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サモン・サーヴァントの儀式の終わった日の夜、ルイズは眠ることが出来ずにいた。 目をつぶっても昼間に起きた出来事が頭の中を駆け巡る。気がついたら東の空から太陽が昇り始めている。 あの後使い魔が消えたことで最もショックを受けていたのは意外にもキュルケだった。 今まで見たことない素直さでルイズに謝ってきたのだ。正直どう反応すればいいか分からなかったので適当に流しておいたが。 ルイズが思いのほか冷静だったのは、自分の手元に召喚した奇妙な箱が残ってたからだ。 今はもう火は出てない。あの時の騒ぎで気づいたときにはもう消えていた。だが壊れたわけではないようだ。 たぶんこの箱から火を出せば再びあの使い魔は現れる。 そして再び私を襲うんだろう。向こうはこっちの事を主人と認識してないようだ。 「あ~もう。どうしよう」 思わずつぶやく。が、そういいながらも心の中ではひとつの覚悟を決めつつあった。 今まで誰よりも努力してきたつもりだが、それでも報われず魔法が成功したためしはない。 その自分が始めてほぼ成功したと言う事ができたのだ。後もう少し。 後はあの使い魔に私を主人と認めさせる。そしてどのメイジにも負けない信頼関係を作る…! (点火「する」。ではなく点火「した」なら使ってもいい!) ルイズの手の中で火が踊った。 また後ろに現れるのではないかと思って、あらかじめ背中に壁を付けておいた。 世の中には背中を見られたら死んでしまう奇病があるという話を意味もなく思い出す。 予定通りと言うべきかどうか、使い魔は今度は自分の前に現れた。 昼間と全く同じ格好の黒尽くめの亜人。そして。 「おまえ…『再点火』したな!」 第一声も全く同じ。 違うのはそれに立ち向かうようにして杖を握りしめるルイズ。 「ええ。『再点火』したわよ」 ドドドドドドドドドドドドドドド………… (やっぱり影だ……) さっきからその場をうろうろするだけの使い魔を見てルイズは確信する。 昼間の出会いのとき心に引っかかったいくつかの単語。 再点火、チャンス、選ばれるべき者、影。 キュルケはこの使い魔がルイズの影に触れた後で、ルイズが叫び始めたと言っていた。 今回はあらかじめ自分の影が壁に向かうようにロウソクを立てておく。 余計な影ができると困るのでカーテンは閉めておいた。 これらは自分の影を守る為の作戦だったのだが、別の事実も浮かび上がらせることになった。 (こいつ。さっきから影の部分しか歩いてない) 使い魔がさっきから歩いているのは、ロウソクの光によって出来た家具の影の部分だけだった。 ひとまず自分は安全地帯にいることを認識したルイズは、使い魔に話しかけてみる。 「あんた名前は?私の使い魔なんでしょ?」 使い魔は動きを止めこっちを見ると答えた。 「チャンスをやろう!お前には向かうべき二つの道がある!一つは生きて『選ばれるべき者』への道!」 (ど~しろっていうのよ) 全く会話にならない。こいつはもしかしてこれ以外の言葉を知らないのか?思わず嘆息してしまう。 ああ。サモン・サーヴァントはもうやり直しできないし、使い魔は話を聞かないし。つまりハサミ討ちの形になるな… …………だんだんむかっ腹がたってきたわ。なんで私だけ使い魔のためにいろいろ考えて寝不足にならないといけないの? 逆じゃあないのか?選ぶのは私で、寝不足になるのはこの使い魔のほうなんじゃないのか? ルイズは相変わらず演説を続ける使い魔に向かって足を踏み出した。 使い魔がルイズの影に触れたと思った瞬間、使い魔に肩を掴まれている状態になっている。 昼間の再現。だからルイズはあわてなかった。 「チャンスをや「うるさい!!!」」 また同じことをリピートしようとする使い魔に一喝する。 「意味わかんないこと言ってんじゃないの!アンタは私の使い魔なの!私がご主人さまなの!」 ルイズはその目をけっして使い魔から離さず睨み続ける。 使い魔の動きが止まる。そして。 「チャンスをやろう!お前には「だからもうそれは聞いた!!」」 使い魔の動きが再び止まる。 「チャン「うるさい!!!」」 両者の動きが再び止まった。相変わらず使い魔の感情を読み取ることはできない。 どれくらいその状態が続いたか分からない。ルイズにはそれこそ永遠のように感じた。だが睨みは効かせ続ける。 使い魔はしばらくするとルイズの肩からトンと押すように手を離した。 よろけて転びそうになる!と思ったのは一瞬で、気がつくと少し離れた場所に立っている。 (今のは『私の体』を掴んでたんじゃないのね) 息を落ち着かせながらそんなことを考える。 使い魔の方を見てみる。雰囲気が変わったとは思えないが、もう襲ってくる様子はないようだ。 「あんた名前は?」 答えは返ってこない。 またひとつ嘆息。 「じゃあもうここは譲歩して私から言うわ。ありがたく聞きなさい。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 反応はない。 「あんたを選んだ者よ」 やっぱり反応はない。 どうやってこの使い魔と信頼関係を作る?というよりコミュニケーションを取る?……ルイズは頭を抱えた。そのとき。 「ブラック・サバス」 「え?」 とりあえず名前は知ることができた。いやブラック・サバスが名前なのか本当は分からないのだが この際細かいことは考えないでおく。とりあえず一歩進んだ。ここから少しずつ進めればいい。努力には慣れてる。 この使い魔は何ができるのか。とりあえず簡単な命令からやってみようと思った。 「洗濯とか分かる?コレ」 ルイズは洗濯物が入ったカゴをブラック・サバスに渡す。 使い魔はそれを受け取ると…………なんの躊躇もなく食べた。 え……ルイズはその行動にしばらく絶句してしまう。なにをやったこの使い魔は!? 「何やってんの!すぐ出しなさい!このバカ犬!」 もう信頼関係なんて言葉は頭から飛んでいた。ブラック・サバスは我関せずといった雰囲気でルイズを見下ろしている。 「どうしたのルイズ?」 鍵がかかってたはずのドアが開き、廊下からキュルケが入ってくる。 と、その瞬間ブラック・サバスの姿が消え去った! 「あ!」 思わずルイズは声をあげる。あわててキュルケの横を抜け廊下に出て左右を見渡す。 わずかにだが廊下の端を影の線が伸びている。 もしあれが影上でしか動けなくてもこの上を伝って行けば相当移動できるだろう。 さらに時間が立って影の範囲が大きくなればほとんど学校中を移動できるのでは? 「ちょっとルイズどうしたのよ」 後ろを見るとキュルケが不思議そうにこちらを見ている。その足元には赤くてでかいトカゲが。おい尻尾燃えてるぞ。 「ああ、この子が私の使い魔のフレイムよ。あのさ~、えーと、あんたの使い魔は……やっぱ」 キュルケが珍しく言葉を濁すように話している。どうも自分がルイズの使い魔を殺したと勘違いしているようだ。 最近珍しいキュルケばっか見るな。なんてルイズは思いながらも 「使い魔に逃げられた」などと言うことも出来ずに、ただ廊下の先を見つめていた。 汚れたエプロンなどを洗濯するために水汲み場へ向かうメイドが一人。シエスタである。 今日もいい天気だ。というかよすぎる。 シエスタは少しでも日の光から離れるため校舎の日影の部分を歩いていた。 しかし水汲み場まで残り数メートルは日影がない。それに水汲み場自体は影になるところが無く、日に照らされている。 それでも太陽の光を反射してキラキラと光る水汲み場を見ると、涼しい気持ちになる。 水汲み場へ歩いていく。回りには誰もいなくて、付いてくるのは自分の影だけ。 「お前にチャンスをやろう」 後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。 そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜか洗濯かご。 見詰め合うこと数分。 「あの……何かようですか?」 根負けしたシエスタは、目の前の怪しさ爆発の存在に声をかけた。 15分後そこには2人並んで洗濯しているシエスタとブラック・サバスの姿が! 「私ここで使用人をやらさせてもらっています。シエスタと申します」 「…………」 「あ、この洗濯道具は自由に使っていただいてけっこうですよ」 「…………」 「そ、その格好暑くないですか?」 「…………」 「ウミネコだ。ありゃーカモメじゃねぇーぜ。ウミネコだ。どうやって見分けるか知ってるか?」 「…………」 (…………空気が重い。エコーズACT3ってレベルじゃねーぞ!) 横からの妙なプレッシャーに思わず泣きそうになる。 黙々と洗濯をする隣の亜人に、なにか他に話題はないかと頭を回転させる。 「あなたはどなたの使い魔なんですか?」 ……やはり返事はない。もう黙ってさっさとしあげてしまおう。そう思ったとき 「ルイズ」 驚いて横を見るが、使い魔は相変わらず手は動したままこっちを見ようとはしない。 「ルイズ……ミス・ヴァリエールの使い魔なんですね?」 シエスタは会話が繋がったことに驚き、思わず声が大きくなる。 すると急に辺りが暗くなる。何事かと上を見ると巨大なドラゴンが空を通過していく。 「すごいですね。あれも使い魔なんでしょうか。わたし龍は初めて見ました」 ひとり興奮しながらも隣のサバスに話し続ける。 しかし、横を見ると使い魔はいなかった。洗濯物とカゴも消えていた。 To Be Continued 。。。。?
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「宇宙の果てのどこかを彷徨う私のシモベよ… 神聖で美しく、そして究極の使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに…答えなさいッ!!」 激しい爆発と共に呼び出されたそれは、その場にいた誰も想像しなかった物だった。 岩、まずはそう見えた。しかしそれには顔があった。 まるで人間が生きたまま石に変えられたようなおぞましいオブジェ、それには生きる物全てを畏怖させるような気配が感じられる。 普段ルイズを嘲笑している者達も今は声一つあげていない。 何故自分は震えているのだ?『ゼロ』が召喚した不気味な岩を見ているだけなのに。 生物的本能による恐怖、という解答に彼らがたどり着くことはついになかった。 一方のルイズもまた不可解な感情に苦しんでいた。自分の呼び出した使い魔、下僕となるべき存在、そのはずなのに。 何故体が震えて動かないのだろう。何故こんなに絶望的な気分になるのだろう。 何故この塊を見ていると、生きたままヘビに飲み込まれるカエルの心境を考えてしまうのだろう。 その答えを考える猶予はルイズには与えられなかった。 誰一人声の出せない状況下、足のすくんだルイズの目の前でそれがゆっくりと動き出したからだ。 太陽すらも克服した究極の生物がハルケギニアの大地に解放された瞬間だった。 ハルケギニア西方に長い歴史を持つ王国があった!歴史ある国家故の伝統としきたりに支配されたこの文化! その名をトリスティン王国! そしてその中に『魔法』の能力で王国を支配する貴族がいた! 『魔法』は彼らに伝わる奇跡!真の支配者の力をもたらす! しかし!ある時その王国は忽然と歴史から姿を消す!無数の吸血鬼を残して! なぜなのか!どこへ行ったのか!謎の全てはあの『使い魔』にあった! この物語は異世界から召喚されたゼロの『使い魔』にまつわる人々の 数奇な運命を追う冒険……にはならなかった!残念ながら! 究極の使い魔 完
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ヴァニラはどこに消えたのか? ルイズが壁の穴の前で思案に暮れている時 彼はまさにその穴を通り抜け外にいたッ 自らのスタンド、クリームの口内に潜り込みこの世界から姿を消す スタンドが小さくなったとはいえその口内に広がる亜空間の容量はヴァニラにすら判らないほど広大ッ 彼が潜り込む等造作もなかった 時折外を確認し、物を削って移動の痕跡を残さぬよう注意し やがて人気のない洗い場にたどり着いた 「どうすればいいのだ・・・・・」 とりあえずルイズの部屋からは抜け出したものの、エジプトに戻る方法も行く当てもないヴァニラはこの世界において完全に孤独ッ そもそもこの弱ったスタンドでは戻ったところで何の役に立つというのか 小さくなったクリームの口内から少々苦労しながら体を出し、腰を下ろそうとするが 「きゃっ!」 突然背後から上がった悲鳴と、それに続く何かの落ちる音に弾かれた様に振り返る 「誰だッ!」 クリームを飛ばそうと身構えるがそこにいたのは洗濯物を満載した籠を持った――正確には持っていた、メイド服の少女ッ どうやら何もないところから出てきたヴァニラに驚いたらしい 「も、もうしわけありません・・・・あの、ミス・ヴァリエールの使い魔になられた方ですよね?」 少女は恐る恐る問いかける 「・・・・・・・・・・そうだ」 しかしヴァニラは目に見えて不機嫌になり、少女は更に恐縮してしまった 「も、もうしわけありませんッ!」 体が折れてしまうんじゃないかと心配になるほどに少女は何度も何度も頭を下げ、その態度に流石のヴァニラも居た堪れなくなる 「もういい、頭を上げろ」 本当に申し訳なさそうに頭を下げる少女に仕方ないといった様子で声をかける 「はい、申し訳ありません・・・・ええと」 ようやく顔を上げた少女は困ったようにヴァニラの顔を見上げる 「ヴァニラ・アイスだ」 「あ、もうしわけありません」 ヴァニラが名前を告げると慌てたように頭を下げ 「ヴァニラ様ですね。私はここで貴族の皆様のお世話をしているシエスタと申します」 と、恭しく名乗り返した シエスタの態度はここへ来て傲慢な貴族しか見ていなかったヴァニラにとってとても好ましく思えた 「それでシエスタ、お前はここで何をしていたんだ?」 「あ、私は洗濯を・・・・」 シエスタはそう答えると今頃思い出したのか、慌てて落としてしまった籠を拾い上げる 「・・・・・・」 ヴァニラは無言で零れ落ちた洗濯物を拾い、籠に入れた 「え、あの、ありがとうございます」 再び少女は恐縮しもう一度恭しく頭を下げるがその弾みで洗濯物が幾つか零れ落ちた ヴァニラがまた拾い上げようと身を屈めると 「見つけたわよヴァニラッ!」 肩で息をしながらルイズと、その後ろから見るからにキザそうな金髪の少年が洗い場に駆け込んできた 「ミス・ヴァリエール、君の使い魔はなかなか手が早いようだね」 「うるさいわねギーシュ、もう見つけたんだから帰ってもいいわよ!」 ギーシュと呼ばれた少年はルイズの言葉にむっとしたようだが、これ以上面倒ごとに関わる気はないのか何もいわず帰っていった 「・・・・・」 しかしヴァニラはギーシュの台詞に些かむっとした様子、何か言おうとしたが 「ちょっとヴァニラ、どういうつもり?使い魔が逃げ出したなんて聞いたこともないわッ!」 わめき散らすルイズに阻まれ、それは叶わなかった 「うるさい、それよりもルイズ」 ヴァニラは面倒くさそうにそれを遮る 「大体・・・・何よ?」 平民如きに呼び捨てにされたのはムカついたが一先ずストップ、自分より遥かに背の高い使い魔の顔を見上げる 「お前如きに仕えるのは本意ではないが、使い魔とやらになってやろう」 スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃ッ! ヴァニラが自分から使い魔になると言い出したッ!! (ここで癇癪を起こしたところでDIO様の元へ帰れるわけじゃない。ならばあの小娘の元で帰る方法を模索した方がましというものだ) 今一度冷静になり、己の身の振りを考えた結果だった 「は・・・・?あ、当たり前でしょ!アンタは私の使い魔でもう契約の・・・そのしたんだから!!」 契約に伴った行為を思い出し赤面するルイズ、そもそもヴァニラの知らないことだが サモンサーヴァントの儀式には使い魔に口付けをしなければならない 幸いにも『お前如き』といわれたのは耳に入らなかったようだ (DIO様、いつの日か必ずお傍へ参ります。どうかその時までご健在であられて下さい) こうして、ヴァニラの使い魔としての生活が始まった To Be Continued...
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ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、塔の間にある。要は中庭だ。 建物の影になって日が差さず、普段人はいない。 あの平民はぶちのめしたいが、あまり大事にはしたくない……というギーシュの微妙な配慮(彼も一応貴族だ)がここを選んだのである。 だが、それは全く無駄に終わったと考えていいだろう。 広場は噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっている。 「決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げた。歓声が巻き起こる。 「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの平民だ!」 うおおおー! また歓声。 平民と貴族って、階級だと思ってたが、どうやら種族みてーだなあ。 すると目の前のモヤシ男は人間じゃねーのか? セッコは思った。 魔法=血統なのである意味間違ってはいない。 殺しちゃあダメとかルイズが言ってたな。 ということは「貴」族も死ぬって事だ。 なんとなくだが負ける気はしない。 決闘を前にしても特に何も感じなかった。不思議だ。 「では始めるか、僕はメイジだから魔法で戦うぞ。文句はあるまいね?」 ギーシュが薔薇の造花を振る。 花びらが舞って、女の銅像が現れた。動くのか? 「さっさとかかって来い、モヤシ男。」 まだ銅像の性能がわからねえ。こっちから行くのは危険だ。 「僕は[土]属性、青銅のギーシュだ!ちゃんと名前で呼べ平民!」 「青銅とギーシュ、どっちが本当の名前だぁ?」 「うるさい黙れ!行けワルキューレ!」 銅像が走ってやってくる。運動能力はそう高くねえらしい。 あまりヤバそうじゃねえし、まずはこれと戦ってみるか。 目の前まで来た銅像が殴りかかってきた。 腕を掴み地面に叩きつけるように投げる。意外と重い。 ん、突然軽く? ギーシュが何か叫んでいる。 「……この銅像欠陥品かぁ?」 「こ、こんな馬鹿な!」 ワルキューレの腕が、根元からもげた。 思ったとおりね、結構強いじゃない。 ルイズは自分の使い魔が無能ではないとわかって、少し嬉しくなった。 ――トリステイア魔法学院、学院長室―― ミスタ・コルベールは、泡を飛ばして、学院長老オスマンに説明していた。 ルイズが使い魔召喚で平民の男を呼び出したこと。その契約のルーン文字が気になったこと。 それを調べていたら…… 「始祖ブリミルの使い魔、[ガンダールヴ]に行き着いたというわけじゃね?」 「そうです!あのルーンは、伝説の使い魔[ガンダールヴ]のものと全く同じであります!」 「わかった、しかし慌てるんじゃあない。同じルーンを使う違う魔法だってあるじゃろうが。」 オスマン氏はあくまで冷静である。 「それもそうですな」 ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 扉の向こうから、秘書ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「私です、オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいて、大騒ぎになっています。」 「まったく、暇をもてあました貴族ほど性質の悪い生き物はおらんわい、で、馬鹿は誰だね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あの、グラモンとこの馬鹿息子か。おおかた女の子の取り合いじゃろ、相手は誰じゃ?」 「生徒のメイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔です。」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師たちは、決闘を止めるために[眠りの鐘]の使用許可を求めております」 オスマン氏の目が、鷹のように鋭く光る。 「アホか。たかが子供のけんかを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく。 コルベールは唾を飲み込んで、オスマン氏を促した。 「オールド・オスマン」 「うむ」 オスマン氏が杖を振ると、壁にかかった大鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。 ギーシュは焦っていた。一体目のワルキューレはセッコに腕と頭をもぎ取られて機能停止している。 あいつは間違いなく戦闘経験豊富だ。けれど、メイジたる自分が平民相手に全力を出して問題になったりしないか? グラモン家の恥になったらどうしよう? 「くらえっ!」 足を狙って石礫を放つ。が、普通にかわされてしまう。 「[土]魔法ってのは全部こんな鈍いのか。」 もう仕方がない。負けるよりは全力で叩き潰す方がはるかにマシだ。 ありったけの精神力を込めて薔薇の杖を振る。 「ワルキューレぇっっ!!!」 魔法って大した事ねえなあ、それとも「土」だから? 確か赤土とかいう先生は土は日用品 つってたっけ? だが、こいつが単に弱い可能性も捨てきれねえ。知らないものは警戒するに限る。 さて、ギーシュをぶん殴ってオレに土下座させるかぁ。 「うおあ、なんだ?」 気づくと、さっきの銅像が7匹も現れている。 しかも武器を持ってやがる。こいつはやべえ。 どうせ鈍いんだろうが、もし当たったら死にそうだ、逃げるか? それもムカつくなあー。 ……なんか武器があればいいんじゃねえか? なぜ、その発想が生まれたのかは判らない。 何故ならセッコは武器を使ったことが一度もないからだ。 そうだ、この広場には石が敷かれている。この石で殴ったらどうだろう? 石は多分銅より硬いんじゃねえか? 少し出っ張った石に触れると左手の模様が光りだした。 この手触り、昔から知っている気がする。 思い切り石を掴む。模様が更に輝き、力が溢れてくる気がする。 ふと横を見ると、さっき壊した銅像が転がっていた。 何でオレは目の前にある銅像ではなく、わざわざ埋まっている石を選んだんだ? 今は闘いの最中だ、そんなことを考える暇はねえ。 左手の輝きに身を任せてみることにする。 「ねえ、タバサ、あの使い魔って人間だと思う?」 キュルケは隣の青髪の少女に声をかけた。 彼女には珍しく、本から目を離して戦いを見ている。 「わからない」 「タバサでもわからないか。」 「あんな能力の亜人は聞いた事も読んだ事もない」 「じゃあやっぱり人間なのかしらね?」 「わからない」 「そう。」 「ちょ、おま、おまえ一体?メイジなのか?」 どう見ても目の前の男は杖など持ってない。 しかし これは……そんな馬鹿な…… ルイズの使い魔が、足元に埋まっていた石を。 いや、岩だ! そいつは、直径1メイル以上はあろうかという岩を。 片手で地面から引きずり出した! しかも、僕の目が正しければ、岩の表面が溶けた様に何か滴っている。 「うわ うわああああああ!ワルキューレ!あいつを、あいつをぶっ殺せ!」 「不思議なんだよぉ、左手から力が湧いてくる、オメーを潰せってなあ!」 僕の 僕のワルキューレが、あいつの持った岩に端から潰されていく…… しかも、まるで素手で殴るように動きが速い。 これは平民ではない、何か別のモノだ、認めたくない。 「潰れて死ね」 僕に向かって 岩が 飛んで しぬ 「ギーシュさま!!!」 突然横から飛んで来た水流が僕を弾き飛ばした。一体誰が僕を助けたんだ? 岩は背後の塔にめり込んで砕けた。 「モ、モンモランシー?」 「ギーシュ、やめて!もう怒ってないから、もうちょっとで死ぬところだったのよ!!」 「僕は……」 「それはもういいから、あの使い魔に謝って!あれはギーシュが悪いわ!」 あいつが近づいてくる。やっぱり僕を…… 「……」 「その……セッコ・・だったかな?」 「オレの勝ちでいいか?」 「あ、ああ、僕が……悪かった……」 「わかった。」 「僕を許してくれるか?」 「オメーを殺したらルイズが怒る。」 さっきの岩は僕を殺す気じゃなかったのか? と言いたくなったが、また怒らせそうだし止しとこう。それに実際もう怒っているようには見えない。 「一つだけ言わせてくれないか?」 「何だ。」 「僕は青銅のギーシュだ。オメー じゃない。」 「わかった。オレはセッコだ。」 「確かにさっきの僕は貴族らしくなかった。すまない、セッコ。」 「わかった。」 「僕は貴族ギー……」 「わかったつってるだろおおおお!もう怒ってねえから黙れえ!」 悔しいがこいつにはもう逆らえないな……平民の癖に。 でも、モンモランシーの怒りが静まったのもこいつのおかげかもしれない。 そう考えるとまだ良かったかな。 コトッ 「ギーシュさま、この指輪はなに?」 「それはケティに・・・ハッ!」 「ギーシュさま……」 訂正しなくてはならない。今日はやっぱり厄日だ。 「ふむ……」 オスマン氏とコルベールは、「遠見の鏡」で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。コルベールは震えながらオスマン氏の名前を呼んだ。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが……」 「うむ」 「ギーシュは一番レベルの低いドットメイジですが、それでもただの平民に遅れをとるとは思えません。 そしてあの動き!あんな平民見たことがない! やはり彼は[ガンダールヴ]!さっそく王室に報告しなければ!」 「なあ、コルベール君」 「なんでしょう、オールド・オスマン?」 「伝説のガンダールヴは、どんな特性の使い魔だったのかね?」 「主人の長い詠唱時間を守るため、時間稼ぎに特化した使い魔と聞きますが」 「うむ」 「あらゆる武器を達人のように使いこなしたそうです。」 「なあ、コルベール君。あの平民は武器を使っていたかね?」 「そういえば……」 「うむ」 「岩も武器といえばそう言えなくもないかもしれませんが」 「むしろ先住魔法の類かものう。」 「しかし、召喚時はディテクト・マジックに反応がありませんでした」 「まあ、しばらく様子を見てみるかの。無論クサレ王室には内密でな」 「そうですねえ……」 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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愚者(ゼロ)の使い魔-1 愚者(ゼロ)の使い魔-2 愚者(ゼロ)の使い魔-3 愚者(ゼロ)の使い魔-4 愚者(ゼロ)の使い魔-5 愚者(ゼロ)の使い魔-6 愚者(ゼロ)の使い魔-7 愚者(ゼロ)の使い魔-8 愚者(ゼロ)の使い魔-9 愚者(ゼロ)の使い魔-10 愚者(ゼロ)の使い魔-11 愚者(ゼロ)の使い魔-12 愚者(ゼロ)の使い魔-13 愚者(ゼロ)の使い魔-14 愚者(ゼロ)の使い魔外伝 愚者(ゼロ)の使い魔-15 愚者(ゼロ)の使い魔-16 愚者(ゼロ)の使い魔-17 愚者(ゼロ)の使い魔-18 愚者(ゼロ)の使い魔-19 愚者(ゼロ)の使い魔-20
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ドドドドドドドドドドドドド………… ルイズが後ろを振り向くと奇妙な声の主は、クレーターが作るわずかにできた影の部分に立っていた。 少し離れた距離。ちょうどルイズの影の頭の部分が使い魔の足元に伸びている。 黒い帽子に、黒いマント、顔に奇妙な仮面を付けているためか妙な威圧感を放っている。 少しルイズの方が背が低いため見下ろされてしまっている。視線をルイズに合わせたままピクリとも動かない。 ルイズはルイズでヘビに睨まれたカエルのように動けずにいた。 (なにこいつ!?なんで後ろにいるの!?こっちみんな!) 混乱する頭を落ち着かせようと必死の努力。使い魔のルーンが出た奇妙な箱から火が出たと思ったらこいつが出てきた。 つまりどういうこと?…………もしかしてコレが私の使い魔? (素数よ!素数を数えて落ち着くのよ!1……2……3、5……これが使い魔というなら……やることはたったひとつ!『逃げる』!) ルイズは混乱している。 「おまえ…『再点火』したな!」 再びさっきと同じセリフをルイズに向かって言う。口の動き方から仮面ではなく本当の顔のようだ。 ルイズは、ハっとしたように聞き返す。 「『再点火』?なによそれ?えーと、ていうか、そうだあんた名前は?」 質問を質問で返してしまったが、相手の言ってることが分からないから仕方ない。 それにお互いの名前を知ることは、信頼関係を築くうえでまず最初にすべきことであろう。 使い魔は身体を傾けると下を向いた。視線の先にはルイズの影法師。 「チャンスをやろう……向かうべき『二つの道』を!」 質問を質問で返されたら無視ですか。そうですか。 再点火……チャンス……二つの道……何を言っているんだコイツ頭脳がマヌケか? こっちの混乱を無視するように使い魔は勝手にしゃべり続ける。 「チャンスには…『お前が向かうべき二つの道』がある」 「『お前』って、一応あんたと私は主人と使い魔の関係なんだから、その呼び方は許さないわよ」 ルイズが話をさえぎって釘を指すが 「ひとつは生きて『選ばれる者』への道」 はい、シカト。ていうかなによ、選ばれる者って。主人を選ぶ権利はこっちにあるぞってこと? そうルイズが言おうとしたとき、使い魔はルイズの影に向かって両腕を伸ばした。 するといつの間にかルイズは使い魔の目の前に移動し、そして両肩を掴まれている! 「きゃあ!」 「もうひとつは!さもなくば『死への道』……!」 「なに言ってんのよ!離しなさい!」 動いて必死に抵抗しようとするが……全く動くことができない。 痛みはないがルイズを掴む使い魔の腕からとんでもない力を感じる。 ルイズが使い魔を睨みつけると、ちょうど使い魔はその大きな口を開けた。 口の中は何もなかった。歯も舌も無い。ただの暗闇、暗黒空間、ガオン。 食べられる!ルイズがとっさに思ったのはそれだった。思わず目をつぶり、固まってしまう。 しかし、次に何も起きなかった。ルイズに合わせる様に使い魔もピクリとも動かなくなる。 恐る恐る目を開けてみると、口を開けたままの使い魔がそこにいた。 ルイズには不思議と使い魔が戸惑っているように感じた。 「『矢』が出てこない」 確かに使い魔がそう呟いた。 「矢?」 オウム返しのようにルイズが聞き返すがやはり返事は無かった。そのかわり後ろから聞こえてくるよく知った声の呪文。 キュルケの放った火の球がルイズの使い魔をぶっ飛ばす。 「何ボーっとしてんのよ」 キュルケが叫ぶ。その声に想像以上の安心感を持ったルイズだったが 「危ないじゃない!私にも当たったらどうすんのよ!」 この女に素直にお礼は言えない。というか今のは本当に危なかったろ。 「何言ってんの。これだけ離れてたら当てないわよ。あんたじゃないんだから」 簡単な挑発になりそうになるが、堪えて前を見てみるとキュルケの言うとおりだった。 ルイズは使い魔の立っていた場所から、ちょうど影ひとつ分離れていたのだ。 (さっきは確かに使い魔と目と鼻の先に立ってたはずなのに!) 疑問符を上げるルイズにキュルケが少し緊張感を持った声で説明する。 「あの使い魔がアンタの影を触ったと思ったら、アンタ急に動かなくなって叫び始めたのよ」 影……ルイズは改めて思い出す。そういえばあの使い魔が私の肩を掴む前に影を触ってたような…… もうこうなったら信頼関係もなにもない。とりあえずとっちめて何をしたか聞きだそう。 とっちめて………… 「まさか死んだってことはないわよね」 ルイズが思わずキュルケに尋ねる。 「まさか、足元を吹っ飛ばしただけよ。砂埃が消えたらすぐに見えるわ。感謝しなさいよ~ミ・ス・ヴァリエール?」 クッと思わず声を漏らしてしまう。くそう。せめてあの使い魔に言うこと聞かせてやる。 決意を胸に秘め、サモン・サーヴァントの時のように杖を強く握る。 (ねーちゃん!あしたっていまさ!) 2人の姉の横顔が空に浮かんで見えた気がする。 だが結局その決意は無駄に終わる。 砂埃が消えた時残っていたのは、新たに作られたクレーターだけだった。 To Be Continued 。。。。?
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半壊になった教室をルイズは一人で掃除していた。 姿をくらました使い魔をどう叱ろうか授業中ぼんやり考えていたら 教師に目を付けられ、錬金の魔法を前に出て実践することになったのだ。 結果を一言で表すなら、惨劇が起きた。自分で言うのもなんだが日々破壊力に磨きがかかっている気がする。 実はキュルケが掃除を手伝おうかと言ってきたのだが断っておいた。 どうせ裏があるに違いないと思ったからなのだが よく考えたらキュルケは、ルイズに使い魔がいないのは自分のせいだといまだに思っているようなのだ。 そう考えると無下に断ったのは逆に悪かったかもしれない。実際はルイズの使い魔はピンピンしているのだから。 まぁもう少し黙っとこう。そのほうがおもしろい。 そう、それよりも問題はブラック・サバスのほうだ。 もし他の生徒が同じ事を言いつけられたら、使い魔にでも手伝ってもらうのだろうが ブラック・サバスは朝ルイズの下着入りの洗濯カゴを持って(というか食べて)どこかへ消えてしまった。 まさか本当に洗濯に行ったとは思えない。もし本当に洗濯してたらはしばみ草でもアバ茶でも食べてやる。 (帰ってきたらエサ抜きね!) そんなことを考えながら机の破片を拾い集める。 いや、でもあれ何食べるんだろう。まさか下着を口の中に入れたのは本当に食べるために… (もしそんなことしてみなさいよ…エサ一週間抜きにしてやるんだから!) いや、でもあれ何食べるんだろう。 ルイズはポケットから『箱』を取り出す。 壁の一部が無くなり、日の光がいつもよりずっと多く入る教室には影になる部分も多い。 それを確認すると『再点火』してみる。 だが使い魔は現れなかった。 呼ぶためには他の条件がいるのか、はたまたもう呼ぶことさえできない遥か遠くに行ってしまったのか。 ルイズは嘆息で火を消すと、どこで何をやっているのか分からない使い魔のことは一旦諦め、掃除を再開した。 学院の中庭にあるベンチにキュルケは一人で座っていた。 雲ひとつ無い空を眺め、ひとつ嘆息。 それは自分の美貌の為にはよくないことだし、自分のキャラじゃないとは思っているのだが、つい出てしまう。 自分の格好のおもちゃであるゼロのルイズ。それに大きな貸しを作ってしまった。 ツェルプストー家とヴァリエール家の伝統とも言える因縁も含めて、キュルケはルイズをある意味特別視していた。 ルイズとは会えば口げんかするし、しょっちゅうからかってはおちょくる犬猿の仲。 だけど本当に馬鹿にしたことは決してなかった。 特にルイズの日頃の努力を最も知っている自分にそんなことはできない。 だからサモン・サーヴァントへ向けて気合を高めるルイズを心の中では応援してたし 最初ルイズが箱を召喚した時は、またおちょくるネタができたとニヤニヤしつつも とりあえず成功させたことにほっとしていた。 ルイズだってうれしかったはずだ。何度も何度も失敗してとうとう現れた使い魔。 だがそれがあっさり死んでしまった。いや、殺されてしまったのだ…。 気配を感じて視線を空から前方に移す。 ああダメだ。あまりにも悩みすぎて幻覚を見ているようだ。 昨日自分が殺したルイズの使い魔が、キュルケの使い魔のフレイムの尻尾を握ってこっちを見ていたのだ。 (幽……霊?こういうのはあの子のポジションでしょ) 一瞬、無表情な青い髪の親友の姿を思い浮かべる。 そこでキュルケの意識は途絶える。 学院の中にある図書館でタバサは一人本の世界に入り込んでいる……はずだった。 タバサは嘆息する。本当に小さく、本で隠すように。 ここは図書館で自分以外誰もいない。司書の先生すら用事で抜けているようだ。 いつもこの時間帯はこんなものだ。 なのにさっきからずっとこっちに向かって声をかけてくる存在がいる。 基本的にタバサは読書に没頭しはじめると、周りのことなど眼中になくなる。 だが、さすがに同じ事を30分間近く話しかけられ続けると、いいかげんうっとおしくなる。そこで。 「チャンスをや…………」 タバサは本から目をそらさず、手だけ動かし前にいる存在にサイレンスの魔法をかけ音を消した。 一時間後、本を読み終えたときにはすでに声の主も消えていた。 シエスタには嘆息をするような余裕はなかった。今は夕食の準備の真っ最中。 厨房は戦場と化していた。自分の仕事をテキパキとこなしていかないと間に合わなくなる。 (あ、お皿用意しなくちゃ) 頭をクルクルと回転させ、やるべきことを次々とこなしていく。 これは普段のシエスタの仕事ではないのだが、今日は他の使用人に病欠が多いため回ってきたのだ。 なんでも真昼間から幽霊と遭遇して、気分を悪くし寝込んでいるらしい。 マルトーさんは何を馬鹿げたことをと笑っていたが。 (幽霊……そういえば結局朝の使い魔はなんだったんだろう) 作業する手を休めず、朝の出来事を回想する。 唐突に現れた使い魔は、唐突に消えた。なぜかシエスタの洗濯物といっしょに。 使い魔も主人の……確かミス・ヴァリエール……の洗濯に来ていたようだったから 間違えていっしょに持って帰ってしまったのかもしれないが…… できれば返してもらいたかったのだが、あまりあの使い魔にもその主人にも関わりたくないというのが本音だった。 あの使い魔の不気味さは言わずもがなだし、その主人であるミス・ヴァリエールの噂も知っていたからだ。 つまり『ゼロ』のルイズは魔法が使えないくせに、やたらプライドは高いと。 「お前にチャンスをやろう」 後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。 そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜかエプロン。 今度は見詰め合うこと数十秒。 「あ、あの…お返しに来てくださったんですか?」 使い魔はシエスタの問いに、エプロンを持つ手を差し出すことで答えた。 「あ、えと、わざわざありがとうございます」 「…………」 「ちゃんと乾いてる。干してくださったんですね」 「…………」 「あ、あの。本当にわざわざお越しいただいたのにスイマセン。今から夕食の準備に取り掛からないといけないんです。本当にありがとうございました」 やっぱKOEEEEEEEEEEEEE。思わず下唇を歯でかみそうになりながら、逃げるようにシエスタは食器棚に向かった。 皿を何枚も重ねて、お盆に乗せる。 一枚、一枚は大した事なくても、生徒の数だけそろえると相当の重さとなった。 両手に力を入れ、よいしょっと持ち上げる。なんとか持てそうだ。 しかしそこで使い魔が道を塞ぐように立っていることに気づく。 「あ、あの……」 不安になりながら尋ねる。すると使い魔は無言でシエスタに両手を差し出したのだ。 (これは手伝ってくれるって事?) 使い魔の差し出された両手の位置からは「お盆を持ちますよ」という意味にしか取れない。 「あの大丈夫です。これは私の仕事ですから」 やんわり断るが使い魔は全く反応しない。きっとお盆を渡すまでその場からテコでも動かないだろう。そんな『凄み』を感じる。 「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます。向こうの机まで運んで下さいませんか」 そう言うと使い魔はお盆を掴もうとさらに手を伸ばしてきた。 二人の手が触れ合う。予想と違って普通の人間と同じような温かさをその奇妙な手から感じる。 「じゃあ、あの、手を離しますよ?ちゃんと持ってくださいね?」 シエスタは何度か使い魔に確認し、手を離した。 そして使い魔の手に渡ったお盆は、そのまま下へ落下していく。 「どらあ!」 それに即座に反応したシエスタは気合の叫びとともにお盆を空中でキャッチする! 「つつつつつつ使い魔さん!ちゃんと持って下さいっていったじゃないですか!」 半腰に皿の乗ったお盆を両手で抱えるという、かなり無理のある体制のため 足をプルプル震わせながら、上目遣いで使い魔に非難の声を上げる。 「つかんだ!」 使い魔はそれだけ言うと、再びお盆に手を掛けて持ち上げようとするが…全く持ち上がらなかった。 思わず貧弱、貧弱ゥ!と叫びたくなる。どうやらこの使い魔はシエスタより力が弱いらしい。 (やれやれだわ…………) シエスタは思わず心の中で嘆息した。 To Be Continued 。。。。?
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「俺の名はペイジ」 ドォッシュウウウ 「ジョーンズ」 ボシュウッ 「プラント」 ジュウウウウウウウ 「ボーンナム 血管s」 デロリン 「ルン!ルン!ルン!」 ゴシャァアッ 「ズラ!」 ボシ─── 「え!?…オレ? 外に居たのは……おれだったァ── 棺桶の中に居たはずなのにィ~~~~」 ゾバゾバッ 爆音が響き、土煙を巻き上げて何かを呼び出す閃光。 そして、土煙が晴れる度に日光を浴びる度に呼び出した使い魔が溶けて消えていく。 それが今日の『ゼロのルイズ』の『サモン・サーヴァント』の晴舞台であった。 「おいおい、一体何回死なせるんだよ!」 「ゼロじゃなくて死神のルイズか!?」 「十回超えてるじゃねぇェかよぉぉお! なあ、帰っていいだろぉぉおお? なぁぁああ、こく……コルベールの先生よぉぉおお!」 爆発と召還と消滅の一連の動作を遠巻きに見ている外野もいい加減飽きてきたらしい。 最初は囃し立てるような大きな声で野次を飛ばしていたが、 今はもうささやきのようになっている。 「……ミス・ヴァリエール」 生徒に比べて比較的近く、しかし爆発に巻き込まれない絶妙な位置に立っていたハゲが ルイズと呼ばれた少女に話しかける。 「予定時間を考えると今日は次で最後です。 それで駄目だったら、翌日にしましょう。まだ猶予はありますからね」 声を掛けられた少女は、その言葉に一際表情を引き締めた。 ここで失敗したら明日は余計にバカにされると分かっているからだ。 人一倍プライドの高い彼女にとってそれだけは許してはならない事なのだ。 「どーせ駄目なんだからやるだけ無駄だって。 なんせ『ゼロのルイズ』なんだからなァアア!」 最後、という言葉に勢いを取り戻した野次を無視し、 ルイズは呪文を口にし、意識を集中させていく。 「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ…… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに……答えなさいッ!!」 ドッグォオオオン! 何度目か分からない呪文の後、 一際強い爆発と共に派手に土煙が上がった。 ───────ゼロのメイジとアホの使い魔 「んだァ?こりゃあ?」 冬の寒さがいよいよ到来してきた頃、 仗助や康一と『トラザルディー』で昼飯を食っての帰路、 心身共に健康になった億泰は『ソレ』に眉を顰めて無い脳みそを回転させていた。 『ソレ』は家の扉の真ん前に出ていた『鏡』だった。 高さ2メートル、幅1メートルはありそうな楕円形で、しかも宙に浮いている。 スタンド使いならすぐさま警戒しそうな所だが、 吉良吉影が倒されて以来スタンド使いによる目立った事件が無かったために 億泰はすっかりと油断していた。 一般人でもやりそうな何かを投げつけるような行動もせず、いきなり鏡に触れた! 通らないと家に入れなかったため、さっさと潜り抜けようと思ったのだ。 バリィ! 「うっ、うおおおおおおおお~~~~~~~ッ!?」 かつて『レッド・ホット・チリ・ペッパー』に地下ケーブルへと 引きずり込まれた時のようなショックを受け、 そのまま倒れこむようにして鏡へ飛び込んでしまった! そして絶え間なく続く衝撃に意識を手放してしまう。 油断とはいえこの男、オツムが足りないのだろうか。 「っつ~~~~~~~~」 「あんた誰?」 誰かに呼びかけられた気がして、頭を抱えながら億泰は目覚めた。 まず、地方とはいえ五万三千の人口を抱える杜王町では 見る事のできないような澄んだ空が目に入った。 次に、ピンクが強く出たブロンドの髪をした少女が覗き込んでいる事に気がつく。 よく見ると黒いマントに杖を持っていて、 まるで昔兄貴に読んでもらった絵本に出てきた魔法使いのような格好だ。 遠くにはお城まで聳え立っている。 (おいおい~~~!俺は家の前に居た筈だよなァ~~~! なんだこの状況はよォ。外人さんに囲まれてんじゃねえかぁあ~~!) 「貴族を無視していいと思ってるの! 私が誰かと尋ねてるの!さっさと答えなさい!」 珍しく思考に没頭する事となった億泰だったが、 その女の様子にプッツン由花子を連想してしまい、 ふくらんだ風船が萎んだような気分になった。 答えないのも面倒くさそーな気がして、投げやりに答える。 「俺は虹村億泰…だ」 起き上がりながら周囲を見渡すと、 ルイズと同じような格好をした少年少女と、ハゲ。 そしてその周りには……何体ものモンスターが! 「ニジムラオクヤス?変な名前ね。 一体どこの平民n」 「ってなんだってェーーーーっ!! 『ザ・ハンド』!」 ズギュン! 他の使い魔達を見て思わずスタンドを発現する。 「プッ!」 「アハハハハハ!流石『ゼロのルイズ』だ!」 「フッフッフッフハハハフフフフヘハハハハフホホアハハ」 「ウケッウケッウケコッウコケウコケ ウヒャホコケコケコケケケケケケケケコケコ」 「『サモン・サーヴァント』で平民を! それも頭の飛び切り悪そうなのを召喚したぞ!」 「いや、頭がおかしいんじゃないか!? いきなり叫んでるぞアイツ!」 その様子を見て周囲の生徒で笑いが巻き起こった。 確かに頭悪いのは事実だけどよォー、 としょんぼりしながらスタンドを解除する億泰。 どうやらこの中にはスタンド使いも敵もいないらしい。 その裏でルイズは億泰のスタンド発現に続き、 他の生徒の爆笑のせいで完全にセリフがぶった切られてプッツンしていた。 「ミ、ミミミミミスタ・コルベール! 再召喚させてくだs」 「NO!NO!NO!NO!NO! 君はこの儀式を愚弄するのかね!ミス・ヴァリエール! それも!今日の最後の猶予で! 平民とはいえ成功したならやり直しは有り得ないィイイ!」 だが、更にセリフを潰されながら拒否されてしまった。 「でも平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」 「例外は認めないィィイイ! だから彼を君の使い魔にするんだ。早く続けなさい」 さらりと言われ、ルイズは諦めたように返事をした。 「………分かりました」 立ち尽くしている億泰へと改めて目を移す。 180サント近い背に、間の抜けた顔つき。 どうやったって好意的には見れないが、諦めたようにルイズは歩み寄りながら呪文を唱える。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 杖を億泰の頭に乗せ、力ずくでしゃがませて額に移す。 「イテ!イテェ!なにしやが…」 (さよなら、私のファーストキス) ズキュウウウウウウウウン! 喚く億泰を無視して!心で涙を流しながらも強引にルイズはキスをした! ただし、一瞬だけ。触れるなり思いっきり突き飛ばすように離れてだが! 「終わりました……」 「………」 ブワァァ! と、急激に億泰が涙を流しだした。 「お、俺が…女の子から…チューされた…?」 スタンドも月までぶっ飛ぶ衝撃を身をもって味わい、 そんな事で幸せを噛み締めている億泰だったが… 「くぁ!?」 その余韻は左手に突如襲い掛かった熱にかき消された。 焼けた鉄板に押し付けるような熱さに思わず億泰は草原の上を転げまわる。 「あづ、あち、アチィイイ!」 「五月蝿いわね……使い魔のルーンが刻まれてるだけよ」 そう言いつつも、ルイズの心はやっと安堵できていた。 『サモン・サーヴァント』も『コントラクト・サーヴァント』も成功した。 だが、その一方で平民という事実がルイズに重くのしかかっている。 この男が今日召喚された使い魔の中で『最も恐ろしい』という事も知らずに……
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「ハハハハハッ!いつまでもつのかな?」 左右から人形が迫る 「くっ」 エピタフで予知していたので一体を右腕で殴り破壊。二体目の攻撃を回避 「エピタフ!」 次の予知、その予知は 「後ろ三体!」 右腕のチョップで一気に三体倒す。だがこのままだと 「・・・消耗戦になってしまう・・エピタフ!」 事実、本体であるギーシュに詰め寄れない。詰め寄ろうとしても何体もの人形が邪魔をするのだ 「右二体前一体・・ここ!」 左後ろに下がり瞬時に 「エピタフ!」 未来予知を使う。その結果 「・・・囲まれた?!」 「こうも簡単にその敷地に来るとはね。今まで君を相手にしていたワルキューレたちは陽動さ」 「まずい・・・!」 周囲の土から現れた人形、数にして八体 ドッピオは右腕を使い回転して周囲の八体を薙ぎ払う様に倒す 「エピタフ!」 次の予知を行うが 「・・くっ」 さっき倒さずにいた三体の人形の攻撃、前、右、左 ドッピオは右腕を地面に打ち後方に下がろうとするも ドガッ! 「ぐっ・・・?!」 後ろの何か・・・いや、青銅の鎧人形にぶつかってしまった 「言っただろう?今まで君を相手にしていたワルキューレたちは陽動と その三体は今までのワルキューレじゃないかな?」 「しまっ・・」 ドゴォッ! しまったと言い切る前に殴り飛ばされる それは計算されたのかギーシュ手前の二、三メートルまで飛ばされた 「・・・ゲホッ」 「ここでさっきの愚行を改める・・・土下座して謝るって言うならもう終わらせてもいいけど」 「・・・れが」 「・・・よく聞こえなかったなーもう一度言ってくれないかな?」 「・・だれが貴方なんかに謝りますか・・・!」 ドッピオは少しギーシュに対して不満を持っていました。二股もさることながらルイズを小ばかにした態度が気に入らなかったのです 「ふーん、じゃあその考えを改めるまで・・・」 ドッピオに杖を突きつけギーシュは 「僕のワルキューレたちのサンドバックになるがいいさ!」 ドッピオは瞬時にエピタフを使い対応しようとしますが 「やめて!!」 その声にさえぎられたのです 午前の授業を終えたルイズは一度部屋に戻りました ドッピオに昼ごはんを与えるためドッピオを探していたのです ですが 「部屋にもいないなんて・・掃除は綺麗にやってるみたいね まったく主人をほったらかして何をやってるのかしら。あの使い魔は」 少々ルイズは怒っていました。自分の使い魔が自分にまったく干渉しようとしないのですから 「本当にどこに行ったのかしら」 「お困りのようね。ゼロのルイズ」 と、急に自分のあだ名で呼ばれたルイズ。ルイズ自身は分かっている。この声の主が 「何の用かしら?ミス・ツェルプストー」 「いえ、貴女が一度使い魔に脱走されたなんて聞いたので 今回もまたそういうことになってるんじゃないかと思って」 「余計なお世話よ。大体実際に脱走はしていないし今回だって違うわ」 「そうかしら?あんないかにも体力より頭脳って感じの・・ドッピオだっけ? そんなのに掃除洗濯任せてたらいやになるのも当然よ」 「う・・・」 その事に関してはルイズも同意見でした。まだ上手くやっていますがいつ放り出してしまうか 少しルイズも不安でした 「だ、だからってここ以外に住めるところなんてこの辺には無いし 野生のクリフォンやドラゴンが出てくるのよ?無用心に出て行くなんて」 「それを貴女の使い魔は知っているのかしら?もしかしたら」 ルイズは少し冷静になり考えたら恐ろしいことが浮かびました 「・・・ドッピオが死んじゃうかもしれない?」 「そうなるかもしれないわね」 「だったら急いで探さないと!」 ルイズは自分の家名に泥がとか使い魔が脱走した上に見殺しで自分の評価が下がるとか言うのは考えませんでした 二日とは言えど自分の世話をしてくれた彼が見殺しになるのがなぜか嫌でした 「そう、じゃ頑張ってね」 「ちょっとアンタも手伝いなさいよ」 「嫌よ、何で人の使い魔の問題を抱えないといけないのよ」 「こうして話をしてロスした分の時間そのくらい手伝ってもらわないといけないわ」 「・・・ハア、仕方ないわね」 こうしてドッピオを探すために廊下を走り回るルイズとキュルケですが一人の生徒と会いました 「ゼロのルイズとミス・ツェルプストーではないですか。どうかしたんですか?」 少々ルイズはムッとしましたが今は気にしてられません 「丁度いいわ。コイツの使い魔がどこにいるか知らない?」 「ゼロのルイズのですか?そういえば今すごいことになってますよ 何でもギーシュと決闘をするだとか」 「何ですって?!」 「・・それはどこでやっているのかしら」 「確か中庭だったと思いますよ」 「急ぐわよ!ルイズ!」 「ええ!」 予想していたことより厄介なことになりました たとえドッピオが勝ったとしても貴族を侮辱した罪などで起訴されれば死刑になってしまう それにドッピオのような平民が貴族・・魔法を使えるものに敵うわけが無い そう思って中庭に来たルイズとキュルケでしたが 「嘘・・・」 「・・すごい」 予想していたようにはなっていませんでした ドッピオはギーシュ相手に戦えていました ギーシュのワルキューレがどこから来るのか分かっているかのように攻撃を回避し 自分たちに視えないなにかでワルキューレたちを倒していきます 「嘘・・・貴女の使い魔って平民よね」 「ええ・・魔法は使っていないはずよ。杖持ってないし」 魔法使いには必須の杖を持たずに不可視の何かでワルキューレを倒していくドッピオ 「・・・でも、もう終わりのようね」 「え?」 「ギーシュのほう、よく見なさい」 「・・まさか」 ギーシュは笑っていた 自分の魔法が平民であるはずのドッピオに敗れているはずなのに笑っていた 「ギーシュの奴、何か罠を張ってるわよ」 「あ?!」 突如ドッピオに現れる八体のワルキューレ、だがドッピオはそれを薙ぎ倒す 「積みね」 そこからさらに前進して来たワルキューレから離脱しようとして後ろのワルキューレにぶつかってしまった ドゴォッ! 「あ?!」 鈍い音が響きました。それを周りの人は笑いながらや見ていられないように見ています 「・・・ギーシュ、加減をしてないわね。骨までイったんじゃないかしら」 「そんな・・・!」 「ここでさっきの愚行を改める・・・土下座して謝るって言うならもう終わらせてもいいけど」 ギーシュの言葉でした。ルイズは (もうドッピオは戦わない。何が目的でやったか知らないけどこれだけひどい傷を負えば) そう考えていました。いや、だれもがそう考えていたでしょう 「・・だれが貴方なんかに謝りますか・・・!」 ですが、その考えはもろくも打ち破られました 周囲の人は静かでした。笑いや同情もなく、ただその場で立ち上がろうとするドッピオを見て・・見守っていました 「ふーん、じゃあその考えを改めるまで・・・」 ドッピオに杖を突きつけギーシュは 「僕のワルキューレたちのサンドバックになるがいいさ!」 と言いました。その一言で 「あ、ちょっとルイズ?!」 ルイズのスイッチが入りました 6へ
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「・・・。」 「う~ん・・・キュルケ・・・に・・・シアーハー・・・むにゃ・・・。」 「・・・。」 「壊れない・・・ウフフ・・・。必殺・・・やって・・・おしまい。」 「しばっ!!」 バサァッ!! 爽やかな朝に不穏な寝言を言うルイズ。 そんな彼女の朝は、キラークイーンに布団を引っぺがされることから始まった。 さすがに布団の爆破はしない。 『許可なき爆破は許さない。』キラークイーンに課せられたルールである。 どのみちルイズに馴染んできたキラークイーンにとっては、ルイズの意志がなければ出来ないが。 その他にも目覚ましの役目も言い渡されている。 そんな忠実なる使い魔に、彼女は寝ぼけ眼で言い放った。 「・・・誰?ってか何?」 「・・・。」 「あ、使い魔か・・・。」 ・・・何かもうダメだ。 「着替えなきゃ・・・。えっと、パンツは一番下に・・・と。」 衣擦れの音の響く部屋、その中で無駄に存在感を発揮するキラークイーン。 オプションには半裸の美少女。 異様な光景である。 「櫛は・・・キラークイーン、ちょっと取って。」 櫛を手渡すキラークイーン。何故かいつまでも視線をルイズの手に向けている。 「あんたって手を見ると動き止まるわよね・・・。変なの。」 その理由を彼女は知らない。 でも知らない方がいいってことも世の中にはたくさんありますよね。 「さて、準備も出来たし朝食に行くわよ。ついてきなさい。」 何となくキラークイーンには傍にいて欲しいルイズ。彼を近くに呼び寄せます。 別に離れても問題は無かったのだけれど、あんまり離れていると何かこうムズムズとするのです。 部屋から出て、施錠チェック終了!!といったところでなるべくなら聞きたくない声がした。 燃えるような髪。ルイズとは対照的な「何想像してんのさ」と聞こえてきそうな体。 そう、今朝、ルイズの夢の中で爆弾戦車に追っかけ回されていた女性、キュルケである。 ちなみに爆死する前に布団を引っぺがされたため、死んではいない。 「あら、ルイズ。その猫っぽい亜人が貴女の使い魔?けっこうキュートね。 フフッ・・・ひょっとして他の人のをさらってきたんじゃないでしょうね?」 「黙りなさい、キュルケ。体温すらない体にするわよ?あと人の使い魔、勝手に触らないで。」 「・・・。」 「・・・?フフ・・・私の手、綺麗でしょ?」 「キラークイーン!手なんか見ててもしょうがないでしょう!?行くわよ!」 「あら、キラークイーンっていうのね。素敵な名前・・・。 それと・・・私だけが知ってるのもフェアじゃないから。」 彼女の隣にジョーダンのようなトカゲが現れた。 「これが私の使い魔、フレイム。サラマンダーよ。しかも火竜山脈の・・・。 好事家に見せたらきっと欲に塗れた醜態を晒してくれるでしょうね・・・。」 「ふ~ん、まあまあね。あんたにぴったりじゃない。それじゃ、私お腹空いてるからこれで。」 「あ、ちょっと・・・。」 有無を言わさず立ち去るルイズ。 普段見せているコンプレックスの欠片も見せなかったルイズにキュルケは戸惑っていた。 意外に思えるかもしれないが、このときルイズが癇癪を起こさず、冷静に対応できたのは奇跡などではない。 なぜならキラークイーンもけっこうレアなため、この時点でルイズには勝った!!という考えが浮かんでいたのだ。 キラークイーンの能力を把握しているルイズにとって、サラマンダーなどシアーハートを発射するだけで事足りるのだから、 当然といえば当然の態度である。 本日のルイズ・・・夢の中で必殺技を思いつく。 必殺技・・・シアーハートアタックを発射後すぐにキラークイーンで全力投球。これにより周囲の温度に影響されずに標的に向かう。 ただし対象物に温度がない場合は使えない。 To Be Continued → 戻る 目次