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ナズーリン3 Megalith 2011/11/22 「いやはや、いつも助かるよ。男手は地味に必要なものだからね」 「これくらいお安い御用だよ。むしろ楽しいし」 里で買い物をして、メモを持つナズーリンと荷物持ちをしている○○。日ごろよく見かける光景だ。 一部の店主達はまるで夫婦だとはやし立てるが、お互いそんなもんだと達観しているため好意として受け取っている。 そしてある店のところに来ると○○は目を輝かせる。 「あ、あのさ、ナズ?」 「ああ、分かってるさ。買うものは全部買ったから、遅くならないうちに帰ってくるんだよ」 ナズと分かれて○○は香霖堂の中に足を踏み入れる。 相変わらずよく分からない物がごちゃごちゃと置かれて、少し埃臭い香りが鼻につくが、この匂いが○○は好きだ。 「霖之助さーん、おじゃましますよー」 「ああ、ごゆっくり」 奥で文々。新聞を読んでいるここの店主は○○の来訪に軽い返事をしてまた新聞に目を戻す。 そんな中彼はある一角、骨董品が並べてある場所に足を進める。数少ない○○の趣味である。 高額な目利きはできないものの、出来のいい一品を見つけることにはそこそこの力がある○○。 ある宴会のときに彼の目利きはナズーリンから分け与えられたものじゃないのか、とそこから少々下世話な話に逸れてしまったが 当人である二人は皆の想像に任せると、あっさり受け流した。 今回はそんな良い品物はないか、としばらく物色をしていた○○はある茶器の前で足を止めた。 暖かみのある、それで純朴な湯呑みを見つけた。しばらくそれに目をとられていたがふと頭をよぎったものがあった。 (そういえば、ナズーリンに似合いそうだ。この湯呑み。渡してあげたらよろこぶかな……) そう思い立ち、○○は霖之助と交渉することにした。 「すみません、この湯呑みいくら位ですか」 「どれどれ……。相変わらず陶器に関しては目利きがいいね。そうだな、値段は――」 「……ぐぅ、今の手持ちでは足りませんね。もう少し勉強することはできませんか?」 「いやいや、これでもそれなりに譲歩はしているよ? うちに来る者の中ではちゃんと代金を払ってくれる大事なお客様だからね」 「うぅ……。すみません、今回は諦めますが、そのうち取りにきます」 「分かった。ではこれに○○推薦と値札でも掛けておけば魔理沙が持っていくかもね」 「あはは……止めてください……」 仕方なしに香霖堂を後にする○○、命蓮寺に帰る道すがら考え続けた。 (うーん、あれは是非とも手に入れたいんだが、ナズから貰うおこづかいじゃあと半年くらい溜めないと…… それじゃ間違いなく魔理沙が持っていってしまうだろうしなぁ……。聖に相談してみようかな……) ◆ ◆ ◆ それからしばらく日にちが経った命蓮寺。廊下を歩きながら○○を探すナズーリン。 「ふむ……、最近○○はどこへ出かけているのやら。聖に聞いてみても笑顔ではぐらかされてしまうし、別段悪いことをしているわけでもなさそうだ。 しかし、一度気になってしまうとダメだな。何をしても彼のことが頭から離れん。ちゃんと話をつけるべきか……」 そんなことを考えつつ歩いていると前から寅丸 星が歩いてきた。駄目元でいいか、とナズーリンは彼女を呼び止めた。 「ちょうどいいところにご主人。○○の行方を知らないかい?」 「ふぇぇっ!? し、知りませんねー。どっかお使いにでも行っているのではないですか……?」 ……まったくこの主人は隠し事に弱くて仕方が無い。もう少しポーカーフェイスというものを身につけてほしいとナズーリンは思いつつも 足がかりを見つけたのは幸いとしてもう少し彼女の証言を揺さぶることにした。 「おやおや? その動揺ぶりからはまったく彼の行方を知らないという訳でもなさそうだ。もしかして○○はいけないことに手を出して……」 「そ、そんなことはありません! 彼は健全です! むしろそこまで思われている貴女の方が羨まし……ハッ!?」 「ふむ、どうやらご主人は○○が何をしているか詳しく知っているようだ。ちょうど居間に近い。ゆっくりお茶でも飲みつつ話し合いをしようか?」 「あぅぅ……すみません○○……私が至らないばっかりに……」 しょぼくれる星を連れて軽い注意と共に彼のことを聞きだそうと居間に向かった。 「いらっしゃいま……うえぇっ!? ナ、ナズーリンっ!?」 「おやおや、お客様に対してその反応は無いんじゃないかな?」 里の一角、とある茶店での会話。じゅうじゅうとおいしそうな音を立てているたこ焼きをくるくるとひっくり返しながら驚いている○○。 作務衣姿もなかなか……と余計な方向に思考が向かう前にナズーリンは彼に疑問を投げかけることにした。 「で、こんなところで副業に勤しんでいるとはね……。ご主人を問い詰めたらあっさり白状してくれたよ。さて、これから弁明を聞こうと思うのだが?」 「はぁ、分かったよ。もう少ししたら休憩時間に入るからそこで話をしよう」 じゃあ、奥の席で待っている、ついでにたこ焼きと飲み物を二つ頼むとナズーリンは店の中へと消えていった。 「さて、何故こんなところで○○はバイトなぞしていたのだ? 私に話を通してくれればおこづかいの値上げも視野に入れたのだが?」 「そ、それは、できれば自分の稼いだお金で手に入れたかったものがあってさ、今日ちょうどその金額が溜まったから買ってこようかと」 少し奥ばった席でたこ焼きをはふはふと食べながら話をする二人。 どうやら詳しい事情を聞いているらしい店の若い女性従業員陣はニヤニヤしながら二人の状況を楽しんでいる風である。 「ほぉ……。ところでそれは私がついて行ってもいいものなのかな? ああ、春画を買いたいというなら謹んで辞退させてもらうが」 「はぁ……。できればナズーリンには内緒にして買いたかったものなんだけどなぁ。いいや、手間が省けたと思えば」 「それじゃ、仕事が終わるまで私はしばらく時間を潰してくるよ。だいたいの時間になったら戻ってくるさ」 かたりと、席を立ち店を後にするナズーリン。○○もまた焼き場に戻ってたこ焼きを焼き始めた。 そうして軽く日が傾きかけた辺りで、二人は合流し、香霖堂に向かった。 香霖堂に着き、○○は店主である霖之助に声を掛け、あの湯呑みを現金と引き換えに渡してもらった。 「はい、これナズーリンに」 「これは……」 「本当はちゃんとプレゼントとして渡してあげたかったんだけどね。バレてしまったんじゃしょうがないし」 「ふふふ……それでもうれしいことには変わらない。ありがたくいただくとしよう」 大切な宝ものを扱うようにぎゅっと胸に抱くナズーリン。その笑顔が見られただけでも胸が高鳴ってしまう。 「おいおい、お二人さん。あんまりここで愛を育まれてもこっちには毒にしかならないよ。それにここから命連寺は遠い。 遅くなる前に帰った方がいいんじゃないかな?」 微笑ましいものを見せてもらった、と言わんばかりの表情をして二人を冷やかす霖之助。 人目を憚らずイチャついてしまったことに少し顔を赤くしながら、またいいものがあったら買いに来ますと言って香霖堂を後にした。 ◆ ◆ ◆ 命連寺に帰ってきて夕飯を食べた後、いつもの通りにナズーリンと一緒にお茶を飲むことにした。 「ああ、そうだ。私の方からも○○に渡したいものがあった。どうぞ」 ことりと置かれたものは先程ナズーリンにあげた湯呑みとそっくり、というよりもどう見ても同じものとしか思えないものだった。 「…………? あれ、これナズーリンにあげたものじゃ?」 「いや、こちらは私が里で見つけ、○○に似合いそうだと思って取り置いて貰った品だ。 まさか○○も同じものを見つけていたとは分からなかったが」 二つ同じ湯呑みにお茶を注いでまったりとくつろぐ。 「うん、おいしい。それに同じ湯呑みってさ、あの、まるで……夫婦みたいだね」 「ああ、私もそう思った。いいな、君と夫婦か……いつかこの指に似合う指輪、くれるんだろ?」 「もちろん」 ぽかぽかと暖まった身体。くいくいとナズの袖を引いて彼女を見つめる。分かっていると言わんばかりに○○の胸に飛び込む小さな賢将。 「あったかいな……」 「ナズ、良い匂いがする」 きゅっと抱きしめてナズーリンの香りを胸いっぱいに吸い込む。 指で梳くとサラサラと合間からこぼれる絹糸のような柔らかな銀髪。 「○○、何度でも言うけれど、私は君のことが大好きだ」 「俺だってナズのこと、大好きだよ」 ○○の背に手をまわしてもっと、もっと彼と密着する。 こつんと額をつっくけてお互いに笑顔を見せ合い、心が満たされる。 愛おしい。とても愛おしい。自然に唇を重ねて愛を交換しあう―― 「なぁ、○○」 「ん……」 「こんな幸せが長く続くといいな……」 「続くさ……きっと」 Fin 35スレ目 347 無縁塚 ナズーリンハウス ナズーリン「風邪をひいたしまったぞ…ズビ」 ナズ「こういう時一人暮らしは辛いところだな…誰も面倒見てくれる人がいない」 ナズ「lineで連絡いれとくか…風邪引いたので今日は行けませんっと…」スッスッ ナズ「薬を買いに行きたいが苦しくて行けそうもないな…ゴホッゴホッ」 ナズ「ゴホッゴホッ…ううっ…うーっ…苦しい…苦しいぞぉ…」ゼェゼェ あー…ひんやりして気持ちいいぞ…誰かがタオルを乗っけてくれたのか… トントントントン グツグツ 誰かが料理してる音が聞こえるぞ… ○○「起きましたか」 ナズ「○○じゃないか…勝手に乙女の家に上がるなんて感心しないなゴホッゴホッ」 ○○「乙女なんてどこにも見当たりませんけどね」 ナズ「これは手厳しいゴホッゴホッ」 ○○「もう少しで飯できますからゆっくりしててください」 ナズ「すまないね…ハァハァ」 ○○「お粥できましたよ、食べられますか」 ナズ「あーんして欲しいところだが贅沢は言えないね」 ○○「いいですよ、ほらあーん」 ナズ「む、むぅ…どういう風の吹き回しだい?や、やめたまへ恥ずかしいじゃないか」 ○○「羞恥心あったんかいお前」 ナズ「あるよ失礼だな」 ○○「時間潰しの為にDVD借りてきましたよ」 ナズ「ほほう、助かるね。何を借りてきたんだい?」 ○○「トム・ヤン・クンです」 ナズ「病人にアクション見せんな」 ナズ「うーっ…うーっ…」ゼーゼー ○○「大丈夫か?」 ナズ「苦しいぞ…苦しいよぅ…」 ○○「…せっかく聖住職のもとで修行しているというのに、こんなときホイミのひとつもできんとはな…」 ○○「私にできるのは手を握って元気づけてあげることぐらいです」ギュッ ナズ「うーっ…うーっ…」 ○○「できることならかわってやりたい…」 ナズ「…ぅ」 ナズ(眠っていたのか…今何時だろう…ん…誰か手を握って…) ○○「…」 ナズ「やぁ…」 ○○「なんか飲むか?」 ナズ「頼むよ」 ○○「えーっとペカリは…」ガサゴソ ナズ「君、タンス漁ってないだろうね…まぁ看病のお礼だ、一枚くらい見繕っても構わないよ」 ○○「…誰がお前の下着なんているかドラゴンラナすんぞ」 ナズ「フヒヒ」 ○○「はぁ…眠ってる間はあんなかわいいのになぁ…起きたらこれだもん」 ナズ「!」 ○○「あったあったほらペカリスェット…ん?」 ナズ「…うー///」 ○○「顔赤いぞ?ぶり返してきたか?」 ナズ「な、なんでもないよ///」 ナズはちょっかいとか悪戯とかして気をひこうとする構ってちゃんだけど いざ向こうからアクション起こされるとタジタジするタイプという俺の妄想 35スレ目 399 ナズーリン「君ってよく命蓮寺にいて平気だな」 ○○「と、いいますと?」 ナズーリン「私が言うのもなんだけど美少女美女揃いの中で男一人(雲山除く)で生活してて、劣情を催したりしないのかなって」 ○○「ホント『なん』ですね」 ナズ「ホント失礼なやつだなたまに思うけど私のこと嫌いなのかな」 ○○「嫌いだなんて一言も言ってないだろこうやって軽口言えるのは賢将ぐらいなんだから」 ○○「喧嘩するほどなんとやらって、賢将との関係は大事だよ」 ナズ「……っ!…っと、君が私に劣情を催していたとはやれやれ。言ってくれれば相手するくらい吝かではなかったというのに」 ○○「好きだとも言ってませんけどぉ」 ○○「まぁ、そうですね。そういうことに関してはまだまだ『未熟』ですね」 ナズ「魔法使いだったのか」 ○○「誰が経験について語ったよ精神修業に関して未熟って言ったんだよ」 ナズ「じゃあ経験はある?」 ○○「まぁ人並みには」 ナズ「ふぅん…」 ○○「どうした?」 ナズ「い、いや?なんでもないぞ…」 ナズ「でも君そういう欲とは無縁だと思っていたよ」 ○○「所詮は雄だと言うことです。本能と言ってしまえばそれまでですが三大欲求ですから、切っても切り離せないでしょう?」 ナズ「えっ『切ってた』のか、なんか悪いこと聞いちゃったかな」 ○○「部位じゃねぇよ」 ナズ「じゃあ好みのタイプとか」 ○○「そうですねぇ、自分の意見はハッキリ言ってくれるようの芯の強い女性ですかね」 ナズ「性格じゃなくて、ホラ」 ○○「えー…さすがに女性とそのような話をするのは気が引けますし…」 ナズ「まず君が私のこと女性として扱っているつもりでいるのに驚いたぞ」 ○○「そりゃぁ毎度俺の尻触れば色んな尊厳なくなるでしょ俺に原因があるみたいに言わないでください」 ナズ「例えば命蓮寺の中なら」 ○○「それ一番聞いちゃいけないやつでしょ」 ナズ「どーせ聖だろ?」 ○○「住職にそんや邪な気持ち抱いたりしませんよ!!」 ナズ「それ毘沙門天様にも同じこと言えんの?」 ○○「………い、言えないです…」 ナズ「正直というか嘘つけないというか」 ○○「ぶっちゃけると一輪さんのお体が結構好み…だったり」 ナズ「ダークホース!?」 ○○「スレンダーよりも多少ムチムチしてる方が好みで…」 ナズ「一輪体型に関しては結構コンプレックスあるから目の前じゃ言わないことをおすすめするぞ」 ○○「くれぐれも内密にお願いしますよ!」 ナズ「君は響子が好きだからてっきりロリコンだと思っていたんだがな」 ○○「俺を何だと思ってんだ」 ○○「そういう賢将はどうなんだよ、俺だけ言わせて不公平だ」 ナズ「え、や、やだよ言わないぞ」 ○○「言えよぉ」ヘッドロック ナズ「ちょっやめっやめてくれぇ///」 ぬえ「あいつらずっと縁側で話してんな」 一輪「仲良いんだか悪いんだか」 星「いいなぁ…」 35スレ目 413 ナズ「やあ君か。最近は寒暖の差が激しくて些か体に堪えるね。」 そうだなあ、たしかに最近風邪気味かも。 ナズ「それはいけないな。ほら、これをやるからちゃんと栄養をとるといい。」 お、チーズか? ナズ「何馬鹿なことを言っているんだ君は。チョコレートに決まっているだろう。」 ああそういえば今日は…もしかして ナズ「勘違いするな。ご主人や聖にも渡しているんだ。」 ああ友チョコとか言うやつ? いつからそんな風習が生まれたんだか。 ナズ「まあ普段から世話になっているからな。じゃ、私はもう行くからな。」 ありゃ行っちゃった。なんか足早に見えたけど気のせいかな? 星「あ、ここにいたんですね。探しましたよ。」 お、星か。 星「はいっ、バレンタインのチョコです!」 おお、ありがとう。 星「そうそう、先ほどナズーリンからチョコを貰ったんですよ。」 友チョコとか言うやつね。 星「そうなんですか?ほら、これ。人里で有名なお店のものらしいんですよ。私もお返ししないといけませんね。」 へえ、なかなかかわいいじゃないか。 星「聖にも同じものを渡してましたね。あ、聖といえば呼ばれていたのを忘れてました、すみませんがこれで。」 ああ。じゃあまた。 自室にて さて開けてみるか。おっ、星のは綺麗に飾ってあるな。これは美味しそうだ。 ナズーリンのは…さっき見たのに似てるけど不格好だな。ん?これは手紙か? 『こういうのはあまり慣れてないから正直うまく出来たとは思わない。だから…必ず、必ず感想を聞かせてくれ。いつか君のためになれるように。』
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さっきから随分と悶えているようだが」 ――声が、飛んできた。 まるで風鈴の音のように透き通った、大人びた女の声。 その突然さに、心臓は敏感に反応して飛び出しそうになる。 視界を塞いでいた手をどけるついでに目じりを拭い、上体を起こしあたりを見回す。 慌ててキョロキョロする僕が見つけたのは、植林された木が作り出す木陰から出て、こちらへと歩み寄ってくる女生徒の姿だった。 細い眉に切れ長の目、細い鼻梁と、薄めの唇。それらが絶妙のバランスで、色白の小顔の上に乗っている。 女生徒にしては長身である彼女が、その長い足で一歩一歩を踏むたびに、漆黒の絹糸のような髪が揺れる。 腰まで届くほどに伸ばした髪が、強い日差しを反射して、艶のある輝きを放っていた。 同年代の女子とは思えない。学生服を着ていなければ、大学生か社会人に見える。 可愛いというよりも、綺麗という表現が的確だろう。 その大人びた美しさに見とれてしまっていることに気付いたのは、彼女が僕のすぐ側までやってきて足を止めたときだった。 慌てて、僕は彼女から目をそらし地面を見る。 好きな子がいるのに、他の女の子に見とれる自分が、嫌になる。 「大丈夫か? 私に医術の心得があれば診てやりたいが、残念ながら無知なんだ。 保健室へ行くなら付き添うぞ? 腹痛ならトイレに行くという選択肢もあるな。 階段を下りてすぐのところが一番近いが、そこまで行けそうか?」 矢継ぎ早に問うてくる。女の子らしくない妙な口調が、やけに似合っていた。 「別に、体調不良じゃないんで、お気遣いなく……」 素っ気なく返す。タメ口にならなかったのは、大人っぽい見た目のせいだろう。 僕は再び、その場に寝転がる。そのときにちらりと見えた彼女の顔には、心配の色が浮かんでいた。 「本当に、大丈夫か?」 「大丈夫ですってば」 返答は短く、簡潔に。告げた声には苛立ちが籠もってしまったが、謝罪する気にはなれなかった。 目を閉ざし、寝返りを打って彼女に後頭部を向ける。耳に触れる地面の感触が、不愉快だった。 「……それならいいんだが、こんな直射日光が当たるところで寝転がっていると体を壊すぞ? 日光浴をするにはまだ暑すぎる」 話しかけてくる女生徒に、僕は答えない。ただ、いいから放っておいて欲しいと、背中で訴える。 だけど、その願いは伝わらなかったらしい。 汗まみれになった僕の背に、手が触れる感触が伝わってきた。 「ほら、汗だってこんなにかいてるじゃないか。一緒に木陰へ行こう?」 ああもう、うるさいな。空気読めよ。誰にも会いたくないから屋上に来たのに、なんで人がいるんだ。 僕は、黙りこくって無視を決め込むことにした。 そのうち根負けして、木陰に戻るなり屋上から出て行くなりするだろう。 そんなことを考えていると、背中から手の感触が離れていき、遠ざかっていく足音が聞こえてきた。 思ったより早く立ち去ってくれたみたいだ。奇妙な安堵感は、でも、長くは続かなかった。 また、足音は近づいてきたからだ。 すぐ近くまで来て、音は止まる。背中の向こうに感じる、人の気配。 そっと振り返ってみて、耐え切れずに溜息を吐いてしまった。 僕の隣で、女生徒は腰を下ろしていたからだ。ご丁寧に、鞄まで持ってきて。 訳が分からない。いい加減にして欲しい。 「何か用ですか」 「いや、別に」 「じゃあ何ですか」 「もう夏も終わりだろう? もうすぐこの日差しも浴びれなくなる。 そうなる前に、浴びておくのも悪くはないと思って。でも、日焼け止めだけは塗っておかないとな」 女生徒は鞄から日焼け止めのクリームを取り出すと、細い腕に塗り始める。完璧に居座るつもりらしい。 「そんなの、また来年になったら嫌ってほど浴びれるじゃないですか」 「うん、夏はまたやって来るね。でも、ここで浴びる日差しは今年で最後だ。私にとっては、ね」 蝉の鳴き声に包まれて聞こえた彼女の声は、なんだかとても哀愁を帯びているようだった。 僕は、思わず彼女の顔を見た。 眉尻を下げて笑む彼女の顔が、儚く憂いに満ちているようだった。 それでいて。 抗えない終焉を前にしたかのような表情は、とんでもなく綺麗だった。 僕に絵心があったなら、すぐにでも絵筆を握っていただろう。 胸が、締め付けられた。沢口のことを思うときとは違った切なさが、胸の奥で痛みを訴える。 「この広い屋上を独占するために授業をサボったんだが――」 そこで言葉を切ると、僕へと微笑みかけてきた。 たおやかな笑みはひたすらに無邪気で、優しくて、穏やかで。 目が、離せなくなる。 乾燥しひび割れたた心に、温かい湯が沁み入るように。 彼女の笑顔が、僕の苛立ちを胸に温もりを与えてくる。 「こうして、誰かと共有するのも堪らなく素晴らしいね。 一人だと、どうしてもよくない考えをしてしまうものだから、な」 綺麗さに目を奪われていたせいで、今まで気付かなかった。 彼女の瞼が腫れぽったくなっていて、両目が微かに充血していたことに。 その事実は、彼女への忌避感を、瞬時に反転させた。 きっと彼女は、僕と同じだったんだ。 何か辛いことが、苦しいことがあって、耐えられなくて。 誰もいない屋上に僕よりも早く来ていて、誰にも見られないよう、一人泣いていたんだ。 僕が邪魔されたんじゃない。 僕が、邪魔していたんだ。 一人になるための彼女の空間に、土足で踏み込んでいたんだ。 そんな傍迷惑な邪魔者である僕を、彼女は気遣ってくれた。 それなのに僕はどうだ? 歩み寄ってくれた彼女を迷惑に思い、無視しようとし、邪険に扱おうとした。 八つ当たりだって分かっていたのに、そうせずにはいられなかった。 ――ああ、やっぱり最低だ。こんな男、フラれて当然だよな。 僕は、跳ね上がるようにして起き上がって彼女の瞳を真正面から見つめる。 黒真珠のような瞳を見つめるのは気恥ずかしかったけど、決して目を背けないようにする。 そんなことをしたら、本当にヘタレスパイラルから抜け出せなくなる気がした。 「あの、すみませんでした。その、僕……」 その優しい表情から、怒っていないことくらい分かる。 それでも僕は、自分が情けなすぎて、謝らずにはいられなかった。 僕の内心を知ってか知らずか、彼女は、必死で謝る僕の言葉を黙って聞いてくれていた。 想いを声にし、外に出す。 それに合わせて、胸に詰まったしこりや心を縛っていた鎖が消えていく。 心が軽くなり、靄が少しずつ晴れていく。 ようやく、気付いた。僕はどうやら、自分の心すら見えなくなっていたらしい。 みっともないところを見せたくないから、誰にも会いたくないと思いながら、本当は。 誰かと、話をしたかったんだ。 さすがに、初対面の相手に失恋の愚痴を告げることはできなかったけれど、話をすることで、楽になっていく。 彼女には悪いけど、今更ながら、ここに来てよかったと、思った。 ◆ 「そういえば、自己紹介がまだだったな」 謝罪を終えた僕を笑って許してくれると、彼女がそう口にした。 軽く咳払いをすると、改まって僕に向き直る。 「三年の、宮野明菜。射手座のA型で、元弓道部員だ。もう止めた身だが、時々顔を出させてもらっている。 趣味はゲーム。テレビゲームに限らず、カードゲームやボードゲームも好きだぞ」 どうやら彼女――宮野先輩はゲーマーらしい。 予想だにしなかった趣味に驚きつつも、僕は、弓を射る先輩の姿を想像する。 長い黒髪を束ね袴を纏い、鋭い眼差しで的を狙う。 張り詰めた弓以上に引き締まった表情から感じられる、深く強固な集中力。 あまりにもハマり過ぎていた。カッコイイ。 危うく妄想に浸りそうになるが、先輩に自己紹介をさせて僕がしないわけにはいかない。 「二年の米倉啓祐です。帰宅部で、『マクガフィン』って喫茶店でバイトしてます。 趣味、って程じゃないかもしれないんですけど、結構料理とかしますね」 無難に纏めた自己紹介を終える。すると、宮野先輩は目を輝かせて僕の顔を覗き込んできた。 「料理が出来る男の子とは素敵だ! バイト先でも調理したりするのか?」 「いえ、ウェイター業務なんで、注文取ったり料理運んだりレジ打ったりですね」 「おや、そうか。ならば米倉くんの料理を頂くには、直接お願いしなければならないというわけだね?」 期待の色が、宮野先輩の顔に広がる。クールな人かと思っていたが、意外と感情が表に出るタイプのようだ。 「ええ、まあ。僕に出来るものなら、何かご馳走しましょうか? あまり期待されると困りますけど」 「いいのか? だったら是非お願いしたい!」 僕の申し出に、先輩は大きく頷いて即答する。すごく大人っぽい見た目をしているのに、その仕草はやけに子供っぽい。 そのギャップが、可愛さを強く演出してくる。 「何かリクエストとか、あります?」 速くなりそうな鼓動を抑えるようにして、そう尋ねるのが精一杯だった。 「米倉くんの得意料理を食べたいな。嫌いなものは特にないから、大丈夫だぞ」 「分かりました。じゃあ、明日にでも作ってきますよ。昼休みに、屋上に持ってくればいいですか?」 さっきのお詫びとお礼も兼ねるつもりだし、早いほうがいいだろう。 「うん、構わないよ。ふふ、明日のお昼が楽しみだ」 心底楽しみにするように、先輩の表情が満面の笑みになる。そこまで楽しみにされると、嬉しい反面恥ずかしい。 「ところで、宮野先輩」 だから話を摩り替えることにしたが、すぐに話題が思いつかない。 「……射手座だから、弓道やってたんですか?」 咄嗟に口にしてしまったのは、しょうもない質問だった。 「いや、違うよ」 そんな質問にも、先輩は笑って応じてくれる。 「あるゲームに、弓を使うキャラがいてな。そのキャラに憧れたのがきっかけだ」 楽しそうな先輩の答えも、なかなかにしょうもなくて、僕は笑ってしまった。 残暑の下で、穏やかな雑談が交わされる。 日差しは変わらず強くてクソ暑いし、蝉は相変わらずうるさい。 それでも、笑うことができた。 まだ、沢口と顔を合わせるのは辛いけど、何を話せばいいのか分からないけど。 チャイムが鳴ったら教室へ行こうと、思う。 315 : ◆HdhN8f97gI :2008/09/09(火) 20 34 54 ID zyCKtWkT 以上、投下終了です。 キャラ紹介も書いてみました。よろしければ使ってやってください。 米倉啓祐(よねくら けいすけ) 高校二年、帰宅部。 真面目で人がいい。繊細で女々しい。結構ヘタレ。 趣味は料理で、喫茶店『マクガフィン』でウェイターのバイトをしている。 線は細く、身長は男子生徒の平均くらい。 宮野明菜(みやの あきな) 高校三年、元弓道部員。射手座のA型。 クールに見えるが、感情が表に出る。割と子供っぽかったりする。寂しがり。 趣味はゲーム。テレビゲームで徹夜もしばしば。 黒髪長髪。女子にしては高身長。大人っぽい外見。 駄文のくせに長文ですみませんorz 113で出てきた夏祭りと、 236の喫茶店を登場させてみました。 今後も投下していけたらいいなぁ… BACK INDEX NEXT
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玄霧弦耶〇自宅 〇バンバイク用ガレージ 〇陽炎用整備社寺 〇お料理教室 〇おともネコリスのロコト(スケール1) 〇バンバンジーバイク(スケール2) 〇玄霧火焔 階川 雅成〇自宅 〇乾坤用整備社寺 久藤睦月〇自宅 〇整備社寺(ガレージ) 〇久藤流男装女装(技術)(スケール1) 〇久藤百佳 瀬戸口まつり〇自宅 〇デューラーの整備社寺 〇高之とまつりの結婚記念指輪(スケール1) 〇瀬戸口高之 〇ツヨソー 〇皮革衣類ブティック”フォレストハート”(2/24追加) 九条イズミ〇自宅 萩野真澄〇自宅 佐藤ぶそあ〇自宅(2/24追加) ニム〇自宅(2/24追加) 玄霧弦耶 〇自宅 名前:頑丈な作りの広い我が家 スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 設定: 玄霧弦耶一家の住む家。家族が増えたこともあり、新築された。 一階はコガの部屋に、広めのリビングと大きい台所に風呂・トイレ。ロコトと千早のスペースはこちら。 二階に家族それぞれの個人部屋と夫婦の寝室に、予備の部屋が少し。となっている。 家族の要望が色々反映された憩いの我が家。 一般的な森国の家に比べて一階部分の入り口や通路はコガ用に広く作られ、4トン近い重量に耐えるために土台もかなりしっかりしている。 〇バンバイク用ガレージ 名前:バンバイク用ガレージ スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:バンバイク用ガレージ HP:0 設定: 玄霧の自宅に併設されたバンバイク用のガレージ。簡単な整備道具や手入れ用の道具などが置かれている。 設計段階からバイクと相談して作られており、内装などはバイクの好きなようにされている。 出入り口の開閉はバイクが操作することができ、バイクが「出撃の必要あり」と考えた時には玄霧に連絡が飛ぶようになっている。 それが必要であると玄霧が認識した際は承認サインを返し、行動を任せることが可能になっている。 〇陽炎用整備社寺 名前:陽炎用整備社寺 スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:陽炎用整備社寺 HP:0 設定: 玄霧の自宅に併設された騎機・陽炎用の整備社寺。 陽炎が現地で使用していた形に似せて作られており、ここで陽炎の手入れなどを行うようになっている。 日当たりのよいところに作られており、周囲には季節の花が植えられている。 天気の良い日には花に囲まれながら日に当たる陽炎の姿がよく見られ、稀に野心封印猫の千早やおともネコリスのロコトが一緒に日向ぼっこしている。 また、社寺や周辺の警備を陽炎が生成したカマクラボディが行っている姿も確認されている。 〇お料理教室 名前:お料理教室 スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:お料理教室 HP:0 設定: 玄霧の自宅に併設されたキッチンスタジオ。講師は玄霧で、藩王業務の一環として国民との交流を増やすため開催している。 いくつかのグループに分かれて簡単な調理が行えるように設備が整えられており、道具なども備え付けのものがあるため、身一つで着て料理を体験できる。 「包丁の使い方」といった初歩から、「記念日にお勧めの煮込み料理」といった手の込んだものまで、様々なテーマを事前に用意して参加者を募る形で開催される。 目玉としてはオーブンにも使えるピザ窯があり、お料理教室で使う他、玄霧家が時折使用している姿が見受けられる。 〇おともネコリスのロコト(スケール1) 名前:おともネコリスのロコト スケール:1 能力:C 種別:おともネコリス 用途:護衛?/しゃべり相手 HP:0 迷宮を抜けてB世界にやってきたときにいつの間にか同行していたおともネコリス。 玄霧はその子をロコトと名付け、家に住まわせている。 普段は家でのんびりしたり、コガと一緒にいたり、バンバイクと一緒にいたり、最近は騎機・陽炎と一緒にいることもある。 おそらくそれぞれから話を聞いて楽しんでいると思われている。 ネコリスにできることは大体でき、必要に応じてコパイロットになることすら可能だが、表立ってそういった場所に出たことはない。 〇バンバンジーバイク(スケール2) 名前:バンバンジーバイク スケール:2 能力:C 種別:超辛帝国機動兵器 仕様:変形バイク 主兵装:多目的ミサイル アイテム:なし 装備:変形機構 HP:2 解説:古代超辛帝国由来のスーパーマシン。 超辛帝国の血筋を引くもののみが操れる。 ほかにヘリ、タンクがあり、すべてそろえば合体も可能。 バイク形態では地上踏破能力のほか、空中を滑空、水中を移動など多岐な用途で活用できる 〇玄霧火焔 名前:玄霧火焔 スケール:3 能力:C 種族:天使 職業:野菜乗り スキル:設定可 アイテム:設定可 装備:設定可 HP:0 次のアイドレス: <山岳騎兵><コガ><青竜刀><天使><アニメ、バンバンジー><零式突撃槍> 解説:野菜に乗るのが楽しくなってしまったぼんくら王妃。自分で凶暴な野菜を育ててもいる。 階川 雅成 〇自宅 名前:飾り気のない一軒家 スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 設定: 階川雅成とその家族が住む家。ニ階建てである。 以前は階川敦子、階川柊と三人で暮らすための家として使われていたが、アポロニア経由での玄霧藩国襲撃事件が発生した際、全焼したので再建され、 その際には、新しい娘である階川柳にも部屋が割りあてられた。現時点では寝室は一つだが、いずれは娘たちが個室で暮らすことも増えるだろう。 土地には余裕があったため、間取りは全体的に広くとってある。特色は宰相府とのリンクゲートが秘密裏に設置されていること。 庭が広く、いつか友人であるビリーをここに招待するのが家主の夢である。 アイドレスシーズン5現在、妻や娘たちはマドリア世界にいると考えられるため、暮らしているのは階川雅成ただ一人。 〇乾坤用整備社寺 名前:乾坤用整備社寺 スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:乾坤用整備社寺 HP:0 設定: 階川家に併設された騎機の整備社寺。祀られている騎機の名前は乾坤であり、鋸山の旧名に由来する。 整備社寺としての機能、外観は、平安時代に設置されていたものの再現が多くなされているが、階川雅成は毎日ここを参拝しており、 玄霧藩国民が訪問することも増えていく場合、いずれは外観が少しずつ変化していくものと思われる。ただし、機能部分への接触は原則として禁止されている。 騎機用の日本刀が安置されているほか、ライドオン鎌倉時代に当時の民が咲かせた花によくにた花が植えられている。 名前:光勢号用ガレージ スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:人騎兵クーガー用ガレージ HP:0 設定: 階川家に併設されたファクトリーモデル人騎兵用のガレージ。 マドリアのミッション報酬として贈られたクーガーの光勢号が稼働状態を維持して保管されている。 ファクトリーモデルの人騎兵を整備するのは相応に手間とお金がかかるため、予算については国の許可を得て捻出している。 ここで局所的に培われた人騎兵整備技術は、持ち出し厳禁となっており、見張りがついている他、違反者には厳罰が課される。 久藤睦月 〇自宅 名前:庭付きの一軒家(二階建て) スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 久藤睦月、久藤百佳、久藤一華の自宅。玄霧藩国の共和国環状線の駅ビルから徒歩10分ほどの距離にある二階建ての一軒家で庭まで付いている。 一人暮らしをしていた頃の自宅を改装し、一階に広めのリビングとキッチン、トイレ、大人二人が十分に入れる浴室、百佳用にトレーニングルームもある。 二階は百佳と睦月の寝室(防音はしっかり)と一華の部屋、衣装部屋(3人分)、将来家族が増えた時の空き部屋がある。 〇整備社寺(ガレージ) 名前:整備社寺(ガレージ) スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:騎機(ゲオルクオーム)用整備社寺 HP:0 久藤睦月の自宅裏の空き地に建設された騎機(ゲオルクオーム)用の整備社寺(ガレージ) 屋根付きで広めの小屋で整備用の資材と整備エリアとは別に騎機が座れるようにふかふかのマットを敷いている箇所もある。 騎機が眺めて楽しめるように睦月が作ったプラモや買ってきたぬいぐるみの一部を棚に飾ったりもしている。 毎日欠かさずに睦月、百佳、一華の誰かが掃除したり、お供え物をして、失礼のないように大切にしている。 〇久藤流男装女装(技術)(スケール1) 名前:久藤流男装女装(技術)(スケール1):久藤流男装女装は久藤睦月と久藤百佳が趣味と実益から研鑽を積み重ねた男装術と女装術である。 この技術を習得した者は男装時・女装時に違和感を感じさせず、綺麗でカッコよく、或いは可愛く立ち振る舞う事で TPOに応じた適切な印象を相手や周囲に与える事が出来る。 具体的には化粧術と着こなし、立ち姿、身振りなど所作を工夫し、体型維持と姿勢をよくする為のトレーニング、 発声方法(女声、男声)の訓練でこれを実現させている。 このスキルの習得には日常生活を送りつつ、毎日2時間程度の訓練を続けて2年ほど掛かる。 次のアイドレス:<ピドキャンディ><エロカワ><しゅき><正気をなくして回避> 〇久藤百佳 名前:久藤百佳(個人ACE) スケール:3 能力:C 種族:天使 職業:歩兵 スキル:設定可 アイテム:設定可 装備:設定可 HP:0 解説: 久藤睦月の伴侶、かつては宰相府のパイロットだった。とても可愛く、時にカッコいい。 傍目に見ると麗しの美女だが、茶目っ気があり、旦那をからかって遊ぶ事もしばしば。 男装も女装も使いこなし、時に少年っぽく、時に少女のようにも振る舞う。 元職はパイロットだが、白兵戦能力も高く、かつて住んでいたアパートの管理番長を退けたこともある。 副官適正も高く、旦那の出張に自前の輸送車大隊を連れて駆け付けた事は記憶に新しい。 ※設定派生なし1/4緊急提出 瀬戸口まつり 〇自宅 名前:瀬戸口家の新居 スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 灼熱の宰相府から転居してきた瀬戸口家の新居。 木材と石材を使用したハーフティンバー方式は北国風シルエットが再現できる、と即採用された。 キッチンダイニングとつながったリビングは小上がりにして畳敷きの和室を広めにとり、二階には夫婦の寝室と子供たちそれぞれの部屋に予備の客室、と、できるだけ旧居の雰囲気を残すように考えたが、家族の要望も取り入れるように心がけた。 気候が全く違うので暮らしやすさにも気を配って内装外装を選んでいる。 庭には温室をおき薬草を集めて栽培している。 〇デューラーの整備社寺 名前:デューラーの整備社寺 スケール:3 能力:C 種別:付属建築(自宅用) 用途:騎機(デューラー)用整備社寺 HP:0 ドイツ型の騎機・デューラーのためのガレージ兼整備社寺。 庭をはさんで反対側の本宅と同じように外壁はハーフティンバー様式を模した装飾性の高い外観となっている。 個人犬士マメソーが自分で気に入ったものを集めて置けるように、整備道具や部品を集めた部屋とは別に整備士としての作業スペースを兼ねた個室を用意した。もちろん寝起きは本宅で行っている。 広い間口からデューラーが自分で出て前庭でひなたぼっこをすることもあり、子供達が集めたお花や植物がよく飾られている。 〇高之とまつりの結婚記念指輪(スケール1) 高之とまつりの結婚記念指輪(アイテム)スケール1 設定: 引っ越しを機に新調することにした揃いの結婚指輪。 生活の中でどうしてもつきやすい小さな傷などが目立たぬよう、地金の表面にヘアライン梨地加工が施され控えめに光を反射する。 引っ掛かりを排するよう地金に表面の高さを揃え埋め込んで据えられた、澄んだ明るい青色のアクアマリンは家族愛の石として二人の変わらぬ願いを示している。 次のアイドレス: <身代わりの指輪><正気に帰る><秘密のサイン> 〇瀬戸口高之 名前:瀬戸口高之 スケール:3 能力:C 種族:鬼 職業:オペレーター スキル:お耳の恋人 アイテム:設定可 装備:設定可 HP:2(黒) 次のアイドレス: <鬼><お耳の恋人><ツヨソ−><善師暗殺><地の母の迷宮><童子> 解説:宰相府につとめるオペレーター。昔は持てていたと言い張る。シオネに屈折した思いがある。既婚、養女がいる。 〇ツヨソー 名前:ツヨソー スケール:3 能力:C 種族:猫 職業:守護猫 スキル:設定可 アイテム:設定可 装備:設定可 HP:0 次のアイドレス: <厄除け><フェアリーよけ><日向ぼっこ猫で><守護猫><猫><猫耳> 解説:顔がツヨソーな猫で守り神などやってる。かなり有能だが仕事を知られることはない。けして。 〇皮革衣類ブティック”フォレストハート”(2/24追加) 名前 皮革衣類ブティック”フォレストハート” スケール:3 能力:C 種別:自宅付属施設 用途:服飾品販売 HP:0 設定: 宰相府で手芸品店を経営していた瀬戸口まつりが玄霧藩国に移って開いたブティック。 玄霧藩国で伝統的に用いられる皮革製品に刺繍などの手芸要素を組み合わせてまつり自身がデザインし、客の要望に沿ってのオーダーメイドも受け付ける。 刺繍糸はナニワアームズ産の絹糸を輸入して用い、仕事として引き受けてくれる国民に卸価格で渡して出来た製作物を買い取る、 小物やアクセサリなどの個人製作物の持ちこみを受けて店の中の個人販売コーナーに期間を区切って展示する (売れた場合は店側が展示依頼者から価格の5%を展示料として受けとる)など地域活性に役立てるよう頑張っている。 九条イズミ 〇自宅 名前:九条イズミの家 スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 九条イズミとフォス、猫士のアンリの住む家。 2階にイズミとフォスの部屋、予備の客室があり、1階に日当たりがよく一部が畳小上がりとなったリビング、本の詰まった部屋と、広めの台所がある。 台所はうどんの調理場も兼ねているので、一般のご家庭よりはしっかりとした設備となっている。 アンリはどこにでも出入していいことになっているが、基本的にはリビングの窓際が定位置。 家の前にはちょっとした庭があって、庭の木には手作りのブランコがかけられている。 萩野真澄 〇自宅 名前:真澄とイデアの家 スケール:4 能力:C 種別:自宅(兼ガーデニングスペース) 用途:自宅 HP:0 玄霧藩国にある萩野真澄とイデアが住む家。玄霧藩国の木材と石材を利用したハーフティンバー様式で建てられた二階建ての一軒家。 一階にはゲストルームやダイニング、書斎。 二階にはリビングやキッチンや、真澄とイデアの個室があり、お互いのプライベートゾーンを大事にしている。 一階からサンルームと庭園に繋がっており、庭園は毎朝真澄とイデアが2人で手入れをしており、季節折々の花が咲いている。 佐藤ぶそあ 〇自宅(2/24追加) 名前:木造家屋の佐藤家 スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 設定: 佐藤ぶそあと、その養女である扶桑・T・ベルが住む家。 森国においては木の中に住むタイプの家と並び、一般的に見られる木造家屋。 書斎として使っていた部屋を片付け、ベルさんの部屋として使えるように譲り渡した。 柱や梁は太く頑丈な木で作られている。木材特有のしなりや、要所の補強もあり、意外と耐久性が高い。 二人暮らしにしてはやや広いキッチンが特徴的で、三食のご飯はできるだけ家族の時間をあわせて食べるようにしている。 ニム 〇自宅(2/24追加) 名前:ニムの家 スケール:4 能力:C 種別:自宅 用途:自宅 HP:0 ニムとニムの猫士である仁村が住む家。 ニムの部屋と仁村の部屋、リビングやキッチンといった基礎的な部屋に加え、書斎兼書庫が1部屋存在している。友人が泊まれるような客間も1部屋ある。 家の中は比較的清潔・快適を保つようニムが努めている。 物は多くなく、日用品の他に多いのは分野も様々な本や図鑑である。 土地面積が狭い代わりに天井が高い構造になっており、高い位置にベランダがある。仁村の部屋は陽の光が良く入る。
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行くぜ 1投 敷かれた布団の上にペタリと座るシェリルと向かい合うように腰を下ろすと、アルトは彼女の潤んだ瞳を見つめ、照れたような笑みを浮かべた。 「シェリル…」 吐息混じりに名を呼び、シェリルの華奢な身体をそっと抱きしめる。 抱き込まれた腕の中、シェリルは驚いたようにビクッと肩を震わせると短く悲鳴を上げた。 「いやっ」 「…え」 シェリルの反応に、アルトは反射的に抱いた腕を離してしまった。 え、嫌なの? ガーンと硬直してしまったアルトをよそに、シェリルは怒ったように眉を上げる。 「ちょっと、あんたなんでこんなに身体冷やしてるのよ!お風呂入ってきたんじゃないの?」 「あ、え…?」 あれ、嫌なわけじゃないのか…? 「んもう。あったまってこなかったの?」 心配そうな青い瞳に覗き込まれ、アルトはようやく我に返って愛想を崩した。 シェリルの反応を取り違えるなんて、余裕な振りをしたが、思った以上に緊張していたようだ。 あぁ先ほどまでの甘い雰囲気はどこへ行った…。 「あー…。水風呂?」 いろいろ鎮めるのに苦労してね、と心の中で呟く。取り繕うのもらしくないかと苦笑した。 「はぁ?やだ、なにやってるのよ。風邪引いちゃうじゃない!」 何かを誤魔化すように苦笑めいて言うアルトに、シェリルは心底呆れたような声を上げる。 「まったく…水風呂なんて。なんかの修業でもするつもり?」 馬鹿なんだから…と困った顔をして呟くと、シェリルはアルトをその豊かな胸に抱き込んだ。 「シェ、シェリル…!」 薄物の布越しの、ふにゃりと柔らかい感触を頬に感じ、アルトは上擦った声を上げる。 「ほら。こうすれば、少しはあったまるわ」 あんたの身体、氷みたいだったわよ、とアルトを胸に抱き込み、彼の絹糸のような黒髪を優しく梳きながらシェリルは言う。 2投 不器用なシェリルの、髪を梳く指先が優しい。 とても大切なものに触れるように動く、その白い指先から愛情が伝わってくる。 「シェリル…」 途端に愛しさが溢れてきて、アルトは唇に名を乗せた。 顔が見たい。その瞳に映るのが自分の姿であると確かめたい。 「なぁに?」 震える声で名を呼ばれ、シェリルは髪を撫でる手を止めると、アルトの顔を覗き込んだ。 なんて慈愛に満ちた優しい瞳をするのだろう。 その優しい瞳に写った自分は、なんと情けない顔をしているのだろう。 アルトは胸が苦しくなって、喘ぐように息を吐いた。 体中から溢れ出る想いに、溺れてしまいそうだ。 「アルト?」 どうしたの?と首を傾げるシェリルを、彼女の胸の中から見上げていたアルトは、首を伸ばしその唇にそっと口付けた。 「……んっ」 アルトからの口付けに、シェリルは鼻から抜けるような吐息を漏らす。 ちゅっちゅと音を立て、角度を変えてシェリルの唇を吸うと、ゆっくりと唇を離し、アルトはその青い瞳を覗き込む。 お互いの瞳に、お互いの情欲に濡れた顔が映っていることが、ひどく心を満たし、二人見つめあったままそっと唇を合わせた。 「シェリル…、好きだ」 唇を触れ合わせたままアルトは告げる。 間近に見つめた瞳は、涙の膜を張って青が滲んでいる。 それが美しいと、愛おしいと思いながら、アルトはゆっくりとシェリルの身体を布団に押し倒した。 3投 真っ白な布団に、シェリルの豪奢なストロベリーブロンドがふわりと広がる。 白くなだらかな頬を撫で緩く顎を固定し唇を開かせると、アルトは己の舌をそっと差し込んだ。 ぎこちないながら、二人舌を絡めあう。 「……ん…ぅ」 シェリルが深い口付けに懸命に応えている隙に、アルトは手馴れた様子で彼女の浴衣の帯を解き、抜き去った。 本当に和装で良かったと思う。不本意だが、シェリルに浴衣をすすめた糸目の兄に感謝した。 ちゅっと音を立てて唇を離すと、アルトはシェリルの浴衣の袷に手を掛け、ぐいと左右に広げる。 「えっ…あ、…っ」 浮かび上がる白く清らかな裸体に、アルトはごくりと喉を鳴らした。 「シェリル…」 熱を孕んだ声で名を呼ばれ、シェリルはぞくぞくと身体の奥を駆け抜ける感覚に身体を震わせた。 アルトはシェリルのひざを割り、己の身体を割り込ませると、胸元を隠そうと持ち上げられた彼女の両腕を取り、布団に押し付ける。 「隠すなよ」 自分には全て隠さずに見せて欲しいと、唇を尖らせてアルトは言う。 ついうっかりその細腕をきつく押さえつけてしまいそうになって、逸る気持ちを落ち着かせようと深く息を吐いた。 『シェリルさんの真っ白な肌にーなにするのー!』 以前浴びせられたランカからのお小言を思い出し、思わず苦笑いを浮かべる。 シェリルの肌に跡をつけるな、と。残念、それは無理な話だ。 むしろ積極的につけてやるよ、俺だけの証を。 4投 「…あ、ると?」 自分の手首を押さえたまま、苦く笑うアルトに、瞳に熱を宿したままのシェリルは不安そうに問う。 「跡、つけていい?」 「え?」 アルトはシェリルの手首を押さえつけていた手を離し、そっと左腕持ち上げると、しっかりと指を絡め、その指先に口付けを落とした。 一度、捕まえられずに離れてしまったこの手を、もう二度と離すものか。 「ダメって言われても…無理」 「えっ」 アルトは子供のようにそう言うと、シェリルの返事を聞くことなく、彼女の豊かな胸元に顔を落とす。 柔らかく、しかし張りのある白い乳房に唇を寄せると、ふと考えて左の乳房の上をきつく吸い上げた。 「あっ…ん」 くっきりとついた所有の証に微笑みを浮かべ、それでも足りず白い首筋にも唇を寄せ吸い付いた。 強く、弱く重量感のある乳房を揉みしだくと、それは面白いようにアルトの手の中で形を変える。 ツンと尖った頂を指先で捏ね回し、もう片方は唇で挟んで吸い上げる。 シェリルから紡がれる声が熱を帯び濡れている。 アルトは身体を起こすと、散々胸元を弄り回していた手を、そっとシェリルの秘所へと滑らせた。 「……っあぁ!」 くちゅっと下着の上からでも水音を立てるそこへの刺激に、シェリルは高い声で鳴いた。 「……すげ…、濡れてる…」 感嘆したように目を丸くして呟くアルトの言葉に、シェリルはカァと赤面するとギュッと目を閉じる。 「も…バカ!言わない、で…よっ…」 こんな自分の拙い愛撫に応えてくれたシェリルが、可愛くて仕方ない。 両手で顔を覆ってしまったシェリルをチラと見、アルトはそっとシェリルの下着に手を掛けた。 サイドストリングのそれは、思いのほか脱がせやすく、アルトはほっと胸をなでおろした。 5投 ふ、と有り得ない場所に吐息を感じ、シェリルは驚いて顔を上げた。 視線の先には、シェリルの秘部を凝視するアルト。 「…うそ、や…。アル、ト、見ちゃダメ…」 シェリルは顔を真っ赤に染め、力の入らない足を閉じようとする。 だが、アルトはそんなシェリルの弱々しい抵抗を、両太股に手をかけ、閉じられないよう固定することで阻む。 そして、アルトは何の戸惑いもなく、まるで花の蜜を求める蜂のように、シェリルの愛液に塗れたスリットに顔を埋めた。 シェリルの身体が、弓なりにしなる。引き攣ったかかとが布団を蹴った。 「………あ、…っあぁ!」 アルトの唇が、シェリルの下の唇を食む。じわりと溢れ出る蜜を夢中で吸い上げた。 もっと、もっとだ。全然足りない。 ぷくりと充血した花芯をひと舐めすると、アルトは蜜が湧き出す秘所に舌を捻じ込んだ。 「…ひっ…あ…、っ」 舌の動きにつられるようにあがる、シェリルの高い喘ぎが耳に心地よい。 散々舌で愛撫したそこから顔を上げると、シェリルの愛液と己の唾液で濡れた顔を手の甲でぐいと拭った。 アルトは身を屈めると、いまだ両手で顔を隠したままのシェリルの額にそっと口付け、ふぅっと息を吐く。 「シェリル……力、抜いて…」 宥めるように言いながら、アルトはその長い指を彼女の中に潜らせた。 6投 「……ぅっ、っく…」 とたんに上がる苦悶の声。 きつい。 「シェリル……」 思わず、情けない声が零れてしまった。 シェリルは顔を覆っていた手をそっと退けると、痛みに引き攣る頬を誤魔化すようにニコリと笑ってみせる。 「あ、ると…。平気、だから…」 「でも……」 それでもなお躊躇するアルトに、焦れたシェリルが声を張った。 「…もう!このあたしがいいって、言ってる…の!アンタ、だけ、なんだか、ら…!」 「……っ、お前…。そんなこと言って、やめてやれない、ぞ?」 シェリルの言葉に、アルトは頬を染める。 「のぞむところよ」 先に進みたいのはお互い様と言うわけか。 涙に濡れそれでも強い光を湛える空色の瞳を見つめアルトは、ふっと笑った。 こいつには敵わない。 「…覚悟しろよ、妖精さん」 7投 ようやくシェリルの中がアルトの指を二本受け入れたところで、二人大きく息を吐いた。 すでに脱がせてしまったシェリルとは逆に、アルトは浴衣を寛げただけなので、布地が汗で張り付いて気持ちが悪い。 さらに、下着は先走りで濡れている。 こりゃあんまり持たないかもな…とアルトは腹に力を込める。 「ある…と…」 「ん…」 「も、だいじょうぶ、よ」 シェリルの言葉に、彼女の顔色を伺うと、頬がうっすらと上気している。 「……うん。挿れる、ぞ…?」 「あ、まって。その前に、アルトも脱いで…」 あたしばっかり裸でずるいわと、頬を膨らませて言うシェリルに、アルトは眩暈を起こしそうになった。 壮絶な女の色香を放っているくせに、ふと見せる表情がどうにも無垢な子供のようなのがいけない。 くらくらしながら浴衣を脱ぎ捨て、ついでに下着もおろしたところで、こちらを凝視しているシェリルに気付きアルトは動きを止めた。 「……シェリル?」 「…えっ、あ…。あの、それ……?」 「それ?」 それと指差されたものは先走りを滴らせるアルトの屹立。 「……それが、入る…の?」 「……うん」 8投 あれ、何かおかしい?俺の…。 「入る、の?」 「え。う、うん…」 とたんにどこか及び腰になるシェリルに、今度はアルトが焦れる。 「やめてやれないって、言った」 むっとしたようにそう言うと、アルトはシェリルの細い腰を両手で捕らえる。 「えぇぇ…無理、よぉ…」 泣き言を言うシェリルにずいと顔を近づけると、アルトも眉を下げ言う。 「…って言うか、ホント、ごめんな。もう、さすがに我慢できない…」 最後は唸るように言うと、アルトは自身をシェリルの入り口に宛がい一気に押し入った。 「………ひっ…あぁっ…!」 挿入と同時に、シェリルが高く掠れた声を上げる。 途中、何かを突き破るような感覚がして、アルトはハッとして結合部に目をやる。 白い布団に散った赤。 そうなんだろうな、とは思っていたけど本人に聞くことでもないし、でもやっぱり、これは破瓜の… 「…シェリ、ル」 気付いたとたんに、頭に血が上るのが分かった。 俺が、シェリルの初めての…改めて認識したと同時に、ドクリと大きく脈を打つ。 「ヒッ…、バカ…なんでもっとおっきくなるのよ…」 「え、あ…ごめん。ちょっと、うれしくて…」 泣きながら睨むシェリルに、悪いと思いつつもアルトは頬がにやけるのを止められない。 「俺が、初めてなんだ…な」 嬉しくて思わずそう口に出すと、シェリルはカァと頬を染めた。 それと同時に、シェリルの中がキュッと締まる。 「ちょっ……!く、ぅッ…」 「…キャッ」 9投 ………いやいや、早すぎだろ、俺! シェリルのきつい締め付けに、限界まで挿入を堪えていたアルトの欲はあっけなく弾けてしまった。 いきなり最奥に、熱い飛沫を注がれたシェリルは目を見開いている。 うわ…そりゃ、そうだろ。アイツは挿れられて痛いだけで…俺は気持ちよかったけど…。 情けなくてシェリルの顔を見られず、アルトはがっくりと項垂れた。 「…ごめ、ん」 「……なんで、あやまるの?」 「いや、だって…」 「あたしは、嬉しかった、わ」 やっと繋がれたんだもの、といまだ涙が滲む瞳を細めてシェリルは言い、アルトの頬を両手で包みチュッと唇を寄せた。 はにかむような表情が可愛くて、シェリルの中に埋めたままのアルトがまた熱を上げる。 「えっ…あ、なんでっ…」 シェリルがそれを敏感に感じとり、身体を震わせる。 10投 「あんま、可愛いこと言うからだ…」 熱に掠れた甘い声で言うと、アルトはシェリルの身体を抱き起こしひざの上に乗せる。 「…ぅ…あぁっ…」 自重でアルトが最奥を穿ち、シェリルはアルトの背中に腕を回ししがみ付いた。 触れ合った胸が早鐘のように音を刻んでいる。 「シェリル…」 唇から零れる声が甘い。 ひざに乗せた身体を上下に揺さぶりながら、アルトはシェリルの頬を撫でる。 「シェリル…」 「…あっ、る…と」 切れ切れに悲鳴のように喘ぎながら、シェリルはうっすらと瞳を開けてアルトを見た。 情欲に濡れた瞳すら美しい。 「シェリル、好きだ…。好きだ、愛してる」 吐息のように囁いて、薄く開いたままの唇に口付けると、そのまま彼女の身体を揺さぶり続けた。 「あ、…アル、ト…もう…」 すすり泣くようなシェリルの声に、自分の限界も感じていたアルトはさらに奥を穿つ。 搾り取ろうとするかのような中の動きに、アルトは息を詰めシェリルの最奥へと欲を放った。 引き摺られるように、シェリルは身体を痙攣させると、目の前のアルトの肩に噛み付きながら果てた。 二人しばらく抱き合ったまま息を整えると、ふと目を合わせ、照れたように笑いながら唇を合わせた。 「愛してる、シェリル」 甘えるように、首筋に鼻先を寄せて囁くアルトの言葉に、シェリルは幸せそうな笑みを浮かべた。 11投 体中が軋むような痛みに、夜中にふと目を覚ましたシェリルは、自分を抱きしめる腕に気付き、そっと眠るアルトの顔を伺い見た。 気の抜けた、あどけない顔。シェリルはふっと笑みを漏らす。 「……寝てても綺麗な顔、ね。でも、男の人なのね…」 女よりも綺麗な容貌をしているくせに、抱きしめられた腕は力強く、頬を寄せた胸は思った以上に広かった。 男のくせに肌理の細かい白い肌を羨ましく思いながら、眠るアルトを見つめ、彼の肩口についた歯のあとに気付いたシェリルはカァと赤面する。 「あたし、とうとうアルトと……」 幸せな痛みだった。泣きすぎたのか、目元が腫れている気さえする。 いつだか、シェリルの入院中に、雑誌のウェディングドレスを指差し『それも夢で終わらない』と言ってくれた。将来を約束するような言葉はなかったが、それだけで充分幸せだった。 愛している人と身体を繋げる悦びを知ることなく、恋心を抱いたまま死んでいくのだと思っていた自分に、憧れだけで終わると思っていた『夢』を見続けていいと。 そんな彼が、好きだ、と。愛している、と言ってくれたのだ。これ以上の幸せを望むのは欲張りすぎだろうか。でも。 「ねぇアルト。……大好きよ」 でも、ね。出来れば、これからもずっとそばにいて。 シェリルは眠るアルトに口付けると、そっと彼の腕の中で再び目を閉じた。 以上です。なんか、途中で眠くなって、変なとこで投下したとことかあるかもしれない、けど確認してない ノリと勢いだけで書いたから、アルトとか誰これ状態ですが… っていうか、滝なんて初めてだよ!こんなんでいいの? 書く側じゃなくて、読む側なんだよ… かなりひどいお目汚し失礼しました…
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白く、しなやかな指がペンダントのチェーンにかかる。 絹糸のように細い輪の連なり。ほんの一瞬の抵抗の後、弾けるように宙に舞う。 手を真っ直ぐに伸ばす。千切れた鎖の先で輝きを放つ、幸せの素を高く掲げる。 贈ってくれた人の目に、しっかりと映るように。 向かい合う少女は、信じられないといった面持ちでその動きを見守る。 心は凍りつき、感情は形を成さない。思考だけが状況を正確に、そして無慈悲に、記憶に刻み込んでいく。 (やめて、お願い、やめてぇ――――!!) 届かない。どんなに叫んでも、今のせつなの声は決して届くことは無い。 これは、夢の中なのだから。 せつなと、そして、きっとラブにも刻まれた過ちの記憶なのだから。 チェーンをつかむ指から力が抜け、それはゆっくりと落下していく。まるで、スローモーションのように。 固いコンクリートの床に叩き付けられ、軽くバウンドする。 ズキン――――ズキン――――ズキン ズキン――――ズキン――――ズキン――――ズキン ズキン――――ズキン――――ズキン――――ズキン――――ズキン 痛い、痛い、痛い。心が――――砕け散りそうになる。 まるで自分の魂が、その緑色のアクセサリーに封じ込められてでもいるかのように。 踵で踏み付けて力を込める。形を変えるはずのない硬い樹脂が、ほんの一瞬だけ歪む。 軋みを上げることもなく、割れる音を大きく響かせることもなく。 悲しいほどにあっけなく、四散した。 『翼をもがれた鳥(第十七話)――――幸せの素に導かれて――――』 「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」 激しい運動ですら、滅多に乱すことの無いせつなの呼吸が荒れる。 額に滲む大量の汗は、寝苦しいほどに熱い気温のせいだけではないだろう。 「ある。――――ちゃんと、ここに……」 ベッドの宮棚に大切に置かれた、緑色のアクセサリーを手にする。 もう、欠片とは呼べないだろう。 砕けた破片の中から見つかった四つ葉の一枚。それを削って、磨き上げて、ハート型に仕上げたのだ。 このままでは、あまりにも悲しかったから。 後悔以外の――――意味を与えたかったから。 トン、トン、トン パジャマを着替えて、静かに階段を降りる。 まだ起きるには早い時間かと思ったが、あゆみは既に家事に取りかかっていた。 居間の隣、和室と呼ばれる畳で敷き詰められた部屋。そこで先の尖った器具で作業をしていた。 邪魔をしてはいけないと思い、その場で待つことにした。 しばらく後、作業が一段落したのか、あゆみは廊下でたたずむせつなに気が付いて振り返る。 「おはよう、せっちゃん。どうしたの? こちらにいらっしゃい」 「おはよう、あゆみおばさま。邪魔しちゃってごめんなさい」 なんとか丁寧語を崩そうと、懸命に努力しているせつなの挨拶が可愛らしかった。あゆみはせつなを招き 寄せる。 アイロンかけはほとんど終わっていたのだが、せつなの様子から、興味がありそうに見えたからだ。 不思議そうな顔で見つめるせつなに、やってみたら? とあゆみが持ちかける。 少し恥ずかしそうにはにかんで、せつなは頷いた。 霧を吹き、細かい部分から順に、直線的に動かしていく。 右手でアイロンの先を浮かして動かしながら、左手で器用に生地を引っ張っていく。 見る見るうちに美しく仕上がっていく。 あゆみは驚きに目を見開いた。 確かにアドバイスはした。素直に頷きもした。しかし、せつなの手はそれを始めから熟知しているかのよ うに動く。 その動きは、あゆみと比べても遜色のないものだった。 「すごく上手ね、せっちゃん。やったことあったのね」 「いいえ、これが初めてです」 「えっ? でも、教えていないことまで……」 「さっきまで、おばさまのアイロンかけを見ていたから」 そのとんでもない言葉に、あゆみは一瞬、驚愕して身を引いてしまう。 改めて、まじまじとせつなを見つめる。その表情には、自信も、誇らしさもうかがえなかった。 それどころか、困ったような、不安そうな様子すら感じられた。あゆみの反応に、何か失敗してしまった のではないかと心配しているのだろう。 ふと、あゆみはラブの言葉を思い出す。 とてもつらい所で生きてきた子だからって。失敗したり、言うことを聞かなかったりしたら、それだけで 命が奪われてしまう。 そんな世界で、ずっと暮らしてきた子だからって。 極限まで研ぎ澄ませた集中力。ずっと、この子はそんな風に張り詰めて生きてきたのだろう。 愛しくなって、あゆみはせつなをそっと抱き寄せた。 情緒が不安定なところもあるだろうけど、仕方がないの、わかってあげて。 ラブはそう言っていた。 情緒不安定はどちらかと思う。せっちゃんに変に思われないかしら? そう心配しつつも、抱き寄せる腕 を離す気にはならなかった。 この子に一番足りないのは、この温かさだって気がしていたから。 「おばさま?」 「ああ、ごめんなさい。嫌だった?」 「ううん――――」 「そうだ、何か用事があったんじゃないの?」 せつなは小さく頷いて、ポケットから緑色の塊を取り出した。 大切そうに、両手に乗せてあゆみに見せる。 「大事なものなんです。壊してしまって……。もし、使わないチェーンか何かあったら」 「直したいのね?」 「はい。始めは四つ葉の形をしていたんです」 「ええ、ラブから聞いているわ。あの頃ね――――」 ねえねえ、おかあさん、幸せの素って何だと思う? 商店街の福引の一等賞がそれなんだって。だから、どうしてもゲットするんだって。 キラキラと瞳を輝かせてラブはそう言っていた。 貯めていたお小遣いも全て使ってしまった。カオルちゃんのドーナツを食べるお金すら残っていない。 よく、そうボヤいていたものだった。 それでも諦めきれなくて、進んでお使いをかってでた。 買い物に出かけるたびに足を弾ませて、帰ってくるたびに肩を落として―――― ある日、素敵なお友達と知り合うことができたって、ラブはそう言っていた。 その子はドーナツを食べるのが初めてなのに、惜しみなく半分こしてくれたって。 ジュースも買えなくてお水で喉に通したけど、これまで食べたどんなドーナツよりも美味しかったって。 その後、やっと幸せの素を手に入れることができたって。そして、それをその子にあげてしまったって。 ごめんなさいって、ラブはあゆみに謝った。 あゆみは、良かったわねって、そう言って微笑んだ。 「だって、そうでしょ? もっと欲しいものが、見つかったってことなんですもの」 「はい……」 せつなは、それを両手に握りしめて瞳を潤ませる。 あの日から、あゆみはその子のことが、ずっと気になっていたって。だから、こうして家族になれて凄く 嬉しいって。 「そうそう、チェーンだったわね。待っててね」 「おばさま! それは――――」 清楚な光沢を放つ白銀のチェーン。その先に付いているのは、ハートをあしらったプラチナの細工物。 その中央に丸くて大きなルビーが収まっていた。 それは、樹脂で成型されたものなんかじゃない。本物の――――宝石だった。 「待ってください! それは、駄目です!」 「いいのよ。せっちゃん、赤が好きなんでしょう? だから、あげようと思っていたところなの」 専門知識の無いせつなにも、それが相当に高価なものだということくらいはわかる。 普段、宝石を身に付けないあゆみの持ち物であることを考えれば、大切な思い出の品だということも想像 がつく。 せつなの制止も聞かず、あゆみはそれをチェーンから外し、代わりに幸せの欠片を取り付ける。 「器用でしょう? これでも職人の娘なのよ」 「私、そんなつもりじゃ――――」 「いいの。ただし、ルビーは部屋にしまっておくこと。中学生が身に付けるものじゃないわ」 「中学生?」 「そうよ、もう手続きは済ませましたからね。せっちゃんはラブと同じ中学二年生よ」 できた! きっと、よく似合うわ。あゆみは、せつなに抱きつくような格好でペンダントをかけた。 そして、せつなの手を開いてルビーを握らせた。 情熱の赤い宝石。勝利の石とも呼ばれ、あらゆる危険や災難から持ち主の身を守り、困難に打ち克ち、勝 利へと導くという。 「きっと、せっちゃんのことを守ってくれるわ」 「ありがとう――――」 そこから先は言葉にならず、せつなは、今度は自分からあゆみに身を預けた。 飛び込むほどの勇気は出せず、触れるか触れないかの距離で全身を震わせて泣いた。 あゆみは優しくせつなの背中を撫でる。そして、心を込めて囁いた。 「幸せになりなさい。せっちゃん」 小さくて可愛らしいハート型のペンダント。せつなは、そっと首に戻して追憶を終える。 幸せになりなさい――――あの時かけられたあゆみの言葉に、結局せつなは返事をすることができなかっ た。 今なら、胸を張って答えられるだろうか? はい――――と。 無理だと思う。 それでも、せつなはこれから幸せをつかみに行く。 例え、一時のものであっても構わない。与えられるのではなく、自分から幸せを手に入れに行く。 (それをどうか――――許してください) せつなはペンダントを握りしめて、静かに祈りを捧げた。 コンコン 部屋がノックされる。音の響きでラブだとすぐにわかる。 せつなは、急いでペンダントを服の中にしまって戸を開けた。 「せつな! ブッキーがせつなに会いたいって」 「ええ、わかった。私が迎えに出るわ」 「そっか。じゃあ、あたしはお茶を淹れてくるね」 祈里からせつなに会いに来る。それがラブには大きな驚きだった。 まだ、美希や祈里はせつなと馴染んでいるとは言い難い。ラブとしても気の使うところだった。 まして、祈里は控えめな性格で、自分から行動を起こすことは少ない。それだけに意外で、そしてありが たかった。 せつなが玄関まで迎えに出ると、祈里は嬉しそうに微笑んだ。 手には大きな包みを抱えている。せつなは自分の部屋に祈里を案内した。 「いらっしゃい、ブッキー」 「お邪魔します。わぁ~、せつなちゃんのお部屋かわいい!」 「ありがとう。とても気に入ってるのよ」 せつなは本当に嬉しそうに微笑んだ。もともと、自分のことを誉められて喜ぶような子ではない。 だけど、この部屋は別だった。この家と、この家族は特別だった。 「今日は、せつなちゃんにプレゼントを持ってきたの」 「ありがとう。何かしら?」 「これは――――赤い、ダンス服? 私の……」 「せつなちゃんの、クローバー加入のお祝いよ。気に入ってもらえるといいけど」 「ありがとう――――さっそく着てみていいかしら?」 「うん、じゃあ、わたしは外に出てるね」 「それは悪いわ。ブッキーになら、見られても平気だから」 「うん、じゃあ着つけを手伝っちゃう」 下着姿になったせつなを見て、祈里は息を呑む。 透き通るような白い肌の下に秘められた、強靭なる筋肉。鍛え上げられたスレンダーな肢体なら、美希で 知っている。見たことがある。 だけど、またそれとは違う。魅せる力ではなく、秘める力。生き抜くことに特化した、戦うための肉体。 例えるならば、豹のようなしなやかさ。研ぎ澄まされた、刃物のような美しさ。一見女性らしい丸みを帯 びながらも、その奥に弾けるようなバネを感じさせた。 「せつなちゃん……すごい……綺麗」 「もう、恥ずかしいからジロジロ見ないで」 「ごめん、じゃあ、寸法の微調整もしちゃうね」 「ええ、お願い」 祈里は、メジャーと針と糸を引っ張り出して仕上げにかかった。 大まかな寸法はラブと同じと聞いていたが、念のため調整が効くように仕上げを残しておいたのだ。 「お待たせ、ブッキー、せつな。って――――何やってるの~~~!!」 「あっ、ラブ! これは」 「ちっ、違うの、ラブちゃん。脱がせてるわけじゃなくて!」 かろうじて、淹れたお茶をひっくり返さずにすんだラブに事情を話す。 フンフンと聞いていたラブだったが、納得がいくと、とたんに目を輝かせた。 「せつなって超キレイ~、あたしとはお風呂も入ってくれないんだよ」 「一緒に入ろうとしてたんだ……」 「ちょっと! もう、何の話よ。いいから服を返して!」 すっかりせつなの下着姿の鑑賞会になったことに、口を尖らせて抗議する。 身体を丸めてうずくまったせつなに、祈里は仕上げの済んだダンス服を手渡した。 「どう――――かしら?」 「せつなちゃん、よく似合ってる!」 「うんうん、これでせつなもクローバーだね!」 「ありがとう、ブッキー」 「えっ、今、せつなブッキーって……。それに、ブッキーもせつなちゃんて……」 「うん、この間からなの」 祈里が嬉しそうに事情を話す。せつなも恥ずかしそうに頷いた。 よほどダンス服が嬉しいのか、せつなは姿見を眺めながら何度もクルクルとまわる。 そして、ラブの携帯に着信が入る。 「もしもし、美希たん? えっ、せつなに? うん、代わるね」 「もしもし、ええ、今はブッキーと私の部屋よ。うん、わかった。一緒に練習しましょう」 今度は、美希からせつな宛ての電話だった。親しげに話す様子に、ラブは目をパチクリさせる。 明日は、せつなにとって初めてのダンスレッスンだ。事前に、基礎だけでも予習しておこうとの美希から の誘いだった。 四つ葉町公園の、いつものダンス練習ステージに四人は集まった。 ピンク、ブルー、イエロー、そしてレッド。一際目立つ真っ赤なダンスウェアが、クローバーを華やかに 彩る。 眩しい日差し、爽やかな風が心地良い。夏特有の命溢れる草木の薫り、生気漲る澄んだ空気が肺の中を満 たしていく。 せつなは目を閉じ、それらを全身で感じ取る。 そして、一言、感慨深くつぶやいた。 「本当に、ここに立つことができたのね」 「ほんとうにって?」 「ラビリンスのイースだった頃、一度だけここで、みんなと一緒に踊る夢を見たの」 「わたしたちと?」 「ええ、ラブも美希もブッキーも。そして、ミユキさんに指導してもらっていた」 静かに、淡々と、感情を込めずにせつなは語る。 それでも、時々声が震えてしまうのは隠すことができなかった。きっと、それは歓喜の震えなんだろう。 ほんと、図々しいわよね。そう、自嘲気味に笑って締めくくった。 みんなも、もう分かっていた。せつなは、ずっと前からみんなの知るせつなであったことを。 そして、もう一つ。一見物静かなせつなの胸の奥には、真っ赤に燃えたぎる情熱の炎があることを。 「さあ、明日までに基本を一つでもマスターして、ミユキさんを驚かせちゃおう!」 「始めはゆっくりでいいからね、せつなちゃん」 「頑張ろうね! せつな」 「ええ、ありがとう。大丈夫よ」 自信を漲らせてせつなが答える。他の何を失敗しても、これだけはモノにしてみせる。 それが、この場にせつなを立たせてくれた、ラブと美希と祈里と、そしてミユキの気持ちに応えることに なるのだから。 スタンドポジションからアティチュード、そしてアラベスク。コントラクションからリリース。 スポンジが水を吸収するかのように、せつなは次々に身に付けていく。 その動作の正確さは、最も美しいと言われる美希すら凌駕した。 「凄いよ、せつな。もうあたしより上手なんじゃ?」 「ラブ……。さすがにそれは問題があると思うわよ」 「あはは、でも、油断したらほんとうに置いていかれちゃいそう」 「ありがとう。ここまでは夢の通りね」 「そうだ! せつなのクローバー加入のお祝いに、ドーナツパーティーしようよ!」 「賛成!」 「いいね、やろうやろう!」 ラブの提案と、美希と祈里の賛成にせつなは目を丸くして驚いた。 ほんとうに、まるっきり同じ。もしかして、これも夢なんじゃないかとほっぺをつねってみた。 生々しい痛みと現実感。それが、涙が出るほどに嬉しかった。頬の痛みのせいにして、そっと目じりを拭 った。 そして、行きましょう! とせつなからラブの腕を引いて走り出した。 何もかも同じ展開なんて癪に障るから。それなら、自分から変えてやろうと思った。うんと、楽しんでや ろうと思った。 それに、最後は違う。絶対に違う。 これは夢ではないのだから。決して、覚めることはないのだから。 せつなは走る。 胸に輝くペンダントは、四つ葉ではないけれど。 もう――――儚く砕けることはない。今も、そしてこれから先も、せつなの幸せを明るく照らしてくれるのだから。 避2-690へ
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※「トカゲのたまご ~たまご~」の続きです。 ※今回、勝手ながらいくつかの作品を参考にさせて頂きました。 タイトル等は伏せさせて頂きますが、この場にてお礼申し上げます。 ※作者は元ネタの知識も無く、設定等適当なところがあります。 すいません、ご了承ください。 「とかげのたまご ~トカゲ~」 ド シ ン ッ ! ! ! 巣全体が激しく揺れる・・・。 「「「「ゆゆゆ?!!!!」」」」 「ゆ?!おちびちゃん達!!ゆっくり集まってね!!!」 「「「おきゃーしゃーーん!!」」」 突然の地震にゆっくり達は身を寄せ合った。 開放された2匹の子トカゲは、一目散に巣の外へと逃げてゆく。 そして代わりに巨大な影が巣の中に侵入してきた。 予期せぬ侵入者に親まりさが立ちはだかる。「ぷくぅぅぅぅぅぅぅ」と頬を膨らましながら。 侵入者は構わず、ドッシ、ドッシと重たい足音と共に侵入してくる。 「ここはまりさ達のおうちだよ!!かってに中・・・に??!!・・・はい・・・ぷしゅぅぅぅぅぅぅ.....」 侵入者が親まりさの目前まで近づき、口からシュルシュルと舌をだして親まりさを舐め回す。 影の正体を認識した親まりさはガタガタ震えながら頬の空気を抜いてゆく。 そしてゆっくりらしからぬ速さで、家族が集まる巣の奥へと退却した。 親まりさの落とした卵を嗅ぎつけて来たのかはわからない。 子トカゲの断末魔を聞きつけてやって来たのかはわからない。 そこには全長2m近い”オオトカゲ”がいた。 「「「「「「ヒイイイイイイィィィィィィィ!!!」」」」」」 「まままりさ!このトカゲさんはゆっくりできそうにないよ、ちゃちゃ、ちゃんと帰ってもらってね。」 「お゛お゛お゛おとなしくしてれば、ゆっくりできそうだよ。ままま、まりさはおとなしくしてるよ。」 「「「「ごわ゛いよおお!!!」」」」 親ゆっくりと姉ゆっくりは目の前の巨大な侵入者に震え上がった。 まだ一人で外に出たことの無い姉ゆっくり達から見ても、目の前の生き物が危険な事は一目瞭然だった。 逃げ出そうにも出口はオオトカゲの巨大な体躯に妨げられ、逃げる事は叶わない。 そんな家族の事を知ってか知らずか、赤ゆっくり3匹がオオトカゲの前に飛び出した。 「「あ゛がちゃん!!!!だめ゛えええええええええええええええええ!!!!」」 今しがた子トカゲの味を覚えたばかりの赤ゆっくり達にとっては、 「さっきのとは比べ物にならないほど"大きなご馳走"がやって来た!!」くらいにしか思っていないのかもしれない。 「ゆぅーー!!おっきなとかげしゃん、こんにちわ!!」 「とかげしゃんのあかちゃん、とてもゆっくちできたよ!!」 「おいちいあかちゃん、ありがとうね!!」 「「「ゆっくちちていってね!!!」」」 オオトカゲの前で跳ねながら、満面の笑みで礼を述べてゆく赤ゆっくり達。 お礼を言った後は、家族みんなで"おっきなとかげしゃん"を食べられるとでも思っているらしい。 そんな赤ゆっくり達の言葉がオオトカゲに通じたかどうかは分からない。 オオトカゲはシューーーッっと大きく鼻息を鳴らし、品定めするかのように赤れいむを舐め始めた。 「ゆゆ!とかげしゃん、くしゅぐったいよ」 「とかげしゃんもとてもゆっくちちているね」 「まりしゃも、ペロペロしてー!!」 「!!!!あ゛がちゃん!!!!ぞのトカゲさんはゆっくりできないよ!!!!!」 "大きなご馳走"を前に、親れいむ達の声は赤ゆっくり達には届かない。 一通り赤れいむを舐めまわすと、オオトカゲは口先で赤れいむを咥え、宙へと持ち上げた。 「「あ゛がちゃん!!!!にげてえええええぇぇぇぇぇっ!!!!」」 「わー!れいみゅ、たか-いたかーい!」 「お゛ねがいでず!!お゛ねがいじまずがら!!あ゛かちゃんを゛たずけてあげでね゛ぇぇ!!!!!!」 オオトカゲは何度か顎を動かし、赤れいむを喉の奥へと押し込んでゆく。 「とかげしゃん、おくち、くちゃぁぁぁぁい!!」 次にオオトカゲが口を開いた時、赤れいむの姿は見えなくなった。 「「「「「「!!!!!!!!!!!!」」」」」」 「こんじょはまりしゃのばぁんー!!」 「れいみゅもやってよー!!」 今度は赤まりさが咥え上げられる。紡ぎたての絹糸の様な金髪がたなびき、赤まりさはきゃきゃとはしゃいだ。 しかし赤まりさの目前に広がる巨大な暗闇から、姉妹の声が聞こえてくる。 「(ゆわぁぁん!!い゛だい゛っ!!ぐらいよぉぉぉぉぉぉ!!!ここじょこぉぉぉ?!)」 「ゆ゛ぅ?!」 全身に潰されるような力が掛かり、赤まりさは目の前の穴へと引きずり込まれていった。 「れいぶの!!!!れい゛ぶの、がわい゛い゛ぃぃぃあ゛か゛ちゃんがあ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 とうとう親れいむが、涙とよだれで顔をぐちゃぐちゃにしながらオオトカゲに跳びかかった。 オオトカゲは食事の邪魔をするなと言わんばかりにそれをはねのけた。 「っゆぐぇ!!!」 「おきゃあしゃん!!!」 目の前で親れいむが吹っ飛ばされ、ようやく事態の危うさに気づく赤れいむ。 親れいむの元に駆け寄ろうとするが、後ろからオオトカゲに咥えられてしまう。 「ゆぎゅあぁぁぁぁん!!!おぎゃあしゃんいじめる、いぐっ、どかげしゃんはぢんでね゛ぇぇぇぇ!!・・・」 そしてオオトカゲにペロリと飲み込まれてしまった。 「ま゛でぃざのあがぢゃんがえぜえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 さすがの親まりさも目の前で我が子3匹が飲み込まれるのを見て、オオトカゲに跳び掛かった。 しかし親れいむ同様、巣の奥へとはね飛ばされてしまう。 オオトカゲの口から、胃袋で再会した赤ゆっくり達の叫び声が漏れてくる。 「(ゆぎぎぎぎぎぃぃぃ!!!い゛ぢゃいぃぃぃぃっぃ!!!ぐらいよぉぉぉぉっぉ!!!)」 「(ま゛りじゃいるのお゛ぉぉぉぉぉ??!!どこぉぉぉぉぉ??!!も゛う゛おうぢがえるぅぅぅ!!!)」 「(ゆぎゃあぁぁぁ!!ドロドロいぢゃいぃぃ!!ぎぃぃぃぃおべべがぁぁぁぁぁ!!!)」 「「「たじゅげでえぇぇぇぇ!!!おぎゃあぁぁじゃぁぁぁんんん!!!」」」 まるでオオトカゲが助けを呼んでいるようだった。 「「どおぢてごんなごどずるのぉぉぉぉぉぉ!!!かってにひとのあがぢゃんたべるトカゲははやぐじんでね!!!」」 「「「「がわい゛い゛ぃぃ、いも゛ぉうとだぢがあ゛あ゛ぁぁぁぁぁ」」」」 巨大なオオトカゲの前に手も足も出ないゆっくり達。すでに巣の奥へと追い詰められ、後が無い一家。 オオトカゲは今度は姉まりさへと舌を這わせた。 全身をシュルシュルと這い回るオオトカゲの舌に、かつてない嫌悪感が姉まりさの体を駆け巡る。 「ゆぎぃいいい!!ベロベロやめ゛でええぇぇぇぇ!!!ばりざはおいじぐないよ!!!」 オオトカゲは姉まりさも一飲みにしようとするが、赤ゆっくりよりも大きく、うまく喰いつけない。 姉まりさの帽子だけがオオトカゲの口に咥えられた。 オオトカゲはそれを大きな花びらを食べるかのようにあっさりと飲み込んでしまった。 「ばりさのがわ゛びいぃ帽子がえしでね!!!ゆっくり帽子吐き出してねっ!!!!」 命と同等に大事な帽子を盗られた姉まりさは、恐怖に顔を歪ませながらもオオトカゲに跳び掛かっていった。 何度はね返されようともオオトカゲに跳び掛かる姉まりさ。 すでにかわいい妹たちの事は頭に無い。 「まりざぁぁぁぁ!!!いっちゃだべええええええ!!!!!」 「ぼうじがえじでね!!!!はやくかえじでね!!!ばりざのぼう・・ゆぎゅっ!!!!」 オオトカゲは命一杯に口を開き、姉まりさにかぶりついた。 オオトカゲの口には入りきらず、姉まりさの頬がオオトカゲの口からはみ出す。 赤ゆっくりの時とは違い、口内の鋭い牙を立てて獲物を逃がさないオオトカゲ。 「ゆぎいいいいいいい!!いだいいぃぃぃぃぃ!!!ぐぶぶぶぶぶ・・・!!!」 全身に上と下から鋭い牙が突き刺さり、強力な顎が姉まりさを押し潰した。 オオトカゲはなんとか飲み込もうと、狭い巣の中で姉まりさを何度も何度も壁に叩きつける。 さらに、オオトカゲの唾液内に棲息するバクテリアが、姉まりさの体を蝕み始めた。 人間やオオトカゲよりも大きな動物でも、バクテリアが体内に入り込むと敗血症を引き起こし、 早急に手当てをしなければ最悪の場合死に至る。 そのバクテリアが餡子にも効いたかは分からないが、無害でもなかった。 「ゆぐぐぐぅぅうぅ、さぶい゛い゛ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!いだいぃぃぃぎいぃぃぃぃぃぃ!!!」 顔がパンパンに膨らみ、真っ赤に腫れる姉まりさの顔。目の周りには紫黒い隈ができている。 「だずげでぇぇ!!ゆぎゅっ!!!おぎゃざぁぁぁ!!ぐぎゃっ!!!!」 目の前で苦しむ我が子を前に、これ以上娘たちを失うまいと親れいむが立ち上がる。 「まりさ!!ゆっくり早く起きてね!!」 「ゆぐぅ・・・。ゆゆ??」 「まりさ!!二人で力を合わせておちびちゃんを救うよ!!」 「ゆ!ゆっくり理解したよ!」 二匹は互いの目を見つめ合い、意思を確かめ合うと交互にオオトカゲの顔に体当たりしはじめた。 「おぎゃあぁぁぁぁぁじゃん・・・!!」 「もう少しだよ!!ゆっくり我慢してね!!」 「お母さん達が今助けるよ!!」 親まりさが跳び掛かり、親れいむが跳び掛かり・・・。 そんな親ゆっくりを姉れいむ達も必至に応援する。 二匹の波状攻撃にさすがのオオトカゲも鬱陶しくなったのか、姉まりさを咥えたまま巣の出口へと後退してゆく。 「ゆゆ!!れいむ!!トカゲの奴逃げていくよ!!」 「ゆー!!まりさ!!れいむ達の愛の勝利だよ!!」 「おかーさんがんばれぇぇぇぇぇ!!!!」 このゆっくりとした大自然の中で、家族みんなでいつまでもゆっくり過ごしたかった。 自然の素晴らしさをもっと赤ちゃん達にも伝えてやりたかった。 しかし突如として一家に降りかかった災い。どうして自分達がこんな目に? とてもゆっくりできない事がいくつもあった。 だがこの困難も家族みんなで立ち向かえばきっと乗り越えられる! ふと3匹の赤ゆっくり達の笑顔が思い返される。 今ならまだ3匹の赤ちゃん達も助けられるかもしれない!!! そんな思いがゆっくり一家の脳裏によぎった。 ついにオオトカゲは巣から出ていった! あとは子供達を救うだけだ。一家は家族の絆を確かめ、高なる思いを胸に巣の外へと飛び出した。 巣の外ではオオトカゲが姉まりさを地面に何度も何度もこすりつけていた。 何度も痛めつけられた姉まりさの顔からは両目の眼球がこぼれ落ちていた。 こぼれ落ちた眼球にかぶりつく2匹の子トカゲ。 子トカゲにとっては、この世に生れ落ちて初めての食事だった。 姉まりさの眼孔はぽっかりと黒い穴が穿たれ、中から餡子が漏れ出していた。 「ゆぶぎゃああああぁぁぁぁ!!!おべべぎゃあ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「おちびちゃん今助けるよ!!!!」 親まりさがオオトカゲに跳びかかった。 バッッヂン!!!!!!! 強烈な痛みと共に、重たい音が響き渡る。 オオトカゲの強烈な尻尾のムチを顔面に喰らった親まりさは、巣がある剥き出しの断層に叩きつけられた。 その口からは餡子が漏れる。 さらに・・・。 「「ゆぎゃあああああああ!!!」」 「おぎゃああじゃああああん!!!」 「たずけで、まりざああざぁぁぁぁぁぁあぁ!!!」 家族の悲鳴が響き渡る。親まりさは、はっと周囲を見回した。 そこには何匹いるか分からないオオトカゲの群れと、それに弄ばれる家族の姿があった。 姉れいむは先の姉まりさと同じように地面に叩きつけられていた。 もう1匹の姉れいむは、2匹の取り合いに巻き込まれ、左頬と右頬にそれぞれ噛み付かれて引き裂かれようとしていた。 残りの姉まりさは、オオトカゲの大きく鋭い鉤爪を突き刺されて踏み付けられていた。 そして最愛のパートナーである親れいむは、頭のおさげを咥えられて樹木に叩きつけられていた。 「たずげでええぇぇぇぇぇ!!!ま゛りざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「「「おぎゃあぁぁぁぁぁぁざあああああぁぁぁん!!!!!」」」 親まりさは誰から助けて良いのかわからない。 「み゛んな゛まりさが助けるよ!!ゆっぐり順番を待っでね!!!!」 しかし大自然の食欲は"待つ"という事を知らない。 ついに初めに捕まった姉まりさの左頬がずるりと崩れ落ち、姉まりさだった物はオオトカゲの胃袋へと収まった。 他の姉ゆっくりたちも、叩きつけられ、引き裂かれ、全身をズタズタにされて飲み込まれていった。 「ばりざのがぞくがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「まりざああああぁぁぁぁぁぁ・・・」 愛するパートナーが自身を呼ぶ声に振り向く親まりさ。 その視線の先で「ズバチンッ!!」と大きな音を立て、親れいむは樹木に叩きつけられ、大量の餡子を撒き散らして弾けた。 「れぇぇぇいぶうぅぅぅぅぅぅう゛う゛あ゛ぁ゛ぁぁぁああああああぁぁぁ!!!!!!!!!」 呆然と、喰われてゆく家族を見回す親まりさ。 崩れ落ちた姉まりさの左頬に2匹の子トカゲが群がるのが見えた。 その時である・・・。 姉まりさの餡子を貪るのに夢中な子トカゲに、オオトカゲがかぶりついた。 「ゆ゛????!!!!!」 子トカゲに獲物を横取りされたと感じたのか、 オオトカゲはそのまま子トカゲを飲み込んでしまった。 「ゆぎぎぎぎぎぎぎ????????????!!!」 親まりさは混乱した。 これまで愛情を込めて子供達を育ててきたのは何の為だったのか。 子供達の喜ぶ顔が見たくて、空腹を我慢しながらも森中を駆け回り、食物を集めてきたのは何の為だったのか 怯える子供達を必至に守ってきたのは何の為だったのか。 誰よりも先に脅威に立ち向かったのは何の為だったのか。 あっさりと同類の子トカゲを喰ってしまったオオトカゲを見て、親まりさは訳がわからなくなってしまった。 「ゆっぐりしでいっでね!!ゆっぐりしでいっでね!!ゆっぐりしでいっでね!!ゆっぐりしでいっでね!! ゆっぐりしでいっでね!!ゆっぐりしでいっでね!!ゆっぐりしでいっでね!!ゆっぐりしでいっでね!!・・・」 親まりさは白目をむいて泡を吹きながら、跳ね回り、わめき散らした。 そして親れいむと子ゆっくり達を食べ終えたオオトカゲ全てが、親まりさに群がった。 はじき飛ばされ、かじられ、引き裂かれ、叩きつけられ、親まりさはオオトカゲに貪られた。 親まりさは「ゆぐ・・・、ゆぎぎ・・・」と呻き声を漏らしながら、絶命した。 それから程なくして、森のあちこちから様々な鳥獣の鳴き声とゆっくり達の悲鳴が上がり始めた。 ゆっくり達がこの森に馴染むには、まだしばしの時間を必要としていた・・・。 あとがき 卵の描写に関してスレでの多くのご指摘ありがとうございました。 多くは語りません。 色々調べたつもりだったのですが、にわか知識で動物を描写するのは無謀でした。www エンディングも後味悪いし個人的に大失敗ですた。\(^o^)/ おでんのが書いてて楽しかった。 今まで書いたもの 「おでんとからし ~おでん~」 「おでんとからし ~からし~」 「トカゲのたまご ~たまご~」 「トカゲのたまご ~とかげ~」 このSSに感想を付ける
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▼ A Moral Manifest? 依頼者: フックノックス(Hooknox) / 祭壇の間 依頼内容: ゴブリンの泥棒フックノックスは オズトロヤ城に盗みに入ったが、 変装がばれてしまい、面が割れてしまった。 彼女に代わって、地下宝物庫から お宝を盗み出すのだ。 もちろん、ヤグードにばれないように…… 祭壇の間 Hooknox アィキァトビリディハプゥ! イィニィブディウェトゥファンアゥ プァフックノックスゥネヴァビィブゥトゥショ ハァプティゴビィフェスンパブリッアガ…… Hooknox ……………… Hooknox ええーッ、まじィッ!? 人間の冒険者じゃないのォ! 前門の狂鳥、後門の冒険者ってわけェ!? Hooknox ……なんてねッ! あんたに敵意はないよッ。見逃してくんない? 同じ冒険者なんだしさァ。ねッ? Hooknox そ、そっか……先に名乗んないとだねッ アタシはフックノックス。 見てのとおり冒険者ァ。ノックスって呼んでッ! Hooknox んでッんでッアタシが ここで何してたかっていうとォ…… 最近、ここの教団のカミサマがァ近東の国から すんごいお宝を贈られたッて小耳にはさんでェ…… Hooknox もゥ、ソッコー 競売所にダッシュしてェ 買ったヤグードの羽根で変装してェ…… Hooknox で、ここに忍び込んだんだけどォ なんかァ身体中かゆくなっちゃってェ あと一歩んトコで変装がばれちゃったってわけェ。 それからは、もゥここまで超必死ィ。 Hooknox ま、命あっただけマシかもォ。 ところでェ、あんたも自由な冒険者なんだしィ ここでアタシと取り引きしてみる気はあるゥ? Hooknox 噂だとォ、そのお宝 近東の技の粋を注いだ危険なブツって話らしいしィ アイツらに持たせとくとォ後でやばいかもよォ? どォ? 詳しく聞きたくなってきたァ? 選択肢:聞きたい? いいえ Hooknox ……あッ、そうなんだァ 案外、人間ってアタシたちより個人主義よねェ まッいいや。この話はなかったことにしよ? はい Hooknox あんたも人間よね…… っとッ、なんでもないないッ じゃあ、条件決めと行こ? Hooknox 要はァ面が割れたアタシの代わりにィ あんたがここのカミサマのトコに忍び込んでェ 寝所の地下宝物庫からァお宝をゲットしてェ ここに戻ってくればいいわけェ。超簡単でしョ? Hooknox ちなみにィその宝物庫のカギはァ すでにアタシが苦労して入手済みィ。 それがないとト~ゼン宝物庫の蓋は開かないよォ。 Hooknox んでェ、お宝は山分けってことで。 それが宝石とかならアタシがァ、兵器ならあんたが 手に入れてェその半分相応の金を相手に支払うの。 ……どォ? やってみるゥ? 選択肢:やってみる? いいえ Hooknox えええェッ? アタシの見込みちがいィッ? 別にいいけどォ、自力でも何とかなるしィ…… じゃ、バィバィッ! はい Hooknox うれしィッ! じゃ、これで契約成立ゥ。 でもォ……その姿じゃやばくない? Hooknox アタシほど完璧な変装は 無理としてもォ、せめて最低限ここで 怪しまれない格好をしとく必要はあると思うしィ。 Hooknox ……そうだァ! 街に行って誰か針仕事の得意な人にィ その恐い顔を隠すマスクを作ってもらえばァ? Hooknox じゃ、アタシは隠れてるしィ あんたの準備ができたら、またここでねェ。 ウィンダス森の区 Ponono あら、なんですの? わたくしのオーダー・メイドとなると 数年先まで順番を待っていただかないと…… Ponono ………… Ponono ……なるほど。 それはゆゆしき話ですわね。 お引き受けしましょう。ただ…… 狡猾なヤグードの目を欺くのは難しいですわ。 Ponono それに、もしもばれたら わたくしの咎だけでなく、我が国とヤグードとの 外交問題にも発展しかねないし……… Ponono でも、とにかくやってみましょう。 わたくし、しばらく型紙を検討してみますから あなたはビロードと 虹布を探してください。 Ponono あ、事情が事情ですし 手数料は10000ギルでいいです。 一緒に払ってくださいね。 Ponono まだ、型紙を考案中なんです。 それにあなたにビロードと 虹布を探してきていただかないと…… あと10000ギルも忘れないでくださいね。 Ponono それとも…… けっこう材料費もかかることですし またの機会になさいますか? あきらめた場合、クエストはキャンセルされ、 オファー前の状態に戻ります。 あきらめて、クエストをキャンセルしますか? あきらめる あきらめない(キャンセル) 本当にあきらめてよろしいですか? 本当にあきらめる やっぱりあきらめない(キャンセル) クエストがキャンセルされました! (Ponono に材料と10000ギルをトレード) +... ビロード 絹糸と毛糸または木綿糸を編んで作った布。 虹布 虹糸を編んで作った布。 Ponono わたくしの型紙もできてるし、 あなたの努力で材料もそろいました。 では、しばらくしたら取りにいらしてください。 それまでにわたくし、大まかに裁断しておきますわ。 Ponono ……まだ、終わってませんわ。 羽根を移植する微小な穴を開けつつの 作業ですから、長時間は作業できないんです。 もう少しお時間をください。 ※ヴァナ0時経過後。 Ponono 裁断は終わりましたわ。 なかなかの出来ですわよ。 はい、どうぞ…… ヤグード頭衣シートを手にいれた! ヤグード頭衣シート Rare ヤグードに扮する頭衣製作のために裁断された布。 Ponono それが完成すれば ヤグードも見紛うような 彼らそっくりの被り物が完成するはずですわ。 Ponono さて、わたくしの協力はここまで。 我が国とヤグードは平和条約を結んでるし 仕上げまでウチでやったギルド製品となると ばれちゃった時、何かとまずいですから…… 自作できるスキルがある場合 +... Ponono ……さて あとはあなたががんばる番。 作り方は教えますけれど、一度しか言いません。 よく耳をすませて聴いてくださいね。 Ponono まず加工用に土のクリスタル。 材料はヤグード頭衣シート、ブガードの牙、 コカトリスの皮、毛糸、 さらに植毛用にヤグードの羽根を2セット。 Ponono それに、眼には…… そう黒真珠2個がいいわね。 それで合成してみてください。 ちょっと多いですけど、覚えましたか? Ponono ……あと、補足です。 あなたなら材料から想像がつくと思いますけれど 骨と皮を扱う技も必要なんです。 Ponono だいじょうぶ。わたくしは信じてます。 多くの困難を乗り越えてきた、あなたですもの。 今度も……きっと成し遂げられますわ。 自作できるスキルがない場合 +... Ponono ……でも、あなたが ご自分でその面を仕上げるのは ちょっと難しそうですわね………… Ponono ……いいことを考えました。 Ponono ここで皆伝を得た冒険者裁縫師に お願いして仕立ててもらったらどうかしら? 作り方を一度だけ教えますから よく覚えて裁縫師に伝えてください。 Ponono まず加工用に土のクリスタル。 材料はヤグード頭衣シート、ブガードの牙、 コカトリスの皮、毛糸、 さらに植毛用にヤグードの羽根を2セット。 Ponono それに、眼には…… そう黒真珠2個がいいわね。 それで合成してみてください。 ちょっと多いですけど、覚えましたか? Ponono ……あと、覚えておいて。 これを作るには骨と皮も扱える職人さんでないと。 お願い前に、本人に聞いてみることを勧めますわ。 Ponono このギルドで裁縫を修めた 冒険者職人さんたちは、ステキな人ばかりでした。 わたくし、きっと協力してくれると思いますよ。 Ponono ……あっ、それから 彼らは厳しい修行の末、皆伝を得た裁縫のプロ。 お代はちゃんと払うのが礼儀です。忘れないで。 ヤグード頭衣シートを捨てた場合 Ponono ………… あの……まさか、ひょっとして ヤグード頭衣シートの再注文ではありませんよね? 選択肢:ヤグード頭衣シートを作ってほしい? はい いいえ(キャンセル) やっぱりあきらめる(クエストのキャンセル) Ponono ふぅ……仕方ありませんわ。 材料も余ってますし、もう一度裁断しましょう。 ただし、今回は過失ですから、手数料として 100000ギルいただきます。よろしいですわね? 選択肢:100000ギル払いますか? はい いいえ(キャンセル) Ponono ……確かに。 では、これから裁断を始めます。 しばらくしたら、取りにいらしてくださいね。 (指定された材料を合成する) +... 黒真珠 黒色の宝石 毛糸 獣毛をつむいだ糸。 ヤグードの羽根 ヤグードの風切羽。 コカトリスの皮 ぬめぬめしたコカトリスの皮。 ブガードの牙 ブガードの発達した歯。 ヤグードヘッドギアを手にいれた! ヤグードヘッドギア 防5 耐火+5 耐氷-25 耐風+5 耐土+5 耐雷+5 耐水+5 耐光+5 耐闇+5 Lv61~ All Jobs 祭壇の間 (ヤグードヘッドギアを装備してエリアチェンジする) Hooknox ブゥゥゥゥッ! ずいぶん待ったんだけどォ? 人間の社会じゃァ…………!? Hooknox ……………… Hooknox ……ねッ、ねェ なんかの人間の冗談だとは思うんだけどォ まさかァあんたそれでヤグードになったつもりィ? Hooknox ………やッ、やばくない? もぅこうなったらァ黙ってるしかないよォ。 無言の行をしてる僧の真似でもしてェ…… じャ、はいこれェ。 だいじなもの 宝物庫のキープを手にいれた! 宝物庫のキープ ヤグードが連絡や記録に用いる結び縄文字。 1本のロープにつけられた結び目の結び方、 間隔、数や色に数多の情報が含まれている。 ノックスの話では鍵の役目も果たすらしい。 Hooknox ……そのロープの結び目がァ 宝物庫の蓋のカギになってるからァ 怪しい床を見つけたら、はめ込んでみてェ。 Hooknox ……じゃ、アタシは この辺に隠れてるしィ、がんばってねェ。 Hooknox …………何よォ、文句あるのォ? アタシはァ、カギを手に入れるの苦労したんだしィ あんたもォ、ドジ踏まないでよねェ。 (Stone Lidを調べる) 彫り込まれた部分に宝物庫のキープをはめた。 ??? ……クククククゥッ かかりおったな、不浄なるネズミめ…… Yagudo Avatar きっとここにまた現れると思い 見張っておった甲斐があったぞ。 我が明主の御寝所に忍びし大罪。 万死をもって贖うがよい…………… Yagudo Avatar ……クククククッ 愚かなる邪教徒よ、偉大なる神力を知れ。 シシュ様……我が最期の戦い、ご照覧あれ! [Your Name]は、Laa Yaku the Austereを倒した。 [Your Name]は、Poo Yozo the Babblerを倒した。 [Your Name]は、Goo Pake the Bloodhoundを倒した。 [Your Name]は、Fee Jugu the Ramfistを倒した。 [Your Name]は、Kee Taw the Nightingaleを倒した。 [Your Name]は、Duu Masa the Onecutを倒した。 [Your Name]は、Yagudo Avatarを倒した。 (Stone Lidを調べる) ??? ハッモヤラーム…… サルミ、コポラーイ? Tzee Xicu the Manifest ほう これはこれは…… 盗みに入ったばかりか、かような乱暴狼藉。 我を全能なる神と知っての無礼であろうな? Tzee Xicu the Manifest ……………… Tzee Xicu the Manifest これは笑止。 我らが近東の邪教徒より贈り物を受けとるなど 天地が逆さになろうともあり得ぬこと。 まして、あの国は今………… Tzee Xicu the Manifest ……ふむ。 たとえ浅ましき人間といえど 濡れ衣を着せられるのは不快よの。 よかろう、我が順をおって話してやろう…… Tzee Xicu the Manifest 我が国が古より はるか東の国と交流があるのは知っておるか? 中には彼の地に渡り その王に仕えたハラカラもおるほどよ。 Tzee Xicu the Manifest 先日がこと。 その末裔より危急を知らす使者が送られてきた。 ……汝も聞き及んでおろうが 彼の地では恐ろしき天変地異が起きておると。 Tzee Xicu the Manifest しかも 報告はそればかりではなかった。 混乱に乗じて近東の軍勢が大挙来襲し 国境を脅かしておるのだそうだ…… Tzee Xicu the Manifest だが、宝刀を献上し 涙ながらに嘴を床に打ちつけて救援を請う そのかつての同胞に、我がしてやれたことは わずかな兵をつけてやることと……… Tzee Xicu the Manifest その宝刀を 再び返してやることだけであった。 神といえど無力なこともある……分かったか? おそらく、それがくだらぬ風説の始まりであろう。 Tzee Xicu the Manifest 近東の宝など まして兵器などここにはないのだ。 はなからな……… Tzee Xicu the Manifest だが、人間よ。 その憂国の志は異教徒といえど見事である。 汝がごとき者がいつの日か彼の地に渡りて 何事かなすのかもしれぬな…… Tzee Xicu the Manifest ……ふむ、我は決めた。 特別に恩寵として、汝に神器をとらそうぞ。 我らが姿を真似た頭衣をその蓋の上に置くがよい。 (Stone Lidを調べる) ……わずかに床が浮き上がっている。 その石には細長い渦巻き模様が彫り込まれている。 (Stone Lidにヤグードヘッドギアをトレード) Tzee Xicu the Manifest ……ほう。 汝は肝が据わっておるな。 修行を積んだ高僧でもなかなかそうはいかぬ。 Tzee Xicu the Manifest 誰かある? Tsoo Haja the Umbra これに…… Tzee Xicu the Manifest ツォーか? 汝、これよりその人間が冒険者の僕となれ。 Tsoo Haja the Umbra お、恐れながら、 こやつは人間。しかも憎むべき異教徒…… Tzee Xicu the Manifest 痴れ者めが! 神の言に疑問を挟むでない。 ツォーよ、その冒険者が頭衣を被りて命じし時 汝は命に代えても護るのだ。よいな? Tsoo Haja the Umbra 御意っ! なれど、もし………… Tzee Xicu the Manifest 我を襲えと命じたら ………か? 務めをまっとうすればよい。 それともツォーよ……汝は神の不滅を疑うのか? Tsoo Haja the Umbra めっ、滅相もなきこと。 されば、これにて失礼つかまつる。 Tzee Xicu the Manifest 汝に、 この頭衣を返そう。 ハジャヘッドギアを手にいれた! ハジャヘッドギア Rare Ex 防10 耐火+10 耐氷-50 耐風+10 耐土+10 耐雷+10 耐水+10 耐光+10 耐闇+10 エンチャント ヤグードヒーロー召喚 Lv75~ All Jobs 30/30 0 30/[20 00 00, 0 30] Tzee Xicu the Manifest あやつの名は 影法師のツォー・ハジャ。東方の忍術を修め 人間の言葉も解する如才なき武僧だ。 汝の思うようにあやつを使ってみせよ…… Tzee Xicu the Manifest さて、用は済んだ…… 早々に我が寝所より立ち去ってもらえるかな? 無礼なる冒険者よ。 Tzee Xicu the Manifest 今日のこと 我と汝の秘密ぞ。神は邪教徒に声をかけぬ。 邪教徒は神を目にした刹那に死すべき定め。 それは今後も変わらぬ事実……今をのぞいてな。 称号:ヤグードイニシエート (ハジャヘッドギアを装備してエリアチェンジする) Hooknox 遅かったじゃないッ! でも、その自身に満ち溢れた顔。 しっかりお宝をゲットしたんだ? Hooknox ……………… Hooknox …………そんな。おッ、お宝が アタシのお宝がッ、あ・り・ま・せ・ん・でした。 ですってェェェェェッ!? Hooknox …………ハァハァハァッ ウソは言ってないよ~ねッ。 ん、もう仕方ないッ! アタシも冒険者だもん、きっぱり諦めるよッ! Hooknox …………はい、コレ。 Hooknox アタシからの報酬だよッ! ッと、えとォ……私の計画で無駄足させたしィ それに危険な目にもあわせたしィ…… Hooknox 驚かないでよォ! ゴブリンにだってェ信義もあれば正義もあるしィ 友情だってェ…………… 獣人金貨を手にいれた! 獣人金貨 クゥダフの鋳造した金の硬貨。 獣人社会で広く流通している。 Hooknox じゃ、これで ほんとにお別れだねェ。バィバィ! Hooknox ……いつか、またァ どこかのダンジョンで出会ったらァ…… 今度はいっしょにパーティ組んでみようよッ! ▲ ■関連項目 オークの謙譲 , クゥダフの博雅 , ゴブリンの仁義 , 祭壇の間 Copyright (C) 2002-2015 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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(前編から) 二十日が過ぎた。二人は綿密な調査を進め、ほぼ完璧なデータを集め終えた。 この森の群れの数は大小合わせて五十四群で、総個体数は三千二百五十頭だった。 一つの群れは平均して十二家族、六十頭の個体からなっていた。 そこから、一家族辺りの縄張りが二百平方メートルという数字が導かれた。わずか十四メートル四方だ。 十四メートルといえば、ゆっくりの歩度でも五十歩かそこらだ。 五十歩四方の中で、居住するだけではなく、運動、捕食、水浴び、排泄などすべてをこなしており、明らかに過密状態だった。 「ここはれいむのゆっくりプレイスだよ! ゆっくりしないでむこうへいってね!」 「ゆぐぐぐ、いくところなんかないよ! まりさはここでゆっくりするからね!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛ーっ!」 「ゆっぐりいいぃ!」 そんなやり取りがたびたび聞かれた。外周網を周回したヤマベは、網に絡まって干からびた死体や、網のすぐ外で小枝に刺さっている死体を見つけた。 逃げようとして無理やり抜けようとした成体ゆっくりや、我慢できなくなって域外へ出て事故にあった赤ゆっくりのようだった。 三千二百五十頭のうち、成体ゆっくりは千三百六十頭。うち二十五パーセント、すなわち四百頭以上が妊娠していた。 冬になる前に食糧不足に至るのは明白だった。 主任とヤマベは写真入りの調査結果を地主と役所に持参し、最終的な処置の契約を結んだ。 その日、二人はいつもの軽トラではなく、マイクロバスで森にやってきた。バスにはアルバイトの学生二十人を乗せていた。 助手席のヤマベに、後席の学生たちの会話が聞こえてきた。 「いくら多いったって、相手はたかがゆっくりでしょう? こんなに人数いるんですかね」 「君、ブリーフィングのときに何を聞いてたんだ。今回は三千二百頭だっていうんだぞ」 「はあ……三千二百ねえ」 「実感ないって顔だな。いいか、普通のゆっくりは大体重さ六キロある。ペットボトル四本分ぐらいだ。 それが三千二百頭、半分は子供だとしても、一千頭以上いるんだぞ。重さは全部でどれぐらいだ?」 「……六千キロとか、一万キロになるんですかね」 「十トンだよ。自家用車十台分だよ。それだけの量の餡子やらクリームやらを前にしても、まだたかがゆっくりなんて言えるか?」 「いや、なんかわかってきたっす……」 経験者と、初心者なのだろう。ヤマベは椅子にもたれて目を閉じた。 森に到着すると、広めの場所を選んで仕込み用のネットとスコップを降ろし、『イベント』の準備を始めようとした。 すると主任が言った。 「ヤマベ、ヤマベ」 「はい、なんですか」 「おまえ、これ行ってこい」 そう言って手渡されたのは、いくつかの座標を書いたメモ用紙だった。ヤマベは驚いて目を見張った。 「私が行っていいんですか?」 「俺が行くわけにもいかない。おまえ一人で学生は仕切れないだろう。行け」 主任が背を向ける。ヤマベは頭を下げ、森のなかへ駆け出した。 だが、すぐに頭をかきながら戻ってきて、登山用の巨大なザックを担いでまた走っていった。 彼女が見えなくなると、主任は学生たちに声をかけた。 「よーし、集まって。作業の説明をするよ。 一班は柱設営だ。『ステージ』を囲むようにぐるりと柱を立てる。 二班はネット掛けね。柱の上に、『ステージ』を覆うネットをかける。このネットは縁のところ以外は絶対触らないで。 三班はデコイの穴掘り。そこらへんを掘って飴玉を埋めていって。 さっきうまいことを言ってた子がいたが、大体ペットボトル四本が入る感じで」 「三千頭分も掘るんですか!?」 「いやいや、デコイ、囮だからね。二十分の一ぐらいでいいよ。百五十箇所だ。 柱立てたら残りのみんなも参加するからね。 あー、長靴? 長靴はあとでいいです。ひとまずバスの横置いといて。 じゃあ僕が外周にライン引きしていきまーす。 大体あの辺までになると思うんで、チャキチャキ働いてください。では、はい」 「うーっす」「いっちょやるかー」 森の中に入ったヤマベは、メモにある座標へ向かった。地形はこの二十日で頭に叩き込んである。 目当ての場所には倒木に隠れた斜めの穴があり、中をのぞくと、薄暗い穴の中でごそごそ動く黒い帽子が見えた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっ? ゆっくりしていってね!」 声を掛けると、ゆっくりまりさを初めとする一家が現れた。続いて、小さな赤まりさと赤ちぇん。 「あ……」とヤマベはつぶやく。 それは、以前会ったことのある、あの母ちぇんを亡くした一家だった。 「ゆ、ヤマベさんなんだぜ! キツネさんはゆっくりいなくなった?」 「ええ、どうかな」 「まりさはもうそろそろ旅に行きたいよ! おちびたちのごはんも減っちゃったよ!」 ゆーゆーと子供たちが母まりさに頬をすり合わせている。ヤマベは胸が痛くなった。 だが、これも仕事なのだ。――ギュッと歯をかみ締めると、ヤマベはザックを降ろして母まりさを抱き上げた。 「ゆゆっ? なにするんだぜ?」 「いいところへ連れてってあげるね」 「いいところ? ゆっくりできるならいってもいいぜ!」 得意げな顔をするまりさを、ヤマベはザックに入れた。まりさはまだよくわかっていない様子で言う。 「おちびのちぇんが一番さみしがりなんだぜ。ゆっくりいれてあげてね!」 ヤマベはザックの口を縛り、それを背負って立ち上がった。 足もとで小さな赤ゆっくりたちが、ゆーゆー、おかーしゃんまっちぇ、と飛んでいる。 その子たちに、ヤマベはひとことだけ言い捨てた。 「隠れてな」 「ゆっ……?」 子供たちが戸惑って立ち止まる。このままついて行こうか、お留守番しようかと迷っている風だ。 ゆゆっ? と背中からくぐもった声が聞こえた。ぼすんぼすん、と背当てのパッドが叩かれ、叫び声がした。 「ゆっくりまって! ゆっくりとまってね! おちびたちをわすれてるよ!」 「ごめん、まりさ」 ヤマベは硬い顔で言った。 その後三箇所を回って、計四匹のゆっくりでザックを一杯にすると、森の外周へ向かい、網をまたいでさらに百メートルほど離れた。 そして、あらかじめ準備してあったカンバス地のコンテナを地面の上に組み立てた。 風呂桶ほどの大きさになる、蓋付きの容器だ。複数のゆっくりを一時的に害獣から守ることができる。 そこにザックからドサドサと四頭を流し込んだ。 「ゆぶっ!」「ゆべえ!」 つぶれながら落下したゆっくりたちが、すぐに起き上がってゆうゆうと不安そうに周りを見る。 成体のまりさとれいむちぇんが一匹ずつと、やや小さくておとなしそうなアリスが一匹だ。 まりさがヤマベを見上げ、心配そうに叫んだ。 「ゆううう、まりさのおちびたちがいないよ! ゆっくりさがしてね! さびしがってるよ!」 「ごめん」 ヤマベはもう一度言って、ザックを片手にそこを離れた。ゆううう! ゆううう! と閉じ込められたゆっくりたちの悲鳴が追ってきた。 それから二時間ほど後、森の反対の端では、主任たちが準備を終えて『イベント』を始めていた。 「あまあま大会だよー」 「ゆっくりできるよー」 「ゆっくりしていってねー、ゆっくりしていってねー」 スーパーの売り子のように一本調子で叫びながら、間隔の広い横隊で森を進んでいく。 「あまあま」の声に反応して、次々にゆっくりたちが飛び出してきた。 「ゆうっ、あまあま!?」 「あまあまたべたいよ!」 「しゅにんさん、あまあまをくれるんだね! わかるよー!」 顔見知りのゆっくりを見かけると、主任が声を掛ける。 「ゆっくりだね、ちぇん。今日も元気かーい」 「ゆっくりしているよ!」 「あまあまをたくさんたくさん配るから、仲間みんなに声を掛けてねー。一人残らずだよ」 「わかったよー! ゆっくり、ゆっくりーっ!」 ちぇんを始めとする元気のある若いゆっくりたちが、我先にと駆けていく。 やがて森の奥から、赤や黒、緑や金色の色彩が、数え切れないほどぴょんぴょんと跳ねてきた。 無邪気な目をきらきらと輝やかせ、ハァハァと口を開けている。あまあま以前に、皆が食べ物に飢えていたのだ。 そんなゆっくりたちに向かって、人間はメガホンで叫ぶ。 「あまあま大会は森の入り口でおこないまーす」 「ご家族すべて連れてこないと参加できませーん。ゆっくりしていってね!」 「あまあまたいかい!?」 「ゆうううぅ、すごくゆっくりできそうな言葉だよぉ……」 「まりさ、おちびちゃんを乗せてね! れいむはおかあさんをひっぱってくるよ!」 さっさと走り出すもの、妄想が浮かんでその場でうっとりする者、一族郎党を引き連れてくるもの。 山のようなゆっくりたちが、ざわざわ、ごそごそ、もぞもぞ、ぴょんぴょんと湧き出して、流れる川のように森の入り口へ移動していく。 それと入れ違いに人間は森の奥まで進み、外周の網までたどり着くと、また叫びながら引き返し始めた。 「あまあま大会、まもなくはじまりまーす」 「一度きりだよー、来ないとなくなっちゃうよー」 「ほっぺのおちるあまあまだよー」 「ゆんぐぐぐ、やっぱりれいむもいくよー!」 「おかーしゃーん!」「おいちぇかないれー!」 跳ねる親、泣きながら追う子。 「むきゅぅぅ、ぱちぇはもうむりよ。ありすは先に行って……ぜぇぜぇ」 「ひとり占めなんてとかいはじゃないわ。おしてあげるからゆっくりがんばってね!」 助け合うカップルもいる。 置いていかれたものは、残らず抱き上げて聞き取りした。 「ゆっくりしていってね! もう周りにはゆっくりは残っていないかい?」 「みょーん、残ってないみょーん! みんないっちゃったみょーん!」 ざわざわと流れていったゆっくりたちは、やがて渋滞に入ってしまう。 森を囲む網が近づいて、一箇所しかない出口に殺到しているためだ。 「ゆっくりして、ゆっくりしてね!」 「おさないで、おさないでよ!」 「ゆぐぐぐぐ! でいぶつぶれるううう」 「ゆんやあああ! おかーしゃーん、おとーさーん!」 出口のところは駅の改札口のように何列かのゲートにされて、五人のアルバイトが両手の計数機をものすごい勢いでカシャカシャと連打している。 「ゆううう、やっとぬけたわあああ!」 「ゆっくりつぶれちゃったよ!」 「ゆっくり、ゆっくり!」「あまあま! あまあま!」 ゲートを抜けたゆっくりたちが、広い地面に出て勢いよくぴょんぴょんと跳ねていくが、じきに不思議そうに立ち止まる。 森から出たそこも、緑の網で囲まれた行き止まりの土地なのだ。ただし森ほどの広さはなくて、差し渡しは三十メートルほどだ。 そして頭上にも網が張ってある。こちらは外周の網とは違ってキラキラ光る細い網だ。 「ゆゆっ、あまあまがないよ?」 「おにーさん、はやくあまあまをもってきてね!」 「まりさはおなかがすいたよ! ぷくうううう!」 そんな風に膨れて威嚇するゆっくりたちも、後から後から流れ込んでくる仲間たちに押されて、どんどん奥へと運ばれていった。 「あまあま、あまあま!」 「ゆっくりたべるよーっ!」 森から流れ出し、広場に駆け込んでいく、紅白黒緑のざわざわした流れ。 横隊に加わっていた主任がそれを追い越して、爪先立ちでゆっくりを押したり蹴飛ばしたりしながら、一足先に戻ってきた。 「ほい、どいてね。はい、ごめんよ。おーいみんな、カウントどう?」 「僕は三百二十ですね」 「二百八十でーす」 「三百八十一」 「そこ、流れ悪いね。なんだあれ、あいつがふんぞり返ってガーガー言ってるからだ。誰かあのでいぶをステージに放りこんじゃって!」 「うぃーす」 「君君、足速そうだね。もうひとっ走り、外周回ってきてくれる? カウントは僕がやるから」 「えーっ、走るんですかあ?」 「あとで色つけとくからさ」 「わかりましたー」 アルバイトの一人が駆け出して行き、二十分ほどしてから横隊の連中と戻ってきた。 「主任さーん、パーフェクツです」 「穴とかちゃんと見た? テープで目印してあったでしょ?」 「見ましたー。ちゃんと声かけましたよ。残ってたのはアレしてきちゃったけど、いいですよね」 「いいけど、そんなに残ってた?」 「いえ、なんか年取ったれいむと、うつむいてブツブツ言うありすが一匹だけ」 「それはおちんちん取れちゃったやつだよ。ほっといても……」 「ギャー、セクハラ発言キター!」 「おい、真面目にやるよ?」 そうこうしているうちに横隊がカウボーイのように、最後尾のゆっくりを網のうちに追い込み、ゲートを閉じた。 いまや、三十メートル四方の広くもない広場が、ゆっくりでぎゅうぎゅう詰めになって足の踏み場もなくなった。 ゆっくり、ゆっくり、という期待の声と苛立ちの声、泣き声や悲鳴が重なり合って開場前の遊園地のように騒々しい。 カウンターと記録をつき合わせて、ほぼ誤差がないことを確かめてから、主任はハンドマイクを取った。 ガピッ! とハウリングの音をさせてから、盛大に叫び始める。 「えー、それではゆっくりのみなさん。お待たせしました。これよりあまあま大会を開始します」 「ゆっくりーーーー!!!」 「ルールの説明です。この会場には、たくさんのあまあまが地面の下に埋めてあります。 はい、そこのまりささん! あなた、そう帽子のつやのいいあなた。 ちょっとあなたの真下を掘ってもらえませんか」 「ゆゆっ? まりさが掘るのぜ? ざーくざーく……ゆゆゆう、飴さんをみつけたよ!」 「という具合です。みなさん張り切って地面を掘ってください。 なお、飴の数はみなさんよりきもち少なめにしてあるので、掘るのが遅れるとなくなってしまいます。 それでは用意、スタート!」 主任はそう言うと、陸上競技用のピストルをパァン! と鳴らした。 司会進行はメリハリもクソもないグダグダだが、道具の準備だけはいい男だった。 「ゆーっ!」 ゆっくりたちが一斉に足元を掘り始める。 最初は穴掘りの得意なまりさたちががんばっていたが、実際にあちこちから、 「ゆっくりー! あまあまみつけたよー!」 「ちゅぱちゅぱ、ちゅぱちゅぱ! おいしいよ、とってもゆっくりできるよ!」 と叫び声が上がると、もたもたしていたれいむもありすもぱちゅりーさえも、必死に掘るようになった。 ほとんどのゆっくりが穴堀りに熱中し始めたのを確かめると、主任はハイドマイクを置いて学生たちに合図した。 「おーい、配置配置。ちゃんと長靴はいた? いいか、焦っちゃだめだからな。焦るなよ!」 二十人の学生が、網で囲まれた穴掘りステージの周囲に陣取る。 三千数百のゆっくりが穴を掘りまくるフィールドでは、砂と土がザクザクと巻き上げられ、もうもうと砂煙が上がっている。 「穴、どう? おーい、そっちは穴どう!?」 「もうちょっとですかねー」 「全部入らなくてもいい、全体入らなくっていいよ! 土、土かけるから!」 「じゃあオッケーです!」 「オッケー? 一班オッケー?」 「オッケー!」 「二班もオッケーでーす!」 「よーし、いいかな? いいかな? じゃあいくぞー、それっ!」 全体と十分アイコンタクトしてから、主任は頭上の網を支える柱を引き倒した。二十人の学生がそれに続いた。 ふわり……と白く薄い網がゆっくりたちの頭上に落ちかかる。 間髪要れずに人間は網の周囲にペグを打ち、一匹たりとも逃さないように固定していく。 すると、穴に半ば埋まって土を放り出していたゆっくりたちが、遅まきながら気づいて顔を上げた。 「ゆゆっ?」 「なにかのってきたよ?」 「しろいふわふわさんだよ! きれいだね!」 「これはゆっくりできるもの? ぺーろぺーろ……ゆぎひゃあああああ!?」 絶叫が上がり始めた。網をなめようとした舌が、すっぱりと切断されたのだ。 「主任さん! これは一体……」 「“カスミアミ”だよ!」 主任が力強い声でそう言った。 カスミアミ――それは絹糸で作られた鳥猟用の網だ。 ほとんど目に見えないほど細いわりに、絹を使っているので強度が高い。 昔は日本の多くの山野で使われていたが、鳥類保護の観点から使用が禁止された。 主任たちの会社ではそれをゆっくり用に使用しているのだった。 鳥が絡まったら抜けられない、細い強靭な網がゆっくりに対して使われるとどうなるか――。 「ゆぎゃっ、ゆぎゃああああ!?」 「切れるううう、まりさのおぼうしが切れちゃううう!?」 「ゆぴゃああ、いちゃいっ、いちゃいよおぉぉ!」 「あびゅっぱ!」 「ひぱれ!?」 「てぷ」 スッ――れいむの額がめくれる。 スッスッ――まりさの頬が削がれる。 サクッ サクサクッ――親の頭にのっていた赤ゆっくりたちが、一文字や十文字に割れる。 バラバラ、ボトボトと地面に落ちる。皮が、あんこが、頭飾りが。たちまち悲鳴と糖臭が立ち込める。 饅頭肌を持つゆっくりにとって、「糸」は大敵だ。くくられたりひっかったりすると、それだけで肌が切れてしまう。 強靭な絹糸の網は、まるで空気そのものが刃物になったかのように、いともあっさりとゆっくりを切り裂いていった。 広場の外周では、アルバイトたちが浮き輪の空気抜きのように網ごとゆっくりを押しつぶしていく。 圧迫されたゆっくりが裂け、弾け、網の合間からトコロテンのようにヌリヌリとこぼれだす。 「ゆぎゃあああ、ぢにだくないい!」 「ゆっ、ゆゆっ? なんなの、どうしたの?」 「ゆっくり! ゆっくりおしえてね!」 それに引き換え、内側のゆっくりたちは何が起こっているのか理解できない。 ただ回り中から悲鳴が沸きあがるのを聞いて、混乱し、恐怖して、ゆっゆっと説明を求めるばかりだ。 「ゆっくりにげるよ、ぴょーん! ……ぷぱっ?」 「まりさもにげるよ! ずーりずーり……んぴっ! びゅあっ、びべばぁー!」 外へ逃げようとしたゆっくりは、ことごとく網にかかって切断される。 勢いのいいものは分割されたままヨウカンのように飛び、着地地点でバラリと解体される。 それほどでもないものは、顔面が割かれたところで痛みにのた打ち回り、後から来る仲間に押されてやはりトコロテンになる。 「だめだよぉー! おしちゃだめだよぉー!」 「ゆいいぃぃ! そとはあぶないよ! ゆっくりできないよ!」 「もどってね、ゆっくりもどってね!」 網が危険だと理解したゆっくりたちは、地下に飛び込む。 今まで自分たちが掘っていた穴に、だ。 飴が埋めてあったのはちょうどゆっくり一体分の深さ。つまりその掘り跡は都合のいい隠れ場になるわけだ。 ゆっくりたちは先を争って穴に逃げ込む。 すぽっ すぽっ ころころ、ずぽんっ! 「ゆっくりかくれるよ!」 「ゆゆーん、ここはれいむにぴったりだよ! れいむのゆっくりプレイスにするね!」 「おちびちゃん、おいでね! おかあさんのおくちにゆっくり入ってね!」 「ゆー、ゆー!」「ゆっくちはいりゅね!」「こーろこーろ!」 穴という穴にゆっくりが入り、下を向いたり横を向いたり上を向いたりした状態で、得意げに叫ぶ。 中にはその場でゆっくりプレイス宣言するものもいるが、そんなのんきなことが許される状況ではない。 「どいてね、おねがいだからゆっくりどいてね!」 「ゆあああ、すぱすぱがくるよお! はやくでてね!」 穴の主に向かって懇願するれいむや、背後をちらちら見ながら泣き喚くまりさがいる。 「れいむのおちびちゃんを助けてあげてね! どいてね!」 「どけっていってるでじょおお゛お゛お゛゛お゛!」 「がーぶがーぶするよ! がぶ! ゆうううう!」 「ゆびゃああああ、ひっばらないでぇぇぇ!」 「だめだよ! おぢびぢゃんだちのだよ! ゆぐぅぅぅ!」 「ゆぎゃああああぁぁ、あばぁ!」 焦りのあまり、穴の主のもみ上げや髪の毛にかみついて、力ずくで引きずり出そうとするものもいる。 その途中で踏ん張りすぎてもみ上げが千切れてしまい、あんこがドバッと噴出したのが見えた。れいむは瀕死で穴の底に落ち、ひっぱっていたれいむは後ろへ吹っ飛んで網に切り裂かれる。 「れいむも入れてね! ゆっくりいれてね!」 「まりさもはいるのぜ! ずーりずーり」 「ちぇんもはいるよー! いれてよー! おねがいだよぉぉ!」 「ゆーっ、ゆめてねやめて、ここはもうはいらないよ! ゆっくりやめて! づぶれるよぉ゛ぉ!」 「あっあっあ゛っだめだぜっ、つぶっ、つぶれるっ、ああああんこ出るあんこ出るまりさでで出ちゃうっ、でちゃうでちゃううっ、ゆああああゆぶびびぅぅっぶば!」 「ぶべっびぁ!」「ばぴゅっふ!」 一つの穴に黒いのや赤いのや緑のが殺到し、ムリムリモリモリと尻を持ち上げて無理やり頭をねじ込んだ挙句、二、三頭が破裂してしまい、派手にあんこを吹き上げているところもある。 そんな狂乱穴埋まり地獄とでもいうべき、ゆっくりたちの阿鼻叫喚を、端から学生たちが網ごとズムズムと踏み潰していく。 「いち・にー、いち・にー」 「よっせ、よっせ」 「長靴ってこれかよー」 麦踏みにも似た光景だが、一歩ごとにブビュッ、ブビュッ、と餡が吹き上がるところが異なる。 主任が外周を回りながら言う。 「穴入ってるやつはできるだけその場で埋めてくださーい。網切れないように気をつけてー」 「はーい」「あいー」 ザッザッ、と餡交じりの土が浴びせられ、ゆっくりが埋められる。 「ゆばばばぁ、やめでよぉ! ゆっくりざぜでぇ!」 空を向いて泣きながら埋められるのもいれば、 「もぉやだああぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅ!」 「だじでよぉぉ! ぬけないよぉぉぉ!」 「おがあじゃぁーーーん! だずげでぇぇーーー!」 「おぢびぢゃああん! ごめんねぇぇぇ!」 下を向いたり、横を向いたり、大きいのの隙間に小さいのが挟まったりして、身動きできずに号泣しながら埋められていくものもいる。 主任は外周を回りながら地面に目を走らせている。時折、外の地面をぴょんぴょんっと跳ねていく小さな帽子や髪飾りがいる。 親が必死の思いで外へ投げ飛ばした、赤ゆっくりや子ゆっくりだ。涙をこらえて一歩でも遠くへと走っている。 主任はそういうゆっくりを目ざとくつまみあげ、ポイッと広場の真ん中へ放り戻す。 捕まった途端に赤ゆっくりたちは絶望に口を開け、「ゆんやあぁぁぁ!」「いやに゛ゃぁぁぁ!」と悲鳴を上げながら飛ばされていく。 せっかく逃げられたかもしれなかったのに、赤ゆっくりたちの望みはこの冷静な男に断たれてしまうのだ。 混乱しきった網の中では、母親といっしょに死ぬこともままならない。 ただ、「みゃみゃぁぁー!」「おちびぢゃあぁぁぁん!」と叫びあいながら、解体され、潰されていくしかないのだった。 「それっ、それっ! あれー、主任さん潰さないんですか?」 額に汗をかいて楽しそうに潰し歩いていた女子学生が、赤ゆを投げている主任に尋ねる。 「こうすれば同じだからね」 主任はむっつりと答えた。 包囲し始めから四十分ほどたつと、ゆっくりの狂乱もだいぶ静まってきた。広場の中心辺りで、言葉もなくモゾモゾ、ワサワサとうごめいている。 だがこれは落ち着いたのではなく、しゃべる余裕もないほど必死で闘争しているのだ。 外周からは、少しでも死を遅らせようとゆっくりたちが中央へ押し寄せる。 中央では、押し寄せる仲間たちの圧力に負けて、皮の弱い個体から破裂していく。 「ゆぶっ……!」 ズチャンッ 「ばびっ……!」 ドチュンッ 「みゃみゃ……」 プツンッ それらの餡子やクリームが、ときおり間欠泉のように吹き上がる。 数は少ないがしゃべれるほど大きなのもいて、大声でわめいている。 「どぼじでごんな゛ごどずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ! でいぶばがわいいでいぶなんだよぉおおぉぉぉ! ゆっぐりごごがらだぜぇぇ! ゆっぐりざぜろおぉぉおぉ!」 喚きながら大きな図体で暴れるものだから、まわりのゆっくりが巻き添えを食って潰されている。 「っせぇ黙っとけ!」 苛立った学生が穴掘りに使っていたスコップを掲げて、平らな面でバシンバシンとその大きなれいむを叩き始めた。 れいむは口汚く罵っていたが、途中から命乞いを始め、それも通じないとわかると狂ったように泣き喚いた。 それでもなかなか死なず、周りの学生が寄ってたかってパンチとキックを集中させ、頭全体に何十個もの陥没口をあけられて、ようやく死んだ。 皆が思っていた通り、そのれいむの面の皮は恐ろしく厚く、十センチほどもあった。 「あまあま大会」で六割以上のゆっくりが穴を掘っていたため、包囲網が内に近づくにつれ、外周にはゆっくりの埋まった土饅頭が増えていった。 中央部の数少ないまともなゆっくりが、網でキシキシ裂かれていきながら、泣き声で叫んでいた。 「にんげんさん、やめてね! やめてね! れいむなんにもわるいことしてないよ! おねがい、やめてね! ゆっくりしてね! ゆっくりしてよー! いっしょにゆっくりしてー!」 このころになると、最初はハイだった学生たちもやつれた顔になっていて、哀願するれいむから次々と目を逸らした。 人間の顔と声をした生き物をこれほど殺していると、たとえゆっくりであっても消耗するのだ。 「いたいよー、たすけてよー! ゆっくりしていってね!!!」 叫ぶれいむに、主任が大またに歩いていって、力いっぱい長靴で踏みつけた。 ザパッ! と絹網がれいむに深く食い込み、上下・左中右の六つに切り分けた。 その切り方が綺麗だったのかなんなのか、そのれいむは分割されても声を上げた。 「ゆっくりして……ってね」 そしてボロボロと開くように倒れた。 最終的に、中央部のゆっくりは自分たちの圧力でつぶれ、ドロドロした粘体の山と化した。高さ八十センチ、底の差し渡しが三メートルほどの低い山ができた。主任がそれを写真に撮って言った。 「この山一つで二トン半ぐらいかな。……じゃあ、あとはみんなで穴掘って、これ埋めたら終わり」 「二トン半て」 うんざりした顔の学生に、主任は声をかけた。 「残り七トン半は自分らで掘った穴に勝手に埋まってくれたんだ。楽したと思わなきゃ」 「そっスね」 すでに日は傾いていたが、皆は黙々と作業の締めくくりに移った。 携帯電話が鳴った。カンバスコンテナの横でぼーっと座っていたヤマベは、電話に出た。 「はい」 「済んだぞ。そっちは」 「NPです。みんな泣いてますけど」 「離してやれ」 ヤマベはコンテナの中に目を戻した。主任の指示通り、森中からランダムに集めた十頭のゆっくりたちが、不吉な将来を予感したのか、えぐえぐと泣きじゃくり、ゆっくりしようねと慰めあっていた。 いずれも色艶のいい、利発そうな成体ゆっくりたちだ。 ヤマベはコンテナに手をかけ、ごとんと倒した。ころころと出てきたゆっくりたちが、「ゆゆっ?」と辺りを見回した。 その中のまりさが怒った様子でヤマベに詰め寄った。 「ヤマベさん、ゆっくりあやまってね! まりさはこんなにおちびたちからはなれたのははじめてだよ! ゆっくりおちびのところへつれていってね!」 物悲しい目でまりさを見ていたヤマベは、立ち上がった。コンテナを畳んでザックにいれ、歩き出す。 「ゆゆぅ!? むししないでね! ゆっくりはなしをしてね!」 後ろからまりさがピョンピョンとついてきた。ヤマベは黙々と歩き、例の森の外周の網までたどり着くと、それをクルクルと巻き取り始めた。 「行きなよ。こっからさき、あんたたちの森だから」 「ゆっ? くんくん……そういえばこのにおいは知ってるよ! ここはまりさのもりだよ!」 「そうだね」 「これならおちびのところへいけるよ! ゆっくりいそぐよ!」 まりさはヤマベが開けた網の隙間から森へ入っていこうとしたが、ふと不安そうに振り向いた。 「きつねさんは、もういないのぜ?」 「最初っからいなかったのよ。増えすぎたのはあんたたちのほう」 ヤマベは振り向き、様子を伺っている九頭の生き残りにも声をかけた。 「さあ、行っておうちへ帰りなさい。この森はとっても広くなったから、ゆっくりできるわよ」 「ゆゆう……?」「もりがしずかだよ……」「ゆっゆっ……ゆうう?」 おどおどと周りを見回しながら、ゆっくりたちは森へ戻っていった。 まりさは一番最後までヤマベを見ていた。その目に言い知れぬ不安と不信が揺れていた。 ヤマベは何も言わずに網を片付けた。 広場へ戻って合流すると、朝には生き生きとしていた二十人のアルバイトたちが、ぐったりと疲労困憊して座席で待っていた。ヤマベが助手席に入ると、タバコをすっていた主任が「よう」と片手を挙げた。 「どうだった」 「え、普通です。十頭とも元気で森へ戻りましたよ。何が起きたのかわかってないみたいでしたけど」 「まあ死ぬまでわからんだろうな」 ヤマベはタバコを灰皿に押し込み、マイクロバスを転回させた。素人がメチャクチャに畑作業をやったような、荒れた掘削跡がヤマベの目に入った。 「これで何年持つんですかね」 「いいとこ五、六年だろ。ネズミ算だし」 「十頭が一年で三十頭になって、二年で九十頭になって、三年で二百七十、四年で八百十、五年で二千四百……そんなもんですね」 「まあ一概には言えんが。この森はやばいと思って引っ越すかもしれんし、外敵に食われるかもしれん」 「外敵なんかいませんでしたよ、フィールドワーク中に」 「いなけりゃどっかから来るだろ。生態系ってそういうもんだ」 「こんなのでゆっくりを守ったって言えるんですかね?」 ヤマベはとうとう振り向いて主任を見つめた。どういうわけか鼻の奥がツンとしていた。 「森とゆっくりをっ、守るためにっ、仕方ないっていうことですけどっ!」 主任は次のタバコに火をつけながら言った。 「バーカ、そりゃ建前だ」 「……」 「邪魔なゆっくりを根こそぎ滅ぼしますとか言ったら、いろいろ横槍入んだろが」 「……そうなんすか?」 「そうなんじゃねえの。ほんとにゆっくりを守りたかったら、もっと厳密に繁殖管理しなきゃダメだろ。実際そういう会社もあるし」 「……そうなんだ……」 ヤマベは視線を落とした。膝が震えていた。 「そっち就職するべきだったかな……ちっくしょ」 ポタリと膝が濡れた。 ガタガタと揺れながら走っていたバスが、キッと止まった。 ヤマベは顔を上げる。まだ全然山の中だ。というか振り返るとさっきの場所がまだ見えた。地続きで五百メートルも離れていないだろう。 主任が作業服のポケットをあさって、カサカサ動いている紙袋を取り出し、窓から草の上に投げ捨てた。 それから何食わぬ顔で再びバスを出した。 ヤマベはしばらく、呆然と主任の横顔を眺めていた。主任は嫌そうに目を細めてぼそぼそ言った。 「見んなよ」 「主任……」 「言っとくが違反じゃねえぞ。あの森には十頭しか戻すなって言われてるが、今のとこはもう、登記上は別の森だからな」 主任は頑なに前を見つめていた。ヤマベは目頭を拭いた。 「……戻れるといいですね」 「なにが?」 ヤマベはマイクロバスのサイドミラーを見た。 小さな小さな点が三つ、勢いよくはねていったような気がした。 (おわり)
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前100|トップ|次100 301 :オーバーテクナナシー:2005/04/20(水) 23 15 04ID 8fy24zCD (聞こえない) だいたい九州南部~サンフランシスコ~アフリカ北岸~メソポタミア~南京あたりの緯度 ということですが、気候はどうなのでしょうか? オリーブがよく育つということは地中海性気候か? 原始人さんへ どの穀物を主力にするかという問題ですが、『稲』がおすすめです。 『稲』は、麦と比べてたんぱく質が多いので、狩りや牧畜が不調の時でも 栄養のバランスをかろうじて保てます。 また、『水田』(既出?)にした場合、麦よりも連作が効きます。 (気温条件は多分問題ないでしょうが、雨量が不安・・・・・。 でもアメリカ西海岸は、地中海性気候ですが、カリフォルニア米というのがあるからOK?) 302 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)00 07 30 ID ygza3hli イネは、3大穀物では干ばつに弱いと言う欠点がある。 幸いなことに、日本は降水量が多いので、灌漑さえすればこれは克服できた。 欠点と言えるかどうか解らないが、完全食に近く、連作障害にも強いので イネばかり作って、イネがないと動かないような文明になりやすい(日本もそうだったな)。 303 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)03 21 29 ID GSpycDeE 敵はいません、獣を排する武器もあります、病気もあまりありません、食料はたくさんあります。 今日もみんなで食べ物を集めて食べました。 こうなったら文明が進歩しなくなる。 304 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)12 51 37 ID bDMrjzQ5 ということは、今の文明はすさまじい不幸の産物ということですね・・・・・ 文明が発達しないということは、それなりに幸福なことかもしれない。 305 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)12 56 18 ID KEix9Rjm 不幸を克服しようとした結果の文明と考えたいな。 306 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)14 22 00 ID 3UmfJPZd 304 まあぶっちゃけそういうことでしょ 人類発祥の地のアフリカでは文明は発達しなかった、追い出された側が発達させた。 また、戦争が起きる毎に文明が発達してきたのもその証左と言えるんじゃないかな 困る→工夫する→克服するの繰り返し 307 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)15 57 31 ID L3PxcMAc 食べ物に困らない。 病気がない。 安全で平和。 これ、楽園って言うよな。今の文明もまだ達成できてないわけで。 欲を言えば、知的好奇心を満たしてくれるものがあれば言う事なし。 308 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木) 16 14 28ID XflzvOCq 食料を確保して初めて学問をする余裕が生まれたとも言える。 農耕の盛んな場所では天文学が発達する。 309 :オーバーテクナナシー:2005/04/21(木)20 53 03 ID 2xSYVdzx 白い人のフラグが成立してっかもしれんから 敵とかに関してはそれに期待しましょうや。 310 :原始人@初代1:2005/04/22(金) 03 54 55ID KUxYH0Ev 295 ロープってなんだ? そうそう、緑色の石(孔雀石)を拾いにいったら青い石もあっただで持ってきただよ。 あと、茶色と他に3色ぐらい使えると何か良いことがありそうな予感がするだよ。 狼(いぬ?)は元気だよ。狩りのときに獲物を追いたてる役をやってもらってるだよ。 全滅した鶏の代わりを5匹捕まえただよ。 オリーブ油も前よりは沢山とれるようになっただよ。 最近、サヌカイトと黒曜石の大きいやつが見つかりづらくなってきただよ。 斧やナイフが壊れたら代わりの物を探すのが大変だよ。どうにかならねえぇかな? それと、村の畑を鳥が荒らすだよ。 とくに真っ黒い奴(『カラス』と名前をつけただよ)が、収穫前の奴を食べてしまうだ。 なんとかまらねぇだかね。 311 :オーバーテクナナシー:2005/04/22(金) 12 11 02ID 4YzENJV3 『ロープ』は、『藁縄』や『麻紐』のようなものを結ぶ時に使う細長い道具の総称です。 『孔雀石』(緑色の柔らかい石)の近くにあった青い石を『藍銅鉱』と呼びましょう。 藍銅鉱は、孔雀石と同じように絵を描くことに使えます。 ただし藍銅鉱は、数百年放置すると『孔雀石』になってしまい、緑色になってしまいます。。 ナイフや槍、矢の鏃を『銅』を使って作ってみてはいかがでしょう。 『孔雀石』や『藍銅鉱』を小さい土器に入れて火にかけましょう。 そして四人ぐらいで『火吹筒』を使って、空気を火に吹きかけて火の勢いを強くします。 この作業は3日ぐらいかかるかもしれません。 すると茶色くてキラキラしたものが出来ます。それを『銅』といいます。 あらかじめ石に、ナイフの形のくぼみを刻んで、そこに溶けた『銅』を注ぎます。 そのとき、土器もかなり熱くなっていますので、『木プライア』でつかむようにしましょう。 そして『銅』を『ハンマー』でたたいて形を整え、冷えるのを待つと完成です。 銅は、『鋳型』(いろいろな道具の形をしたくぼみを刻んだ石)を使っていろいろな道具を作ることが出来ます。 また、壊れたら溶かして治すことが出来ます。 銅はごくまれに自然に落ちていることがあるらしいので、見つけたら使ってみてください。 312 :30女:2005/04/23(土)02 07 52 ID mGGE3y4W そうね。 畑の周りに棒を立てます。 その上に網を張るといいです。 網というのは、蔓などで作った糸を同じ間隔で並べて結んだものです。 鳥さんを防ぐには網の目が半キュービットくらいでいいんじゃないかしらね。 鳥さんはこのくらいの網を翼を広げたままではくぐれませんから。 鳥がいっぱい飛んでくるところに、目の細かい網を縦向きに置くと、時々、鳥さんが気づかずに飛び込んできて引っかかることがあります。 これを『かすみ網』といいますの。ただ、鳥さんって飛ぶために体を軽く作ってますから、食べるところは少ないかもしれませんね。 【かすみ網は現在では禁止されていますので、現代人は、やらないでくださいね】 313 :オーバーテクナナシー:2005/04/23(土)09 04 32 ID MM1o9pKc 緑・・・・・孔雀石 青・・・・・藍銅鉱 白・・・・・石灰岩 黒・・・・・墨 灰・・・・・文字どうり灰。白と黒を混ぜた色 黄・・・・・ウコン(日光で退色が激しいので絵の具に向かないかも?)。硫黄(まだ見つけてなかったっけ?火山の温泉近くに落ちてる黄色い石、臭いです) 赤・・・・・地の味のする砂、赤い池の土 茶・・・・・粘土。赤に灰色を混ぜた色。いろんな色ごちゃごちゃ混ぜるとこの色になります ピンク・・・・・赤と白を混ぜた色 黄土色・・・・・黄に灰色を混ぜた色 紫・・・・・赤と青を混ぜた色 こんな感じかな?ちょっと黄色が不安・・・・ 補足知識: 色の三原色と言って、赤、青、黄色の三色さえあれば他の色は混ぜて作る事が出来ます 出来るだけ鮮やかな赤青黄(三原色)と白黒(彩度明度調節用)があればいいですね 314 :オーバーテクナナシー:2005/04/23(土) 10 19 33ID c4M2nTNi 『からす』 藁で人の形を模したものである『人形』をつくり、畑の地面に棒を立て、そこに『人形』を縛ります。 これを『かかし』といって、鳥獣にそこに人がいるかのように騙す道具です。 ただし、カラスは賢いので効果があるかは疑問です。 (あると風情はでます。) 他にも次のような対策法があります。 ・畑に狼などの肉を食べる動物の糞を配置する。 ・畑の地面に立てた棒にカラスの死体を吊るす。 ・人間の髪の毛を焼いた時の匂いで追い払う。 315 :オーバーテクナナシー:2005/04/28(木) 00 51 10ID ytcICpr8 『橋』について考えてみましたが 双胴船的なものを使って『浮橋』は作れないでしょうか。 構成的には浮くための部分、船型かもしくは竹を単に束ねたものでも 良いかもしれません その上に板を固定します。 しっかりと作れる大きさでこれらを作り、川を渡せるぐらいの個数、2~3個作り 川に浮かべてそれぞれをつなぎます。 緩やかな流れの川であれば、ロープと杭で流れて行かないよう固定して出来上がり です。 かばやワニの問題を除けば大きな土木工事も無く、でき次第で滑動車も使えると 思います。 簡易的に双胴船を一つだけ作り、かわの両端に渡したロープを手繰って荷物を 渡す方法もありますが、毎回渡る前と後にそれぞれ荷物を積み替える必要が出るので 最悪一人で運搬をする必要がある場合はあまりお勧めできないかなと思いました。 316 :オーバーテクナナシー:2005/04/28(木)13 18 38 ID ASYYb1VL 川幅が7.5~10m(普通乗用車2台分くらい)と比較的小さな川らしいので、丸太の長さが向岸まで届きますから こんな方法はどうでしょうか? ・川幅の出来るだけ狭い適当な場所を見つけておく ・近い森から川幅よりも長い木を切り出す ・枝を払い丸太に加工する ・転がすか、ころやテコを使い川岸まで運ぶ ・50キュービット以上の太目の縄を数本(4本以上)丸太の先端に結び付け、そのうちの一本を持って何人かが向岸へ渡る ・一本の縄に付き数人が取り付き、バランスを取りながら引いて丸太を川岸に立てる ・向岸の人間に合図を送り、縄を引いてもらい正確に向岸に向かって丸太を倒す ・一本丸太では渡り辛いようであれば、もう一本渡して、丸太同士を縄で結わってばらけないようにする ・両岸の丸太両側の地面に杭を打ち込み、ぐらぐらしたり流されたりしないようにしっかり固定しておきましょう 丸木橋の出来上がり 317 :オーバーテクナナシー:2005/04/28(木)13 36 06 ID 37PM6V81 316 ・川幅よりも長い丸太が取れる程太く長い木があるか ・処理を施さないと木材はダメになる ・丸太と同じ長さの縄を十数本つくれたら盛り土を使うやり方で立てて そのままゆっくりと向こう岸に倒せる 318 :オーバーテクナナシー:2005/04/29(金)18 42 10 ID V1TGdneH 317 ・針葉樹(葉が針のように細い種類の木)なら20m~40m位になる物が沢山有ります ・木材の耐久性は・・・この村の木で作られた物(家とか)にどの位の耐久性があるのかは・・・柿渋や木酢液塗るくらいでしょうか ・原始人さんのために盛り土を使うやり方というのを説明してあげた方がいいのでは? 319 :オーバーテクナナシー:2005/04/29(金)22 49 50 ID FQSdemRM >カラス 森で葉っぱを食べる芋虫を捕って来て下さい。 残酷ですが、芋虫の頭を摘んで引っ張ると、白いひも状のもの(『絹糸腺』)が引き出せます。 長く放っておいたお酒が酸っぱくなってしまったもの(『酢』)に絹糸腺を漬けて引き伸ばして下さい。 細く、強く、色がついていない糸(『テグス』)が出来ます。 畑の周りに何本か木の棒を立て、天辺にこのテグスを張って下さい。 テグスはカラスには見えないので、一度でも引っかかると警戒して近づかなくなります。 >斧やナイフ もし隕鉄が見つかったら、何とかしましょう。 320 :オーバーテクナナシー:2005/04/30(土)00 38 28 ID /l3dQxnU 310 59-60,66,139 さっさと銅作りに挑戦してみたらいい気がする。 317 大黒柱の立て方がそれだった気がする。 318 原始人村の建築木材は洞窟で燻煙熱処理されてた気がする。 321 :初代1:2005/04/30(土)03 03 03 ID EssPsIIw 川に橋がかかった。 長さ22キュービットほど、太さは約1.5キュービットほどの丸太を使った橋だ。 村の男衆10人がかりでここまで運び、川の端に杭を打って固定したものだ。 これほど大きな丸太となると、洞窟には収まらなく、防腐処理がおざなりに なっているのは少々いただけないが、急ごしらえのものとしては、それなりだ。 河の向こう側には、ナナッシの目的である珪藻土のほかに 村周辺の草原では、数が少なくなってきた大型の哺乳類が数多くいる。 動物達もただ人間に狩られるのではなく、狩られにくい場所へ移動しているようだ。 こうして、数日間。この橋は大いに利用されることになったのだが・・・・・ ざぁざぁと雨が降る。 ここ3日ばかり短くやんでは長く降るといった状態を繰り返している。 雨量が多ければ、川の水が増す。 橋をかけた川だが、川幅が橋をかけたときの3倍程度になっている。 茶色く濁った水がドウドウと音をたってて流れており、 村まで引いた水路の一部を壊す被害も出した。 雨が上がり、2日が過ぎると、川の水もだいたい引いたが、橋はまだ川の中だ。 5日がたち、普段の川幅まで戻ったころには、橋は杭ごと流されていたことだかが確認できた。 長雨は1年に数度ある。そのたびに橋を流されたのでは手間がかかってしょうがないというものだ。 珪藻土も大きな獲物も川の向こう側。橋は欲しいが、流されるのでは労力に見合わない。 水かさが増えても良いとなると、その幅は約60キュービット もう少し、知恵を絞る必要があるかもしれない。 322 :初代1:2005/04/30(土)03 29 22 ID EssPsIIw 新素材「銅」の作り方をネ申に教えてもらったナナッシくんは いつもの2人とモラーラを加えた4人で銅を作ることにしました。 用意したのは ・大人の頭ほどの大きさの土器 ・木炭 ・レンガで組んだ小さなカマド ・孔雀石 ・火吹筒 ・粘土にナイフを押し当てて作った鋳型 ・木プライヤ レンガで組んだ小さなカマドはコの字がた囲いなので 気休め程度でしょうか? カマドの中に土器を入れ、土器の中に孔雀石を入れます。 土器の回りに火のついた木炭を置き、その上に新しい木炭を足します。 そして、4人がかりで火吹筒で吹きます。 木炭の火は大きくなり、やがて緑色の炎をあげ燃え上がります。 さらに木炭を足し、4人の顔が真っ赤になってもさらに吹きつづけます。 土器の底も真っ赤染まり、中の孔雀石も真っ赤になっています。 しかし、それ以上は一向に変わりません。 ついに4人はダウンしてしまいます。 土器の中に残ったのは、黒く変色した孔雀石。 土器の底にほんの少しだけ、何かがあるようですが、ダウンした彼等が気がつくのは しばらく後の話しのようです。 323 :オーバーテクナナシー:2005/04/30(土)06 13 14 ID Vl7cGK4n うほうほうほ。 324 :オーバーテクナナシー:2005/04/30(土)14 36 15 ID Io2LAg5B 321 わずか1レスで橋が完成して流されましたか orz 現代の木造の橋でも増水時には流されますからねー・・・原始人さんの作ったのが流されても仕方ないでしょうね どんなに頑丈に石とかで作っても流される時には流されてしまいます なので、流されても簡単に架け替えが出来るような構造で作るか 増水時でも全く影響が無い程の長距離を橋脚無しで飛ばすかだと思います 後者の方法を取るとしたら60キュービット(約30m)のスパンを飛ばせる方法は、今の技術で考えられるのは吊り橋しか無いでしょうね・・・ 325 :オーバーテクナナシー:2005/04/30(土)15 30 55 ID /l3dQxnU 稲が深刻な被害を受けてそうな気がする。 326 :オーバーテクナナシー:2005/04/30(土)15 32 29 ID 2hR6GVrb さて、2~3人の人間+獲物又は土、 これらの加重条件を満たしつつ30mの吊り構造、 さらにたわんで川につかない程度の高さの確保又はたわみ難い吊り構造、 構造検討すればいける。。。か? 327 :オーバーテクナナシー:2005/05/01(日)10 50 36 ID k36vnkuE トンネル 非現実的 土木技術向上が見込める つり橋 ワイヤーにあたる素材があれば可能 川を渡らずに資源を採れるところを見つける 数人常駐させる問題が多い 物資の受け渡しは投石器を流用すると解決できる? 328 :オーバーテクナナシー:2005/05/02(月)01 20 09 ID Xs5eN4BK 橋の建築は、もう少し技術力が上がるまで待ってみてはどうしょうか? 金属加工が出来るようになれば、かなり丈夫な橋が架けられると思うのですが。 そこで提案なのですが、2~3人+獲物・鉱石等の運搬程度なら ゴンドラを作ってみてはいかがでしょうか? これならば、ロープとカゴがあれば割と簡単に作ることができそうだし 丈夫な物が作れなかったら、人は乗せず物資だけを運搬させます。 荷物を先に対岸へ届ければ、足下と手元に2本のロープを張るだけで 人が川を渡るのに十分でしょう。 329 :オーバーテクナナシー:2005/05/02(月)13 01 28 ID bK5ScLhL 早く絵の具作って絵での説明を解禁してもらわないと これ以上の発展は望めそうも無いんじゃない? 船作るにしろ橋をかけるにしろ、言葉だけでの説明では難しすぎ 330 :オーバーテクナナシー:2005/05/02(月)13 54 42 ID 81tSDaN5 ↑同感。 原始人さんへ 以前出た絵の具の作り方の『水簸(すいひ』で出来た絵の具は 岩の粒の大きさで色が変わります 粒子の大きいものは暗い色、細かいものは白っぽい色になります。 ですので一種類の材料から数種類の絵の具を作ることが出来るかと思います。 331 :オーバーテクナナシー:2005/05/04(水)09 22 06 ID kteDF7bv 山が近い=川の流れが速い アフリカのように舟でカバを慎重に避けながら川を渡るのは無理だね。 両岸に柱を立て、やぐらにし、60キュービット=約30mの吊り橋を作るか。 支流を増やし、貯水湖を作り、土塁を築き、増水被害を少なくする地道な治水工事をするか。 川幅を広げるのはワニがいるので無理ぽい。 あと橋は吊り橋にしないと、敵が川向こうから攻めて来た時やっかいかも。 332 :オーバーテクナナシー:2005/05/04(水) 21 26 09ID 505n9sE1 『やぐら』(背の高い建物)を建てるということは、荷物を高い所に運ぶ手段が必要ですね。 原始人さんへ 今回は荷物を高い所に運ぶ道具、『滑車』を紹介します。 まず、樫などの丈夫な木で、直径7寸、厚さは縄三本分の太さ程度の丸い板を、 斧や石カンナで作ってください。 円を書く時は、尖った木の枝をたて、その下の方に紐を結び、もう一方の端に葦ペンや筆を結んで、 紐が張った状態を保ちつつ円を書くときれいに仕上がります。 この道具を『コンパス』といいます。 コンパスの木の枝が立った部分が中心になりますが、そこに石錐で縄を通す穴をあけます。 縁の真ん中に紐が収まるくぼみをカンナや石鑿で作りましょう。 そして、乾かすなど防腐処理をして完成です。 『滑車』の穴に紐を通し、太い木の枝や建物の梁などに渡して輪の形になるように結びます。 そして、くぼみの部分に長い縄を渡して、片方を荷物をつけ、もう一方を引っ張ると荷物が上に のぼります。 荷物が手の届く範囲にないときは、┌────のような形をした棒で、荷物の上の縄 を引き寄せてください。 333 :初代1:2005/05/05(木)01 54 25 ID J9Bczr6F 「これで、いいだかね?」 目の前にあるのは、コブしぐらいの大きさの小さな土器。 その中にはいろいろな色の粉末が入っている。 黒・・・木炭 白・・・白っぽい石 赤・・・赤い土 黄色・・・ウコン 緑・・・孔雀石 青・・・藍銅鉱 そして、それらを混ぜ合わせた色 黒と白は灰色っぽかったり、赤というよりも赤茶色だったり、 黄色が変色して黄土色ぽかったり、緑と青の区別が微妙だったりするのだが 顔料の元となるものはできたのだが、いまのところ、体に塗りたくるぐらいしか使い道は無い。 ナナッシは水に溶かして使おうと思ったのだが 水に溶けたのは黄色と赤だけだ。 他のものは粒子が粗いのか、水との相性が悪いのか 粉が水の底に溜まるだけ ニカワやマツヤニで固めて、石なんかにこすりつけようと思ったのだが それらを馴染ませた時点で色が変わる。 とくに、白は黒っぽい茶色というか、マツヤニやニカワの色を黒くしたような色になってしまった。 「あとすこし、なんだがねぇ」 絵の具の完成までには、もう一工夫必要なようです。 334 :初代1:2005/05/05(木)02 23 32 ID J9Bczr6F 「ビル様、マックが戻ったようで」 「うむ、して、この陸地の様子はどうだったか?」 「はい、広告によると、見たことも無い動物と植物にあふれている様子です」 「うむ、J-ホバ様のおっしゃったとおりだ」 「南の端に集落があり、植物の種を食べて暮らしているようです」 「ふむ、未開な連中だ。種など食わずに、肉を食らえば良いものを・・・・」 「おそらく、狩猟を知らないものだと」 「よし、予定通りに、ここに本拠地をおく。テントの補強をしろ それと、女が必要だ。南の集落から嫁を迎えよう。 ビーズと金を見せれば、女のほうからよって来るわ」 「なるほど、言葉の通じぬ蛮族でも、あの輝きなら理解するというもの このペケロク感服しました」 「使者はマックがよいだろう。早速向かわせよ」 「了解しました」 335 :オーバーテクナナシー:2005/05/05(木)04 03 28 ID jewk7ohz 人間の耳のような形をした紫色の花を咲かし 16にあるヨモギのような葉を持った植物を探しましょう。 この植物は「トリカブト」と言い、根に毒があります。 症状は嘔吐、呼吸困難、手足指の麻痺、下痢、重症の場合は死亡となっており 少量なら利尿作用のある薬として使えます。 この根を磨り潰して粘液状にしたら矢につけて放ちましょう。これを「毒矢」と言います。 たとえ致命傷に至らなくてもかすっただけで獲物は倒れてしまうでしょう。 肉を食べても毒にあたることはないので安心してください。 336 :オーバーテクナナシー:2005/05/05(木)18 04 21 ID yJtW0tNG 333 白は貝殻を細かく挽いた粉を使うといい。 光を反射する成分が含まれているので綺麗な白になると思います 赤はちょっと気持ち悪いかも知れないけど、動物の血を使うことも出来ます。 (故手塚治氏は昆虫の図鑑を描く際に綺麗な赤色が無かったので自分の血 を使って塗ったという話があります) 黄色がウコンなのはちょっと厳しいですね。これだけが染料だし。 ウコンで染めた布は一日も日光に当てていれば脱色してしまうほど光退色が激しいです。 洞窟内とかのあまり日光の当たらない所に描く分には、他の黄色顔料(硫黄等)が 見つかるまでは止むを得ずと言う感じですね・・・ 原始人さんが混ぜようとしたニカワや松ヤニはバインダーとかメディウムとか 呼ばれる絵の具の伸展&定着剤です。 ニカワを混ぜて色が変色する?というのはニカワの精製具合が良くないのでしょうか? 混ぜた状態で色が悪く見えても、実際に塗りつけてみると薄く広がって、それ程 変ではない場合もあります。(バインダーの層が極めて薄くなり、顔料が露出するため) バインダーとしては他に蜜蝋等が使えますが、もう一つ簡単な物があります。 ちょっと勿体無いのですが、卵の黄身を使った物です。 卵の黄身に顔料を混ぜて絵を描く技法を「テンペラ」と言います。 337 :30女:2005/05/05(木)20 32 44 ID 3jK0b6Eu 貝殻の粉は焼いてから砕いてつかったほうがいいですね。 より白くなります。これを『胡粉』といいます。 血液は茶色っぽく変色するかもしれませんね。 赤い池のお水は危険かしら。 不穏な雰囲気がただよってきました。 335さんのトリカブト矢は、量産しておいたほうがよさそうですね。また、槍などもね。槍にも塗っておくといいです。 でも、手の内は隠しておきましょう。戦(いくさ)やむなしとなってからですね。 男衆は、村に何人かはいるようにしてください。留守の間に襲われることのないように。 また、狩猟や採集、農作業のときも必ず何人かで組になって行動してくださいね。 (しかし、未来からの技術を導入している未来技術村よりも、すすんでいるところがあるとは。X68000なつかし~) 338 :オーバーテクナナシー:2005/05/05(木) 21 41 25ID +bZOc9v7 前スレ 334の物語から要約 白い人の文明 ネ申:J-ホバ(J-HOBA) 指導者:ビル(Bill) 登場人物 参謀ペケロク(X=Rock) 斥候マック(Mack) 社会:父系社会、狩猟社会 テクノロジー:船の量産・テント・金・ビーズ 今後の動向:斥候マックを派遣し、未来技術村から嫁を迎える模様。 前スレ542から最終的に海戦によって征服を試みると思われる。 未来技術村の地理的位置 ・南方に海があり、陸地の南端に未来技術村がある。 ・南の海には、多くの小さい島があり、その中の一つ、 航海日数60日~の距離にウズメヒメの出身地『海の民』の集落がある。 ・2スレの334の「この陸地」発言から大陸ではなく、南海諸島とおなじく島である可能性がある。 339 :オーバーテクナナシー:2005/05/05(木)22 14 08 ID yJtW0tNG 白い人は北から来たんじゃなかったっけ? あと、船を持っている記述はなかったみたい 340 :オーバーテクナナシー:2005/05/05(木)23 11 25 ID +bZOc9v7 339船の記述は前スレにあった。 542 :1:05/02/26 02 13 11 ID RKgyWz3g 全米を震撼させた、あの超ヒットスペクタクル! ナナッシ「オレ達以外にも、ネ申の加護を受けた村があるだか?」 総制作費100万ドラクマ 白い男「我々が秩序なのだ、他民族は我々に従えば良い」 監督 中の人@1 モラーラ「聖女様さえいれば、怖いものなんてないのですよ」 感動の巨編がいまここに! ギーコ「船で海が見えないぞ!ゴラァ!」 北の大地が白い壁に覆われるとき、安住の地を求めてきた民と そこに元々住まう民がぶつかり合う モーナー「おまいら、もちつけ!!」 理想の大地エデンで、2つの民がぶつかり合う。 「征服」「服従」「協和」「協調」 ネ申の技術と技術がぶつかり合う! ナナッシ「こんなこともあろうかと、コレを作っておいだだよ!!」 このスレ末、最高の試練が未来技術村にやってくる! 白い人「すべては、我がネ申”J-HOBA”様の思し召し!」 ・ ・ ・ ・ ってな夢をみただよ。 ナナッシは、あきれる2人にそう語ったそうだ(笑 341 :オーバーテクナナシー:2005/05/06(金)00 14 51 ID P9VxEVdE ヴァイキング並の文明があるとして船はキール・帆・オールがあるロングボートかな? 342 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)01 04 28 ID 4uFNF1cK まじか? 船が密集してきたら油を流して火を放とう。 投石器で大きい石をがんがん投げよう。 海岸沿いに防御陣地を構築。 竹の先を斜めに切り、尖ってるほうを海に向けて、組み合わせて無数に置こう。 大き目の石を積んで防塁を作ろう。 今のうちに硝石を探しておこう。 大きい焚き火を燃やして(上昇気流を発生)神風が吹くのを待とう。 木酢液を原液のまま相手にかけよう。 (ふいご、もしくは水鉄砲使用) できれば、馬を飼いならそう。 服ににかわを塗ったり、にかわで皮を何枚も貼り付けて頑丈にしておこう。 343 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)05 53 48 ID S0iM87fI やべー宗教とか人々を操るような文明が出来てきてるし加工技術も発達してる。 狩猟文明って事で武器も相当だろうしこのままいくとナナッシ達の負け確定やん。 奴らの行動から推理するに?女性不足でさらに氷河期?が近くなってるときた。 なるべく和平を結びたいものだが変な宗教が発達してるから無理そう。 マックが来たらそのまま返すべきだろうか?捕虜にするべきだろうか? 捕虜にしたらしたで白い人たちが迅速に行動しちゃいそうだし そのまま返すのもなぁ・・・一番良いのは相手を驚かせれば良い訳だ。 秀吉の一夜城みたいに何かとんでもないインパクトを与えられれば抑止力にはなるんでない? 争いになるとしたら高速移動手段を手に入れるべきだし(出来ればこちらも船が望ましいが・・・馬辺り) そして一番の問題なのが村人やナナッシ自身が戦争というものを知らないって事だよな。 白い人たちが攻めてくる!って言ったって信じないだろうし 戦いってのは対応が遅れるのが一番致命的だしきっついなー 何か抑止力を作るしかないぞ。 344 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)05 59 44 ID u4+4iOwV 古いヴァイキングだと2~3世紀頃だから日本で言えば弥生時代。 鉄は鎧にする程の量はないが鉄兜くらいは装備してるのかも。 345 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)06 23 51 ID NDexkncE 北欧はBC10000~BC1800が石器時代、BC1800~BC500が青銅器時代。鉄器時代はBC500~AD1050。 青銅器時代の船は現在のような骨組み構造ではなく、外板を作ってそれに合わせて組み立てる構造。 竜骨はあるがフレームと接合されるようになるのは紀元後3世紀頃から。 346 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土) 11 25 00ID OC3NJdQ4 誰が書いたのかわからない壁画 ttp //www.ff.iij4u.or.jp/~ranmaru/nazo/tizu.jpg (はじめの方のまとめで発見) これは多分村の周辺の地形を書いたものと思われます。 334発言より、海は南らしいので、海を下に書いてAAでまとめると以下のようになります。 川 火の山 川 川 村 丘 川 海海海海海海海海海海 シムレーションゲーム Age ofEmpire では、できるだけ資源を採集できる領域を広げて、 数で圧倒するという戦略が基本です。 今の村の人口は、128人(男53人 女75人 これでも弥生時代の一集落と比べたら二倍弱の規模)で、 戦える成人男性は20人程度ではないかと思います。 狩猟用飛び道具『投石器』『投槍器』『弓矢』がありますが、これでは勝ち目は薄いです。 西の川(多分 321で流された橋がかかっていたのはここ)の向こうにも殖民して人口を増やすといいと思います。 347 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)12 28 48 ID OC3NJdQ4 ○西の川について 川幅 平時15~20キュービット(6.75~9m)、増水時60キュービット(27m) 深さ 人の背丈よりやや深い 流れ 早い 橋架計画の目的 減少した大型の獲物、珪藻土獲得(→耐火煉瓦→冶金用のカマド) 他にも耕地面積拡大→人口増加や未知の資源の獲得が望める。 筏で運搬するという方法があるが、水に濡れるし重量があるため 沈まないように大きめの袋ひとつずつしか積み込めない。 今までの展開: 321で丸木橋を建設したが、増水によって流される。 原始人さんへ とりあえず、川の向こう岸にも家を建てて人が住むようにしましょう。 家の材料はなるべく現地調達がいいと思います。 橋を立てる(戦争も)など大規模な事をするには人手が要ります。 物資の交換はしばらく船を使いましょう。 348 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)13 06 24 ID hrHEnQ3Y 戦争するには強力なリーダーがいないとダメだが、 ナナッシは先頭に立つタイプじゃないし。 そもそも、戦う訓練もしたことが無い。 戦争は下策でしょう。 349 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)15 19 45 ID OC3NJdQ4 >初代1へ ところで、戦争するしないにかかわらず、他の部族に支配されたらゲームオーバーですか? 350 :オーバーテクナナシー:2005/05/07(土)17 46 20 ID n/J6nqDV 狩の仕方も少し変えてみましょう。 今までのように獲物を直接仕留めるのではなく、崖に追い込んで落とす方法を が良いでしょう。 その際、2~3人ずつの小集団に分かれて行動します。 そして、目が良く声の大きい者の指示で獲物の集団を崖へと導きます。 この者を狩の『リーダー』とします この時小集団のものは獲物に対して逃げ道を塞ぐように行動します リーダーの腕の見せ所です。 うまくすると獲物を一度にまとまった数仕留めることができます。 また、息のある獲物はそのまま村へつれて帰り必要なときに食料に することができます 前100|トップ|次100
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前ページ次ページデュープリズムゼロ 第二十二話 『帰還~邂逅』 ____ 魔法学園 中庭 『やめろっやめろ~!!やめっ!!!ギャアァァァァ~~~……………………!!!!』 魔法学園の平和な昼下がり…静寂を引き裂いて響き渡ったのは男の絶叫と一発の落雷の轟音。 「別に吸収出来るんなら良いじゃ無い。…で、実体を伴った衝撃までは消しきれないみたいだけど電撃何かは問題なしね。 これであたしの魔法も一通り試したけどあんた意外とやるじゃない。」 アルビオンでその真の姿を見せたデルフリンガー…ミントはその力をこの数日で試していた。友人となった他のメイジの魔法、自分の魔法。全て例外なくデルフリンガーは吸収してみせる。 相変わらず記憶は曖昧な為ブリミルや生きた古の情報は得られなかったが… 「褒めてくれるのは嬉しいがよ相棒。お前さんほんとやる事が無茶苦茶だぜ。何て言ったっけか?あの黒い大球『グラビトン』か…あれは流石の俺様もへし折れるかと思ったぜ。」 「何言ってんの、折れてないんだから良いじゃ無い。」 「ひでぇぜ相棒。」 「あ、居た居た。ミント~!!」 地面に突き立てられたデルフリンガーを引き抜きながらミントが満足そうに笑っていると少し離れた所からミントの名を呼びながら誰かが連れだって中庭へと歩いてくる。 「ん?キュルケとタバサじゃない。どしたの?」 「へっへ~、面白い物手に入れたからあんたに見せに来たのよ。きっとあんたこういうの好きだと思ってさ。」 言ってキュルケは近くに備え付けられたテーブルへと腰を落として手にした羊皮紙の束をミントに見せつけるようにひらひらと遊ばせる。 その直ぐ隣に腰掛けてタバサはいつもの如く本の世界へと意識を落とす。 「地図?」 「そっ、実家の息が掛かった商人から買い取ったお宝の地図。」 「お宝っ!?」 ルイズ、ミントがアルビオンでの任務を終えて魔法学園に帰還して一週間が経った。 あの後無事に帰還を果たしたルイズとミントはアンリエッタにはラ・ロシェールまでの道中からアルビオンで起きた全てを報告した。 アンリエッタは残酷な事実とウェールズの死に悲しみに暮れるように泣いたが既にレコンキスタの薄暗い陰謀が迫る以上事態はそれを許しはしない。嫌が応にもこの危機に立ち向かわなくてはならない。 「アンリエッタ…あたしがウェールズから貰ってた風のルビー、あんたにあげるわ。 その代わりと言っちゃ難だけど『遺産』『ヴァレン』『エイオン』『デュープリズム』これ等について調べて貰える? それとあたしが帰る為に貴女の力が必要な時は協力してもらいたいの…」 「勿論です。ミントさんはわたくしの為に危険を冒してまで尽力して下さった大切なお友達。今度はわたくしが手を貸す番です!!」 「アン…」 「ミントさん…」 そんなやり取りの結果ミントは当初の目論見通り、王女の全幅の信頼を手に入れた。望めば始祖の秘宝すら借り受ける事も可能だろう。 おまけに抜け目ないミントはアンリエッタに一筆を書かせることにも成功した。 【 この書を持つ女性ミントは王女アンリエッタ・ド・トリステインの盟友にして大恩ある恩人であり、その身は王家とヴァリエール家にて保証をする物也。 故に王女の権限においてこの書を持つ女性の活動に対し諸貴族は最大限の便宜を図るようお願いする物也。 アンリエッタ・ド・トリステイン 】 そんな常識外れな書を背中の鞄に収めてミントは今キュルケの手にした宝の地図に瞳を輝かせて注目する。 「タバサと何日か授業サボって宝探し行こうと思うんだけど、どうするミント?」 キュルケはミントの返答がわかりきった事を聞きながら悪戯に口角をつり上げた。 「行くにきまってるじゃない!!このあたしに掛かれば宝探しなんてどうってことないわ~!!」 「フフフ…だと思ったわ。やっぱり声かけて正解だったわね。」 「ルイズの許可は?」 揃ってノリノリで握り拳を天に振り上げたミントとキュルケにタバサがぽつりと呟くように問い掛ける。 「あ~そんなのいい、いい。そりゃ一声位はかけるけどあたしが行くって言ったらそれはもう決定なの。 ルイズ自身は腕の怪我もあるし何よりアンリエッタの結婚式の祝詞っての考えなきゃいけないからどうせあの子は図書館や自分の部屋に缶詰よ。あたしには関係ないわ。」 ___ ルイズ自室 「あ~…もうっ!!全ッ々思い浮かばないわっ!!」 備え付けのテーブルに座って白紙の書物と向かい合い、ルイズは降って湧いた名誉でありながらも厄介な事案に嘆きながら自慢のピンクブロンドの髪を掻き毟って項垂れる。 と言うのも数日前、ゲルマニアとの軍事同盟締結の為、アンリエッタ王女と皇帝アルブレヒト3世との結婚式がおよそ一月後に行われる事に決まった。 だが、アンリエッタからの直々の依頼によって伝統である祝詞の巫女にルイズが選ばれた。 それは良い、しかしオスマンを通じて渡された秘宝【始祖の祈祷書】は表紙以外は全て白紙という驚愕の仕様で秘宝と言う事で食いついたミントも一目でガラクタと断じた代物だ。 本番ではルイズは祈祷書を手に、あたかもそこに祝詞が記されているかのように自分で考えた詩を読み上げなければいけない。 そして、ルイズには残念ながらそう言った詩を謡う才能が決定的に無かったのである。 「うぅ…誰か助けて…」 ルイズは一人自室で誰とも無く恨めしげに助けを求めて深く溜息を溢す。因みにミントはルイズに対してはっきりと面倒だから手伝う気は無いと伝えていた。 ___ 中庭 「で、他には?あたし達だけなの?」 「一人メイドを連れて行くわ。偶然お宝の隠し場所の近くに実家がある子が居たから連れて行く事にしたわ。聞いてみたら地理にも明るいみたいだし、私達の食事の世話もして貰わないといけないしね。」 「へ~それは助かるわね。あ、それとそういう雑用なら一人連れて行きたい奴がいるんだけど大丈夫かしら?」 旅慣れているのかキュルケの以外に周到な段取りにミントは感心する。そしてミントの頭に一人お供として連れて行くのに最適な人物の顔が思い浮かんでいた。 「美少女に囲まれて冒険の旅だなんて…きっとあいつ泣いて喜ぶわよ~。」 ミントは言いながらにんまりと意地悪く微笑みを浮かべて食堂脇のテラスを見やる。 そこにはやはりというかこの後訪れる不幸などつゆ知らず、恋人であるモンモランシーと談笑しながら優雅に午後のティータイムを楽しむ男子生徒の姿があった。 「…少しだけ同情するかも…」 キュルケはそんなミントの視線の先に居るギーシュ(生け贄)のこの先の苦労を思うと思わず苦笑いを浮かべた。 ___ ウェストウッドの森 所変わってここはアルビオン大陸、サウスゴーダの街の外れにあるウェストウッドの森…今、この木々生い茂る深い森をローブを纏った一人の人物が歩いていた。 「ハァ~…ようやく戻ってこれたよ。ティファは元気にしてるかね~。」 独り言を呟きながら歩くのはかつてミス・ロングビルと呼ばれ、土くれのフーケを名乗り、マチルダ・オブ・サウスゴーダの名を隠した年…妙齢の女性。 「まっ、ラ・ロシェールの闘いであたしもレコンキスタから上手い事抜けられたしね、あのガキ共にしてやられたのは癪だけど御陰でこうやってここに戻って来れたってんだからあれも結果オーライって所だね…」 思い出すのはラ・ロシェールでのキュルケ、タバサ、ギーシュの三人を相手取ったあの夜の闘い…作り出した巨大ゴーレムは尽く氷と落とし穴の嫌がらせや足止めに会い、雇った傭兵は気づけば全滅。 マチルダの精神力が底を尽き始めた辺りで熱疲労と油の練金の合わせ技によってゴーレムを一気に崩され、最終的には意表を突いて風龍の背から飛び降りるように勢いを乗せて放たれたタバサのドロップキックでゴーレムの肩からぶっ飛ばされてしまった… 「あ~~~~っ!!!…思い出すだけで腹が立つ!!」 マチルダがそこまで思い出して一人森の中でストレスを発散するように叫んでいると不意に森の奥から人の気配を感じとり足を止める。 マチルダが今目指しているウェストウッド村はまだまだこの先でそこの住人というか子供達はこんな森の入り口付近にまで一人で出ては来ないよう教育されている。 「そこに居るのは誰だい!?出てきな!!」 マチルダは言ってタクト状の杖を抜いて油断無く構える。すると進行方向に生えていた桃林檎の木の陰から一人の男が静かに、だが堂々と姿を現した。 「(仮面?怪しい奴だね…)何者だい?」 マチルダの行く手を阻むように現れた男は主に目鼻を隠すような黒い仮面を付けていた。マチルダはつい最近共に仕事をしたあのいけ好かない白い仮面のメイジを思い出して警戒心をむき出しにする。 「悪いが名乗るつもりは無い。小娘、私はこれより先にはお前を進ませる訳にはいかん。 悪い事は言わん、このまま立ち去るならばそれで良し。立ち去る気が無いのならばこちらも少々強引な手をとらせて貰う。」 男の言葉にマチルダの表情は強張った… マチルダには自分がティファニアの元に帰る事を邪魔しようとする人物が居る事に心当たりがある。脱走まがいに抜けたレコンキスタの追っ手か…フーケ時代の追っ手か…それとも直接ハーフエルフのティファニアを狙う人物か。 マチルダは知らなかったがこの仮面の男こそは先日ティファニアが召喚した人物、ルシアンだ。そしてルシアン自身もマチルダの名前こそティファから聞いていたが目の前の怪しい女がそうとは知らない。 いわばこれは不幸なすれ違いによる事故なのだ。 「引く気は……無さそうだな。よかろう…」 マチルダの様子に引く気が無い事を悟り、ゆらりと流れるような動きでルシアンは戦闘態勢に移行して軽く足を肩幅に開き半身を前にだす。 (こいつ…強い!!) マチルダはその一動作だけでルシアンから発せられるプレッシャーを感じ、一瞬でルシアンの力を感じ取る。 伊達に荒事に身を置いていた訳では無いが杖すら持たずただ立っているだけでこれ程の威圧感を感じるなど尋常では無い。これが盗みの仕事なら逃げている所だ。だが、マチルダにはここで引く訳にはいかない理由がある。 次の瞬間、杖を振るったマチルダの足下の土は一気に隆起し、巨大な人型を形作りマチルダを肩に乗せた。これこそがマチルダの十八番の巨大ゴーレムだ。 ルシアンはマチルダのゴーレムが完成するまでの時間その様子を興味深げにただじっと見つめる。 「悪いけど、私の邪魔をするなら潰れて貰うよ!」 マチルダの意思に呼応してゴーレムがその豪腕を振り上げてルシアンへと一気に振り下ろす。しかし、ルシアンはそれに対して回避等の行動は一切行わなかった。 「わが魔力に挑むとは……無謀の極みだな。」 その代わり、ただ一言言って自らの左手をゴーレムの拳に向けて突き出し、手の平に魔力を集中させる。次の瞬間、それだけでゴーレムの拳はまるで何かに阻まれるようにルシアンの眼前でピタリと止まった。 「嘘、そんなっ…バカな!!一体何がっ!?」 どれだけ魔力を送り込んでもピクリとも動かなくなったゴーレムの上でマチルダは驚愕の声を上げる。ルシアンは杖すら持っていないし一言も呪文を唱えていない。ただ手を翳しているだけだ。 理解出来ないその現状にマチルダが混乱していると不意にゴーレムを押さえつけていた強力な力が消え去り、そのまま慣性に従いゴーレムは地面に拳を突き立てる。 予期せぬゴーレムの動きにマチルダの視界は揺れ、一瞬自分の足下だけを映す事になる。 ルシアンがどうなったかも分からず、まずは状況を確認しようと慌ててマチルダが再び顔を持ち上げ前を向くとそこにはマチルダにとって信じられない光景が映り込んでいた。 「これまでだ。」 目の前には杖も詠唱も無く、纏った甲冑法衣の飾り帯を毒蛾の羽のようにたなびかせて浮遊するルシアンの姿。 (あぁ…こんどこそ私もお終いね…ごめんねティファ…) そうしてルシアンの掌が閃光を発したと思った瞬間、マチルダの意識はまさに手も足も出ないまま衝撃と共に途切れたのだった。 「…う…ぅ~…ん…」 「あ、ティファ姉ちゃんマチルダお姉ちゃん目を覚ましそうだよ。」 一人のまだまだ幼い少女が簡素な木製ベッドに横たわるマチルダが僅かに声を上げた事に気が付いてティファニアを呼ぶ。 「ん…ここは…」 ようやく意識を取り戻したマチルダはぼんやりとした意識のまま見慣れた天井を認識し、上半身をベッドから起こす。と、そこに突然暖かく柔らかな衝撃がマチルダを襲い再びその身体をベッドに押し倒す。 「マチルダ姉さん!!」 しばらく耳にしていなかったその最愛の妹の声にマチルダの意識は一気に覚醒した。先程森の中で怪しい男に敗れ、気を失ったというのに目覚めれば自分の目指した目的地に辿り着いているのだから意味が分からない。 「ティファ…」 それでもマチルダは甘えるように自分に抱きついてきたティファを強く抱きしめ返し、絹糸のような金髪を優しく撫でてやる。その感触は間違いなく今が夢幻であるという事を否定していた。 「どうやら目を覚ましたようだな。」 そんな水入らずのやり取りを行っていた二人に部屋の扉の側から声がかけられる。 その声の主は仮面を外し素顔を晒したルシアンであり複数の子供達に法衣の裾を握りしめられている。その姿を認めたマチルダは分からない事ばかりだと無意識に表情で語る。 「先程は知らぬとはいえ悪い事をした、素直に謝罪させて貰おう。手荒い真似をしてすまなかった。」 「いや…え?あんたは一体何者だい?」 「姉さんこの人は……………」 マチルダの当然の疑問、それに答えたのはティファニアだった。 召喚の儀式から村の一員になるまでの経緯、狩りや子供達への教育、悪意を持って森に入り込んだ部外者を捕まえてはティファの元に連れてきたりと様々な面でウェストウッド村を助けてくれていると言う事。 そして人間では無いと言う事も… 「成る程ね…」 ティファの説明にマチルダは頷いて納得する。 今更亜人の類いだから等で差別をする気も無いし周りのルシアンに対する態度を見れば不器用ながらティファや子供達に対してどれだけ真摯に誠実に相対してきたかは覗える。 「分かったよ。これからこの国も物騒になりそうだからね、あんたみたいな強い男が側に居るなら私も安心だからね。よろしく頼むよルシアン。」 「あぁ、こちらこそよろしく頼む。マチルダ。」 言ってぎこちなく笑ったルシアンと優しくも厳しい姉然としたマチルダは堅く握手を交わす。 こうしてルシアンとマチルダはこの仮面を必要としない平和な村で互いにティファニアと子供達を守るという理念の元、少々のすれ違いを経て邂逅を果たしたのだった… 「所で……ルシアン、あんたティファに手を出したらぶっ殺すからね…」 「いらぬ心配だな…だが、心得ておくことにしよう。」 前ページ次ページデュープリズムゼロ