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「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の……」 ルイズがこれで十数回目の召喚の呪文を唱え終わろうかというその時だった。 呪文の途中だというのに突如、ルイズの目の前に電流走る。 そこから突然現れたのは、四つんばいになった男だった。 しかし、そのとき偶然目を閉じていたルイズにはそれが見えるはずもなく…… ……運命に従いし『使い魔』を召喚せよ!」 呪文を唱え終えてしまった。 「ここはどこ…ぬわーーーー!!!」 哀れ、ルイズが杖を振り下ろすと爆音と共に光が炸裂し、 爆発に巻き込まれた男の独白は誰にも聞かれることはなかった。 目を開いたその時、ルイズの瞳に煙の向こうの何かが映った。 まさかと思い、爆発の中心に駆け寄るルイズ。 「……なに?」 煙が晴れ、そこで見たのはまるで人の骸骨のようなスーツを着用した金髪の男だった。 もっとも、爆発にまきこまれてウェルダン一歩手前だったが。 平……民?とルイズが思ったその時 『未来が変わってしまった!!タイムパラドックスだ!』 どこからか渋い男の声が聞こえてきた。 え……?と思考が停止したのもつかの間、 『未来を変えてはいけない!未来を知ることだ!』 渋い男の声とともに、使い魔になる(とルイズが思っていた)男は 電流に包まれ、そのまま消えてしまった。 あとに残されたのは途方にくれるルイズと野次を飛ばす外野、 そして絶句するコルベールのみだった。 終わり …MGS3のシークレットシアターMETAL GEAR RAIDEN snake eraserより、雷電が迷い込み即退場
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「マスターよ、朝だ」 男がすやすやと眠る少女に語りかける、しかし少女は一寸も目に光がささらないようグッと閉じようとしといる とりあえず寝ている少女の毛布をはいだ 「な、なによ!なにごと!」 少女が驚きながら上体を起こす 「朝だから起こした」 「はぇ?そっそう・・・・ってあんた誰よ!」 寝ぼけた表情で男に怒鳴る少女、男が口を開く 「ロムだ」 第二話 少女の使い魔となった戦士 「ああ、昨日召喚した使い魔ね」 ロムを召喚した少女、ルイズはベットの上で上がり欠伸をひとつ、そして命令 「服」 ロムは椅子に掛かっている服を取りに行く、さらにルイズは命令する 「下着も取って」 「何処にある」 「そのクローゼットの下、引き出しに入っている」 言われるままに引き出しを明けて適当なのを取りだし制服と共に渡す するとルイズはネグリジェを脱ぎ始めたのでロムは少し慌てて後ろを向く (やれやれ、やはりこれだけは慣れないな。それにしても何故今女性の肌がこんなにも艶やかに見えるんだ・・・?以前はそれほどでもなかったのに・・・・) 兄さん、それは男性のサガです 「じゃあ服を着せて」 「・・・・・・・・」 ロムは目をそらしながらブラウスのボタンを留めていく 二人は着替えが終えて部屋から出ると目の前のドアから女の子が出てくる。長い赤毛で身長が高く、大きく突き出たバストが特徴的な少女、「微熱」のキュルケ・ツェルプストーだ 「おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズが嫌そうに返すと 「あらあら、やっぱり昨日の召喚は夢じゃなかったのね」 バカにした口調で言うと 「でも平民ではね~、ふふふ、あっはっはっは!」 含み笑いの後の大笑いのコンボにルイズはプルプル震えている (どうやらこの二人の仲は最悪のようだな・・・・、あまりお互い近づけない方が良いか) 二人の交流を見て学習するロム、するとキュルケの後ろから真っ赤で巨大なトカゲが現れた。尻尾が燃え盛る火で出来ているのが主人の胸の様に目立っている 「これって、サラマンダー?」 ルイズが悔しそうに尋ねた 「そうよー、見てよこの大きい尻尾についた大きな火、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ!惚れ惚れしちゃうわ~」 「あんた『火』属性だもんね」 「ええ。微熱のキュルケですもの、あなたと違って私はちゃんと自分に相応しい使い魔を召喚してるわ、それよりも・・・・あなたの使い魔は」 キュルケはルイズの後ろで手を腰に当てて一部始終を見ていたロムに視線を合わせる 「貴方お名前は?」 「ロム・ストール」 「ロム・ストール?ここらへんでは聞かない名前ね。じゃあお先に、ゼロのルイズ」 炎のような赤髪をかきあげ、サラマンダーと共にキュルケは去っていた (それにしても・・・・、いい男だったわ。) 「くやしー!何なのあの女!自分がサラマンダーを召喚したからって!」 「マスターは俺を召喚したからいいじゃないか」 「よくないわよ!メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言うのよ!平民とサラマンダーじゃ犬と狼を比べるのと同じよ!!」 (その例えなら俺が狼だな) 「ところで、彼女、ゼロのルイズと言っていたが、『ゼロ』とは何だ?」 「あだ名よ、嫌いだけど」 ルイズはさっきよりトーンを落として呟いた 「彼女は自分の事を微熱だというのはわかるがマスターは何故ゼロなんだ?」 「うるさいわね、さっさと食堂へ行くわよ」 プンプンしながら奥へ歩いていくルイズ (そういえば昨日も周りの生徒は宙を浮いて移動していたがルイズは歩いていたな。それが関係しているのか?) トリステイン魔法学院の食堂は非常に広く、やたら長いテーブルが3つ並んである 前の椅子に座った先生やメイジが楽しそうに雑談している。 その上豪華な飾り付けがなされていてこの学院の華やかさを物語っている ロムはその物珍しさに周りに目を配り、気が付くとルイズが得意気に言った 「トリステイン魔法学院が魔法だけじゃないのよ。メイジはほぼ全員貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』がモットーのもと、貴族たるべき教育を存分受けるのよ」 ロムはその言葉を聞くと深く頷く。 彼もまた、クロノス族の族長である父の教えより身体だけではなく精神の成長が大切である事を教えられていた 「世界が違えど心の教えは変わらぬのだな」 「何か言った?」 さてロムはここに来て重大な問題に気付く。それは食べ物、エネルギー原の有無である。 もともとマシン生命体はエネルギーカップ、もしくはロムトロンと呼ばれる物でエネルギーを補給するのだが残念ながらこの世界にはどちらも無い。 エネルギーが補給出来ないことは餓死に繋がる・・・・。 「何ずっとパンとにらめっこしているのよ、ひょっとして食べないの?」 「いや・・・・、そうではないが・・・・」 椅子に座って朝食を食べているルイズが床であぐらをかいて皿を睨むロム見下ろして言う 「言っておくけど、渋っても何も出ないから。平民がここに入れる事だけでも珍しいのよ」 仕方がなくパンにかじりつくロム (硬い・・・硬すぎる・・・・、これは食べ物なんかじゃ無い。 こんなものを作った奴の顔を見てみたいな・・・・) などといつもは考えもしない事を心の中で呟き、良く噛んで飲み込む。そして・・・・ (・・・・なんとかなるか) どうやら大丈夫のようである
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの人生とは、 這い寄る闇からの逃走劇も同然だった。 魔法が使えないこと、身体が幼いこと、他人に認められないこと――。 それら闇から逃れるため、ありとあらゆる努力を重ね、研磨し、足掻いた。 ――それでも、何も変わらなかった。 いくら呪文を知っていても、魔法は使えない。 いくら健康になっても、身体は育たない。 いくら貴族として立ち振る舞っても、誰も認めない。 逃げても逃げても追ってくる闇――だが、幸か不幸か、今までそれに捕らわれる事は無かった。 魔法が使えなくても、学園が自分を放り出すことは無かったし、 身体が幼くても、どうしても気を引きたい相手などはいないし、 他人が認めなくても、自分はれっきとした貴族だって分かっている。 けれど、もうここまでだ。 この学園では、2年生への進級するための儀式として、『使い魔の召喚』がある。 今までに一度たりとも魔法を成功させたことの無い自分に、できるはずもない。 案の定、呪文を唱える度に、地面を爆発させた。 他の生徒たちの嘲笑が聞こえる。文句が聞こえる。罵倒が聞こえる。 ――本当は、分かっていたのだ。 魔法が使えなくては、進級できない。 身体が幼くては、婚約者は去るかもしれない。 他人が認めなくては、貴族にはなれない。 それでも、足掻きたかった。 ちっぽけな希望を抱き、この闇を打ち破り、この広い世界に歩みだしたかった。 闇はすぐ後ろにいる。 未来までも黒で覆い、光を奪おうとしている。 お前は、何者にもなれないと、絶望を突きつけようと―― ――そうして、その使い魔は現れた。 ルイズは、その使い魔を召喚したときのことを、一生忘れないだろう。 その姿を目にした瞬間、自らを覆おうとしていた闇は、一瞬で消し飛んだ。 灰色の世界に光が射し込み、自分を、世界を、輝かせる。 ――もう、何も怖くない! 魔法が使えなくても、この使い魔がいれば何でも出来る! 身体が幼くても、この使い魔がいれば何も言わせない! 他人に認められなくても、この使い魔がいれば何も要らない! ショボイ魔法などどうでもよくなり、 チンケなコンプレックスは消え去り、 周囲の視線は、畏怖と羨望の視線となった! 吊り上っていた眼は、絶対なる意志を持ち、 追い立てられるような歩きは、王者の余裕を持ち、 張り詰めていた雰囲気は、覇王のようなカリスマあるものへと変わった! 使い魔が自らと在る限り、 自分に出来ないことなど無いのだと、 自分は何処へでも行けると、ルイズは確信した! ――そう、ルイズは、果てしなく続く戦いの道(ロード)へ歩み始めたのだ!! 喧嘩売って来た色ボケメイジを、ぶっ飛ばしてやった。 悪名高い盗賊を、その僕の巨大なゴーレムごと吹き飛ばしてやった。 国と自分を裏切った婚約者を、そのお仲間諸共消し飛ばしてやった! ルイズは止まらない。 何者にもルイズは止められない! ――そして今! 眼下には、卑劣にも条約を破り、攻め込んできたアルビオン軍が展開している。 「こないだ、アルビオンで躾けてやったというのに……まだ足りないらしいわね」 虫けらを見るような目で――事実、そう思っているのだろう――白の国のゴミクズどもを眺める。 「ならば教えてやるわ……この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのいる、 そして、我が最強のしもべのいる、このトリステイン王国に攻め込んできた、その愚かさを――!!」 ルイズは緩やかに右手を上げる。 それは、ルイズがしもべに敵の殲滅を指示する、号令なのだ――! ルイズは高らかに謳い上げる――破壊を告げる言葉を! 「滅 び の ッ ! バ ァ ァ ァ ス ト ス ト リ ィ ィ ィ ィ ィ ム ッ ッ ! !」 その瞬間――。 青き眼の、白き最強龍は、口内から光を放つ――! それは、あらゆるものを滅ぼす、破壊の光――!! 「強 靭 ッ ! 無 敵 ッ ! 最 強 ォ ―― !!」 光は全てを飲み込んでいく! 戦艦を蹴散らし、ブチ壊し、滅茶苦茶にしていく! 竜騎兵など蝿も同然! 地べたを這いずるメイジや兵士どもなど、塵芥に等しい! 「粉 砕 ッ ! 玉 砕 ッ ! 大 ・ 喝 ・ 采 ―― !!」 何が来ようと、何も恐れることは無い。 我がしもべ、『青眼の白龍』の前には、全てが平伏すのだ――! 「ワハハハハハハハハハハ―――――!!」 その後、ルイズは『滅び』の二つ名と、 ありとあらゆる名誉を手にいれ、トリステイン最強の力として、君臨した。 ルイズは最期まで魔法を使えなかった。 ルイズは最期まで体系はお子様だった。 ルイズは最期までメイジとは認められなかった。 だが―― ルイズは『力』を使えた。 ルイズはあらゆる名家の男たちから誘いがあった。 ルイズは至上最強の竜騎兵として認められた。 そして、友も得た。 ルイズは未来を切り裂き、幸せを手に入れた。 そして、これからも、ルイズは止まらない! ルイズの踏み出した道――それが未来となるのだから――! 「ずっと私のターン!!」 『滅びのルイズ』…… 完 -「遊戯王」より青眼の白龍を召喚
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ハルケギニアの歴史は《始祖ブリミル》から始まり、その三人の御子と一人の弟子が王国を築いて、 現代に至ったと伝えられている。始祖ブリミルはまだ神話の霧に覆われているが、四王国の存在は確かである。 それらは六千年以上前、大陸の西方に起こり、現在も戦乱はあるが続いている。 豊富な記録……精巧な魔法技術の数々……そして何よりも、王国を支える貴族、メイジの存在が…… その強大な王国の権力を表している。 《第一章 ゼロのルイズは如何にして魔法学院で竜を召喚したか》 「始祖ブリミルよ、生ける神よ、貴方と同じく臣にかこまれ、奴婢をおき、杖を振って魔法を使わしめたまえ。 我ら子孫に幸いを与え、祟りなすことなく、王国の繁栄を給わりたまえ。 トリステイン魔法学院の生徒、ルイズが祈りまする。我に『使い魔』を授けたまえ………」 『使い魔』とは、メイジによって召喚される禽獣で、しばしば魔法によって捕らえられ、奴隷やペットにされていた。 この王立魔法学院では、二年生進級の神聖な儀式として、召喚を行うのだが…。 「まて! ちょっとまちなさい! ミス・ヴァリエール!」 桃色の髪の女子生徒、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの魔法失敗は、 ただ魔法が完成しないだけでなく、結構な破壊力の《爆発》を引き起こすのだ。 見かねた教師のコルベールが、彼女を止めた。 「……九十九、百、百一……やっぱり無理だよダメルイズ! もう百一回目のプロポーズだぜ!」 「数えてたのか、暇な奴だなあ」 「呼び出せないと、学院の規定通り、彼女は留年せねばなりません!」 「も、申しわけありません。もう一度だけ……」 「コモンマジックも満足に使えんのか! やっぱり《ゼロ》だ! ワハハハハハ」 もはやルイズは、息も絶え絶えだ。顔は煤と涙と汗でドロドロになった。 周囲の嘲笑が悔しすぎる。唇を血が出るほど噛み締める。 「仕方ないですな……座学は優秀ですし。特例で明日から三日間、補習として猶予を与えます。 それまでに使い魔が出なければ、ヴァリエール公爵家に連れ帰ってもらいなさい!」 絶え間ない上、狙いの定まらない爆発にビクビクしていた一同は、ホッと一息つく。 「ほらルイズ、帰ってゆっくり休んで。いいから、帰りましょう」 友人のキュルケの情けが、なけなしのプライドを引き裂く。もう言葉も出なかった。 夢の中、闇の中。ルイズは、青銅色の恐ろしい顔を持つ悪魔たちに追い回されていた。 人間の心を貪るような異常な造型と、魂をひねり潰すような嘲笑。口からは牙をむき出し、意地悪い視線で蔑む。 (食い殺される! 私が召喚してしまったの? それとも私の絶望と恐怖の産物?) キュルケに、モンモランシーに、ギーシュに、コルベールに似たような、おぞましい顔、顔、顔、顔。 足を滑らせて倒れたルイズに、仮面をつけた半裸の男が顔のついた大斧を振りかぶって、差し出された頚をズンと刎ねる。 「いやっ……いや――――――――――っ!!」 「おはよう、ルイズ。だいぶ、魘されてたわね?」 いきなりキュルケの巨乳が目に入った。もう朝か。 勝手に《開錠》の魔法を使うのは校則違反だが、余程呻いていたのか。 「あ…はあ……夢を……悪魔たちが、私を食べようとして……」 「まあ、可哀想なルイズ! 夢の中でも気が休まらないなんて。でも大丈夫よ、私が応援してあげるから。 けど、運がいいわね。本当は留年だったのに、コルベール先生も人がいいんだから……」 「ツェルプストーに応援されても、あんまり嬉しくないの」 一方、学院長室。学院長オールド・オスマンが、コルベールに成績証明書を見せてもらっている。 「今学年の生徒の出来も、まあまあじゃな。外国人留学生に二人、優秀なのがいるようじゃが……」 「はい、二年生進級も無事終わりそうですが……約一名」 「ヴァリエールのゼロ娘か……ま、これでダメなら諦めもつくじゃろ」 二人は揃ってため息をつく。国一番の大貴族で優秀なメイジの娘が、なぜこうなのか。 「ともあれ、有為な若者を育てる事は、国家のためでもあります。 それは魔法に限りません。学芸、武勇、礼節、倫理、柔軟な発想なども、健全に育成せねば」 「そうじゃのう、近隣諸国との関係もこじれておるし……姫殿下があとを継がれても、これからが大変な時じゃ…… わがトリステインにも、アンリエッタ王女を補佐するすぐれた人物がいればのう…… いやいや、マザリーニ枢機卿はよくやっとるが、政治・軍事をはじめ、より天下のことに通じた知恵者が…… さすればわが国も……」 ドカアアアアンという爆発音が、せっかくシリアスになっていたオスマンのセリフを遮った。ルイズだ。 「ええい、またかね。期限はもう明後日じゃろ? いい加減にしてくれんかのう」 だが、丸二日経ってもルイズは使い魔を召喚できなかった。黄色い朝日が昇る。 「(フラ…)使い魔を……今日中に使い魔を呼び出せないと……人生終了ね……」 ルイズは《ヴェストリの広場》に向かっていった。すぐ爆発音が響き始める。 そこへ、朝食に向かう前のギーシュたちが、音を聞きつけて通りかかる。 「見たまえ皆、あそこにルイズがいるよ。自分の爆発で倒れている。ああ、杖も手落として……」 「そういや、今日中に召喚できないと留年ね。退学かも」 「はああ、可哀想。玩具にするには最適の可愛い娘なのに」 「あんた、そっちだったのキュルケ……」 モンモランシーがスザッと引く。大体フェロモン過多なのだ、この成金ゲルマニア女は。 「まてまて、僕に面白い考えがある」 ギーシュが意地悪く笑うと、モグラの使い魔ヴェルダンデに命じて土を掘らせ、 ルイズの傍まで行かせてから戻って来させる。咥えているのは、ルイズの杖。 「ちょっとギーシュ、今何したの?」 「《錬金》で作った青銅製の偽物の杖と、密かに取り替えておいてやったのさ。 どうせ魔法なんか使えないんだ、杖が偽物なら爆発も起きないし、かえって安全だろう?」 イジメ、かっこ悪い。二人はしらけ切ってそっぽを向く。 「貴族の誇りに何するのよ、馬鹿。付き合ってらんない、行きましょモンモランシー!」 「そうね、頑張ってる女の子に意地悪なんて、人として軸がぶれているわ。ちゃんと返してあげなさいよ」 「ま、待ちたまえ君たち! ああ、ルイズがビックリする顔が見物なのに」 ギーシュは引っ込みがつかず、広場の入り口でうろうろしている。 やがてヨロヨロとルイズが立ち上がり、朦朧とした頭で意識を保つ。体が生命の危機を知らせている。 「もう三日三晩寝てないし、何も食べてない……。 使い魔が来てくれればいいけれど、もし来なければ……このまま……」 悲壮な覚悟で、青銅の偽杖を振り上げる。だがもう、精神力も底を尽いた。しゃがみこんでしまい、動けない。 「ご先祖さま……始祖ブリミルさま……どうかルイズに、使い魔を一体、お与えください…… ああ、気が遠くなってきたなあ……もし神さまがいるのなら……使い魔を………」 「ゼロのルイズ、どうですか?」 ハッ、とルイズが振り向く。声は聞いたことがあるような、ないような。 傍に立っていたのは、六十歳過ぎぐらいの小柄な老貴婦人。杖を持ちマントを羽織って、ルイズを見下ろしている。 学院の先生か、非常勤講師だろうか。そう考えるのが一番自然だった。 「あ……貴女は? なぜ私の名を…?」 「ほら、何かいるわよ」 地面に銀色の鏡が現れ、それが水面のように波立って、ザバッと猿のような獣が現れる。その顔は人間の老人にそっくりだ。 「きゃあ!!」 バシャンとしぶきを上げ、怪物は鏡面に沈む。尻尾がちらりと見えた。 「ふっふっふ、せっかくの獲物を逃してしまったわねえ」 「い…今のは…?」 「気にすることはないの。だいいち、その杖では使い魔は呼べないわ。貴女自身の杖でなければ……」 よくよく手元の杖を見れば、私の杖ではない。誰が取り替えたのだろうか、イジメかっこ悪い。 「心配しないで。私がもっといい場所を教えてあげる。その杖を持ってついておいで」 「あ…あの……? 貴女はこの学院の先生、ですか?」 「いいえ、もっと凄いものよ」 スタスタと先を歩く、余裕綽々たる老貴婦人に、ルイズはピンと閃く。 「貴女はもしや……私の呼び出した使い魔では……?」 「ばかをいわないで、私を使い魔などといっしょにするなんて。 さっき貴女が呼び出しそこなったのは、水中に棲む猿に似た精怪。大したものではないわ」 ズンズン進む彼女に、ルイズは遅れないように着いていく。足も立たないはずだったが。 いつしか二人は学院を離れ、深い山奥へと迷い込む。 「近くにこんな所あったかしら……? いつ霧が……? それに、さっきまでは動くのもおっくうだったのに、今はやけに体が軽い……」 急にガラッと足元の地面が崩れる。あわてて下を見ると、なんと切り立った崖の上だ。 しかも眼前には、洋々たる大海が広がっている。 「こ…これは…? いつの間にこんな所に………」 「ここは《東方》の海の果て」 いつの間にか、老貴婦人は再びルイズの背後にいる。その髪は赤金色に輝き、顔はまるで磨いた銅のようだ。 「と…《東方》…!? しかし、そんな……も…もしや貴女さまは、始祖ブリミルさまですか!?」 「おっと、それは違うわ。まあいいから、そこから使い魔を呼んでみて。貴女は使い魔が欲しいのでしょう」 「で、でもこの杖は……」 「いいからとにかく、私のいう通りやってごらんなさい」 千載一遇のチャンスだ。高貴で強力なメイジが、私の手助けをして下さるとは。 藁をも掴む思いで、ルイズは前向きに気持ちを切り替え、杖を構えた。 「気を抜いてはダメよ。たとえ偽物の杖でも、全身全霊をこめて集中すれば、竜でも召喚することができるのよ!」 「りゅ…竜でも!?」 「そうよ、杖の先、舌の先に全身の魔力を集めるの。 技術も力もいりはしない、ただ召喚をするという、ただそれだけのことを…… 純粋に……強く……念をこらすの」 言われるまま、ルイズは残った魔力を集中する。老貴婦人の鳶色の瞳は、なぜか四角い。 「貴女は、私が始祖ブリミルではないか、と言ったわね? そうじゃない、でも私は、時によってはそれ以上のもの。 私は、貴女の純粋に《生きたい》という気持ち、使い魔を求める心に応じて現れた。 一点の濁りのない、純粋な心で私を求めるなら、私は時には天をも動かす。 けれど、少しでも心に濁りがあるなら、どれほど高位高官の者であろうとも、 始祖ブリミルであろうとも、私にまみえることすらできない」 大海がドオオオオオと大波を立て、崖が震える。しかしルイズの精神は、小揺るぎもしない。 「純粋に……心を純粋にするのよ。一切の邪心も恐れも疑いもすべて捨てて、この大自然の中に身を投ずるの。 どう、海の中が見えてきたでしょう? 杖の先に宇宙を感じるでしょう! さあ、呼んでみて、竜を!」 きた。 逆巻く海面が銀色に光り輝き、その中から巨大な、ワニのような頭部が姿を顕す。 頭には枝分かれした二本の角が、頚には鬣が、牙の並ぶ大きな口の周りには髯が生え、 鼻先に二本の長い鬚がある。眉毛の濃い突き出た眉間の下には爛々と輝く眼があり、 体は蛇のように長く、大きな青金色の鱗に覆われていて、力強い四肢には五本の爪があった。 全長は、何百メイルにも及ぶだろう。まさに竜(ドラゴン)。その神々しい姿に、ルイズは見惚れる。 「そうよ! よく竜を呼んだわ! もし貴女がこの気持ちを忘れず、もう一度私と会うことができるなら、 いずれもっと大きな竜を呼ぶことができるでしょう!」 老貴婦人が嬉しそうに叫び、ルイズの周囲が光に包まれた。 その日の夕方、《ヴェストリの広場》の入り口に、今朝の三人が集まっている。 「なんですって、あのルイズ、まだやってるの?」 「ああ、もう夕方になるっていうのに、あの時のままずーっと杖をかまえて、使い魔を待っているんだ」 「あれから何時間経つと思っているの? 貴方が授業にもこないから、ルイズと浮気しているんじゃないかと思って、 わざわざ様子を見にきたのよ。感謝しなさい!」 モンモランシーが頬を染めてツンデレする。しかし、その間の皆のスルーっぷりが悲しすぎるではないか。 キュルケも肩をすくめ、ため息をついた。 「流石に、杖が偽物なのに気づいたんじゃない?」 「気づいてないよ。呪文をブツブツ唱えながら、気絶したみたいに硬直しているんだもの。 僕はずっと見ていたから知っている。可哀想な娘だね」 「「可哀想なのはあんたよ」」 ハモッてジト眼で二人が睨む。なんという馬鹿だ。 「あ…杖を振るわよ!?」 モンモランシーが動きに気づき、二人もルイズを注目する。 ぼんやりと地面が銀色に光り、鏡となった。三人は予想外の展開に、身を乗り出す。 「何か出てくる!?」「まさか!」「ああっ!!」 鏡面が水のように波立ち、杖を振り上げたルイズの手元に、一抱えもある大きな《鯉》が召喚された。 三人はあっと驚く。とうとうあのルイズが、《使い魔》を召喚したのだ。しかも、自分の杖ではない偽物の杖で。 使い魔が魚ということは、彼女の系統は《水》なのだろうか? 倒れこむルイズをキュルケが駆け寄って支え、ギーシュが大きな金ダライを作り、モンモランシーが水を張る。 《鯉》は青金色の鱗を煌かせ、悠々とタライの中を泳ぎ出した。 このルイズ、魔法成功率の低さから、皆に《ゼロのルイズ》と呼ばれた少女こそ、後の《虚無のルイズ》である。 ルイズは四十五年後、このトリステイン魔法学院で、再び竜を召喚するのである。 (つづく)
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苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。 形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。 ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。 当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。 一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。 当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。 拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。 そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。 悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。 錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。 片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。 その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。 一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。 その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。 こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。 そうしてルイズは眠りに就いた。 深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。 ―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。 こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。 ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。 大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。 ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。 ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。 しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。 この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。 まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。 彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。 ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。 「ヴェストリの広場に来て」 そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。 一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。 肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。 彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。 彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。 「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」 「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」 「なんだい?何でも言ってくれたまえ」 「私とゲームをしましょう」 「ゲーム?」 「そうよ、ルールは簡単」 そう言って自らの杖を取り出すルイズ。 「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」 その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。 決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。 つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。 勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。 「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」 「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」 人は本当のことを言われると怒り出すものである。 自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。 力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。 「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」 ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。 ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。 「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」 まったく淀みない口調でルイズは言う。 もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。 しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。 「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」 ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。 所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。 「呼んだわね。では私のターン」 ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。 そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。 「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」 放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。 「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」 ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。 そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。 「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」 ギーシュはわけがわからなかった。 ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが! エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!? 混乱するギーシュへとルイズが促す。 「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」 ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。 「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」 「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」 そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。 その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。 しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい! 「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」 「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」 「なんだって!?」 辺りを見渡すギーシュ。 しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。 当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。 「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」 「うぅ……」 短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。 そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。 無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。 「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」 7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。 それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。 「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」 ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。 その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。 「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」 呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。 「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」 ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。 ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。 「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」 剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。 「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」 痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。 エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。 「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」 「あ、あ、あ、、、」 恐ろしい恐ろしい恐ろしい。 ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。 「罰ゲーム!」 ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。 ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。 ―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。 ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。
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まともに召喚させてもらえないルイズ 「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 少女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールはトリステイン魔法学園の生徒。今日は進級試験の日、ルイズはその試験の課題である使い魔召喚の儀式の真っ最中です。 「私は求め訴えるわ!我が導きに答えなさい!」 ルイズは魔法が得意ではありません。今日もどうせ爆発で終わるんだろうなとルイズを含めたその場全員が思っていたのですが… 「あれ?何かいるわ…?まさか成功した?」 なんと召喚魔法は一発で成功。鏡からゆっくりと現れる緑色のフォルム。二本足で立ち、背中には黒い羽のような物がついている。 召喚されたのはどうやら亜人…?何はともあれルイズは喜び召喚したそれに話しかけます。 「アンタ亜人ね?この私に召喚されたんだから光栄に…」 「ここは…何処だ?…まぁそんな事はどうでも良い…まさか孫悟空が私と一緒に自爆するとは…な?」 緑の亜人はブツブツと何かを呟いています。ルイズは自分が無視されている事に気付き緑の亜人の側でぎゃーぎゃー喚きますが、亜人の耳には全く届いていない様子。 「ククク…だがおかけで新たな力が手に入った…待っていろ孫悟飯…このセルが…パーフェクトに貴様を消してやろうー…!」 亜人は人差し指と中指を額に押し付けます。次の瞬間、緑の亜人は姿形もすっかり無くなっていました。 「はぇ?あれ?」 辺りがシーンと静まります。召喚した本人はというと、一体何が起きたのかといった様子で事態が飲み込めていない様子。 数分後、事態を理解したルイズが儀式のやりなおしを教師のコルベールに申し出、再びルイズの使い魔召喚が行われました。 再召喚で現れたのは黄土色の鎧と鉄仮面を被った男だった。今度は成功したとルイズが鉄仮面に近づこうしたその時… 「ここは…神崎士郎の望む世界ではない。…修正が必要だ」 鉄仮面は腰の黒い箱から一枚の札を取りだし…! 『TIME VENT』 「え?」 チクタクチクタクチクタクチクタク… 「はっ!あれ?あいつは!?」 一瞬、何かが起きた後、黄土色の鎧の男はどこかへと消えていました。ルイズがコルベールに「アイツはどこへ行ったの!?」と問いかけましたが、コルベールは何の事やらさっぱりといった態度で接します。 いまいち納得のいかないルイズは再び召喚魔法「サモン・サーヴァント」を行います。今度は爆発が起こりました。召喚成功の手応えを感じたルイズでしたが、周りを見渡しても使い魔が見当たりません。 ふと足元に目をやると何かが浮かんでいました。文字です。ハルケギニアの言葉で「ここにいた」と書かれています。 おまけに矢印まであるではありませんか!ルイズが足を上げるとそこには体の潰れた自分の使い魔がいました。 やっぱり諦められないルイズはまたまたコルベールにやり直しを申し出、コルベールはこれを承認。四回目の召喚。 「やった!今度こそ成功よ!」 今回召喚されたのは、青い帽子を被った平民のようでした。しかし、それと一緒に見たこともない『魔物』が居ます。 これは当たりだとルイズが喜んでいるとどこからともなく青い毛に包まれた魔物が現れました。 「わたっ!わたっ!テリー、ここは異世界の扉で飛ばされた世界じゃないわた!ひとまず城に帰ろう!」 「そうなのか?じゃあ帰るかな!」 と平民の少年が言いました。ルイズの脳裏に嫌な予感が過ります。 「ちょ…ま…」 「わたわたわた~!」 取りつく島もなく少年は遥か空へと飛んでいってしまいました。 流石にストレスが溜まってきたルイズはコルベールに許可を取ることも忘れ召喚魔法を唱えます。 五回目に現れたのはおかしな帽子を被った少女、しかし背中には大きな羽が… 「よくも私を召喚してくれたな…人間。このレミリ…」 あるのを確認するところで日に当てられた少女は灰になった。 再再再再再再度召喚に挑むルイズ。現れたのは紅蓮の巨人! 「なめんじゃねぇ…異次元だろうが…多元宇宙だろうが…ハルケギニアだろうが関係ねぇ…俺を誰だと思っていやがる…穴堀りシモンだあぁ!」 紅蓮の巨人は気合い(螺旋力)で空間をねじ曲げ元の世界へ帰っていった。 それでもめげないルイズは渾身の力を込め召喚を行います。 「ドカ「ウボァァァ!」ァァン!」 断末魔の叫びと共に爆発が起こります。土煙が引くと底には黒こげになった鉄のゴーレムがいました。 ルイズが召喚した残骸が増える中、ルイズは藁にすがる思いで使い魔を召喚します。 召喚されたのは平民の少年とどう見ても人間には見えない異形の者。両者共に腕に何かを着けています。良く見ると少年の方は何かを手にしています。しらない文字書かれた緑色の札です。どうやら少年はその札で何かをするようです。 「俺のターン!魔法カード『超融合』を発動!…来い、ユベル!」 「十代…!」 すると二人は一つに重なり、眩い光となって空へと消えていった。 その後もルイズは召喚を続けました。 「あぅあぅ~…ここはカケラの世界じゃないのですよ…オヤシロワープ!」 …しかしいずれも 「はかせー、ここにはサルいないよー」 「ははは、悪かったなカケル君、今転送するぞい」 皆帰るなり死ぬなりして、 「エトナの奴こんなボトルの中に閉じ込めおって…おい、時空の渡し人!さっさと俺様をエトナのところへ飛ばせ!」 とうとう100回を超えたところでルイズの意識が 「キテレツー、ここどこナリ?」 途切れた。 次の日の朝、ルイズが起きると平民の少年が彼女の部屋にいました。何でも気を失う前にルイズが召喚したそうです。 その平民は「早く元の世界に帰せよ」等と馬鹿らしい事をほざいている。早く自分の力で帰れば良いのにと思いながら再びルイズは眠りについたそうな。 お し ま い 以上小ネタ ドラゴンボールよりセル 仮面ライダー龍騎より仮面ライダーオーディーン ぷよぷよよりのみ DQモンスターズ1よりテリー 東方プロジェクトよりレミリア・スカーレット 天元突破グレンラガンよりグレンラガン(シモン入) ボンバーマンよりボンバーマン 遊戯王GXより十代とユベル その他もろもろ… でした
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前ページ次ページルイズが世界を征服するようです 唐突だが、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、同級生であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのことが嫌いだ。 それはツェルプストーとヴァリエールの確執などという問題ではなく、純粋に、キュルケ個人として、ルイズ個人のことが、だ。 嫌っていた、という表現では、少々生温いかもしれない。 憎悪していた、というのはややニュアンスが違う。 忌み嫌っていた、というべきか。 キュルケは、常々こう思っていた。 一言で彼女のことを言い表すならば。 まさしく、『邪悪』だと。 この言葉を聞いたキュルケの親友、タバサは、無言で頷いたという。 幼きある日、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、自宅の池に浮かべた小舟の上で考えていた。 先ほどのメイドの言葉を思い出す。 小腹が空いた、何かつまもうとキッチンに入り、たまたま聞いてしまった陰口。 『貴族の癖に、魔法が使えないなんて――』 もっともな言葉だと、ルイズは歪んだ笑みを浮かべた。 貴族とは即ちメイジであり、魔法が使える。 当たり前の認識だ。 その常識に照らし合わせれば、なるほど、確かに自分は落ちこぼれのクズだろう。 しかも、ここは名家も名家、誰もが畏れるヴァリエール伯爵家なのだ。 姉や父が怒るのもわかろうというもの。 だが、彼女はそれをまったく、これっぽっちも気にしていなかった。 ある予感がするのだ。 いや、確信と言ってもいい。 ――自分はおそらく、貴族だとか平民だとか、そういう下らない次元ではなく、もっと遥かに大きな概念で括られる存在になるのだ、と。 ルイズは、そんなひどく傲慢な確信を抱いていた。 ……しかし、ゴチャゴチャとうるさくさえずる輩を、このまま放置しておくのも癪だ。 ここらでひとつ、黙らせておく必要があるだろう。 それには、魔法を成功させるのが一番だ。 今やってもどうせ失敗するだろうが、しかし、試さずして魔法が成功することなどありはしまい。 魔法が使えない、と言っても研鑽を怠っているわけではない。 専属の教師を雇い、多くの書物を読み漁って、彼女は既に一人前の魔法使いたるに十分な程の知識を蓄えていた。 どの魔法を試してみようか。 魔法に成功した、ということが一目でわかるようなものが良いだろう。 仮に『ライトニング・クラウド』に今成功したとしても、誰にも見られず空しく散るのがオチだ。 となれば、錬金。いや、使い魔召喚が妥当か。 本来ならば魔法学院の進級試験になる筈のものだが、構うまい。 先に召喚していたとしても、さして問題があるわけでも無いだろう。 そうして彼女は、詠唱を始めた。 成功する、とは思っていない。失敗して元々。成功したら――むしろ驚く。 「5つの力を司るペンタゴン――」 驚いた。 「なんだ……ここは……?」 舞い上がる水飛沫の向こう、現れたものを見て、ルイズは更に目を見張った。 おまけに喋った。ということは、あれは――人間なのか? 身を包んでいるのは紫のローブ。手にしているのは先端に竜の頭部を象った杖。 しかし、その姿は人間とはかけ離れている。亜人、だろうか。 そして、何よりも異常なのが、こうして面を向かい合わせているだけで伝わってくる凄まじく強大な魔力と、その邪悪さである。 一瞬にして理解した。理解する間もなく思い知らされた。 これは、巨悪なのだと。 「……小娘。これを引き起こしたのは貴様か? 何なのだ、これは」 こちらを睨めつけてくる。 ひるんではならない。こいつは、私の、使い魔なのだ。 「小娘じゃない。私は、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 お前の、主よ」 「……主、だと?」 圧迫感が更に強くなる。 怯える心に鞭を入れ、ルイズは笑った。引くな。笑え。傲岸不遜であれ。 それが、主だ。 「そうよ。アンタは私の使い魔召喚に応じた。 使い魔ならば、主である私に従うのが道理でしょう」 次々と重ねられる問いに、ルイズは答えていった。 召喚の儀式。使い魔。主。ハルケギニア。トリステイン。ヴァリエール。魔法。貴族。 やがて、その応答も尽きた頃。そいつは、突如として笑い始めた。 「ク……ハハハハハハハハハハ! 窮地に突然現れたものに、飛び込んでみれば……別の世界とはな! これぞ、精霊のお導きだろうよ! 感謝するぞ!」 「…………」 ルイズにはわかっていた。 精霊だと? そんなもの、こいつが信じているわけがない。 こいつは、自らこそ神と称するような者。 精霊など、鼻で笑い飛ばして無視するような輩だ。 ――だが。 それでこそ、私の使い魔に相応しい。 「よかろう。小娘よ、貴様と契約してやる。 この世界は、少々我とは馴染まぬようでな。力が出てこん。 貴様と繋がれば、我は十二分に元の力を発揮できるだろうよ」 これで、まだ不調だというのか。 だとすれば、一体、こいつはどれだけの力を持っているというのだろう。 「結構。でも、小娘ではないわ。あんたは使い魔。私に従属する者よ。わかる? 私のことは、主と呼びなさい」 「クククク! 承知した、我が主」 膝を着き、頭を下げる使い魔を見下ろしながらルイズは考える。 こいつは、決して素直に従うような奴ではないだろう。 『使う』のには、ひどく苦労する筈だ。 だが、そのデメリットを補って余りある力。 そう、この力だ。これさえあれば、――国を手に入れることすら、不可能ではあるまい。 「主よ。我にはわかる。貴様も、おそらく我と近しい者。 躊躇無く世界を踏みにじる種類の人間だ。 我は待っていた。貴様のような者が現れるのをな」 「随分と言ってくれるわね。私はそんな、あんたみたいな悪じゃないわよ。 で、何が言いたいの?」 そいつは立ち上がると、ルイズの目を見て笑った。 どこまでも邪悪でありながら、赤子のように無垢な笑い。 「もし我の味方になれば――世界の半分をお前にやろう」 こうして。 後に歴史書に『魔王』と記される、主と使い魔は出会った。 2人は、幼い子供でも笑い飛ばすような目的を叶えるための行動を、ここに開始する。 即ち。 世界征服である。 「乗ったわ」 使い魔――りゅうおうの額に、ルーンが刻まれた。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 進級試験でもある召喚の儀式は、滞り無く終わった。 そして大半の予想を裏切り、あのルイズは召喚に成功した。 『ゼロ』の異名を持ち、今まで一度も魔法を成功させたことの無い、あのルイズが成功したのだ。 それに驚かなかったのは、学院生徒では僅か2名。 キュルケ。そして、タバサである。 儀式を終え、夕暮れ時。学院の廊下を並んで歩きながら、キュルケが漏らす。 「――茶番ね」 「おそらくそう」 普段は寡黙なタバサが、珍しく言葉を続けた。 「彼女が召喚したあの小さな黒竜。 あれはおそらく、既に前から使い魔だった。でもなくとも、彼女と何らかの繋がりがあったと思われる」 「そう思う理由は?」 熱にうかされたように、タバサは喋り続ける。 「ヴァリエールは魔力を使っていなかった。詠唱の真似事をしていただけ。 あそこであの竜が現れたのは、おそらくは竜自身の能力に拠るもの。 転移時の爆発で砂埃を起こし、それを皆の目から隠した」 「……私も同意見よ。問題は、どうしてそうしたのかってことね」 キュルケが眉根を寄せ、タバサが応じた。 「たった今召喚したように見せかけたのは、あの竜を今まで隠匿していたため。 あれは、普通の竜ではない」 「……まさか、韻竜、ってこと?」 韻竜。 極めて高い知性を持ち、先住魔法すら操るとされる、伝説の存在である。 「違う。……おそらくは、それをも越える存在」 「どうして、わかるわけ?」 タバサが立ち止まる。 ちょうど、彼女の自室の前だった。 「それを今から見せる。が、他言はしないで欲しい」 「了解よ。ツェルプストーの名にかけるわ」 キュルケは即答した。 この時間の短さこそが、揺るがぬ信頼の証であり、 つまるところ彼女達の関係を如実に示すものだった。 タバサがドアを開く。 窓から夕焼けの陽光が差し込み、赤く染まった部屋。 その隅で、巨大な何かが蹲っていた。 「……さっきあんたが召喚した風竜じゃない。どうしたの? こんなとこに蹲って」 タバサは問いに答えることなく使い魔に近づいていく。 竜の背にそっと手をやった途端、竜が痙攣するように跳ねた。 身を縮め、更に部屋の隅へと体を押し込めていく。 「ヴァリエールがあれを召喚してから――したように見せかけてから、ずっと怯えている」 ぶつぶつと、何かを呟く声が聞こえる。 はじめ、キュルケは誰が喋っているのかと部屋を見回し――やがて、その顔に理解の色が浮かんだ。 「まさか……」 「そう。私が召喚したのは、韻竜だった」 キュルケが目をひん剥いた。 「す、凄いじゃないアンタ! 韻竜を使い魔にするなんて、聞いたこt」 「今はそれを問題にしている時ではない」 興奮するキュルケの言葉を遮り、タバサは続けた。 「この竜はずっとこう繰り返している。 『あのお方が来た。あのお方が。あのお方がいらっしゃった』。 ……極度に怯えてしまっていて、会話は難しい状況。 何とか聞き出せたのは、あの黒竜が、竜を統べる『王』のような存在であることだけ」 キュルケの顔が歪む。 「伝説の韻竜をそこまで怯えさせる、『王』……。 一体、なんなのよそれ」 タバサは頷いた。 その顔は、夕日に照らされていてもはっきりとわかるほどに青白かった。 「ヴァリエールが今まで魔法が使えない『フリをしていた』のは、皆を油断させるためではないかと私は思う。 今ここでその偽装を止めて、黒竜を皆の目に晒した。 おそらく彼女は、本格的に『目的』に向かって動き出す筈。 あの黒竜が、どれだけの力を持っているのか。……私は、恐ろしい」 ――そして、沈黙。 部屋には、怯える風竜の呟きだけが響いていた。 「どうしたの? リュウオウ」 儀式から数日後、食事の場。 肩に乗せた小竜が妙な素振りをしていることに気付き、ルイズは小声で話しかけた。 「まさか、あの騒ぎが気になるわけ? 放っておきなさい、あんなの」 ルイズが目を向けた先では、金髪の少年――ギーシュが黒髪のメイドを怒鳴りつけていた。 関わる意味も価値も無い、どうでも良いことだ。 だが。 「あの髪……目……いや、まさか」 「リュウオウ? どうしたの?」 「バカな、まさか、そんな筈は。 だが、あの瞳、忌々しい輝きの瞳、間違える筈も」 ルイズは顔をしかめた。 幼い頃からの付き合いで、動じた所など1度も見せたことのないリュウオウが、どうしたというのだ? 「こんなところに、かの血を受け継ぐ者が居る筈がっ……!」 「リュウオウ!」 声量を抑え、使い魔を怒鳴りつける。本当にどうしたのだ。まったくもってらしくない。 リュウオウは沈黙し、……やがて、掠れた声を出した。 「……主よ。あのメイドは理不尽な謝罪を要求されている。 助けてやるべきではないのか?」 「……アンタ、頭腐ったの?」 「あのメイドに恩を売っておけ。なんとしても、あやつを敵に回してはいかん。 あれは――我らの『運命の敵』だ」 「はははは! ルイズ! 『ゼロ』の君の使い魔が、僕と決闘だなんてね! 確かに竜種は強力さ! だけど、手のひらサイズのそれじゃあね! 僕の敵じゃない!」 言葉と同時に、青銅の戦乙女が組み上げられる。その数、7。 それを鼻で笑い飛ばし、ルイズは己の使い魔に念話を伝えた。 『リュウオウ。――蹴散らしなさい』 『承知した、我が主』 異世界の魔法、『ギラ』。 初歩の魔法である筈のそれ。 だが、魔王の手によるものとあれば――最早、別の魔法と言っても過言ではない威力を持つ。 小さき黒竜から放たれた閃光は鋭く、ただの一瞬ですべてのゴーレムを溶かし尽くした。 「な!? ぼ、僕のワルキューレが!」 「……『大嵐の聖剣』?」 「うむ。城の宝物庫に収められていたのだがな。 昨夜の騒ぎで、それが盗まれた。かの大悪党、『土くれのフーケ』じゃ」 どうでもいいわ、と鼻をほじるルイズに、使い魔からの念話が届く。 『主よ。この討伐、引き受けよ。他の者に譲り渡してはいかん』 『リュウオウ?』 ほじった鼻××を飛ばす主に顔をしかめながら、りゅうおうは笑った。竜のくせに器用な顔である。 『最早、驚くことも出来ぬ――この世界と我の世界とは、想像以上に縁深きようだ』 「『エクスプロージョン』!」 ルイズから放たれる、『虚無』の魔法。 りゅうおうの指導を受け、自らの属性に目覚めてから幾数年。 使い魔からあふれ出る魔力のバックアップをも受け、ルイズの力は凄まじいレベルに達していた。 一撃で巨大なゴーレムを砕き、無数の残骸へと散らす。 「がっ、ぐっ……な、なんだその魔法は……」 地に叩きつけられ、動きを止めるフーケ。 その傍らから、ルイズは奪われた物を拾い上げる。 「これが、『大嵐の聖剣』……?」 光差さぬ森の中で、自ら光を放つように輝く一振りの長剣。 それと対を成すように、小さき黒竜が闇に包まれる。 闇から現れたのは、紫のローブを纏った亜人。彼本来の姿である。 「ク……ハハハハハハハハハ! 愚か者どもめ! 『大嵐の聖剣』だと!? ああ、確かにその剣は、念じれば強力な風の刃を生み出す! 我らが扱う魔法の一つ、『バギクロス』をな! なるほどなるほど、強力な魔法だが……その剣の本質は、そんなものではない!」 おかしくてたまらない、というように腹を抱えて笑うりゅうおう。 そう、この剣の強さは、そんなものではない。 それは、希望。 それは、光。 それは、正義。 それは、絶望と悲しみの暗闇の中を、燦然と照らす一条の光。 それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほどに輝きだす白銀。 それは、例えすべてを無くしても、尚この胸より生まれ出る最強の力。 それははじめ、ただの強力な剣だった。 だがそれは、時を経るにつれ、人々の希望を、意志を、夢を、その剣身に集めていった。 折れるわけにはいかないから、折れなくなった。 曲がるわけにはいかないから、曲がらなくなった。 故に最強。最強であれ、と望まれた――それ故に最強の、勇気ある者のための剣。 それは、絶望を知りながら、それでも尚闇に抗う人々の希望を担った、伝説の剣。 それは、人々の歓声を一身に受け、血を吐いて泥に塗れながらも強大な魔王へ立ち向かう、勇者の剣! 「この剣に相応しき名は2つ! 『王者の剣』! そして……『ロトの剣』だ!」 ルイズは悟った。 ああ――この剣を持つ者こそが、私たちの『敵』なのだ。 剣は、りゅうおうが魔法でどこぞに転送してしまった。 「この剣を破壊することは出来ぬ。よって、封印した」 ということらしい。 「さて。――じゃあ、こいつね」 ルイズはそう言うと、土くれのフーケへと顔を向けた。 「ひっ!」 フーケは先ほどから、りゅうおうの出す凄まじい邪悪な気配に怯え切っていた。 腰が抜けており、それでも何とか逃げようと、手を使って後ずさる。 「怯える必要は無いわ。私たちは、アンタに危害を加えるつもり無いから」 りゅうおうがククク、と笑う。 ルイズは満面の笑みを浮かべ、尻をついているフーケに手を差し伸べた。 「先ほどのゴーレム。見事だったわ。 私達は、力のある人材を求めてるの。 ああ、アンタなら、十分にその資格がある」 フーケは、理解できないものを見る目でルイズを見つめ、震える声で尋ねた。 「な、なに、を……?」 「もし、私たちの味方になれば――そうね、世界の2%くらいはくれてやってもいいわ」 捜索の甲斐無く、奪われた『大嵐の聖剣』は、戻らなかった。 騒ぎの後、ミス・ロングビルが突然の辞職願いを残し、実家に帰ったという。 「……ふぅ。疲れた。頭の中花畑な奴の相手は疲れるわ」 「クク。そんなことを言ってよいのか、主? あやつはこの国の王族であろう?」 「は。だから花畑だってのよ。王女のくせに、その責務すら理解していない。 あれ、放っておくとその内この国を滅ぼすわね」 アンリエッタが、寮の自室を去った後。 ルイズは寝台に寝転がって愚痴を漏らしていた。 テーブルの上に乗っている小竜は、ルイズに問いかける。 「しかし、主よ。先ほどの話、どうするのだ?」 「ああ、アルビオンの話? 受けるに決まってるじゃない。 そもそも、あいつを傀儡にしてこの国から手に入れる計画なんだから、 繋がりは強くしておかないとね。何をきっかけに近づこうかは悩みの種だったし、渡りに船ってやつよ」 「クハハ! あの王女も、まさか親友がそんなことを考えておるとは、夢にも思うまい!」 堪え切れぬ笑いを漏らす使い魔に、ルイズは輝くような笑顔を向けた。 「知ってるかしら、リュウオウ? ――親友ってのはね、お互いそう思ってるから親友なのよ」 「そこまでよ、ワルド」 今まさにウェールズを刺し殺さんとするワルドの背後。 ルイズは、突如としてそこに出現していた。 「これ便利ね。『トヘロス』だっけ?」 「ああ。自らより弱き者に、気配を悟られぬようにする魔法だ。 今の我らならば、気付かれる心配は皆無だろうよ」 「そんな便利な魔法あるならもっと早く使いなさいよ、バカ竜」 「な……!」 突然現れたかと思えば、肩に乗せた使い魔との会話を始める婚約者。 ワルドは、絶句していた。 「ミ、ミス・ヴァリエール! こ、このワルドは裏切り――」 「ああ、アンタ黙ってて」 使い魔が何事かを呟くと、ウェールズは瞬時に昏倒した。 ……どうやら、眠っているらしいことをワルドは見てとる。 「る、る、ルイズ……? 一体、何なのかな……これ……?」 恐る恐る尋ねるワルドに、ルイズはようやく顔を向けた。 「ワルド。あなたが、『レコン・キスタ』の尖兵だってことは、もう知ってるわ」 「――――!」 瞬時にその場から飛びのき、距離をとる。 考える。悟られていた。ならばこれは? 王女の罠か? あの腐れビッチ、愚鈍なのはまさか演技なのか? いや、ならば何故ルイズを選んだ? 戦闘力も皆無な筈なのに? 婚約者ならば情で落とせると思ったのか? ――混乱する頭ではじき出された、最初の言葉はこれだった。 「る、ルイズ。……何で、私、呼び捨て?」 片言であった。 「……ぷ、ははははは! いいわ、ご希望なら今まで通り、ワルド様と呼びましょうか?」 「ああ、頼む」 「頼むのか」 使い魔が突っ込んだ。珍しい光景である。 「さて、ワルド」 「様をつけてくれ」 「こだわるのね。――あなたが先に勧誘した『土くれのフーケ』は、私たちの仲間よ」 「……そういうことか」 先日、『レコン・キスタ』に加わった大盗賊、『土くれのフーケ』。 ……間諜だったか、とワルドは失敗を悔いる。 「けどね。私たちは、別にトリステインに仕えているわけではない。 これがアンリエッタの罠だとか想像しているかもしれないけど、大外れ。 安心なさい。あの王女は、見かけ通りよ」 「なに?」 困惑するワルドを前に、ルイズは笑った。高らかに笑った。 「聖地奪還? 下らない。ああ、下らないわ。小さいわね、ワルド。 仮にも、私の婚約者ならば――世界征服くらいは言って欲しいものよ」 「様を」 「貴様、しつこいぞ」 魔王は突っ込み役に回っていた。他に居ないのだから仕方が無い。 ルイズは腕を広げ、演説を続ける。 「私達は、世界を欲している。 『偏在』をはじめとした強力な魔法を駆使するスクウェア・メイジ。 おまけに騎士としても極めて優秀なあなたならば、私たちの仲間たるに十分な力よ。 このりゅうおうが居れば、更なる力をあなたに与えるのも容易。 ねぇ、ワルド。あなたが、必要なのよ」 そうして、ルイズはワルドに手を差し伸べた。 「あのクロムウェルにいつまで従属しているつもりかしら? あれはただの小物。あなたが付き従う価値など、欠片も無いような男なのに? さぁ――この手をとりなさい、ワルド。そして、一緒に世界を踏み躙りましょう? もし、私たちの味方になれば――うーん、えー、世界の1%くらいは、あげなくもないというか、善処するわ」 ワルドはしばらく黙考する。今の状況。レコン・キスタ。クロムウェル。ルイズ。そして、この使い魔。 「……君の目的は、何だ?」 「ククク。物分りの悪い男だ。 世界征服だと、先ほどから言っておろう」 ……本気なのか、とワルドは額に汗を浮かべる。 世界征服。聖地奪還どころの話ではない。 人間やエルフ、この世界に住む全てを敵に回すつもりなのか。 「……クロムウェルは、伝説の『虚無』の使い手だ。 『レコン・キスタ』を敵に回せば、いずれ相対することになる。勝算は、あるのか?」 「ああ。あれ、嘘よ」 「は?」 ワルドの口があんぐり開いた。 「う、嘘? ……………………嘘ぉ?」 「あいつが使ってるのは、水の秘宝で……ってああもう、面倒ね」 ルイズは嘆息すると、おもむろに杖を腰から引き抜いた。 ワルドに突きつける。 「言葉で納得できないなら、力で示すわ。 かかってきなさい、ワルド。力とは何なのか、教えてあげる」 「……いいだろう。私も、口先だけでは納得できない。 そこまで言うなら、お手並み拝見といこう。 君たちが、あのクロムウェル卿をも上回る力を持っていると、納得させてくれれば―― その時は、君の下につく」 ワルドは自らの愛杖を抜くと、詠唱を始めた。 「ユビキタス・デル・ウィンデ――」 手加減をしている余裕など無いだろう。 最初から、全力でいく。 「ユビキタス。『偏在』せよ!」 5人にその数を増やしたワルド達が、ルイズに殺到する! 「リュウオウ」 「承知した、我が主」 『ベギラマ』。中級閃熱呪文。 魔王の手によって放たれたそれは、4人のワルドを瞬時に消し飛ばした。 「な――!」 慌てて動きを止める、残り物。 ワンアクションで、分身全てを消し去るほどの威力。 しかも、あいつは今――わざと、本体を避けた。 つまり、本体がどれか、ということも、一瞬で把握したのであり―― 「……なるほど。わかったよ、ルイズ。確かにこの使い魔の力は、君が言うだけのことはある。 使い方次第では、まさしく世界を征服し得る力だろう。 わかった。君に、従う」 「それは重畳。じゃ、こいつはさよならね」 黒竜から放たれた、初級爆裂呪文『イオ』。 眠るウェールズ・テューダーは、無数の肉片へと散った。 「姫様。……ウェールズ皇太子は、裏切り者の手により、その胸を刺し貫かれて――」 「我が力及ばず、申し訳ありません」 アンリエッタの前、平伏するルイズとワルド。 「……そう」 平静を装うアンリエッタだが、その顔は蒼白。 「ご苦労様でした。……もう、下がって下さい」 「これで、よかったのかい? ルイズ?」 王宮の廊下を並んで歩きながらの問いかけに、ルイズは微笑む。 「ええ。これでアルビオン貴族派への憎悪は煽った。 あとは、きっかけがあれば――トリステインは、アルビオンへと侵攻する」 ワルドは肩をすくめた。 「やれやれ。可愛い婚約者が、こんな酷いことを考えるようになっていたとはね。 君の仕業かな、リュウオウ?」 使い魔は念話で低い笑いを漏らした。 『ククク。何を言うか。主は、我と出会った時よりこの有様であったぞ。 それを見抜けなかったのは、貴様の目が腐っておることの証であろう』 「おや。手厳しいね」 2人と1匹は、声を揃えて笑った。 「タバサ。いえ、シャルロット・エレーヌ・オルレアンと呼ぶべきかしら?」 学院裏庭の片隅。 突然かけられた言葉に、タバサは一瞬にして迎撃体勢を整える。 「見事ね。流石はシュヴァリエ。 その恵まれない体格でありながら、よくもそこまで磨き上げたものだわ」 拍手をしながら姿を見せたのは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 タバサは無表情のまま、杖を握り締める。 「緊張する必要は無いわ。私に、あなたを害するつもりは無い。 私の用は、ただ一つ。勧誘よ」 ククク、と肩の上の黒竜が哂う。 「……私に、あなたに与する意志は無い」 断言するタバサ。 この邪悪に、手を貸すことなど決して無いと、目が告げていた。 「ああ、知っている。知ってるわ。 あなたとキュルケが、何やらコソコソ動いていたのはね。 ――でもね、シャルロット。この言葉を聞けば、あなたはきっと、私の味方。 私の信頼する仲間になってくれるわ」 「その名前で、私を呼ぶな」 敵意をむき出しにするタバサを前に、ルイズは笑った。 それは、絶対的な優位に在る者の傲慢。 抵抗を可愛く受け止める、強者の微笑み。 「こんなのはどうかしら。 もし、私の仲間になれば――あなたに、母を返してあげる」 タバサの顔が、凍った。 「どうしたっていうのよ、いきなり!」 「これ以上の協力は、出来ない」 突然態度を変えたタバサに、キュルケは苛立ちを隠せない。 あのルイズが裏で、何をしているのか。 それに関する調査もようやく進んできたというのに、一体どうしたのか。 「何があったの!? あいつに、何かされたわけ!?」 「これ以上は、言えない」 目を伏せ、視線を合わせないタバサ。 それを見て、キュルケは嘆息した。 「……そう。あんたなりの、思いやりってわけ?」 「関わらない方がいい」 ふん、とキュルケは鼻を鳴らした。 「冗談。あいつは、私の敵よ。あの邪悪を、放っておくことは出来ないわ」 「許して欲しいとは言わない。が、これ以上は言えない。 もう一度言う。関わらない方がいい」 「くどいわ」 タバサが顔を上げ、キュルケを見上げる。 ――一瞬だけ。2人の、視線が交わされた。 それで、十分。 まるで違う性格でありながら、それでも親友だった2人。 幾つもの死線を潜り抜け、互いの背中を任せあった2人。 その2人にとっては、その一瞬で十分だったのだ。 「じゃあね、タバサ。楽しかったわ」 「今まで、ありがとう。さようなら」 それは。 親友同士の、決別の瞬間だった。 「……知っていたんですか」 自室の扉を開け放ち、突然現れた黒髪のメイド。 ルイズは驚き、音を立てて椅子を離れる。 「シエスタ!」 「……知っていたんですか、アルビオンが、タルブに侵攻するのを!」 シエスタは叫ぶ。握り締めた拳を震わせていた。 『……話を聞かれたか。少々、無用心だったようだな』 使い魔の念話に、ルイズは硬い表情で頷きを返した。 「……まぁね。あっちには、何人か間諜を忍ばせてあるから」 「なんで、なんで、それを前に――」 「必要だったからよ」 返された答えに、メイドは戸惑う。 「必要――?」 「そう。トリステインがアルビオンに侵攻するための、口実としてね。 バカが向こうから来てくれたおかげで、やりやすくなったわ。 これでこちらとしては、何の憂いも無くアルビオンを叩き潰せる」 シエスタが目を伏せる。 握り締めた拳から、一筋の血が垂れた。 「そんな理由で、見捨てたんですか。 タルブを。私の、故郷を。お父さんも、お母さんも、弟も、みんな、死んだ」 「見捨てたわ。――どうでもよかったから」 視線を上げ、ルイズを睨みつけるシエスタ。 その瞳の輝きに、りゅうおうは体を震わせた。 ――ああ、あの瞳、あの瞳の輝きこそが、かの血脈の証。 幾度倒されても決して折れぬ意志の現れ。 人々の希望を背負う、一筋の光。 正にあれこそ――勇者たるものだ。 「……優しい人だと思ってた。 名前を覚えてくれたり、私を助けてくれたり。 今、この時より。あなたは、私の敵です」 『……厄介なことになったな』 メイドが去った後。 また盗み聞きされるのを警戒してか、念話でりゅうおうは話しかける。 『ま、なってしまったものは仕方が無いわね。 いずれ敵対するのならば、それがいつであっても大差は無いわ』 「……参ったわね。ちょっと、水の指輪を舐めてた」 「あれほどの力を持つとはな。少々、計算が崩れた」 小高い丘の上。本来の亜人の姿に戻ったりゅうおうと、ルイズは語り合う。 「よいのか? 今まで隠匿していた力、ここで晒してしまって? 7万の敵が相手となれば、流石に隠し通すことは不可能であろう」 「仕方無いわね。ここでトリステインの兵力を失うのはまずい。 ま、もう政府の8割がたは掌握したし、国内は力押しで何とかなるでしょう」 7万の敵を単騎で食い止める、決死の任務。 ルイズとその使い魔は、自ら志願してここに立っていた。 「お、来たわね。よくもまぁ、あんなに群れちゃって」 「数こそが人間の力。主よ、侮るでないぞ」 「わかってるわ」 遠目に見える丘の向こう、見え始めた敵の先頭集団。 それに向かい、ルイズは意識を集中させた。 「最初から全開でいくわよ。叩き潰すわ」 「承知した、わが主」 制御できる限界スレスレの出力で放たれた『エクスプロージョン』と、最上級爆裂呪文『イオナズン』。 初撃は、数千の敵を消し飛ばした。 「がっ――!」 「リュウオウ!」 ルイズは目を疑った。 本来の姿を取り戻したリュウオウが、あのリュウオウが――圧倒されている。 アルビオンの片隅にある、小さな村。 こんな所に、何故こんな使い手が! 「くっ……何者だ、貴様!」 言葉と共に、『ベギラマ』を放つりゅうおう。 しかしその閃光は、敵の左手にある大剣に吸収されてしまう。 この世界のものとは思えぬ奇妙な服装に、黒い髪の若い男。 何かのルーンが浮かび、光り輝く左手には大剣。魔法を吸収する、対魔法使いのためと思われる兵装。 そして、その右手には―― 「何で、その剣がここに――!」 ルイズの疑問ももっともだった。 その剣は封印した筈。あのリュウオウが封印したのだ、そう簡単に破れるわけもない。 だというのに、何故、ここにあるのか。 『大嵐の聖剣』。いや―― 「『王者の剣』。……『ロトの、剣』――!」 「か、カカカカカカカカ! クハハハハハハハ!」 戦闘中、しかも劣勢だというのに、りゅうおうは笑い出した。 魔法を放ち、剣を杖で防ぎながら、堪えきれぬ笑いに身をよじらせる。 「そうか。――そうか! ついに現れたか! この世界にも、やはりいたか! だとすれば、その剣を持っているのも不思議ではない、必然だろうよ! 運命、だからな!」 そう。その剣は、必ずやある者の手に渡る。 闇に抗う者。 勇気ある者。 人でありながら、ただ自身の努力と意志だけで人を超えた存在。 「現れたか! 我が愛しい怨敵! 我が愛すべき天敵! ――『勇者』よ!」 ここに、物語の主人公は降臨した。 前ページ次ページルイズが世界を征服するようです
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マジシャン ザ ルイズ 進む 春の使い魔召喚の日、ルイズは召喚に成功した。 そして、それは前代未聞の使い魔の召喚であった。 ルイズが呼び出したそれは、杖を持ちローブを着たメイジらしき色眼鏡をつけ髭を生やした初老の男であった。 周囲を取り囲む学生達も唖然とする、勿論ルイズも。 「あ、あ、あああんた、誰よ」 人間を使い魔として呼び出すなんて、聞いたことが無い。 問われた男は、周囲を睥睨し呟いた。 「………ウルザ」 ウルザはプレインズウォーカーと呼ばれる多次元宇宙を渡る力を得た魔法使いである。 彼はドミナリアと呼ばれる世界に生を受け、彼の弟であるミシュラとの争い―兄弟戦争―の末に大陸一つを吹き飛ばしたことがきっかけとなりプレインズウォーカーとしての力に目覚めた。 それ以後、彼は弟を誑かした機械生命体が支配する暗黒の次元ファイレクシアに復讐を誓う。 そして、数百年にわたる準備の末、他の八人のプレインズウォーカー達と「ナインタイタンズ」を結成し、ファイレクシアの中枢へ攻撃を開始。 戦い、暴走、裏切り。 ナインタイタンズの仲間が次々と無念の内に帰らぬ人となり、ウルザ自身も囚われの身となってしまう。 ―そして、終幕の場面。 ウルザは彼と同様に捕まり、操られてしまった自分の子孫であり同志でもあるジェラードとファイレクシアの闘技場で対峙することとなる。 目前にはファイレクシアの王、宿敵ヨーグモスの姿。 ジェラードを倒しヨーグモスを葬ろうとするウルザ。 しかし、その願いは適わずジェラード首を落とされ彼は長い生涯を閉じたのであった。 (ここは…どこだ? ファイレクシアの闘技場では無いようだが…ドミナリアでもないようだな) 「あ、あ、あああんた、誰よ」 自分を召喚したらしい、桃色の髪の娘が問いかけてきている。 周囲を見回す。 どうやらここは教育施設か何かのようで、周りにいるのは10代の子供達ばかりである。 全員が同じような服装をしていることからも、この推測は的外れでは無さそうである。 例外として一人だけ禿げ上がった成人男性がいるが、これは教師だろうか。 正面に視線を戻し、桃色の娘を注視する。 「………っ!」 ぶるっと震える桃色。 どうやら召喚を行ったらしい娘といい、周囲の生徒といい、マジックユーザーであることは間違い無いようである。 その証拠にマナの流れが感じられる。 それならば、事情を話し協力してもらうことも可能であろうと思い至った。 「………ウルザ」 マジシャン ザ ルイズ (1)ワールド・シフト 「ミ、ミスタ・コルベール!やり直しを!やり直しをさせてください! 何かあの人!…ええと、ミスタ・ウルザ、怖いです!」 色眼鏡で直接に目を見たわけではないが、ウルザに見られた瞬間思ったのだ、「こいつはヤバイ」と。 「こらこら、初対面の人をいきなり『怖い』とは何ですか。 それに召喚のやり直しは無理です、契約をしない限り、進級できませんよミス・ヴァリエール」 そこで、これまで沈黙を続けてきたウルザを口を開く。 「ミスタ・コルベール、この世界は、なんと言うのでしたかな?」 「は?世界?それは一体どういう…」 「召喚の影響で記憶が混乱しているのです、教えていただけませんかな?」 「ああ、そういうことでしたか。 確かにメイジを使い魔として呼び出すというのは前例がありません、そういうこともあるでしょう。 この世界の名前はハルケギニアです。加えてここはトリステイン魔法学院です。」 「ハルケギニア…トリステイン…………聞いたことが無いな………」 それだけ聞くと、ウルザはぶつぶつと独り言を始めてしまった。 「ほら!ミスタ・コルベール!怖いですよ!何かぶつぶつ喋ってるし!あれ絶対マイワールドに引きこもる人種ですよ!」 「だからミス・ヴァリエール、やり直しは認められないと…」 「しかし!」 「ミス・ヴァリエール」 不毛な押し問答が正に開始されようと言うところで、案外早く思考の世界から帰ってきたウルザが声をかけた。 「おおよその状況は把握した。 私と『契約』しなければ、君は留年になってしまう。そして私は記憶が曖昧で右も左も分からない。 利害は一致している。 ここは契約をしてしまうのが丸く収める方法ではないかね?」 「けけけけ、け契約って、そんな!使い魔の契約なのですよ!ミスタ・ウルザ」 「…ふむ、使い魔か、長いこと生きているがそんな経験は初めてだが、中々に興味深い。 少なくとも私を使い魔にすればフェイジングをする以上の働きをしてみせよう」 「で、でも………」 話はメイジと使い魔として契約を結ぶという流れになってきたことで周囲の生徒達が騒ぎ始める。 「メイジがメイジを使い魔に!聞いたことが無い!」「しかもあんな凄そうなのを!」「でもおじさんでしょ?四六時中おじさんと一緒は…」 「つか、あの歳の差でキスは犯罪じゃね?」 ビビクッ! 真っ白に思考停止していたルイズであったが、生徒の一人が発した台詞で我に返った。 (そ、そうよ…わ、私のファーストキスの相手が、あんな、あんなお爺ちゃん…!) 「どうしたのかね。契約をしたまえ、ミス・ヴァリエール」 「早く契約を済ませたまえ、ミス・ヴァリエール」 周囲の生徒達も口々に「契約」と騒ぎ始める。 『契約』…『契約』…『契約』…『契約』…『契約』 ルイズの周囲を『契約』という言葉が渦巻き始める。 それらと場の空気がルイズの乙女心を侵食し始める。 (で、でもでも、メイジと契約しちゃうなんて前代未聞じゃない! もしかしたら歴史に残っちゃうかもしれないし、それにこの人、なんか凄そうな雰囲気だし、もしかしたらトライアングル…いえ!スクエアクラスのメイジかもしれないじゃない! そんなメイジを召喚しちゃう私ってば、もしかしたらスクエアを超える、それこそ虚無の魔法使いとかになっちゃうんじゃないの!? そうなったらクラスの皆に笑われて、ゼロのルイズなんて呼ばれなくて済むわ! わ、わ、私を馬鹿にしてた連中なんてそうなったら、……うふ、うふっ、ふふふふふふふふふふ) 「じゃ、じゃあちょっと屈んで頂けるかしらミスタ・ウルザ」 思考のループに嵌ってしまい口元が緩んでいるルイズであった。 「こうかね?」 「そ、それで大丈夫です」 乙女なルイズが心の何処かで静止しているのを感じるが、暴走した思考は止まらない。 ルイズは呪文詠唱を開始した。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」 こうして彼女は4200歳ほど年上の男と口付けを交わし、使い魔の契約を交わしたのであった。 何事にも不測の事態は起こり得る。起こったならば予測の事態だったことにすればいい。 ――ウルザ マジシャン ザ ルイズ 進む
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前ページ次ページルイズが世界を征服するようです 「始めるわよ」 首都トリスタニア、某所。 明かりはただ一本の蝋燭のみという、薄暗く狭い小部屋に、数人が集まっていた。 いずれもローブに身を包み、フードで顔を隠している。 「……まずは、現状確認からいきましょうか」 アルビオンを制圧したトリステインは、すぐさま帝政ゲルマニアに宣戦を布告。 同日、ゲルマニア首都ヴィンドボナは壊滅した。 ……噂を信じるならば、ただ1騎の竜騎士によって。 主要都市をわずか数日の内に陥落させられたゲルマニアは、成す術無く降伏した。 現在、トリステインはロマリア連合皇国と交戦中。 トリステインはトロルやオークなど亜人に加え、エルフ、 更には無数の強力なドラゴンまでも戦線に投入している。兵力差は圧倒的だった。 アルビオン、ゲルマニアを傘下に加え、更には『東方』――エルフ達と同盟を結ぶことにすら成功。 最早、トリステインは小国などでは無く、世界有数の覇権を誇る大国だ。 「そして、それを操るのがあの2人。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、その使い魔ね」 女王に即位したアンリエッタ。 それを傀儡とし、裏から操る者が居た。 マザリーニなど、優秀な人物は既にあらかた粛清され、この世から去ってしまっている。 「このままでは、世界は本当に、あの2人のものになってしまう」 無論、ルイズ達に対する抵抗が無かったわけではない。 送り込まれた暗殺者は、既に3桁にまで上る。 しかし。グリフォン隊隊長を務めるジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵や、 『シュヴァリエ』の称号を持つ少女といった凄腕の側近。 そして何より、本人達の力の前にあっては、暗殺者などカス同然だった。 「そうはさせない。絶対にね。 ――ここに、レジスタンスの結成を宣言するわ。 同意する者は素顔を晒し、血判状にサインを」 そう言い放った人物が、まずフードを脱ぐ。 素顔が、蝋燭の淡い光に下から照らされた。 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 祖国を蹂躙され、復讐に燃える火のトライアングルメイジである。 「――彼女らは。私の、敵です」 シエスタ。 かつて魔法学院にて、メイドを務めていた少女。 「あいつらを、許しておくわけにはいかないよな」 「はい。頑張りましょう。 ……それに、彼らはウェールズ兄様を……!」 異世界人であり、伝説の『ガンダールヴ』である平賀才人。 そして、その主、ルイズと並ぶ『虚無』の使い手、ティファニア。 「人数こそ少ないけど、十分ね。 このメンバーならば、十分あいつらに勝利し得るわ」 朗々と、誓約の言葉を読み上げる面々。 それは、遥か昔よりこの大陸に伝わる、死地へ赴く人々が交わす誓いの証である。 この言葉が一体、どこで生み出され、どう伝わったのかは定かではない。 一般的には、始祖とその仲間達の言葉が、その始まりであるとされる。 ――だが。 それは、遥か異世界、とある冒険者が集う酒場にて、 今まさに邪悪に立ち向かわんとする1人の少年、そして3人の仲間達が交わした言葉と。 奇しくも、まったく同じものであった。 "我はここに集いたる戦友の前で厳かに精霊に誓わん。 我が生涯を光と共に過ごし、我が使命を忠実に果たさんことを。 我は全ての邪悪なるもの、闇たるものを絶ち、 悪しき力を用いることなく、また知りつつこれを許さざるべし。 我は我が命の限り、我が意志の揺るがざることをつとむべし。 我が使命にあたりて、与えられし力に驕らず、慢心に捉われることなく、幾万の敵を恐れることも無し。 我は心より人々を助け、 我が手に託されたる未来の幸のために身を捧げん。" ――アリアハン戦士誓詞 「――さぁ。反撃開始といきましょうか」 キュルケは、獰猛に笑った。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 「ウェールズ様……」 「アンリエッタ可愛いよアンリエッタ」 ぶちゅー。 「はん。よくもまぁ、飽きないものね」 「クク。1度離れた分、余計に愛が深まったということであろうよ。麗しきものではないか」 トリステイン王国、王宮。 人目を憚ることもなくウェールズと抱き合うアンリエッタに、主は呆れ、使い魔は哂う。 「水の指輪。アルビオンでは苦しめられたけど、手に入れてしまえばこんな便利な物も無いわ」 右手中指に嵌められた指輪を眺めながら、ルイズは漏らした。 アルビオン侵攻の際にクロムウェルから奪ったマジックアイテム、『水の指輪』。 ルイズは先住魔法の力がこめられたそれを使い、ウェールズの死体を操ることでアンリエッタを骨抜きにしていた。 (※これも、前編にてルイズがウェールズを殺害する際、 きちんと死体に傷がつかない方法で殺していたからこそ成せる業である。 仮に、『イオ』で爆破するなどという愚かこの上無い方法を取っていたならば、まず不可能であっただろう。 筆者が前編投下真っ最中にこのミスに気付いて頭を抱えたなどという事実は決して存在しないので、 その旨ご了承いただきたい。というか、正直ごめん) 「ヴァリエール宰相。前線より伝令です」 「聞くわ」 「最前線にて、極めて強力な竜騎士と遭遇。 交戦の結果制空権を奪われ、現在戦線は膠着状態にあるとのことです」 報告を聞いた小竜が顔をしかめる。 「何? スカイドラゴン大隊はどうしておる」 「……そのほとんどが戦死。残った者も、本格的な戦闘は不可能と聞いております」 「バカな。我がスカイドラゴンが、そこらの竜騎士隊に劣る筈が――」 「それが、その。……相手は、僅か一騎だと、報告にはあります」 「何だと?」 りゅうおうはしばし黙考する。 ……ただ一騎にスカイドラゴン隊がやられるなど、通常ではまず考えられない。 いや、それどころか、あれ一体で竜騎士小隊を壊滅させられる程の戦力差なのだ。 それは敗れるとなると――相手も、この世界の常識では計れないクラスの戦力か。 「……やむをえんな。すぐにしんりゅう大隊の出撃をさせよ。 同時に、地上戦力も補強する。 そうだな……ダースドラゴン連隊を、しんりゅう隊に載せてゆけ」 「了解しました」 下がろうとする武官を、ルイズは引き止める。 「ちょっと待ちなさい。――ワルド?」 「何かな?」 「いくらりゅうおうのマジックアイテムで遠距離からすぐ連絡出来ると言っても、 いちいちこちらに指示を仰いでいるのでは対応が遅れる。 アンタ、前線指揮官として行ってきなさい。全て任せるわ。 必要なものがあれば送るから、何でも遠慮せず伝えなさいよ」 「しかし、護衛はいいのかな、ルイズ?」 ルイズは鼻息を漏らす。 「ここ1ヶ月は暗殺も減ってきてるし、シャルロットだけでも十分よ。 いいから行ってきなさい。 そしてとっとと、その竜騎士とやらの首を晒しなさい」 「このような時のために力を授けたのだ。わかっておろうな?」 ワルドはりゅうおうの指導と『改造』により、 『バギ』系統の全ての呪文を、更に『ピオリム』『スカラ』などの補助魔法すらも身につけていた。 「わかった。行ってくるよ、ルイズ。 さぁ、行ってらっしゃいの接吻を――」 「2週間以内に教皇の首を持ってきたら、褒美にね」 「マジで!?」 「マジよ」 うっしゃー、と全力で走り去るワルド。 「よいのか?」 「いいのよ。どうせ、私のファーストキスはあんたなんだから。もうどーでもいいわ」 「カカカカカカカ! そうであったな!」 ――数日後。 「やぁ、ルイズ。いや、ヴァリエール宰相とお呼びするべきかな?」 「どうでもいいわ。とっとと用件を言いなさい、ギーシュ」 王宮の片隅、一室。 突然姿を見せた元級友相手に、ルイズはうんざりと返す。 今は、少しの時間であっても無駄にしたくない状況なのだ。 深く椅子に体を沈め、ルイズはため息をついてから促した。 「こんな時に何なの?」 「今日はグラモン家の代表として来たんだ。父も兄さん達も、それどころではないようでね。 ロマリア侵攻の状況について、グラモン家として――と、」 そこでギーシュは言葉を切り、室内を見回した。 「あの使い魔はどうしたんだい?」 「りゅうおうなら、戦力の補強のために部下を召喚中よ。いいから、とっとと話しなさい」 「やれやれ、忙しないねルイズ。まぁいいか。こちらも、遊びに来たわけじゃないんだ。 まずは、この資料を見てもらえるかな?」 ギーシュが懐に手をやると、ルイズは背もたれにもたれたまま、無言で右手を伸ばし、 「驕ったな、ルイズ」 瞬間。 鋭利な何かが、背後からルイズの胸を貫通した。 「がっ……!」 吐血。 思わず体を丸めようとするも、椅子に縫い付けられているような状況では、それすら許されない。 続けて2、3と、何かがルイズの体を貫通する。更に大量の血を吐き出し、ルイズは痙攣した。 必死で痛みを堪えながら、自らの体を貫通し、突き出ているものを確認。 鋭く、槍のように尖った青銅。……椅子を、『錬金』したのか。 懐から出した杖を突き出すギーシュを、睨みつけた。 「油断したね、ルイズ。 護衛の1人もつけないとは、僕も舐められたものだ。ドットメイジごとき、警戒する必要も無い? いや、それとも信用してくれていたのかな? だとしたら、嬉しいね。 そのおかげで、君をこうして葬れるのだから」 「……ギーシュ……あんた……!」 ギーシュは暗い瞳でルイズを見下ろした。 「ゲルマニア戦で父は死んだよ。2人の兄も、ロマリアでね。 知っていれば、さっきの僕の言葉がおかしいことに気付いた筈だ。 仮にも、元帥の死を知らなかったのかい? だとすれば、僕がこうして直接手を下すことも無かったかな。 そんな有様では、いずれ誰かが君を殺しただろう」 喋ることすら出来ず、血にまみれ、痛みにあえぐルイズ。それを眺めながら、ギーシュは哂う。 傍らのランプを手に取り、『錬金』。青銅の剣を作り出し、構えた。 「あぁ、でも。こうして君を直接殺すことが出来て、嬉しく思うよ。 ――さらばだ、『魔王』ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 貴族の誇りなど欠片も無い、愚かな侵略戦争で多くの命を散らした罪。死で償え」 剣が、振り下ろされる。 早く、速く、疾く迅く捷く! 転移魔法『ルーラ』を超短距離間で使用、それを連発することで限りなく最速に近づく。 扉を吹き飛ばし、階段の上を飛翔して、目的の一室へと全力で向かう。 油断した。驕っていた。 いくら主が大丈夫だと主張しようと、聞き入れるべきではなかったのだ。 その傲慢こそ、敵が狙っていた隙に他ならないというのに――! 最後の扉を中級火炎魔法『メラミ』で焼き尽くし、部屋に文字通り飛び込む。 目に入ったのは、振り下ろされる剣、歪んだ笑みを浮かべた少年、そして血に塗れ瀕死の主。 怒りに、視界が赤く染まった。 轟音。 大量出血のせいか、霞む目を凝らす。 ――自分とギーシュの間に、紫のローブを纏った背中が立ち塞がっていた。 ああ、きてくれたんだ。よかった。もう、あんしんだ。 「りゅう、おう」 「喋るな、主」 杖でギーシュを牽制しながら、片手でルイズを即興の槍から引き抜くりゅうおう。 苦悶の息が漏れ、血が噴き出す。りゅうおうはすぐに回復魔法『ベホマ』を起動。ルイズを床に寝かせる。 あまりに深い致命傷だったが、何とか間に合ったらしく、傷は塞がっていった。 怒り狂う使い魔は後ろ手に回復を続行しつつ、剣を下ろした少年を睨みつける。 ギーシュは、全てを諦めたかのように笑みを浮かべていた。 「好機を逃したか。――無念だよ」 「我が主をここまで傷つけた罪、千度殺しても尚余りある。死ね」 りゅうおうの杖に、膨大な量の魔力が集中する。発動すれば、塵も残さずギーシュを焼き尽くすだろう。 ルイズは震える腕を何とか動かし、ローブの裾をつまむ。 「りゅうおう、まって」 「喋るな、主。傷はまだ塞がっておらん」 使い魔の言葉を聞き流し、ルイズは掠れた声で続けた。 「ギーシュ、みごとだったわ。 ドットメイジでありながら、ここまでのけいびをすりぬけて、わたしにいちげきをくわえるなんてね。 みなおした。やるじゃないの」 「は。ここまで絶好の条件でありながら、殺せなかったのは僕の落ち度だ。 褒められるようなことじゃないよ」 「喋るなと言っておろうが、貴様も黙れ!」 激昂するりゅうおうを尻目に、ルイズは荒い息を隠そうともせず言葉を継ぐ。 「いいえ。たまたまりゅうおうはいなかったけれど、 そうでなくともあんたはやったはず。 すぐにころされるのをかくごで、いちげきにすべてをかけてね。 そのかくごとじっこうりょく、しょうさんにあたいするわ。 ねぇ、いまからでもおそくはないわ、わたしたちのなかまにならない? あんたになら、せかいの5%くらいはくれてやってもいいわ」 ギーシュは鼻を鳴らした。 「冗談にしても最悪の部類だね。殺せ」 「ならばその望み、叶えてやろう!」 杖を振り下ろそうとするりゅうおうはしかし、後ろからローブを引かれる感触に動きを止める。 「主よ……! 何故止める!」 「ひつようだから。……そいつをちかろうに。けっしてみはりをおこたらないよう」 「は、はい!」 ようやく現れた武官達に命じるルイズ。 ギーシュは杖を取り上げられ、数人に拘束されて運ばれていった。 「まったく。あるじのいうことはちゃんとききなさい、りゅうおう」 「何故止め……いや、いい、喋るな主」 「だいじょうぶよ。あんたがこうしてくれてるんだから。 あいつはグラモンけのゆいいつのいきのこり。いかしておけば、なにかとべんりよ」 「回復魔法では傷を塞ぐことしか出来ぬと、知っておろうが! いい加減に黙らんかこの痴れ者が!」 激怒する使い魔を前に、ルイズは青白い顔でくすりと笑う。 「ふふ。しんぱいしてんのね、あんた」 「当たり前であろうが! 黙れ!」 ルイズはその笑みをやがて大きくし、肩を震わせて笑い始めた。 「ふ、ふふふふ! ねぇりゅうおう、あんたはわらう? たかがどっとめいじひとりとゆだんして、そのけっかがこれよ! あはははは! こっけいね! これが『まおう』ですって!」 「主!」 「ふふふふふふ! ねぇきいてよ、わたしね、もしかしたら、 じぶんからいけんをいいにくるなんて、ギーシュはなかまになるのかもっておもってた! もとは、おなじがくいんせいなんだしって! あはははははは! ここまでしておいて、なにをいまさら! はははは!」 ルイズは自嘲する。 ――ああ、そうだ。愚鈍なことこの上無い。 私は、人に恨まれることをしてきた。 数え切れない程に人を殺し、多くの村を、町を、国を、叩き潰し、蹂躙した。 後悔はしていない。全ては、目的のため。必要な行動だ。 その私が! 今更! 「主……」 「あははは! そう、はじめから、こうしておけばよかった!」 ルイズは右手を掲げ、魔力を集中する。 『水の指輪』が起動。城内全てに、力の波紋を広げていった。 「ギーシュがつえをもってここまではいってこれたということは、 じょうないにそのてびきをしたやつがいるはずよ。 これで、あんしん。じょうないのほとんどのにんげんは、かんぜんにあやつれるわ」 有事にそなえ、『水の指輪』を使うための下準備は済ませてある。 特に城内の人間には、秘薬を混入した食事や水を摂取させることで、 『完全盲従』という暗示をかけることに成功していた。 「わかった、もうよい。休め、主」 「あはは……はぁ」 ルイズは再び、ローブの端を握り締めた。 ローブでルイズを包むように、抱きしめるりゅうおう。 「……あんたのからだ、つめたいわね」 「ああ。竜であるからな」 ルイズは微笑む。 それまでのような狂乱したものではなく、穏やかな、安心し切った赤子のような笑み。 「……ほんと、つめたい。ああ、でも――」 きもちいいわ、と呟き、ルイズは瞼を閉じた。 りゅうおうは睡眠魔法『ラリホー』を使った手を下ろし、杖をしまって両手でルイズを抱き上げる。 まさに、一国の姫を攫う魔王のような構図。 それにしては、その手つきは、酷く慈愛に溢れていたが。 「…………」 ルイズの寝室にたどり着き、ゆっくりとベッドに下ろす。 枕元に置かれた宝玉を起動。魔力で編まれた、緑色の幕が豪奢なベッドを包み込む。 元の世界にあった結界装置を更に改良したもので、 耐衝、耐熱冷、防音、更に魔法を反射する『マホカンタ』の機能をも併せ持ち、 りゅうおう以外の内部への侵入を決して許さない、鉄壁の守り。 例え城が崩落しようとも、ルイズはそれに気付かず眠り続けるだろう。 「…………」 りゅうおうはしばらくの間、眠る主の姿を見つめ、やがて部屋を出た。 廊下を渡り、階段を下る。進むにつれ、徐々に騒音が大きくなっていく。 爆発音に、風を切る音。何者かが、戦闘しているのだ。 「そこまでだ」 その階全体を貫く、一際広大な廊下。 護衛を勤めるタバサと共に、数人の近衛兵が奮戦していた。 相手は、4人。 その内の1人――燃えるような赤髪の少女が、現れたりゅうおうを見て目を剥く。 「な――!」 「そこの貴様ら。我が相手をしよう。それが目的であろう?」 驚きを露わにしてこちらを向くタバサ達に向けて、顎をしゃくる。 「貴様らは、上で主の護衛だ。決して誰も近づけるな」 「しかし――」 「行け」 たった二文字の言葉に込められた感情を瞬時に汲み取り、タバサは顔を青ざめながら頷く。 他の兵たちを引き連れ、上のフロアへと去っていった。 「まさか、そっちから来るとはな。前の戦いでつけられなかった決着、ここで決めてやる」 言葉と共に、2本の剣を構える少年。他の3人も体勢を整える。 りゅうおうは笑い、演説するかのように手を広げた。 「まぁ待て。ここで我が戦っては、城が無くなってしまう上に人的被害も膨大だ。 それは、貴様らにとっても不都合であろう? 場所を変えるぞ」 「ど――」 どこに、とメイドが続ける暇も無く、彼らの体は遠方へ転移されていった。 「……ここは、アルビオン?」 「そうだ。ここでなら、周囲を気にする必要はあるまい」 半年ほど前、7万のアルビオン軍とルイズ達が対峙した草原。 りゅうおうと4人は、一瞬にしてそこに辿り着いていた。 転移魔法『ルーラ』及び『バシルーラ』を併用した結果である。 「さて、戦う前にひとつ聞いておきたい」 「何でしょうか?」 ハーフエルフの少女が、背の丈ほどの大きな杖を構えながら返す。 「先ほどの小僧。あれは、貴様らの差し金か?」 キュルケが厳しい表情で答える。 「……ええ、そうよ。ここにあんたが居るってことは、失敗ってことだろうけどね」 「ククク。いや何、立派であったぞ。主も賞賛していた。 いやいやしかし、そちらも中々に残酷な作戦をとるものだな。 戦力にならないドットメイジに、一か八かの特攻をさせるとは」 りゅうおうの嘲笑に、キュルケは悔しげに唇を噛み締めた。 「……あいつの発案よ。私たちに、その覚悟を止める資格は無い」 「なるほど。ああ、しかしなるほどなるほど――貴様らの策か」 何を言いたいのか。シエスタは訝り、そしてすぐあることに気付く。 りゅうおうの瞳。 普段は黄色のそれが、真っ赤に染まっていた。 「…………っ!」 シエスタは直感する。まずい。 あれは、逆鱗だ。 「よくも、主をあのような目にあわせてくれたものだ」 戯れるような口調。 それを口にするりゅうおうの脳裏には――血まみれで苦しげに喘ぐ、主の姿があった。 りゅうおうの額のルーンが、輝き出す。 「――皆殺しだ」 りゅうおうは、真の姿を見せた。 前ページ次ページルイズが世界を征服するようです
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間久部字楽(マクベ アザラク)を召喚 ルイズが字楽を召喚しました。色々あったけど馴染んできたところで巨大なゴーレムが拳を宝物庫の壁に向かってたたきつけている所に出くわしました。 以上前フリ終わり 「ぬう、なんじゃいアノどでかい土人形は。」 「ゴーレムよゴーレムッ!『土くれ』のフーケに違いないわ。あそこって確か宝物庫だもの。行くわよアザラク!」 「フム。世間を騒がせているとかいう噂のアレか。あの土人形の肩にツッ立っておるヤツを捕まえればよいのだな?」 「見ッ見えるのッ!?まぁいいわ!そうそれ、そいつを捕まえるのよ!」 一方壁が頑丈でお困りのフーケさん。何度も叩けどヒビ一つ入らない。このままモタモタしていては学校の教師連中に捕まってしまうことは必定。 「ああもうあのハゲ!何が『物理攻撃に弱い』だよッ並の城壁より硬いじゃないのさ!」 焦るフーケさん!と、そこで奇跡がッ! 再度拳を振り上げ打ち下ろさんとしたその時、ルイズの失敗魔法が壁にクリティカルヒットしたのである。そして入るヒビに気付く! 「ハハッこいつはラッキーだねぇ!感謝しとくよ!」 撃ち込まれた拳が遂に壁を砕く。意気揚々と、しかし迅速に破壊の杖を探し出し、確保。 「さて、あとは…」 と、サインを残そうとしたフーケ。だが背後に怪しい影がッ!そこには影から這いずり出てきた字楽先生がいたのだッ 「なッどうやって…!」 驚愕により硬直するフーケ! 「人様のモノを盗むとはなんという奴だ、そんなことでは神罰をくらって地獄に落ちるぞ。反省したまえ!」 そして、言うが早いかフーケの首の辺りを掴んで持ち上げる字楽先生! だがフーケも伊達に盗賊稼業をやってはいない。危機に陥ったことだって当然ある。そしてこういった時に対処する為の切り札も。 必死で精神を集中させ、腰に吊るしておいた一掴みの土を即席の槍を作り突き出す。弾かれるように二人は離れ、その隙にフーケは自らのゴーレムの肩の辺りに飛び乗る。 数十メイルはあった距離を一瞬で詰めた上によくわからない方法で自分の背後まで移動してきたヤバいのが既にいるからにはサッサと逃げなくてはならない。 そう判断し逃げ出そうと、フーケはゴーレムを反転させる。その瞬間、得体の知れない悪寒を感じるッ『これが殺気というヤツかッ』等と考えつつも体は迅速に反応している。 が、数瞬回避が遅かったか、破壊の杖を持つ左手に字楽の飛び蹴りがヒットする!そのままの勢いでカッ飛んでいく字楽には目もくれず、奪ったばかりのお宝の行方を探す。 杖は、ルイズが確保していた。その事を確認するや否やゴーレムの手を伸ばす。魔法の使えない生徒から宝を奪うのはとても容易な事の様に思われた。安堵するフーケ。 だがしかし。 二十数メイルの高さをカッ飛びながら落ちていった字楽をガン無視していたことが彼女の不運。いや、無視しなくとも結果は変わったかどうか。 ルイズ の かげから アザラク が とびだしてきた! 「ぬおりゃぁああああああああああああああ」 という声と共に超重量の拳を支える字楽先生。呆然としていたルイズは我に返りその隙に退避する。 その姿を見たフーケは舌打ちしつつ 「チッホントに平民かい!?仕方ないねえ!」 言い、更にゴーレムのもう一方の腕を乗せて押しつぶそうとする。 流石にツラいか、顔を歪ませた字楽先生。だがその目がルイズの持つ破壊の杖を捕らえた瞬間! 「小娘ッ」 「へ、わたし!?」 「そうオマエだァオマエェッ!バッバッバズッバズーカッ!バズーカを早くッ」 「ばずーか!?ばずーかって何!どれ!?」 「バズッバズーカだっつのバズーカッ!その手に持ってるソレだソレェェェェエ!」 「これ!?」 得体の知れない金属の棒で何をするのかがわからなかったが、とりあえず言われた通りに投げ渡す。 破壊の杖を片手で受け取った字楽は再び影に沈みこみ、ルイズの背後に出現する! 発射用意を整えゴーレムに照準を合わせると、盛大に顔を歪ませ、呟く 「Hasta la vista baby.」 ゴーレムは土くれに返り中からロングビルが出てきてロングビルがフーケの正体だとわかりました。以上。 ↓その後 「虚ォ無ゥスゥメェェェェ!」 「な、何よ!」 「ヒトがぁああゆーふーにバズーカ渡せって言ったらぁ モタモタしてちゃ駄目でしょう 手に持ってるものが一つしかないんだから。 バズーカっつったらソレ渡すの。ネ!?」 ミグミグミグミグミグ ギニャー 「アザラクハスバラシイツカイマデス。サイコウノツカイマデス。」