔薇を振り、ゴーレム達に攻撃を命じる。 一体のゴーレムが康一を攻撃しようとした瞬間、『ドガァァァン』という音と共に、粉々に弾けとんだ。 「あ……ああ……うわぁぁぁああああああー――ッ!!」 二体目、三体目のゴーレムが康一に殴りかかる。 康一が、少し体をずらした次の瞬間、二体目と三体目のゴーレムが『ズバッ』という音と共に、豆腐のように切り裂かれた。 二体のゴーレムは、真っ二つになって地面に転がる。 「く、来るなッ! 来るなッ! 来るなぁぁぁあああああー――ッ!!」 残りのゴーレムで、一斉に康一を攻撃する。 四方を取り囲み、完全に康一の体を捕らえたと思った瞬間、『ドンッ』という音と共に、全てのゴーレムが上空に吹っ飛んだ。 康一の後方で激しい金属音を立てながら、ゴーレムは思い切り地面に体を叩きつけ、バラバラに分解した。 「うぁ……ぁぁああ……」 全てのゴーレムがやられ、無防備になったギーシュを守る者はどこにもいなかった。 ギーシュの頭に絶望の二文字が浮かんだ。 一瞬でゴーレム達を倒したバケモノ、勝てるわけがない……。 そう思いながら、震えていたギーシュの目の前に康一が迫る。 「ひッ! く、来るなッ! 来ないでくれぇぇぇぇええええー――ッ!」 ギーシュは自分の杖である薔薇を投げ捨て、康一から逃げようとする。 しかし、ACT2は既に、ギーシュに『ピタッ』という音を張っており、ギーシュは一歩も動けなかった。 康一は、身動きが取れないギーシュを、鋭い眼差しで睨みつける。 ギーシュは、まるで巨大な鬼か悪魔に見下ろされたような気分になり、全身をガタガタと震わせていた。 「ひぃぃッ! こ、殺さないでくれ……! た、頼む……!」 康一は、命乞いするギーシュを無言でブン殴った。 エコーズではなく、自分自身の拳でギーシュに右ストレートを浴びせていた。 『ピタッ』という音が剥がれ、ギーシュは地面に転がった。 「あが……ぐぐぐ……ぐ……」 「いいかッ! 今のは、シエスタさんを侮辱した分だッ! そしてッ!」 康一は、ギーシュの胸倉を掴んで、さっきよりも強く拳を握り締める。 「これはお前のガラクタに殴られた、シエスタさんの痛みだァー―――――ッ!!」 「うわぁぁぁあああああああああー――――――ッ!!」 康一の渾身を込めた一撃が、ギーシュの顔面ど真ん中にクリーンヒットする。 前歯が一本抜け落ち、ギーシュは顔面を押さえながらもだえている。 康一は、地面を転げまわっているギーシュに馬乗りなった。 「も、もう止めてくれッ! 僕が悪かったッ! 謝るッ! 謝るからもう許してくれぇ……」 情けない声を上げながら、ギーシュは涙を流した。 「僕のことなんてどうでもいい……」 康一は、気絶しているシエスタをチラリと見て言葉を続ける。 「シエスタさんに言った言葉を取り消せ。そしてちゃんと頭を下げて謝るんだッ!」 「わ、分かった……。取り消す! ちゃんと謝るッ! なんでもするッ!」 馬乗りになっていた体勢を解き、康一は立ち上がった。 「本当だな? 嘘をついたら承知しないぞッ!」 「き、貴族の誇りに誓う!」 康一はニヤリと笑って、ギーシュを指差して言った。 「よし、なんでもするって言ったな……。 それじゃあ明日からさっそく……炊事、洗濯、家事の世話を全部やれ!」 「えッ!!」 「フフ……ジョーダン! ほんのジョーダンだって! フフフ……」 ギーシュの肩にポンっと手を置いて、康一はシエスタの所へ向かった。 康一に脅されたギーシュは、涙を流しながら呆けていた。 「……。(じょ、冗談に……き、聞こえなかった……)」 シエスタを抱え、歩き出そうとする康一の元に、ルイズが駆け寄った。 「コーイチ!」 「どうだい、勝ったぞ……。少しは僕のこと見直してくれたかい?」 「ふ、ふんだ。ギーシュが弱かっただけよ!」 突如、康一に重い疲労感が襲った。膝が抜け、力が一気に抜ける。 「そ、そんなことより、治療……」 「ぼ、僕は後回しでいいからさ……シエスタさんのこと……頼むよ……」 抱きかかえていたシエスタをそっと置いて、康一は地面に倒れた。 意識が朦朧とする康一に、ルイズの叫び声が聞こえてくる。 ――そういえば……僕のエコーズACT2は、物理的ダメージはないはずなのに…… どうしてあのゴーレムに対しては爆発させたり、分断させたりできたんだろうか? しかも……今までにない物凄いスピードで……まあ、今は……休みたい……な―― そんな風に思いながら、康一の意識は闇へと沈んだ。 それと同時に、康一のルーン文字の光もふっと消えた。 広瀬康一――気絶。ルイズの治療を受ける。 シエスタ――大した怪我じゃなかったため、この後、すぐに目を覚ました。 ギーシュ――この後、シエスタに謝りに行った。前歯が一本抜けたため、『歯抜け(マヌケ)のギーシュ』というあだ名がついた。 To Be Continued →
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トリスティン魔法学園、春の使い魔召還。 それはこの学園に通う生徒にとってもっとも重要な行事。 皆が思い思いの使い魔を召還し、あるものは歓喜し、あるものはがっくりとうなだれた。 それはもちろん彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも同じであった。 彼女が使い魔召還のための呪文を詠唱を終えると まばゆい光が辺りを包んだ。 そして ドオン! 「うわ! ゼロのルイズがまたやったぞ!」 「建物が崩れるぞ、逃げろー!」 地震のような地鳴りと巨大な爆音。 いつもの彼女の失敗にしては少々大きすぎる爆発。 辺りを覆う煙が晴れると、そこには 「・・・・・・・・・なによ、コレ」 巨大な『鉄塔』がそこにはそびえ立っていた。 それは高さ20mくらいはあろうか。 塔とは言うものの床がなく、側面に鉄の棒が繋がっていてかろうじて塔と分かるだけだ。 そう、ちょうど塔に骨があるとするのなら、こんな感じなのだろう。 「ぶ・・ふふ・・・あーっはははは、さすがね、ルイズ・・・まさか生き物以外を召還しちゃうなんて」 キュルケの笑い声が引き金となりほかの生徒もどっと笑い出す。 「ぶははははは、塔ってなんだよ! どういう使い魔だよ!」 「これなら失敗のほうがよかったんじゃねーの?」 「違いねえ」 わはははははは、と生徒は笑う。 本来誇り高き貴族たるルイズは侮辱に怒りを露にするはずだが、 「あ・・・あはははは」 もはや笑うしかなかった。いくら自分に才能がないとしてもコレはあんまりだ。 みなの言うとおり失敗して爆発のほうがまだ救いがあっただろう。 「あー、コホン、ミス・ヴァリエール」 「・・・ミスタ・コルベール、もう一度召還の機会を与えていただけますか?」 「それはダメだ、ミス・ヴァリエール。使い魔召還は今後の属性を固定しそれにより・・・」 「お言葉ですが、ミスタ・コルベール」 「これと『どう』契約しろというのですか?」 契約は使い魔との口付けでなるのは周知の通りだ。 だが『こいつ』には口はない。 あまつさえ顔もない。 それ以前に生き物ですらない。 「ううむ・・・確かに。春の使い魔召還の儀式はあらゆるルールに優先する・・・と言っても限度があるな。 さすがに契約できないものを使い魔とすることはできない。やむ終えません。今回の件は特例として オールドオスマンと協議の上再度仕切りなおしと致しましょう」 「ありがとうごさいます! ミスタ・コルベール」 「やめといたほうがいいんじゃない? 今度召還したら風車が出てくるとかいやよ」 「うるさい、キュルケ!」 いつもの通りの嫌味に腹を立て鉄塔の外に出ようとしたとき、ルイズの体に異変が起きる。 バキバキバキ 「! ルイズ、あんたそれ!」 「へ?」 見ると鉄塔の外に出ている右手と左足が『鉄』に変わっていた。 「きゃああああああああ」 あわてて手と引っ込めると拍子に転んで鉄塔の中に戻る。 手と足は元に戻っていた。 「なによこれ・・・」 「ややや、コレは・・・!」 コルベールが鉄塔に腕を出し入れする。しかし今度は何も起きなかった。 「・・・・・・」 バキバキバキ ルイズが手を出そうとする再び鉄に変わった。 あわてて手を引っ込める。 「・・・信じられないが、どうやらこの鉄塔から出ようとした人間は『錬金』されてしまうようですね」 「そんな! 人間が錬金されるなんて聞いたことありません」 「そうですね、ミス・ヴァリエール。私も聞いたことがありません。建物を使い魔として召還すると言うことも含めてね」 うぐ、とルイズは痛いところを突かれる。 「とにかく、すぐオールドオスマンと相談してまいりますので、本日は皆さんこれで解散。 ミス・ヴァリエールはそのまま残っておくように」 言われなくてもどこかにいけるわけがない。 いったいなんだと言うのだこの使い魔は。 使い魔は主人に有益なものをもたらすのが普通なのに、有益どころかもたらすのは不利益ばかり。 いや、そもそも契約もしてないし使い魔かどうかすら怪しいのだが。 「一体・・・なんだってのよ・・・」 どっと吹き出てきた疲れに身を任せ、ルイズは鉄塔の中で倒れこんだ。 コレが彼女と鉄塔、「スーパーフライ」の出会いであった。
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「やめて!!」 ギーシュとドッピオの決闘の間に誰かが割って入りました 「ミス・フランソワーズ、そこをどいてくれないかな?」 ギーシュは一度、ピッと杖を突きつけ言います 「もう勝負は決まったようなものじゃない!続ける必要なんて・・・」 「僕はその平民に誇りを汚されたんだ。だったらそっちが負けを認めるまでこれは続けるさ」 ルイズは一度ドピッオに振り返り 「・・・ドッピオ、負けを認めなさい。これ以上続けたらアンタ死ぬわよ!」 ルイズはそう言いました 「・・ルイズさん?いつから来てたんですか?」 ドッピオは見当違いのことを言います。ドッピオ自身気になっていたからです 「そんなのどうでもいいから!何が目的でやったか知らないけどこんな傷まで負って・・・」 「ルイズさん」 言いくるめようとしたルイズを一言で止めました 「使い魔って言うものがどういう者か最初に説明してくれましたよね」 「確かに説明したけどそれとこれとは・・・」 「使い魔はつねに主を守り、敬愛する者・・・だったら」 ドッピオはギーシュの方を向き 「あだ名だかよく分かりませんけど、ゼロのルイズとか言ってバカにしているような人には・・ッ」 力が入らない足に渇を入れて立ち上がり 「絶対に・・ッ謝らないッ!!!」 その意気に呑まれたのかそれとも感動したのか 「・・・平民の方、頑張れ!」 「ルイズの使い魔!頑張れよ!!」 「ドッピオさん!負けないでください!!」 「ドッピオ?・・ドッピオ!ギーシュなんかに負けるな!」 「「「ドッピオ!ドッピオ!ドッピオ!」」」 周囲から湧き上がるドッピオコール 「え?え?なに?」 ルイズ自身は戸惑っています 「・・よし」 その声援に少々力づけられたドッピオはギーシュを倒そうと歩こうとしますが (駄目だ、力が・・・) たとえ気力が充実したとしても肉体が拒否する。痛みにドッピオは耐えられないのです (ドッピオ) 不意に聞こえる声 (よくここまでやった。可愛い部下がここまでやっているというのに私がやらないわけにはいかん) この声は・・まさか (後は私に任せろ。あの男が気に入らぬのは私も同じなのだ) ドッピオの意識はそこで途切れました 「ドッピオ・・・?」 一番最初に異変に気づいたのはルイズでした 「・・・・・・」 目の前でだんまりしている自分の使い魔が別の何かに・・・最初のときのような人になっていることを 「・・・どうかしたのかな、ドッピオ君。そうまでして立ち上がったのだから僕と戦うのだろう?」 ギーシュはまだ気づいてません。目の前の男がドッピオではなく 「戦いなんかにならないだろうけどね!」 ドッピオにボスと呼ばれた絶頂の能力を持っている人だということを 「キング・クリムゾン」 そう男が呟きました 「ハッ?!」 ギーシュは気がつきました 「あ、あれ?」 さっき確かに召喚したはずのワルキューレがいません 「そ、そんなバカな!」 もう一度召喚しようとしますが 「キング・クリムゾン」 どの呟きに邪魔されてしまうのです 今、ドッピオと呼ばれた人はその人にボスと呼ばれた人に入れ替わっています 名をディアボロ。エピタフとキング・クリムゾンという絶頂の能力を持っている人です 肉体が痛みで動くのを拒否するのをそれを超える精神で肉体を支えています (この程度の痛みッGERで与えられた痛みに比べればまだましだ!) GER、その効果の所為でディアボロは地獄を味わい続けていました 終わりが無いのが終わり、それを救ってくれた少女。それをバカにする周り (我が救いを侮辱するなど許さん!) そう思い、目の前を男に歩みを進めるのでした ギーシュはいくら召喚しようとも召喚できていないことに不安を覚えました 自分が魔法を使えなくなってしまったのではないかと思ってしまうのです 「くっくそ、くそくそくそ!!」 目の前の男がなにをしているのかさえ分かりません ただ自分の魔法をなにかで消している。そう思わないと不安につぶされてしまうのです 「ひっ・・!」 とうとうその男が目の前までに来てしまいました エピタフで未来を予知し、それをキング・クリムゾンで消し飛ばす それが絶頂の能力の正体、最強の守りのことです 攻撃はキング・クリムゾン自体の攻撃です。こういうと些細なものと思われてしまいますがその力も尋常ではありません ディアボロは今、目の前の男が未来になにするか予知してその時を消し飛ばしながら進んでいるのです そして、その男の目の前まで来ました (・・・殺すか?) ディアボロは殺すかどうか考えていました (・・とりあえずこうしとくか) 殺すかどうか以前に目の前の男の杖をへし折りました 「あ・・・僕の杖が!」 「・・・・・・」 決闘はこれで終わりです。その後は、キング・クリムゾンで目の前の男を・・・ 「ストップ!」 殺そうとして止められました。止めたのはルイズです 「・・・なぜだ?」 「え?」 「この男は君をバカにしていただろう。他にも大勢の者が・・・だ」 「・・・そんなの一々気にしてたら仕方無いし魔法をちゃんと使えない私が悪いのよ!」 「・・・そうか」 キング・クリムゾンをしまい・・・目の前の男に近づきます そして一発殴ります 「ギャッ!」 男は変な声を出して地に伏しました 「・・・ぐっ」 男を殴ってから少し経つとディアボロも倒れました 精神が支えていたのですから倒したことで安直するとこちらだって倒れてしまいます 「あ・・・いけない!誰か救護・・・」 ルイズの心配する声も聞こえなくなってきました 「ぐ・・・はあ」 一度、呼吸をしてディアボロは妙な達成感を覚えながら意識を遮断しました 7へ