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FSチャンバー 交易品 聖魔武器 貴重品 FSチャンバー 名称 説明 入手 カーマインチャンバー 透き通った赤色の謎の玉。術技の性能を変化させるという。 落 ラップオン盗 マルクトボーン コバルトチャンバー 透き通った青色の謎の玉。術技の性能を変化させるという。 盗 キムラスカボーン グラスチャンバー 透き通った緑色の謎の玉。術技の性能を変化させるという。 盗 ジャバウォック、ソードダンサー2回目 サンライトチャンバー 透き通った黄色の謎の玉。術技の性能を変化させるという。 落 ジャバウォック盗 ソードダンサー3回目 交易品 名称 説明 入手 貝殻 海辺に落ちているただの貝殻。 ワールドマップ:探索ポイント 珊瑚の欠片 海のない地域で重宝される。 ワールドマップ:探索ポイント 熊の毛皮 熊の毛皮。防寒具等につかわれる。 ワールドマップ:探索ポイント 巨大な貝殻 回りに珊瑚が付着した巨大な貝。 ワールドマップ:探索ポイント 黒炭 燃料用・消臭用・調湿用・園芸用と幅広く使用される。 ワールドマップ:探索ポイント グミの元 グミの材料になるモノ。詳細は企業秘密。 ワールドマップ:探索ポイント 幻の魚 めったにとれる事のない魚。そのため価値が高い。 ワールドマップ:探索ポイント 雪解け水 ロニール地方につもった万年雪を溶かした物。 ワールドマップ:探索ポイント 聖水 様々な奇跡をおこすことが可能とされる水。魔物をしりぞける力もある。 ワールドマップ:探索ポイント 巨大魚の骨 いまだ確認されたことのない巨大魚の骨。そもそもこれは魚の骨なのだろうか? ワールドマップ:探索ポイント 紵麻 ちょま。麻の祖先とされる。 ワールドマップ:探索ポイント 服の素材 一般的な服の材料になる物。 ワールドマップ:探索ポイント 絹糸 薄手でなめらかで光沢があり上質な肌触りの衣服は貴族などに好まれる。 ワールドマップ:探索ポイント 顔料素材 赤 赤着色に用いられる色材。天然鉱物からできておりわりと高価。 ワールドマップ:探索ポイント 顔料素材 黄 黄着色に用いられる色材。天然鉱物からできておりわりと高価。 ワールドマップ:探索ポイント 顔料素材 青 青着色に用いられる色材。天然鉱物からできておりわりと高価。 ワールドマップ:探索ポイント 雑草 なんのへんてつもないただの草。 ワールドマップ:探索ポイント 綿花 様々な衣服の材料になるもの。 ワールドマップ:探索ポイント 腐葉土 水はけや通気性、有機質にすぐれている。 ワールドマップ:探索ポイント タタル草 タタル渓谷に生える草。暗闇で光を発するため別名・夜行草ともいわれる。 ワールドマップ:探索ポイント ヒカリゴケ 暗闇で少量の光を発するコケ。 ワールドマップ:探索ポイント ロニールタケ ロニール地方でとれるキノコ。 ワールドマップ:探索ポイント コクマー樹皮 コクマー地方にある木々の樹皮。肥料として一部に人気がある。 ワールドマップ:探索ポイント ふゆトマト 寒いところでしか獲れないトマト。ひんやりジューシー。 ワールドマップ:探索ポイント 冬虫夏草 薬、魔術の触媒として重宝される。 ワールドマップ:探索ポイント ケセドニアサボテン ケセドニア地方にはえるサボテン。熱しても赤くなることはない。 ワールドマップ:探索ポイント 神木 チーグルの森にある巨木のかけら。様々な奇跡を起こす物として重宝される。 ワールドマップ:探索ポイント 幻の野菜 滅多に市場に出回ることがないとされる特殊な野菜。味・栄養共に満点! ワールドマップ:探索ポイント リンカの実 風に揺れると美しい音色がなる木の実。楽器の材料にも使われる。 ワールドマップ:探索ポイント 砂鉄 鉄を少量含んだ砂。 ワールドマップ:探索ポイント 砂金 金を少量含んだ砂。 ワールドマップ:探索ポイント 石ころ なんのへんてつもないただの石。 ワールドマップ:探索ポイント 鉄鉱石 鉄を多量に含んだ鉱石。 ワールドマップ:探索ポイント 銅鉱石 銅を多量に含んだ鉱石。 ワールドマップ:探索ポイント 銀鉱石 銀を多量に含んだ鉱石。 ワールドマップ:探索ポイント 金鉱石 金を多量に含んだ鉱石。 ワールドマップ:探索ポイント メジオラフィッシュ メジオラ高原でとれる魚。独特の風味がある。 ワールドマップ:探索ポイント サソリの針 サソリの器を含む針。ポイズンボトルなどの材料にもなる。 ワールドマップ:探索ポイント 虫の羽根 不思議な模様の描かれた虫の羽根。薬の材料になる。 ワールドマップ:探索ポイント たきぎむし 窟にせいそくする虫。暖かいたきぎに集まる習性がある。 ワールドマップ:探索ポイント ペンギンフェザー ペンギンの羽毛。 ワールドマップ:探索ポイント バジリスクのうろこ 珍獣バジリスクのうろこ。ストーンボトルなどの材料にもなる。 ワールドマップ:探索ポイント ドラゴンの牙 武具・薬・譜術の触媒など幅広く使われる。しかし数が少ないため高価。 ワールドマップ:探索ポイント 真珠 人魚の涙、月の雫などで呼ばれる宝石。貴婦人などに人気が高い。 ワールドマップ:探索ポイント 黒真珠 真珠より稀少ではあるのだが見た目から真珠の方が好まれてしまい価値が高くない。 ワールドマップ:探索ポイント メドウクリスタル 牧草地でとれる水晶。通常の物より純度が高い。 ワールドマップ:探索ポイント ハイランドルビー 第五音素の性質をもったルビー。 ワールドマップ:探索ポイント フリーズダイヤ 第三音素の性質をもったダイヤ。 ワールドマップ:探索ポイント アクアサファイア 第四音素の性質をもったサファイア。 ワールドマップ:探索ポイント フォレストエメラルド 第二音素の性質をもったエメラルド。 ワールドマップ:探索ポイント トカゲの化石 トカゲの化石。学術的資料として価値が高い。 ワールドマップ:探索ポイント 譜石の欠片 青空にある譜術帯から落下した物。お守りとして重宝される。 ワールドマップ:探索ポイント 隕石の欠片 地上にあるどの鉱石よりも堅い鉱石。そのため加工には手間をようする。 ワールドマップ:探索ポイント ナビメタル 世にも珍しい成長する金属。放っておくと他の生物を侵食するために危険。 ワールドマップ:探索ポイント マナの欠片 力の流れを変調する高密度の結晶体。 ワールドマップ:探索ポイント リヴァヴィウス鉱石 銀色の輝きは、星のかけらのよう。別名・星雲石と呼ばれる。 ワールドマップ:探索ポイント 火精の腕 音素とは異なった力を秘めた腕の形をした火。 ワールドマップ:探索ポイント 水精の歌声 音素とは異なった力を秘めた音譜の形をした水。 ワールドマップ:探索ポイント 風精の羽根 音素とは異なった力を秘めた羽根の形をした風。 ワールドマップ:探索ポイント 地精のシッポ 音素とは異なった力を秘めたシッポの形をした土。 ワールドマップ:探索ポイント 雷精の瞳 音素とは異なった力を秘めた瞳の形をした雷。 ワールドマップ:探索ポイント 氷精の涙 音素とは異なった力を秘めた涙の形をした氷。 ワールドマップ:探索ポイント 光精の翼 音素とは異なった力を秘めた翼の形をした光。 ワールドマップ:探索ポイント 闇精の爪 音素とは異なった力を秘めた爪の形をした闇。 ワールドマップ:探索ポイント 聖魔武器 名称 説明 入手 魔剣ネビリム 第一音素を秘めた魔の剣。惑星譜術の触媒になるとされる。 宝:ブレイドレックス 聖剣ロストセレスティ 第六音素を秘めた光の剣。惑星譜術の触媒になるとされる。 サブイベント ネビリム(グランコクマでピオニーと会話) ローレライの鍵 ユリアがローレライの力を借りて作った譜術武器。第七音素を集結させる力がある。 エルドラントで自動入手 宝刀ガルディオス ガルディオス家に伝わる剣。 サブイベント 魔杖ケイオスハート 第一音素を秘めた魔の杖。惑星譜術の触媒になるとされる。 サブイベント ネビリム(ダアトでの鬼ごっこイベント) 聖杖ユニコーンホーン 第六音素を秘めた光の杖。惑星譜術の触媒になるとされる。 サブイベント ネビリムエルドラントのユリアの墓前 魔槍ブラッドペイン 第一音素を秘めた魔の槍。惑星譜術の触媒になるとされる。 サブイベント ネビリム(崩壊セントビナーでブウサギを捕まえる) 聖弓ケルクアトール 第六音素を秘めた光の弓。惑星譜術の触媒になるとされる。 サブイベント ネビリムバチカル廃工場 ローレライの宝珠 ユリアがローレライの力を借りて作った物。第七音素を拡散させる力がある。 レムの塔のイベント後自動入手 貴重品 名称 説明 入手 ワールドマップ オールドラントの世界地図。千里の道も一歩から。 セントビナーで自動入手 コレクターブック コレクター必携のアイテムカタログ。コンプリートをめざそう! サブイベント:チーグルの森(エンゲーブ食材屋の依頼を受ける) キャラクターディスク テオドーロの私室に置いてある、人物名鑑に情報をうつすための道具。 サブイベント:ユリアシティ(人物名鑑を調べる) ムーンセレクタ 戦闘中、メニューを開いてSTARTボタンで操作キャラクターを変更することができる。 自動入手:バチカル テクニカルリング 操作モードをマニュアルに切り替える事が出来る。これであなたもテクニシャン!? 落:ライガ・クイーン ウィングドブーツ 羽根があしらってある靴。マップ中の移動速度がアップ。 連絡船キャッツベルトでのミニゲーム(入手し損ねた場合、後のケセドニアで入手できる) マジカルポーチ 魔法の袋。食材が飛び出す事がある。 イベント:ケセドニア(戦争時) Sフラッグ Sの彫像。幸福の黄色い旗!パーティートップを変更することが可能。 チーグルの森の宝箱 万能包丁 軽い!良く切れる!お手入れが簡単!!譜業の力で料理の成功率アップ!? 探索ポイント:テオルの森北 未完のローレライの鍵 ユリアがローレライの力を借りて作った譜術武器。しかし、宝珠がないため完成とはいえない。 自動入手:エルドラント 旅券 マルクトとキムラスカを行き来出来するために必要不可欠な券。 自動入手:カイツール軍港 音譜盤 コーラル城でシンクから手に入れたディスク。音譜盤解析機がないと解読することはできない。 自動入手:コーラル城 音素学原論 ティアからもらった音素学の本。音素学初心者にわかりやすく説明されている。 自動入手:ユリアシティ 木札 トリトハイムからもらったオラクル本部への通行証。 ランチャー ワイヤーを射出する音機関。アルビオールを固定するための物。 シェリダンで自動入手 浮遊機関 アルビオールを浮遊させるための機関。 創世暦時代の歴史書 プラネットストームを維持したまま地核の振動を停止するための草案が書かれた禁書。 自動入手:ベルケンド 漆黒の翼バッチ 漆黒の翼の仲間になれるバッチ。これで君も団員の仲間入り!? サブイベント:グランコクマ 振動周波数の測定器 地核の振動周波数を図る測定器。 自動入手:シェリダン 飛行譜石 飛行音機関において最も重要な譜石。これにより音機関が正常に機能する。 自動入手: 仲間からの手紙 仲間達からの手紙 自動入手:ファブレ公爵邸 イオンの譜石の欠片 イオンが最後に詠んだ惑星預言の譜石の一片。 自動入手:ザレッホ火山 ロケットペンダント 小さなロケットペンダント 金髪の赤子の肖像が入っている 自動入手:ロニール雪山 駆動機関 飛行譜石を取り外されたアルビオールの浮遊機関。 自動入手: 大飛譜石 アルビオールの駆動機関に取り付けると機能を向上させる事ができる譜石。 探索ポイント:キノコロード先 錬成飛譜石 アルビオールの駆動機関の性能を全て引き出させる譜石。 探索ポイント:ロニール雪山北 竜退治の鍵 『ているず おぶ どらごんばすたー』を遊ぶために作られた専用の鍵。 サブイベント: 最高級りんご 限られた人にしか卸されていない最高級品魔物をおびき寄せるほどの甘い香り サブイベント:エンケーブ魔物退治 ローズのお守り ローズ夫人がくれるお守り サブイベント:エンケーブ魔物退治 カッパーメダル バチカル個人戦初級優勝銅メダル 闘技場個人戦初級優勝 ゴールドメダル バチカル個人戦上級優勝金メダル 闘技場個人戦上級優勝 カッパートロフィー バチカル団体戦初級優勝銅トロフィー 闘技場団体戦初級優勝 ゴールドトロフィー バチカル団体戦上級優勝金トロフィー 闘技場団体戦上級優勝 ソーサラーリングA ミュウアタックが可能になる ザオ遺跡で自動入手ミュウウィング取得でソーサラーリングWに変化 ソーサラーリングW ミュウウィングが可能になる タタル渓谷で入手ミュウファイア2取得でソーサラーリングF2に変化 ソーサラーリングF2 ミュウファイア2が可能になる ザレッホ火山で入手 漆黒の鍵 ノワールから渡された秘密の部屋へ入るための鍵 サブイベント: 機械人形の動力 メジオラ高原にある奥のエレベータを稼動させるためのコア。 自動入手:メジオラ高原 レムの充填器 レムの塔にあるアームを作動させるための器。エネルギーを蓄積させなくてはいけない。 自動入手:レムの塔 光転の譜石 大地を揺るがす光の玉音。 落:ガーディアン(光属性の譜術で倒したときのみ) 王の肖像画 若々しい王様が静かに微笑んでいる サブイベント:アラミス湧水洞 スパの会員証 ケテルブルクにあるホテルの会員専用客室に泊まれるようになる。 サブイベント:ケテルブルク 闇転の譜石 大地を揺るがす闇の玉音。 落:ガーディアン(闇属性の譜術で倒したときのみ) 序奏の音盤 物語の始まりを思わせる優しき音色の音盤。 ダアト:街左下の人に話しかける 清麗の音盤 心が洗われるような美しき音色の音盤。 グランコクマ:店内宝箱(横から入る) 鎮魂の音盤 使者の魂を静める音色の音盤。 コーラル城(要:王の肖像画) 義賊の音盤 自らを犠牲にする者たちを称え鼓舞する音色の音盤。 宝:神託の盾本部 白銀の音盤 白銀の世界を彷彿とさせる音色の音盤。 宝:ザレッホ火山 笑劇の音盤 誰もが楽しい気持ちになる音色の音盤。 ナム孤島:ねこにんに話しかける 終幕の音盤 物語の終わりを告げる音色の音盤。 ケセドニア北側のバザー(他の6枚の音盤を入手済みの時のみ) 秘密の小箱 エンゲーブ果物屋さんの秘密の小箱。中身を見られては困るらしい。 宝:チーグルの森 応援倶楽部会報 『暗闇の夢』を応援する倶楽部の会報。全16頁のうち14頁がノワール特集。 サブイベント セシルの短刀 オールドラントでは女性から短刀を渡すことは絶縁を意味する。 サブイベント「セシルとフリングス」 フリングスの手紙 フリングス将軍からセシル将軍宛の手紙。 サブイベント「セシルとフリングス」 形見の指輪 セシル将軍へ贈られたフリングス将軍の母の形見。 サブイベント「セシルとフリングス」 ルグニカ紅テングダケ キノコロードにのみ繁殖している特殊なきのこ薬の材料になる。 サブイベント:母の薬作り 古文書 古代イスパニア語で書かれた十四行詩。3つの禁譜が暗号化されている。 サブイベント:禁譜 ホド住民名簿 シグムント流を修得している奥義会の人間たちが掲載された名簿。 サブイベント:オアシス(ガイ奥義口伝イベント) アルバート流奥義書 アルバート流の奥義が記された書物。全部で4冊あるとされる。 聖なる刻印 ホーリーボトルの効果を底上げするという印。 サブイベント:チーグル救出 邪なる刻印 ダークボトルの効果を底上げするという印。 サブイベント:チーグル救出 サーチガルド 隠しダンジョン
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573 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 16 39 ID ??? ■SEQUENCE 07 「……っ」 梨銘は唇を噛む。ヤヌスは少し疲れて、ぼんやりしているように見えた。 肩を落とした姿は、いつもよりも小さく見えるほどだ。そんなヤヌスの姿 を見ていつも見ていたヤヌスの颯爽とした後姿を思い起こす。 背筋をぴんと延ばして歩く姿は気品があって意思を感じさせた。梨銘はそ の姿を見て、苦笑めいた思いを持つとともに憧れてもいたのだった。 そのヤヌスが意気消沈している様を見るのは胸に鈍痛めいたものを抱かせ た。 「ごめん」 云おうと思ってた言葉は出なかった。代わりに出たのは何の芸も無い単純 な謝罪だけ。 「ヤヌスを苛めるつもりなんて無かった。恥ずかしい目にあわせようなんて 思ってなかったんだ。ただ……」 「ただ?」 ヤヌスが梨銘を見上げる。 いつもの凛々しい眼差しはそこには無い。五月のまだ肌寒い夜の暗がりに あるのは、地上のネオンの光も写り込まない黒曜石のような瞳。 強い光は無いけれど、不純物を除いたような綺麗な黒。 「……」 その色に梨銘は言葉を失う。「ただ」。その後は何だというのか。 何を云ってもそれは言い訳の言葉でしかないだろう。でも、本当に言いた いのは言い訳では無かった。言い訳ではないのに、出てくる言葉は言い訳じ みたものばかりなのだ。 もどかしい様な気持ちで梨銘はあがいた。 言葉がうまく出てこないのをこんな気持ちで味わうのはいつ以来だろう。 不器用な子供になったような気分で梨銘は押し黙る。 574 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 17 25 ID ??? 「じゃぁ、一体なんでなんですか? こんなことして楽しいですか?」 ヤヌスの声に怒気が戻る。でもそこにはいつもの鮮やかさが無く、苛立ち の色だけが在った。 「……」 梨銘はその声を忸怩たる思いで聴く。その声を出させたのは自分だ。 ヤヌスをヤヌスらしくしているものを奪ってしまったのは自分だ。 それはひどい罪悪に思えた。死刑執行されても仕方が無いほどに。 「……ヤヌス」 「ヤヌスだなんて呼び捨てにしないでください」 感じていた温度が冷えていくような、何かが失われていくような感触に梨 銘は恐怖を覚える。取り返しがつかなくなる前に、伝えなければならない。 でも、伝えるための言葉は品切れだ。 肝心なときになんて役に立たないボキャブラリィなんだろう。 「ちゃんと説明する」 梨銘は大きく息を吸った。それでも。梨銘は思う。 『それでも』ちゃんりヤヌスに説明したい。それは嫌われたくないという 気持ちよりもヤヌスのために。梨銘は思った。言葉が拙くても避け得ない局 面があるとするならば、それは今だ。 ヤヌスはその梨銘を表情の読めない黒曜石の瞳で見上げている。引き結ん だ口元に怒った様な堪えているような想いを乗せて。 「時間は取らせないけれど、きちんと説明したいと思う。だから、聞いて」 梨銘は押しかぶせるように云った。 ヤヌスは、黙って小さく頷いた。 575 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 18 37 ID ??? 正直に告白すれば、梨銘に勝算など無かった。 それどころかどんな風に説明するかという考えも無かったし、もっと言っ てしまえば何を説明するつもりなのかもあやふやだった。 『なぜこんなことをしたのか?』 ヤヌスはそう尋ねている。 売り言葉に買い言葉だったから? ヤヌスが怒っていたから緊急回避? それともヤヌスからかって遊びたかっただけ? どれも嘘ではない。 そういった悪戯めいた気持ちがどこかにあったことは本当だ。 でも、それをヤヌスに説明してしまったら、全部が嘘になってしまう。梨 銘はそう思った。 言葉として形にしてみたら、そうなってしまう。 名前をつけたら、名前のとおりの存在になってしまうのと一緒だ。 そしてそう認識されたならば、言葉から漏れた「本当の部分」は無かった ことにされてしまう。 部分としてはどれも本当なのに、相対としては殆どが嘘になってしまう。 本当に伝えたい部分だけがぽっかりと無くなってしまう感覚。それは、ま るで食べてしまった後のドーナツの穴だ。ドーナツを食べ終われば、食べて ないはずのドーナツの穴まで無くなる。 「昔……」 梨銘は何も考えずに切り出した。 仕方ない。結局伝えたい「本当の部分」は形じゃないのだから。そこに在 るものは気持ちでしかないのだ。 それは本来伝わらないものなのだから、伝わらなくても仕方ないんだ。梨 銘は半ば自棄な気持ちで思う。 迂遠だけれど、こんな方法でしか説明出来ない。 576 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 19 44 ID ??? 「中学のころ、学校に行く途中の小道で黒い猫を見かけたんだよ。毎日同じ 場所でね。すごくハンサムで、格好良くて凛々しい猫でさ」 迷いながらもと言葉は出てきた。 「スレンダーで動きに品があって、尻尾が長いの。……先っちょがいつもゆ らゆら揺れていてさ。 楡の木があって。いつもそこにいるんだけど、人間なんか眼中に無いって 感じ。友達なんかでも気にしてるヤツがいてね、たまに餌とかあげてたりし ているみたいなんだけど、見向きもしないんだって。 きっと、その猫にとっては、人間っていちいち真面目に付き合う存在じゃ ないんだろうなって感じてた」 梨銘の中にその猫の颯爽とした格好よさが蘇る。 それは肌触りを感じるほどに鮮明で梨銘の気持ちの深いところに感動を与 える思い出。 どうかこの気持ちが伝わりますように。祈るように梨銘は続ける。 「俺もそいつを気に入っててさ、通りがかりに挨拶するんだけど、いっつも 無視されてたんだよ。声をかけ続けたり、触ろうとするとすぐ逃げられちゃ うしね。俺だけじゃなくて、皆そんな感じみたいでさ」 梨銘は小さく苦笑する。 実際当時は「なんて生意気な猫なんだろう」と思ったこともあったのだ。 「でも。一回だけ、近くに寄ってきて見上げてくれたことがあって。 喉を鳴らして綺麗な声で鳴いてくれたんだ。 『お前変なやつだなー』って言われたような気がするんだけどさ。んっと、 判るかな。『なーぉ』ってさ」 賢そうな瞳が見上げてきたときのことを思い出せる。 琥珀色の瞳は思慮深そうで、それだけで梨銘は飛び上がるほど嬉しかった。 「うまく云えないけれど、それがすごく嬉しくてさ。特別に感じて。わくわ くした。どきどきして。大切にしようって思った」 577 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 27 25 ID ??? 柔らかい天鳶絨のような一声と見上げた瞳の触れ合う感じが、当時の梨銘 にどれほど幸福感を与えてくれただろう。 それだけの力のある一瞬が、時間の流れの中には存在する。 それを実感するのは小さくは無い感動だった。 梨銘は自分の言葉が伝わっているかどうか心配そうにヤヌスを見る。 「判るかな?」 「……」 ヤヌスは応えない。黒い瞳で梨銘をただ見上げている。 「うまく言えないけどさ。俺はヤヌスに懐いて欲しかったんだと思う」 猫という生き物は自身の王で人間を主人だとは思わない。 犬は仲間と族長を持つが、猫が持つのは友人だけだ。梨銘は昔読んだ外国 の作家の言葉を思い出す。 ――だから、人間は猫と仲良くなるためには頭を下げなければならない。猫 が認めてくれない限り貴方は猫と上手には付き合えない。 それはとても難儀な話に思えたが、たぶん正確な表現なのだ。 「……」 ヤヌスが何を考えているのかは相変わらず判らない。ただ黙って、約束ど おり話を聞いている。 ヤヌスは約束を守っているのだ。猫以上に、ヤヌスは自身の王であり主人 だった。ヤヌスは完全に独立した人間で、彼女に近づいてみたいという気持 ちは自分の側の身勝手なんだな。 梨銘は自分がした説明で、やっと自分の気持ちに気がついた。 ああ、なんだ。――ヤヌスの頭を撫でたかったんだ。 触れてみたかっただけなんだ。 「……説明、終了」 梨銘は息を吐き出す。 上手に説明できたとはとても思えない。 けれど仕方が無い。そもそも伝わるというのが奇跡的なことなのだ。 あの猫が見上げてくれたのと同じくらい。それは奇跡的なこと。 578 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 28 16 ID ??? ヤヌスは梨銘の言葉が終わってしばたく口を開かなかった。 ただ黙って、梨銘を見上げていた。 彼女は黙って一つうなずくと、一歩前に出る。 そこは既に梨銘の中といってもいい場所で、彼女はわずかな動きで、自分 の頭を梨銘の顎の下に滑り込ませる。 桃の香り。梨銘はそれがヤヌスのシャンプーの香りだと気がつくのにしば らくかかった。ヤヌスの考えがまったく読めない。 「――つまり」 梨銘の首筋に吐息が絡むほどの距離でヤヌスが呟く。 「梨銘君は、わたしのことを撫でたい。……そう云うのですね?」 「うぅ」 ヤヌスの言葉は梨銘の理解の範疇を完全に超えていた。そのうえ、かすれ たようなヤヌスの声で改めて問われると、我が事ながらすごく恥ずかしい気 がする。 「違うのですか?」 「違わない。ような……」 ヤヌスが言葉を漏らすたびに、抱きしめられる至近距離でささやく唇から 吐息が漏れる。それを感じるだけで梨銘の体温は跳ね上がる。 「判りました」 梨銘が凍りつく。ワカリマシタ。そう聞こえた。 ワカリマシタというのは撫でて良いよという意味なのだろうか? 日本語 の文法ではそういう意味であるはずだ。 しかしヤヌス語では違うのではないか。そんな猜疑心さえ感じるほど唐突 な許可だった。 「判りました。といったのです。どうぞ撫でてください」 ヤヌスが自分の指先が届く場所でじっと立っている。 それは野良の猫が触れさせてくれるように貴重なこと。 579 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 29 25 ID ??? 「――うん」 緊張して梨銘は震えそうになる。膝の力が抜ける。 「ただし」 ヤヌスがタイミングを見計らったように言葉を挟む。 「撫でた後には死刑です。被告、梨銘君は死刑です。判決死刑ですよ。然る べき報いとしての神罰執行ですっ。それでも良いならどうぞ」 その潔癖な声は。 いつものヤヌスのように。いつも聞いていたあの声のようで。 梨銘はその言葉だけで胸が一杯になってしまう。 言葉は「死刑」だなんて厳しいのに。ほんのわずかにヤヌスの落ち込んで いた姿を見ただけなのに。懐かしさと嬉しさで、限りなく優しい気持ちがあ ふれてくる。 「死刑になるだけ?」 ヤヌスがこくりと頷く。梨銘の胸のすぐそばにヤヌスの小さな頭部がある ために表情は見えない。抱きしめてはいないけれど、抱きしめているのと同 じような距離で。 触れてはいないけれど体温の伝わる距離で。 梨銘は頷いたヤヌスの髪をすくう。 指の間をさらさらと滑り落ちるそれは水で作った絹糸のよう。 野良猫を怯えさせない細心の注意をもって高鳴る鼓動を押さえ指を滑らせ る。 「――。死刑になってもいいんですか」 ヤヌスの呆れたような拗ねたような声が聞こえる。 「死刑なだけでしょう? 嫌わないでいてくれるなら甘受する」 言葉に詰まるヤヌス。ぎゅっと拳に力が入り、身体が強張るのが判る。 梨銘は胸の中でゆっくり数を数えながらヤヌスを優しく甘やかすように撫 でる。1、2、3、4……。そろそろ限界かな、そう感じた梨銘は手を離す。 その瞬間ヤヌスは爆発するような速度で後ずさると弾けるように梨銘に背中 を向ける。 580 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 31 06 ID ??? 「あ、貴方は何を考えてるんですかっ! 梨銘君っ。死刑ですよっ! 死刑 判決といってるんです。判りますか? 私はお説教してるんですっ。それな のにお構いなしに中央突破で頭を撫でるとは、貴方は一体何を考えてるんで すかっ。見損ないました。恥を知りなさいっ」 歯切れのいいヤヌスの声。抑揚のついた旋律が耳に心地よくて、梨銘は笑 みがこぼれてしまう。ああ、そうか。と梨銘は自分の想いがまた一つ腑に落 ちる。 「でも、嫌いになるって云われてないし」 「~~っ!! 何を云ってるんですか!!」 夜風に揺れるヤヌスの黒髪。その間に覗く彼女の耳が朱く染まっている。 「撫でられるのいやだって云わなかったし」 「~~っ! 梨銘君っ!!」 「いいよ。死刑。――できるなら、ヤヌスの膝枕で安らかにしちゃって欲し いかな」 我慢できずに振り返ってしまうヤヌス。真っ赤に染まった頬と恨むような 視線が、眼鏡の中から上目遣いに見上げている。 「なっ、なんていう破廉恥なことをっ」 「抵抗しないよ?」 にこりと笑う梨銘。それはヤヌスをからかっていた日々と同じ言葉だけれ ど、まるで違う気持ち。触れさせてくれたから。独立不羈の高潔さを持った ヤヌスがあの日の猫のように一度だけ撫でさせてくれたから。 その掛け替えの無い貴重さが梨銘の胸を暖める。だから、嫌われるのは怖 いけれど、怒られるのは怖くない。 ヤヌスは梨銘のその表情に何を感じたのか、口を開いては閉じる。言葉を 捜して、その表情がめまぐるしく変わる。 「ね?」 「~~っ! う。うぅ。……ぐぐぐ」 じりじりと下がるヤヌス。 581 名前:NPCさん 投稿日:2006/05/22(月) 14 32 46 ID ??? い、いいでしょうっ。……今回のことは私のほうにも隙がありました。今 回だけは特例として執行猶予を認めますっ。いいですか、執行猶予ですよ。 決して貴方の罪がなくなったわけでも、罰が執行されないわけでもありませ んっ。諸般の事情を鑑みてその執行を一時保留にするだけですからねっ」 ヤヌスはどこか居心地が悪いような逃げ腰で、それでも胸を張ってメトロ ノームのように人差し指を振る。 「喉渇いちゃった。ヤヌス。なんか甘いものでも食べに行こうよ」 「ひゃんっ!? ななな、何を云ってるんですかっ!? 執行猶予の癖に!」 「だから、保護観察だよ。見張ってないと危険でしょう?」 「ダメですっ。それ以上の接近は禁止ですっ! 禁止! 髪の毛触っちゃダ メですっ!!」 「もちろん許可があるまでそんなことしないよ」 「~っ! 許可なんてありません。未来永劫金輪際あるわけないのですっ! 絶対に絶対に絶対にありえませんっ」 噛み付くようなヤヌスの反論。その言葉の一つ一つが今の梨銘にはくすぐ ったい。 「そっか」 「なんですか、その微笑みはっ! 一体どういう意味なんですか! 釈明と 事情説明を求めます。さぁ!!」 「ん、判った。じゃぁその話はフレンチクルーラーでも食べながらにしよう か」 「絶対ですからねっ。逃亡は許しませんよっ」 詰問とはぐらかしを。同意と否定をうちあわせながら、二人はスチールの 古ぼけた階段を下りてゆく。 後に残ったのはドーナツを食べた後のドーナツの穴。 梨銘が言葉にしなかったこと。ヤヌスが確認しなかったこと。 ドーナツを食べたあとでは形もわからなくなってしまった「本当のこと」 名づけることをしなかった「好意」だけが屋上に漂って、 やがて五月の夜風に散って行った。
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以下、ガートルッド=エリッドの開発物を書く。 Item 《義手“Tiwaz”》 繊細な動きと、人外の膂力を両立する高性能義手。 表面は人工皮膚が貼られており、本物と見間違う程。 拳の部分や肘部分には特殊超硬鋼-IXM_666を使用している。 鋼糸を五指から伸ばす事が出来、それに拠る攻撃が可能。 ワイヤーには電気信号を徹す事が出来、之によりハッキングの補助をする。 構造は外装には複数層重ねられた金属装甲の上に人工皮膚を貼りつけ、 内部はGleipnirをより合わせて作った金属の人工筋肉で生体部品を全く使用していない。 科学部部長、ガートルッド=エリッドの作品で有り、氏の最高傑作の一つと称している。 主な機能 筋電義手としての能力 五指からの鋼糸による戦闘 鋼糸に電気を通すことに拠る電子機器へのアクセス 素材:特殊超硬鋼-IXM_666、培養皮膚、電子部品各種 種別:特殊筋電義手 用途;日常~戦闘 握力:80kg 重量:8kg 鋼糸全長:10m×5本 《アームド・ツール》 ナノマシンで構成された手袋。 パッと見は肌色と変わらない 其の形状と硬度を変える事ができ、工具やナイフなどにして使用する。 又、繊細なマニピュレータとしても機能し、0.1ミリ単位以下の微細な動きが出来る。 《鋼糸-Gleipnir》 特殊超硬鋼-IXM_666により作られた特殊なワイヤーである。 細さは絹糸の半分程であり、その生産にはかなりの手間がかかっている。 柔軟性と、硬度を併せもち、武器として使った場合はかなり良く切れる。 磁性を持たせることにより自在な動きを可能とさせる。 引張強度は1メートル辺り50kgでTiwazに装着されているのは指一本に10mの為、最大で500kg×5となる。 通電性に優れ、ネットワークケーブルとしても使用可能。 《Easter Egg》 哲学者の卵を独自に処理し、液体化した物。 谷山 基樹に投与され、現状見せた効果は、能力との融合など、強い効果を齎している。 その、真の能力は、“卵”との融合である。 融合した卵により、宿主は人間を超え、新たな能力を手に入れる事となる。 ガートルッドはまだそのことに気づいては居ない。 『I Shot』 コンタクトレンズ型のデジタルカメラ。 HD画質以上の画質での撮影が可能な上、動画も取れる。 更に最新の3Dにも対応。 ズーム機能など便利機能も。 手ブレ補正は法定速度全力でブッちぎってるフェラーリに乗りながら撮っても大丈夫なレベル。 『Sharp ears』 耳に付けるマイク。 可逆圧縮形式での最高音質で録音できる。 《人工臓器》 本来の内蔵より遙かに性能のよい臓器。 ガートルッド=エリッドは気管支類を之と入れ替えている。 之によりどんなに激しい運動をしても息が切れることがないという究極的な持久力を手に入れるのだ。 《Skidbladnir》 アーガイルに提供した携帯式倉庫。 名称は、北欧神話の船、スキーズブラズニルより。 この船は、折り畳む事ができ、ポケットに入るサイズに出来たとされている。 その、逸話の如く、どんな物も手のひらサイズの空間に収めることが出来るのだ。 入れるときと出すときは〝Open〟と言い空間を閉じるときは〝Close〟と言う必要がある。 ARMS 〝Deus ex machina〟独自改造型シリーズ《G》 《Cyclops》 2mの巨体を持つ、ガートルッド独自の強化型Deus ex machinaである。 念動力を失う代わりに、その肉体を最大限に強化されている。 その肉体は、特異な構造を持っている。 頭部は、単眼に見えるヘッドギアを装着しており、コレには哲学者の卵を応用した脳波操作器の効果と、赤外線ゴーグルの効果を持っている。之が、Cyclopsのコードネームの由来である。 腕が身長の8割程の長さで、かなりの太さを誇る。肘から先は、《Gleipnir》で出来ており、指先から糸を紡ぎ、相手を拘束することが可能。 また、骨格は《IXM_666》を使用した強固な物であり、完全に物理に特化したDeus ex machinaと成っている。 なお、現状特殊型として哲学者の卵を仕込んだ物が居る。特殊能力は不明。 《Hecatoncheir》 2mの巨体を持つ、ガートルッド独自の強化型Deus ex machinaである。 頭部は、複眼型ヘッドギアを装着しており、コレには哲学者の卵を応用した脳波操作器の効果と、赤外線ゴーグルの効果を持っている。之が、Hecatoncheir》のコードネームの由来である。 腕が存在せず、歩みも遅いが、その代わりに念動力を強化されている。 体内でカルシウムを精製し、武器とすることが出来る。 サイズにも依るが、最大で100までなら操作可能。数が減ると、その分速度や精度、威力が上昇する。 100の腕をもつが如く、自在に兵器を動かす。正に《Hecatoncheir》の名に相応しい存在である。 自動人形 ガートルッドがトチ狂った結果生まれたロボットたち。 しかしながら、性能は異様に高い、現に《Mary》はナンバーズとして運用できるレベルのスペックを誇る。 《Mary》 詳細はメアリー・シェリー《№58》に記する。 ガートルッドの副官として作られたメイドロボである。 戦闘力はその外見に反して極めて高い。 部品の全てはガートルッド謹製の一点物、故障すればオーバーホールもあり得る。 しかし、全てのデータは指先サイズのチップに有る為、それを他の機械に搭載することで、同じAIを持ったほかのロボを作る事も出来る。 《Catherine》 キャサリン。 メアリーのノウハウを使って作られた量産型メイドロボ。 性能は大幅に劣るが、その分生産性が高く、カスタマイズによる無限の可能性を秘めている。 〝事象生体概念兵器 O・A〟 詳細は上記のリンク先に有ります。 レギンの人の設定を使用させていただいております。 Type---03 〝Binah〟 全高5.00m 重量15,9t パイロット:ガートルッド=エリッド《№91》 明らかに、他の機体よりも遥かに小さい機体である。 その使用目的は、小型である点を生かした〝屋内戦〟である。 しかしながら、その戦闘能力は極めて高いと言えるだろう。 機体の特性は、近接戦闘一点である。刃物や銃器等の武装を一切廃し、その代わりとして莫大な出力を小柄ながらもかなりの重量と重装甲を誇る機体の動作に回す。 その為、重装甲ながらも、高い機動性と近接戦闘の性能を持つ兵器となった。 そして、その特性は逆に屋内戦であれば、周囲に無駄な被害を及ぼさないため、逆に有用な物と成っている。 AIナビは、《メアリー・シェリー《№58》》である。 ガートルッド=エリッド#Creatureに記載されている、《高性能チップ-SEL_EEES》により、AIの共有が成されている。テンションの低い搭乗者の代わりにめちゃくちゃしゃべりまくることうけ合いである。 武装 《装甲》 多重構造の特殊装甲である。 その構造は。 |吸|爆|吸|爆|吸| |収| |収| |収| |繊| |繊| |繊| |維|薬|維|薬|維| という、多重構造に成っているのだ。 これらの機構を複雑に詰め込んだ装甲の厚さは、僅か5mm。 衝撃吸収繊維で吸収しきれない衝撃は、次の層の爆薬に伝わり、その爆発で、衝撃を殺すのだ。 所謂、爆発反応装甲という物で、装甲内部の密閉度を高めれば、基体表面の装甲を砕き、それによる攻撃も可能。しかしながら、その場合は装甲が薄くなる。 《疑似聖釘》 四肢毎に1本ずつ仕込まれた、〝聖釘〟のレプリカである。 之により、機体の性能を底上げしている様だ。 また、ガートルッドの体内の〝本物の聖釘〟と共鳴することで、大幅に性能を上昇させることも出来る。 《機体天使術》 疑似聖釘とガートルッドの聖釘が共鳴した際のみに、使用できる。 その性質は、大規模なテレズマの運用という説明に尽きる。 四肢から、力を放出し、全身を力場で守る。ただそれだけ。 しかし、それだけであるがゆえに、シンプルに強い。 【全長は5m程だろうか、かなり巨大な所々が鋭いヒトガタの兵器である】 【全体の色彩は、白。白だというのに、光を感じさせない、それでもその機体は〝白〟】 【四肢の末端には、十字架の文様が刻まれており、そこから[漆黒/純白]い[閃光/暗黒]が漏れていて】 【全体的に、シャープであるが、それでも装甲は隙無く、割と重装甲で有ることが伺える】 【背部には、強力なスラスターが搭載されており、推進力は極めて高そうだ】 【頭部は、清楚な女性を彷彿とされるマスクが装着されており、どこか人間らしさを感じさせる】 【頭部には十字架が刻まれており兵器でありながら〝神聖〟さもかもしだす不可解な雰囲気の存在だ】 MF-メタル・フェアリー 回線が縦横無尽に張り巡らされたコアを囲むように液体金属が纏わり付く20cm程の兵器。 人形を取り、空中を自在に飛び回る。サイズは小さいが、諜報や集団による攻撃など、応用性に富む。 《Titania》 薄布を見にまとう神秘的な少女の姿を取るMF。 MFの統括が可能であり。このMF一体で50のMFが統括できる。 戦場に空中から投下することで、己の身を危険にさらす事無く戦争が出来る。 《Alice》 エプロンドレスを着た少女の姿を取るMF。 電撃を操る能力を持つようだ。 移動速度は割と遅いが、遠距離からの電撃攻撃がメインのため、あまり問題はない 《Pixy》 皆の想像する妖精のような姿を取るMF。 ふわふわとしたドレスに、活発そうな短髪が特徴。 移動速度が早く、音が小さい。その為、諜報や集団に依る攻撃に向く。 Weapon 《ナイフ》 ガルニエに提供したナイフ。 軽く固くよく切れる。エルゴノミクスデザインでグリップが出来ており、かなり持ちやすい。 〝HERO〟 〝StartS〟のパッケージにある剣と同じ外見をした剣である。 見た目で言えば、紅い柄の標準的な西洋剣である。 只の剣で、特別な効果は何も無いが、剣としての性能はかなり高い。 素材の混合比率により、軽さと丈夫さを両立しているようだ。 かなり刀身は薄く、長い。 報酬として、杉本健太の手に渡った。 〝SpEcIaL〟 オートマチックタイプの大口径拳銃である。 特殊な衝撃吸収機構と消音機構を搭載した、音無き拳銃だ。 撃っても、反動が腕に伝わることが無いため、〝気持ち悪い〟のだが、その為バカでも狙えば正確に撃てる。 しかしながら、素材や機構の問題で、重量は4kgとかなり重い、反動が無くても腕が疲れることうけ合いである。 装弾数は8発。 報酬としてType - C / チェルシーの手に渡った。 〝ExTrA〟 簡単に言うと、警棒である。 折りたたみ式で、振り下ろす事で40cm程の棒に成る。 重量が先端に有る為、振る際の威力が高くなるが、その分振るのには、コツがいる。 かなり丈夫であるため、ぞんざいな扱いをしても問題はないだろう。 内部の機構で各所を分離させることで、三節棍にもなる。 《Jarngreipr》 アーガイル及び、フェーデ・ファルクラムに提供した防護手袋。 衝撃に対応して硬化、衝撃や斬撃に対して強い防護性を発揮する。 北欧神話のトールの持つ鋼の手袋。ヤールングレイプルから来ている。 Material 《特殊超硬鋼-IXM_666》 ガートルッド=エリッドの開発した合金。 炭素含有率0%の鋼に、複数のレアメタルを混合し、加圧して溶解させることにより完成する。 工程に恐ろしく手間がかかる為、量産が出来ず、之を素材に作られているTiwazは時価数千万にも下らない価値を持つと言っても過言ではない。 その性質は極めて優秀で、かなりの硬度を誇るも、展性、延性にも富み砕けにくい夢の金属。 溶解温度が高いため、加工には専用の設備と高熱を生み出す大量の特殊燃料を必要とするため全く普及はしていない。 ガートルッドのラボで少数だけこれを素材とした道具が作られているのが確認されているのみである。 分類:合金鋼 溶解温度:6000℃ モース硬度:9.7 ビッカース硬度:3700 比重:2.3 《特殊高反応金属-FLM_1016》 ガートルッド=エリッドの開発した合金。 ケイ素と炭素を、低圧状況で融解させたものを複数の薬品で処理することにより得られる。 酸素と化合しやすく、更に鎮火しにくい性質を持ち、粉末として空気中に散布し、火を点けて使用する。 反応性が非常に高く、貯蔵には専用の容器を必要とするため全く普及はしていない。 金属加工の際に、之を触媒に火を起こすことで高熱を得ることが出来る。 ガートルッドのラボで少数だけこれを素材とした道具が作られているのが確認されているのみである。 分類:合金鋼 溶解温度:200℃ モース硬度:0.4 ビッカース硬度:200 比重:1.2 《超軽鋼-FLY_002》 ガートルッド=エリッドの開発した合金。 凄まじく柔らかいが、とても軽く、重さは発泡スチロール以下と言う物。 IXM_666との混合の比率により、重さと硬度を調節して扱うことで、役立つ。 分類:合金鋼 溶解温度:2400℃ モース硬度:3.1 ビッカース硬度:1800 比重:0.6 《高機能繊維-ALC_235》 ガートルッド=エリッドの開発した特殊繊維。 柔軟性、軽さ、耐久性全てが平均以上であり、着心地も悪くない。 伸縮性とフィット感が良いため、運動向け。 之により作られた衣服は放熱性に優れ、汗が直ぐ吸収され蒸発するため着心地が常に良い。 《耐衝撃物質-LAB_2010》 ラボで開発された物質の中でもかなり役立つ物質。 衝撃に対してその硬度を変えると言う性質で、関節部に装備しても動きを阻害しない。 拳に装着することにより、柔軟な動きと高い打撃の威力を実現しつつも拳を痛めないようにする事ができる。 防護服等に使用されている。ガートルッド=エリッドの開発物の中ではかなり汎用性が高い。 《高性能チップ-SEL_EEES》 メアリー・シェリー《№58》に最初に搭載された、超小型高性能チップ。 対応マシンの中であれば、全てにおいての互換性をもち、同じAIを共有することが出来る。 これひとつで通信機能と記憶機能、入出力など、大抵のコンピューターの機能を再現できる。 性能が足りない場合は、複数のEEESを接続する事で、其の性能を簡単に上昇させることができるはずだ。 依頼された品 依頼者;フェーデ・ファルクラム 電子ドラッグ《Skrýmir》 読みはスクリューミル。 電子ドラッグとして、星の国支部に納入した。 ヘッドセットタイプで、使用中は幻覚や幻聴によるサイコな空間を観ることが出来る。 しかしながら、脳に異様な反応が起きるため、使用していくうちに徐々に人格が破壊されていくだろう。
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272 :1/7 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 34 19 ID ??? 「はっ。」 ぼくは、ふと目を覚ました。 ……静寂の中、時計の秒針が刻む音だけが部屋に響いている。 まだ意識が薄ぼんやりとしている中、ぼくは何とはなしにキョロキョロと辺りを見回してみた。 自分の部屋ではない。質素な装飾に、窓の外から見える広大な大海原。 ぼくを乗せている大きなベッドの布団には、大きいモンスターボールの形のマークが描かれている そうだ、ここはナグサシティのポケモンセンター三階の宿舎。 ポケモンリーグへ挑戦しに行kのは夜より朝がいいと思い、ここに泊まっていたのだ。 「おンっはよ~~! 目が覚めたかい? コウイチ~~。」 部屋と廊下を隔てるドアの奥から、叩くようなノックと同時にハイテンションな声が聞こえる。 ぼくはその声に半ば起こされるようにベッドから起き上がり、ドアの鍵を開けた。 扉が開き、ぼくの親友の顔が現れる。ミキヒサだ。 「今日もさわやかな朝だねぇ~~~。うっふっふ、ポケモンマスター日和っていうかさぁ~~~。」 やたらと満足げな顔をしながら、クネクネと体をくねらすミキヒサ。 その様子を見ただけで、今朝彼に何か幸運なことがあったであろうことは容易に察しがつく。 「ねーねー、ミキヒサ何かいい事でもあったの?」 ぼくがそう言うと、ミキヒサは待ってましたとばかりに顔を半笑いにゆがめた。 「ん~~~? にっひひ~~、よく聞いてくれましたっ! ジャジャジャーン! これ見てーーっ!!」 ミキヒサは元気よく叫びながら胸のトレーナーカードを開いtぼくに見せつけてきた。 中には8つの輝き。8つつのジムバッヂ…… 「あれ?ミキヒサこの8つめのバッヂ……」 「そうそう、今日朝一でここのジムリ倒してゲットしてきたのさっ! これでオレもポケモンリーグに挑戦出来るんだぜーっ!」 274 :2/7 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 39 05 ID ??? ぼく達はナグサシティはずれの浜辺に来ていた。 ここから海を数キロメートルほど渡ればやがて大きな滝が見え、 そこを上るとポケモントレーナーの総本山、ポケモンリーグが見えてくるらしい。 「オレな、ポケモンマスターになったらな、」 言いながらミキヒサは海辺に向かって水色のポケモンを出し、その上に乗った。 ぼくは自分の水色のポケモンを出し波乗りを始めた ポケモンリーグへの唯一の道であるこの2230番水道は、 潮の流れもとても穏やかで、待ち受けるポケモンリーグでの 厳しいバトル への最後のゆとりだと言われている。 風評通り、照りつける太陽と吹きすさぶ潮風の温度の調和が肌に心地よく、 緩やかな波音や、間断なく聞こえるキャモメ達の優しいさえずりがミミに心地よい。 爽やかな自然が偉大なる挑戦を迎えパミ゛ようとしているぼく達を歓迎しているようにも思える。 「今日もさわやかな朝だねぇ~~~。うっふっふふふふふふふふふふふ、ポケモンマスター日和っていうかさぁ~~~。」 気分がいいのか、歌うような調子でミキヒサはそう叫びだす 耳鳴り。がする。ところで何十分か経ったいま、ぼく達はとうとう滝の前に立っていた。 見上げてみる ちょうtんが見えない程の大きい大きい滝だ 上りきれるだろうか?いいや、ここまで来たぼくのポケモンの力なら「きっと上れるに違いな」い。 ぼくは自分のポケモンである№260のラグラージにぼくは滝登りの命令をラグラージに浴びせかけたのだ 276 :3/7 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 42 36 ID ??? ミ キヒサも滝登りを始めている ぼくと肩を寄せ合ってだ。 「今日もさわやかな朝だねぇぇぇぇ~~~。うっふっふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、ポケモンマスター日和っていうかさぁ~~~。」 滝登りをしながらミキヒサがそう叫びだした。 叫んでも叫んでもいくら叫んでも叫んでもいくらいくら叫んでも頂点は見えない。 上を見上げても下を見下ろしても滝の流れが永遠のように続いてるだけ 雲を突き破り天に橋をかける大きな大きな大きな大きな滝 この一番上にポケモンリーグがあるという噂なのだ。 だがしかし噂は噂 もしもこのまま幾ら上がり続けてもポケモンリーグなんて無かったら? まさに永遠にこの滝が続いてるだけだとしたら? ノボッても上っても先が見えないこの滝は僕に絶望感を与えている。しかしミキヒサは平気そうな顔をしている。のんきな物だ しかしミキヒサは平気そうな顔をしている。のんきな物だ どれだけ時間が経ったかわからない。一時間か、十時間か。ぼく達はまだ滝を登っている もはや上を向いても下を向いても横を向いても前も向いても後ろを向いても滝なのだ。 いまぼくの世界には滝と自分達しか存在しない もうどうにもなれというある意味の諦めがぼくの脳内を満たし「緊張するなー、コウイチ。くーっ、チャンピオンになれるかなーっ!」 「じゃあミキヒサ、どっちが先にチャンピオンになれるか勝負しよっかー!」 「アネ゛デパミ゛」 「むっ、それいいねぇ!にゃはは、今度は負けないぞぉーーー」!! 「ぼくも負けないぞおっ!!」 ぼく達は共に励ましあィ゛ゃゾ┛び#ガネ゛ 滝の中に顔が見える 誰の顔? 誰の顔? いいえ、それはわざマシン36です 278 :4/7 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 46 05 ID ??? 見知らぬ顔だ。見知らぬ顔が円形状に延々と並んでいる もはや上を向いても下を向いても見知らぬ顔で埋め尽くされている。 四方八方全てが見知らぬ顔で埋まっている。 右も左も上も下も奥も手前もぼくの中身までも全てすべてが そう、見知らぬ顔で 埋まっている 「はっ。」 ぼくは、ふと目を覚ました。時計の秒針。それが刻む音だけが聞こえる。 ぼくは、キョロキョロと辺りを。自分の部屋じゃあ。質素な装飾に、 窓の外から見える。ぼくを乗せている大きなベッド。 の布団には、大きいモンスターマークが描かれ。 そうだ、ここは○○○○のポケモンセンター 三階の宿舎。ポケモンリーグへ挑戦しに行kのは。夜より朝がいいと。 「アネ゛デパミ゛」 ドアの奥からベッドが。現れる。グリーンバッジ 「データが破損しています! データが破損しています! データが破損しています! データが破損しています!」 警告!このゲームを無断で複製することは法律で禁止されています!!法律で禁止されていますゥゥーーーー!! 「データを初期化しますか? データを初期化しますか? データを初期化しますか? データを初期化しますか?」 セーブしています・・・必ず電源を切らないで下さい・・・切らないで下さいって言ったでしょォーーーッ!!! 電池切れなんて言い訳になんねえぞォーーーッ!!! 「お気の毒ですが冒険の書1は消えてしまいました! お気の毒ですが冒険の書2は消えてしまいました! お気の毒ですが冒険の書3は消えてしまいました!」 もはや何も見えない。何も聞こえない。 見えるのは見知らぬ顔だけ。怖い、怖い怖い。 おそらくこれは夢だ。ぼくには分かる。でも ああ (ほっほ……人間め、いい具合に夢にうなされているようだのォ……さすがは、このわしの『夢食い』! ……ほっ! なかなかよい句が浮かんできたぞォォ!! ほっほ! ……さて、次は隣のこの緑色の竜のうなされかたを、じっくり観察させてもらおうかのォーっ!) 280 :5/7 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 50 31 ID ??? こんにちはーっ! ボクの名前はフライゴンっ! いま、ヨスダシティの触れ合い広場に、ボクの自慢のトレーナー・コウイチくんと一緒に来ていまーすっ。 ボクのトレーナーのコウイチくんは、世界一っ! 頼りになるし、頭いいし、かわいいし、何よりとーっても優しい! いつもどんな時だってボク達を思いやってくれて、時には甘えてきちゃったりもしちゃう、 そんなコウイチくんが、ボクはだいだいだいだァい好きなんですっ! コウイチくんは広場に入るなり、ぱたぱたとお花畑のほうに走っていきました。 彼の絹糸のように艶やかキレイな黒髪が、金色の陽光に照り栄えて栗色に光っています。 「わぁ、見てごらんフライゴン! キレイなお花だよー」 コウイチくんは、広場に沢山咲く様々な色合いの花を指差して、 まるで無邪気な赤ちゃんのようにはしゃいでます。何てかわいいんでしょう…… 「キレイですねー……それにとってもいい匂いっ」 鼻をつくような甘い花の匂いを(あっ、ダジャレじゃないですよ)、鼻腔いっぱいに吸い込んでみます。 甘い香りが頭の中にぽわ~って広がって染み込んで来て……恍惚っていうのでしょーか、頭がぽ~ってなって凄い幸せな気分。 なんていうか……とっても甘えたい気分になっちゃいます。 「コウイチくん……」 女の子のように整っているのに少しあどけなさの残るコウイチくんの顔を、甘えた目付きで見つめてみます。 コウイチくんもボクを見つめ返して、やんわりと可愛くほほえんでくれました。 ……まさにこれが、心が通じ合う瞬間っ! なんでしょうねっ! ああ、きっとボクいま世界一幸せなポケモンです。 ボク達を見て羨ましがらないポケモン及びトレーナーなんていませんよっ! それ程ボク達は心が通じ合い息が合っている……まさにベストパートナー、なんですよねっ。 「ああ……なんかボク、眠くなってきちゃったかな」 腕を上げておおあくび。心地よい眠気のもやもやが頭にかかります。 ボクは、チロリとコウイチくんのちっちゃい膝に目をやります。そうだ。膝枕してもらっちゃおうっと…… そ~っと倒れこんで……えいっ、ひざまく…… 「おい」 281 :6/7 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 54 12 ID ??? 「はい?」 いきなりドスの効いた声がボクに降ってきました。 誰でしょう? 幸せな時間を邪魔する有害物質めっ 「はい? じゃあ……ねェーーーだろォーーーッッ!!!」 「いっ!?」 いきなり髪をつかまれ、持ち上げられてしまいます。痛い、痛い痛い!! だれだ、ボクにこんな事をするのは……! 首を捻って、ボクの髪を掴む暴漢の顔を見つ、め…… コウイチくん!? 「テメーコラッ!! 勝手にご主人様の膝に頭つけるたァ、どォいう事だァ~~~ッ!? そのコケの塊みてェな腐った頭をぼくの膝につけやがって、どう落とし前つけるつもりだダボがッ!!」 「はいぃぃーーーっ!?」 ボクの髪を掴み暴言を吐きかけてきたのは、確かにコウイチくんでした。 コウイチくんの顔が、今まで見たこと無いくらいに恐ろしく歪んでいる……な、なんで! ボクそんな悪い事した!? 「土・下・座 しろ」 コウイチくんはボクの髪を離すと、床を指差しながらそう言い放ちました。 土下座? ボクが……コウイチくんに? いくらコウイチくんの命令とはいえ、躊躇ってしまいます。すると…… 「土下座してあやまれって言ってるんだァーーッ!! 土下座だよォ、土下座、土に下りて座るんだよォ~~ッ! 膝と手を地面につけて、頭を床に擦って擦って擦りつけまくるんだよォォ!! 湿気ったマッチ棒みてェにグリグリって何度もなァ~~~!!!」 「ひっ……」 泣きそうになりながらも、僕はコウイチくんの目の前で膝と手を付きます。 コウイチくんを怒らせてしまったなら仕方が無い……この怒りを収めれば、きっといつもの優しいコウイチくんに戻ってくれるはずです。 ボクは床に頭をつけ……言いました。 「すいません……許してください、コウイチくん……」 ボクは言いながら、涙をこぼしていました。 壊れた水道管のように涙がボロボロ溢れて止まりません。 もう、ボク達おしまいなんでしょうか。 282 :7/8 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 18 57 33 ID ??? 「そういえばさ……」 コウイチくんはいきなり声のトーンを落として、そう言いました。 許してくれるのでしょうか。元のコウイチくんに戻ってくれるのでしょうか!? 「ぼく……きみに『穴を掘る』って技たしか教えたよねー?」 「あ、はい」 コウイチくんの口調はいつも通りの穏やかな風に直っています。 質問の意図はよく分からないですけれど、とにかくよかった、コウイチくんが元に戻ってくれたぁ……! 「よし、いい事を思いついた。お前いまここで穴を掘れ」 「え?」 突然下されたコウイチくんからの命令。『穴を掘れ』……この触れ合い広場で穴を掘るの? 従業員の人とかに注意されないか心配だけれど、コウイチくんの命令です。ボクは急いで爪で地面を掘り始め…… 「SYAAAAAAGYAAAAAAA!!!!」 「ひえええええっ!?」 ボクが穴を掘ろうとした瞬間、いきなりコウイチくんがワケ分からない奇声を上げボクを威嚇し始めたのです。 ボ、ボク何か悪い事した!? 283 :8/8 ◆8z/U87HgHc :2007/12/07(金) 19 02 24 ID ??? コウイチくんは、膝を折り未だ土下座のポーズのボクの顔を見ながら、 憤怒の形相でこう叫びだしました。 「だれが『手を使って穴を掘れ』と言ったァーーッ!? いいかッ!! 土下座したそのポーズのままッ!! その地面に擦り付けた『頭』でッ!! その汚ねぇドタマで『穴を掘る』んだよォッ!! 『土下座穴掘り』だよォォォ~~~~ッ!!!」 「ええええええぇぇぇぇぇっ!?」 幾らなんでも無理難題です。『頭を擦り付けてそれで穴を掘る』なんて……! どうやってやれっていうんですか。理不尽、不可解、意味不明。 コウイチくんは今までこういう無理な命令なんて一回もしてこなかったのに…… 「ぼくは思うねッ!! マジに心の底から『すまない』って気持ちがあれば、何でもなァんでも出来るってなァッ! そう、何だろうとッ!! 何だろォとだッ!! それが例え窃盗・放火・人殺し・犯罪の類であろォーーーとッ!! テメー、『すまないゴメンナサイ』の気持ちがあるんだろ? あるなら土下座穴掘りくらい朝飯前だろォーーがよォーーなァーーッ!!」 もう何か言っても聞いてくれるような雰囲気じゃありません。完全に別人のようです。 「う、うううう~~~~っ!!」 ボクは、泣きながら頭を地面に擦りつけ『土下座穴掘り』を試みました。 周りの人からの視線が痛いです。恥ずかしいです、頭が痛いです、胸が痛いです。 誰か助けて……何でですか、コウイチくぅん……誰か、誰か……助けてよォ…… (ほっほ、何といいうなされ方かっ! この顔を見ているだけで句五つは軽いのォーーっ!! さて、次は……あのジュカインとかいう生意気なトカゲ野郎のうなされ方をじっと観察させてもらおうかのっ!)
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時刻…不明 UNKNOWN 砂の荒野に、一人の男が横たわっている。 年齢は30代後半程の、もう若く無く、既に頭は白く染まっている。 「…うぅ」 男が目を覚ますと、荒野だった筈の大地が緑溢れ、花が咲き乱れる美しい世界へと変わって行く。 「…ここは…?俺は…そう、黒い奴に吹っ飛ばされて…」 敵ACアントリオンに蹴られた衝撃でクレーターの中へと飛ばされ、デストロイヤ・フリーの熱線を受けた。 中破していたプロウセイルが耐え切れる筈も無く、爆発。散らばった残骸すら、熱線は蒸発させる。 「…ッ!?…もしかして、ここ、天国?俺、死んじゃった? 蒸発しちゃった?コクピットが香ばしい肉の香りで満たされて…?」 …彼は、今自らが居る場所を、天国…死後の世界だと思った。 既に数え切れない程他人の命を奪って来たこの男が、天国に逝けるとは思えないが。 「そうか…死んじまったのか…作戦は、どうなったんだろうな」 随分と気楽だとは思っていたが、死んでしまった今、些細な事だと思った。 時刻…03 06 ギエンクレーター周辺 三人はただ驚き、固まっていた。 目の前の敵だった筈のACを、その味方、つまりもう一機の敵ACが破壊した。 先程の誤射の報復にしては、まるで始めから決まっていた事の様に、滑らかな動きだった。 仲間のACを切り裂き、そのACの武器を躊躇う事無く奪う。 ――まるで、予備武装のように。 「あいつ、仲間を…?」 「テメエ!人情ってモンは…無ェのかよッ!」 ラッシュが叫んだ瞬間、ガンナー1の足元が爆ぜる。 威嚇射撃。聞く耳など無い…というメッセージを込めた。 ガンナー2がマシンガンを一斉射すると同時に、ガンナー1が間合いを詰める。 敵機の武装は先程味方機から奪ったリニアライフルとブレードのみ。 間合いを詰め、得意の接近戦に持ち込もうとするが、正確な射撃がそれを阻む。 本来ならばガンナー2との実弾リニア砲を用いた連携攻撃で接近するのだが、今回の作戦ではそうはいかない。 マシンガンとハンドミサイルのみの薄い弾幕では牽制効果が低く、接近する事が困難。 「くそ、おっさん、聞こえるか?聞こえたら返事をしてくれ!」 遠巻きにハンドミサイルを撃ちながら、プロジェクターへの通信を試みるガンナー3。 だが、非情にも返って来るのは静寂のみだった。 時刻…不明 UNKNOWN 「そうだ!天国に来たって事なら、受付みてえなのもあるかも!」 パチン!と指パッチンの音を響かせながら、閃いた事を口にする。 目の前に広がる花畑に、思わず圧倒される。 「…以外と、ベタな風景だね。…おっ!お迎えの方?」 目の前の花畑の中心に、人らしき影を発見する。 天使、という割には全体的に黒い服装が目立つが、絹糸の様な純白の長髪は、とても美しい。 「いや~、こんなお美しい方に出迎えられるなんて、意外と善行してたのかな?」 大袈裟におどけて見せるが、目の前の女性は、優しい微笑みを浮かべるだけだった。 (…なんてキワドイ服装だ、俺も結構な歳の筈だが…チクショー) (しかし美しい。…もしかして女神様ッ!?) 年甲斐無く醜いリビドーを感じた上、都合の良い妄想まで垂れ流す始末。 「あ、あのですね、えと、失礼ですが、お名前は…?」 緊張、と言うより嫌らしい目つきにならない様に自我を抑えつつ、名を尋ねる。 「…ライラ」 目の前の女性が表情一切変えず、微笑んだまま呟く。 (女神ライラ様…ね。良い名前じゃないか…そうかッ!!) (あんな格好してるって事はそれなりにアレでナニで、 聞かれた事しか答えないのは、困ってる姿を見るのが大好きなんだなッ!) 完全にアホとしか言いようの無い脳内妄想をスパークさせ、都合の良い結論に持って行く。 (…もしかして誘ってるッ?まさか、死んでいきなりこんな上等なサービスだなんてッ!) 脳内物質の過剰分泌にターボが掛かっている。此処まで行くと単なるスケベオヤジだ。 「そうと決まればァーッ!!」 ――ガツン、と鈍い音が響く。 「痛ったたた…アレ?、女神様は?お花畑でスキンシップは?」 広げた拍子にぶつけた両手をさすりながら、我に帰る。 今、彼が居る場所はACのコクピットブロック。 運良く脱出に成功し、熱線の範囲にも入らなかった。 プロウセイルは完全に蒸発してしまったが、彼は生きている。 「何でぇ、生きてるじゃねえか…」 …死んだ方が良かったのだろうか。生きているだけでも奇跡的だというのに。 「得したのやら、損したのやら…」 ぶつぶつと先程の夢を惜しみながら、モニターに周辺の映像を映し出す。 現在地は、ギエンクレーター内部。敵生体兵器の索敵範囲外らしく、こちらに気付く様子は無い。 周辺に危険が無い事を確認し、コクピットブロックから出る。 AC本体が破壊され、通信機能が麻痺している為、連絡を取り合う事も出来ない。 ザッ、ザッと砂に足跡が残る音を立てながら歩く。 辺り一面砂だらけのクレーターで、どうやって通信手段を確保するのか。それが最大の問題だ。 俯いたまま、ただ一直線に進む。足跡を定期的に確認して、直線的に移動出来ているかを確認する為だ。 ――コツン。とつま先が触れた所から音がした。 最初は何かの残骸だと思った。しかし、一歩進むたびに、音が大きくなっていく。 足元の砂を調べると、コンクリートで造られた道のような物が現れた。 (まさか、この先に…!?) クレーターの外周の端に当たる部分に、くりぬいて造られた、もしくは有った所にクレーターが後から出来たのか… ようやく見えた一筋の光を、ひたすら追いかける様に、走る。 時刻…03 07 ギエンクレーター 焦りが三人を包んでいた。 敵は一機で、こちらは三機。単なる戦力差なら圧倒的に有利な筈だ。 しかし、ACの限界を超えた動きを見せるアントリオンに、翻弄される。 そして、こちら側で対等に渡り合えるのは、ガンナー1のみ。 電子、情報戦特化型のガンナー3と主砲を放てないガンナー2では、相手を補足するのがやっとだった。 (残り38発か…少しはやるようだな) リニアライフルの残弾を確認しつつ、ハンドミサイルを確実に回避する。 (…このままじゃ、ジリ貧だ。こうなりゃ覚悟を決めるしかねえ) 奥の手、一発逆転の必殺フォーメーション。 「コルト、トーマス。アレをやるぞ!奴の誘導を頼む!」 「その言葉、待ってたぜ!」 「了解。しくじるなよ!」 ガンナー3が巡航型オーバーブーストを起動させる。 「こっちだ!鬼さんこちら!」 高速で円を描く様にアントリオンへと接近しつつ、ハンドガンを乱射する。 「体張ってでも、止めてやるぞぉッ!」 重装型だが、目一杯ブーストを吹かし、ガンナー2はアントリオンへと『直進』する。 「…何の真似だ?」 不可解な敵の動き、そして急に速度を増したフロートAC。 照準すら合わせていないような乱雑な射撃が飛来する。 ――ドクン、ドクンと心臓の鼓動が高鳴っていく。 目視とレーダー両方を駆使して、敵と味方の位置がある条件を満たすのをひたすら待つ。 チャンスは一度。外せば、三人まとめてお陀仏。 操縦桿を硬く握り締め、時を待つ。 (敵の狙いが固まった。今だ!) 唐突にガンナー3が腕部武装を解除する。 肩武装等を持たないガンナー3にとっては、敗北宣言に近い。 「戦場で武器を手放すとはなッ!気でも狂ったか?笑わせるなッ!」 アントリオンが武装解除したガンナー3へと狙いを定め、突進する。 「…来たッ!」 ――時は満ち、コアの後部ハッチが開く。 ガンナー1は風を切り裂き、砂塵を巻き上げ、飛翔する。 勝利を掴む為に。――生きて、また還る為に。 「来たぞ、もってくれよ、ガンナー3!」 ガンナー1の飛翔を確認したトーマスは、同じくオーバードブーストを起動させる。 無茶な軌道を描いて飛ぶガンナー3は、アントリオンへと接触、 そして、敵ACを掴んだまま、ガンナー2のいる方向へと無理矢理運んで行く。 「貴様ッ、放せ!」 コクピットが警告で埋め尽くされ、機体各所から悲鳴が上がる。 (もう少し、もってくれ!) 「よし、そのまま、そのまま!」 ガンナー2が軌道を合わせ、同じ様に腕部武装を解除する。 「捕まえたッ!」 ガンナー3と挟む様にアントリオンを拘束する。 (くそ、動かん!馬鹿な…こんな馬鹿げた戦法に俺が…!) 機体を最大出力で動かそうとするが、 重量級のガンナー2にも捕らえられたアントリオンに、動く事は許されない。 (馬鹿な、馬鹿な、ばかなバカナッ…!!?) 「「ラァーッシュ!」」 「食らえぇーッ!」 高速で接近するガンナー1の左腕部から蒼い光が伸び、動けないアントリオンのコアを貫く。 拘束を解かれたアントリオンにブレードを突き立てたまま、高速で押すように飛ぶ。 「これで…終いだッ!」 ブレードを引き抜き、落下するアントリオンにありったけの鉛弾を叩き込む。 ――地面に叩きつけられたアントリオンが、炎上する。 『プラス』の能力で力を引き出された漆黒のACが、燃え上がってゆく。 後方で支え合いながら立つ二機のACへ、ガンナー1がマニピュレーターでVサインをした。 「…やれやれ、この陣形で一番苦労するのは俺なんだよな、結局」 機体各所からの警報は止まず、左腕部にいたってはオーバーロードで半壊している。 「普段の戦闘で、後方にいる事が多いんだからさ、おあいこだろ?」 「そういう事に、しときますかね。」 『機体耐熱温度限界。緊急冷却装置を作動します』 『ジェネレーターへの負荷が限界を超えました。安全の為、外装部及びブースタへのエネルギー供給を一時停止』 高出力オーバードブーストによる長距離飛行とブレードの使用により、 ガンナー1はチャージング状態へと強制的に移行する。 「お~いラッシュ、さっさと戻って来いよ。なに歩いてんだ?」 こちらの事情を知らない訳でも無いだろうに、コルトからふざけた通信が入る。 「うるせぇ!こちとらチャージング中だ!文句言うな!」 「楽しそうな所悪いんだけどさ。俺達、まだ仕事終った訳じゃ無いんだよね」 時刻…03 08 旧世代軍事基地 クレーターの内部には、大深度戦争末期辺りで使用されたと思われる軍事基地があった。 「こりゃ随分古いな。通信設備は生きてるのか?」 埃と砂にまみれた通路を走りながら、通信手段を探す。 それまでACが通れるほどの大きさの通路がずっと続いて来た。 通信設備が残って無いのであれば、せめて移動手段の一つでもあれば…そんな思いを胸に走る。 目の前に今までとは違う、更に大きな空間が広がっていた。 恐らく、ACやMTのハンガー。残された何かを探して、ひた走る。 「あ…こいつは、AC…?」 旧世代の骨董品級のACだった。頭の中から記憶を探り、搭乗口を探す。 「あった、これだ!火は入っているのか…?起動法は…」 シートに座り、目の前の端末と格闘を始める。 不意に一つのパネルが光り、起動に成功した事を表し、機体情報が羅列される。 HD-H10 XXL-DO AN-823-B LN-3001C GBG-10000 TRVX-QUAD B-VR-33 WM-X201 RXA-99 LS-3303 WG-1KARASAWA (こいつは…お宝だぞ!何てこった、オリジナルタイプの『唐澤』まであるぞ。損して特取れってか?) 最後に表示された物…右腕武装の情報を再確認し、驚喜する。 「出来るなら、無傷で持って帰りたい所だが…」 旧式の為、詳細は無理だが、反応の有無くらいは感知出来る筈だ。 レーダーを起動させ、確認。自機より上方に三機、反応がある。 「二機も減っている…やられたのか、それとも…」 あの黒いAC以外にもう一機、ACが現れた筈だが、しかし、敵に増援が無いとは言い切れない。 「通信は…駄目か、古過ぎて対応していない。 接触するしか無いか。頼むぞ、無事でいてくれ…!」 旧式のACを駆り、クレーター上部を目指す。 「楽しそうな所悪いんだけどさ。俺達、まだ仕事終った訳じゃ無いんだよね」 奥の手、必殺陣形で見事敵ACアントリオンを討った三銃士。 だが、彼等の仕事はあくまでも『母体』の破壊だ。 依頼を達成した訳では無いので、当然今撤退すれば報酬は無い。 「…けどよ、今の俺達であのでっかいのを倒す事って出来る? 個人的には満足だし、もう帰っても良いんじゃないかな~なんて…」 無責任な事をラッシュが口にする。 「一応、主砲は全弾残ってるぞ?全部ブチ込みゃ、落ちるんじゃねえの?」 徹底して肩武装を使用しなかった為、対『母体』用の大口径砲は万全の状態で残っている。 あとは狙撃態勢さえ整えば、何とか撃墜する事も可能かもしれない。 一行が進退を迷っていると、ガンナー3のレーダーが未確認機を捉えた。 未確認機はすぐ側まで迫っており、気が付いた時には視界に入っていた。 「何だ、テメェ!…おい、マジで、何?あの機体?」 見慣れない機体に戸惑う三銃士。交戦するにしても、こちらには殆ど武器が残っていない。 ロックアラートも聞こえず、交戦の意思は無い様だが、不信感を隠せない三銃士に指向性通信が入る。 「よう!地獄から還って来たぞ」 「おっさん!?」×3 「何だよ、生きてちゃ悪いのか?」 指向性通信ならば、通じる様だ。声を揃えて驚く三銃士。 「…ハハハ、そうかい!生きてたのか…!」 「生きてんならさっさと通信入れるなりしろってんだ」 「その機体…随分珍しい機体だな。地獄製か?」 トーマスの洒落に声を合わせて笑う。 「機体については後で話そう。それより、仕事はまだ終わっちゃいないんだろ?」 デストロイヤ・フリーの破壊は今だ成し遂げていない。 「…ついて来い。絶好の狙撃ポイント、見つけたぞ」 旧式ACを駆り、クレーターへと出ようとした時に、偶然見つけた狙撃ポイント。 それは、旧世代基地の入り口。目標の射程外な上、高度を合わせる必要が無い。 正に絶好の狙撃ポイントであった。 「こりゃ楽だ!良くこんな所見つけたな。 これなら目視でも十分当てれる。あとは俺に任せな!」 三機のACに見守られる中、狙撃態勢を整えるガンナー2。 砲身にプラズマが蓄積し、発光している。どうやら狙撃準備が整った様だ。 凄まじい大きさの、光の柱が飛んで行く。 「9…10!こいつもオマケだ!」 10本目の光柱が飛んで行く。『母体』は成す術も無く、炎上していった。 今までの苦労が嘘だったかの様な、あっけない最後に、ラッシュが笑い出す位だった。 「よし、任務完了!ってね。帰還すっか!」 収支報告 収入 成功報酬+165000C 特別加算+30000C 旧式のACパーツ+武装 『女神ライラのご加護』 支出 AC「プロウセイル」完全大破。破棄。
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(前編から) 二十日が過ぎた。二人は綿密な調査を進め、ほぼ完璧なデータを集め終えた。 この森の群れの数は大小合わせて五十四群で、総個体数は三千二百五十頭だった。 一つの群れは平均して十二家族、六十頭の個体からなっていた。 そこから、一家族辺りの縄張りが二百平方メートルという数字が導かれた。わずか十四メートル四方だ。 十四メートルといえば、ゆっくりの歩度でも五十歩かそこらだ。 五十歩四方の中で、居住するだけではなく、運動、捕食、水浴び、排泄などすべてをこなしており、明らかに過密状態だった。 「ここはれいむのゆっくりプレイスだよ! ゆっくりしないでむこうへいってね!」 「ゆぐぐぐ、いくところなんかないよ! まりさはここでゆっくりするからね!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛ーっ!」 「ゆっぐりいいぃ!」 そんなやり取りがたびたび聞かれた。外周網を周回したヤマベは、網に絡まって干からびた死体や、網のすぐ外で小枝に刺さっている死体を見つけた。 逃げようとして無理やり抜けようとした成体ゆっくりや、我慢できなくなって域外へ出て事故にあった赤ゆっくりのようだった。 三千二百五十頭のうち、成体ゆっくりは千三百六十頭。うち二十五パーセント、すなわち四百頭以上が妊娠していた。 冬になる前に食糧不足に至るのは明白だった。 主任とヤマベは写真入りの調査結果を地主と役所に持参し、最終的な処置の契約を結んだ。 その日、二人はいつもの軽トラではなく、マイクロバスで森にやってきた。バスにはアルバイトの学生二十人を乗せていた。 助手席のヤマベに、後席の学生たちの会話が聞こえてきた。 「いくら多いったって、相手はたかがゆっくりでしょう? こんなに人数いるんですかね」 「君、ブリーフィングのときに何を聞いてたんだ。今回は三千二百頭だっていうんだぞ」 「はあ……三千二百ねえ」 「実感ないって顔だな。いいか、普通のゆっくりは大体重さ六キロある。ペットボトル四本分ぐらいだ。 それが三千二百頭、半分は子供だとしても、一千頭以上いるんだぞ。重さは全部でどれぐらいだ?」 「……六千キロとか、一万キロになるんですかね」 「十トンだよ。自家用車十台分だよ。それだけの量の餡子やらクリームやらを前にしても、まだたかがゆっくりなんて言えるか?」 「いや、なんかわかってきたっす……」 経験者と、初心者なのだろう。ヤマベは椅子にもたれて目を閉じた。 森に到着すると、広めの場所を選んで仕込み用のネットとスコップを降ろし、『イベント』の準備を始めようとした。 すると主任が言った。 「ヤマベ、ヤマベ」 「はい、なんですか」 「おまえ、これ行ってこい」 そう言って手渡されたのは、いくつかの座標を書いたメモ用紙だった。ヤマベは驚いて目を見張った。 「私が行っていいんですか?」 「俺が行くわけにもいかない。おまえ一人で学生は仕切れないだろう。行け」 主任が背を向ける。ヤマベは頭を下げ、森のなかへ駆け出した。 だが、すぐに頭をかきながら戻ってきて、登山用の巨大なザックを担いでまた走っていった。 彼女が見えなくなると、主任は学生たちに声をかけた。 「よーし、集まって。作業の説明をするよ。 一班は柱設営だ。『ステージ』を囲むようにぐるりと柱を立てる。 二班はネット掛けね。柱の上に、『ステージ』を覆うネットをかける。このネットは縁のところ以外は絶対触らないで。 三班はデコイの穴掘り。そこらへんを掘って飴玉を埋めていって。 さっきうまいことを言ってた子がいたが、大体ペットボトル四本が入る感じで」 「三千頭分も掘るんですか!?」 「いやいや、デコイ、囮だからね。二十分の一ぐらいでいいよ。百五十箇所だ。 柱立てたら残りのみんなも参加するからね。 あー、長靴? 長靴はあとでいいです。ひとまずバスの横置いといて。 じゃあ僕が外周にライン引きしていきまーす。 大体あの辺までになると思うんで、チャキチャキ働いてください。では、はい」 「うーっす」「いっちょやるかー」 森の中に入ったヤマベは、メモにある座標へ向かった。地形はこの二十日で頭に叩き込んである。 目当ての場所には倒木に隠れた斜めの穴があり、中をのぞくと、薄暗い穴の中でごそごそ動く黒い帽子が見えた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっ? ゆっくりしていってね!」 声を掛けると、ゆっくりまりさを初めとする一家が現れた。続いて、小さな赤まりさと赤ちぇん。 「あ……」とヤマベはつぶやく。 それは、以前会ったことのある、あの母ちぇんを亡くした一家だった。 「ゆ、ヤマベさんなんだぜ! キツネさんはゆっくりいなくなった?」 「ええ、どうかな」 「まりさはもうそろそろ旅に行きたいよ! おちびたちのごはんも減っちゃったよ!」 ゆーゆーと子供たちが母まりさに頬をすり合わせている。ヤマベは胸が痛くなった。 だが、これも仕事なのだ。――ギュッと歯をかみ締めると、ヤマベはザックを降ろして母まりさを抱き上げた。 「ゆゆっ? なにするんだぜ?」 「いいところへ連れてってあげるね」 「いいところ? ゆっくりできるならいってもいいぜ!」 得意げな顔をするまりさを、ヤマベはザックに入れた。まりさはまだよくわかっていない様子で言う。 「おちびのちぇんが一番さみしがりなんだぜ。ゆっくりいれてあげてね!」 ヤマベはザックの口を縛り、それを背負って立ち上がった。 足もとで小さな赤ゆっくりたちが、ゆーゆー、おかーしゃんまっちぇ、と飛んでいる。 その子たちに、ヤマベはひとことだけ言い捨てた。 「隠れてな」 「ゆっ……?」 子供たちが戸惑って立ち止まる。このままついて行こうか、お留守番しようかと迷っている風だ。 ゆゆっ? と背中からくぐもった声が聞こえた。ぼすんぼすん、と背当てのパッドが叩かれ、叫び声がした。 「ゆっくりまって! ゆっくりとまってね! おちびたちをわすれてるよ!」 「ごめん、まりさ」 ヤマベは硬い顔で言った。 その後三箇所を回って、計四匹のゆっくりでザックを一杯にすると、森の外周へ向かい、網をまたいでさらに百メートルほど離れた。 そして、あらかじめ準備してあったカンバス地のコンテナを地面の上に組み立てた。 風呂桶ほどの大きさになる、蓋付きの容器だ。複数のゆっくりを一時的に害獣から守ることができる。 そこにザックからドサドサと四頭を流し込んだ。 「ゆぶっ!」「ゆべえ!」 つぶれながら落下したゆっくりたちが、すぐに起き上がってゆうゆうと不安そうに周りを見る。 成体のまりさとれいむちぇんが一匹ずつと、やや小さくておとなしそうなアリスが一匹だ。 まりさがヤマベを見上げ、心配そうに叫んだ。 「ゆううう、まりさのおちびたちがいないよ! ゆっくりさがしてね! さびしがってるよ!」 「ごめん」 ヤマベはもう一度言って、ザックを片手にそこを離れた。ゆううう! ゆううう! と閉じ込められたゆっくりたちの悲鳴が追ってきた。 それから二時間ほど後、森の反対の端では、主任たちが準備を終えて『イベント』を始めていた。 「あまあま大会だよー」 「ゆっくりできるよー」 「ゆっくりしていってねー、ゆっくりしていってねー」 スーパーの売り子のように一本調子で叫びながら、間隔の広い横隊で森を進んでいく。 「あまあま」の声に反応して、次々にゆっくりたちが飛び出してきた。 「ゆうっ、あまあま!?」 「あまあまたべたいよ!」 「しゅにんさん、あまあまをくれるんだね! わかるよー!」 顔見知りのゆっくりを見かけると、主任が声を掛ける。 「ゆっくりだね、ちぇん。今日も元気かーい」 「ゆっくりしているよ!」 「あまあまをたくさんたくさん配るから、仲間みんなに声を掛けてねー。一人残らずだよ」 「わかったよー! ゆっくり、ゆっくりーっ!」 ちぇんを始めとする元気のある若いゆっくりたちが、我先にと駆けていく。 やがて森の奥から、赤や黒、緑や金色の色彩が、数え切れないほどぴょんぴょんと跳ねてきた。 無邪気な目をきらきらと輝やかせ、ハァハァと口を開けている。あまあま以前に、皆が食べ物に飢えていたのだ。 そんなゆっくりたちに向かって、人間はメガホンで叫ぶ。 「あまあま大会は森の入り口でおこないまーす」 「ご家族すべて連れてこないと参加できませーん。ゆっくりしていってね!」 「あまあまたいかい!?」 「ゆうううぅ、すごくゆっくりできそうな言葉だよぉ……」 「まりさ、おちびちゃんを乗せてね! れいむはおかあさんをひっぱってくるよ!」 さっさと走り出すもの、妄想が浮かんでその場でうっとりする者、一族郎党を引き連れてくるもの。 山のようなゆっくりたちが、ざわざわ、ごそごそ、もぞもぞ、ぴょんぴょんと湧き出して、流れる川のように森の入り口へ移動していく。 それと入れ違いに人間は森の奥まで進み、外周の網までたどり着くと、また叫びながら引き返し始めた。 「あまあま大会、まもなくはじまりまーす」 「一度きりだよー、来ないとなくなっちゃうよー」 「ほっぺのおちるあまあまだよー」 「ゆんぐぐぐ、やっぱりれいむもいくよー!」 「おかーしゃーん!」「おいちぇかないれー!」 跳ねる親、泣きながら追う子。 「むきゅぅぅ、ぱちぇはもうむりよ。ありすは先に行って……ぜぇぜぇ」 「ひとり占めなんてとかいはじゃないわ。おしてあげるからゆっくりがんばってね!」 助け合うカップルもいる。 置いていかれたものは、残らず抱き上げて聞き取りした。 「ゆっくりしていってね! もう周りにはゆっくりは残っていないかい?」 「みょーん、残ってないみょーん! みんないっちゃったみょーん!」 ざわざわと流れていったゆっくりたちは、やがて渋滞に入ってしまう。 森を囲む網が近づいて、一箇所しかない出口に殺到しているためだ。 「ゆっくりして、ゆっくりしてね!」 「おさないで、おさないでよ!」 「ゆぐぐぐぐ! でいぶつぶれるううう」 「ゆんやあああ! おかーしゃーん、おとーさーん!」 出口のところは駅の改札口のように何列かのゲートにされて、五人のアルバイトが両手の計数機をものすごい勢いでカシャカシャと連打している。 「ゆううう、やっとぬけたわあああ!」 「ゆっくりつぶれちゃったよ!」 「ゆっくり、ゆっくり!」「あまあま! あまあま!」 ゲートを抜けたゆっくりたちが、広い地面に出て勢いよくぴょんぴょんと跳ねていくが、じきに不思議そうに立ち止まる。 森から出たそこも、緑の網で囲まれた行き止まりの土地なのだ。ただし森ほどの広さはなくて、差し渡しは三十メートルほどだ。 そして頭上にも網が張ってある。こちらは外周の網とは違ってキラキラ光る細い網だ。 「ゆゆっ、あまあまがないよ?」 「おにーさん、はやくあまあまをもってきてね!」 「まりさはおなかがすいたよ! ぷくうううう!」 そんな風に膨れて威嚇するゆっくりたちも、後から後から流れ込んでくる仲間たちに押されて、どんどん奥へと運ばれていった。 「あまあま、あまあま!」 「ゆっくりたべるよーっ!」 森から流れ出し、広場に駆け込んでいく、紅白黒緑のざわざわした流れ。 横隊に加わっていた主任がそれを追い越して、爪先立ちでゆっくりを押したり蹴飛ばしたりしながら、一足先に戻ってきた。 「ほい、どいてね。はい、ごめんよ。おーいみんな、カウントどう?」 「僕は三百二十ですね」 「二百八十でーす」 「三百八十一」 「そこ、流れ悪いね。なんだあれ、あいつがふんぞり返ってガーガー言ってるからだ。誰かあのでいぶをステージに放りこんじゃって!」 「うぃーす」 「君君、足速そうだね。もうひとっ走り、外周回ってきてくれる? カウントは僕がやるから」 「えーっ、走るんですかあ?」 「あとで色つけとくからさ」 「わかりましたー」 アルバイトの一人が駆け出して行き、二十分ほどしてから横隊の連中と戻ってきた。 「主任さーん、パーフェクツです」 「穴とかちゃんと見た? テープで目印してあったでしょ?」 「見ましたー。ちゃんと声かけましたよ。残ってたのはアレしてきちゃったけど、いいですよね」 「いいけど、そんなに残ってた?」 「いえ、なんか年取ったれいむと、うつむいてブツブツ言うありすが一匹だけ」 「それはおちんちん取れちゃったやつだよ。ほっといても……」 「ギャー、セクハラ発言キター!」 「おい、真面目にやるよ?」 そうこうしているうちに横隊がカウボーイのように、最後尾のゆっくりを網のうちに追い込み、ゲートを閉じた。 いまや、三十メートル四方の広くもない広場が、ゆっくりでぎゅうぎゅう詰めになって足の踏み場もなくなった。 ゆっくり、ゆっくり、という期待の声と苛立ちの声、泣き声や悲鳴が重なり合って開場前の遊園地のように騒々しい。 カウンターと記録をつき合わせて、ほぼ誤差がないことを確かめてから、主任はハンドマイクを取った。 ガピッ! とハウリングの音をさせてから、盛大に叫び始める。 「えー、それではゆっくりのみなさん。お待たせしました。これよりあまあま大会を開始します」 「ゆっくりーーーー!!!」 「ルールの説明です。この会場には、たくさんのあまあまが地面の下に埋めてあります。 はい、そこのまりささん! あなた、そう帽子のつやのいいあなた。 ちょっとあなたの真下を掘ってもらえませんか」 「ゆゆっ? まりさが掘るのぜ? ざーくざーく……ゆゆゆう、飴さんをみつけたよ!」 「という具合です。みなさん張り切って地面を掘ってください。 なお、飴の数はみなさんよりきもち少なめにしてあるので、掘るのが遅れるとなくなってしまいます。 それでは用意、スタート!」 主任はそう言うと、陸上競技用のピストルをパァン! と鳴らした。 司会進行はメリハリもクソもないグダグダだが、道具の準備だけはいい男だった。 「ゆーっ!」 ゆっくりたちが一斉に足元を掘り始める。 最初は穴掘りの得意なまりさたちががんばっていたが、実際にあちこちから、 「ゆっくりー! あまあまみつけたよー!」 「ちゅぱちゅぱ、ちゅぱちゅぱ! おいしいよ、とってもゆっくりできるよ!」 と叫び声が上がると、もたもたしていたれいむもありすもぱちゅりーさえも、必死に掘るようになった。 ほとんどのゆっくりが穴堀りに熱中し始めたのを確かめると、主任はハイドマイクを置いて学生たちに合図した。 「おーい、配置配置。ちゃんと長靴はいた? いいか、焦っちゃだめだからな。焦るなよ!」 二十人の学生が、網で囲まれた穴掘りステージの周囲に陣取る。 三千数百のゆっくりが穴を掘りまくるフィールドでは、砂と土がザクザクと巻き上げられ、もうもうと砂煙が上がっている。 「穴、どう? おーい、そっちは穴どう!?」 「もうちょっとですかねー」 「全部入らなくてもいい、全体入らなくっていいよ! 土、土かけるから!」 「じゃあオッケーです!」 「オッケー? 一班オッケー?」 「オッケー!」 「二班もオッケーでーす!」 「よーし、いいかな? いいかな? じゃあいくぞー、それっ!」 全体と十分アイコンタクトしてから、主任は頭上の網を支える柱を引き倒した。二十人の学生がそれに続いた。 ふわり……と白く薄い網がゆっくりたちの頭上に落ちかかる。 間髪要れずに人間は網の周囲にペグを打ち、一匹たりとも逃さないように固定していく。 すると、穴に半ば埋まって土を放り出していたゆっくりたちが、遅まきながら気づいて顔を上げた。 「ゆゆっ?」 「なにかのってきたよ?」 「しろいふわふわさんだよ! きれいだね!」 「これはゆっくりできるもの? ぺーろぺーろ……ゆぎひゃあああああ!?」 絶叫が上がり始めた。網をなめようとした舌が、すっぱりと切断されたのだ。 「主任さん! これは一体……」 「“カスミアミ”だよ!」 主任が力強い声でそう言った。 カスミアミ――それは絹糸で作られた鳥猟用の網だ。 ほとんど目に見えないほど細いわりに、絹を使っているので強度が高い。 昔は日本の多くの山野で使われていたが、鳥類保護の観点から使用が禁止された。 主任たちの会社ではそれをゆっくり用に使用しているのだった。 鳥が絡まったら抜けられない、細い強靭な網がゆっくりに対して使われるとどうなるか――。 「ゆぎゃっ、ゆぎゃああああ!?」 「切れるううう、まりさのおぼうしが切れちゃううう!?」 「ゆぴゃああ、いちゃいっ、いちゃいよおぉぉ!」 「あびゅっぱ!」 「ひぱれ!?」 「てぷ」 スッ――れいむの額がめくれる。 スッスッ――まりさの頬が削がれる。 サクッ サクサクッ――親の頭にのっていた赤ゆっくりたちが、一文字や十文字に割れる。 バラバラ、ボトボトと地面に落ちる。皮が、あんこが、頭飾りが。たちまち悲鳴と糖臭が立ち込める。 饅頭肌を持つゆっくりにとって、「糸」は大敵だ。くくられたりひっかったりすると、それだけで肌が切れてしまう。 強靭な絹糸の網は、まるで空気そのものが刃物になったかのように、いともあっさりとゆっくりを切り裂いていった。 広場の外周では、アルバイトたちが浮き輪の空気抜きのように網ごとゆっくりを押しつぶしていく。 圧迫されたゆっくりが裂け、弾け、網の合間からトコロテンのようにヌリヌリとこぼれだす。 「ゆぎゃあああ、ぢにだくないい!」 「ゆっ、ゆゆっ? なんなの、どうしたの?」 「ゆっくり! ゆっくりおしえてね!」 それに引き換え、内側のゆっくりたちは何が起こっているのか理解できない。 ただ回り中から悲鳴が沸きあがるのを聞いて、混乱し、恐怖して、ゆっゆっと説明を求めるばかりだ。 「ゆっくりにげるよ、ぴょーん! ……ぷぱっ?」 「まりさもにげるよ! ずーりずーり……んぴっ! びゅあっ、びべばぁー!」 外へ逃げようとしたゆっくりは、ことごとく網にかかって切断される。 勢いのいいものは分割されたままヨウカンのように飛び、着地地点でバラリと解体される。 それほどでもないものは、顔面が割かれたところで痛みにのた打ち回り、後から来る仲間に押されてやはりトコロテンになる。 「だめだよぉー! おしちゃだめだよぉー!」 「ゆいいぃぃ! そとはあぶないよ! ゆっくりできないよ!」 「もどってね、ゆっくりもどってね!」 網が危険だと理解したゆっくりたちは、地下に飛び込む。 今まで自分たちが掘っていた穴に、だ。 飴が埋めてあったのはちょうどゆっくり一体分の深さ。つまりその掘り跡は都合のいい隠れ場になるわけだ。 ゆっくりたちは先を争って穴に逃げ込む。 すぽっ すぽっ ころころ、ずぽんっ! 「ゆっくりかくれるよ!」 「ゆゆーん、ここはれいむにぴったりだよ! れいむのゆっくりプレイスにするね!」 「おちびちゃん、おいでね! おかあさんのおくちにゆっくり入ってね!」 「ゆー、ゆー!」「ゆっくちはいりゅね!」「こーろこーろ!」 穴という穴にゆっくりが入り、下を向いたり横を向いたり上を向いたりした状態で、得意げに叫ぶ。 中にはその場でゆっくりプレイス宣言するものもいるが、そんなのんきなことが許される状況ではない。 「どいてね、おねがいだからゆっくりどいてね!」 「ゆあああ、すぱすぱがくるよお! はやくでてね!」 穴の主に向かって懇願するれいむや、背後をちらちら見ながら泣き喚くまりさがいる。 「れいむのおちびちゃんを助けてあげてね! どいてね!」 「どけっていってるでじょおお゛お゛お゛゛お゛!」 「がーぶがーぶするよ! がぶ! ゆうううう!」 「ゆびゃああああ、ひっばらないでぇぇぇ!」 「だめだよ! おぢびぢゃんだちのだよ! ゆぐぅぅぅ!」 「ゆぎゃああああぁぁ、あばぁ!」 焦りのあまり、穴の主のもみ上げや髪の毛にかみついて、力ずくで引きずり出そうとするものもいる。 その途中で踏ん張りすぎてもみ上げが千切れてしまい、あんこがドバッと噴出したのが見えた。れいむは瀕死で穴の底に落ち、ひっぱっていたれいむは後ろへ吹っ飛んで網に切り裂かれる。 「れいむも入れてね! ゆっくりいれてね!」 「まりさもはいるのぜ! ずーりずーり」 「ちぇんもはいるよー! いれてよー! おねがいだよぉぉ!」 「ゆーっ、ゆめてねやめて、ここはもうはいらないよ! ゆっくりやめて! づぶれるよぉ゛ぉ!」 「あっあっあ゛っだめだぜっ、つぶっ、つぶれるっ、ああああんこ出るあんこ出るまりさでで出ちゃうっ、でちゃうでちゃううっ、ゆああああゆぶびびぅぅっぶば!」 「ぶべっびぁ!」「ばぴゅっふ!」 一つの穴に黒いのや赤いのや緑のが殺到し、ムリムリモリモリと尻を持ち上げて無理やり頭をねじ込んだ挙句、二、三頭が破裂してしまい、派手にあんこを吹き上げているところもある。 そんな狂乱穴埋まり地獄とでもいうべき、ゆっくりたちの阿鼻叫喚を、端から学生たちが網ごとズムズムと踏み潰していく。 「いち・にー、いち・にー」 「よっせ、よっせ」 「長靴ってこれかよー」 麦踏みにも似た光景だが、一歩ごとにブビュッ、ブビュッ、と餡が吹き上がるところが異なる。 主任が外周を回りながら言う。 「穴入ってるやつはできるだけその場で埋めてくださーい。網切れないように気をつけてー」 「はーい」「あいー」 ザッザッ、と餡交じりの土が浴びせられ、ゆっくりが埋められる。 「ゆばばばぁ、やめでよぉ! ゆっくりざぜでぇ!」 空を向いて泣きながら埋められるのもいれば、 「もぉやだああぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅ!」 「だじでよぉぉ! ぬけないよぉぉぉ!」 「おがあじゃぁーーーん! だずげでぇぇーーー!」 「おぢびぢゃああん! ごめんねぇぇぇ!」 下を向いたり、横を向いたり、大きいのの隙間に小さいのが挟まったりして、身動きできずに号泣しながら埋められていくものもいる。 主任は外周を回りながら地面に目を走らせている。時折、外の地面をぴょんぴょんっと跳ねていく小さな帽子や髪飾りがいる。 親が必死の思いで外へ投げ飛ばした、赤ゆっくりや子ゆっくりだ。涙をこらえて一歩でも遠くへと走っている。 主任はそういうゆっくりを目ざとくつまみあげ、ポイッと広場の真ん中へ放り戻す。 捕まった途端に赤ゆっくりたちは絶望に口を開け、「ゆんやあぁぁぁ!」「いやに゛ゃぁぁぁ!」と悲鳴を上げながら飛ばされていく。 せっかく逃げられたかもしれなかったのに、赤ゆっくりたちの望みはこの冷静な男に断たれてしまうのだ。 混乱しきった網の中では、母親といっしょに死ぬこともままならない。 ただ、「みゃみゃぁぁー!」「おちびぢゃあぁぁぁん!」と叫びあいながら、解体され、潰されていくしかないのだった。 「それっ、それっ! あれー、主任さん潰さないんですか?」 額に汗をかいて楽しそうに潰し歩いていた女子学生が、赤ゆを投げている主任に尋ねる。 「こうすれば同じだからね」 主任はむっつりと答えた。 包囲し始めから四十分ほどたつと、ゆっくりの狂乱もだいぶ静まってきた。広場の中心辺りで、言葉もなくモゾモゾ、ワサワサとうごめいている。 だがこれは落ち着いたのではなく、しゃべる余裕もないほど必死で闘争しているのだ。 外周からは、少しでも死を遅らせようとゆっくりたちが中央へ押し寄せる。 中央では、押し寄せる仲間たちの圧力に負けて、皮の弱い個体から破裂していく。 「ゆぶっ……!」 ズチャンッ 「ばびっ……!」 ドチュンッ 「みゃみゃ……」 プツンッ それらの餡子やクリームが、ときおり間欠泉のように吹き上がる。 数は少ないがしゃべれるほど大きなのもいて、大声でわめいている。 「どぼじでごんな゛ごどずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ! でいぶばがわいいでいぶなんだよぉおおぉぉぉ! ゆっぐりごごがらだぜぇぇ! ゆっぐりざぜろおぉぉおぉ!」 喚きながら大きな図体で暴れるものだから、まわりのゆっくりが巻き添えを食って潰されている。 「っせぇ黙っとけ!」 苛立った学生が穴掘りに使っていたスコップを掲げて、平らな面でバシンバシンとその大きなれいむを叩き始めた。 れいむは口汚く罵っていたが、途中から命乞いを始め、それも通じないとわかると狂ったように泣き喚いた。 それでもなかなか死なず、周りの学生が寄ってたかってパンチとキックを集中させ、頭全体に何十個もの陥没口をあけられて、ようやく死んだ。 皆が思っていた通り、そのれいむの面の皮は恐ろしく厚く、十センチほどもあった。 「あまあま大会」で六割以上のゆっくりが穴を掘っていたため、包囲網が内に近づくにつれ、外周にはゆっくりの埋まった土饅頭が増えていった。 中央部の数少ないまともなゆっくりが、網でキシキシ裂かれていきながら、泣き声で叫んでいた。 「にんげんさん、やめてね! やめてね! れいむなんにもわるいことしてないよ! おねがい、やめてね! ゆっくりしてね! ゆっくりしてよー! いっしょにゆっくりしてー!」 このころになると、最初はハイだった学生たちもやつれた顔になっていて、哀願するれいむから次々と目を逸らした。 人間の顔と声をした生き物をこれほど殺していると、たとえゆっくりであっても消耗するのだ。 「いたいよー、たすけてよー! ゆっくりしていってね!!!」 叫ぶれいむに、主任が大またに歩いていって、力いっぱい長靴で踏みつけた。 ザパッ! と絹網がれいむに深く食い込み、上下・左中右の六つに切り分けた。 その切り方が綺麗だったのかなんなのか、そのれいむは分割されても声を上げた。 「ゆっくりして……ってね」 そしてボロボロと開くように倒れた。 最終的に、中央部のゆっくりは自分たちの圧力でつぶれ、ドロドロした粘体の山と化した。高さ八十センチ、底の差し渡しが三メートルほどの低い山ができた。主任がそれを写真に撮って言った。 「この山一つで二トン半ぐらいかな。……じゃあ、あとはみんなで穴掘って、これ埋めたら終わり」 「二トン半て」 うんざりした顔の学生に、主任は声をかけた。 「残り七トン半は自分らで掘った穴に勝手に埋まってくれたんだ。楽したと思わなきゃ」 「そっスね」 すでに日は傾いていたが、皆は黙々と作業の締めくくりに移った。 携帯電話が鳴った。カンバスコンテナの横でぼーっと座っていたヤマベは、電話に出た。 「はい」 「済んだぞ。そっちは」 「NPです。みんな泣いてますけど」 「離してやれ」 ヤマベはコンテナの中に目を戻した。主任の指示通り、森中からランダムに集めた十頭のゆっくりたちが、不吉な将来を予感したのか、えぐえぐと泣きじゃくり、ゆっくりしようねと慰めあっていた。 いずれも色艶のいい、利発そうな成体ゆっくりたちだ。 ヤマベはコンテナに手をかけ、ごとんと倒した。ころころと出てきたゆっくりたちが、「ゆゆっ?」と辺りを見回した。 その中のまりさが怒った様子でヤマベに詰め寄った。 「ヤマベさん、ゆっくりあやまってね! まりさはこんなにおちびたちからはなれたのははじめてだよ! ゆっくりおちびのところへつれていってね!」 物悲しい目でまりさを見ていたヤマベは、立ち上がった。コンテナを畳んでザックにいれ、歩き出す。 「ゆゆぅ!? むししないでね! ゆっくりはなしをしてね!」 後ろからまりさがピョンピョンとついてきた。ヤマベは黙々と歩き、例の森の外周の網までたどり着くと、それをクルクルと巻き取り始めた。 「行きなよ。こっからさき、あんたたちの森だから」 「ゆっ? くんくん……そういえばこのにおいは知ってるよ! ここはまりさのもりだよ!」 「そうだね」 「これならおちびのところへいけるよ! ゆっくりいそぐよ!」 まりさはヤマベが開けた網の隙間から森へ入っていこうとしたが、ふと不安そうに振り向いた。 「きつねさんは、もういないのぜ?」 「最初っからいなかったのよ。増えすぎたのはあんたたちのほう」 ヤマベは振り向き、様子を伺っている九頭の生き残りにも声をかけた。 「さあ、行っておうちへ帰りなさい。この森はとっても広くなったから、ゆっくりできるわよ」 「ゆゆう……?」「もりがしずかだよ……」「ゆっゆっ……ゆうう?」 おどおどと周りを見回しながら、ゆっくりたちは森へ戻っていった。 まりさは一番最後までヤマベを見ていた。その目に言い知れぬ不安と不信が揺れていた。 ヤマベは何も言わずに網を片付けた。 広場へ戻って合流すると、朝には生き生きとしていた二十人のアルバイトたちが、ぐったりと疲労困憊して座席で待っていた。ヤマベが助手席に入ると、タバコをすっていた主任が「よう」と片手を挙げた。 「どうだった」 「え、普通です。十頭とも元気で森へ戻りましたよ。何が起きたのかわかってないみたいでしたけど」 「まあ死ぬまでわからんだろうな」 ヤマベはタバコを灰皿に押し込み、マイクロバスを転回させた。素人がメチャクチャに畑作業をやったような、荒れた掘削跡がヤマベの目に入った。 「これで何年持つんですかね」 「いいとこ五、六年だろ。ネズミ算だし」 「十頭が一年で三十頭になって、二年で九十頭になって、三年で二百七十、四年で八百十、五年で二千四百……そんなもんですね」 「まあ一概には言えんが。この森はやばいと思って引っ越すかもしれんし、外敵に食われるかもしれん」 「外敵なんかいませんでしたよ、フィールドワーク中に」 「いなけりゃどっかから来るだろ。生態系ってそういうもんだ」 「こんなのでゆっくりを守ったって言えるんですかね?」 ヤマベはとうとう振り向いて主任を見つめた。どういうわけか鼻の奥がツンとしていた。 「森とゆっくりをっ、守るためにっ、仕方ないっていうことですけどっ!」 主任は次のタバコに火をつけながら言った。 「バーカ、そりゃ建前だ」 「……」 「邪魔なゆっくりを根こそぎ滅ぼしますとか言ったら、いろいろ横槍入んだろが」 「……そうなんすか?」 「そうなんじゃねえの。ほんとにゆっくりを守りたかったら、もっと厳密に繁殖管理しなきゃダメだろ。実際そういう会社もあるし」 「……そうなんだ……」 ヤマベは視線を落とした。膝が震えていた。 「そっち就職するべきだったかな……ちっくしょ」 ポタリと膝が濡れた。 ガタガタと揺れながら走っていたバスが、キッと止まった。 ヤマベは顔を上げる。まだ全然山の中だ。というか振り返るとさっきの場所がまだ見えた。地続きで五百メートルも離れていないだろう。 主任が作業服のポケットをあさって、カサカサ動いている紙袋を取り出し、窓から草の上に投げ捨てた。 それから何食わぬ顔で再びバスを出した。 ヤマベはしばらく、呆然と主任の横顔を眺めていた。主任は嫌そうに目を細めてぼそぼそ言った。 「見んなよ」 「主任……」 「言っとくが違反じゃねえぞ。あの森には十頭しか戻すなって言われてるが、今のとこはもう、登記上は別の森だからな」 主任は頑なに前を見つめていた。ヤマベは目頭を拭いた。 「……戻れるといいですね」 「なにが?」 ヤマベはマイクロバスのサイドミラーを見た。 小さな小さな点が三つ、勢いよくはねていったような気がした。 (おわり)
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「~~詩で遊ぼう! 投稿梁山泊 10th edition ~~」の300-430 360 名前:300 [] 投稿日:04/01/29(木) 08 30 ID f057nWxe 遅くなって、本当にごめんなさい。 審査等くださった方々、有難うございます。 次の御題(テーマ)は「裏」でお願いします。 361 名前:裏めしや [] 投稿日:04/01/29(木) 12 29 ID QSYlJw2o 段ボールのお山 しとしと雨に崩れかけ しわがれたキャベツら 値札をつける口もなく 青白く芽吹く煤団子ら 雨にむかい手を伸ばす ありえない隅へのサッカーボール転がれば 金網越しに見つける少年もあるかも 捨てられないところ 賞味期限内のところだけを 当然として特権の者として めしやで食らうは無知な労働階級ども ありえぬ空間から裏めしや 厨房で整う自動人形たちへ 表へむかって裏めしや ちょうだい ちょうだい それ 362 名前:午後五時の荒天1 [] 投稿日:04/01/30(金) 02 16 ID nlnGhB9L 寒流に乗った、昨日の荒天はわずかに コンクリートをたたきつけて 反発は随分と細部にまで及んで それでも敗北して いずれ、侵食する、という痕跡を残した で、俺はずいぶん歴史的だな、 という陰口を叩き壊す しかし、そこは収めろ で、打ち揚げられたヒトデ カルシウム質のなかに なんとか花を見出そうと いくつかの思想をこねくり回して 頭を痛めてみたものの 腹痛を催して、吐き出すと タバコを一服、海に棄てる 波紋はあっさりと掻き消されたようで 断末魔のわずかな煙がのった 港湾沿いのしけった風に吹かれて脂汗を催す オエッ 結局のところ、漂う煤煙はモザイクのかかった テクノ調で機械音と脳みそのやわらかさが ガチガチに固まった あのこびりついた歯石のやわらかさを 象徴するようなあの音は… 363 名前:午後五時の荒天2 [] 投稿日:04/01/30(金) 02 16 ID nlnGhB9L 永遠に聞こえやしないんだよ 内耳炎でな 赤ん坊、と叫んでみて そのままブリキ板でボコボコに 補修された道を歩いてゆくと 嘔吐を思い出す 吐き出してみたところ 毛玉だったのはいいのだが ずいぶんと合成繊維ばかりで うんざりしたら また腹痛だ 今の時間は 例えば朝だとする 夜は薄命だから 誰かの言っていた 午後五時は ずいぶんと こちらでは、 撒き散らす、 小便を 加速したら 早くしろ 364 名前:キメラ [sage] 投稿日:04/01/30(金) 22 27 ID fOjRH0hU 君はキメラだ 喘ぐキメラだ 僕のペニスに貫かれて 背中をみせて悶えるキメラだ 湯舟のお湯はゆっくり波打ち 時には細かく震えてさざ波立つ 白い背中に梳けた髪がまとわりついて くねる背骨のようにS字にウエーブする 右の肩越しに後れ毛がかかり 上気した頬がほんのり桃色 だが君は振り向こうとはしない うしろを見せたままだ きっと恥ずかしいのだ 彼への言い訳を考えているのだ 蛍光色が闇に煌めくように 心の裏側を垣間見せて反射しているのだ 君はキメラだ 喘ぐキメラだ 365 名前:裏のない人 [] 投稿日:04/02/01(日) 00 50 ID NBnEZ1ms 良い人だ、裏のない人だと聞いていたがすれ違ったら、本当になにも見えなかった。 振り返ったオレはなにか反則をしたような、切ない気持ちでいっぱいだ。 もちろんあの人は振り返ってはくれなかった。……。 366 名前:裏庭 [] 投稿日:04/02/01(日) 03 30 ID hriZ7VHH 裏庭で 真っ白なコピー用紙を 泣きながら 何枚も燃やした 一枚目、空の無責任な青さのために、 二枚目、物言わぬ風のために、 三枚目、びどうだにしない雲のために、 四枚目、届かなかったひかりのために、 五枚目、ほしくない永遠のために、 六枚目、軽薄な言葉たちのために、 七枚目、くだらない自尊心のために、 八枚目、しゃべらない孤独のために、 九枚目、人生のはかなさのために、 十枚目、すべての沈黙のために、 十一枚目、ひえきったぼくのために 灰は脆く 触るとすぐに崩れた たくさんの灰を踏み固めて ぼくはうすぐらい縁側に うなだれた 遠くで眺めていた タローが近寄ってきて ぼくを心配そうに 覗き込んだ 367 名前:裏道 [] 投稿日:04/02/01(日) 04 38 ID F41mS7Yk いつも渋滞の 騒がしい道を外れて 静かすぎる 裏道へ入る 遠回りだという事 わかってる 無駄だという事 わかってる 結局は戻らなくては 歩むべきは あの騒がしい道 車の音 耐えかねて 逃げるように 裏道へ入る 夕日に照らされた 伸びる影は一つ あいつらには見つけられない 僕だけの道 僕という名の 逃げ場所 一匹の猫 いつも あの塀の上 君はいつでも そのままの顔 大きなリアクションで 喜んで 怒って 僕にとっちゃ 厄介さ 君をこの道に隠して 生きてきた 素晴らしいのは君の方 僕はあの騒がしい道じゃ どうにもやっていけない いつも渋滞の 騒がしい道の ど真ん中に立って 大声で叫びたいよ 「僕はここにいる」 君なら出来るんだろな だからこそ 裏道に隠しておくのさ 368 名前:語り部(ア) [] 投稿日:04/02/01(日) 15 33 ID W6p8ya0s えーみなすぁん 虫たちの聴覚にご遠慮騒音をピーpppp膨らんでおりま寝る根のです失礼島す 失せろ 不満は 失せて 黄ばむ ふん あ 「先天性のスナフキンが お花畑で歌います ラリラリラルルララリラリラルルラ 「お花なんか枯れてしまえ」 「ナメクジばかりがいじめられ 紫陽花ばかりが踊り出す ステップ忘れた農民が メロディー忘れて歌います ラリラリラルルララリラリラルルラ 「お花なんか枯れてしまえ」 369 名前:語り部(ア)2 [] 投稿日:04/02/01(日) 15 33 ID W6p8ya0s 「旅の仕方を忘れたよ 豆の食べ方を忘れたよ 食物連鎖を忘れたよ 顔と形を忘れたよ スナフキンは歌います ラリラリラルルララリラリラルルラ 忘れんぼうのふりをして ラリラリラルルララリラリラルルラ」 「お花なんか枯れてしまえ」 ラリラリラリラ はいおしまいでごzazazaimasuuu 370 名前:農夫の歌 [sage] 投稿日:04/02/02(月) 00 03 ID dfO1dOZ+ 人知れず雲雀は幸せをさえずり、 裏の畑に口をあけた春が、毛穴の底から涌いてくる。 幾千の年月を重ねた清水は、黒い土に沁み入り、 磨きあげた鉄鍬を突き刺せば、 泥まみれた残雪が虚偽のように横たわっている。 裏の畑を偲ぶ春よ、 地熱のように地下に耕し、 私の心を掘り起こしておくれ! 大地の底で、 抉り込むような大声が、遠く響き渡っているから!! 371 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/02(月) 01 37 ID V9vw2Uh1 お題「裏」しめきりはいつなんだろうか。 ムムッ、知らないのはオレだけか? 372 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/02(月) 16 55 ID WkFUeJaO 締め切りはこちらに一応出ていますね 梁山泊スレ専用! 雑談感想議論スレ7 http //book.2ch.net/test/read.cgi/poem/1063564596/l50 373 名前:371 [sage] 投稿日:04/02/02(月) 19 32 ID V9vw2Uh1 2月5日までか。372さんよ、ありがとう。 374 名前:アナウンス 1/2 [sage] 投稿日:04/02/02(月) 22 08 ID C1k/Gw5P ピンポンパンポン 至急連絡いたします。くりかえします。至急連絡いたします。 「田中」はすぐさま1階事務所の方にお越しください。 館内案内図はお手元のをご参考にしてください。 お手元になければ2番案内所に横道さんという下衆な係員がおりますので 私も行くの嫌ですが、行って教えていただいてください。 ピンポンパンポン お昼をお知らせします。ただいまより館内のレストラン・定食屋・ファストフード店等は いっさいの営業を停止いたしますので、お気をつけください。 なお、3階36番角の「おのころ亭」だけは開いております。 ピンポンパンポン お知らせです。12階3番ロビーa24番にて踊り食いがはじまります。 ピンポンパンポン 火事です。火事です。15階4番「ザ・めんこい」より火の手が上がっています。 できるだけ体勢を低くし、お持ちならハンカチを口にあて 15階36番にある「蜂蜜倶楽部」に移動してください。 ピンポンパンポン 迷子のお知らせをお伝えいたします。 8階2番ゲートにて迷子を保護しました。 以上、お伝えいたしました。 ピンポンパンポン 午後6時をお知らせします。 375 名前:アナウンス 2/2 [sage] 投稿日:04/02/02(月) 22 09 ID C1k/Gw5P ピンポンパンポン 20時より15階24番内「ファッションプラザ 鬼頭」においてファッションショーが行われます。 実際はストリップですので、18歳未満の方はお断りします。 また、どうしても見たいという18歳未満の方は、15階1番下にて 伏目がちな浪人生ばかりが切符を販売しておりますので、こちらでどうぞ。 ピンポンパンポン ただいまより山下清の時間です。 各階ロビーにてお楽しみください。 なお、物真似は禁じます。 ぴんぽんぱんぽん このチャイムの感想をお待ちいたしております。 ピンポンパンポン 30分間のサービスタイムです。 全商品が70%オフになります。 料金はそのままです。 ピンポンパンポン まもなく館内営業終了のお時間です。 心ゆくまでお楽しみ頂けたでしょうか。 明日の営業は午前9時からです。 明後日の営業も午前9時からです。 後10分ほどで必ず終了いたしますので お買い物などはお早めにおすましください。 376 名前:サヨナラ満塁ホームラン [] 投稿日:04/02/03(火) 01 23 ID AMvvSKuV 4対4同点 9回裏二死満塁バッター俺カウントツースリー ピッチャーのおまえサインに大きく首を振っております ああ投げられませんプレートを外しました キャッチャーが駆け寄ります内野も集まります 内野どころか外野も集まって来ました 何やらギャーギャー俺を指差して騒いでおります さらにスタンド観衆からも俺に対して大ブーイング バッターボックスを外して見渡せば 優しい目をしているのは監督とコーチともう一人だけ この現状を作り出したのは俺だしそんなことわかってるし でもなあ俺は味方がいれば 一人でもいれば怖くないのんよ さあ気をとり直してピッチャーおまえがサインに頷く 大きく振りかぶって投げました「ストレート!知っとる!」打った 左中間に打球が飛ぶレフトさがるレフトさがる見送ったー 入ったーサヨナラサヨナラサヨナラサヨナラ サヨナラ満塁ホームラーーーーーーーーーン たとえこの劇的なサヨナラ満塁ホームランが明日のスポーツ紙の一面を飾らなくたって たとえこの劇的なサヨナラ満塁ホームランを解説者が誰一人誉めなくたって そんなこと俺はかまわない ホームベース踏んだらそのままサヨナラ It is time 二度とサヨナラ 「プレイボール!」 ほら、こっちでまた始まった 377 名前:裏1/2 [sage] 投稿日:04/02/03(火) 03 19 ID NHFASL3W 抜けるような青空 プラスチックのような日差し 絹糸のような風 ミント香るような女の子が こぼれそうな笑顔で「おはよう」と言った 街路樹の葉はアクリルの緑 とぎれとぎれセミの声が響き渡る 宝石のような汗を散らして ランニングしていく女の子が 満面の笑顔で「おはよう」と言った 気の置けない友人と合流し 真剣に言葉をかわし歩く 案外すいてた電車に乗り込み すぐに席に着いた 378 名前:裏2/2 [sage] 投稿日:04/02/03(火) 03 20 ID NHFASL3W 向かいに座っていた清純な女の子が 人懐こい笑顔を浮かべて「おはよう」と言った 友人がその娘を無視したので 女の子は泣き出してしまった 友人が徹底的に無視したので 女の子は泣き笑いしだした あまりに短い時間の後 電車はホームに滑り込んだので 永遠の別れにも似た悲しみに襲われた 抜けるような青空を見上げて こみ上げてくる笑いをこらえた プラスチックのような日差しの中で 女の子をやさしくやさしく抱きしめたかった 絹糸のような風にとらわれて 身動きできない僕に ミント香るような女の子が 「おはよう」とやさしくささやいた 379 名前:うら_1 [sage] 投稿日:04/02/03(火) 05 36 ID Xzt0JzWM 人の言葉に確かめられて うん、そう たぶん そんな私なんだと思う よ いつでも そう 認めざるをえない ほんとはただ 行き過ぎたいだけなのに ね 誰も 忘れてくれないんだ それでやっぱり今日も電話がかかってくる 私を 知ってる人から 名乗る前に 呼びかけられては 元気だよ、会いたい って いう 知らない人と知らない場所へ行きたい 夜は知らない部屋で一緒に寝たい おもて側のやわらかくて熱い肌に はじめてのキスを 何度もしたい 知らないあれを 私がせがんで まるで知ってるふりをする知らない人と 何度も 何度も して 忘れて もう知らない 380 名前:うら_2 [sage] 投稿日:04/02/03(火) 05 37 ID Xzt0JzWM あなたの千里眼で 知られた私 あなたの見通す 私の名前 私のおもて 私のうら 好きだからって 知ってる よ 私が隠さないから きっと抱きしめてくれるって だけど 知ってちゃだめなんだ うらのうらはおもてじゃない うらのうらはおもてじゃない 知ってるあれを 私がせがんで まるで知らないふりをするあなたが 私のうら側の皮膚に いつものキスをする いつもみたいに さみしい気持ちになって うらのうら側で 私はあなたを忘れていく 381 名前:ころコロこみックす [] 投稿日:04/02/03(火) 16 25 ID a5VUTPyQ 1. 2. 3. 4. 5. 裏番外編というカタチで、心は捕まれたの。 完 メンスになったイモートの為 に、僕らはヤッキョクまで買 いに奔った 学校の裏ガワに住ん でるヒトは買ってもい ないパンを無理矢理風 船にして 錆だらけ のトッキュウ列車で男鹿武山(オガタケヤマ)まで走ったはしった、はしった、はしったはしった のこった、のこった、のこったのこった ころころミックスを買いに奔ったあの頃 のように僕らは何 度でも生き返れるんで す 382 名前:天狗ばなし1 [sage] 投稿日:04/02/03(火) 17 37 ID qerKFAp5 雁回山には天狗が棲むという 彼等はいつも杉の木の上でキセルをふかして僕たちを見ているらしい 働いているときも 遊んでいるときも 恋人と交わっているときも 彼等に観察されているのだという 祖父はその山で彼等にあったといった 田舎づくりのその家では似つかわしくない 珈琲を啜りながら 呵々として僕に語った あやつどま、神さんでんなんでんなか あっどま ただ見とるだけだもね 父も僕も幼いころから聞かされてきた話 祖父は天狗を語る時 いつも珈琲を啜った 383 名前:天狗ばなし2 [sage] 投稿日:04/02/03(火) 17 38 ID qerKFAp5 浮き世離れした話だと祖母は馬鹿にしていた 母も苦笑いしながら 聞き流していた 祖父だけが真剣に話し続けた いつもは穏やかな人が 天狗のことだけはゆずらなかった 僕はもう一つのその祖父の顔を愛していた ある日 祖父がぽつりとつぶやいた おれはほんなこつ天狗ば見たとだろか 僕だけがその言葉を聞き取った 祖父が死んで十年が過ぎた今日 僕は雁回にのぼった 屹立する杉の木の間から 微かに珈琲の香りを嗅いだような気がした 384 名前:ザ・裏 [sage] 投稿日:04/02/04(水) 11 17 ID +u8xeX4t うらら裏らうらうらら 裏ら裏ら裏裏よ 裏らうらら裏うらら このよわ私のためにある うらら裏らうらうらら うららうららうらうらよ 裏ら裏ら裏裏うら このよわわたしのためにある 裏裏裏裏裏裏 うららうらうら裏うら うららうら裏裏うらよ この世わわたひのためにあゆ もうすぐ梅もさきゅ もさきゅーーーーーー!! うらら裏らうらうらら 裏ら裏ら裏裏よ 裏らうらら裏うらら このよわ私のためにある うらら裏らうらうらら うららうららうらうらよ 裏ら裏ら裏裏うら このよわわたしのためにある 裏裏裏裏裏裏 うららうらうら裏うら うらら裏裏裏うらよ このよわわたひのためにあゆ 385 名前:うらぶれ [sage] 投稿日:04/02/04(水) 13 06 ID ea8YPua+ 扉の裏に影一つ 表を見ても影一つ 誰もいない禿山の 壊れた小屋に 一匹の物の怪が住むという 父上母上お元気ですか。私は元気です。 近所の方々はとても親切にしてくれます。 住む処も貸して頂きました。 それではまた手紙を書きます。 雲の陰から雨が降る 小屋も一緒に流れ行く 草木も生えぬ禿山の 岩の後ろに 小さな物の怪がいるという 父上母上お元気ですか。私は大丈夫です。 ここは草木も多くて心安らぎます。 それではまた手紙を書きます。 濁った水に映る顔 それは錆び付いた顔 青く澄んだ大空の その下に いくつも手紙があるという 父上母上お元気ですか。私は―― 386 名前:A Back and Lips 1/1 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 00 00 ID eh6onIMa 二人羽織から覗く 白魚の指 蒼に 血の道は走る 歴史が育てた皺しわの山 二人羽織から呟く 揃わぬ髭 青に 煙の香は残る 指令うけ渡すだけ針はりの先 私を包む 家紋の前掛け 肌蹴に見た毛むくじゃら 私を包む 家紋の身頃 全て追い剥ごう二重の声しとめるため 今宵もし 羽織のキスは、 誰の誑かしにその気になり突き出される唇だけ 387 名前:A Back and Lips 2/2 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 00 00 ID eh6onIMa 伝える口ここ 受ける耳うらに、 私を待たせ急ぐ背中での企て (舌は入れるべきだろか入れさせるべきだろか) 待つ私かわいたの出したり引いたりで (舌は誰のが入ってくるのだろか誰に入れるのだろか) 噛み千切れば悲鳴 震える指を泣かせるから 衿足に流し込むツバせめて私からの御礼です 388 名前:2ちゃんねる [] 投稿日:04/02/05(木) 02 42 ID PxRDds7n 裏2ちゃんねるなんかすでに 公式化していて あるやなしや関係も無く。 ここにしか、吐けない言葉を、吐いている。 げろっぱ。 此処は裏通り。 逝っていいんじゃねーの? そうだね。逝ってみようか。 氏ね。 そうだね。死のうか。 藁 そう、、、、 そう、、 藁藁藁藁 はははひひいい 今日も打つキー。 氏ねと。 389 名前:僕 [] 投稿日:04/02/05(木) 11 10 ID 4X0xaJ1o 火に吸い込まれそうになる 力を入れた拳がグーの形で汗ばんでいる 「僕はいつ死ぬか不安だ」と いつも思っています。 それから、「僕はいつ死ぬかいつ死ぬか不安です」と思った。 ゆっくりと裏の感情が表の僕の笑顔を強く強く強くそうして変えていくと。 僕はさらに「僕はいつ死ぬか不安だ」という、そういう不安にかられる。 「僕はいつ死ぬか不安だ」 「僕はいつ死ぬか不安だ」 最近そんな不安に駆られる 390 名前:眠り 第壱夜 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 17 32 ID ZP8GKHbn 夜になれば全てが明らかになる 薄暗いバーの戸棚の奥に置かれた静謐さ 歴史の重たい壜が君との交流を求めている スツールの上から路地裏の天蓋まで 全てはストーリーに導かれている 君の赤い心臓を満たすワインが僕の中に流れ込むとき 僕はその筋書きを理解する道化となる 海のような夜が屋根まで浸る頃 舞曲は鳴り止み必要な言葉が紡がれる そして僕らは気泡のような囁きを交わす 君は寝息を立てている 回廊の奥から足音が響いてくる 窓から砂漠の月光が滑り込んでくる ここでは朝が来ることなど誰も知らないのだ 391 名前:眠り 第弐夜 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 17 32 ID ZP8GKHbn 突然城は茨で覆われ眠り姫は眠りに就いた 彼女の物語は終わったのだ それでも人々は物語の続きがあることを信じようとする 王子様のキスを信じようとする 人々は語り始める いつしか物語は真実となり 眠り姫は彼らの物語の中で永遠に生き続ける 今 僕らはその物語の本当の悲しみを知る それらは果たされることの無い契約の中にある 僕らは茨の城に近づくことすらできない 感情の行き場を無くした僕らは目を閉じて祈っている 新しい風が茨の間を吹き抜けて彼女の頬を撫ぜてくれたら その暖かみに僕らのキスを感じてくれたら そうして苦痛の無い安らかな笑顔に変わってくれたら 僕らは幸せな物語の続きを信じることが出来るのだろう 392 名前:『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 19 09 ID DtPxKygU -1(胎動) ペストの伝染を防ぐため 大量のネズミが虐殺されたが ノミは難をまぬがれた と 父は言い残して身罷った 僕はノミと相談し ひとりの人間でもある野心家の思考中枢へ われらの怨みをこめたプログラムをインストールさせることに成功 彼はそれから一心不乱 自らの野心の充足に腐心 ついには輝ける王となって君臨 そう あの 夢と魔法の王国の玉座に 人がペストの撲滅に奔走するなか われらはそうやってわれらの地位を築いたが 画策してきたものはそれだけじゃない ごらん もうすぐ 人類が崩壊する 393 名前: 〃 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 19 11 ID DtPxKygU 0(盲点) ラスプーチンと寝た祖母の 三女であった母はわたしを ファシズムの手から逃れさせるため 日本へ隠したと 父は最期に言い放った ぼくは決心を固め エルサレムへ飛んだ イエローモンキーという語はやがて 称号ともなろう 後発の有利性というものを かれらははじめて知ることになる ぼくらはユダヤのノミとネズミに とびきりおいしい時限爆弾を仕掛けに行く 394 名前: 〃 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 19 12 ID DtPxKygU 1(過去そして対峙) その澄んだ耳が あなたが背中を向けて立つその分岐点を未来へふりむいて 天命を聞き届けるまで 持ち場をうごかず守りきらんことを [チャフやフレアを全く受けず150キロ先からフェイズドアレイ 10個以上の破壊目標の同時処理の容易な可能 大型目標探知距離100nm 小型目標ルックダウン35nm 対艦攻撃ミッション仕様 450nm以上の戦闘行動能力の半径 並みの先進国なら4日で壊滅可能なたった一機でこのスペック] 用があるから保有しているいつものお家芸つまりオトリ ほんとうの武器は マッカーサーの仕掛け置いた3S政策のほぼ中央 バブル崩壊の自作自演と ピカチューで カモフラージュしてある 395 名前:月の裏をとらえる 1/2 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 19 26 ID v+REm6YG 電子信号の明滅 送られて来たファックスの文字が読めない 嘘ばかりつくのだ、いつも 情報の摩滅 マニュアルをめくると文字はまだ続いている 追い続ける広角レンズ 機械の手足 細い、マニピュレーターを刺して ブレイン・アナライズ 見えない … 地球へ帰りたい 飛び降りれば 垂直な壁にぶつかって肉塊に あたたかい雨に降りこめられた所と 乾いた大地に咳き込む所と ふぅぅ、と 溜息のような霧が巻いている所と 今にもコポコポと生まれて来るばかりの海底と 知らない世界 天国 396 名前:月の裏をとらえる 2/2 [sage] 投稿日:04/02/05(木) 19 27 ID v+REm6YG 記憶が呼びだされる 圧倒的な力 (Supercell ) 水滴が地上に接している所では 赤い砂の上で、白くなった人々の悲鳴が 聞こえない … 精神世界の感応者たち 記憶のすりかえと、交錯 目がチカチカするばかりだ、いつも 同じ顔の満月 捕らえきれない ありのままの姿なのに キュビスムの解釈から 立体が嘘つきではないことを知ってはいるが 反射も受け止めずに震える星 顔をそむけて (Swing By) 解析・解析・解析・分析・ 邂逅 不誠実なメッセージ 397 名前:舞台裏の少女 [] 投稿日:04/02/05(木) 22 18 ID qWB24jPM パパとママは 夜が来ると ぼくに秘密のなにかをはじめる けっしてそこには ぼくは寄せてもらえない ということはこういうことだ パパとママは ぼくを食べる相談をしている パパがなにかを食べながら ママが 早く欲しい と吠えるのを聞いた 町にサーカスがやって来るたび ぼくは毎回顔の違う少女に片想いする キラキラの洋服にキラキラのお化粧した 彼女は表舞台では いつも笑顔 舞台裏では 秘密の素顔 ライオン顔の団長や 猛獣使いの小男に殴られて パパとママの秘密をしっている 398 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/05(木) 23 21 ID hged116F 189 本人としてみたら、挑発してるつもりなんだよ。ほっといてやれ。 399 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/05(木) 23 23 ID PM6FcDVc 398 誤爆? 400 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/05(木) 23 23 ID PM6FcDVc 400ゲト(´ー`)y-~~~ 401 名前:自転車に乗って [] 投稿日:04/02/05(木) 23 30 ID HkbjCuiO 家の前のチャリの後輪はペチャンコになっていた 予約した店に髪をカットに行くために エアを入れる そこは1年前まで住んでいた家の近く 今朝は起きたら きみのすがたが部屋になかった その家の近くで、去年の冬 きみは涙を流して泣いていた ワタシガワルイノ、ゴメンナサイ、 ぼくはみっともなく裏返った声できみを慰めていた 走らせているチャリを漕ぐ足が重い 風は無風 ぼくは無傷 入れたばっかりの後輪のエアが抜けている エアが抜けている きみがいない いま ぼくは見慣れた家並の、曲がりくねった道を走っている そこは1年前まで住んでいた家の近く 昨夜見ていた、きみの笑顔が ふと不確かになった その角の先に自転車屋があったはず ぼくは左右の安全を確かめ、交差点をスイッと右折した 変わらない店構えで営業している スミマセン、 ガシャッ、シュルルー、キュッキュッ、ツー 滑らかにチューブが裏返っていく 402 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/05(木) 23 54 ID gHIW4V6f 〆切5分くらい前あげ 403 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 00 00 ID uKEeapGp じゃシメキリってことで 404 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 00 01 ID AySjmGXQ 了解。 405 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 00 19 ID Kr8stilj > 告知 < これより審査期間です。 審査〆切は、8日いっぱい。 みなさま宜しくおねがいします 406 名前:一覧 [sage] 投稿日:04/02/06(金) 00 36 ID OPN/hF6L 361 裏めしや 362-363 午後五時の荒天 364 キメラ 365 裏のない人 366 裏庭 367 裏道 368-369 語り部(ア) 370 農夫の歌 374-375 アナウンス 376 サヨナラ満塁ホームラン 377-678 裏 379-380 うら 381 ころコロこみックす 382-383 天狗ばなし 384 ザ・裏 385 うらぶれ 386-387 A Back and Lips 388 2ちゃんねる 389 僕 390-391 眠り 第壱夜 392-394 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 395-396 月の裏をとらえる 397 舞台裏の少女 401 自転車に乗って これであってる? 407 名前:ザ・裏 [sage] 投稿日:04/02/06(金) 00 54 ID UhCAcmPW 406 377-378 裏 ここだけ訂正ぽい? 408 名前:一覧 訂正 [sage] 投稿日:04/02/06(金) 01 23 ID OPN/hF6L うあ!本当だ、申し訳ない。。。 御指摘ありがとうございます。 407さん ---------- 406の一覧 訂正です。------------------------- 361 裏めしや 362-363 午後五時の荒天 364 キメラ 365 裏のない人 366 裏庭 367 裏道 368-369 語り部(ア) 370 農夫の歌 374-375 アナウンス 376 サヨナラ満塁ホームラン 377-378 裏 379-380 うら 381 ころコロこみックす 382-383 天狗ばなし 384 ザ・裏 385 うらぶれ 386-387 A Back and Lips 388 2ちゃんねる 389 僕 390-391 眠り 第壱夜 392-394 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 395-396 月の裏をとらえる 397 舞台裏の少女 401 自転車に乗って 409 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/06(金) 01 33 ID gzuQQakt 目次つくりお疲れ様~ 410 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 01 37 ID UhCAcmPW 366 裏庭 1点 382-383 天狗話 1点 397 舞台裏の少女 1点 以上です。 411 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 01 39 ID 6o98QU5t 410 1-3を熟読してください。 その票は無効とさせて頂きます。 412 名前:スマヌ ◆R3t3jx3pxY [sage] 投稿日:04/02/06(金) 01 45 ID UhCAcmPW 申し訳ない。もう一度よいでしょか。 382-383 天狗話 1点 397 舞台裏の少女 1点 これでいいのかな? 413 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 01 53 ID 6o98QU5t 412 コテハンはお持ちでしょうか? 414 名前:スマヌ ◆R3t3jx3pxY [sage] 投稿日:04/02/06(金) 01 57 ID UhCAcmPW ナルホド……締め切り前に宣言、なんですね。 次回参加させていただきます…残念。 415 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/06(金) 02 00 ID 6o98QU5t いえ、ルールには「締め切り前に宣言」と明記されていますが、厳守するほどではありませんし、 もしあなたがコテハンをお持ちなのでしたら、そちらを提示頂ければ審査員として参加しても一切問題ないかと。 416 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/06(金) 02 23 ID 0PhV0gGw indexお疲れsummer 417 名前:日々 [(・ω・ ≡ ・ω・)] 投稿日:04/02/06(金) 17 19 ID xCtCSlaM とけていく とけていく 何でもない日に とけていく 幸せだぁ。 418 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/07(土) 08 48 ID hPETKp5i 審査期間age 419 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/02/08(日) 02 11 ID j2hUd6DU 採点で~す よろしくお願いします。 3点 382 :天狗ばなし1 :04/02/03 17 37 ID qerKFAp5 話が面白い。ちょっと動きというかアクションもほしいかなぁ? 3点 385 :うらぶれ :04/02/04 13 06 ID ea8YPua+ 3点連発だけど、好きな詩にしあがってる~月見るロボットの作者かなぁ? 2点 384 :ザ・裏 :04/02/04 11 17 ID +u8xeX4t アイデア おもしろい! もっ一つひねりが…… 2点 386 :A Back and Lips 1/1 :04/02/05 00 00 ID eh6onIMa 詩らしい。しあがり。ちょと読みつらいか? 入ってくる舌(Sex)が相対か一般か?? 1点 361 :裏めしや :04/01/29 12 29 ID QSYlJw2o なんとなくおもしろい。ホームレスの語るわが人生の成功の縮図? 1点 367 :裏道 :04/02/01 04 38 ID F41mS7Yk 読みやすい。いい感じ。 1点 374 :アナウンス 1/2 :04/02/02 22 08 ID C1k/Gw5P おもしろい。なんか魅力がある…… 1点 377 :裏1/2 :04/02/03 03 19 ID NHFASL3W すい込まれるような青空。ひかる汗? ……とちかづいてくる 1点 390 :眠り 第壱夜 :04/02/05 17 32 ID ZP8GKHbn 出だし、期待させるが…… 1点 392 :『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 :04/02 題名が気に入った、とくに、裏書…… 1点 401 :自転車に乗って :04/02/05 23 30 ID HkbjCuiO 意味不定だが、読みやすい詩だ。 420 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/08(日) 22 25 ID kGGKW3rq 審査ひとりだけ!? 421 名前:ふにふに ◆./IUAzrbq6 [sage] 投稿日:04/02/08(日) 22 50 ID NEb6tnjw ではにぎやかしに一つ……。 2点 382さんの「天狗話」おじいちゃんセツナイ。 ざっと見ただけなのでひとつしか。ごめんなさいです。 422 名前:構造 ◆/Cej999/v6 [sage] 投稿日:04/02/08(日) 23 10 ID y9pIn6xr 392-394 正直、こういうのが評価されないのは可哀想ですね。 わかりにくかったのかな。 バックボーンはハナにつくけど 展開は相当好きですな。 3点 377-378 和みますので 2点 395-396 構成の妙すかね。あと表現。 1点 ではこんなところで 423 名前:ame ◆yUHAxrOw2c [sage] 投稿日:04/02/08(日) 23 25 ID X8aJ7Ii7 裏、ということで自分としては仕掛けがほしいかな、と勝手に思ってたところです。 3点は該当なしで。ゴメンナサイ 2点 392-394 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 手形を必要としたのは、時間の中での話。歴史の話としての。 見に行った彼は今の人であるからして、そのように現代語が紛れることについては問題なし。 設計は、-1から0、そして1への全ての接点が現在に繰るような仕掛けの糸。 ただし、その壮大な仕掛けの先は風刺としての現在へ向かうだけ、というのは惜しいかも。 そういう構成は上手いと思う。 1点 381 ころコロこみックす 素材としてとても好きな形のものなんですが、 いまいち見えてこなかったものがあるので不安。 401 自転車に乗って 第3連から最終連までの表現は読みやすくて意外と好きになれる。 それだけに第1連から第2連についてはもう少しなんとかなったかも、と思った。 424 名前:激辛正当派 ◆PmUYNHN29Q [sage] 投稿日:04/02/08(日) 23 28 ID YJeEGu0S 2点 392-394 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 1点 361 裏めしや 362-363 午後五時の荒天 365 裏のない人 384 ザ・裏 386-387 A Back and Lips コメントなくてすみませんです 425 名前:激辛正当派 ◆PmUYNHN29Q [sage] 投稿日:04/02/08(日) 23 29 ID YJeEGu0S あ、ひとつ書き忘れた。。。 1点 401「自転車に乗って」 以上です 426 名前:名前はいらない [sage] 投稿日:04/02/09(月) 01 14 ID APXy2Wk+ 審査締めきりってことで。。。 ところで、あの、失礼ですが、 421の方は、過去に審査員経験アリでしょうか。 私が存じ上げないだけだったらごめんなさい。 427 名前:名前はいらない [] 投稿日:04/02/09(月) 02 59 ID ZSIWd/w/ 集計です。 チャンプ 9点で 392-394 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 準チャンプ もし?? 421 :ふにふに ◆./IUAzrbq6 さんの投稿が有効なら 4点で、 382 :天狗ばなし1 ふにふにさんの採点無効とすると、 401「自転車に乗って」 @3 377-378 @3 386-387 A Back and Lips @3 384 ザ・裏 @3 382 :天狗ばなし1 :04/02/03 17 37 ID qerKFAp5 なんと、5作品が得点3 で準チャンプとなります。 チャンプは不動だとおもうので、 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 の作者さん、次のお題をお願いします。 集計の確認もよろしくお願いします。 428 名前:確認です [] 投稿日:04/02/09(月) 16 43 ID maFcqIGp 392-394 『真綿のような戦火のなか、三通の手形、その裏書き』 チャンプ作品不動ですが、8点のような…。 準チャンプ 385「うらぶれ」 も3点 他は合ってます。 準チャンプについてはふにふに氏の採点が有効かどうかになりますが チャンプは決定です。おめでとうございます! 429 名前:ふにふに ◆./IUAzrbq6 [sage] 投稿日:04/02/09(月) 18 13 ID zRZFmHzm 426 はうあ、ごめんなさい。過去に採点したことはありません。無効票にしてください。 ふらりとのぞいて書いてみただけでした。申し訳ニャい。 430 名前:れん@2ch ◆YltgToqNj6 [sage] 投稿日:04/02/09(月) 18 35 ID j/UVp/JF 評価および寸評いただいた方ありがとうございます。 そして審査していただいた皆様、まさかのチャンプありがとうです!!! 次回のお題、身近なものをといろいろ考えましたのですが、 衣食住の 『食』 でもしよろしければよろしくおねがいします。 ページ先頭へ トップページ
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355 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 21 36 ID XMlftmzh 鳥が鳴いている。 この鳴き声は、鶯だろうか。風流だね、うん。 太陽が黄色い。襖は閉まっていて、此処からじゃ見えないけれど。 つまりは、それだけ疲れきっているという事だ。 「結局、一睡もできなかった……」 呆然とつぶやく。 隣に目をやる。妹が俺の苦労なんてどこ吹く風で、すやすやと心地よさそうに眠っている。 その無防備な姿を見ていると、何だか悪戯してやりたい気持ちになった。 「ったく、コイツめ。俺の苦労も知らないで……」 つんつんと頬を突く。マシュマロのようにぷにぷにと柔らかい。吉野先輩の胸と、どちらが柔らかいのだろう。 ……徹夜のせいか、自分の思考が変な気がする うーん、と花音のむずがる声。 そう言えば、花音の寝顔を見るのなんていつ以来だろう。 いつもは、凛とした印象を受けさせる、きりりとした目元も閉じられていると普段の綺麗ではなく、可愛く見せるから不思議だ。 コイツも寝てる時は、年相応の女の子に見えるな。 はは、と思わず笑みがこぼれた。 もう一度頬を突いて、はたと気付いた。 今、俺の中にある気持ちは、間違いなく兄としてだけのもので、花音に対する仄暗い感情ではなかった。 何だ、俺にでも、兄、できるじゃないか。 相変わらず、眠気は全く取れないけれど何だか嬉しい気持ち。 「ん、んん、んー」 さすがに頬を突き過ぎたのか、花音が一際大きな声をあげた。 唐突に、むくりと体を起こすと、ごしごしと瞼をこする。 まだ半開きの眼で、辺りをきょろきょろ。あ、涎垂れてる。 花音が俺を見つけた。じーっと、俺を見つめてくる。 「花音?」 名前を呼ぶと、花音がにへらと笑った。 途端、がばっと俺に飛びついてきた。 柔らかい花音の体がこの上なくくっ付いてくる。 ドクンと大きく鼓動が跳ねた。 やばい、と心の奥で誰かが叫んだ。 「にいさんー」 俺の膝の上に乗り、首に腕をまわした花音が嬉しそうな顔をして見下ろしてきた。 目が合ったかと思うと、花音が自らの唇を俺の唇に押しつけてきた。 「――む!?」 余りにも突然で、けれど自然な動作に、俺はされるがままに唇を受け止めた。 胸の鼓動は最早、無視する事が出来ないほど激しい。 やっぱり俺は、花音の兄足りえなかった。 数秒の間をおいて、花音が唇を離した。 えへーと花音の無邪気な声。 そんな、普段からは想像もつかない花音の姿に俺の胸に、去来するのは消えたと思った仄暗い感情。 「にいさん、だいすきー」 甘えるような声。幼いころから人並み外れた才能を持った花音に甘えられたことなんて、もう何年振りだろうか。 あの頃はまだ、俺たちは幼かったけれど。 今は、お互い身も心も成長して。いつまでも、子供のままじゃいられない。 ――それでも、俺は。 花音は、今まで誰にも頼らず、この小さな体で色々な事に耐えてきた。 今度は俺が、兄として自分の欲望に耐えるだけ。それだけで俺たちは、辛うじてだが兄妹としてやっていける筈だ。 深呼吸して、昂ぶる気持ちを抑えた。 「ほら、花音、寝ぼけてないでしゃんとしろ」 花音の頭を軽く、ぺしぺし叩く 「んにゅー」 何度か繰り返していると、やがて花音の瞳に理性が宿った。 ばっちり視線が合う。 「へ……兄さん」 間の抜けた声で花音が呟いた。 全く、昨日から花音の知らないところを発見してばかりだな、と苦笑しながら、 「おはよう」 「おはよう、ございます……」 356 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 22 26 ID XMlftmzh 花音が周囲を見回す。右見て、左見て、上を見て、下を見て。 そして再び俺を見て、さーっと顔を青ざめさせた。 どうやら、現状把握出来たようだ。 「えーっと、悪いんだが、そろそろ降りてくれないか?」 「い……」 「い?」 「いやーーーーー!!」 花音の叫び声。 さっと、耳に指で線をしたが、少々間に合わず、キーンと耳鳴りがする。 全く、昨日から花音の珍しい所ばかり云々。 ごめんなさい、ごめんなさいとぺこぺこ頭を下げながら、花音が脱兎のごとく部屋から逃げていった。 その後姿を見送って、安堵する。 よかった、正気に戻った花音が、慌てて出ていてくれて。 寝ぼけた花音の過剰な接触に、俺のアソコは朝勃ちとは違う理由でテントを張っていた。 「馬鹿野郎が……」 俺の捨て台詞は、どうしてだろう、やけに寒々しかった。 † † † † † 朝のひと騒動から、三十分ほど。 自分と花音の分の布団を直して、自分の部屋で制服に着替えリビングに出ると、既に着替えた花音がエプロンをしてキッチンに立っていた。 俺に気付いた花音が、 「おはようございます……」 と気まずそうな顔をした。 ああ、おはよう、と俺も気まずい気持ちで本日2度目の朝の挨拶。 「丁度良かったです。朝御飯が、出来ましたよ」 「お、おお、そうか」 言われて、キッチンそばのダイニングへ向かうと、テーブルの上には味噌汁と焼き魚に卵焼きと白いご飯。 何とも花音らしいといえばその通りな、いつも通りの我が家の朝食。 妙に懐かしく感じるが、花音の朝ごはんを最後に食べてから、まだ3日しかたっていない。 それだけ、恋しかったとでも言うのだろうか。 馬鹿馬鹿しい、と鼻で笑う。 確かに花音の料理は美味いのは認める。 こんな料理、都にだって作れない。けれど、嬉しさで言えば昨日の都の朝ごはんの方が上だ。 少なくとも昨日の朝は、間違いなくそう思った。 そう、自分に言い聞かせて、テーブルの前に座る。 頂きます、と小さく手を合わせてもそもそとご飯を箸で口に運んだ。 じっと花音のこちらを窺う視線。 「どうした?寝ぐせでもついてるか?」 「いえ……あの、先ほどはすみませんでした」 「先ほど?ああ、あの事か。知らなかったよ、お前朝弱いんだな」 花音のあんな無防備な姿、今まで見たことなかった。 思い返してみれば、今まで、朝俺が起きた時にはいつも花音は既に起きていた。 俺は、普段は朝に弱くていつもギリギリまで寝ているから。 「いえ、朝に弱いというわけではなくてですね。ただ、ちょっと意識が確りするまでの間、私が私じゃないというか……」 ちゃんと、目を覚ましたら普通なんですよ!と花音。 「だから、それを朝に弱いって言うんだろ」 「あうう……不覚です」 さすがの完璧超人の花音にも、どうやら弱点はあったようだ。 それからは、居心地の悪そうな花音と二言、三言会話を交わしながら朝食を終え、お互い学校へ行く準備を済ませた。 「まだ、時間にはたっぷり余裕がありますが……どうしますか?」 「そうだな……」 357 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 23 46 ID XMlftmzh 花音手製の弁当のはいった弁当箱を受け取りながら、考える。 正直、さっきから眠気がピークだった。 家で少し寝てもいいが、学校の方が落ち着ける気がした。 ……昨日まで、学校にも安住の地はないとか思っていたくせにゲンキンなやつだ、と我ながら思う。 「いいや、今日は早目に学校に行くか」 「はい、分かりました」 花音は特に何も言わず、頷いた。 鞄を持って俺が家を出ると、当たり前のように花音もついてきた。 俺もそれに何も言及することなく、二人で学校までの道のりを歩く。 いくら、スタートとゴールが一緒とはいえ、年頃の兄妹が二人で揃ってご登校、なんてあんまりないんじゃなかろうか。 つくづく、自分たち兄弟が普通じゃない事を実感する。 まあ、今更何言ってるんだって感じではあるが。 「あらあら、二人とも今日は早いんですねー?」 後ろからかけられた、どこか間延びした声。 振り返ると、吉野先輩が立っていた。 「ああ、おはようございます」 「おはようございます」 俺はかるく、花音が深く頭を下げると、 「もー」 何故か、吉野先輩が鳴いた。 頭の両側に、人差し指を一本立てた両こぶしをくっ付けた何処かで見たようなポーズ。 吉野先輩の余りに唐突で奇怪な行為に、花音が、首をかしげている。 「そのポーズ……」 あ、花音、突っ込んじゃダメだろ。面倒だから。 「はい、牛さんです、もー」 吉野先輩が、音符を飛ばす。 思いだした。そう言えば、昨日の放課後も、そんなポーズしてた気がする。 「それ、マイブームなんスか……」 「はい、そろそろ私も持ちギャグ欲しいなと思いまして」 「何に使うんですか、何に」 「えー、分からないんですか飛鳥ちゃん」 吉野先輩が呆れたような顔をする。 どうでもいいから、さっさとその両手は下ろしてほしい。イライラするから。 「分かんないですね。……花音は分かるか?」 「私ですか?ええと、今そういうモノが流行しているとか?」 「流行って、持ちギャグがか?」 有りえねーな、と一笑に付す。 そんなモノが流行るようになったら、世も末だと思うのだ。 世界では、今も絶えぬ争いに苦しんでいる人もいるというのに。 「もう、兄妹揃って駄目駄目ですね。特に花音ちゃん!その秀才の頭はお飾りですか!」 「すみません……けれど、佐里先輩も秀才と呼ばれているじゃありませんか」 そう言えば、花音は吉野先輩を佐里先輩と呼んでいる。 理由は知らないが、何か特別な理由でもあるのだろうか。 まあ、大方花音は天ノ井の親戚一同をよく思っていないようだから、それ関連なのだろうとあたりはつけている。 「まあ、私は伊達に飛鳥ちゃんと、花音ちゃんのお姉ちゃんをやっているわけじゃないですからね」 えへんと、その豊満な胸を張る。 どこぞのマンガやアニメみたいに、ぷるんと胸が揺れる事はない。残念だ。 そうなのだ、この先輩、凄く阿呆っぽそうに見えて、というか、阿呆にしか見えないのだけど、花音に負けず劣らずの才媛なのだ。 しかも、俺たちが通う伊高の生徒会長なんてものもやっている。 しかし、普段の言動からかとてもそうは思えない。 358 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 25 09 ID XMlftmzh まあ、花音とはベクトルの違う天才ということだろうか。 ……俺の縁の深い知り合いの中では、都が一番馬鹿ってことか。 今はまだ寝ているのであろう、愛する恋人へ黙祷を捧げる。 凡人は凡人同士、仲睦まじくやっていこうな。 「それで、何で持ちギャグが欲しいと思ったかというとですねー」 あ、その話、まだ続けるんですか? 思うけれど、口には出さない。 過去の経験から言って、怒らせると一番怖いのは都でも、花音でもなく、この先輩だと思うのだ。 吉野先輩は俺の思考を読める筈もなく、 「それは、生徒会会議のためなのです!」 びしっと、人差し指を何故か俺に向けてさしてきた。 理由は聞かない。どうせ気分や、やってみたかった、程度の理由だろうから。 指をさされ、面倒くさそうな顔をしている俺の代わりに花音が、 「会議にですか?」 「そう、ウチの生徒会メンバーはみんな真面目ちゃんばっかりで、会議がすっごく退屈なんです。それで私が生徒会長として盛り上げなければと思いましてー」 うわ、すっげえくだらない理由。 この程度のオチのためにこんなに時間使ったのか、この先輩。 「それは何というか、他の生徒会メンバーの反応が目に浮かぶようですね」 きっと、凄いスベったんだろうなあ。 その時、生徒会室は氷点下を記録したんじゃなかろうか。死人が出てなければいいけど。 「ええ、皆笑ってくれていましたよー」 「それは、それは」 何と云うか、生徒会メンバーも苦労してるんだなあ。 全校生徒は、こんな生徒会長を選挙で選んだ事を彼らに謝るべきだと思う。 ちなみに、俺は吉野先輩の対抗馬に投票した。 ……あとで、吉野先輩にしつこく誰に投票したか聞かれて、プライバシーもお構いなく喋らされて、ミノタウロスモードの片鱗を垣間見た。 その時は、帰りに近くの商店街に唯一ある小洒落たケーキショップで滅茶苦茶奢らされて事なきを得た。 先輩の方が、小遣いは一杯持ってるくせに理不尽だ。 「中には、鼻血を出して倒れちゃった子達もいたんですよー」 「……それ、全員、男でしたか?」 「ええ、よくわかりますね、飛鳥ちゃん」 「まあ、彼らの気持ちも分からないでもないですから」 きっと彼らの頭の中では、吉野先輩の服が、布面積の異常に少ないビキニにでも脳内変換されたのだろう。 前言撤回、彼らは彼らで楽しくやっているようだ。 そんな取り留めもない話をしていると、校舎が見えてきた。 「それで二人とも、今日はどうしてこんなに早いんですか?」 と、思い出したように吉野先輩が首を傾げた。 俺と花音は顔を見合わせて、 「今日は朝早く目が覚めたので……それに天気もいいですしねー」 俺が取り繕うように答えると、 「天気……?」 吉野先輩が空を見上げて、クエスチョンマーク。 それもそのはず、空には雲が多いせいで春の暁光も弱弱しく、お世辞にもいい天気とは言えない。 それでも、徹夜の俺には陽の光で灰になってしまいそうな気分なのだが。 「そんな気分ってことで、今日は勘弁してください……」 徹夜の事を思い出すと、更に眠気がどっと押し寄せてきた。 吉野先輩は、大変なんですねー、と妙に訳知り顔で頷いている。 テンションが急に低くなった俺に見切りをつけて、吉野先輩は花音に対して構ってオーラをふりまき始めた。 「ねぇ、ねぇ、花音ちゃん」 「はい?」 花音は、いい子だから嫌な顔一つせず吉野先輩に応える。 二人の会話をBGM感覚で聞き流しながら、校門をくぐった。 背後の二人の会話は、二人とも良いとこのお嬢さんであるせいか、敬語で話していて何だか此処だけ異世界な感じ。 まあ、吉野先輩の敬語は少し崩れている気がしないでもないけど。 下駄箱で靴を履き替えて、階段の前で、一階に教室のある花音と別れて、二階で吉野先輩とも別れた。 まだ1~2人しかクラスメートが居ない自分の教室に入ると、挨拶もそこそこに自分の席に直行。 机の上に腕枕を作って、一番寝やすいポジションを探す。 ……よし、こんなもんだろう。それではおやすみなさい。 そこで、俺の意識は途切れる。 359 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 26 19 ID XMlftmzh † † † † † 教室に入ると、自分の席の後ろ、私の恋人である飛鳥が爆睡していた。 真木君の家に泊まった時は、いつも遅刻ギリギリなので今日は家に帰ったのだろう。 何故か飛鳥は、家に帰りたがらない人間だった。 それは私たちが出会った頃からそうで、理由を聞いてもはぐらかして教えてくれなかった。 自分の席に座り、飛鳥の髪をいじる。男の癖にすっごくさらさらな髪。 きっと、寝起きに爆発して必死に髪を梳く私の気持ちなんて分からないんだろう。 ちょっと、むっとして手に力が入ってしまう。うーんと飛鳥がうなった。 飛鳥の髪はさらさらだけど、妹の花音ちゃんの髪は飛鳥のそれ以上にさらさらだった。 一度触らせてもらった時は、あまりの手触りのよさに食べてしまいたくなった。 あれは、そう、まるで極上の絹糸のような手触り……極上の絹糸なんて触ったことないけれど。 まったく、あんな長い髪をしておいて、何で髪の毛が痛まないんだろう。 漆黒のカラスの濡れ羽の様な艶やかな花音ちゃんの髪は、私の憧れだった。 ――ったく、羨ましい兄妹め。 心の中で、二人に向かってあっかんべー。 当の本人の一人である、飛鳥は以前すやすやと爆睡中だ。 何というか、ZZZなんて漫画のような効果音が聞こえそうなくらい。 飛鳥は、お世辞にも真面目とは言えない生徒で居眠りは珍しくないのだけど、ここまで爆睡してるのは珍しい。 一昨日の夜の睡眠時間が短かった、昨日でさえもここまでではなかった。 ……昨日何かあったんだろうか? 「まさかね」 一瞬浮かんだ考えを、自ら一笑に付す。 それこそまさかだ。 まだ真木君は登校してきていないことからも、飛鳥が真木君の家には泊まっていない事は分かる。 また、飛鳥は友達が多い方じゃなく、それこそ一晩泊めてくれるような知り合いは、私と真木君。 幼馴染だと言っていた吉野先輩は……あんなお嬢様の家に泊めてください何て幾ら幼馴染でも無理があるだろう。 天ノ井家の飛鳥もお坊ちゃんなんだろうけれど、まあ、所謂没落貴族のようなものであるという事はこの町全体の共通認識だ。 この町はそれなりに田舎だから、何かあった場合の噂の広がりといったらそれはもう、恐ろしい。 それこそ、天ノ井家なんてこの町随一の歴史と、富と名声を持った家に関わる噂ならそれこそあっという間に町の隅に渡るまで広がってしまう。 かく言う私も、飛鳥に初めに興味を持った理由が、その噂なのだけれど。 ――天ノ井家は既に失墜し、今や分家の吉野家にその実権を握られている。 この噂は、既に噂の領域を超えた信憑性を持った、実話と言っても過言ではないだろう。 実際、天ノ井家が今まで支配していた、規模はそこまで大きくはないがコンツェルンと呼べるであろうグループの頂点には、 現在、吉野家の当主が立っていて、TV等でもたまに見かける。 そんな、今やこの町一番の金持ちの座を奪った吉野家の娘である、吉野佐里先輩の家に泊めてもらう何て勇気は飛鳥にはないだろう。 となると、やっぱり飛鳥は昨夜、自分の家に帰った事になる。 飛鳥の両親はもう亡くなっていて、家には飛鳥と花音ちゃんの二人きりだという事を聞いた事があった。 昨夜眠れないような何かがあったとすれば、それは。 「だから、ありえないってば」 飛鳥と花音ちゃん。二人は、兄妹で、その関係は近くて遠い。 私にお兄ちゃんや、弟は居ないけど、他の女友達の話によれば中には2~3日会話しない日が続く事さえ、ままあるということだ。 「喧嘩しちゃったのかな……」 けれど、飛鳥が喧嘩くらいで眠れなくなるほど悩むなんて考えられないし。 まあ、TVやら何やらで夜更かししたんだろうと、あたりをつける。 「一人でブツブツ喋って、さっきから変だよ、峰松さん……何かあった?」 その時ちょうど、真木君が登校してきて私を怪訝な目で眺めていた。 「ううん、別になんでもないよ」 あはは、と愛想笑い。 確かにさっきまでの自分は、傍から見れば挙動不審な変な人に他ならなかった。 「え、え~と、そういえば、告白したんでしょ、飛鳥に」 360 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 27 28 ID XMlftmzh 私の露骨な話題反らしに、真木君は特に気にした風もなく照れくさそうな顔をして、 「え、まさか、俺が花音ちゃんが好きなの気付いてた?」 「っていうか、あれで隠してたのって感じなんだけど……」 花音ちゃんを前にした真木君は、なんというか純朴少年みたいに顔を真っ赤にしてやることなす事が空回ってばかりなのだ。 「それにしても、好きな子に告白する前に、その子の家族に打ち明けるなんて大胆だね」 「はは、俺も昨日天ノ井に言った後気付いて、一晩中後悔と遅まきながらの羞恥に襲われたよ」 「それは、それは」 そんな会話をしていると、担任教師がだるそうな顔をして、教室に入ってきた。 相変わらず飛鳥は眠ったまま、いつもと同じ、今日が始まる。 † † † † † 飛鳥がそれから目を覚ましたのは、昼休みがちょうど始まり、教室がにぎやかになり始めた時刻だった。 朝から同じ格好で机に抱きついていた飛鳥は、がばりと体を起こすと、 「腹減った……」 と呟いた。 とりあえず、一発頭を叩いておく。 こっちは、朝からずっと真面目に授業を受けていたのに、と何となくムカついた。 「って、いきなり何すんだよ、都」 「ちょっとムカついたから」 「は?」 「それよりも、お昼ごはん!今日は花音ちゃんのお弁当なんでしょ?」 「あ、ああ、そうだけど……」 それならさ、と私はにやりと笑う。 「それなら、今日は花音ちゃんも呼んで屋上か中庭かどっかで一緒に食べようよっ」 私の突然と言えば突然な提案に、はあ?と飛鳥。 寝起きのせいか、ちょっと機嫌がよろしくないようだ。 「何で、学校でまで妹と一緒に飯食わなきゃならないんだよ」 恥ずいだろ、と飛鳥は続けた。 飛鳥は余り目立つ事を嫌い、周囲から浮くような行為を取らないように心掛けている節があった。 確かこのクラスで初めてのHRでの自己紹介の時に、小市民を目指しています、とか何とか言っていた気がする。 今現在の所、残念ながら上手くいっていないようだけど。 「飛鳥は真木君の恋を応援してあげないのん?」 「は?さっきからお前何が言いたいのか、さっぱり分かんないんだけど……っていうか、お前真木が花音のこと好きなの知ってたのか」 だったら言えよ、と飛鳥が非難がましい目で見てくる。 恐らく昨日、色々と面倒くさい目にあったのだろう。 「というか、あれだけ分かりやすい真木君の態度見てて気づかない方がどうかしてると思う」 「む、それは何か。俺が鈍いとでも言いたいのか?」 「うん」 「うおー、即答されるとイライラが倍、更に倍!」 飛鳥が頭を抱える素振りをした。 途端教室の注目を幾許か集めてしまう。 普段の飛鳥なら、絶対にやらないような行為。 「何か、今日テンション高いねー。授業中はずっと寝てたし、徹夜明け?」 聞くと、飛鳥はぎくりと体を震わせた。 そんなことないぞ、と何故か抑揚のない声。 ……分かりやすすぎ!と心の中で軽くつっこんで、 「ね、それより早く花音ちゃんを呼んで御飯食べようよ。真木君も、それでいいよね?」 さっきから少し離れたところで様子を窺うように立っていた真木君の方を向くと、 「お、おう!もちろん……」 と既に緊張気味。 「お前、気持ち悪いぞ。男が顔真っ赤にしてもじもじしてる所なんて需要ないぞ」 とあきれ顔で首を振る飛鳥。 そして、仕方ないなと呟いて、携帯電話を取り出してメールを打ち始めた。 361 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 29 01 ID XMlftmzh 「あれ、花音ちゃんってケータイ持ってたの?」 「ん、ああ。知らなかったのか?」 「まあ、私花音ちゃんと特別仲がいいってわけでもないし……イメージではそういう文明の利器とか使わないって感じだし」 「文明の利器って……お前な、花音にどんなイメージ持ってるんだ」 「だって、だって、時々着物のままで買い物しているところ見かけるんだもん!そんな女子高生、花音ちゃん以外に私見たことないよぅ」 着物なんて私は、今まで七五三の時くらいしか着たことないんじゃなかろうか。 浴衣なら、祭りの時に何度か着た事があるけれど、着付けが面倒だし、着くずれはウザいし、歩きにくいしで正直日常的に着ている人の気がしれない。 飛鳥も、まあそれはな、と頷いている。 「何度か洋服の方がよくないかとか両親が生きていた頃から言ってたんだけどな……なんとなく着物の方が落ち着くらしい」 「ごめん、その気持ち私には全然分かんないよぅ……」 「俺もだ」 私と飛鳥は二人して、うんうん頷きあう。 すると、 「馬鹿!お前ら、花音ちゃんの着物姿の神々しさも分からないなんて!本当に人間なのか!」 と真木君が私たちの会話に割り込んできた。 ウザいって、と飛鳥は真木君の主張を一蹴して、 「あーこいつ花音の事になると、いつもこんなんだったっけ?」 「うん、だから飛鳥はニブチンさんなんだよ」 あと、花音ちゃんもね、と付け加える。 普通なら真木君の態度に自分に向けられた行為を感じ取ってもよいものだろうが、花音ちゃんからはそんな感じは受けなかった。 「これで気付かないとか俺たち兄妹はどんだけ鈍いんだよ……」 飛鳥は地味にショックを受けながら、携帯電話をしまった。 そして鞄から青い巾着を取り出す。中には花音ちゃん手製の弁当箱が入っているのだろう。 「そっか、今日は花音ちゃん特製弁当の日か」 真木君がうらやましそうな眼をして言った。 飛鳥が、やらないぞ、と釘をさして立ち上がる。 「花音はわかりましたってさ。屋上に向かいますって言ってたけど……場所、屋上でよかったよな?」 「え、うん、オーケーオーケー。じゃ、早速、私たちも向かいますか」 私も自分の弁当箱を取り出す。自分で作ったのではなくて、私の母手作りの弁当。 真木君も、自分の鞄からパンの入った袋を取り出した。 真木君は一人暮らしで、昼はいつもパン食だ。 一人暮らしの理由は、直接聞いた事はないが、まあ、高校生で一人暮らしを始めるのはそこまで珍しい事でもないだろう。 今はもう少なくなっただろうけれど、中学を卒業して、高校にいかずに働き始める人だっているのだから。 † † † † † 屋上に行くと、既に花音ちゃんが手持無沙汰そうに立っていた。 私たちに気付くと、薄く笑みを浮かべて、ぺこりとお辞儀。 その動作は洗練されていて、何だか何処かのお姫様か、やんごとない血筋の人みたいな印象を受けた。 ……まったく、何から何まで“普通”の女子高生の枠を飛び越えた子だねぇ。 「峰松先輩、真木先輩、こんにちは。今日はお招きありがとうございます」 「こんにちわわー」 「こんにちは、花音ちゃん、今日はいい天気だね」 真木君は、やっぱり緊張している。 今日は結構曇ってるよ、空見て空。 「そうですね、このくらいが過ごしやすくて良いですね」 間違いを指摘するでもなく、さらりと受け流す花音ちゃん。 うう、やっぱり花音ちゃんはいい子だなー。 何処かピントのずれた会話をしている、真木君と花音ちゃんを見て飛鳥が呆れたような溜息をついて、給水塔の下からレジャーシートを引っ張りだした。 「なにそれ?」 「俺の昼寝用」 「うわー。いつも時々授業サボってどこ行ってるのかな、と思ってたけどそんなんまで用意してたんだー。このヤンキーめ」 「この程度で、ヤンキーって……それなら、昼間からゲームセンターに入り浸ったり、コンビニ前でうんこ座りしてたりする輩はチンピラか何かか」 そう言いながら飛鳥は、結構大きめのレジャーシートを広げて自分だけ座って、さっさと弁当箱を巾着袋から取り出して、そのまま、弁当箱を開けて、食べはじめた。 どうでもいいけど、飛鳥の抱いてる不良のイメージは古すぎると思う。 「ちょ、何でもう食べてるの!」 「は?だっへ、もう腹減っへるひ」 もぐもぐさせながら、飛鳥はきょとんとした顔。 362 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 30 32 ID XMlftmzh 「もーこう言うのは皆でいただきますしてからでしょー!?ほら、真木君と花音ちゃんも二人で和んでないで早くご飯食べよう?飛鳥が一人で食べ始めちゃったよ」 「お、おう」 「もう、兄さんったら、御行儀が悪いですよ」 私たち3人も飛鳥の用意したレジャーシートに飛鳥を気中に時計回りで、私、真木君、花音ちゃんの順に座って弁当箱を各々広げた。 真木君だけは、パン袋だけれど。 花音ちゃんと飛鳥の弁当の中身は全く同じで、やっぱり花音ちゃん手製のモノなんだな、と改めて実感。 飛鳥はとてもおいしそうに食べていて、昨日私が作った弁当はそんな風に食べてくれなかったのに、と少しムッとした。 とにかく飛鳥は食べるのに夢中で、真木君は話題を振ることなくパンをちびちび食べながら、時折花音ちゃんに話題を振ろうとして断念しているし、 花音ちゃんは静かに行儀よく弁当を口に運んでいる。 4人の間に沈黙がずっしりと圧し掛かっていて、しかしそんな風に感じているのは私と真木君くらいだった。 この兄妹は、何てニブチンなんだと改めて思い知らされる。 「あー、そうだ花音ちゃんってケータイ持ってたんだっけ」 「?……はい、持っていますが」 何とかあたりさわりのない話題を、と考えて花音ちゃんに尋ねると、ちゃんと口の中のモノを咀嚼、飲み込んで答えてくれた。 「え、えーとさ、じゃあ、ケータイの番号とアドレス交換しない?もちろん、真木君も」 「え、お、俺も!?」 突然の事に驚いたのか、真木君が泡を食ったような顔をした。 当然でしょ、と真木君にだけ聞こえるよう小さくつぶやく。 花音ちゃんは、きょとんとした顔をして私の言葉を咀嚼、そして凛とした大きな瞳でじっと私の目を見つめてきた。 上質の黒曜石をはめ込んだような瞳に見つめられて、私の方が年上なのに気圧されてしまう。 ……何か、怒らせちゃったかな? 良く分からないけれど、とにかく謝ろうと口を開こうとしたところで、 「分かりました」 そう言って花音ちゃんが、携帯電話をとりだした。 固まってしまっている私たちを怪訝そうに、どうかなさいましたか?と小首を傾げている。 「あ、ああ、そうだね。じゃあ赤外線で送ってもらえるかな?」 見たところ花音ちゃんの携帯電話はそんなに古いモノじゃないし今時赤外線機能の付いていない携帯電話なんてそうは存在しないだろう。 けれど、やっぱりイメージとしてこういうものに疎そうな感がしたので、私が代わりにやろうか?と携帯電話をいじり始めた花音ちゃんに申し出ると、 「いいえ、大丈夫です。赤外線機能の使い方くらいなら分かりますから」 と、携帯電話を差し出してきた。 見ると、画面は確かに赤外線機能に切り替わっている。 私も慌てて赤外線機能を呼びだし、花音ちゃんの携帯電話に近付けた。 ピロリロリン、と間抜けな音を出して私と花音ちゃんのデータが交換された。 「ありがとー。ほら、真木君も早く!」 「あ、ああ……良いかな、花音ちゃん?」 「ええ、勿論」 真木君が慌てたように携帯電話を取り出して、ピロリロリン。 花音ちゃんの電話番号とアドレスの入った自分の携帯電話を、感極まった表情で眺める真木君。 「よかったな、真木。花音のアドレス知ってる奴なんて、俺と吉野先輩ぐらいしか居なかったぞ」 もう昼ご飯を食べ終えて満足した飛鳥が、にひひと下品に笑った。 「まあ、花音にメールしても半日位返信来ないこともあるし、あんまり意味ない気もするけどな」 「そんなことありません。今日だってきちんと、迅速に返信したじゃないですか」 花音ちゃんが不満げな顔をする。 花音ちゃんは飛鳥に対してだけは、傍目から見ても分かるくらいには表情豊かに接している。 私と花音ちゃんが初めて会ってから、もう2年目なのだけれど私に対しては余り、というか全く心を開いてくれていない気配があった。 寧ろ時々――たとえば先ほどにもあったように――嫌われているのではないか、と思ってしまうこともあるくらいだった。 実際、飛鳥と二人でいるときに花音ちゃんに会った時なんかは、睨むような目で見られたこともあった。 ――飛鳥は花音ちゃんにとってたった一人の家族なのだから、そのたった一人の家族を盗られた様な気がしているのかな? 363 弓張月5 ◆1zfTn.eh/1Y3 sage 2010/01/18(月) 00 31 26 ID XMlftmzh 花音ちゃんは、ぱっと見では分からないけれど、兄である飛鳥の事を凄く大切に思っているように感じる。 二年間曲がりなりにも飛鳥の恋人として、花音ちゃんと接してきた私が言うのだから間違いはないだろう。 けれど、私もお兄ちゃんが欲しいと思ったこともあるし、それくらいはおかしい事じゃないだろうと思う。 寧ろ家族の事を大切に思うという事は、とても素敵な事だと思う。 とにかく、恋人のたった一人の家族とくらい、いい関係を築きたいと私は思っているのだ。 ふと、飛鳥の方を見ると、飛鳥の口の周りにご飯粒が付いていた。 私は、ほぼ反射的に、すっと手を伸ばした。 「もう、兄さん。口の周りに――」 「飛鳥、口の周り、ご飯粒ついてる」 「え、あ、マジで?」 飛鳥の口の周りに付いたご飯粒を取って、何とはなしにパクリとそれを口に運んだ。 「ばっ!都、お前、何、恥ずいことやってるんだよ」 瞬間飛鳥が、かあっと顔を赤くした。 「にゃはは、今更、これくらいで赤くなるなんて飛鳥は初心だねん」 「ったく、お前はもう少し、人の目ってのを意識してだな……」 いつものように、飛鳥と軽く言い合っていると、ぞくりと寒気。 その元をたどると、花音ちゃんが表情の抜けおちた顔で私をじっと見つめていた。 その無機質な視線にあてられて、ひ、と思わず小さく悲鳴が漏れてしまった。 花音ちゃんは無表情だってけれど、その視線はまるで刀のように鋭く怪しい光を湛えていた。 もしかしたら、私は何か思い違いをしているのかもしれない。 重大な、それこそ、命にだって関わりかねない大きな思い違いを。
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ファイナルファンタジー タクティクス A2 封穴のグリモア[A6FJN0Jxx] ゲームID・マスターコード等 ★PAR用ゲームコード:A6FJ ★PAR用ゲームID:CCB201F8 コード ●コンティニュー再開時 「中断セーブ」しなくても中断データ消えない 0210A680 E1A00000 ※コンティニュー再開時、「中断セーブ」しないで電源を切った場合 及び「タイトルへ戻る」を選択した場合、ともに効果があります。 ●プレイ時間0 00 00 0212C028 00000000 ●所持金MAX(99999999ギル) 0212E63C 05F5E0FF ●所持金変動するとMAX(99999999ギル) 020BB048 EA000001 ●クランポイントMAX(9999CP) 1212E640 0000270F ●クランポイント変動するとMAX(9999CP) 020BB008 E1A0C002 ●アビリティポイント変動するとMASTER 120B9CFE 0000E383 120B9D02 0000E201 ※変動したアビリティのみMAX(MASTER)になります。 ●クランスキルすべて99 0212E644 63636363 ●クランアビリティ全開 2212E757 000000F0 0212E758 FFFFFFFF 0212E75C FFFFFFFF ※ジョブも追加されます。 ●ロウいちらん全開 1212E73E 0000FFE0 0212E740 FFFFFFFF 0212E744 0FFFFFFF ●クランメモ全開 0212E6A4 FFFFFFF0 1212E6A8 000003FF 0212E6B4 FFFFFFF0 0212E6B8 FFFFFFFF 0212E6BC FFFFFFFF 0212E6C0 FFFFFFFF 0212E6C4 7FFFFFFF ※ジョブも追加されます。 ●アイテム&おたから所持数変動すると所持数99個 020EE8A8 E3A00063 020EE8BC E3A00063 ●武器防具等 ・1個目 0212DC1C xxyy0### ・2個目 0212DC20 xxyy0### ・3個目 0212DC24 xxyy0### ・4個目 0212DC28 xxyy0### ・5個目 0212DC2C xxyy0### ~以降アドレスに+4hしてください。 ### アイテムリスト参照 xx(所持個数)=00(0個)~63(99個) yy(装備個数)=00(0個)~63(99個) ●[SELECT]ボタンで全武器防具等99個所持(装備数0) 94000130 FFFB0000 D5000000 63000001 C0000000 000000EF D6000000 0212DC1C D4000000 00000001 D2000000 00000000 D0000000 00000000 94000130 FFFB0000 D5000000 630000FC C0000000 0000009F D6000000 0212DFDC D4000000 00000001 D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●アイテム ・1個目 0212E27C xxyy0### ・2個目 0212E280 xxyy0### ・3個目 0212E284 xxyy0### ・4個目 0212E288 xxyy0### ・5個目 0212E28C xxyy0### ~以降アドレスに+4hしてください。 ### アイテムリスト参照 xx(所持個数)=00(0個)~63(99個) yy(装備個数)=00(0個)~63(99個) ●[SELECT]ボタンで全アイテム99個所持(装備数0) 94000130 FFFB0000 D5000000 6300019C C0000000 00000012 D6000000 0212E27C D4000000 00000001 D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●おたから ・1個目 0212E2D8 xx000$$$ ・2個目 0212E2DC xx000$$$ ・3個目 0212E2E0 xx000$$$ ・4個目 0212E2E4 xx000$$$ ・5個目 0212E2E8 xx000$$$ ~以降アドレスに+4hしてください。 $$$ おたからリスト参照 xx(所持個数)=00(0個)~63(99個) ●[SELECT]ボタンでおたから99個所持 94000130 FFFB0000 D5000000 630001AF C0000000 000000CB D6000000 0212E2D8 D4000000 00000001 D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●オークション必ず勝てる 92294DE8 00000401 22294DEA 00000023 D0000000 00000000 ●オークションレコード全項目100 0212E9CC 00640064 0212E9D0 00640064 0212E9D4 00640064 0212E9D8 00640064 0212E9DC 00640064 ●全エリアチャンプ 1212E81E 00002020 0212E820 20202020 0212E824 20202020 0212E828 20202020 0212E82C 20202020 2212E830 00000020 ステータス ●主人公 ・MVPトロフィー全開 2212C074 00000014 ・レベル99 2212C07A 00000063 ・EXP99 2212C07B 00000063 ・スピードMAX 2212C07C 000000FF ・HP999/999 0212C094 03E703E7 ・MP999/999 0212C098 03E703E7 ・武器攻撃&防御999 0212C09C 270F270F ・魔法の強さ&防御999 0212C0A0 270F270F ・装備(武器) 1212C0A4 00000### ・装備(盾) 1212C0A6 00000### ・装備(頭防具) 1212C0A8 00000### ・装備(身体防具) 1212C0AA 00000### ・装備(その他) 1212C0AC 00000### ### アイテムリスト参照 ・[SELECT]ボタンでアビリティ全開(★MASTER) 94000130 FFFB0000 D5000000 000000FF C0000000 00000036 D8000000 0212C0B2 D2000000 00000000 D0000000 00000000 94000130 FFFB0000 D5000000 000000FF C0000000 0000008D D8000000 0212C0EB D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●2人目 ・MVPトロフィー全開 2212C190 00000014 ・レベル99 2212C196 00000063 ・EXP99 2212C197 00000063 ・スピードMAX 2212C198 000000FF ・HP999/999 0212C1B0 03E703E7 ・MP999/999 0212C1B4 03E703E7 ・武器攻撃&防御999 0212C1B8 270F270F ・魔法の強さ&防御999 0212C1BC 270F270F ・装備(武器) 1212C1C0 00000### ・装備(盾) 1212C1C2 00000### ・装備(頭防具) 1212C1C4 00000### ・装備(身体防具) 1212C1C6 00000### ・装備(その他) 1212C1C8 00000### ### アイテムリスト参照 ・[SELECT]ボタンでアビリティ全開(★MASTER) 94000130 FFFB0000 D5000000 000000FF C0000000 00000036 D8000000 0212C1CE D2000000 00000000 D0000000 00000000 94000130 FFFB0000 D5000000 000000FF C0000000 0000008D D8000000 0212C207 D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●3人目 ・MVPトロフィー全開 2212C2AC 00000014 ・レベル99 2212C2B2 00000063 ・EXP99 2212C2B3 00000063 ・スピードMAX 2212C2B4 000000FF ・HP999/999 0212C2CC 03E703E7 ・MP999/999 0212C2D0 03E703E7 ・武器攻撃&防御999 0212C2D4 270F270F ・魔法の強さ&防御999 0212C2D8 270F270F ・装備(武器) 1212C2DC 00000### ・装備(盾) 1212C2DE 00000### ・装備(頭防具) 1212C2E0 00000### ・装備(身体防具) 1212C2E2 00000### ・装備(その他) 1212C2E4 00000### ### アイテムリスト参照 ・[SELECT]ボタンでアビリティ全開(★MASTER) 94000130 FFFB0000 D5000000 000000FF C0000000 00000036 D8000000 0212C2EA D2000000 00000000 D0000000 00000000 94000130 FFFB0000 D5000000 000000FF C0000000 0000008D D8000000 0212C323 D2000000 00000000 D0000000 00000000 ☆4人目以降は各コードアドレスに+11Chしてください。 ●[SELECT]ボタンで全キャラMVPトロフィー全開 94000130 FFFB0000 C0000000 00000017 2212C074 00000014 DC000000 0000011C D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●[SELECT]ボタンで全キャラステータスMAX 94000130 FFFB0000 C0000000 00000017 2212C07C 000000FF 0212C094 03E703E7 0212C098 03E703E7 0212C09C 270F270F 0212C0A0 270F270F DC000000 0000011C D2000000 00000000 D0000000 00000000 ※スピードMAX、HP999/999、MP999/999、 武器攻撃&防御999、魔法の強さ&防御999 ●[SELECT]ボタンで全キャラアビリティ全開(★MASTER) 94000130 FFFB0000 C0000000 00000036 2212C0B2 000000FF 2212C1CE 000000FF 2212C2EA 000000FF 2212C406 000000FF 2212C522 000000FF 2212C63E 000000FF 2212C75A 000000FF 2212C876 000000FF 2212C992 000000FF 2212CAAE 000000FF 2212CBCA 000000FF 2212CCE6 000000FF 2212CE02 000000FF 2212CF1E 000000FF 2212D03A 000000FF 2212D156 000000FF 2212D272 000000FF 2212D38E 000000FF 2212D4AA 000000FF 2212D5C6 000000FF 2212D6E2 000000FF 2212D7FE 000000FF 2212D91A 000000FF 2212DA36 000000FF DC000000 00000001 D2000000 00000000 D0000000 00000000 94000130 FFFB0000 C0000000 0000008D 2212C0EB 000000FF 2212C207 000000FF 2212C323 000000FF 2212C43F 000000FF 2212C55B 000000FF 2212C677 000000FF 2212C793 000000FF 2212C8AF 000000FF 2212C9CB 000000FF 2212CAE7 000000FF 2212CC03 000000FF 2212CD1F 000000FF 2212CE3B 000000FF 2212CF57 000000FF 2212D073 000000FF 2212D18F 000000FF 2212D2AB 000000FF 2212D3C7 000000FF 2212D4E3 000000FF 2212D5FF 000000FF 2212D71B 000000FF 2212D837 000000FF 2212D953 000000FF 2212DA6F 000000FF DC000000 00000001 D2000000 00000000 D0000000 00000000 戦闘関連 ●[START+↑]ボタンで味方HPMP回復 94000130 FFB70000 C0000000 00000017 DA000000 0212C096 D7000000 0212C094 DC000000 0000011A D2000000 00000000 D0000000 00000000 94000130 FFB70000 C0000000 00000017 DA000000 0212C09A D7000000 0212C098 DC000000 0000011A D2000000 00000000 D0000000 00000000 ●[START+↓]ボタンで敵一撃で倒せる 94000130 FF770000 1212AF28 00000001 1212B044 00000000 1212B160 00000000 1212B27C 00000000 1212B398 00000000 1212B4B4 00000000 D0000000 00000000 ※敵6体まで有効。GUESTユニットがいる場合、そのGUESTもHP0になります。 ●スマッシュゲージ満タン 020BA138 E3A0001E 020BA13C E8BD8038 ※実際にたまった数値に関係なくゲージが満タン表示になります。 神獣召喚も可能ですが、敵味方全員に効果がでます。 ●味方全ユニット・スマッシュゲージ満タン 6212C060 00000000 B212C060 00000000 C0000000 00000005 2000000C 0000001E DC000000 00000048 D2000000 00000000 ※神獣召喚に必要なアクセサリを装備していないと満タン表示になりません。 味方に戦闘不能になった者が出た場合、一部効果が切れる場合があります。 ●味方全ユニット神獣再度召喚可能 6212C060 00000000 B212C060 00000000 C0000000 00000005 10000014 00000000 DC000000 00000048 D2000000 00000000 ※スマッシュゲージが満タンになっていないと召喚できません。 ●味方全ユニット・スマッシュゲージ満タン&神獣再度召喚可能 6212C060 00000000 B212C060 00000000 C0000000 00000005 2000000C 0000001E 10000014 00000000 DC000000 00000048 D2000000 00000000 ※神獣召喚に必要なアクセサリを装備していないと満タン表示になりません。 味方に戦闘不能になった者が出た場合、一部効果が切れる場合があります。 ●[L]ボタンを押しながら行動を終了すると再度行動可能 02068904 E1C011B2 94000130 FDFF0000 02068904 E3A01000 D0000000 00000000 ※行動終了時(待機する向きを決定する時)[L]ボタンを押しながら 決定すると再度行動可能になり、これを繰り返すことで何度も 行動可能になります。決定時[L]ボタンを押さなければ、次の キャラの行動ターンへ移行します。 ●[START+→]ボタンで味方ユニット状態(ステータス変化)変更 94000130 FFE70000 C0000000 00000017 0212C088 xxxxxxxx 0212C08C yyyyyyyy 1212C090 00000zzz DC000000 0000011C D2000000 00000000 D0000000 00000000 xxxxxxxx,yyyyyyyy,zzz 状態リスト参照 適用したい状態の数値の合計を入力してください。 ●[START+→]ボタンで味方ユニット+ステータス変化 94000130 FFE70000 C0000000 00000017 0212C088 064581F0 0212C08C F7DE9554 1212C090 000001BF DC000000 0000011C D2000000 00000000 D0000000 00000000 ※プラス効果のあるステータス変化のみ有効になります。 ●[START+←]ボタンで味方ユニットステータス変化リセット 94000130 FFD70000 C0000000 00000017 0212C088 00000000 0212C08C 00000000 1212C090 00000000 DC000000 0000011C D2000000 00000000 D0000000 00000000 ※すべてのステータス変化がリセットされます。 ●敵の状態(ステータス変化)固定 6212C060 00000000 C0000000 00000005 0212AF1C xxxxxxxx 0212AF20 yyyyyyyy 1212AF24 00000zzz DC000000 0000011C D2000000 00000000 ※敵6体まで有効。GUESTユニットがいる場合、そのGUESTにも効果が出ます。 xxxxxxxx,yyyyyyyy,zzz 状態リスト参照 適用したい状態の数値の合計を入力してください。 ●敵常に状態異常 6212C060 00000000 C0000000 00000005 0212AF1C 00023000 0212AF20 00014AAA 1212AF24 00000000 DC000000 0000011C D2000000 00000000 ※敵6体まで有効。GUESTユニットがいる場合、そのGUESTにも効果が出ます。 ●ロウなし 2212E8E6 00000000 ※ロウは表示されますが、違反しても何も起こりません。 ●ロウ変更 2212E8E6 000000xx xx ロウリスト参照 ※表示上のロウは変更されません。 ●常に「いどうアップ」状態 020B7DC8 E28700xx 020B7DCC E20070FF ※クランアビリティ選択時に「いどうアップ」を選択しないでください。 xxには00~FFの任意の値を入力してください。 値が大きいほど移動可能範囲が広がります。 あまり大きい値を入力すると不具合が出る可能性があります。 ●常に「APアップ」状態 020F9274 EA000004 020F928C E3A050xx ※クランアビリティ選択時に「APアップ」を選択しないでください。 xx(獲得倍数)=08(2倍),10(3倍),18(4倍),20(5倍),28(6倍), 30(7倍),38(8倍),40(9倍),48(10倍),50(11倍),58(12倍),60(13倍) ●常に「EXPアップ」状態 020F944C E3A080xx ※クランアビリティ選択時に「EXPアップ」を選択しないでください。 xx(戦闘後獲得EXPに+される倍数)=00(1倍)~FF(256倍) ●常に「ギルアップ」状態 020F9248 EA00000x ※クランアビリティ選択時に「ギルアップ」を選択しないでください。 x(獲得倍数)=0(1.1倍),2(1.2倍),4(1.3倍) ●戦闘後獲得経験値99 120FD46A 0000E3A0 ●戦闘後獲得経験値加算値+999 120F9492 0000E1A0 ●戦闘後獲得経験値加算値変更 120F9492 0000E1A0 020F94A8 000xxxxx xxxxx=0(+0)~1869F(+99999) ※+999を超える値はすべて+999で表示されますが 実際には指定した値が経験値に加算されます。 最大値を指定すると、Lv.99になります。 【アイテムリスト】 (刃武器) 001 ジャックナイフ 002 クリスナイフ 003 ククリ 004 カルド 005 スクラマサクス 006 ロンデルダガー 007 ジャンビーヤ 008 ソードブレイカー 009 オリハルコン 00A チンクエディア 00B ゾーリンシェイプ 00C ティプタップトウ 00D トンベリアン 00E ダガー 00F ブロードソード 010 シルバーソード 011 バスターソード 012 バーグラーソード 013 ゲイルソード 014 ブラッドソード 015 レストアエッジ 016 ウィータノヴァ 017 オニオンソード 018 チリジラデン 019 ショートソード 01A アサルトブレード 01B シャドウブレード 01C サンブレード 01D アトモスブレード 01E フレイムタン 01F エアブレード 020 アイスブランド 021 クィゴンブレード 022 オグンブレード 023 パールブレード 024 パライバブレード 025 ヴィナスブレード 026 マテリアブレード 027 レンゲンサイブ 028 アダマンブレード 029 赤のエーヴュア 02A 青のエーヴュア 02B アイアンブレード 02C ブルーサーベル 02D シャムシール 02E アクアサーベル 02F ハルペー 030 マンガニーズ 031 ライトサーベル 032 タルワール 033 ソルセイバー 034 ディフェンダー 035 アポカリプス 036 ライオンハート 037 ラグナロク 038 ローエングリン 039 セイブザクイーン 03A アークエッジ 03B エクスカリバー 03C ロングソード 03D エクスカリバー2 03E ナグラロク 03F セクエンス 040 スティンガー 041 エストック 042 フルーレ 043 スカーレット 044 フランベルジェ 045 銀のレイピア 046 ジンフリッサ 047 ジュワユース 048 メイジマッシャー 049 コリシェマルド 04A グピティー・アガ 04B マドゥ 04C エペプリズム 04D バトルレイピア 04E ファイナルレター 04F ディアボリーク 050 ファムファタル 051 エイリアルホール 052 バロング 053 ザンクブレス 054 ダグリオーム 055 古代の剣 056 ダイヤの剣 057 オブリージュ 058 ハードブレイカー 059 オーガニクス 05A ツヴァイハンダー 05B トウルヌソル 05C ヴィジランティ 05D 剣聖剣 05E ルーアブレイカー 05F サムソンの剣 060 ファルシオン 061 プレデターエッジ 062 ストリボーグ 063 エルシードの剣 064 岩獣の剣 065 クレイモアー 066 ヴァジュラ 067 ロンパイア 068 エストレアエッジ 069 くない 06A 村雨 06B 阿修羅 06C 備前長船 06D 徒桜 06E 虎鉄 06F 菊一文字 070 天のむら雲 071 ノサダ 072 正宗 073 斬魔刀 074 百式正宗 075 墨炎 076 羅月伝武 077 ジャベリン 078 ラバースピア 079 ゲイボルグ 07A アイスランス 07B パルチザン 07C ランスオブカイン 07D トライデント 07E 竜のヒゲ 07F ショートスピア 0FC ブロードアックス 0FD スラッシャー 0FE ハンマーヘッド 0FF フランシスカ 100 グレートアックス 101 ゴールドアックス (打撃武器) 080 ロッド 081 火輪のロッド 082 雷鳴のロッド 083 凍雪のロッド 084 地竜のロッド 085 フォースロッド 086 フレイムロッド 087 トールロッド 088 チルロッド 089 星くずのロッド 08A リリスロッド 08B プリンセスガード 08C ボムのうで 08D ヘレティック 08E ホワイトスタッフ 08F 守りの杖 090 裁きの杖 091 いやしの杖 092 浄化の杖 093 祝福の杖 094 蛇の杖 095 宮水の杖 096 ザクロの杖 097 マーベラスチアー 098 ニルヴァーナ 099 賢者の杖 09A トンファー 09B サイプレスパイル 09C バトルバンブー 09D メルツフレイル 09E エアリアル 09F 鉄棒 0A0 エスタムバトン 0A1 ゴクウの棒 0A2 ファナティック 0A3 象牙の棒 0A4 飛天南星 0A5 クジラのヒゲ 0A6 メタルナックル 0A7 ライジングサン 0A8 ポイズンナックル 0A9 眠りの爪 0AA カイザーナックル 0AB ネコの爪 0AC サバイバー 0AD ホワイトファング 0AE ゴッドハンド 0AF タイガーファング 0B0 デスクロー 0B1 レザーナックル 0B2 グレスバースト 0B3 マジックハンド (投射武器) 0B4 ロングボウ 0B5 カーボンボウ 0B6 スパイクボウ 0B7 ネイルボウ 0B8 銀の弓 0B9 アルテミスの弓 0BA 与一の弓 0BB ターゲットボウ 0BC ペルセウスの弓 0BD ショートボウ 0BE クレセントウィル 0BF モルボウ 0C0 風斬りの弓 0C1 狩人の弓 0C2 クレインクイン 0C3 ツインボウ 0C4 ハンティングボウ 0C5 エルブンボウ 0C6 ハデスの弓 0C7 ニケの弓 0C8 マスターボウ 0C9 マックスの魔弓 0CA セブンスヘブン 0CB コンポジットボウ 0CC マルドゥーク 0CD ガストラフェテス 0CE アルバレスト 0CF アイアット銃 0D0 銀玉鉄砲 0D1 ライアット銃 0D2 カオスライフル 0D3 ロストガン 0D4 ピースメーカー 0D5 ガイアット銃 0D6 ロングバレル 0D7 アウトサイダー 0D8 ゴーク29式 0E7 ハンドカノン 0E8 オムニス砲 0E9 ディクルム式 0EA マキシマムレイ 0EB リガートゥル砲 0EC ブレウィス式 0ED ソリッドバズーカ 0EE グアング砲 0EF ドロマエオ 0F0 ロケットパンチ 0F1 X 0F2 X 0F3 X 0F4 X 0F5 X 0F6 X 0F7 X 0F8 X 0F9 X 0FA X 0FB X 110 スペードの4 111 ハートの8 112 クラブのQ 113 ダイヤのJ 114 ハートのK 115 スペードのA 116 クラブの2 117 ダイヤの6 118 ジョーカー (打撃武器) 0D9 子鬼のベル 0DA ガラスの鐘 0DB 突撃ラッパ 0DC 法螺貝 0DD ハーディガーディ 0DE ブラックケーナ 0DF サテュロスの笛 0E0 妖精のハープ 0E1 青葉の笛 0E2 ヒーリングベル 0E3 光のリュート 0E4 流氷のヴィオール 0E5 天陽のテオルボ 0E6 ラミアの竪琴 102 フレイル 103 ウォーハンマー 104 スレッジハンマー 105 ミョルニル 106 バトルメイス 107 エナジーメイス 108 ドルイドメイス 109 賢者の錫杖 10A モーニングスター 10B マンドラゴラの根 10C 生命の錫杖 10D 紅蓮のメイス 10E サソリのしっぽ 10F メイスオブゼウス 119 バトルディクト 11A 魔道指南書 11B ウルタンアノズ 11C アーナスグリフ 11D エナビア日記 11E ウイヴェール 11F 邪解禁書 120 エダローア聖典 (盾) 121 ブロンズシールド 122 ラウンドシールド 123 プラチナシールド 124 アイスシールド 125 フレイムシールド 126 イージスの盾 127 源氏の盾 128 聖騎士の盾 129 四神の盾 12A チョコボシールド 12B 血ぬられた盾 12C レバリーシールド (頭防具) 12D ブロンズヘルム 12E アイアンヘルム 12F バルビュータ 130 クロスヘルム 131 プラチナヘルム 132 ダテアヘルム 133 ハンヤペルソナ 134 巨人の兜 135 源氏の兜 136 カチューシャ 137 バレッタ 138 リボン 139 羽根つき帽子 13A グリーンベレー 13B サークレット 13C ねじりはちまき 13D 三角帽子 13E 金の髪飾り 13F シーフの帽子 140 スタイルビット 141 黒の帽子 142 白の帽子 143 黄金のスカラー (身体防具) 144 リネンキュラッサ 145 ブロンズアーマー 146 アイアンアーマー 147 プレートメイル 148 ゴールドアーマー 149 ダイアアーマー 14A プラチナアーマー 14B キャラビニエール 14C リフレクトメイル 14D ドラゴンメイル 14E マクシミリアン 14F 源氏の鎧 150 アダマンアーマー 151 マテリアアーマー 152 ペイトレール 153 革の服 154 チェインプレート 155 アダマンベスト 156 サバイバルベスト 157 ブリガンダイン 158 柔術道着 159 力だすき 15A 大地の衣 15B ミネルバビスチェ 15C 忍びの衣 15D 黒装束 15E ウィガール 15F ミラージュベスト 160 ラバーコンシャス 161 ボーンプレート 162 ジャッジコート 163 最後の服 164 ブリントカレア 165 ガルミアカレア 166 テンプルクロス 167 麻のローブ 168 シルクのローブ 169 魔道士のローブ 16A カメレオンローブ 16B 火群の衣 16C 神鳴の衣 16D 風花の衣 16E 白のローブ 16F 黒のローブ 170 光のローブ 171 ローブオブロード 172 銀糸のコート 173 赤のローブ 174 賢者のローブ 175 魔法のローブ 176 死神の衣 (アクセサリ) 177 バトルブーツ 178 スパイクシューズ 179 ダッシュシューズ 17A 赤い靴 17B フェザーブーツ 17C ゲルミナスブーツ 17D ガルミアの靴 17E 妖精の靴 17F ガイウスカリグ 180 忍び足袋 181 アームガード 182 盗賊の小手 183 ブレイサー 184 源氏の小手 185 ガントレット 186 獣骨の手甲 187 まもりの指輪 188 魔法のリング 189 天使の指輪 18A タマムシ守り 18B ルビーピアス 18C 星天の腕輪 18D ミンウの宝玉 18E 金のアミュレット 18F 魔人のペンダント 190 背徳のコサージュ 191 密告者の腕輪 192 統制者のヘアピン 193 暗黒のベロア 194 霊帝のブローチ 195 不浄王のカフス 196 死天使のピアス 197 輪廻王のリング 198 断罪のチョーカー 199 霊樹のフリンジ 19A 聖天使の羽飾り 19B 戒律王の指輪 (アイテム) 19C ポーション 19D ハイポーション 19E エクスポーション 19F エーテル 1A0 エリクサー 1A1 フェニックスの尾 1A2 やまびこ草 1A3 乙女のキッス 1A4 金の針 1A5 聖水 1A6 毒消し 1A7 目薬 1A8 ばんそうこう 1A9 万能薬 1AA あぶらとり紙 1AB サビのカタマリ 1AC エウレカ結晶 1AD グリモアの破片 1AE ダークマター 【おたからリスト】 (魔石) 1AF タルコフの水晶 1B0 知のセフィル 1B1 力のセフィル 1B2 心のセフィル 1B3 土竜晶 1B4 風神晶 1B5 水蛇晶 1B6 火鳥晶 1B7 氷虎晶 1B8 雷鬼晶 1B9 聖翼晶 1BA 闇王晶 1BB 土の石 1BC 風の石 1BD 水の石 1BE 火の石 1BF 氷の石 1C0 雷の石 1C1 聖の石 1C2 闇の石 1C3 風の刻印 1C4 地の刻印 1C5 炎の刻印 1C6 水の刻印 1C7 雷の刻印 1C8 氷の刻印 1C9 小アルカナ 1CA 大アルカナ (金属) 1CB アダマンタイト 1CC ゾディアック鉱石 1CD リーズストーン 1CE ミスリル銀 1CF アダマン合金 1D0 クルセイド合金 1D1 ミシディア合金 1D2 ヒヒイロカネ 1D3 ダマスカス 1D4 オリハルク 1D5 アインヘリエル 1D6 タマガネ 1D7 ラド亜鉛 1D8 グレクオ亜鉛 1D9 ザージス錫 1DA クルゼル黄銅 1DB ディプレーウ青銅 1DC 白金 1DD ジケット鉛 1DE 銃身支歯車 1DF 大時計の歯車 1E0 金の器 1E1 愛のフライパン 1E2 呪われたコイン 1E3 千本針 1E4 薬針 1E5 円月輪 (皮素材) 1E6 タイガーの毛皮 1E7 チョコボの皮 1E8 ネズミの皮 1E9 ヘビの皮 1EA 地竜の皮 1EB 良質の皮 1EC なめし革 1ED 巨人のなめし革 1EE 地竜のなめし革 1EF 高級なめし革 1F0 オオカミの毛皮 1F1 クァールの毛皮 1F2 良質の毛皮 1F3 高級皮 1F4 ウサギの毛皮 1F5 ウサギのしっぽ 1F6 ネズミのしっぽ 1F7 ピンクのしっぽ 1F8 コカトリスの皮 1F9 バットのしっぽ 1FA 魔獣のなめし革 (骨) 1FB 動物の骨 1FC ドラゴンの骨 1FD 丈夫な骨 1FE 修羅の骨 1FF ボムの抜け殻 200 かがみのウロコ 201 皇帝のウロコ 202 まだらのウロコ 203 ラミアのウロコ 204 抜け殻 205 鉄の殻 206 竜の殻 207 虫の甲殻 208 攻竜の殻 209 とがった角 20A 獣の角 20B 大蛇の牙 20C 吸血の牙 20D まがった牙 20E 大牙 20F 飛竜の牙 210 くるくるドリル 211 アルラウドリル 212 ジングパール 213 ジングパールの殻 214 星々のかけら 215 闘気のかけら 216 サンゴのかけら 217 亀の甲羅 218 千年亀の甲羅 219 万年亀の甲羅 21A 骨くず 21B サレコウベ (植物) 21C 月武の花 21D テラクオの花 21E 羅伝の花 21F モルバルの花 220 マリオムの花 221 プリマの花 222 リュコジウムの花 223 カロスの花 224 ヘデキウムの花 225 忘れ草 226 思い出し草 227 ひそひ草 228 ネジネジ草 229 音笛草 22A 黄金タケ 22B 魔力の果実 22C 体力の果実 22D あまい果実 22E サボテンの実 22F あやしいキノコ 230 小さなキノコ 231 さけびの実 232 オニオン 233 ヘデキウムの花粉 234 オーレアの花粉 235 ファランの花粉 236 モルボルのつる 237 丈夫なつる 238 うずをまいたつる 239 しあわせの四葉 23A コケダマ 23B タマノモ 23C トマトのヘタ 23D ギザギザの葉っぱ (木材) 23E ストラディバリ 23F ストラ樹 240 ディバリ樹 241 ゲッコーの木材 242 ダンブカの木材 243 良質の木材 244 コットンフルー材 245 ウォルトの木材 246 ケンパス樹 247 アガチス樹 248 メープの木材 249 レッドギープス樹 24A スプルースの木材 24B カリンの木材 24C バーチ樹 24D ローズフィトン樹 24E マーベニー樹 24F グルナットの木材 250 エンジュの木材 251 クラジツゲ 252 昇竜の木片 253 神木 (液体) 254 緑色の液体 255 黄色の液体 256 銀色の液体 257 くさい液 258 とてもくさい液 259 エーテル水 25A 英雄の薬 25B 聖戦の薬 25C いやしの水 25D ナゾの液体 25E 真水 25F ガルクスアクア 260 邪心の生血 261 モルボル酒 262 透明な粘液 263 あまい粘液 264 にがい粘液 265 にごった粘液 (布材) 266 黒の糸 267 白の糸 268 よごれたウール 269 ウール 26A 良質のウール 26B クモの糸 26C 古い亜麻糸 26D ふつうの絹糸 26E 上質の絹糸 26F やわらかコットン 270 ビロード 271 虹色の糸 272 アーリマンの羽 273 妖精の羽 274 小さな羽 275 大きな羽根 276 大鳥の羽根 277 風切りの羽根 278 悪魔の羽根 279 コウモリの翼 27A 飛竜の翼 【ロウリスト】 00 なし 01 炎属性禁止 02 冷気属性禁止 03 雷属性禁止 04 三属性禁止 05 属性しばり 06 全属性禁止 07 刃物武器禁止 08 突きさし武器禁止 09 なぐり武器禁止 0A 飛び道具禁止 0B 雑貨武器禁止 0C 動物愛護 0D ヒュム愛護 0E バンガ愛護 0F ン・モゥ愛護 10 ヴィエラ愛護 11 モーグリ愛護 12 シーク愛護 13 グリア愛護 14 男性愛護 15 女性愛護 16 異性愛護 17 弱者愛護 18 たたかう禁止 19 アイテム禁止 1A 神獣召喚禁止 1B スペシャル禁止 1C ヒュムA禁止 1D バンガA禁止 1E ン・モゥA禁止 1F ヴィエラA禁止 20 モーグリA禁止 21 シークA禁止 22 グリアA禁止 23 隣接行動禁止 24 遠隔行動禁止 25 範囲行動禁止 26 自己行動禁止 27 全体行動禁止 28 HP回復禁止 29 MP回復禁止 2A まねっこ禁止 2B ノックバック禁止 2C 背後攻撃禁止 2D ミス禁止 2E 悪性ST禁止 2F 良性ST禁止 30 全ST変化禁止 31 ST変化されるの禁止 32 盗まれ禁止 33 Rアビリティ禁止 34 ダメージ20↓禁止 35 ダメージ50↓禁止 36 ダメージ100↓禁止 37 ダメージ20↑禁止 38 ダメージ50↑禁止 39 ダメージ100↑禁止 3A HP20↓禁止 3B HP100↓禁止 3C HP200↓禁止 3D MP消費20↑禁止 3E MP消費禁止 3F MP消費しばり 40 スマッシュ60↑禁止 41 仲良し禁止 42 ひとりぼっち禁止 43 絶対移動1 44 絶対移動3 45 必ず行動 46 水進入禁止 47 高さ10↑禁止 【状態リスト】 (xxxxxxxx=) 00000000 なし 00000001 消滅 00000002 戦闘不能 00000004 HP0 00000008 瀕死 00000010 クイック 00000020 リレイズ 00000040 リジェネ 00000080 アストラ 00000100 リフレク 00000200 石化 00000400 バーサク 00000800 カエル 00001000 毒 00002000 くらやみ 00004000 透明 00008000 まもる! 00010000 ためる! 00020000 かいひゼロ 00040000 必殺アップ! 00080000 かばう 00100000 かばわれる 00200000 死の宣告 00400000 ヘイスト 00800000 スロウ 01000000 ストップ 02000000 シェル 04000000 プロテス 08000000 眠り 10000000 ちんもく 20000000 混乱 40000000 チャーム 80000000 ドンムブ (yyyyyyyy=) 00000000 なし 00000001 ドンアク 00000002 もの忘れ 00000004 パーフェクトガード 00000008 スピードブレイク 00000010 攻撃アップ! 00000020 攻撃ダウン 00000040 魔攻撃アップ! 00000080 魔攻撃ダウン 00000100 防御アップ! 00000200 防御ダウン 00000400 魔防御アップ! 00000800 魔防御ダウン 00001000 あやつる 00002000 あやつられ 00004000 オイル 00008000 耐性アップ! 00010000 耐性ダウン 00020000 砲撃アップ! 00040000 砲回数アップ! 00080000 砲範囲アップ! 00100000 砲命中アップ! 00200000 ロックオン 00400000 命中アップ! 00800000 いどうアップ! 01000000 魔砲チャージ! 02000000 かいひアップ! 04000000 カウンター 08000000 ねらってる 10000000 毒無効 20000000 石化無効 40000000 ちんもく無効 80000000 くらやみ無効 (zzz=) 000 なし 001 カエル無効 002 オイル無効 004 チャーム無効 008 戦闘不能無効 010 ダメージ無効 020 遠距離無効 040 いどう無効 080 ステータス延長 100 ヌーキアチャージ 名前 コメント すべてのコメントを見る はじめまして。突然のコメント。失礼しました。 -- (http //www.burberryofficialoutlets.com/バーバリー-コート-c-3.html) 2012-11-14 18 24 47
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(前編から) 二十日が過ぎた。二人は綿密な調査を進め、ほぼ完璧なデータを集め終えた。 この森の群れの数は大小合わせて五十四群で、総個体数は三千二百五十頭だった。 一つの群れは平均して十二家族、六十頭の個体からなっていた。 そこから、一家族辺りの縄張りが二百平方メートルという数字が導かれた。わずか十四メートル四方だ。 十四メートルといえば、ゆっくりの歩度でも五十歩かそこらだ。 五十歩四方の中で、居住するだけではなく、運動、捕食、水浴び、排泄などすべてをこなしており、明らかに過密状態だった。 「ここはれいむのゆっくりプレイスだよ! ゆっくりしないでむこうへいってね!」 「ゆぐぐぐ、いくところなんかないよ! まりさはここでゆっくりするからね!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛ーっ!」 「ゆっぐりいいぃ!」 そんなやり取りがたびたび聞かれた。外周網を周回したヤマベは、網に絡まって干からびた死体や、網のすぐ外で小枝に刺さっている死体を見つけた。 逃げようとして無理やり抜けようとした成体ゆっくりや、我慢できなくなって域外へ出て事故にあった赤ゆっくりのようだった。 三千二百五十頭のうち、成体ゆっくりは千三百六十頭。うち二十五パーセント、すなわち四百頭以上が妊娠していた。 冬になる前に食糧不足に至るのは明白だった。 主任とヤマベは写真入りの調査結果を地主と役所に持参し、最終的な処置の契約を結んだ。 その日、二人はいつもの軽トラではなく、マイクロバスで森にやってきた。バスにはアルバイトの学生二十人を乗せていた。 助手席のヤマベに、後席の学生たちの会話が聞こえてきた。 「いくら多いったって、相手はたかがゆっくりでしょう? こんなに人数いるんですかね」 「君、ブリーフィングのときに何を聞いてたんだ。今回は三千二百頭だっていうんだぞ」 「はあ……三千二百ねえ」 「実感ないって顔だな。いいか、普通のゆっくりは大体重さ六キロある。ペットボトル四本分ぐらいだ。 それが三千二百頭、半分は子供だとしても、一千頭以上いるんだぞ。重さは全部でどれぐらいだ?」 「……六千キロとか、一万キロになるんですかね」 「十トンだよ。自家用車十台分だよ。それだけの量の餡子やらクリームやらを前にしても、まだたかがゆっくりなんて言えるか?」 「いや、なんかわかってきたっす……」 経験者と、初心者なのだろう。ヤマベは椅子にもたれて目を閉じた。 森に到着すると、広めの場所を選んで仕込み用のネットとスコップを降ろし、『イベント』の準備を始めようとした。 すると主任が言った。 「ヤマベ、ヤマベ」 「はい、なんですか」 「おまえ、これ行ってこい」 そう言って手渡されたのは、いくつかの座標を書いたメモ用紙だった。ヤマベは驚いて目を見張った。 「私が行っていいんですか?」 「俺が行くわけにもいかない。おまえ一人で学生は仕切れないだろう。行け」 主任が背を向ける。ヤマベは頭を下げ、森のなかへ駆け出した。 だが、すぐに頭をかきながら戻ってきて、登山用の巨大なザックを担いでまた走っていった。 彼女が見えなくなると、主任は学生たちに声をかけた。 「よーし、集まって。作業の説明をするよ。 一班は柱設営だ。『ステージ』を囲むようにぐるりと柱を立てる。 二班はネット掛けね。柱の上に、『ステージ』を覆うネットをかける。このネットは縁のところ以外は絶対触らないで。 三班はデコイの穴掘り。そこらへんを掘って飴玉を埋めていって。 さっきうまいことを言ってた子がいたが、大体ペットボトル四本が入る感じで」 「三千頭分も掘るんですか!?」 「いやいや、デコイ、囮だからね。二十分の一ぐらいでいいよ。百五十箇所だ。 柱立てたら残りのみんなも参加するからね。 あー、長靴? 長靴はあとでいいです。ひとまずバスの横置いといて。 じゃあ僕が外周にライン引きしていきまーす。 大体あの辺までになると思うんで、チャキチャキ働いてください。では、はい」 「うーっす」「いっちょやるかー」 森の中に入ったヤマベは、メモにある座標へ向かった。地形はこの二十日で頭に叩き込んである。 目当ての場所には倒木に隠れた斜めの穴があり、中をのぞくと、薄暗い穴の中でごそごそ動く黒い帽子が見えた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっ? ゆっくりしていってね!」 声を掛けると、ゆっくりまりさを初めとする一家が現れた。続いて、小さな赤まりさと赤ちぇん。 「あ……」とヤマベはつぶやく。 それは、以前会ったことのある、あの母ちぇんを亡くした一家だった。 「ゆ、ヤマベさんなんだぜ! キツネさんはゆっくりいなくなった?」 「ええ、どうかな」 「まりさはもうそろそろ旅に行きたいよ! おちびたちのごはんも減っちゃったよ!」 ゆーゆーと子供たちが母まりさに頬をすり合わせている。ヤマベは胸が痛くなった。 だが、これも仕事なのだ。――ギュッと歯をかみ締めると、ヤマベはザックを降ろして母まりさを抱き上げた。 「ゆゆっ? なにするんだぜ?」 「いいところへ連れてってあげるね」 「いいところ? ゆっくりできるならいってもいいぜ!」 得意げな顔をするまりさを、ヤマベはザックに入れた。まりさはまだよくわかっていない様子で言う。 「おちびのちぇんが一番さみしがりなんだぜ。ゆっくりいれてあげてね!」 ヤマベはザックの口を縛り、それを背負って立ち上がった。 足もとで小さな赤ゆっくりたちが、ゆーゆー、おかーしゃんまっちぇ、と飛んでいる。 その子たちに、ヤマベはひとことだけ言い捨てた。 「隠れてな」 「ゆっ……?」 子供たちが戸惑って立ち止まる。このままついて行こうか、お留守番しようかと迷っている風だ。 ゆゆっ? と背中からくぐもった声が聞こえた。ぼすんぼすん、と背当てのパッドが叩かれ、叫び声がした。 「ゆっくりまって! ゆっくりとまってね! おちびたちをわすれてるよ!」 「ごめん、まりさ」 ヤマベは硬い顔で言った。 その後三箇所を回って、計四匹のゆっくりでザックを一杯にすると、森の外周へ向かい、網をまたいでさらに百メートルほど離れた。 そして、あらかじめ準備してあったカンバス地のコンテナを地面の上に組み立てた。 風呂桶ほどの大きさになる、蓋付きの容器だ。複数のゆっくりを一時的に害獣から守ることができる。 そこにザックからドサドサと四頭を流し込んだ。 「ゆぶっ!」「ゆべえ!」 つぶれながら落下したゆっくりたちが、すぐに起き上がってゆうゆうと不安そうに周りを見る。 成体のまりさとれいむちぇんが一匹ずつと、やや小さくておとなしそうなアリスが一匹だ。 まりさがヤマベを見上げ、心配そうに叫んだ。 「ゆううう、まりさのおちびたちがいないよ! ゆっくりさがしてね! さびしがってるよ!」 「ごめん」 ヤマベはもう一度言って、ザックを片手にそこを離れた。ゆううう! ゆううう! と閉じ込められたゆっくりたちの悲鳴が追ってきた。 それから二時間ほど後、森の反対の端では、主任たちが準備を終えて『イベント』を始めていた。 「あまあま大会だよー」 「ゆっくりできるよー」 「ゆっくりしていってねー、ゆっくりしていってねー」 スーパーの売り子のように一本調子で叫びながら、間隔の広い横隊で森を進んでいく。 「あまあま」の声に反応して、次々にゆっくりたちが飛び出してきた。 「ゆうっ、あまあま!?」 「あまあまたべたいよ!」 「しゅにんさん、あまあまをくれるんだね! わかるよー!」 顔見知りのゆっくりを見かけると、主任が声を掛ける。 「ゆっくりだね、ちぇん。今日も元気かーい」 「ゆっくりしているよ!」 「あまあまをたくさんたくさん配るから、仲間みんなに声を掛けてねー。一人残らずだよ」 「わかったよー! ゆっくり、ゆっくりーっ!」 ちぇんを始めとする元気のある若いゆっくりたちが、我先にと駆けていく。 やがて森の奥から、赤や黒、緑や金色の色彩が、数え切れないほどぴょんぴょんと跳ねてきた。 無邪気な目をきらきらと輝やかせ、ハァハァと口を開けている。あまあま以前に、皆が食べ物に飢えていたのだ。 そんなゆっくりたちに向かって、人間はメガホンで叫ぶ。 「あまあま大会は森の入り口でおこないまーす」 「ご家族すべて連れてこないと参加できませーん。ゆっくりしていってね!」 「あまあまたいかい!?」 「ゆうううぅ、すごくゆっくりできそうな言葉だよぉ……」 「まりさ、おちびちゃんを乗せてね! れいむはおかあさんをひっぱってくるよ!」 さっさと走り出すもの、妄想が浮かんでその場でうっとりする者、一族郎党を引き連れてくるもの。 山のようなゆっくりたちが、ざわざわ、ごそごそ、もぞもぞ、ぴょんぴょんと湧き出して、流れる川のように森の入り口へ移動していく。 それと入れ違いに人間は森の奥まで進み、外周の網までたどり着くと、また叫びながら引き返し始めた。 「あまあま大会、まもなくはじまりまーす」 「一度きりだよー、来ないとなくなっちゃうよー」 「ほっぺのおちるあまあまだよー」 「ゆんぐぐぐ、やっぱりれいむもいくよー!」 「おかーしゃーん!」「おいちぇかないれー!」 跳ねる親、泣きながら追う子。 「むきゅぅぅ、ぱちぇはもうむりよ。ありすは先に行って……ぜぇぜぇ」 「ひとり占めなんてとかいはじゃないわ。おしてあげるからゆっくりがんばってね!」 助け合うカップルもいる。 置いていかれたものは、残らず抱き上げて聞き取りした。 「ゆっくりしていってね! もう周りにはゆっくりは残っていないかい?」 「みょーん、残ってないみょーん! みんないっちゃったみょーん!」 ざわざわと流れていったゆっくりたちは、やがて渋滞に入ってしまう。 森を囲む網が近づいて、一箇所しかない出口に殺到しているためだ。 「ゆっくりして、ゆっくりしてね!」 「おさないで、おさないでよ!」 「ゆぐぐぐぐ! でいぶつぶれるううう」 「ゆんやあああ! おかーしゃーん、おとーさーん!」 出口のところは駅の改札口のように何列かのゲートにされて、五人のアルバイトが両手の計数機をものすごい勢いでカシャカシャと連打している。 「ゆううう、やっとぬけたわあああ!」 「ゆっくりつぶれちゃったよ!」 「ゆっくり、ゆっくり!」「あまあま! あまあま!」 ゲートを抜けたゆっくりたちが、広い地面に出て勢いよくぴょんぴょんと跳ねていくが、じきに不思議そうに立ち止まる。 森から出たそこも、緑の網で囲まれた行き止まりの土地なのだ。ただし森ほどの広さはなくて、差し渡しは三十メートルほどだ。 そして頭上にも網が張ってある。こちらは外周の網とは違ってキラキラ光る細い網だ。 「ゆゆっ、あまあまがないよ?」 「おにーさん、はやくあまあまをもってきてね!」 「まりさはおなかがすいたよ! ぷくうううう!」 そんな風に膨れて威嚇するゆっくりたちも、後から後から流れ込んでくる仲間たちに押されて、どんどん奥へと運ばれていった。 「あまあま、あまあま!」 「ゆっくりたべるよーっ!」 森から流れ出し、広場に駆け込んでいく、紅白黒緑のざわざわした流れ。 横隊に加わっていた主任がそれを追い越して、爪先立ちでゆっくりを押したり蹴飛ばしたりしながら、一足先に戻ってきた。 「ほい、どいてね。はい、ごめんよ。おーいみんな、カウントどう?」 「僕は三百二十ですね」 「二百八十でーす」 「三百八十一」 「そこ、流れ悪いね。なんだあれ、あいつがふんぞり返ってガーガー言ってるからだ。誰かあのでいぶをステージに放りこんじゃって!」 「うぃーす」 「君君、足速そうだね。もうひとっ走り、外周回ってきてくれる? カウントは僕がやるから」 「えーっ、走るんですかあ?」 「あとで色つけとくからさ」 「わかりましたー」 アルバイトの一人が駆け出して行き、二十分ほどしてから横隊の連中と戻ってきた。 「主任さーん、パーフェクツです」 「穴とかちゃんと見た? テープで目印してあったでしょ?」 「見ましたー。ちゃんと声かけましたよ。残ってたのはアレしてきちゃったけど、いいですよね」 「いいけど、そんなに残ってた?」 「いえ、なんか年取ったれいむと、うつむいてブツブツ言うありすが一匹だけ」 「それはおちんちん取れちゃったやつだよ。ほっといても……」 「ギャー、セクハラ発言キター!」 「おい、真面目にやるよ?」 そうこうしているうちに横隊がカウボーイのように、最後尾のゆっくりを網のうちに追い込み、ゲートを閉じた。 いまや、三十メートル四方の広くもない広場が、ゆっくりでぎゅうぎゅう詰めになって足の踏み場もなくなった。 ゆっくり、ゆっくり、という期待の声と苛立ちの声、泣き声や悲鳴が重なり合って開場前の遊園地のように騒々しい。 カウンターと記録をつき合わせて、ほぼ誤差がないことを確かめてから、主任はハンドマイクを取った。 ガピッ! とハウリングの音をさせてから、盛大に叫び始める。 「えー、それではゆっくりのみなさん。お待たせしました。これよりあまあま大会を開始します」 「ゆっくりーーーー!!!」 「ルールの説明です。この会場には、たくさんのあまあまが地面の下に埋めてあります。 はい、そこのまりささん! あなた、そう帽子のつやのいいあなた。 ちょっとあなたの真下を掘ってもらえませんか」 「ゆゆっ? まりさが掘るのぜ? ざーくざーく……ゆゆゆう、飴さんをみつけたよ!」 「という具合です。みなさん張り切って地面を掘ってください。 なお、飴の数はみなさんよりきもち少なめにしてあるので、掘るのが遅れるとなくなってしまいます。 それでは用意、スタート!」 主任はそう言うと、陸上競技用のピストルをパァン! と鳴らした。 司会進行はメリハリもクソもないグダグダだが、道具の準備だけはいい男だった。 「ゆーっ!」 ゆっくりたちが一斉に足元を掘り始める。 最初は穴掘りの得意なまりさたちががんばっていたが、実際にあちこちから、 「ゆっくりー! あまあまみつけたよー!」 「ちゅぱちゅぱ、ちゅぱちゅぱ! おいしいよ、とってもゆっくりできるよ!」 と叫び声が上がると、もたもたしていたれいむもありすもぱちゅりーさえも、必死に掘るようになった。 ほとんどのゆっくりが穴堀りに熱中し始めたのを確かめると、主任はハイドマイクを置いて学生たちに合図した。 「おーい、配置配置。ちゃんと長靴はいた? いいか、焦っちゃだめだからな。焦るなよ!」 二十人の学生が、網で囲まれた穴掘りステージの周囲に陣取る。 三千数百のゆっくりが穴を掘りまくるフィールドでは、砂と土がザクザクと巻き上げられ、もうもうと砂煙が上がっている。 「穴、どう? おーい、そっちは穴どう!?」 「もうちょっとですかねー」 「全部入らなくてもいい、全体入らなくっていいよ! 土、土かけるから!」 「じゃあオッケーです!」 「オッケー? 一班オッケー?」 「オッケー!」 「二班もオッケーでーす!」 「よーし、いいかな? いいかな? じゃあいくぞー、それっ!」 全体と十分アイコンタクトしてから、主任は頭上の網を支える柱を引き倒した。二十人の学生がそれに続いた。 ふわり……と白く薄い網がゆっくりたちの頭上に落ちかかる。 間髪要れずに人間は網の周囲にペグを打ち、一匹たりとも逃さないように固定していく。 すると、穴に半ば埋まって土を放り出していたゆっくりたちが、遅まきながら気づいて顔を上げた。 「ゆゆっ?」 「なにかのってきたよ?」 「しろいふわふわさんだよ! きれいだね!」 「これはゆっくりできるもの? ぺーろぺーろ……ゆぎひゃあああああ!?」 絶叫が上がり始めた。網をなめようとした舌が、すっぱりと切断されたのだ。 「主任さん! これは一体……」 「“カスミアミ”だよ!」 主任が力強い声でそう言った。 カスミアミ――それは絹糸で作られた鳥猟用の網だ。 ほとんど目に見えないほど細いわりに、絹を使っているので強度が高い。 昔は日本の多くの山野で使われていたが、鳥類保護の観点から使用が禁止された。 主任たちの会社ではそれをゆっくり用に使用しているのだった。 鳥が絡まったら抜けられない、細い強靭な網がゆっくりに対して使われるとどうなるか――。 「ゆぎゃっ、ゆぎゃああああ!?」 「切れるううう、まりさのおぼうしが切れちゃううう!?」 「ゆぴゃああ、いちゃいっ、いちゃいよおぉぉ!」 「あびゅっぱ!」 「ひぱれ!?」 「てぷ」 スッ――れいむの額がめくれる。 スッスッ――まりさの頬が削がれる。 サクッ サクサクッ――親の頭にのっていた赤ゆっくりたちが、一文字や十文字に割れる。 バラバラ、ボトボトと地面に落ちる。皮が、あんこが、頭飾りが。たちまち悲鳴と糖臭が立ち込める。 饅頭肌を持つゆっくりにとって、「糸」は大敵だ。くくられたりひっかったりすると、それだけで肌が切れてしまう。 強靭な絹糸の網は、まるで空気そのものが刃物になったかのように、いともあっさりとゆっくりを切り裂いていった。 広場の外周では、アルバイトたちが浮き輪の空気抜きのように網ごとゆっくりを押しつぶしていく。 圧迫されたゆっくりが裂け、弾け、網の合間からトコロテンのようにヌリヌリとこぼれだす。 「ゆぎゃあああ、ぢにだくないい!」 「ゆっ、ゆゆっ? なんなの、どうしたの?」 「ゆっくり! ゆっくりおしえてね!」 それに引き換え、内側のゆっくりたちは何が起こっているのか理解できない。 ただ回り中から悲鳴が沸きあがるのを聞いて、混乱し、恐怖して、ゆっゆっと説明を求めるばかりだ。 「ゆっくりにげるよ、ぴょーん! ……ぷぱっ?」 「まりさもにげるよ! ずーりずーり……んぴっ! びゅあっ、びべばぁー!」 外へ逃げようとしたゆっくりは、ことごとく網にかかって切断される。 勢いのいいものは分割されたままヨウカンのように飛び、着地地点でバラリと解体される。 それほどでもないものは、顔面が割かれたところで痛みにのた打ち回り、後から来る仲間に押されてやはりトコロテンになる。 「だめだよぉー! おしちゃだめだよぉー!」 「ゆいいぃぃ! そとはあぶないよ! ゆっくりできないよ!」 「もどってね、ゆっくりもどってね!」 網が危険だと理解したゆっくりたちは、地下に飛び込む。 今まで自分たちが掘っていた穴に、だ。 飴が埋めてあったのはちょうどゆっくり一体分の深さ。つまりその掘り跡は都合のいい隠れ場になるわけだ。 ゆっくりたちは先を争って穴に逃げ込む。 すぽっ すぽっ ころころ、ずぽんっ! 「ゆっくりかくれるよ!」 「ゆゆーん、ここはれいむにぴったりだよ! れいむのゆっくりプレイスにするね!」 「おちびちゃん、おいでね! おかあさんのおくちにゆっくり入ってね!」 「ゆー、ゆー!」「ゆっくちはいりゅね!」「こーろこーろ!」 穴という穴にゆっくりが入り、下を向いたり横を向いたり上を向いたりした状態で、得意げに叫ぶ。 中にはその場でゆっくりプレイス宣言するものもいるが、そんなのんきなことが許される状況ではない。 「どいてね、おねがいだからゆっくりどいてね!」 「ゆあああ、すぱすぱがくるよお! はやくでてね!」 穴の主に向かって懇願するれいむや、背後をちらちら見ながら泣き喚くまりさがいる。 「れいむのおちびちゃんを助けてあげてね! どいてね!」 「どけっていってるでじょおお゛お゛お゛゛お゛!」 「がーぶがーぶするよ! がぶ! ゆうううう!」 「ゆびゃああああ、ひっばらないでぇぇぇ!」 「だめだよ! おぢびぢゃんだちのだよ! ゆぐぅぅぅ!」 「ゆぎゃああああぁぁ、あばぁ!」 焦りのあまり、穴の主のもみ上げや髪の毛にかみついて、力ずくで引きずり出そうとするものもいる。 その途中で踏ん張りすぎてもみ上げが千切れてしまい、あんこがドバッと噴出したのが見えた。れいむは瀕死で穴の底に落ち、ひっぱっていたれいむは後ろへ吹っ飛んで網に切り裂かれる。 「れいむも入れてね! ゆっくりいれてね!」 「まりさもはいるのぜ! ずーりずーり」 「ちぇんもはいるよー! いれてよー! おねがいだよぉぉ!」 「ゆーっ、ゆめてねやめて、ここはもうはいらないよ! ゆっくりやめて! づぶれるよぉ゛ぉ!」 「あっあっあ゛っだめだぜっ、つぶっ、つぶれるっ、ああああんこ出るあんこ出るまりさでで出ちゃうっ、でちゃうでちゃううっ、ゆああああゆぶびびぅぅっぶば!」 「ぶべっびぁ!」「ばぴゅっふ!」 一つの穴に黒いのや赤いのや緑のが殺到し、ムリムリモリモリと尻を持ち上げて無理やり頭をねじ込んだ挙句、二、三頭が破裂してしまい、派手にあんこを吹き上げているところもある。 そんな狂乱穴埋まり地獄とでもいうべき、ゆっくりたちの阿鼻叫喚を、端から学生たちが網ごとズムズムと踏み潰していく。 「いち・にー、いち・にー」 「よっせ、よっせ」 「長靴ってこれかよー」 麦踏みにも似た光景だが、一歩ごとにブビュッ、ブビュッ、と餡が吹き上がるところが異なる。 主任が外周を回りながら言う。 「穴入ってるやつはできるだけその場で埋めてくださーい。網切れないように気をつけてー」 「はーい」「あいー」 ザッザッ、と餡交じりの土が浴びせられ、ゆっくりが埋められる。 「ゆばばばぁ、やめでよぉ! ゆっくりざぜでぇ!」 空を向いて泣きながら埋められるのもいれば、 「もぉやだああぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅ!」 「だじでよぉぉ! ぬけないよぉぉぉ!」 「おがあじゃぁーーーん! だずげでぇぇーーー!」 「おぢびぢゃああん! ごめんねぇぇぇ!」 下を向いたり、横を向いたり、大きいのの隙間に小さいのが挟まったりして、身動きできずに号泣しながら埋められていくものもいる。 主任は外周を回りながら地面に目を走らせている。時折、外の地面をぴょんぴょんっと跳ねていく小さな帽子や髪飾りがいる。 親が必死の思いで外へ投げ飛ばした、赤ゆっくりや子ゆっくりだ。涙をこらえて一歩でも遠くへと走っている。 主任はそういうゆっくりを目ざとくつまみあげ、ポイッと広場の真ん中へ放り戻す。 捕まった途端に赤ゆっくりたちは絶望に口を開け、「ゆんやあぁぁぁ!」「いやに゛ゃぁぁぁ!」と悲鳴を上げながら飛ばされていく。 せっかく逃げられたかもしれなかったのに、赤ゆっくりたちの望みはこの冷静な男に断たれてしまうのだ。 混乱しきった網の中では、母親といっしょに死ぬこともままならない。 ただ、「みゃみゃぁぁー!」「おちびぢゃあぁぁぁん!」と叫びあいながら、解体され、潰されていくしかないのだった。 「それっ、それっ! あれー、主任さん潰さないんですか?」 額に汗をかいて楽しそうに潰し歩いていた女子学生が、赤ゆを投げている主任に尋ねる。 「こうすれば同じだからね」 主任はむっつりと答えた。 包囲し始めから四十分ほどたつと、ゆっくりの狂乱もだいぶ静まってきた。広場の中心辺りで、言葉もなくモゾモゾ、ワサワサとうごめいている。 だがこれは落ち着いたのではなく、しゃべる余裕もないほど必死で闘争しているのだ。 外周からは、少しでも死を遅らせようとゆっくりたちが中央へ押し寄せる。 中央では、押し寄せる仲間たちの圧力に負けて、皮の弱い個体から破裂していく。 「ゆぶっ……!」 ズチャンッ 「ばびっ……!」 ドチュンッ 「みゃみゃ……」 プツンッ それらの餡子やクリームが、ときおり間欠泉のように吹き上がる。 数は少ないがしゃべれるほど大きなのもいて、大声でわめいている。 「どぼじでごんな゛ごどずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ! でいぶばがわいいでいぶなんだよぉおおぉぉぉ! ゆっぐりごごがらだぜぇぇ! ゆっぐりざぜろおぉぉおぉ!」 喚きながら大きな図体で暴れるものだから、まわりのゆっくりが巻き添えを食って潰されている。 「っせぇ黙っとけ!」 苛立った学生が穴掘りに使っていたスコップを掲げて、平らな面でバシンバシンとその大きなれいむを叩き始めた。 れいむは口汚く罵っていたが、途中から命乞いを始め、それも通じないとわかると狂ったように泣き喚いた。 それでもなかなか死なず、周りの学生が寄ってたかってパンチとキックを集中させ、頭全体に何十個もの陥没口をあけられて、ようやく死んだ。 皆が思っていた通り、そのれいむの面の皮は恐ろしく厚く、十センチほどもあった。 「あまあま大会」で六割以上のゆっくりが穴を掘っていたため、包囲網が内に近づくにつれ、外周にはゆっくりの埋まった土饅頭が増えていった。 中央部の数少ないまともなゆっくりが、網でキシキシ裂かれていきながら、泣き声で叫んでいた。 「にんげんさん、やめてね! やめてね! れいむなんにもわるいことしてないよ! おねがい、やめてね! ゆっくりしてね! ゆっくりしてよー! いっしょにゆっくりしてー!」 このころになると、最初はハイだった学生たちもやつれた顔になっていて、哀願するれいむから次々と目を逸らした。 人間の顔と声をした生き物をこれほど殺していると、たとえゆっくりであっても消耗するのだ。 「いたいよー、たすけてよー! ゆっくりしていってね!!!」 叫ぶれいむに、主任が大またに歩いていって、力いっぱい長靴で踏みつけた。 ザパッ! と絹網がれいむに深く食い込み、上下・左中右の六つに切り分けた。 その切り方が綺麗だったのかなんなのか、そのれいむは分割されても声を上げた。 「ゆっくりして……ってね」 そしてボロボロと開くように倒れた。 最終的に、中央部のゆっくりは自分たちの圧力でつぶれ、ドロドロした粘体の山と化した。高さ八十センチ、底の差し渡しが三メートルほどの低い山ができた。主任がそれを写真に撮って言った。 「この山一つで二トン半ぐらいかな。……じゃあ、あとはみんなで穴掘って、これ埋めたら終わり」 「二トン半て」 うんざりした顔の学生に、主任は声をかけた。 「残り七トン半は自分らで掘った穴に勝手に埋まってくれたんだ。楽したと思わなきゃ」 「そっスね」 すでに日は傾いていたが、皆は黙々と作業の締めくくりに移った。 携帯電話が鳴った。カンバスコンテナの横でぼーっと座っていたヤマベは、電話に出た。 「はい」 「済んだぞ。そっちは」 「NPです。みんな泣いてますけど」 「離してやれ」 ヤマベはコンテナの中に目を戻した。主任の指示通り、森中からランダムに集めた十頭のゆっくりたちが、不吉な将来を予感したのか、えぐえぐと泣きじゃくり、ゆっくりしようねと慰めあっていた。 いずれも色艶のいい、利発そうな成体ゆっくりたちだ。 ヤマベはコンテナに手をかけ、ごとんと倒した。ころころと出てきたゆっくりたちが、「ゆゆっ?」と辺りを見回した。 その中のまりさが怒った様子でヤマベに詰め寄った。 「ヤマベさん、ゆっくりあやまってね! まりさはこんなにおちびたちからはなれたのははじめてだよ! ゆっくりおちびのところへつれていってね!」 物悲しい目でまりさを見ていたヤマベは、立ち上がった。コンテナを畳んでザックにいれ、歩き出す。 「ゆゆぅ!? むししないでね! ゆっくりはなしをしてね!」 後ろからまりさがピョンピョンとついてきた。ヤマベは黙々と歩き、例の森の外周の網までたどり着くと、それをクルクルと巻き取り始めた。 「行きなよ。こっからさき、あんたたちの森だから」 「ゆっ? くんくん……そういえばこのにおいは知ってるよ! ここはまりさのもりだよ!」 「そうだね」 「これならおちびのところへいけるよ! ゆっくりいそぐよ!」 まりさはヤマベが開けた網の隙間から森へ入っていこうとしたが、ふと不安そうに振り向いた。 「きつねさんは、もういないのぜ?」 「最初っからいなかったのよ。増えすぎたのはあんたたちのほう」 ヤマベは振り向き、様子を伺っている九頭の生き残りにも声をかけた。 「さあ、行っておうちへ帰りなさい。この森はとっても広くなったから、ゆっくりできるわよ」 「ゆゆう……?」「もりがしずかだよ……」「ゆっゆっ……ゆうう?」 おどおどと周りを見回しながら、ゆっくりたちは森へ戻っていった。 まりさは一番最後までヤマベを見ていた。その目に言い知れぬ不安と不信が揺れていた。 ヤマベは何も言わずに網を片付けた。 広場へ戻って合流すると、朝には生き生きとしていた二十人のアルバイトたちが、ぐったりと疲労困憊して座席で待っていた。ヤマベが助手席に入ると、タバコをすっていた主任が「よう」と片手を挙げた。 「どうだった」 「え、普通です。十頭とも元気で森へ戻りましたよ。何が起きたのかわかってないみたいでしたけど」 「まあ死ぬまでわからんだろうな」 ヤマベはタバコを灰皿に押し込み、マイクロバスを転回させた。素人がメチャクチャに畑作業をやったような、荒れた掘削跡がヤマベの目に入った。 「これで何年持つんですかね」 「いいとこ五、六年だろ。ネズミ算だし」 「十頭が一年で三十頭になって、二年で九十頭になって、三年で二百七十、四年で八百十、五年で二千四百……そんなもんですね」 「まあ一概には言えんが。この森はやばいと思って引っ越すかもしれんし、外敵に食われるかもしれん」 「外敵なんかいませんでしたよ、フィールドワーク中に」 「いなけりゃどっかから来るだろ。生態系ってそういうもんだ」 「こんなのでゆっくりを守ったって言えるんですかね?」 ヤマベはとうとう振り向いて主任を見つめた。どういうわけか鼻の奥がツンとしていた。 「森とゆっくりをっ、守るためにっ、仕方ないっていうことですけどっ!」 主任は次のタバコに火をつけながら言った。 「バーカ、そりゃ建前だ」 「……」 「邪魔なゆっくりを根こそぎ滅ぼしますとか言ったら、いろいろ横槍入んだろが」 「……そうなんすか?」 「そうなんじゃねえの。ほんとにゆっくりを守りたかったら、もっと厳密に繁殖管理しなきゃダメだろ。実際そういう会社もあるし」 「……そうなんだ……」 ヤマベは視線を落とした。膝が震えていた。 「そっち就職するべきだったかな……ちっくしょ」 ポタリと膝が濡れた。 ガタガタと揺れながら走っていたバスが、キッと止まった。 ヤマベは顔を上げる。まだ全然山の中だ。というか振り返るとさっきの場所がまだ見えた。地続きで五百メートルも離れていないだろう。 主任が作業服のポケットをあさって、カサカサ動いている紙袋を取り出し、窓から草の上に投げ捨てた。 それから何食わぬ顔で再びバスを出した。 ヤマベはしばらく、呆然と主任の横顔を眺めていた。主任は嫌そうに目を細めてぼそぼそ言った。 「見んなよ」 「主任……」 「言っとくが違反じゃねえぞ。あの森には十頭しか戻すなって言われてるが、今のとこはもう、登記上は別の森だからな」 主任は頑なに前を見つめていた。ヤマベは目頭を拭いた。 「……戻れるといいですね」 「なにが?」 ヤマベはマイクロバスのサイドミラーを見た。 小さな小さな点が三つ、勢いよくはねていったような気がした。 (おわり)