約 7,964 件
https://w.atwiki.jp/okieroparo/pages/175.html
7-203-207 小ネタ埼玉 長くて退屈な授業が終わり、今日も部活の時間がやって来た。 終礼と掃除もそこそこに、市原は荷物を掴むと一人足早に部室へと向かう。 (あー疲れた疲れた) 崎玉では先週二学期末考査が終わったばかり。試験後の開放感と冬休みを目前に 控えた嬉しさで生徒達は明るく、校内もどことなくウキウキした雰囲気に包まれ ている。 特にあと一週間もすればクリスマス。そこかしこでカップルやグループがクリス マスどうするー?と華やいだ声で話すのが聞くに堪えず、ついでに自分にお誘い が掛からないのも切なくて、市原はいそいそと靴を履きかえて校舎を出た。 (まぁ…野球部なんてこんなもんだよな。練習忙しいの皆知ってるし、誘われた って行けるかどうか分かんねーし…) そう自分に言い聞かせ、部室までの道のりをとぼとぼと歩く。別に寂しいとかじ ゃないし、そもそも他の部員も皆同じだろーし…荷物しか掛けていない肩が何故 だか、凄く、重い。 しばらくすると、前方に男女二人の人影が見えてきて思わず立ち止まった。 大柄な男子と小柄な女子、二人で何事か話し合っている。 (デートの約束かぁ?余所でやれ、余所で) 別に話している事自体は悪くないが、こういう時にこういう光景を見てしまうと 何となくヤサグレた気分になる。 (…チッ。んだよ、どいつもこいつも) とっとと部室に行こう、と心の中で舌打ちをして歩き出す。すると次の瞬間聞こ えた言葉に市原は仰天し、その場で踏鞴を踏んだ。 「佐倉君、ずっと前から好きでした!付き合って下さい!」 (んなっ…大地かよ!?) 思わず荷物を取り落としそうになる。 確かに目を凝らしてみれば、長い手足を居心地悪そうに縮めてあーとかえーとか 呟く男子はずばり佐倉大地その人だった。途端に気まずさと焦りが込み上げてき て、市原は辺りを見回すと慌ててその辺の物影に身を隠した。 (…ヤベーとこ見ちまった…) 「えーっと…そのォ…」 頭をがしがし掻きながら大地は困った様に呟く。 一年生と思しきその女の子は付き合って下さい!から頭を下げたままだったが、 その声を聞いて恐る恐る顔を上げた。 (ははぁ…結構カワイイな) 大地も見た目はいい方だが、その女の子もなかなか可愛い子だった。ああいう子 にずっと前から好かれてたなんて。クリスマスを前に告白なんて。イヤ羨ましい とかそんなんじゃ無いけど。 驚き半分嫉み半分で先輩からじろじろ観察されているのにも気付かず、大地はし ばらく逡巡していたが、両手をぱん!と顔の前で合わせるとぺこりと頭を下げた 。 「んっと…ゴメン!無理!俺今彼女とかつくる気ねーから」 (えーーー!!そんなアッサリ振るのかよ!?) 「…部活、忙しいから?」 蚊の鳴く様な声で女の子が尋ねる。 ウン、と大地があっさり頷くと女の子はまた下を向いた。しかし直ぐに顔を上げ る。 「じゃ、じゃあ、部活引退するまで待つから…!」 「え、駄目」 (即答かよ!!) 大地はまたもやあっさりと答えた。 流石にこれにはショックを受けたらしく固まっている女の子には構わず、そのま ま言葉を続ける。 「だってー引退するまで待って貰っても、その間に俺が君の事好きになる保証な んてないじゃん。それまで君がずっと俺の事好きでいる保証もないし。寧ろ待つ とかの方がお互いにとって負担になるし意味ねーと思うよ、だからそんな不毛な 事するよりも…」 (あっちゃあ…) 女の子が肩をぶるぶる震わせる。どうやら泣いているらしい。が、喋り続ける大 地は気付かない。 「まあ要するに、今は誰ともつきあう気はな…」 「…ごめん!もういい!」 大地が全て言い終える前に、女の子はそんな捨て台詞を残して、顔を覆いながら 向こうの方へと走り去って行った。 一人残された大地は暫くぽかんとしていたが、やがて何が悪かったんだ?と言う 様に首を捻った。 そんな様子を影から眺めながら、市原も驚きのあまり、寧ろそれを通り過ぎて呆 れのあまり女の子と同じく目から汁が溢れそうになるのを堪える。 アイツって、ほんと、モノスゲアタマワルイんだな… 「あーあ、泣かせちゃったよ、大地」 「うわっ!!!?タイさん!?」 「先輩!」 目頭を押さえていると、背後から聞き慣れた声がした。 驚いて振り返ると、三年の小山がニヤニヤしながら隠れている市原の後ろに立っ ていた。ついでに大地も隠れていた二人に気付いたらしく、ちわす!と元気に頭 を下げる。 「先輩方!何してるんスか」 「イッチャンはねー、大地が誰から告られてんのか気になって、盗み聞きだって 」 「なんでタイさんが答えるんすか!?たまたま居合わせたんだよ、たまたま!! 」 「いや~でも盗み聞きたくなるのも分かるよ、なんだかんだ言っても羨ましいも んな」 「羨ましくねっすよ!」 ムキになって答えようとする市原の肩を小山が笑いながら叩く。 いいじゃん俺も告られた事なんか無いよ?だから違いますから!と、先輩二人の やり取りを大地はきょとんとした顔で眺めていたが、ふと思い出した様に口を開 いた。 「え、さっきの『泣かせた』って何なんすか」 「ハア!?お前気付いてねーの!?」 「さっきの子だよ、大地に告った」 「えーッ!!」 どうやら本当に気付いていなかったらしい。ヤッベェという顔で今更頭を抱える 大地を先輩二人は半ば呆れ顔で見つめた。 「ヤベェっす!!全ッ然気付かなかった!!」 「お前ほんと鈍いのな…」 「ほんと鈍いッス!どうして俺はここまで人の事を考えられないのかッ!!~~ ~先輩!俺どうすれば!?」 今から走って土下座でもしてきましょうか!?それで許して貰えるでしょうか! ?とマジ顔で叫ぶ大地に市原は頭が痛くなった。 「まーまー。そこまでしなくてもいんじゃない?あの子もたぶん分かってるって 」 「…ほんとッスか?でも俺こんなにも人付き合いヘタクソだって事はつまり部活 とかでも知らず知らずのうちに先輩方なんかにさっきみたいなヒドイ事してたり す…」 「落ち着け落ち着け」 暴走しかける大地を市原が慌てて押し止める。 「でも大地の言ってる事は間違ってないと思うよー」 「…そ、そうッスか?」 「うん。恋愛すんなとは言わないけど、部活と両立させる自信無いんならしない 方がいいし。かと言って好きでも無い子を三年も待たせるのだって、お互いにと って不毛だしね」 「そ…そうッス!俺が言いたかったのはそうゆう事なんス!!やっぱ今は野球 一筋ッスよね~!!」 ウンウンと神妙な顔で頷く小山を、大地は感動した面持ちで見詰めている。 大地の場合今の時点で既に野球一筋なのだが、それでも周囲からアプローチされ るのが問題だった。それをキッチリ諭す小山の姿には元主将の貫禄がある。 (やっぱタイさんはスゲエ) 流石一人で後輩だらけのチームを纏めてきただけある…と市原も改めて小山に尊 敬の眼差しを向けた。 「イヤ~でも面白いモン見れたな。んじゃ俺そろそろ戻るわ、人待たせてるし」 「え、タイさん、何しに来たんすか」 「ん?あぁ、一応部活に顔出しとこうかなーと思って。三年はもう授業ねーから 、次に学校来んの年開けてからだし」 でもお前らの顔見れたからいーや、と笑う小山の顔を見ると、市原の胸に一抹の 寂しさが込み上げてきた。 そうか、あと三年が学校に来るのは三学期の始業式と、何回かの登校日と…卒業 式だけだ。年が開ければ大学受験が始まるし、今みたいにちょくちょく顔を見せ てくれる事も無くなる… …そして卒業したら、自分のたった一人の先輩はこの学校から居なくなってしま うのか… 「…あのさあ、なに一人でしんみりしちゃってんの?イッチャン」 「あ!…イヤ、その…」 ばっちり表情に出ていたらしく、小山が苦笑しながら市原に話し掛ける。市原は 慌てて頭から寂しさを追い出し、精一杯の感謝を込めて小山に頭を下げた。 「えっと…あんまし会えなくなるの、寂しいスけど、勉強頑張って下さい!」 小山が引退してもう大分経つ。 後任の主将も決まり、新しいチームも動き出した。市原も他の二年と共にチーム を引っ張っていくようになった…なのに、それでも時間と共に小山が部から少し ずつ疎遠になって行くのが無性に寂しかった。 大地もそんな市原の気持ちを感じ取ったのか、同じ様にしんみりとうなだれてい たが、市原が頭を下げると慌てて一緒に頭を下げた。 「先輩、俺もっ、勉強頑張って下さいっ!」 「勉強?あーハイハイ頑張るよ。それに年開けてからもまた遊びに行くよ、お前 らにも見せたいし」 「…見せたい?」 何を?顔をッスか?と市原が聞き返そうとすると、後ろから高い声が聞こえた。 「小山くーん!」 「…!?」 まごうことなき女子の声が聞こえる。 後ろを振り返ると、向こうの方で一人の女の子が笑顔でこちらに向かって手をブ ンブン振っているのが見えた。 驚いて小山の顔を見ると、同じく手をブンブン振りながらごめーん待ったー?な どと叫び返している。え。何だこの会話。 「…タイさん、あれ…」 「ごめん!俺もう帰るわ。あんま待たせてると拗ねちゃうからネ」 「拗ねっ…て彼女なんすか!?いたんすか!?」 「え、九月くらいからいるけど…」 「はあっ!?で、でも告られた事無いって言ったじゃないすか!!」 「イヤだから俺から告ったんだって…」 「おーやーまーくーん!」 「あ、んじゃもう行くわ!じゃーなっ」 これからクリスマスの予定たてなきゃいけないからさ、部活頑張れよーと笑顔を 振り撒きながら小山は女の子の元へと走って行った。 二人仲良く並んで歩く姿は校内のカップルとまったく同じ、いやそれにも増して 眩しく見えて。市原はまたもや目頭をグッと押さえる羽目になった。 「また来て下さいねー!!…先輩?どうしたんスか?」 「…イヤ…別に……」 「…大地…」 「なんスか?」 「…部活だ。部活行こう」 大地は一瞬顔に?を浮かべたが、部活大好きなので直ぐに笑顔でハイ!と答えた 。 それじゃあ俺荷物取ってきます!と大地が元気に教室に走って行く。おかげで市 原の涙は誰にも見られる事は無かった。 「…野球ってシンドイな…」 でも俺には部活しか無いんだ…改めてその事実を突き付けられると、何だか無性 に切なくなる。 …正確に言えば部活しか無い人間でも、小山しかり大地しかり恋愛しようと思え ば出来るものだが、自分には全く恋愛の気配も無いのが、ただ、ひたすら、切な かった。 (…俺、エースなのになぁ…) 十二月の寒空の向こうで、頼れる先輩がドンマイイッチャン!と笑った気がした … 終わり
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4555.html
「赤い糸? 緑の炎で焼き切ってあげるよ」 さて、この世界には『運命の赤い糸』などという色の通りに血迷った戯言を信じている輩がいるようだけど、本当に妬ましいと思う。生まれたときから? 愛によって結ばれるのが約束されている? くだらない。妬ましい… 疾風「本っ当妬ましい…!」 と、そんな言葉を漏らす僕、妬見女疾風。学生会七つの大罪、嫉妬担当。帝先輩は、ゆくゆくは『学生会七つの大罪』を『秘密結社七つの大罪』にグレードアップさせるつもりだって言ってたけど、今はいいか ん? あそこに居るのは… 「はい紅ちゃん。あーん」 高校生くらいの女性の箸の先にある玉子焼きが、隣の男性(恐らく恋人だろう)の口元に運ばれる… 疾風「爆発しろ!」 前に爆散した。こんなにあからさまにイチャついてたんだもん。爆発させろって言ってるような物だろう? 「なっ…なんだ?」 「私達の愛を邪魔する人は誰?」 こいつら全然懲りてないよ…ああ妬ましい 疾風「どうも! 中央高校2年B組、妬見女疾風でーす! 妬ましくって仕方ないから貴方達の恋路を邪魔しにきました!」 紅介「はぁ…赤井紅介です」 結子「糸田結子です」 ん? ちょっと引いてる? うん、まぁ概ね計画通り。これでさっきのイチャイチャの熱も冷めたし、そんな空気も壊せただろう 結子「ねぇ紅ちゃん。この人怖ーい」 紅介「大丈夫。結にゃんは僕が守るからね」 あれ? おっかしいなー またイチャイチャし始めたぞー? 空気読めよこのリア充どもが! 爆発しろ! 疾風「…爆発しろ」 壊れた空気を読まない彼らの発する桃色の空気をぶち壊すように、爆音と爆風が響く。すっきりした 紅介「なんなんだ君は! なんなんだそれは! 何故君は僕達の愛を邪魔するんだ!」 疾風「『リア充爆発しろ』。僕の契約都市伝説だよ。僕って君達みたいに愛し愛される人間が大ッッ嫌いなんだよ! ああ妬ましい!」 結子「はぁ? ふざけないでよ! 貴方には関係ないじゃない!」 疾風「関係ない? 関係ないとか関係あるとか…それこそ関係ないよ。僕の嫉妬は無限大で全方位型の法界悋気だ」 あ、法界悋気っていうのは自分とは全く関係ない人に嫉妬することね 紅介「どうしても邪魔するって言うんだね…。なら! 僕達の…」 結子「私達の絆で! 貴方を倒す! この…」 紅介・結子「「『運命の赤い糸』で!!!」」 疾風「あっはははは! 赤い糸? 緑の炎で、嫉妬の炎で焼き切ってあげるよ…! 」 こうして、非リア充(ぼく)VSリア充(カップル)の勝負が始まったのだ! 紅介「いくよ…!『赤い糸』!」 結子「レッドスパイダー!」 『運命の赤い糸』をくもの巣のように張り巡らせる二人。使いこなしてるじゃないか妬ましい! 疾風「爆発しろ!…うわっ!」 『リア充爆発しろ』で爆破しきれない! 『運命の赤い糸』の絶対に切れない能力か…! 疾風「危なかった…! 拙いな…ここは一旦引く!」 逃走…ではない。一時的な戦略的撤退である 紅介「え?」 結子「あれ?」 紅介「逃げたみたいだね」 結子「みたいね…。じゃ、食事の続きを…」 「紅介くーん! まったぁ?」 二人がイチャイチャし始めようとすると、突然一人の女の子がやってきた…いや、僕なんだけども 紅介「え…鳥風(とりえ)? どうして此処に…」 鳥風「どうしてじゃないわよ…忘れちゃったの? 今日ここで会うって約束してたのに…」 紅介「え?(そんな約束してたっけ?)」 まぁ、僕が他人の約束のことなんて知るわけもないんだけどね 鳥風「ふーん…忘れてたんだぁ…。ねぇ、ところで…その女、誰なの?」 さっき紹介されたから知ってるわけだけど… 結子「糸田結子。紅ちゃんの彼女よ!」 鳥風「へぇ、ちゃん付けで呼んでるんだぁ…でも! 私の方が紅介君のことをよく知ってるんだからぁ!」 そう言って赤井紅介君の腕にしがみつく僕。いや、別にそういう趣味があるわけじゃないよ? 紅介「! 君、偽者だろう? 鳥風はこんなに積極的じゃあなかった! つまり君は…本物の鳥風じゃないんだ!」 鳥風「………あれぇ? ばれちゃいましたかぁー…」 リア充から離れ、変装を解く僕 疾風「結構完璧に変装できてたと思ったんだけどな…」 紅介「また君か…! 君は今日始めて会ったばかりのはずなのに…なぜ鳥風に変装できたんだ!?」 疾風「ん? ああ、この前君と話してるのを見たから。僕は一回見た人なら誰でも変装できるし、一回聞いた声なら何でも真似られるのさ」 紅介「一回聞いたら…? まさか君、最近噂の『異常』とやらか…! 変装能力とはかなり超能力じみているな…」 疾風「おいおい、早とちりするなよ。変装能力(こんなの)も声帯模写(こんなの)もただの特技だぜ? 僕の誇る僕の異常は…他にある!」 と、どこかで聞いたことのある台詞を吐く僕 疾風「ところ紅介くん。君、糸田さんと恋人なんだよね? 一生彼女を守るって決めたんだよね?」 紅介「そうだけど…」 疾風「だったら他の女のことなんて、全く全然気にならないはずだよねぇ? だったらどうして、鳥風さんが積極的じゃないって分かったのかなぁ…?」 紅介「そ…それは…とっ…友達だから!」 疾風「言い訳にしか聞こえないよ。ねぇ、糸田さん。これで分かったろう? つまりコイツと運命の仲だと思ってたのは君だけだったってわけさ。 許せないよね? コイツは今まで君を騙してきてたんだ! 君を一生守るとか嘯いて! いったいこの台詞を、何人の女に言ったんだろうね…?」 言葉を巧みに操って、糸田さんの心を刺激する…否、言葉(こんなもの)はただの手段に過ぎない― 結子「裏切り…浮気…」 糸田さんの周りから、一部の人にしか見えない緑のオーラが放出される…そう、『ジェーラ』だ。よし、こうなれば… 疾風「そう! コイツは君の事を玩具としか思ってない! 心の中じゃあ君を『チョロい女』とか笑ってるに違いないよ…コイツはそういう女誑しなんだ!」 結子「女…誑し…」 紅介「な…違う! 騙されないでくれ! 確かに他の女の子と話すこともあったけど…それはあくまで友達としてだ! 僕にとっての一番は君だけなんだよ!」 疾風「無駄だよ。その言葉が嘘だろうと本当だろうと、今の彼女には裏目(マイナス)にしかはたらかない…」 結子「ふ…ふふ…あは…あはははははははは! そっかぁ…やっぱりそうだったんだぁ… 分かってる、分かってるよ紅介君…。貴方は誑かされてたのよね…悪い悪魔に取り憑かれてただけなのよね…。でも大丈夫。私が目を覚まさせてあげるから…」 よし、狙い通り…飲まれたね 疾風「教えてあげるよ。嫉妬に狂った女の子は何よりも強くて何よりもまっすぐで何よりも恐ろしくて…そして何よりも美しいんだ。そこがまた妬ましいんだけど…ね!」 紅介「ま…まさか…君…」 疾風「そう! これこそが僕の異常だよ。異性だろうと同性だろうと。人間だろうと人外だろうと。生物だろうと無生物だろうと。有機物だろうと無機物だろうと…例外なく全てに嫉妬する。悋気王辺(グリーンアイドクイーン)だ。 そして、嫉妬心が強すぎるあまり…他人の嫉妬心すら操れるのさ」 男なのに女王(クイーン)? とか、そういう突っ込みは受け付けてないよ! 結子「あっははははははははははははははははは!!! 大丈夫だよ紅介君…私が綺麗にしてあげるから!」 どこからか包丁を取り出し、振り回す糸田さん 紅介「ひっ…」 結子「どうして…? どうして逃げるの…? 私はこんなに好きなのに…! ああそっかぁ! 私が『紅介君』なんて余所余所しい呼び方するから怒っちゃったんだね…。ごめんね紅ちゃん! ねぇ紅ちゃん、ちゃんと紅ちゃんって呼ぶから! だから逃げないでよ…」 紅介「目を覚ましてくれ結にゃん! 君はその男に騙されてるんだ…!」 結子「おかしなことを言わないでよ。私が騙されてるわけないじゃない。貴方に浮気されてたのは確かにショックだったけど…でも、貴方を私しか愛せないようにすれば! 貴方に寄り付く意地汚い女共を全て滅ぼせば! みーんな解決するのよ…!」 虚ろな瞳で包丁を振り回す糸田さん 疾風「ふーん…この状況でまだ説得なんてしようとするんだ…。無駄だって言ってるのに。あー、それにしても…君を疑わせるために嫉妬に狂わせて! 関係をぶち壊してやろうと思ったのに…愛されてるんだね妬ましい…! それもこれも君に良い所(プラス)があるからなのかなぁ…? じゃ、それも踏まえて無駄だってことを教えるために…しっかり“釘を刺して”おかないと…ね!」 僕は袖から五寸釘を取り出し…紅介君と糸田さんに突き刺す! 紅介「!?」 結子「…?」 疾風「見た目はグロテスクだけど…肉体に殆どダメージはないよ。これは僕の過負荷(マイナス)なんだから」 紅介「マイ…ナス? なんだそれ…! 聞いたこともないぞ…?」 疾風「教えるとでも? …と、言いたいところだけど、折角だし教えてあげるね。過負荷っていうのは異常と違って、環境や性格によって後天的に発言するスキルさ。 異常と違って理論も理屈もないってのが特徴でね…。つまり! 文字通り種も仕掛けもありません、ってことなんだよ…! ちなみに僕の過負荷は勝人堕とし(ベストクリーナー)。僕が妬んでる相手に、気持ちを込めて釘を刺すことで…良い所を削ぎ落とせるんだよ」 紅介「良い…所?」 疾風「そう! 体型(スタイル)にしろ顔(ルックス)にしろ性格(キャラクター)にしろ能力(スキル)にしろ…全部削ぎ落として剥ぎ取って洗い流すのさ! 隣の青い芝生は全部刈るに限る、ってね。さぁ! 良い所がなくなった君を! 愛する奴なんか誰も居ない! 僕達(マイナス)の、どんなに頑張ってもどんなことをしても! 決してモテない人生を味わうがいいよ…。あはははははははは!!!」 紅介「う…う…く…」 結子「紅…ちゃん…」 疾風「ふーん…まだそんな呼び方できるんだ…。でも! そんなのは所詮惰性なのさ! 止めだよ…『橋姫』」 『了解よ。あははははは、呼ばれるのはまだかってずーっと待ってたわ…。だって、すごく妬ましかったんだもの…! 私の橋を渡ったカップルは、みーんな別れることになるのよ…! 主の異常と過負荷のお陰で! 『運命の赤い糸』が無効になっている今! 貴方達にこれを防ぐ術はない…!』 『宇治の橋姫』の手から緑色の炎が飛び出し、紅介君と糸田さんの間に飛んでいく…。そして、文字通り『運命の赤い糸』を、焼き切った…否、“妬き切った” 紅介「…あれ? 僕は今まで何を?」 結子「…あれ、これ、私のお弁当…。向こうのベンチで食べましょう」 ここで何事もなかったかのように、どこかに行ってしまった紅介君と糸田さん。よし、これでまた一組、リア充共をぶち壊せた…! あははははははははははははははは!!!! 優秀な奴も幸せな奴も! 人気者もリア充も! みーんなみんな滅びちゃえばいいんだよ!!! 続く…
https://w.atwiki.jp/t-kimura_ss/pages/163.html
留奈とのライブでの戦いの後、瀬戸燦は 控え室で一人今回の騒動の事に想いを馳せていた。 巻が怪我をした知った時、勘違いとはいえ 自分は危うくかけがえの無い大切な友達を 傷つけてしまうところだったのだ。 「永澄さん・・・。」 そんな自分を必死になって止めてくれた 夫の姿を思い出す。 あの時の永澄の言葉が無ければ今頃は、 本当に取り返しの付かないことになって しまっていただろう。 「ありがとうな。」 小さな声で今はこの場に居ない永澄に感謝の 言葉を送る。 その時、燦は自分の頬が朱に染まっている 事に気が付かなかった。 「燦ちゃん、入ってもいいかな?」 燦が物思いに耽っているとコンコン、とドアがノックされ 永澄が燦に入室の許可を求める。 もちろん燦は断る理由も無く、二つ返事で 直ぐにOKした。 「燦ちゃん、今日はお疲れ様。」 永澄がジュースを差し出しながら 労いの言葉をかけると燦は嬉しそうに 微笑みソレを受け取りながらうん、と頷いた。 燦がもらったジュースを飲んでいると、 永澄がチラチラとこちらを見ては視線を 逸らす、といった不自然な動作を していることに気づく。 「・・・どうしたん、永澄さん?」 「えっ!?」 燦が訝しげに思い問いかけると、永澄はとても 驚いた様子で身体を後ろに傾かせた。 「えと、今日のライブで歌ってた時の燦ちゃん、 すごく綺麗で可愛かったなと思って・・・。」 永澄は顔を赤くし、汗をだらだらと 垂れ流して、なかなか言い出せなかった今日の ライブの時の感想を燦に告げる。 いや、普段から燦ちゃんは可愛いし、綺麗だし、 等などと付け足しながら、燦の様子をうかがう。 緊張からか永澄は上手く言葉を紡げず、自分でも 半分何を言っているのか解からない状態だった。 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 「燦ちゃん?」 いつまでも反応のない燦に永澄が顔を上げながら 呼びかけると、そこにはまるでのぼせた様に 真っ赤な顔をした燦がいた。 瞳を潤わせ、ふるふると身体を震わせている燦を 見て永澄は何かまずいことを言ってしまった のだろうかと焦る。 不安になる永澄を余所に燦は顔を俯かせ、先程の 彼の言葉を頭の中で繰り返していた。 (永澄さんが・・・、私の事綺麗って・・・ 可愛いって・・・。) 永澄に褒められて燦の心は嬉しさと、 恥ずかしさで占められていく。 やがて燦は未だに赤い顔を上げ、永澄を見つめる。 うっすらと頬を上気させ、瞳を潤わせている燦の 纏う年不相応な色気に、永澄は思わず胸をドキリと 高鳴らせた。 「永澄さん・・・。」 すっと燦が永澄の懐に身を寄せ、ふわりと した彼女の匂いが永澄の鼻に広がる。 が、ソレを実感する前に永澄は突然の燦の 行動に驚き、目を白黒とさせていた。 「照れるけど・・・、嬉しいきん。」 燦は片手に持っていた飲みかけのジュースを 永澄の口元へ差し出す。 燦の言わんとする事を察し、永澄は 彼女に視線を向け本当にいいのかと 目で尋ねる。 燦ははにかみながらも、優しく笑って こくりと頷き、永澄の口へジュースの 飲み口をそっと押し当てた。 ごくりと一口、永澄がジュースを飲む音が 静かな部屋の中に響く。 照れ笑いを浮かべた燦は、今度は自分の口元に缶を 持っていき、んっと色っぽい声を出しながら こくりと可愛らしげにジュースを飲む。 二人の間に何とも言えない、それでいて 何処かあたたかく居心地の良い不思議な空気が 漂う。 「・・・永澄さん、このジュース・・・ おいしい・・・きん。」 最後の方は若干、すぼみ気味になりながらも この空気を打ち消そうと燦が声をあげた。 「う、うん。本当おいしいね・・・。」 永澄もまた燦に同調するように言葉を発する。 決して互いにとってこの雰囲気は不快なものでは無い、 むしろもう少し味わっていたいと思う位の物だ。 だが、まだ心が成長を続けている途中の二人には それよりも恥ずかしさの方が上回っていた。 永澄と燦は名残惜しく思いながらも、 どちらからとも無く身を離し、笑い合うのだった。 ーその後、燦がライブの衣装から制服へと着替える ため永澄は部屋の外で待機していた。 しばらくして、扉が開き中から燦が出てくる。 お待たせ、と言った燦の顔はいつもの天真爛漫な 彼女に戻っていた。 その名が示すとおり太陽の様な笑顔をする燦に 永澄は心の中で、やっぱり綺麗だなぁ、と呟き 見惚れてしまう。 「じゃあ、行こうか。燦ちゃん。」 頭を振り気を取り直しながら永澄は燦へと声をかけた。 「うん、永澄さん。」 燦は返事をすると同時に、自身の腕を 永澄の腕へと絡ませる。 さっきのジュースと言い自分としては少し大胆な 行動かな、等と思いながら燦は組んだ腕にきゅっと 力を込める。 再び驚く永澄を見て燦はいたずら好きな笑みを 浮かべると、頬を染めながらこう言ったのだった。 「大丈夫、みんながいるとこまでじゃきん。」 たまにはこんなのもええよね? だって今日はまた一歩、 永澄さんを好きになれた日なのだから。 ~おわり~
https://w.atwiki.jp/sdstarwiki/pages/82.html
「果たすべき使命」 俺の名は重戦士バスター。ザフトに雇われた傭兵…ということになっているが実はラクロアの者で称号は重闘士だ。 しかし最近不穏な動きを見せるザフトに対し情報を集めるため王の命を受け、単身ザフトに潜入することとなった。やれやれだ。 ちなみにこの事をザフトに感づかれないための身代わりとして、信頼できる部下を影武者に仕立て上げてきた。 気は弱いがそれなりに信頼の置ける奴なので一応は安心しているし、俺自身の装備を与え行動も一挙手一投足を叩き込んできたのでぬかりはない。 装備は当然貸しただけだ。後で必ず返してもらう。下手に傷をつければただでは済まないことも言い聞かせてある。 その後はザフト製の鎧や武器などを纏って姿を変え、傭兵として前線での戦闘を志望する事であっさりとザフト軍の一員として認められた。 ザフトは、騎士団だけでなく傭兵なども雇いそれを纏めて一つの軍としているらしい。 だからこそ、余所者にもある程度は入り込む余地はあるという事だ。 しかし生粋のザフト国民(もしくは、移民してきて正式に国民として認められた者)にしかなれない騎士団員達は自尊心が強く、余所者に対してはかなり排他的だった。 そのせいで当初は情報を集めるのもままならなかったものの、戦場で戦果を上げザフトに貢献するうちに待遇もそこそこ良くなりどこを出入りしても怪しまれなくなった。 常在戦場の精神で戦いを生きがいにしている俺としては、この点は大変好都合だった。 我が国王は、そういう意味で俺をここへ送り込んだのかもしれない。何分読めない男なので真意はわからないが。 むしろザフトが侵略こそ行うがつまらない一方的な殺戮も無く、最初に力を示してから事を容易に運ぶ姿勢である事は少し意外だった。 おそらくは現場を指揮する者の考えなのだろうが、他国への容赦ない侵略を命じているザフト王の意思に比べると矛盾を感じるところもある。 まぁ、そんな事はどうでもいい。 現在集めた情報では、近々ラクロアへと襲撃をかけるらしい。すぐさまこの事をラクロアへ伝えようとしたが、あまりに突然の事でどうする事もできなかった。 そしてラクロアに式典の日、即ち襲撃の日がやってきた。 ザフト騎士団はラクロア騎士団に悟られぬようにということで国から少し離れて待機、ラクロアへと潜入した者からの合図で一斉に攻め込むとのことだった。 しかし実際には近衛騎士をはじめとするラクロアの守備は完璧、付け入る隙もないはずだ。事実、何度か起きた小規模な戦いではラクロアはほとんど被害を受けていない。 おそらくこの戦いを機に小競り合いの続いたザフトとの決着も近くなるだろう。 だが合図を受けラクロアへと入った時、自分の目を疑いたくなる光景がそこにはあった。 あの近衛騎士のデュエルとイージスが守るべき王の元を離れ、守るべき国を自らの魔法で焼き払っていたのだ。 俄かには信じられぬ事態に、つい声を上げそうになる。だが今はまだばれるわけにはいかない。表情を戻し、平静を装う。 それでも、俺の中では滅多に覚える事は無い戸惑いという感情が大部分を占めていた。 自分とは全く違い王と国民からの信頼は厚く、同時に厚い忠誠を誓う彼らが、何故。 俺が慣れない思考の渦に巻かれているうちに奴らは何食わぬ顔でザフト騎士団と合流する。 「まさか本当に我らの側につくとはな…誇りも信念も捨てたか。 だが、ここまでの覚悟を示した以上は受け入れてやる。国の方は我らが手を下すまでもなかろう…」 騎士団長の男があまり気分はよくなさそうな調子で言うと、特に追い討ちをかけることも無く騎士団を引き上げさせる。 残されたのは硝煙に包まれ、かつての面影と平穏を失った祖国であった。 裏切り者達は一片の感情も見せず、自分達が起こした惨劇に背を向けている。 裏切り者。 自分はどうなのだろう。任務のためとはいえ、手をこまねいて見ているこの行為は裏切りではないのか。 今からでも遅くは無い、武器を手に一矢報いる時ではないか? 自分でも珍しく感情的になっていると思う。普段なら何も考えずに手を出すか、傍観するかをすぐに決め込んでいるはずだ。 国をとるか、使命をとるか。 二つの狭間で、俺の心は揺れた。 国は、好きでも嫌いでもない…はずだ。平和ボケしているとは思うが決して堕落した国ではない。 王にも別に恩義を感じたりはしていない。だが俺の扱い方を心得ていて、仕えていても悪くないと思わせる男ではあった。 そんな男が、自分を信じて託した使命。 王が生きているかはわからない。下手をすれば、最後の命令かもしれない。 …ならば、何があってもこれをやり通す。 それこそが、俺を信じた王に対する俺なりの答えだ―――決して気が長い方ではないが、いけるところまでいってやる。 こうして俺は、本来は守るべき祖国に背を向けてラクロアの地を離れた。 しかし実際あれだけの打撃を受ければ、ラクロアも立ち直れないかもしれない。 失ったものは大きく、これからのことを考えると苛立つ気持ちが沸々とわいて来る。 そんな時、帰還するザフト騎士団の元に駆けつける者がいた。デュエルの弟、ストライクだ。 「兄さん!イージス!何故こんなことを!」 涙ながらにやかましく叫ぶ。どうやら単身ザフト騎士団を追ってきたようだ。 あの馬鹿なら納得はいくが、本当にやってしまう無思慮さと無謀さにはため息が出る。 「時間が惜しい。適当に痛めつけて追い返すのが得策だ」と提案しながら他の兵を制し背中から武器を抜く。この手で殴っておかないと気が済まないからだ。デュエルとイージスも似たような考えでさっさと追い返すつもりらしく、誰よりも先に剣を構えていた。 まぁ、こいつらならすぐに終わらせるだろう。俺は武器を持った手を緩める。 しかし、そこで再び信じられない事が起こった。デュエルとイージスは何の躊躇いもなくストライクに斬りかかったのだ。 俺は慌てて参戦し、適当に手を抜いて攻撃する。だが、二人が手を抜く様子はまるでない。 その時見た奴らの目には、戦闘狂と揶揄される俺でさえ戦慄を覚えた。 歓喜と狂気が入り混じった目。本気で、あいつを殺そうとしている目だった。 さらに厄介な事にもう一人の傭兵が参加しストライクにさらに不利な状況へと陥れる。 こいつは凄腕の殺し屋で、殺した人数だけ報酬を得るという契約をとっているために傭兵の中では俺に匹敵する戦果を上げている。 なんとか引き下がらせたいところだが、ここで止めるのは少々不自然だ。 戦いが始まり、ストライク自慢の闘術による攻撃は全てかわされるか弾かれ、隙を突いたデュエルの二刀流がストライクを傷つけていく。さらに、殺し屋は確実にしとめようと急所を狙い続けている。その度に俺が攻撃する振りをして妨害しているため、埒が明かないと思ったのか姿を消す。逃げる意味ではなく、文字通り姿を消して。 そう、こいつは消える能力を持っているのだ。現にストライクは誰もいない背後から攻撃を受けている。何らかの方法で姿を消しているに違いない。 この謎を解かずしてザフト攻略は難しいだろう。しかし今はそれどころではなかった。 大した時間も経たずに、ストライクの白い鎧がところどころ赤に染まる。本人も肩で息をし、ほぼ満身創痍の状態だった。 しかしここでこの未熟者が四人もの格上の相手に囲まれいたぶられた末に殺される、というのはどうにも気に食わない。 かといって、先ほどの決意をこの馬鹿のために覆すつもりもない。 決して余裕ある思考の許されない時間の中で、俺はあることを思いつく。 すぐに実践することを決めると、なんとか前に出てストライクを崖の方まで追い詰める。そして、トドメをさそうとするデュエルよりも先に一撃を叩き込んだ。 少しだけ腹から少し嫌な音をさせたストライクは悶絶の表情のまま弾き飛ばされ、力を失い崖下へと落下した。 俺の記憶が定かならば、この辺りには流れの激しい川があったはず。とにかくここより先は俺にはどうしようもない。後は自分で生き延びろ。だがもしも死んだら俺が殺した事になるのだろうか、などと考えていると 一方のデュエルとイージスは先ほどまでの無表情と打って変わって、凄むように俺の方を睨んでいた。 『よくもあいつを崖に突き落としたな』というより、『よくも邪魔をしてくれたな』と言いたげな表情に見えた。本当に人が変わってしまったようだ。任務で僅かに見ない間に、ここまで変われるものだろうか?本来なら感謝するところだろう。いや、死んでいたら一応謝ろうと思いつつ適当な言葉を流しその場を去る。 気がつけばラクロア騎士団が駆けつけていたが遅すぎた。そもそもあいつらがしっかりしていればこんな面倒な事にはならなかっただろうが。 結局近衛騎士二人の裏切りという戦力の減少と精神的動揺もあってか、碌な戦いにもならずにフラガの奇策で危機を切り抜けると撤退していった。 あの男もこの不可能は可能に出来なかったな、どこか情けない心情になりつつ俺は改めて誓う。 いつか必ず、こいつらザフトを纏めてこの手でぶちのめす。そのために、今は耐える。 とっくに汚れきった手だ。今更汚れが増えたところで構わない。この屈辱も甘んじて受け入れよう。 俺はザフトへと舞い戻る。 全ては、果たすべき使命のために。 灯りも無く、陽も射さず、全てが暗闇に包まれたどこかの一室に『それ』はいた。 『それ』は人間のようだったが、何か別のモノが入り混じったような不自然さをかもし出していた。 そして、他の生命が一切存在しない闇の中で自分の存在を確かめるようにひとりごちる。 クククッ…どうやら洗脳は完全に成功したようだな…こうもうまくいくとは。 やはりこの『力』は素晴らしいものだ。出来ない事など、何も無い。 彼らにはこれから存分に働いてもらうとして…しばらくはラクロアも邪魔はできないだろう。 下手に壊滅させれば近隣の国を含め敵を増やすだけだ。それよりは戦力を削いだあの状態で他国に悟られぬよう、復興と防衛に気をとられていてくれる方が都合が良い。 こちらとて戦力は無限ではないのだから、計画的に使わねばなるまい。 長い時間をかけて、ようやく私の理想は形を成してきたと言える。 パトリックは完全に私の操り人形。ヤツを使えば民衆も思いのままだ。小うるさい王子も地下牢に閉じ込めてやったし、この国はもはや私のモノ同然…フフッ…笑いが止まらんな…。 使えるだけ使ってやろう。これまで私が受けた苦しみと同じいや、それ以上の苦しみを味わってもらわねばな…! そして私は手に入れるのだ!老いも病も、全てを超越した完全なる――――― 僅かな空白が、『それ』に訪れた。 暗闇を完全な静寂が支配する。 ややあって、『それ』は感情を剥き出しにしていた先ほどとは違い淡々とした口調で言葉を紡ぎだす。 さて、これでゆっくりとあの忌々しい種子(シード)を探し出す事が出来るわけだ…。 アレがなければ、全てが始まらない。アレさえあれば…。 暗闇の中で果たして見えているのか手元の石版を大事そうに眺め、撫で回すように指で表面の字を読み取った。 …一つはラクロアの近くか…二度手間だが構うまい。障害となるモノなど、もはや存在しないのだから…。 しかし、『それ』はまだ気づいていなかった。 ある男の行動によって一命をとりとめた、取るに足らないラクロアの若者が自身にとって最大の敵となろうとしているという事を。
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1024.html
2,3時間目の間に訪れる、ほんの少しだけ長い休み時間。 弁当を平らげたり、他愛もないお喋りに花を咲かせたり、生徒それぞれ、少し特別な時間を過ごせる時間帯である。 腹も大して減っておらず、また誰かと喋る気にはなれず、私は机に頬杖をついてひたすら思考を巡らせていた。 ペンケースの中からシャープペンシルを一本取り出し、人差し指と中指でそれを挟むようにして持ち、クルクルと回す。 物事を考えるとき、もしくは落ち着かないときにやってしまう癖だ。 何周か回していると、力加減を誤ってしまい、シャーペンを飛び出させてしまった。 慌ててそれをキャッチしようと手を伸ばすと、その拍子に机の上に重ねていた教科書類が落ちてしまった。 シャーペンの上に、ばさばさと慌ただしく落ちる。 小さくて弱い小動物に、飢えた、獰猛な獣たちが襲い掛かる。そんな大自然の弱肉強食のほんの一コマが、重なって見えた。 教室の床に散乱した教科書を拾おうと私が手を伸ばすと、それより先に、誰かが既に集めてくれていた。 私の隣の机でそれらをトントンと整え、シャーペンをその上に乗せて私に差し出した。 「はい、柊ちゃん」 白く細い指で、峰岸は私の教科書をしっかりと掴んでいた。少し顔を傾けて笑う彼女は、何となく艶やかだった。 女性というものはオトコができると綺麗になる、というが、それは峰岸にもぴったりと当てはまっていた。 中学の頃は大人しくてあまり目立たなかったが、陵桜に入学し、彼氏が出来てからは、一層女らしくなった。 時々、女の私でも峰岸に見惚れてしまうときがある。 こなたが、「峰岸さんは一般の男性からでもど真ん中直球だよね」と言っていたのを覚えている。 まぁ何だ、私やみゆきなんかはオタク目線での萌え要素が多いとか何とか。 一方峰岸は、『そっち方面の知識を持たない普通の』男性も萌えるんだそうだ。 詳しいところは、こなたが無事戻ってきてから本人に直接問い合わせてみて欲しい。 「ん、サンキュ」 私は教科書を片手で受け取り、峰岸に感謝の言葉を返した。 峰岸は私の顔を覗き込み、目を真ん丸くさせた。 「な、何よ」 あまりに峰岸が接近するので、私は峰岸から目を逸らせた。 峰岸は数秒私の顔を見つめた後、ふふっ、と笑った。 「柊ちゃん、何か悩んでるでしょ?」 私が驚いたような表情をすると、峰岸は私の眉間を真っ直ぐに指差した。 眉間がムズムズと疼いてくる。 「シワ、できてるわよ」 そう言って、峰岸は再び笑った。それから、長い髪を翻して自分の席へと戻っていった。 冬の太陽の弱い日差しが、峰岸の艶のある髪に反射して、輝く。 「悩み……か」 独り言のように、私は呟いた。 「悩み」という単語では、この体中がモヤモヤとする感覚は伝えきれないだろう。 何とか冷静さを取り戻した私だが、こなたが居ないという事実は私に完全な安堵を与えなかった。 頭のてっぺんから、やけに綺麗なアーチを描いた、アンテナのようなアホ毛。一目見ればこなただと気付ける。 いや、そんな目立つな特徴じゃなくても、こなたを判断する力を私は得ているんだ。確信は、もちろんある。 ともかく、このままでは埒が明かない。 動かなければ。動かないと頭も働かない。考えてるだけじゃ、どうにもならない。 私は椅子から無駄に大きな音をたてて立ち上がり、教室を後にした。 ☆ 手始めに、もう一度B組の教室に入った。 つかさはクラスの女子と話をしていて、みゆきは机に向かって熱心にやけに分厚い本を読んでいた。 長編小説だろうか。タイトルは小さくて読み取れない。 「何読んでるの?」 みゆきの元へ歩み寄り、後ろから声を掛ける。 少し反応を待ったが、みゆきの声はしなかった。本に没頭しているようだ。 「みゆき」 みゆきのその華奢な肩に手を乗せると、みゆきは一瞬体を強張らせ、そしてゆっくりと私に振り向いた。 「あっ、ひ、柊さん」 みゆきの口調に、何か違和感を覚える。何だろう。 目の前に居るみゆきは、私の顔をまともに見てくれない。何故か視線をあちらこちらに泳がせている。 「そ、その、何の御用でしょう」 「いや、特に用は無いんだけどね。何でアンタ、そんなにキョドってんのよ」 「い、いえ、柊さんにそのように親しく話しかけられたことがあまりなかったもので……」 「え?」 「そ、それとですね。柊さんが私のことを『みゆき』と呼んで下さるのは親しみが込められていて嬉しいのですが、できればいつものように『委員長』と呼んでいただければ……」 さっき感じた違和感。今のみゆきの言葉でわかった。 私のことを“柊”さんと呼び、私に話しかけられてもどこか余所余所しいみゆき。何故か。 つまり、このみゆきは私とあまり親しくないのである。 それもそのはずだ。私とみゆきは、こなたが居なければ『ただの学級委員』という関係であり、 その関係を維持したまま近付きもせず、離れもせずに卒業していく、そんな関係だったのだろう。 こなたが私に「うちのクラスに新たな萌え要素発見したよ~♪」なんて言ってこなかったら出会えなかったのだ。 ……考えてみたら、とんでもない出会い方してたんだな、私ら。 兎にも角にも、これ以上みゆきを困惑させるわけにはいかない。 みゆきに適当に謝辞を述べ、足早に教室を出た。 ――いよいよ間違いなくなってきたな。 こなたがいないという事実が、私の中でどんどん現実味を帯びてきた。 今の感じからして、みゆきはつかさとも余り親しくは無い。つかさとみゆきも、こなたが居なければ親しくなれなかったんだ。 なんだかんだいって、こなたは私らの仲の橋渡しをしてくれてた……ってことだよね。 今更そんなことに気付くなんて。いや、ホントは気付いてたんだろう。 窓の外で、枯葉が渦を巻いて舞っていた。 ☆ さて。 私は今どこに向かっているのか。 自分でもわからない。 目的地を失って、さながら母親を見失って泣きながら彷徨う子供のよう……でもないか、泣いてないし。 で、私の足は屋上へと向かっていた。 普段、青春を真っ直ぐに生きている愚者たち……じゃなく、 カップルたちが仲良く弁当を広げて相思相愛しているために避けていたスポットだが、何故か足が私を屋上へ導く。 屋上に出ると、案の定カップルたちが喜色満面に語り合っていた。 まぁ、カップルだけってわけでもなさそうだ。女子の仲良しグループに見て取れる集団もちらほら。 そのグループ中に、見覚えのある姿があった。 ゆたかちゃんだ。みなみちゃんも、田村さんもパトリシアさんも一緒だ。 そうか、こなたはあの4人に直接的に関わったわけじゃないんだ。 彼女たちが座るベンチから少し離れたベンチに私は座った。とりあえず4人の話を盗み聞かせてもらおう。 「――で、もう半年になるんだよね」 「うん。もうあそこでの暮らしも大分慣れたよ」 「……でも、何で陵桜に来ようと思ったの?」 「うーん、やっぱり進学校だし、それに、みなみちゃんが居るから、なーんて」 その後の傍観者たちのリアクションは、視覚と聴覚を封印してもわかる。 田村さんが顔を赤くして目を細めている。こなたと同類のリアクションだから、もう肌で感じ取れた。 あの子も相当キてるんだな……。 ・ ・ ・ 「ところでその泉さんって、一体どんな人なの?」 一瞬集中が途切れかけていた私だが、聴覚は確実に今の言葉を拾ってくれていた。 「泉さん」。そう聞き取れた。私の知っている泉家か。それとも、私の知らない泉家なのか。 いや、確実に、こなたが暮らしていた泉家だろう。何故か確信が持てた。 消えかけていた希望の光が、再び弱くも確かに灯るような気がした。 私は無意識のうちに、足を4人のほうへ向けていた。 「ねぇ、ちょっといいかな」 4人は一斉にこちらを振り向いた。勿論、その目は穏やかではない。警戒心が反映されている。 「小早川さん……よね?」 ゆたかちゃんは、私のほうを見て目をしばたかせた。 「え、と……誰ですか?」 微かに声を震わせているのが聞き取れた。怯えてる。私、そんなに怖いか? ――そんなこと言ってる場合じゃない。 「柊かがみよ。3年C組の」 「柊……さん?」 ゆたかちゃんが他の3人に助けを求めるように目配せをした。 みなみちゃんがその表情を読み取り、すぐさま私に向かう。 「何の用ですか?」 もともとキツい目をしているみなみちゃんだが、今の彼女の目はさらに鋭く、怯んでしまうほどだった。 でも、怯んでる暇なんか無い。用があるのは、今は小早川さんだけ。 「今、泉さんと言ったわよね。もしかして小早川さん、泉さんの家に居候させてもらってる?」 「え、あ……はい」 俯きながら、雀がさえずるような声でゆたかちゃんは言った。 「あ、あの、うちに何か用ですか?」 「ええ。実は、あなたの家にちょっとお邪魔させてもらいたいの」 口にして、後悔した。あまりにも唐突過ぎる。これじゃ、只の怪しい先輩じゃないか。 案の定、4人とも顔を見合わせている。あぁ、失敗した。これで彼女たちとの関係も――。 「Oh、これは何かのflagですネ」 キーの高い、それでいて微妙にイントネーションを誤った日本語が聞こえた。 パトリシアさんが、目をキラキラさせてこちらを見ていたのだ。 「ユタカ、これは何かのflagデス。彼女は何かとても重大なmissionを負っているに違いありまセーン」 パトリシアさんが私の両腕を掴んで上下に振り回す。流石というべきなのか、力が強い。肩が少し痛くなった。 「連れて行きましょう、ユタカ s homeへ! 今日は丁度ユタカのお家にオジャマする予定だったデース!」 大声でそんなことを言うものだから、回りの視線は私たちの居るところへ集中していた。 ゆたかちゃんは俯いたまま、みなみちゃんは鋭かった目を少し穏やかにし、田村さんはパトリシアさんほどではないけど目を輝かせ、 一方の私は突然の急展開に頭が少し混乱していた。 「ま、まぁ……悪い人じゃなさそうですし、いいですよ」 「ユタカは話がわかるネー」 パトリシアさんが、私の腕を更に強く振った。 私は嬉しさ半分、痛さ半分で、苦笑しかできなかった。 さっきまで羞恥心から身を隠していた太陽が、今は開き直ったのか地上を明るく照らしていた。 何はともあれ、泉さんの家――こなたの家にお邪魔させてもらう許可を得た。 こなたの家に行って、現状が変化するという可能性は、0に限りなく近いだろう。 でも、行くしかない。こなたの家以外に、何か手がかりがありそうな場所は想像できないのだ。 頼むよ、神様……!
https://w.atwiki.jp/yomedousi/pages/1115.html
スレ15-980 (産院凸) 969 :名無しさん@HOME:2008/11/11(火) 01 39 24 O 義弟嫁、32歳だけど小梨で雑種の犬をバカ可愛がりしている。 結婚して四年も経つのにまだ小梨を義弟は恥ずかしげもなく「嫁と犬がいれば十分」と言ってる。 うちは長男嫁としてすぐ子供作ったし産まれてから近所の人からも産院に見に来て貰った。 それが羨ましいのか退院ギリギリに来て「きついだろうから最後にしたの」と言い訳。 コトメも義弟嫁に気を使って「まだ気にしないでゆっくり産んだら良いよー。出来たらなんでも相談してね。」とか言ってるし、うちの子を義弟夫婦に気を使ってか見に来てないし。 ウトメも「二人の良いときにつくればいいんだしね。出来た時は犬でも子供でも喜んで世話するからね」と気を使ってる。 ばっかみたい。 ウトメは毎日我が子を見に来てくれてるんだから。 不細工な雑種しかいないあんたより大事にされてるのにいい加減気付けってーの。 970 :名無しさん@HOME:2008/11/11(火) 01 42 21 0 これはひどい釣りだね。 小梨って言葉知っているぐらいなのに、長男嫁としてって書いている辺りが浅いよ。 971 :名無しさん@HOME:2008/11/11(火) 07 42 04 0 953の義兄嫁の考えをエスパーしてみたんじゃない? 生まれてからすぐ産院に凸されるほうがよっぽど嫌だと思うけどな~。 義弟嫁が先に結婚してたり出産してたらさぞや面倒な事になりそうな思考だし。 「こちらが自重しといたから長男嫁としての威厳が保てて良かったですね(笑)」 位に思って生暖かくスルーで良いんじゃね? どうせ介護の頃になったら手のひら返したみたいになるでしょその 義兄嫁。 良いとこ取りした後苦労だけ丸投げされないように今のうちに距離とっておけばいいよ。 973 :名無しさん@HOME:2008/11/12(水) 12 39 13 0 私は逆に義兄嫁さんに 「弟嫁ちゃんが出産するとき病院にうちの子達連れて行って良い?」 って聞かれて、なんとな~く、アンニュイな気分になったなぁ…。 私は甥姪3人のお産の時は、義母経由でご祝儀渡してもらっただけで お見舞いは遠慮したのだけど…。 それでやっぱりお祝いは「うちの子達のお古でいいよね。」だって。 日頃から、こちらが迷惑していてもKYな人なんでお断りしたい…。 出産関連の板にも、子供は風疹やはしかのウィルスを保菌している ことが多いから病室に入れない方が良いと病院関係者が書いてたし。 でもKYな人なんで、お断りしても強引に行動しちゃうことが多くて 「自分がどうしたいか?」って気持ちだけで行動しちゃうので アポ梨訪問とかしでかしそう。 何台かの車に分乗して出かけるときも、私達にお伺いも立てずに 勝手にうちの車の後部座席に座っていたりするし…。 微妙に異常のある人なんじゃないかと思う。 974 :名無しさん@HOME:2008/11/12(水) 12 43 42 0 私の産院は、自分の子以外の子供のお見舞い禁止。 他の妊婦、新生児もいるしね。 病原菌を持ってこられたら問題となっている。 975 :名無しさん@HOME:2008/11/12(水) 12 45 58 0 ちなみにアポなし訪問も禁止。 一日有効のセキュリティーカードを渡された人以外はいれない。 たぶん今時の病院は、病院側に言えばそういう人は防いでくれるよ。 相談してみれば? 976 :973:2008/11/12(水) 12 59 54 0 975 そうですね。診察後にカウンセリングがあるので相談してみます。 私の病院は母子の絆を深めるようにとの趣旨で母子同室だそうで。 無菌の保育器に入れられている訳じゃないから 尚のこと、子連れで大勢で来られたら迷惑ですよね。 977 :名無しさん@HOME:2008/11/12(水) 13 09 43 0 母子同室なら、自分の子供ももちろんだけどよその部屋に入られても怖いよね。 新しい命を守ってね。 978 :名無しさん@HOME:2008/11/12(水) 13 11 06 0 冬場に鼻水たらした子供を連れてくるような人間って、バカなのか悪意なのか悩ましい。 979 :名無しさん@HOME:2008/11/12(水) 16 56 08 0 しかし何で、余所の赤ちゃんを自分の子供達に見せたいんだろうね。 3人もいるなら、上2人の子は下の子が赤ちゃんの頃を見てるだろうにね。 動物の赤ちゃんを公開している動物園に子供連れて行くような感覚なのかな? Next→15-980
https://w.atwiki.jp/byakumu2/pages/2365.html
製作者、白書 設定 ルーシー=ブレイド=ストーカー 身長:163cm 体重:55kg 血液型:不明 誕生日:4月30日 年齢:17歳 備考:R女学園高等部二年生/姫士組ネオユニバース3rd隊 一人称:「アタシ」 二人称:その場の雰囲気で変わる R女学園に通うハーフヴァンパイア。 同学園の教頭及び風紀委員の副顧問をしているカミーラ=ブレイド=ストーカーの娘。 母親譲りのバトルマニアで、兎にも角にも暴れたがり。 姫士組の活動中に勝手に先走って大暴れをしては副長達にこってり絞られる、 という毎日を送っているが本人はてんで反省するつもりがないようだ。 母親と同様に吸血鬼としての弱点はあらかた克服している…のだが、 数年前に巨大な十字架を振り回してくる怪力シスターとやりあって殺されかけた経験があるため、 どうも十字架に対しては苦手意識を抱いているらしい。 生まれてから今までずっと、母親に用意して貰った輸血パックを使って血液を補充しているが、 「一度でいいから人の生き血を吸ってみたいな…」 と心の底でひっそりと思っているらしい。 前述の怪力シスターにまた襲われたらたまらない、という理由で自重はしているが。 趣味は詩作。 彼女の作る詩は普段の豪快さからは想像もつかないようなキャピキャピとした文体で書かれており、 そのインパクトはうっかり彼女のポエムノートを覗いてしまったルームメイトが 一ページ目を読み終えた時点で耐え切れずにノートを閉じてしまうほど強烈だという。 本人は自分の詩才に相当の自信があるようで、 たまに姫士組の同僚に自作のポエムを見せたりしているようだが… 周囲の反応は推して知るべし。 パイロット ルーシー=ブレイド=ストーカー ルーシー, 女性, 吸血鬼, AAAA, 160 特殊能力 魔力所有, 1 切り払いLv1, 1, Lv2, 13, Lv3, 21, Lv4, 38, Lv5, 50 援護Lv1, 1, Lv2, 19 148, 141, 144, 140, 166, 157, 強気 SP, 60, ひらめき, 1, 魅惑, 1, 鉄壁, 13, 必中, 13, かく乱, 28, 奇襲, 35 OSC_0000_0081.bmp, -.mid ユニット ルーシー=ブレイド=ストーカー ルーシー=B=ストーカー, るーしーぶれいどすとーかー,(吸血鬼(ルーシー=ブレイド=ストーカー専用)), 1, 2 陸, 4, M, 6000, 160 特殊能力 性別=女性 特殊効果無効化=魅即告 耐性=死闇♀ 攻撃属性=夢 格闘武器=吸血鬼の腕力 HP回復Lv1.5=吸血鬼の回復力 !水中 吸血鬼の回復力=解説 自分のターンのはじめにHPが15%回復する。;水中にいる間は発動しない。 アーマーLv-5=吸血鬼の弱点 水光聖浄害 メッセージクラス=モンスター 3800, 160, 1300, 60 BACA, OSC_0000_0242U.bmp 吸血鬼の腕力, 1300, 1, 1, +10, -, -, -, AAAA, +10, 突 吸血鬼の豪腕, 1500, 1, 1, +5, -, 15, -, AAAA, +15, 突 メッセージ ルーシー=ブレイド=ストーカー 回避, ふふん 回避, これが格の違いって奴よ 回避, 諦めたらどう? 回避, そんな付け焼刃でアタシを倒せるとでも思ってるのかしら? 回避, …退屈だわ 回避, お遊戯会なら余所でやるといいわ ダメージ小, ふうん? そう、当てることはできるのね ダメージ小, あんた、一体誰を相手にしてるのかわかってんの? ダメージ小, さっさとここから立ち去りなさいな。命は惜しいでしょう? ダメージ小, 実に無意味ね ダメージ中, そんじょそこらの有象無象ではないようね ダメージ中, いいわねぇ、この緊張感 ダメージ中, ふふっ。少しは楽しめそうね ダメージ中, …さぁて、ウォーミングアップはここまでにしときましょうか ダメージ大, あぁ…痛みが心地よい ダメージ大, くふ、くふふふ…あぁ、楽しい。本当に楽しいわ ダメージ大, 最高よ……本当に最高ね、貴方 ダメージ大, 感謝するわ。貴方のような強敵に巡り会えた…この幸運に 破壊, 楽しかったわ、ありがとう 破壊, …アタシも修行が足りないわね 射程外, …逃げ腰の相手をいじめても楽しくないんだけど 射程外, つまらないわねぇ。ほら、遊んであげるからさっさと寄ってきなさい! 攻撃, さぁ、闘争の時間だ 攻撃, さて、貴方はアタシを満足させてくれるのかしら? 攻撃, 弱いものいじめは勘弁だかんね? 攻撃, ほらほらほら! 死にたくなければもっと気合を入れて避けなさぁい! 攻撃, 生半可な防御なんて吸血鬼の怪力の前じゃあ紙くず同然よ? 攻撃, ──ぶち抜くッ! 攻撃(対アーメア=クレイウィン), あ、貴方はあの時の… 攻撃(対アーメア=クレイウィン), ひっ 攻撃(対アーメア=クレイウィン), 十字架を投げるなよ聖職者ぁぁぁぁぁぁ! 戦闘アニメ ルーシー=ブレイド=ストーカー 吸血鬼の腕力, 打突 吸血鬼の豪腕(準備), - 吸血鬼の豪腕(攻撃), 振り下ろし 吸血鬼の豪腕(命中), 超打 素材等の出所 オリジナルサポートセンターよりそれも私だ様のアイコンを指定しています。
https://w.atwiki.jp/keikenchi2/pages/586.html
ここに一組のタブンネの親子が居ます お母さんタブンネに、二匹の子タブンネちゃん おてんとうさまのしたで、自分たちのおうちでおひるねしているようですね すやすやすやすやと眠っている子タブンネちゃん、幸せそうですね 子タブンネちゃんを見守っているお母さんタブンネも幸せそうに微笑んでいます 子タブンネちゃんの頭をそっとなでてあげています そんなタブンネの親子を一人の男の子が見つけたようです お母さんタブンネは男の子に気が付き、優しく微笑み手を振りました 男の子はタブンネの数を指折り数えて、そしてモンスターボールに手をかけました 「でておいで、オーダイル」 オーダイルと呼ばれたポケモンはその凶暴そうな風貌とは裏腹に、出てきた瞬間すぐに男の子に頬ずりを始めました どうやら甘えん坊な性格のようですね 「はは、オーダイル、くすぐったいよ」 男の子もそんなオーダイルを拒絶するわけではなく困ったような笑顔を浮かべながら頭をそっとなでてあげました そんな様子を見てお母さんタブンネもニコニコと笑っています 「オーダイル、タブンネにアクアテールだ」 男の子はそう静かに言うとオーダイルはすぐにタブンネの方に振り向きその尻尾に水をまとい攻撃しました 子タブンネには当てていないところが一種のこだわりを感じさせますね 顔面にアクアテールを喰らったタブンネは「ミボォ!」という短い鳴き声と共に後方に吹き飛ばされてしまいます 大きな木に衝突し、その場に崩れ落ちるお母さんタブンネ、その隙に男の子は二匹の子タブンネを掴みあげました 目を覚ました子タブンネは自体をいまひとつ飲み込めていないようですが、遠方に見える母タブンネを見つけて不安そうにミィミィと泣きだし始めました 次第にその鳴き声は大きくなっていきます 母タブンネはすこししてからそれに気づき、こちらに駆けよってきます 目に涙をためて返してくれと足元にしがみついてきました 男の子とオーダイルはニヤニヤと笑っています そして一匹の子タブンネを上空に放り投げました 子タブンネは柔らかく宙を舞います 「オーダイル、ハイドロポンプ」 そう言われた瞬間オーダイルは高圧の水流を口から発射し、宙を舞う子タブンネに当てます 子タブンネは吹き飛ばされ、先ほど母タブンネが衝突したのと同じ木にぶつかります しかしその四肢はあり得ない方向に折れていて、胴体は文字通りペチャンコになっていました 口から血反吐を吐きだしうなだれるタブンネ、すでにこの世にはいないでしょう 母タブンネはそれを見た瞬間「ミィヤアアアアアアアアアア!!」と叫び声をあげました そして男の子に向かい捨て身タックルをしてきたのです 男の子は身構える気配すらありません、むしろその不格好な捨て身タックルを笑っていました タブンネが近くに来た時それをオーダイルが受け止めました いくら捨て身タックルと言えどそれを使うポケモンが貧弱では意味がありません 受け止められ尻もちをついた母タブンネにオーダイルのアクアテールが炸裂します 再び吹き飛ばされ木に激突する母タブンネ、学習しませんね 弱り切った母タブンネを余所に男の子は残りの子タブンネの下半身をまさぐりました ポケットから筒状の物がいくつも連なったもの、爆竹を取り出しお尻の穴に入れようとしました しかしいざ入れようとするとそこは不衛生極まりない場所でした ツンと臭う排泄物の臭いに思わず男の子は鼻を押さえます これはとても無理だ、と思ったその時ふいと前の穴に目が行きます この子タブンネちゃんは実は♀だったのです 男の子はこれは好機と思いぐいぐいと力の限り爆竹を押し込んでいきます ある程度はいったら準備OKです、男の子はライターで爆竹に点火しました 導火線はじりじりと短くなっていきます 男の子はその場に子タブンネを置きオーダイルと一緒に距離を置きます そしてそれに気づいた母タブンネは子タブンネに駆けよりますが── 残念ながら手遅れだったようです、爆竹は音を立てて子タブンネちゃんの股の間で発破しました 「ミビャアアアアアアアアアアアア!!」という大きな叫び声をあげる子タブンネちゃん、爆竹の発破音にも負けていません そして一通り発破し終わるとそこには無様な下半身をしてピクピクと痙攣している子タブンネちゃんが居ました お母さんタブンネはその子タブンネを抱きかかえ涙を流します 悲痛な泣き声を聞きながら男の子とオーダイルはおなかを抱えて笑っていました その時です、コヒューコヒューという弱々しい呼吸音が聞こえてきました なんとその子タブンネちゃんはまだ生きていたのです それに気づいた母タブンネはすぐさまいやしのはどうを撃ちます 泣いてなんかいられない、そう決意したような眼でした いやしのはどうでだいぶ楽になったのか呼吸は落ち着き子タブンネの顔に笑顔が戻りました 母タブンネが傷がある程度ふさがってきたと思ったその瞬間青く巨大な足が子タブンネちゃんの顔を踏み潰しました 骨と柔らかい何かが潰れる音が静かになります 子タブンネちゃんは再び数回痙攣した後失禁し、その生涯を終えました れにはたまらず男の子も木に手を当て苦しそうに大笑いしています。 オーダイルは汚れた右足を草で拭くように軽く擦りながら男の子の方へ戻って行きました 「御苦労さま、オーダイル、帰りにヒウンアイスを買ってあげるよ」 喜んでいるオーダイルと共に男の子は去って行きました 母タブンネはその姿をただ見ていただけでした 男の子はまた次のタブンネを探しています、新しい遊びをするために もしかしたら、次に来るのはあなたの街の近くの草むらかもしれません
https://w.atwiki.jp/karensenki/pages/30.html
藤原 絢毘 (ふじわら あやひ) 高天原世界の「精神」の具現。概念や理に近い存在。 底から出る事は極めて稀であるが、出てしまった時の影響は測り知れない。 プロフィール 身長 175cm 体重 61kg 誕生日 8月21日 出身地 修羅の国・深淵 肩書き 瓦落塵芥の王 好物 とんかつ 「ダメだよ、私の名前を口にしたらね」 「一人は寂しいものだよ。本当は、支穗や皆と過ごしたいのだけどね。私の業が、それを許さないのさ」 「君は…駄目だね。修羅の国へおいで」 「君は自分の心に勝ったんだ。誇っていい」 「クフフフ、自らの闇に圧し潰されるがいい…!」 人物 特徴・性格 修羅の国の地底奥深くのゴミ捨て場のような場所「底」に巣食う存在。 神魔戦争により生じた「淀み」と呼ばれる魔力の残滓や戦争で死んだ人々の無念や怨念など、様々な物が寄り集まって生まれた。その悍ましさは魔族ですら直視できないほどであり、高天原や魔界を含んだ世界全ての共通認識として「姿を見てはいけない」「名前を知ってはいけない」「闇雫に触れてはいけない」の三禁があり、これを侵したものは絢毘によって捕えられ底に引きずり込まれてしまう。 神々の心に闇がある限りその身が亡びる事はなく、今まで何人も彼女に挑んでいるが、その悉くが絢毘に辿り着く事もなく闇に沈めている。唯一支穗のみが生きて辿り着き、その結果として彼女と契約を結び地下に封じる事に成功した。支穗曰く「友達」。 極めて強大な力を持ち、その動向は暗部によって常に監視されている。彼女自体に征服欲や世を紊す悪意はないが、彼女の行動の結果生まれる闇雫の影響が大きい為、修羅の国の底に自ら留まっており、正当な理由と賢人会議の許可なく出る事を許されていない。前述の三禁は、彼女を見て負の感情が爆発しないようにするためと、彼女の存在を知る事で闇雫に手を出す事が無いようにするためと、闇雫に手を出しそうな心弱き者を底に捕えて離さない様にするため。 幼い頃の桃曄は修羅の国下層の地割れの裂け目から絢毘を見てしまったが、辛うじて生き延びた。その時に刻み込まれた恐怖が今も桃曄の脳内にこびりついている。絢毘曰く心が綺麗だから見逃した、とのこと。 とても寂しがりであり孤独が苦手。底で一人ぼっちで過ごしており、寂しくてたまらないが、自分の存在が世界や他者に与える影響を理解しているため、一人で様々な娯楽に興じながら暮らしている。時折底で自然発生する生き物と戯れているが、彼女の膨大な魔力に中てられてすぐに消滅してしまう。 先端が鴇色に染まった檳榔子黒色の長髪をしている。瞳の色は金糸雀色。顔の左側に大きな痣がある。 戦闘能力 特異な魔力を持っており、彼女の血を混ぜて魔法を発動する事で凄まじい威力を引き出す事が出来る。 彼女の魔力が使った後に生じる残滓「闇雫」は手にした者に絶大なる力を齎すが、引き換えに心と魂が黒く染まってしまい、闇雫なしでは生きられなくなるほどの依存性に苛まれることとなる。黒く染まってしまった者は絢毘の声が聞こえ、その子らもまた後世に渡って連綿と続く呪いを受ける事となる。その為、それに触れる事は高天原でも魔界でも固く禁じられている。修羅の国には魂が黒く染まってしまった者が多い。誰もこの闇雫が発生する事を止められず、それが彼女が底にいる理由になった。 身体能力も閑佳や天元、佳聯らと並びうる程。戦闘技術もとても高い。閑佳曰く「見た事のない戦い方で非常に興味がある」。柔軟性に富んだ体から繰り出される体技は奇想天外であり、武術を修めている者ほど戸惑う。 能力 闇ある者の心の中に姿を現す事が出来、その者に宿る負の感情を増幅させ心を闇に捉える能力を持つ。闇に囚われた者は心に打ち勝たない限り、永遠に絢毘の「鎖」に囚われてしまう。誰しも何かしらの負の感情を抱えている物であり、これに完全に打ち勝つことはどんな武芸者でも難しい。 心身を鍛えていない者やそもそもの魔力が弱い者は彼女の姿を見るだけでその者の負の感情が呼び起され増幅してしまい、その身を闇に染めてしまうことになる。 この能力を使用する事で高天原で生まれた危険な人物を呼び寄せ、修羅の国に留めている。その為、余所から修羅の国へ来る者は、例外なく心が弱い。修羅の国を出る事が出来る者は、基本的に自らの心の闇に打ち勝つことが出来ている。桃曄も神連も、路考やあの蘭麝ですらもそれは例外ではない。 神器 いずれも、底に溜まった塵芥の中で生成されたものである。 鎖鉄球「生贄の鎖」 無限に伸びる鎖に繋がれた呪いの鉄球。左手の籠手から鎖が伸びている。 籠手は鎖鉄球を弾丸の様に射出する事が出来る機構を備えている。 大斧「断界」 巨大な心臓を中心部に備える両刃の大斧。右手の籠手から伸びた鎖と繋がっている。 あらゆる「境界」を割く斧であり、武器自体が発する怖気に中てられて発狂する者もいる。 その心臓の脈動は魔力の暴走を齎す。
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/1057.html
● 喫茶リゾナント。 普段は店主のさゆみが腕を振るい客をもてなすこの店。とは言ってもその機会はめったに訪れないが。 今日はさゆみが朝から所用で出かけているため、同じく学生という立場から離れている春菜がキッチンに立っていた。 あまり客の訪れることはないリゾナントだが、今日に限ってはそのほうが幸せなのかもしれない。 春菜の料理のセンスは、絶望的だった。 からんからん。 さっそく朝から犠牲者第一号、もといお客様の登場に腕撫す春菜。 だがその人物の顔を見た途端、なぁんだ、という言葉が思わず漏れてしまう。 「なぁんだ、って何。衣梨もお客さんやろ」 「だって、生田さんお客様としてきたわけじゃないですよね」 春菜の反応に不満げなのか、それとも店に春菜しかいないことに不満げなのか。 ともかく学生ならば学校に通っているべき時間に現れた衣梨奈は、店の奥のテーブル席に座ると、鞄から取り出した音楽プレイヤ ーを取り出してヘッドホンを被る。あっという間に一人だけの世界の出来上がりだ。 別に互いに仲が悪いわけではない。 ただ、互いに積極的にコミュニケーションを取ろうという仲でもなかった。 特に、このような二人きりの状況においては。 ぱら、ぱらと常連客が来るものの、基本的には閑古鳥。 そんな状況に、春菜が動き出す。目を閉じてヘッドホンの中の音楽を追う衣梨奈の前に、オレンジジュースが差し出された。 「生田さん、何聞いてるんですか?」 「ん…」 春菜の存在に気付いた衣梨奈が、ヘッドホンを外し、お気に入りのアーティストの名前を出す。 だが、いかつい漢字で構成されたいかついアーティストは、春菜の興味の外だったようだ。一通り話を聞くと、すっとその場を離れ てキッチンへと戻ってしまう。 それを見た衣梨奈は再び、ヘッドホンを装着して音楽に没頭していった。 緩い時間が、ゆっくりと過ぎてゆく。 さすがに退屈した春菜が、キッチンの裏手から数冊の漫画本を持ち込んだ。 流行らない喫茶店には必需品の暇つぶしアイテムだ。 その様子が、ちょうど衣梨奈の視界に入ったようで、その視線は春菜が開いた漫画本に注がれていた。 そしてヘッドホンを外し一言。 「その漫画、面白いと?」 「あの、これはですね…」 自らの手にしている漫画の魅力について、滔々と話し始める春菜。 普段漫画を読まない衣梨奈の顔に「わけわからん」の文字が浮かぶまでにそう時間はかからず、話が一区切りついたのを見計ら って再び音楽の世界へと帰っていった。 決して仲が悪いわけではない。 ただ、良くもない。そしてこれは彼女たちにとって当たり前のことだった。 里保と衣梨奈のように互いに救い救われた間柄でも、遥と春菜のように特殊な環境下で共に過ごした間柄でもない。 確かにリゾナンターの仲間同士ではあったが。それ以上でも、それ以下でもなかった。 それから再び、静かな時間が流れていった。 聞こえるのは春菜が漫画をめくる音と、衣梨奈のヘッドホンから漏れ聞こえる音だけ。 目を休めようと春菜が衣梨奈のいるほうを見ると、手前に置いてあるグラスが空になっていた。 新しい中身を注ごうと、冷蔵庫から取り出したオレンジジュースを持って衣梨奈の元へ向かおうとした。 その時だった。 衣梨奈の座る席の、窓越しに見える風景。 そこに、一人の女性が歩いているのが見えた。 春菜の視線は、その女性をすぐさま捉える。 ふらふらと、足取りも覚束ないまま歩いているその女性。 着ている服はよれよれで、黒いロングの髪も乱れていた。だが、春菜が彼女に気付いたのはその異様性からではない。 「わ、和田…さん?」 彼女は。 数か月前に春菜がふとした偶然から言葉を交わした人物だった。 そして、その時に再会を約束した相手でもあった。 メルアド交換までしたものの、春菜の送ったメールが返ってくることはなかった。 忙しいのかもしれない。そう思いつつ、春菜自身も日々の業務に追われて顧みることはなくなってしまったが。 和田彩花。 彼女は春菜に、そう名乗っていた。 まるで絵画から抜け出したかのような、美しい女性。 しかし、春菜が今しがた見かけた彩花はまるで別人。 通りがかった姿を見ただけで、魂が抜けてしまったかのような印象を叩き込まれた。 明らかに、尋常ではない。 「生田さんごめんなさい!ちょっとお留守番しててください!!」 「え、ちょ、ちょっとはるなん!!」 言葉と同時に、体が動いていた。 春菜の慌てた様子に目を白黒させる衣梨奈を余所に、春菜はそのまま店を飛び出してしまう。 とにかく、和田さんを捕まえないと!! 何故彼女があんな風な姿で徘徊していたのか。なぜ彼女を捕まえないといけないのか。 春菜にはわからなかった。けれど、直感が訴えかけていた。。 今彼女を捕まえないと、もう二度と「彼女」に会えなくなってしまうかもしれないと。 投稿日:2014/08/18(月) 11 31 30.03 0 back 『リゾナンター爻(シャオ)』 08話 next 『リゾナンター爻(シャオ)』 10話