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No.QR067 レアリティ:☆ ライフ:3 必要アビリティ:リベリオン1 攻撃力/防御力:―/20 アビリティ:リベリオン1 スピード1 テキスト 相手がアタック宣言したとき、このカードを場に出すことができる。 (距離制限なし) 収録セット クイーンズブレード・リベリオン 叛乱の騎士姫編 (アンネロッテ・ヴァンテ・ターニャン・シギィ) イラストレーター 中野友和
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StrikeWitches IF Chapter 1 ――――― 私の名前はオリーブ・クエイル。リベリオン空軍爆撃部隊のウィッチです。 でも現在は、安全なノイエカールスラントにて毎日物資の運搬作業をしています。 給料はいいし就労時間も日が出てるうちだけなので特に文句はなかったのですが ある日突然、リベリオン統合参謀本部の直令で第501統合戦闘航空団への 重要物資の輸送と異動が命じられました。 私は中身もわからない重要物資を航空機に詰め込み、 技術者のウルスラ・ハルトマンさんと共にロマーニャへの長い航路に出ました。 ――――― 輸送機内- ウルスラ「オリーブさん、どうされました? ……落ち着かないように見えますけど」 オリーブ「えっ、いや特に……。ただ、私みたいな純粋な実力階級は二等兵のウィッチに 突然世界中の優秀なウィッチの集まる501に異動だなんて。 それに統合参謀本部員が直接私の宿まで異動を知らせに来たのよ?」 ウルスラ「それは確かに、驚かれるかもしれませんね」 オリーブ「実戦経験なんて、カールスラント本土で虫の息のネウロイを爆撃しただけ。 今度はノイエに飛ばされて運搬作業……とても最前線に送る柄じゃないわ」 ウルスラ「オリーブさんの思われる所は解ります。でも、ちゃんと理由あって 501に異動になったのですから、どうか杞憂はなされないで下さい」 オリーブ「……?」 ――――― 輸送機は何度か補給地点を次ぎ遂にロマーニャ空軍基地へと到着する。 重要物資と私の荷物は作業員に運搬してもらい、ウルスラさんと私は単身で 伝説とまで言われたウィッチたちが待つ司令室まで向かいました。 ――――― ミーナ「はい、みんな注目して。今日から我が501に新しく配属された隊員を紹介します」 ゲルト「(新人入隊か。来るロマーニャ決戦に備えてキチンと教育しなければな)」 エーリカ「(また人増えるんだー……)」 ペリーヌ「(騒がしい人じゃなければいいんですけどね……)」 宮藤「(どんな大きさと形だろう……)」 ミーナ中佐が直接扉を開く。ウルスラさんより気持ち一歩下がり目に 恐れ多いと思いながらおずおずと室内に入ると、着席しているのは年相応と見える 普通の女の子たちだった。 ミーナ「それではオリーブさん、自己紹介をどうぞ」 オリーブ「こっ、こんにちは! リベリオン空軍より来ましたオリーブ・クエイル軍曹です! この度はいどっ、……異動ということで、あの」 シャーリー「おいおいそんなに畏まらなくてもいいぞー」 ルッキーニ「いつもの通りでいいからねー」 オリーブ「そ、そうですか。わかりました」 シャーリー「……あれ? オリーブ、ちょっと先に聞いていいか?」 オリーブ「はい、なんでしょう」 シャーリー「そのズボン……ブラックスパッツァー部隊の隊員なのか?」 オリーブ「はい……そうですけど」 リーネ「(へぇーあれがもしかしてスパッツって言うのかな……?」 エイラ「(ヘリコプターみたいな部隊名ダナ)」 サーニャ「(Zzz...)」 シャーリー「おいミーナ、ブラックスパッツァーはリベルのB-29爆撃部隊のニックネームだぞ? 部隊そのものがうちの作戦に追随するならまだしも……」 ミーナ「その通り。オリーブさんはB-29戦略爆撃飛行脚を使うウィッチです それと、ちゃんとした作戦参加としてこの部隊に異動になったの。心配いらないわシャーリー」 シャーリー「そっか、なら良いんだ。悪かったオリーブ! 続けてくれ!」 オリーブ「あはい! えっと……どこからでしたっけ」 …… リーネ「(悪い人には見えなさそうだけど……)」 ペリーヌ「"あの人"に変になびかないように」 エイラ「(先手を打っておく必要があるみたいダナ)」 ザザザッ リーネ「オリーブさん! よかったら今から案内でもどうですか!」 ペリーヌ「そうですわ! 少佐に案内されたらあの子何の気を起こすかわかりませんわ……」 坂本「呼んだか?ペリーヌ」 ペリーヌ「さっさささ坂本少佐! いつの間に!?」 坂本「ちょっと前だ。すまん、遅れた」 ペリーヌ「いいえいえ、お気になさらず……あれ? オリーブさんはどこに」 宮藤「案内私も行きたいー!」 ペリーヌ「えっ (でも芳佳ちゃん一人をつけているよりは安心ね) う、うん! 一緒に行こ!」 エイラ「サーニャは部屋で休んでナ」 サーニャ「うん……」 ミーナ「ちょっとあなた達! 会議はまだ終わってませんよ!」 ルッキーニ「私もいくー!」 ガヤガヤ バタン エーリカ「あーあ、ホントに行っちゃった」 坂本「まったく……しょうがない奴らだな」 シャーリー「それで、リベリオンの爆撃隊員がなぜここに?」 ミーナ「触りだけは聞いたけど本腰の説明は私からは出来ないわ。 そのために、ウルスラさんに着てもらったのよ」 エーリカ「おぉ、ウルスラ久しぶり」 ウルスラ「姉さま……ちょっと遅いです」 エーリカ「あれ? えへへ、ごめんね」 ウルスラは基地員に指示すると、司令室に彼女と同じほどの丈がある荷物が運び込まれた。 エーリカ「もしかしてイモ?」 ゲルト「いや、イモだったらこんなところにまで持ってこないだろ……」 ウルスラ「いえ、イモではありません。これはノイエカールスラントにて開発された 対ネウロイ用の最新兵器です」 ミーナ「それではウルスラさん。その説明をお願いするわ」 ウルスラ「はい」 金属の厳重な容器を開けると、中には従来の銃器には似ても似つかないような 威圧的なフォルムをした銃があった。 ウルスラ「RG-45。魔導銃と呼ばれ開発されたものです」 シャーリー「んー、でも見た目はリーネのスナイパーライフルをゴツくしただけにしか見えないんだけど」 エーリカ「すっごーい。これウルスラが作ったの?」 ウルスラ「いえ、開発したのはリベリオンとカールスラントの共同研究技師で、私は説明に来ただけです。 ゲルト「具体的にはこれまでの銃器と何が違うんだ?」 ウルスラ「みなさんの使用している銃器は、魔法力で強化されてますが 基本的な構造は火薬によるガス圧なので威力に限界があります。 魔導銃はこの中に完成された術式が存在し、射撃手がそれに則り使用することで 最大秒速60キロで弾丸を発射できるとされています」 シャーリー「60キロぉ? そんなのその辺の車より……秒速!? えーっと1分が60秒だから」 ミーナ「時速21万6000キロ。マッハ5ってことね……私たちの銃の初速は秒速10キロが限界だから 単純に速さだけ考えれば6倍、恐ろしいほどの威力は想像つくわ」 エーリカ「でもさーウルスラ、そんなすごい兵器なら何かめんどくさい事があるんじゃないの?」 ウルスラ「面倒くさいと言いますか……姉さまの通り、簡単な使用は出来ません。 兵器の詳しい説明は別にしますが、コレを使用していただくのが今日紹介したオリーブさんです」 ゲルト「ほぉ……ま、ネウロイに対して強力な対抗手段が出来たのなら良い事だ。 それにしてもあいつら、新人連れてどこに行っちゃったんだ?」 ――――― 宮藤「基地内は一通り紹介したかな?」 リーネ「ちょうど食堂まで戻ってきたし、お茶にしましょうか」 エイラ「そうダナ、ちょっと歩きつかれちまった」 ペリーヌ「オリーブさん、こちらにいらして」 オリーブ「はい、ありがとうございます」 ルッキーニ「ふぃー、ちかれたー」 宮藤、エイラ、ルッキーニ、オリーブが席に着くと、ペリーヌとリーネが 手際よくお茶の準備を始めた。 宮藤「ノイエカールスラントって南リベリオン大陸なんだよね? そんな遠くからなんでここに配属されたの?」 オリーブ「それが私もよく解らないの……特別な能力もなければ固有魔法もないし 戦闘能力も反応が良くないし……けど魔法力が平均よりちょっとタフだから 重い爆弾を持つ爆撃部隊に居たってだけ。実際私が一番不思議に思ってるよ」 エイラ「へー。私たちは基本撃ちに行くか迎えて撃つだから、毛色は確かに違うナ」 ルッキーニ「いいじゃんいいじゃんそんなこと。 それよりオリーブ、南リベリオンの美味しいご飯とか作れる?」 オリーブ「あ、私おじいちゃんがロマーニャ人だから基本的にロマーニャ料理だけど……」 ルッキーニ「うそー! じゃーねじゃーね!今晩はニョッキがいい!」 オリーブ「また地味に家庭なメニューだね……もし作れる機会があれば」 ルッキーニ「やたー!」 リーネ「セイロンティーです。お口に合うといいんですが」 オリーブ「んーおいしい! 付け合せのスコーンも軽くておいしいよ」 ペリーヌ「ほほほ、ほめるならもっとほめても宜しくてよ」 宮藤「そっかぁ。とにかく、よろしくね!」 オリーブ「はい!よろしくお願いします!」 ウゥゥゥゥゥ…… エイラ「サイレンだ」 警報と慌しい足音が近づいてきたと思った瞬間、食堂の扉が勢いよく開いた。 ゲルト「何やってるんだお前たち! 出撃だ!」 5人「はっはい!!」 オリーブ「あの! 私も行ったほうが良いですか?」 ゲルト「そうだな……ミーナはどう思う?」 ミーナ「そうね、これから実戦に参加するなら間近に居たほうが良いとは思うわ オリーブさんは後続で、なるべく実戦距離から離れる感じについてきて」 オリーブ「(ゴクリ……)はい、わかりました」 初めての実戦ではないけれども、これから活動中のネウロイに攻撃しに行くと考えると 前線の緊張感と現実感が、自然とユニットに伸ばす足先を震えさせる。 宮藤「これがB-29? なんか私達のよりも大きいねー」 坂本「爆撃用だからな。私達のストライカーと同じに、用途における相応の作りと術式がある」 ルッキーニ「銀色でぴっかぴか!!」 ミーナ「敵は北11キロの地点に突然出現したわ。まだ破壊活動は行ってないけど 行動を起こされるのも時間の問題だわ。戦闘領域に入り次第即交戦、陣形は崩さないで!」 全員「了解!」 サーニャ(睡眠中)を除くウィッチーズとオリーブが基地より出撃する。 オリーブは4発のプロペラを捲くし立て一気に高高度まで上がり続ける ※インカム 坂本『どうしたオリーブ、あんまり隊列を離れるなよ。ネウロイが見えるか?』 オリーブ『いいえ……私は特別なことは出来ないので。でも視力は2ありますよ? 最近は運動量の高い飛行をしてなかったので、念のために……』 エーリカ「あれ、通信が途絶えた」 リーネ「太陽がまぶしくて見えない……」 ゲルト「作戦中に迷子探しは勘弁だな……『オリーブ軍曹! そろそろ戻れないか?』」 プロペラ音のストロークが背後に聞こえたと思うと、銀色の機体が隊列目掛けて急速に降りて そして最後尾に着きなおす。 オリーブ「ごめんなさい、多分感はニブってないみたいです」 シャーリー「ここから通信が途絶える高高度まで行って、まるで散歩に行ってきたみたいな顔色だな」 坂本「そういう状況も想定して作られたんだろう。いざとなったら上昇して撒けるなら良い手段だ」 ミーナ「そろそろ迎撃地点だわ。みんな武装を確認、射程に入ったら交戦開始!」 その指令から間もなくけたたましい銃声が鳴り響く。オリーブは手ぶらで少し高度をとり見守る。 ネウロイは土偶のような形をしている。コレまでにオリーブが聞いた機械系のネウロイとは 何か違うものが見えてる気がした。 エーリカ「何こいつー! 再生どころか装甲が破れないよ!」 リーネ「私が撃ちます!」 エイラ「おイ……全然利いてないじゃないか」 宮藤「でもこのネウロイ、全然攻撃してこないよ?」 坂本「防御特化か。縦横無尽に撃ってくるよりかは良いが、逆にタチが悪いとも言える。 コアは不動で瘴気もだしていないが、これ以上撃ち続けても飛行だけで魔法力を消費するだけだぞ」 ミーナ「そうね……みんな、攻撃中止。少し見切ってから一旦戻りましょう」 ゲルト「……くっそおおおおおおおお!!!」 ミーナ「ちょっとトゥルーデ!」 土偶ネウロイの数メートル前まで迫るバルクホルン。眉間に銃をつきたてるようにしてトリガーを引く。 銃弾は耳に響く金属音を返し、空に散る。 ゲルト「ずおおおりゃああああああ!!!!!」 バキンッ!! ゲルト「――ッ!!」 結局ネウロイは一撃のビームすら返してこなかった。 バルクホルン得意の銃槌もネウロイに傷一つつけることは出来なかった。 更には反動で、両手には裂傷のない痛みまで負ってしまった。 宮藤「バルクホルンさん……痛みは取れましたか?」 ゲルト「気分と腕の痛みは良くなったが……相変わらず痺れてろくに指が動かない すまんな宮藤」 宮藤「ごめんなさい……私がもう少し上手く治癒魔法が使えたら」 ミーナ「軍医の診断では、2,3日も寝ていれば取れる痺れだそうよ。心配は要らないわ」 シャーリー「でも、心配なのはネウロイもだなぁ。居はするけど行動しないし、こっちから撃滅できなきゃ 正直八方塞も同じだしなー」 ルッキーニ「それよりご飯たべたいー!」 ウルスラ「ずいぶんおあつらい向けなネウロイですね」 坂本「そうかもしれないな」 ルッキーニ「ごーはーんー!」 シャーリー「ちょっと静かにしてろー、今は落ち着くまで我慢だ」 ルッキーニ「うじゅー……」 バルクホルンが横たわる病室、寝ていたサーニャも起きてきてオリーブを含むウィッチ全員が揃う。 その場で坂本とウルスラが並び、全員の注意を向けた。 坂本「ここで説明するのも微妙だが良い機会だ。ウルスラに、オリーブに着てもらった理由と そのための武器の説明を今ちゃんとしてもらおう」 オリーブ「私が……来た理由」 ウルスラ「少し長く複雑になりますが、これから大事になる事と思うのでご容赦ください。 まず、みなさんにはこれを見ていただきます」 今度は、ウルスラが直接容器から魔導銃を取り出し、病室に居るウィッチ全員にそのフォルムを見せる。 オリーブはここに来た理由もあの運搬物の中身を知ったのも初めてだ。 ウルスラ「繰り返しになりますが、これは魔導銃と言います。銃自体が魔法の術とそれを封入するモノになっています。 魔導銃に特製の銃弾を込めてトリガーを引くと、射撃手の魔法力を銃身に満たして それを消費しながら誘導力を持つ2つの力を作ります。この二つを反応させて推進力を生み 加速させて発射するという仕組みです。この理論自体は古く1844年より存在し……」 エーリカ「あーんまた始まったよ……」 シャーリー「また淡々とした表情で話すなぁ」 オリーブ「あのーウルスラさん」 ウルスラ「問題点が数多くあり実現はしなかったものの、現在の戦……はいなんでしょうオリーブさん」 オリーブ「それって、やっぱり……」 ウルスラ「感が良いですね。オリーブさん、あなたが射撃手になるんです」 オリーブ「うぁぁ……やっぱりそう来ますよね」 ミーナ「先ほど、話しそびれた部分聞かせてもらえるかしら」 ウルスラ「そうですね。オリーブさんもいることですし。 この銃は純粋な魔法力のみ使用することを実現し、銃器の限界と取っ払い、強烈な破壊力を生みます。 しかし射撃手には3つの条件が、射撃に際しては1つの条件が必要なのです。 射撃手の条件は『タフな魔法力の容量がある事』と『固有たる魔術を持っていない事』、そして 『銃器をほぼ取り扱ったことのない事』です 坂本「固有魔法か……私は元来この眼だし、宮藤は最初は下手でも才はあった。 てっきりウィッチひとりひとりが持った業のようなものだと思っていたんだが……」 ウルスラ「世界各国にウィッチは点在しますが、活動の性質上ほとんどが度重なる射撃経験があり さらに2つの条件を重ねた際には、適合するウィッチがオリーブさんしか居なくなったんです」 オリーブ「…………」 ウルスラ「……オリーブさん、もしかしてこの言われで怒ってますか?」 オリーブ「違うんです、なんだか急に自分の中で話しが大きくなって…… 実感がわかないというかなんと言うか」 ゲルト「……無理もない。だが、オリーブ。世界のためにその強力な武器が使えるというんだ。 それはとても重要で、有意義なことなんだ。自信を持って良いんだぞ」 オリーブ「バルクホルンさん、本当にケガは大丈夫ですか?」 ゲルト「私はこのザマだ、冷静さを失ってな。力の限界を目の当たりにするほど 戦う人間にとって恐ろしいことはないよ。オリーブはその限界を超えれるんだ」 ウルスラ「あの、もう一つ『射撃に際する条件』があるんですが」 ミーナ「続けて頂戴」 ウルスラ「この魔導銃は、魔導理論を銃器として形にしたものです。ジェットストライカーとは また色々定義の違うものにはなりますが……。ただやはり技術的な限界もありました。 魔導銃は射撃した瞬間、発生したエネルギーがすぐ魔法力に戻って体内に逆流するんです。 そうなると魔力の過飽和状態になって様々な面で不安定な状態に陥ります。 この副作用を取り除く仕組みはついに完成できなかったので、別方法を使用する事になりました」 リーネ「それは?」 ペリーヌ「その方法はなんですの?」 ウルスラ「それが……その」 エーリカ「あ、ちょっと赤くなった」 ミーナ「珍しいわね……」 宮藤「なんなんですかー!」 ウルスラ「……コホン、単刀直入に言います。射撃手にキスしてください」 全員「」 オリーブ「あの……うる、ウルスラさん?」 ウルスラ「これはれっきとした契約術式です。魔力共有と言って、互いの魔力を必要に応じて 共有する術を完成させるための儀にすぎません。 先ほども申した通り、魔導銃の問題は魔法力逆流による過飽和状態。 しかし射撃手は射撃時にほとんどの魔力を消費してしまいます。 飽和限界より溢れた魔力は、魔力共有によって契約者に流せば問題はないということです」 シャーリー「理屈はわかったようでわからんが……とにかく、オリーブにその、キスしないと 魔導銃が使えないってことであってるんだよな」 ウルスラ「正確に言えば、使えないことはないですが、命の保証が出来なくなります」 坂本「そうか……ならば仕方ない、私が」 ウルスラ「ちなみに、ファースト限定です」 「!」 エーリカ「これは……」 ゲルト「えと……」 ミーナ「…………」 ウゥゥゥゥ ミーナ「! どうしたの!?」 職員「先刻確認されたネウロイが、時速20キロのスピードで南下を開始しました!」 エイラ「タダの土偶も待っていられないノナ」 宮藤「でで、でもあのネウロイの装甲がこのままだと破れないんじゃ……」 リーネ「移動を始めたのなら、もしかしたら弱点を見せてるかもしれません」 ミーナ「そうね……そうでなくとも進撃は阻まなくてはいけないわ。 オリーブさんはここに居て。あとのみんなは再出撃よ!」 一度目の出撃までは天に昇っていた太陽も、次第に傾き始めていた頃だった。 オリーブ「行っちゃった……」 ゲルト「今はとにかく、戦況を聞きまもるしかないか」 先程より使用していたインカムに耳を傾ける。豪烈なエンジン音が先ず飛び込み 次に聞こえたのはミーナの交戦指令の声だった。 ルッキーニ『なんなのこいつー! また硬いまんまだよ!』 シャーリー『これでも歯が立たないなんてたまんないなぁ!』 エイラ『サーニャ、ぶちかませ!』 サーニャ『行きます!』 ミーナ『……ほんの僅かに傷が出来たわ。一瞬のうちに再生されたけどね』 病室、バルクホルンは向けるに向けられない怒りをこぶしに込めようとするが 痺れる手は未だに力が入らず、更にもどかしい気持ちに入り込む。 ゲルト「くそっ! 大規模な進撃でなくとも、一つ一つの拠点を瘴気に侵されればいずれ我々は負ける それを止める手段が無いなんて……」 ウルスラ「……決して押し付けるわけではありませんが、方法は今ここにあります」 ゲルト「魔導銃……か?」 ウルスラ「照準を合わせてトリガーさえ押せば後は確実です。 威力は見ていただけたほうが早いでしょう」 ゲルト「…………」 オリーブ「…………」 ゲルト「オリーブ、……わかってると思うが、ちょっと来てくれ」 オリーブ「は、はい」 ベッドで上半身を起こしているバルクホルンの元へ、ベッドに腰をかけるようにして自然と近づくオリーブ ゲルト「その、なんだ。私はネウロイが倒せるなら……戦争を終わらせられるなら こんな方法もやぶさかでない。だがこれはその、一人の意思とかじゃなく」 オリーブ「……いいですよ」 オリーブ「むしろ、私がお願いしなきゃいけない立場だと思うんです。 あっその個人的な意味じゃなくて! こんな事になるとは思ってなかったですが 願いは、歴戦のウィッチたるあなたと変わりません」 ゲルト「…………」 ルッキーニ『ああっ! 村が瘴気に飲まれちゃうよ!!』 ゲルト「くっ……っ!」 ガバッ 腰を起こしたバルクホルンは、思いを振り切るように間髪なくオリーブの顔を捉える。 しかし痺れた腕が思うように動かず、勢い余ると両腕は彼女の肩を抱えるようにして唇が一瞬重なった。 オリーブ「(ポー)」 ゲルト「……こっ、これでいいんだなウルスラ」 ウルスラ「はい。ダメです」 オリーブ・ゲルト「うぇっ!?」 ウルスラ「ダメというわけではありませんが、魔力共有は契約術において相当上位のものです。 なのでそれ相応の儀式が必要になります。 具体的には舌を絡めさせれば完璧なのですが」 「!」 ゲルト「とりあえず大丈夫なんだろう! とにかく出撃だ! ウルスラ、オリーブに魔導銃を渡して撃てる様にしてくれ。私はついて行けばいいんだよな」 ウルスラ「……とにかく私もストライカーでついていきましょう。オリーブさん。これをもってください。 今ここで初期化を行います」 オリーブ「(ポー)」 ゲルト「いつまで呆けてるんだ! 早くしないと侵攻を止められないぞ!」 オリーブ「はっはいい!」 ウルスラ「銃を持ちましたね? それでは両方の持ち手を持つようにし魔法陣を展開してください。 現在装填されているのは、オリーブさんを魔導銃の射撃手にするための弾です。 安全装置を解除し、存分に魔法力を込めたらトリガーを引けば完了です」 言われたままに、オリーブの身長に迫らんとする銃を構えて魔法陣を展開する。 漠然と魔法力を引き出そうとすると、自然に銃身に吸い込まれていくような感覚に陥った。 その吸い込まれる速さがだんだんと遅くなり、止まった瞬間をその時と思い思い切りトリガーを引く。 オリーブ「うわっ!!」 オリーブを取り囲む風。でも周りのものは一切揺れていない。猛烈な魔力の風にもまれながら 僅かに視界から見えたのは、空中を飛び舞う術式だった。 ゲルト「これは……」 ウルスラ「…………」 ゲルト「……ウルスラ、私もお前もカールスラント人だ。 このカールスラント術式が読めないわけじゃないよな」 ウルスラ「はい。当たり前です」 ゲルト「それにしては趣味の良くない式ばかり見える。まるでアレイスター・クロウリーの 儀式を見ているようだ。呪いの儀式にしか見えない」 ウルスラ「これは魔導銃という術をウィッチに付与する、バルクホルンさんの言うとおり形式的には 呪いとそれ同等のものです。しかし臨床実験では問題なく、解呪も可能です」 ゲルト「…………」 オリーブ「と、止まった」 ウルスラ「終わりましたか。あとは敵を討ちにいくだけです。出ましょう」 ゲルト「よし、行こうオリーブ」 オリーブ「……はい!」 ―基地上空― ウルスラ「あごを引いて銃身を眼前に構えてみてください。 そこにはスコープが搭載されています。コアに反応して照準を自動調整するため 視界に敵が入ったら先ほどの儀式の通り銃身に魔法力を込めて撃ってください」 ゲルト「私は後ろに付いて、オリーブから出る魔法力を受け止めれば良いんだな」 ウルスラ「背中に添えばバルクホルンさんは魔力のパッシブ状態になります。 それと、射撃後数秒は絶対に離れないでください」 ゲルト「わかった。準備はいいかオリーブ」 オリーブ「弾丸装填しました。スコープは……ここだ。 あっ、みなさんとあのネウロイがまだ交戦しているのが見えます!」 ゲルト「よし。『みんな、これから魔導銃を使用する。念のため数キロネウロイから離れてくれ』」 ミーナ『大尉? ……わかったわ。みんな少し離れるわよ』 ゲルト「……よし、全員ネウロイから3キロ離れたようだ。しっかり狙うんだ」 オリーブ「はい……あれ? なんだかスコープがぼやけて」 ウルスラ「まだ安定してないようですね。ゆっくり、深呼吸してください」 オリーブ「すぅーっ、はー……。よし。ネウロイ捉えました。撃ちます!」 トリガーを引いた瞬間、景色が暗暖色に変わる。銃口が青い炎を噴くと ……30ミリの弾は出た瞬間勢いを失い、ひゅるひゅると海上に落ちていく。 オリーブ「―っ!! うくっ!!」 ゲルト「大丈夫か!? おい!」 ウルスラ「安全のため出力リミッターを下げておいて正解でした……やはり、魔力共有が 完璧ではないと安定性安全性に欠けます。……バルクホルンさん」 オリーブ「はーっ、はー……」 ゲルト「……、どうにでもなれ!!!!」 意識混濁のオリーブの顔を腕を使って必死に上げると、噛み付くようにまた唇と重ねた。 オリーブ「うぶっ!」 ゲルト「んふぅっ……ふぅっ!」 ヤケに長ったらしい数秒が過ぎる。 ウルスラ「……けっこう激しいですね」 ゲルト「……うるさい。 オリーブ、私がわかるか」 オリーブ「は……はい。なんとか気が戻ってきました」 ウルスラ「一度魔力を全て使い果たしていますが、射撃後に反動で魔法力自体は充填されてます。 今度こそリミッターを0.5まで解除します。次失敗したら……」 ゲルト「次などない! これで決めるんだオリーブ!」 オリーブ「はい! ネウロイ捉えました! ……今度は鮮明に捉えられる。撃ちますよ!」 ゲルト「行けー!!」 再び視界が暗暖色に変わり、次に見えたのは銃口から吹き出る青い炎。 そして、弾は発射されたかと思った瞬間、はるか前方の空中で大爆発が起きた。 オリーブ「当たった……」 ゲルト「大丈夫か!? さっきみたいなのは」 オリーブ「いえ、ちょっと驚いただけで……体は全然大丈夫です」 銃弾の軌道は、空中に青い線となって残り続けている。鮮やかな青色のレーザーのようだ。 ゲルト「ウルスラ、この青い線は……」 ウルスラ「今の射出初速は、秒速20キロと出ています。それでも、通常の銃弾なら 大気摩擦で擦り切れてしまいますが、魔導銃弾はジャケットをエーテルと反応させることで 弾を冷やして形状を維持、そして着弾するという仕組みになっています。 この青い線も、銃口から噴出した青い炎もエーテルが変質した結果によるものです」 ゲルト「なるほどな……とにかくネウロイの撃滅には成功したようだ」 ミーナ『バルクホルン大尉、こちらでネウロイの撃滅を確認しました。私達もすぐ戻るわ』 ―空軍基地内― エーリカ「いやーホント一時はどうなるかと思ったよ」 リーネ「あの硬いネウロイを一撃で粉砕するなんて、すごいですね」 シャーリー「オリーブが魔導銃を使えたってことは……そうなんだよな」 ゲルト「聞くな! ……まったく、とにかくこれで、ネウロイに対する強大な対抗策ができた。 改めてお礼と、501に来たことを歓迎しよう」 オリーブ「そんなお礼だなんて、私も、そのバルクホルンさんに……」 ゲルト「んぁあもう一々赤くなるな! 今日はあのネウロイのせいで昼飯も食べれなかったんだ。 さっさと夕食にしよう!」 ――――― 翌日、魔導銃の存在とこのネウロイ撃滅はアンオフィシャルながらも地元新聞 そして世界中にたった一つの戦果が報じられた。 一部では過剰な軍備増強を懸念する声もあるが、ウィッチたちは強い希望を抱いていた。 オリーブ「あれ? この写真は……」 ロマーニャの地元新聞社員が、許可無く掲載したウィッチの作戦写真。 その中の一枚が、軍の回収措置も空しく世界中に広まってしまっていた。 ?「こっ……ここ、これは……どどどっどど」 次⇒StrikeWitches IF Chapter2
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天冥を見届けし者ニーニャ(テンミョウをミトドけしモノ~) p e 属性 雷 コスト 39 ランク S 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 10 887 880 250 70 1,792 1,808 ? 最大必要exp 63,204 No. 0367 シリーズ ニーニャ Aスキル キュアスコール 水・雷属性の味方のHPを中回復(7%) Sスキル 碧海の癒し 味方全体のHPを大回復する(75%/13turn) 売却価格 30,000 進化費用 - 進化元 悠久の調停者ニーニャ(A+) 進化先 - 入手方法 進化、クリスタルガチャ 備考
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前回までのあらすじ シャーリー「負けるかぁぁぁ!」 空母『天城』格納庫、ネウロイ化まで後4分 砲声と轟音が飛行甲板直下の格納庫に響く。 艦載機を全く搭載していないので、殆どがらんどうな格納庫の中を鐘のような 余韻を持って鳴った。 僕「発進ユニットをエレベータの近くに寄せるぞ!重いから気をつけろ!」 そう言って、5人掛かりで後ろから発進ユニットを押す。 単体の重量が500kgを超えるそれは、縦揺れを繰り返す艦の中では酷く重い。 だが、格納庫の前後を占領している蓄電池にぶつけたら作戦が終わる。 僕「こんな邪魔っ臭いモン置くなってーの!」 恨みたくなるほど重い発進ユニットを押しながら、蓄電池に向けて文句を言う。 空母の主缶だけでは賄い切れない、魔導ダイナモの起動に必要な電力を補助しているが お陰で加熱した鉛電池から硫酸蒸気の匂いが漂う。 息を切らせながらエレベータ近くまで寄せ、発進ユニットを並べた。 僕「チョーク噛ませ!」 「チョーク噛ませ!」 艦載機用のチョークを持った別の整備兵が復唱して 発進ユニットの下の車輪にチョークを噛ませた。 これで動かなくなるだろう。急激な回避運動をしなければ。 隣の整備兵がふらついて転びそうになったのを慌てて支えた。顔色が悪い。 僕「戻すときは戻したほうがいい。お前は休め」 「了解です…」 ふらつきながら端にあるゲロ壺に向かっていった。その姿を横目で見送って次の指示を出す。 僕も船酔いと硫黄臭からきた吐き気を抑え 格納庫の床から備え付けの固定用ワイヤを引っ張りだした。 僕「発進ユニットをワイヤで固定しろ。先端のカラビナでポイントに引っかけろ」 ワイヤの先端についたカラビナを、発進ユニットの固定ポイントに引っ掛けた。 汗と機械油の匂いが染み付いた手ぬぐいで額の汗を拭う。 僕「いいか、気分が悪くなったらすぐに休憩しろ!動ける奴はあと2台を手伝え」 まだ2台後ろから押してきている。 発進ユニットの固定を終えた整備兵がぞろぞろと動き始めた。 僕「ネウロイに負けんなよ…」 上空で戦っているウィッチたちに向けて呟き、片方の発進ユニットの取っ手を引っ張った。 上空、ネウロイ化まであと3分 ネウロイに向けてBARを構えトリガを引く。はじき出された弾丸はネウロイを 破片へと変えるが別のネウロイの集団が空いた穴をカバーするように降りてくる。 シャーリー「このっ…」 手のひらを奴らに向けてシールドを展開。腕の少し先で赤いビームが止まる。 後ろで待機していたルッキーニがブレダを撃った。 ルッキーニ「落ちろーっ!」 あたしを狙うネウロイが墜ちると、一度逃げるために急降下。 一気に高度を落として、次に急上昇できるだけのエネルギーを蓄える。 海面すれすれまで近づくと、上からビームの雨が降ってきた。 シャーリー「邪魔すんな、よっ!」 バレルロールと横滑りを加えて複雑に動く。たちまち速度が落ちた。 ビームの雨が止んだところでネウロイをオーバーシュートさせてBARを撃った。 3匹のネウロイを撃墜して、40発弾倉を交換して初弾を送り込む。 左を見ると、ルッキーニに覆いかぶさるようにしてネウロイが集まっていた。 シャーリー「ルッキーニ、危ない!」 とっさにBARの銃口を奴らに向ける。 ネウロイがビームを撃つよりも早く、ルッキーニが目にも留まらぬ速さで爆転するように避けて ビームは1発も当たらず海面に派手な水柱を立てた。 襲撃を失敗して逃げようとするネウロイの小隊に向けてルッキーニが翻る。 シャーリー&ルッキーニ「当たれっ!」 構えたBARとブレダで5匹のネウロイが砕け散った。周りを見渡したが 今のところ近くにネウロイはいない。崩れた体勢を立て直して、少し休むように水平飛行に移った。 ルッキーニ「そろそろ疲れてきたよ~」 隣を飛ぶルッキーニの息が上がってきている。 シャーリー「頑張れ、ルッキーニ。あと少しだ」 へばってきたルッキーニを励ますが、いつもよりネウロイの数が圧倒的に多いから 捌ききれなくなるのも時間の問題か。魔法力が底をつくのが先か取り囲まれるのが先か。 どちらも考えたくはないな。 シャーリー「ルッキーニ、空母に……ッ!」 途中まで言いかけたところで、背筋をチリチリと焦がす殺気のようなものを感じた。 後ろを振り向くと、また別のネウロイが送り狼のように追いかけて来ている。 シャーリー「ルッキーニ、後ろだ!」 ルッキーニ「えっ!?」 急減速でルッキーニの後ろに回りこんで、ネウロイに振り向いてシールドを張る。 襲撃に遅れて気づいたルッキーニが振り向いて機銃を撃った。 ブレダから弾丸が火線となって吐き出されるが 射線がぶれて弾丸のほとんどがネウロイに当たっていない。 シャーリー「くそっ…重い…」 シールドを展開して攻撃を防いではいるものの、そろそろあたしもヤバい。 戦闘の疲労が溜まってきているのか、いつもよりビームが重く長く感じられる。 長いように感じられた集中砲火が止んだ。 シャーリー「このやろっ!」 ネウロイが次のビームを撃とうとする前に弾丸を叩き込む。 10発ぐらい当たったところでネウロイが墜ちた。 このままじゃじり貧だが、上を向くとまだ戦っている仲間たちが見えた。 ミーナ 魔法力を消耗した人は、各自、空母『天城』に帰還して! ルッキーニのことがあるから戻ったほうが良いかもしれないけど、まだ残って戦っている仲間は? 頭の中で躊躇していると、インカムからバルクホルンの声が聞こえた。 バルクホルン シャーリー、お前はルッキーニ少尉と先に空母へ戻れ! シャーリー「おい、どういう風の吹き回しだ!?」 思わず上空を振り返ると、2人がネウロイの大群を次から次へと落としているのが見えた。 エーリカ 戦いで一番難しいのは、護衛をしながらの撤退戦だからね~。 ここは私たちに任せて先に戻った方が良いよ バルクホルン 疲弊したルッキーニ少尉を守りながらの撤退は難しい。 背中は任せろ!お前は先に戻れ! 2人ともダンケルク撤退戦を経験しただけのことはあるからか、言葉の重みが違う。 隣のルッキーニも、これ以上の戦闘は難しいだろう。 シャーリー「戦闘中に、背中は任せろとか言うなよ…」 バルクホルン ふん!そんな在り来りな運命なんて、私がへし折ってやる! 語気を強めたバルクホルンの怒鳴り声がインカムの容量を超えてハウリングした。 本当にやりそうな勢いだ。『とっとと行け!』と片手のMG42を振り回している。 シャーリー「…わかった。ルッキーニを守りつつ、空母に帰還する。 あたしとルッキーニの背後は任せた」 バルクホルン ああ、任せとけ! エーリカ りょうかーい、任されました! いつもの堅物軍人らしい声と飄々とした返事が耳元に聞こえる。 2人の好意をありがたく受け取って、空母へ進路を向けた。 空母『天城』格納庫 発熱する電池の暑さと硫黄臭でへばっていると、スピーカが鳴った。 こちら、管制室。ユーティライネン中尉とリトヴャク中尉が着艦する。着艦準備を 僕「…さぁ仕事だ」 壁に手を付いて立ち上がり、ヘッドセットを掛ける。 ついでに懐中電灯と点検項目を挟んだバインダーと鉛筆も持つ。 同じようにヘタっていた整備兵も立ち上がり、床に固定していた発進ユニットから ワイヤとチョークを外した。動かないように周りを5人位で取り囲んで手をかけ、 僕「轢かれないように気を付けろよ…せぇのっ!」 いつもより増して重い発進ユニットを中央エレベータまで押す。 エレベータの床に着いたところで、車輪にチョークを噛ませる。隣のもう1台も同じように固定。 2台とも固定されたことを確認する。ちゃんとチョークを噛ませてあるな。 僕「固定完了。管制、中央エレベータ使用許可を」 了解。中央エレベータ、使用可能 「エレベータ、上げます!」 操作盤の前にいる整備兵が昇降ボタンを押す。 蒸気駆動のエレベータが鈍い振動を立てながら上がり始めた。 蒸気機関車のように盛大に吹き出した水蒸気で視界が白く染まる。 染み付いた硫黄臭が水蒸気で落ちるかと期待したが 硫黄は水に溶けにくいから、飛行甲板に出てから直に風で飛ばすしかないようだ。 人工的に作られた向かい風で水蒸気が吹き飛ばされ、間もなく甲板に出ることがわかった。 僕「風で略帽を飛ばされないようにしろよ…チョーク外せ」 飛行甲板に着いたと同時に、何も持っていない整備兵が2台分のチョークを外した。 イェーガー大尉とルッキーニ少尉が着艦する。 事故防止のため、前部エレベータから発進ユニットを上げろ こちら格納庫、発進ユニットを固定した。管制室、前部エレベータの使用許可を こちら管制室。了解した ヘッドセットから一気に賑やかくなった無線の指示が入る。 僕「僕達は今からが本番だ。戦ってきたウィッチに、情けない格好は見せるなよ!」 「「「「了解!」」」」 発破をかけると、いつにも増して気合の入った声が返ってきた。 彼らは女の子の前では世界最強だろう。艦尾側からユーティライネン中尉とリトヴャク中尉が 艦首左舷からはシャーリーとルッキーニ少尉が近づいている。 僕「艦橋側まで一気に押すぞ……3、2、1、Go!」 先のに着艦する2人の邪魔になる前に寄せるべく、発進ユニットを押す手に力を込めた。 空母『天城』上空 しばらく飛ぶと、『大和』に随伴している『天城』が見えた。 艦橋近くでは整備兵に混じって先に降りたエイラとサーニャのストライカーを固定すると 何か指示を出している僕中尉の姿があった。それを横目に見ながら着艦許可を求める。 こちら管制室。貴機の着艦を許可する ノイズとともに着艦許可が下りた。空母と進行方向が正対しているから左舷を一航過して左へ旋回。 旋回を終えて、艦尾に向けて減速しつつ直進する。 着艦まで1マイル インカムから管制官の声が聞こえた。 右舷にある誘導灯で仰俯角を確認しながら艦尾からゆっくりと近づく。 着艦できる距離は確保してあっても滑走路より短いし 上から見ると甲板がまな板ぐらいの大きさにしか見えない。手に汗が滲んだ。 進入コース、適正 管制の指示を信じながら、冷や汗を流して『天城』に着艦した。 作業員の手信号でストライカー発進ユニットへ歩くの速さで近づき、P-51を固定してもらった。 ストライカーを脱いで飛行甲板に下りると、艦が大きく揺れてバランスを崩した。 シャーリー「あっ…」 何も出来ずに後ろへ倒れるかと思ったが、走ってきた影があたしを支えた。 僕「大丈夫か?」 シャーリー「あ、ああ…」 中尉が心配そうに覗き込むが顔がかなり近い。 肩と膝裏に後ろから回された腕で、そのままヒョイと抱かえられた。 シャーリー「えっ、わ、ちょっと待って…」 抗議する間もなく、先にストライカーを脱いだエイラとサーニャがいるほうへ 『お姫様だっこ』されたまま運ばれる。寝転がっていたルッキーニがこっちに気づくと 隣に座っていたサーニャの袖を引っ張った。 ルッキーニ「ねぇサーニャ、見て見て」 サーニャ「どうしたのルッキーニちゃん…」 あたし達の方へ顔をを向けたところでサーニャの顔が真っ赤になった。 エイラ「スゲ~こんなの初めて見たヨ」 ルッキーニ「あー、シャーリーうらやましーな~」 シャーリー「わわ、やめろ見るな恥ずかしい!」 中尉に先に降りた3人のところまでどこ吹く風というように運ばれ、甲板へ足から丁寧に下ろされた。 あたしを下ろしたあと、頭をクシャクシャと撫でられる。 僕「戦闘の疲れが出ている。しばらく休んだほうがいいよ」 それだけ言うとヘッドセットマイクに二言三言話して、P-51のある方へ戻っていった。 あっけに取られて、撫でられた頭を押さえたまましばらくその姿を眺めていた。 同飛行甲板 シャーリーをルッキーニ少尉がいる方へ運んだあと、発進ユニットのあるほうへ戻る。 先に発進ユニットを押してる整備兵に混じって、それを前部エレベータに向けて押した。 格納庫から上げた空の発進ユニットと入れ替えると 大和、ネウロイ化まであと10秒! 空の発進ユニットを甲板へすべて出したのと同時にカウントダウンが始まった。 1台につき5人で残りのそれを取り囲んで押す。 …3、2、1…魔道ダイナモ、起動! 艦橋から船体中央、そこから艦首艦尾方向へ別れて禍々しい六角形の紋様で戦艦を染め上げていく。 僕「余所見すんな!物見遊山で来たんじゃねぇぞ!」 口を半開きにして『大和』の方を見ている整備兵達を叱責すると、慌てて進行方向を向いた。 空の発進ユニットを左舷艦橋近くまで押してから戦艦の方を見遣った。 僕「バケモノめ…」 禍々しく変色していく『大和』を見て思わず吐き捨てるた。 狂気の沙汰としか言うようが無いモノを実戦投入か。 『大和』を染め抜いた『それ』が、最後に指揮所の窓を赤く光らせた。 大和、浮上! 『天城』に乗艦する指揮官の号令一下で 『大和』だったものがホースを引き千切って海面から離れる。物理法則もクソもない。 僕も口を半開きにして『それ』が右から左へと浮上するのを見た。 …整備班、バルクホルン大尉とハルトマン中尉が戻ってくる 管制室からの指令で止まっていた手を慌てて動かす。 艦尾からは護衛任務を終えたバルクホルン大尉とハルトマン中尉が 最終旋回を終えて、着艦のアプローチに入っていた。 僕「…毒を持って毒を制したつもりか」 「中尉、どうしました?」 僕「いや、何でもない。独り言だ」 整備兵に手を振って適当な言い訳を答えた。 ネウロイ化を考えた奴はアスクレピオスのように雷霆で、今回はネウロイの赤いビームで撃ち殺されるだろう。 僕「…嫌な予感がするな」 眉間に皺を寄せて頭を振って不安を追いだそうとしたが タールのようにへばりついて離れなかった。 同飛行甲板 …3、2、1…魔道ダイナモ、起動! 寝転んでいた上体だけ起こして『大和』の方を見た。『大和』の艦橋から徐々に真ん中が その後に前後方向へ戦艦の鉄の黒色が、ネウロイのような模様 に染められていく。 大和ネウロイ化、完了しました!残り約9分 大和、浮上! この空母に乗っているらしいお偉いさんの一声で、隣で航行していた『大和』が 盛大な水しぶきを上げて空へゆっくりと上がった。 シャーリー「おおー、すげー」 ルッキーニ「うひゃー」 エイラ「サーニャ、見ロ見ロ」 サーニャ「もう見てるわ…」 思ったままの感想をこぼして『大和』が向かっている方向を見ていると 『天城』に戻ってきたバルクホルンとエーリカがこっちにやってきた。 シャーリー「2人とも見たか?」 バルクホルン「ああ。空中から大和がネウロイ化しているところを見た」 エーリカ「見てたけどすごいよね~、戦艦をまるごとネウロイにしちゃうなんてさ」 2人と話していると宮藤とリーネ、ペリーヌもあたし達がいる方に来た。 だけど中佐と少佐がまだ帰ってきていない。 シャーリー「宮藤、ミーナ中佐と坂本少佐はまだ帰ってきていないのか?」 宮藤「ええ、まだ空に残っているみたいです」 目を凝らすと、豆粒ほど小さくなった2人のシルエットが見える。殿として残ったのかもしれないな。 シャーリー「ん…本当だ。サンキュー、宮藤」 しがみついたルッキーニの肩に腕を回して、『大和』が飛んでいった方角を見上げる。 ネウロイの巣まで残り5000! 艦橋のスピーカから一刻一刻縮まる距離が伝えられた。 ネウロイを蹴散らしながらたった1隻で突入する姿を見守る。 残り1000…500…0です! 今だ!主砲、斉射ぁ! 0宣言から遅れて吹いてきた突風が、あたしたちの間を抜けて髪を暴れさせた。 髪を押さえ固唾を飲んでその時を待ったが、何も起こらない。 シャーリー「おいまさか…」 ここまで来て失敗か?それはいくら何でも… 主砲撃てません!魔道ダイナモが停止しています! なんてザマだ! 偉いさんが憤慨して拳を打ち付けた音を、マイクが忠実に拾ってスピーカから流れた。 今まで蹴散らされていたネウロイが仕返しとばかりに、今度は『大和』を袋叩きに爆撃し始め 直撃弾が船体を明るく照らすのがここからでもよく見える。 皆、よくやってくれた。だが魔道ダイナモが起動せず主砲が撃てない。作戦は…失敗だ シャーリー「嘘、だろう…?」 爆発が遠雷のように聞こえる中、失敗と周りのどよめきだけが実態を持って聞こえた。 同飛行甲板 皆、よくやってくれた。だが魔道ダイナモが起動せず主砲が撃てない。 作戦は失敗だ……全艦16転回頭 宮藤の震電を止めた発進ユニットに手を掛けたところで止まる。 空母がゆっくりと取り舵をとって左へ傾いた。 「おい、マジかよ…」 「そりゃ無いだろう、ふざけてんのか!?」 「ここまで来て逃亡かよ…」 「まだサカモト少佐とヴィルケ中佐が戻っていないぞ?2人を置き去りにするのか!?」 「バカ、あの人達はちゃんと戻ってくるから変なコト言うな!ここは一度戻るんだよ!」 「だから、こんなところで…」 「何言ってんだ、それじゃ…」 作戦失敗と撤退の宣言で、発進ユニットを押そうとしていた 整備兵たちが任務そっちのけで口論が始めた。 失敗したらロマーニャを明け渡す重要な作戦で、冷静になれなくなるのも仕方がないだろう。 ほぼ全員がロマーニャ人ならば尚更か。思い出したように、今度は僕に矛先が向けて詰め寄った。 「中尉はどっち何ですか!?」 僕「…少し待て。もう一度管制に聞いてみる。 こちら整備班の僕技術中尉だ。ここまで来て逃げ帰るのか?」 何を言っている!上が撤退すると言ったんだ、従うしか無いだろう! 僕「ロマーニャはどうするんだ?市民を見殺しにせよとでも…」 いい加減にしろ! 怒りを顕にした管制官の怒鳴り声が鼓膜を貫いた。 後ろでは撤退準備で火の車になっているらしい指揮所の怒号がヘッドホンから聞こえてくる。 …我々は軍人だが、今ここで撤退して次の戦いに勝てるのなら 1万の市民は犠牲にするしかあるまい。わかってくれ、これは今後のためでもあるんだ… 市民を見捨てロマーニャを捨石にするつもりで、次の戦いに勝つためだの今後のためだと? 怒りと諦めが渦巻き、終いには呆れ、今までの苦労がバカバカしく思えると瞬時に熱が冷え切った。 僕「……了解、任務に戻る。邪魔をしてすまなかった」 重い口を開き、ヘッドセットの電源を切った。黙ったままの整備兵の方へ向き直る。 「中尉、俺たちは…」 僕「…我々はストライカーの整備兵で、作戦の指揮に意見することは任務ではないはずだ」 黙りこくった整備兵たちに向けて白けた言葉を吐いた。 自ら喧嘩を売っておいて、負け戦となると尻尾を巻いて逃げ始める僕達軍人の 鼻で笑ってしまうような愚かさに呆れて力が抜けていく。説明するのも億劫になってきた。 「でも…」 僕「デモもストも無い。本来の任務に戻れ……これは命令だ」 自分たちの国土を踏み躙られて黙っていろなんて言えないし、僕達ではどうすることもできない。 詰め寄った彼らが溜息を付いて、諦めたように発進ユニットを前部エレベータへ押しはじめた。 僕「………」 ヴェネチア上空で鎮座したままのネウロイを黙ったまま睨みつける。 人間の無力さと土壇場でヘマった大和と、全ての元凶となったネウロイを呪った。
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ディースマーニーブス(ディース・マーニーブス) ローマ神話の黄泉の国の神々の総称。
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【元ネタ】史実 【CLASS】セイバー 【マスター】 【真名】シャルルマーニュ(カール1世) 【性別】男 【身長・体重】cm・kg 【属性】秩序・善 【ステータス】筋力:A 耐久:A 敏捷:B 魔力:C 幸運:EX 宝具:EX 【クラス別スキル】 対魔力 A ランクA以下の魔術は全てキャンセル。事実上現代の魔術師では対抗出来ない。 セイバー自身は魔術に関する逸話を持たないが、彼の持つ複数の宝具が全て聖人由来の為、規格外の加護を受けている。特に、腐敗や病などの呪いに対し強力な耐性を持つ。 騎乗 D+ 騎乗の才能。セイバーは生前に乗馬を嗜んでいた。また、彼の率いた軍は騎馬兵団であったとも伝えられている。乗馬に限り、卓越した技術を発揮可能。 【固有スキル】 皇帝特権 A 本来持ち得ないスキルを、本人が主張する事で短期間のみ獲得可能。 Aランク以上となれば、肉体的な負荷すら獲得可能であるが、本人はあまり使いたがらない。 カリスマ A 軍団を指揮する才能。その生涯において四十七回の勝利を得た彼は人間が持ち得る中で最高峰のカリスマを持つ。 勤勉 B 学問や芸術などの知識を自ら高める姿勢。 Bランクとなれば地上のあらゆる知識と特定のサーヴァントの固有スキルを除くBランクまでのあらゆるスキルを努力次第で習得可能になり、入手EXPに30%の上昇補正が入る。 セイバーは皇帝特権のスキルと第三宝具のコンボを持つため、半分死にスキルと化している。 【宝具】 第一宝具 『二重真名・神血聖槍(ロンギヌス)』 ランク A++ 種別 対人宝具 レンジ 1~2 最大補足 1~2人 セイバーが生前に所有していたと伝わる聖槍。この槍を手にした時からセイバーは四十七の戦いにて勝利を得た。 しかし、ある時この槍を手放すと共に病に襲われ、すぐに命を失ったとされる。 かつて神の子を突き穿ちた処刑槍、その処刑人の名を冠した聖遺物。 盲目の処刑人に視力すら与える聖人の血を受けたこの槍は、本来の処刑槍としての機能を失い、手にした者と貫いた者に権能級の癒しと解毒・解呪の祝福をもたらす。 また、その出自から特定宗教にまつわる、あるいは信仰する英霊や人間に対しては全ステータスのランクを1上昇させる程の祝福を与え得る。 セイバー自身もその例に漏れず、上記のステータスはこの宝具による修正も含んでいる。 だが、例えこの宝具でステータスを上昇させたところで、この宝具では攻撃が出来ない(相手を回復させてしまう)為、専ら防戦用の宝具である。 但し、神の御子の祝福が反転して、悪霊・悪魔や化生の類には覿面な攻撃力を持つ。 希少な『二重真名』の特性を持ち、真名解放をスイッチに第二宝具、『二重真名・神血聖剣(ジュワイユース)』に変形する。 第二宝具 『二重真名・神力聖剣(ジュワイユース)』 ランク B+ 種別 対城宝具 レンジ 1~99 最大補足 1000人 セイバーが生前に所有していた剣。黄金の柄と、デュランダルと同質の鋼で作られた刀身を持つ。その柄には聖槍・ロンギヌスの穂先が埋め込まれたと伝わる。 その真実は、ロンギヌスの槍の癒しではなく、力としての権能を振るうために作られた人造兵器であり、つまり第一宝具とは銘の異なる同一の宝具である。 真名解放をスイッチに二つの形態を行き来するため、第一宝具と第二宝具の同時使用は出来ない(その代わりに、セイバー、ランサーのクラスの どちらで召喚されても両方の宝具を扱える)。 人の手によって改造され、神秘を失った為にランクはロンギヌスから低下している。 その刀身からは光のエネルギーが放出され、一度振るえばさながら極大のレーザービームとなり大地を抉り、敵軍を討ち滅ぼす。 そして、この剣には十三の魔術拘束が施されており、一定条件下にて解き放たれるそれらが一つ解放される度に威力を上昇させる。 ほぼ同一の効果を持つ槍が騎士王の伝説に伝わっているが、ロンゴミニアドとロンギヌスは時に同一視される事もある。……たまに。 第三宝具 『皇帝の石(ル・オンプルール・タリスマン)』 ランク C 種別 対帝宝具 レンジ 0 最大捕捉 1人 セイバーの所有するペンダント型の護符。またの名をシャルルマーニュの護符と呼ばれる。 豪奢な宝石があしらわれた黄金のペンダントの内部には、神の御子が磔刑された十字架の木片と聖母の髪が埋め込まれている。 『持つ者を皇帝にする石』とも呼ばれ、かのオットー三世、ナポレオン一世の元に渡った後、行方が分からなくなっている。 この宝具を所有する限り、所有者はAランク相当の黄金律を会得し、耐魔力・幸運スキルに1ランク分の上昇修正を受ける。 そして、皇帝特権のスキルにより会得したスキルを永続的に所有することが出来る。 オットー三世がセイバーの墓を暴いた時、200年の月日を経てもこの護符を身に付けたセイバーの肉体が腐敗していなかった逸話があり、 これにより腐敗などの呪いに対しては聖骸布並みの耐性を持つ。 ちなみに、行方不明となったこの宝具は現在も『実在する宝具』として魔術師達の間でまことしやかに存在を噂されている。 ……もしも実在するならば、それを触媒としてこの英霊を呼び出すことも容易いだろう。 第四宝具 『頂きの鉄王冠(コーローナ・フェッリア)』 ランク B 種別 対帝宝具 レンジ 0 最大捕捉 1人 神の御子の聖遺物にして、東ヨーロッパ世界における皇権の象徴。その逸話から数多くの皇帝達がこの冠で戴冠を受けた。 そのためナポレオン一世、オットー一世などの英霊も同様の宝具を所持する。 聖釘を加工して作り出された王冠であり、それ自体が強大な魔力炉となる為、所有者に魔力を補給し続ける。 この宝具を利用する事でセイバーは魔力補給不要で第二宝具のビームを連続ぶっぱできる。同時に、神性により所有者にCランク相当の耐魔力を与える。 【解説】 フランク王国国王にして西ローマ帝国皇帝。そして叙事詩『ローランの歌』などに伝わるシャルルマーニュ十二勇士を取り纏める軍団長。 故に、史実の存在ながら物語の世界の逸話が融合した英霊である。彼らの物語は中世以降のアーサー王伝説にも影響を与えた。 生涯を通して何処かの土地に定住するという事はなく、彼の在位した46年間、フランク王室は絶えずその位置を動かしていた。 その王政は征服と戦争と布教に費やされ、フランク王国をヨーロッパ世界に轟く強国にせしめた。 また、カロリング・ルネサンス運動を起こし国民の教育水準を上げ、自らも学問に勤しんだ。 敬虔なキリスト教徒であり、民や臣下、家族を想う理想的な王。 背丈195センチの大男であったが、さりとて豪気な性格というわけではなく、寧ろ勤勉で大人しく物腰の柔らかい、乗馬を愛する平和主義の男。 彼が皇帝特権を使いたがらないのも、その真面目さ、勤勉さ故である。 だが、一度戦となれば可能な限り効率的に、最大の戦果をもたらす冷徹な戦鬼となる。 平時の優しさと戦時の恐ろしさこそが、彼が王として十二勇士と民を惹きつけるカリスマの所以なのかも知れない。 総じて、王らしからぬ物腰と性格から誤解されがちであるが、彼の性格の根本にあるのは『王としてのプライドと欲』である。 平和主義である事、人当たりが柔らかい事はこれに矛盾しない。 彼は心の底から自分以上の王は居ないと考えており、民は皆愚かで脆弱だと思っている。 だが、なればこそ、愚かで蒙昧な民は愛おしく、その誰よりも優れた自身が人々を導く王で無くてはならない。 それこそが自身が王として生まれた理由であり、そして御神の意志である、と使命に燃えている。 彼は主人に対し基本的に従順ではあるが、仕える価値無しと見れば、裏切り、あるいは活動を邪魔されない程度に肉体を破壊するなどの事は平然と行える。 彼にとって真に大事なのは王である自分とその仲間達、そしてそれを守る為の願望機であり、マスターは其処に含まれない。 だが、マスターとサーヴァントの間柄でなく、真に信頼し合える仲間として認められれば、彼はその力を十全に振るってくれるだろう。 聖杯にかける願いは『永遠に平和な王国を作り、そこに君臨すること』。 このどこまでも強欲な夢を追い求めるその姿こそが、カロリング朝最大の王、シャルルマーニュそのものである。 ジュワユースとロンギヌスの逸話から変形機能付きの二つの真名持ち宝具を思いついた結果。盛りまくった性能のせいで話作るの諦めるタイプの鯖。 ロンギヌスの特性から、エリザベートやメドゥーサ、ヴラドなどの怪物としての特性を持つ鯖に対して強いと思う。 皇帝特権を使いたがらなかったり、勤勉が死にスキルだったりしていかにもこれ全力じゃないから感が出てるのが痛い。 あとロンゴミニアドと同じ能力の宝具持ちだったりする辺りが最高に泥い。 +TRPGキャラシート 【真名】シャルルマーニュ(カール1世) 【クラス】セイバー 【HP】 /最大HP=5d6+5+8 (キャラシート提出時にダイスを振ってください) 【宝具1】二重真名・神血聖槍(ロンギヌス) 1/1 ランク A++ 種別 対人宝具 レンジ 1~2 最大補足 1~2人 【効果】戦闘フェイズ中に使用可能。この宝具は宝具2と使用回数を共有する 1全陣営から一人を選び、選択した対象のHPを10d6回復する。使用した戦闘フェイズ中、シャルルマーニュの全てのdice判定を+1する 2ただし設定上、悪霊・悪魔や化生の類である場合dice+15をした物理攻撃扱いとなる。 【宝具2】二重真名・神力聖剣(ジュワイユース) 1/1 ランク B+ 種別 対城宝具 レンジ 1~99 最大補足 1000人 【効果】戦闘フェイズ中に使用可能。この宝具は宝具1と使用回数を共有する 1.敵前衛全体にdice+5をして物理あるいは魔術攻撃をする。陣地を破壊する 【宝具3】皇帝の石(ル・オンプルール・タリスマン) ∞/∞ ランク C 種別 対帝宝具 レンジ 0 最大捕捉 1人 常時効果。幸運に関わる判定を常にdice+1する。更にその戦闘フェイズ中、皇帝特権によって上昇させた判定を戦闘フェイズ終了まで維持する。 【宝具4】頂きの鉄王冠(コーローナ・フェッリア) ∞/∞ ランク B 種別 対帝宝具 レンジ 0 最大捕捉 1人 常時効果。ターン開始時に宝具1と2の使用回数を回復する。魔力防御時dice+3する。 【筋力】A 5 【耐久】A 5 【敏捷】B 4 【魔力】C 3 【幸運】EX 8 【スキル1】対魔力 A 魔術攻撃時、dice+5を得る。 【スキル2】皇帝特権 A 1ターンに1度使用できる。任意の判定にdice+5出来る。 【スキル3】カリスマ A 奇襲防御時、dice+5を得る。相手の攻撃時、攻撃対象を自分に変更できる。 【容姿】 【その他】
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ノイエ・カールスラント とある基地 春の陽気が満ちる中、輸送機の前で一人の男と少女が言葉を交わす。 隣でその様子を見ながら初老の医師が微笑んでいる。 何も事情を知らなければいい場面だ。 だが、男の着ている服はカールスラントの軍服。そして冷えるのか両手に白の手袋を嵌め、右腕を吊っていた。 ウルスラ「リハビリ、お疲れさまでした」 俺「ああ、ウーシュには感謝してもしきれないよ」 ウルスラ「私はやれる事をやったまでです」 医師「我々も同じです。どうか大尉、自分を殺し続けた7年を取り戻してきて下さい」 俺「ありがとうドクトル……ウーシュ」 医師に礼を言い、少女の手を握る。右腕が動く度、きしりと金属の擦れる音が鳴る。 ウルスラ「はい。俺さん」 俺「君のおかげで俺は腐らずに済んだ。ありがとう」 ウルスラ「いいんです…最後に、見せてくれませんか?」 俺「ああ」 そう言って両手を合わる。ぱちりと電流の様なものが手の隙間からこぼれだす。 それを見る少女―ウルスラは眼鏡の奥の瞳を輝かせ、ほんの少しの笑みをのぞかせた。 俺「…ファーゼンヴバガン」 電流を散らし、ぐっと力を込める。頭の中で式を展開、証明、終了。 俺「ウーシュ、目つぶって」 ウルスラ「はい」 目を閉じた事を確認してからウルスラの首に先程作ったものをかける。 紐の長さもばっちり。上出来、と心に思いながら位置を整え、目を開けるようにと囁く。 ウルスラ「…何の形ですか?月?」 俺「鮫の歯。研究室で要らないって言うから教授に頼んで貰ってきた…どうだい?」 ウルスラがついついと鮫の歯にガラスが絡み付いたペンダントを人差し指でなぞる。 その様子を見て少しドギマギするが、ふにゃっと笑うのが見えてほっと胸をなでおろした。 俺「君が無事でありますように」 ウルスラ「技術省は安全ですよ?」 俺「よく爆発するからね」 ウルスラ「俺さんもよく爆発させていたじゃないですか」 俺「しばらく実験は出来ないからいいんだよ」 医師「大尉、そろそろお時間ですよ」 笑いながら言い合う二人に、初老の医師が懐中時計を閉じながら告げる。 俺「今行く。じゃあまたなウーシュ」 ウルスラ「はい、姉さまによろしくお願いします」 俺「魔法力接合の考案者だからな。必ず」 ウルスラ「俺さんお元気で」 俺「ああ、またなウーシュ!」 俺が輸送機に駆け寄り、タラップを上る。 もう一度離れたウルスラに目をやり、その光景を目に焼き付ける。 ―奪われた祖国カールスラントとは違う温暖な気候、でも…俺は…… 操縦士「大尉?どうなさいましたか?」 俺「ああ…今行く!」 この一歩が、祖国奪還に繋がるのなら何だってしよう。 機内で発進を待ちながら軋む右腕を見詰める。 あの日失った希望。あの日死別した右腕。だが今、全ては還って来た。 たった一人の少女が全て取り戻してくれた。 俺「奇跡は起こすものなんだ…そうだろ?ウーシュ」 最後のつぶやきはエンジンの轟音に掻き消され、機はロマーニャへと動き出した。 医師「行きましたか」 ウルスラ「はい。皇帝陛下直々の推薦を頂いて501統合戦闘航空団へ…」 医師「彼はよく耐えました。そして貴方も」 ウルスラ「私は手を差し出しただけです」 医師「頑なに手を払ってきた彼に貴方は希望を掴ませました…我々には誰一人として出来なかった」 ウルスラ「買いぶり過ぎ…です、よ」 段々と拙くなる言葉と共に、ウルスラが倒れる。 そんな彼女を、さほど慌てもせずに医師はささえ、溜息をついた。 医師「大丈夫ですか?…この一年程働き詰めでしたからね。少し休みましょう」 ウルスラ「いえ、ジェットストライカーの調整をしなければいけませんので…」 医師「駄目です。せめて一日だけでも寝ていただかないと」 ウルスラ「大丈夫です」 医師「目が閉じてますよ……あ、もう」 幸せそうに眠る天使を抱きかかえ、春に霞む大尉の輸送機を眺める。 かつての英雄が7年を飛び越え、再び戦場に帰った。揺るがぬ鋼の意思を携えて。 医師「まったく、大尉の周りは頑固者ばかりだ」 ロマーニャ基地 執務室 かりかりとペンが書類の上を走る。先程から広い室内を支配するのはペンの音だけ。 しかし粗方作業は終わっているようで先刻よりペンの音は繊細だった。 一枚が終わりまた一枚。と捲った下にはカールスラント王族の封蝋が押された封筒と書類がぽんと乱雑に置かれていた。 ミーナ(…嘘でしょう) 頭を抱えながら封筒を開け、内容を読みまた溜息。 ミーナ(補給人員…それも皇帝陛下のサイン入り) 坂本「ほう、また誰か来るのか?」 ミーナ「きゃっ…美緒、驚かさないで頂戴」 坂本「はっはっは。気付かないミーナもミーナだ」 ミーナ「書類手続きを手伝ってもらいますよ?少佐」 坂本「なーにバルクホルンにでも手伝ってもらえばいいさ」 軽口を叩きながら坂本が手紙の内容を読み、片手で付属の書類を探る。 すかさずミーナが書類を取り内容を読み上げた。 ミーナ「カールスラント空軍所属の俺大尉。元技術省所属ね。 主にロケット兵器などの開発に尽力。大学院に通っていて正確には客員大尉……滅茶苦茶よ」 坂本「男のウィッチとは珍しいな。撃墜数137…ほう、スーパーエースじゃないか」 ミーナ「大戦初期のオストマルク戦線のみの戦果よ。それ以降の作戦には不参加……正直、あまりいい噂は無いわ」 坂本「…まあ、聞いた事はあるが」 眉間にしわを寄せ、坂本が言い淀む。 大戦初期、最強とまで謳われたカールスラント最高のウィッチ。 ミーナ「有名よね『赤鼻』。錬金術師と呼ばれたウィッチ。 オストマルクでの負傷後、上層部に取り入って一人安全な技術省に逃げた…ダイナモ作戦すら参加しなかった裏切り者」 怒気が見え隠れするミーナの声に、坂本は苦笑すると、かつての教官の言葉を思い出しながら言う。 坂本「戦果の持ち逃げ、臆病者、扶桑でもよくコイツみたいになるなと言われていたよ」 ミーナ「私も言われたわ…でも、そんな人には見えなかったけどね」 坂本「ミーナはあった事があるのか?」 ミーナ「ええ、技術省に行ったときに。なんとなくよ?」 それでも許せないけれど。 そう言うと、ミーナは書類を処理済みの箱へと置いた。 坂本「まあ、見ない事には分からないな…」 ミーナ「でも来る事に変わりはないわ。一応エースだったし、それに皇帝陛下からの御命令はさすがに断れないし」 坂本「…再結成したばかりだと言うのにまた忙しくなるな」 ミーナ「使い物にならなければ本国に送り返すまでよ。他の子達と何もなければいいんだけれど…」 坂本「はっはっは!どんな奴が来るか楽しみにしようじゃないか!」 ページ先頭へ
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妖精工師アーニャ P 火/自然 (4) クリーチャー:スノーフェアリー/マシン・イーター 3000+ ■バトルゾーンにある自分のマシン・イーターのパワーは+2000される。 イラスト/名前:メイコ フレーバーテキスト 評価 名前 コメント
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FrontPageへ Mapへ ヨーロッパ北へ ヨーロッパ西へ ヨーロッパ東へ アフリカ西へ アフリカ南へ アフリカ東・インドへ 中南米・カリブへ Mサイズへ 上陸地へ カンパーニャ地方 出現NPC ●⇒出入口 ●⇒奥地入り口
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*注:時系列的には相当、進みすぎてしまった短編です。 お読みいただけるなら、そこの所をご了承頂ければ、幸いです。 概ねTVA2期8~10話に近い時期でしょうか。 半ば自業自得な理由から、オラーシャ陸軍より扶桑皇国海軍航空隊へ「出向」。 数奇な経緯を経て、やはり奇妙な経歴から「航空戦艦」へ改装された「日向」「伊勢」からなる、 第七航空戦隊。それに座乗する六六六空の一員として、私は当時、地中海にて従軍していた。 ネウロイのヴェネチアハイヴ肥大化。同地方陥落は、連合軍全体に凄まじい震撼を齎した。 扶桑皇国も、後の戦史で有名な一連の援一号から三号作戦を発令。 その三号作戦において、巨大戦艦「大和」「武蔵」と第七航空戦隊。 大小空母三隻、重巡四隻、軽巡二隻、駆逐艦一六隻。 油槽船、輸送艦、補給艦を含めれば、六〇隻を軽く超える艦隊を派兵していた。 私が「彼女」とアフリカ方面で面識を持つのは、その作戦の中の一幕に於いてであった。 「アフリカの星との奇妙な邂逅・南号作戦一部始末」 「航空戦艦二隻を使った、アフリカへの強行輸送作戦ですかあ…」 飛行隊の主計業務補助を頻繁に行なっていたことから、ついに短期間ではあるが、 経理学校で短期集合教育を受ける羽目になり、「算盤を弾くウィッチ」になってしまった私。 クラーラ・ウラディミロナ・バラノワ中尉が、余り機嫌が良さそうとは言えない出雲隊長。 かのバロネスに呼び出され、陸上司令部で仔細を聞いたときは、他人ごとのように、 「そりゃまた贅沢な」と、間の抜けた感想を抱いたものであった。 言うまでもないことだが大型軍艦。それも高速を発揮しうる大出力機関を搭載した艦は、 高品質な重油をとんでもない分量で要求する。大型高速輸送船でさえ、青くなる分量を。 「ブリタニア空海軍がマルタを維持してくれていれば良かったんだが、今やあそこはネウロイのネストだ。 並大抵の護送船団ならば、先日のような航空攻撃を受けて、瞬く間に壊滅しかねない」 「あの時は…流石にここで駄目かと、色々覚悟しましたね」 そう。 ヴェネチア陥落に恐慌状態に陥った、ブリタニア陸空軍アフリカ方面軍および地中海艦隊。 彼等は「こんな後方までネウロイが来るはずがない」と、地中海の要衝マルタの防備を、ほぼ放棄。 同方面の艦隊及び航空部隊を、ロマーニャ北部防衛に全てつぎ込んでしまった。 そこへ大型重装甲のネウロイが襲来。幸いにして、事前のレーダー警戒による警報が間に合い、 民間人と守備隊のかなりを、形振り構わずかき集めた船舶で、逃すところまではうまくいった。 「あのヒヨっ子…いや、あれはもう立派な准士官クラスの腕前だな。501に出向している宮藤とかいったか。 あいつが、大和から試作機を引っ張り出すなんて、非常識をしでかさなければ、どうなったことか」 あなたが非常識という言葉を使いますかい。 喉元まで出かかった言葉を慌てて飲み込みつつ、私は当時の戦闘を軽い恐怖と共に思い出した。 辛うじてマルタ陥落の警報が届き、艦隊は対空警戒序列から対空戦闘用意に移行。 程なくして、戦艦や重巡、空母に搭載された大型電探が巨大ネウロイを捕捉。 指揮統制巡洋艦へ改装された旗艦「愛宕」からの命令に従い、私たち六六六空。 そして空母「天城」「千代田」「千歳」に搭載された、戦闘機八〇機の要撃は辛うじて間に合った。 しかし「間に合っただけ」であった。 「三七ミリが豆鉄砲みたいに!?」 「撃った端から再生していきますよ、あの『夕張』より早い!」 「…これ以上、シールドが、もたない!」 しかし、まるで大型爆弾のような形状をした、あのネウロイはNS-37、五式三〇ミリ。 戦闘機隊の機関砲と噴進弾による波状攻撃。 それらを蠅か蚊のように押しのけ、逆に強力なビーム攻撃の弾幕により、過半が魔法力の限界に達した。 巨大戦艦と航空戦艦四隻を含む、艦隊の全力対空射撃も、一時的に侵攻を押しとどめるに過ぎず。 「高雄が…!?」 「大和が、花火みたいに…」 あろうことか、近代化改修を終えたばかりの扶桑の重巡。「高雄」が大破航行不能に、 医務室爆発で一時的に艦内が混乱していた、「大和」さえ左舷高射火器全滅という損害を負った。 501JFWから援護に来てくれた、ブリタニア空軍のリネット・ビショップ曹長。 信じがたいことに、彼女は性能良好とは言いがたいボーイズ対戦車ライフルと、高性能ではあるが、 癖も強いスピットファイアMk22を手足のように扱い、一時は単身食い止めてくれた。 後々に知ったのだが、彼女が所属していたのは連合軍第501統合戦闘航空団。 僅か11名でガリアを解放した、精鋭中の精鋭であった。 おっとりした外見からは予想もつかなかったが、彼女も一騎当千の精鋭部隊の一員だったのだ。 だが、単機であの化物に叶うはずもない。 何しろ数個飛行隊のウィッチ、戦闘機。そして46サンチ、36サンチ主砲多数の直撃をものともしない、 正真正銘の化物、対抗不可能な存在であったのだ。 私たちが陽動攻撃を仕掛けようとも、最も危険な存在を彼女と認識したネウロイは、 集中攻撃を止めることはなかった。 「人の恩人を、いたぶって遊ぶな!この○☓△□!!」 後で列機のソーニャに言われて知ったのだが、私はあらん限りのスラングを叫びつつ、 延々と五式三〇ミリ機関砲を撃ちこみ続け、銃身が焼けついては機械的に交換し、 乱射を続けていたという。それも、普段は使わない弾道補正の魔法を、フル活用し。 多分、そういうスラングでも叫び、固有魔法をフル稼働しないと、もたないほどの恐怖だったのだ。 実際、戦闘を終えて「伊勢」に降りた後、私は暫く恐怖による悪寒で、震えが止まらなかった。 その後の宮藤軍曹と試製「震電」による大活躍により、私たちも艦隊も事なきを得たが、 それについては人口に膾炙しているため、割愛する。 「でまあ、501はロマーニャ方面防空で手一杯。504は未だ再編が完結していない。 他の欧州海軍も、ブリタニアを除けば、あのネスト排除作戦に備え、出師準備の真っ最中だ」 「それで格納庫を持つ航空戦艦を、高速貨物船替わりに、物資欠乏気味のアフリカへ走らせろ、と」 「さすがにブリタニア海軍も、一応は責任を感じているらしい。燃料は全てあっち持ちだ。 例のネスト排除作戦。その準備のための情報収集部隊の陽動も兼ねて、 機動部隊を出し、援護もしてくれる。空母三隻に戦艦二隻が基幹だ、いい餌にはなるだろう」 相当に露悪的な物言いだったが、反感は覚えなかった。 私達は大型ネウロイを洋上で迎撃、もしくは船団護衛任務が長かったためか、 「ネウロイに人の航続距離の常識は通用しない」という感覚が、自然と身についている。 そんな視点からすれば「後方ならば攻撃を受けるはずもない」と、浅慮に走り。 よりにもよって要衝の防備をまるまる放棄し、艦隊全滅の危機を演出してくれたブリタニア。 彼等に対し好意を抱けるはずもなかった。 「伊勢、日向ともに格納庫の過半を物資積載に使う。そのため出せる人員は半分以下だ」 「じゃあ、余程の手練を選ばないといけませんね。うちだと…」 「何を他人ごとみたいな顔をしている、お前も行くんだよ」 「はい?」 一応は中尉の階級章を佩用し、当時、飛行時間も1600時間を越えるところまで来たが、 私は軍を退くまで「自分に才なし」と思っていた。それは今でも変わらない考えだ。 あのネウロイや精鋭中の精鋭、501には叶わないとは言え、六六六空には私より上手は、 それこそ一ダースを超える数で居るはずだ。うだつの上がらない戦爆ウィッチに出番があるとは… 「主計参謀兼任の清水主計長が、現地補給の指揮を務めるが、とにかく主計士官が足りてない。 その点、短期とは言え主計士官教育を受け、実務経験も長く、しかもウィッチとなれば、な」 「私は空飛ぶ金庫番ですか…」 「それだけでもない、まあ聞け」 隊長は珍しく、困ったように翡翠がかった黒髪を軽く掻くと、大きな声では言うなよ?と釘を差し、 これまた意外な内容を伝えてきた。 「今回の任務。まずはアフリカ戦線経験者、ベアールとエレオノールは外す。 万が一とは思うが、過剰な刺激を与えたくはない。過保護と思うか?」 「あのお二人なら大丈夫とは思いますが、慎重を期するなら…何か参謀みたいな口調ですね、これ」 あの二人は亡命政権乱立により、各国軍より白眼視視された、ガリア軍のウィッチとして。 補給不十分なアフリカ戦線で、幾度も地獄をみている。多分、私とは比較にならないほど。 日頃は概ね快活、もしくは温厚な二人なのだが、アフリカに関わる話題になると、 口が重くなり、時には若干辛そうな、もしくは酷く遠い目に変わってしまうのだ。 比較するのも失礼だが、私も嘗て、心労の果てにアルコール依存症に耽溺しかかったたことがある。 今や貴重な要撃、あるいは対地攻撃のエキスパートの二人に、不要な心理的負担は避けた方が良い。 隊長が口には出さないが、心底二人を案じているのは、私のような半端者でも察しはついた。 「その上で『腕利き』の定義が、今回は多少異なってくる。あそこは陸上ネウロイの襲撃も多い。 対地攻撃の経験が豊富な者も、ある程度は編成に含めねばならない」 「後は…この方面が庭の、ロマーニャの三人も外せませんよね?」 「それもある。あの三人、リーチェはお前と同じく対地攻撃が得意で、バッシスはなかなかの遣い手。 リッピはやはり、主計士官が足りない状態では、頼りになるからな」 つまり、ウラル戦線にいた頃と同じ。陸空双方の状況に対応せねばならず 更には主計任務も多く、この方面を知り尽くした人間は外せない。そういう事になる。 「今回、先方より緊急補充要求のあった物資。それを格納庫に押しこんで、 その上で何とか乗るのは、いいところ8名から10名…選考には難儀してるよ」 「隊長は、どうされるんです?」 「却下された。神経過敏だと私は思っているが、カールスラント空軍参謀本部や陸サン。 そっちからの要請で。貴族将校が戦艦部隊を押し立ててやってきたという状態は、 下手をすれば、戦闘神経症気味な連中から、強い反感を買いかねない、と」 「それじゃあ少佐か…大尉の何れか。その中から指揮官を?」 何で中尉風情がいつの間にか、飛行隊の最高責任者とここまで話し込んでいるのか。 そんな事を思ったが、どうも今回に限れば主計特技徽章持ちの私が、 主導せねばならない所も多く、早めに話を通しておきたかった、ということらしい。 「まあ、そうなる。只、これまた人選が難しい理由が、もうひとつある」 「隊長がそこまで悩まれるってのも珍しいですね。それで、理由とは何でしょう?」 「…これに目を通してくれないか」 そういって、出雲隊長が私に手渡した(この人は部下相手でも、物を放ったり滑らせたりはしない)、 一通の書類は、写真入りの人事考課表であった。それも、大概の人間が知っている著名人の。 「アフリカの星って、オラーシャでも有名な人でしたよ。マルセイユ大尉、彼女が一体…」 「命令無視、独断専行、過去に友軍ウィッチへ実弾を用いての『悪戯』数回。その他もろもろ。 正直、ウィッチを含めてカールスラント空軍部内で、彼女を敬遠している者は多い。 うちの飛行隊でも…ハーケは余りそう言うのを気にせんが、他のは皆、基本的に生真面目だからな」 「うわっちゃあ…」 前線で、莫大な戦果や高い技量を示し、それゆえに我侭が押し通ってしまう。 そういう事例はよくある。この部隊とて、余り表には出せない手段で、戦力強化を図ってきた。 だが「個人」レベルで軍全体で敬遠する者が。 それも将軍でもなく、大尉クラスで多数存在するというのは、異例中の異例であった。 確かに考課表を見ると、毀誉褒貶ではすまない遍歴が掲載されている。 「人事に関しては、こちらと司令部でも協議し、検討してみる。 クララ、そっちにはウィッチ用の補給物資。その調達をリッピと一緒に頼む。 補給廠へは既に、制式な要請は出した。清水参謀の助けになってくれ」 「了解しました、微力を尽くします」 これはえらいことになった。たかだか一ヶ月の短期教育を受けただけの、航空ウィッチさえ動員。 陸上部隊やインフラ関係の需品は兎も角、ウィッチ用の装備を一通り確保して来いというのだから。 私は敬礼して、出雲隊長の元を辞すると、大慌てで今は陸上基地で原隊に一時出向。 ロマーニャでもMC205、G55と並行して配備され始めた、Bf109Kの教育を行なっている、 ティリアナ・リッピ中尉の元へ、通信を借りて連絡を取ると、今度はタラント港湾管理部に連絡。 大型トラック1台の準備を、至急要請した。 ラッタルを昇降し、舷門へ駆け続けていると、誰かにぶつかった。 見れば、向こうも早速多忙そうになった、清水主計参謀だった。愛用の銀縁眼鏡のズレを直している。 「ああ、すいません。大丈夫でしたか」 「いや、そりゃ気にしなくて良い。見る限りそっちもらしいな」 よろめきかけた中佐を支え、その後に二人で舷門を早足で駆け下りながら、 私たちは互いの情報交換に移った。 「こっちは補給廠と弾薬廠、後は補給艦巡りだ。 弾薬は補給艦がしこたま運んできたので、何とかはなるが…それ以外が、ね」 「やっぱり糧食や燃料、真水ですか?」 「特に燃料だね。ブリタニア海軍が今回は負担すると言っているが、 連中、こっちが見ていないと、どんな重油を送ってくるか」 前線の兵站将校って、大概あんなものですけれどね。 私はブリタニアの補給を安心しきって待っていたら、機関が故障を起こしかねない。 とんでもない低質重油が回ってきて、カンカンになった駆逐隊司令のことを、話題にだした。 「確か17駆逐隊が哨戒行動に出ようとした際、凄い粗悪品を渡されたんでしたっけ?」 「機関長がぎりぎりで気づいたが、そのまま注油したら罐もタービンも故障しかねない代物をね。 そっちも気をつけるんだぞ。ウィッチの装備品は詳しくは分からんが…」 「ええ。ここも前線に近いですからね、肝に銘じておきます」 互いに敬礼と答礼を手短にかわすと、清水主計中佐は、 港湾管理部より借り受け、既に玄門近くに回されていたジープに飛び乗り。 私は私で、大型車輌区画で手配されているはずの、 すっかり馴染みとなったGMCトラックを目指して走り始めた。 「先任、お待たせしましたぁーー」 「大体の話は聞いてるわよ、行きましょう」 原隊でBf109KやG55を用いた中高度以上での戦闘、長距離飛行。 あるいは洋上航法を、短期間とは言え教え込もうと、何くれと多忙だった先任。 ティリアナ・リッピ中尉は、仕立ての良い航空軍衣を腕まくりして、GMCの補助席に飛び乗ってきた。 流石は地元で、なおかつ扶桑海軍艦隊という乗客が来訪し、実家にビジネスチャンスが訪れたせいか。 最近のリッピ中尉は、教官出向任務でも哨戒任務でも。 そしてこういう兵站の交渉事でもえらく元気だ。元々、そういう質の人だとリーチェから聞いていたけど。 エンジンはかかりっぱなしになっていたので、 ギアチェンジを行ってクラッチ、アクセルの踏みこみを変えれば、 6輪トラックは多少古びているものの、快調に走りだした。流石は信頼性第一のリベリオン製だ。 「清水主計長の方なんだけれど、私とリョーコさんで補給廠に、多少話は通しておいたから」 「そちらのご実家、タラントの補給廠までお客さんなんですか?」 「勿論、それにリョーコさんの実家も海産物関係だから、最近は仕事増えてるみたいよ」 私の隣で、既に補給品リストに優先順位をペンで付けている、この元気者のロマーニャ人中尉。 彼女の実家はちょっとした中堅商家であり、軽工業製品から食料雑貨まで、手広く扱っている。 そしてリョーコさんこと、リョーコ・アラシロ・バッシス中尉の実家は、 元は漁師の家系ということもあり、ここの網元で、元々リッピ中尉の実家との取引が多かったらしい。 まして魚介類を好む扶桑人が四桁でやってきたのだ、確かに絶好の商機だろう。 「重油まではどうにもならないけれど、 糧食と真水は多少、手に入りやすくなってるんじゃないかしら」 「それだけでも、大分手間は省けてますよ…問題はうちらですね」 「一応、目は通したけれど、こりゃまた難しい注文品がならんでるわねえ」 今、清水主計長が随所で話を付けているのは、アフリカ方面軍一般将兵向けの需品、兵器、弾薬。 そして私たち二人が、航空補給廠で調達しなければならないのは- 「第31統合戦闘飛行隊“アフリカ”。うち以上の曲者ぞろいとは聞いていたけれど、 この需品要求リストを見ていると、確かに納得は行くわね」 「そのリスト通りに揃えるならば、港湾管理部はトラック1台が手一杯と言っていましたが、 何らかの手段でトレーラーが要りますよ」 連合軍第31統合戦闘飛行隊、通称「アフリカ」。 カールスラント空軍、扶桑皇国陸軍航空隊の現地部隊が、成り行きで独立混成を採り、 いつの間にか陸戦ウィッチ部隊さえ抱え込み、北部アフリカの守護神として君臨する精鋭。 部隊編成当初こそ苦労したものの、それ以降は扶桑陸海軍やオラーシャ陸軍の「一部」。 彼等から潤沢な補給を受けられるよう漕ぎ着けた、私たちよりも余程の苦労を負っているのだろう。 とはいえ… 「扶桑の三式戦、これはまあⅡ型以降できちんと動くものならと、ハードルはまだ低い。 陸戦ストライカーもM4やマチルダの補修部品なら、多分、何とかなるでしょう。 でもBf109のF型なんて…もう何処にも残ってないわよ。G型でさえK型に更新され始めたのに」 「そのあたりは榊班長やシゲさんに、何とか調整を頼んでみるとして…火器弾薬も面倒ですね。 MG34の防塵仕様、マルセイユ大尉専用の特注品。予備まで含めて準備。これはまだ良いですが」 ハンドルを握る私と、助手席に座るリッピ中尉は揃ったかのようにため息を付いた。 ストライカーユニットはまだ、何とかなる可能性が高い。 三式戦は欧州製魔導エンジン換装を条件に、エアフレームがかなり各国に輸出されている。 ロマーニャの補給廠でも、交渉すればなんとかなる可能性はある。 Bf109も最悪、G型の魔法力バランスを調整して、誤魔化して勘弁してもらうしかない。 陸戦ストライカーに関しては、私は造詣はそんなに深くはないけれど、 M4とマチルダⅡといえばリベリオンとブリタニアの傑作で、規格化大量製造されている。 手管を使って何も入手できないことは、流石にないだろう。 しかし… 「FLAK36とボヨールド40mmって、軍艦の格納庫に詰める代物なんですかね。 確か88mm高射砲に、うちらの母艦もしこたま積んでる、あのごつい機関砲ですよね?」 「陸戦ウィッチか高射砲兵用だろうけど、補給申請元は飛行隊だし。まさか担いで飛ぶ気かしら」 「…ご冗談を」 その後の航空補給廠では、これまでにないほどに混乱した交渉となった。 ロマーニャ人は一般的に、女性に甘いと言われている。それは間違ってはいない。 特にこの地の上空、陸上を守っているウィッチには、相当良くしてくれている。 しかし31JFSからの特注品揃いの注文には、流石に担当兵站将校も閉口したのだ。 「そりゃあ、揃えられるものがあれば、何とかしてあげたいさ。しかし物には限度があるぜ?」 「まあ、そうですよねえ…」 私ら二人と、三十路絡みの兵站将校の少佐は頭を抱えた。 ここはウィッチ専用の兵器廠でもあり、陸戦、航空ウィッチ用の装備であれば、 多少の無理が利かないことはないのだが… 「確かにここはウィッチのための補給廠だが、渡せるものには限りがある。 航空機関砲ならまだしも、FLAKやボヨールドって、そりゃ高射砲兵か弾薬廠の担当じゃないかな…」 「それが航空ウィッチ用重火器として、申請が来てまして。31JFSからですが」 「何?…そうか31か、思い出した。確かそんなのを扱う扶桑のウィッチが、あっちにはいたよ」 どうやらそのウィッチについては、彼も心当たりがあったらしい。 嘆息しつつ「多少待ってくれ」と言い、何処かへ電話をつなぐと、十数分話し込み、 肩をすくめながら戻ってきた。相手は恐らく弾薬廠か、高射砲兵部隊かな? 「ストライカーと機銃、他の航空装備や陸戦ウィッチ用の装備。それは何とかする。 109はG型だが、これはどうにもならない。そっちで我慢してもらうしかない」 「ご面倒をおかけします」「有難う御座います」 「それで重火器については…ここの高射砲兵が、1基ずつなら何とかすると言っている」 その分、君らにここの要地防空を気張ってもらうのが条件だがね。 そっちの指揮官にも、最低でも常時1個小隊は飛ばしておいて欲しい。そう伝えておいた。 なかなか様になるウィンクと共に、件の兵站将校殿は融通を約束してくれた高射砲兵部隊に、 正式な譲渡命令書類と、彼等が布陣している場所への地図も寄越してくれた。 …まさか私までナンパしようとするとは、思わなかったけれど。 結局、一連の補給品が揃ったのは、概ね5日後。 三式戦はDB605搭載型が回ってきたけれど、Bf109はG2型が限界で、F型は何ともならなかった。 陸戦ウィッチの装備は、弾薬とストライカーの補修部品。防塵ゴーグルや鉄鉢。 そういったものに関しては、むしろ潤沢だった。 聞けばリベリオンが本腰を入れ、この方面の山岳防御に潤沢な兵站、補給を回しが始めたという。 「世界の工場」とはよくぞいったもの… そういえば、私もソーニャもリベリオンのストライカー使ってたし。 今でも予備装備で持ってきたけれど。 「MGのそれも34の防塵対策ねえ…陸戦想定で良ければ、手を貸してもいいぜ?」 「そうだ、崎山さんがいたんだ…」 「これで一安心ですね」 幸いにして、マルセイユ大尉専用のMG34に関しては、 武装救難小隊でも使っている、MG42用ダストカバーを、 手品のように崎山中尉が数分で仕込んでくれたことで、何とかなった。 扶桑の諺で「餅は餅屋」というのがあるらしいけれど、 こういう時、「本職」がいてくれるのは本当に有り難い。 「しっかしうちでもMG42使ってるが、34はそれ以上に凝ってる上に、これ、銃身や薬室も特製だぞ。 確かにあの嬢ちゃんになら、こんだけの機銃を与えても不思議じゃないがな」 「崎山小隊長、ご存知なんですか?」 「ああ。アフリカにちっと浸透偵察に行ったこともあってね。そん時に護衛してくれたことがある。 問題児だが確かにありゃあ、天才だよ。お前さん方の飛行隊長でも、勝てるかな?」 「それ、隊長の前では言わないでくださいよ?」 私らが崎山中尉の調整を受けたMG34。そしてその予備銃身や部品を、 再度防水・防塵カンバスに包み直しているとき、後ろではあちらはあちらで、 榊班長と勇音が難しい顔をしていた。見ればやはり、大尉専用のBf109Gの調整らしい。 「トリム、タブを弄れるだけ弄ってはみました。過給機のダストカバーも何とか。 魔法力バランス調整も、速度より運動性に割り振ってます。とはいっても」 「感心は出来ねえよなあ。これ、その気になれば正規仕様には戻せるんだな?」 「親父さんの手も借りましたし、それは何とかなります。でも、危なっかしいのは同感ですよ」 勇音と榊班長が、調達してきたBf109-G2を何とかF型に近づけないか。 魔法力バランスだけではなく、タブ、トリム、そういったものさえ弄繰り回し、苦闘していたようだ。 逆に三式戦はノーラさんが嘗て使ったものに近く、そのままでいいとのことで楽なものだが、 申請に関して調べてみると、一概にエースの我侭故とは言い切れない、重い理由があったのだ。 「まあ、一度自分を墜落させたストライカーなんて、誰でも使いたくはないんでしょうけどね」 「いっそのことメルスじゃなくて、もう少し頑丈な奴に乗り換えてくれたら、話は早えんだがなあ」 そう、アフリカ戦線切っての。世界規模で見ても五指に入る最強の航空エースウィッチ。 ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉は、過去にG型での出撃を司令部勅命で強いられ、 エンジントラブルにより墜落事故に見舞われている。 本人は回復可能な範囲の負傷で、何とか事なきを得たものの、長い付き合いの使い魔は「戦死」。 今の使い魔は、その子供らしいけれど…振り回されるのはたまったものではないが、 安心して使える、なれた機材で戦いたいという気持ちは、前線の人間なら皆、一緒だろう。 ましてウィッチにとって、一心同体ともいえる使い魔を亡くしてしまっては、尚更だ。 「でも私らはまだいいですよねえ、一番災難なのは」 「シゲと高柳サンだな。砲術長も青い顔をしていたが、あんなもの担げるのか?」 「念動力系が強ければ、不可能ではないって喜美佳さんは言ってましたけどねえ」 「オーライ、オーライ、慎重に降ろせ。 カンバスに包んでるとは言え、傷がついたら弾道が狂っちまうぞ」 その当事者。シゲさんこと斯波茂雄整備大尉、「伊勢」整備班長は陣頭指揮をとって、 高速昇降機に載せられた「補給品」を、まずは天板に厳重に固定させてから、作業を開始していた。 後ろでは事前に運び込まれた弾薬を、「日向」より来訪した高柳砲術参謀。 「伊勢」砲術長と砲術分隊の一部が、入念に状態を確認し、信管と弾薬が分離されているか。 状態に異常はないか、整備班ともども目を通し続けている。 「36サンチ主砲や12サンチ高角砲を預かっている立場で何ですが… 航空格納庫の内部に高射砲を積み込むなんてのは、兵学校を出て初めてですね」 「俺だって初めてだよ。というか、こんなことが何度も続いたらたまったものじゃない」 そう、今シゲが降ろしているのは、分解されたFLAK36型高射砲の5m近い砲身。 そして彼等が見ているのは、やはり分解されたボヨールド40mm高射機関砲。 加えて二つの重火器の予備部品、弾薬、信管などであった。 何れも厳重に分離され、梱包され、緊急散水の通電も確認はしているが、安心出来るものではない。 「本艦が『日向』の教訓を取り入れ、半開放格納庫を採用したのが、今回は災いした… そう言ってはさすがに不謹慎でしょうかね?」 「それは仕方ないさ。俺が中瀬さんや君の立場でも、同じことを言うよ」 そう。「日向」にストライカーユニットとその他ウィッチ用装備が搭載され、 「伊勢」に重火器が集中搭載されたのは、その構造の違いからであった。 最初に航空戦艦となった「日向」は、扶桑とリベリオン双方の試行錯誤もあり、 格納庫側面も、かなりの厚みのVH装甲鈑で覆われている。 これはネウロイの攻撃の貫通を許さないまでは有効だが、一度射貫されてしまえば、 エレベーター以外に爆風の抜け道がない。無論、応急設備は多重化されているが。 その反省を受けて、「伊勢」の改装を行う際には、荒天時の作業を想定して、 格納庫は一応、側壁で覆われているものの、内部で爆発が生じた場合、 容易に吹き飛ぶ程度のものであり、それにより爆風を逃し、艦の被害を極限する構造となったのだ。 「よぉーし、次は薬室だ。こいつに傷いったら他が無事でも…ちょっと待ってくれ。 ああ、俺が直接行って監督するわ。砲術長、参謀、少し失礼します」 「うん、宜しく頼むよ」「苦労をかけるね」 まあ、これが仕事ですからね。 危険で精密な重火器を格納庫へ運び込む作業で、披露の浮いた顔に苦笑を刻みつつ、 斯波茂雄整備大尉は、一旦昇降機を上昇させ、 砲身同様、射撃には無傷でいてくれないと困る薬室の格納作業。その監督に掛かり始めた。 その他の糧食、真水、弾薬、小火器、衣料品、医薬品などは、 幸いにして二人のロマーニャウィッチの援護射撃もあり、順調に積載が終わっていた。 とはいえ、88mm高射砲と40mm高射機関砲。それを他のウィッチの火器弾薬も収まっている、 航空格納庫へ収めるという難事で疲労した整備班。 現地へ赴けば、酷暑のもとに同様の作業をせねばならぬ彼等を慮り、 松田少将直々に、連合軍へ出撃を半日遅らせることを申請。乗員には半舷上陸が許された。 「…あれ?先輩、何してるんですか?」 「んー、まあ強いて言えば観光」 陸上基地に展開して、今回は留守番としてタラント防空を預かるソーニャ。 彼女も哨戒シフトの非番で、街に繰り出してきたのだろう。偶然、街路で出会したのだ。 私と七航戦主計班も、やはり現地での作業と現状での疲労を見越され、 半日間ほどの半舷上陸を許可されたのだ。今の私はオラーシャの軍衣を纏ってはいるが、 首から下げたリベリオン製のカメラも相まって、余り軍人には見えない雰囲気だろう。 「この前、ブレストに寄港したときにリベリオンのアーガス。あれが安く買えたからさ。 フィルムまではそんなにお金回ってないけど、記念写真にはいいかなあって」 「でも先輩が撮るのって大概、掘り出し物のバーや酒屋の中とか、道端の野良猫とか、 そんなんばっかじゃないですか」 「良いじゃん、好きなんだし」 でもリベリオンの機械が良いのは、本当ですよねえ。壊れにくいし安いですから。 ソーニャ、ソフィア・レオノア准尉の言葉にうんうんと応じつつ、私は道端をのんびり歩いている、 さっちんのミケと同じくらい、毛足の長い猫を撮ろうとして-逃げられてしまった。 「あーあ、残念でしたー」 「猫って下手なネウロイより、よっぽどすばしっこいのよねえ…そういえばソーニャは?」 見ればソーニャの手元には、菓子や書物といった嗜好品の他に、ワインか何かと思しき、 細長いボトル複数の収まった紙袋が下げられている。これまた見事な観光者風だ。 「バカーチン叔父さんあてに、何かいいお酒はないかなって。 コニャックは無理ですけれど、ここはここで、グラッパっていうワインが特産品みたいで」 「そっかあ…喜望峰周りの、遠い贈り物だねえ。帰ったら一緒に飲めるよう、多めに買っておいたら」 「先輩にはあげませんよ?」 「チッ…って違う、親族相手のプレゼントを飲むほど、酒に飢えてないわよ!」 そんなこんなの半日ほどの休養を経て、やがて出港時刻が到来した。 流石に航空作業勤務前に飲酒はご法度だが、ロマーニャならではの海産物を使った料理を楽しめ。 そして意外と人懐こい野良猫何匹かを触れたのは、僥倖だった。引っ掻かれたけれど。 「甲板分隊、錨上げ。曳索離せ」 「錨あげーー、曳索離せぇ!」 「安全監視員、配置よろし」 「曳船、本艦より距離をとりつつあり」「両舷前進微速」 かくして出向当日となり、今、私の乗り込んでいる「伊勢」を含む、七航戦を中核とした輸送部隊。 連合軍名称「サウスポート」、扶桑皇国海軍名称「南」号作戦は制式に発動された。 しかし発動されたと言っても。 「何ともおっかないですねえ。これ、確か重戦車や大型ストライカーに積む大砲だとか」 「高射砲兵が試験導入していたが、水平射なら1500mで100mm以上を軽々とぶち抜いたそうだ」 「出来ればそれ、ネウロイ相手だけにして欲しいですね」 私ら航空ウィッチに、入出港時にやることはなく(というか邪魔になる)、格納庫でだべっている他はない。 今回の編成は、喜美佳さんこと南坂喜美佳大尉を第一中隊兼任の指揮官に。 編成は流動的だが、先任将校は勇音、リョーコさん。 そして私より先任で、この近隣を知り尽くしているリッピ中尉。 同じくロマーニャウィッチで、現地の対地支援攻撃で活躍してくれるであろうリーチェ。 カールスラントウィッチの中で、唯一、あのエースにさほど敬遠していないティー。 夜戦隊から唯一出向してきてくれ、先日佩用した中尉の階級章が新しい御影。 やはり先任将校で、勇音と同じく大尉への進級が近い先任の龍華さん。 そして末席の私、総勢9名が、今回7航戦が輸送物資の合間合間を縫って搭載させた、 ウィッチ飛行隊の総勢であった。 「吾輩なら持ち上げられんことはないかもしれんな、装填手がいるが」 「88mm砲弾を担いで飛ぶだけでも、大事ですよ。一撃必殺なら頼もしいですが」 「試してみるかな…」「いや、それは止めてください。隊長が目を付けたらどうするんです?」 割り当ては「日向」に喜美佳さん、リョーコさん、リッピ中尉、リーチェ、御影。 そして「伊勢」には勇音、龍華さん、ティー、私といった塩梅である。 本来、2隻合計で23名を搭載、運用できる航空戦艦が、その4割程度しか乗艦させていない。 それだけで、格納庫の有様がどんなものか、わかろうというものだ。 加えて「日向」には茂木中尉と「ハチドリ」-カールスラント製の輸送ヘリコプターさえ積んでいる。 でもって私は、龍華さんと二人で呆れ返ったように、カールスラントの生み出した傑作高射砲。 FLAK36型56口径88ミリ高射砲の分解された姿を眺め、あれこれ雑談していたというわけだ。 「あー、今のうちに哨戒割(ワリ)伝えておくわよー…って二人して、それに釘つけだったのね」 「おっといかん、それがあったな」 「うん、まあね。搭載されてる高角砲はともかく、分解された高射砲を運ぶなんてさ」 それはもう、みんな諦めかかってるから、観念しなさいな。 そんなことを言いながら、勇音がティーを伴って格納庫に入ってきた。 流石にここでは手狭なので、航空科員区画-今は閑散としているが、ここにも需品が山積みだ-で、 折畳式の簡易卓に、今は臨時で「伊勢」飛行隊長を務めている樫城勇音大尉が、 航路、そして恐らくは哨戒班を示すのであろう、A、B、C、Dと書かれたウィッチをかたどったマーク。 それが随所で艦隊上空を交代する様が、記載されている。 「知っての通り、今のマルタは大型ネウロイの巣窟になってる。 だから艦隊もできるだけ、迂回航路で、マルタ島から距離をおいたコースで突っ走る予定。 そこまでは聞いてるわね?」 三人のウィッチが頷くのを確認すると、勇音は航路をなぞった。 タラントを出港した後、マルタをカーブを描くように迂回し、イオニア海から北アフリカへ抜けるルートだ。 「最終目的地はトリポリ。 北アフリカで一番整った港湾のある都市。ここまでおよそ1100海里。 必要な時間は悲観的に見て4日前後。その間、9名を4個班にわけて3時間から4時間。 上空警戒を行う。うちでは私とティー、龍華とクララの組み合わせで」 「確かにそのコンビなら、間違いはないな」 龍華さんの言うとおり、勇音の見立てはかなり的確に、四人の技量と適正を見極めてきた。 ティーは普段、ぼんやりしているように見えて、 案外、やれると思ったときはとんでもない無茶をする。 目端が効いて中隊長勤務の長い勇音が、万が一のブレーキ役に入るのは無難だ。 そして龍華さんは普段の言動こそ芝居がかっているけれど、 勇音と同等以上のベテランでもある。 最近、La-9にすっかり慣熟できたとは言え、空対空戦闘が苦手な私のカバーに入れたのだろう。 「航空哨戒開始の時間は?」 「艦隊出航から一時間後には。可能な限り迂回すると言っても、 マルタからすれば、ロマーニャ南部から中部は攻撃圏内の可能性が高いからね」 「第一陣は喜美佳さんとリョーコさん、第二陣は僕と勇音さん、それ以降は…」 勇音とティーの説明を聞いているうちに、自然と眉間に皺が寄ってきたのを自覚した。 以前、艦隊を襲撃してきたネウロイは、マルタ島から概ね200海里で遭遇した。 あれが進出限界かは分からないが、今回の艦隊航路はそれよりも大回りになっている。 そして仮に電探や空中哨戒で先手を打てても、こちらは9名。 迂回航路ゆえの4日間、どうなることやら… 「大体、何を心配しているか検討は付くけれど、考えすぎても仕方ないわよ」 「なるようになりますって」 「“燃料”が足りないようなら、輜重品から補給するか?」 見れば勇音、ティー、龍華さんがそれぞれ、態度は違えど案ずるような色を浮かべていた。 はっきりと顔に出ていたのだろう。懸念だけではなく- 「あ、ああ。ごめん、何か心配させちゃったわね」 「今回はブリタニアの機動部隊も陽動に出ているし、タラントから300海里程度なら、 うちの隊長とかのスクランブルも期待できるしさ。ま、気楽に行きましょうよ」 「オラーシャ人の私がアフリカ旅行だものねえ、五年前なら考えもしなかったわ」 そう、恐怖がありありと顕になっていたに違いない。 実際、背中には嫌な汗が、艦内はそれなりに空調が効いているのに、伝っていた。 如何なる攻撃を受けても、弾き返し、あるいは即時に再生し、 一万トンを越える巡洋艦を軽々と大破させる、あのネウロイの姿が脳裏から離れないのだ。 「じゃ、各自解散。自分のユニットと武装は、整備任せだけにはしないように」 「レコン0-1(喜美佳)より指揮所、発艦準備よし」 「0-2(リョーコ)、同じく出撃準備よし」 「指揮所より0-1及び0-2、発艦を許可する。無事に戻れ」 指揮所から聴きなれたカタパルト作動の警報音が鳴り響き、程なくしてGがかかる。 魔力による身体強化と慣れで、もうすっかり馴染んでしまったが、一瞬海面が迫るような感覚。 これだけは慣れても気分がいいものじゃない。 文字通り自分の足と言っていいほど馴染んだ紫電改。 その「マ43」魔導エンジンとフラップを、体に染み付いた魔力コントロールで調整し、 程なく上昇角を取る。見れば大尉もぴたりと私の前方に占位している。 「無事発艦を確認、そのまま高度5000まで上昇、爾後、レジーエイトで哨戒に当たられたし」 「0-1了解…さて、行きますか。エスコート、宜しくお願いしますよ?」 「道案内ならお任せあれ」 喜美佳さんらしい冗談めかした態度にあわせ、こっちも多少笑って見せる。 さすがは飛行隊長経験者というべきか、この前の戦闘の影響を、殆ど顔に出していない。 もうひとつの祖国の扶桑。その武士道には反するかもしれないけれど、皆、怖かったろうにね… 私のそんな思いを他所に、大尉と私の紫電改は至って好調であり、 6分もしないうちに指定高度にたどり着いた。 その後、すぐにロッテのままにレジーエイト。 リベリオン海軍航空隊が産み出した、八の字を描くような哨戒飛行を開始する。 「雲量1、快晴、視程6マイル以上、現在異常兆候なし…と」 「扶桑とは違った、青みの強い綺麗な海ですね」 「ええ。荒れるときは荒れますけれど、ここはいいところですよ」 眼下を見れば地中海が。その中心にネウロイの巣窟を作られてしまい、 対岸が激戦地となっていることなど感じさせない、 日光を綺麗に反射した、深く美しい青色をたたえている。 「只、この高度ならそんなに心配はないですが、 シロッコ-あー、アフリカからの強風には気をつけて下さい。 結構な砂塵を含んでることもありますので、海上でも用心しないと駄目です」 「そういえば環ちんと同じ、漁師の家の子ですものね」 「こういうベタ凪の時は、本当に漁にはいいんですけどね…早く、ネウロイに出ていってもらわないと」 そう。アフリカとヴェネチア方面が戦線である状況の中で、ガリアが解放されたとき、 何より喜んだ人々の中には、私ら地中海を漁場とする漁師もいるのだ。 これで安心して魚が取れる、海に船を出せる、と。現にヴェネチアが陥落した後も、 ロマーニャの漁師たちは逞しく、船を出して、海からの贈り物を賜ってきた。 だが、マルタ島が陥落してしまっては、どうにもならない。 北部ロマーニャやヴェネチア方面からの空襲なら、縦深を活用した防空で阻止も出来る。 しかし、昔から地中海貿易の要とさえ言われた、あの島にネウロイが居座ってしまったら。 今のように大型船で大迂回するか、空海軍の援護を受けやすい沿岸漁業しか出来ない。 ブリタニアは、海軍も空軍もけして悪い奴ばかりじゃない。 結構頼りになる、しぶとい連中なのに、どうしてこういう肝心なときに限って間の抜けた- 「知恵と船と少しの勇気があれば、海は何時か必ず、人に懐を開く」 「え?」 少し暗い想念に囚われそうになったとき、喜美佳さんが普段とは少し違う。 穏やかではあるが、真面目な声音で詩的な言葉を口にした。 「涼ちんから教わった一節です。 出雲の家は造船だけでなく、昔は漁業も営んでいたそうですから」 「そういえば隊長、よく舷側から秋刀魚を釣るのが好きでしたものね」 「ええ。そして今の私たちには、知恵も勇気も、そして-」 「まだ一年弱ですけど、生死を共にした『日向』、それに『伊勢』もいましたよね。 そうでした、ちょっと弱気になっていたのかもしれません」 「加えて最新の駆逐艦4隻も、ですよ。でもまあ、そんなの当たり前だから、気にしちゃ駄目です 私だって一度、お馬鹿な参謀を殴り飛ばし、営巣に入った時、彼を破滅させる方法を72通りは」 ちょっと大尉には失礼だったけれど、私は声に出して笑ってしまった。 普段は穏やかで冗談ばかり飛ばしているこの人が、営巣の中でかわらぬ調子で、 「さーて、次はどんな手を考えましょう」と、満面の笑みでノートに何かを書き付けている。 そんなコメディチックな情景を、ありありと想像してしまったのだ。 「でも、大尉が実行に移す前に、勝手に自爆したんでしたっけ」 「その時の参謀を処罰してくれたのが、今回の第一遊撃部隊司令だったりするんですよ」 「人の縁って分からないもんですねえ」 幸いにして艦隊出航より第二直まで、空襲の予兆はなく、今や日は暮れ、 六隻の軍艦は墨絵のように影を落とし、夜目に目立つ白い航跡を残し驀進し続けていた。 「『日向』『伊勢』、艦尾信号、方位変わった… 追間距離5000、進路3-4-5、速度、そのままー」 「取舵」 「とぉーりかぁーじ」 そのころ、第七航空戦隊の護衛。そして彼ら自身も物資輸送任務を仰せつかっている、 第一七駆逐隊旗艦「霜月」では、艦長の畑野少佐が、落ち着いた様子で舵を握っていた。 本来であれば航海長、航海士に任せるのが普通であるが、駆逐艦は員数も少なければ、 戦艦や巡洋艦、空母ほど格式張ってもいない。 故に艦長自らが艦橋に立ち、舵を握ることも珍しいことではなかった。 そして艦長自らが舵を握る「霜月」は、二隻の航空戦艦に遅れることなく、 外周陣形を維持しながら、20ノットの高速巡航のまま、安定して進路を変え始めた。 「うまいもんだな。着任して間なしなのに、元々トップヘビーに補給品過積載のこのフネを、 夜間でそこまで綺麗に扱える奴は、そうそうはいないぞ」 「以前は『酒匂』の航海士も務めていましたが、あれに比べれば随分楽ですよ」 「ありゃあ本当に、正真正銘の『花魁の簪』だからなあ」 そう話しかけてきたのは、その一七駆逐隊を預かる新谷大佐であった。 汐焼した顔、枯れた声、節くれた手指から分かるとおり、生粋の「車引き」でもある。 「それに今回は、司令が清水中佐と一緒に、燃料廠に目を光らせてくれていましたから。 良い燃料を呑んだ駆逐艦ってのは、多少重くてよく回りますよ」 「あの時は迂闊だったぜ。天下のロイヤルネイヴィなら友軍も粗末にはすまいと、 安心したのが少々知恵が足りなかった。前線になっちまえば、皆、あんなもんだろうにな」 そう、新谷は生粋の「車引き」。 つまりは艦隊勤務の長い、海軍大学校への進学も興味がない、生粋の艦艇指揮官だ。 海と部下の掌握、艦隊行動については本能のレベルで身についている。 しかしそれだけに、同じ「船乗り」の仁義や善意というものを、深く信じているところがあり、 前回の哨戒行動出航の時に、「霜月」機関長が感づかなければボイラーが故障しかねない、 低質燃料を丸のみさせられるところだったのだ。 これはブリタニア海軍というより、その燃料廠の担当将校が質の悪い輩だったようであるが、 この苦い経験以降、新谷は機関長や航海参謀、内務長、主計参謀などの誰かを伴い、 他国海軍からの補給作業には必ず、自ら立ち会うようになったのだ。 「『大月』『浦月』『山月』…僚艦の占位に異常なし」 「機関、罐圧及びタービン回転数、異常なし。機械室および発電機、問題なし」 「よぉし、ご苦労。舵戻す、速度赤黒なし」 イオニア海を目指し、進路を刻一刻と変える航空戦艦2隻。それを護衛する秋月型駆逐艦4隻。 僅か6隻からなる艦隊は、速度を20ノット以下に落とすことなく、見事な転舵を行った。 「松田さんもやるなあ。あのでっかいフネ2隻、速度を落とさず編隊を崩さず転舵させるなんて。 昔は少し、頭でっかちな人だったんだが」 「大分、変わられたらしいですよ。日向が航空戦艦になって、否応なしに他国のウィッチ達と関わって」 「俺も少しだけ話をしたが、あのお転婆娘たちの愚痴ばかりだった。 ま、娘を山ほど持った父親が、何時までも石頭でいられる筈がない。家長は妻子にゃ勝てんのだ」 「げほっごほっ!?」 「司令、お風邪ですか?」 「すまない、大丈夫だ。誰か噂でもしとるのかね」 唐突に喉に痰が絡みせきこんだ松田を、心配そうに覗き込んだ通信参謀に、 彼は軽く手を振って、大丈夫だと応じた。 妙だな。時差ぼけや南洋ぼけには気をつけていたし、予防接種や健康診断。 それに最近の軍務でもおかしなところはなかったが…多少、緊張しすぎているのか? 「それよりも菅原中佐、しかと耳を済ましておいてくれ。電探と逆探だけではなく、 君達の拾うネウロイの波も貴重な情報源だ。何より、今回は他国の海軍と共同して動いてる」 「ええ、心得ています。正直、彼等からの通信がなければ、盲目で進むようなものですから」 そう。今回の任務は出雲涼中佐が口にしたとおり、ブリタニア海軍地中海艦隊。 その過半が出動した機動部隊が、マルタ島のネウロイネストへの陽動攻撃を実施。 同時に特殊潜水部隊による、水中隠密浸透偵察さえ行うらしい。 結果がどのように出るかは分からない。 しかし装甲空母三隻、戦艦二隻、巡洋艦及び駆逐艦一三隻、合計一八隻の機動部隊。 彼等は何より、マルタ島の球形状のネウロイネスト。その内部構造偵察を成功させ、 並行して七航戦がアフリカに辿りつけるよう、盛大に電波を発信し、接近しているはずだ。 「艦隊出航から半日、ブリタニア海軍は4日前にジブラルタルから先行出撃している。 そろそろ何らかの接触があるはずだ…航空参謀、夜間哨戒班は問題なく飛んでいるか」 「白水中尉は元々夜間専属ですし、他のウィッチも夜間進攻には大分慣れてきたようです。 電測班、通信班と確認しましたが、異常なく上空警戒をやってくれています」 一時期は涼が航空参謀を務めていたが、欧州派兵に伴う激務。 そのような中、人事の兼任は極力減らすべきだとの意見から、新規に着任した航空参謀。 元は偵察航空隊飛行隊長ながら、負傷により参謀へ転属した千早少佐は、 大丈夫ですよと安心付けるように、快活に応じた。 今、飛んでいる夜間哨戒班は御影以外、リーチェもリッピも夜戦は本業ではない。 とはいえ北洋護衛作戦を含め、夜間から払暁にかけての任務は複数回こなしている。 当初は搭乗員出身ということもあり、どのようにウィッチに接するべきか躊躇した時期もあったが、 元々、豪放磊落かつ元は腕利きの搭乗員である彼は、すぐに打ち解けたようだ。 『レコン0-3(御影)より日向、聞こえますか』 「こちら日向、野村だ。聞こえている、0-3。状況を知らせ」 『魔導針と逆探が波を拾いました、ネウロイじゃありません。 恐らく、友軍艦隊のそれかと、方位0-8-5』 御影の報告と同時に、指揮所に緊張が走った。 友軍艦隊ということは間違い無く、ブリタニア機動部隊だ。 高度5000m以上を飛翔する夜戦ウィッチは、中にはメテオバーストを用いたアマチュア無線で、 夜間の孤独な哨戒任務の、寂しさを紛らわせることもあるという。 六六六空の夜戦隊がそういう習慣を持つか、千早はまだそこまでは聞き及んでいない。 少女のささやかな趣味、内面的なものへ土足で踏み込むのは、流石に躊躇われたのだ。 だが、元々夜戦ウィッチがそのように高い通信、逆単能力を有していることは知っている。 時には艦隊よりも早く、通信波や電探の波を捕まえられることも。 「通信参謀、その方面の波を集中的に拾ってくれ。0-3、白水中尉。そっちも頼む」 『了解です』 「参謀、艦隊間通信と思しきものを受信。恐らくこちら宛でもあります」 「読んでくれ」 「はい。発:K部隊、宛:周辺部隊各位、2215時、ワレ、新種ノねうろいノ接触ヲ受ク。 偵察型、位置座標162-072-058、各方面ハ空襲ニ備ヘラレタシ…」 「マルタ島からきっかり200海里。以前、我々が襲撃を受けた地点とは異なりますが、 あの島から半径370kmが鬼門なのは、間違いなさそうですな」 「後は彼等が、どれほど我々の戦闘報告を受け、戦術を工夫し、十全に戦ってくれるか…か。 航海参謀。中途の回避運動を含め、今から巡航速度を上げて燃料がもつ限界は?」 一瞬黙考し、恐らくは「カミソリ」とさえ言われた怜悧な頭脳の中で、海図と燃料。 各艦の特性を安産し終わったであろう、航海参謀たる後藤大佐は、そうですねと前置きし、応じた。 「全く逃げの一手を打つのであれば24ノット。但し、艦隊運動を考えれば22ノットが限界です。 燃料自体は距離的に問題ありませんが、戦艦と駆逐艦では操舵特性が異なりすぎます」 「心得た。達する、艦隊速力22ノット。現在、ブリタニア機動部隊、マルタ島からのネウロイと交戦中。 各艦、艦内哨戒第二配備。対空見張りを厳と為せ」 「艦内哨戒第二配備、対空見張りを厳と為せ!配置急げ!」 それまでの三交代制の艦内哨戒第三配備から、ニ直の第二配備へと艦隊は警戒態勢を変更した。 本来ならば、直ちに第一配備としたいところだが、ブリタニア海軍の動向、戦闘の結果次第で、 状況はいくらでも流動的に変化する。 松田にしても新谷にしても、そして各艦長や参謀にしても、最低限度の交代制を維持し、 乗員の疲労を極限まで高めることだけでは、避けておきたかった。この状況がいつまで続くか。 それはまだ誰にも分からないのだ。 (中編に続く)